2024年1月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和6年1月26日(金)14:00~

場所

厚生労働省専用第22~24会議室

出席者

出席委員(19名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 
 
欠席委員(2名)五十音順

 
行政機関出席者
  •  城克文(医薬局長)
  •  吉田易範(大臣官房審議官)
  •  中井清人(医薬品審査管理課長)
  •  野村由美子(医薬安全対策課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構 審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御出席いただき、どうもありがとうございます。本会議はペーパーレスの開催といたしますので、資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。操作等で御不明点がありましたら、適宜、事務局がサポートいたしますので、よろしくお願いします。
 本日の会議における委員の出欠についてですけれども、大森委員、佐藤直樹委員より御欠席との連絡を頂いております。そのほかにも今のところ、まだ赤羽委員、髙橋委員、田﨑委員、長谷川委員がまだ入られていませんが、後ほど入られるというように理解しております。本日、現在のところ、当部会委員数21名のうち、15名の委員がこの会議に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。
 薬事分科会規程第11条の適合状況については、全ての委員の皆様より適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。その都度その都度、御協力を賜り、誠にありがとうございます。
 これより議事に入りますので、カメラ撮りと言いながらカメラはいらっしゃいませんね。ここまでといたします。それでは森部会長、以後の進行をお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず事務局から資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、委員からの申出状況につきまして、報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、本日の会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~10を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。
 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストは資料No.10に記載のとおりで、これらに関する委員からの申出状況等を踏まえた薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員の審議参加に係る取扱いは次のとおりです。
議題1、「ジャディアンス」、退室委員なし、議決に参加しない委員は代田委員、中西委員、矢野委員です。
議題2、「ジンタス」、議題3、「エンレスト」、議題4、「希少疾病用医薬品の指定の可否」、いずれについても退室委員、議決に参加しない委員ともに、なしです。以上です。
○森部会長 今の御説明につきまして、特段の御意見等はございますでしょうか。よろしかったでしょうか。それでは皆様に御確認いただいたものといたします。
 本日は審議事項が4議題、報告事項が2議題となっております。それでは審議事項の議題に移らせていただきます。それでは議題1につきまして、機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題1、資料No.1、医薬品ジャディアンス錠10mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。慢性腎臓病(以下「CKD」)は、タンパク尿の存在や糸球体ろ過量(以下「GFR」)の低下等が3か月以上持続する状態であり、進行すると末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要となります。また、末期腎不全は心不全や全死亡のリスク増加とも関連することが知られております。
 本薬はナトリウム-グルコース共輸送担体2(以下「SGLT2」)阻害薬であり、既に2014年12月に「2型糖尿病」、2021年11月に「慢性心不全」に係る効能・効果で承認されておりますが、本薬が糸球体血行動態の改善により、腎保護作用を示すことも期待されたため、CKDに対する開発が行われました。
 今般、CKD患者を対象とした国際共同第III相試験の成績等を基に、CKDの効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、本薬は2023年9月現在、海外において、CKDに係る効能・効果では欧米を含む43か国で承認されております。
本品目の専門協議では、本日、配布資料のNo.9に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性・安全性について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず有効性についてですが、審査報告書、通し番号10ページの表4を御覧ください。CKD患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目である「腎疾患進行又は心血管死の初回発現」の結果は表4のとおりであり、本薬による腎疾患進行又は心血管死の発現リスクの低下が示され、プラセボに対する本薬の優越性が検証されました。また、副次評価項目である主要評価項目の構成要素の各イベントの発現割合についても、プラセボ群と比較して、本剤群で低下する傾向が認められ、eGFRの年間変化率はプラセボと比較して、本薬群で小さく、eGFRの低下が遅延する傾向が認められました。
 また、日本人集団における結果は、審査報告書、通し番号11ページの表5のとおりであり、主要評価項目で日本人集団と全体集団の有効性の一貫性を支持する結果が得られ、ほとんどの副次評価項目でも全体集団と同様の結果が得られました。以上より、CKDに対する本薬の有効性は示され、日本人においても有効性は期待できると判断いたしました。
 続いて、安全性について、審査報告書、通し番号12ページの表6を御覧ください。国際共同第III相試験における有害事象の発現状況について、事前に注目することとされた有害事象の発現割合は、プラセボ群と本薬群とで大きな違いは認められず、重篤な有害事象や投与中止に至った有害事象も、プラセボ群と比較して本剤群で特有の状況は認められませんでした。
 また、既承認効能・効果で、有害事象の発現状況と比較して、臨床的に明らかに問題となる新たな事象は認められず、既知の事象である低血糖や体液量減少等の発現状況についても、既承認効能・効果と比較して、CKD患者で臨床上、問題となる違いは認められませんでした。以上のことから、CKDにおいて、既承認の効能・効果と同様の注意喚起を行うことにより、安全性は管理可能と判断いたしました。
 以上、機構での審査の結果、CKDに対する本薬の有効性は示され、認められたベネフィットを踏まえると、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。
本申請は新効能医薬品に係るものであることから、再審査期間は4年と設定することが適切と判断いたしました。薬事分科会では報告を予定しております。御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問や御意見いかがでございましょうか。では私から一つ、専門協議で特に御指摘があり、御対応を既に頂いている点につきまして補足いただいてよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書、通し番号の39ページを御覧ください。専門協議では、審査報告書、通し番号20ページの表21のところで、ベースラインのUACRが低い患者ほど、本薬の主要評価項目に関する有効性が低くなる傾向があるという点に関して、添付文書等で情報提供すべきとの御指摘を頂いております。御指摘を踏まえまして、資料の1.8になりますが、添付文書の臨床成績の項に、ベースラインのUACR別の部分集団の主要評価項目の結果を記載しております。そのほか、関連する副次評価項目や部分集団解析の結果に関して、資材等での情報提供を予定しております。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。今、御説明いただきましたように、表の21にあるベースラインのアルブミン尿別の主要イベントは、主要評価項目に関する情報提供を追記いただいているということでございまして、重要な情報の一つと思われます。また、尿中アルブミン別のカテゴリーに分けて様々な解析がされていらっしゃいます。本剤の腎保護効果を反映していると考えられるほかの所見としては、いかがだったでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。主要イベント以外の有効性としては、審査報告書の次のページ、通し番号21ページの表23、24を御覧ください。こちらはeGFRの年間変化率をUACR別に示しております。こちらの表のとおり、UACRが低い集団におきましても、eGFRの低下の遅延が本薬群で認められております。当該部分集団において、主要イベントでは有効性が低くなる傾向が認められておりますが、eGFRの年間変化率では有効性を示唆する結果が得られておりますので、腎保護効果は期待できると考えております。
○森部会長 今の機構からの御説明を承りまして、委員の先生方から、この本剤の腎保護効果に関する、CKDに対する有効性に対して、どういった情報提供をしておくべきかということにつきまして、何か御意見や御助言がもしございましたら、お願いいたします。
 近年、腎保護効果の観点は、尿中アルブミンの軽減という点やeGFRの年間変化率が軽減するという2点が大変、重視されている臨床上の特徴があります。もし御意見がございましたら、いかがでしょうか。
 今回、添付文書に追記いただいた部分は、主要評価項目に関するカテゴリーの分類ということで、これは最も重要な情報でございますので、添付文書の記載が望ましいと思います。また、先ほど機構の方から御説明いただきましたようなeGFRの年間変化率は、臨床家も臨床情報として非常に重視している点でございますので、様々な媒体、例えば資材やインタビューフォームにて詳しく御紹介いただきまして、臨床家の先生が閲覧しやすいような形で御記載いただくということは、いかがでございましょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。ご指摘の部分の結果についても重要性を理解いたしましたので、資材等で適切に臨床現場に情報共有されるよう、申請者と協議したいと思います。御指摘ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、先生方から御質問、御意見はございますでしょうか。宮川先生からお願いします。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 今、森座長がおっしゃったように、このメーカーを含めてですけれども、傾向としては、そういうことを強く言いすぎるというこの腎不全の効果の中で、そのようにして、ある程度宣伝しているというか、広報をしているというところが実際の場面ではありますので、やはり資材等で落ち着いたそういう情報提供というものは、実臨床の中では必要だろうというようには思っております。実際に使用することによって、効果というものは見られることは確かなのですが、著しいほどではないということは森座長がそういう意味では御指摘されたとおりなので、資材では、しっかりとした立て付けで記載されるということを望んでおります。以上です。
○森部会長 宮川委員、御指摘どうもありがとうございました。有効性につきましては、患者さんの背景ごとのリスクも異なってまいります。また、有効性の指標につきましても、相対的な有効性に加えて、絶対的な改善度といった両方の指標がございますので、今回の情報提供に当たり正確を期して提供いただくということでお願いしたく思っております。それでは、ほかに御意見はございますでしょうか。よろしかったでしょうか。
 では、議決に入らせていただきます。なお、代田委員、中西委員、矢野委員におかれましては、利益相反に基づく申合せに基づきまして、議決への参加は御遠慮いただくこととなっております。本議題につきまして、承認を可として、よろしいでしょうか。
特に御異議ないようでございます。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題2に移らせていただきます。では機構の方から議題2につきまして、概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題2、資料No.2、医薬品ジンタス錠25mg、同錠50mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。資料につきましては資料No.2、ジンタス錠25mg、同錠50mgの審査報告書を御覧ください。
 低亜鉛血症は血清亜鉛濃度が低下し、生体内の亜鉛が不足した状態であり、食事からの亜鉛摂取が十分でない場合は、亜鉛製剤による亜鉛補充療法が考慮されます。国内では経口投与の亜鉛製剤として、酢酸亜鉛水和物であるノベルジン等が承認されております。
本品目の有効成分であるヒスチジン亜鉛水和物(以下、本薬)はヒスチジンと亜鉛が比較的安定な錯体構造を取っており、消化管で解離する亜鉛イオンが無機亜鉛塩より少ないため、亜鉛イオンによる直接的な副作用(悪心、嘔吐等)の低減が期待されます。
 本薬は、国内では申請者により低亜鉛血症に対する治療薬として開発され、今般、低亜鉛血症患者を対象とした国内第III相試験の成績等を基に、製造販売承認申請が行われました。
なお海外では、2023年12月現在、本薬が承認されている国又は地域はありませんが、1995年にドイツでヒスチジン亜鉛が「亜鉛欠乏状態」の効能・効果で承認されております。
本品目の専門協議では、本日の資料No.9に示します専門委員を指名しております。
 それでは、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
有効性に関しては、審査報告書通し番号18ページ、一番上の表21を御覧ください。低亜鉛血症患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である「投与24週後までに同一投与量で目標血清亜鉛濃度(80μg/dL以上、200μg/dL未満)を、8週間維持できた被験者の割合」は、本薬群で86.4%、ノベルジン群で80.4%、群間差は6.0%、95%信頼区間は-4.2%~16.3%であり、群間差の95%信頼区間の下限値は、事前に設定した非劣性マージンである-15%を上回ったことから、ノベルジンに対する本薬の非劣性が検証されました。
 安全性に関しては、同じページの下、表22及び表23を御覧ください。国内第III相試験において、いずれかの群で2%以上に認められた有害事象及び副作用は表に示したとおりであり、ノベルジン群と比較して、本薬群で臨床的に問題となるような傾向は認められず、本薬の安全性がノベルジンに劣ることはないと判断しました。なお、ノベルジンで副作用として注意喚起されている血中銅減少や膵酵素増加については、本薬群でも認められており、ノベルジンと同様の注意喚起が必要と考えております。また、胃潰瘍についてもノベルジンで注意喚起されており、少ないながらも本薬群でも発現が認められていることを踏まえ、添付文書で注意喚起が必要と考えております。
 以上、機構での審査の結果、低亜鉛血症に対する本薬の有効性は示され、認められたベネフィットを踏まえると、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。
 なお本薬は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原薬及び製剤は、いずれも劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。
なお、事前に森部会長より、ドイツで承認されているヒスチジン亜鉛製剤と本薬の注意喚起の違いについて御質問いただいておりますが、ドイツで承認されているヒスチジン亜鉛製剤の添付文書で注意喚起されている内容については、同様の内容が本薬の添付文書においても注意喚起される予定であることを確認しております。
機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。大谷委員から御質問がございますので、お願いいたします。
○大谷委員 ありがとうございます。1点、質問させてください。本剤は、亜鉛のヒスチジンとのキレート剤かと思います。そうしますと、例えばジンタス錠の50mgには、全体で313mg入っているとなると、亜鉛を除きますと恐らくヒスチジンとしては250mg程度のヒスチジンが入っているかと思います。2錠で摂取すると500mg程度のヒスチジンを摂取することになると思うのですが、ヒスチジンとの相互作用という形でイソニアジド、こちらの相互作用に関しては懸念はございませんでしょうか。御存じのとおりヒスチジンが体内でヒスタミンになったときに、イソニアジドのモノアミンオキシダーゼ阻害作用等になって、体内に蓄積が起こる可能性があって、実際に中毒のリスクはあるのではないかと懸念するのですが、その辺はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えさせていただきます。ヒスチジンにつきましては、ヒトにおいては1日当たり4gまでは有害作用は報告されておりませんので、本薬の1日投与量を考えますと、特にヒスチジンの毒性という点に関しては問題はないと考えております。
○大谷委員 すみません、質問が単独という意味ではなくて、イソニアジドと併用した場合に、イソニアジドによるモノアミンオキシダーゼ阻害が起こった状態で、ヒスチジンから生成するヒスタミンが体内で蓄積するおそれはないかということでございます。大体、赤魚に含まれる量と同じぐらいの量を取る可能性があるのではないかと思いますので、一般的にイソニアジドに関しては、その辺の注意喚起があるかと思いますが、いかがでしょうか。
 また併せて聞きますと、添付文書の中に過量投与時の措置等が書いてありますけれども、過量投与をした場合も同様にヒスチジンが体内でヒスタミンに変換されますので、たくさん取った場合は、やはりヒスタミンの急性中毒の可能性もあるのではないかと、併せてこちらの点も御質問したいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。審査報告書の通し番号11ページを御覧いただければと思います。ヒスチジンの薬物動態について、ヒスチジンとの相互作用試験は実施されておりませんが、上から2段落目の下の方に書いておりますとおり、今回の最大用量を投与した場合でも、血中のヒスチジン濃度は、内因性レベルから大きくは変化しないと考えられますので、今回の投与量でヒスチジンを介した相互作用が問題になるということはないと考えております。
○大谷委員 そうしますと、基本的には相互作用のリスクに関しては、問題ないという理解でよろしいのでしょうか。ちょっとほかの委員の先生方も、この辺は結構教科書的にもヒスチジンとイソニアジドの相互作用は有名ですが、どなたか御意見をほかの先生方、頂戴できればと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○森部会長 今、ヒスチジンに関する添付文書を拝見しておりますと、相互作用に関する注意喚起で、ヒスチジンを多く含有する魚、マグロ等についての記載がございます。イソニアジドによるヒスタミン代謝酵素阻害作用により、体内にヒスタミンが蓄積すると考えられている点が併用注意として喚起されていることが確認されておりますので、この本剤の服用によるヒスタミンの摂取が。
○大谷委員 ヒスチジンですね。
○森部会長 失礼しました、ヒスチジンの摂取が、これに相当することの摂取に該当するということの確認なのでしょうか。
○大谷委員 はい、そういうことだと思います。食品標準成分表を見ますと、例えば赤魚の成分として、大体ヒスチジンの含量が魚肉100g当たり、大体赤魚ですと700ぐらいから上は2,000mgぐらいまでということですので、白身魚だともっと少ないですが、赤魚の中でちょっと少ないぐらいの量を、今回の摂取量ですと取る可能性はあるのではないかと思うわけですが、特に血中濃度の上昇がベースラインから変わらないということを思って、安全だというのであれば、それでほかの先生方も、それでよろしければいいとは思うのですが、ちょっと懸念がありましたので、質問させていただいた次第です。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。頂きました御意見につきまして、内因性レベルを大きく上回らないということで問題ないと考えました。吸収量も含めて改めて確認し、注意喚起が必要かどうかという観点も含めて精査させていただきたいと思います。現状では、内因性レベルは越えないということで、吸収量も含めて注意喚起までは必要ないのではないかと考えておりますが、御指摘いただいた点も含めて、改めて確認させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○大谷委員 ありがとうございました。必ずしも加筆はしなくてもいいと思うのですが、それであれば加筆をしないに至った理由というのを明確に何らかの形で御提供いただいてという形で、記録には残していただければと思います。一応、懸念はしております。以上です。
○森部会長 今、大谷委員からも御指摘ありました、ヒスチジンの摂取に関して、特に臨床上問題はないということの確認はさせていただければ良いと思います。もし何らかの懸念が残っているようであれば、特にイソニアジドと併用した場合のリスクについて懸念がある場合には、本剤の添付文書に関する記載追記や、場合によってイソニアジドの添付文書にも本剤の併用に関する注意喚起が必要になる可能性もあります。薬剤の安全に関する部署の方と、よく御検討いただきまして、両者の記載整備をすべきかどうか、当部会に御報告いただくことが望ましいのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。イソニアジドの添付文書の件も含めて、併せて検討させていただきます。
○森部会長 そのほか委員の先生方から御質問、では堀委員どうぞ。
○堀委員 ありがとうございます。私からは飲みやすさについて、2点質問させていただきます。まず1点目は臭いについてです。今回、服薬可能な対象が、30kg以上の小児ということでしたので、やはりちょっと臭いにつきまして、小児が飲む場合は支障になるかと思いましたので、質問させていただきます。
 まず今、販売されている亜鉛サプリにおいては臭いが気になり、飲みにくいものもあるという消費者からの声を聞いておりますが、この薬は、臭いについてはいかがでしょうか。教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。申し訳ございませんが、直接臭いというのは確認しておりませんが、処方を見る限りは特に臭いに対して、何か特別な配慮はされていないと思います。ノベルジンに関しては、酢酸亜鉛ということで、酢酸が臭いに関係しているようでしたら、今回はヒスチジン亜鉛ですので、そこの問題はないのかもしれませんが、申請者に確認して、また部会後に御報告させていただければと思います。
○堀委員 ありがとうございます。販売を待ち望んでいらっしゃる小児の方がいらっしゃると思うのですけれども、飲みにくいということになりますと、やはり嫌がるお子さんもいらっしゃるかと思いますので、その点の確認をお願いいたします。
 あともう1点なのですけれども、味覚についてです。今回、亜鉛不足では味覚障害が起こる方が多いと、私はお聞きしていますが、そういう方であっても味に関しては特に支障はないと考えてよろしいでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。こちら、味に関しても、審査の中で特に確認はしておりませんでしたので、こちらも申請者に確認して、御報告させていただきます。
○堀委員 よろしくお願いいたします。私からは以上です。
○森部会長 そのほか御質問、御意見いかがでしょうか。先ほどの大谷委員からの御質問で、過量投与に関するお話があったかと思います。先ほどのヒスチジンの血中濃度に関連したヒスチジンの影響に関するところで、イソニアジドと併用した場合の際の過量投与の場合には、ヒスタミン中毒発症のおそれがないかどうかの御確認と、もしある場合には、過量投与に関わる、添付文書の13の項目の症状や処置についても、何らかの配慮が必要である可能性はございましょうか。大谷委員、いかがでしょうか。
○大谷委員 もちろんそれが一番極端なケースかと思いますので、そのケースでも書いておいていただければ、念のため安心かなとは思います。よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。そちら、過量投与の項への追記の必要性も含めて確認させていただきます。
○大谷委員 どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 そのほか、委員の先生方から御質問はいかがでございましょうか。特段ございませんでしょうか。今回、この議決については、どう進めていくとよろしいですか。通常に議決に入っていいのか、それとも今回は、少し課題が残っていますので、どういたしましょうか。
 それでは御質問いただきました委員に御確認いただき、その上で安全性に関する追加情報を確認させていただいた上ではございますけれども、通常の対応でよいということですので、今回はこのまま議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。それでは本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
特に御異議ないようでございますので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では続きまして、議題3に移らせていただきます。議題3につきまして、機構から概要説明の方をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、医薬品エンレスト錠50mg他4品目について、機構より説明いたします。資料No.3の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全57ページの通し番号で7ページ「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤の有効成分であるサクビトリルバルサルタンナトリウム水和物は、経口投与後速やかにサクビトリルとバルサルタンに乖離し、サクビトリルによるネプリライシン阻害作用と、バルサルタンによるアンジオテンシンII受容体拮抗作用により、ナトリウム排泄作用、利尿作用、血管拡張作用等を発揮する薬剤です。本薬は、本邦で慢性心不全と高血圧症に係る効能・効果で承認され、成人の用法・用量が確立しています。
 今般、国際共同第II/III相試験であるB2319試験の成績を主要な根拠として、1歳以上の小児における「慢性心不全」の効能・効果及び用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請、並びに小児用製剤である本薬の粒状錠の剤形を追加する医薬品製造販売承認申請がなされました。小児の慢性心不全に係る適応については、米国で2019年10月、欧州で2023年5月に承認されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。臨床試験成績については、審査報告書の16ページから記載している「7.1.1 国際共同第II/III相試験」の項を御覧ください。B2319試験は、生後1か月以上18歳未満の慢性心不全患者を対象に、Part2では本薬の有効性及び安全性をエナラプリルと比較検討することを目的として実施されました。小児の慢性心不全は有病率が低く、有効性の検証を目的とした規模の試験の実施は困難であること等から、B2319試験は実施可能な規模の試験として計画され、B2319試験の結果と成人の慢性心不全患者における臨床試験成績との比較に基づき、小児の慢性心不全患者に対する本薬の有効性を検討することとされました。
 有効性について、審査報告書の通し番号20ページの表10を御覧ください。B2319試験の結果、主要評価項目である「Global rank endpoint」について、エナラプリル群に対する本薬群の優越性は示されませんでした。「Global rank endpoint」は、死亡及び心不全の悪化に加え、慢性心不全の重症度の指標として広く認められている症状及び身体機能に関する評価指標を含めた5つのカテゴリーから構成される複合endpointとして、B2319試験において申請者より提案された新たな評価項目ですが、審査報告書の21ページの表11に示すように、Global rank endpointにおける生命予後に直結する臨床的に最も重要なカテゴリー1に分類された患者の割合は、本薬群でエナラプリル群より低かったこと、カテゴリー3~5の結果は、いずれも本薬群とエナラプリル群とで同様の傾向であったこと等から、本薬でもエナラプリルと同程度の有効性が期待できると判断いたしました。
 加えて、B2319試験で得られた結果は、成人の慢性心不全患者を対象とした国内外の第III相試験の結果と大きく異ならないことが確認されたこと等からも、小児の慢性心不全患者における本薬の有効性は、期待できるものと判断いたしました。
 続いて、審査報告書の31ページの「7.R.2.2 日本人小児における有効性について」の項を御覧ください。日本人小児における有効性については、B2319試験の日本人患者数が極めて限られており、カテゴリー1又は2のイベントの発現は認められなかったことから、全体集団の成績と比較することには限界がありますが、表19に示すとおり、B2319試験における副次評価項目の結果について、全体集団と日本人集団で明確な差異は認められていないこと、また、本薬の有効性に明らかな影響を及ぼす民族的要因の差異は示唆されていないことも踏まえ、日本人の小児の慢性心不全患者においても、本薬の有効性が期待できると判断いたしました。
 安全性について説明いたします。審査報告書の33ページの「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。B2319試験での有害事象の発現状況を踏まえると、小児の慢性心不全において追加の注意喚起を要する新たな安全性の懸念事項は認められませんでした。低血圧を含む本薬の特徴的なリスクの発現状況については、医療従事者向け資材等を用いて情報提供を行うとともに、添付文書において、小児の心不全治療に関して十分な知識及び経験を有する医師の下で、本薬の適用の是非について慎重に判断する旨の注意喚起がなされることから、本薬の期待される有効性を踏まえると、安全性は臨床的に許容可能であると判断いたしました。
 その他の審査上の論点について説明いたします。1歳未満の患者への投与について、審査報告書の43ページ「7.R.6 1歳未満の患者への投与について」の項を御覧ください。臨床試験における1歳未満の患者に対する本薬の投与経験が限られており、現時点では、1歳未満の患者に対する推奨用量を検討可能なデータ及び本薬の安全性に関する情報が限られていることも踏まえると、用法・用量に本薬の投与対象として「1歳以上」を明記することはやむを得ないと判断いたしました。ただし、1歳未満の小児に投与可能な薬剤に対する医療ニーズは高いため、1歳未満の患者に対する本薬の適切な用法・用量を速やかに検討することが望ましいと考え、専門協議でもこの判断が支持されたことから、申請者に検討を継続するよう指摘しています。
 小児への投与に適した製剤については、審査報告書の44ページ「7.R.7 小児への投与に適した製剤の開発について」の項及び製剤の写真を御覧ください。本申請において、新たに提供される製剤である粒状錠は、投与直前に容器であるカプセルから取り出し、水と一緒に投与する又は食べ物に混ぜて投与する必要のある製剤であり、取扱い時の負担や投与過誤のリスクが想定されることに加え、最小用量が12.5mgであるため、投与対象となる全ての小児患者への適切な投与が可能とは言い難いもの、錠剤では対応できない又は服用困難な年齢・体重の小児への投与が可能となる製剤であり、慢性心不全に対して小児の用法・用量が承認された薬剤がない現状では、医療現場に提供する意義がある製剤と判断いたしました。粒状錠の服用方法については、添付文書に加えて、共有する患者向け資材(5~7ページ)等においても情報提供しています。
 また、体重9kg未満の患者のような、錠剤及び粒状錠のいずれでも推奨用法・用量が調節し得ない患者に対しては、現時点では錠剤を粉砕して、懸濁した液剤を用いて本薬を投与することは、やむを得ないと判断いたしました。ただし、錠剤を粉砕することを前提とした用法・用量は、本来、適切ではなく、粒状錠の取扱い時の負担や投与過誤のリスクを踏まえると、引き続き低年齢・低体重の全ての小児が適切な用量でより容易に服用可能な剤形の開発について検討することが望ましいと考え、先ほどの1歳未満の患者への用法・用量の探索と併せて、申請者に検討を求めているところです。
 続いて、事前に柴田委員より、審査報告書の17ページの注釈4において、「「中間解析に伴う第一種の過誤確率の状態を考慮して」との記載は、第二種の誤りではないか」との御質問を受けています。こちらについては御意見を踏まえて、審査報告書の記載を「中間解析に伴う第一種の過誤確率の状態を考慮して」という記載から、「中間解析の実施を考慮して」との記載に修正いたします。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は、新効能医薬品及び新用量医薬品に係る申請であるものの、エンレスト錠に既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は、残余期間(令和12年6月28日まで)、エンレスト粒状錠小児用12.5mg及び同粒状錠小児用31.25mgについては、製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品には該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明どうもありがとうございました。それでは、先生方から御質問、御意見はいかがでしょうか。堀委員、どうぞ。
○堀委員 御説明ありがとうございました。幾つか質問があります。まず、今、御説明の中で、7.R.6の所で、1歳未満の患者への投与について御説明いただき、ありがとうございます。添付文書においては、43/57ページの上の所ですね、7.R.6の1歳未満の患者への投与の上の所で、「粒状錠小児用を用いて投与する場合は、以下の点に注意すること」で、「最低用量は12.5mgとし、用法及び用量で規定した投与量に最も近い用量になるよう、粒状錠小児用12.5mgと31.25mgを組み合わせて投与すること」と書いてあるのですが、これは添付文書には書かれているのでしょうか。投与量に最も近い用量となるようにということは、ちょっと読んでいた中で拝見できなかったのですが、まずその点を教えてください。
 なぜかという理由をお伝えいたします。まず、添付文書の14.2.2の所では、薬剤交付時の注意として、粒状錠小児用に関しては1錠単位ではなく1カプセル単位、つまり、中に入っている12.5mgでしたら4錠、31.25mgでしたら10錠で、それを「1回に関して全て投与することとし」と書いてあります。となりますと、まずスタートは12.5mgを全部投与するということになるかとおもいます。しかしながら、小児への投与用量は、体重1kgにおいて0.8mgからがスタートということが、6.の用法及び用量の所に書いてあります。そうしますと、12.5mgを0.8mgで割る体重の値は、1歳だと体重は平均9kgなので、そこに該当しなくなってしまうかと思います、それなのに、なぜ対象年齢を1歳以上をOKとしたのか教えてください。
 それで、今おっしゃったように、12.5mgを粉砕してもいいということなので、9kg未満に満たない場合は、粉砕して投与することも可能ですということだったのですが、そういうことが添付文書では何も書かれていないかと思います。今回対象患者が1歳以上ということで、小児に投与するのは多分、保護者だと思いますので、現在の添付文書を確認した際に、混乱するのではないかと思いましたので、なぜ1歳以上にされたのか。それから、粉砕に当たってとかの説明に関しては、添付文書に書かれているか否か教えていただきたいと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。添付文書の7.4項に、「最低用量は12.5mgとし、用法及び用量で規定した投与量に最も近い用量となるよう、粒状錠小児用12.5mgと31.25mgを組み合わせて投与すること」という記載があり、例えば、0.8とか1.6mg/kg等の用量から算出される用量に近くなるよう粒状錠を組み合わせることとなります。加えて、医療従事者向け資材において、どういった粒状錠の組合せで投与すべきか記載しておりますので、体重と体重あたりの用量が分かれば、どういった粒状錠の組合せで投与することが適切か、判断することは可能と考えております。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。ただ、結局、今この薬剤を投与する場合は、例えば事前に薬局で一包化するわけではなく、この説明ですと自宅で包装から出して、カプセルを開けて粒状を投与しろと書かれています。そうなると、実際に薬を計測するのは保護者なわけですから、保護者により分かりやすい説明をしておくことは必要かなと思ったのですが、いかがでしょうか。先ほど患者向け資材を投影していただいたのですが、私もまだ内容を確認していないので、そういう説明がその資材にあるかないか教えてください。もしあるようであれば、投与量は用法・用量で規定した投与量に最も近い用量となるように医師から処方がされるけれども、先ほどの9kg未満の場合に関しては、粉砕することも可能とかということも記載があれば、分かりやすいかと思うのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 患者向け資材において、粒状錠の飲み方について情報提供しております。粒状錠では用量調整できない場合については、医療従事者向け資材及び患者向け資材において、既存の錠剤を粉砕懸濁して液剤にしたものを容器に入れた形で患者に提供し、1回あたりの服用量が計量可能な器具等を用いて必要な用量を服用することを、情報提供しています。
○堀委員 続けて確認させていただきます。そうすると、保護者は患者向け資材を見て粒状錠を、先ほど食べるものに入れたりとかということも考えられるとおっしゃっていたのですが、そういうことが資材からは判断できると理解してよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。確認ですが先ほど1歳の平均体重が9kgですので、9kgを0.8mgで割ると、大体1歳の小児には7.2mgのお薬を投与すると判断したのですけれども、そうすると、一番最初のスタートは結局、12.5mgを粉砕したり溶かしたりして、それを飲ませるということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 粒状錠で対応できない用量に対しては、錠剤を調製した懸濁液を投与することとしております。一方で、粒状錠の用量選択は前後30%ぐらいのマージンを設けていて、粒状錠小児用12.5mgと31.25mgを組み合わせて投与することとしており、用法・用量の早見表を見ていただければ、どの用量が必要かというのが分かる形となっております。
○堀委員 ありがとうございます。早見表があるわけですね。では、あと2点質問させていただいていいですか。先ほどおっしゃっていたように、カプセルの中に粒が入っていますので、カプセルを飲み込まないようにということ、これは非常に大切な注意喚起だと思います。私どもは、カプセルを飲むことに慣れてしまっていますので、万が一カプセルを飲んでしまった場合の支障点などは、何かあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。カプセル自体は、通常の薬剤で使われているカプセル剤と同じものでして、現時点で飲んだときの懸念は、特にありません。ただ、カプセル自体は成人で飲むような大きなカプセルとなっておりますので、小児が飲んだときに喉を詰まらせたりするような懸念があるということで、こういった形で注意喚起させていただいている状況です。
○堀委員 ありがとうございました。安心いたしました。もう一点すみません。小児の場合に関しては、やはり長期投与ということが考えられると思うのですが、長期投与に関しては、制限とかは今のところ指定はしていないということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおり、慢性心不全ですと長期に投与することが想定されますので、今回の試験ですと1年投与した経験があるという状況なのですけれども、特段、制限は設けない形にしております。製販後、長期投与の安全性等については、検討していくことを考えております。
○堀委員 ありがとうございました。ただ、お薬の服用の仕方というか、投与の仕方が今までのものとはかなり煩雑だと思うので、その点に関して、やはり使う保護者に対しての注意喚起、資材に関しては念には念を入れて作成していただきたいと思いました。私からは以上です。長時間にわたり、失礼いたしました。
○森部会長 ほかの先生から御質問、御意見はいかがでしょうか。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 宮川です。教えていただきたいのは、小児の慢性心不全というのは、どのような病態を想定されておりますか。慢性心不全というのは、大人の場合ですとある程度理由は分かりますよね。血行動態も含めて私たちはよく理解できますが、小児において慢性心不全というのは、どのように考えているのでしょうか。特に、先ほどお話があった1歳未満とかというのが慢性心不全になるのかどうか、それは、どういう病態をお示しされているのかを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 小児の慢性心不全は、主に先天性心疾患が原因で、短絡性疾患による肺血流量増加、房室弁逆流又は狭窄動脈管依存性疾患の体肺血流の不均衡によって起こるものと想定されます。
○宮川委員 その想定された場合の疾患というのは、本来であれば、小児においては手術適応を含めて、血行動態が悪いという場合となるはずなのではないかと思うのですが、それが慢性心不全というカテゴリーに入るのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 後ろから回答いたします。小児の慢性心不全は、先生のおっしゃるように、先天性心疾患の患者さんが多いのですが、手術をしたから全員元気になるというものでもなくて、房室弁逆流が残存するとか、肺高血圧が残存する、そのほか、様々な理由で術後も心不全管理を継続する患者さんが多くなっております。そういう患者さんを慢性心不全と実臨床では定義付けています。
○宮川委員 確かに実際には、今、実臨床とおっしゃったけれども、一つのガイドラインで示されているだけで、ほかのガイドラインでは、そういう小児における慢性心不全という表記は、実際にはないので、日本小児循環器学会の小児心不全薬物治療ガイドラインの中で初めて記載されたので、ほかのガイドラインにはまだ載っていないのです。これを広めていくときに、どういう形で啓発するというか、知識を定着させていくのかと心配だったものですから、お聞きいたしました。
 当然ながら、小児においての心不全というのは、急性心不全、いわゆる血行動態の様々な病態から起こってきて、手術適応を経てある程度定常状態になって、血行動態がまだ完全に修復できない状態が続いて、慢性心不全状態という形になるのですが、そういう場合にも、年齢がある程度上がっていく状態とか経過の中で、様々な手術適応をしながらやっていくという形で経過を見ていくのが普通なのでしょうけれども、そういう意味で慢性心不全という定義をここに用いたというのは、まだまだ一般的ではなかったものですから、なぜこのお薬の添付文書の中でこういう書き方をしたのかなということで、御質問させていただきました。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおり、慢性心不全という概念自体は余り知られていないかもしれませんが、成人と今回の小児への適応での効能・効果の一貫性を考慮して、同じような効能・効果を付けております。試験の対象となった患者については、添付文書の臨床成績の項において具体的な選択基準等を記載して、どのような患者が対象となったか情報提供させていただきますので、このような形で理解を促進させていただきたいと考えております。
○宮川委員 私は理解しているのですが、しっかりとした記載がなければ意味がない。つまり、一つだけのガイドラインで示された急性心不全と慢性心不全の区別というもの、特に小児においては慢性心不全という書きぶりが今までなかったものですから、それを一つのガイドラインの一部の所を用いて、こういう審査の過程の中でカテゴリーを作られたということが、少し問題かなと思ったので御質問させていただいたということです。何かほかに書きぶりとかというのがないのか、なければ、しっかりと小児における慢性心不全の病態の成り立ちから変化の所も含めて、ある程度分かりやすい書き方がなければいけないのかなと思ったので、あえてお聞きしたということです。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございました。今後、学会でもガイドラインの改定等が進んでいくと思いますので、そちらも参考にしながら審査を続けてまいります。ありがとうございます。
○宮川委員 ありがとうございます。もう一つ、先ほどGlobal rank endpointというのがありましたが、なぜこれを用いて評価をしたのか。普通であればNYHAも含めてですけれども、それだけでよかったのかもしれないのですが、あえてこの指標を用いて行っていたのか。今までの類薬というわけではないですが、そういうものはどのように判断してきたのか、その経緯について教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。今まで小児の慢性心不全で、こういったイベント試験が実施された例は、かなり限られております。本来であれば、真のendpointとしては、死亡や心不全の悪化による入院といった評価項目を用いて有効性を評価することが適切と考えております。しかしながら、小児の慢性心不全の患者数がかなり少なく、こういった成人と同じようなendpointを用いた評価がかなり困難であったという状況があり、NYHA心機能分類の変化やQOLに関する指標といったものを組み合わせて、Global rank endpointといった指標を作って評価することとなりました。
○宮川委員 つまり、NYHAだけでは非常に粗いので、小さい変化というもの、それから、特にendpointに近い所をよりはっきり分かりやすくするために、このような手法を用いたのだと私も理解しておりますが、ほかの薬剤等でこのようなものを用いたことは、今まであったのでしょうか。私も不勉強で、教えていただきたいのですが。
○医薬品医療機器総合機構 Global rank endpointを用いた臨床試験というのは、本剤が初めてとなっております。もちろん、この評価指標が適切であったかというと、そうではないかもしれませんが、できる範囲の検討としては、妥当だったと考えておりまして、そういう状況もありましたので、審査ではGlobal rank endpointの評価だけでなく、Global rank endpointに含まれている各構成要素の評価も重要であると考え、有効性を評価しているところです。
○宮川委員 ありがとうございます。
○森部会長 宮川委員からの御質問に関して、少し確認事項がございます。海外で承認されている小児の慢性心不全に関する項目は、実際はどのように適応症が記載されているのか、情報提供を頂ければ助かります。
○医薬品医療機器総合機構 本薬でない他剤に関して、どういった指標を用いて評価されていたかというのは、現状では把握しておりませんが、本薬に関する米国と欧州における指標としては、米国ではNT-proBNPの変化を指標に承認されていたり、欧州では日本と同じGlobal rank endpointを用いた指標で承認されているという状況にあります。
○森部会長 そのことは後で聞こうと思っていたのです。まずは適応症です。今回、小児の慢性心不全は、米国と欧州では既に適応が取れているという記載があります。そこで書かれている病名はchronic heart failureという病名であるのか、若しくは違った病態のことを指しているのかを教えていただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 米国の添付文書の効能・効果の記載では、「慢性」という言葉は使っておらず、「左室収縮機能障害による症候性の心不全」というように書かれております。欧州では「慢性心不全」という言葉が用いられているという状況です。
○森部会長 今の二つの表記の方法は、いずれも大変工夫されたものだと思います。その一方で、宮川委員からの御指摘のように、小児における心収縮機能低下という病態は非常に複雑で多岐にわたることや、個々の症例においてもその背景は異なるということです。したがって表記については今、米国と欧州の記載を御紹介いただき、本邦における記載については「慢性心不全」という用語を使っておりますけれども、その概念については学会のガイドラインを含めて、今回の本剤の対象疾患について専門家の中でよく議論いただき、適切な病態の患者に使われるように御指導いただきたいと感じております。
 もう1点伺おうと思っていた点は、どういった有効性の指標を基に判定されているかということです。今回の主要評価項目については他剤では余り実績がないと伺っております。より客観的な指標として、NT-proBNPのデータがありますけれども、この情報についてどのように位置付け、どのような情報を提供していくか、機構のお考えはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。NT-proBNPですけれども、審査上の有効性の評価に当たっては、Global rank endpointにおける比較がまず第1にあって、その次に、Global rank endpointのカテゴリー1の死亡など、臨床的に重要な指標を重視して評価しておりました。加えて成人の成績の利用可能性を検討するために、本薬の薬物動態の成人と小児の類似性とか、NT-proBNPの変化とか、Global rank endpointのNYHA心機能分類の変化を参考に、総合的に有効性を評価しました。
○森部会長 そうすると、添付文書に記載する内容について、臨床成績をどのように整備していくかということになりますが、お考えはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 NT-proBNPは、あくまでも本試験では探索的評価項目であり、実臨床で用いられている指標ではありますけれども、患者個別の推移などを参考に管理されているという状況です。集団レベルでの結果の評価とは、ちょっと位置付けが違うのではないかと考えており、NT-proBNPの結果は参考として、医療従事者向け資材等に記載し、情報提供しようと現状では考えております。
○森部会長 今、機構の見解を伺ったところですけれども、事前に御質問いただいている点等を踏まえて、委員の先生方から御発言を頂こうと思っております。では、柴田委員から御発言いただけますか。
○柴田委員 今の点に関連して、少しお伺いします。添付文書案の中ではおっしゃったように、Primary endpointとして設定されているGlobal rank endpointのマンホイットニー確率推定値が書いてあります。それが0.52であることや、それをオッズ比にした数字が書いてあり、P値が有意でなかったという結果が書いてあります。しかし、この0.52という数字を見て臨床の先生方が、これが効いているか効いてないかという判断ができるのかという点については、判断できないと思います。有意差が付いていて既存薬に勝っているのであれば薬効が存在する証明にはなりますけれども、有意差が付いてないことと、この0.52というのが、0.5からの上乗せが0.02あるというのが、どういう臨床的意義があるものなのか、全く分からないですね。そうであればこれは、やはり医学的に解釈可能な数字をここに載せるべきではないかと思います。
 機構のお考えとしては、カテゴリー別の数字を書いておられるので、全く書いておられないということではないと思いますが、例えば米国の添付文書を見ると、NT-proBNPの推移が書いてあります。エナラプリル群では何パーセントで、本剤群では何パーセントというのが書いてあるので、12週投与したときにこのぐらい落ちるものであるという目安が分かる。つまり、この0.52という数字では一体何を示しているのかが分からないですが、NT-proBNPであればこのぐらい落ちることが分かります。そういう分かりやすく、臨床的に解釈可能なものを添える必要があるのではないかと思う次第です。これについて、改めて御見解をお伺いしたいと思います。
 補足をしますと、0.52というのは0.5よりはちょっと上回っているので、エナラプリルに劣ってはいない、ちょっと勝っている傾向だというのは分かります。しかし、これはエナラプリルが十分効いてなければ、プラセボだと思って見れば、プラセボに0.02勝ったという結果とも読めるし、エナラプリルがしっかり効いているのであれば、効いている薬に少し勝っていたという結果になります。つまり、この相対値だけを見ても、本剤が効いているのか効いてないのかが解釈できないので、対照群の成績を特定する必要があります。そういう観点で言うと、NT-proBNPの推移を提示すれば、対照群も落ちていて、有意差はないけれども同じぐらいか、少し勝るぐらいの結果であるということが解釈できます。相対値だけでは解釈できない絶対値、対照群の成績まで示して説明されている方が、解釈可能性が上がるのではないかというコメントです。
○森部会長 今、柴田委員に御発言いただいたことと、もうお一方、代田委員にも御発言いただこうと思っていましたが、順番にお答えしますか。それとも御発言いただいてから答えるのと、どちらがよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 先に意見を頂く形でお願いします。
○森部会長 代田委員から御意見がありましたらお願いします。
○代田委員 ありがとうございます。柴田先生から指摘いただいたところは、私は少し分かりにくいと思っていました。先生に御説明いただいて大変よく理解できましたので、その辺りはより分かりやすくしていただくことが必要だろうと思いました。それから、先ほどからお話があった米国での認可に関連して、ヨーロッパは日本よりも早めに認可されていましたから、どういう理由かと思っていました。その点もクリアになって、大変有り難いと思います。
 症例数が少ないので、致し方ない部分もありますけれども、私はこのデータを拝見して、総合的にはエナラプリルとほぼ同等プラスアルファの効果があることが、ある程度は見えているので、そういう判断は妥当かと思っておりました。特にhard endpointのカテゴリー1に減少傾向があるのは、ある程度説得力があると思いました。
 もう1点は、市販後調査については症例数が30例と書いてありましたけれども、もう少し症例があった方が、より分かりやすいデータになるのではないかということです。それと並行して1歳未満と剤形の開発もされるようなので、そういう意味合いでもメーカーも含めて、しっかりモニターをしていただければと思っております。以上です。
○森部会長 それでは、機構の方から御回答をよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 エナラプリルの有効性についてです。エナラプリルの小児の心不全に対する使用については、国内外のガイドラインで標準的治療薬として推奨されており、更に保険適用もされているという状況になっております。なので、エナラプリルの有効性に疑義が生じるとは考えにくいと考えています。先ほども申しましたが、NT-proBNPの本試験における評価の位置付けというのは、あくまでも探索的な評価項目であったことを踏まえ、NT-proBNPの結果自体は参考として、医療従事者向け資材等で記載して、情報提供することとしようと考えておりました。代田委員からも御指摘があったように、こちらとしてはあくまでもGlobal rank endpointのカテゴリー1の結果をより重視していたということもありましたので、添付文書のカテゴリー別の結果が、臨床的意義を説明する結果の記載となっていると考えております。
○医薬品医療機器総合機構 機構より少し補足させていただきます。心不全領域の薬効評価において、NT-proBNPの位置付けとしては、基本的に薬力学的指標としての評価であったり、あるいは第II相試験において、ある程度有用な指標という認識で、薬事承認に至る臨床的意義のある有効性に関しては、基本的にhard endpoint、心血管に関するイベントや入院等で評価することが適切という評価を、これまで行ってきたところがあります。
 今回の試験でも、NT-proBNPの位置付けとしてはイベント評価に比べると、若干下であったというところを踏まえて、添付文書の基本的な記載要領として、主要評価やそれに準ずる重要な評価項目に関して、要点を記載しているところであったために、ただいまのような方針を提案させていただきました。
 一方で今回、そもそも主要評価項目で検証には足りなかった部分や、成人では既に一定の有効性が確認されているという前提での評価という、ちょっと複雑な背景があります。そうした背景込みで、添付文書にもあえて探索的な項目であったNT-proBNPの結果まで記載すべきか、それが有用かどうかというところは、各委員の先生方の御意見を頂いて判断させていただきたいと考えております。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。では柴田委員、どうぞ。
○柴田委員 補足としてコメントします。今回の本質的なことは、用法・用量の設定が適切であったかということになろうかと思います。用法・用量の最適化ができているか否かを議論する上で、十分にたくさんの患者の数があれば、詳細な用量設定試験をするなどして、用法・用量の設定の妥当性は議論できると思いますが、このような状態では難しいので、ざっくりとした評価にならざるを得ない。
 そうなると、基本的に通常は先ほどおっしゃったように、第II相試験で調べるようなendpointであったとしても、このぐらいの用法・用量でやると、このぐらいの結果になるという反応の情報を示すことは、成人との類似性を踏まえて議論をしているという背景からも、一定の意味合いはあるのではないかと思った次第です。おっしゃるようにNTproBNPをPrimary endpointにして検証するのは、やはり厳しいところがあると思います。現状でPrimary endpointが書いてあるとか、カテゴリーが書いてあるというところまでは妥当だと思いますけれども、今回のPrimary endpointの分かりにくさとか、第II相試験、第III相試験で、厳密に通常の成人と同じような開発ができない領域であるということを踏まえると、情報提供はあった方がいいかと思います。ただ、最終的には分量との兼合いもありますので、そこの御判断はお任せしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘、ありがとうございます。機構よりお答えいたします。そうした意味で御指摘のように、今回は用法・用量の設定も含めて、そもそも血中濃度レベルでどのぐらい成人と近接したところに設定できているか、その反応性に関しては、PDのようなNT-proBNPの変化を含めて、恐らくかなり総合的な指標を以て判断していただく必要があると考えております。それを全て添付文書に盛り込むというのは、構成的にも難しい部分があります。また現行の添付文書だと、今おっしゃったように成人等の比較という点で、成人のNT-proBNPの成績の記載は特にしていないという状況なので、いろいろ必要な情報を並べて提示できるようにするには、資材において適切なまとめ方をして提示していただくのが一番分かりやすいのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。
○柴田委員 そこが実際にこの添付文書を読まれる先生方にとって、適切な情報提供になっているのであれば、必ず添付文書に記載しなければならないというようにこだわっているわけではありません。
○森部会長 本日御欠席の佐藤直樹委員から、事前に御意見を伺っております。佐藤直樹委員からも、この点は添付文書に記載していただいた方がいいという御意見を賜っております。先ほど代田委員からも御発言がありましたし、現場の第一線で御活躍になっている先生方から、そのような貴重な御意見もありました。データの位置付けや収集した背景等を考えますと、観察された所見の一つとして、添付文書に御記載いただくということでよろしいかと思います。ですから有効性の根拠としてという位置付けではなく、治験中に観察されたデータとして付記いただくということで、おまとめいただく方法はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 承知しました。記載方法を少し工夫しつつ、反映する方向で検討させていただきます。
○森部会長 この点で柴田委員はいかがでしょうか。
○柴田委員 特に追加はありません。ありがとうございます。
○森部会長 代田委員、いかがでしょうか。
○代田委員 私もそれに賛成いたします。よろしくお願いします。
○森部会長 どうもありがとうございました。先ほど堀委員から、カプセルのお話を詳しく伺っております。やはりカプセルの誤飲というのが大変心配されるところです。先ほど資材を拝見しました、小さくてよく見えなかったのですけれども、誤飲の注意喚起をしっかりしていただくことが、大変望ましいのではないかと思っております。もともと心機能の弱い方が飲まれるので、誤飲リスクが、非常に重篤なイベントを起こすことが想定されます。丁寧に記載を頂きたいと思っておりました。
 それから冒頭、宮川委員から御発言いただいた1歳以下での開発についても、やはり小児の慢性心不全といった病態の多様性を御考慮いただき、各症例の病態等、きめ細やかな御配慮を頂いた上で、適応について御検討いただくことが、将来的に必要かと考えております。
○医薬品医療機器総合機構 代田委員から、製販後調査の症例数に関して御指摘があったので、御回答させていただいてもよろしいでしょうか。
○森部会長 お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 本調査の目標症例数についての実施可能性、具体的には調査予定症例数と、施設あたりの年間使用患者数に基づいて設定されております。機構としても過少な見積もりではないと判断しているため、現在設定されている30例より増やすことを求めるのは難しい状況と考えております。
○医薬品医療機器総合機構 補足いたします。現時点での見積もりということで、一定の妥当性があると判断しておりますが、当然症例の集積情報であったり、そこからまた得られる安全性情報によって追加の措置であったり、調査の要旨というのは経時的に検討していきたいと考えております。
○森部会長 ありがとうございます。佐藤直樹委員から、事前にもう一つ御意見がありました。服用後の調査について、長期にフォローいただきたいという御要望がありました。もし、そういった御意見がほかの委員の先生方からも御指摘があればと思っておりますが、いかがですか。今回の調査は1年ですか。
○医薬品医療機器総合機構 今は1年で設定しています。
○森部会長 1年間という期間について、もし御意見がありましたらお願いいたします。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 本当に年齢が低いときというのは、ほとんどの子供たちはそれほど塩分を摂ることが少ないのです。ところがある程度学童に近いところになりますと、やはりスナックみたいなものも含めて、いろいろ買ってしまいますので、塩分摂取量が非常に多くなります。体重や年齢だけではなく、子供の場合は周囲の環境がものすごく変わってくるので、その辺のフォローアップは非常に難しいかと。その辺で今の1年というのは、非常に難しい判断に迫られるのではないか。だから機構も、非常に御苦労されるのだろうと私も思います。
 私も臨床経験として、大人の場合はたくさん使っていますし、臨床試験も経験しています。そういう意味では、非常に有効な面も見られます。子供にとっても非常に有利な、いろいろなところに働くことも想定されるのですが、子供の場合だと様々な誘因があり、そういう意味では非常に慎重に考えていただければと思います。手術を受けられた子供たちも数多くおられます。ただし、この頃は外科的な処置が非常に優れているので、このようなカテゴリーに入る子は確かに少ないのです。だから例数もなかなか伸びないのだろうということも想定されるので、その辺はしっかりと判断される方がよろしいかと思います。
○森部会長 代田委員と長谷川委員から御発言を頂くことは可能でしょうか。
○代田委員 佐藤先生が提案されたように、より長期のフォローアップができれば、その方が情報量としては多いと思います。確かに宮川先生もおっしゃるように、発達とともに、またいろいろな要件が変わってくるだろうと思いますので、可能であれば私も少し延長できるといいと考えております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。長谷川委員、よろしいでしょうか。
○長谷川委員 先ほどから慢性心不全という疾患が出ていますけれども、術後だけではなく、うちの大学では拡張型心筋症など、先天性心疾患に伴わないものも結構フォローしております。ですから、先ほどから出ているように、もう少し長期でフォローさせていただく方がよろしいのではないかと考えました。以上です。
○森部会長 御発言、どうもありがとうございました。長谷川委員、そのほかに全般的に何か御発言や御意見はありますか。
○長谷川委員 ほかの委員の先生方の御議論で十分です。ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 こちらは実施可能性や、企業との調整にもよるのですけれども、より長期に調査が可能かどうかについては、調整して検討させていただこうと思います。
○森部会長 是非、その点はよろしくお願いいたします。そのほかに委員の先生方から御意見、御質問はありますか。柴田委員、先ほどの第一種過誤の記載整備は、これでよろしいでしょうか。
○柴田委員 先ほど御説明いただいたとおりで結構です。
○森部会長 ありがとうございました。そのほかに。どうぞお願いします。
○中西委員 琉球大学の中西です。専門は小児科です。基本的には腎臓がサブスペですけれども、医療環境も含めて全体を診ております。今回、小児の薬剤開発というところで、皆さんには非常に御苦労いただいています。最初の堀委員の御懸念も、もっともだと思いますけれども、非常によくできた資材です。小児科の場合は医師が患者や御家族に、かなり丁寧に説明することが多いのです。それだったら、何とか小児の薬剤の開発をしようという会社と機構の熱意を感じるような資材を、きちんと作っていただいた。小児の開発というのは、皆さんも御存じのとおり大変難しい中で、endpointが少しはっきりしないとか、薬効が十分どうかということもありますが、むしろそちらよりも安全性を長期に見るということに、私も賛成です。今回、小児の開発のために非常によく尽力いただいていることに、改めて敬意と感謝を申し上げたいと思います。私からは以上です。
○森部会長 中西委員、御発言をどうもありがとうございました。今回、審査の際に資材を実際に御供覧いただきまして、本当に助かりました。大変詳しく、患者向けと医療者向けの両方の御準備を頂いてよく分かりました。厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。そのほかに先生方から御質問はありませんか。
○佐藤(陽)委員 国衛研の佐藤です。添付文書について確認します。先ほどもちょっと話題になった、6ページの14番の「適用上の注意」の14.2.2です。「絶対にカプセル型容器ごと飲ませないこと」とあります。「絶対に」と言っている割には、余り目立たないのが大丈夫かと思うのです。これは資材などではかなり強調されているのですか。そこだけ確認させてください。
○医薬品医療機器総合機構 患者向け資材の共有をお願いできますか。6ページです。患者向け資材の右上に太字で書いて、目立つようにしています。
○佐藤(陽)委員 分かりました。
○医薬品医療機器総合機構 加えて、製剤写真を御覧ください。PTPシートにも、「カプセル型容器ごと飲まないでください」といった記載をしており、注意喚起させていただいている状況です。
○佐藤(陽)委員 どうだったかなというのは覚えていなかったので、ありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 添付文書の中で「絶対」という注意書きの付いている記載は、大変希少かと思います。添付文書の記載ルールは決まっていると思いますので、ボールド(太字)にしていただくことが記載上可能かどうかは、御確認いただきたいと思っておりました。
○医薬品医療機器総合機構 記載要領等を確認して、適切に対応させていただきます。
○森部会長 そのほかに、先生方から御質問はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議はないようです。では承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて議題4に移らせていただきます。議題4について、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題4、希少疾病医薬品の指定の可否について御説明いたします。資料4を御覧ください。4-1に表として今回、2品目をお示ししております。まず1品目目として、資料4-2の事前評価報告書を御覧いただけますか。「Encaleret」です。申請者はこちらに記載の会社で、予定される効能・効果は「常染色体顕性(優性)低カルシウム血症1型」です。患者数は100人程度と推定されております。医療上の必要性は次のページです。本疾患の治療ですが、本疾患について本邦で承認されている医薬品はなく、標準的に低カルシウム血症に対しては、活性型ビタミンD製剤及びカルシウム製剤の経口投与が行われます。しかし、これらの薬剤を長期間投与すると、高カルシウム血症及び高カルシウム尿症に伴う腎臓の合併症、異所性石灰化の発症リスクが増加すると言われております。また、本剤についてはこれまでの製剤とは異なる作用機序により、血中カルシウム濃度及び尿中カルシウム排泄量の正常化を促すことが期待されると考えております。開発の可能性については、海外第II相試験が既に実施されており、一定の見解が得られております。また、現在国際共同第III相試験を実施中であるという状況です。以上のことから、指定の基準を満たすと考えております。
 2品目目が「tinlarebant」です。予定される効能・効果は「スタルガルト病」です。まず、対象者数です。スタルガルト病は指定難病の黄斑ジストロフィのうちの一類型であり、眼底所見として黄斑部の萎縮病巣と、その周辺部の黄色斑を特徴とする病気です。このスタルガルト病自体の基となる黄斑ジストロフィの総患者数については、約1万2,600人とされていることを踏まえますと、スタルガルト病の患者数についても2万人未満ということで、5万人未満の基準を満たすと考えております。
続いて、医療上の必要性についてです。黄斑ジストロフィは、両眼の黄斑機能が進行性に低下する遺伝性網脈絡膜疾患の総称であり、その1類型のスタルガルト病は、主に小児期、成年期に発症し、両眼性進行性の不可逆的な中心視力の低下を生じた結果、失明に至る場合もあるとされております。本薬については、レチノールのRBP4への結合を総合的に阻害することにより効果が期待されるもので、臨床試験としては海外1臨床試験において、一定の結果が得られているという状況です。開発の可能性として、本薬は海外で第III相試験が実施中であることを踏まえますと、本薬の希少疾病用医薬品の指定の要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 御説明、どうもありがとうございました。では希少疾病用医薬品の2剤の開発に関して、先生方から御質問はありますか。特にないようですので、議決に入らせていただきます。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
特に御異議がないようなので指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、報告事項に移らせていただきます。報告事項の議題1、2について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは資料5を御覧いただけますか。まず報告事項の議題1です。こちらは資料6関係です。対象の品目は、販売名が「注射用エンドキサン」、申請者は「塩野義製薬株式会社」。申請の概要ですが、「造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制に係る効能・効果及び用法・用量の追加」となっております。こちらは既に本部会においても公知申請について、事前評価の報告をしているものです。機構における審査の結果、承認して差し支えないとの判断をしております。
 続いて議題2の関係、医療用医薬品の再審査結果についてです。今回、御報告する品目は三つあります。資料7-1が「サーティカン錠」、資料7-2が「スーグラ錠」、資料7-3が「フォシーガ錠」です。これらの品目について機構における審査の結果、いずれの品目もカテゴリー1として効能・効果、用法・用量の変更の必要のないものとして判断しております。以上です。
○森部会長 報告事項の議題1について御説明いただきました。この点について御質問がありましたらお願いします。特にないようなので、報告事項については御確認いただいたものとさせていただきます。
 本日の議題は以上です。事務局から何か御報告はありますか。
○事務局 次回の部会は令和6年2月29日の木曜日、午後6時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。御議論、どうもありがとうございました。御礼申し上げます。
( 了 )  
 
 
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬局

医薬品審査管理課 課長補佐 松倉(内線2746)