第2回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(議事録)

日時

令和7年2月28日(金)10:00~

場所

オンライン・対面による開催(中央合同庁舎第5号館 職業安定局第1・2会議室(12階)東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

○山川座長 おはようございます。それでは定刻となりましたので、ただいまから「第2回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。皆様方、大変お忙しいところ御参集を頂きまして、誠にありがとうございます。本日は、前回御欠席の勇上和史構成員が出席されておりますので、御紹介をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○勇上構成員 よろしくお願いします。

○山川座長 本日は、田中克俊構成員、新田構成員が御欠席となります。新田構成員の代理として、経団連労働政策本部統括主幹の阿部博司様に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 本日の研究会は、Zoomによるオンラインでの開催と会場からの御参加と両方になっております。会場には、倉知構成員、眞保構成員、冨高構成員、田中伸明構成員にお越しいただいております。開催に当たりましては事務局から説明がございます。

○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局です。本日も、Zoomを使ったオンライン参加を頂いております。開催に当たりまして、簡単ではありますがオンラインについて操作方法のポイントを御説明いたします。本日、研究会の進行中は皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言される際には画面上の「手を挙げる」ボタンをクリックし、事務局や座長から発言の許可があった後に、マイクをオンにして、必ずお名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。Zoomの操作方法につきましては、事前にお送りしましたマニュアルを御参照ください。
 会議進行中、トラブルがありましたら事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただきますようお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合は一時休憩とさせていただくこともありますので、御容赦いただきますようよろしくお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上です。

○山川座長 それでは、議事に入ります。カメラの頭撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。第1回研究会において、今後、ヒアリングを実施していく関係者の皆様、また研究会における論点をお示ししております。本日はそれに沿って、関係者の皆様からのヒアリングを実施してまいります。ヒアリングにつきましては、第2回と第3回にわたって、関係者の皆様の御都合のつく日に、順次実施してまいりますので御承知いただければと思います。本日は、4団体の発表者の方にオンライン又は会場から御出席を頂いております。
 まず、議事次第にあります順に4団体から御発表を頂きまして、各団体からのヒアリングごとに質疑の時間を10分程度取りたいと思います。各団体からの発表・質疑が終わりましたら、最後に全体を踏まえまして質疑応答を実施したいと思います。各団体の皆様には、御提出いただいた発表様式に沿って御発表を頂ければと思います。
 それから、本日の進行上、各団体の皆様にお願いしたいことでありますけれども、発表後の意見交換の時間を確保して、より良い議論にしたいと考えておりますので、発表時間は各団体10分程度ということでお願いいたします。こうした進行の関係上、大変恐縮ですが、御説明時間が10分を経過した時点でベルを1回鳴らさせていただきます。それから、12分を経過した時点でベルを2回鳴らさせていただきますので、その場合には、御意見のまとめをよろしくお願いいたします。
 それでは、御発表をお伺いしたいと思います。議事次第の順で、まず、一般財団法人 全日本ろうあ連盟福祉・労働委員会委員長の大竹浩司様、それから、委員の市山小織様にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○全日本ろうあ連盟大竹氏 全日本ろうあ連盟の大竹と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、全日本ろうあ連盟について説明します。きこえないといっても様々で、全くきこえない人から少し聴力が残っている方、生まれたときはきこえたが途中できこえなくなった人もいます。全日本ろうあ連盟は、手話言語が必要な人が集まっている団体です。きこえない人、きこえにくい人の課題をまとめて提出をしております中から、幾つかお話しします。
 詳細は資料をご覧ください。日本の多くの職場では音声がメインです。きこえない人たちは手話言語でコミュニケーションをとり、情報にアクセスしておりますが、十分な環境が整っている訳ではありません。手話通訳者が必要だと思っても手話通訳者が不足しており、養成もまだまだです。いろいろな助成を活用して一つずつ解決していけば、手話言語をいつでもどこでも使って話ができる、円滑に仕事ができるようになることは間違いありませんが、残念ながら現状できる状況ではありません。
 例えば就職したら、まず仕事を覚えることが必要です。技術面を学ぶためにパソコンを活用しますが、チームの中でコミュニケーションをとりながら仕事を覚えていくことになります。会社の発展のために一人一人の力をまとめることが大切だと思いますが、手話以外のコミュニケーション手段がないので壁に当たり孤立してしまうとういう例が非常に多いです。特に労働の現場では、民間事業所、行政等いろいろな職場があります。現在、手話通訳の派遣制度だけでなく、文字情報を活用するきこえない人のために要約筆記という制度がありますが、多くは生活場面での利用が前提となり働く労働の現場では、なかなかこの制度は使いにくい面があります。
 きこえない人を採用した職場向けのいろいろな支援ができる制度は現在不足しています。これをもっと広げて深めていくことができれば、会社にとってもきこえない人本人にとっても、とても良い結果につながります。そのためには資金や支援者養成する仕組みが必要なため、一人ひとりの様々なニーズに対応して支援する対応をお願いします。
 「手話が必要なきこえない人」と言いましたが、きこえないだけでなく精神障害や視覚障害等との重複の障害の人もたくさんいらっしゃいます。それぞれの障害に応じたやり方、支援の仕方が必要だと思っています。
 また、きこえない人といっても様々です。先ほど申し上げました通り、制度の谷間にいるきこえない人・きこえにくい人もいます。全くきこえない人の場合は、障害者手帳を申請し、サービスを活用できますが、少しきこえる人や高齢になってきこえにくくなった人たちは手帳の申請ができません。でも、きこえない・きこえにくいという悩みは同じです。この制度の谷間にいる障害者を取り残すことなく支援する取り組みが必要だと思っています。これは聴覚障害だけではなく、ほかの障害の方も同じだと思います。
 まとめますと、日本の社会は、昔から手話に対して差別がありました。車椅子や視覚障害者のように外からわかる障害ではなく、見えない障害ですので、きこえないために苦しい思いをしていることはなかなか理解してもらえません。手話通訳派遣制度や要約筆記の制度があっても、一般の人たちが活用してくださる理解も少ないです。企業に向けては、障害者のいろいろなことを理解していただくことが、まず必要だと思います。そして障害者を採用した場合は、こういうことをすればいいんだというように気付いていただくことが大切だと思います。会社と障害者側きちんと両方の支援を進めていくことが大切だと思います。以上です。

○山川座長 大竹様、大変ありがとうございました。それでは質疑応答に移ります。御質問のあります方は挙手をお願いします。御発言の際にはお名前を述べていただいて、それからお願いいたします。御質問等ございますか。倉知構成員、どうぞ。

○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。今のお話をお伺いして、職場の中で合理的配慮としての情報保障が不十分なために能力開発がうまくいっていないというようなお話が中心だったと思います。最後に、手話通訳者の助成金をもっと使いやすくしたらどうかということがあったと思いますが、具体的にはどのようなことを望んでおられるか、お話いただけると有り難いです。

○全日本ろうあ連盟市山氏 全日本ろうあ連盟の福祉・労働委員の市山と申します。私から回答させていただきたいと思います。助成金ですね、手話通訳者の企業への配置とか、就職の助成金制度がありますが、それが使えなくて申請しにくいということが実際に起きています。
 助成金制度を使いやすくということで、実は昨年4月に助成金制度も拡充されました。今まで10年しか使えなかったものが、5年延長されたり、中高年の特例ということで、35歳以上の方に対しては、入社後1年経過していても申請ができますという制度に変わったのですが、きこえない方の障害というのは、加齢により何か手話通訳の必要性が変わるという部分がないものですから、せっかくできた中高年特例の部分に関しても、非常に利用しにくく、大阪でも1件、申請がようやく通ったという所はあるのですけれども、ほかにも申請したいという相談は幾つか受けていますが、本当に加齢により手話通訳が必要になったという理由付けみたいなものができなくて、せっかくの制度が使いにくいという問題が起きているということです。
 あと、元々ある制度も、入社後1年以内に申請しなければ認定されないというものになっているので、そこの辺りを、1年は何とかやれたけれども、その後にいろいろな会議に出席する機会が増えて、通訳が欲しいけれどというときには、もう間に合わないとかいうことで、使いにくい制度になっているというところを改善していただければ、更にきこえない方が活躍できるのではないかということです。以上です。ありがとうございます。

○山川座長 倉知先生、よろしいですか。ほかに御質問等はありますか。それでは、大竹様、市山様、ありがとうございました。
 続いて、一般社団法人 障害者雇用企業支援協会理事長の畠山千蔭様、専務理事の石崎雅人様、理事の澁谷栄作様、発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 障害者雇用支援協会の澁谷から説明させていただきます。障害者雇用企業支援協会、通称SACECですが、加盟団体は237社あります。主に、いわゆる特例子会社、それから企業が主な構成になっております。
 それでは、ヒアリング項目(1)について説明させていただきます。3ページを御覧ください。ヒアリング項目(1)は、更なる雇用の質の向上に向けてということで、まず「現状認識、課題」です。障害者雇用に取り組む企業の多くは、これまでも雇用の質の向上と雇用率の向上、安定に取り組んできました。本文がかなり長いので、要点だけ説明させていただきます。4ページを御覧ください。その業務ですが、障害者雇用の推進については高い専門性が求められますが、そうした専門性を企業では一朝一夕に備えることは、やはり困難です。知見、経験が乏しいまま、障害者雇用に取り組む企業が、なかなか少なくはありません。それらの中には、そういった障害者雇用に懸命に努力したにもかかわらず、もう少しで法定雇用率に届かないという場合に、やむなく障害者雇用ビジネスを使うような企業があるとも聞いております。
 5ページです。そのような状況について、「とるべき対応、対応の方向性等」です。障害者雇用の世界を見ていきますと、「雇用の質」を測る仕組みが全くないわけではなく、既に運用されている例があると思っております。その1つは、令和元年に公務部門に導入されました「障害者活躍推進計画」の作成及び取組状況報告の義務化です。もう一つは、厚生労働省主導の「もにす認定」制度があるかと思います。例えば、「もにす認定」での評価項目、評価基準、評価尺度などを援用しつつ、より簡便かつ定期的に雇用の質の評価をできるような新たな仕組みを研究開発することが急務だと考えております。資料1に、そのアイディアを述べておりますが、時間もありませんので割愛させていただきます。
 このような結果報告を、毎年の障害者雇用状況報告のときに、雇用率だけではなく、こういった雇用の質についての評価結果も報告することを義務付けて、優れた評価が得られた企業に対しては、別に定めた一定のアドバンテージを実雇用率に加味するといった新しいルールを設けることを提案したいと思います。
 6ページを御覧ください。今のアイディアについては資料2にありますが、これも省略いたします。その上部の所ですが、この資料1とは別に、「長期継続雇用の実現」を測る指標を設けることも提案したいと思います。この指標により、何らかの奨励措置をとることで、障害者雇用に取り組む企業の意欲が更に向上することが期待できるのではないかと考えております。
 また、上記とは別に、新たな表彰・認定制度の創設・拡充で、「雇用の質」を評価するという方策も考えました。その下ですが、「障害者雇用促進法」の理念に基づいて、優良な事業主を公的に表彰・認定する制度を導入してはどうかということです。例えば、女性活躍推進においては、「えるぼし認定」というものがありますし、その下ですが、「子育てサポート企業」としては「くるみん認定」といったものもあるかと思います。
 さらに、7ページですが、企業への投資を促進する各社の取組を加速するということで、これを狙いとした「なでしこ銘柄」認定や、LGBTQなどの「PRIDE指標」の認定というように、障害者雇用においても、これらと同様の表彰認定制度を導入されれば、企業の、事業主の取組の促進につながるのではないかと思います。その下ですが、これからは「雇用率」1本足、1本の単線ではなく、雇用率に「雇用の質」も加えた複線的な評価が、今後の障害者雇用の発展に必要なものではないかと考えております。
 次のヒアリング項目(2)に移ります。8ページを御覧ください。マル1~マル4の4項目のヒアリングがありますが、まず「現状認識、課題」です。法定雇用率の達成のために、個々の企業の取組を支援すべく、当障害者雇用支援協会では日夜努力しております。法定雇用率の過去の推移を見ますと、近年、雇用率のアップ、引上げのペースが一段と上がってきているように思っております。その影響によって、障害者雇用の中身に少なからず課題が生じてきていると憂慮しております。そこで、当協会としては、今後一定の期間、法定雇用率の改定を据え置く、若しくは法定雇用率引上げ幅を抑制・緩和するなどの措置を講じて、その間に障害者雇用の実態に生じた課題を解決するということを図ることが中長期的な観点から見れば必要ではないかと考えております。
 さらに、その下ですが、2026年7月より、民間企業に課せられる法定雇用率2.7%に引上がることが決まっておりますが、それを踏まえて、これまで雇用されている障害者雇用に関するデータを基に、2023年6月に、障害者雇用状況の集計結果、障害者雇用実態調査をベースに試算いたしました。これは、資料3にありますが、次のページに挙げております。2027年6月1日での法定雇用率達成に必要な人数は、少なくとも1万2,000人ほど下回るとなります。簡単に言いますと、就労する障害者の人数が不足するというような試算を行いました。こういったことを踏まえますと、いわゆる就労系障害福祉サービスから一般雇用への就労を更に加速しないと、こういった企業が雇用したいと思っても、なかなか障害者の人が集まらないというようなことになる可能性があるのではないかと見ておりますので、就労系障害福祉サービスから一般就労への施策の強化が必要ではないかと思っております。
 10ページを御覧ください。ところで、「障害者手帳」は、障害を有する人の「就労困難性」を測り得るものとはいえず、その意味で現行の障害者手帳の所持を前提とした障害者雇用制度は完全なものとは言えないのではないかと考えております。当協会としては、福祉制度の中で設けられている現在の手帳制度とは異なる「障害者雇用のための手帳制度」を考えていく必要があるのではないかと思っております。
 一方、現行の法定雇用率の算定に関して、当協会としては以前より下記の2項目について疑問を持っております。その1つは、疑問Aの現行の法定雇用率算定式を今後もそのまま用いていくことが適切なのでしょうかという疑問です。もう一つが、算定式に当てはめられている数値は本当に適切なのでしょうかという疑問です。まず疑問Aの項目に関してですが、法定雇用率の算定式が長年にわたって変更されておりませんが、その間に障害者雇用の関係する社会構造が大きく変化してきており、また人々の意識にも変化が生じてきました。
 11ページです。こういった中で、特に近年、就労する障害者に占める精神・発達障害者の割合が急速に増大してきている事情があります。この社会と人々の意識の変化を踏まえて、変更すべき点の有無をもう一度確認するところから見直しを検討する必要があるのではないかと考えております。
 疑問Bに関してですが、算定式に示される失業している障害者の人数、いわゆる計算式の分子にくる数値ですが、こういった人数をどのように把握しているのかということについて疑問を感じております。近年、就業を希望する精神障害者の中には、「就労準備性」が未調整のまま就労に挑戦する人が少なくありません。就労準備性が整わないまま就労に挑戦しようという人々を、失業している障害者として取り扱うのは適切なのでしょうかということです。
 次に、ヒアリング項目(2)の「とるべき対応、対応の方向性」です。マル1手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置付けについてです。まずは、指定難病患者についてですが、異なる目的で設けられた受給者証を本来の目的を超えて便宜的に利用することには賛同できません。これは、受給者証は就労困難性を測ることができないからということで考えております。
 13ページです。仮に、指定難病患者を雇用促進のために入れるのであれば、障害者手帳の所持を前提として考えることが必要ではないかと思っております。それから、障害者手帳を所持していない精神・発達障害者についてですが、A、Bの2つのケースがあると考えております。Aは、本人の意思に基づいて手帳を持たない人。Bが、2年ごとに手帳更新のときに手帳の更新ができなかった人です。Aに関してですが、これは手帳を取得した上で、福祉制度に設けられている今の就労支援を適切に受けた上で企業就労を目指すということをしていただきたいと思っております。
 14ページです。分類Bですが、手帳の返納をした方についてです。2年ごとの手帳更新時に手帳が更新できなかった場合でも、その後一定期間、手帳の更新のあった人をカウントできるような措置をお願いしたいと思っております。
 16ページを御覧ください。マル2の就労継続支援A型事業所についてですが、A型事業所をカウントするのは、法定雇用率の算定式から外すべきと考えております。また、納付金制度からの奨励金を支給するというのも改めるべきとは考えておりますが、一気になくすのではなく、やはり利用者への影響を考慮して、最小限に影響が出ないように対策が必要かと考えております。
 17ページのマル3です。「重度」のことについてです。精神障害者の短時間労働のカウントを「1」というものが暫定的に行われておりますが、非常に有効なので、これは恒常的にしていただきたいです。その下ですが、手帳の級による区分については、手帳の級をもって重度の認定を行うことについて反対という考え方です。それから、代わる方法として、知的障害者に関しての「職業的重度判定」といったものを考えるのは、よいのではないかと考えております。
 18ページです。4番目の納付金の100人以下の事業主への拡大です。基本的には拡大に賛成なのですが、やはり漸進的に障害者雇用納付金の納付義務の範囲を徐々に拡大していくべきではないかと考えております。
 最後に、19ページのヒアリング項目(3)について、4つの項目を取り上げております。高齢従業員の福祉的就労へのスムーズな移行を実現、除外率引下げに関するスケジュールの明確化、自治体による異なる障害認定基準の統一化、助成金制度の改善です。高齢従業員の福祉的就労へのスムーズな移行については、企業に在籍しながら福祉制度を利用できる仕組みを更に進めてもらいたいと考えております。
 20ページです。Bの「除外率引下げに関するスケジュールの明確化」については、長期のスケジュールをしっかり決めていただきたいと感じております。Cの「自治体によって異なる障害認定基準の統一化」ですが、知的障害の療育手帳の称呼、区分、判定基準の全国統一化をお願いしたいということです。Dの「助成金制度の改善」については、申請の簡略化をお願いしたいです。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。時間の制約があり、申し訳ございません。それでは、ただいまの御発表について質疑応答に移ります。御質問等はありますか。眞保構成員、お願いします。

○眞保構成員 法政大学の眞保と申します。本日は、大変充実した具体的な御提案を頂き、勉強になりました。ありがとうございました。雇用の質というのは、障害のない方の場合も多くの議論があり、まだ決着が付いている問題でもないと思います。雇用の質についてのこれまでの議論に加えて、障害のある方の特性を考慮した職場の環境なども踏まえて、雇用の質を検討するというのは大変時間もかかりますし、結論が出るかどうかも分からない問題ではないかと思っております。そうした中で、既に使われている「もにす認定」を援用するのは、1つの選択肢ではないかと考えております。
 資料にございます付加倍率と分母調整率についてお伺いしたいと思います。これに関しては、会員企業などでシミュレーションをされて設定されたのでしょうか。お願いいたします。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 資料2の計算式のような内容をシミュレーションしたのかということでしょうか。

○眞保構成員 倍率の数値の設定です。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 そうしましたら、資料1も含めてということですね。これは、一応シミュレーションをしてみた例を挙げさせていただいたということで、実際にこれを会員企業で評価してみたというわけではありません。会員企業の中には、もう既に「もにす認定」を取られている企業もたくさんありますので、その中の一部を持ってきて、このような参考を挙げさせていただきました。

○眞保構成員 具体的に申しますと、例えば付加倍率ですと、1.1~1.5、それから分母調整率は、5~25%という数字でシミュレーションされていると思うのですが、この数値自体を設定する際に、何か企業へのヒアリングなどをされて設定されたのか、教えていただければと思いました。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 実は、これを検討している委員会を内部に設けており、委員の中でいろいろ議論をした中で、例えば一般企業は少し多めに加算して、特例子会社は下げるといったことを、議論をした中で例を挙げさせていただいたということです。具体的には、これからということになります。

○眞保構成員 ありがとうございました。

○山川座長 ほかに御質問等はありますか。勇上構成員、お願いします。

○勇上構成員 神戸大学の勇上と申します。御報告ありがとうございました。ヒアリング項目(2)に関してお伺いします。雇用率制度における手帳を保持されていない方や、就労継続支援A型事業所などの考え方について、貴団体は、現在の手帳制度の福祉制度的な側面を指摘されておられ、就労困難性を勘案した障害者雇用のための手帳制度を御提案されていると思います。このヒアリング項目(2)の大きな背景として、障害者雇用促進法の第2条、差別禁止と合理的配慮の対象と、第37条の雇用率制度の対象がずれているということは、専門家などで指摘されています。
 今回、貴団体が提案されている新しい制度と、現在の第2条の合理的配慮の対象と、第37条の現状の障害者手帳の雇用率制度の対象との関係はどのようになると考えればいいかを教えていただければと思います。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 そこは非常に難しいところではあるのですが、考え方としては、今、一般的に言われている、いわゆる障害者の医療モデルから社会モデルへといった議論の中で、簡単にはいかないとは思うのですが、基本的には障害による就労困難性に着目した新たな制度というのは、現在の手帳制度では十分カバーできないので、じっくり議論しながらでも考えていかなければいけないという程度で、具体的にはまだ議論できておりません。

○勇上構成員 ありがとうございました。

○山川座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。新銀構成員、お願いします。

○新銀構成員 みんなねっとの新銀です。具体的な報告をありがとうございます。1点、お聞きしたいのですが。その前に、9ページの就労系から企業へという人材移動の構造と、11ページの就労準備性は連携していることなのかと思うのですが、この「就労準備性」について少しお伺いしたいと思っています。精神の方の場合はIPSモデルが大変有効であると聞いており、福祉就労系の所で幾らトレーニングをしても余り効果がなくて、実際には一般企業へ直接入っていったほうが就労の継続率が高くなるというような報告を聞いております。その辺りは、この就労準備性と、どのような関係になりますか。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 精神の方はいろいろなケースがありますので、一概には言えないところもあるのですが、実際に私も、特例子会社で精神の方を90名以上採用しております。その中で、採用のときに面接などをする場合に、まずは業務的なスキルではなく、きちんと出勤できますかと。いわゆる生活環境、生活リズムがきちんととれていますかというところから、疑問を持つような方もいらっしゃるということなので、今おっしゃったような、いわゆる仕事のスキルがあるのにというわけではなく、それ以前の問題を経験することが、多々あります。
 こういった方が、例えばハローワークが行う障害者対象の面接会などに出てこられるわけですが、この人たちは多分、失業者の中に入るかと思うのですが、ちょっとそれは違うのではないかと。そういうことから、こういう議論が出てきたということです。

○新銀構成員 ありがとうございます。ということは、その就労系の事業所で、むしろ、そういったトレーニングをすることによって、人材移動が可能になっていくというイメージでよろしいでしょうか。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 はい、そうです。

○新銀構成員 承知いたしました。ありがとうございます。

○山川座長 ほかにありますか。大谷構成員、お願いします。

○大谷構成員 お世話になります。育成会の大谷です。少し気になる部分というか、同調させていただきたい部分もあります。療育手帳の問題についてですが、確かに言われるとおり統一性がなくて、私たち育成会のほうが療育手帳の主になりますので、呼び名も違ったり、いろいろな問題があるので、現在、会としても統一性を図ってほしいということ、やはり身障手帳と同じような扱いになるようにしてほしいということで今、進言させていただいているところで、是非とも、ここも併せて言っていただければと思います。
 それから、手帳を所持していない方々の問題についても、何らかの措置は必要かとは思うのですが、もう少し検討していく部分ではないかと私は思っております。というのも、本人又は御家族の思いによって手帳を所持していない方が、まだまだかなりあるということで、それを就労に向けるために手帳を取りなさいといっても、取得される場合と、そうではない方が、まだ日本国内では多くありますので、この辺りのことも少し集約していく必要があるとは思います。それから、難病の関係などについては、何らかの措置をとっていかないといけないのではないかと思っておりますので、それらについても同調をしたいと思っております。以上です。

○山川座長 ありがとうございます。ほかに御質問等はありますか。倉知構成員、お願いします。

○倉知構成員 そのとおりだと思うことがたくさんありました。1点だけ、社会モデルで捉えるという点で、実はこういう考え方もあって、企業が合理的配慮を一生懸命して、環境を整えて、就労困難性が軽くなると。そうしたら、企業が一生懸命努力すればするほど、障害者実雇用率が下がっていくということが、現実的に起こるのではないかと。ですから、医学モデルで障害を捉えて認定し、企業が合理的配慮を努力することで、就労困難性は軽くなるけれども、それは企業の努力を評価してあげる。このように、社会モデルではなく医学モデルで捉えたほうが企業にとって良いのではないかという考え方もあるのですが、この辺りはどのようにお考えでしょうか。

○障害者雇用企業支援協会澁谷氏 精神の手帳の更新の関係の部分だと思うのですが、そこは本当に悩ましいところではあります。ただ、例えば精神の方で、特例子会社などの環境の整備された所で、症状が軽くなって手帳が要らなくなったという方もいらっしゃるかもしれないのですが。よくあるのは環境整備、その環境で働くからはじめて寛解したというか、環境がマッチしたということですので、その環境をつくるために企業は努力しているわけです。その方が体調を崩された環境に戻れば、これはもっと早い段階で、また体調を崩す可能性があると。そういう意味で、この企業には考慮していただきたいということを言っているのですが、そこを今おっしゃったような医学モデルという形で維持するのか、社会モデルという形で維持するのかは悩ましいところではあるので、ここにも書いておりますが、ずっとそのままというわけではなく、ある期間を考慮していただけたらというのは、その辺りも考慮して、というつもりです。

○山川座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。大変ありがとうございました。続きまして、一般社団法人日本発達障害ネットワークの副理事長の大塚晃様より御発表をお願いいたします。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 皆さん、こんにちは。

○山川座長 よろしくお願いいたします。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 日本発達障害ネットワークの副理事長の大塚と申します。団体の意見を述べる機会を与えていただきましてありがとうございます。ヒアリング項目の(1)更なる雇用の質の向上に向けての所から説明していきたいと思います。「現状認識、課題等」としては、障害者雇用の数に加えて、その質を向上させると、量から質への転換かもしれませんけれども、障害者雇用においては非常に重要なことと認識しております。障害者職業センターの2015年の調査研究によると、発達障害者の就業の現状は、賃金、賞与、就業形態及び労働時間並びに勤続年数等の雇用形態・待遇等労働条件においても、一般労働者と比較すると、厳しい状況にあることが報告されております。また、離職率も高いことから雇用の安定という観点からも様々な課題があると認識しております。雇用の質の指標である職業への満足度は、この調査にはこのようなものもありますけれども、必ずしも高くはなく、発達障害の特性を理解した合理的配慮が必ずしも適切に提供されている状況にはないというように認識しております。
 「とるべき対応、対応の方向性」ですけれども、1.より満足度を高めるための雇用の質を向上させるために、発達障害の特性や配慮の内容を職場の人に適切に伝えていくことが重要であると考えています。そのために発達障害という障害種別に対応できるジョブコーチなどを活用して促進していく必要があると考えております。2.個々の発達障害者の特性について事前にその状況をアセスメントする。アセスメントというのは非常に重要でありますけれども、特に発達障害の方に関しては、本人の就労能力や適性の客観的な評価のみならず、人間関係も含めた環境のアセスメントが重要と考えております。その際、本人の就労に関する意思決定支援というのは、その後の定着の観点からも非常に重要なものだと考えております。3.上記の調査研究によれば、職場定着の促進のためには、発達障害の特性に関する正しい知識、技術の習得、あるいは職場における相談・援助者の配置や当該者の専門知識・支援技術の付与、向上が必要であると報告されております。専門支援機関がそれぞれの発達障害者への合理的配慮を提供できる体制整備は喫緊の課題であると考えます。また、多様性かつ個別性が高い発達障害者に対する合理的配慮を適切に提供できる人材の育成も重要だと考えております。4.発達障害者本人を中心とした多職種連携の支援体制の構築も重要です。行政機関、専門支援機関、教育機関、医療機関等の関係機関、雇用主等が、発達障害者本人及びその家庭に対して一層きめ細かく、本人を真ん中に置いて適時適確な支援ができるような体制を構築する必要があると思っております。
 ヒアリング項目(2)です。マル1手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置づけです。現状認識としては、知的障害のある発達障害の方であれば、療育手帳の取得ができます。障害者基本法に、「精神障害(発達障害を含む)」とあるように、発達障害者も精神障害者保健福祉手帳の取得を促し、更に雇用に結び付く人も増えていると、このように認識しております。
 今後の対応です。当団体は、発達障害の方については精神障害が発達障害を含むという観点から、発達障害にも精神障害者保健福祉手帳を積極的に取得して雇用に結び付けるということを考えております。そのためには、精神障害者保健福祉手帳への発達障害の方も利用できる、あるいは利用する数を増やしていくという認知や、推進ということを行っていかなければならないと考えております。
 いわゆる、その他の雇用への道ということで、1つは、診断(書)の取得というのがあります。医師の診断書は様々な課題があるというように言われておりますし、先ほどの医学モデルということもあって課題もあるわけですけれども、ただ、発達障害の方について、診断書をもって雇用に結び付けていきたいと。一般企業で働きたいというニーズというものがあるとすれば、診断書も範囲を広げるという意味では一つの選択肢かと思っています。雇用制度にうまく結び付けるという手段だとすれば、本人の働きづらさとか、あるいは雇用の困難性、働きづらさでしょうか、そういうことを副次的に評価して診断書とともに考えていくということも、1つの方法かと思っております。
 マル2就労継続支援A型事業所については、皆さんのお手元にはないので口頭で発表いたします。現状認識としては、就労継続支援A型事業所については、利用者数や事業者数が大きく増加する一方で、生産活動の内容が適切でない事業者や利用者の意向にかかわらず、全ての利用者の労働時間を一律にすると、このような課題が指摘されて、様々な制度の変更がなされています。一般就労が可能な障害者が就労継続支援A型事業所に、もし、とどめ置かれるとすれば、反対に、一般就労を困難とする理由とあれば、これは非常に大きな課題であり、考えていかなければならない重要なことだと考えています。
 今後の方向性ですけれども、A型事業所の利用者や事業者の支援内容も非常に多様であると。A型事業所の在り方や役割として、一般就労が難しい障害者に就労や訓練の機会を適切に確保するという目的から考えれば、一般就労への移行も含めた利用者のニーズに沿った支援の提供、十分な生産活動の実施が更に図られるような、そういう方策を講じていくということが大切だと思っています。更に、一般就労への移行ということを、まず進めていくのだと、こういう原則に立てば、福祉と雇用の連携というのは、ますます一層充実していくということが必要だと思っています。
 マル3精神障害者において、雇用率制度における「重度」という区分を設けることであります。身体障害者と知的障害者の異なり「重度」という取扱いがないというのは課題だと思っています。今後の方向性ですけれども、3障害共通の枠組みを考慮すれば、精神障害者にも「重度」という取扱いをすることはあり得ることだと考えております。それによって、精神障害の方の雇用における様々なメリットが生じると、そういう観点が重要だと思っています。もちろん療育手帳あるいは障害者手帳制度の「重度」とは何かということの根本に返ることでもありますので、そういうことも含めて、考えざるを得ないということになるかもしれません。
 マル4障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲を、100人以下の事業主へ拡大するという課題ですけれども、100人以下の事業主については、障害者の雇用率が0人である所も多く、雇用未達成企業が半数以上に上っていると報告されております。雇用率達成のためには、常用雇用者100人以下の事業主にも納付金の適用範囲を拡大するということも、1つの考え方としてはあり得るかもしれませんが、中小企業を取り巻く状況というのは、非常に厳しい状況においてはそれでいいのか、もう少し、その前に様々な方策をとることによって、これらの事業主における障害者雇用が進展した経過を見て実施していくということがよいのではないかと考えております。
 今後の方向性、とるべき対応ですが、100人以下の事業主に対して障害者雇用が進むように、これら事業主、特に障害者雇用がゼロの企業が抱える支援のノウハウの不足ということに対応していくためには、ハローワークが企業ごとの課題やニーズを踏まえて支援を積極的にしていくことから始めるべきだと考えております。
 発達障害者に関しては、ハローワークが行っている「発達障害者雇用トータルサポーター」などによって、一層の専門的な支援によって雇用に結び付いていくというようにも考えておりますので、このような事業を進展させていただきたいと思います。
 最後、ヒアリング項目(3)です。障害者雇用を更に促進するためということで、特に高学歴の発達障害の方に関しては、なかなか働く機会が少ないと、専門職の雇用が増えてほしいという観点からであります。
 対応ですけれども、特に、今までの職務内容が障害の種類や程度に限定することを前提に考えるのではなくて、専門知識、いわゆる発達障害の方の持っている強みをいかせる業務、あるいは企業にも貢献できる職務を新たに創出していただきたいと考えております。また、発達障害者の障害特性を考慮するとともに、職場環境の改善や就労支援機器の導入、適切な教育訓練により、発達障害者の方も職域を広げていくことができるのではないかと考えております。以上です。よろしくお願いします。ありがとうございました。

○山川座長 大塚様、大変ありがとうございました。それでは、構成員の皆様から御質問等があればお願いいたします。
 では、私からですが、3ページに、アセスメントの重要性の御指摘があります。特に、本人の就労に関する意思決定支援が定着の観点からも重要だという御指摘ですが、具体的には意思決定支援にどのような課題があって、これが重要だということをもう少しお聞かせいただければと思います。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 ありがとうございます。意思決定支援は福祉場面だけではなくて、成年後見制度などにおいても意思決定支援ということで大きく取り上げられております。障害者総合支援法においては、あらゆる事業に意思決定支援を義務付けて、最低基準に入れることも始まっております。雇用の場面において、本人の意思、どのような所で働きたいか、どのような望みがあるか、そういうことを丁寧に聞きながら就労支援を行うと、障害のある方にとっても定着率が進むということのようです。
 データがありまして、アメリカの研究者が、教育分野の方ですけれども、意思決定支援を十分にすると、卒業して就労した後、その定着率が非常に良い結果が得られるという報告をされています。やはり本人の話をよく聞きながら支援していくということは当たり前のことのようですけれども、なかなかできないことでもあります。そういう意味では、就労支援、雇用支援の中において意思決定支援というのを、もう一度きちんと位置付けていただきたいと考えております。以上です。

○山川座長 ありがとうございました。ほかに御質問等はございますか。倉知構成員、お願いします。

○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。1点お聞きしたいのですが、障害者手帳だけではなく、医師の診断書というのを入れてはどうかということでしたけれども、それは雇用率に反映すべきという考え方ですね。その理由としてお聞きしたいのは、手帳を取るのをためらう方がいるから手帳のほかに診断書でやっていいのではないかという考え方なのか、手帳を取れない方も対象にすべきなので、診断書を入れるべきだという考え方なのか、どのようなことなのかを教えていただけますか。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 多分、両方あると思いますけれども、手帳を取りたくない人、手帳ではなくて診断書を希望する人で、もちろん診断が出ているというような状況の方もいらっしゃいますし、発達障害者手帳はありませんので、必ずしも手帳を取らなくても雇用に結び付いていただきたいということで、そのような考えを入れております。そういうことかと思います。

○倉知構成員 雇用に結び付くということでは、雇用率に反映すべきという考え方でしょうか。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 雇用率の算定のときにも診断書を使ってはどうかという意見であり、その結果として、雇用に結びつくと認識しています。

○倉知構成員 分かりました。精神障害者の方を雇用率の算定に入れるときに、かなりそこの議論があって、公的なものではないと公正な判断が難しいだろうということで、結局障害者手帳で判断することになったわけですけれども。また同じ議論をもう一回展開されているという理解でよろしいですか。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 私はその議論は分からなかったのですけれども、少なくとも法定雇用率の算定のときに、今は手帳に落ち着いていますが、診断書においても雇用率の対象になるように考えてほしいということです。

○山川座長 ありがとうございます。では、眞保構成員、お願いします。

○眞保構成員 大塚様、ありがとうございました。今の倉知構成員に関係する御質問になろうかと思いますけれども、5ページの所に、「発達障害かかりつけ医研修」が全国で行われてきていて診断の信頼度が高まっていると、これは医学モデルのお話だと思うのですけれども。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 医師の診断という意味では、そうですね。

○眞保構成員 法政大学の眞保です。先ほどからお話が出ている職業準備性を、発達障害の診断を正確にできるという、信頼度が高まっている医師が評価できていると、大塚さんの御覧になっている現状からご判断されている、ということでしょうか。それを教えていただきたいです。

○日本発達障害ネットワーク大塚氏 私は職業に関する評価ということも入れましたけれども、必ずしも医師ができるかどうかということは、まだ課題があるのかと考えています。まずは診断ができるということが1つで、入口としての発達障害の方が診断で発達障害ということがきちんと評価されることが重要と考えています。それだけではなくて、やはりそこについては医学モデルの課題、全ての障害にも言えるのですけれども、手帳だけの判断だけではなくて、もし職業に対する評価が必要であれば、それは加えた方がいいのではないかと考えています。どういう制度にするか、誰がするかということもあるのですが、医師以外の人や機関が、例えば障害者職業センターなどが補足的に評価を加えて、本人のトータルな状況というものを考えてもいいのではないかと、私は考えています。ただ、そうなると、先ほどの議論から、全ての方に本人の就労困難性とか、そういうことを評価するということの方向になりますので、少し時間が掛かるかもしれませんが、それに進むための1つの途上と考えています。以上です。

○眞保構成員 今、準備性と申し上げましたが、その前提として、やはり就労困難性も、医師が判断するということになろうかと思いますので、もし、診断書を使っていくことになりますと、その辺りをどのように捉えているのかということを伺いたくて、御質問させていただきました。ありがとうございました。

○山川座長 ありがとうございます。ほかはいかがですか。それでは、大塚様、大変ありがとうございました。
 続いて、特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク代表理事の藤尾健二様からお願いいたします。

○全国就業ネットワーク藤尾氏 皆様、こんにちは。よろしくお願いいたします。
では、全国就業支援ネットワークから御報告をさせていただきます。まず、このような機会を頂きまして、ありがとうございます。こういった機会があると、我々の声も反映していただけるのではないかと思っております。
 全国就業支援ネットワークは、お手元の資料にあるように、会員約7割を障害者就業・生活支援センターが占める団体になりますので、今日の内容は、障害者就業・生活支援センターの声が大部分を占めると思っていただければと思います。また、公的な支援機関であるがゆえに、他団体のように具体的な提案がなかなかないところは御容赦いただければと思います。
 まず、ヒアリング項目(1)です。現状については、昨年度、初めて雇用率を達成したということで、これまで進んできた中で障害者雇用が非常に進んできたのは確かだろうと感じています。ただ、やはり皆さんがおっしゃるように、雇用者数ではなくて「雇用の質」の問題が大きく取り上げられるべきだと感じています。知的障害のある方の雇用義務化から、かなりの勢いで雇用者数が増えてきていると思いますが、この間の雇用促進の在り方について今一度しっかりと検証する必要があるのではないかと思っております。雇用率がここまで来たことは、もちろんプラスのイメージで良いのですが、それによって、どこか課題になった点もあるのではないかということを検証した上で、今後のことを検討していくことが重要ではないかと思っています。
 その上で、まず重要なのは皆さんがおっしゃられている「雇用の質」の問題になります。これは、先ほどSACECさんがお話されたものにも近いのですが、雇用の質を雇用率の中だけで考えていくのは厳しいだろうと。要は、雇用の質の変換先ですね、メリットをどこに持っていくかというところが、また、これは雇用率に返ってしまうと、中で回るだけなので、先ほどお話いただいたような内容であったり、最近では、企業の中で「ビジネスと人権」という意識であったり、様々別な指標で、特例子会社の中で完結するものではなくて、本来の大きなところにしっかりと目を向けるような施策が必要なのではないかと感じています。
 2つ目です。ここが我々の団体としての唯一具体的な提案になりますが、現在、障害者就業・生活支援センターでは、マンパワー不足が言われています。特に、昨今の問題になっているのは、いろいろな企業が登録ありきで、例えば求人を出すなど、応募するから登録してきてくださいと言われるようなことが、実は結構出ています。やはり、本当に必要な所に必要な支援を行うというように、今後していかないと、マンパワー不足はなかなか解消されないと考えたときに、現行ある制度の中の例えば公正な採用選考の遵守であったり、今あるものを活用して、企業は本来こうやって動くべきだという発信を是非、これはいろいろな行政のほうから今以上に発信していただければと思っております。
 3つ目は、0人雇用企業に向けて、今回スタートを切っている雇用相談援助助成金は、スタートを切ったばかりなので、これから検証になると思いますが、主目的が0人雇用からの脱却だと考えると、ここには雇用の質は恐らく含まれていないと思います。0人雇用からの脱却が進むようであれば、一度ここにも検証が入って、その後どうだったのだろうかというのは、雇用の「入口」での支援でかなりのことが決まっていく。雇用後に、その雇用環境の改善等に入るのは、我々支援機関からするとなかなかハードルが高くなる印象があるので、この支援する認定事業所はどういう所が適切だった、どういった支援が、より良いものなのかということを今後、しっかり検証していく必要があるのではないかと思っています。
 最後は、引き上げられる雇用率の中で、働き手が足りないということが都市部では既に起こっていると思います。この足りないというのを実際に、今のハードルのせいで足りないという検証の仕方をするのか、あるいは認める範囲が狭いから足りないという検証の仕方をするのかを今後は見ていく必要があるのではないかと思います。
 続いて、ヒアリング項目(2)に移ります。まず、1つ目ですが、手帳を所持していない難病患者や、精神・発達障害者の位置づけについてです。我々の中では、難病患者の方の支援で、なかなか苦慮するところがあります。ただ、この難病患者の方、あるいは中途に精神を発症した方の場合には、やはり、個人の方が含まれてきます。新規の就労と継続雇用、働き続けるというところで、若干アプローチが変わってくると思っています。病気であったり、困難を抱えながら働き続けるということでは、恐らく、がん患者の方などを対象にした両立支援や、先んじて動いているものがあると思うので、こういったことを、うまく取り入れられないのかと、働き続けるというところに対する支援に関して言うと、今よりも対応がたくさんあるのではないかと考えています。そういったものが広まっていくと、先ほど来、皆さんから出ている言葉で、社会モデルが進んで、ある意味あえて手帳がなくても働ける社会に移行していけるのではないかと、何か、今、区切られている所を少し段階的に崩していくような取組が必要なのではないかと思います。
 2つ目です。A型事業所の取扱いについては、雇用率の算定から外すべきだと考えています。やはりA型事業所をグループ内に取り入れて障害者雇用をグループに入りさえすればクリアできるような仕組みをやっているというのも耳に入りますし、この点で考えると、現在、国が認めているLLPの考え方や、こういったものも本当にこれでいいのだろうかというところは、少し聞いてみたいというところです。そもそも、A型事業所とは福祉のお金が入っている事業所ですから、これが雇用率の算定対象になるのはどうかと思いますし、また、A型事業所とは就労に難しい方が利用して今後、就職をしていくという位置づけにもなっているので、晴れて就職した際に、しっかりと雇用率に入っていただければいいのではないかと思います。
 3つ目です。精神障害者における「重度」区分ですが、基本的には、これは賛成です。ただ、「重度」の区分を、何かレッテルを張るなど、何かラベリングするようなものにならないような措置が必要だと考えるのと、一方で、例えば知的障害の中の「重度」の判定、「職業重度」という判定も含めて、本当に「重度」なのだろうかという疑問があります。これは、もう本当に何十年も前に、知的障害の方が働くのは難しいこととされているときに制定された制度だと思います。一方で、より「重度」の知的障害の方は、雇用されているかというと、今はされていない。もっと言ってしまえば、昔のほうが、より重度の方が働いていたのではないかと。最近は、何か人当たりの良い方が働いているみたいな傾向があるので、重度の見方を見直すのであれば、精神の方を考えるのであれば同時に、恐らく知的障害の方や他の方も、「重度」の問題も見直す必要があるのではないかと考えます。
 4つ目の100人以下の企業に関してです。基本的には最終的に、これは納付金の対象としていただくというのは必要だと思いますが、一方で、0人雇用の企業の支援をしていると、しっかりと取り組んでみてはいるけれど、なかなか進まない企業と、全く取り組まない企業との二手に分かれます。障害者雇用相談援助助成金ができた経緯としては、まずはやる気のある企業をしっかり拾おうというところからスタートを切っていると思うので、単純に雇用しているか、していないかということを対象にするのではなく、当面は、その過程を評価するような仕組みが必要なのではないかと思っています。
 一方で、先ほどお話させていただいたような外交ビジネスであったり、余り望ましくない形での雇用率達成に関しては、しっかりと目を光らせていく必要があるのではないかと思います。
 最後に、その他の所です。大きく分けると3つになりますが、1つは、働ける人材の供給を今後どうやって考えていくのかというところです。やはり、より重度な方が働けるようになるということを考えていかなければいけないと思うので、この点に関して言うと、障害福祉サービスとも連携を取っていく必要がありますし、恐らく「就労選択支援事業」が実際に稼動してしっかりと福祉サービスの中に入り込んでいくということであれば、いろいろな活路が見出せるのではないかと思っています。
 また、多様な働き方の場合に必要になるものとして、生活保障があると思います。現在、短時間であれば働けるとか、ゆっくりであれば働けるという方が実際に働いたときに、どうやって生活をしていくのかという問題が議論されていないと思うのです。日本の場合には、その生活保障でいくと、生活保護制度しかないと。前回の雇用と福祉の連携強化の財産ワーキングのときに年金課の方が参加されていたと思いますが、やはり大きな枠の中で、例えば月6万円しか働けない方がどうやって、その後の生活を成り立たせていくのかというような議論がどこかでされていかないと、この働く人の数は増えていかないのではないかと考えています。
 最後に、社会の理解促進です。障害者雇用が進む上では、支援する人や、雇用する一部の企業ではなくて社会全体の理解が進むことが最も大きなポイントになるだろうと考えると、これは「雇用促進法の今後の在り方の研究会」に即するかどうかは分からないですが、最終的には教育がどうあるべきかがとても大きなポイントになるのではないかと思います。時間が来ましたので、終了したいと思います。どうもありがとうございました。

○山川座長 藤尾様、大変ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表について、御質問等ありますか。それでは、倉知構成員、お願いします。

○倉知構成員 九州産業大学の倉知です。2点あって、1つが100人以下の企業も納付金の対象にするという所で、取組をしたか、しなかったかという過程を対象にして納付義務にするかどうかという、こういう仕組みを導入したらどうかということでしたか。かなり細かくて難しそうですね。私は、アウトカムだけで評価するしかないのではないかと思っているのですが、もう少し過程を評価することの意義というところをお話いただけますかというのが1点です。
 もう1点が、雇用相談援助事業のことをお話されていて、確かに、結果の検証は要ると思いますが。もともと、これは雇用の質を指標に入れている仕組みだなと思っているのですが、実際、どうかは別ですが。その雇用相談援助事業のやろうとしていることが雇用の質に余り関連しないのではないかという捉え方をされていらっしゃるということでしょうか。その2点をお願いします。

○全国就業支援ネットワーク藤尾氏 ありがとうございます。まず、1点目ですが、正に過程の所で判断材料の1つになるのが雇用相談援助事業の活用をしたかどうかとか、あるいは支援機関の相談をしっかり行ったかどうかというところが、恐らく一つあると思います。ただ、これは今後どのような在り方がいいのかという検証をしなければいけないと思うので、今ここでこれだといいのではないかというのはなかなか難しいかと思います。ただ、そういった視点で取り組んでいただくことが必要ではないかというのが1点目です。
 2点目の雇用相談援助事業なのですが、これは、認定事業所が労働局のホームページに載るのですね。そうすると、本当にここの人ができるのかというような名前が割と並んでいるのです。やはり、ある意味、0人雇用を「1」に変える、そこをしっかりとやる、あの事業のマストは求人票を出す所までですよね。求人票を出せば多分、助成金の対象になるということになっているので、ある意味、民間であれば最短距離で行くのではないかと考えると、どういうふうに運用されてきたかという検証を必ずする必要があると思っています。以上です。

○倉知構成員 いわゆる結果の検証ということですね。ありがとうございました。よく分かりました。

○山川座長 ほかに御質問等、いかがですか。よろしいですか。それでは、藤尾様、大変ありがとうございました。
 これで、本日予定されておりました各団体からの御発表が終わりました。では、ただいまから全体的な質疑に移りたいと思います。御質問あるいは御意見等がありましたら、構成員の皆様、いかがですか。眞保構成員、お願いします。

○眞保構成員 法政大学の眞保です。全体的なことではないのですが、今、藤尾様から御報告いただきました5ページのことなのですが、LLPによる障害者雇用のグループ算定を認めていると思いますが、これ自体が問題とお考えになっているのか、それとも、そこにA型事業所が加わることが問題となっているのか、その辺りを教えていただければと思います。お願いします。

○全国就業支援ネットワーク藤尾氏 ありがとうございます。本来は両方だと思っています。ただ、より大きな問題としては、A型事業所が加わることだと考えます。やはり、こういった制度ができる根本の考え方の所で障害があるから働けない、雇用できないというのが大前提になっていると思います。なので、例えば、先ほどの障害者雇用相談援助助成金の話なども含めて、雇用の取組をしてみて難しかった結果という、一定期間であれば、選択肢に入ってくる。端から「これでいいのですよ」というのが提示されていれば、そもそも取り組むことが必要なくなりますよねというような、そもそも企業が障害のある方は雇えないというスタンスに立ちやすい仕組みになっていないだろうかというのが、大きな要因だと思っています。以上です。

○眞保構成員 ありがとうございました。

○山川座長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。時間の制約でそれぞれの方々にお聞きできなかったこと等も含めて御質問あるいはコメント等があればいただきたいと思います。
 それでは、特にありませんので、本日はこの辺りで終了させていただきたいと思います。御発表の皆様、大変有益な御見解、また、真摯な取組の状況等の御紹介を頂きまして大変ありがとうございました。次回も引き続き関係者の皆様からのヒアリングを行いたいと思います。
 では、日程等について、事務局から説明をお願いします。

○原田障害者雇用対策課長補佐 事務局です。次回、第3回は3月10日に開催予定です。詳細については、改めて事務局から御連絡いたします。以上です。

○山川座長 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。皆様、お忙しい中、大変ありがとうございました。