2024年10月9日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会・費用対効果評価専門部会 第6回議事録 

日時

令和6年10月9日(水)10:00~

場所

日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階

出席者

構成員等
事務局

議題

  • 高額医薬品(認知症薬)に対する対応について

議事

議事内容

○安川部会長
 おはようございます。ただいまより、第6回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 費用対効果評価専門部会 合同部会」を開催いたします。
 今回は「高額医薬品(認知症薬)に対する対応について」を議題といたしますが、本議題につきましては9月25日の総会において、薬価専門部会と費用対効果評価専門部会における相互の検討状況を踏まえた上で、効率的に議論をするため、次回は合同部会として開催することとされたことを受けまして、本日開催するものでございます。
 本合同部会の議事進行につきましては、薬価専門部会の部会長、安川が務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本合同部会も対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。また、会議の公開については、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
 まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は末松委員、笠木委員が御欠席です。
 また、今回は参考人として、福田参考人が御参加いただいております。
 なお、会議冒頭のカメラ撮りは、ここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○安川部会長
 それでは、議事に入らせていただきます。
 先ほど申し上げましたとおり、今回は「高額医薬品(認知症薬)に対する対応について」を議題といたします。
 事務局より資料が提出されておりますので、事務局より御説明をお願いいたします。
○清原薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。
 資料薬費-1の2ページを御覧ください。
 本日の合同部会では、御議論いただきたい点は、9月に薬事承認されましたアルツハイマー病治療薬であります、ケサンラに関する薬価算定の課題と、薬価収載後の薬価調整の課題の2点となります。
 今回は、総会にお諮りしたとおり、薬価専門部会と費用対効果評価専門部会との合同部会の開催となっております。
 おめくりいただきまして、まず、薬価算定の課題について御説明したいと思います。
 資料の説明につきましては、先週の総会と重複する内容につきましては、省略しながら御説明をいたします。
 4ページを御覧ください。
 本剤の概要となっております。
 本剤は、レカネマブに次ぐ抗アミロイドβ抗体となっており、アミロイドβプラークの除去が確認された場合に投与を完了することができる点が特徴ですが、除去が確認できなかった場合であっても、最長18か月で投与完了することとなっております。
 また、レケンビと同様に承認条件として、全例調査が課されております。
 5ページを御覧ください。
 レケンビの薬価収載時の対応については御覧のとおりです。
 6ページを御覧ください。
 今回承認されましたケサンラと、既に薬価収載されているレケンビとの比較となります。
 7ページを御覧ください。
 ケサンラの有効性について、国際共同第Ⅲ相試験を示したものです。
 左側の図は、主要評価項目である認知機能と日常生活機能を総合的に評価する評価尺度iADRSの76週時点のベースラインからの変化量を示す図となっております。
 ケサンラ投与群とプラセボ群と比較して、22.3%の進行抑制が認められております。
 右側は、副次評価項目であります、記憶、見当識、判断力等について評価する指標、CDR-SBのベースラインからの変化量を示したものでございます。
 ケサンラ投与群とプラセボ群と比較して、28.9%の進行抑制が認められております。
 なお、レケンビの有効性につきましては、後ろの参考資料、28ページ、29ページにつけておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、8ページを御覧ください。
 本剤のアミロイドプラーク除去効果について示したものでございます。
 右図を御覧ください。
 グレーラインのプラセボについては、アミロイド蓄積に変化がなかった一方で、ケサンラ群ではアミロイド蓄積が低下しております。
 また、本剤は、総会でもアミロイドプラークの除去される点について御質問をいただきましたが、それを示す表が左下の表となります。
 投与後52週、12か月でございますが、その時点で66.1%の被験者はアミロイドプラークが除去されております。
 この結果を踏まえ、本剤の投与後12か月を目安にアミロイドプラークの除去を指標として、投与終了の可否について評価することが添付文書に注意喚起されております。
 9ページを御覧ください。
 投与52週目にケサンラからプラセボへと切り換えた場合に、76週時点まで本剤の症状進行抑制作用が持続されていること、及び投与52週時のアミロイドPET検査の結果に基づき、本薬投与を完了した集団でプラセボ群と比較して、臨床的進行が最も抑制されていることが示されております。
 10ページを御覧ください。
 本剤の安全性に関して、有害事象の発現状況でございます。
 ARIAと呼ばれるアミロイド関連画像異常として、浮腫や微小出血等が本剤群では、プラセボ群に比較して多く認められております。
 11ページを御覧ください。
 ARIAの発現状況を解析したものとなります。
 死亡例を含む重篤な事象が一定数報告されております。
 また、自覚症状がない無症候性も多いことから、画像検査等により、ARIAの発現の有無を定期的に確認し、ARIA発現時には、適切な対応を求められることとなります。
 レケンビの安全性につきましては、参考資料の30ページ、31ページにつけておりますので、こちらも適宜御確認いただければと思います。
 12ページを御覧ください。
 こういった安全性の観点から留意すべき点があることから、添付文書にも注意喚起がなされることとともに、医療者向けのARIA発現時の対応策や、患者、介護者向けのARIAによる症状に関する注意喚起が企業より作成されております。
 13ページを御覧ください。
 こちらは最適使用推進ガイドラインの内容となりますが、安全性の観点についてもガイドラインでしっかりその確認タイミングを示しております。
 14ページを御覧ください。
 薬価算定の課題でございます。
 今まで御説明させていただきましたとおり、一部レケンビと異なるところはあるものの、薬価算定方式において類似薬を選定する際の事項として挙げられている効能・効果は同一。
 それから、薬理作用、組成、化学構造、用法等においては、一定の類似性が認められております。
 また、対象患者についても、最適使用推進ガイドラインにおいて、患者要件等を適切に示すため、実際の投与患者数は限定的となる見込みであるものの、レケンビ同様に、今後の使用状況によっては、実際に投与される患者数は、当初の見込みよりも増加する可能性もあります。
 おめくりいただきまして、次に、薬価収載後の薬価調整の課題についてでございます。
 16ページを御覧ください。
 こちらは、市場拡大再算定について示したものでございます。
 続きまして、17ページを御覧ください。
 1つ目と2つ目のポツは、年間販売額が予想販売額を一定程度超えた場合に、市場拡大再算定により薬価を調整する制度があり、改定時と四半期に行っているという説明でございます。
 3つ目のポツでございますが、本剤の効能・効果から推定される有病者数自体は多いものの、先ほどのように最適使用推進ガイドラインで投与対象患者数は限定的になる見込みでございます。
 4つ目、仮に大幅に市場規模が拡大した場合、1,000億円を超えると、薬価算定方式にかかわらず、再算定の特例が適用されるというものでございます。
 5つ目でございますが、このような現行ルールがありますが、本剤の患者数が増加して市場規模が拡大した場合に、現行ルールで対応できるかどうか考慮していく必要があります。
 なお書きに記載していますが、市場規模は投与患者数のほか、患者ごとの投与期間がどれぐらいになるかによっても変化し得るものと考えております。
 18ページを御覧ください。
 市場拡大を把握するための方法についてお示しいたします。
 把握の方法について、2つ目のポツにありますとおり、高額医薬品であっても、薬価制度抜本改革の骨子のいずれかの要件に該当する場合に限り、NDBによる使用量を把握しておりますが、骨子の②の要件について、収載時に2年度目の販売予想額が下回ったとしても、収載後の実際の販売額が販売予想額を大きく上回る可能性があり、この場合は、NDBによるデータの把握はなされないという課題があります。
 19ページを御覧ください。
 こちらは、費用対効果評価の対象品の指定基準についてでございます。
 20ページを御覧ください。
 薬価算定方式に応じた費用対効果評価の進め方についてお示しいたします。
 薬価算定方式では、類似薬がある場合は、類似薬効比較方式により算定するとされ、類似薬がない場合には、原価計算方式で算定されることとされております。
 1つ目、類似薬効比較方式で算定され、有用性系加算がない場合、H5区分に該当する見込みとなるため、ケサンラの費用対効果分析は実施せず、レケンビの費用対効果評価の結果を受けた価格調整に準じて、ケサンラの薬価を調整することとなります。
 2つ目、類似薬効比較方式で算定され、有用性系加算がある場合、H1区分に該当する見込みでございます。
 その場合は、ケサンラを対象品目とする費用対効果分析を実施し、介護費用の取扱い及び価格調整範囲の在り方について「レケンビに対する費用対効果評価について」に準じて進めることとなります。
 3つ目でございますが、仮に原価計算方式で算定された場合、H1区分に該当する見込みでございます。
 その場合は、1つ目の類似薬効比較方式で算定され、有用性系加算がある場合と同様に、ケサンラの費用対効果分析を実施するということになります。
 21ページ目を御覧ください。
 こちらは、レケンビに対する費用対効果評価について、参考としてまとめたものになります。
 22ページを御覧ください。
 現状は、これまで説明した内容の概要です。
 論点は3つ挙げております。
 1つ目は、本剤はレケンビと同様のアルツハイマー病治療薬であることを踏まえると、本剤の薬価算定方法については、レケンビと同様に現行の薬価基準に基づき算定し、補正加算は既存のルールに従って評価することとしてはどうかというものでございます。
 2つ目、本剤の収載後の価格調整については、レケンビと同様に、四半期での速やかな再算定の適否を判断するため、薬価の算定方法又は2年度目の販売予想額にかかわらずNDBによる使用量把握の対象としてはどうかというものでございます。
 3つ目といたしまして、費用対効果評価については、算定方式に応じた区分によって指定し、H1と指定された場合には、介護費用の取扱い及び価格調整範囲の在り方に関して、レケンビの際に議論されました「レケンビに対する費用対効果評価について」に準じて進めることとし、H5と指定された場合には、レケンビの類似品目として対応することとしてはどうかとしております。
 説明は以上となります。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 3つの論点を御提示いただきましたが、それを含め、ただいまの御説明について、御質問、御意見等がございましたら、お願いいたします。
 では、長島委員、お願いします。
○長島委員
 ありがとうございます。
 22ページの3つの論点に沿って、コメントいたします。
 まず、1つ目の薬価算定方式についてです。
 本剤とレケンビの違いを踏まえた臨床上、治療上の使い分けはあるとは思いますが、医薬品としては、類似性がかなり高いと思われます。
 したがって、薬価算定方式を変えるほどの理由は見当たらないと考えます。
 論点2つ目の収載後の価格調整の把握の仕方や、3つ目の費用対効果評価がH1あるいはH5と指定された場合の対応案についても、提案のとおりで異論ありません。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかに御意見は、森委員、お願いいたします。
○森委員
 ありがとうございます。
 22ページ目に示されている論点に沿って発言いたします。
 1つ目のケサンラの薬価算定方法についてですが、脳内アミロイドβ量を減少させる作用があるアルツハイマー病治療薬となるため、同様の作用があるレケンビと同様に、現行の薬価基準に基づき算定することでよいと考えます。
 2つ目のケサンラの収載後の価格調整についてですが、対象となり得る患者数が多く、使用可能な医療機関の体制や使用実態等の変化により、当初の予想より大きく市場拡大することも考えられることから、四半期での速やかな再算定の適否を判断するために、2年度目の販売予想額などにかかわらず、NDBによる使用量の把握は必要な対応と考えます。
 また、18ページ目に市場拡大の把握方法に関する要件の課題が示されていますが、課題として挙げられている②の要件については、既存の医薬品の取扱いも含めて検討していく必要があると考えます。
 3つ目の費用対効果評価については、事務局提案のとおりに対応することに異論ありません。
 最後に、ケサンラの有害事象ですけれども、事務局からも発言がありましたけれども、直接比較されていないので評価が難しいものの、ARIAの発現がレケンビに比べ多いように感じられ、特にE関連は約倍の24%となっています。
 最適使用推進ガイドライン、また、添付文書の中で注意喚起等をしていただくとともに、市販後の安全対策として全例調査等が実施されるようですが、把握した安全性情報については適切に医療現場にフィードバックしていただく必要があると考えます。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 今の森委員の御発言で比較対象のこともありましたが、事務局、何かそれについて補足説明等ございますか。
○清原薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。
 森委員、長島委員、御指摘ありがとうございます。
 森委員の御指摘がございました、まず1つ目が、18ページのところでございますが、今の要件の②のほうの対象を広げてはいかがかということにつきましては、これは、また、次回の制度改正のときに議論したいと思います。
 ただ、現状といたしましては、実はNDBのデータを取ることは、結構費用と時間がかかることになりまして、やみくもになかなか対象を広げられないという現状がございますので、そのことも少し勘案しながら、今回は、この高額薬剤というものに、まず限定をしてということでの御提案となっております。
 それから、ARIAに関する類似薬は、先行品と比較して少し発生頻度が多いのではないかというご心配かと思いますが、安全対策につきましては、速やかに企業に安全対策を徹底するようにお伝えするとともに、全例調査の結果につきましては、医療関係者に周知していただくようお伝えするようにしたいと思っております。
 なお、薬費-1の最後になります、32ページでございますが、先行するレケンビについては市販直後調査等もしておりまして、その結果が公開されております。市販直後調査は、市販してから6か月間調査をすることになっておりますが、こちらの最終報告が出ておりますので、本剤もこの対象となりますので、市販後の情報が取りまとめられましたら、公表あるいは医療関係者に伝達するということになろうかと思います。
 以上でございます。
○安川部会長
 よろしくお願いします。
 ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。
 では、松本委員、お願いします。
○松本委員
 ありがとうございます。
 ケサンラの薬価収載に向けた対応につきましては、資料の22ページの論点に示されております考え方に、異論はございません。
 薬価算定方式に応じた費用対効果評価の進め方につきましては、20ページのほうに対応をケース別に分かりやすく整理いただいておりますので、このとおりに進めていただくことで結構でございます。
 特に薬価調整範囲につきましては、費用対効果評価を積極的に活用する観点から、閾値の価格を指標とする方法を適用すべきと考えております。
 また、ケサンラ、レケンビと、いずれも使用状況をしっかりモニタリングすることは、事務局にお願いしたいと思います。
 私からは以上でございます。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 鳥潟委員、お手が挙がっております。鳥潟委員、お願いいたします。
○鳥潟委員
 ありがとうございます。
 まず、薬費-1の22ページに論点で示されている内容につきましては、いずれも異論ございません。
 ケサンラについてですが、繰り返しにはなりますけれども、医師、施設要件があるため、投与対象患者数は限定的になる見込み等はありますけれども、レケンビ同様、有病者数自体が多く、また、国民の期待も高いことから、使用実態が変化し、予測以上に患者数が伸びていくことも考えられると思います。
 その際には、価格の再調整も必要になるのではないかと考えます。
 そのため、薬価収載後も算定方法などにかかわらず、NDBにより使用量を把握していくことには賛成でございます。
 以上です。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 高町委員、よろしくお願いいたします。
○高町委員
 ありがとうございます。
 私も副作用について、発言させていただきたいと思います。
 ただいま御説明がありましたように、十分な安全対策が講じられているということですが、重篤化する例や死亡例もあるようですし、レケンビに比べて発現の可能性も高いということですので、患者の安全を確保するために、また、患者が安心して治療を受けられるためにも、これらの対策をぜひ徹底していっていただきたいと考えています。よろしくお願いします。ありがとうございました。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
 もし、ほかに御意見等ないようでしたら、いろいろと御指摘もありましたが、本件に関する質疑は、このあたりといたします。
 今後、御指摘のあった点については、鋭意また事務局のほうで進めていただければと存じます。
 本日の議題は以上です。
 それでは、本日の合同部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。