第202回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和6年12月27日(金) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 専用第14会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階)

議事

議事内容
○岡雇用保険課長 それでは、定刻より少し早いですけれども、皆様おそろいでございますので、ただいまより、第202回「雇用保険部会」を開催いたします。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表守島委員、使用者代表島本委員が所用のため欠席となっております。また、公益代表水島委員が所用のため途中参加予定となっております。なお、総務課長の黒澤は別の公務のため欠席となってございます。
 本日は、部会長である守島委員が御欠席です。そのため、労働政策審議会令第7条第6項の規定に基づき、部会長代理にその職務を代理していただきます。部会長代理については、同項の規定により、部会に属する公益委員のうち部会長があらかじめ指名する者となっておりまして、中窪委員が指名されております。
 以降の議事進行につきましては、中窪部会長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中窪部会長代理 皆様、おはようございます。
 ただいま事務局より説明のありましたとおり、本日は私が部会長を代理して議事を進行させていただきます。よろしくお願いいたします。
 マスコミ等のカメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。議題1は「雇用保険制度について」です。
 それでは、まず資料1について事務局より説明をお願いいたします。
○岡雇用保険課長 それでは、資料1に沿って御説明申し上げます。
 表紙をめくっていただきまして、2ページ目は本日の議題でございます「二事業による失業等給付の積立金からの借入金の扱いについて」でございます。2ページは、第199回、第200回の当部会における主な御意見について抜粋したものでございます。
 それから、次の3ページが前回第201回の当部会における主な御意見になってございます。これ以前にも多くの御意見をいただいておりますけれども、ここでは前回第201回の御意見の中から主なものを御紹介させていただきます。
 まず、「雇用保険二事業による失業等給付の積立金からの借入金の扱いについて」です。ということで、1つ目の黒ポツでございますけれども、概要のみを省略しながら御紹介させていただきます。累計2.9兆円の積立金からの繰入れについては、コロナ禍において政府からの休業要請を受けて多くの事業主が休業を強いられ、雇調金を活用せざるを得なかった事情がある。度重なる特例措置を長期間にわたって講じた結果、雇用の安定には寄与した一方で、雇用安定資金については4年連続で残高がゼロという危機的状況にある。多くの国民生活が守られたという事実に照らせば、2.9兆円を事業主のみが拠出する二事業で賄うことは理解が得られないという御意見がありました。
 それから、4つ目の黒ポツでございますけれども、積立金から二事業への貸出しについて、本来であれば一般会計で措置すべきものであった。貸出しの中には労働者の保険料も含まれていることを踏まえ、最優先で保全されるべきといった御意見をいただいております。
 それから、借入金に関する毎会計年度における返還についてでございます。
 1つ目でございますけれども、二事業における剰余金について、今年度は2分の1を雇用安定資金に組み入れるべき。その後は雇用保険財政全体の状況、政策課題への対応などを踏まえて検討するべき。
 それから、2つ目でございますけれども、速やかに返還されるべき、労使の意見をしっかりと認識した上で今後の対応を検討してほしいといった御意見をいただきまして、それを踏まえまして厚労省のほうで財務当局と折衝をしてまいりました。
 次の4ページでございます。12月25日に行われた厚労大臣と財務大臣の大臣折衝がございました。以下がその内容になります。ちょっと長くなりますけれども、読み上げさせていただきます。
 雇用保険二事業による失業当給付の積立金からの借入額(2.9兆円)については、1兆円の控除を行い、残りの1.9兆円については、毎年度の雇用保険二事業の剰余金により返済を行うこととする。
 当該控除については、特別会計法附則第20条の3第8項の規定に基づき、雇用勘定の財政状況及び雇用保険二事業の実施の状況を勘案するとともに、新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、令和2年度から講じられた雇用調整助成金の特例措置が、国による全国的な休業要請などの未曾有の危機時における政策判断として、失業等給付の積立金の活用(雇用保険二事業への繰入れ)を含む前例のない雇用維持策であって、同特例措置が相当程度の失業を予防し、もって求職者給付等の代替機能を一定程度果たしたと見られること。
 こうした特例措置による対応が令和3年度以降にまで長期間にわたって延長されることにより積立金から雇用保険二事業への繰入れも継続された結果、同年度以降において雇用保険臨時特例法に基づく一般会計からの任意繰入れが発動され、当該任意繰入れの果たした役割を踏まえた負担の調整が行われる必要があること。
 さらには、雇用保険二事業に組み入れられた失業等給付の積立金のうち労働者が拠出した保険料に相当する部分については、最優先で保全されるべきであるとの意見を踏まえる必要があることなどを総合的に勘案し、特例的な対応として行うものである。
 また、毎年度の雇用保険二事業の剰余金の取扱いについては、今後の景気後退等における雇用調整助成金の支給等の急増に備えるため、また、近年取り組んできた人への投資や就業調整への対応を含む労働力確保等に引き続き取り組むとともに、賃上げに向けた生産性向上対策等の事業者全体が抱える課題について、雇用保険二事業の対応力を高めつつ、政策的要請に機動的に対応していくため、毎年度の予算編成過程において、失業等給付の安定的な運営に留意しつつ、検討を行うこととする。
 こうした観点から、令和6年度決算において雇用保険二事業に差引剰余が生じた場合には、特別会計法附則第20条の3第6項ただし書の規定に基づき、当該剰余の2分の1を雇用安定資金に組み入れることとし、残余の2分の1を失業等給付の積立金に繰り入れることとする。
 以上が大臣折衝の内容でございます。
 この大臣折衝について、これだけでは1兆円の根拠が不明確でございますので、その考え方を5ページに記してございます。雇用調整助成金の特例措置は、失業等給付の積立金から二事業へ貸出しを行いつつ、令和2年度から令和4年度まで実施されたところでございます。令和2年度の貸出額(1.4兆円)については、その積立金の原資が失業等給付の安定的運営のために労使の皆様が納めた保険料であることが明確であることから、その全額を返還することとする一方、当該特例措置が想定を超える異例の長期間にわたって延長することとなった令和3年度以降の二事業への貸出額(1.5兆円)については、一般会計からの任意繰入れも行いつつ、雇用保険財政全体の負担により当該特例措置を継続することで、極めて臨時的・特例的に雇用維持を図ったものと考えられることから、当該任意繰入れの果たした役割を踏まえた負担の調整を行うこととしたものです。
 すなわち、積立金への特例的な一般会計からの任意繰入れがなされなければ、二事業に貸し出し得なかった額として0.55兆円は免除することとしました。
 残りの0.95兆円については、失業等給付のために徴収された労使折半の保険料を原資として蓄えられてきたものでございます。コロナ禍における長期間にわたる延長という異例の事態が存在しないとするならば、本来失業等給付のために使用されたはずのものでありますので、積立金に全額返還されることが原則と考えます。
 しかしながら、先ほど申し上げたような異例の状況下において、当該特例措置が相当程度の失業を予防し、求職者給付等の代替機能を一定程度果たしたと見られることに鑑みれば、可能な限り関係者間の負担の均衡を図る観点から、また、労働者が拠出した保険料に相当する部分は保全されるべきとの意見を踏まえ、0.95兆円の半分の0.47兆円は失業等給付に変換するとともに、もう半分の0.47兆円は、使用者が拠出する保険料を財源とする雇用保険二事業財政の早期の健全化を図る必要性を踏まえ、免除することとし、合計1兆円の免除額とすることにしたものでございます。
 以上、申し上げたことを図に表したものが資料の次の6ページでございます。まず、令和2年度、令和3年度、令和4年度とそれぞれの状況を図で示してございます。一番左の令和2年度につきましては、前年度の積立金残高4.49兆円、左のほうに書いてございますが、これは全て失業等給付のためにそれまで労使の皆様が納められた保険料によって蓄えられてきたものでございます。そして、この令和2年度については令和2年度の図の右のほうに青い字で「二事業へ貸出1.40兆円」と書いてございます。紫のところでございますけれども、前年度の積立金残高から補填ということで、これは全て労使の皆様が失業等給付のために納められてきた保険料によって拠出をしたということになります。
 一方、雇用調整助成金の特例措置が異例の長期にわたった令和3年度でございますけれども、この年度はまず前年度の積立金残高が1.98兆円、これは先ほどから申し上げておりますように労使の皆様が納めた保険料を財源とするものでございます。これが令和3年度に繰り越されまして、この紫の部分に該当いたします。
 それで、この令和3年度につきましては、この図の右のほうにありますように失業等給付の支出が1.45兆円に対し保険料収入が0.42兆円しかなかったということで、紫の部分の破線で仕切ってあります上の部分、労働者保険料0.52兆円、それから使用者保険料0.52兆円、計1.03兆円を失業等給付に充てまして、残りの破線から下であります労働者保険料0.47兆円、使用者保険料0.47兆円、④と③ということになりますが、合わせて0.95兆円、これを右のほうにあります黄色で網掛けしております「二事業へ貸出1.44兆円」に充てられたわけでございます。けれども、1.44兆円はこの0.95兆円だけでは足りない、それ以上貸し出し得なかったということで、その下にありますピンクの一般会計財源から補填0.49兆円、これは左のほうにありますように、緑で網掛けしてございますけれども、臨時特例法によって任意繰入れしました一般会計財源1.74兆円、その中からこの0.49兆円を充てることで、ようやくこの二事業への貸出しがなし得たという状態でございます。そして、残りました積立金残高1.25兆円につきましては、この任意繰入れによる一般財源のものが残ったということになりまして、翌年度に繰り越されたということになります。
 そして、令和4年度に入りましても失業等給付に対し保険料収入が不足しているということで、一般会計任意繰入れによるものを前年度から繰り越したもの、また、緑で書いてございます令和4年度にも0.73兆円の任意繰入れが一般会計からありましたけれども、この合わせて1.97兆円の中から失業等給付の支出に充てつつ、また、「二事業へ貸出0.06兆円」、この黄色の網掛けがしておるところでございますけれども、そしてピンクで②と書いてございますけれども、この二事業への貸出しについてもこの任意繰入れの一般会計を使ってようやく貸出しができたということでございます。
 こういった中で、まず上のリード文の1つ目のポツでございますけれども、失業等給付から二事業への貸出しは、先ほど申し上げましたように令和2年度1.40兆円、令和3年度1.44兆円、令和4年度0.06兆円で、累計2.9兆円が行われました。このうち令和2年度の貸出額(1.4兆円)につきましては、全額を積立金のほうに原則どおり返還する一方、想定を超える異例の長期間にわたって延長することとなった令和3年度、それから令和4年度については負担の調整を行ったものでございます。具体的には貸出額1.5兆円、黄色の網掛けをしてございます1.44兆円と0.06兆円の合計ということになりますけれども、このうちまず一般会計から積立金へ繰入れがなされなければ貸し出し得なかった0.55兆円、①と②のピンクの部分の合計でございますけれども、ここを免除する。令和3年度の二事業への貸出のうち労使の保険料に基づく0.95兆円、紫の③、④の部分でございますけれども、このうち雇用調整助成金の特例措置が果たした機能に鑑み、使用者負担分の0.47兆円、③の部分については免除をする。一方、労働者負担分0.47兆円、④については原則どおり返還をするということになりまして、合計で1兆円を免除するということになった次第でございます。
 次の7ページは、今、図で申し上げたものを収支表にしたものでございます。内容は重複しますので、説明は割愛させていただきます。
 今回の折衝の内容につきましては以上でございます。
○中窪部会長代理 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして御質問、御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。
 それでは、平田委員、お願いします。
○平田委員 御説明ありがとうございました。
 まず、スライド4ページ目の大臣折衝事項の合意には、二事業による積立金からの借入額2.9兆円のうち1兆円の控除とありますが、これはコロナ禍で緊急対応としてやむなく雇用保険二事業で対応してきた、言わば感染症対策に係る費用の一部を一般会計で負担すると政府が判断したと受け止めました。
 これを踏まえて2点確認です。1点目は、同じく大臣合意の中に「特例措置が相当程度の失業を予防し」とありますが、どの程度の失業抑制効果があったのかを教えてください。
 2点目は、コロナ禍で大幅に利用された雇調金を含む雇用安定事業についてです。改めてコンメンタールでも確認したところ、地震や火災等の天変地異や伝染病による汚染等を直接の原因として事業活動の縮小を余儀なくされる場合の失業予防を目的として実施されるものではないと理解しております。この制度の趣旨は今も変わっていないと考えてよいのか教えていただければと思います。
○岡雇用保険課長 まず、1点目の失業予防効果がどれくらいあったかという御質問についてでございます。新型コロナウイルス感染症が蔓延し、企業活動が未曾有の影響を受ける中で、雇用失業情勢の悪化が一定水準にとどまったことに鑑みますと、雇用調整助成金の特例措置が失業の抑制機能と求職者給付等の代替機能を一定程度果たしたと考えられます。ただ、その具体的な効果については様々な見解がありますので、確定的に申し上げることは難しいと考えてございます。
 なお、これは2020年4月から10月という限られた期間ではありますけれども、失業率の抑制効果が2.1ポイントだったという厚労省の試算がございます。これをベースに仮に令和3年度も一年間失業率の抑制効果が2.1%だったと仮定して推計いたしますと、失業等給付の抑制効果というのは約0.51兆円だったということで、これは先ほど御説明いたしました控除額のうち使用者拠出相当分である0.47兆円とほぼ同程度と考えてございます。
 それから2点目でございますけれども、雇用調整助成金の制度の目的ということで、先ほどお話のありましたように、本来は一時的な景気変動へ対応するため、それを想定して制度として設けているのが雇調金でございますので、そういった意味で今回のコロナ禍での措置というのは極めて異例だったと考えてございます。
○中窪部会長代理 よろしいでしょうか。
 そのほかはいかがでしょうか。
 清田委員、お願いします。
○清田委員 御説明ありがとうございました。
 今回の大臣折衝におきまして、厚労省の皆様におかれましてはこの部会における意見を踏まえて控除額をはじめとした調整を行っていただきましたことに改めて感謝を申し上げたいと思います。
 他方で、結果については遺憾に思っております。コロナ禍における雇調金の対応は全額一般会計で行うべきことをコロナ禍の当初より申し上げてまいりました。政府からの休業要請や広範囲かつ長期にわたる雇用の維持支援を事業主のみが負担をする二事業のみで措置するということは適切ではないと現時点でも考えております。
 今回の借入金の控除額についても、一般会計から充当された2.5兆円というのは実質的に雇調金の原資になっているということを踏まえると、控除額として検討するべきであると申し上げてまいりました。
 今回の大臣折衝における結果はこうした考え方から乖離するものでございまして、必ずしも納得できる結果とならなかったということは残念に思っております。今後、同様の大規模災害などの非常事態に直面した際に、今回の対応が前例となることは受け入れられるものではございません。繰り返しとなりますが、国家の非常事態における雇用の維持・安定の支援の在り方、財政支援の在り方については平時より早期に検討を行うべきと考えております。この点について改めてお願い申し上げます。
 私からは以上です。
○岡雇用保険課長 これまでも清田委員がおっしゃってきたとおり、コロナ対策というのは国の責任で一般会計で措置するべきものだということで、先ほど平田委員からも御質問がありましたように雇用調整助成金というのは本来一時的な景気変動のためのものであり、これで全部コロナ対策について対応したというのは不適切ではなかったのではないかという御指摘かと思います。この特例措置につきましては、繰り返しになりますけれども、本来一時的な景気変動への対応を想定している雇用調整助成金の対応を超えるものであったという御指摘を真摯に受け止めたいと考えております。
 また、今後同じようなことが起きた場合のために、コロナ禍の対応に関しまして十分な検証を行う必要があると考えております。現在、JILPTで今回のコロナ禍における雇用調整助成金の効果などについて検証作業を進めておるところでございますけれども、今後、その検証結果等も参考にしながら、本来一時的な景気変動への対応を想定している雇用調整助成金等の雇用維持政策の在り方について、特例措置を講ずる場合の留意点等を含めて労働政策審議会において検討してまいりたいと考えております。
○中窪部会長代理 それでは、ほかはいかがでしょうか。
 渡辺委員、お願いいたします。
○渡辺委員 御説明ありがとうございました。
 失業等給付への返済免除額につきましては、前回、法律の関係で積立金を経由して一般会計から支出した金額をベースに免除されるべきと考えており、できる限りの交渉を財政当局としていただくようお願いさせていただいたところです。このたびの大臣折衝の結果、1兆円が免除され、残りの1.9兆円については毎年度の雇用保険二事業の剰余金より返済を行うとされこと、また、令和6年度決算で雇用保険二事業に差引剰余が生じた場合には、当該剰余の2分の1を雇用安定資金に組み入れるという結果となったとの御説明があったかと思います。これまで申し上げてきたことが必ずしも満たされたわけではございませんが、雇用保険全体の今後も見据えた安定的財政運営の観点も踏まえたものであると理解したいと思っております。
 ただ、これまで平田委員、清田委員からもあったかと思いますが、今回の議論を機に、非常時における緊急対策の財政負担の在り方や雇用調整助成金の在り方についての検討を行っていく必要があると考えております。
 最後になりますが、労使それぞれの立場での意見を踏まえた形で財務大臣との協議や折衝を行っていただいたことについてお礼を申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○岡雇用保険課長 今、渡辺委員からも今回のコロナ禍への対応というのは適切ではなかったという御意見がございました。繰り返しになってしまいますけれども、雇用調整助成金というのは本来一時的な景気変動への対応のためのもので、今回はそれを超えて極めて異例な措置を講じたということであります。今後、同様なことが起きた場合に備えまして、平時から危機時の対応の在り方や財源の在り方について検討してまいりたいと思っております。
○中窪部会長代理 そのほかはいかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 この間の議論において、「免除」といった意見が使用者側から再三出ておりましたことは私どもも承知しておりますし、雇用保険二事業が担っている重要性については十分認識しているつもりでございます。
 ただ一方で、失業等給付というのは労働者にとっては最後の砦とも言えるもので、雇用保険制度の根幹だと考えております。雇用・失業情勢が悪化した際に、安定的な給付を行うために十分な財源の確保が求められるべきものであって、軽々に免除するべきものではないというのが我々としての考えでございますが、その前提に立った上で大臣折衝の合意事項について2点確認したいと思います。
1点目、先ほど事務局から説明があったように、国による感染症対策の意味合いで実施されたのであれば、免除するのではなく一般財源から補填することで解決すべきではないかとも考えられると思いますが、免除に至った考え方について改めてお伺いしたいということでございます。
 2点目でございますが、令和6年度の決算における返還額につきましては、本部会において速やかに返還すべきという意見もあれば、剰余額の2分の1にすべきという両論の意見があったと思います。今回、2分の1を返済することになった理由についてお伺いしたいと思います。
○岡雇用保険課長 まず、1点目でございます。御指摘のとおり、失業等給付というのは労働者の生活の安定、それから就職の促進のために欠かせないものであると十分認識をしてございます。雇用保険制度の中で積立金と雇用安定資金、それぞれ異なる重要な役割があります。積立金については失業等給付の安定的運営のために労使の皆様が納めた保険料を原資として蓄えられてきたものでございますので、二事業に貸し出された額というものは全額返還されることが原則だと考えております。
 しかしながら、大規模かつ約3年という長期のコロナ禍の下で、本来一時的な経営危機に伴う支援策である雇用調整助成金の特例措置を2年目以降に延長して実施したことは雇用保険制度として異例であり、国の感染症対策として当該特例措置を継続した結果、相当程度の失業が予防され、求職者給付等の代替機能を一定程度果たしたものと考えております。これを踏まえ、今般、返還額については先ほど御説明したような1兆円の免除ということにしたものでございます。新型コロナ禍における当該特例措置は本来一時的な景気変動への対応を想定している雇用調整助成金の対応を超えるものであったという御指摘を真摯に受け止めたいと考えてございます。
 繰り返しになりますけれども、今後、こういったことがあった場合に備えまして十分な検証を行って、本来一時的な景気変動への対応を想定している雇用調整助成金等の雇用維持政策の在り方について、特例措置を講ずる場合の留意点等も含めまして労働政策審議会にて検討してまいりたいと考えてございます。
 それから、2点目でございます。今回の大臣折衝の中で令和6年度の二事業の剰余について2分の1となった経緯・理由でございます。まず、二事業への貸出しの返還につきましては、毎年度の二事業収支の剰余を活用することとされておりますけれども、剰余額の2分の1の範囲内で厚労大臣が財務大臣に協議して定める額を雇用安定資金に積み立てることが可能な仕組みとなってございます。令和5年度決算の決算においてはコロナウイルス感染症が流行した令和2年度以降初めて二事業に剰余が発生したところでございますけれども、本部会での議論において、予期せぬ雇用情勢の変動に備え積立金を一定程度確保していくことの重要性や積立金の水準が早期に回復することは、失業等給付の保険料率の水準に影響することに鑑み、雇用保険に事業の剰余の全額を積立金に繰り入れることとすべきとされたことを踏まえまして、当該剰余の全額(0.32兆円)を積立金に返還したところでございます。その結果としまして、今年度も引き続き雇用安定資金が枯渇する異例の状態が続いておるところでございます。
 足下の雇用調整助成金の支給も増加傾向にあるところでございまして、今後の景気悪化時の雇用調整助成金の急増に備えるとともに、人への投資や労働力確保対策等の事業者全体が抱える課題につきまして、雇用保険二事業の対応力を高めつつ、政策的な要請に機動的に対応できるようにする必要があります。他方、失業等給付の安定的な運営は非常に重要でございまして、この失業等給付の安定的な運営に留意しつつ、一方で雇用保険二事業の対応力を高めるという雇用保険全体の安定的運営を図る観点から、令和6年度決算においては差引剰余が生じた場合には2分の1を雇用安定資金に組み入れ、残余の2分の1を積立金に返還するという内容となってございます。
 一方で、今回の大臣合意においては毎年度の雇用保険二事業の剰余金の取扱いについては、今後の景気後退等における雇調金の支給等の急増に備えるため、それから、近年取り組んできた人への投資や労働力確保等に引き続き取り組むとともに、賃上げに向けた生産性向上対策等の事業者全体が抱える課題について、雇用保険二事業の対応力を高めつつ、政策的要請に機動的に対応していくため、毎年度の予算編成過程において失業等給付の安定的な運営に留意しつつ検討を行うこととされたところでございます。
 雇用保険二事業の剰余金の取扱いについては法律上、厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めることとされていますけれども、来年度以降、本部会において上記の観点も踏まえて十分に検討していただけますように、検討に資する資料の提供に努めるなど、事務局として最大限努力してまいりたいと考えてございます。
○中窪部会長代理 では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 労働者側はこの間、積立金から雇用保険二事業への貸出しの中には労働者の保険料も含まれていることから最優先で保全されるべきと申し上げてきましたが、その意図はそのほかの部分を免除してもよいと言っている意味ではございません。今、御説明があったように、コロナ禍における雇調金の特例措置が失業の予防に寄与したという考えは一定理解しますが、本来全額返還されることが原則であり、厚労省の考えでもそうだと説明いただいたところでございます。我々もそのように思っており、労使の保険料問わず積立金からの貸出しは全額保全されるべきということは今でも変わらない考え方でございます。免除することに対する責任、重みを十分認識していただきたいと考えております。
 それから、令和6年度決算における返還額についても説明いただきましたが、積立金は安定的な運営のためだけではなく、保険料率の水準にも影響することを踏まえて速やかに返還されるべきという考え方は変わっておりません。確かにその年々の状況も踏まえて検討する必要があると思っておりますので、毎年度本部会において財政状況や収支見通しといったものを踏まえて議論できるように十分丁寧な対応をお願いしたいと思っております。また、次年度以降も一般会計からの機動的な繰入れなどを通じて財政の安定化を図っていただきたいと思いますし、非常時には速やかに労政審できちんと対策を議論して結論づけていくことが重要だと思っております。
 先ほどから雇用保険制度の本来の趣旨や、今後の在り方の検討についても様々意見がありましたが、本部会において議論をして結論づけていくことが重要だと思っておりますし、二事業の機動性を高めていくという話もございましたが、雇用保険制度における失業等給付の役割の重要性を十分認識しながら議論していただきたいと考えております。厚労省には労使それぞれと十分コミュニケーションを取りながら、雇用保険制度の安定的な運用のために最大限努力いただきたいと思います。
 以上です。
○岡雇用保険課長 ありがとうございます。
 今回、こういった結果になりましたけれども、御指摘がありましたように積立金については労使の皆様の納められた失業等給付のための重要な財源でございます。その重み、重要性はしっかり受け止めながら、今後の業務をしていく必要があると思っております。
 また、二事業の剰余の扱いにつきましては、令和6年度については2分の1ということになりましたけれども、令和7年度以降につきましてはこの雇用保険部会で十分御議論いただいた上で、その在り方について決めていく必要があると考えてございます。
 また、今後の非常時の在り方についても、失業等給付の重要性というのを十分認識した上で御議論いただきたいと思っております。そのためにも、日頃から労使の皆様とのコミュニケーションを密に取って、しっかりとした検討ができるようにしていきたいと考えてございます。
○山田職業安定局長 今回の問題に関して、雇用保険制度が改めて労使の保険料によって支えられているということをしっかり認識しなくてはいけないということだと思っています。コロナ禍における雇用保険制度の今回の異例の対応というのが雇用保険財政に甚大な影響を与えた。それに加えて、今回、能登半島の発災から1年経過した来年1月以降の対応についても先日の職業安定分科会において労使双方から御意見、御批判をいただいたところです。
 先ほど課長が言った話と重なりますけれども、雇用調整助成金について、この制度はオイルショックのときにできたものでありますが、雇用維持策としての在り方という本質的な議論というのがこれまで欠いていたと思っております。そのことが結果的に今回の事態を招来したということは思っております。
 今回、コロナ禍への対応だけではなくて、現在進行中の能登半島地震への対応も含めて検証を行いつつ、雇用調整助成金の在り方については労政審においてしっかり検討していきたいと思います。そのことが失業等給付の保全という意味でも有効だと思っております。そうしたプロセスで労使としっかりコミュニケーションを取ってやっていくということは当然でありますし、ほかの課題以上に重要な問題だと思っておりますので、そこはしっかりやっていきたいと思います。
 引き続き御議論、体制への御協力をよろしくお願いしたいと思います。
○中窪部会長代理 ありがとうございました。
 そのほかはいかがでしょうか。オンラインで御参加の皆様もよろしいですか。
 それでは、本件については以上とさせていただきます。
 本日予定されております議題は以上ですので、本日の部会はこれで終了といたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、どうもありがとうございました。