2024年12月23日 第102回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和6年12月23日 10時00分~12時00分

場所

全国都市会館 大ホール

出席者

(委員)

 翁部会長、小野委員、駒村委員、佐藤委員、寺井委員、野呂委員、枇杷委員


議題

  1. (1)令和5年度財政状況について―厚生年金保険(第1号)―
  2. (2)令和5年度財政状況について―国民年金・基礎年金制度―
  3. (3)その他

議事

議事内容
楠田統括数理調整官 おはようございます。定刻より少し早いのですけれども、皆様お集まりになりましたので、ただいまより、第102回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
資料1「令和5年度財政状況-厚生年金保険(第1号)-」
 資料2「令和5年度財政状況-国民年金・基礎年金制度-」
でございます。
 次に、本日の委員の出席状況について御報告いたします。
 本日は、庄子委員、山口委員から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 それでは、以降の進行については、翁部会長にお願いいたします。

○翁部会長 おはようございます。
 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございます。
 社会保障審議会年金数理部会では、年金制度の安定性の確保に関し、毎年度報告を受けております。本日は、令和5年度財政状況について、厚生年金保険(第1号)及び国民年金基礎年金制度の報告を聴取いたします。
 カメラの方がいらっしゃれば、ここで退出をお願いいたします。

(カメラ退出)

○翁部会長 本日は、年金局数理課の佐藤課長と年金局事業企画課調査室の村木室長に御出席いただいております。
 それでは、議題(1)に入りますが、令和5年度の厚生年金保険(第1号)の財政状況について説明をお願いいたします。

○佐藤数理課長 数理課長でございます。
 資料1の令和5年度厚生年金保険の財政状況について御覧ください。
 例年と同様でありますが、年金財政の関係については私のほうから、受給者、被保険者の実績統計に関しましては調査室長の村木から御説明させていただきます。
 また、本日は厚生年金保険の第1号被保険者に係る分の御報告ということになりますので、御承知ください。
 では、1ページを御覧いただきまして、収支状況となります。
 令和5年度の欄を御覧いただきたいと思います。主な収入の状況を見ていきますと、まず保険料収入は35兆1702億円で、前年度と比べまして1兆1119億円、3.3%の増加となっております。この要因といたしましては、被保険者数の増加や賃金上昇によりまして、年度累計の標準報酬総額が3.3%増加したということによるものであります。国庫負担につきましては9兆1979億円で、前年度より1兆488億円、10.2%の減少となっております。こちらは基礎年金拠出金の減少に伴い減少しているというものであります。
 支出のほうに飛びまして、基礎年金拠出金の欄を見ていただきたいと思います。17兆7525億円で、前年度より2兆510億円、10.4%減少しています。
 このように基礎年金拠出金のマイナスが目立っていますが、こちらは令和4年度までは予算の見通しにより、そのまま繰り入れしていたというものでありますが、より実勢に合わせて繰り入れするということとしたため、こういった現象が出ているというものであります。
 こちらにつきましては、後ほど国民年金の報告でも数値について御確認いただきたいと思います。
 収入に戻りまして、運用収入につきましては括弧のついた時価ベースで見ていただきますと43兆1030億円、前年度より大幅な増加となっているところであります。時価ベースの運用利回りが一番下にありますが、こちらが21.69%となっておりまして、好調な運用環境により高い利回りを確保できたことが要因となっております。
 なお、丸括弧の再掲で年金積立金管理運用独立行政法人納付金が0円となっております。こちらの納付金は、毎年度の歳入、歳出の状況を勘案いたしまして、歳入に不足が生じると見込まれる場合についてのみ前年度末までの運用収益の中から納付するとされているものであります。令和5年度につきましては、歳入に不足が生じないという見込みであったため、受け入れていないというものであります。
 また、項目が飛びまして、積立金より受入れについても引き続き0となっております。こちらは運用収入から納付金を受け入れてもなお不足が生じると見込まれる場合に、積立金の元本から受け入れるというものになります。令和5年度につきましては元本の受入れを必要としていないので、0となっているところであります。
 続いて、基礎年金交付金が1799億円となっております。こちらは昭和60年改正以前の旧法の給付に相当いたしますので、その減少に伴い減少しているというものであります。
 その下の厚生年金拠出金は4兆4027億円となっておりまして、対前年度で908億円減少しています。こちらは厚生年金の支出に必要な費用を各実施機関、共済組合等が負担能力に応じて拠出するというものであります。
 この結果、一番上の収入総額は括弧つきの時価ベースで92兆1730億円となりまして、前年度より大幅な増加となっておりますが、こちらは時価ベースの運用利回りが上昇したというのが主な要因であります。
 続いて支出になります。主な内訳を見ますと、給付費が23兆9625億円でして、対前年度で2693億円、1.1%の増となっております。
 令和5年度の年金改定率につきましては、新規裁定が2.2%で既裁定が1.9%となっておりますので、給付費の伸びはこれより小さくなっています。こちらは、近年、人口構成の関係とか支給開始年齢の引上げといったものによりまして、受給者数の伸びが緩やかになっている影響などを受けているものであります。
 次の基礎年金拠出金については、先ほど説明したとおり減少しています。
 なお、基礎年金拠出金につきましては、基礎年金導入時に3号被保険者となった者が基礎年金導入前の昭和60年以前に国民年金に任意加入していたときに積み立てた積立金、いわゆる妻積みと呼ばれるものですが、こちらを充てていくということになっております。その充当額1300億円を控除した後の額となっております。
 続いて、厚生年金交付金は4兆7559億円でして、前年度より88億円の減少となっております。
 この結果、支出総額は46兆7084億円でして、前年度と比較して1兆7545億円、3.6%の減少となっております。こちらは基礎年金拠出金が減ったというものが主な要因になっております。
 収支をトータルしての収支残を御確認いただきますと、時価ベースで見ると45兆4646億円のプラスとなっておりまして、この収支残にその下の業務勘定から積立金への繰入れ440億円を足したものが45兆5086億円となりまして、こちらが年度末積立金の前年度からの増加額となるところであります。その結果、年度末の積立金は時価ベースの額で243兆478億円となっており、前年度より大幅に増加しているというものであります。
 収支状況は以上です。

○村木調査室長 事業企画課調査室長の村木でございます。よろしくお願いします。
 私からは、受給権者及び被保険者の実績統計に関して御説明申し上げます。
 初めに、こちらの実績統計の留意点を説明させていただきます。
 2ページの下の特記事項を御覧ください。
 特記事項の1に記載しておりますとおり、この資料では、一元化により厚生年金保険の適用対象となりました国共済、地共済、私学共済の情報を除いた、いわゆる厚年1号に係る数値を計上していることに御留意いただければと思います。
 また、特記事項の4に記載しておりますが、新法老齢厚生年金のうち、旧法の老齢年金に相当するものは「老齢相当」に、それ以外のものは「通老相当・25年未満」に計上しております。平成29年8月施行の受給資格期間の短縮により、被保険者期間が10年以上25年未満の方も年金の受給権が発生しましたが、このような方々は「通老相当・25年未満」に計上しております。
 2ページから給付状況をお示ししておりまして、まずは2ページの厚生年金保険の受給権者数でございますが、令和6年3月末の欄、こちらが令和5年度末の数値になりますけれども、この一番上の段を御覧いただきますと、受給権者数は全体で3767万1000人となっており、前年度と比べて0.5%の増加となっております。このうち、老齢相当が1605万5000人で、前年度と比べまして0.4%の増加、通老相当・25年未満が1472万5000人で0.4%の増加という状況でございます。
 年金総額につきましては、1つ下の2段目になりますけれども、こちらは厚生年金の年金総額でございまして、基礎年金分は含まれておりません。令和5年度末の年金総額は受給権者全体で26兆4222億円であり、前年度と比べて1.7%の増加となっております。このうち、老齢相当は17兆4272億円で1.4%の増加、また、通老相当・25年未満は2兆6399億円と2.7%の増加となっております。これらの年金総額が増加した要因については、令和5年度の年金額が新規裁定者は2.2%、既裁定者は1.9%のプラス改定であったことなどが考えられます。
 続きまして、3ページでございますが、こちらは繰上げ支給及び繰下げ支給の状況でございます。令和6年3月末の繰上げ支給の老齢厚生年金受給権者数は26万人となっております。一方で、繰下げ支給の老齢厚生年金受給権者数は令和6年3月末で44万5000人となっております。近年の状況を見ますと、繰上げ支給、繰下げ支給ともに受給権者数は増加傾向となっております。
 次に、下の特記事項を御覧いただきますと、注1におきまして各年度末時点で70歳の方の繰上げ率と繰下げ率の推移を表でお示ししております。繰上げ率のほうですが、令和6年3月末時点で70歳の方は報酬比例部分が61歳から支給されるため、老齢厚生年金の繰上げが可能となっておりまして、繰上げ率は0.9%となっております。令和5年3月末以前で70歳の方は報酬比例部分が60歳から支給されているため、繰上げ制度の対象となっていませんので、数値は計上しておりません。繰下げ率のほうは令和6年3月末時点で70歳の方は3.2%となっており、上昇傾向にございます。
 また、令和2年の制度改正により、5年を超えて繰下げが可能となりましたことから、注2におきまして、5年を超えて繰下げを選択された方の人数をお示ししておりまして、令和6年3月末時点で1万2297人となっております。
 次に、4ページは老齢年金受給権者の平均年金月額等についてでございます。男女合計の老齢相当の老齢年金の平均年金月額は、一番上の段にありますように令和6年3月末で9万457円となっておりまして、前年度に比べて1.0%の増加となっております。
 この額に老齢基礎年金月額を加算した平均年金月額を御覧いただきますと、3段下の欄になりますけれども、14万6429円となっております。こちらが基礎年金分まで含めた平均年金月額でございまして、前年度と比べて1.7%の増加となっております。
 続きまして、5ページは新規裁定者に関する資料でございます。新規裁定者の年金は、基本的には特別支給の老齢厚生年金ということになりますので、定額部分のない報酬比例部分のみの年金となっております。
 令和5年度の加入期間が20年以上の新規裁定者の平均年金月額は8万6218円となっております。前年度と比べて8.2%の増加となっておりますが、これは令和4年度に男性の支給開始年齢が64歳に引き上げられたため、この年度に63歳を迎える男性が令和4年度ではなく令和5年度に新規裁定されたため、女性と比べて平均年金月額の水準が高い男性の人数割合が高まったことによるものと考えられます。
 6ページから8ページは、老齢相当の老齢年金につきまして給付状況を詳細に見たものでございます。特に60代前半につきましては各歳別のデータとなっておりまして、支給開始年齢の引上げの状況が見てとれる形でお示ししております。
 6ページは男女計の数字ですが、厚生年金の支給開始年齢の引上げに関して、男性と女性でスケジュールがずれておりますので、7ページから8ページの男女別の数値を御覧ください。
 7ページの男性の63歳の令和4年3月末と令和5年3月末の欄を比較いただきますと、受給権者数が大幅に減少し、平均年金月額が大幅に増加している状況が見てとれます。
 8ページの女性の61歳の令和3年3月末と令和4年3月末の欄につきましても、同様の動きとなってございます。
 ここで御留意いただきたい点ですが、支給開始年齢の引上げは、先に定額部分が引き上げられた後に報酬比例部分が引き上げられることから、報酬比例部分が引き上げられると、それより下の年齢では、繰上げをしている場合、または男性の坑内員・船員を除き受給権者はいなくなります。
 また、老齢厚生年金を繰り上げる場合には、繰上げにより減額される一方で、制度上、老齢基礎年金も同時に繰り上げることとなるため、その分平均年金月額が増加します。
 7ページの男性の場合で申し上げますと、令和4年度に支給開始年齢が64歳に引き上げられたことで、63歳について受給権者数が減少しており、令和5年3月末の63歳のところで基礎年金も含めて繰上げしている方及び年金額が比較的高い坑内員や船員の受給権者のみとなっていることから、平均年金月額が増加しております。
 8ページの女性についても、令和3年度に報酬比例部分の支給開始年齢が62歳に引き上げられたために、61歳の受給権者が減少し、61歳は基礎年金も含めて繰上げをしている方のみとなり、平均年金月額が増加しております。
 令和5年度は支給開始年齢の引上げがございませんでしたので、令和6年3月末の数値にはこのような動きは特に見られませんでした。
 9ページは老齢相当の老齢年金受給権者の年齢構成でございます。男女合計で見ますと、割合が最も多いのが70歳以上75歳未満の24.7%、次いで75歳以上80歳未満の20.8%となっております。平均年齢は男性が75.7歳、女性が76.8歳、男女計で76.1歳となっております。特記事項に平均年齢の推移をお示ししておりまして、男女とも平均年齢は上昇傾向にございます。
 10ページは老齢年金受給権者の年金月額の分布を示したものでございます。この年金月額は基礎年金月額を含んだ金額となっております。
 左側の老齢相当を見ますと、男女計の平均年金月額は14.6万円で、10万円前後の階級が最も多いことが見てとれます。
 一方、右側の通老相当・25年未満の分布を見ていただくと、平均年金月額は6.5万円であり、老齢相当と比較して低い金額水準に分布していることが見てとれます。
 11ページからは被保険者の状況でございます。まず被保険者数ですが、令和6年3月末時点で4210万9000人となっておりまして、前年度に比べて53万9000人、1.3%の増加となっております。このうち男性は0.6%の増加となっており、女性は2.4%の増加となっております。被保険者の平均年齢は男性が45.4歳、女性が43.8歳、男女計で44.8歳となっております。男女計では前年度に比べて0.1歳上昇したという状況でございます。
 次に、下の2つ目の表の中段ぐらいのところにございます標準報酬総額〈総報酬ベース〉(年度累計)の数値を見ていただきますと、こちらにつきましては194兆4434億円となっておりまして、前年度に比べて3.3%の増加ということでございます。
 一人当たりの標準報酬総額の総報酬ベースの月額ですけれども、こちらは一番下の段でございますが、男性が44万584円、女性が29万9502円、男女計で38万3866円となっておりまして、男女計では前年度に比べ1.4%の増加となっております。
 また、上の表の令和6年3月末において、短時間労働者の被保険者数は91万9000人となっておりまして、前年度に比べて9万6000人、11.7%の増加となっております。
 下の特記事項の注3には、100人以下の企業で働く方も労使で合意がなされれば社会保険に加入できますが、そのような任意加入の被保険者数を示しておりまして、令和6年3月末現在で1万2000人となっております。
 また、特記事項の注4に70歳以上で老齢厚生年金、老齢基礎年金等の老齢給付や退職給付の受給権がなく、任意で厚生年金保険に加入している高齢任意加入の被保険者数を示しておりまして、令和6年3月末現在で620人となっております。
 12ページからは被保険者の分布を示してございます。上段が被保険者全体の分布、下段が短時間労働者の分布になっております。
 こちらも男性、女性別に御覧いただきたいのですが、まず13ページの男性について上段の分布を見ていただくと、50歳以上55歳未満の割合が14.0%となっており、団塊ジュニア世代を含むこの階級をピークとした山の形となっております。
 一方、下段の短時間労働者の再掲を見ていただくと、60歳以上65歳未満、65歳以上の人数が多くなっており、高齢層にピークがあることが分かります。
 続いて女性の分布でございますが、こちらは14ページでございますけれども、まず上段の分布を見ていただくと、女性の場合はピークになる場所が2か所ございまして、一つは25歳以上30歳未満のところで11.8%、もう一つは50歳以上55歳未満のところで13.6%となっており、山が2つある形となっております。
 一方、下段の短時間労働者の再掲を見ていただくと、50歳以上55歳未満のところが15.3%と最も多くなっており、ここをピークとした山の形になっております。
 15ページは標準報酬月額等級別の被保険者の分布でございます。左側が被保険者全体の分布、右側が短時間労働者の再掲になっております。
 まず男性につきましては、一番多いのが65万円の等級でございまして、こちらが全体の9.8%を占めております。次に多いのが26万円、28万円、30万円辺りのところでございまして、それぞれ6.3%、6.1%、6.6%となっております。
 女性につきましてはその右隣の列でございますが、22万円のところが最も多く10.0%、その前後のところが8%から9%ということで多くなっております。
 右側の短時間労働者の標準報酬月額の分布を見ていただくと、男女ともにピークが11.8万円と等級の低いところに山ができていることが見てとれます。

○佐藤数理課長 続いて16ページを御覧ください。1号厚生年金の資産の状況となります。下の表になりますが、令和5年度末の資産区分別の内訳を見ていきますと、国内債券が23.9%、国内株式が24.1%、外国債券が23.6%、外国株式が24.6%、預託金が3.7%となっているところであります。
 続いて17ページを御覧ください。こちらは収支について財政検証における将来見通しと実績を比較したものとなっております。この比較につきましては、財政検証と比較するために、収支の範囲等を財政検証にそろえて実績を作り直しているというものであります。具体的には、基礎年金拠出金や国庫負担等は特別会計の決算値ではなく、実績に基づく確定値を用いております。また、特別会計の実績に厚生年金基金の代行部分や国庫負担の国の分を加えて収入、支出、積立金を作成しております。また、基礎年金交付金は収入、支出の両面から控除して基礎年金勘定との会計上のやり取りを相殺しているというところであります。このような方法によりまして、財政検証ベースの実績を作成しております。詳しくは特記事項に記載しているところであります。
 加えて、年度末積立金につきましては、時価の変動を平滑化して確認するために、時価評価額に加え、平滑化後の評価額についても括弧書きで記載しているところであります。
 将来見通しにつきましては、令和元年財政検証結果、5年前の財政検証の結果となりますが、第1号厚生年金の実績と比較するため、将来見通しについても共済分を含まない第1号厚生年金だけの数値を記載しているところであります。
 また、令和元年財政検証では幅広い経済前提を設定しておりまして、複数の将来見通しを作成しておりますが、ここでケースⅠ、Ⅲ、Ⅴの3つの数値を掲載しております。ただ、令和5年時点ではいずれの数値もおおむね同水準の値となっているところであります。
 以降、将来見通しについては、真ん中のケースⅢで数字を申し上げていきたいと思います。
 まず保険料収入ですが、令和元年財政検証では34.3兆円と見込んでいたところ、実績では35.2兆円ということで、0.9兆円程度実績のほうが多くなっています。この差の主な要因につきましては、女性や高齢者の労働参加が見通しよりも多くなったということで、被保険者数が想定以上に増加したということであります。
 次に、国庫負担は将来見通し10.1兆円に対して実績は9.9兆円となっております。こちらは、基礎年金拠出金が見通しよりも少なかったことに伴うものであります。
 被用者年金一元化に伴って導入されました厚生年金拠出金収入につきましては、将来見通しの4.8兆円に対して実績は4.5兆円となっているところであります。
 運用収入につきましては、将来見通しが3.1兆円と見込んだところ、実績は45兆円ということで、好調な運用結果を示しているところであります。
 続いて支出になります。給付費が将来見通し25.1兆円に対して実績が24.6兆円、隣の基礎年金拠出金が将来見通し19.7兆円に対して実績が19.3兆円、また、被用者年金一元化に伴い導入されました厚生年金交付金が将来見通し5.0兆円に対して実績は4.8兆円となっておりまして、いずれも実績のほうが少なくなっているところであります。
 こちらにつきましては、年金改定率の累積が実績のほうが低くなっているということに加えまして、将来見通しについては受給資格期間を考慮せずに全ての被保険者期間を年金に反映させるという保守的な推計を行っているということによって、実績より大きくなっているといったことによりまして、このような結果になっていると考えております。
 最後、年度末積立金につきましては、将来見通し178.9兆円と見込んでいたものが実績は時価評価額で257.0兆円、平滑化後の評価額が236.1兆円となっております。いずれの評価額で見ても、実績が将来見通しを上回っているというところであります。
 続きまして18ページ、被保険者数及び受給者数の比較を見ております。
 将来推計につきまして、労働参加が進むケースで数字を申し上げますと、一番左側の欄、被保険者数につきましては、将来見通し3983万人に対して実績は4221万2000人となっておりまして、実績のほうが多くなっているところであります。こちらは女性や高齢者の労働参加が見通し以上に進んだ影響と考えております。
 受給者の総数につきましては、将来見通しで3756万8000人に対して実績は3609万4000人となっております。実績のほうが小さくなっております。
 内訳につきましては、老齢相当は実績のほうが大きいということになっておりますが、通老相当、障害年金、遺族年金につきましては実績のほうが小さくなっているところであります。
 要因といたしましては記載のとおりですが、将来見通しの作成方法に起因しているところが大きいと考えております。将来見通しにおきましては、老齢相当は2~4号厚生年金の被保険者期間を通算せずに老齢相当、20年あるかどうかを判定しています。このため、老齢相当が少なく、その分通老相当が多く見込まれております。
 加えて、受給資格期間の10年を考慮せずに全ての被保険者期間が受給に結びつくと仮定しているために、この要因でも通老相当が多くなっていると見込まれております。
 なお、老齢相当と通老相当の受給者につきましては、令和6年財政検証においては推計方法の見直しているところであります。令和6年の財政検証におきましては、1~4号厚生年金を通算した場合と通算していない場合の足下の受給者数の実績を踏まえまして、簡易的な方法でありますが、1~4号厚生年金の被保険者期間を通算したベースの老齢相当、通老相当の受給者となるように推計しているところであります。こちらは、詳しくはまたピアレビューにおいても御説明したいと考えております。
 続いて19ページを御覧ください。財政指標の比較になります。19ページは年金扶養比率、つまり、何人の被保険者で一人の受給者を支えるかといった率となります。下の表の将来見通しでは、労働参加が進むケースで、令和5年度は2.62人に対して、上の実績は2.69と上昇しております。こちらは被保険者数が増加している影響ということであります。
 続いて20ページが積立比率の比較となります。積立比率は前年度末積立金が当年度の国庫負担を除く実質的な支出の何年分に相当するかというものを表すものであります。
 令和5年度を確認いただきますと、下の表の将来見通しではケースⅢで5.1となっているのに対して、上の表の実績は積立金を時価評価したもので6.2、括弧内の平滑化したもので6.1と実績のほうが高くなっているということであります。こちらは前年度末積立金でありますので、令和5年度の運用の好成績が反映されていないということになっておりますが、それでも実績が見通しを上回っているというものであります。
 最後に21ページを御覧ください。こちらは厚生年金の財政状況の総括となります。おおむね前年度と同様の結果となっております。
 まず、年金財政の重要な要素となります被保険者数、経済について確認いたしますと、女性や高齢者の労働参加の進展によりまして、厚生年金の被保険者数は財政検証の見通しを上回っておりまして、3号被保険者数については逆に見通しを下回り推移しているというところであります。こちらは保険料を拠出する支え手の増加と被扶養者の減少ということを意味しておりますので、厚生年金の財政にプラスの影響を与えているというものであります。
 次に、重要な経済要素について確認いたしますと、令和元年度以降、累積で見ておりますが、実質賃金上昇率は実績が見通しを下回っておりまして、厚生年金財政にマイナスの影響となっているところでありますが、逆に実質的な運用利回り、賃金を上回る運用利回りについては実績が見通しを上回り、プラスの影響を与えているというところであります。
 さらに、年金の改定率を見ますと、マクロ経済スライドの発動状況については、令和5年度においてはキャリーオーバーを含めて全て発動しているというところであります。結果、年金改定率は実績が見通しを下回っているところであります。
 続いて収支状況を確認いたしますと、保険料収入は賃金上昇率が見通しを下回ったところでありますが、被保険者数は上回っているということで、後者の効果の方が大きかったため、保険料収入は見通しを上回って推移しております。一方、給付費については、年金改定率が下回ったことなどから見通しを下回って推移しているところであります。
 この結果、運用収入を除く基礎的な収支差というものを確認いたしますと、令和5年度の実績は0.9兆円のプラスとなっておりまして、見通しの0.7兆円のマイナスより改善しているところであります。
 さらに運用収入を確認しますと、年度により変動はありますが、令和元年度からの累積で見て実績は見通しを上回っているということで、積立比率も実績が見通しを上回っているところであります。
 したがいまして、令和5年度までの収支状況、また、積立水準を見ますと、厚生年金の財政にプラスに影響を与えているというところであります。
 しかしながら、年金財政の重要な要素であります人口について見ますと、合計特殊出生率は近年実績が中位推計の見通しを下回って推移しております。人口の要素につきましては、平均余命や外国人の入国超過といった動向も含めて、今後も動向を注視していく必要があると考えております。
 ただ、いずれにしましても、年金制度は長期的な制度でありますので、短期の結果のみから直ちに判断することはできません。人口・労働・経済、こういった重要な要素の長期的な趨勢を見極めていく必要があると考えております。
 また、前回令和元年財政検証後5年間の動向を踏まえまして、人口・労働・経済について長期的な見通しを見直した上で、本年7月に令和6年財政検証を実施しております。引き続き財政に影響を与える様々な要素について注視していって、長期的な趨勢を見極めつつ、健全な財政運営ができているかどうかしっかり確認していく所存であります。
 私からの説明は以上となります。

○翁部会長 御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関しまして、御質問がございましたらお願いいたします。
 寺井委員、お願いします。

○寺井委員 ありがとうございます。
 丁寧な御説明をありがとうございました。
 感想を1つと質問を1つさせていただきたいと思います。
 率直な感想としまして、やはり積立金の運用収入が非常に好調なことが目立ったのですが、それに加えて運用収入を除く基礎的な収支差の実績も改善しているというところで、年金財政という側面から見ればよい結果なのかなと感じました。それが率直な感想です。
 お伺いしたいのは18ページのところです。老齢相当と通老相当の受給者数が令和元年財政検証時の見通しと実績が乖離している。この点について理由をこういうふうに書いていただいて、非常に分かりやすくなってありがたく思います。
 今後、計算の仕方を改善していく予定と承ったのですけれども、老齢相当と通老相当の間で人数のカウントが片方が多ければ片方が少ないという関係になっている部分もあるかと思うのです。それは先ほど御説明いただいた推計方法の改善でより正しい数字が見通しとして得られると思うのですが、1つ気になったのは、受給資格期間10年要件を考慮せずに全員裁定している。この点がありますと、たとえ老齢相当と通老相当を通算したとしても、受給者数が将来見通しよりも実績が少ないという点は引き続き残るかなと思うのですけれども、ここら辺りは技術的に難しいのかという点と、また、新しく推定方法を入れるとまた違った計算の誤差が出てくると思うのですけれども、この辺りの可能性についてお伺いしたいと思いました。
 以上です。

○翁部会長 ありがとうございます。
 では、お願いいたします。

○佐藤数理課長 委員の御指摘のとおりでありまして、受給資格期間を考慮せずに全て将来見通しでは発生させているというやり方を取りますと、主に通老相当の部分が実績より多く見込んでしまうといった効果はあります。ただし、この推計で技術的に受給資格期間を見込むことが可能かといいますと、かなり難しいところがあります。特にカラ期間と言われる部分ですけれども、例えば昭和60年改正前のいわゆる専業主婦だった期間とか、カラ期間というのは本人の申請がないと年金の記録からは分からない部分であります。このカラ期間については、年金の実のつく期間ではないのですけれども、受給資格期間にカウントするということになっております。その期間を年金のデータからは把握することができないため、保守的にということで全て発生させるという見通しとしているところであります。技術的になかなか難しいところがありまして、令和6年の財政検証では、こちらは従来どおり全て発生させるというやり方を取っているところであります。

○寺井委員 ありがとうございました。
 技術的に難しいということになりますと、それ以上お願いするのも何かなと思います。主な要因というのを昨年も書いていただいて、今回で2回目だと思うのですけれども、ここを見てしんしゃくするというほかないのかなと思いました。
 ありがとうございます。以上です。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、駒村委員、お願いいたします。

○駒村委員 ありがとうございます。
 幾つか確認をさせてもらいたくて、3ページの特記欄ですけれども、繰上げが0.9%という数字がここで入ってきているわけですけれども、これは70歳まで繰上げをして生存されていた人のパーセンテージという理解でよろしいのかと。そうすると、繰上げをしたにもかかわらずそれまでに亡くなった方というのはここにはカウントされないという理解であると、繰上げの実勢を必ずしも反映しているのではないのかなという気はしましたので、そこは確認です。
 それから、従来から関心があるのは、繰上げ減額率、繰下げ増額率が変更されたわけですけれども、それによって各世代が繰上げ、繰下げにどういう影響を与えたのかというのを確認するための統計というのは出せないのかというか、持っていないのかというのが2点目です。
 あと、10ページは既裁定者全体の分布ということだと思いますけれども、新規裁定と老齢相当と通老相当を両方合わせた数字というのは、これは計算すれば出てくるのですけれども、従来から出していなかったでしょうかというか、分布に関しての統計というのはこれから重要になってくるので、両方合わせたものとか、あるいは新規裁定に関してのこういう分布がほかのページにあったかどうかすぐ見つからなかったのですけれども、どうでしょうかという2点がまず確認事項です。
 それから、部会長、21ページに書かれている総括はこれから別途やるということでしょうか。それとも今コメントしてしまってもよろしいのでしょうか。

○翁部会長 御質問があれば、ぜひお願いいたします。

○駒村委員 総括としてはこのとおりだと思いますけれども、労働力の見通し、厚生年金加入者の見通しが想定以上だったというのはとてもいいことなのですが、これも特に60歳以上、65歳以降は、今後、今の団塊ジュニア世代がだんだんこの60歳代に突入していくと、親の介護の問題なども発生してくると、本当に伸び続けることができるのかどうかというのはまだ不透明な部分もありますので、これは足下ではいいということですけれども、これに過度に期待してはいけないのかなと。
 一方で、足下の合計特殊出生率は低下して、これは20年後には労働者に入ってくるわけですので、ここが弱含みだということを考えると、やはり長期的な制度という点からしっかりモニターしていかなければいけないということだと思いますので、内容としてはそのとおりだと思いますけれども、その辺は強調しておきたいと思います。
 以上です。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、今の質問に対する御回答をお願いいたします。

○村木調査室長 まず、3ページの繰上げ率0.9%の部分でございますが、こちらは委員の御指摘のとおり、生存されていた方が対象でございまして、死亡失権された方はカウントしておりません。
 次に、繰上げ減額率、繰下げ総額率の変更の影響につきましては、特にデータは持っておりませんが、徐々に影響の効果も現れてくると思いますので、どういった形でお示しできるかというのは検討していきたいと思います。
 また、10ページの分布でございますが、こちらの老齢相当と通老相当を合わせた分布は、足せば作成できますが、お示しをしておりません。
 あと、新規裁定に関する分布があるかどうかは確認をしたいと思います。
 以上です。

○翁部会長 お願いします。

○佐藤数理課長 総括の部分は先生から御指摘いただいた点をしっかりと受け止めて、まずデータをしっかり注視していくということが必要だと思っております。労働参加の状況もそうですが、出生率が下がってきているという懸念点がある、一方、ほかにも様々な要因がありまして、例えば人口につきましては寿命や外国人の入国超過というのも大きな要因になってきています。こちらを見ていますと、社会的にはあまりいいことではないのですけれども、寿命は想定ほど伸びていません。外国人についても、今回使った将来推計人口の見通し以上に入ってきているというようなこともありまして、これらは逆に年金財政への影響はプラスの方に動いています。そういった様々な要素をトータルで総合的にどうなっているかというのをよく見ていきたいと思っておりますので、先生の御指摘を踏まえて引き続き注視していきたいと思います。

○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、今、御検討いただくことになっているデータについては、また追って御回答いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 御説明ありがとうございました。
 総括のページは、他の委員の方もおっしゃっていますけれども、今年度も大変充実していて参考になります。ありがとうございます。
 その中で、財政につきましては運用のところが大きく貢献している。これは今年度だけではなく、過去5年間を見てもその傾向があるわけなのですけれども、先ほどの駒村委員のお言葉をお借りするとすれば、そこが今後も同じような大幅な見通しを上回る実績というのがずっと続くという過度な期待は持たないということと、あくまでも長期の視点で考える。この総括の一番最後のブレットに書いてあるところは非常に重要なので、苦境に転じたときこそこの言葉を忘れないように運営に当たっていただければと思います。
 以上です。

○翁部会長 どうもありがとうございます。
 何かコメントがございましたらお願いします。

○佐藤数理課長 先生の御指摘のとおりでありまして、そういったこともありますので、積立金に関しては、5年程度ですが、平滑化した数値を確認しております。この平滑化した数字がどうなるかというのはやはり重要なのかなと思っているところであります。
 また、財政検証におきまして、運用については保守的に見なくてはいけないというのは経済前提の専門委員会の先生方からも御指摘がありまして、保守的に設定しているということで、GPIFの発足以降の実績と比べてかなり低い水準で前提を設定しているところであります。引き続きこういったことに留意していきたいと思います。

○翁部会長 ありがとうございます。
 どうぞ。

○村木調査室長 先ほどの駒村委員の御質問で、10ページの分布の新規裁定に関する統計はないかという点につきましては、年報の総括表の中に令和4年度の分布があることが確認できました。令和5年度はこれから作成していくこととしておりまして、御報告でございます。
 以上です。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。
 野呂委員もよろしいですか。では、お願いいたします。

○野呂部会長代理 まず、3ページの特記事項につきましては、今年度から時系列で書いていただきまして、これまで以上にイメージ、特に繰下げが上がっていく様子がよく分かったので、ぜひ継続してほしいと思います。
 繰上げにつきましては、駒村先生のおっしゃったとおりの疑問が私もありましたので、なかなか難しいのか分からないですけれども、そもそもの繰下げがどれぐらいあったかも知りたいというところはあります。
 それから、11ページの被保険者数、被保険者の状況で、私もよく分かっていないところもあるのですけれども、短時間労働者につきましては、去年ほどではないものの、今年もそこそこ順調に増加しているのですが、この増加している中身について、年金事務所などの奨励などによって遅れて適用拡大された事業所や被保険者が多いのか、それともそもそもベースとして短時間労働者の数が増えているのか、その辺りの構造がもし分かれば教えてほしいなというのが一点。
 もう一つは、去年も申し上げた話で、短時間以外の通常の労働者が被保険者増加の大多数を占めているのですけれども、それにつきまして、総括では女性及び高齢者の就労増加ということになっているのですけれども、実際に数字を見ると、50代が増加分の7~8割を占めているので、何か特別な要因があるのではないかということを、今後の被保険者数を推計する上でも一度見たほうがいいのではないかなと思いました。
 去年のこの部会ではいわゆる団塊ジュニア世代がコホートの中で年齢シフトしていくということを御説明いただきまして、確かにそれもあると思うのですけれども、シフトであればどこかがへこんでどこかが増えるという形かと思うのですけれども、必ずしもそうでもないところもあり、そういうところが気になったというのが感想でございます。
 最後ですけれども、先ほど駒村先生がおっしゃった総括の「しかしながら」のところで、平均寿命や外国人の入国超過についてウォッチングしていくということで、そのとおりかと思います。ただ、平均余命のほうはウォッチングしましてもなかなか政策的にどうこうできるところは少ないと思うのですけれども、前回から議論になっています外国人の入国超過の動向やその就労状況についての調査というのはその後どうなっているか、もしお聞かせいただけるところがあれば教えてほしいと思います。
 以上でございます。

○翁部会長 ありがとうございます。
 よろしくお願いいたします。

○村木調査室長 まず、1点目の短時間労働者が増加している点でございますが、短時間労働者への適用が始まってすぐの時期や今回の適用拡大の制度改正があった令和4年度を除いては、これまでもおおむね10%前後の増加率で推移をしてございます。このことから、令和5年度末の増加率11.7%についてもおおむねトレンドによる増加と考えてございます。
 令和4年10月の適用拡大におきましては、日本年金機構では、事前の事業所調査等におきまして、短時間労働者を雇用していると回答があった特定適用事業所に対して訪問調査や届出の勧奨を行うなど、施行後のフォローアップを実施してございまして、令和4年10月の適用拡大がまだ行われていない事業所は令和5年度において多く残っているとは考えてございません。

○佐藤数理課長 追加で、まず短時間労働者の増加の要因として1つ考えられるのは、賃金が上がってきているというところがあると思います。短時間被保険者については、現在、月8.8万円以上の収入がある方というものが対象になっておりますが、最低賃金が上がっていくことによって、これをクリアしている方が多くなってきているといった要因があると考えております。定量的にどのぐらいかはなかなか難しいのですけれども、そういった要因は一つあるということです。
 あと、被保険者数の増加ですけれども、やはり50代が増えているのは50代の人口が増えているからだと考えております。これは団塊ジュニアが50代になってきているということで、その影響が現れてきているものであると考えております。人口に占める被保険者の割合を見ても、増えているのは女性や高齢者の部分ということでありますので、被保険者の増の主な要因は女性、高齢者の労働参加であると考えております。あと、外国人のお話がありましたが、こちらは既存の調査といたしましては出入国管理統計とか在留外国人統計といったものがありまして、そうしたものをウォッチしていくということだと思っておりまして、例えば出入国管理統計を見ていますと、令和5年の将来推計人口では年16.4万人外国人の入国超過があると見通していたのですけれども、2022年以降、コロナが明けて以降はこの16.4万人を超えて毎年入ってきておりまして、直近2024年、これは前年10月から9月までの計ですけれども、それで見ると、まだ月報で確定値ベースではないのですけれども、33.8万人入ってきているということで、将来推計の見通しより大幅に上振れしているというものであります。

○野呂部会長代理 ありがとうございます。大変よく分かりました。
 ということは、今後とも賃金、特に時給などが上がっていくと、制度改正とは関係なく、自然増という形で短時間労働者は今後も増え続ける。そういう見方をしていらっしゃるという理解でよろしいのでしょうか。

○佐藤数理課長 定量的になかなか難しいところはあるのですけれども、そういった影響は必ずあると思っております。

○翁部会長 ありがとうございます。
 外国人については、出入りだけでなく就労状況についてもやはり把握していかなければいけないと思うのですけれども、その辺りの問題意識はどんな感じなのですか。

○村木調査室長 公的年金制度におけます外国人の適用状況や保険料の収納状況につきましては、現在どのような集計が可能か検討して取り組んでいるところでございまして、現時点でお答えできる段階にはございません。

○翁部会長 これから大変重要になりますので、よろしく御検討をお願いいたします。
 ほかはいかがでしょうか。特に追加でございませんか。
 寺井委員、お願いします。

○寺井委員 ありがとうございます。
 先ほどの野呂委員の御質問へのお答えで、考えがまとまっていないところもあるのですけれども、月8.8万円の収入という条件をクリアして短時間労働者になっていると。これは現在注視されている106万円の壁と関係するところだと思うのですけれども、今回の資料を見てみると、106万円という壁はそんなに大きくないといいますか、今回の結果から何か言えることがありましたら、非常に大胆なというか、おおらかな質問で申し訳ないのですけれども、お願いできたらと思います。

○翁部会長 お願いいたします。

○佐藤数理課長 今年の財政検証の結果でも、週20時間以上働いていて8.8万円に満たない短時間労働者というのは推計でまだ110万人ぐらいいます。110万人というのは令和4年の最低賃金をベースに推計したものになりますが、令和4年段階では、まだかなりの方が8.8万円以下のところにとどまっているということであります。これが5年、6年と最低賃金が上がるに伴い減ってきて、人によって乗り越えて適用になる方もいますし、逆に時間調整をして適用にならないようにするという方もいると思います。その点が今106万円の壁といって問題になっているものであります。この点は年金部会でどうするかを御議論いただいていて、方向性としては、最低賃金が今後も上がっていくということを見通して、上昇してきた段階では8.8万円という基準を見直していくという方向で議論されているところであります。

○寺井委員 ありがとうございました。
 いろいろと議論が行われているので、今回の結果だけで簡単に見通すことはできないということも理解できました。ありがとうございます。

○翁部会長 でも、データで確認しておくということは大事ですね。

○寺井委員 そう思います。ありがとうございます。

○翁部会長 ありがとうございます。
 そのほかございませんでしょうか。
 枇杷委員、小野委員、よろしいですか。
 それでは、次に移りたいと思います。議題の(2)でございますが、令和5年度の国民年金基礎年金制度の財政状況について御説明をお願いいたします。

○佐藤数理課長 数理課長でございます。
 では、資料2の国民年金・基礎年金について御説明させていただきたいと思います。
 1ページを御覧ください。まず、基礎年金勘定の収支状況です。
 令和5年度の欄を御覧いただきたいと思います。基礎年金は毎年度必要な費用を基礎年金拠出金で賄う仕組みとなっております。ですので、まず支出欄から御確認いただきたいと思います。支出総額は25兆633億円で、前年度に比べ1.7%の伸びになっているところであります。基礎年金の給付費の内訳を見ますと、昭和60年改正後の新法による給付に当たります基礎年金給付費が24兆6945億円、前年度に比べて2.1%の伸び、旧法の基礎年金相当する基礎年金交付金が3686億円、前年度に比べて816億円の減となっているところであります。令和5年度の年金額の改定率が新規裁定2.2%、既裁定で1.9%となっておりますので、支出の伸びの主な要因は年金額改定となっているところであります。
 こちらは先ほども言いましたように、近年、65歳を迎える世代が人口の谷間に当たっておりまして、受給者数の伸びが緩やかになっているといったことが影響し、その他の伸びの影響が見られないというところであります。
 基礎年金給付金を基礎年金拠出金で賄うということになりますが、拠出金額は当年度分の概算拠出に2年度前の精算を加えて算出するということになります。さらに、被用者年金の一元化に伴いまして、基礎年金拠出金の軽減に活用するとされたいわゆる妻積みも控除した上で金額を決定しておりますので、当該年度の基礎年金給付金と金額が必ずしも一致しないというものであります。
 収入の大部分を占めます基礎年金拠出金は22兆6309億円、前年度に比べて2兆5186億円、10%のマイナス、特別国庫負担は4268億円、前年度に比べて226億円の増加となっているところであります。こちらは厚生年金でも見てもらいましたが、拠出金のマイナスが目立っているところであります。これは令和4年度までは予算の見通しをそのまま繰り入れたというものですが、より実勢に合わせて繰り入れるということをしたため、こういったマイナスになっているというものであります。
 このように実勢に合わせて繰入れをした結果、飛びまして収支残の欄を御覧いただきますと4932億円、前年度に比べて2兆4299億円減少したということになっております。
 続いて収入欄に戻りまして、積立金からの受入れについては2兆4855億円となっておりますが、こちらは予算において歳入に不足が生じる場合に受け入れているというところでありますが、先ほど説明しましたいわゆる妻積みによる軽減分も含まれているというものであります。この結果、収入総額は25兆5565億円、前年に比べて7.3%の減少となっております。
 一番下の欄を御覧いただきますと、こちらは一人当たりの基礎年金拠出金のうち、拠出金単価と呼ばれる部分ですけれども、国庫負担を除く保険料相当額に相当するものであります。月額1万8849円で、前年度に比べて327円、1.8%の増加となっております。こちらも年金額改定により給付費が増加したことが主な要因となっております。
 また、この金額が令和5年度の国民年金の保険料月額1万6520円となりますが、こちらより高くなっております。これは基礎年金拠出金を国民年金保険料だけで賄うことができないということを意味しておりまして、積立金を活用している状況にあることを示しているものであります。
 続いて、2ページを御覧ください。令和5年度の基礎年金拠出金や拠出金算定対象者数などの制度別の内訳となります。
 拠出金交付金につきましては、先ほど述べたように予算で設定する概算値と実績により確定する確定値というものがあるわけですが、概算と確定の差は翌々年度に精算するという仕組みになっております。
 先ほど1ページで見ていただいたものが当年度の概算値と前々年度の精算を合計したものとなっておりますが、この2ページの表は実績による確定値で整理させていただいているというものであります。
 また、注2にありますように基礎年金拠出金軽減のための積立金からの受入れ、いわゆる妻積みについては控除する前の数字となっております。控除額を括弧内に再掲しているというものであります。
 上の表でありますが、基礎年金の給付費の本来額、いわゆる新法分の給付となりますが、こちらが24兆6858億円、旧法分の基礎年金相当給付費は3380億円となっておりまして、その両者を合計したものが一番右側の25兆238億円となっております。
 こちらから下の表に移りまして、特別国庫負担、右のほうにありますが、4182億円を差し引いたものが基礎年金拠出金の合計となりまして、24兆6056億円となります。これを各制度が拠出金算定対象者数に応じて人数割りで分担するということになっております。その結果、下の表にあるような数字になっております。
 続いて3ページを御覧ください。こちらは国民年金勘定の収支状況です。
 令和5年度の欄を御覧ください。まず、収入について主な項目を見ていきますと、保険料は1兆3352億円で、前年度に比べ450億円、3.3%の減少となっております。第1号被保険者数の減少や保険料月額が70円ほど減少したといったことが影響しているというものであります。
 国庫負担につきましては1兆8272億円で、前年度に比べて817億円、4.3%の減少となっております。これは支出の欄の基礎年金拠出金が減少していることに対応しているというものであります。
 運用収入は時価ベースで2兆2567億円と前年度より大幅に増加しているというものであります。こちらは時価ベースの運用利回りが一番下にありますが、21.79%と高かったことが要因となっております。
 また、丸い括弧つきの再掲でありますが、こちらは年金積立金管理運用独立行政法人納付金が4400億円となっております。こちらは厚生年金のほうでも御説明いたしましたが、歳入に不足が見込まれる場合に前年度末までの運用収入の中から納付されるというものであります。国民年金については不足が見込まれるということで、4400億円の納付がされているということであります。
 これらを合計した時価ベースの収入総額が5兆5556億円となっておりまして、前年度より大幅に増加しているということであります。こちらは時価ベースの運用利回りの上昇が主な要因となっております。
 次に支出のほうを見ていただきますと、その大部分が基礎年金拠出金となっておりまして3兆1769億円、前年度より1836億円、5.5%の減少となっております。こちらの減少は基礎年金拠出金をより実勢に合わせて算出するということとした影響となっております。
 支出総額が3兆5011億円で、前年度に比べて2244億円の減少となっております。
 収支残を見ていただきますと、時価ベースで2兆544億円のプラスとなっております。これにその下の業務勘定から積立金の繰入れ110億円を足したものが時価ベースで見た積立金の増加額となっているところであります。この結果、年度末積立金は12兆5173億円となりまして、前年度と比べて2兆654億円の増加となっているところであります。
 4ページは御参考でありますが、3ページの保険料収入の内訳になりまして、現年度保険料、過年度保険料別に見たものであります。説明は省略したいと思います。

○村木調査室長 5ページを御覧ください。こちらは給付状況についての資料でございます。
掲載しております数値は新法の基礎年金と旧法の国民年金を合計したものとなっておりまして、被用者年金のいわゆるみなし基礎年金に係る部分は含まれてございません。
 まず受給権者数でございますが、令和6年3月末は合計で3691万人となっておりまして、前年度に比べ9万2000人、0.2%の増加となっております。このうち、老齢年金・25年以上は3345万6000人となっており、前年度と比べ4万人、0.1%の増加となっております。通算老齢年金・25年未満につきましては、令和6年3月末で94万1000人、前年度に比べ0.7%の増加となっております。
 年金総額につきましては、1つ下の段のところになりますが、令和6年3月末で25兆5146億円となっておりまして、前年度と比べて2.5%の増加となっております。この大部分を占めております老齢年金・25年以上について見ますと、令和6年3月末で23兆1181億円、前年度に比べ2.4%の増加となっております。
 続きまして6ページでございます。こちらは繰上げ支給・繰下げ支給の状況についての資料でございます。
 まず、繰上げ支給の男女合計の受給権者数ですが、令和6年3月末で356万7000人となっており、前年度に比べ12万7000人、3.4%の減少となっております。近年の状況を見ますと、減少傾向で推移しております。
 一方、繰下げ支給の受給権者数は令和6年3月末で75万9000人となっており、前年度に比べて8万6000人、12.8%の増加となっております。繰下げ支給の受給権者数については、近年増加傾向で推移しているという状況でございます。
 また、下の特記事項の注1におきまして、厚生年金と同様に各年度末時点で70歳の方の繰上げ率と繰下げ率の推移をお示ししております。令和6年3月末時点で70歳の基礎のみの老齢基礎年金受給権者の繰上げ率は11.5%で減少傾向に、繰下げ率は4.6%と増加傾向になっております。
 注2におきまして、こちらも厚生年金と同様、5年を超えて繰下げを選択された方の人数をお示ししておりまして、令和6年3月末時点で2,224人となっております。
 続きまして7ページでございます。こちらは老齢年金受給権者の平均年金月額及び平均加入期間についての資料でございまして、上の表が受給権者、下の表が新規裁定者となっています。
 上の受給権者の男女合計の老齢年金・25年以上の平均年金月額は、令和6年3月末で5万7584円と前年度に比べ1,268円、2.3%の増加となっております。また、平均加入期間については403月と前年度に比べて3月の増加となっております。
 下の表の新規裁定者につきましては、男女計の老齢年金・25年以上に係る新規裁定者の老齢年金平均年金月額は、令和5年度で5万5256円と前年度に比べ1,637円、3.1%の増加となっております。また、平均加入期間については426月と前年度に比べて2か月の増加となっております。
 続きまして、8ページは老齢年金受給権者の年齢構成でございます。男女合計で見ますと、割合が最も多いのが70歳以上75歳未満の23.6%、次いで75歳以上80歳未満の21.7%となっております。平均年齢は男性が76.7歳、女性が78.4歳、男女計で77.6歳となっております。特記事項に平均年齢の推移をお示ししておりまして、男女とも平均年齢は上昇傾向にあります。
 続きまして、9ページは老齢年金受給権者の年金月額の分布でございます。上の表は受給権者全体に関する分布で、下の表がいわゆる基礎のみの受給権者に関する分布になっております。さらに、それぞれについて、左側が老齢年金・25年以上、右側が通算老齢年金・25年未満の分布を示しております。
 上の表の受給権者全体について、左側の老齢年金・25年以上の分布を見ると、男女計で年金月額が6万円から7万円の階級が47.8%と最も多くなっていますが、右側の通算老齢年金・25年未満の分布を見ると、比較的低い水準の金額階級の割合が高くなっております。
 10ページからは被保険者の状況でございます。
 まず被保険者数でございますけれども、第1号被保険者数は令和6年3月末で1387万1000人となっており、前年度に比べて17万6000人、1.3%の減少となっております。第3号被保険者数につきましては、令和6年3月末で685万6000人となっており、前年度に比べて35万5000人、4.9%の減少となっております。
 被保険者の平均年齢は、令和6年3月末で第1号被保険者が39.3歳、第3号被保険者が45.9歳となっております。
 免除等の状況につきましては、一番下の段にお示ししております。令和6年3月末の免除者数につきましては、前年度に比べまして、法定免除者、申請4分の1免除者、産前産後免除者は増加しており、その他については減少している状況でございます。
 11ページは第1号被保険者の分布でございます。一番右の割合の欄を御覧いただきますと、最も多いのが20歳以上25歳未満のところの24.3%となっております。国民年金の第1号被保険者には、自営業の方、無職の方などいろいろな方がいらっしゃいますけれども、この年齢層は学生の方が多いことから、そのウエートが大きくなっているということでございます。
 12ページと13ページは今見た第1号被保険者の分布を男女別に見たものでございますので、説明は割愛させていただきます。
 14ページは第3号被保険者の分布でございます。第3号被保険者につきましては、最も多いのが50歳以上55歳未満のところで20.7%となっております。ここをピークとして山のような形となっております。
 15ページと16ページは今見た分布を男女別に見たものであり、多くを女性が占めている状況にございますので、説明は割愛させていただきます。
 17ページは、国民年金保険料の納付状況を年齢階級別に見たものでございます。特記事項にも記載しておりますが、納付状況の途中経過を示すものとして現年度納付率、過年度1年目納付率がありますが、最終的な納付状況を見るための指標としては最終納付率が適切と考えております。
 直近の結果では、一番上の段を見ていただきますと、令和3年度分保険料の最終納付率は83.1%であり、これは統計を取り始めた平成14年度分以降で最高の水準であり、また、2年連続で80%台となっております。
 下段に年齢階級別の最終納付率をお示ししておりますが、括弧内は年齢階級別の現年度納付率となっております。おおむね年齢階級が高くなるにつれて納付率が上昇する傾向が見てとれます。
 なお、20歳以上25歳未満の納付率が25歳以上30歳未満の納付率よりも高くなっていますが、20代前半は学生納付特例により保険料納付猶予を受けていたり、本人に代わり親が保険料を負担したりしているケースが多いことなどが影響しているものと考えられます。

○佐藤数理課長 続いて18ページを御覧ください。国民年金の資産構成割合となります。
 下の表、令和5年度末の積立金の資産構成割合ですが、国内債券が23.8%、国内株式が24.0%、外国債券が23.5%、外国株式が24.5%、預託金が4.1%となっているところであります。
 続いて19ページを御覧ください。財政検証における将来見通しと実績の比較となります。
 厚生年金と同様、国民年金に関しても将来見通しとベースをそろえる必要がありますので、基礎年金拠出金や国庫負担は確定値ベースといたしまして国庫負担の繰り延べ分を積立金に加える。また、基礎年金交付金を収入、支出の両面から控除するということなどによりまして、財政検証ベースの実績を作成しております。詳しくは一番下の欄の特記事項に記載しているとおりであります。
 この実績と将来見通しを比べておりますが、将来推計につきましてはケースⅢで数字を申し上げたいと思います。
 まず、最も差が大きくなっている収入欄の運用収入を御覧いただきますと、将来見通しが0.19兆円でありますが、運用成績がよかったことから、実績は2.26兆円と見通しを大きく上回っているというところであります。
 一方、それ以外の項目、収入欄の保険料収入、国庫負担、その他収入、また、支出欄の給付費、基礎年金拠出金、その他支出につきましては、実績と将来見通しがおおむね同水準となっているところであります。項目によりまして要因を考えますと、それぞれプラスの要因、マイナスの要因というものはあるわけですが、結果として見るとおおむね同じ水準となったというものであります。
 収支残につきましては将来見通しが0.12兆円のマイナスとなっておりますが、実績は運用収入が大きいことから1.94兆円のプラスとなっているところであります。
 年度末積立金は、将来見通し11.01兆円に対して、実績は時価評価額で14.51兆円、平滑化後の評価額で13.41兆円となっており、運用成績がよかったことからいずれも実績が将来見通しを上回っているところであります。
 続いて20ページを御覧ください。国民年金の被保険者数及び基礎年金受給者数の比較となります。実績と労働参加が進むケースの将来見通しを比べますと、被保険者数の合計では将来見通しが6570万3000人に対して、実績は6749万7000人と実績のほうが大きくなっているところであります。
 内訳を見ますと、2号被保険者数は実績のほうが大きくなっていますが、1号被保険者数及び3号被保険者数は実績のほうが小さくなっています。こちらも女性や高齢者の労働参加が見通し以上に進んだことが主な要因となっております。
 受給者数を見ますと、合計は将来見通し3656万8000人に対して実績は3645万3000人と実績のほうが若干小さくなっているところであります。その内訳を見ますと、老齢と遺族は実績のほうが小さい一方、障害は実績のほうが大きくなっています。
 障害と遺族の受給者数につきまして、その発生率が、障害は上昇した一方、遺族は低下しておりまして、こういったことから、財政検証で設定した仮定と実績にずれが生じてきたというのが主な要因ということであります。
 令和6年財政検証では、当然これらを実績に合わせて見直して将来見通しを作成しております。
 続いて、21ページからは財政指標の比較となります。
 21ページが年金扶養比率となりまして、受給者一人に対する被保険者の人数を示すものであります。令和5年度の数値、下の表の将来見通しが1.90に対して、上の表の実績は1.97となっており、実績のほうが大きい値になっております。想定を超えた高齢者の労働参加によりまして、被保険者数が増加したことが主な要因であります。
 22ページを御覧ください。こちらは国民年金勘定の保険料比率となっています。こちらは、国庫負担を除く実質的な支出に対して保険料収入がどの程度占めるかというものを示しております。100を下回ると運用収入などの積立金を活用している状況となっているというものであります。
 令和5年度の数値は、下の表の将来見通しではケースⅢで82.8に対して、上の実績は82.7とおおむね同じ水準になっています。
 続いて、23ページが国民年金勘定の収支比率であります。こちらは保険料収入と運用収入合算した収入に対する実質的な支出の割合を表すものであります。運用収入が分母に入っているため、時価の変動の影響を受けて実績数値が大きく変動しているところであります。こちらは100を超えますと、時価ベースの積立金が減少していることを示しているものであります。
 令和5年度の数値は、下の表の将来見通しはケースⅢで105.0に対して、上の表の実績は43.8となっておりまして、実績のほうが小さくなっております。こちらも運用利回りが高かったことが要因であります。
 続いて24ページを御覧ください。国民年金勘定の積立比率となっております。令和5年度は下の表の将来見通しではケースⅢで7.2に対して、上の表の実績は時価評価額8.1、平滑化後の評価が8.0となっておりまして、いずれを見ても実績のほうが高くなっているところであります。
 こちらの指標は前年度末積立金を基準にしておりますので、令和5年度の運用の好成績が反映されていないということになりますが、それでも積立比率が高くなっているということであります。
 最後に25ページ、国民年金の財政状況の総括となります。
 年金財政の重要な要素であります被保険者数、経済の状況を見ていきますと、国民年金の第1号被保険者は実績が見通しを下回っていますが、基礎年金の支え手に相当します拠出金算定対象者数を見ますと、納付率の向上によりまして1号の実績は見通しを上回っています。
 さらに、基礎年金は1号だけではなく2号3号も含めた全体で支える仕組みとなっておりますので、拠出金算定対象数の合計が基礎年金の財政に重要な要素となります。この合計は実績が見通しを上回っていますので、基礎年金財政及び国民年金財政にプラスの影響を与えているところであります。
 経済要素につきましては、実質賃金上昇率は実績が見通しを下回っているということで、国民年金財政にマイナスの影響を与えておりますが、実質的な運用利回り、賃金を上回る運用利回りは実績が見通しを大きく上回っているところでありまして、国民年金財政にプラスの影響を与えているものであります。
 さらに年金改定率を見ますと、マクロ経済スライドは令和5年度にキャリーオーバーも含めて全て発動しているということでありまして、その結果、年金改定率は実績が見通しを下回っているところであります。
 さらに国民年金(第1号被保険者)の財政となりますが、こちらを見る上で、その大部分を占める基礎年金の財政に大きく影響を受けるということ、とりわけ基礎年金拠出金単価と国民年金保険料月額の差が保険料納付者一人当たりの運用収入を除く基礎的な収支差におおむね相当するということになりますので、両者の関係が重要ということであります。
 そこで、拠出金単価と国民年金保険料月額について見通しと実績を比較しますと、拠出金単価は、年金額改定率は実績が見通しを下回ったことによりまして、分子の給付費が低下したことに加えまして、分母の拠出金算定対象者数も見通しを上回っているということで、実績は見通しを下回っているということであります。
 一方、保険料月額も賃金上昇率を下回ったということによりまして、実績は見通しを下回っているというところであります。
 こういったものの結果、令和5年度の国民年金の運用収入を除く基礎的な収支差の実績はマイナス0.32兆円となっておりまして、見通しのマイナス0.31兆円とおおむね同水準となっているところであります。
 さらに、基礎的な収支差は国民年金の積立金の活用により賄われるということになりますので、国民年金の積立比率が重要になります。まず、1号の拠出金算定対象者数の実績が見通しを上回って推移しています。こちらは国民年金の支出の増加につながるということで、積立比率を低下させる面があります。しかし、令和元年から5年までの累計で見て運用利回りの実績が見通しを大きく上回っているということから、こちらの影響のほうが大きく、令和5年度における積立比率は実績が見通しを上回る結果となっているところであります。
 したがいまして、令和5年度の収支状況についてはおおむね見通しどおりとなっているわけですが、積立水準が国民年金の財政にプラスに寄与しているということであります。
 ただし、年金財政上重要な要素であります人口につきましては、合計特殊出生率の近年の実績が中位推計の見通しを下回って推移しているということでありまして、平均余命や外国人の入国超過の動向も含めて今後も人口の動向に注視していく必要があります。
 また、いずれにせよ、年金制度は長期的な制度ですので、短期の結果から直ちに判断することはできないということで、こういった人口・労働・経済の長期的な趨勢を見極めていく必要があるというものであります。
 最後に、厚生年金の説明でも述べましたが、こういった人口・労働・経済の5年間の動向を踏まえて、これらの長期的な見通しを見直した上で、本年7月に新しく令和6年財政検証を実施しております。引き続き財政に影響のある様々な要素につきまして注視していきつつ、長期的な趨勢を見極めながらですが、健全な財政運営ができているかどうか、しっかり確認していくという所存であります。
 私からは以上であります。

○翁部会長 御説明どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問などありましたらお願いいたします。
 枇杷委員、お願いします。

○枇杷委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございました。
 3つお聞きしたいことがありまして、最初は3ページで保険料収入がマイナス3.3%減っているということだったのですけれども、人の動きといいますか、1号被保険者の人数の減りは1.3%ぐらいかな。なので、それより大きく減っている。納付率とかその辺も改善しているので、数字の動きが分からなかったということで、理由等があれば教えていただきたいのが1点目です。
 それから、6ページで繰上げを選択される方が減っているということなのですけれども、これの理由等をもし把握されていらっしゃったら教えていただきたいということです。
 それから、3点目、最後ですけれども、20ページですかね。障害年金の受給者の数が見通しより大分増えてきているということなのですけれども、これも理由を把握されているかどうかということと、推計を見直しされるとおっしゃったかと思ったのですが、そこは具体的にどういう見直しをされるのかという辺りを教えていただければと思います。
 以上です。

○翁部会長 よろしくお願いいたします。

○佐藤数理課長 1点目の保険料の減少の要因ですが、1号被保険者が減っている以上に減っているということですけれども、まず一つは、保険料月額も70円ほど減っておりまして、それが要因になっているということと、もう一つ、4ページを御覧いただきますと、説明を省略して恐縮ですけれども、過年度保険料や追納保険料も減少してきているということであります。4ページは納付受託機関分の保険料が過年度保険料、追納保険料の中に含まれていませんので、正確には分からないのですけれども、そういった過年度や追納の保険料が減っているといったことも影響していると考えているところであります。
 3点目になりますが、障害の受給者が見通しより増えているという点ですけれども、こちらは障害の発生率が実績で増えてきているということが確認されております。見通しを見直したということですけれども、やったことは障害の発生率をきちんと実績に合わせて見直したということであります。将来どうなっていくかまだ分かりませんので、将来の推計方法は変更しておらず、実績を踏まえて基礎率を見直したということであります。

○村木調査室長 2点目の6ページの繰上げ支給の受給権者数が減っている要因でございますが、年齢が高いほど繰上げ受給を選択した方の割合が多い傾向にございまして、亡くなられて失権される方が多くなっていること、また、高年齢者の就業率が高くなっているなどの背景によって繰上げを選択する方が年々減少していることによるものと考えております。
 以上です。

○枇杷委員 ありがとうございます。
 障害の発生率のところですけれども、想像ですが、障害という給付があるということが周知されたとか、そういう背景があって増えているということなのかなと思ってお聞きしたのですけれども、そこまでの背景は特につかんでらっしゃらないでしょうか。

○佐藤数理課長 要因まで正確に分析しておりませんが、近年、精神障害の関係で増えてきているとは聞いております。

○枇杷委員 分かりました。ありがとうございます。

○翁部会長 それでは、小野委員、次に駒村委員でお願いします。

○小野委員 ありがとうございます。
 1点コメントと初歩的な質問で恐縮ですけれども、10ページの免除等の状況という数値ですが、これは基本的に末時点で表示されているということだと承知しているのですけれども、例えば産前産後免除者というのは免除の期間が限定的なのだろうと思うのです。そういう意味では、これ末時点がいいのか、年度を通じての延べ数といいますか、そういったものがいいのかというのは一つ検討してもよろしいのかなとは思いました。
 それで、私の拙い記憶で恐縮ですが、産前産後免除者というのはたしか保険料を100円引き上げたときの話で、これは国庫負担だけ給付がつくということではなくて、全額給付がつくと承知しているのですけれども、この辺りも含めて、保険料を拠出しないということになると、ひょっとして給付が半分になってしまうのではないかとか、そういう誤解とかがあって順調に申請が進んでいるのかどうかというのが気になったところですが、その辺りを教えていただきたいと思います。
 以上です。

○村木調査室長 産前産後期間の保険料につきましては、出産予定日が属する月の前月から4か月間免除となりますが、委員がおっしゃるように3月末時点で免除期間に該当している人数を計上してございます。ご指摘のように時点ではあるのですけれども、この4か月間の免除期間が末時点に該当している人数という意味では、3倍するとおおむね年間を通じた人数にはなります。ただし、年間の数値としては正確ではございませんので、どういった数値が取れるかは検討したいと思います。
 あと、申請が順調に進んでいるかという御質問があったかと思いますけれども、産前産後の保険料免除制度に関しましては、必要な方に情報が届くように、地方自治体の担当部に対して制度周知の協力依頼を行ったり、母子健康手帳の任意様式への記載を行ったりするという取組のほか、日本産科婦人科学会や日本助産師会等の関係団体、ハローワークに対して制度周知の協力依頼を行うですとか、適用勧奨や免除勧奨の際に同封するリーフレットへの制度の説明の記載や、日本年金機構のホームページにリーフレットを掲載するなど、周知広報に努めているところでございます。

○小野委員 ありがとうございます。

○翁部会長 それでは、駒村委員、お願いします。

○駒村委員 幾つかあるのですけれども、先ほど枇杷委員の御質問で事務局の回答の部分ですけれども、これも厚年と同じように70歳の時点での状況ですので、今受給している人全体に占める繰上げ受給ということなので、コホート別に見ているわけではないから、増えているか減っているかというのはこれからだと直ちには分からないということで、さっきのような分析は恐らくそうなのだろうなと。つまり、繰上げ受給を選んでいた世代がだんだん失権していくので、全体としては下がっているようにも見えていますけれども、先ほどの減額率、増額率のインパクトも含めて、少し丁寧な解説というか分析をお願いできればなと思います。
 次に、2ページなのですけれども、年金部会のほうでも大事な議論になっているのが基礎年金拠出金の扱いということで、拠出金算定対象者数というのがあって、これが基礎年金にそれぞれどのくらい貢献するのかというのを見たものですけれども、これが約660万人ということですが、1号被保険者は1387万人いるので、これは基礎年金拠出のほうにカウントされるのが半分弱にすぎないということになる。こういう理解でいいのかということで、大事なのは各保険からの基礎年金拠出の負担割合、構成比みたいなものが大事だと思いますので、これはこれまでのトレンドとかといったものを紹介していただきたいなと思いました。
 そして、今の議論と制度の確認をさせてもらいたいのですけれども、10ページでありますが、10ページの免除等の状況の人数が基礎年金拠出金算定対象者と加入者のギャップを説明するものだと思いますけれども、これはそれぞれどういう扱いで拠出金算定者の計算に反映されているのか。多分制度があったと思いますが、私も忘れてしまっているので、免除者と産前産後免除者の扱い、それから、特例納付者、猶予者の扱いで、この猶予者、特例納付者が後で払った場合は算定額に算定対象数にどう変更があるのかどうかというところは制度で決まっていると思いますので、教えていただきたいと思います。
 それと、9ページの受給権者で25年以上と25年以上未満で2つに分かれていて、これは計算すれば統合した数字が分かるのですけれども、これはお願いなのですが、これらの資料というのは全部Excelか何かでダウンロードできるような形になっていましたでしょうか。PDFでは確認できるのですけれども、いろいろ研究をしたり利用、計算するためには、できたら今後は、大変多くのデータになると思いますけれども、この本文の表は基本的にはExcelでダウンロードできるような形にしておいていただきたいなと思いました。
 以上です。

○翁部会長 ありがとうございます。
 では、御回答をよろしくお願いします。

○佐藤数理課長 まず基礎年金拠出金の仕組みのお話ですが、こちらは国庫負担を除いて保険料負担部分の給付がつく人をカウントするということになっております。ですから、20~59歳までの2号被保険者、3号被保険者については、皆さん基礎年金の給付がつきますので、全員1人としてカウントする。一方、1号被保険者については、保険料を納付した人だけが保険料負担の実がつくということになりますので、例えば全額免除ということであればカウントしない。また、学生納付猶予とか納付猶予を受けていても保険料分は全く実がつきませんので、カウントしない。半額免除であれば半分実がつきますので、0.5人としてカウントする。そういったカウント方法としているということであります。
 もし追納されたらどうなるかということですが、追納されたときに実がつくということになりますので、追納された年度に1人としてカウントする。そういった計算方法になっているということであります。
 ですから、最初に先生がおっしゃいました1号の拠出金算定対象者数660万人というのは、1号被保険者はたしか千三百数十万人いましたけれども、その中で半分以下ということですが、こちらは保険料を払って実がつく人たちがそういう状況にあるということであります。

○駒村委員 そのトレンドがどうなってきたのかとか、拠出金に対して各保険者の構成がどうなってきたのかというのは、今年度は分かりますけれども、経時的に資料があったほうがいいのかなと思いました。いかがでしょうか。

○佐藤数理課長 資料につきましては、また事務局とも相談して、どういったものを出せるか考えていきたいと思います。
 大きな流れといたしましては、1号被保険者が減ってきておりますが、免除される方の人数というのはあまり変わっておりません。つまり、保険料納付対象者の方々が恐らく2号になって減ってきているのだろうと考えられます。その結果、免除される人の割合、免除率は上がってきているという傾向になっております。
 資料については検討させていただきたいと思います。

○村木調査室長 繰上げ率、繰下げ率の示し方でございますが、割合を出すときの分母となる受給権者につきましてはあくまでも裁定請求をされた方に限られますので、繰下げ待機中の方がいらっしゃる中で、割合が過大にならないように70歳時点で観察をしているところでございます。委員がおっしゃるように死亡失権や増減率の変更といったことを踏まえますと、どういう形でお見せすると繰上げ、繰下げの効果を適切にお示しできるかというのは検討していきたいと思います。

○翁部会長 Excelについての御質問については。

○楠田統括数理調整官 事務局でございます。
 今、ホームページに掲載させていただいているのがPDFの形なのですけれども、Excelの形でも持っておりますので、より活用していただけるような形で掲載できるよう検討させていただきたいと思います。

○翁部会長 駒村委員、よろしいですか。
 そのほかいかがでしょうか。
 それでは、野呂委員、お願いいたします。

○野呂部会長代理 例年同じような質問で恐縮なのですけれども、先ほどの免除のページの10ページですが、コロナの影響がかなり収束した割には免除の減り方がそれほど大きくないというのが率直な感想で、去年も免除の実態といいますか、同じ人がずっと免除なのか、あるいは免除の後に追納しているのかどうかという辺りの調査をできないかということで御相談しました。その辺りはどうかというのが一点です。
 それから、これは先ほどの厚年のときと逆ですけれども、10ページの3号被保険者の減り方ですが、これも、時給が上がることによって、年収の壁の問題はあるものの、やはり3号から2号被保険者に移っていく人が多いという理解でよろしいのでしょうかというのが2点目です。
 3点目は、納付率のところの17ページでしたか。これは去年も教えていただいたのですが、現年度納付率が上昇して、これは非常にいいことなのですけれども、その要因分析といいますか、加入者の納付率によるものか免除や猶予によるものか、あるいはその他の要因かという辺りで因数分解を教えてもらっていたので、今年もそれを教えてほしいと思います。
 以上です。

○村木調査室長 まず1点目の免除の期間やその追納の状況についての御質問でございます。法定免除をはじめとしました各種免除、猶予制度は、所得が低いために保険料を納付することが困難な方の年金受給権確保のために創設されたものでございます。免除につきましては、その期間分は老齢年金を受け取る際に全額納付した場合の年金額の2分の1を受け取ることができますけれども、納付猶予をした期間は年金額に反映されないという仕組みでございます。
 こちらの猶予制度につきまして、今年9月20日の社会保障審議会年金部会において、現在納付猶予が適用されている方の期間をお示ししてございます。こちらを見ますと、特に30代では納付猶予の適用期間が5年を超えると者が半数以上を占めているという結果となっています。
 また、追納状況につきましては、今月3日の年金部会におきまして納付猶予制度における追納率をお示ししておりまして、納付猶予制度における追納率は7.0%、学生納付特例制度における追納率は8.9%という結果が示されているところでございます。低年金や無年金の対策は重要でございますので、こうしたもののほかにどういったデータを把握できるかということは引き続き検討してまいりたいと考えております。
 2点目の第3号被保険者の減少につきましては、まさに今、年収の壁等の議論もございますが、先ほどの説明のとおり賃金が上昇して収入の基準を超えることによって、第3号から第2号被保険者に移行している方が多くなっているのではないかと考えてございます。
 3点目の令和5年度分保険料の現年度納付率の上昇の内訳の要因分解についての御質問でございます。17ページに、前年度分との比較として1.6%ポイント上昇と記載してございますが、もう一桁細かく見ると上昇幅は1.55%ポイントでございます。これを分解しますと、両年度とも納付対象月数がある方の納付率の上昇に伴う影響が1.63%ポイント、免除または猶予の増減による影響が0.77%ポイント、その他の新規資格取得喪失による影響がマイナス0.85%ポイントとなってございます。
 以上です。

○佐藤数理課長 3号被保険者の減少について追加でお話しさせていただきますと、先ほど先生がおっしゃったように、3号被保険者から壁を乗り越えて2号になるという方も一定数いるのはそのとおりだと思いますが、ただ一方、短時間被保険者の増加に比べて、それ以上に3号被保険者が減っているということでありますので、単に短時間で働くというだけではなくて、フルタイムで働くような方々も増えてきているという要因もあると思っております。

○野呂部会長代理 免除の中身につきましては少しイメージができたと思います。、教えていただいて、ざっくり言いますと、やはり同じ方が長く免除を続けていらっしゃる。一度免除になって追納で返済される方というのは10人に1人もいないというイメージで理解してよろしいのですか。先ほど御説明がありましたとおり、将来低年金者の予備軍みたいなところがありますので、去年から気になっているところなので、念押しで恐縮なのですが、いかがでしょうか。

○村木調査室長 今回お示ししたのは、免除ではなく納付猶予でございまして、免除につきましても法定免除と申請全額免除がございます。法定免除は、対象者が生活保護の生活扶助の受給者や障害基礎年金の受給者などでございまして、障害年金の受給者数が増えておりますので、法定免除者数が増加しています。障害基礎年金は満額の年金をもらえますので、そういった点でも免除と猶予の差はあるとは思いますが、全額免除者と納付猶予者の実態は、このデータからはすぐには分からないということでございます。

○野呂部会長代理 ということは、申請免除の実態については、まだ十分には分からないということで理解してよろしいのですか。

○村木調査室長 納付猶予制度と全額免除の要件につきましては、所得基準は同じでございまして、所得対象者が納付猶予は本人と配偶者、全額免除は本人、配偶者と世帯主という違いはございますが、そういう点ではもしかしたら比較的近しい部分もあるかもしれません。

○翁部会長 ありがとうございます。
 いずれにせよ、ここについてはどういう属性の方たちが多いのかというようなことはとても大事な点だと思いますので、引き続きウォッチしていくことが必要かなとは思います。
 そのほかいかがでしょうか。
 駒村委員。

○駒村委員 総括のところの表現がやや微妙というか、「国民年金納付率の上昇により」という記述があるのですけれども、国民年金財政にとってみると、全体の基礎年金算定対象者数が増えながら、自らの算定、国民年金1号グループの算定数が減るということは財政的にはいい話になるということですよね。それが減るためには2つあって、一つは2号に移っていただくというのと、もう一つは免除が増えるというのも同じ効果になるのではないかなと思うのですけれども、免除が増えて納付率が上がっていても、それはどう評価していいのかということになるので、「国民年金納付率の上昇により」という表現がいいのかどうか、そこはやや悩みながらこの文章を読んでいたところですけれども、これはいかがでしょうか。

○佐藤数理課長 基礎年金は1から3号全員で支える仕組みなので、1から3号全員が増えるというのは間違いなくプラスということでありますけれども、先生がおっしゃるように、1号の人数が増えると、1号の12兆円ほどある保険料を1号の人たちで使うということになりますので、人数が増えると逆に一人当たりに使える量が減ってしまうということでして、実は国民年金財政にマイナスの影響があるということであります。
 そういう点から言いますと、1号の拠出金算定対象者は少ないほうが国民年金財政だけを考えるとプラスということになるわけですが、ただ、免除が増えるとか未納が増えるというのは将来の給付が減ってしまうということなので、高齢者の所得保障の関係からは決して好ましくないということだと考えています。
 ですから、免除については払えない方は使っていただくということだと思いますけれども、少なくとも未納はできる限り少なくしていく必要があると考えております。財政と将来の免除の方々の所得保障の両面を考えていく必要があります。いずれにせよ、将来の所得保障は大事だと思いますので、保険料を払える人はきちんと払ってもらうということが重要だと考えているところであります。

○翁部会長 そのほかございませんでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、以上で国民年金基礎年金制度についての報告の聴取を終わりたいと思います。
 また追加的に御質問がございましたら、事務局までお寄せいただければと思っております。
 本日の議題は以上となりますが、全体を通じて、あるいは今後取りまとめを予定している財政状況報告に係ることでも構いませんので、御意見がもしございましたらいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 佐藤委員。

○佐藤委員 ありがとうございます。
 本日の議題とは直接関係ないことなのですが、1点発言をお許しください。
 本日、国民年金の財政の御説明があったこともあり、第1号被保険者の表記についてお願いがございます。これについては当部会でも毎年報告をさせていただいているのですけれども、年金の体系の表の中で、表記では1号被保険者は自営業者、学生などとなっており、そこに注記があるわけなのですけれども、令和5年3月末時点で注記の中ではパート、アルバイト、臨時が32.6%、無職31.2%、自営業者19.4%、その他の方が家族、従業者とかの常時雇用者の方がその他なのですけれども、そのうちの学生の割合は21.1%となっていまして、この表の中の表記と注記の平仄が合っていないのです。このことについて、このままでよいのかどうかということはぜひ検討をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○翁部会長 御意見ありがとうございます。これはずっと議論があった点でございます。
 この点について、事務局のほうからお願いいたします。

○楠田統括数理調整官 事務局でございます。
 この点につきましては、直近で出ている調査等も踏まえながら、今後行われる作業班でも委員の方々の御意見をいただきつつ、修正の必要があるのであれば修正するという方向で、取りまとめまでに検討させていただきたいと思います。

○佐藤委員 ありがとうございます。
 それには時間もかかるということで、本日の議題とは直接関係ないのですけれども、お願いの発言をさせていただいた次第です。

○翁部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に事務局から連絡がありましたらお願いいたします。

○楠田統括数理調整官 次回の第103回年金数理部会は、1月14日火曜日の10時から、本日と同じ全国都市会館大ホールにて開催いたします。
 議題は国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済、それぞれの令和5年度財政状況についてを予定しております。
 以上でございます。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、第102回「年金数理部会」はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。