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技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第82回)議事要旨
人材開発統括官海外人材育成担当参事官室
日時:令和6年11月11日(月) 10:00~12:00
場所:Web会議
出席者:市田委員、岩崎委員、漆原委員、大迫委員、後藤委員、當間委員、花山委員、堀委員
厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構
(医療・福祉施設給食製造職種関係)日本メディカル給食協会、農林水産省外食・食文化課、厚生労働省医療関連サービス室
(介護職種関係)シルバーサービス振興会、厚生労働省福祉基盤課
議題
(1)医療・福祉施設給食製造職種の実施・運営状況の報告について
(2)介護職種の作業範囲拡大について(訪問系介護サービスの追加)
【概要】
(1)医療・福祉施設給食製造職種の実施・運営状況の報告について
○ 医療・福祉施設給食製造職種の試験の実施・運営状況の報告について、日本メディカル給食協会から報告があり、主として以下のような質疑が行われた。
・初級と専門級の学科試験について、同じ設問が出る場合があること、専門級で多肢選択式の設問がなくいずれの級ともに○×式としていることから、初級と専門級の学科試験で難易度の差がないのではないか、第2号技能実習で新たに得た知識をどのように専門級の試験で確認しているのかとの質問があった。これに対し、整理して改めて報告するとの回答があった。
・試験基準について、初級、専門級ともに、詳細な知識を有することを求める項目があるが、当該項目について初級と専門級で求める知識の程度に差があるのか。また、当該項目に対応する第1号技能実習と第2号技能実習の内容のレベルに差があるのかとの質問があった。これに対し、整理して改めて報告するとの回答があった。
・当該職種の実習実施者として訪問介護の食事提供をおこなう事業所が存在する可能性があるものの、審査基準において実習実施者の要件として定められている提供食数にはカウントできない、との説明があったが、技能実習生がつくった訪問介護の利用者に提供する食事に関しては実習実施者は責任を持たないということなのか、との質問があった。これに対し、審査基準の作業の定義において「利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く」とされ、医療・福祉施設給食の定義が「家庭、職場、屋外等の任意の場所(いわゆる中食の環境)で調理されることなく食べられるものも対象外である」とされており、訪問介護用の食事には当該職種の技能実習生は関わらないとの回答があった。
・審査基準に定める安全衛生業務について、「労働衛生上の有害性を防止するための作業」、「事故・疾病予防に関わる安全衛生」とあるが、具体的にどのような実習や指導が行われて、それをどのように試験で確認しているのかとの意見があった。これに対し、整理して改めて報告するとの回答があった。
・採点表で主観採点による項目の一部に「適切に」と曖昧な記載があるが、全ての監督者、評価者が平等に評価できるように取組を行っていただきたいとの意見があった。これに対し、御指摘のとおり対応するとの回答があった。
○ 報告の結果、日本メディカル給食協会の技能実習評価試験について、今回の会議での指摘事項への回答について、改めて会議へ報告することとなった。
(2)介護職種の作業範囲拡大について(訪問系介護サービスの追加)
○ 介護職種の作業範囲に訪問系介護サービスを追加することについて、厚生労働省福祉基盤課から説明があり、主として以下のような質疑が行われた。
・送出し国においては訪問介護についてどの程度のニーズがあるのか。例えば、送出し国における統計上のデータを示した上で、訪問介護分野で技術移転が必要である旨の送出し国の正式な要望書が必要なのではないかとの質問があった。これに対し、介護職種については、介護分野として技能実習の枠組みの中で認めていただいている認識であり、利用者の尊厳を大切にしながら自立支援を実現することで、介護サービス、介護支援が提供されていて、施設の介護でも訪問介護でも変わらないと考えている。訪問介護は介護の一部であり、移転すべき技能も変わらない。大前提として、個別の訪問介護のニーズを捕まえるというよりも、介護の業務が基本的には共通であることを前提にお話を進めていただきたいとの回答があった。
・「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」(以下「検討会」という。)の中間まとめは、おそらく国内の訪問介護事業者のニーズを取りまとめただけであって、技能実習制度の趣旨である技能移転のことを全く考えずに内容をまとめた報告書ではないかと思っている。現在、海外から来る介護職種の技能実習生が増えているのであれば、既に介護技能修得のニーズは満たされているので、あえて訪問介護をこのタイミングで解禁する理由にはならないのではないか。仮に、今後、この専門家会議で訪問系介護サービスの追加について議論を継続するのであれば、その前提として検討会の中間まとめの内容はあくまでも今回の参考資料と位置付けて、今後は介護職種の追加の議論を行った平成29年度の専門家会議で、あえて利用者との1対1対応を認めないことにしたことを踏まえ、ゼロベースから、訪問介護に対する遵守事項や内容を議論することが不可欠であり、検討会の中間まとめの内容に沿ってこの場で議論すべきではないとの指摘があった。これに対し、検討会はこの専門家会議と検討の観点が違うことは一面事実であり、技能実習特有の論点等から必要な事項は、こちらの専門家会議で議論することは認識している。しかし、検討会では、介護分野の有識者、関係者に入っていただき、一定の方向性を示しており、検討会の中間まとめの内容は重要であることについてご理解いただきたいとの回答があった。また、委員から検討会の中間まとめはある程度尊重すべきとの意見があった。
・技能の修得の観点から、技能実習評価試験の内容が施設介護と訪問介護とで同じということであれば、あえて密室で利用者と1対1となり、通常の施設の業務よりトラブルになるリスクの高い訪問介護で技能を修得する必要性はないのではないかとの意見があった。これに対し、外国人の方々にお話を聞くと、訪問介護をやることの必要性や重要性を感じている方々がいて、利用者と1対1で対応する中でしっかりとコミュニケーションをとって介護サービスを提供する大切さを感じ、是非そういったことに関わりたいという方々が出てきている。ケアの質や安全などはしっかり担保しないといけないが、そのような技能実習生のキャリアアップという視点も大変重要だと思うとの回答があった。これに対し、外国人の方々にヒヤリングを実施したというが、どの程度の規模で、どういった労働者を対象にした調査なのか、中間まとめでは数名しかヒヤリングしていないのではないかとの質問があった。これに対し、一定の業務経験がある方へのヒアリングで確認をしているとの回答があった。
・訪問介護が技能実習指導員の目の届かないところで行われることについて、コミュニケーションアプリの導入など、ICT の活用等も含めた環境整備を行うとのことだが、この程度のコミュニケーションツールで利用者と1対1対応することを認めた場合、他職種の技能実習の現場でも同様のツールを使用して、技能実習責任者や技能実習指導員がその場で指導をしなくてよいことにつながりかねず、技能実習制度全体の悪しき前例になってしまうのではないか。さらに、技能実習生が現場にいる時に電話などで指導できる体制等が整備されていることを実習実施者に求めると説明があったが、技能実習指導員の目が届かず、密室で利用者と1対1対応しているという点では訪問介護を除外して介護職種を追加した7年前と状況が同じではないか、との指摘があった。これに対し、技能実習指導員が常に技能実習生に同行しているわけではないが、事業所で事前にしっかりと調整や打ち合わせをする、訪問時に何かあったときには対応ができるようにする、事業所に戻った後は適切に指導する。この3点のポイントで技能実習生を指導する体制を確立することが重要である。それらを行うにあたり、ICTの活用はもちろん大変重要であるが、研修やサービス提供責任者等の同行なども組み合わせることで、しっかりとした体制を担保した上で技能実習生を指導することを実習実施者に求めるとの回答があった。事務局から、技能実習指導員がいない所で技能実習を行うことの他職種への影響については、現在でも、技能実習指導員が四六時中、技能実習生の隣で見ていることを求めているわけではないが、技能実習指導員が技能実習生のそばにいないことをどこまで許容していくのか、どこまでICTなどの技術で補完していくのか、訪問介護の事前、事後の技能実習指導員等の対応でOJTの質を担保するのかという点が、今回の議論の肝になると考えているとの説明があった。
・平成29年度に介護職種の追加について議論した際に、訪問介護は利用者と1対1対応になるので外した経緯があるが、それから7年経過した現在、ICT技術等の何が変化したのか。検討会の中間まとめの内容だけでは到底納得できず、また、技能実習開始から半年程度サービス提供責任者等が同行するといった対応では到底不十分である。同行期間が終わった後に、訪問先で技能実習生に対するハラスメントがあったり、利用者の居宅で物がなくなったりしないかということについて、ウェアラブル端末を技能実習生全員に付けて監視するといったことがない限り難しいのではないかとの意見があった。これに対し、7年前においては、EPAなどは少し入っていたものの介護現場に外国人の方々がほとんど入っていなかった状況だったが、その後、現場で外国人材による介護の実践が積み重なってきており、現在は1万5,000人近くの方が介護現場で技能実習生として活躍している点で大きく異なる。介護業界、介護現場の方も、外国人の方々と一緒に働くことで、技能実習生がどういう役割で来ているかの理解も進んできていると思う。また、今ではスマホなどを持って利用者宅に訪問し、困ったことがあれば、音声なり画像なりを送ってやり取りをしている事業者も出てきている。それだけが絶対的な違いではないが、あえて訪問系サービスでこの7年間で進んだことがあるかと問われれば、その一例として挙げられるとの回答があった。
・送出し国のニーズの一例は説明の中で挙げていたが、具体的で詳細なデータはまだ見付かっていないのかとの質問があった。これに対し、国ベースではなく事業体として訪問介護を実施しているケースや、インドネシアにおける介護人材能力強化プロジェクトがある。こちらについては、厚生労働省が8月26日に提示した国際保健ビジョンに含まれており、実際に動いている。送出し国にとっては、高齢化が進む中で高齢者に対してどういうケアを提供していくかという観点が重要であり、その前提でいろいろな国とやりとりを行っている。その中には、もちろん施設介護もあるし、訪問、御自宅での介護も含まれている。したがって、いろいろな形での介護サービスの提供があり得るが、提供する介護というものは変わらずに、施設であるのか、訪問であるのかというように場所が変わるだけであり、各国とのやり取りでも同様の認識であるとの回答があった。
・訪問介護は施設介護以上に難しいところがあると思うが、説明のあった訪問介護を行う前に実施する130時間程度の研修で想定している内容があれば、紹介いただきたいとの質問があった。これに対し、技能実習生が受ける研修には2種類ある。まずは、訪問介護を行う前に受ける必要がある介護職員初任者研修である。130時間の研修で、訪問介護をする上で基本的な事項として、基本的な介護の実践をするための必要な知識、技術を理解することや、利用者家族とのコミュニケーションの在り方、自立支援に資するサービスがどういうものか、人権擁護の観点や職業倫理の観点などを学ぶ。それに加えて、特に技能実習生を対象とした追加の研修を事業所で実施していただく。こちらの研修はより実践的なもので、コミュニケーションや日本の生活様式のほか、緊急時の連絡、対応などの業務フローを学ぶとの回答があった。
・特定技能外国人が介護分野に3万6,000人以上入ってきているが、この中には訪問介護に携わっている方々がいるのか。いる場合、関連データあるいは課題や対策などについて教示いただきたいとの質問があった。これに対し、特定技能についても訪問系サービスは認められておらず、技能実習と同様に、施設やデイサービスというような形で業務に従事している。一方で、介護福祉士の資格を持つ在留資格介護の外国人の方々の中には、訪問介護を実施している方はいる。技能実習や特定技能と一律には論じられないが、そういう方々に対し、検討会の中でヒアリング等を行い、研修の大切さや、あらかじめ緊急時の対応を整備することなど、事業所の工夫によって比較的スムーズに事業が進んでいると伺った。これらのことも参考にしながら検討会において、中間まとめをまとめた経緯があるとの回答があった。
・これまでの議論を大まかに総括すると、大きな論点の1つとして外国人材は、まだ訪問介護には十分携わっていないが、日本人が訪問介護を行う場合、利用者と1対1対応になるリスクには、具体的にどのようなものがあり、多いのか、また、そういったリスクに対して、技能実習生を入れたときに、どのような対応策があるのか整理することが必要であるとされた。
○ 平成29年度に介護職種の追加について議論した時と同様に、次回以降、介護の現場に詳しい方をオブザーバーとして加えて意見を聴きながら、引き続き議論を行うこととなった。
(以上)