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令和6年度 第2回化学物質管理に係る専門家検討会 議事録
労働基準局安全衛生部化学物質対策課
日時
令和6年6月10日(月) 14:00~16:50
場所
厚生労働省 専用第8会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館19階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館19階)
議事次第
- (1)濃度基準値の検討
- (2)化学物質の危険有害性情報提供制度における成分名等の通知等関係
- (3)その他
議事内容
○化学物質評価室長 それでは定刻となりましたので、「令和6年度第2回化学物質管理に係る専門家検討会」を開催いたします。本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。私は、本日座長に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます、化学物質対策課化学物質評価室長の藤田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、濃度基準値の検討及び化学物質の危険有害性情報制度における成分名等の通知について検討することとしております。そのため、開催要綱別紙の構成員名簿の全般に関する事項及び毒性に関する事項の先生方に参集いただいております。現在の出席者は13名で、うち武林構成員がオンライン参加となっております。平林構成員、宮内構名員が欠席となっておりますが、宮内構成員につきましては途中参加される可能性があるとのことです。
本日は会場とオンラインの併用で開催しておりますので、会場参加の皆様は、御発言の際に必ずマイクを使用していただきますようお願いいたします。オンライン参加の先生におかれましては、周囲の音を拾ってしまうことがありますので、御発言される場合を除きまして、マイクをミュートに設定していただきますようお願いいたします。また、御発言の際には、あらかじめチャットで御発言の旨を入れていただくか、又はお名前を名乗っていただき、座長の指名を受けてから御発言いただきますようお願いいたします。なお、議事録を作成し、後日公表いたしますので、御承知おきください。本日の議事は公開としており、一般傍聴者につきましては、会場での傍聴のみとさせていただいております。
それでは、城内座長に以降の議事進行をお願いいたします。
○城内座長 皆さん御参集いただきまして、ありがとうございます。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○化学物質評価室長 事務局でございます。資料は、議事次第と配布資料一覧、資料は資料1から資料4、参考資料は参考1から参考10までを御用意しています。タブレットに格納しておりますが、検討対象物質の一覧の資料3は印刷した資料も配布しております。会場にお越しの構成員の皆様方におかれましては、資料に抜けなどはございませんでしょうか。オンラインで参加いただいている先生にも資料を事前にメールで送付させていただいておりますが、何かありましたら、事務局までお知らせください。
本日の資料は、厚生労働省のホームページにあらかじめ掲載しております。傍聴の方はそちらを御覧ください。資料の確認は以上です。
○城内座長 それでは、本日の議事に入ります。議事1「濃度基準値の検討」についてですが、本日は10物質について検討する予定としております。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○有害性調査機関査察官 議事1の「濃度基準値の検討」については、小永光から説明させていただきます。資料の説明後ですが、構成員の先生方から事前に頂いた御質問、御意見等を事務局より御説明させていただきます。その御質問、御意見を踏まえていただいた上で、個別物質ごとに御議論いただきたいと思います。なお、検討に必要な一次文献資料の印刷版が必要な方は、事務局にお知らせいただければお席までお持ちいたします。
それでは、資料を説明させていただきます。資料1の説明です。資料1は、本年度の濃度基準値設定対象検討リストですが、本日、御検討いただく10物質について、○を付けさせていただいています。この○の付いた10物質について、個別の資料を資料2として配らせていただいています。
資料2を御覧ください。1ページです。まず最初は、ホルムアミドです。こちらは詳細調査不要となっており、初期調査のみとなっています。ホルムアミドの八時間濃度基準値としては、5ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載がある1文献で、提案の理由としては、コメント欄の記載のとおりですが、まとめとして、動物試験の結果から、肝血管肉腫を臨界影響とした場合のNOAELが20mg/kgから不確実係数等を考慮して5ppmの八時間濃度基準値を提案するとしています。その他、コメント欄も併せて御確認いただければと思いますが、遺伝毒性については、「Ames試験で陰性、またホルムアミドを3か月間経口投与した雌雄マウスでの小核化赤血球の増加が認められなかった等、概ね「陰性」という結論と判断した」と記載しています。
続いて、3ページの硫化ジメチルです。こちらも詳細調査不要、初期調査のみとなっていて、硫化ジメチルの八時間濃度基準値としては、10ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文の欄に記載の2文献で、提案理由としては、コメント欄に記載のとおり、まとめとして、「動物試験の結果から、NOAELを250mg/kg/日と判断し、不確実係数等を考慮した10ppmを八時間濃度基準値として提案する」となっています。その他のコメントについては、特に記載はありません。
5ページのペンタクロロエタンを御覧ください。こちらは詳細調査不要、初期調査のみとなっており、ペンタクロロエタンの八時間濃度基準値としては、2ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の1文献となっており、提案理由としては、コメント欄記載のとおり、まとめとして、「動物試験の結果から、体重増加抑制を臨界影響としたNOAELを50mg/kg bw/日と判断し、不確実係数を考慮した2ppmを八時間濃度基準値と提案する」と記載しています。その他コメントは、特にありません。
7ページの1,2,4-トリメチルベンゼンです。ここからトリメチルベンゼンが3物質、1,2,4-トリメチルベンゼン、9ページの1,3,5-トリメチルベンゼン、11ページの1,2,3-トリメチルベンゼンと3つの異性体が続きますので、まとめて説明させていただきます。なお、トリメチルベンゼンについては、タブレットの参考資料10として、令和5年度の検討会報告書の抜粋を付けさせていただいていますが、令和5年度の検討会において、異性体混合物として濃度基準値が議論されて設定されており、10ppmの八時間濃度基準値が設定されています。今回、検討いただくそれぞれの異性体については、いずれも詳細調査不要で、初期調査のみとなっており、昨年同様、10ppmの八時間濃度基準値を提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の2又は3文献で、ほぼ同様の文献が根拠となっています。
提案理由としては、コメント欄に記載のとおりですが、まとめとしては、いずれの異性体においても、「動物試験の結果から神経毒性(行動影響および疼痛感受性の低下)および赤血球系の異常を臨界影響としたNOAELを25ppmと判断し、不確実係数等を考慮した八時間濃度基準として10ppmを提案する」と記載しています。その他のコメント欄ですが、1,2,4-トリメチルベンゼンについて、また1,2,3-トリメチルベンゼンについては、単体の試験結果があることから、それに基づき濃度基準値を設定した。1,3,5-トリメチルベンゼンについては、1,3,5-トリメチルベンゼン単独の試験結果は調査した範囲では認められなかったが、異性体による毒性の差は上記結果から顕著でないと判断されて、混合物の濃度基準値10ppmを用いて評価してよいと判断したと記載しています。
続いて、13ページの2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールです。こちらは詳細調査不要で、初期調査となっており、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールの八時間濃度基準値としては、2ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の2文献となっており、提案理由としては、コメント欄のとおりですが、まとめとして、「動物試験の結果から、22ppmをNOAELとみなし、不確実係数等を考慮した2ppmを八時間濃度基準値として提案する」としています。その他のコメント欄には、特に記載はありません。
15ページのヒ化ガリウムを御覧ください。詳細調査不要で、初期調査となっており、ヒ化ガリウムの八時間濃度基準値は「設定できない」を提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の2文献となっており、提案理由としては、コメント欄に記載のとおりですが、「ヒ化ガリウムは体内で分離した無機ヒ素としての有害性が懸念されることから、本物質での濃度基準値は設定できないと判断する」となっています。その他のコメントも併せて御確認いただければと思います。
17ページの2-シアノアクリル酸エチルを御覧ください。詳細調査不要で、初期調査となっており、2-シアノアクリル酸エチルの八時間濃度基準値としては0.2ppm、短時間濃度基準値としては、1ppmを提案いたします。根拠論文としては、根拠論文欄の2文献で、提案理由としては、コメント欄に記載のとおり、まとめとして、「ヒトの知見から閉塞性肺機能障害を臨界影響とした八時間濃度基準値0.2ppm、眼および上気道刺激を臨界影響とした短時間濃度基準値1ppmを提案する」となっています。その他のコメントも併せて御確認いただければと思います。
19ページの二酸化セレンです。詳細調査不要で、初期調査となっており、二酸化セレンの八時間濃度基準値としては、セレンとして0.02mg/m3を提案いたします。根拠論文は、根拠論文欄に記載の4文献となっており、提案理由としては、コメント欄に記載のとおり、まとめとして、「日本人成人の耐容上限量(335μg/日)と平均摂取量100μg/日との差235μg/日を職業ばく露によるセレン中毒を防ぐための最大許容量と判断し、呼吸量で補正したセレンとして0.02mg Se/m3を八時間濃度基準値と提案する」となっています。その他のコメントも併せて御確認いただければと思いますが、「二酸化セレン固有の有害性にかかる知見に乏しいことから、令和5年度のセレン化合物の根拠に順じ濃度基準値を設定した」と記載しています。
資料2の説明は以上です。資料3については、資料2の一覧の資料となっています。以上です。
○化学物質評価室長 続いて、事務局より構成員限りとしてお配りしておりますとおり、あらかじめ御質問や御意見を頂いておりますので、それらに対する御回答をさせていただきたいと思います。机上配布資料に御質問がありますので、御準備ください。最初に、幾つか頂いている御質問の中に共通して出てくる事項がありますので、それについて、まとめて御説明させていただきたいと思います。
1つ目として、試験結果に発がん性が認められるので、基準値を設定してはいけないのではないかといった意見が何件か見られます。これについては、発がん性には、体内にある細胞の遺伝子に傷を付けてがんが発生するもの、これを遺伝毒性発がん物質と言いますが、このほかに、細胞に炎症を起こしたり、ホルモン作用等で細胞増殖を増加させて、ある量を超えるとがんが発生するものがあります。これを非遺伝毒性発がん物質と言います。前者の遺伝子に傷を付けてがんを発生させる物質というのは、遺伝毒性発がん物質のことですが、これについては、ほんの少しでもあればがんが発生すると仮定されていることから、これ以下であれば大丈夫という基準値を作ることができないとされています。一方、後者の非遺伝毒性発がん物質は、ある量を超えるとがんを発生させるとされていますので、ある量を超えなければ大丈夫です。つまり、これ以下であれば大丈夫という基準値を作ることができるとされています。したがって、文献中にがんが発生したといった報告があっても、これが遺伝毒性かどうか、遺伝子に傷を付けるものかどうかを判定して、基準値を策定するかどうかを検討しております。
何回か出てくる御意見として、次に、GHSの有害性と、臨界影響が異なるのはおかしいのではないかといった御意見がありました。本検討会では、濃度基準値を設定できる文献を根拠としています。濃度基準値は、様々な毒性について入手できる文献の中で最も低いNOAEL、NOAELというのは、No Observed Adverse Effect Levelということで、ある物質について何段階かの異なる投与量を用いて毒性試験を行います。そうすると、少ない所では毒性が出ないけれども、多い所では毒性が出てくるといった曲線が書けるということです。この毒性が出なかったもっとも大きな所をNOAELとします。それで有害性が影響されなかったもの、幾つも試験をしますので、その中で最も小さなものを定めて、これから不確実係数等を考慮して基準値を作ります。一方、GHS区分というのは有害性を区分するためのものなので、もっと毒性の高い所を見ているということです。また、本検討会では、GHSの政府分類以降に発行された文献を用いた検討がされる場合もあります。したがって、GHS区分の有害性と、臨界影響が異なることは、十分あり得ると御承知いただければと思います。
もう1つ、GHS区分と絡めて、GHS区分に急性毒性や単回ばく露等、短期の毒性しかない場合に、八時間濃度基準値を定めるのはおかしいのではないかといった御意見が幾つかありました。本検討会では、どのような物質に対し基準値を作るかということについては、令和3年度に取りまとめられた「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」に従っております。リスクアセスメント対象物質のうち、欧米の基準値策定機関による職業性ばく露限界値がある物質について、濃度基準値を策定することにしています。濃度基準値というのは、先ほど申しましたように、様々な毒性について入手できる文献の中で最も低いNOAEL、何も影響が出なかったということを確認して定めるもので、有害性を区分するGHSの区分の考え方とは大きく異なります。したがって、GHSの有害性が短期的なものであったとしても、得られた文献から、八時間濃度基準値を定めることが妥当であると考えております。
では、個別の物質に行きたいと思います。資料2の1ページです。1つ目のホルムアミドに関する御意見、御質問です。濃度基準値に用いられている文献というのは、肉腫の発生に関する影響濃度になっています、ちょっと飛ばして、発がん性に関しては閾値を定められないので、濃度基準は定めないということで、これを定めてはいけないのではないかといった御質問です。お答えですが、全体に関するところで御説明したように、こちらは文献を見て遺伝毒性かどうかを判断しております。その他のコメントの欄を見ていただくと分かりますが、文献1の結果によって、遺伝毒性は陰性とされていることから、濃度基準値を定めることができると判断しております。
続いて、硫化ジメチルです。3ページを御覧ください。こちらについては、意見が3つ来ておりますが、まとめて御紹介いたします。ラットの経口試験において、NOAELが250mg/kg/日と判断されていますが、これ以上の濃度でも有害影響が認められていない可能性があるので、これを採用していいのかどうかというのが1つ目の御意見です。もう1つの御意見は、次の段落ですが、GHS区分では、眼に対する重篤な損傷となっておりますので、要は短期ですね、濃度基準値の設定の対象とするべきかどうかが疑問ですということです。次の行ですが、GHSガイダンスの分類においても、250mg/kg/日が区分2のガイダンス値をはるかに超過しているので、長期的なばく露の有害性はないということなので、そもそも長期的濃度基準値の対象の候補とすることに妥当性を欠くのではないかといった御意見を頂いています。さらに、その下の御意見ですが、同様に、眼以外に対しての標的健康影響が明確でないので、長期の濃度基準値を設定するというのは適切ではないのではないか。同様に、3行目ぐらいで、本試験結果は250mg/kg/日以上の試験データがないので、NOAELがこの値以上になる可能性もあるのではないかといったことで、ACGIH以外に職業ばく露限界値が設定されていないので、本当にこの物質に濃度基準値を設定する必要があるのかどうかということを、御意見として頂いています。
まず、GHS区分と基準値設定対象物質の考え方については、最初に御説明したとおり、リスクアセスメント対象物質のうち、他の機関で基準値が定められているものについて、基準値を設定するという考え方に基づいて選定しているので、GHS区分が何であっても、論文を見て設定できるということであれば設定するといった考え方です。今回、眼にしかないのに設定していいのかということについては、GHS区分とは全く関係ないということも御説明させていただきました。
NOAELとした濃度以上の濃度での試験結果がないことについては、もしかしたらそれ以上のNOAELの可能性があるのではないかという御指摘だと思いますが、こちらについては、事前に調査していただいている安衛研の部会でも、得られた文献でやるということになっていますので、得られた限られたデータの中で基準値を策定しようとすると、この値になるということで、この文献しか見付けられなかったので、このような値になっているということで提案させていただいています。
続いて、5ページのペンタクロロエタンです。ペンタクロロエタンについても、GHS区分は特定標的臓器毒性(単回ばく露)の区分3だけになっているということで、これについて八時間濃度基準値を定める必要があるのでしょうかといった御意見があります。また、コメント欄を読むと、250mg/kg/日の健康影響は発がん性の疑いがあるので、発がん性があるものについて濃度基準値を設定してよいのかどうかといった御意見です。
まず、GHS区分が単回ばく露の影響だけであるものへの考え方については、全体に対する質問の所で御説明させていただきました。本件では、文献にあるとおり、ラットに対する13週間の毒性試験で体重増加抑制という全身影響が見られたことから、八時間濃度基準値を設定することが妥当であると考えています。また、発がん性物質については、こちらも文献をちゃんと見ており、コメント欄にも記載してあるとおり、遺伝毒性は見られないとなっていることから、濃度基準値を設定することは可能であると判断しています。見られた肝細胞がんですが、高濃度で見られていることから、基準値を守っていればがんの発生は避けられるものと考えられます。
続いて、トリメチルベンゼンのシリーズです。9ページの1,3,5-トリメチルベンゼンは、先ほど単独の文献がないといった説明をさせていただいたところですが、御意見としては、1,2,3と1,2,4の結果から、1,3,5-トリメチルベンゼンの有害性も大差ないと推定しているのですけれども、1,3,5-トリメチルベンゼンの含有率が低い場合は、その影響が表面化しない可能性があり、それぞれの含有率が明らかにされていない状況では、この仮定は成り立たないので、ここから濃度基準値は設定できないのではないかといった御意見を頂いています。
これに対する回答ですが、トリメチルベンゼンについては、令和5年度の検討会で、今回提案されている3つの異性体の混合物として、今回の提案と同じ基準値が設定されています。先ほども説明の中で申していましたが、参考10に昨年度の評価書を付けていますので、そちらも併せて御覧ください。参考10に付けた資料に、その他のコメントの欄がありますが、「異性体の毒性の差は顕著でない」とされており、1,3,5-トリメチルベンゼンの単独の結果がなくても、異性体の結果をもって基準値を提案することができると考えております。
トリメチルベンゼンシリーズの3つ目ですが、11ページの1,2,3-トリメチルベンゼンです。こちらについては、8時間の濃度基準値は継続的なばく露による健康被害を防止するということなので、これは何回か出てきているものですが、そもそも特定標的臓器毒性(反復ばく露)のような継続的なばく露による有害性があるものに対して設定されるべきであるが、今回は特定標的臓器毒性(単回ばく露)の気道刺激性や麻酔作用のみがGHS区分でされていますので、八時間濃度基準値を設定することが妥当でしょうかといった御意見を頂いております。
GHS区分が単回ばく露の影響だけであるものという考え方については、何度か御説明させていただいているとおりです。今回の基準値は、3か月の動物試験の結果、行動影響や疼痛感受性の低下が見られたことから、GHS区分が何であっても、八時間濃度基準値を設定することは可能であると考えています。
続いて、2-シアノアクリル酸エチル(ECA)です。資料2の17ページです。こちらは、肺機能障害での感作性を原因とするのであれば、GHS区分においても同様に結論付けられているべきですが、今回のものとGHS区分が違うので、整合性が取れていないといった御意見を頂いております。
GHS区分と臨界影響が異なるという点については、何度か御説明させていただいているとおりです。特に本件では、その他のコメントの欄にもあるとおり、GHSの議論よりも新しい文献を用いて検討いたしました。本件では、シアノアクリル酸による職業性ぜん息が多発したことをきっかけとして行われた疫学研究に基づいて基準値の提案をしていることから、閉塞性肺機能障害を臨界影響とすることは妥当であると考えています。
なお、令和5年度に検討したシアノアクリル酸メチルでは、GHS呼吸器感作性区分1が設定されております。根拠論文等からは、シアノアクリル酸エチルとシアノアクリル酸メチルは同等の呼吸器感作性があると考えられております。今回、検討したシアノアクリル酸エチルのGHS分類は、シアノアクリル酸メチルよりも分類年度が古いことから、今後、シアノアクリル酸エチルの再分類が望まれるとなっております。
以上が事前に頂いた御質問への回答です。
○城内座長 御説明、ありがとうございました。それでは、事前に頂いた質問・御意見や、それに対する事務局の回答も踏まえ、1物質ごとに議論していきたいと思います。では、個別物質ごとに名前、8時間濃度基準値等を読み上げますので、一つずつ御議論いただければと思います。まず、ホルムアミドについて、5ppmと提案されていますが、いかがでしょうか。
○西村構成員 日本化学工業協会、西村でございます。ホルムアミドにつきましては、数値というところではございませんが、その他のコメント欄に経皮吸収性があることが記載されておりますけれども、その根拠文献がどれに当たるかを、初期調査、結果調査、あるいは別紙2-1のところに記載いただければ有り難いと思います。以上でございます。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質評価室長 事務局でございます。御質問、ありがとうございます。皮膚等吸収性有害物質でございますが、これは根拠論文に基づいているというよりは、令和5年7月4日に公布されて本年4月1日から施行されている「皮膚等障害化学物質等」に基づいて定めているということでございますので、あえて書くと言うと「法令で定められた物質」ということが根拠になるということでございます。皮膚等吸収性有害物質がどうやって設定されたかという考え方は、安衛研に設置されました「皮膚等障害化学物質の選定のための検討会」というものがございまして、こちらに詳しく記載されておりますので、もし御関心がありましたら、そちらを御参照いただければと思います。以上です。
○城内座長 よろしいでしょうか。
○西村構成員 はい。
○城内座長 そのほか、御意見等ございませんでしょうか。それでは、ホルムアミドにつきましては、8時間濃度基準値5ppmとしたいと思います。
続きまして、硫化ジメチル、8時間濃度基準値は10ppmと提案されていますが、これについてはいかがでしょうか。
○西村構成員 日化協、西村でございます。硫化ジメチルにおきましては、コメント欄のところで2つの試験が引用されていますけれども、NOAELの算出のところでWistarラットの経口試験を選定・選択した理由を、同様にこの資料2の初期調査結果評価の表に記載していただければと思っております。以上でございます。
○城内座長 事務局、いかがでしょうか。
○化学物質評価室長 すみません、もう一度何を記載したらよいかお願いできますか。
○西村構成員 2つの試験をコメント欄に記載していただいていますけれども、吸入と経口の試験が並んでおり、経口の後ろのほうの試験を選択した理由をこのコメント欄に記載していただければと思います。
○化学物質評価室長 分かりました。どちらがより低い濃度かがパッと見では分からないから、低い濃度をとったということですけれども。
○西村構成員 その旨で結構だと思いますので。
○化学物質評価室長 分かりました。工夫いたします。ありがとうございます。
○城内座長 そのほか、御意見等ございますか。
○大前構成員 1番の試験はLC50を求めるための試験なので、8時間濃度基準値には使えないということになろうかと思います。
○城内座長 西村構成員、どうぞ。
○西村構成員 日化協、西村でございます。今の御説明はすなわち、見ているのは致死だけしか見ておらず、その他の有害性影響を見ていないからというように言い換えてもよろしいでしょうか。
○大前構成員 はい、そういうことだと思います。
○城内座長 そのほか、御意見等ございますか。それでは、硫化ジメチルは8時間濃度基準値10ppmにしたいと思います。
続きまして、ペンタクロロエタンは8時間濃度基準値2ppmと提案されていますが、これについていかがでしょうか。御意見等ないようですので、ペンタクロロエタンは8時間濃度基準値2ppmとしたいと思います。
続きまして、1,2,4-トリメチルベンゼン、これは異性体を含めて御検討いただければと思います。異性体も含めて皆、8時間濃度基準値は10ppmと提案されていますが、いかがでしょうか。御意見等ないようですので、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼンは、それぞれ8時間濃度基準値10ppmとしたいと思います。
続きまして、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールは8時間濃度基準値2ppmと提案されていますが、これについてはいかがでしょうか。御意見等ございませんでしょうか。それでは、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールに関しまして、8時間濃度基準値2ppmにしたいと思います。
続きまして、ヒ化ガリウムについては濃度基準値の設定はありませんが、これについてはいかがでしょうか。御意見等あればお願いいたします。それでは、ヒ化ガリウムについては、濃度基準値については設置しないということにしたいと思います。
続きまして、2-シアノアクリル酸エチルは、8時間濃度基準値0.2ppm、短時間濃度基準値1ppmと提案されていますが、これについてはいかがでしょうか。御意見等お願いいたします。それでは、2-シアノアクリル酸エチルにつきましては、8時間濃度基準値0.2ppm、短時間濃度基準値1ppmにしたいと思います。
続きまして、二酸化セレン、8時間濃度基準値0.02mg/㎥(セレンとして)について、コメント等ありましたらお願いいたします。それでは、二酸化セレンにつきましては、8時間濃度基準値0.02mg/㎥(セレンとして)としたいと思います。
これで本日予定のすべての物質の濃度基準値の審議が終わりました。最終結果は、事務局からまとめはありますか。よろしいですか。
○有害性調査機関査察官 資料3を用いながら審議結果について確認させていただきたいと思います。本日御議論いただきました10物質の濃度基準値につきましては、皆様の御了解を得られましたので、10物質について設定させていただくという形で進めたいと思います。なお、今回、再検討となったものはございませんでした。よろしくお願いいたします。
○城内座長 ありがとうございます。続きまして、議事2「化学物質の危険有害性情報提供制度における成分名等の通知等について」です。事務局からの資料の説明の後、論点ごとに区切って議論をお願いしたいと思います。それでは、事務局から資料の説明をお願いします。
○化学物質評価室長補佐 化学物質評価室の吉岡と申します。資料4の「骨子案について」を御説明させていただきます。前回まで論点ということで御議論いただいていたものについて、今回、骨子案としてお示ししております。
2ページが検討項目ということで、これまでと同様、6点の検討項目としております。このうち1点目については、前回までは、SDS制度の運用改善を図るべき点としておりましたが、より法令に近い形で、「危険有害性情報の通知制度」という言葉を用いております。
3ページ以降の構成はほとんど変わっておりませんが、8ページに資料の追加があります。「化学物質を譲渡・提供する際の安全データシート(SDS)の交付状況」ということで、労働安全衛生調査の結果について、過去3年間のSDSの交付状況をまとめております。
6ページ以降が前回までの御議論です。こちらは各論点ごとに、検討会の中で御議論いただいた内容を記載しております。黒字は前々回までのもの、青字は前回いただいた御意見としておりますが、本日、説明は割愛させていただき、16ページに飛んでいただきたいと思います。
16ページからが報告書の骨子案で、こちらについて御説明させていただきます。検討項目の1番は、「現行の危険有害性情報の通知制度の運用改善を図るべき点はあるか」です。まず「成分及びその含有量」ということで、CAS登録番号等、成分名を特定できる一般的な番号をSDS等で通知することを義務付けるべきではないか。もちろんCAS登録番号などが割り当てられていない物質は除くというところを、御意見としていただいております。
2点目が、「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」ということで、使用上の制限を主としてSDS等で通知することが望ましいとすべきではないか。また、記載すべき事項について、物理的危険性を有する物質については爆発限界や引火点、急性毒性を有する物質についてはばく露防止措置や保護具の使用などが必要であるという、注記という意見を頂いております。もちろん、他の項目で同様の趣旨の記載がある場合は、それを引用(参照)してもよいとするということです。
3点目が「適用される法令」ということで、特別則適用物質、危険物に加え、RA対象物、皮膚等障害化学物質、がん原性物質、濃度基準値設定物質については、含有される成分ごとに該当する旨を通知することを義務付けるべきではないか。労働基準法の女性労働基準規則第2条第1項第18号の妊娠中の女性を就かせてはならない業務の対象物質についても、該当する旨を通知することを義務付けるべきではないか。労働基準法施行規則第35条及び別表1の2で定める業務上の疾病の対象物質については、人体に及ぼす作用ということで、有害性情報の通知事項として位置付けるべきではないか。
4項目目が、「事故が発生した場合の応急の措置」ということで、急性毒性など、生命に関わるような有害性を有する物質については、救急隊員が到着する前に行うべき応急措置を通知事項とすることが望ましいとすべきではないか。また、医師が治療方針を決定する際の問合せ先として、日本中毒情報センター等を通知事項とすることが望ましいとすべきではないか。
次のページが骨子案の(2)として、「貯蔵及び取扱い上の注意における保護手袋の通知事項」です。混合物の場合、保護手袋選択マニュアルにより選択は可能であるが、ユーザーが選ぶのは負担が大きいことから、必要最小限の事項の通知を義務付けるとともに、通知することが望ましい事項を明確にすべきではないか。
含有される皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質については、適当でない保護手袋の材質(ネガティブリスト)の通知を義務付けるべきではないか。ただし、厚生労働省のHPで公表している耐透過性能一覧表のURLを示すなど、インターネットの利用その他の方法により、その事項を周知させることができる場合はこの限りではないとすべきではないか。この一覧に記載のない物質であって、経皮吸収による健康障害の情報がある物質については、当該物質ごとに、ネガティブリストの記載を行うことが望ましいとすべきではないか。そのまま使用する製品、取扱い説明書等に基づき混合する製品など、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品については、推奨する保護手袋の材質(ポジティブリスト)の通知が望ましいとすべきではないか。材質のポジティブリストを示す場合には、以下に留意することでよいか。耐透過性レベルが最も高い多層フィルムなどの材質を明示するだけではなく、使用可能な選択肢を幅広く示す。また、ポジティブリストを明示する場合は、ポジティブリスト以外でも事業者が選択できることを明記する。
次の項目です。保護手袋の「厚さ」について、次のいずれか事項を通知することが望ましいとすべきではないか。事業者が作業内容や作業時間によって必要な耐透過レベルを決定し、厚さを選択することを明示する(保護具選択マニュアル等の活用を明示する)。取扱説明書で指定する標準的な使用方法に基づいて必要な耐透過性レベルが特定できる場合には、必要な耐透過性レベルを通知するとともに、保護手袋の材質及び厚さを明示する。これは製品名の明示でもよいとするということです。
次のページです。「貯蔵及び取扱い上の注意における呼吸用保護具に関する通知事項」ということで、呼吸用保護具についても、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品については、呼吸用保護具を使用する場合に、選択すべき呼吸用保護具の種類の通知を義務付けるべきではないか。ここにおいて呼吸用保護具の種類の判断に当たっては、常温で気体の物質又は常温で固体・液体の物質で蒸気圧の高い物質を含有する製品については、防毒用が必要であること、常温で液体又は固体の製品については、防じん用が必要であるとすべきではないか。呼吸用保護具の種類の通知の趣旨は、呼吸用保護具の使用を求めるものではなく、ユーザーが呼吸用保護具を使用する場合に、使用すべき種類を通知する趣旨である。防毒用の場合、そのまま使用する製品、取扱い説明書等に基づき混合する製品など、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品については、成分に応じ、使用すべき吸収缶の種類を通知することを義務付けるべきではないか。取扱説明書等において、常温で液体の物質であっても、塗装作業等、気体とミスト状の液体が混在している作業を行うことが予想される場合には、防じん性能を有する防毒用のものを使用する必要があるという注記を通知することが望ましいとすべきではないか。
次のページです。「譲渡・提供前のSDS等の提供」については、譲渡提供する以前の段階で、一律にSDS等の開示を義務付けることは困難ではないか。一方で、リスクアセスメントの結果に基づく措置として代替物を検討するため、購入前にSDSの閲覧ができることが望ましいことから、譲渡提供を受けることを検討している者からの求めがあった場合、適用法令の一覧だけでも開示することが望ましいとすべきではないか。
「SDS等により通知した事項に変更が生じたときの通知の迅速化」については、有害性情報、非常時対応や適用法令について、SDS等で通知した事項を変更した場合、すみやかに変更された事項の通知を行えるよう、SDS等による通知の電子化及び標準化を推進すべきではないか。当面の間は、法令上の義務とはしないという前提です。SDS等による危険有害性情報の通知を電子化し、その電子データの配列を標準化することにより、川上、川中、川下、ユーザーそれぞれの電子システムに直接入力可能とする。これにより、変更された事項を手入力する手間を省き、通知に要する時間の短縮を図る。現状の紙で作成されているSDS等の通知事項を標準化するという趣旨ではなく、法定通知事項ごとの内容にばらつきがあっても、それを電子的に交付する際、標準化された電子データ配列を用いる。混合物の成分、含有量、適用法令を表形式にしている場合や、同じ通知事項を複数の項目で通知する等の、複数のバリエーションがあるということを想定し、どのような場合であっても一定の標準データ配列を出力できるような仕様を定める。その上で、通知事項の変更時にエンドユーザーにまで、その情報を適切に伝えるため、電子的に通知事項を変更し、変更された事項を電子メールでの通知、インターネットに掲載してQRコードの配付等の方法により、速やかに譲渡先に伝達することを推奨し、それを前提として、通知事項の変更時のユーザーへの通知を義務付けるべきではないか。
次のページです。「履行確保の方法」ということで、これらの事項について、化学物質の譲渡提供者の履行確保のため、次のとおり法令で規定すべきではないか。これには3点あります。SDSの交付等による危険有害性情報の通知の義務に罰則を設ける。SDS等により通知した事項を変更した場合は、変更後の通知事項を速やかに譲渡提供先に通知する努力義務を規定とする。ここは通知事項の変更の頻度について規定する趣旨ではない。また、変更された事項の通知の相手方については、継続的に取引を行っている相手方とする。3点目として、SDS等による危険有害性の通知事項のうち、必須となる事項について、厚生労働省令で定める。これら以外で通知が望ましい事項については通知等で示す。これらの規定については、施行までに5年程度の周知期間をおき、その通知の電子化・標準化等の推進のため、国が一定の支援を行うべきではないか。
次の項目が、「SDS等の作成者に対する支援」です。その2点目にありますが、SDS等の作成については、事業者団体が連携し、5年を目途に中小事業者に対する支援を行うべきではないか。危険有害性情報の通知の電子化及び標準化については、具体的な方法を引き続き検討し、5年後に中小事業者が電子化及び標準化に対応できるよう、国が一定の支援を行うべきではないか。電子的な通知にあたっては、必要に応じ、セキュリティが確保された方法も利用可能とするよう検討するということで、製品含有化学物質情報伝達スキーム(chemSHERPA)で用いられている方法を例示させていただいております。
次が21ページ、「より使い勝手の良い保護手袋の開発等に対する国の支援」です。次の事項について、国が一定の研究支援を行うべきではないかということで、保護手袋の作業性の向上等を促進するための保護手袋の作業性の性能評価方法の確立等、保護手袋の使用可能時間を確認するための簡易な測定方法の評価方法の確立等。化学物質管理の改善を図るための官民の取組として、令和7年2月を初回とする「化学物質管理強調月間」を活用し、官民で化学物質管理の向上の取組を働きかけるべきではないか。
「SDS等による危険有害性情報の通知事項に関するメーカーとユーザーの対話の充実」ということでは、危険有害性情報の通知事項の適正化や、電子化・標準化にはメーカーとユーザーの対話を積み重ねることが重要であるため、事業者団体により、両者の対話の場を常設すべきではないかとしております。
検討項目の2番は「営業秘密として非開示にできるSDSの項目をどう考えるか」です。これについても、同じ構成になっており、併せて骨子のところから御説明させていただきます。骨子案の28ページです。「営業秘密の定義など」ということで、営業秘密の定義としては、①情報が公開されていないこと、②申立者が、情報が公開されないように合理的な手段をとること、③開示によって申立者に財産上の損失又は申立者の競合相手に財産上の利益を与えることの3点全てを満たすものとすべきではないか。
「非開示の対象」として、成分名は、有害性区分1や重篤な健康障害を生ずる有害性クラスに該当する場合等を除き、営業秘密に該当する場合は非開示の対象とすべきではないか。この点についてはこの後、論点3で御議論いただくことになります。また、含有量については、非開示の対象とはせず、非開示対象の物質の含有量は、(省令で規定された)10%刻みの表示を原則とすべきではないかとしております。
続いて、論点の3番「リスクアセスメントの実施に支障のない範囲として、営業秘密として非公開にできる化学物質の有害性の範囲及び濃度をどう考えるか」です。こちらも骨子案について御説明させていただきます。36ページです。「重篤な有害性を有する物質の成分名の非開示の範囲」ということで、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性を有するものは、有害性区分にかかわらず、成分名の非開示の対象としないべきではないか。
2点目として、呼吸器感作性又は皮膚感作性と誤えん有害性を有するものは、成分名の非開示の対象としないべきではないか。ここで呼吸器感作性又は皮膚感作性と誤えん有害性は、有害性区分が区分1しかないというところを御留意いただきたいと思います。
3点目が、皮膚腐食性/刺激性、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性、特定標的臓器毒性(単回ばく露)、特定標的臓器毒性(反復ばく露)を有するものは、区分1に該当する場合は成分名の非開示の対象としないべきではないか。これら有害性の毒性区分は、毒性の強さによる区分であり、含有量に濃度限界値が設定されているということになります。
4点目です。急性毒性を有するものについては、成分単体として区分1~3に該当する物質は、成分名の非開示の対象としないべきではないか。混合物の急性毒性の有害性区分は、急性毒性の区分のある全ての成分を濃度で加重平均して混合物の急性毒性値(ATE)をばく露経路別に計算し、判定基準に照らして区分することが通常。このため、混合物としての有害性区分で非開示の対象物質を判断することは困難であり、成分単体の有害性区分によって非開示の対象を判断すべきであるとしております。ここで言う「有害性を有する又は区分に該当するもの」については、国が行うGHS分類又は事業者が行うGHS分類のいずれかの結果で該当するものとしております。
次の37ページです。「リスクアセスメントの実施に支障のない範囲として、混合物の有害性区分に影響を与えない範囲の濃度について」ということで、含有量がGHS(JIS)の濃度限界以上の場合は、混合物の有害性の区分に影響することから、成分名の非開示の対象としないべきではないか。急性毒性については、この制限は適用しないということです。
「法令で特別の規制が適用される物質について」ということで、法令で個別の対応が義務付けられている、特化則等の特別則の適用対象物質、皮膚等障害化学物質等に該当する物質及び濃度基準値が設定されている物質については、成分名の非開示の対象としないべきではないか。
「履行確保の方法」としては、次の事項を化学物質の譲渡提供者に対する法令上の義務(罰則を設ける)として規定すべきではないか。上記の条件に従い、非開示が認められる物質のみについて、成分の通知義務が免除されること、この場合においては、代替名称を譲渡提供先に通知しなければならないこととしております。
次に論点4の「営業秘密として非開示とした場合、SDSにどのように表記するか」という点についてです。こちらも骨子案について説明させていただきます。44ページです。「営業秘密」に該当する旨の明示として、営業秘密による非開示とする場合、「営業秘密」であることを通知することを義務付けるべきではないか。
「代替名の通知及びその方法」としては、成分名を非開示とする場合、それに代わる代替名を定め、それを通知することを義務付けるべきではないか。代替名の決定は、成分名の一部を置き換え又は削除する方法によることを定めるべきではないか(法令では原則のみを簡潔に定め、次の事項は指針で定める)ということで、実際の名称の付け方については、下に4点あります。名称の4要素のいずれか1つを置換又は代替する。ただし、構造が比較的単純である等の理由で、1要素のみの置き換え又は置換では成分名が特定されるおそれがある場合は、2要素の置き換え又は置換を認める。名称の4要素は、①母体化合物の構造、②対イオンの構造及び数、③光学異性体、④母体化合物または他の置換基に結合している置換基の構造、数、位置とする。置換位置番号、母体化合物の置換基の位置番号については削除、その他の情報については一般名への置換とする。代替名の決定に当たっては、代替名と有害性の関連性が分かるようにすることが望ましい。
「含有量の通知」は先ほども御説明しましたが、含有量の表示については、安衛則34条の2の6で規定される方法(原則10%刻みで記載し、譲渡先から要望があった場合は、さらに詳細の情報の開示)とするべきではないかということです。
続いて論点の5番目、「緊急事態における情報開示規定をどのように考えるか」です。こちらも、骨子案について御説明いたします。48ページを御覧ください。「情報の開示が認められる場面」として、医療上の緊急事態又は産業保健上の必要のある場合について、情報開示を求めることができるとすべきではないか。
「医療上の緊急事態における開示」については、医師又は看護師が、医療上の緊急性があり、ばく露した患者への医療上の処置のために成分名の特定が必要であるとして、成分名の開示を求めた場合、直ちに、化学物質の譲渡・提供者に対し、営業秘密に当たる成分名を開示することを義務付けるべきではないか。上記の開示の請求は口頭で足り、書面は不要であるとすべきではないか。医師等からの要請があった場合には、緊急対応要員(緊急搬送従事者等)を通じて、成分名の開示を請求させることも認めるべきではないか。夜間等に災害が発生した場合に備え、非開示情報を含むSDSには、緊急時(夜間)問合せ先を記載することを求めるべきではないか。
「非緊急事態(産業保健上の必要)における開示」ということで、産業医又は産業看護職が、次に掲げる産業保健上の理由により、成分名の特定が必要であるとして、成分名の開示を書面で求めた場合、その目的に必要な範囲において、成分の含有量に係る秘密が保全されることを条件に、化学物質の譲渡・提供者に対して、営業秘密に当たる成分名を、速やかに、開示することを義務付けるべきではないか。
対象となる産業保健上の理由については、次の場合であって、労働者の健康管理のために非開示物質の名称を特定する必要があることとしております。1点目が、非開示物質にばく露する労働者に対する健康診断等により有所見や健康影響を把握した場合、2点目として、非開示物質を使用している他の事業場で健康障害が発生したことが明らかになった場合など、非開示物質にばく露する労働者に健康障害が生ずるおそれを把握した場合としております。産業医が選任されていない中小零細事業場では、地域産業保健センターの医師等も産業保健上の理由を判断できるとすべきではないか。
49ページを御覧ください。「情報の開示の秘密保持」についてです。医療上の緊急事態について、情報開示の条件として、医療関係者には秘密保持契約を求めず、医療従事者としての守秘義務で対応すべきではないか。医師法等では正当な理由がない限り、「人の秘密」を漏らすことを禁じられております。さらに、「診療情報の提供等に関する指針」では、「医療従事者は、患者の同意を得ずに、患者以外の者に対して診療情報の提供を行うことは、医療従事者の守秘義務に反し、法律上の規定がある場合を除き認められないことに留意しなければならない」とされております。「人の秘密」には、患者の診療情報(診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た情報)が含まれる。医師等が、患者の医療上の処置のために成分名の開示を求めた場合、その情報は当然、その目的に照らし、患者の診療情報に含まれると考えられる。なお、守秘義務違反に当たるかどうかについては、個別具体的な判断が必要である。医療従事者以外の緊急対応要員については、事後的に秘密保持契約を結ぶべきではないか。非緊急事態として、産業保健上の必要がある場合での情報開示の条件として、秘密保持契約を結ぶべきではないか。
「医療緊急時の支援」としては、SDSの事故が発生した場合の応急の措置の記載事項として、次の事項を記載することが望ましいとすべきではないか。急性毒性など、生命に関わるような有害性を有する物質については、有害性の内容や症状、ばく露した場合の応急措置等、救急隊員が到着する前に行うべき応急措置、医師が治療方針を決定する際の問合せ先として、日本中毒情報センター等の連絡先です。
「履行確保の方法」として、医療上の緊急事態及び非緊急事態(産業保健上の理由)における非開示情報の開示については、化学物質の譲渡提供者に対する法令上の義務(罰則は設けない)として規定すべきではないかとしております。
最後に6点目、「行政機関への非開示情報の開示等の必要性をどう考えるか」については、最終ページの53ページに骨子案があります。化学物質の譲渡提供者が営業秘密の非開示事項を決定するに当たっては、行政への届出等を求める必要はないとすべきではないか。その代わり、営業秘密が適切に設定されているかの確認のため、労働基準監督機関から求められた場合に報告(非開示情報の開示等)に応じる義務を課すべきではないか。これは罰則を設けるべきということになります。現状の安衛法第100条第1項から第3項に基づく報告徴収規定では、個人が化学物質を譲渡提供した場合(個人輸入等)に対応できないため、化学物質の譲渡提供者を措置義務者に加える等、所要の改正を検討することになります。併せて、化学物質の譲渡提供者には、次の事項を化学物質の譲渡提供者に義務付ける(罰則を設ける)べきではないか。上記の条件に従い、非開示が認められる物質のみについて、成分の通知義務が免除される。この場合においては、代替名称を譲渡提供先に通知しなければならないということです。
以上で資料4についての御説明を終わります。
○城内座長 非常にたくさんの論点があって、活発な議論があると思いますが、その前に休憩をしたいと思います。
(休憩)
○城内座長 それでは時間になりましたので、論点ごとに検討を進めていきたいと思います。まずは16~21ページの検討項目の1の骨子案について、御意見等をよろしくお願いいたします。16ページからです。いかがでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。17ページの2項目目になりますけれども、保護具の選定マニュアルとか、耐透過性の一覧表というのは、本来、ユーザー側、具体的には保護具着用管理責任者のためのものと理解していまして、これらを広めるために「URLを示すなど」といった記載になっていると理解しています。方向性としては、私どもとしても賛同したいと考えています。また、日化協としても、SDSの記載例などをアップデートし、広めるための活動を行っていく予定です。
ただ、ここで「ネガティブリストの通知を義務付けるべき」ということですが、それに適切な物質、あるいはそれが適当でない物質等もあるため、本質的にはこのネガティブリストの通知を義務化すべきであるとは考えていません。以上です。
○城内座長 そのほか御意見等いかがでしょうか。SDSに記載すべき事項ということで、かなりこれは供給側からも、それから受け取る側からも非常に重要な情報になるわけですけれども、たくさん御意見を頂いて事務局の判断に資すると言いますか、検討項目になるようにたくさん御意見を頂きたいと思っていますが、いかがでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。続いて16ページの辺りになりますけれども、私どもは今までの議論を経てこのような内容になっているということは理解していますけれども、少し細かくなりすぎていると感じていまして、遵守することが難しい法令になってしまわないかと、懸念をしています。
そういった観点で、3点ほど意見、コメントさせていただきます。1点目は、2ポツ目の「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」のところですけれども、GHSあるいはJISでは推奨用途と使用上の制限は、SDSの第1項に書かれます。一方、物理的及び化学的性質はSDSの第9項に、ばく露防止及び保護措置はSDSの第8項に記載することになっています。ここではSDSの第何項に記載するということまで指定しているわけではないということは理解していますけれども、この骨子案のまま公表した場合に、混乱が生じかねないと思っています。どういうことかと申しますと、物理的及び化学的性質や、ばく露防止及び保護措置まで、SDSの第1項に書くことになったのではないかというような混乱が起こってしまわないかと、懸念をしています。
従って、議論の1つとして記録にこの形で残るのは問題はないのですけれども、骨子案からは削除したほうがいいのではないかと考えています。あるいは逆に、物理的及び化学的性質や、ばく露防止及び保護措置は、SDS第1項に記載するのではなく、本来の記載箇所である、それぞれ第9項と第8項に記載するということを、骨子案に明記する形で対応するのがいいのではないかと考えています。これが1つ目です。
2つ目は、3つ目のポツの「適用される法令」のところです。労働基準法の女性則と業務上の疾病の対象物質につきましては、安衛法令の中で他法令である労働基準法令の内容を通知する通知事項と定めることに、違和感を持っています。特に、業務上の疾病の対象物質は、物質リストになっているわけではなく、骨子案においても、人体に及ぼす作用(有害性情報)の通知事項として位置付けるべきとなっていて、「人体に及ぼす作用」と表記していることは、昨年の安衛法施行規則で義務化された、人体に及ぼす作用の5年ごとの定期確認の対象になるということなのだろうかという、これは質問になります。記載する内容が複雑になりますため、法令遵守が困難になるのではないかと考えています。このため、この項目を通知事項として義務化することは避けていただきたいと考えています。もし通知事項にするということであれば、記載例を示していただければと考えています。これが2つ目の意見です。
3点目のコメントになります。最後に、「事故が発生した場合の応急の措置」の項目のところです。この項目も骨子案からは削除すべきと考えていますけれども、特に日本中毒情報センター等を通知事項とするということについては、日本中毒情報センターには一般化学物質、非常に広範な一般化学物質の情報がほとんどないと思いますので、削除したほうがよいと考えています。これは骨子案に記載することで、数多くのSDSに「日本中毒情報センター」という文言が追加されることになります。その結果、日本中毒情報センターでは対応できない製品についても、日本中毒情報センターに連絡が行くという可能性もあり、それは好ましくないと考えています。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。事務局から現時点で何かありますか。お願いします。
○化学物質対策課長 まず17ページ、こちらはネガティブリストについては義務付けるべきではないという御指摘ですけれども、ここはユーザー側からのもともとの御意見が、保護具についての記載が非常に不十分なので、それを記載してほしいという強い要望があって、議論を始めているものです。義務化するというのは、要するに、きちんと書いてもらいたいというのが原点で、それを前提に、結局、ポジティブリストは難しいということで、ネガティブリストになったということ。ネガティブリストになってしまえば、この耐透過性能一覧と同じになってしまうので、そのURLを示せばいいということに、だんだん変質はしてきているのですけれども、義務化するというのは大前提ですので、義務化にはしたい。ただし、こちらに書いてあるように、一覧表のURLなどをQRコードなどで教示すれば、実際に、ネガティブリストを書く必要がないというところは、そういう形にしたいと考えています。
16ページですが、まず1点目に、「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」というところで、こちらは今回の令和5年の省令の中で新たに義務付けられた項目で、ここの内容に何を書くのかというのは、現在定められていない状態になっていますので、その内容について御議論いただいたということになります。こちらにつきましては、御議論いただきましたとおり、使用上の制限を主として書くべきだという御意見の中で、ここに書いてありますように、爆発限界や引火点、あるいはばく露防止措置や保護具の使用が必要であるという注記を書くべきだという御意見になっているというところです。
西村構成員からの御意見については、ほかの項目で例えば8項とか9項とか、そういうところにそもそも書いてあるのではないかということですが、こちらはそういったところに書いてあれば、それを例えば8項参照とか9項参照と書いていただくのは、全然差し支えないわけですが、現時点で、とにかく推奨用途、使用上の制限について、何を書くのかというのは、全く明確になっていませんので、こう書くと。二度書きが不要であるということでは、これらについては8項に書いてある、これについては9項に書いてあるということを書いていただくのは、差し支えないということです。
それから2点目については、女性則につきましては、従来から、御案内のとおり、これは特化物の一部で、そういう意味では労働安全衛生法の範囲内であり、その中で特に労働安全衛生法の姉妹法である労働基準法の中に、女性の基準につきましては引き続き労働基準法で措置されていますけれども、御案内のとおり、もともと労働安全衛生法というのは労働基準法から枝分かれしているものですので、全体としての労働基準法令の中に位置付けられているものですので、こちらにつきましては、義務規定ということでもございますので、記載を義務付けるべきだと考えています。
もう1点、労働基準法施行規則第35条及び別表1の2については、これは業務上の疾病の対象物質で、それについて何らの措置義務というのは課されていませんので、これは適用法令として書くのは適切でないと考えています。ただ、第35条に載っているということは、業務上の疾病の可能性があるということですので、有害性情報の内容に付け加えるべき、望ましいと考えているところです。
それから、記載例を示してほしいということですが、記載例はお示ししたいと思っています。
それから応急の措置というところですが、こちらも先ほどの話と同じなのですけれども、応急の措置については、応急措置で必要な事項については書きなさいというのは、実は留意事項通達で既に示しています。それを二度書きしているところです。唯一違うといえば、こちらの御指摘のあった、日本中毒情報センター等を通知事項とするということです。こちらについては、日本中毒情報センターを全部書き過ぎると、対応できない製品についても問い合わせがいくとか、そういった御指摘がありますので、こちらについては、日本中毒情報センターを所管している部局と協議して、書くべきかについてはもう一回検討させていただきたいと思います。
○城内座長 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員 建設労務安全研究会の佐藤です。今、保護具関係をSDSに記載するとかしないとかいう話が出たのですけれども、我々ユーザーとしては、やはりSDSの中に適正な保護具を記載していただくのが一番いいというのは、前々からお話していることなのです。ただ、ポジティブリスト、要するにこれでなければ駄目だというのは、ちょっと厳しくて、やはりネガティブリストになろうとは思っています。
その中で、今、安井課長から説明があったとおり、ネガティブリストでこれは駄目だというような書きぶりが我々としても一番いいと思うのです。保護具等は、皮膚等障害の厚労省のホームページのアドレスが入っていくように収斂していくような説明を今されていたのですけれども、SDSを見て、それからまた違うところまで行かなければ保護具が分からないという、より複雑になるような仕組みは是非やめていただきたい。やはりダイレクトに書いていただいて、これを使えと言われると非常に高価なものになるものですから、非常に大変ですけれども、これは駄目だという書きぶりにしていただければいいのかなと。要するに、どんどん複雑にするよりも、SDSを見れば全て分かるというような書きぶりにしてもらうのが、我々ユーザーとしては有難いと思います。以上です。
○城内座長 そのほか御意見等、いかがでしょうか。小野構成員、お願いします。
○小野構成員 SDSを作る物質が単品である場合には、これは駄目だと書けると思うのですけれども、それが混合物になっている製品になってしまうと、やはり書きにくいのかなという気はしています。ネガティブリストで、例えば5%ぐらい入っている、よく透過するようなものがあったときに、完全にそれは使ってはいけませんと書いてしまうと、短時間しか使わないのに本当に駄目なのですかとか、場合分けのようなものが出てきてしまう。ポジティブにしてもネガティブにしても、取る人によっては100%オーケーとか100%バツとかという取り方もしますし、製品が100%の製品なのか、1%ぐらいのものがばーっと並んでいるのかということで、具体的にこれを書けというのはやはり厳しいのかなという印象は持っています。
もちろん川下のほうで、その製品しか使わないのだから、その製品用のSDSはこう書いてくれというのがあるかもしれませんけれども、それはまた業界の間での話の仕方で、なんとか落としこんでいくしかないのかなという印象を持っています。ですから、やはりマニュアルを書くぐらいしかできないのかなと思っています。ここで骨子案というか、全体をまとめるものとして出すときには、個別に書くのは難しいかなという印象を持っています。以上です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○宮本構成員 宮本です。「中毒センター」を書けないというのはおっしゃるとおりで、分からなくはないのですけれども、この後の営業上の秘密の議論にも出てきますけれども、緊急事態のときにそれの大量ばく露とかで対処したドクターが、何かの影響を疑ったという場合、どこに聞けばいいのかがさっぱり分からないことになります。SDSにしっかり書いてくれればいいのですけれども、何か聞きたい、あるいは営業上の秘密が少し含まれているという場合の問合せ先が、一体これはどう書かれるのかというところに収斂してしまうと思います。ちょっと後の議論なのかもしれませんが、中毒センターではないとしたら、どこなのかというのも頭に入れて議論したほうがいいと思った次第です。以上です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 質問というか、この骨子案の質問になるのですけれども、17ページと18ページにかけて、保護手袋とか呼吸用保護具の判断、「あらかじめ判断する」という記載が何箇所かありますけれども、判断する主体はSDSの提供者ということでよろしいでしょうか。
○城内座長 事務局お願いします。
○化学物質対策課長 こちらは、「そのまま使用する製品、取扱い説明書等に基づき混合する製品など、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品」、すごい長い名前ですけれども、我々がイメージしているのは、いわゆるユーザーで消費される段階の製品ということで、平たくいうと最終製品を想定しています。ですので、これは、当然、メーカーのほうで最終製品として売りますという場合は、こういう記載をしてくださいということですので、譲渡提供者のほうで判断すると考えています。
○西村構成員 ありがとうございます。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 もう1点質問ですが、20ページの履行確保の方法のところです。履行確保のところで、罰則を設けることになっていますけれども、この罰則は、これは通知すらしていないケースとか、意図的に通知内容を通知していないようなケース、すなわち悪質なケースを対象にしているということでよろしいでしょうか。すなわち、通知内容の意図的ではない誤り、CAS番号が変わってしまったのに気が付かなかったとか、誤記載をしてしまった、そういった意図的ではないものについては、罰則をかけられないという理解でよろしいでしょうか。以上です。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 こちらにつきましては、表示の義務の罰則の書き方を踏襲しようと思っていまして、そちらに書いてあるのは、表示していない場合、又は虚偽の表示をした場合ということになっていますので、一義的には全く通知していないか、意図的に何か虚偽な内容を書いた、そういった場合を処罰の対象にするということを念頭においています。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。御質問、コメント等がなければ、次の論点に移りたいと思いますが。事務局、どうぞ。
○化学物質対策課長 佐藤構成員と小野構成員、西村構成員からも保護具のネガティブリストの件ですけれども、先ほど御説明したとおり、そもそもポジティブリストは製品を書くのが難しいから、ネガティブリストに後退して、今の案では耐透過性能のリストを教示すれば、ネガティブリストも不要になっているような感じで、ある意味、段階的に変更されているのですけれども、こちらにつきましては日本経団連さんにも御協力いただきまして、メーカーとユーザーで対話をする場がありまして、そちらで一定の議論をさせていただきました。
ネガティブリストになりますと、小野構成員からもありましたけれども、非常に多い物質になると数十物質あって、要は、数十物質分のネガティブリストが、通知され、それによって、結局、適切な材質が選べるのかという問題があることと、SDSのほうはただでさえ、どんどん長くなって読みにくくなっているという議論の中で、要するに、厚生労働省がリストとして示しているものを二度書きすることに、SDSとしての資源を消費する意味があるのかといった議論がありました。
ユーザーの御意見も伺ったところ、厚生労働省のホームページにアドレスを載せてあるものを二度書きすることに、さほど意義がないのではないかという意見が全てといいましょうか、そういうユーザー側の御意見でしたので、それを踏まえて、今回の提案をさせていただいているという経緯は説明させていただきます。
宮本先生からの中毒情報センターの関係につきましては、所管しております旧厚生部局に御相談させていただきたいと思いますが、一義的には、お医者さんから電話が掛かってくるという想定ではあるものの、どういった人から電話が掛かってくるとかも分からないという可能性もないわけではないので、一定、整理はさせていただきたいと思います。
○城内座長 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員 今、安井課長から御説明があったのですけれども、私が先ほど言ったのは、要するに、SDSを見れば全て分かるのが一番ベストなのですが、それを見て、更に厚生労働省の皮膚等障害の所まで行かなければいけないとなると、これは実際に使う人がいなくなってしまうのではないかと思うのです。要するに、メーカーの方々は化学物質に対して非常に知識の豊富な方なので、厚生労働省さんの皮膚等障害のところに入っていても、すぐ分かるかもしれませんが、ほかの業界はよく分かりませんけれども、我々建設業界では、ほとんど分からない人が多いのではないかと思います。そうすると、今こうやっていろいろな議論をしているのは、化学物質の取り扱うときの自律的管理、すなわち、実際に使う方々が使えないと意味がないのかなと思うのです。実際に化学物質を取り扱う方々が、障害が起こったり病気になったりしないようにいろいろな検討をされていると思うのですが、そういった場面のところで、そういう知識のない方がホームページに入っていって、皮膚等障害の所を見て、エクセルで検索して、これが良い、これが悪いという判断というのはできないのではないかと思います。ですから、それをメーカーの方が事前にやっておいてくれれば、それと、先ほど小野先生が言われたのですけれども、1つの製品の中に3つも4つも化学物質が入っていて、非常に書きづらいと。確かにそうだと思いますけれども、それを考えてみて、これは駄目ですという判断をSDSに載せてもらうのがいいのかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○城内座長 宮本構成員どうぞ。
○宮本構成員 宮本です。今の御意見でいくと、前回、私もお話したのですけれども、それだったらポジティブリストで、例えば4時間だったらニトリルのこれぐらいの厚みだったらいいとか、そちらのほうが今度、理にかなってくるのではないかと思うのですね。そういう意味で、8時間どぶ浸けしているということは多分もう作業としてはないだろうとなると、4時間みっちり有機溶剤作業で手袋に付着だったら、4時間の断続的な有機溶剤作業だったら、普通の使い方だったら大丈夫ですとか、そういうポジティブリスト。すごい厳密なことをやってしまうと、ポジティブリストは一番高いものにしか出てこないとなってしまうけれども、いやいや、ニトリルで0.2ミリの厚みがあれば4時間はいいですとか、あるいはミストが付くかもしれないという程度であれば、ニトリル手袋に軍手を付けておけばほぼ防げるとか。何かそういうポジティブリストみたいなのがあれば非常に現実的だなと思っているので、それで前回もポジティブリストはどうかと申し上げたところです。
○城内座長 佐藤構成員どうぞ。
○佐藤構成員 建設労務安全研究会の佐藤です。実は前回もお話したのですけれども、我々建設業界で、今、マニュアルを建災防さんで作っていて、確かに、そういったような方向では、今、検討しています。軍手は駄目で、ニトリル手袋ということで落ち着いたのです。ただ、いろいろな製品がありますので、それが実際にそのままいけるのかというのは、まだまだ不明なところがあって、今、私が申し上げたのは、そういったところを含めて、ポジティブでもいいのですけれども、SDSのところで解決できないかなという話をしたところです。言っていることは多分一緒だと思いますけれども。以上です。
○城内座長 小野構成員どうぞ。
○小野構成員 安衛研の小野です。私もいろいろな所でいろいろな会議をしているので、あるときは、こちらの味方だったり、あるときは敵だったりということがどうしても起こるのですけれども、SDSというのは結局何なのですかという、SDSは手引なのですか、それとも、下流に情報を流すという、有害性・危険性の情報を流すものなのですかというのが、まず1つあります。そこに、より丁寧な使い方説明を付けてくださいというのが、今、もっと詳しく書いていただきたいという方の御意見だと思います。それは分からないでもないのですけれども、ただでさえ見ないSDSの中で、そこの所を探し出して、そこに行って、でも、やはり分からないということになるよりは、やはり国が書いたものに従っていればOKではなくて、自分たちの所で化学物質管理者と保護具着用管理責任者がいて、その人たち、あるいはその業界レベルでマニュアルを作る。今、建災防さんがそれをやっていたり、ほかの業界にも、それをもう少し波及させようというように、国も活動しているところですが、そこからもう一段階、手袋を選ぶときにはもう一段、そちらのマニュアルを見てくださいという仕組みにしていかないと、一番上流側のSDS、各製品を作っている方々に全ての負担を掛けると、5年では出なくて、10年掛かるとか、10年掛かっても出ないとか、使い方が分からないと、使い方の説明は絶対できないと思うのですが、そこの情報が、SDSを作る方に全ていくのでしたら作れる可能性はあるかと思いますけれども、何を実際に求めているのかというところを整理しないと、いつまでたってもこの議論が終わらないような気がします。私の意見は以上です。
○城内座長 森構成員、どうぞ。
○森構成員 日本印刷産業連合会の森でございます。私も、保護手袋の選定に当たって、SDSに必要事項を是非記載していただきたいのですけれども、先ほど佐藤構成員から、実際の選定の方法については、できるだけ易しくというのでしょうか、当然、我々印刷業界は化学物質の知識の豊富な者がいるわけではなくて、こういった保護具を選定するに当たっては、自分たちで選ぶのではなくて、実際手袋に当たっては、手袋メーカーのほうに、自分たちはこういうものを使っていますと、SDSを渡して選定してもらうようなことを一部ではしています。というわけで、こういう物質を使っています、ただし、作業はこういう作業をしています、これに合う手袋、保護具を選んでくださいということでお願いしている次第なのです。そういった意味では、実際の選定を、ユーザー側というよりも、メーカーさんのほうにやっていただくときに活用できるような書き方、あるいはポジティブリストでもネガティブリストでもいいのですけれども、そういった内容にしていただきたいと思います。当然、中身は我々も知っていないとまずいのでしょうけれども、実際それを使うユーザーというよりも、保護具メーカーでしょうか、その辺の意見も入れていただければと思います。
○城内座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。事務局からありますか。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 日化協の西村です。今の御議論にあったように、例えば、この物質を使って5分、10分だったらどうだとかということを書いていただきたいという御意見とか、あるいは手袋メーカーさんに相談するときに、SDSとともに、その作業状況を説明した上でアドバイスを頂いているという御指摘があったように、組成成分のみで保護手袋が決まるものではなく、使用条件によって変わるものであると考えています。そういったことから、それらを含めて全てSDSに書き込んで、例えばネガティブリストあるいはポジティブリストのような形で記載するということは、SDSを非常に長大化させて、結果的には読めないようなものになってしまうのではないかと考えております。したがいまして、小野先生の御意見にもございましたように、私どもは業界ごとにマニュアルの策定に協力させていただいておりますし、今後もさせていただきたいと考えておりまして、SDSは、そういった意味で、成分情報とか皮膚等障害物質等の情報を提供する形で、それを見つつ、耐透過性能一覧表とか、あるいは作成したマニュアルを見て選んでいただくというのが一番合理的というか、効率的になるのではないかと考えております。以上でございます。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはございますか。事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 御議論いろいろありがとうございます。11ページを見ていただくと、前回、前々回とかで、この部分で、行ったり来たりしているのがお分かりいただけるかと思います。11ページに青字で書いてありますけれども、まず、ポジティブリストを提供できるというのは使用時の成分、要するに、使うときの成分組成が明らかであるとともに、西村構成員からもありましたけれども、どのように使用するのかが明らかになっていないとポジティブリストというのは作れないと。特に、どのように使うかというのがメーカーでは分からないから、ポジティブリストは書けないという1つの理由になります。だったらネガティブリストは書けるのではないかという御意見がありました。あと、各社で管理者などがマニュアルとか作ろうというときに、ポジティブリストがあると、それに引きずられて混乱するのではないかという御意見もありました。また、先ほどの話と重なりますけれども、ハザードと作業内容の組合せになるので、ポジティブだと、かえって誤った選択、要するに、作業内容が分からないにもかかわらず、無理に強引にポジティブを書くと、誤ったポジティブリストになりかねないという意味で、その意味では使えない物質、材質を並べるのはいいのではないかというところで前回御議論がありました。
そこから、またもう一歩進歩して、では、ネガティブリストは書きましょうといったときに、そのネガティブリストに書いてある情報というのは既に公開情報で、言ってみれば何のオリジナリティもないというものをSDSに書く必要があるのかというところで、現在の案になっております。
そういう意味では、先ほど佐藤構成員からも自律的管理に資さないとか、知識がない人でも分かるようにしてほしいというところについては、小野構成員からも御意見がありましたけれども、SDSというのはマニュアルとか説明書ではないので、どうしてもきちんと選ぼうと思うと、厚生労働省のマニュアルに沿ったプロセスを経て選ばないといけないというところは、実は外せなくなってきていて、それを全部SDSに盛り込むのはもともと不可能ですので、そういうハザード情報を示すという原点に立ち返って、ただ、もちろん書ける範囲でハザードから分かる内容については書きましょうということになってくると、ネガティブリストに収斂せざるを得ないと。先ほど申し上げましたように、ネガティブリストであると、ネガティブリストそのものは既に公開されていて、また、ネガティブリストそのものだけでは選べないという事実もあって、そこからは厚生労働省のお示しした手袋の選択マニュアルで選んでいくのが第一ではないかと。あと、建設業など、現場で実際に選択しなければいけないようなもので、厚生労働省のお示ししている手袋選択マニュアルが現場で使えないという場合については、いわゆる業種別マニュアルというのを進めておりまして、毎日現場を変えるような特定の業種については、業種別マニュアルの促進を別途行っておりまして、それはそれで進めていくという形になります。ですので、業種・業態あるいはその立場によって、何が最適なのかというのは難しいのですけれども、総合的に見ると、やはりネガティブリストにならざるを得ないと。ネガティブリストに30物質を列記するということにどれほど意味があるかというところを踏まえると、今回のような御提案になっているということになります。
これを見ていただくと分かるのですが、非常に単純な物質の場合は、耐透過性能一覧のURLを示すよりもネガティブリストを書いたほうが簡単なので、それはそういう会社もあると思います。要するに、皮膚等障害化学物質が1個しか入っていないような物質、そういった場合はそういうものもあり得ると思います。ただ、先ほど申し上げたような20物質、30物質が入っているような製品もあるので、そういうときはURLを示すと。柔軟性を与えたほうが実効上も役に立つのではないかという趣旨で、やや柔軟な御提案にさせていただいているという趣旨でございます。
○城内座長 そのほか御意見等はいかがですか。
○宮本構成員 宮本です。今のでよく分かったので、これはそれで進めていただいてもいいと思ったのですが、将来的な課題として、例えば代表的な5、6個の手袋について、その物質をどれぐらい耐えられるかという浸す試験がありましたけれども、その結果を載せることは余り意味がないことでしょうか。私はそういう情報があれば、この成分はいいとか、悪いとか、使う側がある程度判断ができるということもあるのかと思いますけれども、今、何も載っていないから混乱する、手袋を使えと言われても、何を使っていいか分からないというのが現状なわけですので、よく使われる代表的なものを、逆に手袋メーカーからすると、物質名が30個ぐらいしかなくて、どれに近いのか分からないということがあるから、この物質について代表的な5、6個のメーカー、手袋の組成でいいので、どれぐらい耐えられるということを載せるのは、これは将来的な話として進めていくことに意味があるかどうかは、いかがでしょうか。
○城内座長 お願いします。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。今、御議論しているのは、義務付けるということで最低限度の議論をしていますので、先ほど申し上げたことになるわけですが、もちろん特に最終製品とかの場合であれば、例えば取扱説明書に基づいたら、こういう使い方をするだろうと分かっているような物質もあって、そういうものについてはポジティブリストを書くのは望ましいと思っております。ですので、17ページにありますように、ポジティブリストを記載するのは望ましいとなっておりますし、ポジティブリストを書く場合については、多層フィルムだけを明示することがないようにと、一応、留意点を書いてありますので、行政としては、望ましいというところが埋まっていくように、特に最終製品については誘導していこうと考えております。ただ、義務付けということになってしまうと、先ほどの一番初めの矢印の所の記載になるといったことです。
○城内座長 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員
建設労務安全研究会の佐藤です。私もちょっと、今、皆さんの議論を聞きながら、SDSとは何なのかということを考えていたのですけれども、ほかの業界の方が化学物質を含んだ材料をどのように使っているのかは分からないのですが、こと我々建設業界においては、もう用途が限られているわけです。物を固める、物に塗る、というように用途は決められていて、その用途の材料を買ってきて我々は使っているわけです。我々が、SDSの中にきちんとした保護具を書いてくれれば一番いいのですという話をしているのは、実は化学物質が入った材料を使うときにはリスクアセスメントが義務化されましたよね、それが今、拡大されようとしているわけですけれども、その拡大されたときに、我々もおぼろげながらSDSというものを入手して見ながら書いていくと、例えば適正な手袋とか、適正なマスクを使うことみたいな書きぶりが書いてあったわけです。我々も詳しいことが分からないので、その製品に書かれている、SDSに書かれているものをそのまま書くことがリスクアセスメントだと思っていたのですね。そういったことを踏まえていくと、今、時代が進んできて、厚労省さんがいろいろな選定マニュアルとかを作っていただいたというところを読み込んでもらって、こと我々建設業で使う製品・材料等々のSDSには、メーカー側で読み取って書いてくれるのが一番いいのかなという意味合いで私は思っています。ですから、ほかの業界とはちょっと違うかもしれません。例えばいろいろなペンキにしても、A液とB液を混ぜて使うということは決まり事なのです。だから、そういった用途が決まっているのだから、あとは使用時間になるのでしょうね、きっと。どれだけペンキを使う、8時間使うのか、1時間くらいで終わるのかという選択肢になるとは思うのです。我々の業界としては、用途が決まった材料をその用途のために製品として売っているメーカーさんがいるので、そこのところも事前に皮膚等障害等々のマニュアルを読み取ってもらって書いていただくといいのかなという意見です。ほかの業界とは、今、話を聞きながら違うのかなという気がしましたので、少し補足しました。以上です。
○城内座長 そのほか、何かございますか。GHSを日本に入れるときに、どちらかというと、売るほうからはネガティブな情報などがいっぱいあるという意見が多くあったわけです。だから、できればそういうものは作りたくないとか、ラベルも貼りたくないなど。私が思ったのは、そういう情報を製品として一緒に売る、何と言うか、そういう製品がたくさん売れるような社会になればいいとずっと思っていました。それで導入はできたのですけれども、今の話を聞いていると、佐藤構成員がおっしゃったように、例えば建設業界でそういう決まったものをたくさん使うのであれば、それを売るメーカーが、この製品にはこの手袋を使えばいいよと売れば、たくさん売れるのではないかと思ったのですね。だから、発想を変えれば私は何か解決策はあるのではないかと思うのです。今は、塗料は塗料、手袋は手袋で別々で走っていますので、そういうところをちゃんともっとうまく動かすためのものとして、多分、法律があると私は思っているので、法律ができて困ったなというところで、みんなが話し合ってそういう方向に行けばいいかと、実は夢を見ていますけれども。そのほか、御意見等はありませんでしょうか。では、次に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
28ページの検討項目について、御意見等をお願いいたします。「営業秘密として非開示にできるSDSの項目をどう考えるか」ということですけれども、御意見等をお願いいたします。次に移ってもよろしいでしょうか。西村構成員、よろしいですか。
それでは続いて、36、37ページ。ここは、いかがでしょうか。宮川構成員、お願いします。
○宮川構成員 36ページですが、よろしいでしょうか。一番最初のマルの、「重篤な有害性を有する物質の成分名の非開示の範囲」で、最初の矢印のところに、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性を有するものは、有害性区分にかかわらず、成分名の非開示の対象としないべきではないかというのがあるのですが、この3つの項目については、区分2というのは、そもそもGHSの記載では「疑い」なのですよね。疑いがあるものについて、果たしてこういう非開示の対象としないという、かなりの制限を課すのがいいのかどうかというのは、少し検討の必要があるような気がしています。
○城内座長 西村構成員、お願いします。
○西村構成員 関連してなのですけれども、CMR、ここを外してのエビデンスの確からしさに区分というのが背景にあるということは承知しているわけですけれども、何と言うのでしょう、区分2のものが、例えば発がん性区分2のものが、例えば0.1%~1%含むというような状況でありましたらば、GHS上、区分が付かないということになりますので、リスクアセスメントに支障がないという範囲になるかと思っております。
そういった意味で、そこの部分がCBIの対象に今回、検討の俎上に上がっているわけでありますけれども、その部分につきましては、つまりCMRの区分の2につきましては、CBIの対象としていただきたいというように考えております。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。これは確認なのですけれども、36ページに書いてある有害性に関して、37ページの範囲で考えますよということで、よろしいですよね。
○化学物質対策課長 こちらの原案については、一番初めの、いわゆる生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性については、我々の提案としては、濃度限界値の概念は使わないというようにもともとここは考えています。ですから製品単体として、例えば発がん性で区分2であるものについては、濃度基準値を認めないということにしております。ただ、西村構成員の御提案は、そこに濃度限界値の概念を入れてくれないかという御理解だというように理解しております。
○西村構成員 そのようなことでございます。
○城内座長 宮川構成員、どうぞ。
○宮川構成員 追加の発言ですけれども、今の課長からの御説明がありましたが、私としては、本来、個別の成分に従って判断するのが適切であって、混合物の分類でもって濃度基準値を超えるからどうのこうのということで、これは正確なリスクアセスメントを反映しないものですので、そこは成分に基づいた判断が必要ということは言えると思います。 ただ、私の個人的な意見としては、区分2のものについても非開示の対象にするかどうかというのは、改めて、もう一度、議論していただければというのが個人的な意見でございます。以上です。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長 よろしいですか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 もともとこれは、リスクアセスメントの実施に支障のない範囲というところで、37ページにございますように、濃度限界の考え方は一部導入しておりまして、皮膚腐食性や眼の損傷性などについては、区分1に該当しないものについて、リスクアセスメントに支障のない範囲として考えるとき、濃度限界という考え方がありますよというのは、お示ししています。これは当然、混合物の有害性の区分を入力することで、最低限のリスクアセスメントができるからという趣旨でございます。
生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性につきましては、これはエビデンス、要するに区分1と区分2で発がん性の毒性の強さということが違うわけではなく、要するにエビデンスの強さ、人のエビデンスがあるかどうかというエビデンスの強さになっていますので、こちらについて区分1と区分2というのを分けるのは、結果的に危険なことではないかということで、ここの有害性区分に分類されるものは、非開示の対象としないというスタンスはそのような形でやっているところでございます。
今のそういった御議論を踏まえますと、今日の西村構成員の御議論を考えると、37ページにありますように、結果的に濃度限界値を下回っている発がん性物質が含まれていても、混合物としての記載としては区分がなくなってしまうという運用を認めているということと、整合的な御議論ではあって、なかなか反論しにくいというところはございまして、そういったところについては毒性の専門家の御意見を伺いたいと思っているところでございます。
○城内座長 宮川構成員、どうぞ。
○宮川構成員 今の点について申しますと、例えば生殖毒性でもって疑いがあると言われるものが、本当に非常に危ないものかどうかというのの例で言うと、例えばですけれども、産業衛生学会の許容濃度の提案の中に、生殖毒性のリストというのが第1群、第2群、第3群と分けて載っているのです。証拠の確からしさによって、GHSと同じように第1~3群が分かれているのですけれども、実際上、そこで化学物質を使う上で気を付けなければいけないものというのは、ほかの毒性から見て許容濃度が設定されていて、そこと比べて生殖毒性について更に低いところで影響が出るかどうかという、その実際のばく露のレベルと比較して有害性を防御することを考えなければいけないのですけれども、シャープ印(#)というのが付いていて、通常の許容濃度では生殖毒性を防ぐ上で不十分かもしれないので気を付けましょうという印が付いているものは非常に少ないのですよね。そういうことを考えると、「疑い」のレベルまでも含めて非常に毒性が高いから非開示の対象にしないとするのは、少し過剰かという気がします。
逆に言うと、そういうことで区分2になると、ここでもって規制が掛かってしまうと、そういうことであれば、自分たちのSDSを作るときに、このぐらいだったらこれは疑いがあるとしなくてもいいかな、疑いもなかったので区分も付けなくていいやと、そういう形で、SDSを作る業者が増えてくる。私はそのほうが心配で、不確かな情報でも疑ったほうがいいよというのがあるのであれば、そこのところは拾っていただいて、情報を提供するという意味では、きちんと書いていただくのが本来のSDSの在り方かと。それが、規制が掛かるのだったら、掛からないようにしようというようなことになると、かえって望ましくない結果を生む可能性があると思いますので、その辺り、区分2については特に慎重な御判断を頂きたいというのが意見でございます。以上です。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 御意見ありがとうございます。後段の部分なのですけれども、要するに区分2にしてしまうと規制が掛かるから、できるだけ緩いGHSにしてしまおうというようなモチベーションがかかるということでございますが、それは本来あってはならないことですが、そういったことにはならないように、この36ページの下の行に書いておりますけれども、ここで書いてある区分は、「国が行うGHS分類又は事業者が行うGHS分類のいずれかの結果で該当するもの」ということにしておりますので、国が区分2というようにしたものについてはやるということですので、そういうモチベーションが働いて逃げたとしても、逃げられない規制の体系にはしようかと思っております。
○城内座長 そのほか、御意見等はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。御意見がなければ、次の論点に移りたいと。
○事務局 いいでしょうか。
○城内座長 では、事務局からお願いします。
○化学物質対策課長 西村構成員の御意見と宮川構成員の御意見は、似ているようで少し違うのですけれども、今までの議論の流れから言いますと、この生殖細胞変異原性、いわゆるCMRについては、重篤な健康影響ということなので、極力、非開示にしないという積み重ねた議論の結果がございます。また国としても、要するに確からしさだけで区分するというところには、もしこれで決めてしまうと、将来に禍根を残すと考えます。結局、何か起きたときにここできちんと「疑い」までやっていれば、この人は死ななかったのではないかという論調で、訴訟を起こされた場合に、非常に厳しいということがございますので、我々としては、「疑い」だから外すということよりも、やはり結果の重篤性というところを重視したいと思います。ただ、西村構成員の御議論につきましては、区分がなくなるということでございますので、こちらについては、GHSの全体の流れから考えて、一定の整合性はあるかというようには考えているところでございます。
○城内座長 次に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、44ページです。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 44ページの所で、改めて化学業界の基本スタンスについて説明させていただきます。化学業界として安全性に関わる情報を通知することを惜しむつもりはありません。その場合、安全性に関わる情報というのは、リスクアセスメントに必要な情報と言い換えることができ、製品としてのGHS分類結果が基本となると考えております。ただ、これに加え、特別則の適用物質、皮膚等障害化学物質、がん原性物質、濃度基準値設定物質の物質名称も、物質名称がないと対応ができないことから、通知しないといけない情報と認識しております。
こうした中、現在、私ども化学業界がCBI保護をお願いしているのは、これらの「物」ではなく、これらの安全性に関わる情報ではない「物」の中で、製品中の成分名称についてのみお願いしているところです。骨子案で提案されている代替名のルールは、EUのルールをベースにしていることは承知しているところですが、EUと日本とでは状況が異なり、日本においてはこのルールではCBI保護につながらないと考えており、ここの見直しをしていただきたいと考えております。
少し詳しく述べさせていただきます。CBIの保護の対象は表示・通知対象物質であり、その母数が限られていること。これがEUと日本とで大きく異なるところです。したがいまして、母数が少ない中で代替名を示すことは、物質を特定される可能性が高くなるということがあります。加えて、このようにヒントが多い状態で、物質特定のための汎用的な物質、例えばLC/MSのようなものを用いれば物質特定は更に容易になるということです。また、物質特定が難しい場合であっても、代替名を示すことで物質の種類が分かってしまいます。製品の特性を出すために添加しているような物質の場合、添加している物質の種類自体がCBIに該当することがあります。また、成分の数ですらCBIに該当する場合があります。
一方で、御意見の中で指摘されておりますように、ブラックボックス化の懸念があるという意見があることは承知しております。この44ページの2ポツ目の「代替名の通知」ということで、今御提案いただいているところですが、その代替案としては、危険有害性情報の通知をすることを提案したいと考えております。例えば、代替名を通知することに代えて、標的臓器毒性(反復)等や区分2の物質を1~10%含む、あるいはLC50が何々mg/kgの物質を1ないし10%含むといった記載を書くということではいかがかと考えております。このことは、代替名の通知よりも危険有害性情報の通知のほうが、ユーザー側にとって有用ではないかと考えているものでございます。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか、御意見等はございますか。事務局、いいですか。大前構成員、お願いします。
○大前構成員 もう既に議論は終わっているのかもしれませんが、CBIの対象の物質の場合に、例えば100%の物質であってもCBIの対象になるということはあり得ますか。1から10%くらいの場合ですと理解できますが、半分以上の成分の物質がCBIにもなるということは。
○西村構成員 日化協の西村です。今の御質問ですが、CBIの対象にできる範囲というのは、SDSの通知の閾値からGHSの区分の閾値までの範囲内ですので、例えば1~10%の間と、一番大きい数字でも多分10%ではないかと思いますが、50%とか、大きい数字のものはCBIの範囲にはなり得ないです。
○大前構成員 という範囲ですと、先ほどの議論に戻るかもしれませんが、例えば発がん性物質の区分2まで本当に入れる必要があるのかというのはあります。そのぐらいのレベルでしか入ってないもので発がん性物質区分2というのは、IARCでいくと2Bぐらいのレベルですが、そのくらいのレベルまで開示する必要があるのかは非常に疑問に思います。確かに、安全を見込めば、将来、何か起きたときの懸念まで考えれば区分2まで入れるのはいいのでしょうが、過剰に安全性を見込み過ぎているのではないかという考え方はないですかね。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 コメントありがとうございます。先ほどの議論に戻りますが、大前先生の議論は、実は西村構成員の意見と全く同じでして、今は、区分2のものについては、濃度限界値を下回っていても、いわゆる営業秘密を認めないというのが行政の提案でしたが、それはやはり濃度限界値を下回っているものについて、いわゆる混合してしまうと区分がなくなってしまうようなものについては要らないのではないかという御意見ですので、大前先生と西村構成員の御意見は同じでして、我々も、GHSの原則を踏まえれば、濃度限界値を下回ってくれば区分外になってしまう場合もありますので、そういったものについては営業秘密を認める方向で、今日頂いた議論を踏まえて検討したいと思っております。
こちらの御意見については、ほかの先生にも御意見を伺いたいと思います。確認したいのは、一つの考え方として、代替名を示しても構わないという人は、別に代替名でいいという理解でよろしいでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。代替名を示したいというものを妨げるということではございません。
○化学物質対策課長 もう1点なのですが、一つのロジックとして、代替名を示すことによって、物質、あるいは物質の種類が特定されることにより不利益がある場合に限って、先ほどおっしゃったような毒性を明示するというような考え方は受け入れ可能でしょうか。要するに、代替名を書くほうに優先順位を与えるという場合です。原則として代替名で、ただ代替名を書いてしまうと営業秘密が結果的に保持できないような場合については、代替名を省略した上で毒性の表示をするということを認める、そういったロジックは可能でしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。代替名を使った場合に、推測が容易であるものの場合に限定するというのだと、それを判断するのは非常に難しいと思っております。また、そういったところから分析も可能ではありますので、そうではなく、有害性情報と代替名のどちらかを任意に選択できるということで意見を申し上げたいと思います。
○化学物質対策課長 ほかのユーザーの方の御意見も頂きたいと思いますが、ただ、GHSはお名前を示すのが原則なので、お名前を示すほうに原則は置きたいとは思っています。先ほどおっしゃったように、支障があるのであれば隠せるというのが、なぜ駄目なのか教えていただきたいのですが。
○西村構成員 2つございまして、ある製品を作るにおいて重要な秘密になり得るその物質を特定することにつながり得る可能性が、代替名のほうが物質の性質よりも高いということが理由の1つです。もう1つは、ユーザーさんにお伝えする情報として、代替名称よりも有害性情報のほうが、より有用であると考えたからの2点です。これで質問にお答えしていますでしょうか。
○城内座長 ちょっと質問なのですが。GHSは、そもそも危険有害性は隠してはいけないものになっているので、代替としてそちらでどうかというのは、私は議論にならないような気がするのですが、その点はいかがでしょうか。
○西村構成員 これが冒頭の、改めて説明申し上げたいという所の趣旨になりまして、今回、CBIの範囲は、GHS分類されない範囲になりますので、リスクアセスメントに全く影響を与えないところになります。なので、お願いしているCBIの範囲は、リスクアセスメントに全く影響を与えない範囲、GHS分類が付かない範囲の議論です。なので、有害性情報を隠すというわけではないです。
○城内座長 分かりました。もう1つ、先ほどCMRが10%とかというお話があったのですが、ちょっと理解できなかったのですが、どういう意味でしょうか。
○西村構成員 例えばの話で申し上げたのですが、36ページで、1~10%の10%は、10%刻みというのを許容しておりますので、その10%をただ使っただけです。意味が分からないですかね、ごめんなさい。SDSで濃度範囲を示すときに、28ページの非開示の範囲の2つ目の項目の、「10%刻みの表示を原則とすべきではないか」の「10%」をとって、例示として上限範囲を「10%」と申し上げたということです。質問と合ってないですか。
○化学物質対策課長 今の話は混乱してまして、まず、営業秘密として非開示を認める物質かどうかについてという話と、その決まった後にそれの含有量をどう表示するかは別の話です。前者については、この31ページにありますように、濃度限界で決めるということなので、例えば発がん性であれば、区分1が0.1と区分2が1で、これは裾切値が0.1ですから、区分2というのは1%から0.1の間に隙間があります。それから生殖毒性であると区分1が0.3で、区分2が3ですから、こちらも裾切値が0.1ですから、その間に隙間があります。この隙間について認めるということで、10%刻みという話は、その決まった後に含有量をどう表示するかの話です。ちょっとそこが混乱してるかなと思います。
○西村構成員 全く御指摘のとおりだと思います。
○城内座長 宮川構成員、お願いします。
○宮川構成員 度々申し訳ないのですが、今の議論でお聞きした発言の中から、これは事務局のほうもそうですし、西村構成員の発言からもそうなのですが、やはりリスクアセスメントの基本がGHSだと、GHSの分類によってリスクアセスメントをするのだという考え方が結構強く出ているような気がします。そこは、本来、有害性に関するリスクアセスメントは、ばく露の程度が許容できる限界を超えてるかどうかという、その定量的なところに重きを置かなければいけないというのがあります。そういう意味からいうと、これまでの会議でも何回か申し上げましたが、区分が付くかどうかということでリスクアセスメントということに余り拘るのではなく、本来であれば、ばく露の程度がどの程度分かるのか、そうするとその物質名を伏せたとしても、この物質の許容濃度はこういう数値のものなのですよと、それがどのぐらい含まれてますよと、そういうところのほうが、GHSの分類区分がどうなるかということよりも本来重要なはずなのです。この辺りについては、多分、その辺りの専門の先生も複数いらっしゃいますので、当然のこととして御理解いただけると思うのですが、先ほどの、リスクアセスメントの基本はGHSからということが、この会議で何となくそういうふうになっているというように思われると困りますので、その辺りは、本来は違うのではないかということだけ発言させていただきます。以上です。
○城内座長 事務局、どうぞ。
○化学物質対策課長 宮川先生、ありがとうございました。宮川先生のおっしゃるとおりです。ですので、私が申し上げておりますように、GHSの制度というのは成分名を開示するのが原則で、それの代替として、本来は代替名を表示するのが原則であるので、それに優先順位があるべきだというのが事務局のスタンスです。それに対する西村構成員のスタンスが、どちらかというと、区分に影響しなければさほど重要ではないというスタンスで、そこは少し宮川構成員と西村構成員では御意見が分かれているところかと思います。
話を戻しますと、先ほど宮川先生の御意見もありましたが、我々としては、代替名を表示するのが原則で、それがもともと営業秘密を保持するために代替名を出すにもかかわらず、代替名を出してしまったら営業秘密は保持できないというのは全く意味がないので、そういう場合については別の手段を認めようというスタンスが正しいのかなと思います。ですので、先ほど西村構成員がおっしゃったように、代替名と物質名を一切開示することなく、有害性区分をお示しするというのを、並列とするというのは、ちょっと違うのではないかというのが我々の考えです。
それを踏まえ、実際に運用は難しいと御指摘はありましたが、いずれにしても、CBIをどのように組むかというのはそれぞれの事業場において判断するわけです。要するに化学物質の譲渡提供者が、この代替名では営業秘密が保持できるかどうかを判断した上で、保持できないと思った場合は別の手段を取ることができるということが担保されているのであれば、代替名をまず書くというところを原則とするのは可能ではないかというのが我々の考えです。その辺はいかがでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。今の御説明をいただきまして、少し理解ができたような気がいたします。要は、情報の譲渡提供者側が、この代替名で秘密保持が難しいと判断した場合には、有害性情報で代えることができるということが担保できるようであれば、CBIが守れるのではないかという気がいたします。ありがとうございます。
○城内座長 そのほか、御意見等はございますでしょうか。では、もう少し議論すべきところがありますので、進めたいと思います。48、49ページ、緊急事態における情報開示規定です。いかがでしょうか。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 余り本質的ではないところで1つだけ。49ページの守秘義務で「※医師法等」と書いてある所なのですが、医師法には守秘義務の規定がないので、刑法等とすべきだと思います。刑法第134条で、医師、歯科医師、薬剤師、助産師の守秘義務が規定されて、あと、保健師、看護師は保助看法で決められていて、それ以外の医療従事者は身分法で決まっています。医師法では、医学部の学生実習のときの守秘義務が、第17条の3という所にあるだけなので、話の趣旨に合いません。それ以降はみんな合意ですので、頭の所だけ。本質的でなくてすみませんが、御検討ください。
○化学物質対策課長 今、医師法と刑法と2度書きになっていまして、医師法も改正されて、同じような記載が入っているはずです。確認してみます。
○宮本構成員 今もちょっと調べていたのですが、医学部学生のは第17条の3に書いてあるのですが、医師そのものはこちらには書いてないと思います。
○化学物質対策課長 分かりました。いずれにしても、御指摘を踏まえて、もし医師法になければ、そのようにしたいと思います。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。中毒センターの件で宮本先生からお話がありましたが、そこはいかがでしょうか。
○宮本構成員 宮本です。先ほどの話であった中毒センターの、どちらにするかというので、48ページだと思いますが、「夜間等に災害が発生した場合に備え、非開示情報を含むSDSには、緊急時」とありますが、これは業者さん全部が24時間対応をすることになるので、本当にこれでいいのかというのがあります。それで中毒センターとのトレードオフの話ではないかと思っております。現実的にどちらがということだと思います。
○城内座長 そのほか、緊急時の情報開示規定について、いかがでしょうか。御意見等はございませんでしょうか。事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 こちらに「中毒センター」を記載したのは、必ずしも夜間緊急問合せの代替という趣旨ではなかったのですが、緊急時の問合せ先というのは、やはり非開示情報を作った人に求めるのが本筋であるのと、先ほど来も御議論がありますが、日本中毒センターの中に、2,900物質全てについての有害性があるのかというと、若干疑問な点もありますので、こちらは代替措置には多分なり得ない。要するに、中毒センターに聞いても分からないから開示を求めるということになるケースのほうが多いのではないかなと思っております。
○宮本構成員 分かりました。基本的にそういう有害性があって緊急事態で何か影響が出るものは非開示ではないという状態になっているはずだと思えば、余りこれに該当してここに引っ掛ってくることはなく、何らかの書かれていることで普通は対処するだろうと思います。未知の有害性が疑われたとき、産業保健スタッフですと慢性障害で共通の症状が何かあるぞということで、これは何だというところを確認するところだと思うので、そうだとすると、業者さんに聞くということで、聞かれた業者さんが答えられるのかどうかが、ちょっと分からないのですが、書いておいてということは御指摘のとおりかなと思います。これは、「書いておいて」で大丈夫なものなのですか。
○西村構成員 日化協の西村です。今、御指摘があったのは、多分急性の話でよろしいですか。
○宮本構成員 急性のは病院の話で、あとは産業保健スタッフが気が付くのは、どちらかというと慢性的な、みんなに共通な何かの症状の訴えがあるという、そういったときの話だと思います。
○西村構成員 まず、急性毒性のほうに関して言えば、急性毒性が予想されるようなものは、当然CBIの対象になっておらず、書かれていて、そういったものが分かるようなケースはそんなに多くはないかもしれませんがありますので、そういったものに書かれているということなので、それは多分、運用上問題ないかなと思います。一方で、慢性毒性のケースで、実際に事業者さんから直接連絡があるかどうかは分かりませんが、そういった場合には、CBIとかいうことではなく、むしろ行政ということになってくるのかな、ちょっと分からないですね。多発しているようなケースですと、厚生労働省からということがあるのかどうか分からないですが、しかるべく対応していくことになるのかなとは思います。具体的なイメージが湧かないですが、分かる範囲で製品の譲渡提供者としては対応していくことになると思います。CBIとは全く無関係にだと思います。お答えになっていますでしょうか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。宮本先生が御指摘になったのは非緊急事態ということでありますと、非緊急事態の場合は、健康診断とかで有所見や健康障害があることを把握した場合などに、それは緊急ではないので、書面で求めるというプロセスになります。この夜間等の緊急連絡先ではなく、書面で会社にお出しすることになります。あくまで、この緊急時連絡先を書くというのは、医療上の緊急事態における開示のときを想定しているものです。
○宮本構成員 分かりました。
○城内座長 そのほか、ここについて御意見等はございませんでしょうか。
では、最後の論点にいきたいと思いますが、よろしいですか。53ページをお願いいたします。「行政機関への非開示情報の開示等の必要性をどう考えるか」です。御意見等がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
私から質問ですが、第100条第1項から第3項までの規定の改正というのは、できるとすればいつ頃になるでしょうか。
○化学物質対策課長 こちら、仮に営業秘密を認めるということになりますと、法律の改正が必要になりますので、その改正と同時に行います。
○城内座長 皆さんから御意見、コメント等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。では、論点の全ての御意見を伺ったということですが、言い忘れたということはございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
たくさん御意見を頂きました。事務局では本日の御意見も踏まえ、さらに論点の整理、関係者等からの意見聴取等、中間取りまとめに向けた作業をお願いいたします。
最後に「その他」ですが、事務局から何かございますか。
○化学物質評価室長 事務局です。本日の議事は以上です。本日の議事録は、後日、構成員の皆様に御確認いただいた上で公開させていただきます。次回の日程ですが、6月24日(月)午後2時~5時を予定しております。構成員名簿のうち、前半に「全般に関する事項」「毒性に関する事項」の欄の先生方、後半に「全般に関する事項」、そして次回から、「ばく露防止対策に関する事項」の欄の先生方に御参集いただく予定としております。議事は、前半は「濃度基準値の検討」、そして「化学物質の危険有害性情報提供制度における成分名等の通知等関係」、後半は「対象物質ごとの測定方法」、そして「個人ばく露測定の精度担保関係」を予定しております。正式な開催案内は後日お送りさせていただきます。以上です。
○城内座長 以上で本日の化学物質管理に係る専門家検討会を閉会とさせていただきます。熱心な御議論、どうもありがとうございました。本日はお疲れさまでした。
本日は、濃度基準値の検討及び化学物質の危険有害性情報制度における成分名等の通知について検討することとしております。そのため、開催要綱別紙の構成員名簿の全般に関する事項及び毒性に関する事項の先生方に参集いただいております。現在の出席者は13名で、うち武林構成員がオンライン参加となっております。平林構成員、宮内構名員が欠席となっておりますが、宮内構成員につきましては途中参加される可能性があるとのことです。
本日は会場とオンラインの併用で開催しておりますので、会場参加の皆様は、御発言の際に必ずマイクを使用していただきますようお願いいたします。オンライン参加の先生におかれましては、周囲の音を拾ってしまうことがありますので、御発言される場合を除きまして、マイクをミュートに設定していただきますようお願いいたします。また、御発言の際には、あらかじめチャットで御発言の旨を入れていただくか、又はお名前を名乗っていただき、座長の指名を受けてから御発言いただきますようお願いいたします。なお、議事録を作成し、後日公表いたしますので、御承知おきください。本日の議事は公開としており、一般傍聴者につきましては、会場での傍聴のみとさせていただいております。
それでは、城内座長に以降の議事進行をお願いいたします。
○城内座長 皆さん御参集いただきまして、ありがとうございます。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○化学物質評価室長 事務局でございます。資料は、議事次第と配布資料一覧、資料は資料1から資料4、参考資料は参考1から参考10までを御用意しています。タブレットに格納しておりますが、検討対象物質の一覧の資料3は印刷した資料も配布しております。会場にお越しの構成員の皆様方におかれましては、資料に抜けなどはございませんでしょうか。オンラインで参加いただいている先生にも資料を事前にメールで送付させていただいておりますが、何かありましたら、事務局までお知らせください。
本日の資料は、厚生労働省のホームページにあらかじめ掲載しております。傍聴の方はそちらを御覧ください。資料の確認は以上です。
○城内座長 それでは、本日の議事に入ります。議事1「濃度基準値の検討」についてですが、本日は10物質について検討する予定としております。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○有害性調査機関査察官 議事1の「濃度基準値の検討」については、小永光から説明させていただきます。資料の説明後ですが、構成員の先生方から事前に頂いた御質問、御意見等を事務局より御説明させていただきます。その御質問、御意見を踏まえていただいた上で、個別物質ごとに御議論いただきたいと思います。なお、検討に必要な一次文献資料の印刷版が必要な方は、事務局にお知らせいただければお席までお持ちいたします。
それでは、資料を説明させていただきます。資料1の説明です。資料1は、本年度の濃度基準値設定対象検討リストですが、本日、御検討いただく10物質について、○を付けさせていただいています。この○の付いた10物質について、個別の資料を資料2として配らせていただいています。
資料2を御覧ください。1ページです。まず最初は、ホルムアミドです。こちらは詳細調査不要となっており、初期調査のみとなっています。ホルムアミドの八時間濃度基準値としては、5ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載がある1文献で、提案の理由としては、コメント欄の記載のとおりですが、まとめとして、動物試験の結果から、肝血管肉腫を臨界影響とした場合のNOAELが20mg/kgから不確実係数等を考慮して5ppmの八時間濃度基準値を提案するとしています。その他、コメント欄も併せて御確認いただければと思いますが、遺伝毒性については、「Ames試験で陰性、またホルムアミドを3か月間経口投与した雌雄マウスでの小核化赤血球の増加が認められなかった等、概ね「陰性」という結論と判断した」と記載しています。
続いて、3ページの硫化ジメチルです。こちらも詳細調査不要、初期調査のみとなっていて、硫化ジメチルの八時間濃度基準値としては、10ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文の欄に記載の2文献で、提案理由としては、コメント欄に記載のとおり、まとめとして、「動物試験の結果から、NOAELを250mg/kg/日と判断し、不確実係数等を考慮した10ppmを八時間濃度基準値として提案する」となっています。その他のコメントについては、特に記載はありません。
5ページのペンタクロロエタンを御覧ください。こちらは詳細調査不要、初期調査のみとなっており、ペンタクロロエタンの八時間濃度基準値としては、2ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の1文献となっており、提案理由としては、コメント欄記載のとおり、まとめとして、「動物試験の結果から、体重増加抑制を臨界影響としたNOAELを50mg/kg bw/日と判断し、不確実係数を考慮した2ppmを八時間濃度基準値と提案する」と記載しています。その他コメントは、特にありません。
7ページの1,2,4-トリメチルベンゼンです。ここからトリメチルベンゼンが3物質、1,2,4-トリメチルベンゼン、9ページの1,3,5-トリメチルベンゼン、11ページの1,2,3-トリメチルベンゼンと3つの異性体が続きますので、まとめて説明させていただきます。なお、トリメチルベンゼンについては、タブレットの参考資料10として、令和5年度の検討会報告書の抜粋を付けさせていただいていますが、令和5年度の検討会において、異性体混合物として濃度基準値が議論されて設定されており、10ppmの八時間濃度基準値が設定されています。今回、検討いただくそれぞれの異性体については、いずれも詳細調査不要で、初期調査のみとなっており、昨年同様、10ppmの八時間濃度基準値を提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の2又は3文献で、ほぼ同様の文献が根拠となっています。
提案理由としては、コメント欄に記載のとおりですが、まとめとしては、いずれの異性体においても、「動物試験の結果から神経毒性(行動影響および疼痛感受性の低下)および赤血球系の異常を臨界影響としたNOAELを25ppmと判断し、不確実係数等を考慮した八時間濃度基準として10ppmを提案する」と記載しています。その他のコメント欄ですが、1,2,4-トリメチルベンゼンについて、また1,2,3-トリメチルベンゼンについては、単体の試験結果があることから、それに基づき濃度基準値を設定した。1,3,5-トリメチルベンゼンについては、1,3,5-トリメチルベンゼン単独の試験結果は調査した範囲では認められなかったが、異性体による毒性の差は上記結果から顕著でないと判断されて、混合物の濃度基準値10ppmを用いて評価してよいと判断したと記載しています。
続いて、13ページの2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールです。こちらは詳細調査不要で、初期調査となっており、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールの八時間濃度基準値としては、2ppmを提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の2文献となっており、提案理由としては、コメント欄のとおりですが、まとめとして、「動物試験の結果から、22ppmをNOAELとみなし、不確実係数等を考慮した2ppmを八時間濃度基準値として提案する」としています。その他のコメント欄には、特に記載はありません。
15ページのヒ化ガリウムを御覧ください。詳細調査不要で、初期調査となっており、ヒ化ガリウムの八時間濃度基準値は「設定できない」を提案いたします。根拠論文等は、根拠論文欄に記載の2文献となっており、提案理由としては、コメント欄に記載のとおりですが、「ヒ化ガリウムは体内で分離した無機ヒ素としての有害性が懸念されることから、本物質での濃度基準値は設定できないと判断する」となっています。その他のコメントも併せて御確認いただければと思います。
17ページの2-シアノアクリル酸エチルを御覧ください。詳細調査不要で、初期調査となっており、2-シアノアクリル酸エチルの八時間濃度基準値としては0.2ppm、短時間濃度基準値としては、1ppmを提案いたします。根拠論文としては、根拠論文欄の2文献で、提案理由としては、コメント欄に記載のとおり、まとめとして、「ヒトの知見から閉塞性肺機能障害を臨界影響とした八時間濃度基準値0.2ppm、眼および上気道刺激を臨界影響とした短時間濃度基準値1ppmを提案する」となっています。その他のコメントも併せて御確認いただければと思います。
19ページの二酸化セレンです。詳細調査不要で、初期調査となっており、二酸化セレンの八時間濃度基準値としては、セレンとして0.02mg/m3を提案いたします。根拠論文は、根拠論文欄に記載の4文献となっており、提案理由としては、コメント欄に記載のとおり、まとめとして、「日本人成人の耐容上限量(335μg/日)と平均摂取量100μg/日との差235μg/日を職業ばく露によるセレン中毒を防ぐための最大許容量と判断し、呼吸量で補正したセレンとして0.02mg Se/m3を八時間濃度基準値と提案する」となっています。その他のコメントも併せて御確認いただければと思いますが、「二酸化セレン固有の有害性にかかる知見に乏しいことから、令和5年度のセレン化合物の根拠に順じ濃度基準値を設定した」と記載しています。
資料2の説明は以上です。資料3については、資料2の一覧の資料となっています。以上です。
○化学物質評価室長 続いて、事務局より構成員限りとしてお配りしておりますとおり、あらかじめ御質問や御意見を頂いておりますので、それらに対する御回答をさせていただきたいと思います。机上配布資料に御質問がありますので、御準備ください。最初に、幾つか頂いている御質問の中に共通して出てくる事項がありますので、それについて、まとめて御説明させていただきたいと思います。
1つ目として、試験結果に発がん性が認められるので、基準値を設定してはいけないのではないかといった意見が何件か見られます。これについては、発がん性には、体内にある細胞の遺伝子に傷を付けてがんが発生するもの、これを遺伝毒性発がん物質と言いますが、このほかに、細胞に炎症を起こしたり、ホルモン作用等で細胞増殖を増加させて、ある量を超えるとがんが発生するものがあります。これを非遺伝毒性発がん物質と言います。前者の遺伝子に傷を付けてがんを発生させる物質というのは、遺伝毒性発がん物質のことですが、これについては、ほんの少しでもあればがんが発生すると仮定されていることから、これ以下であれば大丈夫という基準値を作ることができないとされています。一方、後者の非遺伝毒性発がん物質は、ある量を超えるとがんを発生させるとされていますので、ある量を超えなければ大丈夫です。つまり、これ以下であれば大丈夫という基準値を作ることができるとされています。したがって、文献中にがんが発生したといった報告があっても、これが遺伝毒性かどうか、遺伝子に傷を付けるものかどうかを判定して、基準値を策定するかどうかを検討しております。
何回か出てくる御意見として、次に、GHSの有害性と、臨界影響が異なるのはおかしいのではないかといった御意見がありました。本検討会では、濃度基準値を設定できる文献を根拠としています。濃度基準値は、様々な毒性について入手できる文献の中で最も低いNOAEL、NOAELというのは、No Observed Adverse Effect Levelということで、ある物質について何段階かの異なる投与量を用いて毒性試験を行います。そうすると、少ない所では毒性が出ないけれども、多い所では毒性が出てくるといった曲線が書けるということです。この毒性が出なかったもっとも大きな所をNOAELとします。それで有害性が影響されなかったもの、幾つも試験をしますので、その中で最も小さなものを定めて、これから不確実係数等を考慮して基準値を作ります。一方、GHS区分というのは有害性を区分するためのものなので、もっと毒性の高い所を見ているということです。また、本検討会では、GHSの政府分類以降に発行された文献を用いた検討がされる場合もあります。したがって、GHS区分の有害性と、臨界影響が異なることは、十分あり得ると御承知いただければと思います。
もう1つ、GHS区分と絡めて、GHS区分に急性毒性や単回ばく露等、短期の毒性しかない場合に、八時間濃度基準値を定めるのはおかしいのではないかといった御意見が幾つかありました。本検討会では、どのような物質に対し基準値を作るかということについては、令和3年度に取りまとめられた「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」に従っております。リスクアセスメント対象物質のうち、欧米の基準値策定機関による職業性ばく露限界値がある物質について、濃度基準値を策定することにしています。濃度基準値というのは、先ほど申しましたように、様々な毒性について入手できる文献の中で最も低いNOAEL、何も影響が出なかったということを確認して定めるもので、有害性を区分するGHSの区分の考え方とは大きく異なります。したがって、GHSの有害性が短期的なものであったとしても、得られた文献から、八時間濃度基準値を定めることが妥当であると考えております。
では、個別の物質に行きたいと思います。資料2の1ページです。1つ目のホルムアミドに関する御意見、御質問です。濃度基準値に用いられている文献というのは、肉腫の発生に関する影響濃度になっています、ちょっと飛ばして、発がん性に関しては閾値を定められないので、濃度基準は定めないということで、これを定めてはいけないのではないかといった御質問です。お答えですが、全体に関するところで御説明したように、こちらは文献を見て遺伝毒性かどうかを判断しております。その他のコメントの欄を見ていただくと分かりますが、文献1の結果によって、遺伝毒性は陰性とされていることから、濃度基準値を定めることができると判断しております。
続いて、硫化ジメチルです。3ページを御覧ください。こちらについては、意見が3つ来ておりますが、まとめて御紹介いたします。ラットの経口試験において、NOAELが250mg/kg/日と判断されていますが、これ以上の濃度でも有害影響が認められていない可能性があるので、これを採用していいのかどうかというのが1つ目の御意見です。もう1つの御意見は、次の段落ですが、GHS区分では、眼に対する重篤な損傷となっておりますので、要は短期ですね、濃度基準値の設定の対象とするべきかどうかが疑問ですということです。次の行ですが、GHSガイダンスの分類においても、250mg/kg/日が区分2のガイダンス値をはるかに超過しているので、長期的なばく露の有害性はないということなので、そもそも長期的濃度基準値の対象の候補とすることに妥当性を欠くのではないかといった御意見を頂いています。さらに、その下の御意見ですが、同様に、眼以外に対しての標的健康影響が明確でないので、長期の濃度基準値を設定するというのは適切ではないのではないか。同様に、3行目ぐらいで、本試験結果は250mg/kg/日以上の試験データがないので、NOAELがこの値以上になる可能性もあるのではないかといったことで、ACGIH以外に職業ばく露限界値が設定されていないので、本当にこの物質に濃度基準値を設定する必要があるのかどうかということを、御意見として頂いています。
まず、GHS区分と基準値設定対象物質の考え方については、最初に御説明したとおり、リスクアセスメント対象物質のうち、他の機関で基準値が定められているものについて、基準値を設定するという考え方に基づいて選定しているので、GHS区分が何であっても、論文を見て設定できるということであれば設定するといった考え方です。今回、眼にしかないのに設定していいのかということについては、GHS区分とは全く関係ないということも御説明させていただきました。
NOAELとした濃度以上の濃度での試験結果がないことについては、もしかしたらそれ以上のNOAELの可能性があるのではないかという御指摘だと思いますが、こちらについては、事前に調査していただいている安衛研の部会でも、得られた文献でやるということになっていますので、得られた限られたデータの中で基準値を策定しようとすると、この値になるということで、この文献しか見付けられなかったので、このような値になっているということで提案させていただいています。
続いて、5ページのペンタクロロエタンです。ペンタクロロエタンについても、GHS区分は特定標的臓器毒性(単回ばく露)の区分3だけになっているということで、これについて八時間濃度基準値を定める必要があるのでしょうかといった御意見があります。また、コメント欄を読むと、250mg/kg/日の健康影響は発がん性の疑いがあるので、発がん性があるものについて濃度基準値を設定してよいのかどうかといった御意見です。
まず、GHS区分が単回ばく露の影響だけであるものへの考え方については、全体に対する質問の所で御説明させていただきました。本件では、文献にあるとおり、ラットに対する13週間の毒性試験で体重増加抑制という全身影響が見られたことから、八時間濃度基準値を設定することが妥当であると考えています。また、発がん性物質については、こちらも文献をちゃんと見ており、コメント欄にも記載してあるとおり、遺伝毒性は見られないとなっていることから、濃度基準値を設定することは可能であると判断しています。見られた肝細胞がんですが、高濃度で見られていることから、基準値を守っていればがんの発生は避けられるものと考えられます。
続いて、トリメチルベンゼンのシリーズです。9ページの1,3,5-トリメチルベンゼンは、先ほど単独の文献がないといった説明をさせていただいたところですが、御意見としては、1,2,3と1,2,4の結果から、1,3,5-トリメチルベンゼンの有害性も大差ないと推定しているのですけれども、1,3,5-トリメチルベンゼンの含有率が低い場合は、その影響が表面化しない可能性があり、それぞれの含有率が明らかにされていない状況では、この仮定は成り立たないので、ここから濃度基準値は設定できないのではないかといった御意見を頂いています。
これに対する回答ですが、トリメチルベンゼンについては、令和5年度の検討会で、今回提案されている3つの異性体の混合物として、今回の提案と同じ基準値が設定されています。先ほども説明の中で申していましたが、参考10に昨年度の評価書を付けていますので、そちらも併せて御覧ください。参考10に付けた資料に、その他のコメントの欄がありますが、「異性体の毒性の差は顕著でない」とされており、1,3,5-トリメチルベンゼンの単独の結果がなくても、異性体の結果をもって基準値を提案することができると考えております。
トリメチルベンゼンシリーズの3つ目ですが、11ページの1,2,3-トリメチルベンゼンです。こちらについては、8時間の濃度基準値は継続的なばく露による健康被害を防止するということなので、これは何回か出てきているものですが、そもそも特定標的臓器毒性(反復ばく露)のような継続的なばく露による有害性があるものに対して設定されるべきであるが、今回は特定標的臓器毒性(単回ばく露)の気道刺激性や麻酔作用のみがGHS区分でされていますので、八時間濃度基準値を設定することが妥当でしょうかといった御意見を頂いております。
GHS区分が単回ばく露の影響だけであるものという考え方については、何度か御説明させていただいているとおりです。今回の基準値は、3か月の動物試験の結果、行動影響や疼痛感受性の低下が見られたことから、GHS区分が何であっても、八時間濃度基準値を設定することは可能であると考えています。
続いて、2-シアノアクリル酸エチル(ECA)です。資料2の17ページです。こちらは、肺機能障害での感作性を原因とするのであれば、GHS区分においても同様に結論付けられているべきですが、今回のものとGHS区分が違うので、整合性が取れていないといった御意見を頂いております。
GHS区分と臨界影響が異なるという点については、何度か御説明させていただいているとおりです。特に本件では、その他のコメントの欄にもあるとおり、GHSの議論よりも新しい文献を用いて検討いたしました。本件では、シアノアクリル酸による職業性ぜん息が多発したことをきっかけとして行われた疫学研究に基づいて基準値の提案をしていることから、閉塞性肺機能障害を臨界影響とすることは妥当であると考えています。
なお、令和5年度に検討したシアノアクリル酸メチルでは、GHS呼吸器感作性区分1が設定されております。根拠論文等からは、シアノアクリル酸エチルとシアノアクリル酸メチルは同等の呼吸器感作性があると考えられております。今回、検討したシアノアクリル酸エチルのGHS分類は、シアノアクリル酸メチルよりも分類年度が古いことから、今後、シアノアクリル酸エチルの再分類が望まれるとなっております。
以上が事前に頂いた御質問への回答です。
○城内座長 御説明、ありがとうございました。それでは、事前に頂いた質問・御意見や、それに対する事務局の回答も踏まえ、1物質ごとに議論していきたいと思います。では、個別物質ごとに名前、8時間濃度基準値等を読み上げますので、一つずつ御議論いただければと思います。まず、ホルムアミドについて、5ppmと提案されていますが、いかがでしょうか。
○西村構成員 日本化学工業協会、西村でございます。ホルムアミドにつきましては、数値というところではございませんが、その他のコメント欄に経皮吸収性があることが記載されておりますけれども、その根拠文献がどれに当たるかを、初期調査、結果調査、あるいは別紙2-1のところに記載いただければ有り難いと思います。以上でございます。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質評価室長 事務局でございます。御質問、ありがとうございます。皮膚等吸収性有害物質でございますが、これは根拠論文に基づいているというよりは、令和5年7月4日に公布されて本年4月1日から施行されている「皮膚等障害化学物質等」に基づいて定めているということでございますので、あえて書くと言うと「法令で定められた物質」ということが根拠になるということでございます。皮膚等吸収性有害物質がどうやって設定されたかという考え方は、安衛研に設置されました「皮膚等障害化学物質の選定のための検討会」というものがございまして、こちらに詳しく記載されておりますので、もし御関心がありましたら、そちらを御参照いただければと思います。以上です。
○城内座長 よろしいでしょうか。
○西村構成員 はい。
○城内座長 そのほか、御意見等ございませんでしょうか。それでは、ホルムアミドにつきましては、8時間濃度基準値5ppmとしたいと思います。
続きまして、硫化ジメチル、8時間濃度基準値は10ppmと提案されていますが、これについてはいかがでしょうか。
○西村構成員 日化協、西村でございます。硫化ジメチルにおきましては、コメント欄のところで2つの試験が引用されていますけれども、NOAELの算出のところでWistarラットの経口試験を選定・選択した理由を、同様にこの資料2の初期調査結果評価の表に記載していただければと思っております。以上でございます。
○城内座長 事務局、いかがでしょうか。
○化学物質評価室長 すみません、もう一度何を記載したらよいかお願いできますか。
○西村構成員 2つの試験をコメント欄に記載していただいていますけれども、吸入と経口の試験が並んでおり、経口の後ろのほうの試験を選択した理由をこのコメント欄に記載していただければと思います。
○化学物質評価室長 分かりました。どちらがより低い濃度かがパッと見では分からないから、低い濃度をとったということですけれども。
○西村構成員 その旨で結構だと思いますので。
○化学物質評価室長 分かりました。工夫いたします。ありがとうございます。
○城内座長 そのほか、御意見等ございますか。
○大前構成員 1番の試験はLC50を求めるための試験なので、8時間濃度基準値には使えないということになろうかと思います。
○城内座長 西村構成員、どうぞ。
○西村構成員 日化協、西村でございます。今の御説明はすなわち、見ているのは致死だけしか見ておらず、その他の有害性影響を見ていないからというように言い換えてもよろしいでしょうか。
○大前構成員 はい、そういうことだと思います。
○城内座長 そのほか、御意見等ございますか。それでは、硫化ジメチルは8時間濃度基準値10ppmにしたいと思います。
続きまして、ペンタクロロエタンは8時間濃度基準値2ppmと提案されていますが、これについていかがでしょうか。御意見等ないようですので、ペンタクロロエタンは8時間濃度基準値2ppmとしたいと思います。
続きまして、1,2,4-トリメチルベンゼン、これは異性体を含めて御検討いただければと思います。異性体も含めて皆、8時間濃度基準値は10ppmと提案されていますが、いかがでしょうか。御意見等ないようですので、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼンは、それぞれ8時間濃度基準値10ppmとしたいと思います。
続きまして、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールは8時間濃度基準値2ppmと提案されていますが、これについてはいかがでしょうか。御意見等ございませんでしょうか。それでは、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エタノールに関しまして、8時間濃度基準値2ppmにしたいと思います。
続きまして、ヒ化ガリウムについては濃度基準値の設定はありませんが、これについてはいかがでしょうか。御意見等あればお願いいたします。それでは、ヒ化ガリウムについては、濃度基準値については設置しないということにしたいと思います。
続きまして、2-シアノアクリル酸エチルは、8時間濃度基準値0.2ppm、短時間濃度基準値1ppmと提案されていますが、これについてはいかがでしょうか。御意見等お願いいたします。それでは、2-シアノアクリル酸エチルにつきましては、8時間濃度基準値0.2ppm、短時間濃度基準値1ppmにしたいと思います。
続きまして、二酸化セレン、8時間濃度基準値0.02mg/㎥(セレンとして)について、コメント等ありましたらお願いいたします。それでは、二酸化セレンにつきましては、8時間濃度基準値0.02mg/㎥(セレンとして)としたいと思います。
これで本日予定のすべての物質の濃度基準値の審議が終わりました。最終結果は、事務局からまとめはありますか。よろしいですか。
○有害性調査機関査察官 資料3を用いながら審議結果について確認させていただきたいと思います。本日御議論いただきました10物質の濃度基準値につきましては、皆様の御了解を得られましたので、10物質について設定させていただくという形で進めたいと思います。なお、今回、再検討となったものはございませんでした。よろしくお願いいたします。
○城内座長 ありがとうございます。続きまして、議事2「化学物質の危険有害性情報提供制度における成分名等の通知等について」です。事務局からの資料の説明の後、論点ごとに区切って議論をお願いしたいと思います。それでは、事務局から資料の説明をお願いします。
○化学物質評価室長補佐 化学物質評価室の吉岡と申します。資料4の「骨子案について」を御説明させていただきます。前回まで論点ということで御議論いただいていたものについて、今回、骨子案としてお示ししております。
2ページが検討項目ということで、これまでと同様、6点の検討項目としております。このうち1点目については、前回までは、SDS制度の運用改善を図るべき点としておりましたが、より法令に近い形で、「危険有害性情報の通知制度」という言葉を用いております。
3ページ以降の構成はほとんど変わっておりませんが、8ページに資料の追加があります。「化学物質を譲渡・提供する際の安全データシート(SDS)の交付状況」ということで、労働安全衛生調査の結果について、過去3年間のSDSの交付状況をまとめております。
6ページ以降が前回までの御議論です。こちらは各論点ごとに、検討会の中で御議論いただいた内容を記載しております。黒字は前々回までのもの、青字は前回いただいた御意見としておりますが、本日、説明は割愛させていただき、16ページに飛んでいただきたいと思います。
16ページからが報告書の骨子案で、こちらについて御説明させていただきます。検討項目の1番は、「現行の危険有害性情報の通知制度の運用改善を図るべき点はあるか」です。まず「成分及びその含有量」ということで、CAS登録番号等、成分名を特定できる一般的な番号をSDS等で通知することを義務付けるべきではないか。もちろんCAS登録番号などが割り当てられていない物質は除くというところを、御意見としていただいております。
2点目が、「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」ということで、使用上の制限を主としてSDS等で通知することが望ましいとすべきではないか。また、記載すべき事項について、物理的危険性を有する物質については爆発限界や引火点、急性毒性を有する物質についてはばく露防止措置や保護具の使用などが必要であるという、注記という意見を頂いております。もちろん、他の項目で同様の趣旨の記載がある場合は、それを引用(参照)してもよいとするということです。
3点目が「適用される法令」ということで、特別則適用物質、危険物に加え、RA対象物、皮膚等障害化学物質、がん原性物質、濃度基準値設定物質については、含有される成分ごとに該当する旨を通知することを義務付けるべきではないか。労働基準法の女性労働基準規則第2条第1項第18号の妊娠中の女性を就かせてはならない業務の対象物質についても、該当する旨を通知することを義務付けるべきではないか。労働基準法施行規則第35条及び別表1の2で定める業務上の疾病の対象物質については、人体に及ぼす作用ということで、有害性情報の通知事項として位置付けるべきではないか。
4項目目が、「事故が発生した場合の応急の措置」ということで、急性毒性など、生命に関わるような有害性を有する物質については、救急隊員が到着する前に行うべき応急措置を通知事項とすることが望ましいとすべきではないか。また、医師が治療方針を決定する際の問合せ先として、日本中毒情報センター等を通知事項とすることが望ましいとすべきではないか。
次のページが骨子案の(2)として、「貯蔵及び取扱い上の注意における保護手袋の通知事項」です。混合物の場合、保護手袋選択マニュアルにより選択は可能であるが、ユーザーが選ぶのは負担が大きいことから、必要最小限の事項の通知を義務付けるとともに、通知することが望ましい事項を明確にすべきではないか。
含有される皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質については、適当でない保護手袋の材質(ネガティブリスト)の通知を義務付けるべきではないか。ただし、厚生労働省のHPで公表している耐透過性能一覧表のURLを示すなど、インターネットの利用その他の方法により、その事項を周知させることができる場合はこの限りではないとすべきではないか。この一覧に記載のない物質であって、経皮吸収による健康障害の情報がある物質については、当該物質ごとに、ネガティブリストの記載を行うことが望ましいとすべきではないか。そのまま使用する製品、取扱い説明書等に基づき混合する製品など、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品については、推奨する保護手袋の材質(ポジティブリスト)の通知が望ましいとすべきではないか。材質のポジティブリストを示す場合には、以下に留意することでよいか。耐透過性レベルが最も高い多層フィルムなどの材質を明示するだけではなく、使用可能な選択肢を幅広く示す。また、ポジティブリストを明示する場合は、ポジティブリスト以外でも事業者が選択できることを明記する。
次の項目です。保護手袋の「厚さ」について、次のいずれか事項を通知することが望ましいとすべきではないか。事業者が作業内容や作業時間によって必要な耐透過レベルを決定し、厚さを選択することを明示する(保護具選択マニュアル等の活用を明示する)。取扱説明書で指定する標準的な使用方法に基づいて必要な耐透過性レベルが特定できる場合には、必要な耐透過性レベルを通知するとともに、保護手袋の材質及び厚さを明示する。これは製品名の明示でもよいとするということです。
次のページです。「貯蔵及び取扱い上の注意における呼吸用保護具に関する通知事項」ということで、呼吸用保護具についても、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品については、呼吸用保護具を使用する場合に、選択すべき呼吸用保護具の種類の通知を義務付けるべきではないか。ここにおいて呼吸用保護具の種類の判断に当たっては、常温で気体の物質又は常温で固体・液体の物質で蒸気圧の高い物質を含有する製品については、防毒用が必要であること、常温で液体又は固体の製品については、防じん用が必要であるとすべきではないか。呼吸用保護具の種類の通知の趣旨は、呼吸用保護具の使用を求めるものではなく、ユーザーが呼吸用保護具を使用する場合に、使用すべき種類を通知する趣旨である。防毒用の場合、そのまま使用する製品、取扱い説明書等に基づき混合する製品など、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品については、成分に応じ、使用すべき吸収缶の種類を通知することを義務付けるべきではないか。取扱説明書等において、常温で液体の物質であっても、塗装作業等、気体とミスト状の液体が混在している作業を行うことが予想される場合には、防じん性能を有する防毒用のものを使用する必要があるという注記を通知することが望ましいとすべきではないか。
次のページです。「譲渡・提供前のSDS等の提供」については、譲渡提供する以前の段階で、一律にSDS等の開示を義務付けることは困難ではないか。一方で、リスクアセスメントの結果に基づく措置として代替物を検討するため、購入前にSDSの閲覧ができることが望ましいことから、譲渡提供を受けることを検討している者からの求めがあった場合、適用法令の一覧だけでも開示することが望ましいとすべきではないか。
「SDS等により通知した事項に変更が生じたときの通知の迅速化」については、有害性情報、非常時対応や適用法令について、SDS等で通知した事項を変更した場合、すみやかに変更された事項の通知を行えるよう、SDS等による通知の電子化及び標準化を推進すべきではないか。当面の間は、法令上の義務とはしないという前提です。SDS等による危険有害性情報の通知を電子化し、その電子データの配列を標準化することにより、川上、川中、川下、ユーザーそれぞれの電子システムに直接入力可能とする。これにより、変更された事項を手入力する手間を省き、通知に要する時間の短縮を図る。現状の紙で作成されているSDS等の通知事項を標準化するという趣旨ではなく、法定通知事項ごとの内容にばらつきがあっても、それを電子的に交付する際、標準化された電子データ配列を用いる。混合物の成分、含有量、適用法令を表形式にしている場合や、同じ通知事項を複数の項目で通知する等の、複数のバリエーションがあるということを想定し、どのような場合であっても一定の標準データ配列を出力できるような仕様を定める。その上で、通知事項の変更時にエンドユーザーにまで、その情報を適切に伝えるため、電子的に通知事項を変更し、変更された事項を電子メールでの通知、インターネットに掲載してQRコードの配付等の方法により、速やかに譲渡先に伝達することを推奨し、それを前提として、通知事項の変更時のユーザーへの通知を義務付けるべきではないか。
次のページです。「履行確保の方法」ということで、これらの事項について、化学物質の譲渡提供者の履行確保のため、次のとおり法令で規定すべきではないか。これには3点あります。SDSの交付等による危険有害性情報の通知の義務に罰則を設ける。SDS等により通知した事項を変更した場合は、変更後の通知事項を速やかに譲渡提供先に通知する努力義務を規定とする。ここは通知事項の変更の頻度について規定する趣旨ではない。また、変更された事項の通知の相手方については、継続的に取引を行っている相手方とする。3点目として、SDS等による危険有害性の通知事項のうち、必須となる事項について、厚生労働省令で定める。これら以外で通知が望ましい事項については通知等で示す。これらの規定については、施行までに5年程度の周知期間をおき、その通知の電子化・標準化等の推進のため、国が一定の支援を行うべきではないか。
次の項目が、「SDS等の作成者に対する支援」です。その2点目にありますが、SDS等の作成については、事業者団体が連携し、5年を目途に中小事業者に対する支援を行うべきではないか。危険有害性情報の通知の電子化及び標準化については、具体的な方法を引き続き検討し、5年後に中小事業者が電子化及び標準化に対応できるよう、国が一定の支援を行うべきではないか。電子的な通知にあたっては、必要に応じ、セキュリティが確保された方法も利用可能とするよう検討するということで、製品含有化学物質情報伝達スキーム(chemSHERPA)で用いられている方法を例示させていただいております。
次が21ページ、「より使い勝手の良い保護手袋の開発等に対する国の支援」です。次の事項について、国が一定の研究支援を行うべきではないかということで、保護手袋の作業性の向上等を促進するための保護手袋の作業性の性能評価方法の確立等、保護手袋の使用可能時間を確認するための簡易な測定方法の評価方法の確立等。化学物質管理の改善を図るための官民の取組として、令和7年2月を初回とする「化学物質管理強調月間」を活用し、官民で化学物質管理の向上の取組を働きかけるべきではないか。
「SDS等による危険有害性情報の通知事項に関するメーカーとユーザーの対話の充実」ということでは、危険有害性情報の通知事項の適正化や、電子化・標準化にはメーカーとユーザーの対話を積み重ねることが重要であるため、事業者団体により、両者の対話の場を常設すべきではないかとしております。
検討項目の2番は「営業秘密として非開示にできるSDSの項目をどう考えるか」です。これについても、同じ構成になっており、併せて骨子のところから御説明させていただきます。骨子案の28ページです。「営業秘密の定義など」ということで、営業秘密の定義としては、①情報が公開されていないこと、②申立者が、情報が公開されないように合理的な手段をとること、③開示によって申立者に財産上の損失又は申立者の競合相手に財産上の利益を与えることの3点全てを満たすものとすべきではないか。
「非開示の対象」として、成分名は、有害性区分1や重篤な健康障害を生ずる有害性クラスに該当する場合等を除き、営業秘密に該当する場合は非開示の対象とすべきではないか。この点についてはこの後、論点3で御議論いただくことになります。また、含有量については、非開示の対象とはせず、非開示対象の物質の含有量は、(省令で規定された)10%刻みの表示を原則とすべきではないかとしております。
続いて、論点の3番「リスクアセスメントの実施に支障のない範囲として、営業秘密として非公開にできる化学物質の有害性の範囲及び濃度をどう考えるか」です。こちらも骨子案について御説明させていただきます。36ページです。「重篤な有害性を有する物質の成分名の非開示の範囲」ということで、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性を有するものは、有害性区分にかかわらず、成分名の非開示の対象としないべきではないか。
2点目として、呼吸器感作性又は皮膚感作性と誤えん有害性を有するものは、成分名の非開示の対象としないべきではないか。ここで呼吸器感作性又は皮膚感作性と誤えん有害性は、有害性区分が区分1しかないというところを御留意いただきたいと思います。
3点目が、皮膚腐食性/刺激性、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性、特定標的臓器毒性(単回ばく露)、特定標的臓器毒性(反復ばく露)を有するものは、区分1に該当する場合は成分名の非開示の対象としないべきではないか。これら有害性の毒性区分は、毒性の強さによる区分であり、含有量に濃度限界値が設定されているということになります。
4点目です。急性毒性を有するものについては、成分単体として区分1~3に該当する物質は、成分名の非開示の対象としないべきではないか。混合物の急性毒性の有害性区分は、急性毒性の区分のある全ての成分を濃度で加重平均して混合物の急性毒性値(ATE)をばく露経路別に計算し、判定基準に照らして区分することが通常。このため、混合物としての有害性区分で非開示の対象物質を判断することは困難であり、成分単体の有害性区分によって非開示の対象を判断すべきであるとしております。ここで言う「有害性を有する又は区分に該当するもの」については、国が行うGHS分類又は事業者が行うGHS分類のいずれかの結果で該当するものとしております。
次の37ページです。「リスクアセスメントの実施に支障のない範囲として、混合物の有害性区分に影響を与えない範囲の濃度について」ということで、含有量がGHS(JIS)の濃度限界以上の場合は、混合物の有害性の区分に影響することから、成分名の非開示の対象としないべきではないか。急性毒性については、この制限は適用しないということです。
「法令で特別の規制が適用される物質について」ということで、法令で個別の対応が義務付けられている、特化則等の特別則の適用対象物質、皮膚等障害化学物質等に該当する物質及び濃度基準値が設定されている物質については、成分名の非開示の対象としないべきではないか。
「履行確保の方法」としては、次の事項を化学物質の譲渡提供者に対する法令上の義務(罰則を設ける)として規定すべきではないか。上記の条件に従い、非開示が認められる物質のみについて、成分の通知義務が免除されること、この場合においては、代替名称を譲渡提供先に通知しなければならないこととしております。
次に論点4の「営業秘密として非開示とした場合、SDSにどのように表記するか」という点についてです。こちらも骨子案について説明させていただきます。44ページです。「営業秘密」に該当する旨の明示として、営業秘密による非開示とする場合、「営業秘密」であることを通知することを義務付けるべきではないか。
「代替名の通知及びその方法」としては、成分名を非開示とする場合、それに代わる代替名を定め、それを通知することを義務付けるべきではないか。代替名の決定は、成分名の一部を置き換え又は削除する方法によることを定めるべきではないか(法令では原則のみを簡潔に定め、次の事項は指針で定める)ということで、実際の名称の付け方については、下に4点あります。名称の4要素のいずれか1つを置換又は代替する。ただし、構造が比較的単純である等の理由で、1要素のみの置き換え又は置換では成分名が特定されるおそれがある場合は、2要素の置き換え又は置換を認める。名称の4要素は、①母体化合物の構造、②対イオンの構造及び数、③光学異性体、④母体化合物または他の置換基に結合している置換基の構造、数、位置とする。置換位置番号、母体化合物の置換基の位置番号については削除、その他の情報については一般名への置換とする。代替名の決定に当たっては、代替名と有害性の関連性が分かるようにすることが望ましい。
「含有量の通知」は先ほども御説明しましたが、含有量の表示については、安衛則34条の2の6で規定される方法(原則10%刻みで記載し、譲渡先から要望があった場合は、さらに詳細の情報の開示)とするべきではないかということです。
続いて論点の5番目、「緊急事態における情報開示規定をどのように考えるか」です。こちらも、骨子案について御説明いたします。48ページを御覧ください。「情報の開示が認められる場面」として、医療上の緊急事態又は産業保健上の必要のある場合について、情報開示を求めることができるとすべきではないか。
「医療上の緊急事態における開示」については、医師又は看護師が、医療上の緊急性があり、ばく露した患者への医療上の処置のために成分名の特定が必要であるとして、成分名の開示を求めた場合、直ちに、化学物質の譲渡・提供者に対し、営業秘密に当たる成分名を開示することを義務付けるべきではないか。上記の開示の請求は口頭で足り、書面は不要であるとすべきではないか。医師等からの要請があった場合には、緊急対応要員(緊急搬送従事者等)を通じて、成分名の開示を請求させることも認めるべきではないか。夜間等に災害が発生した場合に備え、非開示情報を含むSDSには、緊急時(夜間)問合せ先を記載することを求めるべきではないか。
「非緊急事態(産業保健上の必要)における開示」ということで、産業医又は産業看護職が、次に掲げる産業保健上の理由により、成分名の特定が必要であるとして、成分名の開示を書面で求めた場合、その目的に必要な範囲において、成分の含有量に係る秘密が保全されることを条件に、化学物質の譲渡・提供者に対して、営業秘密に当たる成分名を、速やかに、開示することを義務付けるべきではないか。
対象となる産業保健上の理由については、次の場合であって、労働者の健康管理のために非開示物質の名称を特定する必要があることとしております。1点目が、非開示物質にばく露する労働者に対する健康診断等により有所見や健康影響を把握した場合、2点目として、非開示物質を使用している他の事業場で健康障害が発生したことが明らかになった場合など、非開示物質にばく露する労働者に健康障害が生ずるおそれを把握した場合としております。産業医が選任されていない中小零細事業場では、地域産業保健センターの医師等も産業保健上の理由を判断できるとすべきではないか。
49ページを御覧ください。「情報の開示の秘密保持」についてです。医療上の緊急事態について、情報開示の条件として、医療関係者には秘密保持契約を求めず、医療従事者としての守秘義務で対応すべきではないか。医師法等では正当な理由がない限り、「人の秘密」を漏らすことを禁じられております。さらに、「診療情報の提供等に関する指針」では、「医療従事者は、患者の同意を得ずに、患者以外の者に対して診療情報の提供を行うことは、医療従事者の守秘義務に反し、法律上の規定がある場合を除き認められないことに留意しなければならない」とされております。「人の秘密」には、患者の診療情報(診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た情報)が含まれる。医師等が、患者の医療上の処置のために成分名の開示を求めた場合、その情報は当然、その目的に照らし、患者の診療情報に含まれると考えられる。なお、守秘義務違反に当たるかどうかについては、個別具体的な判断が必要である。医療従事者以外の緊急対応要員については、事後的に秘密保持契約を結ぶべきではないか。非緊急事態として、産業保健上の必要がある場合での情報開示の条件として、秘密保持契約を結ぶべきではないか。
「医療緊急時の支援」としては、SDSの事故が発生した場合の応急の措置の記載事項として、次の事項を記載することが望ましいとすべきではないか。急性毒性など、生命に関わるような有害性を有する物質については、有害性の内容や症状、ばく露した場合の応急措置等、救急隊員が到着する前に行うべき応急措置、医師が治療方針を決定する際の問合せ先として、日本中毒情報センター等の連絡先です。
「履行確保の方法」として、医療上の緊急事態及び非緊急事態(産業保健上の理由)における非開示情報の開示については、化学物質の譲渡提供者に対する法令上の義務(罰則は設けない)として規定すべきではないかとしております。
最後に6点目、「行政機関への非開示情報の開示等の必要性をどう考えるか」については、最終ページの53ページに骨子案があります。化学物質の譲渡提供者が営業秘密の非開示事項を決定するに当たっては、行政への届出等を求める必要はないとすべきではないか。その代わり、営業秘密が適切に設定されているかの確認のため、労働基準監督機関から求められた場合に報告(非開示情報の開示等)に応じる義務を課すべきではないか。これは罰則を設けるべきということになります。現状の安衛法第100条第1項から第3項に基づく報告徴収規定では、個人が化学物質を譲渡提供した場合(個人輸入等)に対応できないため、化学物質の譲渡提供者を措置義務者に加える等、所要の改正を検討することになります。併せて、化学物質の譲渡提供者には、次の事項を化学物質の譲渡提供者に義務付ける(罰則を設ける)べきではないか。上記の条件に従い、非開示が認められる物質のみについて、成分の通知義務が免除される。この場合においては、代替名称を譲渡提供先に通知しなければならないということです。
以上で資料4についての御説明を終わります。
○城内座長 非常にたくさんの論点があって、活発な議論があると思いますが、その前に休憩をしたいと思います。
(休憩)
○城内座長 それでは時間になりましたので、論点ごとに検討を進めていきたいと思います。まずは16~21ページの検討項目の1の骨子案について、御意見等をよろしくお願いいたします。16ページからです。いかがでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。17ページの2項目目になりますけれども、保護具の選定マニュアルとか、耐透過性の一覧表というのは、本来、ユーザー側、具体的には保護具着用管理責任者のためのものと理解していまして、これらを広めるために「URLを示すなど」といった記載になっていると理解しています。方向性としては、私どもとしても賛同したいと考えています。また、日化協としても、SDSの記載例などをアップデートし、広めるための活動を行っていく予定です。
ただ、ここで「ネガティブリストの通知を義務付けるべき」ということですが、それに適切な物質、あるいはそれが適当でない物質等もあるため、本質的にはこのネガティブリストの通知を義務化すべきであるとは考えていません。以上です。
○城内座長 そのほか御意見等いかがでしょうか。SDSに記載すべき事項ということで、かなりこれは供給側からも、それから受け取る側からも非常に重要な情報になるわけですけれども、たくさん御意見を頂いて事務局の判断に資すると言いますか、検討項目になるようにたくさん御意見を頂きたいと思っていますが、いかがでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。続いて16ページの辺りになりますけれども、私どもは今までの議論を経てこのような内容になっているということは理解していますけれども、少し細かくなりすぎていると感じていまして、遵守することが難しい法令になってしまわないかと、懸念をしています。
そういった観点で、3点ほど意見、コメントさせていただきます。1点目は、2ポツ目の「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」のところですけれども、GHSあるいはJISでは推奨用途と使用上の制限は、SDSの第1項に書かれます。一方、物理的及び化学的性質はSDSの第9項に、ばく露防止及び保護措置はSDSの第8項に記載することになっています。ここではSDSの第何項に記載するということまで指定しているわけではないということは理解していますけれども、この骨子案のまま公表した場合に、混乱が生じかねないと思っています。どういうことかと申しますと、物理的及び化学的性質や、ばく露防止及び保護措置まで、SDSの第1項に書くことになったのではないかというような混乱が起こってしまわないかと、懸念をしています。
従って、議論の1つとして記録にこの形で残るのは問題はないのですけれども、骨子案からは削除したほうがいいのではないかと考えています。あるいは逆に、物理的及び化学的性質や、ばく露防止及び保護措置は、SDS第1項に記載するのではなく、本来の記載箇所である、それぞれ第9項と第8項に記載するということを、骨子案に明記する形で対応するのがいいのではないかと考えています。これが1つ目です。
2つ目は、3つ目のポツの「適用される法令」のところです。労働基準法の女性則と業務上の疾病の対象物質につきましては、安衛法令の中で他法令である労働基準法令の内容を通知する通知事項と定めることに、違和感を持っています。特に、業務上の疾病の対象物質は、物質リストになっているわけではなく、骨子案においても、人体に及ぼす作用(有害性情報)の通知事項として位置付けるべきとなっていて、「人体に及ぼす作用」と表記していることは、昨年の安衛法施行規則で義務化された、人体に及ぼす作用の5年ごとの定期確認の対象になるということなのだろうかという、これは質問になります。記載する内容が複雑になりますため、法令遵守が困難になるのではないかと考えています。このため、この項目を通知事項として義務化することは避けていただきたいと考えています。もし通知事項にするということであれば、記載例を示していただければと考えています。これが2つ目の意見です。
3点目のコメントになります。最後に、「事故が発生した場合の応急の措置」の項目のところです。この項目も骨子案からは削除すべきと考えていますけれども、特に日本中毒情報センター等を通知事項とするということについては、日本中毒情報センターには一般化学物質、非常に広範な一般化学物質の情報がほとんどないと思いますので、削除したほうがよいと考えています。これは骨子案に記載することで、数多くのSDSに「日本中毒情報センター」という文言が追加されることになります。その結果、日本中毒情報センターでは対応できない製品についても、日本中毒情報センターに連絡が行くという可能性もあり、それは好ましくないと考えています。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。事務局から現時点で何かありますか。お願いします。
○化学物質対策課長 まず17ページ、こちらはネガティブリストについては義務付けるべきではないという御指摘ですけれども、ここはユーザー側からのもともとの御意見が、保護具についての記載が非常に不十分なので、それを記載してほしいという強い要望があって、議論を始めているものです。義務化するというのは、要するに、きちんと書いてもらいたいというのが原点で、それを前提に、結局、ポジティブリストは難しいということで、ネガティブリストになったということ。ネガティブリストになってしまえば、この耐透過性能一覧と同じになってしまうので、そのURLを示せばいいということに、だんだん変質はしてきているのですけれども、義務化するというのは大前提ですので、義務化にはしたい。ただし、こちらに書いてあるように、一覧表のURLなどをQRコードなどで教示すれば、実際に、ネガティブリストを書く必要がないというところは、そういう形にしたいと考えています。
16ページですが、まず1点目に、「想定される用途及び当該用途における使用上の注意」というところで、こちらは今回の令和5年の省令の中で新たに義務付けられた項目で、ここの内容に何を書くのかというのは、現在定められていない状態になっていますので、その内容について御議論いただいたということになります。こちらにつきましては、御議論いただきましたとおり、使用上の制限を主として書くべきだという御意見の中で、ここに書いてありますように、爆発限界や引火点、あるいはばく露防止措置や保護具の使用が必要であるという注記を書くべきだという御意見になっているというところです。
西村構成員からの御意見については、ほかの項目で例えば8項とか9項とか、そういうところにそもそも書いてあるのではないかということですが、こちらはそういったところに書いてあれば、それを例えば8項参照とか9項参照と書いていただくのは、全然差し支えないわけですが、現時点で、とにかく推奨用途、使用上の制限について、何を書くのかというのは、全く明確になっていませんので、こう書くと。二度書きが不要であるということでは、これらについては8項に書いてある、これについては9項に書いてあるということを書いていただくのは、差し支えないということです。
それから2点目については、女性則につきましては、従来から、御案内のとおり、これは特化物の一部で、そういう意味では労働安全衛生法の範囲内であり、その中で特に労働安全衛生法の姉妹法である労働基準法の中に、女性の基準につきましては引き続き労働基準法で措置されていますけれども、御案内のとおり、もともと労働安全衛生法というのは労働基準法から枝分かれしているものですので、全体としての労働基準法令の中に位置付けられているものですので、こちらにつきましては、義務規定ということでもございますので、記載を義務付けるべきだと考えています。
もう1点、労働基準法施行規則第35条及び別表1の2については、これは業務上の疾病の対象物質で、それについて何らの措置義務というのは課されていませんので、これは適用法令として書くのは適切でないと考えています。ただ、第35条に載っているということは、業務上の疾病の可能性があるということですので、有害性情報の内容に付け加えるべき、望ましいと考えているところです。
それから、記載例を示してほしいということですが、記載例はお示ししたいと思っています。
それから応急の措置というところですが、こちらも先ほどの話と同じなのですけれども、応急の措置については、応急措置で必要な事項については書きなさいというのは、実は留意事項通達で既に示しています。それを二度書きしているところです。唯一違うといえば、こちらの御指摘のあった、日本中毒情報センター等を通知事項とするということです。こちらについては、日本中毒情報センターを全部書き過ぎると、対応できない製品についても問い合わせがいくとか、そういった御指摘がありますので、こちらについては、日本中毒情報センターを所管している部局と協議して、書くべきかについてはもう一回検討させていただきたいと思います。
○城内座長 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員 建設労務安全研究会の佐藤です。今、保護具関係をSDSに記載するとかしないとかいう話が出たのですけれども、我々ユーザーとしては、やはりSDSの中に適正な保護具を記載していただくのが一番いいというのは、前々からお話していることなのです。ただ、ポジティブリスト、要するにこれでなければ駄目だというのは、ちょっと厳しくて、やはりネガティブリストになろうとは思っています。
その中で、今、安井課長から説明があったとおり、ネガティブリストでこれは駄目だというような書きぶりが我々としても一番いいと思うのです。保護具等は、皮膚等障害の厚労省のホームページのアドレスが入っていくように収斂していくような説明を今されていたのですけれども、SDSを見て、それからまた違うところまで行かなければ保護具が分からないという、より複雑になるような仕組みは是非やめていただきたい。やはりダイレクトに書いていただいて、これを使えと言われると非常に高価なものになるものですから、非常に大変ですけれども、これは駄目だという書きぶりにしていただければいいのかなと。要するに、どんどん複雑にするよりも、SDSを見れば全て分かるというような書きぶりにしてもらうのが、我々ユーザーとしては有難いと思います。以上です。
○城内座長 そのほか御意見等、いかがでしょうか。小野構成員、お願いします。
○小野構成員 SDSを作る物質が単品である場合には、これは駄目だと書けると思うのですけれども、それが混合物になっている製品になってしまうと、やはり書きにくいのかなという気はしています。ネガティブリストで、例えば5%ぐらい入っている、よく透過するようなものがあったときに、完全にそれは使ってはいけませんと書いてしまうと、短時間しか使わないのに本当に駄目なのですかとか、場合分けのようなものが出てきてしまう。ポジティブにしてもネガティブにしても、取る人によっては100%オーケーとか100%バツとかという取り方もしますし、製品が100%の製品なのか、1%ぐらいのものがばーっと並んでいるのかということで、具体的にこれを書けというのはやはり厳しいのかなという印象は持っています。
もちろん川下のほうで、その製品しか使わないのだから、その製品用のSDSはこう書いてくれというのがあるかもしれませんけれども、それはまた業界の間での話の仕方で、なんとか落としこんでいくしかないのかなという印象を持っています。ですから、やはりマニュアルを書くぐらいしかできないのかなと思っています。ここで骨子案というか、全体をまとめるものとして出すときには、個別に書くのは難しいかなという印象を持っています。以上です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○宮本構成員 宮本です。「中毒センター」を書けないというのはおっしゃるとおりで、分からなくはないのですけれども、この後の営業上の秘密の議論にも出てきますけれども、緊急事態のときにそれの大量ばく露とかで対処したドクターが、何かの影響を疑ったという場合、どこに聞けばいいのかがさっぱり分からないことになります。SDSにしっかり書いてくれればいいのですけれども、何か聞きたい、あるいは営業上の秘密が少し含まれているという場合の問合せ先が、一体これはどう書かれるのかというところに収斂してしまうと思います。ちょっと後の議論なのかもしれませんが、中毒センターではないとしたら、どこなのかというのも頭に入れて議論したほうがいいと思った次第です。以上です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 質問というか、この骨子案の質問になるのですけれども、17ページと18ページにかけて、保護手袋とか呼吸用保護具の判断、「あらかじめ判断する」という記載が何箇所かありますけれども、判断する主体はSDSの提供者ということでよろしいでしょうか。
○城内座長 事務局お願いします。
○化学物質対策課長 こちらは、「そのまま使用する製品、取扱い説明書等に基づき混合する製品など、使用時の成分組成があらかじめ判断できる製品」、すごい長い名前ですけれども、我々がイメージしているのは、いわゆるユーザーで消費される段階の製品ということで、平たくいうと最終製品を想定しています。ですので、これは、当然、メーカーのほうで最終製品として売りますという場合は、こういう記載をしてくださいということですので、譲渡提供者のほうで判断すると考えています。
○西村構成員 ありがとうございます。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 もう1点質問ですが、20ページの履行確保の方法のところです。履行確保のところで、罰則を設けることになっていますけれども、この罰則は、これは通知すらしていないケースとか、意図的に通知内容を通知していないようなケース、すなわち悪質なケースを対象にしているということでよろしいでしょうか。すなわち、通知内容の意図的ではない誤り、CAS番号が変わってしまったのに気が付かなかったとか、誤記載をしてしまった、そういった意図的ではないものについては、罰則をかけられないという理解でよろしいでしょうか。以上です。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 こちらにつきましては、表示の義務の罰則の書き方を踏襲しようと思っていまして、そちらに書いてあるのは、表示していない場合、又は虚偽の表示をした場合ということになっていますので、一義的には全く通知していないか、意図的に何か虚偽な内容を書いた、そういった場合を処罰の対象にするということを念頭においています。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。御質問、コメント等がなければ、次の論点に移りたいと思いますが。事務局、どうぞ。
○化学物質対策課長 佐藤構成員と小野構成員、西村構成員からも保護具のネガティブリストの件ですけれども、先ほど御説明したとおり、そもそもポジティブリストは製品を書くのが難しいから、ネガティブリストに後退して、今の案では耐透過性能のリストを教示すれば、ネガティブリストも不要になっているような感じで、ある意味、段階的に変更されているのですけれども、こちらにつきましては日本経団連さんにも御協力いただきまして、メーカーとユーザーで対話をする場がありまして、そちらで一定の議論をさせていただきました。
ネガティブリストになりますと、小野構成員からもありましたけれども、非常に多い物質になると数十物質あって、要は、数十物質分のネガティブリストが、通知され、それによって、結局、適切な材質が選べるのかという問題があることと、SDSのほうはただでさえ、どんどん長くなって読みにくくなっているという議論の中で、要するに、厚生労働省がリストとして示しているものを二度書きすることに、SDSとしての資源を消費する意味があるのかといった議論がありました。
ユーザーの御意見も伺ったところ、厚生労働省のホームページにアドレスを載せてあるものを二度書きすることに、さほど意義がないのではないかという意見が全てといいましょうか、そういうユーザー側の御意見でしたので、それを踏まえて、今回の提案をさせていただいているという経緯は説明させていただきます。
宮本先生からの中毒情報センターの関係につきましては、所管しております旧厚生部局に御相談させていただきたいと思いますが、一義的には、お医者さんから電話が掛かってくるという想定ではあるものの、どういった人から電話が掛かってくるとかも分からないという可能性もないわけではないので、一定、整理はさせていただきたいと思います。
○城内座長 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員 今、安井課長から御説明があったのですけれども、私が先ほど言ったのは、要するに、SDSを見れば全て分かるのが一番ベストなのですが、それを見て、更に厚生労働省の皮膚等障害の所まで行かなければいけないとなると、これは実際に使う人がいなくなってしまうのではないかと思うのです。要するに、メーカーの方々は化学物質に対して非常に知識の豊富な方なので、厚生労働省さんの皮膚等障害のところに入っていても、すぐ分かるかもしれませんが、ほかの業界はよく分かりませんけれども、我々建設業界では、ほとんど分からない人が多いのではないかと思います。そうすると、今こうやっていろいろな議論をしているのは、化学物質の取り扱うときの自律的管理、すなわち、実際に使う方々が使えないと意味がないのかなと思うのです。実際に化学物質を取り扱う方々が、障害が起こったり病気になったりしないようにいろいろな検討をされていると思うのですが、そういった場面のところで、そういう知識のない方がホームページに入っていって、皮膚等障害の所を見て、エクセルで検索して、これが良い、これが悪いという判断というのはできないのではないかと思います。ですから、それをメーカーの方が事前にやっておいてくれれば、それと、先ほど小野先生が言われたのですけれども、1つの製品の中に3つも4つも化学物質が入っていて、非常に書きづらいと。確かにそうだと思いますけれども、それを考えてみて、これは駄目ですという判断をSDSに載せてもらうのがいいのかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○城内座長 宮本構成員どうぞ。
○宮本構成員 宮本です。今の御意見でいくと、前回、私もお話したのですけれども、それだったらポジティブリストで、例えば4時間だったらニトリルのこれぐらいの厚みだったらいいとか、そちらのほうが今度、理にかなってくるのではないかと思うのですね。そういう意味で、8時間どぶ浸けしているということは多分もう作業としてはないだろうとなると、4時間みっちり有機溶剤作業で手袋に付着だったら、4時間の断続的な有機溶剤作業だったら、普通の使い方だったら大丈夫ですとか、そういうポジティブリスト。すごい厳密なことをやってしまうと、ポジティブリストは一番高いものにしか出てこないとなってしまうけれども、いやいや、ニトリルで0.2ミリの厚みがあれば4時間はいいですとか、あるいはミストが付くかもしれないという程度であれば、ニトリル手袋に軍手を付けておけばほぼ防げるとか。何かそういうポジティブリストみたいなのがあれば非常に現実的だなと思っているので、それで前回もポジティブリストはどうかと申し上げたところです。
○城内座長 佐藤構成員どうぞ。
○佐藤構成員 建設労務安全研究会の佐藤です。実は前回もお話したのですけれども、我々建設業界で、今、マニュアルを建災防さんで作っていて、確かに、そういったような方向では、今、検討しています。軍手は駄目で、ニトリル手袋ということで落ち着いたのです。ただ、いろいろな製品がありますので、それが実際にそのままいけるのかというのは、まだまだ不明なところがあって、今、私が申し上げたのは、そういったところを含めて、ポジティブでもいいのですけれども、SDSのところで解決できないかなという話をしたところです。言っていることは多分一緒だと思いますけれども。以上です。
○城内座長 小野構成員どうぞ。
○小野構成員 安衛研の小野です。私もいろいろな所でいろいろな会議をしているので、あるときは、こちらの味方だったり、あるときは敵だったりということがどうしても起こるのですけれども、SDSというのは結局何なのですかという、SDSは手引なのですか、それとも、下流に情報を流すという、有害性・危険性の情報を流すものなのですかというのが、まず1つあります。そこに、より丁寧な使い方説明を付けてくださいというのが、今、もっと詳しく書いていただきたいという方の御意見だと思います。それは分からないでもないのですけれども、ただでさえ見ないSDSの中で、そこの所を探し出して、そこに行って、でも、やはり分からないということになるよりは、やはり国が書いたものに従っていればOKではなくて、自分たちの所で化学物質管理者と保護具着用管理責任者がいて、その人たち、あるいはその業界レベルでマニュアルを作る。今、建災防さんがそれをやっていたり、ほかの業界にも、それをもう少し波及させようというように、国も活動しているところですが、そこからもう一段階、手袋を選ぶときにはもう一段、そちらのマニュアルを見てくださいという仕組みにしていかないと、一番上流側のSDS、各製品を作っている方々に全ての負担を掛けると、5年では出なくて、10年掛かるとか、10年掛かっても出ないとか、使い方が分からないと、使い方の説明は絶対できないと思うのですが、そこの情報が、SDSを作る方に全ていくのでしたら作れる可能性はあるかと思いますけれども、何を実際に求めているのかというところを整理しないと、いつまでたってもこの議論が終わらないような気がします。私の意見は以上です。
○城内座長 森構成員、どうぞ。
○森構成員 日本印刷産業連合会の森でございます。私も、保護手袋の選定に当たって、SDSに必要事項を是非記載していただきたいのですけれども、先ほど佐藤構成員から、実際の選定の方法については、できるだけ易しくというのでしょうか、当然、我々印刷業界は化学物質の知識の豊富な者がいるわけではなくて、こういった保護具を選定するに当たっては、自分たちで選ぶのではなくて、実際手袋に当たっては、手袋メーカーのほうに、自分たちはこういうものを使っていますと、SDSを渡して選定してもらうようなことを一部ではしています。というわけで、こういう物質を使っています、ただし、作業はこういう作業をしています、これに合う手袋、保護具を選んでくださいということでお願いしている次第なのです。そういった意味では、実際の選定を、ユーザー側というよりも、メーカーさんのほうにやっていただくときに活用できるような書き方、あるいはポジティブリストでもネガティブリストでもいいのですけれども、そういった内容にしていただきたいと思います。当然、中身は我々も知っていないとまずいのでしょうけれども、実際それを使うユーザーというよりも、保護具メーカーでしょうか、その辺の意見も入れていただければと思います。
○城内座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。事務局からありますか。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 日化協の西村です。今の御議論にあったように、例えば、この物質を使って5分、10分だったらどうだとかということを書いていただきたいという御意見とか、あるいは手袋メーカーさんに相談するときに、SDSとともに、その作業状況を説明した上でアドバイスを頂いているという御指摘があったように、組成成分のみで保護手袋が決まるものではなく、使用条件によって変わるものであると考えています。そういったことから、それらを含めて全てSDSに書き込んで、例えばネガティブリストあるいはポジティブリストのような形で記載するということは、SDSを非常に長大化させて、結果的には読めないようなものになってしまうのではないかと考えております。したがいまして、小野先生の御意見にもございましたように、私どもは業界ごとにマニュアルの策定に協力させていただいておりますし、今後もさせていただきたいと考えておりまして、SDSは、そういった意味で、成分情報とか皮膚等障害物質等の情報を提供する形で、それを見つつ、耐透過性能一覧表とか、あるいは作成したマニュアルを見て選んでいただくというのが一番合理的というか、効率的になるのではないかと考えております。以上でございます。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはございますか。事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 御議論いろいろありがとうございます。11ページを見ていただくと、前回、前々回とかで、この部分で、行ったり来たりしているのがお分かりいただけるかと思います。11ページに青字で書いてありますけれども、まず、ポジティブリストを提供できるというのは使用時の成分、要するに、使うときの成分組成が明らかであるとともに、西村構成員からもありましたけれども、どのように使用するのかが明らかになっていないとポジティブリストというのは作れないと。特に、どのように使うかというのがメーカーでは分からないから、ポジティブリストは書けないという1つの理由になります。だったらネガティブリストは書けるのではないかという御意見がありました。あと、各社で管理者などがマニュアルとか作ろうというときに、ポジティブリストがあると、それに引きずられて混乱するのではないかという御意見もありました。また、先ほどの話と重なりますけれども、ハザードと作業内容の組合せになるので、ポジティブだと、かえって誤った選択、要するに、作業内容が分からないにもかかわらず、無理に強引にポジティブを書くと、誤ったポジティブリストになりかねないという意味で、その意味では使えない物質、材質を並べるのはいいのではないかというところで前回御議論がありました。
そこから、またもう一歩進歩して、では、ネガティブリストは書きましょうといったときに、そのネガティブリストに書いてある情報というのは既に公開情報で、言ってみれば何のオリジナリティもないというものをSDSに書く必要があるのかというところで、現在の案になっております。
そういう意味では、先ほど佐藤構成員からも自律的管理に資さないとか、知識がない人でも分かるようにしてほしいというところについては、小野構成員からも御意見がありましたけれども、SDSというのはマニュアルとか説明書ではないので、どうしてもきちんと選ぼうと思うと、厚生労働省のマニュアルに沿ったプロセスを経て選ばないといけないというところは、実は外せなくなってきていて、それを全部SDSに盛り込むのはもともと不可能ですので、そういうハザード情報を示すという原点に立ち返って、ただ、もちろん書ける範囲でハザードから分かる内容については書きましょうということになってくると、ネガティブリストに収斂せざるを得ないと。先ほど申し上げましたように、ネガティブリストであると、ネガティブリストそのものは既に公開されていて、また、ネガティブリストそのものだけでは選べないという事実もあって、そこからは厚生労働省のお示しした手袋の選択マニュアルで選んでいくのが第一ではないかと。あと、建設業など、現場で実際に選択しなければいけないようなもので、厚生労働省のお示ししている手袋選択マニュアルが現場で使えないという場合については、いわゆる業種別マニュアルというのを進めておりまして、毎日現場を変えるような特定の業種については、業種別マニュアルの促進を別途行っておりまして、それはそれで進めていくという形になります。ですので、業種・業態あるいはその立場によって、何が最適なのかというのは難しいのですけれども、総合的に見ると、やはりネガティブリストにならざるを得ないと。ネガティブリストに30物質を列記するということにどれほど意味があるかというところを踏まえると、今回のような御提案になっているということになります。
これを見ていただくと分かるのですが、非常に単純な物質の場合は、耐透過性能一覧のURLを示すよりもネガティブリストを書いたほうが簡単なので、それはそういう会社もあると思います。要するに、皮膚等障害化学物質が1個しか入っていないような物質、そういった場合はそういうものもあり得ると思います。ただ、先ほど申し上げたような20物質、30物質が入っているような製品もあるので、そういうときはURLを示すと。柔軟性を与えたほうが実効上も役に立つのではないかという趣旨で、やや柔軟な御提案にさせていただいているという趣旨でございます。
○城内座長 そのほか御意見等はいかがですか。
○宮本構成員 宮本です。今のでよく分かったので、これはそれで進めていただいてもいいと思ったのですが、将来的な課題として、例えば代表的な5、6個の手袋について、その物質をどれぐらい耐えられるかという浸す試験がありましたけれども、その結果を載せることは余り意味がないことでしょうか。私はそういう情報があれば、この成分はいいとか、悪いとか、使う側がある程度判断ができるということもあるのかと思いますけれども、今、何も載っていないから混乱する、手袋を使えと言われても、何を使っていいか分からないというのが現状なわけですので、よく使われる代表的なものを、逆に手袋メーカーからすると、物質名が30個ぐらいしかなくて、どれに近いのか分からないということがあるから、この物質について代表的な5、6個のメーカー、手袋の組成でいいので、どれぐらい耐えられるということを載せるのは、これは将来的な話として進めていくことに意味があるかどうかは、いかがでしょうか。
○城内座長 お願いします。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。今、御議論しているのは、義務付けるということで最低限度の議論をしていますので、先ほど申し上げたことになるわけですが、もちろん特に最終製品とかの場合であれば、例えば取扱説明書に基づいたら、こういう使い方をするだろうと分かっているような物質もあって、そういうものについてはポジティブリストを書くのは望ましいと思っております。ですので、17ページにありますように、ポジティブリストを記載するのは望ましいとなっておりますし、ポジティブリストを書く場合については、多層フィルムだけを明示することがないようにと、一応、留意点を書いてありますので、行政としては、望ましいというところが埋まっていくように、特に最終製品については誘導していこうと考えております。ただ、義務付けということになってしまうと、先ほどの一番初めの矢印の所の記載になるといったことです。
○城内座長 佐藤構成員、お願いします。
○佐藤構成員
建設労務安全研究会の佐藤です。私もちょっと、今、皆さんの議論を聞きながら、SDSとは何なのかということを考えていたのですけれども、ほかの業界の方が化学物質を含んだ材料をどのように使っているのかは分からないのですが、こと我々建設業界においては、もう用途が限られているわけです。物を固める、物に塗る、というように用途は決められていて、その用途の材料を買ってきて我々は使っているわけです。我々が、SDSの中にきちんとした保護具を書いてくれれば一番いいのですという話をしているのは、実は化学物質が入った材料を使うときにはリスクアセスメントが義務化されましたよね、それが今、拡大されようとしているわけですけれども、その拡大されたときに、我々もおぼろげながらSDSというものを入手して見ながら書いていくと、例えば適正な手袋とか、適正なマスクを使うことみたいな書きぶりが書いてあったわけです。我々も詳しいことが分からないので、その製品に書かれている、SDSに書かれているものをそのまま書くことがリスクアセスメントだと思っていたのですね。そういったことを踏まえていくと、今、時代が進んできて、厚労省さんがいろいろな選定マニュアルとかを作っていただいたというところを読み込んでもらって、こと我々建設業で使う製品・材料等々のSDSには、メーカー側で読み取って書いてくれるのが一番いいのかなという意味合いで私は思っています。ですから、ほかの業界とはちょっと違うかもしれません。例えばいろいろなペンキにしても、A液とB液を混ぜて使うということは決まり事なのです。だから、そういった用途が決まっているのだから、あとは使用時間になるのでしょうね、きっと。どれだけペンキを使う、8時間使うのか、1時間くらいで終わるのかという選択肢になるとは思うのです。我々の業界としては、用途が決まった材料をその用途のために製品として売っているメーカーさんがいるので、そこのところも事前に皮膚等障害等々のマニュアルを読み取ってもらって書いていただくといいのかなという意見です。ほかの業界とは、今、話を聞きながら違うのかなという気がしましたので、少し補足しました。以上です。
○城内座長 そのほか、何かございますか。GHSを日本に入れるときに、どちらかというと、売るほうからはネガティブな情報などがいっぱいあるという意見が多くあったわけです。だから、できればそういうものは作りたくないとか、ラベルも貼りたくないなど。私が思ったのは、そういう情報を製品として一緒に売る、何と言うか、そういう製品がたくさん売れるような社会になればいいとずっと思っていました。それで導入はできたのですけれども、今の話を聞いていると、佐藤構成員がおっしゃったように、例えば建設業界でそういう決まったものをたくさん使うのであれば、それを売るメーカーが、この製品にはこの手袋を使えばいいよと売れば、たくさん売れるのではないかと思ったのですね。だから、発想を変えれば私は何か解決策はあるのではないかと思うのです。今は、塗料は塗料、手袋は手袋で別々で走っていますので、そういうところをちゃんともっとうまく動かすためのものとして、多分、法律があると私は思っているので、法律ができて困ったなというところで、みんなが話し合ってそういう方向に行けばいいかと、実は夢を見ていますけれども。そのほか、御意見等はありませんでしょうか。では、次に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
28ページの検討項目について、御意見等をお願いいたします。「営業秘密として非開示にできるSDSの項目をどう考えるか」ということですけれども、御意見等をお願いいたします。次に移ってもよろしいでしょうか。西村構成員、よろしいですか。
それでは続いて、36、37ページ。ここは、いかがでしょうか。宮川構成員、お願いします。
○宮川構成員 36ページですが、よろしいでしょうか。一番最初のマルの、「重篤な有害性を有する物質の成分名の非開示の範囲」で、最初の矢印のところに、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性を有するものは、有害性区分にかかわらず、成分名の非開示の対象としないべきではないかというのがあるのですが、この3つの項目については、区分2というのは、そもそもGHSの記載では「疑い」なのですよね。疑いがあるものについて、果たしてこういう非開示の対象としないという、かなりの制限を課すのがいいのかどうかというのは、少し検討の必要があるような気がしています。
○城内座長 西村構成員、お願いします。
○西村構成員 関連してなのですけれども、CMR、ここを外してのエビデンスの確からしさに区分というのが背景にあるということは承知しているわけですけれども、何と言うのでしょう、区分2のものが、例えば発がん性区分2のものが、例えば0.1%~1%含むというような状況でありましたらば、GHS上、区分が付かないということになりますので、リスクアセスメントに支障がないという範囲になるかと思っております。
そういった意味で、そこの部分がCBIの対象に今回、検討の俎上に上がっているわけでありますけれども、その部分につきましては、つまりCMRの区分の2につきましては、CBIの対象としていただきたいというように考えております。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。これは確認なのですけれども、36ページに書いてある有害性に関して、37ページの範囲で考えますよということで、よろしいですよね。
○化学物質対策課長 こちらの原案については、一番初めの、いわゆる生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性については、我々の提案としては、濃度限界値の概念は使わないというようにもともとここは考えています。ですから製品単体として、例えば発がん性で区分2であるものについては、濃度基準値を認めないということにしております。ただ、西村構成員の御提案は、そこに濃度限界値の概念を入れてくれないかという御理解だというように理解しております。
○西村構成員 そのようなことでございます。
○城内座長 宮川構成員、どうぞ。
○宮川構成員 追加の発言ですけれども、今の課長からの御説明がありましたが、私としては、本来、個別の成分に従って判断するのが適切であって、混合物の分類でもって濃度基準値を超えるからどうのこうのということで、これは正確なリスクアセスメントを反映しないものですので、そこは成分に基づいた判断が必要ということは言えると思います。 ただ、私の個人的な意見としては、区分2のものについても非開示の対象にするかどうかというのは、改めて、もう一度、議論していただければというのが個人的な意見でございます。以上です。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長 よろしいですか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 もともとこれは、リスクアセスメントの実施に支障のない範囲というところで、37ページにございますように、濃度限界の考え方は一部導入しておりまして、皮膚腐食性や眼の損傷性などについては、区分1に該当しないものについて、リスクアセスメントに支障のない範囲として考えるとき、濃度限界という考え方がありますよというのは、お示ししています。これは当然、混合物の有害性の区分を入力することで、最低限のリスクアセスメントができるからという趣旨でございます。
生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性の有害性につきましては、これはエビデンス、要するに区分1と区分2で発がん性の毒性の強さということが違うわけではなく、要するにエビデンスの強さ、人のエビデンスがあるかどうかというエビデンスの強さになっていますので、こちらについて区分1と区分2というのを分けるのは、結果的に危険なことではないかということで、ここの有害性区分に分類されるものは、非開示の対象としないというスタンスはそのような形でやっているところでございます。
今のそういった御議論を踏まえますと、今日の西村構成員の御議論を考えると、37ページにありますように、結果的に濃度限界値を下回っている発がん性物質が含まれていても、混合物としての記載としては区分がなくなってしまうという運用を認めているということと、整合的な御議論ではあって、なかなか反論しにくいというところはございまして、そういったところについては毒性の専門家の御意見を伺いたいと思っているところでございます。
○城内座長 宮川構成員、どうぞ。
○宮川構成員 今の点について申しますと、例えば生殖毒性でもって疑いがあると言われるものが、本当に非常に危ないものかどうかというのの例で言うと、例えばですけれども、産業衛生学会の許容濃度の提案の中に、生殖毒性のリストというのが第1群、第2群、第3群と分けて載っているのです。証拠の確からしさによって、GHSと同じように第1~3群が分かれているのですけれども、実際上、そこで化学物質を使う上で気を付けなければいけないものというのは、ほかの毒性から見て許容濃度が設定されていて、そこと比べて生殖毒性について更に低いところで影響が出るかどうかという、その実際のばく露のレベルと比較して有害性を防御することを考えなければいけないのですけれども、シャープ印(#)というのが付いていて、通常の許容濃度では生殖毒性を防ぐ上で不十分かもしれないので気を付けましょうという印が付いているものは非常に少ないのですよね。そういうことを考えると、「疑い」のレベルまでも含めて非常に毒性が高いから非開示の対象にしないとするのは、少し過剰かという気がします。
逆に言うと、そういうことで区分2になると、ここでもって規制が掛かってしまうと、そういうことであれば、自分たちのSDSを作るときに、このぐらいだったらこれは疑いがあるとしなくてもいいかな、疑いもなかったので区分も付けなくていいやと、そういう形で、SDSを作る業者が増えてくる。私はそのほうが心配で、不確かな情報でも疑ったほうがいいよというのがあるのであれば、そこのところは拾っていただいて、情報を提供するという意味では、きちんと書いていただくのが本来のSDSの在り方かと。それが、規制が掛かるのだったら、掛からないようにしようというようなことになると、かえって望ましくない結果を生む可能性があると思いますので、その辺り、区分2については特に慎重な御判断を頂きたいというのが意見でございます。以上です。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 御意見ありがとうございます。後段の部分なのですけれども、要するに区分2にしてしまうと規制が掛かるから、できるだけ緩いGHSにしてしまおうというようなモチベーションがかかるということでございますが、それは本来あってはならないことですが、そういったことにはならないように、この36ページの下の行に書いておりますけれども、ここで書いてある区分は、「国が行うGHS分類又は事業者が行うGHS分類のいずれかの結果で該当するもの」ということにしておりますので、国が区分2というようにしたものについてはやるということですので、そういうモチベーションが働いて逃げたとしても、逃げられない規制の体系にはしようかと思っております。
○城内座長 そのほか、御意見等はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。御意見がなければ、次の論点に移りたいと。
○事務局 いいでしょうか。
○城内座長 では、事務局からお願いします。
○化学物質対策課長 西村構成員の御意見と宮川構成員の御意見は、似ているようで少し違うのですけれども、今までの議論の流れから言いますと、この生殖細胞変異原性、いわゆるCMRについては、重篤な健康影響ということなので、極力、非開示にしないという積み重ねた議論の結果がございます。また国としても、要するに確からしさだけで区分するというところには、もしこれで決めてしまうと、将来に禍根を残すと考えます。結局、何か起きたときにここできちんと「疑い」までやっていれば、この人は死ななかったのではないかという論調で、訴訟を起こされた場合に、非常に厳しいということがございますので、我々としては、「疑い」だから外すということよりも、やはり結果の重篤性というところを重視したいと思います。ただ、西村構成員の御議論につきましては、区分がなくなるということでございますので、こちらについては、GHSの全体の流れから考えて、一定の整合性はあるかというようには考えているところでございます。
○城内座長 次に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、44ページです。西村構成員、お願いします。
○西村構成員 44ページの所で、改めて化学業界の基本スタンスについて説明させていただきます。化学業界として安全性に関わる情報を通知することを惜しむつもりはありません。その場合、安全性に関わる情報というのは、リスクアセスメントに必要な情報と言い換えることができ、製品としてのGHS分類結果が基本となると考えております。ただ、これに加え、特別則の適用物質、皮膚等障害化学物質、がん原性物質、濃度基準値設定物質の物質名称も、物質名称がないと対応ができないことから、通知しないといけない情報と認識しております。
こうした中、現在、私ども化学業界がCBI保護をお願いしているのは、これらの「物」ではなく、これらの安全性に関わる情報ではない「物」の中で、製品中の成分名称についてのみお願いしているところです。骨子案で提案されている代替名のルールは、EUのルールをベースにしていることは承知しているところですが、EUと日本とでは状況が異なり、日本においてはこのルールではCBI保護につながらないと考えており、ここの見直しをしていただきたいと考えております。
少し詳しく述べさせていただきます。CBIの保護の対象は表示・通知対象物質であり、その母数が限られていること。これがEUと日本とで大きく異なるところです。したがいまして、母数が少ない中で代替名を示すことは、物質を特定される可能性が高くなるということがあります。加えて、このようにヒントが多い状態で、物質特定のための汎用的な物質、例えばLC/MSのようなものを用いれば物質特定は更に容易になるということです。また、物質特定が難しい場合であっても、代替名を示すことで物質の種類が分かってしまいます。製品の特性を出すために添加しているような物質の場合、添加している物質の種類自体がCBIに該当することがあります。また、成分の数ですらCBIに該当する場合があります。
一方で、御意見の中で指摘されておりますように、ブラックボックス化の懸念があるという意見があることは承知しております。この44ページの2ポツ目の「代替名の通知」ということで、今御提案いただいているところですが、その代替案としては、危険有害性情報の通知をすることを提案したいと考えております。例えば、代替名を通知することに代えて、標的臓器毒性(反復)等や区分2の物質を1~10%含む、あるいはLC50が何々mg/kgの物質を1ないし10%含むといった記載を書くということではいかがかと考えております。このことは、代替名の通知よりも危険有害性情報の通知のほうが、ユーザー側にとって有用ではないかと考えているものでございます。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか、御意見等はございますか。事務局、いいですか。大前構成員、お願いします。
○大前構成員 もう既に議論は終わっているのかもしれませんが、CBIの対象の物質の場合に、例えば100%の物質であってもCBIの対象になるということはあり得ますか。1から10%くらいの場合ですと理解できますが、半分以上の成分の物質がCBIにもなるということは。
○西村構成員 日化協の西村です。今の御質問ですが、CBIの対象にできる範囲というのは、SDSの通知の閾値からGHSの区分の閾値までの範囲内ですので、例えば1~10%の間と、一番大きい数字でも多分10%ではないかと思いますが、50%とか、大きい数字のものはCBIの範囲にはなり得ないです。
○大前構成員 という範囲ですと、先ほどの議論に戻るかもしれませんが、例えば発がん性物質の区分2まで本当に入れる必要があるのかというのはあります。そのぐらいのレベルでしか入ってないもので発がん性物質区分2というのは、IARCでいくと2Bぐらいのレベルですが、そのくらいのレベルまで開示する必要があるのかは非常に疑問に思います。確かに、安全を見込めば、将来、何か起きたときの懸念まで考えれば区分2まで入れるのはいいのでしょうが、過剰に安全性を見込み過ぎているのではないかという考え方はないですかね。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 コメントありがとうございます。先ほどの議論に戻りますが、大前先生の議論は、実は西村構成員の意見と全く同じでして、今は、区分2のものについては、濃度限界値を下回っていても、いわゆる営業秘密を認めないというのが行政の提案でしたが、それはやはり濃度限界値を下回っているものについて、いわゆる混合してしまうと区分がなくなってしまうようなものについては要らないのではないかという御意見ですので、大前先生と西村構成員の御意見は同じでして、我々も、GHSの原則を踏まえれば、濃度限界値を下回ってくれば区分外になってしまう場合もありますので、そういったものについては営業秘密を認める方向で、今日頂いた議論を踏まえて検討したいと思っております。
こちらの御意見については、ほかの先生にも御意見を伺いたいと思います。確認したいのは、一つの考え方として、代替名を示しても構わないという人は、別に代替名でいいという理解でよろしいでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。代替名を示したいというものを妨げるということではございません。
○化学物質対策課長 もう1点なのですが、一つのロジックとして、代替名を示すことによって、物質、あるいは物質の種類が特定されることにより不利益がある場合に限って、先ほどおっしゃったような毒性を明示するというような考え方は受け入れ可能でしょうか。要するに、代替名を書くほうに優先順位を与えるという場合です。原則として代替名で、ただ代替名を書いてしまうと営業秘密が結果的に保持できないような場合については、代替名を省略した上で毒性の表示をするということを認める、そういったロジックは可能でしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。代替名を使った場合に、推測が容易であるものの場合に限定するというのだと、それを判断するのは非常に難しいと思っております。また、そういったところから分析も可能ではありますので、そうではなく、有害性情報と代替名のどちらかを任意に選択できるということで意見を申し上げたいと思います。
○化学物質対策課長 ほかのユーザーの方の御意見も頂きたいと思いますが、ただ、GHSはお名前を示すのが原則なので、お名前を示すほうに原則は置きたいとは思っています。先ほどおっしゃったように、支障があるのであれば隠せるというのが、なぜ駄目なのか教えていただきたいのですが。
○西村構成員 2つございまして、ある製品を作るにおいて重要な秘密になり得るその物質を特定することにつながり得る可能性が、代替名のほうが物質の性質よりも高いということが理由の1つです。もう1つは、ユーザーさんにお伝えする情報として、代替名称よりも有害性情報のほうが、より有用であると考えたからの2点です。これで質問にお答えしていますでしょうか。
○城内座長 ちょっと質問なのですが。GHSは、そもそも危険有害性は隠してはいけないものになっているので、代替としてそちらでどうかというのは、私は議論にならないような気がするのですが、その点はいかがでしょうか。
○西村構成員 これが冒頭の、改めて説明申し上げたいという所の趣旨になりまして、今回、CBIの範囲は、GHS分類されない範囲になりますので、リスクアセスメントに全く影響を与えないところになります。なので、お願いしているCBIの範囲は、リスクアセスメントに全く影響を与えない範囲、GHS分類が付かない範囲の議論です。なので、有害性情報を隠すというわけではないです。
○城内座長 分かりました。もう1つ、先ほどCMRが10%とかというお話があったのですが、ちょっと理解できなかったのですが、どういう意味でしょうか。
○西村構成員 例えばの話で申し上げたのですが、36ページで、1~10%の10%は、10%刻みというのを許容しておりますので、その10%をただ使っただけです。意味が分からないですかね、ごめんなさい。SDSで濃度範囲を示すときに、28ページの非開示の範囲の2つ目の項目の、「10%刻みの表示を原則とすべきではないか」の「10%」をとって、例示として上限範囲を「10%」と申し上げたということです。質問と合ってないですか。
○化学物質対策課長 今の話は混乱してまして、まず、営業秘密として非開示を認める物質かどうかについてという話と、その決まった後にそれの含有量をどう表示するかは別の話です。前者については、この31ページにありますように、濃度限界で決めるということなので、例えば発がん性であれば、区分1が0.1と区分2が1で、これは裾切値が0.1ですから、区分2というのは1%から0.1の間に隙間があります。それから生殖毒性であると区分1が0.3で、区分2が3ですから、こちらも裾切値が0.1ですから、その間に隙間があります。この隙間について認めるということで、10%刻みという話は、その決まった後に含有量をどう表示するかの話です。ちょっとそこが混乱してるかなと思います。
○西村構成員 全く御指摘のとおりだと思います。
○城内座長 宮川構成員、お願いします。
○宮川構成員 度々申し訳ないのですが、今の議論でお聞きした発言の中から、これは事務局のほうもそうですし、西村構成員の発言からもそうなのですが、やはりリスクアセスメントの基本がGHSだと、GHSの分類によってリスクアセスメントをするのだという考え方が結構強く出ているような気がします。そこは、本来、有害性に関するリスクアセスメントは、ばく露の程度が許容できる限界を超えてるかどうかという、その定量的なところに重きを置かなければいけないというのがあります。そういう意味からいうと、これまでの会議でも何回か申し上げましたが、区分が付くかどうかということでリスクアセスメントということに余り拘るのではなく、本来であれば、ばく露の程度がどの程度分かるのか、そうするとその物質名を伏せたとしても、この物質の許容濃度はこういう数値のものなのですよと、それがどのぐらい含まれてますよと、そういうところのほうが、GHSの分類区分がどうなるかということよりも本来重要なはずなのです。この辺りについては、多分、その辺りの専門の先生も複数いらっしゃいますので、当然のこととして御理解いただけると思うのですが、先ほどの、リスクアセスメントの基本はGHSからということが、この会議で何となくそういうふうになっているというように思われると困りますので、その辺りは、本来は違うのではないかということだけ発言させていただきます。以上です。
○城内座長 事務局、どうぞ。
○化学物質対策課長 宮川先生、ありがとうございました。宮川先生のおっしゃるとおりです。ですので、私が申し上げておりますように、GHSの制度というのは成分名を開示するのが原則で、それの代替として、本来は代替名を表示するのが原則であるので、それに優先順位があるべきだというのが事務局のスタンスです。それに対する西村構成員のスタンスが、どちらかというと、区分に影響しなければさほど重要ではないというスタンスで、そこは少し宮川構成員と西村構成員では御意見が分かれているところかと思います。
話を戻しますと、先ほど宮川先生の御意見もありましたが、我々としては、代替名を表示するのが原則で、それがもともと営業秘密を保持するために代替名を出すにもかかわらず、代替名を出してしまったら営業秘密は保持できないというのは全く意味がないので、そういう場合については別の手段を認めようというスタンスが正しいのかなと思います。ですので、先ほど西村構成員がおっしゃったように、代替名と物質名を一切開示することなく、有害性区分をお示しするというのを、並列とするというのは、ちょっと違うのではないかというのが我々の考えです。
それを踏まえ、実際に運用は難しいと御指摘はありましたが、いずれにしても、CBIをどのように組むかというのはそれぞれの事業場において判断するわけです。要するに化学物質の譲渡提供者が、この代替名では営業秘密が保持できるかどうかを判断した上で、保持できないと思った場合は別の手段を取ることができるということが担保されているのであれば、代替名をまず書くというところを原則とするのは可能ではないかというのが我々の考えです。その辺はいかがでしょうか。
○西村構成員 日化協の西村です。今の御説明をいただきまして、少し理解ができたような気がいたします。要は、情報の譲渡提供者側が、この代替名で秘密保持が難しいと判断した場合には、有害性情報で代えることができるということが担保できるようであれば、CBIが守れるのではないかという気がいたします。ありがとうございます。
○城内座長 そのほか、御意見等はございますでしょうか。では、もう少し議論すべきところがありますので、進めたいと思います。48、49ページ、緊急事態における情報開示規定です。いかがでしょうか。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 余り本質的ではないところで1つだけ。49ページの守秘義務で「※医師法等」と書いてある所なのですが、医師法には守秘義務の規定がないので、刑法等とすべきだと思います。刑法第134条で、医師、歯科医師、薬剤師、助産師の守秘義務が規定されて、あと、保健師、看護師は保助看法で決められていて、それ以外の医療従事者は身分法で決まっています。医師法では、医学部の学生実習のときの守秘義務が、第17条の3という所にあるだけなので、話の趣旨に合いません。それ以降はみんな合意ですので、頭の所だけ。本質的でなくてすみませんが、御検討ください。
○化学物質対策課長 今、医師法と刑法と2度書きになっていまして、医師法も改正されて、同じような記載が入っているはずです。確認してみます。
○宮本構成員 今もちょっと調べていたのですが、医学部学生のは第17条の3に書いてあるのですが、医師そのものはこちらには書いてないと思います。
○化学物質対策課長 分かりました。いずれにしても、御指摘を踏まえて、もし医師法になければ、そのようにしたいと思います。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。中毒センターの件で宮本先生からお話がありましたが、そこはいかがでしょうか。
○宮本構成員 宮本です。先ほどの話であった中毒センターの、どちらにするかというので、48ページだと思いますが、「夜間等に災害が発生した場合に備え、非開示情報を含むSDSには、緊急時」とありますが、これは業者さん全部が24時間対応をすることになるので、本当にこれでいいのかというのがあります。それで中毒センターとのトレードオフの話ではないかと思っております。現実的にどちらがということだと思います。
○城内座長 そのほか、緊急時の情報開示規定について、いかがでしょうか。御意見等はございませんでしょうか。事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 こちらに「中毒センター」を記載したのは、必ずしも夜間緊急問合せの代替という趣旨ではなかったのですが、緊急時の問合せ先というのは、やはり非開示情報を作った人に求めるのが本筋であるのと、先ほど来も御議論がありますが、日本中毒センターの中に、2,900物質全てについての有害性があるのかというと、若干疑問な点もありますので、こちらは代替措置には多分なり得ない。要するに、中毒センターに聞いても分からないから開示を求めるということになるケースのほうが多いのではないかなと思っております。
○宮本構成員 分かりました。基本的にそういう有害性があって緊急事態で何か影響が出るものは非開示ではないという状態になっているはずだと思えば、余りこれに該当してここに引っ掛ってくることはなく、何らかの書かれていることで普通は対処するだろうと思います。未知の有害性が疑われたとき、産業保健スタッフですと慢性障害で共通の症状が何かあるぞということで、これは何だというところを確認するところだと思うので、そうだとすると、業者さんに聞くということで、聞かれた業者さんが答えられるのかどうかが、ちょっと分からないのですが、書いておいてということは御指摘のとおりかなと思います。これは、「書いておいて」で大丈夫なものなのですか。
○西村構成員 日化協の西村です。今、御指摘があったのは、多分急性の話でよろしいですか。
○宮本構成員 急性のは病院の話で、あとは産業保健スタッフが気が付くのは、どちらかというと慢性的な、みんなに共通な何かの症状の訴えがあるという、そういったときの話だと思います。
○西村構成員 まず、急性毒性のほうに関して言えば、急性毒性が予想されるようなものは、当然CBIの対象になっておらず、書かれていて、そういったものが分かるようなケースはそんなに多くはないかもしれませんがありますので、そういったものに書かれているということなので、それは多分、運用上問題ないかなと思います。一方で、慢性毒性のケースで、実際に事業者さんから直接連絡があるかどうかは分かりませんが、そういった場合には、CBIとかいうことではなく、むしろ行政ということになってくるのかな、ちょっと分からないですね。多発しているようなケースですと、厚生労働省からということがあるのかどうか分からないですが、しかるべく対応していくことになるのかなとは思います。具体的なイメージが湧かないですが、分かる範囲で製品の譲渡提供者としては対応していくことになると思います。CBIとは全く無関係にだと思います。お答えになっていますでしょうか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。宮本先生が御指摘になったのは非緊急事態ということでありますと、非緊急事態の場合は、健康診断とかで有所見や健康障害があることを把握した場合などに、それは緊急ではないので、書面で求めるというプロセスになります。この夜間等の緊急連絡先ではなく、書面で会社にお出しすることになります。あくまで、この緊急時連絡先を書くというのは、医療上の緊急事態における開示のときを想定しているものです。
○宮本構成員 分かりました。
○城内座長 そのほか、ここについて御意見等はございませんでしょうか。
では、最後の論点にいきたいと思いますが、よろしいですか。53ページをお願いいたします。「行政機関への非開示情報の開示等の必要性をどう考えるか」です。御意見等がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
私から質問ですが、第100条第1項から第3項までの規定の改正というのは、できるとすればいつ頃になるでしょうか。
○化学物質対策課長 こちら、仮に営業秘密を認めるということになりますと、法律の改正が必要になりますので、その改正と同時に行います。
○城内座長 皆さんから御意見、コメント等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。では、論点の全ての御意見を伺ったということですが、言い忘れたということはございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
たくさん御意見を頂きました。事務局では本日の御意見も踏まえ、さらに論点の整理、関係者等からの意見聴取等、中間取りまとめに向けた作業をお願いいたします。
最後に「その他」ですが、事務局から何かございますか。
○化学物質評価室長 事務局です。本日の議事は以上です。本日の議事録は、後日、構成員の皆様に御確認いただいた上で公開させていただきます。次回の日程ですが、6月24日(月)午後2時~5時を予定しております。構成員名簿のうち、前半に「全般に関する事項」「毒性に関する事項」の欄の先生方、後半に「全般に関する事項」、そして次回から、「ばく露防止対策に関する事項」の欄の先生方に御参集いただく予定としております。議事は、前半は「濃度基準値の検討」、そして「化学物質の危険有害性情報提供制度における成分名等の通知等関係」、後半は「対象物質ごとの測定方法」、そして「個人ばく露測定の精度担保関係」を予定しております。正式な開催案内は後日お送りさせていただきます。以上です。
○城内座長 以上で本日の化学物質管理に係る専門家検討会を閉会とさせていただきます。熱心な御議論、どうもありがとうございました。本日はお疲れさまでした。