第4回健康日本21(第三次)推進専門委員会議事録(2024年12月24日)

日時

令和7年12月24日(火)17時00分~19時00分

場所

オンライン開催

議題

(1)健康寿命の令和4年値について
(2)個別領域の取組について:栄養・食生活領域
(3)その他

議事

開会

【門馬課長補佐】 定刻となりましたので、ただいまから第4回健康日本21(第三次)推進専門委員会を開催いたします。本日、議事に入る間、議事進行役を務めさせていただきます、健康・生活衛生局健康課の門馬と申します。よろしくお願いいたします。委員の皆様には、御多忙の節御参加いただきお礼申し上げます。本日は、委員の皆様にはオンラインで御参加いただいております。なお、会議の模様をYouTubeによるライブ配信にて公開しておりますので、御承知おきください。

・委員紹介
【門馬課長補佐】 本日の委員の先生方の御出席状況ですが、古井委員、山下委員から遅れての御出席の御連絡を頂いております。
本日、「議題1 健康寿命の令和4年値について」の御報告をお願いしております、参考人の先生を御紹介いたします。藤田医科大学名誉教授 橋本修二先生です。よろしくお願いいたします。
【橋本参考人】 橋本です。よろしくお願いいたします。
【門馬課長補佐】 また、「議題2 個別領域の取組について」の議論においては、栄養・食生活領域の2名の御参考人にも議論いただく予定ですので、後ほど御紹介させていただきます。

・資料の確認
【門馬課長補佐】 次に、資料の確認をさせていただきます。事前にお送りしているファイルに不足がないか御確認ください。座席表、委員名簿、議事次第の他に、資料1-1 健康寿命の令和4年値について、資料1-2 橋本参考人提出資料:健康寿命の推移とその検討、資料2 健康日本21(第三次)推進の方向性(イメージ)(栄養・食生活領域分野追加)、資料3 栄養・食生活領域資料及び参考資料1から5までが本日の配布資料になります。
不備がございましたら、事務局まで御連絡ください。
 
・オンライン参加に係る留意事項
【門馬課長補佐】 議事に入る前にオンライン参加について留意事項を申し上げます。ビデオカメラはオンにしていただき、御発言時以外はマイクをミュートにしてください。御発言されたい場合には、オンライン会議システムでの挙手ボタンを押していただくか、画面上で見えるように挙手をしていただき、委員長からの指名後、御発言ください。
御発言のときにはマイクをオンにしていただき、お名前をおっしゃった上で御発言をお願いいたします。御発言後は挙手ボタンを押し、マイクを再度ミュートにしてください。以上、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、カメラの撮影はここまでとさせていただきます。
以後の進行は、辻委員長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

議題

(1)健康寿命の令和4年値について

【辻委員長】 それでは本日の議題に入りたいと思います。議題1 健康寿命の令和4年値につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【谷口室長】 事務局の谷口です。本日の資料1-1の御説明をさせていただきます。健康日本21(第三次)で目標としております健康寿命の延伸について、最新値である令和4年値の健康寿命が算出されましたので、本日発表させていただきます。
健康寿命の算出ですが、国民生活基礎調査及び簡易生命表を基に、本日の委員長でもあります辻一郎先生の厚生労働科学研究におきまして、3年ごとに算出いただいております。
令和4年値の健康寿命は、男性が72.57年、前回と比較してマイナス0.11年、女性が75.45年、前回に比べましてプラス0.07年、この値は男女ともに前回と比較して統計的に有意な差はない数値です。
次に平均寿命と健康寿命の差、いわゆる不健康な期間と言うことができると思いますが、そちらに関しては、男性が8.49年、前回と比較してマイナス0.24年、女性が11.63年、前回と比較してマイナス0.43年となっています。平均寿命と健康寿命の差は男女とも有意に短縮が認められております。
右側の方に書いておりますが、健康日本21(第三次)の目標として、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を掲げております。健康寿命の延伸については、平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加を目標としておりまして、今回発表しております令和4年値の健康寿命を、中間評価、最終評価の際のベースラインの値として今後使用していくことを考えております。
健康寿命の延伸とともに、健康格差の縮小にも取り組んでまいりますが、健康格差の縮小としては、上位4分の1の都道府県の健康寿命の平均と、下位の4分の1の都道府県の健康寿命の平均の差を縮めていくことを目標としております。令和4年値を用いますと、男性が1.51年、女性が1.35年の差が見られるということで、これについて、引き続き縮小に取り組んでいきたいと考えております。
次のページは平均寿命と健康寿命の推移をお示ししたものです。これまで令和元年値まで発表しておりましたが、今回の令和4年値を加えて、資料を更新しております。
次のページは都道府県別の健康寿命になります。次のページが男性のページ、その次のページが女性のページとなっております。こちらの図ですが、誤差の範囲として、95%信頼区間でお示しをしておりますので、数値間の単純な比較ということではなく、算出上の誤差が含まれることも踏まえて、見ていただく数字です。自県の中での取組とその推移を検討するといったような活用方法で御覧いただければと考えております。
次のページは、都道府県別に、日常生活に制限がある期間の平均を示したものになります。こちらも男性と、次のページで女性についてお示しをしております。誤差の範囲があること等は、先ほどの健康寿命と同様ですので、県内での推移等を見ながら活用いただくものとしてお示しをしています。今後、研究班の橋本修二先生からも御発表いただきますが、総論としては、新型コロナウイルス感染症で、今回男女の平均寿命の短縮といった影響がございます。健康寿命は平均寿命を用いて算出する値ですので、こちらも影響というのは一定程度考えられると思っており、今回は横ばいといった結果で算出されております。資料1-1の御説明は以上です。
【辻委員長】 それでは橋本参考人から資料1-2「健康寿命の推移とその検討」について御説明をお願いいたします。
【橋本参考人】 それでは、健康寿命の推移とその検討について御報告をいたします。スライドの内容は配布資料と同じですので、どちらを見ていただいても結構です。本報告は国立保健医療科学院の川戸美由紀先生との共同研究です。本報告の内容は、「次期健康づくり運動プラン作成と推進に向けた研究」の研究成果に基づいています。
本日の報告の内容ですが、日常生活に制限のない期間の平均(以下、健康寿命と呼びます。)についてⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの順番で報告をしてまいります。
1番目が全国の推移とその検討です。5ページに記載していますが、健康寿命と不健康期間の算定方法として、対象集団は全国の都道府県、対象期間は2010年、2013年、2016年、2019年、2022年です。対象年齢は0歳で、基礎資料として、死亡率は人口動態統計の死亡です。不健康割合は国民生活基礎調査の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか。」という質問への回答です。計算方法はChiangの生命表法、Sullivan法で、これは標準的な計算方法です。不健康期間は、平均寿命と健康寿命の差で算出しています。それから留意点ですが、2010年から2019年の健康寿命の目標評価、前回の目標評価における算定方法と同一です。
6ページの健康寿命と不健康期間の推移の検討についてですが、目的は2010年から2022年の健康寿命と不健康期間及び基礎資料の死亡率と不健康割合について、2010年から2019年の推移を基準として検討しました。方法ですが、健康寿命と不健康期間、年齢調整死亡率と年齢調整不健康割合ごとに、2010年から2022年の期待値として、2010年から2019年、2022年を除く、2019年までの観察値に基づく年次による線型回帰直線から計算をしました。健康寿命と不健康期間の線型回帰分析というのは、前回の2010年から2019年の健康寿命の目標評価で用いたものと同一です。
7ページに死亡率と不健康割合の推移を示しています。左側のグラフが年齢調整死亡率で、人口1000対で表しています。赤の四角が観察値です。2010年、2013年、2016年、2019年にかけて、男性の年齢調整死亡率は年次とともに低下しています。2022年は上昇しました。特に2010年から2019年の推移に基づく期待値と比べるとかなり大きいという結果になっています。女性も2010年、2013年、2016年、2019年に対して2022年は上昇していて、やはり期待値と比べてかなり大きいという傾向です。一方、右側のグラフが年齢調整不健康割合です。下側が男性ですが、観察値を見ますと、2010年、2013年、2016年、2019年と低下していて、2022年も低下しています。ただし、期待値と比べるとかなり高いという結果です。女性についても同様に2010年、2013年、2016年、2019年と低下していって、2022年も低下しております。男性と比べると、期待値との差が男性ほどは大きくないという傾向です。
8ページですが、健康寿命は死亡率の上昇によって短縮します。死亡率が上昇すると寿命そのものの全体が短くなりますので、それによって健康寿命も短縮します。また、不健康割合の上昇によっても健康寿命は短縮します。2022年の健康寿命の観察値と期待値の差を見ますと、男性は死亡率の上昇分による健康寿命の短縮分と不健康割合の上昇分による短縮分で合計マイナス1年程度ということになります。女性についても同様に、死亡率の上昇分と不健康割合の上昇分による短縮で、これは1年弱といった数字になります。一方、右側が不健康期間です。不健康期間に対して死亡率の上昇により、やはり不健康期間も寿命全体が縮まりますから、不健康期間も短縮します。一方、不健康割合の上昇によって不健康期間は延伸します。そのため、両者の影響は異なる方向になります。グラフの左側が男性ですが、死亡率の上昇によって不健康期間は短縮して、不健康割合の上昇によって延伸して、この差分が相殺して、男性の場合は不健康割合が少しマイナスになります。一方女性の場合は、不健康割合の上昇分が小さいので、死亡率の上昇分が上回って、不健康割合がマイナスになります。
9ページが健康寿命と不健康期間の推移をお示ししたものです。健康寿命は男性の場合は、2010年から70年余りですが、2013年、2016年、2019年と延伸して2022年は短縮しました。特に、2010年から2019年の推移に基づき期待値と比べるとかなり短いということになります。女性も同様で、2010年、2013年、2016年、2019年と2022年も延伸はしているのですが、期待値と比べるとかなり短いという結果になっています。右側のグラフが不健康期間です。男性の不健康期間について、2010年は9年余りでしたが、2010年、2013年、2016年、2019年と短縮をして、2022年も短縮しています。期待値との差もあまり大きくありません。先ほど申し上げたように、死亡率の上昇と不健康割合の上昇が相殺することによって、男性の場合はほんの少しだけ低下する。期待値との差がほんの少しマイナスになります。一方、女性については、2010年、2013年、2016年、2019年と短縮して2022年も短縮している。こちらの方は不健康割合の低下分の上昇分が小さいですから、この差が男性に比べて大きくなっているという傾向になります。
全国の推移とその検討の結果を10ページにまとめました。2010年から2019年において、死亡率と不健康割合は低下、健康寿命は延伸、不健康期間は短縮でした。2019年から2022年においては、死亡率は上昇、不健康割合はこの3年間では低下しています。健康寿命は男性で短縮と女性で延伸、不健康期間は男女とも短縮という結果でした。一方、2022年において、2010年から2019年の推移を基準としますと、死亡率はかなり大きく、不健康割合は男性で大きく、女性でやや大きいという結果でした。そのために健康寿命は両者が和で影響するということから、かなり短く、不健康期間は両者が差で影響するために男性でやや短く、女性で短いという結果でした。
Ⅱが全国の推移に対するCOVID-19の影響の検討についてです。12ページに記載のとおり、全国の推移に対するCOVID-19の影響の検討の目的は、健康寿命の基礎資料である2022年の年間死亡数と、2022年6月2日(国民生活基礎調査の調査日)、年間死亡数と当該日の不健康者数が健康寿命の基礎資料になります。これらについてCOVID-19の影響を検討するということです。方法としては、2022年の超過死亡数について総死亡の観察死亡数と期待死亡数の差と仮定して、原死因別に試算をしました。COVID-19の直接的影響による2022年の不健康者数としては、調査日の0から1週前の全数と、1から13週前の10%のCOVID-19感染者数と仮定・試算しました。これは要するに1週間、それから3か月間の10%で症状が残るという先行研究を参考にして定めたものです。COVID-19感染者数はHER-SYSの公表データから得ております。
13ページがCOVID-19による死亡数への影響です。左側のグラフが死亡数で単位は万人になります。2022年の85歳以上の年齢階級の総死亡数というのは80万人余りです。それに対してこの赤の部分が超過死亡になります。男性の場合は合計で9.5万人、女性は7.3万人で、総死亡数に占める割合は10%前後といったところです。そして男性の超過死亡数9.5万人について、原死因別に分けてみますと、COVID-19が原死因によるものが2.5万人で26.6%、女性の場合は2.3万人で30.9%です。それ以外の原死因としては悪性新生物がありますが、それよりも虚血性心疾患あるいは脳血管疾患が大きいという結果になりました。
14ページがCOVID-19による不健康者数への影響です。縦軸が不健康者数で単位は万人です。年齢階級別に見ますと85歳以上の不健康者数は合計で300万人余りになります。左側のグラフの赤い部分がCOVID-19の影響の部分です。2022年6月2日におけるCOVID-19の影響による不健康者数というのは、男性では22万人、女性で23万人と試算されまして、不健康者全体に占める場合は2~3%といったところです。右側のグラフは先ほど御覧いただいた年齢調整不健康割合の年次推移です。男性がだんだん年次とともに下がっていってということですが、「×」がCOVID-19の影響を除く試算値ですから、観察値からCOVID-19の不健康者数を抜いた部分が「×」になりまして、男女ともこの「▲」の期待値に比較的近いという結果になりました。
15ページに全国の推移に対するCOVID-19の影響の検討の結果についてまとめました。2022年の死亡数におきましては、超過死亡数と原死因の死亡数からCOVID-19の影響が2022年の死亡数においてかなり大きいと示唆されました。2022年6月2日の不健康者数において、COVID-19の感染者数による影響が、観察値と期待値の差に近いと試算されましたので、不健康者数においてCOVID-19の影響が大きいというように示唆されました。2022年の健康寿命と不健康期間の短縮、これは2010年から2019年の推移を基準とした場合の短縮に対してですが、COVID-19の影響が主要な原因と考えられました。
16ページの健康寿命の目標評価とCOVID-19の影響についてですが、健康日本21(第三次)における健康寿命の延伸の目標の評価は、「日常生活に制限のない期間の平均」を用いて男女ごとに2022年から2031年の推移に基づいて判定するとされています。目標到達は健康寿命が平均寿命の増加分を上回る増加、すなわち不健康期間が短縮することです。一方、悪化は健康寿命が短縮することです。
17ページに記載のとおり、仮にですが、COVID-19の影響によって、健康寿命と不健康期間が2022年に一過性に短縮をして、その後、元通りに回復すると仮定します。このとき、目標評価のベースライン値に利用しますと、2022年の健康寿命と不健康期間が短すぎることになるために、2031年との年次差による目標の評価における「目標到達」と「悪化」の確率に過小評価の可能性があります。つまり、不健康期間が2022年から31年の間にかなり短縮した、目標到達のレベルまで短縮したとしても、2022年の不健康期間が短すぎるために、このレベルにいかない可能性がある。評価としてはそういう可能性があるということを意味しています。今後の健康寿命と不健康期間の算定を待って、COVID-19の影響を見極めることが重要であり、それらの影響も加味して評価・分析を行う必要があると考えています。
Ⅲが都道府県別の推移とその検討です。19ページに記載のとおり、都道府県別、健康寿命と不健康期間の推移の検討について、目的は都道府県別の2010年から2022年の健康寿命と不健康期間について、2010年から2019年の推移を基準として検討するということです。方法として、都道府県別の健康寿命と不健康期間の算定方法は、全国のそれと同一です。都道府県ごとに2010年から2022年の期待値として、全国と同様に2010年から2019年、2022年を含めずに2019年までの観察値に基づく年次による線型回帰直線から計算をしました。健康寿命と不健康期間のこの線型回帰分析というのは、都道府県別の2010年から2019年、前回の健康寿命の目標評価で用いたものと同一です。
20ページは2010年から2019年までの都道府県別の健康寿命の推移です。左側のグラフが男性で、横軸が2010年の健康寿命の観察値、縦軸が2019年の観察値で、47都道府県全てが対角線よりも上回っている。すなわち、2010年から2019年では全ての都道府県で延伸している。女性も全く同様の傾向です。
一方、21ページは2019年から2022年の都道府県別の健康寿命の推移です。横軸が2019年の観察値、縦軸が2022年の観察値です。左側のグラフは男性で、2019年から2022年では対角線よりも少し下回る都道府県がやや多いという傾向です。女性も同様の傾向です。
22ページが2022年の健康寿命の観察値と期待値の比較です。2022年の健康寿命の期待値、これは2010年から2019年の推移に基づく期待値ですが、縦軸が2022年の観察値です。これを見ますと、ほとんどの都道府県で観察値が期待値よりも短いという結果になります。女性も同様の傾向ですが、女性の場合はかなり短いとか、かなり長いという都道府県が若干含まれています。
23ページは2010年から2019年の都道府県別の不健康期間の推移です。横軸が2010年の観測値、縦軸が2019年の観察値です。左側のグラフが男性で、2010年から2019年では、多くの都道府県で不健康期間が短縮しています。女性も同様の傾向です。
24ページは2019年から2022年の都道府県別の不健康期間の推移です。横軸が2019年の観察値、縦軸が2022年の観察値ですが、2019年から2022年では、不健康期間が短縮した都道府県がやや多いという傾向です。女性も同様の傾向です。
一方、25ページは2022年の不健康期間の観察値と期待値の比較です。2022年の期待値に対して、こちらが2022年の観察値です。左側が男性ですが、観察値と期待値の長短は、都道府県のほぼ半数ずつという傾向です。女性の場合も同様の傾向ですが、かなり短いとかかなり長いという都道府県が一部含まれています。
26ページに都道府県別の推移とその検討の結果をまとめました。2010年から2019年において、健康寿命は全ての都道府県で延伸し、不健康期間は多くの都道府県で短縮しました。2019年から2022年において、健康寿命と不健康期間はいずれも短縮の都道府県がやや多かったという結果です。2022年において、2010年から2019年の推移傾向を基準としますと、健康寿命は短い都道府県がほとんどであり、不健康期間は短い又は長い都道府県がほぼ半数ずつという結果でした。
次が4番目の都道府県格差の推移とその検討です。28ページに記載のとおり、健康寿命の都道府県格差の算定についての目的は2010年から2022年の健康寿命の都道府県格差の推移について検討するということです。方法ですが、健康寿命の都道府県分布の形状を正規分布と比較するために、正規スコアを用いました。都道府県格差の指標としては、健康寿命の都道府県の「上位4分の1と下位4分の1の平均の差」と「地域格差指標」の2つを用いました。地域格差指標というのは、標準偏差の真値の推定値、標準偏差というようなものとお考えいただければ結構です。健康寿命の都道府県分布にはずれ値があるときには、はずれ値を除く場合の都道府県の指標値も合わせて算定しました。
29ページが健康寿命の都道府県分布の正規プロットです。左側のグラフが男性です。横軸が健康寿命で縦軸が正規プロットです。この黒のひし形が2010年の健康寿命の都道府県の分布です。正規スコアを見ますと、分布がほぼ直線的になっているということはほぼ正規分布に近いということを表しています。2010年、2013年、2016年と右に移動しているということは健康寿命が全体として延伸しているということを表しています。それから傾きですが、2010年に比べて2013年、2019年になると、傾きが急になっているという傾向が見られると思います。傾きが急ということは、小さいところと大きいところの格差が小さい、つまり間差が小さくなっているということを表しているわけです。それから、青の四角が2019年ですが、こちらの方は2016年と比べると、分布の傾きがやや緩やかになるようになっているように見られるかと思います。それから、赤のバツが2022年ですが、2019年とそれほど違わず比較的近いなという傾向です。女性についても同様の傾向で、2010年、2013年、2016年と傾きが少しずつ急激になっていって、都道府県の間差が小さくなっている。一方、2019年になりますと、大きい方のはずれ値と小さい方にも実ははずれ値が出るという結果になっています。それから2022年のバツ印を見ていただきますと、2019年よりはより急激になっている。つまり、間差が小さくなっているという傾向が見られます。
以上の傾向を30ページの都道府県格差の指標で見てみますと、左側のグラフが都道府県の「健康寿命の上位4分の1と下位4分の1の平均の差」です。男性を見ますと、2010年、2013年、2016年とだんだん間差が小さくなっていき、2019年に上昇して2022年はほぼ男性の場合は横ばいという傾向です。女性の場合も同様に2010年、2013年、2016年と低下して、2019年に上昇して、2022年に低下していくという傾向でした。地域格差指標については全く同様の傾向です。
女性の2019年におきまして、大きい方と小さい方にはずれ値がありましたので、それを除いた結果が31ページの左側のグラフの破線の部分です。女性についてこのはずれ値を除くと、全体として単調な低下傾向という傾向になります。地域格差指標も全く同様の傾向です。
32ページに都道府県格差の推移とその検討の結果についてまとめました。健康寿命の都道府県格差の指標値は2010年から2016年で男女とも低下傾向、2016年から2019年で男女とも上昇傾向であり、2019年から2022年では男性が同程度、女性が低下傾向でした。女性では2019年のはずれ値を除きますと、全体として単調な低下傾向になりました。今後の健康寿命と不健康期間の算定を待って、COVID-19の影響を見極めることが重要であり、それらの影響を加味して、健康寿命の都道府県格差の評価・分析を行う必要があると考えています。
「日常生活に制限のない期間の平均」について4つの結果をお示ししました。以上です。
 
<質疑応答>
【辻委員長】 ありがとうございます。それでは、これまでの御説明につきまして、委員の皆様から御質問・御意見いただきたいと思います。津下委員お願いします。
【津下委員】 ありがとうございます。健康寿命の計算など、橋本先生、川戸先生には詳細な分析をしていただいて、今回はCOVID-19の影響がかなり出た年だったのでどうなるかと推移が気になっていましたが、単純な延長はなかったもののすごく戻るというところまではいかなかったということで、少し安心した部分もあるのかなと感じた次第です。橋本先生にお伺いしたいのですが、都道府県の健康寿命の推移や不健康期間の推移などの状況とCOVID-19の影響が大きいということですが、COVID-19の死亡率もかなり都道府県格差があったかと思っています。統計を見てみると、死亡率で言うと人口当たりで5倍ぐらい違っており、感染率も違っているという状況があったため、今回の都道府県別の健康寿命で延伸した場所や短縮した場所があると思いますが、それとコロナ感染の状況との関連について、何か知見等がございますか。
【辻委員長】 橋本先生お願いします。
【橋本先生】 あくまで研究の途中段階ですが、都道府県別にCOVID-19が原死因によるSMRを計算して、それと都道府県別の平均寿命の期待値との差(2019年から2022年の差)との関連性を検討しますとやはり相関が出ます。しかも都道府県別のCOVID-19によるSMRの都道府県間差というのは80から120くらいまでには入っている都道府県が多いのですが、それを逸脱する都道府県もあります。そういう意味で、あくまで研究の途中ですが、COVID-19の影響が都道府県によって少し違いがあって、それによって健康寿命の違いが起こっている可能性があるというふうには思います。ただ、まだまだ詳しく検討する必要があって、研究段階と考えています。
【辻委員長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
【津下委員】 ありがとうございました。
【辻委員長】 横山委員お願いします。
【横山委員】 国立保健医療科学院の横山です。非常に詳細な御検討とデータをありがとうございます。橋本先生も今おっしゃっていましたが、今後の評価をどうやるかがすごく気になります。当初の計画ですと、この値をベースライン値としてその後の推移を見るということですが、スライドの17枚目にあったように、今後の健康寿命と不健康期間の算定を待って影響を見極めて加味して分析する、評価・分析が必要じゃないかというお話があったかと思います。評価の仕方について考えると、確かにこういうイレギュラーなことは想定していなかったので、実際どうするかですが、結局は今後の推移を少し見て、次回の算定値を見て、その上でどのように評価するか考えるということになるかと思うのですが、それについて、もし橋本先生から御提案等ございましたらお願いできますでしょうか。
【橋本先生】 御指摘ありがとうございます。大変難しい問題だと考えています。そのため実際にはこの専門委員会で決定されることだと理解しておりますが、研究として考えますと、やはり今後のことを考えていくということになりますので、次回の健康寿命と不健康期間の算定を待たないとやはりよくわからないというところだと思います。申し上げたように、一過性に健康寿命が短縮するという傾向があるということなのか、それが今後も引き続いて低下した状態がそのまま続くということなのかということによって、そのベースライン等々の影響というのは違ってきますので、そのようなことを検討する必要があると考えます。実際に今のところ2023年の簡易生命表による平均寿命が公表されておりますが、それを見ると2022年ほどではなさそうですが、やはりCOVID-19の影響は残っていると思います。ただ、その後2024年、2025年となったときに、果たしてどうなっているのか。それから、不健康者割合についての影響について、これほど今回大きくないという傾向が出ているという結果が試算されましたが、今後はどうなっていくのかというのも、やはり今後検討してみていく必要があるという意味で、今後の動向を見極めた上で、分析・評価が必要と考えています。以上です。
【横山委員】 貴重な御助言ありがとうございます。都道府県の方でも同じような悩みに恐らくなると思いますが、32枚目に都道府県でも同じようなことが書かれていたと思いますので、そのあたりはこの検討会で検討していく必要があるのかなということと、あとは4年ごとに見ていくとやはり途中がわかりにくいため、毎年公表されている平均寿命も今後は見ていく必要があるのかなと思いました。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございます。他にどなたかいらっしゃいますか。津下委員お願いします。
【津下委員】 健康寿命に不可欠な国民生活基礎調査の「あなたは現在健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか。」という項目への回答ですが、2022年なのでそれほど厳しい制限ではなかったかもしれませんが、不活発等の様々な健康上の問題が言われた時期でもありました。生活習慣のいろいろな取組がやや抑制的になっていた影響が残っていたかもしれないのですが、国民生活基礎調査に対するCOVID-19の影響において何か考慮しなければいけない点はございますか。
【辻委員長】 橋本先生お願いします。
【橋本先生】 これも大変難しい御質問だと思います。今回はあくまで感染者であって、しかも症状がまだその時点で残っているという人について、不健康者が追加されたという形でCOVID-19の影響を見積もっています。その意味では、本当に直接的な影響を見積もったということになると思います。この分をもってしても不健康者割合の期待値と観察値の差はそれに比較的近いということなので、COVID-19以外の影響というのが2022年についてはそれほど大きくなかったのかもしれないとは思っています。ただ、検討してみないとわかりませんし、それから御指摘のとおり、今後どうなっていくのかということについては検討してみないとわからないと考えています。
【津下委員】 ありがとうございます。
【辻委員長】 橋本先生、私から1つお聞きしたいのですが、14ページにCOVID-19による不健康者数への影響というのがグラフで出ています。不健康者全体のうちCOVIDの影響によるのが大体3%内外で、しかも若い人が多いという認識でよろしいですか。お年寄りについてはあまり影響が少なかったのでしょうか。
【橋本先生】 御指摘のとおり、COVID-19の感染者というのは、若い人が多くて、高齢では比較的それほど多くないという傾向があります。超過死亡の方は明らかに高齢者が多いのですが、感染者の方はむしろ若い人が多い。若い人の中の不健康者が増えるという傾向になっているということです。ただ、先ほど申し上げましたように、感染者に限定して、しかもその時点の症状がある人という形に限定しておりますので、その意味でCOVID-19の影響による不健康者数は男女それぞれ20万人前後となっています。今回この不健康者数というのは、日常生活への影響がかなりマイルドなところまで含めており、元々の数が非常に多いので、COVID-19の影響による不健康者数の20数万人というのは不健康者全体の2、3%に当たるということになります。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございました。他にどなたかから御質問・御意見ございますか。横山委員お願いします。
【横山委員】 今回、日常生活に制限のない期間の平均ということですが、健康寿命の補完的指標として平均自立期間などもあるかと思いますが、こちらの方は今後、研究班で検討されるのだと理解しています。あと、4年に1度だと少しわかりにくいため、確か国民健康保険中央会が都道府県別に毎年計算して公表している平均自立期間も見ながら、都道府県の場合には今後どうやって評価していくかということを考えていくといいのかなと思いました。
【辻委員長】 ありがとうございます。これについて、橋本先生何かございますか。
【橋本先生】 日常生活に影響のない期間の平均以外の残りの2つの補完的な指標についても同様の検討を行っています。詳しくはまた研究報告等でお示ししたいと思いますが、基本的には比較的類似した傾向を示しています。ただし、要介護2以上の割合については、それほどCOVID-19の影響はそんなに大きくなかったような気がします。「日常生活動作が自立している期間の平均」については、少しやはり傾向が少し違うような感じも受けました。そのため、少し詳しく見ていく必要があるだろうと思います。それから御指摘のとおり、「日常生活動作が自立している期間の平均」は毎年計算可能ですので、3年ごとではなくて毎年の推移を見ていくというのは重要だと考えています。
【辻委員長】 ありがとうございます。横山先生いかがでしょうか。
【横山委員】 ありがとうございます。そのとおりだと思います。
【辻委員長】 ありがとうございます。他にどなたか御質問・御意見どうですか。よろしいでしょうか。それでは、橋本先生、まとめのコメントなどございませんか。
【橋本先生】 今回御報告させていただいて、御意見を頂いて大変有り難かったです。今後、研究を進めていきたいと思っております。どうもありがとうございました。
【辻委員長】 わかりました。それでは橋本委員はここまでとなります。先生どうもありがとうございました。
 
(2)個別領域の取組について:栄養・食生活領域

【辻委員長】 それでは次の議題に移りたいと思います。議題2、個別領域の取組についていうことで、事務局から参考人の御紹介と資料の説明をお願いいたします。
【門馬課長補佐】 事務局です。議題2については、栄養・食生活領域の有識者の先生にも参考人として議論に御参加いただきます。資料の説明の前に参考人の先生を御紹介いたします。新潟県立大学 副学長、村山 伸子様。
【村山参考人】 よろしくお願いいたします。
【門馬課長補佐】 社会医療法人製鉄記念八幡病院 理事長、土橋 卓也様。
【土橋参考人】 よろしくお願いいたします。
【門馬課長補佐】 以上、どうぞよろしくお願いいたします。
【谷口室長】 それでは、事務局から資料2、資料3について御説明をいたします。まず資料2を御覧ください。
右下のページ番号で1と書いてある緑の資料を御覧ください。こちらは毎回推進専門委員会の際にお目にかけておりますが、健康日本21(第三次)推進の方向性のイメージとして、地域の体制作りについての取組等を整理した骨格のお示しになりまして、前回同様引き続きで掲載しています。
2ページは、データの整理やデータに関する考え方について、同様に健康日本21(第三次)推進の方向性のイメージとして、整理して載せているものです。こちらも毎回骨格の資料として御提示をしています。
3ページは、領域別の取組に関し、同様に、健康日本21(第三次)推進の方向性について、取組の方向性を整理した骨格資料となります。本日の栄養・食生活領域につきましても、このピンクのページの骨格に基づいて整理したもので御提示をさせていただきます。
4ページが今回の栄養・食生活領域についての取組を整理したものとなりまして、また後ほど詳しく御説明をさせていただきます。
5ページは身体活動・運動領域の資料です。以前推進専門委員会で先生方に御議論いただきました御意見を反映して資料を更新し、前回の委員会でお示ししたもので、再度掲示をしてございます。
6ページ目も、休養・睡眠領域につきまして、同様に、先生方の御議論を反映して資料を更新したものを前回御提示しておりまして、引き続きの掲載です。
7ページ目は飲酒領域の取組です。こちらは、前回先生方に御議論いただきました内容を踏まえて資料を更新し、今回御提示しております
8ページ目は喫煙、COPD領域の資料となります。飲酒領域と同様に、前回の御議論を踏まえて事務局の方で資料を更新し、今回御提示をしております。
それでは4ページ目に戻りまして、栄養・食生活領域の取組等について御説明をさせていただければと思います。栄養指導室長から御説明をいたします。
【塩澤室長】 栄養指導室の塩澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、基本的には資料2を中心に、そして後段になりますが、資料3も適宜使わせていただきながら御紹介させていただきたく思います。
今回は健康日本21(第三次)の告示を踏まえて、栄養・食生活の領域について、各地域でどのような取組が期待され、そしてどういったことがポイントになるのかという点が中段に書かれております。そしてこれを支えるものとして行っていく国の取組も御紹介させていただきながら、この内容に関して御意見を賜りたいと思っております。
初めに、健康日本21(第三次)の告示において、栄養・食生活の領域がどういう位置づけになっているのかというところから御説明します。この表の左列に告示がございます。「第二 国民の健康の増進の目標に関する事項」、これは大きいものとして1つ目、個人の行動と健康状態の改善という柱、そして社会環境の質の向上という柱がございます。そして、その次の「第六 食生活、運動、休養、飲酒、喫煙、歯の健康の保持、その他生活習慣に関する正しい知識の普及に関する事項」についても文字通り食生活と関わってくるところです。ただ、この栄養・食生活については、先ほど御紹介しました第二の1つ目の柱、すなわち、個人の行動と健康状態の改善の1つ目、生活習慣の改善に特に関わるものです。
これらについて、別の資料を通じておさらいをさせていただきたく思います。同じ資料2の9ページ目から簡単に御説明します。先ほど個人の行動と健康状態の改善という柱を申し上げました。これが中段の青い四角のところで書かれていまして、特に栄養・食生活はここに特に位置づいてくるものでもございます。しかしながら、こうした個人の行動と健康状態の改善というのは、個人の自助努力だけでうまくいくとは限らないというところがありますので、この社会、社会環境の質の向上というのが礎になって推進していくという考えのもと、今回の健康日本21(第三次)では社会環境の質の向上というところにも注力しています。この代表となるものとして、左下に自然に健康になれる環境作りというのがありまして、ここにも栄養・食生活というのは大きく関わってきますので、こちらも後ほど御紹介します。そしてこれらに生涯を通じて取り組んでいくということが不可欠ですので、一番下に、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりという矢印を示しています。これらの合わせ技でもって一番上の目標、すなわち健康寿命の延伸、そして健康格差の縮小が図られるというのが健康日本21(第三次)の概念図であります。
続きまして10ページです。今まで大体申し上げたところですが、やや上の方に、個人の行動と健康状態の改善というところに生活習慣の改善がありまして、いくつかの領域のうち、栄養・食生活は正にここに位置づけられるというものです。
これを各地域で取り組んでいく方法として、このようなものがあるのではないかというのを先ほどの4ページに書かせていただいておりまして、これを支える国の取組というのも書かせていただいていますので、この赤枠で囲っているところの観点で、後ほど御意見を賜りたく思っております。栄養・食生活の赤枠で囲ったところというのは、ここだけで完結するものではございませんので、これに関連する、あるいは支えるものとして、下の方に、点線で囲ったもの、これが関連するものとして挙げさせていただいておりますが、こうしたことも両輪で進めていきながらこの栄養・食生活の取組の推進を図りたいというのが私どもとしての思いです。
11ページには今回の健康日本21(第三次)の各領域の目標を掲げておりまして、上の方に栄養・食生活の目標も挙げておりますので、こちらを御参照いただければ幸いと思います。
それでは4ページを用いて説明させていただきます。先ほど御紹介したのが告示の構造ですが、この告示の栄養・食生活を進める上で、各地域でこのような取組が期待され、そしてポイントになる項目を中列に示しています。
1つ目でありますが、まず普及啓発と情報の発信があると思っております。具体的には、栄養・食生活の重要性の周知そして適切な栄養・食生活に繋がる情報提供となりますが、対象の1つとして一般国民向けのものがあると思っております。次に働き世代、そして企業へのアプローチがありまして、こちらは企業、職域との連携というのが重要になってくるかと思います。例えば外食、中食、そして給食等でのバランスのとれた食事等の提供の促進などが考えられるかと存じます。もう1つは、若い世代へのアプローチ、これは教育の部門や職域との連携というのが重要になってくるものと思います。また高齢者へのアプローチも重要になってまいります。こちらはフレイル予防の普及啓発ツールの活用等が考えられると思っております。
次の柱としては健康教育・保健指導です。「食生活指針」「食事バランスガイド」、これはかねてから、国としていろいろ普及啓発等に努めてきたものですが、引き続き普及啓発に努めてまいりたいと思っております。健康教育・保健指導に関連するものとしては、特定健診・特定保健指導等における栄養指導等の充実というものが考えられます。当然ながらこれは保健所との連携が重要になってきます。また健康増進事業を通じた栄養教育も重要と考えております。
次の柱としては環境整備がございます。これも給食等でバランスのとれた食事等を入手しやすい環境整備が重要になりまして、企業そして職域との連携が鍵になると考えます。また、関心が薄い層へのアプローチ、これも健康日本21(第三次)で強くうたわれているところですが、こうしたことを進めていくことも重要でありまして、誰もが自然に健康になれる食環境づくりの推進、これは産学官等との連携というのが鍵になりますが、こちらの取組も期待されると考えております。その下に『「健康的で持続可能な食環境づくりのための国・都道府県等アライアンス」への参画・活用を通じた、各地域での食環境づくりの推進』とやや具体的に書かれていますが、これは後ほど国の取組のところで併せて御紹介させていただきたく思っております。以上が地域において期待される取組とそのポイントです。
そして、これを支えるものとして、国として取組をやっていきたい、やっている取組が右列です。1つ目が、国レベルでの普及啓発、情報発信です。以降、適宜資料3のスライドも参照いただきながら御説明させていただきたく思います。1つ目が国レベルでの普及啓発の情報発信ですが、代表例としては毎年9月に行っている食生活改善普及運動です。資料3の12ページ以降に食生活改善普及運動の記載がございますので御参照いただきたく思います。毎年9月に行っていますが、普及啓発用ツールをスマート・ライフ・プロジェクトのウェブサイトに掲載するとともに、好事例などを横展開していただきたいと思っておりますので、こういった取組もできるようなウェブページのデザインになっておりますので、これらも踏まえて、バランスの良い食事を入手しやすい環境づくりを推進していきたいということを書かせていただいております。
主に、自治体等に提供している資料として下半分に記させていただいておりますが、バランスの良い食事に関するPOPや野菜の摂取量増加に繋がるようなPOPといったものを御用意させていただいているというものです。好事例としては、資料3の13ページで小田原市における野菜に関する好事例を用いて、例えばこんなようなものが好事例としてありますというのを御紹介させていただいております。
次に資料2に戻りますが、SLP(スマート・ライフ・プロジェクト)を介した周知です。これは職域そして一般国民向けとなりますが、スマート・ライフ・プロジェクトのサイト内のコンテンツ、例えば野菜摂取量の増加等がありますが、コンテンツの充実を図っていくという取組をこれからも進めてまいりたいと思っております。
スマート・ライフ・プロジェクトについては、資料3の14ページ以降で簡単に御紹介させていただいております。SLPにも、真ん中の赤囲みに示すとおり栄養・食生活のコンテンツというのがございまして、ここをクリックすると、様々なコンテンツを入手できるようになっておりますので、中身の充実などを図ってまいりたいと思っております。
そしてこのSLPを介した好事例を資料3の15ページに簡単に御紹介しております。こういった形でSLPの枠組みを通じて、各地での栄養・食生活の取組の好事例というのも紹介し、そしてこれをいろいろな形で横展開していただくような取組を今後も続けてまいりたいと思っております。
また資料2に戻ります。これは一般国民向けになりますが、他にe-ヘルスネットを通した普及啓発をこれまでもやってまいりました。引き続きこれも努めてまいりたいと思っておりますし、2025年版が間もなく適用になりますが、日本人の食事摂取基準の策定と周知ということに関しても、情報発信等に努めてまいりたいと思っております。
資料3の16ページに食事摂取基準の概要を記載させていただいております。この食事摂取基準については先ほど申し上げましたとおり、今は2020年版ですが、2025年から2025年版が適用になりますので、こちらについては主に保健指導者、実務者向けになりますが、例えば説明会などの開催も含めていろいろな周知などを図ってまいりたいと思っております
また資料2に戻ります。次の柱としては、自治体が活用する普及啓発資材の作成と周知です。例えば、食生活改善普及運動の機会を活用した資材の作成・提供として、各種POPを毎年更新しておりますので、活用していただけるようにしていきたいと思っております。主に各自治体の健康づくり支援担当者向けになろうかと思いますが、資材の充実を図ってまいります。
次に、e-健康づくりネット、これは健康づくり支援者向けの資材の作成・提供でございまして、資料3の17ページに簡単な御紹介がございますが、例えば肥満予防といった自治体の方向けの資材のように、資材の充実を図ってまいりたいと思っておりますし、日本人の食事摂取基準の活用の資材として、自治体の方向けにお使いいただけるようなものも作ってまいりたいと思っております。
いずれにしてもこの自治体の方々に御活用いただく資料については、自治体を始め、地域の方々に作成の負担も含めたいろいろな負担をかけることなくお使いいただくよう、国がしっかり作成して発信し、そのような資材を自治体の方々や地域の方々がそのままできるだけ活用いただけるような円滑な運用というのを念頭に置いて検討を進めているところですので、そのあたりは意識して進めてまいる所存です。
次に環境整備の推進がございます。1つ目として、健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブの推進、これは産学官等との連携というところで、もう1つの柱である関心が薄い層へのアプローチにも関わってくる内容であります。この取組については、資料3の18ページ目以降で御紹介させていただいております。有識者検討会の報告書、そして東京栄養サミット2021を踏まえた産学官等連携による食環境づくりの推進体制として、厚生労働省は健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブを2022年3月に立ち上げました。このイニシアチブは、食塩の過剰摂取、若年女性のやせ、経済格差に伴う栄養格差等の栄養課題、そして環境課題、これらを重大な社会課題として捉えまして、産学官等の連携・協働により、誰もが自然に健康になれる食環境づくりを展開していくというものです。主な概念図が下の囲みのところにございますが、やはり鍵になるのが産学官等連携です。左下に産というのがございます。主に関係してくるのが食品メーカーや食品小売業、あるいはメディアであったりしますが、例えば栄養の課題の最たるものとしては、食塩の過剰摂取というものがございますので、この減塩の推進に資するような具体的な行動目標というのを挙げていただいて、それを産学官等が連携して進めていくこととしています。具体的に、食品事業者等の事業者がこのイニシアチブに参画するに当たっては、少なくとも減塩の推進に資する取組として具体的なスマート行動目標案を出していただいて、それを学術や行政、あるいは職能団体と市民社会団体といった方々からの建設的助言を受けてブラッシュアップして具体的な行動目標の案が取れたものを、イニシアチブのウェブサイトに公表していき、そして進捗を追跡して公表していくといった取組です。こうした産学官等の連携の取組を今進めているところです。
そして19ページに記載のとおり、関心が薄い層へのアプローチにも関わってきますが、食環境づくりというのは、国が音頭をとるだけでいいかというとそういうわけでもなく、やはり各地域の特性に応じた取組というのが非常に重要になってきますので、自治体との連携が非常に鍵になります。事実、健康日本21(第三次)におきましては、目標の1つとして、この食環境戦略イニシアチブに全47都道府県が連携していくというのが目標になっています。ただ、なかなか連携と言っても、都道府県等自治体によっては難しいところがあるかと思われますので、まだイニシアチブとの連携も十分図れていないような自治体も含めて、イニシアチブとうまく連携を図っていくような、そういう頭の体操も含めた意見交換などができる場として、こちらのスライドでお示ししておりますとおり、健康的で持続可能な食環境づくりのための国・都道府県等アライアンス、以下、食環境アライアンスと呼ばせていただきますが、2024年6月に食環境アライアンスを構築しました。
主な概念図は下に掲げておりますが、この左上に食環境アライアンスという点線の囲みがあります。こちらのイメージ図ですが、中央に厚生労働省とありますが、A県、B県、C県、D県、E県というように、各都道府県との連合体、連携会みたいなものがございます。この一部拡大したものが残りの四角の部分に図示されております。A県というところを見ていただくと、A県として、国のイニシアチブと同様に、産官等の連携体というのを作っていただいて、地域の実情も踏まえたようなきめ細かな食環境づくりを進めていっていただく組織体を立ち上げることをお願いしているところです。
そして図を見ていただくと、例えば、職能団体、市民団体、管内市町村、学術、事業者などが、A県の組織体というところの連携体として参画しているという状況です。これが厚生労働省のイニシアチブと相補的・相乗的な連携を図るというものでございまして、国のノウハウそして各自治体でのいろいろな成功事例などを共有し合って、このA県と国のこういった連携みたいな情報も他のB県、C県、D県、E県同様に、お互いに交換し合うこととしています。まだこの組織体が出来上がっていないような都道府県も、このアライアンスには参加可能でございまして、例えば予算要求のプロセスやいろいろなノウハウも各自治体からお話を聞く機会があるという具合で、うまく組織体の立ち上げに繋げ、そして国のイニチアチブとの連携も図る。そして実際に組織体ができた暁にはその成功事例みたいなのを共有していただいて、それも他の自治体にも共有するといった体制を考えております。
実際、このイニシアチブでは専用のウェブサイトを用意していますが参画いただいた各自治体の取組を紹介できるようなページも用意してまいる所存です。このような形で、各自治体で食環境づくり、特に誰一人取り残さないみたいな観点も踏まえて、きめ細かな食環境づくりを進めていただきたく、国としてもこのような体制というのを用意しているというのがこちらのスライドです。
また資料2に戻ります。環境整備の推進の2つ目のポツですが、地域高齢者等の健康支援を推進するための配食サービスの普及と利活用の推進、これは配食事業者、そして利用者が軸になってきます。こちらについては、厚生労働省で2017年に有識者検討会を行いまして報告書を出しており、配食事業者向けのガイドラインも発出しております。これを活用しつつ、引き続き適切な配食サービスの普及に努めてまいりたいと思っております。こちらは配食事業者の方と今申し上げましたが、利用者の方向けの手引きみたいなものもウェブサイト上に公表し、ダウンロードいただけるようになっておりますので、この活用なども引き続き進むようにしてまいりたいと思っております。
そして3つ目であります。こちらは、飲食店等の調理師向けの嚥下調整食の研修の推進です。これは主に実務者向け、調理師など実務者向けになろうかと思います。こちらは令和3年から厚生労働省の補助事業でやっているものですが、これの狙いとしては、やはり高齢者がこれから多くなるといった中で、どうしてもこの嚥下機能が低下してくる方々が増えることが予測されます。これまで医療施設や介護施設ではしっかりとしたスキルを持った専門職の方がいて、そして患者あるいは入所者に、適切な形状の嚥下調整食が安全に提供されていたところですが、医療施設や介護施設にずっといるわけではなく、在宅を見据えてやっていくというのが重要になる中で、そういった医療施設、介護施設以外のいわゆる飲食店等でも安心してこの嚥下調整食が提供されるという環境は、食環境づくりとしては非常に重要になってくると思っております。
そうした観点から、厚生労働省では、令和3年から飲食店等の調理師さんを主な対象者とした専門の研修を行っているところです。これも引き続き行うことによって、医療介護施設はもとより在宅療養者の方々にも安心して嚥下調整食を召し上がっていただけるような環境整備に努めてまいりたいと思っております。
そして最後は調査・研究の推進であります。こちらは主に厚生労働科学研究等での知見の収集などとなっております。具体的な記載がなくて大変恐縮ですが、主なものをいくつか紹介させていただくと、1つは、特定給食施設関係の研究がございます。4ページの中段の途中にも給食が出てまいりましたが、やはりこの特定給食施設、特に、働き盛り世代の事業所給食での取組というのが非常に重要にり、健康日本21(第三次)でも、特定給食施設、特に事業所を中心としたところでも適切な栄養管理の推進というのが目標として掲げられています。これと歩調を合わせる形で、厚生労働科学研究を展開しています。具体的には、事業所、特定給食施設における関係者間の連携による栄養管理の推進に向けた研究を行っております。例えば事業所、特定給食施設の施設長、保険者、受託事業者、こちらは給食委託業者等ですが、こうした方々が連携して、給食を含めた食環境の改善等を行うことで、この給食利用者の痩せ・肥満の割合の減少に取り組んでいるような事例の収集や文献レビューを行っていただくということや、これらの結果から好事例を抽出して、関係者のヒアリングを実施して、事業所、特定給食施設における効果的な栄養管理の推進に資する資料を作成するというのが、この厚生労働科学研究の狙いです。当然ながら、研究から出来上がった資料については、各自治体が地域の特定給食施設の関係者といろいろな調整をし、より良い状態に持っていくための手引きとしても活用していただけるよう、この厚生労働科学研究を行っている次第です。
またその他の厚生労働科学研究としては、経済格差に伴う栄養格差に関するものがございます。具体的には社会経済的要因による栄養課題の解決に向けた食環境整備のためのツール開発研究でございまして、これは社会経済的要因による栄養課題の解決に向けて、生活状況を踏まえた栄養・食生活の実態分析を行い、好事例を収集していただくということや、あるいはこの分析結果を踏まえて、自治体、市民社会、食品関連事業者、そしてメディア事業者がそれぞれ利用可能な支援ガイド等を作成するということも目的としておりますので、これもやはり自治体はもとより地域の様々な方々に御利用いただけるようなツールになるのではないかと考えております。この地域の取組をしていくに当たっては、鍵となる関係者として、やはり自治体の職員の方、特に健康増進部局あるいは保健所などを軸とする管理栄養士の方々などが非常に重要な役割を担ってくるのではないかと思っておりまして、こうした方々の人材育成も非常に重要になってくると思っております。
こうした人材育成のために私どもとしては、例えば令和2年から4年にかけてと、令和6年、7年にそれぞれ自治体の管理栄養士向けの人材育成に繋がる厚生労働科学研究を今まで展開しているところです。
また自治体の管理栄養士という意味においては少し別枠になるのですが、厚生労働省からの委託事業として、管理栄養士専門分野別育成事業というものがあります。委託先は日本栄養士会ですが、こちらの事業で令和5年度から、公衆衛生領域の管理栄養士のスキルアップを図るためのプログラムの作成の検討というのを進めていただいています。
こうした自治体の管理栄養士の方々の人材育成も併せてやっていくことで、この中段にあります地域における取組を効果的に進めてまいりたいと思っております。以上です。
 
<質疑応答>
【辻委員長】 どうもありがとうございました。それでは、栄養・食生活領域の取組について議論していきたいと思います。参考人の村山先生、土橋先生にも御参加いただきます。特に資料2でまとめられている、栄養・食生活領域の目標を達成するための取組につきまして、委員の先生方から御意見がありましたら頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。諸岡委員お願いします。
【諸岡委員】 ありがとうございます。日本栄養士会の方から参っております諸岡です。私の方からは2点意見をさせていただきたいと思っております。現在のこの地域における取組のポイントというあたりで、期待されるポイントなどを記載いただいているかと思うのですが、このうち、個別領域として適正体重を維持しているものというあたりが非常にポイントになっているかと思いますが、それについて2点意見させていただきます。1点目としては、やはり指標にもなっている肥満傾向児という点を考えた際に、現在、若い世代へのアプローチとして、教育部門、職域との連携という部分はございますが、できればそこに、例えば教育委員会と連携し、肥満傾向児の保健指導というような文言をつけ加えていただく、あるいは教育部門と職域の間に子育て部門というような文言をつけていただけると、より良いのではないかと思いました。2点目としては同じく、適正体重を維持するという点で、女性のやせというのは非常に重要な視点だと思うのですが、女性へのアプローチといったものを、例えば少し別枠に太字で作っていただきまして、特に女性のやせに骨量の減少や低出生体重児といったリスクがあるといった健康に関する情報発信を、やはりリーフレット、チラシあるいはSNSを活用しながらしっかりと発信していくことが必要というあたりで、子供と女性についての追加の意見をさせていただきたいと思います。以上となります。
【辻委員長】 ありがとうございました。続きまして、岡村委員お願いします。
【岡村委員】 私が一番ここで大事だと思ったのは、国と都道府県のアライアンスのところになります。ここに書いてある個々のことを実際に落とし込んで実行していくことは非常に大事ですが、現在の17という参画自治体数は現在手が挙がっているところなのか、もっと広げていくのかというのが1点です。それから、一度に来るとおそらく回らなくなるので、どのような展開の仕方を考えておられるかというのを教えていただきたいと思いました。ある程度成功例を見た上で、次に発展させていくのかということで、最後は47都道府県全部に広げるということで理解はしております。
【辻委員長】 松本委員お願いします。
【松本委員】 少し細かい点になるのかもしれませんが、今回案をお示しいただきまして、特に若い世代へのアプローチをしっかり位置づけていただいているのは大変有り難いと思います。やはり食生活は幼少期からの習慣づけが非常に重要ですので、食塩の摂取量や果物の摂取量といったものを考えますと、外食でもそのような食事メニューが揃えられるといった工夫が必要だと考えております。企業の方への取組も書いてございますが、インセンティブを与えるなど、推進される仕組みというものがプラスされるとよいのではないかなと思っております。
2点目は、関心の薄い層へのアプローチですが、誰もが自然に健康になれる食環境づくりの推進に向けまして、身体活動、運動領域のアクティブガイド、こちらの方もお示しいただいていますが、このような目標値などをわかりやすく示した媒体も御作成いただけるとよいのではないかなと思います。また、単身者もこれから非常に増えてくるということで、グラム数等を明示した目標値などが立てられておりますので、そういったものがきちんと測れるような容器など、日常生活にも安心して簡単に取り入れられるものも併せて社会資源として作り出していく必要があるのではないかと思いました。最後3点目ですが、食生活も含めて、各世代によって特徴的な課題を有していると思います。今回、高齢者についてはフレイルといったところが書いてございますが、やはり歯科口腔保健と連動した取組というのは重要だと考えております。このような取組につきましても、何か記載があるとよろしいのではないかと思いました。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございます。それでは津下委員お願いします。
【津下委員】 詳細にいろいろな御検討をされているということでプランが見えたのですが、資料の3の5ページ、6ページにありますように、特に野菜や果物は下降曲線を描いていて目指す方と逆向きに動いているところで高い目標を目指すということになり、本腰を入れないとなかなか達成できないのではないかと思います。また、減塩に力を入れられているのですが、国民健康栄養調査では食物摂取状況調査として塩分は詳細に聞き取りをやっていると思うのですが、それが減塩食品なのかどうなのかを反映した結果でしょうか。例えば、尿中Na/K比などを活用して、より定量性を高くしてもいいかもしれないと考えております。減塩の目標がしっかりと達成できているか評価をしたいということであれば、少し客観性を持たせていくというのも一つ必要なのかなと思いました。それから2点目ですが、食環境戦略イニシアチブは本当に大事なことだと思います。提供サイドが健康な食事や食品を用意する。しかしそれを食べる人が選択する必要があります。健康経営が非常に広がってきているという現状がありますが、この健康経営とコラボした取組をこのイニシアチブの中にうまく取り込んでいけるといいのかなと思いました。そのあたり、健康経営とのコラボについては、どのようになっているかということをお尋ねしたいなというのが2点目です。それから3点目ですが、厚生労働省は正しい情報がたくさん載ったわかりやすい情報ページを作られるのですが、世の中には正しくない情報が非常に蔓延しやすく、そちらの方に飛びつきやすいということもあるかなと思います。そのような整理とか、それからマスコミも含めて正しい情報をどう面白く伝えるかということもあります。正しい情報というとすぐに何かありきたりと思われないような伝え方を考える必要があります。無関心な人がこのスマート・ライフ・プロジェクトを自ら見に行くということはないので、栄養士や様々な専門職、お店の方やいろいろな方などの消費者との間にある人たちへの啓発について、より注力していただく必要があるのかなと感じた次第です。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございました。引き続き皆さんから御意見を頂いてから、事務局から回答をお願いしたいと思います。長津委員お願いします。
【長津委員】 日本薬剤師会の長津です。質問というか、意見というか感想ですけれども、まず資料2の4ページ目の外食、中食、給食というのが何となくイメージとして、そもそもバランスが取れない代名詞のようなイメージも多少ありますので、書き方の問題でしょうが、こういうのをうまく利用してバランスがとれる食事をどうやって提供するのかというところでしょうが、一文だけ見ますと何となく少し気持ち悪いなという印象があります。あとは資料2でも適正体重の維持というところがありますが、これは資料2の4ページの栄養・食生活領域の課題だけではおそらくなくて、5ページ目にある身体活動・運動領域とどうやって紐づけて見せるのかというところが大事ではないかと思います。栄養だけでは、それは成しえないのかなという気はしていますので、そこが縦割りにならないような工夫がもしかしたら必要なのかなという気はしています。
4ページの右列の下の方に関心が薄い層へのアプローチ/ICTの活用促進がありますが、関心が薄い層というのは、多くは若い方で健康な方なのかなという気がしますし、そういった方に対してどうやってアプローチしていくのかというのは大事です。ただ、これは何か資料を置いただけではなくて、彼らがこのような情報にリーチしてこないということが問題ですので、どうやってリーチさせるのかということも重要なのかなと思います。それには参考資料にありました19ページのところ、津下先生もおっしゃいましたけれど、その中間にいる層、まさしくそれは我々薬剤師会の薬局のようなところなのかもしれませんが、職能団体というところでうまく利用して、どうやってその職能団体でアピールしていくかというところも極めて重要な課題なのかなと思います。いいものを作ってもそれが実行されないと何にも意味がなくなってしまうので、非常に良い試みだと思うのですが、周知や運用に関してももう一歩踏み込んだ検討が必要なのではないかと思っています。
【辻委員長】 ありがとうございます。土橋参考人お願いします。
【土橋参考人】 土橋です。お招きいただきありがとうございます。私は高血圧学会で長年、減塩栄養委員会として活動させていただいております。個人的にはインディビジュアルアプローチをずっとやってきていた立場からお話しさせていただきたいと思うのですが、一番私が問題だと思っていたのは、関心が薄い層というよりは、関心がある層が減塩できていないということが一番問題だと思っています。減塩が大事だということはわかっています。減塩食品は使っています、資材もちゃんとわかっているのに、測ったらできていないという人が非常に多いということで、減塩を意識している人としていない人の差ってほとんどありません。
よって、やっているつもりなのにやっていないというところが一番下まで降りてアウトカムとして出てきていないということではないかなと思っています。従いまして、厚労省のイニチアチブでもいつも言わせていただいているのは、その作った資材、あるいは売っている商品を食べたことによって、その人が本当に減塩できているのだろうかと。管理栄養士さんが指導したことによって、その方は本当に減塩できたという確認をどうやってするのかというところが一番ネックになっているような気がします。指導をしている人自身も自分が7グラムできていますかと言われたときに、自分は7グラムできていますよと言えるかどうか、というところの指標を我々が一番求めていると思っていて、先ほど津下先生がおっしゃったように、検診のときでもクリニックでも薬局でも、今の尿を取ったら食塩の量やNa/K比が見られるなど、見える化はできますので、やはりそのような可視化した指標を現場でフィードバックできるような仕組みがないと資材を作っても、栄養士さんが言っても、減塩食品や減塩調味料を使えばいいのではないかというところで、やった形になっているのが課題ではないかなと私自身は思っています。何らかの形でやはり食塩の量を見える化することが必要ですが、例えば野菜350gや果物200gはすごくわかりやすいものの、食塩7gはどれぐらいですかというのは非常に説明しづらい。加工食品にも入っているし、使っている調味料が普通のしょうゆか減塩しょうゆかでも違ってくるということになると、やはり出口調査をしないとわからないといつも思っていて、一般の国民の方の尿を少し取って食塩が多すぎますよっていう一言が必要じゃないかと思っていますので、何らかの形で食塩摂取量を見える化する指標を作るということを現場サイドに求めてほしいというのが私の意見です。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございます。では佐原委員、お願いします。
【佐原委員】 日本医師会の佐原です。私たちは日常診療の中でも生活習慣病の方に栄養や食生活の改善を指導することがよくあります。すばらしいツールを作成されていらっしゃいますので、ぜひこういったものを臨床の場でも活用させていただければと思います。その際に、一般の方や患者さんがアクセスしやすいようにQRコード付きのリーフレットのようなものがあれば、それをお渡しして、これを後で見ておいてくださいねというようなことができると思います。また、私たちは学校医や産業医として、様々な場面で健康に関わる機会がありますので、そういった機会にも使いやすいなと思います。ぜひ御検討いただければと思います。よろしくお願いします。
【辻委員長】 ありがとうございます。では参考人の村山先生お願いします。
【村山参考人】 新潟県立大学の村山です。私は健康日本21の第二次の策定と評価、そして第三次の策定に関わった立場から少しコメントさせていただければと思います。
1つ目は、第二次の評価のときにも非常に問題になった点で、これ自体、あるいは栄養・食生活だけの問題ではないと思うのですが、その実施した取組がどのように効果に繋がっていくのか、その道筋をきちんと考えて、計画というか、対策を考えることが大事だと思っています。そのため、施策の評価ができるようにアウトプット、アウトカムの指標を繋げて考えて施策の評価ができるように、ここに書くというものではないかと思うのですが、別の資料でも構いませんので、それが見えるようにしていただけると有り難いと思っています。
それから2点目として食環境整備についてですが、特にイニシアチブで食環境整備ということを計画していただいています。今詳細に御説明いただいていて、自治体を含めて広げていこうということで、カバー率を高めるという取組をしていただくことになっています。これは非常に重要なことで、食環境整備は一部だけあっても効果が薄いので、カバー率を高めていっていただくということが期待されています。
それから3点目ですが、若い世代へのアプローチは私もとても重要だと考えています。今回、自治体の方で地域における取組では教育部門という文言も入れていただき、すごく重要なことでいいことだなと思っていますが、できれば国の方でも、教育部門あるいは子育て部門との連携があると、自治体、地域における取組を後押しできるのではないかと考えています。
それから4点目は、環境整備の推進というところに、国の方は配食の事業あるいは調理師向けの研修があるのですが、これは地域の方にはありません。連携施設と連動してやっていくことが効果を生み出すと思いますので、そこも少し御考慮いただければと思います。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございます。では、古井委員お願いします。
【古井委員】 ありがとうございます。私からは1点ですが、イニシアチブやアライアンスはとてもすばらしい仕組みだと思いました。そのときにやはりどうしても自治体の方が参加することや、あるいは知見を抽出するということには、事例の抽出を含めて負担がかかるので、負担をなるべく減らすということはもちろん大事ですが、やはりそこに参加をするインセンティブがとても大事だなと思っています。もちろんこれはお金ではありませんので、そこに参加をすることで自分たちの事業や施策にとても参考になるなとか、またその同じような健康課題とか人口規模の市町村の取組を介して、これは我々も頑張ろうといったモチベーションが上がるようなことが大事だと思っています。そういった中で、各都道府県を見ると、どうしても地方の都道府県ですと県庁所在地は人口規模が突出してしまっていて、なかなか県の中で他の市町村の事例が参考にならないということもよくあるかと思います。したがって、アライアンスもこれだけ多くの都道府県で普及をしてくると、多分、県をまたがった取組の共有というのもとてもためになるのではないかなと思いました。以上です。
【辻委員長】 ありがとうございます。では、山縣委員お願いします。
【山縣委員】 山縣です。ありがとうございます。1点です。今回、栄養・食生活領域の中に、小児の肥満のことが入ってきて、とても重要だと思っており、先ほども小児期の親との連携ということの重要性をお話しいただいたと思いますが私もそのとおりだと思います。その点で、早期のアディポシティ・リバウンドの回避に関して、乳幼児期の栄養領域で親に対して具体的にアクションできればいいかなと思います。また、子供の場合に食事による体重コントロールも大切ではあるとは思うのですが、それ以上に活動量を増やすことが大切で、両面から小児期の肥満対策はやっていくべきだと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【辻委員長】 ありがとうございました。瀧本委員お願いします。
【瀧本委員】 ありがとうございます。国民健康・栄養調査でどうやって食塩を把握しているかと言いますと、私どもで調査票が自治体から来たあと、ちゃんとチェックをして減塩調味料であれば、そのように把握するように努めてはおります。ただ、やはりそこが把握できないと十分じゃないというのは事実としてあると思います。また、食塩の難しいところが、調味料が供給源として6割、7割ぐらいを占めてはいるのですが、一般の人に「あなたは何から取っていますか」というのを把握してもらうのはすごく難しくて、今私どもで、食品企業も一緒になって食環境整備のプロジェクトを進めているのですが、全体として、より健康的な方にシフトできれば意識せずに減塩もできるしより健康になれる、そういう食環境というのを目指しております。
【辻委員長】 諸岡委員、手短にお願いします。
【諸岡委員】 委員の先生方の方から食環境戦略のイニシアチブの関係で御発言を頂いているところがたくさんあって、私の所属している兵庫県の方になるのですが、実はこの食環境戦略の方のアライアンスの方も組ませていただいておりまして、本年8月に組織体の方を立ち上げて、今産学官と連携をしながら取組を進めています。具体的に5つの事業者が参画をしていただいて、うち2つが行動目標を立てるに当たり、そのあたりの悩んだところというのはやはり他府県の方と一緒に国が開催してくださる意見交換会の中で様々なノウハウを知ることができて、企業担当の繋がりというところでツールも含めて大変参考になっています。
今実際に47都道府県中、17がアライアンスで手を挙げているというところで、これからますます広がってくるのではということを期待しています。自分自身もアライアンスに携わる中で連携や施策評価、そしてこれに取り組むこと自体が、自治体の管理栄養士の人材育成に繋がっているということをすごく期待しているので、この機運が全国で広がるというところにしっかりと自分自身も取り組みたいと思っています。
【辻委員長】 ありがとうございました。以上、様々な御意見・御質問いただきました。それについて1つ1つは時間的に無理ですが、塩澤室長の方から概括的なお話はありますか。
【塩澤室長】 ありがとうございます。包括的なコメントも難しいので、いくつかお答えできるものをお答えするという形でもよろしいでしょうか。
【辻委員長】 はい、それでお願いします。
【塩澤室長】 岡村委員からお尋ねがあったアライアンス関係をお答えしたいと思います。今17府県が参画しているところでありますが、この17府県というのがどのように参加したかというと、手上げ式でいつも開かれている状況です。このアライアンスに入っていただくには、まだ都道府県の組織体はできていなくてもいいのですが、この3年以内ぐらいを目途に、実際にこの組織体を立ち上げるという意気込みといいますか、ちゃんと予定があるという意向があることをお願いしているところであります。そういったところが今17あって、そのうち兵庫県と福島県の2県が実際に組織体を検討して立ち上げているという状況です。そのため、このアライアンスというのは、そのような組織体を立ち上げるまでの方々と、立ち上げた方々が混在しているという場です。そしてこのアライアンスのゴールイメージは、最終的には47都道府県全部がこのアライアンスに入り、そして全47都道府県で各都道府県の組織体ができている、そしてコミュニケーションが図れているということですので、それを目指してこれからも進めてまいりたいと考えております。あと、松本委員からの御指摘だったかもしれませんが、高齢者関係で歯科口腔保健といったことも含めた方がいいのではないかという御指摘がありました。これについてもアライアンスで様々に適用可能だと思っておりまして、資料3の19ページのアライアンスの図にお示しさせていただきましたが、各県の組織体、これは事業者や学術団体、管内の市町村等いろいろな方々が参画いただけるわけですが、ここに例えば、いろいろな医療関係職種の団体といったところも連携して、各地に応じたきめ細かな取組をしていくというのも非常に重要な観点です。そういった視点もあり得るというのも、このアライアンスの場で参画している各都道府県の方々に共有をさせていただき、そしてそれに関連する成功事例が上がった暁には、共有とか横展開といったことをしてまいりたいと思っておりますので、そのような形で我々としても考えたいと思います。あとは、佐原委員から御指摘のあったQRコードの活用というのも一部やっておりますが、これをより一層広げてまいりたいと考えます。あと、村山委員からお話のあった若い世代の件、教育部門や子育て部門との連携が重要という点かと思いますが、これに関連して情報提供させていただくと、この食環境戦略イニシアチブにおきましては、実は既に公表はしているのですが、こども家庭庁とも連携をして、具体的には小学校5年生、6年生がメインですが、そういった小学校高学年の子供を中心に減塩の重要性を考えていただくための普及啓発資料を作成し、公表しているところです。こども家庭庁との連携等もパンフレットには掲載されているのですが、いずれにしても子供へのアプローチは非常に重要になってきますので、イニシアチブを始めいろいろな機会を通じて、子供や若い世代へのアプローチというのも我々として引き続き挑戦していきたいと思っております。古井委員から御指摘のあったアライアンスへの自治体の参画インセンティブというのが重要になってくるのではないかということについては、先ほど諸岡委員からも補足の説明を頂いたところですが、我々としても自治体間、それから国とのそういった対話はもとより、事業者やこのイニシアチブに入っていただいている有識者の方々との対話といった様々な方々との対話というのもやはり参画のインセンティブとしてあると思いますので、このインセンティブの重要性というのを念頭に置きつつ、さらにこのあたりのインセンティブの付与というのも強化してまいりたいと思っております。本当に時間が限られている中、いくつかの御質問への回答ということで大変恐縮ですが、このような形で考えておりますので、引き続き御助言等をいただけると幸いです。ありがとうございます。
【辻委員長】 ありがとうございました。時間でもありますので、議題2につきましては以上にしたいと思います。本日様々な御意見を頂きましたので、事務局におかれましては引き続き御検討をお願いしたいということでよろしくお願いします。
 
(3)その他

【辻委員長】 本日の議論はここまでとさせていただきたいと思いますが、最後に事務局から何か追加で御連絡等あればお願いいたします。
【門馬課長補佐】 今後のスケジュールについて御案内申し上げます。次回の委員会につきましては、追って御連絡させていただきますので、お忙しい中恐れ入りますが、御参加いただけますようよろしくお願いいたします。

閉会

【辻委員長】 それでは、本日の委員会を終了したいと思います。委員の皆様、それから参考人の先生方におかれましては、大変貴重な御意見を賜りましたこと、大変感謝申し上げます。では、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。