2024年7月24日 令和6年第5回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和6年7月24日(水)10:00~22:53

場所

厚生労働省共用第8会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2中央合同庁舎5号館19階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、戎野委員、小西委員、首藤委員
労働者代表委員
 伊藤委員、永井委員、仁平委員、水崎委員
使用者代表委員
 大下委員、佐久間委員、土井委員、新田委員
事務局
 岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊勢主任中央賃金指導官、
 大野調査官、山崎賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、川辺副主任中央賃金指導官

議題

令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

 <第1回全体会議>
○藤村委員長
 ただ今から第5回目安に関する小委員会を開催いたします。
 それでは、まず、お手元の資料について、事務局から御説明をお願いします。
○安藤賃金課長補佐
 それでは、参考資料No1をご覧ください。こちらは、前回、委員の皆様からご要望のありました資料をまとめています。
 1ページは、労働分配率についてです。こちらは法人企業統計を基に人件費と付加価値額を算出し、それらの比率から労働分配率を算出しています。令和4年度の「規模計」では67.5%となっています。資本金規模別にみますと、「10億円以上」では51.2%、「1億円から10億円」では65.1%、「1,000万円から1億円」では77.3%、「1,000万円未満」では84.6%となっています。
 続いて、参考資料No2をご覧ください。こちらは第1回にご説明しました主要統計資料の更新部分の抜粋です。ページ番号は第1回の資料と便宜上同じにしています。
 25ページは売上高営業利益率のグラフです。第2回の目安小委員会では、23ページの売上高営業利益率について、令和5年度を計画値から実績値に更新した資料を提出していましたが、前回、視覚的にもわかるよう、グラフについても更新版の提出の要望が委員からございましたため、資料として提出させていただいております。
 資料の説明は以上です。
○藤村委員長
 それでは、今ご説明いただきました資料の内容について、何かご質問等がありましたら、お願いします。

(質疑応答なし)

 それでは、配付資料に関する議論は以上といたします。 
 さて、前回の小委員会においては、目安の取りまとめに向けて鋭意調整を進めましたが、依然として重視すべき点について双方の主張に隔たりがある中で、労使双方より公益の見解について提示の求めがあり、その後の検討の時間も考え、今回に持ち越したところです。
 まずは、公益の見解について公益で検討の後、公労・公使で個別にお伝えし、さらに議論を深めていきたいと思いますが、よろしいですか。

(異議なし)
 
 それでは、労使双方の委員の皆様は控え室でお待ちください。事務局から連絡事項をお願いします。 
○安藤賃金課長補佐
それでは、まず公益委員で見解の検討を行うとのことですので、労働者側委員、使用者側委員の皆様は控え室へご案内させていただきます。

(労働者側委員、使用者側委員 退出)
 
それでは、傍聴者の皆様はご退出ください。

(傍聴者 退出)
 
<第2回全体会議>
○藤村委員長
 ただ今から、第2回目の全体会議を開催します。
 委員の皆様のお手元に公益委員見解を配布しておりますので、事務局から読み上げてもらいます。よろしくお願いします。 
○川辺副主任
 それでは朗読します。
 令和6年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解案。令和6年7月24日。
 1令和6年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和6年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。A、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪。50円。B、北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡。50円。C、青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。50円。
 2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、令和5年全員協議会報告の1(2)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」と合意されたことを踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2024」に配意し、最低賃金法第9条第2項の3要素を考慮した審議を行ってきた。
 ア 労働者の生計費。労働者の生計費については、関連する指標である消費者物価指数を見ると、「持家の帰属家賃を除く総合」は、令和5年10月から令和6年6月までの期間で見た場合は平均3.2%で、前年同期の令和4年10月から令和5年6月までの平均4.3%から引き続き高い水準となっている。なお、消費者物価指数の「総合」、とりわけ「基礎的支出項目」といった必需品的な支出項目については、経済産業省が実施するエネルギー価格の負担軽減策である「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響で一定程度押し下げられている(「総合」では、6月は0.25ポイント押し下げられていると試算されている)。
 加えて、年間15回以上の購入頻度である食パン、鶏卵などの生活必需品を含む支出項目である、年間購入頻度階級別指数で見た「頻繁に購入」する品目についても、令和5年10月から令和6年6月までの期間で見た場合は平均5.4%で、前年同期の令和4年10月から令和5年6月までの平均4.8%から引き続き高い水準となっている。
 消費者物価指数については、基本的には「持家の帰属家賃を除く総合」を基に議論すべきであるが、最低賃金の引上げにより時間当たり賃金が上昇した者がその増加分の賃金の多くを消費に回している調査結果が出ていることを踏まえると、生活必需品を含む支出項目を中心とした消費者物価の上昇に伴い、最低賃金に近い賃金水準の労働者においては、生活が苦しくなっている者もいると考えられる。
 こうした状況を踏まえれば、今年度においては、労働者の生計費については、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年10月以降の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す水準を一定程度上回ることを考慮しつつ、「頻繁に購入」する生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案する必要がある。
 イ 賃金。賃金に関する指標を見ると、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は、連合の第7回(最終)集計結果で、全体で5.10%、中小でも4.45%となっており、昨年を上回る33年ぶりの高い水準となっている。さらに、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給)の加重平均の引上げ率の概算も昨年を上回る5.74%となっている。
 経団連による春季労使交渉月例賃金引上げ結果(第1回集計)では、大手企業で5.58%、中小企業では3.92%となり、いずれも昨年を上回る水準である。また、日商による中小企業の賃金改定に関する調査の正社員の結果では全体で3.62%、20人以下の企業で3.34%、パート・アルバイトの結果では全体で3.43%、20人以下で3.88%となっている。
 賃金改定状況調査結果については、第4表①②における賃金上昇率(ランク計)は2.3%であり、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大値であった昨年の結果(2.1%)を上回っている。また、継続労働者に限定した第4表③における賃金上昇率(ランク計)は2.8%となっており、これも昨年の結果(2.5%)を上回った。この第4表は、目安審議における重要な参考資料であり、同表における賃金上昇率を十分に考慮する必要がある。
 大企業を対象に含む結果である春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率と、30人未満の小規模な企業のみを対象とする賃金改定状況調査結果をみると、企業規模によって賃金上昇率の水準には開きが見られる一方、企業規模に関わらず昨年を上回る賃金引上げの状況が見られる。
 ウ 通常の事業の賃金支払能力。通常の事業の賃金支払能力については、個々の企業の賃金支払能力を指すものではないと解され、これまでの目安審議においても、業況の厳しい産業や企業の状況のみを見て議論するのではなく、各種統計資料を基に議論を行ってきた。
 関連する指標を見ると、法人企業統計における企業利益のうち、経常利益については、令和4年度は資本金1,000万円以上で11.8%、1,000万円未満で70.7%の増加となっている。また、売上高経常利益率については、資本金1,000万円以上では、四半期ごとで令和5年は6~9%程度で推移、令和6年の第1四半期は7.1%となっており、安定して改善の傾向にある。また、労働分配率について、令和4年度は資本金1,000万円以上で65.0%、資本金1,000万円未満で84.6%となっており、企業の規模が小さいほど労働分配率は高くなっているものの、資本金1,000万円未満において、足下では令和3年度から6.4ポイント低下している。加えて、従業員一人当たり付加価値額について、令和3年度は、資本金1,000万円未満規模の製造業・非製造業ともに前年度比マイナスだったものが、令和4年度は、資本金1,000万円未満の製造業で4.5%、非製造業で5.7%と改善している。
 一方で日銀短観における売上高経常利益率の大企業と中小企業との開きについては、令和4年度では製造業で6.28ポイントの差、非製造業で3.82ポイントの差だったのに対し、令和5年度では製造業で6.79ポイントの差、非製造業で4.61ポイントの差となっており、二極化の傾向にある。
 また、中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保するためにも一層重要性が増している価格転嫁については、中小企業庁が公表した令和6年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査によると、前回令和5年9月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査と比べて、受注企業のうちコスト増加分を全額価格転嫁できた割合は約3ポイント増加(16.9%→19.6%)、一部でも価格転嫁できた割合は約4ポイント増加(63.0%→67.2%)し、転嫁状況は一部では好転する一方、1~3割しか価格転嫁できなかった割合は約4ポイント増加(19.6%→23.4%)し、また、全く転嫁できず又は減額された企業も約2割となっており、二極化の兆しがある。労務費について見ると、価格交渉が行われた企業(59.5%)のうち、その約7割において労務費の価格交渉が実施されている一方で、約1割(8.8%)の企業が「労務費が上昇し、価格交渉を必要と考えたができなかった」と回答している。
 さらに、倒産件数については、新型コロナウイルス感染症流行下である令和2年から令和4年にかけて、資金繰り支援等の各種施策により、倒産件数は低水準で推移したものの、直近の令和5年においては感染拡大前の水準まで増加し8,690件となっており、また、令和6年1~6月の物価高(インフレ)倒産については、484件(前年同期375件、29.1%増)発生しており、年半期で初めて450件を超え、過去最多を大幅に更新している。
 なお、賃金改定状況調査の第4表における賃金上昇率は、企業において賃金支払能力等も勘案して賃金決定がなされた結果であると解釈できるところ、春季賃上げ妥結状況の結果と大きな差が生じている要因は、それぞれの調査対象企業の規模等が異なるためであると考えられ、また、法人企業統計における従業員一人当たり付加価値額をみると、一般に資本金規模が小さい企業ほど労働生産性は低いことからも、企業規模により、賃上げ原資の程度が異なることに留意する必要がある。
 エ 各ランクの引上げ額の目安。最低賃金について、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」等において、「今年は、昨年を上回る水準の春季労使交渉の結果を含み、労働者の生計費、事業者の賃金支払能力の3要件も踏まえて、最低賃金の引上げ額について、公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論いただく」こと、「労働生産性の引上げ努力等を通じ、2030年代半ばまでに1,500円となることを目指す目標について、より早く達成ができるよう、中小企業・小規模事業者の自動化・省力化投資や、事業承継、M&Aの環境整備等について、官民連携して努力する」こととされていることも踏まえ、公労使で真摯に検討を重ねてきた。さらに、最低賃金の審議に当たっては、全体の平均値の賃上げ率とともに、賃上げに取り組めない、あるいは労務費等のコスト増を十分に価格転嫁できていない企業が一定程度存在することも十分に考慮すべきという意見も踏まえて議論を行った。
 この結果、ア~ウで触れたように、①労働者の生計費については、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、昨年10月から今年6月までで平均3.2%となるなど、昨年に引き続き高い水準となっていること、また、生活必需品を含む「頻繁に購入」する支出項目に係る消費者物価も昨年10月から今年6月までで平均5.4%の高い水準であることを考慮し、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持するため、最低賃金法に定める労働者の生活の安定を図る趣旨からも、この水準を勘案することが、今年度は適当と考えられる。
 また、②賃金について、春季賃上げ妥結状況における賃金引上げ結果に関して全体で5%台と昨年を上回る33年ぶりの高い水準となっていることや、中小企業については3%後半から4%台、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額については5%台後半の引上げでいずれも昨年を上回る水準となっていることに加え、賃金改定状況調査結果第4表①②における今年の賃金上昇率が2.3%で昨年を上回り平成14年以降最大のものとなっている。③通常の事業の賃金支払能力については、売上高経常利益や従業員一人当たり付加価値額が高い水準で推移するなど、景気や企業の利益において改善の傾向にある。しかし、売上高経常利益率の大企業と中小企業の差が広がっていることや、価格転嫁率が示すように賃上げ原資を確保することが難しい企業も多く存在し、二極化の傾向にあると考えられる。また、第4表と春季賃上げ妥結状況の差からも、小規模事業者は賃金支払能力が相対的に低い可能性がある。そうした中で、最低賃金は、企業の経営状況にかかわらず、労働者を雇用する全ての企業に適用され、それを下回る場合には罰則の対象となることも考慮すれば、引上げ率の水準には一定の限界があると考えられる。
 これらを総合的に勘案し、特に今年度は、消費者物価の上昇が続いていることから労働者の生計費を重視した。また、賃上げの流れの維持・拡大を図り、非正規雇用労働者や中小企業・小規模事業者にも波及させることや、最低賃金法第1条に規定するとおり、最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障し、その労働条件の改善を図り、国民経済の健全な発展に寄与するものであることにも留意すると、今年度の各ランクの引上げ額の目安(以下「目安額」という。)を検討するに当たっては5.0%(50円)を基準として検討することが適当であると考えられる。
 各ランクの目安額については、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」等において、「今後とも、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」とされていることも踏まえ、地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていくことが必要である。
 その上で、賃金改定状況調査結果第4表①②③における賃金上昇率はCランク、Bランク、Aランクの順に高くなっている。さらに、消費者物価の上昇率は、Cランクがやや高めに推移している。雇用情勢としては、B・Cランクで相対的に良い状況である。各ランクの目安額について、下位ランクの目安額が上位ランクを上回ることは理論上あり得るが、各ランクの引上げ額が同額であった場合でも、地域別最低賃金額が相対的に低い地域の引上げ率がより高くなること、また、引上げ額が増すほど引上げ率がより高くなることについて留意する必要がある。
 これらのことを考慮すれば、Aランク50円(4.6%)、Bランク50円(5.2%)、Cランク50円(5.6%)とすることが適当であると考えられる。この結果、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合は、最高額に対する最低額の比率は80.2%から81.1%となり、地域間格差は比率の面で縮小することとなる。ただし、地域間の金額の差についても引き続き注視する必要がある。
 オ 政府に対する要望。目安額の検討に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素を総合的に勘案することを原則とし、今年度は、特に消費者物価の上昇が続いていることを重視するとともに、春季労使交渉を始めとする賃金上昇率が昨年を上回る水準となっていること、売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にあることなどから、目安額を決めた。
 一方で、労務費を含む価格転嫁の状況が二極化の傾向にあることや、倒産件数、特に物価高倒産が足下で増加しているといった企業経営を取り巻く環境を踏まえれば、一部の中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものであると言わざるを得ない。また、都市部以外の地域においては小規模事業者がその地域の生活を維持していくためのセーフティネットとしての役割を果たしているところもあり、従業員の処遇改善と企業の持続的発展との両立を図る観点への配慮も必要である。
 中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「成長と分配の好循環」と「賃金と物価の好循環」を実現するためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
 生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
 さらに、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、労働生産性を引き上げるため、設備投資の促進に資する税制や、省力化投資の補助金等による支援の強化を要望する。加えて、創業・事業承継やM&Aの環境整備の一層の強化に取り組むことが必要である。また、成長市場に進出しようとする者の事業再構築、新製品開発や新市場の開拓、イノベーション創出、DX・GXの取組を促進することを要望する。さらに、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに運用改善を要望する。
 価格転嫁対策については、新たな商慣習として、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」を実現するため、独占禁止法の執行強化、下請Gメン等を活用しつつ事業所管省庁と連携した下請法の執行強化、下請法改正の検討等を行うとともに、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知徹底を要望する。また、価格転嫁円滑化の取組についての実態調査が行われ、転嫁率が低い等の課題がある業界については、自主行動計画の策定や改定、改善策の検討を求めることを要望する。指針別添の交渉用フォーマットについては、業種の特性に応じた展開・活用を促すことを要望する。さらには、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大と実効性向上に取り組むとともに、中小企業等協同組合法に基づく団体協約の更なる活用の推進に向け、活用実態の調査や組合への制度周知に取り組むことを要望する。さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
 また、いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことができるよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進するほか、被用者保険の適用拡大等の見直しに取り組むことを要望する。
 カ 地方最低賃金審議会への期待等。目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであり、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではない。こうした前提の下、目安小委員会の公益委員としては、目安を十分に参酌しながら、地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金の審議に際し、地域の経済・雇用の実態をデータに基づいて見極めつつ、自主性を発揮することを期待する。その際、今年度の目安額は、最低賃金が消費者物価を一定程度上回る水準である必要があることや、賃金上昇率が増加傾向にあること、地域間格差の是正を引き続き図ること等を特に考慮して検討されたものであることにも配意いただきたいと考える。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
 なお、公益委員見解を取りまとめるに当たって参照した主なデータは別添のとおりである。
 (2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。
 なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
 (3)最低賃金引上げの影響については、令和5年全員協議会報告の3(1)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。
 また、資料に記載はありませんが、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1054円、全国加重平均の上昇額は50円となります。
○藤村委員長
 ありがとうございました。公益委員としては、この公益委員見解を小委員会の報告として地方最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告したいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

 それでは、この公益委員見解を、小委員会の報告として地方最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告したいと思います。
 それでは、目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、配布をお願いします。事務局から読み上げをお願いします。 
○川辺副主任
 それでは朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告案。令和6月24日。
 1はじめに。令和6年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2労働者側見解。労働者側委員は、今年の春季生活闘争は、デフレマインドを払拭し、経済社会のステージ転換をはかる正念場との認識で取り組み、33年ぶりの5%台の賃上げ結果となったことを述べ、一方で、労働組合のない職場で働く労働者も多く、最低賃金の大幅な引上げを通じ、今年の歴史的な賃上げの流れを社会全体に広げていくことが必要であると主張し、最低賃金法第1条にある法の目的を踏まえて議論を尽くしたいと述べた。
 加えて、産業別組織における賃上げや、中小企業での初任給引上げの動向を見るに、大企業と比較して中小企業経営は人に頼る部分が大きく、まさに経営は生き残りをかけて、人材確保に向けた「人への投資」を決断していると指摘した。
 また、最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げなければならず、まずは2年程度で全都道府県において1,000円以上、その上で中期的には一般労働者の賃金中央値の6割という水準を目指し、本年の審議では昨年以上の大幅な改定に向けた目安を提示すべきであると主張した。
 加えて、現在の最低賃金は絶対額として最低生計費を賄えていないと指摘し、昨年の改定以降の消費者物価指数は3%前後の高水準で推移しており、さらに年間購入頻度階級別指数で見た「頻繁に購入」する品目についても、令和5年10月から令和6年6月までの期間で見た場合は平均5.4%と、最低賃金近傍の労働者の暮らしは極めて苦しいと主張した。
 さらに、地域間額差は地方部から都市部へ労働力を流出させ、地方の中小企業・小規模事業者の事業継続・発展の厳しさに拍車をかける一因となると指摘し、昨年のCランクの引上げ実績を踏まえて今年の目安額を検討すべきと主張した。ランク別にみた3要素のデータに基づけば、下位ランクの目安額が上位ランクを上回ることが適当であると主張した。
 また、有効求人倍率等の雇用情勢の現状に鑑みれば特に地方における労働需給がひっ迫している状況や、現行の各地域の最低賃金で採用するのは既に困難である現状は明白であると指摘し、最低賃金の引上げは妥当であると主張した。
 さらに、ここ数年の最低賃金の引上げ幅はかつてない上げ幅であるが、倒産件数との相関は見出しにくい状況であり、最低賃金の引上げによって企業の倒産が増える、と言える客観的なデータは存在しなく、最低賃金の引上げと雇用維持とは相反しないと指摘し、むしろ人口流出や人手不足が顕著な地域、中小企業・小規模事業者において、人材確保・定着の観点からも最低賃金を含む賃上げは急務であると主張した。
 また、企業の経常利益は堅調に推移しており、賃金支払能力については総じて問題ないと認識していると述べた。一方で、中小企業・小規模事業者へも賃上げを広げるためには、賃上げのための環境整備やより広範な支払能力の改善・底上げが重要であり、政府は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の実効性のさらなる向上やパートナーシップ構築宣言の普及・促進等を早急かつ徹底的に進めることや政府の各種支援策の利活用状況や効果の検証を踏まえた一層の制度拡充と利活用の推進を求めたいと述べた。
 加えて、社会の賃上げの流れを速やかに波及させるという観点では、10月1日発効を中心に、より早期の発効も念頭に議論を進めるべきと主張した。
 以上を踏まえ、本年度は「誰もが時給1,000 円」への到達に向けてこれまで以上に前進する目安が必要であり、あわせて、地域間額差の是正につながる目安を示すべきであると主張した。
 労働者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 3使用者側見解。使用者側委員は、成長と分配の好循環実現に向けて賃上げは極めて重要であるが、全ての企業に例外なくかつ罰則付きで適用される最低賃金の引上げは、各企業の経営判断による賃金引上げとは意味合いが異なると主張した。
 また、目安審議に当たってはデータに基づく納得感ある審議決定を引き続き徹底し、目安額の根拠となるデータをできるだけ明確に示す等、納得性を高め、地方での建設的な審議に波及させることが極めて重要であり、「10月上旬」の発効に間に合わせるために目安審議のリミットを切ることなく、少なくとも例年同様、公益委員見解を各地方最低賃金審議会へ提示する場合には労使双方やむなしとの結論に至るよう審議を尽くすべきであると主張した。
 加えて、今年度の目安審議に当たって、最低賃金決定の3要素の状況を総合的に示す「賃金改定状況調査」の結果、とりわけ「第4表」の賃金上昇率を重視するとの基本的な考えは変わらないと述べた。
 さらに、生計費については、消費者物価指数は引き続き高い水準にあり、最低賃金近傍で働く人の可処分所得に対する物価の影響を十分考慮すべきであり、賃金については、賃上げの動きは着実に広がっており、企業の賃金支払能力については、業況判断DIで大きな改善は見られず、原材料・商品仕入単価DIは依然高い水準にあると述べた。
 こうした3要素の状況や賃金改定状況調査の結果等から、今年度の最低賃金を一定程度引き上げることの必要性は十分理解しているものの、賃上げの対応は二極化の傾向が見られ、さらに業績改善がない中で賃上げを実施する企業は6割になっていると指摘した。
 加えて、中小企業を圧迫するコストは増加する一方で、小規模な企業ほど価格転嫁ができず、賃上げ原資の確保が困難な状況であり、また、企業規模や地域による格差は拡大しており、最低賃金をはじめとするコスト増に耐えかねた、地方の企業の廃業・倒産が増加する懸念があると述べた。さらに、最低賃金引上げの影響率は21.6%に達し、現在の最低賃金額を負担と感じる企業も増加していると述べた。
 また、最低賃金の審議に当たっては、全体の平均値の賃上げ率とともに、賃上げに取り組めない・労務費等のコスト増を十分に価格転嫁できていない企業が相当数存在することも十分に考慮すべきであり、価格転嫁や生産性向上の過渡期にある中で、「通常の事業の賃金支払能力」を超えた過度の引上げ負担を負わせない配慮が必要であると主張した。加えて、地域の中小企業・小規模事業者は、地域住民の生活と雇用を支えるセーフティネットでもあり、従業員の処遇改善と企業の持続的発展との両立を図る必要があると主張した。
 このため、中小企業の賃金支払能力を高め、最低賃金はじめ賃金引上げが継続的に実施できる環境整備を一層進める必要があり、団体協約の仕組みや活用事例の周知や後押し、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の浸透度の実態調査による検証、下請法の遵守強化等、具体的な施策をさらに進めていくことが必要であると主張した。
 使用者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 4意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見が一致せず、目安を定めるに至らなかった。
 5公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、令和5年全員協議会報告の1(2)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」と合意されたことを踏まえ、加えて、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2024」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。
 目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、政府の掲げる「成長と分配の好循環」と「賃金と物価の好循環」を実現するためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
 生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
 さらに、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、労働生産性を引き上げるため、設備投資の促進に資する税制や、省力化投資の補助金等による支援の強化を要望する。加えて、創業・事業承継やM&Aの環境整備の一層の強化に取り組むことが必要である。また、成長市場に進出しようとする者の事業再構築、新製品開発や新市場の開拓、イノベーション創出、DX・GXの取組を促進することを要望する。さらに、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに運用改善を要望する。
 価格転嫁対策については、新たな商慣習として、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」を実現するため、独占禁止法の執行強化、下請Gメン等を活用しつつ事業所管省庁と連携した下請法の執行強化、下請法改正の検討等を行うとともに、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知徹底を要望する。また、価格転嫁円滑化の取組についての実態調査が行われ、転嫁率が低い等の課題がある業界については、自主行動計画の策定や改定、改善策の検討を求めることを要望する。指針別添の交渉用フォーマットについては、業種の特性に応じた展開・活用を促すことを要望する。さらには、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大と実効性向上に取り組むとともに、中小企業等協同組合法に基づく団体協約の更なる活用の推進に向け、活用実態の調査や組合への制度周知に取り組むことを要望する。さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
 また、いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことができるよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を促進するほか、被用者保険の適用拡大等の見直しに取り組むことを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 記以下は省略いたします。
 小委報告の別添の参考資料は、先ほど配布したもので代えさせていただきます。
○藤村委員長
 ありがとうございました。今の内容を小委員会報告として取りまとめようと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

 それでは、審議会で私から報告することといたします。事務局から、中央最低賃金審議会の本審の日程の連絡をお願いします。 
○安藤賃金課長補佐
 中央最低賃金審議会の本審は明日25日15時から、厚生労働省のこの会場で行います。
○藤村委員長
 はい、では、皆様よろしくお願いいたします。本当に長時間に渡る御審議ありがとうございました。大変お疲れ様でした。また明日、お会いしたいと思います。
 どうぞ、仁平委員。
○仁平委員
 一言、御礼も含めて申し上げておきたいと思います。昨日も8時間、今日も12時間、議論してまいりました。本当に関係する皆様は大変お疲れ様でございました。とりわけ、労使双方たくさんの意見を聞いていただきました藤村先生はじめ公益の先生方には御礼申し上げたいと思っております。また、限られた時間の中で例年以上に資料を取りまとめていただいた事務局の皆さんにも御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○藤村委員長
 どうぞ、大下委員。
○大下委員
 一言御礼申し上げます。公益委員の先生方、厚労省の皆様ありがとうございました。また、労働側委員の方々にもお疲れ様と申し上げたいと思っています。去年も申し上げておりますが、この真摯な議論がこの後の地賃にもしっかり引き継がれるということが非常に重要かと思っております。昨年に引き続き、公益委員の先生にはビデオメッセージの収録をお願いをしていると承知しております。そちらも踏まえて各地賃にしっかりとこの趣旨が伝わるよう是非お願いをしたいと思います。私からは以上です。本当にありがとうございました。
○藤村委員長
 はい、どうもありがとうございました。では、以上をもちまして本日の小委員会は終わりにいたします。どうもお疲れ様でした。