2024年8月6日 薬事審議会 指定薬物部会 議事録
日時
令和6年8月6日(火)10:00~
出席者
- 出席委員(10名)五十音順
-
- 合川勇三
- 青山久美
- ○池田和隆
- 北中純一
- ◎関野祐子
- 髙野博德
- 田中理恵
- 出水庸介
- 舩田正彦
- 丸井一弘
(注)◎部会長 ○部会長代理
- 欠席委員(1名)
-
- 松本俊彦
行政機関出席者-
- 城克文(医薬局長)
- 佐藤大作(大臣官房審議官)
- 小園英俊(監視指導・麻薬対策課長) 他
議事
○監視指導・麻薬対策課長 それでは定刻となりましたので、ただいまから「令和6年度第2回薬事審議会指定薬物部会」を開催いたします。委員の先生方には、大変御多用のところ御出席を頂き、誠にありがとうございます。
はじめに、人事異動について報告をいたします。7月5日付けで審議官に佐藤が、監視指導・麻薬対策課課長に私、小園が、室長に山本がそれぞれ着任をしております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
本日はWeb形式併用での開催ですが、関野部会長、舩田委員、田中委員には、こちらにお越しを頂いております。当部会の委員数11名のうち、松本委員より御欠席、青山委員、合川委員が遅れての出席との御連絡を頂いておりますが、現時点で8名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
続いて、部会を開始する前に、本部会の公開・非公開の取扱について説明いたします。審議会、総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開とされています。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
それでは、以後の議事進行は、関野部会長にお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点について、事務局よりお願いいたします。
○事務局 本日の部会資料に関しては、事前に各委員宛てに送付いたしております。また、会場出席の委員は、タブレットにて御確認をお願いいたします。指定薬物部会フォルダの中に、資料フォルダ、文献フォルダ、参考資料フォルダの三つのフォルダを付けております。資料フォルダの中には、資料No.1、No.2の1~4、No.3、文献フォルダには文献1~16、参考資料フォルダには参考資料No.1~No.3を収納しております。部会資料についての説明は以上です。また、審議物質の説明中は、画面上に資料を共有いたしますので、併せて御覧ください。
○関野部会長 本日の議題は、指定薬物の指定についてです。それでは、審議に入ります。審議物質について、事務局より説明をお願いします。
○事務局 資料No.1を御覧ください。資料No.1は、本日審議いただく6物質の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2は、本日御審議いただく6物質のほか、構造が類似する指定薬物などについて一覧表としてまとめております。資料No.3は、審議物質の動物実験の結果などについて取りまとめたものです。
それでは、合成カンナビノイド系である審議物質マル1について説明いたします。資料No.2-1を御覧ください。資料No.2-1は、合成カンナビノイド系である審議物質マル1、通称名ADB-5´Br-BUTINACA 及びこれに構造が類似する麻薬、指定薬物について、症状観察、カンナビノイド受容体への影響等のデータを取りまとめております。ADB-5´Br-BUTINACAのカンナビノイド受容体活性、中枢神経系への作用は、過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-1は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の1ページを御覧ください。ADB-5´ Br-BUTINACAは、麻薬であるADB-BUTINACAと構造が類似する化合物です。
2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにADB-5´Br-BUTINACA15mgを添加したマーシュマローリーフ0.25gを燃焼させることで、マウスに薬物をばく露させ、燃焼後15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状について観察された症状を記載しております。また、3、4ページの表1~3にADB-5´Br-BUTINACAに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、5ページに観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
続いて、5ページの(2)カタレプシー試験の結果を御覧ください。カタレプシー試験の結果は、燃焼終了後15分、30分、60分後では、5匹全てが30秒以上動かない陽性を示すことはありませんでした。ここで、実際の動画を御覧ください。動画は二つあります。これは、燃焼終了後、約9分経過後のマウスですが、力なく静止することが確認されております。動画中の時計は動いております。止まっているように見えますが、動画自体は動いております。次に、これは燃焼終了後、約19分経過後のマウスですが、立ち上がりの抑制が確認されました。動画は以上です。
続いて、6ページ(3)ヒトカンナビノイド受容体機能評価を御覧ください。カンナビノイド受容体(CB1及びCB2受容体)に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を載せております。CB1受容体では、S体で1.11×10-9mol/L、R体で1.02×10-7mol/Lでした。また、CB2受容体では、S体で7.80×10-10mol/L、R体で9.66×10-9mol/Lでした。これらの結果から、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性があることが確認されております。
以上から、ADB-5´Br-BUTINACAは、動物による行動観察、受容体親和性評価の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは医薬品医療機器等法に基づき、指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
続いて、(4)海外での流通事例ですが、欧州、カナダ、マレーシア、韓国、アメリカなどで流通が確認されております。また、(5)海外での規制状況については、スウェーデン、イタリア、フィンランドで規制されていることを確認しております。
審議物質は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方から御意見を頂きます。まず、最初に流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 □□委員、ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。特に、カタレプシー試験の陰性についてですが、ビデオによると短時間動かないようですが、これは、カタレプシーとどこが違うのかという点を説明してください。
○事務局 30秒以上の評価としては、やはり動いてしまうという結果がその時間に出ているということで、煙を吸ってすぐでは止まった状態なのですが、そこまで長く持続するようなということではなかったのかという評価です。
○関野部会長 カタレプシー試験の持続時間の定義に合わなかったということで陰性となっているが、実際には短時間は力なく脱力していたということですね。
○事務局 はい、そうです。
○関野部会長 そういうことなので、委員の皆様その辺りを御理解いただきたいかと思います。御意見、御質問等がありましたら、お願いいたします。Webの確認をお願いします。大丈夫でしょうか。
○事務局 もし質問等ありましたら、挙手ボタン等でお教えいただければと思います。
○関野部会長 それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をお願いいたします。
それでは皆様、異議なしということで。ありがとうございました。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、ニタゼン系化合物であります審議物質マル2について説明いたします。資料No.2-2を御覧ください。資料No.2-2は、ニタゼン系(合成オピオイド系)である審議物質マル2、通称名N-Desethyl isotonitazene及びこれに構造が類似する麻薬指定薬物について、オピオイド受容体活性、中枢神経系への作用、マイクロダイアリシス試験のデータ等をまとめております。
N-Desethyl isotonitazeneは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体への影響も過去に指定した麻薬、指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-2は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の8ページを御覧ください。N-Desethyl isotonitazeneは、Protonitazeneと構造が類似する化合物です。
続いて、9、10ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにN-Desethyl isotonitazeneを0.33、1.0、3.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、10、11ページの表1~3に、N-Desethyl isotonitazeneに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を12ページに載せております。
ここで、写真と併せて実際の動画も御確認ください。動画は三つあります。これは、1.0mg/kg投与群の投与後3分経過したマウスですが、寄りかかり立ちが確認されました。これは、0.33mg/kg投与群の投与後30分経過したマウスですが、挙尾反応、腹ばいでの旋回歩行が確認されました。これは、3.0mg/kg投与群の投与後120分経過したマウスですが、腹ばいでの旋回歩行、しゃっくり様の症状が確認されました。動画は以上です。
続いて、13ページ(2)を御覧ください。自発運動における運動量について、マウスにN-Desethyl isotonitazeneを1.0mg/kg腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。各群マウス4匹を使用し、測定いたしました。立ち上がり回数を除き、測定期間中対照群と比べ大きな変化が認められましたが、投与後の1個体の死亡のために統計的な有意差は得られませんでした。
続いて、14ページ(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。N-Desethyl isotonitazene 約0.8mg/kg腹腔内投与群マウス5匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されました。
続いて、15ページ(4)を御覧ください。N-Desethyl isotonitazeneのヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするために、EC50を算出しております。μ受容体でのEC50は、1.75×10-9mol/L、κ受容体のEC50は算出されませんでした。
以上の結果から、N-Desethyl isotonitazeneは動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化及びμオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であることと考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
続いて、(5)海外での流通事例についてですが、カナダ、ポルトガル、アメリカで流通が確認されております。また、(6)海外での規制状況については、アメリカ、イギリスで規制されていることを確認しております。
審議物質マル2は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きます。最初に、流通実態について、□□委員お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。行動実験の結果等、指定することについて全く問題はないと思いますが、御意見はないでしょうか?ありがとうございました。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をお願いいたします。
異議なしということで。ありがとうございました。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、フェンメトラジン系化合物であります審議物質マル3について説明いたします。資料No.2-3を御覧ください。資料No.2-3は、フェンメトラジン系であります審議物質マル3、通称名3,4-MDPM並びにこれらに構造が類似する指定薬物、抗精神薬について、モノアミントランスポーターへの影響、セロトニンに対する受容体機能評価等のデータをまとめております。
3,4-MDPMは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響についても過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-3の説明は以上です。
それでは、資料No.3の16ページを御覧ください。3,4-MDPMですが、指定薬物であるメフェンメトラジンと構造が類似する化合物です。
続いて、17ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスに、3,4-MDPMを2、20、100mg/kg経口投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、18、19ページの表1~3に、3,4-MDPMに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また20ページには、観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
ここで、写真と併せて実際の動画とともに御確認ください。動画は二つあります。これは、100mg/kg投与群の投与後約30分経過したマウスですが、伏臥位姿勢にて静止、自発運動が少なくスニッフィングが目立ち、狭い範囲での旋回歩行が確認されました。次は、100mg/kg投与群の投与後約60分経過したマウスですが、自発運動が少なくスニッフィングが目立ち、狭い範囲の旋回歩行が確認されております。動画は以上です。
続いて、21ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。全ての期間を通して、対照群と比べ有意な差は確認されませんでした。
続いて、22ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。3,4-MDPM約27mg/kg経口投与群を5匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンで有意に増加することが確認されました。
続いて、23ページの(4)3,4-MDPMのモノアミントランスポーターに対する阻害作用評価のため、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しました。結果は、表4及び24ページの図のとおりで、3,4-MDPMのノルアドレナリントランスポーターに対するIC50は、1.5×10-5mol/Lで、コカイン塩酸塩の約3.1倍。ドパミントランスポーターに対するIC50は、5.3×10-5mol/Lで、コカイン塩酸塩の約20倍。セロトニントランスポーターに対するIC50は、2.4×10-5mol/Lで、コカイン塩酸塩の約6.2倍でした。
続いて、25ページの(5)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性ですが、いずれも算出されませんでした。
以上から、3,4-MDPMは動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化及びモノアミントランスポーターに対する阻害活性において有意な影響が認められていることから、中枢神経系の作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であることが考えられることから、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮、若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えております。
続いて、(6)海外での流通状況についてですが、米国での流通が確認されております。また、(7)海外での規制状況については、ロシアで規制されていることを確認しております。
審議物質マル3は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の方々に御意見を頂きます。最初に、流通実態について、□□委員お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
ご異議はないようです。ありがとうございました。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、カンナビノイド系化合物である審議物質マル4、マル5の2物質について、説明いたします。ここでは、2物質同時に審議を頂きます。資料No.2-4を御覧ください。資料No.2-4は、カンナビノイド系である審議物質マル4、マル5、それからここではマル6も明記しておりますが、今回はマル4、マル5をまず審議していただきます。通称名Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネート、並びにこれらに構造が類似する指定薬物、麻薬についてまとめております。Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートは、マウス投与によるカタレプシー様無動状態、体温低下及びCB1、親和性評価について過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-4の説明は以上です。
資料3の26ページを御覧ください。審議物質マル4及び5について、ここでは二つの審議をお願いいたします。今回の審議物質マル4のΔ9THCプロピオネート、審議物質マル5のΔ8THCプロピオネートは、麻薬であるTHCの1位にプロピオニル基が結合したエステル体です。続いて、27ページ、構造類似物質であるアセチル基の結合したエステル体THCOに関しては、既に指定薬物に指定しております。
続いて、28ページ(1)行動観察を御覧ください。マウスの試験成績となります。マウスに、Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートを陰性対象である10%DMSO含有の生理食塩水とともに腹腔内投与しております。投与後120分までの運動活性及び体温に対する影響を評価しております。結果としては、図1に示しているとおり、Δ9THCプロピオネート及びΔ8THCプロピオネートの投与により、有意なカタレプシー様無動状態及び体温低下効果が確認されております。
29ページになりますが、同じ試験においてCB1受容体拮抗薬であるAM251を前処理することにより、29ページの図2に示しておりますとおり、先ほど認められた作用が抑制されたことから、Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートの作用はCB1受容体を介して発現していることが確認されております。
続いて、30ページ(2)受容体親和性評価を御覧ください。ヒトカンナビノイドCB1受容体を発現させたCHO細胞の培養液中にΔ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネート、陽性対照としてCP-55940を添加し、細胞内カルシウム濃度の変化を蛍光強度として測定しております。結果については、図の3のとおり、Δ8、Δ9ともに10μM、40μMで有意な変化が確認されておりますが、EC50は算出されませんでした。また、これらの変化は行動観察試験と同様に、CB1受容体拮抗薬であるAM251の前処理により、完全に抑制されたとされております。
続いて、31ページ(3)代謝について御覧ください。Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートは、生体内に存在するエステラーゼにより、麻薬であるΔ9THC、Δ8THCがそれぞれ生成する可能性が考えられたことから、in vitroによる代謝実験を行っております。ヒト肝ミクロソーム溶液中にΔ9THCプロピオネート、又はΔ8THCプロピオネートを添加し、37℃条件下で分解物の確認を行ったところ、図4及び図5のとおり、Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートは生体内で酵素化学的加水分解を受け、Δ9THC、Δ8THCが生成することが推察される結果が得られました。
32ページですが、Δ9THCプロピオネート及びΔ8THCプロピオネートは、動物による行動観察の結果及び受容体親和性評価の結果において、有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、それら生体内代謝物は麻薬であるTHCと考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えられております。
我が国での流通状況についてですが、THCプロピオネートを含有すると標榜する製品が販売されていることが確認されております。
(5)海外での規制状況についてですが、事務局で確認した範囲では規制はされておりません。
審議物質マル4及びマル5については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きます。最初に、流通実態について□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例があります。7件について、黄色い液状として検出されております。あと1件が、ハーブといわれる植物細片の状態で検出されております。いずれも、Δ9THCOP及びΔ8THCOPが両方とも含まれた状態で検出されております。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。この物質は、代謝によってTHCになっていくということで、そのもの自体では比較的フェノタイプが出にくいという問題があります。また摂取後かなり時間をおいてから行動異常が観察されているということや、体温低下が観察されています。これらはきちんとアンタゴニスト実験で非常にきれいに阻害されておりますので、受容体への作用は明確なのです。今後このように代謝されてTHCとなり作用がでてくるという種類の化合物が増えてくることが予想されています。この物質のデータに関しては委員の先生方に、指定に関する今後の課題として御検討いただきたいと思います。データについて、何か御質問等はありますか。
またこの後の、□□□□□□□□でもお話が出てくるかと思いますが、この指定薬物としてデータがこのように出ていることを認識しておいていただきたいと思います。このことについて御質問等を受けたいと思うのですが、いかがでしょうか。御意見はありませんか。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました2物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
異議なしということでまとめます。ありがとうございました。
それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、同じくカンナビノイド系化合物となります審議物質マル6について、説明をいたします。先ほどの資料No.2-4に示しました物質、HHCPMです。資料No.3の33ページを御覧ください。審議物質マル6のHHCPMは、指定薬物であるHHCPの1位にメチル基が結合したものです。
続いて、34ページ(1)行動観察を御覧ください。マウスの試験成績となります。マウスに9S,9R-HHCPM、陰性対象である10%DMSO含有生理食塩水を腹腔内に投与し、投与後の運動活性及び体温に対する影響を評価しております。結果としては、図1に示しているとおり、9S,9R-HHCPMの投与により、有意なカタレプシー様無動状態及び体温低下効果が確認されております。
35ページになりますが、同じ試験においてCB1受容体拮抗薬であるAM251を前処理することによって、35ページの図2に示しておりますとおり、先ほど認められた作用が抑制されたことから、9S-HHCPM及び9R-HHCPMの作用はCB1受容体を介して発現していることが確認されております。
続いて、36ページ(2)受容体親和性評価を御覧ください。ヒトカンナビノイドCB1受容体を発現させたCHO細胞の培養液中に、9S-HHCPM及び9R-HHCPM、陽性対照としてCP-55940を添加し、細胞内カルシウム濃度の変化を蛍光強度として測定しております。結果については、図3のとおり、9S、9Rともに10μМで有意な変化が確認されており、EC50はそれぞれ1.755×10-5、1.644×10-5Мでした。また、これらの変化は行動観察試験と同様にCB1受容体拮抗薬であるAM251の前処理により、完全に抑制されたとされております。
37ページですが、9S-HHCPM及び9R-HHCPMは動物による行動観察の結果及び受容体親和性評価の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、これまで指定した指定薬物と同等と考えられますので、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(4)我が国での流通状況についてですが、HHCPMを含有すると標榜する製品が販売されていることが確認されております。
(5)海外での規制状況についてですが、事務局にて確認した範囲では、規制は確認されておりません。
審議物質マル6については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きます。最初に、流通実態について□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例が4件あります。いずれも黄色い液状で、化合物として異性体のR体のみ検出されました。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であるは決議してよろしいでしょうか。
異議なしということで、ありがとうございました。
それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について説明いたします。本件の結果については、次回開催の薬事審議会で報告させていただく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。
また、本日御審議いただいた物質に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障を来たさないよう対応いたします。以上です。
○関野部会長 以上で、本日の議題は終了いたしました。事務局から、次回の予定について連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会日程については、正式に決まり次第、改めて御連絡いたします。以上です。
○関野部会長 それでは、以上をもちまして令和6年度第2回指定薬物部会を閉会いたします。ありがとうございました。
はじめに、人事異動について報告をいたします。7月5日付けで審議官に佐藤が、監視指導・麻薬対策課課長に私、小園が、室長に山本がそれぞれ着任をしております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
本日はWeb形式併用での開催ですが、関野部会長、舩田委員、田中委員には、こちらにお越しを頂いております。当部会の委員数11名のうち、松本委員より御欠席、青山委員、合川委員が遅れての出席との御連絡を頂いておりますが、現時点で8名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
続いて、部会を開始する前に、本部会の公開・非公開の取扱について説明いたします。審議会、総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開とされています。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
それでは、以後の議事進行は、関野部会長にお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点について、事務局よりお願いいたします。
○事務局 本日の部会資料に関しては、事前に各委員宛てに送付いたしております。また、会場出席の委員は、タブレットにて御確認をお願いいたします。指定薬物部会フォルダの中に、資料フォルダ、文献フォルダ、参考資料フォルダの三つのフォルダを付けております。資料フォルダの中には、資料No.1、No.2の1~4、No.3、文献フォルダには文献1~16、参考資料フォルダには参考資料No.1~No.3を収納しております。部会資料についての説明は以上です。また、審議物質の説明中は、画面上に資料を共有いたしますので、併せて御覧ください。
○関野部会長 本日の議題は、指定薬物の指定についてです。それでは、審議に入ります。審議物質について、事務局より説明をお願いします。
○事務局 資料No.1を御覧ください。資料No.1は、本日審議いただく6物質の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2は、本日御審議いただく6物質のほか、構造が類似する指定薬物などについて一覧表としてまとめております。資料No.3は、審議物質の動物実験の結果などについて取りまとめたものです。
それでは、合成カンナビノイド系である審議物質マル1について説明いたします。資料No.2-1を御覧ください。資料No.2-1は、合成カンナビノイド系である審議物質マル1、通称名ADB-5´Br-BUTINACA 及びこれに構造が類似する麻薬、指定薬物について、症状観察、カンナビノイド受容体への影響等のデータを取りまとめております。ADB-5´Br-BUTINACAのカンナビノイド受容体活性、中枢神経系への作用は、過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-1は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の1ページを御覧ください。ADB-5´ Br-BUTINACAは、麻薬であるADB-BUTINACAと構造が類似する化合物です。
2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにADB-5´Br-BUTINACA15mgを添加したマーシュマローリーフ0.25gを燃焼させることで、マウスに薬物をばく露させ、燃焼後15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状について観察された症状を記載しております。また、3、4ページの表1~3にADB-5´Br-BUTINACAに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、5ページに観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
続いて、5ページの(2)カタレプシー試験の結果を御覧ください。カタレプシー試験の結果は、燃焼終了後15分、30分、60分後では、5匹全てが30秒以上動かない陽性を示すことはありませんでした。ここで、実際の動画を御覧ください。動画は二つあります。これは、燃焼終了後、約9分経過後のマウスですが、力なく静止することが確認されております。動画中の時計は動いております。止まっているように見えますが、動画自体は動いております。次に、これは燃焼終了後、約19分経過後のマウスですが、立ち上がりの抑制が確認されました。動画は以上です。
続いて、6ページ(3)ヒトカンナビノイド受容体機能評価を御覧ください。カンナビノイド受容体(CB1及びCB2受容体)に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を載せております。CB1受容体では、S体で1.11×10-9mol/L、R体で1.02×10-7mol/Lでした。また、CB2受容体では、S体で7.80×10-10mol/L、R体で9.66×10-9mol/Lでした。これらの結果から、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性があることが確認されております。
以上から、ADB-5´Br-BUTINACAは、動物による行動観察、受容体親和性評価の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは医薬品医療機器等法に基づき、指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
続いて、(4)海外での流通事例ですが、欧州、カナダ、マレーシア、韓国、アメリカなどで流通が確認されております。また、(5)海外での規制状況については、スウェーデン、イタリア、フィンランドで規制されていることを確認しております。
審議物質は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方から御意見を頂きます。まず、最初に流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 □□委員、ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。特に、カタレプシー試験の陰性についてですが、ビデオによると短時間動かないようですが、これは、カタレプシーとどこが違うのかという点を説明してください。
○事務局 30秒以上の評価としては、やはり動いてしまうという結果がその時間に出ているということで、煙を吸ってすぐでは止まった状態なのですが、そこまで長く持続するようなということではなかったのかという評価です。
○関野部会長 カタレプシー試験の持続時間の定義に合わなかったということで陰性となっているが、実際には短時間は力なく脱力していたということですね。
○事務局 はい、そうです。
○関野部会長 そういうことなので、委員の皆様その辺りを御理解いただきたいかと思います。御意見、御質問等がありましたら、お願いいたします。Webの確認をお願いします。大丈夫でしょうか。
○事務局 もし質問等ありましたら、挙手ボタン等でお教えいただければと思います。
○関野部会長 それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をお願いいたします。
それでは皆様、異議なしということで。ありがとうございました。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、ニタゼン系化合物であります審議物質マル2について説明いたします。資料No.2-2を御覧ください。資料No.2-2は、ニタゼン系(合成オピオイド系)である審議物質マル2、通称名N-Desethyl isotonitazene及びこれに構造が類似する麻薬指定薬物について、オピオイド受容体活性、中枢神経系への作用、マイクロダイアリシス試験のデータ等をまとめております。
N-Desethyl isotonitazeneは、マイクロダイアリシス試験でモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体への影響も過去に指定した麻薬、指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2-2は以上です。
続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の8ページを御覧ください。N-Desethyl isotonitazeneは、Protonitazeneと構造が類似する化合物です。
続いて、9、10ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにN-Desethyl isotonitazeneを0.33、1.0、3.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、10、11ページの表1~3に、N-Desethyl isotonitazeneに対する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を12ページに載せております。
ここで、写真と併せて実際の動画も御確認ください。動画は三つあります。これは、1.0mg/kg投与群の投与後3分経過したマウスですが、寄りかかり立ちが確認されました。これは、0.33mg/kg投与群の投与後30分経過したマウスですが、挙尾反応、腹ばいでの旋回歩行が確認されました。これは、3.0mg/kg投与群の投与後120分経過したマウスですが、腹ばいでの旋回歩行、しゃっくり様の症状が確認されました。動画は以上です。
続いて、13ページ(2)を御覧ください。自発運動における運動量について、マウスにN-Desethyl isotonitazeneを1.0mg/kg腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。各群マウス4匹を使用し、測定いたしました。立ち上がり回数を除き、測定期間中対照群と比べ大きな変化が認められましたが、投与後の1個体の死亡のために統計的な有意差は得られませんでした。
続いて、14ページ(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。N-Desethyl isotonitazene 約0.8mg/kg腹腔内投与群マウス5匹、コントロール群6匹を用いて、モノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンのいずれも有意に増加することが確認されました。
続いて、15ページ(4)を御覧ください。N-Desethyl isotonitazeneのヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするために、EC50を算出しております。μ受容体でのEC50は、1.75×10-9mol/L、κ受容体のEC50は算出されませんでした。
以上の結果から、N-Desethyl isotonitazeneは動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化及びμオピオイド受容体に対するアゴニスト活性の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であることと考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
続いて、(5)海外での流通事例についてですが、カナダ、ポルトガル、アメリカで流通が確認されております。また、(6)海外での規制状況については、アメリカ、イギリスで規制されていることを確認しております。
審議物質マル2は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きます。最初に、流通実態について、□□委員お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。行動実験の結果等、指定することについて全く問題はないと思いますが、御意見はないでしょうか?ありがとうございました。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手をお願いいたします。
異議なしということで。ありがとうございました。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、フェンメトラジン系化合物であります審議物質マル3について説明いたします。資料No.2-3を御覧ください。資料No.2-3は、フェンメトラジン系であります審議物質マル3、通称名3,4-MDPM並びにこれらに構造が類似する指定薬物、抗精神薬について、モノアミントランスポーターへの影響、セロトニンに対する受容体機能評価等のデータをまとめております。
3,4-MDPMは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響についても過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-3の説明は以上です。
それでは、資料No.3の16ページを御覧ください。3,4-MDPMですが、指定薬物であるメフェンメトラジンと構造が類似する化合物です。
続いて、17ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスに、3,4-MDPMを2、20、100mg/kg経口投与し、投与後30、60、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、18、19ページの表1~3に、3,4-MDPMに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また20ページには、観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
ここで、写真と併せて実際の動画とともに御確認ください。動画は二つあります。これは、100mg/kg投与群の投与後約30分経過したマウスですが、伏臥位姿勢にて静止、自発運動が少なくスニッフィングが目立ち、狭い範囲での旋回歩行が確認されました。次は、100mg/kg投与群の投与後約60分経過したマウスですが、自発運動が少なくスニッフィングが目立ち、狭い範囲の旋回歩行が確認されております。動画は以上です。
続いて、21ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。全ての期間を通して、対照群と比べ有意な差は確認されませんでした。
続いて、22ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。3,4-MDPM約27mg/kg経口投与群を5匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンで有意に増加することが確認されました。
続いて、23ページの(4)3,4-MDPMのモノアミントランスポーターに対する阻害作用評価のため、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しました。結果は、表4及び24ページの図のとおりで、3,4-MDPMのノルアドレナリントランスポーターに対するIC50は、1.5×10-5mol/Lで、コカイン塩酸塩の約3.1倍。ドパミントランスポーターに対するIC50は、5.3×10-5mol/Lで、コカイン塩酸塩の約20倍。セロトニントランスポーターに対するIC50は、2.4×10-5mol/Lで、コカイン塩酸塩の約6.2倍でした。
続いて、25ページの(5)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性ですが、いずれも算出されませんでした。
以上から、3,4-MDPMは動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化及びモノアミントランスポーターに対する阻害活性において有意な影響が認められていることから、中枢神経系の作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されている指定薬物と比較して同等であることが考えられることから、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮、若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えております。
続いて、(6)海外での流通状況についてですが、米国での流通が確認されております。また、(7)海外での規制状況については、ロシアで規制されていることを確認しております。
審議物質マル3は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の方々に御意見を頂きます。最初に、流通実態について、□□委員お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例はありませんでした。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
ご異議はないようです。ありがとうございました。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、カンナビノイド系化合物である審議物質マル4、マル5の2物質について、説明いたします。ここでは、2物質同時に審議を頂きます。資料No.2-4を御覧ください。資料No.2-4は、カンナビノイド系である審議物質マル4、マル5、それからここではマル6も明記しておりますが、今回はマル4、マル5をまず審議していただきます。通称名Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネート、並びにこれらに構造が類似する指定薬物、麻薬についてまとめております。Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートは、マウス投与によるカタレプシー様無動状態、体温低下及びCB1、親和性評価について過去に指定した指定薬物と同程度の活性を有することを確認しております。資料No.2-4の説明は以上です。
資料3の26ページを御覧ください。審議物質マル4及び5について、ここでは二つの審議をお願いいたします。今回の審議物質マル4のΔ9THCプロピオネート、審議物質マル5のΔ8THCプロピオネートは、麻薬であるTHCの1位にプロピオニル基が結合したエステル体です。続いて、27ページ、構造類似物質であるアセチル基の結合したエステル体THCOに関しては、既に指定薬物に指定しております。
続いて、28ページ(1)行動観察を御覧ください。マウスの試験成績となります。マウスに、Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートを陰性対象である10%DMSO含有の生理食塩水とともに腹腔内投与しております。投与後120分までの運動活性及び体温に対する影響を評価しております。結果としては、図1に示しているとおり、Δ9THCプロピオネート及びΔ8THCプロピオネートの投与により、有意なカタレプシー様無動状態及び体温低下効果が確認されております。
29ページになりますが、同じ試験においてCB1受容体拮抗薬であるAM251を前処理することにより、29ページの図2に示しておりますとおり、先ほど認められた作用が抑制されたことから、Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートの作用はCB1受容体を介して発現していることが確認されております。
続いて、30ページ(2)受容体親和性評価を御覧ください。ヒトカンナビノイドCB1受容体を発現させたCHO細胞の培養液中にΔ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネート、陽性対照としてCP-55940を添加し、細胞内カルシウム濃度の変化を蛍光強度として測定しております。結果については、図の3のとおり、Δ8、Δ9ともに10μM、40μMで有意な変化が確認されておりますが、EC50は算出されませんでした。また、これらの変化は行動観察試験と同様に、CB1受容体拮抗薬であるAM251の前処理により、完全に抑制されたとされております。
続いて、31ページ(3)代謝について御覧ください。Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートは、生体内に存在するエステラーゼにより、麻薬であるΔ9THC、Δ8THCがそれぞれ生成する可能性が考えられたことから、in vitroによる代謝実験を行っております。ヒト肝ミクロソーム溶液中にΔ9THCプロピオネート、又はΔ8THCプロピオネートを添加し、37℃条件下で分解物の確認を行ったところ、図4及び図5のとおり、Δ9THCプロピオネート、Δ8THCプロピオネートは生体内で酵素化学的加水分解を受け、Δ9THC、Δ8THCが生成することが推察される結果が得られました。
32ページですが、Δ9THCプロピオネート及びΔ8THCプロピオネートは、動物による行動観察の結果及び受容体親和性評価の結果において、有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、それら生体内代謝物は麻薬であるTHCと考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えられております。
我が国での流通状況についてですが、THCプロピオネートを含有すると標榜する製品が販売されていることが確認されております。
(5)海外での規制状況についてですが、事務局で確認した範囲では規制はされておりません。
審議物質マル4及びマル5については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きます。最初に、流通実態について□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例があります。7件について、黄色い液状として検出されております。あと1件が、ハーブといわれる植物細片の状態で検出されております。いずれも、Δ9THCOP及びΔ8THCOPが両方とも含まれた状態で検出されております。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。この物質は、代謝によってTHCになっていくということで、そのもの自体では比較的フェノタイプが出にくいという問題があります。また摂取後かなり時間をおいてから行動異常が観察されているということや、体温低下が観察されています。これらはきちんとアンタゴニスト実験で非常にきれいに阻害されておりますので、受容体への作用は明確なのです。今後このように代謝されてTHCとなり作用がでてくるという種類の化合物が増えてくることが予想されています。この物質のデータに関しては委員の先生方に、指定に関する今後の課題として御検討いただきたいと思います。データについて、何か御質問等はありますか。
またこの後の、□□□□□□□□でもお話が出てくるかと思いますが、この指定薬物としてデータがこのように出ていることを認識しておいていただきたいと思います。このことについて御質問等を受けたいと思うのですが、いかがでしょうか。御意見はありませんか。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました2物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
異議なしということでまとめます。ありがとうございました。
それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、同じくカンナビノイド系化合物となります審議物質マル6について、説明をいたします。先ほどの資料No.2-4に示しました物質、HHCPMです。資料No.3の33ページを御覧ください。審議物質マル6のHHCPMは、指定薬物であるHHCPの1位にメチル基が結合したものです。
続いて、34ページ(1)行動観察を御覧ください。マウスの試験成績となります。マウスに9S,9R-HHCPM、陰性対象である10%DMSO含有生理食塩水を腹腔内に投与し、投与後の運動活性及び体温に対する影響を評価しております。結果としては、図1に示しているとおり、9S,9R-HHCPMの投与により、有意なカタレプシー様無動状態及び体温低下効果が確認されております。
35ページになりますが、同じ試験においてCB1受容体拮抗薬であるAM251を前処理することによって、35ページの図2に示しておりますとおり、先ほど認められた作用が抑制されたことから、9S-HHCPM及び9R-HHCPMの作用はCB1受容体を介して発現していることが確認されております。
続いて、36ページ(2)受容体親和性評価を御覧ください。ヒトカンナビノイドCB1受容体を発現させたCHO細胞の培養液中に、9S-HHCPM及び9R-HHCPM、陽性対照としてCP-55940を添加し、細胞内カルシウム濃度の変化を蛍光強度として測定しております。結果については、図3のとおり、9S、9Rともに10μМで有意な変化が確認されており、EC50はそれぞれ1.755×10-5、1.644×10-5Мでした。また、これらの変化は行動観察試験と同様にCB1受容体拮抗薬であるAM251の前処理により、完全に抑制されたとされております。
37ページですが、9S-HHCPM及び9R-HHCPMは動物による行動観察の結果及び受容体親和性評価の結果において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、これまで指定した指定薬物と同等と考えられますので、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(4)我が国での流通状況についてですが、HHCPMを含有すると標榜する製品が販売されていることが確認されております。
(5)海外での規制状況についてですが、事務局にて確認した範囲では、規制は確認されておりません。
審議物質マル6については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きます。最初に、流通実態について□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例が4件あります。いずれも黄色い液状で、化合物として異性体のR体のみ検出されました。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きます。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であるは決議してよろしいでしょうか。
異議なしということで、ありがとうございました。
それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について説明いたします。本件の結果については、次回開催の薬事審議会で報告させていただく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。
また、本日御審議いただいた物質に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障を来たさないよう対応いたします。以上です。
○関野部会長 以上で、本日の議題は終了いたしました。事務局から、次回の予定について連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会日程については、正式に決まり次第、改めて御連絡いたします。以上です。
○関野部会長 それでは、以上をもちまして令和6年度第2回指定薬物部会を閉会いたします。ありがとうございました。
( 了 )
- 備考
- 本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。
照会先
医薬局
監視指導・麻薬対策課 課長補佐 藤井(2779)