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- 第12回労働基準関係法制研究会 議事録
第12回労働基準関係法制研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和6年9月4日(水) 10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第15会議室
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 それでは、ほぼ定刻で、皆様おそろいということですので、ただいまから、第12回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。構成員の先生方におかれましては、御多忙のところ御参加いただきありがとうございます。
本日の研究会につきましても、会場参加とオンライン参加双方の方式で開催をいたします。
本日は、神吉先生が御欠席、石﨑先生、島田先生がオンラインでの御参加ということになっております。
カメラ撮りはここまでということでお願いします。
議事に入ります。
本日は、労働基準法上の「労働者」、「事業」及び労使コミュニケーションについて、これまでの議論を踏まえた検討ができればと考えています。
まず、資料1から3について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
資料1、2、3と順番に「労働者」、「事業」、労使コミュニケーションという形となっております。この3つの資料に関しまして、今回は全て共通して、これまで御議論いただいてきた論点と前回まで御議論いただいてきた中で、先生方からいただいた御意見、御発言をまとめた資料という形とさせていただいております。
まず資料1、「「労働者」について」を御覧ください。おめくりいただきまして、まず2ページ目でございます。労働者性に関しまして、まず1つ目の論点といたしまして、労働基準法第9条に定める「労働者」の定義自体についてどのように考えるかということがございました。前回第8回の際の御議論の中で、労働者概念が多様化している中でも基本的な法律上の定義を変えている国はほとんどないということですとか、現行の規定であります事業に使用され賃金を支払われる者という内容が適切であるのではないかということで、第9条の「労働者」の定義の改正を行わなければならないという認識ではないというような御意見が大宗であったかと思っております。
続いて3ページ目でございます。論点といたしまして、真ん中、太字のところですが、昭和60年の判断基準をどのように扱うか、そしてプラットフォームワーカーを含めた個別職種に対してどのように対応していくのかというところが論点としてございました。
4ページ目、前回第8回の御議論でございます。まず、上からでございますけれども、昭和60年の研究会報告については、法的根拠があって位置付けられているものではないけれども、これに沿って裁判例が積み重なってきた。ただ、40年経っておりますので、様々な問題点というものがあったり、変化に対応できない点というものも出てきている。また、諸外国の状況を見ても、EUでEU指令が出たりということで、各国、予測可能性を高めようということでの動きが出てきているというような実態がある。
また、フリーランスとの関係も含めて検討していかなければならないのではないかというような御発言がございました。
下から3つ目のところでございますけれども、労働基準関係法令においての「特別の取扱いの必要性」だとか健康確保や労働安全基準をどう保障していくかといった議論も必要で、労働者の範囲と法律の対象を議論する場合には、各法律の制度に照らして整理をした上での議論が必要というような御発言をいただいていたところでございます。
5ページ目でございます。それでは、この労働者性に関して今後の議論・検討をどのように進めていくべきかというところでございますが、第8回の議論の中で、昭和60年の研究会報告を所与の前提とはせず議論すべきであるということ。また、諸外国の実態、法令、裁判例を見つつ、今後出てくる日本の実態を踏まえて複眼的な分析が必要であろうということ。それは専門的な議論の積み重ねが必要であり、すぐに答えが出るような話ではないというようなお話をいただいていたかと思います。
また、下のほうでございますけれども、労働者概念の中身をどのように実態の変化に合わせて変えていくかということと同時に、併せて法制度の在り方としてどういう仕組みにするかということ、両方考えないといけないと御示唆をいただいていたところでございます。
6ページ目でございます。最後に1つ独立した論点でございますが、家事使用人について労働基準法を適用すべきでないかという点でございます。前回の御議論でございますが、家事使用人の位置付けが時代を経て変わってきたということで、使用者責任、災害補償ということについて一定の責任を負うべきではないか、今まで特別扱いしてきたものを通常扱いにするべきではないかという御意見がございました。
ただ一方で、労働基準法による国家的監督というものが私家庭に及んで、使用者として責任を負わせるということには懸念と疑問も感じるというような御意見もあったところでございます。
前回までの御議論はこのような形で進んでおりました。今後の報告書取りまとめに向けてさらなる御議論をいただければと思っております。
続いて資料2でございます。「労働基準法上の「事業」について」でございます。2ページ目、問題の所在でございます。こちら、資料は前回もお出ししたものでございますが、様々、「事業」の概念については機能があるというところでございますが、これを踏まえて、現在、労働基準法の適用単位が「事業」「事業場」となっているものについてどう考えるかというところが論点だったかと考えております。
3ページ目に前回までの御議論をまとめさせていただきました。これまでの御議論の中ですが、基準法に基づいた、例えば労使協定の締結に当たっては、実態を反映できる単位というのはやはり事業場ではないかという考えもございました。また、事業場の実態を踏まえて、その意見を反映させることができる労使コミュニケーションがあるのであれば、企業単位ということも考え得るのではないかということ。あるいは、地域的な適用の範囲ですとか、労働基準関係行政の体制に対応するということであれば、場所的概念としての事業というものは今後も有効ではないかという御意見。それから、指導の有効性、届出の効率性の観点から、企業単位とする方法が適切、また支障がないというものについては企業単位としてもよいのではないかというようなお話がございました。
中長期的な話としまして、下から3つ目のところでございますが、事業や働く人の「場所」的な概念が一致しないという事例が今後も増えていくということが予想される。こういう中で、この事業という概念を法令上どう考えるのか、中長期的な検討が必要という御意見がございました。
これに対しましては、雇用されている以上、どこかの組織には属している。そこを事業場と捉えるということができるのではないか。コミュニケーションを取りながら仕事をしている以上、具体的な場所でなくとも、事業場的な基盤はあるのではないかというような御意見もいただいていたところでございます。
「事業」に関していただいていた御意見は以上でございます。後ろに関しては参考資料です。
最後に資料3でございます。労使コミュニケーションについてでございます。
2ページ目、問題の所在でございますけれども、大きく分けまして、労使コミュニケーションを行うに当たって、労働組合や過半数代表者との関係での労使協定締結といった労使コミュニケーションをどのように改善していくかということと、後ろに出てまいりますが、そういったものについて、事業場をある程度くくっていくということに関してどう考えていくのか、そういったところが論点であったかと存じます。
3ページ目でございます。前回の御議論でございます。3ページ目に列挙させていただいておりますのは、主に、過半数組合であったり、過半数代表者が労使コミュニケーションをする際についての御議論をいただいていた部分でございます。
まず、一方が組合である場合の労使コミュニケーションについて、これは質的な面を考えてもしっかり促進していくということが必要であるものの、法制的対応は馴染まず、政策的な対応が望ましいのではないかというような御意見をいただいておりました。
過半数代表者に関する改善・適正化については、まず、大まかに選出手続ですとか、過半数組合、過半数代表者に対してどのような支援ができるかという点と、過半数代表者を選ぶとなった場合に、複数選出するということや任期制にするということについてどう考えるかというものがございました。
まず、前者についてでございますが、選出手続に関しては、その具体的解釈というものを行政から明確に示す必要があるのではないか。何ができて何ができないのかということを整理・提示するだけでも意味があるというようなお話をいただいております。
また、現在行われているような労使協定の内容というものを労働者側にしっかり御認識いただいた上で過半数代表者を選出いただき、締結手続に向かっていただくことが必要であるというような御意見をいただいております。
こうした過半数組合や過半数代表者に対する支援に関しましては、まず、過半数代表者が適切に判断をしていただく、その必要がありますので、使用者からその協定に必要な情報というものを提示させるというような規定が必要ではないかという点がございました。また、過半数代表者が労働者の意見を集約していただくことが必要ですので、その点、過半数代表者の任務として明確にすべきではないかというようなお話もございました。
労使コミュニケーション促進の観点からしますと、組合や代表者を含めて企業側がどのような便宜供与ができるのか、これも行政が明確に示す必要があるのではないかというような御意見をいただいていたところでございます。
下半分でございます。人数と任期に関しまして、過半数代表者の複数選出、任期制でございますが、これはいずれも、いきなり法律で義務づけるということは現実的ではない。一方で、現行法令上可能なことは何なのか、どのようなメリットがあるのか、デメリットがあるのか、そのようなことは明示していく必要があるのではないかというような御議論をいただいていたところでございます。
4ページ目でございます。続いては、労使協定や労使委員会をやるに当たって複数事業場を束ねるということについての考えというものでございます。長期的に見て、労使が民主的な話し合いをするためのコミュニケーション基盤を整えるという観点から、統合的に検討することが必要だろうというのをまず前提として御意見をいただいております。
その上で、メリット、デメリットで言いますと、複数事業場をまとめるということで、労働者同士の刺激ですとか情報共有といったメリットがある。一方で、過半数代表者の形骸化というものがさらに進んでしまうのではないかという懸念もあるというような御議論をいただいておりました。
将来的には、手続の企業単位化ですとか、現行の労使委員会、衛生委員会の労使の会議体との融合も含めた検討をしていく必要があるのではないかというものをいただいているところでございます。
最後に④でございます。労働者の個人の意思確認について、集団的コミュニケーションだけでなく、個人の意思、個人同意というものをどう考えるのかという論点でございました。
ここに関しまして、まず1つは、個人同意のみで集団的手続を踏まないデロゲーションというものは現状では考えにくいという御意見をいただいていたところかと思います。本人同意に関しては集団的合意を前提として、その上に本人同意を上乗せで課す。それは現在の裁量労働制のように、集団的な合意をした上で、本人の同意が得られなければ通常に戻るというような例、こういったものを応用して考えていくのではないかということをいただいていたところでございます。
5ページ目以降は参考資料でございます。
今回資料でまとめさせていただきました前回までの御議論は以上でございます。これをもとに取りまとめに向けた御議論をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、3つの議題がございますけれども、最初の資料1、労働基準法上の「労働者」について御意見ありましたらいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、挙手等してお示しください。
では水島先生、お願いします。
○水島構成員
家事使用人につきましては、この研究会においても、労働基準法を適用するという御意見が多数のように思います。その方向に強く反対するものではございませんが、2点確認させていただきたいと思います。
資料6ページ、問題の所在のところに、家事使用人については、家事使用人の働き方の変化を踏まえ、労働基準法を適用する方向でとあります。家事使用人の働き方の変化とは何かを今一度確認させていただければと思います。
私の理解では、むしろ私家庭で働く家事使用人以外の労働者が増加したことが、見直しの一つのきっかけと思います。そうであるならば、家事使用人の働き方の変化というよりは、他の説明になるのではと思いました。
2点目は、労働基準法を適用した場合に、実効化が図れるのかということです。労働基準監督署が現在のマンパワーで様々な法令違反等に対応できるのか、その見通しを教えていただければと思います。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。これは事務局へのお尋ねと思いますので、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 まず、働き方の変化ということでございますが、1つは、昔ながらの住み込みでの家事使用人の方というものが調査の結果、大分数を減らしていて、今、水島先生がおっしゃったような労働者という立場で、家事支援サービスというような形で働いている方と同じように、短時間で家庭に赴いて家事をしているというような形で働いておられる方がかなり多いという状況が見受けられるということが1つございます。
もう一つは、個別の事例でも様々出てきておりますが、介護事業所の介護労働者としての立場と家事使用人の立場を兼務して、その家庭の中で訪問介護をやる。そのステージにおいては介護事業所の労働者として介護保険の適用を受けながら働いていて、その周辺で、その家族のための業務をやる、買い物をしたり御飯をつくったり、そのようなところは別途契約という形で家事使用人として働いているというような複合的な働き方をしている方も増えていて、そういった場合に、労働者である立場と家事使用人である立場と、という複合的なことをやっている方もかなりいらっしゃるというような結果が出ていた。このようなことが変化として挙げられるのかなというところでございます。
基準法を適用した場合の実効をどのように図るかということですが、これは、私ども行政としてどのようにやっていくのかというのはこれからしっかり検討していかなければならない部分ということで、監督署と家庭の関わりをどのようにしていくのか、あるいはその他の労働者になったことによって適用される法の適用というものをどのような形でつくっていくのかというのは、これからの検討事項になるかなと考えているところでございます。
○荒木座長 水島先生。
○水島構成員 ありがとうございました。家事使用人の働き方の変化について2点お示しいただき、納得がいきました。ただ、1点目につきましては、短時間で働く人が増えている、だから労働基準法適用というのは腑に落ちないところもあります。
それから、2点目ですけれども、マンパワーの問題もありますが、以前この研究会で申し上げたように、国家的監督や規制が私家庭に及ぶことにつきましては慎重に御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 今の点について、労働基準行政だけではなくて、職業安定行政との連携をしながら円滑な適用の体制の整備を進めていっていただきたいとは思うのですが、実際上、今、労働基準法とか労働安全衛生法、労災保険法も含めて適用除外されるという解釈のもと、職業紹介で派遣して、直接契約は各家庭と結んでいるけれども、労働基準法等の責任は免除されているという構造になっていますが、例えば、今お話があった介護保険のサービス提供については基本的に介護保険事業者というのが労働契約上の使用者になって、全部責任を持って派遣してやる。途中までは介護保険なのだけれども、途中からは家事使用人になって、途中で変わってしまうという状況になる中で、それがこれからは連続的になった後で、例えば選択肢としてどういうものがあり得るかというと、家事使用人の家事代行サービスみたいなものを、介護保険のサービスと同じように、全部直接雇用して送り込んで、家庭では契約は結ばせないという形で、その場合については全部法令上の責任も指揮命令も基本的には事業者が負うというビジネスモデルと、他方で、今やられている職業紹介で、紹介はするけれども、後の責任は全部家庭でやってねというもので、家庭が労働契約を結んで、労働基準法等の責任を負うというパターンも、今後も可能性としては残る。
ただ、それがうまく実効的にワークするかどうかというときに、例えば労働者派遣という形になると、雇用上、契約上の責任は基本的に派遣業者が負いつつ、現場では指揮命令、指揮監督することができるけれども、これは事実上の指揮監督であってというパターンが出てくる中で、今後、例えば直接事業者が契約を結んで、全ての責任を負うといって家事使用で送り込んだとして、介護保険については定型的なサービスをするので現場で指揮命令はしないにしても、家事使用人って現場でいろんなことが起こり得るので、定型的なサービスでないところで、現場で指揮命令、指示をするとなると、急に労基法上の責任を負わなければいけないということになってくるのかどうか。
その場合は、労働者派遣という形で、現場で派遣しながらできるようなビジネスモデルもつくって、それでちゃんとうまいぐあいに移行していくとか、それを例えば家事使用人の提供を受ける家庭が事業者に全部お願いするか、派遣として現場で指揮命令できるようにするか、それとも全部自分で、職業紹介受けながら、我々で全部責任負いますという、幾つかの選択肢の中できちんと選択できるような体制をつくるには、職業紹介のところで、要は介護保険みたいなサービスと派遣みたいなサービスと、そして紹介にとどまるサービス提供というのがうまく選択肢として出てくることが必要なので、そことも連携しながら労働基準法制としての監督の円滑な運用も考えていってもらうことが必要かなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
山川先生。
○山川構成員 ありがとうございます。質問というか、確認になるかもしれませんけれども、基本的な方向性に異存はありません。その場合、労基法第9条との関係で、「事業に使用され」というふうに労基法第9条では事業性の要件が課されていまして、それで、先ほど来の、家庭で家事使用人を雇用するという場合に、第9条のほうの事業性を維持するとしたら、その点をどう考えるかという問題が起きそうな感じがいたします。
前提として、そもそも第9条にかかわらず家事使用人について労基法を適用するというふうにするのか、それとも、第9条を維持しつつ、つまり、「事業に使用され」という要件を維持しつつ、そこの中で家事使用人に労基法の適用をするというか、適用除外規定を設けないとするのか、その辺り、ちょっとお伺いしたいと思います。
○荒木座長 事務局からいかがでしょう。
○労働条件政策課長 第9条と第116条の関係につきまして、これまで過去の経緯的に改めて解釈の整理が必要なのかなと思うところではございますが、山川先生御指摘のとおり、第9条においては、「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と書いてある一方で、第116条第2項は、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」と書いてあるところからいたしますと、家事使用人は一応労働基準法上の労働者であることを念頭に置きつつ、第116条第2項で除外をしているものと理解をしているところでございます。
これが、第116条第2項がなくても、事業に雇われていないのだから労働者ではなく、労働基準法の適用がないと見る解釈もあろうかとは思いますが、ちょっと両者の関係の整理も含めて、適用するしないにかかわらず検討が必要かと思います。ただ、安全衛生法等の書き方から見ましても、基本的には労働者に入るものと理解しているところではございます。
また、若干付言いたしますと、労働契約法においては、家事使用人は、労働契約法の適用の対象となる労働者であると整理されているところでございまして、それを前提とした場合に、今回、労働基準法を家事使用人について適用するかどうかということについて言いますと、その監督権限の行使もさることながら、様々な最低労働条件に係る規定であるとか災害補償に関する規定について一律に除外されるということでよいのかどうかということの御議論も要るのかなと思うところでございます。
○荒木座長 よろしいですか。
○山川構成員 ありがとうございます。ほぼ確認できました。そうしますと、改めて整理すべき部分も残っていると。特に規律の内容によって変わってくるとか、あとは労働基準監督制度の運用の在り方にも関わってくるのかなという感じがしました。ありがとうございます。
○荒木座長 石﨑先生から手が挙がっております。お願いいたします。
○石﨑構成員 ありがとうございました。
私も同じ点でして、今いろいろと事務局の方から御説明いただいた中でまた非常に勉強になったというところなのですが、まず1点目、水島先生から問題提起がありました家事使用人の働き方の変化というところ、その中で、通いで働かれている方も増えているというお話なのですが、それは何というか、働き方の変化という表現に最終的にはなるのかもしれませんが、要するに家事使用人が、かつてのように、家族とほぼ同然のような形で一緒に暮らしてということではないというような趣旨として承りまして、そのこと自体はやはりこの適用の方向の理由になってくるのかなと私の中では腑に落ちたところであります。
もう1点として、具体的なケースとして、家事使用人の方が介護保険の適用を受けながら訪問事業者の労働者として勤務しつつ、また同時に家事使用人として働くというケースがあるというお話で、そこに関して水町先生からいろんな整理の在り方があるのではないかという提案も出たところではありますけれども、そうした働き方が引き続き行われるとしたときに、この検討会の別のところで議論している労働時間の通算の話とかがあるかと思いますが、そういったケースになってくると、ある程度やはり事業者と使っている家庭のほうとの連携というのは期待可能かなとも思われますので、そういうケースですと、場合によっては通算という考え方も取り得るのかなということを思ったところであります。
私からは以上であります。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
山川先生。
○山川構成員 労働基準法上の「労働者」については、長期的にはいろいろ検討する課題があるということと、現下の課題としては、おそらく昭和60年研究会報告をどう考えるかということが問題になろうかと思います。改めて現状に合わせて検討の機会を設けるということは重要ではないかなと思っております。その結果どうなるかは分かりませんけれども、推定方式とかいろんなこともありますので、そういったことも踏まえて、この報告の基準のつくり方というか、書き方みたいなことになるかもしれませんけれども、推定というと、前も申しましたけれども、何となく裁判所の主張立証を前提にしているようですが、例えば重要な要素とそうでない要素くらいでも、例えば裁判にいったらそれは推定に事実上使われるかなという気がしますし、その辺りも、様々な運用の在り方が出てきますので、そこに即した示し方みたいなことも検討する必要があるかと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
労働者性、労働者に該当するかどうかについては、ヒアリングも行いました、フリーランスの方々との関係でも、フリーランスと認められるのか、それとも労働者になってしまうのではないかと、そのことを恐れて、フリーランスとしての就業が阻害されるという問題も御指摘いただいたところです。労働者性をどう判断するかについて、これは世界共通ですけれども、実際の就業状態を基本として、その状況が使用者の指揮命令に服して労務を提供し、賃金を支払われているかということで、客観的に判断されるということだと思いますが、非常に対応が要請されているのは、予測可能性がないのではないかという問題だと思います。
この問題は、一つの対応の方向として、契約でどういうことをすべきかというのは決めるわけです。その契約どおりに展開した状況であれば、それは労働者となるのか、それとも独立営業者と評価されるのか、これは事前にも判断可能ではないかと思います。その契約どおりに実態が動いていなかった場合は、労働法、あるいは裁判所では実態を基本として労働者性を客観的に判断する。つまり、事前の契約どおりの展開がどう評価されるかという問題と、現実に展開された状況がどう評価されるかという2つの点について少し区別をして、事前の契約どおりの展開であった場合どう評価されるかということを行政としても整理をし、その契約から実態が離れた場合に一体どうなるか、こう離れたらこれはもうだめですとか、このとおりに展開しているのだったらこれは労働者とはならないとか、そういったことを少し示していくことも実務にとっては予測可能性を高める一つの方策かなということも思ったところでした。
ほかにはいかがでしょうか。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
今、座長からお話があった点とも場合によっては関わるかもしれないですし、全くまた別の話になるかもしれないのですが、まず、この労働者性に関して、今後専門的な検討会でさらに御検討いただくという全体的な方向性についてはそれでよろしいのではないかと私も思っているところですが、その中でちょっとぜひ御検討いただきたいところとして、例えば大学教員などもそうだと思うのですけれども、非常勤の仕事をするときに、雇用形態でやるケースと、場合によっては業務委託でやるケースがあるということを伺っています。やっている業務の内容としてはほぼ同じようなものである中で、その契約形式を違えているというそのことが一体どこまで許容されるのか、されないのか。
先ほどお話に出た家事代行などについても、ここでは家事使用人について労基法を適用する方向でという話だったのですが、ケースによっては業務委託で多分依頼して、家事の一部を切り出して依頼してやっているケースというのもあるというところを聞いておりますので、そうすると、やっている仕事内容としては同じだけれども契約形態が違うということがいろんなケースで存在していると思うのですけれども、そこで何が違っていたら違いを設けていいのかだめなのかというところ。特に、同じことをやっているのに、雇用と業務委託と両方、契約形態が散見されるような業種についてちょっと御検討いただけるとありがたいなと思ったところになります。
私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。労働法的に言うと、現実の就業環境が同じであれば、それが労働関係と評価される場合は、業務委託という名称の契約をしていても、それは労働契約であり労働者であるというように客観的には判断されると思いますが、実態として2通りの契約が普通に行われているという状況についてどう考えるかというのは一つの課題かと思いました。
安藤先生。
○安藤構成員 今の荒木座長のお話に質問なのですけれども、雇用契約として家庭の家事仕事を任せているのだけれども、実際は業務委託になっている、つまり指揮命令をしていないようなケースというのもあり得る気がするのですが、その場合は実態を見て、労働者としては認められないということになるのでしょうか。
私がイメージしているのは、例えば自分が仕事に朝出ている間に鍵を既に預けてあって、掃除と洗濯だけをやってくださいといった内容が与えられていて、しかし、実際の進め方については特段の指示もなく、契約された事項だけをやっていただいて、定められた時間で作業を終えて出ていくといった、本人が直接いない場に家庭に入ってきて作業するといったタイプのものもあると思うのですが、先ほど、どちらかの契約であったとしても、労働者性があるのだったら労働法の枠に入るという話でしたが、反対のケースはあるのかというのが聞きたいことなのですが。
○荒木座長 ほかの先生方、違う意見かもしれませんけれども、客観的にどのように働いているかが基準でありますから、仮に雇用契約という名前がついていても何ら指揮命令に服さず役務を提供しているという場合には、これは客観的には雇用契約、労働契約ではなく、労働者でもないということになるのだと私は理解しております。
どうぞ。
○安藤構成員 まず、労働者性のところで、既に何回か発言しているので今回の資料にも記載があるのですが、私が関心を持っているのは経済的従属性についてです。繰り返しになりますが、経済的従属性があると保護の対象になるといった整理をしてしまうと、仕事を依頼する側からすると、一定量以上の仕事を任せると労働者として判断されてしまうということで、仕事の任せ方が変わってくる可能性がないでしょうか。そのようなときに、労働者にとってメリットがあるのかといったときに悩ましい問題があるかと思っています。
例えば、最近いろいろなところで注目されているスポットワークのような、限られた回数、一回限り、短時間の仕事を依頼する。その際に、特段、履歴書などを出してもらうとか、面接などもせずといったタイプの仕事の場合であったとして、社会保険料の適用を受けないようにということで仕事量がコントロールされているといった事例もあると聞いています。何らかの法制度のもとで、これ以上仕事をすると条件が変わるのでということで仕事がもらえなくなるといったケースがあると、これは労働者にとってプラスの面、マイナスの面、いろいろあるとは思うのですが、いずれにせよ、経済的従属性という話を入れると、副業・兼業なども含め今多様化している中でなかなか難しいのではないかと考えますので、労働者性のところに、特に資料にあったプラットフォームワーカーについて欧州ではそういう議論があるという話はありますが、経済的従属性というのを入れるのはあまり適切ではないのかなと感じています。
その上で、経済的従属性がある労働者についての保護であったり、また経済的従属性があるのだけれども労働者ではないケース、その保護について、別に、例えば独占禁止法、下請法、また11月からのフリーランス保護法といろいろ多様な枠組みがある中で、個々の働き手が、自分がどの枠組みで守られているのかというのが認識されやすいように整理することが必要かと感じました。
併せて、先ほどの家事使用人のケースですが、資料では、先ほどあった話で言いますと、「家事使用人の働き方の変化を踏まえ」という書きぶりですが、働き方が変化しているというよりは、家庭での位置付けや、契約が変わっているのかなと思うところであります。
その中で水町先生からあった、実際には多様な契約があり得るという中で、今回、家事使用人について直接契約をしているケースにおいて労基法の適用というのは、私は方向性としては望ましいものだと思っていますが、どのような契約のときに誰が責任を持つのかということが明確になっていないと、ここでルールを決めたとしても、まさか自分がそういう使用者として振る舞わないといけないということを認識していないといったことになってしまっても困るかなと思います。仕事を依頼する側として、仲介事業者に依頼してマッチングしたあと、自分はサービスを受けているだけで使用者は契約した事業者側という感覚の人もいるでしょう。そうではなく、自分が直接雇っているという位置付けについてあまり理解されていないと、このように枠組みを変えたとしても実効性を持たなくなるということもあり得ると思うので、誰がどういうときに責任を持つのか、この明確にするためのうまい仕組みづくりが必要かと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水町先生。
○水町構成員 今、安藤先生のおっしゃった前者のほうの経済的従属性ですが、経済的従属性というネーミングが誤解を生んでいるのかもしれませんが、必ずしも量が多い少ないという問題ではなくて、基本的には質の問題として受け止められていることが多くて、例えば諸外国で経済的従属性というようなものとして受け止められているのは、事業組織に組み込まれて働かざるを得ない状況に置かれていたかとか、契約を締結するときに個別交渉ができたのか、それとも一方的に示されて、それを受け入れざるを得ないような契約締結のプロセスだったのか、さらには、固有のお客さんを自分で持っていいと、自分は自分でお客さん取ってサービスしていいと言われているか、それともこの事業で得たお客さんしかだめで、ほかに似たようなことを別にお客さん取ってやっちゃだめだよと言われているか、そういう質的なもので、人的な従属性以外に経済的な意味での従属性があるかどうかを、契約の分量、労務提供の量が多い少ないというよりもそういう質的なものとして見られていて、そういうものを、これまで例えば労基法上の労働者概念の中にダイレクトに入ってきていないものを場合によってはどう考慮するかというものだと考えてもらえれば、こういう場合にはこういうことも考慮するし、こういう場合にはそうでないかもしれないという概念として今注目されていると理解いただければと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。労働者概念というのが日本では労基法上の労働者概念と労組法の労働者概念で違っているのですね。ドイツでは、労働者概念のほかに労働者類似の者という概念があって、そこでは50%以上、1か所から収入を得ているというような割と数値化された、その場合には労働者類似の者と見ることができるというような、これが経済的な従属性の一つの指標となっているということで、明確性のためにそのような数値化された経済的な従属性に着目するアプローチも1つありますでしょうし、日本の労組法の場合は、同じように経済的な従属性を加味しますけれども、そうした数値化されたものはないので総合判断となるということで、これはいろんなアプローチがある。今日の事務局の話もありましたけれども、法制度としてどういった仕組みをつくってその状況を受け止めるか、その仕組み方によって実は労働者に該当するかどうかという判断も左右されるということでありますので、その両方を見ながら議論するということが要請されている問題かなとも思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
島田先生、お願いします。
○島田構成員
まず、家事使用人についてなのですけれども、労基法では家事使用人が適用除外とされており、私家庭一般を適用除外していないということを考えると、私家庭で働いている、ほかの家事使用人以外の労働者があり得るということになります。その人たちとのバランスを考えると、適用除外をなくすことが望ましいのではないかと思います。その上で、それでも私家庭に責任を負わせるというのは問題があるのであれば、先ほど水町先生がおっしゃったようなビジネスモデル、私家庭と直接契約させないような契約を推奨していくということが望ましいのではないかと考えています。
第9条の労基法上の労働者性ですけれども、定義自体はいじったりせずに、その明確化について今後長期的に検討するという点はそれでよいかと思います。
以上です。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかによろしければ次の議題に移りたいと思いますが、よろしいでしょうかね。
ありがとうございました。それでは、第二の議題であります労働基準法上の「事業」について、これもどなたからでも結構ですので、どうぞ御意見をお願いいたします。
水町先生。
○水町構成員 労働基準法の適用範囲を確定する、適用対象を確定する概念としての事業とか事業場概念の在り方が、前にも申し上げましたが、今、事業場って場所的な概念として捉えられていますが、本当に場所的な概念で捉え続けていいのか。今後いろんな働き方が出てくるときに、場所にこだわると、場所がないときに擬制的な取扱い方をしなくてはいけなくなってきて、例えばそれが端末を持ってどこでも仕事しているし、使用者側にとっても、別にどこにも事業場を置いていない。そこも端末とかクラウドの中に全部情報があってやっている。
そのときに、特に本社とか事業場とか決めずに自宅でやっていて、自宅というのも別に本当に定まっているかどうか分からないというような状況の中で、例えばそのときに法人が登記している所在地を事業場だとした場合にどうなるかというと、法人の登記の場所って自由に選べたり、最低賃金が低い県に法人登記をしようとか、場合によっては海外に法人の登記があった場合に、労働者はみんな、端末は日本国内で働いているけれども、事業場が日本国内にないので、これは労基法を適用しなくていいのかとか、そして、実際に例えば国際私法の準拠法決定のときに、強行的な法規については、原則として労務提供地をまず見て、労務提供地が動いていたり特定できない場合には雇入れ事業所所在地というので特定していますが、それと例えば労基法上の適用というのが今後もしかしたらずれる場合も出てきて、いろんなパターンが考えられる。
おそらく、新しい、テレワークだけではなくて、デジタル化の中で、スタートアップ企業も含めていろんな働き方、事業分野が出てくると、これまでの場所を中心とした労働基準法の事業概念、事業場概念で対応できないことが出てくるという中で、いろんなパターンがあり得るので、労務提供地なのか、それとも事業場所在地なのか、それで対応できない場合はどうするのか、海外にあった場合にはどうなのかと、いろんな問題も出てくるので、これは多分、すぐにこれとこれはああですねというふうにできないような問題でもあるので、場合によっては労基法の適用単位とか適用対象に関する新しい形態に対応するための問題だとして、例えば労働者概念について専門的な知見を含めてこれから議論を積み重ねていくのと並行して、事業概念、事業場概念についても少し先を見た検討を行っていくということが必要かなと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水島先生。
○水島構成員 ありがとうございます。
結論としては水町先生と同じですが、ただ、労働基準法の適用単位が地理的に、場所的に定められているという原則は維持すべきであると考えます。場所的な「事業」で働く労働者がまだ大多数ですし、監督行政のためにはこの地理的要因、場所的要因を外せないと考えます。労基法の実効性のために各労働基準監督署が事業を管轄・監督しているわけで、その原則は維持すべきと考えます。
他方で、水町先生御指摘のような完全クラウドワークのような事業、つまり、現行の規制では十分に労働基準法の意義が達成できないような事業が増えることが想定され、そうしたものへの対応というのは、中長期的な議論として、今から検討の俎上に載せるべきではないかと考えます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
私も、今、両先生がおっしゃられたこととほぼ同じところの話になるのですが、この事業の概念を定める目的との関係で、後で議論する労使コミュニケーションのところとの関連する部分も多いと理解しています。例外的な位置付けということになるのかもしれませんが、完全テレワークだったり、あるいはメタバース上での働き方みたいなものを想定したときの事業ということになると、ちょっと場所的なところで画することがなかなか難しくなってくる。かつ、規模が小さければ、本社で全ての労働者を一事業場と捉えてもいいのかもしれないですが、他方で、労使コミュニケーションの実効性というところの観点から、ある程度やはり人数規模、擬制的にでも区切っていく必要というのもあるのかもしれないと思っているところでして、そうした対応を含めて今後中長期的に御検討いただければというところになります。
私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水町先生。
○水町構成員 これからいろんなことも含めて検討するということでいいと思うのですが、例えば先ほどの原則と例外の間みたいなことも、実際、現行法上は起こり得て、例えばコールセンターってほとんど今家でやっている中で、その人の家がどこにあるのか、都道府県でどこに所在しているかというのと、その雇用管理をどこでやっているのかという、雇用管理地でその人の事業場を決めるのか。その雇用管理地が東京にあったら東京の最低賃金が適用され、逆に雇用管理地ってもうクラウドで管理できるとすると、雇用管理地は最低賃金の一番低いところに置いて、東京の自宅で働いている人にもその雇用管理地の最低賃金が適用されるのかとか、そういう形でもいろんな問題が出てきているし、出てくる可能性もあるので、原則と例外の関係の真ん中にあるようなものも含めて少しきちんと検討したほうがいいかなと思います。
○荒木座長 ありがとうございます。
山川先生。
○山川構成員 基本的にこれまでの議論に異存はないのですけれども、今の水町先生のお話との関係で言えば、今でも分からない事項とか、あるいは特別な取扱いがなされている事項はかなりありまして、出向の場合に、労働時間関係は出向先ですが、多分、賃金を出向元が払っているときは賃金については出向元が所属事業場になるのだろうと思いますし、それから、海外派遣の従業員の駐在員等では、解雇するのは日本から解雇するということで、さっきの雇用管理の話ですけれども、雇用権限を持っている者が日本にいる場合には、日本の労働基準法によるなど、その事項ごとに要は考える。労働基準法第10条の使用者の定義のところでも事項ごとに考えていますので、その事項というのは権限とか管理によって変わってくるので、その辺りは整理をする必要があろうかと思います。
ほかに、これはよく分からない点で、別にここで結論を出す必要はないのですけれども、採用内定者をどうするか。労働条件明示の第15条は、採用内定でも契約が成立すれば適用がありますけれども、採用内定者の所属事業場はどこか。採用内定者には、解雇予告の規定は適用がないとの見解が有力ですけれども、労働基準法の適用はかなりあります。いろいろなところで、現実にもう既に権限とか管理の対象によって変わっているという現象が起きているので、それは改めて整理し直す必要がありそうです。
ただ基本は、最初の頃に申しましたように、法律の規制の趣旨とか規制事項によって変わってくる。水島先生おっしゃられたように、管轄とか、あるいは適用の場所的範囲は、場所が基本になるかなという感じはしますけれども、その場合でも事項によって変わるということはあり得るかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。おそらく議論されている事柄は2つあるのかと思いまして、労働基準監督上、どこの監督署が管轄するのかという問題は、今、山川先生がおっしゃったように問題となり得るところですけれども、もう一つ、規範が場所によって異なるというのは、幸か不幸か、日本の労働基準行政のもとでは、最低賃金は都道府県で違うのですが、そのほかは全て、労働基準法は統一的な規範ですから、どこで起ころうと、日本国内で労務が展開する限りは規範が変わるということはないのだと思います。
これに対して海外でありますと、これはそもそもどういうことになるかというので、水町先生御指摘のように、労務提供地の強行的な規制が原則及ぶということになりますし、それでも、フライトアテンダントのように一体どの国で労務を提供しているのかわからない場合もある。労務提供地が不明な場合はどうするということで、雇入事業所所在地とか、いろんなルールがありますが、これは、どの国でも難しい問題として残り続けるかと思います。しかし、日本国内に限りますと、具体的に規範が場所によって異なるのは最低賃金だとすると、この問題は、対応の仕方としては、最低賃金規制のほうで対応する。例えば派遣の場合も、派遣先と派遣元で最低賃金額が違った場合にはどちらの最低賃金を適用するかについては最低賃金法のほうで派遣先事業場の最賃を適用すると規定しております。そのように、最低賃金規制の中で規範の違いについて対応するという在り方もあり得るので、これも事業が客観的にどこかを決めなければ対応ができないかというと、別のアプローチもあるのかもしれないと思いました。
ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 教えていただきたい点として、事務局なのかもしれないですけれども、先ほど水町先生がおっしゃっていたような、例えばコールセンターにおいて東京の会社が地方の従業員を雇用していたりするような場合にどちらの最低賃金が適用されるのかというところは実態としてどうなっているのか。現状としてそういうことはもう既に起きていると思うのですけれども、なので、例えば地方の労働者が東京の会社でクラウド上で契約を結んで働く場合、東京の最低賃金が適用されているようなことになっているのか、会社としてはできるだけ地方の人を雇って安くしたいということで、そちらでの最賃の適用になっているのか、その辺りって実態としてどのように運用されているのか、もしお分かりだったら教えてください。
○労働条件確保改善対策室長 テレワークを行うような場合でどちらの最低賃金かということになると思います。例えばA県の事業場に所属する労働者がB県の自宅でテレワークを行う場合に、AとBどちらかということであれば、現在で言えば、A県の事業場所在地の最低賃金が適用されるということになろうかと思います。
○首藤構成員 分かりました。
○荒木座長 水町先生。
○水町構成員 基本的にそれが最賃法の問題として捉えていいのか、そして海外の問題については難しい問題があるのでそれは置いておいてとしていいのかどうかで、例えば事業場概念で言った場合に、日本国内でみんな働いているけれども、その事業場は海外にあったというときに、労務提供は日本で確実に行っているのに事業場所在地が海外だったということで、日本の労基法が事業場単位で適用対象を決めているということで労基法が適用されないということでいいのかそうでないのかというところも含めて、これはきちんと議論すべきだと思います。
○荒木座長 絶対的強行法規の強行連結の話にもなるのですけれども、山川先生が大家でらっしゃいますが、いかがでしょうか。
○山川構成員 労基法のどの側面かという問題はあるのですけれども、基本はやはり所在事業場で決まってくると思います。ただ、日本法を適用するという合意があったとした場合に、労基法の内容も契約内容になっていると考えれば、契約上の問題としては日本法を適用するということはあり得るかと思いますが、例えば海外の事業場がある場合に、そこに刑罰権を行使することはできないということですので、その規律の中身によって変わってくるのかなと思います。
○荒木座長 いずれにしても、デジタル化によって従来想定していないような労務の提供の在り方が出現しておりますので、これについてはやはりしっかりと理論的にも詰めるべき問題だというのはそのとおりですね。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 1点確認というか質問なのですが、資料の2ページにある問題の所在というところで、あくまで、「労働基準法上の「事業」の概念は、行政解釈上、次のとおり整理されている」となっています。ということは、今議論されている話というのは、必ずしも法改正とかにつながるものではなく、単にここの行政解釈の内容が現在の実態に合わせて、おそらく、1つ目の➣のところの「工場、鉱山、事務所、店舗等の如く一定の場所において」というものが外れて、大事なのはこの後の「継続的に行われる作業の一体をいう」。この「継続的に行われる作業の一体」というものは多分自宅からテレワークで会議に参加していようが、自宅で作業をやっていようが、一体のものだったら含まれるというふうになるのかと思います。
この後半に、「支店、工場等を総合した全事業を指称するものではない」という中に、必ずしも場所が同じでなければならないわけではないというものが入るのかなと感じました。とはいっても、既に3つ目の➣のところに、「場所的に分散しているものであっても」ということで、「一の事業として取り扱うこと」というのがあるので、基本は、ここの行政解釈の内容を実態に合わせて変更していくという話なのだろうと思うのですが、法律をいじる必要があるのかというのは、ないという理解で正しいでしょうかというのが事務局への質問です。
○荒木座長 ではまず事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 法律上何らか、例えば労働基準法の第9条なりの規定についてもっと踏み込んだ整理を示すべきという御議論を全く排除するものではありませんけれども、本日いただいている議論の内容を私どもなりに理解しますと、行政解釈で基本的には場所的概念に基づいて原則として処理するというところについて、実態に合わせてもう少し変更なり、あるいは個別の事例における判断の明確化ということで様々御示唆をいただいたのかなと受け止めております。
○荒木座長 水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。この労基法上、「事業」ということしか書いていないので、そのもとで法律は改正しないで解釈によって変えられるという部分もあるかもしれないです。議論をしてみたら、場合によっては、「事業」というのを、労務提供地なのか、その事業場所在地なのかというところで、どう解釈するかというところまで来てみたら、今の法令の立てつけと齟齬が出てくる場合も、場合によって出てくるかもしれないので、それは検討を尽くした上で、法令改正が必要なのか、それとも法律は変えないで解釈で変えられるかというところはあり得るかと思います。
いずれにしても、ここの今の通達、行政解釈は場所を中心とした概念であって、その中でうまく処理できない問題が今後出てくると思うので、そこをまず検討した上で、法令解釈が必要かどうかも含めて検討すればいいかなと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
今は削除されておりますけれども、歴史的には、労働基準法の第8条で労働基準法の適用対象事業がずっと並んでいたわけですね。あるいは、それがあってか、第9条で「事業に使用される」というのは、労働基準法適用対象事業が決まった上でその事業に使用されるということで事業概念を第9条でも書いていた可能性もあると思います。しかし、対象事業を列挙いたしますと列挙漏れの事業で働いている労働者に労基法を適用しないのかという問題が生じましたので、今は第8条を削除して、事業ごとに労基法上の規制を変える場合の別表をつくって、そちらのほうで列挙して、この事業についてはこのように対処するよというので、適用対象としての列挙を外したというような経緯があります。しかし「事業」という用語は、そのほかのところにはそのまま残っているということもありますので、そういう現状において、改めて第9条の労働者概念を規定する上での事業をどう考えるかという問題、それから、働き方がICTの発展によって変わってきたという状況、こういったことも含めて少しじっくりと検討すべき課題ではないかと思います。御示唆があったように、労働者概念についての検討と並行して検討すべき重要な課題ではないかと私も思ったところです。
ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生。
○黒田構成員 ありがとうございます。
ちょっと労働基準の本筋とは違いますけれども、安全衛生の観点から考えると、場所を基本として考えているもともとのルールに引きずられているのかもしれませんが、やはり場所、そして場所に紐づいている組織をベースで考えていくというところで、テレワークという働き方が出てきてちょっと複雑にはなってきていますけれども、安全衛生に関しては特に違和感というものを感じていないところです。実際はいろんな場所で勤務をしていても、今では、遠隔でもかなりの安全衛生の管理やサービス提供というのは実際にはできますし、一事業場でなくて複数事業場においての話にはなりますが、安全衛生に関して距離的要件は今撤廃されていますので。
ただし、監督行政ということで考えると、本社が東京にあって、その小さな支店なりブランチが例えば滋賀県にあります、というときには、両方の地域の監督署に相談していくということを実際にはやっていると思うので、二重規制という形になるのかと考えます。労働監督行政は一つだと思いますので、両方に相談して何か大きな齟齬が出るということはないと思いまので、二重に監督されているとか二重に相談して、ということをやっているとは思いますけれども、組織という単位で事業場を考えることには安全衛生上は何の違和感もないなと思っておりますので、一応意見を申し上げます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
それでは、よろしければ第三の議題の労使コミュニケーションのほうに移りたいと思います。この労使コミュニケーションについても、どうぞ、どなたからでも御自由に御発言をお願いいたします。
水町先生。
○水町構成員 中身については、これまでの研究会でほとんど申し上げてきているので、今後の方向性についてですが、3ページにある、まず過半数代表者の選出手続など過半数組合及び過半数代表者の位置付けについて、今は、労基法上、労使協定、労使委員会の決議が必要な条文でそれぞれ個別に書かれていますが、全体として過半数組合とか過半数代表者というのはこういうものなのだというような、法令上、特に法律上の位置付けを明確にしながら、過半数組合、過半数代表者、そして労使委員会というものは労基法上どういう位置付けなのだということを見えやすく分かりやすくするということが必要かなというのが1つ。
それと、過半数組合、過半数代表者への支援との関係で、過半数代表者を複数化して実質的なコミュニケーションが図れるようにするということが直ちに難しいとしても、例えば多くの大きな事業場で過半数代表者を選ぶ際に行われている、過半数代表者は1人選ばれるけれども、過半数代表者がそれを補佐するメンバーを指名して、そして過半数代表団みたいなものをつくって、それで事業場、使用者と具体的な協議なりを行っていくということがやられているので、例えば過半数代表者は1人選ばれるとしても、過半数代表者が代表者を補佐する者を指名することができる。そして、そういう指名するという場合に、使用者として、今、労働基準法施行規則で義務づけられている配慮ですね、そういうことをして、多様な従業員構成に即して過半数代表団をつくっていくということを過半数代表者がするとすれば、それをなるべくきちんと配慮したり支援していってあげてくださいということを、これは法律で書き込むことは難しいかもしれませんが、労働基準法施行規則にある配慮の具体的な内容として書くことによって、そういう良い取組を、実際上、法令上も促していくということで、実質的な複数化、実質的なコミュニケーションを促すということも考えられるのではないか。
併せて、そういう過半数代表者とか過半数代表を補佐する者というふうに選ばれた人に対しては、実際協議する、話し合う時間を勤務時間中に認めてあげるかどうかとか、会社のホームページ上、意見を集約するような場所を与えて、意見集約を図ることについて一定の配慮をするとか、さらには、労基法の解釈等で具体的なことが分かりにくい場合、その過半数代表者や過半数代表を補佐する者の人たちが専門家にいろんなことを聞きたいという場合には、例えば弁護士とか社会保険労務士の人たちに話を聞きたいという場合のその支援、サポートもするとか、そういう形で意見集約とか実質的なコミュニケーションを促していく、そのサポートをきちんと使用者が行うべき配慮の例として記載していくということが考えられるのではないかと思います。
もう一個、選出手続についても、実質的に過半数代表者を選ぶときにどこまで会社が関与していいのか。具体的には選挙をするという場合に、従業員の名簿を過半数代表者は持ち合わせていないですし、そういうメールを従業員に送ることのサポートとか、その開催のときにどういう労使協定が今結ばれていて、今回の過半数代表者の選出に当たってどういうものが議題になり得るのかということについては、具体的に選出に関与するとか、労働者が話し合う中身について関与するということがなければ、そういう会社側がサポートしてあげるということもその配慮に含まれると思うので、どこまでやっていいのか、どこまでやることが配慮として望ましいのかということを少し具体的に書くことによって、実質的なコミュニケーションが促せられるようにしていくということも、今回ある程度、その法律上の位置付けとそれに基づいてやることができること、やるべきことを少し具体的に施行規則もしくは指針などで書き込んでいくことによって、過半数代表者に対する実質化を、協議、コミュニケーションの実質化を図っていくことが考えられるのかなと思います。
差し当たり以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 今の水町先生の御意見と全く同意するものでして、私も、基本的に過半数代表者の選出であるとか、複数選出の有無であるとか、何ができて何ができないのか、どのようにどういうことを推奨するのかということを非常に具体的に示していくことが、過半数代表のこの機能を実質化していく上では不可欠だろうと思っておりまして、今、水町先生がまさにおっしゃったようなことをしていくべきだろうと思っております。
もう一つ、少し難しい論点になるかもしれないのですけれども、過半数代表者については、やはりその活動時間をどのように保障していくのかということも検討していく必要があるかなと思っております。就業時間内に、意見集約であるとか、過半数代表者として代表するためには、そこの現場の労働者たちの声を聞かなければならないわけですけれども、そういったものを就業時間内の時間を使ってやっていいのかというところ、時間のみならず場所もそうかもしれませんけれども、そういったことも含めて会社側に対して、これもちょっと便宜供与の在り方は難しい論点も含みますが、そういったところも考えていく必要があるだろうと思っております。
さらに、会社の外も含めてやはりサポートの体制というものもつくっていかなければ、いきなり過半数代表者になって、意見集約の方法もそうですし、労働法の知識もそうですけれども、全てがスムーズにできる労働者ばかりでは当然ないと思いますので、そういったサポート体制も今後の政策としても取っていくことが必要だろうと思っております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
お二人の先生とほぼ同じ趣旨の意見になりますけれども、使用者がするべき配慮の内容ですとか可能な便宜供与の範囲、あるいはその選出方法だったり、補佐人の選出といったようなところで、現行法の中で可能なこと、あるいは望ましいことについて指針などで具体化していくという方向性は必要ではないかというところで、私もその点、同意見であります。
そういったことは指針で書いていけばよいと思うのですが、併せてちょっと確認しておきたいところとして、やはりきちんと法令で規定すべき事項というのもあるように思っておりまして、過去に出た意見の中でいきますと、例えば過半数代表者がどういう役割を負うのか、意見集約の役割を負うということですとか、あるいはそうした意見集約や労使協定の締結に当たっての判断に必要な情報を使用者側に提示させるといった過半数代表者、あるいは組合の役割に直接関わるようなところについては、やはり指針ではなくて、できれば労基法、難しくとも施行規則できちんと規定していただく必要があると思っています。
また、繰り返しにはなりますが、併せて、不利益取扱いの禁止規定というのはやはり重要だと私は思っていますので、そこは明確な形で規定していただけるとよろしいのかなと考えているところです。
あとは、将来的な話にはなりますけれども、例えば過半数代表者の人数だったり任期について、当面は法律で何か義務づけというのは現実的ではないということ、これは私自身も意見として申し上げたところですが、将来的に、もちろん企業規模によってというところにはなるかもしれませんが、そうした複数制の委員会、組織としての従業員代表制の導入というのも検討課題になっていくということは盛り込んでいただいてもよろしいのかなと思っているところではあります。
私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
水島先生。
○水島構成員 ありがとうございます。
過半数代表者が機能していない現実が指摘され、それが実質的な労使コミュニケーションの妨げとなっていることが課題であると、この研究会でも御指摘があったと思います。当初は、過半数代表者に労使コミュニケーションの担い手を任せておいていいのかといった御意見が強かったように思っておりました。私は過半数代表者をもっと支援して過半数代表者に頑張ってほしいと思っていたところ、今回、過半数代表者の実質化を図る方向での議論に向かっていることについては大変嬉しく思います。
その上で、過半数代表者の実質化を図る観点として、既に三先生がお話しされたことですけれども、3点あると考えます。第一の点は、過半数代表者の法律上の位置付けを明確にする。労働基準法第1章に過半数代表者の定義を置くことが必要と思います。それにより、過半数代表者の重要性が、法律上、法文上も明確になりますし、今の非常にわかりにくい規定の改善にもつながります。
2点目として、任期制や複数選出について、現行において差し支えないけれども、積極的に認めているわけでもないといった御説明があったように思います。これまでの議論の中でも、任期制や過半数代表者の複数選出は、事業場によっては非常に有効であるという御意見が多かったように思います。これらを法律で義務づけることは現実的ではないと思いますが、過半数代表者の在り方として、こういう方法が可能である、あるいは推奨するといったことを、おそらく指針ベースで積極的に示すことが必要と思います。
3点目は使用者側のサポート体制について、何ができるのか、また何をすべきかを整理して示すことが必要と考えます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
島田先生、お願いします。
○島田構成員
将来的に法律上定義などを位置付けていくということは非常に重要だと思います。その中で過半数代表者に関しては、現在、選出手続が法令上は何も書いていないですけれども、最低限民主的な手続で選出する必要があるといったような意味の定義を入れておくことが必要ではないかと思います。現在でも不適切な選出というのは見られると思うのですけれども、おそらく、どこに書いているか分かりにくいということがあるかと思いますので、細かいことは規則とか指針で書くとしても、民主的な選出が必要なのですということを明示しておく必要はあるのかなと思います。
同じように、先ほど石﨑先生がおっしゃったように、不利益取扱いも法令上書くことが望ましいと思いますし、また、使用者が一定の配慮義務を負うということぐらいも法令で書くことが可能であり望ましいのではないか。その上で、具体的な内容でどこまでできるのか、どういうことが望ましいのかということは規則以下の別のところで書いていけばよいと思います。
また、非常に中長期的な話になるかもしれませんけれども、今の過半数代表者や過半数組合という制度を今後も維持していくのか、あるいは将来的には、労使委員会のような別のところ、統一的な何かをつくることが望ましいのかというような議論も長期的にはしていく必要があるのかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
安藤先生。
○安藤構成員 まず、過半数代表者の役割と位置付けについて分かりやすく、これまでばらばらにいろんなところに書いてあるものを統一的に明記するということはとても重要なことかと思います。ただ、それをやると、よりその役割の重たさというものが明確になってしまって、なり手が不足するといったことにもつながりかねないかなということから、この支援の重要性という話につながるのかと感じております。
どうすれば、その重たい仕事に対してやりやすいかといったときに、これまで複数制にするとか任期制にする、このような話が候補としてあったという中で、例えば私がこれまで発言した中では、複数制かつ任期制で半数改選にする、こういうことにすれば継続性もあるし、自分一人で全て負うわけではないといったこと、あり得るのではないかといったお話をしました。
そこまで一足飛びに複数にしなくても、先ほど、例えば水町先生からあったみたいに、補佐する人として、前の過半数代表者の人を補佐としてつけて、過去のやり取り、経緯などについても情報をもらいながら今のやり取りをするといったことも重要なのかなと思っています。
ただ、人の出入りが激しいような職場の場合、前の過半数代表者が既に辞めてしまっているとかいうケースもあり得るし、今、過半数代表者として選んだ人が辞めてしまう、こんな可能性もあるとする場合には、やはり継続性など考えると複数が望ましいのかなといったことで、複数又は任期制については有力な選択肢として入れておけばいいかなと思う一方、これを推奨する必要はないというか、あくまで可能であることを示した上で、メリットもあればデメリットもあるということも含めて、どういう形で活用するとよろしいのかと、注意点なども示すとよろしいかと考えております。
なり手が不足するという問題だけでなく、なりたい人が複数いるというケースについてはまた同時に考えておく必要があるかと思っています。労働者が全体として一定の方向を向いている、一枚岩のようなときになり手がいない場合であると、複数選ぶのだったら負担が軽減するといった方向になりますが、異なる希望を持つ労働者の複数グループがある中で、今、1人だけ選んでいる、その際に選挙をやって多数を取った側が過半数代表者として振る舞っているといった状況のときに、複数選出を可能にしますよといったときに、単数なのか複数にするかというのはどこで決めるのかといったこの選び方のもとになる、そもそもの立てつけですね。代表者が1人なのか複数なのかといったものは労働者の中で多数決で決めてしまってよいのかといったところ、複数可能ですよと明示するのであったとすると、それに伴い発生し得る混乱、これを防ぐためのあらかじめの手当てというものが必要かなとも感じました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかには。
山川先生。
○山川構成員 ありがとうございます。
概ね皆さんの意見に同感で、特に労働基準法自体に、根拠規定ないし定義規定かもしれませんが、設けるということは特に現在の問題としても適切だと思います。今の労働基準法施行規則第6条の2は、なぜ第6条の2という位置にあるかというと、強制貯蓄に関する労働基準法第18条に合わせている。実質は36協定とか第36条が重要なので、普通、第36条のところで議論しているわけですけれども、全体的に重要な制度になってきているというところから、基準法自体に規定を置いて、場合によってはいろいろな先生から、石﨑先生でしたかね、お話がありましたように、法律に規定ができると法律事項と省令事項をどう振り分けるかという議論がなされることになります。
例えば今の規則第6条の2の第3項で、不利益取扱いをしないようにしなければならないという回りくどい書き方になっているのは、これは規則だからこうならざるを得ないというか、なっているのだろうと思いますので、この辺りの整理がより可能になりますし、また指針のようなものでより詳しく定めるという根拠規定も、規則でもできなくはないのですけれども、法律のほうがより美しくなるかと思いますので、その辺りは、現在の問題に対応する上でも重要なことになるかと思います。
そうする上では、先ほど事務局の方からもお話ありましたけれども、意見集約が想定されるないし期待されるという観点から、そもそも何についての協定、あるいは過半数代表者の選出かというようなことは明確に労働者に認識していただいたほうが、大変だからというのもあるのですが、やはり重要な問題を取り扱うのだということで皆さんの関心が高まるような方策を取る、同時に配慮ももちろんですけれども、そうした施策を取ってはどうかと思います。
根拠規定については、次に労使委員会についてもどうするかということが検討に値するかと思います。今、法の第38条の4で最初に出てきますけれども、もし過半数代表について総則的な規定を置くとしたら、そこに労使委員会を合わせてということが検討の対象になるかもしれません。
あと、任期制とか複数制はなかなか難しい課題があるというのは先生方御指摘のとおりで、特に任期制については理屈の整理からしておく必要がありまして、多分、今の過半数代表者の仕組みというのは、労使協定という契約を結ぶという構成ではなくて、ある問題についてそのときの過半数代表者が同意を与えたかどうか、それで与えた場合には違法性阻却事由になると、そういう形で、契約的な構成でないのではないかと思うのですけれども、そうすると、例えば任期制を定めて、変更する場合、変更の協議をして変更の合意をする場合に、誰が一体変更の合意をするのか。そのときに改めて過半数のチェックが必要になるかどうかとか、その辺りの制度の検討も必要になりますので、そこはちょっと理論的なお話としても検討する必要があるのかなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
首藤先生、どうぞ。
○首藤構成員 ありがとうございます。すみません、度々。
過半数代表者については、今、先生方の御発言のとおりだと私も全く同意しているところです。
もう一つ、3ページの①のほうですけれども、基本的には、36協定などについて、労働組合とコミュニケーションをとり、締結するほうが望ましく、もし組合がない場合には過半数代表者が代替するという立てつけになっているのだと思っております。そう考えると、労働組合による労使のコミュニケーションの促進の部分については、確かにそれを法令上書くということはなかなか馴染まないと思いますけれども、不当労働行為をより厳格に取り締まることは重要だと思います。不当労働行為は、もちろん現在でも禁止されているわけですが、実際に現場で起きていて、それによって労組の結成が難しい実態が多々あることも事実だと思いますので、これをより厳格に運用していただく、これは政策的な対応になるのかもしれませんけれども、についてもぜひお願いしたいと思っております。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生。
○山川構成員 今の首藤先生と、あと、前の安藤先生のお話について1点だけ。これは最初の頃にも申しましたけれども、過半数代表ないし過半数代表者をめぐる紛争というのが結構ありまして、その際にどうするか。少数組合が絡んでいる場合等については労働委員会の制度がそのまま適用されますし、それ以外についても、例えば争議団になった場合ですとか、それから個別紛争のあっせんとか、労働委員会制度もその紛争解決については利用可能である。これは法律で特に労働基準法関係でどうのというよりも、そういうシステムが使えますよという情報提供を促進するのも意外に、首藤先生がおっしゃられたように、結構紛争があるものですから、重要になるかなと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
水町先生。
○水町構成員 2点。1つは、これまでの議論の中で、例えば代表者、代表を複数化するときになるべく多様な従業員層の利益が選出されるようにするほうが望ましいという中で、大きく、諸外国も含めて考えると2つ、複数にするときに、1人代表者がいて、そこで指名するというやり方と、フランスなんかは、複数化したときには比例代表制というので、それぞれのグループがリストを出して、そして日本の選挙の比例代表制みたいにたくさん得票を取ったところから何人ずつという比例代表制でやって、民意というか、従業員の意識が比例的に代表に反映されるようなシステムを取っています。
法令上、今後、過半数代表を複数化するときにはどうするかということを考えなければいけないと思いますが、差し当たり日本では、労基法上の労使委員会で、労使同数制の委員会ができていますが、これは過半数組合又は過半数代表者が残りの委員を労働者側は指名するということになっているので、場合によって多様な意見が必ずしも代表されるということが担保はされていない制度になっています。
ただ、今回、例えば補佐人、代表を補佐する人を代表者が指名するというときに、これは法律上明記するというよりも、指針の中の配慮としてそういうものを書くとすれば、多様な従業員層の利益が代表されるような形で補佐人を選ぶほうが望ましいというので、それを促していくというやり方は1つソフトなやり方としてはあり得るかなということが1つ。
もう1つ、4ページの③のポツの3つ目で、10人未満の事業場の意見聴取も集約できれば望ましいのではないかということと、4つ目で、これは、要はコミュニケーションを事業場単位でやるのか、企業単位で集団化して集約してやるのかという将来の方向性も含めたところですが、差し当たり現行の事業場単位の過半数代表者制度を法律上は維持するとしても、そのもとで、例えば各事業場で、ある会社に10の事業場があったとした場合に、その事業場の過半数代表者を例えば一つに集めて、10人、場合によっては補佐の人も入れてということもあり得るかもしれませんが、その10人を全部入れて、そして場合によっては10人未満で、過半数代表者が選ばれていないところでも、そこの人たちを入れてあげるというような企業レベルでの話し合いをして、そこで横のつながりも意識しながら議論をして、最終的には、10の事業場について、10の労使協定をそこの場で全員10人の過半数代表者が使用者とサインすることによってやるということも現行法上は禁止されていないですし、その場合、例えば10の事業場があるけれども、その中の1事業場もしくは2事業場の代表者が、いやいや私は本社に行ってみんなと話したくなくて、我が事業場で事業場の代表者として単独で話し合いをしながらサインをしたいと言われれば、これはもう代表者の権利として、行きたくないというところに行かせるということはできないので、そういうやり方もあり得ますよというようなやり方を少し整理して書いて、最終的には、労働安全衛生法上の委員会とか、労働時間等設定改善法上の委員会と労基法の委員会というものが実質的に融合しながら、いろんな問題について柔軟に話し合うような委員会を企業レベルで設けていくということが、私は実質的には望ましいとは思いますが、そういうのを見ながら、現行法上できることと望ましいことと、いやこれ以上やっちゃいけないことということを少し、仮に指針をつくるとすれば、その指針レベルで書いていくということも大切かなと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
水島先生。
○水島構成員 ありがとうございます。
水町先生の御発言を聞いていてふと気づいたのですが、過半数代表者の議論はどうしても労使協定や36協定を念頭に置いての議論になりがちです。36協定は全社的な問題であると同時に、事業場に特有の問題もあると思います。それ以外に、就業規則の変更に関する意見聴取も重要な過半数代表者の役割ですが、就業規則の変更は全社的に行うことが多いように思いました。過半数代表者の議論を今後検討していく中で、労使協定の問題と、就業規則の意見聴取の問題、その他いろいろな場面を想定しつつ議論ができればと思いました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
1点確認なのですけれども、3ページの①で、「労働組合による労使コミュニケーションの促進は必要だが、法制的対応は馴染まない。政策的対応が望ましい」というような文章が書かれておりますけれども、過半数代表者に対する支援を議論していくときには、過半数代表者に対する支援のほかに、過半数組合に対しての支援というのがどうかということが問題となると思うのですが、それについても法制的な対応は馴染まないという、そういう趣旨なのでしょうか。事務局の文章の趣旨は。ちょっと教えてください。
○労働条件確保改善対策室長 これは前回の御議論のところですが、過半数代表者のところに入る前の段階で、組合の組織率が継続的にちょっと低下してしまっていると。組合による、一方は組合であるコミュニケーションというのはそれなりにしっかりしているので、組織率が下がっているということは望ましくないけれども、そこをどう活性するかという議論の中で、組合を結成することそのものですとか組合員になることそのものというのは労働者の自由の部分ですので、そこに法律で何かするというのは望ましくないのではないかという御発言でいただいていたかと思います。
○荒木座長 事務局から引き続き、局長、どうぞ。
○労働基準局長 補足ですけれども、過半数組合としての労働組合に対する支援については、このページの真ん中ほどの<過半数労働組合又は過半数代表者となった労働者への支援>という項目の2つ目のポツの後段で、過半数代表者に対する意見集約活動に関する配慮を書いた後に、過半数労働組合も含め、便宜供与なりについて明確にするということで、そこはちょっと両者の関係分かりにくいかもしれなくて恐縮なのですけれども、そちらのほうで。
○荒木座長 きちんと書いてありました。読み方が不十分で失礼いたしました。了解しました。ほかにはいかがでしょうか。
山川先生。
○山川構成員 今の点に関しては労働組合法制との関係も考えておく必要がありまして、労組法の第2条第2号で、経理援助を受けないとか、あと第7条の第3号後段で経費援助が不当労働行為になるとか、法律上こういう配慮をすべきだ、あるいはこういう支援をすべきだというようなことになりまと、それで法律上の労働組合でなくなったり不当労働行為になったりするというのは法律上の調整がおかしな感じになっていくので、その辺りをちょっと明確にしておく必要があるかなと。要は自主性が阻害されないというのが規定の趣旨ということで、解釈上こちらとの関係も考慮しておく必要があるかと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 今の山川先生のお話を踏まえまして、前回の御議論の中でいただいていたこの①のところと、②の2つ目の支援のところの書きぶりで分けているのが、いわゆる労働組合が労働組合として組合員のために振る舞うパターンの動きのときと、過半数労組というものは労働組合ではあるのですけれども、概念としては、いわゆる労使協定を結ぶ場合において全従業員の代表として振る舞われるという立場で出てくるというものでございますので、そこに違いが認められるのかどうかということまで含めた御議論になるかなということも含めて、ちょっと資料は記載させていただいております。
○荒木座長 今日いただいた議論の中で大変重要な御指摘があったのは、現在、過半数代表についての仕組みが、いろんな条文に付随してばらばらに規定してあるということがごあります。具体的にも、過半数代表者についてどのように選ぶか、それから不利益取扱いをしないようにしなければならない、それから円滑に遂行することができる必要な配慮を行わなければならない、これは労働基準法施行規則の第6条の2というところに初めて出てくる規定なのですね。
ということで、労働基準法をつくったときには、過半数代表の意見を聴取して就業規則を作成しなければいけないというふうに規定したのですけれども、そのときには、労働組合組織率も50%前後というところから始まって、労働組合はどんどん広がっていくということを前提に、過半数組合がない場合について、過半数代表者をいわば過渡的存在として考えてところ、これが今は労働基準法の中で大きな役割を担わされているという状況に変わってきた。しかし、労働基準法は、過半数代表についてそれぞれの条文で散発的に規定するにとどまっています。
今日は、多くの先生から、そういう過半数代表制度についてはきちんと総則の中で位置付けるべきではないかという大変重要な御指摘がありました。これは現在存在している法規制の内容を変えるということではなくて、散在しているものをきちんと労働基準法で明示するということだけでも大変大きな意味があると思いますし、労働基準法施行規則の第6条の2、きちんとした根拠規定がなくこのような規定になっておりますけれども、労働基準法の本則に規定があれば、それを受けた指針とかガイドラインというものもきちんと位置付けることができますし、過半数代表者というのはどういう存在なのかということを改めて労働基準法で明示することの意味も大きいと思います。
それからもう一つ、これも御指摘がありましたけれども、現在は労働基準法第38条の4、企画業務型の裁量労働制のところに初めて労使委員会制度というものが出てきます。しかし、労使委員会制度は企画業務型裁量労働制のための制度ではなく、賃金、労働時間、その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対して当該事項について意見を述べることを目的とする委員会ということで、非常に幅広い任務を持った制度として想定されているのです。そして、この労使委員会は、その決議で過半数代表の労使協定は代替することができる。過半数代表の担った任務を労使委員会は代替することができる制度として現に労働基準法上、存在しているにもかかわらず、企画業務型裁量労働制に付随する制度のような位置付けになっている。これも位置付けとしてはいびつな状況ではないかと思います。
労働組合の組織率も低下している中で、集団的な労使コミュニケーションをどう図っていくかという議論の中で、現行制度として存在する過半数代表制度をきちんと法制上位置付け、かつ、労使委員会も併せて総則の中で位置付けることが重要な課題となっているとのご指摘を頂きました。これは現在の制度を変えなくても、現在散在するものをまとめるということでも、大きな意味があることですので、ぜひ重要な御指摘として受け止めていきたいと思ったところです。
ほかにはいかがでしょうか。
3つの論点について今日議論してきましたけれども、いずれも相互関連しているところもございますので、3つ併せて何かコメントなどがあればぜひお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 事業、事業場の単位のくくり方ですね。これが客観的にくくれる概念なのか、それとも、実際上は使用者、法人が主観的にというか、選択的に選択できるものになっているのかというのが実は必ずしも明確でない。大学によってはすごい大きな単位で事業場をくくっているところもあるし、学部単位を事業場だと見てそれぞれやっているところもあるし、大きく取るか小さく取るかによってコミュニケーションの在り方とか監督の在り方とか、いろいろ実は労基法上の適用とか監督上様々な問題が出てくる可能性がありますが、おそらく現行では、会社がこのように事業場をくくって、それで労基法の解釈としてそんなおかしくはないよねというのでそれを受け入れて、労使協定等の届出を受理しているのだと思います。
そこら辺が、会社の選択を重視せざるを得ない状況なのか、それともそれは、会社って基本的には選択できるものではなくて、労基法の解釈として客観的に定まるべきものなのかも、おそらく事業概念、事業場概念できちんと議論しなければいけないことになるかなと。それはコミュニケーションの在り方とまさに関わるところなので、そこについてもきちんと議論していくべきかなと思います。
○荒木座長 今、行政実務としてはどうなのでしょうか。当事者のほう、これは一事業だというようなことでいろんな申請などをしてきたときに、いやいや、これは監督行政としては、そうでなくて、こういう単位で考えるべきだみたいな指導はなさっているのでしょうか。
○労働条件政策課長 個別には、まさに個別判断になろうかと思いますが、基本的な考え方としては、今、資料2の2ページ目に書いてあることを解釈として示しておりますので、原則としては、場所で一の事業と見ますということで整理しております。最近のいろいろな働き方とか労務管理の集約にどこまで対応できているかというのはありますけれども、従来、例えば生命保険会社の営業所だとか新聞社の地方通信機関といったものについては個別の実態を幾つか調べた上で、解釈、一定の判断基準を示したことがございます。
建設現場については、基本的には現場ごとに見ますということで整理をしているところでございまして、これについて、最近の働き方を踏まえてもっと客観的な整理ができないのかという御指摘であれば、それはそれでまた行政の課題として受け止める必要あるかなと思っております。
○荒木座長 この問題はどういう規制、目的のために事業を考えるかということの相関で考える必要があると思いまして、前にも御指摘あったかもしれませんけれども、個人で、一人で働いているようなときには、直近の事業場に所属するものとして考える、そういう考え方で見ると、当該事業場に所属する者が10人以上になれば就業規則の作成義務が生ずるし、意見聴取義務も生ずる。そうすると、なるべく集約して10人を超えるような単位で捉えるほうが実は労働行政としては望ましいと考えることもできます。そういうことで、どういう目的のために事業を一まとまりとして考えているのかということも課題になるかと思います。
状況が似ているか似ていないか分かりませんけれども、アメリカでは団体交渉法上、交渉単位というものを決める必要があって、労使当事者がこの単位でいいと言ってくれば、基本、行政はそれを受け入れるけれども、労使が、使用者はなるべく広くとらえたい、労働側は狭くとらえたい、というように立場によって違うので、バーゲニング・ユニットについての考え方が労使で対立すると、日本でいうと労働委員会に相当する行政機関がバーゲニング・ユニットを定めるということになっています。これは団体交渉するユニット、単位として何が適正かということに向けて、労使がそれでいいと言ったらそれに口は出さないけれども、合意ができない場合には行政が判断するということになっています。
ということで、事業を単位とする場合に、これは監督の単位としてどれが望ましいかという観点もあれば、意見聴取とか労働条件を話し合う単位としてどれがふさわしいかというその目的に照らしながら事業も考えるという観点もあって、それが現状、この2ページで示されているような場所的なものだけで本当によいのかということも踏まえて再検討が必要になるかもしれない、そういう御指摘かと受け止めたところでした。
首藤先生。
○首藤構成員 私も、今の水町先生の御提案に賛成なのですけれども、何か客観的な基準を設けられるのかどうかというところをやはり議論していただいきたいと思います。現在、かなり恣意的に決めることが可能で、例えば従来はこの規模の事業だったものを複数一緒にして、かなり大きな事業体としてカウントしたりということをやっているケースもまま聞いております。事業単位か企業単位かという話がありましたけれども、事業は分かれているけれども、それを全部集めて、これが一つの事業ですといって実質的に企業単位化しているようなことだって起こり得るかもしれないですし、そういったことをやることによって、例えば過半数の組合があったけれども、広がってしまったがために過半数でなくなってしまうようなことだって起こり得るかもしれません。多分、行政の中で管理監督していただく際に、これはあまりにもちょっと広がり過ぎですよといった助言もされていると聞いたことがありますが、現在は、あまりにもその辺の基準が不明確だと考えております。
先ほど座長がおっしゃったように、労使で決めるということだったらいいかもしれないですけれども、今の日本の状態ですと、多分、使用者側が事業の単位を決定できるような形になっておりますので、やはりそこは完全に恣意的に決定できるようなものではないのではないかなというような認識を持っています。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
先ほど事業のところで述べた意見と同じ趣旨の発言になるのですけれども、労使コミュニケーションとの関係で、かつ、過半数代表の役割として意見集約というようなことを今後明記していくことになると、意見集約できる範囲というのはどれぐらいの規模なのかということはやはり考えていく必要があるような気がしております。そこは、ただ一律に数字で線が引けるのかどうかというところも要検討のような気がしていまして、というのは、どの規模だったら1人ないし複数の代表が集約できるかどうかというのは、そこは他方、使用者側がどういう配慮を提供するのか、この検討会の中でそうした意見集約ツールみたいなものの提供みたいな御提案もあったと思うのですけれども、そういったものがどういった形でされるかによっても変わる部分もあるのかなという気もしていまして、いずれにしても、その部分、さらに検討する必要があるのかなというところについて補足させていただければと思います。
あともう1点はちょっと細かな点で、全体に関わるというよりは労使コミュニケーションのところの話になるのですけれども、これはまずちょっと確認したほうがいいですが、労使協定締結に当たって過半数組合だった組合が後で過半数でなくなってしまったとしても、その場合、協定の効力には影響がないという理解でよろしかったでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 御指摘のとおり、現行の制度下においては特に効力に変更はないということになろうかと思います。今、アドホックにそれぞれの条に、協定を結ぶときにはその相手方と結ばなければならないと書いているだけですので、そこで一旦効力が生じてしまえば、その後の主体の変更には特に影響はないということになります。
○石﨑構成員 ありがとうございました。そういう意味ではその点はクリアしたわけですけれども、ただ、他方で、任期制になるのか分からないですけれども、過半数組合で、かつ、その後のモニタリングみたいなのも担うみたいな話になっていったときに、その過半数でなくなったりすることが何らか影響すると考えるべきなのか、多少細かな変動についてはどう考えるのかといった辺りの考え方の整理というのも必要なような気がしておりまして、併せて、どういった形で過半数組合であることを適切に確認するのか、要は不当労働行為にならないような形での確認の在り方みたいなものも、今後指針にしていくときにちょっと検討いただくとよいのかもしれないなということを思いました。
ちょっと補足的なところで、以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、3つの議題について大変充実した御議論をいただきました。ほぼ時間になりましたので、本日の研究会はここまでにしたいと思います。本日も、お忙しい中、御参集いただきましてどうもありがとうございました。