第3回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事録)
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議事
○山川座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第3回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。皆様方、大変お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、前回まで御欠席されておられました田中克俊構成員が、オンラインで御出席されておりますので、御紹介いたします。田中構成員、どうぞ。
○田中(克)構成員 北里大学の田中と申します。産業精神保健の研究と教育を中心に行っておりますが、実際には身体障害者も含めた障害者の雇用支援の現場でやらせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○山川座長 よろしくお願いいたします。なお、本日は新田構成員が御欠席です。新田構成員の代理といたしまして、経団連労働政策本部統括主幹の阿部博司様に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
本日の研究会は、Zoomによるオンライン開催と会場からの参加と両方になっております。会場には倉知構成員、眞保構成員、田中伸明構成員にお越しいただいております。
開催に当たりまして、事務局から説明がございます。
○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局です。本日も、Zoomを使ったオンライン参加を頂いております。開催に当たりまして、簡単ですが、オンラインについて操作方法のポイントを御説明いたします。
本日、研究会の進行中は、皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言される際は、画面上の「手を挙げる」ボタンをクリックし、事務局や座長から発言の許可があった後に、マイクをオンにして、必ずお名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。Zoomの操作方法につきましては、事前にお送りしましたマニュアルを御参照ください。会議進行中、トラブルがありましたら、事前にお送りしております電話番号まで御連絡いただきますようお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合には、一時休憩とさせていただくこともありますので、御容赦いただきますようお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上です。
○山川座長 それでは、議事に入ります。カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。今回も、前回と同様に、関係者の皆様方からヒアリングを実施してまいります。本日は、5団体の発表者の方にオンライン又は会場で御出席を頂いております。議事次第にあります順で、各団体から10分程度のヒアリングをさせていただいた後、質疑応答の時間を10分程度取りたいと思います。最後に全体を踏まえた質疑を行います。各団体の皆様には、御提出いただきました発表様式に沿って御発表を頂ければと思います。大変恐縮ですが、進行の都合上、御説明時間が10分を経過した時点でベルを1回鳴らします。12分を経過した時点で2回目を鳴らしますので、その場合、意見のまとめに入っていただければと思います。
それでは、まずNPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会理事長の久保寺一男様、副理事長の加藤裕二様に御発表をお願いいたします。
○就労継続支援A型事業所全国協議会久保寺氏 A型事業所の全国協議会、略称を全Aネットと言います。本日は、私、理事長の久保寺と副理事長の加藤の2人で参加をいたしました。今回、ヒアリング項目を分かりやすく設定していただいたので、会員にアンケートを取りました。それを基に、資料を飛び飛び要点を示しつつ、団体の主張としたいと思います。
それでは、2ページを御覧ください。まず、ヒアリング項目(1)です。障害者の雇用の質についてです。1つ目の○の所ですが、労働契約を結んでいれば無条件に雇用率に算定するというのが現状ですが、労働者としての処遇ができていることを条件に、雇用率に算定できるようにすべきだと思います。労働の質を評価する方法を導入すべきということです。例としては、もにす認定を参考に、キャリアアップやステップアップに関する条件が担保されているとか、定着率、障害者の満足度調査等も必要だろうと思います。また、福祉施設で障害者が働く環境を提供するなどしている場合、例えば施設外就労や発注などの連携を一定評価すべきだと思います。
次のページの下から2つ目の○です。障害者雇用ビジネスの一層の拡大が予想されます。事業者及び利用企業について、インクルージョンの考え方を踏まえた留意点を示したガイドラインを設定し、指導すべきだと思います。
次のページで、ヒアリング項目(2)です。障害者雇用率制度についてです。マル1からマル4まで項目がありますが、マル2のみ、3つほどに分けて、会員にアンケートを取っております。まず1つ目のマル1ですが、手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置付けについてです。現行のままでよいというのが24%、医師の診断書で認めるということが46%、医師の診断書に加えて自立支援協議会等の第三者機関の了解が必要だというのが15%、合わせて61%が、医師の診断でという回答でした。そのほかの意見として、就労困難の認定基準を検討すべきというのと、福祉サービス受給者証を発行されれば対象にするという意見もあり、正論だと考えております。
5ページは、A型事業所やその利用者の位置付けについてです。これは、3つほど分けて聞いています。まず、A型事業所の障害者が法定雇用率の算定基礎に含まれている件についてです。A型事業所利用者は労働関連法規で守られている労働者であり、現行どおりでよいというのが41%、福祉の財源が投じられているのは福祉的支援が必要な障害者であり、B型事業所の給付費と同様なので何ら矛盾しないと、したがって、現行どおりでよいということが32%、合わせて73%が現行どおりでよいという結果でした。その他の意見の3つ目のポチの所です。A型事業所においては、障害者は雇用契約を結んで働いており、公的費用は福祉的支援に充てるもので、賃金は事業収入から支払われることが原則であることから、障害者雇用については企業と何ら変わりがない、これを除外することは公平性に欠けると考えるということです。
2つ目は、A型事業所に労働助成が支給されている件についてです。調整金、報奨金が主になると思いますが、これでいきますと、福祉と労働の2つの支援の原資になるので、そのままにしてほしいというのが73%ありました。我々の会員の意見と考えていいと思います。
3つ目は、A型事業所の利用者の在り方についてです。A型事業所の運営方針としては、多様性があります。大別すると、1つ目、一般就労に向けて努力している事業所、2つ目は、雇用を優先し高い賃金で地域生活を支援している事業所、3つ目は、重度障害者を労働者として処遇している事業所があります。それぞれ主張をもって運営をしていると考えております。したがって、A型事業所の役割を再定義すべきだろうと思います。その次の○の所は、スコアについてです。評価軸が主に労働時間と生産活動収支になっています。A型事業所とはどのようなサービスなのか、移行支援、A型・B型の違い等、不明瞭になっているのではないかと感じております。7ページです。発達障害者のグレーゾーンで手帳を所持していない人は、日本の貴重な労働資源である、現在、ほとんど活用されていないと、発達障害を主に支援をしている事業所から、切実な願いが来ています。それから、能力はあるが、企業では働くことが困難な障害者が多数いる。その障害者の能力を社会にいかすためには、A型事業所が必要であるということです。これは、全Aネットの活動の趣旨です。
3は、精神障害者において雇用率制度における「重度」区分を設けることについてです。これについても、表でお示ししました。精神障害者の重度設定は難しいので、現行のままでいいということが26%。ただ、医学的尺度でなく、実際どの程度働けるのかの尺度で判断してほしい、就労アセスメントの評価にしてはどうか、働きづらさの視点ですが、これが37%。福祉の障害程度区分を利用して、重度把握設定をしてはどうかが30%。合わせて67%が精神障害の重度の設定をしてほしいということでした。
8ページは、障害者の納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者が100人以下の事業所に拡大することについてです。これも、2つに分かれましたが、小規模事業主は障害者雇用が難しいので、現行のままでいいということが39%、ただ、雇用の義務と納付金制度は整合性を考えるべきであり、法定雇用率が適用される事業主全てに適用すべきだというのが50%でした。
最後は、ヒアリング項目(3)です。その他、障害者雇用を更に促進するため、どのような課題や対応が求められるかということです。まず1つ目の○です。企業で戦力として働ける障害者は、かなりの割合で既にもう働いている。法定雇用率への社会的共有量としての限界が近づいている。障害者雇用を雇用率で無理やり義務化を進めるのではなく、社会全体で働く環境を得難い人、生活困窮者や高齢者、外国人労働者等々、日本全体の労働力確保の視点からダイバーシティ政策としての福祉的支援(労働政策)を求められるということです。これについては、福祉のところに労働政策ということはよく言われるのですが、労働政策のところに福祉的支援という視点を、是非進めていただけないかと思います。
2つ目の○です。これから労働人口が更に減少していくことです。これは文言にないのですが、現行の一般就労ありきの制度で本当によいのかどうかということを疑問に感じております。
下から2つ目の○です。企業と福祉的就労の連携を強化する仕組みを整備すること。具体的には、企業就職後の円滑な習得や定着に資するため、福祉的就労施設において支援を受けつつ、実践的な職業能力を高めることのできる施設外就労や企業実習等を促進する必要があるということです。これは、雇用促進の連携強化のところで、確か雇用と福祉サービスの併給という話が出たと思いますが、復職ということ以外に、導入時に是非大胆に進めてほしいと思います。
最後になります。これは構成員の方に是非お願いしたいのは、法律のために障害者があるのではなく、障害者のために法律があります。法律のために障害者の生き方、働き方が決まるというのは、本来目的が逆に思います。是非、本質的なところの議論を進めてほしいと思います。私からは以上です。ありがとうございました。
○山川座長 大変ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表について、質疑応答に移りたいと思います。御発言のある方は挙手をお願いいたします。発言の際には、先ほどもあったようにお名前を言ってから御発言をお願いいたします。御質問等はありますか。倉知構成員、どうぞ。
○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。ありがとうございました。聞いていて、雇用促進制度の在り方というよりは、A型事業所の要望みたいに私は感じてしまい、違和感があったということを一言最初にお話をしておきます。
それから、今、話になかったのですが、資料の3ページの上から2つ目の○の所、LLP、事業協同組合のグループ加算の制度にA型事業所の加入を認めることについて進めるべきと。これはなぜ進めたほうがいいのか、その意義みたいなことを教えていただきたいのが1点です。
それから、かなり障害者雇用ということを強調されていたと思います。私は、それはそれで1つの考え方かなと思っていて、そうなると、むしろA型事業所という福祉的な事業所というよりは、障害者雇用の企業、雇用するための企業として位置付け直して、障害者福祉サービスから外して、いわゆる、いろいろな納付金や交付金の助成金などで対応するという考え方に近いのではないかなと感じたのですが、その辺りはどうでしょうか。
○山川座長 いかがでしょうか。
○就労継続支援A型事業所全国協議会久保寺氏 私からよろしいですか。まず、1つ目ですが、A型事業所だけではなくてB型事業所も含めてなのですが、やはり良質な仕事の確保が難しいということがあります。良質な仕事がないと、賃金、工賃が上がってこないということがあります。それで、事業協同組合の算定特例については、法律的に認められています。これをA型事業所の加入も含めてしていくことについては、確かに賛否両論あろうかと思いますが、ただ、要するに、働いている障害者が、ちょっと言葉がきついかもしれませんが、まともな労働をしているということが一番大事だろうと思うのですね。だから、いろいろな制度を活用しながら、現行、使える制度を使ってやっていくということが必要だという思いで、これは表記をしました。
もう1つ、今、倉知先生からありましたA型事業所の在り方そのものなのですけれども、やはり福祉的就労であることは必要だろうと思います。例えば特例子会社や一部企業で働いている障害者に合理的な配慮をして働いていくことは必要だろうと思うのですけれども、ただ、現実、本当にそれが大きな枠として実現可能かと言ったら、私にはとてもそうは思えないのですね。だから、もちろん就労選択支援事業で就労アセスメントもきちんとし、A型事業所を利用する人たち、真にA型事業所を必要とする人たちだけが利用するような制度にしていかなければいけないのですけれども、A型事業というのはこれからも必要だし、是非、この在り方について我々も提言をしていきたいなと思っています。以上です。
○山川座長 よろしいでしょうか。では、勇上構成員、お願いいたします。
○勇上構成員 御指名ありがとうございます。神戸大学の勇上と申します。
A型事業所の位置付けに関して御説明いただいた内容について、2点伺いたいと思います。1点目は、先ほど御説明いただいた5ページのアンケートの自由回答の3番目の箇条書の部分です。A型事業所においては、公的費用は福祉的支援に充てていて、賃金は事業収入からということで、後者の部分で言えば、一般の企業の障害者雇用と何ら変わりないということは、なるほどと感じました。一方で、先ほどの、非常に質の良い事業の確保が難しくなってきているとか、あるいは、労働者性がもちろん認められているわけですから、最低賃金が適用されている中で、最低賃金がかなり上がってきています。そうしますと、公的費用は福祉的支援に充て、賃金は事業収入から充てるということが、実際にどのように変わってきているのか。このことについて、現状、もし会員の事業所の状況が分かれば教えていただきたいということが1点です。
2点目は、先ほどの倉知先生のコメントにも関連するのですけれども、6ページでA型事業所の利用者についてまとめをされる中で、A型事業所の役割を再定義すべきであると結論としてお書きになっていると思います。実際にA型事業所の運営方針は3種類ぐらいあって、一般就労に向けて努力している事業所さんであるとか、幾つかあるとお書きになっています。そのうえで、先ほど倉知先生は、A型事業所を結局一般の障害者雇用の事業所と同じように主張されていらっしゃるのか?という御質問だったと思うのですが、最終的にこの再定義が、A型とB型と就労移行との区別を改めて見直すというお話なのか、あるいは、一般就労の障害者雇用の事業者として位置づけるということなのか、再定義の意味を教えていただけると助かります。
○山川座長 お願いいたします。
○就労継続支援A型事業所全国協議会久保寺氏 ありがとうございます。まず1つ目ですけれども、良質な仕事、それから最賃に関しては、確かに現状を運営していく上で苦労している事業所が多いわけです。したがって、良質の仕事を求めようとすると、必然的に施設外就労が増えるということがあります。施設外就労が増えていくことは、一般就労に結び付くということもあるので、私はいいと思っています。それから、最賃については、国の労働施策に、障害だけではなくて、大きく関わってくるので何とも言えないですけれども、ただ、一部余りにも高騰しすぎているので、障害関係については猶予をしてほしいという意見も出ています。
それから、A型事業所の在り方について、先ほど大別すると3つのタイプがあるとお示ししましたけれども、要するに、A型事業所を何のためにやるかというのが、それぞれ思いがあって始めているわけですね。特に6つ目の重度障害者を労働者として処遇というようなことは、はたから見ていると余りにも無謀すぎるのではないかと感じる事務所もあります、確かに。ただ、思いを尊重すると、できるだけ頑張ってほしいなと思うのですね。
そのA型事業所の在り方の定義なのですが、実はA型というのはサービス報酬費、要するにスコア評価に直結するわけですね。2つ目の○の所でお示ししましたけれども、労働時間と生産活動収支に偏っていると。これは、収支が赤字になると指定基準に違反をするということがあるのですけれども、それも含めて再定義が是非必要だと思っています。ただ、これは難しい、一つの物差しで本当にできるのかというところもあります。そうすると、A型事業所も絡めた施設体系の見直しも含めて、ちょっと時間が掛かるかもしれないけれども、是非構成員の方に長期の検討をお願いしたいと思います。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。では、眞保構成員、お願いします。
○眞保構成員 法政大学の眞保です。御報告ありがとうございました。労働の質を評価する方法として、定着率を挙げられています。A型事業所は、利用者の方が希望されれば、企業への就職に向けての支援も行うことになっているかと思います。労働の質を定着率で評価される場合、定着率が高いほど雇用の質、労働の質が高いというロジックだと思います。その点については肯定的に考えるのですけれども、一方で、利用者の方の可能性を広げる企業への就職に目を向けるというキャリア形成の支援ですとか、あるいは意思決定支援ですとか、そうしたことを行うことについて、定着率を高め、それを質の評価軸にしようとすると、相反するのではないのかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○就労継続支援A型事業所全国協議会久保寺氏 労働の質のほうで、主に企業の質を想定してたものですから、企業の障害者雇用についてきちんと定着に向けて努力をするという視点でお示しをいたしました。特に雇用ビジネスに関して、本当に障害者の労働者についてキャリアアップやステップアップがきちんと担保されているかということも含めて、そういう意味で定着というようなことを入れました。
ただ、A型事業所に関しては、もともと制度が出きたときには、一般就労という話は余りなかったのです。就労移行支援事業所があるという想定の下にA型事業所ができたということがあったのですが、ただ、その後、A型事業所も一般就労へ移行を促進すべきだと変わってきました。先ほども3つのタイプがあるとお示ししましたが、この中で本当に一般就労へ移行に向けてできるような障害者ばかりだとは思えないのですね。例えば、先ほど説明しました重度障害者は、A型事業所でかろうじて雇用ができている人たちだと思うし、それから、雇用を優先し高い賃金で地域生活を支援しているということを入れましたけれども、こちらについては、能力があっても御本人たちがA型事業所のほうが自分に合っているというような希望を持ってA型を継続しているという人たちが多いと思うのですね。ただ、マル1の所では一般就労に向けて努力しているという事業所も確かにあって、恐らく就労移行支援事業所以上に実績を上げているようなA型事業所もあるのですね。もし訓練をして成長したと思ったら一般就労に向けて送り出すわけですから、しかも、生産活動をやりながらですので、かなりの努力をしているのです。これは運営者の思いがすばらしいと思っていますけれども。そのようなことで、定着と移行は、ちょっと私の説明が不十分だったかもしれませんけれど、そういうことです。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、恐縮ですが、時間の関係で、最後のときに追加的な御質問がありましたら、お願いいたします。大変ありがとうございました。
続いて、公益社団法人全国障害者雇用事業所協会会長の加藤勇様、専務理事の湯浅善樹様から御発表をお願いいたします。
○全国障害者雇用事業所協会加藤(勇)氏 全国障害者雇用事業所協会の会長の加藤でございます。私は基本的な説明をいたしまして、具体的なことは湯浅専務のほうから御報告させていただきます。
通称、全障協と言っておりますけれども、会員数が令和6年度で339会員で、これは正会員と賛助会員を合わせた数字でございます。雇用状況は、会員の中の構成を言いますと、一般企業が44.7%、特例子会社が45.9%、その他A型事業所等で9.4%、これが構成比になっています。令和3年度に実施した雇用状況調査(回収率84.4%)によりますと、全体で雇用者は67,346人いまして、会員全体の障害者雇用数が13,556人です。会員の全体の実雇用率が、27.5%でございます。会員全体の障害種別割合ですが、身体障害者の方が30.6%、知的障害の方が47.9%、精神障害の方が21.5%の割合になっております。会員全体の障害種別重度の割合は、身体障害者が64.8%、そして知的障害の方が31.9%です。
今までの全障協の経緯を言いますと、昭和56年に重度障害者多数雇用事業所協議会として設立をいたしまして、ちょうど今44年目を迎え、その後、労働大臣から社団法人に認可をしていただき、その当時は、まだ全国重度障害者雇用事業所協会と申しました。それから36年でございます。平成26年に、公益社団法人に移行させていただきました。
会員の業種ですけれども、クリーニング、リネンサプライなどや、印刷・製本、農業における栽培・育成、食品製造、それから電気機器関係の会社など、多種多様となっています。また、マッサージであったり、卸小売業であったり、飲食店等もやっている会員が数社ですけれども、おります。以上が全障協の基本的な概要でございます。これからは、湯浅専務のほうから報告します。
○全国障害者雇用事業所協会湯浅氏 障害者の雇用の質について。言うまでもなく、雇用の質については、障害者がその持てる力を発揮して、職場の戦力として活躍するために一番重要な取組でございます。これは、障害者のみならず、職場全体のモチベーション、成績アップにつながりますので、重要な経営課題であるという認識をもっております。
対応ですが、雇用の質の向上のためには、何よりも雇用の安定が土台にございます。その上で、障害者の職域拡大、職業能力の向上、処遇の改善を通じて、障害者の生涯キャリアの形成や促進、それによる長期の継続雇用、これにつなげることが重要でございます。これらの取組を評価していただき、優良な取組をしている企業には、雇用率カウントの上乗せを行う仕組み等をお考えただきたいと思っております。また、好事例を収集し、情報を提供し、さらには好事例の職場見学など、企業の背中を押すような支援、これを強化していただきたいと思います。
それでは、次のページの(2)にまいります。雇用率制度でございます。企業は法定雇用率を達成する努力はもちろんでございますが、先ほどありましたような質の向上についても取り組むべきであると、これは当然と考えます。
しかし、現状を見ますと、法定雇用率が従来に比べて短期かつ大幅に上がる中、採用できる人材が確保できず苦しんでいる企業が全国にございます。また、関連して、特別支援校からの卒業生も、一般企業への就労は3割にとどまる。また、中途採用においても、就労支援事業機関の就労も求人需要に足りていないという状況、これをよく御理解いただきたい。次に、採用全体の5割を占める精神保健福祉手帳は、統合失調、うつ、発達、てんかんと、多種多様な特性もございますので、採用経験の乏しい中小企業では、雇用のためのノウハウが十分に普及しておらず、採用に踏み切れない企業も多うございます。さらに、目に見えない障害である精神障害への配慮は、人の支援が中心ですので、人材がただでさえ不足している中小企業では、負担が重く余力が乏しい。こうした実情を踏まえ、実雇用率のカウントや、更なる助成金の支援が求められております。
全般的な取組でございますけれども、人材確保のための障害者と企業を効率的に結び付ける仕組みを強化する必要があります。例えば、特別支援校の実習の機会を中小企業が活用できる仕組みや、就労支援事業所の事業所外就労の増加などを通じて、企業と求職者の接点を活性化するという支援が求められております。また、最近感じられるのは、本人や親御さんの理解が、一般就労に向いていない。ともすれば一般就労をご検討せず、A型・B型事業所での就労に満足されている。このため、説明会などを通じて、一般企業就労への御理解を深める必要があると感じております。
さて4ページでございます。論点マル1、手帳を所持していない障害者です。手帳を所持していない障害者については、雇用率制度の対象障害者に含めるべきであると、私どもは考えております。その場合の課題ですが、医的状況に加え、就業上の困難を踏まえて評価していただきたい。就労選択支援制度も今度開始されておりますが、これの活用も考えていただきたい。法定雇用率への反映に際しては、急激な変化を招くため、慎重にしていただき、当面は実雇用率への反映にとどめ、法定雇用率への反映の場合は激変緩和措置などの対応も御考慮いただきたいと思います。また、精神保健福祉手帳は2年ごとの判定のため、困難が継続しているにもかかわらず、有効期限が切れてしまうというケースがございます。これらも救済の対象にしていただきたい。
論点マル2でございます。就労継続支援A型事業所とその利用者の位置付けです。結論から申し上げますと、法定雇用率計算に含めないほうがよろしいと思います。まず1点は、A型事業所は専ら福祉が定款にあり、一般事業会社とは性格を異にすること。また2番目は、A型事業所は福祉報酬が国庫から支払われており、一般企業の障害者雇用との公平性が保たれていないこと。最後に、利用者は福祉的就労であり、一般の雇用労働者とは異なるということです。一方、法定雇用率には含めないものの、A型事業所は雇用と地域、一般企業と福祉施設間の重要な橋渡しとして、一般就労の採用時・退職時に重要な役割を果たしてございますので、納付金等の制度上の取扱いについては慎重に取り扱っていただきたいと思います。
マル3で、精神障害者の「重度」区分です。先ほども触れましたが、採用数の5割を占め、これからも増加が見込まれる精神の重度判定は、必要かつ重要な取組です。その際に御考慮いただきたいのは、精神は他の種別と異なり、短時間ほど雇用管理の負担が重いという点です。ですので、現在の短時間就労のダブルカウント、これは継続いただきたい、できれば恒常化していただきたいと思います。また、短時間からフルタイムへキャリアアップした場合については、フルタイム定着の支援を含め、一定期間は重度と判定することもお考えいただければと思います。
最後はマル4、障害者雇用納付金の範囲拡大についてです。中小企業では障害者雇用企業がいまだ浸透していない状況を勘案いたしますと、慎重に取り組むべきと考えます。直近の障害者雇用状況報告、令和6年度でも、常用雇用40名~100名ランクの実雇用率は1.96と、各ランクで飛び抜けて低く、また、雇用率ゼロ企業も、対前期の2割増し。加えて、中小企業の経営環境はますます厳しさを増しております。障害者雇用のノウハウの普及、十分な周知期間の設定、一定期間の適用免除などの激変緩和措置を講じた上で、慎重に取り組むべきと考えております。
最後のページ、6ページでございます。ここでは現状と対応をまとめてお話いたします。第1は加齢問題でございます。定年や加齢により労働能力が低下し、雇用継続が困難となり、地域に戻っても居場所がなく、社会と接点が持てないなどの問題です。企業と地域の連携を更に強化することをお考えいただきたい。困難性の評価項目の整理や、企業と地域のマッチングのための相談及びあっせん機関などをお考えいただきたいと思います。
第2は、中小企業への障害者雇用の支援でございます。重なりますが、中小企業は、人手不足も相まって、潜在的な雇用吸収力はある一方、障害者雇用の負担が重いという傾向があります。そのため、各種助成金についても周知徹底していただき、分かりやすい提示、手続の簡素化など、更なる使いやすさの追求をお願いします。また、企業内の障害者雇用を担当するサポート人材も確保が難しく、職業生活相談員やジョブコーチの研修もなかなか取れない、研修機会が少ない。遠隔地でも便利に受講したいという御要望もございます。また、外部の就労支援者、配置型ジョブコーチや訪問型ジョブコーチ制度の充実並びに中小企業への周知、これについてもお願いしたいと思います。
最後に、中小企業をめぐる厳しい環境についてお願いがあります。御承知のとおり、最低賃金の引上げが今後も続くことになっております。中小企業の経営には、大きな懸念が出ております。長期的にはその必要性は十二分に理解しておりますが、短期的には障害者の雇用機会が狭められるなどの影響が懸念されます。そこで、障害者雇用の継続努力をしている中小企業に対して、例えば長期継続雇用に対して雇用率カウントを上乗せしていただいたり、賃金助成の支援制度の創設をしていただいたり、最終手段ではございますが、一時的な最低賃金の減額特例の適用など、環境に対する激変緩和措置を御検討いただければと考えてございます。
以上でございます。会長、補足はございますか。よろしいですか。それでは、貴重なお時間を頂戴してありがとうございました。これで終わらせていただきます。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思います。御質問のあります方は、挙手をお願いいたします。倉知構成員、どうぞ。
○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。ありがとうございました。1点確認させてください。6ページのとるべき対応の最初の○の2段落目の所で、「雇用する障害者が必要なときに適切な福祉サービスを受けられるように」というのがあったと思いますが、具体的に、例えば通勤のときの支援とか、職場の中の生活介助のようなイメージなのでしょうか。
○全国障害者雇用事業所協会湯浅氏 そのとおりでございます。やはり福祉サービスが受けられるということは、仕事を継続する重要なポイントでございますので、そちらの面の支援もお願いしたいという意味で書かせていただきました。御質問ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。ほかに御質問等はございますか。それでは、特別支援学校の話が出てまいりましたけれども、こちらの就職割合の向上等について、何かこうしたほうがいいとか、御提案等はありますか。
○全国障害者雇用事業所協会湯浅氏 余り議論は深まっていないのですが、特に申し上げたいのは、今、特別支援学校の就職先が大企業に偏りが見られるというところでございます。特に特例会社に行かれている方がかなりあります。しかしながら、特別支援学校に通っている親御さんの中には、地域でどうにか就職させたいという方がいらっしゃいますので、その地域の中小企業に対しても、実習とか説明会等についても、機会を与えていただければ、雇用のチャンスが広がるのではないかと考えております。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。それでは大変ありがとうございました。
続いて、全国社会就労センター協議会雇用事業部会長の小畑治様、雇用事業部会副部会長の井上忠幸様に御発表をお願いいたします。
○全国社会就労センター協議会小畑氏 ありがとうございます。小畑といいます。全国社会就労センター協議会雇用事業部会長をしております。今日は、小畑と副部会長の井上のほうから御説明をしたいと思います。まず、小畑のほうから概要と総論をお伝えさせていただき、実際のヒアリング項目については、井上のほうから御説明をする形でお願いできればと思います。
通称、SELP(セルプ)と言っています、SELP協と皆さん呼んでいます。創立が昭和52年です。活動の目的ですが、旗とする言葉として、障害者の“働く・くらす”、この部分を非常に大事にしています。それに伴い、いろいろな取組をしながら、やはり個別の課題が出てきますので、その個別の課題の解決を図りながら、多様な取組を、研修を含めてしております。現在、加盟団体は1,328施設になります。会長が叶義文といいます。
次のページ、総論です。どの辺を視点にしながら考えていったらいいかなということを、会のほうでもまとめました。A型事業所といってもいろいろな成り立ちがありますので、それに伴い、会として柱を決めてヒアリングも進めていければと思っています。まず、障害者雇用促進法第5条(事業主の責務)というところを非常に大きく捉えています。この中で、「雇用の安定を図るように努めなければならない」、また、厚生労働省のほうでも「ディーセントワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)という部分、これらをキーワードとして取り組んでいこうと思っております。
厚生労働省で示しているとおり、4点で整理しています。働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること。働く上での権利が保障されている。また、家庭と職場の生活が両立でき、セーフティネットが確保されている。男女平等な扱いを受けている。今回のヒアリングに関しては、この「ディーセントワーク」という言葉をキーワードにしながらヒアリングを組み立てた状況ですので、この後のヒアリングのほうを、井上副部会長から、どうぞよろしくお願いいたします。
○全国社会就労センター協議会井上氏 引き続き、御報告申し上げます。井上でございます。よろしくお願いいたします。
まず、ヒアリング項目(1)についてです。雇用の質については、障害者を直接雇用している企業、それから、障害者雇用を外部に丸投げしている企業、この2つに分けて考える必要があろうかと思っています。
まず、障害者を直接雇用している企業についてです。現状の認識、課題としましては、知的障害のある方は、手先が器用で細かな仕事や特定の能力、持続力に長けている方がいらっしゃいます。ただし、仕事以外の生活支援が求められることが多々あります。就労支援機関が『雇用の質の向上に係るノウハウ』を最も持っていると、私どもは認識しております。現在、新宿ハローワークと協力し、「障害者雇用における対象者の職能の活かし方」、「定着のためのケアシステム」等を民間企業等にアドバイスできるように、企業と施設が意見交換する場を設けています。一方、雇用の質が低い企業等については、障害者虐待防止法に関する研修などを義務付ける等の必要があるのではないかと考えております。また、「雇用の質」といっても捉え方は様々ではないかと。冒頭のディーセントワークの実現というところが最も大きな柱になるのではないかと考えております。
とるべき対応、対応の方向性です。1番目に、民間企業でも様々な障害種別に対応できるSST等の支援が必要ではないかと思っています。定着に苦慮している企業の意見などを実際に聞く中で、こうしたことの必要性を感じているところです。また、『雇用の質の向上に係るノウハウ』の共有や、『障害者虐待防止法に関する研修』等の提供のため、企業と福祉のマッチング機能、そういう機能をハローワークに持たせることはできないかと考えております。取りあえず雇用率の達成に着眼する、本人のディーセントワークとは程遠い実態、こうしたものも実際にございます。「雇用の質」に関する統一的な見解が必要ではないでしょうか。
次ページです。続きまして、障害者雇用を外部に丸投げしている企業等についてです。こちらの手法としては「雇用代行ビジネス」が挙げられます。雇用代行ビジネスが拡大した背景には、障害者雇用の「量」が優先されてきた雇用率制度の弊害が大きいのではないか。雇用率制度の果たしてきた役割は評価しつつも、弊害が起きている雇用率制度の在り方を見直す段階に来ていると考えます。障害者雇用を外部に丸投げしている企業等の雇用の質を担保するため、以下のような対応が考えられるのではないかということで、御提案です。雇用代行ビジネスを利用する企業等に対して、労働の場と雇用代行ビジネスを利用する企業等の間で、例えば、人事ローテーションを行うことを求めるとか、「障害者を直接雇用している企業等」でも記載した“企業と福祉のマッチング”を進めることを義務付けるなどというのは、考え方としてはあるのではないかと思われます。
続きまして、次ページ、ヒアリング項目(2)です。まず、手帳を所持していない難病患者や精神・発達障害者の位置付けについてです。精神障害のある方の就職支援を行った際に、障害基礎年金を受けることができていない方には、就労による稼得収入が非常に重要な割合を占めますが、継続が難しく、雇用につながらないことが多いと感じております。そういった方への配慮が必要ではないかと思われます。障害者手帳の有無によらず、“働きづらさを抱える方”が一般企業等への就職で不利にならない仕組みの検討が必要ではないかと思います。例えば、就労選択支援を利用している方や、障害福祉サービス受給者証を所持している方は、モニタリングや受給者証の更新を必須とした上で、雇用率への算入を可能としてはどうか。難病患者についても、難病医療交付証等をもって雇用率への算入を可能とすることや、長期休養時の特例処理等を付与する必要があるのではないかということで、御提案させていただきます。
続きまして、項目マル2の就労継続支援A型事業所やその利用者の位置付けについてです。就労継続支援A型事業所の利用者、雇用者については、労働基準法等の労働関連法を根拠とした雇用契約を締結しております。また、A型事業所利用者は、労働基準局長通知において、「労働基準法第9条の『労働者』」と明記されています。以上を踏まえますと、A型事業所利用者の雇用率制度上の位置付けは『労働者』であると考えております。では、福祉サービスについては、例えば、障害のある方が雇用されて、居宅サービスを受ける、これは別の契約になります。こうした別々の契約が存在している中では、全く雇用においても同様かと解釈できるかと思います。
続きまして〔2〕、「法定雇用率」、「調整金・報奨金・納付金」、「特開金」の対象からA型事業所利用者を除外する議論がありますが、〔1〕の内容と矛盾してくるのではないでしょうか。A型事業所利用者の除外の根拠として、障害福祉サービスに係る報酬の存在がありますが、当該報酬はA型事業所との利用契約に基づく障害福祉サービスに対する対価として整理されています。また、A型事業所利用者が雇用保険料を支払っておりますので、これからも除外される必要はないと思います。
項目マル3として、精神障害者において雇用率制度における「重度」区分を設けることについてです。精神障害のある方は体調や症状に波があることが想定されるため、「重度」の線引きは困難です。雇用率制度上も「重度」区分を設けることは適さないと考えております。しかし、体調や症状に波があることから、休職期間が生じた場合でも雇用率への算定に影響が出ないようにする等の配慮を行う必要があろうかと思います。こちらは難病指定の方と同様です。
障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、常用労働者100人以下の事業主へ拡大することについてです。良い環境で働いている方がいることや、法定雇用率の対象事業所の規模が小さくなっていることを考えると、納付義務の適用範囲の拡大を検討する必要があるのではないかと考えます。ただし、モラルハザードや雇用代行ビジネスの蔓延等、生じている問題は大きいことから、納付義務の適用範囲を拡大する場合でも段階を設ける必要があるのではないかと考えます。
ヒアリング項目(3)、障害者雇用を更に促進するため、どのような課題や対応が求められると考えるかという点についてです。民間企業等で障害者雇用を一層促進するために、事業協同組合等算定特例の対象から、就労継続支援A型事業所を外す必要があるのではないかと考えております。先ほどの問題点の解決案として、実雇用率の公表に当たって、「就労継続支援A型事業所における雇用者を含めた実雇用率」と、「就労継続支援A型事業所における雇用者を除いた雇用率」を並行して公表する必要があるのではないでしょうか。
続きまして、別紙で用意しております。高工賃を支払う就労継続支援B型事業所の取組について、参考資料としてそこに付けております。こちらに関しては、全国1位の県別の平均工賃をたたき出している徳島県の事例、それから、東京都でも最高の工賃を出している事業所の事例の資料を添付しております。
徳島県の事例では、ヒアリング項目として、特に3ページ、徳島県セルプ協役員の事業所からの意見ということで、障害特性によって必要な取組は変わると思いますが、主に精神障害のある方は、定期的な面談を通じて、本人の思いや考え、困りごと等を確認する機会を設けて進めることが効果的だと感じております。また、職場で孤立しないように、何でも相談できる身近なスタッフがいるかどうかは、職場定着を左右する大きな要因になると考えております。いわゆる、メンタルケアの部分です。
続きまして、[1]の取組を行う際に連携した機関や利用したサービスがあればということで、定期面談については、主に就労定着支援事業所や就業・生活支援センターのサービスを利用しております。また、当施設の就労定着支援事業では、就業し利用を卒業した方が集まり余暇活動を行う場を提供し、情報交換の機会としております。職場は異なりますが、同じように頑張っている仲間の存在を感じることで、やる気、モチベーションの継続となるよう取り組んでおります。いわゆる、ストレスマネジメントの領域になるかと思います。そうしたことを、事業者からのコメントも含めて記載しております。
続きまして5ページ、東京都からの意見です。東京都のある事業所の実例です。事業所の事業内容や、高い工賃を実現・維持できている理由・工夫として、取引の方法です。下請会社からの受注をせず、営業活動により直接取引を行うようにしています。こちらは、前年は10万を超えるぐらいの平均工賃をたたき出しております。
次ページの2つ目の○、「実習等による雇用前のジョブマッチング」です。効果的であった取組としては、雇用前の実習機会を設け、想定する業務を配属予定の職場で実施。福祉サービス事業所では、本人の地域生活も含めたアセスメントを実施し、就労後につまずきやすくなる事柄など、本人の承諾を得た上で、企業と情報共有を行っております。こうしたことがジョブマッチングにつながってきております。
また、次の○、「基幹業務に携わる」ということです。部署をまたいだ職場内業務開拓で、本人が力を発揮できる業務へアサインしました。そのことで、本人がやりがいを持ち、職務へ取り組む意欲、態度が向上しております。
次ページ、その他で、事業所利用者の一般就労への移行が進んでいる例があればということです。一般就労への移行が進んでいるとは思っていません。市役所での実習等の機会を定期的に取り入れていますが、直接的に結び付いているとは言い難い状況です。また、ハローワークよりも、自法人内の就労支援センターとの連携をより図っていくことで、今後の一般就労への移行を推し進めていきたいとしております。
以上で、全国社会就労センター協議会からの報告を終えさせていただきます。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、御質問等があります方は挙手をお願いいたします。勇上構成員、お願いします。
○勇上構成員 神戸大学の勇上と申します。御発表ありがとうございました。短く1点だけお伺いします。ヒアリング項目(3)、資料ですと7ページですが、その他の御意見として、実雇用率の公表に当たって、就労継続支援A型事業所を含めた実雇用率と、除いた実雇用率を公表する必要があるのではないかという御見解を示されています。一方で、別のヒアリング項目の(2)のマル2では、A型事業所の位置付けに関する貴団体の見解は非常に明解で、労働者性があって、そのように位置づけられているということで、一貫されていると思います。そういう意味で、A型事業所を区別して実雇用率を公表すべきというご意見の意図が正確に理解できませんでした。これを区別することで何を見るかということについて、どのようにお考えかをお聞かせ願えればと思います。
○全国社会就労センター協議会井上氏 御質問ありがとうございます。井上がお答えさせていただきます。確かに、御指摘のとおり、矛盾する点だとは存じます。ただし、これにつきましては、A型事業所が、どのような位置付けで現在の在り方を踏襲しているかというところにもなってくるかと思っております。A型事業所におきましては、本人の労働者性を発揮させるための環境整備、いわゆる合理的配慮というものを、しっかりと福祉施策によって展開しております。そういう合理的配慮が必要な割合がどのぐらいあるのか。これについては、後々の障害者雇用率が増えていくと、当然今のA型事業所を利用されている方たちは、どんどん一般就労に移っていくという可能性も十分ございます。そうすると、合理的配慮の必要性というものが更に深まってくるであろうということから、論点の先ほどのA型事業所を別とすべきではないかという点については、折衷案ということで、そうした企業では賄いきれない合理的配慮を必要とする労働者がどのくらいいるかという点での割合を出すという点でございます。このような回答でよろしいでしょうか。
○勇上構成員 なるほど。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。ほかに御質問等はありますか。倉知構成員、お願いします。
○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。明確な報告をありがとうございました。1点、教えていただきたいことと、もう1点、ちょっと気になることがあってお聞きしたいのです。1点は、4ページ、丸投げしている企業の質を担保するということで、2つ提案があります。これの具体的に期待される効果はどういうことがありそうか、そこを教えていただきたいのが1点です。
もう1点、気になったのは、5ページの手帳を所持していない難病患者や精神・発達障害の位置付けについての[2]で、医療交付証をもって雇用率への算入を可能とするということなのですが、疾患を持っていることと障害があることはちょっと別かなと思っていて、疾患がある人を全員障害があるという捉え方にしてしまっていいのだろうかと私は思っているのですが、その辺りの見解を教えてください。
○全国社会就労センター協議会井上氏 御質問ありがとうございます。まず、1点目でございます。障害者雇用を丸投げしてる企業について、どのような効果があるかということですが、実際に丸投げして、雇用代行ビジネスで働いてらっしゃる方の労働状況を、現地などを訪問する中で確認した中では、果たしてこれが労働と言えるのかというようなことが散見されました。労働は、やはり労働対価によって賃金を得るという大前提がございます。そうであれば、雇用代行ビジネスで障害がある方たちが働いている所に、自社で労働されている従業員を配置しても大丈夫なのかというぐらいの労働実態を見るという意図でございます。1番目の質問については以上でございます。
2番目の質問。確かに、御指摘のとおり、難病医療交付証等をもって雇用率への算入、これは少し乱暴すぎると思っております。実際に、難病医療交付証があったとしても、日常生活はごくごく普通に行われている方もいらっしゃいます。そこで私どもが考えたのは、まず、就労選択支援、障害福祉サービスの受給者証、それからモニタリング、このような現在の障害福祉サービスを使った上で就職された方たち、一般移行をされた方たちに対してのインセンティブということで、ここは想定しているものでございます。したがいまして、それら3点がそろわない限りは、雇用率への算入というのは適切ではないだろうと考えるところでございます。以上ですが、よろしいでしょうか。
○山川座長 ありがとうございます。それでは、ほかにございませんでしたら、大変ありがとうございました。
続きまして、全国就労移行支援事業所連絡協議会会長の酒井大介様、副会長の稲葉健太郎様からお願いいたします。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会酒井氏 ありがとうございます。御紹介いただきました全国就労移行支援事業所連絡協議会の酒井と稲葉です。このような貴重な機会を頂きましてありがとうございます。
早速ですけれども、時間の関係もありますので本題のほうに入っていきたいと思います。少し欲張りすぎまして、たくさんのページになっていますので、かい摘まんで私から御説明をさせていただきたいと思います。
まず2ページですけれども、ヒアリング項目(1)、質に関することです。現状認識としましては、そこに記載をしていますように、雇用の質、すなわち障害者の職場環境やキャリア形成、能力開発の支援が十分でないケースも見られるなと。その上で、急激な法定雇用率の上昇がそれらの課題に拍車をかけているように、現場の感覚でも感じているところです。
2つ目のポツですけれども、いまだ障害者雇用代行ビジネスは増加しており、そこでの雇用の質が問題となっているということです。今般、前回の法改正で第5条の表記を見直してもらいましたけれども、当然ですけれども、それによって余り変化は現状見られないというのが今のところかなと思います。
3ページに移りまして、とるべき対応です。まず、雇用の質の評価に関してですけれども、障害者雇用状況調査の実雇用率の記載に加えて、SACEC(障害者雇用企業支援協会)さんなども具体的に提案をされていましたけれども、例えば定着率とか職場環境とか、何らかの尺度を持って評価することが設けられないか、その検討を始めるような段階に、今回でどうこうできるかどうかは別としましても、そういう段階に来ているのではないかなと思います。ただ、質を施策、制度で整理するというのは非常に難しいことだと思うのですが、何かしら公平性のある評価基準というものが取り入れられるといいのではないかというように考えます。
2番目、雇用代行ビジネスです。前回の法改正で、このような附帯決議を付けていただきまして、「職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導の措置を検討すること」と付けられていますけれども、約2年たっていますけれども、政府としてこれらに対しての取組が余り感じられないなというのが率直なところです。所管行政の厚生労働省も、毎年実態調査をするのもいいのですが、確かに法律違反をしているわけではないですから難しい問題なのですが、法の理念に照らし合わせば、こういう障害者雇用の促進の仕方は好ましくないということを、もっと発信してくれればと思います。
3つ目、重度障害者の雇用促進に関してということで、質の観点からも、今後、重度障害者にもっとスポットが当たってもらいたいと思っています。精神障害者が、この間、義務化されて以降、かなりのスピードで促進されておりますが、反対に重度障害者はどうでしょうか。それほど大きな促進がされているようにも感じません。そういう中で、1つとして、特例子会社が障害者雇用、大企業を引っ張り、その中でも特例子会社の役割というのは大きいわけですけれども、このように重度身体障害者、知的障害者、精神障害者を30%以上とすることが設立要件とされています。先ほど申しましたように、昨今の精神障害者の雇用が進展していることを鑑みると、その要件から精神障害を外して重度身体障害者、重度知的障害者を30%以上とする要件に変更しても、精神障害者の雇用というのは進むのではないかということが1つと、もう1つ、その上でですけれども、この要件は設立の時に課している要件であって、その要件が守られているかどうかというのは多分調査していないと思います。なので、障害者雇用状況報告、あるいは、それを別立てでやるとしても、特例子会社は600社ぐらいですから、毎年調査を実施できると思います。しっかりその後もフォローしてほしいなと思います。
それから、雇用の質の向上に向けた取組ということで、今ちょうど地域就労支援室のほうで職場適応援助者(ジョブコーチ)の作業部会が開催されております。その前段では、ジョブコーチの制度に関していろいろと議論され、今、制度の利用が低調な状況にあるなどということも言われています。一方で、研修受講のニーズは年々上がっている。研修のニーズはあるけれども、制度の利用は低調だという状況なのですが、やはり、これから活性化していくのであれば、ジョブコーチが活躍できる場もしっかり用意する、制度として用意することが必要であって、企業在籍型ジョブコーチの配置の義務化などということも1つ考えられるのではないかと思って挙げさせてもらっています。
4ページに移ります。「もにす認定」は制度が始まってしばらくですが、どうでしょうか、中小企業でそこまで広がっているようにも思えないのです。そこまで国民的周知がまだされていない。やはり、それを厚生労働省だけで周知するというのは限界があるのではないかと思いまして、例えば、経産省にも協力してもらって、商工会議所と何か連動できるものがないかとか、もう少し横の連携ということを検討していただければと思います。
5番目の企業支援の拡充です。今年度から障害者雇用相談援助事業が始まりました。これはまだちょっと実態が見えていないのですが、厚生労働省として、1年たったタイミングで集計していただいて、優れた実践についてはオープンにしてもらいたいと思っています。
1個飛ばしまして3番目です。トライアル雇用と特定求職者雇用開発助成金についてです。ちょっと細かい話ですけれども、会員からデマケーションの問題があるということで、いろいろとよく声が上がりますので、ここに記載をさせていただきました。
5ページに移ります。5項目ですけれども、雇用状況の正確な把握についてです。ハローワークには就職件数を毎年度公表していただいているのですが、その後の定着や離職者数については、まだまだ追い掛けられていない現状があるのではないかと思います。何とかこれをデータベース化できるように工夫できないかという提案です。
6ページ、ヒアリング項目(2)についてです。ここからは、とるべき対応から説明します。難病や精神の位置付けについてということで、1つは、手帳の有無に関わらず、個別のニーズに応じた合理的配慮が提供されるということが前提です。ただ、障害者雇用率制度というのは約50年ほど前にできた制度で、障害者固有の問題で始まったのだと思います。固有の問題というのは、やはり障害のある方が経済の仕組みの中で自然に入っていくことが難しいと。そのためにこういう割当制度というものができたのだと思うのです。そういう中において、今、働きづらさを抱えている方というのはたくさん増えているわけです。なので、後ほど記載していますが、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)などの推進はもっとされるべきだと思いますが、この制度に関して言うと、どこかでやはり線を引かないといけないようにも思います。なので、手帳をもって対象としているという現行の制度というのは、国民にとっても非常に分かりやすいものではないかなと思います。
一方で、今後のことを考える上で、就労の困難さ、働きづらさを調べるということ、それを施策にどう活かしていくかという次のステップも検討しなければならないと思っています。前回の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会が2018年にありましたけれども、そこでもそういう話が挙げられ、フランスの就労判定とかを精査して議論を深めていくという話になっていたような報告書であったと思います。そこから進捗がどうなったのか。私は議論されているような経過を把握できていないので、その辺りがどうなのかというのは、ちょっと確認したいと思っているところです。
それから、A型事業所の問題ですけれども、ここでの議論というのは、法定雇用率の計算式にどうするか、実雇用率にどうするか、調整金・報奨金をどう考えるか、この3つの具体的な論点だと思いますが、加えて、質の問題から入ったときに、今、雇用と福祉の間にあるような制度だと思います、この制度をどちらに持っていくのか。私たちとしては、限りなく労働、雇用のほうに持っていきたいと思ったときに、現行の制度の見直しも含めて考えないといけないなと思うと同時に、そうであるならば、この障害者雇用制度の対象の範囲に置いていただきたいというのが私たちの論です。いずれにしましても、まだ調整金・報奨金の減額も始まっていない段階ですから、ここで結論を出すというのは時期尚早と思っています。是非、障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会を再開していただいて、そこで議論させていただきたいと思っています。
障害者納付金について記載をしておりますけれども、そもそもの財源論です。就労支援、障害者雇用、これからもっともっと支援策を充実させたいのですが、やはり財源に限界があると思います。納付金の財源というのは調整金・報奨金に充当して、障害者雇用の支援に関することは、やはり雇用財源でやるべきではないかというのが私たちの論です。そのために、雇用保険の事業主負担の割合を見直して、拠出を捻出し、それで安定的な財源を確保していただくというのが1つではないかと思います。その上で納付金の対象を広げるということは、我々としても別に反論することはないのですが、何かしらの助成策などが必要でないかと考えています。
また、納付金の金額が何十年も5万円なのですが、どうして変わっていないのだということです。その計算式すら明らかになっていないですし、調整基礎額がどうやって計算されているのか。この辺りも本当に何十年もなる中で変わっていないのかとも思いますし、この5万円というのは、果たして100人以下の企業も対象になった場合に、納付金を支払うことがディスインセンティブになり得るのか、このことをもう一回再考すべきではないかと思います。
最後に、8ページの除外率制度です。前回、一律10%引き下げていただきました。ただ、ロードマップまで示されていなかったのが残念だなと思います。これは積み残しの宿題ですから、事務局の方、ちゃんと向き合ってやってほしいと思います。
その他の項目、もう話せないのですが、就労支援施策の充実等々を記載しています。最後、その中で1点だけ、すみません、発言させてください。9ページの3項目、未達成企業への指導や支援の強化です。私は、普段大阪で仕事をしていますけれども、やはり雇用行政として指導する立場の指導官が圧倒的に足りない。そのことによって、やはり指導が追い付いていないように思います。法定雇用率はどんどん引き上げられていくけれども、指導の体制が変わっていない。雇用率達成指導を受けても雇用状況の改善が特に遅れている企業は、厚生労働省により社名が公表されるまでの期間が3年というのは妥当な期間かもしれませんが、その間に、どれだけ伴走して、指導という名の下、サポートができているのか、やはりちゃんと実態を調べてほしいですし、なかなかそこに手が行き届かなくて、その間に雇用代行ビジネスなどの営業が来て、手を出してしまったりするわけです。この指導の体制の充実というのもセットで図るべきだと考えています。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、御質問等がありましたらお願いいたします。ございませんか。それでは、また後で全体の質疑応答がありますので、そのときに追加的にありましたらお願いいたします。ありがとうございました。
続きまして、日本難病・疾病団体協議会常務理事の辻邦夫様から、御発表をお願いいたします。
○日本難病・疾病団体協議会辻氏 弊会は、大人や子供の難病や慢性疾患の患者会や家族会、地域難病連など103団体、約17万人で構成される全国組織です。活動内容等は、記載を御覧いただければと思っています。本日は、ヒアリング項目(2)のマル1の手帳を所持していない難病患者について、当事者の立場も含めて発表したいと思います。いろいろな影響を考えて、事前資料には書いていないことも発言いたしますので、是非よろしくお願いいたします。
まず、現状、課題ですが、難病法においては、今、指定難病は341疾患、20-59歳までの医療費助成対象者は約46万人となっています。そのうち、障害者手帳を所持している方は約3割となっています。資料には書いていないのですが、手帳所持が少ないことについては、難病は根治療法がなく、その中で再燃や寛解を繰り返す、また進行性のものも多く、そういう意味では、固定・永続の障害概念を基本とする現在の身障者手帳の考え方では、なかなか包含できないところがあるとは思っています。
資料に戻ります。なお、昨年4月より、医療費助成のない指定難病患者には登録者証が発行されており、障害者総合支援法では、指定難病に加えて28疾患が「難病等」として障害者の枠に入っています。また、最近ですが、難病等に含まれない、診断基準の定まっていない疾患で、強い痛みや疲労感を特徴とする疾患が注目されています。
次に、難病患者の就労困難性について述べます。厚生労働大臣の基本方針では、患者が難病であることを安心して開示し、治療と就労を両立できる環境を整備する、としていますが、難病は多様性に富むなか多くの患者さんは、外見上は健常者と区別がつきません。また、病名も聞いたことがないものばかりではないかと思います。医学的にも未解明の部分が多いなど、病名や症状の軽症・重症にかかわらず、上司や雇用主、職場での理解不足、患者自身も上手に説明できないなど、結果、参考資料の沢山の帯グラフがあり、最後のほうに文章が載っていますが、その文章部分の2、3ページに現状の声が載っている通り、病気を開示できないとか、開示されても会社側が対応できないという声、現状が非常に多く見られます。
一方で、医療の発展により、職場の理解の下で治療や通院をしながら就労できる方も増えてきています。しかし、継続的な受診が必要なうえ、再燃や進行が付き物で、その場合、たちまち問題が表面化します。そうすると、適切な支援なく就労継続が困難になる、不利益な扱いを受けるといった多くの相談に繋がり、難病相談支援センターへの就労に関する相談は、医療についての相談、生活についての相談に続く第3位で13%、軽症者に至っては17%に上ります。特に求職活動においては、たとえ見た目が健康そうであっても、一生病気である患者さんを新規に雇う、それも難解な病気の方を雇うということですから、手帳の保護がない場合、その方の疾患の重症度にかかわらず、会社側は顕著に困難性が高くなると考えています。進行性の難病の場合は、いずれ手帳が取れる可能性は高いのですが、手帳取得前の求職活動も非常に高い困難性を伴います。
このように、先ほど少し申し上げましたが、難病患者の就労の困難性の多くは、現在の手帳の基準の想定外となっており、就労困難性が高いかどうかは、手帳が取れるかどうかで決定すべきではないことは全く明白であると考えています。
次に、難病患者の就労についての法的義務について述べます。難病等の患者は、手帳がなくても、障害者雇用促進法第2条により、その他の心身の機能の障害によって就労困難性がある場合には、障害者として、全ての事業主からの差別禁止と合理的配慮提供義務の対象となっています。しかし、差別への不安、求職の際の面接官や上司、事業主側の理解不足や、雇用率等で実際は保護されていない中で、彼らが病気を開示して、個人で採用や環境整備や合理的配慮を求めることは、非常に高い困難性を伴うわけです。参考資料の4ページ以降のグラフにたくさんある、それら掲載された具体的な施策は、企業での導入は平均で20%にとどまっています。このため、多くの企業は、具体的な合理的配慮提供ができていないし、支援の方法が分からないということで、結局「法定義務」を果たすことができていない、困難であるということです。ここも資料には書いていませんが、ハローワーク等で就労困難性が認められても、雇用率達成を目指す企業は、結局、手帳のない難病患者を採用しないこととなります。
次にとるべき対応の方向性について述べます。まず、法定雇用率への算入については、雇用率制度によって実際に障害者を雇用して、職場での理解や環境整備、配慮等の取組が促進されてきたことも踏まえて、参考資料の15ページの円グラフにあるように、難病であることの証明、基準やルールを明確に求めたいという声もありますので、診断基準が確立している難病等の患者の法定雇用率への算入を、他障害とのバランスや就労可能時間、カウント方法等も工夫して、是非、実現していただきたいと思います。
ここからは、提出資料には書いていない事になりますが、これでは雇用率制度の対象障害者が非常に増えてしまうのではないかという議論もあるかと思います。実際には、難病患者の全ての方が法定雇用率による保護を望んでいるわけではないとも考えています。障害者の概念は異なると思いますが、先ほどの意見にもありましたように、欧米の難治性の疾患の患者さんは、実は、自分から手を挙げることで、障害者として強い保護と適正な支援を受けることができると聞いています。ですので、A型事業所を希望する方はもちろんですが、ハローワーク等の支援を受けてもやはり難しいと、就職や就労継続が難しいと実際に困っている方が、自主的に申告する、その方を雇用率でしっかり保護することはできないだろうかと考えています。体調の悪いときに手をしっかり挙げられる環境を作っていただくためにも、難病患者の法定雇用率に関する就労課題は、慢性疾患が増えてきている中、精神などに拡大してきた法定雇用率の次の重大な課題です。先般、難病法が改正され、難病相談支援センターの連携主体として、就労支援関係者が明記されることになった今、一刻の猶予もならない喫緊の課題であると考えています。
資料に戻ります。法定雇用率への算入がすぐに実現できない場合も、山梨県であった難病患者募集枠の設定や独自枠の義務化等を行い、海外の具体例なども参考に、企業が取り組みがいのある補助金、認定制度等の支援策を強く希望いたします。
なお、これらとは別に、先ほど少し触れた、強い疲労や痛みの継続、非常に高い就労困難性を医学的に証明できる場合は、本人の申告がなくとも、新たな機能障害として法定雇用率に入れていただく必要があると思っています。
次に、環境整備と合理的配慮の提供の部分について述べます。就労途中で難病を発症する、また再燃や重症化する場合、たとえ雇用率で保護されていても、環境整備や配慮が十分でないと、就労継続は非常に困難となります。また、前述のように、雇用率の保護なく差別禁止や合理的配慮を個人で事業主等に求める困難性は非常に高いため、正に法定雇用率と合理的配慮提供義務は車の両輪、両方がそろうことで、初めて機能が発揮されるのではないかと思っています。
参考資料の先ほどの帯グラフの部分ですが、既に導入している企業は各施策とも20%ぐらいでしたが、「導入可能である」という回答を入れると、500人以上の企業では平均で77%に上昇いたします。具体的な例で言えば、通院休暇やテレワーク、時差通勤、あるいは難病患者の健康管理体制、トップの宣言や研修等で、それほど難しい話ではありません。ただ、これが雇用率の対象でないためにできていないのが現状かと思っています。これら施策や配慮の実態は、企業の法定の義務です。例えば、良くない例の挙げ方かも分かりませんが、車いす利用者の方が、御自宅からデスクまでの動線をしっかり確保してはじめて、力を発揮できるのと同様に、難病患者は配慮によって初めて安心して力を発揮できるのであり、手帳のある障害者よりも就労困難性が少ないということは全く間違いだと思っています。そして、この推進には、補助金や企業コンソーシアムなどの構築が有効かと思っています。
次に、支援機関ですが、資料にあるとおり、難病患者の就労支援が、業務上明確に位置付けられているという回答状況は、各機関とも大変残念な状況です。ニーズとメニューのずれと書きましたが、それ以前に、雇用率の対象外であることがそもそもの問題であると考えます。
次に、他の社会課題からの要請や波及効果について述べます。難病患者の就労課題の克服は、労働力不足、多様性への対応の課題解決につながるとともに、がんや慢性疾患、小児がんなどの晩期合併症などを抱えながら働いている方や高齢者にとっても、波及効果が十分考えられると思います。
最後に、これも資料になく恐縮ですが、その他について述べます。
人工呼吸器などを付けている、医療的ケアが継続して必要な方で、介助者や支援機器を使って就労を希望している方がいらっしゃいます。このような方は、雇用率制度や合理的配慮提供だけではなくて、重度訪問介護の就労時の利用を可能とすべきと考えています。長くなりました。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、御質問等がありましたらお願いいたします。倉知構成員、どうぞ。
○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。非常によく分かりました。2点だけです。1点は3ページですが、難病相談支援センターに、就労に関する相談が17%というのがあったと思います。にもかかわらず、ウ)の所で、難病患者が個人で環境整備や合理的配慮の提供を求めなければいけない状況にあるという、この乖離が気になっていて、恐らく就労関係の支援機関につながっていないのではないかと。もっとつなげられる状況なのに、つながっていなくて支援が展開できていないということがあるのではないかと。そこをどうするかも考えなければいけないのではないかと思っています。それについて、背景をどう捉えているのか教えていただきたいのが1点です。
もう1点は4ページなのですが、おっしゃるとおり、今の手帳制度で救えないというのは、強い疲労や痛み、体調の変調性、免疫機能低下、かゆみなどもあるのかなと思っているのですけれども、そういう状態にある方をどう救うかというところが大事だと思うのです。だから、難病に限らず、がんの方も入ってきますので、そういう手帳制度で救えない方々をどうするかは、非常に考えなければいけないことだと思うのです。医学的に証明できるというところがなかなかネックになっていて、私もいろいろお聞きしましたが、科学的にはなかなか難しいと。でも、よく考えれば、精神科は全て科学的かどうかということもなくて、問診などで判断しているのです。このように、主治医の証明のような形で何かできないのかなと考えているのですが、その辺りの見解を教えていただければと思っています。以上です。
○日本難病・疾病団体協議会辻氏 ありがとうございます。支援機関については、実際には難病相談支援センター、それから、ややハローワークが相談に行く対象として多いと考えます。そのほかの障害者就業・生活支援センター、あるいは事業所には、なかなか相談ができていないと。これは、ニーズとメニューのアンマッチもあるのですが、法定雇用率に入っていないことによって、結局、自分から相談に行きづらい部分が当然あるのかなと考えております。難病相談支援センターではやはり医療に関する相談が多いわけですよね。医療の中でも一番多いのは、主治医と合わないというものらしいのですが。その後は、お金のこと、生活相談、関連して就労相談という形になりますので、そういう意味では、難病対策が、医療と福祉の両方にわたるという難しさもあるかと思います。ですから、就労支援だけ、あるいは福祉、医療の相談だけでは解決できない問題がもともとあって、それに雇用率が複雑に絡んでいるのかなと考えております。ですので、いろいろな提言の方法があるのですが、方法としては、ハローワークに難病就職支援のサポーターさんもいらっしゃいますので、そこの充実が1つかなと。そしてやはり企業側も、法定雇用率関係ですと、ハローワークに相談いたしますので、ハローワークが核になってくると思っております。
次に、痛み等の医学的基準ですが、診断基準のない病気を挙げますと、実は、多くの場合は慢性疲労症候群、線維筋痛症、さらには脊髄液漏出症等が診断基準がはっきり定まっていないということで、患者さんが何万人いるのかもよく分かっていない状況です。これについては、学会も診断基準を作ろうとされているのですが、なかなか意見が合わないということもあり、結局取り残されてしまっているわけです。倉知先生がおっしゃるような診断方法のところで、しっかりと医学的に証明していただく方法があるのであれば、是非お願いしたいと思っておりますが、精神科ではないところでの医学的な見地の進展も期待しているところであって、実際に治験等が始まっているところもあると聞いています。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
○倉知構成員 よろしいですか。
○山川座長 どうぞ。
○倉知構成員 ありがとうございます。最初のハローワークというところですが、法定雇用率の対象とならないと、なかなかそこが難しいので、むしろ、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所など、そういう所を積極的に活用して、支援機関が環境調整の支援に苦労する経験がスタッフのスキルアップにつながっていくのではないかと思っています。
○日本難病・疾病団体協議会辻氏 ありがとうございます。確かに、相談しても分かってもらえる方が少ないというのが、障害者就業・生活支援センター、産業保健総合支援センターであります。調査によりますと、実際、ほとんどの方が会社の配慮に頼っているということで、両支援センターを活用した、という例は非常に少ないです。ですが、先ほどの雇用率に入ればまた違うのかも分かりませんけれども、この状態は余り良くないと思っておりますので、そういう意味では、双方が成長するためにも、そういう所を積極的に利用する環境は必要かと思っています。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。ほかに御質問等はございますか。
それでは、各団体様からの発表が終わりました。進行に御協力いただき、多少時間があります。前回に引き続き、様々なお立場、御経験からの真摯な取組状況、また御見解を発表いただき、大変ありがとうございました。追加等の質疑に移りたいと思います。皆様から何か追加の御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。眞保構成員、どうぞ。
○眞保構成員 法政大学の眞保です。NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会の久保寺様にお伺いしたいと思います。資料の3ページだと思いますが、在籍型出向制度を援用した二重雇用契約スキームを認めるとありましたが、障害者総合支援法における運用を認めるということなのか、それとも、出向元の企業も自社の実雇用率に算定できて、同時に出向先であるA型事業所も実雇用率に算定できる、企業もA型事業所もそれぞれ調整金や報奨金の対象になるといったことをお考えなのか。二重雇用契約スキームについて、もう少しお伺いできればと思います。
○山川座長 いかがでしょうか。
○就労継続支援A型事業所全国協議会久保寺氏 もともとこの案が出てきたのは、施設外就労を進めていく上で障害になることを乗り越えようということがあって、いろいろな案が出てきたわけです。在籍型出向制度というのは、もともと制度としてはあるようなのですが、施設外就労先と施設外に送り出す側の二重契約スキームがあれば、施設外就労を受け入れていただける企業が増えるだろうという考えです。施設外就労については、企業側のメリットが人手不足という意味以外に余りなく、施設外就労が大きく進むことがなかなかないため、1つの方法として、こういうスキームを考えたということです。
それから、今は出てきませんでしたが、事業協同組合の話は、前に少し話をしましたけれども、これももともと事業協同組合の特例があって、明記されていなかったA型の加入については、良質な仕事を確保するという意味で、我々が提案したということです。以上です。
○山川座長 ほかにございますか。それでは、先ほど全国就労移行支援事業所連絡協議会の酒井様から御報告いただきましたけれども、雇用相談援助事業の課題について、雇用指導官との連携や役割分担の整備が必ずしもうまくいっていないという御意見があるということでしたが、具体的にはどういう点の課題か、お教えいただければと思います。資料の4ページでしょうか。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会酒井氏 御質問ありがとうございます。資料の4ページの5の1)の所ですか。
○山川座長 そうです。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会稲葉氏 会員事業所からの話によると、実際、事業計画認定までに時間が掛かるため、受付までに時間が掛かってしまう。それから、各都道府県に聞いてみると、積極的に労働局と話し合いながら進んでいる所もあれば、全然そういった話合いも進まないで、ほとんど動かれていないのではないかなという所もあるので、その辺も含めて実態把握をしていただけると有り難いということです。
○山川座長 ありがとうございます。始まったばかりなので、いろいろばらつきがあるのかなと、そういう御意見かとお伺いいたしました。ありがとうございます。ほかに御質問等はございますか。
○倉知構成員 よろしいでしょうか。倉知です。
○山川座長 倉知構成員、どうぞ。
○倉知構成員 では、移行支援の質問をさせてもらいます。説明がなかったのですが、4ページの5の2)の文章がよく分からなくて、企業の何の取得意欲を高めるのでしょうか。
○全国就労移行支援事業所連絡協議会酒井氏 移行支援協議会の酒井です。段落が、本来ここの項目ではなかったのだと思うのですが、もにす認定に絡んでいる話でした。そういう認定制度をもって、例えば、それが普及すれば、自治体などの入札制度においても何らかの評価ができたり、それで更に促進されるのではないかという意味です。文章の入れ方が間違っていました。失礼いたしました。
○倉知構成員 分かりました。
○山川座長 ありがとうございます。ほかに御質問等はございますか。それでは、大変ありがとうございました。本日は、この辺りで終了させていただきたいと思います。御発表いただきました諸団体の皆様、大変ありがとうございました。
では、次回の日程等について、事務局より説明をお願いいたします。
○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局でございます。次回、第4回の開催は、皆様に御確保いただいている日程の中で調整し、追って御連絡させていただきます。以上です。
○山川座長 それでは、これをもちまして、本日の研究会は終了いたします。皆様、お忙しい中大変ありがとうございました。