技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第78回)議事要旨

人材開発統括官海外人材育成担当参事官室

 

日時:令和6年6月17日(月) 10:00~12:00
場所:Web会議
出席者:岩崎委員、漆原委員、大迫委員、後藤委員、當間委員、花山委員、堀委員
厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構
(林業職種関係)林業技能向上センター、林野庁林政部経営課林業労働・経営対策室
(外食業職種関係)日本フードサービス協会、外国人食品産業技能評価機構、農林水産省外食・食文化課
 
議題
(1)林業職種の職種追加について(技能実習生への研修及び習熟度確認に関する報告)
(2)外食業職種(飲食物調理・接客・店舗管理作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
 
【概要】
(1)林業職種の職種追加について(技能実習生への研修及び習熟度確認に関する報告)
○ 林業職種の技能実習生への研修及び習熟度確認について、林野庁から報告が行われ、主として以下のような質疑が行われた。
・外国人向けテキストについて、なぜ英語版を作成しないのかとの質問があった。これに対して、技能実習生は必ずしも英語を理解できるわけではないため、林業職種の技能実習生の送出しのニーズのあった国の現地語版を優先して準備したが、今後の状況次第では、英語版の作成についても検討していきたいとの回答があった。
・外国人向けテキストについて、多言語版を作成しているが、技能実習生は文章を読めば理解できるのか、音声テキストのようなものも作った方がより効果的ではないかとの意見があった。これに対し、令和7年度の予算要求等においては、映像も活用したものを作成することを検討するなど、より実態に即して対応できるように努めていきたいとの回答があった。また、テキストに関しては、技能実習指導員が読み上げながら、技能実習生に確認を取りながら教育していくのかとの質問があった。これに対し、基本はそのような形を想定しているとの回答があった。
・技能実習生への講習について、実習実施者に通訳がいなくても必要な講習を実施できるよう、外国人向けテキストの作成等に引き続き取り組んでいくとのことだが、仮に技能実習生にテキストを読んでもらえない場合はどうするのかとの質問があった。これに対し、基本的には、技能実習指導員が日本語である程度の説明をして、技能実習生に理解してもらうことを想定してるが、細かい点を補足するなどの目的で現地語版のテキストが役に立つと考えているとの回答がなされた。これに対し、今後、技能実習生の数が増えた場合に、地方を含め日本全国各地でこのような対応が徹底できるのかとの質問があった。これに対し、テキストができた段階で、早目に周知等を実施することで、各地の技能実習の現場できちんと対応できるよう準備してもらう時間を確保したいとの回答があった。
・技能の習熟度の確認のためのチェックリストについて、実習実施者が保管して、監理団体がそれを確認するとのことだが、監理団体はそれを見て、どのような指導をするのかとの質問があった。これに対し、監理団体は、チェックリストにもれなくチェックが入っているかどうかを確認することになるため、監理団体が改めて実習生の習熟度を確認するというよりも、実習実施者がチェックリストを用いて習熟度を確認しているかを見ていく形になると考えているとの回答があった。
・技能実習生に労働災害が起きた場合に、チェックリストは労働基準監督署に提出されるのかとの質問があった。これに対し、運用上、提出すべきものという位置付けにはしていないが、実習実施内容に関する資料として提出する可能性はありうること、そのためにも実習実施者がきちんと保管するべきものだと考えているとの回答があった。
・外国人向けテキストについて、インドネシア、ベトナム、ラオス語版を作成中とのことだが、その他の言語については、受け入れる都度作成する予定であるかとの質問があった。これに対し、今回は送出しニーズがあった主要3か国を選んだが、その他の国からの技能実習生が多ければ、引き続きテキストの準備は考えたい、また、技能実習生は一定程度日本語を勉強して来日するので、日本語のテキストにルビをふり、平仮名で読めるにするなどの工夫はしているとの回答があった。
・技能検定当日も通訳を使うのかとの質問があった。これに対し、他の職種と同様に、試験実施中は通訳を立ち会わせないとの回答があった。また、座長から、職種によっては、安全について説明する時だけは通訳を付けることがあるが、試験実施中は通訳をつけないことが原則となっているとの補足説明があった。
○ 報告の結果、会議で出た意見等を踏まえて、林業職種における技能実習生への研修及び習熟度確認の適正な実施を図っていくこととされた。
 
(2)外食業職種(飲食物調理・接客・店舗管理作業)の職種追加について(職種の概要等の確認)
○ 外食業職種を移行対象職種として技能実習評価試験及び審査基準を整備することについて、日本フードサービス協会から説明があり、主として以下のような質疑が行われた。
・第2号技能実習の作業として実施させる「調理管理(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)」について、危険温度帯を理解した調理後の温度管理や、中心温度計を正しく使うことができることなどを目標としている、との説明があったが、HACCPは、温度管理だけでなく、原料の搬入からお客様に提供するまでの間において、危害(ハザード)がどこにあるかをまず分析するものだと思うが、外食業職種ではそこまでを技能実習の内容としないのかとの意見があった。これに対し、令和3年6月から、HACCPの考え方を取り入れた調理管理というのは多くの外食店で実施されているところ、例えば温度管理についても、メニューを3つに分類して、冷たいままで出すもの、あるいは加熱して殺菌等を行って、それをすぐに提供するもの、一旦加熱するが、冷却をして、その後、オーダーに応じて提供するものという3つのグループに分け、それぞれについて、どこにハザードがあって、どういう管理をするのが適当かということを、一般的に計画的にチェック項目を用意して、きちんとチェックすることになっているとの回答があった。これに対し、温度管理だけであれば、3年の技能実習期間は不要ではないかとの質問があった。これに対し、基本的にはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を学んでいただくことになり、温度管理だけを実施させるわけではないこと、また、一般的な日本の飲食店においては、日本衛生協会が作成しているマニュアルを参考にしながら調理等を行っているとの回答があった。これに対し、3年間で学ぶ衛生管理の内容として「HACCPの考え方を取り入れた」程度では不十分だと考えているとの意見があった。さらに、HACCPに関する技能実習の内容について、説明と資料で齟齬があるため整理が必要であるとの意見があった。
・開業や廃業が頻繁な飲食業において、技能実習生が実習先を失わないようにする対策はあるかとの質問があった。これに対し、安定した実習環境を提供するため事業所開業後3年経過していることを実習実施者の要件とすること、実習実施者の都合で人員を削減することになった場合に、技能実習生がその対象となることは想定していないこと、との回答があった。これに対し、改装又は廃業する予定のある店舗には実習先としないという認識でよいかとの質問があった。これに対し、技能実習計画を立てる段階で、改装等が予定されている店舗での実習は想定していないとの回答があった。
・飲食店は3年経つと7割が閉店する業界と言われることもあるが、技能実習を行うこと自体実現可能なのかとの質問があった。これに対し、事業所開業後3年を過ぎても、なお、継続して経営が続いていることを実習実施者の要件にすることで、実習生の実習先の確保を図っていきたいとの回答があった。
・実習実施者の要件である「開設後3年経過」していること、について、事業者単位ではなくて、事業所単位で3年経過していることを要件とするのかとの質問があった。これに対し、個別の店舗ではなく、事業者単位で開設後3年以上経過していることを要件とすることを考えているとの回答があった。
・特定技能制度の外食業分野においても、「開設後3年経過」要件を設けているのかとの質問があった。これに対し、特定技能制度においては当該要件を設けていないとの回答があった。
・ベトナム等にも、世界展開しているチェーン店等があり、日本と同様に店内の雰囲気も良く、清潔感があって、HACCPに対応していると思うが、日本に来なくても海外で就職し、技能を習得することは可能ではないかとの質問があった。これに対し、日本の高い顧客要求水準を満たすような国は、ほかには実態上ほとんど無いこと、日本ではHACCPに沿った食品衛生管理が義務付けられており、それに従って作業手順やマニュアル等が整備され、従業員教育が徹底されているが、海外でそれと同様の環境を用意することは難しいことから、日本を実習環境とする必要があり、実際に、送出し国になることが想定されるインドネシアやベトナム等から、日本で技能実習を実施してほしいとの要望書も頂いているとの回答があった。
・臨時的に店舗が閉鎖になった等の場合に、隣の店舗に勝手に実習先を変更することは、制度上簡単にできないことになっているが、廃業の多い外食業において、そのような場合にどのように対応するか、仕組みをつくり、店舗ごとの実習内容の統一化を図る必要があるのではないかとの質問があった。これに対し、技能実習制度の本旨からすると、店舗が閉鎖したからといって簡単に隣の店舗に移ることはできないと承知しているため、そうならないために、実習実施者が開設後3年経過していることを要件とすること、実習先が常時複数人で運営される店舗であることを確保されるように、事業所における累計総労働時間が週200時間以上であることを要件とすることを考えているとの回答があった。
・店長や指導者が不在の場合は、技能実習生もその日は勤務しないという認識でよいかとの質問があった。これに対し、店長や指導者が不在の場合は、それを補助する管理者や責任者が実習生を指導できること、また、実習体制の確保として、受入事業所では責任者向け研修を行うことを要件としており、店長のみならず副店長や時間帯責任者も当該研修を受講することで、店長が不在の日であっても技能実習の現場で技能実習生の実習の様子を確認をしながら、指導することは可能と考えているとの回答があった。
・技能実習指導員1名につき最大5名の技能実習生を指導するという説明がされたが、複数の技能実習生が、店舗管理、調理、接客という、それぞれ別の業務をやっているときに技能実習指導員の目が全員にきちんと行き届くのかとの質問があった。これに対し、外食業における経験から、技能実習指導員1人について最大5名の技能実習生の指導を行うことは可能ではないかと考えており、具体的には、例えば1フロアの比較的狭小なスペースの中に技能実習指導員や技能実習生が置かれるという状況が想定されるため、技能実習指導員はそのフロア全体を見渡すことが可能と考えられること。ただし、例えば、5人の実習生がそれぞれ飲食物調理、接客、店舗管理を分かれて行って、1人の技能実習指導員で5人を指導できないような状況となるおそれがある場合は、技能実習生5人を接客のみに従事させるなどの対応をすることで、目が行き届かなくなる状況を回避できると考えているとの回答があった。
・第2号技能実習の内容として調理、接客、店舗の「管理」を行うとの説明があったが、技能実習生自らが調理や接客に従事することはないということかとの質問があった。これに対し、第1号技能実習の段階では、マニュアルと作業指示書等に定められた業務を、自分がきちんとできるようになることを目標にしている一方で、第2号技能実習では、自分ができることに加えて、周りの従業員たちの業務の状況に目配りをして、できていない人がいたら注意をして、きちんと実施させることを想定し、「管理」という言葉を使ったとの回答があった。これに対し、「管理」とすると、現場の仕事には従事しない印象を受けること、技能実習指導員に指導されている技能実習生が、他の従業員をどこまで指導・監督できるのか整理が必要であることといった意見があった。また、特に、第2号技能実習において調理、接客は技能実習生自らも実施するのであれば、各企業で提供するものが異なる中で共通する必須業務は何か、1号と2号の技能実習の目標・実習内容の違いについてはもう少し具体的に示し、整理すべきとの意見があった。これに対し、指摘を踏まえて整理するとの回答があった。
・業態共通の必須業務を具体的に整理しないと技能実習評価試験を作成できないのではないかとの意見があった。これに対し、惣菜製造業職種の技能実習評価試験においても、実習実施者が製造する商品に関係なく試験を実施できていること、外食業職種においても加熱する商品、非加熱の商品で料理の種類が違っても共通する作業があることを踏まえ整理するとの回答があった。
・第2号技能実習の内容としてクレーム対応があるが、日本人でも難しいクレーム対応を技能実習生が行なってトラブルなどが生じた場合、その責任の所在も含め、外国人の技能実習として適当なのかとの質問があった。これに対し、第2号技能実習生のクレーム対応としては、お客様の苦情内容をよく聞いて、自分のミスであればすぐに謝る、対応を自分で判断できない場合には、責任者につなぐ、といった初期対応を想定しており、解決に至るまでの対応を全て技能実習生がやることは想定していないとの回答があった。これに対し、再度具体的な技能実習内容を整理して説明すべきとの意見があった。
・接客は対人対応であるため、マニュアルがあったとしてもそのとおりにいかないこともある中で、第1号技能実習生が対応できるのかという質問があった。これに対し、N4レベルの日本語能力があることを第1号技能実習生の要件としていること、実習先の店舗でチームを組んで技能実習生が接客をできるように指導を行うことで対応可能と考えているとの回答があった。これに対して、非常に幅広い技能を外食業職種で学ぶため、第1号技能実習の内容は調理と店舗管理、第2号技能実習で初めて接客を学ぶという考え方もあるのではないかとの意見があった。
・第2号技能実習の内容としてクレーム対応があるが、クレーム対応のパターンが様々ある中で技能実習生にクレーム対応のやり方をどのように教えていくのか。また、クレーム対応のパターンが業種・業態により様々ある中で、クレーム対応に関する技能実習評価試験は、どのように実施するのかとの質問があった。これに対し、お客様から苦情内容を聞いて、自分のミスであれば、謝った上で店舗責任者にすぐに報告する、話を聞いても自分で対応について判断できない、分からない場合には、店舗責任者を呼び、それ以降は店舗責任者にお任せする、ということは業種・業態によらず共通であるとの回答があった。それに対して、お客様からのクレームは、第1号技能実習生も受ける可能性があり、その場合、第1号技能実習生であっても店舗責任者につなぐことは必要であるため、クレーム対応を第2号技能実習の内容に限定する必要はないのではないかとの意見があった。これに対し、御指摘を踏まえて、技能実習の内容を再度整理するとの回答があった。
・技能実習生がクレームを受けた際に、メンタル不調とならないための保護策が用意されているのか、例えば、相談体制はどのようになっているのかとの質問があった。これに対し、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」又は各企業独自のマニュアルを使って技能実習生にカスハラ対策を学んでもらうことを考えているとの回答があった。これに対し、カスハラ対策として、母国語や英語で学べるようにすることも検討いただきたいとの意見があった。
○ 検討の結果、外食業職種(飲食物調理・接客・店舗管理作業)については、次回以降、引き続き、議論が行われることになった。
 
 
(以上)