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第5回労働基準関係法制研究会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和6年3月26日(火) 14:00~16:00
場所
AP虎ノ門 Aルーム
議題
労働基準関係法制について
議事
- 議事内容
- ○荒木座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5回「労働基準関係法制研究会」を開催いたします。構成員の先生方におかれましては、御多忙のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。
本日の研究会につきましても、会場参加とオンラインの双方で実施することといたします。
本日は、安藤先生、石﨑先生、神吉先生、黒田先生、島田先生がオンラインでの参加、水島先生については御都合で御欠席となっております。
カメラ撮りは、ここまでということでお願いいたします。
(カメラ退出)
○荒木座長 それでは、議事に入ります。
本日は、第1回で単純集計結果を説明いただきました労働時間制度等に関するアンケート調査のクロス集計等の詳細と、労働時間制度等に関する実態調査について議論し、残りの時間で第2回から第4回までの論点のうち、さらに検討すべき点について議論を深めたいと考えております。
まず、資料1及び資料2について、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課労働条件確保改善対策室長 資料No.1でございます。今、座長からお話しいただきましたとおり、第1回の際に単純集計を速報として御紹介いたしました労働時間制度等に関するアンケート調査の結果でございます。今般、第1回の資料にクロス集計の結果とウエイトバックしたものの結果を付け加える形で資料を準備してございます。めくっていただきまして、左肩にクロス集計と書いてあるスライドとウエイトバック集計と書いてあるスライドがあろうかと思います。これらが今回追加をしたものでございます。これがないものについては第1回にお示しをしたものと同じでございます。
この中で、まずウエイトバック集計について簡単に申し上げます。これは今回のアンケート調査のサンプルを日本全体の産業割合に戻す作業を行ったものでございますが、結果としてはほとんど数値に傾向等の違いが現れなかったということで、参考として記載をさせていただき、説明は割愛をさせていただきたいと思います。
クロス集計でございますけれども、これは前回お示ししたものの中から必要なものについて選択肢をクロスして集計したものでございます。これについても分量がございますので、特徴的な結果が出ているものを代表して3つほど御紹介させていただきたいと思います。
まず、スライド番号25、26をお開きください。こちらは社内で労働関係の制度変更を行う際に経営陣が誰の意見を聞くかというものでございますが、25ページ、第1回でお示ししたものでございます。その際、役員に意見を聞くというのが46.6%ある一方で、過半数労働組合ですとかそうでない労働組合に関しては、それぞれ4%、7%と非常に低い結果であったということで、これはどういうことなのだろうかというような御指摘をいただいていたかと思います。
26ページですが、これに関してクロスをした結果、その原因が分かったということで御紹介をいたします。今回のサンプルですが、そもそも組合がない事業場が非常に多かったということがございます。組合がない事業場を除きまして、過半数組合がある組合、過半数ではないが組合がある事業場というところで見ますと、役員に意見を聞くよりも組合に意見を聞くほうが頻度としては高く出てございまして、サンプルの偏りがあったということで、制度変更を行う際に決して労働者の意見を聞いていないということではないという結果でございました。
次に、労働者調査での特徴的なものでございますが、スライド67番、68番をお開きください。これも第1回の御議論の中で御指摘いただいたものでございます。勤務間インターバル制度に関しての部分で、労働者の回答として、勤務間インターバル制度の導入を希望するかしないかというものでございます。この中で導入の希望がないという結果が66.9%であり、希望なしが非常に多いが、これはどういうことなのだろうかというような御指摘をいただいていたかと思います。
これに関してクロス集計したものが68ページでございます。先ほどと違いまして、これに関してはこれで全てが説明できるわけではございませんが、特色として出ているところがございます。下のほうのグラフですが、そもそも残業時間がどれぐらいあるのかというものの回答と、勤務間インターバル制度の導入希望の回答をクロスしたものでございます。結論といたしまして、導入希望はないと言っている方に関しては、そもそも残業時間がゼロ時間である方がかなりの数いらっしゃったということ。また、全体として100時間以上といったような長い残業時間の頻度も低かったということで、そもそも残業が少ない人は、勤務間インターバルを必要もないので希望しないケースが多かったのではなかろうかというのが傾向として取れます。もちろん残業があってもインターバルの導入希望はないと言っている方はいらっしゃいますので、これだけで全ては説明ができませんが、そういった特徴があったということを御報告させていただきます。
最後に、後ろのほうで左肩に赤く特例措置とついているものがあろうかと思います。これは現在、週の法定労働時間が44時間の特例対象となっている事業場を対象に調査したものでございます。第1回で御説明したときには、基本的には週44時間の特例対象となっているところでも、実際には週労働時間が40時間以下となっているところが多く、特段影響はないと答える方が多かったということを御紹介しましたが、これに関して産業別にクロスを取ると少し特徴が出てきたということで御紹介します。
スライド89番を御覧ください。これは業種別に週44時間特例対象の事業場の所定労働時間、すなわち労働契約上の労働時間は何時間ですかというのを取ったものでございますが、この中で理美容業に関しましては、8時間を超えるところで所定労働時間をはめているところが比較的多かったと。また、週で考えますと、下にありますように、週労働時間が40時間を超えるところで設定している事業場割合が理美容業に関しては頻度が比較的高く出ているというような結果でございました。一方で、90ページを御覧いただければ分かりますとおり、実際の総労働時間はというと、決して理美容業もそこまで長時間労働があるわけではないというような実態もございました。
こういった所定の労働時間の違いから、法定労働時間を週40時間にすることの支障の有無についても影響が出てきておりまして、93ページと、少しまたぎますが95ページを御覧いただきますと、93ページで全体に聞いたところでは、83.5%が法定労働時間を週40時間としても問題ないと答えられておりましたが、95ページにありますように、この中でも理容業、美容業の方々に関しては、一定支障があるというふうにお答えになった頻度が高かったというものでございます。もちろんこれは産業別にしますと、理美容業の方はサンプルが15事業場でございますので、統計的に有意かどうかということには疑問がございますが、結果としてはそのようなものが出ていたところでございます。
以上がクロス集計等の御報告でございます。
これに関しまして、次に資料No.2を御覧ください。「労働時間制度等に関する実態調査について」ということで、これは来年度の事業として私どもがやろうとしているものでございます。
おめくりいただきまして2ページ、中身でございますけれども、先ほど御紹介しましたものはあくまでもアンケート調査ということですが、今般、調査の規模を拡大いたしまして、また、政府内での手続を取った正式な統計調査として、働き方改革の施行状況の実態調査を行おうというものでございます。調査目的は、こちらにありますとおり、働き方改革の見直しのための基礎資料を得るために実態を把握するというもので、それぞれ1万事業所、労働者1万8000人という母集団で調査をしようと考えております。サンプルにつきましても、経済センサスに基づきます事業所母集団データベースを活用いたしまして、基本的に日本国内の実相を捉えられるようなサンプル設定にしようというものでございます。
調査項目については、3ページ、4ページ、5ページに事業所調査、労働者調査と分かれておりますけれども、基本的には既存の統計調査では取れないような、しかして働き方改革には関連をしているというようなものに関する調査事項をつくりまして、統計を取りたいと考えているところでございます。
こちらは現在、政府部内で総務省の統計局とも調整をしながら手続を進めているところでございますが、このタイミングで先生方に何か御示唆等をいただければということでお示しをさせていただいたものでございます。よろしくお願いいたします。
最後に参考資料について少し御紹介いたします。参考資料のNo.1とNo.2を配付させていただいております。参考資料No.1に関しましては、試みではございますけれども、私どもの監督署に提出のあった36協定のうち、紙で申請のあったものに関して集計等の作業をしている際に数字として取ってみたものでございます。正式な統計等ではございませんけれども、何らかの御参考にということで配付をさせていただきます。
それから、参考資料No.2でございますけれども、EUのプラットフォーム労働に関する指令案についてでございます。こちらは第1回等でも資料を出させていただきましたが、この3月にEUのほうでも少し動きがございました。それを踏まえまして、資料のほうを修正させていただいたものでございます。
事務局からの資料説明は以上でございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御意見等がございましたらお願いしたいと思います。オンラインの先生方も手を挙げるような動作をしていただければと思います。
石﨑先生、お願いいたします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。統計の報告について、ありがとうございました。
1点だけコメントになりますけれども、理美容業において、法定労働時間が週40時間だと支障があるというような統計結果があるところで、理美容業界の実態について、もし何らかの機会に確認可能であれば御確認いただきたいというお話になるのですが、理美容師としての研修ですとか研鑽時間が、業界において労働時間として処理されているのか、自己研鑽時間として処理されているのかといった辺りの実態が何か分かる機会があれば、御確認いただけるとありがたいなと思った次第です。
以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
事務局、いかがでしょうか。
○労働条件政策課労働条件確保改善対策室長 こちらにつきましては、今後、機会を捉えて業界ともお話をしながら検討を進めていければなと考えてございます。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。今、資料2の調査のほうについてもコメントしてもよろしいのでしょうか。
○荒木座長 どうぞ、お願いします。
○黒田構成員 分かりました。ありがとうございます。
非常に重要な実態調査だと思うのですけれども、1回目ぐらいに話が出ていた無償ケア労働との兼ね合いで自発的に多様な働き方を選んでいるのか、そうせざるを得ないから働き方を選んでいるのかみたいな話があったと思うのです。その辺りもできれば解析で分かると良いと思います。労働者調査の項目として、例えば社会経済的というか社会階層が分かるような指標と、あと、あまり細かくは聞けないと思うのですけれども、家事、育児、介護、地域活動といった無償ケア労働にどれぐらい今携わっているのか、もしくは無償ケア労働だけではなくて自己研さんの活動を一体どれぐらいしているのかという実態を項目に加えられると良いと考えます。社会階層については、世帯年収なのか自己年収なのかは分かりませんが、その辺りの指標も併せて取ると興味深い解析ができるのではないかと思いました。
ただ、項目数が限られているという話だったと思うので、どこまで入れられるかはいろいろせめぎ合いがあると思いますけれども、ちょっと御検討いただければと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。これは正式の統計調査で、項目もかなり厳格で、ある部分を入れるのでほかの部分を削ったというようなこともございますので、どのようにできるか少し事務局で検討いただくのがいいかと思いますけれども、御意見は承りました。
首藤先生、どうぞ。
○首藤構成員 では、私も今の資料2の調査の件なのですけれども、御検討いただければという点なのですが、事業所調査のところで、そもそも事業所というのをどのように扱っているのか。かなり事業所が大くくりな形に変更されているような実態もあると聞いています。つまり、これは厚労省のほうでも何らかの定義をお持ちなのかもしれませんけれども、事業所の区分を会社のほうで自由に設定できるときに、従来の事業所を2つ3つまとめた形の大きな事業所にして、そこで協定を結ぶというようなことも起きている実態があると聞いていまして、実際の事業所の規模で見ればいいのか、何で見ればいいのか、すぐに何か的確な数字があるわけではないのですけれども、どのような形で区分けしているのか、かつ、それが変動してきているのかどうかみたいなところも分かると、何回か前の事業所単位か企業単位かという議論にも非常に資するかなと思っているところではあります。
○荒木座長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課労働条件確保改善対策室長 御示唆ありがとうございます。今回の統計調査に関しましては、2ページの事業所調査のための事業所母集団データベースというものを使いますということでやらせていただいていますが、これは総務省統計局のほうでまとめている正式なものでございます。経済センサス等の調査を行いながら、日本全国の事業所について、A事業所、B事業所と事業所のリストがずらっと並んでいて、そこから抽出するという形になりますので、ここで出てくる事業所ということになりますと、企業側が「これが事業場です」といってくくっているものではなくて、公式の統計として事業所としてカウントされたものが出てきます。そこから取っていくものになりますので、企業側がどうくくっているかというものを取るのは、なかなか難しいのかなというところでございます。
○首藤構成員 今回の調査はよく分かりました。結局、労使協定を結んでいる、36協定とかを結んでいる事業所の単位がどうなっているかというところが私としては気になっていて、今回の調査では難しいかもしれないですけれども、いろいろなくくり方が現在においては行われているようなので、その辺は慎重に取り扱う必要があるかなという問題意識です。
○荒木座長 後ほどまた議論するのかもしれませんけれども、今の首藤先生の御質問には、元来、労働基準法の施行単位として事業場単位で適用しているのですけれども、それについては厚労省のほうでも事業場をどのように考えるかということは見解を示してきていますね。それが業態も変わってきたという中で、変化がそもそもあるのかとか、従来出している事業場の考え方が時代の変化に応じて変わってきているかとか、そういったことも情報を今日でなくてもいいのですけれども、提供していただけるとありがたいと思います。
どうぞ、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 先ほど首藤先生及び荒木座長から御指摘いただいた点でございますが、労働基準法長通達におきましては、事業の概念についての考え方を昭和22年以来整理してきているところでございまして、基本的には「同一場所にあるものは分割することなく一個の事業とする」ということと、「場所的に分散しているものであっても、出張所、支所等で規模が著しく小さく、組織的関連ないし事務能力等を勘案して一の事業場という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業場として取り扱う」こと、この考え方自体は全く変えていないのですが、恐らく先生の問題意識でもあり、我々もそこをどう考えるかというところが今回のテーマだとも思っておりますけれども、現在かなりクラウドなどで集約的に労務管理が行われるようになってきている中でも、一の事業場という程度の独立性というものが、物理的に建物が離れていることをもって、昭和22年当時と同じなのかどうかということの実態については、確かに我々も明確に分かりかねているところはありますので、この場で先生方の実務上の御知見などがあればお伺いしたいと思いますし、我々も別途、現場の情報などで把握してお知らせできることがあれば、また整理してお知らせできればと思っております。
○荒木座長 ありがとうございました。後ほどこの事業場についてはさらに議論する機会があるかと思います。
お待たせしました。安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 安藤です。よろしくお願いします。
私も資料2についてです。質問できる項目数に限りがあるということは承知していますが、最終的にどのように使うのかということから設問を考える必要があるということで、今回、制度の調査目的に書かれているのは労働時間制度等の実態なので、「等」に入っているのかもしれませんが、制度としてどのようなものがあるのかだけを見たいのか、それとも働き方の実態について見たいのかによって質問の仕方が変わってくるかと思います。もちろんほかの政府統計によって把握できているのだったら結構ですが、例えば、会社の制度とは違うが、働き方に関連するものとして通勤時間がどのぐらいなのかといった数字はどうか。
また、テレワークについて、中抜けについての質問はすることになっていますが、テレワーク自体の頻度ですね。また、どういう形で行われているのか。例えば、9時から午後3時までは会社で働いて、帰宅して子供の世話をしてから夜テレワークをするとか、または週に3回オフィスに行って、週に2回はテレワークなのかみたいなテレワークの行われ方などについても知ることができると有益かと思いました。
あとはつながる権利関係で、会社に対して時間外でのメール処理とかこういうものについても質問することになっていると思うのですが、労働者側にどのくらいの頻度で、またはどのくらいの時間で、労働時間外にもメールの処理など自宅でできる作業をしているのか。このようなことを聞くなども、働き方の制度ではなく、働き方の実態を把握するという意味では有益かと思うのですが、この辺りはいかがでしょうかという質問です。よろしくお願いします。
○労働条件政策課長補佐 回答させていただきます。こちらの調査で聞いていきたいことは、やはり実態を聞いていきたいと基本的に考えているところでございます。今先生から御指摘いただいた点、既存の統計で例えば通勤時間が取れるものがあるのかどうかということなども含めて、どういうふうに入れられるかというのは検討をさせていただければなと考えております。
テレワークについては、中抜けの時間の取扱いは聞いていくことで考えていまして、また、テレワークを実施しているか、していないかというところまでは確認をしていこうと考えているのですけれども、それをより細かく、1日の中の一部なのかとか、1週間の中の一部なのかとか、そういったことは今、設問自体には入れていなかったので、ちょっと考える必要があるかなと思っております。
また、つながらない権利についても、制度的に企業側でルールを決めているかどうかというところを聞いています。こちらもかなり人によってまちまちだったり、また、何か緊急的な事態が起きている場合なのか、それとも恒常的なのかなど、その状況によっても結構大きな差があるかと考えておりますので、どう実態を聞いていくかというのはあるかと思うのですけれども、いずれにしても、いただいた御意見を踏まえて検討させていただきます。
○安藤構成員 よろしくお願いします。
○荒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、いただいた御意見も踏まえて、事務局にさらに検討していただければと思います。
それでは、残りの時間で、これまでの論点と御意見のうち、さらに深く検討すべきものについて議論していきたいと思います。事務局に、これまでの論点及び御意見等を資料3としてまとめていただいております。議論に先立ち、事務局から補足等をお願いしたいと思います。
まず最初は、第2回の労働時間制度について、事務局から補足説明をお願いします。
○労働条件政策課長 第2回の労働時間制度に関しまして、資料3に基づきまして補足説明をさせていただきます。
第2回研究会におきましては、資料3の2ページにあります1から3、細かく分けますと11個の項目を論点として考えられることとして提示して御議論をお願いしたところでございます。労働時間関係で第1回の研究会で出ました御意見については3ページから4ページに、第2回研究会でいただきました御意見につきましては5ページから11ページまでにかけて、時間外労働の上限規制ですとか年次有給休暇、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度、勤務間インターバル制度、休日・休暇、割増賃金等々、項目によって一応分類しつつ、御発言いただいたものを整理させていただいております。
基本的にはこれを御覧いただきながら、さらに議論を深めていただければと思っておりますけれども、事務局として若干補足で申し上げますと、まず、基準法34条の休憩につきまして、その長さとか一斉休憩の在り方などについてどう考えるかというところは御意見がなかったので、もし何らか御意見がありましたらいただければ幸いでございます。
それから、年次有給休暇につきましては、5ページや8ページで御意見を整理させていただいておりますけれども、時間単位年休について、例えば上限5日の日数をどうするかなども含めた制度の在り方についてですとか、一方で時季指定義務に関しましては、その日数とか指定のタイミングなどについて法律でどこまで一律に定めるかということも含めて、さらに御議論をいただければなと思うところでございます。
また、7ページのインターバル、それから9ページの割増賃金にも関わるのですけれども、いわゆる深夜の労働につきましては、一方で社会が24時間化しているとか、国際的なお仕事も多いというところで、かなり深夜帯に働くニーズあるいは自分が深夜に働きたいということとの関係で割増賃金規制をどう考えるかということもある一方で、そもそも仕事と生活の調和とか労働者の健康の保持という観点から、回数を制限することの検討といったことも、設定改善指針に既に現行記載しておりますけれども、深夜帯の健康確保という観点からの在り方、両面から深夜の働き方について何らかもう少し御意見をいただければなと思っているところでございます。
それから、テレワークにつきましては、先ほど調査の御検討の御意見もございましたけれども、実際のところ、どこまで厳密な労働時間管理を求めるべきなのかですとか、みなし労働時間制の必要性なども含めて、テレワーク中の労働時間管理につきまして、さらに御議論を深められればとも思うところでございます。これに限らず全体を見渡していただきながら、様々な角度から御意見を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 それでは、今、事務局から第2回についての補足がありましたけれども、第2回には首藤先生が御欠席でいらっしゃいましたので、よろしければ、まず口火を切っていただいて、その後、皆さんで議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○首藤構成員 第2回は欠席しまして申し訳ございません。事前に資料も拝見して、コメントも出させていただいたのですが、1点、5ページの長時間労働者に対する健康確保措置のところなのですけれども、今回猶予が与えられた3業態、自動車、建設、医師等の上限規制の適用はこの4月から始まりますが、特に医師、自動車運転の職業については一般則よりも長い上限が認められている状況ですので、これをどうするのかというところは少し気になっているところではあります。国会の附帯決議の中でも、速やかに一般則にするというような項目も入っていますので、やはり過労死ラインぎりぎりのところで今上限が定められているような実態で、健康確保という点からも問題は大きいかなというふうに私は思っているところではあります。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、ほかの先生方から御自由に御発言いただきたいと思います。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。私のほうから4点ほど意見を申し上げさせていただければと思います。
まず、一斉休憩の点についてなのですが、確かにこの点、一斉休憩を取るのが望ましい業態もあるのかもしれないですけれども、果たしてそれを原則的な形で規定していくのがよいのか。どちらを原則とするのかという話だと思うのですが、昨今のいろいろな業態に照らして考えたときに、それが本当に原則的な形態なのかというのは考える余地があるのではないかという気はするところです。
あわせて、休憩については、休憩で回復することによって、またその後の午後の仕事をしっかりするとか、もちろんそういった効能はあると思うのですが、果たして一律に45分であるとか1時間という形で規定するのがいいのかどうかというところも実は検討対象になり得るような気がします。こちらはもちろん原則的な形で休憩時間を規定することは必要かと思うのですが、他方で、そこで休憩時間が入ることで帰宅が遅くなることが嫌だという労働者側のニーズも場合によってはあるかもしれず、また、安全などの関係から必ず休憩を取らなければいけない業態はもちろんあると思うのですが、そうではないような業態ももしかしたらあるのかなと。そこで、例えば労使協定によるデロゲーションみたいなことも考える余地はあるのではないかという気がしているところです。
休憩については以上になります。
続いて、時間単位の年休について、これを広げていくのかどうかという点については、実はなかなか一概に議論しにくいところがあるのかなという気がしておりまして、結局この時間単位の年休というのが、現状、柔軟な働き方を可能にする形で非常に活用されているという面があると思うのですけれども、要するにその必要性というのは、例えばその職場でフレックスが入っているのかとか、その職場がテレワークだったりするのかとか、それによっても大分ニーズは変わってくる部分があるのかなという気がしておりまして、一律にどうすべきかというのはなかなか難しいなというところですし、労働時間制度のほうの柔軟化と併せて議論していかないといけないのではないかということを感じているところであります。
それから、テレワークに関しても、テレワーク時に恐らくいろいろなモニタリングのシステムを使って非常に厳格な管理をやっているところもあれば、中抜けを緩やかに認めたり、緩やかなところもあるという中ですので、一律にテレワークだったらこの労働時間制度ということにはならないのだろうと思うのですけれども、そういった非常に緩やかな管理をしているケースにおいて、みなし制のような仕組みを利用可能にするという制度設計はあり得るのではないかとまずは考えるところです。
他方で、この研究会での問題意識として、制度のシンプル化というような話もある中で、みなし制というのが唯一の解なのか、ほかのいろいろな仕組みと統一的な形でもうちょっと整理することも考えられるのかというのも、別途、将来的な課題としては論点になるのかなと感じているところであります。
最後、深夜についてなのですけれども、やはり深夜に働くことでの健康への影響とかはあると思うので、ある意味、深夜労働に対して、特に企業が健康経営などの観点からちょっとストップをかけるとか、そういったことは当然あっていいと感じているところです。ただ、他方でこの割増賃金規制というのがそのこととの関係で直接影響しているのか、深夜労働の抑制という点において意味を持っているのだろうかというところは若干懸念するところでして、逆に割増賃金規制があるがゆえに、労働者は深夜労働をしているけれども、そのことは申し出ず、要するにこっそり深夜に働いている状況になってしまうようなことも生じているのではないかということが懸念されるところでして、私としては、割増賃金規制によって深夜労働の抑制を図るよりは、むしろ深夜労働しているのであれば、しているということで申告をしてもらって、しかし、それがあまりに常態化していたり健康に影響が出そうなところで、それをちょっとストップするような仕組みのほうがより望ましいのではないかという気がしています。
後の議論にも関わってくるかもしれないのですけれども、この割増賃金規制の趣旨のうちの時間外労働の抑制の趣旨と時間外労働に対する補償の趣旨というのがあるかと思うのですが、その補償の部分に関しては、それこそどういうふうに報いるかというところ、処遇の問題と大きく関わるかところで、労使自治にある程度委ねていい部分もあるのではないかという気もしているところでして、以上のようなことを考えているところであります。
すみません。長くなりましたけれども、意見としては以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
続いて、黒田先生、お願いします。
○黒田構成員 ありがとうございます。4点コメントをさせていただければと思います。
まず、先ほど澁谷課長がおっしゃった基準法34条の一斉休憩の観点について、基本的に石﨑先生がおっしゃった御意見に同意かなと思いながら今聞いていたのですけれども、やはり安全とか疲労の蓄積を緩和するという観点で、幾ら労使で協定して同意したからといって、減らせないとか変えられない休憩もあると思いますので、緩和する、デロゲーションを適用するときには、何らかの科学的エビデンスをもって変えるのだと考えています。実態に応じた運用は可能だけれども、ただ単に、労使両方がいいと言ったから休憩はこういうふうに分割しましょうとか、思い切ってこういうふうに変えましょうみたいなのはちょっとどうかなと、少し抑止するようなコメントが入るといいのかなとは思いました。
2点目は勤務間インターバル及び深夜帯の勤務について、これに関しては、やはり産業保健の立場で言うと、深夜勤務を常態的に行うときはもちろん、不規則に行うとしても、明らかに健康への悪影響がございますので、できるだけ勤務間インターバルを保つような規制が残るといいのではないかなと思っています。もちろんどのように現場で応用していくかという緩和の観点は必要だと思うのですけれども、現場で気になっている具体的な点もあります。勤務間インターバルを制度として導入するかどうかは別として、突発的なことは仕方ないけれども、基本的に勤務間インターバルをきちんとやっていこう、長時間抑制もセットでやっていこうね、という機運が今あると思います。一方で、国際的な電話会議などの海外対応では、割と日本が割を食いやすいというか、日本が深夜帯に対応するような電話会議が設定されやすかったりとか、あとは出張、特に海外出張を行い帰ってきて翌日も普通に勤務しているなど、勤務間インターバルがちゃんと保てていないのではないかという実際の状況も見聞きします。その辺りに関して何らか、法律で決めることはちょっと難しいでしょうけれども、ガイドラインレベルで、健康は保ちつつ、生産性も上がるのですよ、という例を示せるといいのではないかなと思っています。
3点目に、テレワークの働き方、どこまで厳密な労働時間管理をということがありましたけれども、まず、テレワークというのは、ある程度自律的管理が、健康面でもそうですし、働き方としても自律的に働ける人が行うものであるという大前提があると思うのです。そうでないと、一から十まで管理者が指示するような状況なのにテレワークするということは想定し難いのではないかと健康管理の場面では思っているのです。ですので、仕事の仕方においても健康管理においても、自律的管理ができる人が行うものであるという大前提で、かつデジタルモニタリングがセットで実施されるのが適切ではないかというふうに思っております。
原則としては厳密な労働管理が必要だと思うのですけれども、そういう意味ではテレワークで厳密な労働時間管理を行うというのは正直困難ではないかと思っております。そのため、例えばみなし労働時間制度というものを適用するといったことが現実的ではないかなと思っています。
ただ、デジタルモニタリングをどこまで行うかということについて、以前、別の研究会でテレワークの働き方について検討していたときに、カメラをオンにしてずっと監視しているような強すぎるモニタリングはメンタルヘルス上悪影響で、そういうものは推奨されていなくて、緩やかなモニタリングや、あとは健康影響のモニタリングというものが推奨されているのを御紹介したことがあります。ILOなどが指針を出しているのですけれども、どういうデジタルモニタリングがいいかは、また別途検討が必要なのかと思います。
4点目は、全般的な意見として、たくさん働きたい人は自由に働かせてくれという議論もあると思うのですけれども、健康と安全を害する権利は本人であってもないと思いますので、やはり労働基準法でどうやって最低限を決めていくかということは大事な議論だと思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
神吉先生、お願いします。
○神吉構成員 ありがとうございます。私からは1点に絞ってコメントします。時間外休日労働の上限規制、労働時間の絶対上限に関して、導入時は労使が合意した実現可能な時間というところで落ち着いて、その後どうするかが課題かと思います。その根本的な考え方、多様な職場に合わせた柔軟性を確保するという要請が労働時間の上限に関してどこまで正当化できる原理なのかを考え直す必要があると思います。これは同じく最低条件の設定であるところの最低賃金と余りにも違い過ぎるのではないか。最低賃金の場合、減額特例はあれども、ごく少数の例外を除けば、都道府県で設定された地域別最低賃金について、うちの職場ではもっと低い賃金でもいいんだ、それでみんなの雇用が守れるのだったらそれでいいと合意しているからといって、その職場のニーズに合わせてどんどん引き下げることはできない、絶対的な最低基準として機能しているわけですね。それはやはり社会的に許されない水準だと、そういう強行性が認識されているのです。
お金より、人生にとって有限な時間のほうが重要な資源であるわけで、それについても個人の健康確保という観念だけではなくて、合意による最低基準のダンピング的なものを防ぐという観点も必要ではないかと思います。再三指摘されているように、現在の最低基準である上限規制は、これまでなかったのが本当に異常なくらいで、入ったとしてもいわゆる過労死基準で、最低基準としては低過ぎます。毎年3桁の人が過労で倒れている状況、そして、格差の元凶にもなっている、そうした長時間労働を撲滅するのであれば、職場の多様性確保という観点よりも、時間の安売りを許さないという、最賃のように公正な基準を絶対的に入れていく、そうした政策的観点も重要だと考えます。
先ほど冒頭で、インターバル規制について必要ないと考えている人の多くは、そもそも残業がない職場でそのようにお答えになった方が多かったという統計もありました。実はそんなに残業がない職場もあるのに、あまりにも基準を考える人たちが長時間労働過ぎて、無理だと思い込んでしまっている節もあるのではないか。そもそも法定労働時間は人間的な生活をするための1日8時間、週40時間という設定なので、どこまでこれを逸脱できるかという観点を、まずは基本の法定労働時間で、本当にしようがないときにはせいぜい月45時間ですか。でも、45時間も、私生活の中でのいろいろな責任も考えれば本当に妥当なのか再考は必要だと思いますけれども、基本に立ち返って、最低基準としての強行性を考え直す必要があるのではないかと私は考えています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
続いて、安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 よろしくお願いします。今まで先生方から意見があった話で、幾つか私の認識を確認することも踏まえて少しお話しさせていただきます。まず、法定労働時間や時間外労働の上限についてのお話が先生方からございましたが、健康確保のために必要な労働時間規制というのはどのような水準なのかというのが私にはいまいちよく分かっていなくて、私のこれまでの認識では、過労死基準というのは、これは以前もお話ししたかもしれませんが、この時間を超えたら人がばたばたと健康被害で倒れるようなものではなく、反対に、健康被害が出たときに、この水準を超えていたら因果関係があると認めようと、そして、そこは広く労働者を救うために、かなり因果関係としては緩やかに認めるようなものなのだと認識していました。
その観点からは、今、それこそ劣悪な条件の工場労働とか炭鉱労働みたいな時代とは働き方が変わってきていることを踏まえますと、医学的に見て、どのような業種、職種において、どのくらい働くと健康に悪影響があるのか。パワハラとかいろいろな要因もあるでしょうけれども、この辺りでもう少し医学的な根拠がある数字を知りたいなと感じているところです。
次に、家庭生活の両立という話、今回の資料にもあるわけですが、これが全員に共通して必要なのかということは、私は個人的には疑問をまだ持っています。例えば配偶者も子供もいない若者の場合に、プライベートの時間と仕事の時間の切り分けをすることに対して、外から介入すべきかといったことをどう考えるか。これも前に話した話ですが、例えばここにいらっしゃる先生方も含めて、キャリアを考えて集中的にスキル向上に時間を使ったからこそ、皆様は研究者として結果を出されているといった面もあるのではないか。
黒田先生から、本人の健康を害する権利は本人にもないというお話がありましたが、それは本人が健康を害してしまうと、例えば医療保険制度や労災制度を通じてほかの人にも悪影響があるとか、家族にも迷惑をかけるという意味で、経済学の言葉で言う外部性があるから規制せよというのは理屈としては分かりますが、個人が単体として、昔、スチュアート・ミルとかが議論した愚行権のような議論ですね。こういうものをどこまで認めないのかというのは気になるところです。例えば、お正月にお餅を食べて亡くなるお年寄りがいるわけですが、もうお餅は危険だから禁止すると、60歳以上は食べちゃいけないと言われたら、嫌だと言う人もいる気がします。例えば研究者の中でも、仕事で大きな、いつか教科書に載るような仕事をしたいと思って日夜研究に打ち込んでいる先生方もいらっしゃると思いますが、そういうのは一切禁止してみたいなことをどこまで線引きするのがもっともらしいのかといったときに、ゼロイチで切れるものではなくて、もちろん労働時間の長さと健康への影響というのは、人によっても違うし、また、徐々に効いてくるものなので、線引きが難しいことは分かっていますが、今の基準をどうつくってきたかという経緯と、これからのつくり方についての考え方を、もう少し働きたいという人の視点からのことも考える必要があるのかなというのは感じたところです。
あとは、割増賃金について石﨑先生からあった労働時間を抑制する効果については上限規制、また、金銭的に報いるというケースでは時給で報いなくてもいいのではないか、多様な報い方があるのではないかというのは、私もそのとおりだと思っています。例えば仕事を通じて、より責任が重い仕事に就くことができること自体が御褒美であるケースなどもいろいろあると思うので、この辺り、どのような形で割増賃金を設計していくかというのは少し柔軟に考えるべき時代に来ているのかなと考えています。
あとは休憩時間について、現行のルールでは6時間以上で45分、8時間以上で1時間といった基準があると思いますが、これは今、分割できるのですね。とはいえ、あまり細切れにするのは望ましくないと厚労省のホームページなどにも書いてありますが、実際問題分割されているという実態もあると思います。例えば大学教員の先生だったらよく直面することとして、入試の試験監督の仕事を担当するとき、試験科目と試験科目の間の短い時間をつなぎ合わせたら一応この休憩時間には達しているような大学がほとんどだと思いますが、連続して1時間休めているかといったら、多分そんなことはないですねみたいなことを考えたときに、この辺りについてはもう少し、これも医学的に根拠があったりとか、休み時間の使い方という面で、15分を3回とかもらっても使い勝手が悪いとかあると思うので、この辺りはルール化を考えたほうがいいのかなと思っています。
取りあえず私からは以上です。ありがとうございました。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
島田先生、お願いします。
○島田構成員 ありがとうございます。
まず、労働時間の上限に関して申し上げます。労働時間の上限については、働きたい人、家庭とかも特にない独身の方とかの働きたい自由を考える必要があるという御意見があるかと思います。ただ、他方で先ほどから神吉先生がおっしゃるように、それが労働力のダンピングにつながってきたのではないかということも考える必要があるのではないかと思っていまして、ここまで日本が、特に海外と比べても長時間労働が恒常化してきたのは、恐らく前提としていた労働者のモデルがいわゆる企業戦士というか、男性の正社員で、結婚していて子供がいても、女性の配偶者に全部やってもらえるので、自分は仕事に集中できるというモデルがまずあって、恐らくそれに合わせる形でできてきた慣習なのではないかなと思っています。それがこれだけいろいろ多様化してきて、女性も働く、家で集中して家事をやってくれる人はいないという状況になってきたときに、その前提のモデル自体をまず変えていく必要があるのではないかなと思っています。
他方で、これだけ多様化している中で、一生独身の人も多分増えていって、そういう人は一生働けるじゃないかというふうなことも言えるとは思うのですけれども、全力で働きたいという人がいる限り、やはりそこに合わせた設計がなされてしまうおそれが強いのではないかなと思っています。なので、働きたい人の自由もある程度制限しないと、社会全体として働き方のモデルが変わっていく中でうまく回っていかないのではないかなというのが、私が強く懸念しているところです。
また、労働か自己研さんかというのはゼロか1で割り切れるものではないのですけれども、全体の労働時間を低く抑える、恒常的な残業が低く抑えられたら、もちろん空いた時間で自己研さんをすることも可能なのであって、そのことも考えていく必要があるのかなと思っています。労働時間自体を少なくすることで自己研さんにも回せる。余暇にも回せる。家庭生活がある人は家庭にも回せるというふうに考えていくほうがいいのかなというのが個人的な考え方です。それが1点目です。
2点目に、テレワークに関しても1点申し上げたいことがございます。テレワークに関しては、デジタルモニタリングも技術的にはきっと可能なのでしょうけれども、それは労働者にとってもストレスがかかるもので、あまり好ましくないというので、緩やかな管理をさせて一定のみなしを使うということは、労働者にとっても利益があるものだと思います。ただ、裁量労働と違って、業種や地位の縛りなく、テレワークというだけで労働時間規制が外れてしまうということには、やはり懸念すべき点もあるので、テレワークに特有のみなしというものを導入するとしたら、その時間内で終わらなかった仕事が出たときにどうするのかとか、健康確保措置も含めて、その時間内で終わらなかった場合にどうするのかというルールもある程度デフォルトを示した上で導入することが重要になってくるのではないかと感じました。
以上です。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
水町先生。
○水町構成員 時間の関係もあるので簡単に。上限規制については、神吉構成員、島田構成員がおっしゃっていたことに大賛成で、基本的には、健康確保の観点もあるかもしれませんが、ワーク・ライフ・バランスとか公正競争基準という観点もあり得るので、さすがに100時間、80時間は長過ぎるので、定期的に、少なくとも5年に1回ぐらい、最低賃金は1年に1回ですが、きちんと目標となるゴールを見ながら直していくことが必要かと思います。
休憩時間については、6時間までは45分、8時間までは1時間となっていますが、そこから先、23時間までは1時間しかないので、実際には長時間労働で、例えば自動車運転業務については長時間労働を想定して拘束時間の規制も改善基準告示で示されていますが、一般の人についても、勤務間インターバルが強行的にきちんと入れば、それで13時間が上限ということになるので、そこまで考えなくてもいいのかもしれませんが、勤務間インターバルが全体として強行的になるというのはまだそんなにすぐ見通せない中で、長時間働く人についての休憩時間という視点、例えば16時間働く人とかに対しては1時間でいいのかということも、これはきちんとやっておくべきかと思います。
深夜規制については、現行法だと夜10時から朝5時までで割増賃金25%だけの規制になっているのです。けれども、深夜労働の規制は最終的に25%の割増だけでいいのか、実際に健康に関わる問題で、黒田構成員がおっしゃっているようにいろいろな健康に関わるので、もう少し精密、精緻に、例えば労働安全衛生法の中でいろいろなことを考えながらケアすることが必要なのではないか。単に深夜だと駄目なのか、不規則だから駄目なのかというところもあり得ますし、日本時間の夜10時から朝5時までというところで今合わせていますが、どこで働いていようと、いろいろなところの会議に出なければいけないという人たちが出てきた場合に、25%割増しするよりも、そういう人たちの不規則勤務に対する健康確保をどうするかという観点から、もう少しきちんと規制をすることを考えたほうが、そういう意味で深夜労働の規制についてはもう少し仕組みをつくり直すという観点から、単純に柔軟化するという話にならないようにすべきかなと思います。
もう一点、テレワークについては、みなしの話がありましたが、今、テレワークで長時間労働の問題が出てきている人たちがたくさんいる中で、みなし制にすると実労働時間によらないみなし管理になってしまうので、私はやはりテレワークについては、みなし労働時間制ではなくて実労働時間に基づく管理、だけれども、私生活とのバランスを取るために、例えばフレックスタイム制で柔軟に労働時間を自分で選択できるけれども、時間についてはきちんと実労働時間を管理して、実労働時間に対して処遇をするというので、今、全労働日について始業時間、終業時間を自由にしなければいけないことになっていますが、フレックスタイム制を少し制度を改める形でテレワークにも使えるようにすることのほうが、制度的選択としてはいいのではないかなと思いました。
差し当たり以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生。
○山川構成員 簡単に申し上げます。テレワークのお話でありまして、みなし制の適用の可能性を現在のテクノロジー水準に合わせて見直すというのは、一般的なお話としては1つあろうかと思いますが、これまでの先生方のお話と似ていて、やはりテレワーク特有の、あるいはさらに言えば中抜け時間への対応みたいなことを独自に考えるということはあり得るのかなと思います。
やや外れるのですが、副業のガイドラインとかテレワークのガイドラインで、表現が適切かどうか分かりませんが、合意ベースであれば便法として認めるようなことがだんだんと増えてきているような気がします。本来刑罰法規である労働基準法に便法というのがどのぐらい認められるのかというのは、理論的には疑問があるところで、むしろその点は正面から一定の制約とか健康確保の下で、合意で左右できるものを導入するほうが理屈としては合っているのではないか。
それをどういうふうに見るのか。デロゲーションと見るのか、あるいは先ほど水町先生から実労働時間というお話がありましたけれども、ある種の約定基準説ですね。労働時間の概念について、テレワークに関しては、少なくとも特に中抜け時間の便法と言われるようなことに関しては、一定の要件の下でそういう取扱いを認めるのかといった、そもそも労働基準法の性格との関係で再検討する必要があるのではないかという感じがしていますし、副業についても同じ問題が起きるかもしれないという感じがしております。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
首藤先生、どうぞ。
○首藤構成員 まず、労働時間の上限規制については、私も神吉先生、島田先生の御意見に全く賛成で、やはりダンピングを防ぐということが最大の目的でもあると考えています。
1点だけ気になったのが、私もトラック業界とかを見ていて思うのは、深夜勤務の負担が確かに健康を害する上ですごく大きいというのもあるのですけれども、黒田先生が先ほどおっしゃったとおり、不規則勤務が非常にきついとアンケートを取っても皆さんおっしゃっているのです。この不規則、週何回か非常に早い早朝に出勤しないといけないとかいうようなことが健康を害しているリスクはすごくあるのではないかと思うのですけれども、これについての労基法上の制約が今はない状態ですが、これはこのままでいいのだろうかと。深夜にやれば25%割増し、それが十分かという議論は当然あると思うのですけれども、極めて健康を害する可能性がありますし、あと、ワーク・ライフ・バランス上も非常に深刻だと思うのです。ただ、不規則勤務って何をもって不規則勤務と呼ぶかとか非常に難しいですし、あと、柔軟な働き方自体は幅広い業種に広がっていますので、簡単に定義できないかもしれませんけれども、実は不規則勤務のほうが深夜勤務以上に深刻なリスクかもしれないというふうに思っています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。大変多様な御意見をいただきました。
第3回のほうに移りたいと思います。第3回は労働基準法の事業と労働者についてです。これも事務局からまず補足をお願いします。
○労働条件政策課長 第3回、労働基準法の事業、労働者につきましては、資料3の12ページの論点として考えられることを提示しまして、御議論をいただいたところでございます。第1回での関連する御議論は13ページ、14ページに、第3回研究会でいただきました事業関係の御意見につきましては15ページから、労働者関係まで含めますと20ページまでのところに項目ごとにまとめさせていただいております。こちらにつきまして、事務局として若干補足を申し上げますと、15ページのところで労働基準法の事業の概念については複数の機能を有するというようなことを発端に様々御議論をいただいたところでございますけれども、これに関連しまして、基本的に事業場単位で従来適用してきており、それが一定程度妥当であるという御議論もある中ではございますが、後ろの労使コミュニケーションとの議論とも若干重なる部分はあろうかと思いますけれども、実際に労と使が議論をする中で、事業場単位というものが実質的に有効なのかどうか。冒頭の首藤先生の御意見もありましたように何をもって事業場単位と見るかというところとも関わりますが、どのような単位で労使のコミュニケーションを取るかということの関係で、事業をどう考えるかという辺りは、第4回関係の議論とも関わりますが、改めていろいろ御意見を伺えればと思うところでございます。
それから、労働基準法の労働者性の判断基準の関係でございますけれども、17ページ目以降に御意見をまとめさせていただいております。予見可能性がない等々の御発言をいただいておりますけれども、昭和60年の判断基準について、この要素がおかしいみたいな具体的な御意見がありましたら伺っておきたいと思っております。また、どのように要素を整理したとしても最終的には総合判断、かつ、労働基準法の労働者に当たるかどうかは形式要件ではなく実態で判断するということと予見可能性を高めるということとの関係について、さらに学識の立場からどう考えたらいいかという御意見をいただければと思っております。
また、各論的な話といたしまして、現在、予見可能性が低いものあるいは裁判例が割れているものとして、プラットフォームワーカーのほか、訓練中の方々、芸能関係の方々などを御紹介いただきましたけれども、ほかにもなかなか予見可能性がないという働き方の実例を御存じのものなどがございましたら御紹介いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、第3回は山川先生が御欠席でしたので、まず山川先生からお願いします。
○山川構成員 欠席をいたしましてどうも失礼しました。メモをその回で提出したのは事業概念についてでありまして、そこに書いたとおりですけれども、端的に言うと、事業単位の適用という概念だけで議論するのが適切かどうか、一括して考える必要はないのではないかということでありまして、いろいろな協議ないし同意の在り方とか届出等については、恐らくはメモで書きましたうち、事業という場所的な範囲で使用者の義務の内容を確定するような仕組みの当否の問題で、これが恐らく現在問題になっている中心的な事項ではないかと思います。
監督署の権限行使とか、あるいは国際的な適用の範囲とかは必ずしも現在のような仕組みを変える必然性はない。切り離して考えていいのではないかと思います。その際、先ほどお話のありました事業か企業かということに関しては、前回申し上げたかもしれませんが、場合によって事業単位を企業単位のものに変えるような仕組みをどう考えるか、その要件をどう考えるかとか、委任というふうに前回申しましたけれども、そういう捉え方もあり得るかと思います。
あとは根本的なこととしては、やはり労基法は刑罰法規であるという点が常に頭に入ってきまして、使用者は割増賃金を払わなければならないという37条につき、10条の使用者で時間外労働を命じた上司が割増賃金を払うというのは恐らく想定されておらず、支払義務を負うのは事業主だと思うのですけれども、そういうところも刑罰法規としての労基法と、私法上の権利義務関係を規律する法規としての労基法のずれがあるような感じがいたしております。もちろん上司が割増賃金を払うべきだという見解を取るならば、話は10条の適用で一括されるのですが、多分そういう理解にはならないだろうなと思います。
それは事業概念の補足で、あと労働者性についてはメモを出しませんでしたけれども、1つは60年報告、当時までの裁判例をまとめてあのような基準をまとめたというふうに理解しておりまして、そうすると改めて最近の事例も含めて見直すということはあり得るかなと思います。
当時は特に請負と委任との区別が微妙な事例が傭車運転者とかたくさんあって、基準の設定が問題になったかと思いますので、先ほど澁谷課長からもお話があったように、いろいろな就業形態が出てきて、何が論点になるのかというのも含めることは必要かと思います。プラットフォーム就労者もそうですけれども、判例で言いますと、最高裁までいきました研修医は何らかの仕事をしていることは明らかなのですが、要は教育を受けているのか、労働しているのかという点が問題になったので、60年報告がそのままは使えないのではないかなという感じがあります。
あと、労基法ではそんなに問題ないですが、労組法ですと、例えばコンビニエンスストアのオーナーとかですね。つまり、これまでは労務供給を前提とした基準をつくってきたのですが、そもそも労務供給なのか、また、誰に対する労務供給なのかということが問題になる事例が出てきているような気がいたします。
あと1つ、推定という手法が各国で使われていて、予見可能性を高める上では、それは1つの有益な手法だと思います。ただ、たしか前回か前々回、水町先生もおっしゃられたと思いますが、結局推定だと反証ということが問題になりますので、どういうことの反証がどれだけできるのかということによって、結局運用がいろいろ変わってくるという感じがいたします。
これもそういった規制をどう施行するかに関わってきて、反証は裁判のイメージなのですね。原告側が一定の推定ができるような事実を主張して、使用者側が反証する。でも、労基法は刑罰法規であるため、刑罰法規で推定はどうなるのかという問題が1つあるのと、監督官が権限を行使するときに推定はどういうふうに働くのかとか、運用上、一口で推定と言っても、労基法の法規としての性格を踏まえるといろいろ検討すべき余地はあるかと思います。ただ、いずれにしても何が重要な要素かとかいうことを考えたうえで、推定的な発想を入れるのは有益かなという感じがいたします。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
では、どうぞ、ほかの先生方から御自由に御発言ください。
水町先生。
○水町構成員 ありがとうございます。事業については、いろいろありますけれども、実態に近い形で規制をするということが大切だと思います。だとすると、原則として法人単位にしつつ、法人よりももっと外のところまで責任を負わせなければいけないようなこともネットを通じて出てくるかもしれないし、これはやはり現場単位できちんと健康を確保したほうがいいよというものについてはということで、原則とその他のアレンジでやることがいいのかなというふうに思います。
労働者性のところは、今までの60年基準の7つないし8つの要素で既に揺らぎ始めていたり、外国ではちょっとこっちかなというようなことも出てきています。これはもう少し専門的に検証すればいいのだと思いますが、例えば公租公課の負担、社会保険とか税金をどっちにしているか。これは圧倒的に使用者がパワーで決めて、従わざるを得ない状況の中で決められているので、最近は労組法では明らかに最高裁も言っていますが、労基法上の労働者性を判断するときも裁判例は余り言わなくなってきているというので、大分シフトが見られてきていますのと、あと、やはりプラットフォームワーカーとの関係で、最近は諾否の自由とか、時間・場所の拘束は労働者性の判断であまり重視していたら新しい変化に対応できないよねと。
今、新しいビジネスモデルとして、登録はしておくのだけれども、そもそも仕事をするかどうかと、あとどの時間、どの場所でやるかというのを就業者に決定できるようなものでビジネスが回るような、だけれども、実際にオンタイム、オフタイムの間ではきちんとマニュアルどおりに指示を出していたり、いつ、どこでやってもいいけれども、締め切りは決まって、ネットでこういう加工をして送ってくださいねというようなものも出てきていて、今の基準からすると、諾否の自由があるとか、時間、場所の拘束がないから労基法上の労働者性が認められないのかということにもなりかねないところで、諸外国では、やはりそういうところよりかは、逆に最近言われているのは経済的従属性というか、自立した事業者であるかどうかというのがかなり重視されてきています。今、労組法上の労働者性でも事業者性というのが問題になっていますが、日本で言うと労基法上の労働者性の中でも、独立した事業者として利益を上げるような行為をしているのか、業務委託なのだけれども、全然独立した社長ではなく、組織の中に組み込まれながら働いているのかというところに労働者性の判断基準がシフトしてきていると言われていて、日本でもそういうプラットフォームワークが増えていく中で、そういうことを考えなければいけないということがあるかと思います。そこら辺を併せて、もう少し具体的にやったほうがいいのではないかなと。
推定方式も、山川先生がおっしゃるように労基法との関係で推定方式を入れるとどうかというところはありますが、例えば管理監督者というと、逆推定みたいなもので、管理監督者扱いしていれば適用除外をしているけれども、実態を見てみたら管理監督者ではないよねというものが実際の労基法の適用上あるのと同じように、場合によっては推定して、一定の外形的基準で推定してみて、実態を見てみたら、いやいや、労働者じゃなかったよというような解釈は労基法上の解釈の中でもいろいろあり得るかと思いますので、EUの動き等も見ながら、立証責任の転換というか、情報をいっぱい持っているほうがきちんと情報を出しながら主張しなければいけないよという方向に変えていくことは一つ有効な手段かなと思います。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 ありがとうございます。労働者性の判断基準のところで、1回目の研究会において資料3-1ということで多様な就業者に対する5つのアプローチといったお話を整理していただいたものがございました。その中で、少なくとも多様な労働者が増えているということはよく理解しているつもりではいるのですが、そこで挙げられていた、ここにないので言い方はちょっと考えないといけないのですが、(2)として挙げられていた労働者の範囲を広げるというものではなく、できれば異なる名称をつけて区別をしやすくしてほしいなというのは今日の資料などを見ても再度思ったところです。予見可能性を高めるためには、労働者の範囲が広がって、労働者の枠の中にいろいろなタイプの人がいるというよりは、ギグワーカーみたいなもの、多様な働き方を含めて、(4)として挙げられていた特別規制という形でいくか、また(5)の他法を使う、ほかの法律などをやることによって、労働者というのはどういう人なのかといったものが、より判断しやすくしてもらえると、多分、社会全体で誤解を招く可能性が減るのかなと感じています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。ちょっと細かなところの議論になって恐縮なのですが、労働者性が問題となる類型として、裁判例で争われているもののほかにも、例えば就労継続支援B型で働かれている障害者の方ですとか、あるいは中間的就労にある方、あとは高年法の就業確保措置の対象者等についても、要するに実務上はどうしたら労働者、労働契約に当たらないような形で働かせるのかというところが問題になっているのではないかと思います。その際、先ほど教育訓練が問題になる類型のお話もあったかと思うのですけれども、やはり訓練としての拘束と指揮命令による拘束の区別がなかなか容易ではないというところで、この辺りの部分についてどう考えていくのがいいのかというのは一つ課題になるかと思いました。
その際、そういった類型はこれまで出てきたような個人事業者と労働者が問題となるような類型とは別のアプローチがもしかするとふさわしいのかもしれないということも思うところでして、先ほど労働時間規制について約定基準説的なお話があったりしたのですけれども、推定の逆方向になってくるのかもしれないのですが、何らかきちんと訓練としての計画が適切に行われていたり、その辺りについてのちゃんとしたいろいろなことが定められていたり、配慮がされていたりというところを前提に、労働者に当たらないとか、そういった解釈を示すようなことも1つ考えられるのではないかと。既に通達もある部分はあるのですが、この辺りはなお検討の余地があるのではないかという気もしているところです。
それから、推定規定につきましては、今のような類型はもしかするとやや特殊なのかもしれませんが、全ての業態に適用できるような推定規定として設計し得るのかどうかとか、また、今、EUのほうの動きも現在進行形というところがあろうかと思いますけれども、その辺りの動向を見ながらどう設計していくのかということが、入れるという場合には課題になってくるのかなということが1つ。あとは結局、推定規定を入れたとしても、労働者に当たるか否かで、労働者に当たるならこうした法的保護を与える枠組みの中でいく限り、必ず労働者ではないと判断されるものが出てきますので、もしかしたら別のときにも申し上げたかもしれないのですが、そうではない人たちに対しても適用されるべきいろいろなルール、特に健康確保とかそういったところでのルールの整備は必要になってくるのではないかと思っている次第です。
以上になります。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
首藤先生。
○首藤構成員 事業場単位なのか企業単位なのかというところですけれども、先ほど水町先生のほうから実態に近いところでというお話もありましたが、私はやはり現在の36協定の労使関係ですとか安全衛生委員会等においても、実態があまりうまく機能していないことが問題なのではないかと考えています。本日のクロス集計のデータで見ても、労働条件等の検討の際、誰に意見を聞きますかというところで、組合がないところでは圧倒的に役員に意見を聞くというような回答になっていまして、やはり労働時間のデロゲーションを決める36協定であるとか、さらには安全衛生ですね。現場で働く者が最も何が安全なのか安全でないのかということを分かっていると思いますので、そうした労働側の発言を担保できるように健全な労使関係が築けるような形をつくっていくことのほうが重要かなと思っています。
なので、今日冒頭でも申し上げたとおり、実態として事業場単位がかなり大くくり化していて、ほぼ企業単位に近くなっているような場合もあるかもしれないのですけれども、だから企業単位で十分なのかというと、必ずしもそうとも限らないのかなと思っているところではあります。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
神吉先生、お願いします。
○神吉構成員 私からは、事業と労働者概念について1点、最近すごく悩ましいなと感じている論点についてお話します。というのは、労基法上の労働者概念は労働契約上の労働者なので、契約の相手方が自動的に使用者と決まると思うのですけれども、それがアルゴリズム、つまりアプリを通じた業務指示などが増えることによって、すごく分かりづらくなっています。契約関係も請負という形態を挟むなどして非常に複雑化して、さらに多層化している実態があり、かつ指揮命令関係というのがアプリに出てきた指示にそのまま従う状況だったときに、アルゴリズム、アプリを提供している主体と、それから直接の請負などの形で直接お金を払う主体とが違う状況が増えてきています。
末端で労務を提供している人の働き方を見ると、これはやはり労基法上の労働者なのではないかと判断したとして、使用者は誰なのかが分からなくなってきている状況です。労働者性と使用者性の関係が、労働者性だけで判断ができなくなっている状況に意識的に対処していく必要があると思います。
その場合、直接の関係がある人は、報酬を払っている主体なので、そこが使用者と言えるかというと、逆にその人はお金しか支払っていない。指示は全部別の主体のアプリでやってくださいと丸投げしているときに、両方が部分的な使用者としての責任を負うということがあり得るのか。共同で責任を負うとか、責任の所在の在り方をどういうふうに決定していくのかは、今後より問題になってくるので、そうした課題も意識していきたいと考えています。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、次は第4回、労使コミュニケーションについてですが、これも事務局からまず補足をお願いいたします。
○労働条件政策課長 労使コミュニケーションにつきましては、資料3の21ページにお示しした論点例に沿いまして、第4回研究会で御議論いただいたところでございます。
資料3の中では、第1回研究会での関連する御発言を22ページと23ページに、第3回研究会での御発言を24ページと25ページに、第4回での御発言につきましては26ページから33ページまでにまとめさせていただいております。特段付け加えるところはございませんが、先ほど来若干御議論も出ておりますけれども、労使で協定の締結をする当事者が、特に労働者側について適切に選べて役割を果たせるかということを考えた場合に、どのような単位でどのように選出され協議をしていくのかということにつきまして、既に出ている御発言と重複するところもあるかもしれませんが、さらに御議論を深めていただければ幸いでございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
第4回は全員御出席でしたので、どうぞ、どなたからでも御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
安藤先生、お願いします。
○安藤構成員 よろしくお願いします。ここの回で議論になった話として、やはり労使コミュニケーションで重要だと私が思っているのは過半数代表の役割と位置づけといったところであります。労働者が多様化している中で、過半数の代表で選ばれたからといって、ほかの人たちの働き方について過半数で、その人を推さなかった人がいた場合に、どこまでその人たちが代わりにデロゲーションであったりいろいろなことに意見を申し述べることができるのかというところは、時代の変化も踏まえてよくよく考えないといけないかなと思っています。労働者が皆同じような方向を向いていて同質的な時代には、過半数の人が推した意見というのは、ほとんどの人はその人の意見で希望が代弁されていたのではないかと思う中、今はそうなっていないのではないかというところで、過半数代表に複数の人を選任するであったりとか、どうやれば多くの人の意見が届くのかといったところは、よくよく考える必要があると思っています。
もう一点、これまでの議論で先生方のコメントの中で気になっていたところとして、組合があって、過半数組合があればそこが労働者の希望をしっかり捉えているので、あまり問題がないのではないかといったように私が理解してした議論があったかに思っているのですが、例えばユニオンショップ協定などがあって、一般的な労働者が皆入らないといけないというケースも考えられます。このとき労働者が主体的に組合に入りたいと思っていたのかといったら、組合員にはなっていて、チェックオフで組合費が取られているけれども、組合活動には大して興味も関心もないといった人も統計上は組合のメンバーとなっている。この人たちが組織化されていることになっているので、この人たちは問題ないとしてしまっていいのかということは少し気になっています。
この点については以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
今の安藤先生の発言につなげて議論すると、確かに過半数組合が存在する場合は問題が少ないだろうという議論がされてきたわけです。労働組合は現在は非正規の方を組織しようと大変努力しておられますけれども、非正規従業員の加入を認めないような労働組合もあり、組合自身が組合員の範囲を自主的に決定すること自体は禁止されておりませんので、そういう正規従業員だけの組合であったりした場合に、非正規従業員も含めて従業員全員の意見を公正に代表できているのかという問題は、過半数組合が存在しても常に問題として存在するところだと思われます。
いわんや過半数代表者という組織のバックのない方が、ある一時点において過半数を代表する者と選任された場合に、どのように最低基準を下回るような協定を適正に結び得るのかという問題も、これは既に指摘されているとおり存在するのだと思います。
首藤先生、どうぞ。
○首藤構成員 今の安藤先生の御意見で、過半数に行かなかった人たちの声をどうやって拾うのかというのはすごく重要な御意見だと思います。なので、複数の過半数代表の設定等を検討していく必要があると思っています。
組合がない場合を前提にここでは議論してきたと思うのですけれども、それはやはり組合がある場合も入れるとかなり話がセンシティブになってきて、議論が先に進まない可能性もいろいろあったりするので、ここでは組合がない場合というような形で議論してきたと思っています。
2点ありまして、先ほどの過半数に行かなかった人たちというところでも、例えば組合があっても少数派組合の場合は過半数に行かないことがありまして、組合があっても少数派組合の場合には、そういった人たちも含めて、例えば従業員代表に入れていくというような担保をすることもできるかなと思っています。
過半数組合があったとしても、そこからこぼれる人たちがいるじゃないかというのは確かで、非正規労働者もそうだと思いますし、あとは、ここは難しいところですけれども、非組合員である管理職なども、使用者の側とも必ずしも言えないような管理職層というのはいるわけですから、そこの声は誰がどう代弁するのかというような問題もあるかなと思っています。
ただ、様々な調査、ヨーロッパの実態なんかを見ても、組合があるほうが労使間での意見だとか労働者側の声というのは、ない場合に比べると、かなり高く反映されやすい部分は実態としてあるのではないかなと思っていて、この間の議論は組合がない場合に限って議論してきたというところがあるかなと思っています。
○荒木座長 ありがとうございました。
水町先生。
○水町構成員 制度をどうつくっていくかという話と、細かい利益を誰がどう代表していくかという2つあって、前者の話で言うと、基本的にはシンプルな制度で集団である労働者、働く人たちの意見を吸い上げて、実際の企業の経営方針の決定とか労働条件の決定に反映させるような制度を、これは今、労基法上の過半数組合とか過半数代表制を念頭に置かれているのかもしれませんが、それは結局、労働安全衛生法とか労働時間設定改善法、さらには労働契約法上ルールをどうつくるかとか、企業倒産法制の中で意見をどう反映させるかというときに、それぞれの法律でそれぞれ別々の制度があるというのはうまく回らないもとになるので、基本的に過半数組合があったらうまく機能するけれども、過半数組合がないときにはほぼ機能しないというのではない制度をシンプルな形で、全体を見据えながらどうつくるかというのが一方で大切だと思います。
その上で制度をつくったときに、賛成の人もいれば反対の人もいるというのは当然で、そのときにどう代表するかというので、50%を超える51%の支持があれば、51%の支持を得た人に全員を代表させる。その代わり、公正代表義務みたいなものを課して、少数派の意見もちゃんと踏まえた上でやってくださいねというような制度の選択もあり得るし、選出の時点で選ばれているので、あとは任せるという選出の仕方もあり得るかもしれないし、逆に、過半数だから全員を選ばせるのではなくて、例えば少数組合があったり、別のタイプの人たちがいれば、それぞれ代表別の制度をつくるという制度設計もあり得るかもしれません。そこはどのような調整をするか、組合があるパターンで憲法28条が絡む場合と、組合がないパターンもあり得るかもしれませんが、最終的にいろいろな制度を包括するフィージブルな制度を導入するという観点から制度設計を考えた上で、あとは具体的な制度設計の中で51対49のときにどうするのか、組合は1個だけあるけれども、それは15%の労働者しか組合員ではなくて、85%は非組合員だというのは世の中にたくさんあるので、そういう場合にどういう人たちがどういう形でこの制度の中で意見を反映させることができるのかという制度を一本だけ考えるのか、組合があった場合には例外として、組合は別にするよという労働協約の拡張適用みたいな話として制度設計するのか、いろいろな形はあり得るかなと思いますが、あまりこれをごちゃごちゃとして議論していくと、結局難しくてできないよねと。今もできていないのに、こんなの絶対できないよねという話にならないように、少しゴールを見ながら建設的な議論をしたほうがいいかなと私は思います。
○荒木座長 ありがとうございました。
山川先生。
○山川構成員 多様な論点があると思うのですけれども、研究会での問題意識としては、個人の意向と集団的な意向が必ずしも一致しない場合にどうするかというのが1つの論点としてあったかと思います。その際の方法としては幾つかあると思いまして、集団的な同意が必要な場合のお話ですけれども、1つは集団的な同意プラス個人の同意を要件とすること。これは裁量労働制で用いられている仕組みですけれども、これが1つです。
あとはこれまでも御議論がありましたけれども、個人の意向の聴取とか調整を労使協定等の当事者に課するというような仕組みがもう一つあります。これは法的効果をどうするのか。意見聴取を怠った場合に、36協定とはちょっと例が別かもしれませんけれども、労使協定が無効になるのかというような法的効果との関係も検討する必要があるかと思います。
3つ目の方法は、特定の類型の労働者との合意あるいは協議の仕組みとする。例えば御紹介がこれまでありましたパート労働者とか派遣労働者ですけれども、規定はあるのですが、微妙に文言が違っているのですね。短時間労働者の過半数を代表すると認められる者ということで、36協定の代表者の選出とは方法がかなり違っているのではないか。どのように運用しているのかというのは興味があるところですけれども、前回も申し上げましたが、例えばパート労働者で同じような代表の選出手続を取るのが実際上どのぐらいできるかというのは、なかなか難しい面もあるのかなと思います。
いずれにしても、3つくらいの方法がありまして、あとは理論的には個人の労働者の同意だけで済ませるということがある。これは労働法の前提からすると難しい面があろうかと思いますけれども、それらの政策手法それぞれの利害、得失を考えるというのが1つのアプローチかなと思ったところです。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
石﨑先生、お願いします。
○石﨑構成員 ありがとうございます。制度設計とかに関わるところではなくて恐縮なのですが、前回、恐らく私が発言したところかと思うのですが、過半数代表のなり手がいないというところへの対応として、過半数代表以外の者への周知啓発が大事ではないかという趣旨の発言をさせていただいたかと思います。その部分について私自身、それほど意見が変わっているわけではないのですが、今回事務局に資料をまとめていただいて読んだときに、この周知啓発みたいなものがある種義務的な形で行われると、結局あまり効果を持たないのではないか、要するに皆さん嫌々参加されて、かえって場合によっては逆効果ということもあり得るのではないかという気もしたところです。
何かすごくよい案を持っているわけではないのですけれども、周知啓発と言ってしまうとちょっと固くなり過ぎるところはあるのですが、過半数代表としての仕事のやりがいみたいなものを、広く企業内あるいは企業外でのネットワーク形成なども促しながら、担当いただいている方に感じてもらえるような流れというか、制度としてやるというよりはどちらかというと誘導的な話になってくるのかもしれないですけれども、そういったことが必要になってくるのかなと思ったところで、若干補足というところになります。
この労使コミュニケーションの議論を考えていくときに、前回、神吉先生も発言されていたかと思うのですが、義務的、強制的な要素と自主的な要素のバランスをどう取っていくのかというのが非常に難しいところでして、その点に関して何か明確な意見が現時点であるわけでもありませんし、制度設計との関係でどうするのかというところもあるのですけれども、自主性の要素をどう掘り起こしていくのかということが重要になってくるのかなという問題意識を持っているところです。ありがとうございます。
○荒木座長 ありがとうございました。
黒田先生、どうぞ。
○黒田構成員 私もあまり制度設計の関係の根幹に関わるコメントではないのですが、今の石﨑先生のお話をお伺いしながら気づいたというか、感じたことをコメントさせていただきます。これは私も前回申し上げたのですが、そもそも会社に物申していいのかなという逡巡ですとか、労働者がコメントすることで会社がいいほうに、自分たちが働きやすい方向に変わるという体験をそもそもあまりしていないことがあるのかもしれません。積極的に関われば、会社がいい方向にいくこともあると思うのですが、そもそもそういう経験がないがために、あまり大変そうな役割はちょっと御遠慮したい、成功体験がないから自主的な関わりが少ない、というのがあると思うのです。
かといって、私も良い案を持ち合わせているわけではないのですが、安全衛生の枠組みでストレスチェック制度というのがありまして、その枠組みでの取り組みが参考になるかもしれません。ストレスチェックの結果を受けてみんなで自分の職場について状況を確認する、参加型職場改善というのですけれども、その取り組みで自分たちの働く環境をいいように、かつ効率的に変えていこうねという参加型でやっていく手法があります。労使コミュニケーションに関しても、制度というよりは、あくまでつくった後にどう運用していくかという話だと思いますが、成功体験を生むやり方として、参加型の、最初から自主性がすごく尊重されるというよりは当初は参加を強制されたりはするのですけれども、そういうものをお互い労使で様子を見合いながら導入していくというのが1つのヒントになるかなと思っています。ただのコメントですが、発言させていただきました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございます。
水町先生。
○水町構成員 参加型とか参加を強制させるというイメージなのですが、フランスも同じような経験を今、中小企業にコミュニケーションを入れることによって、働く人が納得しながら現場の状況を変えていこうという動きがある中で、例えば日本で言うと、36協定がないと週40時間、1日8時間を超えて時間外労働できないから、これは結ばないと会社としても困る。労働安全衛生で、例えばデジタルプロファイリングをこれから入れようというときに、労働密度のところはプライバシーに関わるから、これはちゃんと労使の協議を経ないと、職場にプロファイリングを入れちゃいけないよというようなルールを例えばつくる。労働契約上のルールも原則としてのデフォルトルールをかなり高めに設定して、ただし、例えば労働組合との同意があれば、その限りでもうちょっと柔軟なルールをつくっていいよというのを、それぞれの法律の中で原則的ルール、標準的なものをハードル高く設定して、労使で話し合ったらもっと働く人の声を反映して柔軟なものにできたり、共創的なものにできますよというルールを入れながら、中小企業にもそういう社会経済委員会というのもなるべく設定して、そういうことをやれば中小企業も柔軟な経営ができますよというような形で、原則と例外のルールの設定の仕方を工夫することによって、日本でも部分的にそういうのが入っていますが、労働契約法のルールも労働安全衛生法のルールも労働基準法のルールも、その原則と例外の設定の仕方を工夫しつつ、やはりやらないと会社も困るし、働く人も入っていったら自分たちのニーズに合ったような形にルールを変更できるよね、そうしないとかなり標準的で硬直的なルールになるよねということを法律上制度設計して、労使の参加を制度的に促していこうという努力をしていて、そこで組合との合意なのか、日本みたいに過半数代表者とか過半数組合との合意でその効果をどれぐらい波及させるのか。罰則だとやはりデロゲーションで、過半数の人の合意があれば全員罰則、免罰効を与えなければいけないよということになるかもしれませんが、健康管理の場合はどうなのか、労働契約のルールの場合はもっと個別に類型化もできるのではないかという制度設計は幾つかあり得るかと思います。
○荒木座長 ありがとうございます。
労使コミュニケーションでデロゲーションの話から始めたのは、今、水町先生がおっしゃったような趣旨を私もイメージしておりました。デロゲーションの仕組みをつくらないということになると、全て国が法律で最低基準を設定し、それ以外の働き方は許さないという制度になってしまいますが、それが本当に多様化した労働者の望んだ働き方を実現することになるのかという状況に今、我々は直面しているのだと思います。そこで、法規範を現場でどう適正にカスタマイズするかが問題となりますが、そのための適切な仕組みがなければ、やはりうまくいかない。
前回申し上げたことを補足いたしますと、ヨーロッパでは労働組合は産業別レベルに存在する。そうすると企業内に労働者を代表する組織がないので、各国で従業員代表制度が導入されました。組合はいわば対抗的な労使関係で、従業員代表は企業内の協調的な労使関係というように一応モデルとして分かれるのですけれども、実際には、従業員代表と労働組合が密接に連携していてはじめてうまく機能するという状況があります。
日本では、労働組合自体が産別組合はごくごく少数しか存在せず、日本の労働組合の90%以上は企業別組合です。企業内に労働組合があって、かつ労基法はその過半数組合には諸外国であれば従業員代表制度と同じ役割を与えている。つまり、日本の企業別組合は労働組合の顔と従業員代表の顔と両方を持っているという世界的にいえば特殊な役割を果たしています。
そういう中で、どう事業場の全員の利益を適正に代表する仕組みをつくるかというのが今我々が直面している課題です。従来は労働組合であれば経費援助は許されないという労働組合法のルールがあり、そこまでで議論をストップさせてきたのですけれども、実際は、日本の企業別組合は決して組合員だけのことを考えて行動しているのではないという議論もあり、従業員全体のことを考えて行動する企業別組合はたくさんあると思います。そこで、労働組合の役割と従業員代表の役割をどう矛盾のない形で発展させていくかということについて、よく考えなければいけないという状況ではないかと考えています。
第2、第3の論点についても、大変いい議論をいただきました。労働基準法の話をする場合に、やはり法制度として考えておくべきは、その規制がどういう効果をもたらすかということです。山川先生御指摘のように、労働基準法は刑罰法規というのが非常に大きな効果としてあります。刑罰法規でどのような規制をするかということになります。規制には必ず副作用が伴いますので、非常に硬直的な規制を強い効果で押し付けようとすると、ややもすると非労働者化というような行動を誘発しかねないことになります。強い規制によって社会モデルを変革するということも重要な労働政策の課題で、考える必要がありますけれども、どういう規制でその変革を図るかということも同時に考えなければ、意図した結果にならない可能性があります。そこについてはよく考える必要があろうかと思います。
それから、労働者性のところで推定規定の議論がありました。これもどこのレベルで議論するか。つまり裁判になったときの裁判規範のレベルで推定とか反証という問題がありますけれども、その前に労働基準監督官が労働基準法の履行確保を図るという行政のレベルでどう行動するかという上での一定の推定規定というのがあり得るでしょうし、さらには、一般の労働者の方、法律を勉強されているわけではない労働者の方が、業務処理請負契約、業務委託契約という契約なのだけれども、本当に自分は独立自営業者なのだろうか、あるいは労働者ではないのだろうかといったときに、あらかたの予想がつくような形での指針といいましょうか、そういったものとして何か考えられることはないのかというレベルもあるでしょう。つまり、裁判になったときの処理の仕組み方もあると思いますけれども、労働行政や一般の労働者が行動するときの行為規範としてのガイドラインといいましょうか、そういったレベルでも工夫の余地がないかということも併せて検討する意味があるのかなと思ったところです。
それから、1点、議論にならなかったのですけれども、労働基準法の34条2項で休憩は、現在は一斉に付与しないといけないことになっており、事業場の過半数代表との協定がある場合に一斉休憩の例外が認められる。これは基本的に工場などで一斉に休憩しないと、操業中に休んでも騒音の中で食事をしても十分な休憩が取れないといったこと、それから、外から見てちゃんと休憩を取らせているか、監督官が見て分かるようなことでないと法の潜脱となる。そういった工場労働を前提としたような規制です。しかし、今はオフィスなどでは交代で休憩を取るのは当たり前のことになっているかもしれません。そういう点では、御指摘がなかったのですけれども、一斉休憩の例外を事業場の過半数協定でしか認めないということについては見直しを検討してもよろしいのかなと考えておりました。
全体についてコメントしてしまいましたけれども、何かほかに。
安藤先生、どうぞ。
○安藤構成員 ありがとうございます。今のまず労使コミュニケーションの話について、ここまで資料も「労使」コミュニケーションとなっていますが、同時に大事なのは労働者間のコミュニケーションだとも思っています。なので、ここで労使がどう議論するかだけでなく、労働者間での意見集約ということについては、今回の資料にもかなり書き込んでいただいていますが、労働者間のコミュニケーションといった視点を表に出して検討することも必要かと思っています。
また、そもそも論として、全く法律家ではない経済学者の視点からすると、なぜ間接的にやるのかといったところも、時代の変化も踏まえて理解を整理しておく必要があるかと思っています。昔だったら難しいかもしれませんが、今は皆さんスマホを持っていて、労働者全員が、例えば36協定に同意すべきですかというアンケートに対して直接投票し、過半数を取れたら36協定を結びますということも技術的には、可能なわけです。そうではなく、間接代表制みたいな形で労働組合が間に入ったり、または過半数代表者が間に入ってという形を取ることがなぜ必要なのかといったところ。それは労働者側からの話合いなどを通じて意見が変わることもあるだろうし、また、企業と労働者の間での話合いで条件が変わるといったことも重要なのかなと感じています。
また、多くの先生が、全ての従業員の利益、多様な人の利益を適切に守るという話をされていると思うのですが、しかし、冷静に考えてみたらそれは無理という面もあるわけですね。全員の希望を確実にかなえることはできない。ある程度は妥協もしてもらい、ある程度は議論して納得してもらう。それでも納得できない人は、辞めてほかに行くといったことも含まれてのコミュニケーションだと思っています。
というわけで、実態はこのぐらいまでしかできないのだけれども、それでもほかの手段よりはまだましな制度ですよといったことで現状あるかなと思っていますので、この辺りの実態を踏まえて仕組みづくりは議論していく必要があると思っています。
あと1点、第2回関係で労働時間の上限規制の考え方について、多くの先生方が、健康について守るということだけではなく、ダンピングを防ぐという観点から、島田先生の御意見に賛同だというお話がありました。私も経済学者の視点から、ダンピングを防ぐという意味で、カルテルではないですけれども、一定の協定を結ぶようなものを外から与えるということまでは理解できます。ただ、それ以上の家庭生活の両立についてどこまで公が介入すべきかというところは、個人的にはというお話もありましたが、私は、個人的にはと言っていいのだったら、そこは理解ができないところです。例えば家庭生活との両立というのは多様であって、子供にいろいろな機会に与えたいから教育費が必要ですといった人が、家庭でよく話し合った結果、今はたくさん働きましょうというのは、これは許されないことなのか。それが許されないというのであったとすると、少なくともそこにしわ寄せが行っていますよというのを表に出して議論する必要がある。その上での結論だったら、それはそれで仕方がないことかなとも思います。島田先生も非常に真っ当に、家庭生活との両立が全ての人にとって望ましいと決めつけているわけではなくて、働きたい人の自由を制限しているけれども、それは全体的な利益のために一部の人には我慢してもらっているということを踏まえた発言をされていたので、その点では幾分安心しました。
ということで、この辺り、全員が納得する仕組みづくりというのは無理で、多くの人にとってメリットがあり、一部の人には我慢してもらう。でも、それには正統性があるのだといったことを表に出して議論されるのは、とても適切なことだと感じました。
以上です。
○荒木座長 ありがとうございました。
それでは、議論はまだ続きそうですけれども、時間になりましたので、今日はここまでにしておきたいと思います。
1月から5回にわたって議論してまいりまして、各論点についてはおおむね一巡議論ができたのではないかと感じております。次回はこれまでの議論の振り返りやまとめを行いたいと思います。今日出されたいろいろな論点も含めてまとめの議論になるのではないかと考えております。
また、次々回以降は労使のヒアリングを行いたいと考えておりますけれども、進め方については、さらに事務局と相談してまいりたいと考えております。
それでは、ちょうど時間になりましたので、今日はここまでといたします。どうもお忙しい中、御参加いただきましてありがとうございました。