- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働基準局が実施する検討会等 >
- 労働基準関係法制研究会 >
- 第7回労働基準関係法制研究会 議事録
第7回労働基準関係法制研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和6年5月10日(金) 16:00~18:00
場所
厚生労働省 専用22~24会議室
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 定刻になりましたので、ただいまから、第7回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。構成員の先生方におかれましては、御多忙のところ御参加いただきましてありがとうございます。
本日の研究会につきましても、会場参加とオンライン参加の双方の方式による開催ということでお願いしております。
本日は、安藤先生、石﨑先生、水島先生がオンラインでの御出席、神吉先生、島田先生には御欠席と伺っております。
では、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
(カメラ退出)
○荒木座長 議事に入ります。
本日は、第6回の最後に事務局にお願いしましたとおり、これまでの研究会での議論を踏まえた労働基準関係法制に関する各論点について、労使双方に現状と課題をお伺いできればと考えております。
本日は、一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部長、鈴木重也様と、日本労働組合総連合会総合政策推進局長、冨髙裕子様にお越しいただいております。鈴木様、冨髙様におかれましては、お忙しいところ御対応いただきまして誠にありがとうございます。
それではまず、日本経団連の鈴木重也様からお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。
○鈴木参考人 経団連労働法制本部の鈴木と申します。本日は、私どもに意見開示の機会をお与えいただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、資料に沿いまして説明させていただきます。
1ページ目を御覧いただきたいと思いますが、本日お話しする内容は大きく2点ございます。まず、総論といたしまして、労働基準関係法制の見直しに当たりまして経団連として求めることと申しますか、視点についてお話をさせていただきました後、各論として、これまで労働基準関係法制研究会で先生方が議論されてこられた主な論点について、私どもの考えをお伝えしたいと思います。
3ページを御覧ください。まず、我が国が置かれている現状について御説明申し上げます。
2023年の日本のGDPは世界4位に後退し、世界的地位が低下しております。今後は中国、インドのさらなる発展が確実視されている状況であります。我が国は少子高齢化、人口減少、それから天然資源が少ない島国であるなど、成長を阻む様々な制約条件が多い中で、今後成長を実現していくためには付加価値を増大させ労働生産性を高めることが必要です。しかし、現状、時間当たり労働生産性は、2022年主要先進国7か国中最下位、OECDの中では30位となっており、低下の一途をたどっています。
こうした危機感をまず共有させていただきたいと思います。
4ページを御覧ください。次に、働き方を巡る環境変化についてです。まず、労働時間制度については、我が国の現行労働基準法が工場労働を前提となっており、同じ場所で、同じ時間働く工場労働者を想定した画一的な規制になっていると認識しています。
しかしながら、自律的に働く企画職の方が増えたり、コロナ禍を経てテレワークが普及したりするなど、働き方が大きく変化しています。自律的な働き方を実現する裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の適用労働者の満足度は、それぞれ8割、9割とかなり高い状況です。にもかかわらず、その適用率はかなり低く、制度の拡大を進め各社の実態に応じた柔軟な働き方を可能にすることが求められていると考えております。
また、多様な働き手が増加する中で、同一労働同一賃金や、働きがい、働きやすさを実現するため、労使コミュニケーションの拡充が欠かせません。もちろん、労働組合が果たす役割、これは今後ますます高まると思っておりますが、労働組合の組織率が低下する中では、労働組合の組織化の促進と並行して、様々なレベル、複数のチャネルによるコミュニケーションの充実も必要と考えます。
さらに、事業場概念も見直すべき時期に来ていると考えております。企業で情報通信関係の改善や労働コンプライアンス関連の法改正の規制の増加と複雑化、働き方改革の取組みなどを背景に、従来、事業場ごとに持たせていた人事労務機能を複数の地域を統括する事業場や本社に集約する動きが広がっています。
また、テレワークの普及、遠隔地でのテレワーク勤務を認める企業も出てきております。事業場単位の規制というのは再検討すべき時期に来ていると考えております。
5ページを御覧ください。労働基準関係法制の見直しにおきましては、我が国の企業の実態に合った検討をお願いしたいと思います。日本では、小売業、あるいはサービス業中心に、365日・24時間営業のビジネスモデルというものが比較的普及しております。
また、国を挙げて是正に取り組んでいるものの、依然として商慣行、公契約における短納期・短工期等の慣行が散見されます。
一方、欧州では、例えば原則日曜日の休みが法定されていることなどを背景に、日本ほどきめ細かいサービスは普及していないという声も聞きます。さらに、長期の休暇取得が一般的であり、特に夏季休暇や年末の特定の時期は業務が滞ることを前提に活動をしているのではないでしょうか。このように、例えば我が国と欧州で就労環境が異なる面が少なくないということを踏まえた議論が、この労働関係法制の見直しには求められるのではないかと考えます。
労働者の健康確保のために長時間労働の是正に取り組む、これは当然必要です一方で、これまでお伝えしたとおり、我が国の労働生産性向上の必要性ということを踏まえますと、働き手の能力の最大発揮を促しながら、我が国の豊かさ、経済成長につながる視点からの議論も不可欠ではないかと考えます。
次に6ページを御覧ください。これまでお伝えした問題意識を背景に、経団連では、今年1月に「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を取りまとめましたので、少し御紹介します。
今後求められる労働法制の姿として3点示した上で、特に真ん中の②「労使自治を重視、法制度はシンプルに」という観点から、具体的に3つの提言をしております。
7ページを御覧ください。1つ目は、過半数労働組合がある事業場を対象とする労働時間規制のデロゲーションの範囲拡大です。十分な協議、健康確保措置を条件に、労働時間規制のデロゲーションの範囲を拡充すべきと主張しました。
例えば、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の対象業務については、当事者である労使が議論をし、選択する仕組みとすべきとしております。
8ページを御覧ください。過半数労働組合がない企業におきましても、適宜労働者と使用者が協議して、必要な労働条件の見直しを行うことが必要ではないかと考えております。そこで、労使協創協議制という新しい集団的労使交渉の場の導入を労使で選択できるようにすべきことを提言させていただきました。
創設の条件はいろいろとありますが、例えば有期雇用等労働者を含めた全ての労働者から、民主的手続により複数人を選出することなどとしております。この制度の創設の目的は、この協議体と会社が労働条件について合意すれば、個々の労働者を規律する契約の締結権限を付与し、もって労使コミュニケーションを活発化させるというものです。
なお、この協議制の導入は義務ではなく、あくまで各社の選択制でありまして、過半数労働組合がある企業での導入は想定しておりません。
9ページを御覧ください。先ほど総論部分でもお伝えいたしましたとおり、テレワークが普及し、常時労働者が事業場にいない場合もある中、会員企業からは既存の事業場単位の規制を見直してほしいとの声が多く寄せられています。そこで、過半数労働組合のあるなしにかかわらず、就業規則の作成や労使協定の締結、労使委員会の決議は企業単位での手続を可能にすべきと主張させていただきました。
11ページを御覧ください。ここからは検討会の主要論点についてお話をさせていただきます。18ページまでは労働時間制度についての論点です。
上限規制については、コロナ禍の影響もあったとはいえ、月末1週間に60時間以上就業する雇用者の割合が低下し、一定の効果があったものと私どもでは理解しております。
加えて、商慣行の是正というのが取組としてまだ道半ばでありますし、人手不足が著しい企業もあります。そうした中で、罰則つきの強い規制をさらに強化するということにつきましては、企業実務への影響が強いと考えており、反対の立場をとらせていただいております。
12ページを御覧ください。インターバル制度についてです。企業は、上限規制、後で申し上げます年休5日の時季指定義務、医師の面接指導等の規制、ハラスメント防止措置等の法令の履行でありますとか、深夜回数制限、連続労働制限、各種健康確保措置など企業の自主的な取組も行っております。また、リコールの対応や各種復旧対応、各種イベント対応、海外との打合せ等を行っている企業の実態を踏まえますと、インターバル規制につきましては、まずは普及促進をしっかり図っていくということが肝要であり、画一的な義務化には反対いたします。
13ページから15ページまでは休暇・休日についてです。まず、13ページの年次有給休暇の年5日の時季指定義務日数の拡大についてです。年5日の時季指定義務の立法事実といいますのは、2017年建議にもありますとおり、年休取得年5日未満の労働者が長時間労働者となっている割合が高いために、過重労働を防止するという目的で入ったもの、つまり、本来労働者の権利であるものを、過労死防止のためにパターナリスティックに事業者の時季指定義務としたものと理解しております。そのため、日数拡大の必要性につきましては、あくまでデータに基づく極めて慎重な検討を要すると考えております。
なお、少し異なる論点ですが、期中に育児休業から復帰した人などに対しましても、画一的に年5日の年休の取得を義務づけるということにつきましては、年休の趣旨に合わない面があるため、見直すべきと思っております。
14ページです。年次有給休暇の年初の時季指定制度の導入についてです。例えば数万人の社員がいる企業からは、年初に一人一人時季指定をするということは難しいという声も聞いております。また、例えば夏季休暇の前後の年休取得を推奨するということで、年初に休暇を取る「季節」を労使で共有する企業もありますが、後日具体的な日を指定する手間がかかるという声も聞かれるところです。全ての企業に適する方法というのはなかなか難しく、また、労働者のニーズにも合わない点があると思っております。
と申しますのも、例えば、育児や介護における突発事項への対応のため年休を確保しておきたいとか、子供の学校行事など予定が決まったときに休暇を取りたい、例えば半年ごとに指定したいなどの声があると会員企業からは聞いています。
年初の時季指定制度により計画的な年休取得の促進を図っていくということの有効性を否定するものでは決してありませんが、企業実務と労働者のニーズの観点から、厳格な法制化については反対をいたします。
15ページを御覧ください。4週4休制度につきましては、過重労働となり得る、恒常的な連続勤務のあり方について議論をする趣旨と考えますので、異論はありません。ただし、4週4休制度の廃止の検討については、制度の内容や、4週4休制度をどのぐらいの企業が導入しているのかといった割合、導入している企業の導入理由など、導入企業の実態を十分に把握・分析をいただいた上で、真に必要な対策は何かという観点から議論を行っていただく必要があるものと考えております。
また、一斉休憩原則については、労働者の主体的な労働時間の配分に制約を課すものであり、一律・機械的な休憩の付与はその意義を失っていると思いますので、休憩の一斉付与義務は撤廃すべきと考えます。
また、研究会で直接議論になっていないと承知しておりますが、会員企業からのニーズがある内容といたしまして、法定休日を指定した場合における時間外労働のカウントの行政解釈の見直しについてお願いしたいと思います。
週休2日制で土曜日を「法定休日」と特定した会社におきまして、ある1週で土曜日に労働し日曜日に休んだ場合、厚生労働省は、土曜日の勤務は時間外労働という解釈を取っています。この解釈は、振替後の休日が法定休日になるという解釈と矛盾しますので、会社が法定休日と特定した場合の当該労働日の労働は法定休日労働とする解釈を認めていただきたいと思います。
16ページを御覧ください。管理監督者に対する健康確保の必要性については十分理解をしております。また、要件の明確化にも賛同しますが、規制の強化については反対の立場でございます。管理監督者性が争われた裁判例の大半で会社側が敗訴していることは十分承知していますが、これは制度の問題ではなく、解釈の難しさですとか、制度の周知の不徹底というところが大きいと考えます。
労働時間等、労働条件の公表につきましては、女性活躍推進法における男女の賃金差の公表でありますとか、えるぼし認定制度の他の法令で公表されているということもありますので、そういった他の法令との整理が必要と考えておりますし、数字が一人歩きするという懸念も会員企業からは聞かれます。こういったことを踏まえた慎重な検討が必要と考えます。
17ページを御覧ください。副業・兼業の推進に向けた割増賃金規制についてです。現行の制度下では、例えば本業の所定労働時間が1日8時間、週40時間の場合、副業先における就労の全ての時間に割増賃金が発生します。これにより、副業に従事している社員からは、割増賃金が適用されることで副業先の他の社員に気を使ってしまうという声もでていると聞いています。
そこで、真に自発的な本人同意があり、健康確保を適切に行っている場合には、副業・兼業を行う労働者の割増賃金を計算するに当たって、本業と副業・兼業それぞれの事業場での労働時間を通算しないこととすべきと考えます。
研究会でも前向きな御議論をいただいていると承知しておりますが、副業・兼業の推進に向けてぜひ早期の実現をお願い申し上げます。
18ページを御覧ください。深夜労働の割増賃金規制についてです。在宅勤務の普及によりまして、日中に介護等のために中抜けをするなど柔軟な働き方というのが定着して、夜間も含め、就労時間帯を主体的に決めたいという在宅勤務者のニーズというのがございます。しかしながら、深夜労働規制が適用されており、深夜労働が認めにくい現状がございます。そこで、真に自発的な本人の同意や適切な健康確保措置を条件に、自律的に働く裁量労働制やフレックスタイム制適用者が在宅勤務を行う際には、回数制限などの一定の要件を設けた上で、深夜割増規制を適用しないこと等を御検討いただければと思っております。
19ページを御覧ください。(2)労働基準法における「事業場」の考え方についてですが、こちらは先ほど御紹介した経団連の提言と重なりますので割愛させていただきます。
(3)の労働基準法の「労働者」につきましては、業務委託契約を締結して就労している方が労働者性の判断がしやすくなるような支援や相談体制の強化が重要と考えます。個人事業者に対する保護強化につきましては、労災特別加入制度の対象業務の拡大や個人事業者に対する労働安全衛生法上の対策、フリーランス新法など適宜必要な措置を講ずるアプローチを今でもとっていると思います。こうした方法が有効と考えております。
最後に20ページを御覧ください。過半数代表者制度の見直しにつきましては、その必要性は十分理解するところです。過半数労働組合がない企業において労使で適切かつ丁寧な話し合いのもと、よりよい働き方を実現したいと私どもも願っています。労働組合の組織率の低下傾向などを踏まえますと、過半数代表者に広く労働者の意見を吸い上げる役割を担わせる必要性は高まっていると考えます。
ただし、現状、過半数代表者のなり手が少ないとされる中、過半数代表者を複数人選出することを義務化するようなことは反対の立場です。
まずは、意見集約のためのメール利用等、過半数代表者への便宜供与措置の実施を前提に、労働者から意見聴取する仕組みを優先して検討すべきものと考えています。
私からは以上です。御清聴ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして委員の皆様から質問、御意見等がありましたらお願いいたします。オンラインの先生方もぜひ挙手の合図をしていただければと思います。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 御報告ありがとうございました。私のほうから、主に3点か4点質問させていただければと思います。
まず、いただいた資料のうちの7ページ目のところですね。総論の部分で、デロゲーションの範囲拡大という御主張をされているところがあったかと思いますが、ここでいうデロゲーションの対象としては、割増賃金規制だけではなくて、上限規制等も含めてこうしたデロゲーションということを想定されているのかどうかというところについて、まず確認させていただければと思います。
また、併せて、その条件であるところの十分な健康確保措置ということが条件になっているとあるのですけれども、この具体的な中身ですね。特にインターバルとか、そういった休息規制なども含めた形での条件設定なのかどうか、あるいは十分な健康確保措置というのはどのように評価するのかという辺りについても教えていただけたらと思います。今のが1点目になります。
2点目は8ページになりますけれども、労使協創協議制を選択した場合にも、これは効果としてデロゲーションが検討対象になるというようなお話があったかと思いますが、こちらもやはり、先ほどの十分な協議と健康確保措置というのがある種条件になってくるのではないかと理解しているのですが、この過半数組合がないような状況の中での十分な協議を保障する前提としてどういったものを想定されているのかというところについて教えていただけたらありがたいです。
3点目は、すみません、御報告の中になかったところで、やや細かな話になってしまうかもしれないのですが、時間単位の年休について、これをもっと広げていくのか、あるいはより緩やかな要件で認めていくのかみたいなところの議論もこちらの研究会で議論があったかと思いますが、この点について何か会員企業さんのほうから声であるとか意見等がございましたら教えていただけるとありがたいです。
以上になります。
○鈴木参考人 御質問いただきましてありがとうございます。
まず、1点目の7ページのデロゲーションの範囲についてですが、提言では、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の対象業務の拡大をするということを想定しています
また、十分な健康確保措置の中身については、提言をまとめる際、議論の深掘りを十分にはし切れていないところがありますが、おっしゃったとおり、インターバル規制の設定も含めて労使で議論いただくことはあるものと考えております。十分な協議ができるのかというようなところは、過半数労働組合があるということであれば、当然、協議としては十分ではないかと思っているところでございます。
それから、2点目の8ページ、労使協創協議制のデロゲーションについて御質問がございました。まず、ご質問にお答えする前に、資料では契約締結権限の付与と、デロゲーションを、並列に書いておりますけれども、まず、契約締結の何らかの権限を付与していただくということが重要と考えている点は補足させていただきます。協議の保障に関しては、労使協創協議制の要件として、行政機関の認定を受けることや不利益取扱いがされないことなどを考えております。また、協議の保障ということに関連して申し上げますと、過半数組合がなければ労働協約締結が出来ませんし、会社と個別契約を締結することも煩雑であります。労働組合ではない、労働者を代表する団体の役員が、事業所の全労働者から会社と労働契約を締結する権限を付与され、かつ、会社側が内容ではなく締結権限がないことを理由に締結を拒否できないかどうかなどの論点について先生方に整理していただけると有難いです。
3点目の時間単位年休につきましては、正直申し上げて、企業の御担当者にお聞きすると2つのお考えがあります。一つは、年休なので、少なくとも半日以上しっかり休んでもらうことが年休の趣旨にかなうという御意見です。他方で、育児等と仕事の両立など、ワーク・ライフ・バランスを実現する上で、時間単位年休が大変効果があるという社員の声があり、この制度は維持してほしい意見があります。
以上でございます。
○石﨑構成員 ありがとうございました。確認ですけれども、労使協創協議制のところで、そうした、要するに団体の執行役員のような方が契約を締結した場合に、労働条件をそれによって規律できるようにしてほしいというところまでは伺ったのですが、その後、この制度に関して、デロゲーションとの関係でのお答えというのは既にされておられましたでしょうか。もし差し支えなければ、そこをもう一度お願いできるとありがたいです。
○鈴木参考人 ありがとうございます。説明が不十分で申し訳ございません。デロゲーションにつきまして、検討対象とはしておりますけれども、より厳格な条件のもとでとさせていただいておりまして、先ほど申し上げた過半数労働組合がある場合のデロゲーションにはない、しっかりとした要件というのが必要だと考えているところです。
○石﨑構成員 ありがとうございます。その厳格な要件の中身の部分についてはこれからというイメージでよろしいでしょうか。
○鈴木参考人 さようです。
○石﨑構成員 ありがとうございました。以上になります。
○荒木座長 ありがとうございます。ほかの先生方、いかがでしょうか。
では首藤先生、お願いします。
○首藤構成員 よろしくお願いいたします。
今の御質問の内容とも重なるところからまず質問させていただきたいのですけれども、労使協創協議制についてなのですが、現状として、まず過半数代表が十分に機能していない状況にあるということは多分御認識だと思います。今回この新しい制度をもし創設された場合ですけれども、現状が、選出から意見集約まで様々な問題を抱えている中で、労働組合でない場合の、従業員代表みたいな形になるのかもしれないですけれども、こうしたものが十分に機能し得ると考えていらっしゃる根拠をお示しいただきたいということがまず1点と、もう一点は、深夜勤務のところと副業・兼業のところで、「真に自発的な本人同意」という言葉が2回出てくると思うのですけれども、この「真に自発的」というのは何を根拠に真なる自発性を担保されようとしているのかというところを教えていただきたいということ。
3点目としましては、冒頭で御説明があった日本のこの労働生産性の低さであるとか商慣行のあり方というものが、日本の労働実態が長時間労働になる非常に大きな要因であるというのは私も共感しますし、危機感も共有しているところですけれども、こういったものを是正していくために、やはり労働時間の削減というものが非常に重要なのではないかとも思います。時間当たり労働生産性の上位国を見ても、ヨーロッパ諸国がすごく多くて、いわゆる長時間労働が蔓延しているような国が、アメリカも順位が下がっていますけれども、イギリスとか韓国とか入っていないような状況になっていますよね。その商慣行の問題とかも、労働時間の規制の強化なくしてどのように改善していきたいと経団連として考えていらっしゃるのかというところを、3点目で教えていただきたいと思います。
○鈴木参考人 御質問をいただきましてありがとうございます。
まず、労使協創協議制についての、こういうものが機能し得る根拠についてです。根拠と言われると明確なお答えが難しいのですけれども、厚生労働省がまとめた、令和元年労使コミュニケーション調査(事業所調査)によりますと、労働組合がない企業において、労使協議機関がある事業所が16.8%あります。組合がなくても会社と協議しているところがあることをもって、このような御提案をさせていただきました。
それから、2点目の「真に自発的な本人同意」については、これは何か特別な要件を課すという趣旨ではありませんが、同意を得るために、制度の内容等を丁寧に説明することや、口頭だけでなく書面で同意を取ることも含めた趣旨で書かせていただきました。
3点目、労働時間の削減のご質問につきましては、上限規制だけでなく、年次有給休暇の取得促進や、医師の面接指導等も含めて、労働基準法、安全衛生法でも対策がとられていると思いますし、また、今通常国会で法案が提出された次世代法の改正の一環として、一般事業主行動計画の中に、労働時間の状況を数値目標化してPDCAを回していくことの見直し内容が盛り込まれています。それから、商慣行の是正など外的要因の課題解決についても、首藤先生御専門の物流業界等も含めて、私どももしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
○首藤構成員 ありがとうございます。1点目のところだけ、ちょっと追加で質問なのですけれども、事業者調査で労使協議制を行っているところが16.8%ということは確かに実態としてあると思うのですが、労使協議の質が問われているのだと思っております。労使自治が重要であるというところは経団連の皆さんと多分一致しているところなのかなと思いますけれども、労使協議の質については、経団連として会員企業の皆様等に何かヒアリングをするなりアンケートするなりして実態を調べるようなことをもしされていたら教えていただきたいのですが。
○鈴木参考人 ありがとうございます。今のところ、アンケートなどをとってはいませんが、各社のヒアリング等個別にさせていただいているなかで、組合がないところでも、各エリアで対象者に集まってもらって、会社が就業規則を見直すとか、賞与の決定に当たって協議するという実態があります。そういった企業様からの声として、今回御提案をさせていただいたところです。
ご質問からは少し外れるかもしれませんが、質の担保ということでは、8ページの真ん中の右側の「条件」というところを御覧いただきたいと思います。全ての労働者が民主的な手続による複数人代表を選出、行政機関による認証を取るとか、協議に必要な情報提供をする、また活動に必要な範囲の便宜供与を行う・認める等、しっかりと要件化することを考えているところであります。
○荒木座長 よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。
水島先生、お願いします。
○水島構成員 ありがとうございます。大阪大学の水島でございます。
本日は、経済界の御意見をお聞かせいただきありがとうございました。首藤先生の第一の御質問と関連して1点、ほかに1点質問がございます。
労使協創協議制の創設の御提案は大変興味深く拝聴しましたが、なり手があるのかというところに疑問があります。過半数労働者の代表者のなり手が少なく、複数人選出義務化には反対とおっしゃっておられましたが、労使協創協議制であれば労働者の選出がうまく進むのか、お考えをお聞かせいただければと思います。
2点目ですが、経団連のお考えとして、労働者の「健康確保は最優先」を第一に挙げられたことには私も同感です。しかし、各論を拝聴しますと、必ずしもそのように思われないところがございました。2つ指摘させていただきます。
インターバル規制は、労働者の睡眠時間の確保につながり、労働者の健康確保に大変大きな意義があると考えております。実務上の影響があることは承知しておりますが、その影響を少なくする方策を考え、インターバル規制促進を進めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
もう一つの例は深夜労働でして、深夜労働の割増賃金規制について4つの条件を挙げ、厳格に運用されることをお考えであることは理解します。しかし、深夜労働というのは労働者の健康を害するおそれが非常に高いもので、これは深夜労働の積極的容認につながらないか、懸念があります。問題はないでしょうか。
以上です。よろしくお願いいたします。
○鈴木参考人 御質問いただきましてありがとうございます。
まず1点目の労使協創協議制のなり手がいるかということでございますが、先ほど御紹介した労使コミュニケーション調査にあらわれた、労使協議機関を設けている事業所が実際にあります。繰り返しで恐縮ですが、16.8%の事業所は潜在的にそのようになり手がいると考えます。そして、一般的な過半数代表制を制度化すると全事業所に設置が義務付けられることになりますが、全体的にはなり手がいないことと、なり手がいる事業所もあることを峻別して、私どもは選択制として御提案させていただいたところです。
2点目の御質問、インターバル制度についてです。一般的には11時間の間をあけるという御指摘もお聞きする中、厚生労働省のほうでまとめられている導入・運用マニュアル等の中でも必ずしも11時間のインターバルではなかったり、例外を設けたりされています。あるメーカー様ですと、月に4回ほどはインターバル規制を超えないようにするという例もあります。また、ルール化したインターバル規制の時間を一定の回数超えた場合には翌月に代替休暇を与える例も含め、多様な制度が集積されつつあるということで、画一的な制度の義務化については賛成しかねるという趣旨で申し上げたところです。
深夜割増規制に関するご質問につきましては、自律的に働けるような方が1日8時間以内の中で働くということであれば、規制をかけてまで、罰則つきで規制をかける必要があるのかという問題提起をさせていただいたという趣旨であります。
○水島構成員 どうもありがとうございました。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生、どうぞ。
○黒田構成員 貴重なお話、ありがとうございました。東京大学で産業医をしております黒田と申します。
3点から4点、私も質問がありまして、ただ、今までのものと大分関連しているので、既に回答済みということでしたらその旨おっしゃっていただければと思います。1点目、産業医なので、健康影響というのが一番気になるのですが、勤務間インターバル、画一的な規制強化には反対であって、柔軟な運用をしたいというお話いただいたと思うのです。
令和5年の就労総合条件調査を見ると、全体としては勤務間インターバル制度を導入しているのが6%で、経団連の会員様である企業のような、少し社員数が多いような企業だともうちょっと導入割合が高くて、1,000人規模以上だと17%ぐらい導入しているというお話だったと思うのですが、逆に、どういうことがあるから導入できないという話になっているのでしょうか。多分、趣旨に反対される方は余りいらっしゃらないと思うのですけれども。
あと、勤務間インターバル時間の一般的な目安として11時間というのが先ほどお話が出て、やはり純粋に健康上の影響を考えると11時間以上確保してほしいところですけれども、実際にはそれを下回る時間を導入する理由というのも、何か調査で出ているものが、会員様の声というのがあれば、教えていただきたいです。
2点目は、16ページでしたか、管理監督者に対する健康確保に関してはいろいろ御意見があったところだと思いますけれども、厳罰化は避けてほしいし、見える化するというのもちょっと慎重にというような話がありましたかね。健康確保の必要性は理解するが、規制強化には反対ということで、ただ、今までのこの検討会の議論で、管理監督者だけが何かバランスを欠いて、上限は、健康管理時間ということでは示されているけれども、ちょっと特段の規制がないというのがアンバランスではないかという議論があったと思います。
比較的タフな人が管理監督者になっているのかもしれませんが、やはり同じ人間なので、個人的には管理監督者以外の労働者と同様の上限は必要ではないかと思っているのですけれども、生産性を妨げるからということはあると思いますが、どのような理由をもってですとか、こういうことで健康上の健康確保ができるから規制は強化する必要はない、と考えていらっしゃるか、というのをもう一度明確に教えてください。
3点目としては、今、水島先生からも言及があったところですが、裁量労働制やフレックスタイム制で在宅勤務を行う際に、ちょっと中抜けをしたりとかいうことがある場合には、深夜割増賃金の規制は適用しないというのはありではないかというお話がありました。ただ、深夜割増賃金規制というのは、そういうのがあると多様で柔軟な働き方を妨げるというような趣旨は理解するのですけれども、法律に明確に書かれているわけではないのですが、私は個人的には危険手当のような位置づけと理解しています。やはり深夜帯に働くということはかなり健康にインパクトがあるので、何らかの枠が必要になると思いますし、基本的には、そこも上限規制というのが必要になると思います。極端な例として、中抜けして、その後23時から夜3時まで働いて、でも裁量労働制なので自由でしょう、みたいになるとちょっと困るのではないかなと思うのですけれども、その枠をある程度上限かけて運用するのはありではないかというお話がありましたので、具体的にどういう上限を想定されているのかというのを教えていただければと思います。
以上です。
○鈴木参考人 ありがとうございます。御質問の趣旨と違っていれば適宜御指摘をいただければと思います。まず、インターバル規制の導入のネック、いいかえますとどういう条件であれば良いかという点ですが、経団連の一部企業から聞いた話では、導入が義務化された場合、時間数や対象者、例外などについて労使で決めることが出来るかという点を気にされています。まずは、既に入れていらっしゃる6%の企業様がどのような制度で導入されておられるかという点を、実態把握していただくということが重要ではないかと思っております。そうした実際に導入されている制度の具体的な内容を明らかにしたうえで、導入のネックを検討頂くのが良いと考えております。そのため確定的に、どういう点が導入のネックになっているかについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
11時間を下回ることについての調査結果について、特に私どもが持ち合わせているわけではありません。
2点目のご質問、管理監督者の健康確保措置については、反対と申し上げたのは、範囲、定義についての規制強化には反対という趣旨であります。今、医師の面接指導制度がありますが、管理監督者には独自の健康確保措置がない状態ということの課題は重々理解しております。具体的な内容の検討は別途必要であるとして、検討することについて異論は全くありません。
ただし、例えば高プロと裁量と一緒にするかどうかという点については、ここも十分議論しておりませんが、裁量と高度プロフェッショナル制度は効果が違いますので、健康確保の要件も含めて全く一緒にしていいかどうかということについては検討の余地があるのではないかと思っております。
深夜規制についてでありますが、もちろん、深夜で働いていらっしゃる方で体調が悪いという方がいらっしゃれば、例えば昼間の勤務に移すような取組みを各社でしています。ちょっとお答えになっていませんけれども、深夜に入る前までの時間も含めて8時間以内の勤務に限る、また深夜に働くことの強制はしないという条件のもとでも、本当に規制を維持する必要があるのかという、提案をさせていただいていることを御理解いただければと思います。
○荒木座長 よろしいでしょうか。
それでは、予定の時間がちょっと過ぎておりますので、次の連合の冨髙様の後に、お二方のお話をまとめて質疑の時間も最後に設けておりますので、一旦、日本経団連の鈴木様の質疑についてはここまでということで、次に移りたいと思います。
それでは次に、連合の冨髙様より御説明をよろしくお願いいたします。
○冨髙参考人 連合の冨髙でございます。今日は非常に貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございます。
私からは、労働者の立場から、今回の労働基準関係法制のあり方に関する考え方を御説明させていただきたいと思います。
まず、全体的な説明の前に、2ページを御覧いただきたいと思います。この研究会での論点の設定についてでございます。上のほうのボックスに書いてございますけれども、この検討会の検討事項は、「新しい時代の働き方に関する研究会報告書」、これを踏まえた労働基準関係法制、そして「働き方改革関連法の施行状況」を踏まえた労働基準法等の検討であると理解しております。つまり、検討事項は、研究会報告にもございますけれども、労働基準法にとどまることなく、比較的広く捉えられているという理解をしております。
ただ、これまでの議論の状況からすると、例えば今や働く人の4割を占める非正規雇用の問題など、労働法制を考える上で非常に重要であると考えられる幾つかの課題が取り上げられていないように思います。
この理由は、労働基準法の問題ではないからということなのかもしれませんが、働く者の立場からすると、そういった労働行政の縦割り的な部分が、ややもすると実効性を持った法整備というのを阻害し、分かりにくい制度を生んでいるのではないかと感じるところでございます。
本当に「新しい時代」の労働法制を目指すというのであれば、緑色の部分に記載のとおり、非正規雇用の課題、ジェンダー平等の問題、そしてハラスメントの問題、こういったことにもぜひ正面から取り上げていただきたいと考えているところでございます。
その上で、労働基準関係法制を巡る課題認識について述べさせていただきたいと思います。3ページをお開きいただけますでしょうか。
ここでは3点、労働基準関係法制を巡る課題を示しております。具体的に1点目ですが、働き方の多様化が進む中ということはこれまでも言われている中、労働からの解放というのが困難になり、結果、過重労働につながりかねないリスクが生じているという点でございます。
2点目としましては、労働基準関係法令違反が非常に多く生じている実態があるということでございます。ややもすると、労働法制の検討では、「労働者の希望に沿った働き方」という点が強調されがちですけれども、まずは数多く起こっている法令違反の是正、これを最優先に取り組むべきではないかと考えます。法令違反の是正なくして多様化や柔軟化を論じるというのは、順序として間違っているのではないかということを強調しておきたいと思います。
そして3点目ですけれども、プラットフォームエコノミーの台頭などにより、「曖昧な雇用」などの労働関係法令でカバーされていない働き方が増えている。これも極めて大きな問題であると考えております。
こうした課題認識のもと、4ページを御覧いただきたいと思いますが、労働基準関係法制を今後どうしていくべきなのかという点を、具体的に3点申し上げます。
まず1点目ですが、先ほども申しましたが、労働基準監督行政の充実・徹底を図るべきと考えております。この点、矢印に書いておりますけれども、日本の労働基準監督官は世界標準に比べて量的に圧倒的に劣後しているため、まずはその強化が必要です。
2点目は、新しい時代を迎えた今だからこそ、労働基準関係法制は、「曖昧な雇用」で働く者もカバーして、誰もが安心して働くことができるようにすべきと考えております。
最後に3点目ですが、労働基準関係法制の強行法規性は堅持すべき、ということです。労働基準関係法制ができたのは、労使の力関係の差を是正するためにできたものだと認識しております。この点を踏まえればこそ、強行法規の解除や適用除外を大幅に労使に委ねるというのは、労働基準法の存在意義そのものを否定するものであり、行うべきではないと考えます。
そもそも柔軟で多様な働き方は、現行法制でも可能であり、強行法規としての労働基準関係法制を緩和する必要は全くないという点は強調しておきたいと思います。
こうした基本的な考え方を踏まえた上で、個別論点について触れていきたいと思います。6ページを御覧いただければと思います。
まず、労働時間規制については、労働時間規制の意義というものを押さえておく必要があると思います。具体的には、上のボックスの1つ目の●ですが、労働時間規制は、労働者の心身の保護、それから家庭・社会生活を営むための生活時間の保障という機能を持っているということでございます。
同時に、2つ目の●にありますとおり、労働時間規制は公共的な側面も持っているということも押さえておくべきです。これは、長時間労働を希望し成果を上げようとする労働者がいれば、ほかの労働者も結局はその競争にさらされ、長時間労働を強いられる可能性がある。だからこそ労働時間の最低基準を法で規制するということだと考えております。
今後の労働時間規制を考える上では、これら2つの観点を基本に据えるべきだと考えております。この観点に立った上で、このページの下段以降から、前回の検討会で示された議論の整理に沿う形で、連合の考え方をお示ししたいと思います。
まず、時間外労働の上限規制です。これは月45時間、年360時間という原則、これをきちんと原則として扱い、例外、つまり、特別条項につきましては労基法36条5項の条文のとおり、「通常予見することができない」「臨時的」な場合に限定して、厳格的に運用すべきということです。したがって、この例外である月100時間未満、年間720時間等の上限時間を延ばすことは論外であると考えます。
次に7ページにお進みください。まず、裁量労働制・高度プロフェッショナル制度についてです。これらの拡大につきましては、長時間・過重労働を強いられる労働者を増加させかねないため行うべきではないと思います。特に高度プロフェッショナル制度については廃止を含めた検討を行うべきと考えております。
続いて3点目は、管理監督者の不適切な運用実態の是正でございます。緑色のボックスに相談事例も記載しておりますが、連合には、使用者により管理監督者の範囲が不適切に拡大・運用されている実態が多く寄せられています。したがって、まずは、管理監督者が何なのかということを法律上明確にすべきと考えております。
次に8ページ、テレワークにつきましては、子育て、介護との両立がしやすくなること、また通勤負担軽減のメリットなどがあると考えております。一方で、連合の調査によれば、仕事とプライベートの境界が曖昧になったり、通常勤務より長時間労働になりがちという実態も明らかになっております。だからこそ、テレワークにつきましては労働時間管理を徹底することが重要と考えております。
なお、テレワークにつきましては、パソコンのログイン・ログオフによって時間管理可能ですので、事業場外みなしの適用は慎重であるべきと考えます。
次に9ページです。勤務間インターバル規制の導入です。勤務間インターバルにつきましては、働き方改革の中で、労働時間等設定改善法で努力義務化されておりますが、努力義務化されてから5年経過した今こそ、すべての労働者を対象とした導入に向けてさらに一歩を踏み出すべきではないかと考えます。休息時間につきましては、十分な睡眠時間と生活時間を考慮して、原則11時間保障すべきであると考えますが、当分の間は柔軟化できる措置を通じて、柔軟に導入できるようにするということも1つ考え方としてあるかと思います。ただし、その際も法律で休息時間の下限は明らかにしておく必要があると考えます。
続いて下段のほうの法定休日でございます。これは不適切な実態を是正すべきと考えております。具体的に、1つ目の矢印にあるとおり、労基法では「毎週少なくとも1回の休日」を付与すべき義務が使用者に課されておりますが、法定休日の特定までは求められていません。結果、使用者によって法定休日の恣意的な特定や変更が行われ、休日割増を逃れるような実態が報告されております。この点、労働者の健康確保などの観点から法定休日を特定する義務を法律上課すべきと考えます。
また、2つ目の矢印にございますが、4週4日の変形週休制についても、安易な実施によって、24連勤といったような、労働者の健康・安全等に弊害が生じ得る運用も可能性としてはあり得ますので、実施要件の厳格化を行うべきと考えます。
次に、10ページ目、いわゆる「つながらない権利」の立法化についてです。この点、1つ目の矢印にあるように、本来的には、労働者は、勤務時間外であれば仕事に関わる義務はございません。しかし、左下に載せてある連合の調査を見ていただきますと、「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡が来ることがある」と回答した方が7割程度にのぼります。こうした状況を防止するためにも、使用者からの連絡を遮断する権利を認め、その権利行使の方法を労使において具体化したり、使用者に一定の対応を義務づけるような立法化というものを検討すべきではないかと考えます。
「つながらない権利」が立法化されれば、連合調査の右側のグラフにもありますけれども、時間外の業務指示など断りやすくなるという結果も出ております。こういったエビデンスも踏まえ、ぜひ検討いただければと思います。
次に、労働基準法の「労働者」についてです。11ページをお開きいただければと思います。課題認識としましては、上のボックスにございますとおり、デジタル化の進展、プラットフォームエコノミーの台頭などによって、従来の労働者性の判断基準では保護の対象とならない事例が増えているということです。
その課題認識にたった上で、政策的にまずは、実態として労働者性が認められるものに対しては、確実に労働関係法令の適用を図るべきということです。これは当然のことです。
その上で、2点目としましては、労働者概念を社会実態に合わせて見直すべきということでございます。労働者性の判断基準は、1985年の労基研の報告から見直しが行われておりません。様々法律の動きもございますが、労働市場や働き方が変化する中、40年近くもこの問題が放置されていることは大きな問題だと考えております。ぜひ今こそ社会実態に合わせた早急な見直しをお願いしたいと思います。
その上で、3点目でございますが、労働者概念を見直しても、まだなお労働者に該当しない方については、最低報酬や災害補償、個別論点ごとに保護の必要性について検討することが必要と考えております。
それでは、最後に労使コミュニケーションについてでございます。12ページをお開きいただければと思います。まず、課題認識ですが、上の四角囲みにあるとおり、1点目は、組合の組織率が低下している中で、労働法が予定する集団的労使関係の仕組みが機能しない事業場が増えているということ。また、2点目としましては、過半数代表者の役割が拡大する中で、労働者代表としての民主性や正統性を担保する基盤がないということです。一方で働き方を巡る環境変化や多様化が進む中においては、労使コミュニケーションというものの重要性というのはますます増していると考えております。
その上で、政策的方向性の1点目でございますけれども、労使コミュニケーションの中核的な担い手は、これは労働三権を背景として労働条件設定機能が与えられている労働組合であるべきということでございます。
2つ目の矢印にも書いてございますけれども、過半数代表者は法定基準の解除機能を持つものにとどまるということで、労使コミュニケーションの担い手を過半数代表に代替させるべきではないと考えております。
だからこそ、3つ目の矢印にあるとおり、労働政策上でも、労使コミュニケーションの主体は労働組合であると位置づけた政策を検討すべきだと考えます。厚労省も最近、各種政策で好事例集を積極展開しておりますけれども、労働組合の好事例集などはあまり見たことがありません。もちろん、労働組合として当然積極的に自ら周知等の取組も行ってまいりますけれども、ぜひ厚労省にも、労働組合が労使コミュニケーションの重要な担い手となることで、経営資源としても機能している実例の啓発などを行っていただければと思います。
その上で、13ページに移りますけれども、法政策的にはまず、過半数代表者の選出手続きの適正化等を含めた過半数代表制の整備と見直しが必要であると考えております。
このページの下のボックスに事例を載せておりますけれども、連合には、過半数代表者について、使用者による不適切な選出実態があったり、また少数組合の代表が過半数代表者に立候補したとしても排除されるような実態が報告されております。こうした実態を直視して、まずは過半数代表者の選出手続を厳格化・適正化した上で、その規定を労基則から労基法に格上げするべきと考えております。厳格化や適正化の具体的な中身については、右側の青色のボックスの部分を見ていただければと思います。
また、同時に、そもそも過半数代表者を含む過半数代表が関与する仕組みというものが非常に多くございますので、これを根本から見直して、適宜その数を縮減していくべきだと考えております。こういった過半数代表制が持つ課題を適正化しないままに過半数代表者以外の仕組みをつくることは、過半数代表者と同じ課題を引きずってしまい、結局は現場でワークしないと考えます。
その上で、14ページでございますが、今申し上げた労働組合の機能強化と、過半数代表制の適正化の取組を徹底した上で、次なる段階として労働者代表制の法整備を検討すべきということでございます。
繰り返しになりますが、職場における労働者代表は、第一義的には労働組合でありまして、労働条件の設定に関与し得る労働者代表は労働組合のみでございます。その大前提のもとに、次なる段階として、労働者代表制の法整備を図るべきと考えております。
16ページに飛んでいただきまして、連合がまとめた労働者代表法案要綱の骨子案を載せております。これは1990年代の後半から、組合組織率の低下、非正規雇用労働者の増加などによって集団的労使関係の空白地帯が増加していたということも踏まえて、連合として2001年にまとめ、2006年と2021年に一部修正したものでございます。
具体的には、「目的」にあるとおり、過半数労働組合がない事業場で、労働諸法規に労働者代表との協定締結・意見聴取を定められたものにつき、労働者を代表する機関を設置するというものであり、この機関が労働者代表委員会です。そして法制化すべき内容として、青のボックスの中に主な規定を書いていますが、過半数労働組合が誕生した場合の委員会の解散規定、選出手続、使用者による支配介入・不利益取扱いの禁止、便宜供与、こういったものを示しているところです。詳細は後ほど御覧いただければと思います。
14ページにお戻りいただきまして、最後に法定手続の単位でございます。これは労働基準法上の「事業」の問題でもありますが、労使コミュニケーションの単位とも密接に関わりますので、こちらで整理しております。
具体的には、36協定などの法定手続を企業単位とした場合に、現場実態や労働者の声が反映されにくくなるという懸念があると考えております。職場実態を適切に協定に反映させるためにも、法定手続は事業場単位、さらに言えば場所的概念を維持するということも重要であると考えております。
そもそも労使コミュニケーションが事業場ごとに行われている中、行政による監督単位をたがわせることが有益であるとは考えられません。連合の加盟組合の中でも聞き取っておりますけれども、数万人の企業であっても、一つ一つの事業場で過半数労働組合や過半数代表者を選出して、そこでの協議を通じ現場実態を踏まえたうえで36協定を締結しております。事業場単位というのは、企業側からすれば確かに手間であるかもしれませんけれども、それだけ重要なことであるからこそ、それぞれの職場実態に合わせた協定であるべきだと考えております。こうした実態を見て今後議論をしていただければと思います。
冒頭述べました通り、いま一度、労働法の役割、成り立ちというところを踏まえた上でぜひ前向きな御検討をお願い申し上げ、私からの提起を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問、御意見があればお願いいたします。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 貴重な御報告ありがとうございました。私から3点御質問させていただければと思います。
まず1点目は、資料の14ページ目で、最後にお話しいただいた手続の単位に関わる部分でございます。こちら、36協定等ですとか、とりわけ安全衛生とかそういったところに関わる問題に関して、事業場ごとの実態を踏まえて検討する必要があるという御主張は非常によく分かるところはあるのですけれども、他方、例えば就業規則における意見聴取のような手続について、各事業場ごとの意見を企業に集約させるような形でのやり方を取った場合に、懸念される不都合というものがあれば教えていただけるとありがたいですというのがまず1点目になります。
それから2点目につきまして、16ページのほうで労働者代表法案の御紹介をいただいているかと思いますが、この案の中では、組合は過半数組合が非組合員を含めた全労働者の意見を集約するという役割が予定されているところかと思うのですけれども、この点、組合員と非組合員が特に、例えば正規か非正規かというところの立場の違いなどによって利害の対立が生じてしまった場面での御対応ですとか、そういったところについての何らか、組合の中での御意見等があれば御紹介いただけるとありがたいというのが2点目になります。
3点目は、先ほど鈴木様にもお尋ねした点ですけれども、時間単位年休の拡張であるとか要件緩和といった点について、組合の中で何か御意見、御議論があれば教えていただきたいというところになります。
以上です。
○冨髙参考人 ありがとうございます。
まず、事業場の部分での御質問でございます。法人単位化することに不都合あるかどうかというところでございますけれども、やはり実態として、法人単位で大括りに統括した場合に、きちんと各職場における課題を反映させて協定などを締結できるのかという懸念がございます。それから、今、例えばリモートスタンダードでやっているような企業でも、36協定等は事業場ごとに締結し、届出しているということで、現状の運用で特に問題は生じていないと理解しています。そうした中で、届出の効率化等の安直な理由で事業場単位の概念を法人単位に切り替えるようなメリットはないのではないかと考えているところでございます。
それから労働者代表法制に関し、正規と非正規という立場の違いに基づく利害対立があった場合の対応について何か議論があったかというところでございます。この件につきましては様々な単組の皆さんと意見交換もさせていただきましたけれども、特に否定的な意見は余りなかったと考えております。というのも、労働組合というのはそもそも様々な職場の労働者、働き方も違う労働者の集合体でございまして、組合での取組自体がいろいろな、場合によっては利害の異なるような方たちの意見を集約しながら物事を決定していくということを常にやっております。したがって、正規と非正規を含め、時には利害が対立するような立場の方たちについて意見集約をして取組を進めていくことについて、特に問題があるというようには聞いておりません。
また、労働者代表法案要綱に関して言えば、労働者代表委員会は、例えば非正規の方も含め、代表委員以外の傍聴を認めるというような形で、より透明性を持った議論ができるような仕組みとして考えているというところでございます。
それから、時間単位年休についてです。これは我々もどうするべきかというところはもちろんあるのですが、おっしゃるとおり、我々の傘下の組合の中でも、時間単位年休を有効に活用しているという御意見はある一方で、もともとの年次有給休暇の意図というのは、しっかりとまとめた休息時間を取得することで体を休めるというものです。そういった意味では、時間単位年休を増やしていくのかというところは少し慎重に考えてもいいのではないかと思います。また、育児や介護等のニーズに関しては、2021年から子の看護休暇と介護休暇について時間単位取得が可能になっていると思いますので、そちらを活用していただくというのも1つあるのではないかと思います。
足らざるところがあればまた質問していただければと思います。
○石﨑構成員 ありがとうございました。私からは以上です。
○荒木座長 ほかの先生方、いかがでしょうか。
首藤先生、お願いします。
○首藤構成員 私のほうから2点、今の御質問とまさに重なるところですけれども、まず1点目の、事業場単位か企業単位かというところです。今まさに冨髙さんがおっしゃったように、企業単位化をした場合に職場の実態が分かるのかということが問題なのではないかという御指摘があったと思うのですけれども、この職場の実態が適切に反映されないままに、例えば36協定等が結ばれていったことによって懸念される事態というのは具体的にどういうことを考えていらっしゃるのかということをお話しいただきたいというのが1点と、もう一点が、資料の6ページのところですけれども、基本的な労働時間規制の考え方のところで、労働者の健康と、まさに緑の線で太字で書かれているところですけれども、労働時間などの規制を考える上では、労働者の健康・安全の確保と生活時間保障という環境を基本とすべきであるというのが連合の姿勢であるというところはよく分かりました。
この生活時間保障ということを組み入れていらっしゃる理由を教えていただきたい。生活時間というものをどのように捉えられていて、健康・安全のみならず、生活時間の保障も必要なのだと考えられている理由を教えていただきたいと思います。
○冨髙参考人 ありがとうございます。まず1点目でございますけれども、例えば36協定については、事業場単位で締結するからこそ、それぞれの職場での働き方や、繁閑等も含めてどれぐらいの協定時間が適切なのかというところがより具体的に分かると思っております。これを企業単位にしますと、結局、安全を見て、一番労働時間が長い事業場に合わせるような形にもなるのではないかと思いますので、そうなると、結構長い時間での協定締結になるのではないかと懸念します。
それから、生活時間の部分です。労基法の性格は最低基準ではございますけれども、だからといって、これ以上働いても死なないというレベルの健康確保の最低基準で十分なのかというとそれは違うと考えております。また、そもそも労働時間とそれ以外の生活時間をどうやって切り離せるのかというと、そこは非常に難しいと思います。24時間の中でどこまでの時間を労働に分配して、そしてどこまでの時間を労働以外の時間に分配するかという問題であると考えております。労働時間を規制するということは、やはりその裏には豊かな生活時間をどれだけきちんと確保できるかということだと思っているところでございます。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
水町先生。
○水町構成員 1つ根本的な質問として、労使協定に対する信頼をどれくらい置かれているのかというところをお伺いしたいところなのですが、労使協定って、労働組合、過半数組合が締結する場合と、過半数組合でない過半数代表者が提出する場合がありますが、いずれにしても、強行法規との兼ね合いが問題になって、絶対的な強行法規だと、労使協定による例外も許さないというものがある中で、労使協定があれば例外ができるというタイプのものがありますね。冨髙さんが、労使協定、過半数組合、過半数代表者と言われているときに、例えば過半数組合が結んだ労使協定についてはもう任せてくださいという信頼を置いていいのか、労働組合が関与していない過半数代表者になるともうこれは信頼が置けなくなりますよということなのか。
かつ、時間のベクトルとして強行法規はすごく大切にしなければいけないということが書かれていて、例えばスライド4枚目の一番下のところ、「強行法規としての労働基準関係法制を緩和する必要は全くない」と書いてありますが、例えば何か改正するときに、動かすというときに、過半数組合による合意、労使協定をかませながら柔軟な規制をしましょうというときに、これは強行法規を緩和する必要、緩和の言葉使い次第かもしれませんが、必要は全くないと。これはもう強行法規があるから、強行法規を前提として過半数組合の合意というのはあって、その強行法規に代わるような我々の話し合いを認めてもらっても、我々、そこまで責任は負えませんよということなのか。
それはほかのところにもあって、「管理監督者の定義を、法律上明確にすべき」と書かれていますが、管理監督者の問題って、少なくとも労使協定の対象になっていなくて、届出もなくて、今まで、法律で定めただけで、労規則で書かれた、通達等で書かれただけなのですが、これ、労使協定に任せてくれというのではなくて、我々に任されても困るので法律で明確にしてくれということなのか。変形休日制についても、実施要件の厳格化とある。恐らくこれも法律とか労規則で厳格に書いてくれという趣旨だと思いますが、そういうところも含めて、労働組合に過半数組合、これは連合に加盟している組合も加盟していない組合もあるかもしれませんが、そういうところ、任されても困るので、強行法規としてやってくれと。過去、今まで労使協定のあったところについては労働組合が一生懸命頑張るけれども、でも、過半数代表者というのは、やはり連合さんからすると信頼が置けないので、違うような形にしてくれとか。
今の現状から過去を振り返ったときに法律でどこまで書かれていて、それを一歩でも労使協定に任せてもらうと、それが基準の緩和になり柔軟化になって、我々に任されてもだめだと言っているのか。それとも、全体の政策のバランスの中で、いや、今までの硬直的な強行法規というのも、硬直的なままであると実態に合わなくなってきているので、こういう形であれば労使協定、労使協定といっても、組合が関与している過半数組合との協定だったら、我々も一生懸命頑張りますということなのか。いやいや、今、強行法規でやっているところについては我々に任されても、我々もそんな信用してもらえるほどの中身をしっかり労働者の保護できないので、法律は法律で、そして法律がちゃんとしていないところは法律でより具体的に明確に厳格化してくれという、その労使協定に対する信頼が、組合がある場合と強行法規との兼ね合いで、組合にどれぐらい信頼してくれというメッセージを、例えば国民とか労働者とかに送るのか。組合でないところについてはちゃんと実効的に労働者保護として機能していないので、やはり労働組合があるところと労働組合のない過半数代表者というのは全然違うので、きちっとしないとだめですよというような認識、イメージを持たれているかという質問です。
○冨髙参考人 ありがとうございます。お答えになるか分からないですけれども、バランスの問題もあるのではないかと思います。もちろん、過半数代表者よりは、過半数労働組合のほうがいいと思っております。とはいいながら、過半数労働組合であれば何でも労使協定で法定基準を解除できるというのもどうなのかというふうに思っています。また、労働基準法は強行法規と言いますが、少なくとも労基法のようなミニマムのものがあって、私たち労働組合はそれを上回るような取組をしっかりやっていくということが本来的な姿であるはずです。日本全体で、労働組合の存在感について場合によっては問われているところもあるかもしれませんけれども、そうではなくて、しっかり労働組合の意義や必要性というところもきちんと主張していきたいと考えているというところでございます。
お答えになっているか分かりませんが。
○荒木座長 よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 東京大学の黒田です。
1点質問をさせていただきたいのですが、テレワークに関して、8ページのところの資料だったと思います。テレワークについては、適切な労働時間管理を徹底することが不可欠で、かつ、今いろいろとテクノロジーで労働時間管理、客観的にも労働時間が取れるので、それを把握することで、事業場外みなし労働時間制の適用は慎重であるべきというような御議論だったと思います。一方で、テレワークってかなり裁量性があり、自律的な働き方がそもそもできる人がテレワークするという認識で私はいるのです。そうすると、管理が行き過ぎると企業からの監視というふうになりかねないと思いますし、テレワークで労働時間管理を徹底する、というのはちょっと合わないというか、一致しないような働き方でもあると思うのですね。
なので、その点に関してちょっと御質問したいなと思いまして、テレワークって、今申し上げたように、そもそも自律的な働き方できる人が一定要件を満たしてやるもの、権利としてというのもあるのでしょうけれども、たぶん誰でもテレワークできるというものではない。業種のこともあるでしょうし、スキル的にも誰でもできるものではないと思うのですね。かつ、テレワークによる有害性というのもあると思います。ですので、テレワークすることで健康影響が、悪影響が出るような人はもちろんできないということになると思います。また、WHOとILOがジョイント宣言というのを出していて、過剰な監視というのは労働者の精神負荷を高めると述べています。PCのログオンログオフ程度の情報でしたら、出勤しているときもテレワークをしている時も客観的な時間管理として取りなさいというのを推奨されているのでいいかなと思うのですが、適切な労働時間管理として想定したときに、カメラをオンにして常時監視みたいなシステムを入れている会社もあり、そういうことも想定される可能性があるというのが心配だなというのと、ガチガチに管理することとテレワークは両立しないのではないかなという疑問があって、個人的には事業場外みなし労働時間制の適用はありなのではないかと思っています。もしくはテレワークに特化したみなし労働時間制について新設はどうか、という話が以前の検討会の議論でもあったと思います。どの程度の労働時間管理とかどの程度の把握を企業がするべきだ、と思っていらっしゃるのか教えていただきたく、もしくはほかの現場の声として、この程度はやってほしいよねという話になっているのか教えていただきたいなと思って、質問しました。
以上です。
○冨髙参考人 ありがとうございます。テレワークは自律的な働き方ができる方が利用されるというようなお話もございましたけれども、昨今では、コロナ禍の対応や、子育て・介護との両立といった点で活用されているということを考えると、決して自律的な働き方ができる方だけが活用しているわけでもないというところも少し考えるところでございます。
テレワークには、そういったメリットはあるのですけれども、先ほど言ったようなプライベートな時間との混在による働きすぎの課題があり、我々としても懸念しています。だからこそ、適切な労働時間管理が必要なのだと考えております。先ほど黒田先生が言ったような労働者をずっと監視をするような過度な管理は問題があると思いますけれども、そういった形でなくても、適切な労働時間管理をするということは使用者として当然の責務であると思いますので、そこの部分はきちんとやっていただきたいということです。この点は、テレワークガイドラインの中でもきちんと労働時間管理せよというのは書いてございます。また、先ほど事業場外みなしを使ってもいいのではないかとおっしゃっていましたが、そもそもテレワークについてはパソコンのログイン、ログオフといった様々な形で労働時間をチェックすることとが可能だと思います。したがって、「労働時間が算定し難いとき」に適用できる事業場外みなし自体が本当に必要なのかどうかというところも、私どもとしては懸念しているところであり、あまりそれを使うということは好ましくなく、安易に適用しないほうがいいのではないかと考えているところでございます。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、それぞれの御報告から20分ずつ質疑をしたところでございますが、残った時間で、お二人の方にお話を伺いましたので、総合的に質問があれば質問していただき、さらに委員の皆さんとも意見交換ができればと思っております。いかがでしょうか。
山川先生。
○山川構成員 お二方といいますか、2つの団体のプレゼンテーション、大変ありがとうございました。共通してお伺いしたかったのですけれども、それが今のテレワークのお話で、連合さんのほうからは伺ったことになるかと思いますが、経団連さんのほうから、テレワークに関して深夜割増の話はあったのですが、労働時間のカウントの仕方等について何か御意見があるかどうかをお伺いしたいということです。
それから、この後、これは両方からお聞きしたいのですけれども、テレワークでは非常に様々なやり方がありますので、それを企業の労使で話し合うということはどのぐらいなされているのか。
もう一つ、インターバルの柔軟化というお話もありまして、それも企業によっていろいろ違うと思いますので、労使でインターバルをどのように運用するかというようなお話がなされているのか。現行法のスキームですと、労働時間等設定改善委員会というのがあるのですが、それに限る必要はないのですけれども、現場での労使で工夫みたいなものがどのぐらいなされているかを労使それぞれからお伺いしたいと思います。
そういう御質問をした背景は、昔の話になるのですが、週40時間制を入れようとするときに、労使が現場で小委員会等をつくっていろんな工夫をしていたという歴史があると思いますので、その辺りも踏まえて現場での状況、あるいは好事例みたいな形をそれぞれで出し合っていくことができるか等についてお伺いしたいと思います。
○荒木座長 鈴木さん、どうぞ。
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。テレワークにつきましては、まず、在宅勤務で働く方の属性が人によって異なりますし、アサインされる仕事内容も多様ですので、在宅勤務だから柔軟に働ける、自律的に働いている方であると私は考えておりません。ですので、御質問の趣旨と違うかもしれませんが、在宅勤務の方でも当然、午前中までにこの仕事を完成させてくださいという指示があれば、通常労働時間に適する働き方も多いと思います。一方で、私どもは特に企画職、つまり創造力を働かせて働いてもらう方には場所と時間にとらわれない働き方を推奨しており、そうした方々は自律的に、裁量的に働いていらっしゃると思っています。各社も社内の実情にあわせて工夫されていると承知しております。
時間のカウントについては、まさにどういう属性の方かによって違ってくると思います。その上で、先ほど冨高局長もおっしゃったように、パソコンのログイン、ログオフでチェックできることは事実ですが、実際にその仕事をしているかどうかはまた別の次元の問題として課題です。そうした課題に対して解決する何かアイデアを持ち合わせていませんが、いわゆる客観的な記録を取るという話と、仕事の実際の稼働というような話は分けて議論すべきではないかと思っております。
それから、現場でのインターバル制度等の運用等についてのご質問をいただきました。御質問の趣旨と違えば申し訳ないのですけれども、例えば働き方改革で、本社で統一的にやるような仕組みをつくられる例もあれば、各事業所の労使で話し合って改善していく例など、様々あると思います。例えばRPAを入れるとか、業務の手続を変える取組みは、労使の事業所単位で行われていると承知しています。
一方で、インターバル規制も含め制度については、比較的企業全体でされています。ある事業場にモデル的に入れてみたうえ、効果や課題などについて組合も含め労働者から意見を聞いて、よりよい制度にした上で本格導入する企業もあります。そういう意味で、ちょっと話がそれますけれども、企業単位か事業所単位かということについては、就業規則のように斉一的な取組、制度であり、全社で一律に入れようというものについては各事業所の意見も聞きながら、本社の中で決めていくということがなじむものも多いということで、私ども提案させていただいています。
例えば職種が同じような会社であれば、36協定の締結も、別にそこは企業単位とすることに適するケースもあると思っています。また、A事業所は研究所に対して、B事業所は営業所など、職種がばらばらな企業について、仮に36協定を締結する際代表者に各事業者から集まってもらって意見を本社の担当者から聞いて合意を取るということはワークしないことも多いと思っております。この企業単位か事業所単位かというのは、内容といいますか、取り扱うテーマ、話し合うテーマによって個々具体的に労使で話し合って決めていくということが現実的ではないかと思っています。
○山川構成員 ありがとうございます。むしろこちらの聞き方で、現場と申しましたのは事業場に限るという趣旨ではなくて、企業レベルでも労使でいろいろ話し合う工夫がないかという趣旨でしたので、非常によく分かりました。そういうものをいろいろ広げて積み重ねていくというのが有用かなと個人的には思っているものですから。話がそれるとおっしゃられましたが、非常に有用なお話で、私のほうでも少しそれるとすると、今回の話題ではないのですが、AIの導入などでも、労使が現場でスムーズにいけるような話し合いをするということが海外の調査等でも出てきましたので、それを積み重ねて周知していくということが重要かなと、そういう趣旨での御質問でした。ありがとうございます。
○荒木座長 続いて冨髙さん、お願いします。
○冨髙参考人 ありがとうございます。インターバルやテレワーク等に関して労使でどういった形で話し合いをしているかというところでございますけれども、これは多分いろいろなパターンがあると思います。例えば、常設の労働時間等設定改善委員会があるところではそういった委員会でやるというのもあります。また、例えば春季生活闘争などにおいて組合側から要求をして、その春季生活闘争の間や、またその期間に決まらない場合には、その後継続的に話をして決定していくというようなこともあり得ると思います。そこはまさに様々だと考えておりますが、やはり継続して労使で話し合いをすることが重要なのだろうということです。
また、先ほど少し鈴木さんもお話しされていましたけれども、特にインターバル制度は、今、設定改善法の中で努力義務という形になっておりますので、ある意味、労使で知恵を絞って、柔軟性を持って取組をしているところが多いのではないかと聞いております。例えば、11時間というインターバル時間を定めつつも、、実際にインターバル時間と所定就業時間がかぶっている場合には、就労したとみなして賃金を払うというケースもあります。そうすると、企業は大変なのですが、反対にそのようにならないように深夜残業のほうを減らしていきましょうという工夫をして、ある意味、インターバル制度を導入することが長時間労働の抑止力になっているようなお話も聞いたりしております。この辺りについては、厚労省のほうでも好事例の収集等をやられていますので、そういったものも活用しながら、全ての企業でどうしたらインターバルを導入できるのかという視点に立ち、もう一歩先の議論もできるのではないかと考えております。
以上です。
○山川構成員 ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
水町先生、どうぞ。
○水町構成員 鈴木さんのスライド16枚目の労働条件の公表のところについて鈴木さんに質問と、冨髙さんにも、もし組合としてのお考えがあればお聞きしたいのですが、世界的というか、ヨーロッパの大きな動きなのですが、労働条件の透明性と労使コミュニケーションがやはり重要だというところに今かなり方向性として進んできていて、例えば昔からある差別の問題、男女間の賃金差別とか、差別はいけないと法律で書いてあっても、差別はやはり残存するわけですよ。で、組織的差別をどう是正するかという古くからある問題から、新しいビジネスと人権とか、先ほど話があったAIとかアルゴリズムの問題についてもどう対応するかという問題で、労働基準法で最低基準を定めたらうまく解決できるという問題ではないので、基本的には、透明性を高めるって、労働者にちゃんと明示するという問題と、あと労働者組織、集団的に労働条件とか、新しく何か制度を変えるときには開示して協議するというレベルと、あと、外に公表して、求職者とかマーケットからもちゃんと評価する。
そして、その透明性と労使のコミュニケーションを実質化させて、変化とか新しい問題に対応しようという方向に来ている中で、鈴木さんのところで、他の法令で公表されていることとの整理が必要、また数字が一人歩きしかねない問題などを踏まえ慎重な検討が必要と書いてありますが、基本的に透明性を高めていって、そして労使コミュニケーションを充実させるという方向性は合っているかもしれないけれども、例えばこの条件についてはちょっとまだ時期尚早だとお考えなのか、例えば「数字が一人歩きしかねない」と書いてあるので、数字だけ出させるのはだめで、こういう数字が出ているのにはこういう理由とかこういうプロセスを今踏んでいるよと説明書きを併せて、女活法にもあるように、そういうのを書いてもらえば方向性としては透明性を高めるということは労使コミュニケーションを充実化させるためにも重要だという、それを少し具体的にお聞きしたいということと、冨髙さんにも、労働組合としてこの情報の透明化と労使コミュニケーションの充実ということについてどうお考えかお聞きしたいと思います。
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。まず、社内については、情報開示はどんどん進めていくべきだと思っております。もしかしたら連合さんも御主張されているところがあるのかもしれませんけれども、例えば36協定につきましても、やり方はちょっと置いておいて、どのような条件の中で今回こういう提案を会社側としてするのかということも含めて進めていくべきだと思っております。
対外的な公表ということにつきましては、もちろん、積極的に大企業については公表することでより優秀な方に来てもらうというメリットがあることは十分承知しておりますが、例えば平均の労働時間や平均の賃金を出すときに、企業の担当者は、分布みたいなものも見ないと実際のところが分からないということを懸念しています。職種や時期など、そういったところも見ないと、実態を必ずしも反映していない部分があるというような御懸念です。一方で、細かく開示すればいいのかということになると、かなりセンシティブな部分もあり難しいと思います。また別の問題として、大企業であれば、データとかをすぐに分析して出せる企業もあろうかと思いますが、労働基準法の最低基準として、中小企業、小規模事業所が細かいデータを出すことについて負担の問題もありますので、十分なコンセンサスを得られないのではないかと思っている次第です。
○冨髙参考人 ありがとうございます。私は、基本的には、情報が公表されるということは、求職者の方たちがその会社がきちんとした会社なのかどうかを見極め、正しい選択をする上で非常に重要だと思っています。確かに中小企業がどこまでできるかというところはあるかもしれませんが、基本的には透明性というものを求めていくべきだろうと思っています。
また、労使コミュニケーションとの関係で言いますと、例えば先ほど触れていただきました女活法の男女間賃金格差の情報公開等は、まさにこれは労使コミュニケーションの非常にいいきっかけにはなるのではないかと思っております。例えば、男女の賃金格差があったときに、その要因は企業によって異なると思うのですけれども、それはまさにどういうところに問題があってこの差が生まれているのかというのを労使できちんと話し合って、改善していくという営みにこれは活用できると思っております。したがって、公表することと労使コミュニケーションをセットで進めるということは十分に意味がというか、実効性はあるという気はしております。
○水町構成員 1点だけ。ヨーロッパも同じような経緯を踏んでいまして、まず大企業から始めると。大企業から始めて、だんだん中小企業に進めていくけれども、その過程の中でより具体的な中身を公表したり、かつ、数字だけで一人歩きするのがいけないので、労使コミュニケーションの結果、どういう内容で取組を進めているかも含めて開示させたり公表させたりするというのを段階的に踏んできているので、まず日本も一歩ずつ進んでいって、中小企業も含めてそういうのをどうしていくかというのが課題になるかなと思っております。
以上です。
○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 すみません、何度も。
1点、鈴木様にまずお伺いしたいのですけれども、先ほどの事業場単位と企業単位の件なのですが、テーマによるのではないかと経団連として考えていらっしゃるということで、36協定は事業場単位というような、そういう御意見もございましたが、具体的に企業単位でも構わないのではないかと考えていらっしゃる項目はどういったものがあるのかということを教えていただきたいということと、それを受けて冨髙様のほうにお伺いしたいのですけれども、その項目について連合としてはどのように考えていらっしゃるかということについてお話を聞ければと思います。お願いします。
○鈴木参考人 ありがとうございます。繰り返しですけれども、企業として、その締結単位の各事業場の属性のようなものが同じ、あるいはテーマが同じかどうかがメルクマールになると考えています。そのため、就業規則に記載される労働条件であっても事業所独自の、例えば寒冷地手当みたいなものは事業所単位で決めるのが適当だと思います。一方で、比較的労働時間も含めて同じような条件の中で就業規則に書くということであれば、企業単位に適するものが多いと思っています。
あと、裁量労働制も適用者は比較的属性が同じような職種の方々でいらっしゃいますので、例えば関西地区で3つ4つの労使委員会を一緒に設けて議論するほうがいいのではと考えます。この場合、事業所ごとの具体的な課題みたいなものを共有し、議論が活発になる可能性があると思っています。
さらに敷衍すると、労働安全衛生法の安全衛生委員会も事業場単位ですが、同じような職種の中でもヒヤリハットの経験がある事業所とない事業所があるとか、ヒヤリハットがあったときに、どう対応するかというノウハウがあるところとないところがあるといったことがあります。このときに、本社レベルとか統括する支店の企業側の担当者がいろいろと統括する事業所の間でノウハウを提供し労働安全衛生委員会で活発に議論して、どういう研修をやったらいいのかとか、パートさんの採用時にこういう簡単なチェックリストでまずはやってもらおうかみたいな、そのような情報の共有と協議の活発化が期待できる部分も多いのではないかと思っております。
○冨髙参考人 ありがとうございます。基本的には事業場単位が望ましいかと思っています。事業場単位で締結等を行っている事項は、36協定以外にもいろいろなものがあって、本研究会でも以前少し言及があったと思いますけれども、例えば社内預金制度についても、地元の金融機関との関係も含めて、事業場ごとに状況に応じて労使協定を締結し届出を行っているようなところもあります。また、そもそも地域によって労働者の意識とかそういったものも異なる中で、法人単位で本当にやってうまくワークするのかというのは疑問であります。
なお、先ほど安全衛生委員会の話をされておりましたけれども、事業場毎の課題や好事例の共有に課題があるのであれば、法人単位で一括で設置するということではなくて、事業場毎の課題などを情報共有する場があればいいわけで、共有された情報を事業場に持ち帰っていただいて、そこでうまく使っていただくという、ある意味、PDCAみたいなことは十分できるのだと思っております。したがって、私どもとしては、法人単位での締結にする必要はないと思っております。
○荒木座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、大体時間も近づいてまいりましたので、ここまでとさせていただきたいと思います。鈴木様、冨髙様には貴重な御意見をお聴かせていただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。
それではこれにて、第7回の研究会は終了させていただきたいと思います。構成員の皆様には、お忙しい中、御参加いただきまして、どうもありがとうございました。