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第35回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 議事録
健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課
日時
令和6年9月2日(月) 15:00~17:00
場所
Web会議
厚生労働省 専用第21会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
議題
(1)2024/25シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について
(2)WHOの季節性インフルエンザワクチン推奨株選定会議意見を踏まえた、今後の対応方針等について
(3)現行国産ワクチンを改良した安全で有効な新規おたふくかぜワクチンの開発に関する研究について(研究班報告)
(2)WHOの季節性インフルエンザワクチン推奨株選定会議意見を踏まえた、今後の対応方針等について
(3)現行国産ワクチンを改良した安全で有効な新規おたふくかぜワクチンの開発に関する研究について(研究班報告)
議事
- 議事内容
- ○福澤ワクチン開発専門官 定刻より少し遅くなりましたが、ただいまより「第35回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
本日の議事は公開となります。議事の様子はYouTubeで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。なお、事務局で用意しているYouTube用以外のカメラ撮りにつきましては、議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の皆様におかれましては御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。
本日は、対面とWebのハイブリッドで開催いたします。まず、Web会議の開催に当りまして、会議の進め方について御連絡させていただきます。Web会議から御参加いただいております委員の先生方は、カメラオンに切り替えをお願いいたします。参考人の先生方は、関連する議題になってからカメラオンにしていただければと思います。御発言される場合は、Web会議システムの挙手機能などを用いて委員長から御指名されてから、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言をお願いいたします。会議の途中で、長時間音声が聞こえない等のトラブルがございましたら、あらかじめお知らせしております連絡先の番号までお電話をお願いいたします。
また、開催に先立ちまして、事務局に人事異動がございましたので御報告申し上げます。予防接種課長に前田が着任しております。
○前田予防接種課長 予防接種課長の前田でございます。8月1日に着任をいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。伊藤部会長はじめ、部会の皆様方には御協力いただいていること感謝を申し上げたいと思います。特に、皆様には研究開発及び流通というところで御意見をいただくわけでございますが、今回、秋に向けてということで、まず、インフルエンザ及びコロナの流通状況、確保状況についてお示しをして御意見を頂くということ、翌年以降の供給の在り方についても御意見を頂く予定でございます。忌憚のない御意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○福澤ワクチン開発専門官 引き続きまして、事務局の人事異動ですけれども、予防接種課課長補佐に眞中が、ワクチン開発専門官に福澤が着任しております。よろしくお願いいたします。
続きまして、委員の出席状況について御報告いたします。現在、会場とWeb経由での御出席を合わせて、委員10名中10名の方々に御参加いただいておりますので、定足数を満たしており、厚生科学審議会の規程により、本日の会議が成立していることを御報告いたします。
ここで、新しく就任された委員の方を御紹介させていただきます。まず、日本医師会から笹本先生が本日初参加となります。
○笹本委員 日本医師会の笹本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○福澤ワクチン開発専門官 続きまして、国立医薬品食品衛生研究所から本間先生が御参加いただいております。
○本間委員 国立医薬品食品衛生研究所の本間でございます。昨年の4月から所長を務めています。よろしくお願いします。
○福澤ワクチン開発専門官 また、本日は国立感染症研究所から参考人として2名の方に御出席いただいております。品質管理研究センター第二室・主任研究官の木所参考人とウイルス第三部主任研究官の加藤参考人に御出席いただいております。また後ほどの議題の際に御紹介させていただければと思います。
申しわけございませんが、冒頭のカメラ撮りはここまでにさせていただきたいと思いますので、御協力をお願いいたします。また、これ以降の写真察影、ビデオ撮影、録音はできませんので御留意いただきますようお願いします。
それでは、議事に先立ちまして、本部会の資料について説明させていただきます。本部会の資料につきましては、通信負荷軽減の観点から、基本的には画面には投影いたしませんので、傍聴されている方々を含めまして、Webサイトに掲載している資料をお手元に御用意いただければと思います。
それでは、ここからの進行は伊藤部会長にお願いいたします。
○伊藤部会長 皆様、御出席ありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局から審議参加についての遵守事項について御報告をお願いします。
○福澤ワクチン開発専門官 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日、御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について御申告を頂きました。各委員及び参考人からの申告内容につきましては、利益相反関係書類を御確認いただければと思います。本日の議事内容につきましては、個別に調査審議される品目はございませんので、議事への不参加に該当する方はおられませんでした。以上です。
○伊藤部会長 それでは、早速議事に入らせていただきます。最初の議題、「2024/25シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について」、事務局から資料1の御説明をお願いいたします。
○眞中予防接種課課長補佐 事務局でございます。資料1「2024/25シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について」を御準備ください。本日の内容は、1つ目が「季節性インフルエンザワクチンの供給等について」、2つ目が「新型コロナワクチンの供給等について」です。
3ページ目です。まず、インフルエンザワクチンの供給量の年次推移を表したグラフになります。棒グラフがワクチンの供給量、折れ線グラフがワクチンの使用量を表しております。2024/25シーズンのワクチンの供給量は約2,734万本となる見込みです。
4ページ目です。こちらはインフルエンザワクチンの週次の累積供給量となっております。9月5週の時点、こちらは金曜日を起算日としておりますので、10月4日時点で2024/25シーズンの供給量は全体の半数を上回る約1,820万本が出荷される見込みとなっております。なお、2024/25シーズンの総量は約2,734万本の出荷見込みですので、過去3年間の平均使用量である2,532万本を超える供給量となる見込みです。また、HAワクチンは1本当たり成人2回分ですので、過去3年間の定期の予防接種の実施者数が約2,066万人となりますので、定期接種の対象者には約1,000万本使用されていたということになっております。
5ページ目からは、「新型コロナワクチンの供給等について」です。6ページ目です。新型コロナワクチンの見込み供給量となっております。一部の医薬品については薬事承認申請中であり、予定の情報でありまして、また、定期接種に使用するワクチンについては承認後にワクチン分科会に諮った上で決定されますが、2024/25シーズンのワクチン供給量は約3,224万回となる見込みです。モダリティ別の供給量に関しては、mRNAが約2,527万回、組換えタンパクが約270万回、mRNA(レプリコン)が約427万回となっております。
7ページ目です。こちらは新型コロナワクチンの週次の累積供給量となっております。9月5週時点で2024/25シーズンの供給量の約4割、1,238万回分が出荷される見込みです。あくまでも参考情報となりますが、令和5年度の秋開始であります特例臨時接種時における新型コロナワクチンの接種回数、及びその秋開始の高齢者の接種回数を超える供給量となっております。
8ページ目です。まとめますと、季節性インフルエンザワクチンの供給量については、2024/25シーズンのワクチン供給量は約2,734万本となり、近年の平均使用量を超える供給量となる見込みです。新型コロナワクチンの供給量については、2024/25シーズンのワクチン供給量は全体で3,224万回となる見込みです。
季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの対応についてですが、定期接種の対象者が、まずインフルエンザワクチンの接種を希望する場合、その機会を逸することがないよう、例年ワクチンの効率的な使用を現場に働きかけを行っており、そうした前提の中で近年の使用量は約2,500万本程度となっております。季節性インフルエンザワクチンについては、2024/25シーズンは昨シーズンと比べて供給量は少ないですが、近年の使用量等からワクチンを適切に使用すれば不足は生じない状況と考えられ、今年度もワクチンの効率的な使用等について、医療現場へ働きかけを行うこととしてはどうかと考えております。新型コロナウイルス感染症についてですが、こちらは新たに予防接種法のB類疾病に位置付けられたことから、新型コロナワクチンについても季節性インフルエンザワクチンと同様に、ワクチンの効率的な使用等について医療現場に働きかけを行うこととしてはどうかと考えております。
以降のページについては参考資料となりますので、御確認いただければと思います。資料1について事務局からの説明は以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。今シーズン、皆様方御承知のように、国内は4社が、今までは卵でワクチンを製造していましたが、うち1社が注射製剤をやめて、経鼻のワクチンを作ることになったので、その分が違っているので、従来実績と比べて予想することが少し難しいのかと思いますが、今の説明について、まず御質問を受けたいと思います。どなたかいらっしゃいますか。例年の数字からみると、多分それほど不足しないのではないかとも思いますが。信澤先生どうぞ。
○信澤委員 ありがとうございます。私が聞き漏らしたのかもしれないのですが、6ページの新型コロナワクチンの見込み供給量のところで、第一三共、武田薬品、Meiji Seikaファルマは、(薬事申請中)となっていますけれども、これは見込み供給量の中に入っていますが、使うまでには申請が通るということについての確認です。
○眞中予防接種課課長補佐 事務局でございます。御質問ありがとうございます。この3社につきましては、正に定期接種に向けて薬事承認に係る準備が進められているところとなっております。定期接種に使うワクチンになるかどうかは、薬事承認後にワクチン分科会に諮った上で決定されるといったことになります。
○信澤委員 そうすると、大丈夫だと思いますが、薬事申請が通らないなどということがもし起きたら、接種できる供給量というのは少し減るということになるわけですね。
○眞中予防接種課課長補佐 あくまで企業といたしましては、定期接種に向けて鋭意準備を進めているところになりますので、その状況等にまた変化が生じるようなことがあれば、御報告させていただければと思います。
○信澤委員 分かりました。ありがとうございます。
○伊藤部会長 坂元先生どうぞ。
○坂元委員 どうも御説明ありがとうございました。川崎市の坂本でございます。コロナワクチンに関して質問したいと思います。この秋口のコロナワクチンに関しましては、国のほうから自治体宛てに、標準価格を7,000円として接種をしてくださいと。手技料が3,740円、ワクチン代が3,260円で見積もっての7,000円という形で、当然、市町村の中には、独自予算を付けてそれよりも安くするという所が出てくると思います。国はワクチン代に関しましては、市長村への説明会の中で、販売価格は平均1万1,600円を前提として、差額の8,300円を今回限り補助しますという説明がありました。この8,300円の国からの補助というのは市町村にとっても非常に有り難いところでございますが、10月1日から始まる、今9月に入って、まだメーカーや問屋のほうから実質的にワクチンをいくらで販売してくれるかという、ちょっと説明というか話し等がまだなされていません。市町村のほうは補正予算を組んでいくという中で、国のほうで、いつ頃になったらメーカーのほうから問屋さんを介して、ワクチンの実質の価格の提示、1万1,600円より高く提示されるのか、安く提示されるのか、その辺、もし時期的にお分かりになりましたら教えていただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。
○眞中予防接種課課長補佐 事務局でございます。こちらにつきまして、坂本先生も御存じだと思うのですが、ワクチン価格につきましては、卸売販売業者と自治体、医療機関等との間で設定されているものと理解しておりますので、厚生労働省として価格についての情報というのは把握しておらず、また、どのワクチンを使うかというのは、国の審議会で決まっていない状況というのもあるので、少し情報提供が遅れてしまっているのだと思いますので、申し訳ございませんが、情報としては持っておりません。
○伊藤部会長 笹本先生、よろしくお願いいたします。
○笹本委員 日本医師会の笹本です。インフルエンザワクチンにつきまして、資料1の4ページですが、ワクチンは増産が難しいので、十分な量のワクチンが供給されていることを医療機関と国民に周知していただき、安心してワクチン接種が受けられるように情報の提供をお願いいたします。
新型コロナウイルスワクチンにつきまして、資料1の6ページですが、定期接種では新しいワクチンも登場する可能性があり、国民だけではなく、医療機関も確保するワクチンの選択に迷うところです。ワクチンに関する情報提供が重要となりますので、できるだけ速やかに分かりやすく情報提供をしていただき、Q&Aなどを通じて初歩的な疑問にもお答えしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
○伊藤部会長 ありがとうございます。毎年のことだと理解していますが、10月の開始当初は、インフルエンザワクチンは生産予定の全ての本数が揃っているわけではないので、10月の初めは、足りないかも知れないから早く打たなきゃと報道されると、逼迫する可能性があるので、そういう広報はしないでいただきたいと、厚生労働省を通じて、過去もお願いをしていたと思っております。ですので、今年も、皆様方の御了解が得られることを前提にしてではありますが、厚生労働省を通じてマスコミにお願いをして、少なくともハイシーズンに入る10月の末には、予定数量の供給がされると思います。例年、たくさん作る割には一部使われないワクチンも出てきておりますので、それほど心配しているわけではありませんが、開始当初はワクチンが足りないという話にならないようにしていただきたい。今年は、小児に関しては別のモダリティもありますし、小さなお子さんに関しては、通常の注射用ワクチンであれば2回接種になるので、早めにということですが、今回は第一三共の生ワクチンもありますので、複数のモダリティの中で選択していただけるのではないかと思います。
ということで、何か御意見はございますでしょうか。今回、コロナのワクチンに関しては、生産流通部会で一番最初に話が出てきましたが、多くの方々の関心があるところだと思います。最終的には、分科会で承認されるかどうかが決定してからでないと難しいと思いますが、現段階での各企業の生産予定数を提示していただいていると理解していただければと思います。企業が用意したワクチンが全て使われるかどうかは分からないのでこの数字が一人歩きをしないようにはしていただきたいと思います。
○前田予防接種課長 すみません、予防接種課長です。そういう意味では、今、薬事申請中のものも含めて、秋以降どうなるかというところを今回お示しさせていただいております。今ほど部会長からもお話がありましたとおり、実際は薬事が進みまして、その薬事の前提で、秋以降どうするかというところは、分科会をはじめとする部会でまた改めて議論するというところになりますので、少し情報が未完成であるという状況で、流通の状況を御紹介申し上げているというところは限界があるところではありますが、一方で、そういう形で進めまして、また需要も、これは昨年の状況との比較でも十分あるということで、本年度、初めての任意接種ですので、その様子を見ながら、適宜、そういった流通に関する必要な広報等も行っていきたいと考えています。すみません、以上でございます。
○伊藤部会長 ありがとうございました。まとめさせていただきますが、昨年度も13歳以上の方は原則1回の接種とすることで。坂元先生どうぞ。
○坂元委員 すみません、伊藤先生。1つだけ確認を忘れたのですが、10月1日から開始されるコロナワクチンは、日本では一応小委員会では、JN.1系統とするという形にしたのですが、具体的には日本ではJN.1そのものという理解でよろしいでしょうか。アメリカはKP.2でいくという形で決まったそうですが、日本はJN.1でいくという方針でよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
○伊藤部会長 事務局から答えるべきなのだろうと思いますが、私の知る限りは、JN.1で、KP.2は今のところ使う予定にはなっていないと思います。
繰り返しになってしまいますが、インフルエンザワクチンは13歳以上の方は原則1回で、必要に見合う量のワクチンを購入していただくことについては、例年どおりの働きかけをしていきたいと思います。今年度も医療現場の方にお願いして、適切な形で購入をしていただきたいということになろうかと思います。今年の製造の状況からは、需給の乱れはないと現時点では考えていますが、不測の事態が発生しないということが一番大切だと思いますので、皆様方の御協力を頂きたい思っています。この委員会としてそういう判断をしていることをアウナンスさせていただいてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。では例年どおりの形で、各方面へお願いさせていただきたいと思います。
それでは、次の議題に入らせていただきます。「季節性インフルエンザHAワクチンの推奨株に関する今後の方針について」となりますが、事務局から説明をお願いします。
○福澤ワクチン開発専門官 資料2を御覧ください。こちらは、季節性インフルエンザの不活化ワクチンについての今後の方針について、御議論いただきたいという議題になっております。
2ページは、季節性インフルエンザ不活化ワクチンの製造株の選定手順の大まかな流れとなっております。まずWHOで、日本も参加している世界的なサーベイランスシステムで把握された直近の流行状況を踏まえ、抗原が類似するウイルスのリストがまず公表されることになります。それを踏まえて、国内のメーカーで製造に関する検討を行った上で、感染研で改めて株の優先順位を決定します。その上で、厚生科学審議会の株の選定の小委員会で製造株が決定され、それを基に国内メーカーでの製造が行われている状況です。
下に書いてある近年の主な変更点としては、現在、A型とB型それぞれ2つずつの系統から選定がされておりますが、平成26年度までは、B型株を片方の系統のみ選定した3価ワクチンとして製造がされておりました。一方で、その頃、B型株については混合流行が続いていることから、WHOで4価ワクチンに関する推奨がなされ、国内でも現在は4価ワクチンとしての製造を行っているところです。
3ページです。今御説明したように、WHOでは4価での製造が推奨されていたのですが、2024年シーズンの南半球向けの2023年9月に出た推奨では、B型の山形系統を除いた3価ワクチンを使用するという形での内容が出されました。また、今年の2月に発表された2024/25年シーズンの北半球向けの推奨事項においても、3価ワクチンでの推奨が維持されているところです。下にWHOからの文書の要約をしておりますが、山形系統の自然感染は2020年3月以降確認されておらず、WHOの諮問委員会でも、その系統の抗原についてはワクチンから除外すべきという見解が示されております。一方で、4価ワクチンから3価ワクチンへの移行については、各国・地域政府の権限において意思決定すべきということでの推奨が出されております。
4ページは、先ほど説明しましたWHOでの国際的なサーベイランスで検出されているB型インフルエンザの系統別の検出状況です。色の薄い所が山形系統の状況で、右側の図の2018年頃は5,000件程度の検出がされていたのですが、左下の2020年頃には既に数十件程度の検出状況となっており、その後2021年以降はほとんど検出がされていません。2022年で3件、2023年は1件で、世界的にもそれぐらいしか検出はされていないという状況になっており、これを踏まえて先ほどのWHOの推奨がなされているところです。
5ページは主要国・地域ということで、米国とEUでの対応状況について示しております。米国では、2024/25シーズンから、米国内で使用するワクチンはB/山形系統を除いた3価とするということで進められております。なお、他国では迅速にそういった対応をすることが困難であると想定されるため、米国内でも4価ワクチンの承認を得ており、海外へ輸出する場合には、B/山形系統を含めた4価ワクチンでの製造がなされているという状況です。
またEUですが、こちらは2024/25シーズンについては、弱毒生ワクチンについてはB/山形系統を除外するという形で進められております。一方、それ以外の不活化ワクチンなどについては、ワクチンの接種のキャンペーンに向けての供給を確保しなければいけないということで、来シーズン、2025/26シーズンまでに3価ワクチンへの切り替えを完了するという形で進められております。こちらの差については、弱毒生ワクチンは非常にまれではありますが、ワクチン由来の株から感染性が復帰して感染が起こる可能性があること、一方、不活化ワクチンについては、こちらはEU内の制度の問題ではあるのですが、EU域内全体の承認と、加盟国レベルの承認の2段階あるわけですが、加盟国レベルでは大半が既に4価の承認に切り替わっており、3価のものがなくなっているという状況で、こちらの薬事的な手続を今シーズンまでに完了することが困難であり、先ほど説明したとおり供給を確保する観点から決定がなされているところです。
6ページは、国内での2024/25シーズンにおける対応状況と、今後の方針の案です。インフルエンザ不活化ワクチンについては、WHOの推奨事項を踏まえて、国内の製造業者3社から聞き取りを実施したところ、製造株の価数を削減するということになると、製造工程や原材料の調達計画の変更が必要になってきて、実際の調達にも時間が掛かりますので、製造株の変更のみをする場合と比べて供給までに時間が増大するというような説明がありました。これを踏まえて、定期接種の時期に安定的に供給を頂きたいということを考慮し、今シーズン、2024/25シーズンについては、4価のワクチンでの接種を行うこととし、今年4月の株の選定の小委員会で審議を頂き、4種の製造株を決定・通知したところです。
また、参考として、経鼻の弱毒生ワクチンの状況ですが、こちらは承認されている内容が小児になっておりますので、定期接種の範囲からは外れますが、製造販売業者に確認したところ、2024/25シーズンから3価での供給を行うということで報告を受けているところです。
今後の方針(案)ですが、国内のインフルエンザHAワクチンについては、WHOでの推奨内容と製造販売業者での対応に要する期間などを踏まえ、2025/26シーズン以降は3価のワクチンによる接種を行うことを前提として対応することとしてはどうかという形で、案を示しております。また、その場合に、具体的な製造株の検討については、今後WHOから新たな推奨事項が出る予定になりますので、そちらの内容も踏まえ、引き続き、季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会において行っていくことはどうかということでまとめさせていただいております。
資料の説明は以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。インフルエンザの株に関して、10年前に3価から4価になっていましたが来シーズンから3価に戻すことを前提にしての議論だと思います。コロナに合わせてなのかはよく分かりませんが、山形株が2020年以降出てきていない、出てきていないから打たなくてもよくなりましたという説明だろうと思いますが、米国が既に3価にする、EUと日本は、これからのシーズンに関しては、現在、製造の工程でもあるので4価で、その次のシーズンから作るものに関しては3価でという提案だと思います。御質問などはありますか。
今年は坂元先生の委員会に選定していただいたと思っておりますが、それが次のシーズンから基本的には山形株を除いてB型が1種類という形にすることを、ここで決めたいということだと思いますが、よろしいでしょうか。石井先生、どうぞ。
○石井委員 ちょっと伺いたいのは4ページなのですが、このグラフを見ますと、ビクトリアでも山形でもない系統未特定というのがかなりB型で出ております。特に、2020年やとか2023年ですと、かなりの部分がこの系統未特定というものなのですが、これは一体どのような株なのか。例えば、ビクトリアでも山形でもない、何かワクチンとしてカバーしなければならないようなものなのか、それとも、例えばビクトリアでカバーできるようなものなのかということについて、もし情報がありましたら教えていただきたいのですが。
○福澤ワクチン開発専門官 御質問ありがとうございます。こちらは系統未特定という扱いになっており、系統を特定する作業が行われていないという状況かと思います。各国の研究機関のキャパシティーもありますので、それぞれの系統全てについて特定するというのは難しく、A型、B型のいずれかであるのかという段階の特定までしか至らないという検体が一定程度はあると、関連する資料などを読んでいると、そのような扱いであったかと思います。
一方で、そういったある程度サンプル調査のような、系統の所はそのような形で見ていただくことになるかと思いますが、それの中であったとしても、2020年頃にそういった系統を特定するような作業が行われた中でも、B型というのは割合いが低かったですし、2024年時点だとそれよりもかなり系統を特定された数は多いという状況ですが、それであっても山形系統はほぼ検出されていない状況になっているということで、そのような状況を踏まえて、感染が確認できていないという判断がされていると理解しております。
○石井委員 ありがとうございます。もう1点なのですが、経鼻弱毒生ワクチンについては、使っている株は現在日本で選定されている株とは異なっていて、WHOが推奨する株からメーカーが選んでいるという理解でよろしいでしょうか。つまり、いわゆる注射で使うものとは異なる株のワクチンであるという理解でよろしいかどうかを確認させていただきたいのですが。
○福澤ワクチン開発専門官 参考資料に付けておりますが、御認識のとおり、不活化ワクチンについては厚労省で決定した株が使用されておりますが、経鼻生ワクチンなどの海外も含めての製造が行われているものについては、通常の薬事審査で株の変更が審査されて、それが決定されております。それを選ぶところはWHOの推奨を踏まえて各企業が選択したものが選ばれていて、その妥当性などについては薬事審査の中で見られているということで、場合によっては一致する可能性もありますが、基本的には、御認識のとおりで、メーカーのほうで選択がなされたものが出てくるということになります。
○石井委員 その株の名前は、開示されるという理解でよろしいでしょうか。
○福澤ワクチン開発専門官 販売される際には、添付文書などでどの株が使われているということは明示されるかと思いますし、販売される前の広報の活動といった中でも、そのような情報は提示されていくことになるかと思います。
○石井委員 これまでは、どのメーカーも同じ株を使っていたということで、良くも悪くも余り効果は変わらないということであったと思うのですが、今度は株が変わりますと、経鼻と注射の違いもありますが、それ以外にも免疫原性が異なっているということが出てくる可能性があると思うので、そういう情報開示も重要なのかもしれないと思いました。以上です。
○福澤ワクチン開発専門官 ありがとうございます。そういった適切な情報提供のところを、任意接種のところではありますが、メーカーにお伝えさせていただきたいと思います。
○伊藤部会長 信澤先生、お願いできますか。
○信澤委員 私も、今の石井先生の御質問と関連したものと、もう1つ別な質問をさせていただきます。経鼻生ワクチンの場合には、健康局長通知が鶏卵ワクチン用に出されたときには生ワクチンに使える株名などは開示されずに、実際に使われるようになった時点で、使う人あるいは医師が、ワクチンに付いている添付文書を見て初めて分かるということなのでしょうか。あるいは、アストラゼネカを調べれば分かるのだと思いますが、国内で、あるいは厚労省から何か提示するということはないのかというのが1点です。
もう1つは非常に細かいことなのですが、3価にした場合には、以前と同じように、ワクチン中に含まれる総タンパク量の上限を240μgに戻すのか、あるいは今の400μgのままで、中に含まれるワクチン株の種類が3種類に落ちるだけなのかを伺えればと思います。お願いします。
○福澤ワクチン開発専門官 ありがとうございます。まず1点目の弱毒生ワクチンについての情報提供のあり方ですが、予防接種課の予防接種事業として定期接種に用いられるものについての広報を行うことになりますが、任意接種になってくると制度上難しい部分があります。その点に関しては、先ほど申し上げたとおり、製造メーカーから実際の販売時期などの説明などをMRなどから各クリニックなどに行っていただくことになるかと思いますので、その中でどの株を使うかも含めて、適切な情報提供はしていただくと。先ほどと同じですが、そのようにメーカーにはお伝えさせていただきたいと思います。
また、不活化ワクチンの抗原量についてですが、確か以前の3価のときには現行の量と、それぞれの個々の抗原量は、3価から4価に切り替えをしたときは、1つの抗原に対する量は変わらず、その分、抗原の1価分増えたという形で確か製造の切り替えが行われていたかと思います。今回はそれを戻すということで、抗原全体の量としては減ることになるかと思います。そちらの製造方法については、また確認して後ほど御回答したいと思います。
○信澤委員 すみません、細かいことを伺ってしまったのですが、抗原量ではなくて総タンパク質量です。ワクチン中に含まれるタンパクの総量が、今は400μgで、以前に比べて少し多くなっていますが、それを3価の時代と同じように減らすのかどうかを伺いたいと思ったのですが、今すぐにお答えいただかなくても大丈夫です。ありがとうございます。
○伊藤部会長 では笹本先生、よろしくお願いします。
○笹本委員 日本医師会の笹本です。御指名ありがとうございます。WHOの推奨株が3価に減ったということで、国内では今シーズンは4価、来シーズンから3価ということですが、国民にとってこれはどのようなメリットやデメリットがあるかが分かると、より分かりやすいのかと思いました。また、価格は変化があるのでしょうか。教えていただければと思います。
○福澤ワクチン開発専門官 御質問ありがとうございます。メリット、デメリットということになりますと、従来の4価については本来であればその4価分があるということで、系統が2つあるうちの両方に対応できるようになっていたということがメリットであったと思います。そのメリットが、直近の検出状況からすると、4価で抗原量を増やした上で接種するほどのメリットが失われてきているのではないかと思います。
また、デメリットとしては、その抗原のタンパク量が増えることになりますので、副反応、体に反応を引き起こすための成分量が増えるということになりますので、その分、副反応の頻度など、3価から4価に切り替えたときにそれほど重篤なものが増えたということではなかったかと思いますが、そのような局所的な痛みなどの発現率が変わる可能性はあるかと思いますので、それが減るということになりますと、軽微な副反応の発生率などは一定程度変わってくる可能性があるかというところが、価数が減ることでのメリットになり得るかとは考えてはおります。
2点目は、すみませんが、すぐにお答えが難しいので、また別途個別に御回答させていただきたいと思います。
○伊藤部会長 3価から4価になったときに、打たれた方に話をきくとやはり痛みが強く出ていて、抗原量が多くなると副反応が強かったと思います。今回、山形株に関しては、実際ウイルスの流行がないのでやめましょうという話だとは思います。
ウイルスの流行ですので、また出てきたら戻さなければいけなくなるかもしれませんし、将来にわたって変えるという話なのか、一時的に今出てこないのでやめてみましょうということなのかというのは、後になってみないと分からないというのが現実的なところです。そういう意味で、信澤先生からお話があった上限を引き下げるかどうかに関しては、上限はそのままで、実際のワクチンの含有量だけ減らして3価にしますというのが、今の状況なのかという気はします。坂元先生、お願いします。
○坂元委員 川崎市の坂元です。1点だけ質問なのですが、特例臨時接種の際に、コロナワクチンとインフルエンザワクチン同時接種が可能という形になったと思うのですが、これは定期接種になっても同時接種は可能であるという点に対して変わりがないのでしょうか。なぜならば、コロナワクチンに1人用のワクチンが出てくるので、より同時接種がやりやすくなるのかと思いますので、変わりないかということに関してお答えいただければと思います。よろしくお願いします。
○福澤ワクチン開発専門官 御質問ありがとうございます。資料1の参考資料の一番最後に、定期接種に位置付けるとなったときの取扱いの案を示しております。そこで、他のワクチンとの接種間隔については、「注射生ワクチン以外のワクチンと同様の取扱いとする」ということです。こちらは何を指しているかというと、先ほど御質問があった同時接種のところの扱いになっており、同時に接種しても大丈夫だということで示しているところです。
○伊藤部会長 福島先生、お待たせいたしました。よろしくお願いします。
○福島委員 大変興味深く拝聴いたしました。スライドの6枚目の今後の方針(案)ですが、スライドの記載によると、国内の製造販売業者3社から聞き取りを行われているようですので、今後の方針(案)の所に書かれております「2025/26シーズン以降は3価のワクチンによる接種を前提として対応することとしてはどうか」という問いに関しては、既に背景でおおむね調整されていると思っております。それであれば、案の通りお進めいただいたらよいですし、いずれにしても、国内のインフルエンザ対策にこれまで大きな貢献をしてこられた企業ですので、メーカーの御負担が過度に掛からないようにしていただければと思います。その製造株の検討は株検討小委で行うということで、承知をいたしました。
それから、これは個別の質問というよりはコメントになるのですが、先ほど信澤先生もおっしゃったタンパク総量のことです。以前、3価から4価に引き上げられたときは、生物学的製剤基準の一部変更が行われたと記憶しており、これはかなり大変であったのではないかと思います。私は、自分の勝手な理解で、今回4価から3価に下がっても、その基準は保たれると思っているのですが、そういう規制には疎いものですから、もし基準が変更になると、今後、また3価から4価になったときに大変なことになりますので、できるだけ持続可能な制度となるような御配慮をされるといいのではないかと思いました。
それから、グローバルな状況についても御説明いただき、ありがとうございました。弱毒生とそれ以外のワクチンについて、求められる対応のスピード感の違い等も分かり、私自身、大変勉強になりました。ありがとうございました。以上です。
○福澤ワクチン開発専門官 御質問、コメントありがとうございます。各メーカーと、内々に製造に掛かる期間など、諸々照会させていただいて、その上で、例年のインフルエンザの供給量についてこの時期に部会で御報告させていただいておりますが、この時期にそういった4価への方針変更の御判断を示されるということであれば、次のシーズンから3価での供給ができる見込みということで、各社から伺っているところです。
また、先ほどの先生の規格基準の話ですが、生物学的製剤基準については、前回の3価から4価への切り替えのときに、確か4価でも3価でも読めるような形での変更がなされていると理解しております。今回、また変更がされる場合になりますと、そこの基準をいじる必要はないという扱いであったかと思います。薬事のことなので、細部は異なるかもしれませんが、そのような状況であると理解しております。
○伊藤部会長 いつの時代にまた4価になるかは分かりませんので、基本的には、両方読める形にして、混乱がない制度設計にしておいていただければいいと思っております。
原則的に皆さんの御了解を得て、来シーズンからは3価のワクチンということを、この部会としては了解をしたということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
前の部会で、WHOの推奨をそのまま日本国内でも受け入れるという話になっていて、その代わり、WHOの推奨を受け入れる際には薬事承認が必要になっていますが、この部会というか予防接種の枠組みからは外れてしまっていると思います。その点についてはそうした枠組みがもう決まっていたということで御理解いただくのがいいと思います。ということで、この議論はこれで終わりにいたしますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、次の議題に入ります。「現行国産ワクチンを改良した安全で有効な新規おたふくかぜワクチンの開発に関する研究について」となります。国立感染症研究所の木所参考人から、資料3の御説明をお願いできればと思います。それでは、木所先生、よろしくお願いいたします。
○木所参考人 よろしくお願いいたします。本日はこのような機会を頂きまして、事務局の皆様方、本当にありがとうございます。国立感染症研究所の木所と申します。私はもともとウイルス第3部の第3室、ムンプスウイルスの担当室の室長をやっておりまして、その当時から仕事の1つとして、ワクチンの改良ということを手掛けてまいりました。その成果の一部を今日御紹介させていただきます。
この仕事のきっかけとなったのは、感染研ではワクチンの副反応があったときに、その陽性検査を請け負っていまして、おたふくかぜで起こる無菌性髄膜炎の患者さんから採れた髄液を調べて、それがワクチンによるものか、野外株によるものかという同定をやっております。そのときに、なぜか鳥居株で髄膜炎になったサンプルから採れてくるウイルスというのは、必ず変異が入っていることにある時気付きました。そのときまでに検出された髄膜炎由来株の配列を並べてみましたら、面白いことに全ての株で同じ所に同じ変異が入っていることに気付きました。この2か所です。今回、未発表のデータが多いものですから、大変申し訳ないのですが、こういった漠然としたデータで御説明せざるを得ない点は御了承ください。このように共通した変異が全ての株で見付かっている、髄膜炎から採れた株で見付かっていることから、これはもしかすると、鳥居株ではワクチンに含まれている特定の変異体、これを我々は「AMV」と名付けましたが、それが髄膜炎の原因になっているのではないかと予想しました。
そこで、リテラシー検査を使って、髄膜炎から採れてきたウイルスと、もとのワクチンと、その変異体の解析をしました。その結果がこれです。上が髄膜炎から採れてきた株です。下がワクチン液です。そうしますと、髄膜炎由来株に特徴的な7か所の変異が見つかりまして、それと同じ変異がワクチンの中にも一定数含まれているということが分かりました。ということから、ワクチンの中にやはりAMVが含まれているのではないかと予想して、それではワクチンからこれを分離してみようということを試みました。
まずワクチンを限界希釈法、ぎりぎりの希釈倍率で希釈して、それを製造用のSPFニワトリ細胞に掛けてやる。12wellプレート、あるwellはウイルスが入って増殖する、あるwellについてはウイルスが入らないと。こういった希釈で接種するのです。そして、ここからウイルスが採れてきたそれぞれのwellについて、ウイルスを回収して、1つは次世代によるゲノム解析、もう1つは新生ラットで病原性を評価するということをやってみました。
まずこれはリテラシー検査の解析の結果ですが、先ほどお示ししたようにもとのワクチン株には数パーセント~10%程度このAMVが含まれているらしい。限界希釈法で採れてきクローン1つ1つをシーケンスすると、クローン#1というクローンは、AMVと同じ変異を持っていることが分かりました。ほかのクローンは、これがないということで、LDC♯1というクローンがAMVと同じ配列であると、恐らくAMVであろうと予測されたわけです。
そこで、もとのワクチンと、このAMVとLDC♯1とLDC♯3をラットに接種して、その病原性を評価してみました。その結果がこれです。新生ラットのモデルというのは、生まれたてのラットの脳にムンプスウイルスを接種してやると、脳室が拡張するという、拡張の程度で病原性を評価できるモデルですが、その結果が、こういうことになりました。AMVであるLDC♯1、これはもとのワクチン、これは別のクローン、LDC♯3です。
そうしますと、見ていただきたいのは、矢印で示した所が脳室ですが、やはりAMVは非常に脳室の拡張が大きい、もとのワクチン鳥居は中程度、AMV以外のクローンは非常に小さい。こういう差が出たということになります。これで重要なのは、鳥居株に比べて、単離されたAMV以外のクローンではより脳室の拡張が小さいということです。これは何を意味するかというと、AMVをワクチンから除いてやれば、ワクチンの安全性を向上できるのではないかということが予想されたわけです。もう1つは、AMVの含量をモニタリングすることで、ワクチンの品質管理ができるのではないかということが考えられるわけです。
それで、我々はもとのワクチンから、同じように限界希釈法で幾つかのクローンを採って、それを新しい安全性の高いワクチンにしようということを試みました。AMVではないクローンの中から最も増殖性の高いクローンを選択して、それをTmjと名付けました。これをシードにこの評価をしたわけです。
1つは、霊長類モデルによる有効性と安全性の評価、それからラットモデルによる安全性の評価を行いました。まず、ラットによる中枢神経病原性の評価ですが、コントロールとして、Tmj以外に、もとの鳥居株、それとAMVです。先ほどと同じです。今回は脳室拡張ではなくて、脳内でどの程度ウイルスが増えるかを指標にしました。そうすると、データは示せないのですが、先ほどの結果と同じように、AMVが最もウイルスが増えて、Tmjが最もウイルスが増えにくいということで、ラットにおいて、Tmjというのは鳥居株よりも安全性が高そうだということが分かったわけです。
次に、マーモセットモデルで安全性の評価をしてみました。マーモセットという霊鳥類は、非常にムンプスウイルスに対して感受性が高くて、ヒトでの病原性をよく再現してくれます。マーモセットの脊髄内にJerel-Lynn株、これは海外で非常に定評のある安全性の高いワクチン株です。それから鳥居株、そしてAMV、それから今回のTmj、新規株を入れて比較をしてみました。
まず、組織内のウイルス量で評価をしたのですが、1つは中枢神経系の組織でのウイルス量です。そうしますと、JL株が最も少なくて、次にTmj、それよりも鳥居、AMVと増える、高いということが分かりました。リンパ系組織でも同じ傾向が見られまして、これでもJL株が最も少なくて、次いでTmj、その次に鳥居、次AMVという順番になります。このマーモセットのモデルでも、やはりTmjはもとの鳥居株に比べて安全性が高いということが示されました。
次に、カニクイザルによる評価を行いました。通常、ムンプスウイルスの有効性というのは、従来は接種をして中和抗体の誘導だけで評価されてきました。しかし、我々はやはり感染防御でワクチンを評価したいと考えて、今まではやられたことがなかったのですが、皮下接種をして免疫した後に、10週目で強毒株を経鼻でチャレンジをする、攻撃接種をする。それで感染防御がちゃんと成立するかということを指標にして、有効性を評価してみました。これは今までムンプスワクチンでやられたことはありませんでした。
そうしますと、まず、これはカニクイザルの血中アミラーゼを測定した結果ですが、こちらは免疫した後の変動、こちらは10週たって攻撃した後の変動です。こちらの免疫後のアミラーゼ値というのは、これはワクチンによって誘導されるわけなので、これはある意味副反応を反映していることになります。攻撃後は感染防御されているかどうかを意味しますので、ここではブレイクスルー感染が起こっているかどうかということの指標になります。そうしますと、Tmjでは、免疫後も、攻撃後も、そういったアミラーゼ値の変動はありませんでしたが、鳥居株の免疫群では、ワクチン接種後にも1頭、攻撃後にも1頭、このアミラーゼ値が有意に上昇したということで、副反応もTmjよりも出やすい、また有効性も若干Tmjよりも劣るかもしれないと、こういった結果が得られました。
また、免疫原性のもう1つの指標としては、当然、中和抗体価も重要ですので、これを比較してみますと、これはTmjともとの鳥居株とでほぼ同じ、有意差はありませんでした。ところが、攻撃接種した後に抹消に出てくるリンパ球にウイルス抗原があるかないかということを指標にして、感染防御を調べてみますと、統計学的な有意差はないのですが、平均値ではTmjのほうが抗原陽性細胞が少なかったと。それともう1つ重要なのは、鳥居株接種群では、5頭中1頭でブレイクスルー感染が起こったと思われる非常に高い値を示す個体がいたということです。一方、Tmj接種群では、全頭がきれいに耐過いたしました。
これが最後のデータになりますが、我々はワクチンの品質管理にAMVを特異的に測定できるアッセイ方法が重要であるということを考えて、AMVだけを特異的に検出できるリアルタイムPCR法を確立しました。これはサイクリングプローブ法というタカラバイオから出されているキットを使った方法ですが、スニップスを検出するリアルタイム法です。これでAMV特異的なプローブをデザインして、測定してみたところ、AMVにだけ反応するというプローブプライマーのセットを作ることができました。これで、新しいワクチン株Tmjについて、AMVの含量を測定しますと、これは検出限界以下で、Tmjの中にはAMVは含まれていないだろうということが分かったわけです。これで現在のワクチンも実際に測定していますが、AMVが検出されております。それはNGSで測定された含有量とほぼ一致したということも分かっております。
以上、まとめですが、この改良型のワクチン株、Tmjの特徴・優位性ということでまとめました。まず1つは、ラット、マーモセット及びカニクイザルのモデルで、安全性において鳥居株よりも優れている。カニクイザルでの感染防御試験でも、有効性において鳥居株よりも良い傾向が認められました。それから、これはデータをお示ししませんでしたが、製造用細胞、CEFの増殖性も非常に高くて、107PFU/mL以上増えてくれると。これは製造する上では非常にメリットが大きいです。
4番目としては、最後にお示ししたように、ワクチン株の安全性を担保できる、担保するための精度の高いアッセイ法が確立されています。従来、ムンプスワクチンは、マーカー試験というプラークサイズで品質の管理をしているのですが、この方法を使えば、定量的に再現性高く、意味のあるアッセイができると、品質管理ができるということになります。
5番目として、これもデータは示していませんが、JL株などのジェノタイプAに比べて、国産のワクチンのジェノタイプBというのは、現在流行しているジェノタイプGに対して系統学的により近いので、より高い交差免疫原性を期待できるのではないかということが言えます。
この株は、もし開発を希望される企業さんには、分与することが可能になります。株の既属は、私、感染研にありますので、分与可能です。また、今回は開示できませんでしたが、詳細なデータの開示については、お問い合わせいただければ、秘密保持契約を結んだ上で開示することは可能になりますし、論文発表をされた後では自由に見ることができるようになると思います。
以上です。どうもありがとうございました。
○伊藤部会長 ありがとうございました。まず先生方から御質問などありますでしょうか。今日は木所先生に、鳥居株のマスターシードから中枢神経系の病原性がないシードの単離ができたという、将来に期待がもてる話をいただきました。木所先生の2018年の雑誌の『ウイルス』に掲載されたレビューを参考にさせていただいておりましたけれども、おたふくかぜワクチンに関しては、平成26年の予防接種に関する基本的計画で、麻しん・風しんを含む混合ワクチンの開発の優先度が高いというように、この部会でも決めて、開発をお願いしていたのですけれども、残念ながら未だ実現していませんので、進展がこういう形であったという御報告だと認識しています。おたふくかぜのワクチンについて余り詳しくない方が、今日の木所先生のお話を聞くと、何を言っているのか難しいと思われた方も多いのかもしれないと思いますが、おたふくかぜはもともと感染すると髄膜炎を起こすウイルスです。不活化ワクチンは有効性が続かないので、全世界で使われているのは生ワクチンしかないという状況で、全世界で生ワクチンが使われておりますが、髄膜炎の副反応の頻度と、ワクチン接種後のブレイクスルー感染にはちょっと駆け引きがあって、海外は髄膜炎の頻度の低いJery-Lynn株が使われているのですけれども、ブレイクスルー感染が起きやすいという欠点があるというように聞いています。
我が国では、今日、話が出ました鳥居株、これは武田が販売しているワクチンがこの鳥居株ですが、あと、第一三共が販売している星野株というこの2つの株があって、この単味ワクチンが任意接種として使われています。一方で、分科会の小委員会のほうでJery-Lynn株から分離したRIT4385株を使ったMMRワクチンが申請中という理解をしております。そういった状況の中でTmj株という形で新たな株の分離ができたということだと思います。
今、御説明があったとおりで、今後、国内で開発が進むかどうかというのは、企業がお引き受けいただけるかどうかというところなので、今の段階では何年後と言う先の見通しが難しいのかなと思いますが、まずは木所先生、見通しが立っているかどうかを教えていただけますか。信澤先生、お願いいたします。
○信澤委員 大変興味深いスマートな研究の成果を御報告いただいて、感心して伺っていました。ありがとうございました。素人の質問で大変申し訳ないのですけれども、1点、まず最初に鳥居株の中にその変異株が入っていて、多分、それがドミナントにはならずに、ウイルス集団の中で常に維持されていたのだと思いますけれども、Tmj株のように、純粋にして、変異株を除いていても、ウイルスを何代も継代しているうちに、また変異が入ってしまうという可能性は、インフルエンザウイルスとは違うので、ないのでしょうかという質問です。
○木所参考人 それは可能性はあり得ます。それも考慮して、今回AMVに特異的なアッセイ法を用意したと。製造の過程でそういった病原性の高い変異株が出現した場合には、それを高感度に検出できるようにしたということです。
それと、AMVがずっと維持されてきたのは、もともと鳥居株というのは、開発の過程でクローニングの過程を受けていない、分離されたものをただ継代されてきたということがあって、ミクスチャーのままワクチンになっているのですね。もう1つは、AMVというのは必ずしもCEF細胞でグロースがよくなくて、実は分離するところに非常に苦労したのです。それもあって、製造の過程でAMVがメジャーになることがなかったということが、そういう偶然があったと思います。
○信澤委員 ありがとうございました。
○伊藤部会長 ほかに御質問はありますでしょうか。今、御説明があったとおりで、鳥居株そのものが、マスターシードと言いながら1つの種類ではなかったとという気がするのですけれども、そういう理解でいいのですよね。
○木所参考人 そうです。それは鳥居に限ったことではなくて、海外で使われているJL株も同じ状況で、少なくとも2種類のメジャーなvariantのミックスであるということは周知の事実です。今回、国産のMMRに入れられたRIT株というのは、JL株からメジャーなクローンを取り出してワクチンにしたものです。
○伊藤部会長 ほかに御質問などはありますでしょうか。先生、先ほども伺おうかと思ったのですけれども、鳥居株で販売している会社が1社あるのですが、この会社が取り替えるという話は出てきているのでしょうか。お話いただけるかどうか難しいのですが。
○木所参考人 当然、私のほうとしても、開発の当初から、武田薬品さんには声を掛けて、是非一緒にやってほしいということはずっとアプローチしていたのですけれども、やはり向こうの事情で、武田薬品としては現行の株でいくということで、先日、正式にお断りの回答を得ました。ただ、株の権利は主張しないと。鳥居株の特許も90年代で切れていますので、この後、我々が作った株についての権利は主張しないということも約束いただいております。
○伊藤部会長 随分答えにくいことをお答えいただきまして、ありがとうございます。ほかに何か御質問などございますか。
今、おたふくかぜワクチンの接種率が5割いくかいかないかという状況で、今後も日本としての対応は必要になっているところですので、様々な形で開発は続けて、国内でもワクチン製造ができる体制は、考えていただきたいと思います。その技術的なサポートを感染研がされている内容を私どもにお話しいただいたのが、今日の話と認識いたします。皆さんよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、その御質問がないようですので、本日の予定していた議題は終了ということになりますが、事務局から何かありますか。
○福澤ワクチン開発専門官 本日も先生方から様々な御意見を頂きまして、誠にありがとうございました。次回の開催につきましては、追って御連絡を差し上げたいと思います。事務局からは以上でございます。
○伊藤部会長 それでは、本日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を終了とさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。