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第2回 ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチームの議事録
日時
令和6年2月16日(金) 9:00~11:00
場所
厚生労働省 省議室
議題
- 1.ヘルスケアスタートアップの現状と課題について
- 2.その他
議事
- 議事内容
- ○水谷課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチーム」を開催させていただきます。
初めに、本プロジェクトチームのチームリーダーであります、塩崎厚生労働大臣政務官より御挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。
○塩崎政務官 皆さん、おはようございます。厚労大臣政務官の塩崎彰久でございます。
本日はヘルスタPT第2回ということでございまして、委員の皆様、そして、ワーキンググループメンバーの皆様、そして、各省からのサポートの皆様、本当にありがとうございます。特に、今回からは文科省からも釜井さんにお越しいただいて、オブザーバー参加していただいておりまして、ほかにもいろいろな省庁から、何か面白いことを始めているねということで関心の声をいただいているように、このPTは大変注目をいただいております。ぜひ、引き続き皆様のお力添えをいただければと思います。
前回はキックオフということで委員の皆様から様々な課題認識、こういったことをお話しいただきまして、全体としてこのヘルスケア分野におけるスタートアップの大きなポテンシャルについて共有できたのではないかと思っております。
その後、オープンをいたしました「ヘルスタ・アイデア・ボックス!」、こちらも広く国民の皆さんから様々な政策提案を伺いたいという、ある意味初めての試みだったわけでございますけれども、早速たくさんの御意見をいただいておりまして、委員の皆様のお手元にも検討いただけるように準備をしております。また引き続き、広く多くの皆様から御意見を募ってまいりたいと思っております。
さて、今日は総論の第2回ということで、今日は3名の先生、香本委員、小栁委員、そして、吉澤委員からプレゼンテーションをしていただきます。このヘルスケアの分野は、医療であっても介護であっても、やはり一つの社会課題解決のソリューションが世界に通じるものになるポテンシャルを持っている。逆に言えば、世界の強豪から常に競争にさらされている、そういうマーケットでもございます。そういった意味では、この3名の委員の先生は、アメリカ、または欧州、こうしたほかの国でのスタートアップエコシステムの現状について深い御知見をお持ちの方々ばかりでございますので、今日はそういった海外のエコシステムと日本のエコシステムの違い、これを中心にお話しいただきまして、皆さんと一緒に全体像としての日本のヘルスケアスタートアップエコシステムの課題について議論を深められればと思っております。
また、今日のこの第2回以降は、これからそれぞれのタスクフォースに分かれていただきまして、4つのタスクフォース、そして、総論の部分につきましても、それぞれの主査の委員の方を中心にどんどんヒアリングをかけて、具体的な政策提案を煮詰めていっていただく、そういうフェーズに入ってまいりたいと思います。
とはいえ、その過程でも、いろいろ委員同士、そして、ワーキンググループの皆様と意見交換を重ねながら充実した政策提案をできればと思いますので、今後とも引き続き皆様のお力添えを頂戴できればと思います。
前回もお話ししましたけれども、できるだけ具体的に、できるだけオープンに、そして、できるだけ大胆に、このPTからすばらしい提言が生み出されますことを皆様に改めて御期待とお願い申し上げまして、私からの冒頭の御挨拶とさせていただきます。本日もよろしくお願いいたします。
○水谷課長 どうもありがとうございました。
それでは議事に入りたいと存じますが、頭撮りはここまでとさせていただきます。報道の皆様におかれましては御退室をお願いできればと思います。以降の傍聴につきましては、会場外にてユーチューブでお願いできればと思います。
(報道関係者退室)
○水谷課長 では、本日の委員の出欠について御報告させていただきます。
池野委員、奥田委員、曽山委員より御欠席の御連絡をいただいてございます。本日、6名の委員が会場での御参加、3名の委員がオンラインでの御参加で、合計12名中9名の委員に御出席いただいてございます。
また、経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課及びヘルスケア産業課、さらに中小企業基盤整備機構審議役/経済産業省大臣官房参与の石井様にオブザーバーとして出席いただいております。さらに、先ほど塩崎政務官からのお話もございました、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課にも今回からオブザーバーとして出席をいただいてございます。
本プロジェクトチームはヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策に係る個別の事項を議論するため、議論の内容を公開することで自由闊達な意見交換に支障を来すおそれがある場合には非公開とさせていただくこともございます。
次に、本日の会議資料の御確認をさせていただきます。
議事次第、開催要綱、委員プロフィール、タスクフォース主査・副主査一覧のほか、資料1から資料3まで御用意いたしております。不足等がございましたら事務局までお知らせいただければと存じます。
ここからの司会進行は本荘座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○本荘座長 今日は盛りだくさんですので、早速テンポよく始めたいと思います。
まず、資料1です。これについて香本委員からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。投影をよろしくお願いします。
○香本委員 では、始めさせていただきます。
Eight Roads Ventureでヘルスケア投資全般の責任者をしております香本です。日々、日本のヘルスケアエコシステムをうまく回転させるために汗をかいておりますので、その経験が少しでもお役に立てばなと思ってプレゼンテーションさせていただきます。
まず、アジェンダですが、そもそもヘルスケアエコシステムというのはどのように定義すればいいか、それの日米の違い、そして、我々のようなグローバルなヘルスケアベンチャーキャピタルが実際何をしているのか、特に日本のベンチャーをどのように評価しているのか、そして、最後に、どうやったら日本のエコシステムを好循環させられるのかという、僭越ながらアイデアを申し述べさせていただこうと思っております。
次のページに我々が考えているヘルスケアのエコシステムの図を掲載しました。
ベンチャーの起業、VCからの資金調達、製品の開発、企業価値の向上、そして、IPOでありM&Aが起こり、その中で株式市場が活性化して、さらにその得た資金で企業が成長し、そこからさらに人材がマーケットに流れ込んでいくというものがヘルスケアエコシステムだと考えております。
日本の場合は、このエコシステムがどこかで目詰まりを起こしている。後半のほうに出てきますが、特に人とお金の部分、日本は科学サイエンス技術は非常に有望なものがたくさんあると海外のメンバーからも日々言われておりまして、月に数件は、海外のメンバーから、このリサーチペーパーをよく読み込んで、この先生に話を聞いて会社できないか、アイデアをもらえないかという話は来ます。ただ実際にそれを立ち上げる段階で人とお金、ここの目詰まりというのが非常に大きいのかなと感じています。
次のページ番号3にでは、その結果として、これはいろいろなところに掲載されておりますので復唱しませんが、未上場ベンチャーの数、年間設立される数、ベンチャーへの投資額、投資件数、一社当たりの投資額、IPOの件数、そのIPO、上場している会社の時価総額、これらはいずれもアメリカに比べると非常に劣っています。
ただ、ここに書いてある数字は、そもそもアメリカと日本で医療の市場規模が大分違うことを加味する必要があります。日本に対して中国が大体3倍ぐらい、アメリカが7~8倍ですので、この数字を7~8倍ぐらい割引いて見るのが適切かと思っておりますが、それにしても大分劣っています。
実際にアメリカでどのようにエコシステムが回っているのか実例を少し見ていきたいと思います。
4ページ目に、数字がまだ確定しない2023年部分はエスティメートではありますが、アメリカは41ビリオンUSドルということで、大体5~6兆円の資金がスタートアップに流れ込んでいる。スプリットとしましては、バイオテックが半分弱、昨今の生成AIを含めたAIのアダプションがヘルスケアのほうで進んでいる関係で投資が増えているヘルスケアITが、2023年上がってきています。
実際に、アメリカの場合はM&Aが非常に盛んだと言われておりますが、我々が一般的に考えるような、上場なのかM&Aなのかというこの2択ではなく、アメリカでは、上場というのは資金調達の一環、成長資金を得るための一つのイベント。そして、その成長資金を得てさらに大きくなったところで大手の会社に買収されるという、いわゆる上場している会社が買収されるケースが非常に多いということを御覧いただければと思います。
その中で、下のほうに、Public Total EVを御覧いただいているとおり、上場している会社のほうが買収される価値が高くなっていく傾向が読み取れます。
次ページで御覧いただきたいのは、特にプライベートのほうです。上場していない会社も、かなり高い買収金額で、さらにステージとしても、プレクリニカルであったりプラットフォームであったりフェーズ1だったりという会社も非常に高い価値で買収されています。
次ページ、メドテックの分野でもかなりM&Aが盛んに行われていますが、右側のステージを御覧いただきますと、創薬ベンチャーとは違って、どちらかというと全てコマーシャルステージになっているものが買収の対象になっていくという状況です。
次ページ、ヘルスケアのサービス・ITの分野では、昨今は「value-based」が非常にキーワードとなって買収されている傾向があります。御案内のとおり、治療のアウトカムと治療のコスト、これの最適化を図るようなサービス、これが大手プレーヤーからの買収対象になっているという傾向が読み取れると思います。
次のセクションから、実際にグローバルのVCが何をしているのかご説明します。
我々のグループは、アメリカ、中国、インド、ヨーロッパ、日本にファンドを持ち日本が一番若いファンドにまります。それぞれ国ごとに独立したファンドですが、全てのファンドに出資するLPがフィデリティーグループという一つの母体です。グローバルに233社のヘルスケアの投資実績があり、既に79社エグジットし、上市している品目も33品目なります。
投資の件数233社のうち、昨今、VCが創業ファウンダーと一緒に会社をつくっていく案件、これが大体40社弱あります。シードもしくはシリーズAの投資が160社ほど、つまり合計して200社ほどが会社の非常にアーリーステージから投資を始めている状況です。
総勢グローバルで80名おり、キャピタリストと言われるメンバーが60名。そのほか、一番右側記載のVenture Partnerが20名。キャピタルリストの中にMD、PhDが26名おります。左下記載のキャピタルリストの領域ごとの分布は、先ほどのアメリカのスタートアップ、ファンディングのスプリットとよく似ており、デジタルへルスサービス35%、タイポがありますが、メドテックは15%です。
キャピタルリスト以外にも、横串となる機能を内製化しております。例えば、社内で弁護士がおりまして、投資先の重要な契約であったり、知財に関する相談、資金調達の相談、などを社内の弁護士がサポートしています。ヘッドハンターも我々の中で内製化しておりまして、実際に年間20名から40名のマネジメント層を投資先に紹介をしています。
キャピタルリストだけでは専門領域を全てカバーできませんので、アメリカで著名なScientific Advisory Boardをつくっております、一人一人の紹介は割愛しますが、例えばセルセラピー、ゲノム、RNA、オンコロジー、メンタル、そして、パブリックヘルス、あとはT細胞、といったそれぞれの専門分野ごとに著名な先生方をお招きしてアドバイザリーボードを構成しております。この先生方も、全ての技術を深く理解するわけではないので、この先生方を通じて、その先にさらなるKOLのネットワークを抱えているという状況です。
次ページ、Beam Therapeuticsという弊社が手がけた案件が、アメリカのヘルスケアエコシステムが非常にうまく循環している事例として掲載しました。
2017年に創業してから、ARCH Ventureという著名なヘルスケアVCとともに弊社も創業VCとして立ち上げました。そこから様々な追加IPを獲得したり、会社を買収したり、そして、チームも3年間で80名まで拡大して、もともとプラットフォーム技術でアセットが何もなかったところを、3年間で12個の創薬のパイプラインを構築しています。実際に、3年後にIPOをします。このときには全てのパイプラインがまだ非臨床の状況で、さらに大手とのライセンス契約等も無い、こちが後ほど御説明する日本の上場要件のところにも関わってくるのかなと思っています。
上場した後もどんどんどんどん会社は事業を成長させ、上場時点よりは高い企業価値で、現在も取引されております。また、創業サイエンスファウンダーは別の会社をつくって、また上場するというエコシステムが回っております。
次ページでは、日本のサイアスという会社に弊社は投資をさせていただいて、結果として、社名をShinobi Therapeuticsに変え、アメリカに親会社を設置して、アメリカ国籍の会社としてマネジメントチームをつくり、資金調達もアメリカの投資家から集めて、現在事業展開をしているという好循環を回そうとしている事例になります。
そのほか、次のページ以降2ページにわたって弊社の他の案件も掲載しておりますが、後ほど御覧いただければと思います。
ページ16は、我々グローバルVCが日本のエコシステムに不足しがちだなと思うポイントを挙げさせていただいております。これは優劣をつけるのが非常に難しい、全てナンバーワンにしたいなという気持ちですが、敢えて順位をつけたものになります。御覧の通り、人材、もしくは、グローバル競争となどを意識した知財・薬事・差別化の戦略というところが重要だと思っております。
次のページに、これら今までの考察を踏まえて、どのような施策が、不足しがちな部分を解消してエコシステムを循環させるのかというアイディアを僭越ながら記載しております。
一番最初は、やはり海外のトップKOLに簡単にアクセスできない点の解消です。KOLと包括でリテイナー契約を結んで、月次の定例などを設けて、そこの場に日本のベンチャーが毎月2~3社ピッチをしてボコボコにされるのもいいと思います。そこで宿題が見つかって、その宿題をこなしていくことによって成長していくと思っています。
また、人材、これも専門家のプールを構築して、ベンチャーへ開放するというところで、実際に、我々デューデリジェンスであったり、投資した後に専門家のスポットコンサルをかなり使います。ただ、これは費用が結構高いです。これを開放する。また法律事務所・会計事務所との包括提携も有効的です。
あと、4番目は、今回いろいろな人にヒアリングした結果、ここはぜひ意見としてぶつけて欲しいと言われたのが、実際にPMDA出身の方がプールとしてどこに存在してるか分からない点です。PMDA出身の方はいろんな御経験がありますので、もっとスタートアップを支援頂けるのではないかと考えています。
また、5番目も、国内、海外でトップのExecutive Search Firmと包括リテイナー契約を結んでおくことで、日本のヘルスケアベンチャーがアメリカに進出する際、もしくは日本でトップマネジメントを雇う際に採用コストを下げられます。また、そもそもトップの人材プールにアクセスができるというのも重要だと思います。
次のページでは、実際に投資家を呼び込むにはどうすればいいかという視点です。待っていても来てくれませんので、日本からトップVCに国費留学のようなかたちで2年間武者修行に行くというのがいいのではないかなと考えます。留学中のメンバーは、その海外のVCで、例えば、最低年間3件から5件は日本のヘルスケアベンチャーの投資案件を投資委員会に上程するなど。想像するに、ほとんどがそんな簡単にゴーサインが出ないと思いますが、やはりそこで明確になる宿題が重要です。そうすると、3年後には国内に、海外のトップVCを2年間経験したメンバーが20名ぐらい存在しますので、これは恐らく市場ががらっと変わるのではないかなと考えております。
最後、資金面ですが、当然ながらアーリーステージに需要があります。今回、AMEDの創薬ベンチャーエコシステム強化事業は、非常に大きな取組をいただいています。これはグローバルの他VCからも非常に問合せが多くてすばらしい制度だと思っております。ただし、フェーズ1以降の治験にしか適用できませんので、やはり日本で不足しがちな部分である、前臨床の段階、R&Dの段階、にもこのシステムをアプライしていただけると、また大きく海外の投資家も投資しやすくなるはずです。
以上が私のプレゼンテーションの骨子になります。
○本荘座長 ありがとうございます。
5分程度QAの時間がありますので、質問とか御意見を賜りたいと思います。
○塩崎政務官 香本さん、どうもありがとうございます。2点質問させてください。
これは、これはなかなか、我々日本の中にいると、海外のVCさんがどのように日本のスタートアップを見ているのかという本音を聞く機会はあまりないのですけれども、今日は相当赤裸々にお話しいただいて、どうもありがとうございました。
その上で、大きく分けると、最初の「グローバルVC・インキュベーションの機能を担う」というところは、本来であればグローバルVCが担っているような機能を、グローバルVCをみんな日本に連れてくるのは大変なので、政府が若干代わりをやってあげたらどうかと、こういう御提案だと思うのですけれども、例えばこのKOLを何人かリテイナーで雇って、月一の壁打ちで、そこでピッチをしてもらうみたいな、そういう短いものでもそれなりに意味はあると考えていいのか。これは、どうなのですか。やるとしたら、今日は曽山さんがいないですけれども、MEDISOでそういったものをやったら、実際には意味があるのか、それとも、ただイベントをやっただけで終わってしまうのか、そこら辺の感覚を教えていただきたい。
もう一点は、6番の国費留学。留学はもちろんできたらいいと思うのですけれども、例えば留学が若干ハードルが高いというときに、今回の提案の中でも、例えば海外でのヘルスケア系の主要なカンファレンス、そういったところでの日本の参加者が少ないとかビジビリティーが少ないという声もあったりして、VCの目から見ると、そういうカンファレンスというのは、日本の潜在的なターゲットを見つける機会となり得るのか、いや、そんなカンファレンスなんて行ってもあまり意味ないよという感じなのか、その2点を教えてください。
○香本委員 まず、1点目について、現状我々のアメリカのメンバーがクオーターに1回日本に来まして、非常に有望と思われる会社さんと3日間にわたって10社ぐらいお会いします。一社当たり最初は1時間の枠で予定しますが、必ず2~3時間必要になります。かなり細かいデータのレビューもその場で行って、こういう追加データがあればもっと面白いとか、こういうターゲット、こういうインディケーションを狙ったらどうかといった壁打ち議論をしています。
実際、これが非常にスタートアップさんから好評いただいておりまして、仮に直ぐに投資の意思決定に至らなくても、次にすべき宿題が非常に明確になり、何をすれば海外VCから投資を受けられる可能性が高まるのか理解できるからです。
ポイントは、一社当たり、2~3時間かかるというところです。ぱっとデータを見てすぐにコメントできるアメリカのKOLは稀だと思います。どのKOLもしっかりデータを見て、様々な質問をします。どんなモデル動物を使っているのか、どういう試験条件でどんな結果が出たのか、それが何を意味しているのか、相当なQAを行った上で、ではこうしたほうがいいよねというのが出てきますので、それなりにKOLの方々にも負担になります。我々はVCなので事業としてやっていますので、時間を使うのは当たり前ですが、そうではないKOLの方々に相当の労力を割いていただくには、それなりのコミットメントをいただく必要があるのかなと思っています。
2点目については、これは非常に鶏と卵的な部分なのですが、やはり海外のトップVCは、優秀な技術、優秀なチームはイベントに参加する必要がないと考えています。どちらかというと青田買いで、有望な会社というのは、会社が出来た段階から、皆が投資をさせてくださいという人気状況であまり表に出てこないのです。逆に言うと、資金調達に困っている、もしくは、わざわざメディアにエクスポージャーしなければいけない会社がイベント出てくるのではないかという意見もあります。
もちろん、学会とか、リサーチデータを発表するイベントは全く別ですが、投資家が聞く側になるようなイベントでは、大体そういう傾向がありますので、イベントの場で投資が決まるということは非常に稀かなと思っています。また、投資家側も、パブリックな場でコメントをするのを好まない場合もありますので、本当の本音を聞きたいのであれば、クローズドなセッションのほうがいいのかなと思います。
○塩崎政務官 ありがとうございます。
○本荘座長 ありがとうございます。
よろしゅうございますか。
そうしましたら、時間となりましたので、追加の質問等は、Teamsや電子メールでいただきたいと思います。
では、小栁委員、資料2のプレゼンテーションをお願いいたします。
○小栁委員 京大病院の小栁でございます。よろしくお願いします。
資料をお願いします。
次のページをお願いします。
私のほうから4点御紹介したいと思います。
左から、ちゃんと現状を分析する「Research」、そして、医療情報・生体試料の活用「Digital, Biospecimen」。そして、3番目はどちらかというと哲学になります。リスクを分散するという考え方が日本は弱いのではないかと考えています。そして、最後に、先ほど香本委員のほうからもありました育成をする、ピッチイベントとかそういうところに出てくるところは正直残念なベンチャーだというところが結構あります。アメリカだと間違いなくそういうところからスタートしますので、ベンチャークリエーション、もしくは大企業からのカーブアウト、そういうところを考えていただきたいと思います。
次のページをお願いします。
海外の状況の前に、私がこのプロジェクトチームに参加というところで、いろいろ仲間から意見をいただきました。その中で一番強烈だったのは、やはり「またか」ということで、ちゃんと変えてくださいよと。もういい加減、この茶番はやめてくれみたいなことで辛辣な意見いただきました。
これは、非常に頑張っていらっしゃる、ここの省庁の場で言うのは申し訳ないのですけれども、これは意外なことに2につながります。私たちが言いたいことを聞かれていないんだよということを言われまして、そうなのかとちょっとびっくりしました。
例えば、薬価制度などは、ベンチャーの方はあまり関係ないと思ってヒアリングに行かれていないのではないかと思うのですが、結局、日本の市場が魅力がないと日本でベンチャーをやる理由がないよねというところにつながっているのかなと。日本の企業を買収するというところは、日本市場を取りに行くというのが数十年前にはあったのですけれども、今はそういうのではない、イノベーションを取りにいくということは、イノベーションが評価される市場にいるのかどうかというのは非常に重要だよということがあります。なので、そのための臨床試験のルールとか、あと、日本で治験を失敗したようなこととか、そういう失敗から学ぶ、こういうところも考えてほしいという意見がありました。
次のページをお願いします。
ここの1ポツのところは、私のプログラムの卒業生から言われて耳が痛かったのですが、正直、よかったアドバイザーとそうではないアドバイザーがいます。時間の無駄になったことが非常に多くて、本気で開発をやりたいのに何とかしてくれないかというのがありました。こういうところも意見としてありましたので、私としては、これは支援ハラスメントと個人的に自分で言っていまして、それがないようにすごく気をつけています。
2番目の方は、これシリアルアントレプレナーの方からなのですけれども、個別の支援というのがそろそろ限界に来ているのではないかと。正直、素人を相手にするよりは、ある程度のプロがホールディングスを形成するような形で技術を育てていくような形ではないですかというような意見がありました。
以上が国内の意見です。
続きまして、海外、今回、Stanford SPARK、そして、ボストンのほうでBioLabsの人に意見を聞いたのですが、先に来ているStanford SPARKを紹介します。
1つ目が、日本の企業にアウトライセンスした経験があるStanfordのPI、研究者からですが、どうしてもライセンスアウトしたところがリスクを取ることを過度に避けているよねと。リスクに見合ったインセンティブというのがない市場にいるとこのようになるのではないかということを言っていました。なので、成功のためにリスクを取るというところの考え方を日本企業が持てないのであれば、そういうカルチャー、先ほども哲学と言いましたが、これを社会として変えないといけないのではないかということがあります。
2番目から5番目は、もう一人、矢島理恵子先生という日系人の方なのですけれども、この方はAAAS、アメリカのほうで政策立案にも関わっていた方です。
この方がいつもおっしゃっているのは、日本とアメリカは、そんなに政策として大きく変わりはないのではないかというような意見があります。なのですけれども、これは、経産省さんの、先ほどの香本さんのお話にもありました、ベンチャーエコシステム強化事業、これは非常に魅力的だよねと。ただ、ちょっとジェネラス過ぎるのではないか、ここのお金を少し人材育成やインフラ整備にも力を入れてほしいなというような話がありました。これは香本さんのお話と結構近いと思います。
そのほか、知財の問題、そして、エコシステムの分析ですね。
現状というところをどれだけ分かっているのか、先ほどの支援をされた人の意見とか、こういうところの分析をする。まず、打ち手の前にしっかり分析をするというところやりませんかというところの御提案をいただきました。彼女と私のほうで既にヒアリングとかはかけていて、国内のPMDAを含め、いろいろなところの御意見を入れる仕組みを考えております。それに基づいて最終的にプログラムの立案というところがいいのではないかという話でした。
次のページです。
こちらは、私がいろいろなところで書いている文章、こういうものをやっておりますので、簡単にですが、Stanford SPARKというトランスレーショナルリサーチのトレーニングプログラムの御紹介です。
2006年に、私の元ボスのDaria Mochly-Rosen、右側の写真の女性ですが、彼女が始めたプログラムでして、専門家面談による指導、そして、講義と開発の進捗報告会を主に構成をされています。全世界で70以上の研究機関が入っておりまして、コミュニティーでスタートアップの支援を実現している。なので、これは政策ではないのです。いかにこういう活動ができる環境をつくるかというところが大事だよねというのが1つと、もう一つは、やはり公的資金がしっかり入っているからこそアメリカでこういうことが実現できるということがございます。
次のページをお願いします。
先ほどのがStanford、西海岸でしたが、東海岸のほうではマサチューセッツ、バイオ系のエコシステム、こちらに書いております。香本さんのほうから既に御紹介もありましたので、2点だけ御紹介しますと、私は、インキュベーターとかアクセラレーターサイドですので、ボストンのBioLabs、ここが今、川崎市の殿町地区に入っておりますけれども、彼らが日本にもどんどんサポートをしたいとおっしゃっていました。こういうところは、日本市場に非常に魅力があるというところは間違いないと思います。ただ、彼らが活動するにも、やはりインキュベーターとかそういうインフラが整っていないよねというお話があります。
もう一つ御紹介したいのは、ALEXANDRIAという大手デベロッパーですね。日本でも三井不動産さん、頑張っていらっしゃいますけれども、ALEXANDRIAは、自分たちが直接スタートアップに投資をして、そして、情報も集めて、それに合わせた施設をつくり、最終的にそのアセットが大企業に流れていくという流れをつくる、それこそエコシステムをちゃんとつくっているというようなメインプレーヤーになっています。
こういったライフサイエンス以外の業態というのが入ってくる、これが非常に重要だと思っています。お客さんではなくて、一緒にコミュニティーをつくるんだ、医療というのはインフラなんだというところを非常に強く強調したいと思います。
次のページをお願いします。
では、日本の現状はどうでしょうというところです。
次のページをお願いします。
私は「Translational Researchの不都合な真実」と申し述べています。いわゆる橋渡し研究、文科省さんの支援をいただきまして、各大学、頑張っております。我々、私がいる先端医療研究開発機構もそうなのですけれども、アカデミアのほうは非常に充実してきていると思います。これはかなり誇って言えると思うのですけれども、何をやっているかというと、やはり医師主導治験がメインです。先ほど、最初のほうでの意見でもありました、医師主導治験でつくったデータをしっかりPMDAさんにたたいていただいて承認まで持っていくというパスをやはりつくりたいというような意見は実際あります。
ただ、いかんせん民間の研究資金との接続の相性がよくない。大学で取ったデータ、公的資金で取ったデータと、ベンチャーが集めてきたお金で取ったデータ、こういうものがどういう関係性にあるのかという分析が多分されていないと思います。買収された後、先ほどの事例に、香本さんの事例にもあるようなああいうものでも、日本で取ったデータというのはほとんど取り直しです。これは意外に皆さん分かっているかどうかというのがすごく気になります。
左にあります、SPARKとかLabCentral、LabCentralはBioLabsの連携機関ですが、こういうところで取っているデータというのは、当然、例えばLabCentralというBioLabsの施設のすぐ横に、隣に、歩いて10メートルのところにファイザーの研究拠点があります。そこの人たちとランチをしながら研究計画を練るということがありますので、そもそもがベンチャーキャピタルが入れたお金がきっちり使われているというような状況が実現されていると考えています。
Stanfordでも、当然、Sand Hill Roadというベンチャーキャピタルが集積しているところが車で5分以内にあると。こういうところの環境ということを考えると、やはり官民一体となったグランドデザイン、トランスレーショナルリサーチのビジネス面を強調するということが必要だと考えています。
次のページをお願いします。
これは、開発のステップの中で、最近私がnoteのほうに書いて反響が大きかったのですが、日本国内の開発の状況、特にベンチャーの支援のストーリーというのは、恐らく日本の大学の技術を、日本の製薬メーカーに全て日本でやってくださいということだと思います。
そして、次のページ。
アメリカ国外、アメリカ以外の国で何が起こっているかというと、いろいろな国の大学の技術をいろいろな国の投資家が投資をして、それをどこに持っていくかというとアメリカ市場ですよねとなっています。製品設計とかアメリカでの治験、こういうところも含めてデザインがアメリカ向けにできている、しなければならない、こういうのが現状だということがあります。
例えば、ここに日本が入ろうとすると、当然、日本のスタートアップはアメリカ市場のことを考えないといけない、治験を考えていかないといけないというのもありますが、逆に、ほかの国の技術とか投資家が日本に投資するためには、日本国外の技術であっても取り入れる、海外の研究者も日本に来て起業する、こういうことができるような環境を整えるというのが必要だと思います。
具体的には、ベルギーのほうとかですと、研究者向けの減税とか研究開発の減税というのがあります。投資家につきましては、アメリカの投資家が日本に入ってくるというのはなかなか考えにくいと思います。エイトローズさんは非常に特殊なケースかなとは思いますので、そういうときは、ヨーロッパとかシンガポールですね。こういうところは日本に投資をしたいと考えています。ただ、彼らもヨーロッパ、シンガポールのお金を単純に持ってくるつもりはない。日本のLPと組みたいと言っている。だけれども、この日本のLPとヨーロッパ、シンガポールのお金が一緒に入るファンドの組成というので苦労しているという現状がありますので、この辺り、環境の整備というのは、まだ余地がありそうだなと考えています。
○本荘座長 11分経過です。
○小栁委員 次のページをお願いします。
これは長くなるので、次のページをお願いします。
シナリオのところです。
日本だけではないよねというところのもう一つの特徴が、1つのアセットで1つの大きいベンチャーになる、こういうシナリオは、少し考えを改めたほうがいいだろうと考えています。
そうではなく、右のほうに多数のベンチャーが存在して、それの中から育つ、もしくは離合集散して大きくなっていくというのがある。そこの中に、技術的なところ、様々なビジネス面でのげたを履かせるために、SBIRとかI-CORPSというシステムがアメリカでは存在している。こういう認識を持っております。
これを考えますと、次のページをお願いします。
国内でもM&Aの事例が出始めました。おととい、バレンタインデーに発表になりました、ラクオリアさんがファイメクスという武田のスピンオフベンチャーを買収しました。ほかにも科研製薬さんとか、ベンチャーのほうではメトセラ、そして、大企業スクリーンがAFI、シスメックスがメガカリオン、必ずしも成功的な買収とは言えないかもしれませんが、こういうようなスキームが出てきているというのがあります。
ちなみに、日本国内では、恐らく上場ベンチャーの買収というのは、上場後の買収というのは三角合併が難しいと聞いておりますので、その辺りの仕組みも改善が必要だと思っています。
次のページをお願いします。
最後がVenture Creationのお話です。
ちょっと細かい数字で申し訳ないのですけれども、これの御説明を。
これは、まず、Venture Creationという仕組みをやろうとしているベンチャーキャピタルがアメリカにはいっぱいありますという趣旨のスライドです。
次のページをお願いします。
FlagshipのPioneeringというベンチャークリエーションを主にやっているアメリカのベンチャーキャピタルがやっているモデルになります。このシステムを使って出てきたのが、皆さんもワクチン接種をされていたモデルナという会社です。こういう仕組みをもっと日本でも取り入れていけないかということが私の御紹介したいところです。
次のページをお願いします。
具体的にはコンセプトをデザインし、フィージビリティースタディーを行い、そして会社としてローンチをします。スタートして最終的に成長していく。横文字ばかりで恐縮なのですけれども、キーポイントとしてはVC、もしくはトップサイエンティストたちが合議で企画を立案し、そして、ステージごとにプレーヤーが変わります。日本ではどうしてもCEOがずっと石にかじりついて育てていくというカルチャーがあり、CEOのコミットメントというところを非常に強くベンチャーキャピタルの方もおっしゃいますが、現実的に、一番左からその次のフィージビリティースタディー、この時点では、そこまで、例えばIPOをするCEOはここでは活躍できません。そういうことをあまり考えずにシステムができていると感じます。
次のページをお願いします。
これも、私、いろいろなところで講演で使っております。左端の「根本的な生物学的発見」、ここのところばかりに日本のアカデミアの貢献を求められます。ところが、右のほう、病院のほうで行っております疾患のモデルの開発、新しい評価系、規制・治験プロトコル、リアルワールドエビデンス、疾患情報の活用、こういった大学病院で行っているような研究とか情報を集めること、こういうところにも非常にアカデミアの価値は高いと考えております。
次のページをお願いします。
そして、病院で行っているところから基礎のほうにどんどん変わっていくような、こういうような、上の段では遺伝子、DNAからライセンスアウトのところまで一直線で書いていますけれども、実際には、左から右だけではなくて、右のほうから左に情報がフィードバックされる、こういうような考え方がなかなか日本では根づいていません。ここを改善したいと考えております。
次のページをお願いします。
京都大学のほうでは、これだけではないのですけれども、医療情報とかヒト由来サンプル、そして、早期の臨床試験環境を整えるインフラをつくっておりますが、まだまだ駆け出しです。これらの仕組みは、もう既に5年ぐらい動かしているのですけれども、例えば臨床試験のところですと、ベッドは空いているように見えるわけなのですね。ところが、治験をやるためには、看護師さんとかは裏でずっと働いていると。先日も病院内の懇親会では、「あそこは空いているんだよね」というコメントがあるのです。「いやいやとんでもないですよ。裏では治験のためにどれだけ頑張っているかというのが分かっていますか」。やはり、大学病院で全てを賄うというのはなかなか厳しいなという現状がございます。
最後でございます。一番最初に御紹介したところに戻ってきました。
細かくしゃべりますと長くなりますので、御質問を受けながらお話ししたいと思いますが、まずは分析をして、最終的には、今までと違うVenture Creation、そして、カーブアウト型ベンチャーというのを育てるということを行っていくべきかなと考えております。
以上です。
○本荘座長 ありがとうございます。
御質問、御意見はありますでしょうか。
どうぞ。
○塩崎政務官 非常に分かりやすいプレゼンテーションをありがとうございました。あと、今の、いろいろな政府のよかれと思ってのプログラムを、なかなかうまくいっていないところがあるということを率直にお話しいただいてありがとうございました。
この10ページ、11ページのスライドは非常に分かりやすく、大きな意味での問題を提起していると思います。我々はどうしても、日本からスタートアップ支援というと、この10ページのオールジャパンモデルを考えてしまうのですが、そうではないと。ほかの国もグローバルに勝負していくという意味では、やはりアメリカのマーケットで通じるかというところを最初にゴール設定して、そこから逆算していろいろ考えていかなくてはいけないのだという、ここの示唆は非常に大きな視点だと思います。
具体的に、では、この10ページの世界から11ページの世界に移っていくための分岐点はどこなのか、そのための政策的な打ち手、こういったものがどこにあるのかというのが1つ。
もう一つお伺いしたいのは、薬価制度とか、そういう、いわゆる保険の世界が、日本のいろいろなスタートアップの出口になってくるというお話がありましたけれども、その新しいイノベーションをデザインしていったりするときに、保険がこうあったらいいとか、点数がこうあったらいいとか、こういう加算があったらいいとか、そういった声というのを伝えていくようなチャネルというのは、今、ベンチャーの側から見えているものがあるのでしょうか。それとも、かなりアドホックな形になっているのでしょうか。その2点を教えてください。
○小栁委員 ありがとうございます。
まず、政策に反映できるような海外への進出というところですが、これは、私、2016年からHVC KYOTOというのを始めましたが、4~5年かかってようやく、特にJETROさんが海外に行くというところで思考されている非常にすばらしい政策だなと考えています。
次に必要なのが、やはり、まずはアメリカに行くという形は出来上がったのですが、アメリカで何をするべきかというところ、とにかくアメリカに行けというところから次の実質的なところの議論にするというところが必要だと思います。そのためにも、まず現状の分析というところをぜひお願いしたいと思っています。
アメリカのメンターに会わせて、もしくは連れていって、そこでディスカッションするというのが今のプログラム、ほとんど多いのですが、香本さんの先ほどの意見にもあったKOLと会わせるというのは非常に重要だと思います。ただ、それをやると、私、StanfordとかUCサンディエゴと一緒に話をすると、プレゼンが一通り終わってアドバイザーのセッションが終わった後に私が呼ばれて、「ところであいつら本気なのか」というので、二歩、三歩やはり足りていないというのがあります。なので、国内、特に大学の中でも、ここで先ほどお話にあったようなベンチャーというのは、大体20社1社ぐらいぴかりと光るものについての議論になっていると思います。その前の段階をもう少し考えないといけない。各大学の中での足元のところを、もう少しげたを履かせるというのが必要だと思います。
具体的なお話になっていないと思うのですが、研究者レベルでの技術を、Venture Creationのための技術移転のマネージャークラスでビジネスモデル的なところまでつくれる体制を、各大学で、拠点大学でできるようにしてほしいというところは考えているところです。
すみません。長くなったので、薬価とかイノベーションにつながるところですが、今のところ上場ベンチャーとかが、ただの中小企業、ただのというか中堅の製薬企業程度の情報発信力がないのかなと。ここは鍵本さんは御経験があるのかもしれないのですけれども、そういうところの意見を聞くというところを、まず大きく主張したいと思います。現状では、そこに特化したような活動というのがひょっとしたらあるのかもしれませんが、私には見えていませんし、私が聞いた意見の中では、それをつくってほしいというお話がありました。
○塩崎政務官 ありがとうございました。
○本荘座長 時間となりましたので、その他の質問等はTeamsやメールでお願いいたします。
では、第3の資料について、吉澤委員、お願いします。
○吉澤委員 VCスタートアップ労働衛生推進協会の吉澤と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、欧米の事例から、日本におけるヘルステックスタートアップ振興のための介入余地を検討したいと思います。
私からお伝えする内容の要点としましては、欧米のヘルステック市場を振り返って、2010年代の規制整備が大きく市場形成に寄与したということ、また、その規制が機能した方法として、1つ目に保険者への介入、2つ目に新技術の承認プロセスの変化、3つ目にデータの連携基盤への整備が進んだことを示しています。
また、これらの欧米事例から、日本における参考とすべき点として、保険者への介入とデータの連携促進という2つが重要であると考えています。
まず初めに、欧米において2000年代以降、急速に発展を遂げたヘルステックスタートアップの3段階の成長を整理します。
2000年代は、技術革新が大きなきっかけとなり成長をしておりますが、2010年以降は、アメリカ・フランス・ドイツ各国で、新技術を取り入れることを前提とした法改正が行われています。その後は、コロナの影響もあり、急速に活用が広がっているという状況です。
一方で、日本を振り返ってみると、2000年代の技術革新や直近のコロナという動向については世界共通であるものの、規制の整備という点では大きく遅れておりまして、これがヘルステックスタートアップの誕生と成長のハードルになっていると考えています。
今回の欧米の事例から、この規制整備面の可能性について整理します。
まず「アメリカの規制改革」です。
皆様も御存じのとおり、アメリカでは、ほかの産業同様にヘルスケアスタートアップが多く誕生し、ユニコーンのスタートアップや大型IPOを生み出しました。2013年からの資金調達動向を見てみると、オンライン診療やオンデマンド医療と呼ばれる患者自身の行動も大きく変える分野が継続的に注目されていることが分かります。
詳細は割愛しますが、前提として、アメリカの医療保険制度がこのスタートアップの成長に非常に大きく影響しており、その中の大半は民間の営利企業によって運営されているものになっております。
スタートアップに大きな影響を与えた規制改革であるオバマケアは、この民間の保険の対象となる国民の保険未加入を減らすために成立された法律になります。主に保険者に対する規制強化が行われた結果、加入促進により市場自体は拡大しましたが、一方で競争の激化や給付の増大を受けて、保険者はコスト最適化圧力自体は強く受けるようになりました。
償還の範囲の規定も相まって、医療費を中長期で抑制していくための予防的介入への投資の盛んに行われまして、この分野でも多くのヘルステックスタートアップの普及が加速しています。
実際に、先ほど挙げたオンライン診療につきましても、保険者が無料提供するなど、保険からのサービスの一環として取り入れたことも成長に大きく寄与しています。
保険者は、また、投資自体も行っておりまして、戦略的投資の目的でスタートアップ自体への投資も多く行っております。
スタートアップという文脈だけではなく、国全体の医療の電子化の状況としては既に活用フェーズまで来ておりまして、医療機関におけるデータの電子化と相互運用性が整備されたことで、現時点においても、ペイフォーパフォーマンスのような実用化においても、これらのデータが活用されております。これは、先ほど申し上げたオバマケアによる医療費最適化の圧力だけではなくて、データの連携基盤の整備が2010年代の時点で既に進んでいたことが大きく寄与していると言えます。
こういったデータの活用自体は、医療機関や保険者だけではなく、ベンチャー企業においても活用が進んでいるというところで、こういったデータの活用基盤というところが整うことは、スタートアップの成長においても非常に重要だと言えます。
しかし、アメリカは日本と非常に異なる医療保険制度を取っていますので、その点を考慮し、より日本に近い保険制度を取りつつ、ヘルスケアスタートアップの成功事例が増えているフランスの事例も御紹介したいと思います。
フランスでは、2010年代以降に急速にヘルスケアスタートアップへの投資件数、投資総額が増えております。これには2016年と2019年の法改正が寄与していると考えられ、現時点ではユニコーンは3社あるような状況になっております。
フランスにおいて急速にヘルステックの発展を支援する、推進するきっかけとなったのは、2016年の「健康システム近代化法」が影響していると言えます。これによりオンライン診療や予防サービスの分野において既存企業の参入、もしくは、新たなスタートアップが誕生しました。前述のユニコーン企業のAlanやDoctolibもこのタイミングで事業参入しています。
フランスの医療保険制度は、1つの公的機関が有する公的保険に全国民が加入しているといった意味で、非常に特徴的となっています。さらに、公的保険を補完する任意の私的保険に国民の96%が加入しているという体制になっていて、公的保険は非常に大規模な被保険者がいる一方で、CNAMという1機関に運営が統一されているという点が特徴的です。
単一の公的保険者の運営という点が非常にユニークなフランスになりますが、この公的保険によるイノベーションの推進も大きなインパクトを出しやすい構造になります。
実際の事例では、新技術の保険償還のファスト・トラックや医療機関への電子化推進を評価項目とするインセンティブプログラムも提供しています。これにより、医療現場での電子化の推進という点もですし、新しい技術の開発というのも推進されたと考えられます。
また、PHRの分野においては国が統括し、普及を進めています。2016年から2021年までは記録、共有管理に焦点を当てたDMPと呼ばれるプロダクトを展開しており、2022年からはDMPをさらにアップデートする形でMy Health Spaceと呼ばれるPHRと、その他の機能を備えたアプリを展開しています。
連携が推奨されるヘルスケアアプリのプラットフォーム機能も備えており、既にヘルスケアスタートアップのアプリなども多く提供されているのが特徴です。
フランスのこういった動きとしては、巨大な保険者ないしは国が積極的な動きをとっているというところが非常に特徴的で、各保険者の市場原理に任せるアメリカとは大きく異なると言えます。
次に、ドイツの事例を御紹介します。
ドイツで2017年の医療機器法改正や、2019年のデジタル・ヘルスケア法の施行が、2010年代以降のヘルスケアスタートアップへの投資を加速したと考えられます。現時点ではユニコーン自体は1社になりますが、特にバイオ、医療機器の分野において大型のスタートアップが多く存在しております。
日本は、ドイツの保険制度を参考に今の制度の基礎をつくったということもあり、ドイツの医療保険制度は日本に非常に近いものとなっております。法定義務範囲の保険は公的保険ないしは、ごく一部の富裕層向けの私的な代替保険で100%の加入率となっております。特徴は、法定保険の保険者が統合された結果、現時点では、もともとあった数よりも大きく減って110個の保険者になっているということが挙げられます。
ドイツの最も注目されるヘルスケアスタートアップの推進策としては、2019年のデジタル・ヘルスケア法によって始められた、デジタルヘルスアプリの承認を早めるファスト・トラックプログラムのDiGAが挙げられます。
DiGAは、申請から3か月以内に暫定承認を行って、そこからスタートには、12か月間の間に正式承認に向けた臨床的な試験を行うことができるというものになります。
ただ、この12か月間の間にも、実際に患者が使う場合には保険償還されるというところで、非常に特徴的なものになっておりまして、特に、この価格の決定方法というのは、暫定期間中に関して申し上げると、メーカーから申請した希望価格でそのまま保険償還されるというものになっております。
また、正式に承認されるタイミングでは、保険の連合会とともに、実証データを基に直接的に交渉を行って、最終的な価格が決定されるものとなっております。
DiGAは、先進的な事例として世界中から注目を集めましたが、依然、2つの大きな課題が残っています。
1つ目が、二段階の価格決定方法への問題点と、2つ目が、処方する医師自体を増やせるのかという点になります。
前者については、先ほど申し上げたように、暫定価格と、最終的に保険者とともに決定される価格、この二段階の価格設定を行っていることによって、最初に決められた金額と最終的な価格、これが大きく乖離してしまっているというような問題を抱えています。これによって保険者もそうですし、メーカーにとっても不満を抱える要因となっておりまして、非常に大きな事例でいくと6割以上も価格が下がっているものもあるというところで、今後、見直しが求められているような状態になっております。
後者については、処方したことのある医師自体は徐々に増加をしているものの、処方の件数として見ればまだまだ限定的という問題がございます。
その要因としては、医療従事者自体へのこのDiGAの情報提供不足と、処方に対する保険償還がまだまだ不足しているという点を医療従事者が多く挙げているということが分かっております。
それでも、このDiGAという先進事例から学べる点は多くあると考えており、そのうちの一つは、申請時に必要な要件の中にある相互運用性の厳しい規定になっております。
これは、DiGA自体を継続的に評価し、医療現場で活用できるために非常に重要なものであると同時に、そのほかのアプリや、実際の診療行為自体もこのデータを活用していくという点で非常に重要な取組になっております。
また、国を挙げて法定保険で統一されている取組以外にも、保険者単位でスタートアップと連携する取組自体も近年は非常に増えております。特に、テクニカル保険と呼ばれるドイツ最大規模の保険者も、スタートアップに対するアプローチを開始しており、スタートアップが提供するソリューションの導入だったり、ないしは、スタートアップの初期段階のアイデアに対しても、アイデアの実行部分を支援するようなプログラムを提供しております。
これまで紹介した3つの国の先行事例を基に、日本での導入可能性についても、簡単に提案をまとめたいと思います。
まず、それぞれの特徴を整理させていただくと、アメリカは営利性の強い保険者への規制を強化したことで、医療費適正化の圧力とともにスタートアップのソリューションが非常に成長しました。
もう一つ特徴的な点としては、医療データの相互運用性についてもトップダウンで取り組んだことによって、早期にデータを活用できるフェーズが確立したと言えます。
フランスにおいては、単一の保険者がテクノロジー分野を進めたことで、オンライン診療等への対応も急速に進みました。
アプローチとしては、医療機関とアプリ開発者、両方へのインセンティブの付与を行っており、デジタルヘルス全体の活用を推進したと言えます。
ドイツにおいてはヘルステックスタートアップの中でも、DTxへの保険償還を早めるという取組に迅速に取り組んでおります。
アプリ開発者も特に強いインセンティブを設計し、その参入を支援していると言えます。また、そのアプリの評価の中では、効果や個人情報の保護、セキュリティーの要件というものを設けている中に、データの相互運用性という連携性を高めた要件についても厳しい基準を入れております。こういった点については非常に参考にすべき点だと考えられます。
日本について考える上では、日本の保険構造を見てみることも重要かなと思いますが、皆さんは恐らく御存じだと思いますので、簡単に今の情勢だけお伝えさせていただきます。
日本においては、被用者保険に加入する人が最も多いということが分かっており、それと同時に保険者の数自体も非常に多いということが、諸外国と比較すると分かっております。
さきの3か国の事例において、保険者がスタートアップの成長において重要な役割を担っているということが明確に分かるかと思います。
一方で、日本のヘルステックスタートアップの多くは、雇用主ないしは製薬メーカー向け、もしくは直接消費者に届けるようなサービスに事業が集中しています。その背景には、保険者に対するサービスを展開しづらいという3つの要因があると考えており、こういったことにより直接保険者ないしは医療機関に導入していただける保険者から、診療報酬をつけるようなサービスというのが非常に展開が難しいという状況になっております。
大きな財源を持つ保険者をスタートアップの成長支援に取り組んでいただくための提案としては、後期高齢者の支援金の加算減算項目に、スタートアップの先端技術を取り入れる旨を含めるのが有効ではないかと考えております。
また、保険者への加入だけではなく、データの連携も非常に重要です。
アメリカのValue Based Healthcareの基盤整備や、フランスのMy Health Spaceの事例からも、日本においても、今後、マイナ保険証のオンライン資格確認とともに提供予定の電子カルテの情報共有サービスの構造が非常に重要だと考えています。
マイナ保険証とオンライン資格確認端末自体の普及は急速に現在進んでいますが、電子カルテ情報の相互運用性についてはいまだ発展途上にあると言えます。この構想を推進していくためにも、FHIR対応の電子カルテの普及、それに向けた3つの取組が重要になると考えています。
1つ目に、ベンダーがまず対応するかという点ですが、おととい公開された2024年の診療報酬改定についても、DX推進体制の整備加算というものも含まれ、推進はされる流れであると言えるでしょうと。一方で、加算自体は大きなものではないため、トップダウンの強制力も必要であると考えています。
2つ目に、医療機関と医師が導入したいと思うかという点ですが、これは、利便性はもちろん、診療の質の向上のために必要であるということは、医療従事者にも理解していただく必要性があると考えています。
3つ目に、消費者自体が望むかという点についてですが、これ自体は、利便性は非常に大きく、電子処方箋以上に患者のメリットが直接的であると考えられるため、恐らく消費者については、しっかりとした情報提供を行っていくことによって、マイナ保険証の普及と併せて普及していくことが考えられると思っております。
駆け足になりましたが、私からの発表は以上にさせていただきます。ありがとうございました。
○本荘座長 ありがとうございます。
質問、御意見を賜りたいと思います。
原さん、どうぞ。
○原委員 ありがとうございます。
非常に情報に富んだ内容で勉強になりました。
1つ教えていただきたかったのですが、18ページ目で書いていただいているフランスの事例で、周辺既存システムの互換性を促進するような取組、これは、実際に後押しする原動力になったのは金銭インセンティブと書いてあるのですが、やはり金銭インセンティブが大きなドライバーになったのでしょうか。あるいは、それ以外に、こういうものを後押しするような何か他の取組があったのであればお伺いできればと思いました。
○吉澤委員 ありがとうございます。
ちょっと音声が聞き取りづらい点があったのですけれども、この17ページ目の取組に対して。
○原委員 18ページ目の1つ目の四角の右側のところに、「金銭インセンティブを付与し、普及を加速した」とあるのですけれども、こういうシステムの互換性、相互運用を促進するところにおいて、金銭インセンティブ以外に何か重要なドライバーになるものがあったのであれば教えていただきたいと思いました。
○吉澤委員 ありがとうございます。
DMPの時代からフランスが一貫して力を入れていた点については、消費者に対する有用性の情報提供というところは、かなり力を入れていたような印象を受けます。
医療現場自体での活用のメリットというものは、もちろん、こういった加算のインセンティブというところで指摘されたというものになっていましたが、それと同時に、消費者自体がこのアプリ自体を持って、医療現場で提供する、見せるというような流れをつくること自体が非常に重要だったと考えているので、そういった意味では、DMP及びこのMy Health Spaceにおいても、消費者向けにしっかり情報提供していく、ないしは宣伝をしていくというところに非常に政府が力を入れていたということは分かっております。
○原委員 ありがとうございます。
○本荘座長 ほかにございますでしょうか。
お願いします。
○塩崎政務官 ありがとうございました。
SaMDのところの保険償還は、たしかほかの委員の先生方も、結構、今回、関心の高いテーマではないかと思っておりまして、吉澤さんから、ドイツのDiGA、このシステムの御紹介がありまして、非常に面白いなと思いました。
ただ、この暫定価格を定める、そして、それが結果的に違って値下げを受けるという、ここのところが、企業側もある程度それを織り込んだリスクとして進んでいるということであればいいのですけれども、このときに、23ページですかね。交渉が破綻した場合、仲裁委員会が価格を決定しているとあります。ここのスピード感が制度の運用上で結構大事なのかなという気がするのですけれども、ここは、割とスピーディーに、交渉決裂したら仲裁委員会が値段を決めるような、そういう形になっているのでしょうか。
○吉澤委員 そうですね。正式な決裁といいますか、正式承認に併せて正式価格を決定する必要性があるので、そういった意味では、保険者とメーカーさんが交渉して、早期に折り合いがつかないということであれば、仲裁が入って、その仲裁が入った場合になっても、結果としては保険者に近い価格設定が下されるということが主になっています。できるだけ早く承認を載せて、正式にアプリを使えるようにすることが主な目的としてのプログラムにはなっているので、そういった意味では、正式価格の決定というもの自体は非常に迅速だと思います。
その後、しっかりと継続的に利用されて、価格の見直しを行っていくかどうかという点が重要になりますが、まだ、このプログラム自体は始まったばかりものになっているので、今後、しっかり使われていく中で、そのアプリの有用性を証明することによって価格をしっかりと最適化していくのが、今後注視すべきだと思います。
○塩崎政務官 ありがとうございました。
○本荘座長 時間となりましたので、前半戦はここで閉めたいと思います。追加の質問、御意見等はどんどん賜りたいと思います。
では、ここでユーチューブ配信等について、事務局からコメントをいただきたいと思います。
○水谷課長 この後、個別の事項に係る内容について御議論いただきたいと思います。自由闊達な意見交換に支障を来すおそれがあるということで非公開とさせていただきたいと思います。議事要旨につきましては、後日、厚生労働省のウェブサイトに掲載させていただきます。