薬事審議会血液事業部会令和6年度第4回運営委員会議事録
日時
令和7年3月12日(水)16:00~18:00
場所
Web併用形式
日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階 8E会議室
日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階 8E会議室
出席者
- 出席委員(6名):五十音順、敬称略 ◎委員長
-
- 大隈 和
- ◎田野﨑 隆二
- 松下 正
- 松本 剛史
- 水上 拓郎
- 三谷 絹子
- 欠席委員:敬称略
-
- 武田 飛呂城
- 日本血液製剤機構:敬称略
-
- 津田 昌重
- 福田 洋一
- 廣田 年展
- 日本赤十字社:敬称略
-
- 谷 慶彦
- 後藤 直子
- 事務局:
-
- 岩崎 容子(血液対策課長)
- 金子 健太郎(血液対策課長補佐)
- 源 周治(血液対策課長補佐)
- 山本 光寿(需給専門官)
議題
- 1. 委員長の選出及び委員長代理の指名について
- 2. 感染症定期報告について
- 3. 血液製剤に関する感染症報告事例等について
- 4. その他
配布資料
資料ページをご参照ください。
議事
- 議事内容
- ○源血液対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより「血液事業部会令和6年度第4回運営委員会」を開催いたします。本日は、お忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度は、御参集いただく方の利便性等の観点から、Web併用での審議とさせていただきます。なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
まず初めに、薬事審議会血液事業部会委員会等の改選があり、運営委員会委員についても委員の交代がありましたので、お手元の委員名簿に沿って御紹介申し上げます。大隈和委員、武田飛呂城委員、田野﨑隆二委員、松下正委員、松本剛史委員、水上拓郎委員、三谷絹子委員です。なお、本日は武田委員から御欠席の御連絡を頂いておりますが、委員6名に御出席いただいていることを報告いたします。
本日は参考人として、一般社団法人日本血液製剤機構より、津田執行役員生産本部長、福田執行役員経営戦略本部長、廣田執行役員事業本部長に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、谷中央血液研究所所長、後藤技術部次長にお越しいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
続いて、本日は改選後初めての会議ですので、委員の皆様に御留意いただきたい事項について、2点説明いたします。第1に、守秘義務の関係です。国家公務員法第100条において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されております。委員の皆様は、非常勤の国家公務員としてこの規定の適用を受けますので、職務上知り得た秘密について漏らすことのないよう、お願い申し上げます。
第2に、薬事に関する企業等との関係です。薬事審議会規程第11条において、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。審議の中立性、公平性を確保する観点から規定されておりますので、これらに該当する場合又は任期中に該当することになった場合は、速やかに事務局に御連絡いただくようお願い申し上げます。なお、ただいま説明した薬事審議会規程第11条については、全ての委員の皆様より適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出していただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会議にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いします。タブレット上に「1 議事次第」から「11 資料3」までのPDFファイルが表示されているか、御確認をお願いします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
本日はWeb併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について説明いたします。審議中に御意見、御質問がありましたら、挙手等によりお示しいただきますようお願いいたします。委員長から、順に発言者を御指名いただきます。指名された方は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を発言ください。ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、発言者が多くなり音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は委員長からお願いする場合があります。その場合には、記入されたメッセージに応じて、委員長より発言者を御指名いただきます。
Web参加の皆様におかれましては、議事進行中に会場の音声が聞こえづらい状況が続き、審議参加に支障を来たす場合には、チャット等でお知らせいただくようお願い申し上げます。間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。
それでは、これより議事に入りますが、委員長が選出されるまでの間は、私が進行役を務めさせていただきます。議題1、委員長の選出及び委員長代理の指名についてです。今回からは、新しく運営委員会に参加される委員もいらっしゃいますので、まず事務局より本運営委員会の設立に係る経緯を改めて説明いたします。
運営委員会の設置の経緯・趣旨についてですが、参考資料1になります。安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の国会審議においては、様々な論点について議論が行われ、その中の1つに血液事業の安全監視体制の在り方があり、HIV感染等の経験を踏まえ、血液事業を定期的にチェックし、緊急時には迅速に対応できるよう、厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会の血液事業部会に運営委員会を設置し、危機管理に対応していくこととしました。
平成15年7月30日に安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律が施行され、同年8月11日に第1回運営委員会が開催されました。開催頻度は、少なくとも四半期に1回の開催、緊急事態が発生した場合など、委員が必要と認める場合に開催する。運営委員会の職務は定期的に開催し、血液事業の運営状況を確認・評価する。緊急事態が起こった場合には、機動的に開催し、安全性等に関する情報を速やかに共有、評価し、必要な措置等についての意見を述べる。厚生労働省の医薬局以外の他部局、関係機関等から説明を求めるなど、幅広く説明を収集。血液製剤と代替性のある遺伝子組換え製剤の安全性についても所掌する。
メンバー構成は、血液製剤を使用する患者の代表をメンバーとし、医療関係者や研究者等、血液事業に専門的知見を有する者で構成する。設置根拠は、薬事分科会規程の調査会を設置する規定に準じ、血液事業部会の部会長が血液事業部会の中の恒常的な組織として設置する。上記の議論の趣旨を盛り込んだ運営委員会規程を、血液事業部会に設けることとする。以上が、運営委員会の設置の経緯・趣旨となります。
今回の主な議題としては、感染症定期報告、血液製剤に関する感染症報告事例等についてとなります。直近2年では、これら以外の議題として、血漿分画製剤の持続可能な国内自給体制及び安定供給体制の構築に向けた論点整理について。献血血液等の研究開発等への使用に関する報告についてなどがあります。血液事業の安全監視体制に関わる問題を中心に、幅広く議論を行っております。
本日御欠席の武田委員からは、事前に改めて運営委員会の重要性を再認識した上で議論をお願いしたい旨をお伺いしております。松本委員からは、何か御発言いただけますか。
○松本委員 私は、ヘモフィリア友の会全国ネットワークという血友病の患者の代表をしている団体の理事長もさせていただいております。昨今、血液に関しては、いろいろな世界情勢もあり、血液製剤が安定的に供給されることが少し不安になるような事態もあるかと思います。そういうことが、患者に絶対迷惑というか、利便性に支障が来たされないように、きちんと我々が運営して決め事を決めていくというようなことをしていく必要があるかと思いますので、委員の皆様、よろしくお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 ありがとうございました。委員の皆様から御意見などはありますか。当会については、運営委員会規程第4条第1項により、委員長は委員等の互選により選出することとなっております。どなたか御推薦いただけますか。
○松本委員 松本ですが、よろしいでしょうか。
○源血液対策課長補佐 よろしくお願いします。
○松本委員 松本からは、田野﨑隆二先生を御推挙いたします。田野﨑先生は、これまでもいろいろ難しい課題もあった中、非常にバランスよく、うまく運営していっていただき、うまく血液行政を差配できていったのは、田野﨑先生のおかげだと考えております。是非、田野﨑委員を私から推薦させていただきたいと思います。
○源血液対策課長補佐 ありがとうございます。三谷先生、お願いします。
○三谷委員 血液事業部会を担当しております三谷です。私も、是非田野﨑委員に委員長をお務めいただければと思います。よろしくお願いします。
○源血液対策課長補佐 ありがとうございます。皆様、いかがでしょうか。異議はありませんので、田野﨑委員が委員長に互選されました。それでは、以降の進行を田野﨑委員長にお願いいたします。
○田野﨑委員長 皆さん、こんにちは。田野﨑です。この度は御推挙いただき、大変光栄に存じ上げます。
今、松本委員がおっしゃったように、血液製剤を安全で安定的に供給することは大変難しくなりつつあり、課題が山積している状況かと思っております。私は長くこの運営委員会の委員を務めさせていただき、新型コロナのような振興・再興感染症、それから免疫グロブリンなどを中心とした血漿製剤の問題、それから献血推進などの課題、これから足りなくなっていくということや、天災、人災なども含めて、うまくタイミングよく対策を立てていかなくてはいけないと考えておりますので、微力ではありますが皆様のお力をお借りしまして、皆様と一緒に対策を講じていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
それでは、運営委員会規程第4条第3項によりますと、委員長代理をあらかじめ委員長が指名すると定められておりますが、今までの流れもありますので、引き続き松下委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○源血液対策課長補佐 松下委員、よろしくお願いします。
○松下委員 了解いたしました。お引き受けいたします。
○田野﨑委員長 どうぞ、よろしくお願いいたします。それでは、これまでの説明について、御質問、御意見があればお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、議事に入ります。議題2、感染症定期報告について、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 議題2、感染症定期報告について、資料1-1を御覧ください。感染症定期報告を説明いたします。今回お示ししているのは、令和6年9月~11月までの3か月間に報告いただいた感染症定期報告に含まれる研究報告について、重複している部分を除いたまとめ16報告となっています。E型肝炎ウイルス2つ、エムポックス2つ、鳥インフルエンザ2つ、デング熱、重症熱性血小板減少症候群、オルトナイロウイルス感染、梅毒、リケッチア症が1つ、細菌感染が2つ、真菌感染1つ、クロイツフェルト・ヤコブ病2つの報告となっております。
E型肝炎ウイルスは2つ報告があり、1つ目は献血者の核酸増幅検査により日本におけるE型肝炎の疫学を解明し、輸血による感染の残存リスクを評価したものとなっております。2つ目は、慢性E型肝炎患者における精液由来HEVの感染性の証明で、本研究の中ではHEVRNA濃度が血清と比較して精液中で100倍以上高い検体もあり、HEVを潜在的な性感染症と見なすことが示唆されました。
続いて、鳥インフルエンザです。2つの報告があり、1つは乳牛の曝露における高病原性鳥インフルエンザの米国におけるヒト感染報告。2つ目は、乳牛は高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染しやすく、乳汁中にウイルスを排出することから、低温殺菌されていない乳汁を介して他の哺乳類に感染する可能性が示唆されたと報告されています。
続いて、エムポックスは2つ報告があります。1つは、2023年9月にコンゴ民主共和国でクレードIbのアウトブレイクが起こり、近隣諸国に拡大したが、ウイルスが広がるにつれて罹患グループも変化して、クレードIIの症例が報告もされているというものです。2つ目は、WHOよりエムポックスのアウトブレイクを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言、PHEICと判断したというものとなります。
続いて、デング熱は1つの報告で、CDCがデングウイルスの感染率の増加について、医療従事者、公衆衛生当局及び一般市民に対して通知するためのHealth Advisoryを発表したというものです。続いて、重症熱性血小板減少症候群が1つです。本邦で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のヒト-ヒト感染例の報告でした。
続いて、未知のオルトナイロウイルスの感染の報告で、新たに発見されたオルトナイロウイルスが北東中国のヒトの発熱性疾患と関連していることが確認されたというものです。続いて、梅毒は1つで、日本輸血・細胞治療学会学術総会での報告となります。近年、梅毒届出数が、全国的に増加。梅毒陽性献血者の動向を調査し、併せて輸血用血液製剤への影響を考察された。考察では、性別、年代の傾向も、国内の梅毒患者報告数と類似していました。献血者が梅毒陽性の場合、その後の献血は永久不適となるため、若年層の増加は今後の献血確保に大きく影響することが懸念され、引き続き動向を注視する必要があるとされた報告です。
続いて、リケッチア症の報告です。CDCホームページより1つです。新たにヒトにおいて感染することが認められたリケッチア病原体Rickettsia sp. CA6269が同定されました。今後は、地理的分布、潜在的ベクター、感染有病率及び保有宿主を調査するために、更なる環境調査が必要と報告されています。
続いて、細菌感染の報告が2つです。1つは、急性胆嚢炎を伴う成人におけるHelicobacter cholecystus菌血症の初めての報告です。2つ目が、英国におけるCampylobacter fetusによる真菌性動脈瘤の既往を有し、Nocardia nova及び新たに同定されたVariovorax属菌により引き起こされた慢性大動脈内血管移植片感染を呈した55歳の羊飼いの報告となっております。
続いて、真菌感染の報告が1つです。新たにヒトにおいて感染することが認められたRhodosporidiobolus fluvialisと呼ばれる病原体の報告です。最後に、クロイツフェルト・ヤコブ病は2つの報告です。1つが、本報告の研究の中ではCJDが輸血により伝播しない可能性を示唆しており、類似する欧州の1万5,500人年の観察結果と一致しています。これらの研究は、血液製剤によるCJD伝播リスクがごく僅かであり、理論上のリスクにとどまるとの見解を支持しているというものです。
2つ目が、Scientific guideline、CJD及び血漿/尿由来医薬品に関するCHMP reflection paper-Revision3に関する報告となっております。
続いて、7ページです。こちらも期間は同様に、9月~11月の受理分の感染症定期報告(個別症例報告概要)についてです。国内症例は、これまでと同様に議題3において、別の資料において収集・報告を行っておりますので、こちらは外国症例を一覧にまとめております。8ページ以降に、同一成分ごとに、感染症発症の9例からの成分ごとに一覧としてまとめておりますので、詳細な説明に関しては割愛させていただきます。議題2については以上です。
補足等においては、この後、水上委員にお願いしております。
○田野﨑委員長 ただいまの説明について、水上委員から追加でお願いいたします。
○水上委員 よろしくお願いします。今回はE型肝炎ウイルスと鳥インフルエンザ、それから、感染研から資料2としてオロプーシェ熱についてコメントしたいと思います。
まず、文献1と2、先ほどもお話があったとおり日本赤十字社の田中先生、佐竹先生らが献血血液におけるHEV国内感染状況をまとめて、「TRANSFUSION」誌に掲載された論文となっております。御存じのとおり、HEVはヘペウイルス科に属するエンベロープを持たないプラス1本鎖のRNAウイルスで、ヒトに感染するHEVのウイルスはオルソヘペウイルスAに属していまして、さらに、ジェノタイプ1~8の8種類の遺伝子型、それから、36種類のサブタイプに分類されています。このHEV-1型は途上国で流行するウイルスとなっていまして、先進国では主にHEV-3型によるE型肝炎が、主にブタやイノシシの加熱不十分の肉食によって、この経口感染で発生しています。
健常人におきましては、HEVの感染は99%が不顕性感染です。肝炎を発症しても比較的軽度で治癒する一方で、妊婦や臓器移植患者、造血幹細胞移植患者など、免疫抑制剤を投与されている方では慢性化しやすく、肝繊維化も急速に進展することが報告されています。北海道では重症化傾向の強いHEV-4型が多く見られ、複数の輸血感染事例が報告されていたことから、先ほどお話にありましたとおり、2006年3月よりNATスクリーニングが試験的に導入され、その後、全国疫学調査により、HEVの陽性率が北海道のみならず首都圏でも高いということから、2020年8月より個別NATが全国的に導入されております。
本論文では、導入後の解析結果がまとめられていて、導入後、1年間で約500万のスクリーニングの結果、2,804件(0.055%)の陽性で地域差が確認されています。遺伝子型は98.8%がHEV-3型で、1.2%がHEV-4型でした。HEV陽性ドナーの解析結果から、このHEVのウイルス血症期間が、個別NAT前後のウインドウピリオドを含めて88.2日と判明し、6か月の遡及調査期間も適切であると想定されています。現在まで、輸血によるHEV感染は報告されておらず、個別NAT導入が果たした役割は大きいと考えられています。血液事業報告書によりますと、HEVの陽性者は2020年より年々増加しつつあり、引き続き、この個別NATによるスクリーニングと、その後の遡及調査による確認が必要であると考えています。
併せて、今回、文献2で、ドイツにおける慢性E型肝炎感染者の射出精液中の感染性を有するHEVの検出に関する論文が報告されていまして、これは解析を行った9名中7名で、血清と比較して100倍以上高いウイルス量のHEVゲノムが検出されたことが報告されています。今までの手法ではウイルス分離ができなかったのですが、新しい改良型のウイルス分離試験というものを作りまして、そちらから複数患者由来の精液中に感染性を保持したウイルス粒子が存在していることを明らかにした論文となっています。今までHEVは発展途上国の水、食べ物由来の経口感染で、先進国では加熱不十分な食肉摂取によると考えられてきましたが、近年、動物モデルの様々な解析で精巣とか胎盤の細胞などでも感染が確認されて報告されています。2024年にはオハイオ大学のYadav先生らがPLOS Pathogensに、ブタの精子の頭部にHEVの抗原が発現しており、また、その精子から分離したHEVが、同じ改良分離法を用いて感染性を有することを明らかにしています。
今回、ヒトで初めて性感染の可能性を示唆するものとなった一方で、このエビデンスを裏付けるような性感染自体のエビデンスはないという報告もドイツの論文等では出ております。公衆衛生上の対応に関しては、引き続きエビデンスの収集が必要と考えられます。献血血液におきましては、現時点では個別NATにより十分検出されていると考えられ、特段の対応は不要ではないかと考えています。
続きまして、文献3、文献4の鳥インフルエンザです。こちらは前回から私も引き続き報告させていただいている、米国テキサス州での乳牛との接触履歴のあるH5N1のヒトの感染事例報告となっています。ヒト感染としては2例目の事例で、ウイルス系統としては、世界的に鳥類間で流行しているクレード2.3.4.4bということで、遺伝子型B3.13型になっています。2025年2月28日時点のCDCの情報では前回よりも増えていまして、酪農関係者の感染事例が40例、4州、また乳牛の感染は8月以降、カリフォルニアで非常に急増していて、976牛群で17州となっています。また、ウシ以外にもブタ、アルパカなどの牧場でも感染事例が報告されており、哺乳類への拡大に引き続き注視が必要と考えています。
文献4は、ネコの感染事例が報告されていまして、低温殺菌されていない生乳による集団死亡事例の報告となっています。通常、ウシでは摂食障害、反芻する回数の減少、泌乳量の減少等といったものが基本的な症状ですけれども、イエネコの場合は神経疾患や失明等が発生して死亡する事例が非常に多い。以前からH5N1に感染したトリを餌の原材料として使ったペットフードによるイエネコの感染事例が、欧州のポーランド、韓国等でも報告されていましたけれども、今回、2024年12月、カリフォルニア、コロラド、ミネソタ、オレゴン、サウスダコタの5つの州から20頭の感染が報告されています。特にカリフォルニア州では、高病原性鳥イフルエンザに感染したトリを原材料としたリコール中のペットフードの生乳を摂取して4匹が感染、また、生鶏肉、多分、こういう高級な餌があるのだと思いますが、生牛肉のペットフードを摂食して1匹が感染したという報告になっています。またオレゴン州農務省は、高病原性鳥イフルエンザウイルスが感染した七面鳥を使用した生ペットフードを摂取して、1匹が死んでいるという報告があります。ネコはH5N1に対して非常に感受性が高いことがうかがえます。
現在のところ、哺乳類の発生事例から哺乳類間での感染はまだ確認されていませんが、2022年のスペインのミンク農場では水平感染事例が疑われています。また、昨年度、ウィスコンシン大学の河岡先生たちが、ウシ由来のH5N1をフェレットに感染させて飛沫伝播を疑わせるような結果を、2024年、「Nature」に報告しています。このウシ由来のH5N1はマウスモデル及びフェレットで全身性の感染を示し、血中からも実は非常に高いウイルス量、あと脾臓といった所から検出されています。また、このトリ型の受容体であるシアル酸がガラクトースにα2-3結合した糖鎖と、ヒト型受容体でα2-6結合した糖鎖への結合性を評価したところ、ウシ由来のインフルエンザウイルスはトリ型をメインとしつつ、ヒト型にも結合することが分かっておりまして、哺乳動物間での新たな表現型を示すウイルスが選択される可能性については、引き続き注意が必要であると考えています。
最後ですが、感染研から追加で参考資料2ですけれども、オロプーシェ熱ということで、これはAABB(米国輸血・細胞治療学会)のファクトシートのアップデートについて報告したいと思います。オロプーシェ熱は、あまり聞き慣れていない方もいらっしゃるかと思いますが、ブラジルを中心とした南米で発生している節足動物の媒介性感染症で、デングウイルス等と同じように発熱、頭痛、筋肉痛を引き起こします。潜伏期間は吸血後からヌカカが媒介すると言われていて、症状の持続期間は通常2~7日、発症後、約60%の方は軽症化しますが、臨床症状が再発するという不思議な病状を示します。一方、40%の方は無症候という方になりますので、デングやジカウイルスなどのように、無症候の方からの献血による感染が想定される感染症になっています。
媒介する昆虫は、ヌカカという昆虫とネッタイシマカと言われていまして、ブラジルで媒介している同じヌカカ自身は国内には存在しないのですが、近縁種のヌカカ自体は日本にも非常にたくさん存在していますので、媒介するリスクは国内でもあると考えています。この原因ウイルスは、ペリブニヤウイルス科オルソブニヤウイルス属のオロプーシェウイルスと言いまして、80~120nmのエンベロープを有したマイナス鎖のシングルストランドRNAウイルスとなっています。エンベロープウイルスですので、次亜塩素酸や過酸化水素、過酢酸、エタノール、熱、ガンマ線照射などで十分不活化されることからも、輸血用血液製剤や血漿分画製剤においては、製造工程中の不活化によりリスクの低減が図られていると考えていますが、別途、これは実際評価が必要と考えています。
オロプーシェ熱ウイルスですけれども、1型から4型まで存在していまして、現在、ブラジルでは1型がメインで発生、流行しています。当初は散発的な発生ということで、そこまで注目はなかったのですが、2023年から2024年にかけて非常に感染者が増加しています。特に昨年度末、2024年末から2025年にかけてはブラジルでも前年比74%増と非常に増加し続けています。2024年度時点で1万6,239例、死亡が4例となっています。問題は、輸入症例が比較的多く報告されているということで、米国で108例、カナダで2例、欧州で30例となっています。また、最近、垂直感染事例というのが報告されていて、確定例だけで4例、先天異常が1例となっており、調査中のものが20数例程度あります。また、脳脊髄液からオロプーシェウイルスゲノムが検出されていまして、これはジカウイルスとの類似性といったことも、懸念されています。また、先ほどのE型肝炎と同じで、発症16日目の精液からもウイルスが分離されています。また、感染58日目の精液からも核酸が検出されているという論文が、2024年12月のEID誌に報告されていまして、性感染の可能性というのも示唆されています。
このような状況を受けてFDAは、2024年9月に、オロプーシェ熱と輸血に関するimportant information(重要情報)、それから、11月にはオロプーシェ熱と移植に関する重要情報を発出しています。併せて、AABBは8月20日に暫定版のファクトシートを作りまして、今回、参考資料とさせていただいたものを、11月4日に最終版のファクトシートとしています。内容は、今、御説明したとおりです。現在までに、輸血に関する感染例というのはまだ報告されていませんが、FDA承認の体外診断薬、いわゆる検査薬等がないということ。また流行国ではデング熱の検査の中で有症状でデング陰性の方にNATが実施されているということが記載されております。日本では、COVID-19のパンデミックが終息してから海外からの旅行者、流行地への旅行者も回復・増加していますので、感染リスクがそれなりにあるのではないかと思います。ただ、本病原体は、国内において感染症法における届出対象疾病ではないために、感染研自身も病原体マニュアルがまだ一般公開されていない状況です。加えて、ELISAキット等も国内では整備されていませんので、この夏にかけて検査体制等の構築が求められるのではないかということで御紹介させていただきました。私からは以上となります。
○田野﨑委員長 大変詳細な御説明、ありがとうございました。委員の皆様から御意見、御質問などがあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。大隈委員、お願いします。
○大隈委員 御説明、ありがとうございました。簡単な質問をさせていただきます。まずE型肝炎についてですが、これは精液由来のHEVの感染性が証明されたということで、かなり性感染症としての捉え方、それから取組が、今後、必要になるという印象を受けましたけれども、そういった動きが国際的にどうなっているのか。また、国内で何か動きがあれば教えていただきたいのが、1つです。
もう1つは、鳥インフルエンザに関してですが、米国等での報告が乳牛とか飼い猫ですけれども、実際、国内でこういった事例があるのかどうか。また、そういったことに対する実態調査というか、そういうことが進んでいるのかどうか。もし分かっていることがあれば教えてください。
○田野﨑委員長 そうしましたら、水上委員、お願いできますでしょうか。
○水上委員 E型肝炎につきましては先ほど説明したとおり、まだ疫学的なエビデンスとして性感染のデータがそろってきていないところですので、恐らく状況を見ての対応の変更とか、そういったものが出てくるのではないかと考えています。詳しいところは日赤の先生のほうが、非常に詳しいかと思います。もしコメントがあれば後で頂ければと思います。
インフルエンザのほうは、国内では乳牛における感染事例はまだ報告されていません。一方で、感染したトリの屍体を食べたキツネとか、あるいは各種哺乳類での感染事例は報告されております。特に野生動物の調査では、動物血清を各地より集めてライブラリーを感染研も含めて多くの研究施設で構築されております。これらを用いて血清疫学調査を実施しますと、野生動物においても陽性の個体が結構いることが報告されています。ですから、少しずつ近づいてきているのかなという認識はございますので、引き続き、そういったサーベイを通して感染事例がないか、明らかにして行く必要性があります。またその病原体の検出方法も必要になってきます。我々も、厚生労働科学研究班(水上班)で、H5の何型なのかを調べるための方法を、動物血清を用いて開発、検証していますので、そういったデータが蓄積されてくれば、今、どれぐらい広がっているのかも分かってくるかと思います。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。まだエビデンスが乏しいということですが、ほか、委員の先生方からはよろしいでしょうか。そうしましたら日本赤十字社の方から、もしよろしければ日本赤十字社からの御報告、E型肝炎、梅毒についてもありますので、先ほどの国内外での対応の仕方、そして、これは遡及に関してもE型肝炎に関しては適切であって、6か月間献血しないという対応で、こちらも併せて問題がないのかどうかについてコメントを頂ければと思います。よろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部谷中央血液研究所所長 水上委員から報告がありましたように、2020年、個別NATを導入してからは1例も輸血感染が出ていないというのが1つ、それと遡及に関しては、結構、(運営委員会や安全技術調査会でご指摘いただき)以前の分(HEV陽転の6ヶ月以内の血液)には(遡及調査を)やりましたけれども、(陽転前)6か月以内の血液で感染例はないということで、今の遡及のシステムが妥当ではないかと思っています。精液中のほうについても水上委員が言われたように、エビデンスがまだ乏しいので我々のほうもデータ集めが必要ということで、それに似たような論文が出てこないか、今、注視しているところになるかと思います。以上です。
○田野﨑委員長 ありがとうございます。ほか、皆様、あればお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。オロプーシェウイルスなども私はほとんど存じ上げないもので、これから対策を考えていかないといけない可能性もあるということが分かり、重要なことかと思いました。そうしましたら、事務局におかれましては今後とも感染症定期報告をよろしくお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 よろしくお願いします。
○田野﨑委員長 次に、議題3、血液製剤に関する感染症報告事例等に移りたいと思います。事務局から資料の御説明をお願いします。
○源血液対策課長補佐 よろしくお願いいたします。議題3、血液製剤に関する感染症報告事例等についてです。資料2-1と2-2に関して説明させていただきます。
まず資料2-1の説明をさせていただきます。血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例について、こちらは令和6年9月~11月までの3か月間の感染症事例をまとめています。令和6年度の輸血用血液製剤、症例製剤8件、血漿分画製剤が2件、うち輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告は0件。血漿分画製剤との因果関係が否定された報告は0件でした。
輸血用血液製剤に関する病原体感染症報告事例の内訳を下に示しています。HBV感染で0件。HCV感染で0件。HIV感染で0件。その他は8件、うちサイトメガロウイルス感染が1件、細菌等が7件です。
2番がHBV感染報告事例、3番がHCV感染報告事例、4番がHIV感染報告事例、いずれもこちらは先ほどお話させていただきましたように0件となっています。
5番、その他の感染症報告事例においても、上に書いてありますようにいずれも0件となっています。(2)の所で細菌等感染報告事例において、当該輸血用血液の使用済みバッグを用いた無菌試験が陽性事例は0件となっています。
次のページで一覧を示しています。上段の部分に関しては、サイトメガロウイルスの説明となっています。個別NAT陽性の事例は、該当はありませんでした。輸血後の抗体検査等で陽性であった事例が1件。
続いて、細菌感染報告を下に示しています。こちらに関しては、3件が血小板製剤からの感染が挙げられています。4件が赤血球からの感染が挙げられています。当該輸血用血液の残余にて細菌培養試験を実施していますが、いずれも陰性の結果でした。
3ページ目は、国内血漿分画製剤のものです。ここの説明は省かせていただきます。
続きまして、資料2-2を説明します。供血者からの遡及調査の進捗状況等についてです。1ページの血液製剤等に関わる遡及調査ガイドラインに基づく、日本赤十字社における供血者からの遡及調査の実施の進捗状況を日本赤十字社より御提出いただいており、今回は令和6年4月1日から12月31日までの速報値ということで頂いています。表の左と中央は比較のため一昨年と昨年を示していますが、一番右のカラムが今年度の速報値となっています。
一番上の1つ目の遡及調査対象血液の概要についてです。(1)調査対象とした献血件数ですが、前年度の同時期、4月1日から12月31日に比較してHBVがマイナス123件の920件、HCVがプラス43件の182件、HIVはプラス1件の12件、HEVはマイナス105件の3,671件が対象となりました。
(2)調査対象とした輸血用血液製剤の本数、(3)医療機関に情報提供を行った輸血用血液製剤の本数については、記載どおりの数字となっています。
続きまして、3ページ目では医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況を個別に羅列しています。簡潔ですが、事務局からの説明は以上です。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。医療機関からの報告、そして遡及調査からの報告ですが、重篤な感染症として確定したような症例はなかったということかと思いますが、委員の皆様から御質問、コメントなどがあればお願いいたします。よろしいでしょうか。特に御質問等はないようですので、どうもありがとうございました。
事務局におかれましては、また今後とも感染症症例や遡及調査結果の御報告をお願いいたします。
最後に議題4です。その他ですが、事務局から何かあればお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 ありがとうございます。参考人の日本血液製剤機構からクロスエイトMCの製造トラブル発生の経緯等についての報告があります。日本血液製剤機構から説明をお願いいたします。
○日本血液製剤機構津田参考人 日本血液製剤機構生産本部担当執行役員の津田です。まず、本日は弊機構が製造販売しています血液凝固第Ⅷ因子製剤であるクロスエイトMCの製造にトラブルが起こっていまして、現在、製造を一時停止しています。このことによりまして、本剤の供給が滞ることになりますこと、クロスエイトMCをお使いいただいています患者様、それから医療機関の皆様に多大なる御迷惑、御心配をおかけしていることを深くおわび申し上げます。申し訳ございません。
それでは、製造のトラブルの発生の経緯と製剤の品質、安全性について私から御報告させていただきます。資料3を御覧ください。まず、2ページ目を御覧いただきますと、本日の私どもが報告させていただく概要についてまとめています。昨年、2024年10月に弊機構、千歳工場におきまして、クロスエイトMCと同じ製造ラインで製造している日本薬局方の添付注射用水2ロットにおいて、全数目視検査でバイアル(瓶)の中に球体ガラス異物を認めることがありました。いろいろ調査をした結果ですが、発生原因としてはこのバイアル(瓶)を滅菌する装置、DHTと記載していますが、この製作時に表面加工のために球体ガラスが使用されています。研磨するために用いたものなのですが、この球体ガラスが装置の中の金属フレーム内部に残存していまして、経年使用している中でフレームの接合部が劣化したことで、この装置内に球体ガラスが漏出し、バイアル内に混入したものと判断しています。
現在、クロスエイトMCの製造再開に向けまして、是正措置対応を製造メーカーの専門業者とともに鋭意、進めているところです。
3ページ目を御覧ください。少し装置のことが分かりにくいですので、簡単に説明させていただきます。血漿分画製剤は、注射剤ですので無菌、滅菌していなければならないのですが、熱をかけますと変性して固まってしまうという特性があります。薬液をろ過で滅菌して、容器のゴム栓は高圧蒸気滅菌で滅菌しています。本日、御報告させていただくガラス瓶、バイアルについては300℃程度の高温で乾熱滅菌することで滅菌しています。この滅菌している装置の所で、不具合が起こったということです。
このガラス容器を、まず左の青字で書いている洗浄をした後に、乾熱滅菌という装置の中を通りまして滅菌する。その後、冷却した後に薬液を充填しまして、ゴム栓で打栓した後、凍結乾燥しているということで、この左から2番目の乾熱滅菌装置で不具合を認めたということです。
4ページ目を御覧ください。この度、認められた球体異物の写真がこちらのページにあります。きれいな丸の球体です。無色透明、直径の大きさは約0.1㎜のものです。
次の5ページを御覧ください。この検査については人手で目視検査によって検出したものです。目視検査は、訓練を重ねて社内の認定制度を設けていまして、これに合格した職員が担当しています。検査前には不良品というサンプルを用いていまして、粒子の大きさが90μm、これが目視できるということで資格を与えて、この検査に従事させています。実績としては最小50μm程度の異物を検出しています。目視検査自体は、3名の目視検査員が実施しています。同じ製品を2名で異物の中身の検査をし、残り1名が外観不良、瓶に傷がないか等の検査をしているというのが目視検査方法の説明になります。
6ページ目が、この製造トラブルにおける発生の経緯なのですが、一昨年の2023年9月から左側にありますように注射用水、あるいはクロスエイトMCの製造を順次行ってきました。一番左下にある昨年の6月20日に注射用水のロット9,400本ほどを製造しまして、このとき異物が0本だったということを認めています。その次の製造が右側の上にあります7月5日、クロスエイトMCの3000単位840本を製造したのですが、残念ながらクロスエイトMCというのは凍結乾燥品で、目視検査による異物の検出に限界があります。そのため、この中にガラスが入っていたかどうかはなかなか申し上げにくい状況です。その後の製造が10月20日に注射用水9,400本ほどを製造しましたが、ここで初めて1本のガラス球体の異物を認め、次の11月の注射用水のロットでも67本の異物を認めたということです。ですので、どの時点からこの球体ガラスが混入したのかということで言いますと、6月20日までは注射用水で認めていませんので、それ以前に製造したクロスエイトMCにはないという判断で工場出荷をしています。右上の7月5日のロット3000単位については、入っているかどうか、入っていないというのはなかなか言い切れないところがありまして、その次のロットの注射用水で異物を認めましたので、この7月5日に製造したクロスエイトMCは工場出荷をしないという判断をしているところです。
7ページ目を御覧ください。現在、使用していただいている製剤は、先ほど申し上げましたとおり球体ガラスの異物が発見される以前に製造したものです。製造開始以降、今回のトラブルの発生が起こるまでの間、全数目視検査によって球体ガラスの異物の検出は認めていません。以上のことから、出荷済みの本剤の品質に問題はないと考えている次第です。
先生方にいろいろ説明した際に、本当に入っていないのかということをおっしゃられて、私どもはそういう判断をしていますが、万が一、異物が入っていたとしても下に記載しています溶解移注針には異物除去のためのフィルターを備えています。このメッシュのフィルターは異物よりも小さい穴の大きさですので、理論上、シリンジにこの異物が混入する、万が一、入っていたとしても移行することはないと考えています。
8ページ目を御覧ください。こちらが溶解移注針の図です。本剤、凍結乾燥製剤の入った瓶と注射用水の瓶を接続するものです。左側に溶解液、注射用水を備え付けまして、グシュッと刺しますと右側にクロスエイトMCがありますので、クロスエイトMCの瓶内は真空状態になっていますから、注射用水が自然と右側のクロスエイトMCの瓶に移って溶解していただく。その後、左側の注射用水の瓶を抜きまして、今度は投与していただくためのシリンジを付けまして、クロスエイトMCの溶液をシリンジに吸い取っていただく。液が右、左と動くわけですが、この装置の間に異物除去フィルターがありますので、異物が万が一、入っていたとしても患者様の体に入ることはないと考えている次第です。
最後、9ページです。クロスエイトMCの製造の再開に向けての説明になります。発生原因として装置の製作時に金属表面加工のために使用されていました球体ガラス異物が、装置内の金属フレーム内部に残存していまして、経年使用によりフレームの接合部が劣化したことで装置内に漏出してバイアル内に混入したものと判断しています。
再開に向けましては、まずこの装置の内部、そして外部について、球体ガラスの異物を、徹底的に除去を行っているところです。
2番目として、この球体ガラスが除去できた後は、この装置内にトレーを完全に敷き詰めた状態で運転します。いわゆる空運転のようなものですが、これで異物が発生しないということを確認し、それができれば今度は3番目ですが、装置内部への混入と経路となり得る箇所に溶接、あるいはコーキングして、除去したのだけれども、万が一、残っていても、出てくることがないように閉塞措置を施します。その後、再びマル2に記載していますトレーを敷き詰めた状態で運転を行い、異物が発生しないということを確認していきます。
4番目は、その後、注射用水のテスト製造を行いまして、この注射用水の中にまた異物が検出されないということを確認した上で、ようやくクロスエイトMCの製造を再開するということを計画しています。
最後、5番目になりますが、製造再開した後にはクロスエイトMCの製品在庫を積み上げた上で、この問題が発生した装置を更新、交換する予定です。以上です。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。委員の皆様から質問、コメントなどがあればお願いしたいと思います。三谷委員、お願いいたします。
○三谷委員 よろしくお願いいたします。球体ガラス異物に関する質問なのですが、6ページのトラブル発生の経緯を拝見しますと、10月2日に1本だけ検出されて、その後、11月7日は67本ということなのですが、やはりこれは経年劣化が起きると一気に出てくると考えてよろしいのでしょうか。
○日本血液製剤機構津田参考人 恐らくそうだとは思いますが、あまりに小さいものですので、隙間といいますか、亀裂という所から出てきているのだと考えていますので、その確率論もありまして、どんどん増えていくのかというと、なかなか言い難いなというところはあると考えています。
○三谷委員 4ページに、検出された異物の大きさがロットごとに2つ書いてあるのですが、微妙にサイズが違います。この球体ガラスというのは規格品ではなくて、いろいろなサイズのものがあり得るということでしょうか。もっと小さいものがあるということに対する不安なのですが。
○日本血液製剤機構津田参考人 ガラスをバッと吹き付けているものですから、少しの誤差はあるとは思いますが、これよりも相当小さいというものはないと思っています。
○三谷委員 ありがとうございました。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
○水上委員 感染研の水上と申します。いつもありがとうございます。多分、いわゆるクロスエイトを作るときなども、不溶性微粒子試験など、そういった微粒子が入っているかどうかという試験はあるかと思いますが、その中では確認はされなかったという理解でよろしいのでしょうか。
○日本血液製剤機構津田参考人 そうですね、はい。
○水上委員 あと、この溶解針で一応プロテクトできるというようなお話だったかと思いますが、このメッシュの素材などにもよるのかなと、あと圧などによっても、仮にサイズが径を超えていても、ある程度プレッシャーをかけるとすり抜けてしまうなど、そういったテストというのはされたことはありますか。
○日本血液製剤機構津田参考人 実際に弊機構の中で、実験を何度もしました。先ほど申しましたように、何か圧をかけて水を本剤のほうに移すわけではなく、本剤は真空状態になっていますので、同じような流速、圧力がかかって水が移動するので、それほど変動はない実験結果だと思っています。
○水上委員 ありがとうございます。最後に1点、ちょっとお伺いしたいのですが、こういう目視でこういうある種の職人技というか、非常に能力の高い方をcertificateされて検査されているのだと思いますが、一方でやはりカメラやAIなど、いろいろ使って検出していく方法というものも多分、開発が必要かなと思われるのですが、そういったところも今後、技術移転というか、そういったものを開発されていくような検討もお考えでしょうか。
○日本血液製剤機構津田参考人 私どももこの異物を認めたときに、万が一、入っていても排除できるようなシステムを組めないかということは検討して、いろいろ情報も集めたのですが、ここまでの小さいガラスを検出する機械がまだ私どもは見付けられていないのです。もちろん、今後もそういう情報は収集しまして、こういうことがないようにするのはもちろんですが、万が一、入っても大丈夫なようなシステムは今後とも情報収集して検討していきたいと考えています。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。1つ、私からも確認なのですが、これは免疫グロブリン製剤なども含めて、この血漿分画製剤、原料血漿の段階では例えばナノフィルトレーションや無菌処理を含めて、いろいろなフィルターをかけてということを既にやられたものが、最後の詰めるところの段階で、最終段階でこのようになるという理解でよろしかったでしょうか。
○日本血液製剤機構津田参考人 薬液自体は、ナノフィルトレーションやろ過滅菌で細菌を除去する工程があります。今回、起こりましたのはガラス瓶を滅菌する装置なので薬液のやり方とはちょっと別になるのです。ただし、きれいな空気で流すようにということで、この装置の空気が流れる上流にはHEPAフィルターを付けていまして、0.3μmの粒子を99%捕捉できるフィルターを付けていますので、それがある限り大丈夫なのです。ただ、今回はそのHEPAフィルターの下流で亀裂のようなものがありまして、ガラス球が出てきたということです。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。無菌性など、そういうことに関しては問題がないということですが、同じように例えばゴム栓の破片など、今後はほかの所のものに関しても混在する可能性はあり得るということでよろしいのでしょうか。
○日本血液製剤機構津田参考人 ゴム栓の装置は、このようなガラスを使っていませんのでそういうリスクはないと考えています。
○田野﨑委員長 医薬品等について、例えば異物混入のことをいろいろ調査したような資料も拝見しますと、いろいろなガラスや樹脂、ゴムなど、いろいろなものがそれから見付かることがあるということが、これまでも報告されているように思いますが、そういうもので、最終工程などで経年劣化、その過程で異物が入り込むということはあり得るのかなと思って伺っていたところですが、こういうことについて今回はたまたま、こういうようなガラスのものが出てきて、それでこういうことがあるのかと改めて知ったわけなのですが、今後ともこの辺の管理、メンテナンスということは大変だなと思ったのですが、どんな形でされるのかなと思いました。
○日本血液製剤機構津田参考人 いろいろな装置の技術も進歩してきていますので、カメラでチェックできるものも一部入れていったりすることも考えています。もちろん機械の更新も、こういうことが起こる前にするような計画を立てていきたいと思います。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。実際の医療現場で結構、困っていることがないかどうかなど、そういうことに関しては委員の先生方から何か御意見やコメントがあればお願いしたいと思いますが、松本委員、松下委員、何かコメントなどがあれば、いかがでしょうか。
○松下委員 松下です。クロスエイトMCを使っている患者さんは、確かに10年前よりは少なくなっているのですが、とは言え、製剤が一旦、枯渇しますということで他製剤への切替えをお願いせざるを得ない状況で、中にはせっかく国産の製剤を気に入って使っているのにということをおっしゃる方もいて、御説明をするのですが、何とかならなかったものかなとは思っています。松本先生はいかがですか。
○田野﨑委員長 松本委員。
○松本委員 私も松下委員と同じで、やはりそのような声を聞きます。あと、もう1つ残念なのが、海外への無償の供与で世界血友病連盟を通して寄付をしている製剤ですので、これで今年の寄付はなしということで、一応、輸出も0と先日も算定されていたと思いますが、非常に残念なことで早期の再開を望みます。
それから、やはり国産ということですので、血友病製剤、第Ⅷ因子もそうなのですが、全ての製剤が外国産ということなってしまうことになりますので、これは1つの大きな問題というか、国産製剤を使っていく、もしその国際的に何かあったときに国内製品が全くないというのは非常に安全管理、安全保障上の問題でもあると思いますので、その辺りをJBには早期の製造再開を求めたいと思います。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。やはり血液製剤は非常に資源も限られていて、少し欠品が出ると大変なことになるということが、実際、起こっているわけですし、今後とも、また起こり得ることなので、いかに対策を立てていくかということ、今後の課題かなと思います。日本血液製剤機構におかれましては、引き続き御対応をよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題は以上となります。そのほか何かありましたら、お願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。よろしくお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。次回の運営委員会の日程は、別途、御連絡差し上げます。これにて血液事業部会令和6年度第4回運営委員会を終了します。ありがとうございました。
(了)