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第10回薬剤耐性(AMR)に関する小委員会
健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課
日時
令和7年2月26日(水)13:00~15:00
場所
新橋ビジネスフォーラム(8階)
議題
(1)薬剤耐性(AMR)アクションプランの進捗について
(2)薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症の名称及び届出基準の変更について
(2)薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症の名称及び届出基準の変更について
議事
- ○時岡補佐 ただいまから、第10回「厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会」を開催します。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙にもかかわらず御出席いただき、誠にありがとうございます。
私、本日議事進行を務めさせていただきます感染症対策部感染症対策課の時岡と申します。よろしくお願いいたします。
本日の議事は公開となります。
傍聴の方は、「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので、御留意ください。
本日はウェブ会議で開催することとしております。
まず、ウェブ会議を開催するに当たり、会議の進め方について御連絡させていただきます。
御発言される場合は、まず挙手機能を用いて挙手していただくか、チャットに発言される旨のコメントを記載していただき、委員長から御指名されてから御発言をお願いいたします。
なお、ウェブ会議ですのでタイムラグが生じますが、御了解願います。
会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしている番号までお電話をお願いいたします。
続きまして、委員の出欠状況について御報告いたします。
御出席の委員につきましては、通信の確認も踏まえて、委員のお名前をこちらから申し上げますので、一言お返事をいただければと思います。
五十音順に、浅井委員、荒川委員、伊藤委員、大曲委員、川名委員、坂本委員、笹本委員、四宮委員、白井委員、菅井委員、関谷委員、高野委員、舘田委員、松本委員、八木委員、山野委員。
なお、北原委員、島田委員、三﨑委員から御欠席の連絡を、白井委員から、途中退席の可能性があるとの御連絡を受けております。
また、本日は参考人として、京都橘大学より中村様、国立国際医療研究センター、AMR臨床リファレンスセンターより松永様、国立感染症研究所より矢原様の御参加をいただいております。よろしくお願いします。
以上、現在、薬剤耐性に関する小委員会委員19名のうち16名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令に基づき、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
なお、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
それでは、議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。
配付させていただいている資料は、議事次第及び委員名簿、座席図、資料1-1~3、資料2、参考資料1~5になります。不備等がございましたら、事務局にお申出ください。
それでは、ここからの進行は大曲委員長にお願いいたします。
○大曲委員長 承知いたしました。それでは、本日の委員会もよろしくお願いいたします。
まず、事前に資料に関しては送付させていただいているところでありますけれども、改めて議題に関して事務局のほうから御説明をよろしくお願いいたします。
○上地補佐 感染症対策課の上地でございます。
今回のAMR小委員会では、薬剤耐性(AMR)アクションプランの進捗を確認するべく、議題1では、薬剤耐性アクションプランの進捗について、感染症対策課と薬剤耐性研究センター、AMR臨床リファレンスセンターからそれぞれの視点で進捗を御報告いただきます。
また、議題2では、前回からの宿題となっております「薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症の名称及び届出基準の変更について」として挙げさせていただきました。
以上でございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。ということで、この2議題ということで本日は進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは早速、議題1であります薬剤耐性アクションプラン(2023-2027)の進捗について、こちら、まず感染症対策課から御説明をよろしくお願いします。
○上地補佐 よろしくお願いいたします。上地から御説明させていただきます。
スライドお願いいたします。
初めに、薬剤耐性アクションプランの実施概要といたしまして、厚生労働省で取りまとめさせていただいたスライドを御提示いたします。
先生方御承知のとおり、薬剤耐性アクションプラン、現在、第2期目が始まっておりまして、ヒトについての成果指標、薬剤耐性菌の耐性率・抗微生物剤の使用量等々について目標を定めているところでございます。
それに伴い、また目標1から目標6までそれぞれ目標を掲げており、令和6年度の実施内容といたしまして、スライド下段に厚生労働省、AMRCRC、AMR研究センターとしてまとめさせていただいてございます。厚生労働省としましては、目標1に関しては、記者勉強会やSNS情報発信等々を行っておりまして、以下、目標2から6まで様々な取組をさせていただいてございます。
次お願いいたします。
薬剤耐性アクションプランの成果指標の現状をお示しいたします。ヒトに関して、微生物の薬剤耐性率、スライドにお示ししているとおりでございますが、赤字で示す部分は、2027年の目標値に対して現在若干の乖離が見られるところとなってございます。同様に、抗微生物剤の使用量に関しましても、2027年度の目標に対して、減少傾向にはあるものの目標値とは乖離がある項目について赤字で示させていただいてございます。
次お願いいたします。
ここからは各目標に対して厚生労働省が実施してきた内容をお示ししておりますが、目標1に関しては、今年度よりAMRに関する記者勉強会を2度実施してございます。スライドには、このAMRに関する記者勉強会、6月と8月に実施させていただいたところですが、その勉強会後に事後アンケートとして調査を実施しており、その結果をお示ししているところでございます。
次お願いいたします。
また、11月に、薬剤耐性対策推進月間として、AMRを推進すべく、キャンペーン等々を行っているところでございますが、AMRCRCにて働く細胞とのコラボレーションを行っているということから、このコラボレーションによるポスターの作成に協力したり、厚生労働省の広報誌である月刊『厚生労働』に初めてAMRの特集記事を組ませていただきました。
さらに、埼玉県にある松山高校の校内新聞の取材を受け、AMRの特集記事を組んでいただき、様々な教育・普及啓発活動に取り組んでまいりました。
次お願いいたします。
目標2におきましては、先生方も御承知のとおり、10月の第9回の薬剤耐性小委員会、12月の感染症部会で御議論いただいた内容についてお示しをしているところでございます。
次お願いいたします。
同様に目標2ですが、薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書として、アクションプランの成果指標や取組等の基になっているデータを取りまとめて毎年発出していますが、今年度も、2024年度版として、3月をめどに発出予定でございます。
次お願いいたします。
目標4におきましては、こちらも前回の薬剤耐性小委員会で頭出しをさせていただいた内容になりますが、現在、「抗微生物剤薬適正使用の手引き」第4版の改訂に向けて取り組んでおります。
次お願いいたします。
目標5におきましては、本スライドと次のスライドで、AMR対策に関する厚生労働科研の研究班について取りまとめた内容をお示ししているところでございます。
次お願いいたします。
また、目標5におきましては、抗微生物薬の持続的な開発、安定供給の強化ということで抗菌薬確保支援事業についてお示しをしているところです。こちらについては、別途検討会を開催しておりますので、今回の小委員会では概要をお示しするのみとさせていただきたいと思います。
次お願いいたします。
目標6、国際協力になりますけれども、昨年は「AMR year」ということで様々な国際会議が行われてきたところでございますが、感染症対策課としても、サウジアラビアで開催された第4回のAMR閣僚級会合に参加するなど様々な国際会議の場で議論してきたところでございます。
次お願いいたします。
同じく目標6ですけれども、先週、Tokyo AMR One Health Conference 2025を東京新橋で開催させていただきました。WHOのWPRO、SEAROに加盟している国、35か国中25か国、計170名の方々に御参加をいただき、AMRに関して様々な議論がされてきたところでございます。
次お願いいたします。
ここまで令和6年度の実施内容についてお示しさせていただいておりますが、厚生労働省としては薬剤耐性対策アクションプランの各目標、戦略に基づいて取り組んでいるところでございます。今後、これらの目標達成のために特に強化する取組として、スライドに示す以下の6点をお示しさせていただきました。
重点的な検討項目といたしまして、まず初めにAMRに関する教育・普及啓発の促進に向けた取組として挙げさせていただいております。こちらは国民の認知度向上に関する社会行動学の研究や無関心層へのアプローチに関する研究など様々取り組まれているかと思いますが、AMRを国民の皆様に普及啓発するという観点からより具体的な検討を行っていきたいと考えてございます。
2つ目としまして、JANISなど各種サーベイランスの質の向上に向けた取組を挙げておりますが。戦略2.4では、医療機関等における薬剤耐性に対する検査手法の標準化や検査機能の強化ということが記載されておりますが、医療機関の精度管理については様々な問題があるかと認識しておりますので、こちらに向けて検討を進めてまいりたいと考えております。
3つ目、4つ目、赤字でお示ししておりますが、MRSA及びVRE感染症の減少に向けた取組、こちら、IPC、感染予防管理に関する部分としまして、手指衛生の強化など様々な標準予防策、接触予防策などの強化といった点について取り組んでいきたいと考えております。
また、抗微生物薬適正使用の推進に向けた取組としては、現在、手引き第4版の改訂に向けて動いているところでございますが、学会、医師会等に参加していないような診療所や医療機関へ、この手引きの普及と啓発といった点を進めてまいりたいと考えてございます。
5番目、抗微生物薬の持続的な開発につながる体制の整備として抗菌薬確保支援事業がございますが、来年度は3年目を迎えるということで事業の評価を実施しなければいけない年だということもありますので、検討会で検討を進めてまいりたいと考えてございます。
最後、成果指標の達成に向けたエビデンスの創出といったところで、AMR感染症の疾病負荷、医療経済効果やTokyo AMR One Health Conferenceで行っているASPIREの推進について検討を重ねたいと考えてございます。
次お願いいたします。
最後のスライドは本日御説明させていただいた内容について取りまとめたものでございますが、令和6年度の実施内容、記載しているとおりでございまして、要対策強化としては、目標3及び目標4についてより重点的に検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○大曲委員長 御説明ありがとうございます。感染症対策課から現状の取組とこの第2期の取組、そしてその状況ということで御説明いただきましたが、先生方、御意見、御質問いかがでしょうか。
白井先生、よろしくお願いします。
○白井構成員 白井です。よろしくお願いします。
先ほどの表の中で赤字で示していただいた4番目だと思いますが、医師会とか学会とかに参加していない診療所や医療機関に対してということの手引きのアプローチをお示しいただいたのですが、例えば医師会に参加していらっしゃらない中で、在宅専門の医療機関であったり美容外科であったりがちょっと想定されるのですが、それ以外についても自治体や保健所が届出をいただいている対象につきましては、その手引きのアプローチを普及することが自治体とか保健所に期待される役割なのか、お聞かせいただきたいと思います。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。こちら、事務局からいかがでしょうか。
○上地補佐 ありがとうございます。白井先生おっしゃられたように、この手引きの内容といったものをどう医師会や学会等に参加されていない先生に普及させていくかといった点は非常に大きな問題で、我々もしっかりと考えなければいけない点であると認識してございます。もちろん、先生おっしゃられたように、保健所の力をかりるということも一つのポイントだとは思いますので、今後ぜひ検討させていただきたいと考えております。
以上でございます。
○白井構成員 ありがとうございます。なかなか保健所は難しい点もありますけれども、全国的な動きとしては協力させていただきたいと思います。
○大曲委員長 ありがとうございます。我々としてもリーチするのに大変大変苦慮しておりますので、ぜひお力をいただければと思っております。先生ありがとうございます。
では、坂本先生、お願いします。
○坂本構成員 ありがとうございます。2つあるのですけれども、1点は、冒頭で記者勉強会を2回開催されたという御報告についてです。2回目のほうで円グラフの、企画をしたいというところが大きいのですが、1回目と違って2回目は、何がきっかけとなってそのような回答になったのかというのをもしお分かりでしたら教えていただければと思います。それが1点目です。
2点目に関しましては、これはもしかしたら後半で出てくる議論かもしれませんけれども、今、診療報酬制度において感染対策向上加算1を算定する施設に、地域の診療所が連携強化加算により、抗菌薬の使用状況などに関して年に4回ほど報告するという形で連携しているところがあります。病院によって、例えば診療所版J-SIPHESIPHE(OASCIS)への報告を支援するとか、あるいは抗菌薬の使用に対して助言するといった取組の強度にかなり差があるように感じております。その辺りの差をなくしていく取組ですかね。例えば報告の支援をするなど、具体的にどういった形で連携を行うことが望ましいかといったことに関するガイダンスや支援が今後予定されているのか、もしお分かりでしたら教えていただければと思います。
以上です。
○大曲委員長 ありがとうございます。2点ございましたが、こちらは、事務局いかがでしょうか。
○上地補佐 御質問ありがとうございます。まず1点目、記者勉強会の第2回目で、掲載を企画したいというメディアが増えたという点でございますけれども、こちら、何がきっかけでといったことは承知しておりません。また、第2回目で、企画したいと回答していただいたメディアにおいても、実際記事にはなっていないといった現状がございますので、今後より深い考察を重ねて、来年度はどういう内容で勉強会を開催するかを、薬剤耐性研究センター、AMRCRCの先生方と検討してまいりたいと考えてございます。
2点目、こちら、加算に関した御質問だと認識しておりますけれども、連携加算の所管は医療課になってございますし、具体的な連携の取組について、現在検討できていないという回答になるかと思いますけれども、弊課としても、先生からいただいた御指摘を踏まえて検討していきたいと思います。
以上でございます。
○坂本構成員 ありがとうございます。必ずしも加算とひもづける必要はないと思いますが、実際に大きな病院と連携を組んでいるクリニックなどに対して、何か円滑な連携につながるような支援の手段など、もし可能であれば御検討いただければと思いまして質問させていただきました。ありがとうございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。では、松本先生、お願いします。
○松本構成員 ありがとうございます。資料の3ページにございます薬剤耐性対策アクションプランの成果指標の現状について御報告をいただいたのですけれども、そもそもの話ですが、これが達成できていない、達成が難しそうだということの理由といいますか、そこら辺はどのように分析をなさったかというところをもう少し御説明いただけるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大曲委員長 ありがとうございます。多分これは我々のこの後の発表も併せて聞いていただいたほうがいいのかなと思いましたが、事務局から今の時点で何かコメントございますか。
○上地補佐 ありがとうございます。2020年から22年度は、コロナ禍でありましたので、それが余計に様々な考察を生んで、判断が非常に難しいと考えておりまして、感染症対策課として明示できるような回答がないというのが現状と思っております。
以上でございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。それでは笹本先生、よろしくお願いいたします。
○笹本構成員 日本医師会の笹本でございます。アクションプランの実施概要の御説明及び分かりやすい資料につきまして、どうもありがとうございました。
質問は4つほどあるのですが、その前に白井委員の御質問なのですけれども、医師会に入っていない方にどうお知らせするかということですが、医師会に入っていない方は大学も含めて勤務医、あるいは自由診療の方が多いので、でも、この人たちは学会に入っているケースが多いので、学会との協力関係を少し考えていただいたらどうかと考えております。
それでは質問させていただきます。まず、資料1-1の2ページで、目標に向かって進んでいることが分かりますけれども、1点目の質問は、目標後の抗菌薬確保支援事業のことに関してですが、別の小委員会で検討中ということですけれども、お知らせできる内容とか成果についてお知らせいただければと思います。
2点目は、ここに記載はございませんが、抗菌薬等の全般的な安定供給はどうなっているかということも教えていただければと思います。
3点目は、今の松本委員の御質問と重なりますけれども、一旦減ったものがまた増えているということに関しましては、コロナ禍での基本的感染防止対策や、あるいは外出制限などの受診抑制のためか、あるいは薬局などでお薬を購入するセルフメディケーションのためか、分析などされているかどうか教えていただければと思います。
4点目は、薬剤耐性と言われてもう10年ほどたちますけれども、報告書にあるかもしれませんが、長期的に見て日本の現状はどうなっているかということが分かれば教えていただきたいと思います。
以上でございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。こちらに関して、事務局からいかがでしょうか。
○上地補佐 御質問ありがとうございます。まず1点目、抗菌薬確保支援事業についてですけれども、こちら、クローズの検討会で御議論いただいている内容ですので、この場では難しい点がございますので、回答は差し控えさせていただきたいと思います。
2点目に関しましては、栗島のほうから御説明させていただきます。
○栗島主査 すみません。感染症対策課の栗島と申します。よろしくお願いします。
2点目の安定供給に関してですけれども、当該の問題に関しましては、弊課も非常に重要な問題点であると考えております。ただ、先ほどもありましたけれども、所管を超えてしまう話になってしまいますので、弊課のほうでも担当部局とお話し合いをさせていただきながら、必要時検討させていただければなと考えております。すみません、よろしくお願いします。
以上です。
○上地補佐 3点目、アクションプランのコロナ禍で数が減少したといったところの考察という点と理解しておりますが、こちらについては後ほどAMRCRCからも御説明があるかと思いますけれども、やはり人流が抑えられたという点、コロナ以外の感染症の広がりが抑えられたという点に相関がありそうだといったデータをAMRCRCからお示ししていただいているところかと思っております。ですので、人流の減少とその他感染症の減少に伴い抗菌薬の使用量が減ったと考えてございます。
以上でございます。
○時岡補佐 笹本先生、申し訳ございません。4点目の質問、もう一回お願いしてもよろしいでしょうか。
○笹本構成員 薬剤耐性が言われてほぼ10年近くたちますので、その間の長期的な日本での使用量等についての経過はどうなっていますかという質問でございます。
○上地補佐 すみません。御質問ありがとうございます。ここ10年を振り返ってということですので、私が答えるのもなかなか難しいところがあるのですけれども、当初のアクションプランの策定時点では、やはり日本全体のサーベイランス体制が整っていなかったという点や、様々な施策に繋がる具体的な数字がまだまだ足りなかった部分が多かったということを聞いてございます。
ですので、日本の例えば、JANISやJ-SIPHEなどのサーベイランスの体制が整い、地域における医療機関の連携が進んできた。また、向上加算など保険点数の枠組の整備や様々な研究が進んできたということで、一定程度の成果はあるのではないかと考えております。弊課としましても、まだまだ足りない部分がございますので、今回重点事項として挙げさせていただいておりますが、そういった取組について今後進めていきたいと考えてございます。
以上でございます。
○大曲委員長 御説明ありがとうございます。そのほか、先生方から御意見、御質問いかがでしょうか。
よろしいですかね。
ありがとうございます。それでは、先に進めてまいりたいと思います。2つ説明がございます。次は、感染研の薬剤耐性研究センターから、これは菅井委員から御説明をお願いしたいと思います。菅井先生、よろしくお願いいたします。
○菅井構成員 感染研の菅井です。よろしくお願いいたします。
ちょっとスライドの枚数が多いので、かいつまんでお話しさせていただきたいと思います。
我々のところでは、目標の2、3、5、6に対するところで我々の関与が求められていますので、その点について、22、23、24年でのデータを中心にお話しさせていただきます。
まず目標2の2.1ですけれども、医療・介護分野における薬剤耐性に関する動向調査の強化で、多剤耐性淋菌に対する分析学的調査研究の実施、そして、5類感染症に指定された薬剤耐性感染症、薬剤耐性が問題となる感染症に関してのJANISの得られたデータとの連携及び必要に応じた届出基準等の見直し、そして4番目が国立感染症研究所のリスク評価で、地方衛生検査所や保健所等のリスク評価の結果をフィードバックする手法の検討ということが挙げられています。
まず最初に多剤耐性淋菌については、感染研では細菌第一部と薬剤耐性研究センターが連携しておりまして、毎年、WHO GLASSにそのデータを報告しているとともに、また、ゲノムサーベイランスについては継続を行っております。
また、薬剤耐性緑膿菌感染症の全数把握について、なかなか現在の定点報告では真実が得られないのではないかということを提案しまして、そのデータを提出いたしました。
また、CRE感染症については、その届出情報等から得たデータによって、現在の届出の基準が不十分ではないかということで、メロペネム基準に単独に変えたほうがよいのではないかということを示唆するデータを報告いたしました。
これらに基づいて、現在、厚生労働省のほうではこの届出基準の改訂が進んでいるところであります。
また、感染研の感染症発生動向調査の発生届や病原体のデータから、実際にAMRのリスク評価を実施した上で、地衛研や保健所でのリスク評価結果をフィードバックする手法というのを検討するということで、現在これはまだ検討中でありますが、引き続きこの点について明らかにして、何らかの検討の方法を見出していきたいと考えています。
目標2ですけれども、医療・介護分野における薬剤耐性に関する動向調査の強化で、ここではJANISについてお示しいたします。JANISでは、2023年度から対象施設に診療所が追加されまして、これに対するプログラム等の追加を行ってまいりました。これは2024年以降もこのデータの公開を行っていく予定であります。
また、検査受託機関との協力によって、JANISデータとともに特に外来での抗菌薬の使用について、そのデータを基に、それらが第3世代セファロスポリン系の、あるいはフルオロキノロン薬剤の大腸菌の割合がどれくらい診療所と病院で違うのかということと関連性があるということを示しましたので、これをデータとして報告いたしました。
また、WHO GLASS、WHOが行っているグローバルサーベイランスですけれども、その仕様変更がありましたので、それに応じて要求される菌種に対するプログラムの改訂を行っております。また、JANISとリンクした耐性菌株の収集とゲノム解読のサーベイランス、JARBSを実施してまいりました。JANISを補完するものとしてこれらのサーベイランスを実施してまいりました。成果については後ほど御説明いたします。
また、真菌については、AMR真菌をJANISの対象に加えることを検討いたしました。試算を行ったところでは、感染研で再測定したデータと参加機関から得られたデータで大きな乖離があることが判明し、現在はまずJARBS-Candidaとして実際の真菌株を収集することを行っております。
これに基づいて感染研では、JARBSのプロジェクトの中で菌液の調整に用いる濁度計の違いによってMIC値が変わるということで、この辺りを今後どうするかという薬剤感受性の検査の標準化に向けた議論を行っております。
また、JANISにより得られたデータを地域レベルで分析できる仕組みとして、J-SIPHEとJANISの連携により医療機関がJ-SIPHEの画面からワンタッチでJANISの自施設データを取り込み、医療機関グループ・地域レベルで分析できるようになりました。
戦略2.4ですけれども、ここでは、新たに細菌検査の測定機器の精度管理に用いる細菌株作成及び全国の検査室への提供の検討ということですが、全国調査で行いました薬剤耐性ゲノムサーベイランス、JARBSで得られた株が耐性菌バンクに保管されまして、その株をもとにして、特にカルバペネムに感受性を示すか耐性を示すかということで、精度管理に適切な株を選び出しまして、それらを薬剤耐性菌バンクのパネルとして選定し、2024年の4月からその分与を開始しております。現在、既に分与実績があり、分与手続中のものもあります。
また、戦略2.5では、ヒト、動物、食品、環境等に関する統合的なワンヘルス動向調査の実施ということで、特に赤で記載しております食品中の薬剤耐性に関する動向調査・監視体制の確立に向けた調査研究を実施してまいりました。
また、AMRに関する動向調査・監視のデータを遺伝子データベースを活用したヒトへの伝播が懸念されている薬剤耐性菌の調査・解析も併せて行っております。
また、グローバルAMRサーベイランスシステム(GLASS)の仕様変更への動向調査・監視事業への適合化を行いました。
まず最初にAMRの食品班で扱っております、これは地方衛生研究所、動物医薬品検査所、そしてアカデミア、そして我々がコンソーシアムをつくりまして、食品由来の耐性菌について薬剤耐性研究センターに集め、バンクに収納し、そのもとでゲノムシークエンスを行って解析を行っていくというスキームをつくりました。これによって農水省と厚労省が行っているサーベイランスのちょうど中間に位置する食品に関する部分の様々な菌株についての総合的な解析を行うことが可能になり、2024年度の薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書にその第1号の結果が記載されるという運びになっております。
また、その過程で様々なサーベイランスから得られた菌株を大量にゲノムシークエンスする必要がありまして、そのハイスループットの仕組みを構築しましたが、2022年以降、大体年間1万8,000検体のシークエンスの解読を実施することができるようになりました。また、そのうちの9,000株については既に公共データベースから公開済みであります。
先ほどの食品班のサーベイランスの中でヒトと食品の由来株が食品を介したヒトへの耐性遺伝子の伝播の可能性を示唆するデータが得られましたので、そこについて一部をお示ししていますが、この内容についてもワンヘルス動向調査報告書に記載予定でございます。
また、GLASSの仕様変更に伴い、新しいGLASS2.0では、単に菌株、菌種名、あるいは薬剤耐性だけではなくて、耐性遺伝子についての記載もございます。それについての集計変換するプログラムを現在検討中であります。
戦略3.3、薬剤耐性感染症の集団発生への対応能力の強化ということで、特に地域、自治体担当者に対する研修会の実施ということについてお話を申し上げます。
これは今までもずっと行ってまいりましたが、コロナで一旦フェーストゥフェースの研修が難しくなったのですけれども、令和5年、6年度は集団研修を再開すると同時に、Webinarでの配信継続によりさらに参加希望を拡大して、特に地方衛生研究所の職員に向けた研修を実施してまいりました。
また、国立感染研究所実地疫学研究センターとの共同で、地方自治体への薬剤耐性菌アウトブレイク対応支援、2019から2021はほぼ緑で示していますコロナ対応が主だったわけですけれども、2022年から復活しまして、23、24年とまた新たにAMR事例対応支援を実施してまいりました。
次に戦略5.1、薬剤耐性の発生・伝播機序及び社会経済に与える影響を明らかにする目的の研究の推進ということで、特に薬剤耐性微生物、あるいは遺伝子の伝播過程等の研究、そして産・学・医療で利用可能な薬剤耐性菌バンク(JARBB)での分離株保存の推進、そして薬剤耐性菌バンクを利用した病原体動向調査及び薬剤耐性の発生伝播機序の解明、創薬等の研究開発を推進及び国内外における分離株のゲノム情報の収集を行ってまいりました。
これは今まで行ってきた国内における分離株、薬剤耐性菌ゲノムサーベイランスに用いた様々な株を列挙していますが、このような株について収集し、そのうちの一部については既に論文化しております。
JARBS-GNRはグラム陰性桿菌における薬剤耐性に関する日本のナショナルデータを発表いたしました。また、JARBS-PAではカルバペネム耐性緑膿菌に関する日本全体の全国サーベイランスを行い、その結果について発表いたしました。
また、JARBS-SAでは、血液由来の黄色ブドウ球菌の全国サーベイランスを実施して、この結果についても発表予定であります。
これら多くのJARBSのサーベイランスで集まってきた菌株、あるいはUSCDCからの耐性菌のパネルの輸入等で、現在、薬剤耐性菌バンクは23万株を超える株を有し、それらの株から創薬、基礎研究、精度管理に用いるパネルを作成しているところであります。
JARBBに収納の菌株数の推移を左にお示しし、また、JARBBの分与の件数についても推移を右にお示ししています。現在までに37件、延べ3,635株を既に分与しております。
戦略5.1、薬剤耐性の発生・伝播機序及び社会経済に与える影響を明らかにするための研究の推進。ここでは、WHOと連携した大腸菌を用いたワンヘルス薬剤耐性サーベイランス(三輪車サーベイランス)の研究の推進を挙げております。
これについては既に2019年からスタートしておりますが、その結果が出てきまして、ワンヘルス動向調査年次報告書2024年版にその結果を記載する予定でございます。
また、医療機関における薬剤耐性感染症、疾病負荷及び経済負荷に関する研究の推進、薬剤耐性対策による医療費削減効果等に関する研究の推進、そして診断群別DPCデータ及びレセプト情報、特定健診等情報データベース情報の活用の支援ということを行ってまいりました。
DPCデータを使ったものと、DPCデータとJANISの検査部門データ、あるいはJANIS全入院部門データを合わせて薬剤耐性菌の疾病負荷、医療経済への影響についての解析の試みです。既に一部はMRSA感染症/菌血症、MSSA感染症/菌血症、あるいはMRSA感染症対MRSA保菌についての結果について既に報告しております。
また、薬剤耐性対策による医療費削減効果等に関する研究の推進で、VRE感染症においてその患者の増加によって追加的に発生する費用を試算したものを発表しております。この2年間で薬剤耐性研究センターが関与した欧文論文68報を発表しております。
次に、戦略5.4では、新たな予防・診断・治療法等の開発に資する研究及び産学官連携の推進でございます。これにつきましては、既に収集した日本国内のナショナルサーベイランスで得た株を用いて、ここに書かれているCFDCをはじめ様々な新規抗菌薬に対する検討を行いまして、その結果についてまとめたものを発表してまいりました。
また、感染症に対する抗微生物薬とは異なる非伝統的な治療法としてファージセラピーがございますが、薬剤耐性菌バンクにある株を被験菌として、環境由来サンプルから得られたファージを収集し、それについてファージライブラリとして保管を始めております。その一部は右に示すような発表を行っております。
次に国際共同研究の推進ということで、薬剤耐性に関するアジア太平洋ワンヘルスイニシアティブ(ASPIRE)に基づくアジア各国における発生動向に関する調査及びネットワーク、医療管理、抗菌薬へのアクセスと規制、研究開発の4分野の研究開発の推進がうたわれておりますが、このうちの1と2、すなわち発生動向に関する調査及びネットワーク、医療管理について、薬剤耐性研究センターがWGの議長を担当しております。
それに関わりまして、WJANISの海外版、ASIARS-Netを用いた各国の薬剤耐性の動向調査の強化、そしてWHOと連携した大腸菌を用いた三輪車サーベイランス参加国への技術支援、薬剤耐性動向調査・集団発生対応ガイダンス文書作成と研修、アウトブレイク対応支援、グローバルAMRサーベイランスの改訂支援を行ってまいりました。
これは各国での三輪車サーベイランスの支援の様子でございます。これまでの実績ですけれども、日本、ベトナム、マレーシア、インドネシアから収集した菌株等を解析したものを表しています。
また、薬剤耐性集団発生対応ガイダンスの文書作成と研修、アウトブレイク対応支援で、ここに記載しているように、西太平洋諸国の各国のアウトブレイク対応支援を行ってまいりました。
WHO-Net、ASIARS-Netを利用した各国のAMR動向調査の強化ということで、これらの国と現在関係を深めて推進しているところでございます。
これはタイで作成された海外版のJANIS、ASIARS-Netを用いたデータの一例です。
また、WHO本部のGLASSチームとのZoom会議を行い、GLASSの改訂支援をしております。
以下、ここには成果指標についての現時点での状況について図をもって御説明しておりますので御覧ください。
最後に今後の課題ですけれども、適切な精度管理体制の構築ということを必要としております。また、感染症発生動向調査の発生届やJANISデータから各地域の薬剤耐性のリスク評価を実施し、結果を自治体にフィードバックする仕組みというものを、現在も検討しておりますが、これを明らかにしていきたいと思います。
JARBSの事業化、これはJANISに付随して、JANISで得られないデータをここで集めていく必要が今後あるかと行っています。AMR感染症の疾病負荷、医療経済効果算出の仕組みづくり、そしてワンヘルス体制で議論する場の構築、これを実現できればと考えています。また、ASPIREの継続推進を行いたいと行っています。
以上でございます。
○大曲委員長 菅井先生、ありがとうございます。それでは、薬剤耐性研究センターからの御報告に関して、先生方、御意見、御質問等いかがでしょうか。
坂本先生、お願いします。
○坂本構成員 ありがとうございます。最後、時間の関係で飛ばされた53番のスライドに、VREの目標である80人以下達成が難しかった状況のグラフがあったかと思います。こちらに関しては、冒頭の御説明でも、AMR成果指標の現状の中でも報告をしていただいていたと思うのですけれども、VREに関しては、特定の地域の中での流行が複数発生していることがこの目標達成を困難にしている背景にあるのではと理解しています。封じ込めることに比較的うまくいっているところと、継続的に困難を抱えているところと様々状況が異なる地域があるようですけれども、先生に御発表いただいたスライドの24番に、課題として2つほど挙げてくださっていたと思います。
そちらにお示しいただいていた2つの課題がこのVREの流行のコントロールを困難にしていることにつながっていると考えていいのか、あるいはほかに、これが原因となってなかなかうまくVREのコントロールが地域においていっていないのだと思えるような課題を御存じでしたら、可能な範囲でご教示いただければと思うのですが。
○菅井構成員 すみません。24番のスライドというのがちょっとよく分からないのですが。
○坂本構成員 目標3に関してお示しいただいたスライドが、すみません、私の配付資料としていただいている資料と番号が違うのかもしれませんが、26番の国立感染症研究所実地疫学センターからの支援のグラフ、右下に課題を2つ挙げてくださっていて、VREの流行している地域において、いろいろ課題として考えられるのはこれに該当するのか、ほかにも何かありますでしょうかというお尋ねなのですが。
○菅井構成員 地域感染症対策ネットワークが十分機能していない地域があるということと、医療従事者や保健行政担当者がリスク評価とそれに応じた対策強化を行っていくことに不慣れという2点書いてございます。これらは実際にうちの四室がFETPと一緒に現地に赴いて行った対策の中で出てきた課題と理解しています。
これ以外のところで言うと、私自身は実際にその現場に行って見ているわけではないですけれども、現場からのお話を聞くと、非常に重要なIPCの基本的な技術ができていないことが一番大前提にあるということと、あと、その地域全体、特に自治体と病院とそういったものの連携というのを物すごく重要視しているということがあって、そこがなかなかうまくいっていないと、病院のほうで、例えば余り外からの助言を受け入れないとか、そういう様々な問題があるということは聞いているところです。
あともう一つは、VREというのはヒトがなかなか死なないのですが、一旦VREが出てくると、それに対応してな必要なプラスチックエプロンなどを買う、あるいはスクリーニングするためにお金がかかるというところで、そこら辺でのちゅうちょというか、対策が後手後手に回ってしまうということがどうも今までの経験では多くあったように思いますので、そういったことをちゃんと理解した病院長先生のもとで主導的に、割とクイックにそういうアクション起こされているところは割と早期にそういうものがおさまっていっているように感じています。
以上です。
○坂本構成員 ありがとうございます。今お話しいただいたようなことは非常に参考になる貴重な情報だと思いまして、多くの自治体が同じような状況にいつなるか分かりませんので、共有をぜひしていただけるとありがたいなと思います。もし既に共有されているような情報がどこかに出ているようであれば、申し訳ありません、ちょっと私が探し切れていないのかもしれませんが、そういった情報がありますと非常に参考になります。ありがとうございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。感染症対策課の資料の中にもVRE重点項目として挙げていただきましたので、こうした情報の提供ということも今後力を入れてやっていく必要があると私も思いました。
舘田先生、よろしくお願いします。
○舘田構成員 ありがとうございます。舘田です。
菅井先生、ありがとうございました。先生の最後のスライドですね。今後の課題でまとめていただきましたけれども、今まで非常に活発に活動していただいている中で、僕もここの課題が非常に大事だなと思って聞かせていただきました。全部大事なのですけれども、特にワンヘルス体制で議論する場の構築というところで、ワンヘルスというのがAMRとともにこれだけ広がりつつあるわけですけれども、ただ、実際には、先生方のまとめでも、医療の現場での抗菌薬の使用や耐性菌の状況、あるいは畜産の領域、農業の領域と別々になっているわけですね。ところが、全体で見て、ワンヘルス、あるいはプラネタリーヘルス、そのような視点で考えていくわけですから、まさにここの議論の場を構築しながら、そういうワンヘルスの視点での問題をもっとアピールしていくということが、市民、教育啓発していくということがすごく大事だなと感じています。
そんな中で具体的にどうやって場の構築というのをしていくのか、いろんな学会でワンヘルスといってやっているわけですけれども、でも、まだこういうレベルなのですよね。だから、これはある意味、国が主導していただいて、そしてアカデミアも一緒になって、一般の人たちも巻き込む形でいろいろ考えていくということが大事だと思いますけれども、先生のこれからのプランとして何かあれば教えていただければと思います。
○菅井構成員 重要な御指摘、本当にありがとうございます。我々もこの活動をやっている中で、ワンヘルス動向調査報告書というのを毎年つくっていますけれども、これは厚生労働省が主導して、そこには農水省であったり、あるいはほかの様々な分野の人が入っていただいて、その情報を集めて毎年パブリケーションしてきたのですけれども、毎年行っていることは結局その年のサーベイランスの、特に感受性データを集めて、それが集積されたものが一つの本になって出てくるということで、結果としては一冊にまとまったということだけど、初期のナショナルアクションプランではそういうことをワンストップで見られるようになったということはすごく大きな成果だったと思いますけれども、そこからもう一つ進んで、そういったセクター間でどういうことが起こっているのかということを議論する場というのが実際にはなかった。
実際に、もうすぐあるでしょうけれども、ワンヘルス動向調査報告書の委員会みたいなものが最後、厚労省の主催であって、そこで最終的な本の、認めるという形の委員会で、とてもではないけれども、そこで議論する時間というのは全くないので、実は大曲先生たちとも何回か、そういうものをつくりたいなという話はしていたのですけれども、海外では、例えば厚労省と環境省、そして農水省、そういった省が同じところに一緒に集まってそういうものを議論する場というのが、形だけかもしれないですが、つくられているところがありますが、やはり省庁の人も入った形で、何でも言えるフリーディスカッションできるような仕組みというか、会議をする場というのが、もうここまで来たら必要なのではないかなと強く感じています。それをトップダウンでする必要もあるでしょうし、我々や大曲先生のところみたいに、それを担っているところもそこに加わって、何かドライビングフォースとしてやっていく必要があるのではないかと考えているところです。
○舘田構成員 ありがとうございます。これを見ていて、2016年から比べると、AMRの問題が一般市民の方たちにもかなり広がりつつあるのかなあと思うわけですけれども、ただ、アンケート調査なんかの結果を見ると、余り動いていない、変わっていないわけですよね。ここは、これだけやっているのに、なかなか教育・啓発がまだまだというところがあるわけで、何かやり方をもう少し工夫して、ワンヘルス、そして医学領域だけでないところを巻き込む形で、あるいは一般市民を巻き込む形での教育・啓発の仕組みを、我々の責任ですよ、だから、我々も含めてそれを考えていかなければいけないなと思いました。ありがとうございます。
○菅井構成員 ありがとうございました。
○大曲委員長 八木先生、よろしくお願いします。
○八木構成員 ありがとうございます。菅井先生、耐性菌の側のほうから様々な取組のお話をしていただき、どうもありがとうございます。
先ほど舘田先生からも御指摘のあった、一番最後のスライドにある適切な精度管理体制の構築というところについて御質問させていただきます。薬剤耐性菌のいろいろな対策を取る、またはサーベイランスを行うということになりますと、やはりそれを正確に検出できる精度管理というのがすごく大事だと思います。VREなんかでは一部すごく検出が難しいような菌があるとかそういったこともございますし、ここに書かれている精度管理体制というのは地方のそういった衛生研究所レベルのことなのかもしれませんけれども、各病院での、どこまでやるべきかというようなことも含めて、この薬剤耐性菌検出の精度管理体制について、先生、今後構築していくことについてはどのようにお考えかをお聞かせください。
○菅井構成員 非常に難しい質問で、ありがとうございます。ずっと考えていたことではあって、精度管理というのが、日本ではCLSIとかEUCASTに相当するようなきちっとした組織がないということで、そこをやはり何とかしなくてはいけないのではないかということは常々、臨床検査技師の先生方とかとお話ししているとそういうことをひしひしと感じていて、それを例えば感染研の一部が担うとしても、とてもではないけれども、薬剤耐性研究センターの中の一室みたいな感じで、一つの部屋ぐらいの規模ではだめなのではないかと思う一方で、でも、最初のスタートはそういう公的な機関のどこかに1つ部屋をつくって、そこを出発点として、少しずつ大きな形で日本全体のことを見るような立場のものがそろそろ必要なのではないかなと考えていて、ここの第1番には私も記載したのですけれども、かといって、道筋を示せと言われるとまだまだ何とも申し上げられないのですけれども、例えば今後そういうものに予算をつけていただくような形で、予算をつけるには、そのニーズであったり、きちっとした制度設計といったものが必要になると思うので、そういったことをできればいいなあという思いで課題として挙げさせていただきました。臨床の先生方はもちろんですけれども、いろんな先生方の意見というのをいただいて、何かそういうものが形にできる方向に動き出せればいいなと私自身は思っています。
○八木構成員 ありがとうございます。地方衛生研究所レベルではそういった精度管理のための菌株を選定して配布したり、そういったことは開始されているということでよかったですね。
○菅井構成員 そうですね。
○八木構成員 分かりました。どうもありがとうございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。関谷先生、お願いします。
○関谷構成員 ありがとうございます。舘田先生からワンヘルスの重要性というところで御指摘があったところです。また、菅井先生のスライドにもその重要性ということをお示しいただきました。これまでも、例えば菅井先生のところと私どもの検査所のほうで、共同研究ですね。厚生科学研究、あるいはAMEDの研究も研究班としてワンヘルスの取組を行ってきております。そういう中でいろな議論もさせていただいてきております。また、リスク評価という意味では、内閣府の食品安全委員会では、これはヒトの医療分野、それから動物分野、各微生物の御専門の先生方等が参画して、動物で使う抗菌剤の食品を介したリスク評価というものが実際に、これは食品安全基本法に基づく仕組みとして構築されていて、実施されているということもあります。ですから、そういったワンヘルスの取組を今後どのようにさらに深めていくかというところが重要だと思いますので、我々の動物分野や、あるいは環境分野も含めて、今後も密に連携をさせていただければと考えております。ありがとうございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。そのほか、先生方、いかがでしょうか。
よろしいですかね。それでは、菅井先生、ありがとうございました。
それでは次は、AMR臨床リファレンスセンターからの説明であります。ほかの人にお願いするわけにいかないので、私のほうから説明させていただきます。資料は、事務局のほうからお願いしてもいいですか。
ありがとうございます。それでは、進めてまいります。AMR臨床リファレンスセンターからの報告というところであります。
1枚おめくりください。まず教育啓発からです。こちら、医療従事者向けの教育啓発活動ということで、セミナーは手引きの解説を中心に行ってきましたし、また保健所で対応に当たられる方たくさんいらっしゃいます。一緒に学ぶ機会ということで公衆衛生セミナー、そして、主に臨床感染症の知識ということに関してeラーニングを行いましてやってきたというところです。
実際に参加された方は右の表に示してあります。
では次お願いします。
次は国民、一般の方々向けの啓発活動ですね。左上から資材の提供、ポスター等も含めてやりましたし、ウェブサイトは1期の頃から引き続き運営しております。あと、毎年様々な媒体を使って活動しています。ペイドパブリシティ、あるいは、やはりSNSは非常に重要ですので出したり、またシネアドというのは映画館で上映前に流れる短い時間の映像がありますが、そこにAMRのものを実は入れたりということを行っております。
では次お願いします。
こちらはその続きですけれども、左上、ノベルティポスターの配布なのですが、薬局によく張っていただいております。実際、患者さん方とのコミュニケーションに使う。川柳は、今年も募集をして、つい最近発表したところであります。川柳は海外の方からすごく注目されています。ショートメッセージで伝えやすいということで、我々としても、反省したといいますか、考えさせられたところがあります。また動画、あるいは、今年はゲームというものもありましたし、毎年イベントも行っております。
次お願いします。
ただ、既にお話に出たとおり、国民の知識、意識という形ではなかなかに変化が出ないというところです。「風邪やインフルエンザに抗菌薬は効果的だ」、これは明らかに間違ったセンテンスですが、これを間違いだと正確に言える人の割合が、この棒グラフで下に青で示してありますが、2017年以降なかなか上がってこない。むしろ数年では下がっているように見えるというところもあります。これは大きな課題です。
次お願いします。
ただ一方で、医療現場は変わってきています。これは日本感染症学会と化学療法学会、そして日本医師会の先生方の御尽力をいただきまして、2年に1回、診療所の先生方に行っているアンケート調査であります。そうすると、実際、風邪の患者さんを診たというときに、処方をした割合を見ています。100人診たら、0~20人にしか出さなかったというのが青ですが、棒グラフの中で青の占める比率が、2年ごとですが、上がってきている。これは急速に上がってきているということがお分かりいただけると思います。ですので、診療所の外来におけるいわゆる感冒の診療は実は大きく変わってきているというところが言えます。これは現実にあります。
次お願いします。
というところで、教育・啓発、反省と今後どうするかということなのですが、国民の知識・意識の数値上の改善は、御覧のとおり、改善はまだ見られておりませんが、医療現場での風邪診療の質は変わってきています。そして手引きの第3版も出ました。
課題としては、先に言うと、やはり情報量が非常に、特にコロナ間は少なかった、少なくなっていったということがありますので、これは行政機関や、あるいは我々のような組織だけではなくて、アカデミア、企業、市民団体といったところから多くの方々から重層的に社会に対して情報提供していただく必要があるだろう。そのためには、一番大事なのは非常に分かりやすいシンプルなメッセージだと思います。このメッセージをいま一度考え直して絞り込むというところが非常に重要だと思っています。
医療従事者向けには引き続き専門教育を進めていくわけですが、コロナで分かったのは、介護、福祉の場の重要性であります。こちらにおいて、従事者の方々の教育をもっと進めていくということが必要だと考えております。
では次お願いします。
サーベイランスです。J-SIPHEは病院向けのサーベイランスでありますが、参加する医療機関の数、伸びております。1月17日の時点で3,540です。日本の病院が大体8,000強というところであります。大分増えてきました。
次お願いします。
診療所向けには、診療所版のJ-SIPHEというものを解説しております。こちら、診療報酬改定で要件として取り入れられたこともありまして、2024年度から一気に診療所数、増えております。今年の2月5日の段階で4,018というところです。ただ、こちらに関しては、課題としてはもちろん登録する診療所の数をもっと大きくして影響力をということもあるわけですが、実際、データの活用を自分でどう見るのか、地域で、ネットワークの中でどう見て活用するのかということに関しては、まだ十分に知識が行き渡っていない、経験がないというところがありますので、こちらをどう耕していくかが課題だと思っております。
次お願いします。
そんな中でサーベイランスの仕組みが充実してくると、このような日本の病院における手指衛生の遵守率の分布といったことも見られるようになります。これは大きな成果ですし、幸い、この数値に関しては改善が見られているというところでございます。
次お願いします。
一方でなかなか難儀しているのは、療養病床ですとか高齢者施設による感染防止対策や抗菌薬の使用状況の把握なのですね。2年に1回、厚労科研を用いまして、転入病率調査、言い方が適切かどうか分かりませんが、やはりPPSをやっております。その中で抗菌薬を処方されている方の割合ですとか、どのお薬がどの病気に使われているのかということを見ております。ただ、この数字を取るのは、多分やるほうも、埋める側も大変です。
つまり、課題としては、このような調査をするには、医療の介護、あるいは福祉の場というのは非常に厳しいです。キャパシティがない。ですので、どうデータを取るのか、それをどう改善につなげるのかということが課題です。そういう意味では、介護に関しては公的なデータベースがありますので、その活用といったところも引き続き検討を進めたいと思います。
ということで次お願いします。
サーベイランスに関してはデータ取るようになりました。いいことです。ただ、高齢者施設等の状況を知るのは非常に難しいです。J-SIPHEや診療所版のJ-SIPHEの参加施設を増やすこと、あとは、既に菅井先生も触れられましたが、さらに高度なリンクということで、こうした薬剤耐性のデータ、ゲノム情報を含むものを人間の医療のデータとつなげる、そして介護、福祉の現場から、例えば介護データベース等を使ってデータを得て、それを改善につなげていくというところが課題だと考えております。
次お願いします。
感染予防・管理に関する活動でありますけれども、やはり感染対策の向上加算、非常にパワフルだと思っています。病院だけでなく、診療所の感染防止対策を推進するということを、この力を借りてやってきております。そこには指標のプラットフォームとしてJ-SIPHEも使ってきております。
次お願いします。
また、一つの成果として、日本の特に1期前と1期の辺りのAMR、アクションプランの中での日本の成果ということ、あるいは反省ということに関しては、WHOの西太平洋地域事務局からの御示唆もあって、日本の関係者でまとめて、つい先週、東京AMRワンヘルスカンファレンスで公開してお披露目をしたところであります。
いいところも悪いところも書いてありますが、一つの特徴は、日本は、医療のシステムの中にAMR対策をしっかり取り組んでやってきたというのはほかの国にもお伝えできることでありまして、ほかの国から参考にしていただければと願っております。
次お願いします。
抗菌薬の適正使用ですが、やはり手引きが非常に重要な役割をしています。第3版まで出まして、これを使って、AMR対策の臨床セミナーを行っています。オンラインも併用するようになって、参加者が非常に増えてきたというところです。この3版をいかに知ってもらうのかということが課題ですので、さらに力を入れていきたいと思います。
次お願いします。
既に議論に出ましたが、抗菌薬の販売量、使用量は減ってきていたのですが、2023年、また増えてきています。これは何なのだというところで御質問ありましたが、直接の因果関係は、見てきたようなことは言えませんが、傍証をお示しすることができますので、お示しします。
次お願いします。
同じような現象は世界各国で見られています。それと何が関係あるのかということを見ますと、やはり抗菌薬の使用量が少ない時期というのは、時系列的には行動制限が行われている時期なのですね。多くの国が全てそうでした。だから因果関係があるのかというのは言い過ぎですが、そういうデータがあったというところです。つまり、行動制限が行われている時期の抗菌薬の使用量、販売量が少なかった、各国ではというところです。
次お願いします。
一方で、上気道の感染症ですとか下痢症に対する抗菌薬の処方率は、NDBのデータの集計をしますと、これは実は年々日本では下がってきています。ですので、一人一人の患者さんにおける診療は明らかにいいほうに変わってきているのですね。
次お願いします。
ただ一方で、気道感染症の受診患者数というものを、こちらもNDBのデータを出してみたわけですが、やはりコロナ禍が始まってから、診断名に気道感染症がつく方の受診者数というのはがくんと減っているのですね。言い方を変えれば、診療所に、あるいは病院に来られる風邪の患者さんが減った、来られた方が減ったということが言えると思います。当然、不適切な処方機会というのも減るのだと思います。逆も言えます。患者さんが増えれば不適切な処方機会は当然増えます。
次お願いします。
ということで、なぜ減って上がったのかということに関しては、傍証としてはやはり行動制限があった。その時期に患者さんが病院に来ることは減っていたというところはあります。抗菌薬の使用の中身、質としては、要らない処方の率は減ってきているということなのですが、でも、それを推論すれば、やはり感染対策をコロナ禍中でしっかりやることによって、恐らくは急性気道感染症の患者さんは相当に減った。少なくとも病院に来られる方は減った。それが恐らく抗菌薬の処方数の低下に関係があったけれども、人々の行動が変わって、我々が今経験しているように、急性気道感染症がかなり流行し始めるようになると状況がもとに戻ったのではないかということを想像しております。
ということで、もう一つ課題としてあるのは、WHOの定める、いわゆるAWaRe分類であります。Access抗菌薬の比率、WHOは60%を目標と言っております。これが妥当かどうかというのはまた別の議論ですが、現状、日本はまだ60%には届いていないというところでございます。
次お願いします。
注射薬に関してですけれども、こちらは病院でほとんど使われていますので、そこを見ていくと、注射用抗菌薬、カルバペネム、こちらは実は少しずつですが、減ってきております。ただ、第3世代のセファロスポリンやβラクタマーゼ配合のペニシリンは増えているというのが日本の状況であります。
次お願いします。
ということで、抗菌薬の適正使用の課題なのですけれども、使用量、反転して増えてしまいました。一方で、注射用抗菌薬全体の使用量はほぼ横ばいですが、ターゲットにしているカルバペネム系の使用量は下がってきている。Access比率はWHOの目標とは日本は相当に開きがあるというところです。
対策はでも、シンプルだと思います。基本的には抗菌薬の要らない処方を減らす、上気道感染症、下痢症で不必要な抗菌薬使用をさらに減らすというところと、既にこれは感染症部会でも決定しておりますが、手引きの中で歯科領域も組み込んでさらに不要な処方は減らしていくということが考えられます。
次お願いします。
国際協力に関してはもう既に御紹介がありました。日本は2016年以降の動きであるアジア太平洋ワンヘルス・イニシアティブ(ASPIRE)のもとに、東京AMRワンヘルス会議を行っています。先週ですかね、ちょうど日本で会議が行われたところで、島しょ国、島の国の方もたくさん来られて、厳しい環境を大分聞かせていただきましたけれども、その中で本気でAMR対策を進めるにはどうすればいいかということに関してかなり真剣な議論が交わされました。
次お願いします。
最後は私からの現場に近い人間としての提案であります。課題は何かというところでVREのお話も出ておりますが、もちろん問題です。ただ、疾病負荷の大きさという意味ではやはり黄色ブドウ球菌とフルオロキノロン耐性菌の問題は日本では非常に大きいと思っていますし、なかなか改善が見られていません。
次お願いします。
ではどうすべきかという話です。MRSAに関してはそういう状況なのですが、英国のように、特に病院を中心とした対策とインセンティブをつけることによってしっかりと減らしたという国はありますし、日本でも、コロナ禍の中で内服抗菌薬の使用量が著明に下がった時期には新規でMRSAの発生率は下がったというところも、これは因果関係は別として事実としては見られています。これをどう捉えていくかというところです。
次お願いします。
フルオロキノロン耐性の大腸菌に関しては、日本ではずっと問題なのですが、先ほどと同じコロナ禍の間には、このフルオロキノロン耐性菌の増加傾向が止まったというところがあります。これは素朴に考えれば、内服の抗菌薬の適正使用を進めていった、そしてコロナ禍でそれが増強されたということの、恐らく、推測でありますが、因果があるのではないかと考えられるところであります。
次お願いします。
何を言いたいかといいますと、ターゲットはやはり明確に定めたほうがいいのではないかということです。手前みそで大変申し訳ありませんが、もう20年ぐらい前に、自分が前の勤務先にいたときに、MRSAの保菌例、感染例が大変多くて難渋したときに、病院全体でキャンペーンを張って、抗菌薬の適正使用をしっかりとやって、そうすると、MRSAの菌血症のいわゆる累積罹患率が下がっていったというところがありました。ゼロの月も出たというところです。
ですので、要は目標を明確にして、そこに対して資源を集中して対策をするということを全体の戦略として取り入れてはどうなのだろうかということを言いたかったところであります。
次お願いします。
というところで、これは最後ですけれども、あくまでこういうやり方もありますという御提案ですが、やることを非常に絞り込むというか、明確に示す。1つは、不必要な抗菌薬の使用は減らしましょうと。それもメッセージとして一般の方にも強く強く伝える、医療者にもそうです。そうすれば、MRSAですとか薬剤耐性の大腸菌のいわゆる減少にも寄与するだろう。特にMRSAは市中での問題が非常に大きいですので、抗菌薬の適正使用との関連は大きいと思います。
例えばMRSAを減少するための国民的なキャンペーンをやってはどうか。ゼロMRSAなんて言い過ぎかもしれませんが、ちょっと言い過ぎなぐらいが皆さんびっくりされていいのかもしれないと思っております。ということで、明確なターゲットを定めて、メッセージを明確にしてはどうかということの御提案でございます。
ということで、私からは以上でございますが、先生方、御意見、御質問いかがでしょうか。
川名先生、お願いします。
○川名構成員 日本薬剤師会の川名です。大曲先生、丁寧に御説明いただき、ありがとうございます。
日本薬剤師会では、キャンペーン、啓発活動が始まった頃から、患者さんや地域の住民向けに啓発のキャンペーンをしておりまして、薬局にポスターを貼ったり啓発資材を配布したりということをやっております。そのキャンペーンの文言が、最初は、抗菌薬が効かないとか、耐性菌イコール怖いというようなイメージを植えつけるようなものだったので、薬局で、医師から抗菌薬が処方された患者さんがいらっしゃる場にポスターを貼るのはちょっとためらわれるような状況がありました。しかし、ここ数年の「ウイルスに抗菌薬は効きません」という文言が非常に分かりやすくて、コロナ禍で患者さんもウイルスと細菌は違うのだということもよくお分かりなので、同じ文言で続けていくほうがしっかり伝わるのではないかという感覚を私は持っております。
先生の最後のスライドで、MRSAを減少するための国民的キャンペーンということをおっしゃっていますけれども、これも一般国民の方に向けて発するメッセージというのは、「ウイルスに抗菌薬は効きません」ということで続けてよろしいのでしょうか。それとも、もっとほかの文言をお考えなのでしょうか。お聞かせいただければと思います。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。最初におっしゃっていただいたメッセージは、実は我々も一番効くのではないかと思っておりまして、サポートいただけて大変うれしいと思いました。
2点目のMRSAを減らすときの特に一般の方々向けのメッセージは、実はまだいいメッセージを思いつけていません。医療従事者向けには経験もありますしいいのですが、一般の方向けにどうするかというのは、また専門の先生方の御意見を伺いたいなと思っています。
ただ1つ言えるのは、一般の方向けのメッセージはやはり行動につながるべきものだと思っているのですね。そういう意味では、では私は何ができるのですかというときに、こうしてくださいと言えるような内容を今探しているというところです。そういう意味では、先生がおっしゃった「風邪に抗菌薬は効きません」というのは、実は1つ候補ではないかと私は思っています。
○川名構成員 ありがとうございます。例えば薬剤師は高齢者施設にも行きますし、薬局の窓口では一般の比較的健康な方の一般用医薬品のお買い物で接点とかいろいろあるのですけれども、高齢者施設で耐性菌怖いというイメージを植えつけてしまうと、そこにいらっしゃるヘルパーさんや介護職の方々の中には、医療の知識が十分ではない場合もございますので、耐性菌保菌者への差別や入所拒否のようなことにつながってしまうのではないかという不安があって、相手を見て臨機応変にメッセージを伝えられるようになりたいなとは思っています。
ただ、おっしゃるとおり、一律に広域に伝えるメッセージとしては引き続き、「風邪に抗菌薬は効きません」、また「ウイルスに抗菌薬は効きません」ということを続けていきたいなと思っております。どうもありがとうございます。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。差別の話とか、怖がらせないというのはすごく大事だと思いますので、本当に御示唆いただきましてありがとうございます。
八木先生、よろしくお願いします。
○八木構成員 大曲先生、様々な活動の結果と、今後の目指す方向性についてもお話しいただき、どうもありがとうございます。1つ確認と、もう一つはちょっと御質問になります。
1つは、病院の中での注射用の抗菌薬の件です。カルバペネムですね。今回、AMRのアクションプランでも目標にしていただいたということもありますし、我々もカルバペネムスペアということで頑張って、確かに減っているのです。ここで、先生が示されたスライドで、例えば第3世代のセファロスポリンが代わりに増えているとか、あとβラクタマーゼ阻害薬配合のペニシリンが増えているというのは、例えば第3世代セファロスポリンであれば、セフトリアキソンのような緑膿菌活性もないような第3世代のセファロスポリンもひっくるめてそうなっているかということと、同じように、βラクタマーゼ阻害薬配合のペニシリンであれば、ピペラシリン/タゾバクタムだけではなく、アンピシリン/スルバクタムなども入ったデータと考えていいでしょうか。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。先生お察しのとおりでして、3世代のセファロスポリンも、βラクタマーゼ配合のいわゆるβラクタムも、両方とも抗緑膿菌作用のあるものとないものが混ざっているのですね。ただ、傾向としては、第3世代のセファロスポリンに関して言えば、もう圧倒的にセフトリアキソンの占める比率が高いところです。
○八木構成員 あともう一つは、MRSAを減らそうというのには非常に僕も賛成なのですけれども、この指標として、要するに保菌も含めた検出を減らすのか、先生のデータでも示されたかと思いますが、MRSAによる感染症を減らすのか。MRSAでなくても、黄色ブドウ球菌全体でもいいと思いますが、感染症の症例を減らすのか。いわゆるVREは、今回は感染症の届出の人の数を減らそうということになっていますけれども、MRSAも具体的にそういった届出はないわけで、参考にはできないかもしれないですが、減らすというときに、これはどちら、感染症の症例を減らすというターゲットの考え方をしたほうがいいのか、保菌の人を減らすというふうに考えたほうがいいのか。非常にこれぐらいポピュラーになった、我々も努力して、病院の中では少しずつ減りつつあるのですけれども、やはりそれを一気に減らすということはなかなか難しいところもあるかと思います。しかも、保菌を減らすということと感染症を減らすということはアプローチの仕方が少しまた変わってくるのではないかと思いまして、ちょっと御質問させていただきました。
○大曲委員長 ありがとうございます。これは、正直、専門の先生方に御議論いただいたほうがいいかなとも思うのですが、私個人の意見としては、感染症を減らすと絞ったほうがいいと思っています。自分が対策を行った経験上、保菌例を入れてやるとどこまでが保菌か、感染かとか、人によって判断が変わり得るという議論が生じるのは非常に困りました。あとは、対策を行ったら、本来はかれるものは感染症なので、感染症をターゲットにして、それを減らすというふうにするほうが判定もしやすいし分かりやすいと思ってやったというのが事実です。
実は私たちも菌血症をターゲットにしたのですね。ですので、一つのやり方としては、そういうことがあったということは御紹介できると思います。
○八木構成員 感染症をターゲットにするという意味では、私も先生と同じ意見です。ありがとうございました。
○大曲委員長 ありがとうございます。舘田先生、よろしくお願いします。
○舘田構成員 舘田ですけれども、大曲先生、ありがとうございました。先生方の活動を見させていただきながらちょっと勇気づけられたのは、先生、最初に診療所における抗菌薬の処方のパターンが変わってきているというあのデータですよね。60%から70、80%に変わっているわけですよ。あれは非常にやはり大きいですよね。だって、外来レベルでの薬の処方が、やはりここが耐性菌をつくる。さっきありましたけれども、今は耐性菌は市中感染型ですよね。市中感染型のMRSAもそうですし、ESBL産生キノロン耐性もそうですけれども、市中でつくられて、それが広がりながら病院に入ってくるというものですから、これはさっきの60、70、80%に開業医の先生方の処方パターンが変わってきているということは、先生方の活動の大きな成果だと思いました。
そのときに、さらにそれを進めるときに、例えばそういう開業医の先生方の処方のパターンが変わったときに、市中での耐性菌がどのようになっていったのかということを併せて見ていく。我々、開業医のレベルの処方のパターンが変わることによって、市中感染型の耐性菌がこのように減っているのだというデータとつなげてあげることによって、モチベーションも高まるでしょうし、そのデータを国民にフィードバックしていくということですけれども、そのときに、さっきのグローバルのワンヘルスという視点とともに、やはり多職種ですよね。だから、それは医師だけでなくて、薬剤師の先生方、検査技師の先生方、みんなの視点でそれを教育啓発につなげていくような、うまくそれを使っていくということが大事なのかなあと思いました。ここはだから、そういう意味では、先生方、これはアクションプランの効果が市中の診療所レベルで出てき出しているのだということは非常に大きい。でも、なかなか難しいですけどね。ここからは。
それともう一つ、先生がおっしゃったMRSA、僕たちはMRSA菌血症ゼロと言っていますけれども、MRSAの菌血症、これは病院の中ですよ。MRSAの菌血症ゼロはできるのですよね。今回の環境感染学会でも一つのテーマがMRSA菌血症ゼロですから。それは、半分になり3分の1になりというので、これは医療の現場だけだからある意味やりやすいですよね。もっと難しいのは市中ですけれども、今問題なのは、市中で広がってしまったのが逆に病院の中に市中から入り込むというところ、そこをどうやって抑えるのかということがなかなか難しいですけれども、確実に僕は成果が得られているようなデータだと見させていただきました。ありがとうございます。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。いや、本当にそうで、市中の問題にどう切り込んでいくかというのは難しいなと思っていまして、先ほどメッセージもどうするかということで御指導いただきましたけれども、しっかりと検討してやりたいと思います。ありがとうございます。
白井先生、よろしくお願いします。
○白井構成員 白井です。お礼と感想になりますけれども、先生方の活動の中で、地域保健総合推進事業という保健所長会が協力させていただいているAMR対策のワークショップとかですが、毎年本当に保健所の数というか、参加数が増えておりますのでさらに続けていきたいと思いますし、全国レベルでやっておるのですが、地域単位でもブロックでもそれぞれできるようにと思っておりますので、また御指導いただければと思います。御協力ありがとうございます。
もう一つ、ちょっと現場でというか、私どもの管轄の病院でCREが少し出たときに、地衛研とも関係していろいろ検討会をしたところなのですが、先生のスライドの10ページの中に手指衛生のところが、2021年、22年は上がっていましたけれども、2023年、ちょっと横ばいと言いながら少し減っているかなというところが気になりました。その医療機関でも、コロナのときは手指衛生をやっていたが今、院内全体を見回してみると、ちょっと緩んでいたという言い方は変ですが、関心がちょっとまた低下してきたのかなという印象がありましたので、引き続きやらないといけないと現場のほうでもおっしゃっていましたので、手指衛生は方法論の一つではあると思いますけれども、そういうところも現場というか、保健所もいろいろ病院の指導なんかでもお願いし続けていきたいと思っております。ありがとうございます。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。研修会、引き続き何とぞよろしくお願いいたします。あと、手指衛生の件は、私どもの職場のミクロのレベルで見ても全く同じような状況かと思っておりますので、その辺はまたしっかり全体でやりたいと思います。ありがとうございます。
坂本先生、よろしくお願いします。
○坂本構成員 大曲先生、御説明いただきましてありがとうございました。2つコメントなのですけれども、1つは、また繰り返しになってしまいますが、やはり診療報酬に誘導されるような形で地域の中核病院が今、クリニックですとか高齢者介護施設と連携を強めております。そうした中で、やはり抗菌薬の適正使用についてどのような形でデータを共有するのか、先生がおっしゃっていたとおり、それをどう活用するのか、助言をどう求めていくのか。助言を求められたほうはどう提供していけばいいのか、あるいは助言すら求められないときにどう介入していけばいいのか、そういった具体的な連携を促進するための工夫といいますか、手段に関して何か勉強会、あるいは資料を提供するような形での支援があるといいのかなと常々感じております。
もう一つは、先ほどMRSAのことで感染症を防いでいくというところに焦点を当てるというお話がありました。そのためには、中核病院において特にカテーテルによるものを中心とする血流感染ですとか、手術部位感染の予防を通して菌血症を防いでいくということになっていくかと思います。ただ一方で、保菌が起きてしまうとどうしても、御存じのように、感染症を起こすリスクが高まりますので、保菌自体も同時に防いでいくということが非常に重要になってくるかなと思います。
地域でこれをどうするか、なかなか私もよく分からないのですが、少なくとも医療機関や介護施設の中では保菌を防いでいかないといけない。そうしたときに、手指衛生といって基本的な対策の実施率をいかに上げていくかというところが鍵になってくるかと思います。こうした取組を客観的に評価するのはなかなか難しいところがありまして、先ほど、手指衛生の実施率、J-SIPHEのほうから、60%前後というのが出てきていましたけれども、同じ条件で見て上がってきているということであれば、確かに実施率は上がっているのだろうと思いますが、実際に測定の仕方によって結果がいかようにも変わるというのがこの手指衛生の評価の難しいところでして、さあ見ますよといって見た場合、分からないようにして見た場合で、かなり数字が変わる。この辺りをどのように評価していくのが現状をなるべく正確に反映することにつながるのかという検討も今後必要ではないかと感じております。
コメントのような形になりましたが、以上です。ありがとうございます。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。まず1点目は全くおっしゃったとおりでありまして、正直いうと、診療所というか、外来診療における感染症の質の指標って実は余りコンセンサスがなくて、それはむしろ事実を積み重ねて、日本でつくっていったらどうかみたいな議論はしていたところだったのですね。やはり世の中の動きは早くて、診療所版のJ-SIPHEのほうが先に動いたというところはあります。
ただ、その中でも、そこは地域連携でお話を伺うと、例えば、さっきの話に戻るのですけれども、風邪の患者さんには、うちは余り処方してませんよと。そういったところは頑張っているのだから、そういったところだったら比べられてもいいのではないかみたいな意見が聞こえるようになってきて、あります。ですので、そうしたところもちゃんと伺いながら、まず処方をしっかりと決めて、実践をして、その上で、その成果をなるだけ早く教育活動という形で還元を、お伝えしていくというふうにつなげていきたいと思います。ありがとうございます。
あと2点目も、坂本先生に僕から何か申し上げることは全然ないのですが、評価の仕方で全然変わってくるというのは我々現場でも非常に感じるところでありまして、そこはやはり課題だとも思っています。ここも、数字の信頼性を高める上でどうするかという点で、この点もしっかりまた取り組みたいと思いますので、また御助言のほどよろしくお願いします。ありがとうございます。
○坂本構成員 ありがとうございました。
○大曲委員長 高野先生、お願いします。
○高野構成員 高野ですけれども、今の先生方の御意見とかなりかぶってしまうのですけれども、申し訳ございません。
加算連携施設の支援というのは私もすごく必要だと思います。外来の診療所の先生方が処方しないと患者さんが逃げていってしまうのが事実だということは今でも言われますので、そういうことを言われたときに、連携している加算1の施設としてどのように支援していったらいいのかというところはかなり迷っております。、診療所と加算1の両方に対して支援をしていただけるとありがたいと思います。
そして、大曲先生が提示してくださったMRSAとフルオロキノロン耐性大腸菌に対するターゲットを絞ってはどうかということに私も賛成です。たくさん耐性菌についての課題がありますが、やはりどこででも身近な問題として捉えられないとせっぱ詰まらないのかなと思います。カルバペネマーゼ産生菌は本当に命に関わるようなところはあるけれども、MRSAのほうがもう少し身近にどの施設でも問題になっているのかなということを考えると、MRSA菌血症を減らすということは本当に大事なことですし、先ほど坂本先生もおっしゃったように、保菌率を下げないとMRSA菌血症は絶対下がらないと思いますので、そこのところを十分理解しながら課題に取り組んでいけばいいのかなと思いました。
手指衛生遵守率のことですが、自分自身はこれまでJ-SIPHEの公開データしか見ていませんでした。、公開データでは入退室時のデータしかありませんでしたので、余り意味がないのではないかとおもっておりました。申し訳ございません。、今、J-SIPHEのほうでもかなり苦労しながらいろんなデータを検討されているということで、昨日実施されたの説明会で伺ったのですけれども、5つのタイミングはもちろんのこと、使用量調査についても患者一人あたりの使用量算出など検討されているようでした。このデータを登録する医療施設はかなり膨大な労力と時間をかけて出しているデータです。、精度的には評価指標としていかがなものかというところも確かにありますが、その取組をしようという施設がまず増えることもとても大事なことだと思いますので、5年後にとても重要なデータになったと言えるといいかなと思います。ありがとうございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。御指摘いただいた点、今のところ、明確な答えは全然持っていないのですけれども、でも、そこはしっかりと超えるべき課題だと思っておりますので、しっかりとやっていきたいと思います。1点目のところは、特に診療所の先生方の置かれたジレンマというのは我々も身にしみて感じるところでありますので、それを感じずに進められるような対策というものをお示しできるようにしたいと思います。ありがとうございます。
山野先生、お願いします。
○山野構成員 大曲先生、ありがとうございます。非常にうまくまとめていただいて分かりやすかったのですけれども、抗菌薬の使用量について少しお伺いしたかったです。今回お示しいただいたように、先生方の意識というのは着実に変わっていて、不適切な使用は減る一方で、やはり人流の影響ですか、多分、来院する患者さんの数とかにもよって、また逆に増える部分もあるというところで、そのバランスというのは非常に難しいと思います。その辺りを考えた場合に、どのぐらいまで減らすのが適切なのかという目標値の設定というのがすごく難しいと思うのですけれども、その辺り、何か解析する手だてがありそうなのか、何かそこについてアクションできるところがあるのかどうかについてはいかがお考えでしょうか。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。これはうまくまだ問題として定式化できていないのですけれども、特に今が一番難しい時期だと思っています。恐らくコロナ禍の中の感染防止対策が明けたという状況で、素朴な言い方をすれば、多くの感染者、特に気道感染症を含めてですが、動態が全然変わってきてしまっているところがあるのだと思います。ある意味、ちょっと普通ではない状況にあるといいますか、だと思います。
恐らく、数年か、もうちょっとかかるのかもしれませんが、たてば、新たな意味での定常に近い状態になるのではないかと想像はするのですね。ですので、今がどういう状況なのかということと、今後どうなるかということを見定めた上で、それらを考慮しながら抗菌薬の販売量なり使用量なりの適切な値、あるいは目標値というのを本来定めるべきなのだろうと思います。
だから、そこに関してはまだデータが終わっていないところもあるのでなかなか難しいところであるのですが、我々の疫学のチームでもそこは大きな課題として今取り組んでいますので、現状明快な答えはないのですけれども、しっかりと皆様方に、状況としてでもこうであると説明ができるような統計は出せるようにしていきたいと思います。
○山野構成員 ありがとうございます。多分このアクションプランの5年の間にはその辺り、クリアーにならないと思うので、今設定している目標との乖離というのは出そうな気もしました。何かいい形で解析、メッセージが出せればいいかなと思ってお伺いしました。ありがとうございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。その課題、御指摘いただいて本当にありがとうございます。
松本先生、お願いします。
○松本構成員 ありがとうございます。御説明いただきまして、大分理解が進んだと思います。
教育・啓発上のことを、一般国民向けと医療従事者向けの2つにターゲットを絞っていただいていると思うのですけれども、その間のターゲットにあたるような、一般国民でもなく医療従事者でもない、例えば介護職員だとか、保健所でも感染症の予防計画を立てて、いざというときに助けに来てくださるような本庁の事務職員だとか、そういった方への教育・啓発も必要だと思います。感染症に向けては、医療従事者ではないのだけれども、かなり基本的なところは知っておかなければいけないというメンバーも増えているのではないかと思うのですけれども、一般国民と医療従事者の間の層に向けての教育・啓発について、何かお考えがあったら教えていただければと思います。
○大曲委員長 ありがとうございます。まずは、教育・啓発、あるいは参加していただくターゲットとしてはすごく大きくて、非常に重要な方々と思っています。ただ、お伝えする内容自体はある程度すぐに絞り込みはできるだろうとは思うのですけれども、あとは、お伝えする場をどう設定するのかということと、僕ら自身困っているのは、でも、やはり忙しい、負担も大きいという中で、さらに教育ですかみたいな話になると非常によくないとも思っています。ですので、これらをもろもろ考えながらどう活動を実際に進めていくかというところが非常に難しいと思っています。そういう意味では、具体策はまだ編み出せてはいないのです。
ただ、先生もお話しいただいたように、感染症の予防指針の中にも、AMR対策がもうしっかりと入りましたので、これを旗にしてそういう、一般の方でもない、専門の医療職ともちょっと違うという方々にアプローチする理由といいますか、根拠ができたとも思っていますので、少なくともそれはあるので、またしっかりアプローチの仕方を考えていきたいと思います。そういう意味では、先生、具体策をまだお伝えできるわけではないのですが、またお知恵をいただければと思います。ありがとうございます。
先生方、よろしいでしょうか。
それでは、時間もありますので先に進めたいと思います。1つ議題があります。議題2、MDRP感染症の名称と届出基準、これは前回からの議論でありますけれども、こちらに関して、まずは事務局から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○上地補佐 よろしくお願いします。スライドお願いいたします。
まず初めにこれまでの経緯をお示ししておりますが、第9回のAMR小委員会並びに第92回の感染症部会において国内のMDRP感染症の議論が行われたところでございます。その際、全数把握疾患とするという点については全委員から御同意を得たところでございますが、届出基準等については引き続き検討が必要と判断されたという点で残ってございます。
AMR小委員会の委員の先生、そして感染症部会の委員の先生からの御意見についてはスライドにお示ししているとおりでして、本日の論点としては、スライドの下段に示す3つを挙げさせていただいております。
次、お願いいたします。
まず1つ目に日本語名称の変更についてという点でございますが、薬剤耐性緑膿菌感染症は、感染症法施行規則第1条に規定する5類感染症であり、Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosaとされております。現在の「薬剤耐性」という日本語名称は、医療現場で誤った認識を招きやすいという点から、症例上の名称を英語表記にならって「多剤耐性」緑膿菌感染症としてはどうかという点がまず1点目でございます。
次、お願いいたします。
2点目に、届出基準における各抗菌薬の耐性基準の変更についてということで、MDRP感染症の届出基準と国内で広く使用しているCLSI、海外の基準になりますけれども、こちらの基準が一致しておらず、臨床現場で混乱を生じているため、現在の届出基準における各抗菌薬の耐性基準をより新しい、2019年以降ということで御提案させていただいておりますが、より新しいCLSIの基準に変更してはどうかといった点を挙げさせていただいてございます。
スライド下段には、例といたしまして現行のMDRP感染症の届出基準の耐性の基準と変更案、2019年以降の基準案をお示ししております。
次、お願いいたします。
3つ目には届出基準の対象抗菌薬の変更についてという点で、国のサーベイランスとしては、治療がより困難となるMDRP感染症の制御という点、そしてカルバペネマーゼ産生など薬剤耐性株の伝播を防止するという観点から、全数化に伴い、以下の対象抗菌薬を基準(案)としてはどうかということで挙げさせていただいております。
ただし、今回の基準としましては、DTR、難治耐性という基準をベースとして提案させていただいておりますが、このDTRという基準は国際基準でいうMDRの中に含まれるものでございますので、日本語名称としては多剤耐性緑膿菌感染症、そのままとさせていただきたいと思っております。
具体的な案としましては、DTRをベースに、セフタジジムもしくはセフェピムに非感性、かつ、メロペネム、フルオロキノロン系抗菌薬に非感性を示す株として御提案させていただいてございます。
また、スライド下段のほうに※印でお示ししておりますが、このDTRをベースとした基準案に加えて、カルバペネマーゼ産生などの薬剤耐性株の伝播を防止するという観点を強化するために、CRE感染症の届出基準と同様に、この薬剤感受性試験の結果が上記DTRの基準を満たさない場合であっても、カルバペネマーゼ産生又はカルバペネマーゼ遺伝子が確認された場合に届出対象としてはどうかという御提案をさせていただいてございます。
次、お願いいたします。
スライドには、届出基準(案)についてメリット、デメリットをお示ししたものであり、最後に届出の負担という点でまとめさせていただいてございます。
最後のスライドは、国際基準におけるMDRとDTRの基準を御参考までに掲載しております。
以上でございます。
○大曲委員長 御説明ありがとうございます。前回、幾つか論点が出てきたところを踏まえての、名称と、あとはいわゆる基準ですね。CLSIの最新のものにそろえるというところと、また対象薬の組合せ、DTRという基準が今国際的にありますので、それの採用というところで御提案いただいているわけでございますが、この案に関して、先生方、御意見いかがでしょうか。
八木先生、お願いします。
○八木構成員 どうもありがとうございます。まず名称については、やはり多剤耐性とはっきり言ったほうがいいかと思います。1番の名称変更については賛同いたします。
2つ目の届出の抗菌薬の耐性基準も、日本で使用することのCLSIの基準にそろえて、これも耐性ですので、耐性となったものの基準で行うというふうにしたほうがシンプルではないかと思います。
DTRについては、例えばカルバペネムの薬はメロペネムで代用するとか、第3世代、第4世代が非耐性になってくれば、タゾバクタム、ピペラシンなんかも耐性になることが多いということで外すのはいいのですけれども、アズトレオナム(AZT)は構造上もちょっと違うかなと思いますし、実際、その現場で使用している自動分析装置の一つのパネルにAZTが載ってないのが結構あるということであれば、これはなかなか大変かと思うのですけれども、そうではないと思いますので、DTRを名乗るのであれば、やはりAZTは少なくとも入れておいてもいいのではないか、アミカシンは入れないにしても、AZTは入れておいていいのではないかと私は個人的には思います。
それから、カルバペネマーゼの産生をちゃんと見てくれということで、これはCREというか、カルバペネム耐性の腸内細菌目細菌の治療を考える上でもきちんとカルバペネマーゼの産生しているものであれば、カルバペネマーゼの種類を踏まえた治療をしたほうがいいというのが外国のガイドラインでもありますし、日本でも浸透してきていると思いますけれども、そのカルバペネマーゼ産生の検出が簡単な、今ここにあるイムノクロマト法だと、例えばNGtest CARBA5とか、ああいう非常に便利なのがありますので、残念ながら、まだ保険収載がされていませんので、併せて、こういった感染対策上、または治療上で注意喚起が必要だということであれば、そういったものも保険収載していただけるような方向で考えていただけるとありがたいかなと思います。
以上です。
○大曲委員長 八木先生ありがとうございます。AZT、アズトレオナムの件はほかの先生方の御意見もちょっとまた伺ってみたいと思います。四宮先生、お願いします。
○四宮構成員 全数化に関しては、菅井先生のご説明もありまして、前回の会議でも皆さん賛同されたということでよろしいと思います。平成29年に、CRE、VRSA、VRE、MDRAに関しては、これらの全数把握薬剤耐性菌感染症の届出があった時点で、菌株を地方衛生研究所に提出して、詳細な耐性遺伝子の検査等を行うという通知が出ていますが、今度多剤耐性緑膿菌が全数に移行するということになると、菌株提出の対象になると思うので、その辺の通知も併せて検討いただければと思います。
名称に関しては多剤耐性緑膿菌でよろしいと思います。届出基準の変更等は薬剤耐性のご専門の先生が提案されている基準でいいと思いますが、一点、前回のCREの基準変更のときにメロペネム基準を必ずしも満たしていなくても、カルバペネマーゼの産生またはその遺伝子が確認されることでもいいということになって、それに準じて多剤耐性緑膿菌もそのようなご提案が今回ありました。CREの時はカルバペネマーゼの検出方法は書かれていませんでしたが、今回はイムノクロマト法による検出が指定されています。いわゆる抗原検査、イムノクロマト法は簡便ですが必ずしも精度は高くなく、COVID-19のイムノクロマトは3割程度が偽陽性ですし、最近問題になっている百日咳菌のイムノクロマトでは約4割も偽陽性となっています。さらに、多剤耐性緑膿菌の届出基準の感受性検査は、CREのメロペネム1剤と違って、今回の提案でも5剤の抗菌薬が感受性検査の対象になっているわけですから、その検査が全て感受性であっても、イムノクロマト単独の結果のみで届出できるというのは、CREと場合と同じではないと思います。イムノクロマトの精度を考慮して、CREと同じ扱いではなくてもいいのではないかと思います。
以上です。
○大曲委員長 ありがとうございます。ある程度先生方の御意見を伺ってから、適宜事務局の御意見を伺ってみたいと思います。では舘田先生、よろしくお願いします。
○舘田構成員 ありがとうございます。ちょっと教えてほしいのですけれども、せっかくですから、荒川先生もいらっしゃるし、菅井先生もいらっしゃるから、これは治療学的に、ブレークポイントがある、ですから、それで耐性というところ、もちろんそうですけれども、ただ、日本は非常にCRE、CPEも少ない状況で今維持できているわけですから、ある意味、もう少し広げた形で早く見つけるということをやれるような国だと思うのです。
そのときに、例えばブレークポイントよりも少し低いけれども、MICは低いのだけど、このMICだったらほぼかなり高い確率でカルバペネマーゼを持っているよと、そのような領域があるではないですか。これは昔、そのようにやって学会でブレークポイントよりも低いところを見て、それで対策を取っていきましょうと、そのような提言も出したことがあるのですけれども、そういう視点で、例えばブレークポイントよりも、1環、2環ぐらい低い。だけど、普通、カルバペネムSを持たないと、そういうのはなかなかないというところであるならば、そのようなものを見つけて、そして適切な検査をやって、そして報告してくださいみたいな、ある意味、ほかの国ではできないような対策が取れるというところに関して、そのようなところも考慮していただくのはどうかなと思いました。すみません。ちょっと質問です。
○大曲委員長 舘田先生、ありがとうございます。今の御意見に関して、これはむしろ委員の先生方から何か御意見いかがでしょうか。
荒川先生、お願いします。
○荒川構成員 今、舘田先生が言われたことは非常に重要なポイントだと思いますね。それで、何のためのサーベイランスかということですけれども、CLSIのデータというのは治療のための基本となるデータだと思うのですね。感染症法でやっているサーベイランスは、これは発生動向というか、国内で特定の病原体がどのように増えているか減っているかを経年的に見ていくためのサーベイランスで、治療目的ではなくて発生状況を把握するということなので、CLSIのデータにそのまま乗っかってころころ基準を変えていくと、何を見ているか分からなくなってしまうのではないかということで、その辺のサーベイランスの目的をはっきりした上でどうするかというのを決めていかないとまずいのではないかなという気がしますね。
それで、実際問題として、これはJANISも、それから発生動向調査も2000年からスタートして、当時はPCRも余り使えない時代で、フェノタイプだけで耐性菌を種別して、特定の形質を示す、耐性を示す菌を経時的に把握していくということでスタートしたのですけれども、今いろんな検査法が開発されて現場でも使えるようになっているので、そういう新しい技術を導入してサーベイランスをより正確なものにしていくというのは非常に大事なことですけれども、感染症法で求められ、今続けているサーベイランスと、本来なら臨床現場でこの薬は効く、効かないかという基準は学会のレベルで、感染症学会とか加療学会とかいろいろ感染症の専門学会ありますから、そういうところでより詳細なものはつくって、CLSIのデータを、あるいは基準を参考にしながらやっていかれるのが大事だと思うのですけれども、感染症法に基づく発生動向調査では、先ほど舘田先生が言われたように、例えばメタロ-β-ラクタマーゼをつくる菌、あるいはほかのカルバペネマーゼをつくる菌であっても、ブレークポイント以下の菌は必ずいますね。そういうものは水面下で広がっていて、そこから時々耐性度の高いものが出てきたりして患者さんが感染症起こしたりするということを防ぐためには、やはり水面下にある部分もきちんと押さえていくようなサーベイランスでないと余り意味がないのではないかと思います。
特定のある一定レベル以上の耐性度を示すものを追いかけているだけではなかなか本来の目的を達成しないのではないかということで、その辺の工夫というのは非常に大事かなという気がします。具体的にどうしたらいいかというのは皆さん若い人たちで検討していただいて、新しく決めていかれるということで私はよろしいかなと思います。耐性菌の名前を変えるということは、私は大賛成で、より分かりやすい明快な多剤耐性という名前に変えていくというのは全然異論はありません。
お答えになったかどうかちょっと分かりませんけれども、そのような感想を今持ちました。
○大曲委員長 荒川先生、ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。
よろしいですかね。
白井先生が御退席されて、コメントを残されているので、読み上げます。
この案件については事務局案に賛同いたしますが、臨床現場に理解しやすいよう、基準の変更の意図と運用開始について医療機関や自治体への説明会をいただければ幸いです、ということで御意見をいただいております。御指摘ありがとうございます。
高野先生、お願いします。
○高野構成員 高野です。
私は、耐性基準の変更については余りコメントさせていただくことはないのですけれども、カルバペネマーゼ産生で、対象の抗菌薬が全部満たさなかったとしても、カルバペネマーゼ産生のものについて含んで報告するという点に関しては賛成です。抗菌薬適正使用に苦慮するという点では同等かと思いますので、賛成です。
以上です。
○大曲委員長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
中村先生、お願いします。
○中村参考人 検査の立場から少しコメントさせていただきたいのですけれども、昔の設定されたものを使っていくというのは変ですけれども、現場も、CLSIのそういったものが変わっていくと、やはり結果も変わっていったり、パネル自体が例えばその基準に合わなかったりするということもあると思うのですね。なので、どこかのタイミングで新規にしていただいたほうがより現場も、例えば合わせやすいと言ったらおかしいですが、現状のCLSIのほうに合わせていきやすいというのはあるので、何か議論するタイミングで変えていただくと、現場のほうもそのようなものを意識しながら測定するパネルなんかを変えていける部分もあるのかなとは思います。
名前に関しては別に多剤と変えていただいても問題はないかなと思いますが、現状このように基準が変わると検査室のほうは全部システムも含めて変えていかないといけないというのもありますし、もちろん検査室だけではなくて、検査センターさんなんかは恐らくかなりのシステム改修をしないといけないというのがあるので、変えるタイミングは早く各そういったところに広報してあげたほうがいいのかなというのは思います。
○大曲委員長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
よろしいですかね。
ありがとうございます。荒川先生のおっしゃった目的というのは非常に重くて、なるほどと思って伺っておりました。例えば舘田先生がおっしゃったように、言い方が適切かどうか分かりませんが、ある意味、碁盤の目がそろったというか、でき上がってしまった多剤耐性緑膿菌を探していくということが、そもそもそうしたものを生まないような対策とリンクするのかといいますか、防ぎたいのだったらもっと早い段階で補足するという考え方があるのではないかという御意見もありました。確かにそうなのですね。という意味で、目的にもよるし、それによって、恐らくこのCLSIの基準を入れながら運用していくかどうかというのはやはり変わるのだろうと思って伺っておりました。
そういう意味では、もう少し議論したほうがいいのではないかと思ったのが私個人の印象でありまして、委員の方々、事務局よろしければ、これは継続して少し検討したほうがいいのではないか。もちろん時間を無駄にかけるつもりはございませんが、そのような印象を持ちましたが、そういうことでよろしいでしょうか。
中村先生、お願いします。
○中村参考人 すみません、もう一点だけ。先ほどの例えば耐性になる前の菌をどれぐらい拾うことができるかという件ですけれども、フルレンジでMICをはかっているという施設はほとんどないと思うのですね。なので、CLSIのS以下を見つけるというのが現場は難しい薬剤もあるかなと思うのですね。はかっている薬剤もあれば、測定していない薬剤もあるので、設定していくときに、どういう薬剤設定のものを使っていてという調査は必要かなあとは思います。でないと、いきなり数字が出てきてもその数字はもう出せないとなると、現場が少し困るかなというのはあるので、下げていくのにはそこら辺も調査をしながら値を設定していただくというのがベストかなと思うので、その点も含めてちょっと考えていただけたらいいかなと思います。
○大曲委員長 ありがとうございます。先生がこの前おっしゃっていた、要は現場でそもそも測定能力あるのかという、そこもよく分からない点もあるということですものね。
四宮先生、いかがでしょうか。
○四宮構成員 私も検査機関からの補足なのですが、多剤耐性という名称になって、先ほどのご説明のスライド4、5だと、変更後は5剤の感受性を調べることになっていますが最終的に何剤に対してMICを含めて感受性検査を実施して多剤耐性緑膿菌として届け出るのかということです。薬剤数を増やして厳しくなれば、多剤耐性緑膿菌としてティピカルなものは届け出られますが、ボーダーになるようなものは落ちてしまうので、多剤耐性緑膿菌の届出基準はもう少し検討してもいいのかなと思いました。今日の資料でも最終的な基準ではなく、提案ということですので。
それから、CREのときに、感受性試験の結果を必ずしも満たさなくても、カルバペネマーゼの産生または遺伝子の検出があれば届け出るというB案を追加する形で最終的な届出案になったのですが、カルバペネマーゼ産生については、一般的にやられている Carba NPテストとかmCIMでは、カルバペネマーゼの活性を見ているわけですが、イムノクロマトの場合は活性ではなくて抗原性を抗体で検出する系で、病原体検査やっている立場としては、先ほど言及した百日咳の抗原検査とか、イムノクロマトの精度は高くないので、CREのときにはカルバペネマーゼ産生の検出方法は書かれていなかったのに、今回はイムノクロマト法による検出が指定されているのは、どういう理由でそうなったのか分からないのですが、5剤に対する感受性検査が全て感受性なのに、イムノクロマト単一の検査で陽性が出たら届けるということになると、それは少し総合的な判断が要るのかなということで先ほど言ったわけです。
以上です。
○大曲委員長 先生ありがとうございます。結果をそもそも信用していいのかという話ですね、そうすると。そのクロマトに関して。
○四宮構成員 例えば新型コロナだと、リアルタイムPCR検査と抗原検査の一致率は7、8割ですが、それでも大量の検査が必要なときには十分意味があるわけですけれども、多剤耐性緑膿菌感染症はそんなに多数出てくる感染症でもないので、それがために今度全数に移行するわけですので、そこの基準というのはやはり皆さんが納得するような形になったほうがいいのではないかと思います。
○大曲委員長 ありがとうございます。そのほか、先生方、よろしいですかね。
菅井先生、お願いします。
○菅井構成員 ちょっと補足してですけれども、今、四宮先生が言われた抗菌薬の数が今度増えてきているということですけれども、多分一番の今回の目的は、もともとMDRPですと、その基本と、それからβラクタムとアミノグリコシドという3つの薬に耐性でないということでMDRP、薬剤耐性緑膿菌というのが定義されていて、そうなると数がかなり絞られてきていて、臨床のことを考えるときに、そこまで絞ってしまうと、臨床の現場での肌感覚と合わなくなってきているということがあったというのはもともとの出発点だったと思うのですね。
それで、その上で、臨床現場でよく言われている、アミノグリコシドを外した中で、要するに治療に難渋するケースとして考えてきているのが今の基準になっている。それをさらにもう少し幅広に取るということになると、例えば我々がサーベイランスで行ったように、カルバペネム耐性の緑膿菌ということになります。そうすると、その中にいろんなものが入ってきていて、実際には、緑膿菌の耐性って、カルバペネマーゼというものももちろんあるのですけれども、今その貢献率というのはすごく少なくて、それよりも膜の透過性と蛋白のポリンのような形で排出ポンプのようなものが、いろんな種類がありますが、そういったものが欠損したりして複合的に6つ7つ8つとたくさん絡んできて、そのためにいろんな多様なのが出てきているわけですけれども、ではカルバペネム耐性の緑膿菌まで広げるかというと、今度、全数報告にすると多分莫大な数になってきて、これはちょっと実質的ではないだろうと。そこの中間点として実際の臨床現場で問題になっていることを勘案すると、多分このDTRの基準というのが落としどころなのかなと思って私は聞いていました。
その上で、もう少しこれを、先ほど荒川先生が言われていた、MICを下げたところでどうなっているのかというのは、例えば我々が取ったデータを持ち帰って解析すればある程度MIC値に関しては出すことができると思いますが、結構時間もかかる作業だと思っていて、その辺もどのように判断されるかというのは皆さんの御意見をお聞きしたいところであるかなと思いました。
感想ですけれども、以上です。
○大曲委員長 ありがとうございます。そのほかよろしいでしょうか。
○菅井構成員 あと、すみません。イムノクロマトについての精度というのは、今担当されている上地先生が多分よく御存じではないかと思って、上地先生、お答えいただいてもいいのかなとちょっと思いました。
○上地補佐 ありがとうございます。中村先生でもいいかなとも思ったのですが、私のほうからお話をさせていただきます。NGtest CARBA5は、バージョン1とバージョン2があったのですが、現在、日本にはバージョン2が入ってきている状況でございます。バージョン1では、IMP型のメタロ-β-ラクタマーゼの検出感度が若干劣るということで、改良されてバージョン2になって非常に高感度になっているものと承知しており、国内外で遺伝子検査法と遜色ないという報告がされていると思います。また、カルバペネマーゼの検出検査、mCIMとCarbaNPテストについて、臨床現場での利用を考えたときに、CarbaNPテストはほとんど使用されておりませんので、mCIMで緑膿菌のカルバペネマーゼを検出するということになるのですけど、その精度という点については精度管理などの課題があるものと考えており、国のサーベイランスとして届出基準に設定する場合に、やはり感度という点よりは特異度を重視するものと思っておりますので、イムノクロマトという選択をさせていただきました。
以上でございます。
○大曲委員長 ありがとうございます。よろしいですかね。
四宮先生、お願いします。
○四宮構成員 先ほどの発言に補足ですが、イムノクロマトも様々な製品があるのでなかなか一概には言えないと思いますが、先ほど言及した、百日咳のイムノクロマトは非常に非特異的なものを拾うということで、感染研からも注意するようにという報告が出ているわけです。特異度に関して、例えば適切にデザインされたPCRとかに比べて、イムノクロマトの精度がどの程度かという科学的なデータがあればいいのですが、百日咳での偽陽性に関する報告もあるので、あえてコメントしたわけです。
以上です。
○大曲委員長 ありがとうございます。よろしいですかね。
改めて伺っておりましたけれども、やはり目的の点と、それに関連するいわゆるブレークポイントといいますか、基準値の設定、それがそもそも基準値が設定されたところで現実的に、現場で適用可能かどうかというところと、今、御議論になりましたイムノクロマト法に関するところですね。幾つか、今日大分御議論ありましたけれども、そこはちょっと整理が必要というのが私の印象であります。ということで、こちらの件に関しては、今回は継続して審議ということにさせていただければと思います。御了解いただければと思います。よろしいですかね。
ありがとうございます。すみません。私が上手でなくて、時間過ぎてしまって申し訳ありませんでした。議題は以上でございます。あとは事務局にお返しいたします。
○時岡補佐 ありがとうございました。本日の委員、参考人の皆様の御意見を踏まえ進めさせていただきたいと思います。また、次回については事務局より改めて御連絡させていただきます。
本日はお忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございました。