令和6年11月21日 革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品創出のための官民対話 議事録

医政局医薬産業振興・医療情報企画課

日時

令和6年11月21日 16:00~18:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター「ホール15D」

出席者

  1. (1)産業側
    医薬品・再生医療産業界
    岡田 安史  (日本製薬団体連合会会長)
    宮柱 明日香 (日本製薬工業協会副会長)
    ハンス クレム(米国研究製薬工業協会(PhRMA)日本代表)
    岩屋 孝彦  (欧州製薬団体連合会(EFPIA)会長)
    志鷹 義嗣  (再生医療イノベーションフォーラム代表理事会長)
    医療機器産業界
    山本 章雄  (日本医療機器産業連合会会長)
    高木 俊明  (日本医療機器産業連合会副会長)
    森川 智之  (米国医療機器・IVD工業会副会長)
    出井 正   (欧州ビジネス協会 医療機器・IVD委員会委員長)
    江田 信一    (日本臨床検査薬協会会長)
  2. (2)アカデミア
    中釜 斉  (国立がん研究センター理事長)
    大津 欣也 (国立循環器病研究センター理事長)
  3. 三島 良直   (日本医療研究開発機構(AMED)理事長)
  4. 岩﨑 甫  (山梨大学副学長 研究推進・社会連携機構副機構長)
  5.  
  6. (3)行政庁
    福岡 資麿  (厚生労働大臣)
    仁木 博文  (厚生労働副大臣)
    野中 厚   (文部科学副大臣)
    加藤 昭良  (経済産業省大臣政務官)
    藤原 康弘  (医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

議事

○水谷課長 定刻より少し早いですが、皆様おそろいのようでございますので、ただいまより「革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品創出のための官民対話」を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中、皆様、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。司会進行を務めさせていただきます、厚生労働省医薬産業振興・医療情報企画課長の水谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 この官民対話は、我が国における医薬品・医療機器・再生医療産業がさらに成長していくため、産業界と行政のトップとアカデミアが政策対話の場を持つことにより、産業界をめぐる現状や課題を共有することを目的として開催しております。ぜひ自由闊達な御議論をいただければと考えてございます。
 なお、この会議は、冒頭はプレスが入りますが、挨拶が終わりました後はプレスに御退席いただきます。会議後は、厚生労働省で記者の方に、どういった議論があったか、ブリーフィングをさせていただきます。
 また、議事録につきましても厚生労働省のホームページにおいて公表させていただきますので、あらかじめ御了承いただければと思います。
 お手元の資料1に、本日の御出席の方々のお名前を記載させていただいてございます。本日の御出席者の御紹介は、お手元の座席表に代えさせていただきます。
 また、仁木厚生労働副大臣、それから、城医薬局長につきましては、公務の都合上、遅れて参加させていただきます。
 それでは、本会議に御出席いただいております各省の政務の方々より御挨拶を賜ります。
 まず、本会議を主催しております福岡厚生労働大臣から御挨拶を賜ります。福岡大臣、よろしくお願いいたします。
 おかけになったままで結構です。お願いいたします。
○福岡厚生労働大臣 御紹介いただきました、10月から厚生労働大臣を拝命しております福岡資麿と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、お忙しい中「革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品創出のための官民対話」に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 産業界の皆様におかれましては、日頃より医薬品・医療機器の開発等に御尽力いただいておりますこと、改めて感謝を申し上げさせていただきます。
 優れた医薬品・医療機器の研究開発のためには、国内外の企業、ベンチャーキャピタル、アカデミア、行政といったプレーヤーが相互につながり協力し合うエコシステムを構築し、イノベーションを推進する環境整備を行っていく必要があります。
 このたび、医薬品につきましては、海外の実用化ノウハウを有する人材・資金の積極的な呼び込みや、創薬クラスターの強化、ポテンシャルのあるアカデミアシーズ等の実用化に向けて、基礎研究の段階からの創薬を見据えた支援、国際的に競争力のある革新的な創薬技術に対応できる臨床試験の体制整備といった施策に取り組んでいきます。
 医療機器につきましては、優れた医療機器の開発促進、迅速な実用化に向けまして、医療機器開発を担う人材のリスキリング、スタートアップ企業に対する開発早期段階からの出口戦略を見据えた伴走支援、海外を含めた関係機関等のネットワーク強化を行う産業振興拠点の形成に取り組んでまいります。
 こうした取組におきましては、官民一体となって進めていきたいと考えておりまして、今後の施策をよりよいものとするため、本日は皆様方から忌憚のない御意見、御提案をいただきますようお願いをさせていただきたいと思います。
 この官民対話が各産業の発展につながる実り多いものとなることを御期待申し上げさせていただきまして、御挨拶に代えさせていただきます。
 ちょっとお聞き苦しかったと思います。すみません。失礼します。
○水谷課長 大変申し訳ございません。今、対応してございます。
 すみません。進行の関係上、引き続き、続けさせていただきます。
 続きまして、城内実国務大臣より御挨拶を賜りたいと思いますが、公務の都合上、本日は欠席と伺ってございますので、代読として、内閣府健康・医療戦略推進事務局の中石局長、よろしくお願いいたします。
○中石局長 城内大臣が公務のため、大変恐縮でございますが、私、内閣府健康・医療戦略推進事務局の中石より大臣の御挨拶を代読させていただきます。
 内閣府は、健康・医療戦略の下、関係省庁と連携し、AMEDを通じて、革新的な医薬品・医療機器・再生医療等製品の創出に向けた様々な研究開発支援を実施しています。
 国民の皆様に研究開発の成果がいち早く届くためには、シーズ創出、臨床試験、製造、医療実装の全ての局面において、官民が適切な役割分担を行い、連携を深めていくことが必要だと考えております。こうした観点を重視しまして、令和7年度、来年度から始まる第3期健康・医療戦略の策定に向けた検討をただいま進めているところでございます。
 本年の官民対話におきましても、皆様から引き続き、医薬品・医療機器・再生医療等製品産業のさらなる発展に向けた忌憚のない御意見を伺えればと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 内閣府特命担当大臣、城内実。
 以上でございます。
○水谷課長 どうもありがとうございました。
 続きまして、野中文部科学副大臣より御挨拶を賜ります。
 副大臣、どうぞよろしくお願いします。
○野中副大臣 文部科学省でございます。
 本日のように、産業界、そして、行政のトップ、また、アカデミアが議論を深めることは医療分野のイノベーションの創出を行う上でも極めて有意義であると考えております。
 私ども文部科学省では、主にアカデミアにおける研究費の支援と基盤構築の両面から、革新的な医薬品・医療機器・再生医療等製品の創出に向けた研究開発を推進しております。
 令和7年度概算要求におきまして、医学系研究支援プログラムを創設し、内閣府や厚労省とも連携しながら、医薬品・医療機器等のシーズ創出につながる研究力の強化に取り組むとともに、経産省との連携により、次世代iPS細胞の自動製造技術の研究開発を強化することを盛り込んでいるところであります。
 我が国初の革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品の創出に向けて、皆様と一丸となって取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○水谷課長 どうもありがとうございます。
 続きまして、加藤経済産業大臣政務官より御挨拶を賜ります。
 どうぞよろしくお願いいたします。
○加藤大臣政務官 経済産業大臣政務官を拝命しました加藤明良でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 日頃から医薬品産業、再生医療産業、そして、医療機器産業の皆様方におかれましては、国民の生命と、そしてまた、健康を守っていただいている最前線で御活躍いただいておりますことに改めて感謝を申し上げます。
 国民の健康はもちろん、この業界におきましては、これからの経済の発展にも本当に大きな影響を及ぼす産業界でございます。経済産業省としましては、これからの産業に対して、ベンチャー企業、また、イノベーションの創出など、これも力を入れていかなければいけない分野でございます。また、グローバル展開を支援することにも、これからも皆様方の御意見を伺いながら、しっかりと、また御支援にも力を注いでいかなければなりません。
 また、医薬品産業と再生医療産業については、製造技術の開発支援にもしっかり取り組ませていただくこと、これからも皆様方のお力になっていきたいと思っております。
 これからの産業の競争力強化の観点から、引き続き、必要な政策を積極的に実施してまいりますので、皆様方からの本日は忌憚のない御意見をいただきますようによろしくお願いを申し上げます。
○水谷課長 どうもありがとうございました。
 加藤政務官は、公務の御都合がございまして、ここで御退席と伺っております。
○加藤大臣政務官 ありがとうございました。
○水谷課長 それでは、冒頭の御挨拶は以上とさせていただきますので、プレスの方は御退室をよろしくお願いいたします。
 野中副大臣もこちらで御退席されます。
○水谷課長 それでは、本日はまず、厚生労働省から資料の御説明の時間をいただきまして、その後、産業界、アカデミアの皆様より資料に沿って御説明をいただきます。その後、意見交換の時間を取らせていただいてございます。
 早速でございますが、内山医薬産業振興・医療情報審議官より厚生労働省の資料説明を行わせていただきます。お手元の資料2を御覧いただければと思います。
 よろしくお願いします。
○内山審議官 資料2を御覧ください。
 まず、1ページ目は医薬品に関する取組の御紹介でございます。マル1からマル6まで6点書かせていただいてございます。
 マル1のドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消についてですけれども、日本向けの医薬品開発を促進する観点からの見直しをはじめとした取組を行っているところでございます。
 次に、マル2の創薬力の強化につきましては、本年7月30日に総理の下で「創薬エコシステムサミット」が開催され、構想会議の中間取りまとめを踏まえた工程表を公表しました。現在検討中の総合経済対策においても、アカデミア等のスタートアップとの間の創薬シーズの橋渡しや各地の創薬クラスターの発展につながる設備投資支援等を強化することを検討してございます。
 マル3の治験環境の整備につきましては、国内での治験の実施の誘致に向けてワンストップサービスを行う窓口の設置などを検討してございます。
 マル4の薬事制度上の対応で、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消等に向けて「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」の取りまとめを本年4月に公表し、それぞれの課題について対応を進めてございます。
 マル5の薬価制度上の対応につきましては、令和6年度薬価改定におきまして、革新的医薬品のイノベーションの適切な評価を推進するための薬価上の措置を行いました。令和7年度薬価改定に向けて、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討してまいります。
 マル6の医療情報の利活用推進につきましても、情報基盤の整備等や医療情報の二次利用について、引き続き、関係審議会において議論を進めてまいります。
 次に、2ページ、3ページは医療機器に関する取組でございます。
 マル1医療機器スタートアップエコシステムの構築として、優れた医療機器等を創出できるオープンイノベーションエコシステムの構築のため、産業振興拠点の整備のための予算要求を行っているところでございます。
 マル2の治験環境の整備も含めた薬事制度に係る対応としては、医療機器に関する広告規制に関し、産業界のニーズを踏まえ、選定した品目について、一定の条件の下、広告を可能としましたけれども、今後も疾患の普及啓発を目的とした広告についての研究班の枠組みを活用した検討を行ってまいります。また、QMS調査制度の運用上の制度の検討や、分散型臨床試験の実施体制の整備、臨床研究に関する届出手続の合理化を行っております。
 マル3の医療保険制度に係る対応としましては、令和6年度診療報酬改定において、イノベーションに対する評価の推進に関し、チャレンジ申請の対象範囲の見直し、経済性加算の新設等を行うほか、プログラム医療機器に関し、評価療養・選定療養の新設を行い、また、市場拡大再算定に関しても基準の明確化を実施いたしました。
 マル4の医療機器等の安定供給に係る対応としましては、これも令和6年度診療報酬改定におきまして、不採算品再算定を実施するとともに、安定供給に係る報告制度等に係る課題や対応案の検討を行うために、医療機器等のサプライチェーンリスク評価、それから、安定供給確保事業実施に関する予算要求を行っているところでございます。
 マル5の医療DX・データの利活用推進につきましては、医療機器製品データベースの構築に向けた検討を進めているほか、研究班において、医療機関における医療機器のサイバーセキュリティ対策の在り方について検討してございます。
 最後、マル6、その他の支援についてですけれども、医療技術の国際展開のための外国の医療従事者等の育成支援や、医師の働き方改革等に資する医療機器等の医療機関導入に当たっての支援等を通じまして、医療機器の産業振興に取り組んでいるところでございます。
 簡単ですが、説明は以上です。
○水谷課長 続きまして、医薬品・再生医療産業界より、御提出いただきました資料に基づきまして御説明をお願いしたいと思います。
 大変恐縮ではございますが、事前にお知らせをさせていただいている時間の範囲内で説明をお願いできれば幸いでございます。
 それでは、まず、日本製薬団体連合会を代表いたしまして、岡田会長、よろしくお願いいたします。資料は3-1になります。
○岡田会長 日本製薬団体連合会の岡田でございます。本日は、このような場で発表の機会をいただきまして誠にありがとうございます。日薬連を代表しまして、福岡大臣をはじめ、政府の皆様方への要望をお話しさせていただきたいと思います。
 2ページを御覧ください。こちらは岸田政権の下で7月に開催されました創薬エコシステムサミットにおける総理の御発言でございます。
 この赤字のところに書いてございますように、医薬品産業は「我が国の今後の成長を担う基幹産業」という表現をいただいております。もちろん、新政権となりましたけれども、ぜひとも、このような意思を受け継いでいただいて、強力な医薬品産業政策を立案・実行いただきたくお願いを申し上げます。
 3ページを御覧ください。こちらは6月に出されました「骨太の方針」における来年の中間年改定に関する記載の抜粋でございます。
 「イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」。昨日は、自公国民のディスカッションによって「踏まえて対応する」という文言に、さらに踏み込んだ表現に変わっております。いずれにしましても、これは機械的に過去を踏襲して薬価改定を行わないということであると理解しております。
 4ページを御覧ください。これは過去の薬価改定の歴史を簡単に1枚のスライドにしたものでございます。
 赤でかかったところが過去の中間年改定です。令和3年(2021年)は初めて中間年改定が行われたときで、平均乖離率は8%ございました。それに対して0.625倍という倍率が掛けられて、5%を超えるものについては薬価改定の対象にすることになりました。
 そして、令和5年、2回目の中間年改定は、結果として0.625倍がそのまま適用されて、4.375%以上を超える品目が対象になりました。これは言い換えますと、決して価格乖離が大きいと言える水準ではないこともありまして、しかるに、この下にありますように、合わせて1,100品目が不採算、赤字になりまして、不採算品再算定が適用されたということでございます。この令和6年についても、さらに2,000品目ぐらいまで、この不採算品再算定が広がっている状況でございます。これは現行の市場実勢価改定方式が、ある意味、原価を超えて堤防決壊している状況であると言っても過言ではない状況であると思います。ぜひとも、本質的な議論をさせていただくタイミングであることを改めて申し上げたいと思います。
 次の5ページを御覧ください。こちらも何度も機会ありますごとに取り上げておりますけれども、医薬品原材料のコストの上昇でございます。
 円安・物価高騰、そして、もちろん、賃上げもしなければいけないという影響を受けて、医薬品の製造コストは上昇し続けている状況でございます。
 6ページを御覧ください。こちらは産業別の賃上げ状況を示した資料であります。
 これはUAゼンセン系から産業別の賃上げ率をずっと並べたもので、残念ながら、業種別で見ますと、医薬が最も低い水準でございます。冒頭御紹介いたしましたように、基幹産業との期待を背負いながら、一方では、実はこのような、賃金等の状況もあって、離職がかなり進んでおります。産業の空洞化がこのままでは本当に起きてしまうことを懸念しておりまして、ぜひこういったことについても御考慮いただきたいと思っております。
 最後、7ページで、我々日薬連からのぜひともお伝えしたい要望は、中間年改定廃止をお願いしたいということでございます。
 この下に折れ線グラフが2本あります。医療費に占める薬剤費の比率がこの薄いブルーの線、下がいわゆる市場の薬価乖離率であります。かつては医療費の半分ぐらいを薬剤が占めていて、また、市場乖離も薬価差もすごく大きい時代がありました。これを正すということで市場実勢価改定方式が導入され、この医療費に占める薬剤費の比率はほぼ国際標準の2割ちょっとになり、恐らく間もなく判明するであろう乖離率は6%を切ってくると思っております。
 既に相対的に見ても絶対的に見ても大きいとは言えない乖離率という中で、ぜひとも中間年改定を廃止いただいて、今、これによって本当に種々生じている課題に向き合う本質的な議論をぜひともお願いしたいということを申し上げまして、私からの発表は以上とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、日本製薬工業協会の宮柱副会長、説明をお願いいたします。資料は3-2になります。
○宮柱副会長 日本製薬工業協会副会長の宮柱でございます。本日は、このような貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。製薬協を代表しまして私より発言させていただきます。
 2枚目をよろしくお願いいたします。
 昨年12月の創薬力構想会議にて日本の創薬力向上を目指す議論が開始され、本年7月の創薬エコシステムサミットでは日本が世界有数の創薬の地となること、医薬品産業を日本の成長を担う基幹産業として位置づけることが政府より宣言されました。また、10月の新しい資本主義実現会議でも重点施策の一つとして創薬力強化が挙げられまして、政府の強力なコミットの下で施策の着実な実行が期待されております。
 2024年度の薬価制度改革では、従来の薬剤費抑制の方向からイノベーション評価の方向に大きく転換がなされました。さらに、薬事規制のあり方に関する検討会を経て、グローバル水準の治験・薬事環境の実現に向けた見直しも図られました。それらにより、製薬協、PhRMA、EFPIAの3団体合同アンケート調査では、日本市場の魅力が向上し、国内外の製薬企業が日本国内での製品開発に前向きになったことが示されております。まさに今、かつてないイノベーション推進の流れができ始めていると我々は考えております。
 3枚目をお願いします。
 日本の創薬力強化に向けては、アカデミアでの研究を実用化へと進めていくところに課題が残っていると捉えており、製薬協として3つの点に取り組んでおります。1つ目は、産学連携で基礎研究を推進する、競争力のあるコンソーシアムの設立です。幾つかのテーマではAMED事業に採択され、研究を進めております。2つ目は、アカデミア研究に対して医薬品産業の視点を導入いただく取組です。AMED事業であるAMED-FLuXには、15社から29名がアドバイザー登録をしております。3つ目は、人材育成でございます。不足している生物統計家に対する資金拠出や学生を含めたバイオ医薬品製造人材に対して、製薬企業による教育、そして、講師派遣を行っております。
 創薬力強化に向けた取組への後押しとなる政府への要望を2点挙げさせていただきます。まずは、AMEDの強化となります。現在、来年度の第3期健康・医療戦略及び計画がまさに検討中と承知しております。創薬力強化には、アカデミアの基礎研究強化、実用化する研究の強化が欠かせません。それらを両立できるよう、AMEDの一層の運用体制の強化を望みます。次いで、治験環境、バイオ製造、そして、データ利活用の基盤整備です。政府には引き続き、強いリーダーシップを期待しております。個々のプレーヤーの強化と連携、また、創薬基盤の整備こそが創薬エコシステム構築の鍵となります。産学官が一体となり、世界とつながる創薬エコシステムの実現を目指していきたいと考えております。
 次、4枚目をお願いいたします。
 2024年度は重要な制度改革が実行されております。製薬協では、メリハリを踏まえた薬価上のイノベーション評価の在り方、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消に向けて中医協等で提案を行ってまいりました。現在、2024年度に見直された薬事・薬価制度を踏まえ、その効果検証、各企業の行動変容の促進に努めております。
 日本の医薬品市場のさらなる魅力向上に向けて、政府への要望です。政府におかれましては、グローバル基準での薬事制度設計に向けて、検討会での合意事項を迅速かつ確実に実行いただきたいと思います。また、薬価については、新たな価値を評価する仕組みを含むイノベーションの評価、中間年改定の廃止、費用対効果評価の適切な運用を強く望みます。
 5枚目、最後のスライドとなります。
 新政権には、製薬産業が成長産業、基幹産業であり続けるために、イノベーションフレンドリーな流れを引き継ぎ、イノベーションを創出する政策と薬価政策を一貫した国家戦略として継続的に策定・実行することをお願いしたいと思います。
 我々製薬協としましても、患者さんのため、国民のため、日本のために、産学官での連携を強化しながら、革新的な医薬品の創出により一層取り組んでまいります。
 以上でございます。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、米国研究製薬工業協会のハンス・クレム日本代表、説明をお願いいたします。資料は3-3になります。よろしくお願いします。
○ハンス日本代表 御紹介ありがとうございます。米国研究製薬工業協会日本代表のハンス・クレムでございます。本日の官民対話を開催し、また、日本のバイオ医薬品イノベーションエコシステムと創薬におけるリーダーシップを回復させるべく御尽力くださっております福岡厚生労働大臣に、まず、感謝の意を表したいと思います。
 2ページです。
 政策というものは、産業界の研究開発投資や患者の新薬へのアクセスに大変強い影響を与えるものでございます。ところが、長年にわたる特許、医薬品の価格引下げにより、日本は競争上、大変不利な立場に置かれております。その結果として、産業界の研究開発投資が減少し、日本がイノベーションを最も必要とされているときにドラッグ・ロスが拡大してしまいました。
 2012年から2021年末までに欧米諸国で上市された新薬のうち、日本で上市されなかった品目は225品目、また、48%に至っては開発すら着手いたしておりません。欧米で現在、臨床開発第III相にあります新薬589品目を見てみますと、そのうち69%は日本での開発が行われておりません。こういった医薬品の多くは、感染症、がん、アルツハイマー病など、アンメットメディカルニーズの高い主要分野となっております。ということは、このエビデンスから見ても分かりますように、さらに深い政策改革がなければ日本はさらに後戻りをしてしまうことになってしまいます。私たちはこういった傾向を逆転させなければなりません。
 3ページをお願いいたします。
 日本のバイオ医薬品のイノベーションエコシステムは、過去10年間近くにわたる薬価制度の変更と特許医薬品の毎年の価格引下げを受け、競争上、大変不利な状況にあります。このような状況にもかかわらず、聞いたところによりますと、政府は中間年改定の際に適用されるルール、例えば新薬創出加算の早期累積額控除であったり市場拡大再算定などをさらに拡大し、また、費用対効果分析の役割をさらに拡大する可能性がある。そういった議論を進めていると聞いております。
 このようなイノベーションに反するような政策は、せっかく始まりました2024年度薬価制度改革の前向きな流れを後退させるもので行うできではありません。その代わりに、日本が取るべき道といたしましては、薬価制度というものはイノベーション等、患者のアクセスを奨励するものである。そういった認識をさらにもう一度確認すべきであると私は思います。
 この先の選択肢は明らかだと思っております。一つの選択肢は、せっかく始まりましたこのような前向きな流れをさらに継続し、新薬への患者アクセスの迅速化、創薬の強化、投資の拡大を実現するために、イノベーションをもう一度最優先課題としてその道を進む。もう一つは、日本は後退していくような道を選択してしまうこと、つまり、ドラッグロスの悪化をさせ、また、研究開発投資の減少の道をたどり、そして、患者と経済に不利益をもたらす。こういった道を通るか、どちらかです。
 4ページ目をお願いいたします。
 2015年から2022年にかけて、革新的医薬品に対する世界の研究開発投資が大幅に増加している一方で、世界全体に占める日本の割合は9%から5%へと減少しております。言い換えれば、世界で最も重要な革新的な分野の一つを、日本は逃しているのです。
 イノベーションを促進するための改革を行いますと、革新的製薬産業における世界の研究開発投資における日本のシェアを高める可能性を秘めております。また、バイオ製薬企業が世界の研究開発投資の1%を日本に追加投資すれば、それは日本の研究開発投資水準が3500億円増加することを意味しております。
 5ページをお願いいたします。
 PhRMAは、ドラッグ・ロスをなくし、経済成長を促進するためには、より大胆な革新的医薬品産業に関する国家戦略が必要であると考えています。
 私どもは、内閣官房の下に省庁横断的な常設組織を設置し、この戦略を策定し、そのプロセスを通じて、世界のバイオ医薬品業界と定期的に関わるべき、交わるべきだと考えます。そして、そのような組織としては以下のようなことを行っていただければと思っております。まず、関係省庁に対し、目標、政策、具体的な目標KPIを含む国家戦略を策定するように指示する。KPIを適切に運用し、戦略の実行が目標どおりかどうかを評価し、目標の進捗を確実にするための措置を講じる。多国籍バイオ製薬企業から定期的に意見を聞くルートを確立する。
 来年から始まります官民協議会におきまして、日本のエコシステムにおける研究開発規制、償還の課題に対応するため、政策行動を特定し実施すべきであると考えます。具体的には、協議会では以下3つのポイントに焦点を当てるべきだと考えます。1点目は、イノベーションを適切に評価し、それに報いる透明性があり、かつ、イノベーションを促進する薬価制度となるようにすることです。2点目は、産学連携を促進するため、研究開発とバイオテクノロジー・スタートアップのための環境を強化することです。3点目は、日本の薬事規制環境を改善し、承認審査プロセスにおける日本特有の規制要件を撤廃することです。
 6ページをお願いいたします。
 エコシステムのあらゆる部分がうまく機能するような大胆な国家戦略は、日本にとって医療面でも経済面でも大きな利益をもたらし、また、政府が国内の重要な目標を達成するのに役立つと考えます。そして、以下のポイントが含まれることが重要だと思います。まず、創薬を強化し、最新の医薬品への患者アクセスを迅速化する。より効果的で持続可能な医療システム。高齢化社会を背景とした投資、雇用、経済成長の拡大。
 最後に、2つの点を強調し、私の本日の発言を終わらせたいと考えております。
 まず第1に、国際競争力のあるバイオ医薬品のイノベーションエコシステムを回復するためには、新薬創出加算の累積控除の早期返上や、市場拡大再算定などといった中間年改定の薬価改定ルールの拡大や、あるいは費用対効果分析の役割拡大などといった、後戻りを決して許してはならないと思います。
 第2に、まず、薬価制度改革におきましては、薬価制度はイノベーションと患者アクセスにインセンティブを与えるものでなければならないことをもう一度確認し、それによって2024年度改革の非常に前向きな機運をさらに推し進めるべきであると考えます。
 私たちPhRMAといたしましては、科学・経済成長、そして、日本の患者のための新薬へのタイムリーなアクセスを促進する長期的な政策・解決策を政府と一緒に考えていきたいと思います。日本の大切なパートナーとして、PhRMAといたしましては、これらの目標実現に向け、さらに貢献していきたいと考えております。
 ありがとうございます。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、欧州製薬団体連合会の岩屋会長、お願いいたします。資料は3-4になります。
○岩屋会長 欧州製薬団体連合会(EFPIA)ジャパンの会長をしております岩屋でございます。本日は、こうした機会をいただきまして誠にありがとうございます。
 資料の2枚目を御覧ください。
 この資料の左側にございますのが、昨年の官民対話におきまして、イノベーションをいち早く日本の患者さんに届け、日本の国民の健康寿命に貢献するために、我々EFPIAが求めておりましたものが左側にございます。御覧のように、薬価制度、薬事制度、それから、患者参画の3点につきまして、昨年のこの場でお話をさせていただきました。その後、政府与党の先生方のリーダーシップ、それから、ここに御臨席していらっしゃいます多くの方の御努力によりまして、令和6年度におきましては、最初に内山審議官からもお話がありましたけれども、大変多くの改革をしていただくことができました。
 まず、令和6年度薬価制度改革におきまして、イノベーションの評価、あるいはドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消に向けた対応を取っていただきました。また、創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会での議論を反映いただきまして、薬事制度につきましても様々な改革を行っていただいております。患者参画につきましては、創薬エコシステムサミットを開催していただく中で、患者団体の方も参画されていて、こうした形で、我々が求めておりました提案について非常に前向きな対応をしてくださったことにまず感謝を申し上げたいと思います。
 今、我々が置かれている状況といたしましては、この方向での議論、この方向での改革が継続されますれば、我々が考えておりますような日本の創薬環境、あるいは日本の医薬品市場が成立するのではないか。そういうふうに期待を持って考えているところでございます。
 次のページをお願いいたします。
 そうした議論を今後も続けてまいりますときに、官民でこの議論が行われていくことが大変重要である。これはずっとそういうふうに考えておりますが、EFPIAジャパンといたしましては引き続き、その中でまた患者の声も反映されるような患民産官学の枠組みで、医薬品の創薬からアクセスまで整合性の取れた戦略を議論し、関係省庁、機構と共に推進・実行する。これが必要であると考えております。
 イノベーションの促進と持続可能な医療の両立を目指すためには、イノベーション創出を推進するための研究開発・薬事規制環境の改善、それに、革新的医薬品の価値を踏まえた適切かつ透明性の高い薬価制度の構築、効率的で質の高い医療環境の実現と治療へのアクセスと、この川上から川下まで全体的に整合性の取れた戦略を議論することが大変重要であると考えておりますことを重ねて強調したいと思います。
 日本がさらに魅力的な市場となり、また、日本国民の医療へのアクセスが途切れることのないよう、EFPIAジャパンといたしましても引き続き、議論に積極的に参加していきたいと考えております。
 私どもの発表は以上でございます。どうもありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、再生医療イノベーションフォーラムの志鷹会長、お願いいたします。資料は3-5になります。
○志鷹会長 FIRM会長の志鷹でございます。本日は発表のお時間をいただきありがとうございます。
 2ページ目を御覧ください。
 こちらでは再生医療関連の環境分析を示しております。このスライドで強調したいことは、グローバルでは今まさに大きな波が来ている状況にあるということであります。
 我が国の再生医療等製品は、2021年から2023年の間に11製品が承認され、着実にその数が増えてきております。iPS細胞製品の研究開発も順調に進展しております。欧米でも、この数年で数多くの細胞医療・遺伝子治療製品が承認され、特に米国では昨年1年間で7製品が承認されております。
 さらには、台湾や韓国など、アジアの地域でも再生医療を促進する、推進する動きが出てきております。この流れに乗り遅れることなく、日本の再生医療を推進していく必要があると考えております。
 次をお願いいたします。
 御存じのように、再生医療はゲームチェンジャーとなり得る新しいモダリティであります。イノベーションの推進に向けて期待する今後の方策として、FIRMとしては大きく2つお願いしたいと考えております。
 一つは、産業化支援であります。具体的には、バリューチェーンを通した再生医療エコシステムを構築するため、細胞・遺伝子ベクターの国内製造に係る自動化等の技術支援体制の構築、創薬初期から後期まで切れ目ない投資・伴走支援環境の整備、再生医療の多様性を踏まえたルールや評価方法の策定並びに国際的な標準化や規制調和の推進をお願いしたいと考えております。
 もう一つが、医療保険制度改革であります。持続可能な医療保険制度を整備しながらも、従前の治療概念を覆す再生医療等製品は、大きなリスクに備える互助システムである国民皆保険制度で担い、革新的な治療へのアクセス及び医療の質の維持向上を実現すべきであると考えており、イノベーションを適切に評価し得る新たな価格算定の仕組みの速やかな導入、医療機関への適切な対価・支援の提供、早期患者アクセスのために、条件及び期限付承認された再生医療等製品の公的医療保険適用の継続をお願いいたします。
 4ページを御覧ください。
 最後に、再生医療の普及・産業化には、研究開発から新規治療法の提供、イノベーションの適切な評価による投資回収のサイクルを回していく必要があります。
 今後、iPS細胞関連の製品や海外からの製品も増えることが見込まれ、既存の製品については適切なイノベーションの評価による投資回収が必要になってきております。このサイクルを持続的に回すためにも、本日申し上げた施策を御検討いただきますようよろしくお願い申し上げます。
 説明は以上です。御清聴ありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、医療機器業界から御説明をお願いします。
 こちらも、事前にお知らせさせていただいております時間の範囲内でお願いできればと思います。
 それでは、まず、日本医療機器産業連合会の山本会長、お願いいたします。資料は4-1になります。
○山本会長 日本医療機器産業連合会(医機連)の山本でございます。本日は官民対話におきまして、福岡大臣をはじめとしまして、4府省の政務の方々と意見交換をする機会をいただきまして、この場をお借りして御礼申し上げます。
 早速ですけれども、資料に沿って説明いたします。
 まず、1ページ目を御覧ください。
 本日は、イノベーションの推進に向けた今後の施策について、医療機器業界を取り巻く現状と展望を踏まえまして、今年6月に作成いたしました新医機連産業ビジョンというものがございますけれども、これの基本的な考え方を御紹介した後で、官民が共同して取り組むべき今後の施策の方向性について説明いたします。
 2ページを御覧ください。
 これは周りの環境でございまして、少子高齢化・人口減少、技術革新の加速化、グローバル競争の激化、デフレからインフレへの転換という状況の中で、我々としましては、自ら開発したイノベーションの成果によって全世界の人々に医療と健康に貢献する使命を担って活動していきます。
 3ページです。
 この状況の中で、6月に「いつでもどこでも安心して受けられる医療と健康への貢献」ということで産業ビジョンをつくったわけですけれども、その骨子になるのが7つございまして、一つはイノベーションの実現に向けた環境整備、2つ目が安定供給の実現に向けた取組、3つ目が医療機器・技術のグローバル化を通じた発展、4つ目が国民のヘルスリテラシー向上への貢献、5つ目が地球環境と医療の質のバランシング、それから、人材獲得と育成、信頼される産業への研さんになります。これは我々の委員会を通じまして、このビジョンを実現してまいります。
 4ページ目を御覧ください。
 4ページ目は、これを踏まえまして、イノベーション推進に向けた今後の施策の具体的方向性として5点挙げたいと思います。
 5ページ目を御覧ください。
 まず1点目は、医療機器の研究開発・実用化を推進するための環境整備です。AIをはじめとして、医療をめぐる新技術は加速的に進化を続けておりまして、こうした新技術の医療の質の向上や医療現場の環境改善に大いに寄与することが期待されています。新しい医療技術を一刻も早く医療現場に届けるためには、研究開発の実用化のプロセスが迅速かつ円滑に進むような制度設計が必要であることは当然ですけれども、その後重要なのは、やはり実用化後も品質の管理が適正に行われている、そして、医療の安全が確保されていることとともに、一番大事なのは、持続性のあるビジネスにしなければ、これは逆に患者さんに継続的に安定供給ができないことになってしまいます。
 このため、ここにありますように、新技術の診療報酬上の評価、データ利活用の推進、それから、臨床試験・臨床研究に関わる規制手続の簡素化、サイバーセキュリティの対策、UDI利活用促進と医療機器DBの構築の5つが重要だと思っております。
 2点目は、医薬品とは異なる医療機器の特性を踏まえた制度・システムの設計です。平成25年に旧薬事法がいわゆる薬機法に改正されまして、医療機器について独立した章とか条文が設けられたことによりまして、より医療機器に特化して対応した制度となりましたけれども、例えばまだ広告の規制やQMS制度などには医薬品の制度を前提とした規制が残っておりまして、医療機器の品質確保、迅速な実用化の推進をするためにも、医療機器の特性に対応した制度やシステム設計をやらないといけないと思っております。
 6ページを御覧ください。
 3つ目です。国際標準と整合した規制・基準の設定です。医療機器の市場は今後大きく発展していくことが予想されていまして、ワールドワイドで6%ぐらい伸びると言われていますけれども、事業者が国内外で円滑に事業を行える環境が必要でありまして、日本独自のルールでは、場合によっては事業活動や国民の新しい医療機器のアクセスの障害となる場合があるのではないかと思っています。このために、国際的に認められた共通ルール下での製造とか販売が行われる必要があると思っています。日本のルールを他国のルールとするために戦略的に取り組むことも必要だと思いますが、合理性のないものに関しては国際ルールに整合するように改めていくことも必要かと思います。
 4点目です。医療技術に係る国民の理解を深めるための啓発活動の推進です。医療のイノベーションを推進するためには、新しい医療技術に関する国民の正しい理解が必要になります。また、今後は医療の個別化、個人による医療データの管理、国民が自ら健康や医療に主体的に関わる機会が増大すると思います。新しい医療技術も、正しい理解の下で適切に使用されることによりまして、医療の安全や質が確保されまして、国民がそのメリットを享受できます。このため、国民に新しい医療技術について正しい知識を得ていただくための教育、それから、啓発活動が官民で協働していかないといけないと思っています。
 7ページを御覧ください。
 5点目です。医療機器の安定供給の確保です。そもそも、イノベーション推進は、医療の提供を通じて、国民がその成果を享受することが目的とされているものですけれども、医療の提供が継続的かつ安定的に行わなければイノベーション推進も意味のないということになります。今のウクライナとか中東の紛争に起因する世界的なインフレ基調とか円安、そして、日本でもデフレからインフレで、医療機器の生産に必要な原材料、部材が価格が高騰するだけでなく、いわゆる物流の2024年問題によりまして、納品の回数が減少したり、リードタイムが長期化したり、物流コストが上昇したりしておりまして、医療現場に安定して必要な医療機器をお届けできる環境は悪化しております。これらに対する環境づくりが必要です。円滑な価格転嫁ができる環境づくり、それから、診療報酬を含めた価格面での対応、その他、支援策を具体的に検討する必要があると思っています。
 以上、イノベーション推進に向けた今後の施策の方向性について説明してまいりました。今回の官民対話を契機にしまして、これらの施策について、官民連携して取り組むための具体的な行動を起こしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、米国医療機器・IVD工業会の森川副会長、お願いいたします。資料は4-2になります。
○森川副会長 米国医療機器・IVD工業会(AMDD)副会長の森川でございます。本日は、このような機会をいただきありがとうございます。
 それでは、次のページに進んでください。
 AMDDですが、米国に本社がある企業及び米国でビジネスを展開する日系企業から成る団体になっております。「日本を、もっと健やかに」。このミッションを掲げ、価値ある医療テクノロジーの提供を通じて日本の医療に寄与すべく、様々な取組を行っております。
 次のページにお進みください。
 これからの日本の医療を支えるためには、価値に着目した仕組み、Value-Based Healthcareが不可欠と考えます。超高齢化社会やデジタル技術の発展などの新たな環境においては、診療報酬での医療機器の評価に当たって、健康寿命、患者満足度、介護費用、社会的費用など、医療機器のもたらす多様な価値を考慮するべきだと私どもは考えます。
 次のページをお願いいたします。
 価値の高い医療技術を導入するために、AMDDは3つの領域において、6つの柱に基づき、様々な取組や提言を行っています。本日はその中でも、特に太字でお示ししている右側、次の3点を取り上げます。
 1つ目は、保険外併用療養費制度の拡充です。患者さんの多様なニーズに合った治療の選択肢の拡大が望まれる一方、その負担も公的健康保険以外にも広がることが必要だと考えます。また、患者さんの選択肢を増やすに当たり、一般向けの情報提供の充実を図ることが求められ、広告の原則解禁に向けた議論を引き続きよろしくお願いいたします。
 2つ目は、デジタルヘルス技術の評価における成功報酬スキーム(Pay-for-performance)の拡大です。全国医療情報プラットフォーム等を通じて産業振興に関する医療データの二次利用に向けて社会的な合意形成の推進と制度整備をお願いいたします。
 3つ目の経済性加算の拡大については、次のページで御説明いたします。
 次のページです。
 まず、価値に基づく収載時の価格算定の一つとして、R6改定において経済性加算を新たに設けていただきました。引き続き、本制度が拡大されるべきことを望んでおります。
 また、右側の、価値に基づかない再算定制度、例えば外国平均価格や市場拡大による再算定制度は縮小・廃止をお願いします。
 次のページをお願いします。
 昨今のインフレ、原材料価格や流通コストの高騰は引き続き、弊会員企業にも大きな影響を与えており、そのコスト増を医療機関への販売価格等に転嫁せざるを得ない状況となっております。
 真ん中のグラフが示すとおり、医療機関の購入価格と償還価格の乖離率は年々縮小しており、一部では医療機関の購入価格が保険償還価格を超える、いわゆる逆ザヤが生じております。このような医療機関の負担増を回避する観点から、償還価格を引き上げるルールの導入が必要だと考えます。
 併せて、外国平均価格再算定においても引下率上限50%の緩和をお願いします。コスト増の原因の一つである流通の課題についても引き続き、御支援をよろしくお願いいたします。
 以上の提案は、世界から日本への投資を活性化し、革新的な医療機器が日本に導入されるために不可欠だと考えます。どうぞよろしくお願いいたします。
 発表は以上となります。御清聴ありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会の江田副委員長、お願いいたします。資料は4-3になります。
○江田副会長 本日は、このような機会をいただきありがとうございます。欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会副委員長の江田より説明させていただきます。
 本日は、全世代型社会保障における医療の在り方、医療技術のイノベーション評価、そして、遠隔医療の拡大。この3点について説明させていただきます。
 3ページを御覧ください。
 医療供給体制には現在、様々な問題が山積しております。特にエネルギー価格、人件費、そして、材料価格の高騰、さらに、大幅な円安は、医療機関、供給事業者にとって経営上の大きな問題であり、患者さんへの医療供給体制の課題となっています。
 また、デバイスロスや検査ロスが続いている本邦において、予防から予後まで、イノベーションを患者さんに迅速に提供できる医療保険制度上の新たな仕組みづくりも喫緊の課題ではないかと考えております。限りある財源の社会保障への確保とイノベーションへの制度構築に引き続き、御理解、御検討をお願いいたします。
 4ページ目をお願いします。
 イノベーションの評価に、評価療養や選定療養、さらには公知申請の在り方の検討もお願いいたします。EBCより官民対話でも提起させていただいたドイツのDiGAの日本版、プログラム医療機器の2段階保険につきましては、制度化いただきましてありがとうございました。一方で、入り口のハードルの高さや出口の選定療養の可能性など、引き続き、御検討をお願いいたします。
 また、海外では承認と保険を一体化し、早期に患者アクセスと供給拡大を図るためのブレークスルー保険制度がございます。本邦においても検査ロスを回避し、イノベーションを迅速に広げるためにも、今後協議させていただければと考えております。
 1ページ飛ばしまして、6ページをお願いいたします。
 予防医療の推進は、患者さんへの貢献が大きく期待される分野です。一方で、重症化を予防した医療に対して保険制度上の手だてがない現状でございます。海外同様、予防医療のインセンティブ化推進は、人生100年時代に向け、医療費削減と健康増進へ大きな貢献が期待されます。
 この図の右下に示しました電動歯ブラシとスマートスリープといったクラスI相当のプログラムは非医療機器として取り扱われていますが、例えば健康への貢献を科学的に示せる場合、歯周病の予防など、一定の標榜(ヘルスクレーム)を認め、優位性を持って広告や健診などで使用を促せるようにするなど、全世代型社会保障実現に向け、引き続き、検討をお願いできればと考えております。
 7ページ目を御覧ください。
 遠隔医療の論点です。遠隔操作におけるDoctor to Doctorの診断及び治療、遠隔によるICUの集中管理は、医療の質の均てん化、医療へのアクセシビリティの確保、医療従事者の負担軽減への貢献で今後の普及が大いに期待される部分です。
 最後、8ページでは、EBCで以前より要望しております植込み医療機器のデータベースの利用につきまして、改めてお願いさせていただいているものです。
 ありがとうございました。以上です。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、日本臨床検査薬協会の納富理事、お願いいたします。資料は4-4になります。
○納富理事 日本臨床検査薬協会の納富です。よろしくお願いいたします。本日は、このような機会をいただき大変ありがとうございます。臨薬協、AMDD、EBCを代表いたしまして、体外診断薬業界の意見要望を御説明させていただきます。
 3ページを御覧ください。「臨床検査のイノベーション推進に向けた環境整備」についての要望になります。
 令和6年度改定にて希少疾病における検査に関して市場性加算を導入いただきましたが、医療機器と異なり、体外診断薬には画期性加算、改良性加算等もなく、イノベーティブな製品を評価するシステムが不十分と考えます。令和6年度中医協の答申書附帯意見に、検査等のイノベーションの評価についても検討するようにと示されています。革新的な検査は、最適な診断・治療を行うために不可欠であり、医療資源を有効に用いることができます。革新性の高い体外診断薬の開発を促進し、迅速に医療現場に届けるためにも、イノベーション・経済性の評価を診療保険点数に反映することは非常に重要だと考えております。ぜひ制度の導入をお願いいたします。
 4ページを御覧ください。「薬機法における体外診断薬の分類の見直し」についての要望でございます。
 現在は「医薬品」となっている薬機法上の分類を見直して「医薬品」から独立させ、体外診断薬の特性や国際整合を踏まえた規制の実現を要望いたします。これにより、開発における負担が軽減され、さらに、効率化とスピードアップが図れれば、デバイスラグの解消や事業予見性の向上が見込まれ、体外診断薬の迅速な海外導出及び日本導入が可能になると考えております。国内外の患者へ革新的な検査をより迅速に提供する観点から、ぜひ御検討いただきますようお願いいたします。
 5ページを御覧ください。「安定供給体制確保のための環境整備」に関する要望になります。
 物価高騰、賃金上昇、物流費の増大等、非常に厳しい事業環境の中、安定供給のための努力は企業ごとに行っております。しかし、公的医療保険の下で価格転嫁をすることが困難なこともあり、事業として非常に切迫している状況です。企業努力にも限界がございますので、医療機関への円滑な価格転嫁が可能となりますよう、行政側でも対策の御検討をお願い致したく存じます。
 また、新興感染症等の公衆衛生上必要な検査に関しましては、一層迅速な製品開発と市場提供、それから、安定供給が求められます。そのため、企業における予見性及び事業性を確保した上で、診療報酬上の手当以外の対策も含め、適切に国民に供給できるシステムを構築していただきますようお願いいたします。
 体外診断薬は、医療を支える検査に関わる製品としまして非常に重要な役割を担っております。検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
 どうもありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、アカデミア・AMEDから御説明いただきたいと思います。
 こちらも、あらかじめお知らせしている時間の範囲内でお願いできればと思います。
 まず、国立がん研究センターの中釜理事長、お願いいたします。資料は5になります。
○中釜理事長 国立がん研究センターの中釜です。私からは、当センターにおける医療シーズ開発基盤の整備強化の取組について紹介させていただきます。
 次をお願いいたします。
 大きく5つのポイントについて、一つは、患者由来のPDXモデルを用いた評価系としての次世代創薬プラットフォームについて、それから、大規模医療データ基盤構築による創薬研究と患者還元の加速、また、創薬エコモデルの実現に向けての取組、さらには、その先行的取組事例、5点目としましては、日本でがん領域のバイオ再生医療の早期開発拠点エリアの立ち上げについて紹介させていただきます。
 3ページをお願いいたします。
 まず、PDXモデルですが、当センターでは、患者由来のマウスに移植したPDXモデルを650種類構築しています。このPDXモデルの利点といたしましては、従来の細胞株を使った薬効評価に比べて臨床との一致性が非常に高く、一致率は50~80%と言われています。実際、我々の実験例でもそういう経験を持っています。具体的に、その650種類のPDXライブラリーとしては多くのがん種を網羅しており、さらには、治療抵抗性のあった腫瘍に関してもそのモデルを有しています。
 具体的な最近の事例としましては、例えばスプライシング阻害剤であるE7820の開発において、このPDXモデルで有効ながん種を同定し、実際、胆道がん・子宮体がんで有効だと判断し、さらに、そのがん種を用いたバイオマーカーの同定として、例えばBRCA1/2の変異が有効性マーカーになることを見いだしています。現在、企業と連携した第I相試験を進めています。このように非常に迅速に進められている事例がありますので、こういうモデルのプラットフォーム化が非常に重要だと思います。
 次をお願いいたします。
 それから、大規模医療データ基盤構築については、既に日本において進められている、例えば全ゲノム等のオミックスデータと、臨床データ、質の高い画像データを一体化したような高品質の大規模な医療データベース基盤を構築し、この基盤を用いた創薬研究の加速化、さらには、生成AI・バイオインフォマティクスの活用による創薬開発の加速、同時に、データ基盤を用いた治験への推進による患者還元の促進が重要だと考えています。
 そのためには、例えば新しい取組としてのDCTの推進を国内だけではなくて、国外にも進展することが必要と考えます。さらには、治験の患者還元を促進するための全ゲノム版患者申出療養についても取り組む必要があるかと考えております。
 次のページをお願いいたします。
 それから、創薬エコモデルの実現に向けての取組ですが、現在、日本においては、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消の問題、それから、創薬力の強化とその加速、さらには、産業基盤構築の充実が求められていると思います。
 ドラッグロスにおいては、いわゆる希少がん等の疾患に関するアクセス、あるいはそのアクセス体制の整備、先ほど申しました疾患レジストリを使った利活用の促進、小児がん等への応用、それから、自己完結型ベンチャーや企業への支援が求められていると思います。
 創薬力の強化と加速においては、海外ファルマ等の呼び込みや、そのためのLabo GMPレベルでの安全性臨床試験の体制の整備、アカデミアシーズの臨床試験体制の強化、それから、海外のEBPシーズの医師主導治験での加速、こういうものを積極的に進める必要があると考えます。そのためにも、治験支援体制の資金、財源的なサポートが必要だと考えます。
 最後の産業基盤構築においては、いわゆるスタートアップ、ベンチャーシーズを育成・強化するための伴走支援体制、それから、海外ベンチャー、ベンチャーキャピタル、さらには、企業との連携の加速、国内企業の参入の加速が必要で、こういうものをして、日本のプレゼンスをアピールすることによって海外EBPの呼び込みが求められると考えており、これまでも取り組んできております。
 それから、次のスライドです。
 創薬エコモデルの実現を受けての当センターの先行取組事例について紹介しますが、例えば日本が世界をリードするため、ドラッグ・ロスを解消するためにも、ライセンスを有するシーズを国内できちんと開発を進めることが重要です。直近の例としましては、いわゆるHSP90阻害剤(ジュセリ)を用いた有効性試験の臨床試験を世界に先駆けて実施しています。こういう希少がんに関しては、特に日本において、疾患の多い患者さんの分子を標的とした有効性試験の臨床試験を積極的に実施すること、そのためのライセンスの確保が非常に重要だと考えます。
 それから、右上ですけれども、特定臨床研究を用いて、いわゆるラボGMPレベルでの早い段階でのPhase0の試験を特定臨床研究という形で推進し、その有効性を早い段階で判断し、改変を加えていくことにも取り組んでいます。それを、ヒトを用いたPhaseI/II以降の本格的な臨床試験へつなげていく、こういうラボGMP製剤を使った特定臨床研究の推進は重要だと考えています。
 それから、海外等のVCを呼び込むためにも、日本のシーズと海外のベンチャー等の育成、プラットフォームと連携した仕組みをつくっていくことは重要だと思います。
 最後ですけれども、再生医療の開発においても、早期開発拠点の整備が求められていると考えます。最近のシーズの開発は、シングルモーダルからマルチモーダルに変化していることから、多くの機能を持った企業あるいは機関と連携しながら、総合的な体制を持って取り組む必要があります。
 右上に示していますが、そのためにも、当センターは様々な国内外の企業と連携しながら、創薬・再生医療に関する早期開発拠点の構築を進めているという状況であります。
 私からは以上です。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、国立循環器病研究センターの大津理事長、お願いいたします。資料は6になります。
○大津理事長 国立循環器病研究センターの大津でございます。産業界との連携の取組を御紹介させていただきます。
 スライドの2枚目をお願いします。
 国立循環器病研究センターは、病院、研究所、そして、オープンイノベーションセンターの3部門から成っております。我々の知的財産を、産業界との共同研究を推進することによって、社会実装、マネタイズ、そしてまた、投資を推進していっているところでございます。
 次のスライドをお願いします。
 その基盤となるために、企業との共同研究を推進するため、共同研究部を昨年度より設置しております。そのメリットとしては、一つは我々が持つ臨床データ、バイオバンク、あるいはコホートスタディーやレジストリといったビッグデータ。2番目は、企業等が入居可能な賃貸ラボ(個室型)と、国立開発法人では初めての共用型のWetラボの設立、それから、3番目は支援体制でございます。
 次のスライドをお願いします。
 昨年度からも3つの共同研究部が立ち上がり、12月にはもう一つ立ち上がる予定でございます。1つ目が、バイオデジタルツイン研究部。これは仮想空間での循環モデル構築による治療、特に急性心不全ですけれども、そのシミュレーション、そして、自動化を目指すものです。2番目は、循環器疾患を持った方はなかなか生命保険に入れないわけですが、循環器疾患発症予測モデルを構築し、その予防に必要なコンテンツの開発を目指す共同研究部。3つ目が、認知症に対する創薬の研究部でございます。2023年には、既に3件の新規特許出願、15本の論文投稿を実施しております。
 次のスライドをお願いします。
 今までの企業との研究開発の事例を紹介させていただきます。1つ目は、世界最小・最軽量、そして、6時間であったものを14日間の使用期間に延ばすポータブルECMOの開発でございます。2番目は、小児の心臓外科の最適化の手術方式を示すために、3D心臓モデルの開発と心臓シミュレータの融合によるped UT-Heartの開発でございます。
 次のスライドをお願いします。
 それとともに、国循職員によるベンチャー設立も非常に強く推進しております。規定を変え、国循の職員でもベンチャーの役員になれる、あるいは国循が新株予約権を持てるということで、今、そこにあります4つのベンチャーが立ち上がっております。
 最後に、企業の皆様に活用できる基盤施設でございますが、御紹介したように、個室型の賃貸ラボ、実験室単位で貸し出すWetラボ、そして、研究者、医師、産業界の方が交流できるサイエンスカフェ、それから、最先端のイメージングの装置を集めたイメージングプラットフォームで、これは遠隔地からも使用可能となっております。
 以上です。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、日本医療研究開発機構の三島理事長、お願いいたします。資料は7になります。
○三島理事長 資料7を御覧ください。ただいまから、第3期におけるAMEDの取組について、資料に沿って御説明させていただきます。
 1枚おめくりください。
 6つの統合プロジェクトでの研究開発の推進で、今年度までの第2期、5年間の簡単な振り返りでございますが、モダリティ等を軸とした統合プロジェクトは、開発目的の明確化や研究者の実用化への意識、新たな医療技術等の様々な疾患への展開、技術開発、規制、企業連携等に向けた戦略構築の伴走支援など、基本的に有効に機能したと考えてございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 次に、来年度からAMEDは次の5年間、第3期を迎えることになります。予定されている統合プロジェクトの構成の御説明で、2つの統合プロジェクトが加わりまして、8つの統合プロジェクトということで位置づけてございます。
 第2期のモダリティの軸と構成を基本として、真ん中に医薬品プロジェクト、医療機器・ヘルスケアプロジェクト、そして、再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクトが軸になってございます。そして、左側の基礎研究・シーズ創出に始まり、真ん中のモダリティ等を軸として研究開発を進め、右側の実用化とエコシステムにつなげてまいります。さらに、第2期中から特に対応を求められてきている感染症、それから、橋渡し・臨床加速化といった課題に対応するものを配置しているということでございます。
 この次のスライドが、これをもう少し実際のプロジェクトのイメージとしてお示ししておりますが、これは非常に細かいので、後で御覧いただければと思いますが、先ほどからお見せいたしましたプロジェクトの構成の具体的な事業がどこにどう入るかという形になってございまして、一番左側が本当の基礎研究の部分から、一番右側のイノベーション・エコシステムのところまで、どのようにこれを基礎から実用化へ持っていくかを示してございます。
 次をお願いいたします。
 第3期に向けた政府における検討でございますが、第3期では政府の創薬力構想会議の中間取りまとめにおいて、先ほどの統合プロジェクトの様々な事業や課題に対して、各省の補助事業間の連携促進、AMEDの研究開発支援・ファンディングの仕組み見直し、それから、調整費の活用、AMEDの体制強化に取り組みながら進めていくこととされてございます。
 次をお願いいたします。
 創薬開発においては、後期に資金需要が大きくなるため、基礎研究には十分かもしれませんが、現在のAMED資金では開発後期には十分ではございません。そこで、医薬品や再生医療で言えば、第II相試験を支援できるのはオーファンや医師主導治験で、それ以外は、企業から見ればAMEDが支援することが必要かどうかという点もございます。
 ここから企業にバトンタッチして、次にどう進めるか、これが企業の重点領域であるか等、企業の状況次第の面もあるのが現状でございます。AMEDとしては、社会実装に向けた議論を適切な時期に進めることが重要と認識しているところでございます。併せて、政府とも相談し、省庁の壁を越えて政策や事業がつながるようにしていきたいと考えてございます。
 次、最後でございます。
 医薬品プロジェクトをはじめ、第3期統合プロジェクトの構成においては、先ほど申したとおり、AMED内外の連携を含め、より高いレベルで事業をつなげていくこと、また、それを仕組み化していくことがAMEDに求められております。
 そのためには、案件調整や目利き、出口戦略、今後のビジョンなど、一層のシンクタンク的な機能が重要であり、今後、AMEDの枢要な基盤的機能として具備されるよう、体制強化に向けて、政府とも現在、まさに相談しているところでございます。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 続きまして、山梨大学副学長、研究推進・社会連携機構副機構長の岩崎様、お願いいたします。資料は8になります。
○岩崎副学長 山梨大学の岩崎です。資料8を御覧ください。
 本日の官民対話におきまして、このような発表の機会をいただきありがとうございます。皆様御承知のように、近年の新規な医療技術の創出においては、アカデミアの役割は非常に大きなものになっております。私はAMEDの医薬品プロジェクトのPDも務めておりますので、そのような立場から、イノベーションの根源となるアカデミア創薬の本邦における活性化について述べさせていただきます。
 2ページ目を御覧ください。
 イノベーションの創出・推進におけるアカデミアの役割は、先端的な優れた基礎研究及び異分野融合等によります新規医療技術を創出して、医療の進展に貢献することが第一に挙げられます。また、臨床試験の実施によるエビデンスの創出、人材育成というものがあろうかと考えております。
 3ページを御覧ください。
 このようなアカデミア発の医薬品の創出には、新規医薬品を創出する創薬と、既存の医薬品の活用による新規な適応を開発するDrug Repositioningがありますので、これらについて、その現状と課題について述べます。
 まず、創薬ですが、ここでは近年の分子生物学、情報工学等々の進展によりまして、新規性の高い理論的な開発事例が多く見られます。対象疾患としては、難病や希少疾患など、アンメットメディカルニーズの高い疾患が多く見られるのも事実でございます。
 ただ一方で、創薬ターゲットの検証、また、試験物の品質、安全性の検討、さらに、知財等々の検討がまだ不十分であるという指摘もなされておりますし、ビジネス的なポテンシャルがあまり高くない場合も多いということが言われております。また、スタートアップも試みられておりますけれども、基盤技術を有さないベンチャーですとVCからの支援も得にくいのが現実だと思われます。
 次のDrug Repositioningに関しましては、この方法は、御承知のように、臨床の現場の先生方が日常診療の経験を生かして、本来の適応とは異なる疾患に対しても有効性が期待できる事例に対して開発する方法で、非臨床開発をスキップできることも多く、安全性も把握されており、試験薬もありますので、医師にとって取り組みやすい方法となっております。
 ただ一方で、製薬企業にとっては、既に特許が失われている、また、薬価の改定が難しい、さらに、製造販売後の調査など、企業の負担も小さくないことから、たとえ医師主導治験等において良好な結果を得たとしても、なかなか企業が引き取って薬事承認に至る例は残念ながら限られたものになっているのが現実でございます。
 4ページをご覧ください。
 このようなアカデミアによる新規医薬品の研究開発の現状を鑑みて、イノベーションの推進方策を検討いたしました。
 まず、創薬についてですが、アカデミアの先生方のみでは実用化に向かっての進展は困難な場合が多く、ここでは国内外の医薬品開発の経験者との共創による開発システムの構築が必要と考えます。ここには製薬協の方々等の理解と支援をぜひお願いしたいと考えております。
 先ほども製薬協からの発表でも触れていただきましたけれども、AMEDでは現在、製薬協のご協力を得てAMED-FLuXという仕組みを実施しておりますが、これを参考にしながら、アカデミアの先生と共に継続的に開発を進める仕組みが必要と考えております。この際に、試験物の作製等に関しましては、AMED BINDSという事業がありますが、これの活用も一法ではないかと考えております。BINDSに関しましては、参考資料に添付しておりますので、御覧いただければと思います。
 また、スタートアップに関しましては、特に0→1、スタート時点での支援が必要と考えます。創薬ベンチャーエコシステム強化事業ではVCの支援が条件になっており、その前の段階の最初のステップを支援することは重要で、AMEDによるピッチコンテストなども一つの方法ではないかと考えております。
 最後のスライドを御覧ください。
 2番目のDrug Repositioningに対する方策ですが、ここでは製薬企業が引き受けることが困難な現実と、また、難病や希少疾患、小児など、メディカルニーズの高い疾患が多いことを考慮して、このような場合については、公的な手段を講じて患者さんの下に医薬品を届けることができる仕組みの構築を提案したいと考えます。
 この場合では、これを希求する医師自らが責任を持って、その妥当性を品質の高い臨床試験・治験によって証明する必要があり、PMDAの協力による承認要件を明確にして試験に臨むこと、また、治験薬に関しましては、製薬企業やCDMOから提供していただくことが求められます。
 このようなビジネスとしては成り立たない事例においても、患者さんのために産官学が協力して医薬品を届ける仕組みを構築することは、医療において非常に公共性の高い仕組みを有している日本でなければ実現できない制度と思われます。誰一人取り残さないユニバーサルヘルスカバレッジの達成に資する仕組みになるものと考えます。
 また、このような環境が整えば、患者さんのために医学研究に努めたいとする医師や研究者の人材育成にもつながり、日本の将来のためによい環境づくりになるのではないかと考えて提案させていただく次第です。
 以上で、私の発表を終わります。御清聴ありがとうございました。
○水谷課長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま御要望いただきました事項につきまして、行政側の担当者から簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず、佐々木医務技術総括審議官からお願いいたします。
○佐々木審議官 危機管理・医務技術総括審議官の佐々木です。資料はございませんが、現在、3つの計画を政府で改定策定を進めておりますので、その御紹介をいたします。
 1つ目は、健康・医療戦略でございます。先ほども宮柱副会長から言及いただきましたが、現在、第3期の5か年計画に向けて、本日出席している中石事務局長の健康・医療戦略推進事務局の下で進めております。これは来年4月からですので、急ぎ取りまとめに向けての議論という状況です。
 2つ目の計画は、科学技術・イノベーション基本計画です。これはもう1年遅れて、令和8年度に第7期の5か年計画がスタートしますので、これから、これまでの3年余りの成果を振り返っての議論を進めて、詰めていく状況になっております。
 3つ目が、これは新しいものなのですけれども、国際標準戦略を策定しようと進めております。これは今年5月に内閣府の知財戦略事務局を中心として検討の場を立ち上げて、今月12日に第4回の会議を開いたところです。先ほど山本会長からも国際標準の重要性を御指摘いただきましたし、既に医薬品等の分野ではPMDAの藤原理事長が中心となって国際規制のハーモナイゼーションの枠組みがあるところですが、この国際標準戦略の中では、政府全体の様々な分野について、大事な考え方として、官民の連携体制の強化をどうしていくのか、組み込んでいくのかという視点で議論をさらに深めていく予定です。できれば来年の春頃にはまとめたいと思っておりますが、こういう3つ目の新しい計画も用意していることを御紹介したいと思います。
 以上です。
○水谷課長 続きまして、保険局担当の神ノ田審議官、お願いします。
○神ノ田審議官 保険局担当の審議官をしております神ノ田でございます。御参加の皆様方には、日頃から医療保険行政の推進に格別の御理解、御協力をいただき感謝を申し上げます。また、本日は医薬品・医療機器及び再生医療等製品の評価の在り方等につきまして、貴重な御意見、御要望等をお聞かせいただきありがとうございました。
 革新的な医薬品・医療機器につきましては、イノベーションの適切な評価が重要であることは言うまでもありませんが、それと同時に、国民皆保険の持続性や保険財源の重点的・効率的配分の観点も踏まえる必要があります。これらのバランスを取りながら、引き続き、薬価制度改革及び材料制度改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、医薬品・医療機器の安定供給を確保し、医療現場に必要なものをしっかりお届けすることも重要な課題であると認識しております。このため、医療上の必要性が高い医薬品・医療機器について、価格を維持または引き上げる仕組みを設けているところでございます。この安定供給確保のための仕組みについても、次期、薬価改定・材料価格改定に向けて議論を行ってまいります。
 さらに、令和7年度の薬価改定につきましては、本年6月に閣議決定された「骨太の方針」を踏まえて対応しているところでございます。この「骨太の方針」では、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など、取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討するとされておりまして、今まさに中医協において、関係団体の皆様の御意見も伺いながら、議論を進めているところでございます。
 また、再生医療等製品の保険上の取扱いに関しましては、再生医療等製品に関する算定事例を集積しつつ、今後、中医協で検討してまいりたいと考えております。
 本日皆様方からいただきました御要望や御提案につきましては、いずれも今後の医療保険行政を推進していく上で非常に重要な論点であると認識しております。引き続き、関係団体の皆様方から御意見をいただきながら検討してまいりたいと考えておりますので、今後とも御協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
 以上です。
○水谷課長 続きまして、大坪健康・生活衛生局長、お願いします。
○大坪局長 健康・生活衛生局の大坪でございます。いつもお世話になっております。健康・生活衛生局は、御案内のとおり、各種様々、疾病を扱っておりますので、疾病対策を所管している健康・生活衛生局から2点、動きを御報告したいと思っております。
 政府といたしましては、やはりビジネスになりにくい分野。ここで治療薬等々を開発していただけたらと思っておりまして、一つはがんで、もう一つは指定難病でありますけれども、がんについては、これまでがん登録法の中でも、匿名化情報につきましては情報提供を、民間の製薬企業にもお渡しできるということでありますが、特に仮名化情報についても提供できるように、今、準備を進めているところであります。
 特に数の少ない希少がんで、先ほど中釜先生からGISTのお話もございましたけれども、希少がんにつきましては、平成30年に国立がん研究センターで希少がんの中央機関というふうに位置づけをしまして、全国の医療機関とも連携して、患者様にも適切な情報提供を行うなどをやっておりますが、こういった希少がんの中央機関と製薬企業や関係学会で連携していただいて、患者様にアクセスできるような治療薬の開発をしていただければと思っております。
 また、同じく難病と小児慢性につきましても、これはどうしてもオーファンドラッグになることも多くございますので、令和6年4月、難病法を改正いたしまして、匿名化した難病のデータベースにつきましては、製薬企業等の民間企業に対するデータ提供が可能だということを明記しております。既に1例目としまして、製薬企業の方から申請がありまして、今、重症筋無力症に関する情報提供の準備を進めております。
 こうした希少がん、難病、数の少ない疾患につきましては、ぜひ皆様の御意見を伺いながら、使いやすいデータベースを構築していきたいと思っておりますので、治験の実施可能性の評価など、探索研究に使っていただければと思っております。
 健康・生活衛生局は直接、研究開発に関係しているところではございませんけれども、環境整備に資するように政策をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○水谷課長 続きまして、鷲見感染症対策部長、お願いします。
○鷲見部長 感染症対策部長の鷲見でございます。日頃より皆様におかれましては感染症対策への御支援、御協力を賜り、感謝申し上げます。
 感染症対策におきましては、感染症危機対応医薬品の3点セット、ワクチン、診断薬、治療薬が非常に重要であります。この必要な際にこれらの3点セットを使用できる状況を確保することが非常に重要でありまして、そのためには企業の方々のお力が不可欠でございます。本年7月には、新型インフルエンザ等対策政府行動計画が改定されました。平時から、ワクチン、診断薬、治療薬の研究開発をしっかり取り組むという内容が含まれておりますし、厚労省としましては、来年4月に設立されます国立健康危機管理研究機構(JIHS)とも連携しながら、こうした取組、研究開発を進めてまいりたいと思っております。
 また、こうした感染症危機対応医薬品は市場がなかなか働きづらいという状況でございます。こうした中で、私どももMCMの小委員会におきまして、重点感染症の指定、そうした重点感染症における研究開発の推進および利活用、体制の確保。こうした一連のエコシステムの構築に向けた検討を進めているところでございます。さらに、薬剤耐性(AMR)の問題も非常に重要で、AMR対策としまして、我が国におきましても、AMRのアクションプランに基づきまして、GARDPなどの国際機関と連携しまして国際研究開発イニシアチブの支援を行うとともに、抗菌薬確保支援事業、プルインセンティブでございますが、こうした市場インセンティブの仕組みも進めているところでございます。
 厚労省としてこうした取組を進めているところでございますので、引き続き、感染症領域での継続的な医薬品等開発に向けた御協力をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○水谷課長 続きまして、城医薬局長、お願いします。
○城局長 医薬局長の城でございます。本日は様々な御意見、御提案をいただきました。私は立場上、薬事の観点でのお話をさせていただければと思います。
 まず、制度改正に関して申し上げると、令和元年改正薬機法施行から来年で5年になりますので、今、御承知のように、厚生科学審議会の制度部会でずっと議論をしてきたところでございます。これは産業界の代表の委員も御参画いただいて半年御議論いただいていまして、年内に取りまとめをするつもりでおります。これを踏まえて法改正できればと、法律改正に至らない措置もございますが、そういったところを進めたいと思っていますので、御協力いただければと思います。
 医薬品に関して言えば、薬事規制については、有識者検討会で1回取りまとめをしたものを、さらに薬事検討会で半年やりました。それで、これは取りまとまったものからどんどん運用改善する仕組みで進めていましたものですから、メディア的にはインパクトが薄いのかあまり話題に上りませんが、相当程度、我々の把握している薬事の課題については手を打ったつもりでございます。運用でできるものはほぼやって、残りは法改正にというつもりでありますが、それも含めて、その間、ずっと業界の皆様方と協議をさせていただきながら進めてきたつもりでございます。本日も薬事規制で国際整合と、いろいろお話がありましたが、残り、法改正まで少しではありますけれども、引き続き、そういった御指摘があればいただければと思います。
 再生医療等製品につきまして、これも国際的な規制調和というお話もございました。再生医療等製品ならではの特性に基づく設計が必要ということは私どももよく理解しております。ここも意見交換させていきながら運用改善をしていきたいと思います。
 それから、機器についても、これはPMDAの御協力もいただいて、プログラム医療機器の審査体制の強化、それから、2段階承認等の取扱いの明確化を進めてまいりました。本日も、特殊性を踏まえた制度の運用といったことをいろいろ御指摘をいただきました。これも、これまでも相当、意見交換させていただいたつもりではありますが、ここはしっかりとさせていただきたいと思います。
 ただ、体外診断薬の関係では、部門の独立というお話をいただきまして、ここはまだ、これまでも枠組みの見直しは相当してきたつもりではありますが、これはいきなりそんな簡単にできるものではありませんので、これはしっかりと時間をかけてとここで申し上げますが、議論をさせていただければと思っております。
 いずれにしましても、常に業界とも意見交換をしながら、できる運用改善は常に図りたいと思っております。ぜひよろしくお願いいたします。
○水谷課長 仁木厚生労働副大臣ですが、公務の御都合がございますので、ここで途中で退席させていただきます。
 仁木副大臣、一言お願いできればと思います。
○仁木副大臣 初めまして。このたび、厚生労働副大臣を拝命しました仁木博文と申します。
 この大切な会合、いろいろ勉強させていただきたいと思いますけれども、やはり官民連携のこの場で生まれる様々な情報交換を通じて、よりよい医療が国民に提供されるように、そしてまた、日本が国際舞台で健康・医療の分野で貢献できる国になるように取り組んでいきたいと思います。
 今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。
○水谷課長 それでは、ここから意見交換に移りたいと思います。医薬品・再生医療産業界のパーツと、それから、医療機器のパーツとに分けて行いたいと思います。
 まずは、医薬品・再生医療産業界の観点から意見交換をお願いできればと思います。御発言のある方は挙手等をお願いできればと思います。
 では、岡田会長、お願いします。
○岡田会長 ありがとうございます。
 先ほど神ノ田審議官も触れられましたけれども、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性の両立をいかにして実現するかは、我々はしっかり真正面から取り組むべき最重要課題と認識しております。しかしながら、現状の枠組みやルール、あるいはパッチワーク的な手直しでは、掛け声で終わって、実現することはできないと認識いたしております。
 昨今、今日もお話がありましたように、遺伝子治療とか、細胞再生治療、核酸医薬など、革新的技術によって、これまで打ち手のなかったがんや認知症、希少疾患、あるいは難病等、アンメットニーズを充足する革新的新薬が続々と登場しつつございます。一方で、薬事審査プロセスを見れば、もちろん、細かい仕組みはありますけれども、PhaseIIでPOC、Proof of Conceptを達成したら、PhaseIIIで大規模臨床試験をする。それで成功すれば薬事承認され、薬価がついて、保険収載、そして、償還される。こういう仕組みだけでは、この目覚ましいイノベーションの進展のスピードに追いつけないと思っております。
 「骨太の方針」を見ますと、そのようなイノベーションに関する議論として、費用対効果評価であったり、あるいは保険外併用療養の拡大といった、財源をいかにして確保していくのかという点にのみ論点が強く置かれているように感じております。しかし、繰り返しになりますが、この革新的な治療モダリティは、例えば遺伝子検査をしたり、プラセボのない試験であったり、あるいはとても少ない患者さんでの治験であったり、薬事審査プロセス、審査も極めて難易度の高いものとなりつつあると思います。
 しかし、では、安全性と有効性の判断に何年もかけていいかというと、治療へのアクセスを遅延させてはいけないと思います。すなわち、今後ますます増えていくであろう革新的新薬、モダリティに対しては、財政的な側面だけではなくて、薬事申請・薬事承認の仕組みをより柔軟に考えていく必要があると思っています。
 すなわち、具体的には疾患領域あるいはモダリティによっては新たな医薬品評価プロセスを構築して、患者さんがより早期に使えるスキームも検討が必要だと思います。その場合に、マーケットイン、市場導入が早まることに伴って、例えば公的保険による償還のタイミングや範囲の在り方、また、公的保険対象外をカバーする保険外併用療養制度や民間保険の活用を組み合わせて考えるという仕組みが必要になってくると思います。
 例えば、これは米国でありますけれども、治療効果を高い確度で予測できる評価指標、いわゆるバイオマーカーの変化を基に仮承認を与えることで患者様の医薬品アクセスをまずは担保する。そして、リアルワールドで治療効果を検証して、本承認が得られるまでは保険外併用療養制度を活用する方法が考えられると思っております。この財政的な観点だけではなくて、日進月歩の科学技術の評価をいかにして行っていくのかを含めて、まさに検討すべきタイミングにあると思っております。
 政府には、このイノベーションの推進と国民皆保険の持続性の両立という、この重要課題について、財政的な側面だけではなくて、薬事審査、承認プロセスも含めて、全体として再構築していく必要性があるという認識を持っていただいて、ぜひとも新たな有識者検討会の立ち上げ等を切にお願いを申し上げる次第であります。
 以上でございます。
○水谷課長 ありがとうございます。
 ほかに。では、お願いします。
○宮柱副会長 製薬協の宮柱でございます。
 本当に我々としましても日本における創薬力の強化を非常に前向きに捉えておりますし、本日の発言においても、産学官が一体となって創薬のエコシステムを構築するというお話をさせていただきました。しかしながら、日本のアカデミア研究の成果から、本当に革新的な医薬品を見いだしていく上で、行政の皆様と製薬企業との間で認識の違いがまだ存在しているようにも感じられているのが正直なところでございます。
 官民でより具体的に話し合うことが私どもは非常に重要と考えておりますので、その観点から2点だけ、1点質問、1点意見をさせていただきます。
 今回の官民対話も非常に重要な機会、その一つであると考えておりますし、来年度には官民協議会の開催も予定されていると伺っております。それぞれ、どのようなメンバー構成、そして、どのような項目で、また、どのような頻度で話し合うことを想定されていらっしゃるのか。そちらについて、1点教えていただきたいと思います。
 コメントとしましては、健康・医療戦略推進本部の各協議会をはじめ、創薬力強化に関する協議の場がこれまでも設置されて、我々産業界もメンバーとして参画させていただいているものの、全体の構成員の人数からすると、やはり若干少ない印象を持っておりますので、少なくとも実用化に向けた議論をするためには、ぜひ産業界からの参画メンバーを増やしていただくような御検討をお願いしたいと思います。
○水谷課長 ありがとうございます。
 では、ここで一旦切りまして、最初の岡田会長のコメントにつきまして城局長から、それから、今、御質問いただいた官民協議会の件については内山審議官からそれぞれお答えさせていただきます。よろしくお願いします。
○城局長 価格評価という観点もあるのでしょうけれども、薬事というお話もございましたので、私からまず一言申し上げると、新規モダリティを、もしくはまだない革新的なモダリティを開発して、こういったものをどう評価していくか。薬事承認を迅速にということはおっしゃるとおりだと考えております。それで、これを柔軟にということで、患者様に早く届ける早期承認は大事なことだと思いますが、一方で、新規モダリティですから、さらに安全性の確認は非常に重要になってくるということがございます。
 そうすると、評価体系をどうするか、評価技術をどうするかといったことも同じく重要になって、これの開発も必要ですし、そういった認識を持ちつつ、患者様が少ないものについての薬事制度の改善は我々は大分図ったと思いますけれども、それをさらにどうしていくかというお話だと思いますが、これはよく協議をさせていただきたいと思います。
 ただ、丸々、そこを政府にお願いというふうに投げられても困ってしまいますので、一緒にお知恵を出していただいてということだと思っています。価格評価については私からコメントは差し控えますが、そういったことだと思います。
○内山審議官 御質問ありがとうございます。
 創薬力構想会議の中間報告で御指摘いただきましたように、来年度から官民協議会を設置する予定になってございます。今、御質問いただいたように、メンバーとか頻度とか、これはまさに今、検討中、詰めているところでございます。
 この官民協議会におきましては、製薬企業内外を問わず、製薬企業やベンチャーキャピタルの方々などにも参加いただいて、創薬エコシステムの強化の施策の方針等について御議論いただきたいと思ってございます。
 詳細はこれからでございますけれども、本日いただいた御意見も踏まえて準備を進めてまいりたいと考えてございます。
○水谷課長 司会の不手際で時間が押しておりまして、続きまして、医療機器業界の方々との意見交換に移りたいと思います。御発言のある方は挙手等をお願いできればと思います。
 よろしくお願いします。
○高木副会長 医機連副会長の高木でございます。先ほど山本会長からも説明がございましたけれども、非常に重要な問題ですので、重ねて安定供給確保についてお話しさせていただきます。
 医療保険材料につきまして、長年にわたる保険償還価格の下落、そして、今回のインフレ・円安等による物価の高騰が相まって、採算性がより悪化させていることは皆さん御承知のとおりと思います。最近の業界の調査では、特定保険医療材料の不採算品が前年の3倍に増加していることが明らかになってまいりました。また、日本の償還価格が安過ぎてなかなか日本へ導入できない製品が100製品ほどあることが分かってまいりました。薬のドラッグ・ロスと同様に、医療機器のデバイス・ロスが生じているのではないかという危惧もしているところでございます。
 医療上必要不可欠な保険医療材料が不採算品に陥ることで安定供給に支障を来さぬよう、安定的に医療現場に届けることができる制度的な枠組み、そして、病院・診療所などの医療機関への円滑な価格転嫁が可能となるような診療報酬上の対応をぜひ御検討いただきますように重ねてお願いしたいと思います。
 本件については、先ほど、この安定供給は重要な課題として捉えて、薬価・償還価格の維持又は引き上げる仕組みの御議論がなされているということで伺いましたので、ぜひその中で具体的な保険対応、仕組みの導入などを議論いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○水谷課長 ありがとうございます。
 ほかに御発言は。では、江田さんからお願いします。
○江田副委員長 EBCの江田でございます。非常に重要な動きとして、デジタルトランスフォーメーションの動きがあると思っております。EBCの説明で最後にお話しした植込み医療機器のデータベースにつきまして質問させていただきたいと思っております。
 MRIの検査において禁忌の製品を瞬時に判断するために、電子カルテに記載された植込み製品情報を全国の医療機関あるいはマイナンバーカードで確認できる制度が今後実装されるということが今、議論されておりますでしょうか。もしされているとすれば、それはいつ頃実装されますでしょうか。
 これは、例えばペースメーカーなどが記載・表示されることで、緊急時であっても適切なMRIモードへのパラメーター設定変更が行われる。それによって安全な医療が行われるという意味で、デジタルをうまく活用し、患者様の安全な医療に貢献できる重要な課題ではないかと思っておりまして、この機会に質問させていただきました。
○水谷課長 ありがとうございます。
 では、先に、納富さんから御発言をお願いします。
○納富理事 臨床検査薬協会の納富です。
 先ほどから感染症対策に関してもいろいろな施策を実施されているとお聞きしていますけれども、新興感染症等の公衆衛生上、緊急に必要な検査について、一層迅速な製品開発と市場提供・安定供給が求められるかと思います。そのため、企業における予見性及び事業性を確保する上で、買取り補償等も含め、適切に国民に提供できるルールやシステムの構築が必要ではないかと考えております。
 ぜひ御検討いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○水谷課長 ありがとうございます。
 そうしましたら、最初の2点につきまして内山審議官から、その後、最後の御発言につきましては鷲見感染症対策部長からそれぞれお願いします。
○内山審議官 御質問ありがとうございます。
 医療機器の安定供給は非常に重要な課題と考えてございます。御指摘いただいたように、物価高騰もありますし、為替変動もありますし、サプライチェーンは複雑化しています。さらに、災害もございます。そういう中で、やはり医療現場に必要な医療機器をしっかりと確保していかなければならないことは重要だと考えてございます。
 御指摘いただきましたように、診療報酬改定でも不採算品再算定などを実施してきておるわけでございますけれども、診療報酬の対応、それから、診療報酬以外の対応なども必要だと思ってございます。例えば診療報酬以外の対応としては、感染症法におきまして、感染症対策物資等については、製販業者に対して、報告聴取、生産要請等が可能になる仕組みが設けられておりますが、感染症物資に当たらない医療機器についての報告聴取等を行うことの見直しも行っているところでございます。
 併せまして、やはり医療機器業界全体としまして、製販業者の方、あるいは卸の業者の方、そうした方それぞれの方が取り組んでいただくことも重要だと思いましたので、それぞれの方が取り組むべき事項を整理した手引等として発出しているところでございますけれども、さらに今後、必要な対応について、関係の皆様の御意見も踏まえながら、進めていきたいと思ってございます。
 それから、2点目、MRI検査の禁忌の件で、植込み製品の製品情報を確認すべき医療の場面は、MRI検査だけではなくて、ほかにもいろいろな場面があると考えてございます。
 また、逆に、MRI検査の際に禁忌になり得る機器は、ペースメーカーだけではなくて、いろいろな機器が禁忌あるいは注意すべきものだと考えてございます。そういう意味では、ペースメーカーのMRI検査だけではなくて、幅広く議論していく必要があるのではないかと、今、御指摘を受けて思っているところでございます。
 併せて、やはりこうした仕組みを仮に設けるとすれば、全ての禁忌のものが悉皆性を持って登録されるような仕組みにならないといけないと思っていますし、どういう情報を、誰が、例えばマイナポータルでやるのか、電子カルテへ入れるのか、どういった場面で登録するのか、あるいはどういうところにユースケースがあるのか。そういうところを少し丁寧に把握・議論する必要があると思っていますので、今日いただいた御意見も含めて、業界の方の御提案や御意見も伺いながら、今後、議論の進め方について御相談させていただければと思ってございます。
○鷲見部長 3点目の感染症分野についてお答え申し上げます。感染症対策部長の鷲見でございます。
 検査の重要性につきましては、先ほど申し上げましたように、新型コロナウイルス感染症拡大中におきましてもその重要性について改めて私どもも認識したところでございます。また、先ほど申し上げましたように、感染症分野はやはり市場が働きにくい状況の中で、どういう形で企業の方に継続して関与していただけるのか。そのために、プッシュ型の研究費の配分であるだけではなく、先ほどおっしゃったようなプル型のインセンティブ、この市場の予見性をどう高めていくのか。こうしたことを全体として、エコシステムの構築に向けて、私どもは検討していく必要があると思っております。今、この場で何か回答ということではないのですが、今後、しっかり検討させていただきたいと思います。
 以上でございます。
○水谷課長 ありがとうございます。
 そうしましたら、予定していた時間になろうとしておりますので、意見交換はこの辺りで終わりとさせていただきたいと存じます。
○山本会長 もう一点確認させてください。
○水谷課長 では、よろしくお願いいたします。
○山本会長 最初、厚労省から頂いたご報告いただいた資料の2ページ目で確認させてください。医療機器のところのマル2の1つ目の矢羽根の広告規制についての2つ目のブレットなのですが、これは我々の理解は医薬品のことを言っているのかなと思っています。確認も含めまして、またぜひ御議論させてください。
 それから、もう一つ、同じところの4つ目の矢羽根の臨床試験のところで、これを見る限り、運用面の話をしておられるのかなと思っていますけれども、我々としては制度をどうするかという御議論をさせていただいていると思っています。是非継続的な御議論をよろしくお願いします。
 以上です。
○城局長 基本、御議論させていただければと思いますけれども、さっきおっしゃった広告規制は、医機連さんの資料の13ページに記載がある「一品目しか取扱いがない場合、広告に該当するために啓発活動もできない」というものに対するお答えとして、このとおり、ここでやるということを書かせていただきましたが、それではない、この要望とは違うということであれば
○山本会長 別途ご議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。医療機器と医薬品の違いがあるようでして。
○城局長 それ官民対話でやる話じゃありませんが、もともとちゃんと分けてやっていますから。で、この中でやるのが困るということであれば、それはそれで別にやりますが、今の枠組みが使えないのだとしたら、新しく枠組みからつくらなきゃいけないので、大分時間がかかると思います。
○山本会長 ぜひよろしくお願いいたします。
○水谷課長 ありがとうございました。
 では、ここで意見交換を終わりとさせていただきまして、最後に、福岡大臣から御挨拶をいただきたいと思います。大臣、よろしくお願いします。
○福岡大臣 本日はお忙しいところ、長時間にわたりまして官民対話に御参加いただきまして本当にありがとうございました。
 医薬品であったり医療機器産業は、日本経済を牽引する基幹産業であるとともに、様々な技術革新を基盤とした製品開発によりまして、国民の保健医療水準の向上に大きく寄与する存在だということで、大変重要な産業だと認識しています。
 いろいろ御指摘がありましたように、これから年末にかけて予算編成の議論が本格化してまいります。この官民連携の下、企業、アカデミアといった主体が創薬や革新的医療機器の創出に取り組み、実用化につなげることができるよう、必要な予算上の対応であったり、医療情報の利活用推進に向けた体制整備といったイノベーションの推進に向けた環境整備に取り組んでいきたいと考えております。
 本日、様々な御意見をいただきました。こういった御意見についてはしっかり受け止めながら、これまで以上に、関係省庁とも連携しながら、革新的な医薬品・医療機器等の実用化を促進するための取組を政府一丸となって進めていきたいと考えています。
 今後も様々な形で、産業界であったりアカデミアの皆様との対話の機会を設けていきたいと考えておりますので、どうぞ、引き続き、よろしくお願いいたします。
 本日はありがとうございました。
○水谷課長 どうもありがとうございました。
 引き続き、私ども、産業界、アカデミアと連携しながら取組を進めてまいります。
 では、これをもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様、お忙しい中、お集まりいただきまして、本当にどうもありがとうございました。