2024年10月7日 薬事審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

日時

令和6年10月7日(月)17:30~

場所

厚生労働省共用第6会議室

出席者

出席委員(20名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理

他参考人2名出席


欠席委員(3名)五十音順

行政機関出席者
  • 城克文  (医薬局長)
  • 高江慎一 (医薬局医療機器審査管理課長)
  • 野村由美子(医薬局医薬安全対策課長)
  • 鈴木洋史 (医薬品医療機器総合機構審査センター長) 他

議事

○医療機器審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催いたします。委員の先生方におかれましては、御多用の中御出席くださいまして誠にありがとうございます。
 最初に、今回から新たに、川上純一先生に部会委員として御就任いただいていますので御紹介いたします。川上先生におかれましては、一言御挨拶いただければと思います。
○事務局 恐れ入ります。川上先生は少々遅れて参加される旨連絡をいただいておりますので、後ほどとさせていただければと思います。
○医療機器審査管理課長 失礼いたしました。現時点で、医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、17名に御出席いただいていますので、薬事審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
 次に、本日の審議に参考人として御出席いただいている先生を御紹介いたします。議題1につきまして、愛知医科大学メディカルセンター特命教授の石橋宏之先生でございます。
○石橋参考人 石橋です。よろしくお願いします。
○医療機器審査管理課長 議題2につきまして、独立行政法人労働者健康安全機構千葉労災病院院長の岡本美孝先生でございます。
○事務局 議題2の開始時に御出席いただきます。
○医療機器審査管理課長 岡本先生におかれましては、Webシステムにて御出席いただきます。
 続きまして、議事に先立ちまして、所属委員の薬事審議会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告いたします。薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任された委員はおられませんでしたので御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいておりまして、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願いいたします。これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。
 続けて、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明させていただきます。
○事務局 事務局でございます。本日予定している全ての議題については、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開といたします。会場の皆様のお手元には、資料が格納されたタブレットのほか、議事次第及び座席表を紙でお配りしております。また、Webにて御参加されている委員の先生方におかれましては、事前にお配りした資料をお手元に御用意ください。Web会議で御参加される委員の皆様におかれましては、審議中はマイクミュート、通信環境等支障がない限りカメラオンでお願いいたします。
 資料6「競合品目・競合企業リスト等一覧」をお開きください。本日の審議事項に関する競合企業として、委員の皆様から寄附金・契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、議決に御参加できない委員は、議題1において田中利洋委員、議題2において富田英委員及び松宮護郎委員、議題3において田中利洋委員及び松宮護郎委員、議題4「吸収性食道用ステント」の一般的名称審議において、田中利洋委員及び松宮護郎委員が該当しております。この際、御退室していただく必要はございません。以上、報告いたします。
○医療機器審査管理課長 事務局からは以上でございます。以後の進行につきましては、小野部会長、よろしくお願いいたします。
○小野部会長 ただいまの事務局の御説明につきまして、委員の先生方から何か御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは、これより議題に入ります。本日は議題1から議題5まで全て審議事項となっております。
 それでは議題1、医療機器「ゴア エクスルーダー 胸腹部大動脈ブランチ型ステントグラフトシステム」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否について、入りたいと思います。なお、本議題について、参考人として、こちらに石橋宏之先生に御出席いただいております。
 それでは、事務局より説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。資料1の2ページ、専門協議委員の一覧を御覧ください。本審査に当たり3名の専門委員から御意見を頂きました。以降の説明は資料1の3ページからの審査報告書に基づいて御説明いたします。ページ番号は緑色の通し番号、審査報告書のページ番号及び左に記載の行番号を用いて御説明いたします。なお、事前にお配りした審査報告書に一部修正がございましたので、当日配布資料の正誤表にお示しいたします。この度は修正がございますことをおわび申し上げます。
 はじめに、本品の概要を御説明いたします。資料1、9ページ、審査報告書7ページ、冒頭、「1.審議品目の概要」を御覧ください。本品は、胸腹部大動脈瘤(以降「TAAA」といいます。)及び傍腎動脈腹部大動脈瘤(以降「PAAA」といいます。)を有する患者の血管内治療に用いるステントグラフトシステムです。本品は図1に示すとおり、四つのポータルを有しており、図2に示すとおり、腹腔動脈、上腸間膜動脈、左右腎動脈及び下肢への血流を温存するために、既承認のステントグラフトと組み合わせて使用します。
 本品の留置術について動画を用いて説明いたします。まず、本品の位置を調整し、中枢側を展開します。次にポータル部からブランチコンポーネントを留置するため、それぞれの腹部分枝血管にガイドワイヤーを配置します。本品をポータル部まで展開した後、ブランチコンポーネントを展開し、バルーンで圧着します。末梢への血流を確保するために、ブランチコンポーネントを1本残した状態で本品の末梢側を展開し、残りのブランチコンポーネントも展開します。次に、本品の末梢側にディスタルY字型コンポーネントを展開し、最後にその末梢側にコントララテラル・レッグコンポーネントを展開、留置完了となります。この本品を含むシステム全体を、以降「TAMBEシステム」と言います。
 次に開発の経緯を御説明いたします。資料10ページ、審査報告書8ページ、13行目から御覧ください。TAAAやPAAAを有する患者は、大動脈破裂のリスクがあるため、瘤の大きさ、拡大速度等によっては、外科的修復術や血管内治療といった侵襲的治療が検討されます。TAAA及びPAAAに対する標準治療は外科的修復術ですが、瘤が広範囲にわたり、腹部分枝血管の再建を伴うため、侵襲性や技術的難易度の高さ、死亡にいたる重篤な周術期合併症の発生率が高いことが課題になっています。これら外科的リスクが高い患者に対しては血管内治療が検討されますが、TAAAやPAAAに使用可能なデバイスは本邦では承認されておりません。本品は自社既承認品を含む複数コンポーネントを組み合わせて使用することで、腹部分枝血管及び下肢への血流を温存しながら、TAAA及びPAAAの拡大・破裂を防ぐことができる低侵襲な血管内治療デバイスとして開発されました。
 続きまして、外国における使用状況について、資料11ページ、審査報告書9ページ、26行目から御覧ください。本品は、米国において本年1月に承認を取得し、本年6月末時点で34例に使用されています。
 続いて、本品の非臨床試験については、特段の問題は認められませんでしたので、臨床試験成績について御説明いたします。
資料17ページ、審査報告書15ページ、18行目から御覧ください。本申請では、臨床評価資料として、米国及び英国で実施された臨床試験成績が提出されました。本臨床試験は、瘤の範囲及び使用コンポーネントに基づき、主要試験群と副次的試験群の2群での評価が実施されました。PAAAと、TAAAのうち瘤の伸展が腹腔動脈の中枢側65mmの範囲までのIV型TAAAは主要試験群とされました。65mmを超えるI型~III型TAAAについては、瘤が広範囲に及ぶハイリスク患者であり、本品の中枢側に胸部コンポーネントの追加留置が必要となることから、副次的試験群として評価されました。
 主要評価項目については、次の16ページ、5行目から御覧ください。主要評価項目には「合併症を伴わない技術的成功/手技の安全性」及び「臨床的に有意な再処置/病変関連死亡」が設定されました。主要試験群では仮説検証が実施されたのに対して、副次的試験群は仮説検証に必要な症例数を集めることが困難であるため、胸部コンポーネント併用による追加リスクを中心に評価が行われました。
 試験成績については、資料22ページ、審査報告書20ページ、冒頭から御覧ください。まず、主要試験群の結果について御説明いたします。主要試験群には102例が登録されました。一つ目の主要評価項目である「合併症を伴わない技術的成功/手技の安全性」の達成率は77.5%、95%信頼区間は69.6~84.1%であり、信頼区間の下限値は達成目標である80%を満たしませんでした。
 続いて次のページ、3行目から御覧ください。二つ目の主要評価項目である「臨床的に有意な再処置/病変関連死亡」の非発生率は70.6%、95%信頼区間は61.4~78.7%であり、信頼区間の下限値は、達成目標である68%を満たしませんでした。
 次に、副次的試験群の結果について御説明いたします。資料28ページ、審査報告書26ページ、冒頭から御覧ください。副次的試験群には25例が登録されました。副次的試験群における「合併症を伴わない技術的成功/手技の安全性」の達成率は92.0%でした。
 続いて同じページ、15行目から御覧ください。副次的試験群における「臨床的に有意な再処置/病変関連死亡」の非発生率は58.8%でした。
以上の試験成績を踏まえ、機構における審査の概要を御説明いたします。資料33ページ、審査報告書31ページ、冒頭から御覧ください。
まず、主要試験群の有効性及び安全性について、先ほど御説明しましたように、本臨床試験では二つの主要評価項目の達成目標を満たしませんでした。「合併症を伴わない技術的成功/手技の安全性」について達成目標が未達となった理由として、デバイス追加留置に関する規定が適切ではなかったと申請者は説明しています。本臨床試験では、初回手技中のエンドリークや血管解離等の発生により、TAMBEシステム以外のデバイス追加留置が必要になった場合は、技術的成功が未達成と判定されました。一方で、本臨床試験の開始以降に米国血管外科学会が発表した基準では、ステントグラフト内挿術の初回手技時にデバイスの追加留置があっても技術的成功とされており、当該基準に基づく追加解析では達成目標を上回りました。既承認品を用いたステントグラフト内挿術においても、デバイス追加留置はステントグラフトを適切に留置、機能させる上で確立した対処法となっていることから、初回手技時のデバイス追加留置があっても技術的成功とすることは受け入れ可能と考えます。
 続いて次のページ、3行目から御覧ください。「臨床的に有意な再処置/病変関連死亡」について達成目標が未達となった理由は、再処置の定義が達成目標の設定根拠の文献と異なり、実際には再処置に至らない事象も「臨床的に有意な再処置」と定義されていたことと考えられました。本臨床試験における定義を文献と合致させた場合、達成目標を満たすことから、当該成績は受け入れ可能と判断いたしました。
 さらに、次のページ、16行目から御覧ください。以上のように主要評価項目の成績は受け入れ可能と判断でき、本臨床試験において、術後30日の死亡及び術後12か月時の瘤関連死亡は発生しておらず、外科的修復術と比べ安全に大動脈瘤の治療目的を達成していることを踏まえると、本品の一定の有効性及び安全性が示されたと考えます。一方で本臨床試験において、腹部分枝血管に留置したブランチコンポーネントの閉塞が比較的高い割合で認められたことについては十分に留意すべきと考えます。
 資料42ページ、審査報告書40ページ、13行目から御覧ください。本臨床試験では、ブランチコンポーネント閉塞が術後1年で14.7%発生し、フォローアップ期間も含めると、18.6%と経時的に増加する傾向が認められました。その結果、腸間虚血や腎不全による死亡、腎機能低下や透析などの重篤な転帰に至ったケースも少なくありませんでした。
 PAAAやTAAAの外科的修復術では分枝血管の閉塞リスクが低いことを踏まえると、外科的修復術が比較的安全に施行可能な患者におけるTAMBEシステムを用いた治療のベネフィットはそのリスクを上回るとは言えないと考えます。一方、外科手術リスクの高い患者にとって、TAMBEシステムは、比較的安全に瘤破裂を解決できる貴重な治療選択肢となり得ると考えられることから、本品の対象を外科的修復術が困難な患者とし、十分な製造販売後の安全対策を講じることでTAMBEシステムの有効性と安全性は確保可能であり、国内におけるTAMBEシステムを用いた治療の有用性はあると判断いたしました。
 続いて、副次的試験群の有効性及び安全性についてです。資料43ページ、審査報告書41ページ、17行目から御覧ください。本臨床試験において、副次的試験群のみで施行が必要となる胸部コンポーネント留置に伴う事象の発生は認められませんでした。また、現時点において、主要試験群に比べて、副次的試験群での本品の有効性と安全性が明らかに劣る傾向や臨床上許容できないような差分は認められませんでした。
 PAAAと比較して瘤の範囲が広いTAAAは、外科的修復術のリスクが高いことを踏まえると、副次的試験群において、術後30日の死亡、術後12か月時点の瘤破裂及び瘤関連死亡も発生しなかった本品の臨床的ニーズは高く、有用性も期待できると考えます。一方、副次的試験群の症例数は限定的であることから、現時点では、IV型TAAA及びPAAAと同様に、I~III型TAAAの対象患者についても、低侵襲治療の必要性が高い外科的修復術が困難な患者として本品を国内導入することが適切と判断いたしました。
 続いて、本品の適正使用を含めた製造販売後安全対策については、資料46ページ、審査報告書44ページ、冒頭から御覧ください。本邦初のPAAA及びTAAAに対するステントグラフトシステムである本品を有効かつ安全に国内導入するためには、対象疾患に精通した医師、医療チームが、手技に関する知識、技術を習得した上で、腹部分枝血管の評価を含めTAMBEシステムを用いた治療と外科的修復術のリスクを考慮して適切な患者を選択することが重要と考えます。さらに、留置時や術後に合併症が生じた際には、外科手術も含めた緊急対応も必要となることから、これらに対応できる体制の整った医療機関において治療が行われる必要があると考えます。これを踏まえ、表34に示すトレーニングを実施するとともに、表35に示す関連学会が作成する適正使用指針の遵守が必要と考えられ、これらを承認条件として付すことが妥当と判断しました。
 最後に、使用成績調査について、資料48ページ、審査報告書46ページ、冒頭から御覧ください。本邦における製造販売後の使用実態下におけるTAMBEシステムの有効性及び安全性について情報収集を行い、必要に応じて追加のリスク低減措置を講ずることが重要と考えます。使用成績調査は表36に示すとおり、予定症例数100例のうち、現時点で臨床成績が限られているI~III型TAAAの最低症例数は18例と設定されました。本臨床試験成績を踏まえると、製造販売後も本品の有効性及び安全性について慎重に評価する必要があることから全例調査とすることが妥当と判断し、これを承認条件として付すことといたしました。また、海外で実施された本臨床試験の長期成績は、国内における本治療の適応の判断や安全対策等に重要な情報となることから、その追跡調査結果については経年報告することを承認条件として付すことといたしました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、資料51ページ、審査報告書49ページ、12行目より記載します<使用目的>にて本品を承認して差し支えないと判断し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。本品は使用成績調査の対象に指定し、使用成績調査の評価期間を9年とすることが妥当と判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。
なお、薬事審議会では報告を予定しております。
機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○小野部会長 御説明ありがとうございました。それでは参考人の石橋先生から、何か追加の御説明がございましたら、よろしくお願いいたします。
○石橋参考人 いや、今、機構のほうから説明がありましたので、どこも追加はないですが、一応、私としては2分ぐらいコメントを持ってまいりましたので、読ませていただきます。
 大動脈瘤は大きくなると破裂し、死に至ります。内科的治療は奏功せず、唯一の治療手段は外科的修復、人工血管置換です。2006年、大動脈瘤に対するステントグラフトが本邦に導入されました。それまで開腹による大切開が必要でしたが、長さ1cmに満たない小切開、穿刺操作により、外科手術と同等の治療成績が得られ、血管外科における革命的手術となりました。現在、腹部大動脈瘤では7割の患者が、ステントグラフトで手術を受けています。当初、ステントグラフトは大動脈の分枝再建ができず、分枝を閉塞するシンプルな構造でしたが、しかし2016年に骨盤内の内腸骨動脈を1本再建するステントグラフトが承認されました。
 今回、対象となっております胸腹部大動脈瘤は胸部と腹部の2臓器にまたがって発生する大動脈瘤で、この部位からは主要な内臓動脈、腹腔・上腸間膜・両側腎動脈が4本分枝します。胸腹部大動脈瘤人工血管置換術では、開胸・開腹操作を同時に行い、体外循環、いわゆる人工心肺を用いて主要内臓動脈を血行再建します。侵襲度・技術的難易度・周術期死亡率・重篤合併症の発生率が高いことが課題となっており、自身が患者となった場合、最も受けたくない手術の一つです。本疾患は高齢者に多いですが、基礎疾患のため、手術を受けられない患者も多く存在します。また、たとえ若くても、開胸・開腹が不可能な患者にとって、本デバイス、TAMBEの導入は福音となり、治療ベネフィットはリスクを上回ると期待できます。
TAMBEは従来のステントグラフトから1段階進歩したデバイスで、米国FDAにおいて、本年1月に承認されました。本邦の血管外科医・心臓血管外科医も学会を挙げて早期承認を強く望んでおります。審査をよろしくお願い申し上げます。以上です。
○小野部会長 石橋先生、どうもありがとうございました。それでは委員の皆様方から御意見、御質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。Webの先生方は手挙げボタンを押していただければ、こちらから御指名いたします。それでは永井委員、よろしくお願いします。
○永井委員 京大の永井です。今回の臨床試験についてですが、これは途中でプライマリーエンドポイントを変更するという、臨床試験の御法度をやらざるを得なかったのかと思います。少し気になるのが、きちんと事前にその手続をしていたのかです。プロトコール変更をしていたのか、あるいは解析計画でそのようにすることを定めていたのか否か御質問したいと思います。もし、後付けで解析していたなら、この臨床試験にあっては、まだ効果を検証できていないということになります。いずれにしても市販後で全例調査をして、そのうちに答えが出てくると思いますので、承認に異存はないのですが、直ぐに分かるものならお尋ねしたいと思います。以上です。
○小野部会長 それでは事務局から御回答をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。今回の解析については、後付けの解析になります。臨床試験の実施途中にプロトコールが変更されたというものではなくて、終了した後に追加の解析が行われたというものになりますが、先生のおっしゃるとおり、その点に関しては、この臨床試験では有効性・安全性が検証できていないということになりますので、使用成績調査も含めて、有効性・安全性に関してはきちんと評価をしていくというところが重要と考えております。
○永井委員 分かりました。ありがとうございます。
○小野部会長 ありがとうございました。松宮先生、手挙げしていましたが、何かございますか。
○松宮委員 石橋先生から御説明があったように、手術自体が非常にリスクが高いものですので、特にハイリスクの患者さんには非常に有用ではないかと期待されますが、一方で、傍腎大動脈瘤のほうは、もちろんリスクは高いのだけれど、それほどものすごく高いわけではないので、この分枝閉塞によるいろいろな合併症というのはかなり気になるところで、特に、傍腎大動脈瘤で閉塞が多いということが少し気になったのです。なぜ腎動脈がSMAや腹動脈より閉塞率が高いかとか、para-renalのほうがTAAAより高いかという、その理由がもし分かれば教えていただきたいと思います。
○小野部会長 ありがとうございます。事務局、回答はできますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。TAAAに比べてPAAAのほうで閉塞の発生率が高くなった明確な理由というのは明らかにはなっていないのですが、専門協議での議論等において、PAAAのほうが瘤の範囲がTAAAよりも狭いものになるので、作業範囲がどうしても手技できる範囲が狭くなってしまって、BC、ブランチコンポーネントの位置であったり、置き方によっては、kinkのようなものが起こってしまったり、閉塞が起きやすくなるのではないかということが推測されます。
○松宮委員 それに関係するのですが、その経験という部分ですが、経験を積むことによってこの合併症が減るということが期待されているような記載だったのですが、今おっしゃったようなグラフトの置く位置とか角度をうまく置くことによって、この閉塞を減らせるのかというのがちょっと気になったのです。というのは、急性期には余り多くないけれども、経時的にだんだん閉塞が増えてくるという表がありましたが、最初はきちんと分かれてkinkもなく終わっているはずですが、次第に大動脈瘤の形が変わってくるし、それで分枝が曲がったり、そういったことも起こるのではないかと想像されます。これはテクニカルな問題が主なのか、それとも、やむを得ないというか、この治療の宿命としてやむを得ないものがかなり入っているのか、その割合は難しいとは思いますが、どのように考えられているのかということを教えていただければと思います。
○小野部会長 これは石橋先生にお答えいただいたほうがいいのではないかと思いますが、いかがですか。
○石橋参考人 松宮先生が言われるように、中長期の成績が期待したほどではなかった、PAAAに関しては期待したほどではなかったかなというのは御指摘の通りではあるかと思います。先ほど機構から説明がありましたように、PAAAのほうはワーキングスペースが狭いものですから、どうしても多少無理してブランチコンポーネントが塞がってしまったのではないかというのが、我々検討したところの意見でした。
 例えば腎動脈ぐらいですと、ブランチが将来的に塞がっても、それはセカンドインターベンションでまた救済できますので、合併症だけをすぐ治療の失敗、failureと判断するのではなくて、慎重にフォローして、追加で良いインターベンションしていけば、良い成績が期待できるのではないかとは考えております。
○松宮委員 最後に、比較的小口径のゴアテックスグラフトで距離が長いということですから、そもそも閉塞しやすい状況だと思います。抗凝固療法、抗血小板療法、あるいはDOAC、そういったものについては、このアメリカでの臨床試験では使用されたのか、使用されたとすると、それと閉塞の関係はどうだったのか、これについては今後推奨するのか、この取扱説明書には推奨するとは書いていなかったと思いますが、そこの関係をまず教えていただければと思います。
○小野部会長 これは事務局のほうからお答えできますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。本臨床試験では、抗血小板療法に関する規定としては、低用量アスピリンを1年以上使用するとなっておりまして、さらに医師の裁量で組み合わせても良いというところと、1年未満となった場合は記録するように規定がされておりました。ただ、この抗血小板薬の使用の有無によって、閉塞の発生率が変わるかどうかというところに関しては示されておりません。国内の使用に関しては、添付文書のほうに留置後の抗血小板・抗血栓療法は医師の判断に基づき実施することと規定がされておりまして、これまでのステントグラフトと同様に、医師の判断に基づいて使用されるということになっております。
○松宮委員 抗血小板剤2剤、要するにDAPTですね。2剤使ったほうが発生率が低かったようなことが書いてあったような気がしますが、それは私の誤解でしたか。余り相関がなかったということですね。アスピリン単剤とDAPTで差がなかったということですか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。2剤併用の場合と単剤の場合で発生率の比較を申請者がしているのですが、そこに関して有意な差はなかったということでした。
○松宮委員 はい、分かりました。以上です。
○小野部会長 ありがとうございました。それでは富田委員、お願いします。
○富田委員 この適正使用指針のことについてお聞きしたいのですが、これは実施主体というか、誰が作って、今後、臨床の中で改訂されていくこともあるかと思いますが、それは誰が担当するのかということと、この基準は審査をするということなのでしょうか。基準を満たしていれば、もうそれでOKという、基準を満たしているかどうかの審査をどこかが担当するということにはなっているのでしょうか。その辺をお聞きしたいのですが。
○小野部会長 これは石橋先生のほうがよろしいでしょうか。回答をお願いします。
○石橋参考人 外科系10学会が共同でステントグラフト実施管理委員会というのを作っております。そこでステントグラフトを使う人、今までも私も含めて、ステントグラフトを使う人の資格審査をしておりますので、それに基づいて、このTAMBEも独自に術者基準、施設基準が定められています。また、今後、進行した途中で不具合があった場合には、委員会で審査して改訂するということになっております。
○富田委員 ありがとうございます。
○小野部会長 ありがとうございました。それでは北澤委員、お願いします。
○北澤委員 北澤です。よろしくお願いします。先ほどの永井先生の御質問と少し関連するかもしれませんが、この製品はアメリカでは今年の初めに承認されて使われているという説明でしたが、アメリカでの承認に際しても、今日御説明いただいたアメリカとイギリスで行った臨床試験の結果が承認の根拠となったのか。もしそうであれば、アメリカでこういった後付け解析での試験で承認されたとのは、どういう理由に基づいているのか、その辺りをお尋ねしたいと思います。お願いします。
○小野部会長 それでは事務局からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。まず1点目の御質問ですが、米国でも今回の申請に添付された米国及び英国で実施された臨床試験が添付されております。
 2点目の御質問に関しては、今回、後付けの解析による説明ではあるのですが、本来の治療目的である瘤関連死亡とか、術後1年の死亡が発生していないというところで、一定の有効性・安全性が示されたということで承認されたと聞いております。ただ、今も米国のほうでは継続した組み入れ、登録が続いておりまして、そこのところで引き続き有効性と安全性を見ていくとなっているようです。
○北澤委員 ありがとうございました。事情が分かりました。アメリカでは臨床試験が今も続いていて、それでもって有効性が、いわゆる事前に決めた解析方法で検証されなければ、承認が取り消されるとか、そういうことになるのでしょうか。
○医療機器審査第二部長 北澤先生、ありがとうございます。審査を担当した二部から回答させていただきます。仮に臨床試験の追加登録によって、想定されるような結果と違う結果が出た場合には、最悪の場合は、先生のおっしゃるとおり承認が取り消される、若しくは適応が更に限定されるという措置が行われる可能性がありますが、それに関しては、機構もかなり重視しておりますので、今回、臨床試験のフォローアップ成績については、適宜、機構のほうまで御報告いただいて、日本でもその成績に応じた安全対策をきちんとタイムリーにやっていく体制でいきたいと思っております。
○北澤委員 ありがとうございます。ついでにもう一つお尋ねすると、仮にアメリカで有効性が検証されず、最悪の場合、承認取消しになった場合には、その結果を受けて、日本でも承認取消しという流れになるのでしょうか。参考までに教えてください。
○医療機器審査第二部長 取消しについては、そのときはかなり難しい判断になるとは思いますが、少なくとも、安全性の面、若しくは有効性の面で大きな問題が生じた際には、製販業者の責任で、そこについてはきちんと対処されますし、我々としても、そこについては関連学会、産官学できちんと話し合った上で、有効性と安全性が担保されないような使い方をされるということについては、きちんと指導していきたいと考えております。
○北澤委員 ありがとうございました。
○小野部会長 ほかに御質問はありますか。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 宮川です。先ほどの松宮委員と少し重なる所がありますが、薬物療法に関して、薬物療法の差がないというか、薬物療法を使ったどうのこうのというのは、その詳細が分かっていないわけです。例えば、ブランチの所で、どちらかと言うと、左より右のほうの腎動脈のほうが、確かに閉塞が多かった。そうすると、確かに右のほうが少し長いというか、ある程度長いステントを使わなければいけないこと、そういうことも含めてあろうかと解剖学的には推察されるのです。そういうところも含めてですが、薬物療法に関して、ある程度の指標を出していかないといけないと思います。今後、臨床試験、これは使用後の所でやるわけですが、そういうところの何か追加の指標というか、何か出すようなつもりはないのでしょうか。どういうふうにそれを設定したらいいか。日本においても、やはり、薬物療法の追加というところで、信頼性の担保をもう少ししなければいけないだろうなと考えているのですが、それに対していかがですか。
○小野部会長 これは事務局からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えします。おっしゃるとおり、現状、その単剤使用の場合と2剤併用の場合で、明らかに単剤使用のほうが閉塞率が高くなるといったデータは出ていないのですが、御指摘のとおり、今回の臨床試験ではかなり閉塞の発生率が高いという状況でしたので、今までのステントグラフトでは併用する抗血小板療法の使用の方法に関しては、医師の裁量に任されているところではあったのですが、今後、追加の規定が必要ないのかについては、申請者や関連学会も含めて検討していきたいと思います。
○小野部会長 ありがとうございます。外科医のほうとしていかがですか。石橋先生、今後、ステントグラフト実施基準管理委員会のほうで、何かその辺は協議される予定ですか。
○石橋参考人 いや、そこまで協議するかどうかはよく分かりませんが、多分、抗血小板剤1剤使っていく人は多いのではないかと思います。そういうふうに多分メーカーも推奨してくると思っています。そこは外科医がSAPTよりDAPTがいいと信じる人が少ないかなと思う、でも1剤は入れなければいけないかなと思っております。科学的ではなく申し訳ないです。
○小野部会長 ありがとうございます。宮川委員、いかがですか。
○宮川委員 ありがとうございます。そうすると、閉塞が多かったというのは、実際にはどこのブランチのステントが多かったのかということに関しては、何かコメントを頂けますか。
○小野部会長 事務局から御回答ください。
○医薬品医療機器総合機構 ブランチコンポーネントに関しては、今回、19例、22件で発生したのですが、腹腔動脈とSMAの閉塞が2件ずつありまして、それ以外が全て腎動脈の閉塞となっております。
○宮川委員 ありがとうございます。追加ですが、このアオルティックコンポーネントからブランチに出す所、つまり、少し表現しにくいのですが、そのブランチコンポーネントを長く出していくと、出した口の所、いわゆる起始部というのはどういう構造なのか。つまり、アオルティックコンポーネントの所まである程度はステントがいって、そこから出していくわけですが、ブランチコンポーネントを出した所に、ステントが重なってくるというふうに考えると、つまり、ステントの中にステントが入るという、そういう考え方でよろしいのですか。
○小野部会長 これは石橋先生からお答えいただいたほうがいいと思います。
○石橋参考人 そういうことです。ステントの中にステントが入ります。カーブした所でも、このメーカーのデバイスは今まで使ったデバイスでも、カーブした所でもあまりkinkしなくて、常に割と丸い形をキープしているステント構造になっております。
○宮川委員 そうですよね。そうでないと、そこが少し狭窄するというか。
○石橋参考人 カクっと急に折れることなく、スムーズにカーブを描いて、円柱がぐーっとカーブした形でキープされるようになっております。
○宮川委員 そうですよね。円柱の中に円柱が入ってきて、それで接合部ができてくるという考え方でよろしいですか。
○石橋参考人 そういうことです。
○宮川委員 ありがとうございます。
○小野部会長 ありがとうございます。永井委員、御質問はございますか。
○永井委員 先ほどの抗血小板剤、抗凝固剤、SAPT、DAPTの件ですが、医師の裁量に任せるというだけでは、永遠にどうなのか分からない状態が続いてしまいます。今回、せっかく使用成績調査をするのなら、せめてその調査項目に、どんな抗血小板剤を使ったのか、シングルなのか、ダブルなのかなど、大まかでいいので情報を集めたほうがいいと思いますので、メーカーさんに御指導いただければと思います。以上です。
○小野部会長 これは事務局から御回答ください。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。そういった情報を使用成績調査の中で取っていただくことも含めて、検討をしてもらえるようにお伝えしたいと思います。ありがとうございます。
○小野部会長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見等ございますか。岡本委員、お願いします。
○岡本委員 国衛研の岡本です。ブランチの閉塞について、原因があまり分かっていないところがあったと思いますが、やはり瘤が大きくなる過程で、動脈の走行とかが変わってきていて、もとの径に対して潰れてきている、変形しているようなことというのは起きる可能性はあるという気がしていて、短い期間だとそういうのが出ないかもしれないので、今後、調査する際は、その辺は何で起きたのかが分かるような情報が入ってくるといいなと思いました。以上です。
○小野部会長 ありがとうございます。
○石橋参考人 それに対しては、フォローアップで造影CTを基本として撮るようになっています。閉塞原因は、明らかに同定できるわけではないですが、かなりの所は推測できるのではないかと考えております。
○岡本委員 今までの閉塞の原因としては、そういう変形とかが原因で起きているものはないということでよろしいのですか。
○小野部会長 これは事務局のほうからお答えいただきます。
○医療機器審査第二部長 今までのというのは、どの辺りを。
○岡本委員 今出ている結果で、閉塞している例。
○小野部会長 アメリカ、イギリスの臨床試験ということですね。
○医療機器審査第二部長 臨床試験で、へしゃげてるとか、その情報については入っていないのですが、確かに、先ほども御説明させていただいたとおり、kinkとかある程度伸びた所で少し潰れてしまうような状況になり得ると、やはり閉塞しやすいという状況になっているというところは、事象としては見られているのですが、臨床試験100数例の中で、ブランチコンポーネントの閉塞が20例しか起こっていないので、まだ数的に分析が十分ではないということが多分言えると思いますので、これから米国で得られるフォローアップ成績とか、あとは日本のPMSのデータを使って、その辺も明らかにしていきたいと考えております。
○小野部会長 ありがとうございます。日本の場合は、比較的小まめに画像検査を行いますので、その辺の定期的な、形状の変化によるのか、血栓形成による閉塞なのか、その辺は今機構のほうから推測していただいたようなことがきっと可能ではないかと私も考えます。
ほかに御意見、御質問、よろしいですか。それでは、議決を行いたいと思います。医療機器「ゴア エクスクルーダー 胸腹部大動脈ブランチ型ステントグラフトシステム」について、本部会として、承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品及び特定生物由来製品としては指定しないとしてよろしいでしょうか。また、使用成績評価は期間を9年として指定することでよろしいでしょうか。御異議のある委員の方は挙手又は御発言をお願いします。
特に御異議はないようですので、そのように議決したいと思います。なお、本件は、審議会で報告を行うこととなっております。以上で、議題1を終了したいと思います。石橋先生、どうも御出席ありがとうございました。
――石橋参考人退室――
○小野部会長 議題2に入ります。議題2につきましても参考人の御出席をお願いしております。参考人の岡本先生はWebでの入室が御確認されているということですので、進めてまいりたいと思います。それでは議題2、医療機器「Propel鼻腔内ステント」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否に入りたいと思います。繰り返しになりますが、本議題の参考人として、岡本美孝先生に御出席いただいております。それでは事務局から御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。資料2、2ページ、専門協議委員一覧を御覧ください。本審査にあたりまして、こちらの4名の専門委員から御意見を頂きました。以降の説明は、資料2の3ページからの審査報告書に基づいて御説明いたします。ページ番号は緑色の通しページ番号、審査報告書のページ番号及び左に記載の行番号を用いて御説明いたします。また、審査報告書に修正がございますので、机上に配布若しくはメールにて送付をさせていただきました当日配布資料2、正誤表にてお示しいたします。本件、深くおわび申し上げます。
 はじめに、品目の概要を御説明します。資料8ページ、審査報告書6ページ、冒頭の「審議品目の概要」を御覧ください。
 本品は、慢性鼻副鼻腔炎に対する内視鏡下手術後の副鼻腔の開存性を維持するために用いる薬剤溶出型吸収性ステントと、留置に使用するデリバリーシステムです。ステントは、次のページの表1にお示しするとおり、適用部位とサイズのバリエーションにより、Propel、Propel Mini、Propel contourの3モデルがあり、留置後30~45日で、90%以上が分解する設計となっております。また、ステント表面には、炎症や浮腫を軽減させることを目的に、副腎皮質ステロイドであるモメタゾンフランカルボン酸エステル(以降、「MF」と呼びます。)を含む薬剤コーティングがされています。MFは、アレルギー性鼻炎に対する既承認医薬品の有効成分で、本ステントを留置中に徐放されるよう設計されています。
 次に、開発の経緯を御説明します。資料9ページ、審査報告書7ページ、17行目から御覧ください。慢性鼻副鼻腔炎の治療として、鼻腔内洗浄等の処置や薬物療法が実施されますが、完治に至らない症例では、内視鏡下鼻副鼻腔手術が適応されます。以降、慢性鼻副鼻腔炎を「CRS」、内視鏡下鼻副鼻腔手術を「ESS」と呼びます。
 次のページ、図2を御覧ください。ESSは、副鼻腔の四つの空洞を単洞化する手術です。術後は、中鼻甲介の側方化や創部の炎症などにより、拡大した副鼻腔自然口の狭窄や癒着が問題となるため、篩骨洞に対しては術後の止血や癒着防止を目的に1~2週間程度、加水分解性若しくは非加水分解性のパッキング材やガーゼ等が留置され、患者の状態に応じ抗菌薬、ステロイド薬等による薬物療法が実施されます。前頭洞に対しては、パッキング材等は留置せず、患者の状態に応じた薬物療法が実施されます。
 申請者は、現状のESS後の処置について、創部の分離が十分な期間行えず、パッキング材等の抜去時に疼痛や出血の可能性があること、経口ステロイド薬の副作用、点鼻や鼻噴霧によるステロイド投与では鼻粘膜の線毛運動により投与量の一部が除去されてしまうという課題があることを受けて、ステントにより副鼻腔の開存性を維持し、吸収されて抜去不要なこと、炎症による浮腫等が発生しやすい期間、薬剤を徐放できることをコンセプトに、本品を開発しました。
 外国における使用状況について、資料11ページ、審査報告書9ページ、12行目から御覧ください。本品は、米国で2011年8月に、欧州で2014年7月にPropelの許認可を取得し、その後、Propel Mini、Propel contourについても、同ページの表2にお示ししているとおり許認可を取得しています。20○○年○月時点で約○○個の販売実績があります。
 続いて、本品の非臨床試験については、特段の問題は認められませんでしたので、臨床試験成績について御説明します。資料22ページ、審査報告書20ページ、9行目から御覧ください。本申請では、米国において実施された五つの臨床試験と公表文献を含む臨床評価報告書が提出されました。米国臨床試験は、同ページの表8にお示しする5試験が実施されており、うち、下三つの「アドバンスII試験」、「PROGRESS Mini試験」、「PROGRESS Nova試験」が各ステントに対する検証的試験として実施されました。被験機器は、順に、Propel、Propel Mini、Propel Contourであり、対照は、「アドバンスII試験」は非薬剤溶出ステント、他2試験はESSのみです。症例数は順に、105例、89例、89例のCRS患者を対象に実施されました。これらの検証的試験は、ESS後、片側に本品、反対側を対照として実施され、術当日に本品を留置し、「30日目の術後介入の必要性」が主要評価項目として設定されました。この「術後介入」は、「組織癒着又は瘢痕の除去に必要な外科的介入」と「炎症又はポリープ状浮腫の解消に必要な経口ステロイドの投与」とされています。
 主要評価項目の結果について御説明します。資料65ページ、審査報告書63ページ、表48を御覧ください。探索的試験を含めた5試験の有効性評価の結果をまとめております。検証的試験である「アドバンスII試験」、「PROGRESS Mini試験」、「PROGRESS Nova試験」の主要評価項目の結果は、3試験全てにおいて、被験群で有意に術後介入が少ない結果となりました。公表文献における有効性評価においても、同様の結果が確認されています。
 続いて、安全性の結果について御説明します。資料67ページ、審査報告書65ページ、表49を御覧ください。臨床試験5試験における有害事象をまとめております。死亡及び本品と関連が否定できない重篤な有害事象は認められず、関連が否定できない有害事象は計21件報告されましたが、再発慢性鼻副鼻腔炎1件は未回復であったものの重篤ではなく、その他の事象については軽快、回復が確認されています。公表文献からは、関連が否定できない重篤な有害事象として真菌の感染症が1件認められましたが、ESS後に起こり得る事象であり、本品特有の事象ではないと考察されています。
 以上の成績を踏まえ、機構における審査の概要を御説明します。
まず、海外臨床試験成績の外挿可能性についてです。資料75ページ、審査報告書73ページ、19行目から御覧ください。CRSの診断基準やESS手技等については国内外で同様であり、副鼻腔の形状や大きさについても本ステントが副鼻腔の形状に沿うように拡張することから、有効性及び安全性に影響を与えるほどの差はないと考えています。また、MFについても、既承認医薬品である「ナゾネックス」において日米での用量が同じであることなどを踏まえると、日本人と欧米人において有効性及び薬物動態に顕著な差が生じる可能性は低いと考えられることから、海外成績により日本人における有効性及び安全性を評価することは可能と判断しました。
 次に、本品の臨床的位置付けについてです。資料78ページ、審査報告書76ページ、3行目から御覧ください。本邦では、篩骨洞に対するESS後の処置として、癒着の防止と止血を目的にパッキング材等を留置しています。米国臨床試験では、術後の止血確認の後、当日に本品を留置しており、パッキング材等の留置はされていません。専門協議において、本品の有効性及び安全性を提出された臨床成績によって評価することは可能との御意見をいただいたのと併せて、日本ではパッキング材等の留置が主流であることから、パッキング材等に追加して本品を使用することが主に想定されるとの意見がありました。そのため、申請者は、本邦への導入に当たり、日本鼻科学会と連携し、パッキング材等との使い方や本品の有用性がより高いと思われる症例等を調査するため、市販後にデータ収集を実施することとしており、機構はこれを妥当と判断しております。
 続いて、本品の有効性及び安全性についてです。資料79ページ、審査報告書77ページ、14行目から御覧ください。検証的試験として実施された米国臨床試験3試験において、主要評価項目「術後介入の必要性」は対照群に対し有意な低下となり、公表文献においても同様の傾向が示されていること、また、米国臨床試験及び公表文献から、臨床上許容できない有害事象は認められていないことから、本品の有効性及び安全性は示されたと判断しました。
 最後に、製造販売後の安全対策についてです。資料80ページ、審査報告書78ページ、22行目から御覧ください。本品について、海外での使用実績や提出された臨床評価から、安全性上のリスクは低いと考えており、使用成績評価の対象として指定する必要はないと考えています。また、本品の留置手技についても、ESSを実施する医師や施設において実施可能と考えられることから、実施医や施設要件、適正使用指針の策定を承認の前提条件とすることは不要と考えております。一方で、先ほど御説明しましたとおり、本邦への導入にあたり、関連学会と連携し、本邦の医療環境でのデータ収集が計画されており、得られた情報を速やかに医療現場に提供することで適切と考えております。
また、専門協議等の議論を踏まえ、本品にはパッキング材等のような止血効果はないこと、パッキング材等と本品の併存留置の使用経験はないこと、並びに、本品の使用によりESS後の術後介入が不要となるものではないため術後のフォローアップは継続すべきことについて注意喚起を実施することが適切と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、資料82ページ、審査報告書80ページ、24行目から記載している使用目的にて、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。
本品は、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。なお、薬事審議会では報告を予定しております。
機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○小野部会長 ありがとうございます。それでは、参考人の岡本先生から追加の御説明がありましたら、よろしくお願いいたします。
○岡本参考人 参考人の岡本です。追加としては、やはり日本と欧米との慢性副鼻腔炎の病態の違いが一つ挙げられます。日本では従来から、いわゆる細菌感染、好中球の浸潤を主体とするような慢性副鼻腔炎が多かったのですが、近年、従来、欧米で多いとされていた好酸球浸潤タイプが増えてきています。ただ、割合で見ると、依然として好中球浸潤型タイプの慢性副鼻腔炎が多いのが欧米との違いと思います。好酸球性浸潤の多い副鼻腔炎では、特に、好中球浸潤よりも再発しやすいと言われていますが、欧米との違いはあると思います。
 また、欧米の人は鼻が高いのですが、顔の彫りが深いので鼻の横幅が狭いために、穴の中が狭い人が多いということも解剖学的にみられる特徴だと思います。日本では、従来から、このような慢性副鼻腔炎に対しては、先ほど御説明がありましたように、保存的な治療で改善しない人に対して手術療法が行われています。今は内視鏡を用いた手術が中心になっています。全例にこのステントが必要かというと、費用面等の考慮も必要でしょうが、現在ベスキチンといったムコ多糖体のガーゼなどを用いてのパッキングが行われているので、必ずしもそれに全て代わるものではないと考えられます。以上です。
○小野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の方々から、御質問、御意見等を頂きたいと思います。いかがでしょうか。塩谷委員、お願いします。
○塩谷委員 ステロイドが溶出されるステントという理解で、例えば好酸球性副鼻腔炎のみの適応というように、適応を絞る必要はないのでしょうか。
○岡本参考人 よろしいでしょうか。
○小野部会長 お願いします。
○岡本参考人 別に好酸球性だけではなくて、好中球浸潤型にも鼻のポリープは見られます。また、ステロイドというのは炎症を抑えることが目的なので、必ずしも好中球浸潤型には適応にならないということはなく、従来から使われています。
○小野部会長 ありがとうございます。永井委員、お願いいたします。
○永井委員 この治療法は、手術単独に比べて、大きく二つ新しいところがあるのかと思いました。一つは、生体分解性のPGLAを使って通気を良くする点と、もう一つは、それにステロイドを浸み込ませて炎症を抑えるという点です。
 アドバンスII試験の内容を見ますと、対照が非薬剤溶出性ステントとしか審査報告書には書いてなかったのですが、非薬剤溶出性ステントというのはPGLAなのか、それともメタルなのか、どのようなものなのかと教えていただきたいです。それと、手術のみに比べて、ステントを入れること自体が良いのか、それにステロイドを加えて炎症を治める点がよいのか。臨床試験成績が五つ提示されていますが、よく分からなかったので、どのような印象なのか教えていただきたいと思います。以上です。
○小野部会長 それでは、事務局からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。一つ目のアドバンスII試験の対照のステントについてですが、こちらについては、本品と全く同じ吸収性のステントに薬剤のコーティングがされていないものですので、メタルのものではなくて、本品と同様に吸収性のステントに薬剤がないものとなっています。
 もう1点頂きました御質問は、審査報告書63ページ、資料2の65ページのほうに、有効性評価の結果を表48にお示ししておりますけれども、ステントとしての開存性については、分かりやすい項目でいきますと、アドバンスII試験の中鼻甲介の側方化というところについては、倒れてくる中鼻甲介を押さえるというところで、ステントの開存としての効果が分かりやすく出ているところかと思います。
 また、ステロイドの効果としましては、炎症の所での癒着、瘢痕、それから、明らかな鼻茸というところで、MFに対しての効果が確認できているのではないかと考えておりますので、ステントそのものの開存性、それからステロイドによる効果、どちらとしても対照群よりも被験群のほうで数値が低減しているということで、効果が確認できていると考えております。
○小野部会長 ありがとうございます。永井委員、よろしいでしょうか。
○永井委員 結構です。ありがとうございます。
○小野部会長 ほかに御意見や御質問はございますか。よろしいでしょうか。それでは、議決を行いたいと思います。医療機器「Propel鼻腔内ステント」について本部会として承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品及び特定生物由来製品として指定しないことでよろしいでしょうか。また、使用成績評価は期間を指定しないとすることでよろしいでしょうか。御異議のある委員の方は発言又は挙手をお願いいたします。
ありがとうございます。御異議ないようですので、そのように議決したいと思います。本件は、審議会で報告を行うこととなっております。以上で、議題2を終了いたします。岡本先生、御出席どうもありがとうございました。
○岡本参考人 失礼します。
――岡本参考人Webでの退室――
○小野部会長 それでは、議題3、医療機器「ゴア TAG 胸部大動脈ブランチ型ステントグラフトシステム」の使用成績評価の要否に移ります。事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より、議題3、医療機器「ゴア TAG 胸部大動脈ブランチ型ステントグラフトシステム」の使用成績評価の指定について説明いたします。資料3を御覧ください。1ページの品目の概要欄を御覧ください。本品は、胸部下行大動脈における大動脈瘤及び外傷性の大動脈損傷、並びに、内科的治療が奏功しない合併症を伴うStanford B型大動脈解離の治療を目的とした胸部大動脈ステントグラフトです。既承認品「ゴア CTAG 胸部大動脈ステントグラフトシステム」及び「ゴア TAG 胸部大動脈ステントグラフトシステム」と同じ疾患を対象としておりますが、鎖骨下動脈への血流温存を目的として、分枝構造を有する国内初の分枝付き胸部大動脈ステントグラフトです。
 2ページに本品の写真を掲載しておりますので、御覧ください。本品は、メインのステントグラフトと鎖骨下動脈に留置する分枝ステントグラフトから構成されます。これまで、鎖骨下動脈の近くに瘤などがある場合、鎖骨下動脈上にステントグラフトを置かざるを得ず、代わりにバイパスによる血行再建が必要となっておりました。本製品は、このような疾患であっても、ステントグラフトのみで治療ができるように設計された分枝付きの胸部大動脈ステントグラフトです。
 1ページに戻ります。本品の使用成績評価の調査期間については、既承認品と同様の考え方に基づき、計9年とすることが妥当と考えております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○小野部会長 委員の皆様方、御意見、御質問はいかがでしょうか。鎖骨下動脈の血流をステントグラフトの分枝で維持するということで、追加の侵襲的手術が不要になるということです。よろしいでしょうか。
 それでは、議決を行います。医療機器「ゴア TAG 胸部大動脈ブランチ型ステントグラフトシステム」について、本部会として、使用成績評価は期間を9年として指定するということでよろしいでしょうか。御異議のある委員の方々は、御発言又は挙手をお願いいたします。
ありがとうございます。特に御異議はないようですので、そのように議決をいたします。なお、本件は審議会で報告を行うこととなっております。
 それでは、議題4「医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」に移ります。事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 議題4について、資料4に基づき説明いたします。資料4を御覧ください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器があり、新たに一般的名称を新設する際には、「いずれのクラス分類に該当するかについて」、また、「その保守管理に専門的な知識を要するものとして、特定保守管理医療機器に指定するか否か」について、御審議いただいております。今回は医療機器の承認に際し、一般的名称の新設が必要なものが3件あります。
 それでは、初めに資料4の1ページの「新設する一般的名称(案)について」を御覧ください。新設予定の一般的名称は「吸収性食道用ステント」、その定義は「拡張して管腔の内側に留まる吸収性の支持構造で、食道又は胃食道閉鎖の治療、このような経路の開存性の維持に用いる。例えば、ステントは拡張又はバルーンカテーテルによって閉塞部に送達することができる。バルーンカテーテルを膨張させ、ステントを拡張して管腔を支持する。一定の長さの連続チューブ状のものもあれば、チューブ型の足場構造のものもある。」です。
 参考として、本一般的名称に該当するものと考えております現在審査中の医療機器を紹介いたします。3ページの「新一般的名称が付される予定の品目概要」を御覧ください。本製品は吸収分解性素材であるポリジオキサノン製の食道用ステントで、本品のように吸収性の原材料を使用し、一定期間後に分解吸収されることを意図した既承認の食道用ステントは他にありません。
 1ページに戻ります。類似する一般的名称として「食道用ステント」がありますが、これは永久インプラントとして留置される非吸収性ステントを対象とした一般的名称ですので、今般、新たに一般的名称を新設させていただくこととなりました。本品は、クラスIV、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器については、非該当と考えております。
御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○事務局 続いて、資料4の4ページ、「新設する一般的名称(案)について」を御覧ください。新設予定の一般的名称は「薬剤溶出型吸収性副鼻腔用ステント」です。定義は「拡張して副鼻腔の内側に留まる吸収性の支持構造で、その開存性を維持するために用いる薬剤溶出型ステントをいう。例えば、内視鏡下でデリバリシステムによって、副鼻腔内に送達することができる。自己拡張により、ステントは拡張して内腔を支持する。」です。6ページに「新一般的名称が付与される予定の品目概要」として示しておりますが、こちらの品目は先ほど議題2において御審議いただきました「Propel鼻腔内ステント」ですので、詳細は割愛いたします。
 4ページに戻ります。(参考)です。これまでにある一般的名称の中で、薬剤溶出型ステントとして使用される医療機器の一般的名称や吸収型のステントとして使用される既存の一般的名称が存在するところ、今回、鼻副鼻腔手術後の鼻副鼻腔内の開存性を目的としている点で既存の医療機器と異なるということで、今回、一般的名称の新設を御審議いただくこととなりました。本品は、クラスIII、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器については非該当と考えております。
○事務局 続いて、8ページの「新設する一般的名称(案)について」を御覧ください。新設予定の一般的名称は「皮膚引締め用超音波照射器」、その定義は「美容医療目的で使用され、主に顔面や首において体表面から超音波エネルギーを供給し、標的組織を加熱することで一時的に凝固し、皮膚のしわやたるみを改善する装置をいう。」です。
10ページに、「新一般的名称が付される予定の品目概要」があります。本製品は、超音波を皮膚に照射し、真皮への加熱凝固作用により、顔面及び頸部のしわの改善を行うことを目的とするものになります。
 9ページに戻ります。御紹介した品目は美容医療目的で使用され、主に顔面や首の体表面から超音波エネルギーを供給し、標的となる真皮組織を加熱することで一時的に凝固し、その後の創傷治癒反応によりコラーゲン繊維等の新生を促すことで、皮膚のしわやたるみを改善することを目的とする医療機器です。一方、既存の一般的名称「集束超音波治療器」は前立腺肥大症等の治療を意図して標的組織を完全に焼灼・凝固させるために高いエネルギー密度にて照射する装置を意図しており、申請品は該当いたしません。また、一般的名称「超音波治療器」についても、筋肉の疼痛緩和を目的とした治療機器を意図しており、申請品は該当しないため、今回一般的名称を御審議いただくこととなりました。
本品は、クラスII、管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器については、該当と考えております。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○小野部会長 ただいま、3品目、新しい管理区分の一般的名称を新設するという御説明でしたが、委員の皆様方から何か御質問、御意見はありますか。一つ目は、食道用ステント、吸収性のものが出てくるので、これを指定するということ。もう一つは、先ほど御説明のあった副鼻腔炎の治療で副鼻腔の入口部の部分を拡張させ、ステロイド徐放するというもの。もう一つは、真皮を照射することによるしわの治療用超音波器ですが、いかがでしょうか。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 3品目目ですが、今、部会長からあったように、しわ等も含めて改善するという形なのですが、これについて「皮膚引締め用」というような表現が本当に適切なのかどうか。実際に、ここに書いてあるように、真皮の所を凝固させるという形で、レベルとしては比較的低エネルギーの超音波を使って、皮下の所だけを狙うということなのでしょう。それを凝固させると書いてあるわけですが、凝固させるということに対しては、それは実際に皮下の真皮の組織をある程度破壊していく、実際には、血管も含めてある程度破壊されてしまうということになると思います。もちろん、その後でコラーゲンが新生されると書いてあるのですが、果たしてこれが、記載されているとおり、コラーゲンそのものを再生させるのかという医学的なバックグラウンドとしての証明はあるのでしょうか。
 私は、コラーゲンが再生されるというのは、そこのところだけがしわの改善を目的にそこだけ特定にコラーゲンがそこで再生されるとは、なかなか理解がしにくいと思います。なおかつ、名称が「引締め」というような表現なので、これが実際に美容医療に当たるとしても、適切な名前なのか、少し疑問に思うのですが、いかがでしょうか。
○小野部会長 事務局からお願いいたします。
○事務局 まず、最初に御質問いただいている点は、美容、引締め用という用語が適切かということかと思いますが、この「皮膚引締め用」という用語が、厚労科研にて関連学会協力の下で作成されております美容医療診療指針というものがあり、超音波治療で得られる効果について、指針の中において引締め効果と定義されていることから用いている言葉になります。
○宮川委員 ありがとうございます。美容医療であれば、実際にはこれはもちろん医療行為になるわけですよね。医療法、それから医事法を含めて、その中でいろいろな法的な規制の下に、様々な施行が行われますが、それが本当に医療なのか。つまり、本来であれば、皮膚が欠損したとか、がんも含めてですが、いろいろな外傷があった場合に、それを修復するというものが本来的な美容医療であるという形なのです。それ以外は本来からすると、患者とは言わず利用者とあえて言いますが、利用者が自己の目的で望む身体的な、主に顔面でしょうけれど、そういう所を狙って望むような形にするものであり、本来からすると美容医療として、医療を付けていいのかどうかという問題があります。そして、今回のような「引締め」というような形で、しわを引き締めるどころか、更に損傷というかしわがひどくなった場合、それを修復するために、本来のいわゆる美容医療というところで保険適用となっている。そういう意味では保険医療を非常に困窮させるような、財源を食ってしまうようなことがあるのではないかということがありますので、安易な「引締め」という言葉を使っていいのかどうかと考えています。今後のことですが、厚労省が、従来行っていたから、従来使われていたからということで、この引締めというような形で、単に医療としての考え方ではなく、美容のことだけで、殊更謳っていくのが本来の筋なのかどうかということで、あえてお聞きしました。これから非常に問題が大きくなるので、従来そういうものが「引締め」というような言葉で使われていたからといって、今後、こういうものが認められ、そして名称として使われることが本来的な意味ではないことになってくる。実際には、厚生労働省として望ましくない方向に向かっていくことを助長する言葉になるのではないかと危惧したものですから、あえて発言いたしました。よろしくお願いします。
○小野部会長 ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 機構から補足してもよろしいでしょうか。
○小野部会長 はい、どうぞ、お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 資料4の10ページを御覧ください。7番の備考の所に、GMDNコードの横にUltrasonic skin contouring systemということで英文があります。平成15年2月の厚労省の部会で、国内の一般的名称の新設に当たっては、この国際一般的名称を基とするということで決まっております。私どもとしては、このUltrasonic skin contouring system、このcontouringの所をどう訳すかということですが、この邦訳を適切に付けていただければよろしいのかと思っているところです。
 併せて、クラス分類についても、このGMDNコードの上に欧州においてクラスIIaとなっており、本邦のクラス分類についても平成15年2月の部会で、クラス分類ルールのGHTFルールに基づいて国内のクラス分類を決めるとなっておりまして、欧州のIIaというのは、国内のクラスIIのことですので、一般的名称をこれこれについてクラスIIということで御提案しているところです。
○小野部会長 ありがとうございます。そうですね。
○宮川委員 私は、否定するということではなく、今後、適正に考えていくための基本としてお話しているだけで、基本的なことがどうのこうのと言っている従来のことを否定しているわけではないと御理解いただければと思います。今後、そういうことが、いろいろな方針の中で、いろいろな不都合が出てきたときに、どのような方向性をこれから出すのか。自分たちが言った言葉がどのように響いてくるのかということをお話しているだけです。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 機構から、御参考までになのですが、現状のスキンリジュビネーション治療といいますが、肌の若返り治療の現状ですが、外科手術や、医療機器たるヒアルロン酸を注入するという注入手法に加えて、レーザー、高周波、超音波、IPLなどのエネルギーベースの機器を用いた治療が現状あり、いずれも自由診療となっているかと思います。一般に侵襲の高い外科手術や、異物が体内に残るヒアルロン酸等の注入治療に比べて、もちろんそちらのほうが効果が高いのですが、こういったエネルギーベースの治療については、ダウンタイム、痛みや腫れ等の引く期間が短いですとか、瘢痕形成等のリスクが低いといったことで、こういったエネルギーベースの治療が今行われているという情報を得ております。
○宮川委員 全て理解しております。今お話になったことの言葉尻を捉えるわけではないですが、皮膚の若返りとお話されましたが、皮膚が本当に若返るかどうか、そのようなことも含めて、言葉としてしっかりとした概念を持って発言されないと、今後いろいろな問題点が起こるのだということを御理解ください。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。また、更に御参考までにですが、先ほど申し上げました炭酸ガスレーザーを用いたものや、RF等のラジオ波を用いた高周波の治療機器においては、既にそういった皮膚の審美性の改善という使用目的で承認されているものもありますので、御参考までにお伝えいたします。
○小野部会長 ありがとうございます。議論の方向性が互い違いといいますか、捻れの位置で議論しているので余りかみ合わないので、これはこの辺りで終えてもいいのではないかと思います。
○医療機器審査管理課長 確かに宮川委員がおっしゃった方向での議論が医政局のほうでなされていいます。今回はあえて美容医療目的という形で、今まで様々な雑品のものが、いわゆるエステ等で使われていて、いろいろなことが起こっている中で、美容医療目的ということで、これは医師が使うものだという前提のもとで、今回このような一般的名称をつくるということで、今起こっているような問題に、現時点ではこういったものをつくることによって逆に寄与するのではないかという趣旨で、今回、御提案をさせていただいているところでございます。
 ただ、全体として、今後、いろいろとどこまで何が規制されていくのかが見えない中ではありますが、現時点では、この形で、より良い適正化の方向に資する一つのものとして御理解を頂ければと考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。十分理解しております。いろいろな御苦労があるかと思いますが、なるべくいろいろなことについて、これから問題が起こらないように、うまく適切にやっていただきたいと思っております。
○小野部会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問はありますか。河野委員、お願いします。
○河野委員 すみません、今の御発言は、Webからの参加なのですが、一体どなたからの発言なのかが分からなかったのですが。
○小野部会長 今は宮川委員が、いろいろ御発言いただいておりました。
○河野委員 最後の発言は、宮川委員ですか。
○小野部会長 最後の発言は。
○医療機器審査管理課長 すみません、医療機器審査管理課長です。申し訳ございません。
○河野委員 分かりました。Webからだと、どなたか分からないので。私は、もう宮川委員の発言に全面的に賛成で、言葉の選び方というか、医療というものの考え方については、特に厚労省が非常に厳密である必要があると思っています。私は、宮川先生の意見に全面的に賛成です。以上です。
○小野部会長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問はありますか。佐久間委員、お願いします。
○佐久間部会長代理 今、議論を聞いていて、英語、contouringという言葉との対比だとすると、これは輪郭をするがcontourですよね。これを見てみると、body contouringというのは体型矯正なのですね。ですから、多分これは正確に言うと、皮膚矯正。
○小野部会長 皮膚の形状矯正。
○佐久間部会長代理 形状矯正なのですよね。そうすると、多分それは「引締め」という意味ではなくて、少しニュアンスが変わるかとは思ったので、発言いたしました。
○小野部会長 これは、どれが適訳かという、意訳にするのか、直訳にするのかによって、また違う。水掛け論になってしまいますので、余りこれは本質論ではないとは思いますが。要するに、輪郭をきれいに見栄えをよくするということですね。それを、どう表現するかということですね。なかなか重要な議論ではありますが、余り結論が出そうにありませんので、よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。まず、「吸収性食道用ステント」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定しないということで、よろしいでしょうか。御異議がある方は、挙手、あるいは御発言をお願いします。特に異議はないようです。
続いて、「薬剤溶出型吸収性副鼻腔用ステント」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定しないということで、よろしいでしょうか。御異議のある方は、御発言、あるいは挙手をお願いいたします。ありがとうございます。特に御異議はないとされました。
最後は、「皮膚引締め用超音波照射器」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としても指定するということで、よろしいでしょうか。御異議のある方は、御発言、あるいは挙手をお願いいたします。ありがとうございます。特に御異議はないとみなします。
したがって、全て御異議がありませんでしたので、そのように議決をいたします。なお、本件は審議会にて文書報告を行うこととなっております。以上で、議題4を終了いたします。
 それでは議題5、医療機器「BNCT 治療システム NeuCure」及び「BNCT 線量計算プログラムNeuCureドーズエンジン」を希少疾病用医療機器として指定することの可否についてです。事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 厚生労働省より説明いたします。資料5の2ページを御覧ください。今回、ホウ素中性子捕捉療法(以降BNCTという)に使用する中性子照射装置である「BNCT治療システム NeuCureと、その治療支援プログラムである「BNCT線量計算プログラム NeuCureドーズエンジン」の2品目について、再発悪性神経膠腫と再発髄膜腫の2疾患に対して、希少疾病用医療機器の指定申請がありました。BNCTは、患者にホウ素医薬品を投与し、がん細胞に蓄積したホウ素医薬品に、中性子線を照射することで、核分裂エネルギーを利用して、がん細胞を破壊する治療法です。
 それでは、まず再発悪性神経膠腫について説明いたします。3ページを御覧ください。対象者数については、令和2年度患者調査より、悪性神経膠腫を含む脳の悪性新生物患者の総患者数は約1万人と報告されており、5万人未満の要件を満たしております。
次に、医療上の必要性です。疾患の重篤性として、初回の悪性神経膠腫には外科的切除、放射線療法、化学療法を組み合わせた治療がなされますが、半数以上で再発が認められております。再発悪性神経膠腫には標準的治療は確立しておらず、外科的切除などを実施した場合でも、全生存期間(OS)の中央値がそれぞれ、外科的手術の場合7.4か月、放射線治療の場合7.5~13か月、化学療法の場合5.4~12.6か月と予後が不良であり、重篤な疾病と考えております。
 また、本疾患に対する有用性としては、国内第II相試験において、1年生存率が79.2%、全生存期間の中央値が18.7か月という高い成績が示されておりますので要件を満たしていると判断しております。
 最後に、開発の可能性として、既に必要な非臨床試験は終了しており、今後、国内○○○試験を実施し、承認申請を行う計画です。
 続いて、再発髄膜腫について説明いたします。対象者数については、令和2年度患者調査より、髄膜腫の総患者数は約1万人と報告されており、こちらも5万人未満の要件を満たしております。
続いて、医療上の必要性です。髄膜腫の標準的治療は外科的摘出術で、髄膜腫適応で承認された治療薬等はないため、再発時は放射線治療しか選択肢がなく、標準的な治療は確立していない状況です。また、アメリカで承認されていないものの、ガイドラインで推奨されている治療薬等を用いた臨床試験において、無増悪期間の中央値は、24か月~24.6か月と予後が不良とされており、重篤な疾病と考えております。
 機器の有用性として、現在実施中の第II相試験の予備的な結果において、改変Macdonald基準に基づく中央画像効果判定による奏功率については、がんの積極的治療を行わず、症状緩和治療のみを行ったBSC群では奏功例は認められませんでしたが、本機器を使用したBNCT治療群では41.7%の奏功が確認されており、有効性があると判断しております。
 最後に開発の可能性としては、既に必要な非臨床試験は終了しており、今後第II相試験を完了し、機構と協議後、承認申請を行う計画です。
以上から、申請の2疾患について、希少疾病医療機器の指定基準を満たすと考えられ、指定して差し支えないと判断しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○小野部会長 それでは、委員の皆様方から御質問、御意見はありますか。希少疾病でオーファンであるということと、第II相までそれなりの有効な結果が出て、これから○○○に入るということですね。よろしいでしょうか。特に御質問、御意見等がないようであれば、議決に入ります。
医療機器「BNCT治療システムNeuCure」及び「BNCT線量計算プログラムNeuCureドーズエンジン」を希少疾病用医療機器に指定することとしてよろしいでしょうか。御異議のある委員の方々は、挙手又は御発言をお願いいたします。
特に御異議がないようですので、そのように議決をいたします。なお、本件は審議会で報告を行うこととなっております。以上で、議題5を終了いたします。
 本日用意した議題は以上となりますが、事務局から何か連絡事項等はありますか。
○医療機器審査管理課長 ありがとうございます。冒頭、今回から新たに川上純一先生に部会委員として御就任いただいております旨を御紹介いたしましたが、議題1が始まる前に川上委員がWebで参加されておりますので、川上先生におかれましては一言御挨拶いただければと存じます。
○川上委員 少し遅れてWebに入りまして、恐縮です。川上純一と申します。日本薬剤師会の立場で参加させていただいております。職場は、浜松医科大学附属病院になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○医療機器審査管理課長 どうもありがとうございます。事務的連絡事項ですが、次回の部会は11月11日(月)18時からを予定しておりますが、詳細は後日メールで御連絡いたします。連絡事項は以上です。
○小野部会長 それでは、以上をもちまして、本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬局

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長 冨田(内線4226)