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- 第14回労働基準関係法制研究会 議事録
第14回労働基準関係法制研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和6年11月12日(火) 11:00~13:00
場所
厚生労働省 専用第15会議室
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 それでは、ほぼ定刻となりましたので、ただいまから第14回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。
構成員の先生方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
本日の研究会につきましても、会場参加とオンライン参加による開催ということで実施いたします。
本日は、黒田先生、島田先生、水島先生、山川先生がオンラインでの御出席、石﨑先生は途中からオンラインでの参加と伺っております。
なお、首藤先生は12時半過ぎには御退室の予定と伺っております。
カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(カメラ退室)
○荒木座長 それでは、議事に入ります。
本日は、これまでの構成員の皆様の御意見を基に、研究会の議論のたたき台を事務局に作成していただきました。これを基に議論したいと思います。
まず、資料1について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局から資料を御説明いたします。
今回、「議論のたたき台」ということで資料を御用意させていただいております。内容について御説明いたします。
まずIの「総論」というところでございます。ここで、これまでの御議論からの労働基準法制の課題と検討の柱を整理しております。
1番の課題のところでございますが、経済社会の構造変化に応じて、どこまでどのような手法で見直しを進めていくのかがまず課題である。そうした中で制度をシンプルに保ちつつ、現場に合わせて調整をしていくためには良質な労使コミュニケーションが必要であって、一方で過半数代表を軸とした労使コミュニケーションには課題も多いということ。そして、罰則付きの強行法規である労働基準法に加えまして、他の法律やソフトローも含めて検討することが必要。
こういったことを先生方に御議論いただいたかと思います。
2番目、これに基づく検討の柱でございますが、まず1つ目のところで「新しい時代の働き方に関する研究会」から引き継いでおります働く人を守るということ、そして多様な希望に応えるということ、この2つの軸を基に議論をいただいてきたところでございます。
2ページに、これを基にした4つの柱ということで、「労働者」、「事業」、労使コミュニケーション、労働時間法制の具体的課題ということを整理させていただいております。
これらの課題について、3ページ以降で詳細を記述しております。
3ページ目でIIの「労働者」についての部分でございます。
まず1番としては「「労働者」性の課題」ということで、現行の労働者性に関する判断基準でございます1985年の労働基準法制研究会の判断基準、これに関して制定から40年が経過し、社会が大きく変化する中で労働者性の判断の予見可能性というものが下がってきている。これを再び高めていくことが必要で、これが課題であろうと整理をしております。
2番目から具体的中身ですが、まず法律につきましてです。そちらに記載がありますとおり、労働基準法第9条に労働者の定義がなされておりますが、この抽象的な定義規定そのものに関しましては諸外国でも変えているところもほとんどございませんし、現行の規定には一定の合理性があるのではないかという御議論であったかと考えております。
3番目、昭和60年、1985年の研究会報告についてでございますが、これは作成から40年が経過しているということで、この40年間で積み重ねられた事例、判例等をしっかり分析、研究し、学説も踏まえながら見直しの必要性を検討するということで御議論をいただいていたかと思います。それに続きまして、具体的な検討に当たっての課題というものもそちらに記載させていただいております。
4番目、この検討をするに当たって「働く人の保護法制との関係」ということでございますが、労働者性の判断をするということは必然的に境界事例を生ずるということで、その内と外でどのような法制があるのかをにらみつつ検討が必要ということを議論の中でいただいていたかと思います。
これらを踏まえまして5番目、「今後の研究について」でございますが、1985年の研究会と同様に幅広い専門家の方々にお集まりいただき、研究することが必要であるというような御議論であったかと思います。厚労省において継続的に研究を行う体制を整えることを要望するというような形でまとめさせていただいております。
最後に6番目、「家事使用人について」でございます。家事使用人に関しましては、実質的な労働形態が普通の労働者とほとんど変わらなくなってきつつあるということで、労働基準法の適用除外とすべき事情に乏しくなってきたという御議論をいただいていたかと思います。
一方で、使用者に当たりますのが私家庭でございますので、そういった方に使用者責任を負わせることについては慎重な検討が必要であろう。そういった履行確保の在り方も含めた具体的な制度の検討が必要と考えられるということでまとめております。
続きまして5ページ目、IIIの「事業」についてでございます。
「事業」について、まず結論のところが1つ目の○でございますが、現時点では労働基準法について事業場単位を原則として維持することが適切というような御議論であったかと思います。
そうした中で、原則を守りながら具体的な法規制の内容に応じて、企業単位ですとか複数事業場単位をまとめた単位、こういったもので手続を取ることが適切であるものに関しては、複数事業場単位で行うことも選択肢になることを明らかにするというような御議論であったかと思います。
3つ目の○のところでございますが、将来的なものを考えますと、生活する場、労務を提供する場、事業場が所在する場といったようなものの乖離というのは現在も起きておりますし、将来的には更に増えていくということから、この労働基準法制における事業の概念について、将来的な労使コミュニケーションの在り方も含めて検討していくことが必要という御議論をいただいてきたかと思います。
続きまして5ページ目、真ん中からIVで「労使コミュニケーションの在り方について」でございます。
まず1番の意義と課題でございますけれども、1つ目の○でこの研究会において対象にしている労使コミュニケーションについて整理をしております。労使コミュニケーションと一口に言いましても、そこに①、②、③、④とありますように、いわゆる団体交渉から労使協定等を結ぶもの、その結んだものに関するモニタリング等といったような形で何段階かあるものでございますけれども、この研究会では、そのうちの②、③を対象の中心に議論をしてきたと考えております。
そこを踏まえまして下のところでございますが、法規制をシンプルに保ちつつ、経済社会の変化に対応して現場の実情に合わせた調整を有効に機能させる。そのためには、労使コミュニケーションがしっかりしていなければならない。労使コミュニケーションの中核になりますのは労働組合でありまして、その活性化や組織化といったような取組が望まれるということがまず第一にあるということで、そちらに書いてございます。
その上で、過半数労働組合がない事業場を含めてできるだけ労使が対等に協議をして合意に至る環境が必要であるということで、5、6ページ目に続きますけれども、労使コミュニケーションの改善が必要であるということを御議論いただいていたかと思います。
最後の3つの○に関しましては、少し将来的なことを書かせていただいている部分でございます。これは後ろでも出てきますので、また後ほどお話をいたします。
2番目、「労働組合による労使コミュニケーションについて」のところでございます。
労使関係に関して、中核になります労働組合に関しまして組織率が長期的に低下してしまっているということは事実である。そういう中で自主性を損なわず、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化していくことが必要であろう。その中で、過半数労働組合に対する支援といったようなものも、過半数労働組合が過半数代表として活動する場合には企業から受けることができる支援というものがあるのではないか。それを制度上明確化していくことが必要ではないかというような御議論をいただいていたかと思います。その際には、過半数労働組合は全労働者の代表として明確化される必要があるということもいただいていたかと思います。
3番目、「「過半数代表者」の機能強化について」でございます。
7ページに移っていただきまして、過半数代表者に対する課題でございますけれども、まず1つが適正に選出されないということ。そして、なかなか過半数代表者としての役割に関する知識・経験を持つ方ばかりではないということから、積極的な立候補が得られないことも多いというようなことが挙げられていたかと思います。
現行の労働基準法では過半数代表、過半数代表者というものが明確に定義されておりません。そこに関しまして、労働基準法における定義ですとか、使用者の関与がどのようなものか、便宜供与、権利保護をどうするか、相談支援をどうするかといったようなことに関して、明確にしていくことが必要ではないかというような御議論をいただいていたと思います。
具体的な中身が3-1からになります。
まず3-1、過半数代表者の選出手続でございますけれども、1つは選出を始めるに当たって、その契機となるのは使用者が何らかの労使協定を締結しようとする場合に求めるということになります。その際、この事業場でどのような労使協定が今、結ばれているのか、今回どういう労使協定を結ぼうとしているのか、それをどういった形にしようとしているのか、こういったことは使用者が明らかにした上で過半数代表者を選んでいただくことが必要ではないかという議論があったかと思います。
また、2つ目のところですが、その選出の際にはどうしても選出事務ですとか、周知ですとかといったようなことに使用者の配慮が必要ということで、どの程度までの配慮を使用者がやっていいのか、こういったことを制度上明らかにすることが必要ということをいだいていたかと思います。
また、過半数代表者の選出が必要になる前から、労働者の方にも過半数代表とは何ぞやということを含めた教育・研修の機会が必要ということで、行政サイドとしてもその研修資料の作成、提供といったようなことが求められるということもいただいていたかと思います。
続いて3-2でございますが、過半数代表者が選ばれた後、過半数代表者の活動に対する情報提供、便宜供与というものでございます。
こちらについて8ページに続いてまいりますが、実際に過半数代表者が活動するに当たって必要な情報、関連する事業場の労働実態ですとか、労働者の意見を集約するためにその事業場の従業員がどれだけいるか、誰がいるかというような情報ですとか、こういったものは企業からの提供が必要であろうということが言われていたかと思います。
加えて、労働時間の中での活動保障ですとか、社内設備の使用といったようなもの、こういう便宜供与がどこまで許容されるのかといったことも明確にすることが必要といただいていたかと思います。
その下ですけれども、過半数代表者として活動するといったことを理由とした解雇・異動等の不利益取扱いをしてはならないという旨、また情報提供、便宜供与に関しては過半数代表者だけではなく労使委員会の労働者委員ですとか、過半数労働組合に対しても同様の扱いをすることが考えられるということ。その際、組合に対しては便宜供与に関しては支配介入等との関係を明らかにする必要があるということ、こういったことも御議論をいただいていたということでまとめさせていただいております。
続いて、3-3で「過半数代表者への相談支援」というところでございますけれども、行政機関や外部専門家の相談支援に関しても、体制整備ですとか窓口周知といったことが必要といただいておりました。
3-4、3-5ですが、人数と任期に関しまして、意見集約を行いやすくするですとか、モニタリングをしっかりするということで、過半数代表者を複数人選出するということですとか、あるいは任期を付けて選出するということですとか、こういったものが選択肢であるということを明らかにすべしというようなことを御議論いただいていたかと思います。
こういったことを踏まえまして9ページの3-6でございますが、規定の整備として過半数代表、過半数労働組合、過半数代表者、これらについて法律上の位置付け、役割、どのような関与、支援ができるのか、こういったようなことを規定することが必要ではないかという御意見をいただいていたと思います。
以上、過半数代表者の機能強化の部分でございます。
続いて4番目、複数事業場での一括手続の部分でございます。
現行、デジタル技術が進む中で本社が一括して労務管理を行っているケースが増えておりまして、本社の参画がなければ実質的な労使協議が行えないようなケースが増加しているのではないかという御指摘があり、現行制度の中でも2つ目のところでございますが、労使合意を前提としつつ、手続をある程度まとめて行うということは許容されている。その点を明らかにするということを御議論いただいていたかと思います。
10ページ、そういった場合でも各事業場の過半数代表者が単独で手続をしたいということであればこれを拒否できる。こういったことも明確化する必要があろうという御議論をいただいていたかと思います。
続いて5番目、労働者個人の意思確認でございます。
原則として、法律で示された規制に関しまして、個人同意のみでラインの再設定というものは不適当である。これに関してはしっかり言われていたかと思います。
その上で、現行の企画業務型裁量労働制のように集団的合意に重ねて本人同意を求めるということに関しては、制度によっては必要な部分もあるということで、制度それぞれの検討の際に検討すべきということを言われていたかと思います。
最後に6番目、将来の姿でございます。
将来に向けて労使コミュニケーションをより強化していくためということで、どのような形があるのかということを考えたときに、2つ目の〇でございますが、モニタリングを含めた労使コミュニケーションを恒常的、実質的に行える体制が必要であろう。それが労働者の代表団のような形か、委員会のような形かについては各国でも様々であって労使の意見も異なるということで、ここに関してはより深い研究が必要であろうということをいただいていたかと思います。
その上で一番下の〇ですけれども、まずは過半数代表の改善策を実施するということをこの研究会では中心的に御議論いただいていたと思います。
11ページ、Vでございますが、具体的な労働時間法制の課題についてでございます。こちらはかなり項目数が多くなっておりますので、各項目については少しかいつまんで御説明をいたします。
まず1番目、「最長労働時間規制(実労働時間規制)」の部分でございます。
そのうちの(1)、労働時間の上限規制の部分でございますが、これは現行の80時間、100時間といった上限に関して変更するための社会的合意を得るためには蓄積が不足しているのではないか。一方で、長期目標である月45時間、年360時間というものを見据えた議論というものは必要であるというような御議論をいただいていたかと思います。
(2)、「企業による労働時間の情報開示」の部分でございます。
強行規制による労働時間の短縮のほかに、市場の調整機能を通じて改善をしていくということに向けた正確な情報開示というものが望ましいということ。それに対して、現行法制においても女活法等々、情報開示をやっている仕組みは既に設けられておりますので、これらの開示の取組が進められ、また一覧性をもって閲覧できるようなことが望ましい。その基盤整備ですとか、義務的な情報開示の検討については、厚労省として不断に取り組んでいくべしということをいただいていたかと思います。
次いで「企業内部への情報開示」でございますが、まず衛生委員会や過半数代表等、労使の協議体に対する情報提供に関しましては、実効的な労使交渉を進めていくために取り組んでいくべきといただいていたかと思います。
②、③の管理職ですとか個別労働者に対する情報開示に関しまして、管理職に関してはそこに対する情報開示が有効であろうということはあるけれども、そこは管理職、その場合は使用者とも考えられるので、労働基準法での規定が適当かどうかということに課題がある。また、個人に関しましては、どのような情報を開示するのかによって効果も異なるし、個人自身が短縮できるというのは限られた労働者だけではないかというような課題も指摘されていたところでございます。いずれにしても、こういった情報開示について企業としてもできることから取り組んでいただきたいというようなことを最後のところでまとめております。
12ページの(3)は「テレワーク等の柔軟な働き方」でございます。
こちらについては、テレワークの実態に合わせたフレックスタイム制とみなし労働時間制、この2つを御議論いただいていたかと思います。
まずフレックスタイム制に関しましては、テレワーク日と通常勤務日が混在する場合にも使えるようにコアデイの導入等の制度改正をするべきであるというようなことをいただいていたかと思います。
みなし労働時間制度に関しましては、テレワークの性質から厳格な労働時間管理がふさわしくないのではないかという一方で、長時間労働のリスクというものがみなし労働時間制度にはあるということで、こちらについては中長期的な検討が必要だとまとめさせていただいております。
13ページ、(4)で週44時間の特例措置に関しましてでございます。
こちらについては、実態上もう使っていない事業場も多いところではございますが、業種による違いもあるということで、そういった違いを踏まえながら特例措置撤廃に向けた検討に取り組むべきとまとめております。
(5)、「実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置」ということで、特に管理監督者等でございます。
管理監督者等に現行設けられていない健康・福祉確保措置について、その内容の検討が必要、いずれかの法令に規定することを含めた検討が必要ということ。そして、管理監督者等がどういう性質のものか明らかにし、要件を明確化することが必要ということをいただいていたかと思います。
続いて、大きな2番目で「労働からの解放の規制」の部分でございます。
1つ目の「休憩」に関しましては、1日8時間を大幅に超えて長時間労働をする場合ですとか、逆に6時間未満の所定労働時間の場合の休憩付与についてどう考えるかということで、ここに関してはそういった方々の場合は休憩より早く帰りたいですとか、拘束時間が長くなることを望まないというようなことも多かろうということで、こちらに関しては現時点で法改正までは必要ないのではないかということでいただいていたかと思います。
一方で、休憩の一斉付与の原則に関しまして、必ずしも要しないケースも出てきているのではないかということで、実情を踏まえてどのような手続が必要か、検討することが考えられるとさせていただいております。
14ページ、「休日」でございます。
まず「定期的な休日の確保」というところは下の①、②でございます。「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法に設ける。災害復旧などの真にやむを得ない場合の例外措置も労使合意で可能にする。こういったことについて検討が必要とまとめさせていただいております。
2つ目の「法定休日の特定」でございますが、これはあらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定することが必要といただいていたかと思います。
3つ目、「勤務間インターバル」でございます。勤務間インターバルに関しまして、導入企業割合や諸外国の勤務間インターバル制度の内容を踏まえた法規制の強化、導入促進について検討することが必要とまとめさせていただいております。
その内容に関しましては、2つ目のポツから15ページにかけてでございますけれども、11時間としつつ代替措置等の柔軟な対応を広く取る。あるいは、11時間より短い時間としつつ柔軟な対応をより絞る。あるいは、施行までに期間、経過措置などを設けるというような様々な形について御意見をいただいていたかと思います。
義務化の度合いに関しましても、強行的義務なのか、それとも措置義務や配慮義務なのか、努力義務規定の具体化なのかということで様々な手段をいただいていたかと思います。いずれにせよ、こういった手段を考えながら、より多くの企業が導入しやすい形で開始をし、段階的に実効性を高めていくというようなことでまとめさせていただいております。
2つ目の「つながらない権利」でございます。「つながらない権利」に関しましては、3つ目のポツのところにまとめを書いておりますが、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは「つながらない権利」として拒否できるのか。総合的な社内ルールについて、労使の話合いを促進していくとまとめさせていただいております。
(4)は「年次有給休暇」でございます。
年次有給休暇に関しては①から④までございます。
まず①、時季指定義務日数の5日間ですとか、時間単位年休の上限の5日間、これに関しましては、御議論の中では制度の趣旨から考えれば特段変更すべき必要性があるとは思えないということであったかと思います。
②の計画的・長期間の年次有給休暇の取得に関しましては、特に諸外国ではバカンスといったようなものになりますが、我が国の働き方の特徴なども踏まえまして、中長期的な検討が必要とさせていただいております。
③、年休の時季指定に関しまして、1年間の付与期間の途中に育休から復帰した方ですとか、退職を予定している方のように残り期間が少ない方に対してまで同じように5日間の時季指定義務を課すということに関して、これが不合理な制約になる場合もあるということで取扱いの改善が必要とさせていただいております。
④、年休取得時の賃金に関しましては、そこに(1)、(2)、(3)とございますけれども、(1)、(3)が計算式上、(2)よりも減額されることがあるということで、原則(2)の手法を取るようにしていくべきということでまとめさせていただきました。
最後に、割増賃金でございます。
(1)の「割増賃金の趣旨・目的等」に関しましては、2つ目の○のところにありますように、方向性に関しては様々な御意見をいただいていました。どのような方策を取るにせよ十分なエビデンスが必要であろうということで、割増賃金に係る実態把握を含めた情報収集を進めて、中長期的に検討していくとまとめさせていただいております。
(2)でございますが、「副業・兼業の場合の割増賃金」に関しまして、現行制度は健康管理と割増賃金、双方通算となっておりますけれども、これがかなり手続的な負担にもなっていて、副業・兼業の受入れが難しいというような指摘もございます。ここに関しましては、健康確保のための労働時間の通算は維持をしつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しないよう制度改正に取り組むべきといまとめさせていただきました。
なお、留意事項として、その分、企業はこれまで以上に健康確保に万全を尽くすべきということがございましたし、同一の使用者の命令に基づいて複数の事業者の下で働いているような、いわゆる割賃逃れのような形にならいように制度設計が必要であるというようなこともいただいておりましたので、そちらも明記させていただいたところでございます。
今回、作成させていただきました「議論のたたき台」は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
資料の1は、これまで本研究会での議論を大筋でまとめていただいたというものです。全体の構造としてはI 総論となっていますが、これは総論の総論的なもので、将来の報告書の全体構造を示すような部分かと思います。IIからIVが内容的には総論的なもので、労働基準法制全体に関わるような基本概念等々に関する議論、そしてVが労働時間規制に対する具体的な検討、そういった構造でまとめていただいているということかと思います。
そこで、本日ですけれども、このたたき台の中でもう少しこの場で議論していただいたほうがいい点が幾つかございますので、それから議論いただきたいと思います。
まず、報告書の5ページから6ページの「労使コミュニケーションの在り方について」、とりわけ6ページ辺りですが、過半数代表制の課題、これに対応するような労働基準法における規定の整備に関する点、これが第1のより議論いただきたい論点。
第2として労働時間関係ですけれども、勤務間インターバルについて種々議論をいただいたところですが、具体的な制度を考える場合には柔軟な対応などの、原則に対する例外的な措置、これをどういうふうに設計するかについてもう少し御議論いただいたほうがよろしいかと考えております。
関連して、「つながらない権利」というのは具体的にどういった内容なのかということも更に深めたいと考えております。
そこで、まずは今申し上げた2点について御議論いただき、そしてその後にたたき台全体についての御意見をいただくという形で今日は御議論いただきたいと考えております。
それでは、まず報告書の5ページから6ページの過半数代表制の課題、あるいは労働基準法における規定ぶり等々について御意見をいただければと考えております。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 ありがとうございます。
5ページ、6ページ、7ページとかでも大丈夫でしょうか。
○荒木座長 はい。
○首藤構成員 過半数代表の件なのですけれども、ちょっと細かい点を2点と、大きな点を2点、改めて読んで思ったところを指摘させていただきたいと思います。
まず細かい点からですけれども、7ページの3-1の選出のところなのですけれども、過半数代表者の選出を厳格化していくという方向性はすごく望ましいと思っているのですが、その際にここに書かれていないところとして、やはり不当労働行為に多分近いかと思うのですけれども、少数派組合があったときに、そこを排除するような形で選出されている事業場の実態というのはかなり広がっていると私は見ています。ですので、そういったことを明確に、労働者が主体的に選ぶことを担保するようなことを明記していただきたいというのがまず1点目です。
もう一点なのですが、8ページの3-3の相談支援のところです。これは今回から入ってすごく重要な点だと思っておりますが、これまでの色々なアンケート調査等をもっても、過半数代表の方がそもそも自らの役割を知らないというようなことが実態としてあるかと思っておりますので、今回こういう形で明記されていく場合には、相談支援の前にやはり周知や教育というものが重要なのではないかと思っております。厚労省等が、例えば何かオンデマンドの教材でも作っていただいて、それを主張することを義務づける等、知らないと何を相談していいのかも分からないというような状況だと思いますので、そこもぜひ入れていただけるといいなと思っています。
ここが2点と、あとはちょっと論点になるかなと思うところなのですけれども、過半数代表の機能を強化していくということが今回謳われているわけですが、そもそも、労使協定を結ぶときに過半数代表は使用者と協議をするのでしょうかというところです。
今回、9ページの何回も出ている図表ですけれども、労使協議が前提となって話合いをしていたというか、36協定や特別条項を結ぶときに、これでは長過ぎるとか、協議をして締結するイメージなのですが、現行の過半数代表の場合には協定を結ぶか、結ばないかということであって、協議であったり、協議をすると当然もうちょっと減らしたら結びますよとか、そういうふうになると交渉も入ってくるかもしれないのですけれども、協議や交渉というのは入っていると考えるべきなのでしょうか。入れると、労働組合の役割との抵触の問題なども当然出てくると思うのですけれども、協議なしで結ぶことを前提とするのかどうか。
この9ページの図表も、協議しない場合には例えば集めたりということもなしで、郵送や電子メールでやったりということも当然起こると思うのですけれども、その辺をどう考えるべきなのかというところです。9ページには、労使協定が実質的に行えていないケースもあると書かれているので、協議を行うことが前提になっているのかもしれないのですけれども、そこはかなり大きな変更にもなりますので、そこをどう考えるべきかというのが1点目です。
たくさんあってすみません。もう一点なのですけれども、ちょっと違うところにもなるのですが、情報開示のところで、結局重要な労使協定については企業内への情報開示をしたほうがいいのではないかと思っています。例えば、36協定でうちの事業所では何時間の協定が結ばれているのかということを従業員にちゃんと周知をするとか、就業規則なども本来は周知をしないといけない訳ですから、それもそうかもしれないのですけれども、そういったことを考えられないだろうかと思っています。
さらに言えば、企業外部への情報開示も、例えば36協定を締結しているのかどうか。過半数代表を選出していない事業所も36%あるというのが今回の資料でも出てきていますので、例えば就職を考えている若者が残業のないところで働きたいと思っている場合に、それは一つの選択にもなり得るかとも思いますので、情報開示の絡みでもそういったことを検討してもいいのかなと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
幾つかお尋ねもありましたが、事務局から御説明いただく点はございますか。
○労働条件政策課長 完全なお答えになるかは分かりませんが、まず企業内部への情報開示という最後のお話につきましては、労働基準法第106条で法令等の周知義務が課されている中に労使協定、36協定も含めてですけれども、常時作業場の見やすい場所へ掲示し、備えつけること等々によって労働者へ周知させなければならないということで、規定上は既に設けられております。これの実効性についての問題提起ということであれば、それは行政としても考える必要があるということかと理解しています。
それから、資料9ページ等につきまして、過半数代表者がいわゆる労使協議を行うのかということにつきましては、協定の締結に際して必要な説明を受け、それに対して質問をしたりといったやり取りというのは労働組合でなければ行い得ないことではないと理解をし、ここでは「実質的な労使協議」と書いてしまっているところですが、労働協約の締結権限がある訳ではないので、あくまでも最終的に労使協定の内容に同意をしてサインといいますか、締結をするかどうかという権能があるのが過半数代表者、ということは変わらないと考えています。
ただ、その前段階で色々説明を受け、質疑、やり取りをする中で、結果的に使用者側が当初案と異なる内容の協定案を提示して、それに合意をするというような過程での協議的な実態があることが、組合との関係で抵触をするかとか、過半数代表者がそういうやり取りもできないのかということについては、そうではないのだろうという前提でこの資料は作ったところでございます。
○荒木座長 法的にもそういうことで、例えば36協定で罰則が適用されない範囲、強行性が解除される範囲をどうするかについて使用者が提案するかもしれませんけれども、過半数代表がそれには到底サインはできないという場合には、ではもうちょっと短い時間外労働の上限設定ではどうかとか、そういった協議は当然予定されているのだと考えております。
これはあくまでも免罰効、強行性解除効の枠を定めるものですから、具体的な労働義務を課すようなものではないので、これは組合の権能とも違うものとして峻別して理論上問題はないというふうに整理できると考えております。
ほかによろしいでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。
今の点は私も理解は一緒で、労働基準法上は協定としか書いていませんが、労基法の趣旨から過半数労働組合、もしくは過半数代表者に免罰効を与える協定を締結してもらうということは、その前提に当然適切な情報提供をし、それについて協議と呼ぶかどうかは別にして、ちゃんと話合いをして、そして内容を精査しながら協定を締結するということが前提で当然入っていると思います。
そこで、7ページの3-1の1つ目の○の「その際」の3つ目のポツなのですが、これは過半数代表者選出の際に使用者が明らかにすることが必要と考えられるものの3つ目で、今回の労使協定の内容ということが書いてあるのですが、これはもう選出するときにこういう内容のものを締結しますよと使用者がアプリオリに考えて提示することが前提になっているので、これは今言った趣旨からすると望ましくない。どういうものを締結するかは、選ばれた人と話し合いながら情報提供しながら考えるべきなので、これは実態がこうなっているということはあるかもしれませんが、ミスリードだと思いますし、私は昔、過半数代表団に入って話合いのときは最初から会社側がこれを結びますというのではなく、複数回話合いをしながら適切な内容で最終的に判こを押すかどうかを決めるということをやってきたと思います。
それともう一点だけ、併せて8ページの3-4の人数というところ、ここもよろしいですか。
○荒木座長 どうぞ。
○水町構成員 8ページの3-4の1つ目の○がすごく重要なところで、複数人ということとか、単独で代表者であっても必要な補助者を指名することが考えられるというので、任意にやりたければやってもいいよということなのですが、使用者との関係ですね、会社側が任意にやってもいいというときにどういう立場にあるかということがこれだけだと分からないので、私はこれを実効的に民主的な手続を定めていくということであれば、民主的、実効的なものになるよう、使用者の必要な適切な配慮がここでは必要。
すごく大人数で、例えば工員と職員が混じっているような事業場では、職員の人とか工員の人とか、あとは正規、非正規がある場合にはそこの中からも補助者なり複数の代表なりを実態に合わせて適切な代表団が選ばれるように、これは話合いの中かもしれませんが、そういうことに対して過半数代表者などがこういう実態に合わせて色々な人を補助者として選びたいという場合には実態に合わせた使用者の適切な配慮、必要な配慮が求められていて、これが現行法でいうと労基則第6条の2の第4項とつながっているということを、今回制度をつくり直すときに明らかにしつつ、実態に合わせた適切な制度設計に誘導していくことが必要かと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 ありがとうございます。
まず6ページの「2 労働組合による労使コミュニケーションについて」の2つ目の○のところなのですが、「労働組合の自主独立性を損なわず、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化していくことが望ましい」、まずこれについて主語が誰なのかということです。「労働組合の自主独立性を損なわず」ということは、労働組合にもっと頑張ってくれということを書いているのか、それとも何か政策的に労働組合がよりコミュニケーションを活性化していく、またそのためには1つ上にあるような組織率の問題などについて何らか手当てをする、政策的な支援をするといったことを言っているのか、この辺りの主語についてまず確認させていただきたいと思いました。
続いて、7ページ目の下から2つ目の○の辺りですね。過半数代表者の選出手続のところで、過半数代表の意義や役割、意見集約の方法等について教育・研修の機会があることが必要といった場合に、対象者が誰になるのかというところが気になっています。例えば、飲食店などのようにアルバイト社員、短時間労働者がたくさんいるような職場において、学生のアルバイトの人に過半数代表者の役割について十分に理解してもらってからアルバイトとして採用する、といったことがどのくらい現実的なのか。
もちろん、全ての労働者の民主的な選択によって過半数代表者が選ばれなければいけないというところはある訳ですが、この辺りは実効性を持たせるためのことを考えておかないといけないかなと感じました。
併せて、先ほど水町先生からあった少し上の3-1の「その際」というところですね。今回の労使協定の内容をこれでいきますよというのは確かに誤解があるように思いますが、今回の労使協定としてどのようなものを提案するつもりなのかというものを選出の際に明らかにしてもらうというのは、それによって例えばこの一番上にある「当該事業場でこれまで締結された労使協定」と変わらないものを提案するというのであればあまり問題視はしないけれども、何か変わるというのであれば意見を言いたいとか、自分が過半数代表になってもいいといった人もいるのではないかということで、今回の労使協定の内容、これは決まるのが前提で提示されるのは確かにおかしい訳ですが、どのようなものを会社側が提案するのかといったものであったとするならば、明らかにしてもらったほうが望ましいのかなと感じております。
続いて、14ページの勤務間インターバルも今、含まれていますか。
○荒木座長 それはその次なので、後ほどやります。
○安藤構成員 では、8ページの人数と任期のところで、人数については先ほどこちらも水町先生から手続についてのお話がありましたが、制度上、可能となったときにこれがどうやって実効性を持つのかというところに結構課題があるのではないかと思っています。
例えば、職場に過半数を組織する労働組合がなくて、過半数代表者が必要だといったときに、1人だと手を挙げにくいので自分と一緒に働いている仲間と2人、3人だったらやってもいいという話であれば理解しやすいものではありますが、先ほど首藤先生からもあった話かもしれませんが、例えば労働組合が幾つかあってとか、少数派の労働組合があってそれ以外の人は労働組合に入っていないというような場合に、選ぶべき過半数代表者の人数が1人なのか、複数なのかというのを誰が決めるのかといったときに、企業側が決めるのもおかしい話ですし、労働者の大多数が1人でいいと言っているからそれでいいのかといった辺りですね。この複数選出を可能とするということを明らかにするのであったとすると、具体的にどういう手続によって1人なのか、複数なのか、その選ばれ方というものをきっちり考えておく必要があるかと感じました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
私は基本的には賛成ですけれども、4点コメントさせていただきます。
まず過半数代表、過半数代表者については労働基準法に定義を置くことが必要であり、第1章総則に定義を置くことが適切であると考えます。
2点目は3-1の1つ目の○で、先ほども御議論があったところですが、「労使協定を締結しようとする場合等」とありますが、労使協定のみを前提としているように見えることが気になりました。就業規則作成・変更時の意見聴取も重要でして、労使協定締結の場面についてここまで詳しく書く必要があるのか、少し疑問に思いました。
3点目は今の話と関係するのですが、骨子案では就業規則の変更等に対する意見聴取についての話がほとんど見えないように思います。過半数代表者の方が、とくに就業規則の変更等について意見があるときにどのように意見書を書けばよいのか、難しさを感じておられるのではないかと思います。インターネットで探せば、人事労務や外部専門家のサイトに書き方の例があったりして、そうしたサイトも有用とは思いますけれども、私としましては外部労働組合の役割に期待したいと思っております。
その意味では、3-3で「行政機関や外部専門家などの相談支援」とありますが、ここに労働組合を入れることができないか、と考えます。
最後に4点目ですけれども、これも先ほどから御議論がありました過半数代表者の人数についてです。私も過半数代表者の選出は複数可能との意見を述べてまいりましたが、過半数代表者の負担の軽減、すなわち一人で抱え込まなくてよいということ、それから過半数代表を育成しやすいという意味合いで意見を申し上げました。したがいまして、過半数代表者の複数化にこだわるものではなく、記載いただいているように(過半数代表者の)補助者の指名も適切、有効であると考えます。
もっとも、補助者は法制度上のものではなく、事実上の補助者であると思うのですけれども、この文章からは、補助者を指名しないと相談できないようにも読めてしまうので、少し書きぶりを工夫できないかと思いました。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
1点だけです。3-5でしょうか、過半数代表者の任期のところについてです。この書きぶりで、現行法でも可能であると書いてあるのですが、詰めるところはまだ色々あるかと思います。単純に可能であると言い切っていいかどうか。これは可能であると考えられるという趣旨かもしれませんが、要するに任期付きで選任するというのはどういうことかというと、過半数代表者としての権限と、それからその権限の存続期間を選出の際に定めた上で、そのような権限を与えるものとして選出すると、そういうふうに法的には構成されると思います。
そうなりますと、例えば制度的には選出手続、3-1のほうになりますけれども、選出するに当たっては、もし任期付きを採用するとすればどのくらいの任期であるのかということと、それから今回の選出とか今回の労使協定ということではなくなってしまって複数の場合、例えば一定の労使協定を示すとか、あるいは何でもといいますか、協定事項でしたら何でもできるのでしたら労基法等の労使協定を締結し得るというふうに、権限、それからいつまで任期があるのかということを示して選出するということになるのではないかと思います。これは、法律ではなくて省令レベルのお話かもしれません。
それから、解釈上の問題ですと、これまではおそらく、その都度の過半数代表ということを問題にして、その後の変動は多分問題にしていなかったのではないかと思いますが、任期付きであるとすると、任期中の過半数支持の変動とか、それから協定の効力を考える必要が生じます。
例えば、過半数代表として締結した労働者がその事業場から転勤等で外れた場合、あるいは極端な場合、亡くなってしまった場合、それから多数組合が少数組合になった場合、あるいは過半数代表、多数組合がなくて過半数代表者が締結した協定が存在して任期が定められていたところ、その途中で過半数組合ができた場合にどうするかといった様々な解釈上の問題が発生します。
労使協定については、例えば代理人が契約を締結した場合ですと、契約と考えればその代理人が契約締結後に後から代理権が消滅したとしても影響はなく、過半数代表を代理的に構成するとそうなりますけれども、契約の当事者であると構成すると、一般に契約当事者が消滅すればその契約は消滅する。相続の問題が民事だったらありますけれども、そういうふうに一体労使協定の性格ないし過半数代表者の権限というものをどう捉えるか。代理人なのか、代理人の場合は、労使協定の締結主体である本人がいないということになるのですけれども、そういうふうに捉えるのか、あるいは当事者そのものと捉えるのか。これは解釈上の問題かと思いますが、色々検討する必要があって、それを少なくとも省令レベルでは反映させる必要があるのではないかと思います。
将来的な労使コミュニケーションについては、また後で申し上げたいと思います。
とりあえず以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
島田先生、お願いします。
○島田構成員 ありがとうございます。
過半数代表者の選出手続について1点だけ申し上げます。
3-1の2つ目の○なのですけれども、選出に当たっての使用者の配慮に関して、具体的にどの程度の配慮まで認められるのかを明らかにすると書かれておりますので、おそらく使用者の意向に沿った選出とならないラインというか、介入とならないラインを明らかにするという趣旨だと理解いたしました。
ただ、先ほど水町先生もおっしゃったように、選出に当たって労働者の側が何か使用者に配慮を求めたとき、支援を求めたときに、積極的に支援をする何らかの配慮義務というか、そこまで踏み込んで書くということも重要ではないかと考えています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 先ほど水町先生、安藤先生からあった点なのですけれども、8ページの3-4の複数の過半数代表者の人数のところなのですが、結局複数にするのは1人だと大変だから補助者がという話と、やはり職場の多様性の担保のために複数人という2つの意味合いがあると思っています。
それで、前者のほうはできるかもしれないのですけれども、後者のほうは要は多様な人たちというのは少数派の意見をどう酌み取るかというような話になると、その少数は過半数ではないわけで、そこをどういうふうに実効性が担保できるのかと思っています。
過半数に達しないから選ばれないというようなことなのか。例えば、過半数代表者の選出をやったときに上位3人までとか、そういうような形で1位は過半数だけれども、2位、3位は違うとか、そういうようなところまでをモデルケースとして示すのかどうかというところまで考えていかないと、ちょっと実効性の担保が難しいのかなとも思っています。
○荒木座長 水町先生。
○水町構成員 具体的に今もやられていることを念頭に置けば、まず過半数代表者の選出の選挙の公示をするときにどういう選び方をしますか。実際に今1つの事業場で複数の代表者を選べますという形で公示をされていて、そしてその公示をされた例えば1つの事業場の中で常勤職員と非常勤職員がいて、それぞれ代表者を選びますという形で公示をし、それぞれが過半数の支持を得られれば過半数代表者として活動するということも行われています。
その公示を、例えば企業の人事がする場合もあるし、労働者側が前年度の実績等も踏まえながら選挙管理委員会をつくって、その選挙管理委員会が公示をするパターンもあるし、これはどこまで会社が、使用者が関与していいかというときの公示の仕方と、あらかじめ選挙のときに複数という公示をして過半数の支持を得られるかというところだと、過半数が得られればその時点で複数になるし、それが労基法の今の立てつけとか趣旨に反することがないかということをまず確認することと、その上で1人過半数代表者が選ばれたり、複数選ばれることも公示に基づいてあるかもしれませんが、そこで例えば1人ないし2人選ばれた人が、もっといっぱい多様な人がいるので、私はこの人とこの人というのを仲間に入れて、補助者というか、補佐人というか、この補助者、補佐人もある程度指針なりのレベルで事前に話合いをして、話合いについても使用者からの配慮をいただきながら、例えば勤務時間とか適切な時間に話合いをしながら、実際協約締結における使用者との話合いの場に同席するというような意味での補助者を指名するかどうか。それが実態に応じて必要な指名であれば、それをなるべく使用者側は適切な配慮の下で認めてくださいという制度設計にするのが、今の実務との連続線上では現実的なのかなとは思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
色々な論点が出ておりますけれども、まず7ページの3-1の最初の○の3つの今回の労使協定の内容、これを選出の際に明らかにすることが必要というのは確かに御指摘どおり、そこまでは現在の労基則の第6条でも求めておりませんし、色々な形態があって選出がされた過半数代表者と協議しながらどういう労使協定が望ましいかを決めていくということは当然に予定されておりますので、これをさも選出のときからの要件であるかのように書くのは適切ではないと思います。もちろんそういったものを示した上でということがあってはいけないということではないのですけれども、これを示さなければ選出できないかのような書きぶりは修正が必要だというのは御指摘のとおりだと思います。
それから、複数選出、そして任期制に関する論点がありました。複数選出の場合は、今、水町先生がおっしゃったように現行法でもできるような色々な過半数代表の選び方として工夫がされているということもありますので、そういった事例としては違法とならないということが分かればそういった工夫をする。
大学などでも、教員の代表と職員の代表をそれぞれ選んで、それを全体で過半数代表者として扱っていくというような事例もある。そのほうが実際上、労働者内部での協議というものが実質的に行われているというような好事例があり得るとすれば、そういったことを周知していくのは有効だと思います。
任期制については、山川先生から法的な問題点の御指摘がありました。いずれももっともな御指摘で、現在のところは過半数代表を選ぶことが要求されるのは過半数協定を結ぶ時点だけなのですが、ここで任期制として議論されているのは、その結んだ労使協定の中には例えば裁量労働制だと健康確保措置とかもある訳ですね。そういったものが結んだ当事者の意図どおりに運用されているか。これは現在は、誰もモニターする責任を負わずに運用されている。そういった問題の改善が必要ではないかということが任期制として議論されています。
法的に任期の間ずっと権限があるかということになると、山川先生が御指摘のとおりの問題がありますが、自分が結んだ労使協定についてそのとおりに運用されているか、そういった苦情を受け付ける立場にあるかとか、そういったものとしての協定に有効期間が存続している場合の協定締結としての責任というようなものを明確にする。そういう意味での議論だったと思います。それと法的な議論をどう整合させるかというのは、更に先生が御指摘の点も踏まえて検討すべきかと思いました。
それから、労使コミュニケーションという言葉が5ページ1の最初の○の①から④という形で書いてありますが、①は団体交渉法制を想定したもので、②、③が労働基準法の中に出てくるような過半数代表との協定、そのまたモニタリングで、④は実質的な情報協議を受けたり、あるいは経営に参画するということで、ヨーロッパでは情報協議の担い手という形で議論されているものです。
①から④といった集団的な労使コミュニケーションをここで定義して議論しておりますが、その後の書きぶり、例えば6ページの2の「労働組合による労使コミュニケーションについて」のところは①の話をしているのか、②、③の話をしているのか、やや分かりにくい書きぶりで、こういった点は更に趣旨を明確にする必要があろうかと思っております。
5ページから6ページで過半数代表について現状どう規定されているかというと、それぞれの条項で法定基準が設定されていて、これを柔軟化する、現場においてカスタマイズするには過半数代表と協定した場合にはこれを許容するという形で、それぞれの条項で規定されている。
他方、企画業務型裁量労働制のところは労使委員会というものが第38条の4で規定されていまして、そこでは労使委員会の定義的な規定もある。
このように、労働基準法の法定基準をカスタマイズするための仕組みが各条文に手続だけが規定されていたり、あるいは定義規定が労使委員会のところには出てきたりということで、体系的に整序されない形で、付け足し、付け足しで立法化された結果、現状のようになっている。
しかし、働き方が多様化する中で望んだ働き方を実現するための制度として労働基準法制を考える場合、この労使協定によるカスタマイズの重要性は高まっている。そうすると、改めて過半数代表や労使委員会という制度を総則的なところできちんと位置付けるべきではないかという問題意識が示されてきたところです。
ではどう書くかということなのですが、6ページのところでちょっと頭出し的に書いてあり、さらには10ページの6のところで同趣旨のことが書いてある。これは諸外国では従業員代表制というものがあるのですけれども、日本では従業員代表制を正面からは取り入れていない。しかし、過半数代表制度という特殊な制度がある。
従業員代表制的な制度を将来どういう方向で位置付けていくかについては様々な議論がありうるので、拙速に結論をだすのは適切でないということで深い研究が必要だということになっていますけれども、このような書きぶりをどういうふうにするかは冒頭というよりも、10ページの6のほうでまとめていくことになるでしょう。
そのことも踏まえつつ、9ページの3-6では「労働基準法における規定の整備」ということで、従業員代表制が将来的にあるとしても、現行法で過半数代表者の選出、運用に非常に課題があることについての対応は早急に図るべきである。このことは多分共有されていたと思いますけれども、そのことをきちんと労働基準法の中で総則的に位置付ける。
位置付けるに当たっては、過半数代表のみならず、同様に規定のカスタマイズを担う労使委員会が現行制度としてあるわけですから、総則的な位置付けとしては労使委員会についてもきちんと規定しておくことが法制度上は要請されると考えております。
そうしたことも含めて、最初の5ページ、6ページの書きぶりと、それを少し書き下した後のところ、これは報告書としては整除するのが望ましいのではないかと考えております。
これは私の意見ですけれども、ほかに今の点に関連しても、山川先生は後ほど触れたいという点があるとおっしゃいましたが、何か補足的にございますでしょうか。
○山川構成員 将来的なお話ですから、また後で時間があると思いますので、その際で結構です。ありがとうございます。
○荒木座長 分かりました。ありがとうございます。
安藤先生。
○安藤構成員 2点確認させていただきたいのですが、7ページ目の3-1「過半数代表者の選出手続について」のところで、どういうものが適正で、どういうものが適正ではないかということの理解のために確認させてください。
ある候補者に対して信任投票をした結果、投票者が全然集まらないといったときに、同じ対象者に対して不信任投票をして不信任案も集まらない。ですから、この人は信任したとやってしまっていいのか。私が知っている範囲内で、このように企業を職場として過半数代表者がどうしても欲しい、36協定との観点で欲しいということで選びたいのですが、パート、アルバイトの方が多いような職場において、そもそも投票の場に人が全然来てくれないといったときに、仕方なく不信任投票をやっているという事例を聞いたことがあるのですが、こういうものが認められるのかというのが1点目。
2点目は、先ほど座長の荒木先生からありました、複数選出するときに実際に行われているであろうという手法として、例えば大学みたいに教員と職員がいて、それぞれの代表者が立つといったケースで、教員の代表者については教員が投票し、職員の代表者については職員が投票する訳ではなく、あくまでも全ての労働者がそれぞれについて投票し、過半数を取らないといけない訳ですが、それぞれの代表者が自分の例えば所信表明みたいなものを書くとしたとき、教員の代表者は教員についての事項のみ書いていて、職員の代表者は職員のことについてのみ書いているのに対して、例えば自分が教員で職員の人に対しての過半数を信任するかといったときに、自分とは直接的には関係ない職員の方についてのことが書かれているものに対して信任するという行動がどのくらい適切なのかということに少し引っかかりを覚えているのですが、この辺り、現行法ではそういうような形で役割を完全に分けてしまっても大丈夫ということで理解はよろしいでしょうかという質問です。お願いします。
○荒木座長 どうぞ、首藤先生。
○首藤構成員 1点目のほうの話で、みんな関心がなくて誰も手も挙げないし、投票さえもしないというような職場も当然あると思うのですけれども、デロゲーションすることの重みですよね。法律が規定していることを超えて働かせるときに、それを労働者自身がきちんと認識もせず、関与もせず、不信任も信任もないからいいよというようなことまで認め始めると何でもありになってしまうことを懸念します。
確かに、使用者側としてはどうにかしてやりたいから協定をきちんと結びたいんだと言っても、働く者が全然乗ってこないような職場において何が必要なのかというと、それをこのようにやればできますよということではなくて、やはり労働者にきちんと労働者の権利とか、こういう法律があって、あなたたちは今これを超えて働くことに対しての同意が求められていますよということを徹底的に教えていくと言うとちょっと上から目線で申し訳ないのですけれども、そういったことのほうがまず必要なのではないかと私は思います。
○荒木座長 御質問でありますが、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 投票に当たってですけれども、信任投票のようにこの人を信任しますという意思が表示されているということが必要になるというものでございますので、例えば不信任投票であったりとか、白票、要は書かなければ信任されますよというようなやり方だとか、そういうような意思の表示がちゃんとされていない可能性があるものについては基本的には不適当であるという考え方になろうかと思います。
○荒木座長 安藤先生。
○安藤構成員 ありがとうございます。
そうであるとしたら、そのルールをもう少し周知しておく必要があるかと思います。そして、今、首藤先生からもありましたように、私も積極的に信任するといったプロセスが必要かとも思うのですが、先ほど挙げた例で言うと、正社員として時間外労働をする可能性がある人が少数派であり、大多数の人がシフト制で働いているような職場、この人たちについては本人の同意なく、求めない時間働く必要がないといったような場合に、果たして労働者全てに対して今回36協定の締結のために過半数代表を選びますといったときに、例えば8割方のパート、アルバイトの労働者には関係ない。自分たちが時間外労働をすることはないといったときに、労働者として自分たちではない正社員の方々の時間外労働のために投票に来ていただくということをどうやって理解してもらい、動機づけをするのか。この仕組みをうまくワークさせるための仕掛けづくりということは、今後の課題としてまだまだ残されているかなと感じています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
神吉先生、どうぞ。
○神吉構成員 私は、さっき首藤先生がおっしゃった情報提供が非常に重要だということに賛同します。
座長が言われたモニタリングとも関係して、モニタリングに関しては任期付きの話題が出てきた8ページの3-5で出ていて、10ページの6では、現状ではモニタリング機能を過半数代表者に求めることは困難で将来的な体制づくりが必要とまとめられており、モニタリングが何を指しているかにもよるのですが、モニタリングを専ら過半数代表の責務として機能強化が謳われ、機能強化が負担強化だとすると、なり手がいない、どういうふうに選ぶかの前に候補として手を挙げる人自体がいなくなってしまうのではないかと危惧します。
その前提としては、過半数代表だけにモニタリングを積極的にさせるのではなくて、やはり使用者側がモニタリングの前提としてどういう状況なのかを情報開示することが非常に重要だと思います。
そうすると、ちょっとはみ出てしまいますけれども、現在11ページのVの「労働時間法制の具体的課題について」の1の(2)に入っている、企業による情報開示がここだけに言及されているのはもったいないと思いました。コミュニケーションの前提として必要な情報を使用者が開示することが必要になります。現在の立てつけだと情報開示は時間外労働の抑制のための間接的な手段として位置付けられていますが、労使コミュニケーションにおいても重要な項目として外出ししてもいいと思います。
特に、11ページの下のほう、企業内部への情報開示で、管理職、個別の労働者に対する情報開示であるとか、過半数代表への情報開示も検討するとモニタリングの前提にもなりますし、労使コミュニケーション全般にわたる課題となると考えます。
以上です。
○荒木座長 大変重要な御指摘で、まさに企業内の情報開示の受け手としても、労使協定を締結した後は誰もいないという状況にはしないというのが先ほど任期制と言った内容ですけれども、おっしゃるとおり使用者に情報開示をさせ、その情報を従業員全体にも開示すべきとか、その直接の受け手としての過半数代表者の役割も重要かと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
それでは、時間もありますので、この後は労働時間のほうのインターバル規制、つながらない権利のほうに移ってよろしいでしょうか。
それでは、次は労働時間のところの勤務間インターバルについて、特に14ページ以降ですが、「柔軟な対応」とセットで考えないとなかなか制度化は難しい。では、具体的にどういう柔軟な対応が可能なのか。それと併せて、「つながらない権利」というものをどう位置付けるか。この点について、さらに御意見を伺いたいと思います。どの先生からでも結構ですが、いかがでしょうか。
石﨑先生お願いします。
○石﨑構成員 すみません。授業で遅れまして失礼いたしました。
インターバルについてなのですが、現在のおまとめでは様々意見が出されたことという形になっておりまして、また段階的に実効性を高めていく形が望ましいということに関しては確かに一致しているところかと思うのですけれども、もし可能であれば、更に仮に委員間である程度一致ができるようであれば、私としては11時間のインターバル確保に向けた規制を設計していくというような方向性ですとか、あるいはここにも記載がありますけれども、何らかの事情によりインターバルが確保できない場合には代償休暇の付与などによる対応も許容すること、そして、規制については労働時間設定改善法等の規定の中の措置義務や配慮義務という形になるのかもしれませんけれども、将来的には一定の期間をめどとして労基法上の規制として入れることも検討するといったようなところでもし一致できるならば、そうした方向性の打ち出しができたら本当は望ましいようにも思います。
ただ、各先生方から色々な意見があるところかと思いますので、一致しないということであれば現状のまとめ方になるのかなとも思っております。
また、柔軟な対応をどう検討するかというところについてなのですけれども、以前ももしかしたら御意見があったかもしれませんが、ここに健康観察や面接指導のようなものは含めるべきではなく、基本的には代償休暇、休日等の労働時間の解放という形によって対応すべきであると個人的には考えております。
また、そうしたインターバルを守れないケースを許容する頻度について、例えば月何回までであればそうした代替措置でも可能といったような形について、月何回の部分にどういった限定をかけるかという部分については、ある程度一定の期間内では各事業場で労使の話合い等によって設定していく。そうした実態を踏まえた上で規制化というところを検討していくというような方向性も考えられるように思いました。
私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
私も石﨑先生が今おっしゃったように、基本的には勤務間インターバルは11時間という方向で設計いただければと思っております。これはある程度の科学的根拠を持って言われているもので、勤務間インターバルは11時間と言わず14時間がいいとか、もっと踏み込んだ説もありますけれども、基本的にはヨーロッパでの状況を見ると11時間というのがコンセンサスの得られる時間ではないかと思うので、そこをしっかり打ち出していくことは重要かと思います。
それで、原則は11時間ということはすごく大事で、現状では段階的に引き上げるとしても、そうは言ってももう既にインターバル時間が11時間よりも実質引き下げられてしまっている業界もあると思います。そこに関しては十分な科学的根拠があるならば労使での協定をもって引き下げることも可能というような観点も入れていただけるといいのかなと思います。
また、これも石﨑先生がおっしゃっておられましたけれども、基本的には勤務間インターバルが確保できない場合の代償措置というのは、一般的な健康管理、健診などでは代償措置とはちょっとなり得なくて、休養の確保しかないと思います。どのように休養を別途確保するのかですとか、勤務間インターバルを確保できない場合の上限回数を徹底する、というようなことがきちんと謳われる必要があるかと思います。
あとは、勤務間インターバルに限らず労働時間からの解放ということに関して、今までの議論では、一番の目的は労働者の休養の確保と、生活時間の確保の権利、ワークライフバランスとか、生活時間をコントロールする権利が労働者にもあるという話だったと思います。加えて、休養をしっかり確保することで個人の疲労を回復してパフォーマンス向上という観点もありますし、それを通して企業側が労働生産性の向上を確保するというような観点もどこかに組み込めるといいのかなと思いました。これは勤務間インターバルに限らず、例えば休日の確保とか、もうちょっと広い労働時間からの解放というところにかかってくるような内容かと思います。
代償措置をどのように講じるかは、先に申し上げたとおり基本的には休息時間、休養の確保しかないと思います。一方で、勤務間インターバルが現実の世界で短くなる要因に関しては、どうしても人手不足の業界ですとか、あとはどちらかというと高学歴だったり、フレックスタイムが使えたりとか、非常に職位が高い方というのは勤務間インターバルが短くなりがちなので、管理監督者に関しても代償措置に関して対象になる、という制度設計になるといいのではないかと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
まず勤務間インターバルにつきましては、私は石﨑先生の御意見に全面的に賛同でして、みなさまの御賛同がいただけるのであれば義務化に向けた積極的な記述があればと思います。
それから、勤務間インターバルの中に勤務間インターバル制度と「つながらない権利」がありますが、確かに両者は労働のオンとオフの、オフという点で共通し、また「つながらない権利」は勤務間インターバル制度と合わせて論じられることが多いテーマではあります。しかし、「つながらない権利」は勤務間インターバルの中でのみ問題になるものではありませんし、表題が勤務間インターバルで、その中に「つながらない権利」があることには違和感があります。
また、勤務間インターバル制度の法制の必要性があり、他方で「つながらない権利」がヨーロッパでは認められているけれども、これは主に労使の話合いでやってはどうかというようなものだと思います。両者が同じくらいのレベルで書かれていることが気になりました。ぜひ、勤務間インターバル制度が重要であることを打ち出していただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがですか。
水町先生。
○水町構成員 15ページのところで、まず勤務間インターバルについては今も義務化の意見がかなりありますが、15ページの上から4行目からのポツのところで「労働基準法による強行的な義務とするという考え方や」の次のところで、「労働時間等制定改善法等による措置義務や配慮義務とするという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化するという考え方などが示されており」と書いてありますが、これは具体的にどういう制度設計にするかというのが私は必ずしもイメージできないですし、実効性が上がるような形でこの制度が運用されるということについてあまり自信がありません。
労働時間等設定改善法というのは今、基本的には努力義務で、やりたいところはやってもいいというので大企業の一部がやっているところがありますが、労働時間等設定改善法によって措置義務とか配慮義務というのは企業規模によらずに義務づけるのか。罰則は付けないけれども、義務違反のときにどういう効果があると考えているのか。それとも、現行の労働時間等設定改善法のように努力義務みたいなことでやりたいところはやっていいよ、やらないところは特に法的に義務づけないよというようなものなのか。
イメージが、現行の労働時間等設定改善法とここで書かれていることの次なる罰則付きで労基法で導入するということの間の制度設計としてうまく実効的なステップとして機能するかというところについて私は疑問があります。
それからもう一つ、「つながらない権利」のところですが、これは2つ目にフランスの例で「様々である」と、様々であるからなかなか難しいよねというニュアンスで書かれているような気がしますが、今、水島先生がおっしゃったように、実は勤務間インターバルと「つながらない権利」というのは質が全然違うもので、勤務間インターバルは健康等の問題ですが、「つながらない権利」というのはプライバシーをどう確保するかという問題で、実はフランスの例で難しいのは、色々な対応が企業ごととか、業種ごととか、労働者ごとにあり得るよねというときに、では多様だからやらなくていいという話にはなっていなくて、罰則付きでやるのはなかなか難しいかもしれない。その中身を具体的に特定したりするということが難しいので。
ただ、日本で言うと、これは労働契約法の中で契約ルールとして「つながらない権利」を例えば定める。それで、フランスの例でパラレルに言うとすれば、デフォルトで何も定めなければとにかく勤務時間外については「つながらない権利」とか、会社が勝手に連絡して呼び出したり、仕事をさせたりしてはいけないよということをデフォルトで定めた上で、ただ、人によっては勤務時間外においても、例えば緊急連絡で緊急対応しなければいけない人がいるかもしれないし、そうではない人でも例えば地震が起こったときに居場所確認とか、そういうことをするために連絡を取るというものがあるかもしれないし、それとも全然連絡を取らなくても企業として何も困らないという人たちもいるかもしれないので、そういう多様なルールを労使で協議して協定してください。それで、労使で協議して協定していない限りは、労働契約法のデフォルトに戻って基本的に連絡しては駄目ですよというルールをつくるというのがフランスからの示唆であって、そういうイメージ、そういうものがこの中には必ずしも出てきていない。
ですから、今、労基法を改正しようというところとダイレクトにつながるかどうかは分かりませんが、労働契約法にそういう契約ルールとして「つながらない権利」をどう定めていって、これからデジタル化の中で生じてくる可能性が強い労働者のプライバシーを、私生活をどう守っていくかという観点から、基本的なルールを定める方向で真剣になるべく早く議論していくということが分かるような書きぶりにしてほしいと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
勤務間インターバルについて、まず少し申し上げます。先ほど石﨑先生も言われたこととも関係しますが、もうちょっと積極的な取組を出していくことは考えられるかと思います。積極的に検討するとか、表現ぶりの問題かもしれませんが、それは考えられるかと思います。
その際には導入企業割合が6%、これは私としては重要と思うのですけれども、ただ、どなたかがこれまでおっしゃられた、導入している企業とか、それが義務づけられている場面というのもありますので、導入した企業の実態とか、そこでどんな工夫がなされているかは、むしろ積極的に検討するということでしたら付け加えてもいいのではないかと思います。
それから、水町先生の言われた最後の労働時間等設定改善法等による措置義務の具体的なイメージです。これも申し上げたかもしれませんけれども、努力義務ですと行政指導ができたとしてもソフトなものしかできないのですが、措置義務とか配慮義務ですと義務違反ということが法的に観念できて、違反に対する是正のための指導ができるということ、配慮義務だと若干弱いかもしれませんが、少なくとも措置義務ですと、安全衛生法だと措置義務に罰則があるくらいですけれども、違反を前提とした対応が行政的に可能になるということがありますので、その点は必要があれば書き込んでもいいかなと思います。
あと1点だけ追加で、11ページで先ほどの首藤先生の言われた情報開示の点で、ここでは実態の開示になっていますが、その前提といいますか、制度の開示も重要ではないかと思います。課長が言われましたように、現在の場面では労使協定も就業規則や法令と同じように周知事項となっていますが、これをより実効性のあるものにするというようなことも考えられるかと思いますし、また神吉先生も言われたように、これは労働時間の問題だけではなくてほかの場面一般にも関わるので、周知機能の実質化ということはこの研究会の直接のテーマではないかもしれませんが、就業規則の周知に関しては、平成11年の労働基準法の通達の改正もなされていますので、制度に関する情報の開示の実効化というのもあってよいのかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
安藤先生、どうぞ。
○安藤構成員 ありがとうございます。
勤務間インターバルについて11時間を目指すという理念自体には賛同しますが、現在の導入企業割合6%というところから、さてどのような形でそのゴールに向けて近づけていくのかというところはまだまだ十分議論の余地があるかと思っています。
最初に出たお話は、11時間を入れてしまって代替措置などについては少し自由度を持たせておいて実態を把握していこうといった御意見だったかと思いましたが、色々な手法があり得る中、例えばこれまで資料として出てきた中で、この導入企業割合6%というのはそもそもうちの会社では勤務間インターバルが11時間以上当然に空いているので、勤務間インターバル制度を導入する必要性を感じなかったから導入していないといった企業もある訳です。
そういったときに、ステップをもう少し細かく刻むという観点では、まずは各企業それぞれにおいて勤務間インターバルの制度、それはうちの会社では11時間できますプラス代替措置、うちの会社ではちょっと自信がないから10時間でというような形で、各企業、業界ごとに色々なものが出てきた中で実現可能なものを探っていくというような、もう少しステップを踏んだものも考えられるのではないかと感じています。
と申しますのも、今、深刻な人手不足で企業も色々困っているということで、長時間労働などにつながると採用が難しい、離職抑制が難しいといった点もある一方、これまでのお客さんをつなぎ止めるためには忙しいときには仕事をせざるを得ないといった声もまた別にあるわけです。ここの中で11時間という原則を入れたときに、どのくらい社会が早い段階で受け入れてくれるのかといったところについては少し不安もあるので、ステップを刻んだほうがいいのではないかという考え方もあるというお話を差し上げました。
これも以前からお話ししている件でありますが、基本的に日本の企業というのは大企業が中心かもしれませんが、これまで景気の変動であったり、仕事量の増減に対して人数を増やしたり、減らしたりといったことで調整するのではなく、労働時間で調整することが多かったということで、この労働時間で調整するということは労働者にとって望ましい性質の一つである雇用保障にもつながったというプラスの面も忘れてはいけないと思っているからです。
そういったことで、どのようなものに実現可能性が高いのかをしっかり探っていきつつ、近い将来、この11時間を目指すために納得感のある仕組みをぜひ検討したいと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
まず勤務間インターバルについて、水町先生から具体的なイメージがちょっと湧かないという御指摘もありました。それで、ダイレクトに労基法に書くという方法もありますけれども、設定改善法などで措置義務を導入することも考えられる。努力義務と措置義務の違いについては山川先生から御指摘がありましたけれども、具体的な行動につなげるためには、例えば労働基準法第89条の就業規則の記載事項の一つとして勤務間インターバルというものを掲げておけば、その内容をどうするかについては、設定改善法を参照することも考えられます。
これは色々ありますが、設定改善法に基づいてガイドラインで、望ましい勤務間インターバルというものを示しながら、策定を促す。これは行政指導で誘導するとともに、それを義務化するのであれば就業規則の必要的記載事項としておけば、どういう制度にするかについてはある程度企業の裁量、柔軟性を認めながらも、しかし、制度をつくることは義務付けることも義務化の一つのステップとして考えられるかなと思います。
色々なルートはあり得るところなのですけれども、勤務間インターバルの11時間という時間数は、24時間から11時間を引きますと13時間、その13時間に休憩1時間があるはずでこれを引くと12時間労働です。1日12時間労働は8時間を超える4時間の時間外労働ですから、これを月20日間やりますと既に80時間の時間外労働となります。労働基準法の時間外労働の上限規制で複数月を平均して80時間を超えてはならないという規制が既にあります。それとは別に、勤務間インターバルを11時間に設定する意義があるとしたら、どの一日を見ても11時間の勤務間インターバルを確保すべきという原則を設定するという議論だと思います。それが実際にワークするためには、どういう場合に11時間を割り込むことを例外的に認めるのか、その制度設計が合理的なものでなければうまくいかないと思います。
その点については、石﨑先生からも具体的な方向性の示唆があったところで、多くの先生方は賛同されたところですけれども、これをどう具体化していくかということについては更に議論が必要かもしれません。科学的な根拠ということでは黒田先生からも指摘がありました。
先ほどの時間外労働80時間という数字は、時間外労働が月に80時間を超えるという事態は睡眠時間が6時間を下回るという観点から出てきた基準ということでございますので、それは勤務間インターバルとして11時間を要請するのことの共通の根拠となり得るかと思います。
そうしますと、それを前提にどういうふうに実際に回るような実効性のある制度としていくかについて、更に議論を深めてはどうかと思ったところです。
それからもう一つ、「つながらない権利」です。これもヨーロッパで議論されている「つながらない権利」とは具体的にどういうものかというと、「つながらない権利」についての制度設計を労使が行うべき義務を課すということもありますけれども、もう一つ大きな法的な効果として、「つながらない権利」を行使したことについての不利益取扱いを禁止するということがあります。つながらなくてよいはずなのに、使用者がメールを打ってそれに返信をしなかったことについて不利益取扱いをする。こういったことをやってはいけないという民事上の効果が導けるところです。
この問題は水町先生が御指摘のように、本来労働者は労働契約で所定労働時間以外は労働義務を負っていないはずです。それを、所定時間外に一定の連絡をしてそれに応答する義務を課すとしたら、それはそもそもいいのか。そういった連絡に対応しなかったことに例えば懲戒処分を課すとしたら、その懲戒処分は適法なのかが労働契約法上、問題となり得るところです。
そういった民事上の効力は、「つながらない権利」というまでもなく、労働契約者が義務を負っていない時間を明らかにし、そのことの具体的な意味を明確にするということかもしれません。
そういうことも含めれば、水島先生御指摘のように、これは必ずしも勤務間インターバルだけの問題ではなくて、所定労働時間以外の労働者が本来自由に過ごせる時間をどう確保するのかにつながる問題として議論すべきという御指摘はそのとおりか思います。たたき台ということで並べて書いてありますけれども、位置付けとしては御指摘のとおり、もっと広い問題を扱っている課題だと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、最初に申し上げた2点についての議論はこの程度にいたしまして、この研究会の議論のたたき台全体についてお気づきの点がありましたら御指摘いただきたいと思います。
水町先生。
○水町構成員 11ページの情報開示のところで、1の(2)の2つ目の○の下から2行目の「その先の」というのを削除していただいて、簡単に書くとすれば、重要事項の義務的な情報開示の検討については、というような形にしていただきたいというのが意見です。
どういうことかというと、「企業による自主的な情報開示を充実させるための基盤整備や、その先の義務的な情報開示の検討」と書いてあるので、これがもし時系列で、まずは自主的な情報開示の基盤整備を行って、それが整備されたら次が義務的な情報開示の検討だとも読める表現なので、そうは期待されないようにしてくださいという趣旨です。
基本的に自主的な情報開示はもちろんやってもらって結構なのですが、自主的な情報開示というのは出したいところは出すけれども、出さないところは出さない。後者の義務的な情報開示で重要なのは、例えば労働移動を円滑化するとか、就職するためのマッチングのために出してもらって比較をしながら、自分が好ましいと思う企業に就職したり、転職をしたりするための重要な情報であって、そういう情報を開示させることによって、より適切な方向に誘導していくための情報でもある。
今回は100時間、80時間の上限についてはそれを原則に近づけていくというのも今後の課題だし、割増賃金のところについても今後エビデンスを見ながらということで、100時間、80時間の下の、具体的により望ましいワークライフバランスを実現するための労働時間については今すぐやるということが具体的に何も書かれていない中で、重要なのは例えば実労働時間、時間外労働、休日労働の時間というものをきちんと開示をしてもらって、これは別に短いから良い、より短いほうが良いというふうには必ずしも言えずに、例えば今ホワイト企業、プラチナ企業と、あとはモーレツ企業があって、うちはやや時間外労働は長い、モーレツ企業で時間外労働は長いけれども、特に若い人たちには一生懸命働いてもらって、これがエンゲージメントとしてやる気が高まっているし、労災もそれで発生していないということも併せて場合によっては説明で書いてもらいながら、きちんと学生とか転職する人に選んでもらうための重要な情報ということで開示してもらうことが大切で、出したいところだけ出しても、やはり本当は知りたい会社の情報が出てこないというときにそれが機能しない。
情報開示による企業の誘導という意味でこのところは非常に重要だと思いますので、しばらくやってみて整ったら義務づけを検討しますよ、義務的な情報開示を検討しますよというニュアンスに受け取られかねないような表現にはしないでいただきたいというのが私の意見です。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
私も今の情報開示の点についてなのですけれども、先ほどの「その先の」を消したほうがいいという水町先生の御意見には私も賛同いたします。
ただ、実際に義務化の検討に一定の時間がかかるということはあろうかとは思いますけれども、そのニュアンスは変えていただきたいというところが1点です。
それから、検討に多少時間がかかるということとの関係で併せて御検討いただきたい点としましては、開示すべき情報の中身についても併せて検討いただきたいというところでして、労働時間との関係で言えば、シンプルには平均的な時間外労働の時間というのが考えられるところですけれども、平均に全てならしてしまうと本当に知りたい情報になっているのかというところに問題があるような気もしておりまして、平均がいいのか、あるいはその職場での最長の労働時間に至っている人がどれくらいいるのかとか、色々な情報の設定の仕方があり得るようにも思いますし、またそれも数値で出すのか、あるいは一定のレンジの中にいる人が何人いるというような形で出すのか、色々なやり方があり得るように思いますので、求職者側が知りたい情報と、企業側の負担と両方考慮していただきながら、開示すべき情報の中身というのも詰めていけるとよいのではないかと思ったというのがまず情報開示の点についてです。
このほか、3点ほど細かな点であるのですけれども、1点目は企業内部の情報開示、特に個別の労働者に対する情報開示の点でありまして、これは私の個別な意見ということでここに盛り込んでいただかなかったことも致し方ないかとは思うのですが、個別の労働者に対する情報開示の意義としましては、労働時間の短縮という面だけではなくて、適正に時間に応じた割増賃金が支払われているかどうかを把握する、あるいはどの時間を労働時間と使用者サイドが捉えているかを把握するといったような意義もあるようにも思いますので、そうした点からの情報開示の必要性がないか、個々の労働者に対する情報開示の必要性がないかという点についての検討も、今後は必要になっていくのではないかと思ったというところになります。
その次の点としましては13ページの休憩に関わるところなのですが、休憩に関しては、これまでの検討会の中で休憩がきちんと取れるような配慮が必要ではないかという議論がされたような記憶があります。この点、重要であるというところに加えて、特に一斉付与原則を改めるということになったときに、より重要度が増すといいますか、一斉に取っていないがゆえに休憩できるような環境が保持されないと、隣で働いている傍でちょっとリラックスできないとか、そういったことも起こり得ますので、休憩がちゃんと確保できているかというところに対する配慮なのか、もうちょっと強い表現のほうがよいのかというところはありますけれども、それも併せてここに盛り込めないかということは御検討いただけるとありがたいと思います。
それから、最後の点はやや時機に遅れた意見になってしまうかもしれなくて大変恐縮ではあるのですけれども、前回の検討会でちょっと私のほうで申し上げた半日年休の通達の点に関して法規定化できないのかとか、そういった点についての検討もお願いできればと思います。
あとは、これは全くこれまで発言していなかったところで今、初めて申し上げる話で申し訳ないのですけれども、年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いについて、現状は訓示規定のような形で附則で規定されているだけになっているのですが、やはりこれはもうちょっと明確に労基法上、規定すべきではないかというところがございまして、これまでの議論で出ていなかったので、ほかの委員の先生方の御意見次第であるとは思うのですけれども、今後この研究会の報告書としてまとめていただく際に、その辺りの論点についても取り上げていただく余地があるかどうかというところを御検討いただけるとありがたいと思った次第であります。
私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 11ページの情報開示のところについて、これまで御意見があった、特に水町先生から最初にあった、一覧性を持って比較検討できるというところで、労使のミスマッチを減らしていくという観点から重要なことかと思っています。
そのためにどういう形で数字を出すのかといったときに、平均の数字だけを出して、それにどのくらい意味があるのかといったことは仕事、職場ごとにかなりの違いがあるのではないか。例えば、パート、アルバイトが多くて正社員が少ないような職場で平均の労働時間を出したとしても意味がないということで、例えば今、男性と女性の賃金差異の開示義務がありますが、これでは全社員と正社員、非正規、それぞれについて男性を100としたときの女性の数字、こういうものを出すことを求められていますが、どのような立てつけで公開することを求めるのかといったことが重要になるかと思います。
ただ、そこであまり細かいことを求め過ぎると、なかなか運用のコストがかかるということで、実際に男女間の賃金差異についても平均の数字を出すだけだと誤解を招きやすいといったことを踏まえて、うちの会社ではその他色々な要因をコントロールした上で、残される説明のつかない差異はどのくらいかといったような付随する情報を出したり、又はそれを今後どういうプランで改善していく予定なのか、こういうことを出していくといった取組がどんどん進んでいます。
そういったことで、情報開示を求める。特にこれが比較検討しやすいということ、プラス平均だけではよくないかもしれないといったことはあり得るのですが、一定のラインで公開を求める内容の部分と、それ以上の部分については各企業の適切な努力に任せるといったものの組合せが必要かと思っております。
あとは細かい点ですが、16ページの副業・兼業の場合の割増賃金というところで、雇用型の副業・兼業の場合、本業も副業も雇用の場合の労働時間の通算ということで、割増賃金の計算というところではこれを考えないとなった場合でも、あくまでもここでは健康確保のための労働時間の把握をやるということで議論されているといったところですね。では、この健康確保のための労働時間の計算、通算というものを誰が行うのか。この点についても同時に明らかにしておく必要があるかと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
神吉先生。
○神吉構成員 2点ございます。
1点目は、3ページの「労働者」性の課題の1の2つ目の○のさらに2つ目の「テレワーク等の場所にとらわれない働き方も拡大」をここに入れることの意味についてです。
確かに場所にとらわれない働き方は拡大していますが、もともと労働者であった人がテレワークをすることによって労働者性が問題になるということはないはずなので、ここで言われているのは、働き方の裁量の拡大によって労働者性のメルクマールとしてこれまで使われてきた時間的、場所的拘束性がメルクマールとして弱くなってきているということを指摘したいように思います。そうすると、場所だけではなくて裁量労働制や高度プロフェッショナル制度などの時間にとらわれない働き方も入りそうですが、書き方としては、自由な働き方をする人が労働者ではなくなってしまうような、既存の保護が弱まるように読めないような表現が必要だと思いました。
テレワークはこの後半部分で、まさに時間の把握の問題を議論していきますので、労働者性の問題、課題のところで出すのは適切かと疑問を感じたのが1点です。
2点目は11ページの「労働時間法制の具体的課題について」の1の(1)の最初の○です。これは、「現時点で時間外・休日労働時間の上限規制そのものを変更するための社会的合意を得るためには蓄積が不足しているのではないか」という視点なのですが、これは一体、何の蓄積が不足しているのかという点が疑問です。社会的合意に至っていない、コンセンサスが形成されていないということだけではなく、「蓄積」とは何なのかです。
私自身は、特別条項とほぼ同じ基準で認定される過労死などの労災認定数を見ると、それは1人であっても十分に重いと思っておりまして、そうだとすると一体これは何の蓄積を待っているのか。現状、手をこまねいて傍観しているだけというような状態にならないような表現にしていただきたいと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
労使コミュニケーションに関してですが、1点目は先ほど申し上げてもよかったのですけれども、5ページ目の「労使コミュニケーションの意義と課題」の中で総論部分には労働者の多様化ということが書かれていますが、労使コミュニケーションの在り方についてもこれは影響を与える。つまり、多様な労働者の意見の集約が重要になるという文脈が出てくると思います。
そこで例えばですけれども、5ページ目の一番下の○で「経済社会の変化に対応して」というとちょっと抽象的なので、例えばここに労働者の状況やニーズの多様化も含む経済社会の変化とか、ほかの場所でもよいかと思いますが、多様な労働者像というものが労使コミュニケーションにも影響を及ぼすという視点が入ってよいのではないかと思います。
それから、次は10ページの最後の目指すべき姿に関わることですが、これはどちらかといいますと労働基準法の範囲を超える話になりますので、もしかしたら後書きといいますか、「おわりに」くらいのほうがよいかもしれません。労働契約法に関わる影響もあるのではないかということです。
つまり、労使コミュニケーションが将来的に過半数代表者も含めて非常に充実していき、それで、前にも書かれておりますけれども、対等な話合いというものの実質を持つに近づくということになれば、労働契約法第3条第1項で、対等な立場に基づいて労働契約は締結、変更されるべきであるという規定の理念にも合致するということが考えられます。
これは将来的なそういう労使コミュニケーション制度が過半数代表者も含めて実現した暁にはというようなお話になるので、中長期というか、むしろ長期的な課題と言うべきかもしれませんが、そのように労使コミュニケーション制度が充実した場合には、例えばそういった労働者集団との合意というものが、労働条件の変更等の例えば合理性判断において重要なものとして考慮されうるですとか、労働契約法制との接合にも影響を与えるものとなりうるかということも、将来的な検討課題になるということに触れてもよいのではないかと思います。
ただ、この報告書にも出ていますが、先ほども申しましたように多様な労働者像の中で意見集約が大事だとなると、前も申しましたけれども、意見集約機能はやはり労働組合のほうが充実しているということはほぼ意見が一致するのではないかと思いますので、その中では労働組合の持つ機能というものが重視されるということについても言及してよいのではないかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。3点ございます。
1点目は、どこか特定のという訳ではないのですが、あえて言うならば11ページ以降の「労働時間法制の具体的課題について」に関わる部分です。主に最長労働時間規制や労働時間からの解放に関わる点かと思うのですが、労基法第33条第1項の災害時の特例については、最長労働時間規制も外されるし、休日の連続勤務、休日を取らずに連続勤務することも、勤務間インターバルも、全ての規制が一時的に外される事態に陥ることが想定されます。
それは、もちろん突発的な事態でやむを得ないこともありますし、第33条第1項が無制限に適用される訳ではないと理解はしているのですが、今回労使の話合いによって規制緩和について話し合う際に、第33条第1項のことではやむを得ないから、長期的に規制緩和をやるよね、というような極端な緩和にならないような、何らかの方向性はどこかに示していただけるといいなとは思っています。
これは個人的な意見なので、ちょっとここに入れ込むのは難しいのかなとも思いつつお話します。日本は特に災害が多いというのもありますし、従来とは異なる災害として、新型コロナのパンデミックのときに保健所の職員や自治体の職員が時間外労働100時間以上の勤務を長期間にわたってしており、かなり疲労がたまったり、離職が増えたりした、というようなデータや話もありました。第33条第1項の適用についての留意事項については、ここが適切というのはなかなか申し上げられないのですがどこか数行でもいいので、触れられるといいのかなと思っています。
2点目は、今まで情報開示のことで先生方がおっしゃっていたことと基本的に同意見ですという意見の表明です。情報開示に関しては神吉先生の御意見にもあったとおり、労働時間のみに特化して触れるのはもったいないので、もうちょっと別の章に出しても、と思います。何か一覧できるようなサイトに関しては、これも神吉先生がおっしゃったようにベーシックな情報と、あとは選択制でどれか入れればいいですというような情報開示の仕組みにできるといいのかなと思います。
3点目は、副業・兼業のための割増賃金のことは必要ないという話でした。健康確保のための労働時間の通算というのは以前にも申し上げましたが、実態としては実効的に行われているとは言い難いような状況があります。既に厚労省のガイドラインなどがありますが、加えて、法律を変えるようなレベルの話ではなく、グッドプラクティスの収集などを通して資料の充実化を図れるように目指していることを報告書に書き込んだり、実際に厚労省のほうで事例の収集や好事例の提供を進めていただけるとありがたいと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
書かれている文章の意味についてのお尋ねもかなりあったのですけれども、事務局から何か補足的な説明等はございますか。
○労働条件政策課長 特段補足することではありませんが、あくまでも議論のたたき台としてかなり情報量を絞り込んだ形で今回御議論いただくものを御用意しましたので、本日いただいた御意見も含めまして、報告書本体を今後作るに当たっては、考え方の背景でありますとか、様々な御意見についてはしっかり書き込んでいくということとして受け止めさせていただければと思います。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
今回は今、事務局からありましたとおりたたき台ということで、かなり論点的に書くということで、説明が足りないところは多々私も読みながら感じたところです。これについて誤解のないような表現とか、よく理解が得られるような表現にさらにブラッシュアップすることが必要だと考えております。
それから、労働基準関係法制とは何かとか、労使コミュニケーションとは何かとか、色々な思いを込めて書かれているタームがありますので、それについても丁寧な説明をしていく必要があるのではないかと考えています。
それでは、時間となりましたので、本日の議論はここまでにしたいと思います。次回に向けましては、本日いただいた御意見も踏まえてさらにブラッシュアップした上で議論を続けたいと思います。私自身もそうですが、表現ぶりなどについては色々と申し上げたい点はありますけれども、何しろ時間が限られておりましたので、先生方からもこうしたほうがいいのではないかという点は多々あろうかと思います。そういった点につきましては、次回までに事務局にぜひ御意見をお伝えいただいて、事務局においてはそういった御意見も踏まえた資料を次回までに用意いただければと考えております。
それでは、今日の研究会は以上ということにいたします。
本日もお忙しい中、御参加いただきましてどうもありがとうございました。○荒木座長 それでは、ほぼ定刻となりましたので、ただいまから第14回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。
構成員の先生方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございます。
本日の研究会につきましても、会場参加とオンライン参加による開催ということで実施いたします。
本日は、黒田先生、島田先生、水島先生、山川先生がオンラインでの御出席、石﨑先生は途中からオンラインでの参加と伺っております。
なお、首藤先生は12時半過ぎには御退室の予定と伺っております。
カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(カメラ退室)
○荒木座長 それでは、議事に入ります。
本日は、これまでの構成員の皆様の御意見を基に、研究会の議論のたたき台を事務局に作成していただきました。これを基に議論したいと思います。
まず、資料1について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局から資料を御説明いたします。
今回、「議論のたたき台」ということで資料を御用意させていただいております。内容について御説明いたします。
まずIの「総論」というところでございます。ここで、これまでの御議論からの労働基準法制の課題と検討の柱を整理しております。
1番の課題のところでございますが、経済社会の構造変化に応じて、どこまでどのような手法で見直しを進めていくのかがまず課題である。そうした中で制度をシンプルに保ちつつ、現場に合わせて調整をしていくためには良質な労使コミュニケーションが必要であって、一方で過半数代表を軸とした労使コミュニケーションには課題も多いということ。そして、罰則付きの強行法規である労働基準法に加えまして、他の法律やソフトローも含めて検討することが必要。
こういったことを先生方に御議論いただいたかと思います。
2番目、これに基づく検討の柱でございますが、まず1つ目のところで「新しい時代の働き方に関する研究会」から引き継いでおります働く人を守るということ、そして多様な希望に応えるということ、この2つの軸を基に議論をいただいてきたところでございます。
2ページに、これを基にした4つの柱ということで、「労働者」、「事業」、労使コミュニケーション、労働時間法制の具体的課題ということを整理させていただいております。
これらの課題について、3ページ以降で詳細を記述しております。
3ページ目でIIの「労働者」についての部分でございます。
まず1番としては「「労働者」性の課題」ということで、現行の労働者性に関する判断基準でございます1985年の労働基準法制研究会の判断基準、これに関して制定から40年が経過し、社会が大きく変化する中で労働者性の判断の予見可能性というものが下がってきている。これを再び高めていくことが必要で、これが課題であろうと整理をしております。
2番目から具体的中身ですが、まず法律につきましてです。そちらに記載がありますとおり、労働基準法第9条に労働者の定義がなされておりますが、この抽象的な定義規定そのものに関しましては諸外国でも変えているところもほとんどございませんし、現行の規定には一定の合理性があるのではないかという御議論であったかと考えております。
3番目、昭和60年、1985年の研究会報告についてでございますが、これは作成から40年が経過しているということで、この40年間で積み重ねられた事例、判例等をしっかり分析、研究し、学説も踏まえながら見直しの必要性を検討するということで御議論をいただいていたかと思います。それに続きまして、具体的な検討に当たっての課題というものもそちらに記載させていただいております。
4番目、この検討をするに当たって「働く人の保護法制との関係」ということでございますが、労働者性の判断をするということは必然的に境界事例を生ずるということで、その内と外でどのような法制があるのかをにらみつつ検討が必要ということを議論の中でいただいていたかと思います。
これらを踏まえまして5番目、「今後の研究について」でございますが、1985年の研究会と同様に幅広い専門家の方々にお集まりいただき、研究することが必要であるというような御議論であったかと思います。厚労省において継続的に研究を行う体制を整えることを要望するというような形でまとめさせていただいております。
最後に6番目、「家事使用人について」でございます。家事使用人に関しましては、実質的な労働形態が普通の労働者とほとんど変わらなくなってきつつあるということで、労働基準法の適用除外とすべき事情に乏しくなってきたという御議論をいただいていたかと思います。
一方で、使用者に当たりますのが私家庭でございますので、そういった方に使用者責任を負わせることについては慎重な検討が必要であろう。そういった履行確保の在り方も含めた具体的な制度の検討が必要と考えられるということでまとめております。
続きまして5ページ目、IIIの「事業」についてでございます。
「事業」について、まず結論のところが1つ目の○でございますが、現時点では労働基準法について事業場単位を原則として維持することが適切というような御議論であったかと思います。
そうした中で、原則を守りながら具体的な法規制の内容に応じて、企業単位ですとか複数事業場単位をまとめた単位、こういったもので手続を取ることが適切であるものに関しては、複数事業場単位で行うことも選択肢になることを明らかにするというような御議論であったかと思います。
3つ目の○のところでございますが、将来的なものを考えますと、生活する場、労務を提供する場、事業場が所在する場といったようなものの乖離というのは現在も起きておりますし、将来的には更に増えていくということから、この労働基準法制における事業の概念について、将来的な労使コミュニケーションの在り方も含めて検討していくことが必要という御議論をいただいてきたかと思います。
続きまして5ページ目、真ん中からIVで「労使コミュニケーションの在り方について」でございます。
まず1番の意義と課題でございますけれども、1つ目の○でこの研究会において対象にしている労使コミュニケーションについて整理をしております。労使コミュニケーションと一口に言いましても、そこに①、②、③、④とありますように、いわゆる団体交渉から労使協定等を結ぶもの、その結んだものに関するモニタリング等といったような形で何段階かあるものでございますけれども、この研究会では、そのうちの②、③を対象の中心に議論をしてきたと考えております。
そこを踏まえまして下のところでございますが、法規制をシンプルに保ちつつ、経済社会の変化に対応して現場の実情に合わせた調整を有効に機能させる。そのためには、労使コミュニケーションがしっかりしていなければならない。労使コミュニケーションの中核になりますのは労働組合でありまして、その活性化や組織化といったような取組が望まれるということがまず第一にあるということで、そちらに書いてございます。
その上で、過半数労働組合がない事業場を含めてできるだけ労使が対等に協議をして合意に至る環境が必要であるということで、5、6ページ目に続きますけれども、労使コミュニケーションの改善が必要であるということを御議論いただいていたかと思います。
最後の3つの○に関しましては、少し将来的なことを書かせていただいている部分でございます。これは後ろでも出てきますので、また後ほどお話をいたします。
2番目、「労働組合による労使コミュニケーションについて」のところでございます。
労使関係に関して、中核になります労働組合に関しまして組織率が長期的に低下してしまっているということは事実である。そういう中で自主性を損なわず、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化していくことが必要であろう。その中で、過半数労働組合に対する支援といったようなものも、過半数労働組合が過半数代表として活動する場合には企業から受けることができる支援というものがあるのではないか。それを制度上明確化していくことが必要ではないかというような御議論をいただいていたかと思います。その際には、過半数労働組合は全労働者の代表として明確化される必要があるということもいただいていたかと思います。
3番目、「「過半数代表者」の機能強化について」でございます。
7ページに移っていただきまして、過半数代表者に対する課題でございますけれども、まず1つが適正に選出されないということ。そして、なかなか過半数代表者としての役割に関する知識・経験を持つ方ばかりではないということから、積極的な立候補が得られないことも多いというようなことが挙げられていたかと思います。
現行の労働基準法では過半数代表、過半数代表者というものが明確に定義されておりません。そこに関しまして、労働基準法における定義ですとか、使用者の関与がどのようなものか、便宜供与、権利保護をどうするか、相談支援をどうするかといったようなことに関して、明確にしていくことが必要ではないかというような御議論をいただいていたと思います。
具体的な中身が3-1からになります。
まず3-1、過半数代表者の選出手続でございますけれども、1つは選出を始めるに当たって、その契機となるのは使用者が何らかの労使協定を締結しようとする場合に求めるということになります。その際、この事業場でどのような労使協定が今、結ばれているのか、今回どういう労使協定を結ぼうとしているのか、それをどういった形にしようとしているのか、こういったことは使用者が明らかにした上で過半数代表者を選んでいただくことが必要ではないかという議論があったかと思います。
また、2つ目のところですが、その選出の際にはどうしても選出事務ですとか、周知ですとかといったようなことに使用者の配慮が必要ということで、どの程度までの配慮を使用者がやっていいのか、こういったことを制度上明らかにすることが必要ということをいだいていたかと思います。
また、過半数代表者の選出が必要になる前から、労働者の方にも過半数代表とは何ぞやということを含めた教育・研修の機会が必要ということで、行政サイドとしてもその研修資料の作成、提供といったようなことが求められるということもいただいていたかと思います。
続いて3-2でございますが、過半数代表者が選ばれた後、過半数代表者の活動に対する情報提供、便宜供与というものでございます。
こちらについて8ページに続いてまいりますが、実際に過半数代表者が活動するに当たって必要な情報、関連する事業場の労働実態ですとか、労働者の意見を集約するためにその事業場の従業員がどれだけいるか、誰がいるかというような情報ですとか、こういったものは企業からの提供が必要であろうということが言われていたかと思います。
加えて、労働時間の中での活動保障ですとか、社内設備の使用といったようなもの、こういう便宜供与がどこまで許容されるのかといったことも明確にすることが必要といただいていたかと思います。
その下ですけれども、過半数代表者として活動するといったことを理由とした解雇・異動等の不利益取扱いをしてはならないという旨、また情報提供、便宜供与に関しては過半数代表者だけではなく労使委員会の労働者委員ですとか、過半数労働組合に対しても同様の扱いをすることが考えられるということ。その際、組合に対しては便宜供与に関しては支配介入等との関係を明らかにする必要があるということ、こういったことも御議論をいただいていたということでまとめさせていただいております。
続いて、3-3で「過半数代表者への相談支援」というところでございますけれども、行政機関や外部専門家の相談支援に関しても、体制整備ですとか窓口周知といったことが必要といただいておりました。
3-4、3-5ですが、人数と任期に関しまして、意見集約を行いやすくするですとか、モニタリングをしっかりするということで、過半数代表者を複数人選出するということですとか、あるいは任期を付けて選出するということですとか、こういったものが選択肢であるということを明らかにすべしというようなことを御議論いただいていたかと思います。
こういったことを踏まえまして9ページの3-6でございますが、規定の整備として過半数代表、過半数労働組合、過半数代表者、これらについて法律上の位置付け、役割、どのような関与、支援ができるのか、こういったようなことを規定することが必要ではないかという御意見をいただいていたと思います。
以上、過半数代表者の機能強化の部分でございます。
続いて4番目、複数事業場での一括手続の部分でございます。
現行、デジタル技術が進む中で本社が一括して労務管理を行っているケースが増えておりまして、本社の参画がなければ実質的な労使協議が行えないようなケースが増加しているのではないかという御指摘があり、現行制度の中でも2つ目のところでございますが、労使合意を前提としつつ、手続をある程度まとめて行うということは許容されている。その点を明らかにするということを御議論いただいていたかと思います。
10ページ、そういった場合でも各事業場の過半数代表者が単独で手続をしたいということであればこれを拒否できる。こういったことも明確化する必要があろうという御議論をいただいていたかと思います。
続いて5番目、労働者個人の意思確認でございます。
原則として、法律で示された規制に関しまして、個人同意のみでラインの再設定というものは不適当である。これに関してはしっかり言われていたかと思います。
その上で、現行の企画業務型裁量労働制のように集団的合意に重ねて本人同意を求めるということに関しては、制度によっては必要な部分もあるということで、制度それぞれの検討の際に検討すべきということを言われていたかと思います。
最後に6番目、将来の姿でございます。
将来に向けて労使コミュニケーションをより強化していくためということで、どのような形があるのかということを考えたときに、2つ目の〇でございますが、モニタリングを含めた労使コミュニケーションを恒常的、実質的に行える体制が必要であろう。それが労働者の代表団のような形か、委員会のような形かについては各国でも様々であって労使の意見も異なるということで、ここに関してはより深い研究が必要であろうということをいただいていたかと思います。
その上で一番下の〇ですけれども、まずは過半数代表の改善策を実施するということをこの研究会では中心的に御議論いただいていたと思います。
11ページ、Vでございますが、具体的な労働時間法制の課題についてでございます。こちらはかなり項目数が多くなっておりますので、各項目については少しかいつまんで御説明をいたします。
まず1番目、「最長労働時間規制(実労働時間規制)」の部分でございます。
そのうちの(1)、労働時間の上限規制の部分でございますが、これは現行の80時間、100時間といった上限に関して変更するための社会的合意を得るためには蓄積が不足しているのではないか。一方で、長期目標である月45時間、年360時間というものを見据えた議論というものは必要であるというような御議論をいただいていたかと思います。
(2)、「企業による労働時間の情報開示」の部分でございます。
強行規制による労働時間の短縮のほかに、市場の調整機能を通じて改善をしていくということに向けた正確な情報開示というものが望ましいということ。それに対して、現行法制においても女活法等々、情報開示をやっている仕組みは既に設けられておりますので、これらの開示の取組が進められ、また一覧性をもって閲覧できるようなことが望ましい。その基盤整備ですとか、義務的な情報開示の検討については、厚労省として不断に取り組んでいくべしということをいただいていたかと思います。
次いで「企業内部への情報開示」でございますが、まず衛生委員会や過半数代表等、労使の協議体に対する情報提供に関しましては、実効的な労使交渉を進めていくために取り組んでいくべきといただいていたかと思います。
②、③の管理職ですとか個別労働者に対する情報開示に関しまして、管理職に関してはそこに対する情報開示が有効であろうということはあるけれども、そこは管理職、その場合は使用者とも考えられるので、労働基準法での規定が適当かどうかということに課題がある。また、個人に関しましては、どのような情報を開示するのかによって効果も異なるし、個人自身が短縮できるというのは限られた労働者だけではないかというような課題も指摘されていたところでございます。いずれにしても、こういった情報開示について企業としてもできることから取り組んでいただきたいというようなことを最後のところでまとめております。
12ページの(3)は「テレワーク等の柔軟な働き方」でございます。
こちらについては、テレワークの実態に合わせたフレックスタイム制とみなし労働時間制、この2つを御議論いただいていたかと思います。
まずフレックスタイム制に関しましては、テレワーク日と通常勤務日が混在する場合にも使えるようにコアデイの導入等の制度改正をするべきであるというようなことをいただいていたかと思います。
みなし労働時間制度に関しましては、テレワークの性質から厳格な労働時間管理がふさわしくないのではないかという一方で、長時間労働のリスクというものがみなし労働時間制度にはあるということで、こちらについては中長期的な検討が必要だとまとめさせていただいております。
13ページ、(4)で週44時間の特例措置に関しましてでございます。
こちらについては、実態上もう使っていない事業場も多いところではございますが、業種による違いもあるということで、そういった違いを踏まえながら特例措置撤廃に向けた検討に取り組むべきとまとめております。
(5)、「実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置」ということで、特に管理監督者等でございます。
管理監督者等に現行設けられていない健康・福祉確保措置について、その内容の検討が必要、いずれかの法令に規定することを含めた検討が必要ということ。そして、管理監督者等がどういう性質のものか明らかにし、要件を明確化することが必要ということをいただいていたかと思います。
続いて、大きな2番目で「労働からの解放の規制」の部分でございます。
1つ目の「休憩」に関しましては、1日8時間を大幅に超えて長時間労働をする場合ですとか、逆に6時間未満の所定労働時間の場合の休憩付与についてどう考えるかということで、ここに関してはそういった方々の場合は休憩より早く帰りたいですとか、拘束時間が長くなることを望まないというようなことも多かろうということで、こちらに関しては現時点で法改正までは必要ないのではないかということでいただいていたかと思います。
一方で、休憩の一斉付与の原則に関しまして、必ずしも要しないケースも出てきているのではないかということで、実情を踏まえてどのような手続が必要か、検討することが考えられるとさせていただいております。
14ページ、「休日」でございます。
まず「定期的な休日の確保」というところは下の①、②でございます。「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法に設ける。災害復旧などの真にやむを得ない場合の例外措置も労使合意で可能にする。こういったことについて検討が必要とまとめさせていただいております。
2つ目の「法定休日の特定」でございますが、これはあらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定することが必要といただいていたかと思います。
3つ目、「勤務間インターバル」でございます。勤務間インターバルに関しまして、導入企業割合や諸外国の勤務間インターバル制度の内容を踏まえた法規制の強化、導入促進について検討することが必要とまとめさせていただいております。
その内容に関しましては、2つ目のポツから15ページにかけてでございますけれども、11時間としつつ代替措置等の柔軟な対応を広く取る。あるいは、11時間より短い時間としつつ柔軟な対応をより絞る。あるいは、施行までに期間、経過措置などを設けるというような様々な形について御意見をいただいていたかと思います。
義務化の度合いに関しましても、強行的義務なのか、それとも措置義務や配慮義務なのか、努力義務規定の具体化なのかということで様々な手段をいただいていたかと思います。いずれにせよ、こういった手段を考えながら、より多くの企業が導入しやすい形で開始をし、段階的に実効性を高めていくというようなことでまとめさせていただいております。
2つ目の「つながらない権利」でございます。「つながらない権利」に関しましては、3つ目のポツのところにまとめを書いておりますが、どのような連絡までが許容でき、どのようなものは「つながらない権利」として拒否できるのか。総合的な社内ルールについて、労使の話合いを促進していくとまとめさせていただいております。
(4)は「年次有給休暇」でございます。
年次有給休暇に関しては①から④までございます。
まず①、時季指定義務日数の5日間ですとか、時間単位年休の上限の5日間、これに関しましては、御議論の中では制度の趣旨から考えれば特段変更すべき必要性があるとは思えないということであったかと思います。
②の計画的・長期間の年次有給休暇の取得に関しましては、特に諸外国ではバカンスといったようなものになりますが、我が国の働き方の特徴なども踏まえまして、中長期的な検討が必要とさせていただいております。
③、年休の時季指定に関しまして、1年間の付与期間の途中に育休から復帰した方ですとか、退職を予定している方のように残り期間が少ない方に対してまで同じように5日間の時季指定義務を課すということに関して、これが不合理な制約になる場合もあるということで取扱いの改善が必要とさせていただいております。
④、年休取得時の賃金に関しましては、そこに(1)、(2)、(3)とございますけれども、(1)、(3)が計算式上、(2)よりも減額されることがあるということで、原則(2)の手法を取るようにしていくべきということでまとめさせていただきました。
最後に、割増賃金でございます。
(1)の「割増賃金の趣旨・目的等」に関しましては、2つ目の○のところにありますように、方向性に関しては様々な御意見をいただいていました。どのような方策を取るにせよ十分なエビデンスが必要であろうということで、割増賃金に係る実態把握を含めた情報収集を進めて、中長期的に検討していくとまとめさせていただいております。
(2)でございますが、「副業・兼業の場合の割増賃金」に関しまして、現行制度は健康管理と割増賃金、双方通算となっておりますけれども、これがかなり手続的な負担にもなっていて、副業・兼業の受入れが難しいというような指摘もございます。ここに関しましては、健康確保のための労働時間の通算は維持をしつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しないよう制度改正に取り組むべきといまとめさせていただきました。
なお、留意事項として、その分、企業はこれまで以上に健康確保に万全を尽くすべきということがございましたし、同一の使用者の命令に基づいて複数の事業者の下で働いているような、いわゆる割賃逃れのような形にならいように制度設計が必要であるというようなこともいただいておりましたので、そちらも明記させていただいたところでございます。
今回、作成させていただきました「議論のたたき台」は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
資料の1は、これまで本研究会での議論を大筋でまとめていただいたというものです。全体の構造としてはI 総論となっていますが、これは総論の総論的なもので、将来の報告書の全体構造を示すような部分かと思います。IIからIVが内容的には総論的なもので、労働基準法制全体に関わるような基本概念等々に関する議論、そしてVが労働時間規制に対する具体的な検討、そういった構造でまとめていただいているということかと思います。
そこで、本日ですけれども、このたたき台の中でもう少しこの場で議論していただいたほうがいい点が幾つかございますので、それから議論いただきたいと思います。
まず、報告書の5ページから6ページの「労使コミュニケーションの在り方について」、とりわけ6ページ辺りですが、過半数代表制の課題、これに対応するような労働基準法における規定の整備に関する点、これが第1のより議論いただきたい論点。
第2として労働時間関係ですけれども、勤務間インターバルについて種々議論をいただいたところですが、具体的な制度を考える場合には柔軟な対応などの、原則に対する例外的な措置、これをどういうふうに設計するかについてもう少し御議論いただいたほうがよろしいかと考えております。
関連して、「つながらない権利」というのは具体的にどういった内容なのかということも更に深めたいと考えております。
そこで、まずは今申し上げた2点について御議論いただき、そしてその後にたたき台全体についての御意見をいただくという形で今日は御議論いただきたいと考えております。
それでは、まず報告書の5ページから6ページの過半数代表制の課題、あるいは労働基準法における規定ぶり等々について御意見をいただければと考えております。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 ありがとうございます。
5ページ、6ページ、7ページとかでも大丈夫でしょうか。
○荒木座長 はい。
○首藤構成員 過半数代表の件なのですけれども、ちょっと細かい点を2点と、大きな点を2点、改めて読んで思ったところを指摘させていただきたいと思います。
まず細かい点からですけれども、7ページの3-1の選出のところなのですけれども、過半数代表者の選出を厳格化していくという方向性はすごく望ましいと思っているのですが、その際にここに書かれていないところとして、やはり不当労働行為に多分近いかと思うのですけれども、少数派組合があったときに、そこを排除するような形で選出されている事業場の実態というのはかなり広がっていると私は見ています。ですので、そういったことを明確に、労働者が主体的に選ぶことを担保するようなことを明記していただきたいというのがまず1点目です。
もう一点なのですが、8ページの3-3の相談支援のところです。これは今回から入ってすごく重要な点だと思っておりますが、これまでの色々なアンケート調査等をもっても、過半数代表の方がそもそも自らの役割を知らないというようなことが実態としてあるかと思っておりますので、今回こういう形で明記されていく場合には、相談支援の前にやはり周知や教育というものが重要なのではないかと思っております。厚労省等が、例えば何かオンデマンドの教材でも作っていただいて、それを主張することを義務づける等、知らないと何を相談していいのかも分からないというような状況だと思いますので、そこもぜひ入れていただけるといいなと思っています。
ここが2点と、あとはちょっと論点になるかなと思うところなのですけれども、過半数代表の機能を強化していくということが今回謳われているわけですが、そもそも、労使協定を結ぶときに過半数代表は使用者と協議をするのでしょうかというところです。
今回、9ページの何回も出ている図表ですけれども、労使協議が前提となって話合いをしていたというか、36協定や特別条項を結ぶときに、これでは長過ぎるとか、協議をして締結するイメージなのですが、現行の過半数代表の場合には協定を結ぶか、結ばないかということであって、協議であったり、協議をすると当然もうちょっと減らしたら結びますよとか、そういうふうになると交渉も入ってくるかもしれないのですけれども、協議や交渉というのは入っていると考えるべきなのでしょうか。入れると、労働組合の役割との抵触の問題なども当然出てくると思うのですけれども、協議なしで結ぶことを前提とするのかどうか。
この9ページの図表も、協議しない場合には例えば集めたりということもなしで、郵送や電子メールでやったりということも当然起こると思うのですけれども、その辺をどう考えるべきなのかというところです。9ページには、労使協定が実質的に行えていないケースもあると書かれているので、協議を行うことが前提になっているのかもしれないのですけれども、そこはかなり大きな変更にもなりますので、そこをどう考えるべきかというのが1点目です。
たくさんあってすみません。もう一点なのですけれども、ちょっと違うところにもなるのですが、情報開示のところで、結局重要な労使協定については企業内への情報開示をしたほうがいいのではないかと思っています。例えば、36協定でうちの事業所では何時間の協定が結ばれているのかということを従業員にちゃんと周知をするとか、就業規則なども本来は周知をしないといけない訳ですから、それもそうかもしれないのですけれども、そういったことを考えられないだろうかと思っています。
さらに言えば、企業外部への情報開示も、例えば36協定を締結しているのかどうか。過半数代表を選出していない事業所も36%あるというのが今回の資料でも出てきていますので、例えば就職を考えている若者が残業のないところで働きたいと思っている場合に、それは一つの選択にもなり得るかとも思いますので、情報開示の絡みでもそういったことを検討してもいいのかなと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
幾つかお尋ねもありましたが、事務局から御説明いただく点はございますか。
○労働条件政策課長 完全なお答えになるかは分かりませんが、まず企業内部への情報開示という最後のお話につきましては、労働基準法第106条で法令等の周知義務が課されている中に労使協定、36協定も含めてですけれども、常時作業場の見やすい場所へ掲示し、備えつけること等々によって労働者へ周知させなければならないということで、規定上は既に設けられております。これの実効性についての問題提起ということであれば、それは行政としても考える必要があるということかと理解しています。
それから、資料9ページ等につきまして、過半数代表者がいわゆる労使協議を行うのかということにつきましては、協定の締結に際して必要な説明を受け、それに対して質問をしたりといったやり取りというのは労働組合でなければ行い得ないことではないと理解をし、ここでは「実質的な労使協議」と書いてしまっているところですが、労働協約の締結権限がある訳ではないので、あくまでも最終的に労使協定の内容に同意をしてサインといいますか、締結をするかどうかという権能があるのが過半数代表者、ということは変わらないと考えています。
ただ、その前段階で色々説明を受け、質疑、やり取りをする中で、結果的に使用者側が当初案と異なる内容の協定案を提示して、それに合意をするというような過程での協議的な実態があることが、組合との関係で抵触をするかとか、過半数代表者がそういうやり取りもできないのかということについては、そうではないのだろうという前提でこの資料は作ったところでございます。
○荒木座長 法的にもそういうことで、例えば36協定で罰則が適用されない範囲、強行性が解除される範囲をどうするかについて使用者が提案するかもしれませんけれども、過半数代表がそれには到底サインはできないという場合には、ではもうちょっと短い時間外労働の上限設定ではどうかとか、そういった協議は当然予定されているのだと考えております。
これはあくまでも免罰効、強行性解除効の枠を定めるものですから、具体的な労働義務を課すようなものではないので、これは組合の権能とも違うものとして峻別して理論上問題はないというふうに整理できると考えております。
ほかによろしいでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。
今の点は私も理解は一緒で、労働基準法上は協定としか書いていませんが、労基法の趣旨から過半数労働組合、もしくは過半数代表者に免罰効を与える協定を締結してもらうということは、その前提に当然適切な情報提供をし、それについて協議と呼ぶかどうかは別にして、ちゃんと話合いをして、そして内容を精査しながら協定を締結するということが前提で当然入っていると思います。
そこで、7ページの3-1の1つ目の○の「その際」の3つ目のポツなのですが、これは過半数代表者選出の際に使用者が明らかにすることが必要と考えられるものの3つ目で、今回の労使協定の内容ということが書いてあるのですが、これはもう選出するときにこういう内容のものを締結しますよと使用者がアプリオリに考えて提示することが前提になっているので、これは今言った趣旨からすると望ましくない。どういうものを締結するかは、選ばれた人と話し合いながら情報提供しながら考えるべきなので、これは実態がこうなっているということはあるかもしれませんが、ミスリードだと思いますし、私は昔、過半数代表団に入って話合いのときは最初から会社側がこれを結びますというのではなく、複数回話合いをしながら適切な内容で最終的に判こを押すかどうかを決めるということをやってきたと思います。
それともう一点だけ、併せて8ページの3-4の人数というところ、ここもよろしいですか。
○荒木座長 どうぞ。
○水町構成員 8ページの3-4の1つ目の○がすごく重要なところで、複数人ということとか、単独で代表者であっても必要な補助者を指名することが考えられるというので、任意にやりたければやってもいいよということなのですが、使用者との関係ですね、会社側が任意にやってもいいというときにどういう立場にあるかということがこれだけだと分からないので、私はこれを実効的に民主的な手続を定めていくということであれば、民主的、実効的なものになるよう、使用者の必要な適切な配慮がここでは必要。
すごく大人数で、例えば工員と職員が混じっているような事業場では、職員の人とか工員の人とか、あとは正規、非正規がある場合にはそこの中からも補助者なり複数の代表なりを実態に合わせて適切な代表団が選ばれるように、これは話合いの中かもしれませんが、そういうことに対して過半数代表者などがこういう実態に合わせて色々な人を補助者として選びたいという場合には実態に合わせた使用者の適切な配慮、必要な配慮が求められていて、これが現行法でいうと労基則第6条の2の第4項とつながっているということを、今回制度をつくり直すときに明らかにしつつ、実態に合わせた適切な制度設計に誘導していくことが必要かと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 ありがとうございます。
まず6ページの「2 労働組合による労使コミュニケーションについて」の2つ目の○のところなのですが、「労働組合の自主独立性を損なわず、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化していくことが望ましい」、まずこれについて主語が誰なのかということです。「労働組合の自主独立性を損なわず」ということは、労働組合にもっと頑張ってくれということを書いているのか、それとも何か政策的に労働組合がよりコミュニケーションを活性化していく、またそのためには1つ上にあるような組織率の問題などについて何らか手当てをする、政策的な支援をするといったことを言っているのか、この辺りの主語についてまず確認させていただきたいと思いました。
続いて、7ページ目の下から2つ目の○の辺りですね。過半数代表者の選出手続のところで、過半数代表の意義や役割、意見集約の方法等について教育・研修の機会があることが必要といった場合に、対象者が誰になるのかというところが気になっています。例えば、飲食店などのようにアルバイト社員、短時間労働者がたくさんいるような職場において、学生のアルバイトの人に過半数代表者の役割について十分に理解してもらってからアルバイトとして採用する、といったことがどのくらい現実的なのか。
もちろん、全ての労働者の民主的な選択によって過半数代表者が選ばれなければいけないというところはある訳ですが、この辺りは実効性を持たせるためのことを考えておかないといけないかなと感じました。
併せて、先ほど水町先生からあった少し上の3-1の「その際」というところですね。今回の労使協定の内容をこれでいきますよというのは確かに誤解があるように思いますが、今回の労使協定としてどのようなものを提案するつもりなのかというものを選出の際に明らかにしてもらうというのは、それによって例えばこの一番上にある「当該事業場でこれまで締結された労使協定」と変わらないものを提案するというのであればあまり問題視はしないけれども、何か変わるというのであれば意見を言いたいとか、自分が過半数代表になってもいいといった人もいるのではないかということで、今回の労使協定の内容、これは決まるのが前提で提示されるのは確かにおかしい訳ですが、どのようなものを会社側が提案するのかといったものであったとするならば、明らかにしてもらったほうが望ましいのかなと感じております。
続いて、14ページの勤務間インターバルも今、含まれていますか。
○荒木座長 それはその次なので、後ほどやります。
○安藤構成員 では、8ページの人数と任期のところで、人数については先ほどこちらも水町先生から手続についてのお話がありましたが、制度上、可能となったときにこれがどうやって実効性を持つのかというところに結構課題があるのではないかと思っています。
例えば、職場に過半数を組織する労働組合がなくて、過半数代表者が必要だといったときに、1人だと手を挙げにくいので自分と一緒に働いている仲間と2人、3人だったらやってもいいという話であれば理解しやすいものではありますが、先ほど首藤先生からもあった話かもしれませんが、例えば労働組合が幾つかあってとか、少数派の労働組合があってそれ以外の人は労働組合に入っていないというような場合に、選ぶべき過半数代表者の人数が1人なのか、複数なのかというのを誰が決めるのかといったときに、企業側が決めるのもおかしい話ですし、労働者の大多数が1人でいいと言っているからそれでいいのかといった辺りですね。この複数選出を可能とするということを明らかにするのであったとすると、具体的にどういう手続によって1人なのか、複数なのか、その選ばれ方というものをきっちり考えておく必要があるかと感じました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
私は基本的には賛成ですけれども、4点コメントさせていただきます。
まず過半数代表、過半数代表者については労働基準法に定義を置くことが必要であり、第1章総則に定義を置くことが適切であると考えます。
2点目は3-1の1つ目の○で、先ほども御議論があったところですが、「労使協定を締結しようとする場合等」とありますが、労使協定のみを前提としているように見えることが気になりました。就業規則作成・変更時の意見聴取も重要でして、労使協定締結の場面についてここまで詳しく書く必要があるのか、少し疑問に思いました。
3点目は今の話と関係するのですが、骨子案では就業規則の変更等に対する意見聴取についての話がほとんど見えないように思います。過半数代表者の方が、とくに就業規則の変更等について意見があるときにどのように意見書を書けばよいのか、難しさを感じておられるのではないかと思います。インターネットで探せば、人事労務や外部専門家のサイトに書き方の例があったりして、そうしたサイトも有用とは思いますけれども、私としましては外部労働組合の役割に期待したいと思っております。
その意味では、3-3で「行政機関や外部専門家などの相談支援」とありますが、ここに労働組合を入れることができないか、と考えます。
最後に4点目ですけれども、これも先ほどから御議論がありました過半数代表者の人数についてです。私も過半数代表者の選出は複数可能との意見を述べてまいりましたが、過半数代表者の負担の軽減、すなわち一人で抱え込まなくてよいということ、それから過半数代表を育成しやすいという意味合いで意見を申し上げました。したがいまして、過半数代表者の複数化にこだわるものではなく、記載いただいているように(過半数代表者の)補助者の指名も適切、有効であると考えます。
もっとも、補助者は法制度上のものではなく、事実上の補助者であると思うのですけれども、この文章からは、補助者を指名しないと相談できないようにも読めてしまうので、少し書きぶりを工夫できないかと思いました。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
1点だけです。3-5でしょうか、過半数代表者の任期のところについてです。この書きぶりで、現行法でも可能であると書いてあるのですが、詰めるところはまだ色々あるかと思います。単純に可能であると言い切っていいかどうか。これは可能であると考えられるという趣旨かもしれませんが、要するに任期付きで選任するというのはどういうことかというと、過半数代表者としての権限と、それからその権限の存続期間を選出の際に定めた上で、そのような権限を与えるものとして選出すると、そういうふうに法的には構成されると思います。
そうなりますと、例えば制度的には選出手続、3-1のほうになりますけれども、選出するに当たっては、もし任期付きを採用するとすればどのくらいの任期であるのかということと、それから今回の選出とか今回の労使協定ということではなくなってしまって複数の場合、例えば一定の労使協定を示すとか、あるいは何でもといいますか、協定事項でしたら何でもできるのでしたら労基法等の労使協定を締結し得るというふうに、権限、それからいつまで任期があるのかということを示して選出するということになるのではないかと思います。これは、法律ではなくて省令レベルのお話かもしれません。
それから、解釈上の問題ですと、これまではおそらく、その都度の過半数代表ということを問題にして、その後の変動は多分問題にしていなかったのではないかと思いますが、任期付きであるとすると、任期中の過半数支持の変動とか、それから協定の効力を考える必要が生じます。
例えば、過半数代表として締結した労働者がその事業場から転勤等で外れた場合、あるいは極端な場合、亡くなってしまった場合、それから多数組合が少数組合になった場合、あるいは過半数代表、多数組合がなくて過半数代表者が締結した協定が存在して任期が定められていたところ、その途中で過半数組合ができた場合にどうするかといった様々な解釈上の問題が発生します。
労使協定については、例えば代理人が契約を締結した場合ですと、契約と考えればその代理人が契約締結後に後から代理権が消滅したとしても影響はなく、過半数代表を代理的に構成するとそうなりますけれども、契約の当事者であると構成すると、一般に契約当事者が消滅すればその契約は消滅する。相続の問題が民事だったらありますけれども、そういうふうに一体労使協定の性格ないし過半数代表者の権限というものをどう捉えるか。代理人なのか、代理人の場合は、労使協定の締結主体である本人がいないということになるのですけれども、そういうふうに捉えるのか、あるいは当事者そのものと捉えるのか。これは解釈上の問題かと思いますが、色々検討する必要があって、それを少なくとも省令レベルでは反映させる必要があるのではないかと思います。
将来的な労使コミュニケーションについては、また後で申し上げたいと思います。
とりあえず以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
島田先生、お願いします。
○島田構成員 ありがとうございます。
過半数代表者の選出手続について1点だけ申し上げます。
3-1の2つ目の○なのですけれども、選出に当たっての使用者の配慮に関して、具体的にどの程度の配慮まで認められるのかを明らかにすると書かれておりますので、おそらく使用者の意向に沿った選出とならないラインというか、介入とならないラインを明らかにするという趣旨だと理解いたしました。
ただ、先ほど水町先生もおっしゃったように、選出に当たって労働者の側が何か使用者に配慮を求めたとき、支援を求めたときに、積極的に支援をする何らかの配慮義務というか、そこまで踏み込んで書くということも重要ではないかと考えています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 先ほど水町先生、安藤先生からあった点なのですけれども、8ページの3-4の複数の過半数代表者の人数のところなのですが、結局複数にするのは1人だと大変だから補助者がという話と、やはり職場の多様性の担保のために複数人という2つの意味合いがあると思っています。
それで、前者のほうはできるかもしれないのですけれども、後者のほうは要は多様な人たちというのは少数派の意見をどう酌み取るかというような話になると、その少数は過半数ではないわけで、そこをどういうふうに実効性が担保できるのかと思っています。
過半数に達しないから選ばれないというようなことなのか。例えば、過半数代表者の選出をやったときに上位3人までとか、そういうような形で1位は過半数だけれども、2位、3位は違うとか、そういうようなところまでをモデルケースとして示すのかどうかというところまで考えていかないと、ちょっと実効性の担保が難しいのかなとも思っています。
○荒木座長 水町先生。
○水町構成員 具体的に今もやられていることを念頭に置けば、まず過半数代表者の選出の選挙の公示をするときにどういう選び方をしますか。実際に今1つの事業場で複数の代表者を選べますという形で公示をされていて、そしてその公示をされた例えば1つの事業場の中で常勤職員と非常勤職員がいて、それぞれ代表者を選びますという形で公示をし、それぞれが過半数の支持を得られれば過半数代表者として活動するということも行われています。
その公示を、例えば企業の人事がする場合もあるし、労働者側が前年度の実績等も踏まえながら選挙管理委員会をつくって、その選挙管理委員会が公示をするパターンもあるし、これはどこまで会社が、使用者が関与していいかというときの公示の仕方と、あらかじめ選挙のときに複数という公示をして過半数の支持を得られるかというところだと、過半数が得られればその時点で複数になるし、それが労基法の今の立てつけとか趣旨に反することがないかということをまず確認することと、その上で1人過半数代表者が選ばれたり、複数選ばれることも公示に基づいてあるかもしれませんが、そこで例えば1人ないし2人選ばれた人が、もっといっぱい多様な人がいるので、私はこの人とこの人というのを仲間に入れて、補助者というか、補佐人というか、この補助者、補佐人もある程度指針なりのレベルで事前に話合いをして、話合いについても使用者からの配慮をいただきながら、例えば勤務時間とか適切な時間に話合いをしながら、実際協約締結における使用者との話合いの場に同席するというような意味での補助者を指名するかどうか。それが実態に応じて必要な指名であれば、それをなるべく使用者側は適切な配慮の下で認めてくださいという制度設計にするのが、今の実務との連続線上では現実的なのかなとは思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
色々な論点が出ておりますけれども、まず7ページの3-1の最初の○の3つの今回の労使協定の内容、これを選出の際に明らかにすることが必要というのは確かに御指摘どおり、そこまでは現在の労基則の第6条でも求めておりませんし、色々な形態があって選出がされた過半数代表者と協議しながらどういう労使協定が望ましいかを決めていくということは当然に予定されておりますので、これをさも選出のときからの要件であるかのように書くのは適切ではないと思います。もちろんそういったものを示した上でということがあってはいけないということではないのですけれども、これを示さなければ選出できないかのような書きぶりは修正が必要だというのは御指摘のとおりだと思います。
それから、複数選出、そして任期制に関する論点がありました。複数選出の場合は、今、水町先生がおっしゃったように現行法でもできるような色々な過半数代表の選び方として工夫がされているということもありますので、そういった事例としては違法とならないということが分かればそういった工夫をする。
大学などでも、教員の代表と職員の代表をそれぞれ選んで、それを全体で過半数代表者として扱っていくというような事例もある。そのほうが実際上、労働者内部での協議というものが実質的に行われているというような好事例があり得るとすれば、そういったことを周知していくのは有効だと思います。
任期制については、山川先生から法的な問題点の御指摘がありました。いずれももっともな御指摘で、現在のところは過半数代表を選ぶことが要求されるのは過半数協定を結ぶ時点だけなのですが、ここで任期制として議論されているのは、その結んだ労使協定の中には例えば裁量労働制だと健康確保措置とかもある訳ですね。そういったものが結んだ当事者の意図どおりに運用されているか。これは現在は、誰もモニターする責任を負わずに運用されている。そういった問題の改善が必要ではないかということが任期制として議論されています。
法的に任期の間ずっと権限があるかということになると、山川先生が御指摘のとおりの問題がありますが、自分が結んだ労使協定についてそのとおりに運用されているか、そういった苦情を受け付ける立場にあるかとか、そういったものとしての協定に有効期間が存続している場合の協定締結としての責任というようなものを明確にする。そういう意味での議論だったと思います。それと法的な議論をどう整合させるかというのは、更に先生が御指摘の点も踏まえて検討すべきかと思いました。
それから、労使コミュニケーションという言葉が5ページ1の最初の○の①から④という形で書いてありますが、①は団体交渉法制を想定したもので、②、③が労働基準法の中に出てくるような過半数代表との協定、そのまたモニタリングで、④は実質的な情報協議を受けたり、あるいは経営に参画するということで、ヨーロッパでは情報協議の担い手という形で議論されているものです。
①から④といった集団的な労使コミュニケーションをここで定義して議論しておりますが、その後の書きぶり、例えば6ページの2の「労働組合による労使コミュニケーションについて」のところは①の話をしているのか、②、③の話をしているのか、やや分かりにくい書きぶりで、こういった点は更に趣旨を明確にする必要があろうかと思っております。
5ページから6ページで過半数代表について現状どう規定されているかというと、それぞれの条項で法定基準が設定されていて、これを柔軟化する、現場においてカスタマイズするには過半数代表と協定した場合にはこれを許容するという形で、それぞれの条項で規定されている。
他方、企画業務型裁量労働制のところは労使委員会というものが第38条の4で規定されていまして、そこでは労使委員会の定義的な規定もある。
このように、労働基準法の法定基準をカスタマイズするための仕組みが各条文に手続だけが規定されていたり、あるいは定義規定が労使委員会のところには出てきたりということで、体系的に整序されない形で、付け足し、付け足しで立法化された結果、現状のようになっている。
しかし、働き方が多様化する中で望んだ働き方を実現するための制度として労働基準法制を考える場合、この労使協定によるカスタマイズの重要性は高まっている。そうすると、改めて過半数代表や労使委員会という制度を総則的なところできちんと位置付けるべきではないかという問題意識が示されてきたところです。
ではどう書くかということなのですが、6ページのところでちょっと頭出し的に書いてあり、さらには10ページの6のところで同趣旨のことが書いてある。これは諸外国では従業員代表制というものがあるのですけれども、日本では従業員代表制を正面からは取り入れていない。しかし、過半数代表制度という特殊な制度がある。
従業員代表制的な制度を将来どういう方向で位置付けていくかについては様々な議論がありうるので、拙速に結論をだすのは適切でないということで深い研究が必要だということになっていますけれども、このような書きぶりをどういうふうにするかは冒頭というよりも、10ページの6のほうでまとめていくことになるでしょう。
そのことも踏まえつつ、9ページの3-6では「労働基準法における規定の整備」ということで、従業員代表制が将来的にあるとしても、現行法で過半数代表者の選出、運用に非常に課題があることについての対応は早急に図るべきである。このことは多分共有されていたと思いますけれども、そのことをきちんと労働基準法の中で総則的に位置付ける。
位置付けるに当たっては、過半数代表のみならず、同様に規定のカスタマイズを担う労使委員会が現行制度としてあるわけですから、総則的な位置付けとしては労使委員会についてもきちんと規定しておくことが法制度上は要請されると考えております。
そうしたことも含めて、最初の5ページ、6ページの書きぶりと、それを少し書き下した後のところ、これは報告書としては整除するのが望ましいのではないかと考えております。
これは私の意見ですけれども、ほかに今の点に関連しても、山川先生は後ほど触れたいという点があるとおっしゃいましたが、何か補足的にございますでしょうか。
○山川構成員 将来的なお話ですから、また後で時間があると思いますので、その際で結構です。ありがとうございます。
○荒木座長 分かりました。ありがとうございます。
安藤先生。
○安藤構成員 2点確認させていただきたいのですが、7ページ目の3-1「過半数代表者の選出手続について」のところで、どういうものが適正で、どういうものが適正ではないかということの理解のために確認させてください。
ある候補者に対して信任投票をした結果、投票者が全然集まらないといったときに、同じ対象者に対して不信任投票をして不信任案も集まらない。ですから、この人は信任したとやってしまっていいのか。私が知っている範囲内で、このように企業を職場として過半数代表者がどうしても欲しい、36協定との観点で欲しいということで選びたいのですが、パート、アルバイトの方が多いような職場において、そもそも投票の場に人が全然来てくれないといったときに、仕方なく不信任投票をやっているという事例を聞いたことがあるのですが、こういうものが認められるのかというのが1点目。
2点目は、先ほど座長の荒木先生からありました、複数選出するときに実際に行われているであろうという手法として、例えば大学みたいに教員と職員がいて、それぞれの代表者が立つといったケースで、教員の代表者については教員が投票し、職員の代表者については職員が投票する訳ではなく、あくまでも全ての労働者がそれぞれについて投票し、過半数を取らないといけない訳ですが、それぞれの代表者が自分の例えば所信表明みたいなものを書くとしたとき、教員の代表者は教員についての事項のみ書いていて、職員の代表者は職員のことについてのみ書いているのに対して、例えば自分が教員で職員の人に対しての過半数を信任するかといったときに、自分とは直接的には関係ない職員の方についてのことが書かれているものに対して信任するという行動がどのくらい適切なのかということに少し引っかかりを覚えているのですが、この辺り、現行法ではそういうような形で役割を完全に分けてしまっても大丈夫ということで理解はよろしいでしょうかという質問です。お願いします。
○荒木座長 どうぞ、首藤先生。
○首藤構成員 1点目のほうの話で、みんな関心がなくて誰も手も挙げないし、投票さえもしないというような職場も当然あると思うのですけれども、デロゲーションすることの重みですよね。法律が規定していることを超えて働かせるときに、それを労働者自身がきちんと認識もせず、関与もせず、不信任も信任もないからいいよというようなことまで認め始めると何でもありになってしまうことを懸念します。
確かに、使用者側としてはどうにかしてやりたいから協定をきちんと結びたいんだと言っても、働く者が全然乗ってこないような職場において何が必要なのかというと、それをこのようにやればできますよということではなくて、やはり労働者にきちんと労働者の権利とか、こういう法律があって、あなたたちは今これを超えて働くことに対しての同意が求められていますよということを徹底的に教えていくと言うとちょっと上から目線で申し訳ないのですけれども、そういったことのほうがまず必要なのではないかと私は思います。
○荒木座長 御質問でありますが、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 投票に当たってですけれども、信任投票のようにこの人を信任しますという意思が表示されているということが必要になるというものでございますので、例えば不信任投票であったりとか、白票、要は書かなければ信任されますよというようなやり方だとか、そういうような意思の表示がちゃんとされていない可能性があるものについては基本的には不適当であるという考え方になろうかと思います。
○荒木座長 安藤先生。
○安藤構成員 ありがとうございます。
そうであるとしたら、そのルールをもう少し周知しておく必要があるかと思います。そして、今、首藤先生からもありましたように、私も積極的に信任するといったプロセスが必要かとも思うのですが、先ほど挙げた例で言うと、正社員として時間外労働をする可能性がある人が少数派であり、大多数の人がシフト制で働いているような職場、この人たちについては本人の同意なく、求めない時間働く必要がないといったような場合に、果たして労働者全てに対して今回36協定の締結のために過半数代表を選びますといったときに、例えば8割方のパート、アルバイトの労働者には関係ない。自分たちが時間外労働をすることはないといったときに、労働者として自分たちではない正社員の方々の時間外労働のために投票に来ていただくということをどうやって理解してもらい、動機づけをするのか。この仕組みをうまくワークさせるための仕掛けづくりということは、今後の課題としてまだまだ残されているかなと感じています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
神吉先生、どうぞ。
○神吉構成員 私は、さっき首藤先生がおっしゃった情報提供が非常に重要だということに賛同します。
座長が言われたモニタリングとも関係して、モニタリングに関しては任期付きの話題が出てきた8ページの3-5で出ていて、10ページの6では、現状ではモニタリング機能を過半数代表者に求めることは困難で将来的な体制づくりが必要とまとめられており、モニタリングが何を指しているかにもよるのですが、モニタリングを専ら過半数代表の責務として機能強化が謳われ、機能強化が負担強化だとすると、なり手がいない、どういうふうに選ぶかの前に候補として手を挙げる人自体がいなくなってしまうのではないかと危惧します。
その前提としては、過半数代表だけにモニタリングを積極的にさせるのではなくて、やはり使用者側がモニタリングの前提としてどういう状況なのかを情報開示することが非常に重要だと思います。
そうすると、ちょっとはみ出てしまいますけれども、現在11ページのVの「労働時間法制の具体的課題について」の1の(2)に入っている、企業による情報開示がここだけに言及されているのはもったいないと思いました。コミュニケーションの前提として必要な情報を使用者が開示することが必要になります。現在の立てつけだと情報開示は時間外労働の抑制のための間接的な手段として位置付けられていますが、労使コミュニケーションにおいても重要な項目として外出ししてもいいと思います。
特に、11ページの下のほう、企業内部への情報開示で、管理職、個別の労働者に対する情報開示であるとか、過半数代表への情報開示も検討するとモニタリングの前提にもなりますし、労使コミュニケーション全般にわたる課題となると考えます。
以上です。
○荒木座長 大変重要な御指摘で、まさに企業内の情報開示の受け手としても、労使協定を締結した後は誰もいないという状況にはしないというのが先ほど任期制と言った内容ですけれども、おっしゃるとおり使用者に情報開示をさせ、その情報を従業員全体にも開示すべきとか、その直接の受け手としての過半数代表者の役割も重要かと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
それでは、時間もありますので、この後は労働時間のほうのインターバル規制、つながらない権利のほうに移ってよろしいでしょうか。
それでは、次は労働時間のところの勤務間インターバルについて、特に14ページ以降ですが、「柔軟な対応」とセットで考えないとなかなか制度化は難しい。では、具体的にどういう柔軟な対応が可能なのか。それと併せて、「つながらない権利」というものをどう位置付けるか。この点について、さらに御意見を伺いたいと思います。どの先生からでも結構ですが、いかがでしょうか。
石﨑先生お願いします。
○石﨑構成員 すみません。授業で遅れまして失礼いたしました。
インターバルについてなのですが、現在のおまとめでは様々意見が出されたことという形になっておりまして、また段階的に実効性を高めていく形が望ましいということに関しては確かに一致しているところかと思うのですけれども、もし可能であれば、更に仮に委員間である程度一致ができるようであれば、私としては11時間のインターバル確保に向けた規制を設計していくというような方向性ですとか、あるいはここにも記載がありますけれども、何らかの事情によりインターバルが確保できない場合には代償休暇の付与などによる対応も許容すること、そして、規制については労働時間設定改善法等の規定の中の措置義務や配慮義務という形になるのかもしれませんけれども、将来的には一定の期間をめどとして労基法上の規制として入れることも検討するといったようなところでもし一致できるならば、そうした方向性の打ち出しができたら本当は望ましいようにも思います。
ただ、各先生方から色々な意見があるところかと思いますので、一致しないということであれば現状のまとめ方になるのかなとも思っております。
また、柔軟な対応をどう検討するかというところについてなのですけれども、以前ももしかしたら御意見があったかもしれませんが、ここに健康観察や面接指導のようなものは含めるべきではなく、基本的には代償休暇、休日等の労働時間の解放という形によって対応すべきであると個人的には考えております。
また、そうしたインターバルを守れないケースを許容する頻度について、例えば月何回までであればそうした代替措置でも可能といったような形について、月何回の部分にどういった限定をかけるかという部分については、ある程度一定の期間内では各事業場で労使の話合い等によって設定していく。そうした実態を踏まえた上で規制化というところを検討していくというような方向性も考えられるように思いました。
私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
私も石﨑先生が今おっしゃったように、基本的には勤務間インターバルは11時間という方向で設計いただければと思っております。これはある程度の科学的根拠を持って言われているもので、勤務間インターバルは11時間と言わず14時間がいいとか、もっと踏み込んだ説もありますけれども、基本的にはヨーロッパでの状況を見ると11時間というのがコンセンサスの得られる時間ではないかと思うので、そこをしっかり打ち出していくことは重要かと思います。
それで、原則は11時間ということはすごく大事で、現状では段階的に引き上げるとしても、そうは言ってももう既にインターバル時間が11時間よりも実質引き下げられてしまっている業界もあると思います。そこに関しては十分な科学的根拠があるならば労使での協定をもって引き下げることも可能というような観点も入れていただけるといいのかなと思います。
また、これも石﨑先生がおっしゃっておられましたけれども、基本的には勤務間インターバルが確保できない場合の代償措置というのは、一般的な健康管理、健診などでは代償措置とはちょっとなり得なくて、休養の確保しかないと思います。どのように休養を別途確保するのかですとか、勤務間インターバルを確保できない場合の上限回数を徹底する、というようなことがきちんと謳われる必要があるかと思います。
あとは、勤務間インターバルに限らず労働時間からの解放ということに関して、今までの議論では、一番の目的は労働者の休養の確保と、生活時間の確保の権利、ワークライフバランスとか、生活時間をコントロールする権利が労働者にもあるという話だったと思います。加えて、休養をしっかり確保することで個人の疲労を回復してパフォーマンス向上という観点もありますし、それを通して企業側が労働生産性の向上を確保するというような観点もどこかに組み込めるといいのかなと思いました。これは勤務間インターバルに限らず、例えば休日の確保とか、もうちょっと広い労働時間からの解放というところにかかってくるような内容かと思います。
代償措置をどのように講じるかは、先に申し上げたとおり基本的には休息時間、休養の確保しかないと思います。一方で、勤務間インターバルが現実の世界で短くなる要因に関しては、どうしても人手不足の業界ですとか、あとはどちらかというと高学歴だったり、フレックスタイムが使えたりとか、非常に職位が高い方というのは勤務間インターバルが短くなりがちなので、管理監督者に関しても代償措置に関して対象になる、という制度設計になるといいのではないかと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
まず勤務間インターバルにつきましては、私は石﨑先生の御意見に全面的に賛同でして、みなさまの御賛同がいただけるのであれば義務化に向けた積極的な記述があればと思います。
それから、勤務間インターバルの中に勤務間インターバル制度と「つながらない権利」がありますが、確かに両者は労働のオンとオフの、オフという点で共通し、また「つながらない権利」は勤務間インターバル制度と合わせて論じられることが多いテーマではあります。しかし、「つながらない権利」は勤務間インターバルの中でのみ問題になるものではありませんし、表題が勤務間インターバルで、その中に「つながらない権利」があることには違和感があります。
また、勤務間インターバル制度の法制の必要性があり、他方で「つながらない権利」がヨーロッパでは認められているけれども、これは主に労使の話合いでやってはどうかというようなものだと思います。両者が同じくらいのレベルで書かれていることが気になりました。ぜひ、勤務間インターバル制度が重要であることを打ち出していただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがですか。
水町先生。
○水町構成員 15ページのところで、まず勤務間インターバルについては今も義務化の意見がかなりありますが、15ページの上から4行目からのポツのところで「労働基準法による強行的な義務とするという考え方や」の次のところで、「労働時間等制定改善法等による措置義務や配慮義務とするという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化するという考え方などが示されており」と書いてありますが、これは具体的にどういう制度設計にするかというのが私は必ずしもイメージできないですし、実効性が上がるような形でこの制度が運用されるということについてあまり自信がありません。
労働時間等設定改善法というのは今、基本的には努力義務で、やりたいところはやってもいいというので大企業の一部がやっているところがありますが、労働時間等設定改善法によって措置義務とか配慮義務というのは企業規模によらずに義務づけるのか。罰則は付けないけれども、義務違反のときにどういう効果があると考えているのか。それとも、現行の労働時間等設定改善法のように努力義務みたいなことでやりたいところはやっていいよ、やらないところは特に法的に義務づけないよというようなものなのか。
イメージが、現行の労働時間等設定改善法とここで書かれていることの次なる罰則付きで労基法で導入するということの間の制度設計としてうまく実効的なステップとして機能するかというところについて私は疑問があります。
それからもう一つ、「つながらない権利」のところですが、これは2つ目にフランスの例で「様々である」と、様々であるからなかなか難しいよねというニュアンスで書かれているような気がしますが、今、水島先生がおっしゃったように、実は勤務間インターバルと「つながらない権利」というのは質が全然違うもので、勤務間インターバルは健康等の問題ですが、「つながらない権利」というのはプライバシーをどう確保するかという問題で、実はフランスの例で難しいのは、色々な対応が企業ごととか、業種ごととか、労働者ごとにあり得るよねというときに、では多様だからやらなくていいという話にはなっていなくて、罰則付きでやるのはなかなか難しいかもしれない。その中身を具体的に特定したりするということが難しいので。
ただ、日本で言うと、これは労働契約法の中で契約ルールとして「つながらない権利」を例えば定める。それで、フランスの例でパラレルに言うとすれば、デフォルトで何も定めなければとにかく勤務時間外については「つながらない権利」とか、会社が勝手に連絡して呼び出したり、仕事をさせたりしてはいけないよということをデフォルトで定めた上で、ただ、人によっては勤務時間外においても、例えば緊急連絡で緊急対応しなければいけない人がいるかもしれないし、そうではない人でも例えば地震が起こったときに居場所確認とか、そういうことをするために連絡を取るというものがあるかもしれないし、それとも全然連絡を取らなくても企業として何も困らないという人たちもいるかもしれないので、そういう多様なルールを労使で協議して協定してください。それで、労使で協議して協定していない限りは、労働契約法のデフォルトに戻って基本的に連絡しては駄目ですよというルールをつくるというのがフランスからの示唆であって、そういうイメージ、そういうものがこの中には必ずしも出てきていない。
ですから、今、労基法を改正しようというところとダイレクトにつながるかどうかは分かりませんが、労働契約法にそういう契約ルールとして「つながらない権利」をどう定めていって、これからデジタル化の中で生じてくる可能性が強い労働者のプライバシーを、私生活をどう守っていくかという観点から、基本的なルールを定める方向で真剣になるべく早く議論していくということが分かるような書きぶりにしてほしいと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
勤務間インターバルについて、まず少し申し上げます。先ほど石﨑先生も言われたこととも関係しますが、もうちょっと積極的な取組を出していくことは考えられるかと思います。積極的に検討するとか、表現ぶりの問題かもしれませんが、それは考えられるかと思います。
その際には導入企業割合が6%、これは私としては重要と思うのですけれども、ただ、どなたかがこれまでおっしゃられた、導入している企業とか、それが義務づけられている場面というのもありますので、導入した企業の実態とか、そこでどんな工夫がなされているかは、むしろ積極的に検討するということでしたら付け加えてもいいのではないかと思います。
それから、水町先生の言われた最後の労働時間等設定改善法等による措置義務の具体的なイメージです。これも申し上げたかもしれませんけれども、努力義務ですと行政指導ができたとしてもソフトなものしかできないのですが、措置義務とか配慮義務ですと義務違反ということが法的に観念できて、違反に対する是正のための指導ができるということ、配慮義務だと若干弱いかもしれませんが、少なくとも措置義務ですと、安全衛生法だと措置義務に罰則があるくらいですけれども、違反を前提とした対応が行政的に可能になるということがありますので、その点は必要があれば書き込んでもいいかなと思います。
あと1点だけ追加で、11ページで先ほどの首藤先生の言われた情報開示の点で、ここでは実態の開示になっていますが、その前提といいますか、制度の開示も重要ではないかと思います。課長が言われましたように、現在の場面では労使協定も就業規則や法令と同じように周知事項となっていますが、これをより実効性のあるものにするというようなことも考えられるかと思いますし、また神吉先生も言われたように、これは労働時間の問題だけではなくてほかの場面一般にも関わるので、周知機能の実質化ということはこの研究会の直接のテーマではないかもしれませんが、就業規則の周知に関しては、平成11年の労働基準法の通達の改正もなされていますので、制度に関する情報の開示の実効化というのもあってよいのかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
安藤先生、どうぞ。
○安藤構成員 ありがとうございます。
勤務間インターバルについて11時間を目指すという理念自体には賛同しますが、現在の導入企業割合6%というところから、さてどのような形でそのゴールに向けて近づけていくのかというところはまだまだ十分議論の余地があるかと思っています。
最初に出たお話は、11時間を入れてしまって代替措置などについては少し自由度を持たせておいて実態を把握していこうといった御意見だったかと思いましたが、色々な手法があり得る中、例えばこれまで資料として出てきた中で、この導入企業割合6%というのはそもそもうちの会社では勤務間インターバルが11時間以上当然に空いているので、勤務間インターバル制度を導入する必要性を感じなかったから導入していないといった企業もある訳です。
そういったときに、ステップをもう少し細かく刻むという観点では、まずは各企業それぞれにおいて勤務間インターバルの制度、それはうちの会社では11時間できますプラス代替措置、うちの会社ではちょっと自信がないから10時間でというような形で、各企業、業界ごとに色々なものが出てきた中で実現可能なものを探っていくというような、もう少しステップを踏んだものも考えられるのではないかと感じています。
と申しますのも、今、深刻な人手不足で企業も色々困っているということで、長時間労働などにつながると採用が難しい、離職抑制が難しいといった点もある一方、これまでのお客さんをつなぎ止めるためには忙しいときには仕事をせざるを得ないといった声もまた別にあるわけです。ここの中で11時間という原則を入れたときに、どのくらい社会が早い段階で受け入れてくれるのかといったところについては少し不安もあるので、ステップを刻んだほうがいいのではないかという考え方もあるというお話を差し上げました。
これも以前からお話ししている件でありますが、基本的に日本の企業というのは大企業が中心かもしれませんが、これまで景気の変動であったり、仕事量の増減に対して人数を増やしたり、減らしたりといったことで調整するのではなく、労働時間で調整することが多かったということで、この労働時間で調整するということは労働者にとって望ましい性質の一つである雇用保障にもつながったというプラスの面も忘れてはいけないと思っているからです。
そういったことで、どのようなものに実現可能性が高いのかをしっかり探っていきつつ、近い将来、この11時間を目指すために納得感のある仕組みをぜひ検討したいと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
まず勤務間インターバルについて、水町先生から具体的なイメージがちょっと湧かないという御指摘もありました。それで、ダイレクトに労基法に書くという方法もありますけれども、設定改善法などで措置義務を導入することも考えられる。努力義務と措置義務の違いについては山川先生から御指摘がありましたけれども、具体的な行動につなげるためには、例えば労働基準法第89条の就業規則の記載事項の一つとして勤務間インターバルというものを掲げておけば、その内容をどうするかについては、設定改善法を参照することも考えられます。
これは色々ありますが、設定改善法に基づいてガイドラインで、望ましい勤務間インターバルというものを示しながら、策定を促す。これは行政指導で誘導するとともに、それを義務化するのであれば就業規則の必要的記載事項としておけば、どういう制度にするかについてはある程度企業の裁量、柔軟性を認めながらも、しかし、制度をつくることは義務付けることも義務化の一つのステップとして考えられるかなと思います。
色々なルートはあり得るところなのですけれども、勤務間インターバルの11時間という時間数は、24時間から11時間を引きますと13時間、その13時間に休憩1時間があるはずでこれを引くと12時間労働です。1日12時間労働は8時間を超える4時間の時間外労働ですから、これを月20日間やりますと既に80時間の時間外労働となります。労働基準法の時間外労働の上限規制で複数月を平均して80時間を超えてはならないという規制が既にあります。それとは別に、勤務間インターバルを11時間に設定する意義があるとしたら、どの一日を見ても11時間の勤務間インターバルを確保すべきという原則を設定するという議論だと思います。それが実際にワークするためには、どういう場合に11時間を割り込むことを例外的に認めるのか、その制度設計が合理的なものでなければうまくいかないと思います。
その点については、石﨑先生からも具体的な方向性の示唆があったところで、多くの先生方は賛同されたところですけれども、これをどう具体化していくかということについては更に議論が必要かもしれません。科学的な根拠ということでは黒田先生からも指摘がありました。
先ほどの時間外労働80時間という数字は、時間外労働が月に80時間を超えるという事態は睡眠時間が6時間を下回るという観点から出てきた基準ということでございますので、それは勤務間インターバルとして11時間を要請するのことの共通の根拠となり得るかと思います。
そうしますと、それを前提にどういうふうに実際に回るような実効性のある制度としていくかについて、更に議論を深めてはどうかと思ったところです。
それからもう一つ、「つながらない権利」です。これもヨーロッパで議論されている「つながらない権利」とは具体的にどういうものかというと、「つながらない権利」についての制度設計を労使が行うべき義務を課すということもありますけれども、もう一つ大きな法的な効果として、「つながらない権利」を行使したことについての不利益取扱いを禁止するということがあります。つながらなくてよいはずなのに、使用者がメールを打ってそれに返信をしなかったことについて不利益取扱いをする。こういったことをやってはいけないという民事上の効果が導けるところです。
この問題は水町先生が御指摘のように、本来労働者は労働契約で所定労働時間以外は労働義務を負っていないはずです。それを、所定時間外に一定の連絡をしてそれに応答する義務を課すとしたら、それはそもそもいいのか。そういった連絡に対応しなかったことに例えば懲戒処分を課すとしたら、その懲戒処分は適法なのかが労働契約法上、問題となり得るところです。
そういった民事上の効力は、「つながらない権利」というまでもなく、労働契約者が義務を負っていない時間を明らかにし、そのことの具体的な意味を明確にするということかもしれません。
そういうことも含めれば、水島先生御指摘のように、これは必ずしも勤務間インターバルだけの問題ではなくて、所定労働時間以外の労働者が本来自由に過ごせる時間をどう確保するのかにつながる問題として議論すべきという御指摘はそのとおりか思います。たたき台ということで並べて書いてありますけれども、位置付けとしては御指摘のとおり、もっと広い問題を扱っている課題だと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、最初に申し上げた2点についての議論はこの程度にいたしまして、この研究会の議論のたたき台全体についてお気づきの点がありましたら御指摘いただきたいと思います。
水町先生。
○水町構成員 11ページの情報開示のところで、1の(2)の2つ目の○の下から2行目の「その先の」というのを削除していただいて、簡単に書くとすれば、重要事項の義務的な情報開示の検討については、というような形にしていただきたいというのが意見です。
どういうことかというと、「企業による自主的な情報開示を充実させるための基盤整備や、その先の義務的な情報開示の検討」と書いてあるので、これがもし時系列で、まずは自主的な情報開示の基盤整備を行って、それが整備されたら次が義務的な情報開示の検討だとも読める表現なので、そうは期待されないようにしてくださいという趣旨です。
基本的に自主的な情報開示はもちろんやってもらって結構なのですが、自主的な情報開示というのは出したいところは出すけれども、出さないところは出さない。後者の義務的な情報開示で重要なのは、例えば労働移動を円滑化するとか、就職するためのマッチングのために出してもらって比較をしながら、自分が好ましいと思う企業に就職したり、転職をしたりするための重要な情報であって、そういう情報を開示させることによって、より適切な方向に誘導していくための情報でもある。
今回は100時間、80時間の上限についてはそれを原則に近づけていくというのも今後の課題だし、割増賃金のところについても今後エビデンスを見ながらということで、100時間、80時間の下の、具体的により望ましいワークライフバランスを実現するための労働時間については今すぐやるということが具体的に何も書かれていない中で、重要なのは例えば実労働時間、時間外労働、休日労働の時間というものをきちんと開示をしてもらって、これは別に短いから良い、より短いほうが良いというふうには必ずしも言えずに、例えば今ホワイト企業、プラチナ企業と、あとはモーレツ企業があって、うちはやや時間外労働は長い、モーレツ企業で時間外労働は長いけれども、特に若い人たちには一生懸命働いてもらって、これがエンゲージメントとしてやる気が高まっているし、労災もそれで発生していないということも併せて場合によっては説明で書いてもらいながら、きちんと学生とか転職する人に選んでもらうための重要な情報ということで開示してもらうことが大切で、出したいところだけ出しても、やはり本当は知りたい会社の情報が出てこないというときにそれが機能しない。
情報開示による企業の誘導という意味でこのところは非常に重要だと思いますので、しばらくやってみて整ったら義務づけを検討しますよ、義務的な情報開示を検討しますよというニュアンスに受け取られかねないような表現にはしないでいただきたいというのが私の意見です。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
私も今の情報開示の点についてなのですけれども、先ほどの「その先の」を消したほうがいいという水町先生の御意見には私も賛同いたします。
ただ、実際に義務化の検討に一定の時間がかかるということはあろうかとは思いますけれども、そのニュアンスは変えていただきたいというところが1点です。
それから、検討に多少時間がかかるということとの関係で併せて御検討いただきたい点としましては、開示すべき情報の中身についても併せて検討いただきたいというところでして、労働時間との関係で言えば、シンプルには平均的な時間外労働の時間というのが考えられるところですけれども、平均に全てならしてしまうと本当に知りたい情報になっているのかというところに問題があるような気もしておりまして、平均がいいのか、あるいはその職場での最長の労働時間に至っている人がどれくらいいるのかとか、色々な情報の設定の仕方があり得るようにも思いますし、またそれも数値で出すのか、あるいは一定のレンジの中にいる人が何人いるというような形で出すのか、色々なやり方があり得るように思いますので、求職者側が知りたい情報と、企業側の負担と両方考慮していただきながら、開示すべき情報の中身というのも詰めていけるとよいのではないかと思ったというのがまず情報開示の点についてです。
このほか、3点ほど細かな点であるのですけれども、1点目は企業内部の情報開示、特に個別の労働者に対する情報開示の点でありまして、これは私の個別な意見ということでここに盛り込んでいただかなかったことも致し方ないかとは思うのですが、個別の労働者に対する情報開示の意義としましては、労働時間の短縮という面だけではなくて、適正に時間に応じた割増賃金が支払われているかどうかを把握する、あるいはどの時間を労働時間と使用者サイドが捉えているかを把握するといったような意義もあるようにも思いますので、そうした点からの情報開示の必要性がないか、個々の労働者に対する情報開示の必要性がないかという点についての検討も、今後は必要になっていくのではないかと思ったというところになります。
その次の点としましては13ページの休憩に関わるところなのですが、休憩に関しては、これまでの検討会の中で休憩がきちんと取れるような配慮が必要ではないかという議論がされたような記憶があります。この点、重要であるというところに加えて、特に一斉付与原則を改めるということになったときに、より重要度が増すといいますか、一斉に取っていないがゆえに休憩できるような環境が保持されないと、隣で働いている傍でちょっとリラックスできないとか、そういったことも起こり得ますので、休憩がちゃんと確保できているかというところに対する配慮なのか、もうちょっと強い表現のほうがよいのかというところはありますけれども、それも併せてここに盛り込めないかということは御検討いただけるとありがたいと思います。
それから、最後の点はやや時機に遅れた意見になってしまうかもしれなくて大変恐縮ではあるのですけれども、前回の検討会でちょっと私のほうで申し上げた半日年休の通達の点に関して法規定化できないのかとか、そういった点についての検討もお願いできればと思います。
あとは、これは全くこれまで発言していなかったところで今、初めて申し上げる話で申し訳ないのですけれども、年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いについて、現状は訓示規定のような形で附則で規定されているだけになっているのですが、やはりこれはもうちょっと明確に労基法上、規定すべきではないかというところがございまして、これまでの議論で出ていなかったので、ほかの委員の先生方の御意見次第であるとは思うのですけれども、今後この研究会の報告書としてまとめていただく際に、その辺りの論点についても取り上げていただく余地があるかどうかというところを御検討いただけるとありがたいと思った次第であります。
私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 11ページの情報開示のところについて、これまで御意見があった、特に水町先生から最初にあった、一覧性を持って比較検討できるというところで、労使のミスマッチを減らしていくという観点から重要なことかと思っています。
そのためにどういう形で数字を出すのかといったときに、平均の数字だけを出して、それにどのくらい意味があるのかといったことは仕事、職場ごとにかなりの違いがあるのではないか。例えば、パート、アルバイトが多くて正社員が少ないような職場で平均の労働時間を出したとしても意味がないということで、例えば今、男性と女性の賃金差異の開示義務がありますが、これでは全社員と正社員、非正規、それぞれについて男性を100としたときの女性の数字、こういうものを出すことを求められていますが、どのような立てつけで公開することを求めるのかといったことが重要になるかと思います。
ただ、そこであまり細かいことを求め過ぎると、なかなか運用のコストがかかるということで、実際に男女間の賃金差異についても平均の数字を出すだけだと誤解を招きやすいといったことを踏まえて、うちの会社ではその他色々な要因をコントロールした上で、残される説明のつかない差異はどのくらいかといったような付随する情報を出したり、又はそれを今後どういうプランで改善していく予定なのか、こういうことを出していくといった取組がどんどん進んでいます。
そういったことで、情報開示を求める。特にこれが比較検討しやすいということ、プラス平均だけではよくないかもしれないといったことはあり得るのですが、一定のラインで公開を求める内容の部分と、それ以上の部分については各企業の適切な努力に任せるといったものの組合せが必要かと思っております。
あとは細かい点ですが、16ページの副業・兼業の場合の割増賃金というところで、雇用型の副業・兼業の場合、本業も副業も雇用の場合の労働時間の通算ということで、割増賃金の計算というところではこれを考えないとなった場合でも、あくまでもここでは健康確保のための労働時間の把握をやるということで議論されているといったところですね。では、この健康確保のための労働時間の計算、通算というものを誰が行うのか。この点についても同時に明らかにしておく必要があるかと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
神吉先生。
○神吉構成員 2点ございます。
1点目は、3ページの「労働者」性の課題の1の2つ目の○のさらに2つ目の「テレワーク等の場所にとらわれない働き方も拡大」をここに入れることの意味についてです。
確かに場所にとらわれない働き方は拡大していますが、もともと労働者であった人がテレワークをすることによって労働者性が問題になるということはないはずなので、ここで言われているのは、働き方の裁量の拡大によって労働者性のメルクマールとしてこれまで使われてきた時間的、場所的拘束性がメルクマールとして弱くなってきているということを指摘したいように思います。そうすると、場所だけではなくて裁量労働制や高度プロフェッショナル制度などの時間にとらわれない働き方も入りそうですが、書き方としては、自由な働き方をする人が労働者ではなくなってしまうような、既存の保護が弱まるように読めないような表現が必要だと思いました。
テレワークはこの後半部分で、まさに時間の把握の問題を議論していきますので、労働者性の問題、課題のところで出すのは適切かと疑問を感じたのが1点です。
2点目は11ページの「労働時間法制の具体的課題について」の1の(1)の最初の○です。これは、「現時点で時間外・休日労働時間の上限規制そのものを変更するための社会的合意を得るためには蓄積が不足しているのではないか」という視点なのですが、これは一体、何の蓄積が不足しているのかという点が疑問です。社会的合意に至っていない、コンセンサスが形成されていないということだけではなく、「蓄積」とは何なのかです。
私自身は、特別条項とほぼ同じ基準で認定される過労死などの労災認定数を見ると、それは1人であっても十分に重いと思っておりまして、そうだとすると一体これは何の蓄積を待っているのか。現状、手をこまねいて傍観しているだけというような状態にならないような表現にしていただきたいと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
労使コミュニケーションに関してですが、1点目は先ほど申し上げてもよかったのですけれども、5ページ目の「労使コミュニケーションの意義と課題」の中で総論部分には労働者の多様化ということが書かれていますが、労使コミュニケーションの在り方についてもこれは影響を与える。つまり、多様な労働者の意見の集約が重要になるという文脈が出てくると思います。
そこで例えばですけれども、5ページ目の一番下の○で「経済社会の変化に対応して」というとちょっと抽象的なので、例えばここに労働者の状況やニーズの多様化も含む経済社会の変化とか、ほかの場所でもよいかと思いますが、多様な労働者像というものが労使コミュニケーションにも影響を及ぼすという視点が入ってよいのではないかと思います。
それから、次は10ページの最後の目指すべき姿に関わることですが、これはどちらかといいますと労働基準法の範囲を超える話になりますので、もしかしたら後書きといいますか、「おわりに」くらいのほうがよいかもしれません。労働契約法に関わる影響もあるのではないかということです。
つまり、労使コミュニケーションが将来的に過半数代表者も含めて非常に充実していき、それで、前にも書かれておりますけれども、対等な話合いというものの実質を持つに近づくということになれば、労働契約法第3条第1項で、対等な立場に基づいて労働契約は締結、変更されるべきであるという規定の理念にも合致するということが考えられます。
これは将来的なそういう労使コミュニケーション制度が過半数代表者も含めて実現した暁にはというようなお話になるので、中長期というか、むしろ長期的な課題と言うべきかもしれませんが、そのように労使コミュニケーション制度が充実した場合には、例えばそういった労働者集団との合意というものが、労働条件の変更等の例えば合理性判断において重要なものとして考慮されうるですとか、労働契約法制との接合にも影響を与えるものとなりうるかということも、将来的な検討課題になるということに触れてもよいのではないかと思います。
ただ、この報告書にも出ていますが、先ほども申しましたように多様な労働者像の中で意見集約が大事だとなると、前も申しましたけれども、意見集約機能はやはり労働組合のほうが充実しているということはほぼ意見が一致するのではないかと思いますので、その中では労働組合の持つ機能というものが重視されるということについても言及してよいのではないかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。3点ございます。
1点目は、どこか特定のという訳ではないのですが、あえて言うならば11ページ以降の「労働時間法制の具体的課題について」に関わる部分です。主に最長労働時間規制や労働時間からの解放に関わる点かと思うのですが、労基法第33条第1項の災害時の特例については、最長労働時間規制も外されるし、休日の連続勤務、休日を取らずに連続勤務することも、勤務間インターバルも、全ての規制が一時的に外される事態に陥ることが想定されます。
それは、もちろん突発的な事態でやむを得ないこともありますし、第33条第1項が無制限に適用される訳ではないと理解はしているのですが、今回労使の話合いによって規制緩和について話し合う際に、第33条第1項のことではやむを得ないから、長期的に規制緩和をやるよね、というような極端な緩和にならないような、何らかの方向性はどこかに示していただけるといいなとは思っています。
これは個人的な意見なので、ちょっとここに入れ込むのは難しいのかなとも思いつつお話します。日本は特に災害が多いというのもありますし、従来とは異なる災害として、新型コロナのパンデミックのときに保健所の職員や自治体の職員が時間外労働100時間以上の勤務を長期間にわたってしており、かなり疲労がたまったり、離職が増えたりした、というようなデータや話もありました。第33条第1項の適用についての留意事項については、ここが適切というのはなかなか申し上げられないのですがどこか数行でもいいので、触れられるといいのかなと思っています。
2点目は、今まで情報開示のことで先生方がおっしゃっていたことと基本的に同意見ですという意見の表明です。情報開示に関しては神吉先生の御意見にもあったとおり、労働時間のみに特化して触れるのはもったいないので、もうちょっと別の章に出しても、と思います。何か一覧できるようなサイトに関しては、これも神吉先生がおっしゃったようにベーシックな情報と、あとは選択制でどれか入れればいいですというような情報開示の仕組みにできるといいのかなと思います。
3点目は、副業・兼業のための割増賃金のことは必要ないという話でした。健康確保のための労働時間の通算というのは以前にも申し上げましたが、実態としては実効的に行われているとは言い難いような状況があります。既に厚労省のガイドラインなどがありますが、加えて、法律を変えるようなレベルの話ではなく、グッドプラクティスの収集などを通して資料の充実化を図れるように目指していることを報告書に書き込んだり、実際に厚労省のほうで事例の収集や好事例の提供を進めていただけるとありがたいと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
書かれている文章の意味についてのお尋ねもかなりあったのですけれども、事務局から何か補足的な説明等はございますか。
○労働条件政策課長 特段補足することではありませんが、あくまでも議論のたたき台としてかなり情報量を絞り込んだ形で今回御議論いただくものを御用意しましたので、本日いただいた御意見も含めまして、報告書本体を今後作るに当たっては、考え方の背景でありますとか、様々な御意見についてはしっかり書き込んでいくということとして受け止めさせていただければと思います。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
今回は今、事務局からありましたとおりたたき台ということで、かなり論点的に書くということで、説明が足りないところは多々私も読みながら感じたところです。これについて誤解のないような表現とか、よく理解が得られるような表現にさらにブラッシュアップすることが必要だと考えております。
それから、労働基準関係法制とは何かとか、労使コミュニケーションとは何かとか、色々な思いを込めて書かれているタームがありますので、それについても丁寧な説明をしていく必要があるのではないかと考えています。
それでは、時間となりましたので、本日の議論はここまでにしたいと思います。次回に向けましては、本日いただいた御意見も踏まえてさらにブラッシュアップした上で議論を続けたいと思います。私自身もそうですが、表現ぶりなどについては色々と申し上げたい点はありますけれども、何しろ時間が限られておりましたので、先生方からもこうしたほうがいいのではないかという点は多々あろうかと思います。そういった点につきましては、次回までに事務局にぜひ御意見をお伝えいただいて、事務局においてはそういった御意見も踏まえた資料を次回までに用意いただければと考えております。
それでは、今日の研究会は以上ということにいたします。
本日もお忙しい中、御参加いただきましてどうもありがとうございました。