第2回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 議事録

日時

令和6年8月7日(水)14:00~17:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム 大ホール
(東京都港区新橋1-18-1)

出席者

構成員(五十音順)

議題

  1. (1)精神保健医療福祉に関する施策について
  2. (2)その他

議事

内容

※R6.11.8 構成員発言の一部につき誤記訂正等を行いました。

○田辺座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」を開催したいと存じます。
 構成員の皆様方におかれましては非常にお暑い中、または御多忙のところを御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 初めに、前回の検討会から構成員の交代がございましたので、事務局より御案内をお願いいたします。
 では、よろしくお願いします。
○新平課長補佐 事務局の新平でございます。よろしくお願いいたします。
 構成員の交代について御報告をさせていただきます。
 中野前構成員に替わりまして、公益社団法人日本看護協会常任理事の松本珠実構成員に就任いただいております。
 なお、本日は遅れてオンラインにて御参加いただく予定としております。
 以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 続きまして、本日の出欠状況と資料の確認につきまして事務局のほうからお願いしたいと存じます。
 では、よろしくお願いします。
○新平課長補佐 事務局です。
 本日の会議につきましては、会場への御参集とオンライン会議システムを併用しての実施となってございます。全26名の構成員のうち、会場にお越しいただきました方が16名、オンラインでの御出席は8名となっております。
 岡田構成員、岡部構成員につきましては、御都合により御欠席と御連絡をいただいております。
 また、御欠席の構成員のうち、岡田構成員の代理といたしまして小幡参考人が御出席されたいというお申出がございましたので、皆様そちらでよろしいでしょうか。
(構成員 首肯)
○新平課長補佐 ありがとうございます。
 続きまして、人事異動により事務局の障害保健福祉部の幹部職員に変更がございましたので、御紹介をさせていただきます。
 まず、障害保健福祉部長の野村でございます。
○野村部長 どうも皆様こんにちは。障害保健福祉部長に7月5日付で着任をいたしました野村と申します。今日は、お暑いところお集まりいただきましてありがとうございます。
 第2回の精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会ということで、今日も資料説明、あるいは研究の発表など、引き続いていろいろと御意見を賜れればと思います。
 ちょうど改正法の施行もされたところでございますけれども、今後どういった施策を展開していければいいのかということで、皆様方と一緒にいろいろ知恵を出し合うというか、御意見をお聞きしながら次の方向性を考えるということをしていければと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
○新平課長補佐 続きまして、企画課長の本後でございます。
○本後課長 同じく7月5日付で企画課長に着任いたしました本後でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○新平課長補佐 続きまして、本日の資料について確認させていただきます。
 まず議事次第の一枚紙と座席表、それから資料1から5、参考資料をお配りしております。
 資料は以上でございます。不足等ございましたら事務局までお申出ください。
 また、傍聴の方につきましては同様の資料を厚生労働省のホームページに掲載しておりますので、そちらを御覧いただきますようお願い申し上げます。
 次に、オンラインで御参加の方にお知らせになります。カメラは常に映る状態にしていただき、また、御発言の都度、マイクをオンにしていただき、発言後はオフにする操作をお願いできればと考えております。
 途中で何か不都合がございましたら、お手数ですが、事務局まで御連絡をいただければと思います。
 それでは、冒頭の頭撮りにつきましてはこちらで終了させていただきます。よろしくお願いいたします。
(頭撮り終了)
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、具体的な議題のほうに入ってまいりたいと存じます。
 議題1の「精神医療保健福祉に関する施策について」でございます。まず資料1、2について事務局より説明いただいた後、資料3、4について藤井構成員より説明をお願いしたいと存じます。
 では、よろしくお願いいたします。
○新平課長補佐 事務局でございます。
 まず資料1についてでございます。
 資料1につきましては、前回検討会でいただきました主な御意見をまとめさせていただいております。構成員の皆様方からは、多様な御意見をいただきましてありがとうございました。今後の議論に活かしてまいりたいと考えております。
 資料1は以上でございまして、続きまして資料2でございます。
 こちらは本日、精神保健医療福祉に関する施策のうち、非自発的入院に係る制度と、隔離・身体的拘束について御議論いただければと思っておりまして、事務局のほうから資料2を御用意させていただいております。
 まず資料2の3ページ以降でございますけれども、こちらは「非自発的入院に係る制度について」でございます。第1回でお配りしております資料からピックアップしておりますので、私からは簡単な御説明とさせていただければと考えております。
 まず4ページ目、5ページ目につきましては、「精神保健福祉法に基づく入院形態について」と、「入院形態別在院患者数の推移」をお示しした資料でございます。
 6ページ以降でございますけれども、令和4年の精神保健福祉法の改正に関する検討会、それから改正法に関する資料、障害者の権利に関する条約に関する資料となってございます。
 12ページは新しい資料となってございます。
 こちらは令和5年度から6年度にかけまして、厚生労働科学研究において実施いただいております「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制における入院医療による支援のための研究」についての概要でございます。現状の把握と課題の抽出を行うことなどを内容とした研究でございまして、後ほど藤井構成員のほうから資料3で御説明をいただくかと思っておりますが、その概要を資料として資料2でお付けしております。
 続きまして、13ページ以降が「隔離・身体拘束について」の資料となってございます。
 14ページ、15ページが「行動制限に関するルール」と、あとは「隔離・身体的拘束(指示)の件数」となってございます。
 16ページ以降が社会保障審議会障害者部会の報告書の抜粋と、令和4年度の調査研究事業の概要をお付けしてございます。
 最後に20ページ目になりますけれども、こちらも新しい資料となりますが、令和5年度から6年度にかけて厚生労働科学研究において実施いただいております「精神科医療機関における行動制限最小化の普及に資する研究」について、その概要となってございます。
 行動制限最小化に関する国内外の知見や、行動制限を大幅に減少させた事例等に基づいて、医療機関に広く普及するために利用しやすい資材の作成を行うことなどを内容として行っていただいているものとなっております。後ほど、こちらも藤井構成員から資料4で御説明いただく研究の概要資料となっております。
 資料1、2につきまして、事務局からは以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして資料3、4につきまして藤井構成員より御説明をお願いいたします。
 では、藤井構成員よろしくお願いします。
○藤井構成員 ありがとうございます。国立精神・神経医療研究センターの藤井でございます。
 それでは、資料3に基づきまして「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制における入院医療による支援のための研究」について御説明させていただきます。
 本研究の研究代表は京都大学医学部精神科・神経科教授の村井俊哉先生で、研究分担者は資料にお示ししたとおりです。
 次をお願いします。
 本研究の背景と目的は資料の2ページにお示ししたとおりで、これは先ほど御説明がありましたので割愛をさせていただきます。
 次をお願いします。
 研究の実施体制は3ページ目にお示ししているとおりでして、私、藤井が主に精神医療の視点からの課題整理を行っておりまして、本日は主にこの藤井分担班の進捗を踏まえて御報告をさせていただきます。
 ほかに、本検討会の柑本構成員が分担をお務めの研究分担班では、法学的な視点から課題整理が行われております。また、東京通信大准教授の櫛原先生の分担班では、精神科の入院治療についての社会学的検討が行われております。研究を実施するに当たっては、関係する職能団体や当事者団体、家族会等の御協力を頂戴しております。この場を借りてお礼申し上げます。
 次をお願いします。
 この藤井分担班では、精神保健福祉法に基づく入院に関連する課題について、精神医療の実務者や当事者や御家族を対象としたインタビューに基づく課題整理と、研究2でお示ししてありますような制度の国際比較を実施してまいりましたので、次のページからその中間成果についてお話をさせていただきます。
 まずインタビューから分析した課題について、4ページ目にお示しをしております。
 インタビュー対象は、精神保健医療福祉の実務者としましては精神保健指定医、病棟看護師さん、訪問看護師さん、精神保健福祉士の方と自治体職員の皆様に御協力をいただいております。医療保護入院等の精神保健福祉法に基づく入院に関連する臨床上の困難に関してお尋ねをしているところです。
 さらに、精神科の入院経験のある方や、御家族が精神科に入院された経験を持つ方々に対してもインタビューを実施しております。そのインタビューの中では、精神科への入院に関連する実体験についてお話をしていただいています。
 当事者さんへのインタビューにつきましては、精神障害当事者であるインタビュアーの協力者に御担当いただきました。
 当事者の方や御家族の方々へのインタビューにつきましては現在、質的分析を進めているところですので、本日は実務者インタビューから医療保護入院に関する課題に絞って御報告をさせていただきます。
 医療保護入院に関連する主な課題としましては、「家族等同意に関連する課題」と「本人の意思確認に関連する課題」、医療保護入院の入院決定や入院の長期化に影響を及ぼす精神症状以外の要因に関連する課題の主に3つが抽出をされました。
 まず、精神医療従事者等の実務者から見た「家族等同意に関連する課題」ですけれども、家族等同意で生じると考えられる不利益が幾つか挙げられています。家族等への過大な負担についてはこれまでも何度も指摘をされてきたところで、検討会等でも御指摘をされていまして、家族等のインタビューでももちろんそのようなお話も出てきていますけれども、それ以外にも御本人や御家族への不利益があることが実務者からも指摘をされています。
 例えば、家族等同意が得られないことによる必要な医療へのアクセスの遅れや、医療中断が生じる懸念がある一方で、家族等の御意見を優先し過ぎることによっての不必要な入院や、入院の長期化も懸念がされています。御家族と御本人の関係性の悪化のみならず、御家族間の意見の不一致などから家族同士の関係性の悪化も生じる場合があると考えられます。
 同意をされる家族等の同意能力に関しましても、例えば重度の認知症などの同意能力がないのではないかと考えられる御家族の同意の有効性をどう考えるべきかといった課題が挙げられています。
 また、御本人が最も信頼している方、例えば内縁の配偶者でありますとか、同性パートナーといった方々が法律上は「家族等」ではないといった状況も少なからず経験をされます。
 さらに、同意者である「家族等」と御本人との間に利益相反がある状態というのは、家族等が御本人を虐待しているという状況以外にも、例えば御本人のほうが御家族を虐待していたというような場合だったり、訴訟までには至っていなくても御本人と家族の間に何らかのいさかいがある場合もありますし、虐待に関して言えば御家族が御本人を虐待しているかどうかの判断が難しいという場合の対応についても悩む場面があるというお話もありました。
 そのほか、特に児童の場合、複雑な家庭環境が背景にあると、どなたの同意を取るべきかといった判断が難しい場合もあるという御意見もありますし、ほかに御家族の意向が短時間で揺らぐ場合にどのような対応が適切かについても、これも判断が分かれる可能性があります。
 御本人の意思確認に関連する課題についてですけれども、まずは御本人の同意能力をどう評価するかといった課題が挙げられます。一般的にはインフォームドコンセントの成立要件としましては、本人に意思決定能力があること、御本人に十分な説明がなされること、御本人がその説明を理解すること、御本人が提案された医療に同意することの4つが全て満たされていなければならないとされていますので、御本人の同意能力がないとみなされた場合には理屈上、任意入院は成立しないということになるのですけれども、例えば重度の認知症、知的障害の場合どのように考えるのでありますとか、未成年者の場合は何歳から有効な同意とみなせるのかといったことが課題になっています。
 また、一貫して同意が得られない場合はどうするのかとか、御本人が自分で決めることを避けて、例えば御家族に決めてほしいとか、あるいは医師に決めてほしいというふうに希望されて、入院に対して明らかな拒否はしていないけれども、同意書に署名するということに関しては拒んだような場合とか、そういうときにはどうすべきなのかといった、言ってみれば任意入院と医療保護入院のはざまのようなケースに関しての制度運用をどうするのかといった指摘もあります。
 また、御本人の同意能力の有無の判断が難しい状況で、例えば手術などの侵襲性のある身体疾患の治療をどうすべきかといった課題も挙げられました。
 御本人の意向と御家族の意向が一致している場合はまだいいのですけれども、御本人は同意していて、御本人の同意能力はあるかどうか分からないけれども表面上は御本人が同意していて御家族は治療に反対、あるいはその逆という場合についての対応は難しい場合があります。
 医療保護入院の決定とか、入院の長期化に影響を及ぼすような精神症状以外の要因についても様々な要因が考えられました。
 まず適切な居住先が確保できないために入院となる場合や、入院が長期化する場合というのは少なからずあります。最近増えていると考えられる状況としましては、経済的な理由ですね。つまり、施設に入所するよりも入院のほうが費用負担が少ないということによる入院継続です。また、児童の場合、御家庭で虐待されているような場合は自宅に返すことができない。かといって、適切な児童養護施設も見つからないという状況で入院が長引くこともあります。
 一時保護の対象である児童に精神的なケアが必要である限りは、精神保健福祉法の各規定とは関係なく、精神科病院に対して児童福祉法に基づく一時保護委託は可能とはされているのですけれども、もう一度精神保健福祉法と児童福祉法との整合性について整理が必要になってくるかもしれないと思われます。
 また、地域における支援体制構築が難航することによって長期化する。これも以前から指摘されてきたとおりで、いわゆる社会的入院の問題というのが今も残存していると考えられます。
 それ以外にも、身体疾患の治療が必要だけれども、身体化病棟での受け入れが困難な場合に、精神病床に医療保護入院となることもあります。例えば、重度の認知症の方の場合、御本人が積極的に入院を拒否していなくても同意能力がないと評価されれば医療保護入院となることが多いということもあります。
 今、御説明しましたように、医療保護入院については以前から課題として挙げられていた家族等同意に関連する課題が様々な角度から指摘をされています。また、精神疾患の多様化でありますとか、年齢構成の変化や身体疾患のある方が増えているといった、精神衛生法、あるいは精神保健福祉法の成立当時から精神科医療を取り巻く状況が変化したことに対応するためには、現行の精神保健福祉法では制度運用上の困難が生じているという側面もあるのではないかということが示唆されました。
 さらには認知症の方への対応ですけれども、入院者のうち認知症の方の占める割合は年々増えていることも考えますと、これは重要なポイントだと思われますし、児童の場合は児童福祉法との整合性なども検討課題になってくるかもしれません。
 あとは、改正民法が施行されて共同親権が導入された場合の影響なども今後注視していく必要があるのではないかと考えられます。
 これらの課題に対しての「対応の方向性」としては、右下の図で4つお示しをしております。
 1つは、法改正や精神保健福祉法以外の関連する法律との関係性の整理です。
 もう一つは、法律以外の制度や指針の見直し、例えば診療報酬改定や医療計画での対応、あるいは精神医療審査会の機能強化といったこともこの軸に入ってくると思われます。
 ほかには、医療の質の向上により対応すべきこともあると考えられます。例えば同意能力の評価や意思決定支援の在り方についての教育を、専門医教育でありますとか標準的な指定医研修に入れるということも考えらますし、行動制限最小化の具体的方法の普及、実装ということも考えられます。
 また、それ以外にも医療外資源の整備でありますとか、関係者や国民全体の理解促進、連携構築といったことも重要ではないかと思われます。
 先ほど御説明しました様々な課題に対応するためには、この軸でお示ししましたような法改正などの法整備が必要となる場合もあると思われますけれども、必ずしも法改正でなくても対応できる課題もありますし、逆に法改正をすればそれで解決というわけでもないと思われます。それぞれの課題をどの軸で主に対応していくべきかということについても、今後検討していく必要があると思われます。
 さらに、これらの課題に対応していくに当たっては、社会学的視点からの検討も必要となってくると思われます。特に家族に関しての考え方など、日本の伝統的な家族の捉え方のような社会学的視点は重要ですけれども、その伝統的な家族の在り方が現代社会においては変化しているということも踏まえて検討していくことも必要ではないかと思われます。
 今回はちょっと時間の関係もありまして、医療保護入院についての課題のうちの主なものに絞って御報告しておりますけれども、インタビューでは任意入院や、措置入院や、あるいは地域での危機対応に関係することについても様々な御意見をいただいておりますので、またそれも整理をしていく予定にしております。
 インタビューから把握された課題について、量的な把握が望ましいと考えられる事項については今後全国調査を実施する予定にしております。
 次のページをお願いします。
 次に、「国際比較」について御報告します。
 国際比較についてはこれまでもたびたび行われていまして、特に非自発的入院の手続について調査されることが多かったと承知しております。今回も非自発的入院の手続については最新の状況をもちろん確認はしておりまして、特に柑本構成員の分担班では法学的にかなり深い検討が行われている途中ですけれども、私のほうの分担班では主に臨床的な観点からの制度運用に焦点を当てて比較を行っております。具体的には資料にお示ししました5つのケースについて、もう少し実際には詳しいケースを御提示しているのですけれども、それらのケースについて各国での対応の違いをインタビュー形式でお尋ねをしています。
 ケース1は、医療の必要性は高いけれども、明らかな自傷他害はなくて病院までの移動手段の確保が難しいという状況です。
 ケース2は、重篤な精神症状と身体疾患が合併している場合に、いかにして身体疾患の治療を開始するかの判断に迷うようなケースです。
 ケース3は、明確な入院拒否の意思表示はないものの、認知症により同意能力を欠いていると考えられる状況で、非自発的入院か、自発的入院かという判断に迷うようなケースです。
 ケース4は、知的障害が主診断で、暴言や迷惑行為、診察室での攻撃的言動を認めた場合にはどう対応するかといったものです。
 ケース5は、未成年者の親権者が御本人の意思に反して必要な入院を拒んでいるという場合の対応です。
 「各国共通の対応」としましては、自傷他害の事実があれば非自発的入院の対象となり得ることでありますとか、自傷他害のおそれが切迫していないような場合には行政職員等による自宅訪問を試みるというようなことでありますとか、認知症や知的障害が主診断であっても重篤な精神症状があれば精神科入院を規定する法律で対応することが多いというようなことが挙げられました。
 一方で、病院までの移動手段確保の方法でありますとか、非自発的入院となる場合の代諾者の有無、裁判所関与の有無、身体疾患の非自発的治療を行う場合の法的根拠や重篤な精神症状を認めない場合の認知症、知的障害がある方への対応、親権者の権利と義務に関連するような制度運用などについては国によって違いがあるということが分かってまいりました。
 今後は、柑本構成員の分担班や櫛原先生の分担班とも連携しつつ、重篤な精神症状がなくて同意能力が著しく低下した認知症、同意が得られない場合の身体疾患の治療ですとか、児童・思春期ケースにおける同意能力の評価や親権者の権利と義務に関する法的規定など、前にお示しした医療保護入院の課題と関連が深いと思われるような項目についてさらに詳細に調査をしていく予定となっております。
 以上です。ありがとうございました。
○田辺座長 引き続き、資料4に関しても御説明をお願いしたいと存じます。
○藤井構成員 それでは、すみません。引き続いてで恐縮なのですけれども、資料に基づきまして「精神科医療機関における行動制限最小化の普及に資する研究」について御説明をいたします。
 私は本研究には研究協力者として参画をさせていただいているのですけれども、研究代表の杉山直也先生が私が部長を務めます研究部の客員研究員の立場で研究を実施されていることから、私は杉山先生と御一緒に研究全体の進捗管理などをさせていただいている関係で、杉山先生の代理で御説明をさせていただくということで御承知おきいただければと思います。
 本研究は昨年の令和5年度から今年までの2年間の研究でして、現時点では研究途中にありますので、こちらも村井班と同様、中間報告となりますことを御承知おきください。
 研究代表と分担者はお示しのとおりでして、後でまた申し上げますけれども、看護の視点を強化すべきという意味合いから、本検討会の構成員の吉川構成員に看護系の研究者として分担研究を御担当いただいております。
 次のページをお願いします。
 まず、本研究が行われた背景について御説明します。募集要項は先ほど厚労省からお示しいただいたとおりなのですか、隔離や身体拘束等の行動制限に関連する要因としましてはお示ししていますととおり、急性期シフトとか高齢者ニーズの増加や医療管理技術の発展に伴う変化や、医療安全意識の変化などが関連することが厚労科研の実態調査等から示唆されているところでありまして、これは臨床実感とも一致いたします。
 近年、医療管理技術の発展が精神科領域にも及んでいて、患者さんの管理手法が変化したことでありますとか、医療安全への社会的要請が高まってきていることなどによって、隔離や身体的拘束の使用が通常手順として定着したということも考えられますので、そのような意識を変化させて治療文化を変革させるということが行動制限最小化のための近道となると考えられます。
 つまり、行動制限最小化のための取るべき対策の最も軸、キーとなるのは治療文化の変革と言えるかと思います。この考え方は、行動制限最小化の方策として後ほどもお示しします国際的な実績があるコア・ストラテジーや、令和4年度に厚生労働省の障害者総合福祉推進事業として実施されました精神科医療における行動制限最小化に関する調査研究の成果からも明らかに読み取れるところです。
 次のページをお願いします。
 実際の最小化方策としましては、現在義務化されているような院内委員会の設置でありますとかマニュアル整備、院内監査、一覧性台帳の整備といった最小化活動を行っても、今なお最小化が実現されているとは言い難いことから、最小化活動の在り方自体を見直すことが必要であると考えられます。
 右側の図でお示ししている「コア・ストラテジー」ですけれども、これは国際的に評価の高い介入パッケージとして確立しています。日本でも活用すべき事項が多く含まれているのですけれども、トラウマインフォームド・ケアとかリカバリーといった概念は最近知られるようになってきていますが、我が国ではまだ十分浸透しているとは言い難い状況で、このコア・ストラテジーは実装のための基礎的な準備が整っていない状況とも言えると思います。
 ですけれども、今後はこれらの概念の普及に努めて推進を強化するということは確実に必要であろうと思われます。
 また、このストラテジーは欧米で開発されたということがありますので、用語なども横文字が多かったり、我が国になじみにくい点があることも否定できないところです。
 一方、左下にお示しした令和4年度の推進事業では、我が国の医療現場での実態調査を基に最小化のための4つの視点が整備をされています。この4つの視点に沿って必要な最小化活動を整理し直していくということが、我が国の治療文化の変革に有用ではないかと考えられました。
 4つの視点については、この後、御説明いたします。
 ただ、この推進事業には看護師のお立場の方が参加をしておられなかったということがありまして、看護の視点が不足しているのではないかということも考えられたので、今回の研究では先ほど申し上げましたとおり看護の視点を強化しています。
 次のページをお願いします。
 これは、科研の公募において求められた内容に沿って研究の概要を説明したものですけれども、目標は2つです。行動制限を大幅に減少させた取組を普及させることと、行動制限最小化の総合的推進を行うための方策を検討することです。
 公募で求められる成果も大きく分けて2つありまして、1つ目は医療機関同士が相互連携して質の向上を目指す、いわゆるピアレビューの方法を開発することですね。2つ目は、普及のための利用しやすい資材一式を整備することです。
 この2つの成果のために、それぞれ分担班を組織しました。それとともに教材コンテンツを補強、強化する目的で、研究班では看護の視点を強化した形で取組事例を再調査することとしまして、ここでも1つの分担班を設けました。研究の実施に当たっては、当事者団体なども含めまして幅広い領域から御協力をいただいております。
 次をお願いします。
 ピアレビューでは、コア・ストラテジーを既に行っている諸外国で活用されている、ちょっと小さいですけれども、左下の図にお示ししているアクションツールを参考にして、どのような具体的取組が求められるかを全て網羅的に出しました。
 非常に多岐にわたる項目なのですけれども、この多数の項目を令和4年の推進事業で整理された4つの視点に当てはめて、我が国になじみやすいように再度整理し直して、ちょっとこれは小さくて文字は読めないと思いますけれども、右下の図のようなチェックリストを完成させております。各項目について解説をする解説集と、具体的にピアレビューの手順を整えて、これは8月中には実際に2つの医療機関でレビューを実施する予定で準備を進めているところです。
 次をお願いします。
 教育コンテンツを補強強化する目的で、行動制限最小化に向けた各施設の取組についてのインタビュー調査も実施をしています。図の下のほうですけれども、まずA病院、B病院のように病院の理念とか方針として行動制限を行わないという治療文化を築いていたところでは、職員の中で行動制限を行うという発想自体が出てこないということが分かりました。組織風土として、行動制限を行わないことでのリスクといった医療安全の視点よりも、患者さんの人権尊重の視点のほうが優位になっていました。
 それで、病院長や看護部長といったリーダーシップですね。あとは、スタッフの創意工夫によって行動制限最小化を進めている病院のインタビュー調査を行ったところ、左のC病院のように行動制限を要する状態にならないように予防的ケアの工夫を行っているというような病院がありました。看護職等が不調になる前の段階から関わることで、行動制限を回避することができています。その結果、患者さんの安心感、患者さんと職員双方の成功体験を得ることにつながるという効果が得られていました。
 D病院とE病院、真ん中のところですけれども、ここでは患者さんと看護職とのパートナーシップを重視したパス、あるいは看護計画を取り入れていました。パートナーシップを重視している病院では、行動レベルの目標を共有したり、患者さんと看護職が一緒に評価を行ったりということをしていました。それで、患者さんの行動を問題行動というふうに捉えるよりも、そのような行動になった理由とか背景に着目して個別に対応するということで行動制限最小化に評価が得られていました。
 今後は、患者さんの対応スキルの向上により行動制限を最小化している病院と、高齢患者さんに対して拘束しない看護・介護を方針として打ち出している病院の具体的な取組について調査を行う予定としております。
 では、最後のページをお願いします。
 教育資材につきましては、ここにお示しした一連の資料を今年度中に完成させる予定となっております。これらは普及ツールとして医療現場でアクセス可能で利用しやすくなるように、プラットフォームをウェブ上に整えていく予定としております。現在のところ、日本精神科看護協会のホームページにリンクするという形を想定しているのですけれども、これらの教材の有用性が確認できれば、さらなる普及を促進できるように、より公的な資材とすることも考えられるのではないかと思われます。
 資材につきましては基礎編から事例編までございまして、シリーズとして継続的に学習できるように、包括的な内容を網羅するように作成を進めております。
 基礎編では、行動制限に関わる関連法令の理解を促すために、精神保健福祉法の概説でありますとか、最小化を促進するに当たって活用できるデータの利用について音声つきの研修用スライドで作成をしているところです。
 理論編では、コア・ストラテジーの基礎理論になっているトラウマインフォームド・ケア、リカバリーにつきまして日常臨床で行動制限最小化を検討できる場面を幾つか想定して、気づきを喚起して治療文化を変革させることに資するような内容を15分以内の動画に盛り込みます。特にコア・ストラテジーで重視されている当事者性について、我が国の医療現場でより浸透できるように力点を置いています。
 戦略編では、諸外国でも行動制限最小化の成果を挙げている、先ほどから申し上げているコア・ストラテジーについて解説した音声つきの研修用スライドを作成いたします。
 実践編では、行動制限最小化に役立つ臨床で知っておいてほしい考え方としまして、ディエスカレーションと代替法につきまして具体的な例を示しながら、これも音声つきの研修用スライドで解説をしていきます。
 事例編では、ヒアリングで得られた成果をまとめた臨床で活用できる看護ケアの視点をスライドとかポスターを用いて紹介することにしております。
 以上のコンテンツについて現在作成進行中で、それぞれの進捗につきましてはペンのマークでお示ししております。
 こちらに加えて、プラットフォームの活用方法を動画で開設して、より広い普及を目指す予定になっております。
 以上です。お時間をいただきましてありがとうございました。
○田辺座長 藤井構成員、御説明ありがとうございました。
 では、ただいまの事務局と藤井構成員からの御説明につきまして、御質問、御意見がございましたらよろしくお願いいたします。説明のほうは合わせて行っていただきましたけれども、議論のほうは分けて行ってまいりたいと存じます。
 まずは、非自発的入院に関わる制度に関して御議論をお願いしたいと思います。御意見のある方は挙手にて、またオンラインで御参加の方は挙手機能でお知らせいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 では、池原構成員よろしくお願いいたします。
○池原構成員 ありがとうございます。
 それでは、まず非自発的入院に関してのところでちょっと教えていただきたいのですけれども、藤井先生の御研究の中の資料3ですが、これは現状の研究ということだと思うので、これから増えていく可能性のある市町村長同意ですね。家族などが同意を回避しているような場合、どう考えていくかということについては、例えば今後調査するとか、あるいはあるべき方向性とか、そういうことについて御検討されているのかどうか。
 それから、本人の意思確認に関連する課題について、いわゆる意思決定支援とか、どういう形で本人の判断能力を補助していくかというようなことについては何か検討とか研究をされているかどうかということを教えていただきたいと思います。
 併せて、今回の研究では家族同意というのはかねてからいろいろ問題があって、一時期、医療保護入院はもう家族の同意は不要という方向での法改正も検討されたところですので、家族同意をもしなくすということになっていくとすると、何かそれに代わるようなお考えというか、諸外国の例も含めて教えていただければと思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは藤井構成員、3点ほど御質問がございましたけれども、御回答をよろしくお願いいたします。
○藤井構成員 御質問ありがとうございます。
 市町村長同意につきましては、医療保護入院の中の一つの課題として大きなところだとは捉えておりますけれども、これにつきましては今年度からの施行というところもありますので、例えば実態調査をしてということは今年度の計画には入っておりません。
 ただ、インタビューやアンケートの中で市町村長同意についての認識について問うようなことはしておりますので、そこはまとめていく予定でおります。数の把握とか、そういうことに関しての量的なところにまではなかなかいかないかなと考えております。
 すみませんが、2点目が途中で音声が途切れてしまって聞き取れなかったところがあったのですが、御本人の同意に関して。
○池原構成員 意思決定支援とか、本人のインフォームドコンセントができる能力をどう補助していくとか、補強していくという点については何か研究されたり、あるいは実態調査の中で成果のあるような何かがあれば教えていただきたいと思います。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 その点、今後医療の質の向上という観点からも非常に重要なポイントと捉えておりまして、まずは昨年から今年度にかけては、イギリスでは同意能力評価でありますとか意思決定支援の方法が、比較的その研究やその実践が進んでいるところでありますので、英国の状況を調査するというところから始めております。それで、日本の取組状況等の調査に関しては現時点では行っておりませんので、今後の課題になってくるかと思います。
 3点目の家族等同意に関して、それを不要とした場合の代替策ということですけれども、研究の中ではそこの代替策まで検討しているところではないので、現時点で言えることはないと思うのですが、少なくともインタビューなどから得られた情報からは、家族等同意を残すことのそもそもの不利益ということはいろいろな観点から示されておりますので、まさにその点についてこの検討会でその代替策等についても御検討いただくものというふうに考えております。
○田辺座長 池原構成員、よろしゅうございますか。
 では、ほかはいかがでございましょうか。
 小幡参考人、よろしくお願いします。
○小幡参考人 全国精神保健福祉会連合会の小幡です。本日は、岡田構成員の代理として参加を認めていただきましてありがとうございました。
 今の池原構成員の質問と重なるのですけれども、藤井構成員から御報告いただいた研究は当会でも協力している面があるのですが、家族等同意についての有益性とか不利益という観点ではなく、当事者御本人のアドボカシーをどのように評価していくのかといったときに、非自発的入院の在り方はどうかというような観点を持ち合わせた上で、現状、家族等同意がある中でどう見えるのか。現状の到達点というか、意識がどこにあるのかという研究を深めていただく意味合いはあるかと思っています。ぜひこの点に引っ張られることなく入院形態の在り方をとらえる。非自発的入院、強制入院の中には医療保護や措置入院で、任意入院も含めて精神保健福祉法の中で言われる入院形態というものが一般医療(身体科)とはまた違う位置づけになっているということについての一般医療(身体科)と精神医療の中のギャップについても、評価点としてどんな視点を持ち合わせているのかというところについて、現在の見解等がありましたら教えていただきたいと思います。
 以上です。
○田辺座長 では、藤井構成員よろしくお願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 最初の視点につきましては今、当事者の方や御家族の方のインタビューを分析しているところで、今は実務者のインタビューからの分析をお示ししていますので、今、小幡参考人が言われたような視点については、むしろ当事者や御家族のインタビューから得られる視点も併せて考えていく必要があると考えております。
 ですので、もうほどなく当事者の方や御家族の方のインタビューの質的分析の結果が出てくるかと思いますので、その結果も見ながら御本人のアドボケイトというような観点も含めて、入院の在り方について総合的に検討していくということを考えております。その際には、御家族や当事者の方の御意見を頂戴しながら議論を進めていければと考えているところです。
 もう一点が、一般医療というか、身体科医療との整合性のお話だったかと思いますけれども、これに関しては先ほどの課題の中にも少し触れたところではあるのですが、精神病床に入院中の方とはいっても、身体疾患を合併する方も結構数多くいらっしゃって、そのような方に対して適切な身体医療を提供するという観点からも様々な困難が生じているところでもありますし、例えば同じ認知症で入院をされる場合で同意能力がないというふうに考えられる状態でも、精神科であれば医療保護入院という非自発入院になり、身体科の入院の場合は御家族の同意で入院されるということで、特に非自発的入院の手続というのは取られないということもあるかと思いますので、そのような違いというものが果たして合理的なものなのかどうかというのは議論になるところかとは思います。
 認知症の場合を考えると、身体科の入院と精神科の入院での手続きの違いというのは分かりやすいかもしれません。ここは身体科の先生方の御意見を伺いながら議論していかなくてはいけないところではないかと思います。
 もちろん認知症に限らずなのですけれども、で非自発的な入院だったり治療だったりというのは身体科と精神科で違いがあるほうが適切なのか、そうでないのかということは、諸外国の法律体系や国際比較の観点からも検討していく必要があると思います。同意能力のない場合であって精神障害がベースではない場合にはメンタルキャパシティーアクトとで対応していたりという国もありますが、それらが日本になじむのかどうかということも含めて整理をしていく必要があるのではないかと考えています。ですので、そのような観点からも国際比較を進めていくということで計画しているところです。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、どうぞ。
○池原構成員 すみません。もう一つお聞きするのを忘れていたのですけれども、医療保護入院のときの実体的要件として、任意入院が行える状態にない、いわゆる判断能力がない状態であるということと、それから医療及び保護の必要性があるという、日本法の場合はかなり緩やかなというか、広い概念になっていると思うのですけれども、今、医療保護入院の方が15、16万人くらいいらっしゃるのでしょうか。
 それで、お聞きしたいのは、指定医の評定者としての評定者による誤差とか幅というものがどれくらいあるのかということなのです。どうしても要件が緩いので、比喩的に言うと右側の端で判定するのと、左側の端で判定するのでは相当その幅があって、それがこれだけの人数の膨れ上がりということの背景にもあるのではないかと思っております。
 そういう意味では、せめて1991年の国連が採択した精神障害者の保護及びメンタルヘルスケア改善のための原則程度の厳しい要件ですね。症状の重篤性とか、入院の不可欠性とか、規定があるわけですけれども、そういうことも必要かと思っているのですが、その評定者間の評定誤差というようなことについては何か調査されたり、調査する予定というのはおありなのでしょうか。
○田辺座長 藤井構成員、よろしくお願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 これは、あると考えてはおります。
 ただ、それに関して調査すること自体、非常に難しい。事実上、難しいということもありますけれども、御指摘のとおりそのような判断の幅というのはあると思いますし、それは指定医間で判断が異なるというのもありますし、実際に今の医療保護入院の適用範囲というものが結構広いというのはインタビューの中からも明らかになっていて、任意入院により近いもの、先ほどもちょっと御説明した任意入院と医療保護入院のはざまだったりとか、御本人は拒否はしていないけれども、判断能力が著しく低下しているということで医療保護入院になっている方もいらっしゃれば、措置入院に近いような状態の方もいらっしゃるということで、実際に適用範囲が広いということもあります。そのような状況を踏まえると、指定医の判断の幅がどのくらいあるかというのを調査すること自体は困難だと思われます。
 ただ、措置入院に関しての指定医間の判断の幅があるということは、これは私の研究ではないですけれども、過去の調査研究から示されていますので、措置入院でもそれだけ幅があるということは、医療保護入院ではより幅があるのではないかということは想像されます。
○田辺座長 池原構成員、いかがでございましょう。
○池原構成員 そうですね。どういう調査方法がいいのか分からないですけれども、例えば限界事例みたいなものとか、幾つかの症例を設定して、例えば100人くらいの指定医の方に、これだったら医療保護入院とするか、しないかという調査というのは、有効性はあるのでしょうか。どうなのでしょうか。
○藤井構成員 できないことはないかもしれませんが、様々な観点から入院の必要性というのは判断されるものなので、症例提示自体を相当詳細にする必要があります。医学的な判断の症状だけではないところでも判断に影響が出ますので、実際にその方を診てみないと、文章だけではなかなか判断が難しい。患者さんの演技をしていただいた画像を見ていただく方法もありますが、現実的には難しいところだと思います。
 ただ、過去の研究では医療保護入院の判断の幅ではないですけれども、いわゆる同意判断能力の評価に関して、医師の間で判断がどのくらいずれているかというような研究はございますので、そのような研究は参考になるかもしれません。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、山口構成員よろしくお願いします。
○山口構成員 保健所から来ております山口と申します。
 私ども保健所は,非自発的入院については措置入院に一番関係しています。藤井先生がおっしゃったように措置に関しては,各事例を挙げて判断を聞くような調査はありました。
 また,保健所には措置入院届,医療保護入院届、が最寄りの医療機関から提出されておりまして、届出様式には 入院に至った概略が記載されていますが、措置と医療保護の区別がつきにくい届出が日常茶飯事にみうけられます。
 精神医療審査会で,措置入院決定報告書等について,入院の必要性についての審査を行うことになっています。この診査会の審査実績(判定実績)を把握することで,指定医判断の誤差の実態がわかるかもしれません。
 他には、保健所は精神科病院に実地指導をしています。実地指導をしていて、精神科指定医である実地審査医と同行し、入院患者様に面接します。入院同意の判断が,審査医と主治医で異なることがしばしばあります。入院形態変更の際には都道府県に報告しているので,それを(国が)調査すれば指定医判断の誤差の実態がわかるかもしれません。
 もう一つ、資料2の4ページにある入院形態についてですが、入院を必要とするというのは1から4に共通で、2から4が非自発的入院にかかる形態です。2措置入院と3医療保護入院の違いは重大な自傷他害のおそれの有無ですが、この「おそれ」というものの判断基準が本当に自治体で違って、私どもの調査でも、「おそれ」というのは既遂だけを取るか、未遂・念慮も入れるかなど,どの程度の行為を措置の対象とするか判断に迷うことがある保健所が多いことが分かっています。措置診察の対象とするか否かについても,自傷他害のおそれというのをどう解釈するかで、都道府県差が大きく出ています。精神科指定医数や受け入れ医療機関数も影響しています。
 まとめると,非自発的入院の措置入院と医療保護入院の違いがわかりにくいことがあります。措置診察の要否に関しては保健所の判断に差があります。指定医の評価にも差はありそうです。(非自発的入院制度について根本的に見直す必要があります。)
 
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、北村構成員よろしくお願いいたします。
○北村構成員 少し話は前に戻りますけれども、認知症の話を少ししたいと思います。
 私も県の実地指導とか行っていますけれども、しばらく前は、今もそうかもしれないですが、認知症の人の見当識がなくなってどこに入院しているか分からないような状況になったら医療保護にすべきだということで、何人か任意入院の認知症の人を診察させられて、どうですかとか聞かれるのですけれども、みんなどこにいるか分からなくなっているのですが、でもその前に精神科病院に非自発的入院すべき精神症状もなくなっているんです。だから、あえて医療保護入院に切り替えるのではなく、本人が退院したいと言っていないんだから任意入院のままのほうがいいのではないかと言って県ともめたこともあります。
 今、法改正によって医療保護入院の期間が決められました。それで、認知症の場合は例えば6か月とかたったときに、精神症状は改善していても家族では受け入れられない。施設も行けないという場合に、本人が入院に同意できないという理由だけで医療保護入院を継続しなければいけないとなって、それが先ほど藤井先生もおっしゃったような一般病院だったら家族の同意で入院しているのに、精神科病院だといわゆる非自発的入院の強制入院になるというおおきな矛盾があるわけです。
 それで、うちの病院では認知症は急性期病棟で受けるのですが、どうしても長くなる人は一般の精神病棟で療養病棟的に診ているのですけれども、ちょうどこの法改正の前に、それを一度全部調査したことがあって、長期入院となっている認知症の人50人中10人くらいは施設待機者でした。それで、20人くらいは身体合併症か、あるいは精神症状での入院継続が必要な人でしたが、しかし、精神症状と言っても夜中にずっと大声を上げるとか、それから徘徊してはいろいろなところでつばを吐くから施設で取ってもらえないとか、そういう程度の精神症状です。
 それから、残りの20人は家族が絶対嫌だと、その患者さんに関わるのは嫌だという人も何人かいたのですけれども、多くは長くお世話になった病院で、しかも医者もいて看護師もいるから、施設に行って夜中に救急車で呼び出されたりとか、そういうこともないのでぜひ置いてくださいというような感じなんです。現実的にはそういうことなんです。今、医療保護入院者は十何万人といっても、半分以上は恐らく認知症の人だと思います。
 そういうことを考えると、この前、藤井先生の海外比較の研究班とかで非常に面白いなと思ったのですけれども、認知症とか知的障害を精神保健福祉法から外している国がかなりある。だから、認知症の人の人権とか、そういうことを考えると、いっそのこと何がしかの条件で精神保健福祉法の対象外にして介護が見るようにすれば、身体拘束の問題とかもなくなるわけですから、そういうことをしたほうがいいのではないかと思ったりもします。
 ですから、例えば長期入院になった精神科の病床は、それは精神病床ではなくて介護施設なのだとしてしまえば何の問題も生じないのではないかと思います。ちょっと夢のような話ですが。
 それで、たしか韓国は日常生活に介護が必要だという理由で医療保護入院みたいにできるということも聞いたので、日本は割とそうなのかなと。
 でも、医療保護入院の継続届とかに、若い医者にもなるべく精神症状があるように書きなさいと言うんだけれども、現実的にうそくさいような、だってうちはあまりないですが、寝たきりの方が胃瘻を増設しにほかの病院に行って戻ってきたときに医療保護入院にせざるを得ないわけですから、そのときに介護抵抗があるとか、拒食があるとか、拒食と言っても胃瘻をつくりに行って拒食はないだろうと言ったことはあるのですが、そのように非常に法律と現場の乖離が目立つのは、精神保健福祉法が狭義の精神障害者の統合失調症とか、双極性障害とかに限定されて、今は対症となる精神疾患がどんどん広がっていっていて、認知症に関しては全然現実と合わない部分もある。もちろん精神保健福祉法でないと診られない認知症の人もいます。 いますけれども、ずっとそういう状態でいるわけではない。ですから、本当にもうちょっと根本的に考えたほうがすっきりすると思います。
 ちょっと話が拡大しましたが、以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、江澤構成員よろしくお願いいたします。
○江澤構成員 ありがとうございます。
 藤井先生、丁寧な詳細な御説明をありがとうございます。
 この家族等同意ですけれども、これは精神分野に限らず、あらゆる医療や介護の分野でもやはり家族によっても意見が異なることがしばしば現場ではあるわけです。そういった中で、意思決定支援の研修会などでは、本人が意思表示できない場合に意思を推定する家族等について、医療・ケアチームサイドも医療従事者側もその家族等が意思推定者としてふさわしいかどうか、一応吟味するステップなどを研修会では落とし込んだりしています。
 家族によっても利益相反があったり、いろいろな関係性もありますので、そういった中で今回実務者にインタビューをされているのですけれども、そういった家族等についての適切性判断とか、何か取組が今回インタビューでキャッチアップできていれば教えてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
○田辺座長 ここの点は、藤井構成員から何かございませんでしょうか。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 先生が御存じのとおり、精神保健福祉法では適切かどうかという以前に、家族等であればどなたでもいいことにはなっているということもありまして、むしろ適切ではないと思われるけれども、その方しかいないというような場合に、その方に家族等同意をお願いしなくてはいけないという、そこのジレンマが語られていたところですので、どの方が適切かということをどのように判断するかという観点でのお話は、今回は承っておりません。
 ただ、今後、家族等同意の中でどの方が適切かという判断が入ってくるようなことになってくれば、臨床の中でこの方は適切ではないと思われるのだけれども、致し方なく家族等同意をお願いしたとか、その逆の状況などというものが今回様々に出てきているところですので、かなり参考になる意見は吸い上げられたのかなとは考えております。
○江澤構成員 どうもありがとうございます。
 特に治療方針となりますと、やはりSDM等は今後もっともっと取り組んでいく必要があろうかと思いますし、恐らく現場の医療従事者は結構ジレンマを感じることが多いのではないかと思いましてちょっと伺いました。
 どうもありがとうございます。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、岩上構成員よろしくお願いします。
○岩上構成員 全国地域で暮らそうネットワークの岩上でございます。
 藤井先生、本当に御報告ありがとうございました。
 1点お聞きしたいのですが、国際比較をされている中で、かなり社会学的な影響というものを今後お調べいただくのだと思うのですが、非自発的入院の方の割合というか、人数であるとか、そういったものがこの非入院制度を考えていくときに非常に影響を受けているのではないかと思うのですが、その点は今までの知見もおありだと思いますので教えていただければと思います。
○藤井構成員 確認ですけれども、全体の要因に占める非自発的入院の割合というような意味合いでしょうか。
○岩上構成員 非自発的入院の方の諸外国における割合であるとか総数であることが、この入院制度とどうリンクしているのかということがあるかなと思ったものですから。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 全ての国について調べているわけではありませんけれども、例えば韓国では入院の制度が変わって非自発的入院の要件が相当に厳しくなってからは非自発的入院が減っているというようなことはデータ上、明らかに出てきています。
 ただ、そこは韓国のほうでなかなか悩ましい状況ではあるようで、本来医療の対象であって非自発的入院で入っていた方が医療にアクセスできない問題が出てきているということで、そこは日本で言うところの任意入院と医療保護入院の間のような制度がありまして、今、手元に詳しい資料はないのですけれども、その中で非自発的入院とはという形で数には挙がってきていないけれども、完全な任意入院とも言い難いような形での入院が増えているというような実態があるとの指摘もあったりして、入院形態でありますとか手順が各国で違うということだったりとか、国によって認知症が非自発的入院の、いわゆる精神保健法の対象になっていないということもあって、なかなか単純比較ができないところではあります。
 ただ、韓国の状況を見るだけでも、入院の要件が変わることによって非自発的入院の数が変わってくることがあり得るということは想定できるかなと思いました。
○岩上構成員 ありがとうございました。
 この件についてお聞きしましたのは、先ほど池原構成員が医療保護入院者は16万5000人という話をされていて、実はこの入院制度の議論を平成24年にしたときに私も作業部会の委員だったのです。
 それで、その際に保護者制度を廃止して家族同意を残さざるを得なかったのは非常に残念だったという思いがあって、そのときにやはりこの総数が相当影響しているのではないかということを思いました。それで、本来ここで議論するのは、権利擁護の視点も含めてあるべき入院制度だと思うのですが、非常にそういう入院数も多いという中で制度を考えていくときには財政的な措置も必要になるし、あるいはその制度設計を担う人材をどこに求めるかというのが必ず出てくるので、その点は諸外国を国際調査していただく上でも検討の余地に値するのではないかと思い、御質問をさせていただきました。
 そういう意味では私見ですけれども、やはり家族等同意はなくしていくという方向をもう一度きちんと議論していく必要があるということと、藤井先生が整理をしていただいている中でここでも議論をされていますが、認知症であるとか、児童思春期であるとか、あるいは身体合併がある方と、現在もそうですが、今後も精神科医療としてしっかり良質な医療を提供することを求められていく非常にニーズの高いところなので、この部分はできれば入院制度として切り離して議論をすることによって、これも言葉としてはどうかと思いますが、本丸としての権利擁護が必要だというところ、ほかの人がないということではないですが、少しその分析をして入院制度の在り方を議論することによって、ある程度の総数を今の16万5000人とは分けて議論していくことのほうが、今後制度設計をしていく上では今までこの10年間進まなかった部分が進むのではないかというような認識を持っていることをお伝えしたいと思います。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、松本構成員よろしくお願いいたします。今回が初参加ということでございますので、御挨拶がてらお言葉を頂戴したいと存じますので、それも併せてお願いいたします。
○松本構成員 日本看護協会常任理事の松本です。遅れての参加となりまして、大変申し訳ございません。
 藤井先生からの御説明も十分お聞かせいただけていない段階での御質問になり大変申し訳ないのですけれども、今回インタビューとして御家族にもインタビューをしていただけたこと、大変うれしく思っております。
 先生は、この中で御家族というのが遠方におられて同居ではないとか、そういったようなことの実態はございましたでしょうか。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 インタビューに御協力いただいた御家族は、御本人と近しい関係でいらっしゃって、同居している、していないにかかわらず、御本人と密に関わりを持っていらっしゃる御家族ということで今回のインタビューに御協力いただいております。
○松本構成員 ありがとうございます。
 私は自治体のほうに勤めておりましたもので、家族がなかなか病気に対する認識がないとか、入院させたらそれで手を放してしまうような実態がありまして、この医療保護入院をされたところをきっかけに、端緒として介入をしていくということが非常に地域では重要ではないかと考えております。
 その場合に、自治体が離れてしまうと今は自治体単位で行われている地域医療というものがなかなか保健分野では難しい点もございまして、医療保護入院となりましても家族との連携がちゃんと取れるようにとか、併せて本人へのアプローチだけではなくて家族へのアプローチというのも地域の中でなされるように、そういった体制が必要ではないかと思っております。
 ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、神庭構成員よろしくお願いいたします。
○神庭構成員 ありがとうございます。
 藤井先生の研究で特に国際比較に関心があるのですけれども、家族等同意入院を今後国内でどう考えていくか、進めていくか、あるいは改革していくかという議論をする上で、海外の情報というのは大変参考になると思うのですが、先生が調査している5つの外国で家族等の同意入院をしていない、そういう制度を持っていない国で、ではそれに代わるどういう制度があるのか。その制度のメリット、デメリットはどのようなものか。そういう点が分かると非常に参考になると思いますが、いかがなのでしょうか。
○田辺座長 では、お願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 家族等同意を持っている国のほうが少ないと言うべきだと思うのですけれども、実は家族等同意という形で残っているのは日本と、あとは実質的には韓国です。韓国は、家族等からの申出がないとそもそも入院プロセスが始まらないということがあるので、実質的には家族等同意と同様に考えられているところではあるのですけれども、それ以外の国では家族等同意はないというのが実情です。
 それで、これ以外の国に関しても我々が調べた限りでは、家族等同意の類似の制度を持っているところは今のところ見当たらないです。これからほかの国の情報も集めるところではあるのですけれども、少なくとも今、調べた限りでは、家族等同意がないところでは何らかの資格を持った専門職が複数名で判断をしたり、裁判所が関与したりという対応をしている国が大半でありました。
 そこで、問題となってくるのは先ほど岩上構成員がおっしゃっていた総数の問題で、日本のそもそも人口が多いというのもありますけれども、非自発的入院の方が非常に多いような状況で、諸外国の制度のような、例えば裁判所を関与させるというようなことは裁判インフラというか、司法インフラがそれに対応できないというようなこともあると思いますし、専門職が複数でということに関しても、急に制度が変わったときにそれに対応できる一定の訓練を受けた専門職をすぐに養成できないというようなことが考えられるかと思います。
 ただ、非自発的入院の人口当たりの数を以前に調査したことがあるのですけれども、新規の非自発的入院の人口当たりの数に関しては、実は今回お話ししたような諸外国と比べて極端に多いということはないのです。現在入院している方の総数となると日本の場合、入院期間が長くなっているところがありますので、現在入院している非自発的入院者の総数が日本の場合は多いということになります。最近の状況としては、その背景には認知症の方が長期に入院されているということも一部には関係していると考えられますが、。認知症は精神医療の対象とされていない国もありますので、なかなかそこは諸外国の状況をすぐに日本に当てはめるというのは難しいという側面もあります。
○田辺座長 神庭構成員、よろしゅうございますか。
○神庭構成員 はい、ありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょうか。
 では、小嶋構成員よろしくお願いいたします。
○小嶋構成員 TBSの小嶋でございます。
 藤井先生の研究は非常に興味深く拝聴いたしまして、結果がまとまるのを大変楽しみにしております。
 その上で、1つ御相談というか、お願いなのですけれども、研究のデザインに関わることなのでなかなかイエス、ノーというのは言いづらいと思うのですが、研究のデータを統合失調症と認知症、あるいは鬱を入れてもいいかもしれませんけれども、こういった分類でちょっとまとめ直すというか、そういったところで新しいことが見えないかというところをまとめていただけないかというお願いがございます。
 御存じのとおり、統合失調症の入院の数はかなり減っていますし、一方、認知症は年々増え続けているという背景もありますし、社会的な認知というのも大分違うと思うのです。今、親が認知症だとかということはすぐ遠慮なく言えるような状況になっていますけれども、統合失調症はまだまだそういう段階ではない。そういう社会的な認知の違いというのも入院の同意に関して言うとかなり大きい問題だと思いますので、統合失調症と認知症に分けていただいて、それぞれのデータを分析していただくと、今後の対策の新しいものが見えるのではないかと思うのですが、素人的な発想で大変恐縮なのですけれども、その辺はどうでしょうか。御検討いただけるとうれしいのですが。
○田辺座長 藤井構成員、いかがでございましょうか。全体のサンプルをどのくらい取っている等々、いろいろあるかとは思いますけれども。
○藤井構成員 御意見ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、それは非常に重要な視点だと考えますけれども、研究デザイン的にインタビューを疾患別にお聞きしているわけではなくて、実体験に基づいて様々な入院形態で入院治療を提供する、あるいは通院治療に何らかの形で関与するときに、どのようなところで迷いだったり御苦労があったかというようなことでインタビューしているものですから、疾患別にお伺いしていないというところがございます。
 それで、その中で認知症でありますとか児童に関しましてちょっと特出しでお伺いしているところがあるので、認知症、児童、身体合併症のある方というところについては別におまとめすることはできると思うのですけれども、それ以外の疾患につきましては疾患別に御見解を別の分析をするということができない構造になっておりまして、せっかくの御提案で恐縮なのですが、それはちょっと難しいように思いました。申し訳ございません。
○田辺座長 よろしゅうございますでしょうか。非常に重要な御指摘だと思います。
 では、辻本構成員よろしくお願いいたします。
○辻本構成員 これは言いっ放しになってしまうところかと思うのですが、日本は認知症が今後大きな課題になってくるかと思うのですけれども、認知症の方々が長期化するような予測因子というか、そういうものが見えてくれば、恐らくは先ほどの経済的なところからいうと施設よりも安いというのはどういうことなのかと思うので、家族でそうなってくるとしたらほかに長期化する予測因子があるのかどうか。
 あとは、複合的な要因がどうかというのと、後見人が今度はいろいろついてくると思うと、その辺の後見人の在り方だとか、家族同意ができないんだったら後見人がどうしていくか。それが権利擁護と結びついてどうなってくるかとか、その辺が必要になってくるのではないかと思います。
 ですから、医療保護入院は新しい方々は短くなっているので、今後長期化というケースで考えるとそういう家族にも社会にも離された人、その人たちには権利擁護としては後見人とかがつくべきだとは思うので、その辺はどうかと思いました。
 それと、我々の立場としてはやはり地域支援と整備との連携がどうか。地域にどれだけネットワークを持っている、持っていないというところの視点ももうちょっと調べていただけるとありがたいというのが1つ目です。
 2つ目が措置入院のことに関してなのですが、通報から措置入院になるまでの経緯とか、これは今回調べようがないと思うのですが、措置入院自体がばらばらなので、その辺がどうかというのと、あとは措置入院に絡んでくるのはやはり警察さんとか施設長とか通報とかあったときに、その辺の処理というか、対応とかも自治体によって違ってきて、警察文化だとか、刑務所の文化だとか、こちらの人権を知ってか知らずかで、それを放り投げてこられるということをどういうふうに制度設計の中で防ぐというか、文化を治療行動の文化と同じように、言葉は悪いのですが、社会防衛にならないというか、権利擁護と社会防衛はどういうふうにバランスを取っていくのかを国全体で考えていってもらいたいと思いました。
 それと、措置入院の中では身体拘束だとか、隔離とか、精神科救急とも関係してくると思うので、その辺が多いかとも思うと、そういうのは適切な隔離・拘束としたらどういうところにポイントを持って短期に済ませているのか。そういうところも調べられたら、その辺は精神科の救急学会だとか、保健所長会さんもいろいろと調べておられるので、そういうところから情報を取っていただけるとありがたいと思いました。
 ちょっとざっくばらんで申し訳ないですし、感想だけなのですが発言いたしました。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 今の研究デザインの中にどこまで入れられるのか、私はよく分かりませんけれども、何かコメントがございましたらお願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 認知症に関しましては、今回のインタビューの中でもほとんどの方が問題点というか、考えるべき課題として挙げておられましたので、今回はインタビューという形での質的な分析になってしまうのですけれども、今、辻本構成員がおっしゃったような観点で考えるとしたら、実際に認知症の方で長期になっている方がどのような要因で長期化しているのかということを、これは患者さんの調査として別立てで行う必要があると思いますし、それは恐らく今後やったほうがいいのだろうという印象をこのインタビュー調査からも受けています。
 以前に重度かつ慢性というような概念で長期化している方の背景情報などを調べた研究がございましたけれども、そのときと比べても認知症の方の割合が増えているということもありますので、認知症に焦点を絞ってそのような要因分析をしていくということがどちらにしても、先ほど北村構成員がおっしゃったような制度の改正を今後考えていく上では重要なポイントだと思います。
 措置入院に関しましては、別の研究班で保健所の皆さんに御協力いただいて警察官通報の分析などをしているところでもありますけれども、警察の対応との関係というふうになってくると、調査対象を警察にせざるを得ないところもあったりして、なかなか現実問題難しいということもあって、研究で対応できる限界はあるかなと思います。あとは以前に厚労省から発出された措置入院の運用のガイドラインの運用状況は警察のほうでどのように認識されているかということなども知る必要はあるのかなと思いつつも、なかなか実質の調査となるとハードルが高いなというのが正直なところであります。
 ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、よろしくお願いします。
○長谷川構成員 藤井先生、集中砲火ですみません。
 1つ意見で1つ質問なのですけれども、意見は家族同意のお話を皆さんされていますが、御本人さんと家族の関係性という点から考えると、やはり将来的には外したほうがいいなというのが私の意見でして、恐らく日本の文化に合わせると代諾制度になってくるのかなと勝手に思っているのですけれども、その辺は意見です。
 もう一つ質問が、医療の質を向上させるといわゆる強制入院も減っていくし、緩和されるかなと思っていて、例えば意思決定支援、さっきお話がありましたけれども、できれば算定要件に入るといいかな、せめてピアサポートのどちらかが入るといいかなと思っているのですが、その辺を藤井先生はどうお考えでしょうか。
○田辺座長 この点、いかがでございましょうか。
○藤井構成員 なかなかお答えしづらいところではあるのですけれども、医療の質を上げるというのはどちらにしても必要なことだと考えていて、課題の幾つかは法改正ではなくて医療の質の向上で対応しなければいけないところが結構あるのではないかと今回のインタビューを行っていて感じたところでもあります。
 要は、法改正を第一に考えたとしても、法改正があったとしても医療の質がそれで向上するとも限らないということも考えなくてはいけないので、医療の質向上というのを第一に考えるべきということについては同感です。
 それで、そのためには意思決定支援というのは障害者権利条約の観点からも非常に重要なところですし、共同意思決定、意思決定支援というところを今後さらに進めていくための方策というものを具体的に考える必要があると思いますし、今おっしゃっていただいたピアの方が入っていくというのも、障害福祉サービスの領域ではピアの方が入っていけるような制度がつくられていたところですけれども、医療の現場では一部の医療機関でピアサポーターの方を雇用していたりということがされていますが、それは診療報酬の算定要件には入っていないので本当にまだ一部にとどまっているということであります。
 ピアサポーターの方が医療の現場に入ることによって医療の質が向上するのではないかと予想しますが、そのような研究も行われつつあるようですので、より当事者の方が参画できるような仕組みにしていくことで医療の質向上が目指せるということを、さらに様々な取組や研究から示していって、その実現に向けて動いていければいいのかなと思います。
 その点、前回の第1回の検討会でも長谷川構成員からもそのようなお話があったように記憶していまして、そのお考えに同意します。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、吉川構成員よろしくお願いします。
○吉川構成員 ありがとうございます。日本精神科看護協会の吉川です。
 この医療保護入院についての議論は、今のところ医療アクセスといいますか、入院時の判断のところについていろいろ議論が行われていると思います。我々看護職の多くは入院病棟で勤務している状況が多いということがありますので、入院時の判断に直接看護職が関わるということはあまりないのですが、むしろ入院されてから、例えば医療保護で入院されてからの患者さんに関わることが多いという立場からの少し御質問になります。
 私が行動制限最小化のインタビュー調査などでいろいろ施設を伺っていても、入院当初は医療保護で入院された方を、途中から御本人の同意による任意入院に切り替えていらっしゃる。積極的にそういう関わりをしていらっしゃる病院もたくさんありました。
 そこで、藤井先生にお聞きしたい御質問なのですが、今回、国際比較で諸外国の非自発的入院のことが調査されていますが、諸外国では入院当初の入院形態というのは退院まで変わらないのが一般的なのか、それとも例えば入院当初のこういった入院形態を途中で切り替えたりされることがあるのか。そういったデータは、今回の研究で何かおまとめになる御予定があるのか。もし今回の研究で取り扱われていないようでしたら、そのほかの何か研究とかで御存じのことがあれば教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○田辺座長 では、よろしくお願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 国によって違うと思いますけれども、入院形態が途中で変わるというか、多くの国では非自発的入院だけがメンタル・ヘルス・アクト、日本で言うところの精神保健福祉法の対象になっているので、日本で言う任意入院という入院形態は精神保健法の対象ではない国が多いようです。すなわち、非自発的入院でなければ、身体疾患と同様の自由入院のような形で入院をされていますので、強制入院、あるいは非自発的入院の対象でなくなれば入院継続をする場合には自由入院になるというのが通常のコースであろうと思われます。
 ただ、どのくらいそうなっているのかということだったりとか、そのような形で入院継続をすることが一般的であるのかということについては、詳細なデータなどは持ち合わせていないところですので、そこの観点はちょっと調べてみたいとは思います。
 ただ、そこの関連で言うと、任意入院というものがいわゆる条件つき自由入院のような形で、そういう意味ではほかの国の自由入院とは少し違う形態であるということも、国際比較をする観点で一つのポイントではあるかなと思います。そこで精神保健福祉法の対象となっていない、身体と同じような形での入院の人数がどのくらいなのかを調べられるかどうかはちょっと分からないので、それも含めて調査をしてみたいと思います。
 ありがとうございます。
○吉川構成員 ありがとうございました。
 池原構成員のほうからも、同意能力であるとか御本人の意思決定というところにも言及されたかと思うのですが、やはり看護職は入院された後の患者さんとの関わりの中で、できるだけ御本人が少しでも入院の理解を深めていただいて、同意できるような関わりをやはり我々は役割として進めていくべきだろうと思っています。
 ですので、そういった運用面でしょうか。制度そのものということではなくて、こういった入院制度をどのように運用していくのかというところについてもいろいろ議論ができればと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょうか。
 では、小阪構成員よろしくお願いします。
○小阪構成員 ありがとうございます。
 日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪と申します。当事者の立場から言葉を紡ぎたいと思います。
 藤井先生の分かりやすい御説明、ありがとうございました。御説明に対する質問や意見ではなくて、あくまでも私たちの中で考える非自発的入院制度について少し御意見を申し上げたいと思っています。
 非自発的入院に係る制度、あるいは精神保健医療福祉の今後の施策推進については、現実路線を中心とした段階的な構想を議論するという観点ももちろん大事だと思いますが、一方で私たちが目指すべき理想的な精神保健医療福祉の在り方という議論も非常に重要な観点ではないかと思っています。目指している方向性が、当事者の立場と行政や精神保健医療福祉関係者との間で乖離があっては不合理を招くことがあるのではないかと懸念しています。
 私たちとしては、まずは非同意による本人が安心して受けられない可能性の高い医療保護入院の廃止を将来的に望みます。現状の精神保健医療福祉体制の中ですぐに実現することが難しいことは理解していますし、医療保護入院の廃止については法改正や精神科医療機関にのみ変革を求めるのではなく、精神医療保健福祉全体として、あるいは国民医療の在り方として総合的な議論が必要だろうと認識しています。
 その一環として、例えば外来診療の質向上も含めた充実化、訪問診療や多職種連携によるアウトリーチ支援のさらなる拡充も欠かせない要素だと思います。
 また、既に様々な方策が検討、実地されていると思いますが、精神疾患や精神障害への偏見の除去、そして加えて精神科医療に対する偏見の除去の取組が並行して大切だと思います。
 繰り返しになりますが、御本人が必要としたときに、御本人の立場としても同意して安心して頼りにすることができる精神科医療の提供の在り方を国民医療という観点で、さらには偏見への対策として、教育という観点も含めて総合的な改善策を講じていけるようになってほしいと思います。
 以上になります。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、田村構成員よろしくお願いいたします。
○田村構成員 日本精神保健福祉士協会の田村です。
 藤井先生、分かりやすく御説明いただいてありがとうございました。
 この研究が昨年度と今年度ということなので、その中で聞けたかどうかお聞きしたいと思います。4つの要因の一つには報酬制度と書かれていたので多少絡むのかなと思うのですが、例えばスーパー救急の場合に非自発的入院の方が6割以上とされていることがあり、そういった制度との縛りの中で非自発的入院形態にせざるを得ない実態があることへの疑問を複数の精神保健福祉士は言っています。つまり、本当に医療保護等にしなければいけないわけではないけれども、ここで数を取っておかないと、ということが現実にはあるのではないか。
 ということは、制度が非自発的入院を後押ししてしまっているのではないかという指摘があり、医療機関に勤めている人たちが矛盾を感じている面もあると聞こえてくるのですが、今回のインタビューでもそういった声があったかどうかをお聞きしたいと思います。
 関連して、長時間診察をじっくり行って説得をすれば入院の同意をされるかもしれないけれども、それほど外来診療で時間をかけられず入院の決定をしなければならないときに、御家族等が同意するとおっしゃっているので、早い手続として非自発的入院になってしまうケースがあることについても同じように矛盾を感じているという声があります。
 それから、自殺企図等がある方に関しても、ご本人が入院には渋々納得しているものの、もしかしたら隔離するかもしれないといったこととの兼ね合いで、最初から任意入院では受け入れないとする医療機関の存在、入院依頼をしてもそのように答えられてしまう場合もあるという話も聞きますし、精神医療審査会の入院届等からも、そういう雰囲気のなかで医療保護が決まったのかなと推測されるものもあります。
 ですから、どうも非自発的入院のこの制度があり、それをいろいろなところで活用する仕組みになっていること自体についても検討する必要が今後あるだろうと思います。そこで、今、私が申し上げているのはいずれも現場で働いている精神保健福祉士等のその都度の実感ですが、研究成果としてそういうものがある程度オーソライズされて出てくる可能性があるかどうかをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田辺座長 では、よろしくお願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 今、田村構成員がおっしゃっていただいたことに関しましては、インタビューの中で懸念点として出てきております。インタビューの「医療保護入院・入院長期化に影響を及ぼす精神症状以外の要因」というところの「その他」に全部入ってくるということで、非常にいろいろなことが出てきていましたので、ちょっとまとめ切れず「その他」にしてしまったのですけれども、そのようなことに関してのご懸念は複数の方から御指摘がありまして、モラルハザードが生じないような制度のあり方を検討することが必要かもしれません。たとえば診療報酬で言えば救急の非自発要件の見直しなども検討課題になり得るということで、今後の方向性のひとつとして制度の見直しという観点を示させていただいております。
 今後全国調査も予定していますので、実際のところどの程度そういうことで現場が苦悩しているのかが見えるようになるといいと考えております。
○田辺座長 よろしゅうございますでしょうか。
○田村構成員 ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
○田辺座長 では、池原構成員よろしくお願いします。
○池原構成員 2つ、短めに申し上げます。
 1つは、小阪構成員が言っていただいた、長期的な方向性として医療保護入院とか強制入院をなくしていくということを確認しつつ進んでいくということはとても大事だと私も思います。日本弁護士連合会ももちろんそういう方向を向いておりますし、全体のコンセンサスが得られるようにしていくことができるといいなと思っていて、よい御指摘をありがとうございました。
 それからもう一つ、それとは違ってまた細かいことなのですけれども、藤井先生の御研究のことに関連して、病院までの移動手段確保の方法というのは国により異なるという御指摘がありました。私たちは、日常的な弁護士としての相談を受けているときに、あるいはそれ以外でも聞き及ぶところですけれども、34条に関係したところですが、つまり医療保護入院にどういう形で到達しているかというのが、大ざっぱに言うと34条ルートというのと、民間搬送会社ルートというのと、あとはたまたま受診したけれども、その場で医療保護入院したほうがいいねと言って入院になってしまうというケースみたいなものはあると思うのですけれども、特にもともと34条をつくった動機というのは1990年代にかなり脱法的なというか、ちょっと乱暴な民間搬送というものが行われていて、それをちゃんと法的に規制したほうがいいのではないかということで34条をつくった。
 当時、私もちょっと委員会に参加していたので思うのですけれども、ところが実際には34条ができてからあまり使われていなくて、どちらかというと御家族がもうどうにもならなくて民間搬送会社にかなり高額のお金を払って病院まで連れて行ってもらうということが実態としてどうもあるようだけれども、全体像はよく分からない。あるいは、患者さんのほうのインタビューを聞いてみると、病院まで連れて行かれて、お医者さんの問診はほとんどなしに、着いたら段取りはもう組まれていて、では入院ですよとなって診察もろくに受けなかったという方もいらっしゃるようなのですけれども、その辺りの34条ルートとか、あるいは民間搬送の実態についてお調べになる予定はないでしょうか。
○田辺座長 いかがでございましょう。
○藤井構成員 御質問ありがとうございます。
 問題意識としては、全く同じようなものを持ってございます。
 ただ、今回の村井先生の研究班では具体的な34条、あるいは民間移送会社の状況を調べるというところまでは予定しておりません。
 ただ、インタビューの中で今、先生がおっしゃったような問題意識については特に自治体の職員さんから出ております。
 あとは、国際比較としては、日本であれば、神疾患の場合、家族が何とか頑張って病院にお連れしなければならず救急車が病院にお連れいただくことはないことがほとんどだと思うのですけれども、国によっては救急車が精神疾患でも対応しているというようなこともありましたので、そのような違いはもう少し深掘りできるといいと考えております。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。次に移ってよろしゅうございますか。
 それでは、次に隔離・身体拘束に関して御議論をお願いしたいと存じます。御意見、それから御質問等がございましたらよろしくお願いいたします。
 では、よろしくお願いします。
○池原構成員 引き続きすみません。
 藤井先生の御研究で、身体拘束については告示でも、あるいは他の医療でも大体コンセンサスが得られているのは、切迫性と、一時性と、非代替性ということになっていると思います。切迫性というのは生命、身体に対する重大な危害が切迫しているというような理解だと思いますが、そういう基準で運用のばらつきがあるのか、あるいはかなり身体拘束ゼロに近い実践をされているところがよく守られているのか、あるいはほかのファクターのほうがより強く作用しているのかという辺りについて、もし御所見があれば教えていただきたいと思います。
○田辺座長 では、よろしくお願いいたします。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 今回の研究ではそのような観点からの検討を入れていないものですから、明確にお答えすることは難しい状況です。御指摘のところは確かに重要なポイントかと思いました。申し訳ありません。
○池原構成員 そうすると、かなり少なくなっているところでは、必ずしもぎりぎりの切迫性とか、一時性とか、非代替性ということにこだわらなくても、いろんなケア技術の改善とか、そういうことで実質的に減っていることが多いということなのでしょうか。
○藤井構成員 そのように承知していますけれども、これに関しましては吉川構成員のほうが実際にインタビューを実施されていますので、吉川構成員のほうが正確にお答えいただけるのではないかと思うのですが。
○吉川構成員 ありがとうございます。
 実は量的な調査をしているわけではないですので、減っている要因とか、そういったところまではつかめていません。
 ただ、今、池原構成員がおっしゃっていることですが、今回はあくまでもインタビュー調査の範囲ではございますけれども、本当に限りなく行動制限を行っていらっしゃらない。それが10年以上とか20年くらい、ずっと行っていらっしゃらないところは、そもそも行動制限を行うという発想自体がもちろん病院の組織としてもそうですし、スタッフの中にも課題の解決に行動制限という手段、発想を持たないという状況がありますので、あまり細かい切迫性であるとか、一時性であるとか、非代替性という一つ一つに何か照らし合わせて臨床が判断しているという状況ではないなというのは感じております。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
 では、長谷川構成員よろしくお願いします。
○長谷川構成員 ちょっと研究とは外れるのですけれども、一病院の取組としては、データから転倒転落とか点滴の管理での拘束が非常に多かったので、そこをまずやめた。だから、転倒してけがをしても拘束はしませんというのをまず家族に説明をして、拘束をしないリスクを負うようにした。
 あとは、点滴をとにかく減らした。コロナの肺炎などで持続管理とか、どうしても必要な方も中にはいらっしゃいますけれども、それ以外はできるだけ少なくして、あとはリクライニングの車椅子でナースステーションの目の前で短時間でやるとか、そういうできるだけの工夫をして減らした結果、すごく強い自殺企図とか、本当に激しい暴力以外はしなくて済んだので、昔は30%くらいされていたのですけれども、5%くらいまで減ったし、時間も最新では平均で2時間くらいで済んでいるという感じです。そういう取組の話です。
○田辺座長 補足をありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、よろしくお願いします。
○長瀬構成員 日精協の長瀬でございます。
 行動制限や身体拘束に関しては、いろいろな資料や御議論からのご指摘がありますし、我々の病院協会でいろいろな取組をしております。研修会にて普及啓発に努めており、多職種で取り組むのが一番有効であるということは分かっておりますので、多職種への教育的配慮も含めて力強くやっております。
 昨今、精神医療だけではなくて一般身体科での身体拘束が問題になっておりまして、診療報酬制度の中でも身体拘束を低減させる方向を打ち出すような仕組みが今回の診療報酬改定で見直されました。経過措置がついておりますけれども、そういった方策でないとなかなか減らないと判断されたことは残念なことなのかもしれませんけれども、最小化に努めて取り組んでおりますので、その辺りの現状も少し御理解いただければと思って発言させていただきました。
 以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、北村構成員よろしくお願いします。
○北村構成員 身体拘束に関しては、病院長の考えとか病院全体の方針で相当減らせることは事実です。
 ただ、こういう議論のときにいつも思うのは、それぞれの人によって身体拘束をしている患者の状態のイメージが違うのではないかということで、ステージで分けて考えるというか、例えば救急急性期の非常に興奮が強かったり自殺が切迫していたりしているような場合に、それは従来から言われているとおり、他害行為は隔離で対応し、自殺が切迫している場合だけは身体拘束もあり得るというふうに当院ではやっております。
 ですから、本当に興奮している患者さんに、先ほどあったように一生懸命、話をしてなだめてと、夜中にそんなことができるわけありませんから、まず救急急性期での在り方としてどうするかということが1つある。
 それから長期入院になったりすると、どうしても患者さんのストレスもたまってほかの患者さんとトラブルを起こしたり、物を取ったりとか、あるいは迷惑行為がある。そういうときに、昔は何か罰則的な隔離とかもあったのですけれども、今そういうことはもちろんやっておりませんが、しかし、そういう人たちに対しては先ほどから出ているとおり、なるべく看護師等が個別に対応して非常に丁寧にその人の問題を掘り起こして、隔離しなくて済むようにするということはできると思います。
 数的にやはり一番多いのは認知症者とか高齢者の転倒転落予防で、例えば先ほど長谷川先生が、やらない、減らしたと言っていましたし、それから松沢病院などはそもそも認知症の病棟に入るときに身体拘束をしないということに関して家族から同意書を取ったりしたりしています。
 それはそうなのですが、ただ、当院でもそうは言っても、なぜ縛ってくれなかったかとか、月に3回も4回も骨折されると、家族から訴えられることはありませんが、あれだけ言ったのにどうして縛ってくれなかったんですかという家族がいることも事実だし、それから御本人が認知症で訳が分からなくなってふらふらになって転ぶのを横で見ているわけにもいかないし、夜中じゅう看護師がついて歩くこともできないし、現実的にはやはり認知症者とか高齢者の転倒転落予防に対しては何がしかの補助具といいますか、そういうものを考えるべきだと思います。
 もちろん、精神保健法で規定されているような手を縛るとか、そんなことをする必要はありませんけれども、例えば車椅子に安全ベルトをつけるとか、そういうことはあり得ると思うんです。
 いつも思うのは、子どものチャイルドシートはしなかったら罪になるのに、認知症の人の転倒転落予防に対して、それは確かに判断が難しいかもしれませんし、人の行動を妨げるのはいけないことかもしれないけれども、では赤ん坊のベッドの四方向に柵をつけないで落ちてもそれでいいのかという話とあまり変わらないような気がするので、もうちょっと現実的なところで転倒転落予防についてはいろいろな技術的なことも含めて考えればいいと思うし、これは精神科だけの話ではなくて国民全体で検討していくことではないかと思います。
 一般での身体拘束はやはり認知症の人で、一般の普通の病院では認知症とか高齢者ばかりなんですね、それはなるべく減らしましょうということでできるかもしれないけれども、ゼロにするのはなかなか難しいので、もうちょっと現実的な観点から考えたらいいのではないかなと日頃、思っております。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、江澤構成員よろしくお願いいたします。
○江澤構成員 ありがとうございます。
 今回、ピアレビューと資材を作成するということで大変期待をしているところでございます。
 これまでも意見が出ましたけれども、やはり重要なのは身体的拘束を全く行わないという組織風土の醸成だろうと思います。そういった中で今日少しお話にはなかったのですが、病院の中の組織体制というのも非常に重要ではないかと思っております。
 まず、病院の全体の組織としての大方針があって、そしていろいろな病院の取組があると思います。当院も結構長年行っていますけれども、毎月1回、病院長が参加する身体拘束ゼロの委員会を開催し、そしてその後にワーキングがあったり院内ラウンドするチームがあって、それは定期的に回って現場でいろいろ改善の取組、アドバイスをする。これを継続することが重要であって、病院という組織の中で継続的に取り組むような病院がかなり増えてきていると思いますから、まずは組織体制というものをしっかりと位置づける。
 そして、継続的な活動を行う。どうしても、我々の業界は諸般の事情でいろいろ職員の入れ替わりが比較的あるものですから、職員が入れ替わってもその理念であったり組織風土は変わらないんだというものをつくり上げていくことが大事で、そうした組織の適切な体制の下、継続的に長年取り組んでいくということを続けていくことが一つの方策ではないかなと思っています。
 先ほど御意見もありましたけれども、令和6年度の診療報酬改定では入院基本料の通則、すなわち義務化となったわけですが、身体的拘束の最小化ということで、適切な手続を経ていない身体拘束については入院基本料から40点減算するというものが義務化されたわけで、これは大変好ましいことだと思っています。
 ただ、その適正な手続というところはやはり判断がぶれるところもありますから、特に非代替性とか経験技量の差が出やすい部分につきましてはしっかりとこの資材のほうでいろいろ御示唆、御協力していただければと思っておりますので、特に外部研修とか、外部から講師を招いて自施設の職員の中だけで考えていると気づかない点もどうしても出てくるかもしれませんので、ピアレビューにもありましたけれども、地域で他機関との交流とか講師を招く。そして、講師を招いて、現場で見てもらうというものが非常に重要ではないかと思いますので、ぜひ期待しております。
 これは意見でございます。ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、小嶋構成員よろしくお願いいたします。
○小嶋構成員 行動制限に関しては同じ事柄の表と裏だと思うのですけれども、例えば先ほどもありましたが、車椅子のシートベルトをするとかしないとかということは、冷静に考えれば必要なときもあるわけで、それは行動制限ではないと思うのです。
 それで、「こういうこともあるのでこういうことをしますよ」と、こういう行動制限が起こり得るんだということを言うのと、「基本的には行動制限しません。だけど、こういうケースがあったらこうしましょう」というのでは、国民とか患者の受け止め方がやはり全然違うと思うんです。そういったところをもうちょっと前面に出すべきではないかと思っています。
 それで、「行動制限はしません。だけど、これは危ないからちょっと気をつけませんか」というようなことは十分あり得るわけで、そういった形で医療を変えていくというのがやはり必要なのではないかと思っています。
 群馬県沼田市に大誠会というグループがあって、内田病院というところが認知症の患者に拘束をしないことで有名だと思うのですけれども、そこで理事長の先生に話を聞いたことがあって、そこでは点滴は、点滴の管が抜けないようにする目的で拘束でやる。「点滴は拘束なので、その拘束をいかに拘束でなくするかということにいろいろ気をつけている」というような話がありました。それも非常に重要だと思います。
 あとは、転倒転落の話も出てきて聞いたのですけれども、「転倒転落をしないために体をがんじがらめにするといった拘束はしないのですが、転倒したときに例えば骨折をしないように日頃から指導している」と言うのです。なかなか面白いなと思いました。
 そういう中で、施設に新しく入ってくる患者と家族に、「拘束はしません。転落転倒することがあるかもしれません。だけれども、転落転倒してもけがをしないように、例えば栄養指導もそうですし、転び方も練習する」と話すそうなんです。そこまでやっている。そこまでやって、もし骨折したらごめんなさいということで誓約書を書いてもらうというようなことをやっているところもあるんですよね。ですから、物の見方なのですけれども、表と裏とどちらからも見て、それを患者や国民に伝えていくというのが非常に重要だと思います。
 それともう一つ。監視という言葉はあまり好きではないですけれども、医療をしっかり国民、患者が見て、「これは違うんじゃないですか」と言える社会をつくることが必要なのではないか。正しい情報を伝えるというのはメディアの大きなミッションでもありますけれども、国も同じようにそういう使命を持っているわけで、正しい情報を伝えて国民に正しい判断を促していくことが必要なのではないかと思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、花村構成員。
○花村構成員 花村です。よろしくお願いいたします。
 今、ほかの構成員の先生方の御意見を伺って思いましたのが、やはりいろいろな人たちの中で見守っていくということが大切なのだろうと思っておりまして、多職種の活用ということが先ほど長瀬先生のお話にもありましたけれども、こういう事例でいい取組があったというのを研究の中で出していただき、現場でうまく今後も活用していけるような好事例の事例集みたいなものを出していただけると参考になるのではないかと思います。
 私が勤務しているところは、精神保健福祉法にのっとった病棟はなく一般病院なのですけれども、認知症の方などをみんなでケアしていく中で、やはり転倒転落事故防止のために拘束をするというのではなく、ポジショニングが無理でつらい姿勢を取らざるを得なくて、苦痛で点滴を抜いてしまうとか、ベッドから落ちてしまうとか、そういうことを防止するために、リハビリテーション専門職とも連携しながら、ちゃんと姿勢よく寝られているだろうかとか、といったことをみんなで見たりですとか、「この方がつらくなっていないだろうか」というところをみんなで見守り、拘束を最小化しようという取組もしています。私は心理職ですけれども、看護職の方々とかソーシャルワーカーの方とかも含めて、「この方が気分よく過ごせるにはどんな話しかけをしたら良いだろうか」ということもみんなで検討していく中で身体拘束を最小化し、事故を防いでいこうという取組をしています。いろいろな視点を集積していくというのが今回の我々の会議の役割でもあるなと思いましたので、意見をさせていただきました。
 ありがとうございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、松本構成員よろしくお願いいたします。
○松本構成員 ありがとうございます。
 今回、研究の中で看護の視点というものの重要性ということを出していただきまして本当にありがたいなと思っております。
 言わずもがなでございますけれども、先生方がおっしゃっておられますように、この問題につきましては看護においても大きな問題でございますが、一人一人の看護職の取組や認識だけでは解決できるものではないということを考えております。
 身体拘束の最小化に向けましては、組織的な取組というものが継続してなされることが重要だと思っております。日本看護協会のほうでは、2023年に「精神科病院における看護職による患者虐待事件を受けた今後の虐待防止に係る取り組みの強化について」ということで、日本精神科看護協会さんと日本精神保健看護学会さんとともに共同声明を発出させていただいております。その際にも、倫理的で質の高い看護を提供できる仕組みづくりが大事だということを前面に出させていただきました。
 また、日本看護協会のほうでは、身体的拘束ゼロや最小化に向けて積極的に取り組む精神科病院にヒアリングをさせていただきました結果、やはり看護職はきめ細やかな状態観察やアセスメントに基づいて、積極的に患者とコミュニケーションを図りながら、拘束せず安全に療養できる体制を整えていることが分かりました。
 また、組織的な取組として、院内のプロジェクトを立ち上げて、十分な時間をかけて職員自身が安心・安全に看護ケアができるよう、認識のすり合わせやマニュアルの見直しなどを実施していると聞いております。
 一方で、患者さん個々の状況を見極めながら、相手の負担にならず、適切な距離感でのコミュニケーションを取るためには、精神科看護の知識、技術の向上も重要です。隔離とか身体的拘束といったものの最小化を広く普及していくためには、このようなマネジメントの方法の好事例の横展開が重要だと思っております。好事例を基に、倫理的教育や看護の質向上などの人材育成や精神科看護の人材の確保、労働環境の整備、患者の暴力暴言から看護職を守るための対策、こういったものを総合的に進めていき、身体的拘束の最小化に向けて確実に具体的な対策を講じることが重要だと考えております。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、辻本構成員よろしくお願いします。
○辻本構成員 皆さんの話を聞いていて、言いっぱなしになるかとも思いますが、まず、今後、ますます高齢者の隔離・拘束が課題になることが予想されます。私は総合病院で勤務しています、高齢者のせん妄だとか、ミトンをどうするのとか、点滴をどうするのとかという認識が身体科スタッフと精神科スタッフが異なっていると感じています。精神保健福祉法上での隔離・拘束と身体科におけるそれらと、やはり質が違うというか、文化が違うというか、そういうところがあります。精神保健福祉法上は精神科救急を主体としたものが中心になってきた経緯があります、今はずいぶん整理されましたが。もちろん高齢者の人権も大事だし、命も大事なので、精神保健福祉法だけでどうのこうのとか、指定医だけでどうのこうのとはちょっと違うと思うので、その辺の整理も必要なのではないか。
 どうして精神科だけ批判され、人権問題として取り上げられるのか、身体科においても、身体拘束の最小化が進んでいます。今後、精神科も身体科も同じルール、制度・法律で本人の意思が尊重される方向に進んでいくことに期待します。やはりどの領域でも、同じく人権とともに身体を守るという整理が必要だと聞いていて思いました。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、小幡参考人よろしくお願いします。
○小幡参考人 全国精神保健福祉会連合会の小幡です。
 これまでも身体拘束や制限については、病院内で最小化委員会とかが設けられたにもかかわらずなかなか減っていないとか、実態的にはかなり厳しい部分もあるという中でこういった研究が進められてきて、より最小化を目指すための教育システムに進んできているかと思います。実態として拘束等の廃止やゼロというのが難しいというのはあると思いますが、やはり取り組んでいく姿勢としては皆さんの発言の中にもありましたが、最小化というよりはゼロを目指すという中で最小化に近づけていくということが実績として起こるんだと思います。事例の材料を集めていく中でも、その治療文化の中でそもそも行動制限という発想を持っていないというような現場、全部がそうなるというふうにはならないのだろうという御意見もあるかもしれませんけれども、そこをやはり意識化していく。最小化というよりは、やはりゼロを目指すというところにもう一度皆さんの共通認識を持っていけるのではないかというふうに家族会としては思っているところもあります。
 教材の中では、当事者の声も聞いてというところはあるのですけれども、ぜひ看護職や医療従事者の方が御自身の身を守っていくという観点から見ていくときには、患者と向き合うというところでの行動制限を原則しないんだよというところのコンセンサスがある中であれば、こういう状況のときにはこうだ、ああいうときにはどうだというようなところを、よりつまびらかにお互いが認識を持っていける。
 また、家族の中でもいろいろ見解が分かれたりするところはもちろんありますけれども、そこはやはり基本的には拘束等が自分自身に向けられたときに、高齢者であろうが、精神疾患であろうが、状況下としては行動制限しないにこしたことはないというところは共通認識だと思います。ここが土台にあるんだよということをぜひ患者さんと家族や医療従事者、全ての人が同じ土台に立っているということを、より患者さんに伝わるようにしながら進めていくには、私たちとしてはぜひこの教育の中でも改めて身体拘束をゼロにするというところが根本なんだと、これは言わずもがなのところだとは思うのですが、あえて強調して進めていただかないと、最小化がやはり絵に描いた餅になってしまうのではないか。同じことの繰り返しにしないために、ぜひそこを強調していただきたいという意見を述べさせていただきます。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、田村構成員よろしくお願いします。
○田村構成員 ありがとうございます。日本精神保健福祉士協会の田村です。
 今までのお話の中で認知症の方、特に高齢の方の身体的拘束のお話が中心にされていたかと思うのですが、一方で、それだけではなくて、例えば暴力的な状態になっていらっしゃる患者さんについて、看護職員等を守るためにどうしても一時的な身体的拘束が必要と判断されていることもあるのではないかということが、病院の精神保健福祉士の意見としてあります。ただ、もし職員の方がもっと多ければ見守りが十分できたり、会話をすることなどによって上手にお気持ちを和らげるといったことで対応できるかもしれないけれども、特に夜勤帯など非常に手薄な中で大勢の方を看なければいけないので、そういう配置基準との関係などもやはり検討の中には入れる必要があるのではないかという意見がありました。
 それと、藤井先生から先ほどお示しいただいた資料では、行動制限最小化というふうにされているのですけれども、隔離と身体的拘束以外にも患者さんの行動を制限すること、入院生活の中ですので様々な制限が生じていることも否めないと思うのですが、主に今回の研究で目指しているのは隔離と身体的拘束を最小化、もしくはゼロにするという話に尽きるのか、それとももっと幅広く行動制限最小化ということを捉えていらっしゃるのかというところが分からなかったものですから、改めてお聞きできればと思います。
 というのも、例えば任意入院の方など、基本的には開放処遇が望ましいとされていますけれども、実際には御本人が納得というか、いいですよと言えば閉鎖病棟で任意入院されている方もあるわけですが、任意入院の方というのはあまり縛りがないので、逆に行動制限の見直しがちょっと遅れがちになってしまうところもあるかもしれないという意見も病院の精神保健福祉士の中からは出てきております。今回の研究でどのくらいのところまでを対象としているのかということを改めて教えていただいて、また私どものほうでもいろいろ検討していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○田辺座長 では、この点はいかがでございましょうか。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 今回の研究では、主として隔離・拘束の最小化ということを目指す形になっています。それ以外の行動制限を全く扱わないというわけではないのですけれども、一番大きなところとしては隔離・拘束を最小化する。できるだけゼロに近づけるということを中心に行っています。
 ただ、隔離・拘束を最小化するに当たって、ほかの行動制限も行動制限の中に当然入ってきていますので、その観点は全く入れていないというわけではありませんが、主として隔離・拘束ということになります。
○田村構成員 ありがとうございます。分かりました。
 あとは、暴力を回避する意味での身体的拘束というような側面もあるのではないかと現場の精神保健福祉士たちは結構感じているところもあるのですけれども、暴力を防止するための研修プログラムなどももちろんCVPPP等あると思いますが、今回の教育資材の中でもそういったことが取り入れられているのか、またはほかにも何か要素があるのか、差し支えなければ多少お聞かせいただけたらと思います。
○田辺座長 この点、いかがでございましょうか。
○藤井構成員 ありがとうございます。
 まさにCVPPPなどは念頭に置いて教材作成をしているところですので、実践編のところではちょっと分かりにくかったと思うのですけれども、ディエスカレーションというのは具体的な実践方法になりますし、代替法というものを使いながら患者さんの暴力的な状態に対して、より安全に対応していけるという観点も入れています。
 御本人の隔離・拘束以前に、スタッフとしてどのような対応をするのが適切かというようなことを、具体的な方法論を交えての御紹介になると思います。
○田辺座長 よろしゅうございますか。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、池原構成員どうぞ。
○池原構成員 もう一つ別のファクターとして、もし検討していただけるといいかなと思ったのは、身体拘束は虐待の一形態ともなり得るものだということと、それから精神科病院の一つの課題として、やはりとても閉鎖的で社会の目が入りにくいというところに権利侵害が起こりやすいという一つの温床みたいなものがあると思うんですね。
 その中でも、さらに隔離され、拘束されという状態になると、さらに外部の目が入らないというか、社会の空気が入っていかないというところがあって、そういうところが例えば身体拘束を受ける場合には、権利告知をするときに例えば弁護士との連絡が取れますよとか、連絡を取れるようにしましょうかというような、刑事事件で言えば当番弁護士みたいな制度があるのですけれども、そういうことを外部の空気を入れるということでは検討してみる。
 あるいは、今回精神保健福祉法で虐待についての規定ができましたけれども、都道府県に通報するということになっていますが、その都道府県の障害者権利擁護センターなどの職員が巡視するというか、病院に入ることができるというか、そういう外の空気を流していくことによって少し文化が変わったり、病院の中では当然と思われていることが、社会の人から見ると、そういうことをしているんですかというようなことが起こり得るかもしれないし、逆にそれは確かに妥当かもしれないと評価される場合もあるかもしれないので、少しそういう第三者の目とか、外の空気を閉鎖的な空間に入れていくことによって変化はどう起こるかとか、そういうことも少し御検討いただけるといいかと思いました。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 では、小阪構成員よろしくお願いします。
○小阪構成員 日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪と申します。この件についても、当事者の立場から言葉を紡ぎたいと思います。
 もちろん様々な議論がなされている中で、各構成員の方がおっしゃることはもっともだなと思うのですけれども、一方で特に身体的拘束については原則廃止していただきたいというのが患者当事者としての思いになります。
 ただ、我々が意見醸成をする際に、もちろん我々の中で身体的拘束をしていいですよという人たちは誰もいなかったのですけれども、一方で精神科医療機関の職員の方の犠牲によってそれが成り立つのは違うんじゃないかという意見も率直なところとして出されました。
 私は、それもそのとおりだなと思っています。実際に地域で医療連携だったりしている中で、よい精神科医の方たち、あるいは思いや志を持っている看護師の方たちというのは間違いなくいらっしゃると思いますし、最小化ではなかった気がするのですけれども、病院の院長の方がゼロを目指すという目標を掲げたときに、それについてきてくださる職員たちというのは間違いなくいらっしゃるそうで、実際に最小化に結びついていくことは起きるそうです。私は、そこにすごく期待を持っています。
 藤井先生が紹介してくださった治療文化の変革が鍵というのはまさにそのとおりだと思っていまして、我々当事者もできる限りそういった研究に協力していきたいと思っていますし、精神科医療機関の職員の方々に多大な影響力を持つ藤井構成員や長瀬構成員のような方たちの協力をぜひ得ながら、我が国の精神科医療における行動制限についてでき得る限りゼロに近づけていく取組を進めていただきたいと思っています。
 以上になります。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、長瀬構成員よろしくお願いします。
○長瀬構成員 小阪構成員からお話があったように法改正がございまして、先ほど池原先生からも御指摘があったように、行動制限、身体拘束が虐待の一形態であるというご意見があることは我々精神科病院として深く認識しておりまして、丁寧に慎重な医療提供を心がけております。
 虐待を受けたと思われる方を発見した人はもちろん都道府県に通報しなければいけないということになっていますし、当事者御自身も届け出ていただくという形になっています。さらにそれが問題であろうということであれば、すぐに聞き取りや立入調査が行われて、改善命令や改善計画の提出が必要になってきますので、我々は既に法改正にそって対応しております。
 医療保護入院に関して先ほど議論がありましたけれども、入院期間が法定化されまして、報告書から更新届に変更され、見直しも進んでおります。入院形態においても法改正に沿って対応しています。
 それと、外からの目ということですが、退院支援においては地域援助事業者の紹介が義務化されておりますので、入院されている当事者の方々に対して、外からの支援体制を整備する形になっていますので、ご参加の構成員の方々におきましては御承知おきいただいて議論を進めていただければと思っています。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、桐原構成員よろしくお願いします。
○桐原構成員 全国「精神病」者集団の桐原です。精神障害の当事者です。
 進行と違う形になり大変恐縮なのですが、資料2から4までまとめて意見します。
 障害者権利条約初回政府審査に係る総括所見の中にある精神保健福祉法に基づく非自発的入院制度や医療観察法に基づく入院処遇制度の廃止を求める勧告については、その対応について法附則第3条に関わる大臣答弁や、第210回国会における附帯決議に基づき、真摯に対応、検討を進めていかなければならないと思っています。
 障害者権利条約が締約国に求める措置には、即時的措置と漸進的措置、保護措置などの分類があります。
 即時的措置とはすぐに対応すべき措置のことで、漸進的措置とは時間をかけて段階的に進めていく措置のことです。
 通常は条約に拘束されるのは締約国政府なので、締約国内の私人を直接拘束するものではありません。そのため基本的に政府は立法等を通じて措置を講じ、政府自身拘束していくということになります。
 政府が講じる法的措置等を通じて民間の人々が間接的に条約に拘束されるようにしていくことを保護措置と言います。やはり保護措置なくして実態は変わらないので、これが極めて重要な意味を持つようになっていくのだと思っています。
 資料2の「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制における入院医療による支援のための研究」について意見を言います。
 この検討会が附帯決議に基づく検討をしたことを立法府にレスポンスできるようにしていくためにも、同総括所見に沿った調査研究にしていく必要があると考えています。同総括所見や同附帯決議を踏まえたものにするのならば、医療観察法の入院処遇というものを射程に入れて研究を進めていく必要があるのではないかと考えます。
 そして、そもそも精神疾患に伴う判断能力の低下で同意困難とされる人がいたとして、その人が精神科に入院する場合と身体科に入院する場合とで手続や対応が異なることの合理性というのは本来ないはずなので、ならば医療保護入院というのは一体何なのかということを調査していくことが重要になると思っています。
 精神保健福祉法や非自発的入院制度については、精神科医療を一般医療と同質のものに改編する観点から見直しを行い、同時並行で医療計画等を使いながら非同意入院の段階的、計画的な縮減を果たしていくべきという意見を出しており、少しずつ理解を得られつつあるように感じています。
 同様の趣旨の提言にはいくつかのバリエーションがあります。非自発的入院を段階的、計画的に縮小させてゼロ化してから精神保健福祉法を撤廃すべきという手順の前後が逆になっているような意見や、直ちに望まない非自発的入院制度というのは全廃するように求めるという、私たちとしては実は大変共感できるところがあるような、そんなラディカルな意見などもあります。
 ただ、これら全て障害者権利条約の実施を求める方向での意見であって、そのコンセンサスの下で取り組むことを求める意見です。障害者権利条約に照らすと、非自発的入院の減少というのは即時的措置ではなくて漸進的措置になります。それで、同勧告にある法律の改正というのは即自的措置として求められています。ですから、障害者権利条約にのっとるならば手順としては実体の変化よりも法律の改正が先ということになってくるのだと思います。
 加えて、精神科が地域医療構想や報酬制度において冷遇を受けている現状や、身体科との連携が困難な現場での困難とか、そういったものの現況というのは、精神医療政策が一般医療政策から構造的に分断された状態になっているから起きているものです。
 以上から、当面は精神科と他科の政策の整合性を踏まえて、精神保健福祉法体制を一般医療の枠組みに改変することに重きを置いた検討を進めていかなければならないと考えています。
 続いて、3の精神科医療機関における行動制限最小化の普及に資する研究についてです。
 身体的拘束については、最終的、究極的には現場の努力に期待するほかないので、研修して人々の意識を変えていくという道筋に異存があるわけではありません。ですから、これはこれで進めていく必要があるし、医療計画の指標や、施設の指定要件や、報酬の要件の中にもこういうものを位置づけていく必要があると考えています。
 ただ、現場のスタッフの中には、身体的拘束ゼロに向けて奮闘する人々とそうでない人々とがいて、そうでない人々の意識が変わるまでの間、病院で縛られ続けるのは私たち精神障害者なのです。いろいろな人がいろいろなことを言っていますが、このことはしっかり理解し踏まえてほしいと思います。
 拘束ゼロに関心がない医療者の意識、変化を待つことなく現場を変えていく手段として考えられることは、ルールをつくって守っていってもらうことだと思います。すなわち、身体的拘束に関わる告示の改正が必要なのです。
 改正の中身については、いろいろな意見があっていいと思いますが、同勧告が出る前の2022年6月にまとまった内容が、同勧告が出た今においてなお実現されていないというのは極めてゆゆしきことです。
 このときは、切迫性、一時性、非代替性は曖昧であるということも指摘としてありましたけれども、それは前提にしつつ3要件さえ守られていないようなケースがせめてなくなるようにとの趣旨で当時はまとめられていました。
 同勧告が出て既に2年余りたちますが、いまだに現行告示下に入院者はとどめ置かれており、同勧告に基づく検討の段階に入れないままになっています。もう時代は勧告への対応の段階に入らなければならないわけであって、告示の中身の議論の段階はとっくに終えていなければならないはずです。
 そういうことで速やかな告示改正を行い、本当の意味での真のゼロ化に向けて次の段階へと検討を開始しなければならないと考えています。当事者の目線を踏まえた形での理解というものを、検討の場においてもお願いしたいと思っています。
 以上になります。
○田辺座長 ありがとうございました。
 では、神庭構成員よろしくお願いします。
○神庭構成員 この2、3年で身体拘束の問題がかなり取り上げられて、私たちの問題として強く意識されるようになってきたと思います。
 野村総研の研究班のメンバーだったのですけれども、日本のグッドプラクティスを調査して共通していたのは、身体拘束を減らすんだというカルチャーがその病院の中に生まれているということなのですね。
 それは、トップダウンで経営者からなくそうよというように始まった場合もあるし、ボトムアップで現場のスタッフから上がってきて、経営者から、ではそうしようという形でその病院のカルチャーとして定着していった。
 お話を聞いてみると、皆さんやればできるということは共通しているのですけれども、どうやったのかというところは御本人たちにお聞きしてもなかなかお答えが得られないんですね。考えて工夫すればできるんですということだったんだけれども、つまりここで言いたいのは代替性、これは代替できるんだということなのですが、具体的にどうしたらそれができたのかというのはもう少し調査の中で深掘りができないかなというのが私の思いです。
 それから、拘束の問題は北村構成員がおっしゃっていたように、ハードな拘束と、認知症の方の転倒防止のようなソフトな拘束と、これらを分けて議論しなければいけないと思うし、その代替策を考える上でも分けて議論をする必要がある。
 それから、行動制限最小化委員会の外部委員をもう少し入れるとか入れないとかという議論も、やはり病院のカルチャーとして拘束を減らそうとしている病院と、全く無関心な病院とを分けて考える必要があるのかなと、それを明確にこの病院はこっちでこの病院はこっちだからこうだということはできないと思うので、共通したルールになっていくと思うのですけれども、大きく行動制限最小化の流れが生まれてきているので、ぜひこの流れをより強いものにしていってほしいと思いました。
○田辺座長 では、吉川構成員よろしくお願いします。
○吉川構成員 神庭構成員のほうから先ほど、行動制限を最小化したところにいろいろ聞いても、どうやって具体的にしたのかというのがなかなか出てこなかったということをおっしゃいましたけれども、実は私がいろいろ調査でお伺いしていても、本当になぜかというのがなかなか掴めないという状況がありました。
 そこは看護師同士でいろいろ話をしていて分かったことなのですが、もう既に行動制限最小化という考えが定着されているところが、改めて行動制限を最小化するために何か行っているという感覚はもうあまり持たれていなくて、むしろ我々が行動制限最小化のいろいろなノウハウというふうに知識として持っているものが、日頃の看護の中に全て反映されている、落とし込まれているという状態でした。そこでいろいろ気がついたのが行動制限を要するような状態にならないように日頃からケアを小まめに行っていく。
 その結果として、この行動制限というものはほぼ行わなくてよくなったという状況がありますので、何をもって行動制限最小化に効果があるのかというのをなかなかお示しするのが難しいので、その辺は今回我々の調査でもどういうふうに最終的に示していこうかというのはちょっと苦労しているところです。
 先ほど、それでもゼロを目指すべきだという御意見と、あとは小阪構成員から、ただそれがスタッフの犠牲によって成り立つようではいけないとおっしゃいました。
 そこで、看護職の立場から少し御意見を申し上げさせていただきますと、確かに行動制限最小化というのはずっと我々看護職としても課題になっていまして、いろいろな病院に応じて取組が行われています。
 ただ、一方で、それを追い越すような勢いで高齢化とか、身体ケアの必要な患者さんが増えてきていますので、これもいろいろ現場の声ではあるのですが、やはりスタッフに不安があるとこれ以上なかなか行動制限最小化に踏み込めない、進めないという状況があります。やはり現場のスタッフ、特に最終的に看護師に任されてしまう、夜間も含めて最終的に看護に任されてしまうので、看護職が安心して行動制限最小化に取り組めるような例えば看護体制の確保であるとか、看護人員も含めてですが、そういったところも同時で考えていただきたいと思います。
 虐待防止のこともそうですし、行動制限最小化もそうです。本当に現場の看護師も、患者さんの人権や尊厳を考えていきたいと、それは全員思ってはいるのですが、ただ、現状としてかなり厳しい状況が医療現場、看護現場にはありますので、そういったところも看護職が安心・安全に働けるような体制もやはり考えていただきたいと思っているところです。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 17時までにここを出ないと追い出されますので、ここで意見聴取のほうは終了したいと存じます。
 次に、まだ事務局のほうから御報告があるということでございますので、資料5についての説明を簡潔にお願いいたします。
○新平課長補佐 事務局でございます。
 資料5についてお開きいただければと思います。前回、5月の検討会の後、6月に規制改革実施計画が閣議決定されておりますので、その御報告をさせていただければと思います。
 具体的には2ページ目のところですが、「身近な場所でのオンライン診療の更なる活用・普及」ということでdのところですけれども、「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」におきまして、初診精神療法をオンライン診療で実施することについて、行わないこととされておりますが、安全性・必要性・有効性の観点から適切なオンライン精神療法の普及を推進するために、新たな指針を策定・公表するというような内容が書かれております。こちらにつきまして、令和7年までに結論を出し、措置をすることとされておりますので、本日御報告とさせていただければと思います。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 これで、本日の議題は終了でございます。特に、研究班の御報告いただきました藤井構成員につきましては深く御礼申し上げます。様々な御意見いただきましたので、これを取り入れて調査、これから教材等々の開発にいそしんでいただければと思う次第でございます。
 最後に、事務局から何か連絡事項はございますでしょうか。
○新平課長補佐 ありがとうございます。
 本日は、御意見をたくさんいただきましてありがとうございました。
 次回の予定でございますけれども、第3回の検討会につきましては調整の上、改めて御案内させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございました。
 ちょっとタイムキープを失敗いたしまして、40分以上オーバーしてしまいましたけれども、実に実りのある御意見をお伺いできたと思っております。
 本日は長時間、お疲れ様でございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。
 これで、散会いたします。