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- 第164回労働政策審議会安全衛生分科会議事録
第164回労働政策審議会安全衛生分科会議事録
労働基準局安全衛生部計画課
日時
令和6年7月2日(火)10:00~12:00
場所
対面及びオンラインにより開催
会場:AP虎ノ門(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)
会場:AP虎ノ門(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)
出席者
会場
- 公益代表委員
- 髙田礼子(分科会長)
労働者代表委員-
- 袈裟丸暢子
- 佐々木弘臣
- 中村恭士
- 門﨑正樹
- 山脇義光
- 使用者代表委員
-
- 及川勝
- 小澤達也
- 鈴木重也
- 出口和則
- 七浦広志
- 矢内美雪
- 事務局
-
- 小林洋子(安全衛生部長)
- 松下和生(計画課長)
- 小沼宏治(安全課長)
- 松岡輝昌(労働衛生課長)
- 安井省侍郎(化学物質対策課長)
- 船井雄一郎(主任中央労働衛生専門官)
- 高松達朗(計画課課長補佐)
- 藤井健人(計画課課長補佐)
オンライン
- 公益代表委員
-
- 中嶋義文
- 原俊之
- 宮内博幸
- 労働者代表委員
-
- 奈良統一
- 使用者代表委員
-
- 大下英和
(五十音順、敬称略)
議題
(1)「 経済財政運営と改革の基本方針 2024 」等について (報告)
(2)高年齢労働者の労働災害防止対策及び治療と仕事の両立支援対策について
(3) 個人事業者等に対する安全衛生対策について(その4)
(4)その他
(2)高年齢労働者の労働災害防止対策及び治療と仕事の両立支援対策について
(3) 個人事業者等に対する安全衛生対策について(その4)
(4)その他
議事
- 議事内容
- ○髙田分科会長 それでは定刻となりましたので、ただいまから「第164回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。
本日の出欠状況は、公益代表委員の砂金委員、熊﨑委員、新屋敷委員が御欠席、労働者代表委員の山口委員が御欠席となっております。本日は、対面及びオンラインの併用により開催することとしておりますので、お含み置きください。カメラ撮影等についてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
まず事務局から、オンラインによるZoomの操作方法等について説明をお願いいたします。
○計画課長 事務局です。オンライン参加の委員の皆様方に、Zoomの操作方法について御説明をさせていただきます。本日は、ハウリング防止のため御発言されないときには、マイクをオフに設定をお願いいたします。また御発言される場合には、御発言がある旨をチャットに書き込み、分科会長から指名がありましたら、マイクをオンに設定していただいた上で、氏名をおっしゃってから御発言をよろしくお願いいたします。このほか進行中、通信トラブルなどの不具合がありましたら、チャットに書き込み、又は事務局へ御連絡をよろしくお願いいたします。以上です。
○髙田分科会長 それでは、議事に入ります。議題(1)「経済財政運営と改革の基本方針2024」等について(報告)について、事務局から説明をお願いいたします。
○計画課長 事務局です。私から、議題(1)「経済財政運営と改革の基本方針2024」等についてということで御報告をさせていただきます。資料1に基づいて、御説明をさせていただきます。例年ではありますが、今年も6月21日に幾つかの政府方針、政府計画が閣議決定されております。閣議決定されたものの中で、安全衛生分科会に関係する部分について抜粋した資料を作成し御説明、御報告をさせていただくものです。
資料2ページですが、まず「経済財政運営と改革の基本方針2024」についてということで、いわゆる骨太の方針と呼ばれているものです。具体的な中身ですが、4ページを御覧ください。第2章1.の(2)三位一体の労働市場改革の所、(多様な人材が安心して働き続けられる環境の整備)というところで、関係する部分について下線を引いております。
まず、1行目の所ですが高齢者の労働災害防止のための環境整備を推進するとともに、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策を強化するといった記述。その下の下線の所ですが、今、安全衛生分科会において御議論をいただいております、フリーランスの安全衛生対策のための制度の検討を行い、2024年度中に結論を得るといった記述が骨太の中に書かれてあるという状況です。
5ページです。第2章の6(1)(女性活躍)の記載があります。また下線部分、関係するところです。
1行目の「女性版骨太の方針2024に基づき」ということで1行飛んで、3行目、仕事と健康課題等との両立支援を図っていくという記述。更に4行ほど飛んで、職域における相談支援体制の充実といったところが記載されています。枠外ですが先ほど申し上げた女性版骨太方針と関係する中身を抜粋しております。
具体的には、枠の外のところですが女性活躍・男女共同参画の重点方針2024(女性版骨太の方針2024)というものです。具体的には、そこにまた下線を引いておりますが、(3)の①の2行目の所です。事業主健診において、月経随伴症状や更年期障害等の早期発見に資する項目を問診等に加え、その実施を促進する。更に1行空けて事業所内に働く女性の相談に対する担当者を配置するなど女性の健康を話題とする場づくりを推進する。
その下です。健康課題が把握された従業員に対し、事業主が行うことが望ましい対応について、ガイドラインや指針などを作成することを検討するとともに、女性の健康に関する取組の好事例等を事業主に周知する。その下ですが産業保健スタッフ、保健師、看護師、職場等で更年期の健康課題を含め、女性のライフステージごとの健康課題とその解決方法について知識の普及に取り組めるよう、人材育成を図っていくといった記述があります。
6ページです。第3章の3.(4)です。例年、同じような、若干表現ぶりは変わっておりますけれども似たような記載があります。建設業の関係で、持続可能な建設業の実現に向けということで、安全管理の徹底等を進めていく記述があります。以上が、骨太の方針の記載内容ということになっております。
7ページです。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」について、具体的に関係する記載内容については9ページです。ここについては先ほど、骨太の方針で説明をさせていただいた内容と同じ内容が書かれております。女性の健康への支援というところで、職域における相談支援体制の充実といった記載が書かれています。
続いて10ページです。「規制改革実施計画」についてです。具体的な記載内容については12ページを御覧ください。事項名としてはフリーランス・ギグワーカーの労働者性及び保護の在り方といった事項になっております。具体的な内容は、規制改革の内容の真ん中の枠の所ですが、関係するところでa、b、c、dと書いてありますが、bとdが関係するところです。bの所ですが、具体的には3行目、発注者が安全管理又は健康確保のために取引相手(就業者)に対して行う「指示」等と、そうしたものと就業者の労働者性を肯定する要素である「指揮命令」との関係が明確でないという、そうした懸念があるということを踏まえて、ここに書かれてありますのが、発注者が安全管理又は就業者自身の健康確保に資する連絡をちゅうちょするおそれがあるとの指摘があることを踏まえた、安全上の指示と指揮命令との関係を整理するといったことが、ここのbと所に書かれてある内容です。
その下のdの所ですが、「個人事業者の健康管理に関するガイドライン」は、安全衛生分科会においても御議論をいただいて御報告をさせていただいております。これが、今年の5月28日に公表されております。この中に2行目に書かれていますが、労働者に近い専属性がある個人事業者等が一般健康診断と同様の検査を受診するのに要する費用を発注者が負担することが望ましいと書かれています。こうした点を捉えて、フリーランスに発注する側が発注控えを行うおそれがあるといった指摘があるということが書かれておりまして、そうした発注控えの実態を調査し、当該理由による発注控えが生じていることを把握した場合については、ガイドラインの見直しも含めて、検討を行うといった内容が書かれてあるというものです。以上が規制改革の関係です。
続いて、13ページです。デジタル社会の実現に向けた重点計画についてというところで、具体的な中身です。昨年も御報告させていただきましたが、15ページ以降です。国家資格の関係についてはマイナンバーカード・マイナポータルを活用した手続をオンライン化・デジタル化を推進していくといったことが15ページに書かれております。
続いて16ページです。技能士資格情報であったり、技能講習修了証明書について、オンライン化・デジタル化を進めていくということと、その下の○の所ですがアナログ規制の横断的な見直しというところで、「デジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直し」を進めていくといった記載。
17ページ、具体のオンライン化を実施する行政手続の一覧で、オンライン化対象、安全衛生関係に関する7つの手続が明記されているというものが17ページです。
18ページ、オンライン化を実施する行政手続の一覧の続きですが、安全衛生分科会で御報告、御審議をいただきましたが、労働者死傷病報告の電子申請を進めていくということで、既に実施されている実施済みの取組が記載されている内容になっております。私からの説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして質問、意見等のある方は、会場の委員につきましては挙手を、オンライン参加の委員につきましては、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。まず、会場の委員で御発言がある方は、挙手をお願いいたします。山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 おはようございます。労働側の山脇です。この内容の詳細は、今後労政審で議論される内容だと考えていますが、資料12ページの規制改革関係において、今年3月の本分科会で既に結論を得ております個人事業者の健康管理ガイドラインが取り上げられていましたので、この点のみ、発言したいと思います。
私の認識に誤りがなければ、ガイドラインに関するパブリック・コメントでは、dに記載されているような懸念や反対の声は特段なかったと事務局から御報告いただいたものと受け止めています。その点改めて確認をさせて頂きたいと思います。
どのような経過があり、規制改革実行計画にこのように取り上げられたのかは承知していませんが、連合が日頃から連携している個人事業者を組織している各種団体からは、発注者側が健診費用を負担することは、個人事業者の健康確保のために好ましいことであり、ガイドラインの記載を高く評価する声を多く聞いていることは申し述べておきたいと思います。
改めて言うまでもありませんが、一口にフリーランスといっても、様々な立場の方がいることは周知のとおりですので、本件において、今後何らかの検証が行われるのであれば、特定の団体に偏ることなく、幅広く意見聴取していただきたいと思います。
なお、冒頭申し上げましたが、働く者の健康と安全に関わる施策については、3者構成原則にのっとり、本分科会で慎重に議論を行い、結論を得ていくべきだと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。続きまして、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。私からは、デジタル社会の実現に向けた重点計画について申し述べたいと思います。資料の17~18ページにかけまして、各種試験の受験申請や資格の登録申請のオンライン化を実施すること。これまでの取組として電子申請の利便性を高めたことなどが紹介されています。いずれも重要な内容であり、厚生労働省に感謝申し上げます。その上で関連する質問を1点差し上げたいと思います。
過去の分科会におきまして、私から、安衛法に基づく手続における本社一括届の導入を要望いたしました。その後、厚生労働省内で御検討をされているのかどうか、進捗状況をお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございました。そのほか会場からございますでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、ただいまの山脇委員と鈴木委員の御意見、御質問につきまして事務局から回答をお願いいたします。
○主任中央労働衛生専門官 御質問ありがとうございました。1点目の山脇委員からの御質問で、規制改革実施計画の中の健康管理ガイドラインに関する記載の部分についてです。こちらに書いてあるような視点での御質問、御意見というのは、パブリックコメントにおいては直接はございませんでした。ここに書いてある内容を実施するに当たりまして、特定の団体ではなく、きちんと幅広い団体の声も聞いて実施してくださいという御指摘だと思いますが、これは、我々としても正にそのとおりだと思っております。フリーランスからなる当事者団体だけではなく、発注控えという観点もあるので、注文者側、発注者側になるような、いろいろな産業界の方々の声も聞きながら、広くこういった実態がないのか。こういった実態があるのだったら、このガイドラインの趣旨がきちんと周知徹底されているのかという点も含めて、しっかりフォローしていきたいと思っております。以上です。
○計画課長 2点目の鈴木委員から御質問がございましたデジタル化、オンライン化の関係です。御質問がありました本社一括の届出の導入についてですが、具体的には検討ということでいいますと、基準局内全体に関わってくる部分もございます。そうした中で検討自体、いま何かすぐに新しいものが進んでいるということではありませんが、また、御指摘を踏まえて今後対応を考えていきたいと思っております。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。ただいまの回答につきまして山脇委員、鈴木委員、何かございますでしょうか。山脇委員からお願いいたします。
○山脇委員 ありがとうございます。前段、主任からお答えいただいた内容については、承知しました。是非回答いただいた内容で対応をお願いしたいと思います。後段のデジタル化については、使用者側の鈴木委員から安衛分科会限定での趣旨で発言がありましたが、計画課長からお答えいただいたとおり、ほかの分科会にも大きく影響する内容でありますので、極めて慎重に取扱いをお願いしたいと、労働側の立場として申し上げておきます。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。続きまして、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 検討中ということで残念なお答えだったと受け止めています。法律は違いますが、労基法の手続で既に就業規則の届出や36協定の届出について、本社一括届出が可能ですし、利用率も高まっていると認識しております。届出先は同じ監督署であり、技術的にできないことはないと思いますので、是非御検討を進めていただきたいと思います。毎年のように労働安全衛生法令の改正が続いており、それらの対応で各社は必死な状況です。手続の効率化を求める声が大変強くなっておりますので、是非とも早期に本社一括届出の実現に向けてお取組をいただきたいと思います。
○髙田分科会長 事務局からございますでしょうか。
○計画課長 いま鈴木委員から話があった点についてですけれども、先ほどの回答と同じような感じになってしまうわけですが、いただいた御意見を踏まえまして、関係、各課室とも相談しながら検討を進めていきたいと思っております。以上です。
○髙田分科会長 山脇委員、鈴木委員、よろしいでしょうか。そのほか、オンライン参加の委員で、御発言はよろしいでしょうか。宮内委員、御発言をお願いいたします。
○宮内委員 今後の基本方針ということで、大変分かりやすい御説明、ありがとうございます。Ⅱの(3)で、女性の所得向上、経済的自立に向けた取組の一環の中で、仕事と健康課題に関する両立の支援という内容は、非常に重要だと私も思っています。それで、特に事業主健診において、女性の体調不良について項目等を見直すということも確かに必要かと思うのですけれども、相談をするような体制を作る中で、年齢層を考慮していろいろなことを取組が必要と思います。話は違いますけれども、すこやか親子21という取組もあって、妊産婦さんの安全と快適さの修得とか国への支援、そういうこともうたわれていたりしておりますし、やはり社会的に少子高齢化の中で非常に子育てがしやすいような取組をすることも、ライフステージの中では非常に重要と思っています。職場の中における母子衛生管理は、就労規則とか整備体制は既にあると思いますが、そういうことについても書いていただけると明確になるかと思いました。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。ただいまの御発言につきまして事務局から何かございますでしょうか。
○労働衛生課長 労働衛生課長です。御意見いただきましてありがとうございます。今回の女性版骨太の中では、働いている女性で、どちらかというと生殖関係のことについては議論しないというような形でこれが作られているものですが、そのようなことも非常に重要だということは私どもも思っております。現在私どもで検討会を開いておりまして、健診項目についての見直しを行っている最中です。この結論次第によって女性の健康課題について、より職場内で取り組んでいただけるような環境作りにつながっていけばいいなと思っているところです。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。宮内委員、いかがでしょうか。
○宮内委員 分かりました。まだ取組がこれから続くということで理解しました。
○髙田分科会長 ありがとうございました。そのほか御発言希望の委員はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
○髙田分科会長 それでは、次の議題にまいります。「高年齢労働者の労働災害防止対策及び治療と仕事の両立支援対策」についてとなります。これらにつきましては、4月26日の本分科会におきまして、議題(4)「今後の安全衛生分科会における検討項目・論点等について」として示された項目のうちの一つとなります。本日の議題(1)におきましても、事務局より骨太の方針2024に示された事項としてお話もあった内容となりますが、「高年齢労働者の労働災害防止対策」と「治療と仕事の両立支援」の2つに分けて御議論いただきたいと思います。
それでは、まず資料2-1に基づきまして、高年齢労働者の労働災害防止対策につきまして事務局から説明をお願いいたします。
○安全課長 安全課です。ただいま分科会長からお話がありましたような経緯がありまして、こうしたことを踏まえて高年齢労働者の労働災害防止対策について、行政として他の案件の御審議の状況も見ながらになりますが、秋頃から御議論を頂きたいと考えております。今回、そういう意味では高年齢労働者の労働災害を含む実態を皆様と共有をさせていただくということで、ちょうど5月の終わりに労働災害の発生状況なども公表しておりますので、その結果なども踏まえて説明をいたしたいと思っております。そして、頂いた御意見を踏まえて、今後、少し論点を整理して、先ほど申しました秋の分科会に、皆様方に御提示させていただきたいと考えております。それでは資料2-1に沿って説明をいたします。
2ページです。下側の黄色い所が死亡災害、上の青い所が死傷災害です。死亡災害は着実に減少してきておりますが、死傷災害については、これ、見ていただくとなかなか分かりにくいのですが、平成21年ぐらいが底になっております。ちょうどリーマンショックということもありましたけれども、その頃から比べると3万人ぐらい増えているという状況でして、じわじわとやはり増えてきているというのが実態です。
3ページです。こちらは左側のほうは雇用者全体に占める60歳以上の方の割合ということで、赤い折れ線グラフになっておりますが、平成15年、ちょうど20年ほど前ですが、その頃ですと大体10%弱ぐらいですけれども、現状では20%弱ということで、ほぼ2倍になっているということです。
続いて右側のグラフですが、ではその中で実際、労働災害の全体に占める60歳以上の方の割合はどうなのかということです。こちらのほうも過去20年間を見ると、20年前の平成15年には、大体15%ぐらいでしたけれども、現在30%弱ぐらいまで上がってきているということで、働く方も60歳以上の方が倍ぐらいに増えておりますので、そういう中で死傷災害の割合も倍ぐらいになっているというような状況です。
4ページです。これは年齢階層別に労働災害の千人率を調べたものになりますけれども、大体、通常は30代が一番けがが少ないということで低くなっております。そして、だんだん年齢が上がっていくに連れて千人率が上がっていくということです。全労働者の平均は、ここに数字が書いておりませんけれども、大体2.3から2.4の間です。そうやって見ると、例えば男性の場合ですと、40代後半になってくると既に平均を超えてきまして、50代ぐらいから着実に上がってきているということでして、こういう状況にあるということです。
5ページです。こちらのほうは主要な事故の型別に見て、どういう事故の型で災害が多いのかということで、男性ですと左側の上のほうにありますが、墜落・転落です。こちらのほうが年齢が上がってくると増えてくるということです。それから女性ですと、右側の上にあるように、転んで骨を折るというものが非常に増えてくるということが分かるということです。
6ページです。ただいま申し上げたような転倒して骨を折るという災害が増えてきますというのが60歳未満と60歳以上でいくと、ちょうど左から2番目のちょっと赤色のところですか、こういった部分にあるように、明らかに増えてくるということが出ているというものです。
7ページは、実際、死傷災害に遭ったときの休業期間を示したものになります。下が例えばグレーとか赤とか黄色の部分は要は休業期間が長いということですが、右側にいくほど年齢が上がっておりますので、見ていただくと分かるとおり、年齢が上がると、同じような災害に遭っても、やはり休業期間が長くなるということでして、こうした労働損失が結構大きくなるということが分かるということです。
8ページです。こちらのほうは労働力人口の推移ということで、今後、高齢者の方がどういう形で増えていくのだろうかということです。2025年ですと来年ですが、推計上、大体22%ぐらいになっております。それが2040年になると大体30%ぐらいまで上がりますので、着実に増えていくという、こういった中で先ほどの高年齢労働者の労働災害が増えているというのを、どう考えていくのかという参考になるというものです。
9ページです。こちらのほうは現状の対策として何をやっているのかということです。何度か重要事項の検討の場でも御説明させていただいておりますけれども、「エイジフレンドリーガイドライン」というものを私どもが作って、下の箱の赤い字で書いてあるような1から5まで、安全管理体制をちゃんとやりましょう、それから職場環境を改善しましょう、高年齢者の方の健康とか体力の状況を把握しましょう、そして、その体力や状況に応じた対応をしましょう、そして、最後は安全衛生教育と、こういったことを今、進めているということです。
そして、一番下の赤い箱にあるように、14次の労働災害防止計画の中で、このエイジフレンドリーガイドラインに沿った対策を講じる事業場を50%以上にしたいということで、目標を掲げているということです。現状は10%ぐらいです。
10ページです。こちらのほうはエイジフレンドリーガイドラインに基づく取組状況でして、実際、現状どれぐらい取り組んでいただけているのかということです。一番左端にありますように、ガイドラインは知っているという事業場は大体17.1%、大体5社に1社ぐらいという状況です。そのうち実際に対策を何かやっていますよというのは10.6%になります。そのうちの対策の中でどういったことが行われているのかということを細かく書いていっているわけですが、例えば3番目の黒い字で87%とあります。これは定期健康診断とか地域の住民検診、こういったものの対応ということですので、特段、何か高年齢者ということでやっているというふうに言えるのかどうか、なかなか微妙なところでもあります。
一方で、例えば高年齢労働者の体力のチェックという部分については、隣にあるように21.7%ですとか、それから2番目の赤い字の所も、身体機能の低下を補う設備・装置の導入というところになると、やはり26.1%ということで4分の1ぐらいということです。そういう意味でいくとガイドラインとしてはいろいろと書いておりますが、現実にそういう対策に結びついているところはまだ少し不十分なのかなというふうに考えております。
11ページは御参考ですが、転倒災害が多いということで、各事業場さんで簡単にチェックできるように、あまりたくさん項目を書いても皆さん大変ですので、ポイントだけ絞って10項目ぐらい、これだけを点検してくださいということで、こういうものを作って監督署のほうで配布させていただいているというものです。
12ページですが、こちらのほうは実際そういうガイドラインに沿った取組を進めるための補助金です。左から3つありますが、左の部分は機器の導入とか工事の施工、例えば手すりを付けるとか、そういったものについての補助を行うものです。真ん中の赤い部分については先ほど出た体力のチェックであるとか、運動指導、こういったものに使っていただける右側の所については、健康教育とか研修などにお使いいただくという形で作っているということです。
13ページです。ただいま説明したことを少し整理したものになります。3つありまして、1つはここに書いているように、高年齢労働者の労働災害の増加に歯止めがかかっていないということです。それからエイジフレンドリーガイドラインに基づく取組というのは、なかなか進んでいない部分があるということです。
2点目ですが、背景には高年齢労働者の身体機能の低下を要因とする災害リスクの周知というのが、なかなか進んでいないのかなということがあります。それから、取組の必要性の理解が進んでいない、周知が進んでいないということは取組の必要性の理解も進んでいないということです。それから、私どもにも関係してきますが、やはり取組手法の提示の仕方も不十分なのかもしれないということです。
最後、3点目ですが、エイジフレンドリーガイドラインの実施事項を始め、高年齢労働者の労働災害防止につながる取組事項を定着させていくための何か方策、更には何かギアを上げるようなことが必要ではないかということが書いてあります。こういったことが、ただいま説明したことの整理としてあるということです。
14ページは御参考です。現状、労働安全衛生法の中で中高年齢労働者について、どういったことが規定されているのかということです。1つは第六十二条で明確な部分がありまして、こちらは事業者は中高年齢者その他労働災害の防止上、その就業に当たって特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を講じるように努めなければならないと、適正配置について第六十二条で規定があるということです。
あと、健康教育という形でこちらに書いてあるように、第六十九条の中で健康教育があります。それから第七十条の中で体育活動ということで、運動、スポーツ、レクリエーション、こういったものを通じて体を鍛えましょうといったことが書いてあるということです。一応、このような現状の法令ではこうなっているということです。あとは参考資料ですので、実際に高齢者の方の災害事例などが書いておりますので、お時間のあるときにお目通しいただければと思います。私の説明は以上です。
○髙田分科会長 御説明ありがとうございました。13ページのとおり、高年齢労働者の労働災害を巡る状況について整理をしていただいております。本件について質問や意見等がある方は会場の委員については挙手を、オンライン参加の委員については御発言のある旨をチャットに書き込みをお願いいたします。
まずは会場の委員で御発言がある方は挙手をお願いいたします。矢内委員、お願いいたします。
○矢内委員 矢内です。丁寧な御説明をありがとうございました。12ページのエイジフレンドリー補助金の方針については、新設コースは対象者が60歳以上に限られていないという点が非常にいい取組だと感じております。というのも、高年齢になってから急に体力が落ちるのではなく、若い頃にどれだけ筋肉や骨を蓄えておくかといった、中長期的、総合的な対策が必要と感じております。
例えば、入社の時点で既に腰痛を持たれている方や、20代の痩せの問題といった課題が職場には多々あります。高年齢に対する対策や環境整備と併せて、若年層からの体力向上といった幅広い取組の視点も必要と考えます。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。続いて、七浦委員、お願いします。
○七浦委員 丁寧で分かりやすい御説明をありがとうございます。七浦です。弊社でも、健康に対する個人への取組というのもいろいろしているのですが、やはりそういう意味では、企業側というか本質的な安全の対策というような意味でも、9ページにあるエイジフレンドリーガイドラインの2項、職場環境の改善というところも大切だろうなというように思っております。
弊社では、手持ちワークを自動化することによって、少しでも労働者の負担を減らすという工夫も必要ではないかと。それから、工事車両やエレカといったものの通行ラインも一本化して、一方通行であるといった工夫をすることによって、不意の災害、例えば、高年齢の方になると、少し運動機能も落ちますので、そういうようなところに対して、やはり会社側、企業側、事業所側としても対応ができるような、そんなようなことになるといいなというように思っています。体力づくりも大切ではありますので、個別の対応というのも必要ですけれども、まず、やはり本質、安全対策というのも、まずはそこが最優先なのかなというようにも考えております。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。続いて、挙手をされていた出口委員、お願いいたします。次に山脇委員にお願いする形になります。
○出口委員 出口です。御説明ありがとうございます。職場で働く労働者の高齢化は増加の一途であり、それは建設業でも同様です。そのような状況で、今後、しっかり高年齢労働者の安全衛生対策を講じていかなければならないと考えております。高年齢労働者の場合、ちょっとしたつまずき、転倒で骨折などに至り、休業4日以上の被災となるケースも多く、事業場としては、高年齢者の休業災害を減らしたいというのが実情です。建設業においても建災防で、今年度から建設業における高年齢就労者の労働災害防止対策の在り方検討委員会で取り組んでまいります。厚労省、行政からも建災防と連携していただき、情報共有をお願いいたします。
また、資料2-1の10ページ「エイジフレンドリーガイドラインを知っているか」の問いに対して、知っているが17.6%、取り組んでいる事業場が10.6%となっております。これは、ほとんどが知らない、取り組んでいないという結果であり、現状ではないでしょうか。身近な所で、周りに聞くと、エイジフレンドリーといわれても、分からない、知らないという方が多かったです。特に、高齢の方に聞くと、日本語で直接、分かりやすい言葉に置き換えてほしいという要望の声が多かったので、高齢の方に分かりやすい、認知しやすい周知をお願いいたします。今後も、高齢労働者、また、個人事業者、化学物質等などの災害事例の情報もオープンに開示していただき、各事業の安全衛生教育等のツールとして活用していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございます。続いて、山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 山脇です。改めて労働災害防止計画において高年齢労働者の労災防止がいつから取り上げられているのか調べてみました。それによると、昭和53年からの5年間を計画期間とする第5次計画から、いわゆる主要対策として取り上げられて以降、継続して主要対策あるいは重点対策として取り組まれてきている、古くて新しいテーマだと言えます。
この間、労使それぞれがこの問題について取組を進めてきたものと承知していますが、先ほど事務局から御説明をいただいたとおり、高齢労働者の割合や死傷病発生率は増加傾向にあり、これを反転させるということは決して容易ではないと思っています。
エイジフレンドリーガイドラインの普及促進を図ることは大変重要であり、引き続き進めていくべきと思いますが、先ほど安全課長のほうからあったとおり、ギアを上げるという観点での取組が必要ではないかと思っています。例えば、エイジフレンドリーガイドラインの内容について法制化をしていくことや、資料14ページに記載がある安全衛生法の条文の第六十二条「中高齢者等についての配慮」は、あくまでも配慮義務にとどまっていることから、これを義務に格上げするということも含め、何ができるのかということを幅広い観点から議論し、より一層の取組を進めていく必要があるのではないかと思っています。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。ここまでの矢内委員、七浦委員、出口委員、山脇委員の御発言について、事務局からお願いいたします。
○安全課長 事務局です。矢内先生からの御発言、大変私どもとしても同感です。今まで、割と60歳以上といった形で考えておりましたけれども、現実に、先ほど御説明したとおり40歳後半から間違いなく災害が増えてまいりますし、もっと言うと、多分、女性については骨密度とかをいろいろ考えると、恐らく、もっと若いときから何らかの形で手を打っていかないと、後になって急に対策をしましょうといっても、なかなかうまくいかないのかなと思っておりますので、そういう意味では、やはりもう少し若い世代も含めて何かやっていきたいなということは、少なくとも転倒災害という観点でいくと、私どもも思っているということです。
七浦委員のほうで、本質安全対策をしっかりやるべきという、全くおっしゃるとおりでございます。安全衛生の対策は、基本部分はやはり本質安全という部分です。ただ、現実に転倒災害などを見ると、何もない所でつまづいて転ぶというような方も実は結構おられるので、そういうことを考えると、やはりいろいろな対策を組み合わせていくのかなというように思っており、本質安全はもちろんやるのですけれど、それに加えて、もう少し何か次のことができないかということを考えてみたいということです。
出口委員のほうですが、行政として、まず建災防さんとちゃんとしっかり連携しなさいと、これは全くおっしゃるとおりですが、そういったものをしっかり連携しながらやっていくと。あと、エイジフレンドリーガイドラインというのは、なかなか分かりにくいのではないかというお話ですので、そうした部分も、もう少し一般の方々に分かりやすい言葉にしていくというのは確かに大切だと思いますので、そういう、今できているものを急に変えるのはなかなか難しい部分はありますが、正にこの議論を今後秋からしていただく中で、そういったことを実際に動かしていくときに、どういったことができるか少し考えてみたいということです。
最後、連合の山脇委員からのお話ですが、今のガイドラインの法制化と、義務化ということです。正に六十二条の部分にもいろいろと書いてありますが、頂いた御意見も踏まえ、秋に論点を少し整理するときに、今日、頂いた4名の先生方の御意見も踏まえて、少し論点を提示させていただいて、皆様方に御議論いただけるようにしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございました。矢内委員、七浦委員、出口委員、山脇委員、ただいまの回答について、よろしいでしょうか。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 先ほど、矢内委員、七浦委員、出口委員から、体力づくりや本質安全化の重要性等のお話がありました。高年齢労働者がこれだけ職場に参画される時代ですので、安心して働ける職場づくりは大変重要な課題だと改めて認識させていただいたところです。
1点、山脇委員からギアを上げて取り組むべきではないか。例えばということだったと思いますが、ガイドラインの内容の法制化も検討すべきではないかという御発言があったところです。先ほど事務局からエイジフレンドリーガイドラインに基づく取組みの実施率について御説明があり、出口委員からも認知度が低いというお話がありました。そうした状況の中で、法制化、法的な措置を考えるというのは、現場が付いていけないのではないのかという問題意識を、私自身は持っているところです。
加齢に伴う身体機能や認知機能の低下は労働者一人一人で状況も大きく違うと思いますし、労働災害の発生リスクや対策の有り様も、業種・業態によって千差万別ですので、事業者に特定の措置を義務付けることにはなじまないテーマではないかと思うところです。
高年齢労働者の労働災害防止に向けては、各事業者、事業場の労使の取組を一層後押しすることが重要であり、取り分け17.1%の認知度にとどまっているガイドラインの周知徹底に注力していくことが重要ではないかと考えているところです。私からは以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。そのほか、会場の委員はよろしいでしょうか。それでは、オンライン参加の宮内委員から御意見をお願いいたします。
○宮内委員 職場の環境改善ということで具体的な話もいろいろ進んでいると思うのですけれども、実は、大学としても今、高齢者の施設でナッジを用いた転倒防止対策というのを行っております。その中で気が付いたことなのですけれども、いろいろな施設を見ていると、床材にもいろいろあり、Pタイルのため濡れてしまったら転倒リスクが非常に高いというところや、ラバータイルのため、濡れてもなかなか滑らずらいなど、大分工夫しているところもありました。そういう面で言うと、設備対策として、まだまだいろいろと考慮する所があるかなと思いました。
ちょっと調べると、日本建築学会の材料施工委員会ではいろいろな資料を出していて、床材の性能評価方法や、性能の推奨値も提案しており、学術的な評価を公表しています。既に考慮されている内容とは思いますが、是非、参考の情報として提供してもらえればと思いました。
あと、最近、建築学会にて履物の摩擦係数の一覧表や、滑り止めの各工法のメリット、デメリットを公表していますので、非常に参考になると思います。そういった情報も積極的に出していただくと、環境改善をするときに非常に役立つと思いました。
○髙田分科会長 ありがとうございました。オンラインで参加の委員で、ほかに御意見を御希望の方はいらっしゃいますか、よろしいでしょうか。それでは、ただいまの鈴木委員と宮内委員の御発言について、事務局からお願いいたします。
○安全課長 鈴木委員からの御発言と御意見です。先ほど申しましたとおり、正に、いろいろな御意見をこれから頂きながら決めていく段階ですので、そういう御懸念も一方でありますし、先ほど、連合さんがおっしゃったようなお話もありますが、労使の皆様方の御意見をよく踏まえて、論点を整理して皆様方に御議論していただくようにしたいと思っております。
あと、宮内委員のほうですが、確かに、いろいろな情報を提供するということは大事だと思っており、私どもも、例えば労働安全衛生総合研究所のほうで、安全靴、防滑靴なんかのメーカーさんとも一緒になって防滑の基準といったものを作りましょうといったこともやっていて、そういったものの周知も少し始めておりますので、そういったもの以外にも、多分、床材のお話とかいろいろとありましたが、ちょっと私どもとしても、そういう情報を集めながら、有効なものがあれば御提供させていただくということも考えてみたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。鈴木委員、宮内委員、何かありますか、よろしいでしょうか。
○宮内委員 大丈夫です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。そのほか、会場で御発言の委員はおられますか、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
○髙田分科会長 次に、資料2-2に基づいて、「治療と仕事の両立支援について」、事務局から説明をお願いいたします。
○労働衛生課長 それでは、治療と仕事の両立支援対策について、労働衛生課からお話させていただきたいと思います。先ほど安全課長が話しましたように、高齢者の就労が非常に多く、社会全体も高齢化してきていることが背景にありまして、治療と仕事の両立支援が非常に大きな課題になっていると、私どもは考えているところです。先ほどの高齢者のお話と歩調をそろえるような形で、今後、御議論をいただきたいと思って、今日は、その材料として、現状などについて皆さんと共有するようなお話をさせていただきたいと思っております。
資料2-2の2ページからお話をいたします。2ページは、一般的健康診断の有所見率の推移です。赤が全体なのですが、やはり、平成6年から比べると非常に上がっている、20ポイントぐらい上がっているということで、やはりこれは、高齢化を背景に増えてきていると私どもは思っております。
3ページ、疾病を抱えておられる労働者が通院している状況について調べたものがあります。これは、「国民生活基礎調査」という調査です。私どもが見たものでは1998年のデータが一番古く、ここよりも遡ることは難しかったのです。1998年の段階で、労働者に占める通院しながら働く人数の割合は25.5%でした。それが25年ぐらいたちまして、2022年の段階では40.6%、15ポイントぐらい非常に上がるという、増加を見せているわけです。通院しながら働いておられる方が、大体3人に1人ぐらいという状況になっているわけです。
4ページ、疾病を抱える労働者の状況として、がんの患者さんが一番データがそろっておりますものですから、がんを例としてしばらくお話をさせていただきたいと思っております。がんは、年齢が増えれば増えるほど疾病にかかる確率は高くなりまして、年齢階層別の罹患者は、このように指数関数的に増えていくことになっております。このように増えていきますと、労働者の中にも、がんにかかってしまう方も当然多くなることになります、年齢とともに多くなることになります。
5ページ、がん患者さんの5年相対生存率というのはどうなってきているのかというと、一昔前は、1990年代の前半などでは、大体53.2%の方々が5年生存をしていたのですが、最近、2011年までのデータですが、64.1%と、非常に生存率も向上している中、右側のグラフです。がんの治療方法も変わってきております。入院を昔はすごく長いことして、手術して化学療法してうんぬんという形でやっていたところですが、今では、入院の日数も減っておりますし、外来での化学療法なども増え、また、放射線療法とかも外来でできるようになってきておりますので、外来患者の数が非常に増えている。赤の線です、増えている状況になっております。つまり、外来で治療を行いながら働くことができるという方々が非常に増えている状況だとお考えいただければと思います。
6ページ、それでは、事業所における状況ということで、事業所における治療と仕事を両立できるような取組状況ということで数を取っているものです。これは労働安全衛生調査の実態調査です。治療と仕事を両立できるような取組ができていますか、やっていますかということを聞いたところ、大体6割ぐらいの事業所さんが、治療と仕事を両立できるような取組がありますとお答えいただきました。その中でやっておられることは何ですかというお話になりますと、一番上ですが、86.4%の事業所さんが、通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討となっています。つまり、ケースごとにきちんと対応しますという対応の仕方をされている所が8割以上ある。一方、では、普段から両立支援に関する制度を整えたりとか、相談窓口を明確化したりとかという準備のようなもの、何か起きたときの準備のような形の施策を取っておられる所はと聞きますと、3割強まで落ちてくる。それで、両立支援に関する体制の整備ということを聞きますと、もう2割を切ってくるという形になっているわけです。
7ページ、では、私どもが作っている治療と仕事の両立支援ガイドラインがどれだけ知られているのかを調べたところ、1,000人以上の会社は、内容も含め知っている所が6割弱、58.9%となっています。また、聞いたことはあるけれども内容は知らない、名前ぐらいは知っている所は2割強ぐらい、全部合わせると8割ぐらいの会社が、1,000人以上の場合には何となく知っているという所はあります。一方、例えば、30名~49名とか、50名~99名の所を見ていただくと、内容も含め知っている、若しくは、聞いたことはあるけれども内容は知りませんという所は、50名~99名だったら半分ぐらいの所が何となく知っている。それよりも少ない30名~49名ぐらいになってくると4割ぐらい、10名~29名になってくると、3割強の所が何となく知っているぐらいまで合わせて知っているということで、なかなか認知度は、やはり大きい所は知っておられるが、小さい所は知らないということがあるのかと見ております。
8ページ、私どもの働き方改革実行計画というものが平成29年に決定されているわけですが、その中に、7番の所に、病気の治療と仕事の両立ということで、会社の意識改革と受入体制の整備、それから、トライアングル型支援などの推進を行うとしているわけです。その働き方改革実行計画における病気の治療と仕事の両立について、少し、皆さんには釈迦に説法かもしれませんが、御説明します。
9ページ、会社の意識改革と受入体制の整備というのは、企業トップ自ら、働く人の健康の経営課題としての位置付けをする。それから、疾患別サポートマニュアルの作成や普及を行う。それから、傷病手当金の支給要件等について検討するなどがありました。そして、トライアングル型支援の推進というのは、労働者を中心に、企業、医療機関、支援機関等がトライアングルになってサポートしていくという支援体制を作ることを推進するものです。
10ページ、このようなことを書かれました治療と仕事の両立支援ガイドライン、先ほども認知度の所で申し上げたお話ですが、このようなものを私どもは作って今まで普及活動をしてきているところです。対象は、雇用形態いかんを問わず全ての労働者であり、対象疾患は、反復・継続した治療が必要な全ての疾患としております。そのためにどういうことをやってもらいたいかということで、事業場における両立支援のための環境整備の所になるのですが、事業者による基本方針の表明と労働者への周知、研修等の社内での啓発、相談窓口の明確化、個人情報の取扱いの明確化、それから、休暇制度・勤務制度等の整備等というものが、事業主さんにやっていただきたいことだと私どもは言っているわけです。
また、事業場において、両立支援の実施手順としては、ここに書いておりますように、労働者が、まず両立支援の申出を企業側に言って、企業と一緒になって勤務情報提供書というものを作っていただく。作っていただいた勤務情報提供書を主治医に見せていただいて、主治医からの意見書を頂く。主治医の意見書を提出して企業と一緒に両立支援のプランを作っていただく、このような話になるわけです。そのために必要なお話として、医師側へのインセンティブと言いますか、医師側へのお話としては11ページになります。
11ページ、診療報酬を平成30年に新設し、R2・R4に改定をしております。これは先ほど申し上げたようなルートです。主治医が、この中で意見書を作った場合には算定できるということで、次のページがあります。
12ページ、これは診療報酬ですので、何の病気でというところは、やはり一定制約があります。上のオレンジで囲っている所ですが、対象疾病はこのような疾病を対象にして、初回:800点、1点大体10円にすると8,000円です。2回目以降は減額することになります。
このような支援体制を敷きながらやってきておりまして、13ページです。私どもの両立支援の推進ということで、何をやってきたかをざっと書き込んだものです。まずガイドライン・マニュアルの作成・周知啓発、コーディネーターの養成、診療報酬。それから、産業保健活動総合支援事業を通じて、産保センターなどを介した支援、それから、地域両立支援推進チームの設置と運営、これは都道府県を巻き込んだ取組です。あと広報活動といったことを国としてはやってきているところです。
14ページ、先ほど申し上げました産業保健活動総合支援事業の内容についてはこのようなものだということで、もし、またお時間があれば見ていただければと思いますが、47都道府県の産業保健総合支援センターにおいて、治療と仕事の両立支援関係でこのような支援をしているというものです。
15ページ、私どもの、先ほどからも御説明しております治療と仕事の両立支援をめぐる状況をサマリーしたところ、このような形になるのかと思っております。労働力の高齢化等により疾病リスクを抱える労働者の割合は一層増加することが見込まれ、今後、職場において、労働者の治療と仕事の両立への対応が必要となる場面はさらに増えることが想定されます。
治療と仕事の両立支援は、平成30年7月に公布された労働施策総合推進法において国が取り組むべき施策の一つとして位置づけられているものの、法律において事業者が取り組むべきものとはされていません。
厚生労働省では「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を策定し、疾病の治療を受ける労働者が治療の状況に応じて就業を継続できるための環境整備や必要な措置について周知を図っているが、特に中小企業においてガイドラインに基づいた取組は進んでいない。このため、ガイドラインに基づく取組を定着させるための方策の検討が必要であると考えております。
16ページ、これは最後のものです。参考として、労働施策総合推進法の(抄)を引いております。このように、国の施策と位置付けられて、第四条に、基本理念に従って、次に掲げる事項について総合的に取り組まなければならないとし、十の所に、「疾病、負傷その他の理由により治療を受ける者の職業の安定を図るため、雇用の継続、離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の促進その他の治療の状況に応じた就業を促進するために必要な施策を充実すること」となっています。このような形で、治療と仕事の両立支援対策については位置付けられているのが現状です。私から、現状の報告をさせていただきました。以上です。
○髙田分科会長 御説明、ありがとうございました。治療と仕事の両立支援を巡る状況について、15ページのとおりに整理をしていただいております。本件について質問、意見のある方は、会場の委員については挙手を、オンライン参加の委員については御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。まず、会場の委員で御発言を御希望の方は挙手をお願いします。門﨑委員、お願いいたします。
○門﨑委員 御指名ありがとうございます。労働側の門﨑です。3ページで御説明いただいたように、近年、何らかの疾患により通院している就業者数は増加傾向にあり、2022年には40%を超えています。今後、高年齢労働者の増加に伴い、治療と仕事の両立支援の重要性は一層高まっていくものと考えています。
一方で、治療と仕事の両立支援ガイドラインは平成28年2月に発出され、8年が経過しているわけですが、資料7ページに記載があるJILPTの企業調査によると、ガイドラインについて内容を含め知っている企業全体の割合は7.9%にすぎないということで、ガイドラインに則った取組が十分に行われているとは言い難い状況にあると考えます。治療と仕事の両立を更に進展させていくためには、現行根拠条文のない労働安全衛生法にしっかりと根拠条文を設けるとともに、ガイドラインの周知啓発に加え、法令への格上げなどを含めて検討を進めるべきではないかと考えます。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。そのほか、会場で御発言を御希望の方はいらっしゃいますか。及川委員、お願いいたします。
○及川委員 ありがとうございます。6ページで、労働者の管理監督者等に対する意識啓発が大変低く、14.6%になっています。こういった啓発活動や研修等が低い状況ですと、7ページのような結果にどうしてもなってしまうと思います。現在、この両立のガイドラインがありますので、これをしっかり利用していく余地、工夫は大変大きいのではないかと思います。
まずもって、現在の政策、あるいは制度をしっかり浸透していくことが重要であり、その過程で何か問題があれば、運用を改善する等が必要になってくると思います。例えば、10ページの、事業場における両立のための環境整備ですが、確かに「事業者による基本方針の表明と労働者への周知」と書いてありますが、小さい企業でも基本方針を立てています。具体例を、こういうフレーズが入ってますなど、具体的に表示をしておくことがすごく重要だと思います。現場でも毎日朝礼をする、あるいは社長からスピーチがある、そういった毎日の「スピーチ集」というのもあります。そういった中で、具体的な事例を示していくということが重要だと思います。
研修による両立支援に対する社内啓発、このとおりではありますが、どうやって労使一体となってこういうことを進めていくことが重要になるという具体的なエピソードなどが、経営者を動かすポイントになるのではないかと思っております。15ページに整理をしていただき、現在の置かれた背景や課題もこのとおりだと思います。まず、このようにガイドラインに基づく取組を定着させていくということに、いろいろな工夫や具体的に推進することの余地が多いのではないかと思います。
例えば、人手不足の中で、ロボットや省力化機器を開発、あるいは販売をしている所があります。人手不足で、そういうことを活用しましょうという中で、治療と仕事で両立させたいと思っている方が、そういう機器を使うことで大変スムーズに円滑にできた例があると思います。上からの啓発というよりも、個別、具体的な事例から上げていくという取組も重要だと考えております。私どもは、中小企業の人手不足の現場の中から、こういった仕事の両立についてもセミナー等を通じて推進をしてまいりたいと考えております。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。続きまして、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。先ほど門﨑委員から、ガイドラインの法令への格上げや安衛法への根拠条文の追加を含めて検討すべきという御指摘があったかと思います。私どもも、治療と仕事の両立支援は大変重要な課題と認識しております。大企業を中心に様々な取組も進みつつあると承知しております。
ただし、先ほど事務局から御説明がありましたとおり、今の法律は労働施策総合推進法に盛り込まれているということでして、労働安全衛生法とは目的が異なるとは思っております。例えば、先ほど議論がありました高年齢労働者の労働災害防止対策と異なり、業務起因性、業務増悪性との関連が薄い私傷病の対策という位置付けだと認識しております。こうした場で何度も申し上げて恐縮ですが、労働安全衛生法の目的は「職場における労働者の安全と健康の確保」ですので、やはり次元の異なるテーマではないかと思っております。その意味では、ガイドラインの普及促進を通じて、事業者の自主的な取組を後押しする施策を強力に進めていくことが、大変重要ではないかと考えております。
その関係で、1点、質問をさせていただきたいと思います。先ほど事務局から御説明がありましたとおり、本年3月にガイドラインが改訂され、労働者、主治医、事業者間の円滑な情報のやり取りを支える、「治療と仕事の両立支援カード」が追加されたところです。厚生労働省として、今後、このカードの活用状況の調査や、事業場の両立支援の取組に寄与しているかの検証を行う御予定があるかどうかお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございます。続きまして、七浦委員、お願いいたします。
○七浦委員 御説明、ありがとうございます。企業にとっても、高年齢者、あるいは若年層でもそうですが、やはり病気によって就業できなくなるようなことは避けるという意味でも、両立支援というのはとっても大切なことであると思っております。問題点として整理いただいた15ページにもあるとおり、そういう意味では、診療報酬として医療側なのか、企業側に問題があるのか、あるいは7ページにあるような中小から両立支援についてのアプローチがないのか、この辺りで企業と医療関係の主治医や病院との連携がなかなかうまくいってないのではないかなと思っております。
この辺りというのは、やはり地道な活動ということになってくるのか、今回のカードもそうですが、そういうふうなものの活用ということで、先ほど鈴木委員がおっしゃったような実態や、よりよい活用の方法というのを御検討いただきながら実施されているとは思いますが、引き続き、この辺も含めて、我々も企業の産業保健に携わっている中で、なかなか達成できてない部分もあるなと、御説明を聞きながらつくづく思っている次第です。
やはり、病院との連携、産業保健、企業との連携という、ここでもっと密な連携ができるような何らかの方策がもしおありであれば、この後の議論でしていければなと思っております。以上でございます。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ここまでの門﨑委員、及川委員、鈴木委員、七浦委員の御発言について、事務局からお願いいたします。
○労働衛生課長 ありがとうございます。今、門﨑委員から頂きましたとおり、いろいろな方策があるのだろうと思います。私どもは、やはりガイドラインに基づく取組を定着させるためには、それは法令に位置付ける、位置付けないということも含めて、この場で広い御意見を頂きたいと思っております。それは鈴木委員も、どうでしょうかというお話があったと思います。労使双方からの御意見を頂きながら、この場での合意形成などを行っていっていただきたいと思っております。
あと、鈴木委員から聞かれましたカードの件です。本年3月から運用させていただいておりますカードについてですが、現在、普及を図るべく様々な所にお話をしているところです。これは診療報酬との関係もあるのですが、それなりに使えるものであるということの一定のエビデンスが、やはり診療報酬改定などに持ち込むには重要になってくると聞いておりますので、今後、どのように使われてきたのか、若しくは使い勝手がいいのか、何か問題点があるのかということについては検証していきながら進めていきたいと思っております。
及川委員から中小企業での様々な取組、課題といったことについて御意見を頂きました。いろいろなやり方が多分あるのだろうと思いますが、治療と仕事の両立支援の普及がうまいこといっていない、知られていないというのは、やはり我々の広報のやり方にも一つ問題もあるのだろうと思っておりますので、いろいろとお知恵を頂きながら、ガイドラインに基づく取組を定着させていくことについて御意見を頂ければ有り難く存じます。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。ただいまの回答について、門﨑委員、及川委員、鈴木委員、七浦委員、何かございますでしょうか。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 御回答、ありがとうございます。1点、私が「検証」という言葉を使ったことで、少々ネガティブな発言のように聞こえていたら申し訳ないのですが、逆でして、先ほど七浦委員もおっしゃったように、関係者の連携を図ることが大変重要であり、カードの効果があるというところを捉まえて、周知につなげていただきたいという趣旨ですので、引き続きよろしくお願いいたします。
加えて、事業者だけでなく、医療機関や医師からのアプローチも大変重要ですので、関係省庁や関係部局との連携も是非図っていただければと思います。よろしくお願いします。
○髙田分科会長 ありがとうございます。事務局は特によろしいですね。続きまして、オンラインでかなりお待ちなので、宮内委員、お願いいたします。その次に山脇委員を御指名いたします。
○宮内委員 50名以下の企業において、自主的なガイドラインの取組を上げてくるという課題があるということなのですね。そもそもWHOの憲章は1946年に出ていますが、それの前文の健康の定義では、「到達できる最高水準の健康を享受することは人種、宗教、政治的信念、経済的又は社会的条件の差別なしに万人に有する基本的人権の一つである」と定義されております。
現在、高齢者が働く状況で、その中で慢性疾患を持ちながら働くことは、これはなかなか避けては通れないと思います。つまり、疾病を持ってないことが健康ということではもうなくて、WHOの健康の定義では、身体的、精神的及び社会的に完全に良好ということですから、社会と関わるということも非常に重要ですということをうたっているわけです。健康度を上げていくためには、社会と関わるということが非常に重要ということを、さらに丁寧に50名以下の企業へ説明し、理解していただくのが良いと思います。
現在、高齢で働く方々の中で、自己管理能力がある、適応能力がある方は非常に多く、これはもちろん疾病があるなしに関係なく社会に貢献できるわけですから、そういうことをきちんと説明されるようなアプローチをするということも1つのアイデアと思いました。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。続きまして山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 ありがとうございます。まず、治療と仕事の両立支援が安衛法になじむか、なじまないかという点は、鈴木委員と我々労働側とでは立場が違うということは明確に申し上げておきたいと思います。その上で、先ほどの高年齢労働者の労働災害防止策にも共通するかと思いますが、現状の取組を深めるということはもちろん重要であり、何ら否定するものではありません。ただ、現在の取組を継続していくだけで本当に数字を好転させることにつながるのでしょうか。現状の取組を深めていくことで数字を好転させる道筋が見えるのであれば、法令化ということには必ずしも拘りません。しかし、それができない、必ずしも道筋が見えないのであれば、法令化し周知を進めるというのも選択肢ですので、法令化を含めて御検討をお願いしたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。そのほか、会場の委員で御発言を御希望の方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、宮内委員と山脇委員の御発言について、事務局からお願いいたします。
○労働衛生課長 宮内委員の御意見については、そういった考え方もあるのだなと思って聞かせていただきました。どうもありがとうございます。勉強になりました。
山脇委員の御意見ですが、そういった意見を戦わせるのがこの場であろうと思っておりますので、秋以降の議論の中で法令化も含めた議論を行っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。宮内委員、いかがでしょうか。
○宮内委員 特にありません。
○髙田分科会長 ありがとうございます。山脇委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。そのほか、よろしいですか。ありがとうございます。それでは、また秋に向けて進めていただければと思います。
○髙田分科会長 続きまして、議題(3)「個人事業者等に対する安全衛生対策について(その4)」です。前回の資料を前回提出資料1としてお配りしております。前回は「前回提出資料1」に基づき、個人事業者等に対する安全衛生対策の各論②-1、「注文者」(発注者)による措置のあり方について御議論いただきましたが、26ページから始まります4つ目のカテゴリ「特定事業の仕事を自ら行う注文者の講ずべき措置」等について、事務局からの説明までとなっておりました。こちらについて、委員の皆様から、まだ御意見を頂けておりませんので、質問、意見等のある方については、会場の委員については挙手を、オンライン参加の委員については御発言がある旨をチャットに書き込みをお願いいたします。会場の委員で御発言を御希望の委員がいらっしゃいましたら挙手をお願いいたします。佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 労働側の佐々木です。資料27ページ以降の論点に関して、意見を申し上げたいと思います。まず対応案について、特段異論がないことを前提に発言したいと思います。対応案にあるとおり、対象となる者に個人事業者等を含むことについては、条文を書き換える形で明確化を図っていただければと思います。また、罰則のあり方について、過去の本分科会の議論の中で労働側委員から発言があったように、全体的なバランスを考えて検討すべきこと、周知がしっかり行き届くまでの期間については、罰則の適用を猶予するべきということについて、改めて申し上げておきたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。そのほか、御発言を御希望の委員はいらっしゃいますか。会場はよろしいでしょうか。オンライン参加の委員で、本件について御発言御希望の委員はいらっしゃいますか。よろしいでしょうか。そうしましたら、佐々木委員からの御発言について、事務局からお願いいたします。
○主任中央労働衛生専門官 計画課の船井から回答いたします。御質問ありがとうございました。前回の御議論でも御指摘いただいたとおり、罰則適用に当たっては、十分な周知期間、猶予期間を設けるべきということで、そちらについては我々としても認識しており、今後の検討に当たっては十分留意したいと思います。併せて、必要な周知についてもそのとおりだと思いますので、しっかりやっていきたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 佐々木委員、よろしいでしょうか。そのほか、御発言はありますか。ありがとうございます。では、前回の積み残しになっておりました各論②-1については、こちらで終了させていただきます。
○髙田分科会長 続いて、資料3-1、各論②-2、発注者以外の災害リスクを生み出す者等による措置のあり方です。資料3-1についても論点が多くなっていることから、大きな論点カテゴリごとに3つに分けて御議論いただきたいと思います。まず1つ目の論点カテゴリ、3ページから始まる「機械等貸与者等の講ずべき措置等」について、事務局より説明をお願いいたします。
○計画課課長補佐 事務局の高松より、資料の3ページから説明いたします。この機械等貸与者に関しては、安衛法第33条の話で議論をしていたところです。安衛法第33条に関しては、機械等貸与者、いわゆるリース会社に対して、労働災害を防止するため必要な措置を求めるという趣旨の条文となっております。これに伴い、機械の貸与を受けた者、あるいはその貸与を受けた機械を操作する者についても、労働災害を防止するような措置を義務付けているという条文です。
続いて4ページを御覧ください。論点と対応案です。まず論点の1つ目ですが、機械等貸与者が行う、機械等による災害を防止するために講ずべき措置については、事業者に貸与するときに義務付けられているところ、個人事業者等に貸与するときも義務付けることとして良いかということです。これに関しては、先般の議論と同様に、貸与された機械等による危険性は貸与される者が事業者であるか否かによって変わるものではないということですので、対象となる者に個人事業者等も含まれることを規定上、明確にしてはどうかということです。
続いての論点は、機械等を貸与される個人事業者等の災害を防止するために機械等貸与者に義務付けられる措置に関しては、この機械を労働者と同じ場所で使用する場合として良いかということです。これに関しては、個人事業者等を保護し、規制を課すのは今までの議論では労働者と同じ場所で働く場合であることを踏まえれば、機械等貸与者に対して措置を義務付けるのは、当然個人事業者等が労働者と同じ場所で働く場合とすべきではありますが、このリース会社が、その機械を借りた人たちが例えば事業者であるか、個人事業者等であるか、あるいは個人事業者等であった場合にその機械を労働者と同じ場所で使用するかどうかということを判断することは、現実的に難しいということが考えられますので、個人事業者等に貸与する場合にも事業者に貸与する場合と同様の措置を機械等貸与者に義務付けることとしてはどうかとさせていただければと思います。
次のページです。論点の3つ目は、この安衛法第33条で定める「機械等」に関しては、政令で定義をしておりますが、それ以外にどのようなものが考えられるのかということです。これに関しては、ページが飛んでしまって恐縮ですが、9ページを御覧ください。ここの考え方です。まず一般的に機械をリースする場合ですと、当然不特定の場所に自走するような機械がリースされるのが一般的であると考えております。また、何らかの措置を設けるべきというところは、やはり何らかの機械による危険や有害性があるものに限定することが考えられると思います。そのため、ここで列挙しているものに関しては、いわゆる就業制限業務のうち不特定の場所に自走する機械の運転の業務を列挙させていただいております。そのうち、この黄色網掛けの部分に関しては、既に安衛法第33条の対象になっている機械です。赤字の所、フォークリフト、ショベルローダー又はフォークローダーに関しては、現状で第33条の規制の対象外となっております。そのため、当方としては、こちらのフォークリフト、ショベルローダー、フォークローダーに関しても、第33条の対象としてはどうかということで考えております。1つ目のカテゴリに関しては、以上です。
○髙田分科会長 御説明ありがとうございました。論点3つとその対応案について御説明いただきました。本件について質問、意見のある方は、会場の委員については挙手を、オンライン参加の委員については御発言がある旨チャットに書き込みをお願いいたします。まず、会場の委員で御発言のある方、お願いいたします。中村委員、お願いいたします。
○中村委員 労働側委員の中村です。4ページの上の論点と対応案について、第162回の分科会で議論した機械等の安全の確保に関して、個人事業者に義務が課されることを踏まえると、事務局の提案どおり、機械等貸与者にも必要な措置が義務として課されるのは当然だと思っています。ここについては、条文を修正する形で明確化を図っていただきたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。続いて、山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 山脇です。私からは、4ページの下の論点と対応案について発言したいと思います。機械の安全確保に関して、義務を課される個人事業者の範囲とのバランスを踏まえると、労働者と同じ場所で働く場合に限定されるということは、やむを得ないと思います。他方で、労働者と同じ場所で働かない個人事業者に対しても、機械等貸与者は災害防止に向けた措置を行うべきと考えますが、特に「ガイドライン等に規定する」のように対応策の記載がありませんが、この点どうお考えなのか伺いたいと思います。
また、第162回の分科会で申し述べたとおり、個人事業者に対して定期検査が実施されているかどうか確認することを求めるのであれば、事業者に対しては個人事業者への検査状況の通知を義務付けるべきと思っていますので、その点改めて申し述べておきたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございました。そのほかありますか。出口委員、お願いいたします。
○出口委員 出口です。御指名ありがとうございます。4、5ページに記載されている論点、対応案ともに、おおむね異論はありません。ただ、細かい部分の疑問点について、確認させていただきます。まず、この機械等貸与者は、業として他の事業者に貸与する者となっております。あくまで、機械等の貸与を受けた者の講ずべき措置としては、安衛法第33条、安衛則第667条の「機械貸与者から機械等の貸与を受けた者は、当該機械を操作する者がその使用する労働者でないときは」とあります。建設業では、個人事業者が大きな建設機械等工具、それらを直接機械等貸与者から借り受けることは、ほとんどありません。個人事業者が貸与を受けるのは、元請けが貸与した1会社の数次の事業者から貸与する流れが多くあります。この場合、機械等貸与者、貸与を受けた者が元請け、数次の下請け業者の場合は、個人事業者に対して誰がどのような措置義務を負うのかを確認させていただきます。
また、4ページ○の4つ目に、機械等貸与者が「判断することは困難である」と書いてあります。①が事業者であるか、個人事業者等であるか。②については「個人事業者等の場合に労働者と同じ場所で使用するか否かを判断することは困難である」と記載されています。業として貸与する機械等貸与者が、これらの判断が本当に困難なのでしょうか。この点について、機械貸与者の判断が何をもって困難だと決められているのか、この理由について確認させていただきます。
次に3点目として、4ページに、規制を課すのは安衛法上は労働者と同じ場所で働く場合であることを踏まえれば、機械等貸与者に措置を義務付けるのは個人事業者等が労働者と同じ場所で働く場合とあります。しかし、先ほども他の委員からも御発言がありましたが、労働者と同じ場所での使用の有無にかかわらず、個人事業者等が異なる場所で、又は労働者と同じ場所ではなく、個人事業者同士が同じ場所で機械等によって災害に遭うかもしれません。個人事業者等の災害防止を考えるならば、規制を課すのは安衛法上労働者と同じ場所で働く場合だけでなく、法改正によって個人事業者を定義し、労働災害防止及び規制を講じるべきではないでしょうか。この点については、どのようにお考えでしょうか、確認いたします。
4点目として、3ページの検討会報告書の2つ目の○に、「陸上貨物運送事業においては、着荷主の事業場においてフォークリフトの貸与を受け、附帯業務として荷役作業をもとめられるとの実態も報告されていることから、災害の実態も踏まえつつ、「フォークリフト」などの危険性が高い機械等についても規制対象に含めることとする」とあります。これらから機械貸与を業とする貸与者は、その都度事業場にいませんので、貸与を受けた事業者がその場の管理する事業者の場合、誰が個人事業者に対する措置を講じる形となるのか、確認させていただきます。
「災害の実態も踏まえつつ「フォークリフト」などの危険性が高い機械等について、規制対象に含めることとする。」これらについて異論はありません。ただ、本来契約にない、予定にない荷役運搬作業等を、着荷主の事業場にて指示され、フォークリフト等の貸与を受け、附帯事業、附帯業務やサービスの一環として、求められても契約にない作業等は実施しない、した場合は双方に何らかの処分を課すというのが一番の対策、災害防止となるのではないでしょうか。以上、お伺いいたします。
○髙田分科会長 ありがとうございました。ただいまの中村委員、山脇委員、出口委員の御発言について、事務局から回答をお願いいたします。
○主任中央労働衛生専門官 御質問ありがとうございます。まず、中村委員からの御指摘といいますか、御意見です。この点について、ちょっと誤解があるといけないのですが、今回議論させていただいている論点というのは機械等貸与者ということで、これは法令上明確にしているのですが、業としてこの機械を貸す人ということなので、リース業者の人たちを想定しているということです。
一方、前々回御議論させていただいた個人事業者自身の措置の部分で、個人事業者が自分で機械を持ち込む場合、若しくは一時的に貸与するような場合というのがあると。この一時的な貸与というのは、恐らく個人事業者が作業に入った事業場において、労働者にも使わせているような機械を一時的に借りて作業するということなので、そこにはリース契約のようなものは存在しないということなので、またちょっと別の切り口であるということは御理解を頂ければと思います。
そのような前提で、山脇委員からの御質問にありましたとおり、義務を課される範囲ですが、労働者と同じ場所で就業する場合に、法令上の規制保護を図るべきだということについては、総論の②で議論をさせていただいたとおりです。でありますが、今回の業としてリースする場合については、論点の所でも書きましたとおり、貸す相手が事業者であるか、個人事業者等であるかというのが一見して分からない場合もあるだろうと。また、貸した相手が個人事業者等であった場合でも、その機械をどこで使用するのかというところまではリースする側についてはなかなか把握できないだろうということなので、今回についてはリースする場面において実施しなければならない事項というのが、資料の8ページに書いてあります安衛則の第666条に書いてある事項があります。これは、きちんと貸す機械については点検して異常を認めたときには補修整備してください。若しくは、貸す際にその能力であるとか、使用上の注意事項について、書面で交付してくださいと、この2つをリースする側がやってくださいと言っているので、この2つについては誰に貸す場合。個人事業者であるかどうか、またその個人事業者が労働者と同じ場所で使用するかどうかを確認することなく、これをやってください、一律にやってくださいということでお願いしているところです。したがって、労働者と異なる場所で働く場合についても、ガイドラインでうんぬんという話にはならないということで、御理解を頂ければと思います。
もう1点、個人事業者等が事業者から一時的に貸与を受ける場合の検査の話についても、御指摘がありました。この点については、今回のリースの話とは別に、また関係省令や通知等を議論する際に検討させていただければと思います。
続いて、出口委員からの御指摘です。今申し上げた所とも重複する部分があるかもしれません。まずは、第2項のリースを受けた事業者が、その使用する労働者以外の人に運転させる場合です。その運転させる場合というのが個人事業者であった場合、誰がどういう措置を取るのかということです。これは、貸与を受けた、リースを受けた事業者の方が、必要な措置、具体的には、8ページにあります安衛則の第667条に関する措置を講じていただく必要があると。例えば、元請けさんがリースを受けて、それを例えば二次下請けの下で請け負っている個人事業者の方にその機械を使っていただく場合には、ここに書いてあるような事項を元請けさんがやっていただく必要があるという整理になります。これは、現行の法令上も何ら変わらないということで、御理解いただければと思います。
2点目ですが、リースする側が論点にある事業者であるか、個人事業者等であるか。また個人事業者の場合に、その機械を労働者と同じ場所で使用するか否かというのが一見して確認できない。これは、なぜ確認できないかということなのですが、これはやはり機械を貸す際には会社名が個人企業なのか、個人企業であっても労働者を使っているのか、使っていないのかということが一見して分からないと思いますので、①についてはそういう趣旨で書かせていただいています。②についても、貸した機械をどこに持って行ってどう作業するのかまでは、やはりリース業者では把握できないと思います。この①の部分というのが、建設工事の元方さんと何が違うかというと、元方事業者さんというのは1の場所において、誰がどういう作業をやっているかを統括、管理される立場にあると思いますので、そこがやはり機械を貸すだけのリース業者とは一線を画す必要があるのではないかと考えておりますので、御理解いただければと思います。
3点目については、先ほどの回答の中で触れたとおりです。リース業者については、その機械が労働者と同じ場所で使われるかどうかにかかわらず、一律、先ほどの安衛則第666条の措置を求めていくという形になろうかと思います。
4点目の着荷主におけるフォークリフトの使用に係る対策です。今回御検討いただいたリースの対象機械にフォークリフトを入れるということになりますと、リース業者がやる措置、又はリース業者から借りた事業者、若しくは個人事業者がやる措置、それから運転する操作者がやる措置、それぞれが掛かってくることになります。したがって、例えば着荷主の事業場で附帯業務としてそこにあるフォークリフトを使ってドライバーが作業をするということになりますと、そのフォークリフトのリースを受けた着荷主の事業場が操作をさせるドライバーに対して、先ほどの8ページにありました安衛則第667条に関する措置をやっていただくという形になると思いますので、御理解を頂ければと思います。以上です。
○髙田分科会長 御説明ありがとうございました。ただいまの回答について、中村委員、山脇委員、出口委員、何かありますか。出口委員、お願いいたします。
○出口委員 1点目と2点目について、再度お伺いいたします。おっしゃるとおり、機械等貸与者から元請けが借りて、一次に対して安衛則の第667条にの措置を講じた。その一次から、二次が借り受ける。また、二次から三次が借り受ける。その都度、元請けは一次、二次、三次に対して措置を講じないといけないのでしょうか。また、三次が個人事業者と契約し機械等を貸与しているら場合は、元請けが第667条の措置を講じないといけないのか再度お伺いします。
2点目ですが、②は確かに分かります。貸し出した機械がどこでどのように使われるのか、どのような作業で誰が運転するのかまでは、機械貸与者は分かりません。ただ、一事業者であるか、個人事業者等であるか、これは当然業として機械を貸し出すわけですから、契約であれ支払いであれ、十分把握しないといけないことです。この点について、①の事業者か個人事業者が機械貸与者が分からないとおっしゃるのか、再度お伺いいたします。
○髙田分科会長 それでは、事務局お願いいたします。
○主任中央労働衛生専門官 御質問ありがとうございます。1点目については、第667条の措置というのは、機械を借りた事業者が操作する方に対して行う措置なので、一次下請事業者、二次下請事業者というような、事業者が関わってくる話ではない。例えば、二次下請けの労働者の方に操作をさせるということであれば、法令上はそのリースを受けた元請けと二次下請けの労働者である操作者との関係において発生する義務です。ただ、それを通知する際に、一次、二次という下請けを通じて何か書面で通知するというような運用は、いろいろとやり方はあると思いますが、義務主体というのは借りた人と操作者の関係でしかないということで、御理解いただければと思います。
2点目ですが、3回ほど前に御議論いただきました個人事業者というものを労働安全衛生法上どう定義するかという中で、御議論いただきました。事業を営む者であって、労働者を使用しないのだと。誰かから仕事を委託や請け負っているかも問わないと。そのような形で定義していこうということで、御議論して御了解いただいていたと思います。したがって、いわゆる安衛法の事業者、事業を営む者であって、労基法上の労働者を使用する者と、事業を営む者であって労働者を使用しない者の違いというのは、労働者を使用するかどうかでしかないわけです。そこは、リースをする会社が「あなたは労働者を使っていますか」というのが通常そういう確認はしないでしょうし、そこは事業を営んでいるという形で、それは個人企業のような形で労働者を使うか使わないかというのは、やはりリース業者としてなかなか外見上、一見して判断できないのではないかと。そういう考えから、資料には書かせていただいた次第です。以上です。
○髙田分科会長 出口委員、よろしいですか。お願いいたします。
○出口委員 おっしゃることは、理解しています。ただ、元請けが操作する方に、措置を講じなさいということは、二次、三次の機械貸与を受けた操作の方に、第667条の措置を講ずるべきとなりますが、その中には、作業内容や作業系列というような作業指示に入るようなことがあります。元請けから二次、三次、その下のオペの方に、直接指示するような形でよろしいのでしょうか。
また、機械貸与者が①についておっしゃることも分かりますが、現状まずないだろうと我々は認識しております。
○髙田分科会長 ありがとうございます。事務局、お願いいたします。
○主任中央労働衛生専門官 順序は逆になりますが、現実問題、貸す相手方がどういう方かというのは、分かる、分からないというのは何とも言えない部分があります。そういうこともあろうと。なので、今回は誰に貸す場合であっても、事業者であっても個人事業者であろうが、その個人事業者が労働者と同じ場所でその機械を使うかどうかを、貸す際に確認するという手間と、もう一律に貸す機械がきちんと点検整備されているか。注意事項を書面で通知する、それを一律にやるのと、どちらが実際の運用面も考えたときにトータルで災害の防止に資するか、若しくはリース業者や借りる事業者、個人事業者の負担にならないか。トータルで見たときには、今御提案させていただいたやり方がいいのではないかということで提案させていただいた次第です。
1点目の御質問で、機械の貸与を受けた方が仮に元請けだとして、例えば二次、三次の下請けの労働者がこれを操作すると。では、その方に直接そういうことを言っていいのかという部分ですが、これは法令上は問題ありません。その事項を通知していただければいいので、直接通知していただいても構いませんし、一次、二次、三次と業者を通じてやっていただいても構わないと。現場の実態としては、むしろ後者のほうが一般的ではないかと思いますが、操作する方にきちんと適切に通知される限りにおいては、法令上問題ないと考えております。以上です。
○髙田分科会長 そのほか、本件について御発言御希望の委員はいらっしゃいますか。オンライン参加の委員についても、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
大分時間が押しておりますが、次の論点カテゴリ11ページの「建築物貸与者の講ずべき措置」について、事務局からの説明だけをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○計画課課長補佐 それでは、資料3-1の11ページからのカテゴリについて説明いたします。ここの部分に関しては、検討会の報告書の抜粋のとおりです。安衛法第34条の規定についての議論となっております。
12ページです。この建築物貸与者に関しては、これは、建築物を貸与して、その建築物の共用部分やあるいは貸与を受けた者の占有部分以外の部分について、避難器具の有効保持などについて定めているという条文です。その上で論点ですが、まず1点目です。建築物貸与者が行う、建築物による災害を防止するために講ずべき措置については、事業者に貸与するときに義務付けられているところ、個人事業者等に貸与するときも義務付けることとして良いかというところです。こちらに関しては今までの議論と同様に、貸与された建築物等による危険性は貸与される者が事業者であるか否かによって変わるものではないため、対象となる者に個人事業者等も含まれることを、規定上明確にしてはどうかというところです。
論点の2点目、3点目です。ここの「建築物」の範囲をどのように考えるべきかというところと、あとは、この安衛法第34条の根拠とする省令の具体的な内容に関してどのように考えるべきかというところです。ここについてはまず、現状の安衛法第34条の対象となる建築物に関しては、これは、対応案で書いてあるとおり、事務所と工場に限定されているというところです。ここに関して建築物については一般論として、災害リスクは建築物に起因するものはあります。また、検討会等でもいろいろな、例えば着荷入室先の倉庫などでの災害もあるという話も聞いております。
そのため、災害の実態を踏まえ、あらゆる場所で建築物等の管理に起因する労働災害を発生し得ることから、建築物の範囲を事務所、工場に限らず事業の用に供される建築物としてはどうかと考えています。この建築物に関しては、資料の14ページです。建築基準法を引いているところですが、建築物というのは、基本的には土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものと定義されております。つまり、屋根がないと建築物には該当しないというところです。建築物に起因するような、例えば墜落のような災害などは、当然、災害リスクが大きい。ただ、例えば屋外の駐車場など、建築物には該当しないようなものに関しても一定の災害リスクはあるのではないかと考えております。
論点に戻りますが、屋外駐車場等建築物に当たらないものを貸与する場合には、貸与者に求める措置に関しては、ガイドラインなどで明確にしてはどうかと考えております。また、安衛法第34条を根拠とする具体的な措置に関しては、現状の省令では共用の避難器具の表示や有効保持、あるいは警報設備の設置・有効保持などしかないというところですが、災害の実態を踏まえて、貸与を受けた者の占有部分以外の部分における墜落危険箇所の周知や安全な通路の確保等、災害の原因となっているものも追加してはどうかということを御提案させてもらえればと思います。手短になりましたが、説明に関しては以上です。
○髙田分科会長 ありがとうございます。本件については時間の関係もありますので、大変恐縮ではありますが、委員の皆様からの御質問、御意見については次回の分科会にてお願いできればと思います。残りの論点カテゴリについても次回に回させていただきます。また、本日御用意しております各論③-1についても次回の御議論とさせていただきたいと思います。大分時間が押してしまいまして申し訳ありませんでした。
本日、各委員から御指摘があった点については、事務局で整理をしていただいて、また次回以降も本日の内容を踏まえつつ、各論について議論を進めていただきたいと思っております。
ここまでの議題で何か御発言はありますか。山脇委員お願いします。
○山脇委員 ありがとうございます。この間、予定されている議題を消化しきれない状況が続いています。一方で大変重要なテーマでありますので、議論を打ち切るわけにもいかないと思っています。分科会の開催時間の延長も含めてしっかり議論が行えるように、事務局のほうで調整いただきたいと思います。以上です。
○計画課長 御意見を踏まえて検討させていただきたいと思います。以上です。
○髙田分科会長 ほかはよろしいでしょうか。ただいまの御指摘を踏まえて、今後も進めさせていただきたいと思います。本日の議題はこれにて終了させていただきます。本日もお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。