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第7回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会議事録
労働基準局安全衛生部労働衛生課
日時
令和6年9月20日(金)10:00~
場所
中央合同庁舎5号館専用第22~24会議室
議題
- (1)労働者の健康確保に必要な健診項目について
- (2)その他
議事
- 議事内容
- ○大野中央労働衛生専門官 定刻を過ぎましたので、ただいまより「第7回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、御多用の折、御参加いただきありがとうございます。本検討会は、資料及び議事録は原則公開といたします。報道関係者の皆様、カメラ撮影はここまでとしてください。
本日の出欠状況ですが、荒井構成員、大下構成員からは欠席の御連絡を頂いております。また、大須賀構成員、田中構成員、冨髙構成員、武藤構成員、吉村構成員におかれましては、オンラインにて御参加いただいております。また、本日は、参考人として公益社団法人日本歯科医師会常務理事の山本様に御出席いただいております。参考人の方におかれましては、議論の中で座長から発言を促された際に指名を受けて御発言いただくようお願いいたします。
続いて、オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の仕方などを説明いたします。会議中、御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長からの指名を受けてから、マイクのミュートを解除し、発言をお願いいたします。御発言の終了後は、再度マイクをミュートにしてくださいますようお願いいたします。また、議題に対して御賛同いただく際には、カメラに向かって「頷いていただく」ことで、「異議なし」の旨を確認させていただきます。
続いて、資料の確認をいたします。本日の資料は事前にお送りしておりますとおり、議事次第、資料1、2、3、参考資料1~6になります。この後、議事に沿って画面共有にて御覧いただきますが、不足がありましたら事務局よりお送りいたしますので、コメント又は御発言にてお申し出ください。
以降の議事進行については、髙田座長にお願いいたします。
○髙田座長 よろしくお願いいたします。本日の議題として、「労働者の健康確保に必要な健診項目について」を進めていきます。まず、事務局から、資料1、2の説明をお願いいたします。
○大村産業保健支援室長 事務局です。資料1、労働者の健康確保に必要な健診項目について説明いたします。スライド2を御覧ください。本検討会の論点です。その他労働者の健康確保に必要な健診項目についてという項目が、検討会の論点の1つとして挙げられております。
続いて、スライド3を御覧ください。本検討会における健診項目を検討する際の要件、着眼点について、第4回の検討会でお示しした資料を付けております。対象とする健診項目を検討する場合には、業務起因・業務増悪などについて検討するとされております。
続いて、スライド4を御覧ください。第3回の検討会において、8月末までに新たに健診項目として追加すべき要望等を受け付ける旨をお伝えしておりましたが、以下の項目について今回受け取ることに至っております。具体的に申し上げますと、新規健診項目については4件で、C型肝炎検査を含むウイルス肝炎検査の追加、血清クレアチニン値の追加、歯科健診の追加、眼底検査の追加、以上4件です。また、既存健診項目については、胸部X線検査の維持、心電図検査の維持、以上2件を受け付けております。本検討会では、仮に制度的な措置を行うとした場合には、より大きな手当が必要となる歯科健診の追加の御要望より、ヒアリングを行うこととさせていただきたく存じます。資料1については以上です。
続いて、資料2を御覧ください。労働安全衛生における歯科口腔保健対策についてです。スライド4を御覧ください。労働安全衛生法に基づく健診制度です。下方に、「歯科医師による健診」という欄があります。塩酸、硝酸、硫酸などによる業務に従事される労働者については、歯科医師による健診を行うという規定が、労働安全衛生規則第48条により定められております。さらに、「リスクアセスメント対象物健診」として、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場において、必要な労働者に対して医師又は歯科医師による健康診断を行うという規定があります。労働安全衛生規則第577条の2が根拠です。この健診については、本年4月から施行されております。
続いて、スライド5を御覧ください。有害な業務に係る歯科健康診断結果の労働基準監督署への報告義務を50人未満の事業場へも拡大した労働安全衛生規則の一部を改正する内容です。これについては、併せて、様式の見直しも行われております。施行時期については、令和4年10月1日より施行されています。具体的には、次のスライド6を御覧ください。有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書で、こちらの様式が新たに新設されております。
続いて、スライド7を御覧ください。歯科健康診断結果報告書の電子申請ということで、今説明いたしました結果報告については、本年、令和6年2月より、電子申請においても申請を行うことが可能となっております。
続いて、スライド8を御覧ください。新しい化学物質管理における健康管理の仕組みについてです。上段ですが、特別規則の対象物質というものがありますが、従来からの特殊健康診断制度がこちらになります。本年4月より、これに加えて、下にありますリスクアセスメント対象物を対象としたリスクアセスメント対象物健康診断が新たに創設されております。リスクに応じて事業者が判断を進めることになっており、検査項目については医師又は歯科医師が判断をするという内容になっております。
続いて、スライド9を御覧ください。リスクアセスメント健康診断における検査項目の選定方法についてです。歯科領域の部分については、一番下に記載があります。歯科領域の検査項目については、歯科医師による問診及び歯牙・口腔内の視診という規定があります。
続いて、スライド10を御覧ください。リスクアセスメント健康診断における参考とする有害性情報です。歯科領域については、一番下に記載があります。クロルスルホン酸など、5つの物質を対象としております。検査項目の設定においては、歯牙及び歯肉を含む支持組織への影響を考慮することが規定されております。
続いて、スライド11を御覧ください。昨今の調査研究の内容になります。令和4年度から6年度において、厚生労働科学研究において、東京歯科大学の上條先生により、労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断のより適切な実施に資する研究について、研究が進められております。この成果物としては、「事業所におけるリスクアセスメント対象物歯科健康診断ガイドブック」を公表するということで、既に公表されていると承知しております。今後、周知を進めていきたいと考えております。
続いて、スライド13を御覧ください。事業場における労働者の健康保持増進についてです。労働安全衛生法第69条、また第70条の2において、必要な指針を厚生労働大臣は公表するという規定があります。これに基づき、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」、いわゆるTHP指針が昭和63年に策定され、最終改正は令和5年になされております。
続いて、スライド14を御覧ください。THP指針ですが、口腔保健関係の記載を抜粋しております。こちらの規定は、令和2年の改正により盛り込まれております。具体的に申し上げますと、2 健康保持増進対策の基本的考え方において、口腔保健指導という部分が明示されております。また、4 健康保持増進対策の推進に当たって事業場ごとに定める事項(ロ)健康指導の実施の中に、歯と口の健康づくりに向けた口腔保健指導というものが具体的に明示されております。
続いて、スライド15を御覧ください。「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」です。こちらは、2021年(令和3年)に策定されております。事業者がTHP指針に基づく健康保持増進対策に取り組む際の参考となるよう、ポイントやノウハウを、手引きとして取りまとめたものです。
続いて、スライド19を御覧ください。(4)事業場における取組事例の紹介について記載しております。代表的な例としては、例えば地域の歯科医師会を通じた「出前教室」の開催事例、あるいは歯科健診を年2回実施し、医療保険者と連携して歯科健診費用の補助を行っている事例などが掲載されております。
続いて、スライド20を御覧ください。令和3年度から5年度において、厚生労働科学研究において、東京歯科大学の上條先生により、職域での歯科口腔保健を推進するための調査研究が進められておりました。成果物としては、「職場での歯と口の健康づくりを進めている事業場の事例集および歯と口の健康づくり事業を進めるための評価指標」を公表されております。こちらについては、周知を進めてまいりたいと考えております。
続いて、スライド21を御覧ください。職場の健康診断実施強化月間の実施についてです。平成25年度より、全国労働衛生週間準備期間である9月を、「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、集中的に周知等を進めております。この中で、THP指針に基づく取組の推進についても、周知・啓発をしております。
続いて、スライド23を御覧ください。ストレスチェックの実施者の追加ということで、労働安全衛生規則の一部を改正した内容です。ストレスチェックの実施者に、必要な研修を修了した歯科医師、公認心理師を追加しております。施行時期は、平成30年8月9日です。
続いて、スライド24を御覧ください。長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアルです。この中の「高ストレス者の場合に留意すべきストレス関連疾患」に、顎関節症が規定をされております。
続いて、スライド26を御覧ください。歯科口腔保健に関する調査研究の実績です。「歯科口腔保健と作業関連疾患、労働環境に関する研究」として、労災疾病臨床研究により、こちらにお示ししている4つの課題について調査研究がなされております。
続いて、スライド27を御覧ください。厚生労働科学研究により、以下の2題の調査研究が進められております。こちらは、先ほど説明した内容と同じものを掲載しております。資料2については以上です。
○髙田座長 御説明ありがとうございました。まず事務局から資料1に基づき、労働者の健康確保に必要な健診項目として説明いただいた通り、学会等から寄せられた要望が資料1の最後に載っておりますが、本日はその中から歯科健診の追加について議論を頂くということになります。そのほかの項目については、また次回以降の議論の際に御意見を頂ければと思います。
それから、資料2については、労働安全衛生における歯科口腔保健対策ということで、労働安全衛生法に基づく歯科に関する健康診断、事業場における労働者の健康保持増進について、ストレスと歯科口腔保健対策について、それから歯科口腔保健に関する調査研究の現状について報告いただきました。
ただいまの説明に関して御質問や御意見のある構成員は御発言をお願いいたします。まず、会場の構成員から御発言御希望の方は挙手をお願いいたします。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木構成員 御指名ありがとうございます。資料2の26ページについて、1点質問させていただきます。歯科口腔保健と作業関連疾患、労働環境に関する研究をご紹介いただきました。4つの研究課題を通じて、通常の業務・働き方と歯科疾患との間に何か明確な業務起因・業務増悪が確認できたかどうか、そうした研究があったかどうか、お尋ねいたします。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 事務局、いかがでしょうか。
○大村産業保健支援室長 事務局です。御指摘ありがとうございます。こちらの研究については、大きく2つの内容があったと承知しております。1つは、いわゆる政策についての御提案ということで、事業場における、いわゆる歯科部分での健康教育の推進を図るべきというような御提案です。もう1つは、いわゆる作業と歯科口腔との関係について調査研究がなされたものと、大きく2つのものがあると認識しております。
後者の作業と歯科口腔の関係については、いろいろ多角的な業務等について調査研究がなされておりますが、そこの調査研究の末尾にも含まれておりましたが、基礎的な部分についてはいろいろなデータの収集等がなされておりますが、まだまだ引き続きエビデンスの収集が必要であるという旨の記載がありました。その部分については、更なるエビデンスの集積が必要ではないかと認識をしております。
○髙田座長 鈴木構成員、いかがでしょうか。そのほか、会場から御質問、御意見はありますか。及川構成員、お願いいたします。
○及川構成員 及川です。御説明いただきありがとうございます。労働安全衛生における歯科口腔保健対策について、俯瞰的、総合的に御説明を頂き、今やっていることをしっかりと継続することが重要ではないかと、改めて実感したところです。意見は今申し上げたとおりなのですが、2点ほど少し教えていただきたいことがあります。7ページに電子申請について可能になっていますが、こういった電子申請によるものは、どのぐらい活用されているのか、もしお分かりになれば教えていただきたいです。
また、8ページのほうは、施行されてまだ半年に満たないのですが、この新しい化学物質における健康管理の仕組みが施行されて、何か新しいことが起こっているのか、想定どおりに進んでいるのか、これからなのかという、スタートダッシュの状況をお聞かせいただければ幸いです。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。事務局から回答をお願いいたします。
○大村産業保健支援室長 まず、スライド7の電子申請の部分ですが、こちらの制度が始まったのが本年2月ということで、まだ結果の実績等について集計はできておりません。この辺りについては、折を見て、必要な情報の公表等を考えてまいりたいと思います。
続いて、スライド8のリスクアセスメント対象物健康診断については、本年4月から施行されたこともあり、更なる周知を進めているところです。リスクアセスメント対象物健康診断の実績については、従来からの特殊健康診断と異なり、行政への報告義務がありません。そういったことから、健康診断実施機関等の皆さんの御協力を得て、今後、実態を確認し、把握してまいりたいと考えております。
○髙田座長 及川構成員、よろしいでしょうか。
○及川構成員 ありがとうございます。
○髙田座長 そのほか、何かありますか。オンライン参加の構成員の方で御発言を御希望の方はいらっしゃいますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、資料1、2についての議論は、ここまでといたします。
続いて、本日は労働者の健康確保に必要な健診項目についてのヒアリングとして、日本歯科医師会常務理事の山本様にお越しいただいております。それでは、御説明をお願いいたします。
○山本参考人 先生方、こんにちは。ただいま御紹介いただきました日本歯科医師会の山本でございます。本日は、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目に関する検討会にお招きいただきました。私からは、一般健康診断に歯科を盛り込む必要性ということで、少しお話をさせていただきたいと思います。それでは、2ページを御覧いただきたいと思います。
なぜ、一般健康診断に歯科の項目を追加していただきたいかということですが、1つは、高齢になっても、やはり活躍することができるように、事業場における労働者の健康保持増進を目指すということ。もう1つは、歯周病と全身の健康との関連性、これについては様々な研究報告が集積してきているということになります。3つ目は、健全な口腔環境があれば転倒防止につながるような可能性があるということになります。それから4つ目として、VDT、現在では、情報作業機器の作業増加によりまして、やはり顎関節の症状が課題となっているという部分がございます。
続きまして、3ページを御覧ください。こちらは日本歯科医師会が2年に1度、15~79歳の男女1万人を対象として、インターネットを使った調査で、「歯科医療に関する一般生活者意識調査」を実施しております。最新の2022年8月に実施した調査ですが、その中で特に、職業が会社員という回答のあった3,297名についての特徴をまとめたものになります。「これまでの人生を振り返って、もっと早くから、歯の健診・治療をしたほうがよかったと思うか」という質問に対して、「そう思う・ややそう思う」と回答された方が71.7%となっております。
4ページを御覧ください。こちらも同じ調査です。あなたは、この1年間に、歯や口の中の問題、例えば、痛くなる、はれる、詰めものがとれる、ものがはさまるといったような症状で、以下のような経験をしたことがありますかという質問です。そのうち、「この1年で仕事をしているときに歯や口の中の問題が気になった」という割合では、「よくある・たまにある」と回答された方が28.9%、あるいは、「この1年間で歯や口の中の問題が仕事など日常生活に支障をきたしたことがあるか」ということについては、「よくある・たまにある」と回答された方が、合計で18.4%になっております。このように歯や口の中の症状といったことが、やはりプレゼンティズムに関連するということが示唆されているのではないかというように考えているところです。
5ページです。歯周病についてです。歯周病は、初期の段階では自覚症状がほとんどない、そのために気付かないうちに進行しています。そのために「サイレント・ディジーズ」というように呼ばれています。成人の8割が歯周病になっているにもかかわらず、御自身で自覚している方は少ないということが特徴だと思っております。
6ページです。歯周病と全身の疾患、あるいは生活習慣との関連ということになるわけですが、歯周病は、単に口腔内の疾患だけにとどまらず、全身疾患に波及し、時には重篤な疾患につながることが確認されております。全身疾患となりますと、例えば糖尿病あるいは関節リウマチ、脳梗塞、動脈硬化に伴うような狭心症や心筋梗塞、あるいは呼吸器系の疾患、そして慢性腎臓病、あるいは妊娠・出産といったような問題、それから、内臓脂肪型の肥満といったこととの関連が報告されております。このために、歯科健診により口の中の状況を把握する、適切な歯科口腔保健指導を実施していただく、更には必要に応じて歯科の医療機関につなげていただくよう受診勧奨をする。あるいは、かかりつけの先生方との医科歯科連携につなげていくことが大変重要と考えているところです。
7ページです。歯周病と全身疾患、生活習慣等の様々な関連性についてです。こちらについては、先生方には、特に御説明する必要性もないかと思いますので、お読み取りいただければと思います。
8ページです。ここで、現在の日本における歯科健診の体制について御説明させていただきます。1歳半、それから3歳児を対象とした乳幼児の歯科健診、これは、いわゆる母子保健法に基づきまして義務化されています。また、幼稚園から高等学校卒業までは、学校歯科健診という形で、「学校保健安全法」を基に義務化されております。
ところが、高等学校を卒業しますと、歯科の健診は、基本的には自己責任という形になっています。唯一、「歯周疾患検診」という形で、健康増進法ということで行われておりますが、これは努力義務ということになりますので、各自治体によっては実施されていない場合もあります。また、これを行われているのが、40歳、50歳、60歳、70歳といった10歳刻みの形で実施されていましたが、令和6年度からは、20歳、30歳が追加されて少し拡大してきたところです。
先ほど御紹介がありましたように、一部の労働者、いわゆる塩酸、硫酸、硝酸といったものを取り扱う労働者に関しましては、労働安全衛生法に基づく歯科特殊健康診断という形で歯科医師による健康診断が実施されているということです。したがいまして、いわゆる国民皆歯科健診という議論が始まっているところではありますけれども、就労世代の歯科健診制度というのは、今後、どのように構築したらいいかということが非常に大きな課題と捉えております。
9ページです。こちらは令和5年度の生涯を通じた歯科健診、いわゆる国民皆歯科健診推進事業ということで、「歯周病等スクリーニングツール開発支援事業」というものになります。簡易な歯科検査ということで、5社の事業者が検査として選ばれまして、様々な事業所等での歯科健診で検証がなされたところです。
10、11ページです。この事業所での健診の検証結果ですが、1つは、歯科医師による歯科健診・歯科衛生士による歯科保健指導を実施した場合、それから、いわゆる簡易な検査・歯科健診・歯科保健指導を一般健康診断と同時に実施した場合、11ページになりますが、簡易な検査だけを一般健診と同時に実施した場合という3つのパターンで比較・検討しているところです。
12ページです。こうした歯科健診、あるいは簡易な検査、歯科保健指導の成果と課題ということです。まず、成果としては、歯科健診あるいは簡易な歯科検査のいずれも、一般健診の既存の事業と同時に実施すると効率的かつ高い参加率での実施が見込めました。2つ目として、歯科健診では、若年層あるいは過去未受診の方々の無関心層にも実施率が高いということが分かったこと。3つ目として、簡易な検査でも歯科健診・歯科保健指導と同様に、受診あるいはセルフケアといったことに一定の効果が認められた。また、簡易な検査では多くの従業員あるいは被保険者に対して公平に機会提供を行うことができたというような結果が得られたところです。
一方、課題ですが、やはり実施後の受診行動として、歯科の受診への意識変化、これは「受診するつもり」というところにとどまる方が多く、なかなか直接的な歯科の受診行動に結び付けられることがなかったということから、何らかの対策が必要ではないかと考えられています。
13ページです。更に、歯科健診・歯科保健指導と簡易な歯科検査の検査結果の構成比を見ていただきますと、歯科健診の場合は、要精密検査者が非常に多くなりましたが、いわゆる簡易な歯科検査の場合には、低リスク者が非常に多いという結果でした。やはり歯科健診の場合は、歯科医師により、歯の状態とか、歯周組織の状況、歯石、清掃状況あるいは顎関節の状態、口腔粘膜など、多岐にわたる検査を通じて口腔内の状態を全般的に把握しますが、簡易な検査の場合には、唾液等から得られる情報から歯周病等のリスクだけを判定するということですので、一概に比較するのは少し難しいということです。
14ページです。そこで、労働者に対する歯科健診として、どのようなことが必要かという必須事項ということですが、事業場(会議室等)を使う場合、あるいは歯科医療機関等で歯科医師による歯科健診及び質問票による問診を行うということが、まずは一義的ではないかと思います。ただ、それが非常に難しいといった場合には、簡易な歯科検査でもよいというように考えております。ただ、必ず歯や口の中の状況、あるいは生活習慣等に関する項目を含めた質問を行って、必要に応じて歯科の医療機関への受診勧奨を行うことが望ましいのではないかと考えております。
15ページです。こちらは令和8年度から実施予定の歯周疾患で活用される標準的な質問項目16問になります。歯や口の中の状況に関する質問、それから、日常の生活習慣に関する質問、歯科の健(検)診や治療の状況等に関する質問、その他の質問という形になっております。簡易な歯科検査を実施する場合には、こうした質問票を同時に活用していただくのが重要ではないかと考えております。
16ページです。こちらは歯の数、それから義歯使用の有無と「転倒」との関係です。自分の歯が20本以上ある者を1とした場合のオッズ比を比べたものになります。自分の歯が19本以下で義歯を使って咬合を回復しているような場合には、そのオッズ比が1.36倍、それに対して、自分の歯が19本以下で義歯を使わないで咬合の回復を行わないといった場合には、2.5倍も「転倒」しやすいという結果が出されております。
17ページです。VDT(いわゆる現在の情報作業機器の作業)とTCH(Tooth Contacting Habit)の関連性についてです。やはり、こうした情報作業機器の作業時間が長くなることにより集中あるいは緊張が続く、眼精疲労あるいは首や肩、腰の痛みやメンタルストレス、肥満や2型糖尿病といった健康影響が考えられているわけですけれども、口腔の周囲では咀嚼筋の緊張ということからTCHが起こりまして、これが顎関節の症状といったことの健康影響が考えられています。
次に、18~21ページまでですが、「企業就労者の顎関節症状に影響を及ぼす寄与因子の検討」の論文の趣旨ということになります。こちらは都内と近県に本社、工場を持つ企業の従業員への質問票に回答された2,423名からの結果です。顎関節の有病率が16.4%と、一般の集団より、やや高い値であった。それから、顎関節症群の方は非顎関節症群に比べまして、心理社会的要因の総点あるいは習癖行動の総点が高くなる傾向が認められました。あるいは顎関節症の発症に影響を及ぼす因子としては、男性の場合は、不安感、疲労持続感、TCH及び起床時の症状、女性の場合には、疲労持続感と起床時症状が抽出されています。
19ページです。こちらが今回使った質問票の内容です。1~4番までが顎関節症要因、5~8番までが心理社会的要因、9、10番が習癖行動の要因となります。
20ページです。顎関節症要因の質問は1~4ですが、その評価としては、合計が20ポイント、このうち8.5ポイント以上が顎関節症と評価されています。下のほうになりますが、一般の集団では、約5~12%の方に顎関節症が見られるという報告の内容です。21ページは、寄与因子の合計点数、ロジスティック回帰分析の結果です。
最後に、22ページを御覧ください。従来、産業保健の分野では、やはり転落事故とか、腰痛、熱中症あるいはメンタルヘルスといったような様々な職業性疾患の予防管理が大変重要ということです。近年では、やはり生活習慣病対策といったような健康づくりも、その課題の1つではないかと考えております。日本歯科医師会では、労働保健の分野に、歯科からの健康づくりを進めるということによって、労働者の健康管理が進められるようになればと考えているところです。以上でございます。ありがとうございました。
○髙田座長 御説明ありがとうございました。ただいま一般健康診断に歯科を盛り込む必要性について御説明いただきました。御説明の内容につきまして、御質問や御意見等がある方は、会場の構成員につきましては挙手をお願いできればと思います。オンラインの構成員につきましては、御発言がある旨、挙手をお願いできればと思います。まず会場から、森構成員、お願いいたします。
○森構成員 山本先生、ありがとうございました。以前、先ほど説明があったTHPの指針の改正のときも、山本先生と一緒に議論させていただきました。歯科健診の予防的な取組というのは非常に重要であるということは認識しています。
一方で、リスクの評価では、その後の受診行動になかなか結び付かないという趣旨のお話がありました。一般健康診断の中で、歯科健診を行うことになれば、巡回でもできるということが前提になってくると思いますが、そのような制約の中で、歯科健診の標準的なプロセスとはどのようなもので、どのくらいの時間が掛かるものなのかというイメージが統一できていないと議論が進まないように思います。その辺りは、どのようにお考えでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 御質問ありがとうございます。歯科健診をフルに歯科医師が行うといった場合には、かなり時間が掛かることは十分承知しております。通常、簡単な検査であれば10分程度のものもありますが、例えば歯周組織までしっかり診るということになると、場合によっては20分以上掛かってしまうこともあるかと思いますので、なかなか事業場において、こうした形での歯科健診をするのは非常に難しいということは、我々も認識しているところでございます。
○髙田座長 ありがとうございます。森構成員、いかがでしょうか。
○森構成員 となると、もし、歯科を一般健診で取り上げようとすると、問診とか、簡易な検査が現実的という理解でよろしいのでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 事業場等で行う場合には、そういった形のほうが、よりリーズナブルな方法ではないかと考えております。
○髙田座長 ありがとうございます。森先生、大丈夫ですか。
○森構成員 はい。
○髙田座長 鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 山本様、御説明いただき、誠にありがとうございます。経団連の鈴木と申します。日本歯科医師会において、日頃より歯科口腔保健の増進のために御尽力されていることに対し、まずもって敬意を表します。
私は、一般健康診断の項目追加を議論するに当たり、冒頭で事務局から御説明いただいた資料1の「健診項目を検討する際の要件、着眼点」の中で、とりわけ、業務起因・業務増悪を重視すべきとの立場から、検討会に参加してきたものでございます。本日はそうした観点から、幾つか御質問させていただければと思います。
はじめに、16ページです。歯の喪失と「転倒」との間に関係性があるという御説明をいただきました。歯が少ない状態で転倒が起こりやすいことは理解いたしましたが、こちらの調査は、労働者に限定して行われたのか、確認させていただきたいと思います。
続きまして、18ページです。企業の従業員を対象とした調査の結論として、顎関節症有病率が16.4%と一般集団よりやや高い値を示した等々の結果を御披露いただきました。その結論を導く調査についての御質問です。20ページで、質問票1~4の評価値の合計が8.5以上を顎関節症と判断したとの御説明がありました。細かい点で恐縮ですが、質問票1~4のいずれも「どちらとも言えない」と仮に回答した場合、合計12点となり顎関節症に該当するという理解で合っているかどうかについてお伺いします。
最後に、19ページです。心理社会的要因や習癖行動は、質問票5~10で判断することになると思いますが、設問を拝見しますと、「仕事、学校、家庭あるいは人間関係でのストレスはありますか」などとなっております。従業員を対象とした調査ではありますが、仕事に限定した形で顎関節症の発症に影響する因子を調べたものとは、言い切れないのではないかと理解していますが、こうした理解で合っているかどうか。以上3点を教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 ありがとうございます。一番初めの御質問で、歯の数と転倒との関係の16ページの調査ですが、これは会社員に限定したというわけではない調査だと思います。
その次の御質問ですが、顎関節症の問題ですけれども、この中で顎関節症要因での「3」が全部だと12点になるので、8.5以上ではないかという御質問ですが、こちらについては先生のおっしゃるとおりですけれども、ただ、やはり顎関節症の場合は、ストレスとの関連性が非常に強いということが言われておりますので、どちらとも言えないという質問をどうしても作らざるを得ない部分があります。
もう1つは、心理社会的要因ということで、学校あるいは家庭ということが入っているので、これは労働起因性ではないかという御質問だと思いますけれども、こちらは本研究の実施以前の先行研究において、この調査票が多分有効であろうという調査結果がありましたので、それを利用しているということだと思っております。
○髙田座長 ありがとうございます。鈴木構成員、いかがでしょうか。
○鈴木構成員 ありがとうございます。専門家の先生方の御意見も是非お伺いしたいと思いますが、素人的には、「どちらともいえない」という回答だけで顎関節症と判断されるということや、必ずしも仕事に限定した形での調査ではないことからすると、ご紹介いただいた調査を見る限りでは、「業務起因性・業務増悪性あり」と判断するのは、慎重に考えるべきと感じたところです。ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございました。山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 実は、歯科疾患実態調査が、以前は6年に1度、現在は4年に1度実施されていますが、その中で、平成17年に顎関節に関連するような質問がございます。これを見てみますと、顎の痛みとか、あるいは顎関節のクリック音といった雑音に対する評価があるのですけれども、その中で、特に痛みに関しては、どの年代も5~10%ぐらいの数字で、やはり症状があるということですので、年齢にかかわらず、労働者の方でも非常に顎関節の症状が多いということは、ある程度分かっております。
○髙田座長 よろしいでしょうか。鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 痛みがあるというのは、自覚症状があるということでしょうか。
○山本参考人 そうです。
○鈴木構成員 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 企業で産業医をしております宮本です。山本先生、大変詳細なお知らせをありがとうございました。勉強になりました。私は、今の鈴木構成員からの質問と重なってしまうのですが、やはり「どちらともいえない」という19ページのものが入ると、これは2と4の間というよりは、無関心である、分からない、知らないという人が答えてしまっている可能性がないのかという点が、ちょっと気になったところです。そうすると、全然違うものを拾っているのではないかという点があるということを感じたところです。
私が聞きたいのは、歯科健診をやったお話が13ページにあります。この感覚でいくと要指導と要精密検査で、歯科健診だと77%が有所見という形になると思うのです。77%すなわち約8割が有所見というと、一体その先の措置がどうあるのか。それだったら全員に対してブラッシング教育をするだけでいいのではないかという気がいたします。これは随分の労力を掛けて、得るものが余りないのではないかという懸念があるというところで、実際にどういうように対応されるのか、現実性があるのかというところを、まず1つ教えていただければと思います。
2点目が15ページの質問票です。これを一般健診の質問と考えてみても膨大なものが追加されるという感じがあるのです。例えば、この中で最も重要な質問を1個か2個を選ぶとしたら、どれになるかというのが、もしあれば教えていただければと思います。以上の2点です。
○髙田座長 ありがとうございます。山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 まず1点目の御質問です。歯科健診をやった場合には、詳細に口の中全体を診るということから、どうしても要指導あるいは要精密検査の方が増えてくるというのは致し方ない。逆に言うと、簡単な検査の場合には、どうしても低リスクになってしまうので、偽陽性の方を非常に多く含んでいる可能性もあるということで、むしろ簡易な検査だけでやるのは難しい。やはり、そこに何らかの形での質問票のようなものを加えて、より精細に出していくことがいいのではないかと考えています。
そして、要指導と要精密検査については、地域の歯科医師会を通じた形で、地域の歯科診療所につなげていただければ、そこでよろしいかと思います。その上で治療なり歯科口腔保健指導をした上で、それでも問題があるという方については、やはり専門医の先生方という形を考えていけばいいので、その辺の事後処置については、我々としては全面的にやっていきたいと考えております。これが1点目です。
○宮本構成員 ありがとうございます。もう1つ質問票の話も、ついでに教えていただければと思います。
○山本参考人 こちらの16問は、厚生労働省のモデル事業等で、歯科検診受診者の全ての方が答えるのに、20問以下ぐらいであれば特に問題はないという回答がありましたので、こういった数の質問になっているところです。16問程度の問題数であれば時間的な余裕もあり、特に問題なく答えられると。これより多い場合には、少し考えなければいけないという研究結果だったと思います。この中で特に重要なものが何かということになりますと、やはり口の中の症状である一番上の部分が重要ではないでしょうか。それに加えて日頃の生活習慣という部分が、特に重要ではないかと考えています。
○髙田座長 宮本先生、いかがでしょうか。
○宮本構成員 ありがとうございます。まず1つ目の要指導、要受診の方を地域の先生にという場合ですが、そうなると、8割の方に、どこかの歯科医に行けという形になります。そうだとすると、歯医者さんをどう選べばいいのかもよく分からなくて、保険外診療を勧められてしまう所とか、保険でやってくれる所とか、いろいろあると思うのですが、8割に医者に行けという指導はちょっとないような気がしているのですが。それだったら、全員に対して、一次予防的な教育を展開する、啓発活動をするということが、ひとつ前提にあっていいのではないかという気がいたしました。これが1つ目の追加の質問です。
2つ目は、口腔内の状況や生活習慣だと、その中でどれを1個ずつ取るのか。何か質問を追加するにしても、そんなにべらぼうな量が足せないというところで、これは聞いたほうがいいというものがあったら教えていただければと思います。難しい質問ですみません。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 初めの質問です。先ほども御紹介したように、例えば歯周疾患の場合は、成人の8割ぐらいが罹患していると言われていることであれば、実は8割の方が歯科の診療所に関わらなければいけないという実態があると思うのです。ところが、それが実際にできていないのが、日本国民の今の口の中の健康課題と考えますので、それほど無理なものではないと思います。
それから、どの先生の所に行ったらいいか分からないという御質問は、地域でも、日本歯科医師会でも全て受けているわけですが、医科の先生方の教育システムと、歯科の先生方の教育システムとは、ちょっと違っているのです。歯科の場合、いわゆるジェネラルプラティクションという形で、全ての歯科医師が歯周病や虫歯といった2大疾患に関する基本的な治療あるいは予防ができると、我々は考えておりますので、どこの先生に行っていただいても結構ですというようにお答えしたところです。
2つ目の質問の内容で、どれをやったらいいかというのは非常に難しく、どれ1つというように限定するのは、なかなか難しいかと思っています。少なくともこの中で業務起因性ということであれば、労働者の場合には顎の状態がどうであるかといったところが非常に大きいかと思います。それから、歯周病ということであれば、例えば、ものを噛んだときに痛むとか、口臭がするとか、歯の動揺があるといった口の中の症状、あるいは冷たいものや温かいものがしみるといった症状ではないかと思っております。以上です。
○髙田座長 宮本先生、いかがでしょうか。
○宮本構成員 よく分かりました。ありがとうございます。もう1つです。例えば要指導や軽症レベルだったら予防効果がより高いというのは何となく分かるのですが、歯周病で中等症以上あるいは、やや重度に寄ってしまうと、もうやることが何もなくて、プラーク除去ぐらいでは治まらずに、どんどん悪化していくのを待つだけという感じになりはしないでしょうか。実際は、私がそうだったということもあるのです。最後には「もう抜くしかありません」と冷酷に言われたことがあるのです。ですから、どこら辺までが予防効果なのか。早期は分かるのですけれども、中等以上は、もう保険診療だと散々言われて、そういうものかと思っていたのです。その辺がよく分からないところもあります。要精密検査から、ある程度の中等症以上になってしまうと、処置なしとなってしまうのかどうか、その辺も教えていただければと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 中等症以上になると、確かに骨の吸収が早くなってきますので、その辺は適切な処置が必要だと思うのですが、やはり一番重要なのは、先ほど先生もおっしゃったように、例えば歯垢を取るという基本的なことができているかどうかです。それがしっかりとできている場合には、歯を支えている骨が非常に少なくなっても、ある程度まではしっかりと噛むことができる状態に持っていくことができます。歯周外科も最近はかなり進んできて、その中にエムドゲインという薬を塗って、歯槽骨を再生するという治療も開発されております。そういったところは、やはり専門医の先生方が非常に得意な部分ですので、中等度以上になったら、もうお手挙げだからどうでもいいとは、我々も考えておりません。
○髙田座長 宮本先生、よろしいでしょうか。
○宮本構成員 はい。
○髙田座長 それでは、オンラインでかなりお待たせしておりますので、先にオンラインで御参加の構成員を御指名したいと思います。まず、冨髙構成員、お願いいたします。
○冨髙構成員 御説明ありがとうございました。労働側としても労働者の職業生活が長期化する中で、歯や口腔の健康維持は重要だと認識しています。先ほど御説明の中で、歯数・技師使用の有無と転倒の関係や、VDT作業とTCHの関連性などにも触れていただきました。長期にわたって労働者が活躍できる環境整備は重要と考えますので、一般健康診断に歯科検診を追加するという検討はしても良いのではないかと思います。検討にあたって2点ほど確認させていただきたいと考えます。まず1点目は実施体制についてです。検査項目に歯科を追加する場合には当然ながら、検診機関が全国どこでも歯科医師を派遣できるような環境整備が必要だと思います。特に説明の中で触れられていた顎関節症に対応するということですと、口腔外科に関する知識を有する医師による健診の実施が不可欠と考えます。この点、必要な体制の確保ができるのか、教えていただきたいと考えます。
2点目です。資料3の12ページの下部に、課題として受診行動に結び付ける対策が必要、とあります。先ほど有所見率が8割という話もありましたが、単純に歯科検診を紹介するだけでは受診行動に結び付ける事は難しいと考えます。その受診行動の具体化に向けて、どのような方策が必要と考えられているのか教えていただきたいと思います。以上、2点です。
○髙田座長 山本先生、お願いします。
○山本参考人 まず、いわゆる歯科医師の派遣の問題です。こちらについては現在、歯科医師としての免許を持っているのは約10万人、その中で歯科医師会に入っていらっしゃる先生方が大体6万3,000人ほどおりますので、それは十分可能であると思います。
もう1つは、歯科医師を必ず派遣しなければいけないと考えているわけではなくて、事業場等では検体検査と質問票といった形で簡易な検査を行って、その上で、事後措置として地域の先生方につなげるほうが現実的ではないかと考えております。
それからもう1点は、受診等々に結び付ける方策です。こちらが一番悩みどころの多いもので、歯科の健診も医科の健診もそうかもしれませんが、健診をやっていると、一番の課題というのは、いつも健康に自信のある方は来るのですけれども、逆に健康に不安がある方は来ないということが非常に大きな課題だと思っております。それについては、やはり健康教育が一番重要ではないかと考えています。我々も情報発信の仕方が非常に悪かったのではないかと、いつもつくづく考えているところです。単に歯科健診を実施したいのではなく、歯科受診につなげて、歯科治療が完了した後の予防をどれだけ続けていくことができるか。生涯にわたって健診と予防行動をつなげることが重要という情報発信を今後も進めていきたいと考えております。以上です。
○髙田座長 冨髙構成員、いかがでしょうか。
○冨髙構成員 ありがとうございました。周知も重要だと思うのですが、事後措置として、地域の医師につなげる際に、もう少し具体的な方策が必要ではないかと考えますので、引き続き御検討いただきたいと考えます。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。続いて、吉村構成員、お願いいたします。
○吉村構成員 吉村です。山本先生、詳細な御説明をありがとうございました。私も従来から歯科教育や一次予防の重要性を非常に認識しておりますので、本日の詳細な調査の結果をお伺いして、その意を新たにした次第です。ただ、歯周疾患や歯科関連疾患の有病率が非常に高いということを考えますと、私も先ほど御発言された宮本先生に近い考え方です。やはり、一次予防と言いますか、全体を対象としたブラッシング教育などを少し考えてもいいのではないかと思いました。
そこで質問ですが、現行の歯科健診の体制を見ますと、健康増進法で、努力義務ではありますが、市町村主体で20、30、40、50、60、70歳において、健診が推奨されております。この状況の中で、なおかつ罰則を伴うと言いますか、労働衛生法に基づいた健診を導入しなければならないと思われる、つまり健康増進法では不十分だというエビデンスがありましたら御紹介いただきたいと思いました。先ほどの御説明では、努力義務なのでやっていない市町村もあるという御説明だったと思います。具体的にはどのぐらいやっていないのか、あるいは参加率が非常に低いのかというデータがありましたら、御紹介いただければと思います。以上です。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 自治体で行っている歯周疾患健診は、全国平均で受診率が5%という低調な形になっております。これについても、香川県が一番高くて13.7%台だと思います。低い所が高知県という形で、非常にばらばらではありますが、全国平均でいくと5%ぐらいしか受診していないということになります。やはり自治体の健診の場合は、労働者の方はお休みのときに来なければいけないという事情がありますので、受診機会として自治体の健診を受けるのは非常に難しいという事情があるのかなと思っております。以上です。
○髙田座長 吉村先生、いかがでしょうか。
○吉村構成員 先生、ありがとうございました。受診率の計算の仕方ということになりますと、この場合だと、20代、30代、・・と、対象年齢の全体の人数が分母となり、検診参加者が分子ということになるので、どうしても低くなります。5%が高いとは思いませんけれども、全国的にも高いと言われているがん検診などでも15%ぐらいなので、やはり計算の仕方があるかと思います。対象となっている自治体で、歯科健診をやっていない所がどのぐらいあるのかというのが、もし分かれば教えていただければと思います。
○髙田座長 山本先生、いかがでしょうか。
○山本参考人 自治体自体としては現在、全国的には確か70%ぐらいが実施していると思います。
○髙田座長 吉村先生、いかがでしょうか。
○吉村構成員 了解しました。ありがとうございます。
○髙田座長 続いて武藤構成員、お願いいたします。
○武藤構成員 武藤です。山本先生、詳細な御説明をありがとうございました。私から1点、御質問をさせていただきます。先ほどからの話ですと、簡易な歯科健診を提案されているということだと思うのです。問診以外の検査項目、例えばスライド9に、検査キットなどの紹介がありましたけれども、そういった簡易な検査に使われる検査機器の精度が問題になると思います。簡易な検査で想定されている検査機器の中で、医療機器として正式に認可されているものがあるのかを伺いたいと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 こちらの機器ですけれども、全て医療機器評価提案には出ていないということで、保険収載もされていないという状態です。先生がおっしゃるとおり、感度、特異度が余り高くないという状況です。
○髙田座長 武藤先生、追加で何かありますか。
○武藤構成員 大丈夫です。ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございました。続いて会場に戻ります。増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 増田です。貴重な知見の御紹介ありがとうございました。産業保健、ひいては公衆衛生上の重要課題であるというところを改めて認識いたしました。幾つかのコメントと、質問をさせていただければと思います。
資料の16枚目の転倒に関するデータについては、先ほど鈴木構成員からも御質問がありました。この出典を読んでみますと、年齢までは読み取れなかったのですが、高齢者を対象にした調査だということだと思います。健康診断の対象は20代から60代前半ぐらいまでとなりますので、その集団に対しても同じような結果が出るのだったら検討の価値ありかなと思いましたが、今回のこのデータだけでは健康診断の有用性があるとまでは言い切れないのではないかと感じました。
あと、18枚目では、心理的要因と顎関節症との関連についての検討がなされていますが、顎関節症を治療すれば不安感や疲労持続感が低減するかというと、恐らくそういったことはないかと思います。そうなりますと、これらのチェックということであれば、わざわざ歯科健診までやってストレス評価をする必要があるのかということを感じました。それであれば、既存の取組であるストレスチェックや、健康増進に関するTHPの拡充をやっていくという方向性が考えられるのではないかと思った次第です。
あと、質問させていただきたいと思います。13枚目で、先ほど宮本構成員からも質問のあったところです。この資料には、歯科健診は「多岐にわたる検査項目を通じて口腔内の状態を評価する」とあるのですが、これは定量的な評価は可能なのでしょうか。一般定期健康診断は御案内のとおり、脳・心臓疾患、脳卒中、心筋梗塞のリスク評価を行うのが現在の主たる目的になっているかと思います。歯周病と動脈硬化との関連性が言われているのは、もちろん存じ上げているのですが、歯科健診の評価と脳卒中や心筋梗塞のリスクが果たして関連するのか、そのような調査や知見が得られているのかというところを教えていただければと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 検査とリスクに関しての評価については、多分、そういった知見はまだないと思います。あくまでも歯周病、例えば細菌が心臓血管の中に入っている、あるいは脳血管の中に入っているという写真等はありますので明らかに関連性はあるだろうと思います。それから最近のデータだと、例えば呼吸器系の疾患についても、肺炎のガイドラインでは新たに口腔健康管理が非常に重要だということで、いわゆるガイドラインには、確かグレードが上がったと書いてありますので、そういった面では重要ではないかと考えているところです。
○増田構成員 ありがとうございました。
○髙田座長 それでは岡村構成員、お願いいたします。
○岡村構成員 詳細な御説明をありがとうございました。歯科について、健康管理上非常に重要なことは、もう異論はないかと思うのですが、一番気になっているのは、健康増進事業との関係です。先ほど吉村構成員も言っておられましたが、これは他の部局のことなのであれですが、要するに、やっていない市町村とか、受診率が低い理由の深掘りができているかどうかが問題で、それがなくてやると、恐らく検査はしても誰も受診しないという状態になってしまう危険性があるので、そこは、まず必要だというのが1点かと思います。
それから、健康増進事業の場合は別に市民だったら誰でも受けられるという状態で、門戸は解放されている状態になっているわけです。そうなってくると、勤務者ですね。例えば、自営業や第一次産業の人と比べて、勤務者のほうが特に危ないというエビデンスが恐らく必要になってくるような気がするのです。そこについての研究などがあったら、御紹介いただきたいと思っております。以上です。
○髙田座長 山本先生、いかがでしょうか。
○山本参考人 非常に難しい課題だと思います。労働者だから健康リスクが非常に高いというわけではなくて、国民全体のリスクとして非常に高いというところはあるかと思います。そういったところでは、いわゆる健康増進法でやればいいのかもしれませんけれども、実際には受診率として、先ほども御紹介したように、上がってこないという現実があるので、やはり労働者の部分で健診の項目に何らかの方策で入れていただければ、我々としては有り難いと考えているところです。
○髙田座長 岡村先生、いかがでしょうか。
○岡村構成員 健康増進法の歯科はどんどんやれやれと、私はあちらこちらで言っている立場なので、なぜ、こちらが広がらないかというほうが気になっていて、そこと関連してお話させていただきました。
○髙田座長 続いて松岡構成員、お願いいたします。
○松岡構成員 日本医師会の松岡です。本日は歯科医師会の詳細なデータほか、どうもありがとうございます。医師会としては、歯科疾患における全身疾患との関連性は、大変重要と考えている次第ですが、今までの中で、前段に事務局からの説明にあったとおり、一般健診に入れるためには業務起因性・業務増悪性、そして事後措置の問題、検査の方法等々を考慮する必要があると思います。今までの中で、業務起因性等々、検査法についてはいろいろ話されたのですけれども、事後措置については、今回、受診行動につなげるという話でしたが、今のところは事後措置よりも、恐らく産業医という形になります。結局、産業医の先生方は一般の内科医や一般のドクターがほとんどです。現時点では、歯科のほうの情報等を受け持っていること、教育の中に入っているという状況ではないという形です。そこで、今の歯科医師の事後措置をどういうように考えていらっしゃるのか、御意見を頂ければと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 確かに、先生がおっしゃるように、事業場の場合には産業医と産業保健師といった組合せで保健指導が行われる、あるいは受診勧奨が行われるという制度なので、なかなか歯科医師が入る立ち位置がないという部分はあります。この辺については、法律的な部分が多分にあるかと思いますので、その辺については我々から申し上げることができないのですけれども、少なくとも全国の都道府県歯科医師会には労働保健を扱うための窓口を設置しておりますので、そちらに問合せをしていただければ、我々としては幾らでも御協力できるという体制になっています。
○髙田座長 松岡先生、いかがでしょうか。
○松岡構成員 では、先に少し確認をさせていただきます。もともと、特別規則物質対象の部分と、リスクアセスメント物質に対して歯科医師の健診の話が入りましたが、そういうことをやるような歯科医師の先生方というのは、どのような資格があるとか、何かそういったものがあれば教えていただきたいのですが。
○髙田座長 事務局、お願いいたします。
○大村産業保健支援室長 歯科医師の資格をお持ちであれば、それ以上の規定はございません。
○松岡構成員 分かりました。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 確かに、産業保健に関わる歯科医師の、いわゆる法律的分野はありませんが、我々日本歯科医師会としては、産業歯科医研修会という形で毎年実施しておりまして、そこで養成をしております。今までで52回開催をしており、毎年開催しております。今はeラーニングの形にしましたので、ここにきて、毎年、受講される先生が非常に多くなってきている現状です。法律的な立て付けは、まだないのですが、我々のほうでは自主的に、産業歯科保健に対応できる先生方を養成しております。
○髙田座長 ありがとうございます。松岡先生、お願いいたします。
○松岡構成員 その関連で。今、講習の受講者は何人ぐらいでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いします。
○山本参考人 今まで、総計で約1万5,000人ぐらいの先生方が、それを受講されていることになります。何回か重複して受講されている先生方も含めての話でございます。
○松岡構成員 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 東海大の立道です。山本先生、貴重なお話をありがとうございました。歯科保健は非常に重要だということは認識しております。基本は歯科受診にどのようにつなげるかということが一番の課題で、それに対して幾つかの方法があり、一つは健康教育をするということと、一つは健診をして受診を促すということだと思います。特に、どのような健康教育をすれば歯科受診につながるかという方法論の検討や研究が重要なところかと思います。そこに健診を追加すれば、どれだけ歯科受診率が上がるのかという基礎的なデータが必要と思うのですが、その辺の検討はいかがでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 先ほど事務局から御説明がありましたTHP指針の症例の中に、歯科医師会がいわゆる出前の講座を行っているという事例がございました。こういった形は様々な都道府県で展開をしておりますので、そういった形のものを実施できるような状態にはなっております。
○髙田座長 ありがとうございます。立道先生、お願いいたします。
○立道構成員 つまり、出前の講座でどのぐらいの効果があるのか、実際健診だとどのぐらいの歯科受診に至る効果があるのか、教育として出前以外のいろいろなツールが今はあると思いますが、その場合はどのような効果があるのかというようなデータが必要なのかなと思いました。
○髙田座長 ありがとうございます。立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 産業医科大学の立石でございます。大変貴重なデータをありがとうございます。皆様と同じように、私も公衆衛生上、非常に重要な課題だと思っております。今まで出てきていない議論として少し教えていただきたいことがございます。1つは、国際的には、このような歯科健診というものがどのように捉えられているのかという視点です。今、私が見た限りにおいては、例えば、アメリカの予防医学協会等では、歯周病に関してはエビデンスが定まっていないということ。そして、NICEガイドラインにおいては、スクリーニングの記載ではなく、今あったように、地域の中で明確な指針を作って、その中で口腔衛生上の予防活動をしていくための戦略を策定することが必要だということが書いてあり、スクリーニングに関しては特に記載がありませんでした。このような国際的な視点で、歯科口腔衛生のスクリーニングがどのように議論されているかという点を、まず1つ教えていただきたいということ。
健康診断のところで業務起因、業務遂行というところが議論に出てきておりましたが、また別の視点で見たときに、この歯周病や顎関節症で困っている労働者がいると、具体的に言うと仕事を辞めざるを得ないような方とか昇進をあきらめたとか、そのようなことがあるのであれば、確かに重要なテーマではあるかと思うのですが、そのようなことについて、今まで調べられたようなことや国際的な論文等で何か議論されていることがありましたら御紹介いただければと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 すみません、その辺の情報は持ち合わせておりません。
○髙田座長 ありがとうございました。そうしましたら、亀澤構成員、お願いいたします。
○亀澤構成員 ありがとうございます。山本先生、御説明ありがとうございました。私も歯科健診は非常に重要だと思っております。また、歯科健診には3か月に1回通っておりまして、このことについても大変個人的にも関心を持っております。先ほど事業場で健診をする場合に、歯科医師の先生が直接しっかり御覧になるのは難しいけれども、問診や簡易な方法でやるのが現実的ではないかという話があったところで、他の構成員からも御質問がありました。また、簡易な方法の場合については先ほど武藤構成員からも御質問がありましたが、簡易な方法というのは、具体的にはこの資料の9ページに示されているようなものだと考えてよろしいのでしょうか。具体的に簡易な方法はこれだというのがきちんと決まっていて、簡易な方法をやってみようと、もし事業場の方が考えたとき、こういう方法があると勧められるのかですが、若干、精度の問題があるということでしたので、それは本当に日本歯科医師会としてお勧めできるものであるのかというところを、どういうふうに認識していらっしゃるのかをお伺いしたいと思います。
それから、問診にしろ簡易な方法にしろ、何の資格もない方では対応できないと思いますので、それはどのような方が関わってくださるのかということについて教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 ありがとうございます。こちらで御紹介をしたのは、令和6年度に厚生労働省が研究事業の中で実際に使用したと聞いている検査キットになります。この中でも、非常に価格の安いものから比較的価格の高いものまで、かなりございます。その精度については、それぞれの会社が持っているデータですので、なかなか我々のほうには公表されておりません。令和6年も引き続き、ほかの業者がこれに関わっていると聞いておりますが、先ほど言ったような精度などの問題から、医療技術評価提案に挙げるようなものを今は目指して開発をしているとはお伺いをしております。
それと、どれを使ったらいいかということは、日本歯科医師会としては、まだ申し上げるようなところにはなっていないというところでございます。
○髙田座長 ありがとうございます。亀澤構成員、いかがでしょうか。
○亀澤構成員 あと、最後に、これを健診に使う場合に関わる方についてはいかがでしょうか。
○山本参考人 そこも、誰が使っていいのか、あるいは誰が診断をしていいのかというところは非常に大きな問題で、診断をする場合には、やはり医師、歯科医師という形になるかと思うのですが、それ以外のいわゆる他職種の方が使えるような形のほうが多分、事業場等では使いやすいのかなとは考えておりますので、その辺をどのように事業者が開発してくるかというところは、我々も注目をしております。
○髙田座長 亀澤構成員、お願いいたします。
○亀澤構成員 ありがとうございました。健診をするには、やはりちゃんとした精度が必要で、それには歯科医師の先生がきちんと歯の中を御覧になってチェックされるということが大事だと思うのですが、簡易な方法を勧めることが現実的という話であれば、やはりしっかり判定できるという、そこまでの精度が必要かなと思いました。以上です。ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 産業医の宮本です。追加の質問になるのですが。8割の方が歯医者さんを受診するということになると、短期的に医療費が膨大になります。医療費は保険者で負担なので今回の話とは直接には関わらないのは承知しているのですが、事業者が半額負担するということで考えると、それだけの医療費を短期的に掛けても、将来的な医療費は減るというような知見がおありになるのかというところを教えていただければと思います。
もう1点、先ほど海外のお話があったのですが、多分、途上国に赴任するという海外渡航の方だったら、先に歯の治療をする、あるいは治療の要否の確認をしておく必要はよく分かりますし、先進国ですと医療費がものすごく高いこと等から、やはり渡航前に歯の治療や治療要否の確認をすべきなのかもしれないと思います。海外渡航者という安全衛生規則第45条の2で、渡航前の健康診断、渡航後の健康診断がありますが、渡航前に歯科健診を入れる意味はあるのかなとは思いました。この海外に行く前に歯科の健診を受けるメリットをどうお考えなのかという点についても教えてください。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 まず1点目の医療費の課題ですが、これは、トヨタのデンソーさんが実施したデータがありまして、確かに一時的に医療費は上がるのですが、その後、やはり医療費は下がるということがございます。
2点目の、いわゆる海外渡航者の問題ですが、これは非常に大きな問題で、例えば住友商事だったと思いますが、そちらはやはり歯科健診を行ってから渡航しているという実情があります。私が個人的に自分の診療所で経験したのは、先ほど先生から御紹介があったような、いわゆる先進国に行っている方が夏の期間に帰ってきて、やはり向こうは医療費が高いから、ここに2週間ぐらいはいるから、その間で何とか治療してくれといった御要望がございました。それから、成田に着いた途端に電話が掛かってきたという事例もございますので、そういったところでは、かなり従業員の方は非常に困ってらっしゃる場面があるのかなと思っております。日本歯科医師会で、海外渡航者向けのためのガイドのようなものをいろいろ作ったことも過去にはございました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。宮本先生、よろしいでしょうか。
○宮本構成員 はい。
○髙田座長 そのほかに鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 ありがとうございます。追加の質問をさせていただきたいと思います。一般健康診断の検査項目の追加にあたっては、事後措置、すなわち就業上の措置をどのように考えるかというところまで検討しなければならないと認識しています。17ページで、VDT作業時間の延長に伴う集中や緊張によりTCHが起き、顎関節や咀嚼筋の負担が増加して顎関節症を引き起こす可能性があると理解いたしました。例えば、VDT作業時間をどの程度延長すれば、TCHや顎関節症の発症リスクが高まるかを調べた研究があるかどうか、質問させていただきます。
もう1つは、そもそも論となりますが、歯科口腔について、就業上の措置は余り想定しておらず、受診勧奨による対応を考えておられるのでしょうか。以上2点について、お聞かせいただければと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 就業上の措置ということに関しては、我々は労働災害ということは多分考えておりませんで、少なくとも、受診勧奨ということが非常に大きくなるのではないかなと思っております。
もう1つの御質問の、いわゆるTCHの問題ですが、こちらについては、そういった研究については、今のところは見たことがございません。
○髙田座長 ありがとうございます。森構成員、お願いいたします。
○森構成員 ありがとうございます。今までの話をお聞きしていると、基本的に歯科予防というのは、定期的に歯科医を受診してチェックをして、歯石を取ってというのが本来の在り方で、日本の場合、その行動を取る人たちがすごく少なく、その行動に出るためには、きっかけを職場でどうするかというのがとても重要だという話だと認識しました。
私たちの関係の論文で、大企業製造業5社の歯科予防受診の受診率のデータがあったので見てみたのですが、3か月に1回行かれている方は、男性が9.3%、女性が13.9%です。年に1回は行っているという方が、大企業でも男性が23.9%、女性が31.8%しか、まだ行っていないという状態です。中小企業の場合、これとはかなり異なることも分かっています。
したがって、このような定期受診をどのように上げていくかがとても重要だということですね。そうすると、教育などのいろいろな方法があるから、多分、健診をやるとしても、どうしたら受診につなげられるかというエビデンスを今後作っていかないと思います。まずは、スクリーニングしてみようだと、無駄になってしまうおそれがあるのかと思っています。
我々の研究では、長時間労働で労働時間が長くなると、特に男性の年齢が高い人は予防受診が抑制されるという結果が出ています。交替勤務も含めて、働いている人の中には、仕事の影響で受診行動が抑制される集団があるから、法律というより、そういう状況にある事業者においては、やはりそこの部分を少し配慮するような取組をしていただく必要があるのではないかと、お話を聞きながら、我々のデータもみながら考えていたところです。
1つ、質問なのですが、今、大企業のデータと言いましたが、そもそも予防歯科受診は、どのぐらいの就労年齢の人たちが受診しているのかというデータはあるのでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 この辺は国民健康・栄養調査等のアンケート調査などを見ても、ほぼ半数、大体50%は歯科の受診あるいは健診を受けているのだけれども、半数の方は全く歯科検診を受けていないというのが現状でございますので、日本人2人に1人しか歯科等の受診はないという感じだと思います。
○森構成員 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほか、ございますか。星野構成員、お願いいたします。
○星野構成員 関東労災病院で「働く女性専門外来」というものを担当している者なのですが、貴重ないろいろな情報をありがとうございました。先ほど、「歯科のトラブルにより就労をあきらめる、あるいは何らかの影響がないか」という御質問に対して、「エビデンスはありません」というお話があったことについて、うちの外来に、たまたまだとは思うのですが、ストレスがすごく大きいお仕事をなさっている中で顎関節症を発症なさって、その職場を本人の判断で辞めたら顎関節症もよくなったという方がいましたので、恐らくいろいろなケースがあると思うので、蓄積していただけるといいかと思いました。
あと、先ほどいろいろな質問の中で、歯周外科というのが進んでいて、その専門医がいますという御説明がありましたが、何人ぐらいおられるのでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 すみません。歯周外来の専門医の数自体は分かりませんが、日本には臨床歯周病学会と歯周病学会の2つがありまして、多分、そちらでそれぞれ認定医を作っていると思いますので、そこのデータを見ていただければ多分あるのではないかと思います。
○髙田座長 ありがとうございました。星野先生、よろしいでしょうか。そのほか、ございますか。中野構成員、お願いいたします。
○中野構成員 御発表、ありがとうございました。歯周病も国民病だと認識し、受診の重要性も感じているところです。私が少し気になりましたのは、有所見率が8割弱ということで、歯周病や顎関節症を考えたときに、全員が医療機関受診するというのは難しいと思っております。先ほど、顎関節症で、お仕事を辞めると治ったという可逆性のお話もあったのですが、イメージとしては、重症者は手術というイメージが顎関節症に対してあるのですが、治療の段階のようなものがあれば教えていただきたいと思います。
あと、15ページ、19ページの質問票ですが、特に医療を必ず受けなければいけない重症者に対して、カットオフできる感度や特異度的の検討されたバリディティのある質問票は、現在あるのかどうか教えていただけたらと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 顎関節症の治療ガイドというのは、一般社団法人の顎関節症学会というのがありまして、そちらのほうに確かあったかと思います。その中では、まずは、かかりつけの先生が診るということで、それで3か月ぐらいたっても症状が改善しない場合には、やはりそれぞれの専門医の先生方に診ていただくほうがいいと思います。それから、手術という対応は、多分ないと思います。あくまでも、まずはカウンセリングをしながら口の開き具合を確認する。それから雑音が減るのを見るという形で、観察をしながらやっていくというのが、ごく一般的な方法かと思います。それと、もう1つは、マウスピースなどをして矯正的に口の開く位置関係を変えていく、そういった装置を作りながら様子を見ていくという方法を行っているかと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。中野先生、いかがでしょうか。
○中野構成員 治療方法を教えていただきましてありがとうございます。重症の、医療を受けなければいけないような方を抽出できる、皆さんが認識された質問票というのはありますでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 こちらに書いてある論文のようなものはあるのですが、標準的な方法でのものは見てないです。
○中野構成員 ありがとうございます。そういうものも学会で作っていただけたら有り難いなと思って聞いておりました。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほかにございますか。星野構成員、お願いいたします。
○星野構成員 いろいろな御説明をありがとうございました。私の理解が及ばなかったのかなと思ったのですが、国民生活基礎調査だと、予防的歯科受診が50%ということですか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 予防的な歯科受診ではありません。あくまでも歯科の受診なり、あるいは健診をそれぞれ合わせた形での数字になっていますので、予防的な健診がどれぐらいあるかというのは、かなり少ない数字になると考えております。
○星野構成員 御回答、ありがとうございます。治療にしろ、予防にしろ、それを合わせたのが50%で、ただ、住民健診で受けてらっしゃる方は5%という。この数字のギャップが何なのだろうと思いながら聞いていたのですが。変な話をすれば、国民の50%は何らかの歯科にはかかっていますよということで、いろいろな健診の受診率は低いけれども、ある程度カバーされつつあるという理解でいいのでしょうか。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 逆に言うと、50%の方は全く関わりをしない、過去1年間に歯科健診も歯科診療所への受診もないということになっていますし、他のどの調査を見ても同様の結果がみられます。
○星野構成員 ありがとうございます。そうすると、今回、このように健診に歯科の項目をという話にはなりましたが、ただ、現状でも半数は対応できているという理解でいいわけですか。
○山本参考人 国民全体で見ると、そうです。労働者の方がどれくらいかというところになると、そこは少し、また疑問があると思います。
○星野構成員 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございました。構成員の先生から、大体御意見、御質問が出尽くしていると思いますが、まだ少しお時間がありますので、この健診項目を検討する際の要件や着眼点というのは、先ほど鈴木構成員からもお話が出ておりましたが、資料1の3ページに出ております。こちらに挙げてある項目に関して、構成員の先生方から、更に確認が必要なことなどがございましたら、是非御質問いただければと思います。
健診項目について、業務起因・業務増悪についてもお話が出ておりました。事後措置については、就業上の措置というよりも、受診行動につなげていくという形のお話が出ておりました。検査の目的、対象、方法について、検査の方法は簡易の検査なども出ておりました。あと、検査の精度、有効性、基準値については、検査キットの問題のお話が出ておりました。その他、巡回健診のこと、労働者全員に対して実施可能であるのか、費用面のこと、健康情報の把握についてありますが、今のところ御質問が出ていない点について、何か構成員の皆様から御意見等はありますか。立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 どこに入るのか分からないのですが、事後措置について、健診の結果だけで事後措置することは一般的には余りなくて、精密検査をした上で、その結果、何らかの事後措置をするということが基本になるかと思います。今日の議論でも出てきたのですが、健診に入れるということは、必ずその精密検査を受けられる受け皿があるかどうかが大事な項目で、特に健康診断を法律に入れるということになりますと、日本全国津々浦々の全ての所で精密検査が受けられる環境があることが恐らく大前提になるのではないかと思います。場合によっては、この事後措置の所にそういう項目もあったほうがいいのではないかということを、今までの議論を聞いていて思いました。
というのは、女性の健康管理の問題などでも、健診の会場だけで判断するのはやはり容易ではないのではないかと。その後の精密検査の受診等も必要になって、そこから事後措置にどうつなげるかということが少し整理されたところがありますので、事後措置をするに向けて、精密検査を受けられるような医療体制がきちんと整備されているかどうかというところも、項目として一つ挙げたほうがいいのではないかということを思っている次第です。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。武藤構成員、お願いいたします。
○武藤構成員 1つ追加で、問診に関することなのですが。もともと特定健診の項目にもあります「何でも噛むことができる」という質問があります。こちらは特定健診でもそうなのですが、問診で聞いただけで、有効活用されていないのではないかと思います。新たな問診項目をいろいろ追加するよりも、今ある問診項目をもっと有効活用するほうが、手間などを考えると効率的なのではないかと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。山本先生、いかがでしょうか。
○山本参考人 ありがとうございます。多分、一番考えられるのは、令和8年度から始まる歯周疾患健診が新しくなるので、その問診項目をこのまま、こちらでも適用するという形になると、かなり詳細なデータが様々な所で取れるのではないかと思います。自治体の健診については、これから医療DXの形で自治体のデジタルデータとして入って行く可能性がありますので、そういったことを考えると、それが医療費の削減にも、かなりつながってくるのではないかと期待をしているところでございます。
○髙田座長 ありがとうございます。武藤先生、いかがでしょうか。
○武藤構成員 大丈夫です。ありがとうございます。
○髙田座長 そのほかはよろしいでしょうか。何か追加でございますか。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 宮本です。実は、自分の所では、この健診の問診の中に、例えば、「歯みがきは、いつしていますか」、「歯間ブラシはフロスを使っていますか」、「歯医者さんに最後にかかってから、どのくらいたっていますか」などと入れているのですが、それを何かに使うというよりは、この問診を入れることで啓発しているというつもりがありまして、それで医者に行けというと、それだけでは分からないので、そういうふうにしないといけないのだろうと思ってもらうという生活改善につなげられればと思っております。問診をそういうふうに使うのもあるのかなと思った次第なので、先ほどの8割の人に医者に行けというのだと、実際上少し苦しいかなと思うので、何か現実的な方法があればなと思っているところです。
もう1つは、今、立石構成員が言われました事後措置です。先ほどもありましたが、例えば、この状態になったら暑熱作業は駄目だとか、何か就業制限にかかる、何か、かなりの確率でやめたほうがいいというリコメンドするような、病態なり疾患というのがあるのかというところを教えていただければと思います。
○髙田座長 山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 例えば、先ほど御紹介があったように、顎関節症は、非常にストレス等が強い方の場合には就業制限といったものがあったほうがいいのではないかと思いますが、歯周疾患に関しては、すぐに就業制限があったほうがいいと考えるのは非常に難しいかと思います。ただ、急性症状があるといったようなときに、それでも仕事に出なければいけないというのは問題だと考えますので、そういったときには、やはり就業制限があってもいいのではないかとは感じています。
○髙田座長 ありがとうございます。宮本先生、よろしいでしょうか。
○宮本構成員 ありがとうございました。急性症状があったら、多分、健診ではないと思うので、無症状の人を拾うというところだと思っております。ありがとうございました。
例えば、問診をそういうふうに啓発に使うということについてのお考えも教えていただければと思います。
○山本参考人 先ほど先生から御紹介のあった所は非常に重要で、例えば、フロスや歯間ブラシといったものは、我々は使ったほうがいいと教育はしていますけれども、実際問題としては、ほぼ使われていないというのが現状でございます。そういったところでは非常に大きな効果があるのではないかと思っています。
○宮本構成員 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか、特に御意見、御質問はよろしいでしょうか。鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 宮本先生の御発言を正しく理解できていなければ御指摘いただきたいのですが、問診項目もやはり業務起因・業務増悪の視点で検討すべきと考えております。他の方策、本日も自治体の歯周疾患検診の受診率が低いというお話がありましたが、自治体検診の受診率の向上に取り組むことが本来の姿であり、私傷病が幅広くある中で、問診に入れて気付きを促せばよいという考え方には、私自身は慎重な立場ですので、一言申し上げたいと思います。ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほかよろしいでしょうか。構成員の皆様方は、生涯の健康を維持していく観点から、歯科健診の必要性は公衆衛生学的に重要な課題ということで御理解いただいていると思います。今までTHP指針等で、事業場でも取組をされておりますので、そういったところを更に進めていただく必要性もあるのではないかということを感じた次第です。健康診断の項目ということでは、構成員の皆様方から、いろいろ御意見を頂きましたので、特に追加の御意見がなければ、これにて、この議論については終了したいと思います。山本先生、追加で、もし御発言がありましたらよろしくお願いいたします。
○山本参考人 先ほど、鈴木先生から、自治体健診の受診率を上げればいいのではないかという御指摘がございました。確かに先生がおっしゃるとおりですが、地域職域の連携ということが掲げられているわけですが、事業場のほうから、そういった問合せがなかなかないという現状がございますので、その辺については、経団連さんのほうでも少し考えていただければと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。星野構成員、お願いいたします。
○星野構成員 健診機関で、私も子宮がん検診などを含めてやらせてもらっているのですが、そのときに、事業所の職域としての健診と住民健診をタイアップしてやっている所がポツリポツリあるので、そういう取組が現場でやれると、うまくいくのではないのかなと思いました。一言だけ、すみません。
○髙田座長 ありがとうございます。地域と職域の連携をうまく進めていけるようなことが望ましいと思います。山本先生、よろしいでしょうか。そうしましたら、本日の議論はここまでとさせていただきます。事務局にお返ししたいと思います。
○大野中央労働衛生専門官 ありがとうございます。次回の検討会の日程につきましては、事務局から改めて御連絡さし上げたく思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございました。また、山本先生、お忙しい中、ありがとうございました。