技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第83回)議事要旨

人材開発統括官海外人材育成担当参事官室


 
日時:令和6年12月12日(木) 10:00~12:00
場所:Web会議
出席者:市田委員、岩崎委員、漆原委員、大迫委員、後藤委員、當間委員、花山委員、堀委員
厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構
(自動車整備職種関係)日本自動車整備振興会連合会、国土交通省自動車整備課
(管路更生職種関係)日本管路更生工法品質確保協会、国土交通省下水道事業課、国土交通省国際市場課
 
議題
(1)自動車整備職種の実施・運営状況の報告について
(2)管路更生職種(管路更生工事作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
(3)その他(介護職種の作業範囲拡大について、訪問系介護サービスの追加に係る指摘事項への対応報告)
 
【概要】
(1)自動車整備職種の実施・運営状況の報告について
○ 自動車整備職種の実施・運営状況の報告について、日本自動車整備振興会連合会から報告があり、主として以下のような質疑が行われた。
・EV、ガソリン車やCNG車の整備について、整備士資格の1級用テキストのみに記載があるとの説明があったが、1級以外の方はこうした業務には関与しないのかとの質問があった。これに対し、現場では、1級の勉強をしていない方であっても、実務では携わっている状況である。今後はEV等の増加の状況を見ながら、EV等の整備に特有な技能について、実習内容及び試験問題に反映させることを検討したいとの回答があった。これに対し、EV等の整備には従来のエンジン車とは異なる労働安全衛生の知識、技能が必要であること、ベトナム等の送出し国にはそれなりにEV等が導入されていることから、次に専門家会議での試験運営状況報告を行う時までには、EV等の整備に特有な技能を問う試験を実施していただきたいとの意見があった。これに対し、EV車を取り扱わない(取り扱えない)事業所が一定数存在することから、実習内容や試験での評価を一律に求めることは適当では無いと考えており、今後の状況を注視しつつ判断したいとの回答があった。
・(初級、専門級、上級と級が上がるにつれ合格率が下がっている状況について、)初級と専門級の間、専門級と上級の間の難易度の差が少し大きすぎるのではないかとの質問があった。これに対し、専門級については、不合格が若干名いるが、あと少しで合格する程度の点数は取れていた。上級については、自動車整備の国家検定2級相当であり、日本人でも不合格になる方は多く、非常に高いレベルに設定している。不合格になった方に対しては、不十分だった内容を修得できるよう、フォローしているとの回答があった。これに対し、多くの受検生に共通して点数が取れない設問がある場合には、技能実習の過程でその内容が確実に学べるようにしていただきたいとの意見があった。
○ 報告の結果、日本自動車整備振興会連合会の技能実習評価試験について、会議で受けた指摘に対応し、より一層適切な実施に努めることとされた。
 
(2)管路更生職種(管路更生工事作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
○ 管路更生職種を移行対象職種として技能実習評価試験及び審査基準を整備することについて、日本管路更生工法品質確保協会から説明があり、主として以下のような質疑が行われた。
・都道府県や市区町村でも、JICAの草の根技術協力事業を利用して途上国において技術支援を実施しているところがある。ベトナム国ホーチミン市においてもJICAの無償資金協力が実施されている。ホーチミン市において早急に改築‧更新が必要な下⽔道管路が50km程度との説明があったが、その程度であれば技能実習として労働者を受け入れるよりも、現地における技術支援の取組を進めるべきではないかとの質問があった。これに対し、JICAのプロジェクトはモデル的に実施しているものであり、送出し国が継続的に管路更生を行うための人材を育成するためには、技能実習生として受け入れる必要があるとの回答があった。これに対し、現時点で、送出し国において管路更生作業が行われていないとすれば、JICAのプロジェクトのように、現地に管路更生用の機材を日本から持ち込み管理監督者を現地に派遣して、現地で管路更生工事の技能者を育成すべきではないかとの意見があった。これに対し、今後継続的に管路更生を行うためには、JICAのプロジェクトだけで十分な数の技能者を現地で育成することは難しいとの回答があった。その後も技能実習の必要性について委員と日本管路更生工法品質確保協会と議論した後、座長が技能実習制度を活用しなければならない明確な理由について、整理して次回回答するように日本管路更生工法品質確保協会に求めた。
・現地の管路更生の技術者について、送出し国ごとにどういう技術者がどの程度いるかとの質問があった。これに対し、管路更生の施工を行う技能者はほとんどおらず、施工管理などを行う技術者については、JICAの支援企業などでモンゴルやベトナムから日本に人を招いて講習や研修を行うことが開始されているとの回答があった。
・技能実習生は前職要件を満たしている必要があるが、当該職種においては、更生工法に従事したことのある人のみに限るのかとの質問があった。これに対し、現地で管路更生の施工を行う技能者はいないので、管路更生の経験がある人に限って集めることはなく、現地で他の職種も含め建設企業等に携わっている方々に来ていただく予定であるとの回答があった。
・アスベストに関する事前調査、ばく露防止対策、あるいは廃棄物の処理などについて、日本では法律に基づいて処理することが求められるが、ベトナムなどの送出し国においては、大量のアスベストが活用されてきた一方、規制の開始が日本より遅い。そのため、送出し国ではアスベスト管も存在すると考えられ、管路更生作業中にアスベストにばく露することはあり得るので、技能実習においてもアスベストの各種対策について教えるのかとの質問があった。これに対し、日本の行政機関では下水道台帳等でアスベストが使用されている管を把握していること、法令等に基づきアスベストの各種対策を講じていること、技能実習生がアスベスト管の管路更生に従事することになった場合、各会社で労働安全衛生教育等を実施する予定であることとの回答があった。これに対し、各会社で教育するのみで、試験で確認する、あるいは実習内容の必須業務とする、などはしないのかとの質問があった。これに対し、整理して次回お答えするとの回答があった。
○ 検討の結果、管路更生職種(管路更生工事作業)については、次回以降、引き続き、議論が行われることになった。
 
(3)その他(介護職種の作業範囲拡大について、訪問系介護サービスの追加に係る指摘事項への対応報告)
○ 介護職種の作業範囲拡大について、第82回技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議での委員からの指摘事項の対応状況について事務局から説明を行ったところ、主として以下のような意見が委員からあった。
・訪問介護の海外ニーズに関しては、介護職種を追加したときに送出し国から要望書を受け取っているので議論が尽きている認識である。さらに、外国人からのヒアリング結果として、訪問介護も経験したいという話が前回の専門家会議で報告されており、技能実習生が早く訪問介護の実習を体験できればその分、自国でその経験を早く活かしてもらえて良いことだと思う。次回、業所管担当部局出席の下、議論できるように、事務局には準備いただきたい。また、前回の専門家会議において、「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」(以下「検討会」という。)の中間まとめについて説明されていたが、検討会構成員として現場実態を知る介護従事者の方々、公労使含めて入っており、その結果まとまったことを尊重して、訪問系介護サービスの追加にあたっての懸念点をどのように払拭できるのかという観点で議論をしたほうが前向きでよいのではないか。
・上記意見には反対である。技能実習制度は、送出し国のニーズにもとづき技術移転を実施する仕組みである以上、海外におけるニーズについては、前回の議論や資料だけでは到底不十分で、もう一度改めて議論する必要がある。平成29年度に介護職種の追加について議論した専門家会議において、訪問介護は対象外とする結論になった。専門家会議によるこの「結論」を覆すのであれば、送出し国に訪問介護の実習ニーズがあることを把握する必要がある。仮に十分なニーズが確認できないとすれば、現状のままで問題はなく、1対1で対応するというリスクを冒してまで訪問介護の実習を行う必要がない。そのため、現在、訪問系介護サービスに技能実習生を従事させずに海外の介護の実習ニーズが満たされているのであれば、送出し国において、どの程度訪問系介護サービスのニーズがあるのかについて、示す必要がある。前回、送出し国の訪問系介護サービスのニーズについては、訪問介護の日系企業が送出し国に進出していることについて説明されていたが、それだけでは不十分であり、具体的な一定規模以上の調査結果など、統計上のデータも必要である。訪問系介護サービスについて、仮に技能移転が必要である旨の送出し国からの正式な要望書があれば、その時点から改めて訪問系介護サービスの追加について議論を開始するべきである。施設介護のニーズはあるが、訪問介護のニーズのない国から技能実習生を受け入れ、訪問介護を実習することの理屈が通らない。また、前回、施設介護と訪問介護で技能実習評価試験の内容が全く同じという説明があったが、訪問介護では利用者宅という密室で、利用者と1対1となる点等から、施設介護の業務よりトラブルが発生するリスクが高い。もし送出し国から、訪問系介護サービスへ従事させることがどうしても必要だという要望があれば検討することになるが、現在、訪問介護でなくても施設介護の経験があれば足りているということであれば、新たに訪問系介護サービスの追加を検討する必要がない。
・送出し国のニーズということでは、介護職種を追加したときには、介護ということで要望を受けていると前回説明されている。実習内容として施設介護と訪問介護を含めるかについては、送出し国からのニーズというよりは、日本国内の事情によって訪問介護はしないということでまとまったと前回説明されている。施設介護も訪問介護も同じく介護であり、基本的なことは生活の補助、着替えや入浴、食事、排泄、移動の介助になり、修得する技能に関しては訪問介護と施設介護とで変わらないと考える。働く場所が違うことで問題が生じるリスクの大きさは変わるが、それをどう埋めていくのかが重要であり、それを議論することが必要ではないか。次回以降に、業所管担当部局出席の上で、この点について議論してはどうか。
・上記の海外ニーズの議論は尽きているという意見に賛成。セキュリティの面等、懸念点について詰める必要はあると思っているが、介護の枠組みの中で訪問介護の実習を行ってもよいのではないかと考えている。
○ 介護職種の作業範囲拡大(訪問系介護サービスの追加)については、第84回技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議において、議論が行われることになった。
 
(以上)