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2022年7月22日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第4回議事録
日時
令和4年7月22日 13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、貴島 晴彦専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
議題
- ピヴラッツに係る分析枠組みについて
議事
- 議事内容
○費用対効果評価専門組織委員長
では、3品目に入らせていただきたいと思います。こちらはピヴラッツ点滴静注液に係る分析枠組みについての御議論となります。
まずは事務局及び公的分析から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず、本製品の検証作業に係る分析枠組みに対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
事務局でございます。
企業の方、準備ができたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、ピヴラッツ点滴静注液に係る分析枠組み案についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
それでは、お願いします。
○意見陳述者
○○でございます。
本日、本剤につきましては、C2Hと既に合意に至っておりますので、意見陳述としましては、疾患、それから薬剤の特徴と合意内容を御説明する形にしたいと思います。
まず3枚目のスライドから御覧ください。3枚目の下のほうにはくも膜下出血患者の治療コースを図式でお示ししております。くも膜下出血が発生しますと、患者は病院に搬送され、まず止血処理が行われ、一命を取り留めるということになります。その後、病院での集中管理となりますが、おおむね1週間から2週間以内に強力な血管攣縮、すなわち血管の収縮が発生することが知られております。これに対して強力な血管拡張薬でありますクラゾセンタンにより血管の収縮を防いでやろうというのがこの薬剤のコンセプトでございます。
したがいまして、効能・効果は、左上にありますとおり、脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発生抑制となっております。さらに、用法・用量としては、下図にありますように、10mg/時の速度で持続点滴を行うもので、これを発症後15日目まで継続するという形になっております。
4枚目のスライドにお進みください。疾患の概略をお示ししております。動脈硬化などが原因で発生する脳動脈瘤が突然破綻することによってくも膜下出血が発症いたします。これを直ちに止血することが必要であるわけですけれども、止血方法としては、クリッピング術、コイリング術が広く行われております。クリッピング術は、開頭を行って医療用のクリップにより脳動脈瘤の根本を止めるものです。一方、コイリング術は、カテーテルにより3次元コイルを動脈瘤の中に留置することによって止血を行うものです。これらの2つの止血方法は、動脈瘤の部位や患者の状態により選択されますが、頻度としてはおおむね1対1か、もしくはコイリングの頻度がやや多いというのが現状でございます。
5枚目のスライドにお進みください。止血に成功したとしても、強力な脳血管攣縮が襲ってきます。止血されたとしても、くも膜下腔には出血による血腫が残っておりまして、そこから赤血球由来の強力な血管収縮物質であるエンドセリンが漏出し、これにより脳血管攣縮が発生いたします。これは患者の約半数で発生すると言われています。この脳血管攣縮により脳梗塞が発生し、最悪の場合は死に至るということがあります。
また、脳梗塞に至らなくても、脳虚血によって遅発性神経脱落症状が発生することがありまして、これらにより患者の予後が著しく不良となります。
6枚目のスライドにお進みください。ここには脳血管攣縮に対する治療法が示されておりますが、これは脳卒中治療ガイドライン2021で紹介されているものになります。御覧いただくとおり、既存の薬剤治療も含めまして、いずれも推奨度が低く、エビデンスレベルが低いというのが現状です。
7枚目のスライドを御覧ください。これに対して、一方、クラゾセンタンの特徴でございますが、まず、エンドセリン受容体拮抗作用という新規のメカニズムかつ強力な作用に基づいた治療薬であり、既存薬とは異なるものでございます。
次に、生命予後を指標とした複合的エンドポイントにより有効性を証明した初めての薬剤という点でございます。複合的エンドポイントにつきましては、後ほど御説明させていただきます。
さらに、既存薬はクリッピング術後患者のみでの結果しかございませんでしたが、クラゾセンタンの場合はクリッピング術後患者の結果に加え、新しい技術であるコイリング術後の患者でも有効性を示した初めての薬剤でございます。
さらに、複合的エンドポイントの結果を受けまして、効能・効果に発症抑制という文言が入ったことも初めてのことでございます。
既存薬の位置づけにつきましては、スライドの下のほうにございますが、おおむねエビデンスレベルが低く推奨度も低いものですが、C2Hとの議論の中では、以下のように判断されております。まず、既存薬は生命予後に関する有効性が明らかになっていないという点が挙げられました。さらに、既存薬の臨床試験データはおおむね30年ほど前のものと非常に古く、比較として用いることはできないという点もございます。こういった結果を受けまして、比較対照技術としては、集中治療・管理、すなわち既存薬を使わないプラセボということでございます。
それでは、根拠の一つとなりました国内第Ⅲ相試験の結果を御紹介させていただきます。
9枚目のスライドを御覧ください。国内の第Ⅲ相試験としては2つの試験が実施されました。上の305試験はコイリング術後患者を対象としたもの、306試験はクリッピング術後患者を対象としたものでございます。
これらの2つの試験は、術式のみが異なるもので、術式以外は全く同一のプロトコルで実施しました。それぞれの試験に計400名の患者がランダム化されまして、クラゾセンタン群及びプラセボ群に1対1で割り付けられ、発症48時間以内に投与が開始されております。投与方法は、先ほどお示ししました添付文書のとおりでございます。有効性を評価するために、投与期間を通じて画像及び臨床症状を記録しています。
10枚目のスライドにお進みください。まず患者背景でございますが、左側の性別、年齢、身長等に加えまして、右側の破裂動脈瘤の部位、術前のWFNS分類、血腫の大きさ、発症から投与開始までの時間を含め、プラセボ群と実薬群で患者の偏りは認められません。
11枚目のスライドにお進みください。これが主要評価でございます。主要評価は、脳血管攣縮に関連したMorbidity/Mortalityイベントの発現割合でございます。このイベントの定義は画面下にあるとおりでございまして、まず原因を問わない死亡、脳血管攣縮に関連した新規脳梗塞、脳血管攣縮に関連した神経脱落症状、このいずれかが発現した場合をイベントと定義していました。
イベントが発現した患者の割合は、プラセボが34.1%、これに対してクラゾセンタン群では14.9%となりまして、Pバリューは0.0001未満、統計学的に有意に低下が認められております。リスク低下は0.56という結果でございました。
なお、患者ごとのイベントに該当しているかどうかの判断につきましては、専門家による評価委員会を設けておりまして、キーオープンの前に1例ずつ判断を行った上で結果を得ております。
12枚目のスライドにお進みください。イベントの基になる脳血管攣縮の発現頻度でございます。脳血管攣縮が発現した患者の割合はプラセボ群で52.3%に対し、クラゾセンタン群で26.6%でございました。Pバリューが0.0001未満で、統計学的に有意差があり、相対リスク低下は0.49、約半分まで発現頻度を下げたという結果になっております。
同様に脳血管攣縮につきましても、専門家による画像判定委員会を設置しまして、開鍵前に1例ずつ判断を行っております。
このように第Ⅲ相試験による結果が得られております。
14枚目のスライドを御覧ください。このような結果を含めて御検討いただいた結果、C2Hからは次のような分析の枠組みをいただいております。分析対象集団としては、脳動脈瘤によるくも膜下出血術後患者、比較対照技術としては術後集中治療・管理、すなわちプラセボでございます。公的医療費の立場以外の分析は行わず、QALY以外の指標の使用はないというものでございます。
最後に15ページ目でございますが、分析の枠組みにつきましては、我々企業側も合意しておりまして、さらなる論点はないということが確認されました。
以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、委員の方及び企業から御質問はございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
説明いただきましてありがとうございました。国内第Ⅲ相試験の結果を中心に費用対効果も分析されるのかなと思うのですが、これは海外では今、開発といいますか、臨床試験等をされているのかどうかというのが1つ。あと、御存じのように費用対効果評価というのはQALY、すなわちQOLの測定とかそれに基づいた計算が必要になりますが、QOLの評価はされているのかどうか、その2点を教えてください。
○意見陳述者
海外でございますが、これは国内と海外と分かれて開発を行いましたので、国内が先行しまして、海外は今、第Ⅲ相試験を実施しているところでございます。
QOLの評価につきましては、GOSE、それからmodified Rankin Scaleといった意識障害や嚥下障害のQOLの評価を別途実施しております。ただ、その他のセカンダリー以下のエンドポイントという位置づけになっております。
○○○委員
modified Rankin ScaleとかはQOLといえばQOLなのですが、QALYを算出できないと思うので、費用対効果の効果指標で使えるQALYを算出するようなデータは臨床試験では取っていないという理解でいいですか。
○意見陳述者
そういう意味で申しますと、Morbidity/Mortalityイベントの評価といいますのが、死亡あるいは脳梗塞が起こったかどうか、神経脱落症状があるかどうか、それから全く何も起こらなかったというような判定は一例一例加えられておりますので、このデータはもしかしたらQALYの評価には使える可能性があるのではないかと思っています。
○○○委員
分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の方、いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
非常に期待ができる薬剤なのだなと、すばらしいなと思ったのですけれども、もちろん急性期ですから、それを救うのが第一ですけれども、有害事象についてどうかということと、例えばこれは10mgでこれだけの効果なので、ドーズレスポンス的にもう少し多かったらもっと効果があって、でも、有害事象も増えるみたいな、そういったような検討があったかどうか教えていただければと思います。
○意見陳述者
有害事象につきましては、スライドを省略してしまったのですけれども、特徴としましては、まず、エンドセリン受容体拮抗薬、特にレセプターA選択性の拮抗薬の特徴である水分貯留というものがございまして、それに関する有害事象はある程度発生しております。ただ、何例かは中止例がございましたが、試験薬の投与を妨げるような、トータルとしてそういうものではございませんでした。
また、クラスエフェクトとしては、経口剤のエンドセリン受容体拮抗薬では肝障害というのがあるのですけれども、この薬剤の場合は注射剤で短期の投与でございますので、肝障害として特徴的に出るようなことはございませんでした。もちろん肝障害の臨床検査値の上昇例は何例か確認されております。
すみません。2つ目は何でしたでしょうか。
○○○委員
10mgということは、ここが一番、益と害のバランスがよかったということなのかなと思うのですけれども、多ければ効くみたいな検討はあったのでしょうか。
○意見陳述者
日本人では10mgが最高用量で検討しております。といいますのは、海外では15mgが設定されているのですけれども、体格等を考慮して10mgを日本人では最高にいたしましたので、10mg以上の検討はされていません。
ただ、非常に高用量の60mg等の投与経験がフェーズⅠでございますが、その際にはやはり頭痛、吐き気、嘔吐等といったものが出ておりますが、臨床で使う用量とはかなりかけ離れておりますので、なかなか参考にはできないというところがございますので、日本人として検討したものは10mgが最高という状況でございます。
○○○委員
どうもありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。
では、最後に私から、専門外で初歩的な質問なのですけれども、今回、対象の介入された背景がクリッピングとコイリングがあるということで、昔から多少なりとも成績の違いとか、結果として予後が変わってくるような可能性もあると思うのですけれども、今回、併合解析をするということで皆様方は方針を決めていらっしゃるかどうか、確認させていただければと思いますが、いかがでしょうか。
○意見陳述者
これは併合解析で実施するということになっております。イベント、脳血管攣縮のもともとの発現頻度につきましては、クリッピングとコイリングで若干の違いはございますが、発現の機序としては漏出した血腫によってもたらされるものですので、大きな違いはないのではないかというのがおおむねの御判断でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。ありがとうございました。
その他、ないようでしたら、これで終了させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。どうもお疲れさまでした。
(意見陳述者退室)
○事務局
事務局でございます。
企業の方の退室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、ピヴラッツ点滴静注液に係る分析枠組みについて御議論をお願いしたいと思います。
○○○委員
よろしくお願いします。
特に大きな問題はないと思います。血管内治療を選ぶかクリッピング術を選ぶかというのは施設によって違いますので、この辺は一緒に評価されるということでいいと思います。
ただ、多くの症例が多分これを売り出されますとクラゾセンタンを使うほうに回ってしまうのではないかなということが一番懸念されるところでありまして、使わないほうがかなり少なくなるとか、あるいは一定の偏りを持った心不全があるとか何とかいうような人がそちらに回ってしまうというような偏りが出る可能性はちょっとあるのではないかと思うのですけれども、やってみないと分からないので、まだどういう症例がいいかというのは全然言われていませんので、その辺がちょっと懸念されるところでありますけれども、これはなかなか払拭できませんので、この枠組みで仕方ないかと思います。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、その他の先生方、御意見、コメントございますでしょうか。よろしいでしょうか。事前にいただいた意見では、皆様方、基本的には枠組みを御了解ということでありますので、よろしければ議決に入らせていただきたいと思います。
議決に入る前に、○○委員におかれましては議決の間一時御退席をお願いいたします。
(○○委員退室)
○事務局
事務局でございます。
○○委員の御退席が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、○○委員を除く先生方の御意見をまとめますと、ピヴラッツ点滴静注液に係る費用対効果評価に係る分析枠組み案を了承するということでよろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、事務局は○○委員に入室いただいてください。
(○○委員入室)
○事務局
事務局でございます。
○○委員の御入室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。