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第5回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 議事録
日時
令和7年3月10日(月)10:00~13:00
場所
航空会館ビジネスフォーラム
(東京都港区新橋 1-18-1)
(東京都港区新橋 1-18-1)
出席者
- 構成員(五十音順)
-
- 家保構成員
- 池原構成員
- 岩上構成員
- 上田構成員
- 江澤構成員
- 岡田構成員
- 岡部構成員
- 柄澤構成員
- 神庭構成員
- 北村構成員
- 吉川構成員
- 桐原構成員
- 柑本構成員
- 小阪構成員
- 小嶋構成員
- 田辺構成員
- 田村構成員
- 辻本構成員
- 長瀬構成員
- 長谷川構成員
- 花村構成員
- 藤井構成員
- 松本構成員
- 水野構成員
- 森構成員
- 山口構成員
- 参考人(五十音順)
-
- 岡本参考人
- 岸本参考人
- 佐藤参考人
- 高野参考人
- 長島参考人
- 三浦参考人
議題
- (1)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について
- (2)その他
議事
- 内容
- ※R7.4.21 構成員発言の一部につき誤記訂正等を行いました。○田辺座長 定刻となりましたので、ただいまより第5回「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」を開催したいと存じます。
皆様方におかれましては、御多忙の折、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
初めに、本日の出欠状況と資料の確認につきまして事務局のほうからお願いしたいと思います。
では、よろしくお願いいたします。
○新平課長補佐 事務局でございます。
本日の会議は、会場とオンライン会議システムを併用しての実施です。御出席の構成員のうち、会場には17名お越しいただいておりまして、オンラインでの御出席は9名となっております。
柑本構成員は遅れて来られると伺っております。
また、本日は議題(1)に関連して、川口市保健所より岡本参考人、新潟県小千谷市より高野参考人、佐藤参考人、三浦参考人、慶應義塾大学医学部より岸本参考人、日本医師会より長島参考人に御出席をお願いしております。なお、長島参考人におかれましては、11時過ぎに御参加されると伺っております。
次に、本日の資料として、議事次第、資料1から6を格納したタブレットをお配りしております。
資料の不足等がございましたら、事務局までお申し出ください。
傍聴の方におかれましては、資料を厚生労働省のホームページに掲載しておりますので、そちらを御覧ください。
次に、オンラインで御参加の構成員の方は、カメラは常に映る状態にしておいていただければと思います。また、御発言の都度、マイクをオンにしていただき、発言後はオフにする操作をお願いいたします。途中で不都合が生じましたら、事務局までおっしゃってください。
それでは、冒頭の頭撮り撮影に関しましては、こちらで終了とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
(頭撮り終了)
○新平課長補佐 引き続き、資料の補足をさせていただきます。
資料1につきましては、前回の検討会における主な御意見をまとめているものでございます。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、具体的な議題のほうに入ってまいりたいと思います。
議題(1)の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について」です。
当議題に関しまして、まずは事務局より説明をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○小林精神・障害保健課長 事務局でございます。
それでは、資料2に基づきまして説明をさせていただきます。
当検討会は、前回、前々回は身体拘束、行動制限の問題について中心的に御議論いただいたところでございますけれども、本日は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制について」ということで、とりわけ外来と在宅医療の課題、それから、オンライン診療について中心的に御議論いただければと考えているところでございます。
資料2をおめくりいただきまして、3ページ目からの「外来・在宅医療提供体制」については、第3回の検討会の際にかかりつけ精神科医機能について簡単に御紹介し、また、議論もいただいたところです。資料4ページは精神疾患を有する患者数の推移を示していますが、一番右側に令和5年の数字がございます。患者調査によりますと、精神疾患を有する患者さんの総数は600万強ということでございますけれども、そのうち、入院の患者さんが26.6万人、外来が576万4000人ということで、そういう規模感で患者さんがいらっしゃいます。
5ページは、外来の患者さんの傷病分類別の内訳を示してございます。
また、6ページは年齢階層別の内訳を示したものでございます。
7ページでございます。精神科領域の診療所と病院の数、それから、病床数の推移を示したものでございます。左側の折れ線グラフにございますように、精神病床を有する病院の数というのはこの20年強でやや右肩下がりでございますけれども、診療所の数は赤いグラフにございますように数が増えているという傾向が見てとれると思います。
それから、8ページでございますけれども、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」でございます。これは平成26年に定められた精神保健福祉法に基づく告示でございますけれども、入院医療中心の精神医療から地域生活を支えるための精神医療の実現に向けた事項ということでございます。
1つ目の項目は病院における病床機能の機能分化について記載されてございますけれども、2つ目の部分が外来と在宅に関わる部分でございます。精神障害者の居宅等における保健医療サービス及び福祉サービスの提供に関する事項ということでございまして、1つ目の○にございますように、外来・デイケア等で適切な医療を受けながら地域で生活できるよう、外来の提供体制の整備・充実及び地域における医療機関の連携を推進するといったこと。それから、アウトリーチ(多職種のチームによる訪問支援)を行うことのできる体制を整備し、受診中断者等の地域生活に必要な医療へのアクセスを確保するといったことがこの告示の中には記載されているところでございます。
9ページは、これはいつもお示しさせていただいてございます、いわゆる「にも包括」のイメージ図でございます。
10ページは第3回の検討会の際にもお示しさせていただきましたけれども、このにも包括を推進するという観点から求められる医療機関として、かかりつけ精神科医機能という言葉がございますけれども、これについて触れています。
それから、11ページは第3回でお示しさせていただいた資料。
それから、12ページでございますけれども、第3回の検討会の際にいただいた御意見について記載させていただいています。
本日は、こういった外来とか在宅をめぐる医療の問題につきまして、柄澤構成員、岡本参考人、高野参考人から自治体の立場からの認識を御説明いただき、そして、議論を深めていただければと考えてございます。
それから、本日の2つ目のテーマが資料13ページからのオンライン診療です。
14ページは、昨年の8月7日開催の第2回検討会の資料5においても、お示ししたものでございます。
昨年の6月21日に規制改革実施計画が閣議決定されました。この中で、下のほうに赤で囲んでございますけれども、身近な場所でオンライン診療のさらなる活用・普及ということが盛り込まれてございます。dの項目でございますが、「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」におきまして、初診精神療法をオンライン診療で実施することについて、行わないこととされているところでございますけれども、安全性・必要性・有効性の観点から、適切なオンライン精神療法の普及を推進するために新たな指針を策定・公表する、と記載されており、令和7年までに結論を出し、措置をすることとされてございます。
15ページに記載しているとおり、令和4年に指針が策定されていますが、今回の閣議決定を踏まえて対応を検討する必要があるということで、17ページにございますような研究を岸本先生を研究代表者として行っていただいているところでございます。本日は、この研究の進捗状況について後半部分で岸本参考人からお話をいただき、また、長島参考人からもコメントをいただければと考えているところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○田辺座長 御説明ありがとうございました。
それでは、議題(1)の1点目、「外来・在宅医療提供体制について」に関しまして、地域におけるにも包括の観点で自治体の関係者の方々よりヒアリングを行ってまいりたいと思います。
本日は、柄澤構成員、岡本参考人、高野参考人の順で、おのおの10分から15分以内を目安に御発表いただきたいと思います。
お三方に関しましては続けて発表いただきまして、最後に構成員の皆様方からの質疑、討議の時間をまとめて設けたいと思います。
それでは、早速でございますけれども、柄澤構成員、御説明をよろしくお願いいたします。
○柄澤構成員 おはようございます。北海道北広島市の柄澤でございます。
本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。
本日は業務の都合で会場での参加がかなわず、Zoomでの参加となりますことをお許しください。
私は、この検討会には全国精神保健福祉相談委員会、全精相と省略しますが、全精相からの推薦ということで参加させていただいております。全精相は、全国の保健所、精神保健福祉センター、市町村などにおいて精神保健福祉業務に従事する実務者で構成する団体でございます。
本日は、外来医療、精神科診療所との連携課題と今後への期待につきまして、本市の総合相談の取組から感じている部分と全精相会員からの意見も参考にした内容で報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
次をお願いします。
本市の概要につきましては、資料を御参照ください。人口は5万7000人弱、札幌市に隣接しております。
次をお願いします。
令和5年3月に北海道ボールパークFビレッジが開業し、本市の知名度もかなり上昇しています。
次をお願いいたします。
こちらが日本ハムファイターズの本拠地でありますエスコンフィールド北海道です。昨年は日ハムの成績がよかったことなどもありまして、年間来場者が419万人となりました。
次をお願いします。
右上に記載しておりますが、今後、JR新駅の設置や大学の移転が予定されているところでございます。
次をお願いいたします。
夜はこのような表情になります。
次をお願いします。
では、本題に入ります。こちらは本市の概要について数字でまとめたものになります。こちらのスライドは主に高齢者と障害者に関するものになります。精神保健に関する部分を赤で囲っています。訪問看護ステーションが10か所となっていますが、そのうち精神科訪問看護の指定は6か所になります。
次をお願いします。
こちらのスライドは主に児童分野の施設等に関するものになりますので、御参照ください。
次をお願いいたします。
次に、北広島市の精神保健福祉事業に関する特徴的な歴史を御紹介します。昭和47年から昭和54年まで北海道の地域精神衛生活動モデル地区に指定されていました。当時の精神衛生センターや保健所の全面的なバックアップを受けて、「こころの健康づくり」を保健事業の柱として、精神障がい者家族会の結成など、当時としては先駆的な取組をしていたと先輩保健師から聞いております。
家族会の請願が実り、平成6年度から平成21年度まで行政が直営で精神障害者社会復帰訓練事業として作業所を運営していました。
平成14年に市町村が精神障害者居宅支援事業などを実施することになったときに、事務事業の所管は福祉課の事務職とし、相談事があれば健康推進課の保健師が対応するという役割分担にしましたが、市民が利用しやすい組織とするため、平成17年から福祉課に相談担当保健師を1名配置しました。
さらに、平成29年度からは、世帯単位での支援を行いやすくするため、高齢者と障害者に関する相談業務を一体化し、さらに、令和4年度からは子育て支援部から家庭児童相談室の機能を移管して、福祉総合相談室を設置しました。
次をお願いします。
こちらが福祉総合相談室の組織図になります。子どもから高齢者まで切れ目のない相談体制としています。この図でオレンジ色のところが福祉総合相談室になります。全員保健師か社会福祉士の専門職です。この図の右下部分に示すとおり、支援の必要性があるのに制度のはざまになるような方々の相談窓口にもなるということを明確にしました。
次をお願いします。
こちらは、福祉総合相談室の業務を高齢、障害、児童の担当ごとに色分けしたものになります。
上のピンク色の部分、個別支援については地区担当制を取り、自分の担当地区の個別支援は基本的に分野関係なく全て担当することにしています。個別支援が必要な世帯には、ほぼ100%と言っていいほどメンタルヘルス課題があります。母子保健の個別支援については健康推進課の保健師が主に担当していますが、保護者にメンタルヘルス課題や障害がある場合などは福祉総合相談室と密に連携しています。
下のピンク色の部分、関係機関との連携においては、高齢、障害、生活困窮、児童、居住関係など、非常に幅広い関係機関と連携しています。
次をお願いします。
こちらが庁内の連携体制になります。福祉的支援の必要な世帯に係る庁内関係部署連携会議を設置して、福祉的支援が必要な世帯を早期に発見しやすいと思われる関係部署を参集範囲として、年1回程度会議を開催し、情報共有の在り方や職員の見守り意識の醸成を行っています。この仕組みは大分浸透し、例示しているような世帯に関する情報は随時福祉総合相談室に集まるようになっています。こちらもほぼ全てにメンタルヘルス課題があります。
次をお願いいたします。
ただいま御説明したような体制で日頃の業務を行っております。
ここから、外来医療及び精神科診療所との連携につきまして、市内の医療機関と市外の医療機関に分けて御説明いたします。
まず、市内医療機関の場合についてです。市内には外来精神科を標榜する総合病院1か所と精神科診療所1か所があります。外来精神科は令和6年度に新規開設され、睡眠障害をメインとしているため、統合失調症の陽性症状が顕著なケースなどの受診は難しいと言われることがあります。どちらも休日・夜間の診療体制がなく、往診・訪問診療も行っていないため、緊急時の対応が課題です。
診療所については、同じ医療法人が市外に入院病床を持っているので、あらかじめ御本人の体調不良を市がキャッチできているケースであれば、時間外の対応を相談しておくこともあります。児童・思春期については市外の医療機関を頼ることになります。
医師やコメディカルスタッフとの連携という点では、どちらもMSWや精神保健福祉士の配置があり、連携担当者がはっきりしていること、また、どちらの医師も行政への理解があって、行政ともほかの関係機関とも連携しやすい状況にあります。
初診予約の相談では、家族背景も含めて相談しています。
本市主催の各種会議に医師やコメディカルに出席していただいています。
また、にも包括協議の場には、精神科診療所スタッフの参加が得られています。
どちらの医師にも、市内で開催する市民向けの講演会あるいは専門職向けの学習会に講師を引き受けていただいています。
自院の患者さん対象の個別ケース会議等にも可能な限り出席していただいていますし、市役所からの電話などでの相談にも医師やコメディカルが応じてくれています。
精神科訪問看護とも必要時に連携しています。
訪問看護ステーションによっては、夜間・休日の緊急時に電話や臨時訪問で対応している事業所もあります。ただ、こまめに連絡をいただけて、タイムリーな情報共有が行えるところとそうでないところがあるなど、行政や相談支援との連携については訪問看護ステーションによって少し差があります。
診療所の初診の予約は、タイミングにもよりますけれども、1~2か月待機となる場合があります。
次をお願いします。
次に、市外医療機関との連携状況です。
入院・通院患者の多くは、札幌市内の医療機関を利用しています。自立支援医療精神通院受給者の約2割が市内、約8割が市外の医療機関で、市外のほとんどは札幌市内の医療機関に通院しています。
札幌市内の医療機関についても、休日・夜間診療、往診・訪問診療に対応している医療機関は少ない状況です。時間外の緊急対応において、診療所が主治医の場合に連絡が取れずに困ることがあります。
児童・思春期や依存症に対応できる医療機関は限定されています。児童の発達障害など、相談の人数は増加していますが、児童・思春期に対応できる医療機関が少なく、初診の予約が取りづらい状況があり、受診の調整に苦慮します。
また、児童・思春期以外であっても、すぐに初診の予約が取れない状況があります。初診は受け付けていないという医療機関もあります。
外来医療では精神保健福祉士等の連携担当者が配置されているところもありますが、顔の見える関係で連携できるところは限られています。
精神科診療所には相談員の配置がなく、事務員等を通じて照会、相談、受診予約を行っています。
医師1人と事務員しかいない診療所や、相談員がいたとしても1人しかいない診療所も多く、医師も相談員も多忙であり、診療優先となるため、個別支援会議等への出席はかなり難しい状況です。
精神科訪問看護との連携も一部ステーションに限られてしまいます。
次をお願いいたします。
ここから外来医療、精神科診療所に期待することを述べますが、このような機能があったらいいという話であり、現実的には難しいと思われることも含めてお話をさせていただきます。
まず、アウトリーチ機能です。必ずしも対応が困難な患者さんということではなく、交通手段がないですとか、冬の北海道であれば路面状況が悪くて外出が困難であるなどの場合に、訪問診療が入ることで治療の継続が可能になる場合があります。
未治療のケースということでは、行政には、家族や関係機関から、本人に精神疾患が疑われるので受診させたいが、本人が受診を拒否しており、家族の説得に応じてくれないというような相談が入ることがあります。このような相談を受理した場合、まず受診の緊急性や疾病性などのアセスメントを行い、精神科医療の必要性が高いと判断した上で医療機関へ相談するようにしていますが、このような場合に、行政職員も同行するなどの条件つきでもいいので、医療機関のスタッフも一緒に訪問して医療側からの見立てをお願いしたいと考えます。ただし、ひきこもりのケースでは、訪問しても会えない場合があるため、保健とのつなぎでの訪問診療には課題も多いことは理解しています。
治療中断者については、障害福祉サービスを利用している方が通院・服薬を中断して精神症状が悪化しているために、福祉サービスの利用を断られ、家族や相談支援専門員が困っているという場合もあります。治療中断者について早めに病状の変化をキャッチし、早期に対応できれば、結果的に緊急対応や長期入院を減らすことにもつながると考えますので、治療中断者の支援について行政の相談員と医療機関が連携し、対応できるとよいのではないかと考えます。
特に自殺企図がある場合や精神症状の悪化で生活に大きな支障を来している場合など、心配なケースの情報共有の在り方について、本人同意の下に医療機関と行政の連携システムがあるとよいのではないかと考えます。
ただし、そうは言っても、行政機関が治療中断ケースの全てに支援できる体制を取ることも現段階では難しいことも事実です。また、治療を受けるかどうかは、御本人の意思でもありますので、私たち行政機関の立場では把握している治療中断者への伴走型支援に取り組むわけですが、精神症状が重症化してしまった場合の関わりは非常に難しい面がありますので、早期に介入できる仕組みがあるとよいと思います。
ひきこもりや依存症など本人が受診につながりにくいケースについても、医師が毎回行く必要があるとは限らないので、医療機関の精神保健福祉士や看護師などと行政の相談員が一緒に訪問できたらいいと思います。
また、児童の場合には、少しでも緊張が和らぐ自宅で診察を受けることができると、親子とも受診へのハードルが低くなると思いますし、産後鬱など乳幼児を抱える保護者の受診についても、訪問診療の選択肢があると受診しやすくなると思います。
未治療、治療中断、受診につながりにくいケースのアウトリーチには、例えば認知症初期集中支援チームのような方法で、行政の専門職1名と医療機関の精神保健福祉士や看護師1名、精神科医師の3人でチームをつくり、医師の訪問は時々で実働はコメディカルが担うという方法は実行可能性があるのではないかと思います。
次に、ケースマネジメント機能・コーディネート機能への期待です。御本人が望む生活を実現するには、薬物治療のみではなく、心理社会的なアプローチも必要です。例えば御本人が医療機関としかつながっていない場合に、必要であれば訪問看護、相談支援事業所、地域援助事業者等につなげていくケースマネジメント機能が必要であると思います。
コーディネート機能としては、例えば市に精神科未治療の方の相談があった場合に、市から医療機関に受診前相談をしたときに精神保健福祉士等の地域連携担当者が院内で調整し、そのケースに精神科医療が必要か否かの判断、緊急性の判断において医療側の見解を伺うことができると大変助かります。特に治療を拒否している未治療者で身寄りのない単身者や家族と疎遠な単身者など、キーパーソンがいないケースなどは、精神科医療へアクセスする際に医療機関側のコーディネート役が必要です。
あるいは、御本人が外来ではあまり問題を報告していないので大丈夫だと思われている場合でも、実は生活面の課題が多いという場合に、医療機関に連携担当者がいると、家族や地域の関係機関からの情報で生活課題を拾い上げることができて、適切なアセスメントから支援につながると思います。
こうしたケースマネジメント機能・コーディネート機能を発揮するには医療機関に連携担当者の配置が必要であると思いますし、医療機関との連携を円滑に行うためには市町村側の精神保健相談の担当窓口も明確になっている必要があります。
そして、医療機関の連携担当者も市町村の精神保健相談の担当者もお互いの機関の役割や限界を知っておく必要があります。精神症状の重症度と生活障害の程度によって必要とされる支援内容も異なりますので、その辺りのお互いの共通認識も必要です。それには会議、研修会、事例検討会、日々のこまめな相談、同行訪問などの様々な機会を通して、医療機関と行政が相互理解を進めることが大切であると思います。
次に、緊急・急性期の対応を期待します。診療所が24時間対応をする機能を持つことは難しいと思いますが、自院で診療歴のある方の緊急時には日中の時間帯だけでも往診をお願いしたいところです。急性症状や自殺企図など緊急性の高いケースへの初期対応についても、診察時間内であれば対応していただけるとありがたいです。
次に、家族相談・家族支援です。家族相談については、現状では家族の自己負担であったり、医療機関のサービスで行われていたりするとお聞きします。本人が受診を拒否している場合などは、家族のみでも医師や精神保健福祉士等、医療機関に相談できる体制が必要と思います。ただし、家族相談は行政が仲介することを前提にしたり、行政の行う家族相談会に医療機関が協力するという方向にするなど一定の要件をつけないと、医療機関がパンクしてしまうかもしれません。
家族支援という点では、精神科診療所に何年も通院している方の御家族が、家族会というものの存在を教えてもらったことがなかったという例がありました。御本人のみで通院している場合も多いかと思いますが、家族支援の視点も忘れず、家族への支援についても地域の関係機関と医療機関が連携していくことが大切であると思います。
次に、身体と精神科双方の連携です。高齢化によって身体科と精神科の両方の受診が必要な方が増えていますので、双方の医療機関の連携が必要な場合も増えているように思います。内科の一般科と精神科の連携体制が取れると、精神疾患の早期治療につながると思います。アルコール依存や鬱病のファーストキャッチは内科医師の場合も多いので、内科科医が精神科につなぐ役割を果たせるとよいと思います。内科等のかかりつけ医がある程度精神科領域の見立てができるような認知症サポート医のメンタルヘルス版のようなシステムがあってもよいのではないでしょうか。
次に、多様な精神疾患への対応ということでは、児童・思春期、依存症などに対応できる外来診療所が増えてほしいです。
次に、自治体の啓発事業や人材育成研修への協力もお願いしたいと考えます。精神疾患の正しい理解や適切な関わりについて、自治体が行う啓発事業に医師やコメディカルの参画をお願いしたいです。また、精神科医師や精神保健福祉士の配置がない多くの自治体では、保健師や行政職の生活保護ケースワーカーなどの研修などで医療機関からのバックアップをいただき、精神保健相談を担う人材育成を行うことも大変重要であると考えます。
次にオンラインの活用ですが、医療機関が遠方にある場合や、特に北海道などは雪と寒さで冬場は外出しづらいので、オンラインを活用することで治療の継続が期待できる場合もあると思います。
最後に精神科訪問看護との連携ということで、にも包括に必要な医療提供体制を考えるときに、精神科訪問看護も欠かせないと思います。精神科医療機関のない自治体も多く、精神科訪問看護が医療機関、行政、事業所等と連携しながら支援を行っている地域もあります。にも包括に必要な訪問看護の機能としても、多機関との連携機能は欠かせないと思います。特に複合的な課題があるケースについては日頃のこまめな連絡が欠かせないことから、医療機関と訪問看護ステーションの両方に連携担当者がいると連携がタイムリーになりますし、行政も精神保健相談担当者としての連携を行いやすいです。
病院の外来、診療所、訪問看護ステーション、市町村や保健所などに連携担当者がいることで機関連携が行いやすくなり、にも包括構築推進に資するものと考えます。
次をお願いします。
以上、保健所設置のない一般市の保健師の立場で感じていることを報告させていただきました。ご清聴ありがとうございました。
○田辺座長 柄澤構成員、御説明ありがとうございました。
続きまして、岡本参考人、発表をよろしくお願いいたします。
○岡本参考人 川口市保健所長の岡本と申します。今日はよろしくお願いいたします。
また、このような発表の機会をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、表紙にも書かせていただいていますけれども、あくまでも今回の発表は川口市保健所から見えている外来医療ということでございまして、どこまで普遍性のあるお話なのかというのは、我々はなかなか判断できかねるところであります。
次のスライドをお願いします。
今日お話します内容としては、川口市の概要、市の保健所について、それから、具体的な相談事例を幾つか挙げさせていただき、それを踏まえて川口市保健所が取り組んでいること、それから、将来こういうことを目指していきたい姿、さらに精神科外来医療機関に期待することということであります。
下にも書かせていただいていますが、これは川口市保健所が経験したこと、または担当者の意見を踏まえて私なりにまとめさせていただいた意見でございます。
次のスライドをお願いいたします。
まず、川口市の概要でございますけれども、川口市は埼玉県の一番南にあります。荒川を隔てて東京都に隣接しております。北はさいたま市でございます。
人口、高齢化比率等はスライドを御覧いただければと思います。
中核市としては、船橋市に次いで大きな2番目の中核市となります。
保健所は平成30年の4月1日に中核市に移行したと同時に設置されまして、もうすぐ丸7年が経とうといたしております。それ以前は障害福祉課と保健センター、いわゆる市町村保健センターに精神保健福祉士が配置されておりました。保健センターの保健師が精神保健相談を受け、保健センターの精神保健福祉士がそれをバックアップするという体制で対応させていただいていました。
次のスライドをお願いします。
川口市の精神科の病院は2か所ありますが、1か所は認知症の専門病院となりますので、実際には1か所ということになります。
精神科の病床数は438床ですけれども、そのうち240床が認知症の治療病棟になっておりますので、実際の精神科の病床は198床ということになります。
精神科の診療所数は市内に26か所ということで、これは人口規模で考えますと、全国平均に比べればかなり少ない数ではないかと思います。
それから、入院精神障害者等はスライドを御覧いただければと思います。
次のスライドをお願いします。
精神保健福祉法第23条に基づく通報は基本的に受理を行い、埼玉県の南部保健所が対応するので、23条通報に関する措置診察等については直接の業務を行っておりません。
それから、23条通報以外で即日に対応が求められるような事例につきまして、棒グラフを見ていただくとお分かりのように、少しずつ減っている状況でございます。
それから、精神保健相談件数ということで、電話相談、来所相談、訪問相談の件数を記載させていただいています。電話相談等は少し減少傾向、訪問相談は少し増えているという感じでしょうか。実際には、後で述べますけれども、相談件数の外に委託している事業であるSODAの件数が2,000件くらいあるということを御承知おきいただければと思います。
それから、最近の相談傾向といたしましては、統合失調症等の未治療、医療中断事例は減少しており、どちらかといえばメンタルヘルス領域に起因する生活上の課題等に関する相談が増加傾向にあるように思っております。
次のスライドをお願いします。
これが現時点での川口市役所内の精神保健福祉に対する役割分担を組織で示したものでございます。
上のほうに川口市保健所の疾病対策課精神保健係ということで、保健師5名、精神保健福祉士5名、事務職1名の体制で取り組んでおります。
それから、下の左側でございますけれども、先ほどお話ししたとおり、いわゆる市町村保健センターであります地域保健センターが一次相談先という形になっております。
それから、右下でございますけれども、福祉部のほうに障害福祉課がございまして、そちらのほうに保健師1名と精神保健福祉士3名が配置され、障害者総合支援法等に基づく業務等を行っております。
真ん中に一次予防、二次予防、三次予防と記載してございますが、精神保健係が予防、早期の支援、社会参加という一次から三次の予防まで全ての分野を横断的に対応いたしております。
では、次のスライドをお願いいたします。
ここからが市の保健所に入ってくる具体的な相談事例等の御紹介であります。
今日受診できる精神科はないかという問合せが数多く寄せられておりますけれども、新規で精神科の外来を受診するということはなかなか難しくて、中には1か月から3か月程度も待たされるという場合もあります。特に児童・思春期は対応できる外来が少なく、3か月以上の待機も発生しております。それから、口コミ等で市民に丁寧な外来対応だという形になった診療所は特に新規の予約が取りづらくなっており、待機期間も長くなる傾向がございます。
それから、実際の診療につきましても、家族関係や育児という診療と言うべきかどうか分からないような幅広い相談内容にも対応していただいている現状がございます。それから、これは外来の問題というよりは患者さんサイドのほうでうまく相談内容が整理できていないまま、または医療機関の情報が不十分なまま受診に至ると、必ずしも満足のいく診療が受けられないこともあるということでございます。
次のスライドをお願いいたします。
児童・思春期は対応できない、また、依存症は専門病院を受診するように言われたが、どこの精神科を受診すればよいかという問合せが結構入ります。精神科外来に関する情報が限定的で、どこの医療機関にきちんとかかればいいのかという、いわゆる専門性が実際には明らかになっていないので、時々ミスマッチが起こるということであります。それから、病診連携みたいなところも課題があるのではないかと思います。
それから、精神科と身体科の身体症状を両方有されている場合につきましては、精神科と身体科、特に内科系との連携や役割の整理に課題がございまして、精神科にかかれば身体科のほう、身体科にかかれば精神科のほうと言われてしまうので、なかなか連携がスムーズにいっていないというところもございます。
それから、入院が必要になったときに、紹介状を渡されて、そこから先は自分で探してくださいという話も時々ございます。保健所に問合せが入った場合は入院治療ができる病院の情報提供を行ったり、場合によっては保健所が連携を取らないといけないというケースもございます。
次のスライドをお願いいたします。
地域連携・地域貢献についての課題と申しますか、具体的な事例でありますけれども、保健所が主催している会議の出席、または事業の講師等に協力していただける医療機関が非常に限定的になっております。つまり、お願いできる医療機関が偏ってしまって、業務負荷をかけてしまっているという現状があります。もう少し幅広い医療機関に御協力していただければ、業務負荷が減らせるのではないかなと思うところであります。
それから、川口市保健所で作った「かわぐちメンタルヘルスガイド」は、市民の利便性を考え作成いたしましたけれども、医療機関の情報の掲載を断られることがあるということで、全ての医療機関を現時点では網羅できておりません。
それから、開業されている診療所のほうでは、医師会または精神科診療所協会等に加入されている診療所が少なくて、そういうルートを通じての情報伝達ができず、個別に直接連絡を取らなくてはいけないということで、保健所のほうからの情報伝達に少し課題があるということでございます。
その次のスライドをお願いします。
夜間・休日対応、緊急対応ということでありますが、不調であったときに予約日を前倒して受診をすることが難しいような現状がございます。すぐに対応していただける外来もあるのですけれども、そういう外来は重症化や緊急事例化を予防していることにつながっているのではないかと考えております。
それから、入院までは必要ないけれども、医療のアセスメントというのが保健所等で必要になったとき、当日中に協力をしていただけるところが、現在では市内で1か所だけになっております。
それから、診療時間以外の診察対応とか情報連携がやはり難しい場合が多いです。特にお昼休みに入った場合に必ずしも対応していただけないところもあるような状況です。
それから、夜間に専門職と話ができれば落ち着くので、夜間対応をしている診療所がないかというような問合せもありますけれども、現時点では残念ながら夜間の対応をしていただける診療所がない状況でございます。
次のスライドをお願いします。
このスライドでは訪問看護について少し御紹介をさせていただいています。精神疾患に対応する訪問看護事業所は、数はあるのですけれども、なかなか24時間対応をしていただける事業所が少ないのが現状でございます。
それから、精神疾患に対応している訪問看護ステーションに、身体疾患を合併している患者については利用が断られることが時々あるということでございます。
それから、主治医への報告、情報共有、相談が精神科の訪問看護報告書のみで行われ、うまいタイミングで主治医に状況が伝わらないケースもございます。普段の状況が把握できている訪問看護ステーションが診療所または外来に情報をきちんと伝えるということは、非常に有用なことではないかと考えております。
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診療所等と同じなのですが、緊急の訪問等が難しい場合がある訪問看護ステーションもございます。柔軟に緊急訪問を実施していただければなと思うところでもございます。
それから、保健所が介入している場合につきまして、訪問看護が中断されているにもかかわらず、保健所との情報の共有、情報連携がうまくいかずに相談支援の体制が崩れてしまうようなケースもございます。
次のスライドをお願いいたします。
以上のような状況を踏まえて、川口市保健所の取組を幾つか御紹介させていただきます。
協議の場の中で地域の連携を強化する必要があるというような方向性で議論が進み、この地域連携票というものを作成しておりますけれども、残念ながらまだまだ利用が低調でございます。現在改良の必要があるのではないかということで、来年度検討していきたいと思っているところであります。
次のスライドをお願いします。
精神科の病院・診療所との連携をもう少し強化したいということで、川口市保健所では、令和元年度から継続的に精神科の病院・診療所につきまして、市内、市外を問わず訪問をして、いろいろなお話をさせていただいています。業務が多忙なために、訪問自体を断られるというケースもございます。それから、訪問ができたとしても、地域との連携、また、保健所との連携について必要性を感じておられないというところもございます。その一方で、訪問した医療機関の中には、地域との連携または福祉サービスにつなぐ手段が分からなかった、それから、保健所との連携は今後対応していきたいというお話もいただいていますので、非常に前向きな意見をいただくこともあるわけでございます。
次のスライドをお願いいたします。
市内精神科診療所向けの研修会ということで、令和5年度、令和6年度にそれぞれ1回ずつ、「にも包括」を意識した研修会を実施いたしましたけれども、残念ながら市内の診療所の参加が非常に低調ということでございます。夜間開催とかいろいろ工夫はさせていただいていますけれども、まだなかなかうまくいっていないというところでございます。
次のスライドをお願いいたします。
以上のようなことを踏まえて、川口市といたしましては、事後対応型から事前対応型ということで、一番下の囲みに記載してございますけれども、メンタルヘルスの視点で早期介入することで、課題の発生を未然に予防することができるのではないか。課題が発生しても、大きくなる前に支援を行い、重症化を防ぐ、そういうような観点で事業を進めたいと思っているところでございます。
次のスライドをお願いします。
そういうような方向性を踏まえまして、川口市保健所の取組を2つ御紹介いたします。
一つは、令和元年から実施しております精神障害者訪問支援強化事業、いわゆるアウトリーチ事業であります。市内、市外の医療機関それぞれ1つずつに委託をして、保健所にいない多職種が関与することで、様々な視点を生かし、支援のバリエーションが生まれるということでこの事業を実施しております。保健所として心がけていることは委託先に丸投げをしないということで、常に一緒になって考えていくということで取り組んでおります。
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これが具体的なフローとなります。
その次のスライドをお願いいたします。
これが冒頭でちょっとお話をしましたけれども、「SODAかわぐち」という若年者の相談事業でございます。保健所の相談の中で、相談者の多くが若年の頃から何かしらのメンタルヘルスの課題を抱えていることが見受けられておりました。若いときに抱えていたメンタルヘルスの課題がそのまま放置され、年月が過ぎ、重症化して、保健所の相談場面に現れるということが数多く見受けられました。
それから、保健所の相談の中で若年層の相談件数が増えているということもございましたので、重症化した後に支援を開始するのではなく、軽症のうちに支援を行うことで社会生活の維持ができるのではないかということを考えました。
また、保健所の相談ということになると非常に敷居が高い雰囲気もございますし、それから、時間的な制約もあります。
そういう課題を踏まえて令和4年度から取り組んでいる事業がこのSODAかわぐちという事業でありまして、場所はイオンモール、いわゆるショッピングモールの中に構えていまして、一般社団法人SODAに委託をして行っています。開所時間も、現時点では週4日ですけれども、10時から19時ということで保健所の閉庁時間以降も相談できる体制を取っております。
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これがフローです。一番上の○でありますけれども、診療所等の医療機関が医療提供の機能に集中できるよう、つまり、相談事業をこちらで受け、必要になったら医療機関につなげるという形で、診療所と保健所、SODAというところで役割分担ができるように対応させていただいているところでございます。
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先ほど御説明したものと重複しますけれども、重症化する前に早めの対応を取っていきたいというのが川口市保健所の基本的な方向性でございます。そして、長期的な視点を持ったアセスメント、早めの対応、関係性の構築、それから、関係者が一緒に考えるという支援体制を目指しており、みんなで悩むことができる体制は、「にも包括」の基本姿勢ということにつながると考えております。
次のページをお願いします。
これは、いつも出てくる「にも包括」の図に川口市の資源等を付け加えたものでございます。
次をお願いいたします。
精神科の外来医療機関に期待することについて、まずかかりつけ精神科医の機能ということで、不穏時の柔軟な外来受診の対応、それから、緊急時の対応、特に適切な情報連携等を期待したいと思っております。
それから、地域の身体科、他の精神科外来との連携ということで、内科と精神科または精神科のクリニック同士のネットワーク、こういうものが今は少し希薄かなと思っておりますので、この辺りを活性化していただければなと思っています。
それから、地域連携の推進のためということで、先ほどの北広島市の御発表の中にもありましたけれども、ドクター1人、事務の方1人とかという状況ではなくて、相談員みたいな方を配置していただいて、医師の負担も軽減しつつ連携を推進していただきたいなと思うところであります。
それから、非薬物療法の機能の充実ということで、精神療法であったり、心理療法であったりというところも評価をしていただく。薬を出して終わりというような感じになると、満足度と申しますか、患者さんのほうももう少し別の観点からの精神科の医療に期待しているところが大きいのではないかなと思っているところであります。
それから、地域の精神科医療への貢献ということで、災害や感染症の流行のときということでありますが、コロナの流行のときに非常に受診が難しかったということもございますので、将来のパンデミック時にもきちんと外来の機能を維持できる体制を整備していただければなと考えているところであります。
さらに、自殺対策への協力ということで、未遂者への支援等にも関与していただければなと思っているところであります。
次のスライドをお願いいたします。
精神科救急医療体制への参画ということで、特に一次診察等の輪番体制へもクリニックの先生が参加していただくということも検討していただきたいなと思うところであります。
それから、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築ということでありますが、保健所が取り組む事業等にいろいろ御協力いただければなと思います。
それから、保健所と顔の見える関係を構築するために、先ほど少し御紹介いたしました医療機関への訪問を受け入れていただく。または事業、市民の普及啓発活動、教育、イベント等に御協力いただければなと思っております。
それから、医療機関の職員の方に保健所が実施する研修等へ積極的に参加していただきたい。さらに、地域の専門職に対する人材育成にもご協力いただきたいと考えているところであります。
ここには記載がございませんけれども、訪問看護につきましても、24時間対応、身体疾患等との関係、柔軟な訪問、情報連携ということ、同じようなことを期待したいと思っております。
これは制度、法的な問題、それから、診療報酬の問題、助成金等、いろいろな課題はあろうかと思いますけれども、それは度外視いたしまして、保健所として日々いただいている相談等に基づきまして、精神科の外来医療機関に期待をするということで記載させていただいたところであります。
私の発表は以上であります。御清聴ありがとうございました。
○田辺座長 岡本参考人、御報告ありがとうございました。
最後に高野参考人、よろしくお願いいたします。
○高野参考人 よろしくお願いいたします。新潟県小千谷市健康・子育て応援課保健師の高野と申します。
本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
また、本日は私のバックアップということで、当課の佐藤保健師と障がい者基幹相談支援センターの三浦相談員も同席していただいております。よろしくお願いいたします。
まずは、小千谷市の現状から考えたことについてお伝えさせていただきたいと思いますので、スライドをお願いいたします。
小千谷市なのですけれども、人口は3万3000人ぐらいということで、合併もせずやってきているということで、比較的コンパクトな市になっております。
特徴としましては、平成16年に中越大震災を経験しまして、住民の健康と生活に大きく影響を及ぼしました。
現在の人口は震災前から約8,000人の減少、そして、アパートや住宅などが増え、核家族化も進みましたので、世帯数はほぼ同数となっております。
中越地震後は精神疾患の疾病構造の変化もありまして、鬱病などが増加し、約2倍に増えました。
また、新潟は酒どころということもありまして、以前からアルコールによる問題も多く、県内でも自殺率の高い地域でありました。震災後は、また一時的に自殺率も増えまして、特に若い世代に増加しましたが、近年はようやく県平均は国の平均を下回るようになりました。
また、冬季は降雪量が多く、今年は特に降雪が非常に多くて、2月末の時点でも観測地の平均が246センチの積雪ということで、外出など生活に大きく影響して、ひきこもりなどが増加する地域でもあります。
次のスライドをお願いいたします。
自立支援医療、精神福祉手帳等の交付数になりますので、参考にしてください。
次のスライドをお願いいたします。
赤く記したところが小千谷市になっております。小千谷市は震災後に精神科クリニックが平成18年に開院し、その5年後に心療内科のクリニックが開院しました。それまでは市外の医療機関に車で片道30分から1時間近くかけて受診をしているというような現状がありましたし、現在も入院する医療機関は市外に頼っているような状況です。
次のスライドをお願いいたします。
医療機関に限らず、訪問看護ステーションも市内に1か所で、障害福祉サービス事業所や介護サービス事業所につきましても限定的で、こちらも市外のサービスに頼らなければいけないような状況になっております。
次のスライドをお願いいたします。
小千谷市では、これまで自殺対策、こころの健康づくりの連絡会ということで開催してきたものに加え、令和2年度から2部制を取ってにも包括の協議の場を開催しております。そこが多分野との共有、検討の機会となっております。医療機関からの参加としましては、市内のクリニックの精神科医師、入院病床のある市外の精神科病院の相談員、そして、市内唯一の総合病院から心療内科の看護師さんがこのにも包括の協議の場に出席していただいております。
次のスライドをお願いいたします。
当市の保健師の体制になっております。ほかの市町村では複数箇所への分散配置が進んでいますが、当市におきましては健康・子育て応援課と福祉の高齢分野の2課のみになっております。当課は健康増進係、子育て応援係の2係になっておりますが、係の垣根を越えて分担制を取っているため、保健士が妊娠期から高齢期まで包括的な支援を担っています。
また、古くから精神保健活動も保健師が担ってきておりました。一時的には自立支援医療等の手続も担当の保健師の部署で行っておりましたが、現在、サービスや自立支援医療等の福祉の事務的なところにつきましては福祉課のほうで行っており、個別支援やこころの健康づくり、精神保健活動等を当課の保健師が担当しているというような状況です。
また、福祉課におきましては、障がい者基幹相談支援センターとして地域包括支援センターを同じ社会福祉協議会に委託し、場所を市役所内に配置していただいておりますので、障害と高齢との連携も比較的取りやすい体制になっております。
次のスライドをお願いいたします。
これまでの精神保健活動の歴史ということで、現在は別の保健所管内に移ったのですけれども、昭和57年当時、保健所管内にあった県立の総合病院では、精神科で毎月地域医療連絡会が開催されておりました。そのため、早くから管内の保健師や医療機関、保健所など関係者が集まって事例検討をするなど、顔の見える関係がつくられておりました。また、こういった連絡会での情報交換や学習をヒントにして、市に必要な社会資源として家族会ですとか心の相談会、また、うちも市直営で作業時をやっていたというような時代もあります。医療資源に乏しい市でしたので、市外の医療機関の医師や相談員、それから、保健所の相談員が市に出向いて事業に協力をしてくれていました。住民に身近な市の保健師が精神保健活動を担い、当事者の方が具合のよいときからつながるための訪問活動やこころの健康づくりというのができていたかと思います。
また、当時は家族会の活動も非常に活発で、陳情活動で市内に精神科医療機関体制の確保を長い間要望してきました。中越地震が後押しとなり、平成18年に精神科のクリニックの開院となり、市民の方が精神科を受診するというハードルも非常に低くなったかなと思っております。
社会資源が少ない地域でしたので、その弱みをできるだけ足で稼いで、病院など地域中にも出向いてネットワークをつなぎながらカバーをしてきたというような活動でした。
次のスライドをお願いいたします。
にも包括における医療との連携ということで、現在の連携の仕方などをお伝えさせていただきたいと思います。
震災後の鬱病の予防ですとか自殺予防対策、長期入院者への対応の課題に対して、精神科医や精神科病院と一緒に相談体制の構築や普及啓発などの活動の取組を行ってきました。やはり現状や課題を共有する機会を定期的に持っていることで、同じ方向性で取り組むような連携ができるというところと、我が事として考えられるとして、相手方がどのような役割を担っているところなのかとか、どのようなことはお願いそうなのかというようなところの把握もできております。
にも包括の協議の場においては、精神科医や病院から参画していただいておりますので、課題を検討して、地域全体で支えるというような体制づくりに努めています。
また、市内の総合病院にある心療内科の看護師がこのにも包括の協議の場に参加してきていただいておりますので、身体面と精神面を包括した医療の視点ということで、やはり精神科ができたと言っても、まだ精神科にかかるというハードルを高く感じている人はいらっしゃいます。身体面から気づくということもありますし、身体面の不調が精神面に影響を及ぼすというところも大きくありますので、体と心の双方から診てつなぐというような体制はとても必要になってくるかなと思っております。
現在、市内の医師から精神保健活動に参画していただいておりますので、個別支援においても相談しやすく、よい関係が保てている。そして、医師の声を直接日頃から聞くことができていると思っております。例えば診療の合間に私たち支援者の相談、ケースの相談を先生が受けてくださるということもありますし、逆に病院の医療を中断した人がいるけれどもというような先生からの連絡を受けると、保健師が訪問してその方の状況を見てくるというような連携の活動等もしております。
ただ、にも包括に参画している病院とそうでない病院との連携や関係に若干差があるなとも日々感じているところです。
また、住民に身近な保健師が状態のよいということを意識し、本人も変化をキャッチしたときに医師や相談員と情報共有するという関係ができているということが、病状悪化の際に気づいて医療につなげやすいというようなことにつながっております。
悪い状態のときに関わる保健師ではなく、よい状態のときからつながっているということで信頼関係などもでき、いざというときも受け入れていただくことができます。これについては、保健師に限らず、障害の基幹相談支援センターの相談員、あとは相談事業所の相談員もこういうような活動になっております。
また、長期休日前ですとか長い休暇のときにつきましては、できるだけ本人の状態を事前に確認しております。休暇になると医療もお休みをするところがほとんどになりますし、私たち相談する体制というところもいつもの体制を取ることができませんので、早い段階で御本人さんのところに訪問して、様子を見ておく。
そして、緊急時のためのリスク管理というところでは、その方の例えば課題の可能性だったりで、緊急時の対応の対策だったり、連絡先ですとか、そういったものをリスク管理としておいて、課内で共有するような体制を取っております。
また、地域性というものもあるのか、できる限り予防的な介入というところも意識しておりますので、比較的時間外ですとか緊急対応で病院を受診するというようなケースは、医療機関から多いとか困っているというような声はあまり届いておりません。
次のスライドをお願いいたします。
これは、家族会と、それから、B型を利用している御本人の方と一緒ににも包括の勉強会をして、課題や現状を共有した内容になっております。
本人や家族が医療機関の受診で大切と感じていることについては、やはり継続して治療できる体制というところがありました。そこには医療機関までの距離や交通手段、そして、経済面の支援、医療スタッフとの関係といったハード的なところも意見として多くありましたし、緊急時の対応ができる体制ということで、本来は入院をしないで過ごすことが一番なのですけれども、やはり病気の策定上、それだけとは限りませんので、そういったときに入院が可能となる医療機関とのスムーズな連携や、市外になりますので、入院先への移動手段、そして、やはり本人が自分で進んで入院ができるということだけではありませんので、移動も含めた入院をサポートする人という部分は非常に課題として抱えている人が多くありました。その中には、家族が高齢化したり、身寄りなし問題等でサポートが不足しているというようなこともありますし、特に入院のときに大変な経験をすると、家族自身も退院してくること、在宅生活を送ることをちゅうちょするということにつながって、長期入院にもつながっていくことが懸念されます。
また、現在、市内でも精神科のクリニックを開院していただいておりますが、医師自身も高齢化をしていたり、マンパワー不足ということにもなっております。主治医や医療機関が変化するということは、本人の病状にも大きく影響しますので、医療体制の確保というところは非常に重要になってくるかと思います。
また、非常に過疎の進む地域になっておりますので、公共交通機関の不足や特に冬季の交通障害というところでは、治療の継続を左右したり、そのことによる経済負担の増加というところにもつながっております。現に訪問看護を利用したほうがいいような方も、訪問看護の交通費は自己負担になりますので、そういったところをちゅうちょして訪問看護を利用しないというような選択をする方も中にはいらっしゃいます。
次のスライドにつきましては参考になりますので、飛ばしていただきまして、その次のスライドをお願いいたします。
私たちの現状から医療提供体制において期待することということで、少しお話をさせていただきたいと思います。
まず一つは、にも包括の協議の場において医療機関の立場からの参画というのは欠かせないと思っております。医療も地域生活の一部になっております。にも包括を理解してくださっている医療体制かそうでないかというところは、やはり本人をサポートする体制や、本人が受診しやすいかどうかというようなところにも大きく影響しております。にも包括に参画しているところとしていないところとの連携というところにも違いがあり、にも包括の協議の場において共有をしたり、課題を検討したり、一緒にやっていこうという意思統一ができることは、これらの課題を我が事として捉えること、そして、お互いの役割を理解して、お互いさまの関係でそれぞれのお仕事を実行していくことにもつながるかと思っております。
また、病状悪化時だけではなく、予防の視点で状態のよいときから支援や介入をするということも必要かと思います。もちろん日常の受診や診療体制というのはそれに当てはまるかと思いますし、保健師が精神保健活動をできること、そして、地域で精神障害の方の暮らしを支える訪問看護の役割、精神障害のサービス、そして、ピア活動などができる家族会活動といったものの確保というのも医療をカバーしていく体制の中では必要なものではないかと思っております。
そして、もう一つは精神科以外の医療も含めた医療体制です。やはり体の健康は精神面の安定に必須なものとなっておりますし、精神障害を抱えている方は、お薬の影響だったり、特有の生活スタイルだったり、考え方だったり、そういったもので健康な人よりもちょっと早く体の疾患として出てくるというようなことも非常に多くあります。現在、自立支援医療などで精神科を受診する医療負担というところの軽減を図っていただいておりますが、身体的な面につきましてはまだまだ自己負担ということで、経済面の負担から医療の選択肢が限られるというような話もよくあります。
先ほど柄澤さんの話にもあったとおり、やはりファーストタッチがかかりつけ医になるというような人もたくさんいらっしゃいますので、かかりつけ医と精神科医療機関との連携というところも今後は非常に重要になってくるのではないかと思っております。
また、日頃から共有や相談できる体制、マンパワーの確保というところでは、情報共有や相談できる体制があると、少しの変化に気づいて早期対応ができるのではないかなと思っております。やはり入院というのは非日常になってきますので、できるだけに入院せずに地域生活を続けていくというところにおきましては、変化に気づくということは御本人、御家族、支援者、いずれにとっても大事なことかと思っております。
現在、精神科を受診したいと思っても初診が1か月先になるというようなものは、うちの市でも起こってきていることです。先生の抱える患者数が増加しているので、限られたマンパワーを有効に生かしていくというところにおきましては、医師以外のスタッフと連携をして、先生は治療に専念してもらうというような体制や相談というのも必要になってくるかと思います。現在も市内の医療機関の先生と本当にいい関係はできているのですが、そういった入院の調整等まで先生がしなければならないというようなところも非常に負担としては大きいのではないかなと感じておりますので、クリニックにもそういった役割を担ってくださるような多職種が配置されるというところでは、先生の治療の専念というところにもつながると思われますし、私たち地域の支援者の相談できる内容というのも多様化していくのではないかなと思っております。
そのために、診療所においても多職種が配置されるような体制、また、先ほどのオンライン診療などのお話もありましたが、信頼関係が大事な特性を持つ疾患であることや、なかなか本人の画面では感じ取れない部分というところがある疾患であるというところもありまして、オンライン診療のみに頼るらしいということは難しいとも思っております。ただ、例えば私たち保健師が訪問した際ですとか、訪問看護さんが訪問している際に、先生とのオンライン診療を融合して、本人の変化に気づく。この状態だったら予定よりも早めの受診がいいのか、もう入院が必要なレベルなのか、定期の受診でいいのかといった助言をいただけるような体制などもあると、地域で支えるといったところについては安心して支えていけるのかなと思っております。
誰もが住みやすく、地域で安心して暮らし続けていくために、また皆様のお力を借りながら、今後もよろしくお願いいたします。
私からの報告は以上です。御清聴いただきましてありがとうございました。
○田辺座長 高野参考人、御発表ありがとうございました。
それでは、ただいまのヒアリングに関しまして、御質問等がございましたらよろしくお願いいたします。
また、全体を通じて、構成員の皆様方からこの議題に関しまして御意見等がございましたら、ぜひとも御披露いただければと思うところでございます。
では、いかがでございましょうか。
では、長谷川様、よろしくお願いいたします。
○長谷川構成員 皆さん、すばらしい御発表をありがとうございます。
私から岡本参考人にお聞きしたいことがありまして、SODAの取組は本当にすばらしいと思うのですけれども、この取組を広めるには仕組みとか制度とかをどんなふうにしていったらいいかというのがもしありましたら、御意見を教えてください。あと、ピアサポート活動はどういったところで取り入れていらっしゃるのか、アウトリーチ事業などでもあったのかどうか教えていただければと思います。
○岡本参考人 御質問ありがとうございました。
SODA等の活動をどう広めていくかというのは本当に大きな課題です。この事業は国のほうから補助金を頂いて実施していますし、それから、川口市がSODAという団体とがたまたま巡り会ったということで実施できているという現状があります。地域の資源がないところでどのようにやったら進められるかというところを、もう一つのSODAの事業を通じながら発信していくというのが非常に大きな役割ではないかなと思っているところであります。
それから、ピアサポーターなのですが、残念ながらそこまでのピアサポーターを活用した事業にはまだ至っていないというところでございます。
以上です。
○田辺座長 長谷川構成員、よろしゅうございますか。
○長谷川構成員 はい。ありがとうございます。
○田辺座長 では、北村構成員、よろしくお願いいたします。
○北村構成員 公的病院精神科協会の北村です。
非常に刺激的というか、いつも思っていることをそのまま皆様おっしゃって、いっぱい言いたいことあるのですが、まず新しい地域医療構想に精神科が入ることになりまして、構想区域なども問題になっておりますが、例えば北広島市などは札幌市の病院にかなり依存というか、そこしかないのでという話がありますけれども、精神科の地域医療構想について自分の考えを述べますと、子どもはここと協力するとか、摂食障害はここと協力するとか、認知症はここと協力するみたいに疾患とか病態別に非常に細かく考えたほうがいいと考えております。
第7次医療計画ぐらいから、厚労省は各疾患とか疾病ごとに拠点病院を決めろみたいなことを言っておりまして、石川県では県拠点病院と地域拠点病院というのを指定しております。例えば摂食障害だったらこの病院が県拠点病院で地域拠点がこれとか、依存症だったらここが県拠点で地域拠点がこことかになっていますが、そのときのポイントが、地域拠点病院というか地域拠点医療機関は全部手挙げ式なのです。ですから、クリニックでもアルコールをやりたいとかあるいは子どもをやりたいというところは手挙げをされておりますので、そういうところを拠点にしていろいろ考えていけばいいのではないかなと。今はまだ全然県でそういう話はしておりませんが、そういうふうに考えております。
いろいろ御要望のあるアウトリーチとか往診、緊急時の対応ですけれども、本当にまさしくそのとおりだと思うのですが、病院を経営している立場からすると、診療報酬が安過ぎる、あるいは人手がかかり過ぎる、時間がかかり過ぎるということで、基本的に無理です。
ですから、個人的に考えているのは、川口市みたいな都会のほうは分からないですけれども、石川県、石川県もうちなどは田舎なのですが、やはり市町とか保健所単位でそういうアウトリーチチームを持っていて、それを病院が支援するみたいな形がいいのではないかということで、これは藤井先生がよく御存じだろうと思いますが、所沢市に対するアウトリーチチームですね。そういう形にして、市町がそういうのを持って医療機関なりクリニックが支援するという形が一番理想だろうと思うのです。だから市町とか保健所とか生保センターとかの人材確保とか予算等についてどうなっているのかなということを知りたくて、例えば今度こども家庭庁が発達相談に25億円出して、各市町でそれをやれみたいなこと言いましたけれども、こういうアウトリーチ事業についても国がその気になって県なり市町に支援すればできるのではないかなと僕は考えているので、優先順位が低いのかなと思っていますが、その辺りは政治の話ですけれども、やはり市町とかに人材が要るのではないかなと。それはなぜかというと、やはり精神科クリニックにいろいろなことを期待しても、精神科クリニックを開業されるときに非常に志の高い人とそうでもない人もいらっしゃいますし、それから、子どもをやりたくて開業した人とか、自由な時間が欲しくて開業された人もいるでしょうから、そういうのを今のシステムでクリニックにどんどん地域貢献せよと言って強制していってもまず無理だと思うので、先ほど言った手挙げ式の地域拠点みたいなやり方だったら志のある人はやってくるのではないかなと思っています。
それから、待ち時間のことなのですけれども、待機時間については僕も昔調査したときに、例えば開業医の先生が鬱病ですぐ診てほしいと。でも、クリニックに予約したら1か月待ちだと言われた。では、その間の1か月はどうすればいいのだと。もしその間に死んだらどうするのだみたいなことを言われたことがあるのですけれども、まさしくそのとおりだと思っていて、石川県などでは割とそういうのは病院同士でシステムができるのではないかなということは前から思っていまして、精神科救急システムというのも二十何年前からできて、各県でそれなりの形をしております。ですから、例えばソフト救急システムみたいなのをつくって、輪番制なり当番制なり、それは病院があってもクリニックがあってもいいと思うのですけれども、今日そういう御相談があったらここの病院が対応しますよというシステムをつくることは可能だと思うのですが、大都会では分かりませんけれども、田舎ではそういうことができるのではないかなと思っています。
最後に、身体科との連携について皆さんおっしゃっておりました。まさしくそのとおりだと思いますが、皆さん身体科との連携と言いますけれども、この時代は連携ではなくて身体科と精神科が合体しないと救急医療も何もかもできないような時代になってきているので、精神科だけ切り分けて別に考えるという考え方を改めないと永久に解決できないかなと。その原因は、やはり社会・援護局が精神を担当しているということは非常に問題だと思うので、精神医療の一部はいち早く医政局に移管していただいて、みんなでやっていく。当事者の方もどうして精神科の患者だけ精神病院に行かなければいけないのだということをおっしゃっていましたし、実際にそのとおりだと思うので、この古い昭和の形をぜひ改めてほしいと好きなことを言わせていただきました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
では、松本構成員、よろしくお願いします。
○松本構成員 ありがとうございます。
今回3か所の発表をお聞きいたしまして、私自身も保健師として長く地域で活動しておりました。お聞きしてそのとおりだなと思うところがたくさんあったのですけれども、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムということで、やはり今は高齢者の地域包括ケアシステムから展開するというようなものが多くなっております。冒頭に御説明がありましたように、この精神保健医療福祉の問題は子どもから妊産婦、それから、成人期、自殺対策も様々な年代にわたっておりますので、既存の地域包括ケアシステムをそのままの形で運用するということにはかなり無理があります。たくさんの関係機関を新たに入れて、新たなにも包括を構築する必要があるということを改めて教えていただいたと思います。
また、保健医療福祉の連携はもちろん必須なのですけれども、今お聞きしておりまして、あらゆる場で看護職が存在しておりますので、大きな期待があるということも改めて認識させていただいたところです。
そのために、精神疾患や精神障害の特徴を理解して対応できる専門性の高い看護職も育成していかなければならないと思いますし、そういった意味で外来機能の強化をするとか、予防的な仕組みをその中で展開させるということがやはり大事なのではないかなと感じました。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、上田構成員、よろしくお願いします。
○上田構成員 日本精神神経科診療所協会の上田と申します。
まさに私どもの業界にいろいろ御意見をいただいたような気がしておりまして、非常に耳が痛い部分と勉強させていただく部分がございました。
私たち精神科診療所協会は、志の高い人が多くて、楽をして開業したみたいな人たちは診療所協会には入らないというか、そういうことですので、志の高いクリニックは診療所協会で探していただければいいと思っていただけるといいのではないかなと思っているのですけれども、実際に患者さんの数が増えていて、要請も多い中で、新患も一生懸命診てはいるのですけれども、どうしても再診の方が増えていく。一日の中で診られる患者さんはそんなに、患者さんが増えるからたくさん診られるというものではないので、それなりに時間をかけて話をしていたら、勿論そこまでかからない安定した人もいるのですけれども、結局、患者さんが2倍増えたから2倍の患者さんを一日で診るということは不可能なのです。その中で新患を取っていたりすると、もちろん取るのですけれども、手厚く時間をかける人の割合が増えていく。また、診断書とか書類も増えていく。一方で診療報酬は年々下がっていくということで、診療所の医者は本当に多忙で疲弊しております。
一日中外来をしていて、恐らく保健所とかの連絡があってもすぐ出られませんみたいなこともあったり、すぐ対応してほしいということもなかなか難しかったりしているのも事実だと思うのですけれども、その問題点としてはやはり医者が一人で何でもかんでも役割を担っていたというところに問題があると理解しておりまして、その他の多職種としっかり連携、協力していく。それをチームとしていくことがこれから求められているのではないかとは考えておりますが、どうしても診療報酬の話になってしまいますけれども、それが下がっていく中で心細い思いを抱いている医師も多いので、その辺りが例えば多職種連携すること、あるいは新患をしっかり取っていくことにインセンティブがいただけるような形にしてもらったり、あるいは保健所の方とかと話合いをする場合など昼休みを利用してしたりする場合もあるのですけれども、そういうのも何か診療報酬に追加されるものがあるといいのではないかなと思っています。お金の話ばかりするのはよろしくないのですけれども、現実的にはそういう問題が実際にございます。
救急に関しては、地域によっていろいろ体制が違いますけれども、東京などは、東京精神科診療所協会が初期救急というのを担っておりまして、外来対応施設というのを都から委託される形で手挙げした医者が対応して、平日は午後10時まで、休日は日勤帯の時間、相談というか診療業務を担っておりますので、そういうことが他の地区に広がっていくと、何かあったら救急の対応をお願いしたい、入院は必要ないけれども相談したいという場合に対応できるのかなと思っておりますが、何せ各自治体の事情や地域のマンパワーの部分もございますので、そこが課題かなと考えております。
あとは、先ほどの話にもありましたけれども、アウトリーチをしていったり、予防的な対応をしていくことで重症化を防ぐというのはすごく大切なことかと思いましたし、そんな中で、診療所の医者が急に飛んだり、遠くに行ったりできないので、例えばオンラインというものが活用できるということになると、遠距離であっても対応ができるとか、そういうことも今後考えていく必要があるのかなと感じました。
取りあえず以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、長瀬構成員、よろしくお願いいたします。
○長瀬構成員 日精協の長瀬でございます。
3人のお話を聞いて大変勉強になりました。
私のほうから外来・在宅の医療体制について意見させていただきますけれども、上田先生がおっしゃられたように外来の患者さんは大変増えていますし、入院病床だったり、病院の数も減っていますよね。これは紛れもない事実で、外来患者さんは増えています。精神科病院はとにかく入院機能というわけではなくて、もともと外来・在宅診療やそういった在宅機能が脆弱とか苦手というわけではなくて、前からやっています。そういうことは皆さんよく御理解いただきたいなと。むしろ多職種で支援する体制に関しては大分前から取り組んでいまして、会議体等も病院でおのおのやっています。
にも包括を推進すべく精神科医療機関に求められる機能は、事務局から先ほどお話がありましたように、いろいろな機能を持っていないとなかなか難しいと。これは集約すると、結局、一次医療と二次医療を受皿として連動できないと、やはり拠点としての機能を果たせないのではないかなと認識しています。なので、かかりつけ医精神科機能だけが点として走っていくことというのはあまり求められていないと思っています。
資料にもありますように、メンタルクリニックのスペックでは、マルチスペックなところもあれば、一つの機能、非常に小さいスペックでしかないというか、精神科の先生お一人で事務のパートの方数名ではなかなかケースマネージまで手が回らなかったり、お忙しかったりという問題があると思うのですよね。資料にもありましたように、外来機能の差別化ですね。例えばインセンティブとか、ディスインセンティブとか、インセンティブカットという議論は今後のことかもしれないのですけれども、我々からすると、外来サービスの中では既にやっていることですので、地域によっては、病院が多く診療所が少ない、診療所が多く病院が少ない、いろいろなことがあると思うのですが、連携の形というのは優先順位を決めていただければいいとは思うのですけれども、お互いの地域の医療機関がその機能を把握して、古臭い言い方かもしれないのですが、点から線へと、線から面へという形で連携のネットワークをつくってもらって、我々も参画できればなとは思っております。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、岩上構成員、よろしくお願いします。
○岩上構成員 全国地域で暮らそうネットワークの岩上でございます。
3名の方に御発表いただきまして、ありがとうございました。大変貴重な示唆に富んだ内容であったと思います。
今、長瀬構成員からも一次医療も二次医療もという話がありましたけれども、そういう意味では、今回の3人の皆さんの御発表というのは特筆すべきことではないかなと。つまり、市町村がしっかり精神保健に取り組んでいる、あるいはそういった包括的な相談支援体制を整えている自治体であると。だからこそ外来ニーズがより明確に出てくると思いました。
アウトリーチの話もございましたけれども、アウトリーチも皆さんそれぞれが思い描くアウトリーチがあるように思いまして、基本的には市町村がしっかり訪問による精神保健相談をし、そこにいろいろ医者の力も借りてみたいなことからまずできるようになると一番いいのではないかなと思っています。
せっかく3人の方がいらっしゃるのでお聞きしたいのですけれども、そういう意味では、今回外来はどうあるべきかということに論点が行くところなのですが、まずその前提として、岡本参考人は医療機関に訪問していただいて、そういうことが非常に重要ですよねということを随分前ですが岡本参考人とお話をさせていただいたことが記憶にあるのですけれども、御用聞きをして保健所長がトップセールスをするということがやはり基盤になると思うのです。そういう意味では、医療機関のほうは自治体に対してどういう期待をしていて、それにどのように答えてきたかということを3人にお聞きしたいなと思います。
○田辺座長 では、御回答というか、答えられる限りにおいてお願いいたします。
まず、現場にいらっしゃるので、岡本参考人、よろしくお願いします。
○岡本参考人 御質問ありがとうございます。
岩上さんとは前からいろいろご縁がございまして、ありがとうございます。
川口市の保健所から医療機関を訪問して、いろいろお願いをすることもあるのですけれども、先ほど上田先生からもお話があったとおり、いろいろ制約があってなかなかうまくいかないということがあろうかと思います。一方、医療機関からお願いをされることとしては、やはり保健所でまずは話をしっかり受け止めてもらって、相談支援をきちんと行うということかと思います。いわゆる医療の中で解決できないものもいっぱいあるわけですし、要するに、日常生活全体の支援をすることというのは非常に重要で、医療は相談の一部分でしかないわけなので、医療以外の部分は行政で、ということになると思います。ヘルスの部分もあるでしょうし、福祉部門もあるし、それから、生活支援全体ということで言えば、就労も含めて行政側がやらなくてはいけないことというか、行政側にお願いされることは非常に多いのではないかなと思います。しかし、限られた行政の資源でやっているので、なかなか十分でないというところが今後の課題ではないかなと思っているところであります。
回答になっていたかどうかよく分かりませんが、私からは以上です。
○田辺座長 あと、柄澤構成員、高野参考人、何かありましたらよろしくお願いいたします。
では、柄澤構成員、お願いいたします。
○柄澤構成員 御質問ありがとうございます。
今、川口市さんのほうでおっしゃったことと重複はするのですけれども、実際にあった例としては、医療機関側のほうから、例えばしばらく受診が途絶えているので様子を見にいってもらえないかというような依頼があって、訪問して確認させていただいたり、あるいは医療で解決できない部分、生活支援の部分で心配な患者さんがいるということで御連絡いただいた場合に、もちろん訪問もありますし、その方の個別のケース会議などを開いて皆さんで支援体制を検討しているというような実例がございます。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
高野参考人、何かございますでしょうか。
では、お願いいたします。
○高野参考人 私たちのところも、先生のほうから医療中断しているというような連絡や、あと、患者さん自身が体調不良の電話連絡を病院にして、でも、休日前だから、本当に休日に来てもらったほうがいいのか、お休み明けでもいいのかという判断が電話だけではできないので、地域の保健師さんが訪問して様子を見て話を聞いてくれないかというよう御依頼を受けることもあります。中には、特に医療というところだけではなく、ちょっとお話を聞くだけで落ち着いたりですとか、あとはこの期間はこういうふうにして、それでも駄目だったらこうしてみたらというようなことで落ち着く方もいらっしゃいますので、全てを医療機関とかということだとまたマンパワーも不足しますので、そういった連携がうまくできたり、私たちとしてもその間に本当に医療が必要な人たちのバックアップ体制、ベッドの確保といったものをまた病院からしていただけると心強いなと思っております。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、江澤構成員、よろしくお願いします。
○江澤構成員 ありがとうございます。
まず、精神科の医療提供体制を考えるに当たって、一般医療と同様には難しいというのは共有していることだと思います。全県下で考えることもあるでしょうし、あるいは三次医療圏、二次医療圏で考えることもあろうかと思います。したがって、まず地域によってあるいは都道府県によってどういった構想区域がいいのか。そして、先ほど北村先生もおっしゃったように、疾患にかなり特性がありますから、疾患別に対応できる圏域というのも当然異なっていますので、その辺りを今の各地域の状況に応じてしっかりと考えていくということが大変重要ではないかなと思います。当たり前のことですけれども、顔の見える連携体制をどうつくっていくのか。その中で、そういった構築ができれば、救急対応とか夜間・休日の対応をあらかじめやはり話し合っておいて対応できるようにしておくということが理想的かとは思っております。
昨年の令和6年度の診療報酬、介護報酬の同時改定では、高齢者施設と医療機関の連携ということで仕組みが設けられました。例えば高齢者施設のほうは特養、老健、介護医療院においてはいつでも相談できる、いつでも診てくれる、いつでも入院を受けてくれる、この3つの要件を満たす協力医療機関、協力病院と連携することが3年間の経過措置をもって義務化されました。また、そういった協力の場合において、さらに毎月1回以上の対面もしくはウェブで会議を行う、入所者の医療情報を共有しておくということですけれども、もしくはふだんからICTで連携体制を構築、メディカルケアステーション等でやり取りをしている場合は、年3回以上の会議を対面もしくはウェブで行うというものは加算で新たに評価が設定されたところであります。これは精神科の医療機関と障害福祉サービス事業所との連携にも十分応用できると思いますし、場合によっては精神科の医療機関と一般の医療機関の連携にも応用できる部分があろうかと思っています。
先ほどの意見、今日のプレゼンテーションも大変参考になりますし、本当にある意味では予測されている実態であると思いますし、自治体の職員さんも人手不足の中、必死で頑張っていらっしゃることが脈々と伝わってきましたけれども、ではこういった構築体制は誰がリーダーシップを取るのかというところですが、これについては、まずは自治体と医師会の連携でリーダーシップを取っていくほうが一番進みやすいかなとは思っています。先ほどなかなか医師会に入会していないというプレゼンテーションもありました。そういった中で、それをカバーする上でも、やはり自治体と医師会がしっかり連携をしてリーダーシップを図って、今後、いろいろ新たな地域医療構想に市町村が参画していくに当たりましても、市町村側にも協議の場というのがいろいろと設けられると思います。もちろん精神医療に関する協議の場もできると思いますし、その事前準備としては、やはりしっかりと協議ができる人材を養成しておくということは重要だと思います。協議の活性化は非常に重要なので、政策も含めてしっかりと議論ができる人材を養成しておくことも重要ではないかなと思います。
昨年、令和6年度の診療報酬改定においては、精神医療機関に新たに入退院支援加算が設置されました。これの中身は行政とか障害者サービスあるいは介護保険サービス、その他の保健医療機関との連携という形で、内容的には、普段から連携しておいたり、入院時からいろいろ退院の支援あるいは連携に向けた取組が行われますから、こういったものはぜひ推進していくべきだと思っております。
それから、一般の認知症におきましては、対応力向上研修がかなり活発に行われております。例えばかかりつけ医を対象としたもの、病棟の医療従事者を対象としたもの、それから、病棟勤務以外の看護師等に対応したもの、訪問看護ステーションとか介護施設の看護師さんに対応したもの等、その他もいろいろありますけれども、活発に行っておりますから、これに倣って精神障害の対応力向上研修というのも今後必要ではないかなと思っておりますし、我々日本医師会の日医のかかりつけ医機能研修においても精神や障害のことについて近年プログラムに入れてきております。やはりその辺りの理解は深めていくべきだろうと思っております。
昨年の診療報酬改定でも、精神医療分野においてはケースマネジメントを推進するもの、あるいは地域包括ケア病棟の新設等、かなり地域包括ケアシステムの推進に寄与するものは入っておりますが、施設基準の問題や人材不足の問題、いろいろ要件がなかなか厳しいものもあって、もしくは人材がいないということで、まだまだ進んでいないかと思いますけれども、その辺り含めてまた今後いろいろな面で検討する場も必要ではないかなと思っております。
また、精神科の在宅医療は、今後、提供体制においては外来・在宅、あるいは障害福祉サービスや介護保険サービスとの連携というのを視野に入れながら議論してくことになりますから、どういった患者さんがどういうサービスを受けながらどういう状況になっているかというのはもう少し見える化して、議論をしやすくしたほうがいいかなと思っております。
最後に、今日のプレゼンテーションにもありましたけれども、今、認知症施策の推進計画においては、認知症初期集中支援チームの名称と役割を見直そうかという方向にはなっています。今、認知症初期集中支援チームは、地域によっては介入件数がかなり減少してきています。なぜならば、我が国には身近にかかりつけ医とか、ケアマネージャーさんとか、他国に比べてそういった優れた体制がありますから、必ずしも介入してバトンタッチする期間が必要ではない方もいらっしゃいますし、既にかかりつけ医やケアマネさんを持っている方も数多くいらっしゃる。認知症初期集中支援チームはアウトリーチとしては今かなり全国で定着しているので、このシステムの下、障害者とか精神障害者、精神疾患にもアプローチしていけるチームになっておりますので、ぜひそういったものに応用できるように、認知症に限らず、初期集中支援チームもいろいろサポート支援チームのようなイメージで、期間も今の決まった固定したルールではなくて臨機応変に支援できるような体制がいいのではないかなと思いますし、現状、認知症初期集中支援チームは認知症以外の診断になった瞬間に介入がストップする仕組みになっていますから、実は精神疾患とか障害者が実際は多いのですけれども、私のところの医療機関チームも、それで関係性が途絶するというのはなかなか現場は難しいし、やはり関わった以上はしてあげたいという思いがあって、実際はその後の認知症以外の方もサポートはしているのですけれども、仕組み上は認知症以外の診断になると介入がストップするので、そういったことも変えるべく、認知症以外のところにも幅を広げながら、しっかりと障害福祉あるいは精神疾患も見据えて支えていくようなアウトリーチというのは、全国にかなりの初期集中支援チームがせっかくできていますから、これを生かしていくべきではないかなと思っております。
長くなりましたが、以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、家保構成員、よろしくお願いいたします。
○家保構成員 衛生部長会の家保です。
3人の発表、非常にありがとうございました。
中核市である岡本参考人以外の市町村のお二方にお聞きしたいのですけれども、都道府県の保健所といろいろ関係があることについてはあまり触れられなかったと思いますけれども、今後、所管されている都道府県の保健所に対してどういうことを期待していくのか。また、お二方の活動がほかの周辺の市町村に広がって、より向上するためには、都道府県なり保健所としてどういうサポートが必要なのかということについて御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
以上です。
○田辺座長 では、都道府県との関係ですので、中核市は外れるかもしれませんけれども、柄澤構成員、何かレスポンスはございますでしょうか。
○柄澤構成員 ありがとうございます。
本市を管轄する保健所が車で約1時間弱のところにありまして、緊急時とかにタイムリーに来ていただくというのが距離的にもなかなか難しいところではあるのですけれども、保健所に期待することとしましては、私たち一般市の保健師は精神保健のところの知識がまだまだ不十分なところがありますので、そういった部分でケースの見立てを一緒にしていただくですとか、可能な限り一緒に訪問していただくですとか、協働というところをお願いしたいなと思うところなのですが、ただ、保健所のほうも人員配置が十分ではないところもあって、常に忙しそうにしているなという印象があります。
市町村の精神保健の取組が広がっていくためにはというところでは、今言った協働の部分をお願いしたいところなのですけれども、精神保健法の改正があって、せっかく精神保健福祉相談員の養成講習会などもかなり時間が短縮されて受けやすいことにはなっているのですが、その辺りがどこまで進んでいるのかなと。現場としては市町村の職員が精神保健福祉相談員養成講習会を受講しているというような実感があまり湧かないところがありまして、そういったところも進めていけるといいのかなと感じております。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
高野参考人、何かございますでしょうか。
○高野参考人 ありがとうございます。
私たちも保健所さんは隣の市が現状担っているのですけれども、車で30分ぐらいということで比較的行き来はしやすくなっています。現在の困難事例だったり、同行訪問なども保健所さんの力をお借りすることも多くあります。特にうちの市につきましては、市内に入院病棟を持つ医療機関がありませんので、やはりこういった広域的な病院との連携等につきましては、保健所さんから窓口になっていただいたり、つないでいただいたり、他市町村と包括的にというようなことで進めていただけるとありがたいなと思っております。
精神保健活動につきましては、法改正の中で、精神保健の相談員がいると、保健師が手を離してしまうという市町村が非常に多くなってきているというような話も伺っております。やはり私たち保健師は公衆衛生というところで、予防的な介入だったり、困っていない人にも訪問するというような権限を持つ役割になっておりますので、こういった保健師としての活動の利点を生かしていけるといいかなと思います。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、手を挙げられていたと思いましたけれども、山口構成員、よろしくお願いいたします。
○山口構成員 全国保健所長会から参りました山口と申します。よろしくお願いします。
今、家保構成員からもあったことと重複しますが、保健所というのは、岡本参考人の話の中核市のような市型の保健所と県型の保健所があります。私は今、県型の保健所にいます。県型は市町村の活動の支援が主になっていて、住民の方に直接関わる事例は年々少なくなっています。それと、2-3年毎の人事異動がありますので、市町の担当と比べて、県型の担当はケースとのつながりが希薄になり、直接支援の経験が少ない状況です。
行政改革の影響で、10年ほど保健師の採用が少なかった時代があって、今、中堅期が少なくて、管理期が退職すると若手しか残りません。今、うちの保健所も精神の担当は、精神歴が3年目と1年目、それを統括保健師がサポートするという状態です。同じような状況にある保健所が全国に多数あります。しかし、難しいからやらないというわけにはいきません。今日3人のお話を聞いていて、そのとおりだと思います。私どもも全然異論はありません。やらなくてはいけないなという思いがありますから、厳しい体制ではありますが、今回のプレゼンテーションを伺って、どこもができないという課題が残っていることが改めてわかりました。どこもできないと言うことをやっていくのが私たち行政だと思っているので、そこをこれからもうちょっと整理して、できることは何か、どうすればできるかを考えていきたい。
管内では、3万人の地域で1つ精神病院があるのですけれども、今、そこの医師と市と保健所の担当者等と関係者会議を毎月しておりまして、医師にアドバイスをもらいながら事例検討をやっています。その病院は実は人口減で毎年12床ずつ減らしていて、今、病床が減っている分、外来に力をいれたい。アウトリーチをしたい。ということで病院と行政のお互いのニーズが一致して地域にいる患者さんについての検討が進められているということです。
また、市町村の中には、保健所の職員が勉強なると思えるぐらいしっかり活動されているところがあります。今までみたいに保健所が教えるのではなくて、保健所も一緒に勉強させていただく形で、あらゆるチャンスを使って地域全体で経験値を上げていくことが必要かなと思いますので、これからも一緒に考えていきたいと思います。
発言のチャンスがないかもしれないので、もう一言。最初に当事者からいかに話をじっくり聞くか、話し合うかだと思うのですよね。症状が悪化してからは警察が入るなどして、患者さんは興奮され話を聞けなくなります。とにかく最初(話し合える状態の内)に、話を聞くかが大切です。県型保健所は電話で何時間も話せないし、現場に行くにも、2~3時間かかることがあります。みんなが時間がないとか言っている限り、話を聞く人がいないわけです。ピアサポーターの導入を、もっと積極的に考えた方がいいと思います。また、地域の人の精神障がい者への偏見をなくして、民生委員さんをはじめ地域の人がじっくり話を聞くという仕組み、そういう文化ができることを希望します。
まだまだ市町村によって、精神福祉部門へのモチベーションに差があります。ぜひ国のほうから、何らかの後押しできるようなもの、ルールや枠組みをつくっていただきたい。力のある市町村と、これから力をつけていく市町村があります。県型保健所としては、市町村の力に合わせて協働して地域全体の対応力を上げていきたい。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、池原構成員、よろしくお願いします。
○池原構成員 今日はいろいろ御発表をありがとうございました。
それで、これからのことでいろいろ計画がこの検討会はあると思うのですけれども、もしできたらお願いしたいなと思ったのは、今日のお話を伺って、言わば保健医療の観点から見たときににも包括がどうなっていくかというのはとてもイメージがついてきたのですけれども、逆に障害者総合支援法の障害サービスのほうの例えば相談支援事業所とか、あるいは基幹相談支援センターとか、そういう辺りで言わば生活とかを支える部分がどう組み立っていって、そこと保健医療がどう連携していくか。そこのところはいま一つよく見えないような気がしたので、できれば障害者総合支援法系のケアマネジメントに関わる方とか、あるいは事業所の関係の人のにも包括についての関わり方というようなことをお聞きできるととても興味深いなと一つは思いました。
もう一つは、今度は利用する側、ここにも構成員として参加されていますけれども、精神障害のある方あるいはその御家族がにも包括という枠組みを使っていくときに、どんなところによさと悪さとかを感じるのかという辺りをインタビューして聞かせていただけるといいかなと思ったので、御検討いただければと思います。
○田辺座長 ありがとうございます。
では、岡田構成員、お手が挙がっていたと思います。
○岡田構成員 ありがとうございます。全国精神保健福祉会連合会の岡田です。
今日のお三方のお話は本当に現場で動いていらっしゃる方たちからのお話で、私たち家族が求めているものと大変酷似した中身で大変心強く思っております。
今ほどにも包括を利用する立場からというお話がありましたけれども、私たちの実感としましては、にも包括構築推進事業が始まっているということは情報として分かっていますが、実生活で何が変わったのかというところの実感がいまだに得られていないような状況が続いておりまして、ただ、今日お話を伺って、それぞれの地域地域で頑張って一生懸命取り組まれているということが少し伝わってきましたので、よかったなとは思っているところです。
その中で、お話を伺っていて、今日は医療提供体制なのでどうしても医療のことが中心ですけれども、一つ大事だなと改めて思ったのは、やはり相談体制の充実というところで、すぐに医療に結びつけようということを私たちは考えているわけではなくて、困っていることをどうしたらいいのか、どこに相談して誰が話を聞いてくれるのかというところがよく分かっていない状況の中で私たちは家族の精神疾患、精神障害と関わってきたという経験がありますので、相談窓口の分かりやすさとそこの充実ということはまず地域生活を送る中でとても重要だと考えておりますので、これまでも何人かの方からこのことについての御意見がありましたけれども、私たちは24時間365日ここにつながれば話を聞いてもらえる、何か必要な情報が得られるという場所が欲しいということは切に願っていることです。
その中で、多分私しか言えないかなと思うのですけれども、家族支援の重要性というのを私はいろいろなところでお話しさせていただいているのですけれども、家族が困っているから、苦しいから助けてと。これはある一面支援として必要なことですけれども、それよりもというかもっと重要なこととしては、私が家族支援を求めたいのは本人と家族との関係性のところなのです。家族は親の立場、子どもの立場、きょうだい、配偶者、いろいろな立場の方がいますけれども、家族はやはり愛情とか責任感とか偏見も絡んで、本当に複雑な心理状態の中で本人と生活を共にしている場合が多いわけです。そこを整理してクリアにしていかないと、本人の力が見えない状況の中で、かわいそうだからとか、こんな姿を世間に晒せないとかということで家族が抱え込んで地域の中で孤立しているということが今本当に多いのです。ここを解消するために、家族を支える仕組みというのをきちんとつくっていただいて、家族が本人の病気のことも理解しつつ、本人の持っている力のこともちゃんと理解できるような、家族に向けた支援が私はすごく重要だと思っています。いろいろな障害の方たちにも家族支援は必要だと思うのですけれども、特に精神にとっての家族支援というのは、御本人が御本人の人生を生きる上でもとても重要だと考えておりますので、在宅のことを考えるということで、ちょっと変わった視点になってしまいますけれども、そのことについてぜひ皆さんに知っていただきたいと思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございますか。10分までで打ち切れというので。
では、小阪構成員、よろしくお願いする。
○小阪構成員 ありがとうございます。日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪と申します。
当事者の立場から言葉を紡ぎたいと思っています。
まず、お三方のヒアリングはとても興味深く拝見いたしました。保健所の立場から本当に素直にここまで踏み込んで意見を言っていただけるのだなというぐらい意見を言っていただけたので、大変ありがたかったなと思っていますし、お三方が記載いただいた精神科外来医療機関に期待することなどが実現してくれたら、本当に当事者としては大変心強いなと思いました。私自身、この後の多分全体協議の場ですごく踏み込んだところを発言しようかなと思っているので、お三方が踏み込んで発言してくれたので、私も大変心強かったと思っています。
3点ありまして、まず一つがピアサポートの観点、長谷川先生からも御質問があったかもしれないですけれども、私としてはピアサポートの点はちょっと薄いなと思いました。精神科医療機関に期待することということが実現していない中でも、我々は地域生活を歩んでいるというのは事実ですので、僕らなりに工夫していることとかが絶対あるのですよね。それは当事者同士の知恵ということで、やはりピアサポートとして活用していくということも、今、整えられていない資源の中で生きていくという知恵を共有し合うということでは、ピアサポートもとても有効ではないかなと思っています。
それから、アウトリーチですね。北村先生だったと思いますけれども、現状の医療機関に求められても無理とはっきり言っていただけたのは僕はとてもよかったかなと思っているのです。無理な状況であって、どんなふうに知恵を出していこうかということを考えられるファーストステップかなと思っています。
3点目が身体科と精神科の連携の件です。これは当事者としては非常に不思議というか、何でなのだろうなと思うところがやはりあって、ぜひ医療の構成員の方に伺いたいのですけれども、なぜ精神科と身体科の連携というのはうまく進まないのでしょうか。これは厚労省に伺いたいのですけれども、北村構成員は体制の問題だと。社会・援護局と医政局で分かれている状況だということの御指摘があったかと思います。これについて事務局としてはどんなふうに受け止められているのか、この2点をお伺いしたいと思います。
○田辺座長 事務局のほうに御質問がございましたので、よろしくお願いします。
○小林精神・障害保健課長 体制につきましては、ありとあらゆる行政分野で複数の部局にまたがる場合に、どこの部局が所掌するかというのは非常に制度面でも難しいところがございます。例えば自治体では、精神保健を保健部局が所管するか、あるいは福祉部局で担当するのかといった論点があります。
そういった中で、すべからくの医療機関を対象とする医療法は医政局が所管し、精神保健福祉法については、かつては現在の健康局に該当する部局で所管していた時代もございますけれども、障害行政の一元化という流れの中で、現在では障害保健福祉部において精神保健福祉法を担っているという歴史的経緯もございます。医政で対応すれば全て解決するかというと、福祉施策との連携の点での課題も出るでしょうし、いずれにしても歴史的経緯も踏まえ幅広い視点で考えていく必要があるのではないかなと。個人的意見にもなりますけれども、そういう認識を持っているところでございます。
身体合併症の問題とか論点はたくさんございますけれども、次回以降に改めて議論を深めていっていただければと考えているところでございます。
○田辺座長 では、桐原構成員、お手が挙がっていたと。
○桐原構成員 議題(2)で大丈夫です。
○田辺座長 では、そちらに回して。
では、藤井構成員、よろしくお願いします。
○藤井構成員 ありがとうございます。国立精神・神経医療研究センターの藤井です。
3人の参考人の皆様、本当に御発表ありがとうございました。私も長らく保健所でありますとか保健センターとかで地域活動をしてまいりましたので、非常に共感するところが多くて、同時に医療機関に求められる役割というところも全く同意するところが多くありました。
3人の御発表の中でも共通しているところは結構あったなと思ったのですけれども、特に早めの支援を行うというところですね。アセスメントを含めて早めの支援を行って丁寧に相談をしていくということや、今、相談の内容的に非常に幅広い相談になってきていて、医療だけで何とかなるようなことだけではなくて、生活の支援でありますとか、様々な関係者が連携して対応していかなければいけないような相談事が増えているというようなところは結構共通のところだったかなと思います。
そのほかにも非常に共通する課題をたくさんお示しいただきましたけれども、そのようなことを考えると、資料2の10ページにありますかかりつけとしている精神科医療機関に求められる機能というところをしっかり発揮していかなくてはいけないのだなと改めて考えていたところです。
この資料2の10ページの図に関しては、前の前のこの検討会の中で話し合われた内容だったと思いますけれども、ここを今後どう実現していくのか、実装していくのかというのが結局は求められているところなのではないかと思ったのですけれども、このようなことをしていくのがいいのだということについてはかなりコンセンサスが得られているなとは感じています。ただ、それを実現していくには結構ハードルがあるということは、上田構成員からも診療所の実態ということでお話がありましたけれども、かなりハードルが高いという認識を私もしています。
すごく簡単に言えば、人とお金と全体の医療計画提供体制の計画をどうするかという3点に絞ってお話ができればなと思うのですけれども、人に関してはどこの自治体でも初診待ちの課題が語られたかと思います。やはり一人の精神科医が対応できる患者さんの数というのはどうしても限られていますし、丁寧に診療すればするほど、対応できる人数は当然に減ってしまうということで、そこのジレンマが生じてしまうというのはどこの自治体でも見られるということが再認識されたわけです。これは上田構成員もおっしゃっていましたけれども、結局、精神科医だけで対応できることというのは限られています。精神科医が対応しなくてはいけないことももちろんありますけれども、それ以外のところは、精神保健福祉士の方であったり、精神科の看護師の方であったり、心理士さんであったり、ほかの職種と一緒に対応することによって、人材、精神科医が絶対的に足りないというところを何とか対応していく。それは精神科医の代わりをするという意味ではなくて、そのような多職種での対応をするほうが結局は医療の質としても上がっていくということは言えると思います。ですので、適切なタスクシェアであるとか、一部は精神科医が行っていた業務をほかの職種にタスクシフトしていくというような観点で制度を設計していかないと、この人材不足というのは対応し切れないのではないかと考えます。
ただ、ちょっと悩ましいのは、精神保健福祉士の方に期待するところは非常に大きいのですけれども、聞くところによると、医療機関で精神保健福祉士を雇用しようとしても見つからないということです。これは自治体でも同じようなことが起こっていて、自治体で精神保健福祉士を募集しても応募がない。そのような人材がそもそも不足している、あるいは大学で精神保健福祉士の養成自体がされなくなってきているというような実態も聞いております。
その背景にどんなことがあるのかなと考えたときに、現状では精神保健福祉士の方だったりほかのコメディカルの方が業務を担ってよい医療を提供しても、それが評価されていない。評価というのは診療報酬の評価も含めて、評価が十分されていないというところで、やりがいを感じられなかったり、あるいは見合った報酬が得られないということが背景にあるのかもしれないなと考えていますので、そういうことも考えると、やはりコメディカルの皆さんがやりがいを持って業務に参加して、それを適切に評価していくというような方向性が必要なのではないかなと思います。
もう一つ、お金の話というのはなかなかこの場にはなじまないかもしれないのですけれども、とはいえ、やはり経営を成り立たせていかないといけないというのは当然医療機関として従業員に対しての責任もあるかと思いますので、重要なところだと思います。現状ではかかりつけの精神科医療機関に求められる機能を果たしたとしても、それに見合った収益が得られないというところは恐らく課題としてあると思います。実際に外来に関しては病棟のように人員配置基準が決まっているとかそういうわけではありませんので、それぞれの外来で必要性に応じて人を配置しているということになると思うのですけれども、コメディカルを配置しても、それに対して何らかのインセンティブがつかないということになりますと、配置しないほうが収益性としては高くなりますので、そこは医療機関の判断でなかなか経営的に厳しいということになると、多職種の外来配置というのは見送るというような選択肢になってしまうのは致し方ない部分も一部にはあるような気はしています。
ですので、そこはどのような形で対応していくのかというのは大きく2つあると私は思うのですけれども、診療報酬上の対応というのはもちろんあると思うのですが、精神科の診療だったり支援の中には診療報酬ではなじまないような支援やケアというものもあるかと思います。それに関しては、例えば補助金だったり自治体の行う事業の中で対応するとか、自治体から事業の委託を受けるとか、そのような半ば公的な医療として提供するというような方法があると思います。どのような診療機能が診療報酬上の評価に適していて、どのような診療機能が自治体の補助金のようなものあるいは事業で賄うのに適しているかというようなことを検討していくことが必要なのではないかなと思います。
最後に医療計画とか地域医療構想に関わるところですけれども、やはりこのようなかかりつけ精神科医療機関の機能というのを一つの医療機関で完結すること自体はとても無理なので、地域全体でどのような機能を持っていくかということを考えたときに、今後、精神も入っていく地域医療構想の中でその体制を考えるということが必要になってくるかと思いますし、先ほど北村構成員がおっしゃっていた拠点機能というものをどこの医療機関が担っていくのかということも含めて、地域全体の課題として考えていく。その中に、今なかなか理論に入りにくくなっている精神科診療所も例えば協会として持ち回りで議論に入っていただくとか、工夫していく必要があるのではないかなと思います。
あとは、地域の資源自体がないというところもあるかと思いますので、そのような場合にオンラインの活用をどうしていくのかということも含めて、例えば専門的な医療機関がない場合に、もっと広域でオンラインで診療をカバーするとか、様々な方法があると思いますけれども、ICTをいかに活用していくかという視点も含めて、全体の計画を自治体が医療機関と当事者や御家族の方も交えて話し合えるような仕組みが必要かなと考えます。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
時間をかなり超過していますので、ほかに御発言がないようでしたら、この議題(1)の1点目、外来・在宅医療提供体制については以上としたいと存じます。
○辻本構成員 すみません。意見がないわけではないので、時間がないのでというところで、今回の議事に関して、今後、意見を出せる場をいただけるとありがたいです。
○小林精神・障害保健課長 本日の議論を受けて、次回も引き続きこの議論を行っていただきたいと考えてございますので、今日時間の都合で発言できなかった先生は、次回また改めてお願いできればと考えてございます。
○田辺座長 ということで、誠に申し訳ございませんが、これで議論が収束したとはとても思えませんので、まだまだ続くということでございます。
ここに休憩を入れろと書いてあるのですけれども、それはすっ飛ばしまして続けたいと存じます。
では、次に議題(1)の2点目、オンライン診療について議論してまいりたいと存じます。
厚生労働科学研究「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築における情報通信機器を用いた精神療法の活用に向けた研究」において研究代表者をなさっております岸本参考人より御発表をお願いしたいと存じます。
では、よろしくお願いいたします。
○岸本参考人 慶應義塾大学医学部の岸本でございます。
本日はこのような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
私自身、オンライン診療に関するエビデンス構築に過去10年以上携わってきたこともございまして、本日は精神科領域オンライン診療のエビデンスとニーズについてお話しさせていただければと思います。
COIです。
精神科で行われるオンライン診療は、英語でTelepsychiatryといいます。当然全てとは申しませんけれども、私ども精神科の診療は患者さんと医師がお互いの顔を見ながらの会話で大部分が成り立ちますので、こうしたオンライン診療が非常になじみやすい診療科であるということが言えるかと思います。オンライン診療の一般的な有効性、医療過疎地等への医療提供に加えて、精神科領域の特有のニーズもあるのだと考えています。具体的には、パニック、PTSD等の患者様方が外出への非常に強い不安をお持ちになるケースが少なくないこと、鬱病あるいは統合失調症の患者さんらが外出が困難になるケースも少なくありません。そうした病状の経過の中でひきこもりの状態に至ってしまい、なかなか医療に受診されない、することができない患者さんも数多くいらっしゃいます。これは精神科医としては残念なことですけれども、スティグマも残念ながら強いものがあって、患者さん方が精神科の病院あるいは診療所に受診しにくい、人目を気にして受診が遠のいてしまう。そういったケースも少なくなく、そうしたアンメットニーズに対してオンライン診療は非常に有効な治療提供手段になり得ると考えています。
様々なエビデンス構築を行ってきたというお話をさせていただきましたけれども、以下、まず診断・重症度評価に関するエビデンスについて簡単に御紹介したいと思います。
こちらはビデオ会議システムを使いながら認知機能検査を行っている様子をビデオでお示ししています。特別なことでも何でもないのですが、こういうふうに遠隔地にいる評価者が患者さんとお話をしながら検査を進めている様子をビデオで提示しております。
対面であれば、紙に印刷したこうしたものを見せて、この動物は何ですかとお伺いするところ、それをスライド提示にするといった若干の工夫は必要ですけれども、基本的には同じように検査を行います。
患者さんには実は2回同じ検査を一回は対面で、そして、一回は遠隔で受けていただいて、その2回の検査の結果が一致していたかどうかということを検討しています。Intraclass correlation、級内相関係数といいますが、0.85という非常に高い一致度を認めることができて、認知機能検査において対面とオンライン診療の高い評価一致度を証明することができました。
類似のケースで、今度は小児の神経発達障害のお子さん方に対する遠隔の評価の検討も行っています。これはつい先週の3月3日の日経新聞でも取り上げていただきました。というのも、小児の精神科医療に携わっている先生方で提供できる方がかなり限られていること、ものすごく長い待ち時間があって、そうしたニーズに対してこうしたオンライン診療への期待を寄せていただいたものと思います。
同様の検証を行いまして、小児ADHDにおいて対面とオンライン診療の高い評価一致度を証明することができて、これも論文報告を行っております。
治療に関するエビデンスに関しては、日本医療研究開発機構から大きな支援をいただきまして行われました非劣性試験を紹介したいと思います。私ども、J-PROTECTという名前をつけてこのスタディーに取り組んでまいりました。
J-PROTECTの研究目的です。後ほどお話ししますけれども、実は精神科オンライン診療のエビデンスは世界的にかなり蓄積されています。ただ、プラグラマティック試験と言いますけれども、実臨床、臨床現場で行われるタイプのエビデンスはそこまでなかったことから、重要な位置を占めるプロジェクトではなかったかと思っています。
加えて、精神科の治療はどうしても患者さん方と長いお付き合いになることが多いのですけれども、長期の治療効果の検討を行ったものがまだ限られていたこと、そして、今どきのオンライン診療は患者さん方が御自身のスマホを使って御自宅からアクセスされます。今どきの、現代型の自宅-病院間をスマートフォン等でつなぐ遠隔医療の検証は実は世界的にもまだ珍しく、そうした意味合いからこうしたプロジェクトの試験を行いました。
日本では、これは新型コロナウイルス感染拡大時に行われた試験でしたけれども、そうしたときの治療手段としてこうしたエビデンスの確立は急務となっておりましたし、精神科領域に限らず、日本の医療環境におけるオンライン診療の治療線治療の有効性の検証はまだ十分にできていなかったことから、そうした背景を持ってこのJ-PROTECTに取り組んできたわけです。
J-PROTECTの研究概念図をこちらにお示ししています。外来通院患者さん大体200名を対象に、鬱病、不安症、強迫症の患者さん方をオンライン診療併用群と対面診療群に1対1の割り付けを行って、その後の約半年、24週間の治療効果を検討いたしました。
グループ全体の評価項目としてSF36MCS、これはQOLの評価尺度のうち、精神症状にフォーカスを当てたものなのですけれども、そうしたもので検討を行っています。そのほか、治療継続率、治療の同盟、患者さんとお医者さんが共通の目標に向かってどのぐらい結びつきがあるか。そうした面からの検討を行っていると同時に、それぞれの疾患のゴールドスタンダードの評価尺度として使われるようなレーティングスケールのスコアも検討しています。
オンライン診療併用群と呼んでいるのは、現在の日本の指針に従って、オンライン診療だけではなくて対面診療を時には混ぜるということで、オンライン診療をうまく併用しながら使っていく群としておりました。
対面診療群というのは、対面診療を100%行う群ということで割り付けを行っています。
実は、こうした検討はスタディーのデザインだけ、プロトコルだけを論文化して、それを海外の査読者にも見てもらっていろいろな意見をいただきます。余談ですけれども、このスタディーデザインを説明した論文で、パンデミック中の対面診療100%というのは非倫理的ではないかという指摘を世界の研究者から受けていたこともぜひ皆様には御理解いただく必要があるのではないかなと思っています。
研究体制図をお示ししています。大学病院だけではなくて、これはプラグマティックトライアル、臨床現場に基づく研究でした。精神科病院の先生方、精神科の診療所の先生方、総合病院の精神科の診療を担っていらっしゃる先生方に、非常にお忙しい臨床の合間を縫ってこの研究にも御参加いただき、御協力いただきました。
コロナパンデミック中のリクルート、患者さん方を集めていくことで、これも困難を極めましたけれども、患者さん方の非常に強いサポートがあって、この研究を無事成し遂げることができたわけです。
以下のスライドでその結果をお示ししてまいります。
試験には鬱病、不安症、強迫症の患者さん方199名が参加されました。
オンライン診療併用群は、最低でもオンライン診療を50%使ってほしいというお願いをしていましたけれども、結果的には診療のビジットに対して77%の利用をしていただきました。
試験には40歳前後の患者さんが参加され、そして、これがメインのアウトカム、結果ですが、主要評価項目である24週後のSF36MCS(精神的側面のQOLサマリースコア)において、オンライン診療併用群は対面診療に劣らないことが証明できました。非劣性マージンと言いますけれども、試験が始まる前にマイナス5点よりも下回っていなければ非劣性、劣っていなかったという証明にしましょうというルールを決めて試験を行っています。結果、数字の上ではオンライン診療併用群のほうが若干上回っていました。様々な副次アウトカム、それ以外の結果、治療同盟、患者さん方の満足度等において、オンライン診療と対面診療群での差は認められませんでした。
当然かもしれませんが、オンライン診療併用群に割り付けられた患者さん方の通院時間が短く、そして、通院費用が安かったことも証明されました。
そして、試験に参加されていた患者さん方、オンライン診療に関わる、関わらないに関係なく、とにかく何等かのネガティブな事象、有害事象を報告していただいています。両群に差はなく、有害事象といいましても、腹痛、筋骨格系の疾患等、オンライン診療とは直接関係がない報告があったのみで、問題になるような有害事象は見当たりませんでした。
J-PROTECTでは患者さん方から直接のアンケートもお願いしていました。様々な御意見を寄せていただいておりまして、基本的にはオンライン診療に対して非常にポジティブなコメントを多くいただいたものと思っています。当然ながら、利便性を歓迎する声も聞かれました。病院への移動時間、病院での待ち時間がなくてうれしかった。
ただ、私もこうしたアンケートを見て改めて反省もしたのですけれども、患者さん方が通院に関して非常に大きな犠牲を払って来てくださっていたこと、仕事を休んでいらっしゃった、あるいは小さなお子さんがいてどこかに預けて受診をされていたとか、あるいは通院の手間から通院をやめてしまって再発してしまわれた。こういうようなエピソードも聞かせていただいています。
あとは、待合室の時間が非常に緊張を強いられるもので、それから解放されたことは非常にありがたかったという声もいただいています。医療機関が身近な存在になるという安心感、対面との差はほとんどないと感じたということ、そして、スティグマですけれども、研究に参加したのは自分のためではありません。人目を気にし、受診を拒み、悪化するような場合があるから、変な目で見られたり差別のような態度を取られたりするのは怖いものであると。精神科へ行くハードルが低くなり、助かる方も多くいらっしゃるのではないかという声を寄せていただいております。
私たちは、J-PROTECTのみならず、様々な観点からエビデンスの検討を行っておりますけれども、これは世界中から類似の対面と遠隔を比較した研究を集めてきて統計学的に合算して検討するメタ解析という手法で、32本の対面とオンライン診療を比較した試験のまとめた結果を示しています。結果、オンライン診療と対面診療の治療効果に差がなかったと。実は、鬱病の治療に関してはオンライン診療が若干勝っているのですけれども、これはどうしてかよく分かりませんが、そんな結果を報告しております。
そんな中で、令和6年度診療報酬改定でいよいよ通院精神療法に係る評価も前向きにしていただいて、これ自体は私自身は非常に歓迎しておりますが、とはいえ、これを適用できる医療機関が非常に限られていることなどから、なかなか普及の促進には至っていません。こうしたオンライン診療を使って遠くから通っていらっしゃった患者さん方に何とか提供していきたいと考えていらっしゃった先生方からは、失望の声も聞かせていただいております。
同時に、冒頭で事務局からも御紹介がありましたけれども、閣議決定の中でオンライン診療をしっかり使いやすくしていくのだという方針は示されておりまして、具体的にどうしたケースでよりニーズが高いのか、必要性が高いのか、有効性が高いのかということを検討していく必要があったと思います。
これも事務局から御紹介いただいたとおりで、私ども厚労科研の中で「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築における情報通信機器を用いた精神療法の活用に向けた研究」と題しまして、こうした活動を行っております。
以下のスライドはちょっと文字が多いものですから、かいつまんで赤い部分だけ読みながら御紹介してまいりたいと思います。
目的ですけれども、情報通信機器を効果的に活用しながら、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進していくため。言い換えれば、適切な正しいオンライン診療の普及促進を推進できるようなことがこの研究課題を通じてできればいいのではないかと思います。
具体的には、医療機関、患者さん、そして、自治体等へのヒアリングを通じた好事例の収集を行っております。そして、来年度にかけては適切なオンライン精神療法の実施につながる手引書を策定していきたいと考えております。
今までは、今年度はまず1年目としてこうした好事例の収集を行ってまいりました。本日は中間報告としてその好事例の紹介をしていきたいと思います。
今までに5つの医療機関から、これは初診をある意味想定してですけれども、医師と患者がファーストコンタクトをオンラインで行った症例27例の蓄積を行ってきております。本人のみの受診が一番多くて10例、疾患の内訳に関しては以下にお示ししたとおりです。
ケース1、若い男性の社交不安の患者さんです。小学校4年ぐらいからの不登校、身体化症状の持続が強く、近医の受診も困難なほどの外出困難であったケースです。子どもの精神症状を診察できる施設を探していた中、無事オンライン診療につながりまして、定期的な診療につながっているようなケースです。
こちらは30代の女性のケースですけれども、近医を受診したが、信頼関係を残念ながら構築することができず、治療を中断していたケースです。近隣に成人の発達障害を診療可能な施設がなかった。それから、近隣の医療機関への受診をこの方は避けたいと考えていらっしゃった。そうしたニーズに対してオンライン診療が非常に役立ったというケースです。
こちらは40歳半ばの男性、独り暮らしになっていらっしゃる方ですけれども、不眠・体調不良を来し退職。退職後も不眠・生活リズムの乱れが顕著で、保健師から再三医療機関の受診を勧められていた。ところが、なかなか受診に至っていなかったケースに対して、オンライン診療であればということで本人の同意が得られたために受診に至ったケース。この方は遠隔でスタートして、オンラインで対応した医師が勤務する医療機関を実際に対面でも受診されるようになったというような好事例です。
こちらは同じく10代の男性、自閉症、ADHD、鬱病を抱えていらっしゃる患者さんですけれども、御本人が医療機関受診に対して若干否定的な思いを持っていらっしゃった。そんな中で、オンライン受診であればということで受診につながったケースです。無事にこれも医療につながりまして、現在の診療所での診療を一旦は継続するものの、大人が診られる医療機関へどこかでバトンタッチしていきたいというような方針が示されているようです。
こちらは大変高齢の女性、離島で生活していらっしゃる患者さんです。離島の中で医療機関が唯一あるところで、通院はなさっているようですけれども、精神科薬は診療の専門外であるとなかなか使い方も難しいわけですけれども、そうした状況の中で当該の精神科をオンラインで受診したというようなケースです。薬剤調整を精神科専門医の下で行うことができ、一旦終診となり、今までの先生に継続してかかっていらっしゃるというケースです。
このほかにも、本日の議論にも何度も出てきましたけれども、自宅の比較的近くに診療所があっても受診までに非常に時間がかかるケース、3か月待ちはざらにありますし、時には小児のケースだと6か月ぐらいという話も決して珍しくありません。オンライン診療をうまく活用することで早期の受診につながって、比較的早い社会復帰を果たしたという話も聞いておりますし、長年のひきこもりに至っている方、なかなか信頼できるお医者さんに巡り会えなかったけれども、オンライン診療でとうとうその方にとっての良い先生に巡り会えて、その結果、社会復帰を果たしたケースなどの報告もいただいています。
一方で、非常に残念なことなのですけれども、オンライン診療の不適切事例も時々耳にしています。これはGLP-1受容体アゴニストという糖尿を抱えていらっしゃる肥満の患者さんに対して本来使うべきだった薬が、やせ目的に安易に処方されているということについての話題提供を私たちが行ったものですけれども、これに限らず、精神科領域ではいわゆる診断書専門クリニックであったり、安易に睡眠薬を処方するクリニックが出てきているのも事実で、非常に頭の痛い状況かと思います。
まとめを最後にお伝えさせていただきます。
まず、幾つかエビデンスを御紹介させていただきました。エビデンスは対面診療同等の診断精度、そして、対面診療に劣らない治療効果が示されています。対面での重症度評価と高い一致度が複数の疾患で示されていますし、J-PROTECT試験では対面治療に劣らない治療効果がオンライン診療でも発揮されました。J-PROTECT試験での有害事象はほとんどありませんでした。
患者さんにとってはオンライン診療は非常に大きなメリットになると思います。J-PROTECT試験の自由アンケートより通院の負担の軽減、スティグマ等にも大きな効果があることが示されていますし、好事例の蓄積から離島・僻地の患者さん、病状から生じる通院困難例・ひきこもり例、それから、近隣の医療機関への早期受診が困難だったケースなどで非常に大きな有効性を発揮したことが確認されています。
一方で、好事例の収集です。選択バイアスといいますか、すごくうまくいったケースだけを抽出している可能性は十分あると思います。
一方で、臨床研究をされたことがある先生方はよくお分かりかと思いますけれども、初診に関しての臨床研究はほぼ無理です。こうした好事例を集めていく中で、どうした医療が本来望まれているのかということを我々は検討していく必要があるのだと私自身は感じています。
一方で、研究グループ外で不適切な事例が散見されているのは悲しい現状かと思います。
今後の利活用・普及促進に向けての私見ですけれども、とにかく患者さんのニーズは非常に高いと思います。不適切な診療行為がございますけれども、オンライン診療そのものが及ぼした副作用というよりは、むしろそれを提供する側の医師の倫理観の欠如等によるものだと思います。こうした問題がもとで患者さん方に本来届けられる医療が届けられていない、患者さん方が不利益を被るのはいかがなものかと思います。
そして、今後、特に地方においては病院は集約化の方向だと思います。既に精神科の専門医が不足しているという話は今までもよく聞いてきましたけれども、特に小児の精神科などサブスペシャリティーレベルになると、状況は深刻で、これを全国各地で均てん化していくというのは全く無理な話だと思っています。そうした状況に対してオンライン診療は本来すごい力を発揮する有効な手段だと考えます。
ということで、初診・再診において、患者さん、そして、医療機関双方にとってオンライン診療を活用しやすい措置をぜひ取っていただきたいと考えております。
以上です。御清聴ありがとうございました。
○田辺座長 岸本参考人、御発表ありがとうございました。
では、ただいまの発表につきまして、構成員の皆様方から御意見、御質問等があれば伺いたいと存じます。
その前に、「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」の作成に関わりました長島参考人のほうから御意見を賜れればと思います。
○長島参考人 日本医師会常任理事の長島でございます。
日本医師会では医療DX全般を担当しており、オンライン診療の指針及び精神科領域の指針に関しても作成に関わらせていただきました。その観点から意見を述べさせていただきます。
オンライン診療に対する基本姿勢として、医学的な有効性・必要性、特に安全性が最優先されるべきであり、これらが担保されたものは推進すべきであるが、利便性や効率性のみを重視した安易な拡大はすべきではないと考えています。安易な拡大は不適切・不十分な診療につながりやすく、その結果、患者と医療者に不安や不信が生じれば、普及に対して最大のブレーキとなります。また、医療においては、一旦何か問題が生じた場合は取り返しがつかないという特性があります。したがって、有効性と特に安全性を確保し、着実に広げていく。その結果、安心と信頼が高まることこそがオンライン診療の最大の普及策となります。
安全性についての懸念点に関しては、具体的なデータとして、私も委員として参加している中医協においてオンライン診療について検討した令和5年11月8日と12月15日の資料から少し紹介いたします。これはオンライン精神療法ではなくて、オンライン診療全体についての調査の結果です。
まず、オンライン診療の指針において最低限遵守すべき事項として、初診の場合には麻薬及び向精神薬の処方は行わないとなっているにもかかわらず、初診から向精神薬が処方されている例が実態として示されました。
さらに、最低限遵守すべき事項として、患者の急病・急変時には適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関等にて直接の対面診療を行う体制を整備すべきとなっています。ところが、資料によれば、患者と医療機関の所在が一定以上異なっていて、東京都に所在する医療機関でオンライン診療の実態を調べたところ、8.9%の患者が関東以外、例えば北海道、九州、沖縄、中国、四国などでした。このような状況で直接の対面診療の体制が整っているか、大いに心配されるところです。
そして、この関東圏以外に所在する患者を対象としたオンライン診療の最も多い病名が不眠症でした。また、オンライン診療が全診療の5割を超える医療機関におけるオンライン診療においては、不眠症が病名として初診では20.4%で3番目、再診療では39.7%で最多でした。
一方、患者側の調査です。令和4年度の入院・外来医療等における実態調査で、外来患者に対する調査によれば、オンライン診療の受診経験がある患者さんがオンライン診療を受けた感想として、「対面診療であればすぐに受けられる検査や処置が受けられないと感じた」が38.4%、「対面診療と比べて十分な診療を受けられないと感じた」が20.5%でした。同じ実態調査でインターネット調査によれば、オンライン診療を受けた際に感じたこととして、やはり「対面診療と比べて十分な診察を受けられないと感じた」が63.6%、「対面診療であればすぐに受けられる検査や処置が受けられないと感じた」が56.1%、「対面診療と比べて十分なコミュニケーションを取れないと感じた」が50%でした。
したがって、これらの結果を踏まえても、安易な拡大はすべきではないと考えております。
一方、日本における精神科領域におけるオンライン診療、特に初診についてはまだまだ少数の検討しかされておりませんので、仮にその中で医学的な有効性・必要性・安全性が認められたとしても、日本全国では患者さんや医療提供体制の状況が千差万別ですので、とてもまだ一般化することはできない状況、しっかりとしたエビデンスはないと考えています。
したがって、もしも仮に精神科領域におけるオンライン診療の対象を初診にも拡大する場合は、まずは慎重に試行的に行うべきであると考えます。そこでは、まず安全性が十分担保できる環境を整えて、有効性や必要性が認められた場合にのみ行う。その場合、対象となる患者さんは、まさに地域包括ケアの仕組みの中で自治体やその地域の医療機関、多職種の密接な連携がしっかりできている方が妥当と考えますし、医療機関や医師には十分な経験や実績が求められるものと考えます。
また、令和6年度診療報酬改定で新しく導入された情報通信機器を用いた通信精神療法の実態について、まだまだ調査も分析もされておりませんので、ここのところの十分な調査分析を行って、それを踏まえた上で今後の対応を考えるべきと思っております。
有効性と特に安全性を確保し、検証を重ねながら、丁寧に着実に進めていくことこそがオンライン診療の最大の普及策になると考えております。
私からは以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、皆様方から御意見等がございましたら、お願いいたします。
では、桐原構成員、よろしくお願いします。
○桐原構成員 全国「精神病」者集団の桐原です。
にも包括の外来の件とオンライン診療の件をまとめて言います。
オンライン診療について、京都府を例に出しながら話をします。京都府の北部は精神科医療機関が少なくて、公共交通機関も限られているため、多くの人は自家用車で通院するほかありません。患者自身は処方薬との関係で乗用車の運転をできない場合などがあります。その場合、親族による送り迎えに依拠するほかなくなります。親族は通院のためにわざわざ職場からの休日を取って送り迎えをしています。これは家族にとっては非常に負担が著しいです。
オンラインは、過疎地において救急対応が必要な場合などでも医師の判断を迅速に取りつけることができます。また、それ以上に移動の負担を負うことなく定期的な診療がしやすくなるので安心できますし、クライシス状態になる手前の段階でクライシスを回避できるという事例も少なくないと感じています。オンラインでは、時間帯の拘束を受けにくく、生活している日常に近い空間において状態を診察できることなどの利点があります。
対面が有効な場合があることは間違いないですが、対面が勝るというわけではないです。新規で外来を受診する場合、先ほどの参考人の報告にもありましたが、1か月から6か月程度待たされるということがあります。この期間中に自殺した仲間もいます。一方で、オンライン診療によって待たずに診察できたという声も聞いています。その意味で、初診の対面診療の推奨はすべきではなく、また、精神保健指定医であることをオンライン診療の要件にするようなことはあってはならないと思っています。これが当事者の意見です。
オンライン診療のリスクを懸念する声について述べます。オンライン診療において向精神薬を無造作に処方する医療機関、業者の台頭を憂慮する意見があります。しかし、その懸念は何もオンラインに限ったものではありません。対面診療においても同様の問題が起きています。そのため、にも包括の外来医療体制との関係を踏まえて、対面とオンラインの双方に当てはまる懸念については、片方ずつ検討するのではなく、同時に検討する必要があると考えます。
流れで、にも包括の外来機能と向精神薬のことについて述べます。精神障害当事者から見た向精神薬の評価は実に様々です。薬は効果がないので意味がないという意見や向精神薬の処方が必要ない人にまで処方されているという意見、それから、薬による健康被害が深刻であるという意見、自分には向精神薬の服用が必要だという意見などがあります。
全国「精神病」者集団の主張は、こういった意見とは異なって、むしろ薬は効くことに問題があるという立場を取っています。重度の精神障害者の社会的包摂とは、病状が悪くても人々の助けを借りながら生きていける状態のことなので、病状を治して初めて社会に受け入れられる状態を良しとしていません。病状がよくなった状態とは誰にとってよい状態なのか、これを問う必要があります。患者本人ではなく社会にとってよい状態なのだとしたら、必然的に社会防衛的な意味合いを持ちます。本人にとってよい状態というわけではないのなら、それをよい状態と言うべきではないです。その意味で、多剤投与や大量処方の問題もさることながら、向精神薬それ自体の問題も大きいと思います。
身体合併症についても述べます。精神疾患と身体疾患の合併症の人が精神科病院において長期入院を強いられている事例というのが散見されます。虐待事件が報じられた旧滝山病院、現在希望の丘八王子病院も合併症の方の長期入院が背景にあるわけなのですが、当該病院に限らず、入院中心ではない医療提供や支援体制があるはずだと確信を持っています。そういう意味で、外来精神科と身体科の連携が進めば、そのような長期入院者の地域移行が進みますし、地域移行後も地域で必要な医療を受けながら生活しやすくなると思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
では、小阪構成員、よろしくお願いします。
○小阪構成員 ありがとうございます。日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪と申します。
当事者の立場から言葉を紡ぎたいと思います。
事前に事務局に意見を申し上げたいことと質問したいことをお伝えしていて、全体共有の時間があると聞いていたのですけれども、それがなくなったということで、この時間に発言させていただければと思います。御容赦いただければと思います。
本日、構成員の皆さんに机上配付されております「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」について、平成26年に適用された指針ということですが、患者当事者の立場からは非常に共感を覚える指針であると改めて思います。本指針をつくられた当時の北島智子課長に、改めて当事者の立場から謝辞を述べたいと思います。
また、当該指針の特に基本的考え方に示されていることについてはとても重要なことだと思いますし、本検討会としてもきちんと承知しておくべきことだと思います。
「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供とは」ですが、まず外来診療について、私たちとしては例えば以降のようなことをその一部として想起しています。「いまだ十分ではないインフォームドコンセントの徹底を図ること。また、精神というその人の人格を形成する部分に触れる医療であることの重要性を鑑み、患者本位の医療の実現に努めること。その上で、精神科医のみならず、精神科医療に従事する全ての職種は、患者個人の病状等の緩和や寛解にのみ着目するのではなく、社会との関係性を加味した支えを形成すること。患者さんが必要としている対話の時間については、病院、診療所ともに精神科医だけで対応するのではなく、精神科医療に従事する全ての職種で補い合い、その時間と質を担保すること。」
そこで、2点質問させていただきたいと思います。1点目は精神医療関係者の構成員の方々にお伺いしたいことになります。2点目は事務局である厚生労働省にお伺いしたいことになります。
まず1点目ですが、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける医療提供体制ということで、基本、地域で在宅で支えることを念頭に置いてですが、外来患者約580万人の多くが利用していると推察される現状の通院精神療法の30分未満を想定したときに、誤りがあれば訂正いただきたいのですが、診療報酬としては315点だと認識しています。精神医療関係者の構成員の先生方にぜひお伺いしたいのですが、この診療報酬を土台として、指針に示されているような良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供は、病院や診療所の立場から現実的に提供可能なものでしょうか。つまり、患者当事者の立場からは、指針に示されているような良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を地域で当たり前に受けたいわけですし、精神障害者本位の医療を実現していただきたいと思っているわけですが、診療報酬上の構造としてもそれは可能になっていますかということを患者当事者の立場から端的にお伺いしたいという趣旨になります。
これは個人的意見ですが、5分の診察と15分あるいは20分等の診察ではかなりの差が出ると思っています。長ければよいということを申し上げたいわけではないですが、地域で暮らすということを主眼に置いたときに、患者さん一人一人に合った適切な診療時間は確保していただきたいと思っていますので、30分未満、一律315点で問題ないでしょうかということを併せて教えていただければと思います。
また、2点目として、事務局である厚生労働省にお伺いいたします。私たちが精神の病気や障害があっても自分らしく地域で暮らしていくために、様々な政策や社会資源が整備されていることについては改めて感謝申し上げます。中でも精神科医療、特に日常的に受けることになる外来診療が良質で適切なものになっていなければならないということは、改めて御説明するまでもないことと思います。
その上でお伺いしたいのですが、厚生労働省として、通院精神療法を算定できない5分未満のいわゆる3分診療や1分診療などと称されるような短時間診療を行っている医療機関等が地域の実態としてあることは、これまでお聞きになったことはありますでしょうか。加えて、その実態把握を試みたことはありますでしょうか。ある場合はその情報を公開していただきたいですし、ない場合、改めて調査を実施し、是正に取り組む必要性について、良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するためという観点、また、精神障害者本位の医療の実現という観点、そして、本日の議題でもある精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの医療提供体制という観点から、どのようにお考えになられますでしょうか。
以上2点について、もしお時間が許せばお答えいただきたいと思っています。
○田辺座長 では、事務局のほうからいかがでしょうか。
○小林精神・障害保健課長 事務局でございます。
お時間があればということでございますけれども、本当に申し訳ございません。今日この後の残りの時間はオンラインの議論に充てたいと考えてございまして、次回対応させていただければと考えてございます。構成員の先生に対する質問もございましたけれども、構成員の先生におかれても、よろしければ次回に回答いただければと考えてございます。
○田辺座長 では、次回以降、準備をお願いいたします。
ほかはいかがでございましょうか。
では、池原構成員、よろしくお願いします。
○池原構成員 御説明いただいた資料で、対象の患者さんというのがオンライン診療併用群と対面診療群で、端的に言うと統合失調症は入っていないように見えますが、これは何か特別な理由があるのですか。
○岸本参考人 ありがとうございます。
これはもちろん含めたいという気持ちは持っていたのですけれども、こうした臨床研究をデザインする上で、どう治療の効果を見にいくかということを考えるわけですが、評価軸が疾患ごとによって大分異なってきてしまうために、我々も与えられた時間、そして、研究費の中である程度ターゲットを絞っていくしかなかった。特にこれはコロナ禍で行われた研究でしたけれども、コロナで全ての患者さんは影響を受けたとは思うのですが、より影響を受けたであろうと当時考えた鬱病、不安症の患者さん、加えて強迫症の患者さんをターゲットにしていたということです。他意はないのですけれども、そういった限られたリソース、時間の中で一番効果発揮できるであろうというところに絞ったという経緯がございます。
○田辺座長 オンラインでお手が挙がっていますけれども、長谷川構成員、よろしくお願いします。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
岸本参考人、すごく可能性の広がるいいお話をありがとうございます。
一方で、長島参考人がおっしゃられたように安全性とか質の担保というのは非常に大事だと思っていて、ただ、岸本先生がなされた研究で実は質の担保が一つできるのではないかと考えています。
1つ質問なのですけれども、危機的な状況ですね。例えば極端な場合は希死念慮とかですね。そういう場合があったのでしょうか。もし緊急でなかったとしても、その対策ですね。何かお考えはありますでしょうか。岸本参考人、お願いいたします。
○岸本参考人 ありがとうございます。重要な質問かと思います。
今日、患者さんが早く医療機関にかかれることが重要なのではないかという御意見を何回か伺ったように思っています。むしろオンライン診療はそちらにこそ強い効果を発揮し得るのかなとは考えております。
あと、危機的な状況、特に非常に強い希死念慮を持っていらっしゃるような状況において、我々がこのオンライン診療の研究を行った時点では、そうした患者さんは残念ながら今回の研究に入っていただかないことにしようという取り決めを行っていました。というのも、そうした状況での安全性が完全に確保できない状況の中で研究に入っていただくというのは、倫理的に非常に高いハードルがございまして、そういった状況もあってそのような判断をしたということです。また、必ずしも症状の進行が思わしくないときに速やかに対面診療ができるような状況をある程度整えて、患者さんとはいざとなったら多くの場合当院、オンライン診療を提供していた病院にかかれるような体制を整えて研究を行っておりました。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
○長谷川構成員 はい。ありがとうございます。
○田辺座長 では、神庭構成員、よろしくお願いします。
○神庭構成員 神庭です。
岸本先生、ありがとうございました。僕はあらかじめ開示しておきますと、先生の研究はAMEDのPSとして伴走支援していましたので、非常に精緻で価値のある研究をされたなというのは常々感じていたところでございますので、まずそれをお断りしておいた上で、オンラインと対面で診療時間には差はなかったのでしたか。つまり、オンラインのほうが診療時間が多ければ、それだけ効果が出ていた。それはオンラインによるものなくて、診療時間の違いだという話になるのだけれども、それを確認させていただきたいという点。
それから、先ほど長島先生がおっしゃった、オンラインをいきなり全て解禁というわけにはいかないと思うのですけれども、オンラインの利点を生かすためにはどういうような始め方があるのかを検討する。オンラインが持っている性質上、これが向かない場面というのはあるだろうと思うのです。しかし、その向かない場面にも徹底的に向かないのか、あるいは体制さえ整えば使えるのかを検討する。そういうふうな分け方でオンラインの導入を考えていく必要があるのではないかと思いました。いかがでしょうか。
○岸本参考人 ありがとうございます。
まず診療時間に関しては、我々もアンケートベースで治療を提供していた医療者に対してのアンケートを行っていまして、すみません。しっかりは覚えていないのですけれども、恐らく差がなかったと記憶しています。
一方で、実際の研究を離れて、一般の医療の現場の中ではある意味時間を確保して提供していらっしゃるところは少なくないように聞いています。そういった状況の中でこの時間をしっかり使って診療をしましょうという枠組みがオンライン診療は案外つくりやすいところがあるのかなとは感じています。
それから、どういった疾患に向くのか向かないのか、あるいはどういうふうな体制が望ましいかということに関しては、あくまでJ-PROTECT試験はある程度限られた患者さん、急性期の治療を終えた、亜急性期以降と我々は呼んでいましたけれども、症状が落ち着きつつある患者さんを対象にしていた試験ですので、そこから得られる知見はどうしても限られております。ただ、参加された多くの医療者、そして、オンライン診療を担当していらっしゃる先生方から、明らかに向かないケースというのはあまり思いつかないとは正直聞いております。
一方で、今もお話にありましたけれども、危機的な介入が必要なケースは、我々、何かというときに手が届かないところにいらっしゃる患者さんというのは、診療を行う上でもそういう意味での不安感はあります。そこはまさに地域の実際にそこにいらっしゃる医療者とうまくつながる。あるいはオンライン診療を提供する先生自体もその地域のことをよく知っていらっしゃる必要があると思っています。地域の医療の中でニーズに応える形での提供というのが望ましいのではないかなと思います。
どういったルールで進めるか、いきなり初診の完全な解禁は確かにないのだと思っています。いろいろな不適切事例は私も本当に胸を痛めていますけれども、これを抑えながら、本来の善意のオンライン診療を届けたいと思っていらっしゃる先生方は本当に全国にいらっしゃって、その先生方がしっかりそれを届けやすい状況、ネガティブなものを抑えてポジティブなものを伸ばしていくためにどういった処方箋がいいのか、私も正直悩んでます。やはり不適切事例はいち早くキャッチしていただいて、そこをたたきにいく必要があるのではないかと正直思っています。一方で、現状、保険診療がある程度抑えられた状況の中で、不適切事例は自費診療を主体にやっているケースが少なくなくて、保険診療をたたいたところで、実際は全然ブレーキになっていないという現実がある。むしろ善意で普通の患者さん方に届けたいと思っていらっしゃる先生方の手足がもがれているような状況で、ちょっと違うやり方が必要なのではないか。私自身が具体的なアイデアを持っているわけではないのですけれども、じくじたる思いで状況を見ております。
○神庭構成員 諸外国の状況というのをもう少し情報を集められたらいいのではないですか。例えば国際学会のコミッティーから情報を入手するとか。
○岸本参考人 国によっても大分活用には差があると思っています。コロナ禍においては非常に多くの国が積極的に規制緩和を行っていて、それをまたコロナ後にある程度引き戻しているケースは少なくなくて、例えば初診に関してはやはり対面を原則にする国もあれば、そこはいいのだけれども、時々対面を混ぜるように要請しているところがあったりしますので、それは確かに参考にしていければいいのではないかなと思います。多くのケースにおいて、オンライン診療はやはり患者さん寄り、特に医療のアクセスが非常に制限されている地域においては非常に有効な手段になっていて、それが多くの国でも継続して使われている主な理由になっているようです。
○神庭構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
では、この件に関しても、本日の議論は終了としたいと存じます。
本日ヒアリングにお越しいただきました岸本参考人、長島参考人におかれましては、貴重なお話をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
では、最後に事務局から何か連絡事項はございますでしょうか。
○新平課長補佐 本日はありがとうございました。
次回の予定ですけれども、構成員の皆様方と日程調整の上、改めて御案内をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、本日は時間のゲートキープを失敗いたしまして、長時間かかってしまいましたけれども、実りのある議論ができたと思っております。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、これで散会といたします。どうも御参集ありがとうございました。