第13回労働基準関係法制研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和6年9月11日(水) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 共用第6会議室

議題

労働基準関係法制について

議事

議事内容
○荒木座長 定刻になりましたので、ただいまから、第13回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。
 構成員の先生方におかれましては御多忙のところ御参加いただきありがとうございます。本日も、会場参加とオンライン参加の双方の形式で実施いたします。
 本日は、島田先生が御欠席、石﨑先生、水島先生がオンラインでの御参加ということになります。
 カメラ撮りはここまでということでお願いします。
 議事に入ります。
 本日は、労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇について、これまでの議論を踏まえた検討ができればと考えております。
 まず資料1について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 それでは、資料1を御覧ください。
 資料の構成につきましては、前回の研究会で御覧いただいた3点の論点と同じように、問題の所在について、これまでもお示ししてきたものを書いた上で、労働時間に関して、前回第10回、第11回の議論で先生方からいただいた御発言等をまとめたものとなってございます。ブロックは全部で3つに分かれております。最長労働時間規制という部分と労働からの解放の規制という部分、そして割増賃金規制というブロックに分かれています。
まず、2ページを御覧ください。最長労働時間規制の1つ目でございますが、時間外休日労働の上限規制や、法定労働時間週44時間の特例措置に関する部分ということでございます。
 上の箱の問題の所在のところに関しては、これまでお示ししてきたものとなっております。第10回、第11回の議論の中でございますが、まず上限規制に関しましていただいた御意見といたしまして、上限規制について特別条項に係る上限というものを今の原則の上限、月45時間・年360時間でございますが、そこに近づけていくことが必要であるというような御意見。
 また、36協定が法的には免罰効や強行性解除効を持つもので、事業場の残業時間の天井を決めるという話になっていますが、それと個々人が働ける時間というものはまた違ってくるので、そこに関してどう考えるのかというような点、このようなところで御議論をいただいていたかと思っております。
 その下、週44時間の特例に関しましては、基本的に原則である週40時間に直していくべきという御意見をいただいておりまして、各業種どう考えるかというのは引き続き調整が必要ということであったかと思います。
 3ページ目でございます。企業による労働時間の情報開示についてでございます。これは企業外部への情報開示と内部への情報開示に分かれていたかと思います。まず、企業外部への情報開示につきましては、これまでも幾つかの法律で情報開示の仕組みというものを求めているということ。この人手不足の時代で人を雇っていくために、また離職を抑制するために労働時間の短縮というものは重要な課題になるということで、そういった情報公開の義務化ということで、企業間競争を通じた労働条件の改善ができるのではないかという御意見。また一方で、制度が複数の法律にまたがっているということもあって、もし求めるのであれば、制度の簡素化や整理というものが必要ではなかろうか。その際、所管部局が異なっているということもありまして調整が必要ではなかろうか。そのように御議論をいただいていたかと思っております。
 続いて企業内部への情報開示について、これまでの御議論の中で3つ方法論として出て、考え方の例をお示ししていたところでありますが、まず、衛生委員会といった労使の会議体への情報開示については非常に重要なものである。こういったところに対する情報開示をしっかりやっていくということと、加えて、36協定を締結する過半数代表者にもしっかり情報開示してもらうべきではないかというような御意見があったかと思っております。
 続いて管理職への情報開示ということに関して、これもやること自体の意義については御異論がなかったところかと思いますが、労働基準法の構造上、管理職というものが労働者でもあり、また一方で使用者として振る舞うケースもある。こういった情報開示をしていくに当たっての管理職というものがどのように動くかということを考えると、企業内のガバナンス規律のようなものになるのではないか。それは現在の労働基準法の中には入っていないので、どのように考えていくかというような御議論があったかと思っております。
 それから、本人に対する情報開示ということに関しては、本人に対して情報開示して行動変容を促すということは、働き方に裁量のある労働者ぐらいにしか効果がないのではないか。そういったことをどう考えるのかということが提示されていたかと思っております。
 続いて4ページでございます。実労働時間規制が適用されない労働者に対する措置ということで、これは具体的には管理監督者に対する健康確保措置という部分になります。高度プロフェッショナル制度で敷かれているような健康確保措置というものは管理監督者にはないということに対してどのように考えるのか、何らかの措置が必要ではないかというようなことを御議論いただいていたかと思っております。
 その下、テレワークでございます。テレワーク時の労働時間管理についての御議論でございますが、まず前半部分、いわゆる部分フレックス制度の導入等のフレックス制度の見直しという部分に関しましては、これはテレワークに限らず、部分フレックスを認める等の改正をして、よりフレックス制度を使いやすくするという方向がよいのではないかという御意見をいただいていたかと思います。
 また、テレワークの際のみなし労働時間制という部分に関しましては、みなし労働時間制にすることでプライベートの時間をより自由に使えるという御意見もあれば、一方で、長時間労働の懸念という観点から、みなし労働時間制は難しいのではないかという双方の御意見があったかと思います。こういったことを踏まえて、今回の御議論をいただければと思っております。
 5ページでございます。「労働からの解放の規制について」という2ブロック目でございます。問題の所在については、前回までにお示ししてきたものと基本的には同じでございます。
 まず下側、休日制度でございます。休日に関しましては法適用をどうするかという部分で、まず4週4休というものは健康確保の点から見直しをすべきであろうということ。その見直しの方向性について、13日を超える連続勤務ということに関しては、疲労回復がかなり難しくなってくるということも相まって、何らかの規制が必要ではないか、そういった御議論をいただいていたかと思います。
 続いて6ページでございます。法定休日に関しまして、休日を事前に特定しておく制度とするかどうかということに関して、法定休日の特定は労働者の私的生活の尊重や生活リズムの確保という点からも必要ではなかろうかという御議論があったかと思います。
 ただその際には、どのように特定する必要があるのかということですとか、罰則のかかり方が現行法と変わってくるのではないかということ、あるいは4週4休の削除と相まって、振替休日等々どのように処理していくのかという技術的な問題があるというようなことも御発言でいただいていたかと思っております。
 7ページでございます。勤務間インターバルに関しては、ぜひ進めていくべきであるということでありますが、代替措置とか例外措置といったような段階的な導入をどのような形でしていくのかということが重要であるという御議論をいただいていたかと思っております。
 現在の導入割合6%ということで、ポテンシャルとしては、導入していない企業でも導入できるところはあるのではないかというご意見もありましたけれども、そこをどのように具体化していくのか、努力義務を具体化するのか、それとも何らかの規制を入れるのか、そういったことを御議論をいただいていたかと思っております。ここに関しましては、本日も具体的にどのような形がよいのかということの御議論をいただければと思っております。
 その下の箱、つながらない権利でございます。つながらない権利に関しては、労働のON/OFFということで、OFFの時間をどうするかという論点であったかと思いますが、OFFの時間に関しては基本的に使用者が介入しないということで、介入した瞬間にそこはONの時間になるということで、そのOFFの時間を労働法で労働者の権利として構成するということには違和感があるというような御発言があったかと思っております。
 また、諸外国の例を見ても、フランス等で先進的な事例はあるけれども、非常に多様な状況になっていて、これは労使できちんと協議をするということが重要なのではないかというような御発言をいただいていたかと思っております。
 8ページ目でございます。年次有給休暇制度に関してでございます。前回の御議論では、まず1つ大きなブロックとして、企業による時季指定義務の5日に関する御議論があったかと思っております。この5日をどうするかというところでありますが、1日単位の取得が原則という本来の趣旨を考えると、上限日数の拡大というのはなかなか厳しいのではないか。また、一方で、ヨーロッパのように計画的に年休を取らせる趣旨ということで、年次有給休暇の計画的付与が導入されたということもあって、この計画的に取らせるということをしっかり進めていく必要があるのではないかという両様の御意見をいただいていたところかと思っております。
 また、時間単位年休に関しましては、年5日の上限ということに関して、これも拡大に踏み切るのはなかなか難しいのではないかというような御発言があったかと思っております。
 一方で、下のほうに書いておりますけれども、年度途中の育休復帰の方ですとか退職労働者の方、こういった方々に対する時季指定義務5日の付与義務に関しましては、労働日がそもそも少ないということも含めて何らか対応が必要なのではないかという御意見をいただきました。
 また、一番下でございますが、年休取得時の賃金支払いに関しまして、何で計算するかということで、現行法上、平均賃金か、通常の賃金か、健康保険上の標準報酬月額の30分の1と規定されていますが、これは計算式上、通常の賃金で支払う場合とそのほかの方法で支払う場合で金額にずれが生じるということもありまして、基本的には通常の賃金で支払うべきであるというような御議論をいただいていたかと思っております。
 9ページでございます。休憩に関してでございます。休憩につきましては、労働時間が8時間を超えて時間外労働が長くなる、時間外労働がさらに6時間や8時間を超えていく場合の論点と、そもそも所定の労働時間が6時間を下回っている場合、こういったときに休憩を付与するのかというところでありましたが、そういった部分に休憩を付与すると、かえって拘束時間が長くなるのではないか。そこに形式的に休憩を入れることに弊害があるのではないかというような御議論。
 また、短い労働時間の方で、昼休みがなくて昼食を取れないといったような具体的な問題もあるとは思うけれども、それは各企業の労働契約レベルで考えるということではなかろうか、そのような御発言がありました。
 また、下から2番目でございますけれども、非常に短い所定労働時間のケースで、非常に厳格に労働時間管理をされる場合に、生理現象であるトイレにも行けないということが現場で起きているケースもあるということで、そういった短時間の労働からのポーズというものに関してもどう考えるか、これは整理が必要ではないか、このような御議論をいただいていたところでございます。
 10ページ、大きな3つ目のブロック、割増賃金規制でございます。10ページ目に関しては、割増賃金の総論部分でございます。割増賃金に関しては、まず、時間外の割増賃金率に関して、今、25%、時間外労働が60時間を超えると50%というラインでございますけれども、これが国際水準からすると低いのではないか、また、均衡割増賃金率と比較しても低いのではないかというような御発言があったかと思っております。
 一方で、深夜割増に関しましては、裁量労働制ですとか高度プロフェッショナル制度、あるいは管理監督者といったような、労働時間、時間帯を自分で選べる労働者の方、こういった方々が自ら選んで深夜労働をしている場合にも割増賃金を支払う必要が本当にあるのかというような御議論をいただいていたと思います。
 また、この割増賃金に関しましては、経済的な概念との関係で、雇用保障とセットで割増賃金の運用が考えられてきたという我が国の経緯でございますとか、あるいは各企業の賃金原資ということで考えると、そこが一定である以上、割増賃金率を上下させても、その原資が増えるわけではないので、長期的には均衡してしまうのではないかといったような御指摘もいただいていたところかと思っております。
 11ページでございます。具体論の一つとしての副業・兼業の場合の割増賃金の通算でございます。こちらに関しましては、諸外国、特にヨーロッパでの状況を見ても、副業・兼業の場合に、割増賃金の観点で労働時間を通算している国はないのではないか。また、通常の労働時間に関しても半分の国では行っていないという実態があったということで、結論といたしましては、健康確保の観点からの通算というものは長時間労働の抑制ということで必要ではあろうけれども、割増賃金の観点からの通算というものは必要ではないのではないかというような御発言が多かったということかと考えております。
 また、下から2つ目のところですが、そうはいっても、副業・兼業と言いつつ、その2つの事業場が関係性がある場合、例えば出向関係にある企業で、出向先で働いて、かつ、出向元でも働くというケースでは、これはほぼ同一の使用者ということで通算が必要ではないかというような御指摘もいただいていたところかと考えております。
 以上、第10回、第11回でいただいていた御発言でございます。12ページ以降は参考資料でございます。説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
 それでは、今日は全体を4つぐらいに分けて議論したいと思います。第一の固まりが、最長労働時間規制で4ページまでのところです。それから、2番目に、休日制度、3番目に、そのほかの労働解放の規制であるインターバル、つながらない権利、年休、休憩、そして最後に割増賃金。この4つに分けて議論させていただければと思います。
 それでは、最初は資料の4ページのテレワーク等の柔軟な働き方まで、内容としては最長労働時間規制ですね。これについてどうぞ御自由に御発言いただければと思います。
 水町先生、お願いします。
○水町構成員 3ページの2つ目のポツと3つ目のポツのところで、健康確保のための上限時間、100時間、80時間というところと、あとはワークライフバランスの観点から、原則45時間、さらには残業のない働き方に向けて労働時間政策としてもどうするかというときの1つ重要な鍵になるのが、情報を外に開示する。特に残業時間を含む実労働時間とか、場合によっては休暇の取得日数も含めて外に開示する。これはいろんなところでこういう政策が取られていますが、少なくともここでは労働時間政策、ワークライフバランスと、さらには労働市場政策、特に就職したり転職しようという場合に、きちんとミスマッチが起きないように、こういう働き方をしたいということを外に見せるときの重要な基準になるのが労働時間の長さとか休暇の取りやすさになるので、これがまだ十分に開示されていなくて、学生とか、転職しようというときに、この会社に入ったらどれぐらい長い時間働かされるのか、休暇が取りやすいのか取りにくいのかというのが企業情報としても十分に、一部の企業では開示され始めていますが、それが全体として見えない状態になって、比較が難しい状態になっているので、そういう観点からも、きちんと残業時間を含む実労働時間などの開示を外にするということを政策として打ち出すべきかなと思います。
 どの法律で実施するかということもありますが、例えば先ほど言った求職者に対する円滑な労働移動を促すという観点からすれば、労働施策総合推進法の中途採用比率の開示というのとパラレルな関係でそこに位置付けるということもあるかと思います。他方では、情報を見たい人が見やすいというところもあるので、いろんな法律でばらばらに開示されているというのは政策としてあまり望ましいことではないと思いますが、その政策の趣旨・目的に沿ってそれぞれの法律の中で開示をし、場合によっては全体を見ながら、利用者の便に資するような整理をしていくということも将来的な課題になるかと思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。私も情報開示に関する点について2点ほど申し上げさせていただければと思います。
 今、御意見あったように、外部への情報開示が重要であるという認識は私も同じでありまして、この点、将来的にはやはり法律の中で改めてその時間外労働に関わる情報開示の規制を整備していくということが必要であるとは思っておりますけれども、その改正にいろいろと時間がかかる可能性があるとしても、現行の、既に開示されている情報のもう少し検索性を高めるとかそういった対応というのは、法改正等をしなくても対応が可能なことではないかと思いますので、改めて、そういった意味で、今既に、「両立支援のひろば」だったり女性活躍推進データベースとか、いろいろなところで開示されているとは思うのですけれども、その開示項目で一覧検索みたいなことができるとか、そういった形での対応というのを、別途、もしかすると予算等必要になるかもしれませんが、御検討いただけたらと思いますというのが1点目です。
 2点目は、このポツの6つ目で、企業内部への情報開示に関する意見、こちら、私、以前申し上げさせていただいたところかと思いますが、その中で過半数代表者についても開示が必要だというところがあるのですが、こちら、当時どういった形で意見を申し上げたか、すみません、確認してきていないのですが、過半数代表者だけではなくて、やはり過半数労働組合にもということで、過半数代表に対して開示をすべきであるというところを確認いただけるといいのかなと思っているところであります。もちろん、組合は団体交渉等で要求するということは可能ではあるのですが、労使協定の締結に当たって、やはり必要な情報開示をするということとの関係では、代表者か組合かということで違いはないかと思いますので、どういうところで規定していくのかというのはいろいろ可能性はあるかと思いますが、御検討いただければと思います。
 差し当たりは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
 首藤先生。
○首藤構成員 私からも2点。まず2ページ目の最長労働時間の規制のところですけれども、冒頭に書かれているとおり、特別条項に係る上限を原則的な上限に近づけていくことが必要というのは私も同意をするところです。先ほど水町先生が健康確保としての上限とワークライフバランスの点を整理されましたけれども、まず、健康確保の点の最長労働時間規制について申し上げると、やはり例外的に上限が引き上げられている業種について健康確保が十分になされていないような実態があると思いますので、ここは見直しを含めて検討をぜひお願いしたいと思っております。
 合理的な根拠を持って例外規定が設けられたというよりは、実態に基づいて例外に位置づけられていると思うのですけれども、その長時間労働の実態は、法令が例外であるから起きているということで相互に関係していますので、その辺を留意していただきたいなと思っているのが1点目です。
 もう一点は、今ありました情報開示の点で、水町先生、石﨑先生の御意見に私も賛同します。とくに企業内部の情報開示についてです。今、石﨑先生からご指摘のありました、過半数代表者のみならず、過半数労働組合にもというのは私もそうだと思っておりまして、その理由なのですけれども、労使協定の締結の際にそういった情報が必要だということも確かにそうですけれども、締結した後にその協定が守られているのかどうかをチェックする機能のためにもあるかなと思っております。
 前回の議論の中で過半数代表の役割を整理するという話がありましたが、そこに、このチェック機能をもし加えるのであれば、なおさらその情報がなければ、誰が何時間働いているのかとか、特別条項を超えて働いている人がいるのかいないのかというところを含めて情報が開示されなければ、チェック機能が働かないだろうと思っております。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。水島でございます。情報開示と、③管理監督者について、意見を述べさせていただきます。
 企業外部への情報開示は求職者の就職先選定に重要であると私も思いますが、必須項目として義務づけるよりは、実質的な開示を推奨するほうが早期の対応が可能であると思います。
 ③管理監督者については、行政解釈や裁判例と、実態の乖離がいまだ存在しているのではないかという疑問があります。行政解釈や裁判例の基準を踏まえるならば、特段、規制等を変更する必要はないと考えますが、しかし、実態との乖離があるのであろうという点に鑑みると、中長期的には、この管理監督者の範囲の見直しの検討と同時に、年収規制等の実体規制を強めることが必要ではないかと考えます。つまり、労働基準法上の規制に関する検討が必要という意見です。
 第41条第2号の機密事務取扱者については、私が不勉強なだけかもしれませんが、事案や議論がほとんどない状況のように思います。機密事務取扱者についても、議論の俎上に一旦は載せる必要があると考えます。
 前回までの議論で委員から御指摘があったように、管理監督者の意味づけを再認識した上での規制の見直しと考えます。したがいまして、すぐに見直すものではなくて、中長期的、どちらかといえば長期的な検討課題と私自身は整理しております。
 以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 安藤先生。
○安藤構成員 2ページにある時間外・休日労働の上限規制のところで、私はこれまで、少しマイルドな手法として、多様な正社員の議論のように、契約で対応するという形のほうが現実的かなという話をしてきました。現状、今とても人手不足ですので、条件が悪い仕事には人が集まらず、出ていってしまうというメカニズムが非常に効くようになってきております。
 ただ、それが機能するためには、これまで委員の先生方からあったように、やはり情報が表に出ていて、比較可能性が高いということが必要かと思います。そのために情報提供を義務づける、又は、水島先生からあったように、効果的に早く実施するという観点からは、まずは企業の独自の取組に任せる。実効性がある形でそれを実現するための手段としては幾つかあり得るとは思いますが、これをやることがまず重要かと思っております。
 その際に、やはり時間外労働についての契約がどうなっているのか、又は実態がどうなっているのか公表を求めるということが大事だと思いますが、その際に、例えば時間外労働の平均の数字だけでいいのかといったところも気になっております。一部の労働者は全くやらず、一部の労働者が非常に長い時間外労働をやっていたとして、平均の数字だとあまり長く見えないということだと、実態がよく見えないということにもなりかねない。よって、これを義務づけるのはなかなか難しいかもしれませんが、例えば何時間以上時間外労働する人が何%いますみたいな形で出すことができないでしょうか。正直に実態を出したほうが企業としても労働者が安心して入ってきてくれるということにつながるのかなと思いますので、情報提供が積極的に行われるようになるといいかと感じております。
 例えば企業によっては、希望しない人、事情がある人に対し時間外労働を命じないということを売りにするような会社が出てきてもいいと思いますが、そういう際には、先ほどの問題ですね、平均の数字は短めになるけれども一部の人は多く引き受けている、こういうことになりかねないよということが気になっているというお話をしました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 黒田先生。
○黒田構成員 今の安藤先生のお話は本当に同意でして、産業医として社内で社員の労働時間を確認していると、平均労働時間や平均残業時間はさほど多くないけれども、極端に長時間労働している人がいた場合はその点はちょっと把握ができないので、会社によっては、先月の最長時間はこれぐらいでというふうな、実労働時間の分布をバーで示して検討していくということをやっている場合もあります。
 あとは、やはり職位ですとか、管理監督者か否かで、労働時間や、管理監督者は残業規制がないかもしれませんが健康管理時間は把握できるので、それらを階層に応じて表示をしていくというのは、これは法で縛るのは難しいと思いますけれども、そういう対策を積極的に国としては推奨していますというような形で示すというのは非常に有効だと思いますし、ぜひ社外にも公開することを推奨していただければと思います。
 ただ、法律を犯すような現状があるというのはなかなか示しにくいと思うので、どういう形で示すのが良いかの実例検討も必要かと思います。例えば、実際には、「今月は月80時間超えの人が何人いました」といったデータはちょっと示しにくいと思うので、月60時間以上の人数を公開するなど、現実的に示せる範囲でのグッドプラクティスを示していくというのはすごくよい手段だと思っていまして、補足的に情報を提供させていただきました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 安藤先生。
○安藤構成員 今、黒田先生からあった管理監督者の労働時間というところにしわ寄せがいく可能性というのは私もすごい気になっていまして、最近、管理職になりたくないという若者が非常に増えているといったデータなどもあります。どこから来ているかというと、やはり管理職になっても何も報われないと、負担が増えるだけということです。新入社員などは、今、人手不足ということで初任給が上がっていて、場合によっては入社後2~3年目の人と逆転しているみたいなことがトラブル事案になっているといった話も聞きますが、いずれにせよ、若い労働者に対しては非常に丁重に扱っている一方、その仕事が少しでも大変だとなると管理職がまき取るといったような実態があり、中間管理職が疲弊しているといった話もよく聞くところであります。
 この中間管理職というものが本当に名ばかりではなく、管理職なのかというところが怪しいなと思うところも多分にあるわけで、この辺り、管理職というものがどういう人なのかということをまずは明確にすること。また、仮に管理職として適正に認められる人であったとしても、労働時間がどうなっているのかといったことが社内にも社外にも見えるということがあると、管理職についても適正に扱わないと、そもそも管理職になってくれる人がいないよという実態になって、企業自体が困るということで、管理職になったらもう経営者側で、こちらの仲間なのだからどう使ってもいいと思うのではなく、管理職にも正当な扱いをしないとなり手がいないよといった実態をもう少し表に出していくということが大事かなと感じております。
 また、最近ニュースで見た話ではありますが、例えば会社の中で立て替えた経費かなんかの精算が遅いということで、個々で一生懸命、もっと早くやってくれと言ってもだめで、部署ごとに平均で何日間処理にかかったかみたいなことを公表したらみんな真面目にやるようになったみたいな話を聞いたりします。この時間外労働を減らせ減らせと言うだけではなく、部署ごとに、前年比どのぐらいなのか、ほかの部署と比べてどうなのかということをみんなに見えるような形にすることで、必ずしも長く働いていることは企業に対する忠誠心を示すものではなく、効率的に働いているということのシグナルとして機能するように、お互いが見えるようになっていくといったことも効果的かもしれないと感じているところであります。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。最長労働時間、実労働時間規制の関係で、4ページがテレワークなのですが、テレワークについても少し議論をさらに深めていただけるとありがたいと思っておりますけれども、いかがでしょうか。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
 テレワークに特化した形でのみなし制、正確には在宅勤務ということになるかと思いますが、在宅勤務の際のみなし制の創設ということに関して、私自身は賛成という立場でこれまで意見を申し上げてきたかと思います。
これに対して、このみなし制の適用による濫用への懸念に係る御意見も出されているというところと認識しております。そうした濫用のおそれというところへの対処というのはもちろん必要になってくるかと思いますし、なぜそもそもこうしたみなし制が必要かというところで言いますと、それは、テレワーク、特に在宅勤務の中で、家庭生活ないし私生活上の理由によって、その私生活と仕事が混在したり、あるいは中抜け時間等が途中で細々生じ得るというような働き方をされ、かつ、それを望まれるようなケースの中で、厳密な意味での実労働時間管理になじまない、それがふさわしくないような状況があるからではないかというところでありますので、そうした趣旨に沿う形での運用というものをしていく必要というのはもちろんあるのかなと思っています。
 こうした制度を入れていくに当たっては、やはり導入に当たって労使協定の締結を必要とすることに加えて、これも以前も申し上げましたけれども、個々の労働者の個別同意で、シチュエーションによって撤回可能な状況の個別同意を要件と付すこと。あるいは、そうした私生活上の時間が入りながらまた仕事していくということになると、実は労働時間だけに限らず、やはり健康リスクというものも生じてくるおそれも場合によってはあったりするので、そうしたところの健康確認といいますか、そういった確保のための対応みたいなものも労使協定の中に盛り込むような形で入れたり、あるいは、いわゆるつながらない権利と称されたりしますけれども、在宅中どれぐらい使用者のほうから業務指示が飛ぶのか、どういう時間帯に飛ぶのかとか、そういった辺りについても協議事項としていきながら、適切なテレワークの運用を促していくという方向性が考えられるのではないかという気がしているところであります。
 また、そうしたテレワーク、このみなし制適用のもとでのテレワーク実施状況について、場合によっては厚生労働省のほうに報告を上げていただくとか、そうした形をしながら、望ましい形でのテレワークの推進を図りつつ、このみなし制を入れていくということが必要ではないかと考えているところです。
 濫用のおそれということはもちろんあるのですが、しかし、残念ながら濫用のリスクということで言うと、この制度を入れる入れないにかかわらず、事業場外みなし制があるもとでは、そちらのほうでの濫用のリスクというのは残りますので、そうした意味でも、より望ましい形に誘導していくという意味でのそうしたみなし制の創設というのは検討してもよいのではないかと考えているところであります。
 もちろん、現在のテレワークガイドラインで対応可能な部分というのはあるとは思うのですが、ただ、そうした形でガイドラインで基礎づけるというよりは、きちんと法制度上位置付けたほうがいいのではないかというのが私自身の考えであります。
 以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 水町先生。
○水町構成員 今、石﨑さんのおっしゃったことについて私はやや異論があるのですが、場所を問わない働き方がこれから大きく増えていく中で、在宅かどうかという、場所を決めた新しい制度をつくることに対する、会社にいても、どこにいても、家にいても同じような働き方ができる、働かせ方ができるようになる中で、家にいたらみなし制で、実労働時間管理しなくていいよという話になることの、これからの将来に対する違和感。むしろ在宅かどうかという場所よりも、自由な働き方をしているというその自由度の高い働き方、場合によっては労働時間の配分も自分で選択できるというその自由な働き方に対してどういう制度をつくっていくかということが大切。
 ただ、自由な選択ができるときに、濫用的というか、過重労働とか健康被害に対する抑止が働くかというと、みなし制にしてしまうと、100時間、80時間という上限時間も事実上みなし時間によって外れてしまうので、そのリスクをどうするか。そして、今、事業場外労働のみなし制があるからと言いますが、事業場外労働のみなし制を無制限に広げていくのではなくて、現在の実態に合う形できちんと適用とか運用の規制をしていくことのほうがむしろ大切なので、在宅勤務だから、新しく実労働時間管理を外すみなし制を導入するということに対しては強い懸念を感じざるを得ません。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
 黒田先生。
○黒田構成員 議論の1周目と2周目の間で私は意見が変わったのですが、議論1週目では、在宅勤務の際のみなし制の創設の必要性の基礎的な考え方として、仕事と私生活の混在を認めるという意味で、みなし労働という考え方は、それはそれで妥当かなと思ったのです。コールセンターなどの労働時間がきっちり管理されるもの以外に関しては、在宅勤務においてはある程度の裁量があるということで。
 ただし、結局はどの制度でも健康管理時間を把握することになりますし、テレワーク、在宅勤務ですかね、に特化したみなし制というものに、そこまで結局企業側も労働者側もあまりメリットを見出せないのではないかなと感じております。それよりは勤務実態で、お互いの信頼関係が重要ということになるとは思うのですが、きちんと中抜け時間などを報告して実労働管理をするという、そうすると健康管理時間も同時に把握されることになりますけれども、というほうが実態に合っているのではないか、あとは部分フレックスというものを認めていくほうが実態に合っているのではないか、健康管理ということも含めると実効性があるのではないか、と考えています。
 以上です。
○荒木座長 水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
 テレワークの在宅勤務に関する石﨑先生、水町先生の御発言に関連してですが、私は石﨑先生と恐らくほとんど同じ立場でして、在宅勤務に限ることにこだわります。今、黒田先生もおっしゃっていましたが、私生活との混在、それから自宅という場に。私は理由付けを置いていますので、これには意味があると考えます。
 自由な働き方が今後増える、コンピュータ1つあればどこでも働けるというイメージは私も共有しますが、そうした働き方には限界があるのではないかと思います。それは労働時間の観点ではなく、情報セキュリティの観点からです。コンピュータには多数の情報があります。例えばカフェでテレワークで働いている人が、コンピュータを置いたままトイレに行くのは非常に危険です。また、カフェでの仕事中に隣りの座席にいる人にコンピュータの画面を覗かれてしまう。このような危ない働き方をしている方が実際いらっしゃいます。今はそのような働き方を会社が認めているのかもしれませんが、情報セキュリティ的には非常に危険な働き方であって、いずれこうした働き方に関して企業が規制をかけるのではないかと思います。
 ちょっと本題から外れましたが、意見は以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。水町先生から御指摘いただいた2点について、一言だけ、それぞれコメントさせていただければと思います。
 今後いろいろと自由な働き方が広がっていった際の労働時間法制の在り方というのは、かなりまた将来的な課題としてあるのではないかとは思ってはおります。ただ、他方で、先ほど水島先生からも御意見ありましたけれども、現在生じている私生活の混在というところの対応を何もしなくてよいかというところでは、私は必要ではないかということを考えているというのがまず1点と、それから、やはりみなし制のもとでは健康確保ができないのではないかというところ。それはみなし制のもとでそうしたちゃんと適切な健康管理等がなされず長時間労働になってしまっているという実態もあるというところでの恐らく御指摘だと思いますし、そうした実態については私自身も同様に問題があると考えているのですけれども、その問題というのは、みなし制自体、イコールそれ自体悪というよりは、みなし制のもとで、かつ、例えば健康管理時間の把握等、そういった形で必要な対応を取っていくべき問題なのではないかと考えているところになります。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 安藤先生。
○安藤構成員 4ページ目の一番下の記述なのですが、テレワークのみなし労働時間制を仮に入れたとして、本人が同意を撤回した場合に厳格な実労働時間の把握に戻るといったところ、これが重要なのかなと個人的には考えております。特に考えないといけないのは、厳格な実労働時間の把握といったときに、それをどこまで何をやっていいのか。みなし制にしなければプライバシーが守られないというものではなく、まずベースとして厳格な実労働時間をやるとしても、どこまで何をやっていいのかを明確にした上で、そちらをベースとしておいて、しかし、みなし労働時間制も用意しておく。労働者本人が望んだらみなし制にすることもできるし、本人が、これだとちょっと自分の健康管理が守れないなと思う人は実労働時間に戻れるといったときの、その戻る先の厳格な実労働時間の把握というものがある程度以上のクオリティのものであることが、安心して実労働時間に戻れるという話で、かえってみなし労働時間制のほうの安全性を高めるといった構造になっているかと思います。したがって、みなし制を入れることを仮に議論したとしても、その裏側にこの厳格な実労働時間の把握といったもの、これ自体、今、技術的には、以前も紹介したかもしれませんが、非常に高頻度でスナップショット画面を撮ったり、パソコンのカメラ、キーがどう動いているのか、全部記録することができるし、何かの条件を満たしたときにはそれが上司に通知がいくといったことも技術的には十分可能ですが、どこまでそれをやっていいのかといったことを明確にするということも同時に必要かと思っています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 山川先生。
○山川構成員 ありがとうございます。
 私は、基本的には在宅勤務の、水島先生も言われていた私生活との混在状況への対応をするスキームはあったほうがいいのではないかと思います。ただ、その仕組み方をどうするかというのは労働時間の概念に関わるような気がしまして、今、要は中抜けがあっても問責しないということでやっていることが多いと思いますが、そういう現象をどう考えるかということに関わるものかと思います。
 そうすると、普通のみなし制とやはり違うので、それをそのまま持っていくのがいいかどうか。要は、中抜け時間が、通常の労働とは違うことであって、今、安藤先生の言われましたように、それを厳格な管理のできるような形にならないようにする形で中抜けを認める。要するに、もしそれが主要な問題であるとしたら、そういうものに特化したものとしての新たな仕組みをつくるということはあるかもしれません。
 ただ、その場合、現実の中抜けがどういう客観的な状況で、かつ、どういうものがベストな取扱いなのか、いろいろ実例も調べないとなかなか難しいところがあるので、方向性としてはそういうものがあったほうがいいと思いますが、直ちにというのはちょっと難しい側面があるかもしれないと思ったところです。労働とは何かということに要は関わってくる問題だと思いますので。
 次にほかの点もよろしいですか。
 細かい点ですが、管理監督者につきましては、これも水島先生が言われたように、現在の解釈ですと非常に分かりにくい点もありますし、また、いろんな新たな制度ができたにもかかわらず、従来の制度の解釈が残っているので、これは見直しを検討したほうがよろしいかと思います。
 もう一つは制度的な点で、やはり他の制度とのバランスとかいうものも考える必要があります。健康・福祉確保措置等がないということで、その場合も何の法律でやるかという点があって、安全衛生法で考えるのか、基準法で考えるのか。安全衛生法で考えると、労働時間の把握は管理職でも課されているのですが、それ以上の時間規制を安全衛生法で管理職について特にかけるというのは、これもある種アンバランスな感じがありまして、つまり、一般の労働者は基準法で規制をして、管理監督者に限って労働時間規制そのものを安全衛生法でかけるという理屈をどう立てるのか。安全衛生法には作業時間の規制もなくはないですけれども、その辺りの整理が必要で、他方で労働時間規制、労働基準法で考える場合には、裁量労働にしても高度プロフェッショナル制度にしても、協定とか労使委員会の決議が必要で、管理監督者に労使委員会の決議というのはどうもそぐわないような感じがするので、基準法でやる場合には健康・福祉確保のようなものをどうやって入れていくのか。
 裁量労働制等と同じである必要もないので、ある種の措置義務みたいなものを直接法律で定めて、具体的には指針か何かでということも考えられますけれども、どの法律で行うかというのは結構法制的にはややこしいかと思います。法制的な見直しをするとしたら、先ほどのアンバランスという観点からは、高度プロフェッショナル制度については深夜割増の規定が適用除外になっているのに管理職については適用除外になっていない。やはりちょっとアンバランスな気がするので、その辺りも見直しの対象に含められるかと思います。
 あと1点だけ、すみません。情報公表については、ごく現実的なものとしては、実質的には厚労省のウェブサイトが利用される可能性が高くて、私も、授業中に女性の活躍推進ウェブサイトを紹介すると、学生はみんな興味を持って見てくれて就職活動の参考にしてくれているので、そういう形で統一的なサイトをつくる。あるいは、それがコストがかかるのであれば、少なくとも提供する情報のフォーマットか何かを統一して、1つつくればそれがいろんなところへ活用できるとか、現下の対応としてはそういうごく身近な対応もあり得るのかなと思います。
○荒木座長 どうもありがとうございました。
 安藤先生。
○安藤構成員 今、山川先生がおっしゃった中抜けの件、私も、そもそもどこまでが労働で、どこまでが許されるタイプの中抜けかといったところを考えたときに、中抜けという言葉がいろんなものを含んでいるということが気になっておりました。在宅でのテレワークにおける中抜けの話をすると、いやいや、職場に居たって、トイレに自由に行ったり、コーヒーを飲んだり、減ったけれどもたばこ休憩している人もいるじゃないかといった話が出るわけですが、例えばこれが工場労働だったらどうかといったときに、自由に中抜けを許しているわけではないというのが一般的だと思います。
 というわけで、ホワイトカラーの労働者などで、トイレやコーヒーや、場合によってはたばこなどについてもある程度自由にしたほうが働きやすい、生産性が上がる、人を採りやすいといったことで、全体的に生産性にそれほど阻害要因ではないということを踏まえた上での、許される範囲でのある程度の冗長性といいますか、中抜けを認めてきたというのは多分にあるかと思います。
 これと、在宅でのテレワークを考えたときに行われる中抜けといったものが、例えば時間の長さであったり、そこで行われる行為の質であったりを考えたときに、例えば私もコロナで在宅勤務するときに、ちょうど子供が小さかったというのもあり、家で子供の面倒を見たりすると、結構まとめて時間を取られてしまうということも実際としてありました。それが職場の側としてもある程度見ない振りをしてくれていたのかもしれないのですが、いずれにせよ、その職場に出ていったときの時間の自由な使い方というものと、家にいて仕事をしたときの自由な使い方というものの質はかなり違うものがあるかなと思っております。というわけで、それはどちらも中抜けがあるのだから同じ扱いでいいではないかとは、なかなか言えないのではないかとも思っています。
 そう考えたときに、テレワークで、かつ在宅といったときに、この中抜けというものの質が幾つかあって、例えば別に子育ても介護もないのだけれども、働き方の希望としてテレワークを選んでいる場合に行われる中抜けというものと、介護や育児があってというものではまた違うのではないかということを考えた際に、そういう理由があっての、ある程度長時間の中抜けがある可能性がありますよということを込みでしっかり企業側もそれを把握し、どういうタイプの仕事をそういう人に振るのかということも含めて、労働者も納得のいく形で、場合によっては実労働時間の管理であったとしても、途中中抜けしたら、その分、ほかの時間働くことで補えばいいといったようなフレックスな形で、フレックスというのは、よくコアタイムがあって、それ以外の前後は自由なだけでなくて、労働時間の間にある程度中抜けの時間を挟んで、その分の時間をほかのところで補うといったようなものも含めて可能であったとするならば、実労働時間の把握という形でもある程度労働者のプライバシーも守られるのではないかと、それが常にカメラオンとかそういうものでなければといったことも含めてではありますが、ということで、この中抜けについては、その内容についてもう少し腑分けが必要かなと感じております。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。テレワークについて、現在、事業場外労働を使ったテレワークも可能だということがガイドラインでも書いてあるわけです。事業場外労働というのは労働時間の算定が困難であることが要件なのですが、テレワークの場合、常に使用者からアクセスは可能でありますけれども、使用者のほうからアクセスをしないということにしておければ事業場外労働制度も使えるという解釈がなされていのですけれども、それはそのような使い方でよいのか。
 実は事業場外労働制度には、制度自体に問題も含まれていますので、解釈上、算定しがたいとは言えないのではないかなどとなってきたときに、テレワークの受け皿としては、裁量労働の対象となる場合であれば別ですけれども、そうでなければ、実労働時間規制であるフレックスタイムが受け皿となる。フレックスタイムで相当対応できる場合はあるとは思うのですが、フレックスタイムは始終業時刻が選べますけれども、その時間は実労働時間を把握しますから、実労働していたのか、実労働していなかったのではないかがトラブルになってくると、本当に働いたことを証明しろとか、使用者のほうで、これは働いていなかったのだとか、いろんなことが問題となってくると、先ほどのように、実労働時間をどのように把握し判断するのかということになってくる。
 そうすると、結局、実労働時間規制であれば、実労働時間の把握義務があったり、正確な申告義務があったりする。そういう働き方としてテレワークを受け止めるということが、将来、テレワークが労使にとって望ましい働き方になるかどうか、これはいろいろな考慮が必要ではないかと思います。
 御指摘があったように、在宅においてテレワークに従事するということの特殊性はありますので、そのためにはどういう法的受け皿が望ましいのか、労使にとって望ましい働き方になるのかということを考えていく必要があると思いますが、日本では、コロナ禍によって突然、全国的にテレワークが実施されて、今はいわば試行錯誤の段階かもしれません。そういう中で、テレワークがどのように運用されていって、どういう課題があるかということも踏まえながら制度を考えていくということが必要かもしれませんので、今すぐやれることは何か、そして、もう少し中期的に制度をどう整えていくかという両にらみでこの制度問題を考えていくということもあり得るかもしれないと思ったところでした。
 それでは、長時間労働、実労働時間のところはこの程度にいたしまして、第二のブロックとして、5ページ、6ページの休日制度について御議論いただければと思います。どなたからでもよろしくお願いします。
 特に4週4休制という変形休日制のようなものがこのままでよいのかということについて種々議論いただいたかと思いますけれども、いかがでしょうか。
 山川先生。
○山川構成員 具体的な論点ではないのですが、ここで「労働からの解放の規制について」というのを特にアイテムとして取り上げていることの意味を一言だけコメントしますと、この間の働き方改革で労働時間の上限規制ができて、非常に重要な改正であったと思います。労働自体を規制するのと、労働をしていないということをどう確保するかというのはちょっと裏腹の問題ではあるように思うのですけれども、労働時間の、例えば長時間労働を規制するという側面と、それから、そのほかの労働から解放された時間を実質化するという側面はちょっと質が違うようなところがあると思っていまして、今回の研究会の意味は、今の後者の点、つまり、労働自体の規制に加ええて、労働からの解放された状態というものをどのように実質化していくかという点が大きなコンセプトとして全体を貫いている。その中で、さっきテレワークでもありましたように、個人の状況、あるいは都合と集団的な都合をどう調整するか、この2つが非常に大きなテーマになっているという気がいたしましたと、取りあえずそれだけ申し上げます。
○荒木座長 ありがとうございます。
 安藤先生。
○安藤構成員 ここのブロックの頭に書いてある労働からの解放といったときの労働って何かといったときに、今議論されているのは特定の使用者のもとでの労働から解放されるということを話しているのかなと感じています。例えば副業や兼業という形で、会社からもちゃんと認められた形で、週末などに個人事業主として何かの労働を行うということを考えたときに、そこについてトータルで見た労働時間は長いのかもしれないけれども、生活できるだけのお金は普段の雇用から得ていて、それ以外にやりたいことを別にやっているというようなケースであったとするとあまり問題がないのかなという気もしていて、あくまでここで労働からの解放と言われているのは、特定の使用者からの指揮命令を受けるといったものになっているのかとも感じております。
 もう一点、この4週4休といったような話をする際に、お客さんがいる商売で、かつ、突発的な依頼が来るようなタイプの仕事、また、それがほかの人にやってもらうというのはなかなか難しいといったようなタイプの仕事についてどのくらい配慮をするのかといったところは気になっています。
 事前に休日を特定していたとして、例えば美容師さんが顧客対応という意味で突発的にというのはさすがに考えなくていいのかなという気もしないでもない一方、美容師さんなどの働き方というのは、その職場の中でも自分に個人としてお客さんがついていて、指名をしてもらうということに価値があったり、場合によっては、お店を移るときでもお客さんが自分についてくる、独立する場合でもお客さんが個人についてきてくれるといったようなタイプの場合、自分のキャリアであったり顧客を育てるという観点から、顧客のわがままに付き合うといったこともこれまであったかと思います。こういうものをどこまで規制するかといったところ。
 ほかにも、例えばマンション管理など考えたときに、今、集合住宅が増えていますが、その個々のマンションで何かトラブルがあると、管理会社のフロントマネージャーと言われるような、そのマンションを一人で10軒以上とか普通に持っていると思いますが、担当している管理会社の社員のところに連絡がいく。それは、例えばエレベーターが止まったとかいったら日曜日でも連絡がいってしまうといったことがある中、これはつながらない権利とも関係あるかもしれませんが、どこまでそういうタイプの仕事について休日を特定するということが可能であって、やるべきなのか。
 これをちゃんとやろうと思うと、例えば一つの物件に複数人の担当者をつけて、担当者がオーバーラップするような形にしておいて、休みのほうの人ではなく、今、オンタイムの人にお願いするといったことが行われ、労働者の自由度は上がる一方、コスト面では高くなるとか、それがはね返って労働者の処遇が低下するといったこともあり得るのかなあと思っておりまして、仕事の種類ごとにこの4週4休というのは実現すべきであると思いますが、それをどこまでぎちぎちやるのかといったところは少し気になっています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 水町先生。
○水町構成員 前までの議論と同じことなのですが、2点、やはり労基法改正で必要なのは、1つは週休日の、週に1日の法定休日を事前に特定する。これは割増賃金の計算上もそうですし、36協定との関係の時間の計算の仕方のところって、時間外労働なのか休日なのか、週45時間のカウント等で出てくるので、これは予測可能なようにきちんと特定する。
 もう一つ、仮に36協定があったら休日労働も可能になりますが、36協定があった場合でも、健康確保の観点から、連続勤務規制、連続勤務の日数を、これ以上連続勤務させちゃいけないという上限を罰則つきで明確に定めるということが併せて必要。その2つをやれば、4週4休制についてどうするかというのも併せて整理されると思います。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 山川先生。
○山川構成員 先ほどに続いて具体的な話としては、1つは、今、水町先生の言われた休日労働の規制の絶対的上限のようなものを導入するというのは私も基本的に同感です。4週4休で、2サイクル合わせて48日間連続労働ができるというのは、前回も言いましたけれども、割増賃金を払わず、しかも、36協定もなしにそれができるという点の問題が主たるものですが、休日労働そのものは割増賃金と36協定があればできるので、世の中にはないと思いますけれども、365日の労働も、休日労働の割増賃金を払って36協定を結べば労基法には違反しないというのが現状になるわけですね。
 前回、休日労働の規制を一部、時間外労働に含めるという形で入れましたけれども、休日労働そのものの上限というのは導入していなかったので、これはどのくらいでというのはテーマになるかもしれませんけれども、現行法上、365日、休日に働かせたとしても、36協定と休日割増があれば労基法上違法にはならないというのはちょっと見直しの必要があるのではないかと思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 石﨑先生、お願いいたします。
○石﨑構成員 私も今、水町先生、山川先生がおっしゃられたところと同じで、そういった意味で、絶対的な休日労働規制は導入すべきであるということをまず考えております。
 もう一点、なかなか悩ましいというか、どうしていくといいのかというところで今後検討課題になり得るかと思いましたのが、その特定というときに、どのタイミングで特定すれば特定したということになるのかというところが気になっておりまして、もちろん特定の曜日という形で規定できれば一番明確は明確ですし、また定期的に休日が確保できるというところのメリットはあるのかと思うのですけれども、年間の予定の中で、例えばこの日は日曜日を法定休日とするけれども、例えば違うところは土曜日にするとか水曜日にするとか、そういう形であっても特定すればよいのか。そしてそれは例えば年度の初めとかが望ましいといえば望ましいのかもしれませんが、そうでなくて、月初め、週初めとかでもよいのかとか、その辺りが少し気になっているところではあります。
 休日についてはそのようなところですけれども、インターバルについては、今よろしかったでしょうか。
○荒木座長 インターバルは次のブロックでやろうと思っています。
○石﨑構成員 では差し当たり休日については以上になります。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
 首藤先生。
○首藤構成員 今、水町先生、山川先生がおっしゃったこと等の繰り返しになるかもしれないのですけれども、私も、法定休日の特定が必要だと思っていまして、かつ、やはり連続勤務規制をきちんと定めていくということが非常に重要だと思っております。何日の連続なのかというところが難しいのですけれども、やはり1つは労災認定基準である2週間というところが一つのポイントになると思っておりまして、これは罰則つきで定めるようなものではないかという考えを持っております。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
 事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 すみません。先ほど石﨑先生から、特定をするとしてどのタイミングで特定をするのかというお話がありました。これは実際に制度をどう仕組むかによるところかと思いますが、現状で法定休日を特定しているような企業の例で見ますと、例えば就業規則に当社の法定休日は土曜日とするということが定めてあるというようなケースが多かろうと思います。そのようなパターンで定めるケースもあれば、個別に定めるというケースもあると思いますし、あと、典型労働の方ではなくて、シフト制で働いていらっしゃる方々に関しては、そもそも労働日がいわゆる正社員の方と比べると少ないというケースが多かろうとは思いますが、その場合にはシフトを決定するときに決めていくというのが、現状の制度下であれば一般的なのかなというところではあります。
○荒木座長 ありがとうございました。
○石﨑構成員 ありがとうございます。どう今後仕組むかということだと思いますが、仮に罰則をつけるということになってくると、やはりぎりぎりどこのラインで特定したことになるのかというところが重要になってくるかと思うので、そこも場合によっては検討の必要があるように思いました。ありがとうございます。
○荒木座長 恐らく、水町先生の御指摘のように、法定休日がどこか分かっていないと、45時間との関係でどうカウントするか、紛争となるので、そういう点から明確にしておくという必要性が1つ。
 あともう一つ、ここで議論しているのは、健康確保の観点から13連勤以上は認めるべきではないと。そうであれば、これは絶対的に、13連勤の後、14連勤は認めない、必ず休ませなければいけない、36協定を結んでもやはり働かせるべきではないというような要請であることになる。とすると、その14日目の日は法定休日だろうが法定外休日だろうがとにかく休ませるということですので、休日の特定の問題とは別に、労働から解放する日を2週間に1回は必ず入れなさいということになるかと思います。この両方の要請にかなう対策が必要ではないかと思われました。ほかにはいかがでしょう。
 安藤先生。
○安藤構成員 今の、14連勤をすると健康上というか、労働からの解放が必要だというのは、フルタイムの労働者については当然そうな気がするのですが、極端な、先ほど山川先生から、365日働くことも法律上できてしまうよという話がありましたが、労働時間の上限規制との関係で、その場合には多分、フルタイム労働で365日8時間労働は無理だと思うのですね。ということは、仮に、これもルールづくりのための思考実験ではありますが、例えば1日2時間しか労働しないといったケースで14連勤というのは果たして健康確保上問題があるのかといったときに、私はないのかもしれないなと。少なくとも家で子育てやっているのなんて連勤しているわけですが、普通にできているということで、どのタイプのものというのが、ワークライフバランスの観点から必要なのかという話と、健康確保上どのような連続勤務というのが問題なのかということを考えたときに、1日当たりにどのぐらいの働き方をするのか、またそれが非常に肉体的、精神的に重たい仕事なのか、それとも軽作業なのかによって変わってくる気がするのですが、この辺り、安全面を取って、14連勤というのを定めるのはいいと思いますが、果たしてこれを超えたら一律にアウトと言ってしまっていいのかといったときに一応検討しておく必要があると思うのは、こういうタイプの仕事の場合には例外的にやっても大丈夫、又はやったほうがいいというものがないのかということは、ない気がしますが、一応チェックしておくことが必要かなとは感じました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
 山川先生。
○山川構成員 今の安藤先生の御指摘のとおりで、先ほど極端な例を挙げて労基法違反にならないと言いましたが、第35条違反にならないということで、もちろん労働時間の上限規制違反の問題は別途生ずることになります。短時間の場合は労働時間の上限規制は超えないけれどもという場合はあり得るので、その場合、確かに最長の労働日数をどのぐらいにするかというのは、先ほども課題だと申しましたけれども、いろんな状況を踏まえて検討するということになるかと思います。
○荒木座長 パートタイマーのような働き方、年休でも、パートタイマーに時間比例で与えたりしておりますので、いろいろそういった微調整は考える余地があるかもしれませんね。
 それでは、よろしければ3つ目のブロックということで、7ページから9ページまで、これはインターバル、つながらない権利、年休、そして休憩に関する問題です。どうぞどなたからでもお願いいたします。
 安藤先生。
○安藤構成員 7ページ目の下にあるつながらない権利について1つ発言します。つながらない権利と言ったときに、何をもってつながっていると考えるのかということについて、誤解があると非常にもったいないかなと思ってのお話です。
 例えば上司から部下に電話をかける。電話をするというのは、受けて、会話をしたら当然その分時間を取られるわけで、これはつながっていると思うわけですね。ただ、例えば休日に上司が部下に対して、次の勤務日にこれをやってねというような指示をメールで送る。電子メールというのは必ずしも送ったときと受けて開いて読むときのタイミングはずれていても問題がないといったとき。ただし、来たメールはほかのメールと混ざっているので、どんなメールかといって見てしまう。来たメールを見てしまうのは、これは電話と違って、時間的に即座に拘束されているわけではないのですが、しかし、仕事に関連する情報が目を通じて脳に入ってきてしまう。これをつながっていると考えるのかといったときに悩ましいかなと感じておりました。これは私個人としてはつながっているとカウントしないほうが明確なのではないかと。
 私も、仕事面で、一緒に研究活動している仲間などに連絡する際には、どうしても急ぎのやつはビジネスチャットを使って、オンラインでいつも、誰がオンラインになっているか、お互い見えているような状況で、オンラインになっている人にメッセージを送って、「これ、今すぐできる?」というのを聞いたりします。これに対して、電子メールは1日1回見れば十分ぐらいの時間感覚で、かつ、何かお願いするときには、いつまでとか、急ぎじゃないよといったメッセージをつけたりするわけです。
 こういうことは多分、仕事の現場でも、急ぎのものと、そうではなく、ただし、今思いついてしまったので、相手に連絡だけしておきたいといったもの、いろいろ含まれていると思われる中、このつながらない権利というものを明示的に設定するかどうかは別として、様々なベストプラクティスみたいな形で、急ぎのものとそうでないものをどうやって指揮命令が区別できるのか、こういうやり方をやると働き手としては混乱がないよといって、急ぎじゃないものは急ぎじゃないとちゃんと伝わるように、例えば通知するチャネルを分けるであるとかいうことも重要かと思いますので、この辺り、オンとオフのうち、オフの時間にやっていいことって何なのということは少し考えておく必要があると感じました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
 以前も申し上げたことですけれども、つながらない権利を労働者の権利として構成することには違和感がありますし、労働からの解放の規制という整理の中で、労働時間規制と関連づける形で議論することには何か引っかかるものがありました。もちろん、こうしたつながらない状況を守ることが重要であることを否定するものではありません。
 先ほど安藤先生がいろんな場面をお話しいただきましたけれども、そのようなことも考え合わせますと、つながらない権利はパワーハラスメントの問題として整理できるのではないでしょうか。パワーハラスメントには6類型がありますが、そのうち、個の侵害に当たりうると思います。上司が労働者に連絡を取ったからといってそれが直ちにパワハラに当たるものではないけれども、度々連絡したり、急ぎでもない連絡をしたりすることは、労働者の私生活を侵害する、よろしくないものと考えます。常識的な範囲の連絡であれば特に問題はないですが、それが私生活の侵害に当たるようなものであれば、ハラスメントの問題として、このような行為が不適切である、あるいは違法であるという判断ができるのではないかと考えます。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。今、議論になっているつながらない権利関連で1点と、インターバル関連で1~2点意見を述べさせていただければと思います。
 まず、つながらない権利関係で、今、安藤先生から様々なケースを御紹介いただいて、メールにしても、例えば、ただ送るのか、それとも即返信を求めるのか、あるいはLINEだったらどうなのかとか、いろんなケースによって、またその職場の風土ですとか、個々の労働者のいろんな考え方によって、それを受け入れるのか受け入れないのかというのは大分違う部分があるのかなと私も思うところであります。
 そうした意味で、何らか国によって一律な規制を設けるというよりは、各企業、あるいは各職場のレベルで、どうすれば気持ちよく働けるのかみたいな、先ほど水島先生からパワハラの枠の中でという話がありましたけれども、ある種の職場環境配慮的な枠組みの中で、そうしたことの議論を促していくという方向が望ましいのではないかと私も思っているところではあります。
 ただ、ここの仕組み方の中で1つ考え得る選択肢としては、このつながらない権利の問題というのは、ある種、時間の長さではなくて、その時間の質というのか、時間帯に着目したような話なのではないかという気もしておりまして、その問題を、場合によっては労働時間設定改善委員会とか、そうしたところで取り上げていくこと、それ自体は促していってもいいのではないかという気がしております。
 労働時間等設定改善法、もともとは時短というところを目的として設定されて発展してきたという経緯があるかとは思いますが、そこに1つ時間帯という視点を入れていくということ、もしかして法律レベルでは難しいということであれば、まずは指針とかガイドラインの中でという話になるのかもしれませんが、そうした方向性というのは1つ検討してみてもよいのかなと思った次第であります。
 それからもう一点、インターバルについてなのですけれども、こちらもこれまで申し上げてきたとおり、法令の中で規定を置いておくことが必要ではないかと考えているところでありまして、選択肢としては、労基法か、あるいは労働時間等設定改善法かというところかとは思いますけれども、罰則をつけない形で柔軟に進めていくということを考えると、もしかすると現実的なのは労働時間等設定改善法なのかなあという気はしているところではあります。
 このインターバルを、今後ある種義務規定として入れていくときに少し気になっておりましたのは、前回でしたか、前々回、黒田先生から問題提起があった非常時の場合の労働時間の、36協定なんかの時間外労働ができるケースでの、そこに対して何らか対応が必要ではないのかというところとの関係であります。原則的にはというとか、その場合、非常時のようなケースではインターバルも確保できないということになるのは、そこは致し方ないかなと思うのですけれども、他方で、インターバルの代替措置として定めるほうの規制というのは、可能な限り、そういった非常時のもとでも適用できるような方向、ちょっとそこは義務規定ではなくて努力義務みたいな形かもしれませんけれども、が望ましいのではないかという気もしておりまして、そこをさらに検討する必要があるのではないかと思った次第であります。
 以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
 水町先生。
○水町構成員 つながらない権利のところなのですが、背景に考えなければいけないことは大きく2つあって、1つは、デジタル化とかアルゴリズムの中で、外国で何でこういうことがいっぱい議論されて法制化されているのか。もう時間、場所を問わない働き方になって、働き方自体が、仕事とプライベートの区別がつかなくなっている。家でも仕事しなければいけないし、別に職場でも家庭との間でLINEを送ったりしているということもあるので、その区別がつかなくなっていく中で、仕事とプライベート、私生活の線引きをどうするかというので、ちゃんとルールをつくらないと、現場で力関係が強い弱いというので勝手にルールをつくったら、私生活が損なわれてしまうのではないかという時代の流れの中でどう線引きするかという問題。
 もう一つは、働き方、働かせ方も非常に多様になっていて、要はここで何が問題か。所定労働時間以外に何をさせることができるのか、してはいけないかという問題で、例えば土日が休みの人で所定労働時間になっていないとした場合に、例えばあのファイルどこにあったのとLINEを送って、それでも、所定労働時間外だから全くリアクションしなくていいのかということから、例えば日曜日に大きな事故、事件が起こって、休日出勤をしてこれに対して対応してくれと。でも、土日はつながらない権利があるから、それに対して全くリアクションをしちゃいけないのかというので、いろんな対応があり得る中で、要は、法律で、これはやっていい、これはやっちゃだめというのはできないので、やはり職場できちんと実態に合わせて話し合ってくださいということが大切なのですが、話し合ってくださいと言っても、話し合うところは大体ちゃんとしたところで話し合って、全然ちゃんとしてないところは話し合わないということになるので、基本的には、諸外国でやられている一つの方法としてはデフォルト。基本的には、所定労働時間外は連絡を取っちゃだめよと。リアクションがなくても何も処分とかサンクションしちゃだめよということをデフォルトにしながら、それ以外に、連絡に対するリアクションとか、実際、休日労働命令を出した場合には休日労働しなければいけないとか、どこをどういう人に何ができるかをちゃんとルール化してくださいねと。何もしないとデフォルトになってしまうので、そうでないルールをどう話し合うか。
 その措置を取っていないときに法的にどうするかというので、場合によってはそういう措置を具体的に話し合って、取っていなければ罰則をつけるという国も出始めているし、これって、現場で話し合うことが大切だから、日本でいうと労働時間等設定改善法の中で話し合って、まずルール化を進めていってくださいということになるか、あとは労働契約法の中で、ゼロ時間契約との関係とかもあるのですが、所定労働時間でない時間に対して何までできるかを、所定労働時間でないけれども、どこまで連絡を取ったり義務づけることができるかというルールを、労働契約法やそれに関するルールとして明確にしていく。政策的にはいろいろあると思いますが、労働時間等設定改善法だとコンプライアンスをしっかりしている大企業でやるだけで、実際は本当に私生活をちゃんとしてくれというところにそれが波及するかどうかという懸念もあるので、場合によっては、労働契約法上こういうルールをつくるということが大切なのだという意識をみんなに持ってもらいながら、諸外国の動きを見てルール化していくということも政策的に大切かなと思いました。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 黒田先生。
○黒田構成員 勤務間インターバルについてと、つながらない権利についても少しコメントさせていただきます。
 勤務間インターバルについては、前々回の議論で、長時間勤務の上限規制とどう違うのか、目的を一緒にしているところもかなりあると思うので、その目的と効果の違いをはっきりさせるべきではないかというお話があったと思います。もちろん補完的な施策になると思うので、目的を同じにしているところもあるとは思います。長期間の、例えば月単位、年単位という意味での健康悪影響のリスクを下げるという目的は同じにしているところもあると思うのですが、どちらかというと、勤務間インターバルは長期間というよりは短期間、1日単位とか、先ほどの休日労働からの解放でも、連続勤務時間、連続勤務日数13日というのは、ウィークリーだったりマンスリーだったりの疲労からの回復ということを意味していると思うのですが、勤務間インターバルはどちらかというとデイリーな疲労からの回復というものを意図している分の比重のほうが大きいのかなと思っているので、ちょっと目的は違うのではないか。もちろん、勤務間インターバル確保の目的として、ワークライフバランスの確保という点も重要だと思うのですけれども。
 運輸のほうで改善基準告示でしたか、が議論されたとき、詳しくは承知していないのですが、恐らく、覚醒時間が長くなる、つまり睡眠時間が減るというのと一緒ですけれども、1日当たりの覚醒時間が長ければ長いほど、もしくは、なかなか線引きはできないですけれども、覚醒時間が19時間を超えてくるとアルコール濃度、例えば血中アルコール濃度0.05%に相当とかいう研究もあったりして、これは運転する場面に当てはめると酒気帯びの呼気基準を超えてきますけれども、そういうのを加味しながらきっと決めていると思うのですね。だから、睡眠時間はこれぐらい確保すべきで、睡眠時間だけでなくて、もちろんその前後の生活時間の通勤時間を加味すべきだということを検討していると思います。
 運転業務は公衆衛生上のリスクが高いので、きちんと睡眠時間をより確保すべきという議論があったと思いますが、運転業務でなくても、労働により覚醒時間が長く、日によってはそうではないけれども、特定の日はかなり長時間働かざるを得なかったとなると、やはりそこからの回復時間もかなり必要になりますので、勤務間インターバルを制度として義務化すべきだとは思っています。ただ、その導入は労使での検討がいろいろと必要となりますので、すぐに義務化できるかどうか分からないと思うのですが、検討会としてはやはり義務化というような意見を述べていくべきではないかとは思っています。
 あともう一つ、先ほど事務局から交替制勤務の話が別の文脈で出ていたのですけれども、交替制勤務をしている人は労働者の2割弱ぐらいと言われていると思いますが、何を交替制勤務かとみなすかによって数え方が1割から2割という幅があると思いますけれども、そういう方も含めて勤務間インターバルを保てるようにということも考えると、こちらもきちんと制度化すべきだと思います。ほとんどの会社や組織では、きちんと勤務間インターバルを保てるようにシフト勤務は正循環で設定し回っていると思いますけれども、なかなかそこがきちんとできていなかったり、とにかく人手不足なのでということで、現状はなかなか難しかったり、というところもあると思います。ルールを決めないといつまでたっても勤務間インターバルを保つということができないので、このタイミングでぜひ義務化を目指して報告書としては出すべきではないかと思っています。
 あと、つながらない権利に関して、水島先生のお話を伺いながら、確かにハラスメントの文脈で語るというのもありかなとは思った一方で、オフの時間に何らかの連絡がある、ごくまれだったらいいのでしょうけれども、割とフランクな連絡が頻繁にあるというと、そのこと自体の有害性とか精神負担ということも考えるべきで、必ずしもハラスメントの文脈だけで言えるわけでない。本人がそう感じていないし、相手も感じていないし、けれども、そのことに関する有害性ということは考えるべきで、ハラスメントの文脈だけで語れるかというとちょっと疑問に感じましたので、コメントさせていただきました。
 以上です。
○荒木座長 神吉先生、お願いします。
○神吉構成員 私はインターバル規制の義務化に賛成する方向でこれまでもお話ししてきました。それを何法で行うかについて、現在、導入企業割合が6%にとどまっているので、罰則つきの義務化を労基法で行うのは難しいということだったかと思います。
 第10回、第11回資料の32ページから34ページを見ますと、確かに導入している企業は5年で6.0%ですが、32ページの右下のグラフを見ますと、導入予定はなく検討もしていない理由で圧倒的に多いのが、超過勤務の機会が少なくて、その制度を導入する必要性を感じないという企業になっています。
 そして、33ページからの労働者調査のアンケートでは、既に導入されていると答えているのが労働者ベースで10.8%、「導入の希望はない」が66.9%ですが、希望しない理由を深掘ってみると、結局、超過勤務がそれほどないということで、34ページの最後の表を見ると、導入希望がない人たちの中で、そもそも1か月の平均残業時間が0時間である人たちが38.2%で、1~10時間までいくと32.9%がプラスで乗ります。単純計算すると、労働者ベースで見て、希望しない理由として、そもそも残業していないので必要性がないという人たちは、残業がゼロだと言っている人に関しては3割ぐらいになりますし、1~10時間まで含めると過半数を超えると思います。
 これは労働者調査なので、企業が残業時間を低く出しているというわけでもないと理解しますと、結局、「導入希望はない」の多くは積極的にその必要性がないから希望していないだけ。つまり、罰則がかけられたとしても、それが問題ない割合がかなり多いと考えられ、罰則つきの規制をかけることに対する支障は、希望が少ないという数字以上に導入余地はあるのではないか、私は、労基法での導入義務化ができるのではないかと考えています。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
 勤務間インターバル制度について、本日の資料5ページに制度導入促進のためにどのような手法が考えられるかとありますが、私も義務化しかないと考えます。私も、神吉先生と同様、労働基準法に入れるのが適切であると考えます。導入企業割合が6%にとどまっている点を懸念する御指摘がありましたけれども、3年後とか4年後とか、かなり長いスパンで、施行までの期間を置き、その間に企業等にご準備いただくことを想定しています。施行までに十分な準備期間を設ければ、労基法に罰則つきで導入することも可能と考えます。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 首藤先生。
○首藤構成員 3点お話しさせていただきたいと思います。
 まず、勤務間インターバルについては、私も導入賛成ですけれども、先ほど黒田先生から睡眠時間との兼ね合いがありましたが、私、自動車運転者の改善基準告知の委員をしておりまして、そこで厚生労働省がトラックドライバーに調査をしまして、自動車運転者は休息期間という形で勤務間インターバルが既に適用されているわけですが、休息期間の長さと睡眠時間の長さが強い相関があることがその調査結果からも分かっています。
 6時間の睡眠をほとんどの人が取れるようにしないといけないと考えると、やはり11時間というような休息期間が必要だという結果が出ています。8時間の休息期間を割ってくると、睡眠を5時間取れていない人が半分以上に上るという実態もありましたので、ワークライフバランスというよりは、健康確保の面から勤務間インターバルは非常に有効だと考えています。
 2点目としまして、つながらない権利については、法令で定めることは多々困難があるということは、先生方の御指摘を聞いていて、なるほどと思いました。ただ、先ほどの在宅のテレワークのみなし労働時間制の適用とも関わると思います。在宅テレワークでみなし労働時間を適用していったときに、このつながらない権利がないような状態のままで、長時間労働が本当に抑制できるのだろうかというところは非常に強い懸念を抱いています。
 私は水町先生と比較的考えが近くて、在宅テレワークでのみなし労働時間の適用に慎重な考えを持っていますけれども、やはりこういったものもセットで議論していただきたいと思っております。
 最後に9ページの休憩のところの一番最初のポツの一斉付与の原則の見直しについてです。確かに工場労働している方は非常に少なくなってきている中で、休憩の一斉付与というのが現場にそぐわなくなってきているというのはおっしゃるとおりだと思っております。各職場に合ったような休憩の取り方ということがあり得ると思うのですが、重要なのは、そういった柔軟性を高めていったときに、きちんと休憩が取れなくなっていくということも起こりかねないということだと思っております。
 一斉にみんなが休んでいれば取れていたものが、例えばホワイトカラー労働者が、パソコンの前でサンドイッチを食べながら休憩する場合、周りがみんな働いている中で、1時間や50分をきちんと休憩を取れるのかというような状況を想定してみると、きちんとした休憩の確保というのが難しくなるようなケースがあることが容易に想定できるわけです。組合があれば、休憩確保の確認を取ったりするかもしれませんけれども、休憩の確保について、確認を取る、遵守させるような仕組みも併せて議論していただきたいと思っております。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 山川先生。
○山川構成員 すみません。ちょっと早めに出ないといけないので。
 インターバル規制についてですけれども、私も、基本的には義務化していく方向が妥当であると思っておりますけれども、先ほどの労働基準法でいきなり刑罰規制をかけるというのはちょっと難しいかなと思っております。要は、労基法違反というのは犯罪ですので、新たな犯罪類型をつくり出す作業をするかどうかということになります。もちろん段階的にその導入を進めていって、いずれ義務化するかというのはあり得ることですし、逆に、インターバル規制を義務づけてもそれがすごく短くなってしまうとインターバル規制をする意味があまりなくなってしまうということもあるかと思います。
 義務化といってもいろんな中身があって、今は理念規定に近い抽象的な義務規定ですが、それを、育児介護休業法にあるみたいに具体的な努力義務規定にするのと、あと、セクハラでかつて行っていたような配慮義務規定にすることと、あと措置義務規定にすることと幾つかのパターンがあり得るかと思います。措置義務規定にする場合でも、手続的な行動計画策定義務にする場合と、措置そのものを指針で具体的に定める、いろんなことがあろうかと思います。
 それらの仕組みとしては、あえて言えば労働基準法というよりは労働時間等設定改善法かなと思いますが、ただ、措置義務にするとしたら基準法というのもなくはないかなとは思います。なので、義務という場合でも、いろんな手法を考えるということかと私は考えております。
○荒木座長 ありがとうございました。インターバルについては、導入している6%の企業の実情を見ても、どういうものとしてインターバル規制を導入しているかということ自体がかなり多様であるということかと思います。抽象的にインターバル規制、大変重要な規制だと私も思っておりますけれども、それが労基法違反を構成するということになった場合には、その構成要件をどう書くかということですが、今どこまでの例外を認めるのか、これについてはまだここでは十分議論を深めておりませんし、11時間として、その例外を認めるのか、代替措置をどの程度認めるのか等々、様々なオプションがあり得るところでございますので、具体的に政策を立案するに当たってはさらに詰めるべき点もあるということを認識した上で、検討していくべきかと思ったところでございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
 先ほど、インターバルについても、つながらない権利との関係でも、労働時間等設定改善法による対応ということで意見を申し上げさせていただいたのですけれども、その後、水町先生のほうから、つながらない権利などについて、労働契約法の中での規制も考えられるのではないかといったような御発言があったかと思います。現在、労働契約法の中で、労働時間に関する規定というのは置かれておらず、強いていえば、この第3条第3項の私生活への調和の原則があるにとどまっているところではあるのですけれども、やや中長期的な課題にはなるかもしれませんが、休憩のところでもそうですし、そういった時間への配慮みたいな議論があったかと思いますし、また、いろんなニーズを抱える労働者がいる中で、労働時間、時短的な働き方をしたり、残業を免除された働き方をしたりする、そうした個々の労働者のニーズに応えるような働き方を認めるような仕組みを入れていくみたいなことを考えたときに、労働契約法の中にそういう労働時間に係るルールを規定する章なり箇所を設けていくということも課題になっていくのではないかと思いましたので、併せて意見として申し上げさせていただければと思いました。
 以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
 それでは、よろしければ最後の問題に移りたいと思います。最後は資料の11ページまでの割増賃金ということになります。これについても、どなたからでも御発言いただければと思います。
 神吉先生。
○神吉構成員 10ページの割増賃金の、前回、前々回の議論のポツの3つ目について、歩合給制の場合の割増賃金は結構難しい問題だと考えております。これは、最後のポツ、割増賃金の計算の基礎となる「通常の労働時間又は労働日の賃金」の考え方がはっきりしていないという点とも関わるのですけれども、そもそも会社においてどういう賃金制度を取るか。固定給でいく場合もあるし、出来高払制、歩合給制を取ることもできるし、それを組み合わせることもできるわけです。
 賃金の仕組み方については、現状、使用者側の裁量が非常に大きいうえに、近年、固定給と出来高払給との組合せで、割増賃金の支払い方の仕組みを非常に複雑にすることで、実際には労働時間が増えているのに割増賃金は総体として見て増えない、手取りが増えないような、そういう仕組みの賃金制度になっているケースが見られます。
 歩合給制の場合、例えば労基法第27条に出来高払制の保障給があり、使用者は労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならないとあるのですが、その内容がよく分からない。割増賃金の支払い方についても直接的な規律が直ちには読み出せないという問題があるかと思います。
 ですので、デロゲーションを認める余地はあるのかもしれませんが、その前に、歩合給制、出来高払制の場合に通常の労働時間の賃金をどのように考えていくのか、その設定が使用者側に左右されることで実質的に割増賃金が支払われないような状態を許さないようにする仕組みのようなものも必要になってくると思います。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 神吉先生の御提言は、国際自動車事件などで最高裁判決の考え方も固まったというより展開してきている状況かと思いますけれども、解釈で、いわば通常の労働時間の賃金というものを適切に解釈すれば対応できるようにも思うのですが、それを労基法上きちんと、それと違うような操作を認めないような規制に変えたほうがいいという御趣旨でしょうか。
○神吉構成員 最終的には解釈問題だと思いますが、国際自動車の枠組みというよりは、例えばトールエクスプレスジャパン事件のように、固定給部分を非常に小さく設定しておいて、歩合給部分を完全に上乗せと見て、それが生じる場合と生じない場合とがあるような賃金制度です。出来高と労働時間との関係で、一定の発生要件を満たしたときに、その歩合給部分が上乗せされる仕組みにして、割増賃金を上乗せ部分にさらにつけることで、判別可能性はあり法律上問題ないという判断になったのですけれども、歩合給的な部分が発生する、発生しないの違いが実は労働時間と出来高の関係性で左右できるようにしている仕組み自体の問題性とみれば、通常の労働時間の賃金の解釈だけでもなく、37条の関係で問題になるかもしれません。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、4つに分けて議論はしたのですけれども、改めてこの点について何かつけ加えたいというのがあれば伺いますけれども、いかがでしょうか。
 黒田先生。
○黒田構成員 すみません。つけ加えたいというより、前々回ですかね、9ページの、生理現象である業務時間中の小休止は常識的には認められているのでしょうが、実際にはそこが保障されていないことがかなりあって、労基法で検討すべきかどうか分からないけれども、ちょっと整理が必要というお話があったと思います。この点に関して、もちろん健康管理上は必要だと思うのですけれども、もうちょっと何か踏み込んで検討したほうがいいのかどうかというのが、自分でもまとまっていないのですが、少し議論したほうがよいように思いまして、ちょっとコメントいたします。
○荒木座長 これは、例えばドイツなどでは、一定時間以上の労働からの解放があって初めて休憩と扱うといった規制があります。そういう固い規制を入れてしまいますと、今まで休憩扱いだったものが休憩とみなされないという大きな効果がありますので、簡単にそうすべきだということにはならないかもしれませんけれども、要は、労働からの解放の実があるようなときには、それは休憩となるのですけれども、例えば数分トイレに行ったというだけで、これは労働からの解放とみなしてよいかというと、常識的に考えてもそうなっていないので、企業でも、そんなトイレ休憩とかは労働時間でないから、労働時間とはカウントせずに賃金も削減するといったことをやっていないのは、実際はそういった常識的な対応が受け入れられているからだと思います。
 ですので、何か法制上対応しなければ問題かというよりは、そのような短時間の労働の中断があっても、これは労働から解放された非労働時間とは扱わないという解釈で対応できる部分は相当あるのかなと考えております。
 水町先生。
○水町構成員 この背景はやはりデジタル化で、監視社会になっていて、全ての行動が、人がいなくても全部監視されるようになって、ウエラブルデバイスとか、パソコンとか、全部の行動がいわゆる勤務時間中は監視されて、そこで一瞬も休んではいけないとか、トイレにも行っちゃいけないという管理を受けたときに、労働時間に該当するからどう、労働時間に該当しないから休憩時間に当たるというところは労働時間の問題ですが、デジタル化に伴う監視社会の中でどのような雇用管理が許されるかという中で、労働安全衛生法上、生理現象に対するどういう保障をしたほうがいいかというコンテクストでお話ししたのですが、いずれにしても、労働安全衛生法と労働時間法制って全く別ものではないですし、そういうことも踏まえて、デジタル化に対する監視の対応をどう考えていくのか。
 実際そこが労働時間管理と生理現象に対する対応を非常にハードにしながら、一切休ませない、休んだ場合には労働時間から外して、実労働時間に入れずに時間をカットしたり、その分残業させるとかいう取扱いも既に出始めているので、それについての考え方の整理が必要ではないか。それは必ずしも労働時間だけの問題ではないし、労働時間にも関わりながら、労働安全衛生法上何が必要かというと、今、労働安全衛生法でそこまで措置されていないので、そういう問題についてデジタル化の中でどうするかというのが課題かなと、少し広く思ったところです。
○荒木座長 水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。
 水町先生のデジタル化の議論にはなかなかついていけていないので、伝統的な働き方についてですけれども、私も、トイレの問題は労働安全衛生法的なアプローチが重要と考えます。トイレに行かせないというのは論外ですが、トイレがあまりにも遠いとか、何かそうした事情もあるのかもしれません。労働安全衛生法のほうで、たしか規則で定まっていたと思いますけれども、作業場におけるトイレの適正配置をしっかりと見ていく必要があると思います。
 それから、休憩の一斉付与について一言述べさせていただきます。休憩の一斉付与を必要とする事業場が存在する一方、むしろ一斉付与がなじまない事業場の両方があると思います。以前は、工場労働のように前者が主流でしたけれども、今はそれが逆転しているのかもしれません。そのように考えますと、労使協定で例外を認めるという現在の方法の原則と例外を逆にしてもよいのではと、考えます。
 以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
 石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 すみません。私もちょっと細かなところで申しそびれたところで、時間単位の年休について一言申し上げさせていただければと思います。
 こちら、日数を増やすということに関しては、労使双方からそれぞれ、必ずしもという意見も出ており、難しいと考えているのですが、この時間単位年休を必要とする労働者というのが必ずしも労働者全体の中の多数派ではないことなども考えたときに、果たして労使協定の締結、つまり、集団的な合意を前提に初めて認められるという仕組みのままでよいのかどうかというところは少し検討課題のような気がしています。
 先ほど、一斉付与について原則と例外を逆にするという議論などもありましたが、この時間単位年休についても逆にするという考え方があってもいいのではないかというところですとか、あるいは、現在、半日年休について、確かあれについては通達の中で認められていて、法律上は特に規定は置かれていない、そして、半日年休については労使協定の締結は不要と理解、もし間違っていたら指摘いただきたいのですが、理解しておりますけれども、そこの半日年休の位置付けなどを明記して、そうした取得の可能性があるみたいなことを書き込んでいくということも1つ対応としては考えられるのではないかと思ったところでございます。
 以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。最後に重要な御指摘をいただいたと思います。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは、時間になりましたので、今日の議論はここまでとさせていただきます。本日も大変重要な御議論をいただきましてありがとうございました。以上で終了といたします。