2024年2月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和6年2月29日(木)18:00~

場所

厚生労働省専用第22~24会議室

出席者

出席委員(19名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 
 
欠席委員(2名)五十音順

 
行政機関出席者
  •  城克文(医薬局長)
  •  吉田易範(大臣官房審議官)
  •  中井清人(医薬品審査管理課長)
  •  野村由美子(医薬安全対策課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中御参集いただきまして、どうもありがとうございます。本会議はペーパーレスの開催といたしますので、資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。操作等で御不明点がありましたら、適宜、事務局がサポートいたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日の会議における委員の出席についてですが、現時点において川上先生がまだお見えになられていませんが、後ほど御出席されるかと思っております。本日、現在のところ、当部会委員数21名のうち、20名の委員がこの会議に御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。 なお、薬事分科会規程第11条への適合状況につきましては、全ての委員の皆様より適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様におかれましては、会議開催の都度、御協力を賜り、誠にありがとうございます。
 それでは、これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願いいたします。それでは、森部会長、以降の進行をお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、委員からの申出状況につきまして、御報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1から資料No.15を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストは、資料No.15に記載のとおりです。これらに関する委員からの申出状況等を踏まえた、薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員の審議参加に係る取扱いは、次のとおりです。
 議題1「ピアスカイ」、退室委員なし、議決に参加しない委員は中西委員、長谷川委員です。
 議題2「レズロック」、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、中西委員、長谷川委員です。
 議題3「フィンテプラ」、退室委員なし、議決に参加しない委員は髙橋委員です。
 議題4「アセノベル」、退室委員、議決に参加しない委員はともになし。
 議題5「シスタドロップス」、退室委員、議決に参加しない委員はともになし。
 議題6「アジンマ」、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員、髙橋委員です。
 議題7「ウィフガート」、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、中西委員です。
 議題8「希少疾病用医薬品の指定の可否」、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員、髙橋委員です。以上です。
○森部会長 では、今の御説明につきまして、特段の御意見等はございますか。よろしければ、皆さんに確認いただいたものとさせていただきます。
 本日は審議事項8議題、報告事項2議題、その他の事項1議題となっております。それでは、審議事項の議題に移らせていただきます。審議事項の議題1につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品ピアスカイ注340mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。資料につきましては、資料No.1「ピアスカイ注340mg」の審査報告書を御覧ください。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(以下「PNH」)は、赤血球表面上の終末補体制御因子CD55及びCD59の欠損により補体介在性の血管内溶血を来す疾患で、本薬のような補体C5阻害剤が標準的な治療薬となっております。本薬は、補体C5に対するモノクローナル抗体であり、点滴静注及び皮下注の製剤として開発されました。PNH患者を対象とした国際共同試験の成績に基づき、本薬の有効性及び安全性が確認できたとして、今般、医薬品製造販売承認申請がなされました。海外では、現時点で、本薬は米国及び欧州等において承認申請中であり、2月上旬に中国で承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.14に示します専門委員を指名しております。
 それでは、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書の通し番号34ページの表26を御覧ください。補体阻害剤未治療のPNH患者を対象とした国際共同第III相試験(BO42162試験)では、co-primary endpointsである「ベースラインからWeek25まで輸血回避を達成した被験者の割合」及び「Week5からWeek25までの溶血コントロールを達成した被験者の平均割合」のいずれにおいても、既承認の同種同効薬であるエクリズマブに対する本薬の非劣性が検証されました。日本人集団については、審査報告書、通し番号43ページの中ほどの「BO42162試験における主要評価項目の結果について、」で始まる段落を御覧ください。「ベースラインからWeek25まで輸血回避を達成した被験者」は本薬群で2/2例、エクリズマブ群で3/3例、「Week5からWeek25まで溶血コントロールを達成した被験者」は本薬群で2/2例、エクリズマブ群で1/3例でした。日本人集団の症例数が限られており、結果の解釈には限界があるものの、日本人集団における有効性は、副次評価項目も含め、全体集団と比較して異なる傾向は認められませんでした。なお、本試験では、記述的解析パートであるC群に18歳未満の患者が6例組み入れられ、6例全例でLDHが正常値上限の1.5倍以下に低下し、5例ではWeek25まで持続し、6例中4例でベースラインからWeek25までの輸血回避を達成しました。
 以上より、PNH患者における本薬の有効性は示され、日本人集団においても意義のある有効性は期待できると考えました。
 続いて、安全性に関してです。審査報告書、通し番号50ページの表40及び表41を御覧ください。国際共同第III相試験において、いずれかの群で5%以上に認められた有害事象及び副作用は表に示したとおりです。皮下投与により生じた注射部位反応と、エクリズマブで症状が安定している患者を対象に本薬に切り替えたときの有効性及び安全性を検討した国際共同第III相試験(BO42161試験)で認められた、後ほど御説明する3型免疫複合体型反応を除き、本薬とエクリズマブで臨床的に問題となるような安全性プロファイルの違いは認められませんでした。また、日本人集団についても、症例数が限られており、結果の解釈に限界はあるものの、日本人特有の安全性上の懸念は認められていないと考えました。注射部位反応については、添付文書で注意喚起する必要があると考えました。III型過敏症反応である免疫複合体反応については、異なる補体C5エピトープに結合する本薬及びエクリズマブ(又はラブリズマブ)の両方が循環血中に存在すると、薬物-標的-薬物複合体が形成され、組織への薬物-標的-薬物複合体の沈着により過敏症の症状が引き起こされると考えられます。現在の標準的治療薬であるC5阻害薬からの切替えについては、免疫複合体反応が生じる可能性を考慮し、切替えの必要性を慎重に判断した上で行うべきであり、その旨を添付文書で注意喚起する必要があると考えました。
 次に審査報告書、通し番号51ページ、「7.R.2.3.1 髄膜炎菌感染症及び感染症」の項を御覧ください。本薬は補体C5を阻害するため、髄膜炎菌感染症のリスクが上がります。髄膜炎菌感染症のリスクは既承認のC5阻害薬でも注意喚起されており、本薬でも既存のC5阻害薬と同様の注意喚起が必要と考えております。また、既存のC5阻害薬と同様に、PNHの診断、治療に精通し、本薬のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関のもとで、髄膜炎菌感染症の診断、治療に精通した医師と連携して本薬の投与を行う必要があると考えました。
 なお、国内での治験症例数が極めて限られていることから、製造販売後、全症例を対象に使用成績調査を実施し、本薬投与時の安全性情報を早期に収集する必要があると考えました。したがって、これらの点については、審査報告書の通し番号3ページに記載しました承認条件を付すことが適切と判断いたしました。
 以上、機構での審査の結果、PNHに対する本薬の有効性は示され、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。
機構からの説明は以上になります。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。特段ございませんか。特に事前御質問もなかったようでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、議決に入らせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。なお、中西委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決の参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようです。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題2に移らせていただきます。議題2につきまして、機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題2、資料No.2、医薬品レズロック錠200mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
造血幹細胞移植における移植片対宿主病(以下、「GVHD」)は、ドナーから移植された免疫細胞がレシピエントの正常細胞に対し免疫応答することにより複数の臓器に炎症や線維症が生じる疾患で、移植関連死の主要な原因の一つとなっております。GVHDは病理組織学的所見や臨床徴候により、急性GVHDと慢性GVHD(以下、cGVHD)に分類されます。cGVHDでは、一次治療としてステロイド剤が用いられますが、約半数の患者で二次治療が必要になります。cGVHDに対する二次治療で用いる薬剤としてはイブルチニブ、ルキソリチニブリン酸塩等が承認されていますが、標準的な二次治療は確立しておりません。ベルモスジルメシル酸塩(以下、本薬)は、ROCK2阻害薬であり、免疫調整作用及び抗線維化作用を有することから、cGVHDに対する臨床開発が行われ、ステロイド依存性又は抵抗性のcGVHD患者を対象とした国内臨床試験の成績等を基に、今般、製造販売承認申請が行われました。
なお、本薬は、「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病」を予定される効能・効果として、令和5年5月23日付けで希少疾病用医薬品に指定されております。海外では、本薬は2023年11月現在、米国、オーストラリア、カナダ、英国、イスラエル及び中国において、cGVHDに係る効能・効果で承認されております。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.14に示します専門委員を指名しております。
以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、審査報告書の通し番号52ページの表42を御覧ください。ステロイド依存性又は抵抗性のcGVHD患者を対象とした国内試験において、主要評価項目である「最終被験者登録後24週経過時点のNIH Consensus Development Project Criteria(2014)に基づく最良奏効率」は85.7%であり、95%信頼区間の下限値は63.7%で、事前に設定した閾値奏効率の25%を上回りました。
 続きまして、審査報告書の通し番号55ページの表47を御覧ください。2~5種類の全身治療歴を有するcGVHD患者を対象とした海外試験において、主要評価項目である「NIH Consensus Development Project Criteria(2014)に基づく最良奏効率」の主要解析結果は200mg1日1回投与群で72.7%、200mg1日2回投与群で74.2%であり、いずれも95%信頼区間の下限値は事前に設定された閾値奏効率30%を上回りました。また、いずれの試験においても、副次評価項目である奏効持続時間等の結果から奏効の一定の持続が示唆され、本薬の投与開始後にステロイド剤の投与量が減少する傾向も認められました。以上より、ステロイド依存性又は抵抗性のcGVHDに対する臨床的意義がある本薬の有効性が示されたと判断しました。
 続きまして、安全性について、審査報告書の通し番号66ページの表61を御覧ください。国内試験及び海外試験における有害事象の発現状況について、いずれの臨床試験においても重篤な副作用の発現割合は高くなく、添付文書の注意喚起のとおり、造血幹細胞移植に対して十分な知識・経験を有する医師のもとで適切に本薬が投与されるのであれば、ステロイド依存性又は抵抗性のcGVHD患者における本薬の安全性は許容可能と判断いたしました。
以上、機構での審査の結果、ステロイド剤の投与で効果不十分な造血幹細胞移植後のcGVHDに対する本薬の意義がある有効性は示され、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議いただくことが適当と判断いたしました。
なお、本薬は、本申請に係る効能・効果で希少疾病用医薬品に指定されていることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原薬及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。
御説明は以上です。御審議のほどをよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。では、委員の方々から御質問、御意見があればお願いいたします。いかがでしょうか。では、私から1点。これは確認事項ですが、用法・用量につきまして、プロトンポンプ阻害薬等の使用時の用量についての説明を追加していただいてもよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。御質問ありがとうございます。用法・用量において、通常、成人及び12歳以上の小児にはベルモスジルとして200mg1日1回、食後に経口投与することに加えて、併用薬に応じて、効果不十分な場合は1回200mgを1日2回投与できるとなっております。こちらは薬物相互作用試験の結果より、PPI阻害薬を併用した際、本剤の曝露量が半分以上低下することが確認されております。今回、200mg1日1回で有効性が確認されており、それ以下の用量では有効性が確認されていないことを考えますと、曝露量の半分以上の低下によって有効性が低下する可能性が考えられ、更に、有効性が低下することによってcGVHDの患者さんの症状が悪化する可能性がありますので、これらの併用薬を投与する場合は、症状によって200mgを1日2回投与可能という用法・用量となっております。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。そのほか、先生方から御質問等はいかがですか。従来、慢性GVHDの二次療法は、選択肢はありましたけれど、決定的な治療法がなかった中で、本剤を開発されたということでした。特に御質問ないようでしたら、議決に入ります。
 それでは、佐藤直樹委員、中西委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようです。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題3に移ります。議題3の概要説明につきまして、機構からの御準備をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、医薬品フィンテプラ内用液2.2mg/mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構から御説明いたします。
資料No.3の審査報告書を御覧ください。はじめに、審査報告書の一番下、全40ページの通し番号で5ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。Lennox-Gastaut症候群(以下、「LGS」)は、強直発作、非定型欠神発作、脱力発作を中心とした多彩なてんかん発作を認める、小児期に発症する難治性のてんかん症候群です。本剤は、セロトニン放出を介した種々のセロトニン受容体サブタイプの活性化作用を介して、てんかん発作の減少に対する有効性を示すことが期待されています。本邦では、2022年に「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないDravet症候群患者におけるてんかん発作に対する抗てんかん薬との併用療法」の効能・効果で、既に承認されております。
 今般、第III相試験であるZX008-1601試験の成績等に基づき、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。なお、本剤は、LGSに係る効能・効果で、米国で2022年、欧州で2023年にそれぞれ承認されております。本申請の専門委員として、資料No.14に記載されている4名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず、有効性について、審査報告書の通し番号で10ページの表6を御覧ください。LGS患者を対象に、第III相試験として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験(ZX008-1601試験)が実施されました。当該試験は被験者登録の進捗を踏まえ、本邦と、本邦以外の国又は地域から登録される被験者は別々のコホートとして登録され、第III相試験の主要解析は本邦以外の国又は地域から登録された被験者からなるコホートAを対象に実施することとし、本邦から登録された被験者からなるコホートBは副次解析の対象とされております。コホートAにおいて、主要評価項目である、本剤0.7mg/kg/日群とプラセボ群の漸増期及び維持期の統合期間(以下「T+M期」)における転倒発作頻度のベースラインからの変化率の比較において、表6にお示ししておりますとおり、プラセボに対する0.7mg/kg/日群の優越性が検証されました。また、副次評価項目である、本剤0.2mg/kg/日群とプラセボ群のT+M期の転倒発作頻度のベースラインからの変化率の比較においては、名目上のp値に基づくと、0.2mg/kg/日群とプラセボ群との間に統計学的な有意差は認められなかったものの、0.2mg/kg/日群でプラセボ群より改善する傾向が示されました。なお、ベースラインの転倒発作頻度別の部分集団解析において、ベースラインの発作頻度によらず、本剤の有効性は示唆されていることを確認しております。
 続いて、審査報告書の通し番号12ページの表9を御覧ください。日本人コホートであるコホートBにおける、T+M期の転倒発作頻度のベースラインからの変化率は表9のとおりであり、点推定値において、0.7mg/kg/日群ではプラセボ群を上回る改善傾向が認められました。また、0.2mg/kg/日群はプラセボ群と比較して、点推定値において転倒発作頻度の低下傾向は示されなかったものの、当該結果は検討例数が少ない中でベースラインの転倒発作頻度の被験者間のばらつきが大きかったことに起因する可能性があると考察されております。
続いて、審査報告書の通し番号19ページの表18を御覧ください。転倒発作頻度がベースラインから50%以上減少した被験者の割合は表18のとおりであり、コホートA及びコホートBでは、転倒発作頻度がベースラインから50%以上減少した被験者の割合(点推定値)は、0.7mg/kg/日及び0.2mg/kg/日群のいずれも、プラセボ群より高い傾向が認められております。
以上より、コホートBにおいて、コホートAと明らかに矛盾する成績は得られていないことから、ZX008-1601試験パート1のコホートA及びコホートBの結果を総合的に評価することは可能であり、これらの試験成績から、日本人LGS患者においても外国人LGS患者と同様に、本剤0.7mg/kg/日の有効性はあると判断でき、また本剤0.2mg/kg/日も一定の有効性は確認できたものと判断いたしました。
 次に、安全性について、審査報告書の通し番号21ページから始まる「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本剤の作用機序等も考慮して、提出された臨床試験成績等を検討した結果、本剤の投与に当たっては、既承認であるDravet症候群に対する本剤の使用時と同様に、傾眠等の中枢神経系事象、心臓弁膜疾患及び肺動脈性肺高血圧症、食欲減退及び体重減少を含む患児の成長に特に注意する必要があるものの、これらの事象も含め、既承認のDravet症候群と同様の安全対策の下での使用を前提とすれば、日本人LGS患者に対する本剤の安全性は、許容可能と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、希少疾病用医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果及び用法・用量の再審査期間は10年と設定することが適当と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
御説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見等がありましたらお願いします。どうぞ堀委員、よろしくお願いします。
○堀委員 私からは患者向け資材についてお尋ねします。現在、フィンテプラ内用液に関しては、「患者向医薬品ガイド」にプラスし、私は患者向けの動画もあることを確認いたしました。動画では服用する際の非常に細かいところまで表示されていましたが、今回、新しくLennox-Gastaut症候群が入るということで、新しく刷新される御予定はあるか教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 Lennox-Gastaut症候群の効能・効果が追加されましたら、これらの資材等についてもアップデートされる予定です。
○堀委員 ありがとうございます。あと、今、審査報告書を確認していたところ、これを服用すると食欲が減退するということも確認させていただきました。成長期のお子様もこれは服用しますので、その点に関しては、患者に向けての、警告ではないのですが、そういうことは予定しているのでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 患者向け資材において、患者とその家族に対して、食欲が減退する可能性があるということを情報提供しておりますし、定期的な体重測定を行い、体重減少に気を付けてほしい旨を注意喚起しております。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。以上です。
○森部会長 本剤がフェンフルラミンということですので、食欲抑制が起こりやすい、体重も減りやすいということで、今の御指摘は大変重要かと思いました。どうもありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。佐藤(陽)委員、お願いします。
○佐藤(陽)委員 佐藤陽治です。御説明ありがとうございました。10ページの表6と12ページの表9を比べると、プラセボと投与群のベースラインが、表6だとかなり違うように見えます。プラセボと投与群でベースラインが違うと見えるのに、その変化率で評価しているということの妥当性というのはどういうふうに説明されていますか。
○医薬品医療機器総合機構 表6は、主解析であるパート1コホートAにおける転倒発作頻度に関する解析ですが、審査報告書の脚注でお示ししておりますとおり、ベースラインの発作頻度を共変量としたノンパラメトリックANCOVAモデルを使用して解析しております。機構としては、ベースラインの発作頻度別のサブグループ解析も確認いたしまして、ベースラインのばらつきが大きく、また、部分集団解析の結果ではあるので解釈は難しいところではありますが、ベースラインの発作頻度は有効性の結果解釈に影響しないと判断しております。
○佐藤(陽)委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 この点、柴田委員は何か御発言はありますか。
○柴田委員 柴田です。納得のいく御説明だと思います。
○森部会長 そのほか、先生方、御質問、御意見はありますか。柴田委員からお願いします。
○柴田委員 少し細かい点ですが、確認させてください。10ページの先ほどの表6ですが、脚注のcにいろいろな検定の順番の話が書いてあります。0.2mg/kg/日群の検定のp値がここに0.0939と書いてありますが、これは解釈できないp値であると結論として書いてあるのですが、脚注cで言及されている中間の結果については、どこに記載されているのですか。これは記載されてないのですか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書にはお示ししておりませんが、CGI-Iの結果に基づく改善が認められた被験者の割合の0.7mg/kg/日群とプラセボ群の比較等についても解析がなされており、点推定値では改善方向を示していたことを確認しております。
○柴田委員 分かりました。そこは有意差がなかったということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○柴田委員 細かくて申し訳ないのですが、先ほどの0.7mg/kg/日群のベースラインから50%以上減少した被験者の割合も、有意差は付いてないということですね。
○医薬品医療機器総合機構 ベースラインから50%以上減少した被験者の割合の0.7mg/kg/日群とプラセボ群の比較についてはp値が0.0150であり、統計学的には有意でした。しかしながら、前述のとおり、次の階層のCGI-Iに基づく評価指標の0.7mg/kg/日群とプラセボ群の比較はp値が0.0567であり、p値が0.05を下回らなかったので、ここで解析が止まったという状況です。
○柴田委員 分かりました。であれば、0.7mg/kg/日群の50%以上減少したという一定のエビデンスがあるということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御理解のとおりです。
○柴田委員 ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 そのほかいかがでしょうか。石川委員、御発言はありますか。
○石川委員 特にございません。
○森部会長 分かりました。ほかに精神や小児医療域の先生方から特に追加の御発言ありますか。
○中西委員 特にありません。
○森部会長 そのほか、先生方、よろしかったでしょうか。
それでは、特に御意見はないようですので、議決に入らせていただきます。なお、髙橋委員においては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととしています。では、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようです。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題4に移ります。議題4について、機構から概要説明の御準備をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。議題4、資料No.4、医薬品アセノベル徐放錠500mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
資料No.4の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全46ページの通し番号で4ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(以下、「DMRV」)は、生体内に存在する糖の一種であるシアル酸の生合成に関与する酵素をコードするGNE遺伝子の変異により、アセノイラミン酸を含むシアル酸の生合成が低下することで発症すると考えられる常染色体潜性遺伝疾患です。指定難病の「遠位型ミオパチー」の一種であり、多くは10代後半から30代に発症し、筋組織の萎縮及び筋線維の変性が生じます。下肢筋は、上肢筋より早期から障害を受け、筋力低下の進行も早く、膝下の筋肉が侵されると歩行困難となり、発症から平均12年で補助用具、15年で車椅子の使用が必要となり、21年で歩行不能状態に至ることが報告されております。また、上肢筋の障害は手指から進行し、次第に上肢全体の筋力が低下するとされております。本邦におけるDMRV患者数は167~345人と推定されており、DMRVに対する主な治療は、拘縮予防のリハビリテーションであり、DMRVに対して承認されている薬剤はございません。
本剤は、シアル酸の一種であるアセノイラミン酸を含有する経口剤であり、DMRV患者において不足しているシアル酸を補充することにより、DMRVにおける筋力低下の進行抑制に対して効果を示すことが期待されております。今般、国内臨床試験成績に基づき製造販売承認申請が行われました。なお、現時点で、海外で本剤が承認されている国又は地域はございません。本申請の専門委員として、資料No.14に記載されております6名の委員を指名しております。
 審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず審査報告書の通し番号で32ページの真ん中辺りの、「海外第II相試験が実施された後に」から始まる段落を御覧ください。海外で計画された第III相試験に本邦から参加することができなかったため、本邦での本剤の開発は国内臨床試験として実施することとされましたが、DMRV患者数は極めて限られており、実施可能性の観点から、シアル酸-3試験(以下、「国内第III相試験マル1」といいます)において、プラセボ群と本剤群の間で統計学的な仮説検定に基づく群間比較を実施することは困難でした。したがって、国内第III相試験マル1の成績に加えて、同時期に実施される海外第III相試験成績も考慮して、日本人DMRV患者に対する本剤の有効性を評価する開発計画とされました。その後得られた海外第III相試験の結果、主要評価項目である治験薬投与48週目の上肢筋力合計点数のベースラインからの変化量において、本剤群ではプラセボ群と比較して筋力低下の進行を抑制する傾向は示唆されたものの、本剤群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められませんでした。 このことにつきまして、審査報告書の通し番号で33ページの真ん中から少々下の、「機構は、以下のように考える。」以降の段落を御覧ください。機構は、海外第III相試験でプラセボに対する本剤の優越性が検証されなかった要因について、海外第III相試験には海外第II相試験や国内第III相試験マル1より幅広い背景の患者集団が組み入れられたことなどにより本剤の有効性が示されなかった可能性があるとの申請者の説明は一定の理解はでき、本剤の有効性をより適切に評価可能と想定した患者を組入れ可能な規定に変更して追加の臨床試験を実施し、本剤の有効性を確認する方針としたことは理解できると考えております。以上の検討を踏まえ、二つの国内第III相試験成績を中心に確認し、本剤の有効性を総合的に評価する方針といたしました。
 有効性につきまして、審査報告書の通し番号で26ページの表22を御覧ください。国内第III相試験マル1の主要評価項目である治験薬投与48週目の上肢筋力合計点数のベースラインからの変化量について、点推定値に基づく群間比較を実施した結果、プラセボ群と比較して本剤群で上肢筋力低下の進行を抑制する傾向が認められました。続いて、審査報告書の通し番号で28ページの表24を御覧ください。追加で実施されましたNPC-09-1試験(国内第III相試験マル2)においても同様に、主要評価項目である治験薬投与48週目の上肢筋力合計点数のベースラインからの変化量について、点推定値に基づく群間比較を実施した結果、プラセボ群と比較して本剤群で上肢筋力低下の進行を抑制する傾向が認められました。また、審査報告書の通し番号で34ページの図1及び図2を御覧ください。二つの国内第III相試験の各症例の上肢筋力合計点数のベースラインからの変化量の推移について、いずれの試験においても、プラセボ群では概ねベースラインから評価期間を通して悪化する傾向を示したのに対し、本剤群ではベースラインから評価期間を通して改善又は維持された被験者が一定数認められました。さらに、審査報告書の通し番号で35ページの表30を御覧ください。DMRVの筋力の機能の評価尺度であるGNEM-FASの上肢部分のベースラインからの変化量についても、いずれの試験においてもプラセボ群と比較して本剤群で点数の低下を抑制する傾向が認められました。GNEM-FASの結果の追加資料を御確認いただくことはできますでしょうか。追加資料の蛍光マーカーで塗りつぶされた部分を御覧ください。二つの国内第III相試験において、GNEM-FASの総点数の変化量についても、プラセボ群と比較して本剤群で点数の低下を抑制する傾向が認められました。機構は、本剤の対象疾患であるDMRVは希少かつ重篤な疾患であり、国内外において治療法が存在せず、DMRVに対する治療薬は医療上の必要性が高いことなども踏まえると、二つの国内第III相試験における本剤の有効性の結果をもって、本邦の医療現場に本剤を提供する意義はあるものと判断いたしました。
 また審査報告書に戻っていただきまして、有効性に関する専門協議の議論につきまして、通し番号で41~42ページの「1.1 有効性について」の項を御覧ください。専門委員から、DMRVは極めて希少かつ重篤な疾患であること、疾患病態に個人差が大きいという特徴があることから、国内臨床試験において統計学的な仮説検定に基づく薬効評価は難しいとの判断に至ったことはやむを得なかったとの御意見が示されました。また、DMRVにおける筋力低下について、治療により改善することは難しく、まずは進行を抑制することが重要であり、統計学的にプラセボに対する本剤の優越性が検証されてはいないものの、国内臨床試験の結果は一貫してプラセボ群と比較して本剤群で上肢筋力低下の進行を抑制する傾向が認められたことに加え、DMRV患者において不足しているシアル酸を補充することにより、DMRVにおける筋力低下の進行抑制に対して効果を示すという本剤のコンセプトも踏まえると、承認に足る本剤の有効性はあると判断することは妥当と考えるといった御意見などが示されました。以上の専門協議での議論を踏まえまして、二つの国内第III相試験における本剤の有効性の結果をもって、本邦の医療現場に本剤を提供する意義はあるとの機構の判断は専門委員から支持されております。
 次に安全性につきまして、審査報告書の通し番号で35ページの「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。提出された試験成績等を検討した結果、本剤投与時に肝機能障害に関連する有害事象が認められる可能性があることなどに留意する必要がありますが、適切な注意喚起の下で使用されることで、DMRV患者における本剤の安全性は、許容可能と判断いたしました。
以上の審査を踏まえまして、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
説明は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。先生方から御意見、御質問がございましたら、お願いいたします。柴田委員、お願いいたします。
○柴田委員 審査報告書の33/46ページに関しての質問です。ここで、国内臨床試験、国内第III相試験マル1に関して、統計学的な仮説検定が計画されていない試験であったというのは書いてあるのですが、もともと何が示されたら良しとするというように計画された試験だったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 国内第III相試験マル1の計画は、検出力としては、海外第III相試験の本剤群の結果との類似性を評価することを目的として計画されており、国内第III相試験マル1の本剤群の95%信頼区間の下限値が、海外第III相試験の本剤群の95%信頼区間の下限値を上回る確率が85%となるように設定されておりました。
○柴田委員 ありがとうございます。そのように設定していたけれども、海外の第III相試験がネガティブであったので、その結果についてはあえて示す必要もないと御判断されているということですね。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりです。
○柴田委員 その点については、本来であればやはり書いてあった方がよかったのではないかなと思います。この試験自体で想定した効果が得られていなかったというよりも、もともとこのぐらいの結果を想定したものであって。
CTDの2.5を拝見いたしましたが、元の想定としては本剤群で+2.5kg、対照群で-3kgで、群間差が5kgぐらい、SDも6kgぐらいという設定で組まれているので、群間差としては想定している程度のものは出ているということなので、一概にネガティブ試験というわけではないと。国内試験単独で見るとエビデンスは弱いけれども、想定していた傾向の結果は出ているということまでは言えると思いますので、そこは丁寧に説明された方がよいと思います。
 また、34ページのグラフは、情報提供資材等には提示されるという理解でよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりです。医療従事者向け資材の方で提供させていただきます。
○柴田委員 今回、全ての方に効き目が出るわけではなさそうであるという事実は、やはり伝える必要があると思いますので、このグラフを出されることは重要だと思います。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。今の柴田委員からの前半の御意見については、添付文書に反映する必要はございますか。
○柴田委員 本来であれば、本来、達成しようとしていた主たる解析のことについては、書いておかれる方がいいと思うのですが、今回ややこしいディシジョンルールでもあったので、実際に海外との比較について計画していたということは、書かなくても仕方がないかなと思いました。一方で、単に有意差がなかったということではなく、もともとこのぐらいの計画をしていたのだということは、伝わるようにはした方がいいと思うので、事前に仮説検定を目指したものではないぐらいの注釈は入れられた方がいいのではないかなと思いました。
○森部会長 機構の方、どうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 以後、審査報告書を作成するときに留意したいと思います。ありがとうございました。
○森部会長 その部分は、今回の添付文書には反映されますか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書にも、今御指摘いただいた内容を反映させていただきます。ありがとうございます。
○柴田委員 可能であれば、情報提供資材の方では、実際にどのような計画であったのかということについては理解できるような形で書かれる方がいいのではないかなと思いました。
○医薬品医療機器総合機構 そちらも対応させていただきます。
○森部会長 そうしますと、本邦での第III相マル1の試験の意義がより明確になるということですね。どうもありがとうございます。本件は、石川委員から御発言はございますか。
○石川委員 機構の御説明、それから専門の方が御意見されて、メカニズム的にこの薬が妥当だろうという御意見があったと思うのですが、そのとおりだと思います。あとは、これは十分よく理解されていないのですが、患者さん、同じ遺伝子変異でも臨床症状の重症度というのは、かなりばらつきがあるので、そういったことを考えると、効いている方とはっきりしなかった方がいるということも理解可能で、全体の流れは全て納得いく話でした。ありがとうございます。
○森部会長 石川委員、本剤は比較的緩徐に進行する慢性変性疾患の治療薬ということで、実際に患者さんが服用された際に、どのぐらいの期間服用していただいた上で有効性を評価すべきかということは、なかなか難しい問題でしょうか。
○石川委員 それは本当に難しいと思います。これは48週御覧になっていたわけで、最低でもそれぐらいは必要なのではないかと思います。今後はもっと長く投与できるような環境で、それが実際にどの程度良くなられるかと。一方、相当悪化した方は、最終的にはほとんど動かなくなるのです。全身動かなくなりますので、そういった方はどこを目指すかというのもまた問題ですし、一方、早期の方ですと反応が分かりやすいということで、個々のケースで見ていかないと本当は分からないだろうなと思います。今のところ、私の知る限りそれを非常にクリアカットに示せる臨床評価項目というのは、今ここに挙げられたもの以外は余りないのではないかと思います。
○森部会長 先生、ありがとうございます。本日、追加資料で頂いたアセノベル部会追加資料、GNEM-FASの全体的な結果を聞かせていただいて、もともとGNEM-FASの指標というのは三つのポイント、動作と上肢、それから自己管理という三つの観点の合計点数100点満点のスコアということです。今回は上肢の点数を用いて効果判定を行うということになっていましたが、やはり患者さんの全体像を考える上では総点評価も重要であろうということで、総点評価のデータもお示ししていただいたわけです。こちらも資材等には是非活用いただいて、実際に御使用の先生方が患者さんの全体像を評価する上での資料としてお使いいただければと思っているところです。その点についても、今回のシアル酸-3試験と、NPC-09-1試験において、総点の結果がプラセボと比較した上では加点されていたということで、評価に値すると考えています。
○医薬品医療機器総合機構 今、御指摘いただいた情報については、資材で情報提供させていただきます。
○森部会長 そのほか、先生方から御質問はございますか。堀委員、お願いいたします。
○堀委員 私からは、2点質問させていただきます。1点目は、服用の際の飲みやすさについて、2点目は、このボトルについてお尋ねいたします。まず、質問に際して確認したいのが、こちらは徐放錠ということですので、飲むときに粉砕や分割はしてはいけないということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりです。
○堀委員 ありがとうございます。そういたしますと、頂いた製剤の写真又は添付文書を拝見しておりますと、製剤の大きさ、1錠の大きさがかなり大きいのではないかと思いました。直径が1.9cmということはかなり大きい、そして1回2gということですので、1回につき4錠飲むということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりです。
○堀委員 ありがとうございます。確かに、添付文書の14.2の「薬剤投与時の注意」という所で、飲みにくい場合には1錠ずつ多めのお水でということだったのですが、特に当該患者さんに関しては、筋力が低下しているということで、私も調べたところですと嚥下障害とかも起こってくる方もいらっしゃると聞いております。その場合、これだけの大きさのものを1回につき1日3回ということですので、それを飲むということは、患者さんだけではなく介護者にとってもかなり負担になるのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 見えづらいかもしれませんが、実物も持ってきておりまして、御指摘のとおり非常に大きい錠剤です。堀委員の御指摘のとおり、比較的重症の方ですと、まれに嚥下障害が起きる患者さんもいらっしゃるのですが、基本的には、手や腕と足先から筋力がなくなっていく疾患でして、呼吸機能や嚥下機能が落ちる方は基本的には少ないと言われている疾患です。そういったこともありまして、治験でも同じ大きさの錠剤が投与されてはいたのですが、そのときに、特に嚥下に問題は起きていないと企業から伺っておりますので、飲みづらいのは御指摘のとおりかと思うのですけれども、基本的にはしっかりお飲みできると理解しております。
○堀委員 ありがとうございました。先ほど長期投与48週ということも伺っており、進行していくに従って、今の時点では分からないかもしれないのですが、飲みにくい場合もだんだん出てくるのではないかと危惧しておりますので、今後また調査していただきたいと思います。
 2点目です。ボトルを拝見しておりますと、貼付するラベルの印刷も手元で見させていただいておりますが、徐放錠であって、粉砕や分割をしてはいけないということは、どこにも書いていないのではないかなと思いました。やはり患者さんにとってみますと、徐放錠という言葉すらなかなかなじみがないものですし、特に、今のように飲みにくいお薬だった場合、勝手にそれを粉砕してしまう可能性もあるかと思います。ですので、今後、ボトル自体に、粉砕や分割はしてはいけないというような注意喚起を記入していただけたら、患者さんも迷うことはないのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ボトルの表記に関しては、企業側と調整したいと思います。なお、現時点では添付文書の14項にも注意喚起をしております。また患者向けの資材も準備させていただいておりまして、遠位型ミオパチーの患者団体とも協力しながら作っていると企業から伺っており、その中で飲み方についても詳しく記載することになっていると把握しております。そういった対応で、間違った服薬にならないように注意されるのかなと思っております。
○堀委員 ありがとうございます。最後、あと1点なのですが、ボトルに関しては、チャイルドレジスタンスのようなものはないということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりです。これは実物なのですが、普通のキャップになっています。
○堀委員 分かりました。そこの部分に関しても、お子さんの手の届かないような所に絶えず保存するようにということとかも記載していただけたらと思います。私からは以上です。
○医薬品医療機器総合機構 その点について、企業側に伝えさせていただきます。
○森部会長 石川委員、もしよろしければ、嚥下機能に関する状況というのは、今の機構からの説明でよろしいのでしょうか。
○石川委員 大体そうだと思います。手足、特に足先、その次に手先とかということで、嚥下はそんなに最初から来るものではないと思います。ただ、剤形が大きいので、しかも、かまないで飲むようにと書いていますので、飲みやすくはないだろうなと。ですので、多分アップライトにするというか、起きて飲んでいただくとか、そういう注意はなさっていただく形でやっていただくといいなと思います。今実際に手に取って錠剤を拝見しましたが、これは、やはり大きいですね。ありがとうございます。
○森部会長 今後、患者様が長期服用されることが前提になって、病状が進行していった後も継続服用希望の方が多くおられると思いますので、是非、申請者の方には今後御尽力いただいて、剤形の何らかの飲みやすい工夫について御提案いただくように、この部会の意見としてお伝えすることは可能でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 申請者には伝えさせていただきます。
○森部会長 そのほかご意見ございますでしょうか。
○佐藤(陽)委員 国衛研の佐藤です。承認条件で有効性のフォローアップが入っていたと思いますが、計画の中で調査すべき患者さんの背景因子などの具体的な議論というのは、機構さんや関連学会などでなされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 学会とはコミュニケーションを取っておりませんが、GNE遺伝子の変異型や、ベースライン時の筋力、罹病期間などの患者背景は調査の中で情報収集した上で、有効性との関連性についても検討していく予定です。
○佐藤(陽)委員 その辺は、機構さんの方では具体的な形で提示してもらっているわけですね。分かりました。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の43ページの表33に骨子を示させていただいておりまして、これを基に、今後、企業側と調整する予定です。
○佐藤(陽)委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 1点確認ですが、GNEM-FASの指標値というのは、実臨床でも使用なされるものであるのか、それとも臨床試験のための指標だったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 実臨床では基本的に取っていない指標ということもありまして、今後、調査に当たって医療現場にも御協力いただくことになると認識しております。
○森部会長 ありがとうございます。今回の臨床試験でこの指標が用いられていますので、今後の実臨床上の指標にもこちらを活用していただいて、長期的な有効性の判定の際に御使用いただくということが妥当かと思います。どうもありがとうございました。宮川先生、お願いいたします。
○宮川委員 宮川です。私もそこのところを指摘しようと思ったのですが、臨床試験上の指標というものが、実臨床と全く合っていない部分があると思います。実臨床でこういうことを追い掛けていくと、臨床試験との整合性が取れなくなるというところがありますので、そういう意味では、しっかりとした立て付けを作って、フォローの臨床の評価というものを承認の後にどのように付けるのでしょうか。学会等も関わって、しっかりと立て付けを作っていただかないと、意味合いが全く分からない。今、佐藤委員からもお話があったように、評価ができないはずです。そこからまたスタートしなければいけないということがあるので、整合性をいかに取るかというのが非常に難しい問題だろうと思っているので、そこはしっかりと立て付けを作っていただきたいと思います。
 それから、先ほどの錠剤のことなのですが、今後、長期にわたって飲むという形になると、錠数よりも錠形の方が非常に大きく響いてきます。錠形が俵型になるというと、実際には円形よりも俵型の方が飲みやすいですよと言うのですが、実際にそのところのしっかりした説明がないと、俵型の意味がなかなか分かっていただけません。つまり、咽頭の所に入ってくるときには、俵状の所の長径で入ってくるのだけれども、短径で入ってくるという理屈も含めて御説明していただいて、これが円形ではなく俵状になっているのは、そういう意味であるということも含めて前段階できちんと説明していただければ、資材も含めて有り難いなと。それを含めてですが、もちろんもっと小さくなることを望んでいますので、開発の中でもう少しそれを進めていただくことができればと思います。
 もう一つお聞きしたいのは、原則、食後に飲みなさいと言いながらも、8時間間隔でと書いてあるということは、どのように患者資材も含めてお話しになるのか。つまり、朝8時に飲んで昼は4時間、そして昼飲むと6時とか7時、これは7時か、夜は、そこから見ると12時間以上空くということで、8時間間隔というのはどのように説明するのか。食後と結び付けるからこそできないのですが、食後の血中濃度の上がり方を含めて見れば、食後を入れるとAUCの所で上がっているわけです。AUCが上がっているのがいいのか悪いのかというと、一定であれば別に食後というのにはこだわらなくていいはずなので、朝、昼、晩の3回飲むということだったら、朝起きて飲んで、そして8時間後に飲んで、寝る前に飲むという形になれば、朝起きたところでは実質的に8時間間隔になるのです。3回飲むという意味はどうなのか、機構はそれをどのように説明するつもりでいらっしゃるのかお聞きしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず、用法・用量をこのような規定にした背景を御説明させていただければと思います。薬剤のコンセプトとして、シアル酸を血中に一定程度維持していくことが望ましいのではないかという点から、開発早期から、基本的に約8時間ごとの投与が望ましいという規定で臨床試験が実施されておりました。機構としては、約8時間を守ることが本当に重要かは明確になっているわけではないと理解しているのですが、実際に行われた臨床試験ではそういった投与方法で実施され、有効性、安全性が確認できたということもありまして、用法・用量に反映することが適切であろうと判断して、そのような用法・用量といたしました。
 一方で、患者様によってライフスタイルがまちまちであるとも思っておりますし、必ずしも8時間を絶対守らなければならないとは思っておりません。患者様のライフスタイルに合わせて、食事のタイミングについて、基本的に朝、昼、夕で飲むと8時間おきにはならないとは思うのですが、仮に8時間おきになるべく近づけるように飲む場合には、例えば夕食を食べる前に軽食を取っていただくとか、実際に臨床試験でやられていたのは、夜寝る2時間ぐらい前に食事を取って飲むようにというような指導もされていました。そういった状況を踏まえて、患者資材の方でも情報提供をさせていただいて、なるべく8時間おきを推奨するという注意喚起をしておりますが、適切なタイミングで取っていただいて、可能な限り8時間おきに投与いただくということで、患者様に御説明したいと考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。機構は8時間の方を取るのか食後を取るのか、どちらを取るのですか。本来からすると、8時間間隔の方を取った方がいいわけですよね。
○医薬品医療機器総合機構 基本的に食後に投与していただきたいという部分はあるのですが、食後といっても通常の朝、昼、夕の食事でなくても、ちょっとした軽食を取っていただいて飲んでいただいた方が、血中濃度も上がる可能性があるのではないかというところで、そういった中で投与を御検討いただきたいと考えております。
○宮川委員 実臨床のところで軽食を取るというのは、なかなか難しい形なので、軽食なのか、飲み物の中にそういうものが入っている、例えば牛乳のようなものとか、逆にそれが阻害するのかどうかとか、そういうことも少し教えていただかなければいけないなと。私は、実臨床のときには、8時間間隔であれば、寝る前に飲みなさいと、起きたらすぐ飲みなさい、そして真ん中で飲みなさいと。あなたは起床後、それから夜寝る前のところを中心にして服用することを考えてくださいというようなお話をします。ですから、臨床試験も含めて、この効果というものが、食後ということを基底として考えたいのか、8時間間隔ということを基底として考えたいのか、どちらを重きにして考える方が患者さんにとって臨床の効果としていいのかどうかということを、きちんと出していかないと意味がない。どちらも取ろうとするから問題なので、患者さんにとってはどちらがいいのかといったら、飲むこと自体はそれほど関係ないのです。食事の方がかえって患者さんのコンプライアンスを悪くしてしまうということの方が多いのだろうと思ったので、説明を求めたわけです。その辺のところは、患者会も含めて、きちんとした飲み方も含めて確立していただく。こういう薬というのは、どちらにするのかというのを確立することが大事なはずなので、その辺のところは徹底しないとまずいのだろうなと私は思うので、どのように考えたらいいのか。石川先生にもいろいろ教えていただかないといけないと思うのですが、私たちは患者さんに説明するときに、どのように説明するのか。
 例えば、ちょっと脱線しますが、夜に咳のすごい強い人には、やはり寝る前に飲みましょうと。後鼻漏も含めて、鼻水があって痰が絡んでいる人は、寝る前に飲みましょう、朝起きたら飲みましょう、そして真ん中で飲みましょうと、そのときは水分を多めに取ってくださいねというような話をするわけです。これだけのものを飲むというと、かなりの水分を取らなければいけないということなので、その水分に何か付加価値を掛けてやるのかどうかということは、資材も含めてしっかりと考えていかなければいけないのだろうなと思っております。以上です。
○森部会長 石川委員、よろしければ少し御助言いただいてよろしいでしょうか。
○石川委員 大変重要な御指摘だと思います。例えば、基礎的なそういう食後を中心にして飲んだ場合と、8時間で規則的に飲んだ場合とかのデータがあるかどうかは、今は難しいと思いますが、そういった情報を提供していただいて、今後に備えたいなと思います。
 もう一つ、ちょっと話はそれるのですが、日本神経学会では、私の知る限り患者さんの会が毎年ぐらいブースを出していらして、患者さんが学会と一緒に歩んできたと理解しています。確か2023年度も出しておられたと思いました。そういったことで、今の先生が御指摘になったような、どのぐらいの間隔で飲むのが正しいのか、食後がいいのか、それとも8時間ずつをできるだけ守るのがいいのかというのは、基礎データが表示されれば、学会側、すなわち臨床医と、それから患者さんとは、比較的連絡を密に取ってやっていける疾患ではないかと思っています。
○宮川委員 追加でよろしいですか。
○森部会長 宮川委員、どうぞご発言ください。
○宮川委員 私は、血圧の方をずっとやっていたのですが、早朝血圧が高い、つまり、モーニングサージも含めてある人は寝る前に飲みましょうと、夕食後ではなくて、あなたを救うために、朝のサージを防ぐためには、そういう薬は寝る前に飲むということを基調にしなさいと。お酒を飲む人であろうが何であろうが、お酒を飲んでも翌朝のことで治療するのだから、そのように飲みなさいという治療方針というか、服薬指示を出すのです。ですから、どちらを基調にするのか、長期にわたって安定させるためにはどちらがいいのかということをしっかり考えるような作り方をしていただければと切に思います。よろしくお願いいたします。
○森部会長 宮川委員、どうもありがとうございました。今回の論点は、継続して服用率を高くするということと、かつ有効性を最大化するということをどう折り合いを付けるかということだと思います。背景としては、患者さんのそのときどきの病状もありますし、患者さんの従来からの食事のスタイルとか、介助やサポートをされる御家族の御都合等もありまして、先ほど石川委員もおっしゃったように、患者さんが正しい姿勢で服用するということは極めて重要だと思いますので、資材には姿勢ということも当然加えていただくことになります。その際、その姿勢を支える御家族の支援がないときには、安全に服用できない可能性もあります。やはり医学的には8時間ごとに服用するということが本剤の補充療法という観点から望ましいということで、そういったデザインの臨床試験になっていますから、添付文書でそのように科学的根拠に基づいて書かれることは支持いたします。かつ、食後ということも書いていらっしゃるのは、これも吸収のことも考えての御配慮だと思いますので、十分意図は伝わっておりますが、実際の個々の患者さんの服用については、患者会の御意見や御専門の先生の御意見、更には患者さん個々の生活環境も加味して決めていくという運用や、試行錯誤が続くという状況かと思います。
 その上で、科学的には、先ほどおっしゃった服薬時間のインターバルがどのぐらい違うと実際の薬理効果に影響を及ぼすのかといった基礎的なデータの調査や、実臨床での遊離血中濃度等の確認等の追加検討が必要かもしれません。そういったことも学会ベースで御検討いただくということが、今後必要ではないかと考えております。以上、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、御指摘いただきました資材に盛り込むべき内容については、適切に反映させていただきます。また、今後の検討課題については、機構としても認識いたしましたので、関係者にも共有させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか、先生方から御意見、御発言はございますか。よろしいでしょうか。私から1点だけ、海外では、今回のアセノイラミン酸だけではなくて、アセチルマンノサミンというGNE遺伝子の異常によって合成障害が起こるコンパウンドについても臨床試験が行われているということですが、この現況はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 公表情報によりますと、海外では第III相試験を行っているという情報は入手しております。
○森部会長 分かりました。その臨床試験の結果も、同じストラテジーで行われている今回のアセノイラミン酸の補充療法をより強固にする可能性がありますので、その情報については我々も注視していきたいと思っています。どうもありがとうございました。それでは、いかがでしょうか。特段、先生方からほかに御発言はございませんか。
それでは、議決に入らせていただきたいと思います。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようです。それでは、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題5に移らせていただきます。議題5について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、医薬品シスタドロップス点眼液0.38%の製造販売承認の可否等につき、機構より御説明いたします。資料No.5-1の審査報告書を御覧ください。
審査報告書、通し番号4ページの「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。シスチン症は、シスチンをライソゾームから細胞質へ輸送するシスチノシンの機能不全に起因する遺伝性の疾患で、国内における患者数は14~25例程度と推定されております。シスチン症患者では、ライソゾーム内にシスチンが蓄積することで、腎臓や角膜などの様々な臓器・組織で障害が引き起こされます。角膜へのシスチン結晶の蓄積は、初期段階では無症状であるものの、進行することで、羞明、眼瞼痙攣、点状表層角膜炎、眼疼痛等を来し、視力障害に至る場合もあります。
 システアミンは、ライソゾーム内でシスチンと反応することで、ライソゾームから細胞質へのシスチンの輸送を促進し、ライソゾーム内のシスチンを減少させると考えられています。本邦では、システアミン酒石酸塩を含有する経口製剤が「腎性シスチン症」を効能・効果として、2014年7月に承認されております。しかしながら、角膜は無血管組織であるため、当該経口製剤では角膜に蓄積したシスチン結晶に対する効果は期待できないとされており、システアミンを角膜に直接投与可能な製剤として、システアミン塩酸塩を含有する点眼剤である本剤が開発されました。
 なお、欧米では従来、シスチン症患者の眼症状に対する治療としてシステアミン点眼剤が院内製剤として使用されており、米国では2012年にシステアミン塩酸塩を含有する点眼剤として本剤とは異なる製剤が承認を取得しております。本剤は、1日当たりの点眼回数を低減できるよう、薬液に粘性を付与して角膜上での薬物滞留性を向上させた製剤であり、米国で2020年に、欧州では2017年にそれぞれ承認を取得しており、2024年1月現在、42の国又は地域で承認されております。本邦では、20○○年○月から臨床試験が開始され、今般、申請者は、国内外の臨床試験成績により、シスチン症における角膜シスチン結晶に対する有効性及び安全性が確認されたとして、本剤の製造販売承認申請を行いました。
なお、本剤は「シスチン症における角膜シスチン結晶の溶解」を予定される効能又は効果として希少疾病用医薬品に指定されております。本品目の審査に関して、専門委員として、資料No.14に記載されております5名の委員を指名しております。
本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書通し番号13ページの表6を御覧ください。本剤の承認申請に当たり、主な臨床試験成績として、システアミン塩酸塩0.55%を配合する本剤よりもシステアミン塩酸塩濃度が低い製剤であるシステアミン塩酸塩0.10%を配合する製剤を比較対照とした海外第III相無作為化非遮蔽並行群間比較試験と国内第III相非遮蔽非対照試験の成績が提出されました。なお、国内第III相試験は、欧米での承認の根拠となった比較試験である海外第III相試験と有効性に関して同様の傾向を認められることを確認することを目的に計画・実施された試験です。
 まず、海外第III相試験成績について御説明いたします。本試験における主要評価項目は、in vivo共焦点顕微鏡(IVCM)による角膜全7層の画像に基づいて算出した結晶沈着物の密度の合計スコアであるIVCM合計スコアのベースラインからの変化量が設定されました。こちらの主要評価項目の結果については、審査報告書通し番号15ページの表10を御覧ください。対照群と比較して本剤群ではIVCM合計スコアのベースラインからの変化量が統計学的に有意に大きく、対照薬群に対する本剤群の優越性が検証されました。
 続いて、国内第III相試験成績について御説明いたします。審査報告書通し番号16ページの「7.4 国内第III相試験」の項の4段落目を御覧ください。本試験の主要評価項目は、先ほどの海外第III相試験と同様に、IVCM合計スコアのベースラインからの変化量が設定されました。ただし、後ほど御説明いたしますが、COVID-19の感染拡大の影響などにより、IVCM合計スコアが算出できた被験者数が少なく、結果として主要評価項目の結果が算出できなかったという結果でした。
 この国内第III相試験において、IVCM合計スコアが算出できた被験者数が少なくなった経緯について、これから御説明いたします。審査報告書通し番号22ページの「マル2 実施経緯について」の項を御覧ください。本試験の目標症例数の設定に当たっては、システアミン酒石酸塩の経口製剤の販売実績などに基づき、治験依頼者が把握していた患者全例である14例が目標症例数と設定されましたが、COVID-19の感染拡大の影響を受け、最終的な組入れ数は6例となりました。また、同様にCOVID-19の感染拡大の影響を受け、IVCM検査施設への来院の同意が得られた被験者が6例中3例にとどまる結果になりました。さらに、この3例のうち1例の患者では羞明症状が非常に強く眼球が固定できなかったため、評価可能なIVCM画像が取得できませんでした。残りの2例の患者様においては、角膜の上皮表層と内皮が他の層よりも薄く、一部の時点で評価可能画像数が得られなかったため、結果として2例ともベースラインのIVCM合計スコアが算出できませんでした。以上のような経緯から、国内第III相試験では主要評価項目であるIVCM合計スコアのベースラインからの変化量が算出できませんでした。一方で、シスチン結晶がもともと蓄積しにくいと考えられる上皮表層及び内皮を除く中間の角膜5層のIVCM合計スコアが算出できた被験者におけるベースラインからの変化量について、審査報告書通し番号23ページの表15にお示ししており、非常に限られた被験者数かつ事後的な解析ではあるものの、本剤投与後にベースラインと比較して角膜のシスチン結晶の低下が認められており、この結果は海外第III相試験と同様の傾向でした。
 国内第III相試験の結果を踏まえた機構の審査方針について、通し番号17ページの下から2段落目の「機構は」から始まる段落を御覧ください。先ほど御説明したとおり、COVID-19の感染拡大の影響などにより、国内第III相試験で主要評価項目の結果が算出できなかったことなどから、当該試験から本剤の角膜のシスチン結晶に対する有効性を評価することには限界があり、また当該試験と海外第III相試験の結果の類似性を検討することも困難と判断いたしました。しかしながら、本邦におけるシスチン症患者数は極めて限られており、日本人シスチン症患者を対象とした追加の臨床試験の実施は現実的ではないこと、また本剤は民族的要因による影響を受けにくい薬剤であると判断できることから、日本人シスチン症患者における本剤の有効性については、海外第III相試験を中心に評価することとし、国内第III相試験については補足的な位置付けとして評価することといたしました。
 その上で、先ほど御説明したとおり、海外第III相試験において本剤の角膜のシスチン結晶に対する有効性は示されているとともに、評価に限界はあるものの、国内第III相試験においても本剤の有効性を示唆する結果が得られていることを踏まえ、日本人シスチン症患者においても、本剤の角膜のシスチン結晶に対する有効性は期待できると判断いたしました。
 続いて安全性について御説明いたします。国内外で実施された本剤の臨床試験においては、治験薬点眼後の充血、霧視、そう痒、刺痛、灼熱感等の局所反応のうち、発現時間が1時間を超えたものは有害事象として収集し、1時間以内に消失したものについては有害事象とは別に局所有害反応として収集されました。各試験における有害事象の発現状況については審査報告書通し番号26ページの表17に示しており、局所有害反応の発現状況については通し番号27ページの表18に示しております。本剤投与時の局所有害反応の発現割合は高かったものの、いずれも重症度は軽度あるいは中等度が多く、また重症度にかかわらず症状は一過性であることを踏まえると、添付文書において、臨床試験における眼局所に認められた局所有害反応を含む有害事象の発現状況を情報提供することなどにより、本剤の安全性は管理可能と判断いたしました。なお、本剤の製造販売後においては、再審査期間中の本剤の全投与症例を対象に、本剤の安全性及び有効性に関するデータを収集する使用成績調査を実施する予定です。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年とすることが適当であり、また生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は劇薬に該当し、製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見はいかがでしょうか。根岸委員から御発言はありますか。
○根岸委員 特にありません。
○森部会長 機構の方、今回の点眼のデバイスはどのようになっているか、補足の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 お手元の製剤写真の8ページを御覧ください。点眼剤ではありますが、ガラスのバイアルを用いており、そちらにアプリケータを装着して点眼する形で、通常の点眼剤と比べるとやや特殊な剤形になっております。実物もありますので、もし御覧になりたい先生方がいらっしゃいましたら、御連絡いただければと思います。
○森部会長 御質問、そのほかいかがでしょうか。大変稀少な疾患です。
○佐藤(直)委員 佐藤ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いいたします。
○佐藤(直)委員 ちょっと本質的な所ではないのですが、副作用というか安全性の所で、胃腸炎が10%以上で、結構それなりにいらっしゃるのですが、これは点眼薬で何か血中に吸収されてというようなことで、この有害事象というか副作用が出るのでしょうか。
 それから、添付文書に胃腸炎の記載が見る限りはなさそうなのですが、それは記載しなくていいのかどうか、確認いただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。総合機構から回答いたします。本剤を点眼することによる全身への影響について、先ほど申し上げたように、既に経口剤としてシステアミン酒石酸塩が承認されており、基本的にその経口製剤をお飲みになる患者が本剤を点眼することになると想定しており、本剤は経口剤の投与量と比べると約1,000分の1程度の投与量になるため、本剤による全身への移行はほぼ無視できると考えております。
 添付文書において胃腸炎の記載がないことについて、本剤の添付文書に記載しているものは、治験薬との因果関係が否定できない、いわゆる副作用を記載しており、今回、国内外の臨床試験で認められた胃腸炎については、治験薬との因果関係が否定されているため、添付文書には記載されておりません。
○佐藤(直)委員 分かりました。そうすると、併用する経口薬の影響が主に強いという理解でよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。総合機構より回答いたします。経口剤の影響であることも考えられますし、低年齢の患者も含まれているため、たまたま胃腸炎が生じた可能性もあると考えております。
○佐藤(直)委員 はい、分かりました。
○森部会長 念のため確認ですが、システアミンの内服薬での胃腸症状というのはいかがなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 システアミンの経口製剤で胃腸炎が問題になっているかについては情報を把握しておりませんが、添付文書の「重大な副作用」やRMPにおいて胃腸炎は注意喚起されていないと理解しております。
○森部会長 はい、分かりました。ありがとうございます。そのほか先生方から御意見、御質問はありますか。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようです。それでは、本議題を承認可とし、薬事分科会に報告いたします。
 続いて、議題6について、機構から概要説明の準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品アジンマ静注用1500について、機構より説明いたします。資料No.6の審査報告書を御覧ください。
審査報告書の一番下、全75ページの通し番号で8ページ「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤の有効成分は、遺伝子組換えADAMTS13であるアパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)及びシナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)の混合物です。ADAMTS13は、フォンヴィレブランド因子の特異的切断酵素です。フォンヴィレブランド因子は血管損傷部位の血小板動員に重要な糖タンパク質であり、ADAMTS13は血中に分泌された超高分子量フォンヴィレブランド因子を切断することにより、フォンヴィレブランド因子と血小板との結合を抑制しています。
 先天性血栓性血小板減少性紫斑病(以降、「先天性TTP」)は、ADAMTS13遺伝子異常に起因するADAMTS13活性の著減により、超高分子量フォンヴィレブランド因子が蓄積した結果、微小血管で自然発生的に血小板血栓が形成することにより、血小板消費性の血小板減少症、微小血管障害性溶血性貧血、虚血性の臓器障害等を呈する疾患です。本剤は、著減したADAMTS13活性の補充を目的とした薬剤です。海外では、先天性TTPに係る効能・効果について、米国では2023年11月に承認され、欧州では現時点で承認審査中です。今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、「先天性血栓性血小板減少性紫斑病」を効能・効果として、本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、本剤は、「血栓性血小板減少性紫斑病」の適応症について希少疾病用医薬品に指定されています。
 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。国際共同第III相試験として、成人及び小児の先天性TTP患者を対象に、標準治療である血漿製剤を対照とした無作為化非盲検比較試験が実施されました。本試験は、定期補充療法コホートとオンデマンド療法コホートから構成されており、各コホートにおいて、それぞれ本剤の定期補充療法、一時補充療法としての有効性及び安全性が検討されました。定期補充療法コホートでの有効性について、審査報告書の通し番号48ページの表30を御覧ください。定期補充療法コホートは、第1期と第2期からなるクロスオーバーデザインで本剤と標準治療を比較する計画とされ、血小板減少症と溶血性貧血で定義される急性TTPイベントの発現抑制効果が検討されました。なお、本審査では、治験薬の持ち越し効果を考慮し、第1期の結果を中心に評価することとしました。その結果、主要評価項目とされた急性TTPイベントの発現は標準治療時にのみ認められ、本剤投与時には認められませんでした。また、副次評価項目とされた個々のTTP症状の発現率についても、本剤投与時では標準治療時と比較しておおむね低い結果でした。以上のこと等から、本剤について、標準治療を下回らない有効性が示唆され、12歳以上の先天性TTP患者における定期補充療法でのTTPイベントの発現抑制が期待できると判断しました。
 続いて、オンデマンド療法コホートでの有効性について、御説明いたします。審査報告書の通し番号54ページ、図2を御覧ください。オンデマンド療法コホートでは急性TTPイベントを発現した患者に対する本剤の治療効果が検討されました。このコホートに組み入れられた5例のうち、本剤群に割り付けられたのは2例のみでしたが、個々の症例経過において、ADAMTS13活性の上昇とともに、血小板数の増加と溶血性貧血の指標であるLDHの減少が認められ、急性TTPイベントの回復が認められました。これらの結果に加え、本剤がADAMTS13活性の補充を目的とした薬剤であること等も踏まえ、TTPの急性増悪に対する本剤の有効性は期待できると判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号58ページ以降、「7.R.4 安全性について」の項を御覧ください。臨床試験成績等の情報から、ショック、アナフィラキシー等の過敏症反応を含め、本剤投与による臨床上重大な問題となる安全性の懸念は認められておらず、認められた有効性を考慮すると、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 製造販売後調査については、一定数の症例数に係るデータが集積するまで本剤の全投与症例を対象に、本剤投与時の安全性等に関する情報を収集する使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しています。
以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見はいかがでしょうか。今回は、ADAMTS13の合成が障害されて著減しているという方、先天性のTTPの方を対象にした補充療法という位置付けになっていますので、有効性、安全性についての一定の確認が得られたということかと存じます。特に御意見、御質問はよろしいでしょうか。
では、議決に入ります。なお、川上委員、髙橋委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。では、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。
 では、引き続き、議題7に移ります。機構から概要説明の準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料No.7の医薬品ウィフガート点滴静注400mgについて、機構より説明いたします。資料No.7の審査報告書を御覧ください。
 審査報告書の一番下、全57ページの通し番号で5ページ、「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤の有効成分であるエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)は、アミノ酸残基を改変したヒトIgG1抗体Fcフラグメントであり、IgGの輸送及び恒常性維持に関与する胎児性Fc受容体に結合してIgGのリサイクルを阻害する薬剤です。本邦では、2022年1月に全身型重症筋無力症に係る効能・効果で承認されています。特発性血小板減少性紫斑病(以降、「ITP」)は、血小板膜糖タンパク質に対する自己抗体が産生され、血小板や巨核球に結合した結果、脾臓マクロファージによる貪食・破壊の亢進、巨核球での血小板産生低下等により血小板減少を来す後天性の自己免疫疾患です。本剤は内因性IgGのリサイクルを阻害して、IgG自己抗体を含むIgG分解を促進することで、ITP患者における血小板数を増加させると考えられます。海外では、全身型重症筋無力症に係る効能・効果について、欧米を含む七つの国又は地域で承認されていますが、ITPに係る効能・効果について本剤が承認されている国又は地域はありません。
今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、「慢性特発性血小板減少性紫斑病」の効能・効果を追加する製造販売承認申請がなされました。なお、本剤は、「慢性特発性血小板減少性紫斑病」の適応症について希少疾病用医薬品に指定されています。
 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。国際共同第III相試験(以降、「1801試験」)として、過去に1種類以上のITP治療を受けたことがあり、かつ血小板数が30,000/μL未満の慢性/持続性ITP患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験が実施されました。審査報告書の通し番号22ページの表11を御覧ください。有効性について、主要評価項目とされた、慢性ITP患者における投与19週から24週までの6回の来院のうち4回以上血小板数が50,000/μL以上であった患者割合(以降、「レスポンダー割合」)が主要評価項目とされました。この主要評価項目について、本剤群でプラセボ群と比較して有意に高いことが示され、重篤な出血を予防しうる血小板数増加が期待できると判断しました。また、日本人患者における有効性について、審査報告書の通し番号24ページの表14に示すように、少数例での検討ではあるものの、主要評価項目であるレスポンダー割合は、本剤群でプラセボ群と比較して高く、日本人集団と外国人集団で有効性の結果は類似していると判断しました。
 続いて、安全性について説明します。審査報告書の通し番号38ページ以降、「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。本剤の既知のリスクである感染症、infusion reaction等について、ITP患者を対象とした臨床試験において新たな懸念は認められませんでした。また、血栓症又は血栓塞栓症の発現リスクについて、臨床試験で明らかな懸念は示されなかったものの、血小板数の過剰増加に伴う潜在的なリスクがあること、臨床試験において既往歴を有する患者が除外されていたこと等から、添付文書で注意喚起を行うことが適切と判断しました。以上の検討に加え、血液疾患の治療に十分な経験を持つ医師のもとで適切な観察と管理がなされることも踏まえると、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上の審査の結果、本剤は、血小板数や臨床症状から見て出血リスクが高いと考えられ既存のITP治療で十分な効果が得られない場合等に用いる二次治療以降の治療選択肢の一つとして、医療現場に提供する意義はあると判断しました。
 続いて、審査報告書の通し番号51ページの上から3行目以降を御覧ください。本剤の審査中に、申請者より、同一有効成分を含有する皮下投与製剤の国際共同第III相試験(以降、「2004試験」)において、主要評価項目とされたレスポンダー割合について、皮下投与製剤のプラセボに対する優越性が示されなかったことが報告されました。1801試験と2004試験は、参加地域を除き、対象患者を含めほぼ同一の試験デザインで実施されたことから、本剤の有効性に係る結論への影響を検討しました。1801試験と2004試験は、組み入れられた患者の背景に明らかな違いは認められませんでしたが、2004試験のプラセボ群におけるレスポンダー割合は16.2%と、1801試験の5.0%と比較して高い結果でした。同様のITP患者を対象とした既承認薬の複数の第III相試験でも、1801試験と同様に、プラセボ群における持続的な血小板数増加の達成割合が、いずれも0~4.8%と低かったことも踏まえると、2004試験には本来の組み入れ対象である「追加の治療なしでは持続的な血小板数の増加を達成する可能性が低いITP患者」が適切に組み入れられていなかった可能性が考えられます。したがって、当該成績により本剤の有効性に係る結論に疑義を生じるものではないと判断しました。一方で、2004試験では、皮下投与製剤群のレスポンダー割合も1801試験の本剤群より低い結果であり、明確な要因は特定されていないものの、本薬の有効性に影響しうる潜在的な要因の存在が否定できないと考えました。以上のことから、本剤の添付文書の用法・用量に関連する注意において、投与開始後は定期的に血小板数を評価し、十分なレベルの血小板数の増加が期待できない場合には、遅くとも投与開始後12週までに本剤投与の中止を検討する旨、及び投与を継続する場合においても、4週間連続して十分なレベルの血小板数が認められなければ、本剤投与の中止を検討する旨を注意喚起することが適切と判断しました。以上の機構の判断は、専門委員に支持されました。
 製造販売後調査については、一定数の症例数に係るデータが集積するまで、本剤の全投与症例を対象に、本剤投与時の安全性及び有効性に関する情報を収集する使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しています。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は10年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明ありがとうございました。先生方から御意見、御質問はありますか。後半の御説明では、同効製剤の皮下投与製剤における主要評価の達成割合が今回の注射薬と比べて低値だったことや、プラセボ群のデータのこともあってということで説明頂きました。そういったこともあり、本来の点滴静注の薬剤の使用に当たっては、有効な方により継続いただけるようにということで、また、有効性がない方には早期に中止するようにという注意喚起を頂き、適切な対応を頂いたというように考えています。いかがでしょうか。そのほか先生方から御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 では、議決に入ります。なお、佐藤直樹委員、中西委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようです。それでは、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題8に移ります。議題8については事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 議題8、希少疾病用医薬品の指定の可否について御説明いたします。まず、個別の品目の御説明の前に、最近、希少疾病用医薬品の指定の基準に関する運用の見直しを行っており、その背景を含めて御説明いたします。
 資料8のフォルダーに入っている参考資料の1を御覧ください。資料No.8「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会について」というタイトルの資料です。こちらの検討会は新たに昨年7月から開催しています。この検討会の開催目的は、右下の1ページの所にありますが、ドラッグ・ロス問題等に対する薬事上の取組ということで、近年、指摘されているいわゆるドラッグ・ロスと呼ばれる問題の解消のために、薬事に関係する課題について検討することを目的として開催しております。もともとの背景としては、2ページにありますが、昨年、別の検討会があり、こうした様々な課題について御提言を頂いていますが、その提言いただいた課題のうち、薬事に関する課題についてこの検討会で議論いただいくということです。
次のページには、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの実態ということで、具体的な数字として、日本では86品目の開発が未着手という状況となっているというデータも示されているところです。こうした状況を踏まえ、次のページにあるとおり、この検討会を開催して、昨年7月10日から累次にわたる御議論を頂いているところで、この中で希少疾病用医薬品の指定の要件についても御議論を頂いて見直しを行ったという背景です。
 続いて、参考資料2を御覧ください。具体的にどのような要件の見直しを行ったのかについて、その背景とともに御説明いたします。「希少疾病用医薬品の指定のあり方について」という資料です。まず、現行制度の紹介が冒頭にありますが、右下の数字の4ページの所で、現在、この三つの要件、対象疾患が5万人以下ということ、医療上の必要性があり、また開発の可能性があるという三つの要件に従って指定の可否を判断しているところです。
 6ページ、この希少疾病用医薬品、いわゆるオーファンドラッグの指定の制度は日米欧、いずれの国・地域においてもありますが、特に日本における指定数が少ないという指摘があったのがこの検討の背景にあります。この棒グラフにあるように、青い棒グラフが指定の件数ですが、米国、欧州と比べると、日本ではその件数が少ないといった状況にあります。
 7ページですが、オーファン制度における日米の比較、これは優遇措置に関する日米欧の比較になっております。おおむね、日米欧で優遇措置の内容も同様のものがあります。手数料減免、開発助成、税制優遇、データ保護、いずれについても同様にありますが、この一つ目の優先審査については欧米にはなく、日本においてのみ、この希少疾病用医薬品に指定されれば自動的に優先審査にも該当するといった優遇措置が取られていたところです。ですので、今回の指定対象の拡大というか見直しに伴いまして、この優遇措置の取扱いについても少し運用を見直すことを検討しております。それも後ほど御説明いたします。
 見直しの論点の概要を9ページに記載しています。希少疾病用医薬品の指定が欧米と比べて狭いということで、その拡大や要件の明確化を検討しており、具体的には、9ページの右側にある三つの観点からの見直しを行ったところです。一つ目が「輪切り」の要件の明確化、二つ目が、医療上の必要性の要件の明確化ということで詳細は次のページにあり、この場での御説明は割愛させていただきますが、いずれも、いわゆる「輪切り」と呼ばれる疾患の区切り方とか、あるいは医療上の必要性の捉え方について、もともと余り通知上、文書上明確化されていたものではなかったので、やや厳しめの解釈が取られていたところもあったという背景から、そこを具体化し明確化することによって、より適切な対象を指定の対象としていくといった見直しを行ったところです。
 三つ目ですが、指定の早期化と取り消し要件の明確化を12ページに記載しております。指定の段階としても、これまでは第II相試験ですが、第III相試験の結果が得られた段階での指定といった運用をしておりましたが、より早期の段階から医薬品の開発を支援するという観点から、少なくとも第I相試験を実施するために必要な非臨床試験についておおむね完了している段階において要件を満たす場合があるといった考え方を示すことで、指定の早期化を検討したところです。併せて、取り消しの要件についても明確化をしたといった見直しを行っております。
 その上で、最後のスライドに、「優遇措置の取扱いについて」とあります。こういった見直しを行うことによって、結果として希少疾病用医薬品に指定される品目数が増えるということが想定されますが、ただ、それら全てを優先審査において対応するということは、この機構における審査リソースの問題から対応が困難であるというようにも考えられました。したがって、左下の対応の方向性に書いていますが、機構の体制強化については並行して検討することといたしますが、それが実現するまでの間は、優先審査の対象品目については従来の優先審査の要件を満たすものの範囲としてはどうかと考えております。ですので、この部会で御審議いただくのは、あくまで希少疾病用医薬品の指定の可否についてですが、併せて、優先審査に該当するかどうかについても報告書の中で明記させていただいているところです。
 それでは個別品目の御説明に移ります。まず1品目目です。資料8-2、「sotatercept」の報告書を御覧ください。申請者は「MSD株式会社」、予定される効能・効果は「肺動脈性肺高血圧症」です。患者数は4,319人と推計されております。本疾患は、肺動脈組織に種々の病変が生じた結果、肺動脈圧及び肺血管抵抗が増大し、心不全、さらには死亡に至る重篤な疾患とされております。本邦のガイドラインでは、支持療法と並行して、肺血管拡張薬による治療を実施することが推奨されており、十分な改善が認められない場合には、肺移植の適応となるとされておりますが、治療法としては十分ではないといった状況であるということです。
 本剤については、既存の血管拡張薬、肺血管拡張薬とは異なる作用機序の治療薬であり、医療上の必要性は高いと考えています。また、開発の可能性に関しても、本剤は海外において第III相試験が実施されており、本邦においても第III相試験が実施中ですので、指定の要件を満たすと考えております。なお、優先審査の該当性については資料の一番最後の総合評価の所に記載してありますが、本品目については優先審査の対象にも該当すると考えております。
 2品目目、資料No.8-3を御覧ください。「エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)配合注射剤」です。予定される効能・効果は「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎」(以下「CIDP」)です。申請者は「アルジェニクスジャパン株式会社」です。CIDPの患者数は約5,000人と推定されております。本疾患は、左右対称性の四肢の筋力低下や感覚障害を主な症状とする末梢神経系の自己免疫疾患で、慢性進行性や再発性の経過をとることが多く、筋萎縮や重度の身体障害に陥る場合も多いとされております。現在、CIDPに係る効能・効果で承認されている免疫グロブリン製剤を用いた治療がありますが、これには限界があることから、新たな治療法が必要とされております。
 本剤については臨床試験、国際共同試験が実施されており、プラセボ群と比較して本剤群で統計学的に有意に臨床的悪化までの時間を延長したといった結果が得られており、医療上の必要性も高いと考えております。日本人を含む国際共同試験が実施されていることから開発の可能性もあると考えており、指定基準を満たすと考えております。本剤についても優先審査にも該当すると考えております。以上です。
御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。先生方から御質問や御意見はいかがでしょうか、特段、ありませんでしょうか。
 では、議決に入ります。なお、川上委員、髙橋委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、報告事項及びその他の事項に移ります。報告事項の議題1、2及びその他事項1について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 資料No.9を御覧ください。まず、報告事項の議題1、個別の品目の承認の可否についてです。販売名が「バビースモ硝子体内注射液」、申請者は「中外製薬株式会社」です。今回の申請の概要は、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に係る効能・効果及び用法・用量の追加をする一部変更の申請がなされております。機構における審査の結果、承認して差し支えないと判断しております。
 報告事項の議題2、医療用医薬品の再審査結果についてです。本日、御報告するのは2品目で、1品目目が「スージャヌ配合錠」、2品目目が「ロスーゼット配合錠」です。いずれの品目においても、製造販売後調査等に基づく再審査の申請があり、機構における審査の結果、いずれもカテゴリ1、つまり効能・効果及び用法・用量の変更の必要のないと判断されております。以上です。
 続いて、その他事項の議題1です。資料No.12を御覧ください。最適使用推進ガイドラインの対象となる医薬品の選定についてです。今回お示しの品目、医薬品名が「ケサンラ点滴静注液」、一般名が「ドナネマブ(遺伝子組換え)」、申請者は「日本イーライリリー株式会社」です。対象となる効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及びアルツハイマー病による軽度認知症の進行抑制」となっております。本剤について、最適使用推進ガイドラインを作成する対象として選定しておりますので、その旨を御報告いたします。
以上です。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。委員の先生方から御意見や御質問はありませんか、いかがでしょうか。特段、ありませんか。それでは、報告事項及びその他の事項については御確認いただいたものとさせていただきます。
本日の議題は以上です。事務局から御報告等があればお願いいたします。
○事務局 次回の部会は令和6年4月26日(金)午後2時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 それから、本日の部会をもちまして、代田委員が御退任になることとなっております。代田委員、御挨拶を頂戴してよろしいでしょうか。
○代田委員 ありがとうございます。何年だかちょっと忘れましたけれども、お世話になりました。大変勉強をさせていただきました。この審議会に引き続きしっかりとやっていただくことをお願いして、退任したいと思います。どうもありがとうございました。
○森部会長 長らくの御尽力に心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。それでは、本日の議題はこれで全て終了いたします。長時間どうもありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)