2024年6月10日 薬事審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

日時

令和6年6月10日(月)18:00~

場所

厚生労働省専用第22~24会議室

出席者

出席委員(19名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理

他参考人1名出席


欠席委員(4名)五十音順


行政機関出席者
  • 城克文  (医薬局長)
  • 吉田易範 (大臣官房審議官)
  • 高江慎一 (医薬局医療機器審査管理課長)
  • 野村由美子(医薬局医薬安全対策課長)
  • 鈴木洋史 (医薬品医療機器総合機構審査センター長) 他

議事

○医療機器審査管理課長 それでは定刻になりましたので、「薬事審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多用の中、また遅い時間に御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。
 最初に事務局に異動がございましたので、御報告いたします。厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長といたしまして、4月1日付けで私、高江慎一が就任しております。また同じく4月1日付けで、医薬品医療機器総合機構の医療機器審査第一部長として矢花直幸、医療機器審査第二部長として白土治己が着任しております。よろしくお願いいたします。
 現時点で、医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、17名に御出席を頂いております。薬事審議会令に基づきます定足数を満たしておりますことを、御報告いたします。
 次に、本日の審議に参考人として御出席を頂いている先生を御紹介いたします。議題1につきまして、公益財団法人榊原記念財団附属榊原記念病院循環器内科主任部長、七里守先生でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 続きまして、議事に先立ちまして所属委員の薬事審議会規程第11条への適合状況の確認結果について、御報告いたします。薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任された委員はいらっしゃいませんでしたので、御報告いたします。委員の皆様におかれましては、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 続けて、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて、事務局から御説明をいたします。
○事務局 事務局です。本日に予定している全ての議題については、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開といたします。会場の皆様のお手元には、資料が格納されたタブレットのほか、議事次第及び座席表を紙でお配りしております。また、Webにて御参加されている委員の先生方におかれましては、事前にお配りした資料をお手元に御用意ください。Web会議で御参加される委員の皆様におかれましては、審議中はマイクをミュート、通信環境等に支障がない限り、カメラをオンでお願いいたします。
 では資料5、競合品目・競合企業リスト等一覧をお開きください。本日の審議事項に関する競合企業として、委員の皆様から寄付金、契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、議決に御参加できない委員は、議題1において田中利洋委員が該当しております。この際に御退出していただく必要はございません。以上、御報告いたします。
○医療機器審査管理課長 事務局からは以上となります。以後の進行について、小野部会長、よろしくお願いいたします。
○小野部会長 これより議題に入ります。本日は議題1及び2が審議事項、議題3及び議題4が報告事項となっております。
 それでは議題1、医療機器「SENTINEL 脳塞栓保護デバイス」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績調査の要否についてに入ります。本議題について、参考人として先ほど御紹介いただきました七里守先生に御出席を頂いております。
 それでは、まず事務局より御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、機構より御説明いたします。資料1、2ページ、専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たり、こちらの3名の専門委員から御意見を頂きました。
 以降の説明は、次のページ、審査報告書に基づいて御説明いたします。ページ番号は緑色の通しページ番号、審査報告書のページ番号及び左に記載の行番号を用いて御説明いたします。
 はじめに品目の概要を御説明いたします。資料8ページ、審査報告書6ページ、1行目から御覧ください。本品は経カテーテル的大動脈弁置換術、以降「TAVR」と略しますが、TAVR中に生じた塞栓物質を捕捉、除去することを目的に使用するカテーテルです。本品は図1に示しますように、6Frのカテーテルに2個のフィルタを内蔵しており、TAVRの手技前に右腕の橈骨動脈又は上腕動脈から経皮的に挿入します。
 次に図2に示しますように、腕頭動脈にプロキシマルフィルタを留置した後、カテーテル手元部の角度調整ダイアルを操作することで、カテーテル先端部の角度調整シースを血管走向に合わせて屈曲させ、左総頸動脈にディスタルフィルタを配置し、その後TAVRの一連の手技が行われます。
 次に本品の開発の経緯を御説明いたします。資料9ページ、審査報告書7ページ、10行目から御覧ください。本邦において、大動脈弁尖の変性に基づく大動脈弁狭窄症(AS)が増加しており、症候性重度AS患者に対しては、年齢、手術リスク等を踏まえ、外科的大動脈弁置換術、以降「SAVR」と略しますが、SAVR又は経カテーテル治療であるTAVRが患者ごとに選択されています。TAVRは開発当初、外科手術の施行が困難又は外科手術リスクが高い患者を中心として施行されていましたが、近年、低リスク患者に対しても適応が拡大され、本邦においても年間1万例以上の患者に実施されています。
 一方、TAVR後の脳卒中が患者のQOL低下及び術後の死亡率に影響することから問題とされています。米国で実施されているTVTレジストリにおいても、手技後30日間の臨床症状を伴う脳卒中発生率は、平均2.3%であるとされ、またTAVR後の脳卒中により、手技後30日の死亡リスクが約6倍に上昇するとの報告もあります。脳卒中の原因となる塞栓源としては、TAVR用デリバリーカテーテルが大動脈弓や上行大動脈を通過する際に、動脈壁を擦ることにより発生する石灰化病変やアテローム硬化病変由来の組織片、術中に発生する血栓塊等が挙げられます。脳梗塞を発症すると、血栓塊等においては、血栓溶解療法等による処置が試みられますが、治療効果は必ずしも十分ではなく、組織由来物質では溶解療法による回復は見込めず、不可逆的な病態に進行します。
 申請者はこのTAVR手技時の安全性上の課題を解決するため、TAVR手技時の塞栓物質を捕捉する本品を開発しました。なお、本品は経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会(THT協議会)より早期導入の要望書が提出され、令和4年8月開催の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において、医療ニーズの高い医療機器として選定されています。
 外国における使用状況については、資料10ページ、審査報告書8ページ、7行目を御覧ください。本品は欧米等の海外において既に販売されています。
 続いて本品の非臨床試験について特段の問題は認められませんでしたので、臨床試験成績について御説明いたします。資料19ページ、審査報告書17ページ、表6を御覧ください。本品の臨床試験成績として、米国、欧州及びオーストラリアの51施設で実施されたPROTECTED-TAVR試験,以降「P-TAVR試験」といいますが、P-TAVRの試験成績が提出されました。P-TAVRはASを有し、TAVRを受ける患者を対象として、本品の使用により、TAVR実施後の周術期脳卒中の発生リスクを有意に減少させることを検証することを目的とした、多施設、共同、前向き、無作為化比較試験です。本試験にはTAVR手技時に本品を使用した本品群1,501例、本品を使用しない対照群1,499例がそれぞれ登録されました。使用評価項目は「TAVR後72時間又は退院時までに発生した全脳卒中の発生率」と設定され、その他の評価項目として全死亡、障害を伴う脳卒中を含む神経学的評価項目、modified Rankin Scale等を含む、神経学的状態などの評価が行われました。
 次に試験成績について御説明いたします。有効性について資料24ページ、審査報告書22ページ、表13を御覧ください。表の一番上にお示しする本試験の主要評価項目である「全脳卒中の発生率」は、本品群2.3%、対照群2.9%であり、設定された仮説は検証されませんでした。一方、表の下から2行目にお示しする障害を伴う脳卒中については、本品群0.5%、対照群1.3%であり、本品群の発生率は統計学的に有意に低い結果でした。
 続いて安全性について、資料25ページ、審査報告書23ページ、表14を御覧ください。表の下から4行目、主要血管合併症について本品群で1例が認められていますが、イントロデューサーシースに起因した橈骨アクセス部位の出血であり、本品との関連性は否定されています。また全死亡、神経学的合併症及び急性腎障害の発生率については、本品群と対照群で有意な差は認められませんでした。なお、本品群で発生した死亡8例については、「本品との関連なし」と試験責任医師又は分担医師より報告されています。
 以上の試験成績を踏まえ、機構における審査の概要を御説明いたします。はじめに本品の有効性及び安全性についてです。資料28ページ、審査報告書26ページ、4行目から御覧ください。機構は本品非使用群との無作為化比較にて、TAVR手技後72時間又は退院時のいずれか早い時点における全脳卒中の発生率が主要評価項目として設定されたことについては、本品の対象疾患に対する脳卒中発生リスク低減の目的を踏まえ、その臨床効果を評価する指標として妥当と判断しております。その上で、先ほど述べましたように、P-TAVR試験の主要評価項目が未達であった原因考察について説明いたします。
同ページ13行目を御覧ください。P-TAVR試験の主要評価項目が未達であった主な原因として、二つの事項が考えられました。一つ目は、「P-TAVR試験での脳卒中発生率が、試験計画時よりも低かったこと」です。P-TAVR試験の計画時、主要評価項目(全脳卒中発生率)について、対照群(本品非使用群)の期待値(4%)は、過去に発表されたTAVR手技時における本品の性能評価に関する臨床試験等の脳卒中発生率を踏まえ設定されました。対照群の期待値(4%)の設定に用いた臨床試験の大半は、拡散強調MRIが必須とされていましたが、P-TAVR試験は市販後臨床試験であり、神経内科医等の神経学専門家による神経学的評価を必須とし、拡散強調MRI検査については、通常診療では一般的に実施されないものであることから必須とはしていませんでした。拡散強調MRIは、軽度の無症候性脳梗塞の検出も可能であり、全体の脳卒中発生率が高くなっていたことが想定され、脳卒中発生率の期待値(4%)と観察値(2.9%)に差分が生じた可能性があります。
 二つ目の原因として、登録患者の患者背景が試験計画時の想定と異なっていたことが挙げられます。
 次のページ、審査報告書27ページ、3行目から御覧ください。P-TAVR試験の計画後にTAVRの適応がSAVRの手術リスクの低い患者にも拡大しており、P-TAVR試験の対照群の手術リスクスコアである「STSスコア」は、平均3.3%であり、対照群の期待値設定に用いた臨床試験の患者群におけるSTSスコア約5~6%と比べて低い結果でした。手術リスクが高い患者は、冠動脈疾患等の併存疾患、脳卒中の既往歴等を有する患者が多く、相対的に脳卒中の発生リスクも高いとされており、P-TAVR試験に手術リスクが低い患者がより多く登録されていたことが、対照群の脳卒中発生率が期待値より低かったことに寄与した可能性があります。
 続いて資料31ページ、審査報告書29ページ、1行目から御覧ください。P-TAVR試験のデータ公表後、P-TAVR試験を含め、本品を使用した臨床試験成績等を用いた4,066例のメタ解析が行われ、その結果本品の使用は92%の割合で成功し、P-TAVR試験と同様に、障害を伴う脳卒中のリスクが統計的に有意に低いことが示されています。また、全脳卒中の発生リスクについても同様に、対照群と比較して本品群が低い結果でした。
 同ページ32行目から御覧ください。以上を踏まえ機構は、患者のQOL低下及び術後の死亡率への関与が示唆されているTAVRに関連する脳卒中発生に対する課題や、TAVR時に発生する塞栓物質を捕捉する手段がない本邦の臨床上のニーズに鑑み、患者背景、解剖学的特徴等を十分に考慮して、脳卒中発生リスクの高い患者が複数診療科から構成されるハートチームにより適切に選択される場合においては、本品のリスクベネフィットバランスが担保されると判断いたしました。
 続きまして本品の使用が適した患者集団について御説明いたします。資料33ページ、審査報告書31ページ、11行目から御覧ください。先に述べましたように本品のリスクベネフィットバランスを担保するため、適切な患者選択が重要であると考えております。一方、現時点では、本品の使用に適した患者集団について、P-TAVR試験成績等に基づき、明確に特定することは困難であり、既に本品が使用されている欧米においても、診療ガイドライン等でTAVR時の脳卒中発生リスクが高い患者を特定する因子は確立していない状況です。そのため、現時点で得られているエビデンスから、関連学会とも検討を行い、本品の患者選択に当たっては、末梢血管疾患、慢性腎臓病及び脳卒中の既往といった併存疾患や既往歴、大動脈弁の著しい石灰化及び上行弓部大動脈のアテローム病変といった画像所見などを踏まえ、ハートチームが当該患者の脳卒中発生リスクを検討し、本品の使用を総合的に判断することが最善と考え、これを関連学会が作成する適正使用指針に反映することが妥当であると判断いたしました。
 また申請者は製造販売後においても、関連学会と協力し、本品の使用割合の確認及び今後のエビデンス蓄積を踏まえた適正使用指針の改定も含めて、本品の適正使用を担保していくこととし、当該方針は妥当と判断しました。
 次に製造販売後の安全対策について御説明いたします。資料33ページ、審査報告書31ページ、26行目から御覧ください。本品はTAVRに対する十分な経験を有する医師が、本品に関する適切なトレーニングを受けた上で、各種合併症に対応可能な施設において使用することが適切と考えます。
したがって関連学会と協力し、医師及び施設の基準、トレーニング内容並びに症例立合いを含めた市販後安全対策を適切に行うとの申請者の方針は妥当と判断し、これを承認条件として付すことといたしました。
 最後に使用成績評価について御説明いたします。資料35ページ、審査報告書33ページ、表20を御覧ください。本品について本邦での使用経験がないことから、製造販売後の使用成績調査において、製品トレーニングを含めた市販後安全対策及び適正使用指針を踏まえた患者選択の適切性を確認し、必要に応じて追加のリスク低減措置を講ずることが重要と考えました。予定症例数200例、調査期間を2年とすること、調査項目に設定された項目を含め、提示された計画案は妥当と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、資料37ページ、審査報告書35ページ、7行目より記載しております使用目的にて、本品を承認して差し支えないと判断し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。
本品は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。また、使用成績評価の調査期間は2年とすることが妥当と判断しました。
なお、薬事審議会では報告を予定しております。機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○小野部会長 御説明ありがとうございました。それでは、追加で参考人の七里先生から御説明等ございましたら、よろしくお願いいたします。
○七里参考人 よろしくお願いいたします。本日はこのような場で発言する機会をいただきありがとうございます。榊原記念病院の七里と申します。臨床の立場から本品の医療ニーズと期待について、少しお話させていただきたいと思います。
 我が国で行われている登録試験の結果から、このTAVRの処置において、1%から2%程度の脳梗塞を合併することが報告されています。先ほどもお話がありましたが、脳梗塞は急性期の予後を悪化させるのみならず、慢性期の機能障害を生じますので、施術を行う心臓外科医及び循環器内科医にとっては死亡に次ぐ大きな合併症と認識しております。
 このTAVRにおける脳梗塞の原因としては、上行大動脈から弓部大動脈にかけての石灰化病変やアテローム病変、あるいは、狭窄した弁の石灰化病変等に由来する塞栓物質等が主因として考えられております。本邦でのこの治療開始から10年ほど経過しますが、その間に、この脳梗塞の合併の頻度というのはほとんど変化がありません。すなわち、この脳梗塞の発生には手技の改善、デバイスの改良等は大きな影響を受けず、この手技の本質に伴うものであると考えられます。
 脳梗塞は御存じのとおり、発症すると非常に短時間に不可逆的な機能障害、あるいは生命に影響を与えますので、予防する以外に現実的な方法として、これを回避する手段がないというのが現状であろうと思います。このTAVRという処置の安全性が非常に高くなり、従来の手術が不可能な方から手術低リスクまでできるようになったにもかかわらず、この手技時の脳梗塞の発生頻度が変わらないということで、臨床的にはより大きな問題になってきていると考えています。これをどのようにするかというのは、まだ解決されていない課題となっています。
  先ほど、お話もありましたが、臨床とは無関係な無症候性の脳梗塞は、研究レベルでは半数以上に起こっていると考えられており、そういった意味において、この塞栓物質を捕捉するカテーテルには、臨床ニーズとしては大きなものがあると考えています。
 本品は、腕頭動脈と左総頸動脈に留置したフィルタによって、このTAVR時に生じる塞栓物質を捕捉するデバイスです。御紹介にありました欧米を中心に行われた臨床試験において、機能的な障害を伴う脳梗塞の予防効果が得られたことが報告されています。本研究の一番最初に設定されたエンドポイントではありませんが、臨床の場からは機能障害が回避できることは非常に意義のあることと考えています。
 この使用に際しては、本品が独特の構造を持っていることから、安全に国内に導入するということであれば、最初の時点では教育プログラムが必要であると考えます。これまでの海外での使用実績から、それをきちんと守れば安全に我が国でも使用できるものと考えています。
 最後に、このTAVR時の脳梗塞の合併を高い精度で予測できるスコアは確立されてはいません。したがって、どの方に本品をするかが問題となります。従来からリスク因子として報告されているものは多数ありますが、その中でも大きく確立されているものとしては、末梢動脈疾患の合併や慢性腎臓病の合併、脳梗塞の既往が挙げられるかと思います。また、実際の診療の場においては、術前に現在TAVRに際して必須の検査となっている心臓からアプローチ部位までの造影CTによって、必ず評価される上行大動脈から大動脈弓部にかけてのアテローム病変の評価が、非常に重要になると考えております。
 参考までに、TAVRを受けられる中でこの因子を保有している方がどのぐらいの頻度のであるかをお話させて頂きます。TAVRの試行例の10%程度が末梢動脈の既往をお持ちであったり、脳梗塞の既往歴をお持ちです。また、慢性腎臓病に関しては報告によって多少バラつきがありますが、多くの報告が半数を超えて、多いものは7割と言われておりますので、これらをどのように扱っていくかが非常に問題になると考えています。
 したがって、機構からの御提案のように、最終的にはハートチームで総合的に考慮して、本品の使用の有無を判断するというのが現時点では最高の策と考えています。また、本品の使用は1%から2%の発症率を予防するための追加処置となりますので、どの程度の使用率が適正かということの議論が必要と考えますし、それをどのような状況で使われているか、継続的にモニターしていくことも必要になると考えております。私からの発言は以上です。
○小野部会長 どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方から御意見、御質問等ございますでしょうか。Webの先生方は挙手ボタンを押していただければと思います。よろしくお願いいたします。田中委員、お願いいたします。
○田中委員 奈良県立医大放射線IVRの田中です。非常に重要なデバイスかと思って、導入することについては全く異論はございません。少し御質問したいことがあり手を挙げました。一つ目は、資料の10ページに外国における不具合の発生状況という表が掲載されていますが、その中に、抜去困難、引き戻し不可、実際、臨床で生じるとかなり大変な合併症につながる可能性があるような不具合が報告されていますが、これは3,000例の臨床研究の中には含まれていないという、そのような認識でよろしいですか。それ以外の報告でこのようなことが起こったということでしょうか。
○小野部会長 事務局、お答えいただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 田中委員、御質問いただき、ありがとうございます。
御質問は、P-TAVR試験の中で、こういったフィルタの展開不良や抜去困難な症例があったかという御質問と理解いたしました。今回、資料ですと、審査報告書21ページ、表11を御覧ください。P-TAVR試験における本品の手技情報として、本品の回収という一番下の行にありますが、こちらは99.9%成功していますが、一例の患者さんにおいて、回収ができなかったというか、不成功ということでカウントされております。
 具体的には、ディスタルフィルタを閉じることができず、ディスタルフィルタのハンドル部のスライダが破損したという事例となっております。ただ、この後、このデバイスについては全システムを全て回収したと報告もされており、当該患者が重篤な有害事象を発現したという報告もございませんので、そのような結果であったと理解しております。
○田中委員 1例ということですが、この表3には○例とあるので、恐らく、お聞きした臨床試験外で起こっている不具合の可能性があると把握しました。といいますのは、臨床試験結果も非常にニーズに即した結果が出ていますが、デバイスの信用性も含めて、このようなものがどういう状況で起こったかという情報をメーカーに提出していただき、把握できる範囲でしていただいたほうがいいのではないかと思いました。それが1点目です。
 2点目は、技術的にかなり難しい症例があるのではないかという心配です。循環器の先生のラディアールアプローチで血管造影はかなり慣れておられると思うのですが、右の腕頭から左の総頸に入れるような手技は余りコロナリーなアンギオでも今までされてこなかったように思います。そのような方が少ないように思いますので、脳外科の先生はよくカテーテル操作をされますので、その辺のハートチームということに、脳神経外科の血管内治療専門医の方等を含めるのかどうか等も含めて、実際、臨床の使用前に学会等で御検討をしていただければと思います。
 具体的にいえば、解剖学的に大動脈弓部のアーチングのタイプ3というかなり腕頭動脈が上行大動脈の低い位置で出るようなものは我々も難渋することの多いもので、このような特種なデバイスがうまく向けられるのかどうかも含めて、専門の病域の先生方と術前にディスカッションを十分していただくのが大事だと思いました。以上、2点です。
○小野部会長 田中委員、ありがとうございました。七里先生からこれに対して何かコメント、御回答はございますか。
○七里参考人 ありがとうございます。田中先生がおっしゃるとおりのところはあるかと思います。実際には、右の上腕、あるいは橈骨動脈から左内頸動脈や左鎖骨下動脈を写すこと、カテーテルの種類を変えて行うことは循環器内科もしておりますので、そこへのアクセスが余り大きく問題になることは、個人的には慣れた者であれば、ないと思っておりますが、合併症のことも含めて脳領域の先生方と事前に相談することは重要だと思いますし、先ほどもお話しましたように、TAVR前には必ず頭頸部、頸部から下の所は大動脈弓部を含めてCTによる評価を行っておりますので、そこの形態について脳梗塞がハイリスクと判断した場合は、ハートチームに含めてブレイン・ハート・カンファレスという名称のものもありますので、それを一緒に行っていく必要は十分に指摘してよろしいものだと思っております。
○小野部会長 ありがとうございました。それでは、永井委員、お願いいたします。
○永井委員 よろしくお願いします。今回の臨床試験では、全脳卒中で差がなく、障害を伴う脳卒中で差があったということでした。とすると、障害を伴う脳卒中の定義が非常にクリティカルですので、自分の理解のために御質問させてください。と申しますのは、脳卒中というのは、発症後は常に何らかの症状あるいは障害、言語障害、運動障害、構音障害等を伴うものであり、それらを伴わないものは脳卒中とは言わないわけです。
 この障害を伴う脳卒中というのは、どのように判断したのか。エンドポイントなのでプロトコルを細かく見れば書いてあると思うのですが、どの時点でどのような方法、例えば、NIHSSで、あるいはmodified Rankin Scaleで、或いは、いわゆるメジャーストロークなのか、マイナーストロークなのか、どのような定義で障害を伴う脳卒中と判断、診断されたのか教えていただければと思います。
○小野部会長 それでは、事務局から回答をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 永井委員、御質問をありがとうございます。障害を伴う脳卒中の定義ですが、modified Rankin Scaleで2以上、ベースラインより悪化した患者さんを障害を伴う脳卒中として定義しております。具体的なところですが、手技後に脳卒中と診断された被験者については、発症から30日後にMRS(modified Rankin Scale)を評価し、その30日後のMRSが2以上かつ各患者の脳卒中発症前のベースラインのMRSから少なくとも1カテゴリ­に増加が見られる場合に障害を伴う脳卒中と判断されています。
○永井委員 分かりました。一般的なクリアな定義だと思います。1か月後のmodified Rankin Scaleということであれば、それで結構かと思います。それが審査報告書に全く書かれていなかったので、どうなのかと疑問に思った次第です。
 それともう一つ。大動脈から剥がれた組織片にせよ、その近くにできた血栓にせよ、それが飛んでいって脳血管に詰まると脳梗塞になるわけですよね。どの血管に詰まるかによって症状、障害を来すかどうか決まるのであって、障害の程度というのは、必ずしも塞栓子の大きさで決まるわけではありません。今回のデバイスは、せめて大きい塞栓子はトラップできるだろう、できたのだろう、大きい塞栓子が飛べば障害も大きいだろうということで障害を有する伴う脳卒中が減ったと、そのような理解でよろしいのでしょうか。
○小野部会長 事務局からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。基本的に先生の御理解のとおりかと思います。今回、過去に実施されたセンチネル試験という臨床試験でも、比較的大きな塞栓物質、500μm以上のものも複数フィルタにトラップされていることは確認されているところですので、そちらも踏まえて、障害を伴う重症な脳卒中を低減することができたということが考えられます。
○永井委員 ありがとうございます。最後にショートコメントです。MRIでディフュージョンを撮られていなかったとのことですが、日本だと皆さんMRIを前後で撮ったり、ディフュージョンもそんなにハードルが高くないため、TAVRの前後のMRIで脳梗塞の数を数えたら、多分、クリアな結果が出たのだろうなと思いました。以上です。ありがとうございました。
○小野部会長 ありがとうございました。それでは、富田委員、お願いいたします。
○富田委員 富田です。今の御質問とも関連するのですが、捕捉しそこなった原因が塞栓子の大小によるのか、このシステムですとバーテブラ(椎骨動脈)は裸の部分もありますので。プロテクションデバイスの中には、頸部分枝全部をカバーするようなデバイスもあったかと思うのですが、その辺の有効性というか、捕捉し損なうことの細かい原因の解析ないしは、この頸部分枝を全部カバーしたほうがいいのかどうかというような辺りについて、何かデータはありますでしょうか。
○小野部会長 ありがとうございます。事務局、今の富田委員の御質問内容にお答えできるようなデータ等はございますか。
○医薬品医療機器総合機構 富田先生、ありがとうございます。先生も御理解のとおり、本品はTAVR中に使用するものですが、腕頭動脈と左総頸動脈にのみ留置するもので、左鎖骨下の動脈はカバーできないような設計になっております。ただ、本品の設計としては、脳に行く血流のうち、腕頭動脈と左総頸動脈に本品を留置することで90%はカバーできていると考えておりますので、その残りの10%、左鎖骨下から行くもの、あと、フィルタには穴も空いておりますので、小さいもの、フィルタの穴よりも小さいものは通ってしまうこともありますので、そういった点では、そもそも、全ての塞栓物質を捕捉できるようなデバイスではないということがございます。
○小野部会長 ありがとうございます。今、富田委員がお聞きになったのは、いわゆる、このSENTINELというデバイスと頸部の3分枝全部をプロテクトするほかのデバイスがあるわけですが、その辺の保護効果の比較みたいなものはありますかということです。
○医薬品医療機器総合機構 別製品で本品のようなフィルタ型ではないのですが、おっしゃっていただいたように、3分枝をカバーするように留置するデバイスが海外で開発されていることは認識しています。ただ、こちらについては臨床開発中で、まだ米国でも認可されていない状況と認識しておりますので、3分枝をカバーすることの有効性及び安全性は、今後の海外の試験データが待たれるところと考えます。
○小野部会長 ありがとうございます。富田委員、よろしいでしょうか。
○富田委員 ありがとうございます。結構です。
○小野部会長 続いて、北澤委員、お願いいたします。
○北澤委員 北澤です。審査報告書の34ページ、緑のページ番号でいうと36ページのところからですが、本品は国内での使用成績がないので、実際には承認後に使用成績調査を行うと書いてあり、次ページの承認条件には、関連学会との協力で適正な使用指針を作って、それを周知し、というようなことが書いてあるのですが、その中で、日本の患者さんにおいて、今回の臨床試験で示されたような脳卒中の発生が減るのか、あるいは、施設によってどのように成績が違うのか、例えば、今回の場合ですと、適応される患者が、例えば、ある一つの施設ではとても多いが別の施設では少ないとか、それによって治療成績に施設間格差があるのかとか、そういったことを調べるのでしょうか。使用成績調査の方法について、今、分かっている範囲で教えていただけたらと思います。お願いします。
○小野部会長 それでは、事務局から回答をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。今回、PMSにおいて、各施設における使用状況というものも確認させていただくように計画されております。実際、患者背景などの情報を収集するのですが、その中で、なぜ、この患者を選択したかという患者選択理由も集めることになっております。
 もちろん、本邦での使用は初めてになりますので、有害事象や脳卒中がどれぐらい発現するかといったところも成績としては集め、P-TAVR試験と同様の効果が得られるかというところは確認する予定です。
○小野部会長 ありがとうございます。ほかに委員の先生方から御質問ございますでしょうか。宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 少し七里先生に教えていただきたいのですが、22ページの上段に手技情報として書いてあります。このTAVRの手技で、実際にこのカテーテルを挿入する時間帯というのは、この手技情報によると大体、28.9±16.6ですが、日本の状況において、それ以上長くなる状況というのは、ある程度、考えられるのでしょうか。
○七里参考人 ありがとうございます。今回のP-TAVR試験に参加した、本品を使用した群と対照となった通常のTAVRの群の手技時間は、大体、我が国における比較的ハイボリュームといわれるTAVRの症例数をこなしている所の標準的な数字になってくるかなと思います。
 実際に、当院のボリュームの所で対照群ぐらいの手技時間で一般的にTAVRを行っております。医療制度が少し違いますので、全ての我が国の施設に該当するのかどうかは方法論として出てくる部分はありますが、概ね、我が国の6割、7割ぐらいのボリュームに当たるぐらいの施設においては、大体、これぐらいの示された数字の処置時間になるのではないかと感覚的には思っております。
○宮川委員 ありがとうございます。今、北澤委員も御発言されましたが、施設の所、ハイボリュームみたいな形で、非常に手技に慣れている所ならいいのですが、そうでない所では、やはり、この手技の中でフィルタをかける時間が長ければ長いほど、そのような意味では脳血流の自己調節能の低い患者さんには、ある程度、侵襲があることを考えざるを得ないというところです。この審査報告書の中には、2時間半から3時間であれば問題ないと書いてあるのですが、やはり、そのフィルタが500μぐらいのところで、それから、血栓塊がたくさん詰まるという状況になると、最後のほうはかなり血流が落ちてくるという形になります。そういう意味では、左の総頸、右の総頸みたいな、ある程度、そこでは90%近くの血流量を占める所なので、それが余り長くなるような手技が慣れていない所ですと、患者さんの前の段階での合併症、それからリスクのことを考えると、そのようなところも少し明記して、この手技の時間帯ということもしっかりと考慮するようにというようなコメントも中に入れていただけると非常に有り難いと思うので、是非、それは考慮していただきたいと思います。
○小野部会長 ありがとうございます。事務局から今の要望に対していかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 宮川先生、ありがとうございます。コメントを頂いたところは、大変、重要なことだと思っております。実際に、トレーニング資料等にそういった点も盛り込んで、ハイボリュームでないような、少し慣れていないような施設においても、きちんと一定の手技を保てるように、企業にも関連学会にも協力を依頼したいと思います。ありがとうございます。
○宮川委員 ありがとうございます。
○小野部会長 ありがとうございます。そうしましたら、私からも追加で今の宮川委員の質問にも関連するのですが、新しいデバイスというのは、当初、ハイボリュームセンター、それなりの手技的に確立して安全にできる病院から始めていき、順次、拡大をしていくのが一般的な進め方だと認識しておりますが、本品においても同様の措置といいますか、方式で施設の拡大を図っていくという方向になっているのか。その辺の一般化の進め方のスキームというのは、どのようになっていますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。おっしゃっていただいた点ですが、きちんと企業のトレーニングを実施していただいた施設から導入していくことにはなるかと思います。もちろん、最初は、ハイボリュームセンター等の手技に習熟している施設から、順次、登録は開始していくと、企業からも伺っているところです。
○小野部会長 ありがとうございます。ほかに委員の先生方から御質問、コメント等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。「医療機器SENTINEL 脳塞栓保護デバイス」について本部会として承認を与えて差し支えないものとして、かつ生物由来製品及び特定生物由来製品としては指定しないということでよろしいでしょうか。
 それから、もう一点は、使用成績評価の期間は2年、200例ということも同時に書いてありましたが、2年として指定することでよろしいでしょうか。御異議のある先生方は御発言をお願いいたします。
特に、御異議はないようですので、そのような形で議決をしたいと思います。なお、本件は、審議会で報告を行うこととなっております。以上をもちまして議題1の審議を終了いたします。七里先生、御出席どうもありがとうございました。
── 七里参考人退室 ──
○小野部会長 それでは議題2「医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」に入りたいと思います。それでは事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題2につきまして、資料2に基づき御説明させていただきます。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器があり、新たに一般的名称を新設する際には、「いずれのクラス分類に該当するかについて」、また、「その保守管理に専門的な知識を要するものとして、特定保守管理医療機器に指定するか否か」について、御審議いただいております。
 1ページの「新設する一般的名称(案)について」を御覧ください。新設予定の一般的名称は、「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」、その定義は、「モノクロ医用画像表示用で、DICOM規格のGSDFの階調特性に調整するキャリブレーション機能を持つものであって、それにより画像表示の一貫性を確保し、マンモグラフィー、CTやMRI、CRなどのデジタル画像を表示して診断に用いられるものをいう」です。
 3ページに、「新一般的名称が付される予定の品目概要があります。本品は、入力された映像信号に合わせて液晶パネル上の各画素を光らせることによって、画像として可視化させるもので、各画素は本装置内部の映像信号処理によって、GSDFの階調特性に変換された輝度で光ります。GSDFにキャリブレーションする際には専用のセンサーとソフトウェアを使用し、各階調の輝度を高精度で設定することができるというものです。
 1ページに戻っていただきまして、(参考)に記載されております類似の一般的名称としては、「画像診断用イメージャ」、「スクリーン型医用X線・画像診断用フィルム」、「モーターなし画像診断用観察装置」がありますが、本品は、これら3種類の機器の機能を合わせ持つこと、また、画像表示の一貫性を確保するためのGSDFキャリブレーション機能を持つことが特徴で、既存の一般的名称のいずれにも該当しないため、今回新設することとなりました。本品はクラス1、一般医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については該当と考えております。御説明は以上になります。
○小野部会長 ありがとうございました。それでは委員の皆様方から、御意見、御質問等はございますでしょうか。清水委員、よろしくお願いいたします。
○清水委員 清水です。よろしくお願いします。ちょっと確認なのですが、いろいろな一般的名称が、いずれにも該当しないと考える理由の真ん中辺りに、「本品目は、これら3機器の組合せにより実現できる」と書いてあるのですが、例えば「本機器」とおっしゃっているものは、画像診断用イメージャにあるような、取り込んだ画像を画像記録用フィルム上で再生するとか書き込むとか、そのような機能も合わせ持っているという、そういう御説明でしょうか。
○小野部会長 それでは事務局のほうから、御回答をお願いします。
○事務局 ありがとうございます。事務局です。ここで3種類の機器の機能を合わせ持っていると説明しましたのは、実際に撮影した後のデータを、何らかの形で画像として表示するという意味で、イメージャの機能を合わせ持っているという御説明を差し上げたところです。
○清水委員 ありがとうございます。その資料のほうの後ろを見ても、これはモニターとしての機能しかないものだと、ディスプレイとしての機能しかないものだと思われますので、イメージャにあるようなデジタル画像信号を「取り込み」とか、「書き込む」というような機能まで含んでいるような説明というのは、ちょっと違和感を覚えましたので、コメントさせていただきました。
○小野部会長 ありがとうございます。事務局のほう、いかがですか、今の御意見に対して。
○事務局 事務局です。ありがとうございます。今回の品目はディスプレイですので、確かに書き込む、というところまでの機能はありませんので、御理解のとおりかと思います。ありがとうございました。
○小野部会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入りたいと思います。「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」を、一般医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としても指定するということでよろしいでしょうか。御異議のある委員の先生方は御発言をお願いいたします。
特に御異議はないようですので、そのように議決をしたいと思います。本件は審議会にて文書報告を行うことになっております。以上で議題2を終了いたします。
 それでは引き続き議題3、「医療機器の再審査結果の報告について」に移りたいと思います。まずは事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より御説明させていただきます。議題3につきまして、資料3に沿って御報告いたします。再審査制度につきましては、平成25年改正以前の薬事法第14条の4の規定に基づき、新医療機器等を対象として再審査期間を定め、承認後の使用成績の調査を行うものでして、その調査結果に基づいて有効性及び安全性の再確認を行うことを目的とした制度です。
 はじめに資料3の1ページを御覧ください。今回、再審査の対象となった製品は3品目ありまして、マル1「XIENCE PRIME薬剤溶出ステント」マル2「XIENCE PRIME SV薬剤溶出ステント」及びマル3「XIENCE Xpedition薬剤溶出ステント」です。申請者はいずれもアボットメディカルジャパン合同会社です。
 マル1の品目は、新規冠動脈病変を有する虚血性心疾患患者の治療に用いられる薬剤溶出型ステント、(以後はDrug Eluting Stent」を略して「DES」と言います)。このDESとモノレール型のデリバリーカテーテルからなるステントシステムです。またマル2の品目は、本品マル1に含まれない比較的小さい血管径に使用するDESで、そしてマル3の品目は、本品マル1及びマル2の後継品として、デリバリー性能の向上を目的に開発が行われた製品です。
 本邦での臨床使用下における有効性・安全性を確認するということを目的としまして、1ページの最下段に記載されております期間で再審査が行われたものです。
以降、再審査の概要について御説明させていただきます。はじめに5ページ~7ページを御覧ください。こちらに、それぞれの調査の症例構成をまとめております。マル1の調査におきましては、トータルで536例、マル2の調査におきましては312例、マル3の調査におきましては100例の患者さんが登録されました。
 それでは調査の成績につきまして、まずは安全性についてから御説明いたします。資料の12ページの(5)安全性の項を御覧ください。本調査における安全性に係る評価項目といたしましては、主要心血管イベント(MACE)、標的病変不全(TLF)などからなる複合評価項目です。
 マル1の調査におきましては、MACEの発生率は8か月時点で1.9%、1年時点で4.7%、5年時点で9.7%、TLFの発生率は、8か月時点で1.2%、1年時点で4.3%、5年時点で8.6%という結果でした。マル2及びマル3の調査におきましても、おおむね同程度の発生率となりましたので、詳細は割愛させていただきます。
 続いて13ページにおきまして、本品又は手技との因果関係が否定できない有害事象の発現状況を記載しております。それぞれの調査におきまして、合計49件、41件、22件の有害事象が報告されておりまして、いずれの調査におきましても最も多く認められた事象としては、冠動脈再狭窄の事象でした。
 続いて、その下の機器の不具合についてです。こちらはマル1の調査におきまして、デリバリーシステムの標的病変不通過が1件、バルーン破裂が1件、留置後のステント損傷・変形が2件見られましたものの、マル2及びマル3の調査におきましては、本品の不具合は確認されませんでした。
 続いて、その下の重点調査事項としておりますステント血栓症について説明をします。本品留置後のステント血栓症につきましては、調査マル1については合計で13件、調査マル2におきましては12件、調査マル3では4件認められております。5年累計での発生率を算出しますと、2.4%~4.0%という結果でした。
 続いて有効性について、御説明いたします。資料の14ページの(6)有効性の項を御覧ください。本品マル1~マル3の調査におきまして、それぞれ585病変、378病変及び120病変の血管造影データにつきまして、QCA解析が実施されました。血管の径の狭窄度につきまして、それぞれの調査において手技前にはおよそ70%前後狭窄していた血管が、手技の直後には約20%~30%弱まで改善いたしまして、また手技後8か月でも開存が維持されていることが、本調査により確認されました。またLate Loss(つまり遠隔期内腔損失)といたしましても、およそ0.22mm~0.28mmという結果でした。
これらの成績につきまして、御参考までに本品の承認申請時に提出された臨床試験や、既承認DESにおける調査と比較した表を、資料の16ページの(8)以降にお示ししております。
 これまで得られている臨床成績とは、試験のデザインや患者さんの背景などが全く同一というわけではありませんので、これらの結果と直接比較するということは困難ですが、本品の承認申請時に提出された臨床試験や、既承認のDESの調査を横目に見ましても、本品の成績は大きく劣らないものと判断しております。
 続きまして、本品に付された承認条件について、資料の19ページ、20ページより御説明いたします。本品マル1~マル3の各製品につきまして、3点ほど承認条件を付しております。1点目が承認申請時の臨床試験における患者さんの予後について経年報告をすること、2点目が使用成績調査を実施すること、そして3点目が、国内において発生したステント血栓症について速やかに報告すること。以上の3点を承認条件として付しておりました。
 今回の使用成績調査の総合評価といたしまして、薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当せず、使用目的又は効果、使用方法などの承認事項について、変更の必要がないカテゴリー1と判断しておりますので、それぞれの承認条件についても解除とすることが適切と判断しております。
 最後に、資料の20ページの8項を御覧ください。関連するその他のDESの承認条件について、併せて御説明いたします。今回の調査対象である3品目の後継品に当たります「XIENCE Alpine薬剤用出ステント」と「XIENCE Sierra薬剤溶出ステント」の2品目に関しまして、再審査は課されておりませんが、ステント血栓症が発生した際の速やかな報告につきまして、承認条件を付しております。
 これら2品目につきまして、これまでの報告から、まず「XIENCE Alpine薬剤用出ステント」に関しましては、ステント血栓症の発生率が0.0151%であり、「XIENCE Sierra薬剤溶出ステント」につきましては、0.0117%ということから、これら2品目につきましても、特有の発生傾向は認められていないと考えております。したがいまして、後継品であるこちら2品目の承認条件につきましても、解除とすることが適切と判断しております。以上、議題3の再審査の御報告とさせていただきます。
○小野部会長 ありがとうございました。委員の皆様方から何か御質問、御意見ございますでしょうか。塩谷先生、どうぞ。
○塩谷委員 ステント狭窄であったり、血栓症が起こらなかったということで、問題はないと思いますが、これは恐らく、抗血小板薬等が投与されて、予防されている結果と思われます。脳出血であったり、重大な腸管出血、抗血小板薬投与に伴う有害事象の発生頻度については、いかがだったのでしょうか。
○小野部会長 事務局のほうから御回答をお願いいたします。
○事務局 御質問ありがとうございます。それら有害事象に関しましても、資料13ページの有害事象の発現状況のほうに記載しております。こちらの発生率に関しましても、本品の承認されたときの臨床試験と大きく遜色のない結果でした。
○小野部会長 よろしいでしょうか。
○塩谷委員 承知しました。出血に関しても、一応調査はされているというような理解でよろしいでしょうか。
○小野部会長 事務局のほう、お願いいたします。
○事務局 ありがとうございます。資料の14ページに、抗血小板薬に関連する有害事象ということで、おまとめしておりますので、そちらを御覧いただければと思います。そちらのほうに発生率、件数を記載しております。
○塩谷委員 承知いたしました。ありがとうございます。
○小野部会長 ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ、これで議題3につきましては終了となります。ありがとうございます。
 続きまして議題4、「プログラム医療機器調査会における審議結果について」に移りたいと思います。まずは事務局より、御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。本年5月9日のプログラム医療機器調査会において御審議いただきました、「医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否」について、御報告いたします。
 資料4-2、1ページを御覧ください。今般、新たな医療機器の承認に際し、一般的名称の新設が必要なものが1件ありました。新設する一般的名称は、「体動情報解析プログラム」、その定義は「体動センサ等から得られた体動情報をさらに処理して、診断等のために使用する医療機器プログラム。通常、睡眠時等に検知される体動信号を解析し、患者の疾病診断等に用いるプログラムをいう。当該プログラムを記録した記録媒体を含む場合もある。」となります。
 1ページ、下方の(参考)に示しているとおり、これまでも体動情報を含む複数の生態信号情報を処理して診断等に用いるプログラムや、体動の有無を検知する製品はありましたが、体動センサから得られた体動情報を解析の主としてさらに処理し、睡眠時等の患者の状態判定の支援等に用いるプログラムについては、既存の一般的名称には該当しないため、新設をする必要があると判断いたしました。
 3ページ、品目概要を御覧ください。「5.構造・原理の概要」に記載のとおり、本品目は就寝中に体動センサから得られた体動信号を解析し、呼吸が乱れている時間に基づき指標化された呼吸安定時間(RST)を算出するプログラムです。RSTは同じ様式の呼吸が何秒間継続するかという観点から、呼吸の安定度を示す定量指標として、申請者が独自に定めた指標となっており、基礎研究や臨床研究等において、心不全増悪を予見するための指標として開発されてきました。
治験では、RSTを用いて、心不全増悪を臨床上意義のある管理ができるところまでは検証できませんでしたが、心不全増悪との一定の関連が評価可能であったことから、プログラム医療機器の2段階承認に係る通知に基づき、まずはRSTの値を算出するプログラムとして、第1段階での承認を目指すことで申請されました。
次に、資料4-1を御覧ください。右から2番目の欄に、5月9日のプログラム医療機器調査会で、委員の先生方から頂いた主な御意見をまとめております。調査会では、本一般的名称が付される予定の品目について、寝返りや呼吸リズムなど小さい揺らぎを含めて、どの程度検出できるのか。また、心不全等との関係性を、現段階で想定しているのは危ういのではないかといった御意見を頂きました。
 これらに対し事務局からは、本品は厳密には呼吸を精度良く検出するものではなく、あくまでも体動から呼吸が安定している時間を算出するものに過ぎないこと。また、これまで臨床研究を通して、関連性がありそうだというところは確認されているものの、現時点では確立したものではないと理解している旨、御説明させていただきました。
 なお、本品の使用に当たっては、RSTの臨床的な意義は、まだ確立されていないことを明確にした上で、臨床試験で得られたRSTと心不全による入院・死亡の日数の関係を情報提供する予定です。新設する一般的名称、「体動情報解析プログラム」は、クラスIIの管理医療機器に指定し、特定保守管理医療機器に指定しないことが適当との審議結果を頂きました。報告は以上です。
○小野部会長 ありがとうございます。それでは委員の皆様から、御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。特にないようであれば、これで議題4を終了いたしたいと思っております。
本日の用意した議題は以上でございますが、事務局より、その他、連絡事項等ございますでしょうか。
○事務局 委員の先生方におかれましては、本日、御多忙の中、本部会に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。次回の部会でございますが、8月23日金曜日16時からを予定しております。詳細につきましては後日また、メール等で御連絡させていただきます。連絡事項は以上でございます。
○小野部会長 それでは、これをもちまして、本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会したいと思います。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬局

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長 冨田(内線4226)