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- 第3回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 議事録
第3回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 議事録
日時
令和6年10月3日(水)14:00~17:00
場所
コモレ四谷タワーコンファレンス Room F
(東京都新宿区四谷1-6-1)
(東京都新宿区四谷1-6-1)
出席者
構成員(五十音順)
- 池原構成員
- 岩上構成員
- 上田構成員
- 江澤構成員
- 岡田構成員
- 柄澤構成員
- 神庭構成員
- 北村構成員
- 桐原構成員
- 柑本構成員
- 小阪構成員
- 小嶋構成員
- 田辺構成員
- 田村構成員
- 辻本構成員
- 長瀬構成員
- 長谷川構成員
- 花村構成員
- 藤井構成員
- 水野構成員
- 森構成員
- 山口構成員
参考人(五十音順)
- 岩下参考人
- 櫻木参考人
議題
- (1)行動制限に係る関係者からのヒアリング
- (2)かかりつけ精神科医機能について
- (3)その他
議事
- 内容
○田辺座長 定刻より若干前ではございますけれども、全員おそろいのようでございますので、ただいまより第3回「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」を開催したいと存じます。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところ御参集いただきまして誠にありがとうございます。
初めに、本日の出欠状況と資料の確認について事務局のほうから説明をお願いしたいと思います。
では、よろしくお願いします。
○新平課長補佐 事務局でございます。
本日の会議は、会場への御参集とオンライン会議システムを併用しての実施となりまして、全26名の構成員のうち、会場にお越しいただきました方が18名、オンラインでの御出席は6名となっております。
家保構成員、松本構成員につきましては、御都合により御欠席との御連絡をいただいております。
また、本日は議題(1)の「行動制限に係る関係者からのヒアリング」に関連しまして、構成員の皆様のほか、日本精神科病院協会から岩下参考人と櫻木参考人に御出席をお願いしております。
次に、本日の資料について確認させていただきます。紙媒体の座席表と、構成員の名簿、それからお手元のタブレットに議事次第、資料1から5と、参考資料1から4を御用意しております。
資料の不足やタブレット操作方法の御不明な点がございましたら事務局までおっしゃっていただければと思います。
また、傍聴の方につきましては同様の資料を厚生労働省のホームページに掲載しておりますので、そちらを御覧いただきますようお願い申し上げます。
次に、オンラインで御参加の場合、カメラは常に映る状態にしておいていただければと思います。また、御発言の都度、マイクをオンにしていただき、御発言の後はオフにする操作をお願いできればと思います。会議の途中で何か不都合等がございましたら、お手数ですけれども、事務局のほうまで御連絡いただけますと幸いです。
それでは、冒頭の頭撮り撮影に関しましては、こちらで終了とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
(頭撮り終了)
○新平課長補佐 引き続きまして、資料の御説明の補足をさせていただければと思います。
資料1といたしまして、前回の検討会における主な御意見をまとめたものをお配りしております。第2回につきましては、非自発的入院に係る制度、それから隔離・身体的拘束をテーマに藤井構成員のほうから厚労科研の御説明をいただいておりました。その後の質疑等の中で、皆様からテーマに関連していただいた御意見についてまとめたものでございます。今後の議論において生かしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
○田辺座長 御説明をありがとうございました。
それでは、早速でございますけれども、議題に入ってまいりたいと存じます。
まず議題(1)の「行動制限に係る関係者からのヒアリング」を行いたいと存じます。
第2回で御議論いただきました身体的拘束につきまして、医療現場での実践や当事者の皆様方のお考えをお伺いして議論を深めていくため、本日第3回では医療提供側の皆様方、それから次回の第4回におきましては当事者の皆様方へのヒアリングを行ってまいりたいと思います。
本日は長谷川構成員、次に吉川構成員、最後に日本精神科病院協会より櫻木参考人及び岩下参考人の順で、それぞれ15分以内を目安に御発表をお願いしたいと存じます。
それでは、早速でございますけれども、長谷川構成員から報告をよろしくお願いいたします。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
オンラインで失礼いたします。静岡赤十字病院の長谷川と申します。
資料は事務局から提示をお願いできますでしょうか。
私は今年の3月までは沼津中央病院で精神科救急をしている病院におりまして、身体拘束ゼロプロジェクトに携わっておりました関係で、実践した立場でお話をさせていただきます。
次をお願いいたします。
実は世界でも行動制限最小化は本当にチャレンジングなテーマでして、強い精神症状ですね。焦燥とか暴力、攻撃性などはやはり隔離をしているところが圧倒的に多い。
ただ、児童精神科では特に隔離を減らそうという取組がなされています。ランダム化された研究もありませんし、まだまだ課題の多いところです。
あとは、当事者とスタッフで行動制限に対する心持ちがやはり違いまして、当事者の方は当然ながら日々やめてほしいというところなのですけれども、スタッフの中にはそれぞれ温度差はあると思いますが、ちょっと抵抗感が小さい方もおられるようで、そんな研究があります。
ちなみに、私は拘束が特に嫌で嫌で仕方ないというところがありました。
次のスライドをお願いいたします。
「行動制限を減らす方法」は実はいろいろな取組がありまして、一番上にあるトラウマインフォームドケア、こちらは厚生労働省のホームページにもありますけれども、今日は2番目の赤字のシックスコアストラテジー、片仮名で申し訳ないですが、6つのコア戦略がそろうと行動制限最小化ができるということで、それを実践したお話をさせていただきたいと思います。
今日は時間の関係でお話しできませんけれども、その下にあるコンフォートルームなども行動制限緩和ツールの中にありまして、医療観察法病棟の中にもあるのですけれども、こんなことも参考にしていただければと思います。
本題に戻りまして6つの戦略のお話ですけれども、赤い四角で6個書いてあると思います。「リーダーシップ」ですとか「スタッフの技術力向上」「行動制限緩和ツール」「入院施設での利用者の役割」「ブリーフィング」「データ」となっています。
特に、この中で3つ今日はお話ししたいのですけれども、「行動制限緩和ツール」と「入院施設での利用者の役割」と「データ」についてお話をします。
「行動制限緩和ツール」ですけれども、資料の左下にピコットというロゴがあると思います。これは沼津中央病院の院長がつくっているものなのですが、隔離のエリアから早期作業療法をしましょうというものになります。今はおなかの手術をしても翌日から歩くリハビリが始まっていますが、精神科でも同じ感覚になります。例えば風船バレーをしたり、アロマをたきながらストレッチをしたり、ゲームをみんなでしたり、そういうレクリエーション的な活動をしながらでも隔離の時間を減らせるというメリットがあります。そういうふうに行動制限緩和ツールを活用する。
それから、「データ」の話なのですけれども、沼津中央病院は電子カルテの中でそういう行動制限を見られるものがありまして、実は解析をしたところ、点滴とか転倒転落で拘束になられている方が70%おられました。ということは、ここは工夫すれば減らせるだろうという目算があったわけです。
それで、この6つの戦略の中で一番活用が難しいのが「入院施設での利用者の役割」になるかと思うのですけれども、ここは資料の中で丸で囲ってあるのですが、「ピアサポーター主導の集団療法」を病院で取り組んでおりました。通称フリートークの会と言っていまして、週1回45分、病棟の中に畳のエリアがあって、そこでみんなで車座になって入院されている利用者さんはどなたでも参加できます。ピアサポーターが2人司会をして、どんなことでもどなたでもどうぞというお話合いの会でした。
そこで私も白衣を脱いで一人の人間として参加していたのですけれども、本当にタブーなき話題でして、そこでは行動制限の話も出ました。それで、隔離室はうんと怖かった。どうやって人を呼んでいいか分からないからドアをものすごくたたいてしまったとか、隣同士、顔も見えない中で話をしたとか、そんな話が出てきます。
その中で、「後で考えると、隔離は混乱していたし、必要だったかもしれないと思う。だけれども、拘束はどうしても許せない。人として扱ったと思わない。だからやめてほしい」と目の前で言われるわけです。私は一保健指定医で行動制限の指示を出す立場ですから、本当に申し訳なくて小さくなって、本当にごめんなさい、何とかやめるような方法を考えていきますというような話をしていたところです。
こんなふうにして、とにかく拘束をやめたいなと思っているところに、次のスライドをお願いいたします。
2021年4月に、院長から身体拘束ゼロ化プロジェクトが発動されました。本当に身体的拘束は例外以外行わないということになっています。それで、松沢病院で先行してプロジェクトをされていますけれども、拘束をするリスクではなくて拘束をしないリスクを負いましょうということで、例えばどんなに転んで大きなけがをしてもうちの病院は拘束をしない取組をしていますと入院時に説明をするようにいたしました。
そして、プロジェクトチームが全職種で立ち上がりまして、代表者が集まって月1回会議をするのですけれども、それ以外にも病棟の看護師さんたちが研修会を月1回開いて、本当に拘束をしないためにはどうしたらいいか、話合いをしてくれました。
また、転んでも大丈夫なように低床ベッド、落ちても何とか小さなけがで済むようなベッドとか、組み立てのマットを敷き詰めるだとか、そういう工夫をしたり、それから点滴もなるべく時間を短くするのですけれども、そのときにリクライニングの車椅子があるとちょっとゆったり座ったまま、座位の車椅子は大変なので、そんな工夫のためにグッズを買ってもらったりもしました。
身体管理の方法を変えて、考え方を変える。大事なのは、言い訳をしないで拘束をしないように工夫するということが大切だったようです。
次のスライドをお願いいたします。
実際の現場の声ですけれども、当初、号令がかかったときはポジティブな反応もネガティブな反応も正直ありました。看護師さんたちから、医者がすぐ来ないのは困ると、私は当時部長だったので、とにかく医局を指導してくれと言われて、かしこまりましたと指導というよりは、お願いをしました。
それで、ディエスカレーションで興奮を静めるスキルをとにかく磨いたりですとか、命を守るためにみんなで体を張って徒手制止をする。だから、本当にスタッフも汗だくになって翌日筋肉痛になってしまったりもするのですけれども、それでも拘束をとにかくしないようにする。
早期作業療法は先ほど御説明しましたもの以外にも、看護師さんの手が空いていたら日中に運動をしてもらったり、あとはアロマなど行動制限緩和グッズを活用しました。
点滴も1時間から3時間くらいの間でなるべく短くして、看護師さんにずっと付き添ってもらったりとか、さっきのリクライニングの車椅子で看護師さんはナースステーションの前にいてもらったりもしています。
ベッドからマットと、ベッドをもう諦めてマットに変更して、どこを歩いても柔らかいようにしてみたりもしました。
とにかく話合い、多職種で、看護師さん同士でも物すごく話し合いましたし、職種を違えても話し合いましたし、当事者も交えてやはり隔離も止めてほしいという話を聞きながら、では隔離を止めてみようみたいな話がより出やすくなったかなと思っています。
拘束者の割合も、平均拘束時間も激減しました。口頭での説明になりますけれども、10年前の一番多かったときは全体の入院の方の25%くらいになってしまったときもあったのですけれども、プロジェクトが始まったら6.9%になり、3年目の2023年度は3.3%と物すごく減っています。平均の拘束時間も一番多いときは4日くらいというときもあったのですけれども、それがプロジェクトが始まりましたら7時間ですね。2022年は5.8時間になり、2023年は2.3時間と本当に短くなって、ゼロにはなっていないかもしれないのですけれども、成果は出ていると思います。
次のスライドをお願いいたします。
「全国の取り組み例の報告」、これはインターネットでも見られるのですけれども、簡単に言いますと、共通項は利用者さんとのと関係性の改善になります。それから、看護師さんが特に奮闘していただくのと、職員のジレンマが解消される。それで、岡山県立医療センターでは隔離解除までの期間が短くなったり、山梨県立北病院では心理的負担、利用者さんの負担が軽減されたり、合併症や筋力低下のリスクも低減して、いいことが多いよという報告になっています。
次のスライドをお願いいたします。
「行動制限最小化にかかる課題」ですけれども、「既存の方法から脱却し、文化を変える風土」、とにかく変化をしていくという意思が大事になっていきます。
マンパワーは残念ながら増えません。本当に限られるので、それでも言い訳しないでできることをする。
それで、攻撃性が強いときは複数で対応しますし、多職種で対応しますし、転倒転落など医療安全管理の考え方を少し変えたり、身体管理も医学的に安全な範囲で緩めて工夫をしたりします。
万一、スタッフが暴力を受けたときは迅速に対応し、支援する。
入院当事者やピアスタッフの声を聞き、学ぶ姿勢を保つということが課題になるかと考えています。
最後のスライドをお願いいたします。
これは私の勝手な意見が大分載っているのですけれども、今後医療福祉教育の時点から行動制限の不利益を伝え、精神科医療の文化を変える必要性を伝えていく。拘束に関しては身体科もありますので、これは本当に教育の時点から必要かなと思います。
強い焦燥や攻撃性が高いときに、隔離せずに治療できる方法を世界から学び、日本でも研究する必要があるかと思います。
入院治療のときからピアサポーターの参加を実はアメリカとかは結構していますので、そういう先行例を学んで日本で取り入れる形も考えていけるといいかなと思います。
救急・急性期の医療の質を上げて、ガイドラインですね。例えばEGUIDEとかありまして、薬剤適正使用と、あとはそのランキングが出て、全国の中で自分の病院が何位くらいにいるかが分かるような制度があるのですけれども、そんなガイドラインを使ったり、早期作業療法とか意思決定支援などをして医療の質を上げ、入院期間を短縮し、満足度も上げて通院治療継続につなげるとよいと思います。
また、地域支援ですね。住居・就労支援も含めて手厚くして、ある程度の危機は乗り切れる支援体制があるとやはり地域で暮らせるようになると思いますし、今、私は総合病院にいるので余計思うのですが、総合病院スタッフの精神科対応スキルが上がれば、ある程度の身体合併症はスムーズに見られるのではないかと考えています。
地域支援が充実すれば、療養病棟の長期入院者の一部も地域で暮らせるかなと思いまして、「にも包括」の先の地域共生社会を目指してやっていけたらいいのではないかというのが私の考えになります。
以上、発表になります。ありがとうございました。
○田辺座長 長谷川構成員、どうも報告をありがとうございました。
続きまして、吉川構成員から報告をお願いいたします。
では、よろしくお願いいたします。
○吉川構成員 よろしくお願いいたします。日本精神科看護協会の吉川でございます。今回はヒアリングの機会をいただき、ありがとうございました。
私のほうからは、「精神科病院の看護職等による行動制限最小化の取組実践」ということで、先ほど長谷川先生のほうからもいろいろと御紹介がありましたが、具体的に病院、病棟で看護職等がどのように取り組んでいるのかというのを職能団体及び研究者の立場より、取組の概観を今回は御紹介させていただければと思います。特に今回は根拠資料とか、そういったものを示さない形での御紹介になっていますが、御理解いただければと思います。
では、まずめくっていただきますと、臨床で行動制限最小化にどのようなきっかけで取り組んでいったのかという説明になります。現場で改めて行動制限最小化に取り組もうということで組織的な取組を行っているところが非常に増えてきております。様々な取組の契機はございますが、例えば病院の理念、もしくは院長先生の方針を看護部長などがそれに共感して、何とかそれを実現していきたいと考えて、さらにそれを病棟師長、または病棟師長がスタッフに説明をしていくという形で進めたり、もしくは具体的に進めていくためのガイドラインといったものの作成につながっていくといった取組の契機もございます。
また、他施設で既に先行して取り組んでいらっしゃる、例えば精神科病院の取組でありますとか、あとは介護保険施設での縛らない介護とか、そういったところに感銘を受けて自分の精神科病院でも取り組んでいきたいということで取り組まれていらっしゃるところもありますので、こういった他施設の情報というのも非常に重要だと感じております。
また、病院によってはデータ活用という観点から自院の行動制限のデータを集約されて、そういったデータから取組につながっていくといったこともございますし、ほかの施設のデータと病院のデータを比較、評価されて、そういったことがきっかけで取り組まれていった病院もございます。
次をめくっていただきますと、まず身体的拘束への具体的な取組実践の例としてどのような取組があるかということを御紹介させていただきます。
まず1つ目は、日本精神科看護協会の取組になりますが、日本精神科看護協会では2021年の第2回の精神科看護CONGRESSという学術集会の場で精神科看護職が目指す方向性として「「身体的拘束に頼らない看護の実現」をめざす」ということを打ち出しました。
こういった方向を打ち出すまでには、2020年にちょうどコロナ禍でしたが、この行動制限に関して精神科看護職としても取組が必要だということで、オンラインで看護管理者の方々を対象にして数回意見交換をさせていただきました。現場の皆さんとしても、やはり基本的には行動制限はしない方向、できるだけ減らしていきたいということで、そこでこの「「身体的拘束に頼らない看護の実践」をめざす」ということを共有し、明くる年の精神科看護CONGRESSのほうで公表させていただいております。
そしてマル2ですが、「身体的拘束要因の解消に向けた取組」として、現場で様々な取組、工夫が行われています。これは身体的拘束を回避をするための取組というふうに示させていただいております。これは、まずは身体損傷のリスク回避ということで、やはり高齢化、身体的治療で例えば点滴が必要で、それの抜去などによる身体損傷を回避するといったことが身体的拘束のリスクに現場でなることがございます。
そこで、そういったリスクをそもそも回避していこうということで、医療的処置の実施、これは先ほど長谷川先生の発表にもございましたが、例えば点滴などはできるだけ看護職の多い時間帯で見守りができる体制で実施することといったような工夫を行ったり、あとはルートの違和感でそれを外したいというふうになることもありますので、患者さんの苦痛、違和感等を最小にするためのルートの固定の方法というようなことをいろいろ工夫されている病院、看護職もあります。
次をめくっていただきますと、先ほどもありましたが、やはり転倒転落のリスクが身体的拘束の要因になることがございます。そこで、転倒時のリスクを低減していこうということで、どうしても転倒されたり転落されたりすることがございますので、万が一、転落されてもけがをしないような低床ベッドを利用したり、あとは転倒時の衝撃低減マットが最近かなり利用されております。かなり患者さんの外傷が防げる効果が認められるということで、こういったものの活用も進んでおります。
そして、夜間に歩かれてふらつきがあって転倒されるということもリスクになりますので、生活リズム、睡眠状態を改善していこうということで、一人一人の患者さんのアセスメントをして日中活動の計画、これは多職種で日中の生活リズムを整えるようなケアであるとか、例えば作業療法であるとか、そういった取組を行う。そして、精神科医師のほうと連携して薬物調整といったものも行ったりしております。
それともう一つは「安心感を与えるケア」ということで、高齢の患者さん、特に認知症のある患者さんの場合にはケアの工夫ということで、現場ではユマニチュードの技法などを活用したケアが行われておりました。
それから、3つ目が「身体的拘束の代替法を用いた取組」ということです。こちらも身体的拘束に頼らない看護実践を目指すということで、1つは「環境調整」です。各種センサーの利用ということで離床センサー、体動センサーの活用をしていますが、これはどういったセンサーが一番この患者さんにとってふさわしいのかということを現場の看護師が様々に試しながら、患者さんにとって一番いいセンサーを活用されております。こういったセンサーを活用することで危険の早期発見ができて、早期に対応ができ、そのことで転倒を防ぐということにつながっております。
また、ウェアラブル端末を最近は所持しながら、特に夜勤とか看護師が少ない時間帯にはセンサーがナースステーションだけで鳴ってもなかなか気がつかないということもありますので、そういった端末を所持するということと、あとはできるだけ患者さんのところに行く時間を増やすということで、申し送り時間の短縮といった工夫をされているところもあります。そうした取組によって、観察のモニタリング体制の強化を行っている状況です。
さらに病室、ベッドの配置を工夫しまして、例えばナースステーションからできるだけ駆けつける時間が短くなるような病室利用、あとは駆けつけるまでの時間が確保できるようなベッドの配置の工夫も見られます。
それと、病院によっては見守り担当のスタッフを配置しています。これは看護補助者も含めた見守り担当者により、デイルームなどで人による転倒防止に取組んでいらっしゃるところもございます。
身体拘束の最後でマル4になりますが、身体的拘束を実施した場合、できるだけ早期に解除していきたいということで、解除に向けた取組としまして「患者個別のアセスメントと対策の検討」が非常に重要になると考えております。これはそれぞれの患者さんにとって身体的拘束が必要になった要因と、あとは身体的拘束をしない場合のリスクアセスメント、そういったものを丁寧に行いながら、一つ一つのリスクをどのように回避するか、どのように対応していくかといった対策の検討を行っていくというところがあります。
そういった取組により一人ずつ解除していくということで、最初はかなり心配だったスタッフも、一人ずつ解除をして大丈夫だったといった成功体験を積み重ねることによりスタッフの安心感につながり、その結果として取組が継続して行えていっているんだということがよく分かりました。
続いては、「隔離への具体的な取組実践(例)」になります。
1つ目は「隔離要因の解消に向けた取組」ということで、こちらも隔離を擁する状態にできるだけならないようにしていくといったケアの工夫になります。
この1つは「予防的ケア」ということで、例えば病状でありますとか、状態が悪化して隔離が必要な状態にならないようにしていくということです。これはトラウマインフォームドケアといった考え方を応用しているものにはなりますが、患者さんの個々に応じた手段、選択をして、患者さんと一緒にどういったものに効果があるのかということを考えながらそういった取組をしていらっしゃいます。
また、そういった取組は患者さんが退院した後も御自宅で、御自身でセルフコントロールに活用していっているといったこともございます。
2つ目は隔離最小化ということで、隔離になった場合にできるだけ早期に解除できるようにする。そういった方向での取組になります。これは「患者参画型の取組」ということで、パートナーシップの考え方を重要視した取組が最近は増えていっております。
例えば、どのような状態になれば解除になるのか、何ができるようになればいいのかといった具体的な行動目標を患者さんと職員が共有できるような方法を取ることにより、判断基準を可視化する、さらには患者さんと職員による評価のずれが起こらないようにするといった取組をしていらっしゃるところも増えてきています。
次をめくっていただきますと、行動制限最小化は看護職個人だけでは進めることができません。そこで、最小化を進めるチームづくりというのが非常に重要になってきます。
まず1つ目として、チームスタッフの意識改革というのが大切になってきますが、意識改革に向けた取組としては、例えば倫理カンファレンスを行いながら患者中心に考えていくといった風土づくりを地道に行っていくこと。
もう一つは「行動制限を行わないメリットの共有」ということで、先ほど長谷川構成員の資料にもございました行動制限を行わないメリットとをスタッフ間で共有していくというのも非常に重要になると思います。
そして、「個別性の尊重を重視した業務改革」ということで、こちらは伝統的に精神科の病棟には日常生活上の例えば様々なルールとか制約がございます。個別性の尊重をめざして業務改革を行うことにより制限を行わない、制限はしないという意識を高めていくといった意識改革に向けた取組も非常に効果的だと感じております。
そして、2つ目は「病棟看護職員のサポート体制」ということで、行動制限最小化を進めるためには特に病棟看護職員のサポートというものが重要になると考えております。
1つは「心理的安全性の確保」ということで、率直な意見表出が看護職のほうからできること。そして、スタッフが行動制限最小化の取組についていこうと思えるような、職員間の関係性というものが非常に大事だと感じております。
また、「多職種によるサポート」ということで、これは作業療法士、精神保健福祉士の皆さん、心理職の皆さんとともに考えて、ともに取り組んでいくという、これは患者対応も含めて多職種の皆さんにサポートしていただけるというのが非常に大事だと考えております。
もう一つは、多くの病院に行動制限最小化委員会があると思いますが、最小化委員会によるサポートというものも非常に心強いサポートになっております。これは、委員会の委員の方に病棟に出向いていただいて、一緒に事例を検討していくといったサポート体制が非常に有効かと思っております。
また、CVPPPのような研修を受けた職員を病棟に配置することによって、患者さんの対応に非常に効果的に生かしていくといったサポート体制も非常に重要だと思います。
次が最後になりますが、5番目が行動制限最小化を促進させる、もしくはそういった取組を定着させる取組としてどのようなことが行われているかということです。1つ目に挙げさせていただいているのは行動制限最小化のマネジメント、これも非常に重要になるところで、「トップマネジメント」というのはやはり病院長の先生であるとか、看護部長とか、そういった役職にある方が方針を提示していただくことが非常に重要だと思っております。
また、行動制限最小化を推し進めるに当たっては様々なリスクがございます。ですので、そういったリスクに立ち向かうとき、何かあったときに責任を取るのでスタッフのほうに頑張ってほしいといったメッセージを伝えていただけると、スタッフは安心して取り組むことができますので、そういった役割がトップマネジメントとしては非常に心強いですし、重要だなと感じております。
また、「ミドルマネジメント」というのは現場のマネジメントになります。特に病棟では、病棟の看護師長さんとかがこういった役割を担っていらっしゃることが多くあります。それぞれの病棟の行動制限の状況などの現状把握をされ、具体的にどういうふうに取り組んでいくのかという患者さん個々のアセスメントとを含めた現場指導、あとはスタッフの相談、これは不安などへの対応も含めたスタッフの相談対応というものが非常に重要になると思っております。
マル2が「リスクへの対応」になります。
1つは「医療安全委員会との連携」、そういったことを行うことによってリスクを恐れずチャレンジできる体制づくりにつながっていくのではないかと思います。
また、「事故発生時の対応」として、やはりスタッフが責められない体制づくりというのが非常に大事になってくると思います。
そして、あらかじめ入院される患者さんの御家族に行動制限最小化の方針を丁寧に説明して、できるだけ御理解をいただけるような関わりも必要になると思います。
最後に「その他の取組」としましては、やはり「行動制限最小化に資する情報・知識・スキルの獲得」というのが非常に大事になってくると思います。いろいろな病院で実際に取り組んでいらっしゃる事例がきっかけになることも非常に多くありますので、情報に加えて具体的な取組を行うための知識、スキルの獲得といったものが重要になるのと思います。もう一つは例えば身体的拘束の実施率・実施日数といったものを公開していくといったところも非常に大事な要素になるのかなと思っております。
病院によってはクリニカルインディケーターとか、臨床指標として身体的拘束の実施率や実施日数等を公開していらっしゃるところもありますので、こういった公開されていることが一つの目標となってさらに次の年に向けて取組が促進していくことにもつながっていると感じております。
私のほうからの報告は以上になります。
○田辺座長 吉川構成員、御報告をありがとうございました。
続きまして、櫻木参考人、それから岩下参考人から御報告をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○櫻木参考人 日本精神科病院協会の櫻木です。
多くの構成員の皆様、お久しぶりです。よろしくお願いいたします。本日は、このようなヒアリングという形で我々の意見をお聞きいただくということでありがとうございます。
それでは、めくっていただいて、我々の組織についての概要になります。
昭和24年の6月に設立をされたということ、国民の精神保健の向上と精神疾患を持つ人への適切な医療・福祉の提供、精神障害者の人権の擁護と社会復帰の促進ということを目的にしてやっております。平成24年には、公益社団法人へと移行しております。現在、会員数は1,178病院ということになっております。
次をお願いします。
今日は私のほうで総論的なお話をさしあげて、あとは日精協の医療安全委員であります岩下参考人のほうから具体的な我々の取組ということで御報告をしたいと思います。
今日、皆様のお手元に我々の協会雑誌の今年の8月号ですけれども、ちょうど行動制限最小化・適正化ということで特集を組んでおりますので、お時間があるときに見ていただければと思います。
次をお願いします。
我々の行動制限に関しては、精神保健福祉法の規定に基づいてやっているということですけれども、第34条第1項では「精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる」と定めているというところです。
それに従って、我々医療の現場では、下に示しますような基本的な考え方ということによって、特に行動制限の中でも身体的な拘束を行っているということになっております。それで、事後に行動制限最小化委員会で検証をしてフィードバックを行っているということが日常になっております。
基本的な考え方についてお話をしますと、1つとしてはそのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれ、または重大な身体損傷を生ずるおそれが著しく高い。いわゆる切迫性と言われるような考え方です。
それから2つ目としまして、身体的拘束以外によい代替方法がなく、やむを得ない処置として行われる。これは、非代替性ということになります。
3つ目として、身体的な拘束は一時的に行われるものであり、必要な期間を超えて行われてはいけないものである。これは一時性という考え方になろうかと思います。
次をめくっていただくと、精神保健指定医が行動制限というものを考慮するような場合の精神状態像というものを幾つか挙げております。幻覚妄想が非常に強く、行動がそれに左右されているような状態でありますとか、幻覚妄想状態にはしばしば合併をしますけれども、精神運動興奮状態、統合失調症の場合でいえば緊張病勢興奮というのがこれに当たろうかと思います。
それから抑鬱状態、これで非常に希死念慮が強くて実際に自殺企図を図られるようなケースでありますとか、あるいは躁状態の場合、これも時には精神運動興奮状態を呈するという躁病性の興奮状態ということがあります。それから、高齢の方などに関して言えば、せん妄であるとか、あるいは朦朧状態ということで、意識が障害された中でいろんな行動が起こる。それを制止する必要があるということが考えられるかと思います。
私の部分のまとめとしましては、隔離、身体的拘束等の行動制限は精神保健福祉法の規定に従って行われているということ。
それから、その際も切迫性、非代替性、一時性といった基本的な考え方を横に置きながら判断をしている。
行動制限の対象についてなかなか分かりにくいところがあろうかと思いますので、その実態について参考資料をつけておりますのでそれを少し説明させていただきます。
次をお願いします。
これは我々のほうで事故報告ということで、2018年から2022年の5年間の合計ということで集積をしたものです。不慮の事故、致死ということで、誤嚥、あるいは転倒を含むようなことが3割くらいあります。自殺及び自殺未遂というのが20%、患者間の暴行・傷害・傷害致死・殺人というのが11%となっています。
次をお願いします。
これは、精神科の特に救急の場面における破壊的な衝動の頻度ということで、先ほど御発表いただきました長谷川先生が以前に勤務をされていました沼津中央病院の入院患者さんのレジストリーを運用させていただいています。
自殺念慮がかなり深刻な場合は12.6%、自傷行為・自殺行動で言うと致死的な内容のことは7.8%、他害行為、特に対人に関わる他害行為というのは16.8%というふうに報告をされています。
次をお願いします。
その中の対人・暴力というようなところに関して統計を取っています。これも精神科病院の実態調査の報告書ということで、2022年の報告に基づいています。受傷の相手というか、属性としては患者さんが64%を占めて一番多いということになっています。医療スタッフに対しては36%という数字が出ております。
次をお願いします。
発生の状況はどうであったか。別の見方をすると、そのことは予見できたかどうかということですけれども、突発的な暴力、あるいは予測不能な暴力というのが全体の8割を超えてあるということ。それから、患者さんが不穏な状態で対応したというときに受傷したというのが12.4%となっています。
引き続いて、我々の具体的な取組について岩下参考人からお話をさせていただきます。
○岩下参考人 それでは、具体的な取組ですが、医療安全委員会委員の岩下のほうから御報告させていただきます。
医療安全委員会はさっき櫻木先生のほうからもお話がありましたけれども、大体会員病院から事故報告が年間350件から400件挙がってまいります。それを一件一件、かなり時間をかけて検証して、再発防止策等を含めて当該病院にフィードバックするという作業をずっと行っていますので、主に私のほうからはそういった医療安全の視点から具体的な取組について御説明させていただきます。
まず、そこにありますように日精協では行動制限、中でも身体的拘束の最小化・適正化を非常に最重要課題と捉えて様々な取組を行ってまいりました。
お願いします。
それで、お手元にある先ほど御紹介させていただいた日精協雑誌ですね。これは毎月、全会員病院に配付していまして、その都度特集を組んでおります。その中で医療安全に係る特集を定期的に組んでおりまして、どんどん繰っていただいてよろしいでしょうか。
これは2004年ですけれども、次をお願いします。
2009年です。
「行動制限環境-短く、安全に」というのは2018年です。
お願いします。
これは2022年、「精神科病院の入院処遇における人権配慮の取組」。
その次に送っていただいて、これが今お手元に配付させていただいた最新の特集号ですけれども、赤枠で囲わせていただいたように、当初からいろいろな医療安全に係る特集の中で、行動制限最小化・適正化ということをかなり重点的なテーマとして捉えて、会員病院に対して問題提起、それから情報の共有を行ってきたという経過がございます。
次をお願いいたします。
日精協では年に1回学術大会、学会を開いておりまして、そこでもここ数年、“身体拘束最小化・適正化”関連のシンポジウムを企画して実施しております。
お願いいたします。
ちょっと見づらくて恐縮ですが、3年前の浜松の大会のときですね。ここではシンポジウムを2つ組んで、1つは身体拘束に係る重要な合併症である肺塞栓のリスクマネジメントと、それから「行動制限最小化に関する最近の動向」、先ほどの杉山先生が座長を務められてこういったシンポジウムを開催いたしております。
次をお願いいたします。
これは一昨年の熊本大会なのですが、ここでは特に行動制限に伴っての医師とか看護師の診療録、あるいは看護記録の記載の仕方、記録の在り方の問題というのは非常に重要な問題というふうに捉えまして、それをテーマにこういった形でシンポジウムを行っております。
次をお願いいたします。
それから、日精協では大変多数の研修会を定期的に行っておりますが、その中でもそれぞれ身体拘束最小化・適正化関連プログラムというものを入れ込んで、そういった機会を捉えて会員病院に周知するようにいたしております。
例えば、これは毎年やっている看護管理者講習会というものですけれども、ここでも肺塞栓の予防の問題を取り上げたり。
次をお願いいたします。
これも毎年やっております医療安全管理者養成研修会ですが、この中でも「身体的拘束を安全に行うためのマネジメント」というようなことでそういった項目を入れているということでございます。
お願いいたします。
それで、先ほどちょっとお話をした「医療安全委員会」のそういった活動を通じて、これは個々の事例についてのフィードバック、当該病院についてのフィードバックと、それから時々お手元にもお配りしたような、そういった経過をまとめて日精協雑誌に載せて全会員病院にフィードバックするということと並行して行っているわけですが、「身体的拘束に関連した医療事故」というのはやはり一定のパーセンテージで上がってまいります。
前に23年間の全部統計を取って、6,000件のうち身体的拘束に関連した事故というのは137件ありました。約2%ということになりますが、その内容は非常に様々なので一くくりに言えない部分が多いですけれども、大きく分けて身体的拘束をやったことに起因すると思われる医療事故というものがございます。そのうちで、手技そのものはちゃんとやっていたんだけれども、例えば突然死が起きてしまったというような事例であったりとか、中には大変残念なことに手技がやはり不適切であった。胴拘束だけでやっていたために、患者さんがその拘束を抜けていろんな重大な合併症が起きたというようなものもございます。
それからもう一つは、身体的拘束をやっていればこの事故は防げたのではないかと思われるような事故も一定のパーセンテージでございます。こういったようなものをかなり時間をかけて検討して、次のスライドをお願いいたします。
それで、どんな点を重点に検討するかということですが、まず身体拘束を施行した事例についてはそもそも開始、継続は妥当であったかどうか。
それから、拘束の部位とか手技、この中にはPTE、肺塞栓の予防策も含まれるかと思いますが、妥当であったかどうか。
それから、拘束の開始、継続についてきちんと患者さん御本人、あるいは御家族に説明をしていたかどうか。
あるいは、拘束をやっている間の観察頻度、巡視頻度、観察方法が妥当であったかどうか。
解除方法とか解除のタイミングはどうだったのか。
それから、先ほど申し上げたように身体的拘束に係る記録はきちんとされているかどうか。
こういった点を主に検証して、何か問題があれば当該病院にフィードバックするということをしております。
それから、身体的拘束を施行しなかった事例で重大な事故が起きた場合に、中にはこのケースについてはやはり身体的拘束をやるべきだったのではないかという形でフィードバックすることもございます。
次のスライドをお願いします。
そのような例の代表的なものを2つ、これは私が委員会で担当した事例ですが、お持ちしました。
1例目は、20代の統合失調症の患者さんです。幻聴が活発で非常に激しい精神運動興奮で、滅裂な状態で入院されて、当該病院では拘束はしないで隔離を施行して経過を見ていたわけですが、入院の翌日にベッド柵を壊して、その破片で御自分の両眼を突いて、結果的には右眼の眼球摘出、左眼は光覚のみという20代の若い男性で非常に重篤な後遺症が残ったというケースでございます。
その次は30代のカフェイン中毒の男性ですが、隔離を施行して様子を見ていたところ、非常に激しい興奮状態でドアを乱打したり、あるいは自ら何度も床に倒れ込んで頭をぶつけたりといったような行動を繰り返していたということで、当初は隔離、拘束はしないで経過を見ておられたわけですが、同様の行動が収まらないで徐々にエスカレートしてくるということで、やむを得ずに身体的拘束を施行された。
ただ、その後、意識レベルが低下して緊急搬送したところ、右の急性硬膜下血腫、あるいは外傷性気胸・縦隔気腫等々というようなかなり重篤な障害を負われて重大な後遺症が残ってしまった。このケースについては、その後、御家族が「早期に適切な介入をしなかった」ということで病院に訴訟を起こされたという後日談もございますけれども、こういった2例については検討会で、委員会で検討したところではやはり拘束をすべきだったのではないかというケースがままあるので、そういう場合にはそういう形でフィードバックするということもございます。
次をお願いいたします。
こういったことも踏まえて、次をお願いします。
最近のいろんな裁判事例も踏まえて、2021年の12月に日精協内に「身体拘束適正化専門対応チーム」というものを立ち上げまして、計7回検討委員会を開催して、成果物として去年の10月16日に「身体的拘束適正化モデルチェックシート」と、それから「利用の手引き」というものを日精協のホームページにアップいたしました。
次をお願いいたします。
これはホームページの説明文なのですが、ちょっと分かりにくいので重要な部分だけ大きくしてありますが、身体的拘束実施時の必要事項をとにかく可視化するということで、身体拘束の適正化を目的としたい。それで、チェックシートだけではなくて別表を2つつけて、1つは「拘束解除の評価」、それからもう一つは肺塞栓予防評価表というものを併せて作成した。
日精協の会員病院はたくさんございます。それで、病院によっていろんな診療体制、検査体制にかなりのばらつきがあるというのは事実でございますので、それと会員病院の体制に合わせてカスタマイズして使用していただくということを推奨しているということでございます。
その次をお願いします。
これはチェックシートの「利用の手引き」の冒頭の部分ですが、ここで言う「適正」という言葉には2つの意図が込められているのだということをここで明示してあります。1つ目は行動制限最小化を推進していくということだということと、2つ目は深部静脈血栓症、それから肺塞栓症の予防に努めて発生に備える。この2つのことをもって、日精協としては適性化というふうに理解しているということでございます。
お願いします。
見づらくて恐縮ですが、これが実際のチェックシートなのですけれども、赤枠で囲ったところがア)からウ)までの処遇基準告示の対象となる患者さんがきちんとその基準を満たしているか。
それから、下のほうは1日2回ずつチェックすることになっていますが、非代替性とか切迫性が担保されているかどうかということを都度きちんとチェックして、それがなくなった段階で拘束を解除するというような立てつけになっております。
次をお願いします。
これは、別表1の解除の手順です。
次をお願いします。
これは肺塞栓の予防とチェックシートですが、この辺はちょっと細かいので実物をぜひ御覧いただければと思います。
次をお願いいたします。
その間の議論で、チェックシートそのものに載せるのはなかなか難しいけれども非常に重要なことがあるのではないかということで、次の2つの項目はチェックシートではなくて別途「利用の手引き」に文書の形で盛り込んであります。
1つは、先ほど来お話ししているように、とにかく肺塞栓による死亡事故を防ぐためにも基本的には身体拘束の件数を減らして、拘束時間を可能な限り短縮するということが重要なんだということをうたってあります。
それから、2番目に会員病院のほとんどは単価の精神科病院ですので、肺塞栓の予防にせよ、あるいは発症した場合の治療にせよ、自院だけで完結するということはほとんど不可能であります。ですから、日頃から近隣の他科、あるいは総合病院と良好な連携体制を構築して、必要時には迅速な支援が得られる体制を築いておくということが何よりも非常に重要だということを強調してございます。
次をお願いいたします。
私の部分のまとめでございます。
日精協では行動制限、特に身体的拘束の最小化、適正化を最重要課題の一つとして、ただいま御説明したような会員病院を対象にいろいろな取組を行ってきております。
今日は、主に医療安全の視点から幾つかの具体的な取組を紹介させていただきました。
日精協では身体的拘束最小化・適正化の意味するところは、基本的には1つ目は行動制限最小化を推進すること、それから2つ目は深部静脈血栓症、肺塞栓の予防発生に備えること、この2点に集約されるというふうに考えております。
ただし、2つ事例を報告させていただいたように、医療安全の見地から事故防止のためにも身体的拘束以外に方法がない、代替方法がない事例が実際にあるということはやはり否定できないのではないか。そのような事例においても、正しく適正に身体的拘束を施行することが求められると考えております。
以上、私の御報告になります。御清聴いただき、ありがとうございました。
○田辺座長 櫻木参考人、岩下参考人、御報告をありがとうございました。
ただいまの各構成員、参考人からの発表につきまして御質問、それから御意見を伺いたいとは存じますが、その前に北村構成員のほうから資料の提供がございましたので、北村構成員から御説明をお願いしたいと存じます。
では、よろしくお願いします。
○北村構成員 2分ほどで説明したいと思います。
前回の会議で、認知症の人の長期入院になるのはどういう理由があるかという話題がちょっと出ていたと思うのですけれども、当院でずっと調べたものがありましたので報告します。
次のページをお願いします。
当院は認知症の受入れは精神科急性期病棟でやっておりまして、なぜかというと認知症治療病棟では人員基準が足りないからです。でも、精神科急性期病棟で入れると、3か月以内に40%退院させなければならないのでなかなか難しい。ですから、当然身体拘束などしていたら施設で取ってもらえませんから、ほとんどそういうことはしておりません。
それで、今回の研究はその急性期病棟に入院して3か月以内に退院した人と、3か月を超えた人、さらにもっと長期入院になりますと認知症治療病棟に移すので、その3群間でそれぞれの要因を比較したということになります。
次をお願いします。
男女比はほとんど一緒で、ほとんどが認知症の方です。メディアンの年齢は85歳です。
次をお願いします。
これが、要するに3か月以内に退院できた人とできなかった人の要因なのですけれども、結局有意差が出たのは右側のグラフの頭部打撲を伴う転倒があった場合に3か月以内に退院できなかったという結果が出ました。
それで、当院は身体拘束をしませんからみんなたくさん転ぶんですけれども、特に夜間に転んだときとかに頭を軽く打って、当直医が見て別に意識も大丈夫だからといって放置していたら、その後、1か月ほどたって硬膜下血腫をつくる人とかが若干いましたので厳格にしようことで、転倒して頭を打ったときには転倒パスというものに乗せて必ずCTを撮って、1か月後にどうのこうのとか、そういうふうになっております。要するに、ここで有意差が出たのは、その転倒パスを使用した人ということになります。ほかに、転んで足を打ったり、尻を打ったりする転倒では有意差は出ませんでした。
次をお願いします。
結局、転倒に関わる要因なのですが、転倒パスを使う左側のほうは薬の量とか年齢はあまり関係なく、転倒回数が多い人と暴力行為のある人がそういう転倒を起こしやすかった。それで、右側のほうは普通の転倒ですが、これは年齢が高い人でちょっと暴力行為のある人というのは有意差が出ました。
次をお願いします。
最後ですけれども、先ほどのマル1ですね。3か月以内に退院した人と、認知症病棟に移して長期療養となっている人と何が違うかを比較したものですが、これはちょっと解釈が難しくて、結局オッズ比が1未満は要するに長期入院になっていないということなので、キーパーソンが脆弱で頭部打撲を伴う転倒があり、NPIの得点が高い人ですから、精神状態が悪い人は長期入院になっております。
一方で、長期入院にならなかった要因として、転倒ありの人と入院中の暴力ありの人が長期入院にならなかったという結論になってしまいまして、それについて今ちょっと検討しているのですが、入院中の暴力云々は多分、初めはそういうふうにして暴力で入院してきてもADLが高いのでよくなって退院できたのではないか。
ただ、普通の転倒をするような人がどうして早く退院できるかというのはちょっと分からないので、これは今、検討中です。
以上、簡単ではございますが、要するに認知症の長期入院とか、早く退院できないとかということに関しても、転倒が非常に大きい影響を与えている可能性があるということで終わらせていただきます。
以上です。
○田辺座長 北村構成員、御説明をありがとうございました。
では、今までの御報告に関しまして皆様方から御質問、それから御意見がございましたら頂戴できればと思います。どなたからでも結構でございますので、挙手ないしはウェブで御参加の皆様はボタンを押せば手が挙がると思いますので、それでお知らせいただければと思います。では、よろしくお願いいたします。
それでは、池原構成員よろしくお願いします。
池原構成員 ありがとうございます。
非常に興味深い御発表をいろいろありがとうございました。中でも、長谷川構成員と、それから吉川構成員が御報告いただいた行動制限を最小化していく実践というものの成果とか工夫というのはとても興味深いなと思いました。長谷川構成員の中でシックスコアストラテジーというのを取ったり、それ以外にも様々な工夫をされているので、ちょっとメモで聞き逃しがあったかもしれませんけれども、そういう試みをする前に入院者の25%くらいの人に行動制限をしていたが、その試みを進めた結果、最後は3.3%までに減ったとおっしゃっていたかと思うのですけれども、10分1くらいになっているということで、こういういわゆるグッドプラクティスといいますか、そういうものを実践的に全国の病院に広めていただくことがとても効果的だなということを強く感じました。
ですから、あまり形式的張ったことよりは、やはり現場での臨床の実践ということがとても大事だろう。あるいは、吉川構成員も例えば責任を現場の職員に負わせないで、ちゃんと病院でその責任の体制を取ることとか、いわゆるマネジメントをしっかりやるということとか、あるいはスタッフの意識改革というのが非常に重要だという御指摘があって、この辺りはこの行動制限を進めていく上で今後十分に考えていく必要があるというか、そこに重点を置いていく必要があると思いました。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、田村構成員よろしくお願いします。
○田村構成員 日本精神保健福祉士協会の田村です。御発表いただいた先生方、ありがとうございました。
質問として、長谷川構成員と吉川構成員にお伺いしたいと思ったのが、大事な御指摘と、取組がされているというお話だったので、今後の医学教育、または看護教育に、例えばカリキュラムとしてどのように反映されているのか、これから反映されるのか、さらに、そういうことはどこで検討されるのか、ということです。この場がその検討をする場ではないかもしれないのですけれども、大切な知見が今後医師、看護師になる方たちにきちんと伝えられることはとても大事だと思うので、その方策をお伺いしたいと思いました。
日精協さんのほうでは、現場の先生方や看護職員の方への研修はされているということですので、未来の方たちへの教育ということについてお聞きしたいと思います。
それから、日精協の岩下先生のお話の中で、私の理解が不十分だったら大変申し訳ないのですけれども、教えていただきたいことがあります。医療安全に関して会員病院さんからの御報告が年間350件くらいと言われていたかと思うのですけれども、その内容と、それぞれの病院の、例えば病棟の構造であるとか患者さんの層、病態、年齢層といったものとか、その病院における面会、外出や他機関の方の出入り等の多寡や、地域性といった特徴との兼ね合いで何か分析されていることがありましたらお聞きできればと思います。
というのは、病院によって対応に結構差があるというか、同じように隔離や拘束といってもその解釈の違いがあったり、件数にもかなり格差があると見聞きすることもありますので、何かそういった観点で分析がされていたらお聞かせいただければという質問です。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございます。
まずお答えになりますか、それとも関連の質問でございますか。
○神庭構成員 教育に関しまして。
○田辺座長 では、よろしくお願いします。
○神庭構成員 かつて講座担当者でしたのでお話ししますと、倫理だとか権利擁護だとか人権だとかという教育は精神科の教育の中ではほとんど行われていないと思います。それは卒前、卒後を通して同じだと思います。卒後は特に専門医制度の中でそういったしっかりとしたコマがあるかというと、真正面から取り上げているコマはないように思うんです。
その権利擁護の上に隔離拘束の問題というのは乗るので、まず障害を抱えている方の権利擁護をしっかりと考える時間が必要なのではないか。このことは学会の専門医委員会で取り上げるべきでしょう。卒前であれば講座担当者会議等で取り上げていく問題だと思うのですけれども、残念ながらそのような動きは知っている限りありません。日本の精神医学の標準的な教科書を見ても、それに該当するチャプターでしっかりと書かれているものは恐らくないと思います。
先日、オーストラリアの教科書を竹島先生が訳されて少しお手伝いしたのですけれども、総論の部分に1章使って倫理が書き込まれているんです。教科書から変えていく必要があるかと思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
吉川構成員、長谷川構成員、何か補足はございますでしょうか。
○吉川構成員 田村構成員から御質問いただいたところで、まずは看護の教育に関するところですが、基礎教育と継続教育というふうに大きくは分かれると思うのですが、基礎教育につきましては今の教育には、多分具体的に身体的拘束や行動制限最小化が明確に基礎教育の中に位置づけられているかというと、そこまではもしかしたらないのではないか。私が把握できていないところもあります。
それで、例えば身体的拘束は必ずしも精神医療だけではなくて、今、学生が成人看護学とか老年看護学で実習とかも行っていますが、入院される方が高齢化されていますので、むしろそういった総合病院系とかでの学生がいろいろと経験してくることも多いというふうに実感をしております。
ちょうど現在2026年度のカリキュラムの改正に向けて文科省のほうで検討がされていまして、そこには私は直接関わっていませんので、そういった教育の中にぜひこういった視点も盛り込んでいただけたらと思います。それが、基礎教育のところでしょうか。
精神医療で今こういった行動制限最小化が課題として意識が高く、臨床でそこに取り組んでいるというのは、精神看護学の教育とか実習で取り扱っております。ですので、本学では、今年から学生に行動制限最小化のことを実習前に事前に演習も含めて行っています。それから実習に行くことで、学生もそこを意識していろいろと患者さんのアセスメントであるとか学習ができているなということで、実際に実習を受けていただいている病院の皆さんからも学生の意識が高まっていることについては評価をいただいているところです。
継続教育につきましては、日本精神科看護協会でもこういったことに関する研修、あとは学術集会で様々な企画も通してこういった知識、ノウハウを普及していく取組を行っています。
○田辺座長 ありがとうございました。
長谷川構成員、何か補足はございますでしょうか。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
神庭構成員もおっしゃっていましたけれども、医学教育でこういう権利擁護とか倫理を取り扱うのは本当に大事だと思います。項目ができるまでは、医学の中では精神科救急の講義があると思うので、その中でできれば行動制限最小化についてちょっと入れてもらえるといいかなと当座は思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、2番目の御質問で、岩下参考人、何か特性はあるのかという話だと思いますけれども。
○岩下参考人 参考資料を出していただけますでしょうか。我々の資料で円グラフがあると思うのですけれども、「事故報告類型別割合」という8枚目でしょうか。
さっき櫻木先生のほうから説明させていただきましたが、年間350件から400件くらいレポートが上がってくる。それで、その中でさっきも申し上げたように身体的拘束に関わる事故というのはそんなに多いわけではなくて2%くらいで、一番多いのはとにかく不慮の事故、致死、誤嚥、窒息、転倒を含むような事故で、次が自殺、自殺未遂、それからその後は患者間の暴行・障害というようなもの、それからほかの誤薬であったり医療行為に伴うもの、それから突然死が比較的やはり多いというようなことが全体の事故類型別の分布であります。ですから、この中に行動制限が直接関わるようなものというのは、隔離も含めてそう多いものではないということがあります。
それで、事故報告書は日精協でつくったかなり詳しいプロトコールがありまして、それを使って報告していただくようになっていまして、その中に患者さんのもちろん病歴であるとか年齢、それからどういった機能の病棟にどのくらいの期間入院しておられたかとか、もちろん事故が起きた状況、それから当該病棟の職員の勤務体制がどうであったかとか、かなり全体に詳しい情報を入れていただいて、それも踏まえてそれぞれの事例について検討して検証するという作業をやっています。
ただ、問題はというか、一切事故報告が出ない病院もあります。出ない病院もあるし、しょっちゅう出る病院もある。これは通常のインシデントアクシデントレポートでもそうだと思うのですけれども、では出る病院は事故が多いから問題が多いかというと恐らくそうではなくて、今まで何十年やって一件も報告が出ていない病院というのは結構あります。
ですから、先ほど御質問がありましたように、その病院のいろんな文化であるとか、風土であるとか、それからいろいろな意味でのリスクマネジメントの体制がどうなっているかとか、本当はそういうものと事故の発生状況等々を結びつけて検証すると、いろいろな重要な知見があると思うのですが、残念ながら出ない病院がたくさんあるというのが現状でございます。
そういったことでよろしいでしょうか。
○田村構成員 どうもありがとうございました。大変参考になりました。
○田辺座長 ほかに何かございますか。
では、小阪構成員よろしくお願いいたします。
○小阪構成員 ありがとうございます。日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪と申します。
とても分かりやすい御説明、ありがとうございました。特に長谷川先生と吉川構成員の資料については拝見させていただいたときに、少し未来に希望を持てたという気がいたしましたということが率直なところです。
それで、池原構成員と田村構成員からも意見がありましたけれども、ぜひいい取組は汎化していただきたいですし、基礎教育に反映されていないということを私は今日初めて知ったのですが、それは非常にびっくりしたことで、ぜひ基礎教育の中に、あまりこの言葉を使いたくないですけれども、行動制限最小化というところで、本来であれば当事者としてはゼロを目指していただきたいのですが、行動制限最小化に関する部分も基礎教育の中にぜひ入れて取り組んでいただきたいと思いました。
その上で、看護の立場の吉川先生にぜひ御質問させていただければと思うのですけれども、直接発表いただいた資料とはちょっと関係ない切り口になってしまうので恐縮ですが、この機会に伺えればと思います。
令和元年度障害者施策総合研究事業の医療計画障害福祉計画の効果的なモニタリング体制の構築のための研究、分担研究報告書、精神病床における行動制限に関する検討によると、その研究の中においてアンケート調査を全国の精神病床を有する医療機関を対象として実地していたようなのですが、その項目の一つに隔離・身体的拘束を削減する組織的な取組のキーパーソンに関する設問がありました。
その結果を拝見したところ、行動制限最小化委員会が最も影響力があるという結果については想像のとおりなのですが、次に影響力を持っているとされるのが病院長や精神科医等ではなく、病棟看護師長であると示されていました。
私はこれまでの間、ほかの検討会等において基準告示の改正等が議論の対象になっていた経過等もあって、そうした制度面や行動制限等の指示を出す精神科医の方たちにどう行動制限ゼロ化の必要性に理解を持っていただくかという観点でおりました。
しかしながら、実際に看護のお立場の管理者の方に現場観のお話を伺うと、病棟管理という概念が現場では力として働いており、病棟で患者さんを管理できるかどうかが行動制限における精神科医の判断に強く影響を及ぼし、その判断の際に最も影響力を持つのが病棟看護師長であるということでした。これは、先ほど御紹介した調査結果とも一致するところだと思います。
そこで、端的に御質問です。国民医療である精神科医療において、現場の看護の立場の方たちに将来的な身体的拘束ゼロ化への賛同を得るためにはどうしたらよいとお考えでしょうか。御説明資料等で既にお示しいただいている部分もあるかと思いますが、改めて率直なところをお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田辺座長 では、よろしくお願いします。
○吉川構成員 難しい御質問をありがとうございました。
これは何か一つだけをもってこういうことをやれば、全国の看護職みんなが同じ方向に向いていけるかというと、それはなかなかそうは言えないところがあるだろうと思います。
私自身もいろいろな病院にお伺いしたり、いろいろな看護職とお話をさせていただくと、やはり最初の取り組むきっかけとか、最初の始め方というのはそれぞれの病院の特性とか、それぞれのスタッフのケア力であるとか、その病院の療養環境であるとか、そういったものとの関係もあります。こういう行動制限に取り組むことというのが、これからの時代にと社会から、そして患者さんから求められているので、そこに応えることが看護職の役割としては非常に大事なんだということが現場レベルで浸透していかないとなかなか難しいと思います。
ただ、そのときに現場で時々話題に出ていますが、医療安全というのがどうしても現場のスタッフからすると、これは基礎教育でも医療安全というものがずっと教育を受けてきておりますので、やはり事故を起こさないということのほうが実際に現場の看護職としては非常に意識が高いところにあります。看護職が安心して行動制限最小化に取り組めるように、先ほどもちょっとおっしゃっていただきましたが、やはり現場の病棟レベルでそこをマネジメントしていけるような人を育成していく、そういったマネジャーのような役割が取れる方を増やしていくほうが私はいいのではないかと思っています。
○田辺座長 小阪構成員、よろしゅうございますか。
○小阪構成員 ありがとうございます。
そうした意味でも多分教育という部分が大事なのだろうと思うのと、非常に答えづらい質問をしたと思っているので恐縮です。ありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
では、桐原構成員よろしくお願いします。
○桐原構成員 全国「精神病」者集団の桐原です。貴重な御報告ありがとうございました。
長谷川構成員、吉川構成員に質問なのですけれども、都道府県が作成する医療計画の指標例に行動制限最小化について書き込まれました。こういった現場の取組を推進していく上で、国や都道府県も普及啓発などの形で責任を負っていくべきだと考えるのですが、これら好事例を用いてどのような展開が可能であるのか、何かアイデアなど具体的な御意見等がありましたらお聞かせください。
それから、これは意見なのですが、患者の暴力という言葉がたくさん出てきました。非常にパワーワードだなと思っています。これを連呼されると、精神障害者全般に対して日常的に暴力するものであるかのような先入観を与えてしまわないかというような憂慮もします。
もちろん現場の議論は議論として進めてもらう必要もありますし、この言葉自体を言葉狩りしたらいいとか、そういうふうには考えないのですが、だからこそ私たち当事者の立場から都度、私たちが暴力云々と言われることについてどう感じるのかについてはこういう形で指摘していかないといけないかなというふうに感じているところです。
以上です。お願いします。
○田辺座長 では、長谷川構成員からお願いします。
○長谷川構成員 では、展開の仕方については杉山先生を中心に研究もされていると思うのですけれども、ピアレビューといって、病院同士で互いに行動制限最小化の成果を見合う研究が展開されていきますので、その辺で広がるといいなと思います。
それで、医療計画に載っていることは非常に大事なので、それがやはり病院の目標になっていけば組織として取り組んでいくのでそれも一つの方法になるかと思います。
あとは、桐原さんには本当に申し訳ないです。私の言葉が良くなかったと思うのですけれども、暴力ということで、決して荒れる方が多いわけではないのです。本当にごく一部だと私は思っていて、精神科救急をやっていても大変な思いをしたのはごく一部なので、その辺は言葉には気をつけるようにいたします。すみません。
以上です。
○田辺座長 桐原さん、何かございますか。
○桐原構成員 ありがとうございます。
現場の取組を推進していくようなものになっていけばいいなというふうに、御意見を聞いて強く感じました。
○田辺座長 ありがとうございます。
では、小嶋構成員からお手が挙がっているようですのでよろしくお願いいたします。
○小嶋構成員 TBSの小嶋でございます。よろしくお願いいたします。
長谷川さんの発言の中では、考え方を変える、あるいは文化を変える。それから、現場では言い訳をしない。現場、現場で工夫するという非常にいい学びをいただきました。
また、吉川さんから、行動制限に関して“データ化して他院と比較することなどを契機に意識改革を進める”というようなお話も、非常に共感するところでありました。
また、日精協のお二人から、拘束をしなければならない具体的な例を示していただいて、これは本当に大きなことだと思っています。ありがとうございます。
さらに、その後の議論で“教育の大切さ”というのを改めて感じた次第でございます。
その上で、慎重に言葉を選ばなくてはいけないと思っているのですけれども、今日いろいろ御意見をいただいたものを大きく2つに分けると、拘束に関しては“拘束をゼロからスタートするんだ”という考え方と、“拘束を限りなく少なくする。拘束は仕方ない部分もあるけれども、それを限りなくゼロに近づけるんだ”という2つの考え方があると感じました。そういう微妙な温度差があると思うのですけれども、この温度差がすごく重要だと思っています。“何が何でもとにかくゼロからスタートするんだ”という考え方と、“拘束を減らしていく”という考え方とでは、現場で医療に当たる方々の行動にも大きく影響してくるものだと思います。どこをスタート地点とするのか。どこをスタート地点として議論を進めていくのかが大切だと思いました。この点は、今後この場でも議論できるといいかなと思っています。
もう一つ、拘束に関して今日のお話を聞いて感じたことは、“やはり拘束が必要な現場がある”ということを日精協のお二人の方から具体的にお示しいただいて、全くそのとおりだと思いました。そういったことが国民に十分に伝えられないままごく一部の精神科病院の、目に余るひどい拘束というものがクローズアップされてしまうと、やはり精神科医療に対するバランスが取れた見方というものができないのだということを今日改めて感じました。先ほど“患者の暴力”というお話も出ましたけれども、拘束の問題がどのように国民へ伝わっているのかをもう一度検証して、整理して、改めて国民に情報を伝えることが大切だと思いました。
その上で1つ、長くなって申し訳ないのですが、吉川構成員に質問なのですけれども、「リスクへの対応」ということで大項目の5番目だったと思いますが、「リスクを恐れずにチャレンジできる体制づくり」と、それから「患者家族への対応方針等の説明」という項目がありましたけれども、この辺は具体的にどういうものかというところを教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
○田辺座長 では、吉川構成員よろしくお願いします。
○吉川構成員 御質問ありがとうございます。
まずは「リスクを恐れずチャンレンジできる体制づくり」というのは、その上の「マネジメント」のところにもありますように、行動制限を行わない、できるだけ最小化していくということは何かの事故が発生することもございます。そのときに、現場のスタッフは事故が起こったときに、自分のせいだった、自分のせいでそういうふうに患者さんがけがをしてしまったというふうに看護職は責任を感じます。ですので、看護職個人の責任にならない、やはりそこはみんなで取り組んでいくんだということで、医療安全委員会と一緒に行動制限最小化を考えていく。行動制限最小化委員会と医療安全委員会を切り離して考えるのではなくて、そこは一緒に考えていくというのが一番リスクを恐れずに進めていく体制づくりにつながるかと思いました。
もう一点は、御家族のところでしょうか。最近、行動制限最小化に取り組んでいらっしゃるところは入院時とか、あとは患者さんの状態に応じて御家族に行動制限を行わないという病棟の方針をきちんと説明させていただき、もちろん行動制限最小化を行わないメリット、あとはもちろんデメリットもきちんと説明をさせていただくのが大事になると思っていますので、そういう取組がやはり重要になるのかなとは感じております。
○小嶋構成員 入院時に家族の方に御説明して、それで納得していただいた上で入院してもらうということですね。
○吉川構成員 はい。
○小嶋構成員 あとは、少し戻るのですけれども、リスクを恐れずにというところで、“1人の責任にさせない”ということは非常に重要だと思うのですが、チームをつくってそのチームの全体の責任だという形で受け取るということでよろしいのでしょうか。
○吉川構成員 そこは病院によってチームという単位で考えるのか、それとも病院という単位で考えるのか、看護部というふうに考えるのか、そこは若干違ってくるのかなとは思いますけれども、でも組織全体でというか、そんなふうに考えていただくのが一番いいかと思います。
○小嶋構成員 ありがとうございました。
○田辺座長 では、上田構成員から初めに手が挙がっていたような気がしますのでお願いします。
○上田構成員 日本精神神経科診療所協会の常任理事をしております上田と申します。
本日は非常に貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。私も10年間、精神科病院に勤めていた経験がございますので、その当時のことを思い出したりしながら、葛藤があったなとか、こういう大変な患者さんもいらっしゃったなということも思い出しながらお聞きしました。長谷川構成員からは拘束の7割は点滴とか転倒防止のためにやっているというようなお話だったかとお聞きしたのですけれども、その7割の点滴と転倒防止に関しては非常に改善策がある。低床ベッドとかマットを利用することでかなり減らすことができたと理解しております。
かつ、吉川構成員からも、やはり転倒防止の際の衝撃性低減マットの活用ですとか、そういう上手にツールを使うことでこれまでの点滴中は必ずずっと拘束するという常識を覆すことができるという意味で非常に新しい考えだし、汎化されていくべき話だと考えました。
また、日精協の岩下先生と櫻木先生からは、やはり基本的には拘束というのは切迫性、非代替性、一時性のものであって、相当な精神症状を持った方を治療しなければいけない立場からすると、どうしても避けられない部分があるのではないかと思うんです。
そこで、長谷川構成員にお聞きしたいのですけれども、身体拘束ゼロ化プロジェクトのところに例外として「暴力と切迫した自傷行為」と書いてありまして、実際に精神症状としてこういう状態があるのは事実なのですが、こういう暴力と切迫した自傷行為があったような場合にどのような工夫をされておられるのか。平均4日が2.3時間になったということでございますので、そういう激しい精神症状がある方に対しての身体拘束をなるべく減らすような取組もされているのではないかと思いまして、ぜひお聞きしたいと思いました。よろしくお願いいたします。
○田辺座長 では、長谷川構成員よろしくお願いします。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
難しいところを突いていただいていますけれども、激しい興奮の場合は、隔離はやはりどうしてもその場合は使用してしまうのですが、対応の仕方として部屋に入るか入らないかからまず判断をする。あとは、実はすごく喉が渇いていたとか、実は部屋の外に出たいんだとか、そういったことが積み重なって物すごく激しい攻撃性になっている場合もありますので、その辺はなるべく緩めるような、かなり勇気も要るのですけれども、男性の看護師さんとかうまくディエスカレーションのスキルを使ってもらって少し気晴らしができるような形を取っていました。
激しい自傷行為については徒手制止を説明したと思うのですけれども、10代の若い方とかは激しい自傷行為に至ることがあって、みんなで押さえ込んでプロレスみたいなことになってしまうのですが、みんなで汗だくになりながら何とか収めて、20分くらいすると落ち着いてくるので、そこまで頑張って押さえたりとか、そんなふうにしていました。
○田辺座長 なかなか難しいクエスチョンを投げかけたという感じかもしれません。
○上田構成員 ありがとうございました。
○田辺座長 岩下参考人、今のクエスチョンについて何かためになるようなことはございますでしょうか。
○岩下参考人 頑張ってやっていらっしゃるんだなと思いましたけれども、一方で、これまたちょっと違う話になってしまうかもしれませんので恐縮ですが、一生懸命我々は拘束をなるべくしないようにということで押さえるということはあります。
ただ、実際に最近そういう事例はうちでもありましたけれども、こちらはほかに方法がないからそういう形で、徒手で押さえている。それを後で患者さんが虐待をされたということで、都道府県の虐待通報窓口が4月から東京都でも開かれていますけれども、そこにそうやって通報されてというケースもあります。
それから、これもどこまで申し上げていいかはあれですけれども、最近結構カメラがついていますよね。それは可視化するという意味では大変重要なことだと思うのですけれども、我々が正当なというか、やむを得ない行為で患者さんを多分20分間一生懸命押さえてというのをカメラで見ると、5人でかかって押さえているというのは、本当はこれは虐待じゃないのかと見えてしまうような問題もあったりで、これはまた別の話で恐縮なのですけれども、我々としてはなかなか大変なことがあるかなということでございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、北村構成員よろしくお願いします。
○北村構成員 今日び、身体拘束をしたくてやっているような病院はあまりなくて、多くの心ある病院はいろいろ研究なり何なり頑張ってやっていると思うので、それはそれでいいのですが、こんなことを私が言うのも変な気もしますけれども、やはり人員が少ないということが根本的な問題であって、前回の令和4年のあり方検討会でも、たしか松沢病院の水野先生が資料を出されたと思いますが、カリフォルニアとかマサチューセッツの急性期の病院は4対1とかでやっているんです。それを10対1とかでやれと言っていること自身、我々は努力しなければいけないけれども、やはり努力にも限界があるわけで、先ほどの看護師長の意見が一番それに強くなるというのも人がいないからだと思うんです。
ですから、そのことをやはりきちんとこういう会で言っていかないといけないなと思いますし、急性期に限らず、精神科特例はなくなったと言いながら、あの48対1の人員基準は医療法でそのまま、精神病院は48対1でいいということになっていますから、それが完全に時代に合わないということは皆さん御理解いただきたい。
それから、厚労省はそれは最低基準だと言いますけれども、それは人を雇えれば雇いますが、我々のような親方日の丸の病院でさえこれ以上人は雇えないという状況にある。ほかの一般科に比べて診療報酬が安過ぎるというところをちゃんと議論しないで、精神科は患者さんのために頑張れと言い続けるのもいかがなものかと思いまして、私の立場で言うことではないような気もしますけれども、一言、言わせていただきました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、まず岡田構成員よろしくお願いします。
○岡田構成員 今日御発表の皆様、本当にありがとうございました。
それぞれのお立場で精神疾患、精神障害に苦しむ人たちのために、よりよい対応をということで取り組んでいただいていることに本当に感謝をいたします。このような取組をぜひ全国の精神科病院全てに浸透させて、精神科病院のイメージを変えていくのはすごく大事なことかと考えております。
この場にいらっしゃる皆様にとっては当たり前のことだと思いますけれども、身体拘束という行為自体はやはり人の自由を奪うという人権侵害行為に当たることで、やってはいけないことということが大前提としてあるわけです。そのことを、医療関係者の方が医師やスタッフになる教育を受ける段階で何も教育されていないということを先ほど伺って大変驚きました。ぜひ養成の段階で人権擁護、特に精神科に関しては人権の視点がすごく重要なんだということを教育の中で伝えていくこと、これをすぐにでもやっていただきたいということを、皆様の今までの議論を伺いながら聞いておりました。
それからもう一点、私が申し上げたいことは、ソフト面、ハード面の両方からの整備が必要だということで、ハード面のところで先ほど北村先生がおっしゃっていました人員配置とか環境整備にやはりお金がかかるのですけれども、そこをちゃんとお金をかけて整備していかないと、今の現場の方たちの中で、先ほど20分何とか押さえていてもそれが虐待だと見えてしまうとか、そういう御苦労だけではやはり解決し得ない問題がいっぱいあるということで、人員の問題、財源の問題、そこはきちんと手当をしていかないとできないということは、みんなで声を上げていかないといけないことかなと感じました。
あともう一点、家族に頼まれて、家族からもやってくれと言われたから身体拘束したんだという医療スタッフの話をどこかで耳にしたんですけれども、あるいはけがをしたことによって家族から病院に苦情が上がるということも多々あることだと思います。やはり家族の立場からしますと、何も知識も情報もない中で精神疾患の状態、急性期の状態を目の当たりに経験するということは筆舌に尽くし難い驚きであったり、恐怖であったり、本当にいろいろな複雑なトラウマ的な体験になるわけですね。
そういう家族が病院に託したときに、とにかく何が何でもいいから静かにさせてほしい、落ち着かせてほしいという思いだけでいろいろなことを要求する状態になってしまうのは、私は人として当然のことなのかな、当然の反応なのかなと自分自身の体験からも思うわけで、やはりそこは家族を支援する。病院の方がそういう家族に対面したときにちゃんと話を聞いて、何でこの家族はこんな状況になっているのかということをちゃんと受け止めつつ、病気に対する理解とか、医療の在り方に対する理解とか、そういうものを家族が持てるような家族支援の視点もやはり進めていかないといけないのではないのかと、家族自身も家族会の中でそういう取組はやっていきますけれども、家族会につながっていない家族の方たちのほうが圧倒的に多いですので、そのこともぜひ今日お伝えしたいと思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、岡部構成員、その後、辻本構成員でお願いいたします。
○岡部構成員 日本相談支援専門員協会の岡部と申します。今日は大変学ばせていただきましてありがとうございました。
意見ですけれども、身体拘束ゼロにするか、最小化するかという二極論ではなくて、多分ゼロを目指していくことと最小化を両方目指していくというか、そういう方向なのではないか。減らせるものは減らしていくし、必要なものは命を守るために必要だしというようなことだと理解をしています。
ただ、今のままだと、やっているところはしっかりやっているし、やらないところはなかなか着手しないしというような状況がある中で、今日の学びの一つとして吉川構成員や藤井構成員がおっしゃっていたと思うのですが、ポイントは風土や文化をどう変えるかというようなところで、その風土や文化を変える鍵となるものは人であろうと私は理解しています。
その中で、人と考えたときに、医療スタッフの方たちだけで考えていくのはそろそろ限界があるのではないかと思っていて、やはり当事者目線を入れるというか、最初の長谷川構成員からピアスタッフを活用していくというお話がありましたけれども、複数のピアスタッフが日常的に病院の中にいて、御本人の目線を医療スタッフがふだんから感じられるような環境をつくっていかないとなかなか難しいのかなと思いました。
ですから、身体拘束のピンチのときだけの活用ではなくて、日常的に患者さんのケアをする上でも当事者目線の意見を生かすような医療の仕組みがないと、北村構成員もおっしゃっていましたけれども、医療スタッフも少ない中で工夫だけしていくというのはなかなか限界があると思うので、医療スタッフの充実と当事者スタッフの充実みたいなことを図っていく必要があるのではないかと思いました。
既に福祉の分野では相談支援事業所にピアスタッフを配置できるように仕組みを整えていただいてあるので、相談支援専門員だけで働いていると当事者のことを思ってやっていてもどこか当事者の思いというか、目線が抜けてしまいやすいところがありますが、日常的に同じ事務所にピアスタッフがいることで常に本人中心を忘れないみたいな風土、文化がつくれてきているのではないかというふうに、ここ10年間やっていて感じますので、そういったことも御検討いただくといいのではないかと思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、辻本構成員よろしくお願いします。
○辻本構成員 私も感想に近いところになるのですが、全国精神保健福祉センター長会の辻本です。
1つは長谷川構成員もおっしゃっていたことで、私が不勉強なところもあるのですが、行動制限に関しては海外がどういう状況であるか勉強があまりできていないと考えます。国内で議論してもプラスのことが出てこないとしたら海外はどうしているか、勉強することが大切だと思います。精神障害者の発症率等が国によって違うと思えないし、認知症についても同様に国によって違うとは思えないので、そういう他国の先進例とか、あるいは海外でも隔離拘束等の行動制限をしているのは精神科なのか、介護の領域なのか、身体科の領域なのか、スタッフ数の問題なのか、その辺を明らかにしていただきたい。
日本で海外と比べて行動制限が多いと言われるのですが、どのデータをどう比べているのかあまり分からないので、その辺はどうか、客観的にそう言われる根拠を知りたいなと思いました。
日本の中でモデルになる医療の在り方として医療観察保護病棟-触法精神医療の病棟があります。触法ということで精神障害として重い方だと思うのですが、この病棟では隔離拘束が極めて少ないです。それはマンパワーの問題なのか、手続上の理由なのか分からないのですが、私はマンパワーだと思うのですけれども、そういった先進的な病棟運営を一般の精神科病棟でもモデルにしていくようなことも考えられるのではないか。医療観察保護病棟でも隔離拘束しなければいけないような事例というのが症状としても本質的に行動制限が必要なケースではないかと思うので、そういうところを調査というか、調べてもらうのは意義がある。
これは私の印象ですが、滋賀県の精神医療センターの医療観察保護病棟のスタッフも他の病棟等への異動があります。そうすると、ほかの病棟でも隔離拘束が減っていった印象があります、隔離拘束しない文化が広がっていくというか。これは調査研究としての根拠はないですし、時代の流れかもしれないですけれども、さっきの倫理的な意識だとか、隔離拘束せずに済まそうというのは現場教育として身についていくところがあると思います。医療観察保護病棟を持っている公立病院での隔離拘束の在り方は隔離拘束を減らすヒントになると考えます。
もう一点、北村先生の話をお聞きしながらなのですが、認知症で精神科救急に入ってこざるを得ないのはどういった事例だったのか、関心があります。行動制限が必要となった事例が、精神科病院に紹介されてくるのであれば、(北村先生のところは隔離拘束せずにフォローされているのですが)、身体科にしても介護施設にしても、対応の難しい事例が精神科に集まってくるがゆえに精神科の行動制限は増えざるを得ない。そういう背景とかもちょっと調べていただきたいと思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
恐らく事務局に対するリクエストかなとは思いますけれども、いかがでございましょうか。
○新平課長補佐 事務局でございます。
今、何点か海外の事例等々のご意見をいただいたと思いますので、検討させていただきたいと思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、よろしくお願いします。
○花村構成員 日本公認心理師協会の花村でございます。大変勉強させていただきました。ありがとうございました。
やはり医療安全を中心とした教育の影響を強く受けているという、看護の皆様方のお話もありましたが、そこに今日、吉川構成員が御発表いただいたような行動制限最小化と医療安全委員会の連携という現場実践のお話がありました。医療安全を考える上で、命を守るために何が必要であるか、そして医療安全という考え方と行動制限最小化という考え方が相反するものではなくて並立して存在しそしてそこには人権擁護の問題もあるので、現場看護師に限らず全職種が葛藤して、それを倫理カンファレンスなどで多職種で検討していく、ということが現場で行われているんだ、と養成教育の段階で伝えていくべきことではと感じました。そして、これらは、看護師に限らず、我々公認心理師も含め、医療福祉に関わる職種のすべての基礎教育に含めても良いのではないか、多職種連携教育的なところに入れても良いのではと思ってお話を伺っていました。
あとは、組織風土の問題について申し上げますと、私自身が不勉強なところがあるのですけれども、私の勤務先では近所の病院さんの医療安全チームが相互ラウンドみたいな感じで来て、お互いに見ていいところを学んでいくということをやっているのを見ています。医療安全対策地域連携加算という診療報酬による評価の対象だからではあるのですが、加算の有無にかかわらず、ご近所病院同士で相互ラウンドとか、勉強会とか、閉鎖的にならずいい感じで外の風を入れて、よそはこういう良い実践をしている、と学び合うような、そういった雰囲気ができると良いのだろうと思います。院内の多職種連携にとどまらず、地域での多機関連携の中で地域の同職種、多職種、同業者同士で学び合える場があるといいだろうと、今日この場が多職種で構成されているので、そんなことを強く思いながら聞かせていただきました。ありがとうございました。
○田辺座長 では、江澤構成員よろしくお願いします。
○江澤構成員 ありがとうございます。
1点だけ、今後に期待を込めて意見を申し上げたいと思います。
今日もいろいろ御意見がある中で、今後の組織風土の醸成の部分はどう取り組むかというのが非常に重要な観点ではないかと思っております。やはり法人の理念であったり、医療機関の経営者、あるいは管理者、即ち、理事長、院長のリーダーシップ、そして精神保健指定医、この指示を出すという権限を持っている立場の医師と、それから現場を預かる先ほどから出ている看護師さんをはじめコメディカルの方々、こういった組織の中でどのように取り組んでいくのか、ある意味では一人一人の職員の意識をどう高めていくのか。そういった取組を不断にどう継続していくのかというのが重要ではないかと思っております。
もちろん委員会とかの取組はどこの医療機関でもされているわけですけれども、しっかりとラウンドなり、先ほど言った内部研修、外部研修、いろいろ継続的かつ実践的に結果が出るような取組を、やはり好事例を共有していくということも重要ではないかと思っています。
現場のスタッフは、全ての医療も介護も障害も含めて人員は足りない。理想からすると、極めて少ない、足りないわけですけれども、一方で同じ人員でも拘束の多い、少ないという差異はどのフィールドでもあり得ることであります。
したがって、今、与えられた状況の中で最大限、何ができるのかというのはすごく重要な観点で、頻回にミーティングや、研修や、あるいはラウンドを定期的にやっている医療機関というのはかなりそういったことが少ないような印象も持っておりますので、特にそういった隔離拘束をしないという組織の醸成というのは、先般も精神病院においても管理者がしっかりリーダーシップを取るようにというような議論もなされてきたわけでございますし、組織でどう対応していくのかということと、常に実態も管理者や全ての職員が把握しながら、隔離拘束がある以上は日々解除に向けて実際に取り組んでいくというような使命感を高めていくことも必要ではないかと思っております。恐らく今はいろいろな議論をしながらいい方向に向かっていく道のりの過程にあるというふうにこの数年間いろいろ議論をしてきて思っておりますので、今日の発表も伺いまして今後大いに期待をしております。ありがとうございます。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、柑本構成員よろしくお願いします。
○柑本構成員 東海大学の柑本でございます。
本日は、本当に貴重な御報告を伺わせていただきましてありがとうございました。先生方が日々、行動制限ゼロに向けて行ってくださっている取組が全ての日本の病院で行われるようになってほしいと切に思います。
1点お尋ねしたいのは、このように努力なさっている中でもやむを得ず身体的拘束をしなければならない場合があると先ほどから聞いているわけですけれども、それを行われた患者さんたちに事後的にどのようなケアをなさっているのかということです。長谷川構成員、吉川構成員の御経験ではどうなのか。そして、岩下先生には日精協の会員病院に対してはどのような対応を求めているのか、ぜひ教えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○田辺座長 ありがとうございました。
これは、長谷川構成員からまずよろしくお願いいたします。
○長谷川構成員 やむなく拘束になった場合、例えばものすごい自殺企図が強くて、点滴のルートを首に巻いて引きちぎった後、さらにまた首を絞めてなどという方がいらしたんですけれども、その方は拘束に一時的になりました。でも、後で回復をしたら、その方に関しては、「命を守ってもらってありがとう」と言ってもらえました。
ただ、そううまくいかない場合もあるので、本当にあのときは悪かったねと一応私は声をかけるようにはしています。ケアとしてはそのくらいでしょうか。
○柑本構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 吉川構成員、お願いします。
○吉川構成員 私も、特段こういうことというふうに申し上げることは難しいのですが、ただ、拘束や隔離をしていらっしゃる方の病状が回復していく段階で、なぜ今回隔離が必要だったのか、身体拘束が必要だったのかというのは繰り返し、繰り返し丁寧に御説明をして、できるだけ何で必要だったのかを御本人が理解していただけるような説明を行っていっているというのが現場の状況ではないかとは思います。
もちろん、そこでは患者さんのいろいろな気持ちが表出されると思いますので、そういった気持ちに寄り添いながらケアをしていると思います。
○田辺座長 何かございますでしょうか。
○岩下参考人 医療安全委員会ではなかなかそこまでのケアは難しいのですけれども、今お二人の先生がおっしゃったようなことかと思います。
それから、やはり私もずっと精神科病院の現場におりますので、患者さんももちろんそうですが、拘束せざるを得なかったスタッフの心のケアというのも非常に大事だと思っていますし、そういう意味ではミーティングで少しその辺をグループとして話し合ったりというようなことをするのも非常に大事かなと思っております。
○田辺座長 ありがとうございました。
柑本構成員、よろしゅうございますか。
○柑本構成員 どうもありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
では、田村構成員よろしくお願いします。
○田村構成員 日本精神保健福祉士協会の田村です。
さっきは質問のみでしたので、少しだけ、皆さんのお話を伺った上での意見を言わせていただければと思います。今ここで精神科医療の関係者がみんなでどうしたら拘束や隔離を減らせるかを話しているのですが、精神科病院では隔離や拘束ができるため、そのことを周囲から期待されていて、うちではできないけれどもそこではできるでしょうという形での依頼というのが当然あって、それをどこまでどうお受けし、極力隔離や拘束をしないでいかにしていくか、非常に苦労している面もあると思います。
ですので、精神保健医療福祉関係者以外の方たちにも、精神科病院であっても隔離や拘束はなくしたいのだということをいかにしてご理解いただくかは大事な問題の一つで、関係者以外の方たちにも御理解いただく必要があることだと思います。
あとは、先ほど岡田構成員から、家族が必死の思いで頼んでしまうのは当然のことではないかというお話があって、本当に私も同感するところです。ただ、逆に隔離や拘束をしない病院は、当院では拘束しないからけがをするかもしれないけれども承知した上での入院でいいんですねと、私も病院に勤務していたときにそう説明せざるを得ない場合があったので、患者さんの安全を優先したり、周囲の人の安心を優先するが上に、結局患者さんに我慢を強いてしまって隔離とか拘束になってしまうという社会全体の構造の問題もあるのではないかと思っています。それを施策としてどうしていけるかの検討は当然重要ですが、こうしてみんなで知恵を絞って検討しているのだということを、より多くの方に知っていただくことは、精神科病院での隔離や身体的拘束をなくしていくためにとても大事なことだと思います。それが1つです。
もう一つは、次回は当事者の方々からのヒアリングが想定されているとお聞きしていますが、そのほかに、事務局へのお願いになるかもしれませんが、監査等をやっていらっしゃる自治体の側、行政の側からのご意見も伺いたいです。病院によって取組に違いがあるということや、指摘後にどう改善されたのかといった行政だったら把握できている実態もあると思いますので、その辺りもお伺いできればと思います。というのも、これはやはり結局地域の問題ですよね。その地域に住んでいると、こういう病院しか選択できず縛られても我慢するしかない、といったことになってはいけないので、地域全体を豊かに耕していくという、これは「にも包括」構築の発想にもつながる観点からも行政の立場ではどのように考え、また、実態を把握していらっしゃるのかお聞きできる機会があればありがたく思っておりまして、その点もよろしくお願いしたいと思います。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
事務局、いかがでございましょうか。
○新平課長補佐 ありがとうございます。
御意見として承りまして、今後の進め方をまた相談させていただければと思います。
○田辺座長 では、山口構成員お願いします。
○山口構成員 保健所長会から来ております山口と申します。
保健所では実地指導をしております。鹿児島県の場合は事前に聞き取りのチェックリストというものを病院に配布し記入してもらいます。その中に身体拘束に関する設問事項があります。それをもとに,実際に行ったときに詳細を確認しています。多少は医療機関に差があります。指摘事項に該当する項目については、改善結果報告をいただくことになります。
あともう一つ、精神科からは事故があったら必ず保健所に事故報告書を提出いただいております。報告書には、事故の状況や原因、結果、対策方針だけでなく、ご家族への説明やご家族の反応も記載されております。
ただ、最近ちょっと気になってきているのが、「家族も身体拘束をできるだけしないということは了承しているので、事故がやむを得ないと分かってもらえました」と、書いてあることがあって、「身体拘束をしなければ事故はやむを得ない」結論するのではなくて、身体拘束をしない中での事故防止について、今後検討を続けていきたいと考えています。
ただ、本当に今日は勉強になりました。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
江澤構成員、お手が挙がっておりますか。どうぞ。
○江澤構成員 1点だけ、事務局にもお願いなのですけれども、こういった議論はこの数年間ずっと繰り返しやってきていて、その中でいろいろな建設的な意見とか、対応についてのいろいろなアイデアも出てきています。
大事なことは、全国の医療現場で実際に隔離や拘束の廃止に向けてしっかりといい取組が進んでいるのかどうか。そこは極めて重要ですから、この場での議論は当然有識者の方が集まって非常に前向きないい積極的な議論がなされていると常々思っておりますし、ここでの議論がしっかりと現場に普及して、現場の職員さんたちがちゃんと実行できるということが極めて重要でありますし、今回の春の同時報酬改定でも身体的拘束の最小化というものが入院の基本料の通則で義務化になったところでもございます。1つだけお願いしたいのは、これは国を挙げてでも取り組むべき重要な課題だと思いますから、ぜひ国のほうでもリーダーシップを取っていただいて、関係団体やいろいろ関係の専門職等々を含めて、まずは身体的拘束最小化というものが入院料等の通則にも入ったところでございますので、しっかりとそれをバックアップ、推進するような研修であったり、教材であったり、ぜひここで議論をしている好事例とか、前向きなものがしっかりと現場で具現化できるような仕組みの構築を、ぜひお願いしたいと思っております。
特に、最も大事なのは、私は人の尊厳だと思いますから、しっかりと尊厳を保持していく、患者さんの尊厳を守るという、そのスタート地点に原理原則にのっとってそういった取組が進むように現場職員がちゃんとこれを理解して行動できるということが国民や患者さんの福音にもなりますし、今後そういった取組もいろいろ共有できるかと思いますのでぜひよろしくお願いしたいと思います。これはお願いということでございました。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
よろしゅうございますか。まだ議題が残っておりますので。
では、小阪さんどうぞ。
○小阪構成員 すみませんが、1点だけぜひこの機会に本音のところで議論を交わしたいなと思っていまして、当事者としては多分桐原さんと私は全く一致で、身体拘束はゼロであってほしいと願っている立場になると思うのですけれども、前回も申し上げましたが、だからといって私たちはというか、これは私たちの団体ということですけれども、精神科病院の職員の人たちの犠牲に伴ってそれが達成されるべきではないというふうには考えています。
それを前提とした上で、ぜひ櫻木先生にお伺いしたいと思うのですけれども、櫻木先生とは先の検討会で構成員として御一緒させていただいたときに、ゼロ化にどうしても合意できない中で、将来的なゼロ化というところで合意形成を図れないですかという御質問をさせていただいてお答えいただいたと記憶しています。
にわかにイエスとは言えない。具体的な代替方法がない中で、無責任に多分イエスとは言えないというお答えだったと思います。私は、そのお答え自体は誠実にお答えいただいたなと思ってとても感謝しているんです。立場の違いからそういう答えが出てくるというのは全然ありだと思っていますし、頭ごなしにゼロなんてできないよという答えではなかったことがよかったなと思っているんです。
その上で、今日いろいろな意見というか、資料とかの説明があったと思うのですけれども、ぜひ本音で話せたらと思うのですが、患者としてはやはり縛られるというのは非常に負担が大きいと思っています。これは、きっと櫻木先生も御同意いただけるところだと思っているんです。
それで、1点心配というか、私が分からないのが、身体拘束はすごく増えた時期があって、それ以降いろんな努力をされているというお話が今日いっぱい出ているのに減っていない気がするんです。1万数千人のところで止まっている。
ですから、公の場で櫻木先生にこういった質問をして許されるのかどうかというところもあるのですけれども、私が思うのは今の取組だけではもしかしたら足りない部分があったりするのではないかと思って、率直なところ何か腹案というか、櫻木先生がこうなればゼロというところは合意できないかもしれないですけれども、もっと減らしていく方向にいくのではないかというところで何かお考えがあればぜひお伺いしたいと思いました。よろしくお願いします。
○田辺座長 では、すぐ回答できるかどうか分かりませんけれども、お願いします。
○櫻木参考人 ありがとうございます。
前から言っているように、私は極めて平均的な精神科医ですから、足りない部分もいっぱいあります。ですから、それは胸を張ってゼロと言えればいいんですけれども、やはりそこにいかない自分の足りない部分であったり、いろいろな現場の状況とかがあります。
ただ、幾つか出てきているのは、やはりいい例というのを共有しようということがありますし、もしも外国が少ないんだったら外国はどうしているのだろうかと、今もお話がありましたけれども、そういうことがありますし、それから多分前の検討会の最後の意見のところに入れたのは、国もこれに関する研究をやはりプロジェクトとしてやって、こういうふうにやれば例えばゼロにできるとか、限りなく少なくできるという部分に関しては、それはやってくださいというのは前の検討会の報告書にも入れましたから、そういったことが総合的になってくれば、私が現役でいる間はどうか分かりませんけれども、将来的には限りなくそこに近づいていくことはできるのではないか。ちょっと楽観的と言われるかもしれませんけれども、そう思っていますし、思っていなければ毎日の仕事ができないだろうと思っています。
○田辺座長 ありがとうございます。
よろしゅうございますか。
○小阪構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 では、この議題は取りあえずここで終了させていただきたいと存じます。
本日、実に様々な貴重な御意見をお伺いできましたので、これを踏まえまして今後の当検討会における議論というものを進めてまいりたいと存じます。櫻木参考人、それから岩下参考人、どうも御報告、また難しい質問に対する御回答を含めまして御礼申し上げる次第です。ありがとうございました。
次に、議題2の「かかりつけ精神科医機能について」、事務局より資料5でございますけれども、こちらの御説明をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○小林課長 事務局でございます。
それでは、次の議題でございますが、資料5に基づきまして「かかりつけ精神科医機能について御議論いただければと考えてございます。
本日のかかりつけ精神科医機能の議題は、これまでの議論の振り返りと、次回以降御議論いただくことの予告ということで御認識をいただければと考えてございます。
スライドの2ページ目は、第1回目の5月の検討会で関連して出てきた意見を一覧にしたものです。
入院されている患者さんが多様化しているという指摘がなされました。
それから、(外来患者の増加)ということで、診療所と外部機関が連携する精神保健福祉体制が構築されるべきといった意見。
それから、(精神病床の機能分化)という観点からは、かかりつけ精神科医機能についても議論をさらに深める必要があるということを御意見としていただいたところでございます。
また、(地域・関係機関との協働)につきましては、地域で支える仕組みが必要であるといったこと、外来、精神科救急の在り方について議論を進めるべきということを改めて御指摘をいただいてございます。
このようなところを前提といたしまして3ページ目でございますが、かかりつけ精神科医機能という言葉の由来について触れています。令和3年3月に報告書が取りまとめられました検討会、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」では、「にも包括」の具体的な施策の進め方について様々な切り口から御議論をいただいたところでございますが、精神障害を有する方などがかかりつけとしている精神科医療機関には「ケースマネジメントを含む、いわゆる「かかりつけ精神科医機能」を果たすこと」が求められているとされているところでございます。
この「かかりつけ精神科医機能」につきましては、「にも包括」において医療機関に求められる中心的な機能として、近年の精神保健医療福祉施策における医療提供の在り方の基軸として位置づけられ、医療計画ですとか診療報酬改定にも反映されてきたという経緯がございます。
引き続き、この「かかりつけ精神科医機能」を有する医療機関の整備について施策を進めていく必要があるという認識を持っているところでございますけれども、その際留意する必要があるのが、精神科に特化をしない全ての診療科におけるかかりつけ医機能について今、医政局のほうでも議論されてございますけれども、かかりつけ医機能の発揮される制度の整備についても念頭に置き、考慮しながら検討が必要ではないかということを考えている次第でございます。
資料の6ページは今、申し上げた令和3年の検討会報告書の全体像でございますが、7ページには、ケースマネジメントを含むいわゆる「かかりつけ精神科医機能」を果たすということが述べられてございます。
その下のほうに四角で具体的なところを囲ってございますが、ここでの記載内容を概念図として表したのが8ページの次の図でございます。
「にも包括」における医療機関の役割、かかりつけ精神科医機能に関連する機能が幾つか挙げられてございますけれども、ここで言ってございます、かかりつけ精神科医機能というのがマル1にございますが、主治医、いわゆるかかりつけ精神科医が多職種、障害福祉サービス、行政機関等と連携し、チームを総括しながらケースマネジメントを実施していただく。そういったケースマネジメント機能を果たしていただくことが重要であるといったこと。
それから、「急性増悪時の対応」といたしまして、日常的なクライシスプランの確認ですとか、緊急時の相談対応、医療提供を担っていただく。また、訪問診療や訪問看護の提供、他科の連携ですとか身体合併症等への対応、そういったところを担っていただくのがかかりつけ精神科医機能であると位置づけられたところでございます。
関連しまして次のページでございますけれども、包括的支援マネジメントについてはこれまでは入院医療機関で機能を充実していただいてきているところでございますが、外来医療機関においてもこういう機能をより一層担っていただく必要がある、このような認識を示しているところでございます。
次のところでは、令和4年にまとめていただいた検討会の報告書の概要、そしてそれが11ページにございますように令和4年の法改正に反映されていったということでございます。
次の12ページが第8次医療計画、今年度令和6年度から始まってございます医療計画の見直しのポイントでございますけれども、この第8次医療計画に係る指針が次の13ページにございますが、この中におきましてもかかりつけ精神科医機能について、この四角で囲っているところに記載してございます。読み上げますが、「精神科医療の提供体制の充実には、精神保健に関する本人の「困りごと等」への支援を行う平時の対応を充実する観点と、精神科救急医療体制整備をはじめとする精神症状の急性増悪や精神疾患の急性発症等による患者の緊急ニーズへの対応を充実する観点が必要である。平時においては、かかりつけの医療機関に通院し、障害福祉・介護その他のサービスを利用しながら、本人の希望に応じた暮らしを支援するとともに、患者の救急ニーズへの対応においては、入院治療(急性期)へのアクセスに加え、受診前相談や入院外医療(夜間・休日診療、電話対応、在宅での診療、訪問看護等)について、都道府県等が精神科病院、精神科訪問看護を行う訪問看護事業所等と連携しながら必要な体制整備に取り組むことが望ましい。」と、このように医療計画で位置づけられています。
次のスライドでございますけれども、これは令和6年度の診療報酬改定における精神医療に関する部分の全体像をお示ししています。今回も新たな取組がいろいろ新規に加わってございますけれども、今見ていただいている図の中でかかりつけ精神科医機能という言葉が2か所で使われてございます。
1点目が、真ん中に精神科地域包括ケア病棟入院料ということが記載されてございます。これは新しい入院料が今回創設されたというところでございまして、回復機医療を担っていくというところが中心的な機能の病棟でございますけれども、かかりつけ精神科医機能にも重点が置かれています。
それから、右上のほうに「外来医療等」というところで、これも赤で囲ってございますけれども、地域に貢献する精神科医・医療機関におけるかかりつけ精神科医機能が評価されています。
次でございますけれども、後ほど藤井先生からも御紹介いただければと考えてございますが、令和4年度から6年度の研究班におきまして「にも包括」の概念をさらに推進していくという観点で、かかりつけ精神科医機能の概念について引き続き議論を深めていただいています。
次でございますけれども、先ほど医政局でも議論をされていると申し上げたところでございますが、令和5年度の医療法改正におきまして慢性疾患を有する高齢者その他継続的に医療を必要とする方々を地域で支えるために必要な機能として、かかりつけ医機能に着目をされてございます。そのかかりつけ医機能が発揮される制度の整備について現在、医政局で議論が行われているところで、今年の7月に今16ページにあるような報告書が取りまとめられてございます。報告書の本体を参考資料4としてつけてございます。時間のあるときに詳細は見ていただければと考えてございます。
次でございます。
かかりつけ医機能報告制度が法定化されましたが、かかりつけ医機能を地域で確保・強化するための仕組みを整備する取組の検討が今、行われてございます。これは、慢性疾患を有する高齢者等を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について、医療機関から都道府県知事に報告を行い、外部に公表していくという制度の立てつけでございます。
具体的にどういった報告事項があるかということでございますけれども、参考資料4の6ページないし7ページ辺りに書いてございますけれども、大きく1号機能と2号機能として整理がされてございます。
マル1でございますが、継続的な医療を要する方に対して発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能ということで、例えばかかりつけ医機能に関する研修を受けているかどうかといったこと。
それから、これは先ほど申し上げたように精神科だけに限らず、内科とか外科とか皮膚科とかいろいろな診療領域を包含的するものでございまして、報告書の中では17の診療領域が挙げられてございますけれども、この17の診療領域ごとに一次診療の対応可能の有無とかを記載する。
それから、一次診療を各医療機関が行うことができる疾患を報告していく、とされていますが一次診療として報告できる疾患の具体案として、次のスライドにあるとおり40疾患が挙げられてございます。この中にはいわゆる精神科領域の疾患も幾つかございます。
例えば、鬱(気分障害、躁鬱病)ですとか、不安・ストレス(神経症)、それから統合失調症ですとか睡眠障害も挙がっていますが、患者調査による推計外来患者数が多い疾病を上位から列記されたものでございます。こういった項目が1号として記載される予定です。
それから、前のページのスライドに戻っていただきますと、2号機能についてマル2で書いてございますが、マル1の1号機能を有する場合には(1)から(5)までございますけれども、通常の診療時間外での診療、それから入退院時の支援、在宅医療の提供、介護サービス等と連携した医療提供、その他の事項について都道府県に報告し、そして公表するというふうな立てつけで今、議論がされているところでございます。
それで、都道府県においては医療関係者や医療保険者などが参加する外来医療に関する地域の協議会の場において、地域でかかりつけ医機能を確保するために必要な具体的方策を検討し、結果を取りまとめて公表することとなってございます。
この「かかりつけ医機能」は繰り返しになりますけれども、精神科だけに限らず全ての診療科にまたがるものとして医政局で議論されてございますが、こういった制度の議論の行方も参考にしながら、精神科に特化をした「かかりつけ精神科医機能」について議論を深めていただきたいと考えています。
4ページに戻っていただきますけれども、論点として挙げさせていただいてございます。
人口構造や疾病構造の変化、精神医療の質向上等を背景に、近年、精神保健医療福祉を取り巻く状況は変化しており、「かかりつけ精神科医機能」を有する医療機関についても変化への対応が求められているところでございます。
このページの一番下に※印で書いてございますけれども、今後、外来医療、在宅医療、入院医療の提供体制ごとにかかりつけ精神科医機能の在り方について検討会で議論を行っていただく予定です。
後御議論いただく内容につきましては医療計画に反映させる。場合によっては予算補助事業や、必要があれば診療報酬の改定などにもつなげていきたいとを考えているところでございます。
以上でございます。
○田辺座長 御説明ありがとうございました。
誠に申し訳ございませんけれども、私の生理的限界がきたので、座長権限で3分ほど休憩を取らせていただきます。
(休憩)
○田辺座長 大変失礼いたしました。再開いたします。
事務局から御報告いただいたところでございますけれども、藤井構成員のほうからこれに関連いたしまして資料の提供がございましたので御説明をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
国立精神・神経医療研究センターの藤井でございます。参考資料の2を御覧いただければと思います。
こちらは、先ほど事務局から御説明いただきました厚生労働科学研究で私が代表を務めておりまして、岡山県精神科医療センターの院長の来住先生が分担をお務めの研究班でまとめたものでございます。
1ページ目ですけれども、これは「「にも包括」で求められる精神科医療機関の役割(案)」でございます。「診療機能」「連携」「地域での役割」の3軸で検討しております。
「診療機能」といたしましては、多様な精神疾患に対応できることや、多職種による包括的医療の提供、ケースマネジメントの提供、アウトリーチ系の医療の提供、身体合併症対応などなどが求められると考えられました。これについては、資料5の8ページに示されている「かかりつけ精神科医機能」というところですね。左上のマル1のところとほぼ一致する内容かと思います。
「連携」先としましては、主なところだけでも資料にお示しするように多くの関係機関が想定されています。このような関係機関と連携することによって、同じく資料5の8ページの右上に示されている「地域の精神科医療への貢献」というものが可能になると思われます。
「地域での役割」としましては、医療機関のある地域の状況によって求められる役割というのは異なってくるとは思うのですけれども、例としましては資料に示しているような活動が挙げられるかと思います。これに関しましても、資料5の8ページのマル3、マル4に関連するところかと思います。
「にも包括」では、精神科医療機関がこのような役割を担うことが望ましいということを前提として、今後特に議論が必要であると思われるのが、これまで精神科の医療機関というと精神科病院を中心にその役割の在り方というのを検討されてきたところがあるかと思うのですけれども、総合病院精神科でありますとか診療所に関しての役割というのが、これまでもある程度は触れてきていると思うのですが、あまり深く議論されることはこのところなかったように思います。
特に精神科の診療所に関しましては数が増え続けている状況がありまして、数が増えるというのは一見いいことのようにも思うのですけれども、実際には精神科の臨床経験がない医師がたくさん在籍して診療していたりという質の低下でありますとか、精神科医療のビジネスモデル化というような状況も懸念されるところでございまして、改めて精神科診療所のあるべき姿について議論するというのは大変重要な現状というものがあるのではないかと考えております。
それで、精神科診療所については精神科病院以上にその機能だったり役割のバリエーションが非常に大きいということがあるかと思いますので、議論しづらいという側面があるのも否めないところではあるのですが、「にも包括」で精神科診療所に求められるミニマム、最低限ここは押さえておこうというような機能は何かということ、この共通認識を示す必要はあるのではないかと思います。その上で、地域の実情とか勤務する医師、コメディカルの専門性に応じて機能が追加されるという形になるのかなと考えております。
2ページ目以降は、そのような議論を行うに当たっての参考資料としていただければと思いましてお示ししたものでございます。研究班のほうで精神科医療機関の機能に関する調査を行っておりまして、その速報値です。この調査は病院に対しても実施しているのですけれども、その病院に関してはデータクリーニング中ですので、今回診療所の結果に絞ってお伝えをしております。実施主体や方法については資料のとおりで、診療所につきましては日本精神神経科診療所協会さんに所属する診療所から御回答をいただいており、回答率は28%とあまり多いとは言えないのですけれども、約450か所から御回答いただいておりますので、ある程度の傾向をお示しできているものと考えております。
2ページ目の【人員配置】ですけれども、3、4割の診療所では看護師、精神保健福祉士、あるいは公認心理師などのコメディカルスタッフを配置していることが分かります。
初診までの待機期間はかなり問題になっているところではございますが、かなり幅がありまして、ゼロ日から3か月程度までばらつきがございましたが、平均値、中央値、ともに11日程度でございました。
次のページを御覧いただければと思います。
次のページは【診療機能】についての結果です。項目の前に※印がついているサービスについては、診療報酬外のサービスになります。初診待機の平均は先ほど申し上げたように11日程度だったのですけれども、緊急の場合、当日受付をしている診療所は4割以上ございます。それで、警察官同伴などの受診など、比較的ハードなケースと思われるような患者様への対応をしているところも少なくありません。身体合併症についても、一定程度対応されているということが読み取れるかと思います。
訪問診療などのアウトリーチ系のサービスを自院で実施されているところは御覧いただいたとおりでして、ここでは精在管よりも在総管を算定しているところのほうが多いというのはちょっと気になっておりまして、ここをどうすみ分けるのかの議論は必要かもしれません。
診療報酬として算定できない医師であるとか精神保健福祉士等の院外の相談も一定程度、1割程度の診療所が行っていることも分かりました。
次のページを御覧ください。【診療機能】の続きです。
訪問ではなくて人員外来でのコメディカルによる相談はかなり多く行われておりまして、3、4割では実施されているという結果でした。
一方でケースマネジメント、包括的支援マネジメントを評価する療養生活継続支援加算についてはまだ普及が十分行き渡っていないといった結果が得られております。
【連携機能】としましては、意見書や診断書は多くの診療所で出されているのですけれども、正式な文書以外の様々な関係機関との連携も比較的積極的に行われているような状況が見て取れました。
次のページを御覧ください。
これまでお示ししました記述統計だけでは、なかなか地域のニーズに応える診療所のイメージがつきづらいかと思いまして、実例をお示ししております。
こちらのクリニックでは、院長である精神科医が1人で診察に当たっておられて、よくあるパターンの診療所ですけれども、ほかの医療機関でも診療を受けてもらえない背景事情が複雑な方も多く診察をされておりまして、そのような包括的ケアを必要とされる方に適切に対応するために看護師や精神保健福祉士、心理師、これは臨床心理士と伺っておりますけれども、心理職の方が精神科医の診察前後に面接を行ったり、ケースマネジメントを実施したりされています。
地域の関係機関との顔の見える連携を構築しまして、院長は公的機関の嘱託医などを務めるほか、様々な地域の相談に応じておられます。
次のページは、「大阪精神科診療所協会の取組」です。
図にお示ししていますように、大精診では組織として精神科の一次救急や夜間・休日の措置診察に協力をされています。一次救急とかミクロ救急に診療所が協力する仕組みは私の知る限り東京にもありますし、ほかにも確認する必要はありますけれども、東京、大阪に限らず全国にあるものと思われます。
簡単ですが、報告は以上です。今後の議論の参考にしていただければと思います。ありがとうございました。
○田辺座長 どうも御報告ありがとうございました。
では、議論のほうに移りたいと思いますけれども、本日欠席の松本構成員より御意見をいただいておりますので、事務局のほうで代読をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○新平課長補佐 それでは、資料の5の4ページ、「論点 かかりつけ精神科医機能について」の御意見をいただいておりますので、代読いたします。
「かかりつけ精神科医機能の充実」は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を図るうえでの一つの要素であり、その他の社会参加、精神保健に関する相談指導、市町村と精神科病院との連携、人材育成などの充実、また、社会の正しい理解と合わせて議論する必要がある。
誰しもが住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、早期から退院支援ができる体制と地域で受け止める在宅医療・看護体制の確保が必要である。
論点に示された検討事項については、異論はない。
ただし、資料にもあるように、かかりつけ精神科医機能の中にはケースマネジメントや緊急時の相談対応、訪問診療や訪問看護の提供等の役割が含まれており、外来、在宅、入院医療において医師、看護職員含めた多職種が連携しながら、こうした役割を果たしている。医療機関が地域におけるかかりつけ精神科医機能を果たせるよう、現状を踏まえた十分な検討が必要ではないかと考える。
リソースの問題として、精神科を標榜する診療所は地域偏在があり、小児や依存症など、専門的な医療機関の確保は困難な状況にある。同じく、病床についても課題を有しており、現状を踏まえることが重要である。
これまではかかりつけ医と精神科専門医との連携の在り方について取り上げられてきたが、かかりつけ医療機関と精神科専門医療機関との役割分担や連携などに関する整理も必要ではないか。
今後に向けては、看護の提供体制の整備を含めて地域の状況に応じた精神科医療提供体制の在り方を整理し、示す必要がある。都道府県における医療計画などを通じて、総合的に計画し、推進を図る必要があると考える。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、皆様方から御質問、それから御意見がございましたらぜひお願いします。
では、岩上構成員よろしくお願いします。
○岩上構成員 全国地域で暮らそうネットワークの岩上です。
厚労省の説明と藤井先生の御説明、ありがとうございました。
藤井先生の表紙にある「「にも包括」で求められる精神科医療機関の役割」というのと、国の資料で先ほど藤井先生もおっしゃっていましたが、「精神障害を有する方等がかかりつけとしている精神科医療機関に求められる機能」と、言葉がちょっと違うのですけれども、私はこの「にも包括」で求められる精神科医療の役割、機能としてまとめていったほうが分かりやすくなるのではないかと思っています。それは、やはりかかりつけ医の話と、かかりつけ精神科医の話と、その機能の話がちょっとダブってくるんです。そういう意味では、藤井先生にお示しいただいたことのほうが方向感としては分かりやすくなると思いました。
それで、論点にありますように、今回法改正で、市町村で精神保健に対してしっかり取り組むという方向感はさらに推進されていくと思っています。次には医療アクセスの問題が必ず出てくるので、その際にこの精神科医機能と医療機関の機能として精神保健相談の中でのアウトリーチというのを、より自治体ベースで推進していく必要が必ず出てくる。それが方向としては見えているので、そういう意味ではこの機能はとても期待されるところではないかと思います。
それをぜひお願いしたいということと、あとは今回示されているのは、私はソーシャルワーカーという職種なのですけれども、田村構成員や岡部構成員もそうなのですが、結構ソーシャルワーカー的な構造なんです。つまり、ミクロレベルで御本人がいて、そしてケースマネジメントとしてのチーム医療があって、メゾレベルですね。それで、その地域をどうつくっていくかというのはまさしく私たちがずっとやってきたことなので、そういう価値観からすると、ぜひこの機能を精神科病院に私は期待していますが、今回精神科の診療所でこういう機能を位置づけることによって、精神科の診療所の差別化もできると思うんです。差別化というか、本来、一生懸命取り組みたいところを評価できる仕組みになると思っています。
話を戻すと、非常にソーシャルワーク的な構造化をされているので、精神保健福祉士にも活躍は期待したいと思います。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、上田構成員よろしくお願いします。
○上田構成員 日本精神神経科診療所協会常任理事の上田と申します。
藤井先生、日精診のアンケートを取り上げていただきましてありがとうございました。
皆様に、まず日精診というのはどのような協会なのか、ちょっと説明させていただきたいと思います。日精診は今年で50周年になったのですが、当初は患者さんを地域で診たい。病院から退院してもらって、外来で地域で診たいという医者が診療所を設立した。東京、神奈川、大阪とか、各地に地区協会といますか、その地区の精神科診療所協会ができて、それがまた日本という形で出来上がったのがやっと50年前なのですけれども、当時は外来に今で言う通院精神療法という診療報酬はなかったんです。それがない中で内科の診療もしながら、てんかんも診ながら、外来で精神科の患者さんのフォローをしてきたという歴史があります。
私たちの協会の先輩方が活動してくださったおかげもあって、今は通院精神療法という形になって診療報酬がついているのですけれども、昨今、先ほどもお話に出ましたが、ちょっと質に問題のあるビジネスモデルの診療所がわんさか増えてしまったことで、今回の診療報酬の改定でいわゆるベテランの精神科専門医だったり指定医だったりがやっている診療所も打撃を食らってしまったという現実があります。
それで、私たちの日精診の協会は平均年齢60歳です。かなり高齢で、ほとんどがほぼ1人でやっているようなクリニックなんです。
ただ、非常に数もありまして、地域で期待されているといいますか、地域の患者さんのために町のお医者さんとして、いわゆる今の「にも包括」でかかりつけ精神科医的な機能を既にやっているんです。しかしながら、新手のビジネスモデルが出てきたおかげで診療報酬が下がってしまった。
それで、これまでは高齢の院長が閉院することはあったのですけれども、高齢でもない人も自信を失い、将来に希望を失って閉院することが最近続いておりまして、地域によっては病院も診療所も新患を受け付けていない地域もあります。私の患者さんでも、関西に住んでおられるのですけれども、そちらで診てもらえないから転院ができないといって、東京まで帰ってきてはうちで診察をしているような方もいらっしゃいます。
そのような形で、実は外来患者は増えているので、診療所というか、外来機能が足らないんです。そうなんですけれども、通院精神療法が下がってしまったということもあったり、あとは今回の診療報酬改定が示すいわゆる「ちゃんとした診療所」のレベルといわれるものが非常に高くて、24時間電話対応しなければいけないとか、救急を診なければいけないとか、指定医の活動を年に1回しなければいけないとか、1人の精神科医では全ては無理でしょうというようなレベルを求められているということもあって、我々日精診の会員はちょっと自信を失っているといいますか、憤慨しているといいますか、どうしたらいいんだろうと途方に暮れているという状況なんです。
ただ、患者さんが診られない、新患は診られないと言う状況の中で、クリニックが潰れてしまったのでは日本の患者さんが困るばかりではないかと私は思っていまして、新患を診る待機期間を短くするために、例えば新患をしっかり診ているところにはインセンティブを与えるとか、一人一人の医者のクリニックが毎日24時間電話番はできないので、例えば日精協さんと協力して各地の診療所協会が救急医療に協力させていただくとか、そういうことは考えることができますし、指定業務は実際にやっております。
そういうことで、一人精神科医の診療所、小規模なクリニックは意味がないみたいな形にはなってほしくないと思っています。実際、町のお医者さんとして、ベテランの先生方は、診療報酬にはないけれども、相談を受けたり診療したり活動してこられているわけなので、もう少し小さな診療所を評価していただきたいというのが切実な思いでございます。
とにかく、待っている患者さんはたくさんいらっしゃる。外来診療はパンクしている。それで、新たなビジネスモデルが出てきてしまった。質の高い精神科外来診療を維持するためにどうしたらいいかということを皆様と一緒に考えていきたいと思っておりますし、これが結局日本の国民のメンタルヘルスにつながると考えています。
他機関、他病院とか、他施設との連携はもちろん、PSWも、臨床心理士も、看護職もそうですが、外来でもチーム医療はできますので、引き続き御支援を賜れればと思います。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
会場の都合で17時までと尻が切られておりますので、御発言は手短にお願いいたします。
では、桐原構成員よろしくお願いします。
○桐原構成員 例によって、早口で言います。
かかりつけ医療機能及びかかりつけ精神科医療機能は、入院医療を含むものと考えられています。総合病院のような同一医療機関において、かかりつけ精神科医療機能を持つ精神科とかかりつけ医療機能を持つ内科の両方を受診している場合に、入院中の転科連携などをめぐっては報酬や入院制度上の問題が認められます。
例えば、医療保護入院中の精神障害者が内科の病床に転科する場合に、一旦、医療保護入院を解除し、退院してから内科に入院するというようなことになります。そして、内科の病床から退院して精神科に転科するときには、再び家族等の同意を取得して医療保護入院にするということになります。
このような不要かつややこしい手続が必要とされるのは、精神科医療と身体科医療が政策構造上、分断されているから生じています。そのため、入院制度の見直し等が求められます。精神疾患と身体合併症がある患者の医療連携については、残念ながら円滑にできていないように感じています。コロナ禍では精神疾患を理由に、三次医療圏から感染の治療を拒否された人もいました。また、透析を拒否されて亡くなった人もいました。
それと、滝山病院は昨年問題になりましたが、身体合併症に対応できるところに受け入れてもらうほうがましであるかのような考えに陥っていきます。
しかし、滝山病院は身体の看護はできていませんでした。見ました。滝山病院から転科する人、転院する人のサポートをしたときに目の当たりにしました。
医療機能を果たせない医療機関が囲い込むのは危険です。外来や診療所との連携を含む幅広い連携が必要で、それを阻む政策上の課題を取り除いていくこと、すなわち精神科医療と一般医療を分断させないという政策上の問題を解決することが必要です。
そして、医療機能報告制度ですが、これは地域医療構想や医療介護総合確保基金とともに精神科病院は対象外になっています。ですから、精神科医療と一般医療を同質の水準の政策にしていく観点からの見直しが必要であると考えます。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、北村構成員よろしくお願いします。
○北村構成員 今の桐原構成員のお話のとおり、精神医療と一般医療を別々にずっとこれまでやってきたのが根本的な問題だと思いますが、それは置いておきます。
それで、かかりつけ精神科医機能についてですけれども、医政局の言っているかかりつけ医機能と、藤井先生のおっしゃるかかりつけ精神科医機能は若干似ているようで違ったものですので、このかかりつけ精神科医機能という言葉をやめていただきたい。ほかのものと一緒にすると議論がごちゃごちゃになって、何が何やら分からなくなるのでやめていただきたいというのが第1点。
それから、これまで精神医療については入院医療、精神科医療イコール入院医療みたいな形でずっと入院の話ばかりしてきましたけれども、先ほどの上田先生の話のとおり、今はむしろ地域のほうに難しい患者さんを抱えて、地域でみんなで支えているのが現状なので、これからの精神医療を論じるときにはやはり外来機能を中心に考えるべきだと思いますので、その辺りを発言したいと思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
では、どうぞ藤井構成員、レスポンスがあるかと思いますので。
○藤井構成員 北村構成員がおっしゃらなければ私が言おうと思っていたのですけれども、かかりつけ精神科医療機能という言葉に関して、これは精神の中だけで議論する場合には分かりやすい言葉で、実際に報告書にもそのように書かれています。
ただ、医政局で議論される、かかりつけ医機能と同じように議論するものではないということがあって、これはそれこそ先ほど桐原構成員がおっしゃったように、精神と身体と区別せずに議論していくというときに、この用語の混乱があるとここで引っかかってしまうという問題があるので、今まで議論してきたかかりつけ精神科医機能に関しては、内容についてはこれまでの議論を踏襲しつつ、用語に関しては再考するというのは一つの考え方かなと思いました。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
今との関連ですか。どうぞ。
○長瀬構成員 日精協の長瀬でございます。
今、北村先生からも藤井先生からも御指摘があったように、かかりつけ医機能報告制度とかかりつけ精神科医機能の区別が非常に分かりにくいという指摘をいただきまして、資料にあるようにかかりつけ精神科医機能については令和3年時点で取りまとめておられまして、かかりつけ医機能報告制度により、前から「にも包括」の観点で、地域において精神医療を提供する際に必要な機能として位置づけられたものでございます。
診療報酬上も、評価が実に進んでおります。それで、一次医療が可能であることを報告するかかりつけ医機能報告制度と、かかりつけ精神科医機能が別物であるという整理は理解できるのですけれども、地域で精神疾患を有する方をしっかり診療するに当たっては、かかりつけ精神科医機能の発揮というのはどうしても重要で必要であります。
例えば、精神の医療計画と精神医療福祉施策においては、かかりつけ精神科医機能の整備を推進する方針とすべきであるということは改めて確認しておきたい。その前提であれば、こういった用語の現場の混乱を防ぐためには名称の変更等は検討することも許容できるのかなと思います。
また、かかりつけ医機能報告制度は来年度から施行されるものと承知していますけれども、例えば将来的に制度の見直しなどが行われる際には、精神医療について進んできた議論についても再び考慮して検討してほしいと考えておりますが、これは意見でございます。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、柑本構成員よろしくお願いします。
○柑本構成員 ありがとうございます。柑本です。
今、先生方がおっしゃっていた議論につきまして、私には少し分からないところがあるので、藤井先生が御報告なさったことをベースにしてお伺いしたいことがあったのですけれども、5時までということなので意見だけにとどめさせていただきたいと思います。
厚労省の御担当の方、藤井先生、御説明ありがとうございました。自分の専門に引きつけてしまって大変申し訳ないのですけれども、今、藤井先生が取り上げてくださったもりおか心のクリニックの取組で【地域での役割】の中に、明示的に「警察署・刑務所・精神的な問題を抱える犯罪者・受刑者の相談・面接」と記載されていることは非常にありがたいことだと思っています。
確かに、元受刑者や少年院から退院してきた人たちの中には、一定数精神的な不調を抱えている人たちがおりまして、その人たちが地域で精神科医療につながれる体制が存在することが非常に重要であるということは、様々な刑事司法の現場で言われていることでございます。
そして、どこでも言われていますのは、刑事司法の枠がなくなったときに地域で枠を超えた丸ごとの支援ができるかどうかが肝だということでした。
そこで、藤井先生にお伺いしたかったのは、もりおか心のクリニックの取組というのは日本では一般的な取組なのかどうかということと、こうした支援というのはかかりつけ精神科病院やクリニックなどが中心的な機関となって調整することになるのか、そうでなければどこがするのか、そのイメージを伺いたかったということです。
そして、この場合、精神科医療につなげ続けていくには、本人に来てもらうだけではなく、訪問支援を行うということが非常に重要だと聞いているのですけれども、その調整も行われることになるのかどうか。
もし可能でしたら次回で結構ですので、以上について教えていただけるとありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
○田辺座長 クイックレスポンスが可能でしたら、どうぞ。
○藤井構成員 長くなりますので、次回でと思います。
○柑本構成員 どうぞよろしくお願いいたします。
○田辺座長 では、江澤構成員よろしくお願いいたします。
○江澤構成員 ありがとうございます。
もともとかかりつけ医とかかりつけ医機能は定義も異なるものでございまして、まずかかりつけ医は患者さんが何でも相談できて、最新の医療情報を熟知しており、必要なときには専門医療機関や障害福祉、あるいは介護保険と、またさらには行政と連携できる地域医療を担う医師でありまして、かかりつけ医は患者さんが選ぶものというふうに位置づけられてきております。
一方で、かかりつけ医機能については今日の資料の16ページの分科会でも議論されてきておりまして、報告する内容についても一定の見解が得られております。
ここで報告する一番の目的は、国民や患者さんに分かりやすくするための報告という立ち位置で議論されてきております。したがいまして、その中で患者さんに分かりやすくするための報告については、16ページにありますように1号機能、2号機能、その他の報告事項に記されている内容となっておりまして、これらの内容は全ての診療科、精神科のみならず、全ての診療科で合致する共通のものとして取り扱われておりまして、18ページの報告できる疾患についても精神科を含めてあらゆる診療科がそこに含まれており、これらに基づいた研修というのも今後構築されてくるという流れになっているところでございます。
したがいまして、これらのかかりつけ医機能を念頭に置いた議論は前提にしていかないと混乱を招くと思いますので、その際に精神科医療特有の、例えば精神医療機関同士の連携であったり、あるいは精神科の患者さんの身体合併症でありましたり、そういった特有の論点については議論に含めていくべきではないかと思っております。
もう一点は、4ページの資料の※印の一番下のところに「外来医療、在宅医療、入院医療の各提供体制ごとに議論」とありますけれども、ここは障害福祉や介護保険との連携ということも追加していただきたいと思っております。
また、別の検討会ですが、新たな地域医療構想に関する検討会がありまして、今後地域医療構想には精神医療も議論されるということになっておりまして、そちらでも同様な議論がなされると思います。同じ省内でもいろいろな議論をする場がありますけれども、それぞれの整合性を取って議論はしていくべきではないかと思っておりますので、その辺りはぜひ混乱しないようによろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
よろしゅうございますでしょうか。若干休みを取った割には後でせかすというよろしくないことをやってしまいましたけれども、御発言がないようでございますので、ここで議論を終了したいと思います。
本日の議論を踏まえまして、今後の当検討会における議論を深めてまいりたいと存じます。
それでは、本日の議題は以上といたします。
最後に、事務局のほうから連絡事項はございますでしょうか。
○新平課長補佐 本日もありがとうございました。
次回の予定につきましては、改めて調整の上、御案内したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○田辺座長 ありがとうございました。
それでは、本日は長時間お疲れさまでございました。次回も活発な議論を繰り広げていただければと存じます。
貴重な意見、その他、実に私も今日は勉強いたしましたので、まだ消化し切れない部分はあるのかもしれませんけれども、次回に向けて事務局は論点整理等々をよろしくお願いいたします。若干、宿題も付け加えさせていただいた気もいたします。
これで散会でございます。御参集ありがとうございました。