- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働基準局が実施する検討会等 >
- 労働基準関係法制研究会 >
- 第15回労働基準関係法制研究会 議事録
第15回労働基準関係法制研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和6年12月10日(火) 12:00~14:00
場所
厚生労働省 専用第22~24会議室
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第15回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。
構成員の先生方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
本日の研究会につきましても、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式とさせていただいております。
本日は、石﨑先生、黒田先生、島田先生、首藤先生がオンラインでの御出席、水島先生が御欠席と承っております。なお、石﨑先生については10分程度遅れての御参加と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(カメラ退室)
○荒木座長 議事に入ります。
前回、議論のたたき台について議論を行い、その後も先生方から様々な御意見をお伝えいただいたところです。先生方の御意見を踏まえて、議論のたたき台をさらにブラッシュアップする形で労働基準関係法制研究会報告書の案を事務局に作成いただきましたので、本日はこれを基に議論したいと思います。
まず、資料について、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 それでは、資料を御覧ください。「労働基準関係法制研究会報告書(案)」でございます。
まず、この案の構成でございますが、I「はじめに」、そしてIIとして「労働基準法制に共通する総論的課題」、IIIとして「労働時間法制の具体的課題」、最後に「おわりに」という4部構成となっております。
順に説明いたします。
まず「はじめに」のところでございますが、労働基準関係法制の意義ですとか、これまでの歴史的経緯等々をまとめたものでございます。1「労働基準関係法制の意義」というところに、本研究会において、労働基準関係法制としてどのような法律を対象としているのかということですとか、それぞれの法律がどのような形で労働者の保護を図っているのか、そういったことをまとめた部分となっております。
3ページ下の部分から2「労働基準関係法制を巡る現下の情勢」ということで、1947年に労働基準法が制定されてから現在に至るまでの社会や経済の構造変化に応じて、こういった変化があったのでこういったことをやってきたというような改正の経緯を含めた概略をまとめている部分でございます。
そして4ページ下のところでございますが、こうした社会や経済の変化を踏まえつつ、単なる規制の見直しを超えて、労働保護規範の設定の在り方、実効性の確保の在り方、労働者の多様な働き方も選択できる社会を実現するための労働政策が果たすべき役割、こういうことを踏まえて抜本的な検討を行う時期に来ていると考えられるとまとめているものでございます。
3「労働基準関係法制の構造的課題」でございます。労働基準関係法制は、労働者に共通に妥当する最低労働基準を一律に設定するという形で基本をつくられてきて、その後の社会や経済の構造変化に応じた見直しが進められてきたというものでありますが、その一方で、規制の内容の複雑化というような面も出てきている。「したがって」以降の部分でございますが、保護が必要な場面においてはしっかり保護をするといった原則を大事にしつつ、原則的な制度をシンプルかつ実効性のある形で法令で定め、そして柔軟性に対応する部分に関しては、労使の合意等の一定の手続の下に、労働者の実情に合わせた法定基準の調整・代替を可能とするというようなことが重要である。そのためには労使コミュニケーションが必要になりますが、そういった労使コミュニケーションには課題も多く、実効的な労使コミュニケーションを確保する方策が必要になるといった課題をこちらでまとめております。
これを踏まえました「本研究会の目的・研究の視点」ということで、4でございます。この研究会に先立ちまして、昨年でございますが、「新しい時代の働き方に関する研究会」というところで、働く人を守るということ、そして働く者の多様な希望を支えるということ、この2つの視点が示されているということでございます。社会や経済の構造変化に対応しながら、この2つの視点を両立していくという観点から検討していくということをまとめさせていただいており、その視点に立って、働き方改革に関する見直しについても具体的な検討を行うこととするとまとめております。
5がこれを受けましての「本研究会における検討の柱」でございます。6ページから7ページにかけては、今申し上げたようなところを再度詳しく書いた部分でございまして、これを踏まえて7ページから、労働基準法における「労働者」、労働基準法における「事業」、労使コミュニケーションの在り方、労働時間法制の具体的課題について、それぞれ柱を立てて検討していきますということを書いております。具体的に書いてある文章につきましては、後ほど出てくるところの前置きとなっておりますので、次ページ以降の中で説明いたします。
続いて、10ページからIIに入ります。「労働基準関係法制に共通する総論的課題」ということで、たたき台の段階では、労働者、事業、労使コミュニケーション、具体的制度という4本柱でありましたが、そのうち最初の3つを束ねて「共通する総論的課題」としているものでございます。
その1として「労働基準法における「労働者』について」でございます。
まず(1)ですが、「労働者」性の課題ということで、労働基準法における「労働者」は労働基準法第9条に規定しているところでございますが、個別の人が該当するかどうかという判断は、昔から課題となってきている。他国でも同様に発生しておりますし、日本に限らず、労働者性の判断においては、各国共通で、契約名称にかかわらず働き方の実態に照らして判断されるとなっております。
そうした中で、我が国では予見可能性を高めるために、昭和60年に一度研究会の報告が示され、以後、行政解釈、司法判断といったものがこの報告にまとめられた判断要素を参考として進んできた。
そこから40年が経過いたしまして、11ページに進むところでございますが、様々な働き方が増えてきた。特に近年で言えばギグワーカーやプラットフォームワーカーといったものが拡大しており、諸外国でも11ページに記載されているような対応が検討されてきたというものでございます。こうしたものを踏まえて、日本においても、労働者性判断の予見可能性を高めていくことが求められるのではないかとさせていただいております。
(2)から具体論でございますが、まず2番目で労働基準法第9条そのものについて、こちらに関しましては、この定義そのものを変えている国はほとんどないということからも、今の規定の下で、具体的な労働者性判断が適正に予見可能性を高めた形で行われるための対応を検討すべきとしております。
3番目「昭和60年労働基準法研究会報告について」でございますが、制定から約40年経ったということで、40年で積み重ねられた事例・裁判例をしっかり分析・研究し、学説等を踏まえながら、12ページにございますように、見直しの必要性について検討していく必要がある、その際には、ギグワーカーやプラットフォームワーカーといった新しい課題についても考えていく必要があるということをまとめております。こうした点を含めた総合的な研究が必要としております。
4番目、12ページ下のところ「働く人の保護法制との関係」でございます。労働者性の判断に関しまして、当然、境界に位置する者が存在する。日本においては、例えばフリーランスの方であれば、フリーランス法というものが本年11月に施行されているところでございますけれども、そういったような様々な仕組みがある中で、どのような保護法制があるのか、そこにどのような人が入るのかということも踏まえた検討が必要であるという視点を書かせていただいております。
13ページに入りまして、5番目、今後の研究でございますけれども、昭和60年の研究会同様に、労働者性の判断に関する専門家を集めて、継続的に研究する体制が必要であるということをまとめております。
(6)は家事使用人でございますが、家事使用人に関しましては、これまでの御議論でも出てきたように、労働基準法というのは公法的規制である、また、私法上重要な労働保護規範も設定しているということで、家事使用人の方に対して労働基準法を適用するのかしないのか。これに関しては、家事使用人に対して労働基準法を適用できるように、公法的規制に関しては、私家庭に対する適用であることも踏まえて、実態に合わせて検討していくべきではないかということを書かせていただいております。
その具体的な中身に関しては14ページに記載させていただいておりまして、最終的に家事使用人に対して労働基準法やそれ以外の労働基準関係法制をどのように適用するかについて、履行確保の在り方も含めた具体的な制度設計の検討に早期に取り組むべきとさせていただいております。
続いて2「労働基準法における「事業」について」の部分でございます。まず、事業の概念につきまして、以前より御議論いただいておりました考え方をまとめさせていただいております。労働基準法の「事業」に関しては、かつて労働基準法第8条に適用事業が列挙されておりましたけれども、平成10年の改正で削除されております。そこから先は包括的に適用ということになりましたが、その事業を単位として適用するという概念は今日も引き継がれている。
そういった中で、行政解釈上、真ん中に書いてありますような取扱いを事業の概念でしているということですとか、15ページ一番下からの部分で①、②、③、④ということで、事業を単位として適用して、労使での労使協定の締結の単位も事業場となるということ。また、労働基準法が適用される労働者に関しても、その事業に使用されるというのが定義に組み込まれていること。16ページ、③ですが、監督署もその「事業」について指導監督権限を行使しているということ。そして、国際的には「事業」というものが日本に存在しない場合は、労働基準法の適用が及ばない。「事業」が存在する場所に労働法制が適用になっているといったような機能をもって、「事業」というものは扱われているということをまとめております。
(2)は事業場単位の法適用の在り方でございますけれども、かいつまんで申し上げますと、事業場単位での法の適用に関しては引き続き続けるということではございますが、その中で、企業単位や複数事業場単位で同一の労働条件が定められるような場合や、企業単位や複数事業場単位で適切な労使コミュニケーションが行われるときに、労使合意の下である程度まとめるということも選択肢になるのではないかということ。
また、テレワークが浸透してきた中で、今後のことを考えますと、物理的な空間・場所を基礎とする「事業」の概念で規制の対象を捉えることが引き続きできるのかどうか、そういったことも含めた研究に早期に着手していくことが必要ではないかということをまとめさせていただいております。
続いて、18ページから「労使コミュニケーションの在り方について」の部分に入ります。
まず(1)の「労使コミュニケーションの意義と課題」でございます。ここで取り扱う集団的労使コミュニケーションでございますが、集団的労使コミュニケーションといいますと、①、②、③、④と書いてあるようにいろいろなものがございます。典型例で言えば①の労使の団体交渉において労働条件を設定するというもの。②として、労働基準法にあるような法定基準を調整・代替するもの。そういったところで結ばれた労使協定に関する③、モニタリング等を行っていくもの。そして④として、そういった法的なものとは別に、労働者による経営参画を含めた協議をしていくというもの。こういったものがございますが、この研究会では②、③を中心として扱っていくということをまず書いております。
その上で、意義と課題ということですが、法定基準を調整・代替する仕組み、典型例で言えば36協定でございますけれども、こういったものが時代を追うにつれて増えてきている。こうした中で、変化の中でも守るべき原則を堅持した上で、多様な働き方を支える仕組みにしていかなければならないという視点でまとめております。
19ページに入りまして、そういった観点をるる記載させていただいているところでございます。
具体的に何をしていくかというところが20ページ以降の部分でございます。
まず20ページの(2)、労働組合による労使コミュニケーションでございます。まず冒頭の部分でございますけれども、そもそもの労使関係というところで、労働者と使用者には厳然とした交渉力の格差がある。これに対して、労働組合法において、争議権を背景に組合が団体交渉を行うことで、労働者の交渉力を使用者と対等の立場に引き上げる。これが労働組合法の基本の部分でございますけれども、そのためにある労働組合というもので、この活性化は全体の文脈の中でまず必要であろうということを書かせていただいております。
その上で、労働基準法における労使協定や就業規則の手続に関して、これについても過半数代表というものを考えれば、まず優先されるのは過半数労働組合であるということでございますので、これも労使コミュニケーションの中核として労働組合が担っていくとなりますので、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションの活性化が望ましい。
この後、過半数代表者の改善部分がございますけれども、その際、過半数代表者に対する支援と併せて、過半数組合にも適用可能な支援というものは何かということで、こちらに書いておりますのは、例えば過半数代表としての活動時間の確保ですとか、必要な情報の提供ですとか、意見集約のための各労働者へのアクセス保障とかいうことがございますけれども、組合が過半数代表として活動する場合には、その組合に対して使用者から一定の支援等を行うことができるのではないか。その場合の制度を、労働組合法との関係も含めて考えていく必要があるのではないかということを書かせていただいております。
「また」のところですが、その際は、過半数代表でございますので、労働組合、組合員の代表でございますが、過半数代表として活動する場合は、全労働者の代表として意見集約をしていくべきということを書かせていただいております。
(3)過半数代表者のほうに入ります。まず、選出手続と基盤の強化でございます。過半数代表者の選出に関しては、20ページ下から書かせていただいている課題が様々ございます。なかなか積極的な立候補が得られないですとか、適正な選出がなされないケースがあるといったようなものがあるということでございます。
結局のところ、適正な選出が行われて、きちんとした情報・知識のある代表者の方が出てこないと、きちんとした労使協定が結べないということで、ここの部分の基盤の強化というものが必要だろうと。そのためには、21ページ真ん中より下のところでございますけれども、労働基準法における概念の整理ですとか、過半数代表者の選出手続、過半数代表者に対する支援の在り方、権利の保護、こういったものを明確化していくことが必要ではないかということでございます。
その中で、まず1つ目の選出手続、(3)-1でございます。選出主体は当然労働者自身になりますけれども、現実的に実務上は使用者が何らかの関与をしなければ、労働者から選出することも難しいということがあろうかと思います。
22ページでございますけれども、そういった各段階において、使用者がどのように関与していくのかということの検討を研究会で行っております。
まず、労使協定の締結のために、選出を求めましょうという際には、今その事業場でどういった労使協定が締結されているのか、どういった労使協定をその次の代表者に結んでいただきたいのか、そしてその中にどのようなものを考えているのかということの情報提供をするということですとか、選出の事務に当たっては、労働者による選挙、信任投票といったようなものを行うべきであり、そのプラットフォーム等々を使用者が用意する等の選出事務への配慮、こういったようなものを制度的に明らかにしていく必要があるとさせていただいております。
最後に、立候補をし、その役割を果たしていくということになりますと、過半数代表者になろうとする前から、そもそも過半数代表者とは何なのかということを労働者の方に知っておいていただく必要がある。そのための教育・研修を一定行政において資料を作成し、提供していくことが望ましいとさせていただいております。
22ページ下の(3)-2でございます。過半数代表者になった後の情報提供、便宜供与でございます。過半数代表者は、労使協定の内容や就業規則の内容を確認し、労働者の意見を集約し、使用者に対して伝え、締結や意見の表明を行うという役割を担うので、このために必要な事業場における働き方の情報、23ページにありますように、例えば36協定を締結するためであれば、その事業場の労働時間の情報を使用者側から提供いただく必要がありますというようなことを書かせていただいております。
また、真ん中部分下ですが、過半数代表者として労働者の意見を集約するには相応の時間が必要であるということで、労働時間の中での活動の保障ですとか、社内の設備の使用というようなことが必要になってくる。一定程度今までも行われているものではありますけれども、どこまでやっていいのかということに関しては、明確にすることが求められるであろうということをまとめております。
下の部分ですが、また、過半数代表者であることを理由とした不利益取扱いをしてはならないということですとか、過半数代表者の活動に応じて使用者との間で紛争が生じた場合には、労働委員会等によるあっせんというようなものも考えられるということですとか、あと、こういったものは労使委員会の労働者側委員や過半数組合についても同じことが考えられるので、そういった支援をほかの人に対してもしていくということ。組合に対して行う場合には、労働組合法に規定する支配介入との関係も明らかにすることが必要とさせていただいております。
続いて、(3)-3「過半数代表者への相談支援」の部分でございます。こういった活動を過半数代表者の方がしていくに当たって、第三者の意見を聴きたいというようなケースもあろうかということでございます。これに関しては第三者性も必要ということで、行政機関等に相談することが考えられるので、そうした体制の整備、相談窓口の周知が必要とさせていただいております。
続いて、(3)-4、(3)-5、過半数代表者の人数や任期でございます。現行、多くの場合、1名がその時々の手続で選出されるということになっておりますが、過半数代表者が複数人いれば、その複数人の代表者で相談したりして、より有効なコミュニケーションが行える可能性がある。ただ、一方で、複数人選出ということになると、候補者が少ないというようなことでの負担もあるということが想定されますので、複数人選出は選択肢としてあるのだということを明らかにしつつ、それをやりたい場合には、必要な配慮が求められるというようなことをまとめさせていただいております。
また、(3)-5の任期の部分でございますが、任期を定めて選出するということも現行法上必ずしも否定はされていないことであり、選択肢としてある。任期を定めて選出することで、25ページですけれども、労働者側の代表者が一定期間定まりますので、コミュニケーションの相手方が明確であるということですとか、その人が中心となって、労働者からの質問に応じたり、使用者に質問・意見を表明したりというような、いわゆるモニタリング的なものができたりするというようなこともあるので、そういった意義を明確にしつつ、選択肢としての任期制も明らかにしてはどうかということでございます。ただ、下にありますように、あまりにも長い任期は問題であるので、実施に当たって注意すべき点も整理しなければならないとさせていただいております。
続いて、(3)-6でございます。「労働基準法における規定の整備」でございますが、ここまで述べてきたようなものを実現していくことを考えたときに、労働基準法でどうしていくかということでございますが、現行の労働基準法で過半数代表というものは、それぞれの手続を定める条項に規定されているのみで、明確な定義規定ですとか、どういう機能を持つのかというものは書かれておりません。研究会として、まず労働基準法において過半数代表、過半数労働組合、過半数代表者、これらの法律上の位置付けや役割、過半数代表者に対する使用者からの関与や支援といったようなものを明確に定める法改正を行うことが必要とさせていただいているものでございます。
その際のイメージとして26ページでございますが、【法制度のイメージの例】として、法律やそれによる委任政省令に関してはこういったものを定めてはどうかというものですとか、ガイドライン等々で明らかにしていくものとしてはこういうものがあるのではないかということをまとめさせていただいております。
続いて、26ページの(4)でございます。「労使協定・労使委員会等の複数事業場での一括手続について」でございます。先ほどもありましたように、労働基準法は事業場を単位として適用されております。ただ、一方で、労務管理のデジタル技術の活用が進む中で、企業によっては、労務管理というものを本社一括化して、各事業場にはその機能がないというようなケースもあるということで、一定の場合において、労使の合意、労使当事者が希望する場合に、協定や就業規則といった本体は事業場ごとにしっかり結ばなければならないが、その説明やコミュニケーションは一定程度まとめてやってもいいのではないかというものでございます。
27ページの図にありますように、事業場単位での労使合意を前提としつつ、手続をある程度まとめて行う。これは現行法も許容はされておりますので、そういったことが労使の合意でできるのではないかということを明らかにしてはどうかというものです。ただ、下にありますように、事業場の過半数代表者がこれを拒否する場合には、原則どおり事業場単位で労使協議を行う。ここをはっきりさせた上で、こういった選択肢も明らかにしてはどうかというものにしております。
28ページ、労働者個人の意思確認でございますが、現行制度においても、集団合意を経た上で、重ねて本人同意を求める制度は裁量労働制や高度プロフェッショナル制度にあるということでございます。本人同意のみで基準を調整するというのはふさわしくありませんが、各制度を検討する際に、重ねての本人同意というものに関してはそれぞれ検討することが適当とさせていただいております。
次に(6)「労働基準関係法制における労使コミュニケーションの目指すべき姿」ということで、将来のことについてある程度書かせていただいております。将来的に、モニタリング等々を含めた体制の確保が必要になってくるだろうということで、真ん中部分でございますが、この点について、組合の機能が優先されることを前提としながら、組合がない事業場については、労使コミュニケーションの在り方を考えていかなければならない。諸外国でみれば、労働者のみで構成される代表の仕組みですとか、労使双方で構成される委員会ですとか、様々な形がある。こういったいろいろな形がある中で、どういった方向を目指すのかについては、より深い研究が必要とさせていただいております。
28ページ下ですが、こうした将来の検討につなげて、まず労働組合の活性化をしつつ、過半数代表の改善策を実施し、その状況を把握しながら、労使コミュニケーションの在り方についてさらに議論を深めていくべきとしています。
さらにその先まで見据えたところが最後でございまして、将来的に労働者全体の意思を反映した労使コミュニケーションが十分機能するようになった際には、過半数組合等の労働者集団と使用者の合意と労働契約の規律との関係について、長期的な課題として議論していくということも考えられるのではないかとさせていただいております。
30ページ、Ⅲ「労働時間法制の具体的課題」でございます。
1つ目「最長労働時間規制」の部分でございます。まず冒頭には、労働時間規制に関して、このような体系でやっていますという説明を追加させていただいております。
その上で(1)「時間外・休日労働時間の上限規制」の部分でございます。時間外・休日労働の上限規制に関しましては、導入から5年が経過いたしました。ただ、一方で、その5年のうち令和2年以降は新型コロナウイルスの影響が無視できない状況になったということで、上限そのものを変更するための検討に当たっては、引き続き、上限規制の施行状況、その影響を注視しなければならないのではないかとさせていただいております。もちろん月45時間・年360時間といった原則に向かって努力をしていくというものに関しては、引き続きしっかりやっていくということでございます。
31ページの部分でございますが、この点に関して研究会でも様々な御意見をいただいております。真ん中「なお」のところからでございますけれども、36協定で定める時間外労働はあくまで上限枠ということでございますので、その枠の中である程度労働者が安心して働けるような柔軟な働き方も考えられるのではないかということですとか、労働基準法第33条の災害時による特例によって長時間労働せざるを得ないような場合も増えているということで、そういった場合の健康確保についての対応が望まれるということですとか、制度的議論だけでなく、健康経営や人的資本経営の観点からの意識改革も望まれるということ。また、長時間労働の是正は、労働時間制度だけでなく、取引慣行・商慣行の見直しを官民含めて行っていく必要があるのではないかというようなこと、こういった、いただいていた御意見を紹介させていただいております。
続いて、(2)労働時間の情報開示の部分でございます。
まず、①として「企業外部への情報開示」ということでございますが、労働市場を通じた長時間労働の是正ということで、労働時間情報というものの情報開示を求めていくということがあり得るだろうと。現行法制におきましても、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律ですとか次世代育成支援対策推進法といった法律において、様々な情報開示の取組が進められているということで、こういった情報を労働者・求職者が一覧性を持って閲覧できるようになることが望ましい。こういった企業による自主的な情報開示が質・量ともに充実するよう、その基盤を整えること、義務的な情報開示について検討することについて、厚労省として不断に取り組んでいくべしということをいただくような形としております。
続いて、②「企業内部への情報開示・共有」でございますけれども、企業内部に関しては、自らの改善に向けて情報を開示・共有していくというものでございます。
まず、誰に対して、どのような目的で、何を開示し、何を改善していくのかということで、3つ整理しております。1つが衛生委員会や労働時間等設定改善委員会といった労使の会議体への開示ということでございまして、こういったところに開示をすることによって、労使のコミュニケーションが実効的なものになり、長時間労働の是正に向けて進めていけるのではないかということを書かせていただいております。
次に、管理職に対して情報を共有し、自部署の改善努力を促していくというものでございますが、これに関しては労働基準法のものというよりは、企業経営の中で企業ガバナンスの内部の問題として取り扱っていくものではないかというようなお話がありましたので、そういったことをまとめさせていただいております。
最後に、労働者個人に対するものということで、個人に対する情報開示、それによっての行動変容というものはある程度裁量のある人に限られるのではないかという懸念もございますけれども、一方で、個別の労働者に対して労働時間情報を開示することは、割増賃金の適正な支払いなどの確認ができるということもあり、労働基準法違反状態の発生を防止することができる、あるいは迅速な是正に資するのではないかといったような御意見をいただいておりましたので、そういったことを述べさせていただいております。そうしたことを含めた情報開示についてまとめさせていただく節となっております。
続いて、34ページ「テレワーク等の柔軟な働き方」でございます。テレワークの際、特に在宅でのテレワークの場合には、自宅が職場になるということで、プライバシーへの配慮や、仕事と生活が混在し得ることに関する中抜け等に関する留意が必要になってくるということで、研究会の中では、フレックスタイム制の改善と、みなし労働時間制の導入に関して議論がなされたところでございます。
まず、フレックスタイム制の改善でございますが、35ページ上のところにありますように、現行のフレックスタイム制では、清算期間内でフレックスタイムの日と通常労働時間の日の混在というものはできないということになっておりますが、テレワークをしている方で、テレワーク日と通常勤務日が混在する場合に、テレワークの日だけフレックス制を活用したいというような需要もあるだろうということで、こういった部分的にフレックスタイム制を活用できるような制度の導入を進めることが考えられ、まず改善に取り組むべきであるとさせていただいております。
続いて、テレワーク時のみなし労働時間制でございますけれども、テレワーク時も事業場外みなし労働時間制を適用しているケースもあるといえばありますが、なかなか要件等々で合わないようなこともある。そういった中で、テレワーク時の労働時間の管理について、フレックスタイム制であっても、使用者が実労働時間管理をするという以上は、一定、労働時間の報告や監視というものをやっているということが生じ得る。そういったときに、仕事と家庭生活が混在し得るテレワークについて、みなし労働時間制がより望ましい働き方と考える労働者が選択できる制度として、自宅でのテレワークに限定したものが考えられないかというようなお話がありました。
一方で、研究会の中で、こうした考え方に対しては、36ページに書かせていただいているように、長時間労働の懸念ですとか、本人同意の撤回権ですとか、そういった点から様々な懸念も示されたところではございます。自宅等でのテレワークを対象とするみなし労働時間制に関して、フレックスタイム制との組合せも含め、結論といたしましては、改善されたフレックスタイム制でのテレワークの実情を把握した上で、継続的な検討が必要ではないかとさせていただいております。
続いて、37ページ「法定労働時間週44時間の特例措置」でございます。一部の業種で小規模な事業場に限って、法定労働時間を週44時間とする特例がいまだ残っているものでございますけれども、ここに関しては、業種による状況の違いを把握しつつ検討すべきとさせていただいております。
続いて、(5)「実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置」でございます。具体的には管理監督者等でございますが、現行、管理監督者等には、特別な健康・福祉確保措置が設けられていないという状況でございますので、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度も参考に、管理監督者等に対する健康・福祉確保措置について検討に取り組むべきとさせていただいております。加えて、管理監督者に当たらない方が管理監督者等と扱われている場合もあるということで、その要件の明確化も必要ではないかとさせていただいております。
38ページでございます。「労働からの解放に関する規制」ということで、最長労働時間規制とは別に、労働から解放される時間の規制ということで、具体的には休日や休憩、勤務間インターバルといったものが該当するということでございます。そういった説明書きをまず冒頭に書かせていただいております。
まず1つ目に休憩制度でございますけれども、現行、8時間で1時間、6時間の場合は45分という休憩制度となっておりますが、まず1つ目として、8時間を大幅に超えて長時間労働する場合に休憩を付与するかどうかという点でございますが、その日の時間外労働の長さは事前に把握できないので、事前に計画が立てづらいということですとか、あくまで時間外労働ですので、休憩よりも早く帰りたいという労働者もいると考えられることから、このような改正は必要ないのではないかとさせていただきました。
また、短時間労働の場合の休憩付与に関しましても、6時間未満の勤務の方に関しては、そもそも拘束時間が長くなることを望まない場合も多いと考えられますので、現時点で規制は必要なかろうという御議論でありましたので、そのようにまとめさせていただいております。
その上の「ただし」の部分でございますが、短時間労働の場合に、離席を一切認めないようなケースが見受けられるということもあり、そういった小休止みたいなものに関しては配慮が必要であるということの周知は必要であるとさせていただきました。いずれの場合でも、形式的な休憩付与ではなく、適切な休憩環境が必要ということを普及啓発していくとさせていただいております。
39ページ下、2番目の「休日」でございます。まず定期的な休日の確保ということでございますが、現行制度、1週1休の法定休日でございますが、4週4休の変形休日が可能となっているということで、極端に寄せることにより、かなり長期間の連続勤務が制度上可能になってしまうというものがございます。
また、36協定に基づく休日労働を使うことで、労使で協定をすればではございますけれども、法定休日に関しても労働させることができるとなっていて、理論上は無制限に連続勤務をさせることも可能である。
こういった点を総合的に考慮しますと、労災認定基準なども踏まえて、13日を超える連続勤務をさせてはならない旨の労働基準法上の規制を設けるべきであると考えられるとまとめさせていただいております。ただ、一方で、こういった規制を設ける場合には、災害復旧等の真にやむを得ない事情がある場合の例外措置といったものは検討すべきであるとさせていただいております。
②「法定休日の特定」でございます。現行法上、法定休日がどこであるかについて特定せよということは定めていないわけでございますが、1週の中で週休2日制の場合には、法定休日と所定休日が混在する。いずれの休日が法定休日なのかが不明確であるということで、予見可能性に関しての問題というものも指摘されているということでございますので、法定休日を特定すべきということを規定することに取り組むべきとさせていただいております。
41ページ、(3)「勤務間インターバル」でございますけれども、働き方改革関連法で導入された上限規制は月を単位としているものであって、日々の暮らしということで考えると、一定の期間を空ける勤務間インターバルというものを今回、働き方改革関連法では労働時間等設定改善法第2条において設けさせていただいているものでございます。これについてどのように考えていくかというものでございます。
真ん中下のところですが、現行の勤務間インターバル制度の導入状況でございますが、導入企業割合は6%にとどまっているという状況。ただ、一方で、制度の導入予定がなく、検討もしていない企業が81.5%ありますが、そのうち51.9%は、そもそも超過勤務の機会が少ないので必要性がないと回答している。こういった実情も踏まえて、制度設計を考えていかなければならないとしております。これを踏まえて、研究会としましては、抜本的な導入促進と義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があるとしております。
企業に勤務間インターバル制度の導入を求める場合に、具体的にどのような制度を求めるかということについては、ここに箇条書きになされましたように、11時間とするのか否か、その場合の代替措置をどのような形に置くのか、規制の適用に経過措置を設けるのかといったような様々な考え方がある。これらについて、いずれにしても多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいといただいているものでございます。
その上で、その下のところですが、義務化の程度に関しましても、労働基準法における強行的な義務にするのか、それとも労働時間等設定改善法において制度を設けることを義務づけるなり、事業主配慮を求める規定を設けるなり、そういったような様々な段階が考え得るということで、そういった様々な手段を考慮した検討が必要とさせていただいております。
続いて、(4)「つながらない権利」でございます。つながらない権利に関して、フランスでは法制化されているというような実例がございますけれども、こういったものに関しては、まず労使のコミュニケーションによって社内ルールをどう検討していただくのかということが必要になるということで、話合いを促進するための積極的な方策、ガイドラインの策定など、こういったものが必要であるとさせていただいております。
(5)「年次有給休暇制度」でございます。年休制度については、①から④まで項目を立ててやらせていただいております。
①ですが、使用者の時季指定義務の日数の5日間ですとか、時間単位年休の日数の5日間、これについて変更する必要があるか否かというものでございます。現行制度の趣旨ですとか、これまでの状況、また労使からのアンケート結果等々を踏まえますと、結論といたしましては、時季指定義務日数の5日間、時間単位の年次有給休暇日数の上限5日間、いずれについても直ちに変更すべき必要があるとは思われないというのが研究会での御議論の結果でございました。そこを真ん中下のところに書かせていただいております。
これを踏まえまして、出てきた意見の中で、労働者が取得した日数を時季指定の日数に含めるのかどうか、あるいは時間単位の年休を年次有給休暇の時季指定の5日間に含めるのかどうか、こういったようなものに関する御意見もいただいていたところでございますが、結論といたしましては、現行の取扱いが適当ではないかと考えられるとさせていただいております。
45ページ、②でございます。ILO132号条約にも該当するような、いわゆるバカンス、計画的・長期的な年次有給休暇について、もともと欧州ではそのような趣旨で導入されておりますが、我が国では、我が国の実情を踏まえて1日単位に分割できるようにして制度を導入したというような経緯がございます。
こういったバカンスのニーズに関しましては、具体的なニーズがどの程度あるのか、そして祝祭日を含めた我が国の労働者の休み方を踏まえてどうなのかも含めて、中長期的な検討をしていくというようなことでまとめさせていただいております。
③でございます。1年間の付与期間中に育休から復帰した方ですとか、退職が予定されている方のように、そもそも労働日が少ない方に対する5日間の時季指定義務をどう考えるのかというもので、これに関しましては、場合によっては、使用者や労働者にとって不合理な制約になる場合もあることからも、取扱いを検討することが必要とさせていただいております。
④、年次有給休暇取得の際の賃金算定方法でございます。これもたたき台の際にも出ておりましたけれども、平均賃金を使うのか、通常の賃金を使うのか、標準報酬月額の30分の1を使うのかというものでございますが、通常の賃金と比べまして平均賃金や標準報酬月額を使うケースではやや額が少なくなるというケースがございますので、原則としては通常の賃金というものを使うべきではないかと考えられるとまとめております。
46ページ、3「割増賃金規制」でございます。
(1)「割増賃金の趣旨・目的等」に関しましては、研究会の中で様々御意見をいただきました。かなりいろいろな種類の御意見をいただきましたので、網羅的に列記させていただいております。こういった様々な意見がございましたので、割増賃金の意義や見直しの方向性に関しては、どういう方策を取るかについても、十分なエビデンスを基に検討される必要があるとさせていただいております。
47ページ下、(2)「副業・兼業の場合の割増賃金」でございます。副業・兼業の場合の割増賃金に関してでございますけれども、結論といたしまして、健康管理のための労働時間の通算、これは維持して、必要な健康管理は引き続きしっかりやるということを担保した上で、副業・兼業の場合の割増賃金の計算、1日単位で細かく管理しなければなりませんので、ここに関しては諸外国でもここまで通算している仕組みはなかなかないということもありますので、こういった割増賃金の支払いについては通算を要しないよう、制度改正に取り組むことが考えられるとさせていただいております。
ただ、あわせて、健康管理というものをしっかりしていかなければならないということで、これまで以上に万全を尽くしていくべしということで、48ページのところからでございますが、健康管理のための情報の把握方法や、長時間労働となっている場合の本業先と副業・兼業先の使用者の責任関係に関する考え方、取るべき健康確保措置、こういった在り方を整理することですとか、事業場が違うといっても、同じ使用者の命令の下で出向先・出向元で兼務するといったようなケースがありますので、そういった場合には引き続き通算することが妥当である。そういった論点についても取り組む必要があるとさせていただいております。
最後、「おわりに」でございますけれども、この研究会では、労働基準関係法制にかかわる諸課題について検討し、まず報告をまとめましたということでございますが、引き続きこういった研究の場は必要ということで、最後の部分でございますが、本研究会のような研究を行う場を引き続き設けていくことを要望するという形でまとめさせていただいております。
報告書(案)の説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
大変多岐にわたる論点について、また、先生方からも多様な意見が寄せられたところでございますけれども、それを適切に織り込んで原案を作成いただきました。大変な作業だったと思いますけれども、ありがとうございます。
それでは、本日はまず第一に、この報告書の全体の構成について少し議論をいただきたいと思います。その後、具体的な論点について2点ほどさらに議論を深めることができればと思っております。その一つは、家事使用人と労働基準法の「事業」の関係について、それからもう一点がテレワークに対応したみなし労働時間制度について、この2つについては、さらにこの間いただいた御意見も踏まえて、この場で議論いただきたいと考えております。残った時間、報告書の全体についてさらに御意見があれば伺うといった形で進めていきたいと考えております。
まずは報告書の全体の構成についてですが、最初のページにあるとおり、Iが「はじめに」なのですけれども、IIで「労働基準関係法制に共通する総論的課題」ということで、労働者概念、事業の概念、労使コミュニケーションを論じております。そしてIIIとして「労働時間法制の具体的課題」についての検討、そして最後に「おわりに」という構成になっていますけれども、この報告書の全体構成について、何か御意見があれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。
これまでの議論は、労働者性、事業の概念、労使コミュニケーション、そして労働時間制度と4つが並列的に並ぶような形での議論になっていたのですけれども、事柄の性質上、総論的な議論と労働時間についての各論的な検討でまとめるのが報告書としては適切ではないかという形で、こういった構成になっているかと思います。この点について何か御意見ございますでしょうか。
安藤先生、どうぞ。
○安藤構成員 私からも、大部にわたる資料の説明、どうもありがとうございました。
現段階での構成を最初から順番に全部読んでみたのですが、特段引っかかるところはなく、ただ、同じような表現が複数回出てきたりするというのは、どちらかというと確認的に出てきている部分があるかなとは思う反面、ブロックごとにもきっちり読めるという意味では、現在の書き方、構成ともに特段気になるところなく、私はこのままで結構かなと思っています。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかの先生方はいかがでしょうか。
もともとの労働基準関係法制研究会に委嘱された事項が、1つは中長期的な検討というものと、もう1つが働き方改革5年後見直しを契機とする労働時間制度についての検討、大きくこの2つの項目でありましたので、それに対応する形でIIとIIIという構成になっているということです。研究会の報告書としてもこれで大筋よろしいのではないかと思いますが、この構成については御了承いただいたということでよろしいでしょうか。
(構成員首肯)
○荒木座長 ありがとうございました。それでは、構成についてはご了承いただいたということで、次に参りたいと思います。
この場で議論を深めていただきたい論点が2つあるのですけれども、まず最初に、テレワークに対応したみなし労働時間制のほうから議論いただければと思います。テレワーク等の柔軟な働き方については、まずはフレックスタイム制の改善に取り組むべきだという点については、研究会の先生方、皆さん一致したお考えと承っております。
それから、テレワークに対応したみなし労働時間制については、既存の事業場外みなし、それから既存の裁量労働制みなしについては、適用要件が法定されておりますので、それに適合しなければ適用できないということを確認しております。
その上で、事業場外みなし、裁量労働制みなしとは異なる、新たなみなし労働時間制について一定の議論が提起され、これについては早期に取り組む課題ではなく、今後の継続的な課題だということで、先生方の意見もほぼ一致しているものと理解しております。
この既存のみなし労働時間制とは異なるみなし制度について、今回、少し記載が充実されています。これは、9月11日の第13回の研究会におきまして、石﨑先生から、なぜ既存のみなし制度と異なるみなし制度が必要なのかということについて、私生活と仕事が混在する在宅勤務について、実労働時間管理がふさわしくない状況がある。それへの対応が必要なのではないか。その際には、労使協定締結に加えて、労働者の個別同意、さらにはその撤回可能性も要件とするなどといった論点の提起がなされたところでありまして、こうした仕事と私生活が混在して発生し得るという在宅勤務の特殊性に対する対応については、その方向性について複数の先生方が賛同されたということがございました。ただ、同時に、みなし制については懸念があるという見解も強く示されたところでした。そうした議論を反映して今回の原案の記載となっていると理解しております。
それからもう一点、これも石﨑先生が言及された点ですけれども、新たなみなし労働時間制を導入しなくとも、現在の行政解釈、テレワークガイドラインでは、事業場外みなし制を非常に緩やかに認めているという現状がございます。つまり、情報通信機器で労働時間管理が可能であっても、その情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていない場合であって、かつ、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていない場合には、テレワークに事業場外労働みなしの適用は可能である。つまり、こういった場合には、労働時間の算定が困難と見て事業場外みなし制度を適用してよいという解釈がなされております。
事業場外労働みなしは、その適用に当たっては労使協定も要求されておりませんし、労働者の個別同意も不要でみなし制が適用できるということですので、テレワークに対するみなし制をどう考えるかという場合には、このような現状も踏まえて少し丁寧な議論が必要なのではないかという気もいたします。
そこで、テレワークに対する新たなみなし制について、改善されたフレックスタイム制の下でのテレワークの実情を把握した上で、継続的に検討すべきものとされておりますけれども、今後の検討の参考にするためにも、既存のみなし制やフレックスタイム制との関係を含めて、少しこの場で議論いただければと思います。
それでは、御自由に議論いただきたいのですが、まずは、お名前を出させていただきましたけれども、石﨑先生から何か御意見ございますでしょうか。
○石﨑構成員 過去の発言を引いていただきまして、ありがとうございます。過去の発言に補足する趣旨で、また改めて発言させていただければと思います。
まず、私としましては、みなし制について継続的な検討が必要であるというその結論自体に特に何か異議があるということではなく、その点は同意しているところであります。この間、いろいろと御意見が出た中で、新たなみなし制を導入した際の長時間労働の懸念というところが指摘されたかと思うのですけれども、この点に関しましては、もちろん実証的な検討や評価が必要になるところかとは思っておりますが、仮にそうした実証的な検討の結果、みなし制が長時間労働を誘発する、あるいはそれを促すというような影響があることが明らかになったとした場合、そうであるとするならば、なお一層、現行のみなし制を放置しておいてよいかという問題意識も他方において生じるように思います。
私が提案したというか、テレワークに対する、とりわけ在宅勤務に対するみなし制の適用というところで想定しているのは、もちろん現行のみなし制をそのまま適用するというところではなくて、その中に健康確保ですとか、場合によっては生活時間への配慮、あるいは労使コミュニケーションなどの手続的な規制も含めながら、みなし制を整えていくということを想定していたところでもありまして、現行のみなし制ですと手続要件などもなく、使おうと思えば使えてしまうという状況にあるわけですけれども、そうした中で長時間労働の懸念があるのであればなおのこと、そうした形で制度を整えながら新たな形に誘導していくことが必要になるのではないかと考えているところです。
もう一つの考え方としては、みなし制を取ることによって、非常に細かな中抜けを厳格に把握する必要がなくなるという意味において、よりいろいろな事情を抱えた労働者にとって働きやすい働き方になるというところはもちろんあるのですが、ただ、他方で、もちろんみなし制を取る、取らないは各企業ないし労使の判断ということにはなると思いますので、もちろんそうした制度を入れたからといってそうしなければいけないということでもなく、もちろん厳格な労働時間管理、オン・オフをはっきりさせることが必要なのだと考える事業者さんは、もちろんそのまま通常の労働時間制度の下で厳格な管理を行うということを妨げるものでもないということも、併せて補足させていただければと思います。
また、先ほど座長のほうからも、テレワークガイドラインについてのお話もあったかと思いますが、このガイドラインをどう読むかについても、恐らく様々な考え方があるのかもしれませんけれども、少なくともテレワークガイドラインでみなし制の適用に当たって取られている考え方、つまり、常時通信可能な状態に置かず、かつ、具体的な指示に基づいていないときにはみなし制を適用できるという整理というのは、ある面において、労働者のほうにある程度働き方への裁量を認める場合にはみなし制を使ってよいという立場なのではないかと理解しています。
具体的な実態に照らしたときには、そうしたテレワークガイドラインの考え方というのは、私は妥当であるとは考えてはおりますけれども、ただ、他方で、労基法第38条の2の算定困難なときという要件の厳格な解釈と、どこまでそれが整合しているのか。そこはもちろん最終的には裁判所が判断されるところだとは思いますが、やはりどうしても不明確な点が残るかと思いますので、そういった意味での法的安定性の面からも、そうした立法化というのは一つ重要な検討課題としていいのではないかと考えている次第です。
以上で私の補足は終わらせていただきます。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
では、どうぞほかの先生方からも御意見いただければと思います。
水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。
まずは、フレックスタイム制を改善し、その後、みなし労働時間制について検討するという立てつけはいいと思うのですが、みなし労働時間制のところで書かれている内容について、やや検討不足というか、もう少し精緻な具体的な書きぶりにしたほうがいいのではないかと思うところが幾つかあります。
35ページの下から2行目のところで、実労働時間管理が求められる以上、自宅内での就労に対する過度な監視や、一時的な家事・育児への対応等のための中抜け時間など実労働時間に関する労使間の紛争が生じ得るといった問題というので、フレックスタイム制で実労働時間管理をするとこういう問題が起こるよと。そして、一番下のところで、みなし労働時間制の検討のための課題として、上記の実労働時間管理をする場合の課題を踏まえてというので、これが課題だと言われていますが、実労働時間管理の場合にはこういう問題が出ると書いてありますが、果たしてみなし労働時間制のときに健康管理はしなくていいのかと。
その下のところで、一定の健康確保措置を設けた上でというので、今の裁量労働制の中でも、例えば健康管理時間を入れて健康管理をしっかりする。要件として健康管理を入れるということが裁量労働制とか高度プロフェッショナル制度の中に入れられていますが、この健康管理時間はきちんと把握した上で健康管理を行うということで、みなし制の議論をここですると考えているのか、ここで自宅での勤務、在宅労働における健康管理時間をどういうものとして具体的に考えているのか。裁量労働制の場合は、始業時間と終業時間の間が健康管理時間で、休憩時間があるかどうかにかかわらずその時間ですが、例えば在宅労働をしたときに、朝ぽちっとオンにして、ずっとやって、最後にぽちっとオフにしたときの間、中抜けするかどうか、休憩するかどうかにかかわらず、全部を健康管理時間だと見て、その時間を把握しつつ、例えば一定の時間を超えた場合には、産業医の面談などを要件として課すというような健康確保時間を仮に考えているのか。
もしそうだとすると、実労働時間を管理するかどうかの問題というよりは、ちゃんと時間管理をするかどうかに伴う問題であって、要は実労働時間管理をするから急にこんな問題が出て、実労働時間管理をしなければこういう問題が起こらないよと、やや強調され過ぎているのではないかということと、そういう意味で、健康管理はみなし労働時間制でも必要だと考えているのか、必要だと考えた場合にどうするかというのがあまり具体的にイメージされていないまま書かれているような気がするということと、一番下の継続的な検討課題のところにいろいろ書かれていますが、最大の懸念というのは健康問題なので、在宅労働と長時間労働の関係について、きちんと実態を精査して、そこを先ほどありましたけれども誘発するような関係にあるのかどうか。そして、その場合に、健康を確保するためにどういう実効的な措置があり得るのかということも併せて検討しないと、みなし労働時間制を将来において導入するかどうかの検討が必ずしもバランスの取れたものにはならないのではないかということで、そこら辺の具体的な労働時間管理といった場合の中身の問題と、健康確保が大切だと。そして、検討するときにもそのことについての実態調査や、それを抑えるための措置をどう考えるかをもう少し書き込んだ上で、継続的な検討課題と書いてもらうことが必要かなと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
今、水町先生の御発言を伺いながら、確かに健康確保をどのように実現するのかという話は、この報告書で書かれている、要するに労働時間の管理を厳格化することによって、かえって労働者の不利益になる結果が生じるのか生じないのかという、そこの話に関わってくるなということを思いながら伺っていたのですけれども、これからいろいろな選択肢があり得る中での話なので、あくまで私自身の想定ということではあるのですけれども、テレワークの場合の健康管理時間というのは、もしかしたら高度プロフェッショナル制度でも多少そういう面もあるのかもしれませんが、ある程度自己申告ベースの緩やかな管理というか、多少多めに申告したとしても、それはそれで差し支えないというような形の健康管理時間ということになるのかなというような印象を持っておりまして、あまりそこで厳密な管理というのはイメージしていなかったところであります。ただ、そこら辺はやはり制度設計次第かなというところもあるので、いろいろな選択肢はあり得るとは思います。
あとは、別の副業のほうの論点との関係で申し上げようかと思ったのですけれども、そうした健康確保を労働時間と完全にリンクさせる形がいいのかどうなのかというところも、また将来に向けた検討課題かなとは思っていまして、どういう指標が現在あるのかというところは、いろいろな医学の状況とか科学技術の発展の状況とかによってもまた変わってくるところかと思いますが、疲労感とか、そういったものをどう捉えていくのかみたいなところに関しても、一つ検討課題ですし、その辺りを法で決めるのか、あるいは労使の検討の中で選んでいくのかみたいなところも幾つか選択肢があるのかなと思っているところであります。
この辺り、労使のコミュニケーションがうまく動いていくのかみたいな点については、今回の報告書で、労使コミュニケーションに関しても一定の提案をして、一歩進めたというところもあるかもしれないと思いましたので、そういったところが実現して、うまくコミュニケーションが回るようになっているのかみたいなところも含めながら、こちらの制度設計についても考えていくというのがいいのかなと思っているところです。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
島田先生、お願いします。
○島田構成員 ありがとうございます。
事業場外みなしとテレワークの関係についてなのですけれども、テレワークのガイドラインのほうでも、一定の要件を満たした場合に事業場外みなしが使えることになっているということでしたが、本来であれば、算定できないという解釈としては、あまり整合していないのではないかと考えております。やはり物理的には算定できるということですので、本来であれば想定されていないということになるかと思います。
ただ、テレワークは最近新しく生じてきた問題というので、先ほどから監視の問題、生活空間の監視が関わってくるということが言われていますけれども、プライバシーの面から、実労働時間の算定を厳格にさせないことのほうが望ましいのではないかといった考え方もあって、テレワークガイドラインではそうなっているのかなと考えておりました。
ただ、やはり算定できないという解釈の内容として、使用者が労働時間を算定するかしないかという自分で決定できる事情でその該当性が決まるのは、少し適切ではないのではないかと思っております。そうであれば、生活の監視と、厳密に労働時間を管理しないほうが望ましい。した場合に何か問題が生じるということであれば、やはりテレワークみなしというものを別途つくった上で、事業場外ではなくて、そちら一本でいくほうが、法律の構成としては適切ではないかと考えております。
もちろん健康確保という点は課題としてありますので、そちらをちゃんと整備して、自己申告ベースであっても、何らかの健康管理の措置を入れる、あるいは手続的なところを整えるなどして、事業場外みなしではなく、テレワークのみなしのほうにしたほうが適切ではないか、そういう方向で議論していったほうがよいのではないかと考えております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 今回、事業場外のみなしも場合によっては使えるというお話が出てきて、御説明いただいて、少し実態との整合性が理解できるようになりました。実態として、テレワークの場合、細かい労働時間の管理をされていない、ある意味放し飼いのようにされていて、例えば子育ての時期などが終わったらまた職場に戻ってくることが前提で、一時的に働き方の強度が落とされているといったようなケースも耳にしておりましたので、これが合法的に行われているのだと。少なくとも今まではそう理解できたということがまず分かってよかったと思います。
その上で、テレワークはいろいろな理由で使われていると思います。例えば仕事の特殊性で、必ずしも1か所に人が集まって作業する必要がなく、個別のスキルで対応できるもの、しかし労働者である者、例えばコンピューターのプログラマーのような方が、自宅でちゃんとした椅子もあり、大画面のディスプレイも準備し、高性能なパソコンがあって、自宅でプログラムの作業を行う。このような場合だと、その労働者は厳格な労働時間管理をされても一向に困らないというケースもあるかと思います。仕事用の部屋もしっかり準備されていて、そこで仮にカメラをオンにしろと言われても全く困らない。こういうケースもあるでしょう。
また、一方で、育児や介護があって、その期間は在宅勤務を希望する。これに対して企業側も、その労働者に対して、場合によってはその会社にテレワークの規定がなかったとしても、辞めてほしくないからということで、新規に在宅勤務を認めるといったような事例もあったりするかと思います。
というわけで、そういう場合は中抜けなどがあったとしても、それはそういうものだと割り切って認めてしまっているといったこともあると思うので、どの辺りで36ページの一番上、労使間の紛争が生じ得るといったことがあるのか。これは今、可能性で議論されているわけですが、具体的にどういうパターンがあるのか。企業側が厳格な管理をするために、カメラを常にオンにしておけと。キーボードの操作も全部把握していて、それが一定程度途切れたら電話がかかってくるようなものが実態としてどのくらいあるのかといった、実態の把握のようなものも考える必要があるかと思っています。もちろん将来起こり得る可能性があるものに対して、予防的に施策を練っておくということも重要ではありますが、実態はどのぐらいのものがあるのかということは知っておきたいと思います。
あとは健康管理時間について、どちらかというと自己申告ベースで、多く申告してもそれによって賃金が影響を受けるのではなく、健康確保措置の医師の面談とかのトリガーとなるということで、多く申告しても構わないといったような見方もある一方、個人的には、これを過少に申告するということがもしあり得るのであったら健康に悪影響があり得るので、この点についてはもう少し検討が必要かと思っています。
どのような場合に少なく申告する可能性があるのかというと、テレワークにした場合に、一定の医師の面談などが必要になるような多い労働時間を申告してきた場合には、この労働者はテレワークにはふさわしくないということで、職場に戻ってくるようにと言われてしまうといったような懸念がある場合には、実際には実労働時間を申告しようとしても、それを申告してしまうと、この人は労働時間が長いので職場に戻ってこいと。職場での労働時間管理をすると言われてしまうという懸念を持ったら、短めに申告するような人が出てこないかといったことが気になるので、必ずしも申告ベース、本人がこのぐらいですと言ったら、それはどちらかというと多めに申告しているということを前提に議論していいのかということには懸念を持っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
実労働時間制であるフレックスタイムの場合に、使用者のほうが、働いていないのに働いていると申告しているのではないかといって監視を強めるといった例ももちろんあるとは思うのですけれども、それよりも実際上は、在宅勤務の場合は自己申告で何時間働きましたという形になるだろうと思います。そのときに善良な労働者ほど、これは100%フルで働いたのではなくて、途中中抜けもあったということで、フレックスタイム制の場合は実労働時間を労働者自身が過少に申告しがちになる。あるいは、もし本当にこの時間、実労働をやっていたのですかと問われたときに、少しでも後ろめたいところがあったら、もう働いていなかったという形で申告をする。そういった毎回の労働時間のチェックの煩わしさを考えると、こんなことを考えずに自宅で就業させてもらったほうがありがたいのに、というときの受け皿を考えなくてよいのかということがあろうかと思います。
その観点で、実は先生方から御指摘があったかもしれませんけれども、こういったみなし制については個人の同意を要件とするし、みなし制に移ったところ、やはりこれはいい働き方でないと思った場合には、同意を撤回して実労働時間制に戻るということが当初から御指摘があったところです。その場合に同意の撤回が実効的に使えなければ、非常に問題だろうと思います。
その点を考慮すると、自由度の高いフレックスタイム制が既に採用されている中で、自分は実労働時間制のフレックスタイムではなくて、むしろみなし制の在宅勤務のほうがもっと自由に働けてありがたいという人が、オプションとしてそういった制度も取り得るという制度設計も立法論としてはあり得るところです。そういうことも含めて、今回はフレックスタイム制をより改善したものとしてテレワークに適用できるようにし、その実情を見ながら、果たしてさらにみなし制の需要がどの程度あるのか、そういったことも確かめながら、さらに検討を継続する、そういう趣旨と受け止めたところです。
そのことについていろいろと問題点の御指摘もありました。健康管理時間の問題について一言申しますと、高度プロフェッショナル制度のときも健康管理時間というものを入れました。これは在社時間のようなものだと説明されておりました。健康管理時間というのは実労働時間ではないのです。出社してから帰るまで、途中に昼休みや食事時間、中休みがあったりしても、そういうものを含めて健康管理時間で管理する。高度プロフェッショナル制度では労働時間規制が適用除外になっていますから、実労働時間ではないけれども、健康管理のための時間の把握をしようという発想でした。
テレワークについては高度プロフェッショナル制度とはまた違う形の健康管理時間というものを考えて、健康の問題を捉えるべきかもしれないと、そういった重要な指摘があったと思います。そういうことも含めて、引き続き検討させていただきたいと思います。
それでは、さらに議論いただきたい論点のもう一つは、家事使用人についての労働基準法の適用といった場合に、労働基準法第9条の定義との関係でどう考えるべきかと。これをもう少し議論いただきたいと思います。
すなわち、労働基準法第9条においては、労基法に言う労働者とは、事業に使用されるものとされております。現在、家事使用人は適用除外となっているのですけれども、家事使用人に労基法を適用するとなると、第9条の労働者概念に適合するかどうかということが問題となり得るところです。労基法の労働者に当たるというために、事業に使用される者と言えなければいけないとしますと、私家庭が事業と言えるのかということが問題となり得ます。
ところが、1998年に労基法改正で、適用事業を列挙していた労基法第8条が削除されるまで、労基法第8条は、適用事業を列挙して、かつ、「但し、同居の親族のみを使用する事業若しくは事務所又は家事使用人については適用しない。」と書いてあったわけです。つまり、家事使用人は事業に使用されるかどうかを問題とすることなく、端的に家事使用人については労基法を適用しないという規定があったところです。
このように、家事使用人は労基法を適用しないと定めた上で、その次の条文の第9条で、労働者とは事業に使用される者と定義しているわけですが、家事使用人は第9条の前の第8条で既に適用除外となっているので、第9条の事業に使用される者かどうかということについては、議論が詰められることなく今日まで来ているのではないかと思います。
しかし、翻って考えますと、家事使用人が仮に労基法の労働者にそもそも当たらないのであれば、適用除外を設ける必要はなかったはずですので、労基法は、家事使用人は労働者であるということを前提に適用除外を第8条で書いていたと解されるところです。
そこで今回、家事使用人に対する労基法の適用除外を見直して、労基法を適用しようとする場合には、現在の第9条の定義にあえて適用するような整理を考えるのか、それとも、歴史的には事業に使用されることを問題とすることなく、労働者には該当するけれども、労基法は適用除外と定めていた事実に即して整理をするのか、この辺りについてはもう少し先生方の御意見を伺った上で考えたいということで、問題を提起させていただいたところです。ということで、家事使用人と事業あるいは労働者概念について、もう少し議論いただければということです。
水町先生。
○水町構成員 私の理解では、先ほど荒木先生が整理されたように、原始的には家事使用人も労基法上の労働者に当たるけれども、第8条で適用除外にした結果、適用されていない。もしそこで適用除外がなければ、事業に使用された労働者に当たれば、労基法上労働者に当たるよねという問題だというので、特に今の整理で問題ないような気はしたのですが、果たして事業は何かというところで、事業は特に個人事業主だと事業に当たらないというわけではなくて、私家庭だと事業に当たらないということも何もないので、例えばフリーランスで個人事業主でやっていて、個人でやっていて、従業員を雇った場合には、フリーランス法上のフリーランスに当たるかどうかは置いておいて、雇用関係はそこで成立するので、個人事業主、一人社長であったとしても、私家庭であったとしても、要は使用されるということを事業として行っていれば事業になる。
では、果たしてこの事業とは何かというと、労基法上これまであまり明確な定義とかがなされていなかったところが問題なのかもしれませんが、一般的に言えば、業として継続的に行われるというのが事業で、植木の剪定みたいに単発のもので、継続的に行われないものは、業として継続的に行われるわけではないので、事業に当たらない。けれども、大学の研究室についてはちょっと議論がありますが、大学の研究室で秘書を雇っている。別に今日1日だけ来てくださいというのではなくて、ずっと雇っているとすれば、大学の研究室自体も事業に当たって、そこで雇用契約関係、労働契約関係が発生するので、じゃあどうするかというので、あまり先生が勝手に雇わないでねと、大学本体が雇用契約を結んで雇用管理をするからというような運用が実務上今なされているのだと思います。
それから言うと、私家庭であったとしても、業として継続的に家事使用人を使用していくということであれば、例えば労働者の適用除外が外れて労働者になるとすれば、継続的に事業として労働者を使用しているので、労働契約に当たるし、労働基準法が適用される。ただ、単発で植木の剪定みたいな場合には事業に当たらないよという解釈になるのではないかと私は理解しています。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
事務局からどうぞ。
○労働条件確保改善対策室長 もしよろしければ、今、水町先生がおっしゃった話の業としての部分なのですが、今の文脈での業としてというのは、誰の業なのか。要は、働いている方の業なのか、その家庭の業なのか、一般的には使用者が業を持っているというのが構造だと思うのですが、業として家事使用人を雇うという考え方をしたときに、その業は家庭についているものなのか、家事使用人が雇われたから業になったのかというのが、今お伺いしていてやや私、混乱してしまったので、御教授いただきたいかなと。
○荒木座長 水町先生。
○水町構成員 法律の条文で言えば、事業又は事務所に使用される者というので、事業者のほうなので、家事使用人を使う事業者がいて、それが例えばその日だけよというようなもの、1回だけやった場合には違うかもしれませんが、事業者として株式会社でやっていて、1日1時間だけ雇ったという場合には、もう事業者自体が事業をやっているので、その人が1人について1時間だけ単発で働かせたとしても事業に当たるという解釈になると思います。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
山川先生。
○山川構成員
基本的な方向では皆さん一致していると思うのですけれども、家事使用人も労基法の適用対象に基本的に含めるという方向であろうかと思いますが、法律を改正するのでしたら、いろいろな方法があるかと思います。例えばですが、事業に使用される者とみなすというみなし規定を置くとか、あるいは事業に使用される者か否かを問わず適用するような形にするなど、いろいろなことがあり得る。もちろん現在の解釈でできるというのが貫けるならば、それでもあり得るかと思います。
その先をどうするかもいろいろ検討課題があると思います。労働基準法で言えば、全部の規定を適用するのかどうか、あるいは、個別的にこの規定については適用除外にするのかとか、それを検討する必要があろうかと思います。
もう一つは、監督行政をどうするか。労働基準法の規定の問題ではなくなるのかなという感じもしまして、どこの法律の問題なのか、あるいは運用の問題で対処するのかという行政の実施の問題も検討する必要があるかと思います。これは実情に即して工夫するということはできそうな感じがいたします。
もう一つは、関連法令の関係がありまして、労基法上の労働者と一致すると解されている労働安全衛生法、それから最低賃金法、解釈上、労災保険法でも同じ概念で適用されるので、これらについてどうするかということがあるのではないかと思います。
そもそもこれらをすべて適用するかどうかというの考えられる点ですが、労災保険は裁判例があるように、恐らく適用することが望ましいということになるのかと思いますけれども、そうなると労働保険徴収法の適用を考える必要があります。労災保険法は、もし家庭が事業だとすれば、雇っている個人は事業主ということになって、事業主が保険料の納付義務を払うということになって、それでも問題ないのかもしれませんが、例えば安全衛生法規では非常に様々な措置義務がかかってきますけれども、それをどうするかとか、労働基準法上の労働者は、いろいろな派生法規に関わっているものですから、それがどうなるかをチェックしておく必要があるかなと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 適用するとなると、殊、家事使用人だけの問題ではなくなって、個人事業主がいろいろな形で個人で、個人という名のいろいろな形態で人を雇ったり雇わなかったりというときに、その個人が社会保険上の責任、労働保険上の責任をどうするかというときに、こういう個人でやっているようなものについては適用除外していいよというふうにすることがいろいろな弊害をもたらすので、基本的には使用している人にその責任を負わせつつ、実務上それが難しいので、例えば請負事業者に送り出してもらって、管理も全部してもらう形にするか、派遣事業者に派遣してもらって、指揮命令だけは現地でできるというふうにするか、そういうビジネスモデルに誘導していって、きちんとした管理がどういう場合にもなされるというふうにしないと、ちょこちょこ適用除外とか特殊な事例をつくると、ほかのところにいろいろ発生する問題が生まれるかなというふうには懸念しているところで、14ページの上のほうの段落に、いろいろなビジネスモデルを職業安定行政とも協議しながらきちんと整備することが大切なのではないかと前の研究会でも発言させていただいたところです。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはよろしいでしょうか。
神吉先生、どうぞ。
○神吉構成員 ありがとうございます。
私も基本的に今のご意見に賛同します。家事使用人に関して、労働基準法上の様々な規制の中で、これは適用できる、これは適用できないという一定のパターンができると、それは家事使用人だけではなくて、そういう類型に含まれるべきほかの働き方の人もいるといった理屈で、事実上、第3類型を認める端緒になる可能性がありそうです。ですので、慎重に考えるべき問題ではないかとは思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生。
○山川構成員 先ほど申し上げたのは、もちろん個人事業主であればいろいろなものを適用除外するということでは必ずしもなくて、そもそも家庭に入らないというようなコンセプトがあって、それ自体再検討を要すると思いますけれども、自然人としての個人事業主が1人労働者を雇っていても、それは事業であれば適用されるのは当然ですから、それが除外されるということにはならないと思いますので、現在の家事使用人をどうするかというお話としての検討事項ということでの指摘でした。
これは突飛な話かもしれませんけれども、似たような話は、外国人の雇用で、特定技能では、農業と漁業については派遣形態しか在留資格を認めていないということがあって、水町先生の言われた、特定のビジネスモデルに組み込まれた場合に特定技能外国人を農業等については認めるとか、そうした仕組みはできております。ただ、そういった入管法と同様のスキームが労働基準法で使えるかどうかというと、ちょっと法律の仕組みが違うのと、そもそも入国するかどうかを入管当局が決定できるというスキームの中でやっていることとは違うのです。
もう一つ考えられるのは、これも労働基準法の中では難しいのですが、契約を通じた規制で、これも職安法という労働市場法の分野ですけれども、海外にわたる職業紹介の規制については、日本の行政権力が及ばないものですから、どうやっているかというと、労働者の派遣契約において、派遣法の規定と同様の規律を契約上盛り込んでもらうということで、契約を通じた履行を確保しているという例があります。ただ、これだと要は民事的な規制と行政指導しかできないので、労働基準法の仕組みとは違うこともあるのですけれども、いろいろな規律手法があり得るかなと思った次第です。
後半は思いつきです。
○荒木座長 ありがとうございました。
もともと労基法の第8条で、同居の親族のみを使用する事業もしくは事務所と、家事使用人について適用除外としていたのは、家庭内に公権力の監督行政が入っていくことは控えるべきだという考慮があったと思いますけれども、この研究会で議論してきたのは、そういった問題点はあるにしても、労働基準法は行政取締のほかに重要な民事規範も定めている。これが全て適用除外となってしまっていてよいのだろうか。片や労働契約法では、家事使用人は適用除外としていないということがあります。
そういう中で、カテゴリカルに家事使用人を労基法の適用除外とすることについては、改めて原則適用対象となるという前提に立ちながら、今日も御指摘があったように、どこまでの規定がどういうふうに適用され、執行されるべきかということについて、さらに慎重に検討していくということで、恐らく先生方の意見は一致しているのではないかとお聞きしたところです。
適用除外をやめるということは、全面適用するということと同じではございませんので、今後どういうふうに適用していくかについては、さらに検討していく必要があろうかと思います。
よろしければ、この論点は以上といたしまして、残った時間、30分ほどになりましたけれども、この報告書全体についての御意見をいただければと思います。
大きく2つに分けまして、IIの「労働基準関係法制に関する総論的課題」について15分程度、そしてIIIの「労働時間法制の具体的課題」についてさらに15分程度、御議論いただければと思いますが、まず総論的な課題について何か御意見があればお願いいたします。
首藤先生、お願いします。
○首藤構成員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
労使コミュニケーションのところで1点御相談というかお願いがございます。まず、非常に丁寧に議論をまとめていただきまして、本当に感謝申し上げます。改めて読み直してみて、随所に労使が対等なコミュニケーションを取ることの重要性や、適正な合意が必要であると書いてあるわけですが、過半数代表者の選出やその役割を明記してみて、私は改めて思ったのですけれども、適正な選出をするためにそれを周知をしたり、選挙を実施したり、どういった協定内容なのかを明示したりするなど、こうした様々な手続を使用者側に委ねざるを得ないのが実態であり、多分そうならざるを得ないのだろうと思います。そういう中で、使用者の役割としても、適正な選出を妨げてはいけないけれども、一定の情報提供などはやらないといけないということが課され、非常に難しい面があるなと思いながら読みました。
そして使用者側に大部分の手続を委ねる中で、どのようにして労使の対等性を担保できるのかというところが非常に難しいなと思っております。今回、教育研修であるとか相談支援というのが新たに入り、ここはすごく重要だと私は思っています。24ページの上の段落になりますけれども、相談支援のところの中に、前回、水島先生から、相談先として労働組合を入れたほうがいいのではないかという御発言があったと思います。対等性の担保ということを確実にしていくために、行政機関や外部専門家等の中に労働組合も含まれているのかもしれませんが、やはり労働組合を明記するということが重要なのではないかと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
神吉先生。
○神吉構成員 今の意見に非常に同感です。今回、過半数代表に関する義務や手続の明確化が随分書き込まれているので、報告書の具体的な書きぶりでお伺いしたいのですけれども、例えば22ページのところで過半数代表者の選出手続について、ちょうど真ん中辺りの「次に」の段落の最後に、こうした選出事務に配慮することに関しては、それが求められるだけではなくて、具体的にどの程度の配慮まで求められるのかについて、制度上明らかにする必要があると書かれています。ここでの制度は何を想定しているのか。法令なのか、それともガイドラインなのかとか、どの辺りを想定されるのかが若干気になりました。
というのは、ほかの部分は明らかにする必要は述べられているのですけれども、その方法についてはあまり言われていないです。例えば次の23ページの真ん中ちょっと下辺りの「また」から始まる段落の最後では、労働時間の中で活動することの保障や、使用者が中立性の観点からどこまで関わるか、便宜供与との関係は明確にすることが求められるというのは、どういう制度でやっていくのか。「また」の段落が結構たくさんありますけれども、一番下の段落、「なお」のところ、支配介入等の関係で、その関係を明らかにする必要があるというところもどのように行うのか、確認しなくていいのかなと思いました。
24ページの(3)-4の一番最後、過半数代表者が補助者の指名を望む場合の必要な配慮、これは配慮が求められるというところで終わっていますが、その具体的な内容を明らかにする必要もあるのかないのか、あえて書いていないのか、この辺りの書きぶりの違いが何らか意味を持たされているのかが気になります。
そのほか、周知を行うというのは、制度改正ではなく、ガイドラインなどが想定されているのかなとは理解をしております。
以上です。
○荒木座長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 御意見拝聴いたしました。
事務局として、前回研究会以降、先生方から個別にいただいた御意見を踏まえて、どのような法令ないしガイドラインで何を定めるのかということのイメージにつきましては、26ページの【法制度のイメージの例】というところに、先生方の御意見をある程度集約してまとめさせていただいたつもりでございます。
今ほど神吉先生にいただいた個別の文章の記述に法制度とか制度的という単語が入っていたり入っていなかったりというところについて、もし整合性が取れていないということであれば、また今日の御意見も踏まえて修正をいたしたいと思いますが、思いとしては26ページ側にまとめたものを念頭に置いております。
○荒木座長 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。
○神吉構成員 ありがとうございます。
具体的にどのような義務がどのくらい、といった点まで踏み込んで明らかにするか、そういう内容が入っているのかとは思いましたけれども、項目については理解しました。
○労働条件確保改善対策室長 補足いたします。
【法制度のイメージの例】のところで、「法律(その委任命令を含む。)」の部分、いろいろ書かせていただいておりますけれども、これは私どものほうで研究会の報告もしていただきました後、どのような制度にするかというのを検討していくわけですが、法制的に技術的な問題からどこに何を書けるのか、どういったものは委任政省令のほうがふさわしいのかというのは細かく検討が必要になりますので、そこはどこだという決め打ちは、今の段階でまだ条文案ができているわけでもないものですから、そこは難しいということで少しまとめさせていただいているということでございます。
研究会報告も踏まえて、また今後、労使での御議論もいただく中で、そういったことをしっかりブラッシュアップしていきたいというふうには考えます。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 今のところなのですけれども、23ページで議論されているような過半数代表者に対する活動への一定の保障であったり、また、設備の使用等についての便宜供与が必要といったところで、中立性の観点からどこまで提供することが適法であるのかといった書きぶりからは、このページの下のほうにある「また」以降、不利益取扱いをしてはいけないだけでなく、プラス方向のこともやってはいけないのではないかと思っていたのですが、26ページの書き方、【法制度のイメージの例】だと、不利益取扱いは禁止されているのですが、過半数代表者に対する支援や便宜供与については、どこまでやっていいというのがこれだけだと少し分からなかったのです。そこで、ルールの立てつけとして純粋に興味で教えていただきたいのですけれども、必要な情報提供などではなく、例えば過半数代表をやった人に対して配属などで過度に重用するであったりとか、ケアをするようなことがあったりすると、十分な役割を果たせないのではないかという点に懸念を持つのですが、プラス方向の特別扱いもしてはいけない気もするのですが、その辺りはこういうルールでは手当てはされているのかというのを教えていただきたいと思いました。
○荒木座長 事務局から御説明されますか。
○労働条件政策課長 安藤先生の御指摘につきまして、不利益取扱いにつきましては、まず現行の労働基準法施行規則第6条の2においても一定の規定を置いて、しないようにということは現在も若干指導させていただいている状況があり、それを法令という形で今回規定することが考えられる事項の例として挙げさせていただいております。
一方で、過重な利益を与えるということは、もちろん対等な労使関係ということに対する影響を鑑みると望ましくないという御議論がこれまでもあったのかなと思いますが、法令で禁止をするということについては、26ページのイメージの中には盛り込んでいなかったところでございます。
その際、一つには、まず組合について言えば、それは支配介入ということになるということで、労組法との関係があるということの整理が必要ということを23ページの下で書かせていただいておりますけれども、過半数代表者に対する過度な介入をしてはいけないということについては、結局のところ選出について言えば、今も使用者の意向に沿った選出は駄目だと言っているわけでございますので、それで足りるのかどうかということについての御意見ということならば、今日の御意見も踏まえて、さらに報告書(案)でどこまで書くかということも含めた検討をさせていただきたいと思います。
○荒木座長 現行の労働基準法施行規則第6条の2の第4項で、「使用者は、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない。」としており、あくまで過半数代表として活動することについての配慮を一定の支援とか便宜供与ということで書いてあるのでありまして、使用者に協力的だったから昇進させるとか、そういったことは到底ここで言っている便宜供与の問題ではないと考えて議論してきていると思います。
どうぞ。
○安藤構成員 一応これはいろいろな場合分けの確認のために御質問していて、例えばこれが本当に事実だったかどうかは別として、昔の日本企業では、労働組合の幹部を経験することがある種出世コースだと言われたような会社もあったかと仄聞しております。そういう観点から、必ずしも支配介入に当たるかという問題ではなく、労働者をまとめ上げるといったことが評価された点もあるのかもしれないといったところから、このような可能性も捨て切れないかと思っての御質問でした。
と申しますのも、今、この研究会でも何度も議論に出た点として、過半数代表者の成り手がいない。なかなかなってもらえる人がいなくて、だからといって会社側が一方的に指名するわけにもいかない。どうにか頼み込んでなってもらっているみたいなものもあるのかと聞いている中、過半数代表者になる人に一定の何かインセンティブがあるのかといったときに、場合によっては特別扱いなどがもしあるのだとしたら、それはどこまでやっていいのかというところを明確にしておく必要があるのかなという観点からの御質問でした。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
ちょっと時間が押してきました。私の進行の不手際ですみません。よろしければ、IIIの「労働時間法制に関する具体的議論」につきましても、お気づきの点がありましたらお願いします。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
1番目の議論でタイミングを逃して言えなかったので、テレワークみなしに関して、健康管理に関するところで、水町先生の御意見に賛同しますということを申し上げます。やはりもうちょっと踏み込んで健康管理やいろいろな措置を検討していただく必要があると思います。具体的には健康管理時間は広めに別途申請いただいて、今回の議論にもありました勤務間インターバルの時間も併せて把握して、きちんと休養を取れているかというのが肝心なところなので、その辺りも今後の議論で設計に含めていただく必要があるかと思いました。
もう一点、資料の最後の副業・兼業の通算に関するところです。ページとしては48の下から49ページぐらいになると思うのですが、健康確保のための労働時間の通算管理は一方できちんとする必要があるということはもっともだと思います。前提として、ここでは企業側が取るべきことについて記載してあると理解しており、最後のほうに、「取るべき健康確保措置の在り方を整理すること」と記載してあります。実効性を担保するためには企業側の措置だけでなく、労働者自身の協力も必要となりますので、企業が主語とする書き方を維持するとなると、企業が行う健康確保措置と労働者が行う健康管理に関する支援の両方が必要であるというような視点を追加いただくことが要るかなと思って意見を申し上げます。一言で結局は健康管理と記載することになるかもしれませんが、この辺りは修文をしていただければありがたいなと思います。
加えて、労働基準関係法制をちょっと離れるのかもしれませんが、広く働く人の健康管理という意味では、本務先があり、かつ、自営型の兼業を行う場合という健康管理についても、2つポツがありますが、3つ目ぐらいに加えていただいて、触れる必要があるのではないかと考えております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
私も、副業・兼業の際の健康確保の点でして、基本的に今、御発言いただいた黒田先生の意見に賛同いたします。今回、割増賃金については通算しないけれども、健康確保については、これまで以上に万全を尽くすと書いていただき、また、具体的には、健康確保のための労働時間通算管理を適正に行うための方法などといったところを書いていただいているのですけれども、健康確保という目的を考えたときに、労働時間を通算しているだけで十分かというところはやはり考える必要があって、つまり、雇用型ではない自営型副業の場合は、労基法上の労働時間通算からは対象外にはなるわけですが、趣味的なものは除くにしても、そうした自営型での兼業の時間をおよそらち外に置いて健康確保が図れるのかというところはよく考える必要があるかなと思います。
また、先ほどみなし制との関係でも申し上げたのですが、時間の通算だけで健康確保を図るのかというところも併せて、この辺りは技術の進展に伴いというところはどうしても必要になるかもしれませんが、引き続き検討いただけたらと思うところであります。
一時的に副業先での負荷が増したり長時間労働になっているようなケースにおいて、本業サイドで一定の安全配慮義務などの観点から配慮が必要になってくる場面というのは生じ得ることはあるのかなとは思っていますけれども、ただ、他方で、恒常的に副業先で負荷が生じていて、健康障害のおそれがあるような場合ですとか、先ほども議論に出ましたけれども、長時間労働が続いているのだけれども過少申告しているようなケースといったようなところのときに、結局副業をやめなければ健康確保が果たせないみたいな場面も想定され得るところかなとは思います。
そういったときに、本業として、場合によっては懲戒権の行使もちらつかせながらも、副業をやめろということで命じていくというのももちろん一つの方法ではあるのですが、ある種、副業・兼業の健康管理、最後は自己責任になってくる部分もどうしても出てくるように思っていまして、そういう意味では、労働者側のヘルスリテラシーを高める取組ですとか、そういったところも必要になってくるかと思います。この辺り、個人事業者の健康管理ガイドラインなどでも示唆されているところかと思いますので、そういったところも踏まえつつ御対応いただければという意見でございます。
もう一点、形式的なことなのですが、別の企業内部の情報開示のところで、過半数代表や衛生委員会への情報開示と、管理職と労働者へのというところで並びになっているかと思うのですが、このうち管理職に対するものは、本文中にも書いていただいているように、開示というよりは情報共有の話かなと思いましたので、衛生委員会、労働者、管理職という並びにしたほうがもしかすると論旨がすっきりするのではないかと思いましたが、以上は形式的な点ですので、最終的な判断はお任せいたします。
以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 労働時間について、全体的な記載ぶりについて異論を申すものではないのですが、31ページの上から4つ目の段落「なお、こうした制度的議論だけでなく」といったところ以降の書きぶりに少し引っかかりを覚えるので、一応発言させていただきたいと思います。
これまでこの研究会で何回か同じようなお話をしていますが、長時間労働の中には、健康被害を起こすような長時間労働と、そこまでではないのですが、企業として需要の変化などに対応するために、仕事の量が多いときには時間外労働を行うといった、景気の波であったり需要量の変化に対応するための時間外労働などというものもあったのではないか。そして後者については、日本では、労働者の人数を仕事が忙しいときには増やして、仕事量が減ったら解雇するといったようなことではなく、減らすといったことではなく、雇用保障の観点から、労働時間で調整してきたといったことも経緯としてあったのではないかと認識しておりました。こちらの労働時間の増減については、労働者にとっても一定の雇用保障というメリットがあったと認識しております。
そのような歴史的経緯を踏まえた上で、31ページの「なお」以降について、長時間労働に対応する労働者こそが会社の中核的なメンバーであり、そうでない者は周縁的なメンバーであるという考え方が存在し、こうした考え方を変えていくにはということで、こういう考え方というのは、もちろん健康被害を起こすような長時間労働は駄目なわけですが、一定の需要量の変化などに伴い、かつ、雇用保障などにもつながるような時間外労働のようなものとか、突発的な仕事に対応できるかみたいなことを含めて、これは全ていけないものであって、考え方を変えていかないといけないというふうに言い切ってしまっていいのかというのは、私個人としては少し疑問に感じているところではあります。
例えばこうした考え方を変えていくためにはというよりは、長時間労働に対応できる人だけが中核的メンバーではないようなケースを増やしていくであったり、人手不足の時代に多様な労働者の活躍を求めるためには、そこの平準化を図るであったりとか、もう少しマイルドな書き方ができないのか。従来のやり方を一切否定しているような書き方に聞こえてしまわないかなという懸念を感じました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
大体予定した時間になりました。ただ、何しろ大部な報告書ですので、子細に読めば、もう少し表現を工夫したらどうかとか、あるいはこれでは伝わりにくいのではないかといったところがあろうかと思います。ですので、ぜひ今回の報告書(案)を御覧いただき、お気づきの点は事務局に御意見をお寄せいただければと考えております。
次回は、本日いただいた御意見、さらに今後、報告書について先生方から寄せられた御意見を併せて、取りまとめに向けてさらに議論を行いたいと考えております。ということで、ぜひお気づきの点、何でも事務局のほうにお届けいただければと思います。寄せられた御意見については、事務局のほうで取りまとめた上で、次回の報告書に盛り込んでいただければと考えております。
ほかに特段御意見がなければ、今日の研究会はここまでといたします。
本日も、お忙しい中御参加いただき、どうもありがとうございました。