- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 医政局が実施する検討会等 >
- ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ >
- 第7回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ 議事録
第7回ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ 議事録
日時
令和6年7月23日(水)17:00~19:00
場所
AP虎ノ門
(オンラインとのハイブリッド開催)
(オンラインとのハイブリッド開催)
議題
- 有識者等からのヒアリング
- 意見交換
- その他
資料
議事
- 議事内容
- ○中田研究開発政策課長
事務局でございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから第7回「ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ」の開催をいたします。
構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、構成員全員出席の予定と伺っておりますが、一部、遅れての御参加の方もいらっしゃるということでございます。
ただいま入られたということです。
また、構成員の交代がありましたので、御紹介させていただきます。生命保険協会から代表を務められております遠山優治様が6月末に退任されまして、小谷修一様が7月から構成員に就任されております。生命保険協会は輪番制で構成員を選定しているということで、7月からの交代となった次第でございます。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1から4、参考資料1から4までございますので、御確認いただければと存じます。
本ワーキンググループは公開としておりまして、議事録につきましては、各構成員への確認の上、後日公開したいと考えております。
続きまして、会議の進め方について簡単に御説明させていただきます。御発言がある際には挙手ボタンを押していただければと存じます。また、会場のほうから御指名させていただくような形にいたしますので、名前をおっしゃられてから御発言いただくようにお願いいたします。
また、御発言されない間は、マイクをミュートにしていただきますようにお願いいたします。また、音声が不安定になるような場合もございますので、その際には一旦ビデオをオフにするなどの対応をお願いしたいと存じます。
傍聴に際しましては、携帯電話等の音の出る機器につきましては、電源を切るか、マナーモードへの設定をお願いいたします。
頭撮りはここまでとさせていただきまして、以降の運営を座長にお願いいたします。
○中釜座長
座長の中釜です。構成員の先生方、本日もよろしくお願いいたします。
早速、本日の議事に従って進めさせていただきます。
議題1が、有識者等からのヒアリングとなっています。
それでは、まず、事務局から資料1について説明をお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
本日、有識者とのヒアリングを予定しておりますので、その進め方について、先に事務局から御説明申し上げたいと思います。
資料1を御覧いただきまして、2ページを御覧ください。
前回に引き続きまして、今回もヒアリングをお願いしたいと思っておりますが、本日はテーマといたしまして、生命倫理への適切な配慮の確保と、あと、差別等への適切な対応の確保をメインテーマとさせていただきたいと思っております。
今日の議論の進め方でありますが、患者等の視点から、今後、基本計画に盛り込むべき事項を中心にヒアリングをさせていただきまして、そのヒアリングの内容を踏まえて、論点について議論を深めていきたいと思っております。
3ページ目、4ページ目につきましては、これまでの会議資料でも御説明させていたとおり、今後の取りまとめに向けた大まかなスケジュール。
また最後、4ページ目は、取りまとめとして設ける項目について、念のため、参考資料として添付させていただいております。
事務局からの説明は以上であります。
○中釜座長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの説明に関して何か御質問、御意見はございますでしょうか。今後のスケジュール等を含めてですが、よろしいですか。
特にございませんので、先に進めさせていただきます。
議題1の有識者等からのヒアリングに際して、本日、3名の構成員の先生方から資料2から4が提出されておりますので、その資料に基づいて御説明をお願いいたします。
各構成員からの御発表時間はおおむね15分程度をめどにしていますので、よろしくお願いいたします。
では、最初、天野構成員から説明をお願いいたします。
○天野構成員
本日は貴重な機会をいただきありがとうございます。私、がん患者団体の立場から意見を申し述べたいと思います。
次のスライドをお願いします。
遺伝に関する偏見や差別に関して、国内での一般市民を対象とした先行調査としては、厚生労働省研究班の武藤班による調査が2017年と2022年に行われています。回答者の約3%が何らかの不利益を受けたと回答しています。また、遺伝情報の不適切な利用や差別に対する罰則つきの法律の必要性については、7割以上の方が必要だと回答しています。
次のスライドをお願いします。
そこで、私たち全国がん患者団体連合会とゲノム医療当事者団体連合会ではがんの当事者の方々を対象に、また、日本難病・疾病団体協議会など難病3団体では難病の当事者の方々を対象に、それぞれ、遺伝に関する偏見・差別や不快な経験の緊急調査を実施しました。調査の実施とデータ整理、また、資料作成に当たっては、東京大学医科学研究所の武藤香織教授から御支援をいただきました。
次のスライドをお願いします。
調査への回答。これは7月17日までに集計した速報値となりますが、がんは延べ70名の方々に御回答いただきました。一つ一つの回答、胸が潰れる思いで拝読いたしました。このうち、病気そのものに関する経験である17事例を除きまして、遺伝に関する経験の総数は71事例となりました。なお、病気そのものに関する経験の事例についても、偏見や差別的な言動、誹謗中傷とも言えるような内容が含まれていることには留意が必要です。
次のスライドをお願いします。
回答者の属性ですが、がん・難病ともに女性が多く、年齢についてはがんは50代が多いですが、小児がんに関する事例もありました。がんでは2020年代に経験した事例が7割を超えており、がんゲノム医療の普及が影響している可能性が示唆されるかと思います。
次のスライドをお願いします。
当事者の回答を9つに分類しました。それぞれの分類に対する対応策として、遺伝学的検査の受検をめぐる出来事、腫瘍に詳しい医療従事者からの発言に傷ついた経験、遺伝に詳しい医療従事者からの言動に傷ついた経験に対しては、医療従事者への教育と啓発が必要と考えます。同じく、家族・親族からの発言に傷つく経験、周囲の人や友人からの傷つく発言、ネットニュースへの反応に関する経験に対しては、社会全体への啓発、あるいは誹謗中傷への対応。個人情報の取扱いに関する経験、治療と就労の場面での経験、保険加入に関わる経験に対しては、制度設計、あるいは関係者への教育や啓発といった対応策は必要と考えられます。
次のスライドをお願いします。
腫瘍に詳しい医療従事者からの発言に傷ついた経験として、例えば「遺伝子発見しても治療できないし、治療する必要もない」「遺伝性腫瘍の検査は時間とお金の無駄」「医師がリスク低減手術に無理解、強く批判」「わたしは遺伝性腫瘍とは距離を置きたい」「ゲノム医療なんて流行らない、予防が進んだら製薬企業が儲からない」「乳がんになることが運命づけられた人たち」といった発言の事例であるとか、あるいは遺伝に詳しい医療従事者の発言に傷ついた事例もありました。医療従事者への教育と啓発、あるいはゲノム医療に関わる専門人材の養成が必要と考えられます。
次のスライドをお願いします。
家族や親族、周囲の人や友人からの発言に傷つけられた事例、あるいは誹謗中傷とも言えるような事例もありました。例えば子孫を残すな、社会から消えろ、表だった行動をするな、家の恥、遺伝子技術が発展すれば遺伝子に異常を持つ人たちが排除されてよい世の中になるといった事例もありました。こういった事例に対しては、社会全体への啓発、あるいは誹謗中傷への対応が必要と考えられます。
次のスライドをお願いします。
個人情報の取扱いに関する経験、あるいは治療と就労の場面での経験もありました。例えば上司が遺伝性腫瘍のことを報告したメールを関係者へ転送していた。上司が「またがんになられたら困る」として、契約更新不可の可能性に言及した。遺伝性腫瘍を伝えて契約打ち切りとなった前例を知っているため、同じ目に遭わないよう、検査や手術、治療を会社に隠すのに苦労している。あるいは遺伝性腫瘍のリスクを伝えると、保険加入を拒否された事例に対しては、制度設計、あるいは関係者への教育や啓発が必要と考えられます。
次のスライドをお願いします。
なお、補足ですが、本調査は、がん当事者の事例や心情を明らかにすることを目的としておりまして、事実関係の正確さについては確認はしていません。また、本調査に協力いただいた方々につきましては、つらい記憶を思い出していただくなど、精神的な負担の大きい調査に対して、短期間に御回答くださったことに対して改めて心から感謝申し上げます。
次のスライドをお願いします。
全国がん患者団体連合会では本年5月に、超党派「適切な遺伝医療を進めるための社会的環境の整備を目指す議員連盟」に対して、また、本年6月には、塩崎厚生労働大臣政務官に対して、それぞれ「ゲノム医療推進法に基づく基本計画に関する要望書」を提出いたしました。
次のスライドをお願いします。
要望書の中で、本日のテーマに関係する箇所を赤字で示しております。まず、法第3条に関しては、法務省の17項目から成る「啓発活動強調事項」に「遺伝に起因する偏見や差別をなくそう」を加えることを求めています。
次のスライドをお願いします。
法第16条に関しては、認定遺伝カウンセラーに関して身分保障と職務権限の明確化を含め、その養成を進めるとともに、ゲノム医療診療科を標榜診療科とすることができるよう検討するよう求めています。法第16条に関しては、金融庁による通知やFAQの発出と公開、厚生労働省による通知やFAQの発出と公開、治療と仕事の両立支援ガイドラインへの禁忌事項の追記、また、マイナポータル医療保険情報取得APIにおける個人情報の適切な保護の在り方の検討などを求めています。
次のスライドをお願いします。
法第17条に関しては、DTC(遺伝子検査ビジネス)におけるガバナンス強化のため、経済産業省は法第17条第2項に対応する通知やガイドラインを検討するとともに、厚生労働省もDTCにおける規制等に関わる体制とするよう求めています。法第18条に関しては、学校での教育を含む国民への啓発と社会環境の整備を進めるための施策を検討するよう求めています。
次のスライドをお願いします。
ゲノム医療推進法においては、ここに記してあるように「差別」についての定義が記されていますが、海外における遺伝情報差別禁止に関する法律における内容、また、日本のゲノム医療推進法に示されている「差別」の定義、言わば狭義の「差別」と申しますか、これを考慮しますと、雇用分野と保険分野における社会的な不利益への対応、具体的には、金融庁においては通知やFAQの発出と公開、厚生労働省においては通知やFAQの発出と公開、治療と仕事の両立支援ガイドラインへの禁忌事項の追記などを検討してはどうかと考えます。
また、患者や家族へのアンケート等の結果からは、ゲノム医療推進法に示されている「差別」の定義には必ずしも当てはまらない「差別」、言わば広義の「差別」というべきものですが、これが存在することも示唆されることから、一般的な人権擁護の観点から、法務省においては「啓発活動強調事項」に「遺伝に起因する偏見や差別をなくそう」を加えることを前提として、研究班等による事例の調査収集と分析を通じて、広義の「差別」についての検討を進めてはどうかと考えます。
次のスライドをお願いします。
具体的な事例ですが、例えば米国の雇用機会均等委員会では遺伝情報と差別に関するFAQを公開しています。
次のスライドをお願いします。
FAQでは、遺伝情報と差別の例にはどのようなものがありますかなどの具体例を挙げています。
次のスライドをお願いします。
がん患者の就労支援に関しては、例えば企業における「人事労務担当者」の守秘義務は現状では曖昧なままです。
次のスライドをお願いします。
また、企業に課せられている、いわゆる安全配慮義務と遺伝に関する差別とのバランスを考慮する必要があります。例えば具体的な事例として、先日「熱中症リスク 遺伝子で判定 理研発新興が検査サービス 工場や建設現場で需要」という報道がありました。遺伝子検査ビジネスにおける一般論とはなりますが、科学的根拠の有無がまず重要になってきますし、もし科学的根拠が乏しければ、それは単なる差別となってしまいます。また、科学的根拠があったとしても、この事例にあるように、企業の安全配慮義務の下で、どこまでの活用が許容されるのかという議論も必要と思われます。
次のスライドをお願いします。
金融庁においては、保険会社に対して既にゲノム情報による不当な差別に対する対応要請を保険会社に対してしていただいているところです。
次のスライドをお願いします。
ただ、以前にプレゼンテーションしていただきまして、このプレゼンテーションの内容は、よく読めば分かるのですが、実際のところ、遺伝学的検査を実際に受けている患者さん・御家族にはこういった取扱いになっていることは理解が難しいです。また、医療関係者や現場の保険会社の担当者でも理解が不十分な場合がしばしばございますので、金融庁による公的な通知やFAQが必要であると考えます。
次のスライドをお願いします。
繰り返しとなりますが、法務省に対してはかねてよりゲノム医療当事者団体連合会からも要望が寄せられていますが、改めて「啓発活動強調事項」に「遺伝に起因する偏見や差別をなくそう」を加えることを前提として、研究班等による事例の調査収集と分析を通じて、広義の「差別」についての検討を進めていただきたいと考えます。
私からは以上です。御清聴いただきましてありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。
では、引き続き、森構成員からの御発表をお願いいたします。
3名の構成員の発表が終わってから、まとめて御意見を伺いたいと思います。
では、森構成員、よろしくお願いいたします。
○森構成員
発表の機会をいただきましてありがとうございます。
音声は大丈夫でしょうか。
○中釜座長
大丈夫です。
○森構成員
本日は、遺伝に関する差別について、私たちの体験から具体的な内容をお聞きいたしましたので、発表させていただきます。
次をお願いします。
具体的な事例をお聞きするために、難病の患者団体が多く加盟している3つの団体にお願いし、回答フォームにて事例を共有いただくように案内いたしました。
次をお願いします。
回答フォームでは、性別、年代、疾患名や回答の経験はいつなのかを尋ねています。寄せられた回答の中には、生きていくには病気を隠さざるを得ない。または病名は伝えているが、遺伝の可能性がある病気だということは言っていない。知られては困るといった患者・家族も多くおられることが分かりました。本日の事例発表では、病名は入れず、どのような差別や不快な思いをしたのか、整理した形での発表とさせていただきます。
なお、寄せられる差別事例に接しまして、私自身もつらくなるほどの衝撃を感じました。寄せられた事例は大変つらい苦悩であることから、つらい経験がよみがえる心配のある方は特に御注意いただきたいと思います。
次をお願いします。
こちらは今回の目的、調査・分析方法ですが、がんと同じく、今回の事例を集めるために、東京大学医科学研究所の武藤香織教授の御協力をいただき実施いたしました。
次をお願いします。
本日の発表では、7月8日から19日に寄せられた150件の事例の中で、遺伝に関する差別や偏見などがあると分かるものを有効回答として、77事例について分析いたしております。
次をお願いします。
今回のアンケートでは、女性からの回答が多く、年齢層が幅広い方から寄せられました。経験した時期は2010年以降が7割を超え、差別は過去のことではなく、また、数年以上にわたって継続して起きている事例も11.7%あり、長い療養期間に影響しています。
次をお願いします。
寄せられた回答を大きく10のカテゴリーに分類し、さらに必要な対策として、こちらにある5つに整理しています。寄せられた回答では、法で規定される当該ゲノム情報に基づく不当な差別に該当するものはほとんど見当たりませんでした。
次をお願いします。
ここから、カテゴリー別にまとめた事例を箇条書きで挙げています。寄せられた中の一部ですが、紹介させていただきます。
まず「1.遺伝学的検査の受検をめぐる出来事」では、親戚にこの病気の疑いがあった際、有無を言わさず家族全員が遺伝子検査を受けさせられた。自費で遺伝カウンセリングを受けて、発症前検査を受けることを決定していたが、臨床検査センターに断られた。
また、こんな書き込みもありました。50代女性で、2年間、遺伝子検査を待っています。先生からは、病気の原因が分かるだけで、治療には関係ないので、慌てる必要はないと言われています。確かに、インターネットなどでゲノム医療を調べると、がん患者さんは始まっていますが、ほかには出てきませんでした。ゲノム医療が安全で有効なのであれば私は賛成ですが、そんな話は誰ともしませんし、どこか非現実的な雰囲気があります。
「2.医療従事者からの言動に傷つく経験」についても何件もの書き込みがありました。かかりつけ医に、発症前検査について相談したら批判された。主治医から「親子で体形が違うから遺伝子検査は受けなくてよい」と言われた。主治医から「なぜ出生前診断を受けなかったのか」と言われた。産業医から「遺伝性疾患は新薬を待っていても意味がない」と言われた。不妊治療で遺伝性神経難病の家系であることを伝えたら、顕微授精を急に打ち切られた。
次をお願いします。
「3.家族や親戚からの発言に傷つく経験、遺伝の原因」で大変多くの事例が寄せられました。実の親から、「うちの家系にはそんな病気はない」と言われ、疎遠になっている。家族関係が崩壊したとか、家族・親戚とも断絶した方もおられます。
例えば40代男性で、遺伝性疾患が原因で、小さな子供もいた幸せな家庭が、残念ながら、切り裂かれてしまいました。診断された後、まず、一家全員で悲しみに暮れ、治療法のない現状を恨んでしまいます。残念ながら、自分の場合、本当は知っていたのではないか。このような疑いから離婚を迫られていて、家族が離れ離れになってしまいました。
祖父から、病気の孫について、「うちの血筋にそんな病気は出ない、早く死んでほしい」と言われた。義母は、人前では親切なのに、人気のないところで「うちには同じ疾病の人はいないからそちらのせいだ」と言ってくる。親族から、あなたの母の血のせいだと言われたなど、多く寄せられています。
次をお願いします。
「4.家族や親族からの発言に傷つく経験、事実の共有」では、配偶者や婚約者からも、難病の母を持つ娘が相手の母から交際に反対された。婚約破棄された。結婚当時は未発症で遺伝性だと知らなかったが、配偶者から「だまされた、死亡保険金で還元しろ」と責められている。
次をお願いします。
「5.周囲の人や友人からの発言に傷つく経験」では、予備校教師が、遺伝性疾患という単語が入った英文の読解のときに「こんな人たちが家族にいたら大変だよね」と言っていた。友人から、「息子のフィアンセの家系を調べたい、あなたのような病気の血筋だったら困るから」と言われ傷ついた。
「6.職場の人の言動に傷つく経験」でも、就活中の面接官に、遺伝性疾患の家系であることは隠したほうがいいと助言された。職場に復帰した際に上司に報告すると、病気のことは公表しないほうがいいと言われた。
「7.匿名での批判・誹謗中傷に関する経験」。自らが社会に発信しなければ理解されないと考え、遺伝子検査に関して書いた記事に対して、不審なメールが複数届いた。同病の励みになればと書いたブログに、親が障害者なのは不幸だ、子供を産むべきではない、子供から訴えられればよいなどの書き込みがあった。
次をお願いします。
「8.外から感じる優生思想・内なる優生思想の自覚」について、旧優生保護法の別表に自分の疾病が入っていたことに恐怖を感じた。自分は出産してはいけないと思い込んでいた。約40年前に主治医からもらった難病研究班の冊子に「子どもをつくらない努力をしましょう」と書いており、今もその言葉に縛られている。自分の病気を遺伝されたら申し訳ない気持ちを持つこと自体が優生主義的だと葛藤している。
「9.病気や遺伝のことを人に言えない」。周囲に病名を言えない。周囲に遺伝性の病気であることを言えない。家族が差別を恐れて、本人に病名を告知しなかったため、社会資源を活用されていない。
これらの事例も多く、このことでひきこもりになっているとか、病気の進行が早まった。そして、学校では、いじめを考えると学校にも言えないでいるといった書き込みがあります。
「10.保険加入に関わる経験」について、生命保険に加入する際、未発症であったものの、原因遺伝子保有を理由に、加入を断られた。こちらは昨年の事例です。
次をお願いします。
具体的に、回答フォームには、このような形で事例が寄せられています。20代男性で、母が私を妊娠初期に神経難病の確定診断を受け、遺伝についても説明を受けた。母は父を含む父方家系から「病気がある事を隠して結婚したのか」と非難された。さらに「10年で寝たきりになるのに自分の身の回りのこと、まして子育てができるのか、そして今妊娠している子は中絶すべきだ」と差別を受けた。母は「お腹の子は生きている」と非難や差別に屈しなかったため、私は産まれた。その後も母と私は、父方の家系には遺伝性の病気を持ってきた疫病神のように扱われた。この経験から、私は遺伝性難病発症リスクがあること以上に、人を愛することや自分の子を持つことに対し、ひどく絶望し、憂鬱な気分は遷延化した。ゲノム医療を進める上では、差別を受けない社会構築やゲノム医療を受ける患者と家族の相談体制の整備を進めてほしい。
30代女性で、神経難病の確定診断を受けた病院で遺伝子検査を希望したところ、医師より「遺伝子検査は当院では行っていない。治らない病気なのだから必要ないだろう」と笑って言われた。このような形で書き込みがあります。
次をお願いします。
今回のアンケート調査では、ゲノム情報の差別についての回答はほんのわずかで、患者・家族に理解できる情報が届いていない。まだ関心が高まっていないのかと思われます。
これには、患者・家族が病気を隠さなければいけない、実際にこのような遺伝差別が起きているという要因もあるのかと思います。ゲノム医療推進のためには、患者・家族が安心して受けられるものでなければならず、そのためには「ゲノム情報による不当な差別」については、これら事例のような差別も含めた「遺伝に関する差別」と広義に捉えるべきではないかと思います。遺伝に関する差別を禁止する法律ができ、理解者が増えることで、ゲノム医療への懸念の払拭になり、期待へと変わっていくのではないかと思います。
今回は主に患者団体につながりのある方の回答ですが、どこにもつながりがなく、さらに孤立されている方も含めた実態把握も必要と思います。これからの差別禁止法が実効性のあるものであるためにも、その後の調査で状況を把握できる体制が必要と考えます。
次をお願いします。
また、がんや難病、遺伝に関して、正しい知識が広がらないと差別はなくなりません。アンケート調査には、教師による言動で傷ついた事例もありました。教員などが正しい知識を持ち、差別防止となるよう、研修等で理解を深めていただき、さらに学校教育へと対策を立てていただきたいです。
また、就労問題や職場での事例もありました。企業人口は多く、企業での人権尊重の取組に、がんや難病に関する差別を対象に入れていただきたいです。差別の対象として障害が記載されていますが、難病などはあまり見当たりません。差別の取組により、働きやすい環境、人類の多様性を認め合い、協力し合える社会となることを望みます。
医師をはじめ、医療従事者や支援者による傷ついた体験も寄せられており、専門的知識を有し、一番の理解者であるはずの立場の人から投げられた言動はさらに深く傷つきます。法律で守られ、安心できる環境となることを望みます。
次をお願いします。
本調査では、事例に登場する人物や機関等に対し事実関係の正確さについての確認はいたしておりません。
最後に、つらい経験を言葉にしていただくなど、精神的な負担の大きな調査に、短期間のお願いにもかかわらず御回答いただきました皆様に心から御礼申し上げます。
ここでは寄せられた事例の一部の紹介となりましたが、いただきました差別事例は、実体験の非常に重要な資料となるものであり、整理を行い、当ワーキンググループ事務局には提出させていただく予定といたしております。
これらの事例は過去の終わったことではなく、今、起こっていることです。このような偏見や差別で苦しむ状況ではゲノム医療の信頼や推進にも届かず、誰もがこの先、このような思いをすることがないように、早急に対策が講じられることを切に願っております。
以上です。ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございました。
それでは、続きまして、横野構成員からの御発表をお願いいたします。
○横野構成員
早稲田大学の横野と申します。今回は、このような機会をいただきましてありがとうございます。私からは、ELSIの研究という観点から、国際的な状況も含めて、差別の防止に係る方針の在り方について発表させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。
今回、基本計画を議論しておりますゲノム医療推進法は、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにすることが一番の目的となっている法律です。そして、差別の防止について、これまで法律等による施策を行ってきた国においても、やはり同様に良質かつ適切なゲノム医療を受けられるようにすることが規制をする上での目的となっております。
近年、アメリカのACMG(米国臨床遺伝・ゲノム学会)で「遺伝情報による不当な差別や不適正な取り扱いを避けるための留意事項」が公表されていますけれども、この中でも特に、ヘルスケアや関連するサービスへのアクセスに有害な影響を与えたり、個人の自律性やプライバシー、秘密保持を侵害する場合が遺伝情報の取扱いにおいて特に問題であると指摘されています。
これまでの学術的な議論とか法政策を見ていきますと、遺伝情報差別(Genetic discrimination)と呼ばれるものに関しては、1990年代より様々な定義が提案されてきました。そして、強制力を伴う法規制を目的とする定義の場合、その対象はおのずと限定的になります。このような定義の場合には、技術の発展などの変化に柔軟に対応することは難しく、基本的にある一時点での、ある一領域での行動を切り取って規制するという形にならざるを得ないと思われます。もちろん、こうしたものも個別分野のルールの在り方を考える上では有用であるとは思うのですけれども、政策的にどういった形でこの問題に取り組んでいくべきかを広く考える上では、先ほど天野構成員、森構成員からの御発表の中にもありましたように、差別について幅広い視点から捉えることが重要であると思われます。
こうした問題意識は近年、ELSIの研究者の間でも共有されており、最近ですけれども、英語圏の代表的な研究者らによるGenetic discriminationの定義についての論文が発表されていますが、その中では、幅広い定義を取ることが重要だという観点から、以下のような定義が提案されております。「個人または集団が、実際の、あるいは推定される遺伝的特徴に基づいて、他の人々と比較して否定的な取り扱いを受けたり、不当にプロファイリングされたり、危害を加えられたりすること」といった定義で、このような定義が提案されている理由としては、ヘルスケアへのアクセスを阻害するといった有害な結果をもたらし得るような否定的な影響に焦点を当てること、個人への危害だけではなく、集団全体に対する危害も含めた包摂的な定義とすること、そして、新たな技術や臨床実践が導入された際に、そうしたものに迅速に対応することが可能になることが挙げられています。そのような視点で提案されていて、学術的・政策的な検討や議論においては、このような観点からGenetic discriminationを捉えるのがよいのではなかろうかという提案がなされています。
この定義については、これから国際的なゲノム研究のコンソーシアム等にて採用を提案していくということですので、国際的にも影響力のある提案であると考えております。
次をお願いいたします。
そして、我が国において忘れてはならないのは旧優生保護法の問題です。先ほど森構成員の御発表の中にもありましたが、これは過去のことではありますが、現在にも大きな影響を与えている事象です。
これまで全国各地で複数の裁判が起こされていましたけれども、つい先日、7月3日ですが、最高裁において統一的な判断が示されました。そこでは、旧優生保護法の中で優生手術と言われておりました不妊手術に関する規定については、その立法目的が「専ら、優生上の見地、すなわち、不良な遺伝形質を淘汰し優良な遺伝形質を保存することによって集団としての国民全体の遺伝的素質を向上させるという見地から、特定の障害等を有する者が不良であるという評価を前提に、その者又はその者と一定の親族関係を有する者に不妊手術を受けさせることによって、同じ疾病や障害を有する子孫が出生することを防止することにある」と最高裁が認定しています。
このように目的を認定した当該規定について、個人の尊厳と人格の尊重に関わる憲法13条、それから、法の下の平等に関わる憲法14条に違反することが明確に示されています。
この裁判の結論としては、本件規定に係る、この規定を法律として立法した、その立法行為自体が国家賠償法上、違法の評価を受けるという判断がなされており、これは過去のことではあるのですけれども、その当時においても違法であったという判断になっています。
そして、この判決の補足意見では、この優生保護法に基づく様々な施策について「立法府が、非人道的かつ差別的で、明らかに憲法に違反する立法を行い、これに基づいて、長年に及ぶ行政府の施策の推進により、全国的かつ組織的に、極めて多数の個人の尊厳を否定し憲法上の権利を侵害するに至った被害の回復に関する事案である」との見解が示されており、このような最高裁の判断を受けて、遺伝に関わる理由での差別を防止するために立法・行政が取り組んでいくことの重要性は従前よりもなお大きなものになっていると考えます。
その意味で、このゲノム医療推進法の下で積極的な取組を行っていくことはまさに必要とされていることだと考えております。
次をお願いいたします。
その中で、比較的短い期間で可能な取組としては、既存の法令やガイドライン等におけるゲノム情報の取扱いの確認をすることと、その上でゲノム情報の適正な取扱いに向けたルールの明確化を図っていくことがあると思います。幾つか代表的な分野について挙げましたが、いずれの分野についても、現行の取扱いを確認した上で、必要に応じて、ゲノム情報の保護や差別の防止に資する方向でルールの明確化、そして、何よりも周知を図っていくということが重要であると考えます。
重要と考えられる分野としましては、個人情報保護法が一つございます。個人情報保護法上は「要配慮個人情報」とか、また、これは解釈上使われる概念ですけれども「ゲノムデータ」などの概念が用いられています。これらの概念とゲノム医療推進法における「ゲノム情報」との関係性の整理をする必要があると思います。
その上で、ゲノム情報の取扱いに関する個人情報保護法上のルールの確認をする必要があります。一部関連するものは、既にガイドラインの中などにも含まれていますけれども、改めてゲノム情報を前提にした場合にどのような取扱いになるのかを確認し、明示していくことが重要であると思われます。特に、民間保険会社や捜査機関によるゲノム情報へのアクセスとか、今、森構成員や天野構成員のお話の中にもありましたような、雇用管理における情報の取扱いについても確認する必要があると思います。
そして、これとも関係しますが、労働分野においては、既存の雇用差別禁止法制上のゲノム情報に基づく取扱いの確認が必要になってくると思われます。
そして、医療従事者に対しては、多くの場合、それぞれの資格に関連する法律の中で、守秘義務が法律上規定されています。これに関して、診療において得られたゲノム情報の医療機関における取扱いや血縁者等への開示について、守秘義務の観点からルールが具体化されているものは現状ほとんどないと認識しておりますので、明確化を図っていくとともに、その中で差別の防止に対する配慮を盛り込んでいくことが重要であると考えます。
次のページをお願いいたします。
次に、医学研究に関してのゲノム情報の取扱いですけれども、医学研究の場合には、同意を取得する際に、研究についての情報提供や説明を行います。その際に、ゲノム情報等による差別等の可能性とか保険会社等による研究以外の目的での検査結果へのアクセスの可能性に関して、どのような情報提供をすべきか、すべきでないのかについて、現状どのような情報提供が行われているのかについての把握と、それから、研究参加を判断する上で必要かつ十分な情報提供の在り方についての整理が必要かと思います。
これまでの典型的なIC文章の書き方では差別の可能性を強調するような説明がなされている事例もあり、それに対しては遺伝学的検査に対するネガティブなイメージを強調しているという指摘もされていますので、そういった点にも留意しながら、情報提供において盛り込むべき事項について整理していくことが必要になってくるかと思います。
そして、研究において解析された結果の開示なのですけれども、これは今年4月2日のゲノム医療協議会の際に米村滋人先生からも御指摘があったところですが、かつての「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」では、遺伝情報の開示に特化したセクションがあり、かなり具体的な規定が置かれていました。
現在「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」は廃止され「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に統合されています。そのため、遺伝情報の開示に特化した規定は、現在の医学研究に関する倫理指針の中には含まれていません。現状では、二次的・偶発的所見も含め、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」上は「研究により得られた結果等の説明」として取り扱うという前提となっています。
ただ、ゲノム情報を扱う場合に特に留意すべき事項に関しては、診療の場面と合わせて整理することが望ましいと考えます。
次をお願いいたします。
最後になるのですけれども、情報基盤の整備に関する規定が法11条に含まれています。この情報基盤に関する規定では、基本的施策の一つですが、ゲノム情報と臨床情報、それから、試料を収集・利活用するための基盤・体制の整備、さらには国際間における情報共有の戦略的な推進等について規定がされています。こういった形で、今も様々な研究が進められていますが、情報基盤を構築し、そこでの情報を国際的にも活用していく方針が示されています。
情報基盤においてゲノム情報が適切に保護され、研究や診療以外の、不当な差別につながり得るような目的に利用されないよう確保することが重要になると思われます。
そして、国際間の情報共有に関しては、これはもちろん、国ごとの個人情報保護、データ保護法制の問題もありますが、やはり諸外国と同等のゲノム情報の保護体制があり、その保護体制が国外から見てもルールとして明確なものであることが望ましいと思われます。
現在、日本以外の国で、オーストラリア及びニュージーランドでは、特に保険分野を対象としてゲノム情報による差別の防止を目的とした法規制の導入が議論されていますが、そこではかなり国際的な協調の必要性が重視されています。この表現が正確かどうかはあるのですが、OECD諸国の中でGenetic discriminationを法律上禁止していないのは我が国だけだという議論がよくなされています。
その中、日本はどう取り扱われているのかが気になるところではあるのですが、やはり国際間の情報共有を考慮しましても、明確なルールの下で適切なゲノム情報の保護の体制確保されていることは重要だと考えますので、こうした面からも、差別の防止、そして、情報が保護され、健康管理や診療といった適切な目的のために個人が活用できる環境を整備していくことが重要であると考えます。
私からは以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。
3名の構成員の方々、最初の天野構成員と森構成員からは、がん・難病における実際のゲノム情報における遺伝的情報の取扱いに関する現状についてのご説明、横野構成員からは、ゲノム情報、Genetic discrimination、遺伝情報差別に対して具体的にどのような対応を取るのが適切か、あるいはどういう課題があるのかについて簡潔に説明いただきました。
今の3名の構成員の方々の説明を踏まえて、構成員の先生方の御意見をお伺いしたいと思います。御意見のある方は挙手ボタンを押していただけますと幸いです。
それでは、まず、佐保構成員、お願いできますか。
○佐保構成員
ありがとうございます。何点か意見、それから、質問を述べさせていただきたいと思います。
まず、質問でありますが、先ほど天野構成員からの資料の12ページに患者申出療養などの活用についての記載を拝見いたしました。患者申出療養は、患者の安全性の確保を最優先として、保険収載を前提に検討を進めるべきかと思いますが、安全面についての考えをお聞かせいただければと思っています。
次に、意見ですが、ゲノム情報を理由とする差別の禁止は、特に雇用差別について現実に人権侵害が多発する前に予防すべき分野であり、ゲノム情報の安易な商業利用の対策や情報の漏えい防止対策が不可欠であることについて改めて発言させていただきます。
天野構成員や森構成員からの資料にもあるとおり、難病やがん罹患者、その家族が遺伝に関する偏見や差別を経験していることを踏まえれば、差別や不利益に対する国民の不安は単に理解促進では払拭できないのではないでしょうか。がん患者はあらゆる規模の企業で就労しており、がん罹患者・難病患者などに対する不当な差別だけでなく、様々なハラスメントなども生じ得ます。本人だけでなく、その家族が差別や偏見にさらされないよう十分な対策は不可欠だと考えます。
ゲノム医療を実際の治療に結びつけていくことは必要と思いますが、ゲノム情報とそれに関連する臨床情報は高度にセンシティブな個人情報です。その情報の保護が仮に医学的な研究の進展に支障がある可能性があったとしても、個人情報保護法を厳格に適用すべきだと考えます。国民に対し、ゲノム情報・ゲノム治療において、情報漏えいがなく、差別等につながらない仕組みであることを示すことで安心して治療を受けられるという理解につながると思います。
同様の観点から、仮に蓄積されたゲノム情報の商業利用に当たっても、個人情報保護法の適用はもちろんのこと、システム対策に加え、利活用する事業者等への安全配慮義務を含めた情報漏えい対策を十分に生かすことが不可欠だとも思います。横野構成員の資料の6ページにありましたが、国際間の連携の観点からも、国外から見ても明確な保護体制が必要ではないかと考えます。
ゲノム情報は、通常の個人情報とは異なり、疾病の発生率の高さなどに関する情報も包含されている場合もあります。例えば将来的に特定の症状が出てくる可能性について、ゲノム情報を基に求職者の内定を取り消すなど、雇用・就労における差別や不利益はあってはならず、ゲノム医療を推進する法律に具体的な遺伝差別禁止の条項を盛り込むか、遺伝的特徴による差別を禁ずる法律などの制定が必要ではないかと考えております。
私からは以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。
最初の質問を私が聞き逃して、最初のポイントについて、もう一度、これは天野構成員からの発表に対してですか。すみません。
○佐保構成員 天野構成員にできればお伺いしたいのですけれども、資料の12ページに患者申出療養などの活用について記載がございますが、患者申出療養は、患者の安全性の確保を最優先として、保険収載を前提に検討を進めるべきかと思います。安全面についてのお考えをお聞かせ願えればと考えております。
以上でございます。
○中釜座長
ありがとうございます。
では、最初の点に関して、天野構成員、よろしいでしょうか。
○天野構成員
御質問ありがとうございます。
私は必ずしも専門家というわけではないのですが、御承知のとおり、患者申出療養は、未承認薬あるいは適応外薬を保険外併用療養として使用できることがありますが、もともとは患者さんからの希望、患者さんからの要望を起点として行っている制度になります。
ただ一方で、私も患者申出療養の評価会議の構成員を務めているのですが、これ自体は臨床試験としての立てつけで行われておりまして、臨床試験については、もちろん、有効性・安全性を評価することにはなってまいりますが、臨床試験で行われる立てつけになっている中で一定の安全性は担保されているのではないかと考えております。
回答になっていますでしょうか。
○中釜座長
よろしいでしょうか。
○佐保構成員
安全面ということで、そういうふうにお考えになっているということであれば、了解いたしました。
○中釜座長
それから、もう一つ指摘しているのは、雇用差別、商業利用等に関する漏えい対策で、これは個人情報保護法との関係と、また、国際的な視点からということですが、これは横野構成員、何か追加でこの御指摘に関して御発言はございますか。
○横野構成員
ありがとうございます。
特に日本の中でのルールが国際的に見て非常に分かりづらいという状況があると思っておりますので、その点、御賛同いただけましたこと、大変ありがたく存じます。
○中釜座長
ありがとうございます。
それでは、水澤構成員、お願いいたします。
○水澤構成員
ありがとうございます。本日はお三方からの御発表、大変感動というか、感銘を受けて拝聴いたしました。
私も一臨床医として、特に天野構成員、それから、森構成員がおっしゃったことは経験しております。したがいまして、これは本当に全部真実であることを実感しながら拝聴しておりました。それで、おっしゃっておられましたいろいろな対策、あと、横野先生もいろいろな対策的なこともおっしゃっていたと思いますけれども、それは全てきちんとやることが大事だと思いました。
私からは全般的なことなのですけれども、お話の中にもありましたが、これはゲノム医療だけではなくて、例えば難病・がんといった病気の診療全体に影響があるというか、関連すると思いますので、このゲノム医療の積極的な推進のこの機会に、難病医療・がん医療全般的な面でも、一般の国民、医療者という様々なところの方々の思いというか、考え方とかを改善していって、差別や偏見をなくしていく全体的な運動にしていけたら大変すばらしいのではないかなと思いました。意見です。
以上です。ありがとうございました。
○中釜座長
ありがとうございます。
ほかに御意見はございますか。
それでは、最初、吉田構成員ですか。お願いいたします。
○吉田構成員
天野構成員、森構成員の発表はそれぞれ非常に重要な点を指摘されていました。それを踏まえて、恐らく横野先生のご意見として、今後、基本計画ワーキングで作成する骨子案のなかで、どのような粒度の文章を作成することになるのでしょうか。
御意見があればお聞かせいただけますでしょうか。
○中釜座長
横野構成員、今の御質問に対して何か現時点でお答えはありますか。
○横野構成員
また新たな法律をつくることは将来的な目標ではあると思うのですけれども、直近のこの基本計画においては、新たな法制度の整備も盛り込みつつ、現状の取扱いを確認し、その中でできることからミニマムとしてやっていくのが重要であると個人的には考えています。その中で、より包括的に、ゲノムの問題だけではなくて、医療情報や疾患・障害全般を含めた差別的取扱いについての問題提起といったことを行っていくのが必要なのではないかなと思っております。
それで、法制度を整備するといった場合に、例えば日本の中で包括的な差別禁止に関する法制度がない中で、ゲノムの情報だけについて法制化するのかといった問題もあるかと思っておりますので、その土台を、それも時間がかかることではあるのですけれども、この基本計画の中ではやっていくことが現実的な直近の目標としてはあるのかなと私としては考えています。
○吉田構成員
ありがとうございました。
中釜先生、もう一言だけ発言してもよろしいでしょうか。
○中釜座長
お願いいたします。
○吉田構成員
今の横野先生のご発言にもあるように、新しい法律をつくるためには時間も労力もかかってくることになります。そこで、遺伝的な多様性は継続的に存在していることを考えると、社会の受容性を高める、いわゆる包摂性・相互理解の促進も非常に重要だと思います。不当な差別の防止を目指す一方で、遺伝的多様性について社会的な受容を促進することで、不当な差別の問題を縮小することができるのではないでしょうか。
以上でございます。
○中釜座長
ありがとうございます。
ほかによろしいでしょうか。
では、私から。今、吉田構成員の御発言にありましたが、法律で規定するだけではなくて、社会的にどのような環境を整えると社会の受容性や包摂性を高める取組になるのか、に関しては難しい問題だと思いますが、何か具体的な御意見がありましたら、それも併せて構成員の先生方から御意見をいただけたらと思います。その前に、大沢構成員から手が挙がっていましたので、よろしいでしょうか。
○大沢構成員
すみません。ありがとうございます。
話が戻ってしまったら恐縮なのですけれども、天野構成員と森構成員のまとめを聞いていて、すっかり自分の中で忘れていたのを思い出したのですが、就職で内定をもらった後に内定取消しの電話をもらったことがありました。高校3年生のときに難病のネフローゼ症候群で4か月入院し、出席日数が足りず卒業できなかったので退学し、大検を受けてから大学に進学していたのですけれども、就職の面談で、何で1年遅れたのか聞かれ正直に答えていました。内定取り消しの理由を聞いたところ、産業医の先生がネフローゼは再発しやすいと言ったため、就職してからネフローゼが再発し休まれると困るから、と言われて、電話切った後大泣きしたのがいきなりフラッシュバックしてきました。社会の受容性が高まることで病気による差別とかで悲しくなったり、怒りを感じたり、理不尽を感じたりという人が減っていくのを望みたいです。今回の検討が具体的な対策に繋がるといいなと思いました。
○中釜座長
ありがとうございます。今の御指摘も、先ほど吉田構成員がおっしゃっていた多様性に関する社会の許容をどう上げていくかという問題かと認識しました。
ほかに御意見はございます。
それでは、上野構成員、お願いいたします。
○上野構成員
今日の御発表で、具体的な声も出していただきまして、非常に参考になって、よかったと思います。
それで、たしか天野先生の最初の御発表で、狭義の「差別」と広義の「差別」という整理をしてくださったと思うのですけれども、言わば狭義の「差別」は割とルールをつくりやすいといいますか、こういうことをしましょうとか、こういうことをしてはいけない、してしまったらこうなってというルールをつくりやすいところだと思うので、そこは横野先生の御提案にもあった、明確な分かりやすいルールをつくって、きちんと対応していくとともに、それがまた世間に対して、こういうことは許されないのだというメッセージの発信にもなると思います。そういった対策をする。
広義の「差別」については、また結構難しい問題で、何か分かりやすいルールみたいな手段で対策できる簡単なものではないと思うのですけれども、結局、そこが一番重要なところでもあって、先ほど社会の受容という話もありましたが、その辺りは教育とかもあるのですか。教育とか啓発活動とか、全体で底上げをしていって、車の二輪ではないですけれども、ポジティブスパイラルで社会全体がいい方向に向かっていったらと思いました。
教育は、小学校・中学校みたいな一般的な教育もあるでしょうし、あと、社会に既に出ている大人たちの指導も含めてですけれども、それに対しては、例えば医療業界とか学会みたいな団体様のお力もお借りして、いろいろなチャンネルから広げていければいいのかなとも想像しております。
以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。
水澤構成員、手が挙がっています。よろしいでしょうか。
○水澤構成員
ありがとうございます。
先ほどの座長の、では、どうしたらいいのかということの私の意見なのですけれども、先ほども申し上げましたし、今も上野先生もおっしゃったと思うのですが、いろいろなレベルで、全ての領域でこれはやらないと駄目ではないかなと思いますし、先ほども吉田先生がおっしゃったような、受容性を高める方向であればすぐにでもできるのではないかなと思います。
例えば小・中学校とか、そういった教育の場面でもありますでしょうし、それから、我々医療者の話も出ていたですね。医療者からの言葉で随分傷ついたことがあって、これは非常にショックなのですけれども、実際、時々、そういうことは経験するということだと思いますので、医療者の中での啓発活動等をやっていく必要はありますし、地域でも行う。それから、会社の中では、先ほど産業医の方のお話がありましたが、私も昔、産業医の講習会を医師会長をやったときに受けたことがあるのですけれども、こういうゲノムの話とか病気による差別の話はほとんどなかったかなと思います。
そういった意味で、今もお話しになったように、いろいろなレベルで社会の受容性を高めていく努力をできるだけ早く、完璧な方法をつくるのを待っていてはなかなか時間がかかりますので、出来るところから始めていくのがいいのではないかと思います。
以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。
神里構成員、よろしいでしょうか。
○神里構成員
どうもありがとうございます。本当に短期間のうちに調査をしていただきまして、そして、短期間でありながらこれだけ差別の事例が集まったということで、確実にやはり差別が行われていることが分かりました。そして、これは本当に実態としてはごく少数であって、氷山の一角であることも今回の調査をしていただいたおかげでかいま見ることができました。
それで、御提案がお三方からありましたように、今回、ゲノム情報に関する差別という捉え方だけでなく、遺伝に基づく差別に広げて検討するべきではないかという御提案に賛成いたします。やはり差別は本当に根深い話だと思いますので、何か一つ特効薬があるものではなく、先ほど出ていますように、いろいろなチャンネルで行って、そして、それをかなり長期的にしつこくやっていかなければならないものだと思います。
ですので、やはり短期的な施策、中期的な施策、そして、長期的な施策が必要で、定点観測をしていくということが森構成員のスライドにあったような気がしますけれども、常に差別がどうなっているかという状況をウオッチングしていき、そして、効果が現れていないのであれば常に新しい施策を打っていくという、本当に長期的な対応が必要だと思いますので、その辺も踏まえた計画をつくっていきたいと考えております。
以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。
横野構成員、御発言はございますか。
○横野構成員
少し先ほどの内容に補足させていただきたいのですが、旧優生保護法をめぐる最高裁判決が出されたことを受けて、過去にも救済法が成立していますけれども、新たに賠償に関わる法律を制定する動きがあると承知しております。
できましたら、その中で、こうした政策が過去に数十年にわたって行われたことによって生じてきた差別や偏見を改めて解消するための取組を推進していく調査研究とか啓発活動について、予算措置も含め、そうした取組を行っていく根拠となるような規定を入れていただきたいと思っております。それが一つ、具体的な方法として考えられるかなと思っております。
○中釜座長
ありがとうございます。
深田構成員、お願いいたします。
○深田構成員
ありがとうございます。深田でございます。天野構成員と森構成員の御発表に関しましてコメントさせていただければと思います。
医師を含む医療従事者の発言に傷ついた経験を御共有いただきまして誠にありがとうございました。臨床の場にいる医療従事者の一人としまして、一つ一つの発言の重さを改めて身の引き締まる思いで伺っておりました。さらに、第2回で私からも当院の医療従事者におけるゲノムに関する認知度等について発表いたしましたが、医療従事者におけるゲノムリテラシーの向上に関する取組が重要であることを改めて感じることができました。
私もゲノム医療に関わっておりまして、この恩恵を受けていらっしゃる患者さんがいらっしゃるのを目の当たりにしていて、ゲノム医療の推進は非常に重要だと考えておりますが、ゲノム医療の推進と差別を含むELSIの対応は車でいう両輪と考えられますので、この取組を引き続きしっかりやっていくことが重要なのだということを改めて感じました。
横野構成員に1つ質問させていただければと思っております。今回、ゲノム医療法の中での取組として全体的な対応を進めていくということで承知しております。新たな立法は中長期的なスコープだと伺いました。天野構成員、森構成員からいろいろな経験談の御発表もいただきましたが、新たな立法をつくるという意味では、その立法事実としてはどれくらいの粒度を通常は求められるものなのでしょうか。私は法律に関しては全く専門外ですので、この辺りを少し伺えればと思います。
いずれにしましても、このような経験で苦しまれるような方がいらっしゃらなくなるように、引き続き、本ワーキングにおいて幅広い対応の検討を進めていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
○中釜座長
今の質問に関して、横野構成員、現時点でお答えはありますか。
○横野構成員
それはかなり判断に幅があるところかなとは思います。諸外国の法制を見てみますと、現に差別があることよりも、むしろ、将来的にゲノム研究・ゲノム医療が適正に行われるように、その普及を見据えて、差別の防止といった法制度の導入を進めているのが基本的なスタンスだと思います。
そして、日本の場合には、先ほども触れましたけれども、旧優生保護法によって政策的な差別が推進されてきたことが何よりも大きな背景であると思いますので、私としてはそれで立法事実としては十分なのではないかと思っております。
ただ、より包括的な法制化を考えた場合には、それにとどまらない幅広い視点が必要かなとも思っておりますので、今の段階で限定的な法律をつくるのがいいかどうかについては検討の必要があると個人的には思っているところです。
○中釜座長
よろしいでしょうか。
では、続きまして、神里構成員、御発言はございますか。
○神里構成員
ごめんなさい。手を下ろし忘れていただけです。失礼しました。
○中釜座長
失礼いたしました。
ほかに御発言はございますか。
では、小崎構成員、お願いいたします。
○小崎構成員
小崎でございます。森構成員、天野構成員から、患者さんの立場から見た、実際に起きている差別について御報告いただき、そのように感じました。今回のアンケートは実際に差別のあった方からのみ返答を得たということなので、そのインパクトがどのぐらいかということについて疑念を持たれる方がいらっしゃるかと思ったので、補足的に発言させていただきます。
私自身は、研究者あるいは診療を行う者と並行して教育も行っておりまして、医学生の教育も行っているわけですが、これとは別に、いわゆる進学校から多くの方が入学する文系の学生に対して大学1年生の講義をしております。その内容に関してフィードバックを受けると、そもそも、遺伝性疾患や遺伝病についての知識が非常に足りなかったという感想を述べる方が非常に多くございまして、やはりこの知識の欠如が今日の議論の対象となっておる差別に大きな影響を与えていると感じます。
知識が足りなかったという感想を述べられる方は、5%とか10%ではなくて、何割、多くの方々であります。そうしますと残念ながら、現行の教育体制の中ではこういった内容についての教育が不十分であると言わざるを得ない。このことが今日の問題の大きな影響を与えているのではないかというのが私の考えです。
教育の重要性については、前回、第6回の議論で強調させていただきましたが、改めまして、文部科学省を含めた方々の御対応をお願いしたいと考え、発言させていただきました。
以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。
今の小崎構成員の発言を含めて、やはり差別は、知識の欠如、理解の欠如が根底にあることは恐らく皆さんも御理解され、それを埋めるための教育の在り方、あるいは社会の取組をどういうふうにしていくかが大きな課題なのかと改めて感じたところです。
ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、特にございませんので、もし何か、今日御発言いただいていない構成員の先生方で御発言がありましたらお願いできればと思いますが、例えば五十嵐構成員、何か御発言はございますでしょうか。
失礼いたしました。
多くの構成員に本日は御発言いただきましたけれども、菅野構成員、お願いいたします。
○菅野構成員
今、お話を伺っていて、本当にそうだなと思いながら聞いていたのですけれども、もう一方で経済合理性みたいなものを追求する人たちもいるわけです。そういうふうに考え方が全く違う人たちをどうやって、差別しないことがあなたたちのためになるのだという論理はどう組み立てるべきなのだろうかというところで、もしお考えがあればお聞きしたい気がしました。
1つ個人的なことを言うと、いろいろな駅でエレベーターとかベンチとかがあって、Disabledの方には非常に優しい環境になっているのですけれども、僕がそれに気がついたのは実は足の骨を折ってからなのです。そうならないときには、これはエネルギーの無駄遣いをしているのではないかみたいな感想も持っていたところがあるのです。それで、足を折ってみるとどこにベンチがあるかがいちいち気になりますし、それから、面白いことに、上りのエレベーターよりも下りのエレベーターが大切だとか、いろいろ、そういうことが分かってくるのです。
だから、多分、経済的な合理性を狭く考えて、言ってみれば病気を持った方を就職させないみたいな発想を持っている方たちも身につまされることがあれば考え方が変わるという気もするのですけれども、そういうところでどういう論理が必要なのかなというのはなかなかすぐには思いつかないところがあるので、何か考え方からして、無条件で差別するなという、キリスト教で神様が差別するなと言ったから差別するなみたいな論理だと、僕は実は韓国籍の友達がいて、昔、彼と差別について話したことがあるのですが、もし差別される側が反論できなかったら差別は正当化されるのではないかというところまで極端な話が進んだりして、だって、牛は人間が食べているではないかみたいなことなのですけれども、だから、そういうナイーブな人たちに対しても、言ってみれば哲学的なというか、何か論理的な枠組みがあるともっと理解されやすいのではないかなという気が、非常に極端な意見かもしれませんし、あれなのですが、考えていた次第です。
すみません。長くなりました。
○中釜座長
ありがとうございます。
今の御指摘は、なかなか体験しないと分からない、気づかされないことに関して、あらかじめ、そういうことを含めた多様性をいかに社会全体として受け止めながら、かつ社会としての経済的な合理性を位置づけるのかという課題でもあると今日の議論を聞いていて個人的には感じました。今の菅野先生からの御指摘に関して、この場で何か追加での御発言があれば。
横野構成員、何か御発言はございますか。
○横野構成員
いえ、すみません。特段はございませんが、原理的な面では経済的な合理性と、例えば個人の尊厳とか人格の尊重は異なるレイヤーに属するものだと思うのですが、ただ、実際に政策として実効性を持たせる上で、経済的な合理性を重視する立場の方に対してどういう説明の仕方をすればいいかという観点を入れるべきなのかどうかについては、私はよく分かりません。入れてしまうと、本来の趣旨を損なってしまうような気もしていまして、ただ、そこは目をつむって、実効性という観点からそうした説明を入れていく選択をするのかという、選択の問題かなと、お話を伺っていて思いました。
○中釜座長
ありがとうございます。今の御指摘の点が恐らく、いわゆるゲノム遺伝あるいは疾患への差別全体に対する社会的な対処をどう広げていくかの根源に関わる御指摘かなと改めて思いました。
ほかに御発言いただいていない方で、角山構成員、何か御発言はございますか。
○角山構成員
経団連でございます。
経団連としましては、企業の採用時でしたり、あるいは従業員の配置転換のときに、ゲノム情報に基づいて差別的な対応を行わないことを大前提とすべきという考えを持っておりますので、考え方を続けたいと思います。
本日は、天野構成員、森構成員から本当に痛ましい差別の言葉を御紹介いただきました。あと、大沢構成員からは実際に就職に関してのいろいろな差別の御経験を開示いただきまして、今後もこのような就職等において差別の事例がございましたら、引き続き、御紹介いただきたいと思います。
それから、もう一つあるのですけれども、昨今では平積みで売られておりますような新書の中に過去の優生保護法の歴史についてまとめているような本もありまして、ある程度ベストセラーになっているようでございます。引き続き、そういった啓発が続いていっていただきたいと思います。本日はゲノムという観点での差別と、あと、一般の疾患も含めた形での差別という2つのお話があって、これを混ぜるべきかどうかが構成員の先生から御指摘があったと思いますが、殊にゲノムに関しましては、全てがゲノムで規定されないとか、いろいろな要因が関係しているとか、あるいはどのGenetic backgroundが正しいかというのは、やはり環境によるとか、ゲノムならではの観点から何か差別を禁止するようなことができるのではないのかと思いますので、そこら辺の議論も進めていっていただければと思います。
以上です。
○中釜座長
ありがとうございました。
では、続きまして、小谷構成員、今日初めての参加となりますが、何か御発言はございますでしょうか。
○小谷構成員
明治安田生命の小谷でございます。このたびは保険の点も含めて共有をいただきましてありがとうございます。
保険会社の実務に関しましては、これまでも遺伝学的な検査結果とかは告知いただく必要がないとか、告知いただいても使っていないのは申し上げてきたところではございますけれども、一方で、今回の事例のように、お客様の受け止めとして差別を受けたと思えることも考えられますので、本日いただいたような事例も含めて、監督官庁とも御相談しながら、対応について考えていきたいと思っております。
引き続き、また何かそういった情報がございましたら教えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長
ありがとうございました。
では、続きまして、三木構成員、何かございますでしょうか。
○三木構成員
ありがとうございます。
私も今日、三人の構成員からお話しになったことを聞いて、以前臨床をしていたときのことを思い出すことがありました。その中で、法律あるいはルールで対応できるような部分はあると思うのですが、今日のお話の中でも親族、例えば特に配偶者あるいは配偶者の家族からの差別が結構あったと思います。こういうものに対してルールあるいは法律とは違う対応策が、というよりも、それでは無理ではないかなと思うわけです。
そうすると、吉田先生もその点はおっしゃったのだと思うのですが、例えば教育は非常に大きな要素だと思いますが、それだけでいいのか、あるいはその点に関してどういう対応策があるのか。その辺りをお聞きしたいなと思っています。
以上です。
○中釜座長
教育あるいは親族・家族の問題に関しては、これは恐らく、どの構成員への問いかということは難しいですけれども、今の三木構成員の問いに関して、何か簡単にお答え、あるいは御意見を述べられる方はいらっしゃいますか。今日全体の議論のテーマかなと思いましたが、よろしいですか。
その辺の御指摘は非常に重要な御指摘で、今日の議論にあった、すぐにできること、現存の法的枠組みの中で対応できること、あるいは中長期的に取り組むべきこと、さらには、今、三木構成員が御指摘の親族・家族への対応はまた別の枠組み、仕組みかなと感じましたので、その辺も含めて検討していただければと思います。
よろしいでしょうか。
では、最後になりますけれども、山田構成員、何か御発言はございますか。
○山田構成員
大変貴重な情報を含めた御説明をいただきました。本当にありがとうございました。
特に最初の2つ、調査をされて、回答を集められたということなのですけれども、もともと、調査の質問を投げかけにくい内容でもあったと思いますし、回答された方々は多分、答えにくい内容も多分に含まれていたと思うのですが、そういったものを本当にこの場で共有していただいて大変、本当に参考になりましたし、差別はいけないことは、もともと、私からもこの会議で何回か申し上げているのですけれども、またその考えといいますか、気持ちを新たにしたところでございます。
それで、やはり法整備その他もありますが、教育・啓発をいろいろな方々に対してそれを行っていくことで少しでもこういうもののない社会に持っていければいいなと、今日、改めて思った次第でございます。貴重な会合の機会、本当にありがとうございました。
以上でございます。
○中釜座長
ありがとうございました。
それでは、ほかに。
では、小崎構成員、お願いいたします。
○小崎構成員
先ほどの大学生の教育の話の続きで申しますと、大部分の学生はいわゆる単一遺伝子病と多因子遺伝の区別がついておりませんでした。つまり、多因子遺伝をDTCで扱う場合には遺伝カウンセリング、あるいはそれに類する説明だけでなく、ヒトの遺伝に関する基本的なバックグラウンドがない人たちに対して提供する場合には相応の注意が必要だろうなと感じて今年の講義を終えたところです。
以上です。
○中釜座長
ありがとうございます。
ほかに御発言はございますか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
本日は、構成員3名の方々から差別に関して、調査結果等を踏まえての御説明がございました。それに対して構成員の先生方から様々な御意見をいただきました。
取組としても、短期・中期・長期的な、あるいは様々なレベルでの取組が必要で、社会全体として、この多様性をいかに受け止めて受容するか。そのための仕組みづくり・環境づくりをどうするか、大きな課題、テーマとして取り上げられたと理解しています。
今後は、本日の議論を踏まえて、事務局にて論点を整理していただきまして、具体的な基本計画に反映すべき施策について議論を進めることとしたいと考えております。ありがとうございます。
では、最後、議題3、その他について、事務局よりお願いいたします。
○中田研究開発政策課長
次回の日程につきましては、座長と御相談させていただきまして、後ほど御連絡させていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜座長
それでは、構成員の皆様にはスムーズな議事進行に御協力いただきまして、誠にありがとうございました。
これをもちまして本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。