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第186回社会保障審議会医療保険部会 議事録
日時
令和6年11月21日(木)10:00~12:00
場所
日比谷国際ビル コンファレンススクエア 8F会場
議題
- 1.被用者保険の適用拡大 及び いわゆる「年収の壁」への対応について
- 2.医療保険制度改革について
- 3.マイナ保険証の利用促進等について
- 4.出産費用の状況等について(報告)
議事
- 議事内容
- ○姫野課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第186回「医療保険部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多用の折、御参加いただきありがとうございます。
まず、本日の委員の出欠状況について申し上げます。
本日は、内堀委員、兼子委員、河野委員、袖井委員、原委員、前葉委員、横本委員より御欠席の御連絡をいただいております。
また、菊池部会長代理より途中から御出席との御連絡をいただいてございます。
本日の会議は傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信も行ってございます。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。カメラの方は御退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○姫野課長 それでは、以降の議事運営は田辺部会長にお願いいたします。
○田辺部会長 それでは、まず、欠席される委員の代わりに御出席なさる方についてお諮りいたします。
内堀委員の代理といたしまして根本和代参考人、原委員の代理として池田俊明参考人、前葉委員の代理として木﨑彰参考人、横本委員の代理として井上隆参考人、以上4名の出席につき御承認を賜れればと思いますけれども、いかがでございましょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○田辺部会長 よろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは、早速議事のほうに入ってまいりたいと思います。
本日は、被用者保険の適用拡大及びいわゆる「年収の壁」への対応について、それから、医療保険制度改革について、3番目といたしまして、マイナ保険証の利用促進等について、以上の3つを議題といたします。
まず「被用者保険の適用拡大及びいわゆる『年収の壁』への対応について」を議題といたします。
それでは、事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。
○佐藤課長 保険課長でございます。タブレットの資料1のファイルをお開きください。
「被用者保険の適用拡大及びいわゆる『年収の壁』への対応について」ということでございまして、本日御議論いただきたい事項として4点ございます。1~4という形でございます。大半の資料は先日の社会保障審議会の年金部会でも御議論いただきました内容でございますので、説明として重複する部分がございますけれども、御理解いただければと思っております。
最初に、被用者保険の適用拡大についてということでございます。資料は大部にわたりますので、できるだけ簡潔に説明させていただきたいと思います。
2ページ目、この間、医療保険部会におきましても被用者保険の適用拡大については様々御議論いただきました。その際の概要を事務局の責任において端的にまとめているものでございますので説明は割愛をいたします。
3ページ目からは、被用者保険の適用拡大、短時間労働者につきましては幾つか要件がございます。労働時間要件でございますとか、賃金要件でございますとか、縷々ございますけれども、これは医療保険部会の場でも御紹介・御議論申し上げてきたところでございます。それぞれの要件の概要でございますとか、あるいは医療保険部会の前に懇談会で御議論いただきましたけれども、その辺りの御議論のエッセンスをまとめているものでございますので、説明としては割愛させていただきます。
若干飛びまして8ページ、様々な懇談会における御議論、また、年金部会、また、この医療保険部会における御議論を踏まえ、以下のような方向性としてはどうかということで要点をまとめてございます。短時間労働者及び個人事業者の被用者保険の適用範囲の見直しの考え方ということでございまして、8ページ目の上の4つの箱が短時間労働者の関係でございます。
まず1点目、労働時間要件でございます。今20時間以上という要件が課されておりますけれども、様々な御意見がございましたので、労働時間要件の一番下の5行目、今回は本要件を見直さないこととしてはどうかということでございます。
2点目、賃金要件の関係でございます。今、月8.8万円になっておりますけれども、これが就業調整の基準として意識をされていること、他方で最低賃金、これは年々上がっていることもございますので、労働時間要件を満たせば本要件、賃金要件を満たす地域でありましたり、あるいは事業所が増加をしていることも事実としてございますので、そういう中でこの要件についてどう考えるのか。
それから、学生除外要件、学生は適用除外という形になっておりますけれども、これについては実務的な課題、あるいは意義等々の観点から今回は本要件見直さないこととしてはどうか。
4点目、企業規模の要件でございます。今、50人超の企業が対象となっておりますけれども、これについてはできる限り労働者の勤め先、あるいは働き方、あるいは企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から撤廃することとしてはどうか。他方で、様々な経営面での影響、あるいは事務負担等々がございますので、そういうことに関しては必要な配慮措置、あるいは支援策を講じることとしてはどうかとしております。
また、8ページ目の一番下、個人事業所の関係でございます。今、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所については、いわゆる法定17業種については対象となっておりますけれども、それ以外の業種についてはいわゆる非適用という形になってございます。この非適用業種については、できる限り労働者の勤め先等に中立的な制度を構築する観点から解消することとしてはどうか。また、これも企業規模要件と同じでございますけれども、配慮措置、あるいは支援策を講じることとしてはどうかとしております。他方で、常時5人未満の従業員を使用する個人事業所については様々な御意見、特に慎重な御意見がございましたものですから、今回は適用しないこととしてはどうかという形で整理をしております。この辺りについて御議論を賜ればと考えております。
まず、1点目の論点は以上でございます。
それから、大きな2番目の論点、複数事業所勤務者に対する被用者保険の適用等ということでございまして、これは実務的な課題でございますけれども、少し御議論を賜ればと思っております。
現行、ダブルワーク、複数の事業所で勤務されておられる方については、それぞれの会社から給料をいただいて、そこから保険料を徴収するという形になっております。年金と医療、基本的な流れは同じでございますので、ここは医療保険部会でございますから医療を例に説明させていただきます。
現行、ダブルワークの方が医療保険の徴収等々についてどういう事務になっているのかというのを整理したのが11ページ目でございます。上のほうに手続の流れ、下のほうに絵が書いてございます。例えば労働者の方がA社、B社に勤務をされておられた場合には、A社、B社、それぞれから給料をいただくわけですので、A社、B社に保険料を納付することになるわけであります。例えば甲健保組合、乙協会けんぽと書かれておりますけれども、A社、B社で加入する健保組合、あるいは協会けんぽが違うケースも多々ございます。この場合にはどちらの健保組合、あるいは協会けんぽに加入をするのかという点について、労働者御自身が選択をする仕組みになってございます。
ですので、労働者御自身が例えば11ページの絵で申し上げますと、甲健保組合に加入することを選択した場合、例えば甲健保組合は9%の保険料率、乙協会けんぽが10%の保険料率であった場合には、この労働者が甲健保組合を選択した場合には9%の保険料率を納付することになるわけでありますけれども、その場合には資格取得届を例えばA社のほうから健保組合のほうにお出しいただいて、甲健保組合のほうで保険料率を案分してそれで計算をして、A社、B社から保険料を徴収するという形になるわけでございます。
例えばこの場合、B社からしたらふだんおつき合いがない甲健保組合に保険料を納付しなければいけないとか、様々なふだんの実務的なオペレーションとは違ってくる部分がございます。そういう面において事業主、特に人事・総務担当の方の御負担が発生しているというのが現状としてはございます。こういう事務負担、あるいは課題についてどのように考えていくのか、仮にこれを少し整理していくとしたら、どういうものが考えられるのかというものを整理したのが12ページ目でございます。
12ページ目、現行事務における課題と見直しの考え方ということで整理をしてございますけれども、上のほうに事業者、どういう課題というか様々な負担が生じているのかということを整理して、大きく3点ございます。
まず、事業者については、ダブルワーク、トリプルワークの方については個別の管理、通常の人給システムでは管理ができませんものですから、個別の管理が必要になってくるということ。
2点目、他の事業所における変更等の影響ということで、自社の報酬月額が変わらなかったとしても、他社の報酬月額が変わった場合には案分率が変更してまいりますので、自社で払う保険料にも影響が生じるという点が課題としてございます。
3点目、先ほど申し上げたように、通常やり取りのない年金事務所であったり医療保険者とのやり取りが発生するという点で課題が発生している。
また、年金機構であったり医療保険者についても個別管理が必要になってまいりますので、事務負担が発生をするというのが現状としてございます。
その上で、仮にこれを見直していくことを考えていくのだとしたら、それぞれふだんやり取りがない年金事務所であったり健保組合とのやり取りをなくすためには、それぞれの事業所において保険料算定を可能とした上で個別管理をなくしていく。また、通常おつき合いがある年金事務所であったり、医療保険者とのやり取りのみで完結をさせていくということが必要になってまいります。
現在の制度を存置していくという前提で考えた場合には、例えばこういう見直し案が考えられるのではないだろうかと整理をしたものが13ページ目でございます。見直し案のイメージということで、左側が現行でございますけれども、例えばダブルワーク、トリプルワークの方がいらっしゃるとして、現行のB社を見ていただければと思います。B社のほうからはふだんおつき合いがあるのはB健保組合なわけですけれども、A協会けんぽ、C健保組合とか、いろいろな健保組合さん、あるいは協会けんぽさんとやり取りをしなければいけないというのが現行の実務的な負担としてある。
これを仮に見直していくのだとすると、13ページの右側の見直し後というところ、例えばB社であればB健保組合とのやり取りを一元化していくことが考えられます。他方で、それぞれの協会けんぽさんとかC健保組合との間で情報の連携であったり保険料の調整、こういったものをやらなければいけないものですから、それを協会けんぽ、あるいは健保組合間で調整をしていくという、そういう意味では健保組合さん、あるいは協会けんぽさんのほうでは新たな事務負担が発生することになりますが、仮に見直していくとしたら、そういうやり方があるのではないかと考えております。
例えばそれ以外にも標準報酬の算定でありますとか計算でありますとか、様々な課題がございますけれども、その辺りは14ページ以降で少し整理をしておりますが、細かい部分がございますので割愛させていただきます。
最終的に、こういう見直し案を考えていく上ではどういう課題があるだろうかということで整理をしたのが18ページ目でございます。年金と医療、それぞれ課題がございますけれども、一番大きな課題はシステム改修という点が年金・医療で統一的に課題としてあるだろうと思っております。
また、医療に関しては年金と違いまして保険者が約1,400いらっしゃいますし、また、保険者ごとに保険料率が異なるという事情もありますので、1,400の医療保険者がそれぞれ保険料率はどうなっているのか全て把握をしなければいけないという課題であったりとか、あるいは財政調整をどのようにやっていくのかという課題、このような課題も様々ございます。現行でも様々な事務負担がある一方で見直しを行うとしても、様々な課題が発生する中において、このいわゆるダブルワーク等の方々の保険料率の算定、あるいは事務負担の課題についてどのように考えていくのか、御議論いただければと考えてございます。これが2点目でございます。
3点目、年収の壁への対応ということでございます。いわゆる年収の壁の課題の対応策の考え方についてということで、20ページにエッセンスをまとめております。いわゆる年収の壁ということで、一番上に箱が書いてありまして、1つ目の○、年収の壁とは何ぞやということで、第3号被保険者が働いて収入が増加すると社会保険料が発生することによって手取りが減少する。これによって就業調整が行われる。そういうことをできる限りなくしていくために適用拡大をこれまで進めているわけでございますけれども、そういう年収の壁への対応策として、今回制度改正をしていく上で、こういう特例が考えられないだろうかということを整理したのが23ページ目でございます。
23ページ目は年金部会で御議論いただいたものでございますけれども、医療は若干固有の論点もありますので、その辺りを少し追加してございます。就業調整に対応した保険料負担割合を変更できる特例の検討の視点ということでございます。
まず、一番上の四角で現行制度を書いてございます。被用者保険の保険料は労使折半という原則論がございますけれども、医療に関しては健康保険組合に関してのみ事業主と被保険者が合意の上、健康保険料の負担割合を被保険者の利益になるように変更することが認められております。ただ、この場合であっても被保険者本人の負担をゼロとすることは認められていないという状況でございます。ただ、年金でありますとか、協会けんぽにはこういう仕組みはないということでございます。
その中において、検討の視点ということでございます。1つ目の○、被用者保険の適用に伴う保険料負担の発生、あるいは手取り収入の減少を回避するために就業調整を行う層に対して、健保組合の特例を参考に、被用者保険において従業員と事業主の合意に基づいて事業主が被用者保険の保険料負担を軽減し、事業主負担の割合を増加させる。こういう特例を認めることについてどう考えるのか、御議論いただければと思っております。
それから、検討の視点の2つ目の○、冒頭に申し上げましたように、現行の健康保険法上は、こういう特例はあくまでも健康保険組合にのみ認められているところでございますけれども、仮にこれを協会けんぽについても同様の特例を導入するとした場合にどう考えるのか。また、現行の特例措置については標準報酬月額にかかわらず全ての保険者に適用されるものであるところ、特定の標準報酬月額の方に限って負担割合を変更するという特例についてどう考えるのか、御議論を賜ればと思っております。
一番下に特例を導入する場合の論点ということで4つほど整理をしております。あくまでも被用者保険は労使折半の保険料負担が原則でございますけれども、今回検討する恒久的ではない特例的なこれをどのように位置づけて考えていくのだろうか。あるいは一部の標準報酬月額の方に限るということをどう考えるのか等々、その辺りについても御議論を賜れればと考えております。
最後4点目の論点で標準賞与額の上限でございます。25ページ目、これは9月30日の医療保険部会において資料をお示しして御議論いただいたものの続きでございます。標準賞与額は今573万円を上限にしておりますけれども、標準報酬月額は、医療の場合には下限が5.8万円でございますが、5.8万円から7.8万円と相対的に低い被保険者の方の中には、他方で高額な賞与を支給しているケースもありますということを御報告申し上げた際に、実態はどうなっているのか、少しデータを整理していただけないだろうかという形で、私どものほうで宿題を負った形になっておりました。協会けんぽの被保険者しかこういうデータがないものですから、そのデータを対象に整理いたしました結果の御報告でございます。
標準賞与額の上限、年間573万円の方、直近では5万1000人ぐらいいらっしゃり、その辺りの数字は26ページに整理をしてございますけれども、そういう方について標準賞与が年間のボーナスが573万円で張りついている方について、その方々の標準報酬月額はどうなっているだろうかということを整理しております。
具体的な数字は26ページ目の左側の標準賞与月額の分布(R5年度末時点)というものを御覧いただければと思います。ボーナスが相対的に573万、年間もらっている方ですので、標準報酬月額の高い方が1万2000人ぐらいいらっしゃる一方で、相対的に低い方、左側のところに張りついている方も一定数いらっしゃるという実情でございます。
25ページに戻っていただきまして、3つ目の●でございますけれども、標準賞与額の上限に該当する方のうち、標準報酬月額が30万円以下の方の人数というものは、令和2年から令和5年の間で1.6倍ぐらい増えておられるというのがファクトとしてございます。そもそも現在の標準賞与額の上限は、標準報酬月額の最高等級とか、年間平均賞与月数に基づいて設定されてございますけれども、こういう実態等々を踏まえて標準賞与額の上限をどう考えるのか、また、この場でも御議論を賜れればと思っております。
駆け足でございましたけれども、事務局からの説明は以上でございます。
○田辺部会長 御説明ありがとうございました。
それでは、御意見等がございましたら挙手にてお願いいたします。オンラインで御参加の委員におかれましては挙手ボタンでお知らせいただければ幸いです。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 テーマに沿って4点、コメントを申し上げたいと思います。
まず1点目、「被用者保険の適用拡大」でございます。資料の8ページに今後の方向性が示されておりますが、今後の本格的な人口減少に伴って就業者の減少が懸念される中で、社会保障制度の維持の観点からも担い手を増やしていくことが必要でありますので、方向性に異論はございません。ただし、さらなる適用拡大により、特に短時間労働者を多く抱える業種の健保組合の財政的な負担が増えることも考えられますので、健保組合への財政影響についても十分留意し、必要な財政支援をお願いしたいと思います。
2点目、「複数事業所勤務者に対する被用者保険の適用等」でございます。18ページの課題に示されておりますが、現行、事業主で行っている作業を保険者にシフトするだけの話でございまして、全体としての効率性向上に寄与するわけでもございません。一方で、保険者間で保険料率を把握する仕組みや、徴収した保険料を他の保険者に送る仕組み等々、今までにない新たな作業が増えることになりますので、正直に申し上げて現実感は全くないという印象でございます。したがって、この提案については反対でございます。
3点目、「いわゆる「年収の壁」への対応」でございますが、この壁への対応自体はもちろん必要だと思います。一方で、資料23ページの「検討の視点」にあるように、健保組合では確かに特例が認められていますが、これはあくまでも全ての被保険者に同一の負担割合を課すものであって、特定の標準報酬月額の方に限って負担割合を変更することは、システム改修対応や事務負担の増加が極めて重いと考えます。仮に今回のような特例を行うこととなった場合、最低限、「恒久的でない時限的な対応」とするのは不可欠であり、本質的な対応案も併せて検討しなければ、真の解決策にはならないのではないかと考えております。
4点目、「標準賞与額の上限」については、上限の引き上げ自体を否定するものではございませんが、昨今の働き方の多様化等々を踏まえれば、標準報酬月額や標準賞与額という仕組みそのものを見直す時期に来ているのではないかと思いますので、この在り方ですとか考え方についても見直しをぜひお願いできればと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、藤井委員、よろしくお願いします。
○藤井委員 本件は中小企業にとって非常に重要なテーマでございますので、少々長くなり恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
最初に、被用者保険の適用拡大についてでございますが、それぞれの要件について資料1の8ページ「見直しの方向性案」に記載の順に意見を申し上げます。
まず、労働時間要件については、お示しいただいた「見直しを行わない」とすることに賛成いたします。なお、本要件を引き下げるべきとの意見もございますが、引き下げは手取り収入減を避けたい人の就労時間短縮が増え、中小企業はただでさえ人手不足の中で、さらに人員の確保に悩まされ、労務管理業務が増大するという問題があります。
次に、賃金要件についてでございますが、いわゆる「106万円の壁」に関わるものであり、資料の40ページを見ると、最低賃金額の単価による週20時間の就業で、既に8.8万円を超えているのが12都府県ある一方で、8.8万円未満が35道県あります。引き下げは、今以上に就業調整の拡大や人手不足の誘因となることが懸念されます。また、短時間労働者の出入りが多い事業者等にとって、保険加入や保険料納付に係る事務負担の増加が、経営にどのような影響を与えるかなどについて、引き続き検討を深めていくべきと考えます。
先週の年金部会では、賃金要件の撤廃について意見があったと伺っております。この場合、8.8万円に達しない道県では新たな加入対象者が生じることになります。今後の最低賃金の動向次第ではありますが、撤廃する場合には、全国47都道府県で8.8万円を超える状況の達成を前提とするべきではないでしょうか。
次に、学生除外要件については、お示しいただいた「見直しを行わない」とすることに賛成いたします。
続きまして、企業規模要件の撤廃と、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所における非適用業種の解消についてでございます。その方向性について否定するものではございませんが、適用拡大の対象となる事業所においては、事務負担や保険料負担が新たに発生または増加し、小規模の事業者であればあるほど、その負担は甚大なものとなります。そのため、企業や労働者が制度をきちんと理解し、準備することができるよう、時間をかけて丁寧に進めることが必要と考えます。
また、企業規模要件については、法で定める「小規模事業者」の基準である20人で一旦区切るなど、事業者の実態に配慮しながら進めていただきたいと思います。
併せて、事業者支援として、会計ソフトの導入費用や専門家によるハンズオン支援、また、保険料負担力の強化に向けた取引適正化や経済全体の成長戦略を進めることが重要であります。そうした取組が実を結ぶことによって、適用拡大による負担増に対応できることを十分に御理解いただきたいと思います。
なお、被用者保険へ加入者が大きく移動することで、市町村国保に与える影響も無視できないと思います。加入者による相互扶助である保険制度を今後どのように維持していくのか、被用者保険制度との財務上の関係など、見切り発車ではなく、丁寧な検討が必要と思います。
最後に、常時5人未満の従業員を使用する個人事業所については、小規模の事業者に生じる事務負担・コスト増は経営存続を左右するほどの影響が出ると考えられることから、お示しいただいたとおり、「適用しない」とすることに賛成いたします。
次に、複数事業所勤務者に対する被用者保険の適用についてであります。合算事務に係る煩雑な仕組みの抜本的な改善は必要でありますが、資料の18ページに記載のように、各医療保険者において、相当なシステム改修が不可欠となります。その財源は保険料を充てるのではなく、公費等で賄うべきです。
なお、資料の17ページに記載されている、医療保険者の事務負担軽減を目的として保険料の調整額の還付を不要とする案については、事業主の視点から見て大きな違和感があります。
次に、「年収の壁」への対応でありますが、資料の23ページで健保組合における特例を参考に、個社単位で労使間の保険料負担率を調整できる仕組みを創設する提案が示されております。現行の健保組合の特例は、大企業での活用と考えられますが、それを従業員300名未満の中小企業が加入事業者の99.7%を占める協会けんぽの加入企業まで広げることになります。しかしながら、負担率を上げられる中小企業が多いとはとても思えません。待遇格差を助長し、人材の流出を深刻化させるだけではないかと思います。また、社内で差をつけることなど、従業員の少ない企業ではあり得ないことであります。特例が適用される範囲で働こうという就業調整の要因にもなり得ます。こうしたことから、この提案には賛成しかねます。
また、「年収の壁」の対応策への検討に当たっては、労働者への負担軽減だけではなく、中小企業における保険料負担の軽減策についても、ぜひお願いしたいと思います。
以上であります。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、井上参考人、よろしくお願いします。
○井上参考人 経団連としての意見を述べさせていただきます。
まず、適用拡大についてでございますけれども、就労形態が多様化しまして、さらにより多様な方が労働参画をすることが必要となる中で、働き方に中立な制度を構築していく観点から適用拡大には賛成でございます。今回、残された時間要件なども今後の適用拡大の状況を踏まえて、さらに見直しを進めていくべきだと考えております。
ただ一方で、この適用拡大には企業の負担も増加しますので、その適用の時期等も含めまして十分な配慮・支援が必要だと考えております。
次に、複数事業所に対する被用者保険の適用についてでございますけれども、複数の保険者間の調整を要することになりますので、この図を見ても非常に複雑だと受け止めております。保険者側の事務負担、コスト負担などに対しても、関係者と十分な議論をお願いしたいと思います。複数の働き手を持つという多様な働き方は今後ますます拡大をしていくと思われますので、単にこの調整というだけではなくて、制度全体に関わる問題だと思いますので、ここは大きい議論として検討していくべきではないかと思います。
次に、年収の壁への対応策でございますけれども、最も重要なのは被用者保険に入ることのメリットを皆さんに理解をしてもらうことだと思います。その上で、23ページに保険料負担割合の変更できる特例につきまして説明がありました。先ほど御意見もございましたけれども、労使折半の原則との関係や、そもそも適用できる中小企業はどのぐらいあるのか、あるいは企業の中で格差が出てしまうことをどう考えるのかということもございますので、特に中小企業の方々の声に真摯に耳を傾けて検討すべきだと思います。
標準賞与の上限額につきましては、一定の引き上げは必要だとは思いますが、先ほど御意見もございました通り、そもそも標準報酬の在り方全体につきまして見直しの時期に来ているのではないかと感じております。
私からは以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 被用者保険の適用拡大についてコメントさせていただきたいと思います。被用者保険の適用拡大については、その意義に関しては十分理解してございますが、本日お示しいただいた論点のうち、特に短時間労働者の賃金要件、そして、個人事業所の適用要件に関して要望がございます。
参考資料の43ページに目を移しますと、今回この被用者保険の適用拡大がこういう形で想定されるのは、ここに示されている赤点線で囲んでいる部分が対象になるということと思いますが、特にその黄色の部分です。企業規模要件の撤廃、副業した場合の影響、そして、賃金要件8.8万円、実際、今の人たちに影響が出ることが見て取れるかと思います。
そのときに、賃金要件のほうで言いますと、確かに最低賃金の上昇というところは実際に起こってきておりますし、いずれこういう人たちは少なくなっていくことも理解はしますが、先ほど示しました43ページを見ても今現在110万人いらっしゃる。そういう人たちが被用者保険に移行していくとなれば、特に小規模保険者においては、保険者としての存続に大きく影響してしまうことにもなろうかと思います。
実際、年金部会でも撤廃という御意見もあったとお聞きしますが、一方、実際に徐々になくなっていくのであれば、あえて見直さなくてもいいのではないかという御意見があったともお聞きしてございます。ですので、そういう御意見も踏まえ、なおかつ今お話ししたような小規模保険者に与える影響ということ、また、それに対しての保険者の不安、現場の不安というものを勘案しますと、ここはすぐ撤廃ということではなく、そのまま据え置きということを強く望みたいと思います。
企業要件に関しましては、ここにありますAというところで70万人、これも影響するわけですが、ここに関しましても、記載のとおり、十分な配慮や支援策を検討いただいて、その影響を最小限にしていただきたいと要望させていただきたいと思います。
私のほうからは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、伊奈川委員、よろしくお願いします。
○伊奈川委員 この適用拡大の関係ですけれども、8ページの資料のうち労働時間要件の関係です。ダブルワークに与える影響が非常に大きいわけですし、それが今日の資料にもあるような保険料徴収のところにも影響してくることからすると、少し慎重に考えたほうがいいのかなという感じがしております。
年収というのは時間掛ける賃金なわけですので、今回賃金のほうを仮に見直した場合には、時間のほうも見直すと、それが就業調整にどういう影響を与えるのか、その辺りもなかなか見通しにくいというようなことですし、雇用保険のほうの見直しの状況をまた踏まえないといけないということかなと考えております。
それに対してもう一つありますのは、年収の壁との関係での特に保険料負担の折半の関係です。稼得能力に応じて労使が折半するのが原則だと思いますけれども、果たして絶対的なものなのかというと、そうとも言いにくいのかなと思うところがあります。私の記憶違いでなければ、かつて育児休業が入ってきたときに、最初は本人のところだけ保険料を免除して、その後、事業主分も免除するようになったのではないかと思っています。もし間違っていたら事務局のほうで修正していただきたいです。
また、健康保険ができたときの経緯からしても、労災の部分も含めて一定の計算式でやると折半が合理的だといったような説明もされていたわけですけれども、現在、労災の部分は当然抜けているわけですので、絶対的ではないのだと思います。日本がかつて参考にしてきた大陸ヨーロッパの社会保険も当初は労使折半からスタートして、労使関係の中で労働者に有利にということで変わってきたと私は理解しておりまして、そういった点から言えば、一定の合理的な政策目的があれば、場合によれば労使折半というのも絶対ではないと思っております。
ただ、重要なのは公平性でありますので、特定の人たちを有利に扱うということが、果たしてそういった公平性という点にどのように影響を与えるかということ、それと、何よりも今の健康保険もそうですけれども、労使対等原則の下での合意ということがありますので、保険者をはじめとする当事者の方たちの考えが重要かなと思っております。
以上であります。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、池田参考人、よろしくお願いいたします。
○池田参考人 被用者保険の適用拡大についてでございます。本件につきましては7月3日の医療保険部会におきまして、懇談会の議論の取りまとめについて御説明があったかと思いますけれども、この部会の委員であります国保中央会の原理事長から幾つか御意見を申し上げてきたところでございます。例えば年金保障の充実という主な趣旨から適用拡大をすることについては大事なことだろうと思いますが、一方で、医療保険に与える影響があるだろうということを申し上げております。
そして、今回の対応に限らず、今後も適用拡大がどんどん進められた場合には、地域の連帯感を基礎とした国保の保険者機能の発揮が困難となり、ひいては国民皆保険体制の基盤となっている国保制度の存立そのものに大きな影響を与えるのではないかと危惧していることも申し上げております。
また、そうならないようにするため、少なくとも医療保険制度においては、年金とは別に一定の歯止めを設けることも将来は考えなければならないのではないかといった御意見を申し上げてきたところでございます。
そこで、こうした視点から本日の資料1を見てみますと、8ページに11月15日の年金部会に提出された資料といたしまして、適用範囲の見直しの方向性案が示されておりますけれども、例えば労働時間要件のところを見ますと、今回は本要件を見直さないこととしてはどうかとされております。
また、最後の個人事業所のところですが、ここにつきましても最後の文章の末尾に今回は適用しないこととしてはどうかといったような表現がございます。
この表現につきましては見方によっては、来年の法律改正ではそこまではやらないにしても、その後はどんどん進めていくということを意図しているかのようにも読める表現となっているところが気になるところでございます。こうした表現になっているのは、年金政策について議論する年金部会の資料であることも影響しているのかもしれませんが、被用者保険の適用拡大の議論におきましては、国保の安定的な財政運営や保険者機能の堅持という観点を踏まえた上で、国保関係者の理解と納得を得ながら対応していただくように改めてお願いを申し上げたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、根本参考人、よろしくお願いいたします。
○根本参考人 被用者保険の適用拡大について、国民健康保険の保険者の立場で発言をさせていただきます。
これまでの部会におきましても申し上げているところでございますが、適用拡大を進めた場合の具体的な将来推計や国民健康保険に与える影響を御提示いただくようにお願いいたします。併せて、国民皆保険の最後の砦である国民健康保険が安定した財政運営を継続できるよう、十分に配慮した上で検討を進めるようにお願いをいたします。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、木﨑参考人、よろしくお願いします。
○木﨑参考人 私どもも被用者保険の適用拡大につきまして、先ほどの委員と重なるところがたくさんありますが意見をさせてもらいます。
8ページに見直し案が示されておりますが、被用者保険の適用範囲が見直されることによります国保財政への影響についても、今後、検討の際には明確に分かりやすくお示しいただきたいと考えております。その上で、将来の国保の被保険者の構成の変化等による国保財政への影響を見据え、国保への支援策等についてもセットで検討いただきますようにお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、中村委員、よろしくお願いいたします。
○中村委員 年収の壁についてですけれども、根本的には第3号被保険者の在り方に関わる問題であって、この制度は将来的な解消を目指して今から動いていかなければいけないのではないかと思います。
それから、年収の壁についてですけれども、これは実際にどういう壁があって、どういう影響があるかということをきちんと把握するためには、課税記録とか、本当に行政データで所得とか負担とか、そういうものを正確に把握することが必要になるのですけれども、それが現状ではなかなか難しくて、最近の論文で、これは「市町村税務データを用いた既婚女性の就労調整の分析」という東京大学の近藤絢子先生と筑波大学の深井太洋先生の論文で、この点で非常にきちんと分析されているのですけれども、ただ、これは16市町村の課税記録データということで、全国代表的なデータからは非常にほど遠いデータを使われているのです。これ以上のデータは今ないということで、2023年の段階でこのデータを使われている。
そうしますと、結局いろいろな議論が十分なエビデンスがない中で行われているところが非常に懸念される点なので、今すぐできることではないかもしれませんが、もっと所得とか、いろいろな社会保険料とか税金の負担、就労状況についてもきちんと分かるような業務記録データというのを研究者が使えるようにして、きちんと現状を把握することが必要であると考えます。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、横尾委員、よろしくお願いします。
○横尾委員 8ページ目に今回の方向性の案が示されていますけれども、対象については特に異論があるわけではございませんが、次のようなことを実は感じています。働き方改革がとても大切になり、一方では社会的に人材確保は大きな課題になっています。各事業所におかれても人の確保は不可欠のことですし、それに伴ってこういったいろいろな改正を行うたびに生じる事務的な負担とかコストの負担とかが増加していることが考えられますので、ある意味で未知数の作業をしなくてはいけない、手間もかかるということで、丁寧な検討が今後とも必要だと思っています。
特に雇用の確保等につきましてはいわゆる2040年問題があって、相当な数の人不足、人材不足、人員不足になって、将来的に日本は大丈夫かという大きな課題になっています。けれども、いろいろなことを調査してみたら、女性の方、あるいは高齢者で元気な方を中心に労働力参加、労働力率の向上が可能になっていけば、かなり解消できるという一つの見方の分析もありますので、そういったことが15年後に起こることも想定しながら、こういったことの改善もすべきではないかなと思っています。
働く皆さんにとっては、被用者保険の在り方とか年金の在り方とかについては、大きな関心事項の一つでもありますので、ぜひ高齢者の方が働きやすい、あるいは女性の方も就労の機会を得やすい、もちろん環境とかもあるのですけれども、こういった問題の解消に実はつながっていきますので、ぜひそういったマクロの視点も捉えつつ、今後の検討をいただければありがたいのではないかと思いますし、絶対に必要だと思っています。
また、4点目に説明された標準賞与額の上限のことについてです。調査の結果に基づくグラフを見ても、あるいは途中の説明を聞いても、報酬を極端に低く抑えて高額な賞与を受けておられるケースが多々あるということでございました。全世代型で、ぜひこの社会保障制度を支えようという大きな理念の下に全体が動こうとしていますし、動いていますので、そういった観点も入れて今後も丁寧な検討をすべきだと思っています。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、村上委員、よろしくお願いします。
○村上委員 年金部会でも参加した委員が申し上げておりますけれども、雇用形態や勤務先の規模、企業規模や業種によって被用者保険の適用の有無が変わることには不合理であるとの観点から2点申し上げます。
まず、適用拡大についてです。8ページの年金部会の議論にあるとおり、賃金要件、企業規模要件を撤廃すべきと考えております。また、個人事業所に係る適用範囲について、「今回、5人未満は、国保への影響が大きいことから、適用しないこととしてはどうか」という提案をされております。この点については、5人未満の個人事業所へも適用していくということを前提に、国保への影響への対応については別途検討いただきたいと考えております。
次に、複数事業所勤務者に関して今回御提案されております。この点は今後さらに適用対象が拡大することになっていけば、実務的にも大きな課題となる点だと受け止めております。そのため、将来の対象拡大に備えて、過大な事務負担とならないよう、どのような対応ができるのかということについて、少し時間をかけて研究・検討いただきたいと考えております。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、よろしくお願いします。
○渡邊委員 薬剤師会の渡邊です。議論をお聞きして総じて反対するものではないのですけれども、薬局の現状を踏まえ、コメントをしておきたいと思います。
企業要件等の撤廃等に関しては50人という単位は、多くの薬局において適用されると思います。またその中で、一定範囲内で働かれている方も多数おられます。ということは、両方の部分において労使双方にそれぞれかなり大きな影響が出てしまう状況になってしまいます。ですので、十分な準備期間であったり、経過措置であったり、支援策であったりという部分がないと、両方にかなり大きな負担が生じるのではないかと思っています。
また一方で、先ほど城守先生からもあったのですけれども、医療従事者側に対する国保組合というのもあります。これに関しては、先ほど特例等の適用の中で人の流出等があると、それでなくてもかなり厳しい運用状態にあるという状況ですので、存続にかなり問題が出てくるのではないかなと思います。ここもしっかりとした支援策・対応策が必要だと思っていますので、コメントしておきたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、大杉委員、よろしくお願いします。
○大杉委員 被用者保険の適用拡大及びいわゆる年収の壁への対応についてでございます。まず、今後少子高齢化が進む、働き手を増やすことや若者世代の手取りを増やすことは非常に重要なことだと考えております。ただ、本日の資料を見ましても非常に複雑であり、様々な論点・視点から見て分かりやすく世代間での不公平感がないような設計をお願いしたいと思います。
そして、7~8ページに、事業所規模が5人以上の従業員ということが提示されておりますけれども、令和2年の医療施設調査における歯科診療所の従業員数は平均5.1人と示されており、この線引きによって歯科診療所の約半数が該当し、厚生年金9.15%や社会保険料等の事業所の負担や保険者の負担が大きく変わることで、雇用形態の変化や経営等への影響も少なからず出ると予想されます。
各地域における医療提供が維持できるよう、より小規模で体力の弱い事業所に必要な配慮や支援策、事業所が予見性を持てるような時間的配慮等も含めて、慎重に御検討をお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 まず、被用者保険の適用拡大についてでございます。8ページ目の基本的な方向性につきましては、これまで議論を重ねてきた方向でまとめていただいたものと認識しております。雇用の在り方に中立的な制度としていく観点から、企業規模要件の撤廃や5人以上従業員の個人事業所における非適用業種の解消については、その方向で検討を進めていただければと思っております。なお、賃金要件については、全国の最低賃金の引き上げ状況なども勘案しながら判断するということは必要だと考えております。
加えまして、繰り返し申し上げておりますけれども、健診や特定保健指導といった保険者機能を発揮していくためには、短時間労働者が事業主にとってほかの被用者と同じように、一定の関係性を基盤とした被用者としての実態を備えていることが前提になると考えておりますので、ぜひこうした実態面についても御配慮いただければと考えております。
さらに適用、徴収、給付などの事務処理負担にも御留意いただくとともに、各保険者への財政影響の試算をできるだけ早くお示しいただきたいと考えております。
次に、複数事業所勤務者の対応についてです。医療保険は保険者が多数存在しまして、保険者ごとに保険料率が設定されている状況でございます。また、協会けんぽも都道府県別に保険料を設定しているのが現実であります。今回示された方法では、保険者間調整の新たな事務フローの構築や複雑かつ大規模な新しいシステム構築が必要となるなど、実務面での大変大きな課題があると考えておりますので、検討に当たっては慎重な対応をお願いしたいと考えております。
続いて、年収の壁への対応についてです。保険料負担割合の変更については、特に中小企業において事業主の保険料負担や手続の事務負担が大きく増えるといったことに留意をお願いしたいと考えております。
最後に、標準報酬額の上限につきましては、被保険者の実際の負担能力に応じた保険料の賦課となるよう、標準賞与額の上限設定の見直しについては検討を進めていただきたいと考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、ほかに御意見がなければ、本議題についてはこれまでとしたいと存じます。
事務局におかれましては、本日いただいた意見を踏まえて、引き続き議論を深めていただきますようお願い申し上げる次第です。
次に「医療保険制度改革について」を議題といたします。事務局から資料の説明のほうをお願いいたします。
○佐藤課長 保険課長でございます。タブレットの資料2「医療保険制度改革について」をお開きください。
1ページ目、全世代型社会保障構築を目指す改革の工程ということでございまして、これは昨年末に閣議決定をされました改革工程でございます。まず、この間、政府におきましては能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障の構築に向けてということで、この間、この部会においても様々な御議論を賜りました。
主な改革項目と工程ということで1ページ目の下に整理をしてございます。まずは2024年、ちょうど今年度でございますが、これに実施する取組、あるいはこども未来戦略との関係もございますけれども、2028年度をターゲットとした上で、2028年度までに検討する項目・取組というものを整理した上で、まず、2024年度に実施する取組については、例えば同一労働同一賃金でありますとか、前期の財政調整の課題でありますとか、こういうことについては現在着実に取組を進めている状況でございます。
その上で、右側の2028年度までに検討する取組ということで、例えば先ほどのお話もございました適用拡大、あるいは生産性の向上、医療DXに関してはこの部会でも様々な御議論を頂戴しております。それから、創薬の関係でございますとか、あるいは介護の関係、また、医療の関係、るる課題がございますけれども、それぞれについて2028年度までにしっかりと検討していくということでございます。
その中の一つに1ページ目の赤枠で囲っている部分がございますけれども、経済情勢に応じた患者負担等の見直しということでございまして、高額療養費、自己負担限度額の見直し、また、入院時の食事の基準の見直しというところに赤枠を囲ってございます。
2ページ目、今日御議論いただきたいのは高額療養費でございます。高額療養費の趣旨は改めて申し上げるまでもございませんけれども、上の箱囲いにございます。高額療養費については家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないように、医療機関の窓口において一旦医療費の自己負担を払っていただいた後に、月ごとの自己負担限度額を超える分について事後的に償還払いをされるという仕組みでございます。
下のほうに例ということで、70歳未満で年収が約370万から770万の場合について記載をしてございます。3割負担の場合でございますので、例えば医療費が100万円の場合には、保険のほうで7割が給付されて、残り3割が自己負担になるわけでございます。本来の原則に従うと窓口負担が30万円となるわけでございます。ただ、自己負担が過重なものとならないようにということでございまして、自己負担限度額が設けられており、8万100円プラス、8万100円を超える医療費の部分については1%分だけ御本人からいただくという仕組みになってございます。
ですので、例えば医療費が200万円、300万円となった場合にも、右側に赤字で保険給付と書いてございますけれども、7割のほうは保険から給付をされるという仕組みは変わりませんし、本来でありましたら左側の窓口負担というところは、例えば医療費200万円の場合には60万円、医療費300万円の場合には90万円という形で発生することになります。自己負担をできる限り過重なものとならないようにという観点から、自己負担限度額については、例えば医療費200万円の場合には9万7000円、医療費300万円の場合は10万円ちょっととなっておりまして、いわゆる窓口負担が増えたとしても、この赤い濃い棒グラフの高額療養費という償還される部分が、医療費が増えれば増えていくという仕組みを設けているのが高額療養費の概要でございます。
3ページ目、少し細かい資料になってございますけれども、高額療養費については70歳未満、70歳以上で制度としては分かれております。70歳未満、70歳以上、いずれも所得に応じて自己負担の月単位の上限額、一番右側が変わってくるわけでございますけれども、70歳未満も70歳以上も一定の所得がある方、この表で申し上げますと、年収約370万円以上の方、ちょうど真ん中より上の部分の方については、自己負担限度額、上限額というのは年齢にかかわらず同じであるというのが今の仕組みでございます。
若干違いがございますのは年収370万未満の部分のところでありまして、70歳未満であったら月単位の上限額は5万7600円、70歳以上であれば5万7600円というところは同じでございますけれども、外来(個人ごと)と書いてございますけれども、いわゆる外来特例という形で、月単位の外来での上限額が別途設けられているものでございますと1万8000円、住民税非課税の方であれば70歳未満は月単位の上限額が3万5400円であるのに対して、70歳以上は2万4600円であったり、1万5000円であったり、また、さらには外来のための自己負担の上限という仕組みもございます。
この70歳以上の住民税非課税という方でございますけれども、基本的に一般的な公的年金等控除等々もございますので、一般的なモデル年金の方であれば、例えば住民税非課税であったり、若干この上の区分に入るような方が多いかなと思っております。年金を比較的多めにもらっている方がもう少し高いところとか、そういう形のイメージをしていただければと思っております。
4ページ目、高額療養費の在り方について(案)ということで整理をしてございます。上に箱がございますけれども、高額療養費については冒頭に申し上げましたとおり、昨年末に閣議決定された改革工程の中に、2028年度までに検討する取組ということで高額療養費の自己負担の見直しというものが盛り込まれてございます。
また、ちょうど先週の金曜日、11月15日でございますけれども、全世代型社会保障構築会議が開催されております。その中において複数の委員の方々から、年齢ではなく負担能力に応じた負担という全世代型社会保障の理念でありますとか、あるいは保険料負担の軽減等といった観点から見直しを早急に求めるという御意見がございました。
後ろの参考資料に私どもの責任で作成をした議事録・速記録をつけておりますので、ぜひ御参照いただければと思いますけれども、そういうことを踏まえて必要な見直しを検討していくべきではないかとさせていただいております。
4ページ目の下のほうに箱の枠囲いがございますけれども、上のほうに社会経済情勢の変化と書かせていただいております。
まず1つ目のポツ、高齢化の進展でございますとか、あるいは医療の高度化等によって高額療養費の総額が年々増加をしてございます。そういう中において、近年、高額療養費の自己負担の限度額の上限は実質的に維持をされてきたという経緯がございます。そういう中で、医療保険制度における実行給付率、あるいは保険のほうから償還される実行給付率については上昇しているという現状がございます。
2つ目のポツ、他方でというところでございますが、前回実質的な見直しを行ったのは平成27年、2015年ですから約10年前でございますけれども、そういう前と比べると賃上げの実現等を通じた世帯の支援、あるいは世帯収入の増加など、経済環境も変わってきている部分もございます。他方、足下では生活必需品をはじめとした継続的な物価上昇が続いている中で、特に現役世代の方を中心に保険料の負担の軽減を求める声も実際に多くございます。
そういう中において、検討の方向性ということで書かせていただいております。
まず1つ目のポツ、物価・賃金の上昇など、経済環境が変化する中でも、先ほど申し上げたように高額医療費の自己負担の上限が実質的に維持されてきたこと等を踏まえまして、セーフティーネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、これは健康な方を含めた全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、例えば高額療養費の自己負担限度額の見直し、一定程度の引き上げ、あるいは所得区分に応じたきめ細かい制度設計とする観点から、今5段階であったり6段階という所得区分になっておりますけれども、この細分化などが考えられないだろうか。
また、その際には能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障、こういう観点から負担能力に応じた負担を求めていく仕組みとすべきではないだろうか。
3点目、施行時期については、国民への周知、あるいは保険者、自治体の皆様の準備期間、システム改修等々の期間などを考慮しながら、他方で被保険者の保険料負担の軽減というメリットをできる限り早期に享受できるような観点から検討すべきではないかと記載をしてございます。
以下、参考資料でございますので、適宜御参照いただければと思います。
こういう観点から御議論を賜れればと考えてございます。事務局からの説明は以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、この件に関しまして御意見等がございましたら挙手にてお願いいたします。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 高額療養費制度の見直しについてコメント申し上げます。現在の医療保険制度において、高額療養費制度が被保険者の負担軽減に大きく貢献しているのは紛れもない事実だと思います。ただ一方で、高額薬剤等の登場に伴い医療費が高額化し、医療保険財政を圧迫しているのも事実でございます。
健保組合においても、高額療養費の支給総額は令和元年度から5年度において2割以上、額で言いますと600億円以上増えております。中でも1,000万円以上の高額レセプトは約3倍の増加が見込まれており、これらの給付のための保険料負担も増加をしておりますので、高齢者の給付費に係る拠出金と合わせて、現役世代の負担増につながっている事実がございます。
これらも踏まえ、全世代型社会保障構築に向け、年齢ではなく負担能力に応じた負担、また、保険料負担軽減の観点から見直しを行う時期に来ていると理解しておりますので、高額療養費の見直しについては賛成でございます。
ただし、施行時期については保険者のシステム改修に係る期間等には十分御留意いただければと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、伊奈川委員、よろしくお願いします。
○伊奈川委員 この資料の特に4ページのところで負担能力に応じてという言葉がありますので、その辺りについて発言したいと思います。
医療保険では御承知のように保険料において上下限がある関係で応能負担が原則なのですけれども、多少応益的な要素も入っているわけであります。そこに加えて給付面では、高額療養費は本来病気になった人とならない人との間の水平的な所得再分配だと思うのですけれども、そこに応能要素が入るということで、垂直的所得再分配という面もあるという、非常にいろいろなことがミックスされたのが今の状態だと思います。そういう点から言いますと、受益に着目した限度額ということから言えば、医療費が増大すれば、その伸びに応じて見直すということは必要なことなのだろうと思います。
その一方、応能負担ということで、今回ありますような負担能力に応じてということも徹底するというのも一つなわけですけれども、そうなりますと、年齢に関係なくということになるわけであります。資料の9ページを拝見しますと、それぞれの基準の部分に該当する方たちの割合が制度とか年齢によって違っているということでありますので、その辺り、特に高齢者に低所得層が多いといったような実態をどう考えるかということが重要ではないかと思います。
また、これもまだ私はよく分かっていないのですけれども、住民税との関係でいきますと非課税限度額があって、東京の単身者の場合ですと45万プラス55万で100万円が一種の壁ということなのだと思います。今回、103万円の壁のうちの55万円というのはたしか給与所得控除に相当するわけですので、103万円の壁の見直しが行われた際に、この辺りの非課税限度額、あるいは全体としての所得の分布がどうなっていくのか、その辺りも踏まえて考える必要があるのではないかと思っているところであります。そういう点では、さらに細部も考慮した細分化が必要なのだと思っております。
以上であります。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、井上参考人、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 全世代型社会保障会議にて述べられております、全世代で能力に応じて支え合うという観点から、この改革工程表に基づいて着実に進めていただきたいと思います。今回の高額療養費の見直しに関する案につきましても賛同いたします。
「年齢にかかわらず」という観点から言うと、70歳以上に別途定められている外来上限特例につきましても見直しが必要ではないかと考えますし、また、その観点では1ページにございます赤枠以外のところ、例えば能力というので、金融資産をどうやって把握して負担能力を測っていくかでありますとか、医療・介護の3割負担の判断基準でありますとか、こういうことにつきましてもしっかりと前に進めていただきたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、島委員、よろしくお願いいたします。
○島委員 高額療養費制度そのものは、高額な医療費を自己負担3割であってもこれを軽減するという意味では、患者さんたちにとっては非常に有効な制度だと理解しておりますが、佐野委員も言われましたように、今の医療においては非常に高額な薬剤とかの採用がどんどん相次いでおりますので、この部分で医療費が物すごくはね上がってきているような実態が今はあります。そのような中で、このような高額療養費のところをどのように考えるかという方向性としては賛成ですが、実際に負担能力に応じてといったことに関して、どれぐらいに変化させるのかといったところの具体的なシミュレーションをきちんと示していただければと思います。これに関しては医療財政を非常に危険な状況にさせている高額医薬品がどんどん登場してきている状況ですので、やむを得ないのかなと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 高額療養費制度の見直しということでございますが、参考資料の6ページにもございますように、今、島委員のお話にもあったように、高額薬剤等、また、医療技術の進歩に応じて高額な診療が増えているのは事実であり、財政も厳しい状況であることは十分認識をしてございます。
一方、高額療養費制度そのものは、いわゆる医療におけるセーフティーネットの役割を果たしているわけでございますし、今回これを見直すという議論に関しましては、セーフティーネットの意味合いをしっかりと踏まえた上で、全ての人が必要な医療を適切に受けられるという機能をしっかり果たせるような形で見直しがなされるように、これは十分な議論をする必要があろうと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、根本参考人、よろしくお願いします。
○根本参考人 高額療養費につきましては、今回被保険者の保険料負担の軽減や負担能力に応じた負担の観点で見直しを行うとされておりますけれども、検討に当たりましては必要な医療への受診抑制につながることがないよう、特に低所得者に十分配慮した制度となるようお願いいたします。
なお、施行時期につきましては、被保険者等への周知や保険者のシステム改修に要する期間が十分に確保できるよう配慮していただく必要があると考えます。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、中村委員、よろしくお願いいたします。
○中村委員 まず、年齢ではなくて負担能力に応じて高額療養費の上限を決めるとか、所得区分の細分化ということは非常に妥当だと思います。それから、インフレ対応によって上限が上がってしまうというのもやむを得ない部分があるだろうと思います。
ただ一方で、医療保険というのは本来ネガティブな健康へのショック、運悪く非常に高額な医療費が必要になってしまった方のリスクを軽減するという役割が最も重要なものなので、高額療養費での対応、その上限を上げるという対応よりは、本来優先すべきは、例えば選定療養費によって医学的に絶対的に必要不可欠ではない部分の自己負担を増やすとか、それから、医療の標準化とか、いろいろなルールづくりによって健康の改善に特に必要な部分に医療費が使われるようにしていくという、効率化ということが非常に求められているのではないかと思います。
それから、高額療養費が医療利用とか家計にどういう影響を与えるのかということなのですけれども、これはあまり実証分析がないのです。どうしてかというと、例えば自己負担割合が変わったときの影響は、誰がどういう負担割合になっているかということが分かりますので分析しやすいのですけれども、高額療養費が所得や年齢によって今までは決まっていたので、誰がどういう上限になっているかということがデータから分からないことが多いのです。
それもあって分かっていないのですけれども、高額療養費がどういう影響を与えているか、特に例えば高額療養費を超えた途端に幾ら余計にかかっても、その分患者の自己負担が増えないわけですから、そうすると、急にそこで医療利用が増えるというようなことが起きているのか、いないのか。それから、高額療養費の上限が上がると家計にどういう影響があるのか。それから、負担増による医療利用の低下というのが起きるのか。そういうことがよく分かっていない状況なので、そういうことが分かるようなデータを研究者が使えるようになっていくことが、今後非常に重要ではないかと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、横尾委員、よろしくお願いいたします。
○横尾委員 高額療養費制度については、おそらく大変多くの方々が助けられていらっしゃる感を持っていらっしゃると思います。特に最近ではがんの新薬等が出てきて、ほかの委員からもありましたが、その費用が高額といったこともあって大変不安感もあるわけです。しかし、実際に窓口ではそこまで大きな負担なく、それで治療を受けられるという意味での感謝をされている方も多いと思います。この感謝の声が必ずしも多く聞かれるわけではありませんけれども、その種の方が多々あるであろうと承っています。
例えば人工透析でもかなりの金額がかかりますけれども、それと匹敵する、あるいはそれを超えるぐらいの必要期間の抗がん剤の投薬、新薬の投薬となりますので、そういったことに対して大きな支えになっていると思います。
ただ一方では、負担増のおそれとか、あるいはいつも医療制度関係の議論になると、また自己負担が増えますよとか、そういったニュース等も多いものですから、心配されている方も大変多くいらっしゃるのかなと思っています。
特に高齢者の皆さんはそういった状況にある方が多いと心配をしています。例えばこの先、年金などの限られた収入しかないのに、医療に関わる必要性があるけれども、その医療の負担が大きくなって、自分たちの暮らしは大丈夫だろうかという家計の状況を見ながら非常に気にされている方も多いと思うのです。そういった意味では、適切な改革、また、丁寧な説明、そして、長期を見越した健康の増進や健康の維持ということも啓発をしていく必要があると思っているところです。それをしていかなければいけないと思っています。そのためには予防というのがとても肝心だと思っています。
そういった意味では、若い世代から健康リテラシーの教育ですとか啓発、そして、自己管理をすることで健康を維持して、医療にかかる大きな病気になることが減るようにしていくことがいかに大切かということを啓発すべきですし、これらのことは病になってからでは間に合いませんので、ぜひ若い時期、健康に大切な時期は啓発をしていくべきだと思います。医療財政が大変大きな課題となってずっと議論や検討が続いていますけれども、これらを長期的にも解決する大きな下支えになると思っているところです。
一方では、負担能力に応じた対応も欠かせないことが必要なことだと考えますので、今回の区分をより細かくするとか、あるいはもっと詳しいいろいろな分析もされると思いますけれども、そういったことをぜひ的確に丁寧にやっていただきたいと思っているところです。ただ、退職とかいろいろなことで年度をまたぐことによって収入が変わる方がいらっしゃいます。そうすると、前年度の収入をベースに課税ベースが決まったりしますので、そのときに一時的に負担感がぐっと増えるわけです。こういったことへの配慮をどうするかということも検討が必要かと思います。
また、資料の2ページ目の冒頭に高額医療費の概要というところがあって、そこには家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないようにという、そもそもの趣旨が書かれていまして、この趣旨はとても大切なので、この理念を踏まえつつ今後の改革や改善をぜひ的確にお願いをしたい。また、内容によっては分かりやすく国民の皆さんに説明もお願いしたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、村上委員、よろしくお願いします。
○村上委員 公的医療保険は負担能力に応じた保険料を負担する一方、受けられる医療サービスは所得の多寡にかかわらず同じというものでございます。このような仕組みの中で、今回御提案されているように自己負担上限額についても負担能力に応じた負担を強めるということが、一定以上の収入がある被保険者にとって社会保険に強制加入していることへの納得感を欠くことにつながってはならないと考えます。
高額療養費制度は、資料にもありますように、家計に対する医療費の自己負担が過重なものにならないようにするためものですから、自己負担の水準に関してどれほどの負担原則を強めるのかという検討に当たりましては、年代や年収別などの利用の実態や考えられる影響を分析し、資料でも示していただきたいと考えます。
その上で、国民や患者の不安、家計への過度な負担増、経済力による受診控えにつながらないよう、給付と負担の関係も踏まえて慎重かつ丁寧な検討が必要と考えます。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、よろしくお願いします。
○渡邊委員 制度に関しまして、医療財政上、理解するものではあるのですけれども、先ほど来、島委員や城守委員からもありますように、高額療養制度は治療を根本的に助けている側面が大きくあると思っています。ですので、高額な薬剤等を実際に使うこともありますが、当該制度の変更により、高額な薬剤による治療そのものを躊躇されるような選択につながらないように配慮した、しっかりとした体系づけた変更をお願いしておきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、藤井委員、よろしくお願いします。
○藤井委員 本件は改革工程に基づき、社会保障制度の持続可能性を高めるために行われるものと認識をしており、その方向性についても理解をしております。
他方、保険というものはいざというときのセーフティーネットであり、大きなリスクに備えるものであります。負担限度額の引き上げによって患者の健康状態に影響は出ないのか、医療・介護保険財政にどれだけの影響があるのかといった多角的な視点が必要であります。改革に当たって必要なことは、現役世代にしわ寄せが及ばないようにすることです。ぜひ丁寧な議論をお願いしたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、大杉委員、よろしくお願いします。
○大杉委員 医療保険制度改革における高額療養費の在り方についてですが、本日の資料は議論のキックオフの資料であり、記載されていることに特段の意見はありませんが、昨今、複数の委員からの御指摘もありましたように、非常に高額な薬剤が話題に挙がっており、国民皆保険制度を持続していく観点から、負担能力に応じた負担を求めていることは重要なことであると考えております。
8月30日に医療保険部会で後期高齢者医療の窓口負担割合の見直しの影響に関して御報告がありましたが、この資料の中で歯科疾患は制度改正直後に外来利用率の影響を受けているデータが示されており、今回の議論においても患者の受診控えを惹起するようなことがないように、制度設計をよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 高額療養費の在り方につきましては、全世代型社会保障の実現に向けまして、また、被保険者の保険料負担の軽減を図る観点からも、社会経済情勢の変化を踏まえて負担能力に応じた負担となるように見直していくべきだと考えております。ただし、先ほど来御指摘のあるとおり、セーフティーネットとしての大変すばらしい役割があることを踏まえたきめ細かな見直しが必要であると考えております。また、その際には国民に御理解いただけるよう、丁寧な周知・説明を行っていただきたいと考えております。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、御意見がなければ、本議題につきましてはこれまでとしたいと存じます。
事務局におかれましては、本日いただいた意見を踏まえまして引き続き議論を深めていただきますよう、お願い申し上げます。
次に「マイナ保険証の利用促進について」を議題といたします。
では、事務局のほうから資料の説明のほうをお願いいたします。
○山田課長 医療介護連携政策課長でございます。資料3をお願いします。
「マイナ保険証の利用促進等について」の1ページ、令和6年10月のマイナ保険証の利用件数は3412万件、利用率にいたしまして15.67%でございました。下段でありますが、マイナ保険証を登録している者で医療機関を受診した者がマイナ保険証を利用した割合は約4割でございます。
右の下でありますが、10月28日からマイナ保険証の利用登録解除の手続が始まっております。10月28日から11月8日の間の解除申請登録数は792件でございました。集計の都合から対象期間に少しずれがございますが、10月26日から11月10日までの利用登録の増加件数は約67.8万件となっております。
本日は2点御紹介させていただきます。1点目は運用の詳細やさらなる周知広報の状況について、2点目が12月2日からオンライン資格確認の導入が原則義務化される施設における状況についてでございます。
4ページ、新生児についてであります。12月2日より申請日に1歳未満の方に対しては顔写真のないマイナンバーカードが交付されることとなります。左の欄でございますが、顔写真なしマイナンバーカード、申請から原則1週間で発行される特急発行の対象となっております。出生届と同時に新生児のマイナンバーカードの申請を行うことが可能でございます。ただ、顔写真がないカードでありますので4桁の暗証番号の入力が必要でありまして、顔認証やですとか目視モードが使えないカードとなっております。
右側は資格確認書であります。保護者に新生児のマイナ保険証の利用登録の意向がない場合、保険者への加入手続時に資格確認書が交付されます。下の段でありますけれども、保護者の意向に沿って顔写真なしのマイナンバーカード、または資格確認書、このいずれかを選んで受診いただくこととなります。
特急発行についてであります。現在マイナンバーカードの申請から交付までは1か月程度を要しております。特に速やかな交付が必要となる場合を対象に、原則1週間で交付する特急発行・交付の仕組みを12月2日より開始いたします。対象者は1歳未満の乳児、カードをなくした方、引っ越しなどで件名の追記欄が埋まった方、カードを破損・汚した方などでございます。申請時に来庁していただきまして本人確認を行った上で、郵送でカードが送付されます。
6ページ、資格確認書の交付対象についてであります。この資料自体、資格確認書の交付を推奨するという趣旨ではございませんが、利用者が置かれている状況を基にフローを整理しました。「マイナンバーカードを保有していますか」、「電子証明書の有効期限が切れていますか」、イエス・ノーでフローになっております。左のほうは申請によらず交付されますが、フローの一番下、「マイナンバーカードでの受診などが困難な方、高齢者・障害者などについて、またはマイナンバーカードを紛失・更新中の方」は申請により交付されますので、ここの部分をしっかりと周知していきたいと思っております。
7ページ、国民向けのリーフレットを新たに作成いたしております。マイナンバーカードで受付がうまくいかなかった場合でも、適切な自己負担で保険診療が受けられる方法などをまとめたリーフレットを作成しましたので、周知に努めてまいります。
続きまして、12月2日からオンライン資格確認が原則義務化される施設における導入状況であります。
9ページ、3つの類型ございます。1つ目は訪問看護ステーション、2つ目が柔道整復施設所、3つ目があん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師でございます。
1の訪看につきましては利用申請済みの施設が81%、準備完了した施設が61%、2の柔整につきましては申請済みが64%、準備完了が54%、3のあはきにつきましては申請済みが26%、準備完了が17%となっております。12月2日の原則義務化に向けて必要な周知等を行ってまいりたいと思っております。
10ページ、柔整あはきの施術所に係る療養費に関する受領委任につきましては、12月2日以降、オン資の導入が「原則」義務化となります。「原則」の例外となるやむを得ない事由について記載しております。
1-1、柔整の場合は設置者が皆高齢の場合、1-2、あはきの場合は施術者が皆高齢、または視覚障害の場合を加えさせていただいております。また、廃止・休止、受領委任の取扱いを中止する施術所につきましては、やむを得ない事由に該当するということであります。12月2日以降もオン資が導入されていない場合には、個別の働きかけを行う場合がございます。
11ページ、受領委任を行う場合の資格確認のフロー、医療機関などでもつくりましたものの療養費バージョンを作成しております。何らかの事情でオンライン資格確認を行えなかった場合、患者が提示可能な場合はマイナポータル、資格情報のお知らせなどで、または過去の受診記録などで、受診いただきます。
1点、医療機関と違う部分は初診の場合でございまして、申出書ではなくて事後的に必ず確認をしてくださいという仕組みにしております。いずれにしましてもマイナ保険証を持ってきていただいた場合には、患者には10割ではなく、適切な自己負担分での支払いを求めていただくことになります。
参考資料は飛ばさせていただきまして、別冊で参考資料1-1と1-2がございます。11月14日に障害者部会・こども家庭審議会障害児支援部会の合同会議が行われました。ここでは公費負担医療におけるオンライン資格確認の導入について議論を行っておりますが、この際、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関して様々な御意見がありましたので、その御意見を紹介させていただきたいと思います。
一番上の欄、障害種別によっては使いづらいというような不便性・困難性があることを解消する必要がある。
視覚障害者にとっては暗証番号の入力ができず、顔認証もカードリーダーの操作もしづらい。
身体障害者は鞄からマイナンバーカードを取り出すのが困難だ。
丁寧な情報提供や周知徹底をお願いしたい。
真ん中の欄、視覚障害者は目視確認が唯一の手段となるが周知を徹底してほしい。
下の欄、資格確認書の申請が適切に行えるよう、手続を分かりやすく周知してほしい。
耳が聞こえない人の特性として、資格確認書が届いても理解できずに使えない可能性がある。
このような御意見をいただきました。
参考資料の1-2で、高齢者・障害者などの方々におけるマイナンバーカードの健康保険証利用について説明資料をつくっております。これらを関係者・関係団体の方々に改めて周知をさせていただきまして、できるだけ円滑な施行に努めてまいりたいと思います。
私からの説明は以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、御意見等がございましたら挙手にてお願いいたします。
佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 資料3の6ページの「資格確認書の交付対象について」にかかる記載については、3段目の「マイナンバーカードの健康保険証利用登録をしていますか」は、マイナンバーカードを持っているか、持っていないかで大きく違ってくるでしょう。
このフローを見ますと、利用登録をしていない方は無条件に「申請によらず交付されます」となっておりますが、このうちマイナンバーカードを持っている方については、まずは資格確認書を交付するのではなくて、医療機関にマイナンバーカードを持っていけばいいのですと、そのことを案内するのが極めて重要だと思いますので、分かりやすいフローを書いていただくのであれば、ここにぜひ医療機関に行けばいいですということも併せて周知徹底をお願いしたいと思います。そうしないと、せっかくの普及促進に寄与しないと思いますし、無駄な資格確認書の交付につながってしまいますので、しつこくて恐縮ですが適正な周知をお願いしたいと思います。
もう1点は、12月以降新たに義務化される施設、9ページに利用申請済みと準備完了済みがありますが、ぜひここには導入済みの施設数と割合も示しいただき、これらも併せて、導入に向けた働きかけをぜひ強力にお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、横尾委員、よろしくお願いいたします。
○横尾委員 いよいよ12月2日で一つの大きなエポックメイキング的な時期に入っていくわけです。ぜひお願いしたいのは、あまり時間はないかもしれませんけれども、各医療機関、あるいは薬局等に置かれているマイナンバーカードのリーダーがあります、なかなか読み込めなかったとか、ほかではオーケーなのにここでは読めなかったという例を幾つか聞いています。そういうことがないように、厚生労働省が所管なのかどうか明確に分かりませんが、全ての機関にもう1回チェックしていただいて、小さなトラブルかもしれませんがお一人お一人にとっては印象が悪くなります。マイナンバーカードを保険証と一緒にしたけれども、何かうまくいかないとなってしまうとよくないので、この際、細かく確認をいただいて、必要なところにはアシストする、あるいは説明の機会を設ける、あるいは改善なら改善をちゃんとするということで、ぜひ徹底をしていただきたい。
そうすることによって細かいトラブルが減っていけば、医療機関や薬局でも負担が減りますし、当然利用者であるカードをお持ちの皆さんもこれは便利だな、自分の健康が分かるなとつながっていきますので、ぜひ確認チェック、そして、必要な対応ということでお願いしたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、井上参考人、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 12月2日以降も全て国民・患者が切れ目のない医療を受けられるということを説明していくのはもちろん重要なことで必要だと思います。一方で、マイナ保険証がなくても大丈夫という印象にもつながりかねませんので、今後はマイナ保険証による受診が基本だということを再度強調して利用促進を進めていただきたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、菊池委員、よろしくお願いいたします。
○菊池委員 菊池でございます。本日所用によりオンラインで失礼させていただいています。
先ほど御説明いただきましたように、先週の社会保障審議会障害者部会、こども家庭審議会障害者支援部会の合同会議がありまして、議題は自立支援医療等でのオンライン資格確認の導入だったのですが、そこでそもそものマイナンバーカードと健康保険証の一体化に関して多数の御意見をいただいたものですから、私は司会進行を務めている身として保険局のほうにお伝えしますとお約束をしたところで、本日、参考資料として御提示をいただきましてありがとうございました。
御覧いただいたとおりでございますが、多くの皆様は前向きな姿勢を示していただいています。使いたくないのではなくて使いたい、使いたいのだけれども、使えないのだということで、誰もが使えるように1人も取り残さないという姿勢での御対応をお願いしたいと思います。
様々書かれていますが、障害の状況によっては、仕組みや技術開発、あるいは使いやすくするためのマニュアルの整備、あるいは医療機関になかなか理解をいただけないのだというようなお話もあったりしまして、そういった機関の御協力・御理解をいただくための情報提供ですとか周知といったことをぜひお願いしたい。今回、説明資料が提示されていますが支援者・御家族向けでして御本人向けではないようですし、ぜひ今後、きめ細かな対応をお願いしたいと存じます。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、島委員、よろしくお願いいたします。
○島委員 こうやってマイナンバーカードの利用数が少しずつでも増えてきているということで、前進しているという気はしますが、9ページにありますように、特にあはきのところで数字が低いように見えますけれども、実際、その次にありますように、いろいろな障害がある方たちがここを担当されているようなこともありますので、100%を目指すのは無理かなという気がしております。ある程度、どれくらいまでいけばこういう施設でもきちんと普及していると理解しているのか、機会があれば教えていただければと思います。
今、菊池委員からも説明がありました障害者の方たちに対する窓口での対応というのは、実際には医療施設では配慮が必要です。ですから、そういうことも含めてきちんと医療施設でも障害者に対しても対応していくということは御理解いただければと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、渡邊委員、よろしくお願いします。
○渡邊委員 1点だけお願いです。スライドの4に※でも記載されている部分なのですけれども、現行においては結局、こども医療に関する受給者証が紙で残ります。今後、マイナンバーカードが発行されたとしても、また紙の受給者証を持って歩かなければならないという状況が続きますので、地単公費に係る部分での共通算定マスターのの整備であったり、前回出ていましたようなPublic Medical Hubによる情報共有であったりと、そういう中で紙とカードを並行して結局持ち歩かなければならない状況は、なるべく早く解消していただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、藤井委員、よろしくお願いします。
○藤井委員 お示しいただいた内容に特段の異論はございませんが、特急発行についてはいろいろな要件がありますので、特急の仕組みがあること自体と併せ、きちんと国民に周知をしていただきたいと思います。もうすぐ12月ですので様々な意見があることは存じ上げておりますが、マイナ保険証が基本となるように政府が責任を持って取り組んでいただきたいと思います。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、大杉委員、よろしくお願いします。
○大杉委員 12月2日が近づくにつれ、本日も全国放送でありましたけれども、マスコミ報道等も本当に多くなっております。資格確認書や資格情報のお知らせなどの混同しやすい用語の丁寧な周知、加えて、何度も発言させていただいていますけれども、マイナンバーカードの取得率の伸びも本当にわずかであり、安全性やメリット等についても再度国民の方々が安心して利用していただける土壌をつくっていただければと思います。
また、昨今ではテレビや新聞等の媒体を閲覧することが少ない世代も多いと聞いております。様々な媒体等を利用してさらなる周知をお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、任委員、よろしくお願いします。
○任委員 資料3の9ページで導入状況が示されておりますが、訪問看護のオンライン請求、オンライン資格確認につきましては、短期間で急ぎ義務化の対応を進める必要があり、本会としても厚労省や関係団体等と連携して周知に取り組んできたところです。システム導入のための回線の準備等に時間を要し苦労されたという声も多く聞いていますが、準備完了施設の数は急速に増えていると伺っておりますので、12月2日の義務化に向けて全施設が確実に対応できるよう、引き続き導入を推進していくことが重要だと思っております。
また、厚労省におかれましても引き続き丁寧に導入状況等の把握、評価と支援を行っていただければと存じます。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、御意見がなければ本議題についてはこれまでとしたいと存じます。
次に、事務局のほうから別途報告事項があるということでございますので、保険課長のほうから報告をお願いいたします。
○佐藤課長 保険課長でございます。タブレットの資料4、出産費用の状況等についてということでございます。報告事項ですので、できる限り端的に御説明を申し上げます。
1ページ目、出産育児一時金の経緯は過去の経緯でございますので説明を割愛いたします。今、出産費用は一時金が50万円でございますけれども、実際には大半の施設で直接支払制度を活用していただいておりますので、そのデータを集計した数字でございます。
2ページ目、正常分娩の出産費用の状況(費目別)と書いてございますけれども、上に箱がございます。一番上の行が令和4年度、②で令和5年度、そして、③で令和6年度の上半期ということでございまして、今年度の9月の請求分までのデータを整理しているものでございます。
一番右側に赤枠で囲ってございますけれども、妊婦合計負担額ということで、妊婦合計負担額A~Cの控除後、要は室料差額等々を控除した出産費用の金額でございますけれども、令和6年度上半期においては51.8万円ぐらいであったということでございます。
3ページ目に時系列をつけてございます。正常分娩の平均出産費用の年次推移ということでございまして、全施設が青でちょうど51.8万円、先ほど申し上げた数字でございまして、公的病院がオレンジ、私的病院が薄い青、診療所が黄色という形で時系列で整理をしているグラフでございます。
飛びまして7ページ目、正常分娩の都道府県別の平均出産費用ということでございまして、一番右側に令和5年度の数字、先ほど申し上げた上半期でありませんので、令和5年度の平均として四捨五入すると50.6万円でございましたけれども、それを都道府県別の内訳として、東京が一番高くて62.5万円、最も低いのは熊本県で38.9万円という状況でございました。
8ページ目、平均妊婦合計負担額、これは都道府県別で先ほど申し上げました例えば室料差額でございますとか、あるいは産科医療保障制度の料金ですとか、その他、お祝い膳等々の費目を含めた妊婦の方に御負担をいただく最終的なトータルでの負担合計額でございます。右側に全国平均と書いてございますけれども、全国平均は四捨五入すると57.5万円のところ、一番高いのは東京都で72.3万円、最も低いのは熊本で45.7万円という状況でございました。
9~10ページ目は、今申し上げた都道府県別の過去との増減率、時系列的に整理をしておりますので説明は割愛いたします。
11ページ目、令和5年5月請求分以降の正常分娩の出産費用と出産育児一時金の支給額との差額の状況でございまして、グラフの青い部分が50万円、いわゆる一時金の範囲内で収まった正常分娩の出産費用の割合、赤い部分は足が出ているという状況でございます。全国で申し上げますと、全国平均では一番右側、字が潰れて見づらいところもありますけれども、55%の出産が一時金の範囲内で賄われている、45%については一時金の支給額を上回って費用がかかっている、これを都道府県別に整理しているのが11ページ目の左側でございます。
12ページは妊婦合計負担額でございますので先ほど申し上げた室料差額等々が含まれる金額になります。室料差額等々が含まれますと、一時金の範囲内で収まる出産の割合は当然下がるわけでございまして、一番右側の80%のところがオレンジになっておりますけれども、妊婦合計負担額が一時金の支給額を上回っているという状況でございます。
以下、細かい資料をつけてございますけれども、時間の関係もございますので説明は割愛させていただきます。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
こちらは報告事項でございますけれども、御意見等がございましたらよろしくお願いいたします。
では、佐野委員、どうぞ。
○佐野委員 私自身、この検討会に参加させていただき、すでに申し上げたのですけれども、若干コメントさせていただきます。
今日の資料で申し上げますと3ページ、出産費用の年次推移が載っていますけれども、これを見ますと、令和5年度に全体は50.7万円、令和6年度で51.8万円と急上昇しております。それで見ますと、令和5年度に出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げた影響が出て上昇しているという印象をぬぐえません。詳細は今後検討されると思うのですけれども、本件の検討に当たっては、こういった実際にかかっている費用の「見える化」、それから、妊産婦が選択しやすいための費用の「標準化」が大変重要であると思いますので、その点をお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田辺部会長 ありがとうございました。
それでは、城守委員、よろしくお願いいたします。
○城守委員 今、佐野委員のほうから、資料の3ページのほうで令和4年度から5年度、一時金が引き上がったと同時に、出産費用も上がっているという御指摘がございました。これは皆様方もよく御存じかと思いますけれども、令和4年から令和5年度にかけては基本的に物賃が非常に上昇したということもございます。出産というのが現在は自由診療の下に、それでも医療安全と質の高いアメニティーを確保するために、各医療機関が設備投資であるとか人材の確保をされているわけで、それに伴って医療機関のコストが発生していることをまず御理解いただければと思います。
いろいろなデータが出ておりますが、基本的には、これから正常分娩の保険適用という議論が本格化してくるわけではございますが、自由診療を保険適用するということはどういう意味があるのかということは皆様方もよく御存じだろうと思いまして、各議論の中で地域の分娩医療機関が出産から撤退するようなことがないような形をしっかりと確保しつつ、なおかつ出産をされる方も保険適用というものの利便性、こういうものがどのような形で成り立つのかということに関して、拙速な議論をしていただくということではなくて、しっかり時間をかけた議論をしていただく必要があるのではないかと意見を申し上げたいと思います。
私のほうからは以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、島委員、よろしくお願いいたします。
○島委員 今、城守委員がおっしゃったように、現在の正常分娩の出産というのは自由診療ですが、もし保険診療に取り入れるということが前提だということであれば、このように実際出産にかかる費用の格差があるといったこと、そこをしっかり検討しなくてはいけないので、一時金の支給に関してもどれくらいの額が本当に必要なのかということまで検討しなくてはならないです。
それから、産科の診療所とかも先生たちがだんだん高齢化してきて跡継ぎが入ってこないところは閉院していく。特に産婦人科の領域では、婦人科領域の手術とかをやりたいけれども、産科はあまりやりたくないという先生方が多くなってきているのは事実です。ですから、城守委員もおっしゃったように、この制度はしっかりと考えてやらないと、少子化に拍車をかけるような状態をつくっては絶対まずいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、村上委員、よろしくお願いします。
○村上委員 御説明ありがとうございました。
先ほど城守委員からいろいろな要因があるというお話がありましたが、6ページの月次の推移を見ますと、出産育児一時金の引き上げの時期に上昇していることが分かるのではないかと思います。
また、2ページの費用を項目別で見ますと、その他の項目の伸び率は高いのですが、その中の何が具体的に金額を押し上げているのかという詳細は分からない状況でございます。
従前から申し上げているのですが、産科医療の標準化と質の向上のためにも正常分娩の保険適用は必要だと考えております。今後とも費用のさらなる見える化を図りながら、検討会における議論を深めていただくようお願いいたします。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、北川委員、よろしくお願いいたします。
○北川委員 出産費用について、改めて都道府県ごとに状況が大きく異なることが示されたと認識しております。今後、検討会で議論が進んでいくと思いますけれども、妊産婦等の支援策をさらに充実させていくことが重要であるという一方、議論の内容によって医療保険制度の在り方にも大きな影響があるテーマであるという側面から、現行の医療保険の仕組みとの平仄であるとか、財政面の検証も含めて、ぜひ議論を尽くしていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○田辺部会長 ありがとうございました。
では、横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 出産に関してはとても重要なことで、費用の助成、都道府県別の正常分娩の数が出ていますけれども、例えば首都圏と九州地方とか東北地方を比べると差があるのです。こういったことは多分産科医の皆さんをはじめとした医師会の皆さんや関係機関の皆様は注目されていると思います。全国を単純に一つのルールだけで対応するとかなり混乱というか様々な反応もあるかと推察します。その際、ありがたく感じる人はもちろん増えると思いますけれども、より丁寧な対応も一方では必要なのかなと感じておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○田辺部会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますか。
では、御意見等がないようでございますので、本日はこれまでとしたいと存じます。
次回の開催日については、追って事務局のほうより御連絡を申し上げます。
本日は御多忙の折、御参加いただきありがとうございました。
それでは、散会いたします。