2025年1月21日 第192回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和7年1月21日(火) 14:00~16:00

場所

AP虎ノ門Bルーム
(東京都港田区西新橋1-6-5 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、川田委員、神吉委員、佐藤(厚)委員、水島委員
労働者代表委員
川野委員、櫻田委員、冨髙委員、藤川委員、水野委員
使用者代表委員
鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、佐々木総務課長、澁谷労働条件政策課長、田上労働条件確保改善対策室長、中島企画調整専門官、小嶋労働条件企画専門官

議題

  1. 労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について
  2. 労働基準関係法制研究会報告書について(報告事項)

議事

議事内容
 
○荒木分科会長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまから第193回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 なお、本日の分科会は会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方での開催ということにさせていただきます。
 議事に入ります前に、本分科会委員の交代について事務局より紹介をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
 本分科会委員の交代につきまして御報告いたします。
 お手元の参考資料No.1として「労働条件分科会委員名簿」を配付してございます。
 公益代表の両角道代委員が御退任され、昨年9月20日付で御就任いただきました東京大学大学院法学政治学研究科教授、神吉知郁子委員です。
 神吉委員、よろしくお願いします。
○神吉委員 このたび、公益代表委員を拝命いたしました東京大学の神吉知郁子と申します。労働法を専攻しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○労働条件企画専門官 ありがとうございます。
 続きまして、本日は欠席でございますが、昨年12月17日付で労働者代表2名の交代がございました。お名前のみ御紹介をさせていただきます。
 労働者代表の西尾多聞委員が御退任され、UAゼンセン会長代行、古川大委員。
 同じく労働者代表の大崎真委員が御退任され、全国生命保険労働組合連合会中央書記長、松田惣佑委員に御就任をいただいております。
 事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 本日の委員の出席状況ですが、公益代表の安藤至大委員、黒田祥子委員、藤村博之委員、労働者代表の古川大委員、松田惣佑委員、世永正伸委員、使用者代表の田中輝器委員が御欠席と承っております。
 カメラ撮りはここまでということでお願いします。
(カメラ退室)
○荒木分科会長 それでは、議事に入ります。
 本日の議題の1は「労働政策審議会労働条件分科会運営規程の改正について」です。
 事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の五百旗頭でございます。
 資料のNo.1について御説明を申し上げます。
 こちらは、事業性融資の推進等に関する法律の附帯決議に対応する場として新しい部会の設置をお諮りするものでございます。
 「設置の趣旨」でございまして、こちらは金融庁の法律になりますが、令和6年の通常国会で成立をいたしました、事業性融資の推進等に関する法律の附帯決議におきまして「「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」については、政府において、専門的な検討の場を設け、新たな企業価値担保権の創設を踏まえて必要な見直し等を行うこと。加えて、合併・事業譲渡をはじめ企業組織の再編に伴う労働者保護に関する諸問題については、その実態把握を行うとともに、速やかに検討を進め、結論を得た後、必要に応じて立法上の措置を講ずること。」とされました。これを受けまして、労働政策審議会労働条件分科会の下に「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」を設置いたしまして、先ほど申し上げました附帯決議に沿った検討を行うことを考えております。
 「部会の事務」といたしましては、企業組織の再編に伴う労働関係の調整に関する専門の事項を御審議いただきます。
 「部会の構成」につきましては、労働者代表委員及び使用者代表委員をそれぞれ4名、公益代表委員5名の合わせて13名で構成いたします。
 「部会の運営」につきましては、労働基準局労働関係法課が行います。
 おめくりいただきまして、運営規程の改正案になります。
 赤字部分がその該当になりますが、新たに設ける部会として企業組織の再編に伴う労働関係の調整に関する専門の事項を審議させるため、組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会を置くということで追記をさせていただいております。
 また、参考資料の2を御覧いただけますでしょうか。横置きの資料になります。資料の束の後ろのほうにつけております。
 こちらは、下の箱のところに当面のスケジュールを記載しております。令和7年3月下旬を目途に第1回を開催いたしまして、同じ年の秋を目途に事業譲渡時の労使コミュニケーション等に関して事業譲渡等指針の必要な見直しを行った上で、少しお時間を頂戴いたしまして一番下の○のところに書いておりますが、海外における組織再編に関する法制度や実務の実態等を把握いたしまして、これらを基に令和8年度以降、労働契約の承継等組織再編に伴う労働者保護に関する諸問題についての検討をさせていただくようなスケジュールを考えてございます。
 また、オブザーバーといたしまして、事業性融資の推進等の法律を所管しております金融庁等にも参加を求める予定でございます。
 裏面には、部会設置後の労働条件分科会の組織図がございますので適宜御参照いただければと思います。
 御説明は以上となります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明について御質問、御意見があればお願いいたします。
 なお、オンラインで参加の委員の皆様におかれましては、発言希望の旨をチャットのほうに書き込んでお知らせください。どうぞ、どなたからでもお願いいたします。
 使用者側の鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 この運営規程の改正は国会の附帯決議を踏まえたものであるということと、組織再編に伴う検討は以前にもあったと思いますけれども、それからかなり時間もたっているということから異論はございません。これに関連しまして、私から企業価値担保権について少し発言させていただきたいと思います。
 経団連では2022年に「スタートアップ躍進ビジョン」という提言を公表いたしまして、その中でスタートアップがデットファイナンスを円滑に行えるよう、企業価値担保権の創設を求めたところでございます。法律が施行した暁には、有形資産に乏しいスタートアップなどが円滑に資金調達をすることができる有力な選択肢になるものと大いに期待をしているところでございます。
 企業価値担保権につきましては、担保権設定をする際や実行時などにおきまして労働者保護に資する内容が多く盛り込まれているものと理解をしております。例えば、金融審議会の「事業性に着目した融資実務を支える制度の在り方等に関するワーキンググループ」の報告書によりますと、この担保権設定の目的というのは事業成長担保権者が労働条件等に影響を及ぼすものではないことが明記されておりますほか、担保権実行時に関しまして事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを一般原則とすることが法律に規定されている旨、財務大臣が国会で答弁されているところでもございます。
 部会では、企業価値担保権が労働者の保護に相当程度配慮した内容を含むということを踏まえた議論が行われることを期待するところでございます。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今後、設置される部会で具体的な議論が行われると思いますけれども、私のほうからも検討に当たって重視すべき点について意見を申し上げたいと思います。
 企業価値担保権は、労働契約を含む企業の総財産を担保に取るということでございまして、当然、担保権が実行された場合には借り手企業の労働者の雇用または労働条件に大きな影響が及ぶことが懸念されます。通常の事業譲渡でも譲渡契約の内容次第で雇用や労働条件が大きく左右され、一部の労働者が不採算部門に取り残されて、リストラに遭うといった雇用に影響が出るケースも見られるところです。
 先ほど御説明で触れていただきました附帯決議は、事業性融資推進法に付されたものですが、企業価値担保権の活用時にとどまらず、企業組織の再編全般について検討を求めているものでございます。
 現状では事業譲渡・合併時の労働者保護に関するルールは、指針にとどまっておりまして、労働契約の承継や労働組合等との協議、こうした労働者保護に関する法整備は全く進んでいないと捉えています。
 近年、M&Aの件数が増加をしているということ、また厚労省での前回の検討から10年ほど経過をしているということで、指針の見直しというような単なるびほう策にとどまらず、改めて再編時の労働関係の実態を把握した上で、組織再編全般に関する労働者保護ルールの法制化に向けた検討を進めるべきだと考えているところでございます。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 オンラインのほうから、松永委員お願いいたします。
○松永委員 ありがとうございます。
 今回新設される部会の議論に当たってということで、一言コメントさせていただきたいと思っています。
 企業再編における労働者保護の課題ということですけれども、この議論についてはぜひとも実態を踏まえた検討が進められるべきかと思っています。企業再編のケースも案件ごとに様々あると思っています。例えば、多角経営の企業が一つの事業部門を独立させて、経営効率の向上という観点で競争力を高める目的で行うようなケースもありますし、逆に経営の悪化に伴って事業再編(通信切断)特に後者の場合は残念ながら業績悪化ということに関してはそのような形で企業再編が行われるに際しては、一方で雇用されている従業員の皆さんには新たなチャンスの提供ということで雇用が守られる機会というふうに捉える考え方もあると思っています。
 ですので、新設される部会の議論ではこのような企業再編の多様性ですとか、それぞれの効果、役割など、実態を踏まえて、円滑な企業再編と労働者の保護の両方とよく調和の取れた議論が進んでいくことを期待しています。
 私のほうからは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 御意見をいただきましたけれども、提案されている分科会の運営規程については特段の異論がないというふうに受け止めましたが、そういうことでよろしいでしょうか。
 それでは、分科会の運営規程についてただいま御説明があった改正案のとおり改正することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、分科会の運営規程の改正案については了承されたということといたします。
 次の議題に移りますが、説明者が交代しますのでしばしお待ちください。
(説明者交代)
○荒木分科会長 それでは、議題の2「労働基準関係法制研究会報告書について」、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 労働条件政策課の田上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料は、資料No.2と参考資料No.3でございます。1月8日に発表になりました労働基準関係法制研究会の報告書について御説明をいたします。
 まず参考資料についてでございますが、こちらの資料に関しましては研究会の趣旨、目的の概要ですとか報告書の概要抜粋版、それから研究会で使用されました参考資料としての文章のまとめですとかデータといったようなもの、それから最後のほうにこの研究会の発端となりました働き方改革関連法の附則ですとかその当時の附帯決議、それから関連する閣議決定、こういったものをまとめた参考資料となっておりますので、必要に応じて御参照いただければと思います。
 それでは、報告書本体のほうについて御説明をいたします。
 報告書でございますが、全部で大きく4つの節に分かれております。「はじめに」のところで労働基準関係法制全体の課題の提示をし、2番目の総論的課題のところでおのおのの制度に共通するような課題についての御議論があり、3番の具体的課題で個別の制度についての御議論があり、そして最後に「おわりに」でまとめるというような形としております。
 まず、お開きいただきまして3ページ、「はじめに」でございます。
 「はじめに」の最初のところ、まず「労働基準関係法制の意義」ということで、法律の立てつけと、そこから見受けられる課題について論じた部分でございます。研究会の中におきまして今回対象とするものといたしまして、個別的労働関係に関する法律を念頭に議論をするということをまず最初に提示をしております。
 この中身ですが、2段落目以降のところでございます労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法といったようないわゆる公的な手段によって実効性を担保する法律、それから労働契約法に代表される個別の労働関係の安定を図るもの、それから労働時間等設定改善法に代表されます使用者による労働時間等の設定改善に向けた自主的な努力を求めるような法律、そしてまた法律ではないがガイドライン等の形で労使に自主的な改善を促すようなもの、こういったもの全体を広義の法制の範囲に含まれるものとしてこの研究会では議論の対象としたところでございます。
 また、そういった政策の実現手法としましても、下の段落のところでございますが、いわゆる労働基準監督署による指導・監督といったもののほか、自発的な法目的の実現の促進を図る手法、労使当事者や労働市場によるモニタリングを通じた実現など、様々な手法も考慮しながら検討するというふうにされております。
 3ページの下のところから、現下の情勢についての分析の部分でございます。ここの節につきましては1947年、労働基準法が制定された当時の状況から技術の進展や人口構成の変化、働き方の多様化といったような変化を踏まえて1980年代後半でどのような動きがあったか、その後、現在に至るまで社会経済の構造の変化がさらに加速しているといったようなところを分析している節でございます。
 4ページの下のところですが、こうした社会経済の構造変化も踏まえつつ、労働基準関係法制の将来像について抜本的な検討を行う時期にきているというふうにされているものでございます。
 こういった情勢判断を基にしまして5ページ目、まず構造的課題がどこにあるのかということを3番のところで論じております。
 労働基準関係法制の見直しに関しては、労働者の働き方の多様化に対応する形でこれまで規制の多様化も行われてきた。ただ、一方でその真ん中の部分ですが、規制の内容が複雑化し、労働者にとっても使用者にとっても分かりづらいものとなっている現状もある。したがって、保護が必要な場面ではしっかり労働者を保護できるように原則的な制度をシンプルかつ実効性のある形で法令において定めるということ。その上で、労使の合意の下、一定の手続で個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせた調整・代替といったようなものを可能とすること。こういったようなことが必要ではないかということがまず示されております。
 それに当たって最後の部分、「一方で」のところでございますが、現在の過半数代表を軸とした労使コミュニケーションには課題も多いということで、実効的な労使コミュニケーションを確保する方策が必要だろうと論じられているものでございます。
 こうした構造的課題を踏まえまして、この研究会での目的・研究の視点というものをまとめたものが4番でございます。
 まず、この研究会に先立ちまして一昨年、「新しい時代の働き方に関する研究会」というものを開催しておりました。こちらの報告書が一昨年の10月20日に取りまとめられておりますが、この中では、全ての働く人を「守る」ということと、働く人の多様な希望を「支える」ということ、この2つが柱として取りまとめられたというものがございます。こういった視点というものも踏まえながら、社会経済の構造変化に対応すべくということで、現在直面している厚生労働行政の課題を踏まえて喫緊に対応しなければならない課題にどのようなものがあるか、専門的な見地から研究し、報告するということを研究会の目的としたということでございます。
 最後の部分は、働き方改革関連法の施行から5年が経ったということで、それに関する見直しも含まれていますということが記載されております。
 6ページ目、5番の検討の柱というところでございます。
 こうした構造的課題、それから視点を踏まえまして、検討の柱としてどう考えるかという部分でございます。先ほど出ました「守る」という視点、「支える」という視点というものを踏まえながら、7ページ以降に4本の柱が立っているというものでございます。大きく分けると総論的課題で3つ、具体的課題で1つということとなっております。
 7ページに移っていただきまして、その柱の部分でございますが、まず総論的課題の1番としまして(1)-1「労働基準法における「労働者」について」というものでございます。
 労働基準関係法制の対象者は当然労働者ということでございますが、その労働者であるか、そうでないかという判断基準に関しましては、1985年の労働基準法研究会の報告にあります「労働基準法の「労働者」の判断基準について」、これを参考に個別の働き方について行政においても司法においても判断がされているというものでございます。
 一方で、この研究会の報告から約40年が経過をしておりまして、その間の働き方の多様化、プラットフォームエコノミー等々、新しい働き方の発展、またAIやアルゴリズムといったようなものが労務管理に入ってくるというような動きも出ているところでございます。
 こういった中で、新しい時代や技術に対応した労働者と非労働者の境界をどう判断していくのが望ましいか、こういう検討が必要であろうということで、研究会では労働基準法における労働者の概念について検討しようと、これがまず1つ目の柱でございます。
 2つ目、「労働基準法における「事業」について」、8ページの上のところでございます。
 労働基準法の適用単位は「事業」であり、「事業場」でございます。企業全体ではなく、それぞれの事業場を捉えているというものでございます。ここで言う「事業場」は場の概念を合わせて捉えているというものでございますが、働く場所というものについても近年の変化は非常に大きいということで、場所にとらわれない働き方というものも拡大をしてきているというのがまず1つ、状況としてございます。
 加えて、デジタル技術の進展等も含めまして、労働条件に関して事業場単位を超えて企業単位で統一的な内容を定めるといったようなことも出てきている中で、事業場ごとに細かく労務管理を行うのではなく、本社一括で労務管理をされている企業も増加をしているというような実態の変化もある。一方、「事業場」の概念について現行の法解釈であれば、それぞれの事業場として理解しなければならないものを一つの事業場としてまとめてしまっているというような事例もあるのではないか。こういう様々な指摘があったというものでございます。
 こうした状況を踏まえて労働基準法における「事業」、または「事業場」の概念をどのように捉えるかについて制度改正を見据えた研究の前提として検討しましょうというのが2つ目でございます。
 その次に(1)-3「労使コミュニケーションの在り方について」でございます。
 集団的労使コミュニケーションは様々ございまして、最も代表とされるのが憲法第28条によって労働組合に保障された団体交渉権を中核とした労働条件の設定システムである。これが基本であるということではございますが、一方、労働基準法の中を見てみますと、最低基準を設定し、それに伴う調整や代替といったようなもの、36協定に代表されるようなものに関しましては労使の合意の下、一定の手続の下で労使協定を結んでいく。こういう仕組みが採用されているというものでございます。
 こういった仕組みが有効に機能するためには、労働組合があるところは過半数労働組合がやっているという面はございますが、労働組合がない事業場も含めて労使ができるだけ対等にコミュニケーションを図り、適切な内容の調整・代替を行うことができる環境が整備されていることが重要であろう。一方で、現行の過半数代表については、選出方法ですとか、労働者代表として集団の意見を伝えられるのかというようなところに関して課題があるということで、こういった集団的労使コミュニケーションの課題、その改善方法としてどういったものがあるのかというものを検討しましょうというのが3つ目でございます。
 9ページ目、「労働時間法制の具体的課題」の柱でございます。
 これに関しましては、働き方改革関連法附則第12条第1項及び第3項におきまして、働き方改革関連法の施行から5年を経過したときから見直しの検討をすることが定められているものでございます。働き方改革法の施行から昨年の4月で5年が経過をし、この研究会でその見直しについてまず研究をしたというものでございます。法制的・政策的な検討・対応の必要性が高い事項に何があるのか、特に早期に取り組むべき事項は何なのか、中長期的に議論を要するものには何があるのか、こういったことについて議論をし、考察をしたというものでございます。
 これら4つの柱につきましてそれぞれ論じたものが次ページ以降となっております。
 大きなⅡ番、「労働基準関係法制に共通する総論的課題」の部分でございます。10ページでございます。
 まず「労働基準法における「労働者」について」ということでございます。
 (1)番の「現代における「労働者」性の課題」というところに関しましては、制定当時から現在に至るまでの状況を含めて労働者性についてどういう課題があるかということを包括的に論じております。
 まず、労働基準法の対象者は労働基準法第9条に規定する「労働者」であるということで、ここには「職業の種類を問わず、事業、事務所に使用される者で賃金を支払われる者」というふうに抽象的に規定をされているというものでございます。
 この規定に基づいて運用していく中で、個別の働く人が「労働者」に該当するかどうかの判断というものは、当初から運用に当たっての課題であり、それに対しまして客観的に労働者であるということを判断できるように、昭和60年、1985年に先ほど申し上げました労働基準法研究会の報告が示されたというものでございます。この研究会の報告に関しては、行政解釈も司法判断もこの判断要素を参考として運用してきたというものでございます。
 10ページの下のところでございますが、労働基準法研究会報告から40年が経過をしたということで、その間、産業構造の変化はもちろんですし、働き方も多様化をしてきた。デジタル技術も急速に進展をしてきた。また、新型コロナのまん延を契機にテレワークが幅広く定着をいたしまして、場所にとらわれない働き方も増えてきた。そういった中で、プラットフォームワーカーの方ですとか、AIやアルゴリズムによる労務管理のデジタル化というものも進展をしてきて、これに関しては日本のみならず諸外国でも様々な議論がなされ、直近で言えば11ページの②番のところで示させていただいたようなEUにおいてプラットフォーム労働における労働条件の改善に関する指令というものが出されるなど、各国でも様々な議論がされているということで、日本においてもこうした新しい働き方への対応ですとか、実態として「労働者」である方に対して労働基準法を確実に適用するという観点から、労働者性判断の予見可能性を高めていくことが求められるというふうにされております。
 この視点を基に、個別に議論をしていくのが(2)番以降でございます。
 まず(2)番として、労働基準法第9条そのものに関してでございます。
 労働基準法9条は先ほど申し上げたような規定ぶりでございまして、非常に抽象的な規定でございます。「労働者」の実態が多様化しているといいましても、抽象的属性までもが大きく変わっているわけではないということ。また、諸外国の例を見ても法律上の根本的な定義規定を変えている国はほとんどないということ。こういったことを考えますと、結論としましては現行の労働基準法第9条の規定の下で具体的な労働者性判断が適正に予見可能性を高めた形で行われるための対応というものを検討すべきとされております。
 続いて(3)番目、「昭和60年労働基準法研究会報告について」でございます。
 昭和60年の労働基準法研究会報告に関しましては、当時蓄積していた裁判例等を踏まえながらその当時の働く人を念頭に判断要素をまとめて個別事案について判断するための基準として活用できるように考えられたものでございます。
 約40年間経過をしておりますので、この間、積み重ねられた事例ですとか裁判例をよりしっかりと分析、研究をし、また新たな学説等も出ている部分がありますので、そういった学説も踏まえながら、その表現をより適切に修正すべき点がないかという点を含めて見直しの必要性を検討していく必要があるというふうに御議論いただいたところでございます。
 その際は、先ほども申し上げました国際的な議論もございます。2025年からILO総会においてもプラットフォームワーカーの問題について議論が開始される予定となっておりますので、国際的な動向も視野に入れながら総合的な研究が必要とされております。こういったものに関して、引き続き専門的な研究の場を設けて総合的な検討を行うべきであるとまとめられております。
 (4)番目は「働く人の法的保護との関係」でございます。
 労働者性の判断というだけではなくて、その判断を考えていくに当たってはそれぞれの人に対してどのような保護法制があるのかということも傍らに置いて考えるべきであるということがここでは論ぜられております。特に昨年11月にフリーランス法も施行されておりますので、労働者に対しては労働法が、そうでない方に関してはどのような保護法制があるのか。そういったことも視野に入れながら検討することが必要になるであろうというふうに論じていただいたものでございます。
 これらを踏まえまして13ページ、「今後の研究について」でございますけれども、昭和60年の労働基準法研究会報告を取りまとめたときと同様に、労働者性の判断基準に関する知見を有する専門家を幅広く集め、分析・研究を深めることが必要ということで、この研究会としては我々厚生労働省に対して継続的に研究を行う体制を整えることを要請するというふうに御議論をいただいたものでございます。
 以上が労働者の一般論でございます。最後に6番目、個別部分でございますが、「家事使用人について」です。
 現行法では家事使用人の方、これはいわゆる個人の家庭に直接雇用されて家事を担っておられる方というものでございますが、この方々に関しましては労働基準法第116条第2項で適用除外が設けられております。これは、労働基準法制定当時に関しましてはいわゆる女中さんのような方がまだまだいらっしゃったということで、一般の働き方と労働の態様が相当異なったものであって、同一の労働条件で律するのは適当ではないということから労働基準法の適用を除外したものであるというふうに説明をされております。
 翻って現在の状況を見ますと、住み込みの方というのはかなり減ってきているという状況もあり、実質的な働き方が一般的な労働者とあまり変わらなくなってきているのではないかということ、また、介護サービス事業者の労働者である方が同時に家庭の家事使用人として働いているというようなケースも増えてきたということで、労働基準法の適用除外とすべき事情には乏しくなってきたのではないかということが議論をされております。
 ただ、一方で、家事使用人を雇用する方というのは私家庭でございますので、家事使用人の方に対して労働基準法を適用するとした場合には私家庭においてその使用者責任を負わせることができるのかということに関しては慎重な検討が必要であろうというような御意見もあったところでございます。
 また、家事使用人の方がどのような紹介サービスを受けて家庭に雇用されているのか。一方で、家事代行サービス事業者というような形で、個人個人の方が家庭に雇用されるのではなく、個人の方は企業に雇用され、その企業が家庭から家事を請け負うというような形の業界もあるということで、そういったビジネスモデルも念頭に起きながら具体的な制度設計に早期に取り組むべきというふうにまとめていただいているところでございます。
 続きまして、「労働基準法における「事業」について」でございます。
 まず(1)番で「「事業」の概念について」でございます。
 この節は、現行法における事業の概念について、分析、議論をいただいたものをまとめた部分でございます。結論的なところとしましては15ページ下の①から始まる部分でございますが、労働基準法における事業というものの機能でございます。
 まず1つ目が、労働基準法には場所的な単位としての「事業」ないし事業場を単位として適用するということ。使用者と過半数代表との労使協定の締結に関してもこの事業場というものが場所的単位となっているということ。これがまず1つの機能である。
 2つ目が、「労働者」を捉える場合にも「事業」に使用される者であることを要件としていること。
 ページは移りまして16ページですが、3つ目として「事業」の所在地を管轄する労働基準監督署が監督をする際もその「事業」について監督権限等を行使しているということ。
 4つ目としまして、「事業」が単位であるがゆえに、その「事業」が日本に存在しない場合には労働基準法の適用は及ばないということ。
 こういったような機能がありまして、これは労働基準法だけではなくて労働安全衛生法や最低賃金法等の労働保護法についても同様の適用の仕組みが採用されているというのが基本的な構造となっているというものでございます。
 16ページで(2)番でございますが、そこに関する法適用の在り方についての部分でございます。
 まず事業場単位の法適用の在り方につきまして、一昨年の「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書におきましては、職種や個人の事情に応じて働き方が多様化していく状況の中で事業場単位を原則とし続けることが妥当なのか、リモートワークの普及等により場所に依存しない働き方というものが増えている中で監督指導の在り方を検討することも必要ではないか。こういったような問題提起がなされていたということで、こうした視点も踏まえて研究会のほうでも議論をいただいたというものでございます。
 研究会として、事業場単位として法適用することについては、16ページ下の部分でございますが、労務管理、意思決定、権限行使、義務履行がなされる場面、場所、監督の実効性、こういったものを考慮しまして事業場単位とすべきなのか、企業単位とすべきなのか、企業単位が許容され得るのか、こういったことを検討する必要があるだろうということ。
 また、職場の実態に即して労使コミュニケーションが行われる必要があるということ。
 企業単位で画一的に労働条件が設定されている場合など、複数の事業場を束ねることが合理的である場合もあって、そういう場合には束ねることを妨げなくてもよいのではないかということ。
 労働基準監督署においては事業場単位の指導が原則であるが、企業への指導が有効なものに関しては企業への指導を行っているということ。
 こういったものを考慮して考えようというふうに様々な意見が出たものでございます。
 結論としては17ページの上から4行目のところですが、現時点では引き続き事業場単位を原則として維持しつつ、企業単位や複数事業場単位で同一の労働条件が定められるような場合であって、企業単位や複数事業場単位で適切な労使コミュニケーションが行われるときは労使の合意により手続を企業単位や複数事業場単位で行うことも選択肢になることを明らかにすることが考えられるというようなことでございました。
 一方で、先々の話に関しましては下の最後の段落でございますけれども、労働者が労務を提供する場と、事業場が所在する場との間に乖離が生じるですとか、そもそもバーチャル空間での仕事というような物理的な空間ではないようなところでの仕事が増えるですとか、そういったようなことが今後増えていく中で、「事業」というものをどう考えるのかという検討には早期に着手すべきというふうにまとめていただいているものでございます。
 続きまして18ページ目、3番目の「労使コミュニケーションの在り方について」でございます。
 まず「労使コミュニケーションの意義と課題」ということで、集団的労使コミュニケーションは様々なものがございます。先ほど申し上げました、いわゆる労働組合がやる団体交渉に関するもの、それから労働基準法に定められている労使協定ですとか就業規則の意見聴取のようなもの、それに関するモニタリングのようなもの、それからそういった法的なものとは別に労使間で情報共通を通じた労働者の経営参画に関するものと、様々なものがございますが、今回の研究会ではここで言う②番、③番、労働基準法等に定められる労使協定の場面で出てくるいわゆる過半数労働組合ですとか、過半数代表者との間の交渉というものをメインとしてやりますよということを示しているものでございます。
 こうした法定基準を調整・代替していくという仕組みに関してでございますが、18ページ後段のところでございます。労働基準法制定当時は36協定等々、限定的なものであったわけですが、1987年の改正で様々な労働時間制度の中に取り入れられてきた。1998年の改正におきましては企画業務型裁量労働制が創設されておりまして、その際には過半数代表ということではなく、そこから発展した労使委員会というようなものも規定をされているということでございまして、こういった形での労使コミュニケーションというものは重要性を増してきているのではないかということでございます。
 こういった仕組みが有効に弊害なく機能するためにはということで、19ページのところでございますが、先ほど冒頭でも少し申し上げました実効的な労使コミュニケーションを行える環境の整備が必要ということで、その際にはまずは労働基準法の構造としまして過半数労働組合があるときはそれが優先して過半数代表になるということからも、労使コミュニケーションの主体である労働組合の活性化、組織化への取組が望まれる。
 ただ、一方で労働組合がない事業場に関してもできるだけ対等な労使コミュニケーションが必要であろうということで、そういった過半数代表者というものに関しても課題を解消していくということが必要ではないか。こういったことがまとめられているものでございます。
 20ページに移りまして(2)番、まず労働組合による労使コミュニケーションについてというものでございます。
 労使関係の中で労働者と使用者との間に交渉力の格差があるというようなことに関しては、働き方が多様化していようと現在においても変わらない事実であるということでございます。まずこれを前提としまして、そこに対する労働者の交渉力を引き上げるものとして、もともと労働組合法における労働組合というものが規定をされているというのは基本の構造でございます。したがいまして、ここから労働組合の活性化というものは望まれますし、労働基準法における手続におきましても過半数代表として優先されるのは過半数労働組合である。こういうことも踏まえると、労働組合が実質的で効果的な労使コミュニケーションを実現する中核であろうということは変わらないということでございます。
 ただ、他方で労働組合の組織率が長期的に低下してしまっているということ、過半数労働組合がない事業場が多いということも事実ということでございまして、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化していくことが望ましいというふうにまとめていただいております。
 この後の部分で、過半数代表者に対する支援で具体的にどうかということが論ぜられますが、それに関して過半数労働組合にも適用可能な支援は何かということも考える必要があろう。例えば、労働組合が過半数代表として活動する場合の活動時間の確保ですとか、必要な情報の提供ですとか、意見集約のための労働者へのアクセス保障ですとか、こういったようなものに関しては過半数労働組合、過半数代表者、いずれにも共通して必要と考えられるので、こういったものに関してどういった支援を労働組合に対して行うことができるのか。こういったものを明確化していくべきではないかということが提言をされております。
 また、過半数代表、これは労働組合であれ、代表者であれですが、事業場の全労働者の代表として意見集約していくべきということも明確化すべきとされております。
 (3)番、ここからが「過半数代表者」の適正選出と基盤の強化というものでございます。
 20ページから31ページに関しましては、過半数代表者に関する総論の部分でございます。労働組合のない事業場では過半数代表者を選出して労使協定等の締結等を行いますが、実際上、過半数代表者の選出が各事業場で適切に行われていない場合があること。また、過半数代表者になるということ自体が労働者にとって負担にもなりますので、なかなか立候補が得られないですとか、なったとしても知識、経験を持たずに役割を果たすことは難しい。こういうような問題があるということが最初に示されております。
 これらが相互に関係をしてなかなか適正な選出ができないですとか、選出しても実質的なコミュニケーションができないというような事情が出ているのではないかということが論ぜられております。
 21ページの真ん中、「一方」の段落から先でございますが、現行の労働基準法の中を見ますと「過半数代表」ですとか「過半数代表者」、こういったものは明確には定義をされておりません。おのおのの手続の中で過半数労働組合ないし労働者の過半数を代表する者と労使協定を結びましょうということが書いてあるのみということで、こういった基盤を強化するためにはこの過半数代表というものに関してその定義ですとか、選出手続ですとか、どういった情報提供や便宜供与、権利保護が必要なのか、相談支援はどのようなものがあるのか等々、こういったものについて明確にしていくことが必要ではないかという御議論をいただいております。
 以下、(3)-1からその具体的な中身でございます。
 まず(3)-1は「過半数代表者の選出手続」でございます。
 過半数代表者を選出する主体は当然ながら労働者自身でございますが、選出の契機となりますのは使用者が何らかの労使協定を締結しようとする場合ということになります。また、実際の選出行為は選挙や信任投票等を行っていただくことになりますが、労働者のみで選挙等の選出事務の手続を行うということは実務上、現実的ではないということで、使用者がある程度関与せざるを得ないというのが実情であるということでございます。
 こういった関与の在り方ですとか選出方法に関して、現行、省令に一定の規定はあるものの、具体的な内容が定められているものではないというような状況にあります。したがって、こういった選出に関しまして各段階で使用者がどのように関与していくのかということを考えなければならないということで、22ページの中段から検討がなされております。
 例えば、労使協定の締結のための選出を求める際には、その事業場でどのような労使協定があって、また今回の選出に関してはどの労使協定に関する手続を求めようとしているのか、それから、その労使協定にどういう内容を盛り込みたいのか。これは決定事項ということではなく、考えていることを明らかにするということになろうかと思いますが、そういったものを示した上でそれにふさわしい過半数代表者を選出していただくというようなことが必要ではないかということがあります。
 次に、労働者が過半数代表者を選出するに当たって、労働者の意思を確認しながら選挙、信任投票等を行うということになりますが、その際、使用者サイドでプラットフォーム、例えば選挙場所を設けるだとか、社内イントラネットを使えるようにするということですが、そういったものを用意するなどの配慮というものが求められますので、どの程度の配慮まで認められるのかを明らかにしましょうということ。
 最後に、労働者が立候補をして役割を果たすに当たっては、そもそも労働者の皆様が過半数代表の役割ですとか、そのために必要な知識というものを持っていることが必要になろうということで、そのための教育研修の機会というものも求められるのではないか。これに関しましては、中立な立場から行政において一定の教育・研修資料を作成し、提供する形が望ましいということをいただいております。
 こういった選出を経て、過半数代表者となった方に対する支援ということで(3)-2番でございます。
 過半数代表者となった方に対する情報提供や便宜供与ということで、まず過半数代表に選出された方に関しては23ページ、役割として①、②、③と提示をされております。労使協定の内容ですとか意見聴取しようする就業規則の内容をまず確認をし、事業場の労働者の賛否や意見を集約する。そして、それを使用者に伝えて締結や意見の表明を行う。こういう役割を担うわけですが、その役割を全うするためには先ほどの知識ということに加えまして事業場の働き方の実態という情報が必要であろうということが論じられております。
 例えば36協定を締結する際には、その事業場における平均的な時間外労働の時間数ですとか、最長の方の時間外労働時間数ですとか、時間外労働が必要になる業務はどういう内容なのかというようなことの情報を得た上で判断することが必要になろうということで、こういった情報の提供を使用者の責務として位置付けることが必要ではないかと考えられるとされております。
 また、過半数代表者の方に意見の集約をしていただくということに関しては相応の時間が必要にもなるということでございますので、労働時間の中で活動することに関して一定の保障を検討することが考えられる。
 また、社内の設備、イントラネットや通信機器、コピー機等々といったものがございますが、こういったものに関しての使用の便宜供与というものも必要になろうということが論ぜられております。
 こういった支援に関しまして使用者がどこまで提供するのか、あるいは中立性の観点からどこまで提供することが適法なのか。こういったことについては現状必ずしも共通の認識がないということで、これがどこまで許容されるのかを明確にすることが求められるというふうにいただいているところでございます。
 加えて23ページの下のところでございますが、過半数代表者であることを理由とした解雇・異動等の不利益取扱いをしてはならない。こういったことを明確化しなければならないということですとか、過半数代表者の活動に関しての紛争があった場合には労働委員会等による紛争解決の仕組み等についても整理、周知が必要ではないかということ。
 また、こういった情報提供、便宜供与というものは過半数代表者だけではなくて労使委員会の労働者側委員ですとか、過半数労働組合に対しても同様に必要ではないか。こういったことが論ぜられております。
 24ページ、(3)-3番、「過半数代表者への相談支援」ということでございます。
 過半数代表者の方が活動するに当たって、外部の専門家ですとか労働組合の相談支援を受けたいと考えられる場合も想定されるということでございます。まずは行政機関において受けられるようにということで、研究会からは相談体制の整備ですとか相談窓口の周知ということを行うことが求められるというふうにいただいているものでございます。
 (3)-4番、「過半数代表者の人数」でございます。
 過半数代表者の人数に関しては現行法令上の規定はございません。多くの場合は1名を選出してその1名の方がやっているということでございますが、過半数代表者の方の責務や活動負担は相応に大きいということで、複数人で負担の分担ができないかというようなことが研究会の中でも議論をされたということでございます。これは現行法でも否定はされていないということで、これも選択肢の一つとして、複数人選出も選択肢であるということを明らかにしていくということが考えられるというふうにいただいております。
 一方で、人数の少ないところも含めて複数人選出することの負担も大きいので対応できない場合はこれまでどおり1人ということもあるのではないかというような議論がなされました。
 この節の後半の部分でございますが、1人の過半数代表者を選出するということで、代表者自体は1人であるとしても、その方と一緒に行動するような補助者を設けるというようなことは考え得るので、そういった場合にも使用者側の配慮というようなものが求められるのではないかということを御意見としていただいたところでございます。
 25ページ、(3)-5番で「過半数代表者の任期」でございます。
 これも先ほどの人数と同様、選択肢ということでございますが、現行法では過半数代表者は原則手続ごとにその都度選出されるということになっております。一方で、任期を定めて選出するということも否定されておりません。この任期を定めて選出するということの意義といたしましては、あらかじめ一定期間の間、この人が代表者であるという点で誰とコミュニケーションを取るのかというのがはっきりするということですとか、その方がその期間の間、結ばれた労使協定に関して労働者側からの質問に応じたり、使用者側に質問をしたりというような事後的な取組もできるというような意義があるのではないかというのが研究会で論ぜられたということでございます。こうしたことを踏まえまして、複数人選出と合わせてこの過半数代表者の任期を設定するということに関しても選択肢としてあるのではないかということを明らかにすべしというふうにされております。
 最後のところで「ただし」ということでございまして、あまりに長期の任期を設定することは問題であるということですとか、任期途中の異動や退職に関してどうするのかというようなことに関してはきちんと整理、周知をしておくべきというふうにいただいております。
 25ページの下、(3)-6番でございます。
 こうした議論を踏まえまして、労働基準法における規定の整備をどのようにしていくかということも論じていただいております。ここの節の結論といたしましては、先ほども出てきました過半数代表、過半数労働組合、過半数代表者、こういったものに関して労働基準法上の法的な位置付けというものをきちんとしていきましょうということで、26ページにイメージの例ということで、法律やその委任命令を含む法令に関しましては「過半数代表」「過半数労働組合」「過半数代表者」というものの法律上の位置付けですとか任務・権限、公正代表義務、情報提供、支援・便宜供与の在り方、不利益取扱いの禁止、公平・中立な選出手続といったようなものをきちんと法令上規定していきましょうということですとか、それを踏まえてガイドライン等々で細かな運用方法についてもきちんと定めていきましょう。こういったようなことを御提言いただいたというものでございます。
 続いて26ページの(4)でございますが、「労使協定・労使委員会等の複数事業場での一括手続について」でございます。
 こちらは、先ほどの事業のところでも少し出てまいりました、複数の事業場を一くくりにして手続をするということについてどう考えるのかという部分でございます。原則として労働基準法は事業場を単位として適用されているというものでございますが、働き方の多様化ですとかデジタル技術の発展により変化はしてきている。こういった中で、個々の事業場に実質的な労務管理がなくなって使用者機能を本社や基幹的な事業場に集中・統合しているといったようなケースもあるでしょうということで、複数事業場での手続の一括ということに関する需要は増してきているだろうということがまずございます。
 27ページでございまして、特に労働組合のない事業場におきましては実質的に労使コミュニケーションを担える労働者がいないというようなケースもあって、単独事業場では実質的な労使協議を行えない場合もあるのではないか。こういった指摘も研究会の中ではあったところでございます。
 こういったことを踏まえまして、労働条件によっては企業単位での検討というものがふさわしい場合もあるということは考えられる。ただし、そう考えられるとはいえ、労使協定に関しては事業場ごとの働き方の実態が異なるということも少なくないので、実態の反映ということを考えれば原則どおり労使合意も事業場単位で行うべきであろうとされております。
 これを前提とした上で、先ほど申し上げたような事情があって労使当事者が希望する場合には複数事業場の労使当事者が集まって労使協定を締結することや、労使委員会を管理することについては、これについて検討しましょうということでございました。
 結論といたしましては、そこの下の部分でございます。図にも示させていただいておりますが、労使協定の締結ですとか就業規則の意見の聴取といった事業場単位での労使合意を前提としつつ、実際に手続をする際に複数の事業場が集まって話合いをする。こういったようなことは現行法上も許容されているということでございます。その点をまず明らかにしていくということ、労働者側にとっても複数の代表者が相談できるような体制にもなろうということで、こういった労使が合意をすれば複数事業場をまとめて話合いをするということも許容できるのではないかということを明らかにしましょうというふうにいただいております。
 28ページの上のところで、これも使用者がそういった提案を行うということは許容されるでしょうということですが、一方で事業場の過半数代表者が拒否をする。自分たちの事業場は単独で協議をしますということであれば、それは単独で協議をしましょうということが示されたというものでございます。
 28ページ、(5)番は「労働者個人の意思確認について」というところでございます。
 ここに関しましては、現行では裁量労働制や高度プロフェッショナルに見られるように、集団的労使合意を経た上で実際の制度適用に関して本人同意を求める制度というものがございます。ここに関しては、新たな制度等を考える場合には個人同意というものが必要かどうかということに関してはきちんと検討しましょうということが述べられているというものでございます。
 28ページの下の部分で(6)番、「労働基準関係法制における労使コミュニケーションの目指すべき姿」というものでございます。
 この節は、先ほどの過半数代表者の改善のさらに少し先のことを議論していただいた部分でございます。労働基準法の労使協定というものは現行法で定められた規制の原則的な水準を調整・代替するということに関して免罰効と強行性解除というものの効果を持っているというものでございますが、その時々に選出された過半数代表者で協定を締結していますので、その締結後のモニタリングに関してはあまりきちんとした機能がないというような状況でもあろうかというところでございます。
 こういった点に関して労働組合の機能優先というのは前提としつつでございますが、労働組合のない事業場においてきちんとした労使コミュニケーションを行う機能というものをどう考えるのかということを先々は考えていかなければいけないのでしょう。諸外国においては労働者のみで構成される労働者の集団全体の代表という組織を設ける仕組みですとか、労使双方で構成する委員会を設ける仕組みですとか、様々なバリエーションで対応されているようなケースがあるというものでございます。
 こういったことも踏まえて将来的な研究でございますが、様々な形が考えられる中で包括的、多角的な研究が必要でしょう。先ほどの事業場単位、企業単位についてもより深い研究が必要になるでしょうということで、労働組合の活性化をしながら過半数代表者の改善策を実施し、その状況を把握しながら労使コミュニケーションの在り方についてさらに議論を深めていくべきであるというふうにいただいたというものでございます。
 ここまでが、Ⅱ番の総論的課題でございます。
 30ページから「労働時間法制の具体的課題」というところに入ります。
 具体的課題でございますが、3つに分かれてございます。「最長労働時間規制」と「労働からの解放に関する規制」「割増賃金規制」というものでございます。
 まず「最長労働時間規制」の1番に関しまして、時間外・休日労働時間の上限規制でございます。上限規制に関しましては、働き方改革関連法に基づき2019年に施行されました。いわゆる45時間・360時間の原則と、特別条項における100時間未満・80時間以内の上限でございます。これに関しましては導入から5年経過しまして、その間の労働時間短縮に関しては一定程度効果が出ております。
 ただ、この期間の中で3年間は新型コロナウイルス感染症が直撃していた時期ということもありまして、その影響を除いたときにどのようになっているのかというのがまだ少し分かりづらいということで、現時点では上限そのものを変更するための社会的合意を得るためには情報が足らないということで、引き続きその影響を注視することが適当ではないかというふうに言われております。
 もちろん36協定の原則の限度時間である45時間・360時間に近づけるような努力というものは引き続き続けるということとされておりますし、自動車運転者や医師といった一般よりなお長い条件が適用されている方については、一般の上限規制の適用に向けた取組について引き続き議論をしていくべきとされております。
 31ページは、この結論に至るまでの間にほかにも様々な御意見をいただいたところでございます。そこをまとめておりますが、時間の関係もあるのでここは少し割愛をさせていただきます。
 続いて32ページ、「企業による労働時間の情報開示」でございます。
 まず「企業外部への情報開示」ということでございますが、労働基準法における強行的な規制による労働時間短縮のほかに、労働市場の調整機能を通じて個別企業の勤務環境を改善していこうということで、そのためには企業から労働時間に関する情報の開示があって、それを労働市場の労働者が見て就職先を決めていく。こういうことが必要であろうという議論でございました。
 真ん中部分にありますように、現行法制においても女性活躍推進法ですとか次世代育成支援対策推進法といったもので自主的な情報開示の仕組みというものは既に設けられているというものでございまして、これらの情報を労働者・求職者が一覧性を持って閲覧できるようにすることが望ましいということをいただいております。
 また、先々に関してはその情報開示の基盤を整えることや、義務的な情報開示について検討することについて不断に取り組んでいくことを期待するというふうにいただいております。
 続いて「企業内部への情報開示・共有」でございます。
 企業の内部の労働者に対して労働時間の情報を開示・共有することによって、個別の企業の勤務環境の改善をしていくということが望まれるのではないかというような議論でございます。これに関しては、誰にどのような目的で何を改善していくのかということによって分かれていくというものでございます。
 33ページに3パターン、そこが書かれております。
 まず1つ目が、衛生委員会や労働時間等設定改善委員会等の労使の会議体に対する情報開示でございます。これに関しましては、そういったところに開示をしていくことによって実質的な議論をする上で非常に重要な情報となる。その上で、衛生委員会や労働時間等設定改善委員会を通じた改善というものが進むのではないかというようなものでございます。
 続いて「また」の段落のところですが、労働者個人に対する開示ということで、労働者一人一人に対して事業場の労働の状況というものを開示していくというものでございます。これによってどういった行動変容ができるのかということに関しては、働き方の裁量がその労働者にどれくらいあるのかにもよるのではないかというような懸念もありましたが、一方で個別の労働者に対してきちんと情報開示をすることは割増賃金の適正な支払いというものを確認し、労働基準法違反の状態の発生を防止するというような効果もあるのではないかというような議論がされたところでございます。
 最後に「加えて」の段落で、管理職に対してほかの部署や全社平均との比較を通じて自部署の労働者の労働時間の改善を求めていくということも考えられるのではないかという議論がありました。
 一方で、これに関しましては管理職に対しての情報開示は企業の経営の中での動きであって、労働基準法で規定するようなものではないのではないかというような御議論もあったところでございます。
 33ページの一番下のところですが、いずれにしてもこの情報開示については人手不足が深刻化している中で企業間に人材獲得競争がある。その競争を通じて労働条件の改善につながるということも期待できるということで、情報開示についてはできることから取り組んでいくべきというふうにいただいているものでございます。
 34ページ、(3)番は「テレワーク等の柔軟な働き方」でございます。
 テレワークはコロナの期間にかなり広がってきたものでございますが、自宅で働くというようなことが多いという観点から、柔軟な労働時間管理というものが必要ではないのかということで御議論いただいたところでございます。具体的には、フレックスタイム制をどう活用していくのかということと、テレワーク時のみなし労働時間制というものをどう考えるか。この2点で御議論いただいたものでございます。
 35ページ、1つ目でございますが、フレックスタイムの改善に関しましてでございます。
 現行のフレックスタイム制度は部分的な適用ができないということで、清算期間が定まればその清算期間の中の労働日は全てフレックスタイムの日でなければならないということとなっております。
 一方で、テレワークでの活用ということで考えますと、全ての労働日がテレワークの方というのはあまり多くはなく、テレワーク日と通常勤務日が混在するような方というのはかなりいらっしゃるということでございますが、そういった場合にテレワークをしている日はフレックスタイムで、通常の出勤している日は通常の労働時間でというような活用が現行制度ではできない形となっております。
 これに関しましては、一定程度テレワークと通常の労働時間が清算期間内で混在していくということでもよいのではないかというようなことで、そういった制度の柔軟化というものに取り組めないかというような提言がなされたというものでございます。
 35ページの下の部分でございますが、みなし労働時間制についてでございます。
 現行制度下では、一定の要件を満たしていれば事業場外みなし労働時間制ですとか、あるいは専門的な裁量のある業務を行っている方であれば専門業務型裁量労働制、こういったようなものがテレワーク時でも適用可能ということになっておりますが、それぞれ要件がきちんとあるというものでございます。この要件を満たさなければ、テレワークにみなし時間を適用することはできないということになっております。
 テレワークの際の労働時間管理に関しまして、フレックスであれ、通常労働時間であれ、厳格な労働時間管理を求めるということになると、自宅内での就労に関する過度な監視というものが正当化されたり、家事、育児等の対応のための中抜けみたいなところで紛争が生じたりする。こういった懸念があるのではないかということで、新たなみなし労働時間制といったものが考えられるのではないかというような議論が研究会の中でございました。
 ただ、一方で、研究会の先生方からもみなし労働時間制に関して、みなし労働時間制の副作用をこれまで最小限にしようとしてきたものに関する潜脱にならないかですとか、やはり健康管理というものが心配になるのではないか、長時間労働の懸念が強まるのではないか。そういった様々な御意見があって、これは賛否両論いただいていたというところだったかと思っております。
 そういった様々な御意見をここに箇条書きで書かせていただきましたが、そういったものを踏まえまして、結論として37ページのところですが、先ほどのフレックスタイム制を改善して、そのフレックスタイム制の下でのテレワークの実情ですとか、みなし労働時間制に関する労働者、使用者のニーズがどの程度あるのか。こういったことを把握して、継続的に検討をしていきましょうというような結論となってございます。
 37ページの真ん中、「法定労働時間週44時間の特例措置」に関してでございます。
 これは、現行ございます一定の業種で規模10人未満の事業場に関しては法定の週労働時間を40時間から44時間にすることができるというところでございますが、現状87.2%の事業場がこれを使っていないという状況でございます。
 ただ、業種によってばらつきはございますので、その業種に特徴的な状況というものは検討しなければなりませんが、この特例措置の撤廃に向けた検討に取り組むべきであるということで、その検討をするべしというような御提言をいただいております。
 続いて37ページ、5番目は「実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置」ということでございますが、具体的には管理監督者でございます。
 実労働時間規制が適用されない方というのは、裁量労働制の方ですとか高度プロフェッショナル制度の方、そして管理監督者がございますが、裁量労働制の方や高度プロフェッショナル制度の方というのは特別な健康福祉確保措置が設けられているというものでございます。
 一方で、管理監督者に関しては労働安全衛生法に基づく医師の面談というものはあるものの、特別な健康・福祉確保措置はないということで、管理監督者にも一定の健康・福祉確保措置が必要ではないかということでそういった検討をすべきではないかというような御提言でございます。
 38ページ、「加えて」の段落ですが、それに加えて管理監督者に本来当たらない方が管理監督者にされている場合もあるということで、管理監督者について制度趣旨を踏まえて要件の明確化をすることも必要ではないかというふうにいただいているものでございます。
 38ページの真ん中から、次は「労働からの解放に関する規制」のところでございます。
 これに関しては何時間働かせるかではなく、労働から解放される時間をどれだけ確保しなければならないかという種類の規制という分類でございます。
 まず、一番下からの「休憩」でございます。
 現行制度の中で休憩に関しましては、労働時間が6時間を超えれば少なくとも45分、8時間を超えれば少なくとも1時間という休憩時間が設定されております。また、その休憩に関しては労使協定がある場合を除き、一斉に与えなければならないということとされております。
 今回議論されましたのが、まず法定労働時間を大幅に超えて長時間労働をする場合、例えば超過する時間外労働が6時間を超えたというような場合に、そこに45分の休憩を入れなくてよいのかというようなものでございます。これに関しましては、研究会の御議論の中では、時間外労働の長さは事前に把握できないのでどのタイミングで休憩させるのかということは結局うまく運用できないのではないかということですとか、そもそも時間外労働なのでそこまで長い時間外労働をさせるということはいかがなものかということもあるし、休憩を取るより早く帰りたいという方もいらっしゃるだろうということで、現行ここの改正までは必要ないのではないかというようなことでございました。
 休憩の一斉付与の原則に関しましては、もともと工場労働を前提としたものでホワイトカラー労働者の増加等を踏まえると見直しもあるのではないかという議論がございましたが、休憩の実効性の確保の観点も踏まえれば直ちに見直すべきという結論には至らなかったというものでございます。
 短時間の労働者の方、6時間未満の方に対して休憩の付与が必要であるかということでございますが、こういった方々、短時間労働を選択している方もいらっしゃるということで、その場合、拘束時間が長くなることは望まれないというようなケースも多いということで、現時点でそれを規制する必要はないだろう。ただ、一方でこういった時間が短い方、休憩が付与されないからといって一切の離席を認めないというような事例もあるので、そういった小休止みたいな配慮に関しては必要であるというような周知が必要ではないかというふうにいただいたところでございます。
 40ページ、続いて「休日」でございます。
 まず1つ目は「定期的な休日の確保」ということで、現行制度の法定休日との関係でございます。
 現行の法定休日は、毎週少なくとも1回の休日を付与する。これが原則で、かつ4週間を通じて4日以上の休日を与えればいいという変形休日制を可能としているというものでございます。また、法定休日に関しましては36協定で休日労働の協定を結べば休日労働させることができるというのが現行制度となっております。
 一方で、業務の繁忙ですとか職種の特性によって長期間の連続勤務といったようなものを余儀なくされている例がありまして、労災に関していいますと精神障害の認定基準で2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行ったことというのは心理的負荷の出来事の一つというふうにされております。実際にこれが原因の一つとして労災認定があったというようなケースも生じております。
 先ほど申し上げた4週4休ですとか、休日労働の情報ということで、理論上は無限に連続勤務をさせるということも労使協定を結べば可能となっているというのが現行制度でございまして、こういった連続勤務は健康上望ましくないということで一定の制限をかけるべきではないか。こういった議論がなされたところでございます。
 結論としましては40ページの一番下のところでございますが、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」という旨の規定を労働基準法上に設けるべきではないか。
 ただし、災害復旧等の真にやむを得ない事情がある場合の例外措置ですとか、顧客や従業員の安全上やむを得ない場合の代替措置みたいな例外とする対応を労使の合意で可能とする措置についても検討すべきということで、何らかの上限設定をすべきではないかというような提言をいただいたところでございます。
 41ページ、(2)-2は「法定休日の特定」でございます。
 現行、法定休日は1日でございますが、週休2日を取っている会社もかなり多くなっているというところでございまして、その場合は1週間の中に法定休日と所定の休日が混在をしております。その場合の法定休日に関して、どちらが法定休日なのかという特定をするという制度にはなっておりませんが、使用者が指定をするようなケースもございます。
 ただ、一方で、法律上どちらがどちらということを指定するということにはなっていないので、それが司法の判断と異なってしまうような場合もあり得るので、予見可能性に問題があるというような指摘もあります。
 研究会としても、法定休日がどこで、所定休日がどこでというものはきちんと定まっていたほうが労働者の健康にとってもリズムを保つという点ではいいのではないかということで、法定休日を特定すべきということを法律上に規定することに取り組むべきと考えるというふうにいただいたというところでございます。
 41ページの下の(3)番、「勤務間インターバル」のところでございます。
 勤務間インターバルに関しましては、働き方改革関連法の制定時に労働時間等設定改善法の第2条で努力義務が課されたものでございます。
 ただし、この努力義務に関しては具体的な時間数ですとか、対象者ですとか、導入に当たっての留意事項といったものは示されておりませんでした。それで、厚生労働省において勤務間インターバル制度の導入マニュアル等々を作成してその留意点を示したものの、2023年時点で導入企業の割合は6%にとどまっております。
 ただ、他方で導入予定がなく検討もしていないという81%の企業がいますが、このうち51.9%はそもそも超過勤務の機会がなくて導入する必要性がないというような回答をしているということで、こういったところに関してやろうと思えばできるというような状況でもあろうというようなデータがございました。
 こういった現状を踏まえまして、研究会の結論としましては、抜本的な導入促進と義務化を視野に入れた法規制の強化について検討する必要があるということで様々な御意見があったところでございます。それで、研究会でいただいた御意見については42ページの下のところから箇条書き等々で示させていただいております。
 結論としましては、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいというふうにいただいているというものでございます。
 その際の義務化をどの程度の度合いにするかということに関しましては様々な選択肢があるということで、43ページの真ん中のところですが、強行的な義務とするパターンもありますし、各企業で制度を設けることを義務付ける規定にするですとか、配慮を求める規定にするですとか、あるいは就業規則の記載事項とするという形ですとか、行政指導によって普及促進を図るという考え方、抽象的な努力義務を具体化するという考え方、様々な手段があるのでそういった様々な手段を考慮した検討が必要であろうというふうに御提言をいただいたというものでございます。
 43ページ、(4)番で「つながらない権利」でございます。
 「つながらない権利」に関しましては、本来、労働契約上、労働時間ではない時間、ここに関して使用者が介入する権利はないわけでございますが、実際には突発的な状況への対応等々で連絡することはあるということでございます。ヨーロッパ等でも議論をされておりますが、これに関しましては電話なのかメールなのか、どういったような連絡までが認められるのかということをそれぞれの事業場の労使できちんと話合いをしてルール設定をしていっていただくということが必要なのであろうというような議論でございます。
 44ページのところですが、どういう連絡が許容でき、どのようなものは拒否することができるのか、社内ルールを労使で検討していくことが必要。このような話合いを促進していくための積極的な方策を検討することが必要であろうというふうにいただいたものでございます。
 44ページ、(5)番で「年次有給休暇制度」でございます。
 年休制度に関しては、働き方改革関連法で5日の時季指定義務というものが設けられました。これによって年休の取得促進を進めまして、2022年には62.1%と、過去最高となっております。
 論点としましては、まず(5)-1でございますが、この時季指定義務の日数ですとか、あとは時間単位年休の上限日数5日間、こういったものに関して変更する必要があるかということでございますが、研究会での議論の結果としては結論として制度の趣旨から考えればこの5日間という数字を直ちに変更すべき事情にはないであろうということでございました。
 続いて45ページ、(5)-2でございますが、いわゆるバカンスのような年休の連続取得の推進というものでございます。
 これはILOの条約にも規定されているものでございますが、ヨーロッパと比較した場合に日本の労働者にいわゆるバカンスのニーズがどの程度あるのかということですとか、祝日を含めた日本の働き方、休み方といったようなものを踏まえて、ここは中長期的に検討していくというものでしょうというふうに御議論いただいたところでございます。
 46ページ、(5)-3番でございます。
 5日間の時季指定義務に関してでございますが、そもそも労働日が非常に短い方というのはいるのではないかということで、例えば1年間の付与期間中に育児休業から復帰をして残り期間がすごく短い方ですとか、付与期間の途中で退職予定がされて、残り期間がほとんどないというような場合に、同じように5日の時季指定の義務を課すのかということに関して不合理な制約になる場合があることからも、取扱いは検討する必要があるのではないかというふうに御提言をいただいたものでございます。
 (5)-4でございますが、年休を取得したときの賃金の算定方法でございます。
 これは現行、平均賃金を使うか、通常の賃金を使うか、標準報酬月額の30分の1を使うかという選択制となっておりますが、この計算式の関係上、平均賃金や標準報酬月額は30の暦日制はありますが、通常の賃金は労働日で割るという関係上、(2)が高くなりやすいというような状況がございます。
 結論としましては、(1)や(3)の手法を取らざるを得ないような状況としてどういうものがあるのかを考慮しつつ、原則として(2)の手法を取るようにしていくべきではないかということが考えられるとされております。
 この節の最後、「割増賃金規制」でございます。
 まず(1)番は「割増賃金の趣旨・目的等」というところでございますが、これは割増賃金全体について御議論をいただいたものでございます。
 47ページに箇条書きで先生方から様々な御意見をいただきました。これに関しては、割増賃金率を引き上げるようなものもあれば、深夜割増賃金に関して裁量のある方に対して要らないのではないかというものを含めて、様々な方向での様々な御意見をいただいたということでございます。
 割増賃金全体に関しては48ページにございますとおり、どのような方策を取るにしても十分なエビデンスを基に検討される必要性があるので、中長期的に検討していく必要があろうということをいただいたというものでございます。
 48ページ、(2)番は「副業・兼業の場合の割増賃金」でございます。
 労働者が副業・兼業を行う場合に関して、現行制度におきましては事業主が違う場合であっても労働時間を通算して割増賃金を支払いましょうということになってございます。このため、私どもとしましてはガイドラインに基づきまして計算方法として管理モデルというものを示させていただきまして活用いただいているところではございますが、こういった取扱いに関しては副業先、兼業先、それから本業元、いずれも1日単位で労働時間を細かく計算しなければならないということになります。その過程の中で、労働者にも細かく自己申告をしていただかないといけないというような状況になっているものでございます。こうしたことが副業・兼業も許可しないというような企業行動につながっていたり、副業・兼業を希望する他社の労働者を雇用しづらいということになっていたりということがあるのではないかというような御指摘がありました。
 ヨーロッパ諸国を見ますと、同じように実労働時間の通算を行うということはやっているものの、フランスやドイツ、オランダ、イギリスといった国では割増賃金に関しては通算しないというような状況になっているというようなことでもございました。
 こういったことを踏まえまして、結論としましては49ページですが、こうした現状を踏まえ、労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては通算を要しないよう制度改正に取り組むことが考えられる。
 一方で、割増賃金の支払いに関する通算対応を必要としなくする分、副業・兼業を行う労働者の健康確保についてはこれまで以上に万全を尽くす必要があるということ。こういった見直しをした場合に関しては、同一の使用者の命令に基づいて複数の事業者の下で働いているような場合に割増賃金を逃れるような行為がなされないように制度設計をする必要があるということを提言としていただいたというものでございます。
 以上が報告書の提言の中身でございまして、50ページは最後、「おわりに」というところでございます。
 研究会では労働基準関係法制に関わる諸課題について早期に取り組むべき事項と中長期に検討するべき事項に分けて方向性を出しましたということで、この報告書において早期に取り組むべき事項としたことを中心に公労使三者構成の労働政策審議会において労働基準関係法制に係る諸課題についての議論がさらに深められることを期待するというふうにいただいたというものでございます。
 また、私ども厚生労働省に対しましては、この研究会のような研究を行う場というものを引き続き設けていくべきであるというような御要望もいただいたものとなっております。
 報告書の概要は以上でございます。
 長くなりましたが、私の説明は終わります。ありがとうございました。
○荒木分科会長 50ページに及ぶ大変大部な報告書でございましたけれども、丁寧に、かつ要領よく御説明いただきました。ありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局の説明につきまして御質問、御意見があればお願いいたします。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 私からは、働き方改革の評価も含めて一言申し上げたいと思います。
 報告書にも記載がされておりますとおり、コロナによる影響、これは見極めが必要だと思っておりますが、働き方改革関連法が2019年4月に施行されて以降、我が国全体の時間外、休日労働は緩やかに減少してまいりました。私は制度見直しそのものと、それから各社の働き方改革の取組が相まって一定の効果が上がっていると評価しております。
 働き方改革につきましては、もちろん長時間労働の是正ということもさることながら、社員の働きがい、働きやすさを追求する取組もかなり近年広がりを見せてきているので、そういった意味でも評価ができるのではないかと考えております。
 我が国は少子高齢化、人口減少、それから天然資源に乏しい島国、こういった制約条件が多い国であります。こうした中で、我が国企業は働き手のエンゲージメントの向上を通じて付加価値の最大化を図っていくことが喫緊の課題であり、そのことは持続的な賃金の引上げを実現する上での条件にもなると私は考えています。
 働き手のエンゲージメントの向上策、これは多岐にわたりますが、とりわけ働く場所、働く時間などにとらわれない自律的な働き方を実現する仕組みづくり、それと自発的なキャリア形成を支援する仕組みが重要であり、各社の取組をサポートする政策ということが今、求められていると思っています。
 例えば、副業、兼業は自発的なキャリア形成に資する取組だと思いますが、割増賃金規制があることで普及促進を大いに阻害しているように感じております。そのため、健康確保のための時間通算規制を残すということを前提に見直しを図ることが必要と考えます。
 これに限るわけではございませんけれども、今後の議論では自律的な働き方の実現、自発的なキャリア形成といった観点の検討もぜひお願いしたいと思いますし、期待しております。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 労働基準関係法制研究会に参画されていました委員の先生方、そして事務局の皆様、非常に項目の多い、膨大なテーマをコンパクトに整理していただいてありがとうございます。私も気づかなかった点とか、このような考え方や解釈することもできるのかと考えさせられる点が多々ありまして、本当に勉強になったところでございます。
 今回、このような問題点を示していただき、報告書に取りまとめていただいたわけでございますけれども、この労働条件分科会では、現段階でも労使ともに懸案となっている事項とか、問題点が結構あると思います。そこの中でこれからの開催頻度、または指摘いただいた課題を別途研究会みたいなものを設けて協議するということも先ほど一つの案としては出ているかもしれません。この労働条件分科会においては、どのように取り組んでいくのか、これからのスケジュール感みたいなものを事務局として持っていらっしゃるのか。その辺を教えていただきたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、質問がありましたので事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 佐久間委員の御質問にお答えしたいと思います。
 今後のスケジュールにつきましては、本日の各委員からの御指摘等も踏まえまして事務局として考え方を整理し、次回以降お示しをして、またそれについても御議論いただきながら進めてまいりたいと思います。
 ただ、1つの大きな目標といいますか、節目といたしましては、仮に法改正を必要とするような内容について公労使三者の御意見がまとまりますれば、国会に法案の提出ということになるわけでありまして、それを一つの目標と考えますと、例えば来年の国会に法案を提出するということを考えますれば、年内ないし来年の年明け早々には一定の結論を得られるような御議論をお願いしたい。そのために、必要な回数の分科会の開催もお願いしたいと思っております。
 具体的にはまた次回以降、御相談申し上げたいと思います。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 やはりこの優先度とか、重い軽いという項目の問題もあると思いますので、その辺も検討しながら進めていただきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、冨髙委員からお願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございました。報告書の受け止めも含めて、今後の議論に当たっての労働側としての基本認識を申し上げたいと思っております。
 今回の報告書ですが、労働法や労働経済に関する専門的な見地から、労働基準法全体の論点を整理していただいたものと受け止めているところでございます。報告書では、連続勤務日数制限の導入などの労働からの解放に関する規制の強化や、過半数代表者の適正化といった重要論点ではあるものの、これまで議論が深まらなかった点も整理していただいたものと考えておりまして、これらの点についてはしっかりと実現をさせていくべきだと考えております。
 また、一方で報告書には「テレワークみなし」の創設、先ほど使側委員からもございましたけれども、副業・兼業時の割増賃金の通算撤廃など、働き過ぎを助長しかねない内容も記載されていると考えております。今後の分科会の議論は必ずしもこの報告書を前提にするものではないと捉えておりますが、働き方改革関連法の施行以降、労使で長時間労働是正に向けて取組は推進しているものの、いまだ過労死等がなくならない現状を直視すれば、むしろ報告書では継続の検討課題とされている上限規制の強化こそ積極的に検討する必要があると考えております。
 また、報告書では働き方の多様化や柔軟化への対応、また労使コミュニケーションの文脈で「法所定要件の下で法定基準を調整・代替する仕組み」というデロゲーションを意識した表現が随所に出てきます。言うまでもなく、デロゲーションの拡大というのは労基法の存在意義を否定するものだと考えておりますし、労使コミュニケーションの充実は労働基準法制を土台としつつ、より働きやすい職場環境を整理するために必要ということで、決してデロゲーションしやすくするためのものではないと考えております。
 労働基準法制の中心的存在である労働基準法は労使の交渉力の格差を踏まえて契約自由の原則を修正して労働条件の最低基準を定めた強行法規であると認識しております。働き方が多様化したとしても決して労働者保護の基本原則というものはなくしてはならない。この考えを堅持した上で、労働者の安心・安全の底上げに向けた法規制の強化をしっかりしていくことが必要だと考えております。
 2018年に時間外労働の上限規制をはじめとする働き方改革関連法が成立した背景、また労基法の趣旨、意義をいま一度確認し、誰もが安心・安全に働き、能力を最大限に発揮できる職場環境の土台となる労働基準法制というのはどうあるべきなのかというのをしっかり議論していくことが必要だと考えております。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 櫻田委員お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 私からは、労働時間法制の点で申し上げたいと思います。
 今、まさに2025春期生活闘争は真っただ中という状況で、各労働組合は賃上げにこだわった取組を進めているところですが、もう一つ大きな柱として、労働時間の取組を中心とする「働き方の見直し」についても要求を組み立てているところです。今後の分科会の議論にも関連してくると思いますけれども、働き方の見直しでまず重要な視点というのは働き過ぎの防止であると捉えています。こうした職場の取組を裏づけたり、後押しする法規制がどうあるべきかということを議論すべきではないかと考えています。
 そしてもう一つですけれども、それぞれ労働組合で働き過ぎの防止に加えて、働き方のニーズの多様化ということも踏まえて労働時間制度はどうあるべきかということも視野に入れながら要求を行っていきます。それは、例えばフレックスタイム制度ですとか、あとはテレワークの充実などの環境整備といったこともあると思っています。
 要は、従来から本分科会でも発言しているように、働き方の多様化への対応は現行法制でも十分可能であるということ、多様化への対応を理由に法規制を緩めたり、適用除外を拡大する必要はないということについては改めて申し上げておきたいと思っています。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインのほうから発言希望が出ております。使用者側委員の佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございました。私からは、労使コミュニケーションの在り方の検討に関する意見を申し上げたいと思います。報告書ですと18ページ以降でしょうか。労使コミュニケーションの意義ですとか課題を相当多角的な観点から整理をされて、その在り方を提言されているというふうに拝読いたしました。
 先ほどから皆様の発言にもありますとおり、本当に労働者のニーズ、就労のニーズであったり考え方というのは相当多様化している。これは否定できないものでありまして、そうした中で労使コミュニケーションをしっかりと充実させていく。こういった観点の重要性は増していると考えております。
 それで、報告書で言いますと28ページでしょうか。(6)で、今後のこととして「労働基準関係法制における労使コミュニケーションの目指すべき姿」というところの最後のパラグラフの中で、労働者のみで構成される労働者の集団全体、これを適切に代表する組織を設ける仕組みだとか、諸外国ではすでに法制化されていて、将来的にはこういったことを視野に我が国における労使コミュニケーションの在り方を検討していくことが期待されるというような指摘がされています。労使コミュニケーションのバリエーションといいますか、その検討についての指摘と思います。
 「将来的に」というふうにここには記載があるのですが、労働組合ですとか過半数代表者の役割、その活性化の検討をしっかりとやっていくということも当然必要なこととは考えますが、同時にこうした新たな制度、バリエーションを増やしていくということも必ずしも「将来的に」でよいとは考えておらずに、検討するということであればそういった時期に既にきているのではないかと感じております。
 さらに次のページでしょうか。報告書の29ページに、「将来的に」とした上で最後のパラグラフですけれども、「労働者全体の意思を反映した労使コミュニケーションが十分実効的に機能するようになった際には、過半数労働組合等の労働者集団と使用者との合意と、労働契約の規律との関係について、長期的な課題として議論していくことも考えられる。」とありまして、過半数代表者の改善策の検討状況を見て、順次議論を進めていくという方向性も示されていますが、現に過半数労働者、過半数労働組合がない企業、事業場でも、恒常的かつ実質的な形で労使コミュニケーションを行っているというところがあれば、まずはこうした企業において制度として認めていくであったりとか、そういったことも検討していい時期にきているかと思っておりますので、今後検討していく内容として御検討いただければと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、兵藤委員お願いいたします。
○兵藤委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございました。私からは、働き方改革の進捗状況と課題を中心に発言させていただきたいと思います。
 2019年4月に働き方改革関連法が施行されて以降、企業の現場において働き方に対する意識改革が進み、業務プロセスの見直しや業務効率化を通じ、我が国の労働時間削減の方向につながっているものだと感じております。
 弊社におきましても、休日日数の拡大による所定労働時間の短縮であったり、それから残業時間削減に向けてコアタイムなしのフレックスタイム制やテレワーク制度の活用、またその拡大、それからノー残業デーといった施策を実施しています。
 このような施策は労働時間の削減だけでなく、多くのニーズのある多様で柔軟な働き方を可能として仕事と育児、介護の両立にも寄与していると考えております。
 しかしながら、人手不足の問題に加えまして報告書で触れられておりますように、短い納期や工期の設定、契約外の作業といったような商環境が多くの業界、業種で残っているようで、企業の垣根を超えた協力が求められているものだと感じております。
 私のおります業界では、例えばトラックドライバーの長時間の問題に対して百貨店業界におきましても店舗の開店時間に合わせて品ぞろえをするために検品が必要な商品について物流業者が深夜に検品作業を行い、早朝にドライバーが集荷することで開店までに商品を納品するようなことが慣例としてありましたが、そこで百貨店業界全体としてその解消を図るような取組を始めているところでございます。
 そういったように、国全体として商慣行の是正に向けた取組が一層広がることを期待しておりますが、ただ、その解消にはなお時間を要するものだと思われます。したがいまして、制度の見直しの検討、今後につきましてはこうした商慣行の是正がまだ道半ばであるというような実態におきましても十分配慮いただきながら進めていただくようにお願いしたいと思っております。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鬼村委員お願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。また、御説明ありがとうございました。
 私のほうからは、裁量労働制について一言意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 先ほど来、皆様から御発言いただいておりますとおり、産業構造の変化や、それに伴う労働者の就労ニーズの変化というのは近年大きくなっておりますし、あるいは多様化も進んでいると思います。これは、我々の業界の製造業でも非常に大きく顕著に見られる状況だと思っています。
 こうした状況を受けますと、報告書の5項にございましたとおり、原則はシンプルかつ実効性のある形で法令に定めた上で、労使の合意によって現場の実態に合った法定基準の調整や代替を可能とすることが今後の検討において重要であるという指摘には大変共感するところでございます。こうした点は裁量労働制をはじめ、これからの労働時間規制を考える上で特に重要な考え方になるであろうと思います。
 労働時間をベースとする処遇そのものを否定することではございませんが、少なくとも一定の職種等によっては役割やその成果を基軸とする処遇を一段進められるような労働時間法制への見直しや、あるいはその両方の複線化を図っていく。このようなことが重要であろうと考えております。
 その第一歩としましては、裁量労働制の見直しが非常に重要かつ有効なものであると思います。現行制度では対象業務が厳格に規定されており、企業にとっては適用可否の判断が大変難しい状況がございます。対象業務については過半数労働組合など、労使での話し合いによって決定する。このような仕組みが非常に重要だろうと思います。
 今回、報告書において労使合意の下での法定基準の調整や代替の重要性が指摘されつつも、こうした裁量労働制の見直しに関する内容が全くなかったということについては非常に残念に思います。裁量労働制には一定の懸念があるということも承知しておりますが、適用労働者の約8割が適用に満足しているというほか、適用労働者のほうが健康状態がよいと答える傾向にあるという分析があるという事実もしっかりと共有しながら、必要な議論を進めるべきではないかと考えております。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、松永委員お願いいたします。
○松永委員 ありがとうございます。
 私のほうからは、労働時間法制について幾つかコメントをさせていただきたいと思っています。
 まず6ページに記載されていました検討の柱ということで「守る」「支える」という観点ですけれども、これは労働基準関係法制を検討していく上でも大変重要な項目であるというふうに我々も認識しています。これまでこのような視点で長時間労働の是正ですとか、多様で柔軟な働き方の実現、この両立が図られてきたというふうに考えていますけれども、就労の実態がますます多様化していますし、働くということに関する個人のニーズや考え方というのも大きく変わってきているように考えています。これから労働時間法制を検討するに当たっては企業の実態、労働者の実態も踏まえた検討を進めていくことが肝心だと思っています。
 あとは、柔軟な働き方を求める声に対応していくということも重要であると考えています。例えば、勤務間インターバル制度の規制については円滑な事業運営上、企業がそれぞれの状況に応じることができるのかといった視点も必要だと考えています。特に災害時における対応ということに関してはそれだけではなく、例えばやむを得ないトラブル等にも対応できるような柔軟な制度というのも念頭に置きながら検討が進んでいくことが重要かと考えています。これらの議論については、報告書の検討の柱をこれまで同様堅持しながら実態に合わせた労働法制、時間法制を検討していく必要性を強く感じているところでございます。
 私のほうからは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 藤川委員、お願いします。
○藤川委員 私からは、労使コミュニケーションについて労側の立場で発言をさせていただきます。
 今回、報告書では労使コミュニケーション、特に過半数代表者の適正化にかなり多くのページが割かれております。過半数代表の仕組みは労基法に限らず、育介法や労働者派遣法なども含めて多くの法令で導入されてきましたが、そのたびに過半数代表、特に過半数代表者の課題が指摘されたものの、見過ごされたままとなっていました。今回、報告書で過半数代表者の適正選出と基盤整備の具体的方向性が示されましたが、これは着実に前進をさせていく必要があると考えております。
 一方で、先ほどバリエーションといった発言が使用者側委員からございましたが、集団的労使関係の中核的役割は労働三権を背景として、職場における労働条件設定機能が与えられている労働組合であり、幾ら過半数代表者の適正化を図ったとしても労働組合の代わりにはなり得ないと考えております。
 労働組合の組織率が低下傾向にあることについては私たちも危機感を持っており、これまで以上に組織化に取り組んでいく必要があると認識をしておりますが、労働政策としても労働組合が十全に機能を発揮できるような環境整備を図っていくべきと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 水野委員、お願いします。
○水野委員 水野でございます。よろしくお願いします。
 私からは、今までの論議なども踏まえて、改めて労働時間法制につきまして、30ページにも記載をいただきました「2017年の労使合意」を踏まえた議論をぜひお願いしたく発言をさせていただきたいと思います。
 今回、見直しは働き方改革から5年を経過して、それを踏まえて行うものであると承知をしてございますけれども、働き方改革のもととなりましたのは2017年の時間外労働の上限規制などに関する労使合意だったと思いますので、その思いをこの場で改めて共有をして検討を進めるべきではないかと思ってございます。
 改めてこの労使合意においては、「長時間労働に依存した企業文化や職場風土の抜本的な見直しを図ることで過労死、過労自殺ゼロの実現と、女性や若者、高齢者など、多様な人材が活躍できる社会の構築に不退転の決意で取り組む」とされているわけでございまして、この労使合意から8年が経過をして、では果たして長時間労働に依存した働き方文化がなくなったかと言えば、まだまだそうではないと思ってございます。
 本日の報告でも労働時間が減少しているという報告がございましたが、一方で法の実効性を判定する上では、コロナの影響をどう見るかということで具体的な検証論議に至らなかったものと認識をしております。労働時間が減少する一方で現実的には今なお過労死や過労自死など、痛ましい事案もなくならないばかりか、増加傾向にさえありますので、こういった実態をしっかり見据えて、いかに働き過ぎを防止するのか、いかに労働者の健康と命を守るかという点に重きを置くことがこの論議の出発点ではないかと思っております。
 そういう意味では、一部、使側の発言でも、働き方のニーズとか、あるいは裁量労働制の拡大とか、そういった時間に縛られない働き方というような発言もございまして、そうした労働時間規制の緩和を求める声というのもあったと思いますけれども、過労死ラインレベルである上限規制を超えて働かせたり、ただでさえ低い割増賃金の支払い逃れの働き方を認めるようなことは全く認められない、ここは強調しておきたいと思います。
 改めてとなりますけれども、2017年の労使合意の精神を踏まえて働き方改革の一層の前進を労使で図っていけるような議論を進めていただければと思っております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
 今回の労働基準関係法研究会の報告書は、研究会のメンバーではない労働法を専門としている立場から見て、非常に多岐にわたる、かつ重要性の高い問題について丁寧な検討がなされたものであると思っています。内容が多岐であるので、今日の議論の中でも出てきたように、今後具体的な政策との関係で検討するとしたら優先順位があったり、あるいはさらに付け加えるべき点などもあり得るのかなとは思いますが、今後の検討の際の重要な出発点になるものではないかと考えています。
 それを前提としてちょっと述べておきたかったのが、この検討会の報告書の中では具体的な法制度の中身とともに、法制度を実現する方法についても検討課題として挙げられている点、ここは重要な点ではないかと思っております。特に労働基準法に関しては、伝統的に行政監督による実効性確保が非常に重要な役割を占めていたわけですが、今回の検討会ではむしろそれだけではない多様な実現方法の可能性が示されているというところであり、そのルールの中身と実現方法の関係というのもあり得ると思いますので、今後の検討の中でそういう点も含めた実現方法というのも一つの重要な点になるのではないかということで発言をさせていただきました。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○佐藤(厚)委員 オンラインから発言をよろしいですか。チャットには書いたので、お願いしたいと思います。
○荒木分科会長 失礼いたしました。佐藤(厚)委員、お願いいたします。
○佐藤(厚)委員 大変重要な論点について非常に丁寧にまとめていただいたものだと思って拝見しました。
 1点だけ、確認も含めてのことなのですが、先ほど過半数代表制についての御意見が労側、使側からも出てきたわけでございますけれども、具体的に言いますと29ページの最後で、まずはこの報告書では労働組合の活性化が望まれる。それから、過半数代表者の改善を実施する。これは非常に丁寧に選出手続も含めて、これまで曖昧だった点について明確にしよう。これは非常に重要だと思っています。
 さらに、それを把握しながら労使コミュニケーションの在り方についてさらに議論を深めていくべきであるということなのですが、「さらに、将来的に」というところですね。「労使コミュニケーションが十分実効的に機能するようになった際には、過半数労働組合等の労働者集団と使用者との合意と、労働契約の規律との関係について、長期的な課題として議論していくことも考えられる。」というところの文章の読み方といいますか、一方ではこういう言葉は使っていないけれども、いわゆる労働者代表制とか、あるいは従業者代表制というようなことで、過半数代表者も含まれてはいますけれども、もう少し両者の組織体として労働条件の設定なり、協議なり、あるいは交渉なりというような機能を持った形でそういうものを少し検討して実現の可否について検討したらどうかという議論がありますけれども、こういうようないわゆる従業員代表制とか労働者代表制というようなことの議論というものがこれまでの研究会の中でどのような形で出てきたのか、あるいは扱われてこなかったのか。その辺りの経緯についての御紹介をしていただければと思います。
 それから、最後のところはそういうようなことを含めた形での書き方になっているのかどうかですね。諸外国の例を参考にしながらというのは先ほどあったところなのですけれども、これは確認も含めてということでございます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 議論の経緯について御質問がありましたけれども、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 佐藤(厚)委員の御質問にお答えいたしたいと思います。
 労使コミュニケーションにつきまして29ページ目から30ページ目の(6)といたしまして、目指すべき姿についても研究会の議論の成果として一定取りまとめさせていただいておりますが、今ほど委員から御指摘のありました諸外国におけます従業員代表制とか、労使が入った企業委員会などという制度について、そういうものもあり得るよねというところについては当然議論の中で出てまいりましたけれども、今回やはりそうした会議体を一足飛びにつくれるかということを考えますと、前のほうでも出てまいりますように、我が国においてはそもそも1人の過半数代表者を選出するところ自体にも大きな課題があるということで、まずはその部分の改善をしっかりと検討して提言をするということが委員の総意であったかと考えております。
 その先の姿ということはいろいろあり得るということではここで言及があるところでございますが、早急にといいますか、当面取り組むべきものとしては労働組合の活性化と過半数代表者の機能の改善というところについて、研究会に来ていただきました10人の先生方の総意としてまとめられたものというふうに理解をしております。
○佐藤(厚)委員 ありがとうございました。承知しました。
 今、御回答のリプライの趣旨だなと思って伺っていたのですが、よく分かりました。
 願わくば、その議論をまずは行った上で、労側、使側からの意見を踏まえて諸外国の労働者代表制ということも日本における検討、導入の可否のようなことまでも視野に入れた議論ができればいいかなとは思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 特にそのほか御発言がないようでございましたら、事務局には本日いただいた先生方の御意見を踏まえて次回の資料等の準備をお願いしたいと思います。
 それでは、本日の議論はここまでとさせていただきます。
 最後に次回の日程等について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、第193回の「労働条件分科会」は以上といたします。
 本日もお忙しい中、御参加いただきましてどうもありがとうございました。