薬事審議会血液事業部会令和6年度第1回安全技術調査会及び第2回運営委員会合同会議議事録
日時
令和6年8月30日(金)16:00~18:00
場所
Web併用形式
日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階 8D会議室
日比谷国際ビルコンファレンススクエア8階 8D会議室
出席者
- 安全技術調査会 出席委員(8名):五十音順、敬称略 ◎座長
-
- 朝比奈 靖浩
- 荒戸 照世
- 石井 明子
- 大隈 和
- 岡崎 仁
- 玉井 佳子
- ◎濵口 功
- 水上 拓郎
- 安全技術調査会 欠席委員(3名):五十音順、敬称略
-
- 天野 景裕
- 長村 登紀子
- 脇田 隆字
- 運営委員会 出席委員(6名):五十音順、敬称略 ◎委員長
-
- 武田 飛呂城
- ◎田野﨑 隆二
- 濵口 功
- 松下 正
- 松本 剛史
- 水上 拓郎
- 国立感染症研究所:敬称略
-
- 関 洋平
- 手塚 健太
- 日本血液製剤機構:敬称略
-
- 中西 英夫
- 星山 孝男
- 福田 洋一
- 木村 洋一
- KMバイオロジクス株式会社:敬称略
-
- 羽室 強
- 貝原 徳保
- 武田薬品工業株式会社:敬称略
-
- 加藤 毅之
- 塩入 將介
- 杉本 貴彦
- CSLベーリング株式会社:敬称略
-
- 東 貴之
- 馬込 新一郎
- 日本赤十字社:敬称略
-
- 谷 慶彦
- 後藤 直子
- 藤田 秀行
- 早坂 勤
- 事務局:
-
- 岩崎 容子(血液対策課長)
- 金子 健太郎(血液対策課長補佐)
- 源 周治(血液対策課長補佐)
- 山本 光寿(需給専門官)
議題
安全技術調査会・運営委員会合同会議
〇安全技術調査会
1.感染症安全対策体制整備事業について
2.NATコントロールサーベイ事業について
3.令和5年度の血液製剤安全性確保の取組
4.その他
〇運営委員会
1.感染症定期報告について
2.血液製剤に関する感染症報告事例等について
3.日本赤十字社の令和5年度血液事業報告について
4.各調査会の概要について
5.その他
6.血漿分画製剤の持続可能な国内自給体制及び安定供給体制の構築に向けた検討について(非公開)
〇安全技術調査会
1.感染症安全対策体制整備事業について
2.NATコントロールサーベイ事業について
3.令和5年度の血液製剤安全性確保の取組
4.その他
〇運営委員会
1.感染症定期報告について
2.血液製剤に関する感染症報告事例等について
3.日本赤十字社の令和5年度血液事業報告について
4.各調査会の概要について
5.その他
6.血漿分画製剤の持続可能な国内自給体制及び安定供給体制の構築に向けた検討について(非公開)
配布資料
資料ページをご参照ください。
議事
- 議事内容
- ○源血液対策課長補佐 それでは、定刻となりましたので、「血液事業部会令和6年度第1回安全技術調査会・第2回運営委員会合同会議」を開催いたします。
本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度は、御参加いただく方の利便性の観点から、Web併用での審議とさせていただきます。また、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
次に、本日の委員の出席状況ですが、長村先生、天野先生、脇田先生より御欠席との御連絡を頂いております。現時点で、安全技術調査委員11名中8名に御出席いただいていることを御報告いたします。併せて、運営委員会から委員6名全員に御出席いただいていることを報告いたします。
加えまして、本日は参考人として、国立感染症研究所より、関次世代生物学的製剤研究センター第1室長、手塚次世代生物学的製剤研究センター第2室長に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、谷中央血液研究所所長、藤田経営企画部部長、後藤技術部次長、早坂経営企画部次長に御出席いただいております。
なお、事務局の異動がありましたので、併せて御報告いたします。血液対策課長岩崎容子が山本の後任として着任しておりますので、御紹介いたします。加えまして、金子補佐、源が新たに着任しております。よろしくお願いいたします。
続きまして、全ての委員の皆様より、薬事審議会規程第11条への適合状況を御申告いただいており、本日の議題について影響ないことを確認しておりますので御報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会議にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いします。タブレット上に「1 議事次第」から「8 参考資料」までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
本日は、Web併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問がございましたら、挙手等によりお示しいただきますようお願いいたします。座長から順に発言者を御指名いただきます。指名された方は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、議事録作成のため、まずはお名前を発言ください。ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。
なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は委員長からお願いする場合がございます。その場合には記入されたメッセージに応じて、委員長より発言者を御指名いただきます。
Web参加の皆様におかれましては、議事進行中に会場の音声が聞こえづらい状況が続き審議参加に支障を来す場合には、チャット等でお知らせいただくようお願い申し上げます。
間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。
それでは、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。
○濵口座長 皆さん、こんにちは。足元の悪い中を御参集いただきまして、ありがとうございます。これまでの御説明に関しまして御質問、御意見がございましたら、お願いします。よろしいでしょうか。
それでは議事に入ります。初めに、議題1「感染症安全対策体制整備事業について」、まずは事務局より御説明をお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 感染症安全対策整備事業は、新たな病原体が移入した場合などに備えて、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和5年度の実績の報告については、関参考人よりお願いいたします。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明について何かございますでしょうか。それでは、関先生、お願いいたします。
○国立感染症研究所関参考人 聞こえていますでしょうか。それでは、御説明のほうをさせていただきます。まず、本事業の目的ですけれども、先ほど御説明いただいたように、輸血用血液製剤を含む血液製剤は、ヒト血液を原料とするためウイルス等の病原体混入のリスクが常に存在しており、日本ではHIVや、HCV、HBV、梅毒、パルボウイルスB19等に関しては、血清学的検査や核酸増幅検査が実施されており、極めて高い安全性が保持されてきました。しかし、グローバル化が進む現代において、国内ではほとんど発生例のないような感染症、特に海外での新興・再興感染症が国内に輸入され、問題となることが少なくありません。そこで、平成25年度より新たな病原体が移入した場合に備えて国立感染症研究所と厚生労働省血液対策課、日本赤十字社とが連携し「感染症安全対策体制整備事業」を開始しました。
本事業では、日本の献血血液への混入リスクのある病原体について、血中ウイルス量の低い無症候感染者が献血する場合を想定し、高感度の核酸検査法の開発や標準品・参照品パネルを整備し、将来的な血液の安全性対策に資することを目的としております。図Aには、簡単ではありますが、本事業の概要を、また、表Aにはこれまで行ってきた内容を記載しておりますので、御参考にしていただけますと幸いです。令和5年度は、2022年5月以降、欧米を中心として流行し、国内においても実際に輸入感染症例の発生が報告されたエムポックスについて、その原因ウイルスの核酸検査のための国内参照品を整備し、多施設による値付けのための共同測定を行いました。
次に、実施内容について御説明いたします。グローバル化が進み、訪日外国人数、出国日本人数が年々増加しており、特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより人流が一時抑制されていましたが、2023年5月のWHOによる「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の宣言終了や、国内における感染症法上の位置付けが「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」へ類型変更されたことに伴い様々な規制が緩和され、急速に人流が回復しているところであり、日本には存在しない病原体が旅行者や帰国者から持ち込まれるリスクが増大していると考えられます。
エムポックス(Mpox)は、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルス(MPXV)による感染症で、齧歯類をはじめとする野生動物との接触によりヒトに感染いたします。ヒト-ヒト感染に関しては、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者への感染事例等が以前から報告されていましたが、それらは稀でありました。しかし、2022年春にヒト-ヒト感染によりエムポックスが世界的に流行し、WHOは2022年7月23日にPHEICに該当すると宣言しました。2023年5月に同宣言は解除されていますが、本邦においても、輸入感染症として2022年7月25日に国内1例目の患者が報告されて以降、2023年3月初旬をピークに、以後も散発的な患者の発生が報告され、本日の時点で248名の症例が確認されています。症例の99%は男性であり、その多くが男性同性間性的接触者(MSM)であったことから、特定の集まり等を介して世界的に広まったと推察されています。潜伏期間は5~21日(平均12日)とされ、無症候感染者からの感染事例も報告されていることから、無症候感染者が献血ドナーとなる可能性があり、実際に2023年、タイでの流行時に発症前の患者からの献血により輸血に至った事例も報告されています。現在のところ、輸血によるMPXV感染事例は報告されていませんが、無症候感染者を含むMPXV感染者の血液からウイルスDNAが検出されていることや、2022年に流行したMPXVは比較的症状が軽いクレード2bに属していましたが、コンゴにおいて昨年以降、より病原性の強いクレード1aの感染者が数多く報告されており、また、御存じのとおり、最近では1bも流行しています。また、性交渉による感染事例も報告されていることから、引き続き、国内でのアウトブレイクに備え、献血血液中にウイルスが混入するリスクを想定し対策を講じておく必要があります。特に、検査センターや血液センターなど多施設でのMPXVの核酸検査を実施する場合には、試験法キャリブレーションや性能調査、感度比較を実施するためのMPXVの核酸検査用標準品が必要となりますが、国際標準品は整備されていません。そこで、本事業において令和5年度は、国内で容易に利用可能なMPXVの核酸検査用参照品を整備いたしました。
次に、研究方法及び結果について御説明いたします。MPXVにはクレード1とクレード2の2種類があり、過去、コンゴ盆地系統及び西アフリカ系統群と呼ばれていました。MPXVの国内参照品を作製するに当たり、クレード1aのMPXV Zr-599株、クレード2aのLiberia株、及びクレード2bの2022年以降の世界的大流行時に日本で分離されたMPXV_JPN2022_TK006株の3株を選定しました。これら3株は、国立感染症研究所ウイルス第一部より分与を受けました。国際標準品の不活化法と同様な方法で、酸処理15分及び60℃1時間の加熱処理によりウイルスを不活化し、不活化処理後にアミコン限外濾過による濃縮により酸処理に用いた酢酸とNaOHを取り除き、血漿由来ベースマトリックス(市販品)で希釈し、それぞれ400本ずつ参照品を作製しました。また、作製した参照品が本不活化処理により十分に不活化されていることを確認するため、参照品をMPXV感受性細胞であるRK-13細胞(ウサギ腎臓由来細胞)に添加し、3継代(10日間)培養し細胞変性効果(CPE)が認められないこと、及び図1に示しますように、培養液中のウイルス核酸量を経時的に定量し、継代数に依存して核酸量が低下し、核酸の増加が確認されないことを確認しました。さらに図2に示すように、これらの酸処理、加熱処理、アミコンでの濃縮操作、ベースマトリックスによる希釈操作後の各ステップにおいて検体を採取し、ウイルス核酸量を比較した結果、これらの操作は核酸量に影響を及ぼさないことを確認しました。
次に、共同測定及び値付け値の算出についてです。日本赤十字社、及び国立感染症研究所を含む7施設で、核酸量の値付けを定性法(7施設)、定量法(2施設)で実施しました。感染研では、国立感染症研究所病原体検出マニュアルに従って測定を実施しました。各参加施設においては、自社製品又はin-house法にて測定が行われています。
定性法では、初めに予備試験を実施し、各参照品をベースマトリックスで10-1から10-7まで10倍段階希釈し、各希釈液からDNAを抽出後、リアルタイムPCR法による検出を行い、結果が陽性となる最大希釈倍率(エンドポイント)を定めました。本試験では、エンドポイントの両側にハーフログで2段階の濃度を追加し、合計5点で日を変えて3回測定を行いました。測定結果として、各施設から各希釈濃度の陽性/陰性の結果及びCt値を収集しました。核酸量の絶対値は、プロビット法を用いた最尤推定法により63%が陽性となるときの希釈倍率を算出し、測定に用いた検体量、抽出容量、PCR反応に用いた容量を考慮し、NAT detectable units/mL(U/mL)として算出しました。定量法では、高濃度側にハーフログで2希釈分を追加し、核酸量既知のスタンダードDNA(国立感染症研究所ウイルス第一部より分与)を用いて定量し、定性法と定量法の幾何平均値を算出して核酸量としました。その結果を表1にまとめています。3株のうち、日本で分離されたMPXV_JPN2022_TK006株を参照品として定め、他の2株の核酸量は、定性法では希釈倍率とCt値を、定量法では希釈倍率とコピー数を用いた平行線定量法にて相対的に算出しました。その結果を表2に記載しています。その結果、参照品と定めたMPXV_JPN2022_TK006株、及びZr-599株、Liberia株の値付け値は、それぞれ6.32 Log10 U/mL、7.01 Log10 U/mL、及び6.74 Log10 U/mLでありました。
次に、国内参照品を用いた相対評価による施設間差の改善について報告します。共同測定に参加した各施設における国内標準品と定めたMPXV_JPN2022_TK006、Zr-599、Liberiaの3株の核酸量の絶対評価値を、図3左側のヒストグラムに示しています。数値は施設の番号を示しています。報告書では図4となっていますが、図3の誤りです。さらに、参照品の値を基に相対値を算出し、Zr-599及びLiberia株の核酸量を図3右側のヒストグラムに示しました。いずれの検体においても相対評価によりヒストグラムの横幅が縮小し、施設間差の改善が認められ、参照品整備の有用性が示されました。
次に、考察と課題です。本事業において、令和5年度は2022年に世界的に大流行したMPXV_JPN2022_TK006株の国内参照品及び参照パネルとしてMPXV Zr-599株とLiberia株の計3種を整備しました。エムポックスの輸血感染リスクについては、(ⅰ)これまでに輸血によるエムポックス感染事例の報告はないこと、(ⅱ)ウイルス血症の持続期間については明らかになっておらず、血液からウイルス核酸が検出される場合でも感染性を有するウイルスは分離されていないこと、(ⅲ)日本ではMSMの献血はできないこと、(ⅳ)新しいパートナーとの性的行為後3か月の献血延期期間が設けられていること、(ⅴ)海外から帰国された方の4週間の献血延期措置が設定されていることなどを総合的に考慮すると、現在のところ献血によるエムポックス感染のリスクは低いと考えられます。しかし、今後新たな株の出現等によりアウトブレイクが起こる可能性はあり、感染症のアウトブレイクの際には、新型コロナウイルス感染症のときのように複数の施設でPCRを実施することが考えられます。現在の技術レベルにおいて、アッセイごとに検出できる核酸量に大きな差はないと考えられますが、測定キット等により、測定に必要な検体量、抽出量、PCR反応に用いる検体量が異なるため、採取検体中から検出できる最低ウイルス量も異なると考えられます。共同測定で算出した各施設の核酸絶対量は、図3左のヒストグラムに示すように約100倍の開きがありますが、図3右のヒストグラムに示すように、国内参照品として定めたMPXV_JPN2022_TK006を用いて相対的な評価をしますと、施設間差はハーフログ程度に縮小されることが認められました。このことから、国内参照品を整備しておくことの有用性が改めて示唆され、血液の安全性の確保や公衆衛生の維持に有用であると考えられます。今後は必要に応じて、国立感染症研究所への依頼により、次世代生物学的製剤研究センターから参照品を提供できる仕組みを整えるとともに、MPXVの国際標準品ができた際には、再評価を実施してIU/mLの核酸量を付与し、他国とも比較できるように準備する予定です。
参照品の配布につきまして、一番必要になるであろう血漿分画製剤メーカーの方々や日赤の方々等につきましては、直接コンタクトをとっていただけますとこちらから発送いたしますし、また、その他の一般の方々につきましても、当センターのホームページから御依頼を頂けるように体制を整えていく予定です。
次の項目ですが、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換につきましては、WHOの血液製剤に関する各種会合に定期的に参加し、感染症リスクの早期察知及び評価に基づく安全対策の検討を行うとともに、また、国立感染症研究所の病原体関連部署と連携し、情報の収集や交換を行ってまいりました。
結論です。本事業では、血液を介して感染し得る病原体に関する情報を継続して収集し、日本にリスクのある病原体については、必要に応じて核酸検査のための国内参照品を整備し、我が国での新興・再興感染症の流行やアウトブレイクに備えた体制整備に貢献してきました。令和5年度はMPXVの国内参照品を整備し、共同測定により核酸量(U/mL)を付与しました。いずれの施設で実施する核酸検査であっても、国内外のキットを用いて検出感度を比較できる体制が整いました。今後も血液を介して感染する新たな病原体等について常に注視して情報収集し、血液の安全性確保のために適宜対応していくことが必要であると考えられます。
また、本年度(令和6年度)の事業での実施予定内容ですが、昨年から南米を中心に感染が拡大しており、特に欧米では今年感染者数が過去最高に達しているデングウイルスにつきまして、マル1デングウイルス1,2,3,4型に対する高感度核酸検査法の精度管理のための国内標準品の整備を進めていきたいと考えています。その他、献血血液を用いたサーベイランス、及び臨床血液検体を用いた協力依頼検査ということで、マル2プール血漿、人免疫グロブリン製剤などを用いた血清疫学の評価に向けた体制整備、マル3BSL3病原体が陽性となった際の検査体制の構築、マル4医療施設や血漿分画製剤メーカーの協力依頼への対応、来年度、新機構に移りますけれども、マル5「国立健康危機管理研究機構」発足へ向けた体制整備、また、引き続きマル6海外における血液安全に関する情報の収集及び交換を行ってまいりたいと考えています。報告は以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、委員の方から御意見、御質問がございましたらお願いします。
○大隈委員 関西医科大学の大隈です。
○濵口座長 お願いします。
○大隈委員 貴重な研究結果を示していただきまして、ありがとうございます。先ほど聞き逃したかもしれませんが、エムポックスの国内標準品について、これは3つの株を用意していますけれども、これはそれぞれのホールゲノムで準備されているということで、よろしいですか。
○国立感染症研究所関参考人 不活化ウイルスになりますので、生ウイルスをそのまま不活化して、ベースマトリックスにスパイクしたものをお送りするという形になります。
○大隈委員 分かりました。一応、国内ではそれぞれの株を特異的に識別できるPCRの系が整備されているということで、よろしいでしょうか。
○国立感染症研究所関参考人 一般的に、クレード1とクレード2を見分けるPCRというのは市販もされているかと思います。国立感染症研究所の病原体検出マニュアルでは、全ての株を検出できるところにプライマー、プローブが設定されており、全部検出されますけれども、各株を特異的に検出するプライマー、プローブも存在しています。
○大隈委員 それは、国内に入ってきたときに、どういった株が流行していて、それについて国内標準品を当てれば定量等もできるということで、そういった対策はとられているということですね。
○国立感染症研究所関参考人 そのように考えていただいて大丈夫です。ただし、現在、流行っております1bについては、我々はまだ入手はできておりませんので、そちらのところの参照品ということになりますと、また別途作製する必要が出てくるかと思います。
○大隈委員 分かりました。では、将来的にはよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○濵口座長 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。数日前に論文が出て、このウイルス量を基に臨床対応というのが図られるということも、一応、報告されていたと思いますけれども、これらについて感染研のほうとしては認識がありますか。
○水上委員 もう既に論文(Nat Commun 15, 7112 (2024))が出ておりますし、ニュースでも報道されていたかと思いますが、いわゆる症状の発症・消失及び感染性の有無とウイルス核酸量の関係というものが数理モデル化されて、感染者の隔離期間を個別に最適化できるという報告です。我々が作成した参照品等を用いて適切に精度管理された状況で、ウイルス核酸量が血中も含めて正確に測定できますと、隔離期間のみならず,献血においても、どういった状況でどれぐらい献血延期措置が必要かということも含めて推測できるのではないかと考えておりますので、参照品を必要な検査機関、病院も含めて配布することで、より正確なデータが出て対応が検討できると期待しています。
○濵口座長 ありがとうございます。ほか、いかがですか。よろしいでしょうか。ないようですので、ただいまの御意見を参考に、引き続き、今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。関先生、ありがとうございました。
○国立感染症研究所関参考人 ありがとうございました。
○濵口座長 それでは、次に議題2「NATコントロールサーベイ事業について」に移ります。事務局より説明をお願いします。
○源血液対策課長補佐 NATコントロールサーベイ事業は、NATの精度管理の実情を把握するため、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和5年度の実績報告について、手塚参考人よりお願いいたします。
○国立感染症研究所手塚参考人 音声よろしいでしょうか。
○源血液対策課長補佐 はい。大丈夫です。
○国立感染症研究所手塚参考人 ありがとうございます。改めまして、国立感染症研究所の手塚と申します。昨年度のNATコントロールサーベイ事業の実績について御報告いたします。委員の先生方には、資料4ページ目以降の事業の概要と事業の履歴一覧を御覧いただきます。
まず、本事業の目的になります。最近のNAT技術の進歩は目覚ましく、我が国においても2013~2014年の間に、血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液製剤のNATスクリーニングの試験法がそれぞれ新しいマルチプレックス法に更新されてきております。それらを踏まえて、2014年にNATガイドラインの改定が行われております。更に、輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴うNAT検出限界値の改正も行われてきておりました。以降、2016年度に新しいマルチプレックス法を用いたHBV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、HBVジェノタイプ国際参照パネルを用いた第8回NATコントロールサーベイ、2017~2018年の間に、HIV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、HIV-1サブタイプ国際参照パネルを用いた第9回NATコントロールサーベイ、2019年度にHCV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、HCVサブタイプ国内参照パネルを用いた第10回NATコントロールサーベイが行われております。更に2020年度には、HIV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的とした、HIVの流行組換体国際参照パネルを用いた第11回NATコントロールサーベイが計画されて、実施されております。更に2021年度ですが、ここからHBV、HCV、HIV-1にHEVも加えた4つのウイルスパネルを用いて、新しい試験法の検出感度と特異性の把握を目的として、第12回NATコントロールサーベイを実施しております。更に2022年度の第13回NATコントロールサーベイでは、HBV、HCV、HIV-1のNATの感度と特異性の把握を目的として、3つのウイルスパネルを用いたサーベイを実施しております。そして、最後に昨年度ですが、第14回のNATコントロールサーベイでは、日本赤十字社を対象に、HBV、HCV、HIV-1、そしてHEVのNATの検出感度と特異性の実情の把握を目的として、4種類のウイルスパネルを用いたサーベイを実施しております。
続きまして、参加施設になります。委員の皆様には、PDFの6ページ目の表1を御覧いただきます。参加施設として、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設が記載されております。また、オブザーバーとして、同日本赤十字社の研究施設が1施設加わっております。
次に、具体的な材料ですが、表2を御覧ください。材料として、HBV、HCV、HIV-1、HEVの国内標準品を用いて評価用のパネルを作製しました。国内標準品の希釈には、陰性血漿、あるいは4つのウイルスのいずれかが高濃度に含まれる陽性血漿を用いて希釈を行っております。標的ウイルスの低濃度陽性検体として、輸血用血液のNATで必要とされる検出限界値、それぞれ、HBVでは100IU/mL、HCVでは、同じく100IU/mL、HIV-1では200IU/mL、そしてHEVでは未設定となりますが、その1.5倍あるいは3倍濃度に当たる300IU/mLに検体を希釈して調製しております。スクリーニング試験用パネルとして11検体及び同定試験用パネルとして9検体の計20検体をブラインド化して、各施設に送付しました。
続いて、測定方法ですが、今回の測定は、HBV、HCV、HIV-1を識別せずに検出し同時にHEVを単独で検出するスクリーニング試験法と、HBV、HCV、HIV-1を識別するための同定試験法の2種類の試験で構成されております。参加施設はスクリーニング試験と同定試験の両方の試験法を用いて、スクリーニング試験用パネル11検体と同定試験用パネル9検体に対して、それぞれ日を変えて3回ずつ測定していただきました。
続きまして、結果になりますが、表3及び表4を御覧ください。日本赤十字社ブロック血液センターの全8施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、スクリーニング試験法と同定試験法の両方において、HBV、HCV、HIV-1及びHEVに関する精度管理が適切に実施されていると考えております。
全施設において、HBV、HCV、HIV-1及びHEVの低濃度に希釈された検体及び高濃度のほかのウイルスが混在した検体でも、標的ウイルスが特異的に検出・同定できることを確認しております。また、陰性対照は全て陰性であると判定されております。加えて、オブザーバーとして参加していただいた研究施設も全く同様の結果であることを確認しました。
続きまして、考察ですが、2023年度に実施したHBV、HCV、HIV-1、そしてHEVの4つのウイルスパネルを用いた第14回NATコントロールサーベイにて、輸血用血液製剤のNATを実施する施設でのスクリーニング試験と同定試験の両試験法において、HBV、HCV、HIV-1及びHEVの各ウイルスの陽性検体を検出できたことから、試験の精度管理が適切に実施されていることを確認できたと考えております。全施設において、4つのウイルスが低濃度に希釈された検体及び高濃度のほかのウイルスが混在した検体でも標的ウイルスが特異的に検出・同定されていることから、検出感度及び検出特異性は高い水準で維持されていると考えております。
最後に、表5にあるとおり、本年度の実施計画になりますが、2024年度は、輸血用血液のNAT実施施設及び血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT実施施設を対象に、パルボウイルスB19NATの検出感度と特異性の実情把握を目的とした、第15回NATコントロールサーベイの実施を計画しております。本事業では、このパルボウイルスB19のNATサーベイは初めての試みとなりますので、今回のサーベイでそれを実施して、しっかりと取りまとめたいと考えております。発表は以上になります。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、委員の先生方から御意見、御質問があればお願いします。よろしいでしょうか。今回、参加していただいた施設において、NATの品質管理が非常によくなされていることが。はい、松下先生、どうぞ。
○松下委員 松下です。300IU/mLで、サーベイをしているのですが、検出限界値ぐらいのもっと少ない数字でサーベイをするとかということは、今後計画はあるのでしょうか。
○国立感染症研究所手塚参考人 松下先生、ありがとうございます。私どもも、まずは、NATガイドラインに定められている検出限界付近の検体を用いたサーベイランスを行うことがこの事業の第一目的であると考えておりましたので、これまではそのような形でサーベイを実施しております。ただ、一方で年々、キットの性能も検出感度も上がっておりますので、実際のところ、国際単位でいいますと非常に低コピー、低IUのところで検出限界が定められているという現実もありますので、先生のおっしゃるとおり、NATサーベイランスの事業においても、低濃度検体でのサーベイランスも計画していきたいと考えておりますので、先生の御指摘のとおり、次年度以降あるいはその次のサーベイランスのところで、そのようなことも計画していきたいと考えております。ありがとうございます。
○松下委員 是非よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○濵口座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。はい。先ほど話した内容なのですが、現状においては、ガイドラインに従った形での検出限界をきちんと担保できていると言えると思いますので、引き続きNATコントロールサーベイを実施いただいて、国内のウイルス安全性についての確認をしっかりやっていただきたいと思います。それでは手塚先生、ありがとうございました。
○国立感染症研究所手塚参考人 ありがとうございました。
○濵口座長 続いて、議題3「令和5年度の血液製剤安全性確保の取組」に移りたいと思います。初めに事務局よりお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 事務局です。参考資料を御覧ください。我が国における血液製剤安全性確保の取組について、08の参考資料で示させていただいています。血液製剤については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律において、生物由来製品として、製造販売業者及び医療機関に長期的な記録の保存を求めています。我が国の血液安全体制(ヘモビジランス)は、全ての血液製剤関連記録をつなぎ(トレーサビリティ)、継続的に評価することで血液製剤の安全性向上と安定供給・適正使用を推進しています。
下の図にありますように、供血者の選択から受血者の転帰まで(Blood transfusion chain)を追跡できるトレーサビリティシステム(J-HeST)を稼動していますが、まだ収集される情報の量、質の不足、国内外の医療情報法制やシステム開発等を踏まえ、体制やシステムの見直しと改良が必要と考えています。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御意見等がございましたらお願いします。よろしいでしょうか。それでは次ですね。
○源血液対策課長補佐 資料3の説明です。
○濵口座長 資料3ですね。資料3について、日本赤十字社から説明をお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 それでは日本赤十字社における2023年のヘモビジランス活動について、日赤の後藤からお話をいたします。資料3を御用意ください。最初におわびなのですが、資料に案を付けたまま公開されてしまって申し訳ございませんでした。後で差し替えをお願いしようと考えております。
2枚目にお進みください。本日は輸血感染症をウイルス感染症と細菌感染症に分けて、また輸血副作用を非溶血性の副作用と溶血の副作用に分けて、お話をいたします。
3枚目を御覧ください。輸血後に感染症が疑われ、医療機関から日赤の血液センターに報告いただいた症例数の推移を病原体別にお示ししました。2023年は緑で示しました細菌感染疑いの報告が最多となっております。
4枚目を御覧ください。2023年に医療機関から報告された輸血後感染疑い症例は、HBVが7件、HCVが6件、HEVが1件、CMVが3件、VZV、帯状疱疹ウイルスですね、これが1件、それから細菌感染疑いの24件の合計42件で、輸血による感染が特定されたのはHBVの2件と細菌感染の3件となりました。
5枚目以降、輸血後ウイルス感染症について、お話をいたします。6枚目を御覧ください。輸血後ウイルス感染症の原因となった血液の採血年別件数を、下に安全対策の導入時期とともにお示しいたしました。個別NAT導入後は、NAT陰性の血液によるHBVの感染というのが年に1件程度発生する状況が続いております。E型肝炎につきましては、個別NAT導入後、輸血による感染事例というのは認められなくなりました。
7枚目を御覧ください。遡及調査についての御説明です。遡及調査は医療機関発と供血者発の2種類があり、医療機関発のほうは輸血後にウイルスマーカーが陽転したという情報に基づき調査を行います。輸血された血液はNAT陰性なのですが、ウインドウ・ピリオドに献血された可能性が否定できないので、ウインドウ期間を超えた時期の次回献血若しくは事後検査依頼による検査結果により、当該血液の感染リスクを評価いたします。
右側の供血者発のほうは、複数回献血者の陽転情報に基づき、遡及調査ガイドラインに定められた遡及調査期間内の過去の献血血液の受血者について、感染状況を調査するものです。これらの遡及調査により判明したHBVの2症例を次から御紹介いたします。
8枚目を御覧ください。2023年のHBVの感染2症例をお示ししました。いずれも献血者の陽転に基づく遡及調査により判明した事例で、1例目はHBV陽転の56日前の全血献血から製造した赤血球製剤による感染事例になります。受血者の方は70歳代の女性で、輸血後62日でHBV DNAが陽転し、献血血液由来のウイルスと相同性が一致しました。受血者の方はエンテカビル投与による治療を受けておられます。治療中ということで転帰は未回復ということになっております。
2例目はHBV陽転の84日前に採血された血小板献血により感染した事例になります。このときは血小板を2本作っておりまして、1本の血小板、PC1と書いてあるほうの受血者の方は70歳代の男性で、輸血後98日目にHBV DNAとHBs抗原の陽転が確認され、GenotypeはA2でした。残念ながらその後、原疾患で亡くなられております。同一献血由来のもう一本のPC2のほうの受血者の方は、調査時に既に退院され、調査不能となっておりました。この患者の方も死亡されていたという情報を得ております。
では9枚目以降、細菌感染症について、お話いたします。10枚目に2023年の3症例をまとめました。1例目はS.aureus(黄色ブドウ球菌)の事例で、採血4日目の血小板により、MDSの60歳代の男性が感染しました。この受血者の方は、輸血前からMSSAが陽性で、輸血後も陽性でしたが、血小板製剤からも同じMSSAが検出されておりまして、パルスフィールドゲル電気泳動法により、菌株の一致が確認されました。受血者の方は、残念ながら死亡されております。
2例目も黄色ブドウ球菌の事例で、分割製造された血小板の1本がMDSの70歳代の女性に採血4日目に輸血され、滴下不良で輸血中止となりました。こちらでも受血者、製剤の双方から黄色ブドウ球菌が検出され、菌株の一致が確認されました。受血者の方は回復されております。同じ採血由来のもう一本の血小板、PC2と示していますが、こちらの受血者の方は副作用症状は認められず、感染は確認されませんでした。
3例目は、B群レンサ球菌の事例となります。MDSの60歳代の男性に、採血3日目の血小板製剤が投与され、受血者、製剤の双方からB群レンサ球菌が検出され、ホールゲノムMLSTという方法で2062遺伝子中2060遺伝子一致、ANI解析で99.98%以上の一致が認められております。いずれの事例も同時採血の原料血漿の細菌培養同定試験は陰性でした。
11枚目に輸血後感染症についてのまとめをお示ししました。後でお読みいただければと思いますが、日本赤十字社では細菌感染に係る安全対策として、血小板製剤への細菌スクリーニングを導入することとし、2024年の2月に承認申請を行っております。来年2025年夏の供給開始を目途に準備を進めているところでございます。
では12枚目からは、輸血の副作用について、お話をいたします。まず、非溶血性の副作用から始めます。13枚目を御覧ください。2023年は非溶血性の副作用が2,782件、溶血性の副作用19件が医療機関から日赤に報告されました。輸血後GVHD疑いの報告というのはありませんでした。
14枚目を御覧ください。2023年の非溶血性副作用2,782件の分類をお示ししております。左のグラフにあるとおり、アレルギー及び重症アレルギーが全体の3分の2を占めており、発熱、TRALIやTACOを含む呼吸困難、血圧低下と続いております。右に示したとおり、重篤度別に分けますと全体の28%が重篤と判断され、下に示したとおりアナフィラキシーショックなどの重症アレルギーやTRALIやTACOの呼吸困難などが重篤に含まれました。
15枚目を御覧ください。副作用の原因製剤と副作用の種類をお示ししております。赤血球製剤と血小板製剤による副作用というのが、37%、39%と割合として多く、続いてFFPとなっております。下に示したとおり、PCやFFPといった血漿が多い製剤では、80%以上がアレルギー性の副作用ですが、一番下の赤血球製剤では、アレルギーも40%と多いのですが、これに対して発熱の副作用が30%近く、次いで呼吸困難が10%ほど報告をされております。
16枚目を御覧ください。2023年はTRALI・TACO評価を153件の副作用報告症例に対して行い、TRALIのTypeⅠが7件、TypeⅡが2件、TRALI/TACOが1件と評価され、TACOは94件と全体の61%を占めました。集計の概要を右下にお示ししております。2ポツ目にあるとおり、TRALITypeⅡの1例で製剤の抗白血球抗体が陽性でしたが、患者リンパ球との交差試験は陰性でした。TACOについては、3ポツ目、4ポツ目に示したとおりで、約8割が60歳代以上の高齢者でした。2023年は、TACO事例の4割は医療機関からTACO疑いと報告されたものであり、TACOという副作用が認識されてきたように感じました。過去はTRALI疑いと報告されて、TACOと評価されるものが非常に多かったので、このような感じ方をしたというところでございます。
17枚目を御覧ください。これまでのTRALI・TACO評価の状況でございます。TACOも多い一方、TRALIと評価される事例が2022年、2023年は10件前後認められております。今後もこの発生推移というものを見守ってまいります。
18枚目、19枚目を御覧ください。溶血性副作用については、2023年は11件の報告があり、即時型の副作用が8件、遅発型が11件で、全体で重篤事例は19例でした。不規則抗体が検出されたものは11例ありまして、下の表に示したとおりですが、Rh系が主な抗体ですが、CD99といった高頻度抗原に対する抗体の報告もございました。
最後、20枚目に輸血の副作用のまとめをお示ししました。私からの報告は、以上になります。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、委員の先生方から御意見、御質問がございましたらお願いいたします。石井先生、お願いします。
○石井委員 説明をありがとうございました。10ページの輸血後細菌感染症について教えていただきたいのですけれども、原料血漿の検査結果が陰性であったという点につきまして、試験法あるいはその後のハンドリングなどで改善できるポイントなどはございますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 御質問ありがとうございます。原料血漿のほうは、採血後分離されて、すぐに凍結されてしまいます。一方、血小板製剤のほうは、採血された後輸血に使用するまでに室温で振盪しながら保存されますので、細菌が混入していた場合、バッグの中で増殖しやすい状況にあります。そのことが、まずは血小板製剤では感染が起きて、原料血漿では出ないということにつながっているものかと考えられます。検査法については、どちらも同じです。原料血漿は凍結されていますので、溶かしてサンプリングして、細菌培養検査を行うということになります。以上です。
○石井委員 ありがとうございます。では、原料に問題がなかったはずであって、その後の操作での混入と考えたらよろしいですか。それとも原料に僅かにあったものが増えたと考えたらいいですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 献血された血小板製剤にごく微量に混入していた細菌が、輸血されるまでバッグの中で増えて感染症を起こしたものというように考えております。
○石井委員 分かりました。ありがとうございます。現状は、その微量なものを検出することは難しいということになりますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 申し訳ありません。もう一度お願いできますでしょうか。
○石井委員 今の技術では、その原料レベルでの微量の菌を検出することは難しいということになりますでしょうか、増幅される前のレベルでは。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 細菌培養検査も混入していた細菌が非常に微量だった場合は、サンプリングできないこともありまして、その場合は検査としては陰性になってしまいます。ただ、混入していた細菌が検査の検体に入っていた場合は、今の諸外国でも行われているような細菌培養検査で検出できますので、このような製剤は供給されなくなるものと考えております。
○石井委員 分かりました。ありがとうございました。
○濵口座長 ありがとうございます。では松下先生、お願いします。
○松下委員 松下です。19ページの溶血性副作用のところなのですが、多分ないと思うのですけれども、この中にはABO式というのは入っていないのですね。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 はい。ABO不適合による溶血性の副作用の報告というものはございませんでした。
○松下委員 被疑製剤というのは多分あり得ないと思うので、ここには挙がってこないと思うのですが、分かりました。それと、この上がってきた副作用で、スクリーニングはやっていたのに起こったというのは、どれぐらいあるのですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤から供給する血液の不規則抗体の検査は、抗体検査になりまして、血小板製剤ですとか血漿製剤とか血漿を多く含むものというのは、もし検査で検出できないものがあったら、溶血性副作用を起こすこともあるかと思いますが、これらは全て赤血球製剤によるもので、患者が持っている抗体が輸血した赤血球と反応したと考えておりますので。
○松下委員 その理解で合っているのですが、医療機関側からの情報で、不規則抗体スクリーニングは陰性であったのに、入れてみたら溶血性副作用が起こったという例はあるのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 失礼しました。そういう事例もございます。過去に作っていた、産生していた抗体が消えてしまった人が次の輸血の準備をしたときのクロスマッチ等では出なかった、若しくは不規則抗体スクリーニングでは陰性とされましたけれども、輸血をしたことによって後で溶血が分かるといったような事例も含まれます。
○松下委員 多分それは遅発性溶血反応の中に入ってくるのだと思うのですけれど、即時性のところに入ってきているようなことはありますか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 抗Eとか抗cとかRh系のものでは、そういうこともある可能性はありますが、症例の詳細を見てみないと、どの事例がそういうものに該当するものだったかというのは、分からないところでございます。すみません。
○松下委員 8例なので何ともいえないところなのですけれど、不規則抗体スクリーニングがちゃんと機能していないとしたら、学会としても検討しなければいけないのかなと思って質問いたしました。ありがとうございました。
○濵口座長 ありがとうございます。ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。それでは、日本赤十字社におかれましては引き続き血液安全監視の一環として、情報収集を行い、安全対策に取り組んでいただきますようにお願いいたします。
最後に、議題4「その他」ですが、事務局から何かございますでしょうか。
○源血液対策課長補佐 特にございません。
○濵口座長 ありがとうございます。それでは、本日の議題は以上となります。ほかに御意見等がございましたらお願いしたいのですが、よろしいですか、委員の先生方。特にないようですので、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○源血液対策課長補佐 濵口座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて血液事業部会令和6年度第1回安全技術調査会を終了いたします。ありがとうございました。
この後の運営委員会に関しては、17時5分から始めたいと思います。
(休憩)
○源血液対策課長補佐 ただいまより、「血液事業部会令和6年度第2回運営委員会」に移ります。
本日の会議は、議題1から議題5は公開で、その後、議題6を非公開で行います。入退室の御案内などは事務局から説明させていただきます。また、カメラ撮りはこちらも議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
次に、会議における委員の出席についてですが、委員6名全員に御出席いただいていることを報告いたします。
本日は参考人として、一般社団法人日本血液製剤機構より、中西代表理事理事長執行役員、星山代表理事副理事長執行役員、福田執行役員経営戦略本部長、木村経営戦略本部経営戦略部部長、KMバイオロジクス株式会社より、羽室執行役員生産本部長、貝原医薬営業本部営業戦略部長、武田薬品工業株式会社より、加藤希少疾患事業部血漿分画製剤領域統括部長、塩入希少疾患事業部血漿分画製剤領域企画渉外ヘッド、杉本希少疾患事業部血漿分画製剤領域企画渉外課長代理、CSLベーリング株式会社より、東血友病領域マーケティング部アソシエイトディレクター、馬込医療政策アドボカシー政府渉外部部長に御出席いただいております。
また、日本赤十字社血液事業本部より、谷中央血液研究所所長、藤田経営企画部部長、後藤技術部次長、早坂経営企画部次長にお越しいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、全ての委員の皆さまより、薬事審議会規程第11条への適合状況を御申告いただいており、本日の議題について影響のないことを確認しておりますので御報告させていただきます。委員の皆さまには、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆さまにおかれましては、本日の資料の確認をお願いします。タブレット上に、1議事次第から資料5-2までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
審議の進行方法については、先の安全技術調査会と同様になりますので、御説明は割愛させていただきます。
それでは、早速ですが議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。以降の進行を、田野﨑委員長にお願いいたします。
○田野﨑委員長 皆さん、こんにちは。少し遅くなりましたが、引き続きよろしくお願いいたします。まず、これまでの御説明で何か御質問はありますでしょうか。よろしいですね。そうしましたら、議題1「感染症定期報告について」、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 資料1-1を御覧ください。感染症定期報告を御説明いたします。1ページ、今回お示しさせていただいているのは、令和6年3月から5月までの3か月間に御報告いただいた感染症定期報告に含まれる研究報告について、重複している部分を除いたまとめの9つとなっています。1つ目の雑誌は、Journal of Clinical Virologyより、Detection of early phase human T-cell leukemia virus type 1 and 2 infection with an improved confirmatory testです。こちらは、改変したHTLV感染確認検査(LIA)法による、感染初期におけるHTLV-1及びHTLV-2の検出に関して述べられています。
2つ目は症例報告です。中国において、鳥インフルエンザA(H10N5)ウイルスによる初めてのヒト感染例が報告されました。
3つ目は、雑誌Emerging Infectious Diseasesより、Novel Echarate Virus Variant Isolated from Patient with Febrile Illness,Chanchamayo,Peruで、ペルー、チャンチャマヨの発熱、倦怠感、悪寒、全身の筋肉痛、関節痛、頭痛などの症状を認めた20歳の土木建築業の男性から、Echarate virusの新規変異株が分離されたという報告です。
4つ目、Emerging Infectious Diseasesより、Posttransfusion Sepsis Attributable to bacterial Contamination in Platelet Collection Set Manufacturing Facility,United Statesで、米国で起きた血小板成分採血セットの製造施設における細菌汚染に起因する輸血後敗血症発症事例についての論文です。
5つ目は、雑誌Transfusionから、Syphilis seroprevalence and incidence in US blood donors from 2020 to 2022で、この研究の中では、梅毒陽性とほかの感染症との関連性が評価されています。
6つ目です。第71回日本化学療法学会西日本支部総会・第93回日本感染症学会西日本地方会学術集会合同学会で、研修医の先生から報告があったものです。クローン病に罹患している53歳の女性が、在宅中心栄養目的で、CVポートが埋め込まれていました。カテーテル血流感染が疑われ、血液培養を採取の上、カテーテルが抜去され、血液及びCVカテーテルの先端の培養から、これまでヒトへの感染報告のないLuteibacter jiangsuensisが検出されました。
7つ目は、ProMED International Society for Infectious Diseasesで、ジフテリアを引き起こす可能性がある新種のCorynebacteria菌によるヒト感染に関する報告です。
8つ目は、デンマーク、ノルウェー及びスウェーデンにおける新種のMycoplasma phocimorsusによる初めてのヒト感染に関する報告です。
9つ目、雑誌JAMA Neurologyより、Change in Epidemiology of Creutzfeldt-Jakob Disease in the US,2007-2020では、2007年から2020年までの死亡診断書データを用いて、最近の米国での傾向を理解するために調査が行われました。この論文の考察では、CJDの発症は大幅に上昇しており、高齢者と女性に偏って発症していることが指摘されました。今回の調査を通して、CJDの様相の変化を強調するものであり、高齢化する米国人口のモニタリングの必要性が示唆されました。
続きまして、4ページです。こちらも期間は同様に3月~5月の受理分で、感染症定期報告(個別症例報告概要)についてです。こちらでは外国症例を一覧にまとめております。5ページ以降に同一成分ごとに感染症発症の8例を一覧としてまとめておりますので、詳細な説明に関しては割愛させていただきます。議題1について、事務局からは以上となります。お願いいたします。
○田野﨑委員長 ありがとうございました。ただいまの説明につきましては、水上委員から追加で発言等があればよろしくお願いします。
○水上委員 今回は、文献2と3と4についてコメントさせていただければと思います。文献2は、中国における鳥インフルエンザAウイルスH10N5とH3N2の共感染による初のヒト感染事例及び死亡例となっております。患者は安徽省の基礎疾患を有する63歳の女性で、2023年11月30日に、咳、発熱等が出現して、12月2日に症状悪化で医療機関を受診し、7日に浙江省の病院に退院後、16日に亡くなられるという臨床経過となっております。こちらは、通常行われている死亡例のサーベイランスによって、2024年1月22日に浙江省の検査機関でインフルエンザウイルスH3N2、それからH10N5が検出され、1月26日に中国CDCのほうの再検査でも同様の結果を得ております。濃厚接触者のほうは、スクリーニング検査は全て陰性で、全て良好な健康状態であったということになっています。また、遺伝子解析の結果、同定されたウイルスは鳥類由来で、ヒトへの感染する能力は低いとされています。
現在までにヒトのH10の感染事例は死亡2例を含む全7例がありまして、H10N8の3例、それからH10N3の2例の合計5例は全て中国となっています。また、H10N7の2例はオーストラリアとエジプトになっています。つまり、このH10N5は本事例が初ということになります。皆さん御存じのとおり、一方、H5N1に関しては、2024年8月14日現在、2003年以降の累計で906例、死亡例は463例となっています。同じH5N2ですが、こちらは2024年にメキシコで感染死亡例が1例発生しています。また、H5N6に関しては、37例の死亡を含む92例のヒト感染が報告されています。また、H9N2に関しては、1例の死亡を含む138例が報告されており、基本的には病死した鳥やH5N1の汚染環境での接触が原因であり、ヒト-ヒト感染の能力は得ておらず、感染の拡大の可能性は引き続き低いのではないかと考えております。
その一方で、この鳥インフルエンザの哺乳類への感染事例が実は年々増加しておりまして、また、発生地域も拡大しており、現在で26か国48種類以上の哺乳類で、このH5N1の感染が報告されています。特に、皆さんも御存じかと思いますけれども、直近では2024年2月に米国で発生した乳牛への感染事例が米国各州で拡大しています。牛のみならず酪農従事者への感染も報告されており、2024年8月13日現在、13州190郡の牛、ヒトに関しては、ミシガン、テキサス、コロラドの3州の4例の感染報告がされています。ヒトでは、結膜炎等の眼の症状、それから咳などの上気道の症状が報告されています。テキサスの事例では、1頭目の発症以降、全体で15%程度が発病し、若干数が死亡されたと報告されています。ただ、基本的に牛での症状は軽く、10日程度で回復することが分かっています。
一方、この有症牛のミルクを摂取したネコが死亡するという例がありまして、こちらは、アイオワ州立大学と米国農務省の国立獣医サービス研究所の解析で、H5N1のクレード2.3.4.4bと同定されています。この牛におきましては、ミルクと乳腺で非常に多いウイルスRNAが検出されています。また、ネコでは、脳と肺で大量のウイルスが実は検出されており、同じ哺乳類でも種による病原性の違いが報告されてきています。牛の感染というのは、日本、イギリス、ハンガリー、それから旧ソビエト連邦等でも報告がありましたが、米国では今回初のケースとなっています。牛以外の哺乳類を含め、感染が増加しており、13州で86個体の感染も確認されています。その中には、ネコやイエネズミ、キツネ、アライグマなどの都市動物も多数含まれています。現状ではヒト-ヒト感染のリスクはまだ低いと考えられますが、哺乳類から哺乳類への種を超えた伝播が示唆されており、哺乳類間でのウイルス伝播の可能性に関する懸念を提起する事例と考えられます。
文献3につきましては、Echarate virusということで、先ほど説明がありましたとおり、ペルーのチャンチャマヨの発熱性疾患の患者から分離された新規変異株に関する報告となっています。Echarate virusは、ブニヤウイルス目、フェヌイウイルス科のフレボウイルス属の一種で、脂質エンベロープを有するRNAウイルスとなっています。この論文では、2019年6月25日、ペルー中央部のジュニン県北部のチャンチャマヨ市の病院に入院した土木建築業の20歳の男性の急性期血漿から、フレボウイルスが分離され、更にこのEcharate virusの未確認のフレボウイルスのエムセグメントとのnatural reassortmentであることがセグメント解析から示唆されており、自然界ではこのようないわゆる循環によってreassortmentが起こっており、新規のEcharate virusの変異株が循環していることを示す、非常に貴重なデータとなっています。
本邦におきましては、このEcharate virusは検出されておりませんが、フェヌイウイルス科に属するウイルスとしては、御存じのとおり、SFTSVの発生というのが毎年多数報告されています。また、ヒトへの感染性か明らかとなっているKabuto Mountain virusや、感染性、病原性が不明なHuangpi tick virus-2、それからToyo virus、Mukawa virus、Kuriyama virusなど、ダニ媒介性ウイルスとして次世代シークエンスで同定されているウイルスが次々と報告されており、引き続き注視が必要であると考えております。
SFTSに関しては、2023年の患者数が最多となっており、四類感染症に分類されて以来、106例の死亡例を含む963例が報告届出されています。西日本での感染事例が多く、獣医療の従事者への感染も増加傾向です。2023年4月には、SFTSと診断された後に死亡された患者から医師への感染例も報告されており、日本でもヒト-ヒト感染の事例が確認されております。患者の血中ウイルス量は7.2×106コピー/mLと非常に多く、中心静脈カテーテルを挿入、あるいは死後にカテーテルを抜去する過程において感染したものと考えております。特に、この抜去時にゴーグル等による感染防御が適切にされていなかったということも原因の1つとして考えられており、厚生労働省の感染症対策課より、SFTSの診療の手引を参考に、感染経路予防策を徹底する旨の事務連絡が発出されています。
日本赤十字社におかれましては、問診等において発熱のある方の献血を行っておらず、献血されるリスクは非常に低いと考えられています。また、原料血漿に混入したとしても、モデルウイルスのクリアランス試験等から不活化されると考えており、現状において問題になる可能性は極めて低いと考えております。
最後の文献4は、米国の血漿成分採血セット、キットの製造施設における細菌汚染を原因とする輸血後敗血症発症事例についてです。先ほど安全技術調査会のほうでも細菌汚染についてありましたけれども、その原因の1つが採血キットの製造所における環境汚染であったという事例になります。米国での2018年5月~2022年12月の期間における輸血後敗血症7症例の原因を調べた結果、患者検体及び輸血製剤から、院内感染の中で、ある種一つ重要な菌で、臨床的に問題となる代表的なアシネトバクター属菌、ACBC(Acinetobacter calcoaceticus‒baumannii complex)と言っていますけれども、それとコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の一種である腐生ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)というものが分離、同定されています。実際に用いた血小板製剤の採血セットの製造施設から採取した環境菌検体とともに詳細な解析をゲノムシーケンスにより行った結果、最終的に、この環境菌検体からの分離株が、患者及び血小板製剤からの分離株と遺伝学的に非常に関連性が高いということが判明し、製造施設がこのような細菌汚染の汚染源である可能性が極めて高いことが示唆された事例となっています。
この論文を見ますとメーカー等も書いてありますので、適宜確認いただければと思いますが、日本では、この血小板製剤の細菌汚染により、御存じのとおり、先ほども説明ありましたが、感染事例が発生しており、細菌スクリーニングの導入と、それに伴う有効期限の4日から6日への延長が検討されています。一般的に血小板に混入する原因菌のほとんどがドナーの皮膚にある微生物叢に由来しており、一部が粘膜の微生物叢や消化管からの混入、あるいは環境汚染によるものと報告されておりました。一方で、今回のようなケース、血小板採血キットなど、資材やその製造所における汚染は余り想定されてこなかったかと考えられます。資材等の無菌性の担保につきましては、恐らく受入時にキット販売会社等から情報提供を受けるとともに、必要に応じて環境評価等の結果を適宜確認するなど、製造・品質管理に問題がないか確認をすることも必要ではないかということを喚起する論文であるということで、コメントさせていただきました。以上となります。
○田野﨑委員長 詳細な御説明、どうもありがとうございました。委員の皆さんから御意見、御質問があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。濵口委員、お願いします。
○濵口委員 1番目の論文について少しお伺いしてよろしいですか。日本赤十字社から出されてた論文ですけれども、ちょっと確認させてください。確認検査で使っているLIA法に、抗体ヒトIgMに変更したところ感度が良くなったというか、それまできちんと検出できてなかったところが検出できるようになったということで、改良の余地ありということだと思うのですけれども、一次スクリーニングに関しては特段今の現状で問題ないということでいいのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部谷中央血液研究所所長 はい、そのとおりの認識でいいかと思います。この前メーカーの指示どおりに1つはやってなかったということで、自分らで新しい抗体を使って、二次抗体の代わりにしたということ、そして、日赤のほうでは、そういった決定できないようなものに関しては、PCRでprovirusのチェックもしています。この事例では、provirus、HTLV-1も2も見つかってこなかったので、この結果については、100%そうなのかというところの余地はあるかと思います。ですから、2例目とかが出てきたらこういう方法もいいのではないかと思いますけれども、現時点では次の事例が出てこないと何とも言えないと考えています。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほかにございますでしょうか。よろしいようであれば、事務局におかれましては、今後とも感染症定期報告をお願いしたいと思います。
続きまして、議題2に移りたいと思います。「血液製剤に関する感染症報告事例等について」、事務局より資料の御説明をお願いします。
○源血液対策課長補佐 資料2-1と2-2と2-3に関して説明をさせていただきます。まず2-1の説明をさせていただきます。血液製剤に関する医療機関からの感染症報告事例について、こちらも同様に令和6年3月から5月までの3か月間の感染症事例をまとめております。令和6年度の輸血血液製剤、症例製剤15件、血漿分画製剤2件、うち輸血用血液製剤との因果関係が否定された報告は1件、血漿分画製剤との因果関係が否定された報告は0件でした。輸血用血液製剤による病原体感染症報告事例の内訳を下に示しています。HBVで3件、HCV感染で1件、HIV感染で0件、その他10件、うち細菌等が9件です。この残り1件はHEV感染です。
HBV感染報告事例ですが、輸血後に抗体検査等が陽性であった事例は3件、上記(1)のうち、献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例は0件、劇症化又は輸血後死亡、輸血後に死亡したとの報告を受けた事例は0件です。
HCV感染報告事例ですが、輸血後に抗体検査陽性があった事例は1件、上記(1)のうち、献血者の保管検体の個別NAT陽性の事例は0件、劇症化又は輸血後に死亡したとの報告を受けた事例は0件です。
HIV感染報告事例では、輸血後の抗体検査等が陽性であった事例は0件です。
その他の感染症報告事例、B型肝炎及びC型肝炎以外の肝炎ウイルス感染症報告事例は1件、HEVです。細菌等感染報告事例において、当該輸血用血液製剤の使用済バッグを用いた無菌試験が陽性事例は2件、上記(2)のうち、輸血後に死亡したとの報告を受けた事例は0件です。
2ページです。上の部分が、先ほど御説明した輸血におけるHBV感染報告例で、いずれも個別NAT陽性の事例は該当がありませんでした。上3件がHBVの因果関係があるもので、一番下の部分に関しては、医師・企業ともに因果関係を否定し、報告対象外としています。
続いて、その下で、輸血によるHCV感染報告例です。献血者の個別NATが陽性になった事例は該当はありませんでしたが、輸血後の抗体検査等で陽性であった事例が1件ありました。
輸血によるHEV感染報告例として、献血者の個別NATが陽性となった事例は、こちらも該当はありませんでした。輸血後の抗体検査等で陽性であった事例として1件、HEVが報告されています。
続いて、細菌等感染報告例です。こちらに関しては、この表の上2件で血小板の感染が挙げられています。この中段の日赤投与前検査という項目で、いずれも、この上のほうでいけば、当該輸血用血液の残余にて細菌培養試験を実施し、Streptococcusを同定、患者及び当該輸血用血液の残余により検出された2つの菌株にて遺伝子型検査を実施し、遺伝子型試験で配列が異なったのは2,180遺伝子中0遺伝子であり、解析による値では99.986%で同じ株を起源とする可能性が高いと指摘が挙がっています。下も同様にあり、解析による値では99.972%で同じ株を起源とする可能性が高いと御報告を上げていただいています。
続いて、この流れで、日本赤十字社のほうから細菌スクリーニングに関する御説明を頂こうと思います。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 では、細菌スクリーニングの導入による輸血後細菌感染対策について、日赤の後藤から御説明いたします。資料2-2を御覧ください。輸血後細菌感染症の現状については、日本赤十字社では、輸血用血液製剤への細菌混入対策を様々に講じ、血小板製剤については、諸外国と比較し短い有効期限で運用することにより、輸血後細菌感染症の発生防止に努めてまいりました。しかしながら、この図1に示したとおり、年に数件の血小板製剤による細菌感染症が認められており、2017、2022、2023年には死亡に至る事例も発生しております。
次に、細菌スクリーニング導入の背景です。諸外国においては、血小板製剤の有効期間は、多くは採血後6日目までであって、米国やカナダでは、輸血後細菌感染症を防止するため、2000年代の初めから、採血後24時間以降に血小板製剤の一部を採取し、細菌培養試験を実施していました。日本赤十字社は有効期間を採血後4日と短く設定し、細菌スクリーニングは実施してきませんでした。この状況下で、輸血後細菌感染が血小板製剤の供給100万本当たり、米国等では10件程度、日本では1、2件程度の発生という状況でした。
イギリスでは、細菌培養試験の導入前は米国等と同程度の輸血後細菌感染症が発生していましたが、2011年に改良培養法、血小板製剤を採血後36時間以上待機し、混入した細菌が十分に増殖してから約20mLをサンプリングし、嫌気・好気の両方で培養を実施するという方法で、培養6時間で判定して細菌の増殖が認められなかった製剤を医療機関に納品するという方法なのですが、これを導入し、2017年にこの方法の効果が高いということを報告しました。つまり、2011年から2015年の5年間で細菌感染は1例のみということを報告しました。その後も2023年まで1例も輸血後細菌感染症は認められておりません。
輸血後細菌感染症の発生率は、血小板の供給100万本当たり、細菌スクリーニング未実施の日本では、2007年から2023年の17年間で平均で年に2件に対し、細菌培養試験導入後のイギリスでは、2011年から2023年の13年の平均で年に0.26件と、非常に少なくなっております。これらについては図2にまとめたとおりですが、このような結果に鑑み、有効期間を延長して改良細菌培養試験を導入したほうが、輸血後細菌感染症のリスクを低く抑える可能性があると考えました。それで、日赤としては、細菌スクリーニングを導入することを決定しました。
細菌スクリーニングの概要とスクリーニング導入後の血小板製剤の運用について、次にまとめております。日本赤十字社の細菌スクリーニング導入においては、血小板採血から培養実施まで待機時間を40時間以上確保し、24時間の培養検査を実施後に陰性の製剤を医療機関に供給するため、血小板製剤の有効期間を2日間延長し、採血後6日にすることとしています。これは諸外国の標準的な有効期間であり、安全性や有効性に係る臨床データに基づいて延長するものであります。なお、日本の洗浄血小板製剤は非常に血漿の除去率が高く、同じレベルまで洗浄した製剤が諸外国にはありません。したがって入手可能な臨床データがないため、FDAの基準にのっとり、現在と同様に製造(洗浄)後48時間(ただし採血後4日間を超えない)という有効期間の中で細菌スクリーニングを導入します。血小板の採血から供給までのタイムラインを図3に示しました。
最後に今後の話です。細菌スクリーニング導入により、重篤な輸血後細菌感染症を防止することが期待されます。有効期間の延長による影響については、J-HeSTのデータを用いることにより、製造販売後に調査を実施しようと考えております。私からは以上です。
○源血液対策課長補佐 続いて、資料2-3の説明をいたします。供血者からの遡及調査の進捗状況等についてです。1ページの血液製剤等に関わる遡及調査ガイドラインに基づく日本赤十字社における供血者からの遡及調査実施の進捗状況を、日本赤十字社より御提出いただいており、今回は、こちらも令和6年4月1日から6月30日までの速報値ということで頂いております。表の左と中央は、比較のために一昨年と昨年を示しておりますが、一番右のカラムが今年度の速報値となっております。
一番上の1つ目の遡及調査対象献血血液の概要についてです。(1)調査対象とした献血件数ですが、前年度の同時期4月1日から6月30日に比較して、HBVはマイナス8件の362件、HCVはプラス24件の81件、HIVはプラス3件の6件、HEVはマイナス363件の1,124件が対象となりました。(2)調査対象とした輸血用血液製剤の本数、(3)医療機関に情報提供を行った輸血用血液製剤の本数については、記載どおりの数字となっております。
続いて2ページについては、医薬品医療機器等法第68条の11に基づく回収報告状況を個別に羅列しております。簡潔ですが、事務局からは以上です。お願いいたします。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。以上の御説明に対しまして、何か御質問、コメントなどをお願いします。松下委員、お願いします。
○松下委員 松下です。血小板製剤による細菌感染報告の資料2-1の所の2例あるうちの1例目の方なのですけれども、院内洗浄後、輸血した血小板によって感染されていますが、院内洗浄する前の残余があったということでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 よろしいですか。
○田野﨑委員長 はい。日本赤十字社からお願いできれば。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 洗浄前の血小板製剤というのは入手できませんで、医療機関のほうでバッグ全体を使って洗浄して投与したものの残りが検査用に提供されている状況でございます。
○松下委員 医療機関としては閉鎖系で洗浄しているので、その過程でコンタミすることは考えにくいということなのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部谷中央血液研究所所長 日赤の谷です。そのとおりだと思います。陽性菌の場合、ブドウ球菌とかの場合は、ドナーさんに再来していただいて、感染源みたいなものを探すというか、研究的に肘あるいは口腔、鼻腔粘膜から少し検体を頂いて培養しています。その中で、今回、問題になった同じ菌種が検出されたということで、パルスフィールドで菌株の相同性を調べたところ同じパターンだったということで、ドナー由来と考えました。
○松下委員 分かりました。ここには書いてないけれども、そういう検討もされているということですね。
○日本赤十字社血液事業本部谷中央血液研究所所長 はい。
○松下委員 それと、感染症名が劇症型になっていて、輸血による感染症でこの病名が付いているのは、私はまだ見たことがないのですが、dysgalactiaeが検出されているので、担当医のほうでそういう病名にされたのでしょうか。実際にそういう典型的な症状があったのでしょうか。
○田野﨑委員長 よろしくお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤です。劇症型溶血性レンサ球菌ということで報告されているということなのですけれども、dysgalactiaeの報告自体は今までも5例ほどありますので、とても珍しいというわけでもないというようには考えております。
○松下委員 どのような症状があったかというのは、今のところ、はっきり分からないということですね。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 少しお待ちください。症状としては、細菌感染の症状と言いますか、途中で意識がなくなるようなこともあって、血圧も下がってというような症状が見られたということで、そのような報告がされたのではないかと考えております。
○松下委員 分かりました。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。いずれにしても、今までも血小板細菌感染で血流感染が起こりますと致命的になる可能性、それに近くなることがありますので、十分理解できるかと思います。ほかに委員の先生方からいかがでしょうか。よろしいでしょうか。今後、細菌のスクリーニングが入るということで、こういうのがなくなっていくことを期待しております。そうしましたら、ありがとうございました。引き続き、事務局におかれましては、感染症症例及び遡及調査結果の報告をお願いいたします。
続きまして、次の議題に行きたいと思います。次は、議題3「日本赤十字社の令和5年度血液事業報告について」に移りたいと思います。日本赤十字社より資料の御説明をお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部藤田経営企画部部長 日本赤十字社の藤田でございます。私のほうからは、令和5年度の血液事業への取組について、御説明させていただきます。
2ページを御覧ください。初めに、令和5年度事業概要です。医療機関への血液製剤の供給量は合計で1,743万単位、原料血漿の国内3メーカーへの供給量は120万Lでした。以上の供給のため、合計で501万人の方に献血に御協力を頂いております。
次のページからは、供給実績、採血実績の詳細について御説明させていただきます。3ページは輸血用血液製剤の供給実績です。令和4年度と比較しますと、全体で約19万単位増加をしている状況です。4ページは、分画製剤用の原料血漿の供給と確保の状況です。令和5年度は、一部の製薬メーカーの工場の改修の影響により供給量が2万L減少し、それに伴い確保量も減少いたしました。5ページは、採血実績です。令和5年度は、令和4年度と比較をしまして同数の約501万人の方に御協力を頂いております。先ほど御説明いたしましたが、令和4年度と比較しますと、輸血用血液製剤の供給量は増加しておりますが、原料血漿の供給量の減少に伴いまして、確保量を減少させたことから、結果的に献血者数の増減はありませんでした。6ページは、献血量と献血者数の推移のグラフです。近年では、原料血漿確保量の増加に伴いまして、献血量は輸血用血液製剤より原料血漿用のほうが上回っている状況です。
7ページからは、令和5年度に実施した主な取組について、御説明いたします。主な取組としましては、スライドにお示しをしております4つについて御説明いたします。
8ページを御覧ください。1つ目は、令和5年度に実施した献血推進施策です。令和5年度は芦田愛菜さんをCMキャラクターとして起用し、スライドにお示ししております広報展開を実施してきました。また、令和6年1月から2月にかけては「はたちの献血」キャンペーンを実施いたしました。9ページは、人気アニメ『SPY×FAMILY』とタイアップをしたキャンペーンです。令和4年度に実施したキャンペーンですが、そのときに好評でしたので、令和5年度は献血血液の確保が厳しくなる時期に合わせて2回実施をいたしました。
10ページは、献血セミナーの資材、実施方法の見直しについてです。これまで各血液センターがそれぞれ作成をしておりましたが、献血に対する不安を解消し、献血の意義を分かりやすく確実に発信できるよう、資料を統一しました。11ページを御覧ください。こちらは、小学校4年生に対して、厚生労働省、文部科学省の御協力の下、小学生に向けた献血教育冊子を配布いたしました。また、国のいわゆる「骨太の方針」にも小中学生への献血推進が盛り込まれたことから、今後も国とも連携しながら取り組んでまいります。
12ページは、献血Web会員サービス「ラブラッド」の活用状況です。予約機能、御来場前に可能となる事前問診回答機能も搭載されており、献血者の利便性の向上を図るとともに、必要血液量の計画的かつ安定確保につなげております。
2つ目は、13ページからで、企業・団体に向けた取組です。左の移動採血献血者数(会社員)のグラフを御覧ください。コロナ禍以降、企業におけるテレワークの定着等により、企業(団体)献血の協力は減少しております。そういった方には近くの献血ルームであったり献血会場での献血に御協力をお願いしているのですが、次のページを御覧いただきまして、このような施策を取っております。企業に団体コードを付与し、団体コードを用いて献血した従業員の方は企業の献血の実績になるという仕組みを構築し、昨年度から実施をしております。
15ページ、企業献血の意義と重要性を再認識していただくためのアプローチとして、献血の輪を広めるため、献血協力企業様には社会に向けて献血の意義や重要性を発信していただくことをお願いしてまいりました。
16ページは、企業の献血協力の例です。明治安田生命様、日本プロサッカーリーグ様及び日赤で連携した「シャレン!で献血」におきましては、令和5年度には大変多くの方に献血に御協力を頂いておりまして、令和6年度も引き続き実施していただけることとなっております。
17ページ、3つ目は、安全対策の取組です。先ほども後藤のほうから御説明いたしましたが、令和7年度に細菌スクリーニングを導入した血小板製剤を供給するための準備、課題への対応等を実施してまいりました。また、製造販売承認申請を行い、日本輸血・細胞治療学会等関連学会へも情報提供を行っております。
18ページを御覧ください。4つ目の取組として、今年1月に発生した石川県能登半島地震における対応について御報告いたします。血液事業への影響としては、地震発生後しばらくは、被災地への道路状況等により、通常よりも大幅に医療機関への供給に時間を要したこと、また、被害が甚大であった能登地方を中心に、献血受入れの一部中止を余儀なくされたことが挙げられます。日本赤十字社におきましては、災害の発生にかかわらず、必要な血液量をブロック単位又は全国的に確保する体制を構築しておりますので、赤血球製剤の全国的な需給調整を実施し、合計で830単位を東海北陸ブロックセンターへ支援し、必要な血液製剤を不足なく医療機関へお届けすることができております。
19ページからは、令和5年度の歳入歳出決算の報告です。上段の枠内にありますように、令和5年度の収益的収入は1,665億円で、前年度と比較して6億円の増加でした。一方で、支出は1,574億円となり、前年度と比較して62億円の減少でした。これらの結果、令和5年度の収支差引額は90億円の黒字となりました。また、下段の枠内にありますように、令和5年度の資本的支出については、次期基幹システムの開発や検査機器の整備等による固定資産支出、借入金の償還等を行った結果、251億円となっております。その財源としては、244億円を自己資金、残り6億円を補助金等収入によって賄っております。
20ページです。続きまして、令和4年度事業収支との比較です。事業収益全体については、前年度と比較しまして13.3億円の増加でした。次に事業費用については、全体としては58.6億円の減少でした。それぞれの要因としては、スライドにお示ししたとおりです。
21ページは、参考ですが、過年度からの収支状況の推移のグラフです。平成24年度の広域事業運営体制導入以降は、ブロック血液センターの整備、血液事業情報システムの導入等の投資のため、一時的に赤字決算が続いておりましたが、その後、事業効率の改善を推進した結果、平成28年度からは黒字回復をしておりまして、以降、令和5年度まで黒字決算を維持しております。令和6年度も、財政状況を注視しながら、必要な投資や事業に取り組み、引き続き安定した事業運営を取り進めてまいりたいと考えております。説明については以上でございます。
○田野﨑委員長 どうも御説明ありがとうございました。委員の皆様から、御質問、コメントなどがあれば、お願いしたいと思います。
○松本委員 松本です。すみません、確認させていただきたいのですが、原料用の血漿の供給が減ったということで、その分の売上げが減っているとお聞きしたのですが、聞き逃したのか聞き違えたのか、理由をもう一度御説明していただけますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部藤田経営企画部部長 先生、どのページでしょうか。
○松本委員 前年度、令和5年度の原料用の血漿の供給量が減っているということの理由は、どのようなものでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部藤田経営企画部部長 分かりました。令和5年度が120万Lで、こちらについては、製薬メーカーさんの工場の改修等がありまして、その供給量が減っている、控えたというような内容ですが、そのような回答でよろしかったでしょうか。
○松本委員 それは武田薬品さんの成田工場ということでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部藤田経営企画部部長 そうでございます。
○松本委員 シャットダウンするのは2024年10月なので、どうして前年度から供給量が減るのかということが不思議なのですが。今年の10月からですよね、シャットダウンは。どうして前年から減るのかが理解できないといいますか、何か理由があるのかということを教えていただきたいです。出荷停止は来年の2月からという予定を、こちらの会議でも武田薬品さんはプレゼンしているはずなのですが、どうして前年度から血漿の供給量が減るのかというのは、ちょっと合わないなと思うのですが、いかがでしょうか。武田薬品さんに聞いたほうがいいのかもしれませんが。
○山本需給専門官 事務局でございます。2023年度、令和5年度が昨年度よりも2万L減っているという点ですが、武田薬品さんのほうの必要量が減っていることによるものです。シャットダウンは、先生がおっしゃったように今年の10月からですが、これまでためていた量など、毎年度必要量を各社に確認して、必要量を日赤さんのほうに確保していただいているというところです。2023年度は、その前年度よりも必要量が少なかったということです。
○松本委員 その成田工場のシャットダウンと関係ない、先ほど言われた理由とちょっと合わない感じですが。
○田野﨑委員長 こちらに関しまして、武田薬品工業の方から何かコメントはありますか。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 武田薬品の塩入でございます。シャットダウンは確かに今年度なのですが、それに向かって計画的な原料血漿の調整をしておりましたので、このような結果になっていると御理解いただきたいと思います。
○松本委員 調整というのは、余分に在庫していた分を使用して生産をしているからというような理由でしょうか。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 実は、この前年にはシャットダウンの予定がなかったので、少し多めの購入をさせていただきました。そこからシャットダウンが決まりましたので、それに合わせて必要量の調整をしたということになります。
○松本委員 分かりました。ありがとうございます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。ほか、よろしいでしょうか。
私から日本赤十字社の方に1つだけ。現在、若年者への献血推進ということで、高校献血をかなり進められていると思いますが、まだこれは全国的には一部で、全体には至ってないというように理解をしておりますが、今後、都内なども含めて全国的に推し進めるということでよろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部藤田経営企画部部長 やはり、若年層、10代の方の献血のきっかけというのは学校での献血ということが非常に大きな原因になると思いますので、我々としても、各学校等にお願いさせていただき、行政も含めて今後広めていきたいと考えております。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございます。ほか、よろしければ次に移りたいと思います。日本赤十字社におかれましては、引き続き安定した血液事業の運営をお願いしたいと思います。
次は、議題4「各調査会の概要について」に移りたいと思います。事務局より資料の説明をお願いします。
○金子血液対策課長補佐 事務局です。それでは、議題4、各調査会の概要について報告いたします。資料4の1ページを御覧ください。令和6年度第1回献血推進調査会の概要について説明いたします。開催日時については、7月1日に開催いたしました。出席者については、全員の委員に御出席を頂き、日本赤十字社からは参考人として2名の御参加、また、議題2で中期目標「献血推進2025」の延長についてという議題があり、そちらで参考人として広島大学の田中先生に御参加を頂きました。
議事の内容です。議題1は、令和5年度の実績報告になります。資料1-1で、まず日本赤十字社から供給・献血実績等の報告、続いて、資料1-2で事務局の血液対策課から報告をし、それらを踏まえて、資料1-3で令和7年度の献血推進計画の策定に当たっての方向性について説明をいたしました。
委員からの主な御意見を紹介いたします。「社会人や学生が帰宅時に献血ができるように、献血ルームや献血バスの稼働時間を柔軟に見直せないか」といった御意見や、「学生への啓発資材の配布など、様々な啓発活動を行っているけれども、実際に啓発の効果があったのかを検証すべきではないか」といった御意見を頂きました。
続いて議題2では、中期目標「献血推進2025」の延長について、議論をさせていただきました。献血の中期目標を策定した2020年の頃は新型コロナの感染拡大期で、その影響を見通せませんでしたので、中期目標の中間年である令和5年度を目途に実績値を確認し、必要に応じて見直すこととしておりました。そのために、前回の調査会において、これまでの実績を確認して中期目標の中間評価を行いました。まず、資料2-1で広島大学の田中先生から、「献血推進2025」の各目標値の再検証と、血液法の基本方針の期間に合わせて、献血の中期目標期間を2028年度まで延ばした場合の各目標値の案について、研究結果を報告いただきました。
次に、田中先生の研究結果を踏まえて、事務局から資料2-2「献血推進2025」の中期目標の中間評価について説明をいたしました。中身を少し紹介いたしますと、資料の50~51ページになります。まず現状の把握として、各目標値については横ばいや低下傾向にある項目や順調に数字を伸ばしている項目がありますが、いずれも目標値には達していないこと、一方、新型コロナの感染拡大の状況下でも、全体としては必要な献血者を確保し、輸血用血液製剤や原料血漿を滞りなく供給することができていることを説明いたしました。それを受けて、今後の方向性としては、血液法の基本方針の対象期間と合わせて、国や日赤、都道府県等が一体となって献血推進をできるように、「献血推進2025」の目標期間を2028年度まで延長したいということと、田中先生の研究結果も踏まえて、当面は各目標値を見直すことはせずに、ポストコロナの経過を見ながら、今後必要に応じて目標値を見直していくことも考えていくことを提案し、特に大きな御意見はなく御了承を頂いております。
次に資料3で、47都道府県に設置された献血推進協議会にアンケート調査を行いましたので、その結果を報告いたしました。最後に資料4では、令和5年度下半期のモニタリング結果として、献血に関わる各種データの推移について説明いたしました。最後に全体を通した御意見としては、「痛そう、怖いといった献血をしない理由は共有されているけれども、献血をした方の理由、ボランティアとして、あるいは献血をするマインドやエピソードといったものを調べたらどうか」といった御意見や、「小・中・高・大学とそれぞれの段階に合った啓発を行うべきではないか」といった御意見を頂きました。簡単ですが、以上です。
○田野﨑委員長 委員の方々から、コメント、質問はありますか。ないようですので、どうもありがとうございました。
本日は非公開の議題が控えておりますが、その前に公開議題として議題5「その他」に移ります。まず、献血アルブミネート4.4%静注供給停止について、事務局及び武田薬品工業より資料の説明をお願いいたします。
○山本需給専門官 事務局です。資料5-1、献血アルブミネート4.4%静注の供給停止に関する御報告についてです。武田薬品では、献血アルブミンを4規格、献血アルブミネートを2規格製造販売しております。献血アルブミネートは、献血アルブミンと同一の効能・効果ですが、定期的に有効期限切れが生じるため、献血アルブミンの製造に集約するものです。この点、やむを得ないものと考えております。詳細については、武田薬品様からお願いいたします。
○武田薬品工業株式会社塩入参考人 武田薬品の塩入です。今御紹介いただきましたように、弊社の献血アルブミネートの供給停止に関する報告をさせていただきます。2ページの停止する背景ですが、冒頭、山本需給専門官から御紹介いただいたとおりです。弊社では、資料にも示しておりますとおり、同じように献血アルブミネート4.4%静注製剤と、献血アルブミン5%静注製剤を保有しております。今回は、このアルブミネートの停止をする代わりに、自社代替として献血アルブミン5%静注に集約したいと考えております。
御存じのように、効能・効果については全く同じですので、使い方、医療現場での御使用の仕方も同じかと認識をしております。これについては、御使用いただいております医療機関様等に事前に確認をさせていただいたところ、特に問題ないというような回答も頂いておりましたので、この方向で進めていきたいと考えております。以上、簡単ではありますが、当社からの説明とさせていただきます。
○田野﨑委員長 どうもありがとうございました。何か御質問、御意見はありますか。よろしいですね。特に問題ないことではないかと思います。
次に、エイフスチラの供給停止について、事務局及びCSLベーリング社から説明をお願いいたします。
○山本需給専門官 事務局です。資料5-2、エイフスチラ静注用250の供給停止についてです。こちらは、CSLベーリングが製造販売しております遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤の供給停止です。エイフスチラ250については、2021年3月を最後に3年以上にわたり臨床使用されておりません。今後も臨床使用される可能性は極めて少ないと想定されております。他社の遺伝子組換え製剤においても250規格は販売されており、代替は可能と考えられますので、供給停止はやむを得ないものと考えております。詳細については、CSLベーリング様からお願いいたします。
○CSLベーリング株式会社馬込参考人 CSLベーリングの馬込と申します。私からは、弊社のエイフスチラ250単位の供給停止について報告させていただきます。2ページをお願いいたします。後ほど、次からのスライドで、詳細データ、図表等を示して紹介いたしますが、2ページはサマリーになります。現在7規格を有しておりますが、そのうち250単位のみを供給停止しようと考えております。
現在エイフスチラを使用している患者さん、そもそもエイフスチラ自体を使用している患者さんが極めて少なく、そのうち250単位は、先ほど御紹介いただいたとおり、2021年3月を最後に3年間臨床使用されていない状況です。現在の治療状況を観察しましても、今後臨床使用される可能性は極めて低いと考えられ、また、他社様の製剤において250単位の規格が販売されていることから代替えも可能であろうということを考え、弊社としては、臨床及び患者さんへの影響は極めて少ないことから、供給停止を考えているところです。
3ページです。エイフスチラの基本情報です。赤字で書いてあります規格の所ですが、7規格あり、そのうちの一番小さい250単位を供給停止しようと考えております。現状ですが、先ほど申し上げたとおり、現在のエイフスチラ自体の市場シェアが1%未満です。右側ですが、2024年1月現在、250単位を使用している患者さんはゼロということです。これは、現在8月末時点においても同様です。一方、右下ですが、廃棄費用については、今年は恐らく300万円程度、約400万円程度の廃棄費用が掛かるであろうということを予測しております。
4ページです。エイフスチラ250単位の過去からの使用数、出荷本数です。2021年度は16本、1施設1名の患者さんに使用されておりましたが、その後、臨床使用されていないということです。2024年の1~7月にかけて、1本1施設に出荷されておりますが、こちらについては研究用で、臨床使用ではないということです。したがって、過去3年間使用した症例がないということです。
5ページです。今後も使用される見通しが極めて低いであろうと考えているところです。この250単位が対象となる患者さんは、1~3歳の乳幼児になります。一方、下のほうですが、こちらは令和4年の血液凝固異常症調査によるものですが、低年齢においてnon-factor製剤の使用が非常に多くなってきていると。こちらを販売されているメーカー様のプレスリリースによると、乳幼児への有用性が報告されたことから、更に症例数が増えることが想定されております。したがって、右上にありますように、他社様においても250単位がラインナップされていることから、弊社のエイフスチラ250単位については、今後の処方については極めてゼロに近い、ないと判断し、供給停止をしようと考えております。私からは以上です。
○田野﨑委員長 委員の皆さんから、御質問、コメントはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ほかにも同じ小さい規格がたくさんあるということです。御説明、どうもありがとうございました。
本日公開で行う議題については、ここまでとなります。その他、何かありますか。それでは、これより非公開議題に移りますので、事務局からお願いいたします。
○源血液対策課長補佐 田野﨑委員長、ありがとうございました。議題6については、本議題の議論に当たり、内資系3社の今後の設備投資予定等の企業秘密情報に係る説明を行うため、非公開とさせていただきます。非公開議題は18時20分より行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、3社の参考人の皆様は別室に御移動をお願いします。
(3社参考人 退出)
○源血液対策課長補佐 大変恐縮ですが、日本赤十字社の方、傍聴の皆様は御退席のほどよろしくお願いいたします。(議題6は非公開で行われた。)