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2024年7月10日 令和6年第2回目安に関する小委員会 議事録
日時
令和6年7月10日(水)14:00~17:35
場所
東京国際フォーラムG602号室
(東京都千代田区丸の内三丁目5番1号 東京国際フォーラムガラス棟6階)
(東京都千代田区丸の内三丁目5番1号 東京国際フォーラムガラス棟6階)
出席者
- 公益代表委員
- 藤村委員長、戎野委員、小西委員、首藤委員
- 労働者代表委員
- 伊藤委員、永井委員、仁平委員、水崎委員
- 使用者代表委員
- 大下委員、佐久間委員、土井委員、新田委員
- 事務局
- 岸本労働基準局長、田中大臣官房審議官、篠崎賃金課長、伊勢主任中央賃金指導官、
大野調査官、山崎賃金課長補佐、安藤賃金課長補佐、川辺副主任中央賃金指導官
議題
令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について
議事
<第1回全体会議>
○藤村委員長 では、ただいまから、第2回「目安に関する小委員会」を開催いたします。
議題に入ります前に、事務局に人事異動がありましたので、御紹介をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 このたび、厚生労働省の人事異動により、労働基準局長、大臣官房審議官及び調査官が交代しておりますので、御紹介いたします。7月5日付で労働基準局長となりました岸本でございます。
○岸本労働基準局長 岸本です。よろしくお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 また、同日付で大臣官房審議官となりました田中でございます。
○田中大臣官房審議官 田中でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○安藤賃金課長補佐 同日付で調査官となりました大野でございます。
○大野調査官 大野です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○藤村委員長 それでは、議題に入りましょう。
まず、お手元の資料について、事務局から御説明をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 本日も、お手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
次に、配付資料は、資料No.1からNo.5、参考資料No.1からNo.4の合計9点あり、事務局からは、委員提出資料である参考資料No.4を除いた資料について通しで御説明いたします。
まず、資料No.1を御覧ください。令和6年の賃金改定状況調査結果です。
1ページは調査の概要です。真ん中の3(2)にありますが、常用労働者数が30人未満の企業に属する民営事業所を調査しております。その下の表を御覧いただければと思いますが、調査事業所数は1万6373、集計事業所数は5,149、回収率は31.4%とおおむね例年並みです。
3ページの第1表を御覧ください。こちらは、今年の1月から6月までに賃金の引上げ引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で割合を集計したものです。左上の産業計・ランク計を見ていただくと、1月から6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合は42.8%となっておりまして、昨年よりやや低下しております。
隣の列の賃金の引下げを実施した事業所の割合は0.7%となっており、例年と同水準です。
それからさらに隣の列ですが、1~6月に賃金改定を実施しない事業所のうち、7月以降も賃金改定を実施しない事業所の割合は40.1%で昨年より上昇しており、7月以降に賃金改定を実施する予定の事業所の割合は16.4%と昨年より低下しています。
次に、4ページの第2表を御覧ください。平均賃金改定率を事業所単位で集計したものです。左下の産業計・ランク計で見ていただくと、今年の1月から6月までに賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は4.6%と昨年と比べて上昇しています。真ん中の賃金引下げを実施した事業所はマイナス11.1%です。一番右は、改定を実施した事業所と凍結した事業所を合わせて、今年1~6月の事業所ごとの平均賃金改定率を集計したものとなりますが、こちらはプラス1.9%となっています。
続いて、5ページです。5ページの第3表は、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値です。産業計・ランク計を見ていただくと、第1・四分数が1.6%、中位数が3.2%、第3・四分数が5.2%といずれも昨年より上昇しております。
次に6ページの第4表ですが、賃金上昇率です。
第4表の①は男女別の内訳を示しております。第4表①の産業計・男女計を見ると、ランク計の賃金上昇率は2.3%となっています。2.3%という上昇率は、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大の水準であった昨年をさらに上回っているものです。ランク別では、産業・男女計でAが2.2%、Bが2.4%、Cが2.7%となっており、Cランクが最も高くなっています。
男女別の賃金上昇率を見ますと、左端の産業計・ランク計で、中段の男性が1.9%、下段の女性が2.7%となっています。
次に7ページ、第4表②です。一般パート別の賃金上昇率になります。左端の産業計・ランク計で見ますと、中段の一般労働者は2.1%、下段のパートは2.8%となっています。
次に8ページ、第4表③です。第4表の①、②と③の相違点については、一番下の資料注を御覧いただければと思います。第4表①や②については、集計労働者である2万9463人全員から賃金上昇率を計算しております。一方で、第4表③では、昨年6月と今年6月の両方に在籍していた労働者である2万4639人のみ、割合ですと83.6%の労働者に限定して賃金上昇率を計算しています。言い換えますと、第4表③では継続労働者のみを中計対象にしていますので、昨年6月に在籍していたものの、今年6月に在籍していない退職者と、昨年6月には在籍していなかったものの、今年6月に在籍するようになった入職者は第4表③の集計対象には入っていないということになります。
表の左上のほう、産業計・ランク計の賃金上昇率は2.8%となっており、ランク別に見ますと、Aが2.7%、Bが2.9%、Cが3.1%となっております。
続いて、9ページです。9ページには、賃金引上げの実施時期別の事業所数の割合を、10ページには事由別の賃金改定未実施事業所の割合を参考表としておつけしております。11ページは、この調査における労働者構成比率と年間所定労働日数もおつけしておりますので、適宜御参照いただければと思います。
資料No.1の説明は以上です。
続いて、資料No.2を御覧ください。生活保護と最低賃金の比較についてです。
まず、1ページのグラフを御覧ください。右上の四角囲みに説明がありますが、破線の△は生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものです。実線の◇は令和4年度の最低賃金額で法定労働時間働いた場合の手取り額を示しております。全ての都道府県において最低賃金が生活保護水準を上回っております。
2ページは、1ページの最低賃金額のグラフを令和5年度のものに更新したものです。全体的に最低賃金の水準は1ページよりも上がっております。こちらも同様に、全ての都道府県において最低賃金が生活保護水準を上回っております。
3ページは、47都道府県について、最新の乖離額を示すとともに、その乖離額の変動について要因分析をしたものです。列Cの額は2ページのグラフでお示しした乖離額を時間額に換算したもので、列Dの額が昨年度の目安小委で示した乖離額です。マイナスは最低賃金額が生活保護水準を上回っていることを示しています。そして、列Eが昨年度から今年度の乖離額の変動分ですが、マイナスの幅が大きくなっておりますので、最低賃金と生活保護水準の差が大きくなっていることを意味しています。
資料No.2の説明は以上です。
続いて、資料No.3を御覧ください。影響率と未満率に関する資料です。
第1回の目安小委では全国計の数値については御説明いたしましたが、今回はランク別、都道府県別の数値となっています。
1ページは最低賃金に関する基礎調査によるものですので、原則30人未満の小規模事業者が対象となっています。表は過去10年間の推移であり、一番右の列が令和5年度になります。こちらは注4にあるとおり、各年確認における適用ランクでお示ししています。
未満率をランク別に見ますと、Aが2.1%、Bが1.6%、Cが2.1%とAランク及びCランクが高くなっています。
影響率をランク別に見ますと、Aが23.4%、Bが20.5%、Cが20.1%とAランクが最も高くなっています。
次に、2ページを御覧ください。1ページと同じく、注1のとおり、原則30人未満の小規模事業所を対象とした都道府県別の影響率・未満率になります。
まず、上の破線が影響率ですが、最も高いのが左から2番目の神奈川県、次いで高いのが左から7番目の兵庫県となっております。最も低いのが真ん中右辺りの徳島県です。
次に、下の実線が未満率ですが、一番高いのが右から8番目の岩手県、一番低いのが真ん中辺りの山口県となっています。
次に、3ページを御覧ください。2ページと同様のグラフを賃金構造基本統計調査に基づいて示したものになります。注1にあるとおり、5人以上の事業所が対象となります。
上の破線の影響率では真ん中辺りの北海道が最も高く、右から4番目の鹿児島県が次いで高くなっており、真ん中左辺りの石川県が最も低くなっています。
下の実線の未満率では一番左の東京都が最も高く、真ん中辺りの栃木県が最も低くなっています。
資料No.3の説明は以上です。
続いて、資料No.4を御覧ください。こちらは、令和5年の賃金構造基本統計調査を基にした各都道府県別の賃金分布になります。一般・短時間計、一般、短時間の順で、それぞれA~Cランクの順に都道府県を並べております。こちらは適宜御参照ください。
続いて、資料No.5を御覧ください。最新の経済指標の動向です。こちらは、今年も昨年までと同様に内閣府月例経済報告の主要経済指標を提出させていただいております。主立った指標については第1回の目安小委で御説明しておりますので、適宜御参照ください。
続いて、参考資料No.1を御覧ください。こちらは、前回委員の皆様から御要望にありました資料をまとめています。
2ページです。2ページは、消費者物価指数の昨年の10月から足元までの期間の物価の伸び率を整理したものです。消費者物価指数、持家の帰属家賃を除く総合の対前年上昇率につきましては、2023年10月以降、全国では2.5%から3.9%の伸び率で推移し、2023年10月から2024年5月の対前年同期の上昇率は全国で3.2%となっています。
続きまして、3~5ページは、国内企業物価指数及び消費者物価指数について、上昇率である前年同月比とともに上昇率の積み上げである指数そのものについて表示しています。
まず3ページです。国内企業物価指数の推移については、下段の上昇率を見ますと、5月は2.4%となっておりプラスではあるものの、2023年から下落の傾向にあります。一方で、上段の指数を見ますと、2021年から2022年にかけて急激に上昇した後、2023年から高止まりしているような状況がうかがえます。
また、4ページの消費者物価指数の基礎的・選択的支出項目別指数の推移についても、下段の上昇率を見ますと、5月は基礎的が3.7%、選択的が2.5%となっています。一方、上段を見ますと、両方とも増加で推移しているということが分かります。
5ページは消費者物価指数の推移ですが、持家の帰属家賃を除く総合を含む4つの指標とも、依然として上昇の傾向にあることが分かります。
続きまして、6~7ページです。こちらは業務改善助成金の内訳です。
6ページは実績の概要であり、設備投資の件数が99%です。また、代表的なものとしては、システム関連が約20%で最も多いです。システム関連の具体例としては、在庫管理システム、PC関連としてはプロジェクターなどが挙げられます。
7ページでは事例を紹介しています。事例①では、高知県の農業を行う企業について、業務改善助成金の利用によりローラーコンベアを導入することで、従来手作業で行っていたものを機械化することで、より少人数・短時間で作業を行うことができるようになったというものです。
事例②は、飲食店事業を行う企業について、業務改善助成金の利用によりテイクアウト受注用の予約サイトの開設、店内のレイアウト変更というものを行ったところ、来客数や客単価の増加を含む全体売上げの増加を達成したというものです。
続きまして、8~18ページは、3月に中小企業庁が公表した「取引状況改善状況調査 自主行動計画フォローアップ調査 結果概要」の抜粋です。取引条件の改善状況に関する重点課題について、発注側・受注側に分けてその割合の比較などがされています。
特に17ページの価格決定方法の適正化のうち、左側のコスト全般について、「全て」または「概ね」、「反映した」または「された」と答えた企業の割合は、発注側で令和5年度で64%、受注側で37%となっています。
また、右の労務費について、発注側で55%、受注側で30%となっております。
続きまして、19~30ページ、能登半島地震関係の資料です。
20~23ページは、有効求人倍率等の雇用情勢について載せています。石川県全域、公共職業安定所別の有効求人倍率等、主な産業別の新規求人数について示しています。
24~30ページは、被災地に向けた支援を記載しています。
24ページは、政府の支援パッケージで厚労省関係部分の地域の雇用対策等のみの概要です。例えば雇用調整助成金の特例措置として、地震に伴う経済上の理由により休業、教育訓練または出向を行う場合において、雇用調整助成金の支給要件の緩和や助成率・支給日数の引上げの特例措置が実施されています。
政府パッケージのそれぞれの支援の資料は25ページから29ページです。
また、30ページは、7月1日に創設した地域雇用開発助成金の能登半島地震特例の資料です。
また、実際に現場の状況について石川労働局を通じて関係者に確認したところ、地震の影響については地方最低賃金審議会においてしっかり議論をするため、中央最低賃金審議会への配慮等の要望は特段ございませんでした。
参考資料No.1の説明は以上になります。
続いて、参考資料No.2についてです。前回の目安小委で御説明しました足元の経済状況等に関する補足資料のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。ページ番号は前回の資料と便宜上同じにしています。
1枚おめくりいただきまして、2ページを御覧ください。内閣府の月例経済報告です。6月が新しく出ましたので更新しています。基調判断(先行き)では、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響への言及が追記されました。その他については2~5月と変更はありませんでした。
3ページ、連合の春季賃上げ妥結状況です。前回は第6回集計でしたが、先週、第7回の最終集計結果が出ましたので更新しております。今年の賃上げ率は5.10%、中小で4.45%です。最終集計まで5%超えを維持したのは33年ぶりとなります。
5ページ、日銀短観の雇用人員判断DIですが、今年6月の実績は3月の実績からやや「過剰」方向に増えましたが、引き続き「不足」が「過剰」を大幅に上回っており、人手不足感は強いままです。
次に8ページです。ランク別の有効求人倍率の推移です。今年5月の数値が新しく出ましたので更新しています。引き続きどのランクでも横ばいとなっております。
次に9ページです。ランク別の新規求人数の水準の推移です。引き続きどのランクでも横ばいとなっております。
次に13ページです。日銀短観による業況判断DIです。引き続き改善傾向で推移しています。
次に23ページです。倒産件数及び物価高倒産件数の推移です。帝国データバンク「全国企業倒産集計(2024年6月報)」が公表されましたので、右のグラフを更新しています。物価高倒産は484件発生しており、前年同期に19.1%増となりました。年半期で初めて450件を超え、過去最多を大幅に更新しております。
次に25ページです。倒産件数実数の推移です。足元の推移の4~6月を更新しております。長期的には減少傾向にありますが、足元の推移では上昇傾向にあります。
参考資料No.2の説明は以上です。
最後になりますが、参考資料No.3を御覧ください。
前回御説明しました主要統計資料の更新部分のみ抜粋したものになります。
1ページは、鉱工業生産指数5月速報、倒産件数の6月分、完全失業者数及び完全失業率の5月分が公表されたことを踏まえ、数値を追加しています。
2ページは、毎月勤労統計調査の5月分速報が公表されたことを踏まえ、5月分の賃金等を追加しています。
3ページは、職業安定業務統計の5月分が公表されたことを踏まえ、5月分の有効求人倍率を追加しています。
4ページは、労働力調査の5月分が公表されたことを踏まえ、5月分の性・年齢別完全失業率を追加しています。
5ページは、人数規模別の現金給与総額、定期給与額について5月速報分を追加しています。
6ページは、パートタイム労働者比率の推移について5月速報分を追加しています。
11ページは、月間労働時間の動きについて5月速報分を追加しています。
12ページ、春季賃上げ妥結状況についてですが、連合の第7回最終回答集計結果が出ておりますので、資料の左半分を更新しております。
14ページについても同様に、夏季賞与・一時金妥結状況について、資料上半分の連合の結果を更新しております。
22ページについて、令和6年6月日銀短観による企業の業況判断の追加です。令和6年6月は、3月と比較するとおおむね横ばいです。
23ページ、令和6年6月日銀単価による経常利益です。令和5年度の結果は計画のものから実績に更新されており、第1回目安小委員会で提出した際の計画のものと比較すると、いずれの表の全ての規模・産業についてもプラスの方向に修正されています。
続いて、28ページです。中小企業景況調査の業況判断DIについて、今年4~6月の数字が出ておりますので、追加しております。表の一番右端ですが、合計あるいはどの産業でも1~3月に比べて改善傾向が見られます。
36ページは、定期給与の都道府県別推移について令和5年の数値を追加しております。
37ページは、パートタイム労働者の1求人票当たりの募集賃金平均額について、今年5月分を追加しております。
38ページは、パートタイム労働者の1求人票当たりの募集賃金下限額について、今年5月分を追加しております。
39ページは、平均の月間総実労働時間と所定外労働時間の都道府県別推移について、令和5年の数値を追加しております。
41ページは、都道府県県庁所在都市における消費者物価地域差指数の推移の令和5年の結果を追加しております。
42ページは、都道府県下全域を対象とした消費者物価地域差指数の推移の令和5年の結果を追加しております。
45ページは、常用労働者数の都道府県別推移について、令和5年の数値を追加しております。
資料の説明は以上になります。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。
ただいま事務局から御説明のありました資料について、御意見、御質問がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
よろしいですか。
ほかに、次回以降提出を求める資料がありましたら併せてお願いしたいのですが、現時点ではございませんか。分かりました。
前回、能登半島地震についてどうするかということで、先ほど御紹介にもありましたように、石川局からは地方最低賃金審議会で議論するから中央で特段の配慮は必要ないという意見も出ておりますので、この中央最低賃金審議会目安小委員会ではその点は特段の配慮はしないということでよろしいですね。
ありがとうございます。
では、配付資料に関する議論は以上といたします。
次に、前回の委員会で皆様にお願いをしたとおり、目安についての基本的な考え方を表明いただきたいと思います。
初めに、労働者側委員からお願いいたします。
仁平さん、どうぞ。
○仁平委員 まず、私のほうから全体的な認識を述べさせていただきたいと思っております。
今年の春季生活闘争なのですが、デフレマインドを払拭して、我が国の経済社会のステージ転換を図る正念場であるという認識を持って取り組んでまいりました。多くの労使で問題意識を共有できたことが、先ほども資料にございましたが、33年ぶりの5%台の賃上げ結果に結びついたものと考えております。
しかしながら、労働組合のない職場で働く労働者もたくさんおります。最低賃金の大幅な引上げを通じ、今年のまさに歴史的な賃上げの流れを社会全体に広げていくことが必要であると考えております。
また、これも資料で幾つか御紹介いただいておりますが、物価高が続く中で、労働者の生活というものは昨年以上に厳しさを増しております。とりわけ最賃近傍で働く仲間の暮らしというのは、極めて厳しいし、苦しくなっていると思っております。そして、今年の最低賃金の引上げの期待感はかつてなく高いものだと感じております。こうした状況だからこそ、我々中賃として、社会に向けて、私の賃金も上がるのだという明確なメッセージを発するべきなのではないかと考えております。
最低賃金の意義について、改めてなのですが、最賃法の第1条に書いてあるとおりでございますが、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するとうたわれているところでございます。
労側として、今年も公益の先生方の知見も伺いながら労使で議論を尽くし、結論を得るよう努力してまいりたいと思っております。
引き続いて、各委員から補強意見を述べさせていただきたいと思っておりますが、1点、参考資料4にも一言触れさせていただきたいと思っております。
お手元に参考資料4のカラー刷りの表があると思っておりますが、1ページ目を開いていただきますと、データの出典のところでありますが、最近いろいろなところで話題になっているナウキャストの募集人員の調査、それと厚労省の毎勤統計の地方調査を基に連合で作成させていただきました。
ナウキャストの調査については、調査方法の項に書いておりますが、最近ウェブでの求人も増えているところ、ウェブ上に掲載されている募集賃金を収集したものです。複数の媒体に掲載されている求人や異常値などは削除した上で、金額の幅のあるものについては上下の平均値を取るという形で集計をしたものであります。民間125の求人サイトを毎週集計して収集して足し上げて平均値を出しておりますが、約350万件求人データがあるというものでございます。これは時給表示のものを対象にしておりまして、先ほど御紹介があったハローワークの調査については日給の時給換算も含めているものですから、必ずしも横並びで比較ができるものではございませんが、こういう特徴を持ったものでございます。
2ページに全国、そして、それ以降、47都道府県のものを掲載しておりますが、いずれにいたしましても、募集の時給ということでいくと、ほとんどの都道府県において1,000円を超えているという状況だという資料を提供させていただきました。
それでは、以降、労側のメンバーから補強意見を述べさせていただきたいと思っております。
順番に伊藤さんからよろしくお願いいたします。
○伊藤委員 続いて、私からは最低賃金のあるべき水準という観点で補強意見を述べさせていただきたいと思っております。
冒頭、仁平委員が述べたとおり、本年の春季生活闘争は近年にない水準での賃上げが報告されておりまして、生活防衛の観点はもとより、人材不足が非常に深刻化している背景なども踏まえて、各企業労使が賃金について真摯に交渉して向き合った結果の積み重ねなのだろうと受け止めております。
より具体的にお話しさせていただきますと、私の出身産別の基幹労連は鉄鋼、造船・重機、非鉄といったところが集まっておりますが、こうしたところは決して企業収益が今回十分ではない中においても、大手を除いた定昇別にした賃上げ額の単純平均が1万5690円ということでございまして、300人未満の組織においても1万3332円と時給換算をすれば80円を超えるような高い水準、これまでにない賃上げが果たされております。
また、中小企業において、初任給を3万円や4万円引き上げる企業が散見されておりまして、このことは、大企業と比較して中小企業の操業というのは人に頼る部分が非常に大きいことでございまして、まさに経営が生き残りをかけて人材確保に向けた人的資源への投資、人への投資を決断している証左であるのだろうと考えております。
ただ、私の出身組織や連合の示す春闘結果というのは、あくまで組織労働者の結果でございますので、日本経済を活性化させていくためには、この賃上げを未組織労働者へと波及させることが不可欠なのだろうと考えております。したがいまして、そのためのこの目安の提示なのだろうと私は思っております。
一方、あるべき水準という観点でいきますと、最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいものにしていく。まさにナショナルミニマムの水準を引き上げていかなければならないと考えています。労側としましては毎年こうした主張をしてきておりますけれども、連合として昨年12月に確立させていただいた方針の中では、誰でも時給1,000円をまず達成させていきたいと。そのために早期に目途をつけることを念頭に置きまして、2年程度で全都道府県におきまして1,000円を達成させたいということにさせていただいております。
その上で、中期的には、一般労働者の賃金の中央値の6割、この水準を目指していきたいとしております。この数字というのが、まさに相対的貧困をはかる物差しとして、EU中で参考にしている指標の一つで、加盟国への指令で義務付けられているぐらいでございますけれども、現在の日本の比率というのは47.8%程度にとどまっております。我々としてはこれを改善していくことを中期的な目標に見据えさせていただいております。
政府方針におきましても、昨年の閣議決定において、2035年までに全国加重平均1,500円、こうしたことが明言されるとともに、今年の諮問文にもありますように、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版及び経済財政運営と改革の基本方針2024におきましては、より早く達成ができるよう、所々の環境整備に取り組む旨が補強されております。
以上のことから、冒頭から申し上げております賃上げの動向、また、あるべき水準論といういずれの観点からも、本年の審議では昨年以上の大幅な水準改定に向けた目安を提示すべきだろうと考えております。
私からは以上です。
○永井委員 では、引き続き、私からは主に労働者の暮らしの観点から意見を申し上げます。労働者の生活でございますが、現在の最低賃金は、連合が独自に試算しております連合リビングウェイジを全県で下回っております。そもそも絶対額として最低生計費を賄えていないと認識しています。
その上、昨年の改定以降の消費者物価指数、持家の帰属家賃を除く総合におきましては、2023年10月の3.9%(前年同月比)以来3%前後の高水準で推移しています。
また、政府日銀の2024年度見通しを見ても、いずれも2023年度平均と同程度の水準となっております。
足元の最低賃金近傍で働く労働者の生活を見ましても、昨年以上に苦しくなっていることが伺えます。連合総研の勤労者短観では、世帯年収の低い層ほど1年前と比較した現在の暮らし向きが悪化していると評価しています。また、いずれの年収階層でも半数以上の世帯が何らかの支出を切り詰めているが、世帯年収の低い層ほどその傾向が顕著であります。
また、地域間の格差につきましては、働く人の目線からは地域間の大きな格差の問題があります。前回示された主要統計資料にもありますが、2002年度の時間額統一時に104円であった最高額と最低額の額差は、2018年に224円まで拡大し、昨年改定後は220円となっております。地域格差は地方部から都市部へ労働力を流出させ、また、地方の中小零細企業の事業継続、発展の厳しさに拍車をかける一因となっております。特に地方部から都市部への労働力の流出は、データなどでも出されておりますとおり、特に若年の女性の移動が多いなどと課題が多く指摘されているところでございます。
政府は、6月7日に開催された新しい資本主義実現会議で、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げるなど、地域間格差の是正を図るべきとしておりますが、とりわけ今年度の審議においては、額差の縮小という点を強調して審議に臨みたいと思っております。
昨年はランク制度が見直され、3ランク制での初めての審議でありました。目安としてはランクごとに1円ずつの差をつけたものを取りまとめましたが、続く地方審議では、Cランクの引上げ額、率がA、Bランクを上回りました。地賃の自主性が発揮された結果でございますが、一方で、中賃において議論し配慮した各ランクの引上げ可能性とは異なる展開となったということになります。この実績を重く受け止め、目安額を検討する必要があると考えます。額差縮小につながる目安額、目安制度の在り方に関する全員協議会報告において確認したように、下位ランクの目安額が上位ランクを上回るといったことも含め、中賃としてのメッセージを示し、地方審議における格差縮小に向けた審議の端緒とすべきと考えます。
私のほうからは以上です。
○水崎委員 最後に、私からは雇用情勢、労働市場における募集賃金の状況と企業の支払い能力の観点から意見を述べさせていただきます。
まず、雇用情勢は、完全失業率、有効求人倍率とも昨年審議のとき以来堅調に推移しております。有効求人倍率に関してはCランクが最も高く、次いでBランクが高いというような数字になっております。また、雇用人員判断DIも、製造業、非製造業とも規模区分を問わず人員が不足しているという状況でありまして、特に地方に割合が高いとされる中小企業が最も人員が不足しているというような状況となっています。加えまして、パートタイム労働者の1求人票当たりの募集賃金の下限額は、いずれの都道府県においても各地域の最低賃金を大きく上回っているという状況です。
こうした現状に鑑みれば、特に地方における労働需給が逼迫しているという状況や、現行の各地域の最低賃金で採用するということは、既に困難である状況というのは明白であります。最低賃金の引上げは妥当であるということが言えるかと思います。
特に直近の情勢を見ると、多くの企業が初任給の引上げを行っておりまして、連合の24春季生活闘争の第7回集計では対前年比5.66%増と大幅な引上げとなっています。さきにも述べた状況が、現場の人材獲得競争が過熱していることを推察する一つの要素であると考えます。
他方、最低賃金の引上げと雇用の維持とは相反しないというのが労側の考え方です。前回提出された主要統計資料の中で企業の倒産件数が示されておりますが、確かに23年は8,690件ということで、2015年以来非常に高い件数であるのはそうですけれども、それ以前はさらに多くの倒産件数で推移していたという状況があります。ここ数年の最低賃金の引上げの幅はかつてない上げ幅ではありますけれども、この倒産件数との相関は見いだしにくい状況であるのではないかと考えます。最低賃金の引上げによって企業の倒産が増えるという客観的なデータは存在しないと労側は認識しております。むしろ、人口流出や人手不足が顕著な地域、中小零細事業所において、人材の確保の人材確保あるいは定着の観点からも、最低賃金を含む賃上げは急務であると考えます。
企業の支払い能力の観点で少しお話をさせていただくと、法人企業統計を見ても、昨年の10月の最低賃金改定以降、企業の経常利益も堅調に推移しておりまして、最低賃金審議における一つの考慮要素である通常の事業の賃金支払い能力に関しては、総じて問題ないと見ています。
他方、中小零細事業所へも賃上げを広げるためには、賃上げのための環境整備、あるいはより広範な支払い能力の改善、底上げが重要であると考えます。その観点から、昨年の11月に内閣官房ならびに公正取引委員会から「労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針」が打ち出されております。
ただ、本日追加でお示しいただいた自主行動計画フォローアップ調査を見ると、現状、各企業の価格転嫁はいまだに道半ばという状況であると言わざるを得ないと思います。指針にもあるとおり、最低賃金の引上げ分を確実に価格転嫁できるように環境整備を行うなど、本年10月の発行後に一層の価格転嫁が実施されるよう、政府は方針の実効性のさらなる向上、パートナーシップ構築宣言の普及、促進等を早急かつ徹底的に進めるべきであると考えます。これについては、中賃労側委員として、政府の各種支援策の利活用状況、効果の検証を踏まえた一層の制度拡充と利活用の促進、推進を求めていきたいと考えます。
私のほうからは以上です。
○仁平委員 以上です。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。
では、引き続いて使用者側委員からお願いしたいと思います。
○大下委員 それでは、私から初めに基本的な見解を述べさせていただき、その後、3名の各委員から補強の発言をさせていただきたいと思っております。
初めに、昨年の審議を少し振り返っておきたいと思います。中賃の目安審議においては、特にこの2年間、法に定める3要素、生計費、賃金、支払い能力、このデータに基づく審議ということで、公労使で一致して取り組んできたと受け止めております。その結果、昨年の審議では中でも物価高騰による生計費の上昇を特に重視して、過去最高となる目安額を示すこととなりましたが、その後、御案内のとおり、各都道府県の地賃の審議では半数を超える24の県で目安を上回り、Cランクを中心に最大8円という大変大幅な上乗せが相次ぐ結果となりました。こうした結果、最賃引上げの影響率21.6%とかつていない数字になっています。また、日本商工会議所が本年1月に実施した調査でも、今の最低賃金額を負担と感じている企業は65.7%、去年から10.6ポイントとこれもかつていない増加になっています。また、これに対する支援としての業務改善助成金の昨年度の利用実績は、件数で1万3603件、前の年の2.4倍、執行額で151.6億円、3.3倍ということで急増しています。
最賃引上げに向けて、生産性を高めて賃金の引上げを図ろうとする企業が増えているということは望ましいことと言えますけれども、一方で、こうした数字は、昨年度の大幅な引上げがどれだけ企業の経営に影響を与えたのかというのを表しているものとも考えられると思います。
我々使用者側としても、成長と分配の好循環の実現に向けて賃金を上げていくことは極めて重要と認識をしておりますし、傘下の各企業に対して積極的に賃上げをするように働きかけをしております。また、原資の継続的な確保に向けて、企業の生産性向上あるいは労務費を含む価格転嫁の推進を様々な形で働きかけているところであります。
しかしながら、働く人の生活を支えるセーフティーネットということで、全ての企業に一切の例外なく、かつ罰則つきで適用される最低賃金の引上げと各企業の経営判断による賃金の引上げは、意味合いが異なる部分があると我々は考えています。物価と賃金の上昇局面が続いて、賃上げに対して社会的な期待感が非常に高まっている中で、中央、地方の最低賃金の審議がそれに押されるような形で引上げの方向に加熱して、この2年間我々が取り組んできたデータに基づく冷静な審議、こういったものが損なわれるということを強く懸念しています。
今年度の目安審議に当たりましては、改めてデータに基づく納得感ある審議決定、というこの原則を引き続きしっかり徹底するとともに、目安の根拠となるデータをできるだけ明確に示すことなどによって、納得性をより高めて、各地賃における建設的な審議にしっかりと波及させる。このことが非常に重要と考えております。
厚生労働省におきましても、各地方労働局を通じて、隣県との過度な競争意識に警鐘を鳴らし、データに基づく審議の徹底を働きかけていただくとともに、参考となる地域別の各種統計データの例示、提供等に努めていただきたいと思っております。
また、発効日についても、10月にとらわれることなく、地域の事情を勘案した審議を尽くすことを最優先に、各県の自主性を発揮した審議となるように御指導いただきたいと思っております。
以上のことを踏まえて、データ、3要素について我々が今どう認識しているか、そして、使側として今年度審議にどう臨みたいと考えているのか、最後に述べさせていただきたいと思っております。
今年度の審議に当たって、大臣からの諮問文にもあったとおり、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、また、骨太の方針、これらの配意が求められているということは承知をしておりますが、その上で、使用者側としては、例年どおり最低賃金決定の3要素の条項を総合的に示すと我々は考えております、賃金改定状況調査の結果、特に第4表の賃金上昇率を重視する。この基本的な考え方は一切変わりございません。
その上で、3要素の各状況を足元で見ていきますと、生計費は、5月の消費者物価指数、持家の帰属家賃を除く総合で3.3%、引き続き高い水準にあります。使用者側としても、物価の高騰がこうして続いている原下の局面においては、最賃近傍で働いていらっしゃる方々の可処分所得に対する物価上昇の影響は十分考慮すべきと考えております。
続いて賃金について見ますと、経団連第1回集計で中小の賃上げ率3.92%、日商が今期初めて中小企業を対象に実施した調査では、正社員の賃上げ率で3.62%となっております。同じ日商の調査では、74.3%の企業が今期の賃上げを実施または実施予定と回答しております。これもかつてない数字です。中小・小規模事業者を含めて、賃上げの動きは着実に広がっていると認識をしております。
最後に支払い能力ですけれども、いろいろな数字の見方はあるかと思いますが、少しDIを取って確認してみますと、中小企業庁の中小企業景況調査4~6月期では、全産業で業況判断DIがマイナスの15.7、前の期から2.6ポイント改善で、なかなか大きな改善というところまでは至っていないかなと思っておりますし、原材料・商品仕入単価DIは70.3ということで依然として非常に高い水準になっています。
こうした3要素の足元の状況、また、賃金改定状況調査第4表の結果等から、我々としても今年度最低賃金を一定程度引き上げることの必要性は十分理解をしております。
では、引上げ幅をどう考えていくかというところですが、その中で先ほどの日商調査について賃上率の分布を見てみますと、5%以上の賃上げが全体の24.7%、約4社に1社。賃上げ率0~1%未満、それから、賃下げ、、この2つを足した合計が全く同じ24.7%、4社に1社。企業の対応に一種の二極化の傾向が見られると考えています。
また、賃上げを実施する企業についても、そのうちの6割が業績改善が見られない中でのいわゆる防衛的な賃上げという状況は依然変わりません。
厳しい人手不足の中であっても、賃上げになかなか取り組むことができない企業が相当数あるという背景には、労側の御発言にもありました価格転嫁の問題があると考えています。企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査では、7割以上の転嫁ができている割合は、コスト全般で34.9%、労務費にしますと28.4%にとどまっています。また、およそ2割の企業が全く転嫁できていないと答えています。官民を挙げてこの取組をしていますけれども、いまだ道半ばという状況かと思っております。
最低賃金の審議に当たって、賃上げ率を全体の平均値で見るとともに、こうした賃上げに取り組めない、あるいは最低賃金の引上げ分も含めて労務費等のコスト増を十分価格に反映できていない企業が相当な数ある。この状況については十分考慮して審議すべきと考えております。中小企業の支払い能力を高めて、最低賃金をはじめ、賃金引上げが継続的に実施できる環境整備を一層進める必要があるということを最後に強調しておきたいと思います。
私からは以上であります。
続いて、新田委員、佐久間委員、土井委員の順番で補強の御意見をお願いしたいと思います。
○新田委員 経団連の新田でございます。
今の大下委員の見解表明と一部重複する部分があるかもしれませんが、私から基本的な考え方等と経団連の取組状況等を御紹介したいと思っております。
最初に、この目安小委員会は、果たして何のために行っているのかということについてであります。目安小委員会は、様々なデータに基づいて、しっかりと審議を行い、各地方の最低賃金審議会における具体的な金額審議に資する目安を示すということが責務だと考えています。
10月上旬発効が非常に多い現状は承知しておりますが、ただ、それに間に合わせるために我々の目安審議のリミットを区切ることは本末転倒と思っております。少なくとも、例年同様に、公益委員の見解がもし示された場合、それを地方に示すことについては、労使双方がやむなしという判断ができる結論に至るよう、しっかりと審議を尽くしていきたいと思っております。
そして、今年度の目安審議に当たっては、大下委員からもありましたように、最低賃金法に定める3要素に関する足元のデータを見ます限り、最低賃金を一定程度引き上げることの必要性については十分に理解をしているところでございます。
その一方で、繰り返しになりますが、我々が議論しているのは、募集賃金を含めた民間企業の賃金と大きく異なり、最低賃金法という極めて強い強行法規を根拠として、労働者を1名でも雇用する全ての使用者にあまねく適用され、そして、違反した場合には50万円以下の罰金が科されるという、法で定められた最低賃金であるということを、我々は忘れてはいけないと思っております。
こうした性格を持つ最低賃金ですので、政府においては、最低賃金引上げの影響を受ける可能性の高い中小零細企業、中小企業団体の方々の意見に十分に耳を傾ける必要があります。そして、継続的な最低賃金引上げに対応できる環境の整備と支援が不可欠であると思っております。
加えて、中小企業自身がしっかりと賃金引上げの原資を継続的に確保できるように生産性の改善・向上に取り組むことはもちろん、そうした主体的に取り組んでいる中小企業をサプライチェーン全体でサポートすべく、労務費を含めた適正な価格転嫁をより促進していく必要があります。
そうした活動の一環として、経団連は、これまでも会員企業にとどまらず、その年の春季労使交渉の基本的な考え方について、地方を回って説明する際に、地元の経営者の方々等に対し、政府のパートナーシップ構築宣言への参画を呼びかけるとともに、既に宣言をされている企業においては、その実効性の担保を強力に働きかけてまいりました。
加えて、今年の5月に経団連の企業行動憲章の第2条を改定し、パートナーシップ構築宣言に基づき、サプライチェーン全体の共存共栄を図ることを明記いたしました。
経団連としては、引き続き今回改定した憲章の周知徹底と実践の働きかけなどを通じて、取引条件の改善と適正な価格転嫁に取り組み、そうした流れをぜひ社会的な規範にしてまいりたいと考えております。
最後に、中小企業自身の生産性の改善・向上への取組、サプライチェーン全体でのサポート、そして、政府による環境整備等支援などを踏まえまして、適切な最低賃金引上げの目安ということについて、この場におられる先生方とともに考えていきたいと考えております。
私からは以上です。
○佐久間委員 全国中小企業団体中央会の佐久間でございます。
私からは、「中小企業の現在の景況感について」を中心にお話申し上げたいと思います。
中小企業の景況感は、私ども全国中央会が都道府県中央会ともに実施しております中小企業月次景況調査によれば、これは6月25日に発表したものが直近になり、ホームページでも公開しておりますが、電気やガス、そして、ガソリンといったエネルギー価格や原材料の高騰に加え、人件費の上昇等により、製造業の景況感というのは昨年度の最低賃金審議の時期に比べても数値は悪化してきています。
業界の中には、「原材料等の値上げや人件費の高騰を受注価格に反映することが困難な状況が続いている。」(鉄鋼、金属製造業関係)とかですね。それから、「株価上昇に伴い、社会的に賃上げの機運が高まり、賃上げをしたいが、価格転嫁ができない現状である。業界では、受注状況は改善しているが、原材料価格の高騰が続き、収益状況が好転するまでには至っていない。」(プラスチック製品製造業)。また、「元請企業も値上げを受け入れるポーズはあるものの、実質は値上げに拒否していて、対応に苦慮している。」(生産用機械・器具製造業)とか、あとは人件費分を含めた価格転嫁が十分に進んでいない声があります。
また、非製造業においても、「円安等による物価高の影響で消費マインドが低下したことから、景況感は低下してきており、例えば食品の小売業では高騰する水道光熱費、人手不足、最低賃金の上昇による人件費増加分を経営努力だけでは価格転嫁できず、赤字や減益から脱却できない。」(各種商品小売業)とかですね。それから、「物価上昇による消費者の買い控えで売上げが伸びない一方で、アルバイト等の賃金は上がってきている。中小企業は余力がなく、賃金を上げられないのが現状で、補助金とか支援策が欲しいぐらいである。」(商店街関係組合)とか、さらに、人手不足、人材確保の問題が依然として多くの業種で収益力の足かせとなっており、賃上げの原資確保に苦慮する事業者の声が私ども中央会に届いております。
中小企業を圧迫するコストは増加する一方で、規模が小さい企業ほど価格転嫁を実現できておらず、賃上げのための原資の確保が困難な状況です。特に「中小対中小」の取引においては適正な価格転嫁の実現が難しく、全体的な底上げにまだ至っておりません。
財務省が、毎年9月に発表しております法人企業統計の年度版、一番新しいものだとデータは2022年度にはなるのですけれども、労働分配率では資本金規模1000万円未満、そして、1000万から1億円未満の中小企業、10億円以上のいわゆる大企業との間ではやはりまだまだ格差が大きく、中小企業は大企業に比べ大幅に労働分配率が高い状況が続いています。労働分配率の大きな開きがあるということは、労務費、人件費が十分に価格に転嫁されず、さらにはマークアップ率の上昇にはつながっていないことを示しています。
中小企業における賃上げの原資の確保のためには、国や行政機関による団体協約の仕組みや活用事例の周知や後押し、そして、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の浸透度の実態調査による検証、下請法の遵守、強化等、具体的な施策を国や地方行政、そして、事業所間においてもさらに進めていくことが必要と考えています。
いまだ価格転嫁、そして、生産性向上の過渡期にある中で、中小企業に通常の事業活動の支払い能力を超えた最低賃金の過度な引上げによる負担を負わせないよう、御配慮をお願いしたいところでございます。
以上です。
○土井委員 全国商工会連合会の土井でございます。
私からは、特に地域、それから、事業規模の観点から申し上げたいと思います。
私ども商工会というのは、御存じかもしれませんが、非常に地域が厳しいところにございます。農林漁業を中心とする産業の地域であったり、中山間地域あるいは離島であったりというところの地域を我々は担当しております。
会員が約80万者おりますが、そのうち従業員が50名以上いるというのは2.2%しかありません。多くが小規模企業となっています。
その小規模企業が今どのような状況かといいますと、先ほどから御紹介のある中小企業景況調査では、中規模企業から比べても景況感は約5ポイント低く、より厳しい状況にございます。また、そういった企業については、売上げは何とか確保しても、採算が取れていません。調査では、売上げと採算の差が大体15%ぐらいとなっており、なかなか価格転嫁ができていない状況でございます。
そうは言っても、やはりこの物価高の中、我々の会員企業においても、従業員の福利厚生であるとか生活の向上といったことを考え、賃上げに懸命に取り組んでいる状況でございます。ただ、我々としても独自で調査をしておりますが、先ほどから御紹介いただいている連合さんあるいは経団連さん、日商さんの調査に比べれば、賃上げの実施状況も賃上げ率もやはり低い数字が出ています。
規模別に並べてみると、小規模企業の中でも企業規模、従業員規模、売上規模ごとに大きくなればなるほど実施率、賃上げ率等が高くなるといったところで、我々の地域の中でも規模による格差が生じています。
続いて、価格転嫁の状況も詳しく申し上げますが、中小企業庁さんのフォローアップ調査に比べても、我々の地域の経営者の実感は、原材料費、エネルギー費、労務費のどの項目についても、価格転嫁できている割合が低く出ています。特にBtoB企業については政府のいろいろな取組をやっていただいているおかげでまだ価格転嫁が進んでいるのですが、消費者向け、BtoCのところのほうがやはり価格転嫁が厳しくて、賃上げの実施についても、BtoBが中心の企業に比べても、BtoC中心でやっていますといったところの賃上げ率が低くなっています。物価高の中、消費者の生活もなかなか厳しいので、価格転嫁への理解がなかなか進まず、BtoCの企業が苦戦している傾向にございます。
また、先ほど大下委員のから、企業は賃上げに取り組んでいるが、なかなか原資がなくて防衛的な賃上げになっているというお話がありました。防衛的な賃上げになっているということは、それだけ発注先に払う原資が少なくなっているということで、そこから受注する下請中心である小規模企業はより厳しい状況になっているということです。
先ほど倒産のお話がございました。倒産件数は昨年に比べて増えて、長期的な減少傾向から転じて増加の傾向にあります。昨今、民間企業2つから最新の上半期の情勢が発表されましたが、倒産件数が増加して、負債総額は減少しております。ということは、規模の小さい企業が、今のコスト増に耐えかねて倒産しているということです。また、倒産に至らなくても、昨今のコスト増、あるいは労務費の高騰によって、事業を継続することを諦めて廃業してしまうといった企業も多く出ております。
今後も倒産だけではなくて、廃業の懸念も大きいということについては改めて申し上げたいと思っております。特に我々の地域であると、地域で事業を営んでいる方というのは地域を守る役割も果たしております。そういった企業が倒産、廃業でなくなるということは、貴重な地域住民の生活や雇用の場が失われるといったことで、地方の衰退に拍車をかける懸念を強く持っております。
以上、地域の中小企業、小規模事業者というのを改めて申し上げましたが、地域の事業者は地域住民の生活と雇用を支えるセーフティーネットでもあります。物価上昇局面の中、我々としても従業員の処遇改善というのは非常に重要だと思っておりますが、働く企業がなくなってしまっては処遇改善もしようがないわけで、この両立を図っていく必要があると思っております。
その点からしますと、最低賃金が、どのような企業の規模でも、日本全国どこにあっても、また、従業員さんの能力、あるいは労働条件がどのようなものであっても、働ければ法律的に払わなければいけないといった最低額だということを改めて皆さんと共有させていただいて、物価高の影響にも注意しつつ、企業の通常の事業の支払い能力を重視していろいろ議論させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。
ただいま、労働者側委員、使用者側委員それぞれの御意見を伺いました。
御質問等がございましたらお受けしますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
今、双方のお話を伺っておりますと、賃金を上げる。これは情勢としては必要だよね。ただし、どれだけ上げられるかというのはそれぞれの御主張があると思います。
私ども公益もちゃんと説明のつく賃金引上げ目安を示したいと思っております。そのためには、しっかりと時間を使って議論を尽くすということが今年も必要だと考えます。
ただ、この場でやり合ってもなかなか話は進まないと思いますので、これから公労、公使で個別にお話を伺いながら、その先どうするかを考えていきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○藤村委員長 ありがとうございます。
では、まずは公労会議から始めたいと思いますので、事務局からの連絡事項をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 それでは、まず、公労会議から行うとのことですので、使用者側委員の皆様は控室へ御案内させていただきます。
(使用者側委員退室)
○安藤賃金課長補佐 それでは、傍聴者の皆様は御退室ください。
(傍聴者退室)
<第2回全体会議>
○藤村委員長 では、ただいまから第2回目の全体会議を開催いたします。
本日は、本年度の目安取りまとめに向け、労使双方から基本的な考え方をお出しいただきまして、それに基づいて議論をしてまいりました。議論の中では、労働側からはさらなる引上げの重要性、使用者側からは、本日提出された資料も含めて、データに基づいた審議をしっかり行うことを求める意見がありました。
労使双方、最低賃金を引き上げることの必要性について認識は一致しておりますが、何を重視して引上げにつなげるのかというこの点については、引き続きさらなる議論が必要だと考えます。
そこで、次回の目安小委員会において引き続き御議論をいただき、目安の取りまとめに向けて努力をしていきたいと思います。そういう進め方でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○藤村委員長 ありがとうございます。
それでは、次回の日程と会場について事務局から連絡をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 次回の日程と場所については、追ってお知らせいたします。
○藤村委員長 それでは、以上をもちまして、本日の目安小委員会は終了といたします。
どうもお疲れさまでした。
○藤村委員長 では、ただいまから、第2回「目安に関する小委員会」を開催いたします。
議題に入ります前に、事務局に人事異動がありましたので、御紹介をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 このたび、厚生労働省の人事異動により、労働基準局長、大臣官房審議官及び調査官が交代しておりますので、御紹介いたします。7月5日付で労働基準局長となりました岸本でございます。
○岸本労働基準局長 岸本です。よろしくお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 また、同日付で大臣官房審議官となりました田中でございます。
○田中大臣官房審議官 田中でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○安藤賃金課長補佐 同日付で調査官となりました大野でございます。
○大野調査官 大野です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○藤村委員長 それでは、議題に入りましょう。
まず、お手元の資料について、事務局から御説明をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 本日も、お手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
次に、配付資料は、資料No.1からNo.5、参考資料No.1からNo.4の合計9点あり、事務局からは、委員提出資料である参考資料No.4を除いた資料について通しで御説明いたします。
まず、資料No.1を御覧ください。令和6年の賃金改定状況調査結果です。
1ページは調査の概要です。真ん中の3(2)にありますが、常用労働者数が30人未満の企業に属する民営事業所を調査しております。その下の表を御覧いただければと思いますが、調査事業所数は1万6373、集計事業所数は5,149、回収率は31.4%とおおむね例年並みです。
3ページの第1表を御覧ください。こちらは、今年の1月から6月までに賃金の引上げ引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で割合を集計したものです。左上の産業計・ランク計を見ていただくと、1月から6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合は42.8%となっておりまして、昨年よりやや低下しております。
隣の列の賃金の引下げを実施した事業所の割合は0.7%となっており、例年と同水準です。
それからさらに隣の列ですが、1~6月に賃金改定を実施しない事業所のうち、7月以降も賃金改定を実施しない事業所の割合は40.1%で昨年より上昇しており、7月以降に賃金改定を実施する予定の事業所の割合は16.4%と昨年より低下しています。
次に、4ページの第2表を御覧ください。平均賃金改定率を事業所単位で集計したものです。左下の産業計・ランク計で見ていただくと、今年の1月から6月までに賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は4.6%と昨年と比べて上昇しています。真ん中の賃金引下げを実施した事業所はマイナス11.1%です。一番右は、改定を実施した事業所と凍結した事業所を合わせて、今年1~6月の事業所ごとの平均賃金改定率を集計したものとなりますが、こちらはプラス1.9%となっています。
続いて、5ページです。5ページの第3表は、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値です。産業計・ランク計を見ていただくと、第1・四分数が1.6%、中位数が3.2%、第3・四分数が5.2%といずれも昨年より上昇しております。
次に6ページの第4表ですが、賃金上昇率です。
第4表の①は男女別の内訳を示しております。第4表①の産業計・男女計を見ると、ランク計の賃金上昇率は2.3%となっています。2.3%という上昇率は、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大の水準であった昨年をさらに上回っているものです。ランク別では、産業・男女計でAが2.2%、Bが2.4%、Cが2.7%となっており、Cランクが最も高くなっています。
男女別の賃金上昇率を見ますと、左端の産業計・ランク計で、中段の男性が1.9%、下段の女性が2.7%となっています。
次に7ページ、第4表②です。一般パート別の賃金上昇率になります。左端の産業計・ランク計で見ますと、中段の一般労働者は2.1%、下段のパートは2.8%となっています。
次に8ページ、第4表③です。第4表の①、②と③の相違点については、一番下の資料注を御覧いただければと思います。第4表①や②については、集計労働者である2万9463人全員から賃金上昇率を計算しております。一方で、第4表③では、昨年6月と今年6月の両方に在籍していた労働者である2万4639人のみ、割合ですと83.6%の労働者に限定して賃金上昇率を計算しています。言い換えますと、第4表③では継続労働者のみを中計対象にしていますので、昨年6月に在籍していたものの、今年6月に在籍していない退職者と、昨年6月には在籍していなかったものの、今年6月に在籍するようになった入職者は第4表③の集計対象には入っていないということになります。
表の左上のほう、産業計・ランク計の賃金上昇率は2.8%となっており、ランク別に見ますと、Aが2.7%、Bが2.9%、Cが3.1%となっております。
続いて、9ページです。9ページには、賃金引上げの実施時期別の事業所数の割合を、10ページには事由別の賃金改定未実施事業所の割合を参考表としておつけしております。11ページは、この調査における労働者構成比率と年間所定労働日数もおつけしておりますので、適宜御参照いただければと思います。
資料No.1の説明は以上です。
続いて、資料No.2を御覧ください。生活保護と最低賃金の比較についてです。
まず、1ページのグラフを御覧ください。右上の四角囲みに説明がありますが、破線の△は生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものです。実線の◇は令和4年度の最低賃金額で法定労働時間働いた場合の手取り額を示しております。全ての都道府県において最低賃金が生活保護水準を上回っております。
2ページは、1ページの最低賃金額のグラフを令和5年度のものに更新したものです。全体的に最低賃金の水準は1ページよりも上がっております。こちらも同様に、全ての都道府県において最低賃金が生活保護水準を上回っております。
3ページは、47都道府県について、最新の乖離額を示すとともに、その乖離額の変動について要因分析をしたものです。列Cの額は2ページのグラフでお示しした乖離額を時間額に換算したもので、列Dの額が昨年度の目安小委で示した乖離額です。マイナスは最低賃金額が生活保護水準を上回っていることを示しています。そして、列Eが昨年度から今年度の乖離額の変動分ですが、マイナスの幅が大きくなっておりますので、最低賃金と生活保護水準の差が大きくなっていることを意味しています。
資料No.2の説明は以上です。
続いて、資料No.3を御覧ください。影響率と未満率に関する資料です。
第1回の目安小委では全国計の数値については御説明いたしましたが、今回はランク別、都道府県別の数値となっています。
1ページは最低賃金に関する基礎調査によるものですので、原則30人未満の小規模事業者が対象となっています。表は過去10年間の推移であり、一番右の列が令和5年度になります。こちらは注4にあるとおり、各年確認における適用ランクでお示ししています。
未満率をランク別に見ますと、Aが2.1%、Bが1.6%、Cが2.1%とAランク及びCランクが高くなっています。
影響率をランク別に見ますと、Aが23.4%、Bが20.5%、Cが20.1%とAランクが最も高くなっています。
次に、2ページを御覧ください。1ページと同じく、注1のとおり、原則30人未満の小規模事業所を対象とした都道府県別の影響率・未満率になります。
まず、上の破線が影響率ですが、最も高いのが左から2番目の神奈川県、次いで高いのが左から7番目の兵庫県となっております。最も低いのが真ん中右辺りの徳島県です。
次に、下の実線が未満率ですが、一番高いのが右から8番目の岩手県、一番低いのが真ん中辺りの山口県となっています。
次に、3ページを御覧ください。2ページと同様のグラフを賃金構造基本統計調査に基づいて示したものになります。注1にあるとおり、5人以上の事業所が対象となります。
上の破線の影響率では真ん中辺りの北海道が最も高く、右から4番目の鹿児島県が次いで高くなっており、真ん中左辺りの石川県が最も低くなっています。
下の実線の未満率では一番左の東京都が最も高く、真ん中辺りの栃木県が最も低くなっています。
資料No.3の説明は以上です。
続いて、資料No.4を御覧ください。こちらは、令和5年の賃金構造基本統計調査を基にした各都道府県別の賃金分布になります。一般・短時間計、一般、短時間の順で、それぞれA~Cランクの順に都道府県を並べております。こちらは適宜御参照ください。
続いて、資料No.5を御覧ください。最新の経済指標の動向です。こちらは、今年も昨年までと同様に内閣府月例経済報告の主要経済指標を提出させていただいております。主立った指標については第1回の目安小委で御説明しておりますので、適宜御参照ください。
続いて、参考資料No.1を御覧ください。こちらは、前回委員の皆様から御要望にありました資料をまとめています。
2ページです。2ページは、消費者物価指数の昨年の10月から足元までの期間の物価の伸び率を整理したものです。消費者物価指数、持家の帰属家賃を除く総合の対前年上昇率につきましては、2023年10月以降、全国では2.5%から3.9%の伸び率で推移し、2023年10月から2024年5月の対前年同期の上昇率は全国で3.2%となっています。
続きまして、3~5ページは、国内企業物価指数及び消費者物価指数について、上昇率である前年同月比とともに上昇率の積み上げである指数そのものについて表示しています。
まず3ページです。国内企業物価指数の推移については、下段の上昇率を見ますと、5月は2.4%となっておりプラスではあるものの、2023年から下落の傾向にあります。一方で、上段の指数を見ますと、2021年から2022年にかけて急激に上昇した後、2023年から高止まりしているような状況がうかがえます。
また、4ページの消費者物価指数の基礎的・選択的支出項目別指数の推移についても、下段の上昇率を見ますと、5月は基礎的が3.7%、選択的が2.5%となっています。一方、上段を見ますと、両方とも増加で推移しているということが分かります。
5ページは消費者物価指数の推移ですが、持家の帰属家賃を除く総合を含む4つの指標とも、依然として上昇の傾向にあることが分かります。
続きまして、6~7ページです。こちらは業務改善助成金の内訳です。
6ページは実績の概要であり、設備投資の件数が99%です。また、代表的なものとしては、システム関連が約20%で最も多いです。システム関連の具体例としては、在庫管理システム、PC関連としてはプロジェクターなどが挙げられます。
7ページでは事例を紹介しています。事例①では、高知県の農業を行う企業について、業務改善助成金の利用によりローラーコンベアを導入することで、従来手作業で行っていたものを機械化することで、より少人数・短時間で作業を行うことができるようになったというものです。
事例②は、飲食店事業を行う企業について、業務改善助成金の利用によりテイクアウト受注用の予約サイトの開設、店内のレイアウト変更というものを行ったところ、来客数や客単価の増加を含む全体売上げの増加を達成したというものです。
続きまして、8~18ページは、3月に中小企業庁が公表した「取引状況改善状況調査 自主行動計画フォローアップ調査 結果概要」の抜粋です。取引条件の改善状況に関する重点課題について、発注側・受注側に分けてその割合の比較などがされています。
特に17ページの価格決定方法の適正化のうち、左側のコスト全般について、「全て」または「概ね」、「反映した」または「された」と答えた企業の割合は、発注側で令和5年度で64%、受注側で37%となっています。
また、右の労務費について、発注側で55%、受注側で30%となっております。
続きまして、19~30ページ、能登半島地震関係の資料です。
20~23ページは、有効求人倍率等の雇用情勢について載せています。石川県全域、公共職業安定所別の有効求人倍率等、主な産業別の新規求人数について示しています。
24~30ページは、被災地に向けた支援を記載しています。
24ページは、政府の支援パッケージで厚労省関係部分の地域の雇用対策等のみの概要です。例えば雇用調整助成金の特例措置として、地震に伴う経済上の理由により休業、教育訓練または出向を行う場合において、雇用調整助成金の支給要件の緩和や助成率・支給日数の引上げの特例措置が実施されています。
政府パッケージのそれぞれの支援の資料は25ページから29ページです。
また、30ページは、7月1日に創設した地域雇用開発助成金の能登半島地震特例の資料です。
また、実際に現場の状況について石川労働局を通じて関係者に確認したところ、地震の影響については地方最低賃金審議会においてしっかり議論をするため、中央最低賃金審議会への配慮等の要望は特段ございませんでした。
参考資料No.1の説明は以上になります。
続いて、参考資料No.2についてです。前回の目安小委で御説明しました足元の経済状況等に関する補足資料のうち、更新した部分のみ抜粋したものになります。ページ番号は前回の資料と便宜上同じにしています。
1枚おめくりいただきまして、2ページを御覧ください。内閣府の月例経済報告です。6月が新しく出ましたので更新しています。基調判断(先行き)では、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響への言及が追記されました。その他については2~5月と変更はありませんでした。
3ページ、連合の春季賃上げ妥結状況です。前回は第6回集計でしたが、先週、第7回の最終集計結果が出ましたので更新しております。今年の賃上げ率は5.10%、中小で4.45%です。最終集計まで5%超えを維持したのは33年ぶりとなります。
5ページ、日銀短観の雇用人員判断DIですが、今年6月の実績は3月の実績からやや「過剰」方向に増えましたが、引き続き「不足」が「過剰」を大幅に上回っており、人手不足感は強いままです。
次に8ページです。ランク別の有効求人倍率の推移です。今年5月の数値が新しく出ましたので更新しています。引き続きどのランクでも横ばいとなっております。
次に9ページです。ランク別の新規求人数の水準の推移です。引き続きどのランクでも横ばいとなっております。
次に13ページです。日銀短観による業況判断DIです。引き続き改善傾向で推移しています。
次に23ページです。倒産件数及び物価高倒産件数の推移です。帝国データバンク「全国企業倒産集計(2024年6月報)」が公表されましたので、右のグラフを更新しています。物価高倒産は484件発生しており、前年同期に19.1%増となりました。年半期で初めて450件を超え、過去最多を大幅に更新しております。
次に25ページです。倒産件数実数の推移です。足元の推移の4~6月を更新しております。長期的には減少傾向にありますが、足元の推移では上昇傾向にあります。
参考資料No.2の説明は以上です。
最後になりますが、参考資料No.3を御覧ください。
前回御説明しました主要統計資料の更新部分のみ抜粋したものになります。
1ページは、鉱工業生産指数5月速報、倒産件数の6月分、完全失業者数及び完全失業率の5月分が公表されたことを踏まえ、数値を追加しています。
2ページは、毎月勤労統計調査の5月分速報が公表されたことを踏まえ、5月分の賃金等を追加しています。
3ページは、職業安定業務統計の5月分が公表されたことを踏まえ、5月分の有効求人倍率を追加しています。
4ページは、労働力調査の5月分が公表されたことを踏まえ、5月分の性・年齢別完全失業率を追加しています。
5ページは、人数規模別の現金給与総額、定期給与額について5月速報分を追加しています。
6ページは、パートタイム労働者比率の推移について5月速報分を追加しています。
11ページは、月間労働時間の動きについて5月速報分を追加しています。
12ページ、春季賃上げ妥結状況についてですが、連合の第7回最終回答集計結果が出ておりますので、資料の左半分を更新しております。
14ページについても同様に、夏季賞与・一時金妥結状況について、資料上半分の連合の結果を更新しております。
22ページについて、令和6年6月日銀短観による企業の業況判断の追加です。令和6年6月は、3月と比較するとおおむね横ばいです。
23ページ、令和6年6月日銀単価による経常利益です。令和5年度の結果は計画のものから実績に更新されており、第1回目安小委員会で提出した際の計画のものと比較すると、いずれの表の全ての規模・産業についてもプラスの方向に修正されています。
続いて、28ページです。中小企業景況調査の業況判断DIについて、今年4~6月の数字が出ておりますので、追加しております。表の一番右端ですが、合計あるいはどの産業でも1~3月に比べて改善傾向が見られます。
36ページは、定期給与の都道府県別推移について令和5年の数値を追加しております。
37ページは、パートタイム労働者の1求人票当たりの募集賃金平均額について、今年5月分を追加しております。
38ページは、パートタイム労働者の1求人票当たりの募集賃金下限額について、今年5月分を追加しております。
39ページは、平均の月間総実労働時間と所定外労働時間の都道府県別推移について、令和5年の数値を追加しております。
41ページは、都道府県県庁所在都市における消費者物価地域差指数の推移の令和5年の結果を追加しております。
42ページは、都道府県下全域を対象とした消費者物価地域差指数の推移の令和5年の結果を追加しております。
45ページは、常用労働者数の都道府県別推移について、令和5年の数値を追加しております。
資料の説明は以上になります。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。
ただいま事務局から御説明のありました資料について、御意見、御質問がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
よろしいですか。
ほかに、次回以降提出を求める資料がありましたら併せてお願いしたいのですが、現時点ではございませんか。分かりました。
前回、能登半島地震についてどうするかということで、先ほど御紹介にもありましたように、石川局からは地方最低賃金審議会で議論するから中央で特段の配慮は必要ないという意見も出ておりますので、この中央最低賃金審議会目安小委員会ではその点は特段の配慮はしないということでよろしいですね。
ありがとうございます。
では、配付資料に関する議論は以上といたします。
次に、前回の委員会で皆様にお願いをしたとおり、目安についての基本的な考え方を表明いただきたいと思います。
初めに、労働者側委員からお願いいたします。
仁平さん、どうぞ。
○仁平委員 まず、私のほうから全体的な認識を述べさせていただきたいと思っております。
今年の春季生活闘争なのですが、デフレマインドを払拭して、我が国の経済社会のステージ転換を図る正念場であるという認識を持って取り組んでまいりました。多くの労使で問題意識を共有できたことが、先ほども資料にございましたが、33年ぶりの5%台の賃上げ結果に結びついたものと考えております。
しかしながら、労働組合のない職場で働く労働者もたくさんおります。最低賃金の大幅な引上げを通じ、今年のまさに歴史的な賃上げの流れを社会全体に広げていくことが必要であると考えております。
また、これも資料で幾つか御紹介いただいておりますが、物価高が続く中で、労働者の生活というものは昨年以上に厳しさを増しております。とりわけ最賃近傍で働く仲間の暮らしというのは、極めて厳しいし、苦しくなっていると思っております。そして、今年の最低賃金の引上げの期待感はかつてなく高いものだと感じております。こうした状況だからこそ、我々中賃として、社会に向けて、私の賃金も上がるのだという明確なメッセージを発するべきなのではないかと考えております。
最低賃金の意義について、改めてなのですが、最賃法の第1条に書いてあるとおりでございますが、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するとうたわれているところでございます。
労側として、今年も公益の先生方の知見も伺いながら労使で議論を尽くし、結論を得るよう努力してまいりたいと思っております。
引き続いて、各委員から補強意見を述べさせていただきたいと思っておりますが、1点、参考資料4にも一言触れさせていただきたいと思っております。
お手元に参考資料4のカラー刷りの表があると思っておりますが、1ページ目を開いていただきますと、データの出典のところでありますが、最近いろいろなところで話題になっているナウキャストの募集人員の調査、それと厚労省の毎勤統計の地方調査を基に連合で作成させていただきました。
ナウキャストの調査については、調査方法の項に書いておりますが、最近ウェブでの求人も増えているところ、ウェブ上に掲載されている募集賃金を収集したものです。複数の媒体に掲載されている求人や異常値などは削除した上で、金額の幅のあるものについては上下の平均値を取るという形で集計をしたものであります。民間125の求人サイトを毎週集計して収集して足し上げて平均値を出しておりますが、約350万件求人データがあるというものでございます。これは時給表示のものを対象にしておりまして、先ほど御紹介があったハローワークの調査については日給の時給換算も含めているものですから、必ずしも横並びで比較ができるものではございませんが、こういう特徴を持ったものでございます。
2ページに全国、そして、それ以降、47都道府県のものを掲載しておりますが、いずれにいたしましても、募集の時給ということでいくと、ほとんどの都道府県において1,000円を超えているという状況だという資料を提供させていただきました。
それでは、以降、労側のメンバーから補強意見を述べさせていただきたいと思っております。
順番に伊藤さんからよろしくお願いいたします。
○伊藤委員 続いて、私からは最低賃金のあるべき水準という観点で補強意見を述べさせていただきたいと思っております。
冒頭、仁平委員が述べたとおり、本年の春季生活闘争は近年にない水準での賃上げが報告されておりまして、生活防衛の観点はもとより、人材不足が非常に深刻化している背景なども踏まえて、各企業労使が賃金について真摯に交渉して向き合った結果の積み重ねなのだろうと受け止めております。
より具体的にお話しさせていただきますと、私の出身産別の基幹労連は鉄鋼、造船・重機、非鉄といったところが集まっておりますが、こうしたところは決して企業収益が今回十分ではない中においても、大手を除いた定昇別にした賃上げ額の単純平均が1万5690円ということでございまして、300人未満の組織においても1万3332円と時給換算をすれば80円を超えるような高い水準、これまでにない賃上げが果たされております。
また、中小企業において、初任給を3万円や4万円引き上げる企業が散見されておりまして、このことは、大企業と比較して中小企業の操業というのは人に頼る部分が非常に大きいことでございまして、まさに経営が生き残りをかけて人材確保に向けた人的資源への投資、人への投資を決断している証左であるのだろうと考えております。
ただ、私の出身組織や連合の示す春闘結果というのは、あくまで組織労働者の結果でございますので、日本経済を活性化させていくためには、この賃上げを未組織労働者へと波及させることが不可欠なのだろうと考えております。したがいまして、そのためのこの目安の提示なのだろうと私は思っております。
一方、あるべき水準という観点でいきますと、最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいものにしていく。まさにナショナルミニマムの水準を引き上げていかなければならないと考えています。労側としましては毎年こうした主張をしてきておりますけれども、連合として昨年12月に確立させていただいた方針の中では、誰でも時給1,000円をまず達成させていきたいと。そのために早期に目途をつけることを念頭に置きまして、2年程度で全都道府県におきまして1,000円を達成させたいということにさせていただいております。
その上で、中期的には、一般労働者の賃金の中央値の6割、この水準を目指していきたいとしております。この数字というのが、まさに相対的貧困をはかる物差しとして、EU中で参考にしている指標の一つで、加盟国への指令で義務付けられているぐらいでございますけれども、現在の日本の比率というのは47.8%程度にとどまっております。我々としてはこれを改善していくことを中期的な目標に見据えさせていただいております。
政府方針におきましても、昨年の閣議決定において、2035年までに全国加重平均1,500円、こうしたことが明言されるとともに、今年の諮問文にもありますように、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版及び経済財政運営と改革の基本方針2024におきましては、より早く達成ができるよう、所々の環境整備に取り組む旨が補強されております。
以上のことから、冒頭から申し上げております賃上げの動向、また、あるべき水準論といういずれの観点からも、本年の審議では昨年以上の大幅な水準改定に向けた目安を提示すべきだろうと考えております。
私からは以上です。
○永井委員 では、引き続き、私からは主に労働者の暮らしの観点から意見を申し上げます。労働者の生活でございますが、現在の最低賃金は、連合が独自に試算しております連合リビングウェイジを全県で下回っております。そもそも絶対額として最低生計費を賄えていないと認識しています。
その上、昨年の改定以降の消費者物価指数、持家の帰属家賃を除く総合におきましては、2023年10月の3.9%(前年同月比)以来3%前後の高水準で推移しています。
また、政府日銀の2024年度見通しを見ても、いずれも2023年度平均と同程度の水準となっております。
足元の最低賃金近傍で働く労働者の生活を見ましても、昨年以上に苦しくなっていることが伺えます。連合総研の勤労者短観では、世帯年収の低い層ほど1年前と比較した現在の暮らし向きが悪化していると評価しています。また、いずれの年収階層でも半数以上の世帯が何らかの支出を切り詰めているが、世帯年収の低い層ほどその傾向が顕著であります。
また、地域間の格差につきましては、働く人の目線からは地域間の大きな格差の問題があります。前回示された主要統計資料にもありますが、2002年度の時間額統一時に104円であった最高額と最低額の額差は、2018年に224円まで拡大し、昨年改定後は220円となっております。地域格差は地方部から都市部へ労働力を流出させ、また、地方の中小零細企業の事業継続、発展の厳しさに拍車をかける一因となっております。特に地方部から都市部への労働力の流出は、データなどでも出されておりますとおり、特に若年の女性の移動が多いなどと課題が多く指摘されているところでございます。
政府は、6月7日に開催された新しい資本主義実現会議で、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げるなど、地域間格差の是正を図るべきとしておりますが、とりわけ今年度の審議においては、額差の縮小という点を強調して審議に臨みたいと思っております。
昨年はランク制度が見直され、3ランク制での初めての審議でありました。目安としてはランクごとに1円ずつの差をつけたものを取りまとめましたが、続く地方審議では、Cランクの引上げ額、率がA、Bランクを上回りました。地賃の自主性が発揮された結果でございますが、一方で、中賃において議論し配慮した各ランクの引上げ可能性とは異なる展開となったということになります。この実績を重く受け止め、目安額を検討する必要があると考えます。額差縮小につながる目安額、目安制度の在り方に関する全員協議会報告において確認したように、下位ランクの目安額が上位ランクを上回るといったことも含め、中賃としてのメッセージを示し、地方審議における格差縮小に向けた審議の端緒とすべきと考えます。
私のほうからは以上です。
○水崎委員 最後に、私からは雇用情勢、労働市場における募集賃金の状況と企業の支払い能力の観点から意見を述べさせていただきます。
まず、雇用情勢は、完全失業率、有効求人倍率とも昨年審議のとき以来堅調に推移しております。有効求人倍率に関してはCランクが最も高く、次いでBランクが高いというような数字になっております。また、雇用人員判断DIも、製造業、非製造業とも規模区分を問わず人員が不足しているという状況でありまして、特に地方に割合が高いとされる中小企業が最も人員が不足しているというような状況となっています。加えまして、パートタイム労働者の1求人票当たりの募集賃金の下限額は、いずれの都道府県においても各地域の最低賃金を大きく上回っているという状況です。
こうした現状に鑑みれば、特に地方における労働需給が逼迫しているという状況や、現行の各地域の最低賃金で採用するということは、既に困難である状況というのは明白であります。最低賃金の引上げは妥当であるということが言えるかと思います。
特に直近の情勢を見ると、多くの企業が初任給の引上げを行っておりまして、連合の24春季生活闘争の第7回集計では対前年比5.66%増と大幅な引上げとなっています。さきにも述べた状況が、現場の人材獲得競争が過熱していることを推察する一つの要素であると考えます。
他方、最低賃金の引上げと雇用の維持とは相反しないというのが労側の考え方です。前回提出された主要統計資料の中で企業の倒産件数が示されておりますが、確かに23年は8,690件ということで、2015年以来非常に高い件数であるのはそうですけれども、それ以前はさらに多くの倒産件数で推移していたという状況があります。ここ数年の最低賃金の引上げの幅はかつてない上げ幅ではありますけれども、この倒産件数との相関は見いだしにくい状況であるのではないかと考えます。最低賃金の引上げによって企業の倒産が増えるという客観的なデータは存在しないと労側は認識しております。むしろ、人口流出や人手不足が顕著な地域、中小零細事業所において、人材の確保の人材確保あるいは定着の観点からも、最低賃金を含む賃上げは急務であると考えます。
企業の支払い能力の観点で少しお話をさせていただくと、法人企業統計を見ても、昨年の10月の最低賃金改定以降、企業の経常利益も堅調に推移しておりまして、最低賃金審議における一つの考慮要素である通常の事業の賃金支払い能力に関しては、総じて問題ないと見ています。
他方、中小零細事業所へも賃上げを広げるためには、賃上げのための環境整備、あるいはより広範な支払い能力の改善、底上げが重要であると考えます。その観点から、昨年の11月に内閣官房ならびに公正取引委員会から「労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針」が打ち出されております。
ただ、本日追加でお示しいただいた自主行動計画フォローアップ調査を見ると、現状、各企業の価格転嫁はいまだに道半ばという状況であると言わざるを得ないと思います。指針にもあるとおり、最低賃金の引上げ分を確実に価格転嫁できるように環境整備を行うなど、本年10月の発行後に一層の価格転嫁が実施されるよう、政府は方針の実効性のさらなる向上、パートナーシップ構築宣言の普及、促進等を早急かつ徹底的に進めるべきであると考えます。これについては、中賃労側委員として、政府の各種支援策の利活用状況、効果の検証を踏まえた一層の制度拡充と利活用の促進、推進を求めていきたいと考えます。
私のほうからは以上です。
○仁平委員 以上です。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。
では、引き続いて使用者側委員からお願いしたいと思います。
○大下委員 それでは、私から初めに基本的な見解を述べさせていただき、その後、3名の各委員から補強の発言をさせていただきたいと思っております。
初めに、昨年の審議を少し振り返っておきたいと思います。中賃の目安審議においては、特にこの2年間、法に定める3要素、生計費、賃金、支払い能力、このデータに基づく審議ということで、公労使で一致して取り組んできたと受け止めております。その結果、昨年の審議では中でも物価高騰による生計費の上昇を特に重視して、過去最高となる目安額を示すこととなりましたが、その後、御案内のとおり、各都道府県の地賃の審議では半数を超える24の県で目安を上回り、Cランクを中心に最大8円という大変大幅な上乗せが相次ぐ結果となりました。こうした結果、最賃引上げの影響率21.6%とかつていない数字になっています。また、日本商工会議所が本年1月に実施した調査でも、今の最低賃金額を負担と感じている企業は65.7%、去年から10.6ポイントとこれもかつていない増加になっています。また、これに対する支援としての業務改善助成金の昨年度の利用実績は、件数で1万3603件、前の年の2.4倍、執行額で151.6億円、3.3倍ということで急増しています。
最賃引上げに向けて、生産性を高めて賃金の引上げを図ろうとする企業が増えているということは望ましいことと言えますけれども、一方で、こうした数字は、昨年度の大幅な引上げがどれだけ企業の経営に影響を与えたのかというのを表しているものとも考えられると思います。
我々使用者側としても、成長と分配の好循環の実現に向けて賃金を上げていくことは極めて重要と認識をしておりますし、傘下の各企業に対して積極的に賃上げをするように働きかけをしております。また、原資の継続的な確保に向けて、企業の生産性向上あるいは労務費を含む価格転嫁の推進を様々な形で働きかけているところであります。
しかしながら、働く人の生活を支えるセーフティーネットということで、全ての企業に一切の例外なく、かつ罰則つきで適用される最低賃金の引上げと各企業の経営判断による賃金の引上げは、意味合いが異なる部分があると我々は考えています。物価と賃金の上昇局面が続いて、賃上げに対して社会的な期待感が非常に高まっている中で、中央、地方の最低賃金の審議がそれに押されるような形で引上げの方向に加熱して、この2年間我々が取り組んできたデータに基づく冷静な審議、こういったものが損なわれるということを強く懸念しています。
今年度の目安審議に当たりましては、改めてデータに基づく納得感ある審議決定、というこの原則を引き続きしっかり徹底するとともに、目安の根拠となるデータをできるだけ明確に示すことなどによって、納得性をより高めて、各地賃における建設的な審議にしっかりと波及させる。このことが非常に重要と考えております。
厚生労働省におきましても、各地方労働局を通じて、隣県との過度な競争意識に警鐘を鳴らし、データに基づく審議の徹底を働きかけていただくとともに、参考となる地域別の各種統計データの例示、提供等に努めていただきたいと思っております。
また、発効日についても、10月にとらわれることなく、地域の事情を勘案した審議を尽くすことを最優先に、各県の自主性を発揮した審議となるように御指導いただきたいと思っております。
以上のことを踏まえて、データ、3要素について我々が今どう認識しているか、そして、使側として今年度審議にどう臨みたいと考えているのか、最後に述べさせていただきたいと思っております。
今年度の審議に当たって、大臣からの諮問文にもあったとおり、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、また、骨太の方針、これらの配意が求められているということは承知をしておりますが、その上で、使用者側としては、例年どおり最低賃金決定の3要素の条項を総合的に示すと我々は考えております、賃金改定状況調査の結果、特に第4表の賃金上昇率を重視する。この基本的な考え方は一切変わりございません。
その上で、3要素の各状況を足元で見ていきますと、生計費は、5月の消費者物価指数、持家の帰属家賃を除く総合で3.3%、引き続き高い水準にあります。使用者側としても、物価の高騰がこうして続いている原下の局面においては、最賃近傍で働いていらっしゃる方々の可処分所得に対する物価上昇の影響は十分考慮すべきと考えております。
続いて賃金について見ますと、経団連第1回集計で中小の賃上げ率3.92%、日商が今期初めて中小企業を対象に実施した調査では、正社員の賃上げ率で3.62%となっております。同じ日商の調査では、74.3%の企業が今期の賃上げを実施または実施予定と回答しております。これもかつてない数字です。中小・小規模事業者を含めて、賃上げの動きは着実に広がっていると認識をしております。
最後に支払い能力ですけれども、いろいろな数字の見方はあるかと思いますが、少しDIを取って確認してみますと、中小企業庁の中小企業景況調査4~6月期では、全産業で業況判断DIがマイナスの15.7、前の期から2.6ポイント改善で、なかなか大きな改善というところまでは至っていないかなと思っておりますし、原材料・商品仕入単価DIは70.3ということで依然として非常に高い水準になっています。
こうした3要素の足元の状況、また、賃金改定状況調査第4表の結果等から、我々としても今年度最低賃金を一定程度引き上げることの必要性は十分理解をしております。
では、引上げ幅をどう考えていくかというところですが、その中で先ほどの日商調査について賃上率の分布を見てみますと、5%以上の賃上げが全体の24.7%、約4社に1社。賃上げ率0~1%未満、それから、賃下げ、、この2つを足した合計が全く同じ24.7%、4社に1社。企業の対応に一種の二極化の傾向が見られると考えています。
また、賃上げを実施する企業についても、そのうちの6割が業績改善が見られない中でのいわゆる防衛的な賃上げという状況は依然変わりません。
厳しい人手不足の中であっても、賃上げになかなか取り組むことができない企業が相当数あるという背景には、労側の御発言にもありました価格転嫁の問題があると考えています。企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査では、7割以上の転嫁ができている割合は、コスト全般で34.9%、労務費にしますと28.4%にとどまっています。また、およそ2割の企業が全く転嫁できていないと答えています。官民を挙げてこの取組をしていますけれども、いまだ道半ばという状況かと思っております。
最低賃金の審議に当たって、賃上げ率を全体の平均値で見るとともに、こうした賃上げに取り組めない、あるいは最低賃金の引上げ分も含めて労務費等のコスト増を十分価格に反映できていない企業が相当な数ある。この状況については十分考慮して審議すべきと考えております。中小企業の支払い能力を高めて、最低賃金をはじめ、賃金引上げが継続的に実施できる環境整備を一層進める必要があるということを最後に強調しておきたいと思います。
私からは以上であります。
続いて、新田委員、佐久間委員、土井委員の順番で補強の御意見をお願いしたいと思います。
○新田委員 経団連の新田でございます。
今の大下委員の見解表明と一部重複する部分があるかもしれませんが、私から基本的な考え方等と経団連の取組状況等を御紹介したいと思っております。
最初に、この目安小委員会は、果たして何のために行っているのかということについてであります。目安小委員会は、様々なデータに基づいて、しっかりと審議を行い、各地方の最低賃金審議会における具体的な金額審議に資する目安を示すということが責務だと考えています。
10月上旬発効が非常に多い現状は承知しておりますが、ただ、それに間に合わせるために我々の目安審議のリミットを区切ることは本末転倒と思っております。少なくとも、例年同様に、公益委員の見解がもし示された場合、それを地方に示すことについては、労使双方がやむなしという判断ができる結論に至るよう、しっかりと審議を尽くしていきたいと思っております。
そして、今年度の目安審議に当たっては、大下委員からもありましたように、最低賃金法に定める3要素に関する足元のデータを見ます限り、最低賃金を一定程度引き上げることの必要性については十分に理解をしているところでございます。
その一方で、繰り返しになりますが、我々が議論しているのは、募集賃金を含めた民間企業の賃金と大きく異なり、最低賃金法という極めて強い強行法規を根拠として、労働者を1名でも雇用する全ての使用者にあまねく適用され、そして、違反した場合には50万円以下の罰金が科されるという、法で定められた最低賃金であるということを、我々は忘れてはいけないと思っております。
こうした性格を持つ最低賃金ですので、政府においては、最低賃金引上げの影響を受ける可能性の高い中小零細企業、中小企業団体の方々の意見に十分に耳を傾ける必要があります。そして、継続的な最低賃金引上げに対応できる環境の整備と支援が不可欠であると思っております。
加えて、中小企業自身がしっかりと賃金引上げの原資を継続的に確保できるように生産性の改善・向上に取り組むことはもちろん、そうした主体的に取り組んでいる中小企業をサプライチェーン全体でサポートすべく、労務費を含めた適正な価格転嫁をより促進していく必要があります。
そうした活動の一環として、経団連は、これまでも会員企業にとどまらず、その年の春季労使交渉の基本的な考え方について、地方を回って説明する際に、地元の経営者の方々等に対し、政府のパートナーシップ構築宣言への参画を呼びかけるとともに、既に宣言をされている企業においては、その実効性の担保を強力に働きかけてまいりました。
加えて、今年の5月に経団連の企業行動憲章の第2条を改定し、パートナーシップ構築宣言に基づき、サプライチェーン全体の共存共栄を図ることを明記いたしました。
経団連としては、引き続き今回改定した憲章の周知徹底と実践の働きかけなどを通じて、取引条件の改善と適正な価格転嫁に取り組み、そうした流れをぜひ社会的な規範にしてまいりたいと考えております。
最後に、中小企業自身の生産性の改善・向上への取組、サプライチェーン全体でのサポート、そして、政府による環境整備等支援などを踏まえまして、適切な最低賃金引上げの目安ということについて、この場におられる先生方とともに考えていきたいと考えております。
私からは以上です。
○佐久間委員 全国中小企業団体中央会の佐久間でございます。
私からは、「中小企業の現在の景況感について」を中心にお話申し上げたいと思います。
中小企業の景況感は、私ども全国中央会が都道府県中央会ともに実施しております中小企業月次景況調査によれば、これは6月25日に発表したものが直近になり、ホームページでも公開しておりますが、電気やガス、そして、ガソリンといったエネルギー価格や原材料の高騰に加え、人件費の上昇等により、製造業の景況感というのは昨年度の最低賃金審議の時期に比べても数値は悪化してきています。
業界の中には、「原材料等の値上げや人件費の高騰を受注価格に反映することが困難な状況が続いている。」(鉄鋼、金属製造業関係)とかですね。それから、「株価上昇に伴い、社会的に賃上げの機運が高まり、賃上げをしたいが、価格転嫁ができない現状である。業界では、受注状況は改善しているが、原材料価格の高騰が続き、収益状況が好転するまでには至っていない。」(プラスチック製品製造業)。また、「元請企業も値上げを受け入れるポーズはあるものの、実質は値上げに拒否していて、対応に苦慮している。」(生産用機械・器具製造業)とか、あとは人件費分を含めた価格転嫁が十分に進んでいない声があります。
また、非製造業においても、「円安等による物価高の影響で消費マインドが低下したことから、景況感は低下してきており、例えば食品の小売業では高騰する水道光熱費、人手不足、最低賃金の上昇による人件費増加分を経営努力だけでは価格転嫁できず、赤字や減益から脱却できない。」(各種商品小売業)とかですね。それから、「物価上昇による消費者の買い控えで売上げが伸びない一方で、アルバイト等の賃金は上がってきている。中小企業は余力がなく、賃金を上げられないのが現状で、補助金とか支援策が欲しいぐらいである。」(商店街関係組合)とか、さらに、人手不足、人材確保の問題が依然として多くの業種で収益力の足かせとなっており、賃上げの原資確保に苦慮する事業者の声が私ども中央会に届いております。
中小企業を圧迫するコストは増加する一方で、規模が小さい企業ほど価格転嫁を実現できておらず、賃上げのための原資の確保が困難な状況です。特に「中小対中小」の取引においては適正な価格転嫁の実現が難しく、全体的な底上げにまだ至っておりません。
財務省が、毎年9月に発表しております法人企業統計の年度版、一番新しいものだとデータは2022年度にはなるのですけれども、労働分配率では資本金規模1000万円未満、そして、1000万から1億円未満の中小企業、10億円以上のいわゆる大企業との間ではやはりまだまだ格差が大きく、中小企業は大企業に比べ大幅に労働分配率が高い状況が続いています。労働分配率の大きな開きがあるということは、労務費、人件費が十分に価格に転嫁されず、さらにはマークアップ率の上昇にはつながっていないことを示しています。
中小企業における賃上げの原資の確保のためには、国や行政機関による団体協約の仕組みや活用事例の周知や後押し、そして、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の浸透度の実態調査による検証、下請法の遵守、強化等、具体的な施策を国や地方行政、そして、事業所間においてもさらに進めていくことが必要と考えています。
いまだ価格転嫁、そして、生産性向上の過渡期にある中で、中小企業に通常の事業活動の支払い能力を超えた最低賃金の過度な引上げによる負担を負わせないよう、御配慮をお願いしたいところでございます。
以上です。
○土井委員 全国商工会連合会の土井でございます。
私からは、特に地域、それから、事業規模の観点から申し上げたいと思います。
私ども商工会というのは、御存じかもしれませんが、非常に地域が厳しいところにございます。農林漁業を中心とする産業の地域であったり、中山間地域あるいは離島であったりというところの地域を我々は担当しております。
会員が約80万者おりますが、そのうち従業員が50名以上いるというのは2.2%しかありません。多くが小規模企業となっています。
その小規模企業が今どのような状況かといいますと、先ほどから御紹介のある中小企業景況調査では、中規模企業から比べても景況感は約5ポイント低く、より厳しい状況にございます。また、そういった企業については、売上げは何とか確保しても、採算が取れていません。調査では、売上げと採算の差が大体15%ぐらいとなっており、なかなか価格転嫁ができていない状況でございます。
そうは言っても、やはりこの物価高の中、我々の会員企業においても、従業員の福利厚生であるとか生活の向上といったことを考え、賃上げに懸命に取り組んでいる状況でございます。ただ、我々としても独自で調査をしておりますが、先ほどから御紹介いただいている連合さんあるいは経団連さん、日商さんの調査に比べれば、賃上げの実施状況も賃上げ率もやはり低い数字が出ています。
規模別に並べてみると、小規模企業の中でも企業規模、従業員規模、売上規模ごとに大きくなればなるほど実施率、賃上げ率等が高くなるといったところで、我々の地域の中でも規模による格差が生じています。
続いて、価格転嫁の状況も詳しく申し上げますが、中小企業庁さんのフォローアップ調査に比べても、我々の地域の経営者の実感は、原材料費、エネルギー費、労務費のどの項目についても、価格転嫁できている割合が低く出ています。特にBtoB企業については政府のいろいろな取組をやっていただいているおかげでまだ価格転嫁が進んでいるのですが、消費者向け、BtoCのところのほうがやはり価格転嫁が厳しくて、賃上げの実施についても、BtoBが中心の企業に比べても、BtoC中心でやっていますといったところの賃上げ率が低くなっています。物価高の中、消費者の生活もなかなか厳しいので、価格転嫁への理解がなかなか進まず、BtoCの企業が苦戦している傾向にございます。
また、先ほど大下委員のから、企業は賃上げに取り組んでいるが、なかなか原資がなくて防衛的な賃上げになっているというお話がありました。防衛的な賃上げになっているということは、それだけ発注先に払う原資が少なくなっているということで、そこから受注する下請中心である小規模企業はより厳しい状況になっているということです。
先ほど倒産のお話がございました。倒産件数は昨年に比べて増えて、長期的な減少傾向から転じて増加の傾向にあります。昨今、民間企業2つから最新の上半期の情勢が発表されましたが、倒産件数が増加して、負債総額は減少しております。ということは、規模の小さい企業が、今のコスト増に耐えかねて倒産しているということです。また、倒産に至らなくても、昨今のコスト増、あるいは労務費の高騰によって、事業を継続することを諦めて廃業してしまうといった企業も多く出ております。
今後も倒産だけではなくて、廃業の懸念も大きいということについては改めて申し上げたいと思っております。特に我々の地域であると、地域で事業を営んでいる方というのは地域を守る役割も果たしております。そういった企業が倒産、廃業でなくなるということは、貴重な地域住民の生活や雇用の場が失われるといったことで、地方の衰退に拍車をかける懸念を強く持っております。
以上、地域の中小企業、小規模事業者というのを改めて申し上げましたが、地域の事業者は地域住民の生活と雇用を支えるセーフティーネットでもあります。物価上昇局面の中、我々としても従業員の処遇改善というのは非常に重要だと思っておりますが、働く企業がなくなってしまっては処遇改善もしようがないわけで、この両立を図っていく必要があると思っております。
その点からしますと、最低賃金が、どのような企業の規模でも、日本全国どこにあっても、また、従業員さんの能力、あるいは労働条件がどのようなものであっても、働ければ法律的に払わなければいけないといった最低額だということを改めて皆さんと共有させていただいて、物価高の影響にも注意しつつ、企業の通常の事業の支払い能力を重視していろいろ議論させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○藤村委員長 どうもありがとうございました。
ただいま、労働者側委員、使用者側委員それぞれの御意見を伺いました。
御質問等がございましたらお受けしますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
今、双方のお話を伺っておりますと、賃金を上げる。これは情勢としては必要だよね。ただし、どれだけ上げられるかというのはそれぞれの御主張があると思います。
私ども公益もちゃんと説明のつく賃金引上げ目安を示したいと思っております。そのためには、しっかりと時間を使って議論を尽くすということが今年も必要だと考えます。
ただ、この場でやり合ってもなかなか話は進まないと思いますので、これから公労、公使で個別にお話を伺いながら、その先どうするかを考えていきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○藤村委員長 ありがとうございます。
では、まずは公労会議から始めたいと思いますので、事務局からの連絡事項をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 それでは、まず、公労会議から行うとのことですので、使用者側委員の皆様は控室へ御案内させていただきます。
(使用者側委員退室)
○安藤賃金課長補佐 それでは、傍聴者の皆様は御退室ください。
(傍聴者退室)
<第2回全体会議>
○藤村委員長 では、ただいまから第2回目の全体会議を開催いたします。
本日は、本年度の目安取りまとめに向け、労使双方から基本的な考え方をお出しいただきまして、それに基づいて議論をしてまいりました。議論の中では、労働側からはさらなる引上げの重要性、使用者側からは、本日提出された資料も含めて、データに基づいた審議をしっかり行うことを求める意見がありました。
労使双方、最低賃金を引き上げることの必要性について認識は一致しておりますが、何を重視して引上げにつなげるのかというこの点については、引き続きさらなる議論が必要だと考えます。
そこで、次回の目安小委員会において引き続き御議論をいただき、目安の取りまとめに向けて努力をしていきたいと思います。そういう進め方でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○藤村委員長 ありがとうございます。
それでは、次回の日程と会場について事務局から連絡をお願いいたします。
○安藤賃金課長補佐 次回の日程と場所については、追ってお知らせいたします。
○藤村委員長 それでは、以上をもちまして、本日の目安小委員会は終了といたします。
どうもお疲れさまでした。