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- 第34回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
第34回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録
日時
令和6年7月23日(火) 14:00~17:42
場所
厚生労働省 中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室(オンライン併用)
出席者
- 委員
-
- 土岐 祐一郎 部会長
- 中野 貴司 部会長代理
- 神﨑 恒一 委員
- 庄子 育子 委員
- 花井 十伍 委員
- 深見 希代子 委員
- 藤川 裕紀子 委員
- 前村 浩二 委員
議題
- 1 開会
- 2 議事
- (1)国立研究開発法人国立がん研究センターの令和5年度業務実績評価について
- (2)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和5年度業務実績評価について
- (3)その他
- 3 閉会
配布資料
- 国立研究開発法人国立がん研究センター
-
- 資料1-1 令和5年度 業務実績評価書(案)
- 資料1-2 令和5年度 業務実績概要説明資料
- 資料1-3 令和5年度 財務諸表等
- 資料1-4 令和5年度 監査報告書
- 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
-
- 資料2-1 令和5年度 業務実績評価書(案)
- 資料2-2 令和5年度 業務実績概要説明資料
- 資料2-3 令和5年度 財務諸表等
- 資料2-4 令和5年度 監査報告書
議事
- 第34回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
-
○西岡室長補佐
定刻となりましたので、ただいまより「第34回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。事務局、議事進行を務めさせていただきます大臣官房厚生科学課の西岡と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
本日は、根岸委員より御欠席の御連絡を頂いております。また、神﨑委員、庄子委員、中野委員、深見委員、藤川委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。なお、出席委員に関しては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
本日の会議の進め方についての御説明です。会場に御出席の委員においては、御発言の際は挙手していただき、また、オンラインで御出席の委員においては、Zoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。また、御発言時以外ではマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。御発言の際には、冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御発言される際には資料番号、該当ページを明言いただきますよう、お願いいたします。
続いて、議事の御説明です。本日は、国立がん研究センター及び国立長寿医療研究センターに関する「令和5年度業務実績評価」に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れについては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。説明と質疑応答のお時間は事前に時間設定をしており、終了1分前と終了時に事務局がベルを鳴らしますので、目安としていただきますようお願いします。
それでは、本日の会議資料の御確認です。オンラインで御参加いただいている皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、1-4、2-2、2-4を御用意いただいておりますでしょうか。その他の資料につきましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。会場の皆様の資料につきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料を格納しておりますので、そちらを御覧くださいますよう、よろしくお願いいたします。評定記入用紙については、所定の媒体を事前に送付しておりますので、そちらに御記入いただき、後日、事務局宛てに御提出をお願いいたします。
ここまで、資料の閲覧方法等について不明な点等がありましたら、チャット機能等も含めて事務局までお申し付けください。よろしいでしょうか。事務局からの説明は以上ですが、何かその他御質問等はありますでしょうか。よろしいですか。それでは、以降の進行につきまして、土岐部会長、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
よろしくお願いいたします。それでは、国立がん研究センターの令和5年度業務実績評価について、審議を開始したいと思います。初めに法人の理事長から一言、御挨拶をよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター中釜理事長
当センター理事長の中釜です。本日は、大変お忙しい中、昨年度の当センターの業務実績に関する説明の機会を頂きありがとうございます。まず、各評価項目に関する担当部門からの説明の前に、私から簡単に昨年度1年間の取組について説明させていただきます。
令和5年度の5月にコロナの感染が第5類に指定されたわけですけれども、それ以後1年間、やはりコロナ感染の影響は多少なからずあったかと思います。それが病院の経営においては少し影響があったかと思いますが、その中でも、東京都のCOVID患者の受入要請が昨年9月末で終了して以降、かなり当初目標に近い形での病院の経営状態、病床利用率、患者の受入れ、手術件数が回復してきたと思います。
その中においても、当センターの研究開発法人としての目的である研究活動に関しては、First in humanという開発早期の開発試験に関しても、総数で200件を超える、新規で50件を超える活動を継続しました。さらには、国際的な連携体制の強化、臨床試験の特に東南アジア諸国とのネットワーク構築、そのような試みを通じて、今課題となっているがん領域が受けるドラッグロス・ドラッグラグの問題に関しても、積極的に取り組んできたところであります。
人材育成、教育プログラムに関しても、連携大学院体制の一層の強化等に努めてまいりました。さらには、コンプライアンス体制の改革・強化についても取り組んできたところであります。加えて、第4期がん対策推進計画が昨年度から始まっていますが、がん対策の評価体制としてのロジックモデルの提案とともに、がん対策上の、アウトプット・アウトカム指標についての精緻化にも同時に取り組みながら日本のがん対策に貢献してきたと考えております。
このようなセンターの総合的な活動を可能にしたのは、やはり事務部門と各部門との密な連携体制が取れたことが非常に大きいと思いますし、そのような意味で、センターの成果としては非常に有意義なものがあったと理事長としては理解しています。その各項目についての具体的説明に関しては、これから担当者から説明させていただきます。本日は、よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
ありがとうございました。それでは、「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2に関する業務実績について、議論したいと思います。最初に法人から説明していただき、その後に質疑応答いたします。時間は限られておりますので、ポイントを絞っての説明をよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター間野研究所長
国立がん研究センターの研究所長をしております間野博行と申します。よろしくお願いします。研究開発に関する事項に関して、私から説明いたします。
4ページを御覧ください。評価項目1-1担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進です。自己評価をSとしました。以下、その理由について項目ごとに御説明いたします。
6ページを御覧ください。時間の関係から、課題を絞って説明申し上げることをお許しください。まずは、左側の1、がんの本態解明に関する研究で、(1)がん遺伝子パネル検査データの解析による日本人のがんゲノム異常の全体像解明です。これは、後で述べますC-CAT、日本人のパネル検査を全て集約しているデータベースですが、これに集まるデータ5万例を臨床情報を合わせて大規模な解析を行い、さらに、それをアメリカの同様な大規模ゲノムデータであるTCGAと比べてみたものです。その下の円グラフは、各がん種の症例数の大きさを表わしています。例えば左側の上の紫の所は膵臓がんですが、真ん中下の肺がんなどと比べても、膵臓がんのほうが、むしろはるかに多いベースになっています。このことからも、C-CATは難治がん、希少がんのデータが集約されているデータベースであることがよく分かります。右側のグラフは、各がん種と遺伝子の変異頻度の対応表を表わしています。今回TCGAと比較して分かった一番大きな注目点は、同じがん種であってもアメリカ人のがんはRAS変異がんが多いということです。一方、同じがんなのに日本人はRASの変異は少なくてP53の変異が多いことが分かりました。つまり、同じようながんが起きるにしても、その遺伝的バックグラウンドが人種によって異なってくるということが明らかになり、新たな疫学の解析が重要になるということを示唆したデータとなりました。このデータは、『Cancer Discovery』誌に論文発表となりました。
そのページの右側、(2)膀胱がんのFGFR3異常が腫瘍免疫微小環境と免疫療法の効果に与える影響を解明です。これは、解析手法の説明が少し難しいのですが、膀胱がんは、5割ぐらいがFGFR3遺伝子の異常があるとされています。しかし、FGFR3異常の有無で分けても同じような臨床経過をたどるわけではないことから、各個人のがんの多様性を明らかにするために、それぞれのがんの外科切除標本をシングルセルに分離して、1人当たり100万個のシングルセルを解析して、その人のがんと周辺細胞にどんなものがあるかを明らかにしました。がんと腫瘍微小周辺環境細胞のパターンから、全体のプロファイルを彼らが言うところのEcotype1から10に分けたのが、この結果になります。そうしますと、例えば特定のEcotypeのがんは、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬の臨床効果が5割近くあり、つまり、Tumor mutation burdenがたとえ低くても、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい効果があることが分かりました。つまり、腫瘍だけでなく周りの微小環境のプロファイルを一緒に定義することで、がんの新しいバイオマーカーは可能になることを示したデータで、かなり重要なものと考えます。これは、『Molecular Cancer』誌に出版されました。
めくっていただき、7ページを御覧ください。左側の(3)全ゲノム解析により胃がんの新たな発がん機構を解明です。これは、170例の胃がんの全ゲノム解析を行ったのですが、これまでのように点突然変異からがんを分類するのではなく、もっと大きな染色体の構造異常のパターンからがんを分類する試みを行ってみました。彼らが言うところの染色体構造異常シグネチャー、RS1~6と書いてありますが、全体で6種類ぐらいの構造異常を持つがん種に胃がんが分類されました。その分類ですが、下のグラフの上から2段目ぐらいの所がシグネチャーを表しています。例えば、赤色で染まっているシグネチャー4の所は、がん種としては全部びまん型胃がんになりますし、その隣のオレンジのシグネチャーを持つものは、BRCAの異常があるがんがここに集約されていることが分かります。さらに、となりの緑色のシグネチャーが多い所は、P53の異常あるいはタバコを吸っている人がこの胃がんになっていることが多いことが分かっています。つまり、染色体の構造異常はすごく大きな染色体の異常を分類しているにもかかわらず、それぞれ具体的な遺伝子変異がリンクしているように思われます。また、更なる解析の結果、染色体以外の所にDNAが漏れ出て、自立的に増殖しているDNAががんの原因であることが分かっていますが、胃がんにはそういう染色体外DNAが多いことが分かってきました。これらの結果は、『Nature Communications』誌に出版されております。
めくっていただき、8ページを御覧ください。右側の3、アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究で、(1)標準治療のない内膜肉腫でのMDM2阻害剤の有効性を確認です。これは、臨床試験をやる病院と付随研究をする研究所が一体となり活動しているからこそできる成果だというふうに自負しています。内膜肉腫というのは、血管の内膜における肉腫で、極めて稀な疾患で、外科手術で取れなければ標準治療さえ存在しないような稀ながんです。内膜肉腫の一部には、特定の染色体部分が増幅し、そこにあるMDM2が好発現しているがんがあると知られています。MDM2はP53のブロッカーですが、そのMDM2を阻害することにより細胞死を誘導するような薬剤が開発されました。そこで、実際の患者さんにそれの臨床試験を当センターの病院で行いました。結果は、右上のウォーターフォールプロットですが、左の3名ぐらいが奏効していることが分かります。また、その3名には、2段下ですが、TWISTという遺伝子の増幅があると、どうやら有効性が高くなりそうだという、バイオマーカーの候補が見付かりました。さらに、下に折れ線グラフがあると思いますが、薬が効かなくなってくる人は、あらかじめP53変異の腫瘍由来DNAが末梢血に流れ出していることが分かりました。このようなことは、研究と臨床試験とが一体として行われている国立がんセンターならではの成果ではないかと考えます。本成果は、学術論文誌『Cancer Discovery』誌に出版されました。
9ページを御覧ください。左側は、(2)子宮がん肉腫を対象に、PDXモデルでの効果と臨床試験効果が一致することを確認です。後からも述べますが、患者さんの生きているがんをそのままネズミの背中に植えて継代するPDXというモデル系があるのですが、これは薬の効果を予測する性能が高いと言われています。それをまず検証してみたのですが、同じ腫瘍を、患者さんで治療した場合と、それをネズミに植えてからネズミを治療した場合とで比較してみました。左側が患者Aで、患者Aは最初は非常によく効いているのですが、同様にネズミに植えたPDXは薬の治療によって速やかに消失しています。一方、患者Bは、腫瘍が少し小さくなったがすぐ再発したという症例ですが、これではPDXにおいても多少は効くけども消失には至らないということが分かりました。つまり、臨床の効果とPDXの効果はよく相関していることが分かります。
次の論文です。右側の4、患者に優しい新規医療技術開発に関する研究です。(1)RAS野生型大腸がんに対する抗EGFR抗体薬の最適な投与対象をリキッドバイオプシーにより決定です。これまで抗EGFR抗体は大腸がんの治療に使われていたのですが、例えば右側結腸に生じる大腸がんには効きにくいということが言われていました。そこで、リキッドバイオプシーで、EGFR抗体の治療抵抗性に関係するような遺伝子変異がある場合とない場合とで、きちんと科学的に比べてみました。それの結果が一番下のグラフで、左側の大腸がんであろうが右側の大腸がんであろうが、リキッドバイオプシーでは、そういう遺伝子変異が見付からない場合には、同様にEGFR抗体が有効であることが証明されました。この成果は『Nature Medicine』誌に出版されています。
めくっていただき、10ページを御覧ください。右側の5、新たな標準治療を創るための研究です。EGFR遺伝子変異陽性早期肺がんに対する術後補助療法の開発です。ⅢA期ぐらいまでの比較的早期の肺がんであれば、EGFR変異陽性の肺がんであっても外科手術療法が第一選択となりますが、その外科手術をした後にEGFR阻害剤を補助療法として付与することが、果たして予後を改善するかどうか、これまでコントラバーシャルで正解が得られていませんでした。そこで、東病院の坪井先生を中心としたグループは、大規模な臨床試験を行い、第3世代のEGFR阻害剤、オシメルチニブを使うことにより、Overall survival、全生存が延びることを確認いたしました。それが、一番下のグラフとなります。これも標準治療を世界で決める重要な成果だったと思います。この成果は『The New England Journal of Medicine』誌に出版されました。
次のスライドを御覧ください。11ページです。これは、このセンターの論文数の推移と、高被引用論文数の推移を表したものです。特に右下のグラフを見ていただきたいのですが、ほかの研究者からよく引用されている論文のことを高被引用論文数と言いますが、その上位1%となる論文は極めて優れた論文と一般的には考えられています。その高被引用論文数、Highly cited paperの数が、日本では我が国立がんセンターが、東大、京大等を抜いて、ずっとここ6年日本一を維持しております。このことも、我々のセンターの研究力が優秀であることを証明しているものと思います。
次のJHの事業に関しては、国立国際医療研究センターの先生方が御発表されると思いますので、そこは割愛し、19ページを御覧ください。評価項目1-2実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備です。ここでも、自己評価をSと付けました。それでは、実際の内容について御紹介申し上げます。
めくっていただき、21ページを御覧ください。左側の1、がんゲノム医療の基盤整備で、(1)がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の体制整備です。御存じのように、日本は2019年から国民皆保険の下でゲノム医療が保険で開始され、そのデータを集約し、またC-CAT調査結果というレポートを返却するC-CATが作られました。現在まで、がんゲノム医療を行う病院は順調に増えており、ここでは264施設と書いてありますが、この7月現在で266施設になり、この後も更に順調に増加していくと思われます。C-CATに集約されるデータは、ここでは7万4,000人超と書いていますが、6月末現在で8万人を超えるデータが集まってきて、日本では世界最高水準のゲノムデータを集約する国となっております。そのデータは100施設以上の企業を含む研究機関に利用されており、多くの論文も出版されています。下の図は、これまでのゲノムデータの蓄積の推移です。今は日本では5種類のパネル検査が承認されていますが、重要なことは、患者さんにC-CATのデータを送る際のインフォームドコンセントの中で、あなたのデータをアカデミアだけではなく企業でも使っていいですかとお伺いしているのですが、そこで「はい」と答えてくださる方が99.7%にも及んでいます。つまり、このC-CATのデータのほぼ全てが、アカデミアだけではなく企業も使えて、新しい薬の開発、新しい診断薬の開発に直接使えるデータが日本にあるということは極めてすばらしいことだと思います。右のページは、利用している論文の数々です。
めくっていただき、22ページです。左側を御覧ください。2、バイオバンク、データベース、コア・ファシリティーの充実です。ドラッグラグ・ドラッグロスを省くために、我がセンターではPDXライブラリーをJ-PDXライブラリーと名付け、非常に大規模に作成しています。PDXは、先ほど申し上げましたように、臨床的薬効性を正しく予測できるのですが、費用と手間が掛かります。当センターではこれまで営々と努力し、現在655株のPDXを作っており、これは世界中のアカデミアで最大です。このPDXを使って、多くの製薬会社がまだ発表されていない薬剤、コンパウンドを持って、どのがん種に効くか、どういうバイオマーカーが有効なのかということをやる共同研究を次々と我々と行っています。これまで、特にJ-PDXは、生検検体、バイオプシーから作られるものが全体の3分の1から4分の1を占めており、言い換えると、薬に抵抗性になった、再発した患者から作られたPDXが全体の3分の1から4分の1を占めるという、極めて貴重なPDXとなっており、薬剤の開発の貴重なリソースとなっています。
23ページを御覧ください。右側で、(3)がんをはじめとする未解決の疾患への革新的治療創出、ワンストップで実現する「再生医療プラットフォーム」構築と支援事業の開始です。例えば、CAR-T細胞療法というがんの免疫療法の1つが非常に有名ですが、実はGMPグレードでCAR-T細胞療法を大規模に作る施設は日本にありません。日本は、わざわざ患者検体を海外に行って作ってきて、それを戻して使っているという、ある意味残念な状態になっています。そこで、当センターでは、東病院を中心として、柏の葉の地区に三井不動産のリンクラボと連携し、新しい再生医療のプラットフォームを構築することを考えております。帝人が細胞療法を分担してくれているのですが、幾つかのCDMOを導入しながら、そこで再生医療を中心とした新しい製剤の開発の場を作ろうとしています。特に、CAR-Tを中心とした細胞療法と、医療RIの薬品の製造を中心とした新しい製造拠点を、そこに作ろうと考えております。
ページを2枚めくっていただき、25ページ、最後のスライドになります。左側、(2)アジア主導の開発へ向けたネットワーク構築と新薬開発です。東南アジアの国々は非常に大きな人口を持っていますので、ポテンシャル的には大きな医療マーケットになると我々は考えています。やがては、そこを中国がドミネートすると思いますから、我々が早めにリーダーシップを取って、そこに大きな医療圏を作りたいと考えています。この目的のためにAMEDの支援を頂き、ATLAS Projectを始動させ、かつ、タイのバンコクに初めてのNCCの事務所を開所しました。そこで、これらの国々で、当センターの中央病院が中心となっていますが、新しくFirst in human、早期の試験を中心として回すような大規模なネットワークを構築しています。また同時に、これらの国々に特に希少がんを中心としてゲノム医療を導入する、C-CATのようなシステムを導入し、例えばそのデータをがんセンターがもちろん両方の同意に基づいて集めて集約し、新しい医療圏を作って創薬開発をしていく、海外の製薬企業をそこに呼び込んでくるという活動を行っております。現在これは順調に進んでいるところです。
最後になりますが、先ほど理事長も申しておりましたが、早期の試験、先進First in humanのような早期の試験をいかにたくさん取るかというのは、我々の重要な役割と考えています。FIH、First in humanの試験は、右側の表に書いてありますが、205件が令和5年度に行われ、そのうち新規が51件です。企業の治験の件数ですと、この6年間で636件から924件増えておりますし、また国際共同治験件数は423件から752件と1.5倍から約2倍になるほどの治験の件数が、この6年の間にも増えており、何とか世界の創薬開発の競争に打ち勝つように、鋭意センター全体で邁進しているところです。以上です。ありがとうございました。
○土岐部会長
間野先生、ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がございましたら、挙手若しくはWebで「手を挙げる」でよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
○花井委員
ネットワーク医療と人権の花井と言います。大変専門的で、しかも膨大な圧倒される話なので、即座に評価というのは難しいところがありますけれども、驚いたのはアメリカのデータベースと比較して同じがん腫でも遺伝子での関連が違うというお話がありました。これは臨床上の症状とどういう関連があるのかというのが1つ目の質問です。
それから、いわゆるゲノム医療というのは保険収載以降かなり浸透しているとは思うのですけれども、実際問題、それができる病院とできない病院で薬物療法の患者の利益は大きく差ができていないかと、ちょっとずっと心配しているのです。先生のお考えとしては、日本においてちゃんとパネルで確認して投薬するということがもうスタンダードになりつつあるのか、それとも、やはりまだそれは一部の先進的なセンターだけの領域なのか、その浸透具合について教えていただけますでしょうか。以上、2点お願いいたします。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございます。いずれも重要な質問だと思います。同じようながん種で、見た目も同じなのに、片方はKRAS変異で片方はP53変異という特徴が、臨床像とどれぐらいリンクしているのかに関しては、例えば同じようながんを同じような化学療法で治療した場合は、個人個人ではもちろん違うのですけれども、オーバーオールでがん種で考えると、有効性は余り違わないのですよね。ですので、化学療法の反応性で、つまりバックグラウンドの遺伝的な差異がそれほど影響しているような感じはしないというのは正直なところです。ただし、どうしてそのがんが起きるのかというメカニズムは、多少、遺伝的なバックグラウンドによって影響を受けているような気がします。もちろん遺伝的バックグラウンドだけではなくて、生活習慣の違いですね。日本人が普通に食べているものとアメリカ人が食べているものとは違いますので、そういうものが与えるDNAの傷というのは、やはり違うのですね。例えば腎臓がんなんかですと、この前ちょうど大規模な国際共同全ゲノム解析が行われたのですけれども、日本人の腎臓がんにだけ、ほかにない変異パターンがあるのですね。それは何か全く分からないのですけれども、日本人が普通に食べているものが定常的に傷を与え続けていることが、やがて腎臓がんの発生に関与していると。つまり、発生に関して、人種の固有の生活習慣によるゲノムの影響はかなり大きいと思います。
それから第2の質問、ゲノム医療がどの程度一般化したかですけれども、ゲノム医療が行われて、それによってお薬が選ばれるということは、今はかなりの医療施設であれば、必ずしもその病院がゲノム医療を行ってなくても、少なくともがんを扱っている病院であれば、それは広く情報としては知れ渡っていると思います。ただし、日本は、コンパニオン診断薬というお薬を選ぶ際の診断薬ですけれども、これがある意味では世界で最も普及している国なので、そのようなコンパニオン診断での治療をした人が、有効な薬剤がなかなかもう見いだせなくなった状態、パネル検査に移行するような仕組みなのですね。ですので、そういうコンパニオン診断薬が余り普及してないような国とか、あるいは地域差があるような国だと、コンパニオンがそれをカバーしてあげないとすごく不利益が生じると思うのですけれども、日本ではコンパニオン診断が非常によく、ほとんどの病院でコンパニオンがあり、日本中広く使われていますので、そういうものを使った後で薬が効かなくなった人がパネル検査に行くというのは、ある意味では自然の流れかなというようにも思います。
ただし、患者様の団体などの皆様からは、もう少し早い臨床段階でパネル検査ができないかというような御希望もたくさん出ているように伺いますので、ちゃんと科学的にそのパネル検査を早めにやることで患者さんに利益を与えることができることを証明すれば、そういうことも恐らくは考え得るようになるのではないかと思います。ただ、そのように早めに使うときにはコンパニオン診断薬として使われることになりますので、検査の精度保証みたいなことも同時にパネル検査にも必要とされるのではないかなと私個人的には思います。以上です。
○花井委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
ちょっと私からも追加の質問をさせていただきたいと思います。これを見ましたら先進医療で初回からのパネル検査をやっているということですが、とは言え、今はパネル検査は日本全体で毎月2,000件ぐらいで、がんで亡くなられる患者さんを想定すると、まだまだ10分の1ぐらいしかパネル検査をされないわけですけれども、これを初回からやったときに、どういうことが予想されるのか。薬への到達度、今は10%弱が上がるのか、どういうのを目的にして、例えば先進医療を初回からやった場合、何が起きると想定されているのでしょうか。
○国立がん研究センター間野研究所長
例えば薬への到達度だけで言えば、コンパニオン診断薬の代わりにパネルを最初にもってきたら、それは到達度は上がると思うのですね。例えば肺腺がんでEGFRの変異が5割ぐらいあるわけですし、それをコンパニオンでやるか、それともパネル検査でやるかの違いなだけであって、これまでコンパニオンで見付かったものをパネル検査でやるということなので、薬への到達度自体は必ず上がると思います。ただし、先ほども申し上げましたけれども、これまではコンパニオン診断薬という、個々の遺伝子変異を見付けるのに精度保証された方法で診断して薬を届けてたものが、パネル検査という比較的大まかな検証をされている検査法でそれを代替するとなると、それぞれの遺伝子、薬にリンクしている遺伝子の細かい精度保証というのがやはりなされないと、不利益を被る患者さんが出てくるような可能性があるような気がします。あるパネル検査で見付からなかったのに、実はコンパニオンをやったらEGFRの変異が見付かったとか。ですので、そういう精度保証みたいなことはコンパニオンの代わりに使うのであれば必要なのではないかなという気は、個人的にはしています。
○土岐部会長
ありがとうございます。Webのほうから、前村委員、どうぞよろしくお願いします。
○前村委員
前村です。多くの研究が非常にインパクトのあるジャーナルに報告されていて、アクティビティの高さを感じました。6ページの膀胱がんのFGFR3のことに関して御質問したいのですが、免疫チェックポイントの効果を予測するマーカーというのは、今非常に課題になっていると思うのですが、このFGFR3は、膀胱がん以外のほかのがんでもマーカーとなるのでしょうか。あるいは、FGFR3は膀胱がんに割と特異的なレセプターで、ほかでは発現していないのか。もしほかでマーカーとならない場合は、私はがんの領域は素人なので教えていただきたいのですけれども、今、免疫チェックポイントの効果を判断するマーカーとしては、どれぐらいのことがほかのがんで分かっているのでしょうか。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございます。免疫チェックポイント阻害薬の一般的に使われるマーカーは、マイクロサテライト不安定性ですとか、あるいはその腫瘍の変異の総数、somatic mutationの総数をTumor Mutation Burdenと呼びますが、この両者がチェックポイント阻害剤の有効性を予測するマーカーとして広く使われています。むしろその2つだけが広く使われているマーカーで、あとはいろいろなマーカー候補が論文レベルで報告されています。
今回、この膀胱がんではFGFR3の変異を含む微小環境がICIの反応性を予測するマーカーというように論文で報告されているわけですけれども、FGFR3の変異がほかのがんで多いかというと、比較的少なくて、ほかに頻度が高いがんで言うと、例えば胆嚢がんとか脳腫瘍とか、そういう特定の、ちょっと希少がんになりますけれども、そういうがんで同じようなことが、FGFR3の変異は高いことが知られています。ただし、今回見付かったような、がん部と微小環境全体のプロファイルが、例えば脳腫瘍とか胆嚢がんとか胆道がんとかで、そのまま当てはまるかどうかに関しては、まだこれから検討が必要かなと思います。以上です。
○前村委員
ありがとうございました。
○土岐部会長
深見委員、よろしくお願いします。
○深見委員
深見です。毎年非常にすばらしい研究成果をお示していただいて、とてもいいなと思います。個々の研究でいろいろお伺いしたいこともあるのですが、聞いていると時間がなくなりそうですので、今回注目という分かりやすい項目でお示ししていただいたのですけれど、間野先生にとって昨年度はこれがやはり一番良かったと思うのはどれなのかということを、ちょっと1つお伺いしたい、これが第1点です。
それから2つ目として、今日飛ばされた18ページの「JH研究費を獲得した研究者が」うんぬんの所のこの表の見方です。非常にアップしているのですけれども、何のことを示しているのかがちょっと分からなくて、グラフとして何か異常に伸びている、その異常なのがどういうことを意味しているのかが分からないので、ちょっと御説明していただけたらと思います。以上です。
○国立がん研究センター間野研究所長
後者のところは、JHが御説明させていただくので、後で国立国際医療研究センターの方が説明されるときに御質問いただければと思います。
○深見委員
はい、分かりました。
○国立がん研究センター間野研究所長
それから、何が一番良かったかというのは、私が答えるのはちょっと所長として難しいのですけれども、いずれも良かったし、でも変わってきているのは、研究所と病院が一緒になって動いているのが段々明らかになってくる、業績が出てきていることで、これが一番うれしいと心の中では思っています。例えば先ほどのMDM2、内膜肉腫という希少がんに治験をして、その患者さんの検体を使ってすぐに附随解析をして、バイオマーカーを見付けていくとかというのは、もう研究所と病院が一緒になって動かないとできないことなのですね。これが本当は一番うれしい。例えば、これは今年度の成果で来年申し上げるのですが、また別のがんで、PDXでバイオマーカーを見付けた上で臨床研究をしますということを、もうすぐ記者会見をするのですけれど、そのように、研究所が強くなるだけではなくて、病院側と一緒になって医療を進めていくことが、個人として、所長としては一番うれしいことだと思っています。
○深見委員
臨床とリンクした基礎研究になったという、そこのところという理解でよろしいですか。
○国立がん研究センター間野研究所長
そうですね。最先端の医療は必ず最先端の研究が必要なのですね。誰にも使ったことがない薬を使う場合には、必ずその薬の有効な人を選ぶ、あるいは無効な人を選ぶ、あるいは耐性になるメカニズムを理解するということが重要で、そこには最先端の研究がどうしても必要なのです。ですので、そういう臨床と研究が一緒になって進んでいることが極めて重要ではないかと思います。
○深見委員
ありがとうございました。
○土岐部会長
神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
すみません、ちょっと興味本位の質問になってしまうかもしれないのですけれども、最初に日本人ではP53の変異が非常に多いのがやはり特徴だというお話を頂いたと思うのですが、このことが例えばパネルとかコンパニオンみたいなもので調べられるのかとか、そのことによって我が国のゲノム医療が変わる可能性みたいなところについて、ちょっと御意見が伺えればと思いました。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございます。多分、がんの発生の初期に関係してくるのかもしれないのですけれど、恐らくがんの発生の初期ですと、まだがんはできてなくて、一見、正常な我々の臓器の中に、例えばP53が壊れている細胞が出現するみたいなことが多分起きると思うのですね。それは多分パネル検査では恐らく1細胞だからまだ見付からなくて、1細胞でそういう遺伝子の変異を見付けるような技術を開発して、それを例えば慢性肝炎がある肝臓とか、ピロリ菌感染胃とか、それからHPVが陽性の子宮頸部とかで調べてみると、実際にP53が壊れている細胞がある程度の割合で出てくるとかいうことが明らかになる時代が、そんな遠くなく来ると思います。ですので、今すぐにパネル検査でそれが検出できるというのはちょっと難しいような気がするのですけれど、ある種の新しいプレシジョン・プリベンションと言いますか、個別予防というのが、がんで現実のものとなるのが、恐らく10年ぐらいでは実現してくると思いますので、そこでも我々当センターの研究所が重要な役割を果たしたいと考えています。以上です。
○神﨑委員
ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○土岐部会長
中野委員、どうぞ。
○中野委員
中野でございます。今年も、昨年のすばらしい評価項目1-1と1-2に関する御研究の成果を御報告いただきまして、ありがとうございます。論文報告もすばらしいですし、本当にすばらしい最先端のトップを走っていただいていると思います。
資料の25ページで、アジアの各国との関係ついて少し言及いただきました。確かにおっしゃるとおりアジアは人口が多いですし、恐らく海外諸国も日本のこの最先端の診断治療の技術には非常に注目していると思うのです。今回、資料の25ページでは、臨床試験のネットワークとか新薬開発の観点から御紹介いただきました。また、人口が多い国々も多いので、ある意味、マーケットという言い方は余りよくないかもしれませんけれども、医療の対象としてアジア諸国も非常に大切ということは全く同感でございます。私からの質問はそれに関してですが、ちょっと観点を変えて、例えば、メディカルツーリズムという観点からいった場合、このがん領域でも日本の診断や治療の技術というのは、何か今後展開の余地があるのか、あるいは、やはりメディカルツーリズムというのはちょっと観点が違って難しい点があるかなど、その辺りの率直な御意見をお伺いできればと思います。以上でございます。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございます。これは様々な御意見があると思うので、余り勝手なことは言えないと思うのですが。そうはいっても、例えば、どんな国にあっても、自分がなかなかそこで使える薬では治らないといったがんの患者さんなどで、もしパネル検査が行われてお薬が使えるということがあり得るならば、そこを試してみたいと思う方もたくさんいらっしゃると思います。メディカルツーリズムの可能性はあるのではないかと、私は個人的に思います。
○中野委員
どうもありがとうございます。
○土岐部会長
藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
藤川です。今日もありがとうございました。2点あるのですが、1点は、形式的な話で恐縮ですけれども、今御説明いただいた資料の19ページに指標の達成状況がありまして、ここの先進医療承認件数というのがゼロなのです。これは中長期目標期間である程度設定されている数字だとは思いますけれども、ほかが大変目覚ましい達成度が多く、そうでもないものもありますが、非常に活性化した中で、ゼロというのはどういうことなのかなと、少し聞きたいと思いました。
もう1つですが、もう何年も間野先生が、世界できちんと日本の位置を高めていくとか、アジアの中で日本が中心的にやっていくとか、世界にも目を向けたいろいろな試みをしてくださっていて、そういったことが、23ページ目の再生医療の話とかプラットフォームの話とか、あとは25ページ目のアジアのネットワークみたいなことにもつながっていると思うのです。しかし、今の日本で言えば、例えばデジタルなども、いろいろ頑張ってもデジタル赤字としてAmazonなどにお金が流れていくということがあって、同じように医療も、日本がいろいろ開発したり、こういう高度な研究をやっていても、結局、高額な医療機器とか薬剤を最終的に作るのが日本ではない所になって、お金が流れていくことになるのかなというところが大変危惧するところであります。日本の体力はどんどん落ちているということからすると、全部そういったことを日本ができないとしても、例えば半導体みたいに、一部だけは日本が極めて重要な部分を、シェアを大きくしていって、そこを通らないと絶対に全部は完了しないみたいな仕組みにするとか、そういう何か仕掛けのようなことは考えていらっしゃらないのかなと思いまして、その辺りを伺いたいと思いました。以上です。
○国立がん研究センター間野研究所長
後半の質問から、まず間野で答えさせていただきますけれど、C-CATというシステムは、正に日本が世界の中で医療のトップの位置を守るための仕掛けそのものだと思うのですね。世界中でどんな国に行ったって、その国のゲノムデータベースが見えるような国はないわけです。例えば、アメリカの企業が、C-CATと契約さえしていれば、日本の患者のゲノムデータベースが数秒で見えるわけです。そうすると、では日本で臨床試験をしようとか、例えば日本でBRAFの遺伝子変異が多い病院、トップ5の病院などはすぐ分かるわけですから、そういう病院で臨床試験を組もうとか、C-CATというシステムができたことで臨床試験が組みやすい国に日本はなったと思います。ですので、それも含めて、例えばPDXとかそういう日本がドラッグラグ・ドラッグロスから抜け出していけるような仕組みというのを次々と作っていきたいと考えています。
それから、最初の御質問の先進医療承認件数については、臨床側の者より答えさせていただきます。土井先生、お願いします。
○国立がん研究センター土井東病院長
東病院長の土井と申します。お答えいたします。現時点で、先進医療から実際に保険償還を取るという流れと、それから医師主導治験、特定臨床研究で承認を取りに行く流れがあるのですけれども、実際に迅速に患者さんの元に届ける方法としては、医師主導治験のほうがタイムトゥランがものすごく短い部分がありますので、私たちとしては医師主導治験を優先的に行っているというところで、この先進医療の承認件数自体は、現時点では今年度に関してはゼロという形になっていると考えます。
○藤川委員
この審議会の場は、目標値なども実際に応じて変えていくようなところもあるのかなと思うので、もし何か実態としてそぐわないのであれば、目標値を変えていくことも検討していいのかなと思いました。
あと、先ほどの間野先生の御回答ですけれども、C-CATに関しては、本当にもう世界に誇るもの、どんどんボリュームも広げていかれているということです。なかなか先生方はお金儲けをしようということは余り考えられないのかもしれないのですけれども、結局最後のおいしいところは海外に持って行かれているということが日本には本当に多いので、是非ともそこはやや商人的な発想も持ってやっていっていただけると日本人としてはうれしいなと思いました。以上です。
○国立がん研究センター間野研究所長
ありがとうございました。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。それでは、そろそろ時間となりましたので、次に移りたいと思います。
続きましては、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」ということで、1-3から1-5につきましてディスカッションしたいと思います。先ほどと同様の流れで、まずは法人から御説明をよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター土井東病院長
よろしくお願いいたします。1-3、医療の提供に関する事項については、東病院の土井と、それから中央病院長の瀬戸先生でプレゼンさせていただきます。
まず、自己評価はSとさせていただきました。中長期の目標としては、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供を行っていくこと。それから、もう1つは、一番重要な患者さんの視点に立った良質かつ安心な医療の提供を行うこと。これを中長期の目標とさせていただいております。
指標の達成状況に関しては、目標の項目については従前経過を追っているものですが、令和5年度に関しては、目標値は大まかには全て達成しているものと考えられます。特に、COVID-19の影響があったにもかかわらず、手術件数、病床稼働率、平均在院日数等は目標を達成している点は注目すべき部分だと考えております。この中で非常に良い方向に振ったものとして、緩和ケアチームの関わる症例数、外来化学療法の実施数がありますが、この点については、近隣の医療機関との連携や、院内での多職種の連携等について改善していった点が、この部分になってきたと思います。ただ、これが今後も継続していくかどうかについては、指標を見ながら考えていければと思っているところです。
評定の根拠については、今回、3つここに挙げていますが、これ以外の部分を含めて、次のところで説明させていただければと思っています。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
中央病院の病院長をしております瀬戸といいます。それでは、具体的な項目について、手短に説明を差し上げます。28ページになります。まず、先進的な医療提供の実施ということで、これは中央病院で行っていることですが、まずはBNCT、ホウ素中性子捕捉療法といいます。これは世界初の試みになります。固体リチウムターゲットで中性子照射装置を開発して、2019年11月から、皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)・血管肉腫患者を対象として臨床試験を開始しております。これは、単回照射で完了できるという特徴がありまして、2022年11月からは、血管肉腫を対象として第Ⅱ相試験を行っておりまして、現在までに19人の患者さん、症例に対して、この治療が行われております。それから、アイソトープ治療としては、膵NETに対するルタテラ、褐色細胞腫・パラガングリオーマに対するライアットを実施しているということと、脳腫瘍のアイソトープ治療、64Cu-ATSMですが、この第Ⅰ相試験が始まったということと、難治がんの1つである膵がんの早期診断を目指した新たなPET製剤の第Ⅰ相治験を実施しているということを申し上げます。
○国立がん研究センター土井東病院長
続いて、東病院です。先ほど瀬戸先生からお話がありましたが、東病院は、他の医療機関と共に行っていますラジオラベリングテラピーの治験を実施するための、こういった研究を実施するための核アイソトープの標識に対する専用病床、写真が下にありますが、簡易なお部屋を作製させていただいて、現在稼働しております。
それからもう1つは、先ほどの件にも関わってくるかもしれませんが、フォトンカウンティングCTという新たなCTがあります。実際には、先行するシーメンス、フィリップス等がありますが、それよりもはるかに感度のいいフォトンカウンティングCTを国内でキャノンさんと共同研究の形で導入して、実証実験を今始めているところです。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
それでは、(2)早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得ということです。当センター中央病院が中心となって行いました早期乳がんへのこのラジオ波の治療ですが、2023年12月に、日本において初めて早期乳がんを対象として保険適用を取得したということになります。これは、先ほど御指摘がありました先進医療制度下で行われた特定臨床研究の成果を活用した医療機器の薬事承認の取得としては日本初ということになりますし、このシリーズの乳がんへの適応というのは世界初めてということで、乳がんに対して切らずに治すという治療が保険適用になったということです。ラジオ波は、御承知のように肝腫瘍が中心に行われていたのですが、これが乳がんにも適応になったということです。
○国立がん研究センター土井東病院長
続いて、その下の段になります。外科医の先生方の手術技能の評価に関して、従来はビデオ等で行っていましたが、その部分をAIによる画像認識スコアを用いて評価していくという仕組みを作りました。これによって手術の技能評価ができることにより、客観的で効率的な技能評価ができます。
もう1つは、学会による技術認定等においても、こういったAIを使った評価点数を参考にしながら行うことでトレーニング等もできることで、外科医の育成が加速できるのではないかと考えております。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
続いて29ページ、ロボット支援手術です。国立がん研究センターには、全部でダヴィンチを5台設置しておりまして、多くのダヴィンチを使える資格者、その指導者たるプロクター、国際ライセンス取得者が在籍しております。中央病院においては、2024年、今年の1月に、日本一のロボット手術件数、あるいは日本での開発の中心拠点を目指して、ロボット手術・開発センターを設立しております。ほとんどの外科系の診療科で今ロボット手術が行われているということと、大腸外科、食道外科においては、見学の施設認定を受けておりますので、多くの見学者を受け入れている状況です。
○国立がん研究センター土井東病院長
東病院でも8つの診療科で既に導入を行っています。なかなか保険診療のところに持って行くのにはハードルがあるのですが、8つの診療科で導入させていただいて、国内でも多い手術成績は中央病院と同様になっています。実際、1台のXi、ダヴィンチが行っている手術件数の平均値というのは、一般的に、企業さんからお伺いする限り、1.3倍から1.4倍の手術数をこなしていますので、非常に効率よくこの機器を使っていると考えております。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
続いて、IVR、いわゆるインターベンション治療です。中央病院のIVRセンターというのは、がん専門病院としてはIVRの質・量ともに世界レベルにあると自負しておりまして、令和5年度はトータルで8,026件、前年比で108%の件数を治療として行っております。画像を活用した低侵襲治療ということで、特にCTと血管撮影のハイブリッドというのがその特徴の1つです。今後、目指して、AIを用いたナビゲーション・ソフトウエアを開発中ですし、臨床研究グループを統括して、多施設共同臨床試験を立案、実施しております。また、先ほど申し上げましたラジオ波をIVRの一環として肺腫瘍とかにも行い始めていることを申し上げます。
続いて30ページ、今度は希少がん・難治がんの診療、治療開発ということです。まず希少がん、これは人口10万人当たり6例未満という本当に珍しいがんに対するということですが、やはりなかなか治療の開発が難しいということで、この研究開発・ゲノム医療を推進するために、「MASTER KEYプロジェクト」というのを行っております。その症例のレジストリ、登録と、あるいは新しい手法の臨床試験というのが2つの柱になっております。中ほどにありますが、現在、レジストリとしては、固形がんでは3,553例、血液がんでは380例が登録されておりまして、先ほど申し上げました臨床試験としては、その中から、固形がんでは195例が実際の臨床試験に入っている、また、血液がんでは13例が臨床試験に入って、実際の治療を受けているということを申し上げます。
また、そういった希少がんのネットワーク、やはり各地域でもかなり珍しい、症例数の少ないがんですので、いわゆる希少がんネットワークというのを構築しております。これは日々いろいろな地域とコンタクトを取って、何とかこの希少がんの方々にも、今、言ったような治療の普及を目指しているということです。
その一環として、右側に行っていただいて、患者さんの支援ということで、情報発信と相談支援に取り組んでおります。その一環として、2022年9月から、「オンライン希少がん Meet the Expert」というのを開催しておりまして、これまで35回程度行っております。多くの希少がんの方々であるとか、患者さん、その家族、あるいはその専門家が、現在オンラインですが、時々は対面でも行うようになりましたが、そういったことで希少がんのネットワークを作って取り組んでいるということです。
その下に行っていただき、(4)小児がんです。これも症例数としてはそれほど多くないので、治療としてかなり難しいということです。なかなか治療薬のエビデンスも得られにくいということで、その中で、患者申出療養としてPARTNER試験を始めました。これは令和6年1月、今年の1月から開始しております。7薬剤12剤形ということになりますが、これまで6例の方々にこの申出療養を活用していただいていることを申し上げます。
続いて、ページをめくっていただき、がんとの共生を支援するということです。これまで、やはりがん患者さんというのは、いろいろな就労の困難であるとか、そういった生活上の困難があるということで、両立を支援、就労を支援する取組をしております。令和5年度の中央病院での相談件数が2万2,120件ということで、過去最高になっていることを申し上げます。
○国立がん研究センター土井東病院長
続いて、東病院でも同様に相談件数は6万件と過去最高になっています。その中で、1つの取組として、がんを診断された患者さんの多くは、病院に着いた時点で就労をやめてしまう、若しくは、会社でのお仕事を一旦止めてしまうような事例が非常に多いということがありましたので、社会保険労務士の方々と協働して、こういった部分の相談をさせていただいています。もう1つは、がんの治療をしながら、短時間であれば仕事ができるようなものがあれば、仕事に対してのマッチングができるような形で、就労支援のクラウド上のワーク、マッチングのアプリを作らせていただいて、今、検証しているところです。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
続いて、スライドの右側に行きまして、医療の質の向上(QM)に向けた取組の推進ということです。このがん医療においても、医療の質や機能の向上を図るという観点は非常に重要でして、それの評価指標というのを50項目程度設定しまして、毎月、評価・分析を行っております。令和3年度には、「TQM(トータルクオリティマネージメント)センター」を設置して、その中で、毎月、互いに分析結果を明らかにして、クオリティを維持、アップさせることに努めております。
○国立がん研究センター土井東病院長
東病院でも同様なことをやりながら、もう1つの取組としては、皆さんご存じのように、医師の働き方改革、それから、患者さんに対してのサービス向上ということを念頭に置いた形で、タスクシフトの拡大と、いわゆるメディカルアシスタント室というものでPatient flow managementを行うことを支援させていただきました。結果的に、外来の待ち時間件数、非常に1時間以上の方がいらっしゃったのですが、その数が減ったり、採血待ちで同じ場所で非常に多くの方がいらっしゃったものも短くなってきていますので、医師の働き方改革と同時に、患者さんへのサービス向上につなげていく形にさせていただきました。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
我々のほうからは最後になりますが、アピアランスケアリーフレット新規2種リリース及び医療従事者向けe-learningの提供開始ということです。「アピアランス支援センター」というのは、「患者さんと社会をつなぐ」をテーマに、いわゆる外見の問題に関する様々な課題に取り組んでいる部門です。今までは乳腺腫瘍の方々のみでしたが、今回は、乳腺腫瘍の方以外に、いわゆる頭頚部がんの方々も、今まで余り適切な資材がなかったので、そういった頭頚部がんの方々に対しても新たにリーフレットを作成し、これは他院でも活用しているということ。それから、医療従事者向けに、このアピアランスというのは非常に重要だということで、e-Learningを作成しまして、それを一般に公開して、現在まで1年間で約1,000名の方に受講していただいています。我々からは以上です。
○国立がん研究センター中山理事長特任補佐
続いて、1-4を続けたいと思います。1-4の人材育成に関する事項につきまして、理事長特任補佐の中山から説明させていただきます。
資料は32ページになります。今年度は自己評価はAをお願いしているところです。ここで指標の達成状況についてですが、上から3つ目、e-learningの受講者数につきましては、75%と達成度が比較的低い状況になっております。ただ、これにつきましては、その上にあります両指標の実地開催の研修会が増加したことなどによりまして、結果的に減少していると考えております。また、前年度と比べると84%と、ほかの指標も含めておおむね前年度相当、又はそれ以上の高い達成が図られていると考えております。特に、これまで達成が難しかった、センターが支援した外部向け研修会等の開催回数や、海外からの実地研修等の受入人数などが大きく改善しているところです。
続いて、34ページです。左下のほうですが、こちらは、先ほども院長先生から御紹介いただきましたMeet the Expertというものになります。こちらについて活用した結果、令和5年度には、回数を倍増するとともに、新たにシンポジウムを開催するなどして、積極的に取り組んでいるところです。続いて、右上です。こちらの職員の海外研修についても、令和5年度に「中央病院海外研修支援制度」を新設するなど、実績としても着実に増えているところです。
続いて35ページです。左上になります。こちらは連携大学院についてになります。現在、24大学と協定を結んでおりますが、そこの教員発令のある職員や学位取得者が増えてきております。中でも、早期取得者が倍増するなど、優秀な人材の確保、育成に積極的に取り組んでいるところです。その下になります。患者さんや家族と職員等、双方向の交流も進めております。「患者市民セミナー」の参加者数も増え、「患者市民パネル」の延べ登録者数も増えるなど、取組を強化しているところです。
続いて右上になります。橋渡しです。こちらは、基礎から臨床への橋渡しをしていくというセンターです。がんに特化した開発企画、シーズ発掘・評価などに関する各種セミナーを倍増するなど、産官学全ての方に基礎から国内外の最先端までをワンストップで学んでもらえる教育機会の提供に力を入れております。参加者も、令和4年度は720名でしたので、4、5倍まで伸びているところです。最後に、その下、ICRwebについて御紹介させていただきます。令和5年度にサイトをリニューアルし、見やすく探しやすくするなどして、臨床研究教育をより一層推進することで、配信数、利用者数ともに着実に増加しているところです。以上です。
○国立がん研究センターがん対策研究所井上副研究所長
続いて、1-5、医療政策の推進等に関する事項につきまして、がん対策研究所副所長の井上から御説明させていただきます。
36ページを御覧ください。医療政策の推進は、国民の視点に立ち、科学的知見を踏まえて国へ専門的提言を行うという目標の下に、がん対策に関連するデータベースの整備、均てん化の推進、エビデンスに基づく予防・診断・治療についての国民向け情報提供、そして、がん診療連携拠点病院等への支援を軸として進めております。本年度は自己評価をAとしております。指標の達成状況としましては、指標として、非常に多岐にわたる活動の中で、2つ挙げております。病理診断コンサルテーションの件数は、令和5年度の達成度が180%となっております。これは、病理コンサルテーションの更なる利用促進のために、新規利用者や利用施設の増加を図った効果、一時的効果と見ております。ホームページのアクセス数については100%に至っていない現状がございます。
37ページです。評定の算定の根拠としては、医療の均てん化のため、都道府県がん診療連携拠点病院を核とした取組の好事例の共有を継続して行っていること、第4期がん対策推進基本計画の評価に向けて、患者体験調査及び遺族調査を実施したこと、そして、情報格差の是正に向けて、がん情報サイトの改善リニューアルはもちろんのこと、図書館などへのがん情報誌の提供といった、Webサイト以外への情報アクセス者にも情報が届くような取組を推進したこと等を挙げております。
次の2ページで、令和5年度の活動をかい摘んで御説明させていただきます。まず38ページの左です。国への政策提言としましては、国の審議会や検討会にセンター職員が委員として自ら参画することによりまして、政策形成や施策の推進に自ら関与するということで貢献をしております。国との緊密な連携の下、ゲノム中核拠点病院との会議の開催や調整の役割をがんセンターが担うなど、我が国のゲノム医療の実装への取組を推進しました。第4期がん対策推進基本計画策定の際に提示されたロジックモデルについて、左側の下に示しております。このロジックモデルについては、指標の測定あるいは見直しを継続的に行えるような体制を整備しております。
右のページになります。医療の均てん化として、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会及びその部会の運営、そして、がん対策に関わる各種の研修、さらには、患者体験調査や遺族調査を実施しております。
次ページです。こちらは情報の収集・発信についてです。がん情報サービスのコンテンツや患者必携ガイドの作成・更新、また、がん情報サービスWebサイトのアクセス改善に向けた改修を行いました。全国がん登録の一環としまして、2020年のがん罹患数の報告、研究利用のための審査など、審議会の支援や提供窓口組織としての支援も行ったほか、拠点病院が実施する院内がん登録への支援、そして、院内がん登録全国集計データの提供も併せて実施しております。
右のページになります。がん患者の政策立案参画の要であります「患者・市民パネル」の運営と、パネル検討会の実際の実施による現行の課題に対する患者・市民目線からの意見を頂いております。図書館へのがん情報に関する冊子の寄贈といった、Webサイト以外で情報にアクセスする人への情報普及の推進も行っております。簡単ではございますが、医療政策の推進に関しては以上となります。ありがとうございました。
○土岐部会長
ありがとうございました。ただいま、1-3から1-5まで説明していただきました。それでは、委員の先生方から御質問をお受けしたいと思います。どなたか、ございますか。
○花井委員
御説明ありがとうございます。ロボット手術、こんなに台数をお持ちというのは、ちょっと驚いたのですが、保険収載されているのが一部で、まだ多くの場合は保険が利かないということもおっしゃっていたと思います。実際問題として、ICを受ける段階で、ロボットですと言われたら患者は喜んだらいいのか驚いたらいいのか、どういうことでしょうか。あと、では、人間がいいですか、ロボットがいいですか、そういう話なのでしょうか。つまり、患者利益というのはどういう形に反映するのでしょうか。教えてもらえますか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
私、中央病院の瀬戸がお答えします。ロボット手術に関しましては、2012年、まず泌尿器科領域で保険収載されまして、我々、消化器外科領域は2018年から保険収載されています。基本的には、現状、いわゆる通常の腹腔鏡や内視鏡手術とは、ほとんどの術式で保険点数は同じです。それは、今までは腹腔鏡手術を上回る明らかなエビデンスがないということで点数は同等とされていたのですが、実は2年前の改定から、胃がん領域等では明らかにロボット手術のほうが合併症の発生率、予後に関しても通常の腹腔鏡手術を上回るものがあるということで、ロボット手術の特性が評価されておりまして、その分、加算が付いております。
なので、今、我々にとってロボット手術というのは基本的には普通、どちらかというと普通の手術でありまして、患者さんにロボットですけれどいいですかという場面は、個人的には余りないのではないかなと思います。むしろ、ロボットの台数が限られているので、ロボットを使えるときにはロボットを使って、ロボットを使えないときには腹腔鏡手術が選択肢、恐らくどこの病院も今はそうなっているのではないかなと思います。
○花井委員
説明の段階では、ロボットを使いますというのは説明するのですか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
それは、もちろんそうです。
○花井委員
患者さんの反応としては。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
患者さんも基本的には、がんの患者さんはおしなべて、ロボットを使って嫌だと言う人はまずいないと思います。
○花井委員
人間がいいとか、そういう人はいないということですよね。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
基本的にはロボットの手術と言っても我々外科医が操作するので。
○花井委員
そうですよね。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
ええ。なので、決して飛行機の自動操縦のようなイメージでは決してない。
○花井委員
そうですか。素人っぽい質問でごめんなさい。ありがとうございます。
○土岐部会長
続きまして、前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村です。先端的な医療から患者支援、政策的なことまで多岐にわたって活動しているのが分かりました。ちょっと些細なことなのですが、評価する上で大事なものですから、32ページの表について確認させてください。通常、こういう指標の評価のときは、中期目標年度全体での目標値と単年度の目標値に対する達成度を書くのだと思うのですけれど、先ほどおっしゃった3段目の所で、31万6,000名で75%というのは、目標値は中期目標期間全てのトータルの値に対しての達成度にしているのでしょうか。令和3年度とかは、単年度の目標に対して721%としているので、急激に減ったように見えるのでしょうか。
もう1つは、2つ下の海外からの実地研修等の受入れに関して、それまで2%とか92%だったのが、今回1万3,000で1万6,962%と、ちょっとあり得ないような数字になっているのですけれど、この表の計算の仕方について教えてください。
○国立がん研究センター中釜理事長
理事長の中釜です。その点について、まず私からお答えします。例えば、この3件目のe-learningに関して、令和3年度、令和4年度の数値を見ていただければ分かるのですが、当初目標は中期計画中に6万5,000名ということを設定したのですが、実際には実績上かなり大きな中期目標を上回る数値が達成できたので、それで数値の見直しをするということで、令和5年度の数値目標を、令和5年度だけで42万名以上と大幅に上げて設定しました。結果的には、様々な要因もあって75%の達成度だったということになります。
2つ下の実地研修の数値に関しても、海外からの実地研修ですけれど、当初コロナ禍にあり、中長期目標期間最終年度の達成目標を500名以上と設定していたのですが、近年、コロナ禍の影響もあり目標値を達成することができませんでした。令和4年度から、コロナ禍を想定して達成目標を80名と設定したのですが、昨年度は実際にはコロナも落ち着いてかなり多くの海外からの研修者を研修受入れできたために、達成度の数値が跳ね上がったということです。
○前村委員
では、令和5年度の単年度目標がここに書いてあって、それとの比較での達成度になっているということですね。
○国立がん研究センター中釜理事長
そうですね。令和5年度の目標も数値としては大幅に上げた結果として、この数値になったということで御理解いただけると思います。
○前村委員
分かりました。
○土岐部会長
私から人材育成に関してです。最近、医者でがん診療に関わるのは非常にストレスが多いということで、若い人がちょっとずつ避ける傾向が出てきているのではないかというのをよく聞きます。がんセンターのレジデントも人数的には何とか前年程度、ちょっと短期のほうは減ってきているようなのですけれど、何と言うか、応募の状況というか、特に医者の間で若い先生方が、がん診療に関わっていこうという方がどのような感じなのか、ちょっと現場の感触がございましたら教えていただけますでしょうか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
御質問ありがとうございます。ただ、がんセンターに応募してくるレジデントは。
○土岐部会長
多いですか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
がん診療を目指して、東もそうだと思いますけれども。今度、レジデントの採用試験がありますけれども。
○土岐部会長
基本的には、倍率とかも特に下がることなく維持できておりますか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
倍率の推移はちょっと僕も把握していないのですけれど。
○国立がん研究センター土井東病院長
むしろ、整理をしているような状況のほうが多いかなと思います。実際には、がんセンターのレジデントと言いながら、ほぼ専門医等を持っている方がいらっしゃっていますので、更に自己研鑽をしたいというモチベーションが高い方が応募してきている部分があるのかなと思っています。
○土岐部会長
安心いたしました。
○国立がん研究センター中山理事長特任補佐
すみません、実際は年度によって波がありまして、その波の原因までは分析はしていません。
○土岐部会長
そうであれば安心いたしました。よろしいと思います。
それでは、Webのほうから、神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
がん相談は件数も多いでしょうし、正直、時間も掛かるし、相談件数も増えているということのようなのですけれど、それに加えてPatient flow managementまで導入されたということで、メディカルスタッフの数が相当必要になっているのではないかなと勝手に想像したのですけれども、その辺りは工夫はいかにされたのでしょうか。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
ありがとうございます。確かに御指摘のとおりで、いろいろな職種が関わらなければいけない部署であることは間違いないと思います。中央病院においては、病院の中のワンフロアを大体その領域に充てておりまして、そこに看護師さんや、いろいろな職種の人が集います。
一方で、そこで時間もかなり掛かるのですけれども、片や通常の診療をする医師側からすると、今まで医師のみが関わっていなければいけなかった時間が、そこでより親密にいろいろな角度から患者さんが相談してくれるということで、基本的には機能しているのだと思います。ただ、職種として多職種に関わりますし、人員が必要なことも間違いないです。
○神﨑委員
そうですよね。医師側からすると喜ばしいシステムだとは思うのですけれども、それ以外の職種からすると、結構負担は多いのではないかなと思って質問させていただきました。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
ありがとうございます。ただ、ほかの職種からしても、それは患者さんの満足度ということを考えると、やりがいのある職場になっていると個人的には思っています。
○神﨑委員
そうですよね。それは最終的な目標になりますよね。ありがとうございました。
○国立がん研究センター土井東病院長
東側の工夫の部分は、医師事務作業補助者に関しては、いわゆる各科の診療科において、いらっしゃった秘書さんたち、それから研究補助員の方々が、いわゆる無期転換をするときに、病院側に変わりますかという御意見を伺って、そういう希望されている方は研修を受けていただいて、医師事務作業補助者の認定を受けていただいてお手伝いいただいている形にしています。ですので、人の有効利用という点でも、それから日頃顔を見慣れている人たちですので、非常にその部分がこのワークフローのところではうまくいったのではないかと考えています。
○神﨑委員
そういう工夫をされているということですよね。よく分かりました。
○土岐部会長
ほかは、よろしいですか。私からこの連携大学院のことでお伺いしたいのですけれど、大学院というのは、臨床をされている先生方が連携大学院としてその大学に所属して、がんセンターの研究をしながら学位を取得とするという形になっているのでしょうか。若しくは、ちょっと観点が変わるのですけれど、研究所と臨床側の連携と言うか、臨床の人に研究をファシリテートするような、そういうシステムのようなものは何かあるのでしょうか。すみません、観点が違ってしまって。最初は連携大学院のことで。
○国立がん研究センター間野研究所長
まず、研究所長の間野からお答え申し上げます。がんセンターはご存知のように、大学院を自分で持っていませんので、大学院を持っている他のアカデミアと連携大学院という形を持って、その中で、ほかの所から当研究所で大学院をしたいと、博士課程を取りたいというようなときには、例えば私と京都大学の連携大学院を持っているのですけれども、その連携大学院に入っていただいて、私の所で研究をして京大の大学院を取得していただくということを、うちは取ります。そのような連携大学院、必ずしも研究所でやるものだけではないのですが、広く様々な連携大学院を持っているというのが、がんセンターの現在の体制となっています。
○国立がん研究センター中釜理事長
追加で申し上げさせていただきます。今、間野所長が申し上げた大学院のタイプに大きく2タイプあって、通常の大学から研究員を受け入れて大学院生を受ける、これはBタイプと言われるもので、Aタイプというものは、がんセンターの職員が契約している大学の大学院生になる。例えば慶應大学、慈恵医科大学、順天堂大学、それから星薬科大学、4つか5つの大学がそういう形を取っていて、主として2つの運用タイプを取っています。センター職員でありながら、その連携契約している大学では大学院生として、がんセンターの研究成果を学位として申請し、審査を受ける形を取っています。
○土岐部会長
今のパターンだと、どちらも主に研究所のように聞こえたのですけれども。
○国立がん研究センター中釜理事長
病院の先生も連携大学院生になれます。特にAタイプの場合は病院の先生が主になりますね。
○土岐部会長
Aの場合は、むしろ病院の先生のほうが多くなると。了解いたしました。ほかは、よろしいでしょうか。それでは、次に移りたいと思います。
続きまして、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」です。資料は2-1から2-4になります。それでは、まずは同様に法人から説明をよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター須田理事長特任補佐
理事長特任補佐の須田と申します。資料の40ページ以降を続けて全て説明させていただいてよろしいでしょうか。
○土岐部会長
お願いします。
○国立がん研究センター須田理事長特任補佐
それでは、40ページを御覧ください。まず、2-1、業務運営の効率化につきまして、自己評価Bとさせていただいております。指標の達成状況を御覧ください。まず、後発医薬品のシェア85%、それから未収金比率0.05%以下という指標につきましては、目標を上回る達成状況となっております。一般管理費の逓減につきましては、下の要因分析を御覧いただければと思いますが、(3)外部的な要因によりまして、つまり光熱費の高騰というようなことがありまして、費用増となっております。これを踏まえて、上に戻りまして、4番目の指標の経常収支率の安定は、経常収支率101.7%と黒字を達成しております。
41スライドに進んでください。大きな黒丸の(1)財務ガバナンスという所があります。当センターは、2つの病院の建て替えなども含めた中長期的な収支見通し、あるいは中長期のキャッシュフローの確保を重視しつつ、理事長をトップとする投資委員会という所で1年間の投資計画を立て、それに基づき個別の投資の適否の判断を一つ一つ行うといったことで、しっかりとした財務ガバナンスを構築し、全体観のある財政運営を行っているところです。その下です。効率化による収支改善の所です。赤い字の所を御覧ください。平成27年度に黒字に転換して以降、9年連続で黒字を維持し、令和5年度は、先ほど申し上げましたような要因を抱えながらも経常収支率101.7%となっております。下の材料費等の削減の所ですが、医薬品費について、共同購入や価格交渉等による削減を行ったというような取組をしております。
右側にまいりまして、未収金につきましても様々な工夫により改善しております。その下、電子化の推進につきましては、令和5年度は電子決裁システムを本格的に稼働いたしまして、様々な帳票の電子化を進めたという動きがありました。
続きまして、3-1、財務内容の改善、42スライドに進みます。この項目は、達成すべき指標のところを明記していないので、なかなかAというのは難しいのかもしれませんけれども、今回も自己評価Aとさせていただいております。その根拠につきましては、下に掲げておりますけれど、外部資金の獲得額の増加、知材の収入が4年連続で1億円を突破、また、寄付件数が過去最高といったような成果を上げたところです。
詳細は43ページを御覧いただければと思います。まず、自己収入の増加、外部資金の獲得です。年々、外部資金獲得額が増えていまして、令和5年度は181億円を獲得している状況です。右側の知的財産を御覧いただきますと、戦略的な保有・展開というようなことを行いまして、知財に伴う支出については最小限、ほぼゼロに抑え、逆に知財収入については確保している状況になっております。その下の(2)産学連携、共同研究による受入研究費は、令和5年度には50億円を突破するという状況になっております。
続きまして、44スライドをお願いいたします。がんセンターの研究成果の実用化に向け、6社のベンチャーを認定しております。うち1社は株式上場を果たすというところまできております。その下です。寄付金につきましても、件数、金額ともに拡大をしまして、令和5年度は6.8億円という寄付金を頂いております。当センターの患者さんでない一般の方からの寄付も増えている状況になっています。右側にまいります。(4)の所です。医業収支の状況です。診療報酬の上位基準の獲得等を進めた結果、1人当たり単価、それから収益総額ともに増加をしている状況です。下の借入金の状況につきましては、新たな長期借入れをゼロとし、借入残高を減少させるという状況になっております。今後とも財務内容の改善に向けた様々な取組を進めていきたいと考えております。
続きまして、45スライド、4-1も続けて説明させていただきます。その他業務運営に関する重要事項です。自己評価はBとしております。
46スライドで詳細説明をさせていただきます。まず、Ⅰ法令遵守等内部統制の適切な構築についてです。詳細につきましては、資料1-1の詳細なほうに記載をしているところですが、令和4年度と令和5年度に当センターの職員が収賄で逮捕される事件が発生し、センターの信頼を失墜させた事案が生じました。このことにつきまして、まず、この場を借りて心よりおわびを申し上げたいと思います。こうしたことを二度と起こさないという決意の下、センターの全執行役員が事件発生に至った背景、要因の把握に努め、執行役員会で議論、検討を重ね、また重ねて、全職員から意見を募り、更に外部有識者の検証を経て、昨年度末にコンプライアンス等の強化につき基本方針を取りまとめ公表するという動きになっております。今年度も引き続きセンター内のコンプライアンス推進体制の強化を進め、再発防止を尽くしていくという状況です。
その下です。Ⅱ人事の最適化を御覧ください。医師の働き方改革につきましては、先ほど東病院の院長からも話がありましたが、タスクシフト/タスクシェアの推進のため、医師事務作業補助者の活用、あるいは特定行為研修を終了した看護師による医療行為の実施、また、各診療科内での業務分担の見直し、効率化、医師全体への説明、あるいは新たな勤怠システムの構築といったことを進めました。先ほども土井院長からありましたが、医師等の働き方の効率化が患者の利益、待ち時間の縮減とか、そういったようなところにもつながっているという状況です。その下、(2)障害者の雇用です。法定基準を上回る雇用を実施したところです。
右側を御覧ください。積極的な広報の展開にも力を入れたところです。例えば公式ホームページへの令和5年度アクセス数ですが、3,400万ビューを超えるといったことを獲得しておりますし、動画も活用する形で積極的な広報に努めている状況です。当センターの有するがんに関する最新の知見、研究成果、科学的根拠に基づく診断・治療法を含め、当センターの取組を、このような取組により広く周知することにより、我がセンターの「社会と協働し、全ての国民に最適ながん医療を提供する」という理念の実現を目指し、今後とも取り組んでまいりたいと考えております。説明は以上になります。
○土岐部会長
ありがとうございます。委員の先生方から御質問はございますでしょうか。藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
非常に良い業績であることはよく分かりました。コロナの補助金が途中でストップになっていると思うのですが、そういう中でも非常に良い業績でいらっしゃるというのは、今、なかなか環境としてはほかはあまり良くないので、そういう中でも非常によくやっていらっしゃるなと思いました。ちなみに医業収支だけでいうとどんな状態なのか、1つ教えていただきたいと思います。
それから、最初に理事長が事務部門との連携がとても大事だと思っているということをおっしゃっていたのですけれども、その辺りをもう少し具体的に教えていただけたらと思いました。よろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター須田理事長特任補佐
須田と申します。私のほうから総括的にお話をさせていただきたいと思います。今、御指摘を頂きましたように、コロナ補助金につきまして具体的な数字で申し上げますと、令和4年度は6.4億円の補助金を頂いておりましたが、令和5年度は0.4億円ということで、マイナス6億円という補助金の減でございましたけれども、経常収支全体で黒字という状況でございます。
御質問にありました医業だけの収支で申し上げますと、令和5年度は医業収益が692億円、医業費用が675億円ということで、差し引き医業収支がプラスの16.6億円、医業収支率は102.5%ということで、実は経常収支率よりも少し良い数字ということでございます。
それから、事務との連携についての御質問がありました。各診療科ごとに様々な高度な診療を行っておりますけれども、御質問にありました医業収支の改善にもそれが結び付くように、例えば費用の見直しにおいては、こういう事務については、こういう委託に出したほうがいいのではないかとか、ほかの病院の仕入れの金額のデータのようなものも入手して、事務方がそういう情報を各診療科に提供して、各診療科ごとの経営改善というか、そのようなことについての検討ということも行っています。これが1つの例にはなるかなと思います。ほかに何かありましたらお願いできればと思います。
○国立がん研究センター中釜理事長
追加で申し上げますと、後ほど私からまとめて申し上げようと思ったのですけれども、センターが取り組んでいる様々なプロジェクト、事業、がん対策が多様化し複雑化する中において、様々な新しいプロジェクトを立ち上げる必要があります。そのときに、研究所、病院、といった担当部門だけではなくて、そこに必ず事務部門が関わることによって、それぞれのプロジェクトのマネジメントを丁寧に行っていくことによって、効率的、効果的な運営が可能になる。そういった意味での事務との連携は非常に必須、重要だと考えています。
○土岐部会長
ありがとうございます。私のほうからは、これは本当にすばらしいなと思って、これは自己評価をBにしておりますけれど、Aでもいいかなと思うぐらい本当にすばらしいのですが、ちょっと1点だけ、働き方改革の対応のところだけ。新たな勤怠システムについて、まだ入札中、構築ということで、今後どうされるのかなというところなのですけれど、実際に今年からちゃんとモニタリングしておられるのかということ。それから、やはり自己研鑚の問題がどうしてもがんセンターになると出てくると思うのですけれども、自己研鑽をどのような定義づけでやっているか。そして、完全にこれは自己研鑽として一切報酬と切り離してしまってよいのか。自己研鑽をどのように評価していくべきなのか。全く評価しなければ誰も自己研鑽しなくなるかもしれないので、その辺りは大学病院も困っているのですけれども、今後、是非がんセンターとしても方向を示していただきたいと思いました。いかがでしょうか。
○国立がん研究センター須田理事長特任補佐
まず、私から総括的にお話をさせていただければと思います。新たな勤怠システムの導入というものについては、オートマチックにそういう仕組みを更に構築するということを今やっています。それにつきましても、令和7年1月なので今年度中には運用を開始するという前提でございます。ただ、働き方改革は既に始まっていますので、勤務時間をしっかり把握して、自分でそれを把握するというだけでなく、それは組織内で当然共有をして、それで例えば超勤が多いという所については一定の線を引いて、この線以上であれば上司から指導するとか、あるいはこれを超えた超過勤務があった場合にはこういう措置を取るとか、そのようなことについては、ある意味、事務的なシステマチックな意味では、しっかり既に始めているという状況でございます。
それから、自己研鑽の定義につきましても、中央病院、東病院とありますけれども、全てで統一的な対応ができるように定義づけをしております。私の理解によればですけれども、業務外の自己研鑽ということについては、勤務時間外の研究系、教育系のカンファレンスについては、原則、業務外とするけれども、ただ、これについては、診療科長のほうで業務との関わりが深いので業務と認めると、そういうものについては業務として認めることも可能とするというようなことを基本的な考え方として、両方の病院で扱いを統一しているということです。
最後に、自己研鑽を評価するという、そこを業務と切り離すのは問題ではないかというのは同じ認識でございます。私の知る限りにおいては、若い方が論文をしっかり書いた場合、それは業務として書いた論文ではなくても、その論文に対する手当というものを制度化して、お支払するというようなところは始めています。そのほか、がんセンターという使命に鑑みて、がんの最新の知見についてまとめるというのは非常に業務上も重要ですし、個人としても重要ですので、そこは業務外だからといって、そういう扱いをしないように、例えば今の申し上げたようなことはやって、様々な指導を通じて、そういうことも推奨していると。もちろん研究にも応募をするとか、共同研究とか、そのようなところについても思い切り推奨して、取組は強めているという状況だと思います。やや抽象的で、すみません。
○国立がん研究センター瀬戸中央病院長
補足します。中央病院の瀬戸でございます。基本的にがんセンターは全体的にA水準でありまして、B水準とかC水準は申請しておりません。というのも、これまでも時間外はもちろん毎月把握しているわけですけれども、960時間を超える医師はいないので、A水準でいけると思っております。
具体的な対応としては、例えば自己研鑽にはカンファレンス等があって、これまでは、かなり早朝であるとか、いわゆる夜間とかで行われるカンファレンスもあったのですが、原則として勤務時間以内に行うということが、恐らく東も中央も徹底、周知されております。それ以外に、いわゆる勤務時間以外の研究系あるいは教育系のカンファレンスについては、基本的にはカンファレンスについては自己研鑽という扱いになると思うのですけれども、ただ、診療科長が認めた場合にはそれを業務として認めるというような対応を取っているということでございます。補足です。
○国立がん研究センター土井東病院長
すみません、東病院のほうからも。恐らく中央病院も同じなのですが、先ほど申し上げたように、論文等を書くというのは、恐らく人によって掛ける時間が全然違ってきますので、その成果物として論文がきちんと評価できるものを書いたときには、ちょっと言い方が悪いかもしれないですけれど、報奨金という形でお支払する仕組みを作ったり、海外での発表をするときには、治験の収益の一部から、いわゆる外科系の先生たちにも出張で行っていただけるような仕組みを作ったりということで、いわゆるモチベーションが下がらないような仕組みというのは、比較的十分にしているというところは、ほかの施設よりは大きい部分があるのではないかと思います。
○土岐部会長
大変すばらしいと思います。自己研鑽は決して時間で評価するものではないので、やはりアウトカムで評価するものなので、きちんと評価されているということで、すばらしいと思いました。
○花井委員
ほかのNCでは、この研究事業と臨床研究事業をセグメント別で分けていて、臨床研究事業というのは大体は治験などで収入が入るので、黒字の所も多いのですけれど、研究事業はインハウスで大体は運営費交付金で回して、赤字というパターンなのです。私は目をこすって間違いかなと思うのですけれど、研究事業収益が100億円を超えているというのは、これはどういう整理になっているのですか。治験とかが88億円で、研究セグメントが100億円の収益があって。
○国立がん研究センター須田理事長特任補佐
治験で47億円の収入があって、それから、公的研究費、公的競争的資金と言いまして、内容で言いますとAMEDから頂いている研究費が55億円ほどあります。それから、厚労科研が9億円ほど、文科省から頂いている研究費補助金が6億円ほどあります。それから、企業との共同研究、その企業との共同研究だけで50億円の収入があると。
○花井委員
その企業との共同研究は、こちらの研究事業のほうにセグメントでは入れているのですね。
○国立がん研究センター須田理事長特任補佐
すみません、もう一度お願いします。
○花井委員
セグメント別で、研究事業と臨床研究事業と分けて、セグメントを分けていますよね。研究事業のほうに100億円が収入として立っているので、どうなっているのかなと。普通は、臨床研究事業のほうは大体は委託研究とかが入るので、割とどこのNCも収入が入っていますけれど、研究事業にこれだけの金額が入っているのはここだけなので、何かからくりというか、どういう整理になっているのかと思いまして。
○国立がん研究センター間野研究所長
優秀な研究者を集めているからなのですが、公的研究費、AMED、それから他の民間助成金を含めて80億円近くの収入があります。それプラス共同研究費が、それも企業と一緒にやるのがグングン増えていて50億円ぐらいあります。ただし、共同研究費は、実際は、基礎の研究でやっているものと臨床側で捉えているものと2つに分かれていると思います。それとは別に、治験がやはり40億か50億円ぐらいですかね。ですので、どれも増えているのですけれど、特に公的研究費と共同研究費が増えています。その伸びが、ここ5、6年で2倍ぐらい増えているので、かなりR&Dとしては増えている。でも、それでも世界の一流の所と比べるとまだ足りないと思っています。
○花井委員
そうですか。ちょっと日本では飛び抜けていたので。そうですか。
○国立がん研究センター間野研究所長
はい、そうです。
○花井委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。それでは最後になりますけれども、法人の理事長と監事のヒアリングを行いたいと思います。まずは、法人の監事の方から、業務の監査結果を取りまとめた「監査報告」についての御説明を頂くとともに、現在の法人の業務運営の状況等や今後の課題、改善方針等について、コメントを頂きたいと思います。よろしくお願いします。
○国立がん研究センター近藤監事
監事の近藤と申します。よろしくお願いいたします。資料といたしましては、監査報告が資料1-4という所で出させていただいております。令和5年度の監事の監査結果といたしましては、センターは適切に運営されておりまして、財務諸表等についても適切な開示が行われているという報告をさせていただいております。
がんセンターのミッションに関しましては、今まで議論されているところではありますけれども、今は非常に好調な状況であるということであります。資料1-3に損益計算書が付いておりますけれども、今年の最終損益、これは129億円の黒字であります。巨額の黒字を今回は計上しております。これは、会計基準が変更になって、今まで研究等の収益が完成しなければ計上しなかったものが、進行に伴って計上するということで、変わったことによるものでありますが、この結果として、今年、今までの分が積み重なって129億円という利益が出ております。この結果からも、非常にセンターが好調に事業を行っておりまして、研究も非常にやっておりまして、それが数字として出てきているということだと思います。こういった観点からも、がんセンターの御努力と成果について、監事としては非常に高く評価させていただいております。
ただ、業務が増加しているということがありまして、若干ひずみが生じております。不祥事等が発生しているということがあります。その点に関しまして、コンプライアンス面、あるいはリスクコントロール面、内部統制面、中長期戦略というようなところに関して、いろいろ我々も意見をさせていただきながら、適切な運営をしていただいているというところでございます。以上が報告でございます。
○土岐部会長
ありがとうございます。それでは最後に、法人理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等につきまして、コメントをよろしくお願いいたします。
○国立がん研究センター中釜理事長
まず、本日は、当センターの昨年度1年間の取組について、当センターからの説明を拝聴いただき、またコメントを頂き、ありがとうございました。私の認識として、我々センターは昨年から始まった第4期がん対策推進基本計画に沿って事業を運営したわけですけれど、その中でも大きなスローガンである「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」、この方針に沿って進めているわけです。そういう観点から、国内での取組として、今日も説明がありましたように、例えばゲノム医療におけるC-CAT等の情報基盤を作ることによって新しい医療基盤を構築し、それを広く利活用することによって、がん医療の均てん化ということを新しい視点から展開していきたい、その点に尽力していきたいと考えます。加えて、新規医療技術の開発と提供、それらの国内での普及、こういったことに関しても取り組んでいきたいと思います。
さらに、そういう状況下にあっても、現在も取り沙汰されているドラッグロス・ドラッグラグの問題を解決するには、やはり国内だけではなくて、国際的な連携も重要であります。そういった意味で、米国、ヨーロッパに加えて、東南アジアの諸国との連携をとりながら、臨床試験のネットワークを構築する。さらに、そのネットワークによって新しいデータ基盤を構築し、それを広く利活用することによって、国内のみならず国際的なデータの利活用によって、世界全体の、特に東南アジアを含めた世界全体のがん医療を推進する、そういう方向に尽力していきたいと思います。
加えて、やはりアンメットニーズに応える、これは我々センターの使命ですけれども、そういった意味での希少がん、小児がん、あるいは治療抵抗性の難治がん等に対する取組を強化していきたい。そういう意味では、まだまだやるべきことはたくさんあると認識しています。
さらには、今日、お話させていただきましたけれども、がんそのものが非常に多様であり、がん対策も複雑化する中で、事業体としても、多職種が連携をしながら進めていく必要があります。今日、事業部門との連携の必要性、重要性を説明させていただきましたけれども、一層こういう状況は複雑化するだろうと考えています。その点において経営基盤を盤石とする必要があります。経営規模がこの10数年で2倍~3倍に広がっていますので経営上のリスク要因も急激に増大していることも認識しながら、今日、監事から説明がありましたけれど、コンプライスの強化、内部統制の強化、これらを同時に進めながら、センターが果たすべき役割を安全かつ安心して届けられるような体制を構築していく必要があるだろうと思います。
今日も議論になっておりましたが、がん医療提供の均てん化という意味での課題がまだまだあるということは認識しています。さらに、やはり国際的な競争に打ち勝つことが必要であり、それは単に打ち勝つだけではなくて、国民にとって裨益することを意識する必要があると認識しますので、そういう意味での課題を認識し、世界情勢を把握しながら、センターとしてますます取り組んでいければなと考えているところです。私からは以上です。
○土岐部会長
ありがとうございました。それでは、国立研究開発法人国立がん研究センターの令和5年度の業務実績評価についての審議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
(国立がん研究センター退出)
(休憩)
(国立長寿医療研究センター入室)
○土岐部会長
それでは、続いて国立長寿医療研究センターの令和5年度の業務実績評価について審議を始めたいと思います。初めに、法人の理事長から一言御挨拶をよろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
長寿医療研究センターの理事長を拝命しております荒井と申します。先生方にはいつも丁寧な御指導を頂き、誠にありがとうございます。これから、令和5年度の実績評価について御報告させていただきたいと思います。
当センターは、高齢者の心と体の自立を促進し、健康寿命の延伸を図ることを理念としてやってまいりました。特に診療においては、フレイルや認知症等、非常に複雑な病態を持つ高齢者のケアを、多職種で非常に丁寧に行ってまいりました。当センターの病院は、ほかのナショナルセンターと比べ、決して収益性が高い病院ではありませんが、にもかかわらず、非常に丁寧な診療を行ってまいったつもりでございます。
昨年度は、コロナ禍において、コロナ病棟を閉鎖し、それを地域包括ケア病棟に転換させていただきましたが、その間のつなぎ目の病床稼働が若干立ち遅れ、前半の稼働率が低い状態であったことが響き、トータルとしては赤字になってしまいました。しかし、8月頃からは、稼働率を9割近くまで上げていただき、しっかりと診療収益を得ながら、しかも、365日のリハビリテーションを提供することにより、全ての患者さんが一日も早く元気に帰って自立した生活を送れるような診療を行ってまいりました。
また、研究においても、2019年から始めた認知症予防に関する多因子介入であるJ-MINT研究の論文が昨年度に採択され、今年発表し、プレリリースをさせていただきました。認知症、フレイルを中心に、研究、診療について学際的な取組を行ってまいりましたので、今年から施行された認知症基本法に関しても、当センターがかなりコミットする形で様々な取り組みを行わせていただいておりますので、評価のほうを是非ともよろしくお願いいたします。簡単ですが私からの御挨拶とさせていただきます。
○土岐部会長
ありがとうございます。それでは、まず「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1から1-2ですが、この業務実績について議論をしたいと思います。最初に、法人から説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
研究所長をさせていただいております櫻井です。早速、評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について御説明いたします。令和5年度は、認知症予防を目指した多因子介入研究の主解析が終了し、社会実装に向けた研究を開始しております。また、認知症のゲノム解析、デジタルヘルスの研究、地域コホートの研究の国際共同研究等で顕著な進展が見られましたので、自己評価をSとさせていただきました。
それでは、早速、9ページから御説明いたします。認知症予防を目指した多因子介入研究、J-MINT研究ですが、軽度認知障害(MCI)を有する高齢者を対象とした世界で初めての多因子介入研究です。運動・食事・認知トレーニング・生活習慣病の管理を適正に行いますと認知機能が改善することを明らかにしました。
結果を要約しますと、左側の(1)、運動教室の参加率が70%以上の介入群では、70%未満の介入群及び対照群と比較し、認知機能が有意に改善しました。(2)、アルツハイマー病の遺伝的リスクであるApoE4キャリアーにおいて、多因子介入により認知機能がほぼ維持されることが分かりました。さらに、認知症血液バイオマーカーの層別解析を行ったところ、アミロイドやタウではなく、脳内炎症を反映するGFAP高値群において、介入による認知機能の改善効果が明らかであることが分かりました。多因子介入の機序として、神経炎症が関わる可能性を初めて示したものです。これらの結果は、『Alzheimer's&Disease』誌に掲載されました。
また、多因子介入の効果の高い人、レスポンダーと申しておりますが、その特徴を調べますと、より若い高齢者で、高血圧や高血糖等の生活習慣病を持つこと、フレイルを持つことであることが明らかになりました。社会実装では、レスポンダーに焦点し、リアルワールドでの有効性検証を行っているところです。
右側です。一般に、介入研究から得られたエビデンスが社会実装されるまでには約20年が掛かると言われております。J-MINT研究では、その成果をより早く社会に還元するため、実装科学の手法を取り入れております。リアルワールドでの様々な阻害因子、促進因子を分析し、介入プログラムを地域に適用して、有効性と費用対効果を検証し、横展開させてまいります。
令和5年度は、愛知県大府市の介護予防教室にJ-MINTプログラムを導入し、現場スタッフが多因子介入を提供できるかを検証しました。1年間の研究で、参加者のプログラムの高い継続割合と重要性が確認できました。令和7年度から全国で大規模検証を行い、普及させてまいります。また、多因子介入の教科書として「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」と自己モニタリングを行う「生活ノート」を作成し、ホームページで公開しました。大きな反響があり、MCIをキーワードでGoogle検索すると第2位に挙がってまいります。また、本スライドには示しておりませんが、地域で誰もが認知機能検査を受けられ、認知障害の早期発見・早期治療につながる日本独持のシステムを構築する研究、J-DEPP研究と申しますが、これが令和5年度に始まりました。全国の36自治体、1万人規模の調査を進めているところです。
次をお願いします。認知症のゲノム解析の進捗について御説明します。左側、アルツハイマー病発症に関わる東アジア人特異的なHLA型を同定しました。当センターのバイオバンクに登録されているアルツハイマー病患者303名と認知機能正常高齢者1,717名の全ゲノムシークエンス解析から、アルツハイマー病発症に関連するHLAの遺伝子型を網羅的に調べました。その結果、アルツハイマー病発症リスクが1.8倍高くなる新たなHLA型、図の赤い矢印の所ですが、これを2つ発見しました。下段の表に示しますように、これらは東アジア人特異的なHLA型であり、人種特異的なADリスク遺伝子と考えられました。
右側、前年度に同定したレビー小体型認知症発症に関わる遺伝子変異、MFSD3変異と申しますが、これの機能解析を行いました。ゲノム編集を用いてヒト神経幹細胞並びにマウスに変異を導入して機能解析を行ったところ、ヒト培養細胞において、細胞増殖能、細胞分化能の低下が確認されました。マウスにおいても、神経新生の低下、海馬の委縮、新規好奇心の喪失が観察されました。以上より、当センターが保有するゲノム情報から、新たな日本人特有の認知症発症に関わるリスク因子を同定することができました。これらの結果は、創薬への展開、あるいは認知症の個別化医療につながる知見であり、その意義は大きいと考えております。
次に、大規模コホートを基盤としたデジタルヘルス研究について御紹介します。左側、大規模データベースの構築では、大府市から委託を受けておりますプラチナ長寿健診を保健事業として行っております。令和5年度は1,246名の調査が終了し、前年度より11%増加しました。
(2)高齢者の自動車運転に関する研究では、運転を中止すると要介護や認知症発症が高まることを、これまで報告してきました。本研究では、運転危険者の早期発見のためにバーチャルリアリティの検査システムを開発し、スクリーニング検査を967名に実施しました。バーチャルリアリティでリスクが明らかになった人に、日本で初めて、市の補助事業として運転トレーニングを実施しています。このトレーニングが事故の抑制に有効かどうか、1,477名の高齢ドライバーを対象としたRCTを実施しております。また、日本老年学会が発行した「高齢者の自動車運転に関する報告書」の取りまとめにも貢献いたしました。
右側です。スマートフォンを用いた介護予防・認知症予防プログラムは、住民がデジタルツールを用いて自ら認知症予防に取り組むものです。現在進行中の大規模検証では、介入の継続とともに中間・事後評価を行っております。介入に用いる「オンライン通いの場アプリ」のダウンロード数が、令和5年度に約1.2万件増加し10万件を超えてまいりました。「オンライン通いの場アプリ」で得られるデータを、健診や医療・介護レセプトデータと突合することで、要介護状態を予測するモデルを開発できると考えております。
(4)介護ボランティア支援システムは、介護事業所のボランティアニーズと高齢者のニーズをマッチングさせるものです。報酬をケアポイントとして支払うシステムをブロックチェーンを用いて構築し、スマホアプリを作成いたしました。介護ボランティアの実施による高齢者の孤立や孤独に対する効果をRCTで検証してまいります。
次に、コホート研究の国際共同研究について御紹介します。左側、NILS-LSA研究は、私どもが25年間継続してきた地域住民を対象としたコホートで、令和5年度には第10次調査を行いました。また、米国の最長の老化に関する前向きコホートであるBLSAとの共同研究を行い、加齢に伴う筋量と骨量の低下の関連性を調べたところ、日本のほうが米国よりも強いことが明らかになりました。
右側、私どもは、高齢者のウェルビーイング向上を目指す国内多施設研究(JAGES)に参加するとともに、海外との共同研究を行ってきました。英国University College Londonとの国際共同研究では、日本、英国、米国、中国、欧州の計16か国、計9万3,000人の高齢者の縦断データを用いて、国別の比較とメタ解析を行いました。その結果、趣味活動を行うことが高齢者のウェルビーイングの向上に寄与すること、また、国や文化の違いにはよらないことを示しました。この結果は、『Nature Medicine』誌に掲載されました。
(3)台湾のHALSTとの共同研究も進み、機械学習により人口統計学的変数と臨床検査値による死亡予測モデルの構築を報告いたしました。
次に、老化に伴う睡眠変化及びサルコペニアに関する基礎研究について御報告します。左側、老化に伴う睡眠の断片化は、視床下部Prdm13神経の機能によりもたらされています。左上の図は、視床下部Prdm13神経の睡眠制御への応答が老齢マウスで低下していることを示しております。右上、若年期から睡眠が断片化しているPrdm13欠損マウスは、老化が早く寿命が短縮していることが分かりました。睡眠の断片化は単なる加齢現象ではなく、寿命に影響する生理機能変化であることが分かりました。左下です。マウス脳で睡眠制御への関連が示唆されているmicroRNAは、ヒトの血液中でも加齢に伴い増加すること、また、comorbidityの数とも正相関することを見いだしました。右下です。さらに、脳内神経活動ネットワークを網羅的に解析する手法を解析し、睡眠負荷により脳全体のネットワークが大きく影響を受けることを明らかにしております。
右側です。高齢者の筋肉の霜降り化とビタミンDに関する研究です。骨格筋内の異所性脂肪蓄積、いわゆる霜降り化は、サルコペニア病態と密接な関係があると考えられています。左上、高齢者の筋肉を観察すると霜降り化が見られ、加齢に伴い増加してまいります。右上です。骨格筋内には間葉系前駆細胞(FAP細胞)が存在し、恒常性維持に寄与しています。これまで、ビタミンDの筋肉への作用点は筋繊維と考えられてきましたが、今回、新たにFAP細胞でもビタミンD受容体が高発現していることを発見しました。左下、ビタミンDにはFAP細胞の脂肪分化を強力に抑制する効果があり、ビタミンDを用いない飼料を与えた老齢マウスでは、骨格筋の霜降り化が進行することが明らかになりました。以上の結果から、ビタミンD欠乏は筋力低下を導くだけではなく、筋肉の霜降り化誘導にも関連する可能性が示され、サルコペニアの病態解明や治療法の開発につながることが期待されます。1-1は以上です。
では、1-2へ進んでまいります。実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備についてです。令和5年度は、当センターのバイオバンクが国際規格を取得したほか、認知症の統合データベースを公開いたしました。また、認知症血液バイオマーカー測定室及び科学的介護システムの支援研究部を新設し、成果を上げましたので、自己評価はSとさせていただきました。
24ページを御覧ください。まず、バイオバンクの基盤整備について御報告します。ヒト試料情報を収集・提供するバイオバンクは、重要な医療研究の基盤であり、世界中で設置が進んでいますが、一方で、質の低いバンクも少なくありません。そこで、国際標準化機構(ISO)は、2018年にバイオバンクの国際規格を発行しました。当センターは、国際規格の草案段階からISO会議に参加し、昨年度末に国内初の認定バイオバンクとなりました。加えて、バイオバンキング技術の国際検定では最高評価を受け、試料の品質管理の高さを証明しています。特に私どものバイオバンクが保有する認知症例は、東アジア人種の症例として世界でも突出した保有数を誇っております。この認知症の数的優位を研究活動にいかすため、右に示しておりますような、臨床情報と各種Omicsデータが紐づけられた軽度認知症から認知症への統合データベースを構築し、令和5年度末に稼働を始めております。格納されたデータは、図に示しております臨床情報、脳画像データ、ゲノムを中心としたOmicsデータです。令和6年からは、共同研究でGlycomeのデータの取得が始まっております。
次をお願いします。メディカルゲノムセンターは、ゲノム医療推進基盤として、各NCに設置されています。当センターは認知症を中心にゲノムデータを集め、研究・臨床に資するバイオリンパティクス拠点として整備を進めています。令和5年度は認知症例など308例の全ゲノム解析、2,718例の網羅的全ゲノムのSNPジェノタイピング、288例のトランスクリプトーム解析を行いました。これまでの累積データ数は、ページ右側、中段の表に示したとおりです。
データの活用例としては、令和5年度に、臨床情報とトランスクリプトームデータを用いた機械学習から、高齢者におけるADL低下や認知症のリスクとなるフレイル診断の高精度予測モデルを開発しました。これらの情報は、AMEDが管理しております公共データベースMGeND、CANNDsに登録し、データの共有化に協力しております。
次に、新たな研究支援基盤を構築しましたので御紹介します。左側、認知症血液バイオマーカーは、今後、臨床でも研究でも重要なツールとなってまいります。そこで、血液バイオマーカーの測定室を新設しました。最新の測定機器、HISCL-5000並びにSimoa HD-Xを厳重に温度管理された測定室に設置し、センター内外からの血液バイオマーカーの測定を請け負う体制を構築しました。左下図に示しますように、HISCLによるAβ42/40比、SimoaによるpTau217は、いずれも高いAβ病理の推定能力を示しましたが、これらを組み合わせますと更に精度を向上させることを確認しました。緑のラインでAUCは0.92でした。また、右下図に示しておりますAβ、pTau217、GFAP、NfLの測定値を組み合わせて、認知症の病型判定、進行予測が可能な層別化システムを開発することができました。
右側です。研究基盤センターとして、マウスとゼブラフィッシュの遺伝子改変動物の作製を請け負う体制を整備しました。令和5年度は、当センターで作製した遺伝子改変動物、DOCK11の欠損マウスを用いた解析が、新規遺伝性疾患の病態解明に貢献しました。全身性の炎症と貧血を伴う未知の疾患について、オーストリアのSt Anna Children's Cancer Instituteで解析したところ、当センターで発見されたDOCK11遺伝子に変異を有することが明らかになりました。そこで、DOCK11欠損マウスを用いた解析依頼があり、このマウスのT細胞を解析しました。その結果、抗原刺激に応じたCD8+T細胞で、上段3種のサイトカイン産生が亢進しており、CD4+T細胞については、炎症応答を増強するIL-2産生が上昇する一方、炎症抑制に当たるIL-4の産生が低下していました。これらのことから、DOCK11欠損により、キラーT細胞を中心とした炎症応答が亢進することで、慢性炎症の様々な症状を来すことが示唆されました。これらの結果は『The New England Journal of Medicine』に掲載されました。
次に、科学的介護の質の向上支援について御紹介します。科学的介護とは科学的根拠に基づく介護のことであり、厚生労働省では「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」で取りまとめられております。介護分野におけるエビデンスの蓄積と活用のために必要なデータベースとして、LIFEが創設されました。しかし、LIFEでは、データ入力の負担や煩雑さ、活用における多くの課題があり、厚生労働省では科学的介護に向けた質の向上支援事業が行われ、当センターが委託を受け、令和5年度に新たな研究組織を創設しました。介護現場は慢性的な人材不足を抱えており、経験に頼る介護方法ではなく、科学的根拠に基づく介護の提供が必要とされており、この科学的介護を推進する研究チームです。
左側、科学的介護推進に関わる事業を実施するために、6部門17名による専門委員会を設立し、専従プロジェクトチームである「科学的介護推進チーム」を発足させました。(2)科学的介護情報システムにセキュアにアクセスしてデータを取得し解析する環境整備として、ログ解析可能な施錠管理システム、独立した解析室を設置いたしました。
右側、科学的介護情報システムの普及と推進のために、科学的介護情報システム研修会と研究会を開催しました。研修会は東京、大阪、愛知の3会場に加え、オンデマンドでも配信しました。研修会、研究会はいずれも令和5年度の目標数を大きく上回る参加数を達成しております。
右下、(4)介護現場におけるデータ活用に向けて、LIFE加算項目の類型化を行いました。LIFE情報の入力状況と利活用可能な情報の検討として、介護DB定型データセットから対象集団を抽出し、LIFE情報の基本統計量を算出しました。その結果、必須項目における欠損値は4%でしたが、任意項目では欠損値の割合が85%と高いことが分かりました。また、日付に関する情報では不合理な情報も確認されました。このため、LIFE類型化リストと照合し、利用可能な情報について検討を進めているところです。
最後に、長寿医療支援ロボットの開発について御説明します。左側、リビングラボは、健康長寿支援のためのロボット開発拠点として整備してきました。令和5年度は、リビングラボに導入したマーカーレスによる動作計測技術を開発し、生活支援ロボットの効果を検証しました。特に転倒衝撃緩和ロボットにおいては、模擬転倒時の体の動作速度を定量化することで、転倒後の外傷リスクが大幅に減少することを確認しました。
(2)です。令和5年度は、介護施設で介護ロボットを活用することによる入居者のQOL向上について検討しました。例えば移乗支援ロボットを使用しますと、介護者の負担軽減に伴い、被介護者とのコミュニケーション時間が約8倍に増加しました。また、介護施設入居者がコミュニケーションロボットと触れ合うとき、「見る+聞く+触れる」の刺激を組み合せることで、AI解析による喜びの表情が最大となることを確認しております。
介護ロボットの開発・実証プラットフォームの構築では、介護施設へのロボット導入支援と企業のロボット開発支援を行いました。企業相談では、現場のニーズの伝達や医療・介護スタッフによるプロトタイプの検証を行い、「介護テクノロジー開発ガイドブック」を作成し公開することができました。以上です。
○土岐部会長
ありがとうございます。ただいまの研究開発成果の最大化に関する事項ですけれども、委員の先生方から御質問があればお受けしたいと思います。いかがでしょうか。神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
最初に質問をさせていただきます。資料のページが分からないのですけれども、確かウェルビーイングのデータを論文化されたというデータが上がったと思います。ウェルビーイングというのは、何か分かるような、分からないようなものだと思いますが、ただ実際、国は今やっている高齢者社会対策大綱の取組の中で、確か首相もウェルビーイングという言葉を使われていたような気がするのですけれども、これを定量的に評価するというのは、一体どうやってやったのかというのを知りたい、興味があるのですけれども、いかがでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
ありがとうございます。『Nature Medicine』の論文では、うつの指標であるGDS15と、主観的健康観(セルフリポートヘルス)、幸福感(ハピネス)、生活満足度(ライフサティスファクション)の4つの評価を行いました。また、WHO-5という指標も使われているようです。
○神﨑委員
ごめんなさい、もう一度教えてほしいのですけれども、これはWHO-5を使ってデータを取ったということですか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
いえ、この論文では、そうではございません。GDS15を含む4つの指標を使っております。
○神﨑委員
ウェルビーイングはやはり分かりにくいと思うのですけれども、その4つの指標はここにある日本、イギリス、アメリカ、中国、ヨーロッパで、一応、標準化されているというように考えてよい指標を作ったということなのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
新たに作ったのではなく、既存の4つの指標を使って、国ごとに点数を標準化して評価しました。
○神﨑委員
いや、繰り返しになるのですけれども、この指標がこれから先いろいろなものに使えるのであれば、やはり重要な基礎データになるのかなと思って、すみません、論文を読んでいないので分からないのですけれども、質問させていただきました。読ませていただきます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
今回は国際共同研究ですので、既存の尺度を使わせていただきました。先生が御指摘のように、ウェルビーイングの指標はまだワールドワイドに確立されてはないと私は思っております。今後ウェルビーイングの指標は非常に大事になってまいりますので、老年学・社会科学研究センターを中心に、斎藤部長がこの分野ではいろいろとデータを研究しております。ウェルビーイングは非常に地域性が高いと思いますので、是非とも日本独自の指標を作るようにお願いしていこうと思います。
○神﨑委員
そうですね。世界的ではなくても、日本でということでも私はいいような気がしていいます。どうもありがとうございました。
○土岐部会長
続きまして、前村委員、どうぞ。
○前村委員
前村です。フレイルがいろいろな疾患と関連するので、フレイルになる人を同定して早めに介入するというのは非常に重要なことかと思います。その点で25ページですが、フレイルをAUC=0.95で予測できるというのは驚異的な精度なのですが、これは、全くフレイルの所見のない人のデータを入れて、あなたはフレイルになるというのがこれぐらいの精度で予測できるということでしょうか。その場合、これはAI、機械学習が入っているので、どういうのを見ているかというのはブラックボックスなのかもしれないのですけれども、どういう所見があればフレイルが予測されるというのは分かりますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
御指摘のように、中身はAI解析ですので、分からないところはございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
一応、モデルでは年齢と性別とBMIと5つのバイオマーカーで診断してきたというように言っております。そのバイオマーカーの内容まで十分に我々は把握しておりませんけれども、SNP解析を基にしたものですので、各年代で本当にどれだけ同じような予測性を持って使えるかどうかということは、もう少ししっかりと慎重に検証していかなければいけないのではないかと思っております。
○前村委員
何か検証するコホートでも確かめられているのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
バリデーションはしなければいけないのではないかと思っております。多分これは我々のバイオバンクのデータを基に作ったものだと思いますので、バリデーションコホートでしっかりと検証されているということではないと思います。
○前村委員
これができれば非常に役立つと思うので、よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
ありがとうございます。
○土岐部会長
それでは、深見委員、どうぞ。
○深見委員
深見です。28ページの医療介護ロボットについてお尋ねします。医療ロボットは、最近、開発がすごく著しくて、日本だけではなくて、中国、アメリカ、いろいろな所で、いろいろなロボットですけれども、医療に関するロボットというものについても開発が進んでいると思うのですけれども、多くの製品の中で、どのように採用するのか、そういった採用の基準をどのように設けているのか。それから、開発をどこかの企業と一緒に、実際にやってみたところで開発、改良が進むということもありますので、製品開発に関わっているのかということをお尋ねしたいと思います。それから、こういったものがいいという介護ロボットが、ある程度出てきたところで、ほかの病院に対してどういう波及効果があるのか、その辺りについても少しお尋ねしたいと思います。以上です。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
ありがとうございます。健康長寿支援ロボットセンター長を兼任しております近藤からお答えさせていただきます。
最初のロボットの認可に関しましては、医療系はPMDAがやることになっております。介護系に関しましては、そういった正式な認可を出すような組織はございませんが、一応、テクノエイドが認証して介護保険の福祉機器として使えるように登録をするTAISコードというのがございますが、そういったTAISコードが付くと、介護保険でレンタルとかリースが可能になるような形のシステムがございます。
当センターで開発したロボットに関しましては、なかなか社会実装が難しくて、ほかの病院で使っていただけるところまでは、まだ到達しておりません。ただ、当センター内でまず実証ということが必要ですので、ユーザビリティ調査から始めて、来年度に関しましては、実際に病棟で使ってみるということを、今、考えております。
それから、特に国内の医療ロボット系の開発に関しましては、なかなか診療報酬がきちんと付かないものですから、かなり良いロボットが開発されてはいるのですけれども、診療報酬で十分にロボットの購入費用を補填できるような形にはまだなっておりませんので、そこがかなり大きな問題になってきているのではないかと考えております。ですので、できれば厚労省のほうで少し御検討いただければ有り難いなと思っておりました。以上でございます。
○深見委員
この間、別件でいろいろロボットの開発を見に行ったのですけれども、非常に活発だなと思いましたので、うまく活用できるといいと思っております。以上です。
○土岐部会長
神﨑委員、どうぞ。
○神﨑委員
追加発言をさせてください。ロボットは私も重要な日本の産業になってほしいと希望しているのですが、海外ではこういったロボットの開発の進捗はどうなっていますでしょうか。日本は手掛けるのは早いのかもしれないのですけれども、その後の製品化が遅れると、結局、後塵を拝するということになってしまうような気がするので、そこのところに期待を持ってしまうのですけれども、今の海外の事情と併せて御説明というか、お願いというか、質問とさせてください。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
先ほど少しお話も出てきましたが、中国では、日本あるいは米国で開発されたロボットに類似したものを非常にたくさん開発しております。だから、ロボット展などに参加させていただきますと、たくさんのロボットが展示されているのですが、そのほとんどが死の谷に落ちてしまって、社会実装まで進みません。あと、メンテナンスがやはり海外の場合は整っておりませんので、海外ロボットが大きく展開していくというようなお話は余り聞いておりません。ただ、少し介護から離れてしまうのですけれども、配送ロボット、特にレストランなどで食事を運ぶロボットなどの開発は非常によく進んでおりますし、それは海外でもよく使われておりますし、日本で使われているのを御覧になったことがあると思います。これに関しましては、特に介護現場では、資材の管理がいろいろ問題になってきておりますので、より良く配送ロボットをこれから使っていくというのが、やはり大事になってくるのではないかなと思っておりました。
一方、医療ロボットに関しましては、国内で診療報酬の手当が十分でないということがありますので、海外に活路を見いだそうとしている企業が結構ございます。介護ロボットの領域では、米国のFDAの申請をやっている所もございますし、あと、経産省もCEマークの取得支援を通じて海外展開の補助をされていますので、余り日本で評価されない場合は、やはり海外展開をこれからは考えていかざるを得ないのかなと考えております。以上でございます。
○神﨑委員
是非、頑張っていただきたいと思います。お願いします。
○土岐部会長
よろしいでしょうか。それでは、次の項目に移ります。「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」です。評価項目1-3から1-5になります。先ほどと同様に、まずは法人のほうから説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
それでは、医療の提供に関する事項の説明を行わせていただきます。最初に、スライドに示されていると思いますが、入院延べ患者数及び病床利用率は、目標値より少ない数字になっています。入院延べ患者数については、コロナ頃の医療ニーズの予測が立てづらかったことがあり、現状としては、かなり減少し、それに伴って、特に4~7月の一般病床の利用率が75%を切っておりました。このため、病床の再度の編成の検討を全診療科で行い、加えて、原点に立ち返って、高齢者が必要とする医療に力点を置いた病床運営を行うよう努力させていただきました。その結果、特に年明けの1~3月は、一般病床の利用率が飛躍的に改善し、ここ数年で最大の病床利用率を達成しております。一方、平均在院日数と手術件数につきましては、目標値を大きく上回っております。これらのことを総合的に勘案し、自己評価をSとさせていただきました。
次のスライドです。要因分析としては、眼科の移植医療の積極的導入などの要因に伴う手術件数の増大。評定の根拠に関しては、レカネマブ治療の開始と、摂食嚥下・排泄障害に対する総合的なアプローチがありますが、これらに関しましては、後で説明させていただきます。
次のスライドです。もの忘れセンターで提供する最新の医療とケアについて説明させていただきます。最初に、国内最大級のもの忘れセンターである当センターの新患患者数は、一貫して1,000人前後となっており、多数のもの忘れを主訴とする患者の確定診断を行ってきました。その中で、昨年度、特筆すべきことは、認知症の抗体医薬で国内で最初に認可されたレカネマブを使った治療への取組を開始したことです。当センターで治験を行っていた患者5名の臨床治療移行を皮切りとして、5月の時点の累計で15名の患者の治療を行っています。ARIAを中心とする副作用の管理を厳密に行うため、全例に遺伝子検査を行い、ApoE4キャリアのスクリーニングを行うとともに、初回の投与は入院の設定で行っています。また、本人・家族ペアを対象にした認知症教室も継続しており、レクリエーションパートに、吉本興業の御協力の下、笑いと音楽を取り入れた新しいコンテンツを導入しております。
次のスライドです。摂食嚥下・排泄障害に対する最新医療の取組に関しましては、嚥下時のむせや便秘などの臨床諸症状からの判断ではなく、多職種ベースで嚥下ラウンドを行うとともに、リハ病棟に入院された方に対しては、全例スクリーニング検査を行っております。さらに、嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査及び排泄機能に対する超音波検査を使った客観的な評価を積極的に導入しております。
一方、加齢に伴う嚥下速度、嚥下時の舌骨の挙上及び声門閉鎖などの変化を検討して、基礎的な知見を得るために320列CTを使い、地域在住高齢者のデータを蓄積しています。320列CTを使った試みとしては、当該開発を行った藤田医科大に続く日本で2番目のものであり、特に高齢者のデータは初めてのものになります。
右側を御覧になっていただくと、また、残尿に関しても、リハ病棟のデータでは残尿感と超音波検査の残尿量の結果は一致しないことを明らかにしています。さらに、便通の訴えができない認知症患者に超音波検査による直腸の便貯留検査を行い、薬剤、リハの介入を行い、改善を見ています。
次のスライドです。リハビリテーション部における認知症とフレイルの対策ですが、軽度認知障害と認知症の人に対し、非薬物的包括的リハビリテーションを行う脳活リハを実施しており、通院する患者が増えております。参加者の中には、就業して、仕事を再開された方もおられました。それから、ApoE4の遺伝系を有している人が、レカネマブの副作用の一つであるARIAを起こしやすく、また、J-MINT研究で、ApoE4の遺伝系を有している患者で非薬物的な包括的アプローチが有効であるということが分かっていますので、今後、これに栄養介入を加えた形のサービス提供を検討しています。また、コロナ禍での高齢者のフレイルを防止するために、当センターが開発した在宅活動ガイド(HEPOP)の社会実装の形態として、中日文化センターでの運動教室及び自治体における介護予防事業での運動指導を行っており、それぞれ成果が上がって、一部が論文化されています。
次のスライドです。このほかに、リハビリテーション部門では、ロコモフレイルセンターと協力して運動介入及びオーラルフレイルの良化などを行い、サルコペニア予防に対する取組、及び歩行評価をより簡便に行うための技術開発を行っています。
画面右側は、治験・臨床研究体制の整備についての説明です。ARO体制の整備及びレジストリ構築などの支援を行うほかに、特にMCIレジストリを企業治験のリクルートに活用する基盤(CLIC-D)を全面的に改修し、もの忘れ外来や地域のクリニックなどレジストリ以外のリソースに利用できるようにして、対象もMCIだけではなく、プレクリニカルを含む全てのステージに対応できるシステムを形成しています。
次のスライドです。地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実として、平成28年から移行期支援と訪問リハを開始しており、特に訪問リハの件数は、地域からのニーズも高く、年ごとに増大しています。
また、令和3年度のフォーカスグループインタビュー及び令和4年度の全国実態調査結果を基に、「認知症の緩和ケア実践ガイドライン」と「認知症を有する人のためのエンドオブライフ:ケア、最後までの意思の形成は・表出・実現を支えるための支援ガイド」を策定しています。アドバンス・ケアプランニングのリーダーやファシリテーター養成のための研修会も実施し、令和5年度は参加者の人数を大きく伸ばしています。
次のスライドです。フレイル・ロコモ・サルコペニア克服による身体的自立促進に向けた取組をロコモフレイルセンターで行っておりますが、多職種カンファ、レジストリの構築及び関連機器の開発を継続しております。特に再骨折予防を通じた取組として、地域ネットの活用を開始しており、今後、これを在宅医療サービスにつなげて、より充実したフレイル予防を行っていく予定としております。
次のスライドです。高齢者感覚器包括医療と眼科再生医療の展開として、感覚器外来での視覚・聴覚・味覚・嗅覚・平衡感覚についての包括的感覚器評価を行い、医療介入・ロービジョンケア・運動感覚器評価による高齢者包括的ケアにつなげる活動を継続しています。また、高齢者の難治性角膜疾患に対して羊膜移植・角膜移植の拠点施設として治療と臨床研究を行い、合わせて羊膜移植6件、角膜移植も44件実施しています。高齢者の難治性眼表面疾患に対して再生医療製品を用いた先進医療を開始し、さらに、京都府立医科大学との共同研究にて、培養角膜内皮細胞の開発研究を行い、再生医療製品としての承認を得ています。
ほかに、スライドにはございませんが、関連学会からのステートメントが出ていることもあって、高齢者の認知機能に対して難聴の影響が大きいことが分かっておりますので、感覚器センターでの認知機能の評価と、さらには、補聴器外来で積極的に難聴に対するアプローチを進め、幾つかの論文を発表しております。
引き続き、人材育成に関する事項についても説明をさせていただきます。厚労省からの委託事業である認知症サポート医研修及び認知症初期集中支援チーム員研修、さらには、当センターが独自に行っている高齢者医療・在宅医療総合看護研修は、いずれも順調に実施されており、特に看護研修及び初期集中研修は目標値を大幅に上回って、150%を超えております。このため、自己評価をSとさせていただきました。
次のスライドです。看護研修はオンライン研修を組み込んだこと、初期集中研修は優良事例の公表を行ったことが、研修者数を増やすことにつながったと考えられます。特に、卒後教育研修評価機構による評価を受審しJCEP認定を受けたのはナショナルセンターでは初めてであり、今後、地域で高齢者医療を担う人材の育成につなげていきたいと考えています。
次のスライドです。左側に認知症サポート医研修の受講者数、右側に初期集中支援研修の受講者数を示しました。これらはいずれも厚労省からの委託事業です。累計で、認知症サポート医研修の1万4,610名、初期集中支援研修の1万4,999名の受講を達成しております。このほかに、愛知県からの委託により、認知症地域支援推進員、認知症初期集中支援チーム員などを対象に研修を実施し、さらに、認知症地域支援推進員を対象としたeラーニングサイトである「研修プラットホーム」並びにYouTube限定公開にて研修動画の公開を行っています。
次のスライドです。当センターは、基本19領域の中のリハビリテーション医学の専攻医の基幹施設となっています。また、内科専攻医でも研修基幹施設となるべく、先日、その前提となるJCEPの認定を受けた後、今年度、専門医機構への申請手続を行い、今後、高齢者医療の分野で活躍する人材育成の準備を着々と進めています。海外からの研修も幅広く受け入れ、さらに、当センター独自のレジデント及び専門修練医の研修を行い、加えて、若手研究者の研究遂行能力の育成を図ることを目的として、大学院博士後期課程及び大学院博士課程に在学している者を対象として、リサーチ・アシスタント制度を令和4年7月より導入しています。加えて、メディカルスタッフの学生に対する研修として、令和5年度は、当センターの特徴をいかした実習を単年度で6,595名に対して実施しています。私の説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○国立長寿医療研究センター平岩企画戦略局長
続きまして、企画戦略局長でございます。42ページの評価項目1-5、医療政策の推進に関する事項についてです。自己評価はSとしています。ホームページのアクセス件数が目標に対して134%、803万件となっております。この134%というのは、昨年までの目標の340万件を600万件に引き上げた後の実績値となります。要因といたしましては、ホームページ内に認知症情報ポータルサイトを新たに整備して閲覧しやすくしたこと、あるいは医療情報の発信をできるだけこまめに実施するといったことで関心を継続して持っていただくようなこと、こうした工夫をしたことが挙げられます。
43ページです。アジア人向けのカヘキシアの診断基準というのを世界で初めて公表いたしました。カヘキシアとは、がんなどによる栄養障害でありまして、これに対して適切な包括的ケアが求められる病態を言います。日本では、カヘキシア=がん終末期ということで治療法がないというイメージがあることや、カヘキシアの診断基準がないことで適切に診療されることが少なかったわけですけれども、今回、診断基準が公表されたことで、カヘキシアの診断や早期介入が進むと期待されております。
それから、「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」というのを公開いたしました。ポリファーマシー対策など薬学的管理におきましては、多職種連携が必要不可欠でありますけれども、病院以外の地域医療レベルでの社会実装というのは十分進んでいないところです。このガイドは、在宅や介護施設を現場とする薬剤師をメインターゲットといたしまして、多職種の方と双方向で情報共有をして、適切な薬物治療の提案ができるようにすることを目的として作成したものです。
44ページです。(1)の「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック(第2版)」についてです。第1版が新聞などで取り上げられまして、内容であるとか入手方法など、200件近くの問合せがあったこと、それから、外国語に翻訳をしてほしいといった要望があるなど大きな反響があったことを受けまして、更なる内容の充実と利便性の向上を図るために、これを活用していただいた当事者の方からの意見であるとか、更なる研究の成果といったものを一層反映した形で、最新版といたしまして改めて作成したものです。
それから、高齢者の自動車事故が社会的な問題となっておりますが、この事故を減らし、高齢者の活動範囲を維持するために、(2)としまして、日本老年学会の高齢者の自動車運転に関する報告書作成に寄与したほか、最後まで認知症患者の意思を尊重したケアを実施するため、(3)として、「認知症支援ガイド」を作成するなど、認知症をはじめとした診療情報を積極的に発信したところであります。
また、右側になりますが、愛知県や市町村と協力いたしまして、研修の推進であるとか、最新情報の展開を図ったほか、1,300名以上の申込みがあった「認知症医療介護推進フォーラム」の開催、こういったものに努めたところです。
さらに、今回、初めて開催したものとしては、「Independent Ageing 2023」というものを行いました。こちらは産学官による高齢者の自立というのをテーマといたしまして、国内外の企業とか団体といった所の展示を行うとともに、11か国からWHOや国内あるいは各国の専門家の方々42名を招いて、高齢化対策に関する講演を行うなどして、国際的な発信にも力を注いだところでございます。説明は以上です。
○土岐部会長
ありがとうございます。ただいま、1-3から1-5まで、医療の提供等について説明していただきました。御質問等がございましたら、よろしくお願いします。
○花井委員
御説明ありがとうございます。やはり、この施設の特性から、最後の情報発信という形でハンドブックや、いわゆるライフスタイルをこうしたらいいというようなところで情報発信できるところが多いと思います。例えば摂食嚥下の辺りで食事介護のスキルスコアとかを作られたりとか、特種な320-ADCTというのを私は初めて見たのですが、こういったもので分析して、一定程度、医療介入ということになると、かなり実質的なトレーニングが必要だと思うのですが、こういったことの均てん化というのは、どのような進捗で進んでいると考えていらっしゃるのでしょうか。ここでやっている割と良いことが、毎年思うのですが、割と広がっていかないというところは思っていまして、この辺のところはどのように広げていくことができるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
御質問ありがとうございます。摂食嚥下に関する介護スキルについては、かなりいろいろ教科書が出ておりますが、やはりなかなか現場には広がっていかないというのがございます。当センターでは、まだ摂食に関する介護スキルに関する解説書等は作っていないのですが、今後の検討課題として頂きたいと考えておりました。320列CTは、やはりデータの解析に相当なスキルがいるものですから、なかなか一般展開が難しいかと考えておりました。ただ、高齢者の嚥下の本体というのが、まだ完全には理解されておりませんので、その基礎データを作るために、今データの収集をしているところでございます。加齢に伴って高齢者の嚥下速度が遅れていくというのは分かっているのですが、実際に嚥下に関わる諸器官がどういうタイミングで動いていくかというのは、まだ完全に解明されているわけではありませんので、そういった基礎データがないと、高齢者に対する摂食嚥下のアプローチがうまくいかないということがありますので、そこをクリアにするために320列CTを使ったという理由になっております。ただ、先ほど申し上げましたように、臨床展開はやはりなかなか難しいのではないかというようには考えております。以上です。
○花井委員
ありがとうございます。特にケアの現場というのは、なかなか研修とかが難しいと思うのですが、是非そういう所まで広がっていくようになれたらいいと思いました。よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
是非とも、そういった研究費をAMEDなり厚労省から出していただいて、しっかりと研究班を組んで、もちろん我々のインハウスの研究費もありますが、今の御質問に対する対応に関しましては、しっかりと検討させていただきたいと思っています。非常に重要な課題だと思っています。
嚥下とちょっと違いますが、いわゆるADLに関しては、そういう指標が今ほぼ出来上がっておりますので、少なくとも食物を口に持っていくときにどういった問題があるかと、どういう問題にどういう形で介入していくかということについては、ほぼ出来上がっておりますので、実際に口に入った後について、またしっかりと検討していきたいと思っております。
○土岐部会長
それでは、続きまして中野委員、どうぞ。
○中野委員
中野でございます。ありがとうございます。医療の提供、人材育成、それと医療政策の推進に関しては、非常に着実な業績を上げていただいているということが実感できました。
私から質問させていただきたいのは、私は小児科医ですので、すみません、門外漢からの質問で申し訳ないのですが、感染症の領域では、コロナ禍を経て、様々な感染症、例えばインフルエンザの流行パターンが変わったり、小児期とか成人期のいろいろな感染症、必要な医療、患者さんの背景とかが変わってきています。御質問申し上げたいのは、高齢者医療の領域において、コロナを経験したことで需要が増した領域とか、あるいは逆に需要が減った領域とか、そういった何か変化というのはございますでしょうか。結構、医療の提供とか人材の育成とか政策医療の推進で関係してくる内容かと思ったので、お尋ね申し上げたくて御質問させていただきました。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
非常に激しく流行している頃は、やはり大きな問題は、かなり体にインパクトがある感染症でしたので、高齢者はかなりフレイルになられるのですね。ただ、それがきちんと適切に対処されないまま地域に帰ってしまわれるという大きな問題がございました。先ほども理事長のほうからお話があったかと思いますが、我々はリハビリを非常に熱心にやっておりまして、コロナ病棟にもリハスタッフが入って、非常に早期からアプローチをして、フレイルを防ごうという試みをやっておりましたが、残念なことに、一般の医療機関ではそういったことがなされないまま、地域在住の高齢者がコロナにかかって、フレイルでかなり体を衰えさせてしまうということが頻度高く起こっていました。
小児科領域では、コロナでマスクを掛けて非常に衛生管理に気を付けておられた子供さんたちが、そうではなくなって、ほかの疾病、最近では手足口病とかの頻度が高くなっておりますが、そういった変化が起こっていると思います。高齢者はかなりコンサバティブなので、マスクを引き続き着けられている方もかなり数が多くて、新しい感染症にかかられるという方は、そう多くない印象を持っております。ただ、かといってコロナが流行しないわけではございません。当センターでも、今年度に入りましてからも数回のクラスターを経験しております。なので、高齢者に関しましては、ほかの感染症ももちろん大事ですが、やはりまだコロナは油断してはいけないという印象を我々は持っています。以上です。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
少し追加しますと、感染症の形態が大きく変わったということは、今、病院長から話があったように、コロナに対する防御反応などに関しては高齢者では余り大きな変化は認められてないのではないかというのが我々の印象ですが、社会的な孤立が進んだということと、フレイル化が進んだということによる影響で、圧倒的に誤嚥性肺炎が増えてしまったということ。それは、地域に在住の高齢者の方でも誤嚥性肺炎が増えていったような印象を持っておりますし、入院された患者さんも、誤嚥性肺炎で入院された後のケアが十分ではないために、退院されてもすぐに再発して、お亡くなりになられるというようなパターンが非常に多かったのではないかと思っております。余りに慎重になり過ぎて、高齢者を余りに大事にするというと語弊があるかもしれませんが、誰からも隔離されるような環境に置いて、コミュニケーションをなくしてしまうような、病院で言うと面会もさせないとか、どこにも出せないというようなことを余りにも厳しく行ってきたということが、小児とは全く違うと思うのですが、高齢者においては大きな弊害として残っているというように我々は考えております。ですので、今後そういうパンデミックがあったときには、そういうことがないように、しっかりと感染対策をしながらフレイル対策をしていくということを、再度、国に対しては強く申し上げていきたいと思っております。
○中野委員
どうもありがとうございます。コロナは高齢者のライフスタイルに結構大きく影響したパンデミックだったと思っておりますので、それで御質問申し上げたのですが、非常に勉強になりました。どうもありがとうございます。
○土岐部会長
前村委員、どうぞ。
○前村委員
冒頭で荒井理事長がおっしゃったように、認知症基本法が昨年成立して、今年施行されたのだと思いますが、この法律に関して、センターが何か働き掛け、あるいは、これから基本計画ができるのだと思うのですが、何か提言していることは、余り公に言えないのかもしれないのですが、ありましたら教えていただければ幸いです。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
ありがとうございます。認知症のそれこそ予防から始まりましてケアに至るまで、様々な活動に私どもも直接コミットしてまいりました。それで、もちろん共生社会をつくるという視点ですので、高齢者のお体のこと、認知機能のことを早期に発見して、どのように医療につなげていくかというところが、まず非常に入口として重要であろうと思っております。また、ケアというところに関しましても、認知機能のみならず様々な身体機能、あるいはBPSDと言われる行動・心理症状に対しましても、どのような解決ができるかということで、介護者ということも含めました対策をいろいろ行ってまいりました。また、認知症の診療におきましては、認知症に対する偏見と申しますか、スティグマというのが、非常に医療、予防活動の全ての障害になってまいりますので、そういった社会のスティグマというものをどのように評価して、また、今後どのように提言していくかということにつきましても、今度の認知症基本法の下、やってまいりたいと思っております。以上です。
○前村委員
ありがとうございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
現在、認知症に関しましては、基本計画を厚労省が作りまして、パブコメ募集が出ています。パブコメに対して、我々センターとしてもしっかりとコメントを返していきたいと思っております。もちろん学会もコメントを返されると思いますが、しっかりと個々の国が挙げている計画についてはコミットしていかなければいけないと思っておりますし、国に対してしっかりと意見を申し上げるということは検討しているところでございます。そういったことと同時に、我々の非常に少ないマンパワーの中で、今、1人のエースを内閣府に送り込んでおります。彼が非常にいろいろな部門と連携をして、計画の策定にも関わっているというようにも聞いておりますので、我々のセンターのスタッフが、そういう形で政府のほうで活躍をしているということもございます。
あと、先ほどのお話にも少し出てきましたが、認知症医療介護推進フォーラムという形で、様々な認知症に関連するステークホルダーの方に集まっていただきまして、そこでしっかりと議論をするということも行っております。共生に関しましても、予防に関しましても、いろいろなKPIが設定されていくと思いますが、そのKPIの達成にしっかりと我々センターとして対応をして、KPIの達成に少しでも貢献をしていきたいと思っております。以上です。
○前村委員
ありがとうございます。
○土岐部会長
私のほうから、認知症に関連してレカネマブなのですが、専用病床を10床作られたということで、今後、どのぐらいまでの診療規模を想定しておられるのかというのが1つです。それから、日本全体で使うガイドライン的なものは、今後どこが主導でどのように作られていくのか、日本全体がどうなのかというのと、こちらの病院での見通し等を教えていただけるでしょうか。
○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
レカネマブに関しましては、病棟を整備しまして、外来で点滴をできる体制を大きく整備したところでございます。多くの患者様に来ていただきましてスクリーニングをやっておりますが、当初予定していたよりは、スクリーニングの段階でドロップしてしまう方が相当いらっしゃるというのが現状でございます。やはり、数多くの方にこういった新しい治療を受けていただく機会を提供していくということが、私どもの使命だと思っておりますので、研究を含めまして、より地域で認知症をスクリーニングして、大きな網を広げて、こういった専門医療機関に導いていくということを、1つ考えているところでございます。
また、レカネマブでは、アドバースエフェクトとして脳の浮腫、脳の出血がございます。ApoE4という遺伝的なリスクを持たれる方は、特にそれが多いということが分かっておりますので、私どもとしましては、レカネマブを希望して来られました方に、薬物療法のみならず、J-MINT研究で分かってまいりました非薬物療法的な治療オプションを提供するということをやっているところでございます。そういったことを含めて、データを厚労省へどんどんと提供してまいりたいと考えているところでございます。以上です。
○土岐部会長
ありがとうございます。ほかは、よろしいでしょうか。それでは、医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項につきましては、以上とさせていただきます。
続きまして、2-1から4-1まで、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項」に移りたいと思います。まずは、先ほどと同様に、法人のほうから説明をよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター平岩企画戦略局長
45ページを御覧ください。評価項目2-1の業務運営の効率化に関する事項についてです。自己評価はBとしております。令和5年度の経常収支率は95.3%、後発医薬品の比率は87.2%となっております。一般管理費は、物価高の影響もあり、1億円を超えております。また、医業未収金の比率は0.0124%となっております。これらの要因について順次説明してまいります。
46ページを御覧ください。一般管理費の増については、令和4年度にオープンした新病棟の整備に伴う機器の維持管理費等の委託費や、水道光熱費の増加といったものが要因と分析しております。医業未収金比率については、コロナ禍が明け、来院により直接支払を受けるようになったことで、コロナの時期より縮小する傾向にございます。
47ページです。左側が効率化による収支改善です。材料費の削減については、後発医薬品の数量シェアが目標を上回る87.2%に達しております。医業収益においては、入院延べ患者数の大幅な伸びなどの影響で、対前年度比で5億700万円増の78億2,800万円となっております。また、一般管理費については、新病棟の整備に伴い総額が増えておりますが、各種取組により削減に取り組んでいるところです。右側は、情報セキュリティ対策その他の情報管理等についてです。令和5年度は、NISCによる新たな政府統一基準群の決定を受け、これに準拠する情報セキュリティポリシーに改定しました。また、引き続き情報セキュリティ研修や職員による自己点検を実施しております。さらに、厚生労働省との連携強化として、CSIRTの情報セキュリティインシデント対処訓練を実施したほか、監査法人による情報システムの第三者監査を受審し、問題ないことを確認いたしました。また、マイナ保険証専用レーンも令和6年2月に開設し、さらに、電子処方箋管理サービスシステムを令和5年度末に導入するなど、政府が進めておられる医療DX施策に率先して取り組んでいるところです。
次に48ページです。運営状況の前年度との比較ですが、上の医業収益については、対前年度比で5億700万円増となる78億2,800万円です。一方、医業費用は、対前年度比で5,100万円増の82億4,500万円となっています。医業収支差が▲4億1,700万円ということで、前年度よりも4億円以上改善しています。収益増については、入院及び外来患者数の増、並びに外来の平均単価の増が主な要因となっております。コロナ禍では病診連携に苦労してきたところですが、院長を先頭に、地域の先生方と顔の見える関係の構築に努めたほか、市民公開講座などを積極的に開催することで、より広い地域から多くの患者さんに御利用いただけたと考えております。費用の増については、医療職を増やしたことによる給与費の増もございますが、物価高に伴う材料費の増、これが大きな影響を与える原因と考えております。
また、研究収益は、前年度よりも4.6億円増の約20億円となっております。過去の最高収益が令和2年度の27億円ということで、記録更新とはなりませんでしたが、令和になってからは10数億円程度、それから平成時代は数億円程度で推移していたことを考えますと、順調に研究資金が獲得できていると考えているところです。他方で、コロナ関係補助金の収益が8億円以上減ってしまったことにより、医療外収支については▲2億6,300万円となっております。それらを総合した結果、総収支差は▲6億8,000万円となっております。
次の49ページですが、評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項です。自己評価はBとしています。指標の達成状況ですが、総収支差が▲6億8,000万円でしたので、繰越欠損金も6億8,000万円増えています。物価上昇に伴う材料費や水道光熱費、新病棟整備に伴う機器の維持管理費等の委託費、それから減価償却費などが増加した状況が続いていることが影響していると考えております。
50ページは、外部資金の獲得についてです。対前年度比で▲8%の21億5,800万円となりました。大きな割合を占めているAMED研究費の厳しい状況が影響していると考えています。寄付金の受入れについては、院内掲示はもちろんですが、ホームページの中で目に留まりやすい部分で協力依頼をするといったような方法を通じ、前年度よりも多くの寄付を頂くことができました。
次に51ページ、左側の貸借対照表です。資産の総額は241億円余り、対前年度比で13.5億円の減少となっています。様々な要因がありますが、新棟やPET-CTといった有形固定資産の減価償却や、電子カルテなどの無形固定資産の減価償却によるところが大きくなっています。また、損益計算書については、当期の純損失が6億8,000万円となっています。
右側の外部研究資金の獲得状況については、平成30年度からのトレンドを棒グラフで示しております。令和2年度は、J-MINTやバイオマーカーなど、幾つかの大きなAMED研究が重なった年だったこともあり、大きくなっておりますが、第2期の平均は177億円だったことを考えると、最近は高い水準で推移していると言えるのかなと考えております。なお、令和5年度の注目すべきものとしては、科研費の新規採択率が41.1%ということで、国内8位に入った点を紹介させていただきたいと思います。
52ページ、評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項についてです。自己評価はBとしております。53ページにありますとおり、ガバナンス強化に取り組むとともに、SPD運用業者とセンター職員が協力して、メーカーや卸しの業者と価格交渉し経費節減を図るなど、調達等の合理化の取組を行っているところです。説明は以上です。
○土岐部会長
ありがとうございます。ただいまの御発表に対しまして御質問はありますか。藤川委員、どうぞ。
○藤川委員
藤川です。2点教えていただきたいのですが、1点は、財務諸表の損益計算書の中で、前期損益修正益、1億1,700万というのが計上されているのですが、これは何なのかというのを教えてください。
2点目は、プラス材料として、後半コロナが少し明けて、病床稼働率が上がっているということなので、翌期を考えたときにはもう少し医業の収益が上がる余地はあるのかなと思うのですが、他方、水道光熱費に関しては、特に下がるとは思えない。維持管理費は当然掛かる、減価償却費についても同様、人件費についてもまだ上がるかもしれないなどという点では、なかなかマイナスの材料も多いのかなと思います。そういう中で、繰越欠損金の解消などを考えて、なかなか難しいとは思うのですが、どのような策を考えていらっしゃるのかを教えていただきたいと思いました。以上です。
○国立長寿医療研究センター平岩企画戦略局長
2番目のところです。委員から御指摘いただきましたように、極めてこちらは厳しい条件が重なっておるところでございます。現在は、やはり病床の稼働率を上げていくということでセンターを挙げて取り組んでいるところですので、ここが基本になっていくのではないかということですが、先生からも御指摘がありましたとおり、特に医療が進んでいきますと、その材料費、薬品などもそうなのですが、そういったところが増えていってしまうことがどうしても付いてきてしまいます。そこのところは、先ほど口頭でも説明しましたが、全国での相場等をよく見ながら、そうしたところに詳しい業者さんの協力も得ながら、価格交渉をしっかりいたしまして、それで、医療は進めるのだけれども、費用のほうは抑制していくといったような形で対応していくということでございます。あと、水道光熱費等が昨年来高騰しておりましたので、センター内で5%程度削減していくということで目標を立てまして、患者さんたちに迷惑の掛からない範囲で対応させていただいているところでございます。
1つ目の点です。臨時損失のところなのですが。こちらは会計基準の変更に伴って、収益の認識基準というのを取りましたので、それを調整するというところで対応させていただいたものです。基本的には、研究費などの計上の仕方が、令和4年度までは一括で計上していたのですが、その辺りが令和5年度からは収益化した後ならして、散らしてと言いますか、使うという形になりましたので、この辺りの年度をまたいだ歪みを調整するようなものということでやらせていただいています。あと、臨時収益のほうは、PET・CTの収益を計上している形のものです。これは、本来令和4年度に計上するものだったのが、令和5年度のほうに計上されている形でございます。
○国立長寿医療研究センター近藤病院長
ちょっと病院長のほうから追加させていただきます。確かに医業収支に関しては非常に厳しい状況でございます。診療報酬制度をよく研究して方向性を見ていくと、急性期病院に関しましては、要するに在院日数の短縮化とか、より高効率、高度な医療を求める方向で診療報酬が付き始めておりますし、逆に、我々の病院のように、どちらかというと後方、回復期・慢性期を担当する病院としては、より総合診療化及び在宅方向への誘導が始まっていると考えております。そのため、在宅医療に関する準備をどんどん進めております。本年度に入りまして、訪問歯科を開始しておりますし、先ほども途中でも申し上げましたように、訪問リハのほうの拡大は更に進めていくつもりでございます。訪問医療に関しましても、かかりつけ医の先生とのバッティングという、かなりデリケートな問題がございますので、地元の医師会の先生たちとよく話し合いながら、今準備を進めている状況でございます。特に、訪問系の診療報酬に関しましては、まだかなり高い評価を頂いていますので、病院の方向性をそちらに徐々に転換していくことによって、より収入を上げていくような工夫をしたいと考えておりました。以上でございます。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
追加で少しだけ話しますと、もちろん我々としては現在の診療報酬体系の中でいかに収益を上げるかということを考えなければいけないと思います。それは基本にはなるわけですけれども、当センターは、大学病院のように高度な医療機器を使って多くの収益が上がるような手術ができるという施設ではありませんので、それなりの我々の身の丈に合った方針を行う、そして地域でモデルになるような診療をしなければいけないと思っております。
病院長から話がありましたように、急性期は急性期、そして訪問といった形で展開をするということで、我々がやっている非常に丁寧な診療というのは、人手もかかりますし時間も掛かります。ただ、それが国民にとっては最善の医療であるということを、しっかりとデータをもってお示しすることによって、我々が行っている医療あるいはケアに対する診療報酬をきちんと付けていただく。これが、我々が目指している方向性でありますので、国に対してはしっかりとデータを基に提言をしていきたいと思っております。国からは、情報セキュリティの体制を整えろなど、いろいろな注文は来るわけですけれども、その予算的な手当なしにそういった要求がどんどん来るということで、現場は非常に疲弊をしております。情報セキュリティの重要性は分かっておりますが、なかなかお金なしに、我々センターとして赤字経営の中で更にこれを切り詰めてどうするのだということになりますので、安全性はもちろん担保しながらやっていかなければいけないのは理解はしておりますけれども、国には是非とも予算的な措置をしていただきつつ、そういった指示をしていただければ、我々としてもしっかりと対応していけると考えております。
○藤川委員
多分、先々の日本のことを考えても、当センターの医療の在り方というのは非常に多くの病院に影響を及ぼすというか、その見本となるような在り方が求められるのかなと思いますし、おっしゃるべきことはしっかりおっしゃっていただいた上で、是非模範となるような医療提供をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○土岐部会長
私のほうからよろしいでしょうか。先ほどの外部研究資金が増えていないということが、実はその収支よりも、この外部資金が増えてないということが問題と私は考えるのですが、それはどのように考えておられるのですか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
これは、先ほど局長からもお話がありましたように、第2期に比べますと、かなり改善をしております。もともと独法化する前は、インハウスの研究費が3に対して外部資金が1というバランスでした。現在は、インハウスが1に対して外部資金が4というバランスですので、約10倍改善をしていることになります。この令和2年度が突出しておりますけれども、先ほど少しお話があったように、J-MINT研究やBATON研究といったAMEDの大型研究が3つ走っておりまして、その最初の年度だったということで、この令和2年度は突出しているように見えますけれども、もともとは15億~20億弱の外部研究費だったのが、今は20億をキープさせていただいておりますので、そういった意味で、第3期に入りましてから研究費としては上がっていると考えています。この研究費の増加については、運営費交付金が変わらない中、人を減らさざるを得ない状況になっていますので、研究者の頭数としては残念ながら部長も含め減らさざるを得ない状況の中で、ほかのスタッフがしっかり頑張って、こういった形で外部資金を増やしているということについては御理解いただければ大変幸いであります。
○土岐部会長
ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。
それでは、最後に法人理事長と監事からのヒアリングを行いたいと思います。まずは、法人監事より業務の監査結果を取りまとめた「監査報告」について御説明を頂き、今後の運営方針等、コメントを頂けたらと思います。よろしくお願いします。
○国立長寿医療研究センター橋本監事
監事の橋本でございます。まず、監査の結果ですが、これについては6月20日付けの監査報告書に記載のとおり、適正適法の意見を表明させていただいております。
次に、令和5年度について、少しコメントをさせていただきたいと思います。当センターの経常収支は、令和3年度に黒字を計上したものの、その後は令和5年度に至るまで赤字となっており、繰越欠損金も増えております。令和5年度は、コロナウイルス感染症が5類移行されたことに伴って収益減少したことや、世界情勢の緊迫化及び円安などを背景とした電気水道光熱費等の増大が大きな原因と思われるところです。こういった状況につきましては、毎月の運営会議や理事会でも報告がなされております。また、特に令和5年度においては、全体的な経営改善に関する検討がなされ、先ほど理事長や病院長からも説明がありましたとおり、様々な取組が実践されようとしております。また、その経過は幹部・職員たちに対して周知されており、情報共有も適切になされていると思います。まだまだ予断を許しませんが、徐々に取組の効果が出つつある現状かと思います。監事としましては、令和6年度以降についても経営改善に向けての取組を継続して、確認、注視していきたいと考えています。以上です。
○土岐部会長
ありがとうございました。それでは最後に、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをよろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
今日はいろいろと御指導を頂きまして、ありがとうございました。先ほど既に私のほうからは言いたいことを言ってしまいましたけれども、我々のセンターとしては、ナショセンの中で一番新しく、規模も小さいということであり、そして、高齢者医療という、なかなか大きな収益が得にくい領域を中心に活動しております。その中で、我々のセンターとしては、診療に関しましてはしっかりと国の病院のモデルになるような、高齢者医療モデルになるような病院を目指したいと思っておりますので、急性期から在宅までしっかりと展開をして、国の施策に資する診療を展開していきたいと考えております。その中で最大限収益を上げるということを目指してまいりたいと考えております。研究につきましては、いろいろ御指導を頂きましたけれども、特に認知症、フレイルといった2つの病態に対するモデル的なアプローチを行う必要があると考えておりますので、もちろん基礎研究も含めて、しっかりと優秀な人材を確保しつつ、基礎研究も充実させながら、それをいかに臨床に応用するかということを、しっかりとセンターのスタッフ一丸となって取り組んでいきたいと思います。また、地域における認知機能低下のスクリーニングから適切な医療機関へのコンサルテーション、そして診断。そして、レカネマブのような新しい治療薬を使ったり、あるいはJ-MINTスタイルのような多因子介入を適切に行っていくことを、しっかりとこれから全国展開できるような体制を構築していきたいと考えております。引き続き御支援のほど、よろしくお願いしたいと思います。以上です。
○土岐部会長
ありがとうございました。皆様、よろしいでしょうか。
それでは、以上で国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和5年度業務実績評価についての審議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
では、以上で本日の議事を終了いたします。事務局から今後の流れについてよろしくお願いします。
○西岡室長補佐
事務局です。今後の流れについて御連絡いたします。本日御議論いただきました2センターの実績評価につきましては、本部会の御意見や理事長、監事のコメント等を踏まえて、大臣による評価、通知、公表をすることとなります。委員の皆様におかれましては、8月2日に予定しておりますJHに関する業績も加味した上で、8月14日までに事務局宛てに送付いただきますよう、よろしくお願いします。
次回ですが、8月2日13時15分より、同じこの会場で、国立国際医療研究センター及び国立循環器病研究センターの2センターの評価に関する審議を予定しております。事務局からは以上です。
○土岐部会長
以上でございます。お疲れ様でございました。