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- 第35回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
第35回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
日時
令和6年8月2日(金)13:15~17:50
場所
厚生労働省 中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室(オンライン併用)
出席者
- 委員
-
- 土岐 祐一郎 部会長
- 中野 貴司 部会長代理
- 庄子 育子 委員
- 根岸 茂登美 委員
- 花井 十伍 委員
- 深見 希代子 委員
- 藤川 裕紀子 委員
- 前村 浩二 委員
議題
- 1開会
- 2議事
- (1)国立研究開発法人国立国際医療研究センターの令和5年度業務実績評価について
- (2)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの令和5年度業務実績評価について
- (3)その他
- 3閉会
配布資料
- 国立研究開発法人国立国際医療研究センター
-
- 資料1-1 令和5年度 業務実績評価書(案)
- 資料1-2 令和5年度 業務実績概要説明資料
- 資料1-3 令和5年度 財務諸表等
- 資料1-4 令和5年度 監査報告書
- 国立研究開発法人国立循環器病研究センター
-
- 資料2-1 令和5年度 業務実績評価書(案)
- 資料2-2 令和5年度 業務実績概要説明資料
- 資料2-3 令和5年度 財務諸表等
- 資料2-4 令和5年度 監査報告書
議事
- 第35回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
- ○西岡室長補佐
定刻となりましたので、ただいまより「第35回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。議事進行を務めさせていただきます、大臣官房厚生科学課の西岡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、庄子委員、中野委員、深見委員、藤川委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。なお、庄子委員は15時頃より遅れて御出席される予定です。また、中野委員より16時頃に一時退席の予定と連絡を頂いております。また、神崎委員より御欠席の連絡を頂いております。なお、出席委員に関しましては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。また、危機管理・医務技術総括審議官の佐々木につきましては、他の用務のため本日途中退席させていただきますので、御了承くださいますようお願いいたします。
続きまして、会議の進め方について御説明いたします。会場に御出席の委員におかれましては、御発言の際は挙手していただき、また、オンラインで御出席の委員におかれましては、Zoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。また、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御発言の際には、冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御発言される際には、資料番号と該当ページを明言いただきますようお願いいたします。
続きまして、本日の議事を御説明いたします。本日は、国立国際医療研究センター及び国立循環器病研究センターに関する「令和5年度業務実績評価」に係る意見聴取を行います。また、国立国際医療研究センターにつきましては、令和6年度が中長期目標期間の最終年度に当たるため、「中長期目標期間見込評価」に係る意見聴取も併せて行いますので、見込評価について簡潔に御説明させていただきます。見込評価は、中長期目標期間の最後の事業年度に実施し、中長期目標期間終了時の直前の年度、いわゆる令和5年度までの業務実績に係る自己評価等を踏まえ、中長期目標期間終了時、令和6年度末に見込まれる業務の実績等を分析し、中長期目標の達成状況等について総合的に評価するものです。その結果、SからDの評定を付すことや各評定の基準は年度実績評価と同一となります。評定を付す際には、SからDの評価と併せて、その根拠のほか、次期目標期間の業務実施に当たって留意すべき点等について御意見を記述していただくようお願いいたします。
見込評価の結果は、通常、法人の業務及び組織の全般の見直し並びに次期中長期目標の策定に活用されますが、今回、国立国際医療研究センターは、法人の統合による解散が決定しておりますので、統合後に業務を引き継ぐ新機構の中期目標の策定に活用されることになります。見込評価の御説明は以上です。
次に、本日の意見聴取の流れにつきまして御説明いたします。意見聴取では、評価項目ごとに法人から説明していただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。なお、見込評価を併せて行う国立国際医療研究センターに関しては、評価項目ごとの法人の説明が、「年度評価」と「見込評価」の順に続けてなされます。説明と質疑応答のお時間は事前に時間設定をしており、終了1分前と終了時に事務局がベルを鳴らしますので、目安としていただきますようお願いいたします。
それでは、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、1-4、1-6、資料2-2、2-4を御用意いただいておりますでしょうか。その他の資料につきましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧いただきますようお願いいたします。会場の委員の皆様の資料につきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料を格納しておりますので、そちらを御覧くださいますようお願いします。資料の閲覧方法について御不明な点がございましたら、事務局までお申し付けください。
ここまで事務局からの御説明は以上ですが、何か御質問等はございますでしょうか。それでは、以降の進行につきまして、土岐部会長、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
それでは、よろしくお願いいたします。本日は審議を開始する前に、これまで国立国際医療研究センターから提出された業務実績評価書に関しまして、訂正の御報告があると聞いておりますので、まずは事務局から簡潔に経緯の説明をよろしくお願いいたします。
○和田室長
御説明いたします。国立国際医療研究センターの年度評価に関して、令和4年及び令和5年の本部会の審議に使用されたセンター提出資料に記載されております、令和3年度及び令和4年度の実績値等の一部に、算定方法の誤りなどにより訂正が必要な箇所が複数発見されたとの報告が法人よりございました。報告を受けた対応として、事務局からは速やかに委員の皆様方に個別に内容を御説明させていただいており、御理解を頂いているところです。訂正後の業務実績評価書につきましては、近日中に厚生労働省のホームページ及び法人のホームページにおいて公表を予定しております。なお、本日の審議に用いる資料に関しては、当該訂正を反映させた数値を記載しております。また、この訂正によるこれまでの大臣評価への影響に関して、改めて検討した結果、評定の変更に相当するものではないと判断しております。事務局からの報告は以上です。委員の皆様方には、御迷惑をお掛けしましたことをおわび申し上げます。
○土岐部会長
それでは、理事長から本件に関しまして御発言がありましたらお願いいたします。
○国立国際医療研究センター國土理事長
土岐部会長、ありがとうございます。冒頭から訂正のお願いで大変申し訳ありません。この度、令和3年度及び4年度の業務実績評価書の記載内容につきまして、実績値等の訂正が発生しましたことを謹んでおわび申し上げます。訂正内容につきましては、委員の皆様方に事前に御説明の時間を頂き、誠にありがとうございました。訂正することになった件については、先ほど御説明がございましたが、今回、中長期目標期間の見込評価の実施に当たり、過去の実績値を再度確認したところ、当時の算出方法に事務的な誤りがあったことが判明したことによるものであります。今後の対応につきましては、事務局から御説明いただいたとおり、訂正後の業務実績評価書を法人のホームページに公表するとともに、来年度以降の作業について同様の不手際がないように、再発防止に努めてまいります。この度は、このような訂正が発生しましたことを深くおわび申し上げます。ありがとうございました。
○土岐部会長
どうもありがとうございました。ただいまの御説明について御意見、御質問等はよろしいでしょうか。
それでは、改めまして国立国際医療研究センターの業務実績評価について審議を始めたいと思います。初めに、理事長から一言、御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター國土理事長
国立国際医療研究センター理事長の國土でございます。改めまして、部会長の土岐先生、評価委員の皆様、本日はお忙しい中、評価部会を開催いただきますこと、誠にありがとうございます。
さて、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって丸4年が経過しましたが、私どもNCGMは、感染症等の疾患に対応するナショナルセンターとして、昨年度も引き続き新型コロナウイルスと対峙してまいりました。通算いたしますと、本年4月末の時点で新型コロナウイルス感染症の入院患者総数は2,677人、延べ数では3万7,400人という数になります。
また、学術面の詳細は後ほど満屋所長より御説明いたしますが、EG.5.1系統などの変異株について、これまで不明であった病原性や伝播性に対する報告を行い、また既存薬よりも更に強力な抗ウイルス薬の開発などを行ってきました。満屋研究所長が主導する新規エイズ治療候補薬イスラトラビルの臨床開発も最終段階となってきています。COVID-19のレジストリでありますCOVIREGI-JPは、患者血清などのサンプルとウイルスサンプルのバンキングであるREBIND事業に発展し、今後の新興・再興感染症にも備える形になっています。昨年来流行していますエムポックス、いわゆるサル痘は、REBIND事業の2番目の対象疾患となりましたが、感染予防の痘瘡ワクチン、抗ウイルス薬であるテコビリマットの臨床試験などを当センター主導で開始しています。また、政府備蓄の痘瘡ワクチンを活用した臨床試験をコロンビアにて行いました。感染症の臨床研究支援基盤の組織として、国内ではGLIDEを立ち上げ、また、アジア諸国との連携のためにARISEという国際的なAROを立ち上げて、研究開発を進めています。
一方、JHの活動状況につきましても後ほど植木本部長より御説明いたしますが、設立5年目を迎え、6NC共同研究や、若手研究支援、電子カルテ統合データベース事業など、多くの事業が順調に進行しています。
経営面では、新型コロナの影響による受診控えや補助金の減少などにより、非常に厳しい運営となった結果、令和5年度は赤字となりました。今年度については、昨年度を上回る入院患者を確保し、費用の節減を図るなど、引き続き経営改善の努力を続けているところです。
最後に、国立感染症研究所との統合についてですが、来年4月、国立健康危機管理研究機構、英語名でJIHSが設立されます。これに向けて、両組織で実務者会議、NN会議と申しますが、これを立ち上げて議論を進めております。また、厚生労働大臣直轄の国立健康危機管理研究機構実行委員会の御指導の下、創設に向けた準備に全力を注いでおります。委員の先生方におかれましても、引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。本日はNGCMとしては最後の評価部会になりますが、御審議をよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
國土理事長、ありがとうございました。それでは議事に従いまして、まずは「研究開発の成果の最大化に関する事項」のうち評価項目1-1に関わる業務実績について議論したいと思います。初めに、法人のほうから「年度評価」及び「見込評価」の順に御説明いただき、その後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。説明時間12分、質疑11分となっていますので、見込評価につきましては、年度評価の繰り返しがないように、ポイントを絞っての御説明をお願いします。なお、JHにつきましては、後ほど別途御説明を頂きたいと思います。それでは、よろしくお願いします。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
研究所長の満屋でございます。まず、2023年度の業務実績の概要ですが、本日は6件の御報告を予定しているところです。まず5ページを参照してください。評価項目1-1、研究・開発に関する事項で、自己評価はSです。
次のページを見ていただきますと、指標の達成状況です。いずれも100%から140%と高い達成度を得ていまして、特に原著論文数は、先ほど國土理事長の御説明にもありましたが、COVID-19関連の論文を多く発表し得たことが要因だと考えています。
評定の根拠です。7ページを御覧ください。主たる根拠として3点を挙げています。1つは、先ほど國土理事長が述べられました、新規エイズ治療候補薬イスラトラビルの開発です。そして、SARS-CoV-2の変異株等の病原性・伝播性の解明とウイルスの性状解明、及び新規の治療薬候補の開発に成功しているところ、これが2つ目の根拠です。もう1つは、新規マラリア診断法の開発です。順次これらについて御報告いたします。
まず8ページを御覧ください。このページは、新規のエイズ治療候補薬のイスラトラビルについてです。多様な臨床開発が最終段階にあります。最終段階と言いますのは、今、日本国内で進行中のものは、4件の二重盲検を含む国際共同臨床試験で、つとに我々は米国メルク社に導出しまして、イスラトラビルというのは、現存する全ての多剤耐性の変異株HIV、エイズのウイルスですが、その変異株に対して極めて強力な活性を発揮するもので、特に日、米、英、仏等をはじめとした国際共同試験が進行しているところです。特に強調したいのが、NCGMのセンター病院では、日本における最終段階の臨床試験の旗艦グループ、フラッグシップとして最大数の治験症例を担当しているところです。日本での症例数は約35症例ですが、そのうち28症例でNCGMのセンター病院が治験を進めているところです。
真ん中に青と赤のバーがありますけれども、今使われている薬剤は、3種類から4種類のものを使って、特に現行のものでは腎機能に対する不安、副作用がありますが、このイスラトラビルは僅か2剤で同様のウイルスの減少を実現していまして、CD4陽性細胞数を右の折れ線で示していますが、結論は変化がないということで、今のところ副作用はほとんど見られないというところです。このイスラトラビルは、波及効果と今後の所に線を引いていますが、HIV治療と感染予防での「game-changer・paradigm shift」とされ、劇的な変革をもたらすと期待されているところです。
次に、オミクロン変異株の病原性・伝播性の解明、9ページを御覧ください。御承知のように、新型コロナウイルス感染症、COVID-19は幸い下火となっていまして、重症化率、死亡率もかなり低くなっていますが、まだまだ種々のオミクロン等の変異株の出現が課題となっているわけです。詳しくは後で御覧いただきたいと思いますが、波及効果と今後の所を見ていただきますと、オミクロン株の性質はやはり少しずつ変化をしており、今後も引き続き注意深く流行株の性状をモニターする必要があるということで、こうした私どもの研究所での成果、我々のこれまでの治験は、特に政策立案等に大きく資すると考えているところです。
次の10ページです。このSARS-CoV-2というのがCOVIDの原因ウイルスで、野生・変異株が出現しますが、こうした変異株に対しても非常に強い抗ウイルス活性を発揮する治療薬の研究・開発を続けているところです。私どもは結晶解析の結果などを駆使して、特に変異が起きにくいとされているウイルスの蛋白分解酵素、これは機能性蛋白ですから、なかなか変異を起こすことができない、変異を起こすとその機能が失われてしまうというところを利用しまして、そのようなプロテアーゼ阻害剤を開発しているところです。
上のほうの図を御覧ください。これがその標的蛋白の蛋白分解酵素でして、この酵素は実は二量体ですが、そこにTKB272が結合しているのが御覧になれると思います。こうしたTKB272、TKB245といったコードネームで私どもは呼んでいますが、例えばファイザー社のニルマトレルビルに比べまして、活性が100~140倍ぐらい強力で、しかも、経口投与が可能と思われるものをデザイン、合成しまして、極めて高い抗ウイルス効果の同定に成功しているところです。波及効果の所を見ていただきますと、経口吸収率が非常に佳良で、将来出現すると思われる変異株に対しても極めて高い抗ウイルス活性を発揮すると期待しているところです。
次の11ページを御覧ください。しかしながら、このCOVIDのウイルスは、お聞き及びのことと思いますが、耐性ウイルスが非常に出やすいということで、耐性発現のメカニズムを明らかにして、そうした耐性株にも有効な新規薬剤の開発を進めているところです。試験管内で例えばニルマトレルビルの存在下でウイルスを増殖させますと、下の左にありますこのリボン状のもので、丸のsphereで示している所に非常に問題となる耐性を付与するアミノ酸の置換が起こっています。このようなデータ、試験管内のデータ、そして結晶解析のデータに基づいて、耐性ウイルスにも活性を発揮する新規の治療薬開発を進めていまして、先ほど申し上げましたTKB272は、非常に強い抗ウイルス活性を発揮することを確認しているところです。
次の12ページを御覧ください。新規マラリア診断法の開発です。医師主導試験が終了しまして、WHOの認証へ向けた研究開発を推進中です。マラリア診断は、実は検査技師あるいは医師が顕微鏡を使用し目視で決定することがこれまで行われていましたが、それを機械化したものです。結果の所に書いてありますが、XN-31という分析装置を使いますと、そういった検査者の技量に左右されることなく、高い診断率を得ることができます。波及効果と今後の所を見ていただきますと、特にXN-31という診断機器は、本邦の感染症法でのマラリア診断基準に加筆されているところで、国内でも最近輸入マラリアが報告されていますので、特に鋭敏かつ特異的なマラリアの診断法の実現に大きく資すると考えているところです。
6件目ですが、13ページを見ていただきますと、遺伝性疾患克服に向けた全ゲノム解析基盤の整備と実践です。これも御承知と思いますが、厚生労働省は、難病やがんの診断及び治療法等の開発を目指して、全ゲノム解析を活用するために、実行計画を策定、推進しているところです。2023年開始の第2期研究では、多くの分担研究機関と協力医療機関と共同で、その共同で当たったスキームは図16、右の下に書いてありますが、特にこれまで知られていなかったウイルス関連の神経疾患などの病的バリアント、変異を特定しているところです。特に図14の上、ちょっと説明が難しいのですが、世界の主な集団を対象とした全ゲノム分析で、日本人一般集団が大きく東アジア集団に属することを改めて確認しているところです。
これで6件でございます。中長期の目標期間の業務実績について9件ご報告しておりますが、6件はただいま御報告しましたので、新しい残りの3件について御報告したいと思います。同じように、この中長期についても自己評価はSです。
まず12ページを御覧ください。これはB型肝炎に関わる治療法です。B型肝炎の治癒はC型肝炎とは異なりまして、まだ治癒は得られておらず、生涯の治療が必要とされていまして、そうしたことからB型肝炎のウイルスに薬剤耐性が出現しています。そこで、研究所では、そうした薬剤耐性のB型肝炎ウイルスに対しても強力な活性を有する新規の化合物、E-CFCPという名前を付けていますが、これを独自でデザイン・合成・同定しています。右の上の図を見ていただきますと、よく使われているエンテカビル、ETVと書いていますが、これが下のほうに行けば行くほど抗ウイルス効果が高いということになりますが、御覧のように青の折れ線で示していますE-CFCPが2~3logくらい強いということがお分かりかと思います。これは特にヒトの肝臓細胞を移植したマウスでのデータで、これらのデータは1日1回ではなくて1週間に1度でも非常に強い抗ウイルス効果を発揮することを確認していますので、患者のQOLを改善すると期待しているところです。
次に13ページ、先ほど國土理事長から説明がありましたが、エムポックスの感染症に対する臨床対応と新規治療薬の研究開発も併せて進めているところです。実はエイズの症例2例で極めて激烈なエムポックスの患者様をセンター病院で治療しまして、残念ながら最初の症例は御逝去となりましたが、第2例は図でお示ししております試験管内でのデータなどを参考にしまして、救命し得まして、幸い快癒されているところです。同時に、今はテコビリマットという薬剤しか効果がないということから、更に新規の新しい治療薬の開発を続けているところです。
これも同様に右下のほうに結晶解析のデータがありますが、こうした構造に基づいた新薬の開発の努力を続けているところです。
最後に、9件目となりますが、15ページを御覧ください。糖尿病ではサルコペニア、サルコペニアは右下のほうに説明していますが、加齢などで筋肉量が減少して、筋力や身体機能が低下する状態が良く見られまして、こうしたサルコペニアに対する対応も進めているところです。ある遺伝子部分に関連する抑制剤がサルコペニアの予防・治療になり得ると示唆されるデータを発表したところでして、このような代謝性の疾患についても、新たな治療法の開発を進めております。以上でございます。
○土岐部会長
ありがとうございました。ただいま御説明がありました事項について御意見、御質問等がございましたら、委員の先生方から挙手をよろしくお願いしたいと思います。中野委員、どうぞ。
○中野委員
中野でございます。今回も素晴らしい研究の御成果を御発表くださいまして、ありがとうございました。感染症はもちろん、他の分野にも広くコミットしておられて、非常に感銘を受けました。教えていただきたいことですが、今回の評価でも、B型肝炎治療薬というのは既に国際特許申請を完了して、製薬企業への導出なども進めておられるということで、臨床応用が期待できるわけでございますが、今回御報告いただいたHIV治療薬のイスラトラビルのほうは、核移行シグナルを阻害するということで、新たな機序で、こちらも非常に新規の抗ウイルス薬として期待が持てると思うのです。こちらの臨床応用という観点からは、もちろん、すぐにはなかなか難しいと思うのですが、どれぐらいの年数を見込んでおられるかというのを1点教えていただきたいと思います。
もう1つは、血球自動分析装置を用いたマラリアの診断です。フローサイトメトリーによるマラリアの診断です。私の理解によれば、恐らくフローサイトメトリーで診断するスキルは、機械自体も以前からあったわけでしょうけれども、それをしっかりと臨床的にどのように使えるかと医師主導治験で実現されたことが、やはり成果と言えると思うのです。このフローサイトメトリーの機械を持っておられる医療機関は国内でも非常に多い、ただ、国内の全ての医療機関でマラリアがすぐに診断できるわけではないというのがきっと現状、残念ながら現状ではと思っておりますので、1-1のテーマとは異なりますけれども、臨床現場への普及とか均てん化とか、そういったことも何か計画しておられるのか御教授ください。以上です。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
第1点目ですが、いずれの薬物候補にしても、これは今のところ、御存じと思いますが、特許を申請した日からその特許は20年で効力を喪失することになります。このイスラトラビルも長いこと時間が掛かりまして、実は来年、特許がエクスパイアするということで、これが早くFDAに認可されれば非常に喜ばしいところですけれども、そういったことで、かなり時間が掛かっております。先ほどの核内に移行するそういうシグナルをブロックするという特性も明らかにしたところではございますが、これもどれくらいの、いわば欧米のメガファーマでなければなかなか開発まで至らないという現状が私の個人的な経験ですが、今のところ、アメリカでもいろいろな会社にお願いをして御相談しているところです。
もう1つのマラリアについては、御指摘のように、これは日本のシスメックスという会社が開発している機器ですが、国際的な感染症への対応がNCGMの一つの任務でありますことから、アジア地域でのマラリアを撲滅する努力を払っております。そうした一環として、特にラオスや東南アジアの国との共同研究で、医師主導試験でこれが有用であることを証明しております。また、それと同時に、PCRを使った方法も併せて診断の確立、つまり、マラリア原虫がなかなか見付からなくてもマラリアに感染している方々を捕捉する形の取組を続けておりますから、かなり大きなインパクトをアジア諸国にもたらすものと期待しております。
○中野委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
続きまして、深見委員、どうぞ。
○深見委員
深見です。先ほどの御質問ともちょっとかぶるところがあるのですが、新規エイズ治療薬について、ゲームチェンジャーになるほど非常に期待された薬剤であるということなのですが、ゲームチェンジャーになるほどということは、核内移行を止めるメカニズムという意味ですごく画期的なことなのか、それとも、副作用が非常に従来のものに比べて少ないというお話でしたけれども、何が既存薬に比べてゲームチェンジャーになり得るほどの評価なのかという点をお伺いしたいと思います。
それから、先ほど来年に特許が切れることを伺って大変心配しているのですが、開発が早くできなかったのは、何が問題だったのかを教えていただければと思います。以上です。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
ありがとうございます。ここの(1)、6件のうちの最初ですが、このイスラトラビルというのは、ちょっと専門的になりますが、実はフッ素を配位しております。一番左の図を見ていただきますと、赤でフッ素を示しております。フッ素というのは、細胞内に入りやすくなるのと、それから化学的な安定性が非常に高くなるということで、患者さんに投与いたしましても、すぐに分解されない。結果的にイスラトラビルの投与は1週間に1度で十分だとのデータがあります。現在用いられております内服薬ですと毎日の投与が必要とされておりますから、そうした意味では患者さんでのQOLがかなり改善するだろうと見込まれて、そうしたことからメルク社が開発に乗り出したという経緯がございます。
それから、核移行シグナルのブロックは、実はこのイスラトラビルではございませんで、もう1つの新しい薬剤でございまして、これについては非常に強い抗ウイルス活性を持っているところですけれども、まだ人体への投与は進んでおりません。このような候補薬が最終的にFDAに認可されるまでに、やはり短くとも10年あるいは15年かかります。このイスラトラビルは来年その特許がエクスパイアすると申し上げましたけれども、そうした非常に長い期間が必要だというのは、我々も困ったことだと思っています。このイスラトラビルについては、特に思ったよりも非常に強い抗ウイルス効果がある一方で副作用も出たことから、用量の調節が必要となった。そうすると、それだけでやり直しで2年くらい先に延びてしまいます。そういったことで、時間が非常に長く掛かるということがございます。また、候補薬を同定してもすぐに導出できるわけではございませんで、イスラトラビルの場合も、我々が最初にそれを同定しまして、特許を得てからメルク社に導出するまでに6、7年くらい掛かっております。ですから、もっと早く進めたいところですが思うに任せないところがあるというのが、残念ながら現況でございます。
○深見委員
分かりました。メカニズムについては、逆転写酵素の阻害剤ということになるのですか。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
そうです。
○深見委員
従来のものと同じだということですね。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
従来のものとは異なったメカニズム、実はAZTとかそういった逆転写酵素阻害剤とは異なったメカニズムでウイルスを強力にブロックしますので、そうしたことから、これまで例えばAZTに対する強度の耐性を有しているウイルスにも極めて高い抗ウイルス効果を発揮するのが、この新しいイスラトラビルでございます。
○深見委員
分かりました。ありがとうございました。
○国立国際医療研究センター満屋研究所長
ありがとうございます。
○土岐部会長
少し時間が過ぎましたので、御質問は省略して次に移ります。申し訳ございません。
続いて、評価項目1-1のうち医療研究連携推進本部について議論いたします。先ほどと同様の流れで、まず法人から御説明いただきます。JHについては、令和5年度実績評価については6NC共通の事項となっておりますので、本事項に限り、年度評価と見込評価の御説明を分けて実施いたします。それでは、まず先に令和5年度の実績評価の御説明をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
JH本部長の植木です。14ページを御覧ください。JHは、2020年に発足いたしました。1ポツにありますように、6NCからのクロスアポイントメントで、現在30名の職員がその組織内に従事をしております。右下にありますように、データ基盤課、共同研究課、知財・法務課、広報課、人材育成課に配備されており、JHの事業計画に基づき6NCの理事長会議の下で事業を推進しております。また、令和7年度から事業が開始されます全ゲノム解析等事業実施準備室が同じくJH内に組織されており、その準備を進めているところです。
2ポツにありますようなミッションの達成のために活動をしておりますが、個々の取組については15ページ以降で説明をいたします。15ページを御覧ください。事業計画にあります(1)から(3)について説明いたします。まず、(1)新たなニーズに対応した研究開発機能を支援・強化については、横断的研究推進課題によってサポートされております幾つかの研究がありますが、その中で疾患横断的コホート研究情報基盤の整備に基づく「健康寿命延伸のための提言」、これは2020年に第一次が発出されておりますが、その第二次の発出の準備を進めているところです。また、後ほど詳しく説明いたしますが、ナショナルセンターの職員を対象とした職域コホートを整備し、新型コロナウイルス感染症の罹患率及び実態の多施設共同研究や、ワクチンの抗体価に関する分析を行っているところです。また、6NCは各々異なる電子カルテを用いておりますが、SS-MIX2を介した統合したフォーマットでデータを収集する6NC統合電子カルテデータベース(6NC-EHRs)を整備しており、2022年度の69万人から、昨年度は82万人まで登録症例数が増加しており、この利活用のための7つの研究も開始しております。
また、これも横断的研究推進課題でもともとスタートしたものですが、現在、網羅的発現解析に空間的情報を加味することの有用性が言われており、各NCで研究している疾患動物モデルや、臨床検体についてVisiumを用いた空間情報を保持した1細胞レベルの網羅的発言解析サービスを事業化して行っているところです。また、各NCで特に人材が不足しているという要望がありました若手の生物統計家の連携育成パイロット事業を通じて、昨年度2名の若手の生物統計家が実務試験統計家認定資格を取得し、各NCに戻って実務の従事を開始したところです。また、「6NC共通プラットフォーム」において、各NCが保持している教育コンテンツ等をアップし、e-learningによる教育を行っているところです。
(2)6NC連携で効果的な研究開発が期待される領域の取組を支援・強化については、2022年度までに採択した横断的研究推進課題8課題について、外部評価委員からの評価も含めた進捗の管理を行っているところです。また、令和6年度に開始する10課題を採択いたしました。若手の研究についても引き続き支援を行っており、24課題の進捗管理と、今年度開始予定の12課題も採択をいたしました。
先ほど申し上げましたように、JHは2020年度から発足しておりますが、発足から昨年度までで厚労科研、AMED、文部科研、外部財団等の外部資金を総計57件、総額53億782万4,000円を獲得するに至っております。また、英文論文についても、合計で136報の英文を発表しております。今は電子出版が主なので年度で分けるのが少し難しく年単位での集計となりますが、昨年1~12月の期間で67報の英文論文を発表しております。また、先ほど申し上げました全ゲノム解析等事業実施準備室においては、この6つのチームが発足しており、事業の実施の準備を進めているところです。
(3)6NC全体として研究成果の実臨床への展開を支援・強化については、先ほど申し上げました知財・法務課が知財・法務に関する各NCからの相談に応じており、また著作権等の必要な知識について、e-learningのコンテンツを作成し、公開しているところです。また、JHが支援する研究課題・概要について、英語版も含めてWebページを充実させております。さらに、昨年は第31回日本医学会総会において、初めて6NCのリトリートを開催いたしました。
次のページを御覧ください。16ページの左側は、6NC-EHRsの概要を図示したものです。左下の図にありますように、各NCが違う電子カルテを用いておりますが、それを統一フォーマットで集積をしているところです。右側が、主に人材育成課が行っている事業です。例えば、右下の表にありますように、これまでばらばらに行っておりました動物実験の倫理研修、あるいは知財のセミナーなどを共通化して、ICRweb上に公開してe-learningを共通化したところです。さらに、先ほど申し上げましたように、生物統計家のOJTを引き続き行っているところです。
次のページです。横断的研究推進課題では、様々な基盤的な研究について支援を行っているところです。その一例として、iPS細胞などを用いたオルガノイド、あるいはミニ臓器の作製の支援を行っており、各NCが対象としている疾患について、これらを用いた研究基盤の整備を行っているところです。(4)は、先ほど申し上げました令和5年4月22日に開催された6NCリトリートの様子を掲載しております。131題のポスターが発表され、400名が参加をいたしました。また、各NCの優秀演題についても、下にあるような表彰をしたところです。後ほど報告いたしますが、今年度からは各NC持ち回りでリトリートを継続しているところです。
次のページです。(5)は、知財・法務課で取り組んでいる知財相談、あるいは教育コンテンツに関する内容を記載しております。また、(6)については、全ゲノムの解析等事業実施準備室について、その組織図を下の図で、6つのチームが発足しているという状況を説明したものです。
19ページ以降は、発足以降の様々な指標をグラフ化したものですが、左上が6NC-EHRsの登録症例数、右上がWebページのアクセス件数、そして左下が教育コンテンツの総視聴者数です。右下は、バーの高さが各年度における論文数、オレンジ色の折れ線が各年度における論文の総インパクトファクターになります。
最後のページに、これまでの各年度における外部資金の獲得状況を示しております。以上です。
○土岐部会長
ただいまの御説明に御質問等はありますか。よろしいですか。前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村です。6NCが一緒になって、いろいろな成果が出ていることが分かりました。16ページの電子カルテ統合データベースについて質問いたします。いろいろなベンダーの電子カルテからデータが取れるというのは、自動的にデータが入ってくるのでしょうか。それとも、何か打ち込まなければいけないのでしょうか。もし自動的に入るのであれば、最初は顕名でデータが入ってきて、その後匿名化して、いろいろな解析をするという流れになるのでしょうか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
これで集めているのは、患者さんの基本情報、処方データ、検査データになりますので、それらの情報は自動的にSS-MIX2の中に入ってまいりますので、特に医療従事者や研究者が何らかの操作をする必要はありません。先生がおっしゃるように、各施設では匿名化されておりませんが、MCDRSというリポジトリ・システムで匿名化された上で、統合データベースである6NC-EHRsに入ってきますので、最終的なデータベースは匿名化をされております。
○前村委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
ほかはよろしいでしょうか。花井委員、どうぞ。
○花井委員
御説明ありがとうございます。この統合データベースを1回匿名化しているということで、活用するときには完全に匿名化されたデータベースとして、属性とか、例えば、こういうがんの患者さんとか、こういう疾病とか、こういう投薬をしているというので、コホートを呼び出せるということですか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
はい。匿名化されておりますが、固有の番号が付いていて、病名、その他全部結び付いておりますので、そういうソートは可能です。
○花井委員
なるほど。1回もう匿名化されたものは、各施設においては、臨床研究に使ったか、使わないかというのは、患者の同意などは必要ないということですよね。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
今のところは、オプトアウトでやっております。
○花井委員
オプトアウトですよね。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
はい。
○花井委員
オプトインになる可能性は、この場合はないのですか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
丁寧なオプトアウトで今後対応するべきではないかという議論はあり、その方向でいく可能性はあります。ただ、最初に倫理審査を通したときにはオプトアウトでよいということで、研究を進めております。
○花井委員
例えば、このデータベースを利用して開発したいということが出てきますよね。後から特定臨床研究をしてみたいと。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
はい。
○花井委員
そのときは、別途それをオプトインでやっていくときに、例えばEHRsのリクルートしたい被験者の患者さんがこれだけ見付かりましたと。そうすると、それを各施設に返してオプトインのインフォームドコンセントを受ける必要があると思うのですが、現行のシステムでそういうことが可能なのですか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
現在のところはそうではないのですが、今なぜそうではないかと言いますと、今のところはこれを集めてデータのクレンジングを行っております。やはり、個々の施設ではローカルコードを使っておりますので、それを標準コードに直して使えるようにしております。実際にそれがどの程度きれいになって使えるのかという研究を、今しております。
そして、次の段階としては、NCの中でまず使ってみて、あるいは外部からの研究、製薬企業がこういうことをしたいという場合にも、まずは共同研究ベースでやって、それがうまくいくという段階になったら、先生がおっしゃるような解放のステップを考えております。その際に、オプトインで、あるいは丁寧なオプトアウトで取り直すことを考えております。
○花井委員
参考までに、現在のデータベースのシステムでPMSの利用というのは、可能なクオリティーが確保されているのですか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
MID-NETでも同様にSS-MIX2を用いたデータ収集を行っており、6NC-EHRsもPMSに耐えるクオリティーを確保していると思います。
○花井委員
ありがとうございました。
○土岐部会長
深見委員、どうぞ。
○深見委員
20ページなのですが、データの読み方が分からないです。令和5年度にすごく急速に伸びているのですが、これが意味するところは何なのでしょうか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
これは、これまでJHが横断的研究推進課題や若手研究課題で支援したものを基にして外部資金を獲得したものを総計しております。昨年度は、1課題非常に大きな20億円以上のグラントを取った方がいらっしゃいまして、総額が非常に多くなっております。ただし、御覧になっていただければ分かると思いますが、緑色の線が件数になりまして、こちらも年々伸びてきております。
○深見委員
分かりました。では、これはお一人の方の寄与が大きかったという。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
この桁が1つ違っているのは、そういう理解で結構です。
○深見委員
10件から26件というのは、実質的に堅実に動いているということでしょうか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
はい、おっしゃるとおりです。
○深見委員
はい、分かりました。
○土岐部会長
藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
藤川です。15ページの若手生物統計家NC連携育成パイロット事業について伺います。これは、パイロット事業と書いてあって、どういう趣旨かが分からないところもあるのですが、なるべくNC共通でこういう方を育てていく、自分の所だけではなくて、ほかにも触れながら。あとは、育成するときの効率性のようなものもあると思いますし、一緒に育てていくほうがいいのかと思うのですが、育てた方は元に戻って、うまくいったらそれぞれのセンターでやはり育成をやっていくのか、それとも、こういう事業は継続的に一緒に育てていくというような思考なのか、どうなのかを教えていただけますか。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
ありがとうございます。これについては、様々な研究に必要な人材が、各NCで豊富にリソースを持っておられるNCと、そうではない所があるというのを、まず調査いたしました。その中で、生物統計家が最も需要がありました。そこで、NCCが最もリソースを持っておられるということで、ほかの2つのNCからNCCにOJTで2年間実際に行っていただいて、この資格を取るに至ったということで、今年度も引き続いて、パイロットと名前が付いておりますが、需要がある限りはこれを続けていきたいと思っております。現在、他の職種、具体的にはバイオインフォマティシャンに関しても、同じような育成事業を企画しております。
○藤川委員
ありがとうございます。こういう方々の待遇というか、処遇というか、そういうところもとても大事なのかと思いますので、研修の充実、育成の充実と待遇の充実をお願いしたいと思います。ありがとうございます。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
ありがとうございます。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。それでは、お時間となりましたので次に移ります。
続いて、見込評価です。こちらは、国立国際医療研究センターの見込評価のみに関する審議となりますので、委員については御留意ください。それでは、まず説明をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター植木医療研究連携推進本部長
資料1-6の17ページ以降を御覧ください。17ページは、先ほどの令和5年度と同じです。18ページは、左側は先ほど説明いたしましたVisiumを用いた空間情報1細胞の解析のサービスの内容を書いております。右側については、コロナのパンデミック当初からウイルスの抗体キットをシスメック社とともにJHの支援の下で開発しておりますが、そのキットも用いて、既存のキットと併せて、先ほど説明いたしました職員のコホートにおいて、ウイルスの抗体価、感染とワクチンによる抗体を2つに分けてフォローアップしております。グラフで示しましたのは、ワクチンの抗体価に及ぼす影響について、幾つかパブリケーションを行っております。例えば喫煙、あるいは飲酒、男性においては肥満が、ワクチンの抗体価の上昇の阻害因子であったということを発表しております。
次のページを御覧ください。19ページの左側は同じですが、右側は、先ほど申し上げましたように、今年度からはリトリートについて各NC持ち回りで実施しており、今年度はNCGMがホストNCとなり4月13日に開催し、179題のポスターが発表されて、320名が参加いたしました。
最後のページです。今年度はまだ途中ですので、外部資金の獲得も今後さらに伸びると思いますが、今年度も大型予算を獲得した方がいらっしゃり、20億円以上を獲得している状況です。以上です。
○土岐部会長
こちらはよろしいですか。ありがとうございます。JHについては以上です。
NCGMに戻ります。続いて、「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-2に関わる実績評価について議論いたします。先ほどと同様の流れで、まずは法人から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
それでは、臨床研究センター長を務めております杉浦と言いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。それでは21ページを御覧ください。1-2の項目としては、こちらに示しているように全部で8つの目標を立てております。そして、令和5年度は自己評価をSとさせていただいております。その根拠は22ページを御覧ください。まず、指標の達成状況ですけれども、ここに8つほど項目がありますが、最初のFirst in human試験実施件数というものが達成できなかった以外は、全て目標値を達成しております。また、First in humanに関しては23ページのほうに達成状況の説明があります。ここに書いてあるように、今年度は達成できておりませんけれども、現在、NCGMの研究者が開発した候補薬剤について、来年度上半期のFirst patient inを目指して準備をしているところです。
また、24ページを見ていただきまして、Sの評定の根拠ですけれども、3つ挙げさせていただいております。まず1番目として、国際臨床研究実施件数の大幅な達成に関してということで、これは数のみならず内容的にも、従来はどうしても体外診断薬の試験が多かったのですが、今年度は天然痘ワクチンをエムポックスの予防に使うという試験をコロンビアにおいて実施することができましたので、挙げさせていただいております。2番目の産学連携の強化に関しては、マッチングイベントを積極的に行っておりまして、実際に製品の上市を幾つかしているということで、挙げております。3番目として、新興・再興感染症の研究・開発を促進するためのリポジトリ、こちらのほうは始めて3年がたちますけれども、現在、非常に順調に進んでおりまして、利活用が進んでいることからも挙げさせていただきました。また、この基盤整備の中では、後ほど述べますけれども、国内のネットワーク整備に取り組んでおりまして、そちらのほうも進んできているということで、この評定の根拠に挙げさせていただいております。
続いて、各項目について簡単に述べていきたいと思います。まず25ページです。臨床研究の中核的役割の実現ということで、こちらでは治験と医師主導、そしてネットワーキングということに取り組んでいます。治験実施数に関しては、昨年度は新規治験数が22、そして総治験数が108と、右の図1を見ていただきたいのですが、このように数としては順調に伸びてきています。その内容としては、感染症に関するもの、呼吸器のもの、あるいはそれ以外の疾患のものが増えてきているということです。また、医師主導治験の実施数に関しては、新規治験数が1件、総治験数が6件でした。なお、3年間を全体で見ると、また後ほど述べますが、全体で12件に取り組んでまいりました。これを支えてきたのが、図2に写真が載っておりますけれども、NCGMの感染症等学術支援会議、こういったものを私どもが開いておりまして、今までに71回開催をし、140件に上る臨床試験の研究活動について議論をしてまいりました。
続いて26ページ、ネットワーキングの話です。こちらでは、先ほど冒頭で國土理事長が少し触れましたけれども、GLIDEというものを作っております。このコンセプトとしては、2ポツ目にあるOne-stop solutionということで、ネットワークに参加をしている施設の中で様々なドキュメントを統一し、また、中央一括IRBを実現することによって、より患者の登録を容易にしようと、また、試験も速やかに進められるようにしようという取組です。また、この中では、マスタープロトコルであったり、最近話題になっております分散型の臨床試験などについても検討を進めてまいりました。
NCGMとしては、こういった研究の情報発信というものにも力を入れておりまして、『Global Health and Medicine』というNCGMが刊行している学術誌ですけれども、2023年度は6回刊行しまして、全部で64本の論文を掲載しております。また、こちらの雑誌は創刊4年目になるのですが、Impact Factorを付けていただいておりまして、創刊間もない雑誌としては非常に良い、2.6というImpact Factorを頂いております。
続いて27ページに移りまして、まず下のほうからいきたいと思います。臨床研究に関係しているものですから、私どもの所ではJCRACというデータセンターを持っておりまして、こちらのほうでは様々な医師主導治験、特定臨床研究のデータマネジメントをやっております。また、単に今言いました特定臨床研究などではなく、治験にも対応するような独自のEDCを作っておりまして、現在、1つの製薬企業様のほうから依頼を頂いているところです。先ほど評定の根拠にも入れましたREBIND、バイオバンクデータ事業ですけれども、こちらのほうも順調に進んでおりまして、現在、全国35の医療機関が参加されておりまして、約6,500人の方のサンプルが収納されております。また、利活用のほうも進んでおりまして、図6の左を見ていただきたいのですが、現在、33件の利活用が進められております。まだ始めたばかりですので、成果というものは目に見える形では出てきておりませんけれども、利活用の数はどんどん増えているところです。
次に28ページに移ります。私どもの所では、クリニカル・イノベーション・ネットワークということに取り組んでおります。これは何かと言いますと、医師や研究者が作ったレジストリを創薬研究に利活用するというコンセプトで進めているものです。こちらでは、図8を見ていただきたいのですが、現在、772件のレジストリに関して取りまとめておりまして、カタログ化しているのですけれども、それを研究者の方が御覧になって、利活用の希望があれば、それをつないでいくと、このようなことをやっております。現在までに63件の利活用支援をやっておりまして、また、この活動を支える1つの手法として、レジストリフォーラムというものを開いています。現在までに5回開いておりますが、ここに示すように、企業のほうから大変高い関心を持っていただいております。
次に、国際臨床研究・治療ネットワークの拡充です。後ほど中長期のほうでお話しますが、私どもはアジアの国々とARISEというネットワークを組んでおりまして、そちらのほうで活動するとともに、令和5年度は、こちらに書いてあるように、コロンビアのほうでエムポックスワクチンの臨床試験を実施しました。図9は試験が終わったときに現地の先生方と高杉優弘駐コロンビア日本大使を招いたセレモニーの写真になります。
続いて29ページです。産学連携、これは先ほど評定の根拠の1つに挙げさせていただいたものですけれども、私どもでは、Medical Innovation by NCGM and Commonsということで、MINCの会というものを開催しておりまして、令和5年度は4回やっております。その成果としては、図10に示すように、現場の医師のニーズに合わせて製品を開発しているということで、このようなものを開発し、上市をしております。
また、知的財産の管理及び活用推進ですけれども、令和5年度は国内出願としては新たに10件、国際出願としては1件出しております。図11には累積の特許件数が出ておりますけれども、このように、これは累積なのですけれども、2023年の時点で120件に上る特許を保有しているということになります。
続いて30ページに移って、生活習慣病の予防と治療です。私どものセンターではAIを使った糖尿病の予測ツールの開発を行っており、全国多数の自治体で啓発事業として活用されております。また、職員の健康管理の一環として、NCGMの職員の新型コロナ抗体調査をやっております。図13を見ていただきたいのですが、2023年の時点では9回やっておりまして、赤字で示したように、職員の70.5%が既に新型コロナに感染していることが明らかになりました。なお、10回目を6月に実施しておりまして、その結果、80%を超える方が既に感染していることが分かっております。
昨今、やはり研究における様々な不適合などが起きておりますけれども、私どものセンターでは、その辺りにも力を入れて倫理的に正しい在り方、あるいは透明性の確保をしていくということで、令和5年度は17回の講習会をやっております。また、若手研究者に対する教育ということで、14回研修会などをやっております。この図14の右下のグラフですが、これは何かと言うと、私どもの所では臨床研究に関心がある先生方の相談を受け付けておりまして、これは累積になるのですが、このような形で非常に多くの先生方にそれを活用していただいております。これは、NCGMの医師が臨床研究に関心を示している1つの証拠ではないかと思っております。
31ページに移ります。今まで述べてきておりましたGLIDE、REBIND、ARISEというものについて、統合した臨床試験ネットワーク構築をやっております。これは、平時のうちに準備をして次の有事に備えるということで、目標としては、RECOVERY試験であったり、ACTT試験を目指しているということになります。
続いて中長期のほうに移ります。追加でお話することとしては、26ページを見ていただきたいのですが、こちらに先ほど少し触れましたARISEの詳細が書いてあります。このように今までは診断薬を中心に活動しておりましたが、先ほども言ったように、令和5年度はワクチンの試験を実施することができたと、そのようになっております。私のほうからは以上です。どうもありがとうございました。
○土岐部会長
ありがとうございます。ただいまの御説明に対して御意見、御質問等はありますでしょうか。中野委員、どうぞ。
○中野委員
中野でございます。今年度の評価の24ページでちょっと教えていただきたいのですけれども、我が国の天然痘ワクチン、LC16m8株だと思うのですけれども、それを用いて海外で国際臨床研究を実施していただいたというのは素晴らしい成果だと思います。ありがとうございます。それに関して教えていただきたいのが、個々に無償供与に伴う臨床試験の支援ということで記載していただいています。無償供与に伴うということであると、例えば外務省とかJICAとの調整とか、いろいろな何か立て付けに御苦労があったのかなと推測するのですが、これはどのような形で展開されたのでしょうか。以上です。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
どうもありがとうございます。基本的には厚生労働省の国際課のほうが中心となって進めていったことなのですけれども、今、御指摘があったように、現地の日本大使館を含め、いろいろなご支援を頂いております。現在も試験は進行しているのですけれども、最も苦労しているのは、この試験に伴う機材等の輸出、そこのところが非常に難しく、関係機関のいろいろなご支援を受けているところです。以上です。
○中野委員
ありがとうございます。国内開発のワクチンを持っている国がそんなに多くないので、是非、良い成果が上がることを期待しております。ありがとうございます。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
ありがとうございます。
○土岐部会長
前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村でございます。30ページの糖尿病予測ツールのことについてお伺いしたいと思います。健診データで糖尿病のリスクが分かると、早く介入できて予防ができて素晴らしいかと思うのですけれども、この予測ツールの感度とか特異度はどれぐらいあるかということと、実際にどれぐらい全国の自治体でこれが使われているかというのは、いかがでしょうか。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
ありがとうございます。まず、感度と特異度に関しては、申し訳ございません、あくまでもこれは診断ツールではありませんので、そのような情報は持ち合わせておりません。あと、多数の自治体ということに関しては、今具体的な数字は手持ちがないので、また調べて回答させるということでよろしいでしょうか。
○前村委員
はい、分かりました。
○土岐部会長
私のほうから1点、バンキングのことと、それに絡めて臨床研究のことなのですけれども、コロナのときにもバンキングとかオールジャパンでの臨床試験、臨床研究というのが、スムーズにいったのかもしれませんけれども、最初の頃は結構時間も掛かったと思います。例えば、先ほどバンキング35施設といった所でやっておられるということでしたけれども、こういったものを中心に、感染症に対する研究グループというか、臨床研究も含めてそういうのを推進するという、例えばNCCで言えばJCOGのような、そういうチームというのは感染症に関してはできているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
パンデミックの当初はもちろんそういうものがなくて、それで先ほど述べたGLIDEという国内ネットワークの構築に着手したわけです。今は更にそれを発展させて、先ほども御説明したように、単に臨床試験ではなくて、それをサンプリングしたものを利活用につないでいく。また、国内だけではなく海外へも展開をしていくということで、どうしても国内だけでは患者の登録が進まない可能性もありますので、その場合にはARISEなどの海外ネットワークも使って展開をしていくというようなコンセプトで再構築をしているところです。
○土岐部会長
ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
続きまして、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」の評価項目につきまして、1-3から1-7について議論したいと思います。それでは、先ほどと同様に、まずは法人のほうから説明をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター宮嵜センター病院長
センター病院長の宮嵜と申します。よろしくお願いいたします。まず、令和5年度の32ページから始めさせていただきます。自己評価Sとさせていただいております。
続きまして33ページ、指標の達成状況でございますが、このページに関しましては、おおむね100%の達成度としております。
次に34ページにまいります。その他の指標ですけれども、入院患者に関する指標に関しましては、おおむね達成度は90%前後となっておりまして、その他のものに関しましては、おおよそ100%前後となっているかと思います。
次にまいりまして35ページ、Ⅲの評定の根拠です。感染症への対応に関しましては、この後、エムポックスに対する対応について御説明いたします。救急医療の提供に関しましては、救急及び災害への対応について、この後、御説明いたします。高度・専門的な医療の提供に関しましては、幾つか外科系の例を、この後、説明させていただきます。
それでは36ページにまいります。感染症エムポックスへの対応なのですけれども、国内の医療機関としては、多くの患者さんに対して診療を実施いたしました。また、多施設の共同研究といたしまして、患者さんに治療薬の投与を行っております。さらには、エムポックス患者さんとの曝露後14日以内であれば、ワクチンの接種が発生の予防あるいは重症化予防に有効であるという観点から、当院が実施する臨床研究といたしまして、15名の濃厚接触者の方に曝露後の予防接種を実施いたしました。それらの患者さんの検体を利用いたしまして、体外診断用の医薬品の開発に協力いたしまして、それは無事に製造販売承認を得ております。今後、もし国内で流行するようなことがあれば、対応可能かと思われます。
次にまいりまして37ページ、高度・専門的な医療の提供です。まず1個目が、外科の腹膜偽粘液腫に対する手術です。この病気は、虫垂の腫瘍が破裂して、腫瘍細胞が腹腔内にまかれますと、そこからゼリー状の物質が出て、右の写真にあるように、腹腔内に貯留してしまうという病気なのですけれども、この病気に対して治療あるいは手術を行っている、我が国で極めて限られた施設の1つでありまして、当院といたしましては、総合病院としての特性をいかして、安全に治療・手術を行うことが可能となっております。全国から患者さんが集まっておりまして、昨年度はセカンドオピニオンが150件、手術件数が159件と、多くの患者さんに治療を提供いたしました。
次の顎顔面の血管腫です。これは歯科口腔外科なのですが、右の写真にございますような血管の塊といいますか、血管奇形に対しましてレーザー治療を行っております。こちらに関しましても、我が国で極めて限られた施設でのみ実施されている治療でありまして、昨年度は64例の手術を実施しておりまして、全国から患者が来院されていると、そういう状況でございます。
次の38ページにまいります。これは形成外科なのですが、スーパーマイクロサージャリー、0.5mm以下の血管やリンパ管を吻合するという、そういう技術なのですけれども、それを使うことによって様々な全身の組織欠損や機能障害を再建することができると、そういう技術でございます。日本初の技術でありまして、こちらの形成外科の医師が、下に写真が3つほどありますけれども、世界各地で手術指導を行ったり、逆に外国からも積極的に医師を受け入れて指導しております。右の上には、その技術についてNHKで取り上げていただいた写真が載っております。
次にまいります。39ページ、災害への対応でございますが、今年元旦に起きました能登半島の地震におきまして、当センターといたしましては医療従事者を派遣しております。具体的に申しますと、1月4日、割と早期から、現地での感染対策ということで、10名の医師、薬剤師などが派遣されました。また、DMATを1チーム派遣したのと、珠洲市総合病院での看護業務支援ということで、3チーム、計15名の看護師を派遣しております。
次にまいりまして40ページ、救急医療の提供です。センター病院に関して述べますと、救急搬送件数は都内でもトップクラスとなる1万件超えでありまして、その中でも最も重症である三次救急につきましては、都内で最多の搬送件数でありまして、目標を上回っております。また、救急応需率に関して、コロナ禍の間は目標値を達成することがやや困難ではあったのですけれども、昨年度は91.1%で目標を上回りました。また、全国救命救急センター充実段階評価で、S評価を維持しております。
この後は、国府台病院について御報告いたします。
○国立国際医療研究センター青柳国府台病院長
続きまして、国府台病院について御説明させていただきます。院長の青柳です。どうぞよろしくお願いいたします。
40ページの中段を御覧ください。国府台病院では、精神科救急入院病棟において、重症身体疾患を合併している患者さんの比率を15%以上とする目標を策定しております。重症身体疾患とは、それ単独でも入院が必要となる疾患でありまして、肺炎、骨折、がん、薬物中毒などであります。これらを合併する精神科救急患者に対応できる施設は限られておりますが、昨年度は、精神科救急病棟における重症身体疾患合併患者の比率は目標を上回る21.1%でありました。
次に41ページを御覧ください。摂食障害医療に関してです。当院は、千葉県の摂食障害支援拠点病院になっております。右のグラフは、DPCデータに基づいた全国の摂食障害入院患者数の上位施設の年次推移を表しておりますが、こちらでお示ししましたように、摂食障害に関しましては全国一多い入院患者数を維持しております。また、「摂食障害支援ほっとライン」の開設、それとSNS等による情報発信にも力を入れておりまして、摂食障害診療の啓蒙にも注力をしているところであります。
続きまして42ページを御覧ください。肝炎医療への取組に関してですが、昨年度は、肝炎情報センターを中心としまして、全国の肝疾患診療連携拠点病院に各指標の達成状況の6回目の調査を実施いたしました。課題の抽出と改善に向けた取組を行いました。これらの指標には32の項目がありますが、今回の調査では、全ての指標値が目標であります80%を超えた達成率となりました。これにより、肝炎診療の均てん化が進んでいることが確認されました。また、これらの結果を「肝炎総合政策に係る指標報告書」に取りまとめまして、各拠点病院、都道府県、あるいは保健所設置市等に配布しまして、肝炎医療の事業改善に向けた提言を行いました。私のほうからは以上です。
○国立国際医療研究センター宮嵜センター病院長
続きまして、中長期のほうに移らせていただきます。中長期のほうの28ページから始めます。自己評価はSとさせていただいております。
次にまいりまして、29ページです。救急搬送患者の応需率、一番上の段が右肩上がりで、今回、目標を達成した以外は、大体横ばいになっているかと思います。
次にまいりまして、30ページは、先ほど申しました入院患者のことぐらいで、あとは横ばいだと思いますので、割愛させていただきます。
31ページにまいります。評定の根拠ですけれども、感染症への対応は、この後で御説明します。救急医療に関しても、次で御説明します。高度・専門的な医療の提供に関しましては、先ほど令和5年度で報告済みということで割愛させていただきます。
次、32ページをお願いいたします。救急医療の提供ですけれども、先ほど述べましたように、救急応需率が目標を達成したのと、コロナ禍、令和3年以降ですが、毎年1万台以上の救急搬送を受けております。また、厚労省の全国救命救急センター充実段階評価で連続してS評価を頂いております。
次の33ページ、COVID-19への対応でございます。先ほども少しありましたけれども、患者の受入れ等に関しましては、最大79床の病床を確保しておりまして、1,961名の患者の受入れを行っております。ピークのときには、右下の写真にありますように、救急センターの前に最大6台の救急車が並んだような状態で、この救急車内で待機していただいて、その中でPCR検査であったり、簡易患者診察を行うと、そういう状況が1か月ほど続きました。さらには、COVID-19陽性の方で、例えば帝王切開であったり、腹部手術や骨折であったり、どうしても手術が必要な場合がございまして、それに関しては、感染対策を十分に行った上で、これまで通算81件の手術を実施しております。私からは以上です。ありがとうございました。
○国立国際医療研究センター武井企画戦略局長
続きまして、評価項目1-4について説明をさせていただきます。企画戦略局長の武井から報告いたします。ページを見ていただきますと、全体が43ページになります。今回の評価に関しましては、自己評価Aとさせていただいています。
内容ですけれども、まず(1)としまして、リーダーとして活躍できる人材の育成ということで、センターが担う疾患の医療・研究を推進する人材育成を進めているところでございます。併せて、(2)となりますけれども、モデル的研修・講習の実施ということで、高度かつ専門的な医療技術や国際保健医療施策を推進する国内外のリーダーを育成しているところでございます。
指標の達成状況ですけれども、医療従事者向け各種研修会について、これはコロナで一旦は下がっておりましたけれども、昨年度が実績52回で、2023年が60回ということで上昇傾向にございます。また、児童精神科医療スタッフを育成するための研修会ですが、年3回以上ということで、こちらは100%の達成率になっております。
次の44ページを御覧ください。人材育成に関する事項、評定の根拠ということで、まず一番上にあります感染症危機管理における人材育成及び研修資材の作成ですけれども、今後、ポストコロナを見据えて、地域でリーダーシップを発揮できる人材の育成を行っているところでございます。こうした育成を通じて、都道府県、自治体における人材育成の支援を行ってまいりたいと考えております。2つ目は、臨床研究に関する人材育成でございまして、先ほど説明がございましたARISEですとかPMDAと連携をした研修を行っております。そして、モデル的研修・講習の実施ということで、児童精神科医の育成として専門的な研修を行っていることに加えまして、メンタルヘルスに関する総説を国際雑誌などで発表しております。
次のページ、45ページを見ていただきたいと思います。こちらが研修の中の中心的な位置付けになりまして、JIHSが来年度設立されたときに、感染症の危機管理における人材育成を担う、そうした内容になっております。行政・政策・公衆衛生分野、それから感染症の危機管理における必要な専門的知識を育てていきます。まず18名の有識者からヒアリングを行いまして、習得すべきコンピテンシー、必要な能力とは何かということで、45ページ中ほどにございますけれども、必要な資質として、組織の戦略策定・意思決定、各種のコラボレーション、連携、チームエンゲージメントということで、チーム能力を発揮するセルフマネジメント、こうした資質を育成していくという観点から、座学のためのe-learningの資料を作成しました。それから、対面研修を行うためのプログラムも作成したところでございます。こうした教材を今後活用していくというところまで進んでまいりました。
続いて、次の46ページを御覧いただきますと、国際的な人材ということで、ウクライナの医療者教育支援事業を行っております。これは日本国政府のウクライナ復興支援の一環でございまして、2024年1月から2か月ごとにローテーションをしながら、研修生がNCGMのセンター病院で研修をしております。具体的には救急ですとか麻酔科の領域で研修を行っておりまして、これはウクライナ現地における戦争状態で非常にこうした診療科のニーズが高いということが背景にございます。
このページ、46ページの左下の所が、修了時の写真でございますけれども、研修生のほうからは、非常に日本での研修が役立ったと説明がありました。例えば硬膜外のブロックの麻酔でしたり、あとは、最新の技術ということでロボット手術、いわゆるダ・ヴィンチの研修などをしていただいたところでございます。
次を御覧いただきたいと思います。47ページになります。臨床研究に関する人材育成でございます。ARISE、PMDAの連携で、規制当局とのネットワーク形成などを学ぶということで、380名の参加がございました。日本薬理学会との共催セミナーでは、感染症の緊急事態に対応できる連携システムの構築ということで、120名の参加を得ております。また、ARISEのシンポジウムで、臨床試験の実施の仕方を学ぶなど、196名の参加を得ております。このほか、臨床研究や試験の専門家育成に関する研修への参加も進んでおりまして、国際臨床研究者の養成に努めております。
次のページ、48ページを御覧いただきたいと思います。研修会の開催、児童精神科医の育成ということで、今まで累積で56名に行ってまいりましたけれども、2023年度は3名。それから、研究人材の育成に関しては、学会への参加ですとか、原著論文9本、総説15本に加えて、日本児童青年精神医学会で若手スタッフが発表するなど、実践に取り組んでおります。この学会からは実践奨励賞を受賞しております。研修会の開催、ひきこもり対策、思春期精神保健研修などを行っておりまして、854名の参加に加えまして、「多職種連携を推進するためのマニュアル」なども策定しているところでございます。
見込評価を見ていただきたいと思います。資料1-6、34ページになります。同様に自己評価Aとなっておりまして、その内容ですとか達成状況も同様ですので割愛させていただきます。
最後のページ、新しい情報になりますので、38ページを御覧いただきたいと思います。評価項目1-4、センター病院における専門医育成という観点から研修を進めておりまして、総合病院機能をいかして、NCGMとしてあらゆる診療科に対応できると、そういった研修を行っております。先ほど出ました全国トップクラスの救急車受入病院である利点をいかして、診療科を問わず幅広い研修を行っているということで、日本専門医機構の基本領域においては、令和3年度から全ての基幹認証を取得しておりますし、これまで12分野での基幹施設として体制整備を行っております。内科系、外科系、それ以外も含めて、幅広い分野での研修を進めているところでございます。説明は以上となります。
○国立国際医療研究センター大曲国際感染症センター長
続けて、評価項目1-5にまいります。国際感染症センターの大曲と申します。医療政策の推進等に関する事項です。自己評価はSとしました。
中長期目標の内容は3点でして、国などへの政策提言、2点目が医療の均てん化と情報の収集及び発信、そして公衆衛生上の重大な危害への対応です。指標の達成状況ですが、ホームページのアクセス数が2023年度は78.7%、訓練は100%です。ホームページのアクセス数を要因分析に挙げています。こちらはCOVID-19の影響だと思いますが、令和元年度以降、ページビューが非常に上がり、3,000万を超えていたというところです。これを受けまして、一度目標を2,800万まで上げたところですけれども、それ以降、今年23年ですが、さすがにコロナが収まってきますと、ページビューが下がってきたのであろうと考えております。ですので、目標設定との乖離というところです。
それでは50ページを御覧ください。こちらに評定の根拠3点をお示ししております。順に申し上げます。1点目は、51ページにありますが、新型コロナウイルス罹患後症状への対応です。厚生労働行政推進調査事業があります。こちらに基づいて、令和4年度以降、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状等について調査を行っています。そして、その調査を踏まえて情報発信を行っています。具体的には感染症部会で報告がされていますし、こちらの情報は、厚労省の罹患後症状のマネジメント、これは指針ですが、こちらに反映されて使われています。
2点目が薬剤耐性菌への対応です。52ページです。私どもは、厚生労働省の「薬剤耐性に関する臨床情報センター事業」を受けております。これを受けて、手指衛生や抗菌薬の使用方法などの普及を目的として、一般市民を対象に調査をしておりますし、毎年11月には対策推進月間のキャンペーンを行っていまして、テレビのアニメキャラクターを使った資材の提供、あるいはパラパラ漫画といったものをSNSあるいは映画館での宣伝を行っております。また、これに加えて臨床情報を収集するプラットフォームを作っております。全国の病院、昨年度は3,000ですが今年は4,000近くまできていますけれども、参加していまして、AMRに関する情報を収集・共有しているところです。
3点目が新興感染症への対応です。まず、53ページですが、コロナウイルス感染症に関しては、診療指針の改訂に引き続き関わっております。また、下半分にエムポックスの対応がありまして、こちらも診療指針には委員を送り込んで対応しております。また、既にお話が出ましたテコビリマットを使った国際共同治験、あるいはLC16ワクチンを使いました国際共同治験等々がありますので、これらにも参加しているところです。
54ページにいきますと、新興感染症の1つでニパウイルス感染症があります。2023年にもバングラディシュ、インドでアウトブレイクがありました。日本は経験がないものですから、医師3名をインドに送りまして、実際に病院まで行って調査に当たらせました。その結果を、現在、診療指針ということでまとめております。
55ページに移りますと、またこれも新興感染症で、カンジダ・アウリスという菌があります。カビです。酵母様真菌です。海外では大流行して、病院内、高齢者施設等で問題になっていますが、国内でも1例目の死亡例が出ました。これを受けまして、英国、米国等で情報収集をするとともに、診療の手引きを作ったことと、感染研と協力して、サーベイランス体制に協力をしたところです。
それでは見込評価に移ります。資料1-6、39ページです。こちらも自己評価はSです。
目標内容等は割愛いたします。指標の達成状況に関しては、ホームページのアクセス数全体としては、これまでのところ98%、訓練の回数は200%となっています。要因としては、訓練ですが、回数が多くなった原因としては、やはり昨今の世情の変化というのは非常に大きいです。ですので、実際に訓練をやるにしても、我々単独ではなくて、保健所、東京都、あるいは検疫所等との一緒の訓練の機会も増えていまして、結果として訓練の回数が非常に増えたというところです。
次に40ページです。評定の根拠として3点挙げております。まずは新型コロナウイルス感染症の政策提言です。詳細は41ページになります。1つは、新型コロナの最中にも新たな株の感染症が発生すると、感染研と協力した緊急の疫学調査、FF100と言われるものですが、こうしたことを行い、その情報は社会に還元してきました。また、厚生労働省の感染症部会、あるいは東京都の新型コロナウイルス感染症のモニタリング会議に出てきまして、こちらに関しては意見を述べて政策提言をしたところです。また、COVID-19対応でのレジストリ、そして、REBINDでの通常運営経験を踏まえ、厚生労働省の委託事業である臨床研究ネットワークとかREBINDの構築を進めているところです。
2点目は、エムポックス関連の情報発信、42ページ目ですが、先ほど述べましたので割愛いたします。ただ、オリ・パラ対応をしたことを申し上げておきたいと思います。東京オリンピックの際には、組織委員会の本部での感染症対策センターの支援、あるいは選手村では選手は毎日PCR検査を受けていましたが、それを実際に行うのはNCGMからスタッフが派遣されて行ったということです。
また、これはページはありませんが、公衆衛生上の重大な危害への対応に関しては既に訓練を行ってきたことは申し上げましたし、PPEの訓練もスタッフを代えながら毎週行っております。ECMOでの治療といった重症感染症治療はもう必須ですが、NCGMでは、各診療科のスタッフを海外等に送って、チームを作って、ECMOとか血液浄化療法などに関しては定期的に訓練を行っているところです。私からは以上です。
○国立国際医療研究センター宮本国際医療協力局長
続きまして、グローバルヘルスに貢献する国際協力について、国際医療協力局の宮本から説明させていただきます。資料1-2の57ページをお願いいたします。自己評価はSとしております。
中長期目標の内容ですけれども、まず、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成と、健康格差縮小のための技術協力活動の総合的な展開を行うとされています。そして、政策提言、実践的エビデンスの創出、医療技術、医療機器、医療制度の国際展開、国際保健政策人材の育成と国際機関への送り出し、国際的な公衆衛生上の危機への対応などが求められています。
58ページをお願いいたします。指標の達成状況ですが、専門家の派遣と海外の人材受入れ、主に研修ですけれども、その人数が目標となっています。専門家の派遣については、インドネシアとカンボジアにおいて新しいプロジェクトが開始され、達成いたしました。海外からの人材の受入れについては、コロナの影響が弱まったことに加え、新たな国別研修の受入れや希望者が増加した研修があったことなどにより達成いたしました。
59ページをお願いいたします。評定の根拠としては、総合的な技術協力活動、エビデンス創出や政策提言・技術規範作成、リーダー人材の能力開発が挙げられていますが、それぞれに十分な成果を上げたと考えております。順次内容を紹介させていただきます。
60ページをお願いいたします。専門家の派遣などによる技術協力活動の状況です。6か国において、プロジェクトを8件、行政への技術顧問派遣を3件行い、結果として長期専門家派遣を行った人数が延べ15人になりました。また、WHOラオス事務所とWHO西太平洋事務局に、1名ずつ長期の派遣を行っております。
61ページをお願いいたします。技術協力活動の具体的な内容の例です。新規の海外事業として、インドネシアにおいて感染症のプロジェクト、カンボジアにおいて非感染性疾患のプロジェクトを開始しました。それから、ザンビアのコレラ流行に対して3名の職員を派遣し対応を行いました。トルコ大地震に対して、これは国際緊急援助隊に参加したというものですが、そのほか、その後のフォローアップを実践しています。また、IOM(国際移住機関)のベトナム事務所から受託をしまして、日本で働くベトナム人のための健康ガイドブックを作成いたしました。
62ページ、次のページをお願いいたします。実践的なエビデンス創出の状況です。令和5年度は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに資する研究などで、英文論文を47本発表しています。また、海外において学会発表を行い、海外の研究者や行政間とのネットワークを形成しています。
63ページをお願いいたします。政策提言と技術規範立案については、WHO執行理事会、WHO総会、グローバルファンド理事会など、日本政府の参加する行事に対して、その代表団に私どもも参加し、提言、助言を行いました。また、国際機関におけるルール作りに関して、国際技術専門委員として多くのメンバーが参加することができました。
64ページをお願いいたします。リーダー人材の能力開発とキャリア支援についてです。海外の方を対象とした研修については、新たなテーマによる研修を開始したこと、リモート研修を導入したこともあり、順調に実施することができました。また、国際協力を目指す人材を育成する研修、これは日本の若い方を対象とする研修ですけれども、こちらについても順調に実施することができました。
65ページをお願いいたします。質の高い医療機器の普及などを目的とする医療技術等国際展開推進事業においても、オンライン研修を導入し、多くの受講者を対象として研修を実施することができました。また、国際機関などで活躍したいという若い方を対象としたワークショップや個別での支援なども実施しました。
66ページをお願いいたします。関連する基盤整備として、医療技術等国際展開推進事業において、これは厚生労働省から委託を受けている事業ですが、事務局としての事業の運営、管理、評価を行いました。また、海外の病院訪問や医療従事者との意見交換を行い、ニーズを踏まえた医療機器開発を支援することができました。また、ホームページ、SNS、メディアセミナー、ニュースレターなどを通じて、活動の理解促進に取り組みました。以上が令和5年度の私どもの国際協力の状況です。
続きまして、見込評価について説明させていただきます。見込評価に関して、資料1-6、43ページをお願いいたします。中長期目標については先ほど説明したとおりです。自己評価はSとしております。
44ページをお願いいたします。指標の達成状況については、新規の技術協力事業の開始件数、それから海外からの人材の受入れとも順調に推移し、目標を達成することができました。
45ページをお願いいたします。技術協力活動、政策提言と技術的規範立案、リーダー人材の能力開発とキャリア支援については、令和5年度を含む3年間、高いレベルで事業を実施したと考えております。
以下、各項目で概要を説明させていただきます。46ページです。総合的な技術協力活動として、評価期間中、プロジェクト、行政への技術顧問派遣については、延べ27名の長期間の専門家派遣を行いました。公衆衛生危機への対応としては、先ほど紹介した、トルコ大地震支援やザンビアのコレラ流行対応のほか、コロナ禍の中で開催されました東京オリンピック・パラリンピックの感染症対策についても実施支援をいたしました。エビデンス創出としては、合計で114報の英文論文を発表することができました。
47ページをお願いいたします。政策提言と技術規範立案、リーダー人材の能力開発とキャリア支援については、各年度とも順調に実施ができました。
48ページをお願いいたします。技術的規範基盤整備についても、医療技術等国際展開推進事業の事務局業務、医療機器開発支援、広報について、各年度とも順調に実施できました。また、保健システムの強化に関するWHOコラボレーションセンターという役割がありますけれども、こちらについても、連携会議を開催するなどにより、順調に役割を果たすことができたと考えております。以上で、国際医療協力に関する説明を終了いたします。
○国立国際医療研究センター萱間看護部大学校長
続いて評価項目1-7、看護に関する教育及び研究について御報告いたします。国立看護大学校長の萱間です。資料1-2、P67を御覧ください。私どもの中長期目標は、NC看護職員の養成及び研修です。自己評価はAとしました。
指標は、NCへの就職志願率、質の高い人材を集めるための方略、NCをはじめ現任者を対象とした研修に関するもので、いずれも目標値を達成しております。詳細は、69ページから御説明をさせていただきます。69ページを御覧ください。
まず、NC等への志願数です。NCへの志願率は、卒業生85名中79名で95.1%でした。NCへの最終受験者数は、NCGMセンター病院19名、がん研究センター病院17名、成育医療研究センター11名の順でした。2020年、新型コロナパンデミックの年に100名の定員で入学した学生は、正規の年限で卒業できた者が85名で、この表のような就職先となっております。コロナ禍では、若者や女性の適応の困難が指摘されています。修学支援委員会を設けて合理的配慮を検討しながら、卒業までをサポートしております。
(2)の国家試験合格率は、看護師が98.9%、助産師が100%でした。
(3)ですが、NCの人材育成に直結するのは質の高い学生の確保で、重要で困難でもあります。18歳人口の急激な減少は御案内のとおりです。看護を学ぶ学生では大学志向が強くなっておりますが、東京、大阪、兵庫の都府県立大学は、所得制限のない学費の完全無償化に踏み切っております。私どもには全国から受験生が集まりますが、地元志向が強く、特に東京都の無償化に大きな影響を受けております。大学校での学びの付加価値を実感してもらえるように、オープンキャンパスではNCから頂戴している強力なサポートをアピールして、在学生も参加したイベントを増やしました。昨年1,052名だった参加者は、2,004名に増えております。今年度より指定校推薦を開始し、高校の進学指導教員との密接な連携も取っています。都内及び近郊の多くの大学が倍率を低下させる中、本学は微増でした。
(4)です。学校の認知度を高めるための取組の一環として、キャンパスのある清瀬市との協力協定を締結しました。下の写真の中央が清瀬市長です。今後、市立公園と大学校キャンパスの一体的景観工事を進める予定です。
70ページを御覧ください。(5)は国際交流です。昨年度までオンラインで、学生はベトナムとの国際看護実習を行いました。今年から現地に行くということで、今、現地に行っております。
(7)です。NCの現任看護師を対象とした特定行為研修を、大学校が実施施設となり、センター病院の多大な御協力を得て、5区分10行為について開始しました。多くのNC職員に御活用いただきたいと思っております。
(8)では、JH若手研究をはじめ、感染症対策人材に関する研究活動に取り組んでおります。
(9)では、清瀬市とも連携した公開講座を行い、184名の市民が参加されました。
次に、見込評価に移ります。資料1-6の49ページを御覧ください。目標と指標については、先ほど御説明したとおりです。指標の達成状況は全て100%を超えており、自己評価はAといたしました。
続いて51ページを御覧ください。(1)、NCへの就職志願率は3年間とも90%を超え、延べ267名に達しております。大学院に当たる研究課程部では修士課程21名、博士課程6名が修了して学位を得ました。
(2)の情報発信では、未来の看護人材を育てるため、清瀬市教育委員会が主催する子ども大学に今年から協力を始めました。写真で見ていただけますように、看護の日に小中学生を招いたイベントを開催しました。
(3)のNC職員への研修です。先ほど特定行為研修の実施機関となった御報告をいたしましたが、今年度10月に開始する2年目では、8区分13行為に特定研修を増やしました。ドレーンやカテーテルに関する特定行為にニーズが高く、また感染に関わる特定行為も実施します。実習指導者講習会はNC、NHO、ハンセンの各施設から多くの職員に御利用いただいており、3年間で延べ158名が修了しました。以上です。
○土岐部会長
どうもありがとうございました。では、御質問をどうぞ。根岸委員。
○根岸委員
根岸です。よろしくお願いいたします。御説明、ありがとうございました。どの項目も自己評価を上げられているということで、今の御説明の内容から十分にその根拠が分かり、素晴らしい成果を上げられていると思います。全く異論はありません。その中で質問します。まず、1-2の38ページのスーパーマイクロサージャリーによる再建外科手術についてです。ここに鼻・耳・口・頭頸部、その他幾つか書いてありますけれども、これらについては全て実績として実施されているかということが、まず1点目です。それから、ここに乳房と書かれております。女性の乳がんが非常に増えている昨今ですけれども、従来の再建術とマイクロサージャリーによる再建術を比較すると、どのように異なるのでしょうか。教えてください。
続いて、今、萱間先生から御説明があった看護に関する教育についてです。まず69ページ、質の高い学生の確保を目指して様々な取組をされた結果が、例えば倍率あるいは国家試験の合格率の高さといったところに出ていると思うのですが、実際に就職した後、看護職の方たちの定着はどの程度なのか。もし、離職率が出ていれば教えていただきたい。あと、中間評価の51ページ、同じく看護教育の所です。ここに修士課程21名、博士課程6名とあります。この修士課程の21名というのは、全て専門看護師課程の方たちイコールということですか。そうだとすると、皆さん、修了後は臨床に就職されているということでよいのでしょうか。また、博士課程の方たち6名は、修了後の就職先はどういった所になるのでしょうか。質問は以上です。よろしくお願いします。
○国立国際医療研究センター國土理事長
最初の御質問について、私から回答いたします。スーパーマイクロサージャリーというのは0.5mm程度の超微小血管を吻合する技術です。この技術において非常にメリットがあるのは、実はリンパ管の縫合です。これによって下肢の浮腫などが改善されます。それから、神経吻合にも有用と言われています。どの程度細い神経までつないでいるのかというのは、私は自分がやってないので分からないのですけれども、神経だけではなくて、神経を養う超微小の血管をつなぐというレベルに達していると聞いております。
乳房の再建は、また別の意味で非常に重要な技術ですけれども、どちらかというと今の主流は、このスーパーマイクロサージャリー技術を使うより、普通にインプラントと言うのですか、人工物を皮下に入れて膨らませ、そこにインプラントを挿入して再建するという方法が多いように聞いております。マイクロサージャリー技術を使った自家組織による再建とどういう使い分けなのかは、私も専門外なので分からないのですけれども、おっしゃるような血管吻合を行う技術は必ずしもスーパーでなくてもいい、通常のマイクロサージャリー技術で十分であると理解しております。
○根岸委員
ありがとうございます。
○国立国際医療研究センター萱間看護部大学校長
大学校に関して、御質問をありがとうございました。就職後の離職率は、各NC病院で異なっており、様々かと思います。私どもの卒業生も、ほかと同じように苦労しておりますが、特に離職率が高いというお話は聞いておりません。コロナ禍でこの3、4年間、卒業直前に技術の訓練で実習の補習を行ったり、ホームカミングデーを行って帰ってきていろいろ話してもらったり、出席に当たって各NC病院看護部長のサポートを頂いたりという工夫をしております。大学院研究課程部の卒業生は、修士課程はほとんどが専門看護師ですが研究者コースもありますので、研究者コースで修士を取る学生もおります。しかし、本学の研究課程部は、そのほとんどがフルタイムの臨床の看護師が来ておりますから、臨床に戻る者が大半です。博士課程に関しては、一部、大学の教員になる者もおりました。以上です。
○根岸委員
ありがとうございました。
○土岐部会長
中野委員、どうぞ。
○中野委員
中野です。1-6のグローバルヘルスに関する活動について、教えていただきたいと思います。資料で申しますと、令和5年度の61ページになるかと思います。技術協力活動ということで、非常に幅広く活動を行っていただいております。特にコロナ後で活動の範囲も大分増えてきたし、海外からの人材も来られるようになって、非常に良かったと思っているのですけれども、技術協力というのは、かなり範囲が広いと思うのです。プロジェクトへの派遣もあれば、ここに書いてあるザンビアのコレラアウトブレイク対応とか、国内で言えば能登の地震のように、海外でも自然災害があるわけで、そこへの派遣などですね。これは中長期目標の中での振り返りにも関係するのかもしれませんが、こういった様々なグローバルヘルスの活動の中で、今後、JIHSということも見据えて、どういった活動に重点を置いていくのか。きっと今の時点では、どこに重点を置いていくのかまでお話できないと思うのですが、この中長期目標の振り返りも含めて、何か方向性やお考えがあれば、お教えいただければと思います。
○国立国際医療研究センター宮本国際医療協力局長
中野先生、ありがとうございます。では、宮本からお答えさせていただきます。御指摘いただいたとおり、私どもには長い経緯や歴史があります。その中で、種々の技術協力に取り組み、様々な事案が発生するたびに対応してきたという経緯があります。今後の在り方については、政府や厚労省からも種々、今後の方針というものが出されておりますので、そういったことも含めて検討していかなければいけないと考えております。1つの論点としては、感染症の対策、ワクチンや医薬品の開発といったものが出されております。そういうものの中で、私どもがどういう役割を果たしていけるのか考えていきたいと思います。一方、今後は、これまで続けてきた種々の活動についても、そういった方向性は引き続き必要だと思っておりますので、これまでの活動を引き継ぐ部分と、新しい課題に対して対応していく部分と、両方の側面から考え続けていきたいと思います。ありがとうございます。
○中野委員
どうもありがとうございます。
○土岐部会長
それでは、私のほうから数字のことでお伺いしたいと思います。34ページの紹介率が100%を超えているというのは、普通の病院では余りない数字なのです。この100%を超えるというのは、どういうことなのでしょうか。普通は紹介状を持っているか持ってないかなので、最大100%のような気がするのですが。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
紹介率の計算ですが、紹介患者数と救急患者数を、初診患者数で割って100%率で出しております。つまり救急患者数が多いと、100%を超えるという数字になります。
○土岐部会長
救急患者が1万件を超えているということですけれども、この入院率というのは多分、3、4割ぐらいになってくるのですか。1日何人ぐらいの人が救急で入院しているのかと思って、その数字のイメージを知りたいと思っているのです。かなり大変な運営をされているなと思ったので。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
救急の30%ぐらいが入院しているということです。
○土岐部会長
そうすると、1日300件来て30%だから、ほぼ100人以上が救急で入院されるわけですね。そういう計算でよろしいですか。大体そういうイメージになるのですか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
救急車は30台です。
救急車の受入れが1日30台で、それに3掛けすると9人とか。
○土岐部会長
いわゆる救急が1万件というのは、救急車以外のウォークインも含めての話ですか。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
救急車だけで1万件を超えております。
○国立国際医療研究センター國土理事長
確認したところ、令和5年度において救急受診から入院となった患者数は、3,638人(1日あたり9.9人)でした。
○土岐部会長
1日に30台ですからね。しかし、いずれにせよ大変な受入れをされているということですね。本当に体制の維持が大変だと思います。ありがとうございます。ほかによろしいですか。花井先生、どうぞ。
○花井委員
大変たくさんの機能があって、一言では分からないですが、歴史的経緯で糖尿病とか、国府台は精神との関係で合併症を受け入れているし、摂食障害とか、本来、国立精神・神経の分野も結構重要なことをやっていて、こういう機能が今度、健康危機管理という新しい組織になるときに、どういうようになっていくのかを心配しているのです。もちろんエイズセンターも置いてもらっていますが。国際は、診療として特別にNCとしてやっていかなければいけない部分を幾つか抱えていると思うのです。こういうものが新しい組織でも変わらないのか。あと、一方で精神・神経系はあちらのNCのほうに徐々に中心を移すなど、そういう戦略について、今のところ、何かお考えはありますか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
難しい御質問です。新組織について、ここでお話していいのかどうか分かりませんが、我々のスタンスとしては、感染症中心ではあっても、それ以外の、先ほどおっしゃったような、いろいろな特徴的な医療もやっております。それについては引き続きしっかりやらせていただくということで、職員にも説明しています。そういうことは近隣の患者さんに対しても非常に不安を与える可能性があることでもありますから、そういうことは変わらずしっかりやらせていただくということで御説明し、今のところ、御理解いただいているというように理解しております。
○花井委員
その辺は是非。先の話をしてもあれですけれども、今までやってきた歴史もあって、かなり歴史的なことをやっておられるので、それは大切にしていただきたいというお願いです。
あと、特にこれで扱っている国際貢献やパンデミックというのは、結構優遇が必要な分野なのです。日頃は遊んでいると言うとあれですけれども、ある程度余裕のある人材がいないと、実は対応できない。そういうところは、診療報酬だけでみたいなことをやると、どんどん窮屈になっていって、少ないけれど何か起こったときには奪い合いになるというところもあると思うので、そういった点も今後。今後というか、現状でも人のやり繰りは大変だと思います。現状でも大きく人のやり繰りが大変なことはあるのですか。
○国立国際医療研究センター國土理事長
この後、赤字の話が出てくるかと思いますけれども、「サージキャパシティ」という言葉がよく使われます。有事に向けて平時にどういうように人員を配置し、人材を遊ばせずにちゃんと訓練をやって備えるかというのが、大きな命題だと思っております。その中で、確かに運営交付金などで配慮いただいて、そういうところに使えるお金は、十分とは言いませんけれども、頂いているので、それを活用するというように考えております。
○花井委員
分かりました。
○土岐部会長
ほかによろしいですか。では、私からもう一点、国際貢献の人材育成についてです。64ページ辺りを出していただけたらと思います。研修者のグラフなどがあるのですけれども、これは累積なので、年度別で見ると必ずしも一直線に増えているのではないということが分かります。最近、日本人、特に留学生が減っているという社会風潮があります。医師で世界を目指すというか、世界の医療に貢献したいという医師、実際に海外に行こうという医師の数が増えているのかどうか。これは研修だけでは分からないかもしれませんけれども、印象でも結構なので、そういうものが分かったら教えていただけますか。
○国立国際医療研究センター宮本国際医療協力局長
手持ちのもので、具体的な数字の推移が説明できないのですけれども、印象としては、そういった方は着実におられて、特に減っているという印象は持っておりません。64ページと65ページでは、2つの国際協力に向けた若手人材の育成という話をしています。1つは、先生がおっしゃった方向に近いと思いますが、フィールドをターゲットに、それぞれの国で活躍するような活動を支援する国際協力の在り方を目指す。そういう皆さんについては、比較的堅調だと思っております。もう1つの方向、WHOなど、しかるべき国際機関の中で働いていきたいという方に対する支援の方向は、もともとのポジションがそれほど多いものではないものを推進しているところもあるのですけれども、関心を持つ方は非常に多くなっていて、こちらのほうは増加傾向という感触を持っているところです。ちょっと定性的な話で恐縮ですけれども、私どもとしてはそのような印象を持っております。
○土岐部会長
ありがとうございます。ほかはよろしいですか。それでは、次に移りたいと思います。
続きまして、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項」の評価項目2-1から4-1について議論したいと思います。先ほどと同様に、まずは法人から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
71ページをお開きいただけますでしょうか。2-1と3-1及び4-1ですが、こちらにつきましては自己評価はBとしております。
75ページで概要を説明させていただきます。まず、後発医薬品の使用促進ですが、年度計画を上回る結果となりまして、センター病院93%、国府台病院93.4%です。それから、医療DXの促進としまして、まずマイナ保険証の利用です。こちらにつきましては、厚労省からの依頼を踏まえまして、専用レーンを設置する、あるいは職員を配置して誘導し、マイナ保険証の活用を促しています。そのほか、マイナンバーの読み取り機も設置しております。2つ目として、勤怠管理システムですが、今まではカードリーダーでIDカードをタッチするというシステムでしたが、これを、発信機能付きのビーコンを導入しまして、自動的に時間を管理できるものに換えています。効率的な勤務時間の把握に努めているところです。3つ目は、通院支援アプリです。こういったアプリを導入しまして、診察までの時間の案内、それから後払い制度、クレジットカードやアプリで支払うということで、患者様の待ち時間の有効活用とか短縮につながっています。
続きまして、見込評価の説明をさせていただきます。見込評価の52ページです。自己評価をAとさせていただいております。
53ページをお開きください。経常収支率ですけれども、前年度は非常に厳しく94.8%でしたが、中長期目標期間中は101.7%ということで、目標は達成しているのですが、この厳しい状況は54ページで設定根拠の説明をさせていただきたいと思います。
まず、中長期目標設定時には困難度の設定はございませんでした。しかしながら、この下の表を見ていただきますと、コロナウイルス感染症に関係する重点医療機関ですが、一般病院では90%前半台と、非常に厳しい医業収支です。その中では、我々NCGMは何とか95.9%ということで、一般病院よりも少し高い数値を示しております。こちらにつきましては、やはり患者数も減っておりまして、新型コロナの感染拡大における受療行動の変化、診療控え、それから感染症患者を受け入れるための空床を確保しなくてはいけないと。中長期目標の設定時は、当初、困難度はなかったのですが、こういう状況を踏まえて困難度を「高」とさせていただきまして、その中で自己評価を1段引き上げて、Aとさせていただいた次第です。
続きまして、3-1、56ページです。繰越欠損金を縮減するという目標です。大幅に縮減はできたのですが、ただ、目標は達成しているものの、やはり欠損金であることには変わりはありませんので、自己評価はBとさせていただいております。
続きまして、4-1、59ページです。こちらは自己評価はBです。法令遵守等の内部統制の適切な構築ということですけれども、監事及び外部監査人と連携して内部監査を実施しております。それから、コンプライアンスを徹底させるために、弁護士を講師として全職員を対象としたコンプライアンス研修を実施しています。また、取引業者等とのやり取りにつきましても、職員個人のメールアドレスから係の共有アドレスに切替えを行い、適正に処理するということと、電子入札システムも今年度から導入して運営しているところです。2ポツの人事の最適化です。こちらも従来から実施しておりますが、国、国立病院機構、それからPMDAと、引き続き人事交流を行っております。3ポツのエイズ裁判の和解に基づく対応に関する事項です。こちらにつきましては、これまで同様、ACCにおいて、日々の診療から研究に適切に取り組んでいるものです。私からは以上でございます。
○土岐部会長
ありがとうございます。
○国立国際医療研究センター美代医療情報基盤センター長
それでは、医療DXの促進(システム関係)について、医療情報基盤センター長の美代から御説明させていただきます。オンラインで失礼いたします。
医療機関の患者の情報を電子カルテ等から収集・分析することによって、国民の健康増進や新たな医療の開発につながるということが、今、社会的にも期待されております。NCGMやJHにおいても、厚生労働省や関係学会と連携し、こういった情報を活用する医療DXの推進に努めております。また、医療現場そのものをデジタル化によって効率化していくということで、革新的なインフラ整備につきましても、内閣府の事業とも連携し、社会実装に向けて研究開発を実施しているところです。
具体的な取組として、代表的なものを3つほど御説明したいと思います。下の図ですけれども、左から順に御説明していきます。まず、J-DREAMSです。これは、糖尿病学会と連携しまして、糖尿病の患者さんの情報を施設横断的に収集するという事業です。従来の多くは、手作業で手入力を医師が行ってレジストリを構築することが行われているわけですけれども、電子カルテのデータを一括して複数の施設から収集することで、前例のない大規模な患者情報を分析することが可能なデータベースを構築しております。下の表になりますけれども、2024年2月時点では、74医療機関が参加しておりまして、10万人の患者情報が集まっております。検査値は2,700万件、処方は1,000万件のデータが登録されております。
このデータを活用しまして、植木糖尿病情報センター長のチームが中心になりまして、論文20報、蓄積データを活用する共同研究7本が行われています。今後、診療の標準化、新しい医療の開発、副作用の統計・治療法の開発等も期待されております。
次に、その右側のJASPEHRについて御説明します。これは厚生労働省と連携して進めているプロジェクトになります。Japanese Standard Platform for EHRsの略で、EHRは電子カルテを意味しております。J-DREAMSは糖尿病を中心としたシステムですけれども、これをいろいろな疾患にも活用できるように広げていくということで研究開発を進めています。複数のプロジェクトで利用可能、かつ異なるベンダーの電子カルテから次世代の標準であるHL7 FHIRのフォーマットで収集するプラットフォームとして、今、がんゲノム事業、難病ゲノム事業、それから感染症情報の収集事業で、このプロジェクトを進めているところです。リアルタイムで電子カルテ情報を収集できれば、感染症の広がりの即時的な把握、タイムラグのない治験の実施などへ活用できることを期待して、これについても検討を進めているところです。さらに、国が進める医療DXにおいて、3文書6情報につきましては規格が決められて進めているところですけれども、それ以上の情報を日本全国の様々なシステムから集めるということに関して、JASPEHRがツールとして期待されています。1つのシステムで複数のプロジェクトに対応できるということで、大幅な費用対効果の実現、二次利用の容易さの点で期待しております。
最後に、医療物流について御説明します。これは医療を支えるための非常に重要なインフラであります。内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)第三期と連携して進めております。従来、医療機関内で手作業で行われていた確認作業を、電子タグやバーコードなど、医療の分野では新しい技術を用いまして効率化、医療安全に資するシステムを構築しております。下の写真に一例を挙げております。手術用の医療機械、これは200点ぐらいあるのですけれども、これを目視で確認していたのを、トンネルゲートにコンテナを通すことで、電波で何がどのコンテナに幾つ入っているのかというのを一括で確認するという仕組みを導入しております。これによって、確実に物品が手術室に届くという医療安全に資するだけでなく、効率的に短い時間で確認作業ができるということで、今、物流2024年問題「トラックドライバー不足」などが話題になっておりますけれども、できるだけ早くトラックドライバーを解放して次の場所に向かってもらうという意味でも、こういった社会的な問題の解決にも貢献できるということで進めています。以上です。
○土岐部会長
見込評価のほうは4-1まで終わったということでよろしいですか。順番が入れ替わったので、失礼いたしました。それでは、今、御説明いただいた年度評価の2-1から4-1までと見込評価の2-1から4-1までに関して、委員の先生方から御質問等はございますか。藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
藤川です。幾つか質問があります。まず年度評価の72ページの一番下の枠の医業未収金比率ですが、もともと国際医療センターは、場所柄と言われたこともあるのですけれども、医業未収金比率は比較的高いというようなことを随分前からお聞きしておりました。この中で、外国人渡航者等の問題が出ているということで、当然インバウンドが増えたりするとか、あと、海外からどんどん居住する人も増えているので、この辺りは更に高まる可能性もあります。また、ほかの医療機関でもこういう問題がどんどん出てくるのかと思う中で、ここには「増加要因に対する対策に取り組む」と書いてあるのですが、是非、国際医療センターで効果的な策をいろいろと考えていただいて、国内に広げていただきたいと思うのですけれども、どのようなお考えがあるのかというところをお聞かせいただけますか。
2点目は、繰欠の解消についてです。この期間においては、助成などもあったことによって、結果としては解消している部分もあったと思うのですが、今後、統合によっていろいろ形が変わるので、なかなか今後の展開は難しいところかと思います。この辺りはどのような方向性でお考えなのかということも教えていただけたらと思いました。
それから、中期目標の59ページに電子入札の話が出ていたのですが、この実施率と、その効果のようなことを教えていただけたらと思います。
もう1つは、76ページのDXの中でホスピタルロジスティクスの話が出ていたのですが、これは国際医療センターだけの取組なのか、JHとしての取組なのかということ。それから、何年程度これを取り組まれて、今後、国内でどのように広げていくのかという展開の方向性のようなことも教えていただけたらと思います。少し多くてすみませんが、お願いします。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
未収金の対策というのは、確かに外国人等で非常に厳しい状況になっております。例えばですが、先ほど御説明いたしましたアプリの導入ですけれども、年度評価の75ページです。通院支援アプリを導入しまして、実はこのアプリを導入してカードとひも付けることによって支払いがアプリでできるというので、あくまでも1つの事例ですけれども、こういった形でカードで支払いをする。それ以外には、例えば大使館を通じて、無保険者の方などは、こちらでも届出をきちんと手伝って、それから、未収金の対策として保険に入っていただくと。こういうことも実施して、やっているところです。
それから、繰越欠損金は統合によって変わるかということですが、これも非常に難しいです。今、基本的に感染研は税金で、全部国費で賄っていると。我々においては、医療に関するものとか、一部の研究費は外部資金を導入してやっているものですから、ここをどれだけ広げていけるかということ。それから、やはり今は患者が少し減っておりますから、今年度は昨年度に比較して、若干、患者数が上がってきておりますので、こういったところで患者数を上げて自己収入を引き上げていくと。これによって繰越欠損金は少しずつでも解消していくのではないかと考えております。
電子入札の効果ですが、今年の4月に入れたばかりで、まだ実施率は出していないものですから、お答えはできかねます。効果につきましては、そもそもこれを導入したのは、やはり業者との癒着等で、対面でやりますといろいろ問題が生じると、そういうこともあって、電子入札を入れました。あるいは、業者のほうがわざわざ出向かなくてもいい、そうすると、その分のコストが若干その契約金額等に跳ね返るのかなと思っております。これも今年度に実施したばかりですので、その効果としての金額がまだ定量的に出るものではありませんが、そのような考えで電子入札を導入したものです。私からは以上でございます。
○国立国際医療研究センター美代医療情報基盤センター長
それでは、美代からホスピタルロジスティクスについて御説明いたします。これまでNCGMでは過去3年ほど独自でこういった研究を進めていたところですけれども、昨年度、内閣府のSIPに採択いただきまして、5年計画で進めています。昨年度が5年計画の1年目になります。昨年度、NCGMで実施していたこういった方式を5病院に拡大して実施しまして、今年度、更に2病院を追加して進めていくということで、委員の御指摘のように、こういったことを広げていくということで活動しております。今、業界団体も巻き込みまして、それから、アカデミアで言いますと国立大学病院長会議、こういった病院経営にも資するというところもありますので、そういった所とも連携して進めているところです。
○藤川委員
ありがとうございました。面白い試みもいろいろあるなと思いました。参考になりました。
○国立国際医療研究センター美代医療情報基盤センター長
ありがとうございます。
○土岐部会長
前村委員、どうぞ。
○前村委員
勤怠管理システムとしてビーコンを導入したということで、働き方改革への対応について質問させてください。今年から導入されているのですが、先ほど救急患者が非常に多いというのをお伺いしましたけれども、勤務形態としては、A水準で全部いくことができているのでしょうか。B水準とか、C水準の方もいらっしゃるのでしょうか。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
NCGMは全てA水準の960時間に設定しております。
○前村委員
では、ビーコンの解析をして、全てA水準で収まるということでよかったのですね。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
はい、そのように考えております。
○前村委員
分かりました。
○土岐部会長
では、私から1点だけですけれども、非常に経営が厳しいというのは、よく理解できますが、少し気になったのが、医業収益が落ちているというところです。コロナ後の傾向として多くの病院は、患者さんが減ったと言って苦労はしておられますけれども、医業収益は少し増えて、でも、それよりも支出が増えてしまって、最終的に赤字というところが多いです。医業収益が減っているというのは、診療の規模の縮小がやはりある程度あるのかなというように思われるのですが、特にどういったところが収益が伸びなかった原因だと考えておられますか。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
患者数がやはり落ちてしまったというところが一番大きくて、大きな差というのは、患者が入らないというところが両病院あるのですが、収益としてはそこが大きな負担。それから、収支でいけば、費用もやはり大きく、例えば水道光熱費の高騰だとか、人件費の高騰というので、費用も出て、収支率が悪くなったというのが結果でございます。
○土岐部会長
先ほど救急については伸びているということだったので、どの診療科とか、例えば手術は特に少ないとか、もう少し詳しい解析はされているのでしょうか。
○国立国際医療研究センター新川統括事務部長
手術も若干減っておりまして。
○国立国際医療研究センター宮嵜センター病院長
センター病院長の宮嵜です。1つは、手術数もやや苦戦しているのと、看護師の減少によりまして、昨年度は1つ病棟を閉じておりまして、今年度に入りまして少しまた開き直したりというところがありまして、昨年はかなり苦戦していたと。それから、昨年は放射線科のほうが崩壊しまして、読影に関して全て外に出したり、逆に読影の管理料が取れなかったりというところで、かなり大きなものがありました。
○土岐部会長
よく分かりました。病院はどこか1か所でも欠けると全体にガクッと影響が出てしまうので、常に全体のバランスを保ちながら運営しないと難しいところなので、本当に苦労をお察しします。ありがとうございます。ほかはよろしいですか。それでは、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項については、以上としたいと思います。
ここで全体の振り返りを行いたいと思いますので、これまでの議論を通しての御意見や御質問等がございましたら、委員の先生方からよろしくお願いいたします。よろしいですか。
それでは、最後に法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。まずは、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた「監査報告」について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。
○国立国際医療研究センター白羽監事
監事の白羽でございます。石井監事の意見も取りまとめまして、私からコメントをさせていただきます。
令和5年度の監査結果でございます。よろしくお願いいたします。監査結果に関しましては、資料1-4として添付しております。監査報告は、6月20日に理事長に直接提出し、また、同日、理事会に報告し、同じものを厚生労働省のほうに提出しているところでございます。
監査報告の内容です。報告内容、監査の結果については、監査報告記載のとおりでございます。センターは適切に運営されており、昨年と同様、特に重要な指摘事項はありません。なお、来年、令和7年4月に国立感染症研究所との統合により国立健康危機管理研究機構となり、当センターは解散することが予定されており、令和5年度は第3期中長期目標3年目であり、令和6年度は2年残して最終年度となることから、監査報告においても、その旨の記載をしております。
先ほど来御指摘がありますように、100億円を超えていた繰越欠損金は、昨年度末、19.4億円まで縮小されました。当事業年度、令和5年度におきましては、29.5億円の赤字を計上したことにより、再び増加に転じ、結果、48.9億円となっております。これは、新型コロナウイルス感染症の補助金が減少したことによる収支悪化が原因と考えております。
全国的にコロナという有事があり、臨床現場は極めて大変な状況でした。財務、経営の視点からは、国などによるしっかりとした補助金の対応により、破綻するところまでは免れております。令和5年5月からコロナ感染症法上の取扱いが変更となり、連動して補助金がなくなりましたが、コロナ重点医療機関等において、コロナのために使用していた病床を一般病床に戻しても、すぐに稼動状況を元に戻すことなどが医療機関でも困難であり、令和5年度の全国の病院の決算状況においても厳しい状況というように理解しております。令和5年度のNCGMの赤字29億円は、極めて異常な状況とは言えないというように監事としては認識しております。今後、医療連携を強化し、新規患者の増による診療報酬の増加につながる取組を推進することで収支改善を図ることとしております。
当センターとして最終年度である令和5年度におきまして、国立感染症研究所との円滑な統合に向けた取組であります国立健康危機管理研究機構創設に向け、組織体制のコアが示され、統合に向けた準備が本格化するものと推察しておりますが、研究機関であり、かつ感染症に関して高度な機能を有する総合病院として期待されると理解しております。監事としても、統合の準備状況について注視しながら監査を進めていく所存でございます。以上でございます。
○土岐部会長
ありがとうございました。続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針につきまして、コメントをお願いしたいと思います。
○国立国際医療研究センター國土理事長
本日は、長時間にわたり御評価いただきまして、ありがとうございました。最後に話題になりましたように、喫緊の課題は経営でございます。累積欠損金も平成30年には110億円まで膨れ上がったものを、コロナの補助金の追い風もあって、昨年度は19億円まで減らせたのですが、それがまた少し元へ戻ったということを、大変心苦しく思っております。その状況と分析については先ほどお話したとおりですけれども、実は、年度が変わっても、まだ昨年度よりはましではありますが、まだ厳しい状況ですので、経営改善のプロジェクトチームを立ち上げて、更に新組織に向けて赤字を増やさないように頑張りたいと思っております。
統合につきましては、最初に後藤大臣から御下命いただいたのは2022年6月と記憶しておりますが、もう2年もたって、だんだん気運が盛り上がるとともに、準備作業がかなり増えているという状況です。その中で、私が一番心配しましたのは、職員の士気です。モチベーションが下がらないように、人材流失にならないように、それから、近隣の皆様、患者さんに不安を与えないようにということを心掛けてきましたが、幸い、今のところ心配したことはなく、新組織に向けて期待を高めるという状況になっているかと思っております。
それについて重要なことは広報だと思っておりまして、広報についてもタスクフォース的なものを立ち上げ、拡大させて、新組織の広報も含めて、これからやりたいと思っております。この間、関西に行きましたら、統合を知らない人が多くて、本当にがっかりしたのですけれども、日本全国に、この広報を活用して新組織がどういう任務を持って国民に奉仕するかというのを伝えたいと思っております。
最後に、冒頭にNCGMとしての最後の評価委員会ということを申し上げましたけれども、今日、改めて各担当者からの報告を私も聞いておりまして、これまでNCGMが成し遂げたことについて誇りを持つとともに、職員の皆さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長
どうもありがとうございました。お二人の発言内容につきまして、御意見等はございますか。よろしいでしょうか。花井委員、どうぞ。
○花井委員
重ねてになりますけれども、やはり国立国際医療研究センターとしてやってきて、特別な医療とか、そこに患者の信頼というところもありますし、救急の受入れももちろん都内一でやっていたということで、やはり積み重ねによる伝統というものもございます。医療の提供と、特に特殊な疾患等々に対する、薬害の被害者の方もかなりお世話になっていると思いまして、国際でしかできないことを新組織に持っていくときに、形は変わるのかもしれませんが、中身が変わらないようにやっていただきたいということで、しつこいですが、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。ほかはございませんか。以上で、国立研究開発法人国立国際医療研究センターの令和5年度業務実績評価及び中長期目標期間の見込評価についての審議を終了いたします。どうもありがとうございました。
国立国際医療研究センター退室
(休憩)
国立循環器病研究センター入室
○土岐部会長
皆さん、よろしいでしょうか。それでは、国立循環器病研究センターの令和5年度業務実績評価について審議を開始いたします。まず初めに、法人の理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立循環器病研究センター大津理事長
理事長の大津でございます。本日は当センターの業績評価の機会を設けていただき、厚く御礼申し上げます。
まず、先ほど発表がありました当センターの職員の逮捕は実に遺憾であり、深くお詫び申し上げます。この事態を厳粛に受け止め、警察の捜査に全面的に協力するとともに、再発防止に努めてまいります。
国循は、循環器疾患の究明と制圧に挑む高度専門医療研究センターとして、世界トップレベルの医療を、希望する国民全てに提供するとともに、研究・開発分野においても世界をリードする立場であることを認識し、その成果を広く発信することが責務と思っております。そのため、令和4年2月に将来戦略であるビジョンを策定し、全職員と力を合わせて一歩一歩着実に実行してまいりました。
令和5年度の業務実績については、これから御紹介させていただきますように、世界に誇る成果を多数上げております。新しい取組として、ハイスループットスクリーニングを可能にするHTSの本格的稼働や、カテーテルアブレーショントレーニングセンターの立上げ、卓越した若手研究者がPIとして活躍する制度の運用を開始しました。また、企業との共同研究を行う共同研究部を2部立ち上げ、国循初のベンチャーを1社認定しました。さらに、スタートアップ企業を支援する共用型Wetラボを立ち上げました。
そして、令和4年9月より開始した経営改革プランに基づき、業務運営の効率化、収支の改善を目指してきました。その結果、令和4年度に比し医業収支差は9億円増加し、約8億円のコロナ補助金がなくなったにもかかわらず、総収支差は8.95億円改善いたしました。
これから業務実績の詳細について各担当より説明させていただきますので、何とぞ御審議のほどよろしくお願い申し上げます。以上をもちまして、私からの挨拶とさせていただきます。
○土岐部会長
ありがとうございます。本日、不祥事の公表があったということですけれども、そちらに関しましては、また後日、本日の令和5年度の評価とは別に、また事情を御説明いただけたらと思います。
それでは、本日に関しましては、令和5年度の評価のほうを粛々と進めていきたいと思います。まずは、「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2に関わる業務実績及び自己評価について議論したいと思います。最初に法人から御説明いただき、その後、質疑応答という流れで進めたいと思います。時間が限られておりますので、ポイントを絞っての説明を法人からよろしくお願いいたします。
○国立循環器病研究センター望月研究所長
1-1を御説明させていただきます研究所長の望月です。令和5年度の難易度、重要度については、資料2-2の3ページを御覧ください。右上に書いてございますように、両方とも「高」にしております。難易度「高」は、完全埋込み型の人工心臓を目指すという点、重要度に関しては、言葉を述べるまでもなく、死因の過半数を占める循環器疾患、脳血管疾患のこれからの高齢化社会における重要性を考えて「高」としております。
4ページを御覧ください。自己評価をSとしました評定の根拠をⅢに掲げています。左側、世界初のヒト疾患病態の解明となる基礎研究を実施しました。それから、脳卒中・循環器疾患対策法への提言に資する研究を実施いたしました。それから、国際共同研究への展開と性差研究への萌芽となる研究を開始したということで、この3つを根拠としてSとさせていただきました。
5ページからその具体的内容について説明いたします。左の真ん中の図を御覧ください。心臓に分化するときには、これまで、緑色で書かれている心原基という所が心臓の元になる、心室筋、心房筋の元になるというように考えられたのですが、ピンクで書かれてあります新たな傍心臓領域が、あるシグナル分子、Notchシグナルの下流で転写制御を担うHey2というエンハンサー活性を持った心筋前駆細胞が、右の図のピンクの所になる、つまり、左心室に分化していく。これがなぜ重要かと言うと、先天性心疾患の原因となったりとか、これからiPS細胞を使っていくときに左室心筋への特異的な分化を考えるという意味でも、重要な発見というように考えられると思います。以降、(1)から(6)まで説明させていただきますけれども、論文を発表いたしました雑誌は、下段に書いてあります青色枠の所に掲載されております。
右に移ります。5ページの右の(2)、心筋細胞内の脂質メディエーターが寄与する新規の心不全発症機序を解明したということです。皆様方も御存じのように、心臓というのは圧を受ける。圧というのは高血圧もありますし、大動脈弁の狭窄によっても圧を受けるのですが、それによって心不全を発症するということが言われておりました。そこに雷の矢印があり、それを圧と考えますと、心臓の心筋細胞の膜に圧がかかったときに、ホスホリパーゼA2βを介してLysoPSというもの、最下段に書いてありますリゾホスファチジルセリンが出ます。この分泌されたリゾホスファチジルセリンが、心筋細胞の膜表面にあるGPR34、Gプロテインの共役型受容体を介してネクローシスを起こすことで、心不全の原因となっている。このメカニズムの詳細を解明することができました。本研究成果は、新たなGPR34のアンタゴニストを作ることによって心不全の予防につながるという意味でも、画期的な成果というように判断いたしております。
6ページの左側の(3)、適度な運動が高血圧を改善するメカニズムをラットとヒトで解明ということです。これがなぜ重要か申し上げますと、これまでの高血圧の治療は、薬物療法や理学運動によってエネルギーを消費することで降圧をもたらすというように考えたのですが、その運動というのは体を動かすということだけだったと思います。ビデオを流していただけますでしょうか。体を動かす、頭部を動かすということが、単純に運動しなくても、体の上下動を週3回30分を繰り返すだけで、平均血圧が20落ちる。つまり、150の人は130まで落ちる。このようなことをもたらすことが分かりました。その原因を詳しく調べてみると、脳の中の間質液が、ある脳の中枢の血圧中枢核に作用することによって血圧が下がる。こういう治療法を開発することができました。本研究は、サウジアラビアとかアメリカのボストンの新興企業との共同研究にまで展開されています。
右の(4)、心不全と血液のY染色体との関係を解明したということです。これがなぜ重要かと申し上げますと、これまで循環器だけではなく性差を明らかにするという研究が行われてきたのですが、これまではホルモンの関係とか受容体がどこにあるかということで解明に臨んできました。しかし、もともとダイレクトにいきますと、私どもの染色体の中には、母方であるX染色体と男性のY染色体がありますが、Y染色体の一部が欠損をすることによって、異常が起きることによって、男性特有の心臓の障害が起こりやすくなる。下の図を御覧ください。骨髄から出てきた血球の中のY染色体、男性の染色体の中のUtyという遺伝子のエピゲノムを調整する分子の変異が、このような骨髄からの心臓への炎症細胞、マクロファージ細胞による線維化を促進するということ、これが男性の心不全の原因になるということを明らかにすることができました。つまり、性差を明らかにするという研究になりました。
7ページの(5)、(6)は、循環器疾患に関しては特に治療の標的となる心房細動を解明することによって、その治療法若しくは国際的なガイドラインの作成に資する研究となったということで御報告いたします。左の中段に世界地図があるのですが、2,032人の参加者、103病院、15か国の多施設共同研究で、当センターが中心的な役割を示す介入研究を行うことができました。右下に書いてございますように、赤と緑を御覧いただければ分かるのですが、早期に治療した緑群ではいずれも、出血とか梗塞若しくは血管死の抑制が可能であったということで、抗血小板薬の早期介入が非常に有効であるということを示すことができました。
また、右側は、我が国でのデータを観察することによって見いだした結果になります。右下に書いてあるのは、左側が脳梗塞で右側が出血になるのですが、CHADS2スコアという、心不全とか高血圧とか糖尿病の有無、年齢、そのCHADS2スコアによって、アブレーション、心房細動のカテーテルの焼灼を行う時点でのCHADS2スコアによって、どのような治療を行っていったらいいかというのが分かりました。つまり、右の図に書いてございますように、CHADS2スコアが1点だと出血が多くなる。2点でも出血が多くなる。一方、3点の場合には、抗凝固を行うことによって非常に脳梗塞を減らすことができる。つまり、このようなことを提言することができたことによって、本邦並びに世界の治療指針に資するような研究をすることができたということで、業績の主なトピックとして挙げさせていただきました。以上となります。
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
続いて、評価項目1-2、15ページを御覧ください。実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について、オープンイノベーションセンター長の宮本から御説明いたします。
中長期目標は、オープンイノベーションセンターの機能を活用して、企業との連携を密にし、最先端医療・医療技術の開発で世界をリードすること。創薬オミックス解析センターの機能整備、循環器疾患情報の収集、知的財産の活用により、研究・開発を推進し、研究成果を社会導入すること。住民参加型の実証実験に取り組み、住民の健康に関するデータを用いた研究で、循環器疾患の予防につなげるための取組を進めること。臨床研究及び治験を進めることとなっております。
指標の達成状況ですが、15、16ページに記載しておりますように、9項目のうち6項目が100%を超えております。臨床研究実施件数をはじめ、3項目で120%を超える実施率を達成することができました。
17ページを御覧ください。今回、自己評価をSとしておりますが、その評定の根拠としては、「オープンイノベーションラボ(OIL)」による産学官連携の推進、「メディカルゲノムセンター」の機能整備、健都のまちづくりへの積極的な貢献と住民参加型の実証実験の推進です。
これらについて御説明いたします。18ページを御覧ください。オープンイノベーションの推進のためのオープンイノベーションラボの運営状況を御説明いたします。OILにはベンチャーや共同研究部を含む多彩な企業が入居し、共同研究を行っております。令和5年度のOILの平均入居率は、面積換算で80%を超え、常時、約20の機関が入居いたしました。そして、画像処理装置、診断支援プログラム、発症予測モデル、人工心臓システム等の研究成果を知的財産として確保し、計8個の新規特許出願を行いました。また、OIL内に企業と共同で医師たちのトレーニング施設「イノベーティブラーニングセンター」を新設いたしました。具体的には、心臓アブレーションの3Dマッピング等、リアルとデジタルを融合したトレーニングプログラムを提供いたしました。
右を御覧ください。「オープンイノベーションセンター・ウェット・ラボ」(OWL)と名付けております共用型Wetラボを新設いたしました。実験ベンチ1台から貸出しが可能で、遺伝子組換え実験、P1、P2レベルの実験も可能としております。昨年度から入居希望企業との協議を開始しておりましたが、既に2社に利用を開始していただいております。また、新たな入居希望との協議も進めております。このような共用型Wetラボは、国立研究開発法人としては初めてと伺っております。既存施設の既設機器の有効活用及び管理運営の内製化を行い、初期投資及び管理運営経費の大幅削減を行いました。ここでは、バイオバンクを用いた研究、様々なスタートアップ事業、国循発ベンチャー支援事業に活用をする予定としております。
それでは、19ページを御覧ください。3D心臓モデルが、医師主導治験を経て、令和5年7月にクラス2の医療機器承認を受けました。現在、保険収載に向けた準備が進められております。そして、この3Dモデルに加え、バーチャルシミュレーションである「ped UT-Heart」を融合させた世界初の手術支援システムが、令和6年2月14日に行われました第6回日本オープンイノベーション大賞において、厚生労働大臣賞を受賞いたしました。これは、外科手術が困難な複雑先天性心疾患の術前の心臓形態、血行動態から正確な解剖学的理解、そして、3D計算を行い、予測される最善の外科手術を患者が受けられることを可能とするものです。今年度、医師主導治験を開始することを予定しております。
次に、右を御覧ください。メディカルゲノムセンターでは、次世代シーケンスによる臨床遺伝学的検査として国内初のISO15189を取得し、肥大型心筋症を含むISO認証の検査パネルを開発いたしました。そして、循環器疾患のゲノム研究のために、ALL-JAPANゲノムコンソーシアム、GRAND-STAR Nextと名付けておりますが、それを立ち上げました。昨年度までに20機関、現在は30機関が参画をし、3,000を超える症例が集まっております。昨年度は、2,000を超えるエクソーム解析、1,000を超えるホールゲノム解析を実施いたしました。その解析を可能にしたのはGPUサーバーの導入であり、それにより解析速度は以前の30倍に達しました。過去の全ゲノム解析と合わせて5,000例となる循環器難病データベースとなっており、これは国内最大のものとなります。また、ゲノム医療に関わる人材育成を行っており、AMED研究、企業との共同研究においても、このゲノムに関する研究がいずれも増加しております。
20ページを御覧ください。「共同研究部」は、研究資金と共に優秀な研究者の雇用拡大を可能とするものとして設定されておりますが、昨年度は2つの共同研究部を新設することができました。1つは、明治安田生命との共同研究であります「心血管病予防・QOL推進研究部」です。疾患の予防からリハビリテーションまで全過程を考慮し、国民のQOLを維持・増進するアプローチの社会実装を目指した研究を行っております。
そして、右を御覧ください。米国のNTT Research Corporationとの共同研究である「バイオデジタルツイン研究部」ですが、これは昨年度4月に設立されました。日米混合の研究者チームから成り、大動物研究を基にデジタルツイン技術や自律的治療に関する知見を、多数、報告することができました。原著論文としては10報以上、特許出願は3件に及んでおります。そして、それらをまとめて、自動治療システム、Autonomous Closed-loop Intervention System、ACISというコンセプトを世界に発信いたしました。これは、治療薬とデバイスの使用方法を自律的に最適化することで、心不全や心筋梗塞等の診断治療を支援する技術というコンセプトです。
21ページを御覧ください。最後に、住民への取組を御紹介したいと思います。健都イノベーションパークにあるエア・ウォーター社で「かるしおサミット」を開催し、28の企業及び研究機関に参加をしていただきました。また、「国循=かるしおの聖地」という言葉をモットーにして、センター内の売店にはじまり近隣のスーパーでの「かるしお」の認知度向上に努めました。その際、いわゆるマーケティング手法というものを用いて取り組みました。それにより、「かるしお商品」の売上高の大幅アップが見られました。このような試みが、これまでなかった減塩の社会実装モデルになり得ると考えております。また、吹田市との「グルメな減塩!かるしお大作戦」では、吹田市内の小学校に、減塩献立(かるしおアレンジメニュー)を57点提供し、給食調理員の研修、そして、市民向けの食育講座も実施いたしました。地域を超えた啓発としては、NHKの「きょうの料理」に、かるしおの減塩の料理を紹介し、減塩の啓発を行いました。また、おいしい減塩食レシピコンテスト「S-1g大会」を医薬基盤・健康・栄養研究所と共同で開催いたしました。日本全国から106件の応募を頂くことができました。そして、それは全国版の新聞に掲載されるに至りました。
右にありますように、健都における住民参加型の実証実験は、「一般社団法人健都共創推進機構」が窓口となって行っています。健都ヘルスサポーター制度というものを活用することで、相談・協力案件は36件に上っております。以上、私からの御説明とさせていただきます。
○土岐部会長
ありがとうございました。ただいま御説明のございました1-1及び1-2ですが、委員の先生方から御質問があれば、よろしくお願いしたいと思います。前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村です。基礎研究、臨床研究、応用研究、企業とのコラボ等、大変、進展していることが分かりました。非常に興味深い研究があって幾つか質問したいのですが、2つ質問させてください。5ページの(1)で、2つの心室の原基になる領域があるということですが、右のほうに図は出ているのですが、これが心室の中で領域の違いを出しているのか、何か機能が違うのか。また、いずれかに遺伝子異常ができた場合に、どのような先天性心疾患に結び付くということまで分かっているのかを、まず、お伺いしたいと思います。また、再生医療を考えた場合に、これがどのように役立つのかということをお伺いしたいと思います。もう1つは、6ページの(4)、Y染色体のUty遺伝子が欠損すると心不全になってくるというお話ですが、女性の場合はもともとこれがないわけですが、女性ではどう説明されるのか。この2つについて教えてください。
○国立循環器病研究センター望月研究所長
ありがとうございます。前村先生が御指摘の緑の所が左心室になるということは、もともと分かっていたことですが、赤の部分に関しては、トラベキュラーにいくのか、緻密層にいくのかというのは、まばらになっているところで、どこの領域、例えば自由壁にいくとか、そのようなことはまだ分かっておりません。それは個体によっても違うのですが、はっきり言えるのは、左心室にいくということだけしか分かっておりません。
それから、その遺伝子のHey2のエンハンサー活性の異常が起こるということで、ここのミューテーションに関しては、先ほど宮本が御説明しましたように、今後、ゲノムのほうを調べることにより、先天性の心疾患との関係を突き詰めていきたいと考えております。現在、分かっているのは、形態学的にマウスで突き止めたということだけにとどまっていると理解しております。
もう一点、Y染色体のUtyの欠損、先生もよく御存じのように、これはエピゲノムのヒストンのメチル化のコースなのですが、ヒストンのメチル化は別にUtyに限るということではありませんので、ほかの所にあるヒストンのメチル化をどのようにしていくか。ジメチルエスなので、それがどうなっているかというのは、多分、補完的にやられている所があるのですが、男性の場合は、ここが非常に影響を受けやすい、ここがほかの所のヒストンのジメチルエスでは十分補完できない。それがマクロファージが起きたときに、線維化が余計に亢進する結果になったと理解しております。
○前村委員
女性の場合は、これは余りなくてもほかで代償されているので問題ないということですか。
○国立循環器病研究センター望月研究所長
おっしゃるとおりです。
○前村委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
ほかはよろしいでしょうか。私からオープンイノベーションラボについてお伺いします。約20の機関が入っておられるということですが、これは全て企業とかベンチャーということでしょうか。それとも、どなたか別の研究者が借りておられるのかということです。その場合、国立循環器病研究センターと共同研究することが入居の条件となっているのか。といいますのは、経営的に、いわゆる黒字を生むようなものなのか、ある程度の赤字は覚悟してやるようなものなのか。そのようなことを教えていただけたらと思います。
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
ありがとうございます。現在、OILに入居して共同研究を行っている所は、全て企業、ベンチャーを含む企業です。研究者が入居をして研究をするということはありません。ただ、先ほどお話しましたように、OWLという所に関しては、若干、条件を緩めてウェットなラボということで、そういったことも可能にしようと考えております。そういったことにより、入居していただいている企業からの入居費用ということで、一定の収益を上げており、全体の管理について、採算性としては持ち出しは余りないと考えております。
○土岐部会長
ありがとうございます。深見委員、どうぞ。
○深見委員
同じく、オープンイノベーションラボや共用Wetラボ、それから共用の研究部等、いろいろ組織がたくさん立ち上がってきたと思いますが、どの程度、活用がされ始めたのか。企業の方等々の入って来る方々と、若手などを対象にした中の方々の利用もあると思うのですが、そういった中と外の連携等の状況、今、どのように活用が進んでいるかを教えていただけたらと思います。以上です。
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
ありがとうございます。宮本から回答させていただきます。オープンイノベーションラボは、当センターが新建屋に移る際に、"一つ屋根の下"でのオープンイノベーションを可能にするという目的で作られたものです。ですので、その中に入る企業等は、国立循環器病研究センターの中の組織ということではなく、あくまでも企業の方ということになります。ただ、"一つ屋根の下"で一緒に共同研究を行う環境を作るということです。ですから、基本的には共同研究をしていただく企業に入っていただくことになっており、ほとんどの企業が共同研究を行っております。若干、共同研究が終了する、あるいは、今後、共同研究が始まる可能性があるという企業についても門戸を広げようということで、1つ、2つの企業は入っていただいておりますが、それ以外は全て共同研究をしている企業ということになっております。
若手の研究者に対しては、それらの共同研究の中で企業との共同研究の経験を積んでいただくことを期待しており、実際にやっていただいております。若手の研究者が行う研究の場所としては、病院、あるいは研究所に別に設けられておりますが、唯一、ウェットを行う研究場所が若手にとって少し不足しているというところもあり、今回、OWLという場所を新設したのも、その理由の1つとしております。
○深見委員
OWLの利用に当たっては、審査、競争はどれぐらいになっているのですか。
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
現在は、まだ競争はそれほど高くはありません。実際、OWL全体の中で3分の1のエリアを開放して利用を開始しております。徐々に条件を整備していくということで、そのようにこの4月からさせていただいておりますけれど、現在、その3分の1の約半分が埋められております。今後、そのエリアを少し増やしていこうと考えております。
○深見委員
ありがとうございました。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。私から1点です。3Dプリンタの心臓のモデルについてです。確かこれの医師主導治験をされると言われていたのですが、医師主導治験ということは保険収載を目指すのかなと思うのですが、どういった形で保険収載されるのか。こういったものは開発はできるのですが、なかなか保険で点数が付くことが難しいような気がするので、どのようなエンドポイントでされるのでしょうか。
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
ありがとうございます。現在、医師主導治験を終え、この3D心臓モデルを使って手術に臨んだ場合とそうでない場合を比較した医師主導治験が既に終了しており、その有効性が認められたと聞いております。それにより、医療機器の承認を得ております。今後、臨床の場でそれを使っていただくための保険収載の手続を行っているところです。
○土岐部会長
保険収載の場合は、具体的なベネフィット、例えば、患者さんの合併症が少ないとか、手術時間が短いとか、多分、そういったエンドポイントを設定することになると思うのですが、それは分かりますでしょうか。
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
それに関する医師主導治験は既に終え、その結果として、有効性が認められたと聞いております。
○土岐部会長
分かりました。ほかはよろしいでしょうか。それでは、1-1、1-2に関しては以上としたいと思います。
続いて、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」の評価項目1-3から1-5について議論をしたいと思います。先ほどと同様に、まずは法人のほうから説明をよろしくお願いいたします。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
よろしくお願いいたします。病院長の飯原です。1-3から1-5まで、続けて御説明させていただきます。
まず、1-3、医療の提供に関する事項です。中長期目標の内容は、(1)高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供と、(2)患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供です。自己評価はSとさせていただきました。これから御説明させていただきます。
まず、Ⅱ、指標の達成状況ですが、病院の1-3の定量的な指標は、3つあります。先進医療を含む高度かつ専門的な医療の提供については、心房細動の根治治療件数、補助人工心臓装着患者外来管理患者数、超急性期脳梗塞への再灌流療法、いずれも実績値は120%を大きく上回っています。
次のページには要因分析等があります。24ページを見ていただいて、評定の根拠です。世界最高水準の高度専門的な医療提供の推進については、国内最高の年間の心臓移植の実施などです。新たな診療体制モデルの構築・提供については、「フレイル予防ネット」等、これから御説明させていただきます。最後の循環器病の先制医療・個別化医療の実施については、疾患感受性遺伝子のバリアント等、循環器疾患との関連について説明させていただきます。
25ページです。これは外科手術です。ロボット支援下低侵襲心臓弁形成術の実践と推進です。時代がより低侵襲の外科治療に向かう中で、このロボット支援下の心臓手術は、2023年全国2位でした。2024年は、現在のところ更に昨年度比で1.5倍ぐらいのペースで伸びています。右側のスライドに示しましたように、脳動静脈奇形の複合治療についても国内最多の治療数で、単一の施設で、開頭・血管内治療・ガンマナイフの3種全てを備えて、個別の患者に最適な治療をしているのは国循だけというところで、その成果を海外国際誌に発表しています。
次のページです。こちらは、先ほども申しました個別化医療に関する所です。左側のスライド、家族性高コレステロール血症(FH)と脳血管障害との関連は一般的に乏しいと考えられてきましたが、一部のFHの家系に脳血管障害の患者が集積するということで調べたところ、FH患者の中で、RNF213 p.R4810Kバリアントと頭蓋内動脈閉塞症の関連が認められることを発表しています。右側のスライドは、同様にこのRNF213 p.R4810Kバリアントと冠攣縮性狭心症との関連を報告しています。こちらも国際誌に報告していますが、1点、訂正があります。この『JACC:Asia』のIF=21.7というのはJACCの本誌で、こちらのところはまだIFが付与されておりません。
27ページです。移植医療、昨今もよく心臓移植の件数がなかなか増加しないという報道がされていますが、昨年度はコロナ禍も終息し、国循は、全国の実施施設の中で過去最多となる年間32件の心臓移植を実施しました。また、その心臓移植後の生存率も世界的に見ても極めて良好というところです。右側のスライド、「フレイル予防PAD」でつなぐ地域包括ケアの実現です。超高齢社会の中で、このデジタル・デバイドを解消するために、様々な工夫をしたデジタルのPADを配布して、吹田市の病院等に配布して、今、その効果を検証しているところです。
28ページです。これも最近プレスリリースした件です。枕の高さと特発性椎骨動脈解離、これは東アジア人に多いとされていますが、この関連を初めて発見して報告しています。右側のスライドは、超高齢社会で増えてきている軽度認知障害(MCI)の患者に対して、シロスタゾールの臨床効果並びに安全性に関する医師主導治験を完遂しました。シロスタゾールの認知機能自体への有効性は示されなかったのですが、βアミロイドの血液への排出を促進させた可能性を証明しています。
29ページです。こちらは、循環器病の遠隔医療の開発・実施です。コロナ感染症の中で、循環器病というのは時間との戦いとされる医療の提供において、そのニーズに合った遠隔医療の開発・実施をしています。在宅勤務でも電子カルテが閲覧可能にし、シームレスに抗菌薬処方の助言・検討を実施することで、救急や重症例が多い国循においても、時機を逸しない感染症診療の助言が可能になりました。右側は、チーム医療に関して、国循版Rapid Response Systemを、GRMが中心となって構築し、年々導入実績が増加するとともに、院内心肺停止の件数が11件と、前年度に比較して半減しました。
30ページです。これは、腹膜透析を医療の過疎地でも可能にするためのアプリの開発です。今、腹膜透析は国策として増やそうとしていますが、専門医偏在の問題解決を目的として、遠隔地で腹膜透析の専門医がいない所でも、専門医の指導の下にできるように「どこでもPD」というアプリを開発しました。右側は、肺高血圧症に伴う重症右心不全治療における一酸化窒素吸入療法の治験です。現在のところ、このNOの吸入療法は、新生児の術後あるいは心臓周術期に適応が限られているのですが、適応を拡大する目的で、肺高血圧症における右心不全の保険承認を目指して、治験を行っています。この段階で、これは30例を目標に実施していますが、国循で23例、本日の時点で29例まできています。世界に向けてこの新しい適応の拡大の有効性を証明する治験を遂行しているところです。
31ページです。左側は、世界初の急性心筋梗塞のサイズを抑制する迷走神経刺激システムの治験を開始したということです。このスライドの左側に示しているバスケット電極を上大静脈に留置するというところで、そこで心臓に向かう迷走神経を刺激します。現在のところ、国循の病院で2例実施し、この治験を開始したところです。もしこれの有効性が証明されれば、急性心筋梗塞に心不全を合併する年間2.4万人の患者の予後と生活の質の向上につながる可能性があります。この右側は、島皮質を含む脳梗塞を発症後に心房細動が検出された患者は、塞栓症の再発率が低いことを発見したということです。今、ブレインハートチームでの医療が、世界中で注目されていますが、脳梗塞の発症後に検出された心房細動というのは、以前から存在していた心房細動よりも持続時間が短く、塞栓症のリスクが低いと考えられていましたが、その病態生理には不明でした。今回は2つの多施設前向き観察研究の統合解析を行うことによって、このリスクの要因分析をしたというところです。
32ページです。ここでは、リハビリの2つの試みについて報告しています。左側スライドで示すように、脳卒中の発症後、約半数の患者さんで、重力知覚の障害によって身体が一方に傾く症候、ラテロパルジョンが合併します。それがリハビリの促進する上で、大きな阻害要因になっていました。そこで現在、リハビリの促進を目的に、xR技術を用いたリハビリテーショングラスを開発して、新しいリハビリ、歩行リハビリテーション戦略を開発しています。右側のスライドです。今、心不全パンデミックという言葉がありますが、ADLの低下、自宅退院困難例が増大する中で、より多くの高齢の心疾患患者の様々な病態に応じた、最適な心リハ方法の開発を目指して、このフレイルクラスを進化拡充しています。これは、従来型の心リハの方法から、筋力の増強に特化した新規的な運動様式の開発など、複数人でできる新リハ開発を目指しているということで、これから需要が増加する、高齢心疾患患者の解決を目指した試みです。
33ページです。左側は、国際共同前向き介入試験の中で、国循が日本の中で旗振り役として大きな貢献をしているという取り組みです。これはAdaptResponse試験と申しまして、Adaptive CRT機能を持った心臓再同期療法です。これは、心不全の予防のための、左脚ブロックを有する患者さんに対する心臓再同期療法なのですが、3,617人という過去最大規模の国際共同前向き試験です。この中で国循が症例登録に大きな貢献をしました。プライマリーエンドポイントは、心不全減弱を低下させることはなかったのですが、一部の症例において正常の右脚伝導例では優越性を示しました。右側は、2型糖尿病を伴う慢性心不全患者に対するSGLT2阻害薬の効果を同定したということです。これは、2型糖尿病を伴う慢性心不全患者に対して5mgを中心としたダパグリフロジン投与が心疾患イベントを抑制することを世界で初めて報告しました。
続けて、1-4、人材育成に関する事項です。こちらには2つの中長期目標の内容があります。リーダーとして活躍できる人材の育成が1つ。2つ目がモデル的研修・講習の実施です。指標の達成状況ですが、実績値としては達成度が医療従事者の研修受入れの人数は212%というところで、目標を大きくクリアしているところです。
評定の根拠は次のページに記載しています。リーダーとして活躍できる人材の育成です。これは、次世代の循環器病医療開発のため、連携大学院制度の充実を目指しています。これまで多くの大学と連携協定を結んできましたが、令和5年度は新たに神戸大学と連携協定を締結しました。これによって、大阪大学、京都大学、東北大学、熊本大学、慶應義塾、奈良県立医大、関西大学、立命館、東海大学等と、医学教育・研究の一層の充実を図るための連携協定を締結しています。また、当センター職員が大阪大学医学研究科及び薬学研究科大学院の招へい教員として、新たに多数の職員が任命されたということで、日本全国に指導者を輩出しています。モデル的研修・講習の実施に関しては、コロナ禍でなかなか足踏みをして、e-learningの受講に頼ることも多かったのですが、これから様々な取組が活性化しています。この次にそれを説明させていただきます。
36ページ、左側です。今年度、医師の働き方改革が始まっていますが、特定行為看護師研修の中で、それに先んじて令和4年度から、例えばこの中心静脈カテーテルの管理関連や動脈血ガス分析関連、2区分でこれを開講しています。令和5年度においてはこの実践件数は着実に伸びていまして、全体の中で392件ということで23%、こういう特定行為が実践されているということで、コンスタントな実践により、前年度比は11.2%の増加を維持しています。年々、この特定行為の看護研修を終えた看護師が、特に集中治療系のユニットに配備されて、着実にタスクシフトが行われつつあるというところです。右側は、先ほど1-2でも少し説明がありましたが、このイノベーティブラーニングセンターを開設したということです。今回は、企業と連携して、心房細動のアブレーションについて、マッピングシステムを用いながら、Webを活用して非常に多くの受講者を対象に教育を行っているということで、国循の均てん化を目指す試みとして、重要な試みとして報告させていただきました。
37ページです。こちらは先ほども御説明したところですが、(4)のモデル的研修・講習の実施ではBLS実技研修、全ての職員に対して、病院職員の100%受講を目指す取組を行っています。接遇力向上研修や虐待防止研修、こういうところも広く行っています。その下、千里金蘭大学の学生向けの外部の受託研修を行ったり、当センターの病院・研究所・OICが一体となった研修会も実施しています。
最後に1-5です。医療政策の推進等に関する事項です。(1)は国への政策提言に関する事項、(2)は医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項、(3)は公衆衛生上の重大な危害への対応です。指標の達成状況に関しては、国民向け、医療機関向けの情報提供の充実を図るということで、定量的な指標については、ホームページのアクセス件数の実績が目標に届かなかったのですが、後にご説明するように、この情報提供の充実に関しては様々な取組を行っています。
39ページ、評定の根拠です。令和3年度に循環器病対策情報センターを設置したのですが、このデータベースの診療情報の入力支援システムを再整備して、レセプト・DPCデータに加えて、電子カルテデータを活用することなど、省力化の手法を検討しています。負担軽減の収集システムの構成についても、厚生労働省の担当課とも協議を進めているところです。収集する項目についても、今、医療DXで示されているようなHL7 FHIRへのマッピングを検討、整理しているところです。次の医療の均てん化並びに情報の収集及び発信については、近年、注目されているプレコンセプションケアについて後ほど説明させていただきます。次の公衆衛生上の重大な危害への対応です。COVID感染症は、私たち循環器疾患でも非常に多くの、適切な救急搬送の必要性を浮彫りにしました。今回、報告させていただきますのは、適切な救急搬送を可能にするようなシステム構築に資するハンドブックの作成です。これについて、これから説明させていだきます。
40ページを御覧ください。循環器病対策基本法への貢献です。循環器病対策の診療情報収集・活用支援事業は、これまでも幾つかの支援事業として事業を行ってきました。大きな問題として、これから解決しなければならない問題として、やはり入力の省力化です。これまで私たちは検討を加え、レセプトデータ・DPCデータに加えて電子カルテのデータを活用することで、約80%の項目は自動登録できる可能性があることを確認しています。今、研究ベースで、更なる負担軽減のため、カルテ記事に対する自然言語処理や生成AIの活用手法について検討を始めているところです。また、この収集する項目については、医療DXで示されているHL7 FHIRへのマッピングを検討、整理して、JHの横断的研究費も頂きながら、この環境を準備しているところです。右側を見ていただきますと、脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業が令和4年度から行われているわけですが、令和5年度は国立循環器病研究センターと大阪府が申請をして採択をされています。大阪府のような多くの大学がある所としては、大阪が初めて採択されたわけです。国循の取組としては、府内の5大学病院、関西医大、大阪公立大学、近畿大学、大阪大学、大阪医科薬科大学と連携し、大学の中では、特に大阪大学を中心として、各々国循が1つのペアとなって、地域住民のみならず、広く国民向けに、患者に対する市民公開講座や健康講演会などの講演会を共同で実施しました。本年度も大阪府と連携して、多職種連携の教育のプログラムを作っていきます。総合支援センターとして、国循が大阪府の中心的な役割を果たす所存です。
41ページです。循環器に特化したプレコンセプションケアです。近年、プレコンセプションケアが注目されているのですが、女性やカップルに将来の妊娠のための健康管理を提供することで、より健全な妊娠・出産のチャンスを増やし、次世代の子供たちをより健康にすることを目的としています。この開設は古く、非常に先駆的に私たちは始めていまして、2012年から始まって、循環器疾患に特化した外来をしていました。2023年までに488例の妊娠前カウンセリングを行い、これによって、このカウンセリングを行った女性では妊娠の中絶を選択した例はないということでした。一方、カウンセリングなく妊娠した女性は10.6%が中絶を選択したということです。これから政策にも取り上げられ、重視されているこの取組を、更に充実させていきたいというところです。右側は、心臓MRIの簡便化、簡単なシークエンスの構築、これは医療の均てん化の1つの試みです。心臓MRIというのは、なかなか標準化などが難しくて、この辺りは国循がより広く普及することを目指して、放射線部を中心にこういう取組を行っているところです。
最後、42ページです。こちらは、循環器病対策基本法への貢献として、先ほどお話した循環器病の病院前救護システムの構築に資するハンドブックの作成です。今、脳卒中のほうでは、病院前診断に対しては大血管閉塞の判断が大変大事になっていまして、この脳血管内治療が常時行えるようなセンターに、いかに適切に早く運ぶかということが、世界的な課題になっているわけです。ここで、大血管閉塞の判断のスケールの使用率は、現在のところまだ28%と低いわけなのですが、総務省消防庁が中心となって、これが標準化した所を全国に展開していこうというところに注目して、このハンドブックというものを作っています。『脳卒中・急性冠症候群・急性大動脈解離ハンドブック』というものを作って、これは全国の消防本部に配布しています。これから循環器病研究センターのホームページにも展開して、広くダウンロードをして活用していただこうという取組です。以上です。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
ありがとうございました。ただいま御説明がありました事項につきまして御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いしたいと思います。
○花井委員
御説明ありがとうございます。30ページの腹膜透析のアプリについてです。PHRと書いてあるのですけれども、それぞれの患者さんが持つデータをどこかが全体データベースで管理していて、それを患者さんに返すという、そういうツールなのですかね。いわゆるPHRみたいな形になっているのか。そうすると、そのデータは国循さんのほうでホールドしているのか、どこか民間の企業がやっているのか、もう少し詳しい御説明があればと思います。よろしくお願いします。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
ありがとうございます。「どこでもPD」というのは、腎臓・高血圧内科の医師が開発したアプリです。国循がデータを管理するところまでいっておりませんが、ある企業と国循の医師が連携してこのアプリを開発して、沖縄県だったと思いますが、そこでモデル的に実施しているところです。メイン画面は、最新版というのが下に書いてあるのですが、腎臓専門医がいない地域で腹膜透析を広くやっていくというのはなかなか難しいということで、そのようなツールを開発することを目標として、右に腹膜透析の処方と必要な検査結果、そこで変更が可能とか、患者の現病歴・既往歴・ケアの注意点ということが書いてあります。このアプリを開発して、専門医がいない所でも、かかりつけの医師と患者がこれを共有しながらやっていこうということだと私は理解しております。
○花井委員
ありがとうございます。ということは、民間の業者さんが患者さんのデータを預かることに同意して、患者さんがアプリを使うことに同意していくと使えるという、そういうモデルと理解してよろしいのですね。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
はい。
○花井委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村です。医療提供の体制、人材育成、医療政策に関して、非常に成果が出ているのが分かりました。29ページについてお伺いしたいと思います。循環器病の遠隔医療と聞いて最初にイメージしたのは、国立循環器病センターは全国から患者が集まっていて、結構遠方の患者も多いので、遠隔医療で、地元にいてもそこのドクターと一緒に診療できると、そのようなことをやっているのかと思ったら、今回は感染症のコンサルトみたいなものだったのですけれども、現在、D to P with Dとかwith Nとか、そういうのをされているのか、将来的にする予定があるかというのは、いかがでしょうか。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
ありがとうございます。先生の御質問はすごく大事な点でして、遠隔医療につきましては、幾つか診療科ごとに個別の取組をしております。例えば肺循環科では、肺高血圧症というのは希少疾患で、なかなか全国に専門家が津々浦々いらっしゃるわけではないと理解しているのですが、特にコロナ禍の中で、やはり患者さんの受療の状況はかなり変わったように思います。私たちの病院は、肺循環の患者さんが全国から集まってくるのですが、コロナの中で患者さんの移動がすごく難しくなって、受診患者が、特に新患の患者さんとかが来なくなったということもあります。その中で、企業と連携して、D to Pで疾患の管理状況を当科の医師が遠隔でアドバイスするという診療を展開しております。このように、診療科ごとに個別の展開をしています。あとは、患者さんのPHRに関しては、例えば脳卒中の患者さんでアプリを使って患者の急性期以後の疾患管理状況を、例えば血圧とか体重とか運動などのデジタルデータを収集するなど、そういう個別の試みをいろいろやっております。
○前村委員
ありがとうございます。そういうのが非常に役立つと思いました。ありがとうございます。
○土岐部会長
藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
御説明ありがとうございました。藤川です。41ページのプレコンセプションケアのことについて伺いたいと思います。2012年からということで、確かに循環器疾患を抱えた妊婦さんというのは、いろいろ悩ましいところが多くて、昔から取り組んでいらしたのかなと思いますし、カウンセリングを行った成果があるということもよく分かりました。JHをはじめとし6NCの中でいろいろ共通にやれることはやるという話が前提にあると思いますが、プレコンセプションケアは、成育医療センターにおいても取り組みがあって、例えば遠方の方はこれらの施設でもカウンセリングが受けられますとウェブサイトに書いてあって、そこに大阪医科大学附属病院もリンク準備中みたいなことが書いてある。その中で、ここに循環器センターが出てこないということが悲しいなと思いました。是非6NC間のいろいろな共有化、情報交換など進めていただきたいと思いました。以上です。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
ありがとうございます。先生がおっしゃるとおりでして、実は女性の健康センターが成育にできることになって、病院長の笠原先生に来ていただいて、当院の産婦人科の部長とすでに話を進めています。これから連携していこうというところでして、今、先生が御指摘になった6NC間の連携というのは、JHの横断的な取組でも様々やっておりますので、恐らくそういうセンターができたときに、循環器疾患のことに関して、成育の女性の健康センターをハブにして、私たちも情報共有を更に進めてまいりたいと思っております。以上です。
○藤川委員
成育のプレコンセプションケアセンターというウェブサイト内にはすぐにでもリンクを張っていただけそうな気もします。例えば転勤で御主人と東京から大阪に行くような方が、成育のほうのサイトからいろいろ調べる可能性などもありますし、それほどお金が掛からずにやれることは、どんどんやっていただきたいと思いました。よろしくお願いします。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
ありがとうございます。
○土岐部会長
根岸先生、どうぞ。
○根岸委員
根岸です。よろしくお願いいたします。御説明ありがとうございました。様々な取組を展開されていて、成果が大変素晴らしいと思って伺いました。医療の提供のところで、25ページのロボット支援下の弁の形成術について教えてほしいのですけれども、大変これは低侵襲ということでメリットが大きい手術で、恐らくこれから適応疾患も広がっていくことが予測されます。その一方で、非常に技術的には難易度が高いと聞いているのですけれども、その辺りで、医師の研修はどのような形で行われているのでしょうか。よろしくお願いします。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
ありがとうございます。おっしゃるとおりです。件数自身は、先ほどお話したように、今年度に入ってまた非常に増えておりまして、恐らくそういうニーズがあることは間違いなくて、もしかしたら、そういう集約化が進んでいるのかもしれません。ロボットの手術というのは、私も自分で経験があるわけではないのですけれども、やはり同じ画面を見て、若手と術者がコンソールの別側に立って同じ画像を見ながらやるので、恐らく術者としての経験というのはかなり共有できるのではないかと思っています。それと、今の部長の方針で、かなり若手に執刀の機会を与えていますので、ロボット手術においても、若手の術者がどんどん成長してきていると私も実感しております。疾患ごとの難易度も考えながら、センターに患者さんを集約化して、その中で若手をどんどん育てていくという方針で対処したいと考えております。
○根岸委員
ありがとうございました。是非、推進していただきたいと思います。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。私、土岐のほうから1点、移植のことです。昨今、マスコミ等でも、移植に対応しきれないケースが増えているということですけれども、お伺いしたいのは、今30例を超えて大変だと思いますけれども、職員の勤務状況は大丈夫なのか。特に週末に移植は集中しますので、過重労働になっていないかどうか。そういったことは、きちんとフォローできているのでしょうか。
○国立循環器病研究センター飯原病院長
先生がおっしゃった点は、我々も非常に注視しているというか、今の働き方改革の中で非常に大きなポイントだと思っております。勤務状況については、一般の職員と同様に、毎月、職場長、部署の長がチェックするようにしております。ただ、先生がおっしゃるとおり、国循も週末に非常に移植の症例が集中する週があります。昨今の報道でも、国循が移植を断念した例が1例あったということが報告されておりますけれども、その週は、実は週末の3連休に4例紹介があって、その中で3例対応したということなのです。ですので、先生がおっしゃるとおり、限られたメンバーの中で心臓移植の推進に、非常に使命感に燃えてやっているわけですが、これはシステムで解決する余地は十分あると思っておりますので、その辺りは、今、厚生労働省やJOTがいろいろアンケート調査をされていると伺っていますので、その結果を見ながら、また国循としても考えてまいりたいと思っております。ありがとうございました。
○土岐部会長
ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。それでは、次に移りたいと思います。
続きまして、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」の評価項目2-1から4-1について議論したいと思います。先ほどと同様で、まずは法人から説明をよろしくお願いいたします。
○国立循環器病研究センター北波企画戦略局長
それでは、業務運営関係につきまして、項目2から4について御説明させていただきます。まず43ページ、評価項目2-1、業務運営の効率化に関する事項です。自己評価の評定についてはBという形にさせていただいております。
中長期目標の内容については、効率的な業務運営体制、効率化による収支改善を掲げております。指標の達成状況です。私どもは経営の改善には努めておりますが、まだ収支については赤字が続いているところではございます。後ほど、その改善状況については御説明いたします。上の指標、経常収支率については、目標は100%以上ですが、令和5年度は実績値が98.3%となっております。経常収益が387億円、費用については394億円ということで、約7億円のマイナスになっているところです。ただ、令和4年、令和3年に比べて、令和5年の達成度は上がっているところを見て取っていただければと思います。また、後発医薬品の使用率については、目標を上回る実績を上げております。現在は、令和5年度で91.2%です。一般管理費については、年度計画は前年度に比して1%以上削減、また中長期期間の最終年度において5%以上の削減というところです。目標は大体1.9億円に設定しておりますが、現在のところ2.2億円ということで、達成度については86.1%になっておりますので、更なる効率化を進めていきたいと考えております。
44ページが損益計算書とキャッシュ・フローです。先ほど申し上げた▲7億円程度というのは、損益計算書で見て取っていただけると思います。経常損失6.9億円、それから当期純損失は7.01億円になっております。右側にキャッシュ・フロー計算書がございます。キャッシュ・フローについては、期首残高が81億円、期末残高が87億円で、キャッシュ自体は6億円増という形になっております。
経営の効率化として具体的にどのようなことをやったかについては、45ページを御覧ください。まず、医業収益を拡大するということで、令和4年9月から、私たちは理事長、病院長、それから各診療科の部長と毎月ミーティングを行い、これについては昨年度も引き続き実施をして、それで共通の目標をしっかり確認させていただいて、その実現に向けての打ち手を考えていくという取組を進めております。特に新入院患者をどのような形で設定していくのかは、非常に目標として分かりやすいところもあり、それを中心に各指標を見ていく形にしております。具体的には月当たり1,200名の新入院患者というのが望ましいわけですが、その結果として、令和3年度の1,013人から令和5年度は1,171人ということで、15.6%の増加をしております。また、医療の質をよく測る在院日数についても、平均在院日数が2日間も短縮をするということで、より濃厚な治療を効果的に行うことに努めているところです。
また、右側ですが、医業費用の削減についても調達コストの削減をすることで、NHO大阪医療センター、大阪大学医学部附属病院とともに、連携協定を締結した上で、同等品であれば安価なものを調達をするという方式を取らせていただき、年間3,800万ですが削減効果が得られているところです。右下の後発医薬品については、先ほど申し上げましたとおり、72.7%の購入金額シェアという形になっているところです。品目が増えても購入金額について差があるというのはよくある話ですが、購入金額シェアについても70%を超えているところを見ていただければと思います。
続きまして46ページ、評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項です。繰越欠損金については、自己収入の増加に関する事項と、資産及び負債に関する事項について、それぞれ指標を改善することで取り組んでいるところです。達成状況については、申し上げましたように収支はまだ赤ですが、実績については7億円程度の増になっているところです。右下の実績の所を見ていただきますと、繰越欠損金解消計画はなかなか達成していませんが、実績で累績がどのような形になっているのかと。令和4年が▲15億円、これに比して令和5年は▲7億円ということで、改善度合いについては約9億円の改善をしていると見て取っていただければと思います。少しでも累績分を減らすために努力を続けてまいりたいと考えております。
47ページはその他業務運営に関する事項です。中長期目標の内容は、法令遵守等内部統制の適切な構築、人事の最適化、その他の事項ということで、自己評価はBにさせていただいております。
48ページです。一昨年2月ですが、理事長の大津から法人全体の今後の展望を示した上で、職員一丸となって、マイルストーンを設けてロードマップを作り、進捗状況の管理をし、それぞれの課題について検討チームを組んで検討と実践を行っているところです。令和5年の主な成果について、ここに掲げております。幾つかピックアップしますが、特に(2)の研究費獲得支援で言いますと、科研費の採択率が51%ということで、特筆すべき成果であると考えております。それから、先ほど医療のところでもありました(5)ですが、断らない救急対応ということで94%、現在も90%後半を維持しておりますが、非常に地域の医療機関にとっても信頼ある医療機関になっているのではないかと考えております。また、右側の研究成果のビジネス展開、先ほど、評価項目1の領域で触れた「かるしおプロジェクト」の拡大であるとか、オープニングイノベーションの推進という多方面での活動を行っていますし、また、寄付チャネルの拡大もさせていただいております。
それから、研究不正事案への対応ということで、再発防止に努める。また、人事の最適化ということで、人材交流の推進や人事評価制度。また、1on1ミーティング、風通しのよい職場を進めるということで、コミュニケーションの向上に努めているところです。評価項目2から4については以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
○土岐部会長
ありがとうございました。ただいま御説明ありました事項について御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いしたいと思います。藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
藤川です。よろしくお願いします。まず、45ページの医業収益の拡大ということで、今、繰越欠損金の解消に向けていろいろ努力されている中で、ミーティングとか、具体的な目標を決めるというようなことが書かれています。特に新入院患者の獲得ということを中心にやっていますよ、実際にも効果が出ましたよということだったのですが、ここでは「打ち手を検討し」ということで、余り具体的なことが書いてありません。具体的には、例えば紹介患者を増やすために近隣を回るとか、先ほど別のところで出てきた救急の応需率を上げるとか、そういうことだと考えてよろしいのでしょうか。具体的なことを教えていただきたいと思いました。
もう一点あるのですが、48ページ目の研究不正の話です。何度か繰り返して研究不正の問題が起きて、なかなか申し上げにくい話ではありますけれども、現在、理事長が第三者委員会の調査の対象になってらっしゃるということなので、何となく皆さんすっきりしないところもあるのかなと思うのです。去年の夏に第三者委員会が立ち上げられて約1年ということなので、いつ頃にその結果が出て、皆さんがもう少し次に向かってすっきりとやっていけるような状態になるのかという見通しのようなことを教えていただけたらと思いました。よろしくお願いします。
○国立循環器病研究センター北波企画戦略局長
ありがとうございます。それではお答えさせていただきます。最初の新入院患者数のところは御指摘のとおりでございまして、いわゆる国循のすそ野を広げるという意味で、病院のドクター、その他の職員も含めて、訪問活動であるとか、講演会、いわゆる勉強会への参加、こういうものを積極的にしているところでございます。そういう中で、近隣の病院に比べまして患者さんの数は外来も含めて昨年よりもだんだん増えている状況になっています。ナショナルセンターの使命というのは、症例をより多く集めて、そして医療の向上につなげていくということですので、このような活動の中で、より広い患者さんを、まずは地域、そして全国から、希少疾病について集めていって、より良い治療を提供すると。もう1つは、やはり救急です。これについては、近隣の消防本部との連携というものをしっかりと進めさせていただく。その消防本部についても、今まで連携していなかった数が少ない所についても積極的に出向いて、この国循の医療というものを知っていただいて、患者さんに来ていただくというようなことをしております。そういうものを含めて、入院につながる患者さんの増加、ひいては、経営状況から言うと医業収益につながっていくということで考えています。毎月のヒアリング等でも、その活動状況については各診療科に確認をさせていただいている、こういうところでございます。
2番目の研究不正事案については、これは第三者で行われるという話でございますので、手続については適切に行われているのではないかと考えております。法人組織自体にとっては、特にここについて指揮を発動するわけではございませんので、ガイドライン等に基づいて適切に行われているものというふうには考えております。したがいまして、いつ頃に結論が出るかということについては、私どもは答えられる立場にはないということは御理解いただければと思いますが、適切にしていただいて、結論を出していただく、こういうことは期待しているところでございます。
○藤川委員
ありがとうございます。なかなか国循に診てもらうということは敷居が高いというようなことを聞いたことがあるので、是非いろいろな所に顔出しをしていただいて、国循で診てもらえるような人を増やしていただけたらと思いました。
あと、第三者委員会のほうは、もちろん委員の方が調べられることなので、期限を決められるわけではないのは分かっておるのですけれども、組成をされるときに、目安となる、この時期ぐらいにというようなところは事前に話は出ているのかなと思ったのです。前回のときも、結論が出るまでの時間が非常に長かったなというふうに、一般的な委員会と比べてもちょっと長いなと感じました。調査に対して、協力体制が得られているのだろうか気になったので、お聞きした次第です。早く結論が出ることを期待しております。ありがとうございました。
○国立循環器病研究センター北波企画戦略局長
ありがとうございます。要請があれば協力するというのは、これは当然のことでございますので、それにしっかりと応えているところでございます。進捗状況についてはコメントする立場にないというところは御理解いただければと思います。
○土岐部会長
ありがとうございます。前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村です。医業収益については詳しく説明していただいたのですけれども、外部資金について、科研費の採択率が高いとか、オープンイノベーションを非常に盛んにやっているということは御説明いただいたのですけれども、このことによる外部資金の動向というのはいかがでしょうか。
○国立循環器病研究センター北波企画戦略局長
ありがとうございます。医業外収益のほうでございます。実際、採択率が51%というのは、当然ながら研究の質を上げるという意味で、この競争的資金を獲得する、外部から認められるような研究を盛んにしていくということで意義があるというところでございます。医業外収益については、それほど、医業ぐらい抜本的に改善はしているわけではございません。当然ながら獲得金額については前年度に比べて大きく増えているところでございます。対前年度比で見ましても2.3億円の増というふうな形になっていますので、そんなことで理解していただければと思います。
○前村委員
はい。ほかのセンターは、医療外収益はどれぐらいというのを出して、その年次推移も出されているので、幾らぐらいかというのをちょっと知りたかったというところです。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。
○前村委員
はい。
○土岐部会長
ほかはよろしいでしょうか。私、土岐からは、繰越欠損金のほうが大分増えているということなのですけれども、今後の計画を見直していくとか、そのような計画はあるのでしょうか。
○国立循環器病研究センター北波企画戦略局長
お答えいたします。中長期的にどのような計画になっていくかということは、また所管官庁とも相談していくということになろうかと思いますが、現在のところ、まず私たちとしては、単年度の実績をしっかりと上げて、それで繰越欠損金が累積しないような体制に持っていきたいというところでございます。そういうことをしっかりとさせていただくことをもって、解消計画自体を現段階でこのように変えていくというふうなプランを持っているわけではございません。
○土岐部会長
ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。それでは、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項については、以上にしたいと思います。
全体を通しまして質問、御意見等はございますか。ないようでしたら、最後に、法人理事長と監事からのヒアリングを行います。まずは、法人監事より業務の監査結果等を取りまとめた「監査報告」について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や、今後の課題、改善方針等について、コメントをお願いしたいと思います。
○国立循環器病研究センター小川監事
ありがとうございます。監事の小川でございます。お願いいたします。監査の結果でございますが、資料2-4に添付されている監査報告書に記載のとおり、適正適法の意見を表明させていただいております。
令和5年度におきましては、業績改善の様々な取決めなど、新たな数値目標を共有しての業務改善に取り組まれているところです。先ほどからいろいろ説明がありますけれども、新入院患者の増加等による医業収益の増加や、材料費等の調達コストの削減努力、そういったものにより業績改善の成果が出てきているのではないかなと思っております。残念ながら、本年度も昨年度に引き続き、移転に伴う多額の減価償却費もあるということもあるのですが、赤字決算に終わりました。欠損金の解消等の業績目標については、本年度も未達に終わりました。しかしながら、その赤字の内容等を見ますと、昨年度多額に計上された新型コロナウイルス関連の補助金が大幅に削減していることや、電気、ガス等の光熱費の大幅な上昇、こういったものもありましたので、それらを考慮すると、当期の損失の計上額は前年度と比べて著しく改善されている、そこはかなり評価できるのではないかなと思っております。これも、センター一丸となった業績改善の努力に対する成果が、徐々にではあるのですが、出てきたというふうに見ております。
先ほども質問がありましたけれども、中長期のキャッシュ・フローの見通し、そういったものを踏まえた今後の財務運営の方向性も取りまとめられておりまして、将来にわたって安定的な財務運営をするためにはどういったことが必要なのか、そういったことについては職員に周知されているというところは我々も理解しています。令和5年度に財政融資資金の本格的な返済も始まりましたけれども、この調子で業績改善が続けば、返済資金は確保できるのではないかなとも考えております。
それと、これも先ほどから出ています大津ビジョンについてなのですが、大津ビジョンというのは、中長期計画に沿った組織運営を行う上で取り組むべき課題、こういったものを取りまとめられたものと理解しておりますが、これもビジョン実現に向けて継続してやっておられます。監事としても、一定の成果が出てきているこの取組状況を今後も確認させていただいて、その状況を見守っていきたいと思っております。
研究活動におけるガバナンスについてです。過去にいろいろと特定不正行為、不正事案がございましたので、それに対しては厳格な再発防止策、そういった取組が設けられて、それについて運用面においても着実に実施されているというところは、我々監事におきましても重点的に見させていただいているところです。今後も、この運用状況を引き続き注意していきたいと思っております。監事としては以上です。
○土岐部会長
ありがとうございます。続きまして、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをよろしくお願いいたします。
○国立循環器病研究センター大津理事長
どうもありがとうございます。今日は評価をありがとうございました。たくさんの質問を頂き、ありがとうございます。経営状況についてたくさん質問が出ましたけれども、我々は、減価償却前ですと31億円の黒字であります。しかしながら、2019年の新築移転のときの医療装置の購入、その他建物、そういうものの減価償却が令和5年度38億円、それから、そのときの借入金の返済が令和5年16億円、令和6年から24億円と、非常に厳しい状態の中で、この数字をたたき出していることを、何とぞ御理解いただきたいと思います。一昨年から始めた経営改革で、どんどん経営は良くなっております。そのいろいろな負債を抱えた中で、これからも頑張っていきたいと思っております。病院収益ではなくて外部資金の方も、研究所、OIC、それから病院一体となって、よりたくさんの外部資金を取ろうと、あるいは、寄付を取ろうということで、職員一丸となって財務の改善をしようと取り組んでおります。研究のほうは、我々が世界最高峰の循環器研究診療施設になる、その目標を皆で共有して頑張っているところでございます。今日は本当にいろいろありがとうございました。
○土岐部会長
ありがとうございました。ただいまのお二人の御発言内容等につきまして御意見等がございましたら、よろしくお願いします。よろしいでしょうか。それでは、以上で国立研究開発法人国立循環器病研究センターの令和5年度業務実績評価についての審議を終了いたします。どうもありがとうございました。
以上で、本日の議事を終了いたしました。事務局から、今後の流れについて連絡をお願いいたします。
○大臣官房厚生科学課西岡室長補佐
事務局です。今後の流れについて連絡いたします。本日、御議論いただきました令和5年度業務実績評価等については、この後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえて、厚労大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに、公表いたします。
委員の皆様におかれましては、事前にお配りしております年度実績評価、見込評価、この2種類の評定記入様式に必要事項を御記入いただき、8月14日までに、事務局宛てにメールにより御送付いただけますようお願いいたします。なお、本部会の前回、前々回の審議対象法人を含めた年度実績評価の御記入に当たっては、本日前半の国立国際医療研究センターの審議の際になされたJHの業務実績を加味したものとしていただくようお願いいたします。また、決定した厚生労働大臣による評価につきましては、後日、委員の皆様にお送りいたします。事務局から以上となります。
閉会に当たりまして、厚生科学課長の眞鍋より御挨拶申し上げます。
○眞鍋厚生科学課長
厚生科学課長の眞鍋でございます。本日まで、3回にわたりまして、大変長い時間御議論いただきまして、本当にありがとうございました。拝聴しておりまして、ときに温かく、ときに厳しい、そして、全体通じて非常に法人にとってサポーティブで、本当に示唆に富む様々な御指摘を頂いたと考えております。心から御礼申し上げたいと思います。所管課の課長としても、本当に感謝申し上げます。
頂きました御意見、御指摘に関しましては、十分に踏まえまして厚生労働大臣による評価を検討させていただくとともに、法人とも認識を共有し、今後の運営改善の参考とさせていただきます。また、国立国際医療研究センターの見込評価に関する本日の御議論を踏まえました法人の業務組織全般の見直し案は、次回9月3日に予定をしております部会にて御議論いただけるように準備を進めてまいりたいと思います。委員の先生方におかれましては、引き続き本部会に御協力くださいますよう、また、国立高度専門医療研究センターの更なる発展に向けまして、御指導、御鞭撻のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。短いですけれども、以上で挨拶とさせていただきます。本日は本当にありがとうございました。
○土岐部会長
それでは、本日は以上とさせていただきます。長時間にわたり、ありがとうございました。