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第9回労働基準関係法制研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和6年7月19日(金) 10:00~12:00
場所
厚生労働省 共用第6会議室
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第9回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、御多忙のところ、お集まりいただきありがとうございます。
本日の研究会につきましては、会場参加とオンライン参加の双方による開催方式とさせていただいております。
本日は、石﨑先生、黒田先生、島田先生、水島先生がオンラインでの御出席ということになります。
カメラ撮りはここまでということでお願いします。
(カメラ退室)
○荒木座長 議事に入る前に、事務局の異動について報告をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
それでは、7月5日付で事務局に異動がございましたので、御紹介いたします。
労働基準局長の岸本でございます。
○労働基準局長 労働基準局長を拝命いたしました岸本でございます。先生方には、労働基準関係法制につきまして大所高所から真摯に御議論いただきまして、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)の尾田でございます。
○審議官(労働条件政策、働き方改革担当) 尾田でございます。よろしくお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 総務課長の佐々木でございます。
○総務課長 佐々木でございます。よろしくお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 労働条件政策課企画調整専門官の中島でございます。
○企画調整専門官 中島でございます。よろしくお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局からは以上でございます。
○荒木座長 それでは議事に入ります。
本日は、労働基準法における「事業」、労使コミュニケーションに関してということですが、主として労使コミュニケーションに関して議論いただければと考えております。
まず、資料1について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 それでは、資料No.1を御覧ください。「労働基準法における『事業』、労使コミュニケーションについて」でございます。
おめくりいただきまして、2ページ目、視点と課題ということで整理をしております。
まず、視点でございますが、3点ございます。1つ目でございますが、労働者個人と使用者の交渉力の格差が厳然としてあるということで、組合、労働者が集団となって使用者と協議・交渉することで、実質的なコミュニケーションが行える環境を確保することが重要ではないかということ。2つ目としまして、労働法においては、原則的な法規制として定めた上で、集団的な労使合意、これは産別組合との労働協約ですとか労使協定、様々ございます。これにより、現場の実情に応じたルールへのカスタマイズを許容する法制度をとるということが、国際的にも広く認められているということ。3つ目でございますが、職場における労働環境改善や、業務効率化などを労使で話し合うような、狭義の労働条件に留まらない労使コミュニケーションも重要であるということ。この3つが視点として、これまで議論されてきたかなと思います。
それに基づきまして、課題でございますが、4つ立てております。それぞれ詳しくは次ページ以降で御説明しますので、まずかいつまんでこちらをお話しいたします。
1つ目に、労働組合について。組合は、争議権を背景に団体交渉を行うということで、労使コミュニケーションの中で非常に大きな役割を果たしていると。一方で、組織率の低下というものがあるので、こういった組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションの活性化が改めて望まれているのではないかということ。
次に、過半数労組がない事業場に関しまして、過半数代表者が選ばれるということですが、選出方法ですとか選ばれた方の交渉力、成り手の確保等、様々な課題が指摘されていることで、改善が望まれるのではないかということ。
3つ目につきまして、企業単位で労働条件が斉一化されている場合もございますので、多数の事業場を有する企業等において、事業場ごとの労使の協議・交渉のほかに、複数の事業場の過半数代表者を一堂に集めて協議をすることで、事務負担の軽減や、労働者サイドもほかの事業場の労働者と協力して交渉することができるなど、より妥当な合意に至る可能性もあるのではないかということ。
4つ目といたしまして、集団的労使コミュニケーションを前提とする上ではございますが、労使協定や労使協議に加えて個人の意思確認を求めることが適当な場面もあるのではないかということ。この4本で立てております。
3ページ目から具体的に詳しく記載した資料でございます。
まず1つ目、労働組合による労使コミュニケーションに関しまして、課題として2つ分けております。1つ目は、先ほどもお話をいたしました、組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化する観点から、法制的、政策的な対応として、どのようなものが考えられるのかということ。
2つ目といたしまして、現行の労働基準法制の中では、ほとんどの労使協定におきまして、過半数労組と過半数代表者は同等に取り扱われているということがございます。一方で、先ほど申し上げましたように、組合のコミュニケーションというものは、よりしっかりしたものであるという優位性があるということで、過半数労組がある事業場のみに求められるような、過半数代表者には認められないような制度設計をするということが考え得るのかということ。一方で、過半数労組が労使協定の締結等を行う場合には、非組合員も含む事業場の全労働者の代表として行動していただきたいということがあるのではないかということ。こういった組合による労使コミュニケーションをどのようにしていくかというのがまず1つ目です。
2つ目、過半数代表者の仕組みについてということでございます。①、②、③、④と立てさせていただいておりますが、選出手続ですとか、過半数代表者が1人でいいのか、複数選出することをどう考えるのかということ。過半数代表者は現在アドホックに任命されていますが、これを任期付きとすること。それから、過半数代表者になられた方に対して、教育研修や費用負担、キャリア上の取扱い、外部専門家の支援等々、どういった支援ができるのかということ。こういったことが、これまでの御議論の中で、過半数代表者の改善方法として考えるべきではないかということをいただいていたかと思います。それぞれ制度的なものに関しては義務にするのか、それとも推奨とするのかということも含めて御議論をいただければと考えているところでございます。
また、一番下に、支援によっては過半数組合に該当しない少数組合との関係も考えなければならないのではないかということを付記させていただいております。
4ページ目でございます。3番ということで、先ほどの4本の柱でいきますと2番目に含まれ得るものかなと思いますが、労使委員会や労働時間等設定改善委員会の活用についてでございます。これらにつきましては、現行制度の中で、過半数代表者ではなく労使が集まって協議をする協議体として法律上位置づけられているものでございます。機能として、ほとんどの場合に労使協定に代替して決議を行うことができるというような機能も付加されているものでございます。こうした労使委員会の活用についてどのように考えるのかというのが論点としてあり得るかと考えております。
続いて、4番目、事業場ごとの労使コミュニケーションを集団化することについて、ということでございます。こちらにつきましては、5ページの図を御覧いただきながらお聞きいただければと思います。
図のほうは、上の段が事業場ごとに協議をするというイメージのもの。下の段がここに書かれているように複数の事業場が集まって話合いをする場合のイメージとなっております。これに関しまして、課題としまして①、②、③を挙げております。
1つ目として、事業場単位の法適用との関係ということでございます。労働基準法の適用単位は事業場でございますので、あくまで事業場単位での労使合意をするのが基本と考えるべきではないかということ。その場合に、労使当事者が希望する場合に、複数の事業場が集まって、労使協定の締結ですとか労使委員会の開催ができるようにすることについて、どのように考えるのかと。メリット、デメリットございますので、どう考えるかというのがまず1つ目でございます。
2つ目でございますが、特に使用者サイドが主かとは思いますが、そういった労使委員会ですとか話合いの場の代表者に関しまして、現行法の取扱いを書かせていただいております。現行法でも、使用者側が当該事業場に所属していることは法令上求めていないということでございます。また、労使委員会の委員に関して言いますと、過半数代表者あるいは過半数組合の指名があれば、当該事業場に所属していない方が労使委員会の労働者委員になることもできるということで、事業場単位を基本として集団化というものを考える場合に、労使双方の代表それぞれについて、事業場に所属していない者による労使協定の締結ですとか委員としての参画、意見聴取、こういったものが考え得ますが、望ましい場合があるのかどうかということ。
3つ目でございます。労使協定、労使委員会、意見聴取、手続は様々ございますが、こういった集団化に関して適した類型というものがあるのかということ。こういったことが議題となるかなと考えております。
5番目でございます。労働者個人の意思ということでございまして、使用者と労働者個人の交渉力には違いがございますので、労働者の個人同意のみによるデロゲーションは不適当と考えております。一方で、集団的合意を経た上で、重ねて本人同意を求める制度というものは、例えば高度プロフェッショナル制度など、現在もございます。今後、新たな制度を検討する際に、個人同意の必要性を検討することも必要であるか、そういった点について御議論いただければと思います。
最後、一番下のところですが、これらの論点に関しまして、1つ目として、法制的・政策的な検討・対応の重要性が高い事項として何があるか。多数論点がございますので、そのうちの必要性・重要性に関しまして、どういったものが優先されるのかというような点を御議論いただければなと考えております。
2番目としまして、そのうち特に早期に取り組むべき事項はどのようなものがあるのか。あるいは検討課題が多岐にわたるので、拙速な議論ではなく、中長期的にしっかり議論していくべきものというのは何があるのか。そして、その中長期的な議論を要するといたしましても、一歩でもよくするという観点から、今できることが何らかあるもの、段階的に取り組むべきもの、そういったものは何があるのか。こういったことにつきまして、具体的な制度改正のアイデアも含めて、本日御議論をいただければと考えております。
6ページ以降の資料は参考資料でございます。
事務局からは以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明について、これまでの議論を踏まえた労使コミュニケーションに関する課題について議論していただきたいと考えております。
3ページと4ページに具体的な論点について記載がありまして、相互に関係するところもありますけれども、まず前半は、論点の1「労働組合による労使コミュニケーション」と2「過半数代表者の仕組みについて」の議論をして、後ほど3、4、5を議論したいと考えております。
それでは、まず、3ページの論点について先生方から御意見をいただければ幸いです。
水島先生、お願いします。
○水島委員 ありがとうございます。水島でございます。
まず1と2ということですが、労働組合による労使コミュニケーションの促進という方向性には賛成の立場です。しかし、労働組合は労働者が自主的に結成するものでして、法制的な、制度的な対応には違和感があります。労働組合の活性化についての仕掛けが必要としても、それは政策的な対応になるのではないでしょうか。少なくとも法制的な意味合いで早急に取り組むものではないと私は考えます。
2でございますが、過半数代表者の複数選出について、これまで私は積極的な意見を申し上げておりますので、その立場から一言申し上げます。
事業場の在り方は多様ですので、過半数代表者の複数選出を法律で義務づけることは現実的でないと考えます。選択肢を示し、それにより過半数代表者がより機能するような制度が必要ではないかと考えます。その選択肢を法律で明示する方法もありますが、一段下げて、推奨でもよいのではと考えます。
私が考える1つのモデルとして、四、五人が過半数代表者として選出されてチームで動き、任期終了時に全員が入れ替わるのでなく数人が入れ替わり、経験のある者が新たに過半数代表者になった者を育成していく。つまり、過半数代表者を1人に任せるのでなく、複数人が過半数代表の職務に関与することによって、事業場における過半数代表者の機能が持続的になるのではないかと考えます。
以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 まず1番目の労働組合による労使コミュニケーションの①については、今の水島先生の御意見と私も全く同じでして、これは多分政策的な対応が望ましいのではないかと思っています。法的に何か定めることができるようなものではないかなというような印象を抱いております。
②の過半数労働組合を生かした制度設計についてですけれども、確かに私は、労働組合がある職場とない職場を見たときに平均すると、組合がある職場のほうが組合員、従業員の声を反映して協議ができている割合は高いのではないかと考えていますが、過半数労働組合がある事業場において、問題なく協議や労使協定の締結がなされているケースばかりではないと思っております。
例えば、働き方改革を促すきっかけにもなった電通の高橋まつりさんの事件がありましたが、電通には労働組合があります。組合がありますが、高橋まつりさんのことのみならず、あの後の報道によれば、特別条項を超えて従業員が働いていると報じられていました。この間、大手企業で過労死、過労自殺が起きていますが、例えば三菱電機のように、結構大手の組合があったりするところもあります。ですので、労働基準法の健康確保ということを考えてみますと、過半数労働組合がある事業場のみに、例えば特別のデロゲーションが認められるというようなことをした場合に、本当に健康の確保ができるのだろうかという点に、私は懸念を抱いております。
2番目の過半数代表者の仕組みの改善についてですが、これはまず確認をさせていただきたいのですが、複数選出というのは、現状でも一応できることにはなっているという認識でよろしいのでしょうか。
○労働条件政策課長 制度上は、複数名が駄目だとは書いていないということでありますが、ただ、少なくとも36協定なりを締結した場合に、仮に複数名で選ばれているのであれば、複数名が連名でその内容に合意をして、届出をしていただくということは必要なものと考えております。
○首藤構成員 その場合に、多分選出の方法とも関わると思うのですけれども、現状では過半数を代表するということで投票が行われて、50%以上を取る人が事業場に2人いるということはあり得ないので、多分1人のみが代表者になっているケースが圧倒的に多いと思います。複数名の選出が現状でも認められているということは、結局、信任投票みたいな形で選出をすれば、それで認められるという理解でよろしいのかという点と、その場合に、それは労働者側が複数でいきたいんだと言えば複数になれるのかどうか、その手続きは、どういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
○労働条件政策課長 お尋ねの点につきまして、これまでに明確な解釈を示したことは恐らくないと思われるところでございます。ただ、労働者の過半数が、その方を過半数代表者として選んでいただく必要がありますので、例えば複数名を過半数代表者にすることについて、その事業場の労働者の過半数が賛意を示しているということが裏づけられることが、確認が必要な場面においては求められるのかなと思っております。
○首藤構成員 分かりました。
法改正ということになると、多分中長期の対応になるのかなと思いますけれども、短期的に一歩でも前に進めるということについて、複数になればいきなり過半数代表者が機能し始めるかというと、そこも議論があると思いますけれども、とりあえず現状の法規の中で可能であるのであれば、複数代表を選択肢として示し、推奨するというのが1つの方法なのかなと考えた次第です。
過半数代表者の仕組みについては、私は、その選出をどうするか、複数をどうするか、任期をどうするかという問題ももちろんあるのですけれども、とにかくきちんと協議ができているのかどうかというところが本質なのではないかと思っています。単数でも、複数でも、任期付きでも、なしでも、まず労使できちんと協議をしているのかどうか。現状としては、多くの場合、過半数代表者が単に判を押すだけの役割を担っているような実態もあり、もちろん一部にはきちんと協議をしている実態もあると思いますけれども、そうではないような実態が広がっていると思っていまして、協議の実質化をどのようにして担保するのかと。例えば協議内容を開示させるとか、何らかの形のことを考えないと、なかなか機能し得ないのかなと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。
まず1点目として、労働組合による労使コミュニケーション活性化に対する法制的な意味での対応が不要という点では、水島先生、首藤先生と私も同じ意見でございます。
その上で、2に関連するかと思うのですけれども、2の問題の中で比較的早期に対応したほうがよいのではないかと思われる点について4点ほど意見を述べさせていただければと思います。
1点目としましては、現行の施行規則に規定がある不利益取扱いの禁止に係る規定ですけれども、現状、しないようにしなければならないということで、やや曖昧な記述になっているところもありまして、こちらは労基法のほうに引き上げて、してはならないという形での規定ができないのかというのがまず1点目でございます。
2点目としまして、先ほどの首藤先生の問題意識とも関わるところがあるのですけれども、労使協定の締結に当たって、案を使用者側から提示されると思うのですけれども、いきなり出されてここに判子を押してと言われても、要するに考えたりすることができないところでありますので、やはりある程度時間的な余裕を持って提案するということを、これは労基法レベルなのか、施行規則でいいのかとか、その期間をどうするかという辺りについては労使の御意見も伺った上で決めたほうがよいかと思いますが、ちゃんと時間的な猶予を持って提案する。あるいはその際、必要な法令の周知義務はもともと使用者にありますが、関係する法令でしたり資料などの提示をするといったようなところの規定も整備していくべきではないかというところが2点目としてあるかなと思っております。
3点目としまして、これも施行規則等での話になるかもしれませんけれども、過半数代表者側の役割として、きちんとほかの従業員の意見集約をしていくというようなことも、やはりそこは明確に規定していくべきではないかという気もしておりまして、この点に関しては1の②にも関わってくるかもしれませんけれども、過半数代表者だけではなくて、過半数組合も、組合員以外の者の意見もきちんと聴く必要があるというようなことを明確にする必要があるのではないかという気がしているところでございます。
4点目として、これは過去のこちらの研究会で意見を述べさせていただいたところですけれども、企業側の配慮、あるいは研修といったところの中身についてなのですが、こちらの研修については企業が主導で実施するといっても、なかなかやはり難しいところがあるのかなという気がしております。こうした研修の実施に当たって、特に労働団体さんの御協力なども得ながら、いかに過半数代表者の仕事、いろいろ意見集約という意味では大変な点もあると思うのですけれども、そうした意義であったり、やりがいを伝えていけるような形での研修の実施の検討が必要になってくるのではないかという気がしております。その反面として、そうした研修の実施ということがうまくできるようになっていくのであれば、その研修参加に対する時間的な配慮とか、そうしたものが使用者のほうに求められていくという形になるのかなと考えているところでございます。
それから、より中長期的な課題ということになるかもしれないのですけれども、先ほどお話がありました複数選出、あるいは任期制の問題については、やはり一足飛びに義務づけというのはなかなか難しいところがあるのかなと思っておるところです。例えば複数選出というところに関しても、ある程度、任期制的な形で選出されることを前提としたお話になるのかもしれませんけれども、任期をどう設定するかということとも関わるのですが、前任者の人がその翌年1年は過半数代表者のサポートをするような形で、過半数代表者としての職務に関わるというような形を取ることも可能ではないかと思っております。複数名、委員会形式でそれぞれが決定権を持ってというような形ももちろんあり得るわけですけですし、将来的にはそういった従業員代表制みたいなことを入れていくことももちろん視野に入れていいとは思うのですけれども、その前の段階として、前年度の委員が締結権を持つ代表者をサポートするような形で関わっていくということもできるのではないかと思ったところでございます。
私からの意見としては以上でございます。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
水町先生、お願いします。
○水町構成員 ありがとうございます。
2番、過半数代表者の仕組みについて大きく3つあります。まず、2の①選出手続についてですが、会社、具体的には人事部がどこまでこの選出手続に関与できるかということと、あと、メール等による選出が実際上進んでいるので、そこの点について、より具体的な考え方を示すことが大切なのではないかと思います。基本的には労働者が主体的に選出するという建前になっていますが、選挙管理委員会をつくりながらやっているところもあれば、実際上は、公示というのを人事部長名で出して選挙をやりますよと言った後は、労働者側で選出してくださいというふうにやっているところがありますが、従業員の名簿とかメールアドレスとかは会社しか持っていないので、労働者側が自主的にやるということは事実上難しい状態にある中で、人事がある程度関与せざるを得ない。だから、選挙の実施については人事が関与せざるを得ないところは、どこまでどう関与していいのか。具体的な選出に関与してはいけないというのは確かですが、どこまでやれるのかと。
そして、実際にメールでやっているところが増えてきていますが、最近の裁判例で、例えばメールで信任投票をするときに、返事がなかったら、これはもう賛成したもの、信任したものとするという取扱いが労働基準法の趣旨に沿わないというので、積極的に信任します、賛成しますという返事が過半数にならないと駄目ですよということが裁判例で言われて、まだ厚生労働省として、そういうことはどうしたらいいかということが何も明らかになっていないところなので、実務上そういうものに対する疑義が生じなくて、安心して選出ができるようなインフラをきちんと厚生労働省令などで具体的に示すことが大切かと思います。
2つ目は③の過半数代表者の任期ですが、これは過半数代表者の任期というよりかは、労使協定にそもそも期間をつけるかつけないかというのを明確にし、どういう形で労使協定が現在結ばれているのか、今回労使協定を締結する、もしくは締結し直すことについてどういう状況にあるのか認識しながら締結してもらうことのほうが実務上は大切だと思います。実際上は、ほとんどの労使協定は、別に期間を定めなければいけないということになっていないので、もう何十年も前に手書きでやったものに基づいて、どこに記録があるかどうか分からないけれども、賃金全額払い原則の例外でやっているというような運用を事実上やっているところもたくさんある中で、今、36協定については1年の期間を定めなければいけないというので毎年結び直すことになっています。毎年少なくとも36協定を結び直さなければいけないので、毎年選出をして、毎年労使協定を結ぶ。その選出のときには、一般的にはこういうメニューで労使協定を結ぶということで選出してくださいということまでは明らかになっていますが、我が事業場で今どういう協定が結ばれていて、それは期間の定めがあるものなのか、ないものなのか、そして、今回その中でどれを結び直すとか結ぼうとしているのか分からないまま選出し、選出された当事者も分からないで、会社のペースで判子を押すということが多いので、その選出手続の中で、まず、労使協定で期間の定めがなければいけないものと期間の定めがなくてもいいものを明確に位置づけて、期間の定めがなくてもいいものについても、別に期間の定めを持って労使協定を定めてもいいので、そういうものについてどうなっているのかをきちんと現場で認識させて、選出をして、締結手続に向かわせることのほうが私は大切だと思います。そこを整理することで、議論の実質化に部分的には資するのではないかと思います。
2の④は過半数代表者への支援ですが、これは実は1の①過半数組合にも部分的に関わってくるかもしれませんが、事業主、使用者として、この過半数代表者とか過半数組合にどこまで支援をしていいかということについて、現場では、労組法上の便宜供与との関係で、やり過ぎてはいけない、やってはいけないのではないかということと、労基則で配慮をしてくださいと書いてあるところの線引きが実は分からないということで、例えば、お昼を挟んで会議をするときにお弁当を出していいのかとか、交通費を会議まで来るのに出していいかとかいうことに対する、これをやったら便宜供与になるのではないかとか、労組法上認められていないものについてどこまで有給保障で活動させていいのかということがありますが、これは少なくとも過半数組合もしくは過半数代表者として、労使で話し合って企業全体としてのルールを決めるものなので、労働組合が独立してやっていることとはまた別の労基法等の中で結ぶための手続なので、どこまで事業主として過半数組合もしくは過半数代表者に便宜を与えることが労組法や労基法との関係で許されるのか。その許されることと、かつ、これは配慮してあげたほうがいいよねという望ましいことを少し整理したほうがいいと思います。
実務上はかなり抑制的な対応で、あまりやってはいけないよねという意識で、配慮を行わなければならないといってもどこまでやっていいか分からないという状況にあるので、それを整理したほうがいいのではないか。具体的には、会社の中のルールをつくるための活動なので、有給で活動保障をしてあげる。場合によっては、先ほどお話もありましたが、意見を吸い上げるような活動も有給で勤務時間内に行うことを積極的に認めてあげましょうとか、あと、企業のイントラネットとかホームページの中で、実際にどういうことがテーマになっていて、どういう話合いができました、そこに場合によっては従業員からの声を吸い上げるようなページをつくって、その意見集約、民主制に資するようなことを使用者が認めてあげるということは、恐らく労基法の趣旨からは、やってしかるべきものだと思いますが、そういうことも積極的に明らかにしてください。
そういう形で民主的な話合いが、仮に1人しか代表者が選ばれていないとしても、そういうところの中でコミュニケーションを促す支援を使用者として積極的にやってくださいということをちょっと整理して、違法ではないですよ、むしろやってあげたほうが望ましいですよという具体的なメニューを示してあげることが必要だと思います。さらに、外部専門家の支援というところで、実際には孤立して判子を打つかどうかという状態になっていて、法的にインフラを整備していった中でも外部の専門家の支援ということが大切だと思いますので、少なくとも情報面で、例えばこれは労働委員会になるのか、社会保険労務士の専門家の方々になるのか、これは押し付けたら駄目ですが、過半数組合もしくは過半数代表者が専門家の意見を聴きたいという場合には、聴けるようなチャンネルを用意してあげて、サポートをすることを公的に支援するということも1つ大切ではないかなと思います。
差し当たり以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 ありがとうございます。
まず、1の労働組合による労使コミュニケーションについて、労働組合を一方の担い手とする労使コミュニケーションを活性化する、この方向性には私も賛成です。特に例えば今年1月のある記事を見ると、アメリカでも様々なところで労働組合の活動が今活性化していて、大幅な賃上げを勝ち取ったとかいうことが報道されたりもしている。こういう中で、労働者をきちんと組織して、かつ、その記事で見た話だと、1人の人が何十年間もトップをずっと占めているような、ボスがいるようなものではなくて、きちんと民主的に選ばれた組合によって労働条件の改善のための取組が行われるというのは、とても望ましい方向だと思っています。
その上で、先ほど活性化をするといったときに、法律で対応するのはなかなか難しいだろうと、政策的にといった話がありましたが、ここについて幾つかお話をしたいと思います。まず、労働組合というのはどのように組織されるのかといったときに、教科書を読んだ程度の理解で申し訳ないですが、私の理解では、労働者が主体的に形成するものであって、もちろん差別的なことはできないけれども、仲間にする人たちは自分たちで選べるということです。そして日本では複数の組合が同じ会社の中にあったり、少数組合もあったりするわけですね。また、現在では外部の合同労組、ユニオンへの加盟など、多様な組合活動が行われているという現状があります。
この中で、組合を一方の担い手といったときに、過半数組合が力を持っていること、また、それのみをすばらしいことと考えてしまってよいのかというのは、少し疑問もありました。この辺り、どのような形で組合が交渉力を持つことが望ましいのか。過半数だと企業に対して交渉力を持つというのは確かにそのとおりなのですが、少数の意見を持つ方の意見がきっちり代表されるのかというところについても手当てが必要かと感じております。
その上で、②の過半数労働組合を生かした制度設計というところで、過半数労働組合があることによって、会社側にも交渉相手が明確であるといった点で、例えば利益があるとなると、先ほど政策的に労使コミュニケーションの支援と活性化という話がありましたが、企業が例えば過半数組合ができることについて支援をするなどとなったら、それはそれで不健全な気もしていて、労働組合が力を持つことについて、どういう形でうまく実現していくのかということは考える必要があるかと感じました。
続いて、2の過半数代表者の仕組みについてというところです。過半数代表者の選出の方法について、先ほど水町先生からも御説明がありましたように、不信任だという人がいないという形ではアウトなのですね。積極的に過半数の人が賛成しないと過半数代表者は選べないというルールだと、それをきっちりこなせている事業場がどのくらいあるのかというところには、かなりの不安を感じるところであります。
そんな中で、明確に過半数の人が過半数代表者をしっかり信任したと、投票していないとアウトとなったとすると36協定を結べないとか、様々なところで労使の協定などができないということになると、やはり過半数組合があることが企業にとっても有利だということにつながるのかなと感じています。
というわけで、最初の話の過半数組合の役割をどのように考えて、また、少数の人の立場をどう守っていくのか、この辺りをよく考えていく必要があると考えました。
続いて、②の複数選出についてです。私も複数選出について前向きなというか、賛成、推進する立場からこれまでいろいろ発言をしてきましたが、義務化ということは考えていませんでした。あくまで複数をチームとして選びたいと過半数の労働者が言ってきた場合に、会社側はそれを拒否できないとするべきではないかと感じています。1人の人を選出して、この人が代表者ですというのだったら、それでも結構だと思っています。
あとは、これも先ほど水町先生からあった話だと思いますが、会社側が名簿、リストのようなものを提供しないと、そもそも誰が今投票する権利がある労働者なのか、労働者側も把握しづらいのではないかといった点がありましたが、その際に、雇用契約がある人は短期的なアルバイトであろうと全員その分母に入るのですよということをきっちり周知することは重要かなと思います。例えば私が働いているような大学という組織でも、教員、職員だけではなく、ティーチング・アシスタントの学部生のような者も大学に雇われて短期間でも働いているわけで、この人たちも過半数代表者選出の際の有権者になるといったことがきっちり認識されているのかというのは、よくよく確認が必要かなと思いました。
続いて、何人かの委員から話があった、チーム制になった場合に半数改選というのは私もとてもよろしい制度かと思っています。私が住んでいる区分所有建物、マンションでも、それまで理事会を構成する理事が毎回新たに選ばれていたのを、半数改選制で2年を任期という形にして情報が引き継がれるようにしました。それにより管理会社とのやり取りで、前にどういう協議があったかということが引き継がれる、交渉の中身なども継続性を持つ、知識なども伝達されるといった点でメリットがあるかなと感じています。
ということで、過半数代表者という仕組みも可能なのですよということをまずは伝える。別に義務化する必要はないと考えていて、かつ、加えて注意点も、こういう点には注意が必要ですよということを公表、周知することが重要かと思いました。例えば、案件ごとに対応する代表者が違うといった仕組みはあまり適切ではないのではないか。この案件は私がやります、あの案件はといったものではなく、その過半数代表者がチームとして行動して、1つの意見を持つように議論をしてから交渉するとか、企業に向き合うことが必要かと思っています。例えば特定の案件を複数の人がやりたがったりとか、また、チームの中で人数が偶数だとなかなか決めづらいであるとか、細かいところはこれからと思いますが、この過半数の決め方であったり、うまい運営の仕方について情報提供が必要かなと感じています。
続いて、任期付きの話です。私は、現行のルールではこの任期付きというのは認めていないと理解していたのですが、これも任期付きにすることを義務化するわけではなくて、そのような選択肢も可能としてはどうかと考えていました。その上で何らかの制約をつける。例えば任期付きにしたとしても、1年を超えない任期にしないといけないといったような形で、定期的にきっちり労働者の過半数の意思が表明されているということが必要かと思っています。
ただし、この点で難しいのは、仮に1年を超えないという上限を設けたとしても、人手不足で労働者が入ったり出たりというのが激しいような企業を考えたときに、ある時点で、選出が行われてから例えば半年後の段階で、誰が今の過半数代表者に賛成の投票をしたのかは分からない。当初は過半数の人が投票したのだけれども、それから例えば4割の人が会社から転職していって、また別の人が入ってきたような入れ替わりが激しい場合に、4か月前とか半年前とかに過半数を取った代表者が現時点の人にも支持されているかどうかということは確認できないのではないかといったことを考えたので、この辺りを任期付きとしたときに発生し得る問題として同時に考えておく必要があるかと考えています。
私からは以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
島田先生、お願いします。
○島田構成員 ありがとうございます。
これまで先生方で、過半数代表者について複数選出で、任期もついた常設の労使委員会のようなものを想定されているのかなということを伺っていたのですけれども、その場合だと、過半数代表者を複数選出して、例えば任期をつけて常設のような形にしたときに、今の制度だと途中から過半数組合が現れた場合にどうするのかとか、そういった整理も必要になってくるかなと思います。いきなり複数代表も可能、任期付き、常設のようなものをイメージするのは、すぐには難しいかもしれないですけれども、今のアドホックに議題ごとに選出するという形のまま、ただ、1人ではなくてもいいのですよと、複数アドホックに選出するのでもいいのですよという選択肢を示すのであれば、特に法改正も不要だと思いますので、まずそこから、複数代表というか複数選出も可能ということを示すところから始めるのでもいいかなと思います。
また、従業員間の意見集約をするにしても、やはり情報が必要かなと思いまして、過半数組合であれば団交等を通じて情報を引っ張ってこられるかもしれないですけれども、そうでもないという場合には、やはり必要な情報が出てこないということも考えられますので、内部のコミュニケーションを活性化するためにも、ある程度使用者からの情報提供や説明義務を課すようなルールをつくったほうがよいのかなと思います。
過半数代表者は拒否権を持っているとしても、結局、判を押すだけという実態も多いかと思いますので、実質的な議論をするために、36協定であればこういう情報を出さないといけないとか、そういったものをどこかでルール化して議論を促すという可能性もあるかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生、お願いします。
○山川構成員 ありがとうございます。
1の労働組合による労使コミュニケーションのところは、労使コミュニケーションは非常に多様であると思います。実体的なルールのカスタマイズのほかに、手続的な関与ですとか情報共有というようなこともありますので、広めに見ることができて、ただ、そこは中長期的な課題と目下の課題ということになり、恐らく過半数代表者が目下の課題に位置づけられているのかなと思います。
2の過半数代表者の仕組みですけれども、委員の先生方から非常に様々な論点が出されて、基本的に同感ですけれども、まず、現行法について必ずしも明確でない部分もあって、いろいろ洗い直しないし整理をする必要があるのかなと思います。例えば労働基準法施行規則の第6条の2では、前も申したかもしれませんが、法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票とかの選出手続が求められており、つまり、どういう協定等をするかを明らかにした上で選出されなければいけないということがあって、これがどのくらい適切に実施されているのかというのは必ずしもよく分からない。少なくとも自分ではよく把握していないところでありますし、それから、先ほど水町先生もおっしゃった労使協定の問題というのもいろいろ出てくるように思います。当事者の任期ですとか、効力ですとか、解約の問題ですとか、こちらも古い通達も含めるといろいろあるのですけれども、必ずしも包括的に整理されていないような感じがいたします。複数選出の問題を考えるには、その辺りから考えることも必要になりますので、やはりそこはいろいろなことを考えた上でという課題になるかと思います。
もう一つは、前も申しましたけれども、労使協定は、労働基準法第106条で就業規則と同様に周知義務の対象になっていますので、これも協定が重要であるということになってくると、より意味も大きくなってくるかと思います。就業規則については、最近の通達の明確化で、どこに置いてあるかが分かることを明確にしなければいけないということがあって、たしか労使協定についてはその通達が及んでいなかったような気がしますので、どこかに置いてあるけれども、どこに置いてあるかは分からないということでは足りないようなことを明確化して、見ようと思えばどこにあるかが分かるように、労使協定もより開示ないし周知を実質化してはどうかと思います。
あと、④の支援についてですが、意見集約等を有効とするためにとありますが、そもそも過半数代表者が意見集約をすべきだとかいうこと自体があまり明らかにされていない感じがします。これはやはり組合に比べると、意見集約の機能というのはなかなか難しいところかなと思いますけれども、そもそもそれが期待されているということであるとすると、それはよりクリアにしてもいいかなと思います。ただ、そのためにはその実施への配慮が重要になってきて、現行法の労基則でも配慮の努力義務、理念規定のようなものはありますけれども、これをより具体的なものにするということはあると思います。
また、不利益取扱いの禁止は、先ほど御意見がありましたけれども、これも強化するということがあってよろしいかなと思います。
とりあえず以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
神吉先生。
○神吉構成員 先生方からの御意見を非常に同感しながら伺っておりました。今、山川先生がおっしゃったように、そもそも労使コミュニケーションの指すものがかなり抽象的ですし、非常に幅広な概念で多様なものを含むのだと理解しております。これを大まかに2つに分けたとき、現在改正について議論している労基法に代表されるような強行法規で定めている最低基準としての労働条件を上回るような労働組合による労使コミュニケーションであれば、従来のように労働者の自主性であったり自発性を大事にしていくという方向になるのだろうと思います。そうすると、1の①にあるような労働組合の活性化については、活性化するような義務を課すというのは、やはり原則としてなじみにくい、そぐわないということになるので、政策的な後押しという選択肢になるという方向性かと思いました。
一方で、過半数代表者、特に問題として2のところで挙がっているのは、コミュニケーションのもう一つの側面であるところの、強行的な労働条件の定めを集団的な意思を尊重するということでデロゲーションする側面をどういうふうに手当てしていくかの問題です。実際には各事業場の集団的な労使の意思を尊重してカスタマイズすることがデロゲーションの正当性を基礎づけていたと思うのですけれども、実際には過半数代表者は個人であって、集団的な意見集約の実質が欠如していると。その欠如に対する手当てが必要なのではないかというのが、2の改善方法の位置づけになるのだと思います。
そのような理解に基づくと、まず、選出手続、それから複数選出などについては、現行法下で可能な選択肢を改めて整理、提示するだけでも非常に意味があると考えます。
また、2の③の任期付きとするかに関しては、その前提として、水町先生が御指摘されたように、労使協定の有効期間が非常に曖昧であることに対する手当てが必要であるという点に賛同いたします。何を協議するのか、それがいつまで続くのか。36協定だと1年で見直しが明確かもしれませんけれども、休憩の一斉付与の原則の例外だったりすると、かなり古いものがずっと使われているかもしれません。それはそれで問題ないのかもしれないのですが、現在有効な労使協定として何があって、過半数代表が何を議論していくべきなのかを明らかにする手続を明確にすることは有効であると考えました。
また、④は私も非常に重要だと思っております。過半数代表者、過半数組合も含めてなのですが、過半数代表の意見集約の義務といいますか責任、職務の内容かもしれませんが、そこが定められていないのは先ほどの山川先生の御指摘どおりだと思います。私の理解では、もともと過半数代表の結ぶ労使協定は強行規定の規制解除効と免罰効を持つことがかなり強調されてきた、つまり、労働条件を設定するものではないという建前が大きいためではないでしょうか。
けれども、実際にはデロゲーションとしての位置づけだけではなく、中身をみれば、特に時間外労働については労働条件を積極的に設定する機能に実質的にはかなり近づいている。法的には労働条件の設定そのものではなくても、時間外労働をどこまでさせられるかについての重要な枠組みを設けるものでありますので、そういう役割の変化を正面から認め、その位置づけを過半数代表者の職務と併せて明確にすべきだと思います。
それを真面目にやれば労力も時間もかかるので、水町先生がおっしゃったように、できれば有給で時間的な支援、過半数代表者の職を果たすためのタイムオフとか、それが便宜供与などには当たらないとする仕組み、それから、会社の持っている情報へのアクセス、あるいは意見集約のための各事業場の構成員にコンタクトを取るためのアクセス保障なども必要になってくるでしょう。36協定や特別条項を定める場合に、前提として、実際には誰がどれくらい時間外労働しているのかといった情報を基に考えたくても、現在、過半数代表者が欲しいと言っても、必ずしも提供が保障される状態にはない。そういった権利保障などが今後問題になってくると考えます。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
安藤先生、どうぞ。
○安藤構成員 ありがとうございます。
先ほど発言を忘れてしまったので、④の過半数代表者への支援について1点コメントというか、お話をさせていただきます。
そもそもこの支援をする相手方、対象者は誰なのかということがまだ不明確な気がしております。例えば③であるような任期付きなどでなく、案件ごとにアドホックに対象となる過半数代表者を選んでいる場合を考えましょう。ここで正当なやり方をするなら、「私はこういう考え方を持っています」みたいなことを公表して、または既に労働者からの意見集約をした上で、「私はこういうことを言いたいです」と言って過半数代表者に手を挙げる。そして、その人が信任されたとすると、過半数代表者へ支援するのではなく、これから過半数代表者になろうとしている人が情報集約をすることへの支援になるのかと思います。
そうではなく、とりあえず過半数代表者を選んでしまって、その過半数代表者となった人が、それから労働者から意見を聴いて、では、我々はこういうふうに意見を出しましょうという順番でいいのか。特に過半数代表者になりたい人が複数いるような場合には、私たちは労働者の意見をくみ取って、こういうことを主張しますといったことを事前に言っていることが必要なのではないか。
こう考えていくと、仮に任期付きなども含めて、過半数代表者に今なっている人がいたとして、その人への支援だけで足りるのか。これから過半数代表者になりたいと考えているような人に対しても、ここで教育研修、キャリア上の取扱い、費用負担、外部専門家の支援などを同じような条件で提示しないと、それはそれで問題があるのではないかといったことも感じました。
というわけで、過半数代表者への支援についてと④で書いてしまうと、現在アドホックに選ばれた過半数代表者の人が選ばれてから支援を受ける形に限定されるように聞こえてしまうのですが、ここで本当に求められているのは、過半数代表者になり得る人に対して、どのような内容、どの程度の支援を行っていくのかといった形なのかなという点が少し引っかかっていて発言しました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
多様な意見をいただきましたけれども、次の4ページの論点と係わるところもありますので、そろそろ次の4ページの3、4、5の論点について御議論いただければと思います。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。
大きく2点あります。1つは、フランスでマクロン改革が行われたときに、前にもちょっと申し上げたかもしれませんが、中小企業においても民主的な協議を促していって、労使でコミュニケーションをとった上で社会の変革に対応していこうという改革がなされたときに、何がなされたかというと、複数あった従業員代表機関を、社会経済委員会というものに一本化して、中小企業にもそれを広げようというので、制度をシンプルにしながら規模の小さいところにもそれが及ぶようにしようという改革が行われました。そのような経緯から照らした場合に、日本で労基法上の過半数代表者、過半数組合の話を今している中で、3のところで労使委員会、労働時間等設定改善委員会というのがありますが、法令上、労働安全衛生法とか、さらには労働時間等設定改善法の中に、企業の中で民主的な協議をしながら法令上の重要な決定をしてくださいという制度が並立している中で、労基法上の労使委員会もしくは過半数代表組合、過半数代表者の制度と、そのほかの法律との制度を、将来的には、基本的に統合していって、大切なものは労使でここで民主的に話し合うんだというシンプルな基盤をつくることによって、複数の法令ごとに乱立しているのではなく、重要な労使の話合いの拠点をつくっていくという形で、制度の集約なり一本化なりをしていくという発想が大切なのではないかと思います。
5ページで労使コミュニケーションのイメージ図が描かれていますが、恐らくここで描かれていることは、例えば労基法上の過半数代表者という制度をこういうふうにアレンジしてやったとしても労基法違反にはならないというもので、現行法でもできるのだけれども、こういうふうにやっているところはあまりない。実際上は、労使委員会とか労働安全衛生委員会とか別の形で運用されていることが多いけれども、最終的には中小企業も含めて労使で実質的な話合いができるようなもの、民主制の基盤をどうつくっていくかという視点から、少し制度の統合を検討して、将来の労使コミュニケーションの像で、現行法で何ができるか、現行法でできないところは何なのか、将来的に法改正をしてどういう方向性に向かっていくのかというイメージをしながら、労使コミュニケーションの基盤を考えていったほうがいいのではないかというのが一つ。
もう一つは、4番の事業場単位の法適用との関係の前提としての事業場概念。そもそも労基法上の事業ないし事業場が適用単位となっていますが、この事業とか事業場というのは、場所を基本に考えるということが通達で決められていますが、特に労基法とか施行規則上、この事業とか事業場をどう観念するかというのは必ずしも明確になっていない状況の中で、今はもうデジタル化が進んで、場所がない働き方とか、場合によっては場所のない事業、法人というものも出てきていて、パソコンとクラウドはある。そこの中に事業の情報は全部詰められているけれども、パソコンはどこに行くか分からない中で、働く人もパソコンがあって、会社もパソコンがあるだけで、最終的に場所はどこなのかというなかで、法人として登記している場所はあるけれども、それが事業の場所とか働く人の場所とは必ずしもリンクしていないという働き方が実際に出てきていて、今後そういうものが増えていく中で、この事業場概念自体をどう考えるかということを、今は通達レベルでなっていますが、これを法令上もう少しきちんと定める方向で対応していく。その中で、労使コミュニケーションの在り方を将来どういうイメージの中で具体化していくかということも間接的に関わってくるのではないかと思います。
差し当たり以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
首藤先生。
○首藤構成員 2点お話ししたいと思うのですけれども、まず1点目、今、水町先生がおっしゃった場所のない働き方というところで、確かにテレワークが進んでいくと、出社する場所がないという状況が起こり得ると思っています。ただ、企業で雇われて働いている場合には、多くの場合というか、ほとんどそうなのではないかと思いますけれども、必ずどこかに属しているのではないかと思います。組織の中の事業ごとなのか、部署なのか分かりませんけれども、所属しているところがあって、そこがこの事業場というようなものに現実としてなっているのではないかと思います。そこが東京都の千代田区というような具体的な場所になるかどうかというのはまた別かもしれませんけれども。その事業場の中で、どういうふうにせよコミュニケーションを取りながら仕事をしているという意味では、私は、テレワークが進んでいくことによって本質的にコミュニケーションの在り方を抜本から変えていかないといけないことになるのかどうかというのは、少し慎重に見ているところがありますというのが1点目です。
もう一点としましては、集団化についてなのですけれども、集団化については確かにこちらでも書かれているように、まとまって協議、議論することによって、労働者同士がいろいろな刺激を与え合ったり、情報共有できたりするというようなメリットがあるということはあり得ると思っています。ただ、労使のコミュニケーションという点からみると、そのメリットよりもデメリットのほうが大きいと感じています。
デメリットは2点あると思っていまして、1つはやはり形骸化の問題です。ただでさえ過半数代表者の場合には、すでに形骸化しているということが今の議論でもあったところですけれども、これがより大きな集団になったときに、より発言が難しくなるのではないかという点を懸念します。例えば事業場の中で、5ページの図を見ていても、労使協定の中で、A事業場の過半数代表者は、事業場の中の労使のコミュニケーションのみならず、本社の使用者とコミュニケーションを取るというようなときに、本社の人事の担当者なのか、会社のトップなのか分かりませんけれども、どこまで発言が自由にできるような環境にあるのかというところは少し疑問を抱いています。
もう一つは、やはり現場の声の反映がすごく難しくなるのではないかと思っています。先ほど過半数代表者の中でも36協定をどう結ぶかというときに、情報が重要だというのが様々な先生方から出ていました。結局、誰がどれくらい長く働いているのかというようなことに即して36協定を結びたいと考えると思うのですけれども、本社で集団化していく中で、そういった現場の実態がどこまで反映できるものなのだろうかというところが、やはり私は課題だと思っております。確かにメリットもあると思いますけれども、デメリットがかなり大きいのではないかと感じています。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
山川先生。
○山川構成員 ありがとうございます。
それほどたくさん意見があるわけではないのですけれども、3の労使委員会等の活用についてそれ自体ではないのですが、労使委員会等は、日本の場合は労働者の選出した委員、それから使用者の選出した委員という労使共同の委員で決議をする形になっていて、これまでの議論の複数代表者ということを考える場合には、労働者側がある種の委員会をつくるということになり、その場合は決議ということではなくて、使用者側と何らかの協定を結ぶということになって、その辺りの仕組みの違いが出てきそうな感じがします。これは将来的なお話ですけれども、国によってその辺りの仕組み方も違いますので、それがどういう影響を与えるかというのを考える必要があるかと思います。
4については、これまでのお話の中でメリット、デメリットは確かに種々あるかと思います。5の図を見ていて考えましたのは、今でも成り手がないというのは御指摘があるところで、このような方法をとると日程調整が大変だろうなという感じをしているところです。そうすると委任状を出すみたいなことができるかどうかということも別途検討する事項として出てくるのかなという感じがします。また、こういう形で実施すると、配慮ということもさらに重要になってくると思われます。
例えば5ページ目の労使委員会の真ん中の図ですと、各事業場から選出した労働者代表と本社の使用者で構成される委員会で、これで例えば4分の3の決議というのを考える場合には、現行法を前提にする限り、各事業場の労使委員会が観念的に存在して、そこの4分の3でないと、欠席した人等も含めて全体の4分の3では足りないことになるかと思いますので、その辺りの整理も必要かなと思います。
いろいろ考えてくると、かなりのリーガリズムというか、法令で相当細かいことを考えないといけないということが、今日のテーマ全体に関わってきて、それはかなりの課題になりそうな感じがいたします。
とりあえず現行法の解釈としてどのくらいできるのかということは明らかにすることが必要ですが、いろいろ考えると、やはり組合がある場合とない場合とで、いろいろな意味での整備の必要性が違ってくるということを今回の資料を見ると実感するところがあります。
以上です。
○荒木座長 事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 今、山川先生からあったお話に関して補足でございますけれども、5ページの絵でございますが、その下の段です。労使協定の部分に関しては、この図のイメージでいきますと、それぞれの事業場ごとに労使協定を結ぶという原則は変えないということでございますので、例えば事業場Aでしたら、Aの過半数代表者がいて初めてAの協定が結べるということになろうかと思います。現行法で過半数代表者が自分の権限を委任するというのは想定されていないので、規定はありませんが、基本的にはできないということだろうと思います。
労使委員会のケースですが、これは先生がおっしゃったとおりで、それぞれの事業場の労使委員会は、それぞれに法的に立っているという前提でございます。ですので、この場合ですと、全体での決議というものは存在せず、例えば一番左の事業場で決議をするということであれば、X、Y、Zと1、2、3の中での決議ということになります。
○山川構成員 ありがとうございます。
左の図の労使協定の話もおっしゃるとおりだと思います。その場合に、現行法の解釈でもたしかあったと思いますけれども、労使協定が1通の書面で締結された場合でも、観念的には、この図で言いますと5つの協定が形式というか性質としては並存しているということで、それぞれの代表者の記名捺印や署名とかが必要になるという理解でよろしいでしょうか。
○荒木座長 うなずいておられますが、よろしいということですね。
○労働条件確保改善対策室長 そのとおりです。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
前半の議論も関係するかなと思って、少し先生方の御意見を伺いたいのですけれども、労基法が予定しているデロゲーションの仕組みは、法が定めた最低基準があって、これからの逸脱に対して、刑事罰が科されない免罰効、それから強行性を解除するという効果が認めるというものです。そういうデロゲーションの効果を過半数組合、それがない場合は過半数を代表する者との協定があれば認めるという仕組みです。ですから、労働組合と使用者の団体交渉で労働条件をどう引き上げていくかというものとは性格が違うのだということでこれまで考えてきたのだけれども、しかし、法定最低基準を再設定する、カスタマイズするということですから、もちろん労働条件には関わってくる。そうすると、それが適切にカスタマイズできているか、できるような仕組みにしなければいけないのではないかということで議論しているということだと思います。
そこで、そういった過半数代表者との協議が実質的であるということが非常に重要だという御指摘がありました。協議の場に出てきたときの協議が実質的かということも重要なのですが、例えば過半数代表者の複数選出なども議論したのですけれども、これは労働者側で使用者側が提案した内容にどう対応するかという労働者側の中での議論が実質的であることも非常に重要だろうと思います。これが単独の一人の人が自分で考えるということで十分なのか、それとも誰か相談相手があって、どう対応しようかということで態度を決めることができるかどうかというのは、かなり質が違うのかなという気がいたします。
それから、これも前半の任期制の関係になるのですけれども、どういう問題について過半数を代表する者を選任するかということを示して選任されなければいけないのですが、その時点では、実は使用者側が、例えば36協定で何時間の時間外労働を提案するかというのを提案していない中で選ぶのが通常ではないかということがありますので、それに対して、自分はこれに対してこういう態度で臨むんだということを表明して選挙するとか、そういうことに普通はならなくて、36協定を締結するので過半数代表者を従業員は選んでほしいということになるかと思います。
というように、全てのデロゲーションの仕組みは使用者側のほうで必要があって労使協定を結びたいのだけれども、過半数組合があれば過半数組合、なければ過半数代表者を選んでくださいということになりますので、選ばれた後に選ばれた人がどう対応するかを議論するという仕組みになってくると思います。なので、それからのその人たちが自主的な判断ができるような仕組み、サポートというものが重要なのかなという気がいたしました。
それから、これも前半のことなのですけれども、現行でも過半数代表者というのは、選出のときに過半数から支持されているということが要件になっているのですが、例えば36協定を結んで特別条項がさらに必要となるといった場合は、現行どういう対応をしているかということについて、事務局から、少し御説明いただくことは可能でしょうか。
○労働条件政策課長 36協定の特別条項を結んでいる場合に、これは義務というわけではございませんが、多くの場合におきましては、特別条項を発動する際に、過半数組合ないしは過半数代表者に対して一定の通告なり協議をするという手続を課している場合が多いものと認識しています。
○荒木座長 その場合には、36協定を当初締結している人がいると思うのですけれども、さらに特別条項について選出をし直すということではなくて、選ばれた人と協議をしているという実態なのでしょうか。
○労働条件政策課長 基本的には、協定を締結した相手方である過半数組合または過半数代表者に通告なり協議なりをするものだと理解をしています。
○荒木座長 先ほど水町先生から、協定に期間の定めがあるかどうかということと任期というのは、かなりリンクをして考えられるのではないかという重要な御指摘がありました。任期制の問題がなぜ出てくるかというと、自分が過半数代表者として締結した労使協定が、労使協定を締結した趣旨のとおりに運用されているか、これを誰かがやはりウォッチ、モニターしなければ、結んだきりであとは知らないということでは問題だろうということが基本にあって、議論がされたのではないかと思います。
そういう意味では、現行法上は、過半数代表者というのは、選出の時点における過半数の支持があるということなのですけれども、しかし、一定の期間存続する免罰効や強行性解徐効を発揮するような協定を結んだという場合に、誰かがきちんとその協定が趣旨どおりに実施されていることをモニターする仕組みが、現行法上は何も対応されていない状況は問題で、とりわけ最近では健康確保措置について労使協定や労使決議で定めることになっておりますが、それがきちんと守られているかということは大変重要な労働条件にもなりますので、それが適正にワークするための仕組みにすることは重要な課題ではないかと思いました。
ということで、どういった法制度が過半数代表者に委ねられているかという制度の仕組みのつくり方と、制度がきちんと回るような過半数代表者はどういった立場に置かれている人であるべきかは双方リンクしているので、両方を見ながら議論するということが先生方の議論の中からも課題として指摘されているのではないかとお聞きしたところです。
水町先生、どうぞ。
○水町構成員 今の荒木座長からのお話について2点だけコメントをさせていただきたいのですが、過半数代表者は、選ばれて初めて過半数代表者になるという役割が始まる前の選出過程においてどうかというときに、実際上、私が所属していた事業場では、例えば選挙の公示があって、過半数代表者候補として立候補するときに、こういうことで臨みたいと思いますということを立候補者として述べた上で、複数立候補者が出ることもあるかもしれないし、1人だったら信任投票みたいになるかもしれないし、そういう場合に実際上は、今ある36協定とか、今ある変形労働時間制等について、これがいいと思っているのか、修正点があるのかとか、そういうことについて皆さんの信任を得ながら協議していきたいと思いますということを示す人たちもいらっしゃって、そのことを否定することは民主制の観点からはふさわしくない。労基法の民主性を確保する趣旨からは、そういうことも視野に入れた制度設計が必要かと思います。
もう一つ、任期を定めることも考えられると思いますが、任期を定めた場合に、1年を超える任期を定めることが実際にできるかどうか。36協定は1年でやらなければいけないというときに、任期3年とか5年といって、3年の任期の人がずっと同じものにサインをしてしまうということが、36協定の任期を1年としたものの趣旨との関係でどうかというのがあって、例えば任期を定めるのだったら1年ということになるのかもしれませんが、その場合、例えば任期途中で退職されたりいろいろなことがあって企業内に存在しなくなった場合に再選挙をしなければいけないのかとか、あと、被選挙権との関係で、1年後までにいない人は被選挙権がないのか、期間の定めのある労働契約の労働者の地位との関係でいろいろな問題が出てくるので、特に任期を定めずに選出しておいて、そのウォッチする役割は、事実上その人が負うし、使用者側の支援というところで、そういうものについての情報提供等の支援を実際上していきながら運用することも考えられるのではないか。制度設計上どちらを選択するかという問題で、どちらにしなければならないというものではないのかなという気もします。
○荒木座長 御指摘については全くそのとおりだと思いました。
首藤先生。
○首藤構成員 今の荒木座長のお話は、私も共感しながら聞いておりました。これから多分、労働時間の話に入って、デロゲーションの話に次回以降なると思うのですけれども、結局、労働規則をデロゲーションできるというのは、ある程度自立的に働く労働者であったり、自律的な判断ができるということを想定されているのではないかと思うのですけれども、今日の議論をいろいろ聞いていますと、過半数代表者の選出もそうですし、意見集約も、協議も、さらに任期と運用の問題もそうだと思うのですけれども、非常に多くの課題があるということを改めて実感したところです。成り手もなかなかいないというようなことも何度も出てきていますし、十分な労働法の知識を持っていないというようなことも言われていたりするわけですけれども、こういった状態の中で、労働者は自律的な判断ができているのかと考えると、デロゲーションを議論することの危うさを強く感じるところではあります。
本当に自律的に判断を下すような労働者を想定して、議論していいのだろうかと。だから、それを促すような仕組みをきちんとつくるということは、早急に取り組まなければいけない問題だと改めて思った次第です。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 先ほどの説明を若干補足させていただきたいと思います。
36協定の協定事項として省令で定めておりますものとして、いわゆる特別条項発動のときの手続を定めてくださいということは書いているところでございます。その手続に関しまして、基準局長通達で何を書いているかということを補足いたしますと、締結当事者間の手続として、協定を締結する使用者及び組合、過半数代表者が合意した協議、通告、その他の手続を定めなければならないものであることとしていますので、基本的には協議か通告を想定していますが、その他のものが一切認められないということまでを言っているわけではないということが現状の省令と解釈でございます。
それから、1点ちょっと資料の関係で先生方に御意見を伺えればと思っておりますことがございまして、5ページの図で申し上げますと、右下になりますが、就業規則の意見聴取につきましては、右上の図にありますように、従業員が10人以上の事業場が意見聴取の義務があるところでございますので、Fにありますように、10人未満事業場は現行、意見聴取の対象となっていないところでございます。これを仮に一本化というか、集団でいろいろ意見聴取することを考えた場合にも、現行法の解釈としていくと、Fの事業場は意見聴取をしなくていいということになるわけでございます。
ただ、就業規則につきまして、多くの場合においては、会社で1つの就業規則が等しく適用されている場合もあろうということを考えた場合に、このような取扱いについて現状どうお考えになるかということについても御意見を伺えればと思っているところでございます。
○荒木座長 事務局から問合せがありましたけれども、石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございました。
今の点も含めて、改めて5ページの図について確認をさせていただきたいのですけれども、議論をちょっと巻き戻してしまうかもしれませんが、こちらは、まず薄い青色で塗っていただいた形が、基本的に法律に規定されているとおりのコミュニケーションの在り方であるかと思うのですけれども、青色の網かけがかかっていないコミュニケーションの在り方というのも現行法上は認められているけれども、これらを推奨していくことについてどう考えるかみたいなところが、事務局の方でおまとめていただいた論点の整理という理解でよろしかったでしょうか。
○労働条件政策課長 御理解はそのとおりかと思っています。推奨とか、少なくとも下の白色のところにつきまして、違法であると明言したことはない形でございまして、現状このようなものが出てきた場合に、監督署で法違反であるというような指摘をすることはないということであります。
○石﨑構成員 ありがとうございました。
その上で、先ほど首藤先生がおっしゃられたところとも併せて、まずはこの点に関して意見を述べさせていただければと思うのですけれども、労使協定における左下の図のような方式での協定の結び方というのは、過半数代表者が一堂に会することによって、実質的にそこで協議ができるという側面と、他方で急に集められてもなかなか意見も言いにくいというような事実上のデメリットみたいなところの双方があり得るのかなと思っておりまして、私自身の理解では、この形でなければいけないということもないし、この形がより望ましいのかどうかというところは、ちょっとそういう意味では難しいところかなとも思います。
恐らくより重要なのは、こういう形を取るか取らないかとは別に、各事業場で選出されている過半数代表者同士のネットワークというか、お互いの情報交換みたいなことが可能になるような仕組みを整えていくことなのかなと思っておりまして、前半の配慮の議論とも関わるのかもしれませんけれども、最終的に締結する日にどういう形で集まるかというところは、恐らく両方あり得るのだろうと思うのですけれども、そこよりもその前の段階で、どういう労働者間のコミュニケーションがされるかというところがより重要なのかなと思ったところであります。
併せて、先ほど事務局の方から提起いただきました就業規則の意見聴取の問題に関しまして、確かに現行法ですと10人未満の事業場であれば代表を選出する必要もないし、このように意見聴取をする必要もないということになるかと思うのですけれども、ただ、文言の規定からは外れますが、直感的には、法人自体として十人未満というところはともかくとしても、そうではないようなところで、10人未満の事業場に配置された労働者の意見を聴かなくていいのかというところについては若干、本当にそれでいいのかという疑問も持つところでして、こうしたケースにおいて、F事業場の従業員の意見を、例えばE事業場の代表者がそこも含めて代表するみたいな形を取るとか、何らかそこは対応できないのだろうかという感触を私自身としては持ったところであります。
今の点とも若干関わるかもしれないのですが、過半数代表者は事業場ごとに選出するとしても、選ばれる代表者がその事業場に絶対に属していなければならないのかというところも、実はちょっと検討すべき部分なのかなと思っております。これは前半の任期制の議論とも関わるのかもしれませんけれども、仮に任期制の下で過半数代表者が選出されたときに、任期途中に別の事業場に移ってしまったというとき、改めて選び直すことになるのか、あるいはそれがいいのか、それとも、移ってしまったわけだけれども、元いた事業場のこともよく分かっているし、意見集約もできるから、引き続きその方にお願いするのがいいのかとか、あるいはさらには常設的な形で過半数代表者となっている場合には、その間、異動もできないみたいなことになってくるのかとか、そういったところも含めて課題になってくるような気がします。
そういう意味では、選挙する側はその事業場に所属する労働者ですけれども、被選挙者というか、選ばれる側が事業場に属していなければ絶対にいけないのかというところは要検討かなと思っております。ただ、だからといって特定の方があまりに多数の事業場を代表するみたいな話になってしまいますと、今度は逆にいろいろな意見集約とかの点で現実的に難しいというようなことも出てくるかと思います。恐らくそういう場合も一定の縛りはかけなければならないような気がしているのですが、この点はなお検討課題なのではないかと思ったところでございます。
私からは以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 5ページの図で先ほど事務局から御説明があった一番右のところについては、企業レベルでやって、労働者10人未満の事業場からも事実上、参加してもらって、意見を出してもらうということは望ましいことだと思いますし、そもそも上の事業場ごとに別々にやっているところで、労基法上は義務づけられていないけれども、従業員数8名の事業場からも意見を聴くということをやってもいいので、そのレベルの話かなと思いますが、それよりもより深刻なのは、今、労働組合のない企業、事業場において、過半数代表者とのコミュニケーションなり実質的な議論がなされたり、意見集約がなされているかというと、労働組合が過半数の労働者を組織しているところと、過半数を組織していない、例えば10%、20%しか組織していない労働組合があって、過半数組合がないところもありますが、少数組合でも存在する場合には、その少数組合の組合員もしくはそことコミュニケーションを取れる過半数代表者が選ばれて、過半数代表者だけれども、実質的にきちんと議論しているという例もなくはありません。
ただ、少数組合を含めて労働組合がないところで、本当に労働者の意見を吸い上げながら議論をして、情報提供を受けてやっているかというと、これは私が知る限りほとんどやっていない。労基法の民主制でデロゲーションという重要な役割を果たしている過半数代表者が、その労基法が想定しているような役割を実質的に果たしていないまま現状に至っている中でどうするかといったときに、例えば左上のところだと、個人で事業場ごとに分断化されて、判子を押しておしまいということが多い中で、本社に集めて、これは複数化の1つの方法でもありますが、そういう形で横の話とか、本社に集まるのだったら1回だけではなくて、1回目は説明で、2回目は判子を押しましょうかとか、2回、3回という会議体になっていくことも考えられるし、そういう形での実質的な議論を深める1つの制度的な選択肢として、企業単位になって1人しか選ばせないということは今回の制度の趣旨に合わないので、企業単位にして複数選んで、そこで複数の代表と協議をするという形での制度化を考えるか。それを、今労使委員会とか労働安全衛生法に基づく手続等でなされているものと、どういうふうに将来的に融合させていくかという視点かと思います。
実際上、現行法でも、一番左の事業場別とは別に本社単位でできるときに、私はこれを推奨したほうがいいと思うのですが、法令上、会社がこうやりましょうと言った場合に常に実現できるかどうかというと、例えばB事業場の過半数代表者は、いや、本社に行かずに我々はB事業場で単独でやりたいという意思を持ったときに、それを断れるかどうかということを法令上明確にして、多分断れるという制度にしないと、B事業場で選ばれた過半数代表者の地位というものがあるので、断ろうと思えば断れると。B事業場以外はみんな本社で集まって話し合うけれども、我々はB事業場で私1人で頑張ってやりたいというのであれば、その選択肢も認めつつ、逆にそれを明確にすることで、いや、本社全体で一本でみんな集まってやりましょうと、会社側もそう提案しているし、我々もその形でやりましょうと全員が同意しているのだったら、この制度の下で集まって、横で話合いをしながら、最終的には、例えば10事業場の10本の労使協定をそれぞれ別にサインをするかもしれないけれども、そういうやり方も適法だし、そういうことも想定しながら労基法上の制度の運営をしていきながら、将来の企業レベルで実質的な労使コミュニケーションが機能するような形での制度につなげていくという発想が大切かなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
首藤先生、どうぞ。
○首藤構成員 先ほど事務局から御提案のあった就業規則のところなのですけれども、就業規則をこの上の段の在り方から下の段の在り方にすることについてという話ですが、まず前提として、こういう意見聴取がきちんと機能していることを前提とするのかどうかという点があると思います。就業規則の意見聴取もきちんと機能していない職場が、私はすごく多いと思っています。労働者は就業規則の存在さえ知らなかったり、見たことがないというのはよく聞く話です。意見聴取がほとんど行われていないような実態であれば、上であっても下であっても何も変わらないと思います。まずそれをどう立て直すのかというのが最大の課題だと思っています。
次に、これが機能している職場においてはどうなのかと。機能している場合には、先ほどの水町先生のような御意見も確かにあると思います。ただ、私自身、一労働者として考えたときに、事業場のトップの人は多分知っている。トップというか、会社側の人は分かっているので、意見を出してほしいと言われたときに、もうちょっとこういうふうにしてほしいという意見を言いやすいかもしれませんけれども、本社の人事の担当者とはほとんど面識がなかったりする。そのような場合に、意見を出してくださいと、これは本社に集められて意見聴取するのか、メール等で投げられるだけなのか、いろいろなシチュエーションが考えられると思うのですけれども、初めて会った本社の偉い方にがんがん意見が言えるかというと、私は非常に躊躇するなと思うところであります。なので、形骸化することを懸念するという点があると思っています。
○荒木座長 ありがとうございます。
山川先生。
○山川構成員 ありがとうございます。
右下の図に関しましては、水町先生も先ほどおっしゃいましたけれども、刑罰法規であるわけですから、刑罰を科することは難しいと思いますが、望ましいというレベルで推奨することはあり得るかと思います。特に単体で意見聴取の際の過半数代表者云々があるわけでは必ずしもなくて、現実には36協定は大体の事業場には存在するので、過半数代表者は存在する。理屈の上では、その場合の過半数代表者は36協定の過半数代表者であるだけだということになるのですけれども、そこは現実に存在するとしたら、一層望ましいというのは強く言えるのかなと思います。
今の点と関連するのですが、これは研究者としての観点なのですけれども、労使協定というのをそもそも契約と考えるのか、それともその協定内容に同意をしたという事実を考えるかによって、いろいろな解釈が変わってくるような感じもいたします。例えば契約当事者が消滅した場合には、契約でしたら消えるのが普通だと思いますけれども、ある時点でそのときの過半数代表者から同意を取ったという事実だけ考えれば、その事実は変わらないということがありますので、その辺りの理論的な問題なのか、ひょっとしたら解釈、運用に影響を与えるのかもしれないですけれども、検討する必要があるのかなと思います。
あと、5についてもよろしいですか。あまり意見が出なかったかと思います。労働者個人の意思について。基本的な方向は、私は適切だと思います。個人同意だけのデロゲーションというのはなかなか現在の状況では難しいですし、原理的にもいろいろ難しいので、集団的合意プラス本人同意ということを、事項によっては、現在の裁量労働制とか高度プロフェッショナル制度とかにあるような制度をつくるというのは、多様性ということを今後より考えていくとすると、あり得るかなと思います。
これも研究者的な関心なのですが、現在、素の本人同意というのを裁判所は非常に厳しく判断して、自由意思による同意があったかどうかということをかなり厳しくチェックしていますので、デロゲーションでの本人同意というのは、そもそも労基法違反だから難しいという前提なのですが、仮に可能になった場合に、自由意思による同意という認定が、集団的合意が併存する場合にどう考えていくのかというのは1つの論点になるかと思います。非常に集団的同意が充実していれば、それは自由意思を担保するということがあり得るかもしれないし、不十分な集団的な同意だとそこがあまり機能しないかもしれないということで、これは厚労省で考えるよりは裁判所で考えていただくことかもしれませんけれども、1つの論点にはなり得るかと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
安藤先生。
○安藤構成員 5ページ目の資料で確認させていただきたい、御質問させていただきたいことがございます。
まず、労使協定の下側、本社の使用者と各事業場A、B、C、D、Eで労使協定を結ぶというこのパターンについて、一堂に会してA、B、C、D、Eの事業場の代表が本社の使用者と協議するようなことを前提としているのかと私が理解できるような御発言がこれまでにありましたが、現行で考えられているのは、労使協定の上と比較したときに、本社の使用者がAの過半数代表者、また過半数組合と協議し、また別の場所、別のタイミングでBとCといった、ばらばらのもののことをこれは指しているのかなとも思います。このとき一堂に会することには、横での情報交換というメリットもありつつ、首藤先生からあったのもここに当てはまるかと思うのですが、かえって話しにくくなるとか、ほかの人が話してくれれば私はいいやということになってしまわないのかといったことを考えたときに、労使協定の下のパターンで一堂に会することを求めるのか、それとも一堂に会さないほうがいいのかといった、この辺りの整理が重要なのかなと感じました。
あと、これは1点質問なのですが、一番右側、就業規則の話、上でも下でも同じなのですが、この事業場Fについては労働者10人未満なわけです。10人未満の事業場では就業規則を制定する義務はないわけですが、これをつくって周知して届出をすれば有効に機能すると考えていました。このとき、仮にA、B、C、D、E、Fとあって、Fだけ10人に満たないというときに、どのくらいの企業でここでは就業規則をつくらないぞと。ただし、就業規則をつくらないのだったら、8人、9人の労働者と個別にと同等の内容について明示的な契約を結んでいかないといけないはずですが、実態としてFみたいな労働者10人未満のところでも就業規則があって、同等の議論をしている、または意見聴取をしているのか、それともこういう場合には就業規則はつくらず個別にやっているのかといったら、どういう理解をしておけばいいのかということを教えていただきたいと思いました。可能な範囲で結構ですので教えてください。
○荒木座長 では、お尋ねの点、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 まず、義務があるかということで申し上げますと、労働基準法89条に基づき作成、届出の義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者でございますので、事業場としての作成義務がかかっているのが10人以上になります。したがいまして、作成義務もなく、ついては届出の義務もないということになります。10人未満のところから届出が出てきても受理するということには通常なりません。一方で、就業規則的なものをつくった場合の効力ということで申し上げますと、それは労働契約法に基づく就業規則、労働基準法の就業規則と労働契約法の就業規則がどこまで一致するかというのは理論的にもいろいろ御議論があるところかと思いますけれども、内容としては、労働条件の内容になるものとしての就業規則の効力があるものと通常解されていると認識しています。
○労働条件確保改善対策室長 安藤先生から前半にいただいた5ページの左の労使協定の部分なのですけれども、これは分かりやすくするために、上側がそれぞれの事業場でやっているケース、下側が一堂に会したケースというイメージで絵をつくっております。それで、この使用者と書かれているところの中身の人でございますけれども、これは法律上、使用者としか書かれておりません。使用者の定義というのは、事業のために使用者として行う者ということですので、概念としては、その事業場の所長とかも入りますし、本社の人事部も当然入ってくるし、社長も入るしというような概念になります。その概念の中の誰なのかというのは法律上特定がありません。ですので、上のパターンで、ここの使用者の中に入っている人が本社の人というパターンもあり得ます。下のパターンで、この使用者となっているところに事業所長が一緒に行くというパターンもあり得るということになろうかと思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。
なかなか専門的な立場から申し上げるのは難しい議題が多かったので、ここまで何のコメントもできませんでしたが、基本的には、今、労働組合だけに全てを求めるのは難しくて、過半数代表者が実効的に機能するように、それを支援する体制をいかにつくり上げるかという議論が主だったかと理解をしています。
ただ、これから具体的な議論に、もしかしたらこの検討会を超えて別のところでも議論をされることで実効的に動くのかなということも思いながら、やはり余りにも過半数代表者に求めることが多く、どのように支援をしていくのかは引き続き大きな課題だなと思っています。例えば連合さんですとか労働者代表のところが実際にはいろいろな研修をしてくださったり、そこに行く機会の確保や支援の確保を会社がしていったりということになるのかなと思ってお聞きしていました。
こういう体制の話から少し外れるのかと思うのですが、デロゲーションのことを前提に労働組合の存在とか過半数代表者の話が出てきていると思います。デロゲーションは基本的にはその会社で全体的な条件を緩和するとか変更する、カスタマイズするという話だと思うのですけれども、一方で、健康配慮という話では、特定の属性の人には個別の配慮が必要というのが安全配慮義務上は当然だと思います。そういうことも含めてデロゲーションの議論をするものなのでしょうか。そういう話が一切なかったかなと思うので。もちろんデロゲーションの議論は特定の属性の方の安全配慮義務を妨げるものではないので、こういう属性の人はデロゲーションされた範囲で、となったとしても、基本は原則を適用するが、特定の場合には緩和した条件も当てはめるとかいうような話になるのかなと思って聞いてはいたのですが、もしくは逆かもしれません。特定のこういう属性の労働者においては、申出があればデロゲーションした条件を当てはめず、もともとの原則のほうを当てはめるというふうになるのかなと思います。どちらが原則になるのか、デフォルトになるのかは分かりませんけれども、そういった考え方も必要ではないかと思っています。例えば労働時間に関しては、特別条項で例えば一時的に月80時間の残業といっても、明らかにこういう条件の人には配慮が必要と分かっているのに、一律に緩和して当てはめますというのはすごく違和感があります。労使コミュニケーションでもその辺りは取り扱われるだろうなと想像しているのですが、その辺りの知見がないので、どなたか現状を御存じの方がいらっしゃったら教えていただきたく質問をしました。
○荒木座長 どうしましょうか。事務局からお答えいただけますか。
○労働条件確保改善対策室長 36協定に関して言いますと、36協定のつくり方次第かと思います。その事業場の中に様々な職種の方がいる場合に、ここの部門のここの職種の方に関しては何時間、ここの部門のここの職種の方には何時間という定め方をするケースは当然ございます。ですので、36条に書いてある研究開発業務のようにいわゆる上限がかかっていない方に関しては、同じ協定の中で別個に書いて協定をするというようなことになりますので、その方、一人一人というよりは、ある程度職種での集団ごとにということではありますが、働き方の対応に応じて決められていくものになるということかと思います。
○黒田構成員 ありがとうございます。
お尋ねしたかったのは、職種というよりは、こういう属性の人とか、個別性が高いのでなかなか事前に議論するのは難しいなと正直思うのですけれども、こういう健康上で配慮すべき事項がある人に関しては、基本は当てはめないとか、基本は当てはめるけれども申出があったら配慮するとか、そういうものを36協定で見たことがないので、そのようなことも労使コミュニケーションを含めて議論してほしいというようなことを、国として、もしくは検討会として後押ししていくかというような話もちょっと必要かなと思って話題に出しました。
多分、今そういうことは行われていないのだと理解をしているのですけれども、そういう理解でよろしいですかね。職種別というのは多分、実際にそういう例はあるのだと思いますけれども。
○労働条件確保改善対策室長 36協定に関して言うと、事業場での時間外労働の上限を定めていくということで、これはあくまで上限を定める話になりますので、例えばある職種の中に障害を抱えてとかいったような事情がある方がいて、その方に対しては別のことをするということであれば、その上限の範囲内でそれぞれにやっているというようなことなのだろうと思います。そこに関して個別にどうこうするというのが協定の中に入っているかというと、あまりそういう例はないのかなというのが正直なところでございます。
○荒木座長 水町先生、お願いします。
○水町構成員 私が見聞きする範囲内での実態からいえば、今、事務局のおっしゃったとおりだと思いますが、この労使コミュニケーションが実質化して、安全衛生委員会と36協定の上限時間を決めるというところが一体化した議論をできるとすれば、例えばこういう状況にある人については特別条項の対象にしないとか、上限時間の設定で、例えば精神疾患で病気休職から復職した人については36協定の対象で何時間までにするとか、それを対象にしないとか、デロゲーションの中での定め方もいろいろな工夫ができて、それが法令上、今できないわけではないので、むしろ労使コミュニケーションの実質化をきちんと総合的にやっていくということが重要だけれども、今それができていないので、そういうふうには実務上なっていないということかなと私は理解しています。
○黒田構成員 ありがとうございます。
私もそのように理解をしています。労使コミュニケーションはそこまで至っていないので、方法的には反映できるけれども、実質上やっているところは多分ほぼないのではないかと思います。分かりました。ありがとうございました。
○荒木座長 デロゲーションというのは、例えば、労基法32条では1日8時間、週40時間以上働かせること自体に刑事罰がかかるということになっている、その枠を緩和するというものですので、これは事業場単位でその枠をどう再設定するかというのが労使協定、あるいはデロゲーションの任務で、その上にさらに個別の労働者の健康のための安全配慮義務とか、あるいは合理的な配慮、こういったものはデロゲーションとは別に法的に要請される事柄としてさらにかかってくるということだろうと思います。デロゲーションンの中でも、そのことまでよくよく考えて個別に条件を設定することも当然可能ではありますけれども、デロゲーションとしてはここまでは事業場の全従業員に対して免罰効、強行性解除効を認めるかどうかというところで設定し、そこにまた別の観点からのさらなる規制というものは十分考えられると、そういう関係ではないかと理解しております。
神吉先生、どうぞ。
○神吉構成員 すみません。もう時間がありませんが、今おっしゃった点に関して4ページの5の①、デロゲーションに対する個人同意を重ねてみます。現在ここで指しているのはおそらく、裁量労働制の適用に関して個人同意が得られなかった場合には通常の労働時間規制に戻るという例です。しかし、たとえば36協定に対して個人同意しなければ原則である法定労働時間に戻るような、今はそういう制度はありませんけれども、同じように仕組むことも理論上はできないことではありませんよね。
○荒木座長 デロゲーションとか労使協定というのは、いわば労基法が定めている最低基準の枠を変更する。つまり、労働義務を議論してはいないのだというふうに私は理解しております。
あと、個人の同意というのは、デロゲーションの中に個人の同意までさらに加重的に設計することももちろん可能で、現在、裁量労働制とか高度プロフェッショナル制度ではそういった制度をつくっているということで、そこは個人がデロゲーションをどこまで認めるかの決定権を持つような仕組み方も制度設計としてはできるという関係かなと思っております。
それでは、予定した時間になってしまいましたが、全体を通じた議論というのも後半ではかなりしていただけたかと考えております。
それでは、本日の議論はここまでとしたいと思います。本日も大変充実した議論を展開していただきまして、どうもありがとうございました。