2025年3月24日 第33回政策評価に関する有識者会議 議事録

日時

令和7年3月24日(月)13:29~15:36

場所

厚生労働省共用第15会議室

出席者

菊池座長、井深委員、岩佐委員(オンライン)、印南委員、大西委員、玄田委員、佐藤委員(オンライン)、新保委員、田宮委員(オンライン)、新田委員(オンライン)、春山委員、平野委員(オンライン)、藤森委員(オンライン)、皆川委員、村上委員、東京大学 森田 朗 名誉教授(議事(1))

議事

発言内容
○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 では、定刻になりましたので、ただいまから「第33回政策評価に関する有識者会議」を開催いたします。
 政策評価の担当をしております田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しいところをお集まりいただき、感謝申し上げます。
 まず初めに、御報告でございますが、本有識者会議の委員に今月より新たに春山早苗委員に御就任いただきます。ワーキンググループは医療・衛生ワーキングを御担当いただきます。
 続きまして、本日の委員の出欠でございますが、岩崎委員、松浦委員におかれましては、御都合がつかず、会議を御欠席となりました。また、岩佐委員、佐藤委員、田宮委員、新田委員、平野委員、藤森委員におかれましては、オンラインでの御出席となっております。
 そして、本日は東京大学名誉教授の森田朗先生に御出席いただいており、この後、議事(1)「政策評価の意義等」につきまして御講演いただきます。森田先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 本日の会議では、事前に御案内したとおり、ペーパーレスとしてタブレットでの会議とさせていただきます。下にスクロールすると次のページに、横に大きくスクロールすると次の資料に参ります。
 ここで報道関係者の方に御連絡です。本日の会議の撮影に関しましては、頭撮り可としているところですが、撮影はここまでとさせていただきます。
 オンラインでの御出席の委員の皆様に御連絡でございます。
 会議中は、可能であればビデオはオンにしていただくようお願いしますが、接続が重くなる場合は、ビデオは適宜オフにしていただいて構いません。
 また、御自身が御発言される場合以外は、マイクをオフにしてミュート状態にしていただくようお願いします。また、御発言を御希望される場合には「手を挙げる」ボタンを押していただきまして、こちらから御指名させていただきますので、マイクをオンにして御発言のほうをお願いいたします。
 それでは、この後の議事進行につきましては、座長の菊池先生にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○菊池座長
 本日も大変お忙しい中、また、年度末の大変慌ただしい中、御参集を賜りまして誠にありがとうございます。
 本日は森田朗先生にお越しいただいておりまして、政策評価の意義などについて御講演を頂戴いたします。
 また、後半の議事においては、来年度の政策評価の実施方針等について、委員の皆様に御議論いただく予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に進め方について、事務局から御説明をお願いいたします。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 議事の進め方について御説明いたします。お手元の議事次第を御覧ください。
 本日は、前半、まず、議事(1)といたしまして森田先生より御講演いただき、その後、意見交換、こちらを合わせて1時間程度を予定しております。その後10分程度の休憩を挟みまして、後半、議事(2)以降を順次進めていただければと思います。
 議事(2)以降につきましては、委員の皆様からの御議論に先立ち、議事内容につきまして事務局より御説明いたしますので、その後に委員の皆様方から御意見、御発言いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 それでは、早速、議事(1)「政策評価の意義等、新たな『政策評価に関する基本方針』の背景・意義等について」につきまして、東京大学名誉教授、森田朗先生よりお話しいただきます。
 森田先生は、現在、総務省の政策評価審議会の会長代理をお務めでいらっしゃられ、また、本有識者会議においては、平成15年度から28年度まで、第1期から第3期にわたり委員をお務めいただくなど、厚生労働省をはじめ国の政策評価制度を草創期よりお支えいただいてございます。
 個人的なお話で恐縮ですが、私も本会議に加えていただきまして、当時は森田先生をはじめ政策評価の専門の先生方がかなりおられ、そもそも政策評価とは何なのかというお話を随分御教示いただきまして、大変勉強させていただいたという経緯がございました。
 現在のこのメンバー構成は、まさに厚生労働の各分野における専門の先生方に御参加いただいておりますが、政策評価そのものの在り方について深く議論するとか、そういったことが必ずしもないように思いまして、それで私のほうからも、ぜひ政策評価そのものについて、しっかりと委員間の共通認識を深める機会を持っていただきたいというお願いを申し上げておりまして、そのこともあり、今回、事務局のほうでこのような講演会の機会を設けていただいたという次第でございます。
 それでは、森田先生、本日は御出席ありがとうございます。これから御講演のほうをよろしくお願いいたします。

○森田教授
 皆様、こんにちは。ただいま御紹介いただきました森田でございます。
 菊池先生とはかなり以前にここの場で御一緒したことがございまして、そのときの御縁ということかもしれませんけれども、今日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 今の御紹介で、私自身、総務省の政策評価審議会の会長代理ということで御紹介いただきましたけれども、実はこの任期が今月で終わります。次の木曜日の会議を最後に政策評価を離れることになりますので、そういう意味でいいますと、最後にこういう機会を与えていただいたということを大変うれしく思っております。しかし、率直に申し上げて心はちょっと離れているところがあるものですから、今日申し上げることについて、後で責任を負えるかどうかは自信がございませんけれども、これまでのところについて、お話をさせていただきたいと思います。
 本日のタイトルは「政策評価の意義等、新たな『政策評価に関する基本方針』の背景・意義等について」ということで、これはいただいたお題でございますが、実は政策評価の仕組みといいますのは、政策評価法でもう20年ぐらいずっと続けておりましたけれども、3年ぐらい前だったと思いますけれども、政策評価と事務事業レビューであるとか、そうしたものを併せて見直す必要があるのではないか。そちらのほうの資料は入れておりませんけれども、たしか行政改革会議で総理からそういう指示がございまして、そこで、政策評価の在り方も見直していくべきではないかと考えるようになったということです。
 今日お話しいたしますのは、そのときの考え方についてです。具体的な基本方針につきましては、後でお話ししますけれども、新しいものは今年1月に、かなりのページ数のパワーポイントが公表されておりますので、それを御覧になっていただければと思います。
今日お話しいたしますのは、なぜこういう基本方針が再検討されるようになったかという背景と、そのさらに背景になるかもしれませんけれども、今の世の中は非常に大きく変わっていて、政策評価の在り方もこれまでと同じような形では駄目だということと、さらに申し上げますと、こういう時代こそ政策評価というのは非常に重要なのであるという認識です。
 その場合に、もう一言申し上げておきますと、政策はどこかで誰かがつくっていて、それを外部のほうで後から評価するという考え方はもう時代にそぐわないのではないか。むしろ政策をつくるということと評価ということを、伴走するという言い方が基本方針にも書かれていたと思いますが、そうした形で考えていくことが必要なのではないかという、後から思い返せば至極当然のことかもしれませんけれども、そういう認識で基本方針をつくったということでございまして、それに基づいて、今、各省で政策評価の見直し、むしろ政策形成そのものについての再検討も進められていると聞いております。
 次に行きますが「1.『基本方針』の背景」ですけれども、これまでの政策評価はどうだったのか。これは全てのところでそうだというわけではありませんけれども、政策評価審議会のほうにはこういう声がよく聞こえてきたという内容でございます。
 どうしても一定の年度が終わった後、その政策がうまくいったかどうか、目標を達成したかどうかということが評価の中心だったわけですけれども、確かにこれはうまくいったとか、ここが問題であったという指摘はあったとしても、その後、それでどうなのだということがよく見えてこなかったということがあろうかと思います。
 1つには、ある年の、例えば、2024年度の政策評価にこれから入ると思いますけれども、その評価結果が出るのがこの年度の後半になりますと、それを反映するのは2026年度になってしまいます。では、2025年度はどうなっているのか。その前のときの評価をしている。これだけ世の中の変化が大きいときに、1年の間隔を置いて評価しても、その評価を反映することは難しいのではないか。
 実際、幾つかの府省に関しましては、こういう点は政策の効果が十分に現れていないという指摘をしましても、その部分は分かっているので、もう次の年の政策は変わっているのだと言われますと、その評価自体がどういう意味を持つのかという疑問も指摘されたわけです。
 特にその場合の評価といいますのは、これまでの政策、あるいは制度がうまく動いているかどうか、目的を達しているかどうか。そうした観点からの評価をしていたわけで、実際、現在のように非常に環境の変化が大きくなってまいりますと、既存の制度をきちんと運用しているかどうかということだけを評価していたのでは、実際に世の中の課題は解決しないではないか。かつての時代は変化が比較的少なかったのかもしれませんけれども、それをずっと繰り返してきたというところがありまして、評価のための評価になっているのではないか。
 そして、こちらでもそうだったかもしれませんが、私が有識者会議に入っていたときには紙でしたから、数センチに及ぶような評価書があって、それを見てどうだということが問われたわけですけれども、これはペーパーをつくられる方も大変ですが、読むほうも相当な負担になっていて、そして、評価の結果がどういう形で反映されるかが見えてこないということになりますと、ここでそういうことを申し上げていいのかどうかは知りませんけれども、何となく虚しさを伴っていたというのが実感だったわけでございます。
 それがいろいろなところから聞こえてまいりましたし、実際問題として政策をどんどん変えていかなければいけない。新しい課題が次々と発生している。ただ、その課題に対してどう取り組んだらいいかよく分からないという、初めての経験のような状況が発生しているときに、どのような形でいい政策をつくればいいのか。どうやったらつくれるのか。そして、いいか悪いかも含めてですけれども、どのように改善していったらいいかということについては、やはりきちんと評価をして、フィードバックする必要があるのではないか。そういう仕組みを政策評価の中に入れ込むことを考えてはどうかということが問われ出したわけですし、それをやれという官邸からの指示もあったと受け止めて、基本方針を含めて、新しくやり方を変えていこうと考えたわけです。
 そこで、1-2に書きましたが、想定外の変化、私も70年以上生きておりますけれども、リタイアしてから10年ぐらいたって、これからは平穏無事にずっと人生を送れるかなと思っておりましたら、想定外の出来事で、とにかくパンデミックが起こる。今まで全然経験したことがなくて、どうなるのか。日本が直接関わっているわけではありませんけれども、ロシアのウクライナ侵攻が起こって、それによって円安が起こってくるとか、いろいろな意味で、これまで30年ぐらい頑張ってもなかなか起こらなかったインフレがあっという間に起こってしまうとか、大きな変化が起こり始めたわけです。
 それに加えて、今年1月にはトランプ政権が誕生して、これ以上は申し上げませんけれども、何が起こるか分からない。そうした中で、国民の方が安全に安心して暮らせるような社会をつくっていくために、そこで発生してくる課題に対してどのように取り組んでいったらいいのか。そういうことを政府、あるいはその中でそれぞれのファンクションを分担されている各府省は考えざるを得ないのではないかと思います。
 後で少し具体的な例も紹介いたしますが、今まで我が国の場合には、たくさんの法律をつくり、制度がつくられ、そして、それを少しずつ改善する形で我々の社会の在り方が決まってきているわけですけれども、これまでの制度とか政策が期待された効果を十分に発揮できない状態が起こってきているのではないか。それは制度が前提にしていた、政策が前提にしていた社会状況そのものが大きく変わっているのではないか。
 そこで、新しい状況を解決していくためにはどうするかといいますと、まず、課題がどうであるか、現状がどうであるかということをできるだけ客観的に、今流に言いますと、エビデンスに基づいて把握しなければならないわけでして、そして、それに基づいて解決策としての政策を考えていかなければいけない。適切な政策をつくっていかなければならないわけですけれども、そこで、適切というのは何を根拠にして言えるのかといいますと、評価というものが重要になってくると考えられます。
 そういう認識を共有することによって、政策評価審議会のほうで政策の在り方を見直そうではないかということで、2023年に基本方針の一部変更を行いまして、ガイドラインを改正しました。そして、今年1月に「効果的な政策立案・改善に向けた政策評価のガイドライン」を発表しております。私は今回のガイドラインの作成にはそれほど関わったわけではありませんので、詳しい経緯は知らないのですけれども、いずれにいたしましても、各省との協力の下にどうやって政策をつくり、その中でどのように評価していくかということを組み込もうという考え方でございます。
 そのときによく言われましたのは、政策評価の在り方そのものも、もう一度評価、ないしレビューをする必要があるのではないか。繰り返しになりますが、そこに書きましたように、制度とか政策といいますのは、そもそも一定の社会状況を前提としてつくられ、その状況の下で機能し、目的を達成できるようにつくられていたはずなのですけれども、前提が変わってきたときに制度が機能不全に陥っているのではないか。それを、ずっと漫然と、と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、制度に従って運用していたのでは社会の新たな課題はなかなか解決できないのではないか。要するに、必要なことは、社会の課題を解決して国民に安全で安心できる社会を保障することだとしますと、そういう観点から見たときに、やはり政策形成そのものから見直していく必要があるであろうということです。
 これも繰り返しになりますけれども、それでは、そこにおける行政の役割とは何かといったときに、これまで全く経験してこなかったような課題が発生したときに、どう対処したらいいのかというのはなかなか難しい問題です。今までの方法を少しずつパッチワーク的に修正して、対応してきたというケースが、我が国の制度でたくさんあるわけですけれども、それ自体、制度が非常に複雑になってきておりますし、そうした形での対応の限界を超えて社会の変化が起こっているのではないか。
 そこに書きましたけれども、しかし、変えるというのはなかなか難しい。政策評価審議会の関係の文書でも出てきましたが、無謬性ということ、政策をつくるとき、法律をつくるときは、いろいろなことを考えて、皆さんの合意を得てしっかりしたものをつくるわけですから、それを簡単におかしかったとか欠陥があったとかいうわけにはいかないというわけですけれども、それを誤りがないという形で頑張って使っていくというのは、状況が変わったときに必ずしも適切ではないのではないか。
 むしろコンピューターのソフトウエアの考え方ですけれども、アジャイル型政策形成といいましょうか、ベータ版をつくって使ってみて、悪いところを調べて、それを改善する形でよりよいものをつくっていくという、どちらかというと、柔軟な形で政策を考えていったらいいのではないか。
 このアジャイル型という言葉は、たしか閣議決定か、内閣の文書にもこういう言葉が使われておりまして、政策評価審議会のほうでも文書の中に「アジャイル型の政策決定」と書いてあるのですが、もう今は皆さんも御存じだと思いますけれども、アジャイル型とは何だという質問がたくさん出てから、この言葉は今は消えていると思います。そうした意味で、政策評価のやり方を考えていこうということです。
 これにつきましては、拙い絵なのですが、実はこれは私が大学の学生に説明するときにホワイトボードに描いて、それを後でパワーポイントにしたのですけれども、どういうことかというイメージを御説明するために使ったところ、我ながら言うのは恥ずかしいのですが、割と評判がよくて、政策評価審議会の公式の資料どころか、内閣官房の骨太か何かの資料にも使われました。著作権を主張するつもりはありませんけれども、御覧になったときにはそういうものかと御覧になっていただければと思います。
 冗談はともかくとして、簡単に言いますと、船で向こう岸に渡るというわけです。これは海の海峡だとお考えいただければと思います。目的地、ゴールを目指して出るわけですけれども、最初の計画でいいますと、真っ直ぐそちらに向かって舵を固定して一定のスピードで行けば、目的地に一定の時間後に到達するであろうと想定して船出をするわけです。
ところが、実際に何が起こるかといいますと、潮流の変化がありますから、船が横に流されることになります。そうしますと、このままずっと行ったら目的地になかなか到達できない。しかしながら、むしろ方向を変えないで真っ直ぐ行ってしまうのが無謬性のような考え方ではないか。
 なかなか目的地に到達しないということになるわけで、この場合には、当然ですけれども、途中でゴールの方向に舵を切らなければならない。軌道修正しなければいけない。次に、何を根拠に、どういう方向に軌道修正をやっていくのか。御存じの方もいらっしゃると思いますが、これはいわゆるサイバネティクスの考え方になるわけですけれども、舵を切ってだんだん目標に近づいていくということになります。それで行きますと、もう一回、今度は逆の方向から潮流が起こってきて、今度は行き過ぎてしまう。これも正していかなければいけない。
 そして、最終的に目的地に到達する。時間は多少かかるのかもしれませんけれども、それが一番いいわけでして、1のところ、2のところの辺りできちんとした軌道修正をしながら政策を進めていくという考え方になる。そういう考え方をとって、1回目、2回目のところで、どういう位置にあるかという測定と、新たに向かうべき方向を示唆していく。そこに政策評価の役割というのがあるのではないか。
 もし短い時間でよければ、これで終わりにしてもいいのですけれども、今日お話しすることをもう少しつけ加えさせていただきますと、では、実際に社会の変化でどういうことが起こっているのか。
 先ほども申し上げましたように、パンデミックが起こったり、戦争が起こったり、いろいろしておりますが、我が国の場合、制度の前提となる社会状況を変えてきている大きな要因というのは、急速に起こるものではありませんけれども、人口減少です。
 私自身、社会保障・人口問題研究所の所長もやっておりましたが、10年以上前でしょうか、あのとき地方消滅ということが言われ出しまして、人口が減るのではないかと言われておりましたけれども、これは専ら地方自治体の問題として捉えられていたところがあって、特に東京にいた場合には、人口の減少ということについて、あまり認識されなかったと思います。
 ただ、あのときから数字を見ていて確実に起こると考えられましたのは、生産年齢人口の減少です。ピークが1995年になりますけれども、それから我が国の生産年齢人口は確実に減ってきているということです。最近になりまして、企業もそうですし、実はこちらに伺う直前まで隣の人事院で新しい公務員の人事改革の在り方についての諮問会議の答申をしてきたのですけれども、そこでも話題になっておりますのは、なかなか人材が集まってこないということですし、優秀な人材をいい待遇でもってせっかく雇用したとしても、すぐにやめてしまう。こちらも事情は変わらないと思いますが、そういう状況にあるわけでして、これはかつては想像できなかったわけです。
 生産年齢人口が多いときには、私が大学を出て就職したときなどがそうですけれども、公務員というのはみんながなりたがるものであって、雇う側からいいますと、優秀な人材からどんどん採る。採ってもらった人といいますか、来た人は、残業時間なんかは気にするな、給与なんかも気にするな、とにかく一生懸命働きなさい、それがあなたの将来にとっていいですよというイメージだったわけですけれども、今はそういう人が来てくれなくなってきた。給与の関係でも、今は民間企業と非常に厳しい競争を迫られているということで、公務員の在り方も考え方を変えていかなければならない。そういう時代になってきているわけです。
 もちろん、少子化対策というのは厚労省を中心にいろいろと実施されているわけですけれども、仮にこの政策がうまくいったとしましても、出産に適した年齢の女性の数がまだ20年、30年と減り続けますので、仮に合計特殊出生率が回復したとしても、人口減少の底を打つのは30年後とか、それ以降になってしまう。それまでは人口減少が続きますし、生産年齢人口が減少してくる。
 そのため、女性の就労に関して言いますと、もはやピークといいますか、かなり高いところまで行っていると思いますし、外国人の労働者をどうやって入れるかという議論になっておりますし、私もそうかもしれませんが、高齢者も、もっと働けということで、雇用機会があるのは結構なのですけれども、働かざるを得ない。そうしなければ、なかなか労働力を賄えないという状態になってきていると思います。
 そうした中で、他方では社会保障の負担が増えてくる。医療費をどうするかという問題が出てきているわけですけれども、これも特に今は地方によっていろいろと差があるわけでして、農村部においては高齢化率が高くなり、人口が減ってきている。特に生産年齢人口が減っているところでは、コミュニティーの維持自体、かなり深刻で困難な状態になっております。
 そこで、枠囲みで書いてありますが、その辺を明確に言い切っているフレーズが、2018年だったと思いますけれども、総務省の自治行政局の「自治体戦略2040構想研究会」の報告のなかにありまして、これからの地域社会の在り方とはこうではないかという3項目を挙げております。
 普通、お役所は明るいイメージのメッセージを出すのですが、かなり厳しくて、1つは、「若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏」。東京周辺、首都圏は、多分、総人口の減少はそれほど起こりませんけれども、高齢者の比率が格段に高まります。比率が高まるだけではなくて、絶対数が多いものですから、首都圏における高齢者問題というのは相当深刻になるでしょう。地方ではまさに生産年齢人口が減ってくる。
 2番目の「標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全」といいますのは、ちょっと分かりにくいところがあるのですけれども、今申し上げましたように、就職に関して言いますと、昔のような終身雇用制度の下での買い手市場のような労働市場は変わってしまう。そこで、今までの雇用のシステムを完全に変えなければいけませんし、その前提となった教育の在り方も変わってくるだろう。
 また、土地に関して言いますと、「スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ」ということで、朽ち果てるインフラは、まさに下水道の事故が表していると思いますし、虫食い状態で空き地・空き家が出てきているということが都市の在り方として非常によくない状態をもたらしているということです。
 これらの課題というのはこれまであまり考えられてこなかったものでして、これに対して今までの既存の制度で対応できるかどうかというと、相当厳しいものがあるのではないか。しかし、政策をきちんとつくって制度を変えていかなければ、これからの日本は相当深刻な状態になるのではないかというメッセージなわけです。
ちなみに、人口に関して言いますと、これもちょっと古い図になるかもしれませんけれども、よく出ているものです。
 実は年少人口、15歳未満の人口が一番多かったのは1955年です。生産年齢人口のピークが1995年です。老年人口のピークは、これでは2042年になっていますけれども、もう少し前倒しになるかもしれません。いずれにしましても、こういう形で65歳以上の高齢者4割、生産年齢5割、そして、年少人口1割ぐらいの人口の比率を維持しながら総人口が減っていくというのがこれからの姿で、これがコロナでもう少し下方に加速したかなと思っております。
 こういう社会を前提にしてこの国の在り方を考えていかなければならないということになりますし、もう一つは、私が社会保障・人口問題研究所にいたときにつくってもらった図ですけれども、カルトグラムという表し方で人口規模で都道府県の面積を表しますと、こういう形で表現できる。申し上げたいことは一目瞭然だと思いますが、北海道、東北、特に北東北、そして、四国とか中国地方のほうは、相対的にですけれども、人口がものすごく減っていく。こういう形での人口分布の中で、社会をどういう形で維持していくかというのがこれから問われてくるところだと思います。
 制度の機能不全の事例についてもう少しお話しいたしますと、先ほど申し上げましたように、空き地問題、空き家問題でスポンジ化しております。基本的な制度で何が問題かといいますと、先日のニュースでいいますと、不動産の価値、固定資産税の評価額が全国的に上がっていると言っていますけれども、これは地域によってかなり違っております。首都圏とか観光地では外国人の方がどんどん買っているので上がっておりますけれども、そうでないところはどんどん下がっているといいましょうか、価値がなくなっているところもあります。
 もともと不動産についての所有権といいますのは、当然のことながら、不動産を所有することによって価値を生むということが前提で、その所有権を保護する制度になっておりましたが、今日、地方で見られるのは、特に相続した場合ですけれども、土地にせよ、家屋にせよ、所有権を放棄したいという方がたくさん出てきている。
 ただ、上に建物が建って老朽化している場合には、例えば、市町村に寄贈するという場合でも、今度は受けたほうが解体の費用を払わなければいけない。それ自体が大きな負担なので、こう言ってはなんですけれども、土地も要りませんという話になってきた。そういう状態が起こっているということで、不動産に関して、現在のような所有権と相続の制度が果たして社会的な資産を有効に使う仕組みとして適しているのかどうか。ただ、これは明治以来の基本的な制度の在り方に関する問題提起ですので、制度改革はそう簡単にはいかないと思います。
 専門職の人材不足についても、ここで改めて申し上げるまでもないと思います。私も印南先生と御一緒に中医協とか、医療問題には関わってきたのですが、医師の働き方改革で、あまりにも長時間の労働で先生方が大変だということで、減らすという議論が出ておりますけれども、余っているところも一部はあるようですが、今、一般的に地方では足りないということです。
 ここで申し上げたいのは何かといいますと、日本の場合には、労働の量を時間で測っている限り、労働時間を制限した場合に何が起こるかといいますと、1人の人の働き方、別な言い方をしますと、生産性を上げていかない限り、アウトプットが減るだけになってしまいます。医師の働き方を抑えた場合、やりくりができればいいのですけれども、そうでない場合には、迷惑を被るのは患者さんになってしまうということで、我が国の場合には、そういう意味でいいますと、生産性の向上ということについて、もっと考えていかなければいけない。
 しかし、これまでの労働法制もそうですけれども、いろいろな意味で、まさに生産性を1つの価値といいますか、尺度にして評価をしていくという仕組みはなかったのではないかと思います。海外を見ていると、生産性を向上させるための最大のツールがデジタルなのですけれども、日本の場合には、働き方改革とデジタルは必ずしもリンクしていない、一体的なものとして考えられていないというのは、非常に不思議というか、残念な気がいたします。
 地方金融機関というのは何かといいますと、地方の銀行は合併しないと厳しいというのですけれども、合併による市場占有率が50%を超えると、独禁法に違反する状態になってきて、どうするのだという話とか、入札の場合も、今は競争入札がうまく成り立たない。
 次の三次元プリンターというのは、ここでは関係ないかもしれませんが、申し上げておきますと、かつては外国から輸入してはいけないもの、麻薬とか、いろいろありましたけれども、1つは、ピストルとかの武器を輸入したらいけないということで、日本の場合には、空港とか港で制限することができた。もちろん、かいくぐって入ってくるものもありましたが、チェックすることができたわけです。けれども、今は硬質のプラスチックを使った三次元プリンターですと、ソフトウエアで入ってくる。これに対してどうやって規制するかということが問題になってくるのではないかという話です。
 あとは、御存じのところだと思いますので省略いたしますが、そういう意味で、新しい問題、新しい課題、特にデジタル化もそうですけれども、そういうものがどんどん入ってくるときに、どういう形でこれを規制していくのか、あるいはコントロールしていくのか。そうした課題の取組というのは、新しい課題として取り組まなければいけないということで、大変難しい課題であるということです。
 では、そのときに政策はどうやってつくったらいいのかという話になりますが、ここにいらっしゃる先生方には、基本的な考え方を改めて詳しく説明するまでもないと思いますけれども、何が課題なのかということをしっかり把握しなければいけないでしょう。当然のことです。その課題を解決するためには、解決された状態を目的として設定して、それを達成するためには何をどうすればいいのかということについて、ここではプログラムと言っておりますけれども、設計図といいましょうか、デザインをしっかり描くということが必要になってきます。最近はデザイン志向ということが言われていて、ほとんど同じようなことを言っているような気がいたしますけれども、そういうことになるわけです。
 その課題ですが、先ほども申し上げましたけれども、例えば、人口減少によって、過疎地における医療の提供体制がどんどん衰退してきて、危機に瀕している場合には、何をどのようにすればいいのか。これだけの簡単な設問ですと、診療報酬をもっと上げろとか、そういう議論が出てくるのですけれども、それが因果関係でいろいろなところに影響を及ぼしたときに、今流に言いますと、1つのエコシステムのような形で解決するためのモデルというのはどういうものが考えられるのかということになると思います。
 こういうことを考える場合、これも言わずもがなのことですけれども、何が重要かという優先順位をつけなければいけない。限られたリソースですので、それをどのように使うのが価値の最大化に一番貢献するのか。裏返して言いますと、優先順位の低いものは何であって、はっきり言ってしまえば、それはもう捨てるということも覚悟しなければいけない。今まであるものを全部維持したまま、プラスアルファで何か価値をつけていくのは難しいのではないか。そういう意味での選択、これは考え方を明確にするということと、もちろん、これについて、ポリティカルなプロセスでもってきちんとした決定をするということもありますけれども、それが重要になってくるでしょう。
 ただ、必ずしも価値は一つではありませんから、複数の価値が出てきた場合に、どのようにしてバランスをとっていくのか。優先順位とその価値の充足をどの程度図って、バランスをとるかということも重要になってくるのではないかと思っております。
 今、私自身が関わっているところでいいますと、厚労省でもお手伝いをさせていただいておりますけれども、医療・介護も含めて、デジタル化を進めていく。医療データをしっかり取って、それに基づいて医療政策とか、医療の様々なお薬もそうですけれども、効果の測定をしていく。同時にそれを医療資源の配分にも役立てていく。そういう仕組みを国レベルとしてつくってはどうか。
 ヨーロッパの場合、北欧諸国を中心としてそういう制度がかなり整備されてきました。このたび、今年1月に、御存じかと思いますが、European Health Data Space、EHDSと呼ばれておりますけれども、EU域内での医療データの共有を図るようなシステムをつくることが法律によって制定されました。それも一つの考え方だと思いますけれども、そこで論点の一つになりましたのは、個人情報の保護と個人情報を医療にどう使うかというバランスの話になってまいります。
 その辺りのことについても、いろいろ議論がありましたけれども、何のために何をするのか。そのためにどういう影響があって、そこではどういう要素が必要になってくるのか。そうしたことについてのプログラムがきちんとつくれるかどうか。
 ちょっと余計な話になりますけれども、多くの政策の場合には、人間の行動を変えることによって社会的な問題を解決しようとする。危険なものに対しては危険性をなくすような形で規制をするとか、あるいは非常に困った状態にあるときに、災害に遭った方とか、何らかの被害を受けた方には、それをサポートすることによって生活を改善していく。
 多くの場合、政策科学で言われているのは、手段として3つあって、1つは規制です。最終的に強制権限を使って、ルールに違反した人は罰しますよという形でルールを守らせる。2番目は、経済的なインセンティブであって、補助金とか、支援することによってインセンティブを提供する。3番目は、情報提供と言っておりますけれども、働きかけをするとか、あるいは人間というものは一定の情報に基づいて反応して行動しますので、その情報の提供の仕方に工夫を凝らすということになります。悪用されたのが例のSNSのフェイクニュースのような形になります。
 そうした3つを組み合わせることによって人間の行動をコントロールするということで、具体的な例は、コロナのときにどうやって感染を防ぐか。人の接触を防ぐためにどうするか。飲食店その他、人の集まるところに対して、ロックダウンという強制手段で営業を停止させるか、あるいは営業補償の交付金を払うことによって営業を自粛してもらうか、あるいはリスクがあるということを呼びかけることによって自粛をしてもらうか。日本の場合にはなかなか強制手段がとりにくいということで、結果的にはかなりの額の交付金を使ったということになるわけですけれども、そうした形での政策のプログラムをしっかりと考えることが重要ではないかと思われます。
 当然、それは規制手段がいいのか、お金がいいのか、あるいはお願いレベルで何とかなるのかの議論があろうかと思っておりまして、医療関係の場合、補助金によって病院を維持していくか、あるいはどうするかということによって、プラスマイナスいろいろ出てくるところだと思います。
 人口減少地域の医療の話にもう少し触れさせていただきますと、そこに書きましたが、この図は医師会の資料から持ってきたものですけれども、北のほうのある医療圏の人口の変化ですが、こういう形でどんどん総人口が減っていきます。青の濃い部分と薄い部分が生産年齢人口に当たります。老年人口はあまり減らないのですけれども、生産年齢人口がどんどん減ってくる。こういうところでどういう形で医療を維持していくのか。それについて考える必要があるのではないか。
 そのとき、データを見ますと、これはちょっと見にくくて申し訳ないのですが、左側の折れ線グラフだけを御覧になっていただければと思いますけれども、青い線が予想される医療需要の変化です。そして、赤い線が介護需要です。介護はしばらく水平状態ですけれども、それから下がり始めます。上のほうの薄い赤と青は全国平均になります。こういう形で減ってくるところの医療をどういう形で維持していくのか。
 医療制度の場合、医療の提供体制をどうするかということについて、現実の問題といたしましては、今まで取られていた診療報酬であるとか、いろいろな形での地域医療計画もそうですけれども、そうした策だけではとても対応できるような問題の規模ではないのではないと思います。
 こういうことについて、政策を立てていかなければいけない。そこで、繰り返しになりますが、なぜこうやれば問題が解決するのかという因果関係を組み込んだような、ロジック・モデルと言っておりますけれども、まず、それをしっかりと考えて皆さんで共有しましょうと。何のためにどの要素をコントロールすれば、解決するのかということになります。
 それに基づいて、法律とか予算をつくるということになりますし、法律をつくって恒久的な仕組みにしますと、制度化ということになるわけですけれども、当然、その場合には利害関係者、ステークホルダーの方がたくさんいらっしゃいますから、議論がいろいろ出てまいります。いろいろな意見を聞いているうちに、当初筋の通ったロジックがだんだんゆがんできたり、ずれたりすることもあり得ます。これはある意味で民主主義の社会における決定ですから、やむを得ないのですけれども、どこがどうずれてきたのかということはきちんと把握しておく必要があると思います。
 そして、また出しますけれども、無謬性ということで、大変苦労してつくった以上、これでずっといくのだという考え方が、現代ではなかなか通用しなくなってきている。かといって、取りあえずつくっておいて、アジャイルなのかもしれませんが、あまり頻繁に変えますと、これまた朝令暮改という批判を浴びることになって、どちらに転んでも何か言われるという状況には違いないのですけれども、その中でできるだけ安定した形で、何ができて、何ができないのかということを考えていかなければならない。
 制度ができましたら、今度は運用の段階に入ります。運用するときに、今、日本の場合にはこの問題がかなり大きいと思いますし、先ほど申し上げました生産年齢人口の減少、労働力の不足というのはかなり大きいと思いますけれども、法律にこう書いてあって、このようにすべきということであっても、特に地方公共団体の場合には、実際にはそれが実施できていないというケースがかなりあります。なぜできないのかといいますと、児童相談所のケースもそうですけれども、やはり職員の数が足りない。特に高度の専門能力を持った職員の数が足りないというのが問題になります。
 そこで、政策評価として、そうした人間をちゃんと手当てして雇えと言うのは簡単ですけれども、全体として、絶対数としてそういう人材が減ってきているときに、その評価に基づく警告といいましょうか、助言はほとんど意味をなさないわけです。もう少し根本的なところから考えていかなければならない。
 特に多いのが、災害もそうですし、社会保障関係もそうですし、教育とか、いろいろありますが、昔と違って、地方公共団体に、計画をつくって、計画によって資源を効率的に使いながら政策目的を立てろという法律による要請、あるいは国の府省からの要請というのは非常に強いわけですけれども、計画をつくれという指示が無計画に出されるものですから、計画があふれてしまって、対応できないという状態が起こっている。そうしますと、自治体の側は、やむを得ないので、自らの判断で優先度に応じる形で計画をつくっていくわけですけれども、その計画がなかなかできないので、外部にお願いしてつくってもらったりとか、いろいろなことが起こっているのが現実ではないか。
 それはそれとして、形はできるのですが、そこで書きましたけれども、アウトプットという形で何らかの行政としての活動は行われることになるのですが、それによって社会的な課題が解決するかというと、必ずしもそうとは言えないのではないか。そういう現実があるのではないかということです。
 そこで評価を生かせと。ここから本論に入るわけではありませんけれども、例えば、伴走という考え方を言葉で言った場合には、評価というのもその中に組み込むことができるのではないか。
 ここでちょっと立ち戻りまして、そもそも政策評価というのは何なのか。これも同床異夢といいましょうか、いろいろな捉え方があるようです。もっとあるのかもしれませんが、全く一般的に政策評価という場合には、「外部機関による行政活動の有効性・合規性」と書きましたけれども、きちんと法律どおりにそれがなされているかどうか、あるいはお金がちゃんと使われているかどうか。お金の支出に関して言いますと、会計検査院がそういうチェックをやっているということになります。
 もう一つは、国民がそれによって満足しているかどうか。これをどうやって評価するのかはなかなか難しいところですけれども、世論調査を含めて、SNSが普及した社会では、いろいろとこの類いの情報はいっぱい出てまいります。あれがいいの悪いのということが言われるわけですが、それを評価というのか。あるいはそうではなくて、政策を担当している機関、政策の立案・実施を担当している府省が、政策を自ら改善していくためのツールとして評価をする。自己評価を中心としますけれども、外部のチェックを受けて、それを自己改善のための有益な情報としていく。こういう評価もあり得るわけでして、政策評価法の書き方はちょっと読みにくいところがあるのですけれども、それをつくる過程を脇から見ていた者からいいますと、やはり3番目の自己改善のための評価、情報をつくり出すというのが法律に書かれているところだと思います。
 現在、この有識者会議もそうですけれども、厚生労働省で評価をして、それを総務省の評価局がチェックする形で、そして、こちらの政策の自己改善に結びつけていっていただきたいというのが趣旨のように思います。
 これらは必ずしも連動しておりませんので、事務事業レビューとか事業仕分のように、外から見て無駄を切るという形の評価と渾然一体として取り扱われるところがあると思いますけれども、そうではなくて、あくまでも政策の立案・実施主体が自らどうやって政策を改善していくか。そのためにどういう方法があり、外部からどういう助言を得るかというところが重要ではないかと思っております。
 そういう観点から見たときに、先ほど言いました政策プログラムという、何かの課題を解決するために、最初にこういうプログラム、ロジックモデルで要素を組み込んで、このような活動で解決する。どこまでそれを法律で規定するか、あるいはその活動のための予算をどうつけるか。当然、一体となっていますけれども、基になるプログラムが重要であって、それを実施する前に、政策をつくる前にきちんと検討しておくということが重要ではないかと思うわけです。
 政策評価審議会では表には出しませんけれども、非常に分かりやすく簡単なポイントは何かといいますと、いろいろと政府のやる仕事、それは本当に必要なのですかと。必ずしもやらなくていいのなら、なくてもいいのではないですかということになりますし、2番目は、それをやらなければならないとしても、民間でやる方法はないのですか。そのときに、補助金であるとか、何らかのインセンティブを提供することによって、民間でそれができるならば、それでいいのではないか。どうしても行政機関が行政の仕事としてやらなければならないのかどうか。
 さらに言いますと、行政でやらなければならない場合も、コストパフォーマンスはいいかどうか。このような基準に照らして、それで本当に目的を達成できるのかどうか。そして、その根拠は何であって、達成すべき目標、数値目標をKPIという形で設定できれば一番いいと思いますけれども、その辺りをきちんと見ておくということが必要ではないか。それがあって初めて政策もスタートすると同時に、それを基準にして評価をしていく。
 したがって、先ほどの船のイメージ図ではありませんけれども、一定時間がたったときに、どこにいるかということを測定して、ずれを測定し、ずれ幅を戻すような形での舵を切るという形での軌道修正を政策のメカニズムの中に組み込んでおくことはできないのだろうかという話になってまいります。
 具体的にそれをどうするかということにつきましては、分野によって政策がいろいろ違うところがあります。例えば、これは公衆衛生などもそうかもしれませんけれども、本当に危機が生じるのはごくまれなケースであって、ふだんは何でもないのが当たり前だと。何でもない状態ですけれども、何もしないとそれは起こるはずであって、何かをしている。
 これは消防とか、実は救急医療もそうだと思いますし、軍事もそうなのですけれども、何もない状態でどれぐらいコストをかければいいのかというのは、なかなか難しいところです。昔ありましたように、平和な時代が続くと、軍事費は無駄であるというのでどんどん削っていくと。軍隊のほうは困るから戦争をやりたがるとか、そういう変な話にもなりかねません。いずれにしましても、そういう分野のものであるとか、あるいは実際に何か活動することによって成果が出るものであるとか、行政の政策というのはいろいろありますから、具体的にどうするかということは、それぞれの分野において考える必要があるでしょう。
 次に申し上げたいことは、これもある意味で当たり前のことになりますけれども、行政がどういう仕事をしたか、それにどれだけの資源を投入したかというのは、あくまでもアウトプットの話になります。これをきちんとできたかどうかというのは非常に評価しやすいのですけれども、それによって社会的な課題が解決したかどうかということとは別の話になります。社会的な課題が解決したかどうかという場合には、当然、アウトプットではコントロールできないような社会的要因がそこに入ってくる可能性がありますので、それをどのような形で考慮して評価をするのかという議論になってまいります。
 ただ、これについていいますと、この間、トランプさんがアメリカの議会で演説したときに、前バイデン政権をかなり批判しましたけれども、私はこれだけの政策をつくった。しかし、バイデンは失敗したというのですが、トランプさんは自分の業績をアウトプットで示して高いと評価をして、バイデンさんのほうはアウトカムが駄目だったという評価をして、政策評価の観点からいうと、全くずれた評価をしているのですけれども、世の中の評価の見方をしていますと、意外とそういうところがあると思います。あくまでもきちんとした評価というのはアウトカムでせざるを得ない。しかし、アウトプットが期待されたアウトカムを生むかどうかというのは、まさにプログラムの在り方にかなり依存しているということで、これは申し上げておきたいところであります。
 あと、エビデンスがどうであるかということは、これ以上申し上げるまでもないと思います。
 最後になりますが、繰り返しになるのですけれども、政策形成と政策評価というのは、このような意味において、スタートした時点からパラレルにやっていくことが必要なのではないか。それによって評価基準がはっきりしてくるわけですし、評価の負担がかなり減ると同時に、政策の形成自体にとっても非常に有効な形での情報を提供することになるのではないか。
 今日はエッセンスの部分を誇張して、理想の在り方を強く申し上げたところがあるかと思いますけれども、これから政策評価の仕組みが少しずつこちらに近づいていくように各省に働きかけていって、各省のほうでも、確かに今までの評価に比べて、実際の本来の仕事である政策の形成や実施にコントリビュートするような形での情報を、政策評価に期待したいという方向で変わりつつあると思っております。
 最後は、少し字が小さくて申し訳ありませんが、また船の例を書きましたけれども、この流れを1枚の図で描けば、こういうことになるということでございます。
 私自身は、冒頭に申し上げましたように、政策評価審議会は今月で離れることになりますので、政策評価のほうでも、こういう基本方針が反映されていくかどうかということは外から評価したいと思っています。
 ということで、以上で私の拙いお話を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

○菊池座長
 森田先生、どうもありがとうございました。
 それでは、せっかくの機会でございますので、意見交換に入らせていただきます。委員の皆様から御意見、御質問などがございましたら、どうぞ遠慮なくお願いいたします。
 会場の皆様はお手をお挙げいただければと思います。オンラインの皆様は挙手ボタンでお示しいただければと思います。
 それでは、印南委員、お願いします。

○印南委員
 先生、すばらしいプレゼンをどうもありがとうございました。
 答えを見いだすのはなかなか難しいと思うのですけれども、今のお話を聞いていると、伴走型とか、そういう政策評価というのは、理念的には必要とされるなと思うのです。ところが、私が関わっている中でいろいろ見ていくと、例えば、内閣府がやっている諮問会議でも、EBPMアドバイザリーグループというのができて、ロジック・モデルをつくって、それでKPIを設定して云々ということはやっているのですけれども、実際には、難しいです。
 研究でいうと、ロジック・モデルというのは因果ダイアグラムですよね。
 これ自体は仮説にすぎなくて、しかも、ちゃんと伴走しながらやっていくとなると、適宜、計量経済的にきちんと分析してやらなくてはいけないのですけれども、それにはあまりにもデータベースが整備されていないのです。まさしく先生が進められている医療DXとかデータベースの話を進めなくてはいけないというのが根底にあるのです。
 もう一つは、短期間に伴走しながら因果ダイアグラムそのものを評価できるかというと、結構難しいのではないかなというのが1つの感想です。
 答えが容易に見つかる話ではないと思っていますのでいいのですが、もう一つ、お話を聞いていると、既存の制度を前提にしたものではなくて、それとは別の政策プログラムが先にあって、それから政策評価があるべきだと私は聞いたのですけれども、政策プログラムの概念が私には少し分かりにくかったというのがあって、こちらを御説明していただくと大変ありがたいのですが。

○森田教授
 最初のほうは、ロジック・モデルというのは必ずしも現実的ではないという御意見だったと思いますけれども、その話は昔からかなり出ておりまして、政策評価が始まったときの一つの考え方として、計量経済をやっていらっしゃる方は、かなり厳密にモデルをつくって動かすべきだという認識で評価をやるべきだと言って、データがないし、錯乱要因がいっぱい入ってきて、ロジカルに因果関係なんか分からなくなってしまうではないかという話だったと思います。
 では、やめてしまうのかという話になるわけです。これは、だから、それからだんだん学習して、それこそアジャイルではないですが、学習しながら変えていかざるを得ないと思いますけれども、全く新しい状況で今までのままでうまくいかなくなってきたというときに、どうしたらいいのだと困っていらっしゃる方が各省にそれぞれいらっしゃるわけです。
 そこでは取りあえずあるものを使ってやってみようではないか、そこからだんだんいいものをつくっていこうではないかということになるかと思います。基本的には、おっしゃるように、これをちゃんとやってEBPMで動かそうとするならば、やはり国全体として信頼できるデータをきちんと使えるようにしようぜという話になってきて、医療関係ではそれが必要だし、先進国ではそうやっているのだから、日本もやろうよということを私も言っているのです。しかし、それができるのを待っていたらあと何年先になるか分からない。そういう意味では、できるところから、こうやったらいいよ、こういうものがいいよという話になろうかと思います。
 裏返して言いますと、ここだけの話ということで言いますと、今の政策議論では、例えば、高校を無償化して何が起こるかということをちゃんと考えているのでしょうか、そこのレベルの違いが大き過ぎるのではないですかと。あれはそんなに厳密に出さなくたって因果関係はある程度推計できるし、現実にそういう行動が起こり始めているわけですよね。それについてシミュレーションするだけでも、今までよりはかなり政策の質の改善になるのではないか。そういう情報を横から入れていくところがあってもいいのではないかということですし、それはつくるときの段階から一緒にいることによって、そういうことが言えるのではないか。その程度と言ってはなんですが、そこから始めようという話になるかと思います。
 だから、厳密なのは理想なのですけれども、そんなことをやっている国は世界にもないと思いますし、無理にやるとまた計画経済の愚を繰り返すことになるのではないかと思います。
一緒に答えてしまったみたいですけれども、よろしいでしょうか。

○印南委員
 どうもありがとうございます。

○菊池座長
 玄田委員、お願いします。

○玄田委員
 森田先生、まずはお疲れさまでございました。本当に大変なお仕事を長年やっていただき、感謝申し上げます。それと、今日の御説明もありがとうございました。
 私が1点伺いたいのは、特に今日は厚生労働行政の中での政策評価ということで、私はそれほど専門的にいろいろな知識があるわけではないのですが、何年間か政策評価に関わる中で感じていることを少しお話しして、先生の御意見を伺いたいのですが、厚生労働行政の中では、非常に単純な言い方をすると、弱者を切り捨てないという観点は厚生労働側はすごく強くあるだろう。それが先ほどの観点で効率性だけでは評価できない重要な尺度になっていて、この点については非常に大きい。
 だから、先ほどの21ページにあった、必要か、行政がやらなければいけないか、費用がかかり過ぎではないかということに対して、なぜそれでもやるのかというと、やはり弱者を切り捨てることはできないというのが非常に大きな理由になっているような印象があります。
 それはいろいろな評価があって、個人の人権ということを考えると、たった1人の人であっても切り捨てることができないということがあったり、特にこの弱者というのが誰を指すのかということもありますけれども、突き詰めると、人間観とか、職業観とか、死生観みたいなものにつながりながら、切り捨ててはいけないということがあるような気がしていて、そうすると、22ページで先生がお示しいただいた、仮に社会的なアウトカムがさほど大きくなかったとしても、やらなければいけないことがあるということが厚生労働行政の難しさではないかなということも感じております。
 ただ、では、弱者であれば常に守らなければいけないのかというのもなかなか難しいという印象も近年は持っておりまして、弱者を誰が指定するのかというときに、例えば、大きく言えば世論、SNS、メディア、いろいろなものがある弱者をつくり上げて、その人を守るということが、ある種、既得権の匂いをちらつかせながら、弱者を守ることに誘導させている面もあるし、もっとはっきり言ってしまえば、政策評価の原点である政治的な意思決定がある弱者をつくり上げて、その弱者を守るということを正当化しながらやらなければならないというところが、私は分かりませんけれども、厚生労働で政策に携わっている方にとっては非常に悩ましく苦しいところだろうという印象を外から見ていて感じるところがございました。
 ですので、先生に伺いたいのは、弱者といいますか、括弧つきになりますけれども、切り捨ててはならないという、ある意味、厚生労働行政の政策評価で非常に重要な部分に対して、今後、どのようなスタンスで評価の問題に携わっていけばいいのか。もし先生の御経験の中で我々が聞いておくべきことがありましたら、ぜひお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○森田教授
 大変難しい問題でございまして、私も倫理・哲学の専門でもないのですが、中医協のときからそうなのですけれども、具体的な例をいいますと、私がどう思うかというのはともかくとして、今回の高額医療費の上限を上げるという話もそうですが、限られた資源をどのように配分するかという、エコシステムというか、閉ざされたシステムの中で一番いい方法で、何が一番いいかという価値判断自体は政治が決めるということになります。弱者がどの範囲であって、誰が具体的な対象になるかというのはまさに政策決定の選択になりますが、その人たちに決まった場合には、その人たちは助けるけれども、その部分を助けるためのコストを誰がどういう形で分担して払うのか、そこまでセットで議論できるかどうかということが重要だと思います。
 私も医療保険財政については若干関心を持っているのですが、日本の場合、とにかく人の命を助けるためにはお金に糸目をつけずに、目の前の患者さんはみんな助けるということですけれども、北欧などに行きますと、向こうの場合は医療保険なりなんなりの政策の考え方、価値というのはかなり明確であって、どういうことかといえば、要するに、医療保険財政といいますか、財政的に医療のシステムをサステナブルにしなくてはいけない。持続可能な形にしなければいけないというわけです。
 したがって、使える資源が限られているとすれば、何から優先にしていくか。先ほども申し上げましたように、表現は悪いですけれども、ある意味、何は切り捨てるかということについて、きちんと価値判断しようということです。
 それはコロナのときにかなり出たと思います。イギリスのNHSの判断もそうだったと思いますし、スウェーデンなどもかなりありましたが、これも日本で言うと弱者に対して何をいうかという話になるのですけれども、高齢の方で、ある意味、残された時間が短い方に、さらにそれを延ばすために使うのか、あるいはまだ将来がある若い人たちがたまたま不幸にもコロナにかかったとき、彼らを助けるために使うのか。その辺については、国民全員が納得しているかどうかは知りませんが、合意というものがかなり存在しているという気がします。
 それに従って国として政策を出していった場合、もちろん批判がありますし、境界線上の人については、訴訟が起こる可能性もあるかもしれませんけれども、国民がその原則そのものを受け入れている場合には、そういう政策を実施できるのではないか。
 ですから、日本の場合、ワクチンの接種に関して言いますと、最優先がエッセンシャルワーカーとか医療従事者であって、2番目は高齢者になりました。3番目は基礎疾患のある人でしたが、基礎疾患のある人とはどういうことかという定義は必ずしもはっきりしなくて、ワクチンを打つよといったら増えるのではないかという心配をしていたのですけれども、イギリスのNHSははっきり基準を決めていて、ワクチンの入荷があったら、順位が来た場合には、その人のメールに、あなたの順番が来たので早くワクチンの接種を予約せよというサービスまできちんとやっているわけです。
 そういう意味での弱者の定義というわけではありませんが、一定の救うべき人と、一種のトリアージの対象になるわけですけれども、そういう概念について、何でもないふだんから国民的な合意をきちんとつくりつつ、医療保険といいますか、医療提供体制の政策をつくっていくというところが重要かなと思っております。

○玄田委員
 ありがとうございました。

○菊池座長
 ほかにはいかがでしょうか。
 会場の皆様はよろしいですか。
 では、オンラインの皆様から、どなたか。
 田宮委員、お願いいたします。

○田宮委員
 貴重な御講演を大変ありがとうございました。とても勉強になりました。私も、いろいろ制度とともに評価を考えて一緒にやっていかなければいけない、事後評価だけでは駄目というのは、本当にそう思っていたところで、ぜひ実現に向けたいと思っています。
 1点だけ、先生のお話の中でアウトプットとアウトカムという言葉が出てきて、アウトカムは、それがもたらした社会的効果を図ることだということを何度もお話ししておられました。
 いろいろな要素があるから、それを測るのは難しいが、それを目指すというお話だったと思うのですけれども、この言葉はこの有識者会議で私も何回かお話しさせていただいたのですが、行政として目指している活動量を設定して、それが達成されればアウトカムであるみたいな議論が時々あるような気がして、大変だからやらないというのではなくて、大変だけれども、やはり目指すはアウトカムであって、それは決して簡単に測れるものではないから、それをアウトプットによって代替しているのだ、分けていかなければいけないということは、前にもこの話をしていますが、今日お話を伺って改めてすごく思いましたし、アウトカム評価をちゃんとするには、やはり前後の比較をしないといけませんから、同じものを同じ尺度で計画的に経過を追って測っていくシステムをつくることもすごく大事だなと改めて思いました。
 アウトカムという言葉がちょっと違うように使われていることが懸念だったので、改めて発言させていただきましたが、そういう理解で間違っていないでしょうか。

○森田教授
 アウトカムという概念は非常に多義的で、どこまで何がアウトカムかというのはよく分からないので、アウトカムも一次的なアウトカムと二次的なアウトカムと、さらに、ソーシャルインパクトという概念まで持ち出している方がいらっしゃいます。
 研究者の議論としてはどんどんやっていいと思うのですけれども、行政官の方も含めて、実際に政策をつくっていらっしゃる方が評価をする場合に、概念論争をやっていてもあまり意味がないのであって、これをアウトカムとみなすと。例えば、ワクチンの接種率がアウトプットだとしますと、それによってどれぐらい感染が抑制されたか、それがアウトカムと考えましょうという形でやらざるを得ないかなと思います。
 仮にアウトプットは高かったのだけれども、アウトカムが期待された結果を表さなかった場合に、そこの因果関係を解明していくことが次の進歩に結びつくということが重要かなと思っております。
 田宮先生、お答えになったでしょうか。よろしいでしょうか。

○田宮委員
 ありがとうございます。
 そうですね。一次的なアウトカム、二次的なアウトカムとあるところが、アウトプットもアウトカムと言ってしまっているところがあって、ちょっと曖昧だなという懸念はあったのです。だから、一次的なアウトカムというのは、アウトプットでもよろしいのでしょうか。
 でも、今のワクチンの話はちゃんとアウトカムですよね。ワクチン実施率はあくまでアウトプットで、その後に発症が減らせるかは立派なアウトカムなので、そこは難しいし、いろいろな議論があるけれども、評価の中で混ぜてしまうのはちょっとなと思ったので、今先生がおっしゃったような一次、二次があるにしても、整理して話してくださって、実際に何がというのは、学問的な議論でいろいろあるかもしれませんけれども、混ぜないほうがいいなというのは思っていたので、先生の御発言もそれということでよろしいのですか。あまり厳密に言わないほうがいいということでしょうか。どちらかなと思ったのですが。

○森田教授
 概念的に区別する必要はあると思いますけれども、何が客観的なアウトカムかというのを議論しても、あまり生産的ではないという気がいたします。こういうものだという前提で議論されたほうが生産的になるかなと思います。もちろん、その中から学問的な精度も含めて、進歩させていかなければいけないのは間違いございません。

○田宮委員
 でも、あくまでアウトカムというのは効果ですよね。そこはいいでしょうか。

○森田教授
 そうですね。だから、金利を上げることによってインフレが治まったかどうかという話でいえば、金利を上げるというのがアウトプットになりますけれども、インフレが治まったかどうかはアウトカムの話という理解になります。

○田宮委員
 ありがとうございます。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 ほかにはオンラインの皆様からもよろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、御質問いただけましたので、この辺で締めさせていただきます。
 私も、政策評価の目的は、担当機関がそれによって自分たちの政策をよりよくしていくことなのだということを毎回のように教わりまして、今もワーキングの中で担当課の皆さんにそういうお話を差し上げるのですが、今日、原課の皆さん方が随分来てくださって、それを共有させていただけたかなと思っておりますし、また、今日来ていないところも、事務局等を通じてその辺りを分かっていただきながら、所管課とともに伴走していく。我々だけが一生懸命やってもしようがないところだと思いますので、その辺も努力していきたいと改めて思った次第でございます。

○森田教授
 頑張っていただきたいと思いますし、総務省の行政評価局のほうも、かつては行政監察局の流れをくむところで、どうもあら探しをして監視しているのではないかというイメージで捉えられている方も多いようですけれども、最近はそうではなくて、政策をよくしていくためにサポートするという形で姿勢を変えてきていますし、もう既に変わっていると思いますので、何かあったときには相談されるといいのではないかなと思います。
 では、ぜひ頑張ってください。どうもありがとうございました。

○菊池座長
 どうもありがとうございました。改めて拍手で終わりたいと思います。
 それでは、ここで一旦休憩に入らせていただきます。
 ちょっと時間は押してございますが、14時55分に再開ということでよろしくお願いいたします。

(休憩)

○菊池座長
 それでは、時間が参りましたので、議事を再開させていただきます。
議事(2)「令和7年度の分野横断評価テーマ案について」につきまして、事務局から御説明をお願いします。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 事務局でございます。
 資料2の2ページ目を御覧ください。
 まず、これまでの経緯等についてですが、当省における政策評価におきましては、第5期基本計画期間からの新たな取組として、「複数の施策目標にまたがり、厚生労働省内で分野横断的に実施している政策の評価(分野横断評価)」を試行的に実施しているところ、これまでの分野横断評価の試行的実施の結果を踏まえ、テーマの選定に当たっては、施策に関する見直しの議論の状況や有識者会議委員の希望テーマ等を踏まえ、より慎重かつ丁寧な検討を行えるよう、また、評価書の作成に当たっては、十分な調整・準備期間が設けられるよう、分野横断評価は隔年実施とし、次回は令和7年度に行うことといたしました。
 このため、令和7年度の分野横断評価については、昨年3月の第32回有識者会議における各委員の御発言を踏まえ、事務局にてテーマを検討・精査、関係部局調整の上、事前に各委員の御意見を伺った上で、令和6年度末の第33回有識者会議、今回の会議におきまして御議論、最終的に決定することといたしました。
 昨年3月の有識者会議におきましては、この2ページ目の下の段の枠囲みの1ポツ目のとおり、介護人材等の確保などのテーマ案を委員よりいただき、これら各案につきまして事務局にて検討・精査等を重ねたところ、2ポツ目の箇所でございますけれども、施策に関する見直し議論等が進行中等の理由から、いずれも令和7年度の分野横断評価のテーマとして評価を実施することは難しいとの結論に至りました。このため、事務局より事前に委員の皆様に3ページ目のテーマ案を御提案し、2月までに御意見等を頂戴いたしました。
 3ページ目を御覧ください。事務局より御提案させていただいた評価テーマ案は「厚生労働省における施策の効果的な周知について」でございます。
 「1.背景」の箇所でございますが、当省の所掌する施策分野は多岐に及び、その施策の対象も多様かつ多数に及び、また、短期間で制度・運用に変更が生じることも多く、正確・確実・迅速、そして、分かりやすく施策の対象へ周知することが必要ですが、同時に、その周知は限られたリソース等の中で行うことが求められています。
 こちらは3ポツ目のとおり、省内では「2.(2)」のとおり、施策周知について各種支援策を実施しておりますが、他方で、現状として課題等もなお存在するところでございます。
 このため、下の「3」の箇所でございますけれども、今般、厚生労働省の施策の周知方法として、現状、どのような施策でどのような手法等がとられているか等を調査・整理し、周知が効果的に行われているかを評価の上、今後どのように周知を行うことがより適切・効果的かについて検証等をすることとしたいとして、本テーマを御提案した次第です。
 4ページ目を御覧ください。こちらは先月2月までに、全ページの案につきまして、事前に委員の皆様方より頂戴した御意見等をまとめたものでございます。
本ページ上段のとおり、前ページ案について、施策周知は重要な課題であり、評価を行うことには意義がある等の御意見をいただきました。前ページ案を評価の対象とすることに反対との御意見はございませんでしたが、本ページの下の段のとおり、評価を実施する際の留意点等に関する御意見として、「評価に当たっては、好事例だけではなく改善を要するものも含めて記載等をすることが必要」、「評価に際しては漠然とした結果とならないよう留意が必要」という御意見を頂戴いたしました。
 また、本資料には記載しておりませんが、そのほか、「もし次に分野横断評価を行う場合においては、テーマ案を募る方法など、テーマ選定に係るプロセスを事務局として改めて検討を」との御意見をいただきました。
 事務局といたしましては、頂戴した御意見等を踏まえ、3ページ目のテーマ案にて来年度の分野横断評価を実施させていただき、作成した評価書案につきまして、来年3月の有識者会議において御議論いただきたいと考えております。
 以上でございます。

○菊池座長
 ということでございます。事前に皆様に御説明があったかと思いますが、ただいまの説明につきまして、改めて御意見、御質問などがございましたら、お願いしたいと存じます。いかがでしょうか。会場の方はお手を挙げてくださればと思います。オンラインの方も挙手ボタンでお示しください。いかがでしょうか。
 印南委員、お願いします。

○印南委員
 今のお話を聞いていると、来年3月にもう一回議論してまとめるということですね。今からその間はどのような手順で進められるのでしょうか。頻繁に会議をしてほしいと言っているわけではないですが。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 事務局でございます。
 今後の流れといたしましては、これまで頂戴しました先生方からの御意見等を踏まえまして、効果的な周知に係る評価について具体的に内容を詰めた上で、総務省や具体的な周知に関するものに係る担当部局等と相談等をした上で内容を詰めまして、そちらについて分析等を行いたいと思っております。ですので、この会議において施策のテーマとして決定いただいた上で、来年度に入って来月から具体的な内容を詰めて、事務局において評価を進めたいというところでございます。

○印南委員
 それは分かるのですが、例えば、秋ぐらいまでにはもう少し具体的なものが出てくるとか、そういうことをお聞きしたかったのですけれども、もう少しですが、来年度になって、突然3月にもう一回やりますというのでは、それこそ先ほど森田先生からあったアジャイル政策形成になかなかそぐわないのではないかと思ってしまいます。批判をしているのではないのですが。

○調査分析・評価担当参事官
 担当参事官の三村でございます。
 例年、横断的評価につきましては、3月の会議で事務局が評価案をお示しし、それに基づいて御議論いただきまして、最後にその内容を付記してまとめるという形をとっております。今後の進め方については、来年度以降に作業を進めながら検討していく形にはなりますが、3月頃に事務局の案をお示しする方向で考えております。現時点では、具体的なスケジュールや進行の見通しは立っておりませんが、委員の皆様とご相談しながら進めていく方法について、今後、事務局としても検討してまいります。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 多分、印南委員の御懸念というか、御質問は、分野横断的な特定の施策ではなく、施策の周知をどのようにやっていくかという、それ自体がはっきりしないという。

○印南委員
 そうなのです。その具体案みたいなものがいきなり3月に出てくると、短期間でそれを見て過不足を指摘するのは結構大変ではないかという懸念があったので、ちょっと言ったのですけれども、かといって、秋までにとか、何月までにとか、そんなことまで言うつもりはないのです。原案みたいなものを早めに出していただいたほうがいいのではないかなという程度の意見です。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 それはそうですよね。どういう進め方をするか自体、事務局も手探りでやるだろうから、それまでのプロセスの中で委員に少し意見を聞くなり、そういったプロセスがあってもいいのではないかというサジェスチョンでいらっしゃるかなと思いまして、なので、改めてこの会を開くかということは別としても、少なくともワーキングは予定されていますよね。それぞれのワーキングに進捗状況、あるいはこのようにやろうと思っているというのを御相談申し上げるとか、そういったものも含めて検討してもらえないかという、その辺りはいかがでしょうか。

○調査分析・評価担当参事官
 印南先生のおっしゃるご趣旨は理解いたしましたので、なるべく少し早めに内容をまとめて、いきなりお示しするのではなく、ご意見をいただく御時間を設けるなど、今後の作業の中でご意見を踏まえて進めてまいりたいと考えております。ありがとうございます。

○菊池座長
 その点は御検討いただけるということで、お願いします。
 ほかにはいかがでしょうか。
 井深委員、お願いします。

○井深委員
 よろしくお願いします。井深です。
 この方向性については賛成いたしている次第なのですが、私から少し要望と申しますか、先ほどの森田先生のお話とその後の議論にありましたように、指標としてアウトプットとアウトカムというお話があったと思うのですけれども、今回のこの広報・周知に関わる話というのは、アウトプットに関しては、何となく指標のイメージが非常に立ちやすいなと思っているのですが、どれぐらい伝わったかというところについても同時に知るということは目的として大事かなと思いますので、アウトカムに関する指標についても、ぜひ今後の検討の中で検討していただければと思います。
 以上です。

○菊池座長
 ありがとうございます。

○調査分析・評価担当参事官
 おっしゃるとおり、アウトプットの在り方もありますが、それがアウトカムにつながったときには、アウトカムの測定方法や考え方も政策評価の論点の一つになると思います。ご指摘の点も踏まえて検討を進めてまいります。ありがとうございます。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員
 ありがとうございます。産経新聞、佐藤です。
 今までの御意見と同じなのですけれども、まず1つ目は、印南先生がおっしゃられたように、どのテーマ設定についての周知を評価するのかというのは極めて重要ですし、本来、テーマ別に目的地は違うはずなので、テーマ設定をもむことが大事ではないかと思います。
 2つ目です。先ほど森田先生から御指摘があったように、アウトカムとアウトプットがあって、それぞれの政策の普及啓発・周知が最終的に何を目的にしているのかというのは、実は結構難しいところだと思います。特にSNSが活発になっていて、政策として科学的根拠、科学的蓋然性のある政策を打つことが難しくなるような状況がございますので、そういう世界で、いかに合理的で根拠のある政策を進めていくかという意味でも、普及啓発・周知は極めて重要だと考えているのですが、では、そのときにどのようなアウトカムを設定するのかというのは非常に難しいところです。 こちらの政策の最終的な目標は何なのか、あちらの政策の最終的な目標は何なのかは恐らく違うはずなので、目的地をきっちり事前に設定することが重要だと思います。
以上です。ありがとうございます。

○菊池座長
 ありがとうございます。

○調査分析・評価担当参事官
 ご指摘のとおり、今後、どのようなテーマを設定し、どのような課題を取り上げ、その在り方を考えていくかが重要です。また、それぞれのテーマや課題に合わせてアウトプットの測定方法も変わってくると思います。どのように測定・評価していくかも含めて、ご指摘を踏まえて検討を進めたいと考えております。

○菊池座長
 佐藤委員、よろしいでしょうか。

○佐藤委員
 はい。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。ございませんでしょうか。
 それでは、様々な御意見をいただきまして、ありがとうございます。特に反対という御意見はなかったようですので、令和7年度の分野横断評価のテーマにつきましては、事務局案の「厚生労働省における施策の効果的な周知」を取り上げるということでよろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○菊池座長
 ありがとうございます。
事務局におかれましては、ただいま様々な前向きな御意見をいただきましたので、それらを踏まえてお進めいただきますようお願いいたします。ありがとうございます。
 それでは、次の議事に移らせていただきます。
議事(3)「令和7年度の政策評価実施方針について」、事務局からお願いします。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 まず、資料3-1-1を御覧ください。こちらは厚生労働省で定めております政策評価に関する5か年計画です。今は令和4年度から令和8年度までの第5期計画期間の途中になります。
来年度に向けた改正事項といたしましては、今回は本文中の改正事項はなく、こちらの16ページ目以降に別紙としてつけている政策体系についてのみ、一部改正を行いたいと考えています。
具体的な改正点につきましては、資料3-1-2「政策体系新旧対象表(案)」を御参照ください。こちらは左の列が現行の政策体系、右の列が来年度の改正案でございます。
 まず、改正事項の1点目です。新旧対照表の2ページ目を御覧ください。そちらの下のほう、基本目標Ⅳの施策大目標1及びその下の1-1です。
フリーランスが安心して働くことのできる環境を整備するため、フリーランス・事業者間取引適正化等法が令和5年に成立し、令和6年11月に施行しました。本法は、フリーランスに係る取引の適正化及びフリーランスの就業環境の整備を目的としており、厚生労働省ではフリーランスの就業環境の整備に関する施行を担うこととしております。法の円滑な施行に向けて、執行体制の整備や相談体制の充実等に引き続き取り組んでいく必要があるため、今般、政策体系上、フリーランスの就業環境の整備を明示的に位置づけるものです。
 続きまして、改正事項の2点目です。新旧対照表の3ページ目を御覧ください。基本目標Ⅴの3-1及び基本目標Ⅳの2-1です。
 就職氷河期世代への就労支援につきましては、令和元年6月及び令和4年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針等に基づきまして、令和6年度までの5年間を集中取組期間と位置づけ取組を進めてきたところ、昨年、令和6年6月に閣議決定されました同じく骨太の方針におきまして、「就職氷河期世代の就労支援は5年間の集中的取組により一定の成果を上げている。来年度以降、この世代への支援は、中高年層に向けた施策を通じて、相談・リスキリングから就職・定着までを切れ目なく効果的に支援するとともに、地方自治体と連携し、個々人の状況に合わせ、就労に向けたリスキリングを含む幅広い社会参加支援を行う」こととされております。このため、本政府方針を踏まえ、今般、政策体系上の文言を変更するものでございます。
 改正事項の3点目です。新旧対照表の4ページ目を御覧ください。基本目標XⅡの1-1です。国立感染症研究所につきましては、令和7年4月1日より国立国際医療研究センターと統合され、新たに国立健康危機管理研究機構、通称「JIHS」が設立されます。このため、厚生労働省の国立試験研究機関のうち、国立感染症研究所に次いで予算・定員規模が大きい国立医薬品食品衛生研究所に政策体系上の文言を修正するものでございます。
 政策体系の一部変更については、以上でございます。
 続きまして、資料3-2を御覧ください。こちらも厚生労働省で定めているものですが、基本計画の下に実施計画を毎年度定め、その年度における具体的な政策評価の実施対象などを規定しています。
 4ページ目の下部の6のところですが、先ほど議事(2)で御了承いただきました来年度の分野横断評価のテーマを明記しています。
 また、7ページ目・8ページ目に、別紙1として当該年度に評価を行う施策目標をお示ししております。右端に赤字で「○」「実績評価」と記載している施策目標が、令和7年度に実績評価を実施予定、つまり、今年夏のワーキンググループにおいて実績評価書案を御審議いただく予定の施策目標です。
 議事(3)についての説明は以上でございます。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問などがございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。特にございませんですか。よろしいでしょうか。
 村上委員、お願いします。

○村上委員
 御説明ありがとうございました。
 事前の御説明の際にも確認したのですが、改めて質問させていただきます。
 資料3-1-2の政策体系の新旧対照表についてでございます。今回の改正について、特段の意見があるわけではありませんが、基本目標に関して政策の大目標があって、それぞれに対して枝番のように幾つか目標設定されておりますけれども、必ずしも粒度がそろっているわけではないということについて、見直しが可能なのかということをお伺いしました。
 その際のお答えとしては、第6期計画の中で見直していくのだということでしたが、それでよろしいのかということと、その議論を行うのは来年の3月の有識者会議で、決定するのは再来年の3月の有識者会議という理解でよろしいのかということについて、改めて確認させていただければと思います。
 以上です。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 ありがとうございます。
 施策目標の細かさ、粒度・大きさがそろっていないという点でございますが、こちらにつきましても、第6期の基本計画でどのように政策評価を行っていくかに大きく関わってくるところですので、第6期の基本計画の見直しの際に、政策体系をどのようにしていくべきか、どのように規定していくべきかというところも併せて、大きな検討課題の1つと考えております。
 また、御議論いただく時期でございますが、村上委員がおっしゃっていただいたように、最後の議事(5)でまた御案内いたしますけれども、来年、ちょうど1年後の全体会議におきまして、その時点の見直しの内容等につきまして、事務局からお示しし、御議論いただきたいと考えております。また、最終決定は令和8年度末の全体会議の中で、第6期の基本計画案としてお示しの上、御議論、最終的に決定いただきたいと考えております。
 以上でございます。

○菊池座長
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ございませんようですので、それでは、令和7年度の基本計画の一部変更及び実施計画について、事務局案のとおりとさせていただいてよろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○菊池座長
 ありがとうございます。
 それでは、本案にて基本計画の変更及び実施計画の策定をお願いいたします。
 それでは、次の議事に移りたいと思います。議事(4)「第16回及び第17回政策評価に関する有識者会議WGにおけるご意見等について」、事務局からお願いいたします。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 まず、資料4-1「第16回政策評価に関する有識者会議WGにおけるご意見等への対応状況」につきまして、御説明いたします。
 昨年夏に開催した各WGにおきまして、合計10の施策目標に係る実績評価書案について御議論いただきました。その際、いただいた御意見等につきまして、担当部局に対応状況等を照会し、取りまとめたものが本資料になります。
 表紙の部分、3つのWGの合計で79の御意見等をいただきました。その対応状況につきましては、「対応」と区分しているものは32.9%、「今後検討」が35.4%、「対応困難」が6.3%、「事実関係の照会等」が25.3%という形で整理させていただいております。
 次のページ以降、WGごとに取りまとめていますが、2ページ・3ページが医療・衛生WG、4ページから8ページまでが労働WG、9ページ・10ページが福祉・年金WGです。
 まず、本資料の構成ですが、左の列に第16回WGでいただいた御意見等の内容を記載し、中央の列にWG開催後の対応状況を記載していますが、その際に対応区分を「今後検討」としているものについて、今年3月、今月時点での検討状況として右の列に記載しています。
 また、第16回WGでいただいた御意見を踏まえ、今回よりWG開催後の時点、中央の列において「対応困難」としているものについても、その具体的な内容により再度検討等を求めることといたしまして、その結果等を今月時点での検討状況として右の列に記載しています。
 頂戴した御意見等の中から、幾つか具体的な対応状況等につきまして御説明致します。
 まず、2ページ目、医療・衛生WGの9番、施策目標Ⅰ-6-2、適正な移植医療の推進に係る施策目標についての御意見です。「運転免許センターでの免許更新時の免許証への臓器提供に関する意思の記入の案内について、各都道府県の免許センターでも実施有無にばらつきがあるようなデータも見聞している。国民生活上、各種の目に触れることの多いチャンネルでもっと記入に向けた国民のインセンティブの向上の機会を図ることは、臓器提供に関する意思表示者数の増加に向けた大事な取組かと思うので、今後、何らかの数値の指標の設定も含めて検討してほしい」との御意見をいただきまして、中央の列、WG開催後の時点では「今後検討」としていましたところ、右側の列、今月時点での検討状況ですが、御意見等を踏まえ「令和7年度の事前分析表において、各自治体における運転免許証やマイナンバーカード交付時にお配りしているリーフレットの発注数など、普及啓発の実施状況が検証できるような数値の設定を予定している」としています。
 次に、6ページ目を御覧ください。こちらは労働WGですが、その28番、施策目標Ⅵ-1-2「技能検定を始めとする職業能力の評価を推進すること」に係る御意見です。「『ポータブルスキル見える化ツール』のPV数は高い達成率だが、Webサイトを訪れてもらうことも大事だが、実際に診断するところまで至ってもらうことも大事であるため、診断まで至ったところを目標とすることを検討いただきたい」との御意見につきまして、中央の列の対応状況は「診断結果を得ることのみならず、途中までであっても診断のプロセスを経験してもらうことも含め、診断に関心を持ち、その重要性を認識してもらうことにも意義があると考え『閲覧数』を指標としているところであるため、現行のとおりとするが、ご指摘をふまえ、参考として、実績評価書の「(効率性の評価)」欄及び令和6年度事前分析表において、診断まで至った数(診断数)を付記すること」といたしました。
 そして、最後のページ、10ページ目を御覧ください。こちらは福祉・年金WGですが、そのうち15番、施策目標Ⅶ-3-1「戦傷病者、戦没者遺族等への援護、戦没者の遺骨の収集等を行うこと」に係る御意見です。こちらは測定指標1に係る御意見ですが、こちら、「援護年金及び弔慰金について請求の受付後6か月以内に裁定を行った件数の割合」という指標ですが、こちらの現行6か月としている事務処理期間の短縮、及び過去5か年度の平均値としている目標値の見直しについて御意見を頂戴いたしまして、中央の列、WG開催後の時点におきましては「対応困難」としていたところですが、右側の列、今月時点での対応状況ですが、再検討の結果、御指摘を踏まえ、目標値につきましては、現行、過去5か年度の平均値としているところ、令和7年度事前分析表より「当該年度の過去5年間の実績値のうち一番高い値を上回る値」と設定することといたしました。
 資料4-1については、以上です。
 続きまして、資料4-2を御覧ください。「第17回政策評価に関する有識者会議WGにおける主なご意見」でございます。
 こちらは本年2月、先月に開催いたしましたWGでいただいた御意見のうち、政策評価の手法など、ほかのWGにも関連・共通する御意見等をまとめたものです。
幾つか御紹介させていただきますと、2ページ目、医療・衛生WGにおける御意見です。下部の2の1ポツ目、施策目標Ⅰ-3-1について、「電子カルテについて、まずは普及を目標とすることは良いが、その次の段階として、電子カルテ情報共有のための経過的な指標等も設定することが必要」との御意見をいただきました。
 次のページ、労働WGにおいては、下部の2の1ポツ目、施策目標Ⅳ-3-1について、「施策がどのように進んでいるのか分かるよう、アウトカム指標だけでなく、アウトカムを達成するための手段としてのアウトプット指標又は参考指標を目安として設けることが必要」との御意見等をいただきました。
 また、次のページ、福祉・年金WGにおいては、こちらは下部の2の3ポツ目、施策目標Ⅶ-1-3について、「施策は、どんな戦略でどこまでやる、そのためには段階を追って、まずここまで、次にここまでやって、という戦略が無いと立てられない。政策評価はそれを考える良い材料。(実績値と乖離がある中で、)『全市町村数』を毎年度の目標値に掲げてしまうと、そこに戦略は見えないが、『段階的に、こういうことをチェックしてここまでまず上げ、そこからまた積み上げ、○年後に全市町村数』という立て方であれば、施策として考えられていて、そのために立てられた指標、ということが分かる。施策について、所管課として何を大事に考え、その実現のためにどんな根拠をもって、こういう数字で積み上げていく、そういうものに政策評価を活用いただきたい」との御指摘をいただきました。
 本資料掲載の御意見を含め、第17回のWGで頂戴した御意見等につきましては、対応状況の一覧を今後作成の上、今年夏のWGにおいて皆様にお示しさせていただく予定です。
 議事(4)についての説明は以上です。

○菊池座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして御意見、御質問などがございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。会場からございませんですか。よろしいですか。オンラインの皆様、いかがですか。特にございませんでしょうか。
 それでは、新保委員、お願いします。

○新保委員
 今回、資料4-1で、WG後の対応状況からさらに御検討いただいて、この3月時点で対応困難なものが対応になるなど、このような形で取組を進めていただくというのはとても大事なことだなと思いました。このような御報告をいただけてよかったと思いました。できることを続けていくことの重要性の確認ができました。ありがとうございました。
 以上です。

○菊池座長
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 ございませんようですので、それでは、ただいま資料4-1について御意見、御感想をいただきましたけれども、引き続き今後も事務局から担当部局に必要に応じて確認していただいて、また何かあれば御報告いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議事に移りたいと思います。最後に、議事(5)「その他」につきまして、事務局から御説明をお願いします。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 資料5を御覧ください。「今後のスケジュール等について」と題している資料です。現行の「厚生労働省における政策評価に関する基本計画」(第5期)の計画期間は、令和4年度からの5年間であり、令和8年度末をもって終了します。この点、次期、第6期の令和9年度を始期とする基本計画につきましては、令和5年3月に一部変更された新たな「政策評価に関する基本方針」に基づき策定する必要がございます。
 本基本方針では、各府省において政策の特性に応じた評価手法を導入すること等が求められているため、これに向け、特に、現行、目標管理型の政策評価を実施している政策について、令和9年度以降どのように評価を行うことが適当か等につきまして、令和7年度・8年度において検討を行う必要があり、今後、本有識者会議において御議論、御意見等をいただきたいと考えています。
この資料の下の部分ですが、今期、第5期の計画期間中、残り2か年度ございますが、令和7年度・8年度におきまして、現時点で開催を予定・確定している有識者会議及びWGの開催スケジュールでございます。
 まず、夏のWGにつきましては、例年どおり実施し、実績評価書案を御審議いただきたいと考えています。
 次に、2月のWGについては、取消し線を引いておりますが、こちらはその下の「※」の箇所でございますが、2月のWGはその次々年度に実績評価を行う施策目標に係る事前分析表案を御審議いただく趣旨で開催していますが、今期、第5期の基本計画期間の最終年度である令和8年度に実績評価を行う施策目標に係る事前分析表案につきましては、先月の第17回WGにおいて既に御審議いただいたところです。つまり、今期計画期間内に実績評価を行う施策目標に係る事前分析表案の審議は、第17回WGが先月をもって終了済みのため、その趣旨でのWGは令和7年度・8年度は実施しない予定です。
 年度末の全体会議については、例年どおり3月に実施し、令和7年度末においては、分野横断評価書案及び次期基本計画における政策評価の見直し方針等につきまして御議論等をいただき、そして、今期計画期間の最後である令和8年度末の全体会議においては、最終的に第6期の基本計画案について御議論の上、最終的に決定いただきたいと考えています。
 議事(5)につきましての説明は以上でます。

○菊池座長
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問などはございますでしょうか。会場の皆様、よろしいでしょうか。オンラインの皆様からはいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、特にないようでございますので、この日程で進めていただくようお願いいたします。
 本日予定しておりました議事は全て終了いたしました。本日も有意義な御審議を賜りまして、ありがとうございます。
 大分早いですが、終わりましたので、この辺で締めさせていただきますので、事務局から本日の議論の取扱いについて、御説明をお願いします。

○政策立案・評価担当参事官室長補佐
 本日は、長時間にわたる御議論をありがとうございました。本日の御議論を踏まえまして、令和7年度の政策評価を進めさせていただきます。
 また、本日の会議の場で伝え切れなかった御意見等がございましたら、1週間後の3月31日までに事務局まで御連絡ください。
 最後になりますが、本年度も委員の皆様方におかれましては、様々な施策につきまして御議論、御助言等をいただきまして、誠にありがとうございました。
 本日の会議や各WGでの御意見等を今後の政策評価に生かせるよう、事務局として一層の取組をしてまいります。来年度もどうぞ御指導のほどよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上です。

○菊池座長
 それでは、これをもちまして本日の会議は終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。