第11回外国人雇用対策の在り方に関する検討会 議事録

日時

令和6年9月10日(火)15:00~17:00

場所

厚生労働省職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2中央合同庁舎第5号館12階)

出席者

  • 天瀬 光二
  • 漆原 肇
  • 大下 英和
  • 九門 大士
  • 是川 夕
  • 酒井 正
  • 佐久間 一浩
  • 友原 章典
  • 山川 隆一(座長)
  • (代理出席)
  • 樫山 拓斗(新田構成員代理)

議題

  1. (1)育成就労制度の創設、特定技能制度の見直しについて
  2. (2)外国人雇用の状況について
  3. (3)外国人雇用対策の最近の取組について
  4. (4)その他

議事

議事内容
○山川座長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまから第11回外国人雇用対策の在り方に関する検討会を開催いたします。皆様方、本日は御多忙中のところ御参集いただきまして大変ありがとうございます。では、開催に際しまして山田職業安定局長から御挨拶がございます。
○職業安定局長 すみません、着座にて御挨拶させていただきます。職業安定局長の山田です。本日は大変お忙しい中、第11回外国人雇用対策の在り方に関する検討会に御参集いただきまして誠にありがとうございます。本検討会は、昨年3月に開催して以来しばらく間が空いておりましたが、その間、我が国の外国人雇用政策には大きな変化がございました。
 第1に、育成就労制度についてです。技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を抜本的に見直し、我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が、先日の国会において成立いたしました。今後3年以内の本制度の施行に向けて我が国が魅力ある働き先として選ばれる国となるよう、関係省庁とも連携しながら受入れ環境の整備の取組を進めてまいりたいと思います。
 第2に、既にある特定技能制度については、本年3月の閣議決定において向こう5年間の各分野の受入れ見込数を再設定するとともに、新たに4分野が対象分野に追加されることとなっております。本日は、そのほか外国人雇用に関する取組内容として、昨年度から実施しております労務責任者向けのモデル事業等についても御報告いたします。また、是川構成員よりOECDが取りまとめた外国人労働者に関するレビューについても御紹介をいたします。
 構成員の皆様には限られた時間ではありますが、是非、忌憚のない御意見を頂けますと幸いです。私は、2009年のリーマンショックの最中に外国人雇用対策課長をしていまして、その当時は日系ブラジル人が外国人の主流で大量解雇に直面しましたが、当時そのような日系人の人はどれぐらい日本語に習熟しているかとか、そのような情報がほぼ欠けていて全く実証性を欠いた状態の中でもがいていたという状況です。正直、感情論と政治的な主張が交錯する中で、全く混沌とした状態でありましたが、それ以降、客観的なデータの積み重ねがされ、フィールドワークの蓄積もされて15年の年月が流れて今に至っておりますけれども、私は当時から経済学者や社会学者、それから法律の先生に分析してもらえるだけの形にしていかないといけないと思っておりまして、徐々にそのようなデータの蓄積、いろいろな事例の蓄積、それを法制度に当てたときの検討、そのようなものができるようになってきたと思っております。この場においては有識者、学者の先生それから労使の皆様に集まっていただいて、御議論いただくという場ですけれども、本日お出しした素材でもって忌憚のない御意見を頂ければと思います。以上をもって、私の挨拶とさせていただきます。
○山川座長 ありがとうございました。本日の検討会は、こちらの会場とオンラインで開催します。それに関して、事務局から説明をお願いします。
○国際労働力対策企画官 事務局です。オンラインで御参加いただいている皆様からの発言についてお願いを申し上げます。オンライン参加の方については、事前にお送りしております「(Zoom)外国人雇用対策の在り方に関する検討会の開催・参加方法について」という資料を御参照ください。議事の進行の中で、座長が御発言を希望される方を募ります。会場参加の方については挙手をお願いいたします。オンライン参加の方については「手を挙げる」機能を使用していただくようお願いいたします。座長より御発言される方を指名いたしますので、指名された後に、まずはお名前を名乗っていただき、御発言を開始していただくようお願いします。オンラインでの発言後は、必ずマイクをミュートにしてください。操作などについて質問がある場合には、事務局までお問い合わせください。円滑な会議運営に御協力をお願いいたします。
 続きまして、資料の確認です。本日の資料は、議事次第と資料1~8となっております。これらの資料に不備がありましたら、事務局にお申し付けください。事務局からは以上です。
○山川座長 ありがとうございます。議事に先立ちまして、検討会の構成員の交代がありましたので、報告をさせていただきます。資料1を御覧ください。菅村構成員が退任されまして、代わりまして、日本労働組合総連合会労働法制局局長の漆原構成員に御就任を頂いております。よろしくお願いいたします。
 さて、本日の出席状況ですが、新田構成員が御欠席ということでありまして、代理として日本経済団体連合会労働政策本部の樫山様に御参加いただいております。また、日本商工会議所の大下構成員は16時頃に御退席となっております。
それでは議事に入ります。カメラの頭撮りは、ここまでとなっておりますのでよろしくお願いいたします。議事に入ります。最初の議題は、議題1「育成就労制度の創設、特定技能制度の見直しについて」です。事務局から説明をお願いします。
○外国人雇用対策課長補佐 よろしくお願いいたします。それでは資料2を御覧ください。まずは先の通常国会にて、技能実習、特定技能制度に係る法改正がありましたので、その点を御報告いたします。外国人雇用を取り巻く重要な制度改正であり、特に技能実習制度について、外国人雇用対策課が直接所管しておりませんが、密に連携を取って対応しています。育成就労制度に関して、まずは既存の技能実習制度の概要から御説明いたします。
 2ページ。技能実習制度は、平成5年に創設され、人材育成を通じた国際貢献を目的としており、人材確保の手段ではない旨を法定しておりました。また、本人意向で実習先を移ることを原則不可としており、また、監理団体等による実習の監理が行われます。特定技能制度については、平成31年に創設され、人手不足分野における人材確保を目的としており、登録支援機関等による支援が行われます。主に挙げられていた課題としては、技能実習について制度目的と運用実態の乖離の指摘、実習先の変更・転籍ができないことや、監理団体等の監理支援が十分ではない、技能実習の後の特定技能実習の分野に一部ずれがある分野では、キャリアパスが描きにくいということがありました。
 4ページ目に進んで、技能実習制度の現状について、令和4年度で約32万人、直近の令和5年度では約40万人、受入人数の多い国ではベトナムが最多となっております。職種別では建設、食品製造、機械・金属関係が多くなっており、98.3%が団体監理型の受入れとなっています。
 続いて5ページと6ページにおいて、技能実習の職種・作業のうち、対応する特定産業分野がないのが6ページの黄色部分が該当いたします。後述いたしますが、本年3月に繊維分野などについては、特定技能分野を追加する方針の決定がされています。7ページ、8ページについては、費用負担に係る調査を参考として記載させていただいております。
 続いて9ページにおいて、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議において、当検討会の構成員や関係団体の皆様も山川座長をはじめ、多くの御参画を頂いて提言を頂きました。
 10ページにおいて提言を踏まえた政府の対応について記載をしております。こちらの概要について11ページに記載しておりますが、背景として労働力不足の深刻化、国際的な人材獲得競争の激化を踏まえ、キャリアアップの道筋を明確化、労働者として権利保護をより適切に図る、関係機関の要件等の厳格化などによって、外国人材にとって魅力ある制度とし、日本が海外から選ばれる国となることを目指す改正となります。
 内容としては令和6年6月に法律が公布されまして、人材育成を通じた国際貢献を目的とする技能実習制度を抜本的に見直し、人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設し、育成就労産業分野において、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保するものです。育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針を作成するに当たっては、有識者や労使団体の会議体から意見を聴取することとします。また、現行のように、育成就労計画を外国人育成就労機構により認定を受けることとなりまして、育成就労が適切に実施されているかの監理を行うなどの役割を担う監理支援機関を許可制とし、この許可基準について厳格化となります。送出国と二国間取決めの作成や、送出機関に支払う手数料が不当に高額にならない仕組みの導入など、送出しの適正性を確保します。育成就労外国人の本人意向による転籍を一定の要件の下で認め、権利保護を適切に図ることとしています。
 続いて12ページ、育成就労制度と特定技能制度において想定する技能、日本語能力を記載しており、それぞれでの合格を要するものとなります。13ページは関連する機構を参考に記載しております。続く14ページ、施行までのスケジュールを記載しており、まずは基本方針、主務省令等の作成をし、令和7年に分野別運用方針の作成、令和8年には新制度の事前申請の受付を開始し、令和9年の改正法施行を想定しております。続く15ページについては経過措置のイメージについて参考として記載しております。
 続いて資料3です。特定技能制度(受け入れ数)の見直しの資料になります。資料3の2ページに、令和6年3月の閣議決定における受入れ見込数の再設定について記載をしており、特定技能制度開始時に設定した5年間の受入れ見込数の期限が令和5年度末に到来することから、各分野、人手不足状況等を踏まえ、令和6年4月から5年間の受入れ見込数を設定いたしました。今後、追加されることとなっている分野を含め、合計約34万5千人から合計82万人まで増加をしております。続いて3ページです。黄色の部分が新たに追加されることになっている分野でありまして、濃い青が新たな業務等を追加した既存分野となります。
 続いて4ページです。追加されることとなっている分野について、一部、日本の運転免許の取得等が要件となっている職種については、外免切替や免許取得等の期間の在留を認めるものとし、また、青字の職種については、日本語能力の試験の上乗せ要件等を設けております。
 続いて5ページです。工業製品製造業については、段ボール箱製造やコンクリート製品製造等の業務区分の追加があり、繊維工業の紡織・縫製区分については注のとおり、上乗せ要件等を定めております。3月にこれらを政府として方針決定しておりますが、分野を定める法務省令は現在、パブコメを終え、近く公布される見込みとなっております。資料2及び資料3の説明は以上です。
○山川座長 それでは、ただいまの事務局からの説明内容について、御意見、御質問がありましたら、構成員の皆様から御発言をお願いいたします。発言に際しましては、挙手又はオンラインで御参加の方は、手を挙げるボタンをクリックしていただければと思います。それでは、御質問、御意見等ありますか。漆原構成員、どうぞ。
○漆原構成員 まず1点、資料2についてです。資料2で、御紹介いただいた有識者会議の提言があり、ここに参加されている構成員、あるいは団体の中にも関与してきた方もおられると思います。こうした提言が、例えば今後どのように基本方針や主務省令等に取り組まれていくのかということは、多分参加された皆さんも関心があるかと思いますし、またこの制度に関与をしている関係者の皆さんにとっても、この先どうなるのかという関心が高い分野でもあろうかと思います。
 頂いた資料では、2024年度から来年度にかけて、基本方針や主務省令の作成がされると聞いております。政省令等の作成については、内容などが明らかになるタイミングや、その検討過程などを分かりやすく説明していただき、そのうえで制度が施行されることが重要だと考えております。この点について御説明を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○山川座長 ありがとうございます。それでは御質問ですので、事務局から何かありますか。
○外国人雇用対策課長 御質問ありがとうございます。有識者会議の報告を踏まえて、育成就労法の法案が可決されましたが、制度の骨格はもちろん法律で具体化したわけですが、その具体的な基準、例えば監理団体の厳格化、適正化といったときの監理団体の許可基準をどこまで厳しくするのかは、これから政省令で決めていくことになります。
 それから、転籍における要件も大きな方向性は出ていますが、転籍の要件として、もともとの受入機関で一定期間就労することというものがありますが、この「一定期間」は分野ごとに決められるとなっています。その分野ごとにどうするのか、これは政省令というよりは分野ごとの方針決定のときですが。あるいは転籍時の費用負担の分担は、省令で規定することになります。その検討に当たっては、国会審議でも様々御議論があり答弁申し上げていますように、政府だけで決めるというものではなくて、有識者の御意見を聞きながら決めていくこととしております。
 資料2の14ページにありますが、フェーズとしては制度の骨格、つまり省令等による具体化をしていくフェーズです。ここで、ある意味、制度のどの分野にも共通する基礎的なところが決まって、それを踏まえてどの分野をまず入れるのか、その分野の中の業務区分をどうするのか、分野ごとに上乗せ要件をどうするのか、その受入見込数をどうするのかといった議論をするわけですが、そのベースとなる議論が先にくるという流れになっています。
 分野を決める際には、これは相当有識者会議でも議論され、国会でも答弁がありましたとおり、有識者からなる会議体を作ります。御案内のとおり、技能実習はそれに近い形で、専門家会議という形を経て職種を追加してきたのに対して、特定技能は政府で決めるということになっていて、言ってみれば業所管省庁と制度所管省庁といった所で議論をして分野別方針を共同策定することになっていますが、両制度を通じて公の会議体で議論するということが決まっています。
 しかし、それ以外の主務省令についても、有識者の意見を聞いてということですから、新たな会議体と全く同じ形になるというわけではないかもしれませんが、そこはしっかり意見を聞いた上で決めていきます。具体は、まだこれから御相談申し上げますが、そういう方針で検討していきたいと思っております。以上です。
○山川座長 漆原構成員、何かありますか。よろしいですか。先ほどの御質問で、基本方針のフェーズと分野別の運用方針のフェーズは、これは双方にかかるという説明でしょうか。
○外国人雇用対策課長 これは分かりにくいのですが、実は基本方針というのが2つの要素があり、ある意味制度の具体化の延長のような要素と、一方で分野別方針の延長ではないのですが、こういう分野を追加しますということが基本方針にも書いてあるという2つの要素があります。ただ、大部分が言ってみればこの制度はこのように運用すると、試験の水準はこのようにしていくということが書いてありますので、そこは省令を決めるのと同様に、いろいろな方の意見を聞きながら決めていくことになります。
 一方で、分野を決めるという要素もあり、これはそのまま維持するかどうかというのはあるのですが、そもそも分野は、結局最後は主務省令に定めることで確定するので、その辺りは今後の検討もありますが、2つの要素があるということです。
○山川座長 ほかに御質問、御意見はありますか。まず、佐久間構成員からお願いします。
○佐久間構成員 私も、どちらかというと感想めいたことになってしまうのですが、まず育成就労制度の概要についてです。技能実習制度の2号移行対象職種が、特定技能のほうの特定産業分野になっていくか。それから、またそれが育成就労の分野に取り上げられるかという点について、関連する業界ではいろいろ注目されていると思います。まだ、2号移行対象職種から特定技能の分野になっていない業種もありますので、この辺りを業界の意見を聞きながら、今回は、要望をお伝えする会議ではありませんが、対象になるような方向で見ていただければと思っています。
 それから、7ページに来日前の支払費用とあります。支払状況、要は借金の関係も出てくると思うのですが、結構「支払いあり」が多く、これは技能実習、そしてまた特定技能でもあり得ると思うのですが、送出機関の関係で、「支払いあり」が全部悪いわけではないのですが、「悪質」というのもあります。この辺りは留意しなければ、監理団体だけが悪い、ということでは言い切れないのだろうということを感じております。
 それから、この表では12ページの横長の表に育成就労、特定技能1号、2号になっています。これは、育成就労は特定技能とは違う制度であり、そしてまた専門性、また非熟練のというのがありますが、私にとってこれは分かりやすい表示だと思っております。
 続いて資料3の特定技能の受入れ見込数の追加の関係です。これは令和6年3月29日に閣議決定をしていただいて、対象となった業界、産業界では受入れの拡大につながるということもあり、地方に外国人の方々も行くのではないかということで喜んでいる反面、生産性向上が図れているのに外国人の受入れ人数が拡大されるという数字の出し方が私には分からないところがあります。人材不足の数が少ない業界もあります。これはどういう形で不足人数が決まっていくのか。業界の意見を聞きながら、担当所管庁の担当課と協議をしていただくのですが、どうしてもこの計算式を見ていると、業界が発展していく、そして合理化、機械化を進めて省力化が図られ、生産性が向上するにもかかわらず、外国人の受入れ人数も一緒に増えていってしまうという計算上の綾があるように感じます。本来でしたら業界が発展し、生産性が向上する機械を入れて、それによって外国人を少し入れなくなるような方向にもなるのではないかと思います。これも、産業界の要請があるからなのか、そして逆に効率的に入れていただくということも考えられますので、その辺りの計算や移行は慎重にやっていただきたいと思います。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。御感想ないし御要望が主かと思いましたが、事務局から何かありますか。
○外国人雇用対策課長 幾つかコメントだけ申し上げます。特定技能、あるいは今後の育成就労分野としてどう追加していくのかと。ある意味、技能実習と特定技能のすり合わせのような話になっていきますので、技能実習のように申請はいつでもできて、その都度追加するという形になるのか、ある程度まとめてやるのか、その辺りはまだ決まっていないところもあります。
 少なくとも、今後は技能実習だけしかやりたくないということはできなくなりますので、やるとしたら技能実習で入って、更に特定技能でどうしていくのか、ここを全部描いて分野追加を行ていく。当然ながら、人手不足の分野であるということと、相当程度の知識又は経験を必要とする技能であるか、あるいはそのための育成就労の要件をしっかり判断した上で、検証して追加していくという流れになります。
 今年の3月に、繊維関係や印刷関係などが、ある程度特定技能でも入って両方がそろった部分もありますが、まだ入っていないものもあります。見かけ上、分野が入っているようなのだけれども、例えば製造系ですね。微妙にある産業小分類が抜けているとか、我々制度担当者すら気づかないような抜けがあったりもしますので、その辺りもどこまで把握し切れるかというのはありますが、制度が始まったらもう入れないということではないのですが、そういったところも、ある程度目配せしながら検討していければと思っております。
 特定技能の数字の出し方は、なかなか公式的なものがあるわけではありません。ですが、分野ごとに将来5年後を見据えて、更に言えばもっと将来を見据えたときに、どういう産業でありたいのかというのがあります。例えば、介護や建設などは産業のビジョンのようなものもあり、将来何万人必要だということがもともと想定されているものもあります。それに向けて、今後、生産性向上でどこまで対応し、国内人材の確保でどこまで対応できるのか。この辺りの見込みを、業界の見方と制度所管の見方で必ずしも一致しない場合もありますが、そういったものを提示していただいて、その中で議論する。もう少し生産性向上を図るべきなのではないかなどと、制度所管省庁側から申し上げることもありますし、そういった中で最終的に各分野の数字が決まっていって、合計が82万になっていくというものです。今後は、新しい有識者からなる会議体ができますので、同じ議論であっても、公の場で議論されることになっていくと考えています。
○山川座長 よろしいでしょうか。
○佐久間構成員 はい、ありがとうございます。
○山川座長 それでは、九門構成員、お願いします。
○九門構成員 亜細亜大学の九門です。コメントですが、育成就労から特定技能という流れが出てきたということで、外国人の方々が日本企業である程度定着して、コア人材となっていくような可能性が出てきたのかと理解しております。ただ、今後こうした人材が実際にキャリアパスを描いていけるような施策や運用が具体的に求められてくるのかと思っております。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。事務局、何かありますか。
○外国人雇用対策課長 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、これは二通りのものがあって、1つは産業としてどのように人材登用ビジョンを描くかということになります。これは、受入れ分野ごとに、ある程度標準的な、こういう形で人材育成をしていくのだというところをどう描けるかがあります。
 もう一方は、もう少し深刻なというか、手をこまねいていると、個社レベルでも産業界レベルでも、やはり日本に来てくれないのではないか、あるいは来てくれても途中で抜けてしまうのではないかという懸念もある中では、いかにこの個社に、あるいはその業界に定着していただくかということが課題になりますので、その魅力を高めると。当然その中には、報酬を少しずつ上げるのか、ある段階でクッと上げるのかといった報酬の在り方も含めて、あるいは人材育成そのものの在り方も含めて考えていただくことが、ある意味、日本の生き残り戦略という意味でも非常に重要になると思います。
○山川座長 ほかにありますか。是川構成員、お願いします。
○是川構成員 2点あります。1点目は、育成就労制度の法律ができて、これからいろいろと準備を進めていくということですが、ステークホルダーの状況について、差し支えない範囲で何か把握されていることがあったら教えていただければと思いました。例えば、事業者はもちろんですし、監理団体や事業者といった民間のマーケットの参加者、あるいは最近ですと結構地方自治体レベルでもいろいろと外国人労働者の招致に向けて動き始めている所もありますが、そういった自治体レベルでの動きなどについて何か把握されていることがあれば、差し支えない範囲で御紹介いただければと思います。
 もう1点が、特定技能の向こう5年間の受入れの数字の見直しと、受入れ分野の追加です。こちらは、特に新分野が追加されたドライバー、自動車運送業、鉄道といったようなものについて、今どういう状況なのかということについても、もしアップデートいただければと思いました。2点です。
○山川座長 ありがとうございます。御質問でしたので、事務局からいかがでしょうか。
○外国人雇用対策課長 まず後者のほうから申し上げますと、申し上げたとおり、最終的な分野追加というのは法務省令で決まるので、それは近いうちに出るとは思いますが、それを待ってから完全に追加され、それに応じて試験がなされていくということになります。3月からこれまでの間何をしてきたかというと、まず各分野では試験を作ります。試験内容に関しては、業所管省庁から入管庁に協議があるわけですが、厚労省にも助言を求められることがありますので、場合によってはもっと問題数を増やせとか、そういう助言を申し上げることもありますが、そういう試験を作るというのが1つです。
 それから、分野別方針で、ある程度分野ごとの特別な要件といったものは規定されているのですが、それを運用要領などに落とし込むという作業があります。分野によってはもうそれができているものがあって、1つ紹介いたしますと、例えば食料品製造分野、これはもともとあったのですが、今回3月にスーパーなどで惣菜製造をする、これもできますよということを決めました。これは分かりにくいのですが、技能実習ですと職種単位なので、つまり弁当を作るという仕事であれば、スーパーだろうがお弁当屋だろうがどこでもできるのですが、特定技能には分野という概念があって、お弁当屋ではできるのだけれども、小売り分野であるスーパーではできないというズレがあったのですが、今回そこは解消して、スーパーでもできますということが決まりました。
 ですが、御案内のとおりスーパーですと、言ってみれば作っている所とレジが若干混在してしまうところがあるので、運用要領の中で、スーパーではもちろん惣菜製造はしてよいけれども、販売はするなと、レジに立つなということを具体化するとか、そういう要領の作成を各分野では行っています。既に出している所もあれば、まだ作っているという所もあるという状況です。
 もう1つは非常に難しいお題なのですが、自治体等の動きは、むしろ是川先生から私が教えてもらったようなところもあるので、余り偉そうなことは申し上げにくいのですが。この制度改正の1つのきっかけかもしれませんが、それ以前から各自治体では送出国の政府や自治体などとMOCを結ぶといったことや、あるいは自治体ならではの単独事業がかなり進んでいると思います。協定レベルですと、もしかしたら現地でのイベント開催で終わってしまう所もあれば、ある程度県の単独事業で技能実習生、あるいはその他の資格の外国人を雇った場合、あるいは雇うために、事前にアドバイザーを送って受入環境を整える。場合によっては、介護などは補助金もありますから、そういったものを使って特別な支援制度を作ると、それを前提に協定を結んで受け入れていくというのが、動き始めているというか、動きがより活発になっているという印象はあります。ただ、これがどのぐらいワークするかというのは、協定だけではなくて、やはり自治体の独自事業とうまく組み合わされば、うまくいくところも聞こえてくるかなという印象をもっております。以上です。
○山川座長 是川構成員、何かありますか。
○是川構成員 ありがとうございました。
○山川座長 では、大下構成員、いかがでしょうか。
○大下構成員 日商の大下です。意見というか、今、各地等からの声を踏まえて思っているところ、感じているところを少しお話させていただきます。法律が通って、これから先どうなるのだという期待と不安の声は、各地から寄せられています。先月は川口の、今週は新居浜の商工会議所に呼ばれて、技能実習生の受入れを行っている企業の方との意見交換を行いました。
 別途、今週公表いたしましたが、各地商工会議所会員の中小企業を対象に例年行っている人手不足の状況と多様な人材の活躍に関する調査で、外国人材の受入意向を毎年聞いているのですが、依然として外国人材の受入意向は非常に高い状況です。あまり大きな変化はないのですが、細かな部分で変化を見ますと、例えば業種別で見たときに受け入れる予定、あるいは受け入れを検討しているものを合わせると運送業が最も多い結果となりました。これは今回の特定技能の分野追加の影響があるかと思います。
 また、政府や自治体、公的機関に求める取組の中で、安易な転籍の防止、ブローカーの排除などが前よりも高くなっているのは、育成就労制度における転籍制限の緩和が少し影響しているのではないかと思います。
 それを踏まえて、これから先、実際の制度施行までの間に、政府に対して2つお願いをしたいと思っています。1つは、今日、粗々のスケジュール感をお示しいただきましたが、もちろん言えるところ、言えないところがあると思うのですが、実際に受入れをしている企業が不安にならないように、さらにそこで働いている、就労している、あるいは実習をしている外国人の方が不安にならないように、可能な限り分かりやすく前広に検討のスケジュール感をお示しいただきたいということです。
 やはり、なかなか制度が難しいので、的確に情報が伝わっていないというか、うまく理解されていない部分もあると思います。事業者の方と意見交換をしたときには、転籍制限が緩和されるとなっているのですが、うちに転籍したいと言ってきた外国人は必ず受け入れなければならないのですかというような質問がありました。枠組みのところで、我々が想定していないような不安を持っている事業者もいるようですので、是非その辺りはお願いをしたいと思います。
 加えて、もう1点です。これも、事業者の方とお話をしていたときに言われたのですが、制度が変わる以外の、例えば年金の問題のような、育成就労と特定技能とは別の部分で、今回の制度の改定の趣旨は特定技能に円滑に移行してなるべく長くいてもらおうということになりますので、それに付帯して出てくるいろいろな外国人材に関わる制度も、もちろん簡単ではないものもあるのだと思うのですが、しっかり施行までの間に、できる限り解決できるものは解決をしていただきたいと思っております。私からは以上です。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。貴重な情報もお寄せいただき、ありがとうございました。事務局から何かありますか。
○外国人雇用対策課長 制度施行に向けて、3年よりもっと前に施行してはいけないわけではないのですが、今後3年に向けて、とはいえ、時間は意外とないと思っていますので、まずはその制度の骨格を早めに決めるということ。それに向けて、まず中身を考えていくことに加えて、どう示していくかという問題があります。
 先ほど漆原構成員からも話がありましたが、有識者の意見を聞くというプロセスの中でも、政府はこういうことをやろうとしているのかというのも出てくると思います。それ以外にも、どういうやり方でスケジュールや内容をお示しできるのか。法律の段階よりも、更に具体的なことを決めていかなければいけない。例えば、監理団体の厳格化といったときに、大きな要素として職員体制をどうするのかというのがあります。その職員を何人にするのかというのも、かなり具体的な、ここまでやるとさすがにやりすぎだとか、具体論になってきますので、そこを平場でできるところとできないところもあるのかも分かりませんが、そういったことも踏まえながら皆様が余り過度に不安にならないようにというか、ある程度理解が進みながら3年後を迎えられるように、我々も工夫していきたいと思います。
 年金の問題は、いろいろな所で言われますが、非常に難しいところです。何といいますか、脱退一時金の上限が5年だから、5年で帰ってしまうので6年にしてくれ、7年にしてくれという議論はあります。かといって、5年を10年に延ばしたら完全に適用になってしまいますので、それをどうするのかというのは、むしろ令和3年に3年から5年に延ばしたばかりでもありますので、そこは単純に上げるというのではなくて、逆に一旦帰って一時金を受給した後で、もう1回来るとか、いろいろな別の問題も指摘されているので、そこはいろいろと総合的に考える必要があると思いますが、御指摘を踏まえて我々も考えていきたいと思います。以上です。
○山川座長 大下構成員、何かありますか。よろしいでしょうか。
○大下構成員 大丈夫です。是非よろしくお願いします。
○山川座長 ありがとうございます。先ほど挙げられた例のことに関して、個人的な感想としては、入管法の問題だけでなくて、やはり労働関係の基本的なルールの周知等も併せて、進める必要があると思ったところです。ほかに御質問、御意見等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、次の議題に進みます。
 議題2「外国人の雇用の状況について」、議題3「外国人雇用対策の最近の取組について」、こちらの2つの議題を続けて事務局から説明をお願いいたします。
○外国人雇用対策課長補佐 よろしくお願いいたします。それでは、資料4「外国人雇用状況」の届出状況まとめを御覧ください。こちらについては、例年1月に前年10月末現在のものを公表しており、本年は1月26日に公表いたしました。そちらの御報告となります。
 2ページに、外国人労働者の総数として、右上にあるように約204.9万人で過去最多を更新しております。続いて3ページ、2008年以降の推移です。赤線が外国人労働者の総数ですが、ほぼ一貫して増加を続けております。青線が増加率となり、直近は12.4%でコロナ以前の水準まで戻っている状況です。在留資格別で見ると、専門的・技術的分野の在留資格は前年比24.2%の増加です。そのうち特定技能が約7割以上増加と大きく増加しております。次いで技能実習が20.2%の増加、資格外活動が6.5%増となっております。
 続いて4ページ、業種別の推移です。伸びているのは「建設業」、「医療、福祉」、「製造業」、「宿泊業、飲食サービス業」となっております。5ページについては参考とさせていただき、6ページに進みます。国籍別の推移です。前年比増加率は、インドネシアが56.0%、ミャンマーが49.9%、ネパールが23.2%であり、割合ではベトナムが最大で約51.8万人、外国人労働者の25.3%を占めます。
 7ページについても参考とさせていただき、8ページに進みます。こちらは外国人を雇用している事業所数の推移です。一貫して増加している状況となります。資料4の御説明は以上です。
 続きまして、資料5を御覧ください。こちらは、ハローワークで把握している外国人の求職者と外国人向けの求人状況をまとめたものになります。3ページは、外国人の新規求職者数の推移です。23年後半から若干の微増傾向があります。
 続いて4ページ、外国人の非自発的離職の割合の推移を日本人と比較したものです。青の実線が外国人で、外国人の非自発的離職の割合は減少傾向にあります。続いて5ページ、外国人の非自発的離職の割合の推移を在留資格別に見たものです。若干の変動はありますが、紫色の定住者が最も高い水準になります。次いで永住者、日本人の配偶者が同じようなグループで、最も低いのが技術・人文知識・国際業務となります。続いて6ページ、就職率の推移です。赤の実線が日本人、青の実線が外国人です。日本人の就職率のほうが15~20ポイントほど高い状態もありますが、それぞれ微増傾向となります。
 続きまして、8ページまで進みます。外国人向け新規求人数の推移です。新規求人数はコロナにより落ち込んで以降、上昇傾向にあったものの直近では横ばい傾向にあります。9ページは、外国人向け有効求人数の推移です。新規求職は3か月間有効となりますので、こちらは先ほどのグラフをよりなだらかにしたような形になります。続いて10ページ、専門的・技術的分野の有効求人数の推移です。コロナ前の2019年同月比において回復傾向にあります。続いて11ページ、専門的・技術的分野以外の有効求人数の推移です。こちらも同様で回復傾向にあります。
 続いて12ページは、外国語使用有効求人数の推移を示したもので、こちらは上昇傾向にあります。13ページは外国語使用有効求人数の職業別の推移です。こちらも上昇傾向にあり、サービスの職業、販売の職業の増加が大きいものになります。資料4、資料5の説明は以上となります。
○国際労働力対策企画官 それでは、説明者代わりまして、資料6と資料7に関して私の方から説明させていただきます。御説明の内容は、外国人雇用対策の最近の取組に関してで、中身としては2つあります。1つが「雇用労務責任者講習モデル事業について」、それからもう1つは、「外国人雇用実態調査について」です。
 最初に、雇用労務責任者講習モデル事業についてお話をさせていただきます。資料6を御覧ください。2ページ、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」というものを厚生労働省では策定しております。この中で、「外国人労働者の雇用労務責任者の選任」という項目がありまして、そこで外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者の雇用管理の改善等に関して必要な措置を講ずるため、例えば人事課長等、こういった方々を雇用労務責任者として選任することと規定されております。
 このように、雇用労務責任者の選任をお願いしておりますが、実際には選任に当たって、企業さんによっては、外国人労働者の採用ノウハウや受入手続などに関して、不安を抱えている事業者もたくさんいらっしゃるのではないかと考えております。こういったことを解消するために、雇用労務責任者の選任を要する事業所において、そのノウハウを取得していただくために、今申し上げている雇用労務責任者講習を実施するといったものです。
 次の3ページを御覧ください。こちらが検討過程で、講習のカリキュラムの検討を昨年度4回ほど、いろいろな有識者の方々にお集まりいただいて、議論をして検討をしたところでございます。4ページを御覧ください。この講習の対象について、「受講対象者」の所ですが、外国人労働者雇用労務責任者として選任されている方、あるいはこれから選任され得るだろう方、あるいは現に外国人労働者を雇用している事業所、あるいは雇用しようとしている事業所の事業主さんや人事担当者、こういった方を想定しております。
 「開催地域・予定」について、今年の3月から段階的に開催を進めております。令和6年においては対面形式で、22都道府県で開催しております。来年度に入りますと、オンラインにはなるのですが、これを全都道府県で受講していただけるように開催していく予定にしております。
 講習の内容を大まかに言いますと、外国人労働者の雇用状況や労務管理のポイント、在留管理制度や入管法等の外国人雇用のルール、それから労働関係法令・社会保険関係法令についての、外国人特有の事業に配慮した対応などの労務管理に関する事項、あとは異文化理解とコミュニケーション配慮、こういった内容を講習のカリキュラムとしております。
 例えばですが、在留資格に関して言いますと、例えば、どういう場合に不法就労になるかについて例示などを交えて御理解を頂くようにしております。「在留資格が切れてる人を働かせては駄目です」など、そういった内容を周知していくといったものになります。
 それから、労務管理に関しては年次有給休暇や労働時間、こういった解説などを行っていくとともに、外国語で労働法令を記載した既存のパンフレットについても御紹介し、そのアクセス先なども御案内しているといったものです。あと、コミュニケーションについては、動画なども交えて注意点などを解説するといった内容になっております。以上が雇用労務責任者モデル事業になります。
 続きまして、資料7を御覧ください。今度は、外国人雇用実態調査についてお話をさせていただきます。2ページが概要です。一番下の所に青に白抜き文字で書いてありますが、この調査は、「外国人の雇用実態等を産業別、在留資格別等の別に明らかにし、今後の外国人雇用対策立案の基礎資料とする」といったことを目的としております。
 調査対象の事業所としては、雇用保険の被保険者5人以上かつ外国人を1人以上雇っている事業所ということで、大体、事業所数でいうと1万弱ぐらい、対象労働者数が4万人ぐらい、こういった方々に調査に御協力を頂いているというものになります。この調査においては調査票を2種類用意しておりまして、事業所として回答していただく「事業所調査票」と、それから実際に働いておられる労働者の方に回答していただく「労働者調査票」という2種類をお送りして、回答していただくことになっております。このページの後ろのほうに実際の調査票が付いております。
 今申し上げたとおり2種類の調査票がありますが、事業所調査票のほうでは、労働者数や事業内容といった事業所の属性に関する事項、それから何人かサンプル的に出していただく労働者の方の学歴や在留資格等、雇用する労働者の属性に関する事項や、雇用形態、就業形態等、現在の雇用状況に関する事項等について調査をするといったものになります。
 労働者調査票の方は、労働者本人に書いていただくのですが、こちらは、例えば在留資格等はまた聞いていきますが、あとは出身地等の外国人労働者の属性に関する事項や、入職経路に関する事項等を調査する内容となっております。
 今回、実施しております調査の中には、例えば賃金や労働時間などといった項目も入っておりますが、賃金構造基本統計調査というものがありますけれども、そちらでも調査している項目ではあるのですが、賃金構造基本統計調査のほうは、そもそも対象が外国人であるかは問わず調査対象としているものになりますが、こちらの外国人雇用実態調査は先ほど申し上げたとおり、被保険者数5人以上で外国人1人以上を雇っている事業所ということで、外国人労働者を雇用している事業所を対象に実施し、外国人に焦点を当てているということが大きな相違点となります。
 実際の実施状況は、令和5年に1回目の調査票を配布しております。10月から11月を回答期間としまして、既にお送りして回収もしております。現在、集計作業を行っていまして、当初は今年の夏、8月末までに公表する予定でしたが、ちょっと初回の調査ということもあり、集計に時間を要しておりまして、一応年内をめどに公表したいと考えております。以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について御質問、御意見がありましたらお願いいたします。先ほどと同様に挙手又は手を挙げるボタンをクリックしていただきたいと思います。では、酒井構成員、お願いします。
○酒井構成員 法政大学の酒井です。資料の御説明、ありがとうございました。私からは資料4の外国人雇用状況の届出、それから、資料5の求人・求職者の状況に関してコメントさせていただきたいと思います。
 まず、資料4の外国人雇用状況の届出に関してです。内容に関してではなく、今、御説明がありましたが、私は資料7の外国人雇用実態調査の研究会にも参加しております。実態調査の経緯を説明いただいているのですが、この実態調査は、外国人雇用状況の届出を台帳としてサンプリングを行っています。その実態調査を行っている過程で、要は外国人を雇用しているという事業所に対して調査をかけているわけなのですが、返ってきた回答の中には、外国人を雇っていないという回答も多かったと伺っています。
 どうしてそういうことが起きたのかということに関して、研究会で分析してもらったのですが、例えば、永住者等が登録し忘れている、あるいは、離職した場合にその離職自体の届出を忘れていたといった可能性が示されていました。その分析自体は非常に適切なものだと考えておりまして、実態調査の対応としては別に問題ないと考えておりますが、大元となる台帳の外国人雇用状況の届出のほうでも、しっかりと届出の必要性の説明や周知といったものを改めて徹底したほうがいいのではないか、それをお願いしたい次第です。
 特に、今、正に外国人政策がダイナミックに動いていく中において、やはり今まで以上に実態の把握が必要になってくるかと思いますので、外国人雇用状況の届出を国の大元の調査として、しっかりしていくことが必要なのかと思います。
 次に、資料5に関してです。資料5は非常に興味深い結果です。毎回これを御報告いただく度に、私はすごく興味深く拝見している次第です。やはり、外国人の非自発的離職率が一貫して日本人より高い、そして一方で、外国人の就職率が一貫して日本人より低いということで、そこから示唆されることは、外国人の失業率が相当高いのではないかということが言えるかと思います。
 もちろん、このことは在留資格によって状況やあるべき対応は異なってくるものかとは思いますが、全般的な話として、やはり外国人向けの就労支援やセーフティネットがかなり必要とされていることを意味しているのかなと思います。更に言うと、これはハローワークを通じた統計ということなので、場合によってはハローワークから漏れ落ちている、または外国人のほうがもしかしてハローワークを使っていないといった事実があるとすると、ますます外国人の雇用状況や置かれている状況が深刻な可能性もあると考えております。
 ですので、今後も是非このような統計を通じて、しっかりと注視していってほしいと思います。また、外国人の求人・求職状況というものを、しっかりと把握して分析していってほしいと思います。以上、コメントとなります。
○山川座長 ありがとうございました。有益な分析を頂きました。また御要望も含まれていたかと思いますが、事務局から何かありますか。
○外国人雇用対策課長 この雇用状況届出そのものの周知徹底をということで、そこはしっかりやっていきたいと思います。届出も、基本的に普通の就労系の在留資格で来る場合には、大体雇用保険の適用になりますから、その場合には、雇用保険の手続きに在留資格等の情報を添えて届け出るというやり方になります。それ以外はこのためだけの届出になるので、確かに漏れているという場合があります。令和2年度から入管のデータベースとつなげて、ある程度、これは何かずれているのではないのかというところが捉えられることもあります。そこは可能な限り確認して出してもらっているのですが、確かに捉え切れないところもありますし、気が付いたらいなくなっているということもありますので、そこは新たに雇う所が出していただけるように、しっかり努めていきたいと思います。
○山川座長 よろしいでしょうか。ほかに御質問、御意見等はありますか。是川構成員、お願いします。
○是川構成員 ありがとうございます。こちらの資料5の外国人雇用の状況について、2点ほど御質問いたします。まず1点目が、求職者及び求人数を見てまいりましても、増えてきている傾向がありつつも、一方で、このデータを取っている間に大きな変化として、特定技能が非常に大きく増えたということがあるかと思います。そういった状況を鑑みても、特定技能が、少なくてもハローワークを通じて転職は大きくしていないのかなというふうにも見えるのですが、そういった見方で正しいかどうか。
 これは育成就労の転籍の話とも関係するかと思いますが、民間の職業紹介事業者が入らず、ハローワークを通じてという制度設計になっていたかと思いますので、求人・求職ともに、特定技能がここに挙がってきていないということであれば、育成就労の転籍においても、ハローワークを通じて転籍が起きるということは余りないのかなという、そういう見方も可能なのかなとも思います。このデータの中に特定技能がどれぐらい入っていて、把握されているか、そういった見方で正しいのかどうかという点が1点目です。
 2点目としては、先ほど酒井先生から御指摘のあった、やはり外国人の非自発的離職が高いということで、私もなるほどと思ってお聞きしていました。この資料の中で、在留資格別の非自発的離職の割合が出ていますが、これを見ると、かなり在留資格によっても異なっており、技人国の場合、日本人とそれほど変わらないような水準ですが、やはり定住者が非常に高いと。永住、日配というのがその中間ということで、永住も定住者、日配経由の人と技人国経由の人と両方入っているかと思いますが、そう考えると、ちょうどその中間ぐらいに永住者、日配の非自発的離職者の割合がくるというのも何となく想像がつくのかなと思っておりました。これは私の見立て、感想です。以上、2点です。
○山川座長 ありがとうございました。こちらのデータにある特定技能がどうなっているかという趣旨の御質問だったかと思います。この点、何かありますか。
○外国人雇用対策課長 資料5の3ページを御覧いただくと、結局この数字というのは、基本的にはハローワークに来ていただく求職者や求人のデータです。特にこの求職者で見ると、緑の部分、つまり身分系、永住者や定住者といった方が昔から多数を占めています。その高度人材、ここで言うピンクの専門的・技術的分野、ここの求人は割合的には多くありません。この中に特定技能も入っていますが、特定技能はもちろん転籍ができる在留資格ですから、もう少しこういう分野にも目を向けなければということで、我々ハローワーク、あるいは外国人雇用サービスセンター等で取り組んではおりますが、正直、求人も求職もとても多いとは言えません。正確な数字は今覚えていませんが、確か年間で求職者では多分12万人ぐらい外国人関係の方がいらっしゃいますが、特定技能は1,000人を超えたぐらいです。まだまだ少ない。
 是川構成員はイメージされているかと思いますが、やはり特定技能の方のマッチングというのが、ある意味そのための事業者、つまり登録支援機関や職業紹介事業所がいて、最初に紹介をして、その人が辞めたときに、では次を案内するというルートがそれなりにあるので、そもそも、どこまでハローワークでそういった求人や求職を取ってこれるかというところは、今後の課題ではあります。
 ただし、是川構成員がおっしゃったように、3年後は特定技能に限らず、育成就労の転籍、しかもこれは転籍できるものの、当面、民間職業紹介事業者の関与はさせないという制度設計になりましたから、そうすると、当然監理団体経由が今後も多いとは思いますが、ハローワークにも相談が来ることになります。そうすると、育成就労の方がハローワークに来られるのは3年後なのですが、それまでに、ある意味、特定技能というのは層が近いので、特に受け入れている企業という意味では、ほぼ一緒の属性ですので、そういった求人をどう取ってこれるか。求人を頂くためには、そのために求職者の方にどう案内をして来ていただくかというところが課題になりますので、ハローワークによって濃淡は相当あります。特に西日本のほうでは技能実習や特定技能の方が多いですし、そういった所では今からちゃんと求人や求職にしても、ちゃんと来ていただけるような工夫をするように努めていきたいと思っています。
○是川構成員 ありがとうございます。
○外国人雇用対策課長 非自発的のところは、是川構成員のお見立てのとおりだと思います。今申し上げたように、やはり定住者の方や日系人の方などの身分系の方が多い中で、この中で、定量的な分析というわけではありませんが、従来から派遣や請負などの形態で働かれている方が多く、我々が数字で見るよりも、多分実際には多いのだろうとは思っています。そういった方が多い中で、つまり、ある会社で派遣期間が終わったとすると、一度、非自発的離職になって、ハローワークに来るか、ハローワークに来ないで派遣会社や請負会社が新しい所を見付けて、また就職するといったところもその一部には入っているのかなと考えています。
○山川座長 ほかはいかがでしょうか。佐久間構成員、どうぞ。
○佐久間構成員 ありがとうございます。私も資料6の雇用労務責任者講習モデル事業の関係です。実は、私も7月終わりぐらいに本講習会に受講させていただきました。雇用労務責任者講習モデル事業に係る構成員会等で協議し、テキストの内容等を決めていただいたと思うのですが、私にとっては、非常に分かりやすいテキストとして用意していただいたのではないかなと思います。いいテキストだと思います。ただ、講師がちょっとテキストを棒読みするだけで、もう少し自身のノウハウ的なものを御教授いただくと、より良い実務的な講習になるのではないかと思っています。
 最後に、「まとめ」ということで、テストを10題ぐらいやるのですが、これは職業紹介の責任者講習とか、派遣労働者の責任者講習など責任者講習がある中で、派遣労働者責任者講習にはないのですが、職業紹介事業者の責任者講習においてもテストが10題ぐらいあるのです。それほど難しいテストではないのですが、これがあることによって、ちゃんと聞いていなければ最後にテストがあることで、「おっ」と緊張感も生まれます。受講終了時には、引き続き簡単なテストを実施する方向で、ぜひお願いしたいと思います。
 もう1点、外国人雇用実態調査、資料7です。これだけ大々的に外国人の関する雇用の調査を実施されたのは初めてでございます。実態がよく分かると思いますので、取りまとめのほうを何とぞお願いいたします。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。有益な御指摘も頂き、大変ありがとうございます。この実態調査のほうは、また集計がまとまり次第、御紹介する機会があるのではないかと推測しております。ほかはいかがでしょうか。漆原構成員、どうぞ。
○漆原構成員 まず、モデル事業について質問させていただければと思います。これはおそらく、雇用管理指針に基づいた雇用管理の試行として、モデル事業として実施をしているのだと思いますが、この報告書を取りまとめた後どうなるかも重要だと思います。とてもよい取組ですので、報告書をまとめる皆さんの御意見もあろうかと思いますが、できれば更に充実した形で本格的に実施をしていただければというところです。その上で、やはり雇用関係のところ、取り分け労働法も含め理解いただくまでに時間もかかる部分がありますので、そこにできるだけ説明の時間を割いていただき、違反事例がなくなるような取組にしていただければというのが要望の1点でございます。
 もう1つは、これは連合の考え方でもございますが、雇用管理指針を、できれば法律に格上げをしていただいて、罰則を付けたものにすることで、さらにその効果が高まるのではないかと考えております。
 さらに、外国人の雇用実態調査については、目的の所を見ますと、正に必要な情報を得るための調査だと思いますが、こういった情報というのは厚労省だけではなく、入管庁もまた独自に把握しているところですし、こういう情報を、例えば入管庁との共有ですとか、向こうの持っている情報等とのチェックなどをしているのかどうかについてはいかがでしょうかというのが質問でございます。
○山川座長 ありがとうございました。御質問について、いかがでしょうか。
○外国人雇用対策課長 雇用労務責任者講習ですが、佐久間構成員からお褒めの言葉を頂きましたが、多分、本音をおっしゃると、ちょっと簡単過ぎるかなと思われたかもしれません。これは、ずっと検討会でも議論していて、もっと難しく、あるいはもっと法違反の是正につながるようにという議論は当然ありましたし、どこまでやるかというのは結構議論しました。なにしろ現状が、派遣の責任者講習や技能実習の講習とも違って、受けなければいけないというところまでいってないものですから、任意で受けていただいて、しかも3時間程度という、それなりに受けていただけるような時間内で、最低限マスターしていただく。それも、これは気付かなかったな、こんな落とし穴があるなどの気付きになるようにというコンセプトで、相当議論して作ったものです。全体としては、多分こんなの分かっているよという所は非常に多かったとは思いますが、一方で、人事の担当者からは、淡々と人事異動していると実は入管法違反に陥ってしまうというパターンもありますし、よかれと思ってやっているのに陥ってしまうとか、そういったところを、なるべく気付きのきっかけになるようにということで作っておりました。これはモデル事業ですので、トライアルして、ここが課題であるといったものを踏まえて、更にリバイスしていくことを考えておりますので、より一層質を高めていきたいと思っております。
 外国人指針の法律への格上げ等の議論は、これは実は法案審議のときにそういった議論や問題意識が示されたことはあります。外国人労働者対策は、基本的には外国人も日本人と同じ法令をしっかり適用させましょうというところから始まって、ハローワークでの支援で少し近づけてやるということではありますが、それに加えて、どのようなルールを、しかも法律という意味では法的な規制などをかけるのか、あるいはそれを守らせることができるか、そういったことも総合的に考えながら、何ができるのかというのを考えていきたいと思います。以上です。
○山川座長 入管のデータとの関係はいかがですか。
○外国人雇用対策課長 雇用状況届出のデータと入管庁データについては、オンライン接続をしています。例えば、再就職するときに、名前は本名なのだけれども、在留カードを偽って、あるいは在留資格を偽って就職したとすると、入管の持っているデータとうちのデータで不一致が生じます。そういった場合にアラートが出て、入管のほうでも察知できますし、我々のほうでも、おかしいということは気付くことができます。労働法制的には届出をちゃんとしているかという観点でチェックしていますが、場合によっては、さすがにこれは違法性が大きいのではないか、かなりの偽造、届出に際して違反しているということになれば、地方入管に情報提供するということもあります。全部が全部見抜けるわけではもちろんありませんが、そういった形を通じて、適正になされるように我々も連携していきたいと思っています。
○山川座長 よろしいでしょうか。それでは、時間の関係もございまして、最後の議題4に移ります。その他としておりますけれども、資料8のOECDのレポートについて、この作成にも携わられました是川構成員から御説明を頂きたいと思います。よろしいでしょうか。お願いいたします。
○是川構成員 資料のほうはよろしいでしょうか。それでは御説明したいと思います。こちらは、「日本の移住労働者-OECD労働移民政策レビュー」ということで、邦題はこのようになっております。もともとの原題のほうは「Recruiting Immigrant Workers: Japan 2024」として出たものです。
 次のページです。そもそもOECD移民政策レビューとは何かということになりますが、こちらは、OECDが実施する同シリーズの第12弾として行われたものです。これまでの主な実施国としては、ここに掲げているような国々について行われております。おおむねこの10年弱以内に行われているものです。直近ですと、カナダや韓国といった国も入っています。各国とも移民政策というものは、いずれも非常に複雑になっていまして、かつ外国語、英語での情報提供というのはなされていません。そういった関係で、お互いによく分からないという状況があるのですが、このシリーズの良いところは、英語で全体を見渡せる概観できるような形で書かれているということになります。
 作成は、OECD(経済協力開発機構)、その中でも移民課、インターナショナル・マイグレーション・ディビジョンという所がありまして、そちらが担当しております。
 この担当課は、フラッグシップレポートとしましては、毎年インターナショナル・マイグレーション・アウトルックというものを出していまして、これが加盟国の主要な移民政策の動向や、主に先進国に向けて動いてくる外国人、移民の動きについて概観する最も包括的なレポートとなっています。
 この日本に関するレビューですが、刊行日は令和6月30日にOECD本部のWebサイトで公表されています。日本語版は、2024年8月26日、こちらが現物ですが、私が翻訳をしまして、明石書店から出ております。こちらがもともとのオリジナル版と、日本語版の表紙ということになります。
 こちらの報告書の構成を簡単に見てまいりたいと思います。全体は6章構成になっております。1章はサマリーということで、2章から本文が始まっております。2~4章と、全体を概観するようなチャプターが付いています。まず労働移住の背景、レイバーマイグレーションの背景として、日本の経済的状況について、一番マクロなマクロエコノミーについて書かれております。
 日本経済は完全雇用に近く、人手不足がまん延している。そうした中で、国内労働力の活用や生産性向上といったものと並んで労働移住政策というものがとられていることが書かれています。第3章、こちらは歴史から踏まえた分析です。移民政策レビューの特徴は、何か特定のベストプラクティスを提言するということではなく、各国の文脈に応じて内在的な問題を解明して、解決策を提言するといった丁寧な分析を売りにしています。そういった意味で第3章は非常に重要なものです。日本の1950年代からの外国人労働者の受入政策の変遷について分析した上で、直近の動きについてまとめています。
 次のページです。第4章、こちらは労働移住の政策枠組みということで日本の労働移民政策について概観しています。ちなみに労働移民政策というのは、レイバーマイグレーション・ポリシーという訳語、英語に対する訳語です。外国人労働者政策などと日本では言うわけですが、この訳語は、実はすごく訳をするときに難しく日本語で移民というといろいろな意味が付与されるので、訳語として適当かなと、非常に迷いました。ただ、この報告書の中で、例えばマイグラントワーカー、移住労働者という言葉と、フォーリンワーカーという言葉を両方使っているのですが、
 マイグラントという言葉に外国人という言葉を当ててしまうと、外国人労働者、フォーリンネイバーというところが訳し分けられなくなってしまう問題もありまして、そのほか、様々な用語、対応関係を取っていきますと、移民という言葉を使わないとパズルのピースがどうしても1つ足りないという状況があります。ですので、訳語の選定には慎重を期したのですが、その上で、労働移民政策という言葉を訳語としては使っています。ただ、日本の一般的な用語で使われるときには、外国人労働者政策と呼ばれるものが、おおむね該当しているというように捉えていただければと思います。
第4章は、そういった意味で日本の外国人労働者政策の全体的な枠組みについて、スキルレベルごとに第1節、第2節と紹介した後に第3節で、特定活動の中にあるような小規模なワーキングホリデーとか、特区のメイドとか、そういった小規模な労働移住プログラムというものも紹介しています。この点が、この報告書の非常に大きな特徴の1つです。日本語で書かれたものでも、こうした分野横断的に全ての就労可能な在留資格について包括的に解説した書籍というものは、入管白書を除けばありません。そういった意味で、日本語の情報としても非常に有益なものというように思います。
 第5章、第6章と、それぞれハイスキル、高技能移民と留学生について書かれています。第6章は、訓練と技能に基づく労働移住ということで、技能実習、特定技能のこの2つに焦点を当てた分析がされています。
 次のページです。全体のポイントとしましては、日本の労働移民政策を固有の社会的文脈及び国際的な労働移民政策の動向を踏まえ、包括的に取り扱った初めての文献であるという点です。日本語としても、今、申し上げたように、英語で書かれ、かつOECDのような認知度の高い国際機関から出されていることは非常に重要なことかと思います。
 2点目としまして、日本は、労働移民政策に関して、他のOECD加盟国と同様の課題に直面する国として位置付けられています。これも非常に重要な点です。3点目のポイントとも関連しますが、これまで国内の議論において、日本はそもそも労働移民政策をとっていないというところから始まることが多かったわけです。これは肯定的であれ否定的であれ、変わらない部分といって良いかと思います。では、現在存在している200万人を超える外国人労働者は何なのかと言いますと、それは、サイドドアやバックドアから入ってきた、言わば、だましだまし入ってきているイレギュラーな存在であると。そういったような捉え方をされてきました。ただ、そういった捉え方から入ってしまいますと、政策と効果という分析がきちんとできません。イレギュラーであるというところでいろいろな認識が止まってしまうと。そういった点で、この2点目のような位置付けをしっかりとしたということは重要だと思っています。
 3点目としまして、この報告は様々な論点を含んでいるのですが、今日、御紹介したいと思うのは、日本において盛んに言われている3つの論点についてです。1点目は、今、申し上げた、日本は移民政策をとっていないのかという論点です。2点目としては、主に高度人材ですが、もう魅力がない、日本には高度人材外国人は来ないのではないかという論点です。3点目は、技能実習制度及び特定技能も含まれますが、これらの制度が単なる低スキル労働者の受入れの代替であるといった認識。こういったものについて、この報告書は一つ一つ答えを出しています。
 次のページです。まず、1点目の論点です。日本は移民政策をとっていないのかという論点について、この報告書から、それに該当するファクトファインディングスを見つけていきますと、このように要約できるかと思います。まず、この報告書においては、日本はOECD加盟国の中で移民人口が最も少ない国の1つであるという位置付けられています。これは大方の認識と相違ないといえます。2点目としては、日本は、主に生産性の向上と国内人口による労働供給の引き上げを目的とした様々な政策を通じて、労働市場の構造的課題の解決に取り組んでいるというように評価されています。3点目、そうした中、労働移住は、労働市場の変化に対応するために検討された、政策オプションの1つである。日本は、労働移住プログラムを人口構造の変化から最も影響を受ける分野を含む特定の分野に焦点を当てて進めてきた。少し直訳調で分かりづらいのですが、介護といった分野もそうですし、今日、議論になりました特定技能といったものも、正にそういった政策ということになるかと思います。4点目として、日本は、需要主導型の労働移住システムである。デマンドドリブンで進んでいるということです。これは世界各国の移民政策の中にはサプライドリブンというか、先に移住希望者のプールを作って、そこからマッチングを進めていくといったような国もあります。カナダのエクスプレッション・オブ・インタレスト、EOIといったようなシステムは、それに近いです。日本は雇用契約ありきで、雇用契約がある外国人について在留資格を付与していくというデマンドドリブンであるということが書かれています。また、日本への技能労働移住にはほとんど制限がない。キャップやシーリングといったものがないことが特徴として挙げられています。また、日本の移民政策は、技能移民の受入れと留学生の誘致に重点を置いてきたということも書かれています。
 こうしたことから、1点目の日本は移民政策をとっていないのかという問いに対して、OECDはノーである、とっていると言っているということになるかと思います。つまり、移民政策をとっているという答えを出していることになります。それは考えられた政策オプションの1つであって、それはOECD加盟国が直面している課題と共通であると、それが正にこのレビューの意義ということになるかと思います。
 次のページです。2点目です。日本は高度人材にとって魅力がないのか、これについても興味深いファクトファインディングスがなされています。高度技能移民の大半は、単一のプログラムである技人国で日本に移住していると。これは他の国と違いまして、非常にカバレッジの広い、柔軟に運用される資格であるということが指摘されています。2点目としては、人材の獲得面ですが、終身雇用、1社における長い勤続年数を前提とする日本型雇用システムによっても妨げられていると。雇用慣行を変えることを目的とした最近の政策、こちらの報告書の中では、勤続年数よりも生産性を賃金により反映し、雇用の流動性を高めるシステムというように書かれていますが、そういった政策は高い技能を持つ移民にとって、日本の魅力を向上させるかもしれないことを書いています。
 ただ一方で、ここまで見ると、日本は高度人材にとって魅力がないのかなと、通説どおりかなと思うのですが、3点目以降、少し興味深いことが書かれています。日本に来ることを選択した高技能移民は日本にとどまる傾向がある。これは国際的に見ても、リテンションレートが高いということが書かれています。また、留学生についても、定着率が高いです。留学生の3、4割が来日後5年たっても日本にとどまっている。これはOECD加盟国間の中で比較をしても、高い部類に入ることが明らかにされています。そうした中、潜在的な高技能移民を惹きつけるため、日本は雇用マッチング・プラットフォームのようなものを開発するとよいのではないかという提言がなされています。
 最後に、移民にとって日本社会への統合は依然として課題であるということ。まず1点目として、永住資格取得のための居住条件が厳しく、10年が標準的な年限として掲げられています。また、これは非常にユニークな指摘ですが、配偶者の労働市場へのアクセスを促進することが望ましいのではないかと書かれています。これは高技能移民の配偶者というのは、往々にして高技能であるといったようなこと、あるいは現在受入れが進んでいる特定技能、夫婦共働きで働くことで世帯が家計として安定するといったような効果を考えると、配偶者の労働市場へのアクセスが重要ではないかということが提言されています。
 こうした中、高度人材にとっての魅力という点で、もう一点この報告書にありますのが賃金格差です。こちらは左側にこのレビューでの分析、右側に今年の経済財政白書で、外国人労働者の賃金について分析しておりましたので、その2つを並べています。
 移民政策レビューにおきましては、技人国の賃金率は平均的な日本人男性労働者よりも35%低い。ただ、この差の大部分は日本の労働市場での経験年数と勤続年数が少ないことによる。これらの違いを考慮すると、賃金格差は10%と推定される。また、男女間の賃金格差は、特にないという結果になっています。
 一方で、では、これがどういった理由によるものなのかということですが、差別とかそういったことなのかというと、それは多分違うであろうと。なぜならば、同じ外国人であっても、恐らく日本の教育機関を卒業したであろう新卒採用者に限ると日本人と同程度、統計的に有意な差がないという結果になっています。こうしたことから言えるのは、学歴の取得地による差が、スキル・トランスファラビリティが低いということで、この10%程度の賃金格差が出ていると推定されます。
 これは報告書の範囲外ですが、私がレビューした範囲で先行研究を見ますと、先進各国においても、大体この10%超程度の賃金格差というのは、高度人材においても確認されるケースが多いです。そういった意味でいうと、外国人と日本人の賃金格差については、極端に大きいものではないということは言えるのかなと思います。また、同様の分析が経済財政白書のほうでもなされておりまして、おおむね同じ結論です。多少分析の属性の範囲が異なるので、数字は少し違いますが、およそ3割程度の賃金格差がグロースで見るとついているけれども、様々な属性をコントロールすると7.1%となると。すなわち、約4分の3の賃金格差というのは、単に若いであるとか、勤め先が中小に多いとかそういったようなことによって説明されます。こういった意味で、大体OECDと同様の報告がなされているのかと思います。
 次のページです。技能実習制度は単なる低スキル労働者の受入れの代替なのかという論点です。OECDの報告書は、この点について、以下のようなファクトファインディングス及び評価をしています。1点目としては、技能実習制度は、現在、スキルレベルの低い労働者を雇用するためのプログラムであることを書いています。2点目としまして、送出国における過剰な手数料とブローカー関与は、依然として問題である。技能実習生は、送出機関又は雇用主に縛られ、到着後の雇用主の変更の可能性は限定的であるといった記載がされています。ここまでは事実関係ということになるかと思います。
 3点目、4点目においては通常とは異なる、通説とは違う評価がなされています。まず、3点目ですが、NGOが指摘する技能実習制度に対する批判の1つは、技能実習生が同じ会社にとどまることを義務付けられているため、搾取の対象になりやすいというものである。OECD加盟国の多くの期限付き労働移住プログラムは、雇用者の流動性を制限しているといったことが書かれています。もちろんそれは残留する労働者については徐々に緩和される。ただ、期限付き労働移住プログラムについて、国際的に見てこれは例外的ではないということが書かれています。
 これも非常に重要な観点でして、技能実習制度、日本国内では難民、永住者、日本人の配偶者等から日系人まで、全て同じ横並びで議論されることが多いです。しかし、OECDの報告書において、技能実習というのは期限付き労働移住プログラムというカテゴリーに入ることが指摘されています。そうした観点で比較すると、通説とは違う結論になると。日本の場合、技能実習が様々な点で制約があることについて、比較対象になるのは他の国の永住者であるケースが多いです。これは比較のカテゴリーが違うことで、当然永住者が持っているような権利を期限付き労働移住プログラムでは与えられていない、そういったことが非常に重要な観点かと思います。4点目は、その結果として、特定技能制度と併せてですが、特定技能制度は技能実習制度同様、他のOECD加盟国の労働移住プログラムよりも厳重に管理されている。ほとんどの技能実習生が雇用主の下にとどまり、コンプライアンスのレベルも高い。アメリカ国務省は、この点については、日本で頻繁に引用されますが、それについても言及されていまして、人身取引のリスク等が議論の焦点となっているが、これらの重要な点は、ほぼ解決されているという評価がなされています。
 次のページです。現在の育成就労制度も含めた改革の方向性について言及、関連するようなことが述べられています。まずは、技能実習制度には、通常の労働移住プログラムには含まれない多くの追加的支援メカニズムが含まれている。こうした仕組みについては、日本労働市場の特殊性を考慮すれば、今後の改革においても全体的枠組みは維持されるべきであるということが書かれています。これも育成就労に向けた有識者会議で、盛んに議論された点ですが、移住仲介機能の役割をどう捉えるかという点においてOECDはこうした判断をしていることになります。
 続きまして、技能実習制度の国際貢献の点について、OECDは、それはまやかしであるという評価はしておりません。出身国に対して、より良い貢献ができる。そのためには出身国における訓練の機会を提供するために、試験の基準や要件というものを改善していく必要があると書かれています。これは技能形成を通じた労働移住という、この後で書かれているSkills Mobility Partnershipという新しい政策類型に引きつけた記述ということになります。また、特定技能制度と技能実習制度の関係についても7番目で書かれています。特定技能制度は職業資格を持つように長期的な移住経路を作るために導入されている。ただ、移民が必要な技能を習得できるようにするためには、別のプログラムが必要である。つまり、技能実習制度によって訓練された外国人が特定技能制度へ移行するということが、主な経路となっていることを評価しています。
 次のページです。こうした中で、日本語版の249ページにありますが、アメリカの人身取引報告書に関する評価としてコラムが書かれています。重要な点はこの下線部ですが、「残念ながらこの評価は古く、主観的なものである」とか、「エピソードベースの報告や極端な虐待のケースに基づいたものである」。結論としては、OECD加盟国における他の期限付き労働移住プログラムはこうした問題を抱えていて、しかし、こうしたケースのほとんどに対して、米国国務省レポートは抜本的な勧告を行っていないということです。そういった意味において網羅的に書かれたものではなく、評価は古く、主観的であり、これがOECDとしての米国国務省の報告書に対する評価になるかと思います。
 これは私が実際に参加しているOECDの移民政策会合等でも、各国の移民当局者の間ではおおむね似たような印象を、アメリカの国務省レポートに対しては持っているのかなと感じています。
 最後、まとめです。報告書から何を読み取るか。これは繰り返しになりますが、5点ほどあるかと思います。日本は、決して移民政策をとらない国ということではなく、かなり意識的に政策オプションとして労働移民政策をとっていることが重要な認識かと思います。奇しくもこの報告書が引用しているのは、安倍総理の国会での答弁を引用しています。よく日本の国内では、むしろ安倍総理が特定技能の審議の際に、日本は、いわゆる移民政策をとっていないといったところが何度も引用されますが、全く同じ時期の安倍総理の発言を引用して、正に三本の矢の一つとしてこういったものが選択されていると。日本政府の明確なオプションであるということが、OECDの目には映るということかと思います。
 2点目としては、日本型雇用や日本語といったハードルがあるものの、留学を経由したりした高度人材外国人の定着率は高い。また、より多くの高度人材を獲得するためには雇用の流動性を高め、生産性と賃金の連動を高める現在の改革や雇用マッチング・プラットフォームのようなものも有用であろうといっています。また、技能実習、特定技能の関係についてもここに書かれているとおりです。
 4点目は、移住仲介機能の介在、技能検定との整合性という技能実習制度及び特定技能制度の特徴は、今後も維持されるべきであることが書かれています。そうしたことを踏まえますと、現在の改革の方向性は、こうした指摘とおおむね一致するということができるのかなというように私としては読んでおります。長くなりましたが、以上です。
○山川座長 大変貴重で有益な報告書の御紹介をありがとうございました。皆様から御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。九門構成員、どうぞ。
○九門構成員 亜細亜大学の九門です。非常に有益な興味深い報告をありがとうございました。2点質問があります。1点目は、高技能移民の日本での定着率は、他国と比較すると高いということですけれども、恐らくこれは出身国によっても、少し違いがあるかと思うのです。それにはどういった違いがあるかというところが1点目です。
 2点目は、高技能移民の雇用マッチング・プラットフォームという話が最後にありました。こちらは具体的にどういったものかを教えていただきたいと思います。民間が主体か政府主体か、どういった形でつくられる仕組みなのかというところを、もう少し具体的に教えていただければと思います。以上、2点です。
○是川構成員 まず、1点目の高技能移民の定着率です。こちらは報告書中において在留資格別、国籍別のデータが出ております。まず在留資格別で見ていきますと、どういった所が高いかというと、例えば高度専門職が割と高い。あと、技能で来た人も高く出ております。技人国というのは相対的に低いのですが、経営管理がそれより少し高いといった傾向が出ています。ほかを見ていきますと、例えば在留資格で高いのが、教育で入ってきた方です。あとは研究です。そういった方は高めに出ています。国籍別に見ますと、一番高いのがベトナムですね。これは技人国で日本に在留する外国人について、国籍別に見たものですが、ベトナムが高く、次が中国、次が韓国、少し落ちてきてアメリカやインドといった国は低いという結果が出ております。こちらの分析は、入管庁から在留外国人登録の匿名化された個票データの提供を受けて分析しております。ですから個人単位で出国や入国が、全部分かるようなデータでやっておりますので、正確かと思います。
 2点目として、雇用マッチング・プラットフォームについてです。具体的な制度設計について、この報告書中では言及されていませんが、推測するにカナダのEOI(Expression of Interest)のような仕組みが考えられているのではないかと、私としては考えています。具体的にどういったものかと言いますと、日本に移住したい外国人が事前にデータベースのようなものに、自分の職歴や学歴などを登録して、そのデータベースから日本側の雇用者で「これは」という人がいた場合に、両者をマッチングさせるといった仕組みが、実際にカナダで運用されているシステムとして挙げられるかと思います。
○九門構成員 では、政府が作るシステムだということですね。
○是川構成員 そうですね。恐らくそれが念頭に置かれていると思います。
○九門構成員 分かりました。ありがとうございます。
○山川座長 では酒井構成員、どうぞ。
○酒井構成員 非常に貴重な御説明をありがとうございました。こういった外国人労働政策に関して、日本の文脈の中で見ていくことも重要ですけれども、やはり国際的な文脈の中で評価していく、レビューしていくということも、非常に重要だと思わせる資料内容でした。そこで私からは1点のみ、コメントさせていただきたいと思います。
 資料の10ページ目に、「日本は高度人材にとって魅力がないのか?」というスライドがあります。このスライド自体、大変興味深いものだったのですが、この2ポツ目に今後、従来の日本型雇用システムを変えるような試みによって、高い技能を持つ移民にとっても魅力的になるのではないかということが書かれております。一方で3番目に、現状では留学生の定着率が高いということが書かれているわけです。私の理解というか考えとしては、留学生の定着率が高いというのはある意味、日本型雇用システムというか、新卒一括採用に入り込むためだと。新卒一括採用の日本型雇用システムに乗ってしまうと、労働市場において、外国人も日本人と同等の地位を得られる、それゆえに定着率が高いという側面があるのではないかという気がしております。
 ですから従来型の日本型雇用システムを変えるような試みと、3番目の留学生の定着率が高いということは、矛盾というわけではないのですけれども、若干トレードオフみたいなところがあるのではないかと、ちょっと感じております。だから何だというわけではないのですが、やはりハイブリッド的なというか、留学生の定着率が高いことはいいことだと思いますので、その部分をいかしつつ、同時に高度な外国人の人材にとっても、魅力的になるような雇用システムをつくっていくことが、何よりも重要ではないかと。その組合わせが重要なのかと感じた次第です。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。非常に有益な、高度な学会のような感じになってきました。そのほかに何かありますか。
○是川構成員 まったくおっしゃるとおりです。いくつか一見相反するような現象が起きているように感じるのですけれども、中では全部整合していることだと思っています。たしかに留学生の定着率が高いという背景には、新卒一括採用があるということで、一方で新卒一括採用であるがゆえに、ある意味、入口の賃金が低くなってしまう。これが就労で新規に来る、ミッドキャリアで来る外国人にとっては魅力が低くなってしまうのです。留学などで来る人、長く日本にいるつもりでない人にとっては、賃金が上がるまで待てない。
 また、これは日本人でもそうですけれども、ミッドキャリアが不透明で、いろいろと悩んでしまうことがあります。そういった意味で言いますと、実は留学生の雇用と定着、高度技能移民の採用と定着を考えていく上では、日本の労働市場で今言われているような、若者が途中で辞めてしまうという問題と連続していることが、この報告書中で描かれているのかと、私としては思っています。
○山川座長 ありがとうございます。もうお一方。オンラインで御参加の友原構成員、どうぞお願いします。
○友原構成員 「日本は高度人材にとって魅力がないか?」についてです。日本人との賃金格差についての御説明を頂いたのですけれども、「日本は高度人材にとって魅力がないのか?」と言われたときに、パッとよく頭に浮かぶのが、日本とほかの受入国の間での競争で、高度人材にとって魅力がないかという議論があると思うのです。そうなってくると論点の1つとして、例えば日本の賃金とほかの受入国の賃金の水準比較みたいな議論というのは、今回の本の中で扱われているのでしょうか。もし扱われていれば、少し教えていただきたいと思います。本を読めばいいのでしょうけれども、ちょっと無精をしてすみません。
○山川座長 いかがでしょうか。
○是川構成員 直接、各国の賃金比較はされていません。多分1つには、比較が難しいということがあると思います。ただ間接的な記述ですが、今の日本型雇用システムとの関係での言及はあります。若いうちの賃金が安く抑えられてしまうので、どうしても各国に対して賃金が見劣りしてしまう。それが魅力を減じさせる効果を持つということは、報告書中で書かれています。
 実際に私自身がヒアリングなどをしていても、今は名前が変わりましたけれども、例えばフィリピンのPOLOという、在京の大使館にある1件1件フィリピン人の雇用契約を審査する所だと、「賃金が安過ぎる」と言って跳ねられるケースが多いと聞いています。その多くがまさに日本型雇用において、若い間の賃金が安く抑えられているということです。諸外国であれば専門職は最初から割と高く、かつ、その後は余り上がらないけれども、ある意味最初から高いという職種が、日本だと最初は非常に安く抑えられてしまう。それがやはり魅力を低下させるということがあるのかと思いました。以上です。
○友原構成員 ありがとうございました。
○山川座長 ほかに御質問等はありますか。よろしいでしょうか。おおむね時間となってはおりますけれども、全体として構成員の皆様方から何かありますか。天瀬構成員、どうぞ。
○天瀬構成員 先生、ありがとうございます。JILPTの天瀬です。今、フランスにおり、今日はオンラインで参加させていただいております。今日の議論は、大変興味深く拝聴いたしました。若干総論的なコメントになってしまって恐縮です。
 今日の議論は、大変大きな制度改正のスタート地点に立っているという感じだと思いますけれども、今回の改正が、言ってみれば永住化に近づく方向での改正であるとするならば、先ほどの是川構成員の御報告の中にもあったように、今後、社会統合政策というものが、非常に重要になってくるのではないかと思います。私自身、今は外国人としてフランスで暮らしているのですが、社会を形成するルールに対しては、必ず不満が起こる。新しい制度を導入すれば、そこには必ずある種の不満といったものが伴ってくるものです。フランスも御承知のように非常にストの多い国で、移民問題に関しても、彼らはストという形で不満を表現することが多いのです。私がいるのはパリではなくて南仏のほうなので、それほど深刻なデモはないのですけれども。
 重要なのは、先ほど雇用実態調査のお話もあって、数的な把握ができる体制は整ってきたのではないかと思っております。同時に質的な把握と言いますか、制度における不満というのがどの辺にあって、それがどういった種類の不満で、それは対応すべき不満なのか、あるいは時間を少しかけてもいいのか、優先度合いはどの辺にあるのかという分析を行うことが、非常に重要になってくるのではないかと思いながら、先ほどの是川構成員のお話を聞いておりました。
 「日本社会への統合は依然として課題である」という一文が、御報告の中にあったかと思うのです。不満を把握してそれを分析するという機能が必要です。外国人が安定的に日本で就労できる環境をつくるためには、やはりハローワークが中心的な役割を果たすと思いますので、ハローワークが関係団体あるいは自治体と連携することによって、こういった質的な把握を是非進めていっていただきたいと思います。すみません。総論的なコメントですが、よろしくお願いいたします。以上です。
○山川座長 新しい制度の施行前で、更に今のお話は恐らく施行後においても、非常に重要な課題となってくる点の御指摘かと思った次第です。
 本日は御多忙な中、御議論いただき、大変ありがとうございました。皆様方から賜りました御意見等を踏まえまして、取組をお願いしたいと思います。事務局から全体として何かありますか。
○外国人雇用対策課長 本日はどうもありがとうございます。最後に天瀬構成員からもお話があったように、今後、外国人労働者が日本に来なくなるのではないかという懸念もある一方で、さはさりながら、いつまでかは分かりませんが、技能実習あるいは特定技能といった層を中心に、当面はまだまだ増えてくると思います。少なくともそれを前提として、正に労働政策だけではなく、様々な政策が考えられなければならないと思います。
 特定技能でも今回、5年間の上限が34万人から82万人ということで、かなり大きなメッセージというか、インパクトがあります。それに当たっては、ある自治体からすると急に気付かぬうちに労働者が10人増えている、あるいは企業レベルで見て10人増えているといったことが起こります。そういう中で自治体としても、それをどう把握してどう取り組むかということが課題になります。実際に現在、いろいろな自治体から外国人雇用状況届出の情報を使って、自分の町に、自分の事業場にどういう属性の外国人がどのぐらいいるのか教えてくれという問合せもあります。なるべくお答えするようにしておりますけれども、そういう自治体でもどう把握するか、企業と自治体とでどういう関係を取るか、それを政策にどう反映させていくかというのは、大きな課題であると思います。そこは是非皆様方の御意見を伺いながら、労働政策に収まらない部分も多々あるとは思いますけれども、我々も検討させていただきたいと考えております。
○山川座長 それでは時間になりましたので、本日はこれで閉会といたします。大変ありがとうございました。