第5回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和6年7月26日(金)13:00~

場所

中央合同庁舎5号館12階専用第15会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. (1)引き続き検討すべき論点について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○辻川中央労働衛生専門官 それでは、定刻になりましたので、「第5回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催いたします。本日は、御多忙のところ御参集いただき、誠にありがとうございます。報道関係者の皆様にお願いがございます。カメラ撮りはここまでとしてください。
 本日の出欠状況ですが、砂押構成員が御欠席となっております。また、新垣構成員、江口構成員、及川構成員、大下構成員、黒木構成員、高野構成員、松本構成員、三柴構成員、森口構成員、矢内構成員、渡辺構成員がオンラインでの御参加です。
 また、事務局のメンバーに変更がありますので、御紹介させていただきたいと思います。安全衛生部長に井内が着任しております。
○井内安全衛生部長 この7月から安全衛生部長でまいりました井内でございます。よろしくお願いいたします。
○辻川中央労働衛生専門官 計画課長に佐藤が着任しております。
○佐藤計画課長 同じく7月5日付けで計画課長に着任いたしました佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○辻川中央労働衛生専門官 オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の仕方を説明させていただきます。会議中、御発言の際は、「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の指名を受けてからマイクのミュートを解除し、御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度ミュートにしてくださいますようお願いいたします。
 資料の確認を行います。本日の資料は3点あります。議事次第、資料1、第1回~第4回検討会における主な意見及び論点案、参考資料、関連条文及び指針等となっています。不足がありましたら、事務局にお申し出ください。
 それでは、以降の議事進行については、川上座長にお願いいたします。
○川上座長 それでは、これより議事に入りたいと思います。構成員の先生方におきましては、お忙しい中御参集いただき、ありがとうございます。これまで、かなり論点を絞りながら議論を重ねてまいりました。今日は、それらを踏まえながら、更に引き続き検討すべき論点について御議論いただきたいと思います。まず、事務局から今日の資料の御説明をお願いいたします。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 では、事務局よりお手元の資料1について御説明させていただきます。2ページ、3ページが、第1回~第4回の検討会において、ここにあるようにストレスチェック制度の効果から制度の枠組みや運用に関して、以下のような観点から更に具体的な御意見を頂戴してきたところです。特に前回、第4回から今回にかけては、まずは、ここにある2のストレスチェック制度の枠組みについて、更にそれぞれの丸囲みの項目ごとに論点を立てて、これらを中心に議論を進めていくこととしています。
 以降、ちょっと分厚いですが、35ページまでは、それぞれの項目に関して、これまで頂いた主な御意見を列挙したものですので、ここは御議論に当たって適宜、御参照ください。36ページからが論点案ですので、お開きください。まず、37ページから38ページにかけて、50人未満の事業場におけるストレスチェックについて、論点1として労働者のプライバシー保護となります。なお、37ページ以降の資料の構成ですが、各論点について、まず最初の欄は、(前回の論点より)として、前回、事務局より論点として御提示した内容がそのまま入っています。次の欄は、(第4回検討会における主な意見)(概要)ということで、前回その論点に関して皆様より出された御意見の概要ということです。次の欄が、(意見を踏まえた考え方)として、今回、事務局において当該論点に関する検討の観点を更に整理させていただいたものとなっていますので、本日はそういった見方で、引き続きの御議論をお願いいたします。
 37ページは、前回御提示した論点部分なので、説明を割愛いたしますが、38ページから御覧ください。この項目の前回の主な御意見としては、小規模事業場において、ストレスチェックの実施を労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することは現実的な選択肢になってきているが、全国各地の全事業場での実施が可能な状況にあるかといったことや、ストレスチェックの実施を外部委託する場合にも、事業者の取組が形骸化しないようにすべき、委託する外部機関の質の担保も重要といった御意見を頂戴しています。
 次の欄ですが、今回これらを踏まえた考え方として、全国各地を含めて対応可能な環境は一定程度整備されているのではないか。小規模事業場において、外部委託する場合であっても、事業者として主体的に取り組んでいくことを基本とし、そのための実施体制・実施方法について整理し、示していけばどうか。また、厚生労働省の外部機関のチェックリストについて、小規模事業場が活用できるよう内容の見直しをして、周知していくべきではないかと、こういった論点を御提案させていただいています。
 39ページです。論点2の医師の面接指導の事後措置についてです。ここで主な御意見としては、社内の人間関係に起因するケースも含めて取り扱うことの難しさをどう考えるか。企業規模を問わず、事業者がストレスチェック制度により、人事労務管理に関わるような本質的な対策など必要な措置が講じられるように、事業者や人事労務担当者、産業保健スタッフ等に対するケースワークなどの研修が必要となるのではないかといった御意見がありました。
 これらを踏まえた考え方としては、ストレスチェック制度の取組について、事後措置や職場環境改善を含めた好事例や、その効果等をとりまとめて展開していけばどうか。企業規模を問わず、事後措置や職場環境改善の取組事例等をもとに、ストレスチェック制度を行う事業者、人事労務担当者、産業保健スタッフ等に対するケースワークなどの研修を実施していけばどうか、というように論点の整理をさせていただいています。
 40ページから41ページは、論点3の50人未満の事業場に即した実施内容についてです。前回の主な意見としては、40ページから41ページにまたがっておりますが、50人未満には一斉に実施するのではなく、実施体制がしっかりできているところから進めればどうか。50人以上のストレスチェック制度をそのまま50人未満に導入するのはかなり無理があると。50人以上と同じスキームで実施されるのがあるべき姿ではあるが、50人未満の状況に即してグラデーションを持たせることも選択肢ではないか。10人以上であれば、衛生推進者が選任されているので、キーとなる可能性があるという御意見。あとは、親戚を集めてやっている所になると、メンタルヘルス自体も全然変わってくるといった御意見を頂戴しています。
 これらを踏まえた考え方としては、50人未満の事業場にストレスチェックの実施を促進していくに当たっては、現状に即して以下のようにしてはどうかということで、衛生委員会等の設置義務がない中での関係労働者の意見を聴く方法をはじめとして、モデル実施規程を含め、50人未満の事業場の現状に即したストレスチェック実施マニュアルを示していくと。こういったもののほか、50人未満の事業場における実施体制・実施方法等については、外部機関を活用する場合も含めて、実施者や実施事務従事者、実施責任者、こういったものの体制や、ストレスチェック結果の保存、面接指導の申出への対応といった方法について、さらには、産業医の選任の有無や特に小規模な事業場などのケースごとに、現状に即した取組可能な内容を整理して示していけばどうかといったこと。このほか、50人未満の事業場について、これらの内容を整理していくに当たって、特に小規模な事業場であるなど、その特性から特段考慮すべき課題はあるか、また、それは何かといった論点を提案させていただいています。
 42ページは、論点4の実施コストについてです。主な意見としては、外部機関を活用する場合には、そのサービスの質を担保することが重要であると。民間サービスを前提としないものを整備する必要があるのではないか。外部委託する場合、外部機関がどのような役割を担っているのか。50人以上と50人未満、50人未満でも10人未満とそれ以外では大分違ってくるのではないか等の御意見がありました。
 これらを踏まえた考え方としては、厚労省のストレスチェック無料実施プログラムを小規模事業場にとって使いやすくなるように改善すればどうか。外部機関に委託する場合のサービスの質を担保していく必要があるのではないか。現行の外部機関のチェックリストについても、小規模事業場が活用できるように内容を見直して、周知していくべきではないか等の論点を挙げさせていただいています。
 43ページは、論点5の地産保等による支援策についてです。主な意見としては、小規模事業場のメンタルヘルス対策については、地産保の登録産業医を含めた地域のかかりつけ医の対応を軸に進めるべき。地産保では、50人未満の事業場に対して、登録産業医によって産業保健サービスの提供を行っているが、ストレスチェックについても同様の支援が考えられないか等の御意見がありました。
 44ページです。これらを踏まえた考え方として、50人未満の事業場のメンタルヘルス対策においては、地産保の登録産業医を含めた地域のかかりつけ医への相談を促していくことも重要ではないか。以下、好事例の展開や、産保センターの研修の充実等、そのほか、50人未満の事業場にストレスチェックの実施を促進していくに当たっては、適切な実施に向けた支援を行っていく必要があるのではないかということで、例として括弧書きで、50人未満の事業場におけるストレスチェックの適切な実施のために、厚労省において中小事業者団体の取組に対する支援を検討していくことについてはどうかといった論点を挙げさせていただいています。
 続いて45ページですが、ここからは集団分析・職場環境改善についてです。論点6は、実施状況を踏まえた集団分析の今後のあり方としています。主な御意見です。集団分析の実施状況に関しては、集団分析・職場環境改善の実施割合は、50人以上の事業場であっても5割から6割と、義務化に踏み込むことについては、現状が追いついていないといった意見。集団分析の義務化の是非に関しては、集団分析結果が読めていない管理職が多く、普及が十分にできていない段階といった御意見を頂戴しています。
 46ページですが、改めて事務局から用意させていただきました。これらのグラフで実施状況の数字を御覧いただくと、まず、集団分析を実施した割合は、50人以上で6割、50人未満ですと2割程度ということですが、ストレスチェックを実施した事業場に限れば、一番右のように規模を問わず7割程度と。これは、自動的に集団分析もくっついてくる割合が7割ということかもしれませんが、現状はこのような数字になっています。先ほど御意見の中でも、集団分析結果が読めていないという御意見があったわけですが、次の手法の所にあるように、57項目の簡易調査票を国が標準的な項目として示しており、最も一般的に活用されているものだと思うのですが、これについては、ストレスチェック実施マニュアルで仕事のストレス判定図の読み方等、集団分析の実施方法を示していますし、仕事のストレス判定図を活用している割合が7割となっていますので、一定程度そういったものを活用して、事業場において集団分析を実施できるようにはなってきているのかなと思っています。一方で、実施しなかった理由として最も多く挙げられているのが「集団分析の必要性を感じなかった」という状況があります。
 47ページです。こういった状況を踏まえて、ストレスチェック制度について、集団分析及び職場環境改善まで含めた一次予防のための一体的な制度であるということを、事業者や労働者に対して明確に伝えていくことができるような方策を検討すべきではないか。ストレスチェックの実施から、集団分析及び職場環境改善につなげていくために、集団分析結果を活用した職場環境改善の取組事例について、こころの耳による好事例の収集・情報提供、産保センターにおいて研修や個別訪問支援、こういったものを充実させていく必要があるのではないかといった論点を挙げさせていただいています。
 48ページは、論点7の実施状況を踏まえた職場環境改善の今後のあり方です。主な御意見としては、職場環境改善の実施状況に関しては、先ほどと同じなのですが、職場環境改善の義務化の是非に関しては、職場環境改善は、企業ではストレスチェック以外の結果も用いており、その内容も多様であると。どこまでやれば義務を果たしたことになるかを客観的に特定するのは困難であり、企業規模に関わらず義務化することは時期尚早ではないか。中小企業においても取り組みやすい方法で、ストレスチェック結果の活用はまだでも、できることからメンタルヘルス対策の取組をまず普及できるといいといった御意見を頂戴しています。
 49ページです。実施状況の数字を用意したのでご覧いただくと、集団分析結果を活用した割合は、この安全衛生調査においても50人以上で5割、50人未満で2割弱といった状況ですが、集団分析を実施した事業場に限れば、右のように規模を問わず8割程度という数字になっています。一方で、先ほどと同様に職場環境改善を実施しなかった(できなかった)理由としては、「集団分析結果から職場・部署ごとのリスク・課題を洗い出すのが困難だった」が最も多く3割、次いで、マンパワーや経費面となっています。特に小規模事業場では、「職場環境改善の必要性を感じなかった」が最も多くなっているという状況です。
 これらを踏まえて、50ページです。メンタルヘルス対策における職場環境改善とは、現場の物理的レイアウトや労働時間、作業方法、組織、人間関係などの職場環境を改善することによって、労働者のストレスを軽減しメンタルヘルス不調を予防しようとする方法であり、事業場においては、実情等に応じて、ストレスチェックの集団分析結果も含め活用する情報や実施体制・実施方法など、様々な進め方によって取り組まれているところ、このような中で、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善について、その義務化等を検討する場合、事業場における取組の現状等も踏まえると、どのようなときに、何をどの水準まで実施したことをもって履行されたと判断するべきか、また、そのような判断を行うことは可能なのか。
 集団分析結果を活用した職場環境改善の取組事例について、こころの耳による好事例の収集・情報提供、産保センターにおける研修や個別訪問支援の充実が必要ではないか。こういった取組事例の収集等に当たっては、ストレスチェックの集団分析結果以外を活用した好事例というものにも留意すべきではないか、こういった論点を挙げさせていただいています。51ページは参考なので、御参照ください。
 52ページは、論点8の集団分析・職場環境改善の実施体制についてです。主な意見としては、ストレスチェック制度は、職場のメンタルヘルスの改善が目的であり、一次予防の制度であると。健康診断は二次予防の制度である。健康マターの前に人事問題・労務問題があるという御意見。職場環境改善の検討体制に関しても、産業医も不足している状況であり、企業規模に関わらず義務化することは時期尚早ではないか。まずは好事例を展開して、底上げを図るべきではないか、こういった御意見がありました。
 これらを踏まえた考え方としては、産業保健と人事労務の連携した実施体制の構築について好事例を収集し、展開していくとともに、「ストレスチェック実施マニュアル」等においても、産業保健部門に加えて事業者、人事労務の役割や責任が明確になるように反映していけばどうかといった論点を挙げさせていただいています。
 53ページは、最後の論点9の外部の支援についてです。主な意見としては、外部機関の質の担保が重要といった御意見を頂戴しておりまして、考え方としては、外部機関チェックリストの見直し、周知、こころの耳による好事例の収集・情報提供、産保センターにおける研修の充実、ここは再掲になりますが、論点として挙げさせていただいています。
 説明は以上となりますが、54ページ以降は御参考として、55ページにストレスチェック制度の義務対象について、今更ですが御理解のために付けています。おさらいをすると、単純に義務、努力義務で現状を表すとこの表のとおりになるのですが、法令上の位置付けは、努力義務と書いてありますけれども一様ではありません。表の下に記載がありますが、まずストレスチェックに関しては安衛法、法律により義務付けがなされており、50人未満の事業場については、その附則によって、当分の間、努力義務とされているといった構造になっています。一方、集団分析・職場環境改善に関しては、法律において一体的に規定されているものではなくて、別途、労働安全衛生規則、省令において努力義務として規定されています。ここは、おさらいとして記載いたしました。
 56ページ以降は、ストレスチェックを外部委託する場合の外部機関のチェックリストでして、今日、御紹介させていただいた御意見の中でも何度か触れられていますので、御参考までに付けています。御指摘のように、これも50人以上を想定した内容になっていますので、実施体制、実施方法、セキュリティといった観点で、50人未満のニーズに対応した内容のものも別途必要になってくるのだろうと我々も考えているところです。以上が事務局からの資料の説明です。
○川上座長 事務局で今回、第4回の議論の主な意見を受けて、その意見を踏まえた考え方までお示し、整理いただきました。これに対して、御意見を賜ってまいりたいと思います。論点が9つありますので、まずは論点1~5の50人未満の事業場におけるストレスチェックについて、先に集中して行います。その後に、議論の様子を見ながら、論点6~9の集団分析・職場環境改善のほうにも意見交換を移していただきたいと思っております。御発言いただくときに、論点のどの番号に対するものかをできるだけ教えていただければ、事務局の整理も簡単になるかと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。御意見のある方は、挙手の上お願いいたします。今日はオンラインで御参加の先生も多くて、私のほうで手を挙げたのが見えづらいときは、すみません、事務局で助けていただいて教えていただければと思います。また、前回までのように手を挙げていただければ、私のほうで事前に見つけて順番に御発言をお願いするようにしてまいりますので、御発言のある方は次の番号以降でも手を挙げていただければ、順次御発言いただけるようにしたいと思います。それでは、まず論点1~5について御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。茂松構成員、よろしくお願いいたします。
○茂松構成員 日本医師会の茂松です。今回、論点整理をしていただき、誠にありがとうございました。最初に、全体的な問題について指摘をさせていただきたいと思います。37ページの論点案の大項目1番に、「50人未満の事業場におけるストレスチェック」とあります。ただ、論点1~5を見てみますと、ストレスチェックの義務化の課題に加えて、メンタルヘルス対策という意見がかなり出ているのではないかと思います。したがって、大項目は「50人未満の事業場におけるストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策」とタイトルを直していただいたほうがいいのではないかということを申し添えておきます。
 そして論点1、労働者のプライバシー保護についてです。ここに記載されております意見を踏まえた考え方を見ますと、健診機関ではストレスチェックも全事業場で実施可能と結論付けているように読めるのですが、現在一般健康診断を一般の医療機関に委託している事業場もあり、特に小規模事業場でその割合が高いと思われます。そうした一般の医療機関がストレスチェックに対応可能なのかどうか、この辺りは少し不明ではないかと思っております。この点については、極めて慎重な議論が必要であろうかと思っております。以上です。
○川上座長 御意見をありがとうございました。大下構成員、オンラインで手を挙げていらっしゃいますか。
○大下構成員 日商の大下です。御指名ありがとうございます。また、御説明ありがとうございました。50人未満の事業場のストレスチェックの義務化について、まず全体について、それから各論点について、考えていることを申し上げます。
 これまでも申し上げておりますが、ストレスチェックという取組の意義は十分理解していますし、小規模の事業場で働く人にもそれを広げていくということの趣旨には、一切反対いたしません。先の御発言にもありましたが、問題は実効性のある形で実施ができるかという点と考えます。2016年の国会答弁で触れられた情報管理等が適切に実施されないという懸念等につきましては、我々が日々小規模事業者とやりとりする中での実感としては、残念ながら十分解決できているとは思えないのが実情でございます。
 他方で、これまでの議論の中ではなかなか小規模事業者の方々の実態を十分御理解いただけていないと感じられる御発言もあり、「できるだろう」といった推量に基づいた権利付け、結論付け、実施は非常に危険だと思います。ストレスチェックは労働者にとって、極めてセンシティブな内容を取り扱うものであるからこそ、小規模事業場における実態を十分踏まえ、現実的でかつ真に実効性のある仕組みを作り上げる必要があると思っています。
 そういう意味では、現行の14次防において、50人未満事業場におけるストレスチェック実施割合を引き上げる目標があります。この取組を検証した上で、浮き上がってきた課題、問題点を改めて整理し、それらを解消できる具体的かつ現実的な施策を検討した上で、実施方法を考えていくべきではないかと思います。
 個別の論点について、3点ほど申し上げます。まず1点目のプライバシー保護につきまして、外部委託の話が従前から出ております。こちらも繰り返し申し上げておりますが、外部委託は1つの選択肢であると思いますが、それを前提として全ての事業場への義務化を行うということには、現状を踏まえると賛同いたしかねます。農村、漁村、山間地に所在する小規模な事業所も含めサービスが利用可能か、費用負担・質の担保に関しての懸念が無いか。その他にも、ある委託先のサービスの継続が不能になることも考えられますが、そのような場合の対応など、課題は非常に多いと思います。
 今回頂いた案の中にオンライン実施という話もありますが、例えば我々が全国の商工会議所を通じて、小規模事業者へアンケート調査を行うときなどに、Webでの回答をご依頼したとしても、紙でないと答えられない、ということを仰る事業者が依然として非常に多いのが実情です。皆様のイメージとして、いわゆる普通の会社のようなものを持たれているのではないかと思いますが、ほぼ家庭のような環境で業務を行っている会社・事業所がたくさんあるわけです。小規模事業者の実態をしっかり押さえた上で、実施可能な方策を考えていく必要があると思います。
 このような点を踏まえると、仮に外部委託を前提とするのであれば、本来は公的なサービスをしっかり整備した上で、希望する方は民間も使えるといった仕組みとするのが望ましいと思います。利用可能な外部機関のリスト化というのも一案だと思いますが、一番望ましいのは経営者にも働く人にとっても、もう既にサービスを受けていてなじみのある健康診断の委託先に、その機関が実施するか、あるいは再委託をするかは別にして、直接お願いをできるという仕組みを作ることができれば、無理なく制度の設計ができるのではないかと思います。
 続いて論点2の事後措置につきまして、例えばストレスチェックを導入した場合、セルフチェックとセルフケアまでは十分考え得ると思いますが、先ほど申し上げたような、ほぼ家庭のような職場も含めて考えると、職場改善については容易ではないと思っております。これまでの意見を整理していただいた資料の中で、民間の調査の結果として、高ストレス者が面接指導を受けない理由には、何も変わらない、職場にばれる、ばれると不利益を受けるという自由記述があった、という御発言もありました。
 こうした懸念は、マネジメントがしっかりとしており、ルールや規則も整備されている大企業で働いている人以上に、経営者と労働者の距離が極めて近い、経営者の判断や人間関係で動いている部分が非常に大きい小規模の事業場で働いている人であれば、なおさら感じることだと思います。もちろん、事業場において事後措置も含めてストレスチェックを導入することに、労使双方の了解が得られるのであれば、それを否定するものではございませんが、結果が職場に機械的にフィードバックされることには、非常に抵抗感が大きい人もいるのが実情ではないかと思います。したがって先ほど申し上げたように、例えば健康診断と組み合わせてのセルフチェック、セルフケアまでの義務化。職場改善と、それ以降の部分については努力義務化といったような方向が、1つ考えられるのではないかと思います。この辺りを踏まえていただいたうえで、御検討いただくことが重要だと思います。
 また論点3、中小に即した実施内容については、これまでにも申し上げたように、意義があることは理解をしております。一方で、現実的な仕組み、今申し上げたようなことを踏まえて導入が可能な状況に、今の50人以上と同じ仕組みを導入できる状況にあるとは全く言い切れないとも思います。繰り返しになりますが、14次防の取組の検証を丁寧に行うこと。そしてその結果等も踏まえ、例えば健康診断とセットでセルフチェック、セルフケアまでの仕組みが組めるというような、実効性のある方策がある程度見えるのであれば、そこまでを義務化し、それ以上は努力義務化に留めるなど、本当に現実的で実効性のある、小規模事業所で働いていらっしゃる人々のためにもなる仕組みを具体的に検討すべきだと思います。私からは以上です。
○川上座長 ありがとうございます。小規模事業所の実態を踏まえて、また可能性のあるソリューションについてもお示しいただき、ありがとうございました。オンラインから三柴構成員が手を挙げておりますので、よろしくお願いします。
○三柴構成員 三柴です。まず論点1についてですが、プライバシーの件です。ちょっと思い切ったことを言いますと、このままだと仮に中小企業に制度適用を拡大したとしても、形骸化してしまうというおそれを抱いております。今の大下構成員の御発言とかぶるところがあるのですが、これまでの議論では、たとえ適正にではあっても、どうしたらやりやすいかという議論が中心であったと思うのです。しかし、中小企業者にどうしたらやりたいと思ってもらえるか。つまり、モチベーションを形成できるかが鍵となると思います。
 このストレスチェック制度というもののそもそもの趣旨ですが、これは結局は労使間の話し合いの取っ掛かりをつくるということが大きかったと思います。一旦、産業保健の専門職に間に入ってもらうとしても、上司との対話を最終的にはいざなってもらう必要があるということですよね。他方で、中小企業だと集団分析自体が難しかったり、無意味であったりすることも多いわけなので、プライバシーを言いすぎるべきではないと考えております。イギリスでも、HSEなどは中小企業対策だと、仕組みをシンプルにして事業者自身にやらせるということが重要だと喧伝しているところです。
 他方で日本の中小企業者では、人が辞めるのを止めることが重要課題となっている。もともと、いい人を採れないというのもありますが、人が辞めるのを止めることが重要だと。そこにこの制度を活用させるということが多分重要で、そのためにもこのストレスチェック制度を取っ掛かりにした、腹を割った対話へのいざないが重要であると考えます。
 もう1つ、論点2の事後措置の件ですが、ここではケースワークについて取り上げていただいております。これについては、もめやすい例を取り上げることが重要だということを繰り返えさせていただきたいと思います。好事例を強調するばかりではいけないということです。繰り返しますように、実際は中小企業の場合は、そもそも人がいない、採れない。さらに、中小企業に限らず、労働者と会社との価値観や能力の相性が合わないといった根深い背景がある例が多いと。しかし、ストレスチェック制度の関係者のもめ事対応能力の養成や、適任者との連携が不十分であったわけです。その問題で困っている企業が多いのに、ストレスチェック制度が形骸化しやすい理由のポイントは、ここだろうと思います。人事労務管理と、彼らを説得できるルールの専門家の涵養が重要だと申し上げる趣旨は、そこにあります。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。山脇構成員が手を挙げていらっしゃると思います。お願いします。
○山脇構成員 改めて労働者を代表して、発言させていただきます。私どもとしては、50人未満に関してはストレスチェックの義務化を強く求めておきたいと思います。とりあえず以上です。
○川上座長 ありがとうございました。オンラインの松本構成員、手を挙げていらっしゃいますか。
○松本構成員 ありがとうございます。主に論点3の所になろうかと思いますが、個人情報の保護や結果を踏まえた職場改善を含めて、やはり小規模な企業であっても実施体制を整えられるような方策について盛り込んでいただき、是非小規模でも取り組めるということを推進していただきたい立場です。体制づくりについては、今も労使間というような話が出ておりましたが、産業医や保健師等の専門職の活用についても是非明記を頂いて、間を取り持つ者として第三者的な立場としても、専門職の存在は大きいと思っています。
 保健師は、ストレスチェック制度においては産業医等と同等の立場である実施者として位置付けられております。実施方法などのルールの策定からストレスチェックの評価、医師の面接指導の要否の判断など、一定の実施手順に関する役割を担っております。日本看護協会では、個人事業者や地域産業保健センターなどで中小企業を支援している保健師等にヒアリングを行いましたが、その結果、中小企業を支える保健師がそれぞれのケースの緊急度と必要な支援を判断し、労働環境を含めた詳細な情報を収集・整理し、産業医が適切かつ迅速に就業判断を行えるようなサポートをしておりました。まずは、小規模自治体、事業場であっても、制度導入の体制を整えることが急務かと思っております。是非その中で、専門職である保健師等の活用に向けた体制整備の構築をよろしくお願いいたします。以上、意見です。
○川上座長 ありがとうございました。続けて、オンラインの及川構成員、渡辺構成員の順でお願いいたします。
○及川構成員 及川です。論点1ですが、以前も申し上げましたが、過疎地等地方の状況を見ますと、外部機関の活用ということで解決するとなると、立地による小規模の格差拡大につながるやり方になるのではないかと思っております。中小企業について形だけ真似るというようなやらされ感が出てくることになります。
 38ページの真ん中の○ですが、ここは大切なのですが、「ストレスチェック制度に主体的に取り組んでいくことを基本とし」は正にそのとおりなのですが、「そのための実施体制・実施方法について整理し、示していけばどうか」ということですが、まずもって、そのための実施体制・実施方法について整理をしていただいて、お示しを頂いて、これが小規模事業者についてどうかという意見を聴いた上で、判断をしなければいけないと思っております。
 同様に、論点3の41ページの下から2番目のポツですが、「特に小規模な事業場などのケースごとに、現状に即した取り組み可能な内容を整理し、示していけばどうか」ということです。これについても、内容を整理し、お示しいただいた上で、判断ができると思っております。中小企業の現場に下ろしたときに、初めて判断をさせていただくことになろうかと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。渡辺構成員、お願いいたします。
○渡辺構成員 渡辺です。最初に申し上げておきますと私は、基本的にはこのストレスチェックを中小企業にも拡大できればいいと思っている立場です。基本的な考え方は、労働者の方一人一人が健康になり、そして、その結果として、企業の業績向上につながっていくという両者にとってメリットのある制度にするということが一番大事だと思っております。
 そのような観点から、論点1、2、3に関係することを述べさせていただきます。まず、大前提なのですが、先ほど三柴先生がおっしゃったことにもつながるのですが、義務ではないけれども広げたい、拡大させたいということになりますと、その大前提は、まず1つはリスクがない、危険がないということも必要ですが、やはりメリットがなければ拡大していかないと思います。危険がないですよというだけでは、やはり拡大しない、やっていこうというモチベーションが上がらないわけです。プライバシーのことを含めてリスクが少ない、リスクがないということは大事ですが、同時に実施していくときのメリットを強調しないと、ではやりましょうというエネルギーにはならないと思うのです。したがいまして、メリットを伝える、あるいはメリットをはっきりさせるという努力は、非常に大事だろうと思っております。
 それから、少し各論的な話ですが、健康診断が普及しているということで、健診業者に依頼する、あるいは健診と同時に行うということは、確かに実施方法としては分かりやすいですし、やりやすい方法だと思います。ただ、ここで間違えてはいけない、忘れてはいけないのは、健康診断というのは、あくまで二次予防の制度です。それに対して、ストレスチェックというのは一次予防の制度ですので、ここが混乱しないようにしないといけません。健康診断と一緒にやることによって、ストレスチェックがメンタルの健康診断だと思われてしまう危険があるのです。同時に実施されますと、労働者から見るとメンタル面での健康診断、メンタルチェックだと思われてしまう可能性があります。ですので、ここははっきり違うということを、きちんとどこかで明確にすることは大事だろうと思います。
 それから、健診業者に委託するという話ですが、何を委託するのかということが重要です。検査だけを委託するのか、あるいはストレスチェックというのは、検査の後の事後措置や職場環境改善があって、初めてストレスチェック制度なわけですから、そこまで含めて委託できるのかどうか、ここを分けて考えておく必要があると思います。
 そして、そこにも関係してきますが、面接指導というのは、面接指導をすればそれで終わりのように思われていますが、面接指導をしたらその後、必ずフォローが必要になってくるのです。経験的に、面接指導をしますと、その後、絶対フォローが必要なのです。例えば、事後措置について必要なことを、意見書に書きます。そうすると、今の制度でも数年前から変更になって、その事後措置を事業者が遂行したかどうか、実施できなかったとしたら、できなかったことの理由を添えて返事をすることになっていますが、誰に返事をすることになるのか、さらに、その後どうやってフォローするのか、フォローするのは誰なのか、といった問題があります。健診業者の担当医師が面接指導を実施したとしても、その後のフォローまでその方がやれるのか、ということを含めて、ストレスチェック制度として委託するのであれば、事後措置の後のフォロー、あるいは職場改善といったところまでフォローができるのか、そこも考えておかなければいけないと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。井上構成員、お願いいたします。
○井上構成員 精神神経学会の井上です。まず、渡辺構成員のおっしゃった一次予防か二次予防かというところはすごくポイントで、精神神経学会としては、ストレスチェックはあくまで一次予防であるという立ち位置にありますので、これが二次予防と誤解されないような体制をまずつくっていただきたいというのが、1点あります。
 ここから私の意見になりますが、主に論点2、3に関わる所になります。実際にこれを運用しだしたときに、50人未満の方たちの面接指導をするという医者の部分に関して、やはり地産保が中心になってくる可能性が高いと思います。地産保の先生方はかなり熱意もありますし、しっかりやっていただけると思っているのですが、実際やってもそれを職場が熱心でないと、やはり何をしているか分からない、その後の有効性が担保されないということになると思っています。
 私は産業保健というものは面白いと思っていまして、大企業がいいわけではなくて、中小企業、若しくは小企業でも、トップがすごく熱心であればすごくいい制度が成り立つのです。この制度を、ストレスチェックを下に落としていくときには、やはり中小企業のトップの方たちにまずこの制度の有効性を理解していただいて、かつ面接を受けた人たちに対するアプローチについても熱心に関わっていただくような、事業主に対する啓発活動がすごく大事になってきます。まずこれをしっかりやっていただいた上で、こういう制度は走らせていただければ有り難いと思っております。
 また、次の5つに入ってしまう部分もあるかと思いますが、集団分析なども含めて、ストレスチェックをやっておられる中小企業は、やっておられたら7割が集団分析にしろ、面接にしろ、やはり様々に対応されているということです。さまざまな事例を引っ張ってこようと思ったら、先ほど三柴構成員のおっしゃったまずいほうの事例についても、当然好事例についても、かなり引っ張ってこられるのではないかと思っております。中小企業や小さな事業所というのは多種多様ですので、面接をする側にとってもなかなか一般論として理解ができないところがあるので、本当に多種多様な好事例及び陥りやすいミスの例などについても、事前にたくさん集めていただいた上で、面接する医師に対して御指導いただければ有り難いと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。堤構成員、お願いいたします。
○堤構成員 御指名ありがとうございます。資料ありがとうございました。先ほどメリットのお話があったので、少し視点の追加といったような意味でコメントさせていただきたいと思います。やはり個々の労働者、それから個々の事業者にメリットがあるというようなことは、とても高いインセンティブになりますので、事業を進める上で大切だと思いますが、少し口はばったいですが、公衆衛生学的にやはり認知度が上がっていくというのはとても大切なメリットという形で考えています。確か令和3年のストレスチェック制度の効果検証に係る調査で、ストレスチェックの導入によって50%に及ぶ受検者が自身のストレスを意識するようになったというような御報告がありましたが、労働者の方々が自身の状況に気付くというのは、このストレスチェックの最初のステップとして大切なところで、そこが導入のように動き始めているというような良いデータではないかなと思っています。もちろん、この後に適切なセルフケアにつなげるというようなことが必要な要素になりますが、メリットの中にパブリックな視点も入れていただくのはどうかなと思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。茂松構成員、それから神村構成員とお願いしたいと思います。
○茂松構成員 先ほど論点1のことしか言わなかったのですが、ここでは続けて先生方が言われたように、やはり二次予防の健診機関が一次予防の所ができるのか、これは慎重に議論してもらわないといけないだろうと思っています。
 それと論点3、50人未満の事業場に即した実施内容についてですが、50人未満の事業場というのは本当に個別性、特殊性の高い所ですから、その個人が特定されるなどプライバシーの保護に懸念があるため、ストレスチェックの導入は現在と同様に努力義務にすべきだろうと思います。しかしながら、ストレスチェックの実施の有無にかかわらず、メンタルヘルス対策を講じていくということは必要であろうと思います。要はストレスチェックをしなくても職場環境改善などによって、メンタルヘルス対策をしっかりやっていくということが非常に重要であろうかと思います。例えば職場における心の健康づくり、いわゆる「メンタルヘルス指針」においても、50人未満の事業場のメンタルヘルス対策や職場環境改善のやり方、取組事例を充実させてメンタルヘルス対策や職場環境改善への関心を高めていくということが、非常に重要ではないかと思っています。また、小規模事業場のメンタルヘルス対策は、ストレスチェックを実施したい事業場は実施できる環境整備をやっていけばいいと思います。それはそれなりに対応する一方で、必ずしもストレスチェックに関わる法令や指針にこだわる必要はないのではないかと思います。例えば、厚生労働省の「こころの耳」の中にある職場の快適度チェックシートというものがありますが、これは個人が特定されない完全無記名のアンケート調査です。これをうまく使って、職場環境改善の活動に進めていくということも非常に重要ではないかと思います。
 論点4の実施コストについては、厚生労働省のストレスチェック無料実施プログラム、これを小規模事業場に使いやすくしていくということも、非常に大事ではないかと思います。
 そして、地産保等に関わる論点5の地産保等による支援、その他50人未満の事業場に対する支援策という所ですが、これはメンタルヘルス対策に関する相談体制を強化するためにも、私が1回目で申し上げましたとおり、地産保の予算の拡充といったものは絶対に必須であろうと思いますし、小規模事業場のメンタルヘルス対策というのは、労働者がこころの耳などの無料ツールを使ってセルフチェックを行って、それを地産保の登録医又は地域のかかりつけ医、そこへフィードバックをしていくということがしっかり整えばいいのではないかなと考えます。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、神村構成員、それから、すみません、ちょっと私が見落としていてオンラインの先生方につないでいきたいと思います。よろしくお願いします。
○神村構成員 神村です。産保センターの所長を務めていますので、やはり小規模事業場、それから地方の現状などというところに直面しています。少し議論が戻るかもしれませんが、ストレスチェック制度を義務化するのかどうかというお話を随分取り上げていただいていますが、山脇構成員がおっしゃったように、労働者にはストレスチェックを受けるということは権利として担保してあげたいなと思っています。事業者は御自分の所の労働者にストレスチェックを受けるということは、きちんとさせていただきたい。ただ、それが制度として、事業場の規模によりますので、集団分析、あるいは職場環境改善まで結び付けられるかどうかというのは、非常に難しいところがありますが、少なくとも一次予防であるストレスチェックは、皆さん受けることができるという体制は整えてほしいと思っています。ただ、それにしても大事なのは、井上先生もおっしゃったようにトップの考え方、事業場のトップの方が御自分の所の従業員のメンタルヘルスについて関心を持って、それが大事なことだとお考えになるかどうかによって、決まってくるところが非常にありますので、事業者を支援して、メンタルヘルスがとても大事なのだということを御理解いただくような、強制や義務化など、そういう話ではなくて、そういう小さい所の事業者を支援するというふうなスタンスでやっていただけないかなと思っています。
 その上で、地産保がお手伝いできることは、こういうストレスチェックを実施したその後の制度がどういうふうに大事なのか、それをどのように組み立てていくかということについてアドバイスをすることができます。茂松構成員がおっしゃったようなこころの耳の活用の仕方、様々な参考になるようなものがありますので、それを御存じない小規模事業場のトップの方々にこういうことができます、こういうふうにしたらどうですかというアドバイスをするということについて、地産保あるいは産保センターは大きな役割を果たせると思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。オンラインの構成員の先生方、私のメモでは森口構成員、江口構成員、高野構成員の順になっていますが、もし私が見落としている方がいらっしゃったら、また教えてください。まず森口構成員、御発言をお願いできますか。
○森口構成員 ありがとうございます。森口です。先ほど労働衛生機関のお話がありましたので、少し私の労働衛生機関の業務に関わる立場から補足しますと、私どもの機関ではストレスチェックの事後措置として、医師による面接指導や心理職を中心に職場環境改善なども関わっていますので、ストレスチェックの紙を配って回収するだけではなく、広い役割を担っていると認識しています。ただ、ほかの労働衛生機関もそのような役割が担えるかは、定かには分からず、全衛連を中心にし労働衛生機関の専門職などのレベルアップを図るようなことが必要になってくるだろうと思います。
 それと、面接指導、これは論点2の所だと思いますが、小規模事業場では環境調整などの部分が非常に難しいということが過去の委員会でも意見としてあったかと思います。私もその認識は同様で、やはり個人面接に基づいて経営者に作業環境改善などを求めていっても、なかなか余地がない場合があり、そういった中で大下構成員がおっしゃったように、むしろマイナスが生じるというような懸念も持っています。小規模事業場のストレスチェックはこのような個別対応の限界を考えると、職場環境改善に使うことが重要だと思っています。分析結果を材料やきっかけとして、職場環境改善についての労使のディスカッションにつながるような仕組みが必要ではないか、そういう形であれば家族経営のような会社でも利用していただけるのではないかと考えています。
 また、もう1つだけですが、外部機関を積極的に利用するという話がかなり強調されています。論点3の所でも事業者の関わりが重要だということは記載がありましたので、ある程度認識いただいていると思っていますが、外部機関に任せっきりにならないように、事業者の主体的取り組みをしっかり強調していただくということは必要ではないかと思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、江口構成員、お願いできますか。
○江口構成員 ありがとうございます。産業医大の江口です。私からは研究者の立場からお話をさせていただければと思います。私がメンタルヘルスの研究をしていますと、その職場環境がやはり労働者一人一人のメンタルヘルスに大きく影響していると思っています。ですので、それをセルフケアと個人の頑張りだけで何とかするような動きは、少し研究者として抵抗があると言いますか、やはりメンタルヘルス不調の原因となっている職場環境自体にはかなり関心を持っていただく必要があるのではないかと思っています。
 あと、私もいろいろ労働衛生関係の研究をしていまして、やはり常に中小企業においてメンタルヘルス対策を進めていくのかということを検討する際に経営者さんの意識が課題となります。ですので、やはり社会全体であるべき姿といったら言い過ぎかもしれませんが、そういった職場環境というものが労働者のメンタルヘルスに大きな影響を与えるのだという啓発が、労働者だけではなく、経営者さんにも進んでいくように、何かできていければなと思いました。その中で個別には様々な議論があるかと思いますが、私自身の感想と言いますか、コメントとしてその点は是非、御留意いただきたいなと思った次第です。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。貴重な意見だと思いますが、まだ論点1から5の御意見を聴いているところですので、また職場環境については後でもう一度強調いただければと思います。それでは、高野構成員、お願いできますか。
○高野構成員 よろしくお願いいたします。論点3の部分になるかと思いますが、以前この検討会で厚労省が出していただいた資料で、現在のストレスチェックの対象者が我が国の全労働者の半分以下という資料もあったと思います。そういったことで、もしこの50人未満の職場に行き届いていない所があるので、とても重要な課題とは思いますが、実際に50人未満の所は皆さんも今まで発言があったように産業医も、当然、産業保健スタッフも不在で、つまり内部に実施者がいないという所と、大下構成員もおっしゃったように、50人未満の義務化はちょっと現実にはまだまだ課題が多すぎるのだろうなというふうに考えています。
 しかも、実施が義務化されると受検対象者が、全国的には今までのストレスチェックの倍以上というような、データ上はそんなふうになると思いますので、内部に実施者が不在であるため、余計しっかりした仕組みを考えておかないと、先ほど三柴構成員もおっしゃったように形骸化してしまい、そうなると本来の目的にはどんどん近付かなくなると思います。
 実現可能性を考えると、50人未満の所に、先ほどから御紹介いただいているように、こころの耳の中にいろいろセルフケアに関するコンテンツがありますので、そういうことの周知を徹底するということを先に行うということでもいいのかなと思います。
 あと、先ほど中小企業の好事例などがありましたが、こころの耳の委員長をしている立場からお話しますと、こころの耳の中の職場のメンタルヘルス対策取組事例は実際、事務局で熱心に取材して140社ぐらいになっていて、その中で50人未満の所が17社ぐらい載っているのです。ですので、このような情報も周知し、是非、御参考にしていだければと思いました。以上です。
○川上座長 御意見ありがとうございました。それでは、松本構成員、お願いできますか。
○松本構成員 ありがとうございます。今、地域産業保健センターの強化ということも言っていただいていますが、やはりこちらとしましても、地域産業保健センターの充実というのは必要だと思います。当然、予算化の点についてもかなり補充していただかなければいけない状態ではないかと思っています。実際、令和4年9月時点の人数を見ますと、保健師のほうは登録がまだ366人ということで、未配置の都道府県も4県ほどあるというような状況です。ですので地産保の充実については、全国の地域産業保健センターも含めまして、保健師等の配置も進めていただきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。種市構成員、お願いいたします。
○種市構成員 日本公認心理師協会の種市です。論点の1と2に関わる所ですが、まずプライバシーの問題はあるわけですが、例えば、先ほど御意見もありましたが健康診断と同様に、目的は違いますが、この健康診断と同様にきちんと封をして返信したりという形で、プライバシーを個別に確保するということは、そこはできるのではないかなと。できないとすれば、健康診断はプライバシーを確保できていないのかという話になりますので、その点ではまず実施するということに関しては、プライバシーの問題というのは確保できるのではないかと思います。
 では、次にどこが問題かというと、高ストレスだった場合に、事後措置としての医師面接をして、その後、医師面接の後の事後措置をするというところに、ではプライバシーの問題があるかということになると、高ストレスであるというふうに手を挙げた時点で、もう既にプライバシーの問題は本人も承知しているわけですので、その点でもプライバシーの問題はもう問題ないのではないかと思います。そう考えると、プライバシーの問題というのはそれほど問題ではないのではないか。
 今回の50人未満のストレスチェックの実施に関して、主語を明確にしておくべきだろうと思います。50人未満のストレスチェックの実施は、事業主の義務なわけです。一方、労働者にとっては、労働者は義務付けられるのではなくて、労働者は権利を付与されるということになりますので、そう考えると、この機会にいろいろ都合が悪いと言って、50人未満の事業場にストレスチェックを実施しないということは労働者の権利を拡大する機会を逃すということになりますので、やはりここはいろいろ困難な問題があると思いますが、労働者の権利を拡大するという意味合いで、実施を進めていくべきだろうと思います。
 一方、職場環境改善というのは、また別の話になるかなと私は思いますので、まずは50人未満のストレスチェックの実施については、いろいろ個々に問題があると思いますが、労働者の権利を拡大していく。特に三柴構成員がおっしゃったように、労使でこう着しているような状態であるなど、あるいは労働者自体が使用者によって非常に過大なストレスを与えられてしまっているという状況に追い詰められていくという事案もありますので、相談窓口を知らせたり、あるいは相談できるという状態を周知していって健康づくりを、一次予防を進めていくという意味でも、ストレスチェックを実施して、こういうものがあるのかという形で広げていくことは大事なのだろうなと思います。
 また、それに関して言うと、ハラスメントについても今、規模に関わらず義務化されているということを考えると、その相談先などについても、中小企業においてもそういうことを実施していく時期に来ているのではないかなと思います。以上になります。
○川上座長 ありがとうございました。そろそろこの部分の議論に使う時間が尽きつつあるのですが、島津構成員、お願いいたします。
○島津構成員 島津です。先生方の御議論を興味深く拝聴していまして、私の意見としては、50人未満の事業所にもストレスチェックの実施ができるような体制が整うとよい、と思っています。ストレスチェックが実施となると、やはりどうしてもイメージとして、このストレスチェックの検査を実施するということがイメージとして先行しがちかなと思いますが、ストレスチェックを事業場に導入するとなると、その前に、体制をつくるということが必要になってくると思います。小規模事業場で体制をつくるというのはすごく大変だと思いますが、逆に言うと、だからこそ意味があるのかなと思っています。ストレスチェックを実施するということは、ただ検査をするということだけではなくて、何でこういうことをしなければいけないのか、そもそもストレスチェックを実施するというのはどういうことだろうかなど、それこそ社員のメンタルヘルスについて、経営者含めて考えたり、コミュニケーションを取っていくいい機会にもなるかと思います。ストレスチェックの義務化、というのはこういうことも含めた動きの1つのきっかけにもなることもある、と思いますので、義務化により50人未満も含めてこのストレスチェックの体制ができていくとよいと思っています。
 義務化ということになってくれば、検査をするだけではなく、先ほどお話がありましたように高ストレス者の面接をしたり、本人からの申出面接もあり、相談や面接の体制をどうつくるのか、あと健康相談の申込みの窓口はどうするのかなど、やはりそこは相談窓口の設置をせざるを得なくなって、社内なのか、外部で契約するのか、そういうところも含めて健康づくり、メンタルヘルスの体制をつくっていくということになると思いますので、是非、そういうきっかけにもなるといいのかなと思っています。
 あと、先ほどからこころの耳のお話が出ていますが、堤構成員のされている小規模事業場向けの「小さな会社のためのこころの健康づくりお役立ちツール」などのメンタルヘルスのツールも、こころの耳の中に出ているかと思いますし、そこにもこの経営者向け、従業員向けのサポートツールが出ていたり、先ほど高野構成員からもお話がありましたが、職場環境改善のほうも事例が出ていて、10名、15名の事業所の所での改善の事例も出ていたりということもあるかと思いますので、まだまだ知られていないということがすごくあるのかなと思います。ストレスチェックの実施の意義も含めて、サポートツールとしてどんなものがあって、実際にどんなツールが世の中にあるのかということを、まず皆さんに知っていただく、広く周知していくということをセットでしていくことが大事だなと思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。坂下構成員、お願いいたします。
○坂下構成員 ありがとうございます。論点1・3・4に関して、今までの皆様の御議論を聞いていて、本当に意見が分かれていて難しいとつくづく感じました。従業員50人未満の事業場にストレスチェックの実施を義務化する場合には、これまでも繰り返し申し上げているように、努力義務とされた理由であるプライバシーの問題にきちんと対応できるのかということと、中小企業に即した実施内容にすること、また、現状実施が義務となっている従業員50人以上の事業場のように、大半の企業が外部機関に実施を委託するような方向になるとすると、委託コストにどう配慮していくかということの3点について、適切なものを議論できないと、義務化はなかなか難しいのではないかと思います。
 他方で、かつての労働政策審議会での建議もありますし、条文を見ますと当面の間は努力義務とするという形になっていますので、今申し上げた3つの観点について建設的に議論して、本当に実現できるかどうかということを、この検討会の場で考えていくことが重要だろうと思っています。
 その上で、法律で義務化した場合、我々が目指しているようなすばらしい環境が自動的に実現するかというと、必ずしもそうではなくて、義務化すると企業は恐らく実施の義務を果たすことが第一になるおそれがあり、一番リーズナブルな方法で実施したり、義務を果たすこと自体が目的化するような危険性があると思います。したがって、実施を義務にしたとしても、同時に好事例の展開や、様々な不適切な例を含めた周知啓発や支援を行っていかないと、本来、我々が目指しているような理想的な状況にはならないと思います。両方を考えないといけないということを申し上げたいと思います。
 また、小規模事業場がメンタルヘルス対策を実施するメリットについて、私どもも中小を含めていくつかの企業にヒアリングした経験がありますが、大きいのは採用とリテンションであることは間違いないと思います。特に中小企業ですと、昨今なかなか優秀な人材が採用できない中で、例えば健康経営にしっかりと取り組んでいて、行政から認定されていたりするだけで、理工系の大学院の学生を採用することができたといった事例も聞いています。採用につながるという点は経営者も一番喜ぶところだと思います。また、小規模な事業場こそ、従業員に離職されることに対してすごく危機感を持ちますので、採用やリテンションにつながるといったところが最大のメリットになると思います。ただ、これらの対応がストレスチェック制度のおかげで実現しているかというと、おそらくそれだけではなくて、この後の論点になると思いますが、働き方改革の推進や従業員のエンゲージメントを上げるような取組など、働きやすい職場づくりに向けたさまざまな施策に取り組むことで、企業は実現していると思います。ストレスチェックはメンタルヘルス対策に有効なツールではあると思いますが、万能薬のようなものではないと思っています。有効な手段にはなり得ると思いますので、そうした意味で建設的な議論をできればと思っています。
○川上座長 ありがとうございました。オンラインの黒木先生が手を挙げているように見えるのですが、黒木先生、大丈夫ですか。
○黒木構成員 ありがとうございます。先ほどからいろいろお話を聞いていて、ストレスチェック、それからセルフケア、これが中小企業の場合は義務化するというお話だったと思いますが、確かにそれは必要だと思いますが、渡辺先生、井上先生の話を聞いていて、健診機関がどこまでできるかということを考えると、健診機関で私が知っている所も事後措置まではできるかどうかということを含めて、いろいろ高ストレス者の医師面接指導、そこまではやっているのです。そうすると、面接指導からそれが事業主のほうにフィードバックされるということになります。ストレスチェック制度そのものが組織をどう捉えるかということなので、組織から個人を見ていくということは絶対必要なので、その中のストレスがどうその本人に影響しているかということを考えると、やはりこのストレスチェック、セルフケア、これを受けるだけではなくて、その後の医師面談、それを事業主がどう把握するかということは必要であり、その流れは最低限、その中小企業でも必要かなと思いました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。少し時間が押してきていますので、一旦、50人未満の事業所におけるストレスチェックについては議論を区切らせていただいて、もう少し御意見をメール等で頂いて続けたいと思います。本日、伺っていますと、具体的に実効性のある形で実施ができるのかどうかという体制に関すること、特に具体的に小規模で実施できるような絵が描けるかどうかというのは、かなり御指摘いただいていると思いますので、その辺りも検討が必要と思います。メリットについては、国全体から見たメリットと、それから事業者の持つメリットみたいなものの整理も必要かと思います。幾つか個別の代案も頂いているのですが、それがこの小規模事業所へのストレスチェックの義務化に資するぐらいの効果があるか、この検討会の目的に資するものかどうかというのも、ちょっと検証が必要かなと思いますので、一旦、事務局でこれまでの御意見を頂いて整理して、次回に改めてまたお示しして、議論していただくという形にさせていただければと思います。本日、言い残した御意見がありましたら、メール等で事務局にお伝えいただくようにお願いしたいと思います。こうした御意見は事務局から次回までの間に、全体にも共有していただくようにしたいと思います。
 それでは、50人未満のほうでかなり熱い議論を頂いたところですが、次に集団分析、職場環境改善について論点6~9までの部分について、同じように御議論を頂ければと思います。では、堤構成員、種市構成員の順でお願いいたします。
○堤構成員 すみません、ちょっと感想じみたことで恐縮なのですが。論点6と7に関わることで、今回、新しく事務局から提示していただきました論点6の47ページの3つ目と4つ目の○です。ストレスチェック制度について、集団分析及び職場環境改善まで含めた一体的な制度であることを、皆さんに対して明確に伝えるような方策を検討すべきではないかといったことと、種々の情報を提供するということに、本当に賛同するという意味でのコメントです。ここにも書かれていますが、論点7であれば、49ページにグラフを書いていただいていますが、実施しなかった(できなかった)理由で、「集団分析結果から職場・部署ごとのリスク・課題を洗い出すのが困難だった」と。洗い出したけどもなかったのだったらよかったのでしょうが、洗い出すのが困難だったというのは、方法論が十分に通じてないようなところがあります。やはり、そういう部分を十分にお伝えしていくということは大切な方策ではないかと思いましたので、コメントさせていただきました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、続けて種市構成員、お願いいたします。
○種市構成員 種市です。論点6と7について前回も議論しまして、その会議の後に少し冷静に考えると、やはり実施するためには、体制や現状を考えるとなかなか義務化するというのは困難ではないかと改めて感じました。ではどうするかということですが、義務化するだけが方策を進める方法ではないのではないかと。つまり、例えば経済産業省では、認証や表彰するという形で健康経営を進めている企業を表彰することによって、結果として企業がそこにインセンティブや魅力を感じて、健康経営を進めるということもあると思います。
 そう考えると、ストレスチェックによる職場環境改善を強力に押し進めている企業を、むしろピックアップしたり、表彰したり、あるいはそういう仕組みを取り入れた企業を認証するという方法もあるのではないかと。つまり、義務化することで嫌々やらされるような企業が増えるよりも、やってみたいと経営者が魅力を感じて取り組んでくれるような企業が増えるほうが、この目的に適っているのではないかなと思いましたので、そういうやり方もあるかなと思い、意見を申し上げました。以上です。
○川上座長 ありがとうございます。それでは、オンラインの先生方から、まず、三柴構成員、松本構成員、矢内構成員の順でお願いいたします。
○三柴構成員 論点6についてです。まず、以前も申し上げたとおり、ストレスチェック制度の50人未満への適用拡大自体には、私は賛成です。というのも、現段階の事務局案も実は実際には義務化ではないわけです。というのは、実施状況の報告にも罰則を課す前提にしてないからです。だから、制度で実施を誘導しようという趣旨だと理解しています。
 その前提で、一次予防とは一体何かということについて、少しコメントを差し上げたいと思います。ヨーロッパですと、メンタルヘルス対策では、心理社会的リスク対策という看板で、人と組織と仕事に関する対策は全てやれと、雇い主に義務付けるような流れになっています。私流に言えば、経営コンサルの法的義務化のようなことをヨーロッパでは各国で図り始めているという感じです。しかし、運用面と効果面の両方で難渋している模様だと認識しています。ヨーロッパのやり方というのは、やや極端だと思いますが、しかし、経営の質や量の改善、言い換えると、物的・人的な面での改善という広い対策視線が大事だということは日本でも言えることだと思います。
 では、日本ではどうするかということですが、プライバシーにこだわりすぎず、高ストレスや集団的なストレスチェックの結果の傾向などをきっかけにして、労使間の対話により問題解決や信頼関係づくりをするというのがポイントだろうと思います。この際、種市構成員がおっしゃったように、形の上でプライバシーを保護することは可能です。というのは、就業規則や手続などで本人同意を解釈すればいいからです。しかし、中小企業での制度趣旨の実現を考えると、第一目的はそういう対話を促すことだろうから、実質として、プライバシーにこだわりすぎるのかどうかということです。
 最後に、今の安衛則第52条の14や関係マニュアルの定めで一次予防を図ると、少し技術的すぎる、産業保健的すぎる、定型的・抽象的すぎるという感じがいたします。だから、ストレスチェックをきっかけにして、人選、採用や適正配置、職務割当て、モチベーション、教育訓練、そしてコミュニケーションといったものを、対話をきっかけにしていざなうということが重要なのだろうと思います。結局産業保健から経営や人事への働き掛けということになっていくので、それでルールの専門家なども説得材料に使われたらということを申し上げているわけです。もめ事が多いし、その背景に生まれ育ちや価値観が関わることも多いからなのですが。以上です。ありがとうございました。
○川上座長 ありがとうございました。では、松本構成員、お願いいたします。
○松本構成員 私のほうの意見としましては1つずつということではなく、総体的な問題なのですが。今回、職場のメンタルヘルス対策として、この集団分析や職場環境改善というのは非常に重要なものだと思います。どういう手順を踏んで、いつまでに何をやれば義務化等に至れるのかということの工程表をまず決めて、どの要素を確定させていき、どの項目をどこのレベルまで引き上げていくべきかを、総合的に計画として工程表に示して、そこの中で議論をしていかないと、今までは雰囲気と言うか、行うほうが良いけれども、では具体的にどうやるのというところがなかなか詰まらないまま議論が流れていきそうなことを危惧しております。以上です。
○川上座長 ありがとうございます。では、矢内構成員、お願いいたします。
○矢内構成員 私からは論点の6~8に関わる全体的な視点での意見になります。御提案いただいたように、ストレスチェック制度は集団分析、職場改善までの一体的な制度であって、一次予防を目指すというところは明確だと思います。現場でその一体的な制度を完遂するプロセスの中で一番難しいのは、分析後に具体的にどのような対話をするか、その先の受け皿をどう設定するか、というような、具体的な対策を決定し、実行する点です。各企業によって課題も違いますし、具体的な対策もかなり差が出てくると感じております。
 御提案の、取組事例や情報提供には賛成ですが、まず実施事業所を幅広くフラットに分析評価するようなプロセスがもう少しあってもいいのかなと思います。その中で、課題や困難の共有も図れると思います。好事例だけではなく、むしろ困難事例や課題点を評価することも重要と考えております。その先に、論点8にありますように、事業者や人事の役割といったものが明確に具体的な対策やマニュアル化につながる材料が出てくると感じております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、森口構成員、お願いいたします。
○森口構成員 ありがとうございます。論点6、7の所です。集団分析と職場環境改善を分けて示されていますが、先ほど矢内構成員がおっしゃったように、一体的に取り組むべきことだと認識しております。ただ、私は産業医を務める中小企業の100人前後ぐらいの会社では、分析だけやって改善しないというパターンが目に付くことがあります。分析だけやると、管理職が非常に神経をとがらせることにつながったりし、むしろマイナスが生じることを見かけます。ですので、分析だけをやればいいと誤解されないように、やはり一体的なものであるということをしっかり示していただきたく、改めてお願いしたいと思います。
 あと、職場環境改善のあり方というのは、余り細かく定めるというより、何か簡単なリスク評価や改善のツールのようなものを示して、お手軽にできるようなものから入っていただくという形を取れると、少しずつでも進んでいくのではないかと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。渡辺構成員、お願いいたします。
○渡辺構成員 ありがとうございます。1つは、論点7の49ページの表、グラフなのですが。ここで「職場環境改善の必要性を感じなかった」というのが最も高くなっていますが、これは誰に対するアンケートだったかということがとても大事だと思います。多分、これは事業者側へのアンケートだと思うのですが、もし労働者側にアンケートをしたら違う結果が出ていたのではないかなと思います。少なくとも、集団分析をして健康リスクAや健康リスクBが高い所があったとしたならば、健康リスクAや健康リスクBが高いのに職場環境改善の必要性を感じないということはちょっと矛盾した話なので、この結果に関しては、もう少し慎重な評価が要るのではないかなと思います。
 それから、もう1つ、職場環境改善の総論的な話になってしまいますが、先ほどから出ていますように、職場環境改善が大事だということはもう百も承知なのですが、では職場環境改善とは何ですかというと、健康リスクAや健康リスクBということからも分かりますように、労働の時間や労働の内容、適材適所ということもありますし、それから対人関係の問題ということもあると思います。少なくとも健康問題だけではなく、そのベースに労務問題や適材適所、適正配置、採用といった人事問題、人事マターというのが絶対あるはずなのです。
 ということを考えますと、ストレスチェックの企画、そして結果の評価の役割が、今の体制図では実施者の役割になっているのです。実施者というのは産業医や保健師などの健康管理の人間ですよね。ところが、職場環境改善というのは、今申しましたように、人事マターや労務マターに及んでくるものですから、これを実施者、すなわち健康スタッフだけで対応できるわけではないと思うのです。
 ここで矛盾が生じていると思います。ストレスチェックにおける企画、結果の評価という非常に重大な根本的なところは、実施責任者、つまり事業者の責任、事業者の役割の所に持っていかなければ、制度としては矛盾していると思います。体制図のそこの見直しは是非図っていただきたいと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。黒木構成員、手を挙げてらっしゃるのでしょうか。
○黒木構成員 職場環境改善と、今、渡辺先生がおっしゃいましたが、何をもって職場環境改善かということを考えると、特に中小企業など組織が小さいと、この職場環境をどう変えるかというところが非常に難しいと思います。大きい所はいろいろ動かすということができますが、これは動かせないという所もあるし、役割も非常に少ない人数でやっていると、少ない人数の中で、そこで本人が高ストレスになって、あるいは疾病化してしまうと、そういった人をどう動かせばいいかということになり、なかなか動かしようがないというようなこともあります。これはやはり組織の中で、本当に中小企業で50人あるいは100人、200人、それぐらいの人数がいれば何とかどういうふうに持っていくかということを検討できたとしても、それがなかなかうまくいかないということもあります。この職場環境改善というのをどう考えればいいかということは、特に中小企業の場合はこれは大きな問題で、ここのところが非常に事業主がこれをどういうふうに考えるかということにつながっていくので、非常に難しい問題だと思っています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 集団分析と職場環境改善については、先ほどの論点である50人未満事業場における義務化とはやや異なって、議論が1回、2回分遅れているのではないかと受け止めています。もう少し議論を深めていくステージなのではないかと思っていることを冒頭申し上げておきたいと思います。そういう意味で、今回の見直しにおいては縷々お話が出ております、制度の理解促進だけを先行させ、それにとどめるということなのか、それとも制度の理解促進と並行して義務化まで図るのかについては、引き続き検討をしていただきたいと思っています。私としては、なるべく早いタイミングで義務化を進めてもらいたいという立場であります。
周知啓発を優先すべきだという考え方があることは理解しますけれども、一方で、周知啓発だけでは限界があるということを御理解いただくために、1つデータをお示しさせてもらいたいと思います。
 連合では、昨年、連合加盟の単組を対象に安全衛生に関する調査を実施し、約3,300件の回答を得たところです。この調査結果を見ると、従業員100人以上の企業の中で、ストレスチェックを実施した事業場のうち、集団分析を実施した事業場の割合は大体8割強でした。46ページを見ていただくと同様の分析がありますが、厚労省の調査ですと企業規模を問わず70%強ですから、約10%ポイント、連合調査の方が高いということになります。この結果だけ見ると、そんなに悪いデータではないのではないかと思われるかもしれません。ただし、連合ではストレスチェック制度発足以来、継続して全ての単組に対して集団分析を実施するように指導してきています。そうした中でも、2割弱の単組で集団分析が実施できなかったということです。単組が経営者と十分に話ができていなかった可能性があるにしても、少なくとも労組側からは、使用者に対して集団分析の実施を求めていたはずですので、使用者側がそれに応じなかったという事例は相当程度含まれているものと考えます。そういう意味では、現行の努力義務規定においていくら理解促進を促したとしても、集団分析が実施されない事例というのは一定程度残ることは間違いないと思います。義務化でなければ実現できないことがあるということは、是非、御理解いただきたいと思います。
 それと、50人未満事業場における義務化に関して、2巡目でお話しようと思っておりましたが、発言できなかったので、ストレスチェックの実施状況についてここで触れたいと思います。46ページの右図にストレスチェック実施済み事業場のうち集団分析を実施したデータが示されていますが規模に関わらずというのは連合が調査したものでも一緒で、50人未満事業場もそれほど大きく変わらない状況です。ただ、ストレスチェックを実施している事業場の割合は、連合の調査でも50人未満は厚労省調査よりは多少高いものの50%どまりです。ストレスチェック自体についても、連合としては必ずやるように加盟組合に求めているにもかかわらず、50%は実施できていないわけです。労働組合がある所でも実施できないのが実態ですから、制度改正により実施することが強く望まれます。繰り返しになりますが、50人未満におけるストレスチェックの義務化を、労働者として強く求めているということは、申し述べておきたいと思います。
 また、今日段階で集団分析の義務化に関しては具体的に示されておりませんけれども、義務化した場合にどのような課題があるのか、クリアすべきものは何なのかということは、この検討会で議論しておくことは意義あることだと思います。是非、事務局には次回に向けて、その課題と対応策を示していただきたいということは重ねてお願いしておきたいと思います。
 あと、松本先生からあったご意見に賛同なのですが、仮に今回の議論の結果として義務化を見送る、制度の周知あるいは適切な運用に努めるという結論になるのであれば、周知啓発を政府、使用者、労働者、医療関係者が具体的にどう進めていくのか、工程表のようなものを示していただきたいとも思います。そのうえで、仮にその工程表が達成できないのであれば、次回の検討では義務化するというような計画をたて、しっかりと議論していくことが必要と考えます。そうでなければ、また次回の検討においても、今回と同様に周知やりましょう、それをやらないと次のステップに進めませんよね、という結論になりかねないと危惧します。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。井上構成員、茂松構成員の順でお願いいたします。
○井上構成員 精神神経学会の井上です。論点7だと思いますけれども、職場環境改善の考え方という所です。ここで何をもって職場環境改善を実施したことになるのかということが1つあると思います。企業の形態によっては、残業を含めて修正したほうがいいのは分かっているけれどもなかなかできない。医療もそうですが、そういうことはいっぱいあると考えています。これは、ここにおられる皆様も重々御存じのことだと思いますけれども、職場環境改善というものの結果を短期に求めるのか、それとも長期に求めてもいいのかというところは、改めて押さえておいたほうがいいと思います。すなわち、職場環境改善を何をもってと言ったときに、1年以内に何かを改善するだけではなく、企業が2年、3年単位で同じアンケートをしていく中で、一定の改善方向に進むことをもって職場環境改善に向かっているとする。やはり組織規模が大きいものほど変わるのは大変ですから、職場環境改善については、そのように経年で考えることも可能であることを示していただくことが、もし、義務化していくのであれば大切になってくると考えています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。茂松構成員、お願いします。
○茂松構成員 ありがとうございます。基本的には、今、50人以上の事業場のストレスチェックの実施率は85%ぐらいということですけれども、これを100%に近付けることがまず先決であるというところが1つ。50人以上の事業場でも集団分析の割合が6割、その結果の活用は5割といったところの結果が出ていますが、これがどうしてこれだけ低いのかということは、今、井上構成員が言われましたように、そこの詳細な検証をしっかりやって、それを情報共有していくことが本当に重要ではないかと思います。このストレスチェックの結果のフィードバックをどのように使うかとなると、職場をよく分かっている人たちへ投げ掛けて、そこへ相談する。その中には労働衛生の三管理をしている産業医や、人事労務管理部門がいるので、その人たちを含めて、きちんと職場環境改善につなげていくという道筋をしっかり、今、考えていくことが一番重要ではないかと思います。
○川上座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。ほかに集団分析・職場環境改善部分で御発言いただける構成員の方、お出でになりませんでしょうか。神村構成員、お願いします。
○神村構成員 神村でございます。集団分析をやったか、やらないか。何をもって集団分析をやったとお答えになっているのか、その辺りがちょっと曖昧なのかなと思いましたが、どなたか、お答えなされる方はいらっしゃいますか。
○川上座長 事務局のほう、労働安全衛生調査の内容等、御紹介されますか。今、ここにはないと思いますが、毎年やっている労働安全衛生調査の中で職場環境改善は何をやったか。多分、衛生委員会の審議とか残業制限というものを、どういう割合でやったかは数値が出ているかと思いますが。
○神村構成員 改善につきましては、井上構成員がおっしゃったように単純に、簡単に出るものではないと私も思っていますので、その前の集団分析というのをどう捉えているのか。集団分析すら実施しないというのは、どういうことなのかと思っていました。
○川上座長 分かりました。お願いします。
○夏井産業保健支援室長補佐 事務局でございます。この集団分析の実施割合でございますが、先ほど座長からもお話がありました労働安全衛生実態調査が出典でございます。この調査票の中では、「その集団分析はどういう形でやりましたか」までは調査項目に入れていませんので、その詳細についてはこの調査からは分からないところでございます。
 ただ、資料46ページを御覧いただきますと、(手法)と書いている所の3番目の矢羽ですが、集団分析においての仕事のストレス判定図を「活用している」事業場は7割とあります。これは令和3年度委託事業ということで、出典につきましては労働安全衛生実態調査ではないわけですけれども、これとまた別に令和3年度の委託事業の中で調査したところによりますと、「集団分析を行った」と回答いただいた所については、その7割で仕事のストレス判定図、この仕事のストレス判定図と申しますのは、御案内のとおり職業性ストレス簡易調査票からのアウトプットでございます。ですから、別調査ではありますが、令和3年度の委託事業では集団分析をやったという所は、仕事のストレス判定図をもって集団分析を行ったと答えているということです。
○神村構成員 ありがとうございます。ストレスチェック制度の実施マニュアルからしますと、集計分析であればとりあえず集団のデータとして原始的なデータを捉えられる。さらに、その上で仕事のストレス判定図、大変私も役に立っていると思いますけれども、委託した健診機関あるいは委託先によっては、このストレス判定図を出していませんというお返事を頂くこともあります。そういう体験もございます。独自のやり方をされている所もありまして、産業医としては数箇所の産業医をやっていると大変困ります。この辺りも、もうちょっと同じようなデータが得られるようにしていただかないと、分析のしようがないというときはございます。
 ただ、高ストレス者の割合程度として、従業員の中で高ストレス者割合はどうだった、去年はどうだ、一昨年はどうだという比較的単純な数字の比較ぐらいはできまして、やっぱり去年は仕事が忙しかったよねとか、コロナのせいでストレスが溜まったよねとか、そういうことは衛生委員会で調査、審議を簡単にやっていますので、それで十分なのではないかと思うところもございます。十分というのは言いすぎですけれども、そのくらいでも、ある程度関心を持って衛生委員会の中で話を進められているとすれば、それでもその企業、事業場にとっては役に立っていると私は考えていますので、厳密な意味でどういうことをやるかまで要求する必要もないのかなと思います。
○川上座長 ありがとうございました。先にオンラインの三柴構成員、お願いします。それから堤構成員、お願いします。
○三柴構成員 50ページ目の意見を踏まえた考え方の所について、1つだけ追加で申し上げたいと思います。1つ目の○ですが、ここに書かれているものはちょっと表面的な感じがあるのです。もう少し踏み込む必要があって、価値観とか能力の相性合わせというのは欠かせないと思います。そこに制度が踏み込むのが難しいのは分かるのですが、精神障害の労災認定基準の改定でも能力の相性といったことが書き込まれていますし、そこに踏み込まないとストレスのような心理的な課題には対応ができないと思いますので、ちょっと御検討いただきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。堤構成員、お願いします。
○堤構成員 ありがとうございます。三柴先生と同じような視点でコメントを差し上げようと思っていたのが、職場環境改善の考え方というのを、今一度、整理ができればなと思っています。第1回目に情報提供させていただきまして、そのときに三柴先生と職場環境改善は何ぞやという形で議論させていただき、事務局からも第2回目に資料を出していたただきました。本日もいろいろとお話を伺っていまして、大きくは人事労務に関わるようなことも改善の中に入っているようですし、また、森口先生からも御紹介があったような、いわゆる非常に小さなことでも職場環境改善という形で取り上げて、現場でやっておられるようなこともあります。先ほど仕事の判定図のお話もありましたけれども、仕事の判定図は基本的にタスクレベルの作業のことを見ているもので、そこで改善できるものといったらタスクレベルのものであったりとなると、職場環境改善のスコープが一致しないで議論すると混乱してしまう感じを持っているところです。
 本当にストレスということに関して、どこを求めるのかという三柴先生の御意見とか、これは江口先生たちがよく御存じですが、研究畑では比較的小さな改善を積み重ねることによっても、マイナーなメンタルヘルスの改善に効果があるとか、そういうような部分もありますので、大きな病気とか不調など、その幅もありますけれども、職場環境改善の考え方も整理して、今後は議論していったほうがいいのではないかと考えるところです。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。坂下構成員、お願いします。
○坂下構成員 ありがとうございます。論点6・7に関連して、ストレスチェック制度の定義は、前回の会合のときに茂松構成員も御質問されたように、ストレスチェックと集団分析と職場環境改善が一体になっているものだということで、議論があったと思います。一体的なものであるとともに、その目的が一次予防であるということが皆様の共通の認識だと思います。
 その上で、これまでも繰り返し申し上げているように、特に職場環境改善は、従業員50人以上、その中でも大手企業であったとしても、今なお試行錯誤しながら取り組んでいるという実態がほとんどです。どこまで何を実施すればよいかということが分からなかったり、矢内構成員のお話にもありましたように、職場の理解を得ながら施策を進めなければメンタルヘルス対策の効果が出ないといったところもあり、非常に難しい問題だと思います。実施状況も先ほどから申し上げているとおり、6割ほどにとどまっているので、そうした状況を踏まえると義務化に踏み切るのは時期尚早だと言わざるを得ないと思います。堤構成員からも御指摘がありましたように、職場環境改善に関する理解も含めて、どのような取組がメンタルヘルス対策に効果があるのかということの周知や啓発を、まずはしっかりと展開していくことが重要だろうと思っています。
 職場環境改善については、「職場環境改善のためのヒント集」や「これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引」などを拝見したのですが、書かれている改善の内容が本当に多種多様になっています。結果をすぐに求めないで考えていくことも重要であるし、過去に取り組んでいる施策の延長線でもよいという内容も書かれていたと思います。職場環境改善を義務の対象にして、特定の行為を実施しないと義務を果たしたことにならないという立て付けにするのは、実態に馴染まないのではないかと思っていますので、そうした観点からも、義務化を検討するにあたって、どのような形で義務化するのかということも非常に重要な論点だと思います。企業の実態を踏まえると慎重に検討していく必要があるだろうと思います。
○川上座長 ありがとうございました。種市構成員、お願いします。
○種市構成員 1点だけ、今、神村構成員がおっしゃったように、判定図の結果を見たり、あるいは構成者の割合を見てこれぐらい多いんだなとか、過去と比べてこうだったなというふうに、集団分析の結果を見て経営者がどう感じるかは、結構、経営者によって幅があると思います。また、三柴構成員が言うように職場の価値観であるとか、労使間の関係にもっと踏み込んでというような活用の仕方もある。つまり、先ほどおっしゃっていただいたように職場環境改善というと非常に幅が広いし、レベルも幅があると考えると、例えば義務化する範囲については集団分析の義務化という形にして、集団分析結果を出すというところまでは義務化すると。しかし、そこから職場環境をどのぐらいやるかということについては努力義務の範囲で、それぞれの企業でできる範囲でやっていただく。そういうふうに議論を2つに分けたほうがいいのではないか。少なくともストレスチェックを、例えば50人以上というふうに線引きをするとしても、50人以上の事業所でストレスチェックしたときには、個人の結果が出るだけではなく判定図なり何なり、集団分析の結果が出ることまでを義務化することにしておくところも、一つの現実的なラインではないかと感じたので意見を申し上げました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。集団分析・職場環境改善につきまして、構成員のほうから御意見はございませんでしょうか。山脇構成員、お願いします。
○山脇構成員 実際に事業場のほうでどういうことに困っているのか、今、お話いただいたようなことを前提に、義務化するのであれば何が課題なのかというのは、今回整理してもらうことを改めてお願いしておきたいと思います。先ほど種市先生からもお話いただいたように、こういうパターンならこういう場合が考えられるということまでは、この検討会の中で一定整理をしていただくことを強くお願いしておきたい。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。ほかにも追加の発言、いかがでしょうか。座長のほうも職場環境改善に携わっている研究者でもありますので、今の御意見、非常に興味深く拝聴していました。恐らく、今のような職場環境改善の位置付けで、研究者や実践家がいろいろな改善事例を蓄積していっても、法制度に乗るような職場環境改善の形にはつながっていかないような感じがします。そこを一歩乗り越えることをしなければいけないと思いました。今日、お話に出ていたような工程表を作るとか、あるいは義務化するような職場環境改善とは一体何かという要件を提示したりということは、確かに作業として重要だと思いました。またストレスチェック制度を通じて職場のメンタルヘルスを改善したいという、この検討会全体の目的からすると、職場環境改善の地位を向上させて、法制化の検討の俎上に乗せるようにできたらなという感想を持ちました。ありがとうございます。
 時間も大分たってまいりましたが、よろしいでしょうか。今日も大変熱の入った議論をありがとうございました。先ほどと同じように、本日、言い残したような御意見がございましたらメール等で事務局にお伝えいただいて、御意見が提出された場合には事務局から全体共有してもらうようにお願いします。この集団分析・職場環境改善も事務局のほうで、今日出た議論を基に整理をお願いしたいと思っています。それでは、今日も本当にありがとうございました。これで議題を終了したいと思います。ありがとうございました。事務局のほうから何かございましたら、お願いします。
○辻川中央労働衛生専門官 事務局から連絡事項が2点ございます。次回の日程ですけれども、8月30日(金)の開催を予定しております。また、本日の議事録につきましては、構成員の皆様に内容を御確認いただいた上でホームページに掲載いたしますので、追って御連絡をさせていただきます。本日の検討会は以上で終了いたします。ありがとうございました。