2022年7月22日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第4回議事録

日時

令和4年7月22日13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、大久保 ゆかり専門委員、植木 理恵専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他

議題

○ビンゼレックスに係る分析枠組みについて

議事

議事内容

○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、ビンゼレックス皮下注に関わる分析枠組みについて御議論いただきます。
 まずは事務局及び公的分析から御説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、まず本製品の検証作業に係る分析枠組みに対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
 事務局でございます。
 企業の方、準備できたようなので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内で、ビンゼレックス皮下注に関わる分析枠組み案についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
 では、お願いします。
○意見陳述者
 どうぞよろしくお願いします。
 まず、本日説明させていただきます項目を資料の2枚目に記載しております。2枚目を御覧くださいませ。「乾癬とは?」「ビンゼレックスとは?」「ビンゼレックスの臨床試験の概要」「海外HTA評価結果」「C2Hと合意した「分析枠組み」」について説明をさせていただきます。
 続きまして4枚目を御覧ください。乾癬について説明いたします。乾癬は、青年期から中年期に好発する境界明瞭な紅斑の上に銀白色の鱗屑が付着する角化性皮疹を特徴とする非感染性の炎症性角化症になります。
 乾癬の症状は全身に認められますが、特に連続して刺激を受けやすい部位や日光の当たりにくい部位に出やすいという特徴があります。
 続いて5枚目を御覧ください。乾癬の病態に関する乾癬免疫カスケードになります。始めに左下に書かれていますTIP-DCという樹状細胞が抗菌ペプチドなどにより活性化されます。活性化されたTIP-DCからはTNF-αやIL-23が分泌されます。TNF-αはTIP-DCをさらに活性化し、また、IL-23はTh17細胞に働きかけ、IL-17やIL-22というサイトカインを分泌させます。これが表皮細胞の増殖や分解異常を惹起して乾癬の状態が形づくられます。
 生物学的製剤は、このTNF-αやIL-17、IL-23の働きを抑制することにより、乾癬の病態進行を抑えるという効果を発揮いたします。
 続いて、6枚目を御覧ください。本邦における乾癬の罹患率を示しています。本邦における乾癬患者数は人口の0.34%に当たる約43万人と推定されております。
 続いて7枚目を御覧ください。尋常性乾癬の臨床症状を写真でお示しします。尋常性乾癬は、本邦でも乾癬の中で最も一般的な病型とされ、乾癬全体の90%を占めると言われています。
 続いて8枚目を御覧ください。乾癬性紅皮症の臨床症状になります。乾癬性紅皮症は、乾癬の皮疹が全身に及び、びまん性の潮紅、落屑を伴って紅皮症化した状態を指します。
 続いて9枚目を御覧ください。汎発性膿疱性乾癬の臨床症状でございます。発症頻度は非常にまれで、かつ難治であること、また、治療に急を要することなどから、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の指定難病に認定されております。
 続いて10枚目を御覧ください。乾癬の病型とその割合について示しています。尋常性乾癬が全体の90%、また、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬がそれぞれ乾癬全体の1~2%という割合になっております。
 続いて、対象製品であるビンゼレックスについて説明いたします。
 12枚目の製品情報を御覧ください。販売名はビンゼレックス皮下注160mgシリンジ及び同オートインジェクター、一般名がビメキズマブ、薬効分類名がヒト化抗ヒトIL-17A/IL-17Fモノクローナル抗体製剤、効能または効果は、既存治療で効果不十分な下記疾患。下記疾患として、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症が記載されております。また、用法及び用量は、通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射する。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射できるとなっております。
 続きまして、臨床試験について説明いたします。
 14枚目を御覧ください。ビメキズマブは、フェーズⅢ及びフェーズⅢb試験におきまして3本のhead-to-head試験を行っております。アダリムマブを比較対照としたBE SURE試験、PS0008、ウステキヌマブを比較対照としたBE VIVID試験、PS0009、セクキヌマブを比較対照としたBE RADIANT試験、PS0015になります。
 違いについて説明いたします。15枚目を御覧ください。BE VIVID試験、BE SURE試験、いずれにおきましても、ビメキズマブは比較対照であるウステキヌマブ、アダリムマブに対して統計学的に有意に高い有効性を示しました。ここではPASI90及びIGA 0/1を主要評価項目として評価しております。なお、効果の指標に関する説明をアペンディクスに掲載いたしました。
 続きまして、16枚目を御覧ください。IL-17をターゲットとするセクキヌマブに対しましても、ビメキズマブは主要評価項目であるPASI100の達成率において有意に高い有効性を示しています。
 続いて、安全性について説明いたします。17枚目を御覧ください。ビメキズマブは、IL-17A及びIL-17Fを特異的に抑えることにより、口腔カンジダの発現率が他剤よりも高い傾向がありますが、そのほかの事象に関しましては重要な違いは示されませんでした。
 続いて、19枚目を御覧ください。海外のHTA評価の結果について説明いたします。イギリスにおきましては、NICE、SMCともにRecommendedという評価結果を受けております。フランスではASMR等でセクキヌマブに対して軽度の追加的な医療上の改善ありという評価になっています。また、ドイツではアダリムマブ、セクキヌマブに関してMinor additional benefit、軽度の追加的有用性あり。さらに、カナダにおいてもRecommendedという評価結果になっております。また、オーストラリアでは現在評価中であるため、結果をお示ししておりません。
 最後にC2Hと合意しました分析枠組みについて説明いたします。22枚目を御覧ください。
 分析対象集団は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬患者となります。分析対象集団を設定した理由は、膿疱性乾癬と乾癬性紅皮症は、乾癬全体に占める割合がそれぞれ1~2%程度と小さく、エビデンスも限られていることから、対象集団から除外することとされております。また、比較対照技術名はリサンキズマブ、イキセキズマブのうち最も安価なものとなっております。
 比較対照技術を選定した理由として4点ほど挙げられております。1点目は、尋常性乾癬における各生物学的製剤の選択方法として、世界的に確立された基準は存在しないということ。2点目として、比較対照技術は有効性のより高いものを選択するということがガイドラインに書かれておりますが、コクランライブラリーによるネットワークメタアナリシスの結果では、インフリキシマブ、イキセキズマブ及びリサンキズマブはプラセボと比較して効果が高く、また、これらの間にはほとんど有効性に違いが見られないと報告されていること。3点目は、インフリキマブについては特に関節症状のある患者に選択されやすく、本剤、ビメキズマブによる代替が起こりにくいということ。そして、これらを総合的に勘案した結果、4点目として、リサンキズマブ、イキセキズマブの有効性は同等と考え、これらのうち最も安価なものをビメキズマブの比較対照技術として選択するという結論になっております。
 ほかに公的医療費の立場以外の分析の有無は、なし。
 効果指標としてQOLY以外を使用する場合、その指標と理由に関しましては該当せずとしております。
 以上となります。ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、委員の方及び企業から御質問はございますでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
○○○委員
 ○○でございます。御説明ありがとうございました。教えてほしいのですが、先ほど海外の評価結果ということで御紹介いただいた中で、例えばイギリスのNICEはRecommendedと書いてあるのですけれども、私が見たテクノロジーアプレイザルでは条件つきの推奨になっていて、その条件というのが価格引下げとかいろいろ書いてあった気がしましたのが、そういう理解でいいかどうか。カナダのCADTHも、これは○○価格引下げの上でとかいろいろな条件がいっぱい書いてあって、条件つきの推奨というふうに読んだのですがいかがでしょうか。
○意見陳述者
 最終的なガイダンスではそのようになっております。
○○○委員
 そのようにというのは。
○意見陳述者
 イギリスにおきましてはディスカウントの対象になっております。それから、カナダにおきましても同じくディスカウントということでRecommendというような形になっております。
○○○委員
 そうでしたら、このスライドはちょっと誤解を招くので、ぜひ修正いただければと思います。
○意見陳述者
 分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
(意見陳述者退室)
○事務局
 事務局でございます。
 企業の方の退室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、ビンゼレックス皮下注に関わる分析枠組みについて御議論をお願いしたいと思います。○○先生、○○先生からコメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○○○委員
 ○○です。よろしくお願いします。
 今の会社のほうからの説明で、有効性と安全性については間違いないと思います。ただ、有効性はほかのこれまでの生物製剤に比べて明らかに高いのですけれども、やはり安全性のところでカンジダ症が明らかに多いということで、それについてはかなり注意を要することと、実際にそれによる治療が必要になってくるケースがあるということも事実だと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 ○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
 ○○と申します。よろしくお願いいたします。
 効果については問題ないと思いますが、費用対効果という点をどう評価していくかというところで、何をもって比べるかというところが大事なところかなと思います。数字に出てこなければ比較はできないと思うのですけれども、薬を塗る時間が短くなってQOLが上がるなど、何をもって比べるかというところが大事なのではないかなということで、比較対照のお薬はこの2種類でいいと思うのですけれども、どういう項目で調べるかというところが乾癬に対しては大事なのかなと。
 あと、期間が重要なのかなと思います。結構長期的に見ないと費用が軽減されてこないというところがありますので、その辺も御討議いただければと思います。
 以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。評価について、今、安全性の議論とあとはパラメーターの話がございましたが、科学院さんのほう、今のコメントについて何か技術的な御意見はございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
 国立保険医療科学院でございます。
 御指摘の点、安全性に関する点でありますとか、長期に見る必要性というのがありますが、これらにつきましてはしっかりと分析、企業がやったものについてレビューをしていく段階でしっかりとチェックをしていきたいと思います。期間に関しましては、分析ガイドライン上も効果を見るのに十分長い期間を見るようにという形になっておりますので、そこを見ていきたいと思います。
 QOLに関しては、我々はQOLYという指標を使っておりますけれども、その中でのQOL評価をどうやっていくかというところを企業からの提出資料を踏まえてしっかりと検討していきたいと考えております。御指摘ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の委員からいかがでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
○○○委員
 御専門の先生にお伺いいたします。分析枠組みはこれで結構なのですけれども、直接あまり関係ないかもしれませんが、この薬は17Aだけではなくて17Fがターゲットになっているからよく効くのだということを企業が言われたいたように思います。そこで、効き目のほうはそうかもしれないですが、さっきの口腔カンジダが増えるというのは、やはりそこのメカニズムが関係しているのでしょうか。
○○○委員
 ありがとうございます。○○です。
 そのとおりでございます。17A、17F、どちらも真菌感染症の防御に大変大切なファクターになっておりますが、両方潰してしまうことによって、カンジダ症だけではなく、実はほかの真菌症もですが、特にカンジダ症がターゲットとしては増えてしまうということになっています。
○○○委員
 ありがとうございます。それでさっき、カンジダの治療が必要になることがあるとおっしゃったので、恐らくこういう費用対効果の評価をするときにはその部分の費用も上乗せされると思うのですけれども、それはうがい薬程度でいいのでしょうか。それとも内服薬とかそういうところまでいくのでしょうか。それから、期間も結構かかるのでしょうか。
○○○委員
 ありがとうございます。通常は内服薬というよりも局所ですね。うがいとか、あるいは口の中でくちゅくちゅとやって吐き出す、あるいは飲み込むぐらいで済むのですけれども、ただ、通常は1週間程度の治療で済むところが、私のこれまでの治験での経験上はちょっと長いかなと。1週間から2週間ぐらいかかるケースもあると考えます。中には有害事象としてやや重症な食道カンジダ症とかそういったものに発展してしまうものもありまして、そういう場合には内服薬がどうしても必要です。それについては1週間ではやや不足で再発しやすいので、2週間程度必要なことが多いと思います。
 ただし、その有害事象、重症なものについては、ケースとしてはとても少ないです。海外ではほとんどないようで、日本で数例あったというだけで、特に重篤だったのは1例だけであったと思います。
○○○委員
 ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生は追加で何かコメントございますか。よろしいですか。
○○○委員
 はい。私からはございません。
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他いかがでしょうか。御意見、御質問ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入りたいと思いますので、議決に入る前に○○委員におかれましては議決の間一時御退席をお願いいたします。
(○○委員退室)
○事務局
 事務局でございます。
 ○○委員の御退席が確認できました。お願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、○○委員を除く先生方の御意見をまとめますと、ビンゼレックス皮下注に係る費用対効果評価に係る分析枠組み案を了承するということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それでは、事務局は○○委員に入室いただいてください。
(○○委員入室)