2024年4月30日 薬事審議会 指定薬物部会 議事録

日時

令和6年4月30日(火)10:00~

出席者

出席委員(10名)五十音順 

 (注)◎部会長 ○部会長代理 

 他、参考人1名出席
 

欠席委員(1名)五十音順
行政機関出席者​
  •  佐藤大作(監視指導・麻薬対策課長)他

議事

○監視指導・麻薬対策課長 定刻となりましたので、ただいまから「令和6年度第1回薬事審議会指定薬物部会」を開催させていただきます。委員の先生方には、大変御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 はじめに、人事異動について御報告をさせていただきます。4月1日付けで薬物取締調整官に深田が、課長補佐に藤井が着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。また、本日、局長は所用にて欠席をさせていただいております。
本日はWeb形式との併用の開催でございますが、関野部会長、髙野委員、田中委員には会場の方にお越しいただいております。当部会の委員数11名のうち、松本委員より御欠席との御連絡を頂いておりますが、現時点で10名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。また、本日は参考人として□□□□□□□□□□□□の□□先生をお招きしております。□□先生、よろしくお願いいたします。
 続いて、部会を開催する前に本部会の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。審議会総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、当部会は非公開とされております。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
 それでは、以後の議事進行は関野部会長にお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会資料の確認及び注意点について、事務局よりお願いいたします。
○事務局 本日の部会資料に関しては、事前に各委員宛てに送付しております。また、会場出席の委員はタブレットにて御確認をお願いいたします。指定薬物部会に関しては、資料、文献、参考資料の3つのフォルダを搭載しています。資料フォルダの中には資料No.1、No.2、No.3、文献フォルダには文献1~文献13、参考資料フォルダには参考資料No.1~No.3を置いております。部会資料についての説明は以上です。また、審議物質の説明中は画面上に資料を共有いたしますので、併せて御覧ください。
○関野部会長 ありがとうございました。本日の議題は「指定薬物の指定について」です。それでは審議に入ります。審議物質について、事務局より説明をお願いします。
○事務局 では、資料を御覧ください。資料No.1は、本日審議いただく1物質及び3物質群の名称、構造式、通称名等を記載しております。資料No.2は、御審議いただく1物質のほか、構造が類似する指定薬物などについて一覧表としてまとめております。資料No.3は、審議物質の動物実験の結果等、審議物質群については代謝実験の結果などについて取りまとめたものです。
それでは、LSD系である物質1について説明いたします。まず、資料No.2を御覧ください。資料No.2は、LSD系(LSDアナログ)である物質、通称名1T-LSD及びこれに構造が類似する麻薬、指定薬物について、セロトニン受容体活性、中枢神経系への作用、首振り反応試験のデータ等をまとめております。1T-LSDは、首振り反応・累積首振り回数は増加及び増加傾向を示し、中枢神経系への作用も過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料No.2は以上です。
 続いて、資料No.3について説明いたします。資料No.3の1ページを御覧ください。1T-LSDは、指定薬物である1cP-LSDと構造が類似する化合物です。続いて、2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスに1T-LSDを0.2、1.0、10mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、3ページ、4ページの表1~3に、1T-LSDに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、5ページには観察された特徴的な症状を示した写真を載せております。
 ここで、写真と併せて実際の動画とともに御確認ください。動画は3つあります。これは、1.0mg/kg投与群の投与後約13分を経過したマウスですが、伏臥位姿勢及び後肢の指間離開が確認されました。これは、10mg/kg投与群の投与後約5分経過したマウスですが、後ろに下がる異常歩行が確認されました。これは、10mg/kg投与群の投与後約60分経過したマウスですが、毛並みが悪く、2匹で立毛が見られました。動画は以上です。
 続いて、6ページの(2)自発運動における運動量の測定結果を御覧ください。いずれの項目も、測定期間を通して対照群と比べ有意な差は見られませんでした。
 続いて、7ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。1T-LSD約10mg/kg腹腔内投与群を5匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミンに対しては減少作用、ノルアドレナリンに対しては増加作用が確認されました。
 8ページの(4)には、首振り反応試験における首振り回数の経時変化と累積首振り回数の結果を示しております。首振り回数の経時変化は、全ての投与群において、投与後5分~10分の間に憎加傾向が見られました。また、累積首振り回数は、全ての投与群で、コントロール群と比較して有意な首振り回数の増加が認められました。
 9ページの(5)ヒトセロトニン受容体(2A及び2C)に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を御覧ください。1T-LSDのヒトセロトニン2A及び2C受容体に対するアゴニスト活性は、いずれも算出されませんでした。
以上の結果から、1T-LSDは、動物による行動観察の結果、モノアミン類の経時的変化において有意な影響が認められていることから、中枢神経系への作用を科学的に類推でき、その強さは既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定される指定薬物と比較して同等であると考えられることから、本化合物を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
 続いて、(6)海外での流通事例についてですが、ドイツ、スイスで流通が確認されております。また、(7)海外での規制状況については、事務局にて確認した範囲では規制は確認されていません。
 最後に、(8)に参考情報として本物質に関する文献を示しております。文献3は、1D-LSDと記載されたブロッターに含まれる成分について1T-LSDであったと特定した文献です。日本で押収した1D-LSDとの文字及び化学構造式の一部が記載されたブロッターについて、含有する成分を分析し、1T-LSDと同定したと報告しております。
 文献4は、1T-LSDの評価を行った文献です。日本で入手した1D-LSDとの文字及び化学構造式の一部が記載されたブロッターを分析したところ、異なる20枚の紙片全てから1T-LSDが検出されたと報告しております。
物質1については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見を伺いたいと思います。まず、最初に流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出事例がございます。まず、2023年2月に1件、2023年3月に14件、4月に9件、5月に13件、6月に5件、8月に25件、9月に23件、10月に7件、以上97件の検出事例があります。形態としては、いずれも紙片での検出になりました。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。非常に検出件数が多かったですね。それでは、委員の先生方に改めて御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
○□□委員 お伺いしたいのですけれども、よろしいですか。
○関野部会長 はい、よろしくお願いします。
○□□委員 今の御報告の7ページに、マイクロダイアリシス試験に関するデータがありますけれど、7ページの最初の行ですが、1T-LSDの濃度が約10mg/kgと記載されておりますが、それ以外の所では実験の濃度について厳密に規定されておりまして、ここで「約」と使われているのには何か理由があるのかどうかをお伺いしたいのです。以上です。
○関野部会長 事務局、よろしくお願いいたします。
○事務局 これは体重当たりというところで「約」ということになっておりまして、正確に測った量を体重当たりで見ますと、約それぐらいであるというような形になっております。ですから図の下の所、図の説明の所には正確な数字が記載されているかと思います。
○□□委員 なるほど、よく分かりました。ありがとうございました。
○関野部会長 ほかの先生方、御意見はありますか、会場の先生方もよろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた物質は、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。挙手にてよろしくお願いいたします。全員に挙手をしていただき、ありがとうございました。
 それでは、引き続き、事務局より説明をお願いします。
○事務局 続きまして、物質群について説明いたします。物質群(カンナビノイド化合物)ということになります。11、12、13ページを御覧ください。物質群1、2及び3については、3つまとめて御審議をお願いいたします。これら3つの物質群は、それぞれ既に包括指定を行った物質群について、定義の範囲を拡大したものです。
 各ページにそれぞれの省令名称・構造式を記載しております。この物質群に新たに含まれる物質、つまり、今回審議いただく物質に関しましては各ページの下段に表にして示しております。各群5物質の計15物質となります。規制対象とする必要があるか否かについて、御審議を頂きたいと思っております。
では、14ページを御覧ください。今回の審議15物質は、これまでの指定薬物部会におきまして、「指定薬物」に指定した物質の1位にアセトキシ基が結合したアセチル化体です。令和4年度第4回指定薬物部会におきましては、当該審議物質の構造類似物質であるTHC-O、HHC-Oを指定薬物に指定することが適当であるとの審議をいただいております。その部会資料の中で、これら物質がヒト肝臓ミクロソーム画分により脱アセチル化され、麻薬であるTHC、指定薬物であるHHCに代謝されることが実験結果で示されており、当該審議15物質も同様にヒト生体内では脱アセチル化され、代謝物である指定薬物となることが示唆されます。一つの例としてHHCHとHHCH-Oの構造式を示しております。
続いて、15ページの(1)代謝についてマル1を御覧ください。これは令和4年度第4回指定薬物部会の資料でもありますが、Δ-THC-O又はΔ-THC-Oは生体内に存在するエステラーゼにより規制物質であるΔ-THC又はΔ-THCが生成する可能性が考えられたことから、in vitroによる代謝実験が行われました。ヒト肝臓ミクロソーム溶液中に、Δ-THC-O又はΔ-THC-Oを添加し、37℃条件下で分解物の確認を行ったところ、図1-1及び図1-2のとおり、Δ-THC-O又はΔ-THC-Oは生体内で酵素化学的加水分解を受け、Δ-THC又はΔ-THCが生成することが推察される結果が得られました。
続いて、16ページの(2)代謝についてマル2を御覧ください。これも令和4年度第4回指定薬物部会の資料でもありますが、11α-HHC-O又は11β-HHC-Oは生体内に存在するエステラーゼにより規制物質であるHHCが生成する可能性が考えられたことから、in vitroによる代謝実験を行っております。ヒト肝臓ミクロソーム溶液中に、11α-HHC-O又は11β-HHC-Oを添加し、37℃条件下で分解物の確認を行ったところ、図2-1及び図2-2のとおり、11α-HHC-O又は11β-HHC-Oは生体内で酵素化学的加水分解を受け、HHCが生成することが推察される結果が得られました。
 続いて、17ページの(3)代謝についてマル3を御覧ください。これは今回の指定に向けて新たに検討いただいたエステラーゼによる代謝実験の結果になります。炭素数が3,6,7,8,と、3位のアルキル側鎖の長さが異なる指定薬物のアセチル化体に関しまして、同様の実験を行いました。ヒト肝臓ミクロソーム溶液中に、各物質を添加し、37℃条件下で分解物の確認を行ったところ、図3-1及び図3-2のとおり、各物質の脱アセチル化体が生成する結果が得られました。また、20ページ図3-3に示しておりますが、ヒト肝臓ミクロソームを煮沸することにより失活させた場合や、カルボキシルエステラーゼ阻害薬であるBNPPを添加した場合には、加水分解反応はほとんど認められませんでした。これらのことから、ヒト生体内において酵素化学的加水分解を受け、脱アセチル化体が生成することが推察される結果が得られました。
その下のまとめの部分ですが、以上の結果から、代謝についてマル1で、二重結合の位置(Δ,Δ)、代謝についてマル2、マル3で立体(9(S)、9(R))、3位のアルキル鎖の長さ(炭素数3,5,6,7,8)に関係なく、アセチル化体は脱アセチル化されることが明らかとなり、ヒト生体内においても脱アセチル化体が生成することが推察されました。
Δ-THCV-O、9(S)-HHC-O、9(R)-HHC-O、Δ-THCH-O、9(S)-HHCP-O、9(R)-HHCP-O、Δ-THCjd-Oは、ヒト生体内代謝酵素によるin vitro代謝実験の結果においても、脱アセチル化体が検出されることから、これらアセチル化体は生体内においても脱アセチル化体に代謝されることが類推でき、これら脱アセチル化体は既に医薬品医療機器等法に基づき指定薬物として指定されています。既に包括指定されている物質群のアセチル化体15物質を医薬品医療機器等法第2条第15項に規定する指定薬物に指定することが相当であると考えております。
(4)我が国での流通状況についてですが、THCB-O、THCH-O、THCP-O、HHCH-O、HHCP-Oを含有すると標榜する製品が我が国で多数販売されていることが確認されています。
 (5)海外での規制状況についてですが、事務局にて確認をした範囲では規制は確認されておりません。
 3物質群については以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは委員の先生方に御意見をいただきたいと思います。まず、最初に流通実態について、□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物につきまして、□□□□での検出事例がございます。まず、THCH-Oアセテートにつきまして、2024年3月に2件ございます。1件は黄色い液状物、もう1件は植物片となります。THCP-Oアセテートにつきまして、2023年1月、3月、6月にそれぞれ1件ずつ検出事例がございます。こちらは黄色い液状物となります。HHCH-Oアセテートにつきまして、2024年3月に1件検出事例がございまして、こちらは茶色の液状物となります。HHCP-Oアセテートにつきまして、2023年2月に1件、2024年2月に2件、合計3件の検出事例がございます。こちらは黄色又は茶色の液状物となります。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。それでは委員の先生方に改めて御意見を頂きたいのですが、その前に、本日参考人としていらしてくださっている□□先生から、このことについてのコメントがありましたらお願いいたします。
○□□参考人 ありがとうございます。□□です。私ども、これらOアセテート体につきまして、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝実験を行いまして、アルキル側鎖の長さがC3からC8までの化合物において、全てでヒトの肝ミクロソーム中で脱アセチル化が起こることを確認しております。アルキル側鎖の長さでその代謝速度は変わりますが、C8におきましても脱アセチル化が起きることが認められております。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。物質数は多いですが、これは非常に重要な指定になるかと思います。海外ではまだ規制されていないということで、日本が先駆けて指定ということになりますので、先生方の御意見をよろしくお願いします。
○□□委員 今回、いわゆるプロドラッグの指定ということで、化合物の置換基に着目して包括に規制の範囲を広げていく形は非常にいいと思いました。その中で、今回、代謝のデータも出ておりますので、世界に先駆けて危険性が予測できるものを指定できるというのは、かなり効果的ではないかと思いました。以上です。
○関野部会長 大変いい御意見を頂きまして、ありがとうございます。これを包括にしていくということになりますので、反響が大きいかもしれませんが、その他御意見がございましたらお願いします。
 特にないということですので、それでは審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質群は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、引き続き、事務局より説明をお願いします。
○事務局 今後のスケジュール等について、御説明いたします。本件の結果については次回開催の薬事審議会で報告させていただく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、本日御審議いただいた物質、物質群に関する、いわゆる正規用途については、今のところ、確認されておりません。いずれにしましても、可能な限り適正使用に支障を来さないように対応いたします。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。以上で、本日の議題は終了いたしました。事務局から、次回の予定について連絡をお願いします。
○事務局 次回の部会日程につきましては、正式に決まり次第改めて御連絡いたします。以上です。
○関野部会長 それでは、以上をもちまして、令和6年度第1回指定薬物部会を閉会いたします。
( 了 )
備考
本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。

照会先

医薬局

監視指導・麻薬対策課 課長補佐 竹内(2779)