薬事審議会血液事業部会令和6年度第2回安全技術調査会議事録
日時
令和6年9月27日(金)11:00~12:00
開催形式
Web会議
出席者
- 出席委員(9名):五十音順、敬称略 ◎座長
-
- 朝比奈 靖浩
- 荒戸 照世
- 石井 明子
- 大隈 和
- 岡崎 仁
- 玉井 佳子
- 長村 登紀子
- ◎濵口 功
- 水上 拓郎
- 欠席委員:敬称略
-
- 天野 景裕
- 脇田 隆字
- 金沢工業大学 加齢医工学先端技術研究所:敬称略
-
- 山口 照英
- 日本赤十字社:敬称略
-
- 谷 慶彦
- 後藤 直子
- 事務局:
-
- 源 周治(血液対策課長補佐)
議題
- 1.新たに承認された新型コロナウイルスのワクチン接種者の採血制限について
- 2.その他
配布資料
資料ページをご参照ください。
議事
- 議事内容
- ○源血液対策課長補佐 それでは定刻となりましたので、ただいまより「薬事審議会血液事業部会令和6年度第2回安全技術調査会」を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度は、御参加いただく方の利便性等の観点からWebでの審議とさせていただきます。
次に、本日の委員の出席状況ですが、天野委員、脇田委員より御欠席との連絡を頂いております。現時点で安全技術調査会委員11名中9名に御出席いただいていることを御報告いたします。加えまして、本日は参考人として、金沢工業大学加齢医工学先端技術研究所より山口照英所長に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より谷中央血液研究所長、後藤技術部次長に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、全ての委員の皆様より今回の議題について、薬事審議会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので御報告させていただきます。また、薬事審議会参加規程に基づき各委員の利益相反の確認を行いましたところ、岡崎委員から関連企業より一定額の寄付金、契約金などの受取りの御報告を頂きましたので御報告いたします。
議題1に関しては、岡崎委員につきましては、意見を述べていただくことは可能ですが議決には加わらないこととさせていただきます。他の委員については、対象年度における寄付金、契約金等の受取りの実績なし、又は50万円以下の受取りであることから、特段の措置はありません。これらの申告については、ホームページで公開させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただき御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力賜るよう何卒よろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、本日の資料の確認をお願いします。1の議事次第から6の参考資料までPDFファイルを用意しております。もし確認できない、又は不足がある場合には事務局までお知らせください。
本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問がございましたら、挙手等によりお示しいただきますようよろしくお願いいたします。座長から順に発言者を御指名いただきます。指名された方はマイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を御発言ください。ノイズを減らすために、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度皆様の発言を控えていただき、発言したい委員につきましてはチャットにその旨、メッセージを記入していただくよう事務局、又は委員長からお願いする場合がございます。その場合には、記入されたメッセージに応じて委員長より発言者を御指名いただきます。Web参加の皆様におかれましては、議事進行中に会場の音声が聞こえづらい状況が続き、審議参加に支障を来たす場合にはチャット等でお知らせいただくようお願い申し上げます。間もなく議事に入りますが、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。
○濵口座長 本日はお忙しいところ御参集いただきましてありがとうございます。これまで事務局からの御説明がありましたが、これに対して御質問、御意見はございますか。それでは、議事に入ります。議題1、「新たに承認された新型コロナウイルスのワクチン接種者の採血制限について」、まずは事務局より御説明お願いいたします。
○源血液対策課長補佐 事務局の源です。よろしくお願いいたします。事務局より資料1について説明させていただきます。「新たに承認された新型コロナウイルスのワクチン接種者の採血制限について」です。まず、1.新型コロナウイルスワクチンに対する対応について、これまでの経緯を御説明いたします。これまでにコロナワクチン接種後の採血制限については、厚生労働科学研究である「安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究」において、ワクチン接種に係る知見を整理し、そこでの議論を踏まえて対応方針を定めてまいりました。その中で、令和3年4月の安全技術調査会において、mRNAワクチン接種後の採血制限については、血液製剤の安全性の観点、献血者の安全確保の観点から、接種後48時間と定めております。また、mRNAワクチン以外の組換えタンパク質ワクチン、ウイルスベクターワクチンに関して審議を行い、接種後の採血制限期間の方針を示してきました。一方で、その際に今後ワクチンが新しく承認された際には、当該ワクチンが既に採血制限が定められた種類のものである場合には、接種者の採血制限について、原則、同じ種類のワクチンの採血制限とそろえることとするとしたところです。
今回、本邦において、Meiji Seikaファルマ社製の自己増幅型mRNAワクチン(レプリコンワクチン)が新型コロナウイルスワクチンとして新たに承認され、今後の定期予防接種に使用されることから、これまでの検討を踏まえ、当該ワクチンの採血制限等について対応方針を定めることとしました。
検討するに当たり、2にお示しするように、これまでのワクチン接種に係る採血制限の検討を行った厚生労働科学研究班において、Meiji Seikaファルマ社製のレプリコンワクチンについて、今回の参考資料として含めている審査報告書のデータに基づいて議論をし、既存のmRNAワクチンと同様の採血制限期間が適切であるとして、次のような意見を取りまとめております。
非臨床試験では、今回承認された自己増幅型mRNAワクチンであるコスタイベは、リンパ節を除く他の臓器では、筋注部位に比べた検出量は非常に僅かで、投与から1週間後には、ほぼ検出されませんでした。
また、レプリコンmRNAは、1週間程度の持続相が確認されているものの、増幅されたmRNAが筋肉外へ排出される量は非常に少なく、血中に遊離するmRNAは筋肉内よりはるかに少ないと解釈できる結果から、少なくとも48時間後では1/100以下にはなっていることを踏まえた評価が妥当であるとされております。
採血血液に混入するmRNAの推定量から見た血液製剤の安全性については、筋注部位から血中へ排出されるmRNA量はより早く減衰し、48時間で1/100となり、その後も減少する点から考えると、その影響は非常に限定的であり、コミナティとの副反応の比較結果とも合致していました。
さらに、mRNAのLNP(脂質ナノ粒子)化は当該ワクチンの体内での安定性や細胞内への送達に必須の技術であり、血漿中で検出されるLNPを伴わないmRNAがワクチンと同様に体内動態、細胞内への送達が起きる可能性は極めて低いと考えられます。
一方で、臨床試験においては、接種後の副反応発現状況から見た献血者の安全性に関しては、従来のmRNAワクチンと比較して問題は認められませんでした。接種後の副反応などの症状(ピーク)発現時期や持続期間についても、コミナティと比較して大きな差異はなく、少なくとも同等と考えられました。以上の議論より、Meiji Seikaファルマ社製のレプリコンワクチンについて、他のmRNAワクチンと同様に、採血制限の期間を「接種後48時間」とすることで問題ない旨の見解が提示されております。
3.対応方針です。以上の議論を踏まえ、安全技術調査会として、以下にお示ししておりますが、Meiji Seikaファルマ社製のレプリコンmRNAワクチンについて、接種後48時間の採血制限とする案について御審議をお願いいたします。以上です。
○濵口座長 御説明ありがとうございました。本件に関する研究班の見解につきまして、御参加いただいている山口参考人と大隈委員より、順に御説明をお願いしたいと思います。それでは山口参考人からお願いいたします。
○山口参考人 山口です。御紹介ありがとうございます。今、事務局から御説明していただいたとおりですが、繰り返しになるかもしれませんが、増幅性のmRNAワクチン、コスタイベの審査報告書に基づいて、いろいろ議論をさせていただきました。
非臨床のデータが最も参考になるかと思いますが、筋注されたレプリコンワクチンが、8日目でもう1/10程度に低下していて、かつ、2週間、一か月後にはもう1/100、1/1000まで低下するというデータが示されております。
もう1つは、リンパ節以外の他の臓器では、筋注部位と比べて非常に検出量は僅かで、ほぼ1週間後には検出されなくなっているということ。これらのデータに加え、献血のときに課題となるコスタイベの循環血液での持続性について、先ほど申しました筋注した場合に比べて48時間で1/100程度に低下していると。1週間後には1/1000から1/5000にまで低下しておりますので、このようなデータから、投与部位の減衰曲線に比べ血漿中の減衰がより速やかなのは、多分、mRNAの増幅が筋肉内の細胞の中で起きるによると推定されます。しかも、投与組織から何らかの要因によってmRNAが漏れ出してしまっているのを測定していることを反映していると考えられると思います。
これらのデータをもとに、増幅されたmRNAが筋肉外へ排出される量は非常に僅かであると我々は判断いたしました。さらに、採血される血液の中に混入するmRNAの推定量から見た血液製剤の安全性という観点から、レプリコンmRNAワクチンは、従来の非増幅型mRNAに比べて、投与部位である筋肉内で持続することも確認できておりますが、その一方で、筋注部位から血中へ排出されるmRNA量は非常に早く減衰し、48時間で1/100程度になるということから考えると、その影響は非常に限定的だろうと推定されます。
さらにmRNAは、RNaseによって分解されやすく非常に不安定である上に、その作用が発揮されるには、細胞内に取り込まれることによって薬理作用や副作用、あるいはその自然免疫活性化が起こるということが考えられることから、そのようなmRNAがLNPに含まれない形で細胞外へ漏れ出したものが、LNP化されていないmRNAがワクチンと同様に体内動態、細胞内への送達が起きる可能性は極めて低いと判断させていただきました。私からは以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。続きまして、大隈委員から、研究班の見解をお願いします。
○大隈委員 関西医大の大隈です。よろしくお願いいたします。本件につきましては、主にコスタイベの審査報告書をもとに検討させていただきました。本製剤の体内動態等の特徴は、今、御説明のあったとおりですが、従前のmRNAワクチンと比較しまして、審査報告書に記載のとおり、非臨床試験におきましては、安全性における特段の問題は認められず、大きな差異はないかと考えております。また、臨床試験におきましても、審査報告書に記載のとおり、接種後における特定有害事象等ですが、従前のmRNAワクチンと比較して問題は認められませんでした。やはり、接種後の副反応などの症状発現時期とか持続期間というのが非常に気になりますが、これにつきましてはコミナティと比較検討されておりまして、それを確認しましたが、それについても本製剤とコミナティとの間に大きな差異はありませんで、少なくとも同等ではないかと考えております。
ただ、現時点といいますか、本剤は皆様御存じのように、承認されたレプリコンmRNAワクチンとしては本邦が初めてです。そのため、現時点では参考にできるような実臨床における海外からの副反応報告等はございません。献血者の安全性に係る情報は、乏しい状況ではないかと考えられます。こういったことも含めて、今後の接種後の副反応の発現状況については十分注意して見ていく必要があるのではないかと考えております。できれば、本剤の接種後の状況の情報収集(献血者だけではなく受血者のほうも情報収集)が必要ではないかとは考えております。
こちらは研究班の提案としては、その点も十分注意した上で本製剤の採血制限は従前のmRNAワクチンと同様でいいのではないかと。つまり、接種後48時間で問題ないのではないかと考えておりますが、それに付け加えて、これも従前のmRNAワクチンと同様ですが、全身倦怠感等の全身性の副反応が認められた場合は、献血せずに症状消失まで採血を見合わせる等の対応は取っていただく必要があるのではないかと、研究班としては考えております。私からは以上です。
○濵口座長 大隈先生、ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について、委員の先生方から御意見、御質問がございましたらお願いいたします。それでは、荒戸委員お願いします。
○荒戸委員 御説明ありがとうございました。やはり、今回のような副反応を議論するときには、山口先生がおっしゃっていたように、血液中にどのぐらい残っているかということが大切ではないかと思いました。そこで、普通のmRNAワクチンであるモデルナの審査報告書も確認させていただいたのですが、48時間後にはもう検出限界以下になっていましたが、コスタイベのほうは48時間で1/100程度に減衰ということです。ただ、御説明にあったとおり、血中では筋肉中よりも非常に分解が速いということですので、この結論自体には私も賛成ですが、そこで気になるのは、人でどうなっているかということです。コスタイベのデータはないと思いますが、例えば、通常のmRNAワクチンの場合の生体内分布とか動態のデータ等は出てきているのでしょうか。それを踏まえた議論等が行われていたか教えていただきたいと思います。以上です。
○濵口座長 荒戸先生、ありがとうございました。それでは、山口先生のほうから内容について御回答いただけますか。
○山口参考人 荒戸先生、御質問ありがとうございました。御存じのように、ワクチンという特殊性から、ワクチンというよりは局所投与ということから全身のPKというのはあまり解析されていないというところが実情かと思います。
もう一つは、御存じのように、mRNAそのものはLNP化していない限りは送達が非常に難しいという、いわゆるDDSが重要なポイントになっておりまして、先ほど説明させていただきましたように、ほとんどが投与の部位から漏れ出したものと考えられるわけです。そのときにLNP化された状態で漏れ出していると考えられるのは非常に少ないのではないかと。量に関しては、モデルナ50μg/bodyだったと思いますが、コスタイベは5μg/bodyということで1/10になっております。その1/100ですので、そういう意味では、少なくともそれだけの量比で減衰しているという、先ほどのことは言えるのではないかと。なかなかmRNAを実臨床とか、そういうことで量を計るのは非常に難しいので、少なくとも非臨床のデータからその量を推察するより仕方がないのかなと思っております。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。荒戸先生、いかがですか。
○荒戸委員 ありがとうございます。ただ、モデルナの投与量は100μgだと思うのですが、もし違っていたらすみません。御説明自体、臨床で検討が難しいということは、よく理解できるところです。ただ、大分こういう議論が出てくるので、どこかでやっていたらいいなということで質問させていただきました。以上です。
○濵口座長 荒戸先生、ありがとうございました。山口先生、何か付け加えられることはありますか。
○山口参考人 多分、最初は100で、後で50に下げたのだと。私の理解が間違っていたら。荒戸先生のおっしゃるように最初は100だったと思います。
○濵口座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。水上先生、お願いします。
○水上委員 今の件について、幾つか論文が出ておりまして、Biomedicinesというジャーナルですが、こちらは、大体血中で15日位までは核酸は検出できるという報告があります。血漿と血球成分で比較していて、血球成分では大体接種後6日位まで、血漿では接種後15日ぐらいまでmRNAが検出できるとなっております。コピー数は非常に少ないですが、そういった論文があります(Fertig TE et al., Vaccine mRNA Can Be Detected in Blood at 15 Days Post-Vaccination. Biomedicines. 2022;10:1538.)。
また、最近ですが、Lancetの姉妹紙であるeBioMedicineのほうにも、これは妊婦にmRNAワクチンを接種した後の48時間程度をフォローアップしているスタディですが、mRNAが母乳中から検出できているという報告はございます(Hanna N et al., Biodistribution of mRNA COVID-19 vaccines in human breast milk. EBioMedicine. 2023; 96:104800.)。ただ、先ほど山口先生がおっしゃっていたmRNAの存在形態ですが、幾つかの論文が、Extracellular vesiclesの中にmRNAが入り込んでいて、それが循環しているのではないかということが報告されております。Extracellular vesicles中のmRNAを細胞に添加しても、実際タンパクとしてスパイクが出てくることはなかったということなので、機能的なmRNAではないのではないかということが示唆されています。
あと、特殊な心筋障害の方等で一部心筋組織にmRNAが30日程度残存しているとか、そういった論文はあるのですが(Krauson AJ et al.,Duration of SARS-CoV-2 mRNA vaccine persistence and factors associated with cardiac involvement in recently vaccinated patients. NPJ Vaccines. 2023; 8: 141.)、現状、恐らく機能性を保持したmRNAが存在しているということはないのではないかと考えられます。恐らく、血液中に存在しているmRNAは核酸断片として存在しているのではないかと思っておりますが、ただ、それが今、ファイザー、モデルナも含めて、献血後48時間後に採血した血液で特にそれが大きな問題を起こしていないということであれば、レプリコンワクチンに関しても同等な扱いで基本的に問題ないのではないかと考えております。補足です。
○濵口座長 ありがとうございました。この点に関して何かよろしいですか。追加で何か御発言いただく方はありませんか。それでは、ほかに何か御質問、委員の先生方からありますか。非臨床のデータと臨床のデータをもとに、研究班のほうで一応評価をしていただいたことになっておりますが、よろしいですか。
それでは、特にないようでしたら議決に入りたいと思いますが、進めてよろしいですか。それでは議決に入りたいと思います。岡崎委員におかれましては、議決には加わらないことでお願いしたいと思います。
○岡崎委員 はい、了解です。
○濵口座長 それでは皆様、今回御提案があったレプリコンワクチンの採血制限につきまして48時間の制限を設けるという内容でしたが、これに対して御承認いただけますでしょうか。御承認いただける委員の先生方は手を挙げてください。事務局のほうで一応確認をしていただきたいと思います。もちろん私もイエスです。皆さん、ありがとうございました。手を下げていただいて結構です。それでは、この案件につきましては、皆さんから承認を受けたということで進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
次は議題2に移りたいと思います。議題2の「その他」ですが、事務局から何かございますか。
○源血液対策課長補佐 ありがとうございます。特にございません。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、本日の議題は以上となります。ほかに何か御意見、若しくは追加のコメント等ございましたらお願いします。よろしいですか。皆さん、ありがとうございました。それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○源血液対策課長補佐 事務局です。濵口座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて、「血液事業部会令和6年度第2回安全技術調査会」を終了いたします。ありがとうございました。(了)
- 議事要旨
- ※令和6年9月30日掲載
議事概要[117KB]