第33回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和6年7月22日(月) 14:00~17:45

場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室(オンライン併用)

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和5年度業務実績評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和5年度業務実績評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
  1. 資料1-1 令和5年度 業務実績評価書(案)
  2. 資料1-2 令和5年度 業務実績概要説明資料
  3. 資料1-3 令和5年度 財務諸表等
  4. 資料1-4 令和5年度 監査報告書
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
  1. 資料2-1 令和5年度 業務実績評価書(案)
  2. 資料2-2 令和5年度 業務実績概要説明資料
  3. 資料2-3 令和5年度 財務諸表等
  4. 資料2-4 令和5年度 監査報告書

議事

第33回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

○西岡室長補佐 
 それでは定刻となりましたので、ただいまから「第33回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。委員の皆様には大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。事務局、議事進行を務めさせていただきます、大臣官房厚生科学課の西岡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は神﨑委員、庄子委員、中野委員、深見委員、藤川委員、前村委員がオンラインでの御参加となっております。なお、出席委員に関しましては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。続きまして、事務局に異動がございましたので紹介させていただきます。本年7月5日付けの異動でございます。厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官の佐々木でございます。
 
○佐々木危機管理・医務技術総括審議官
 佐々木です。よろしくお願いいたします。
 
○西岡室長補佐
 続いて同じく7月5日付け、厚生労働省大臣官房厚生科学課長の眞鍋です。
 
○眞鍋厚生科学課長
 眞鍋でございます。よろしくお願いいたします。
 
○西岡室長補佐
 最後に、本年4月1日付けで着任しております、厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室長の和田でございます。
 
○和田室長
 和田でございます。よろしくお願いします。
 
○西岡室長補佐
 続きまして、本部会の開催に当たり、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官の佐々木より御挨拶を申し上げます。
 
○佐々木危機管理・医務技術総括審議官
 着座にて失礼いたします。改めまして、危機管理・医務技術総括審議官の佐々木でございます。委員の先生方におかれましては大変お忙しい中、お時間をお取りくださいまして誠にありがとうございます。今年度最初の開催となります。本部会において御議論いただきます国立高度専門医療研究センター、ナショセンにおきましては、第3期中長期目標の達成に向け、それぞれの法人が使命である研究開発や医療の提供、更には人材育成等に尽力しているところでございます。こうした中で、法人の取組を更に良いものにするため、委員の皆様の御専門の立場から、昨年度令和5年度の業務実績に関して御議論いただき、目標達成に向けた課題等につきまして御意見や御助言、御指摘を頂けますと幸いでございます。まず本日は、国立精神・神経医療研究センター及び国立成育医療研究センターにおける業務実績評価について、御議論いただけますようお願い申し上げます。
 また、今後本部会では、そのほかの4つのナショナルセンターの年度業績の評価に加えて、以前御報告いたしました国立健康危機管理研究機構の創設、これは、来年の4月1日で政令が既に公布されています。このため、国立感染症研究所との統合が予定される国立国際医療研究センターの中長期目標期間見込み評価や、新たな機構の中期目標の策定に向けた御審議も予定しておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
 
○深見委員
 聴き取りにくいので、もう少し大きな声でお願いいたします。
 
○佐々木危機管理・医務技術総括審議官
 失礼いたしました。
 
○深見委員
 チャットでも出したんですけど、事務局の声も聴き取りにくいので、マイクの状況もう一度少し、確認をお願いいたします。
 
○佐々木危機管理・医務技術総括審議官
 はい。このぐらいの音声の量だといかがですか。
 
○深見委員
 はい、結構です。
 
○佐々木危機管理・医務技術総括審議官
 分かりました。改めて今までのポイントを申し上げますと、6のナショセンで第3期中長期目標に向けていろいろと取り組んでおります。今回は、昨年度の業績、業務実績について御議論いただきたいということ、もう1点お願いということで、来年4月に設立が予定されております国立国際医療研究センターと国立感染症研究所が統合してできる、国立健康危機管理研究機構についても、その中長期目標期間見込評価と、新たな法人の中期目標の設定の御審議も予定しております。ここまでを申し上げたところでございます。その上で、今後の御審議をよろしくお願いいたしますということと、簡単ではございますが、まずは、この冒頭の挨拶という形でお願いを申し上げたところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○西岡室長補佐
 続きまして、本日の会議の進め方について御説明いたします。御発言の際は委員の皆様は挙手していただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。オンラインで御参加いただいている委員におかれましては、本日使用しているZoomサービス内の「手を挙げる」のボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。また、その他、御発言時以外のマイクはミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際には冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御発言される際には、資料番号と該当ページを明言いただきますようお願いいたします。
 続きまして、本日の議事を御説明いたします。本日は、国立精神・神経医療研究センター及び国立成育医療研究センターに関する、令和5年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明していただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。説明と質疑応答の時間は事前に時間設定をしており、終了1分前と終了時に、事務局が合図となるベルを鳴らしますので、目安としていただきますようお願いします。続きまして、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、1-4、2-2、2-4を御用意いただいておりますでしょうか。その他の資料につきましては、事前に事務局からお知らせしたURLより閲覧いただくようお願いいたします。会場の皆様の資料につきましては、お手元にあるタブレットに本日の資料を格納しておりますので、そちらから御覧くださいますようお願いします。また、評定記入用紙につきましては、様式の電子媒体を事前に送付しておりますので、そちらに御記入いただき、後日事務局宛に御提出をお願いいたします。資料の閲覧方法について不明な点等がありましたら、チャット機能等で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、これまで何か御質問等ございますでしょうか。それでは、以降の進行につきまして、土岐部会長、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長
 それではまず、国立精神・神経医療研究センターの令和5年度業務実績評価について、審議を開始いたします。はじめに、理事長から一言御挨拶をよろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 本日は、当センターの業務実績評価のために、貴重なお時間を頂き誠にありがとうございます。理事長の中込と申します。私からは当センターの概要につきまして、お手元の説明資料に沿って説明いたします。
 2ページが、私たちの自己評価の一覧です。次のページです。当センターの基本理念は病院と2つの研究所、さらにその間をつなぐ4つのセンターが一体となって、精神・神経・筋疾患・発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果を基に高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図ることです。
 次、お願いします。最大の特長は基礎から臨床までシームレスなフローを可能とする研究体制です。当センターで開発された筋ジストロフィーのビルトラルセンや多発性硬化症のOCHといった治療薬は、その具体的な成果に当たります。そのほかにも筋ジストロフィーに対するエクソン44スキッピング薬は、現在治験が進められており、この後、詳しい説明があると思いますが、当センターでの研究成果を基に遠位型ミオパチーの治療薬として、シアル酸製剤が今年の3月に薬事承認を受けました。また、PTSDの治療薬としてメマンチンのリポジショニングによる研究開発が進められております。
 次、お願いします。令和5年度も研究基盤の強化を目指して、患者レジストリ、バイオバンクや臨床研究ネットワークの構築及びその利活用を進めてまいりました。バイオバンクはその他3施設と共に、国際規格であるISO20387の認定を日本で初めて取得しました。また、実用化を目指した研究開発の項目に関連して、First in Human試験において、令和5年度には新規で3件、さらに医師主導治験も4件と、これまでにない顕著な成果が上げられており、臨床研究開発に注力してきた成果が現われたものと考えています。概要について、私のほうからの説明は以上でございます。
 
○土岐部会長
 ありがとうございました。では、どうぞ続けてよろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 それでは、続きまして、研究・開発に関しまして、神経研究所の岩坪から御説明させていただきます。
 まず、6ページを御覧ください。評価項目1-1「担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進」については、Sと自己評価をさせていただいております。この自己評価の理由としては、難易度「高」の理由にも示しましたとおり、当センターが筋ジストロフィーをはじめとする難治性疾患症例の集積に基づいて世界レベルの研究を進め、病態メカニズムに基づく画期的な治療薬の開発を達成し、患者さんのもとに届けてまいったということを挙げたいと存じます。
 そして、令和5年度も精神疾患関連遺伝子とシナプス機能の関連の解明、また遠位型ミオパチーに対するウルトラオーファンドラッグの承認など、医療推進に大きく貢献する画期的な研究成果を多数上げていることが自己評価を高く取らせていただいた理由です。また、コロナ後の研究成果の顕著な伸びを反映して、6ページの下段に示しましたとおり、医療推進に大きく貢献する研究成果数も今年度は総計6件を数えておりまして、目標を4割程度超える達成度を上げていることもSの評定根拠としたところです。
 7ページを御覧ください。こちらのⅢに、S自己評定の根拠とした3つの顕著な研究の実例3件についてまとめております。精神疾患関連遺伝子とシナプス機能の関連、遠位型ミオパチーに対するウルトラオーファンドラッグであるシアル酸製剤の承認、またPTSDの分子機構の解明、これらについて、この後、御説明させていただきます。
 8ページを御覧ください。こちらにインパクトファクターが付与された学術雑誌収録論文及びその引用数を示しております。論文総出巻数を見ますと、昨年度は350件と、これはコロナ直前のレベルを若干上回る数となっております。また、別冊の評価資料1-1の12ページにお示しをしております国際学会での発表件数は、令和4年度の141件から、今回令和5年度には240件と顕著に増加しておりまして、研究活動の大きな伸びと回復を反映しているものと考えております。
 資料1-2に戻りまして、9ページを御覧ください。顕著な研究成果の達成例を御報告申し上げます。まず最初に、精神疾患関連遺伝子DSCAMが、シナプスにおける余剰なグルタミン酸の除去を担う機能を持つことを実証した成果をお示しいたします。
 脳の興奮性の伝達を行うシナプスの7割はグルタミン酸を伝達物質として用いておりますが、脳機能を健全に保つためには、シナプスの中の余剰なグルタミン酸を排除することが必須となります。この破綻は脳の興奮性・抑制性のバランスを乱し、精神疾患の原因・誘因となるものと考えられております。今回対象としましたDSCAMは、代表的な染色体異常症であるダウン症の責任染色体部位、21番染色体に遺伝子が存在するcell adhesion molecule、細胞接着分子であり、ダウン症のみならず、統合失調症や自閉症の関連遺伝子としても最近注目されてまいりました。
 今回、神経研究所・星野幹雄部長らのグループは、ノックアウトマウスなどを駆使した研究から、DSCAMがシナプスでグルタミン酸の除去を担うグルタミン酸輸送体分子GLASTをシナプスに集める機能を担うことを発見し、その成果を本年初頭にNature Communications誌に公表いたしました。DSCAMの異常が余剰グルタミン酸の滞留を引き金として、シナプスの発達異常や機能異常を惹起し、精神疾患やてんかんを誘発するという新たな病態メカニズムが明らかになったことから、今後、グルタミン酸除去タンパク質の機能増強薬による治療法の開発などにつながる可能性も考えております。
 次の10ページにお示しいたしますように、我々NCNPでは、本研究に代表されるようなシナプス分子の基礎研究から病態治療を目指す研究を幅広く進めてまいりました。その代表例とも申せます本成果は、今後、精神疾患や発達障害に悩まれる患者さんに福音をもたらす可能性のある重要な実績であると考えております。
 次に、11ページを御覧ください。こちらで遠位型ミオパチーに対するウルトラオーファンドラッグであるシアル酸製剤の開発とその薬事承認について、御説明させていただきます。一般に筋疾患は体の体幹部に近い筋、近位筋が侵されるものが多いのですが、逆に四肢の末端部の遠位筋から優位に侵される遠位型ミオパチーと呼ばれる、まれな遺伝性の筋疾患があります。いろいろな種類がありますが、その中に当センターの埜中征哉や水澤英洋らにより、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(Distal myopathy with rimmed vacuoles: DMRV)として報告された疾患が、シアル酸という糖を合成するGNE遺伝子の変異によるということが神経研究所疾病一部の西野一三らにより示されております。西野らは次いで、GNE遺伝子を欠損したモデルマウスにおいて、シアル酸の補充によって筋萎縮が治療可能であることを示しまして、これを受けてシアル酸補充によるDMRVの治験が開始されました。
 12ページに示しますように、我々NCNPによって、本邦で構築されましたGNEミオパチー患者レジストリに登録された患者さんたちを対象に、東北大学、NCNPが中心となってシアル酸の徐放剤を投与する治験を行った結果、令和5年度に臨床的有効性が実証され、治験が成功裏に完了したことから、2024年3月本邦での薬事承認に至ったものです。本成果はNCNPが連綿と行ってまいりました筋ジストロフィーをはじめとする神経、筋、希少難病の病因解明からモデル動物での治療研究を経て、患者レジストリ構築を基盤に、ヒトでの治療を実現するというトランスレーション研究の成果を、患者さんに還元することができた好例ではないかと考えております。
 次に13ページを御覧ください。こちらで精神保健研究所行動研究部の堀弘明現・部長、金吉晴前・部長、所長らによる「心的外傷後ストレス障害(PTSD)の分子機構の解明」について御説明させていただきます。PTSDは災害や犯罪など極度の危険に遭遇し、非常に強い心的衝撃を受けたとき、その体験がトラウマとして記憶の中に残り精神的な影響を与え続ける病態として有名です。
 PTSDに対しては、薬物や心理療法が行われてきましたが、その病態の本質が不明であることから、決め手となる有効な治療法の確立がなされておりませんでした。今回、堀らはPTSD患者さんの末梢血液とマウスPTSDモデルの海馬に発現する遺伝子を網羅的に比較して、共通に変化する重要な遺伝子としてホスホジエステラーゼ4B (PDE4B)を発見いたしました。この分子は記憶などに重要な機能を果たすサイクリックAMP (cAMP)を合成する酵素であり、モデルマウスを用いた実験でcAMP情報伝達を増やしたり減らしたりすることによって、トラウマ記憶が増減することを実証いたしました。
 そして、患者さんのDNAのエピゲノム解析からPDE4Bの発現が長期的に低下していることが示されまして、cAMPを標的とするPTSDの新たな診断治療への道を開くことができました。本成果は一流専門誌であるMolecular Psychiatry誌に公表されております。
 14ページを御覧ください。こちらにまとめましたように、NCNPではPTSDの臨床研究とモデル動物を用いた研究を並行して進めてまいりまして、PTSDの分子機構に基づく新たな治療法の開発を進めております。この中でグルタミン酸性の神経伝達の一部を抑制するメマンチンという薬がありますが、こちらを応用した新たな薬物療法の臨床試験も現在推進しておりまして、NCNPの特長である基礎・臨床の両面からの画期的治療法の開発を目指す双方向性の研究が、PTSDについても結実しつつあると申し上げられます。
 15~21ページまでは、JHの疾患横断領域における連携推進の成果を示しておりますので、ここでの説明は割愛させていただきます。
 次は22ページになります。こちらより、次の評価項目1-2「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」について御説明させていただきます。こちらも令和5年度の自己評価はSとしておりまして、23~25ページにその根拠を示しております。今回、特筆すべきこととしまして、前年度、令和4年度には希少疾患アレキサンダー病に対する世界同時、First in Human試験を実施し得たのに引き続いて、令和5年度には3件のFirst in Human試験の実施を達成いたしました。
 その内訳は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのエクソン50スキップ・アンチセンス療法と同じくデュシェンヌ型に対する幹細胞治療の2件、3件目はプリオン病の脳脊髄腔内、アンチセンスオリゴヌクレオチド投与となっております。これは、NCNPの神経・筋希少難病を対象とする臨床研究体制の充実を反映するものと考えております。
 医師主導治験のほうも目標を大幅に上回る4件を実施することができました。その内訳は、NCNPの主導するものとしては慢性疲労症候群に対する抗B細胞表面抗原、リツキシマブによる治療、また、ほかの施設が主導されるものとしましては福山型筋ジストロフィーのステロイド療法が2件、それから限局性の大脳皮質異形成Ⅱ型のてんかん発作に対するシロリムス治療などであります。これらの達成と共に後述しますように、バイオバンク体制も格段に充実することができましたため、この22~25ページに記す指標の達成を根拠に自己評価をSとさせていただいた次第です。
 26ページを御覧ください。こちらには治験の実績を再度掲載しております。ここで右の表にありますように、当センターでは難治性の精神・神経疾患の主要なものほぼ全ての種類を網羅する治験を実施し得ているということも特筆できるかと思います。
 27ページから、バイオバンク、ブレインバンク事業をまとめております。当センターのバイオバンクは、最も伝統のあります筋肉については、これまでの総数2万4,600に達しており、世界最大級を誇っておりまして、本邦の筋疾患診断の80%以上を担っております。そこから得られた成果は新規疾患概念の確立、治療薬開発の基盤となり、一部のサンプルについては、最近はiPS細胞としての保存も行っております。
 次に脳脊髄液サンプルについては、神経疾患のみならず、精神疾患でも積極的に集積を進めておりまして、これまでの総数は6,568検体になります。また、脳組織、剖検脳組織バンクのサンプル収集総数も300を超えておりまして、特に剖検脳以外にも、近年、脳外科手術で得られた貴重な組織検体は、てんかんや発達障害の分子レベルの研究にも活用され、世界的に注目されております。
 28ページに利活用の実績を示しております。これらのリソースは延べ289件の外部提供実績が挙げられております。本年度特筆すべきこととしては、本邦で初めてバイオバンクの国際規格のISO20387の認定を取得したことが挙げられます。これによってバイオバンクの研究、医療応用の品質の高さが国際的にも保証されたと申せます。サンプル提供も今までの累計として企業に68件、海外に9件を含み精神・神経・筋疾患の研究を支えるバイオバンクとしての機能をフルに発揮しております。
 29ページに「患者レジストリを活用した病態解明・治療法開発に向けた取組」をまとめております。この中で、Remudy(Registry of muscular dystrophy)はNCNPの誇る筋疾患のレジストリでありまして、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬開発をはじめ創薬に貢献をしてまいりました。Remudyを発端とする患者レジストリは、いろいろな方向に発展をしておりまして、30ページに示します中込理事長を中心として展開されております精神疾患レジストリにも発展、活用されております。また、昨年のアルツハイマー治療患者レジストリの創設にもつながっておりますが、こうした結果は次年度以降にも御報告できるものと考えております。レジストリを軸とするARO活動、また患者様の協力による、Patient and Public Involvementも更に活性化をされております。
 31ページには、NCNPにおける戦略的な産学連携活動についてまとめております。NCNPでは、従来、産学連携活動の実践に若干の遅れがあったことは否めないと考えておりますが、現在、ナショナルセンターとしての役割を踏まえた戦略的な産学連携活動に特に注力を開始し、令和5年度にはNTTとの間でパートナーシップ協定を締結、このほか大型の官民パートナーシップ共同研究も複数計画中でありまして、今後、格段の発展が期待されるところです。以上です。御審議、よろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。今1-1及び1-2について説明していただきました。まずJHのほうにつきまして、事務局から説明をよろしくお願いします。
 
○西岡室長補佐
 すみません、事務局です。委員の皆様方に一点補足をさせていただきます。ただいま研究開発の成果の最大化に関する事項として、1-1、1-2の御説明をしたところですが、医療研究連携推進本部、いわゆるJHと呼ばれるものにつきましては、6NC共通の実績となっており、資料の内容や説明も統一的なものとなっているため、昨年度と同様に8月2日に予定されております、JH本部長が所属する国立国際医療研究センターの審議の中で実施させていただきます。
 そのため、本日審議を予定しているナショナルセンターにおける研究開発の最大化に関する事項1-1、1-2の評価に係る御意見につきましては、8月2日の審議も踏まえて評価いただきますよう、お願い申し上げます。事務局からは以上です。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの点につきまして、委員の先生方から御質問ございますでしょうか。JHに関しまして。なければ先ほどの研究開発の成果の最大化に関する事項、こちらの1-1、1-2につきまして、質疑応答に入りたいと思います。御意見のある先生方は挙手、Webの方は手を挙げるということでよろしくお願いしたいと思います。御意見ございませんでしょうか。どうぞ、花井先生。
 
○花井委員
 御説明ありがとうございます。では2つほど教えてほしいのですけれども、まず1つ目は、いわゆる遠位型ミオパチー治療薬が承認されたというお話を聞いたのですが、ミオパチーの中でも少ないと、患者数はどのぐらいなのでしょうか。開発にこぎつけたということは、企業が開発してくれないとどうにもならないという部分もあり、もしすごいウルトラオーファンであれば、開発企業を見つけるのが大変だったのではないかと思うのですが、その辺の事情をもうちょっと詳しく分かれば教えてほしいです。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 こちらのレジストリのほうで、ある程度の集計ができていまして、このGNEミオパチーに関しては、日本でトータル400名ほどの患者さんがいらっしゃるということが分かってきております。
 それから、今回の開発に関しては、希少疾患薬に非常に熱意をもって取り組まれる、ノーベルファーマ社の御参画もあったと聞いております。
 
○花井委員
 ありがとうございます。それからちょっと驚いたのは、PTSDは精神疾患と思ったら、これは神経疾患の領域ですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 すみません、これは精神疾患の領域になります。今私が代表してご説明しましたが、精神保健研究所からの業績です。
 
○花井委員
 これのPDE4B遺伝子ですか、これが器質的にPTSDという精神疾病の中で、何らかの影響があるという御説明なのでしょうか。素人でよく分からなかった。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 それが単一の原因であるというほど絞り込まれたわけではないのですけれども、PTSDの患者さんあるいはモデル動物で、いずれもサイクリックAMPという記憶を細胞の中で伝える、そういう分子を産生する酵素の遺伝子の量が、発現が上がっていた。これが病態に関係あるのではないかということを明らかにしたということです。
 
○花井委員
 うちのグループも以前にそちらにお世話になった、スケールでPTSD傾向というのがあって、そのときにもともとベトナム戦争とかそういうところで出たと思うのですけれども、特徴的なものとして、記憶を思い出す頻度は減っていっても、記憶の鮮明さは変わらないというか、そういう特質があって、今おっしゃられたこの遺伝子はその記憶を想起して、そのリアリティとかに関与するというイメージでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 恐らくこのサイクリックAMPというのは、興奮性の伝達、記憶の基盤になるような神経の伝達が行われたときに、受けた側の細胞の中でその刺激を伝える分子を合成しているものですので、最初は記憶に関係するシナプス伝達が非常に強く増強される、そういうようなフェーズを反映しているのだろうと考えています。
 
○花井委員
 PTSDだけではなくて、いろいろ応用は効く可能性があるというイメージでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 そうですね、今先生がおっしゃいましたように、PTSDにはもう少し複雑な病態がからんでいますので、この部分だけで全容が示されるものではないわけですけれども、主に遺伝子発現が変わってきて、それがヒトの末梢血液とモデル動物の脳で共通点があるということが、今回初めて分かったわけです。
 
○花井委員
 続けてもう1つ。S評価ということなので、こういった研究は割と世界で初の発見みたいな感じなのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 そうです、先ほど3つ挙げましたけれども、いずれもユニークな業績ですし、それから世界的な評価も非常に高い成果が出そろってきたということで、Sという自己評価をさせていただいたところです。
 
○土岐部会長
 ちょっと私から、ついでに連続してPTSDのところで、この薬のメマンチンというのは、この遺伝子とは直接は関係ないということでよろしいのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 実は共通項がございまして、グルタミン酸の関わる興奮性の神経伝達、その単純な伝達の結果は、先ほど申しました細胞内でサイクリックAMPなどが上がってくるという現象ですけれども、メマンチンのほうはちょっと違ったグルタミン酸受容体、NMDA受容体と言うものをブロックするというものです。
 今、メマンチンはアルツハイマー病における神経伝達の異常を是正する薬として上市されていますが、こちらについてはまだ有効性のメカニズムは、十分解明されていないのですけれども、金前所長たちのグループがPTSDで臨床的にも効能がありそうだということで、治験を続けているものです。
 ですから、並行してこういったグルタミン酸性の神経伝達に様々な疾患で異常が起きているのではないかということで、研究を進めております。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。それではWebのほうから、深見先生よろしくお願いします。
 
○深見委員
 深見です。研究開発1-1の12ページにあるのですけれども、ちょっと確認させていただきたいと思います。GNEのミオパチーのところで、令和5年度で薬事承認ということになっていますけれども、薬事承認されて本当によかったと思うのですけれども、これは具体的には、東北大学と一緒にやったシアル酸徐放剤の有効性のところで、薬事承認を得たということでよろしいのでしょうか。御説明がよく聞こえなかったので、このところをまず1点確認させていただきたいです。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 先生の御理解どおりです。この治験自体、数年前から第Ⅱ/Ⅲ相試験として行われてきたものですけれども、実際にはその延長試験が終了しまして、目標を到達したということで薬事承認をこの3月に受けています。
 
○深見委員
 これは医師主導治験は精神・神経センターの病院のほうで、主体的にやった治験ということですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 こちらは東北大学とNCNP、それからあといくつかの施設で合同で行っております。主任施設は東北大神経内科の青木教授に務めていただきましたが、NCNPも大きな中心となって、レジストリの患者さんに入っていただいたりしながら、主体的に関与をしています。
 
○深見委員
 分かりました。それから論文の数なのですが、ちょっと令和5年度少なくなって、数よりやはりよりインパクトのある質のほうが重要ではないかと思いますが、ちょっとそれでも少ないことが気になるのですけれども、質的には落ちているということではないという理解でよいのかどうか。
 それから、論文の成果として、これは1-1の場合は論文というか基礎的なサイエンスとしての成果になると思います。いくつか成果としてお示しいただいているのですけれども、神経・筋肉こういったところでメジャーな病気である、パーキンソンとかアルツハイマーとか、そういうことに対して余り成果が出てこないのですけれども、その辺りは水面下であるのか、それとも精神・神経センターでは余り重点とは置いていないと考えるのか、どういうスタンスで臨んでいるのかということを、ちょっとお伺いしたいと思います。以上です。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます、前段の論文数のことです。発表でも少し申し上げましたけれども、大体年間の合計論文数は410論文ほど達していたのですが、令和5年にはこれが確かに350と総数としては少し減っています。しかしながら今日主に例示をしましたように、かなりインパクトの高い論文が出ておりまして、インパクトファクターの集計という形では今日はデータをお持ちしていませんけれども、全体のインパクトは決して落ちていることはないと考えています。
 数の減少の内訳については今日の報告では申し上げなかったのですけれども、我々神経研究所のほうでは、余り大きな減少はなく、昨年並みです。精神保健研究所のほうで少し人事異動なども重なりまして、総部数が一時的に減ったということも関係はあったかと考えています。それから引用数のほうは非常に高いレートを維持していることを申し上げられます。
 やはりコロナの影響等もありまして、ちょうどコロナ2年目のところで、やや研究活動が一時的に停滞した反映もあるかと思います。しかし活動が確実に回復し、またインパクトも大きく保たれていることが数字に表れていると見ています。
 それから、様々な疾患の中でも、確かに我々NCNPは希少な神経筋難病の研究開発に特長があるのは事実ですけれども、例えばパーキンソン病の患者さんを長期的に追跡して、そのバイオマーカーや自然歴を見るPPMIという研究の日本の代表機関として、非常に高い成果を挙げていまして、ここから今後新しいバイオマーカー、あるいは治療薬の治験につながる可能性もあると考えています。
 それから私自身はアルツハイマー研究にも関係していますけれども、新しい薬が使われ始めまして、その全国レジストリ研究を、我々の希少疾患レジストリ研究との経験を基に進める方向性を大幅に展開していますので、今後メジャーなと申しますか、頻度の高い脳疾患もカバーをして展開できるものと確信しています。
 
○深見委員
 ありがとうございました。
 
○土岐部会長
 それでは、続きまして神﨑委員どうぞ。
 
○神﨑委員
 神﨑と申します、よろしくお願いいたします。時間は大丈夫ですか。
 
○土岐部会長
 はいどうぞ。
 
○神﨑委員
 バイオバンクのところなのですけれども、ISO20387の認定取得おめでとうございます。多分いろいろ御苦労があったのではないかと思うのですけれども、サンプルの質の均一性というか、質を担保する辺りの工夫、あともう1つは、実際このバイオバンクを使って、データを使って何か成果、それは論文というものでもいいですし、企業との結び付きという意味で、何か産物といいますか、そこまではまだ出ないのかもしれませんけれども、現在の状況や今後の方向性、このバイオバンクを使った計画みたいなものをちょっとお聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。先生に御指摘いただきましたように、当初はまずはできるだけ多くの筋肉あるいは脳脊髄液、あるいは亡くなった方々の剖検脳などを集めるというところで始めてきたのですけれども、やはりこのISOにもありますように、手順書などをしっかり整えて、システマティックにサンプルの集積を進めるということが、この数年来非常に軌道に乗ってまいりまして、ISOの獲得にもつながったものと考えています。
 このバイオバンクを使った研究成果は、いろいろな形で出ていますけれども、もちろん一番大きな展開を示しましたのは、臨床登録も含めたRemudyの成果として、数年前から御報告しております、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのジストロフィン、エクソンスキップ療法薬が出たことかと思います。
 これ以外にもパーキンソン病あるいは認知症性疾患の脳脊髄液のサンプルを相当集積していまして、これは国内外のメジャーな企業も含めて、研究で非常に高く評価をされ活用され始めています。ですからまずはこういったものは、バイオマーカーの新しい展開にまず現れてくるのではないかと考えていますけれども、長期的には治療薬のほうにも成果が出てくるものと確信しています。
 
○神﨑委員
 ありがとうございました。理解しました。今後の成果を期待しています。以上です。
 
○土岐部会長
 それでは藤川委員よろしくお願いします。
 
○藤川委員
 藤川です。よろしくお願いします。2点あります。1点は28ページのバイオバンクのところで、左側のグラフを拝見して、289件、2万5,943検体という表現がありまして、素人的な感覚では、一生懸命集めたものをなるべく使っていただくことが大事ということで考えてきたのですけれども、この「件」と「検体」につき、このグラフ自体は「件」のほうで集計して、しかも累計になっているのですが、そうすると1件当たりに検体はばらつきがあって、集計する目的としては検体数よりも「件」で考えるほうが大事。そして累計で考えることが大事というグラフの表れ方になっているのですが、それはどういう考え方をすればいいのか、素人にも分かるように教えていただけたらというのが1点目。
 2点目は31ページなのですが、ここにNTTとのパートナーシップ協定の件が書かれているのですけれども、中身がよく分からないので、産学連携は大変大事なことかなと思うのですが、どのような将来性というか発展の余地があるのかということを、教えていただけたらと思いました。以上2点です、よろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。まず提供実績のところです。御指摘のとおりでありまして、この289件というのは、ある目的を持ったお申込みに対して提供した総件数ということになります。2万5,943検体というのは、それらに対して提供をした総サンプル数になります。ですので、例えば1つのリクエストの中には、脳脊髄液がほしいとか、あるいは筋肉で遺伝子が解明されているものがほしい、そういうような形で限定されてきますので、1つの案件に対しては数十検体であったり、多いものですと1,000に近くなるというものがあるわけです。
 御質問に対しては、これはどちらも重要でして、できる限り多くの高い品質の検体を御提供する。またできるだけ多くのリクエストにしっかりした形でお答えする、その両方が重要になってくると考えているところです。
 それからもう1つ御質問いただきました、最後の産学連携ですが、これはNTTのほうとはまだ非常に早いレベル、大枠の御相談をしているところで、時間の関係で飛ばしてしまったのですけれども、そこの31ページの右に挿絵が1つ入っています。NTTというのはやはり情報処理に長けた企業でして、今日NCNPの成果としては申し上げませんでしたけれども、我々は今後AIに代表されるようなデータサイエンス、あるいはコンピュータサイエンスを強化すべき目標の1つとして掲げています。
 そんな中で、様々な疾患のデータを持って、そういった「ブレインのAI解析」を施行したい我々と、その基本技術を国内企業の研究部門で最高レベルで持っておられるNTT、この協業によって新しい脳神経の解明、またNTTにおいては情報処理というものが発達するのではないか、そんなことを今協議をしているところです。
 
○国立精神・神経医療研究センター森田理事長特任補佐
 産学連携担当の森田と申します。若干補足をさせていただきます。
 
○藤川委員
 すみません、藤川ですけれども、途中一番大事なところでZoomが落ちまして、289件、2万5,493どちらも大事という辺りは聞けたのですけれども、そこで落ちてしまったので、すみませんが、短くて結構ですので。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 すみません、この数に乖離がありますのは、リクエストの総件数と、それに対応して提供できた検体の累計数、この2つがあるわけですけれども、やはりどちらも、品質高く多くのものを御提供するということがミッションですので、双方違った意味を持ちながら重要だろうと、申し上げました。
 
○藤川委員
 ありがとうございます、すみません。
 
○国立精神・神経医療研究センター森田理事長特任補佐
 簡潔に産学連携担当の森田と申します。御質問の点に関しましては、従前産学連携活動というのは共同研究であるとか、受託研究とか、個別の企業のニーズに応じて、かつ自分たちの研究をうまく合せていくというのが中心だったと思うのですけれども、やはりNCNPはNCですので、ここに集積されていくであろう様々な研究の成果やリソースを、いかに迅速に社会実装するかということはこれから一層重要だという、理事長のトップダウンもありました。
 その中でもこういうAIを使うような領域というのは、先ほど岩坪のほうからもありましたけれども、こういう精神的なもの、あるいは神経の働きですとか、ある程度ウエットではなかなか実現できないようなものを、こういうITを使うということに関しましては、NCNPはなかなか能力も十分ではない。こういうところは正に企業と連携をすることによって、社会実装が加速できるであろうという戦略的な発想もありまして、今般双方の合意に基づき、1つトライアルを始めたと御理解いただけたらと思います。以上です。
 
○藤川委員
 ありがとうございます。お手数掛けました。失礼いたしました。
 
○土岐部会長
 私のほうからよろしいでしょうか。バイオバンクのところの質問なのですけれども、企業へ提供しているということで、商業利用もされているということはすばらしいと感じています。1点お伺いしたいのが、やはり神経疾患や難病疾患というのは、遺伝的なものがあると思うので、家族・本人が提供をためらわれるケースがありますかという質問と、その個人情報をどういうふうに保護していくか、多分普通の我々がやっているような試料の検体よりも、より高度なことが求められると思うのですが、そのような対策はどうなっているのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。私自身NCNPの現場で直接患者様や御家族とお話をする機会は、それほど多くないのですけれども、間接的に聞いているところでは、希少難病で遺伝性のある病気の解決を、なんとか企業であれアカデミアであれ、達成してほしいということで、非常に積極的な御提供の申出を頂いているということを常日頃聞いているところです。
 また遺伝性疾患でも、これは完全に匿名化をしまして、完全コード化した番号で御提供することになっていますので、個人情報保護は一般の臨床研究あるいは治験と、同等以上の注意を払って行っているということです。
 
○土岐部会長
 いわゆる地域とか住所で同定されてしまうことを警戒するようなことは、大丈夫なのですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 極めて数の少ない疾患であれば、可能性としてはゼロではないと思うのですけれども、そういうことが起こらないように匿名化、個人情報保護についてはセンター全体として注意を払っているところです。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。ほかよろしいでしょうか。それでは研究開発の成果の最大化に関する事項につきましては、以上といたします。
 続きまして医療の提供、その他の業務の質の向上に関する、こちらの評価項目の1-3~1-5につきまして、議論したいと思います。それではまず最初に、法人のほうから説明をよろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 病院部門の中川が報告いたします。評価項目1-3「医療の提供に関する事項」です。自己評価としてはAといたしました。Ⅰの中長期目標の内容です。医療の提供として、例えば薬物抵抗性の双極性障害の患者さんのために、先進医療制度を活用した反復経頭蓋磁気刺激装置(rTMS)を用いた治療の標準化を目指す。
 また、心身喪失等の状態で重大な他害行為を行った患者さんに対して、センターの研究部門と連携して、退院後の地域生活への安全で円滑な移行を支援する質の高い医療の提供を行うということです。
 また、患者の視点に立った良質かつ安全な医療の提供としては、医師並びにメディカルスタッフの多職種連携かつ診療科横断によるチーム医療を推進し、継続して質の高い医療の提供を行うことです。特にNCNPの中には、センター内センターとして、それぞれの専門疾病センターがありますので、診療科を横断的に多職種連携で医療の提供を行っております。
 また全職員を対象として、医療安全や院内感染対策のための研修会を開催しております。これは、全ての職員が受講する100%の受講を目指して行っております。手術件数・病床利用率・平均在院日数・入院実患者数等については、中長期計画に基づいて、適切な数値目標を設定しております。
 33ページ、Ⅱ指標の達成状況についてです。rTMSを用いた治療については、年間4人以上を目標としていましたが、実際7人の実績がありまして、達成度は175%でした。また、医療安全や院内感染のための研修会や医療安全管理委員会の開催、手術件数・病床利用率・平均在院日数・入院実患者数等については、指標をおおむね達成していると考え、97%から99%の達成度でした。特にrTMSを用いた治療については、175%の達成でありましたが、これについてはNCNTが先進医療、このrTMSで行っているというメディアに対する啓発等によって、目標を大きく上回った達成が得られたというように考えております。
 34ページ、Ⅲ評定の根拠です。rTMSを用いた治療については、既存の薬物抵抗性の双極性障害の患者さんのために、先進医療制度を用いた治療を行って、特に目標を上回る実績になり、また、うつ病の患者さんに対するrTMSを用いた維持療法についても先進医療Bとして、着実に達成できたと考えております。また、高度かつ専門的な医療の標準化に関する医療の提供としては、精神科領域におけるニューロモデュレーションや、進行性パーキンソン病患者に対するレボドパ持続経腸療法など、高度専門的な医療を提供することができました。また、ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)も導入し、これは臨床試験、あるいは実際の保険適用の獲得についても貢献できたというように考えております。
 てんかんに関する診療と研究ですが、てんかん診療、地域連携整備事業において、NCNPは全国てんかんセンターに指定されており、てんかんに関する包括的な医療、研究事業を実施できたというように考えております。特に令和5年度においては、てんかんの診療ネットワークを構築し、その中において、てんかんの遠隔医療、オンライン診療、これは民間と協力してデバイスを開発してオンライン診療を開始し、ある程度の数も達成することができました。
 35ページ、希少神経難病症例の集積、専門的医療の提供として、当センターにおいては表にありますように、例えば多発性硬化症であれば、当院患者が占める割合は4%です。そのほか、先ほども話題になりました筋ジストロフィーに関しては4.5%から11.6%まで、かなり希少疾患でありますが、当院患者が占める割合が高く、先ほど遠位型ミオパチーのお話もありましたが、我が国の推定患者は315人から400人と考える中で、当院は75名受診されており、実に4分の1の患者さんを当院で対応しているということになります。
 当センター病院は、臨床研究中核病院を目指しております。そのため、令和4年度から令和5年度にかけて、病院機能評価の「一般病院3」を受審しまして、令和5年8月に認定を受けることができました。また、NEWSWEEK誌によって、アジア太平洋地区において、神経医学医療領域の医療機関のランキングにおいて15位に選出されております。日本国内の機関に限ると5位でありますが、外部機関からも高い評価を受けていると考えております。
 36ページ、精神科領域におけるニューロモデュレーションの実施です。電気けいれん療法(ECT)の件数も686件、東京都での割合としては6%ですが、東京都からも研修の依頼を受けて実施しております。また、先ほどお話したrTMSについては、先進医療Bで維持、薬剤抵抗性のうつ病に対しても維持rTMSを行っており、うつ病から双極性障害まで幅広く行うことによって、治療の維持効果についても検証中で、ニューロモデュレーションを中心に専門的な医療を提供しているということ、そして医療の均てん化を推進しております。
 37ページ、レボドパ・カルビドパ持続経腸療法、ホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注というのは、なかなか治療の難しい進行期のパーキンソン病の治療法として、このような治療を行っております。特にホスレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注については、17例、世界最多の実施件数を行っております。
 38ページ、ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb)の導入についても、臨床治験の段階からNCNPも協力しまして、これらが医療保険適用になるために大きく寄与したというように考えております。
 39ページ、筋疾患の標準的診療と先進的治療の推進で、先ほどお話がありましたように、非常に多くのNCNP病院には希少神経筋疾患の患者さんがおられます。希少神経筋疾患に対して最近では、遺伝子治療も進んでまいりました。NCNPも積極的に遺伝子治療を行っております。
 特に遺伝子治療におきましては、アデノ随伴ウイルスベクター等を用いていますので、それに対するカルタヘナ法に従わないといけないということで、カルタヘナ法のマニュアルについても成育医療研究センターとNCNPが協力して、カルタヘナ法のマニュアルを作成して、それによって遺伝子治療法を推進しております。NCNPがハブとなりナショナルネットワークレジストリを構成し、エクソン44スキッピング臨床開発については、First in Human医師主導治験を行い、間もなく日米第2相の試験が開始されるということになっております。
 40ページ、高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供として、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)におけるNCNPの役割としては、NCNPはIRUD体制の中核を担っており、診断の連携、解析の連携、データシェアリングやレポジトリ、中央倫理審査の体制を確立した中央事務局の役割を行っております。特に2万5,738人の患者さんが参加され、そのうち解析が終わった3,521家系(48.1%)で診断が確定し、50の新規疾患の新たな原因遺伝子を獲得することができました。
 41ページ、NCNPにおけるてんかんの診療と研究ですが、先ほどお話したように、厚生労働省のてんかん地域診療連携体制整備事業における全国てんかんセンター、全国てんかん支援拠点として、てんかんの包括的な新型治療に大きな役割を果たしております。各都道府県に1か所、てんかん支援拠点を作ろうという整備事業ですが、令和5年度で29拠点、最近5月の段階で30拠点になりまして、64%の都道府県で、てんかん支援拠点を置くことができました。
 また、てんかんを診療している、てんかん支援ネットワークを構築しまして、1,554施設を登録しております。また、てんかんの患者さんは100万人ほどおられますが、てんかん学会が定めるてんかんの専門医は894名、1,000人弱ということで、てんかんの専門医の地域偏在も非常に大きいということで、てんかんの遠隔医療、オンライン診療も進めております。このネットワークを利用した、てんかんのオンライン診療を進めております。
 42ページ、てんかんの小児の薬剤抵抗性の御家族から、てんかん発作を動画に撮って、てんかんのお薬はどういうものを飲んでいるのか、そういうものをデバイスに記録して、それを医師に見ていただきたいということで、nanacaraというデバイスを一緒に開発して、それを用いて医師に見ていただいて、それからオンライン診療に結び付けるようなnanacara for Doctor、そしてnana-mediというオンライン診療のデバイスを開発しました。
 実際の実施数ですが、小児の薬剤抵抗性難治性てんかんの患者さんは10万人おられまして、そのうちの3万1,000人ですので、31%の患者さんがこのnanacaraを利用しています。また、nanacara for Doctorは、450施設にてんかんの専門医がいるのですが、267施設がnanacara for Doctorを使っているということ、またnana-mediについては、これからどんどん進むと思うのですが、大阪市立総合医療センターとNCNPが中心になって、月に60件以上のオンライン診療ができるようになりました。以上、病院からの報告といたします。ありがとうございます。
 
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長
 続きまして、精神保健研究所の張でございます。私のほうからは評価項目1-4と1-5について御説明いたします。まず、評価項目1-4、人材育成に関することについてです。人材育成は当センターが医療政策を牽引する上で、特に重要な事項ですので、次の2つの中長期目標を掲げて取り組んでいます。1つはリーダーとして活躍できる人材の育成です。当センターが国内外の優位な人材の育成拠点となるよう、精神神経疾患等に関する医療及び研究及び関係政策の推進に関わるリーダーの育成を継続的に行っています。
 もう1つの中長期目標は、モデル的研修・講習の実施であります。最先端の医療技術を普及させることによる医療の均てん化を促進するため、地域で中核的に診療に携わっている医師等への各種治療法の研修を実施し、また、医師以外の医療従事者や関係者に対して、精神神経疾患に関する教育やケアについてのモデル的研修や講習を実施してきました。これらの中長期目標に対して、令和5年度は専門家の育成並びに研修・講習の実施ともに目標を達成していると考え、自己評価をAといたしました。
 具体的には43ページから44ページにございますように、臨床研究に携わる実務指導者から特にニーズの高い生物統計学の講座を年10回開催し、218名の参加者を得ています。モデル的研修・講習の実施につきましては44ページにございますように、精神保健研究所において、数多くの研修を開催し、延べ3,000人以上が参加し、高い満足度の結果を得ています。
 また、認知行動療法、CBTセンターでは、厚生労働省から研修事業に係る補助を受け、基礎から実践的な内容まで幅広い研修を実施し、延べ900人以上の参加者を得ており、専門人材の育成に貢献しています。
 45ページから48ページにかけては、当センターにおける令和5年度の各種研修の実施状況を、もう少し詳しく掲載しています。45ページでは当センターの講習・研修の全体像をお示ししています。研究所、病院、CBTセンターなど、当センターの多くの部門において、若手医師や研究者、メディカルスタッフ、行政関係者などを対象とした多くの講習・研修を実施しています。中には、診療報酬における施設基準を満たすために、受講が必要となる研修も実施しており、医療の均てん化にも貢献しています。
 46ページから47ページにかけて、精神保健研究所の研修活動を記しております。御覧のように精神医療、精神保健において、重要かつトピカルなテーマの研修を多数実施し、令和5年度は延べ3,000人以上の参加者を得ています。
 また、研修実施後のアンケート調査では、研修内容の質の高さと受講者の満足度の高さが示されており、良質な研修を通じて医療の質の均てん化や、地域精神保健医療の向上に寄与しているものと考えております。
 48ページには、CBTセンターの研修活動を記しております。CBTは精神疾患の治療法として、薬物療法と並んで多くのガイドラインで推奨されている治療法ですが、治療者が不足している状態が続いています。その現状を踏まえ、当CBTセンターでは厚生労働省から研修事業に係る補助を受け、オンラインでの実技指導研修や、個別スーパービジョンによる高度な専門家訓練を実施し、令和5年度は延べ900人以上の参加者を得て、質の高い専門人材育成を実現しています。参加者へのアンケート調査の結果では、非常に高い満足度を得ており、またCBTに対する自信や態度の向上も得られています。
 続きまして、評価項目1-5「医療政策の推進等に関する事項」について、御説明いたします。この項目では大きく3つの中長期目標を立てています。1つは国への政策提言に関する事項です。具体的には研究や医療の均てん化等に取り組む中で明らかになった課題や、我が国の医療政策の展開等のうち、特に研究開発に係る分野について、患者を含めた国民の視点に立ち、科学的見地を踏まえ、ナショナルセンターとして提言書を取りまとめた上で、国への専門的な提言を行うことを目標としています。
 2つ目は、医療の均てん化に関する事項、並びに情報収集と情報発信に関する事項です。関係学会等とも連携し、中核的な医療機関の間のネットワーク化を推進し、高度かつ専門的な医療の普及及び医療の標準化を図ります。また、精神・神経疾患に関する正しい情報が国民に利用されるように、ホームページやSNSを活用するなどして、国民向け及び医療機関向けの情報提供の充実を図ります。
 3つ目の中長期目標は、公衆衛生上の重大な危害への対応に関する事項です。公衆衛生上重大な危害が発生し、あるいは発生しようとしている場合には、国の要請に応じて迅速かつ適切な対応を行います。これらの中長期目標に対して令和5年度は、個々の目標ごとに初期の目標を達成していると考え、自己評価をAといたしました。
 具体的には49ページにございますように、まず情報発信のことです。当センターのホームページへのアクセス件数が、令和5年度は1,340万件で、目標値の253%の達成度でした。この大幅な達成度の要因としましては、令和5年4月に新たに開設した「こころの情報サイト」への閲覧アクセスが、1年間で350万件以上あったことが大きく影響していると考えています。また、年度途中で解析システムを変更したことで、前年までのカウントの仕方で漏れていた可能性のあるアクセスも、カウントされるようになった影響も考えられます。これらの影響も踏まえ、今後、目標値の見直しについて検討を行う予定です。しかし、いずれにしましても、当センターのホームページへのアクセスが多いことは間違いありません。
 次いで、50ページを御覧ください。評定の根拠と題した表には、医療政策の推進等に関する主な事項をまとめました。まず1つ目が、薬物依存に関する取組になります。薬物使用の実態把握で浮かび上がった問題に対して、一次予防に取り組むとともに、基礎研究や臨床研修を通して、治療法の開発等に取り組んでいます。令和5年度においては、市販薬の濫用について、厚生労働省の検討会等で、参考人として研究成果の報告を行い、濫用等のおそれがある医薬品の指定範囲の拡大や、市販薬の販売制度の改正に貢献しました。
 2つ目は、精神保健医療福祉の質の向上に資する提案・提言の実施です。令和5年度においては、国が現在推進している精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの政策理念の下で行ってきた当センターの研究成果を基に、入院時から包括的な支援を行うことが、予後の改善につながるというエビデンスを示し、令和6年度の診療報酬改定において、新たな入院料の新設につながりました。また、地域における精神保健福祉相談員の養成を支援する講習プログラムの提案を行い、その提案を踏まえた通知が厚生労働省から発出されています。
 3つ目は、国民の健康づくりの施策に対する貢献です。令和6年度の第3次健康日本21における「休養・睡眠」の項目の目標設定や、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」策定のための研究班の代表機関としての活動など、我が国のヘルスケア施策に大きく貢献いたしました。また、てんかん全国支援センター及び摂食障害全国支援センターの指定を受けており、当該支援センターの活動を通じて、てんかんや摂食障害に係る医療の均てん化に貢献しています。
 参考として付しましたのは、公衆衛生上の重大な危害への対応に関することですが、今年1月にありました能登半島地震に関連して、以下のような対応を行っています。ストレス・災害時こころの情報支援センターのホームページに掲載されている、こころのケアに関するコンテンツを、SNS等を通じて情報発信しています。特に被災した子供に対するメンタルケアについて、メディアの取材を通じて情報の発信を行いました。また、珠洲市総合病院に2月と3月、病院の看護師の派遣を行いました。
 51ページから54ページでは、50ページでお示ししました評定の根拠について、少し詳しく述べています。まず51ページですが、薬物依存関係の。
 
○土岐部会長
 もう時間も迫っているので、これは51から繰り返しになるようでしたら、もう割愛させていただいてよろしいですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長
 はい、分かりました。以上になります。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは評価項目1-3~1-5にかけてですけれど、御質問のほう、よろしいでしょうか。根岸委員、どうぞよろしくお願いします。
 
○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。御説明ありがとうございます。それぞれ1点ずつ質問させてください。まず1-3の38ページですけれども、ロボットスーツHALの導入ということで、大変関心を強く持ちましたけれども、これは、例えば実施の条件といいますか、なるべく発症した直後がいいのか、あるいは慢性期に入ってからでもいいのか、そこをまずは教えてほしいと思います。
 それと、今後の適用の範囲が拡大される可能性というのは、どのぐらいの期待を持っていいのか、よろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 御質問ありがとうございます。実際にロボットスーツHALが適用になっているのは、大人の方が多くて、発症して時間がたっている、慢性期の患者さんが多いです。ただ、今後は小児に対しても、例えば脳性麻痺の患者さんとかに、このロボットスーツHALを適用するという臨床試験のほうも進んでおりますので、できるだけ御説明しましたように、本当に早いほうが私はいいと思いますけれども、慢性期から急性期に向けて、臨床治験は進んでいるという状況でございます。
 
○根岸委員
 脳血管疾患の脳梗塞の麻痺に対しては、いかがなのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 脳梗塞も実際HALを使ってリハビリ等、そういう方たちの向上のためにされています。今後も適用となる疾患についても、広がっていくと考えております。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。その次、1-4で43ページの所ですけれども、生物統計学講座の開催は年間10回ということで、これは継続的にされるとすばらしいなと思っていますが、この臨床研究を推進する上では、生物統計家の養成というのは大変重要だと思っておりますが、聞くところによりますと、まだまだ国内では数が少ないというような現状があるようなのですね。それでこの10回というのは、毎回同じ内容でされているのか。あるいは段階的に難易度が上がっていくのか。最終的に資格取得というところまで持っていくのか。ちょっと内容を教えていただければと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長
 これは、内容は毎年基本的に同じものを行っています。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。それから最後です。1-5の52ページに地域包括ケアシステムの御説明がありましたけれども、これは様々な課題が多分あるだろうと思いますけれども、特にどの部分、地域包括ケアシステムに5つの視点があると思いますけれども、どの部分に一番着目していったらいいのか。
 それと、私はやはりその地域で生活する一市民として、特に生活支援という場でインフォーマルのサポートのところに、少し参画できるのかなと思うのですが、例えばその職場で、このシステムの構築に少しでも貢献するためには、どんなことを期待されますでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長
 職場でですか。
 
○根岸委員
 はい。
 
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長
 地域で生活していただくために、様々な職種、医療専門職だけではなくて、多くの職種の方、あるいは、それこそ一般の方にも理解していただく、職場の方にも理解していただくということが重要だということの認識の下に、そのような地域の在り方を支えるということを53ページに記しましたが、その中間層を分厚くする人たちを養成して、その人たちに地域でいろいろな活動を行ってもらうということを考えています。
 そういうことが精神保健福祉相談員という方の養成に当たるわけですけれども、その制度は昔からありましたが、この精神保健福祉相談員の資格を受講するための講習会が200時間を超えていた。多くの人にそれを取ってもらうのが現実的になかなか難しい状況だったのですけれども、それをこの度、精神保健研究所のほうで研修内容等をもう一度見直して、22時間に集約するような講習会を作りまして、それが今年度から展開されている状況で、こういう人たちの地域での活動を通して、今、お話がありました職場あるいは学校、それこそ地域社会の中での様々な活動を支援するサポーターを多く養成していこうと考えております。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。なかなか地域では、専門家がいない所でどういうふうに精神疾患を持った方たちの支援をしていったらいいのかということを、現実としてたくさん悩むところがありますので、そういった相談員の方の養成が進むといいなと思います。ありがとうございました。
 
○国立精神・神経医療研究センター張精神保健研究所長
 はい、ありがとうございました。
 
○土岐部会長
 それでは神﨑委員、どうぞ。
 
○神﨑委員
 手短な質問でいきます。てんかんの遠隔診療、大変すばらしいと思いました。てんかんは多分、診断が難しいと思うのですけれども、この遠隔診療というのは、もう診断が付いた後の方のモニターということになるのでしょうか。それとも、診断まで含むのでしょうか。教えてください。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 御質問ありがとうございます。デバイスで実際に、nanacaraというデバイスを持ちながら、てんかん発作そのものを動画に撮っていただいております。したがって口で言うよりは、実際に動画を専門家が見ると、これはどういうタイプのてんかん発作、あるいはてんかん発作ではないよということも分かりますので、そういう動画が見られるデバイスを用いて、そこできっちりとしたてんかんの診断を行うということもやっていますし、もちろんその診断が付いて、最初は外来等に来てもらって、その後はこういうオンライン診療で、発作の様子を動画で見ながら、どのような状況かという形でオンライン診療を行っています。
 本当に離島などの離れた所にいる方で、なかなか来られないという人は、動画を撮っていただいて、それを見ることで適切な診断ができるというような形で行っています。
 
○神﨑委員
 ありがとうございました。よく分かりました。
 
○土岐部会長
 私からですが、35ページの患者さんの割合のところの話があったのですが、難病はやはり、こういう疾患とかの診断を付けるまでが大変だと思うのですけれども、この数というのは、例えば国立病院とかに送って、向こうでフォローしている人も含んだ数字なのでしょうか?例えば一番上であれば700人以上ですが、実際に現在入院している人数としては多いので、10年間20年間のフォローアップというか、ある程度の累積みたいな数字と考えたらよろしいのでしょうか。
 実際に、この数字がちょっと多いのか少ないのか、ちょっとこのイメージができなくて、もしかするともっと多くて、もう逆紹介してしまって、フォローアップから外れている人も入っているのではないかと思います。やはり大事なのは、年間の初診の発生数に対して、何人ぐらいを初診として見ているかという数字が、ちょっとそこを知りたいと思いました。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 そうですね。初診で、あるいは診断が付かなくて、それで紹介されてきた患者さんがいて、ちゃんとした確定診断と治療ができてという、そういう患者さんもいると思います。どういう割合になっているかというのを、もう少し細かく記載したいと思います。
 
○土岐部会長
 ほか、よろしいですか。どうぞ、花井先生。
 
○花井委員
 御説明ありがとうございます。35ページの専門医療の提供のところで、患者の占める割合が出ているのですけれども、これはその後で診療報酬に、包括ケアで反映しているということですけれども、こちらもレジストリ、そちらで大変お世話になっているのですが、大体、血友病ABだけだと6,000~7,000なのですね。凝固異常はマイナーを挙げても1万にはいかないぐらいで、今は苦労しているのですが、それを見て、センターと病院は大体10か所強ぐらいで、そこにやると。
 ただし、いわゆるそれに対しての診療報酬上の、いわゆるトッケイ的なものは何もないから、例えばここでも恐らく、そのコストに見合わないような人が動いていて、それである程度、その専門的な患者さんに対応できていると思うのですけれども、それはどちらかというと均てん化というよりは、このぐらいのボリューム感だと、全国に例えば10か所ぐらいとか、7か所とか、そういう所にミニセンター的な所があれば、結構地方の患者さんが、みんなここに集まってくるというわけにいかないというときに、よいと思うのですが。そのときに一定程度、この診療報酬に、どうせ財政益はほとんどないぐらい少ないから、そんな医療家だって怒るような金額ではないけれども、それをこういうストラクチャーでという評価基準を作ってあげると、こういう希少疾病、非常に助かると思うのですが、そういう方向というのは何かお考えがあるのでしょうか。ちょっとマニアックな。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 厚労省に対してですか。
 
○花井委員
 例えばデュシェンヌ型の筋ジストロフィーとか。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 もちろん我々も委員がおっしゃるように、加算を付けていただけると、ものすごく助かります。
 
○花井委員
 何にもないですよね。多分、恐らく、でも何にもないけれども、何らかの研究費とかいろいろな形で、人は付いていると思うのですよ。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 それはもう、ほかの研究費ですよね。
 
○花井委員
 ですよね。だから、ここだからそれがやれるというのは、同じ医療をやってくださいと頼まれても、ほかではできないですよね。これがそもそも問題と思っていて、だから、そういうのをちょっと、今後は提案してもらって、診療報酬改定提言に入れてもらうとか。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 ありがとうございます。是非協力していきたい。
 
○土岐部会長
 私も、ちなみに右側の第5位なのですけれど、4、3、2、1というところはどこがなっているのでしょうか。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 恐らく大学だったと思います。
 
○土岐部会長
大学でも提示しない所はあると思うのです。
 
○花井委員
 そうですよね。だから三次医療圏1か所でも、ちょっと多いぐらいの数のボリューム感の場合ですね。中国地方だったら、こことここだけみたいな。
 
○土岐部会長
 そうですね。
 
○花井委員
 希少患者さんの受入体制、ちょっとだけ持ち上げてあげると、いわゆるIRUDでしたっけ。ああいう診断難民がたくさんいるわけですけれども、診断を受けて、じゃあ全部、東京に行きなさいではなくて、中国地方だったら広島のこの病院に行ったら、一定程度の患者さんがいますよみたいな所を作ってあげるのが、やはり。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 そうですね。IRUDに関しては、拠点が結構たくさん地域にできていますけれども、筋疾患については、実は筋病理ですね。最近は遺伝子で、いろいろな筋疾患が確定診断できるようになったのですけれど、それまでは実際に筋肉を生検して、筋病理で診断していたのですね。この遠位型ミオパチーについても、最初は全然分からなかったのですけれど、うちにたくさんそういう診断が付かない筋疾患の患者さんが来て、実際に筋生検を実際にそこまで行って、センターの研究員が取ってきたり、あるいはうちに入院して、筋生検をして、そこで初めて神経筋症で診断が付くということで、この遠位型ミオパチーは正に典型で、それで患者さんの集積ももちろん高くて、臨床試験に結び付き、薬物まで行ったという、そういう経緯もあるのですね。最近は遺伝子検査もできるようになったので、あえて筋生検をしなくなったので、委員のおっしゃるとおり、各地域にそういう拠点ができてもいいかなと。それまではなかなか遺伝子も分からない、診断が付かないのですよ、とにかく、筋生検しても。筋病理ができる施設は、恐らく世界的にもNCNPは唯一の施設だったと思います。
 
○花井委員
 是非、地域では集約化、全国では均てん化という、この微妙な数を。
 
○国立精神・医療研究センター中川副院長
 ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 大変貴重なコメントをありがとうございます。それでは時間となりましたので、医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項につきましては、以上とさせていただきます。
 それでは2-1~4-1ですが、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項につきまして、まずは法人のほうから説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立精神・医療研究センター石川企画戦略局長 
 企画戦略局長の石川です。よろしくお願いいたします。それでは、スライドの55から御説明いたします。評価項目2-1「業務運営の効率化に関する事項」について、自己評価はBとしております。中長期目標の内容は、そちらに記載のとおり6項目あり、定量的指標が設定をされている4項目の達成状況について御説明いたします。
 まず、達成状況(1)経常収支率です。こちらは目標100.1%に対し、実績値で98.6%、後ほど、スライド57で決算状況を御説明いたしますが、残念ながら、昨年度はマイナス3億円の赤字となっており達成率99%です。2点目は、後発医薬品の数量シェアです。こちらは目標を上回り、達成率104%となっております。
 続いて、スライド56、指標の達成状況(2)です。医業未収金については、令和6年度の実績値は0.025%、達成度128%となっております。達成度が120%を超えておりますので、要因分析を下に記載しております。要因分析としては、(2)の法人の努力の結果と考えており、電子マネー、クレジットカードといったキャッシュレス決済の利用促進、また、文書、電話等による督促により、単年度としての目標は達成できております。ただ、一方で、中長期計画の目標には未だ至っておりませんので、今回、目標値の変更はせずに、引き続き、取組を進めてまいりたいと考えております。上に戻り、一般管理費です。こちらは昨年度からやや減少しておりますが、令和2年度に比べてということですので、今回、まだ、355万円ほど増えております。達成度は90%となっております。
 次は、スライド57をお願いします。決算の状況です。令和5年度のグラフを御覧ください。6年ぶりの赤字となっております。2つ目の○です。収益について、医業収益は1.8億円、研究収益は5.9億円の増となり、全体では、昨年度よりも3.1億円増えております。ただ、一方で、材料費の高騰や修繕費が増加した影響により、経常費用自体も7億円増えており、最終的には、残念ながらマイナス3億円の赤字となっております。
 続いて、スライド58をお願いします。こちらは指標以外の取組状況です。まず1点目は、給与制度の適正化です。こちらは経営状況と引き上げをしたときの影響額等を勘案した結果、昨年度は基本給のみ人事院勧告に準じた改定を実施しております。
 2点目の勤務環境の改善としては、病棟薬剤師を活用した医師の負担軽減タスクシフトを進めたほか、在宅勤務の導入、また、休暇取得を促進することによって常勤職員の平均取得日数は1.9日増え、11.6日となっております。収入確保については、以下、記載のとおりです。
 次は、スライド59をお願いします。評価項目3-1「財務内容の改善に関する事項」について、自己評価はBとしております。中長期目標の内容は記載のとおりです。指標となっている繰越欠損金の解消については、令和5年度は申し上げましたとおり、経常収支が赤字となっておりますので、その分約3億円増加し、欠損金の残額は19億5,500万円となっております。ただ、グラフを御覧いただきますと、まだ解消計画は若干下回っておりますので、こちらは引き続き、経営改善の取組を進めていきたいと考えております。
 スライド60をお願いします。こちらは参考指標として外部資金の獲得状況です。こちらは年々順調に増加をしており、特に、AMED等からの競争的資金が約5億円増となり、総額では過去最高の47億円を獲得しております。
 スライド61をお願いします。評価項目4-1「その他業務運営に関する事項」について、自己評価はBとしております。中長期目標の内容は以下4点あります。定量的指標は設定をされておりませんので、スライド62で具体的な取組を御説明します。4点あり、まず、内部統制については、研究費の適正使用のため研修を実施しているほか、研究不正防止については、実際の事例を周知、注意喚起を行う等の再発防止の取組を強化しております。ハラスメント対策についてはポスター等による啓発、外部講師による研修を実施した上で、研修動画についてはイントラネットに掲載し、随時、受講できるように受講を促しております。
 2点目は人事の適正化です。これまでも、NHOや他のナショナルセンター等との人事交流をしておりますが、その取組に加え、国内外の大学とのクロスアポイントメントも推進することにより、優秀な人材の確保、組織の活性化を図っているところです。
 右上にいき、情報セキュリティです。こちらは職員向けの院内報での注意喚起、標的型メール攻撃訓練の回数を増やすといった対策を強化しております。また、今年度に入り、度々サイバー攻撃等が報道されており、医療機関での情報セキュリティ対策は課題となっておりますので、現在も更なる対応を検討中です。
 最後に、情報発信です。先ほど、HPの閲覧数が増加していると御報告しました。HPやSNSを活用した情報発信は、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。下ですが、コロナ期間中はWeb開催としておりましたメディア塾を3年ぶりに現地開催いたしました。今回は岩坪所長にも出ていただいて、アルツハイマー病の治療、睡眠研究といったテーマを設定し、施設見学も含む一日のプログラムとしたところ、21社56名に御参加を頂きました。業務運営に関する説明は以上です。よろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは、こちらの業務運営の効率化、財務内容の改善等について、委員の先生から御質問があればお受けしたいと思います。よろしいですか。それでは、私から57ページにその解説があるのですが、医業収益が1.8億円、研究収益が5.9億円増となっており、それだけですと、7.7億円増のはずですが、それが全体では3.1億増ということなので、これは、どう解釈したらよろしいですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 収入として増えたものもありますが、減ったものもありますので。
 
○土岐部会長
 それが何か書いていないので。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 ああ、なるほど。
 
○土岐部会長
 結構、減った額がかなり大きいように思うのですが。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 一番大きいのは、コロナの補助金が7億円強減っております。
 
○土岐部会長
 ああ、そうですね。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 損益計算書上の医業収支だけをみると4,000万円ぐらいの黒字となっており、細かいので詳細は財務諸表にありますが、時間の関係で割愛しましたが、一番大きいのはコロナの補助金が7.5億円程度減額しております。
 
○土岐部会長
 と言いますのは、今後を考えると、研究資金はすごく増えており、研究が順調に進んでいます。ただ、多分、研究で病院が黒字になるというのは考えにくいので、かなりの支出が、我々の所も研究がむしろ足が出るぐらいの感じが病院全体でありますので、そうすると、今後、研究の収益というのは、余り当てにはできないような気がするのですが。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 はい、そうです。研究自体は、当然、その研究費を使って成果を出すことになりますので、それで、経営上のプラスになるということは我々も想定しておりません。やはり、医業収益をいかに確保していくか。あとは、結局、治験ですとか、そういったものですとある程度は間接経費等、そういうもので環境整備に使えるもの等がありますが、基本的には、やはり、収益として挙げられるものは病院の収益のみということです。
 
○土岐部会長
 そうですね。そうしますと、医業収益が今後も同じように2億弱増えても、支出のほうが修繕費3億、多分、支出のほうが順調に7億ぐらいずつ増えていきそうな気がして、今年は3億でしたが、来年以降は逆にもっと増えてしまう可能性もあると思うのですが大丈夫でしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 実は、研究所の建物の建替え等も予定されており、先生、御指摘のとおり、決算状況は今年度はもっと厳しくなるだろうと予想しております。今年に入り、経営改善、経費削減の取組というのも理事長の御指示の下で計画を立て、毎月その実績を各職員にきちんと周知をしながら、より経費削減に取り組んでいくといったことも始めたところです。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。神﨑委員、どうぞ。
 
○神﨑委員
 ナショナルセンターですので紹介割合は高いと思うのですが、病院機能評価も受けられていると思いますので、逆紹介割合はどのぐらいなのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 逆紹介割合も80~90%、かなり高い割合で地元の医療機関に逆紹介するようにしています。特に、精神科では逆紹介率は高いと思っています。
 
○神﨑委員
 ありがとうございました。
 
○土岐部会長
 藤川委員、どうぞよろしくお願いします。
 
○藤川委員
 すみません。やはり、57ページについて確認したいのですが、左側の平均入院患者数のところ、令和5年の一日平均が410.6となっているのですが、確か、コロナの前ぐらいに、かなり病床改革みたいなことをされて、それもあって、令和元年辺りは、440前後のところまでいっていたのがコロナで落ち込むと。
 ※で、令和3年2月から1病棟をコロナ専用病棟として運用と書いてあるのですが、これは令和5年度もまだ継続しているのでしょうか。この410.6というのは、コロナ病棟として使用をしているのは途中までで、平均すると下がっていますが、後半は上がってきていて、故に、医業収益が昨年度比では、結構、上がっているという理解になるのでしょうか。その辺りを教えてください。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 ありがとうございます。コロナ病棟については、実はもともと精神病棟だったのですが、今、休棟状態です。なので、そのコロナ病棟の分が、今、お休みというところです。1つ病棟が休棟になっています。
 
○藤川委員
 休棟になっているのですね。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 はい。
 
○藤川委員
 それで、そうすると、病床数の稼働はあまりよくないということ。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 でも、まあ、9割近い稼働率は保っています。
 
○藤川委員
 はい。それで、昨年比で考えたときに、外来患者数は一日平均で下がっていますが、やはり、単価が高いのは入院のほうだと考えて、1.8億というのが、要するに、来年以降も先ほどは経費を削減することで、そちらに主点を置いているような感じがしたのですが、医業収益を上げるということでいうと、どのようなことを考えていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 特に、手術ですね。当センターは子供のてんかんの外科治療等をかなりたくさんやっていますので、一時、コロナで遠方や外国からの患者さんも減りましたので、コロナも落ち着いて、そのような患者さんも増えていく。てんかんの外科治療は、特に、小児のてんかん外科治療は非常に収益も大きいので、そこら辺のてんかんの外科治療、外科系の治療、単価の高い、収益の高い、そのようなところをもっと増やしていきたいと考えています。特に、精神科ですと単価も低く、精神科の患者さんですとなかなか収益も上がらないので、我々の得意とする小児のてんかんの外科治療を収益として考えております。
 
○藤川委員
 だとしても、老朽化があるから修繕費はかかるし、建替えもあるということで、なかなか厳しいという理解でよろしいわけですね。
 
○国立精神・神経医療研究センター中川副院長
 そうですね。暑い中、エアコンが壊れて、いろいろな苦情が出ております。
 
○藤川委員
 分かりました。ありがとうございます。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 少し補足いたしますと、病床稼働率は90%を超えて運用しています。そこを増やしていくには、今、副院長が申し上げたように、少し単価を上げられるところは上げるというのがあるのですが、なかなかこれ以上、患者さんをどんどん入院させるというのは厳しいと思っており、今年いろいろ分析をした結果、やはり調達等で掛かっている経費を、若干見直す余地があるのではないかということが分かりましたので、今年度は少しそこをより強力に取り組んでいきたいという趣旨です。
 
○藤川委員
 ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 花井委員、どうぞ。
 
○花井委員
 先ほど、研究事業の赤字、黒字の話があったのですが、セグメント別では研究事業と臨床研究事業と分かれてますよね。この臨床研究事業は研究収益が入っているから、これが委託研究とか、治験等がここに入り、左がインハウスの感じの赤字というイメージでいいのですか。ザクッと見ているので正しいかどうか分かりませんが、セグメント別に見ると、赤字なのは、研究事業、教育研修、情報発信。医業と臨床研究は黒字と見えるのですが、そのような理解でよろしいのですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター石川企画戦略局長
 そうですね。ナショナルセンター共通だと思うのですが、この教育研修事業に、実は、レジデント等の人件費が交付金を上回っていて、それが含まれてしまっているので赤字が大きく見えます。純粋に医業に関係している人と、どうしても分けられないので、財務諸表24ページのセグメントの分けになっていますが、我々としても、研究費は入ったらその分出ていくので、経営上、赤字になる部分というのは、主に診療部分ということで認識し取組はしています。数字上は、このセグメントの分け方だと分かりにくいかなと思います。
 
○花井委員
 厚生労働省にもお願いですが、今、平均乖離率が約6%上がったと、良かったみたいになっていますが、NCやNHOを見ると、その乖離率より、大分、ブレているのではないかと。いろいろ調べると、もう何も考えずに判子を押しているという例を見て、公開できるかは分かりませんが、そこは国でもNCやNHOの各施設が内々にどの程度調達しているかを調べてもらって、6%だったら極端に高いのは、やはり何か、簡単に判子を押し過ぎているのではないかというのがあります。
 少し細かい話ですが、恐らく6%といいながら、うまくやっている民間は、かなり安く買っているのは仕方のないことだと思います。こちらは正々堂々と経営している所なので。なかなか民間に勝つのは難しいと思います。やはり、極端に高く調達しているという例があると、そこはボディブローのように効いてくるので、6%基準でいくと何%ぐらいになるのか調査していただき、もしそれで、6NCがこことここがこれだけ離れているのなら、どうしてるのと言って、契約するときに努力が足りないとか、そのようなことも見たほうがいいかと思いました。議事録に載っていい話かどうか分かりませんが、以上です。
 
○土岐部会長
 時間もありますので、それでは、ここで次に移りたいと思います。最後に、法人の理事長と監事からヒアリングを行いたいと思います。まず、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明をお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター菱山監事
 監事の菱山です。令和5年度の監事監査の結果です。監査報告書に記載のとおり、指摘すべき重大な事項は認められず、適正であることを御報告申し上げます。今のお話にもありましたが、経営という視点ではコロナの補助金収入の影響もあり、当初計画を上回るスピードで繰越欠損金を解消してまいりましたが、今後はNCNPの優れた実績や人的資産を毀損することなく、安定的に収支を改善し、繰越欠損金の解消をいかに行っていくかが大きな課題であり、私も監事としてしっかり注視してまいりたいと思っております。最後に、日々の、そして、日夜の大変な努力とチャレンジを続けられているNCNPの役員の皆様や職員の皆様に敬意を表したいと思います。以上です。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。続いて、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 まず、本日は幅広きにわたり様々な御助言を頂き、誠にありがとうございます。私どもとしては、その研究分野において、先ほどの繰り返しになり恐縮ですが、基盤部分の強化に力を入れてまいりましたが、ようやく、その基盤部分の強化が医師主導治験等の新たな治療薬の開発に少しずつつながっているのではないかという思いで、今後もこの点は強化してまいりたいと思います。
 また、生物統計に関しては、10回のセミナーを開いており、毎年、年度ごとに見れば内容は大きく変わらないのですが、10回はそれぞれ特徴あるセミナーを開いており、この生物統計家が少ないという課題に対しても、積極的に人材育成に取り組んでいるところです。
 地域包括ケアは極めて重要な分野で、我々は最も注力している分野ですが、いわゆるICMという包括ケアというものが、やはり、これまでの待っているタイプのケアシステムに比べて非常に効果が高いことも分かっておりますので、それを支えるべく、医療の専門家の前の方々をどうやって育成するか、ここに非常に精神保健研究としても力を入れておりますし、今後、私どもも注力していきたいと思っております。
 最後に、経営のことに関しましても貴重な御意見をありがとうございます。私どもとしては、この病床稼働率に関しては90%で、割とコンスタントに超えているといったところがあり、それは、それぞれの病棟のスタッフに非常に力を入れていただいていると思っています。
 一方で、先ほどから話のありました調達の問題については、やはり、もう少し考えようがあるのではないかということで、これについては、医薬品のみならず、医療機器、消耗品等に関しても、十分に目配りをしていきたいと。そこは、場合によっては、必要であれば、コンサルタントを積極的に活用して見直しをしていきたい。5年後、10年後のセンターが立っていけるために、きちんとしたそうしたシステムを作りたいと考えているところです。短い御挨拶で恐縮ですが、本日は、皆様本当にありがとうございました。
 
○土岐部会長
 どうもありがとうございます。ただいまの法人監事、法人理事長の御発言について、御意見、御質問等ありますでしょうか。なければ、以上で国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和5年度業務実績評価についての審議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 
(国立精神・神経医療研究センター退出)
(休憩)
(国立成育医療研究センター入室)
 
○土岐部会長
 それでは引き続きまして、国立成育医療研究センターの令和5年度業務実績評価について、審議を開始したいと思います。初めに、理事長のほうから一言、御挨拶をよろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 成育医療研究センターの理事長の五十嵐でございます。今日はどうもありがとうございます。令和5年度の高度専門医療評価部会で御説明の機会を頂きまして、感謝申し上げます。
 私どもは、受精、妊娠から胎児期、新生児期、乳児期、そして学童期、思春期、そして次世代を育む若年成人期に至る過程で生じる疾患に関する医療と、研究を推進することを目的としております。この目的を果たすために、そのベースにはアドボカシーの理念を基にしているところでございます。妊娠、出産に関わる女性、急性疾患あるいは難病などの慢性疾患の子供と、その御家族が安心して優れた医療、看護、そして患者支援を受けられること、これを目標としております。
 現在、御存じのように少子化が進行しておりまして、子供や青年の身体、心理、社会的なウェルビイングを支援する必要性が、以前にも比べまして高くなっていると思います。特に我が国の子供の心理的なウェルビイングは、先進諸国の中でも非常に悪いというように評価されています。今後、子供あるいは青年を身体、心理、社会的に評価して支援する体制を、我が国に構築することが求められていると思っています。
 さらに、様々な分野で私どもは優れた研究成果を出して、政策提言を進めていきたいと考えております。そして、今年度から女性の健康センターとしての役割が私どもに付与されました。性差医学あるいは女性の健康増進に関する臨床研究、人材支援につきましても、今後、推進したいと考えているところです。日々、病院と研究所とが深く協力をして運営に当たっているところです。本日は評価部会の委員の皆様から忌憚のない御意見を頂きまして、今後のセンターの運営に是非、役立てさせていただきたいと考えている所存です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
○土岐部会長
 ありがとうございました。それでは、まずは研究開発の成果の最大化に関する事項、こちらにつきまして評価1-1、そして1-2、こちらの業務実績及び自己評価について議論したいと思います。最初に法人のほうから御説明していただき、その後、質疑応答に入りたいと思います。時間も限られておりますので、ポイントを絞って、よろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 それでは、評価項目1-1「担当領域の特性を踏まえた戦略かつ重点的な研究・開発の推進」です。お手持ちの説明資料の5ページを御覧いただけますでしょうか。それでは始めさせていただきます。私ども、難易度は「高」、重要度「高」、そして自己評価は令和3年度、令和4年度に引き続きましてSとさせていただいております。
 まず難易度「高」としましたのは、ちょうど真ん中辺りですが、免疫不全症や先天性代謝異常症等の多くは、希少疾病・難病疾患であり、治療の対象となる患者数が極めて少ないことから、全国的なネットワーク形成等により、患者情報を集約した上、研究開発を多施設共同で取り組む必要があります。また、倫理的な観点からも、これらの疾患に対する診断・治療等に関し、我が国におけるコンセンサスを同時に形成していく必要があるという困難な面もあるため、難易度を「高」としております。
 次にローマ数字のⅡ指標の達成状況です。令和5年度からも御覧ください。医療に大きく貢献する研究成果を13件、新規病因遺伝子に関しては5件、原著論文数は476件、いずれも達成度は100%を超えているところです。6ページです。要因分析としては、これは後に御説明いたします。その2つ目の列になりますが、新規病因遺伝子の解明に関しては、具体的な遺伝子名を列挙しております。
 ローマ数字のⅢ評定の根拠としては、ゲノム解析等最先端技術によって、成育疾患の発症機序・病態の解明を推進するということ。2番目として、成育難治性疾患の新規原因遺伝子の発見と発症機序を解明する。3番目として、こどもや家族のウェルビイングを促進する社会環境の整備について、この順に御説明をさせていただきます。
 7ページです。カラーのページとなります。左上の(1)ゲノム解析等先端技術によって成育疾患の発症機序・病態の解明を推進するという項目の真ん中辺り、2023年度、赤字で書いてあるところです。まずSTAT6機能獲得型変異に起因した重症アレルギー疾患患者が世界中に存在することを明らかにいたしました。次に、患者の遺伝子変異を導入したマウスで、肺の末梢感覚神経の新たな役割を明らかにすることができました。真ん中辺りに、Rare diseaseからCommon diseaseへの矢印が書いてあるかと思います。希少疾患で得られた知見を一般的な疾患の治療に役立てることができ、これが最も私どもがこの2023年度に成し遂げた成果であるというように自負しております。
 具体的には、図の一番左から新規ゲノム異常の同定、すなわち世界に先駆けて私どもがSTAT6機能獲得型変異疾患を確立し、それらの疾患においては食物アレルギー、高IgE血症・好酸球性血症、気管支喘息、好酸球性消化管疾患、アトピー性皮膚炎を生じます。これらは一番右のカラムになりますが、アレルギーの新規治療法の開発として原因が分かったことにより、私どもが世界に先駆けて発見したということから、国際的コンソーシアムを形成し、臨床的特徴を解析しているところです。これらの成果はTrends in Immunologyに発表し、また、マウスモデルにおいてもアレルギー疾患に関して、Cellに発表したところであります。いずれも著名な国際誌であり、大きな成果を世界に示すことができたことは、非常に私どもにとってはうれしいことです。新たな1つの疾患の概念として確立することとともに、国際的なコンソーシアムで治療法、また、予防法を開発していければというように考えております。
 次に8ページです。左の上の(2)成育難治性疾患の新規原因遺伝子発見と発症機序の解明です。先ほどが病院と研究所が連携して行うことができた成果であります。この(2)は国内外の医療機関・学会・研究班と連携し、1万8,000以上の成育疾患検体と臨床データを蓄積した中で挙げられた成果です。
 真ん中の2023年度の赤字で書いたところです。上から、染色体微細欠失によるキメラ遺伝子形成が巨人症の原因であることを解明することができました。次に、偽性副甲状腺機能低下症を招くゲノム・エピゲノム異常の解明、3番目として、胆道閉鎖症のリスクに関係する遺伝子多型の同定を行いました。
 一番下の図から紹介したいと思います。原因不明の過成長患者、こちらの方は女性の方でいらっしゃいますけれども、小学校に入るときには、もう150cm、小学校の卒業の時点においては180cm、中学卒業する辺りでは190cmを超えた方でいらっしゃいます。原因不明でありましたが、こちらを私どものチームが新たな疾患の発症機序を解明することができました。
 染色体20番の染色体の欠損があることで、新しいキメラ遺伝子、2つの遺伝子がくっ付くことで、1つの成長ホルモンのリリーシングホルモン、成長ホルモンを促すホルモンの発現が大きくなる。その結果として成長ホルモンが過剰分泌した。それが原因となって巨人症になったのだということです。これらはヒトで明らかにするとともに、この真ん中のカラムに書いておりますが、同じ病態をマウスで再現することによって、モデル動物を解析したところ、導入遺伝子を変異させたものについては、体が非常に大きくなるということが分かりました。
 すなわち、私どもがヒトで発見したことが、原因遺伝子であったということが明らかになったわけです。これらは国内外の医療機関・学会・研究班とともに従前から多くの方々、悉皆性と呼んでいますが、国内のほとんどの検体を私どもの成育医療研究センターで集めることによって、確実な遺伝診断、また、その診断の中で新しい遺伝子を発見すること、精度向上、そして治療法、重症化の予防といったものに続けること、また更に、ゲノムデータベースにつなげることで、国際共同研究を今後も継続できれば、いいモデルになったかなと、この2023年度がその元年になるのかというように考えております。
 最後に研究所からもう1つ御報告いたします。9ページです。(3)こどもや家族のウェルビイングを促進する社会環境の整備を行ってきました。2023年度においては、赤字で書いてあるところですが、上から、高度不妊治療を受ける女性のストレスの要因は、“終わりの見えない治療”、“ひとりで抱え込む苦しみ”、“アイデンティティの揺らぎ”、“高額な治療”であることを報告いたしました。
 次に、コロナワクチンで月経周期が延びることを報告いたしました。これは、大丈夫だよということを、全く問題ないですよという意味でも社会に報告したところです。3番目は、保護者の食リテラシーが、子供の朝食欠食や栄養バランスに影響を与えることを報告いたしました。
 4番目として、父親の産前・産後うつは“コロナへの強い不安”や“周囲や家族のサポート不足”により、リスクが高まることを報告し、介入方法を開発し、現在、パイロット試験を実施しているところです。実態把握、要因分析を通じることで、この一番右の所になりますが、青色のところです。ポスターに書いておりますが、「家族の絆を深める、お父さんの心のケアプログラム」といった形で介入を提案し、そして実際に実行するといったようなサイクルを繰り返すことで、これもしっかりこどもや家族のウェルビイングを促進することを、私ども研究所として今後も継続していきたいというように考えております。まずは評価項目1-1を報告させていただきました。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 続きまして、評価項目1-2を御説明させていただきます。資料17ページを御覧ください。「実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備」についてです。まず中期目標ですが、そちらのほうに6つほど記載しております。この項目につきましては、国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会を形成するために極めて重要でして、研究と臨床を一体的に推進するNCの特長をいかすことによって、研究成果の実用化に大きく貢献することが求められているため、重要度は「高」といたしました。
 続きまして、評価の達成状況でございます。幾つか項目を列挙していますが、そのうちFirst in Human試験の実施及び先進医療の件数が本年度は0件でした。しかしながら、その他のほとんどの項目で120%以上の達成状況であったことから、自己評価をSとしております。
 それでは、評価の根拠として、3つほど御説明をさせていただきます。21ページを御覧ください。初めに(1)小児医薬品開発ネットワーク支援事業です。近年、ドラッグ・ラグ/ロスが大変注目されておりまして、中でも小児用医薬品あるいは希少疾病用医薬品などの未承認医薬品の解消に向けた措置が強く望まれている現況において、この事業は小児科学会が中心となりまして、製薬企業に対して小児用医薬品などの開発を要望し、併せて、治験の実施を支援することにより、未承認医薬品の開発を促進する事業です。これは厚生労働省が小児科学会に委託した事業でして、当センターが小児科学会から支援事務局業務を受託して、業務運営を行っているものです。恐らくこの事業がなければ、製薬企業、特に外国の資本を有する製薬企業につきましては、日本国内での小児用医薬品開発を積極的に実施することはまれと考え、更なるドラッグ・ラグ/ロスを招くものと心配しております。幸い当センターには小児治験実施の経験豊富な「小児治験ネットワーク」事務局が存在していることから、このネットワークを利用することで、事業開始から7年間で合計29品目の支援を行い、令和5年度には、レベチラセタム、リバーロキサバン、ベンラリズマブ、ニルセビマブの4品目が新たに承認を得ています。令和4年度の初承認から合計7品目が承認となっております。更に、来年度も幾つか承認が見込まれておりまして、それをもってドラッグ・ラグ/ロスの解消につながるのではないかと期待しております。
 続きまして、22ページを御覧ください。(2)成育医療研究開発費を活用した研究の適切な実施と評価体制の構築に寄与する、POによる研究進捗管理と研究支援についてです。各ナショナルセンターにはそれぞれの所掌を目的としまして研究開発費が交付されています。この研究費使用に係る目的の1つとして、治験・特定臨床研究あるいは先進医療などの適切な実施、及び、この研究費を基礎として、将来の競争的な研究費を獲得することが挙げられると思います。この目的を達成するため、令和4年度から、新たな研究支援体制としてPO制度を実施しております。支援する研究については、毎年、成育医療研究開発費として採択された案件のうち、臨床研究の実施及びその可能性を含んだもの、比較的高額な研究費を獲得したもの、適切な出口戦略の検討が必要なもの、そして、成育医療に大きく影響を及ぼすものなどを中心として選択しております。具体的方法としては、臨床研究センター長が代表POとなり、該当する案件を選択し、採択通知と共に、PO制度対象案件であることを研究者に伝え、1か月を目途にPO面談を受け、その結果を実施する計画書に反映させることとしております。その後は半年ごとの報告を行うと共に、必要な場合には随時担当POが相談を受けることとしています。また、毎年度末の中間報告書におきましては、その進捗を確認し、次年度の計画に資する形としています。令和5年度につきましては、新規課題10課題、継続課題12課題について支援しており、令和5年度にはAMEDの研究費の採択が1件、企業との共同研究が開始されたものが1件、特定臨床研究として実施が開始されたものが2件ありました。
 最後に23ページを御覧ください。(3)国際共同ランダム化比較試験による小児及び若年成人再発急性骨髄性白血病に対する新規治療薬の開発とドラッグ・ラグ/ロス解消についてです。今回、対象としている小児急性骨髄性白血病は小児に多い白血病でして、再発後の予後が不良であることは周知のとおりです。そこで、ある適切な化学療法に本対象薬を併用する群としない群をランダム割付けし、少なくとも5年間追跡調査を行う国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験を計画しました。本試験は、企業ではなくてオランダのPrincess Maxima Centerが中心となって計画された試験でして、欧州を中心に7か国、米国を中心に4か国で実施され、日本は欧州グループの一地域として参加し、成育は日本のNational Cordinating Centerとして取りまとめを行っています。なお、資料に綴りの間違いがありました。大変失礼いたしました。
 日本において、医師主導の国際共同試験を複数の医療機関で実施するには、ここに示すような3つの業務が必要となってきます。その1つ目は、日本のNational Cordinating Centerとしての業務です。オランダの治験調整事務局との頻回な打合せを行うことで、日本での医師主導治験の必要性を理解していただくとともに、日本と欧米での治験制度の違いについて説明し、十分な理解をして合意していただくことが必要となってきます。この部分に大変多くの時間と人を必要といたしました。また、実際に実施に伴う各種契約内容の調整にも比較的多くの時間を必要としたものです。
 2つ目は、国内医師主導治験における調整事務局としての業務です。この業務では、実施計画書の日本語訳レビュー、日本で行うときの同意説明文書及びアセント文書、それから、各種手順書の作成です。この部分では、スポンサーであるMaxima Center、欧州におけるCRO、治験薬管理会社などが日本のGCP省令を十分に理解していないことなどから発生する意見の相違を解決することが重要でした。
 3つ目の国内治験代表医師に対する治験実施に向けた支援については、日本でのCRO設定の必要性をスポンサーに理解していただくことに非常に多くの力と時間を使いました。しかし、これ以外につきましては、これまで当センターで実施してきた支援内容と大きな違いはないので、淡々と進めることができたと思っております。これら様々な作業を令和4年度の終盤から始めましたが、結局、全ての契約が完了したのが令和5年度末でした。
 その後、令和6年6月28日に治験計画届を提出しました。この後、キックオフミーティングを行いまして、国内治験を開始する予定であり、今後、プレスリリースを予定しております。企業治験では、国際共同治験の実施は比較的容易ですが、医師主導治験では治験ごとに解決しなければならない事項が多数ありまして、今回行った一連の作業は今後の国際的な医師主導共同治験の実施における重要な経験となり、小児科領域でのドラッグ・ラグ/ロス解消に役立つと考えております。以上でございます。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの1-1及び1-2につきまして、それでは審議に入りたいと思います。委員の先生方から、御質問があれば是非よろしくお願いしたいと思います。よろしいですか。では、中野先生どうぞよろしくお願します。
 
○中野委員
 中野です。御説明をどうもありがとうございます。私からは、評価項目1-1の所で質問いたします。スライドの7枚目にお書きいただいている希少難病だけではなく、比較的ありふれた成育疾患の発症に関与する遺伝情報や臨床情報の解析、成育疾患研究の実用化体制の充実につなげる、正に成育疾患、小児疾患ではとても大切なことだと私自身も思っておりますので、是非この観点から研究を進めていっていただければと思っております。
 その中で御質問ですが、この7枚目のスライドの左の論文からの引用の図で教えていただきたいのですが、そのSTAT6機能獲得型変異疾患ということで、アトピー性皮膚炎や気管支喘息とか、非常にCommon diseaseの病名も書いてあり、しかもその括弧のパーセンテージが、アトピーの場合は90%、気管支喘息は62%と非常に高いのですが、このパーセンテージは、すみません非常に初歩的な質問ですが、STAT6機能獲得型変異が何らかの形で関与しているというパーセンテージなのでしょうか。御教示ください。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 ありがとうございます。中野先生、貴重なコメントをありがとうございます。皆様、7ページを御覧いただけますでしょうか。一番左の所に書いております。それぞれの疾患の横に、例えば食物アレルギー例えば95%、またIgE血症・好酸球性血症100%というこの数字のパーセントに関する御質問です。こちらは、私どもの論文です。Trends in Immunologyに書いた論文で、中野先生がおっしゃるように、少し書き方が確かに分かりづらいですが、こちらのパーセントの意味は、STAT6機能獲得型変異を持っていらっしゃる患者さんの症状です。ですから、STAT6機能獲得型変異がある患者さんにおいては食物アレルギーが95%、またIgE血症・好酸球性血症が100%というふうに御理解いただければと思います。今、確かに中野先生がおっしゃるように食物アレルギーの95%にSTAT6が関わっているかのように読めるのは、これは私どもの論文における図の示し方に課題があるかなとも感じます。以上、そういった意味です。御指摘ありがとうございます。
 
○中野委員
 ありがとうございます。すみません、私の理解不足だったので、でも非常に御説明を聞いて、何か自分の頭もすっきりしました。私も実は小児科医なのですが、例えばネフローゼの子は結構アトピーや気管支喘息も持っていたり、経験的にずっと小児科医をしながら思っておりましたので、非常にこれは面白い結果だと思っています。どうもありがとうございました。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 これは、少し言葉を付け加えますと、STAT6は、非常に希少な疾患ではないかと思って、私どもが第1報を2002年度にアレルギーのインパクトファクターが14ぐらいの雑誌ですが、発表いたしました。その後、世界中から多くの論文が発表され、その後これは小児科領域に限らず、ほかの分野病気にも関わっていること、分野というのは比較的大人の領域にも関わっていることが後から分かってきて、そういった意味で国際的なコンソーシアムを形成してもらったところです。本当に、御指摘をありがとうございます。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。ほか、よろしいですか。花井先生、どうぞ。
 
○花井委員
 あの、9ページのこどもや家族のウェルビイング促進というのは、特にARTを受けているところで非常に興味深いと思ったのですが、こういう分析は非常に大事だと思います。ART、こういうのも産科の保険収載でいろいろ入る中で医療化していって、今まで民間でいろんな形があったのですが、いろいろなことが起こっていて、私どもの領域ではややこしいというか、LGBTという女性カップルでもそういうことがあるし、そのときにいろんな条件で事実婚なのか何とかという医学的以外のことで非常にメンタルに負担が掛かっているということなのですが、これはいわゆる典型的に夫婦で、カップルでというイメージだけのものでしょうか。それとも、もう少しやはり今の多様な形も射程に入ったものなのでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 花井先生、御指摘ありがとうございます。以下の御質問自体に直接お答えできる回答は、私自身は今持ち合わせておりません。一方、私どもこの4つというのは、いつも社会のニーズが、例えばメディア等で課題だと言われているものに対しては積極的に研究員に調査をしてもらいたい、実態を把握してくれというお願いをしております。
 また、どうしてそういったことがあるのかといった要因分析、そして更には具体的に何らかの形で社会に貢献できるような仕組みを用意してくれとお願いしております。実は、このART、生殖医療に関しましてはその当時、4月の時点でしたがメディアで少し話題になり、そしてできる限り早急にその課題、実際にどういったこと、ストレスになっていることもあるかもしれないのですが、そういったものを調査したところ、このような結果が出たといったところです。私としては、こちらの成果につきましては、すぐにメディアに報告してくださいといった形で、最終的には例えば介入提案といったことはしておりません。一方、メディアへは比較的多くのメディアに取り上げていただき、このような捉え方の人がいるのだな、パーセントの意味は高いのか低いのかということはともかく、その実態について報告したところです。また、今御質問のあった内容については、私自身は答えを持ち合せていない、存じ上げていないところです。御質問ありがとうございます。
 
○花井委員
 ありがとうございます。私たちは感染症でウイルスを排除したりとかいろいろやっていたのですが、むしろ不妊治療をやっている間のストレスから、あきらめて止めた瞬間に妊娠することはよくある話で、すごいストレスで、そのストレスが要するに、いわゆる卵細胞の質を下げるのですよ、きっと。そういうのを、もう一度何かできないのかなとかねがね思ったので、またこういう分析をしていただければ多くの実子希望の人たちに光が当たるのではないかと思いました。ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 私から。今回ドラッグラグ、ドラッグロスにかなり力を入れておられますが、この21ページのネットワーク、成育と小児科学会で非常にいいチームができていると思っています。この実際にお伺いしたかったのは、基本的には適用拡大若しくは海外承認されている薬を対象としているのかです。実際にこの、どのように選んで何件ぐらいまでやっていくのか、そういう舵取りは、どこがされているのかを教えていただけますでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 御質問ありがとうございます。まず適用拡大か否かという話ですが、基本的には既に外国で試験が実施されており、それに対して日本でもという付け足しの部分で、すぐどこが対応できるかということで、こちらに御相談いただき、できれば同時開発を促したいのですが、間に合わないときは外国承認の後か、間を置かずに日本でも承認の道を付けるというのが目的と考えております。
 選択につきましては、特に現在は制限をしておりませんので、基本的に申出があったものについては全てお話を伺う。それにつきまして、ここに小児科学会分科会関連学界と書いてありますが、学会の分科会にお諮りをして、これが実際にできるかというところから始まり、できる場合はどこの施設で誰が中心となって実施していただくかというところまでお話し合いをさせていただき、支援をするかしないかを決めている形にしておりますので、比較的門戸は広いと我々は考えております。スポンサーであります厚労省からは、特に制限は設けることは余り望ましくないという話を聞いております。以上でございます。
 
○土岐部会長
 いや、むしろ我々ほかの成人から見ると、すばらしいチームができており、毎年3つ4つどんどん適用が広がっているのはすばらしいなと思って、ほかのところはなかなか音頭取りがうまくいかずに苦労しております。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 ほか、よろしいでしょうか。それでは続きまして、医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項の評価項目1-3から1-5について、議論したいと思います。それでは先ほどと同様に、まずは法人から説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 それでは、項目1-3「医療の提供に関する事項」について、御説明させていただきます。資料24ページを御覧ください。重要度「高」、自己評価はSとさせていただきました。
 続きまして、資料28ページを御覧ください。評価項目1-3、医療の提供に関する事項につきまして、御紹介させていただきます。最初に、成育医療研究センターで実施されております胎児治療についてです。当センター病院では、日本で最大の小児、周産期、産科、母性医療を専門とする唯一の国立高度専門医療研究センターです。当センター病院において行われている主な胎児治療については、胎児鏡を用いた双胎間輸血症候群に対するレーザー手術、胎児胸水に対する胸腔シャント術、無心体双胎に対するラジオ波凝固術、胎児貧血に対する胎児輸血などを行っております。また、臨床研究として行っている胎児医療については、脊髄髄膜瘤に対する直視下の修復術、重症大動脈弁狭窄症に対する超音波ガイド下の胎児大動脈弁形成術、下部尿路閉鎖に対する胎児膀胱鏡の手術、先天性横隔膜ヘルニアに対する胎児鏡下の気管閉塞術などを行っております。
 これらの胎児治療のうち、特にセンターで特出する胎児治療について、3点ほど御紹介させていただきます。まず、1点目としまして、左下の重症大動脈弁狭窄に対する胎児大動脈弁形成術です。この病気は、胎児及び新生児の生命に関わる症状を引き起こす発生頻度が出生1万人当たり3.5人という非常にまれな先天性の心疾患です。病院においては、重症大動脈弁狭窄症の妊娠25周の胎児に対しまして、胎児治療を行い、左心低形成症候群に進行する前に大動脈弁の狭窄を解除し、二心室循環を保つことを目的とした胎児治療を行っております。当該治療法の臨床試験は、2021年7月に日本で初めて当センターで実施されました。これまで、当センターで紹介は14件、胎児治療適応は6例、同意を得られた症例は4例、実施は3例で、うち、2023年度においては2例実施しておりまして、全例生存しております。
 次に、髄膜瘤の胎児手術の臨床研究です。脊髄髄膜瘤は、脊髄神経の障害により歩行障害、排泄障害、キアリ奇形と水頭症により中枢神経障害を来す疾患です。米国で行われましたRCTにより、胎児治療がこれらの症状を改善することが証明され、世界各国で普及しつつあります。我が国では、大阪大学と当センター病院の胎児診療科が共同研究を行いまして、現在まで全6例を実施し、2023年度において5例実施し、当センターでは2024年3月に1例実施したところです。現在は、先進医療の申請を行っているところです。
 次に、3点目が双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下レーザー手術です。胎児は臍帯を通して胎盤と血液のやり取りをしておりまして、胎盤において母体から酸素や栄養を受け取ります。一絨毛膜二羊膜双胎は双子であっても胎盤が1つなため、2人の胎児で胎盤を共有しており、胎盤において2人の胎児の間に吻合血管のつながりはあります。双胎間の輸血症候群は、この胎盤の吻合血管により双胎間に慢性の血液のアンバランスが生じ、引き起こされる病態です。治療法といたしまして、胎児鏡下のレーザー手術が有効であり、双胎間の血管のつながりを遮断、吻合血管を凝固いたしまして、両児間の血流の不均衡を是正する根本的な治療法です。母体の中から受血児の羊水過多アークルに胎児鏡を入れまして、胎盤表面を観察し、双胎間の胎盤の吻合血管を確認してレーザーで凝固し、遮断する手術になります。センターでは、2023年度は21例実施しております。2023年度までに国内最多の806件を実施いたしまして、一児の生存率を98%まで改善し、3歳の神経発達異常は9%に減少させ、世界的にもトップクラスの成績を上げております。
 続きまして、29ページを御覧ください。救急医療及びPICUの取組についてになります。まずは、救急医療につきまして、当センターが開設いたしました2002年当初より24時間365日対応可能な小児救急医療、断らない医療を実践しております。専門的な高度先進医療を担っているところではありますが、全ての子供を受け入れ、緊急度に応じた診療を行っております。院内院外を問わず、小児救急医療に関する活動を行っており、小児救急医療を実践できる医師の育成を行い、また小児救急医療の充実のため、連携と情報提供を行っております。
 右側のグラフの救急外来受診者におきましては、救急外来から入院へ移行した患者さんの数ですが、救急車受入数のグラフも併せて見ていただきますと、2020年以降、顕著に増加傾向にありまして、コロナ前の水準に回復傾向にあります。また、左下の写真ですが、2024年1月に発生しました能登半島の地震におきまして、ナショナルセンターの看護師が派遣活動も担当いたしまして、当センター病院の看護師を計2回、合計10名、珠洲病院に派遣し活動していただきました。
 次に、右側のPICUにつきまして、現在、20床の病床を確保し、生命が危険な状態にあります重症な小児患者の集中治療を行っております。24時間体制で専門の小児集中治療医が診療を行います。クローズドICUの形態を取っており、各専門診療科、各職種のスタッフと連携を取りながらチーム医療を行っております。また、診療の対象を大きく分けて救急救命と手術期となりますが、救急車を利用いたしまして救急診療科と連携を取りながら全国から小児患者を広域搬送いたしまして、集約化して治療に当たっております。
 更に、臓器移植、脳神経外科手術などの様々な手術が行われているため、麻酔科や関連各科と連携いたしまして、引き続き管理を行っております。
 資料左側のグラフは、小児PICUの取組について、コロナで減少した患者がコロナ以前の水準に回復傾向にありまして、特に救急症例の増加が顕著に現れております。また、左下のグラフ等でECMO等の新興感染症対策も増えてきております。高度専門的な小児医療を提供する施設といたしまして、国内最多の臓器移植を現在、実施しているところです。
 資料30ページを御覧ください。(3)日本の小児がん医療を診療・インフラで牽引するに関してです。がん対策推進基本計画におきまして、小児がんを重点的に取り組む課題の1つに位置付け、小児がん患者と家族が安心して医療や支援を受けることができる環境を整備するため、2013年2月に全国15の小児がん拠点病院を指定し、当センターはその1つに指定されまして、小児がんの診療や支援体制を充実させるため、2013年9月に当センターにおいて、小児がんセンターを開設しております。
 更に、2014年2月には、がんセンターとともに、小児がんの拠点病院を牽引する小児がん中央機関に指定され、我が国の小児がん医療の充実及び体制整備に取り組んでおります。なお、2023年3月に閣議決定されました「第4期がん対策推進基本計画」では、小児・AYA世代に対して「がん医療」のみならず、療養環境への支援を含めた「がんとの共生」が謳われており、その整備にも取り組んでおります。
 下に行きまして、事業の取組です。1.中央診断による全国の小児がん診断の質の向上・小児がん長期フォローアップ体制の設立。2.ファシリティドッグの導入。3.チャイルドライフスペシャリストの介入。4.ディズニーこども病院イニシアチブ等の導入を現在行っているところです。
 続きまして、1-4「人材育成に関する事項」です。31ページ、自己評価Aとさせていただきました。33ページを御覧ください。当センターの職員で学会の評議員等の役職に就いております人数は226名に上り、また、理事長相当職に就任している職員は4名、日本の医学及び医療の水準の向上に寄与してまいりました。また、当センターから大学教授へ就任する職員も多く、2023年4月に4名大学教授に就任しております。
 下の段に行きまして、小児科専攻医の論文発表数は、2023年度において総数25本、英文数15本となっております。2023年度のレジデント・フェロー等の論文数におきましても、病院では内科系が和文17、英文46と非常に伸びてきております。
 続きまして、34ページを御覧ください。医療政策の推進等に関する事項です。こちらも自己評価はAとさせていただきました。
 資料36ページを御覧ください。平成17年に厚生労働省の事業として開設されました妊娠と薬情報センターは、妊娠中の薬剤の安全性に関する情報提供と、相談症例を基にしたエビデンス創出を目的としております。情報提供は、全国に設置されました。拠点病院は現在59か所で、2022年度の57か所から更に増えておりまして、その拠点病院において妊娠と薬の外来を現在行っております。
 また、2023年度の取組として、相談症例のデータに基づきます疫学研究報告・症例報告として欧州TISとの共同研究において、モダフィニルの妊娠中使用におけるコホート研究、拠点病院としての共同研究において、カルボシステインの妊娠中使用に対するコホート研究、また、製薬との共同研究といたしまして、妊娠禁忌薬であるコロナ治療薬のゾコーバ、ラゲブリオの相談対応と情報収集を推進し、抗ヘルペスウイルス薬のアメナリーフの母乳移行量の測定研究を行いました。
 さらに、国の妊娠・授乳婦を対象とした薬の適正使用推進事業において、βブロッカーの添付文書禁忌の妊婦記載削除等を行ったところです。
 次に、資料37ページを御覧ください。令和4年度に創立しました成育こどもシンクタンクにつきまして、全ての子供たちが笑顔になれる社会を目指してエビデンスの創出に加え、こども家庭庁をはじめとする省庁や自治体との連携体制を構築し、先駆的な取組や重点政策を中心に様々な活動・事業・政策の社会実装を支援しております。また、教育活動や民間団体との連携によります「こどもの"こえ"」を聞くための体制整備、既存データを用いて子供の社会課題の実態把握や解決策の提案につながる情報の発信を進めております。具体的には、令和5年4月に設立されました、こども家庭庁との連携体制を構築いたしまして、母子保健情報のDX化や、保育政策、EBPM推進などの計画立案や評価に対する助言や、データ解析を通じた情報提供を行ったところです。また、情報発信といたしまして、子供の社会的な課題につきまして、実態把握や課題解決政策提案につながる分析結果を発信するとともに、セミナーの開催や学会発表など、2023年度に22件実施したところです。
 以上が、評価項目1-3~1-5に関する説明となります。
 
○土岐部会長
 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問を受けたいと思いますので、挙手等をよろしくお願いいたします。中野委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○中野委員
 中野です。御説明をありがとうございます。1-3の医療の提供について教えてください。医療の提供に関しまして、中長期目標の達成度ですが、遺伝子細胞治療、また、心臓移植も達成度が目標値を超えておりますし。肝臓移植は6年間の中長期目標ということですと、数値目標には達していないのですが、200例という非常にたくさんの例数なので、しっかりと医療の提供を行っていただいていると思います。
 御質問を申し上げたいのは、例えば、この肝臓移植とか年間数十例以上ということで、かなりの数だと思うのですけれども、国内で先進的な医療をできる施設がどこにあるかにもよるかと思うのですけれども、成育医療研究センターの患者さんは、やはり東日本が多いのか、あるいは疾患によって心臓移植と肝臓移植とでは異なるのかとか、全国的な患者さんのいらっしゃる地域、何か特徴があったら国内の成育医療体制の充実という点でも参考になると思いますので、教えていただければと思います。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 御質問、大変ありがとうございます。肝臓移植は年間、日本国内で小児は100例程度行われております。成育医療研究センターでは、60~70例の肝臓の移植を行っておりますので、大体、日本の6、7割の肝臓移植を成育医療センターでカバーさせていただいております。
 患者様は、全国から参ります。成育医療研究センターの卒業生が全国の小児科の病院に分散して就職・研鑽しておりますので、術後管理はある程度の時間がたちましたら、そちらの病院で診ていただくようにしております。心臓の移植に関しましては、主に東日本の患者さんが多いです。以上です。
 
○中野委員
 どうも、ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 それでは、深見委員よろしくお願いします。
 
○深見委員
 深見です。37ページの話です。成育こどもシンクタンクについてなのですけれど、新しい試みというのでしょうか。具体的にどういうことをやっているのかが、ちょっと見えにくいのですけれども。成育医療センターで中心となってこの活動を行っている部署というのは、どこになるのかというのが第1点です。
 それから、「こどもの"こえ"」を聞くというのは民間と協力をしながら行うということなのですけれども、相手方、民間というものはどういう団体なのか。どういうようなアウトプットを目指しているのかということを、御説明お願いできたらと思います。以上です。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 深見先生、御質問ありがとうございます。それでは、梅澤から成育こどもシンクタンクについて、御回答させていただきます。私ども、成育こどもシンクタンクは、2022年度から開始した事業です。そもそも、成育基本法の成立に伴いまして、その中にある理念、すなわち、バイオサイコソーシャル、身体的・心理的・社会的理念に基づきまして、多くのステークホルダーの方々とともに、今の社会の子供に関わる現状の課題をしっかりと把握してという形で開始されました。この組織の場所ですが、理事長直下で理事長の指示の下にある組織でして、研究所、病院、又は臨床研究センターといったような所にひも付いているというよりも、理事長直下で皆で一緒にやっているといったような組織です。では、大きな所はどこかと言いますが、全てプロジェクトベースで組織横断的、専門分野横断的なチームを編成しております。今現在、18の課題について対応しているところです。
 ですので、組織としては18の課題に対して、解決策、また既存の健康課題、更には新たな健康課題を提示する研究に取り組んでいくということになります。では、その出口はどこかということになりますが、課題が設定されたものに関しまして、まずは具体的なアウトプットに関しては大きく分けて2つのことを行っております。すなわち、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング、政策立案、成育領域における根拠に基づいたようなことができるのかどうか。では、どこでできるかということなのですが、具体的には今は主に自治体、世田谷区又は岐阜県の飛騨市、高山市、更には愛知県の大府市といったような具体的な地区、あと、狛江市がありますが、そういった自治体とともに、それらの課題を私どもが設定できて、そして、それを介入できるかといったようなことを今現在、評価を受けているところです。実際に、それらが役に立ったのか、又は役に立たないのかといったようなところです。
 更には、民間団体というのは、どういうことかと言いますと、具体的にはスタートアップの方々とともに、例えば赤ちゃんのうつ伏せとか、そういった課題について、今いろいろなデバイスがありまして、そういったデバイスが、例えば保健師さんや幼稚園の先生、更には学校の先生が子どもたちが寝ているときに、その負荷が減るのかどうかといったようなところも想定して、現在、その意味があるかどうかについて検討を進めております。今現在、始まって1年3か月といった状況ですので、現在セミナーの開催は10回程度、講演等は12回程度にとどまっていますが、これらの成果を今後、改めてこちらの場で御紹介をできればなと考えております。簡単な答えではございますが、以上です。
 
○深見委員
 ありがとうございました。2020年の1年3か月ということで、昨年も説明があったのですよね。すみません、認識としてなくて、初めて見るような取組でしたもので。重要な方向性だと思いますので、継続して、理事長直下で頑張っていただきたいなと思っております。以上です。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 私から胎児治療について、お伺いしたいのですが。本当にすごいなというか、もう驚くような胎児の治療が行われているわけなのですけれども、多分、胎児治療も恐らく週数が早いほうが適切な手術があると思うのですが、産婦人科の先生の間でどれぐらい、これが認知されているのか。例えば、こういうのも全てガイドラインに記載されて、これは小児外科医がやるのか、産婦人科医がやるのか分かりませんが、この胎児治療の一般化に向けて、どのように整備されているのか、ちょっとお伺いできるでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 御質問ありがとうございます。当センターでは周産期センターというものがありまして、胎児診療科、産科、母性内科等が一体となって診療を行っております。当然、大阪大学の先生方に御指導を頂きました髄膜瘤手術におきましては、脳神経外科が胎児診療科と大阪大学の胎児診療科、小児外科の先生方のお手伝いを頂き、当センターで実施をしているところです。
 双胎間の輸血症候群に関しましては、胎児診療科単独で行っておりますが、重症大動脈弁狭窄に対する胎児の大動脈弁形成術には、胎児診療科及び当センターの循環器内科で共同して行っております。それだけではなく、術後もICU、PICU、NICUの管理が必要ですので、全病院の臨床部門が協力してこのような体制を敷いているところです。
 海外では比較的行われている胎児手術ですが、国内ではまだ周知が足りませんので、こういった症例を胎児診療科及び周産期センターでレジストレーションを作りまして、国内の学会、海外の学会と共同で英文論文あるいは学会発表等、現在行っているところです。以上です。
 
○土岐部会長
 その産婦人科の先生方で非常に注意深い先生や見識の深い先生など、まだまだ全ての産婦人科医がそこまでは認識していないけれど、一部の先生方はしっかり病態を把握して紹介してくる。むしろ、周りから紹介されてくる患者さんのほうが多いという、そういう状況なのでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 そのとおりです。
 
○土岐部会長
 分かりました。藤川委員、どうぞ。
 
○藤川委員
 すみません、藤川です。先ほどの成育こどもシンクタンクに関連することなのですが、環境省中心でやっているエコチル調査というものがあると思うのですけれども。これにも多分、成育センターは関わっているのかなと思われるのですが、あの中でも割と社会的な調査みたいなものもあったりして、この成育こどもシンクタンクの課題のような中でも、何かかぶるようなものがあるのかどうかが分からないのですが、できれば、国益みたいなことから考えれば、かぶるのであれば、どちらにも使えるようなデータであってほしいと思いますし。相乗効果みたいなものがあればいいのかなというふうに思うのですけれども、全くとんちんかんかもしれませんが、その辺りのことを教えていただけたらと思いました。以上です。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 藤川先生、御質問ありがとうございます。御質問は、エコチル調査とこどもシンクタンクが相乗効果があるかどうか。いわゆる化学反応を起こして、より大きな成果が上げられるかといったような御質問というふうに理解いたしました。今現在、こどもシンクタンクとエコチルのチームは異なるチームで形成されております。エコチルチーム、エコチル調査も年間で非常に多くの資金を投じて、実際に検体を集めて、その検体と作業仮説である、例えばアウトプットであれば、お子さんの状態とか、どのようにリンクするか又はしないかといったようなことに関して、コホート調査を行っているところです。これは環境省の研究所、環境研と一緒に私ども国立成育医療センターが中心となって行っているところです。特に科学的なコホートですが、今現在ゲノムを中心とした関わりといったようなところについても私ども行えているところです。
 一方、こどもシンクタンクは、より社会学的なことにアプローチをしています。ですので、先ほども申し上げましたが、エコチルのほうはかなり十年来の成果が出ておりまして、論文も恐らく私の理解では30~40出ているものです。一方、こどもシンクタンクはまだ赤ちゃんで生まれてきたばかりで、先ほどもPCDAサイクルも回している、すなわち現状把握や課題設定、政策立案、事業実施、特に事業実施をやっているのですが、いずれもパイロット試験を実施しているところで、私どもは今現在、試されているところです。ですので、その成果に関しましては、今後、エコチル調査のチームにも追い付け、そして追い越すぐらいの気持ちでやっておりますので、改めまして、こちらに関しては一緒にやれるような機会、また化学反応を起こして、よりシナジスティックな効果が出るように努力を進めてまいりたいと思っております。藤川先生、ありがとうございます。
 
○藤川委員
 期待しています。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。ほかは、よろしいですか。それでは、医療の提供等その他の業務の質の向上に関する事項につきましては、以上とさせていただきます。
 引き続きまして、2-1~4-1まで、業務運営への効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項に移りたいと思います。先ほどと同様で、まずは法人から御説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター北澤理事
 それでは、38~49ページまでの評価項目2-1、3-1、4-1について御説明いたします。まず、38ページの評価項目2-1「業務運営の効率化に関する事項」を御覧ください。自己評価はAとしております。指標の達成状況については38、39ページの表のとおりです。40ページに評定の根拠をお示ししております。
 41ページを御覧ください。効率化等による収支改善ですが、物価高騰、光熱水量の増加等があります。また、コロナ対応の補助金等の減少といった収支悪化の要因がありまして、経常収支はマイナスでした。しかしながら、委託費の削減、医薬品費等の価格交渉により、材料費は削減いたしました。また、入院患者数は前年度から17.8名増加しまして、406.8名と400人を超えました。外来患者数も増加しまして、医業収益は過去最高を記録いたしました。
 42ページを御覧ください。医薬品について、全国33の小児医療施設への価格照会、後発医薬品の採用の実施。医療材料については、SPD等業務委託契約の工夫により費用を削減するとともに、診療材料の棚卸資産の在庫削減等も図っております。
 次に(2)働き方改革です。次の43ページとともに御覧いただきたいと思います。魅力的で働きやすい職場環境整備に向けて、令和4年度に新たに「ダイバーシティ実現推進室」を設置いたしまして、女性管理職割合の増加、講演会の実施など、多様性をいかした組織マネジメントへ向けた取組を実施いたしました。また、職員満足度調査により、働き方や福利厚生等についても意見聴取をし、職場環境等の現状把握、対応をいたしました。
 さらに、医師の働き方改革としまして、医師の勤務実態の正確な把握のため、他のナショナルセンター(NC)に先駆けましてビーコンを導入し、勤務実績をもとにした医師労働時間短縮計画等を作成し、今年3月6日付けでB水準、C-2水準の指定を受けました。また、業務と自己研鑽との境目が難しいのですが、ここの整理をするなど、時間外労働を正確にカウントするための判断基準を、次の43ページの下の所にあるとおり、このようにお示ししてセンター内に共有しました。そのほか、43ページの右下にあるとおり、病院長名での注意喚起や産業医の面接、医師事務作業補助者の常勤化などの取組により、43ページの上のオレンジの折れ線グラフにあるとおり、医師の時間外労働は漸減傾向にあります。
 続きまして、44ページを御覧ください。3-1「財務内容の改善に関する事項」です。自己評価はAです。45ページを御覧ください。まず、(1)収益の改善です。AMED等の競争的研究資金への積極的な申請の促進などにより、令和5年度は20.7億円を獲得いたしました。小児治験ネットワークを介した治験収益を獲得したほか、小児医療情報収集システムの製薬企業への試行的利活用を開始し、昨年度は製薬企業へ2件提供し、累計で14件となりました。
 さらに、企業との共同研究の例としましては、苦い薬を飲みやすくする子供用の服薬補助食品の開発を、子供に人気のあるお菓子の知育菓子をベースとして行い、特許も取得した上で、令和5年度からは全国販売を開始いたしまして、SNSやマスメディアでも大きな話題となりました。また、寄付については、遺贈における外部金融機関との協定を新たに3行と締結するなどの取組を進めております。
 次に、(2)外部医療機関からの検体検査受託の推進です。臨床検査技師法上の衛生検査所を平成31年に開設したところですが、外部医療機関からの受託件数は19機関から130に増加したほか、かずさDNA研究所とのMOUを締結するなど、検査収入は約5,200万円と増加をしております。
 (3)健全な財務内容として、投資については適切な管理を心掛けております。また、当センターの建物は20年以上が経過しており、老朽化対策ワーキンググループにおいて整備計画を見直し、重要インフラ部分の整備を適切に実施する予定です。医療機器の投資についても、収益性、医療安全等の観点から厳選して実施をしております。
 続きまして、46ページを御覧ください。4-1「その他の事項」です。自己評価はAとしております。指標の達成状況は表にあるとおりです。47ページに、評定の根拠を示しております。
 48ページを御覧ください。まず、(1)ハラスメント対策・情報セキュリティ対策等の推進です。労働環境の健全化は、働き方改革の基本的な要素で大変重要です。コンプライアンスの対応を見直し、パワハラ等の相談にも積極的に対応いたしました。また、情報セキュリティ対策の目的として研修を行い、職員への周知をきめ細かく実施いたしました。近年言われております、研究インテグリティも含めて対応をしていきます。
 (2)広報の推進として、プレスリリースを積極的に行い、メディア露出の数も2,122件と増加いたしました。そのほか、パンフレット、広報誌、ホームページ、SNSと多様な媒体で広報を行いました。
 49ページを御覧ください。「女性の健康」ナショナルセンター機能の構築です。これは冒頭理事長からも御挨拶でありましたが、昨年の6月に政府方針として示された「骨太の方針」や「こども未来戦略方針」に対し、当センターに「女性の健康」に関するナショナルセンター機能を持たせ、女性に特有な疾患の発症率や、経過に男性・女性の差違のある、いわゆる性差に関する研究及び女性の健康に関する最新のエビデンス収集や情報提供などを行う仕組みの構築を行おうとするものです。
 具体的には、真ん中の所に青で4点示させていただいています。1点目は「女性の健康」に関するデータセンターの構築、2点目として、ライフコースを踏まえた基礎及び臨床研究の積極的な推進、3点目として、情報収集・発信、政策提言、4点目としてプレコンセプションケアの推進など女性の体と心のケア等の支援、そのほか、女性の健康に関する臨床機能といった内容の機能を持つセンターの設立に向け、本年の開設に向けた検討を、昨年度から成育内のワーキンググループ等の開催により、鋭意検討を行っております。説明は以上です。ありがとうございました。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。ただいまの御説明に対しまして、委員の先生方から御意見等、是非頂戴したいと思います。いかがでしょうか。藤川委員、どうぞ。
 
○藤川委員
 確認させていただきたいのですが。説明がなかったのですが、51ページの所に、平成28年からの財務状況、損益計算書比較が出ています。この医業収支書を拝見すると、令和5年は、令和2年のコロナの影響が出てくる辺りからと考えると、少し良くなっているというふうに考えることができて、分析してくださっている中でも、物価高騰の影響ということが記載されていますので、そこが結構大きかったのかという考え方でよろしいのでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター北澤理事
 御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、コロナの流行時においては非常に患者数も減ったということがありまして、医業収益についてはこちらに示しているとおり、かなり下がっております。それがコロナの感染も落ち着いてくることに比例しまして、経営努力も院長を中心に行いまして、かなり患者数等の回復も見られました。医業収支差としては御指摘のとおり、赤字ではありますが、よくなってきているという認識です。やはり、それに加えて、御指摘にありました物価高騰も、どうしても下げの要因になっているということは事実かと考えております。以上です。
 
○藤川委員
 続けてよろしいでしょうか。そうすると、この先を考えていったときに、物価高騰は特にこれで下がるということでもなさそうで。ところが、ほかのいろいろな組織で聞いていると、水道光熱費関連は想定していたほど、予算を少し多めに取ったけれども、そうでもなかったとおっしゃる所が意外と多かったので、そこが少し実態と、肌感覚と違うかなという気が少しあります。
 それともう1点、棚卸資産の診療材料に関して、かなり削減して、令和2年比で47%ということで、本当に大きな削減があったと思うのですが。最近いろいろな所でお聞きしていると、供給が思い通りに必要なタイミングでなされないようなケースも出てきているので、在庫がもともとが膨れあがっていたのかもしれませんが、余り削減し過ぎるのも心配だみたいなお話があるので、その辺りは特に問題はないのでしょうか。教えていただけますか。
 
○国立成育医療研究センター北澤理事
 御質問ありがとうございます。光熱水量の件は、すみません、少し説明を飛ばしましたが、41ページを御覧ください。少し見づらいのですが、右下に、光熱水量の金額ベースで、2021年度~2023年度まで数字をお示ししております。2022年度はかなり大きく上がりましたが、2023年度には、使用量をかなり節減したというのもありますが、2022年度に比べれば少し落ち着いてきたのは事実かと思います。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 医薬品等の価格交渉により材料費の削減を図ってまいりましたが、実際に病院で、例えば、子供に使う抗生物質の入手がなかなか困難であったり、また特に、当センターでは免疫抑制剤、あるいは、がんのお子様が多いので、抗ウイルス剤が手に入らなかったり、なかなか厳しい状況が現在まで続いております。それをもって、では手持ちの薬の内部保有をしておくことがいいのかどうか、これはまた少し皆様で議論が必要なところだと思うのですが、現状では、需要と供給に若干のアンバランスがあるのは御指摘のとおりだと思います。以上です。
 
○土岐部会長
 よろしいですか。ありがとうございます。根岸委員、どうぞ。
 
○根岸委員
 根岸です。御説明ありがとうございます。2点、質問をさせていただきます。まず、42ページの所で医師の働き方改革の御説明がありましたが、医師が今までしていた事務作業、その部分を、むしろ、タスクシフトやシェアするのがもっと早くできなかったのかなと思うぐらいです。ここのところ、私が一患者として医療機関を訪れると、先生方が今までずっとパソコンに向かっていた。ところが、その横に入力作業をする方がいらして、そして先生が今までやってらした入力を分担してやって、そのことが結局患者のほうに、しっかり先生が向き合ってくださっているという印象を私は受けました。ということは、この働き方改革というのは、医師の時間外労働を抑えてということが直接の目的かとは思いますが、単に時間的な量の評価だけではなく、そのことが、例えば医師ももちろん含めて、質的にどのようなメリットがあるのか、そこにはやはり患者さんに対する医療の質の向上に向かえばいいと思うのですが、是非評価をするときに、時間がどれぐらい減ったとか、これはもちろん大事なので、そこを否定するつもりは毛頭ないのですが、それプラスやはり質の面で医師、患者、家族に対して、どのようなメリットが生じたのかということも評価の中に入れていただきたいというのが1つです。質問というよりも、私が今考えていることです。先生のほうから、もし何か考えていることがありましたらお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 ありがとうございます。先生がおっしゃるとおりだと思います。時間外を減らすこと、あるいは超過勤務を減らすことが目的ではなく、それにより医師の働き方を改革することによって、より患者さんと向き合う時間を増やす、より丁寧な診療をする、これが最終目標だと思っておりますので、鋭意、それに向けて成育医療研究センターが一丸となって邁進してまいりたいと思います。御指摘、大変ありがとうございます。
 
○根岸委員
 ありがとうございます。もちろん先生方のモチベーションも向上するということの評価も一緒にしていただきたいと思います。それともう1点ですが、49ページの「女性の健康」ナショナルセンターの所ですが、これは対象が女性になるのかしらと思うのですね。というのは、体だけではなく、やはり心のケアという部分がここに入っているようですが、そうすると、女性のライフステージの中で、心のケアというと、やはりそこに男性に役割として期待されることや、男性の課題というのも出てくるように思われるのですが、その辺りはいかがでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 委員のおっしゃるとおりかと思います。ひとまず女性の健康をセンターのほうで、性差医療と、女性が様々なライフステージで抱える問題点をバイオサイコソーシャルにデータを集めて、情報発信をしていく、そういったことがまず求められていることかなと思います。当然そこにはジェンダーの問題、あるいは男性の役割等を、今まで比較的表に出なかったような課題が、この「女性の健康」ナショナルセンターの事業を推進していく上で必ず挙がってくると思いますので、精神科の先生、あるいは心を診る先生、医師だけではなくほかの職種も交えて、手前どもでしっかりしたプラットフォームを作ってまいりたいと思います。どうもありがとうございます。
 
○根岸委員
 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
○深見委員
 深見です。関連質問なのですけれども。「女性の健康」ナショナルセンターを、なぜこの成育医療センターで立ち上げたのか、少し何か違和感を感じるのですが、その辺の立ち上げた経緯というところをお話していただけたら有り難いのですが。
 
○国立成育医療研究センター北澤理事
 まず、成育医療研究センターから御説明させていただきます。先ほど、冒頭に御説明させていただきましたが、昨年の6月にいわゆる政府全体の骨太の方針、それからこども未来戦略、政府方針として女性の健康支援をきちんと行う必要があるのではないか。加えて昨年6月のいわゆる女性版骨太の方針という中でも、女性の活躍、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現という観点から、生涯にわたる健康への支援といった項目の中で、「女性の健康」ナショナルセンターの創設が打ち出されました。その中で、性差も含めて包括的な観点で健康の増進を支援することが重要というところから、国立成育医療研究センターに、この女性の健康に関するナショナルセンターとしての機能を持たせると。また全国の研究機関等の支援として、我が国の女性の健康に関する研究の司令塔機能を構築する。こういったことを厚生労働省とこども家庭庁が担当省としてお示しされたことを受けまして、成育医療研究センターとしては、その実現に向けて、今、検討をしているところです。
 
○深見委員
 はい、分かりました。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。よろしいですか。私のほうから1点。多分前にも質問したような気がするのですが、看護師さんの離職率が、今年も少しですが悪化しておりまして、もともと目標値の14.5というのは少し高いのではないかなという気もしているのですが、それはしょうがないのですが。大学病院などでは、医者の数より看護師さんの数のほうが診療規模を決めていくところがありますので、実際に診療に支障がない十分な数が確保できているのかどうか、その辺りだけコメントをもし頂けましたら。もし、対策も考えておられましたらお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター笠原病院長
 Webで看護部長がいますので、看護部長から説明をさせていただきたいと思います。
 
○国立成育医療研究センター嶋田看護部長
 皆さんこんにちは、看護部長の嶋田でございます。看護部のほうから説明させていただきます。離職に関しましては、この15.8という数字は少し高かったのですが、ほとんど、53%が他施設の就職でした。その中でも、新人看護師は一桁の7、8%なのですが、離職した中でも1年目から3年生までが43%を占めております。それは今後のキャリアアップのためにほかの施設に就職したいという理由が一つありまして、当院は北海道から沖縄まで職員が就職してまいりますので、女性が圧倒的に多く、結婚して夫の転居により辞めていく者、また出産を理由に辞めていく者も少なくはありません。これに関しては、各病棟が離職防止に向けて働きやすい環境作りという点で、前期と後期と発表会をしまして、各病棟の取組を共有しているところではあります。
 データの数字に関しては3つの数字の出し方がありまして、旧国立病院(NHO・NC・ハンセン)が出している離職の数字、看護協会が出している数字、そして一般企業が出している数字と3つの計算方法があります。その計算方法の中で一番高い数字をこれは示しております。一般に日本看護協会の数字ですと、東京都の令和5年度の離職率は15.3となっております。成育は、その看護協会の数字で表わしますと14.8となります。そういった観点からは東京にある病院においては、それほど群を抜いているとは認識しておりません。しかしながら、1年目から3年目までが43%というのは真摯に受け止め、各病棟が取組を継続して、働きやすい環境を作るところでは一丸となって取り組んでおります。
 かたや、離職に関しては弁護士を雇って退職をする、親が出てくる、また退職業者を雇って退職するなどの社会風土もありますので、離職に関しては、今後慎重に取り組んでまいりたいと思っております。以上です。今後とも御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。地方ではよく看護師さんが足りなくて病棟を閉めるとかがありますが、そういう業務縮小には至っていないという認識でよろしいでしょうか。そこだけ、追加でもしよろしければ。
 
○国立成育医療研究センター嶋田看護部長
 そうですね。この度、能登半島地震におきましても看護師を派遣してまいりましたので、そういう意味では、業務を縮小、又は病棟を閉鎖してということには至っておりません。そのようにならないように看護師確保に努めてまいりたいと思います。
 
○土岐部会長
 ありがとうございました。そのほか、御質問はよろしいでしょうか。追加の御質問等がありましたら、今頂戴したいと思いますが。なければよろしいでしょうか。
 それでは、最後に法人理事長と法人監事のほうから御意見を頂戴したいと思います。まずは、法人の監事様より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明をいただきたいと思います。
 
○国立成育医療研究センター西田監事
 監事の西田です。よろしくお願いいたします。まず、令和5年度の監事監査の結果については、お手元の資料2-4にあるとおり、当センターは適切に運営され、また財務諸表等の開示書類について適切な開示が行われていると認めております。令和5年度のセンターの研究・臨床等における実績は、本日御説明させていただいたもの、それ以外の活動も含めまして、適切に成果を上げているものと評価しております。当センターの子供や出産に関わる方、特に女性の健康を身体的・心理的・社会的観点で多面的に支援しておりますので、そういった面でも評価しているところでございます。
 一方、財務に関しては、残念ながら平成27年度来の経常損失の計上となり、また第3期中長期目標期間の累計において損失となっておりますが、想定を上回る出生数の落ち込みやそれに伴う少子化の進展など、また高額医薬品等の増加傾向などの中で、外部環境はセンターにとって厳しい状況です。そのような中で、働き方改革などをしっかり対応をしてきておりますし、経営的な改善活動の成果は上がってきていると見ております。
 令和6年度からは、いわゆる「女性の健康」ナショナルセンターの機能も担うこととなり、センターにとって新たな分野での成果を求められることになりますので、我々は健全な組織運営とともに研究・臨床の成果と、財務的基盤の確保の両面で中長期計画が達成できるよう、監事として注視していきたいと考えております。以上です。ありがとうございます。
 
○土岐部会長
 ありがとうございます。それでは続きまして、法人理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題・方針等について、コメントを頂戴できたらと思います。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 本日は貴重な御意見、御質問を頂きました。本当にありがとうございました。少子化という極めて大きな流れの中で、いかに私どもが日本の中で、あるいは世界の中で、小児、周産期、そしてこれからは女性の健康の医療ということで活動するかということが大きな課題になっております。特に出産に関しましては、例えば東京で最も多い出産数を誇っていた病院で、年間2,800出産あったところが、昨年は2,300に減るなどの状況になっております。私どもは、どんなお母さんになる方であっても、合併症があったとしても、お子さんとお母さんを全面的に支援する状況を作るために努力したいと考えております。
 疾病の研究や均てん化も非常に重要なことです。確かに遺伝子治療や再生医療などの大変お金のかかる治療法が、これからどんどん進んでくると思います。海外で作られた高額の医療製品を輸入して日本でそれを使用することが難しい状況になってくると思います。御存じのように、ゾルゲンスマという薬は脊髄性筋萎縮症の薬ですが、1回当たり1億7,000万円の治療費がかかります。それから、これから導入が検討されているアドレノロイコジストロフィーに対する遺伝子治療薬は4億円か5億円と予想されています。こういう中で、国産の技術で、そして国産の製品を作っていくということがこれからしなくてはならない課題です。再生医療あるいは遺伝子治療に向けた治療等も、我々が努力して貢献したいと考えているところです。
 最後ですが、医療や保健において「バイオサイコソーシャル」という言葉がキーワードとして大事だと考えています。病気でないことが健康であるという時代ではもうありません。健康とは、身体・心理・社会的に、海外ではこれにスピリチュアルヘルスという言葉も入りますが、3つの観点でwell-beingな状況が重要と考えます。日本ではこうした考え方が長い間定着しておりませんでした。わが国の学校健診は、病気を早期発見するための世界一のシステムだと思います。しかしながら、子供たち一人一人の心理・社会的な問題を拾い上げるようなシステムにはなっておりません。ユニセフが数年前に、我が国の子供たちの健康状態を評価し、順位付けしました。わが国の子どもの身体的検討状態はOECD38か国中で1位でしたが、心理的な健康状態の評価は37位と評価されました。こうした評価結果はわが国にとって重要な課題ではないかと考えます。その改善に向けて努力しなくてはいけないと考えておれいます。本日は、いろいろと御指導いただきまして、ありがとうございました。これからも、御指導をどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
○土岐部会長
 どうもありがとうございました。以上で、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和5年度業務実績評価についての審議を終了いたします。どうもありがとうございました。
 では、事務局から、よろしくお願いいたします。
 
○西岡室長補佐
 事務局です。では、今後の流れについて委員の皆様方に御連絡申し上げます。本日御議論いただきました令和5年度業務実績評価につきましては、この後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえて大臣より評価を行い、法人に通知するとともに公表する流れとなっております。委員の皆様におかれましては、本日、会議冒頭にも御説明申し上げました評定記入用紙に必要事項を記入いただきたいと思いますが、8月2日に予定しておりますJHに関する業績もその中に加味していただきたく、また8月14日までに事務局宛に御送付いただけますようお願いいたします。
 なお、本評価部会は次は明日の7月23日14時から、国立がん研究センター及び国立長寿医療研究センターの評価に関する審議を予定しております。連日の審議となり恐縮ですが、よろしくお願いいたします。以上です。
 
○土岐部会長
 どうもありがとうございました。以上で終了いたします。