技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第84回)議事要旨

人材開発統括官海外人材育成担当参事官室



日時:令和7年1月27日(月) 10:00~12:00
場所:Web会議
出席者:市田委員、岩崎委員、漆原委員、大迫委員、當間委員、花山委員
厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構
(タオル製造職種関係)日本タオル検査協会、日本タオル工業組合連合会、経済産業省生活製品課
(介護職種関係)シルバーサービス振興会、厚生労働省福祉基盤課、オブザーバー(特定非営利活動法人東京ケアネットワーク 小山副理事長、UAゼンセン 山﨑医療・介護・福祉部会事務局長)
 
議題
(1)タオル製造職種(タオル縫製作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
(2)介護職種の作業範囲拡大について(訪問系介護サービスの追加)
(3)その他(缶詰巻締職種について、試験実施に係る指摘事項への対応報告)
 
【概要】
(1)タオル製造職種(タオル縫製作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
○ タオル製造職種を移行対象職種として技能実習評価試験及び審査基準を整備することについて、日本タオル検査協会から説明があり、主として以下のような質疑が行われた。
・過去の不正事案について、2019年にNHKで劣悪な環境下で技能実習生がタオル製造を行っていたことが報道され、それに対して今治タオル工業組合連合会のホームページに「大切なお知らせ」として、コンプライアンスへの取組について掲載されている。このような不正を行う企業に対しては、コンプライアンス研修を行うだけでは効果は薄いと思われる。その後、不正にタオルを製造させることを目的に技能実習生の就労資格を特定活動に切り替えさせて引き続き就労させていたという問題について、2024年の7月に報道されている。こうした実態については、業所管省庁に加えて、日本タオル工業組合連合会としても、業界への実態について調査を実施していると思う。それを踏まえて事件が発覚した2024年7月からこれまでの間、追加でどのような対策を講じてきたのかとの質問があった。これに対し、今治タオル工業組合における2019年以降の対策としては、外国人技能実習機構も参加する連絡会議の開催、組合員以外でも参加可能なコンプライアンス研修、組合員への外部監査を行い、サプライチェーンも含めた法令遵守の取組状況をヒアリングにより把握し、そのフィードバックを通じて改善してきた。2024年の事案発生以降は、不正事案が出たときには、今治タオル工業組合の組合員に対して調査を行ったり、サプライチェーン全体に法令遵守の徹底の通知をしたりしている。追加で実施していることはないが、今までやってきたことを徹底しているとの回答があった。これに対して、2019年以降、現在までしっかり対策を実施してきたのであれば、2024年のようなことは起こらないはずであり、現状の対策では到底不十分ではないかとの意見があった。これに対し、委員からの御指摘を踏まえて、具体的な対策について検討するとの回答があった。業所管省庁から、2019年の事案については繊維業の技能実習の分野別の協議会を立ち上げている中で、今治タオル工業組合や愛媛県技能実習協議会などに、業界の中も外も含めて周知をお願いしている。また、2024年の事案については、例えば愛媛県技能実習協議会に対して、構成員にしっかり周知をしてもらうことで、今治タオル工業組合、日本タオル工業組合連合会の中だけではなく、これらの組合員以外にも事案を周知し、改善いただくという要請を行っている。これらの対策が十分であるか否かの議論はあると思っているが、業界団体の外に対しても実施できることは行っており、繊維業全体で企業の人権基準の適合状況も調査をしている、との補足説明があった。
・送出し国には裸足で就業している者がいるため、技能実習で安全衛生について修得する必要があるとの説明があったが、それは技能実習をしたからといって改善するものではない。そもそも工場の安全衛生管理体制、就労環境整備や労務管理上の問題であって、例えば、工場の管理者に対する研修を実施し、その管理者を中心に安全衛生管理体制を強化していくことで十分ではないか。海外の管理者に対する研修は、例えば中央労働災害防止協会(以下「中災防」という。)でも実施している。まずはそういった事業場において、安全衛生管理体制あるいは生産管理体制の研修をやる方が良いのではないか、との意見があった。これに対し、工場の管理者に対する研修によって現地の安全衛生のレベルを上げることはできるが、縫製技能を身に付けることを主な目的としているため、技能実習を通じて、縫製作業における安全衛生の基準や作業の質の高さを身に付けてもらうことで、品質の高いタオル製品を縫製できるようになるとの回答があった。これに対して、少なくとも安全衛生については、日本国内で技能実習を実施しなくても十分に対応できる。これまでも中災防などが海外で管理者研修の実績を積み重ねているので、技能実習制度を活用しなくても問題はなく、安全衛生管理を徹底させ、その管理者の下で労働者が働くことで十分ではないか。また、労働者によるタオル製造の能力だけが向上上しても、送出し国での生産の指示内容や、工程ごとが分業体制となっていれば、全体の工程に波及しない。安全衛生についても品質についても、まずは管理者に対する研修等を実施したり、高品質なタオルを製造する機器を導入したりすることが先ではないかとの意見があった。座長から、次回までにこの点について整理して回答するように日本タオル検査協会に求めた。業所管省庁から、ベトナム政府としては日本国に技能実習生を送り出すという方針を打ち出しており、ベトナム内で安全衛生などの管理体制を作っていくことと両面を育てていく必要があるという趣旨の委員からのご指摘と捉え、この点は更に検討していくとの補足説明があった。
・ベトナムで生産されるタオルの約9割が日本に輸出されると聞いたことがあるが、技能実習を行わなくても、日本がベトナムから輸入する際に、現地の工場に製品の加工や検品を行う人員を日本から派遣するだけでも、一定程度品質管理を向上させられるのではないかとの意見があった。これに対し、ベトナムやインドネシアから繊維産業を発展させたいとの要望書を頂いていることに加えて、現地の事業者からも、幅広いものづくりや新しい付加価値のあるタオル製品を作りたいということを聞いた。そのため、技能実習で多種多様なタオル縫製を身に付けさせたいと考えているとの回答があった。
・2019年の不正事案は、組合に属してない企業の事例だと聞いているが、それで間違いないかとの質問があった。これに対し、2019年の事案では今治タオル工業組合の組合員1社が行政処分を受け、2024年の事案は、今治タオル工業組合の組合員の事業場ではないが、そのサプライチェーンに含まれる事業場であるとの回答があった。これに対し、不正事案の再発を防止するためには、組合員以外の事業者をいかに取り込み、組織立てていくかが重要だと思うので、その点取り組んでいただきたいとの意見があった。これに対し、関係機関と連携して取り組むとともに、業所管省庁と検討していきたいとの回答があった。座長から、組合に属してない業者をどのように取り込んでいくかの具体的な方法、認められてない業務を実習実施者が隠れて技能実習生に実施させることを防止するための具体的な対策を次回の専門家会議で回答するように日本タオル検査協会に求めた。
・最後に座長が本日の会議の主な論点は、認められていない業務を実習実施者が技能実習生に行わせていた過去の不正事案に対する具体的な対策の検討、送出し国での実習ニーズと送出し国内のタオル製造工場での安全衛生などの管理体制の構築についての整理の2点であるとまとめた。
○ 検討の結果、タオル製造職種(タオル縫製作業)については、次回以降、引き続き、議論が行われることになった。
 
(2)介護職種の作業範囲拡大について(訪問系介護サービスの追加)
○ 介護職種の作業範囲に訪問系介護サービスを追加することについて、厚生労働省福祉基盤課から説明があり、主として以下のような質疑が行われた。
・パワハラ・セクハラ等の事実がないにもかかわらず、技能実習生が悪意をもってパワハラ・セクハラされたと利用者を訴える場合も想定されるが、その予防策は考えているかとの質問があった。これに対し、日頃からそのようなことが起こらないよう指導することが第一であり、まずは、基本的な研修、介護職員初任者研修などで基本的な知識を得ていただくことが大切だと考える。その上で、技能実習指導員がOJTで同行訪問したり、必要に応じて巡回したりすることで、技能実習生と利用者との相性を見ていくことが考えられる。また、ICTを活用した遠隔での安否確認も一部の事業所に導入されている。これについては利用者の同意が前提になるが、利用者の自宅に見守りカメラを置いて、状況を見ながらケアをする事例も出てきている。こういったものが、客観的に第三者が状況を確認できるという意味では、一定の抑止になると考えており、周知していきたいとの説明があった。
・訪問先の選定に関して、事業者任せではなく基準を策定すべきではないかと委員から意見があった。オブザーバーに意見を求めたところ、利用者は日や時間によって認知レベルなどの状況が変わるため、ある程度の基準が必要である。例えば、認知症の利用者の日常生活自立度に基づいて基準を設ける、技能実習生がやってはいけない業務を設ける、技能実習生の技術力又はコミュニケーション能力等に基準を設ける等の基準が必要であり、それらを事業者任せにするのは不安が大きい。また、介護を行ううえで、技能実習生が利用者に対し個々の介護行為について同意を得ることが不可欠だが、技能実習生がそうしたコミュニケーションが取れるかどうかも懸念があるとの意見があった。これに対し、訪問先の選定に当たっては、利用者の全体像、特性及び家族の状況と、訪問する外国人の能力、技術の状況及び技術の習得の度合いの要素がある。それらを総合的に判断して、サービス提供責任者の意見を聞きながら決めることが重要だと考えている。利用者の個々の介護行為に対する同意については、例えば介護職員初任者研修の科目に、介護における尊厳の保持・自立支援、介護におけるコミュニケーション技術などが含まれ、利用者の自己選択・自己決定のための意思確認をしっかりしていく。生活支援技術については介護職員初任者研修の中で、演習を通じて学ぶことになっており、日々状況が変わる利用者に対応できるよう適切な技能の修得を行う。併せてOJTという形で、サービス提供責任者が一定期間、技能実習生に同行し、現場で教える。利用者一人一人の状況が違うので、利用者の納得を得て、関係性を作りながらやっていくことが大切だと考えているとの説明があった。
・海外で訪問介護を運営している会社の例について説明があったが、海外で訪問介護を実施している中で何か問題となる点や参考になる点などはあるかとの質問があった。これに対し、介護サービスの提供が適切になされているかということを確認するため、ICTの活用などは大切だという意見があるとの回答があった。これに対し、ICTをうまく活用できれば、より良い運営ができると思うとの意見があった。
・訪問介護と施設介護の違いを踏まえ、技能実習生の日本語能力や実務経験の要件を設定する必要性について委員からオブザーバーに意見を求めた。オブザーバーからは、施設介護はチームでケアにあたるが、訪問介護の場合、基本は1対1であり、何かあったときにすぐに他の職員が助ける、対応者を変えるなどの対応ができない。また、一つ一つのケアに当たるときに、必ず利用者から同意を得なければいけないため、訪問介護では施設介護よりも高いコミュニケーション能力が求められる。現行の施設介護に必要な日本語レベルは、入国時にN4、2年目からN3という基準があるが、N3は小学校中学年程度で、日常会話が何とか行えるレベルである。そのため、訪問介護では日本語レベルN2が最低限必要なのではないか。さらに、訪問介護以外の介護サービスは一定のスケジュールの中、利用者の自宅外において複数人でサービス提供を行う一方、訪問介護は利用者の自宅の中で、利用者の日常生活の現状維持を行った上でサービス提供を行うことが原則であるため、利用者の気持ちをくみ取る、あるいは利用者の協力を得ながらサービス提供を行うことはより高いレベルで求められる。そのため、訪問介護の場合は、施設介護の場合より傾聴力が求められるとの意見があった。これに対し、今回、訪問介護を認めるに当たっては、事業者に遵守事項として、研修、同行訪問、ICTの活用、セクハラ・パワハラの対応、など対応をお願いしている。技能実習生に対しても、介護職員初任者研修の受講を求めており、施設介護と訪問介護で差を設けている。傾聴・受容・共感といったコミュニケーション能力も非常に重要だと思っているので、事業者には研修の実施を遵守させ、その中で御家族、御本人とのコミュニケーション、傾聴などのスキルを学んでいただくことを考えている。日本語能力については、継続的に高めていくことが大切である。要件としては2年目にN3に合格していること等を定めているが、継続的に学習をしていただく環境をしっかり作っていくために現在、介護日本語のWebコンテンツなどを、厚生労働省と関係団体とで連携しながら作っている。また、経済的な支援として介護事業者に対して経費の補助をしているとの説明があった。
・訪問介護を実施するにあたり、介護職員初任者研修修了だけですぐに訪問介護に技能実習生を従事させてよいと考えるかについて委員からオブザーバーに意見を求めた。オブザーバーからは、介護職員初任者研修修了だけでは不十分である。日本人でも研修修了しただけでは十分な技術、知識は持ち合わせていない中、一定期間OJTや、技術面が向上するまでの間の一定程度のフォローが必要。技能実習生であればなおさら経験年数や研修期間、同行期間、指導の期間を定めるなど、一定の基準を国が示すことが必要。利用者は身体能力の違いや生活習慣の違いなど、様々な状況にある中で、通常、サービス提供責任者や事業者が配慮しながらサービスが行われているが、それと同じ配慮のみで、介護職員初任者研修を修了しただけの技能実習生に対応させることは難しいとの意見があった。これに対し、介護職員初任者研修を受ければすぐに現場に出られるということは必ずしも言えず、介護職員初任者研修に加えて、事業者に追加で研修の実施を求めたり、同行訪問を実施させたりして、いろいろサポートしていくということが必要だと考えている。利用者個々人の身体の状況や居宅での生活実態等に即した対応が求められるという点については、実際に行ってみて、利用者及びその家族とコミュニケーションを取ることによって信頼関係ができ、利用者の特性に応じた質の高いサービスにつながると思っている。加えて、同行訪問や訪問前と後に行う技能実習指導員による指導等を組み合わせながらレベルアップを図ることが大切だと考えているとの説明があった。
・事業者側の都合や計画だけで訪問介護を技能実習生に行わせるものではないという理解でよいか。技能実習生本人の同意とキャリアアップ計画との関係はどのようになっているかとの質問があった。これに対し、技能実習生本人が納得して訪問介護に従事することが大切であり、事業者は技能実習生に対して丁寧に説明を行い、本人の意向を確認することが重要である。そのため、事業所において技能実習生一人一人に対して、キャリアアップ計画を作ることを求める。このキャリアアップ計画には、訪問介護に従事したいといった本人の意向を書く欄を設け、事業所が保管するだけではなく、技能実習生本人とも共有して、意思疎通をしながら技能実習を実施していく。さらに、日本語能力の取得目標や今後どのような業務、活動をしていくのか、また事業所がどういう支援をしていくのかということも書き込みながら、具体的に計画的にキャリアアップしていけるようにしたいとの回答があった。
・厚生労働省福祉基盤課から、事業者任せで訪問介護を技能実習生に実施させることになるのではないかとの指摘に対しては、事業者において遵守事項を実施する体制が整備されているか巡回訪問等実施機関がチェックを行う。また、当該機関が、訪問介護を実施する事業所に対し、巡回訪問を行い、技能実習の状況、技能実習生本人の業務に従事する様子等を確認し、ヒアリングを行いながら、例えば、キャリアアップ計画に記載された事項が遵守されているか確認をするとの説明があった。
・委員から、オブザーバーからも意見を頂いて議論をこれだけ重ねてきているので、そろそろ結論を出してもいい段階に来ているのではないかと思っている。煮詰まっているところ、煮詰まっていないところはあると思うが、2月辺りには結論を出す方向で厚生労働省福祉基盤課において議論を整理していただきたいとの意見があった。
・座長から、本日いただいたオブザーバーの意見をまとめると、訪問先の選定の基準を設定する必要性、訪問介護を行う技能実習生の要件としてコミュニケーション能力や利用者との信頼関係構築の可否、意思疎通のレベルを考慮する必要性、訪問介護と施設介護の違いを技能実習生に理解し、本人の同意の下実施する必要性、が挙げられるとの発言があった。
○ 検討の結果、介護職種の作業範囲拡大(訪問系介護サービスの追加)については、次回以降、引き続き、議論が行われることになった。
 
(3)その他(缶詰巻締職種について、試験実施に係る指摘事項への対応報告)
○ 缶詰巻締職種について、第76回技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議での委員からの指摘事項の対応状況について事務局から説明を行ったところ、了承された。
 
(以上)