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- 2025年1月31日 第4回労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録
2025年1月31日 第4回労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録
労働基準局労働関係法課
日時
令和7年1月31日(金) 15:00~17:00
場所
厚生労働省専用第15会議室(中央合同庁舎5号館12階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)
出席者
- 公益代表委員
- 中窪部会長、戎野委員、原委員、水島委員
- 労働者代表委員
- 河野委員、冨髙委員、松元委員
- 使用者代表委員
- 井上委員、坂下委員、高垣委員、山口委員
- オブザーバー
- 筑紫電力基盤整備課長(経済産業省資源エネルギー庁)
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、五百籏頭労働関係法課長、八木労働関係法課長補佐
議題
- (1)現場視察概要報告
- (2)エネルギー政策について
- (3)これまでの議論を踏まえた論点の整理
議事
- 議事内容
○中窪部会長 それでは、ほぼ定刻となりましたので、ただいまより、第4回「労働政策審議会労働条件分科会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の部会につきましても、会場からの参加とオンラインでの参加の双方で実施いたします。
本日は、労働者代表委員の石橋学委員が御欠席と伺っております。
また、今回もオブザーバーとしまして、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部筑紫正宏電力基盤整備課長に御出席いただいております。
それでは、事務局より定足数等について御報告をいただきます。
○労働関係法課長補佐 事務局でございます。
本日の出席委員は12名となっており、労働政策審議会令第9条では、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされていますところ、定足数は満たしておりますことを御報告申し上げます。
カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
事務局からは、以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。本日の議題は「現場視察概要報告」「エネルギー政策について」、それから、「これまでの議論を踏まえた論点の整理」の3点となっております。
「現場視察概要報告」及び「これまでの議論を踏まえた論点の整理」については事務局より、それから、「エネルギー政策について」は資源エネルギー庁筑紫課長より、それぞれ御説明をいただきます。
質疑等の時間につきましては、それぞれの御説明の後に3回に分けて取る予定でございます。
まずは、「現場視察概要報告」について、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の五百籏頭でございます。資料1について御説明をさしあげます。
おめくりいただきまして、「現場視察の概要」を御覧いただきます。
期間といたしましては、昨年の11月22日、28日、29日の3日に分けまして、東京電力パワーグリッド株式会社中央給電指令所及び東内幸町変電所、また、四国電力株式会社西条発電所及び伊方発電所に視察で伺い、施設等の見学、業務の説明を伺うとともに、労使同席の下で、意見交換をさせていただきました。
おめくりいただきまして、「中央給電指令所・東内幸町変電所について」の概要でございます。
中央給電指令所は、需給運用及び周波数の調整を行っておりまして、体制といたしましては、24時間2交替制を実施しておられます。
また、都心中枢部へ電力を供給しておられます東内幸町変電所においては、常時無人という状況でございました。
電力需要は、震災前の水準にまで回復をしておられますが、季節や休日、平日でその需給は非常に大きく変化するということであります。
太陽光及び風力設備による発電量は、将来に向けて増加傾向。再生可能エネルギーは発電量をコントロールできず、再生可能エネルギーの設備量が増えると、天候や時間により変動する発電量の総量も増える。また、昼間に再生可能エネルギーを含む発電量合計が同時刻の需要量を超えることが想定される場合など、揚水式発電所をポンプとして下から上へ水をくみ上げることによって余剰電力を吸収し、太陽光による発電量が少なくなる夕方・夜間等に、揚水発電所を発電機として上から下へ水を流すことで発電をし、昼間の余剰電力を夕方の供給力として活用しているということでありました。
また、山間部や鉄塔等でのドローンや画像診断AIの活用等によって、一定の省人化、省力化が図られています。
災害対策としましては、過去の災害事例を参考に、シミュレーターで定期的に訓練を実施されているとのことです。
おめくりいただきまして、意見交換の主な概要です。
中央給電指令所における自動化の進展状況、再生可能エネルギー増加による需給調整業務への影響につきましては、需給調整は基本的に自動運転ということですが、気象予測の外れなどによって需給にずれが生じた際には、人による速やかな補完が必要であり、将来的には自動化を志向しているが、2030年頃に導入予定の次期中給システムに、AIは導入されない予定とのことです。
また、再生可能エネルギーの発電量が刻々と変化する中で、火力発電や揚水式発電を組み合わせて、全体の発電量を調整しなくてはならない状況ということです。
また、電力システム改革の影響としましては、需要と供給を一致させる仕組みが変わったこと、電力事業に参入する事業者が増えたことなどから、情報授受や指示伝達業務などの連携も増えており、中央給電指令所は1年前まで4人体制だったところを、担当を5人に増やしているという状況でありました。
また、おめくりいただきまして、中央給電指令所の体制及び人材育成等についてでありますが、中央給電指令所内では少人数で対応、日勤職員による応援体制が確保されているということです。
需給調整業務に就く際は、2か月半~3か月のOJTによる育成カリキュラムで経験を積むということで、電力需要の変化が大きい朝夕や昼休みの対応は、経験が必要ということであります。
災害対応については、地震の際は震度に応じて参集ルールを確立されておられますし、想定訓練等を実施し、警察と連携して、テロに対応できるよう訓練をなさっておられます。
ハード面では、送電線を変電所の屋内に引き入れる防水装置を設置するなど、変電所構内に水が入らない構造としておられますし、また、地震に関しましては、万が一停電した場合には、移動用の発電設備や変電設備で対応するなど、早期復旧を目指すこととされておられます。
また、おめくりいただきまして、人材確保・人材育成、労使コミュニケーションにつきましては、採用は職種ごと、本人の適性や希望に応じた職種の転換も可能であり、現場の担当がそのまま管理職になることも、本社、拠点に異動することもあるとのことでした。
人手不足の影響で、工事会社などでは外国人を作業員として雇用する動きがあります。
また、現場が若手とベテランに二極化しておられ、技術継承は喫緊の課題ということで、スマート化と並行して、若手とベテランを現場に一緒に出して、OJTを実施することにも取り組んでおられます。
また、電力システム改革後も、労使コミュニケーションに変化はなく、分社化による事務処理の負担は増加しましたが、充実したコミュニケーションが取れており、よい方向に向かっているということであります。
また、この点につきまして、労働組合からは、若年離職を危惧しており、若手との対話活動等を実施されていること、また、会社とのコミュニケーションの場として、経営協議会があり、震災前と比較しても、件数は変化ありませんが、年間を通じて200~250件というところで、実施をなさっているということであります。
おめくりいただきまして、西条発電所の概要でございます。
西条発電所は石炭火力発電設備を有しており、2号機は1970年から稼働しておられます。
火力発電は、燃料の増減によって発電量を増減させることができ、電力需要の変動に対応しやすいため、電気の需給バランスを保つために活用されているということです。
また、調整力として非常に重要な存在であるということで、石炭火力発電所においても、脱炭素を検討していくということであります。
従業員数は80名程度。発電設備の運転を行う中央制御室は4直2交替、1直当たり5名体制で対応。これに加えて、日勤者が8名配置されており、中央制御室の交替勤務者は、全員組合員。そのほかにも、グループの会社、協力会社の従業員200名程度が、発電所の構内で業務に従事されているということであります。
おめくりいただきまして、意見交換の主な概要です。
電力システム改革や再生可能エネルギー増加による発電業務への影響につきましては、電気の安定供給を担うという業務は変わらず、使命感を持ってやってきた。
電力システム改革で、取引市場が増加するなど制度が複雑化しており、ルールにしっかり沿うような発電所の運営が求められている。
石炭火力発電所は、以前であれば、ミドル・ベース運転をしていたが、現在は再生可能エネルギー増加により、発電量を調整しつつ運転するなどの役割を担っており、より高い緊張感を持って業務に従事しているとのことです。
おめくりいただきまして、西条発電所の体制及び人材育成等につきましては、現行の80名程度の体制は、震災前から比べると2割程度減少ということですが、離職者はほとんどいない。
標準的な人事異動は2~3年ということですが、当直者は育成に6年かかるので、若手社員は、その間、同じ配置でとどまることが多い。
オペレーターは育成標準を定めており、試験に合格した者をオペレーター認定している。交替勤務者20名のうち16名、日勤担当者8名のうち2名がオペレーター資格を持っておられます。
また、保全員についても認定制度を定めておられ、2~3年でおおむねの技能を習得できるということです。
災害対応等につきましては、南海トラフ対応等の訓練を実施されておられます。西条発電所だけの被災なら復旧に1か月くらいかかる想定ですが、広域災害だと、メーカーや作業員の手配がつくのかという点で、大きな課題ということでありました。
おめくりいただきまして、伊方発電所についてであります。
伊方発電所は3号機のみが稼働する原子力発電所になります。
原子力発電所はベースロード電源で、電気出力は一定に保ったまま運転をされています。将来のカーボンニュートラルにおける原子力の役割は大きく、安全・安定運転をしっかり確実にやるのが第一の使命である中、四国電力が設備の計画を行い、関係会社及び協力会社は、設備の点検や性能検査等の現場業務のほか、工事や廃止措置対応の業務を実施しておられるとのことです。
24時間2交替ということでありますが、運転員とは別に、重大事故発生時の対応要員として、最低22名が当番制で発電所内に常駐しておられます。人員は、ここ数年で3%弱減少。入構者全員に対しては、信頼性確認を実施していること。各部の部長、課長及び発電課の当直長は非組合員とのことです。
1日当たりの入構者は、四国電力の従業員が300名程度、関係会社及び協力会社の従業員が800名程度。
定期検査中は、関係会社及び協力会社の従業員が1日当たり2000名程度入構するということであります。
続きまして、意見交換の主な概要です。
電力システム改革やカーボンニュートラルによる発電業務への影響については、送配電事業者は別会社なので、情報管理を徹底している一方で、同じ使命感のもと、安定供給を目指している。情報の遮断はあるが、方向性は同じで、それは今後も変わることはない。
原子力と再生可能エネルギーで電源の特性が異なることから、再生可能エネルギーの主力電源化とともに、安全を大前提として原子力の最大活用にしっかりと取り組みながら、役割を果たしていきたいとのことでした。
また、労働組合からは、東日本大震災以降、組合員のモチベーション等々も心配していたが、最近は、原子力への風当たり、風向きが変わってきたので、引き続き組合員をフォローしていきたい。
安心安全に原子力発電所を運営することに協力することは、組合も大事と思っていて、協力したいということであります。
また、労使コミュニケーションにつきまして、労働組合から、組合員の生活環境の面や労働環境について、必要に応じて協議を行っている。協力会社とは年に1回原子力作業部会を設け、話し合っていて、その内容を労使で意見交換を行っているということであります。
おめくりいただきまして、伊方発電所の体制及び人材育成等につきましては、稼働している原子炉は1機のみだが、原子力規制関係の対応が多く、現行の300名程度の体制を維持しなければ安全・安定運転や規制対応ができないと感じておられます。
採用は、新入社員はほぼ四国出身者でしたが、最近の採用困難化により、中国地方などからも採用されているとのこと。入社後は、当直担当に配属され、1年で研修員から運転員になり、最低限の操作ができるようになる。
その後の育成につきましては、原子力部門の中でキャリアを重ねることが一般的で、管理者の育成に当たっては、現場と本店を行き来して、現場を理解しつつ、全体の統括も経験できるキャリアパスとされている。
安全・安定運転には技術継承が非常に重要だが、ベテラン社員によって確実に技術継承ができるよう対応をなさっている。
資格については、原子炉主任技術者という重要なポストがあり、このポストには試験合格と特別管理職であることを条件としている。
といったようなお話がございました。
概要は、以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見・御質問等がございましたら、お願いいたします。
オンラインで御参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合には、チャットで「発言希望」と書いて、お知らせください。
では、河野委員お願いします。
○河野委員 議題1の現場視察の概要報告に関し、丁寧なご報告ありがとうございました。
昨年の現場視察においては、公益委員の皆さま、さらには、企業や職場の組合員の皆さまも、大変お忙しい中、対応いただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
現場視察では、電力の労使関係についても確認をいただけたと思いますが、電力システム改革による分社化以降も、電力の労使は対等の立場に立ち、健全な労使関係を築いていることを共有いただけたのではないかと考えておりますので、引き続きよろしくお願いをさせていただければと思います。
以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、井上委員お願いいたします。
○井上委員 御説明ありがとうございました。
私は10年前にもこの審議会の委員をしておりまして、その際に、現場視察をさせていただきました。今回、改めて現場視察をさせていただいて、電力システム改革でそれぞれ会社が分かれたりした中で、非常にオペレーションが変わってきているなということを確認しました。
特に中央給電指令所は、かつては同じ会社で、発電の事業者も多くなく、一緒にやられていたわけですが、再生エネルギーの事業者が多く参入された結果として、非常にオペレーションそのものの緊張感というか難度が高くなったなということは、率直な印象として持ちました。
したがいまして、こういったことを踏まえると、日々の安定供給に非常に緊張感を持ってお仕事をされていることもよく分かる大変よい機会となりました。ありがとうございました。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、坂下委員お願いします。
○坂下委員 経団連の坂下でございます。
私は今回、はじめて現場視察に参加させていただきました。電力会社の皆様、また、厚生労働省の事務局の皆様には、すばらしい視察を御準備いただきまして、誠にありがとうございました。受け入れて下さった電力会社の現場の皆様はじめ、労働組合の方々にも、お忙しい中、真摯に対応いただきまして、感謝申し上げます。大変多くのことを学びました。
配付資料にまとめていただいた内容は、まさに私どもが見てきたものと同じだと思っています。改めて、当時の状況が頭の中に鮮明に浮かび上がってきました。非常に重要な現場の情報を確認できたと思っております。これらの内容も踏まえながら、今後、しっかり議論してまいりたいと存じます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
私からも、まずは、今回、視察を受けていただいた企業と労働組合の皆様、また、調整いただいた事務局の皆様に、御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。
私は、中央給電指令所と伊方発電所の2つの視察に参加をさせていただき、改めて、電力の安定供給に向けて、ハード面の対応や、現場の取組について、より理解を深めることができたと思っております。
印象的であったのは、電気の安定供給という目的を労使でしっかりと共有して、日々の業務を遂行されていらっしゃることと、それを継続的に行うために、労使が人材育成にもしっかり取り組まれているということを、改めて感じたところです。
中央給電指令所では、4ページにございましたけれども、需給調整業務が完全ではないもののある程度自動運転が可能になっていたことが見受けられました。
また、伊方発電所では、関係会社や協力会社との連携、アウトソーシングが進んでいた実態が見受けられました。
後ほどの議題の資料3でも、自動化や省力化の状況が一つの検討要素になっていると思います。そもそも電力だけではなくて、労働者が全く不要で完全自動化している職場はあまりない中にあって、電力の現場でも、自動化等が一定進んでいたという点は意識して、今後、議論していく必要があると感じたところでございます。
以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
原委員、お願いします。
○原委員 昨年は視察の機会をいただきまして、誠にありがとうございました。日々、電気がどのように供給されているのか、私たちが当たり前と思っている、その状況を維持することがどんなに大変かということがよく分かりました。強い使命感を持って、労使の方々も一緒になって仕事に取り組んでいらっしゃることが、さらによく分かりまして、事業者の皆様の日々の御尽力に感謝したいと思います。
それと同時に、昨今の世界的な情勢を考えますと、停電が余儀なくされた場合、このような施設はどのようになるのだろう、世の中の安定と電気の安定供給が滞りなくなされるようにと願う気持ちが強くなりました。
施設の中では、特に西条発電所について、こちらは、世の中のイメージは大変悪い石炭火力だったのですけれども、実際に現場に足を運んでみますと、非常にクリーンなイメージで、排気もほとんど出ずということで、ここはちょっとイメージが大分変わったところでした。
所感で申し訳ありませんが、以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
そのほか、いかがでしょうか。
事務局から何かよろしいですか。
○労働関係法課長 改めまして、事務局からも、関係の皆様に御礼を申し上げたいと思います。このような視察を開催することができましたのも、関係いたします企業の皆様、そこで働く方々、労働組合の皆様、労使関係団体の方々のお力添えがあったからであると感じております。この場を借りて、改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、次の議題は「エネルギー政策について」ということで、資源エネルギー庁筑紫課長より御説明をお願いいたします。
○資源エネルギー庁電力基盤整備課長 ありがとうございます。資源エネルギー庁の筑紫でございます。
本日は、第2回のときに、電力システム改革の概要について御報告をさせていただいたわけですけれども、先般、12月27日に、新しく第7次のエネルギー基本計画の概要が素案という形で公表されまして、現在、パブリックコメントを締め切らせていただいたところでございます。
エネルギー政策は、3年に1度程度のタイミングで大きく見直しをしていくこととなっておりまして、今回は、その概略、どういった問題意識なのかということを御報告させていただければと思います。その上で、このエネルギー基本計画の大きなストーリーに沿って、電力システム改革自体の検証も、今、同時並行で進められておりまして、こちらについては、3月末取りまとめを目指しておりますので、その時点で、また御報告をさせていただきたいと思います。
本日は、そういう意味では背景となる方のエネルギー基本計画(原案)についてということで資料を御用意しておりますので、よろしくお願いいたします。
資料2ページ目以降に、エネルギー基本計画(原案)の概要を、これは実際の概要の順番に沿っておりまして、それに所々、参考資料を入れるような構成とさせていただきました。今回、御用意している資料は、全て資源エネルギー庁の審議会で実際に議論に使わせていただいたものを、そのまま転載させていただいておりますので、時系列の関係で、若干表現がおかしくなっている箇所がございますけれども、御容赦いただければと思います。
2ページ目先頭からですけれども、「エネルギー基本計画(原案)の概要」ということで、今のエネルギー基本計画の基本的な原点は、東京電力の福島第一原子力発電所の事故ということでございますので、それが冒頭のところで紹介をされております。
続きまして、2ポツのところですね。「第6次エネルギー基本計画策定以降の状況変化」と、この部分が、私も資源エネルギー庁のエネルギー基本計画に何度か関わってきましたけれども、ここ最近のエネルギー基本計画の中でも特に大きな変化があったタイミングだったなと思います。
見ていただくと、我が国を取り巻くエネルギー情勢の変化は、以下のように大きく変化ということで、1つ目がロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、経済安全保障上の要請が高まったということ。
それから、DX、GXの進展に伴って電力需要が増加する。
それから、1つ飛ばしまして、エネルギー供給や脱炭素化に向けたエネルギー構造転換を、経済成長につながるという、ある種産業政策的な文脈で正面から捉えるという議論になっていること。これは、今回、同じタイミングで、「GX2040ビジョン」が内閣官房で取りまとめられておりまして、石破総理が議長の会議でとりまとめをされておりますけれども、脱炭素化を、単にカーボンニュートラルを実現するだけではなくて、新しい経済成長の種にしていこうと。そういった発想の議論も正面からされるようになっておりまして、そこまで射程に入れてエネルギー基本計画をつくっていくというのが、今回のポイントだったかと思います。
そういう意味で言うと、いわゆる外的な不確実性というような部分、非常に見通しが難しい部分と、他方で、世界の経済情勢からすると、電力というものに対して非常に期待をしていただいている。これは安定供給というだけでなく、コスト面も含めて期待をしていただいているというところをどういうふうに捉えていくのかというのが、今回のエネルギー基本計画(原案)の問題意識でございました。
3ページ以降、幾つかデータをちょっと御紹介したいと思います。
まず、ロシアによるウクライナ侵略の影響でございます。ロシアは、御存じのとおり、ヨーロッパとパイプラインでつながっておりまして、直接的にはヨーロッパが非常に影響を受けた経緯がございますけれども、一方で、ロシアのパイプラインのガスが減少する中で、ヨーロッパは世界中の天然ガスを買い漁るという展開になったものですから、アジアの需給も相当逼迫をしまして、世界的に天然ガスの価格が上がるということがございました。
今もウクライナでの紛争は続いておりますし、その影響はヨーロッパを中心にいまだ高止まっているということでして、今回は、下のところ、LNGの輸入、赤い部分が米国ですけれども、ロシアからのパイプラインのガスが止まったことで、世界中から集めざるを得なかったという事情。それを踏まえて、右側のところですけれども、青い線がヨーロッパの天然ガス価格、それから、下の赤い線、すごく高く飛んでいるようなものがアジアの天然ガス価格ですけれども、世界中が影響を受けることをまざまざと実感する機会となったということでございます。
電力の価格については、次回のタイミングで、また、詳細を御説明したいと思いますけれども、欧州について言えば、2020年断面と比べますと、この2、3年で2倍から約3倍、国によりますけれども、上がった国もありまして、いまだ、非常に大きな政治的な課題となっているということでございます。
他方で、次のページでございますけれども、電力の需要の動きです。4ページは国際機関が出している世界の電力需要でございまして、世界全体で見ますと、元々発展途上国を中心に経済成長に伴って電力需要は増えるのが基本でございますので、世界全体が増えるだろうというのは元々言われていたところですけれども、足元、データセンターとかEVとか、そういった新しい用途が増えていく中で、先進国も含めて電力需要が上がっていくというのが、この2、3年、非常に注目されている議論でございます。
その次のページ、5ページ目をめくっていただいて、我が国においてもそうなるというのが、今回のエネルギー基本計画(原案)では非常に大きなポイントでございました。これはこういう言い方をするとちょっと語弊がありますけれども、長らく人口も減少で、経済も基本的にはデフレの中、電力需要についても、基本は頭打ちだという方向でやってきたこの15年の歴史を振り返りますと、業界全体で非常に衝撃的な見込みでございまして、これまでの前提としていた投資計画、あるいは競争戦略の見直しを迫られるという意味では、各事業者においても、非常に大きな影響があったかと思います。
左の下のところで、電力の需要の見通しがございますけれども、私ども資源エネルギー庁の認可法人の電力広域的運営推進機関がございますけれども、ここが、毎年、法律に基づいて各電力事業者から提出いただいています向こう10年間の電力の供給と需要の見通しの集計結果を毎年1月に公表しているのですけれども、その見込み値が、2023年のときの見込み値ですと、この点線ですね。したがって、左から右に向かって落ちていくようなケースだったものが、昨年の数字で初めて反転をしまして、むしろ、2033年に向かって上がっていくという評価に変わりました。
足元、最新の数字を数日前に公表させていただいておりまして、まだ反映ができておりませんけれども、さらに高く上がっていく見込みになっておりまして、そういう意味では、我が国においても電力需要が伸びてくるという状況になってきております。
6ページ目は、特にその主要な部分であるところのデータセンターや半導体工場に限って、どういった規模のものかというところでございます。ここでは、2033年度までに537万キロワットという言い方で、少し業界の言い方になってしまっておりますけれども、先ほど御紹介いただいた伊方発電所や西条発電所の規模感で言えば、伊方発電所は、先ほど御紹介もありましたけれども、大体80万キロワット程度でございますので、それに掛けていただければ、7倍、6倍と。石炭火力の発電所でも、最新のものは100万キロワットぐらいありますけれども、そういったものが数基必要な部分の量が増えてきているということで、非常に大きな需要が伸びてくるという評価だと思います。
開けていただきまして7ページ。データセンターなどの電力需要については、他方で、実際にはここまで行かないだろうといった御指摘もございます。
先日、中国のAIの新しい技術の発表を踏まえれば、電力需要をもう少し下げられるのではないかといった報道も出ていますし、こういった可能性も、これまでもいろいろな政府機関から指摘がございます。
他方で、実際にそうなるかというのは、正直、誰にも分からないというか、その研究が待たれると。当然、世界全体のカーボンニュートラルとかエネルギーの効率利用という意味では、こういった半導体とかAIに関する技術の省力化もしっかり進めていかないといけないということでございますし、経済産業省全体、我々も、そういったプロジェクトに補助とか委託などもやっているわけですけれども、これがどこまでの成果を生み出すかというのは、予測がなかなか難しいところです。こういったところまで踏まえてエネルギーの計画をつくっていかなければいけないというところが難しいところだと思います。
8ページのところは、そういう中で、特に電源に着目をしておりまして、右下のところを見ていただければと思うのですけれども、足元2022年の数字ですと、実は火力が7割でございます。この火力の7割は、放っておくと、どうしても二酸化炭素を排出し続けるということになりますので、これを脱炭素化していかないといけない。
それから、既に脱炭素の電源である再エネと原子力については、これを伸ばしていかなければいけない。こういったカーボンニュートラルを見据えつつ、かつ電力需要を伸ばすというのが非常に難しい課題であるというのを正面から受け止めるというタイプの議論になっておりました。
9ページ、10ページ目は、ほかの不確実性の例ということで、自然災害、特に昨年1月には能登の地震もございましたので、そういった議論もされております。
9ページの図は、若干専門的な図で、ちょっと恐縮ですけれども、赤い棒グラフが、一定規模以上の停電の回数を取ったもの。それから、緑の棒線は停電時間を取ったものです。これは需要家1軒当たりに直しておりますので、非常に小さく見えますけれども、傾向として申し上げたかったのは、高度成長期以来ずっと下がってきているのですけれども、その後、これは中々ゼロにはならないということなのですね。足元、むしろ、能登の地震などのように、どうしても定期的に災害が起きていきますので、こういうものの対応はやはり気を抜くことはできない。
10ページ目のところで、能登の地震のときの状況を一部お示しするようなスライドも御用意をしております。
11ページですけれども、先ほど申し上げた需要が伸びるといったところの御紹介をさせていただきますと、電力の需給は本当に大丈夫なのかという声をよく伺います。資源エネルギー庁の審議会でも、そういった点は非常に関心の論点でございまして、私どもも折に触れて御報告することを求められるわけですけれども、11ページのスライドは、一番最新の今後の見通しということで、2025年度、つまり今年の夏、7月、8月、9月と、冬、12月、来年の1月、2月、3月ですね。そこの予備率の状況。これは一番厳しいタイミングの予備率を書いていますので、24時間この数字ということでは全くないのですけれども、停電を絶対に避ける、停電を避けるために万全を期すという観点では、余裕のない状況が続くということでございます。
12ページは、この10年を振り返ったときに、そういった余裕のない状況は、マクロで大体どういった印象だったのかというのがお分かりになるかと思って、御用意したものでして。2012年の頃は、その前の年の地震の影響もありまして、全国的に余裕が少ないという状況だったところ、2013年、2014年、2015年ぐらいから徐々に回復を見せてきたところです。
他方で、先ほど御紹介しましたロシアのウクライナ侵略なども一つきっかけとして、2022年以降、非常に需給が全体として厳しい時期が続いておりまして、この2年ぐらいは節電要請をさせていただく時期が続いていたというところでございます。
13ページに戻っていただいて、こういった背景を念頭に、エネルギー基本計画(原案)の具体的な内容について、以下、触れさせていただこうと思います。
エネルギー政策の基本的な方針は、S+3Eとよく言われていまして、Safety(安全性)と、それから、エネルギーの安定供給、Energy Securityと、それから、Environment(環境適合性)、それから、Economic efficiency(経済性)ですね。このS+3Eの方針のもと、進めていくと。そのバランスを常にとっていくということですけれども、今回のタイミングでは、4ポツの2つ目の丸ですけれども、安定供給と脱炭素化を両立する観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入をするというとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスの取れた電源構成を目指していくという方針を新たに設定させていただきました。これは、電力需要がすごく伸びていくという中にあっては、再生可能エネルギーを最大限導入するのは当然のことですけれども、ほかの電源についても、できるだけ使えるものをしっかり使っていくと。原子力についても、脱炭素の火力についても、それは同じでございますけれども、しっかり使っていくという方針を改めて確認をしたというところでございます。
それから、4つ目でございますけれども、2040年に向けてということで、経済合理的な対策から優先的に講じていくと。これは非常に様々な燃料種あるいは脱炭素化の手法が出てきている中で、今この瞬間、どういった手法が最も合理的なものなのかを見通すのがなかなか難しいという中で、他方で、産業界を中心に、できるだけ安く提供すべきという要請もある中、コスト上昇を抑えながら取り組むという、これもまた一つの大きな方針として掲げられてございます。
それから、14ページめくっていただきまして、各論に入っていきますけれども、まず最初のところでは、電源について触れています。
最初のところでございますけれども、脱炭素電源の確保ができなかったために、国内産業立地の投資が行われず、日本経済が成長機会を失うことはあってはならないという表現が入ってきまして、そういった中で脱炭素電源を最大限に活用すると。
それから、その次のポツですけれども、脱炭素電源への投資の回収の予見性を高め、事業者の投資を促していくと。そういったことがうたわれております。
こういった日本経済の成長機会と電源投資をひもづける議論は、ここ数年ではあまりなかった議論でありまして、足元は、世界全体でのカーボンニュートラル、その中での電源の伸びは非常に注目が集まっているということかなと思います。
それから、次が再生可能エネルギーの部分。
それから、15ページをおめくりいただきますと、原子力についても触れられております。原子力のところは、一番最初のところですけれども、データセンターや半導体工場等の新たな需要のニーズにも合致すると。そういった表現が入ってきています。
この部会で議論をさせていただいている、ストの規制という意味で言うと、安定供給の最後のところで帳尻合わせをしていくのは火力という意味で言うと、一番最後の火力の部分は大事なポイントだと思います。
15ページの下のところで、火力のところを御紹介ありますけれども、足元7割の供給を担う火力について、供給力、それから、再エネなどの出力変動を伴う電源に対する調整をする調整力、そういった意味で重要な役割を担っていると。足元、需給、非常に予断を許さないという中なので、基本的には再エネや原子力を増やしていくという方針である以上は、火力は少しずつ押し出されていってしまうわけですけれども、それでも、安定供給に必要な発電容量、設備はしっかり維持をする。それでいて、非効率な石炭火力を中心に、カーボンニュートラルを配慮して、発電量そのものは減らしていくと。これはなかなか難しいバランスですけれども、そういったところを目指していくという方針が新しく提示をされております。
16ページのところで、足元の火力発電が直面している状況ということで、火力の稼働率の推移の御紹介があります。これは2000年から取っていますので、かなり長期のレンジを取っていますけれども、真ん中ぐらいがちょうど2011年、そこから、原子力発電所が止まった影響で、火力発電の稼働率が一部上がります。上がってきたものが2017年、2018年以降、再生可能エネルギーの導入が加速化する中で、どんどん稼働率が下がってきているという傾向が見て取れるということでございます。
他方で、17ページですけれども、そういった中で、これは稼働率が落ちてくれば事業としての採算性は悪化していきますので、経営判断という意味では、発電所を少しずつ減らしていくという判断になるわけですけれども、安定供給をしっかり保つという観点では、そのままでは、長い目で見ると非常に難しい局面に立ち入ることが想定されますので、この(参考)のところにございますけれども、長期脱炭素電源オークションという制度、一種の公共調達だと思っていただければ、誤解が少ないと思いますけれども、そういった形で、LNGの火力については、新しく募集をするという取組をしていることも御紹介をさせていただいております。こういった取組についても、今後、必要に応じてさらにしっかり進めていくということになっています。
18ページでございますけれども、この部会でも一回御報告をさせていただきましたが、そのネットワークの部分ですね。送配電部門の各社、それぞれの供給エリアを持っていて、他方で、そこをつなぐネットワークもしっかり整備をしていこうということになっていますけれども、その方針についてもしっかり確認をされているというところでございます。
19ページに日本地図で書いてございますけれども、2050年を目指した系統整備の計画もしっかり進めていくことも、改めて確認をされたということでございます。
20ページのところで、最後のところに、電力システム改革の部分。発電事業者、送配電事業者、小売事業者、それぞれについてのどういったことを求めていくのかというのも、一定の分量が割かれて方針がございますけれども、この部分は、次回、システム改革の検証の部分とセットで御紹介させていただければと思います。
それから、21ページに残りの部分が記載ございまして、特に一番最後のパラグラフのところが13ポツとなっていますけれども、国民各層とのコミュニケーションということで、特に需要家の皆様方に、こういったエネルギーの現状をしっかり御説明させていただいて、御理解いただくためのコミュニケーションについて、政府としても今一段の取組を求めるといったところも御指摘をいただいたというところでございます。
ここまでが施策編でございまして、エネルギー基本計画は、ここまでが閣議決定のパートということになるのですけれども、よく報道を御理解いただいているかもしれませんが、エネルギー基本計画は、併せて、エネルギー需給の見通しを示すことになっています。この見通しという部分に、非常に注目が集まるところもありまして、今回も、そこの部分も併せてございますので、それも御紹介をさせていただきたいと思います。
特にこの部分は、説明のところから見ていただければと思いますので、22ページの冒頭から確認させていただきたいと思います。
2040年度に向けたエネルギー見通しの考え方というところでございますけれども、先ほど御説明したとおり、ロシアによるウクライナ侵略以降、非常に不確実性が高まっていく中で、今後も、量・価格両面で化石燃料の供給は大きく変動する可能性があると。
気候変動対策についても、各国は目標と現実が20%ぐらいずれている国が結構たくさんあるという状況になっていまして、しかも、米国の課題も御紹介させていただいていますけれども、各国の動向も非常に安定性を欠くと。そういった中でも、2050年カーボンニュートラルの実現は、我々の方針として外せないわけですけれども、そこに向かっていくためには、様々な技術的イノベーションも含めて、いろいろな可能性を念頭に置きながら進めていかなければいけないというところになってございます。
5番目の赤い四角で囲っている最後の部分が一番大事なところですけれども、単一の前提ありきではなく、様々な不確実性が存在することを念頭に、現時点において幅を持ってエネルギー需給の見通しを示すということが書かれております。
実は、これまでのエネルギー基本計画では、こういった形にはなっておりませんで、内部的には、いろいろな検討を当然するわけですけれども、対外的にお示しする見通しについては、単一のもの一本で数字も含めてお示しをしてきたのですけれども、今回、諸情勢を考えると、非常にそういったことは難しいということで、いろいろなシナリオをつくった上で、幅を持ってお示しするということとさせていただきました。
23ページに、そのシナリオのパターンを御紹介させていただいております。
大きく再生可能エネルギー関係の技術がすごく進むパターン、それから、水素などの新しい火力燃料の活用が進むパターン、それから、CCS、二酸化炭素の貯留技術ですね、石炭火力などから出てくるような二酸化炭素を分離しまして、地層の下に貯留をすると、そういった技術がすごく進んだパターンという、この3つのそれぞれがすごく進むか、そこまで進まないか。それから、この3つが全部すごく進むパターンと、全く全部進まないパターン。それぞれ5つ立てていますけれども、そういった大きなシナリオ分けをして、それから、こういったシナリオ分けを前提に、シンクタンクにいろいろなシナリオをつくっていただいたものを集めてつくったものでございます。
24ページがその結果でございますけれども、よく見ていただきたいのは、左側がエネルギー全体でございます。我が国であれば、車の燃料とかそういったものも含めて、熱需要も含めて、左側の例えば2013年でいけば、3.6と書かれているのがエネルギー全体。そのうち右側は、電力だけの中で、石油、LNG、石炭、そういったものの内訳が書いてございます。
大きな傾向として、エネルギー全体は、むしろ効率的な活用がどんどん進んできておりますし、今回、2040年に向けた見通しでも、足元2022年と比較しまして、大体2割程度削減をしていくという想定を立ててございます。
他方で、電力についてはむしろ逆でありまして、むしろ1、2割増えるという想定を立てていまして、その中で、火力は大体3割~4割、原子力は2割程度、再生可能エネルギーは4割~5割程度という幅でもってお示しをしているということでございます。
25ページがその諸元でございまして、ここはちょっと細かいので、割愛をさせていただきますけれども、26ページのシナリオ別分析のところで、それぞれのシナリオで何がどれだけ変わるのかというイメージだけお伝えできればと思います。
右下の図を御覧いただいて、赤が火力、青が原子力、緑が再エネでして、それぞれが億キロワットアワーの単位で書かれているのですけれども、例えば火力で見ていただきますと、現在の数字は、ここのグラフにはちょっとないのですけれども、7000億キロワットアワー、この図で言うと7000という数字になります。足元7000の数字がそのマル1のシナリオだと3400ですから、大体5割以下になると。ところが、一番右側の技術進展のマル5のシナリオですと4,900ですので、約7割になります。つまり、足元の火力が5割を切ってしまうようなシナリオから、7割程度は残るというシナリオの幅の中でどういうふうにやっていくのかというのを考えなければいけないと。そういった見通しをお示ししているということでございます。そういう意味で言うと、なかなか不確実性の中で、しっかり進めていかなければいけないというところをお伝えできたのかなと思います。
27ページ以降は、参考となる諸外国の状況をお示ししている資料で、審議会でもこういった資料を使って議論はさせていただいているのですけれども、エネルギー基本計画を直接構成するものではないので、御参考に、本当にかいつまんでと思います。
特に、ここの参考資料で挙がっているものは、世界的な情勢の中で、再生可能エネルギーを中心とする脱炭素の電源に対して、世界の企業あるいは世界の経済の注目が集まっているものをちょっと御紹介をしております。
28ページは脱炭素の電源、そういったものの調達についての手法のお話ですけれども、29ページは、米国などの大手のIT企業が自ら自分たちで脱炭素の電源の投資に向けて動き出しているといった事例の御紹介。
それから、30ページは、むしろ電気料金が上がることについて、ドイツを中心にヨーロッパの事業者が非常に神経をとがらせている。特に電力をたくさん使う製造業の競争力に非常に影響するものですから、そういったところについての分析などの御紹介がございます。
すみません。長くなりましたけれども、私からは以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見・御質問等がございましたら、お願いいたします。
先ほどと同様ですけれども、オンライン参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合には、チャットで「発言希望」と書いてお知らせください。
では、戎野委員、お願いします。
○戎野委員 御説明ありがとうございました。
電力が、今後も、一層、需給が非常に厳しいこと。しかも、不確実性も高まるということ。こういったことは今後議論を進める上でとても大事な論点だと改めて思ったところです。
そこで質問ですけれども、11ページにあります、2025年度の電力需給の見通しですが、この数字を見ますと、以前、広域連系等によってお互いに融通し合うというお話がございまして、そのときに、人口の多い都市部、特に東京などに地方から再エネなどを中心に送り込んでいくというお話でしたが、確かにそういう面もあるかなと思う一方、例えば九州などが非常にぎりぎりの線かなという数字もございまして、これはどういうことが原因なのか。産業構造の転換など、いわゆる半導体産業の影響があるのかどうかということが1つです。
そして、この数字そのものは、広域連系がなされた結果なのかどうか。先ほど、一番厳しいときの数字がありましたが、地域によって厳しい日が違うのかどうなのかということもお伺いしたいところです。
それから、2点目は、こういう状況は想定されていた内容だったのかどうかということです。
それと関連しまして、今度26ページの今後ですけれども、今後の電力需給のシナリオがありますが、これは広域連系等が前提になったものなのでしょうか。いろいろ再エネとか地域間の差があるのではないかという気がしましたので、その辺りを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○中窪部会長 ありがとうございました。
筑紫課長、お願いします。
○資源エネルギー庁電力基盤整備課長 ありがとうございます。
そうしましたら、順次ということで、まず11ページでございます。11ページは、先ほど御説明の際に、まさに一番厳しい瞬間ということを申し上げましたけれども、これは、「厳気象H1需要」というのが青い四角で書かれています。これはちょっと技術的な用語で大変恐縮ですけれども、10年に1回、1日あるぐらいの割合でしか発生しないすごく条件が厳しいときの需要に対する予備率という、そういった設定をしているものです。若干技術的な想定ですけれども、このケースの場合ですと、例えば冬で申し上げれば、今だと、すごく太陽光がたくさん入っているわけですけれども、太陽光は、雨の日とか曇りの日は発電しない。ここまではよく知られているのですけれども、雪が降りますと、そのまま二、三日使えないという展開になります。ですので、多少ためておけば使えるとか、先ほど中央給電指令所の視察の御報告の中で、揚水発電所を使って電気をためてという表現があったと思うのですけれども、ああいったものも使えない、そういったような状況になることまで想定をしたときの数字です。
そういう意味で、九州の3.2%は、九州は、今、すごく太陽光発電がたくさん入っておりますので、そういった意味で他エリアよりもすごく気象条件が厳しくなったときに影響が出やすい状況にあるのは一つの要素です。
他方で、さらに申し上げると、広域連系の観点で申し上げると、ふだん太陽光発電がたくさん入っているものですから、ふだんの需給という意味ではあんまり心配は要らないのですけれども、そういったすごく条件が悪くなったときに、他エリアから融通してもらう、今の容量という意味で言うと、少なくとも九州電力のエリアの規模からすると少し小さいと見ておりまして、今後、むしろ、増強計画が今は動いているぐらいですけれども、実際に動き出すには時間がかかりますので、今この瞬間の評価で言うと、こういうことになってしまうというところがございます。
これは月単位で、かなり細かく書いていますので、実際には、大型の火力発電所とか、原子力発電所の補修のタイミングとか、そういったものの調整によってある程度カバーできるようにするように、現場の判断としては持っていくことになりますし、そういった形で実際には需要家の皆さんに御心配かけないようにしていくということではございますけれども、シミュレーション上の結果で言うと、こういった数字が出てきてしまうというところでございます。
先ほどおっしゃった半導体産業の影響という意味で言うと、九州は御存じのとおり、今、TSMC社が足元をすごく稼働を始めて、その影響が着実に現れてきております。あの工場は、今、1棟目が動いていますけれども、2棟目、3棟目という計画もございますし、それから、九州電力管内ですと、福岡辺りを中心に、アジアから海底の大型の通信ケーブルが、今もありますけれども、それをどんどん増やしていこうという計画になっていまして、データセンターの需要も高まってくることが想定されています。
そういう意味では、九州電力の管内は、太陽光発電とか、あるいは原子力発電という意味で、脱炭素の電源が多いという意味で条件がいいので、今後、さらに需要が伸びていく。そういう目線で見ますと、今回、この3.2という数字は非常にスポットの数字なものですから、この数字自体がすごく懸念ということではないのだと思うのですけれども、3年~5年の単位で見たときに、余裕はあまりない。特に、少なくとも停電をしないように万全を期すという観点からすると、余裕のない前提でさらに整備を進めていかなければいけないという評価になると思います。
そういったところを、2つ目の御質問の後半、想定されていたのかという御質問に関して申し上げると、再生可能エネルギーが増えていけば、どうしても天候の様々な影響を受けやすくなるというのは、これは想定をされていたわけでして、そういった中で、再生可能エネルギーが増えるに当たっては、それをバックアップできる火力電源、あるいは蓄電池あるいは揚水発電所といったものをしっかり整備していかなければいけないというところは、我々も議論をしてきましたし、そういった前提で、業界の事業者の皆様方とも議論をさせてきていただいたと思っております。
ただ、先生御指摘あった、需要がこれだけのペースで伸びていく想定になるというのは、少なくともシステム改革時には想定はされていませんで、この2、3年の新しい議論。それに併せて、今、我々もそうですし、事業者のほうも投資に向けた計画を修正しながら対応をしている状況だとお考えいただければと思います。
それから、26ページのシナリオのところですけれども、26ページのシナリオは、シナリオのつくり方としては、お答え、まず正面から申し上げると、あまりきちんと想定はされていないというのがお答えです。
どういうことかと申し上げると、今回のエネルギー基本計画(原案)の見通しは、むしろ2050年はカーボンニュートラルになる、あるいはカーボンニュートラルにするという前提に立って、その時点で二酸化炭素が出ないような電源構成になっていることから逆算をした上で、今の足元のところからどうやって伸ばしていけば、2050年のカーボンニュートラル、2040年であれば73%減が達成できるかという前提で書かれていますので、いわゆるこの手のシナリオの手法で言うと、バックキャストでつくっています。ですので、若干そういう意味で言うと、本当に個別の連系線の積み上げの結果がどうなっているかというものは反映されていないということになります。
その上で申し上げると、今、足元にある連系線の計画、2050年カーボンニュートラルに向けてどこまでつくれるかというのを資料で申し上げると、19ページで御紹介をしておりますけれども、19ページのこういった投資の計画が、2050年までに全て出来上がれば、それなりの容量で融通ができるような形になると念頭においてつくられていますけれども、他方で、このようなプランと先ほど御紹介させていただいたシナリオがきちんと一対一でひもづいているわけでは必ずしもないとお考えいただきたいと思います。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、坂下委員お願いします。
○坂下委員 ご説明、誠にありがとうございます。丁寧かつ分かりやすくご説明いただきまして、大変よく理解できました。
ご説明を聞いて感じたことですが、各論点の特に2.と3.に大きく関わってくる内容が多くあったと思います。本日ご説明いただいた内容も踏まえながら、しっかり考えて参りたいと存じます。また、電力システム改革の検証の結果も考慮しなければいけないと思っております。検証結果については、次回の部会でご説明いただけるということですので、その際に詳しい御説明をよろしくお願いいたします。
○中窪部会長 ありがとうございました。
そのほか、いかがですか。
なければ、私から1点だけ。さっき、蓄電という言葉も出てきましたけれども、揚水が今までは唯一の方法だったのが、だんだん技術革新によって新しい蓄電のシステムも開発されたというのを時々ニュースや新聞で見たりするのですが、これが、例えば10年後、20年後になると、随分頼れるものになるのでしょうか。それとも、そこはまだまだほんの一部ですよというイメージなのでしょうか。
○資源エネルギー庁電力基盤整備課長 ありがとうございます。
蓄電池は、おっしゃるとおり、現在、非常に普及が進んでおりまして、蓄電池にも様々なタイプの技術があるのですけれども、特にリチウムの技術がですね。これまで議論されたほかのものよりも若干安くつくれるようになったものですから、発電の分野でも取り入れられております。
足元、北海道とか、あるいは先ほど御紹介あった九州とか、そういったところで導入が今まさに進んでおりまして、すみません、やや技術的な言い方になりますけれども、何十万キロワットぐらいの、そういう単位、一つの火力発電所1個まかなえるような単位の蓄電池というのが、それぞれのエリアに今後立っていくというようなことだと思います。
そういうことになれば、今よりもいろいろな意味で条件がよくなるのではないかという意味で言うと、そのとおりだという部分と、とはいえ、実際にはそれでは追いつかない場合があるというのと、その2つがお答えだと思います。
1つはやはり再生可能エネルギー。一番分かりやすいのは太陽光ですけれども、今、揚水発電所で、昼蓄電して夕方使うというのをやっているのも、蓄電池も同じように対応できますので、そういう対応は非常にやりやすくなりますし、蓄電池のいいところの一つは、機動性が高いというのがございまして、風力発電とは非常に相性がいい部分がございます。揚水発電所は、ためるモードになったらずっとため続けないといけませんし、電気を発電するモードになったらすぐには変えられないのですけれども、蓄電池は瞬時、瞬時に、コンピューターのプログラムさえうまくいじればできますので、風力発電の導入などにも非常に貢献してくれると思います。
他方で、今の蓄電池の技術特性として、そんなに長くは電気をため切れない、ため続けられないというのがございます。どういうことかと申し上げると、普通の乾電池なども、ずっと放っておくと放電してしまうと思いますけれども、今の蓄電池の経済性とか能力で言うと、基本的には、ためた電気を数日のうちに使うというのが前提、しかも、その電気を吐き出すのも、3時間ぐらいしか基本的には吐き出せない。その程度の容量しか基本ためられない。ためられないというか、ためるぐらいの形でないと、経済的には回らないと、こういうふうになっていまして、現在、導入が進んでいるのは、大抵は、放電し始めたら3時間ぐらいで放電が終わると。逆に言うと、その分だけ充電する。1日に大体1回か2回充電・放電を繰り返すというタイプの蓄電池が、今、急速に普及が進んでいます。
こういうタイプの蓄電池は、再エネ導入をサポートするという意味では非常に力を発揮するのですけれども、例えば3日間風が吹かないとか、あるいは大雪が降って、3日間、4日間、太陽電池が発電できない。こういったときには能力が発揮できないということになります。この冬ですけれども、昨年の11月、12月、ドイツとかデンマークで起きていますのは、風が1週間~2週間ぐらい、ふだんの量の大体10分の1ぐらいしか吹かないということになったときに、蓄電池とかそういったものが途中からついていけなくなりますので、そうなってしまいますと、ガスの火力の発電所に全ての負担が集中する。そうなると、非常に価格が上がるというようなことが起きていますけれども、蓄電池がたくさん入ることによって、メリットが出てくる部分は当然ございますが、本当に安定供給に万全を期すという観点からすると、それだけでは届かないというのが評価かなと思います。
○中窪部会長 どうもありがとうございました。大変よく分かりました。
それでは、よろしければ、次の議題に行きたいと思います。
これまでの議論を踏まえた論点の整理ということで、事務局より御説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 資料3を御覧ください。
こちらにつきましては、これまでの議論を踏まえ、論点を深掘りするために事務局のほうで整えさせていただいたものでございます。
まず、(検討の背景)です。
昭和27年の電産スト等が国民経済と国民の日常生活に与えた影響が甚大であったこと等に鑑みて、翌昭和28年にこの法律が制定されました。
また、平成27年のスト部会報告では、スト規制法は「現時点では存続することでやむを得ない」としつつも、「スト規制法の在り方については、電力システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で、今後、再検討するべき」という結論でございました。
また、平成27年の電気事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議では、平成27年部会報告における再検討の指摘に基づきまして、スト規制法の「廃止を含めた検討を行い、結論を得るものとする」ということが記載されております。
このような中で、以下の記載ぶりにつきましては、平成27年の報告書の構成を下敷きに柱を立てさせていただきまして、○として、ポツ、ポツと書いてあるところについては、平成27年の報告書であったり、あるいは、これまでの部会の資料として提出されてきたものなどをベースに事実関係を書かせていただいており、その上で、論点として7つのポイントを投げかけさせていただく形にしております。
まず、1つ目の「スト規制法の法的位置づけ」です。
平成27年部会報告での整理としましては、スト規制法は、憲法28条における争議権の保障が及ばない「正当ではない争議行為」の方法の一部を明文で禁止。
また、スト規制法は、正当でない争議行為の範囲を明らかにしてその防止を図ることが主眼で、正当な争議行為も含めて一定期間禁止し、その間にあらゆる手段を講じて、労働争議を調整・解決することを狙いとする労働関係調整法とは目的が異なる。
諸外国の労使関係法制では、電気事業に限定して争議行為を規制する法制は見当たらないが、電力供給を維持するための何らかのシステムを設けている。
ということでありました。
こうした中、論点の1つ目としては、「平成27年部会報告からの変化等を踏まえた上で、スト規制法の必要性を検討することが重要ではないか」という投げかけです。
次に、2ポツとして、「電気の特殊性と安定供給」です。
まず、「電気の特殊性」につきましては、電気は貯蓄不可能で、需給バランスを崩すと予測不能な大規模停電が発生することに変化はないということでありますが、論点の2としましては、電気の特殊性について、平成27年部会報告から変化がないと言えるだろうかという投げかけであります。
次の「電気の安定供給の重要性」については、国民経済及び国民の日常生活における電気の安定供給の重要性は、平成27年部会報告時に比べて増大。
電気は引き続き常時不可欠で代替不可能なエネルギー源で、データセンターや半導体工場の新増設等が進展する中で、より電力需要が増加する見込み。一方で、再生可能エネルギー拡大により、発電量のボラティリティが増加し、調整負荷が重くなるとともに、自然災害の頻発で電気設備の保全負荷が増大している。今後も大規模災害のリスクがある。
このような中で、論点3として、「電気の安定供給のために求められる対応の在り方は多様化していると言えるか」。
3つ目の「電力システム改革の検証を踏まえた検討」という項目につきましては、この事項は検証を踏まえた検討が必要ですが、現時点では、平成27年部会報告で扱われました3つの柱に沿って論点を整理させていただいております。
1つ目が、「電気事業者の競争環境」ということで、自由化された発電事業については、再生可能エネルギー電源は、新規参入が拡大。石炭火力発電所は、以前はミドル・ベース運転をしていたが、現在は再生可能エネルギー電源増加により、発電量を調整しつつ運転する役割に変化。
送配電事業については、引き続き地域独占。
このような中で、論点4として、「電力システム改革の検証等を踏まえた評価が必要な論点だが、現時点において、電気事業者間の競争環境についてどう考えるか。」
2つ目の柱は、「電気事業における労使関係」で、電力システム改革により、発送電の法的分離があったものの、労使関係に少なくとも大きな影響はない。
近年では争議行為の実績はなく、引き続き労使関係は安定・成熟している。
こうした中、論点5として、「電力システム改革の検証等を踏まえつつ、今後の労使関係をどのように捉えるか。」
3つ目の柱の「電気事業の業務」につきましては、電気事業の業務は、主に定型・日常業務の自動化・省力化により省人化。一方で、完全自動化には至らず、再生可能エネルギー拡大に伴う発電設備の出力調整への対応など、人による判断・対応が増加している部分もある。
業務内容の複雑化、技術革新に伴う頻繁なアップデートにより、複数月~複数年をかけた人材育成が必要な業務も見受けられる。
今後も、電力広域的運営推進機関が策定した広域系統長期方針に基づき、再生可能エネルギーの大量導入とレジリエンス強化のため、地域間連系線等の増強が予定されている。
このような中で、論点6としては、「争議行為時の非組合員(管理職)による業務の代替性についてどう考えるか。」
論点7として、「電力システム改革の検証等を踏まえる必要があるが、電気の安定供給の観点から事業者間の連携による代替性をどう考えるか。」
このようなことで論点を深掘りするための資料を整えさせていただきました。
事務局からは、以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの御説明につきまして、御質問・御意見がありましたら、お願いいたします。
○河野委員 議論の進め方を確認させてもらってもよろしいですか。
○中窪部会長 はい。
○河野委員 資料3では論点が7つ示されていますが、その論点項目に沿って、我々が意見を申し上げたり、質問や確認をすべきなのかという点を教えてください。
○中窪部会長 今日は、もう順不同でやろうかなと思っていたのですけれども、前からのほうがやりやすければ、そちらでも結構です。
オンラインの水島委員、お願いします。
○水島委員 ありがとうございます。オンライン参加で、失礼します。
今、進め方の御質問がありましたけれども、本日は整理いただいた論点のほか、論点の整理に対しても、意見を申し上げさせていただければと思っております。まず、私から、論点1~3について、意見を述べさせていただきます。
論点1の「平成27年部会報告からの変化等を踏まえた上で、スト規制法の必要性を検討することが重要ではないか。」ですが、この点、労使関係や労使関係法において、特段の変化は見られないと考えます。
ただ、この2の「電気の特殊性と安定供給」については、変化があると考えます。
先ほど、資源エネルギー庁様からの御説明で、DXの進展等により電力需要が上がっていることがありました。加えて、一般市民のレベルでも、電気への依存が高まっていると思います。つまり、国のエネルギー戦略においても、国民の生活においても、電気の重要性は、平成27年部会報告時点と比べ強まっており、このことは電気の安定供給の要請がより強くなっていると言えると思います。また、この傾向は将来的にも続くと思います。
その上で、論点2、3を並べてみますと、論点2の立て方は適切であり、「電気の特殊性」には変化がないと考えるのですが、論点3の立て方について、意見があります。電気の安定供給の重要性が増していることを踏まえますと、対応の在り方が多様化しているかだけではなくて、社会の安定あるいは国民生活における安心といった観点から、対応が十分であるかといった検討が必要ではないかと考えます。
また、リスクについて、大規模災害が挙がっていますが、それ以外のリスクについても、対応あるいはリスクを減らせる方策についての検討が必要ではないかと考えます。
以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、原委員お願いします。
○原委員 ありがとうございます。
では、消費者サイドから、主に柱の2「電気の特殊性と安定供給」についての部分を申し上げたいと思います。
前回の議論がなされた平成27年からの10年間を振り返りますと、本当に我々の生活は、IT化、デジタル化がとても速いスピードで進みました。家庭内の家電はもちろんですけれども、通信、そして、産業、交通、金融サービス、あらゆる分野にわたり、電気は社会の基盤となっていると思います。今の私たちの暮らしは、電気に支えられているというよりも、先ほどのお話にもありましたけれども、まさに電気に依存して暮らしていると言える状況かと思います。今後も、電気への依存度が一層高まると同時に、事業者様の社会的責任が大変重くなるのではないかと思っております。
生活の基盤として、この最重要なインフラを支えてくださる労働者の皆さんの権利としてのスト権を復活させることも、働く者の立場としては大変よく理解できます。労使の関係性も、以前、御説明いただいたとおり、今のところ、大変うまくいっている状況かと思います。労働者イコール生活者、消費者でもありますので、暮らしが成り立たなくなるような危険性は避けたいと、そのような思いは同じだと思いますので、ストが起こる可能性はないように思われます。けれども、先ほど資源エネルギー庁様の御説明にもありましたように、かつてとは異なるDX、GX、そして、脱炭素という大きな流れの中で、労働争議へと進む事情が全く起こらないかと言えるのでしょうか。経営環境などをめぐる変化の中で、スト権を行使する可能性が絶対ないと言えるのかどうか、少々疑念を感じたところです。
スト規制法は、それがあることによって、電気の供給は止まらないとされている。そのことは、私たちの暮らしが保障されていることと同じ意味を持つと思っています。災害などがどうしても避けて通れないリスクと考えると、スト権の行使を認めないことは、あらかじめ避けることのできるリスクだと捉えられるかもしれません。消費者としては、生活が混乱に陥るようなリスクは望まないということはあえて申し上げておきたいと思います。
以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
河野委員、お願いします。
○河野委員 今、お二人の御意見をお聞きしたところでありますが、私どもとしましても、これまでの部会やヒアリングなどで御説明をさせていただいたような内容は十分御認識をいただいているのだろうと思っております。電気の供給に支障を生じさせない措置については、労働関係調整法の公益事業の規制に服していること、また、事前に労働協約も労使で交わしながら、その対応を図っていることで十分対応可能であり、そうした点はいま一度御認識をいただければと思います。我々としては、電力労働者の労働基本権は回復していくべきであることは強く思っているところであります。
先ほどご説明いただいた「第7次エネルギー基本計画」の原案でも、これまでのGXの論議を踏襲し、S+3Eの基本原則の中で、エネルギー安定供給を第一として整理され、エネルギー安全保障の重要性も改めて明確化されたというところであります。
引き続き、様々なエネルギー政策に関する課題に対して、労使が連携を図りつつ取り組んでいく必要があると考えております。今後も、電気の安定供給の重要性に対する労使の考え方には違いがないものと認識をしているところです。
そういった観点に立って、それぞれの論点に対する意見を述べさせていただきます。
まず、論点1につきましては、電力システム改革以降も、労使は対等の立場に立って健全な労使関係を築いています。既に、スト規制法が制定されてから70年以上が経過している中、そうした現状の労使関係の実態も十分に踏まえていただいた中で、今後の論議を進めていただきたいと思います。
次に、論点2の電気の特殊性についてですが、電気の特殊性という観点で電力労働者の憲法上の労働基本権が制約できるのかといった点は疑問を持つところです。電気事業は、既に他の公益事業と同様に労働関係調整法の公益事業の規制に服している中、さらに規制を設ける必要はないのではないかということです。この点はこれまでも主張させていただいたところであります。
それと、論点3の「電気の安定供給のために求められる対応は多様化しているといえるのか」という部分については、電力の安定供給は「第7次エネルギー基本計画」の策定においても重視されているものの、それとスト規制法の在り方は別で考えるべきではないかというのが私どもの主張です。
次に、論点4の電気事業者間の競争環境の部分については、電力システム改革からおよそ10年が経過する中で、発電、小売の両分野において多くの事業者が参入し、事業者による創意工夫を発現するための市場整備が進んできたと認識しています。今後も電力システム改革による事業者や需要家の選択、競争を通じた安定供給の確保、脱炭素化、安定的な価格水準での電気の安定供給を果たしていく必要があると考えています。
しかしながら、スト規制の在り方を検討する上で、事業者間の競争環境を検討項目にする必要がないのではないかというのが率直な意見です。
論点5の電力システム改革の検証等を踏まえた今後の労使関係につきましては、繰り返しになりますが、電力労使が対等な立場に立ち、健全な労使関係を築いていることは理解いただけたのではないかと考えていますし、この実態を十分踏まえた対応をすべきであると思います。
論点6の管理職による業務代替性についてですが、現在、電力労使においては、電気事業の公益性、さらには、国民生活の安定に寄与するために、電気の安定供給に対する使命感、さらには、責任感をもって取り組んでおり、これは今後も変わるものではありません。
その上で、労使間の労働協約等において、電気の供給に支障を生じさせないように措置を取るようにしており、全てを非組合員が代替するという考え方は持っていません。過去のスト規制法の調査会においても、我々の代表者がスイッチオフという自らの行為による供給停止は起こさないということを明言しておりますし、リスクとして懸念される労務不提供による間接的な供給停止の不安についても、そのようなことがないよう、自主規制を設けることで十分であると考えているところであります。
最後に論点7として事業者間の連携に代替性をどう考えるのかという点が挙げられていますが、事業者間の連携については、自然災害時の設備復旧に向けた人的応援、さらには、電力系統を維持していくための広域連携が挙げられます。他のエリアの者が代替して、機器の操作や運転できるものではありません。つまり、事業者間の連携で電気の安定供給を代替できるものではないため、事業者間の代替性というのは今回のスト規制法の論点にはならないのではないかと考えています。
これらの点について、次回以降も議論をさせていただければと思っていますので、よろしくお願いします。
長々とすみません。ありがとうございました。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、坂下委員お願いします。
○坂下委員 経団連の坂下でございます。
それでは、論点1~3を中心に議論になっていますので、私も順番に意見を申し上げようと思います。
まず、論点1です。資料3にスト規制法が正当でない争議行為の方法の一部を明文で禁止していることと、正当でない争議行為の範囲を明らかにして、その防止を図ることを主眼としており、労調法とは目的が異なると記載がございます。また、諸外国の状況についても調べてくださっていますので、これに沿って申し上げたいと思います。
まず、労調法とスト規制法の違いにつきましては、10年前の部会の議論でも一定の整理がなされていると理解しております。本日も、本部会の第3回までの会議資料をご用意いただいており、第1回部会の資料4の8ページに分かりやすく区分されています。私の理解としては、労調法は、ストライキが発生した後の対応になりますので、ストライキが発生して、安定供給が途絶してしまうことはあり得ると考えています。先ほど来、議論になっていますが、わが国は、産業技術立国を自負しており、電気の安定供給は不可欠です。そのため、確実に安定供給を実現することが必要です。その意味で、一度でも安定供給が途絶してしまうということでは、対応としては手遅れという評価になるのではないかと考えています。したがって、常に電力供給をしっかり確保するために、事前に正当ではない争議行為の方法の一部を明確にして、それを禁止する事前型の規制は、必要なものだと理解をしています。
その上で、諸外国について言いますと、第3回の部会で改めてこの10年間で諸外国にどういう変化があるかをお調べいただきました。電気事業に限定しているところはなかったようですけれども、イギリス、韓国、ドイツ、イタリア、カナダ、オーストラリア、いずれも電力事業に事前規制を設けていることが分かっています。したがって、事後型だけではなく、事前型も含めて規制している国は当然あり、特にわが国が特殊な状況であるということではないと理解をしています。
資料3の事務局の論点の上のポツのところに書いてないのですけれども、平成27年報告からの10年間の変化ということで、先ほど筑紫課長からもご説明ありましたが、この10年間の話に加え、今後のエネルギー基本計画と電力システム改革がどうなっていくかは、当然に重要な要素だと思います。
配付資料2の13ページにエネルギー基本計画のことが書いてあります。今後は、2050年に向けてCO2の排出削減対策を進めていく上で、特に電化が重要になっていくということが、下の「5.省エネ・非化石化転換」の1つ目のポツの2行目の真ん中辺りから記載があります。これは非常に重要なことで、CO2を出さないためにどう電化をしていくかということについて、その重要性が指摘されていると思います。つまり、電力事業は、インフラの中でもとりわけ重要になっていくことを意味しているのだろうと受け止めております。
こうしたことを考えますと、電気の安定供給に直接的影響を及ぼす可能性のあるストライキを事前に規制するという法律の必要性は、政策的な観点から10年前から変わらず、むしろ、今後はより高まっていくものなのだろうと考えております。
○中窪部会長 ありがとうございます。
では、山口委員お願いします。
○山口委員 それでは、電気事業連合会から、幾つかの論点についてコメントをさせていただきます。
まず、前提として、事務局に整理をいただきました論点、これは今後の議論に必要な内容を基本的には網羅をいただいているという受け止めでございます。
まず、論点1でございますが、スト規制法の必要性につきまして、資料3に御記載をいただいているとおり、今回の部会におきましては、前回10年前の部会での取りまとめ及び附帯決議を踏まえて、電力システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で、慎重に議論を深めていくべきだと考えております。
加えて、先ほど、資源エネルギー庁様から御説明のありました、第7次エネルギー基本計画(原案)でございますが、この内容も十分に勘案をする必要があると考えてございます。
その上で、前回、平成27年の報告書におきまして、スト規制法を存続することをやむを得ないとした理由として、電力需給が逼迫し、供給への不安が残っていることが挙げられていると考えてございます。将来の電力需要が増大する可能性が高いというのが現時点の想定、また、災害が頻発化・激甚化していることなどを踏まえますと、こうした安定供給に対する国民の皆様のニーズは、より一層高まっていると事業者としては捉えております。
加えて、先ほど、坂下委員から御発言がございましたが、GXやCO2の排出量削減の観点から、電化の重要性が増しているという新たな観点、これも御指摘のとおりかと思ってございます。
したがいまして、仮に法律を廃止するとした場合には、国民生活、経済にどのような影響があるか、その影響は国民の皆様にとって受容性があるのかどうか、公益委員の皆様からも、安心というワードも出てございましたが、こういった点も含めて、この法律の保護法益を踏まえた観点で議論をしていくことが重要ではないかと、現時点では考えてございます。
それから、論点2についてでございますけれども、こちらについては、事務局に御提示いただいた資料3記載のとおりの認識というところでございます。
それから、論点3の安定供給のために求められる対応の在り方の多様化についてでございますが、再生可能エネルギーの拡大に伴いまして、その出力変動を調整するために、火力の出力調整の頻度が増加しているといったところは、現場視察でも御確認いただいているところでございますし、また、その報告の中にもございましたが、御視察いただいた西条火力は石炭火力でございますが、こちらは、従来は、おおむね一定に出力を保って運転をしていたところが、現在は、再エネの変動に応じて発電量を調整しながら運転をする、そういう役割の変化がございました。このように安定供給のために求められる対応の在り方は、多様化あるいは変化をしております。今後も、様々な環境変化に伴って、業務内容等が変わることが想定をされます。
こういった変化に対して、論点5で挙げていただいておりますが、引き続き、良好な労使関係を維持しながら、適切に対応し、電力の安定供給に努めてまいりたい。この点、河野委員からも御発言があったとおり、安定供給という点に関しては、労使共通の思いといったところは賛同させていただくところでございます。
さらに、論点4の競争環境でございますが、発電事業は自由化をされておりますけれども、現状のスト規制法の対象事業者の電源シェアなどに鑑みますと、対象事業者において、スト行為により停電が発生した場合には、他の事業者による代替は困難であろうと。したがいまして、国民経済や生活に支障を生じさせるリスク、これは10年前と変わらず存在しているというのが認識でございます。
最後になりますけれども、論点6で御提示をいただいた、管理職による業務の代替性に関してでございますが、資料3に御記載いただいておりますとおり、業務の一部自動化は進展しているものの、組合員がストを実施した場合には、管理職のみでの業務代替は非常に難しいと。場合によっては、安定供給の維持が困難となる事態を招くことがあり得るという認識でございます。本社などの管理部門から、発電所などの現場事業所へ、当該事業所の業務経験者である管理職を応援配置をするという対応の可能性もございますけれども、電力の安定供給に必要な業務につきましては、日々の業務経験から得られる専門知識あるいは技能といったところが必要でございます。
また、論点3にも関連いたしますが、業務の内容が短期間で大きく変化する時代であることも考え合わせますと、例え経験者であっても、一定期間現場を離れている者による代替はやはり現実的ではないだろうと考えてございます。
私からは、以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、冨髙委員お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
次回部会で資源エネルギー庁から電力システム改革の検証の御報告があるということですので、そのときに改めて論点整理しても良いのではないかと思います。したがって、今回はまず、基本的な考え方と論点1の部分について発言させていただきます。
資料3では論点が7つほど整理されていますけれども、根源的に議論しなければいけないのは、労働関係調整法の公益事業規制がある中で、なぜ電気事業で働いている労働者の方にだけ屋上屋を重ねる形でスト規制法を設ける必要があるのかということです。この点は、どうしても労働側としては理解し難いところです。
資料3の「1.スト規制法の法的位置づけ」の部分に「諸外国の労使関係法制では、電気事業に限定した争議行為を規制する法制は見当たらないが、電力供給を維持するための何らかのシステムは設けられている」と書いてあります。しかし、これは書き方の問題で、「諸外国でも、最低限のサービス提供を維持するための公益事業規制はあるけれども、電気事業に限定して争議行為を規制する法制はない」ということであると思います。
これを日本に照らすと、公益事業規制としては労働関係調整法があり、また、我々も現地視察やヒアリングを通じて労使が電気の安定供給について高い志で取り組んでいただいていることを見ています。そういったことも踏まえれば、労働関係調整法の公益事業規制だけで、国際的にも問題がないと思います。もちろん生活者としての視点は重要ですけれども、労働基本権という労働者にとって最も重要な権利を制約する合理的な根拠があるのかというのが、どうしても理解できないのです。この点は論点とするべきであると思います。
先ほど使側の委員の方から、海外では事前規制もあるというご意見がありましたけれども、国民生活への影響などに鑑みて争議行為について制限する効果という意味では、事前規制も事後規制も共通しているのではないかと思います。さらに言えば、日本で見てみれば、電気事業以外のほかの公益事業は、事後規制しかないわけです。繰り返しになりますが、労働関係調整法の公益事業規制がある中、なぜ電気事業の労働者についてのみスト規制法という事前規制を設ける必要があるのかというのは、理解できないのです。この点はしっかりと申し上げていきたいなと思います。
以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、井上委員お願いします。
○井上委員 私は、大規模な需要者、ものづくりのメーカーで仕事をしている者ですので、そういった立場から、また、一生活者としての立場からも意見を申し述べたいと思っております。
今回、スト規制法についてどういうふうに考えることがいいのだろうかと。確かに、労使の関係は大変良好で、ストなどということは将来においてもないですよというお話はいろいろなところで出てくるのですけれども、企業ではリスクに対するマネジメントをどうするのかということを、通常よく考えます。
そうしたときに、この国において、社会生活を安定的に維持していくときのインフラとして、電気にはインフラ中のインフラと位置づけられる重要性があると考えます。ならば、電気が止まるということは、どのようなことがあってもあってはならない。これは人の命にも関わることでもありますし、そういうことを踏まえたときに、あってはならないことを規制するために法はあるのではないのかと、考えた次第です。
今後の社会のインフラとしての電気の重要性や特殊性を踏まえると、スト規制法を廃止するに十分な状況にはないのではないか、私はそのように考える次第です。
以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、坂下委員お願いします。
○坂下委員 論点2について申し上げます。
今し方、労働側から、なぜ電気だけなのかという点について問題提起がございました。そこにも少し関連するのかと思いますが、電気の特殊性の変化をどう見るかについて、申し上げます。
事務局の資料には、電気は貯蓄不可能で、需給バランスを崩すと大規模停電が発生すると記載がございます。これは10年前の部会でも議論にあったものです。今回、筑紫課長のご説明をお聞きして改めて強く思ったことですが、電化の重要性が大きく変わっています。論点1のところでも申し上げましたが、配布資料2の24ページのエネルギー需給の見通しの記載があるとおり、最終消費エネルギー量は省エネや効率化等により減るけれども、発電電力量については、今までは減ると見込まれていましたが、データセンターや半導体工場の設置といった様々な要素で、むしろ1割か2割増えるとされています。このように、CO2を出さないようにするために必要となるエネルギーであるということで、電気の重要性は高まっています。こうした視点は、前回の部会において、電気の特殊性としては明確に位置づけられなかったのではないかと思います。電気が持つ重要性という意味での特殊性は、10年前より高まっていると考えています。
2点目は、需給バランスを崩すと、予測不可能な大規模停電が発生するということについてです。これも当然に重要な要素でして、ここは10年前と変わっていないと思います。今後は、再生可能エネルギーを主電源として最大限導入することが、2040年に向けた政策の方向性として、エネルギー基本計画の原案の中には明記されています。こうした中、今回現地視察をさせていただきまして、配付資料の中にも書いてありますが、視察先の方々がおっしゃっていたことは、再生可能エネルギーは、発電量をコントロールできず、その設備量が増えると、天候や時間により変動する発電量の総量も増えるということでした。このために、専門的な知見と経験を持つ人により需給バランスを保つ重要性は、10年前よりもむしろ高まったと受け止めをしています。実際、現地視察した中央給電指令所におかれましては、人員体制の強化なども図っており、この10年で変わっていました。今後も、再生可能エネルギーが増えていくと、このような調整業務や、先ほど山口部長からもお話がありましたけれども、知見と経験をしっかり持った方が現場で対応することが重要になります。そうしたときに、万が一何らかの理由でストライキが起こってしまい、管理職等で代替することが難しいとなったときに、どのように考えるのか、国民が、需要側が許容できるのかどうか。こういった観点は十分に持っておく必要があるのではないかと思っています。今回の検討における重要な判断要素だと考えております。
○中窪部会長 それでは、高垣委員お願いします。
○高垣委員 送配電網協議会の高垣でございます。私からは、幾つかの論点についてコメントさせていただければと思います。
まず、論点2及び論点3につきまして、先ほど来お話もありますけれども、電気はためておくことができないため、電力を安定的にお届けするには、電気の消費量と電気をつくる量を一致させて、その品質である周波数を常に一定の範囲に維持する必要がございます。
このため、資料に記載いただいておりますとおり、電気の特殊性につきましては、10年前の部会時から変わりはないと認識しております。
また、前回の報告書にも整理いただいておりますけれども、電気は社会インフラの基盤となっており、デジタル時代も迎えまして、さらに、生活にあたり必要不可欠と考えられますことから、電気の安定供給の重要性についても変わりはなく、これは特殊性でもあると思います。
また、論点3につきまして、電気の安定供給のために求められる対応の多様化について記載いただいてございますけれども、再エネ拡大への対応や大規模災害に備えた対応などの環境変化を受けまして、送配電業務として求められる対応も変化してきてございまして、一部業務のシステム化や自動化などを図ってございますけれども、依然として、人による対応が必要な状況に変わりはございません。
また、論点4に関しましては、引き続き、一般送配電事業者には周波数維持義務が課されておりまして、送配電事業の位置づけも変わりはないと認識してございます。
なお、電力システム改革による競争環境整備によりまして、発電事業者、小売電気事業者ともに様々な事業者が参入されておりまして、再エネ大量導入や市場調達を行う中で、一般送配電事業者の業務も多様化している状況にございます。
このような中、論点6にも関連いたしますけれども、現場を御視察いただきましたとおり、管理職のみで業務を代替できるような状況にはなっておりません。
最後になりますけれども、論点5の労使関係につきましては、引き続き、良好な労使関係を築きつつ、電力の安定供給に貢献していきたいと考えております。
私からは、以上になります。
○中窪部会長 ありがとうございました。
では、冨髙委員お願いします。
○冨髙委員 今、論点2で御発言があったので、意見を述べたいと思います。
電気の特殊性のところで、「電気は貯蓄不可能」と書いてありますが、貯蓄可能か不可能かということを、スト規制法の論点として設定することは適切なのかは疑問です。法の在り方を議論する上で、着目すべきは安定供給であると思っており、それは、先ほどから使側の委員からもご発言がある通り、労使が協力して安定供給に取り組んでいるのです。一方、他のエネルギーやインフラといった公益事業では、電力のように屋上屋の規制がないわけです。そうした他の公益事業で争議行為が起こった場合は安定的なサービス提供などについて同じ危険性はあるわけですけれども、今までスト規制法のような屋上屋の規制がないことで何か問題が起こったかというと、起こっていないわけです。そういった事実も考えておく必要があると思っているところです。
以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
そのほか、いかがでしょうか。
事務局から何かありますか。
○労働関係法課長 事務局からは、特にございません。
○中窪部会長 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 事務局に要望をしたいのですが、よいですか。
電気事業法等の個別の事業法を除いて、スト規制法以外の国内の法令において、電気の公益性や特殊性に着目して公益事業の中で電気事業の労働者に限って義務や制約を課しているものはあるでしょうか。
例えば、先般のコロナ禍対応でも、社会機能を維持するために事業を継続すべき機関が、新型インフルエンザ等対策特別措置法によって「指定公共機関」として指定されていましたが、その「指定公共機関」も電気事業に限るものではなかったと思っております。つまり、基本的にはスト規制法以外に公益事業の中でも電気事業の労働者にのみ特別な規制を課しているものはないと思うのです。この点を調べていただきまして、次回会合で提出していただけるとありがたいと思います。
以上です
○中窪部会長 ありがとうございました。
様々な御意見が出ましたので、それを踏まえて、次回までに整理して、事務局のほうでさらに議論を深めていけるように、資料の準備を進めていただきたいと思います。
それから、私個人としては、一番上の「検討の背景」のところに、スト規制法がつくられたということで最初のポツがあるのですけれども、その内容についてもう少し、スト規制法は公務員とは違って争議行為そのものを禁止しているわけではなくて、しかし、それによって電気の正常な供給に直接に支障を生じるような行為は駄目だということですから、それが分かるような形で書いてあると、議論が少し整理されるような気がします。私の希望ということになりますけれども、それも含めて、今日のいろいろな御意見を踏まえながら、資料の準備を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
ただいまいただきました部会長、それから、冨髙委員、また、本日、様々いただきました御意見を踏まえて、次回、事務局において資料を整えて、また、お示ししたいと思っております。
○中窪部会長 ありがとうございます。
それでは、次回の日程について、事務局より説明をお願いいたします。
○労働関係法課長補佐 事務局でございます。
次回につきまして、日時、場所については、調整の上、追って、御連絡をさせていただきます。
以上でございます。
○中窪部会長 それでは、第4回の部会は、これで終了いたします。
お忙しい中、御参集いただき、どうもありがとうございました。